JP2020015975A - 亜酸化銅粉末の製造方法、亜酸化銅粉末、銅粉末の製造方法及び銅粉末 - Google Patents
亜酸化銅粉末の製造方法、亜酸化銅粉末、銅粉末の製造方法及び銅粉末 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】平均粒径が小さく、酸化還元電位が銅よりも卑である元素の含有率の少ない亜酸化銅粉末を製造することのできる亜酸化銅粉末の製造方法及び亜酸化銅粉末、並びにその亜酸化銅粉末を用いて得られる銅粉末の製造方法及び銅粉末を提供する。【解決手段】2価の銅イオン又は銅錯イオンのいずれかを少なくとも含有する溶液に、アルカリ及び還元剤を添加して亜酸化銅粉末を生成する、亜酸化銅粉末の製造方法であって、亜酸化銅粉末の生成過程において2価の銅化合物が生成しないようにアルカリ及び還元剤を添加する亜酸化銅粉末の製造方法である。得られる亜酸化銅粉末は、平均粒径が0.01μm以上0.50μm以下であり、酸化還元電位が銅よりも卑である元素の含有率が0.01質量%未満である。また、得られる銅粉末は、平均粒径が0.1μm以上5.0μm以下であり、酸化還元電位が銅よりも卑である元素の含有率が0.01質量%未満である。【選択図】図2
Description
本発明は、亜酸化銅粉末の製造方法、亜酸化銅粉末、銅粉末の製造方法及び銅粉末に関し、特に電子材料用銅粉の原料、セラミック電子回路用基板の配線材料、セラミックコンデンサの外部電極、若しくは船底塗料等の塗料原料を始めとする種々の用途に適用可能な亜酸化銅粉末の製造方法、亜酸化銅粉末、銅粉末の製造方法及び銅粉末に関する。
亜酸化銅粉末は、電子材料、船底塗料、殺菌剤、触媒、着色剤などの原料や材料として種々の用途に使用されている。特に、化学還元法で製造される銅粉末の製造方法において、亜酸化銅粉末は、銅粉末の反応中間体として製造及び使用されている(例えば特許文献1、2参照)。
銅粉末の製造において、反応中間体である亜酸化銅粉末の持つ役割は1価の銅イオンの供給源である。すなわち亜酸化銅粉末から1価の銅イオンが溶液中に溶解し、1価の銅イオンに還元剤を作用させることにより、1価の銅イオンが還元され銅粉末が得られる。
例えば、亜酸化銅粉末の製造方法としては、特許文献3、4に記載されているように、銅溶液にアルカリ溶液(塩基物質)と還元剤を添加して、2価の銅イオンを還元することにより亜酸化銅粉末を製造する方法が提案されている。
さて、上記の反応中間体である亜酸化銅粉末は、溶液中に溶解させる必要があることから、溶液への溶解性が高いものが好適である。例えば、亜酸化銅粉末の比表面積を大きくするために例えば、サブミクロンオーダー(1μm未満)程度の粒径の小さい亜酸化銅粉末を製造できることが好ましい。
しかしながら、特許文献3に記載の亜酸化銅粉末の製造方法では、得られる亜酸化銅粉末の粒径は1.5以上5.0μm以下であり、サブミクロンオーダー程度の粒径の小さい亜酸化銅粉末を得ることができていない。
また、特許文献4に記載の亜酸化銅粉末の製造方法では、2価の銅イオン含有溶液に予め2価の鉄イオンを添加することで、サブミクロンオーダー程度の粒径の小さい亜酸化銅粉末を得ることができる旨が記載されている。しかしながら、添加される2価の鉄イオンは酸化還元電位が2価の銅イオンに対して卑であり、2価の鉄イオンは2価の銅イオンよりも還元されやすい。そのため、この製造方法により得られた亜酸化銅を反応中間体として使用して銅粉を製造した場合には、不純物として鉄が含有される銅粉が製造される可能性や銅粉の粒度分布が悪化する可能性がある。
日本化学会編 化学便覧 基礎編 改訂5版(2004)
本発明は、以上に挙げた従来の問題点を踏まえ、平均粒径の小さい亜酸化銅粉末を製造することのできる亜酸化銅粉末の製造方法及びその製造方法により得られる亜酸化銅粉末、並びにその亜酸化銅粉末を用いて得られる銅粉末の製造方法及びその製造方法により得られる銅粉末を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、亜酸化銅粉末の生成過程において2価の銅化合物が生成しないように亜酸化銅粉末の製造を制御することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の第1は、
2価の銅イオン又は銅錯イオンのいずれかを少なくとも含有する溶液に、アルカリ及び還元剤を添加して亜酸化銅粉末を生成する、亜酸化銅粉末の製造方法であって、
前記亜酸化銅粉末の生成過程において2価の銅化合物が生成しないように前記アルカリ及び前記還元剤を添加する
亜酸化銅粉末の製造方法である。
2価の銅イオン又は銅錯イオンのいずれかを少なくとも含有する溶液に、アルカリ及び還元剤を添加して亜酸化銅粉末を生成する、亜酸化銅粉末の製造方法であって、
前記亜酸化銅粉末の生成過程において2価の銅化合物が生成しないように前記アルカリ及び前記還元剤を添加する
亜酸化銅粉末の製造方法である。
本発明の第2は、
第1の発明において、
2価の銅イオン又は銅錯イオンのいずれかを少なくとも含有する前記溶液に前記還元剤を添加し、
前記還元剤が添加された前記溶液に前記アルカリを添加する
亜酸化銅粉末の製造方法である。
第1の発明において、
2価の銅イオン又は銅錯イオンのいずれかを少なくとも含有する前記溶液に前記還元剤を添加し、
前記還元剤が添加された前記溶液に前記アルカリを添加する
亜酸化銅粉末の製造方法である。
本発明の第3は、
第1の発明において、
前記アルカリと前記還元剤とを予め混合して混合物を調製し、
2価の銅イオン又は銅錯イオンのいずれかを少なくとも含有する前記溶液に、前記混合物を添加する
亜酸化銅粉末の製造方法である。
第1の発明において、
前記アルカリと前記還元剤とを予め混合して混合物を調製し、
2価の銅イオン又は銅錯イオンのいずれかを少なくとも含有する前記溶液に、前記混合物を添加する
亜酸化銅粉末の製造方法である。
本発明の第4は、
第1から第3のいずれかの発明において、
2価の銅イオン又は銅錯イオンのいずれかを少なくとも含有する前記溶液は、銅錯イオンを含有する
亜酸化銅粉末の製造方法である。
第1から第3のいずれかの発明において、
2価の銅イオン又は銅錯イオンのいずれかを少なくとも含有する前記溶液は、銅錯イオンを含有する
亜酸化銅粉末の製造方法である。
本発明の第5は、
第1から第4のいずれかの発明において、
前記アルカリが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、及びアンモニアからなる群から選ばれる1種類以上である
亜酸化銅粉末の製造方法である。
第1から第4のいずれかの発明において、
前記アルカリが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、及びアンモニアからなる群から選ばれる1種類以上である
亜酸化銅粉末の製造方法である。
本発明の第6は、
第1から第5のいずれかの発明において、
前記還元剤が、ヒドラジン類、亜硫酸ナトリウム類、リン酸類、アスコルビン酸類、カルボン酸類、アルデヒド類、及び還元糖からなる群から選ばれる1種類以上である
亜酸化銅粉末の製造方法である。
第1から第5のいずれかの発明において、
前記還元剤が、ヒドラジン類、亜硫酸ナトリウム類、リン酸類、アスコルビン酸類、カルボン酸類、アルデヒド類、及び還元糖からなる群から選ばれる1種類以上である
亜酸化銅粉末の製造方法である。
本発明の第7は、
平均粒径が0.01μm以上0.50μm以下であり、
酸化還元電位が銅よりも卑である元素の含有率が0.01質量%未満である
亜酸化銅粉末である。
平均粒径が0.01μm以上0.50μm以下であり、
酸化還元電位が銅よりも卑である元素の含有率が0.01質量%未満である
亜酸化銅粉末である。
本発明の第8は、
第1から第7のいずれかに記載の製造方法により製造される亜酸化銅粉末を、還元剤により還元する、
銅粉末の製造方法である。
第1から第7のいずれかに記載の製造方法により製造される亜酸化銅粉末を、還元剤により還元する、
銅粉末の製造方法である。
本発明の第9は、
第8の発明において、
前記還元剤が、ヒドラジン、ヒドラジン一水和物、1,1−ジメチルヒドラジン、1,2−ジメチルヒドラジン、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、アスコルビン酸、シュウ酸、ギ酸、ホルムアルデヒドから選ばれる1種類以上である
銅粉末の製造方法である。
第8の発明において、
前記還元剤が、ヒドラジン、ヒドラジン一水和物、1,1−ジメチルヒドラジン、1,2−ジメチルヒドラジン、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、アスコルビン酸、シュウ酸、ギ酸、ホルムアルデヒドから選ばれる1種類以上である
銅粉末の製造方法である。
本発明の第10は、
平均粒径が0.1μm以上5.0μm以下であり、
酸化還元電位が銅よりも卑である元素の含有率が0.01質量%未満である
銅粉末である。
平均粒径が0.1μm以上5.0μm以下であり、
酸化還元電位が銅よりも卑である元素の含有率が0.01質量%未満である
銅粉末である。
本発明によれば、酸化還元電位が銅よりも卑である元素を用いることなく、亜酸化銅粉末及び銅粉末を製造することができる。これにより、平均粒径の小さく不純物が極めて少ない亜酸化銅粉末及び銅粉末を得られる。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
≪1.亜酸化銅粉末の製造方法≫
<1−1.亜酸化銅粉末の製造方法について>
本実施の形態に係る亜酸化銅粉末の製造方法は、2価の銅イオン又は銅錯イオンのいずれかを少なくとも含有する溶液に、アルカリ及び還元剤を添加して亜酸化銅粉末を生成する、亜酸化銅粉末の製造方法である。なお、本明細書において粉末とは細かな粒(粒の形状は問わない)の集まりとなっている状態を意味する。
<1−1.亜酸化銅粉末の製造方法について>
本実施の形態に係る亜酸化銅粉末の製造方法は、2価の銅イオン又は銅錯イオンのいずれかを少なくとも含有する溶液に、アルカリ及び還元剤を添加して亜酸化銅粉末を生成する、亜酸化銅粉末の製造方法である。なお、本明細書において粉末とは細かな粒(粒の形状は問わない)の集まりとなっている状態を意味する。
本発明者らの研究により、亜酸化銅粉末の生成過程において、水酸化銅や酸化銅等の2価の銅化合物が生成した場合には、製造される亜酸化銅粉末の粒径自体が大きくなることが明らかとなった。亜酸化銅粒子の初期核が液中から析出する過程において、水酸化銅や酸化銅等の2価の銅化合物が生成した場合には、溶液中の2価の銅イオン(Cu2+)の濃度が低下し、亜酸化銅粒子の初期核の析出が抑制される。これにより、亜酸化銅粒子の初期核が少ない状態で粒子の核の成長が進んでしまい、粒子の粒径が大きくなると考えられる。尚、初期核とは溶液中の原子が電極表面に集まることにより形成された初期状態の微粒子(核)を意味する。
本実施の形態に係る亜酸化銅粉末の製造方法においては、亜酸化銅粉末の生成過程において、2価の銅化合物が生成しないようにアルカリ及び還元剤を添加することを特徴としている。つまり、アルカリ及び還元剤の添加を制御することによって溶液中の酸化還元電位とpHを調整し、これにより2価の銅化合物が生成しないようにする。
なお、詳しくは後述するが、亜酸化銅粉末の製造における原料としては、2価の銅イオンを含有する溶液だけでなく、2価の銅イオンの代わりに錯体として形成された銅錯イオンを含有する溶液であってもよい。以下では、アルカリ及び還元剤を添加する溶液中の2価の銅イオン又は銅錯イオンを便宜的に「銅イオン」と総称し、その溶液を「銅イオン含有溶液」と称する。
ここで、図1に、銅イオン濃度:0.1mol/kg、温度:343Kの条件における銅−水系の電位−pH図を示す。銅イオン含有溶液中の銅イオンは、銅イオン含有溶液中の酸化還元電位及びpHによって、2価の銅イオン(Cu2+)の状態、2価の銅化合物(Cu(OH)2)の状態、1価の銅化合物(Cu2O)の状態、銅(Cu)の状態に変化する。
図1において斜線で囲った亜酸化銅の領域を形成する境界線1〜3は、次の反応をそれぞれ表している。なお、E0 1、E0 2、E0 3は、それぞれの反応の標準電極電位を表している(非特許文献1を参考に算出)。
[境界線1]
2Cu2++H2O+2e−=Cu2O+2H+(E0 1=+0.217V(25℃))
[境界線2]
2CuO+2H++2e−=Cu2O+H2O(E0 2=+0.613V(25℃))
[境界線3]
Cu2O+2H++2e−=2Cu+H2O(E0 3=+0.463V(25℃))
[境界線1]
2Cu2++H2O+2e−=Cu2O+2H+(E0 1=+0.217V(25℃))
[境界線2]
2CuO+2H++2e−=Cu2O+H2O(E0 2=+0.613V(25℃))
[境界線3]
Cu2O+2H++2e−=2Cu+H2O(E0 3=+0.463V(25℃))
境界線1〜3における平衡電位Eは、ネルンストの式よりそれぞれ次の形で表される。
境界線1:E=E0 1+2.303×(RT/F)×(pH−p[Cu2+])−(1)
境界線2:E=E0 2−2.303×(RT/F)×pH −(2)
境界線3:E=E0 3−2.303×(RT/F)×pH −(3)
(R:気体定数、T:反応系の絶対温度、F:ファラデー定数、pH:水素イオン濃度指数、p[Cu2+]:2価の銅イオン濃度指数)
境界線1:E=E0 1+2.303×(RT/F)×(pH−p[Cu2+])−(1)
境界線2:E=E0 2−2.303×(RT/F)×pH −(2)
境界線3:E=E0 3−2.303×(RT/F)×pH −(3)
(R:気体定数、T:反応系の絶対温度、F:ファラデー定数、pH:水素イオン濃度指数、p[Cu2+]:2価の銅イオン濃度指数)
そして、図2に、電位−pH図を用いて、本実施の形態に係る亜酸化銅粉末の製造方法における反応系の酸化還元電位及びpHの変化を破線矢印により模式的に表した図を示す。本実施の形態に係る亜酸化銅粉末の製造方法では、亜酸化銅粉末の生成過程において、2価の銅化合物が生成しないようにアルカリ及び還元剤を添加する。
具体的には、図2に示す銅−水系の電位−pH図において、2価の銅イオンの領域(Cu2+で示される領域)から、Cu2+からのCu2Oの電析反応を表す境界線1を越えて、斜線で囲った亜酸化銅の領域(Cu2Oで示される領域)に反応系の状態が直接移行するようにアルカリ及び還元剤を添加する。
上記のネルンストの式を用いて、本実施の形態に係る亜酸化銅粉末の製造方法を表現すると、式(1)と式(2)から導かれる境界線1と境界線2との交点(図2上にA点で示す)、及び、式(1)と式(3)から導かれる境界線1と境界線3との交点(図2上にB点で示す)を範囲として、反応系の状態を2価の銅イオンの領域から亜酸化銅の領域に境界線1上のA−B間を通過して移行するようにアルカリ及び還元剤を添加する。
これにより、銅イオン含有溶液から水酸化銅や酸化銅等の2価の銅化合物の生成を経由することなく亜酸化銅粉末を還元析出させることができ、そしてこのようにして生成した亜酸化銅粉末は、従来よりも粒径の小さいものとなる。
アルカリ及び還元剤によって銅イオン含有溶液の酸化還元電位及びpHを調整する方法としては、銅イオン含有溶液に添加するアルカリ及び還元剤の添加濃度の調整や、添加速度の調整、アルカリ及び還元剤を溶液に添加する順番の調整によって行うことができる。
具体的に、アルカリ及び還元剤を銅イオン含有溶液に添加する順番を調整することによる方法では、例えば、銅イオン含有溶液に対して、還元剤を添加し、続いて、還元剤の添加途中あるいは還元剤の添加後にアルカリを添加する。また、銅イオン含有溶液に添加するに先立ち、アルカリと還元剤とを混合して混合物(混合溶液)を予め調製し、その混合溶液を銅イオン含有溶液に添加する。
このような添加の順番を調整する方法によれば、亜酸化銅粉末の生成過程において銅イオン含有溶液中のpHの上昇が優先的に進行することを抑制することができ、2価の銅化合物(例えばCu(OH)2又はCuO)が生成してしまうことを抑えることができる。
特に、アルカリと還元剤とを混合して混合物(混合溶液)を予め調製し、その混合溶液を銅イオン含有溶液に添加する方法では、より効率的に且つ効果的に、2価の銅化合物の生成を抑えることができる。このことは、アルカリ及び還元剤を含む混合溶液を銅イオン含有溶液に添加すると、銅イオン含有溶液中の酸化還元電位とpHの変化は同時に開始するが、酸化還元電位に比べてpHの変化は遅いため、添加開始から酸化還元電位がまず急激に減少し、pHは追随するように上昇する変化を示すためである。また、混合溶液を添加する方法によれば、アルカリと還元剤とをそれぞれ別々に添加する場合に比べて工程を減らすことができるという効果も有する。
銅イオン含有溶液にアルカリ及び還元剤を含む混合物を添加する態様において、銅イオン含有溶液内で局所的な酸化還元電位の変化やpHの変化が生じる可能性も考えられ、その結果として2価の銅化合物が生成する場合もある。したがって、2価の銅化合物の生成を避けるため、混合物を添加する場合においては、一括且つ速やかに添加することが好ましい。具体的には、5分以内に添加するのが好ましく、1分以内に添加するのがより好ましい。なお、アルカリ及び還元剤を含む混合物は、取扱い性の観点から混合溶液であることが好ましい。
また、アルカリ及び還元剤の混合物を銅イオン含有溶液に添加する態様においては、還元剤の種類にその作用の程度が依存することがある。したがって、使用する還元剤も適宜選定することが好ましい。
本実施の形態に係る亜酸化銅粉末の製造方法において、反応溶液の液温としては、25℃以上90℃以下の範囲であればよく、40℃以上80℃以下がより好ましい。
アルカリ及び還元剤を含む混合物の添加中及び添加後の溶液中の反応においては、2価の銅化合物の生成を避けるために反応溶液が均一に混合されていることが好ましい。反応溶液を均一に混合させるために、撹拌手段を用いることができる。撹拌手段としては、例えばマグネティックスターラーによる撹拌や、外部モーターによる撹拌羽付き撹拌棒などを用いた撹拌手段を使用することができる。
以上のような方法により亜酸化銅粉末を生成させることができる。亜酸化銅粉末を含む溶液に対し、濾過、洗浄、及び乾燥の処理を行うことによって、亜酸化銅粉末を回収することができる。また、後述するようにその亜酸化銅粉末を含む溶液に対してさらに所定の還元剤を添加して、亜酸化銅粉末を還元剤により還元することで銅粉を得ることもできる。
なお、亜酸化銅粉末を洗浄する方法は、特に制限されることなく公知の方法を用いればよい。例えば、洗浄液として純水、エタノール等のアルコール類、又はそれらの混合物等を用い、5℃以上50℃以下の洗浄温度で洗浄する。この洗浄処理は、例えば不純物濃度が所望の範囲内になるまで繰り返し、最終的に濾過して亜酸化銅粉末とする。乾燥方法についても、特に制限されることはなく、オーブン、スプレードライヤー、真空乾燥など公知の方法を用いればよい。
次に、本実施の形態に係る亜酸化銅粉末の製造方法において用いられる、2価の銅イオン又は銅錯イオンを含有する溶液、アルカリ及び還元剤について各々説明する。
(銅イオン含有溶液)
2価の銅イオン又は銅錯イオンを含有する溶液とは、水(例えば純水)等の溶媒に2価の銅イオン又は銅錯イオンのいずれかを少なくとも含有する溶液である。銅イオン含有溶液は、銅塩を溶媒で溶解させて調製する。その際の銅塩としては、硫酸銅及びその水和物、硝酸銅及びその水和物並びに塩化第二銅及びその水和物などの一般的に使用されている2価の銅イオン供給源を使用できる。2価の銅イオン供給源は水溶媒への溶解性が高いため好ましい。なお、銅イオン含有溶液は、溶液中に含有される銅が銅イオンの状態であるため、電位−pH図にもよるが一般的には酸性である。
2価の銅イオン又は銅錯イオンを含有する溶液とは、水(例えば純水)等の溶媒に2価の銅イオン又は銅錯イオンのいずれかを少なくとも含有する溶液である。銅イオン含有溶液は、銅塩を溶媒で溶解させて調製する。その際の銅塩としては、硫酸銅及びその水和物、硝酸銅及びその水和物並びに塩化第二銅及びその水和物などの一般的に使用されている2価の銅イオン供給源を使用できる。2価の銅イオン供給源は水溶媒への溶解性が高いため好ましい。なお、銅イオン含有溶液は、溶液中に含有される銅が銅イオンの状態であるため、電位−pH図にもよるが一般的には酸性である。
また、銅錯イオンを形成するために2価の銅イオンに配位する錯化剤を添加してもよい。銅錯イオンとは、2価の銅イオンが錯化剤により錯イオンを形成したイオンを意味する。錯化剤を添加することにより溶液中の銅錯イオンの過飽和度が高くなり、溶液中からの核発生が促進される。そのため、亜酸化銅粒子の初期核の数が増大し、製造される亜酸化銅粉末の平均粒径がより小さくなる。錯化剤としてはグリシン、酢酸及びその塩、乳酸及びその塩、酒石酸及びその塩、チオ尿素、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸並びにメタンスルホン酸など一般的に用いられる金属イオンの錯化剤やキレート剤が使用できるが、グリシンを用いるのが好ましい。この錯化剤の添加量は、銅イオンを含有する溶液中の銅イオン1molに対して0.1mol以上5.0mol以下であることが好ましい。
(アルカリ)
アルカリは、上記の2価の銅イオン又は銅錯イオンを含有する溶液に添加されることにより2価の銅イオン又は銅錯イオンを含有する溶液のpHを上昇させる。アルカリは、固体、液体、気体のいずれの形態であってもよいが、取扱い性の観点から固体、液体、気体が液体溶媒(例えば水)に溶解したアルカリ溶液を用いることが好ましい。
アルカリは、上記の2価の銅イオン又は銅錯イオンを含有する溶液に添加されることにより2価の銅イオン又は銅錯イオンを含有する溶液のpHを上昇させる。アルカリは、固体、液体、気体のいずれの形態であってもよいが、取扱い性の観点から固体、液体、気体が液体溶媒(例えば水)に溶解したアルカリ溶液を用いることが好ましい。
アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニアなどが水に溶解したアルカリ性の水溶液を挙げることができる。その中でも水酸化ナトリウム水溶液を用いるのが好ましい。
アルカリの添加量は、亜酸化銅の生成を完全に進行させるために、上記溶液に含有される2価の銅イオン又は銅錯イオンに対して1.5当量以上であることが好ましい。添加量の上限は特に制限されないが、経済的観点から上記溶液の2価の銅イオン又は銅錯イオンに対して5.0当量以下であることが好ましい。
(還元剤)
還元剤は、上記溶液に添加されることにより上記溶液の酸化還元電位を低下させる。還元剤は、固体、液体、気体のいずれの形態であってもよいが、取扱い性の観点から固体、液体、気体が液体溶媒に溶解した還元剤溶液を用いることが好ましい。
還元剤は、上記溶液に添加されることにより上記溶液の酸化還元電位を低下させる。還元剤は、固体、液体、気体のいずれの形態であってもよいが、取扱い性の観点から固体、液体、気体が液体溶媒に溶解した還元剤溶液を用いることが好ましい。
還元剤としては、ヒドラジン、ヒドラジン一水和物、1,1−ジメチルヒドラジン又は1,2−ジメチルヒドラジン等のヒドラジン誘導体を含むヒドラジン類、亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸ナトリウム類、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム等のリン酸類、アスコルビン酸又はアスコルビン酸ナトリウム等のアスコルビン酸類、シュウ酸又はギ酸等のカルボン酸類、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類、並びにグルコース、キシロース、ガラクトース、フルクトース、マルトース等の還元糖等を挙げることができる。還元剤の強さの観点から還元剤としてヒドラジン類を用いることが好ましい。ヒドラジン類の還元剤を用いることにより、溶液中の銅イオンの過飽和度が高くなり、亜酸化銅粒子の初期核が液中から析出する速度が上昇する。そのため、亜酸化銅粒子の初期核の数が増大し、製造される亜酸化銅粉末の平均粒径がより小さくなる。
還元剤の添加量は、還元剤の種類によって異なるが、還元剤としてヒドラジン一水和物を用いる場合には、上記溶液の2価の銅イオン又は銅錯イオンが完全に亜酸化銅に還元されるとき(すなわち、2価の銅イオン又は銅錯イオンが1価の銅まで還元されるとき)の当量を1とすると、0.25当量以上1.25当量以下であることが好ましい。2価の銅イオン又は銅錯イオンを亜酸化銅に効果的に還元させることができる。
還元剤としてグルコースを用いる場合には、上記溶液の2価の銅イオン又は銅錯イオンが完全に亜酸化銅に還元されるとき(すなわち、2価の銅イオン又は銅錯イオンが1価の銅まで還元されるとき)の当量を1とすると、0.25当量以上2.0当量以下であることが好ましい。2価の銅イオン又は銅錯イオンを亜酸化銅に効果的に還元させることができる。
(アルカリ及び還元剤を含む混合物)
上記溶液にアルカリ及び還元剤を含む混合物(混合溶液)を添加する場合、その混合物は、上記のアルカリ及び還元剤をそれぞれ所定量秤量して混合することで調製することができる。
上記溶液にアルカリ及び還元剤を含む混合物(混合溶液)を添加する場合、その混合物は、上記のアルカリ及び還元剤をそれぞれ所定量秤量して混合することで調製することができる。
上記の還元剤の中でも還元剤の強さの観点から還元剤としてヒドラジン類を用いることが特に好ましい。アルカリ及び還元剤を含む混合溶液を上記溶液に添加すると、溶液中の酸化還元電位とpHの変化は同時に開始するが、ヒドラジン類は還元剤として特に強いため、添加開始から酸化還元電位をまず急激に減少させることが可能となるためである。
<1−2.亜酸化銅粉末について>
上記の実施の形態に係る亜酸化銅粉末の製造方法により製造される亜酸化銅粉末は、粒径が小さく比表面積は大きい。
上記の実施の形態に係る亜酸化銅粉末の製造方法により製造される亜酸化銅粉末は、粒径が小さく比表面積は大きい。
具体的には、平均粒径が0.01μm以上0.50μm以下である。また、酸化還元電位が銅よりも卑である元素の含有率が亜酸化銅粉末全量中0.01質量%未満である。
このように、平均粒径が0.01μm以上0.50μm以下の小さい亜酸化銅粉末によれば、比表面積が大きくなるため、その亜酸化銅粉末の溶解性が高まり、1価の銅イオンの供給源として銅粉末を製造するための原料(反応中間体)として好適に用いることができる。なお、亜酸化銅粉末の平均粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した画像より、所定数の粒子の粒径を測長し、その算術平均値を求めることにより測定することができる。
なお、上記の実施の形態に係る亜酸化銅粉末の製造方法は特許文献4に記載の亜酸化銅粉末の製造方法のように予め2価の銅イオンに対して卑である元素を添加する必要もないことから、酸化還元電位が銅よりも卑である元素の含有率を少なくすることができる。具体的には、酸化還元電位が銅よりも卑である元素の含有率が0.01質量%未満である。
酸化還元電位が銅よりも卑である元素とは、例えば、鉄、ニッケル、スズ、コバルト、クロム、亜鉛、アルミニウム等の金属元素を挙げることができる。このように、酸化還元電位が銅よりも卑である元素の含有率が少ない亜酸化銅粉末によれば、その亜酸化銅粉末を原料として銅粉を製造したとき、不純物が極めて少ない銅粉末を製造することができる。
≪2.銅粉末の製造方法≫
<2−1.銅粉末の製造方法について>
本実施の形態に係る銅粉末の製造方法は、上記の亜酸化銅粉末の製造方法により得られる亜酸化銅粉末を還元剤により還元する。
<2−1.銅粉末の製造方法について>
本実施の形態に係る銅粉末の製造方法は、上記の亜酸化銅粉末の製造方法により得られる亜酸化銅粉末を還元剤により還元する。
上述した亜酸化銅粉末の製造方法により得られる亜酸化銅粉末は、平均粒径が0.01μm以上0.50μm以下と小さいものである。したがって、亜酸化銅粉末の製造方法により得られる亜酸化銅粉末に基づき、その亜酸化銅粉末を還元剤により還元することで、平均粒径の小さい銅粉末を得ることができる。
具体的には、図2に示す銅−水系の電位−pH図において、斜線で囲った亜酸化銅の領域(Cu2Oで示される領域)からCuの電析反応を表す境界線3を越えて、銅の安定領域(Cuで示される領域)へ移行するように、亜酸化銅粉末を含む溶液に対してさらに還元剤を添加することにより、亜酸化銅粉末を還元して銅粉末を含む溶液を得る。
亜酸化銅粉末を還元する還元剤としては、2価の銅イオン又は銅錯イオンの還元に用いられる還元剤と同様のものを使用することができる。例えば、ヒドラジン、ヒドラジン一水和物、1,1−ジメチルヒドラジン、1,2−ジメチルヒドラジン、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、アスコルビン酸、シュウ酸、ギ酸、ホルムアルデヒド等を挙げることができる。還元剤の強さの観点から還元剤としてヒドラジン類を用いることが好ましい。
銅粉末の製造方法においては、反応溶液の液温、撹拌手段、得られた銅粉末を含む溶液のろ過、洗浄及び乾燥の処理は、亜酸化銅粉末の製造方法にて行った方法と同様の方法により行うことができる。
<2−2.銅粉末>
このような銅粉末の製造方法により製造される銅粉末は、平均粒径が小さく、比表面積は大きい。具体的には、平均粒径が0.1μm以上5.0μm以下の銅粉末である。
このような銅粉末の製造方法により製造される銅粉末は、平均粒径が小さく、比表面積は大きい。具体的には、平均粒径が0.1μm以上5.0μm以下の銅粉末である。
なお、銅粉末の平均粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した画像より、所定数の粒子の粒径を測長し、その算術平均値を求めることにより測定することができる。また、酸化還元電位が銅よりも卑である元素とは、例えば、鉄、ニッケル、スズ、コバルト、クロム、亜鉛、アルミニウム等の金属元素を挙げることができる。
なお、還元前の亜酸化銅粉末は酸化還元電位が銅よりも卑である元素の含有率を少なくすることが可能であるため、このような銅粉末の製造方法により製造される銅粉末についても酸化還元電位が銅よりも卑である元素の含有率を少なくすることができる。具体的には、酸化還元電位が銅よりも卑である元素の含有率が0.01質量%未満である。
以下、本実施の形態について、実施例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[評価方法]
(形状の観察)
亜酸化銅粒子及び銅粒子の平均粒径については、走査型電子顕微鏡JSM−7100F(日本電子株式会社製)を用いて観察した画像より、全様が一様に観察できる粒子100個以上の粒子の粒径を測長することによって、その算術平均値を求め亜酸化銅粒子及び銅粒子の平均粒径とした。また、最大粒径については、測長した内で最大の粒径を最大粒径とした。
(形状の観察)
亜酸化銅粒子及び銅粒子の平均粒径については、走査型電子顕微鏡JSM−7100F(日本電子株式会社製)を用いて観察した画像より、全様が一様に観察できる粒子100個以上の粒子の粒径を測長することによって、その算術平均値を求め亜酸化銅粒子及び銅粒子の平均粒径とした。また、最大粒径については、測長した内で最大の粒径を最大粒径とした。
(組成の測定)
X線回折装置X’PERT PRO(スペクトリス株式会社製)を用いてXRD測定を行ない、得られたXRDデータから、亜酸化銅の生成の有無を確認した。
X線回折装置X’PERT PRO(スペクトリス株式会社製)を用いてXRD測定を行ない、得られたXRDデータから、亜酸化銅の生成の有無を確認した。
(金属不純物の測定)
不純物(銅よりも卑である元素)の含有率については、ICP発光分光分析装置ICP−OES5100SVDV(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いて求めた。
不純物(銅よりも卑である元素)の含有率については、ICP発光分光分析装置ICP−OES5100SVDV(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いて求めた。
(実施例1)
まず、ガラスビーカーに、銅塩として硫酸銅五水和物(和光純薬工業株式会社製)25gと、錯化剤としてグリシン(和光純薬工業株式会社製)1.5gと、溶媒として純水50mLと、を混合し、銅イオン含有溶液を得た。なお、本実施例では、2価の銅イオンは錯化剤により銅錯イオンへと変化している。その際の溶液の温度は343K(70℃)とした。
まず、ガラスビーカーに、銅塩として硫酸銅五水和物(和光純薬工業株式会社製)25gと、錯化剤としてグリシン(和光純薬工業株式会社製)1.5gと、溶媒として純水50mLと、を混合し、銅イオン含有溶液を得た。なお、本実施例では、2価の銅イオンは錯化剤により銅錯イオンへと変化している。その際の溶液の温度は343K(70℃)とした。
つぎに、アルカリとして25質量%の水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製)36.4gと、還元剤としてヒドラジン一水和物(和光純薬工業株式会社製)1.25gと、溶媒として純水18mLと、を混合して作製した混合物(混合溶液)を、ガラスビーカー内の銅イオン含有溶液に添加した後、5分間撹拌して亜酸化銅粉末を得た。なお、アルカリ及び還元剤を含む混合物を添加する際は、2価の銅化合物が生成しないように酸化還元電位及びpHを厳密に調整して混合物(アルカリ及び還元剤を含む)を添加した。
得られた亜酸化銅粉末の平均粒径は0.056μmであり、最大粒径は0.122μmであった。図3に実施例1に係る亜酸化銅粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。また、図5に実施例1に係る反応での酸化還元電位及びpHの推移を「□」で示す。
上記と同様の手順で亜酸化銅粉末を含むスラリーを得た後、これにヒドラジン一水和物3.75gと純水54mLとを混合して作製した還元剤溶液を添加し、343K(70℃)で1時間以上撹拌して亜酸化銅粉末を還元して、得られたスラリーをろ過することにより銅粉末を得た。この銅粉末を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、銅粉末の平均粒径は4.5μmであった。さらに、銅粉末の粒度分布は非常に狭く、均一であることが確認された。なお、粉末粒子同士の凝集も確認されず、銅粉末の分散性も良好であった。
(実施例2)
アルカリとして水酸化ナトリウムを63.0gに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、亜酸化銅粉末を得た。なお、アルカリ及び還元剤を含む混合物を添加する際は、2価の銅化合物が生成しないように酸化還元電位及びpHを厳密に調整して混合物(アルカリ及び還元剤を含む)を添加した。
アルカリとして水酸化ナトリウムを63.0gに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、亜酸化銅粉末を得た。なお、アルカリ及び還元剤を含む混合物を添加する際は、2価の銅化合物が生成しないように酸化還元電位及びpHを厳密に調整して混合物(アルカリ及び還元剤を含む)を添加した。
得られた亜酸化銅粉末の平均粒径は0.069μmであり、最大粒径は0.131μmであった。
また、実施例1と同様の方法により銅粉末を得た。この銅粉末を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、銅粉末の平均粒径は0.9μmであった。さらに、銅粉末の粒度分布は非常に狭く均一であることが確認された。なお、粉末粒子同士の凝集も確認されず、銅粉末の分散性も良好であった。
(実施例3)
錯化剤としてグリシンを添加しない以外は、実施例1と同様の方法により、亜酸化銅粉末を得た。本実施例では、銅錯イオンは形成されていない。なお、アルカリ及び還元剤を含む混合物を添加する際は、2価の銅化合物が生成しないように酸化還元電位及びpHを厳密に調整して混合物(アルカリ及び還元剤を含む)を添加した。
錯化剤としてグリシンを添加しない以外は、実施例1と同様の方法により、亜酸化銅粉末を得た。本実施例では、銅錯イオンは形成されていない。なお、アルカリ及び還元剤を含む混合物を添加する際は、2価の銅化合物が生成しないように酸化還元電位及びpHを厳密に調整して混合物(アルカリ及び還元剤を含む)を添加した。
得られた亜酸化銅粉末の平均粒径は0.093μmであり、最大粒径は0.208μmであった。
また、実施例1と同様の方法により銅粉末を得た。この銅粉末を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、銅粉末の平均粒径は2.3μmであった。さらに、銅粉末の粒度分布は非常に狭く均一であることが確認された。なお、粉末粒子同士の凝集も確認されず、銅粉末の分散性も良好であった。
図6に実施例3に係る反応での酸化還元電位及びpHの推移を「□」で示す。
(実施例4)
還元剤としてグルコース(和光純薬工業株式会社製)9gに変更した以外は、実施例2と同様の方法により、亜酸化銅粉末を得た。なお、アルカリ及び還元剤を含む混合物を添加する際は、2価の銅化合物が生成しないように酸化還元電位及びpHを厳密に調整して混合物(アルカリ及び還元剤を含む)を添加した。
還元剤としてグルコース(和光純薬工業株式会社製)9gに変更した以外は、実施例2と同様の方法により、亜酸化銅粉末を得た。なお、アルカリ及び還元剤を含む混合物を添加する際は、2価の銅化合物が生成しないように酸化還元電位及びpHを厳密に調整して混合物(アルカリ及び還元剤を含む)を添加した。
得られた亜酸化銅粉末の平均粒径は0.287μmであり、最大粒径は0.690μmであった。
また、実施例2と同様の方法により銅粉末を得た。この銅粉末を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、銅粉末の平均粒径は1.5μmであった。さらに、銅粉末の粒度分布は非常に狭く均一であることが確認された。なお、粉末粒子同士の凝集も確認されず、銅粉末の分散性も良好であった。
(比較例1)
アルカリ及び還元剤を含む混合物を混合せず、アルカリとして25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を先に銅イオン含有溶液に添加し、水酸化銅スラリーを形成した後に、還元剤としてヒドラジン一水和物と純水を添加した以外は、実施例1と同様の方法により、亜酸化銅粉末を得た。
アルカリ及び還元剤を含む混合物を混合せず、アルカリとして25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を先に銅イオン含有溶液に添加し、水酸化銅スラリーを形成した後に、還元剤としてヒドラジン一水和物と純水を添加した以外は、実施例1と同様の方法により、亜酸化銅粉末を得た。
得られた亜酸化銅粉末の平均粒径は0.568μmであり、最大粒径は1.08μmであった。図4に比較例1に係る亜酸化銅粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。また、図7に比較例1に係る反応での酸化還元電位及びpHの推移を「□」で示す。
図7の電位−pH図から比較例1の亜酸化銅粉末の製造方法は、酸化還元電位及びpHが、2価の銅化合物であるCu(OH)2が生成する領域に移行していることが分かる。すなわち、図7の電位−pH図から比較例1の亜酸化銅粉末の製造方法は、亜酸化銅粉末の生成過程において2価の銅化合物が生成していることが分かる。
また、実施例1と同様の方法により銅粉末を得た。この銅粉末を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、銅粉末の粒度分布は広く不均一であることが確認された。また、粒子同士の凝集も多数観察され、銅粉末の分散性は相対的に劣るものであった。
(比較例2)
25質量%の水酸化ナトリウム水溶液とグルコースを混合せず、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を先に銅塩水溶液に添加し、水酸化銅スラリーを形成した後に、グルコースと純水を添加した以外は、実施例4と同様の方法により、亜酸化銅粉末を生成した。酸化還元電位及びpHは比較例1と同様に2価の銅化合物であるCu(OH)2が生成する領域に移行した。
25質量%の水酸化ナトリウム水溶液とグルコースを混合せず、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を先に銅塩水溶液に添加し、水酸化銅スラリーを形成した後に、グルコースと純水を添加した以外は、実施例4と同様の方法により、亜酸化銅粉末を生成した。酸化還元電位及びpHは比較例1と同様に2価の銅化合物であるCu(OH)2が生成する領域に移行した。
亜酸化銅粉末の平均粒径は1.13μmであり、最大粒径は2.05μmであった。
また、実施例4と同様の方法により銅粉末を得た。この銅粉末を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、銅粉末の粒度分布は広く不均一であることが確認された。また、粒子同士の凝集も多数観察され、銅粉末の分散性は相対的に劣るものであった。
(比較例3)
錯化剤としてグリシンを添加しない以外は、比較例1と同様の方法により、亜酸化銅粉末を得た。本比較例では、銅錯イオンは形成されていない。
錯化剤としてグリシンを添加しない以外は、比較例1と同様の方法により、亜酸化銅粉末を得た。本比較例では、銅錯イオンは形成されていない。
得られた亜酸化銅粉末の平均粒径は0.310μmであり、最大粒径は0.564μmであった。
また、比較例1と同様の方法により銅粉末を得た。この銅粉末を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、銅粉末の粒度分布は広く不均一であることが確認された。また、粒子同士の凝集も多数観察され、銅粉末の分散性は相対的に劣るものであった。
図8に比較例3に係る反応での酸化還元電位及びpHの推移を「□」で示す。
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた亜酸化銅粉末の組成について、X線回折装置を用いてXRD測定を行った。得られたXRDデータから、いずれも亜酸化銅が主体の組成であることがわかった。
また、実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた亜酸化銅粉末における鉄とニッケルの含有率を表1に示す。表1に示すように、実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた亜酸化銅粉末において、金属不純物としての鉄とニッケルの含有率はいずれも亜酸化銅粉末全量中0.01質量%未満であった。
また、実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた亜酸化銅粉末の平均粒径と最大粒径を表1に示す。表1に示すように、実施例1〜4で得られた混合物の添加により還元析出させた亜酸化銅粉末はいずれも、比較例1〜3で得られた水酸化銅スラリーを形成した後に還元析出させた亜酸化銅粉末よりも、平均粒径と最大粒径が減少していることが分かる。
特に、還元剤としてグルコースを用いた実施例4の製造方法により製造された亜酸化銅粉末よりも還元剤としてヒドラジン一水和物を用いた実施例1、2の製造方法により製造された亜酸化銅粉末の方がより平均粒径が小さくなっている。これは、実施例1、2では、グルコースよりも強い還元剤であるヒドラジン類を用いており、溶液中の銅イオンの過飽和度がグルコースを用いた場合よりも高くなり、亜酸化銅粒子の初期核が液中から析出する速度が上昇したためであると考えられる。
また、錯化剤(グリシン)を用いていない実施例3の製造方法により製造された亜酸化銅粉末よりも錯化剤(グリシン)を用いた実施例1、2の製造方法の方がより平均粒径が小さくなっている。これは、実施例1、2では、錯化剤(グリシン)を用いて2価の銅イオンが銅錯イオンへと変化したため、溶液中の銅錯イオンの過飽和度が高くなり、亜酸化銅粒子の初期核の数が増大したためであると考えられる。
Claims (10)
- 2価の銅イオン又は銅錯イオンのいずれかを少なくとも含有する溶液に、アルカリ及び還元剤を添加して亜酸化銅粉末を生成する、亜酸化銅粉末の製造方法であって、
前記亜酸化銅粉末の生成過程において2価の銅化合物が生成しないように前記アルカリ及び前記還元剤を添加する
亜酸化銅粉末の製造方法。 - 2価の銅イオン又は銅錯イオンのいずれかを少なくとも含有する前記溶液に、前記還元剤を添加し、
前記還元剤が添加された前記溶液に前記アルカリを添加する
請求項1に記載の亜酸化銅粉末の製造方法。 - 前記アルカリと前記還元剤とを予め混合して混合物を調製し、
2価の銅イオン又は銅錯イオンのいずれかを少なくとも含有する前記溶液に、前記混合物を添加する
請求項1に記載の亜酸化銅粉末の製造方法。 - 2価の銅イオン又は銅錯イオンのいずれかを少なくとも含有する前記溶液は、銅錯イオンを含有する
請求項1から3のいずれかに記載の亜酸化銅粉末の製造方法。 - 前記アルカリが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、及びアンモニアからなる群から選ばれる1種類以上である
請求項1から4のいずれかに記載の亜酸化銅粉末の製造方法。 - 前記還元剤が、ヒドラジン類、亜硫酸ナトリウム類、リン酸類、アスコルビン酸類、カルボン酸類、アルデヒド類、及び還元糖からなる群から選ばれる1種類以上である
請求項1から5のいずれかに記載の亜酸化銅粉末の製造方法。 - 平均粒径が0.01μm以上0.50μm以下であり、
酸化還元電位が銅よりも卑である元素の含有率が0.01質量%未満である
亜酸化銅粉末。 - 請求項1から6のいずれかに記載の製造方法により製造される亜酸化銅粉末を、還元剤により還元する、
銅粉末の製造方法。 - 前記還元剤が、ヒドラジン、ヒドラジン一水和物、1,1−ジメチルヒドラジン、1,2−ジメチルヒドラジン、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、アスコルビン酸、シュウ酸、ギ酸、ホルムアルデヒドから選ばれる1種類以上である、
請求項8に記載の銅粉末の製造方法。 - 平均粒径が0.1μm以上5.0μm以下であり、
酸化還元電位が銅よりも卑である元素の含有率が0.01質量%未満である
銅粉末。
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-
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