JP2020011294A - はんだ合金、はんだ粉末、はんだペースト、およびこれらを用いたはんだ継手 - Google Patents
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Abstract
【課題】ペーストの経時変化を抑制し、濡れ性に優れ、液相線温度と固相線温度との温度差が小さく高く機械的特性に優れるはんだ合金、はんだ粉末、はんだペースト、およびこれらを用いたはんだ継手を提供する。【解決手段】はんだ合金は、粘度の経時変化を抑制し、均質な組織となるため、As:25〜300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、および残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式および(2)式を満たすことを特徴とする。275≦2As+Bi+Pb・・・(1)、0<2.3×10−4×Bi+8.2×10−4×Pb≦7・・・(2)。上記(1)式および(2)式中、As、Bi、およびPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。【選択図】なし
Description
本発明は、ペーストの経時変化を抑制し、濡れ性に優れ、液相線温度と固相線温度との温度差が小さいはんだ合金、はんだ粉末、はんだペースト、およびこれらを用いたはんだ継手に関する。
近年、CPU(Central Processing Unit)などのはんだ継手を有する電子デバイスは、小型化、高性能化が要求されている。これにともない、プリント基板と電子デバイスの電極の小型化が必要になる。電子デバイスは電極を介してプリント基板と接続されるため、電極の小型化に伴い両者を接続するはんだ継手も小さくなる。
電子デバイスとプリント基板をこのような微細な電極を介して接続するためには、一般にはんだペーストが使用されている。はんだペーストは、プリント基板の電極上に印刷等によって供給される。はんだペーストの印刷は、開口部が設けられたメタルマスクをプリント基板上に置き、スキージをメタルマスクに押し付けながら移動させ、メタルマスクの開口部からはんだペーストをプリント基板上の電極に一括塗布することにより行われる。その後、電子部品はプリント基板に印刷されたはんだペースト上に載置され、はんだ付けが完了するまでははんだペーストによって保持される。
そして、例えば、電子部品がプリント基板上に載置されてからリフロー炉へ導入するまでに数時間を要した場合には、はんだペーストの経時変化によりはんだペーストが印刷時の形状を維持できないことがある。この場合、電子部品の傾きや接合不良の原因となりうる。また、はんだペーストを購入した場合、通常では1回の印刷ですべてを使い切ることはないため、はんだペーストは、印刷性能を損なわないように製造当初の適度な粘度が維持されなければならない。
しかし、近年、電極の小型化が進むにつれて、はんだペーストの印刷面積も狭小化が進んでいることから、購入したはんだペーストを使い切るまでの時間は長期化している。はんだペーストは、はんだ粉末とフラックスを混錬したものであり、保管期間が長期に渡る場合には、保管状況によってははんだペーストの粘度が上がってしまい、購入当初の印刷性能を発揮することができないことがある。
そこで、例えば特許文献1には、はんだペーストの経時変化を抑制するため、Snと、Ag、Bi、Sb、Zn、In及びCuからなる群から選択される1種又は2種以上と、を含み、かつ、所定量のAsを含むはんだ合金が開示されている。同文献には、25℃で2週間後の粘度が作製当初の粘度と比較して140%未満である結果が示されている。
上述のように、特許文献1に記載の発明は、SnおよびAsの他に6種類の元素を選択的に含有し得るはんだ合金である。また、同文献には、As含有量が多いと溶融性が劣る結果が示されている。
ここで、特許文献1で評価されている溶融性は、溶融はんだの濡れ性に相当すると考えられる。同文献で開示されている溶融性は、溶融物の外観を顕微鏡で観察し、溶融しきれないはんだ粉末の有無により評価されている。溶融はんだの濡れ性が高ければ溶融しきれないはんだ粉末が残存し難くなるためである。
一般に、溶融はんだの濡れ性を向上させるためには高活性のフラックスを用いる必要がある。特許文献1に記載のフラックスにおいて、Asによる濡れ性の劣化が抑制されるためには、高活性のフラックスを用いればよいと考えられる。しかし、高活性のフラックスを用いるとフラックスの粘度上昇率が上がってしまう。また、特許文献1の記載を鑑みると、粘度上昇率の上昇を抑えるためにはAs含有量を増加させる必要がある。特許文献1に記載のはんだペーストが更に低い粘度上昇率と優れた濡れ性を示すためには、フラックスの活性力とAs含有量を増加しつづける必要があり、悪循環を招くことになる。
最近では、はんだペーストは使用環境や保管環境によらず長期間安定した性能を維持することが求められており、また、はんだ継手の微細化により更に高い濡れ性も要求されている。特許文献1に記載のはんだペーストを用いて最近の要求に対応しようとすると、前述のように悪循環が避けられない。
さらに、微細な電極を接合するためには、はんだ継手の機械的特性等を向上させる必要がある。元素によっては、含有量が多くなると液相線温度が上昇して液相線温度と固相線温度が広がり、凝固時に偏析して不均一な合金組織が形成されてしまう。はんだ合金がこのような合金組織を有すると、引張強度などの機械的特性が劣り外部からの応力により容易に破断してしまう。この問題は、近年の電極の小型化にともない顕著になってきている。
本発明の課題は、ペーストの経時変化を抑制し、濡れ性に優れ、液相線温度と固相線温度との温度差が小さく高い機械的特性を有するはんだ合金、はんだ粉末、はんだペースト、およびこれらを用いたはんだ継手を提供することである。
ペーストの経時変化の抑制と優れた濡れ性が同時に改善される際、高い活性力を有するフラックスの使用とAs含有量の増加による悪循環を避ける必要がある。本発明者らは、はんだ粉末の合金組成に着目し、フラックスの種類によらず、ペーストの経時変化の抑制と優れた濡れ性の両立を図るために鋭意検討を行った。
まずは、本発明者らは、はんだ合金として従来から使用されているSn、SnCu、SnAgCuはんだ合金を基本組成として、これにAsを含有するはんだ粉末について検討した。そして、このはんだ粉末を用いた場合にはんだペーストの経時変化を抑制する原因に着目し、As含有量を調査した。
はんだペーストの粘度が経時的に上昇する原因は、はんだ粉末とフラックスが反応するためであると考えられる。そして、特許文献1の表1実施例4と比較例2の結果を比較すると、As含有量が100質量ppmを超えた方が粘度上昇率が低い結果を示している。これらを鑑みると、ペーストの経時変化を抑制する効果(以下、適宜、「増粘抑制効果」と称する。)に着目した場合、As含有量をさらに増加させてもよいと考えた。As含有量を増加した場合、As含有量に伴い増粘抑制効果がわずかに増加するものの、As含有量が多すぎると、はんだ合金のぬれ性が悪化することが確認された。
そこで、本発明者らは、Asの他に増粘抑制効果を発揮する元素を添加する必要があることに思い至り、種々の元素を調査したところ、偶然にも、BiとPbがAsと同様の効果を発揮する知見を得た。この理由は定かではないが、以下のように推察される。
増粘抑制効果はフラックスとの反応を抑制することにより発揮されることから、フラックスとの反応性が低い元素として、イオン化傾向が低い元素が挙げられる。一般に、合金のイオン化は、合金組成としてのイオン化傾向、すなわち標準電極電位で考える。例えば、Snに対して貴なAgを含むSnAg合金はSnよりもイオン化し難い。このため、Snよりも貴な元素を含有する合金はイオン化し難いことになり、はんだペーストの増粘抑制効果が高いと推察される。
ここで、特許文献1では、Sn、Ag、Cuの他に、Bi、Sb、Zn、およびInが等価な元素として掲げられているが、イオン化傾向としては、InおよびZnはSnに対して卑な元素である。つまり、特許文献1にはSnより卑な元素を添加しても増粘抑制効果が得られることが記載されていることになる。このため、イオン化傾向に則して選定された元素を含有するはんだ合金は、特許文献1に記載のはんだ合金と比較して同等以上の増粘抑制効果が得られると考えられる。また、前述のように、As含有量が増加すると濡れ性が劣化してしまう。
本発明者らは、増粘抑制効果として知見したBiおよびPbについて詳細に調査した。BiおよびPbははんだ合金の液相線温度を下げるため、はんだ合金の加熱温度が一定である場合、はんだ合金の濡れ性を向上させる。ただ、含有量によっては固相線温度が著しく低下するため、液相線温度と固相線温度との温度差であるΔTが広くなりすぎる。ΔTが広くなりすぎると凝固時に偏析が生じてしまい、機械的強度等の機械的特性の低下に繋がってしまう。ΔTが広がる現象は、BiおよびPbを同時に添加した場合に顕著に表れることから、厳密な管理が必要である。
Sn、SnCuはんだ合金、およびSnAgCuはんだ合金において、増粘抑制効果、優れた濡れ性、およびΔTの狭窄化、のすべてが優れた結果を示すためには、As、Bi、およびPbの含有量を個々に管理するのではなく、これらの元素の含有量を総合的に管理する必要があると考えた。そこで、本発明者らは、これらの3元素の含有量に関して種々の検討を行った結果、偶然にも、各元素の含有量が所定量の範囲内において所定の関係式を満たす場合に、増粘抑制効果、濡れ性、およびΔTの狭窄化のすべてが優れた結果を示す知見を得て、本発明を完成した。
これらの知見により得られた本発明は次の通りである。
(1)As:25〜300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、および残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式および(2)式を満たすことを特徴とするはんだ合金。
(1)As:25〜300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、および残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式および(2)式を満たすことを特徴とするはんだ合金。
275≦2As+Bi+Pb (1)
0<2.3×10−4×Bi+8.2×10−4×Pb≦7 (2)
上記(1)式および(2)式中、As、Bi、およびPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
0<2.3×10−4×Bi+8.2×10−4×Pb≦7 (2)
上記(1)式および(2)式中、As、Bi、およびPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
(2)更に、合金組成は下記(1a)式を満たす、上記(1)に記載のはんだ合金。
275≦2As+Bi+Pb≦25200 (1a)
上記(1a)式中、As、Bi、およびPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
275≦2As+Bi+Pb≦25200 (1a)
上記(1a)式中、As、Bi、およびPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
(3)更に、合金組成は下記(1b)式を満たす、上記(1)に記載のはんだ合金。
275≦2As+Bi+Pb≦5300 (1b)
上記(1b)式中、As、Bi、およびPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
275≦2As+Bi+Pb≦5300 (1b)
上記(1b)式中、As、Bi、およびPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
(4)更に、合金組成は下記(2a)式を満たす、上記(1)〜上記(3)のいずれか1項に記載のはんだ合金。
0.02≦2.3×10−4×Bi+8.2×10−4×Pb≦0.9 (2a)
上記(2a)式中、BiおよびPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
上記(2a)式中、BiおよびPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
(5)更に、合金組成は、Ag:0〜4質量%およびCu:0〜0.9質量%の少なくとも1種を含有する、上記(1)〜上記(4)のいずれか1項に記載のはんだ合金。
(6)上記(1)〜上記(5)のいずれか1項に記載のはんだ合金を有するはんだ粉末。
(7)上記(6)に記載のはんだ粉末を有するはんだペースト。
(8)更に、酸化ジルコニウム粉末を有する、上記(7)に記載のはんだペースト。
(8)更に、酸化ジルコニウム粉末を有する、上記(7)に記載のはんだペースト。
(9)酸化ジルコニウム粉末をはんだペーストの全質量に対して0.05〜20.0質量%含有する、上記(8)に記載のはんだペースト。
(10)上記(1)〜上記(5)のいずれか1項に記載のはんだ合金を有するはんだ継手。
本発明を以下により詳しく説明する。本明細書において、はんだ合金組成に関する「ppm」は、特に指定しない限り「質量ppm」である。「%」は、特に指定しない限り「質量%」である。
1. 合金組成
(1) As:25〜300ppm
Asは、はんだペーストの粘度の経時変化を抑制することができる元素である。Asはフラックスとの反応性が低く、またSnに対して貴な元素であるために増粘抑制効果を発揮することができると推察される。Asが25ppm未満であると、増粘抑制効果を十分に発揮することができない。As含有量の下限は25ppm以上であり、好ましくは50ppm以上であり、より好ましくは100ppm以上である。一方、Asが多すぎるとはんだ合金の濡れ性が劣化する。As含有量の上限は300ppm以下であり、このましくは250ppm以下であり、より好ましくは200ppm以下である。
(1) As:25〜300ppm
Asは、はんだペーストの粘度の経時変化を抑制することができる元素である。Asはフラックスとの反応性が低く、またSnに対して貴な元素であるために増粘抑制効果を発揮することができると推察される。Asが25ppm未満であると、増粘抑制効果を十分に発揮することができない。As含有量の下限は25ppm以上であり、好ましくは50ppm以上であり、より好ましくは100ppm以上である。一方、Asが多すぎるとはんだ合金の濡れ性が劣化する。As含有量の上限は300ppm以下であり、このましくは250ppm以下であり、より好ましくは200ppm以下である。
(2) Bi:0ppm以上25000ppm以下、Pb:0ppm超え8000ppm以下
BiおよびPbはフラックスとの反応性が低く増粘抑制効果を示す元素である。また、これらの元素は、はんだ合金の液相線温度を下げるとともに溶融はんだの粘性を低減させるため、Asによる濡れ性の劣化を抑えることができる元素である。
BiおよびPbはフラックスとの反応性が低く増粘抑制効果を示す元素である。また、これらの元素は、はんだ合金の液相線温度を下げるとともに溶融はんだの粘性を低減させるため、Asによる濡れ性の劣化を抑えることができる元素である。
Pbや場合によってはBiが存在すれば、Asによる濡れ性の劣化を抑えることができる。本発明に係るはんだ合金がBiを含有する場合、Bi含有量の下限は0ppm超えであり、好ましくは25ppm以上であり、より好ましくは50ppm以上であり、さらに好ましくは75ppm以上であり、特に好ましくは100ppm以上であり、最も好ましくは250pp以上である。Pb含有量の下限は0ppm超えであり、好ましくは25ppm以上であり、より好ましくは50ppm以上であり、さらに好ましくは75ppm以上であり、特に好ましくは100ppm以上であり、最も好ましくは250pp以上である。
一方、これらの元素の含有量が多すぎると、固相線温度が著しく低下するため、液相線温度と固相線温度との温度差であるΔTが広くなりすぎる。ΔTが広すぎると、溶融はんだの凝固過程において、BiやPbの含有量が少ない高融点の結晶相が析出するために液相のBiやPbが濃縮される。その後、さらに溶融はんだの温度が低下すると、BiやPbの濃度が高い低融点の結晶相が偏析してしまう。このため、はんだ合金の機械的強度等が劣化することになる。特に、Bi濃度が高い結晶相は硬くて脆いため、はんだ合金中で偏析すると機械的強度等が著しく低下する。
このような観点から、本発明に係るはんだ合金がBiを含有する場合、Bi含有量の上限は25000ppm以下であり、好ましくは10000ppm以下であり、より好ましくは1000ppm以下であり、さらに好ましくは600ppm以下であり、特に好ましくは500ppm以下である。Pb含有量の上限は8000ppm以下であり、好ましくは5100ppm以下であり、より好ましくは5000ppm以下であり、さらに好ましくは1000ppm以下であり、特に好ましくは850ppm以下であり、最も好ましくは500ppm以下である。
(3) (1)式
本発明に係るはんだ合金は、下記(1)式を満たす必要がある。
本発明に係るはんだ合金は、下記(1)式を満たす必要がある。
275≦2As+Bi+Pb (1)
上記(1)式中、As、Bi、およびPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
上記(1)式中、As、Bi、およびPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
As、BiおよびPbは、いずれも増粘抑制効果を示す元素である。増粘抑制これらの合計が230ppm以上である必要がある。(1)式中、As含有量を2倍にしたのは、AsがBiやPbと比較して増粘抑制効果が高いためである。
(1)式が275未満であると、増粘抑制効果が十分に発揮されない。(1)式の下限は275以上であり、好ましくは300以上であり、より好ましくは700以上であり、さらに好ましくは900以上である。一方、(1)の上限は、増粘抑制効果の観点では特に限定されることはないが、ΔTを適した範囲にする観点から、好ましくは25200以下であり、より好ましくは15200以下であり、さらに好ましくは10200以下であり、特に好ましくは8200以下であり、最も好ましくは5300以下である。
上記好ましい態様の中から上限および下限を適宜選択したものが、下記(1a)式および(1b)式である。
275≦2As+Bi+Pb≦25200 (1a)
275≦2As+Bi+Pb≦5300 (1b)
上記(1a)および(1b)式中、As、Bi、およびPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
275≦2As+Bi+Pb≦5300 (1b)
上記(1a)および(1b)式中、As、Bi、およびPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
(4) (2)式
本発明に係るはんだ合金は、下記(2)式を満たす必要がある。
本発明に係るはんだ合金は、下記(2)式を満たす必要がある。
0<2.3×10−4×Bi+8.2×10−4×Pb≦7 (2)
上記(2)式中、Bi、およびPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
上記(2)式中、Bi、およびPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
BiおよびPbは、Asを含有することによる濡れ性の劣化を抑制するが、含有量が多すぎるとΔTが上昇してしまうため、厳密な管理が必要である。特に、BiおよびPbを同時に含有する合金組成では、ΔTが上昇しやすい。本発明では、BiとPbの含有量に所定の係数を乗じた値の合計を規定することにより、ΔTの上昇を抑制することができる。(2)式ではPbの係数がBiの係数より大きい。PbはBiと比較してΔTへの寄与度が大きく、含有量が少し増加しただけでΔTが大幅に上昇してしまうためである。
(2)式が0であるはんだ合金は、BiおよびPbの両元素を含有しないことになり、Asを含有したことによる濡れ性の劣化を抑制することができない。(2)式の下限は0超えであり、好ましくは0.02以上であり、より好ましくは0.03以上であり、さらに好ましくは0.05以上であり、特に好ましくは0.06以上であり、最も好ましくは0.11以上である。一方、(2)式が7を超えるとΔTの温度域が広くなりすぎるため、溶融はんだの凝固時にBiやPbの濃度が高い結晶相が偏析して機械的強度等が劣化する。(2)の上限は7以下であり、好ましくは6.56以下であり、より好ましくは6.40以下であり、さらに好ましくは5.75以下であり、さらにより好ましくは4.18以下であり、特に好ましくは2.30以下であり、最も好ましくは0.90以下である。
上記好ましい態様の中から上限および下限を適宜選択したものが、下記(2a)式である。
0.02≦2.3×10−4×Bi+8.2×10−4×Pb≦0.9 (2a)
上記(2a)式中、BiおよびPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
上記(2a)式中、BiおよびPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
(4) Ag:0〜4%およびCu:0〜0.9%の少なくとも1種
Agは、結晶界面にAg3Snを形成してはんだ合金の機械的強度等を向上させることができる任意元素である。また、Agはイオン化係数がSnに対して貴な元素であり、As、Pb、およびBiと共存することによりこれらの増粘抑制効果を助長する。Ag含有量は好ましくは0〜4%であり、より好ましくは0.5〜3.5%であり、さらに好ましくは1.0〜3.0%である。
Agは、結晶界面にAg3Snを形成してはんだ合金の機械的強度等を向上させることができる任意元素である。また、Agはイオン化係数がSnに対して貴な元素であり、As、Pb、およびBiと共存することによりこれらの増粘抑制効果を助長する。Ag含有量は好ましくは0〜4%であり、より好ましくは0.5〜3.5%であり、さらに好ましくは1.0〜3.0%である。
Cuは、はんだ継手の接合強度を向上させることができる任意元素である。また、Cuはイオン化係数がSnに対して貴な元素であり、As、Pb、およびBiと共存することによりこれらの増粘抑制効果を助長する。Cu含有量は好ましくは0〜0.9%であり、より好ましくは0.1〜0.8%%であり、さらに好ましくは0.2〜0.7%である。
(5)残部:Sn
本発明に係るはんだ合金の残部はSnである。前述の元素の他に不可避的不純物を含有してもよい。不可避的不純物を含有する場合であっても、前述の効果に影響することはない。また、後述するように、本発明では含有しない元素が不可避的不純物として含有されても前述の効果に影響することはない。Inは、含有量が多すぎるとΔTが広がるため、1000ppm以下であれば前述の効果に影響することはない。
本発明に係るはんだ合金の残部はSnである。前述の元素の他に不可避的不純物を含有してもよい。不可避的不純物を含有する場合であっても、前述の効果に影響することはない。また、後述するように、本発明では含有しない元素が不可避的不純物として含有されても前述の効果に影響することはない。Inは、含有量が多すぎるとΔTが広がるため、1000ppm以下であれば前述の効果に影響することはない。
2.はんだ粉末
本発明に係るはんだ粉末は、後述するはんだペーストに使用される。本発明に係るはんだ粉末は、JIS Z 3284−1:2004における粉末サイズの分類(表2)において記号1〜8を満たすサイズ(粒度分布)を満たしていることが好ましい。より好ましくは記号4〜8を満たすサイズ(粒度分布)であり、さらに好ましくは記号5〜8を満たすサイズ(粒度分布)である。粒径がこの条件を満たすと、粉末の表面積が大きすぎず粘度の上昇が抑制され、また、微細粉末の凝集が抑制されて粘度の上昇が抑えられることがある。このため、より微細な部品へのはんだ付けが可能となる。
本発明に係るはんだ粉末は、後述するはんだペーストに使用される。本発明に係るはんだ粉末は、JIS Z 3284−1:2004における粉末サイズの分類(表2)において記号1〜8を満たすサイズ(粒度分布)を満たしていることが好ましい。より好ましくは記号4〜8を満たすサイズ(粒度分布)であり、さらに好ましくは記号5〜8を満たすサイズ(粒度分布)である。粒径がこの条件を満たすと、粉末の表面積が大きすぎず粘度の上昇が抑制され、また、微細粉末の凝集が抑制されて粘度の上昇が抑えられることがある。このため、より微細な部品へのはんだ付けが可能となる。
3.はんだペースト
本発明に係るはんだペーストは、前述のはんだ粉末、およびフラックスを含有する。
本発明に係るはんだペーストは、前述のはんだ粉末、およびフラックスを含有する。
(1)フラックスの成分
はんだペーストに使用されるフラックスは、有機酸、アミン、アミンハロゲン化水素酸塩、有機ハロゲン化合物、チキソ剤、ロジン、溶剤、界面活性剤、ベース剤、高分子化合物、シランカップリング剤、着色剤の何れか、または2つ以上の組み合わせで構成される。
はんだペーストに使用されるフラックスは、有機酸、アミン、アミンハロゲン化水素酸塩、有機ハロゲン化合物、チキソ剤、ロジン、溶剤、界面活性剤、ベース剤、高分子化合物、シランカップリング剤、着色剤の何れか、または2つ以上の組み合わせで構成される。
有機酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、プロピオン酸、2,2−ビスヒドロキシメチルプロピオン酸、酒石酸、リンゴ酸、グリコール酸、ジグリコール酸、チオグリコール酸、ジチオグリコール酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等が挙げられる。
アミンとしては、エチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−ウンデシルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−エチル−4′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン、エポキシ−イミダゾールアダクト、2−メチルベンゾイミダゾール、2−オクチルベンゾイミダゾール、2−ペンチルベンゾイミダゾール、2−(1−エチルペンチル)ベンゾイミダゾール、2−ノニルベンゾイミダゾール、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2′−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]、6−(2−ベンゾトリアゾリル)−4−tert−オクチル−6′−tert−ブチル−4′−メチル−2,2′−メチレンビスフェノール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2′−[[(メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、1−(1′,2′−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1−(2,3−ジカルボキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1−[(2−エチルヘキシルアミノ)メチル]ベンゾトリアゾール、2,6−ビス[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]−4−メチルフェノール、5−メチルベンゾトリアゾール、5−フェニルテトラゾール等が挙げられる。
アミンハロゲン化水素酸塩は、アミンとハロゲン化水素を反応させた化合物であり、アミンとしては、エチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられ、ハロゲン化水素としては、塩素、臭素、ヨウ素の水素化物が挙げられる。
有機ハロゲン化合物としては、1−ブロモ−2−ブタノール、1−ブロモ−2−プロパノール、3−ブロモ−1−プロパノール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、1,3−ジブロモ−2−プロパノール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール等が挙げられる。
チキソ剤としては、ワックス系チキソ剤、アマイド系チキソ剤が挙げられる。ワックス系チキソ剤としては例えばヒマシ硬化油等が挙げられる。アマイド系チキソ剤としてはラウリン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド、飽和脂肪酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、不飽和脂肪酸アマイド、p−トルエンメタンアマイド、芳香族アマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、飽和脂肪酸ビスアマイド、メチレンビスオレイン酸アマイド、不飽和脂肪酸ビスアマイド、m−キシリレンビスステアリン酸アマイド、芳香族ビスアマイド、飽和脂肪酸ポリアマイド、不飽和脂肪酸ポリアマイド、芳香族ポリアマイド、置換アマイド、メチロールステアリン酸アマイド、メチロールアマイド、脂肪酸エステルアマイド等が挙げられる。
ベース剤としてはポリエチレングリコール、ロジン等が挙げられる。ロジンとしては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン及びトール油ロジン等の原料ロジン、並びに該原料ロジンから得られる誘導体が挙げられる。該誘導体としては、例えば、精製ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン及びα,β不飽和カルボン酸変性物(アクリル化ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン等)、並びに該重合ロジンの精製物、水素化物及び不均化物、並びに該α,β不飽和カルボン酸変性物の精製物、水素化物及び不均化物等が挙げられ、二種以上を使用することができる。また、ロジン 系樹脂に加えて、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペンフェノール樹脂、スチレン樹脂、変性スチレン樹脂、キシレン樹脂、及び変性キシレン樹脂から選択される少なくとも一種以上の樹脂をさらに含むことができる。変性テルペン樹脂としては、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添芳香族変性テルペン樹脂等を使用することができる。変性テルペンフェノール樹脂としては、水添テルペンフェノール樹脂等を使用することができる。変性スチレン樹脂としては、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂等を使用することができる。変性キシレン樹脂としては、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール変性キシレン樹脂、フェノール変性レゾール型キシレン樹脂、ポリオール変性キシレン樹脂、ポリオキシエチレン付加キシレン樹脂等が挙げられる。
溶剤としては、水、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、テルピネオール類等が挙げられる。アルコール系溶剤としてはイソプロピルアルコール、1,2−ブタンジオール、イソボルニルシクロヘキサノール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,2′−オキシビス(メチレン)ビス(2−エチル−1,3−プロパンジオール)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)
−1,3−プロパンジオール、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、ビス[2,2,2−トリス(ヒドロキシメチル)エチル]エーテル、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エリトリトール、トレイトール、グアヤコールグリセロールエーテル、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール等が挙げられる。グリコールエーテル系溶剤としては、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
−1,3−プロパンジオール、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、ビス[2,2,2−トリス(ヒドロキシメチル)エチル]エーテル、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エリトリトール、トレイトール、グアヤコールグリセロールエーテル、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール等が挙げられる。グリコールエーテル系溶剤としては、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアセチレングリコール類、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンエステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミド等が挙げられる。
(2)フラックスの含有量
フラックスの含有量は、はんだペーストの全質量に対して5〜95%であることが好ましく、5〜15%であることがより好ましい。この範囲であると、はんだ粉末に起因する増粘抑制効果が十分に発揮される。
フラックスの含有量は、はんだペーストの全質量に対して5〜95%であることが好ましく、5〜15%であることがより好ましい。この範囲であると、はんだ粉末に起因する増粘抑制効果が十分に発揮される。
本発明に係るはんだペーストは、酸化ジルコニウム粉末を有することが好ましい。
(3)酸化ジルコニウム粉末
本発明に係るはんだペーストは、酸化ジルコニウム粉末を含有することが好ましい。酸化ジルコニウムは、経時変化に伴うペーストの粘度上昇を抑制することができる。これは、酸化ジルコニウムを含有することにより、はんだ粉末表面の酸化膜厚がフラックス中に投入する前の状態を維持するためと推測される。詳細は不明であるが、以下のように推察される。通常、フラックスの活性成分は常温でもわずかに活性を持っているため、はんだ粉末の表面酸化膜が還元により薄くなり、粉末同士が凝集する原因になっている。そこで、はんだペーストに酸化ジルコニウム粉末を添加することで、フラックスの活性成分が酸化ジルコニウム粉末と優先的に反応し、はんだ粉末表面の酸化膜が凝集しない程度に維持されると推察される。
(3)酸化ジルコニウム粉末
本発明に係るはんだペーストは、酸化ジルコニウム粉末を含有することが好ましい。酸化ジルコニウムは、経時変化に伴うペーストの粘度上昇を抑制することができる。これは、酸化ジルコニウムを含有することにより、はんだ粉末表面の酸化膜厚がフラックス中に投入する前の状態を維持するためと推測される。詳細は不明であるが、以下のように推察される。通常、フラックスの活性成分は常温でもわずかに活性を持っているため、はんだ粉末の表面酸化膜が還元により薄くなり、粉末同士が凝集する原因になっている。そこで、はんだペーストに酸化ジルコニウム粉末を添加することで、フラックスの活性成分が酸化ジルコニウム粉末と優先的に反応し、はんだ粉末表面の酸化膜が凝集しない程度に維持されると推察される。
このような作用効果を十分に発揮するためには、はんだペースト中の酸化ジルコニウム粉末の含有量ははんだペーストの全質量に対して0.05〜20.0%であることが好ましい。0.05%以上であると上記作用効果を発揮することができ、20.0%以下であると金属粉末の含有量を確保することができ、増粘防止効果を発揮することができる。酸化ジルコニウムの含有量は好ましくは0.05〜10.0%であり、より好ましい含有量は0.1〜3%である。
はんだペースト中の酸化ジルコニウム粉末の粒径は5μm以下であることが好ましい。粒径が5μm以下であるとペーストの印刷性を維持することができる。下限は特に限定されることはないが0.5μm以上であればよい。上記粒径は、酸化ジルコニウム粉末のSEM写真を撮影し、0.1μm以上の各粉末について画像解析により投影円相当径を求め、その平均値とした。
酸化ジルコニウムの形状は特に限定されないが、異形状であればフラックスとの接触面積が大きく増粘抑制効果がある。球形であると良好な流動性が得られるためにペーストとしての優れた印刷性が得られる。所望の特性に応じて適宜形状を選択すればよい。
(4)はんだペーストの製造方法
本発明に係るはんだペーストは、当業界で一般的な方法により製造される。まず、はんだ粉末の製造は、溶融させたはんだ材料を滴下して粒子を得る滴下法や遠心噴霧する噴霧法、バルクのはんだ材料を粉砕する方法等、公知の方法を採用することができる。滴下法や噴霧法において、滴下や噴霧は、粒子状とするために不活性雰囲気や溶媒中で行うことが好ましい。そして、上記各成分を加熱混合してフラックスを調製し、フラックス中に上記はんだ粉末や、場合によっては酸化ジルコニウム粉末を導入し、攪拌、混合して製造することができる。
本発明に係るはんだペーストは、当業界で一般的な方法により製造される。まず、はんだ粉末の製造は、溶融させたはんだ材料を滴下して粒子を得る滴下法や遠心噴霧する噴霧法、バルクのはんだ材料を粉砕する方法等、公知の方法を採用することができる。滴下法や噴霧法において、滴下や噴霧は、粒子状とするために不活性雰囲気や溶媒中で行うことが好ましい。そして、上記各成分を加熱混合してフラックスを調製し、フラックス中に上記はんだ粉末や、場合によっては酸化ジルコニウム粉末を導入し、攪拌、混合して製造することができる。
4. はんだ継手
本発明に係るはんだ継手は、半導体パッケージにおけるICチップとその基板(インターポーザ)との接続、或いは半導体パッケージとプリント配線板との接続に使用するのに適している。ここで、「はんだ継手」とは電極の接続部をいう。
本発明に係るはんだ継手は、半導体パッケージにおけるICチップとその基板(インターポーザ)との接続、或いは半導体パッケージとプリント配線板との接続に使用するのに適している。ここで、「はんだ継手」とは電極の接続部をいう。
5.その他
本発明に係るはんだ合金は、上記のようにはんだ粉末として使用することの他、ワイヤ状であってもよい。
本発明に係るはんだ合金は、上記のようにはんだ粉末として使用することの他、ワイヤ状であってもよい。
本発明に係るはんだ継手の形成方法は常法に従って行えばよい。
本発明に係るはんだペーストを用いた接合方法は、例えばリフロー法を用いて常法に従って行えばよい。フローソルダリングを行う場合のはんだ合金の溶融温度は概ね液相線温度から20℃程度高い温度でよい。また、本発明に係るはんだ合金を用いて接合する場合には、凝固時の冷却速度を考慮した方が組織の微細化の観点から好ましい。例えば2〜3℃/s以上の冷却速度ではんだ継手を冷却する。この他の接合条件は、はんだ合金の合金組成に応じて適宜調整することができる。
本発明に係るはんだペーストを用いた接合方法は、例えばリフロー法を用いて常法に従って行えばよい。フローソルダリングを行う場合のはんだ合金の溶融温度は概ね液相線温度から20℃程度高い温度でよい。また、本発明に係るはんだ合金を用いて接合する場合には、凝固時の冷却速度を考慮した方が組織の微細化の観点から好ましい。例えば2〜3℃/s以上の冷却速度ではんだ継手を冷却する。この他の接合条件は、はんだ合金の合金組成に応じて適宜調整することができる。
本発明に係るはんだ合金は、その原材料として低α線量材を使用することにより低α線量合金を製造することができる。このような低α線量合金は、メモリ周辺のはんだバンプの形成に用いられるとソフトエラーを抑制することが可能となる。
本発明を以下の実施例により説明するが、本発明が以下の実施例に限定されることはない。
ロジンが42質量部、グリコール系溶剤が35質量部、チキソ剤が8質量部、有機酸が10質量部、アミンが2質量部、ハロゲンが3質量部で調整したフラックスと、表1〜表6に示す合金組成からなりJIS Z 3284−1:2004における粉末サイズの分類(表2)において記号4を満たすサイズ(粒度分布)のはんだ粉末とを混合してはんだペーストを作製した。フラックスとはんだ粉末との質量比は、フラックス:はんだ粉末=11:89である。各はんだペーストについて、粘度の経時変化を測定した。また、はんだ粉末の液相線温度および固相線温度を測定した。さらに、作製直後のはんだペーストを用いて濡れ性の評価を行った。詳細は以下のとおりである。
・経時変化
作製直後の各はんだペーストについて、株式会社マルコム社製:PCU−205を用い、回転数:10rpm、25℃、大気中で12時間粘度を測定した。12時間後の粘度がはんだペーストを作製後30分経過した時の粘度と比較して1.2倍以下であれば、十分な増粘抑制効果が得られたものとして「○」と評価し、1.2倍を超える場合には「×」と評価した。
作製直後の各はんだペーストについて、株式会社マルコム社製:PCU−205を用い、回転数:10rpm、25℃、大気中で12時間粘度を測定した。12時間後の粘度がはんだペーストを作製後30分経過した時の粘度と比較して1.2倍以下であれば、十分な増粘抑制効果が得られたものとして「○」と評価し、1.2倍を超える場合には「×」と評価した。
・ΔT
フラックスと混合する前のはんだ粉末について、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、型番:EXSTAR DSC7020を用い、サンプル量:約30mg、昇温速度:15℃/minにてDSC測定を行い、固相線温度および液相線温度を得た。得られた液相線温度から固相線温度を引いてΔTを求めた。ΔTが10℃以下の場合に「○」と評価し、10℃を超える場合に「×」と評価した。
フラックスと混合する前のはんだ粉末について、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、型番:EXSTAR DSC7020を用い、サンプル量:約30mg、昇温速度:15℃/minにてDSC測定を行い、固相線温度および液相線温度を得た。得られた液相線温度から固相線温度を引いてΔTを求めた。ΔTが10℃以下の場合に「○」と評価し、10℃を超える場合に「×」と評価した。
・濡れ性
作製直後の各はんだペーストをCu板上に印刷し、リフロー炉でN2雰囲気中、1℃/sの昇温速度で25℃から260℃まで加熱した後、室温まで冷却した。冷却後のはんだバンプの外観を光学顕微鏡で観察することで濡れ性を評価した。溶融しきれていないはんだ粉末が観察されない場合に「○」と評価し、溶融しきれていないはんだ粉末が観察された場合に「×」と評価した。
作製直後の各はんだペーストをCu板上に印刷し、リフロー炉でN2雰囲気中、1℃/sの昇温速度で25℃から260℃まで加熱した後、室温まで冷却した。冷却後のはんだバンプの外観を光学顕微鏡で観察することで濡れ性を評価した。溶融しきれていないはんだ粉末が観察されない場合に「○」と評価し、溶融しきれていないはんだ粉末が観察された場合に「×」と評価した。
評価した結果を表1に示す。
表1〜6に示すように、実施例では、いずれの合金組成においても本発明の要件をすべて満たすため、増粘抑制効果、ΔTの狭窄化、および優れた濡れ性を示すことがわかった。
これに対して、比較例1、10、19、28、37、および46は、Asを含有しないため、増粘抑制効果が発揮されなかった。
比較例2、11、20、29、38、および47は、(1)式が下限未満であるため、増粘抑制効果が発揮されなかった。
比較例3、4、12、13、21、22、30、31、39、40、48、および49は、As含有量が上限値を超えているため、濡れ性が劣る結果を示した。
比較例5、7、9、14、16、18、23、25、27、32、34、36、41、43、45、50、52、および54は、Pb含有量および(2)式が上限値を超えているため、ΔTが10℃を超える結果を示した。
比較例6、15、24、33、42、および51は、(2)式が上限値を超えているため、ΔTが10℃を超える結果を示した。
比較例8、17、26、35、44、および53は、Bi含有量および(2)式が上限値を超えているため、ΔTが10℃を超える結果を示した。
Claims (10)
- As:25〜300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、および残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式および(2)式を満たすことを特徴とするはんだ合金。
275≦2As+Bi+Pb (1)
0<2.3×10−4×Bi+8.2×10−4×Pb≦7 (2)
上記(1)式および(2)式中、As、Bi、およびPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。 - 更に、前記合金組成は下記(1a)式を満たす、請求項1に記載のはんだ合金。
275≦2As+Bi+Pb≦25200 (1a)
上記(1a)式中、As、Bi、およびPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。 - 更に、前記合金組成は下記(1b)式を満たす、請求項1に記載のはんだ合金。
275≦2As+Bi+Pb≦5300 (1b)
上記(1b)式中、As、Bi、およびPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。 - 更に、前記合金組成は下記(2a)式を満たす、請求項1〜3のいずれか1項に記載のはんだ合金。
0.02≦2.3×10−4×Bi+8.2×10−4×Pb≦0.9 (2a)
上記(2a)式中、BiおよびPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。 - 更に、前記合金組成は、Ag:0〜4質量%およびCu:0〜0.9質量%の少なくとも1種を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のはんだ合金。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のはんだ合金を有するはんだ粉末。
- 請求項6に記載のはんだ粉末を有するはんだペースト。
- 更に、酸化ジルコニウム粉末を有する、請求項7に記載のはんだペースト。
- 前記酸化ジルコニウム粉末を前記はんだペーストの全質量に対して0.05〜20.0質量%含有する、請求項8に記載のはんだペースト。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のはんだ合金を有するはんだ継手。
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