JP2019537621A - 抗fstl3抗体およびその使用 - Google Patents
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Abstract
本発明は、ヒトフォリスタチン様3(FSTL3)タンパク質に結合する抗体およびその抗原結合断片、かかる抗体を含む組成物、ならびにかかる抗体を作製および使用する方法を提供する。
Description
関連出願
本願は、2016年10月4日に出願された米国仮特許出願第62/404,169号の利益を主張する。上記出願の全教示は、参照により本明細書に援用される。
本願は、2016年10月4日に出願された米国仮特許出願第62/404,169号の利益を主張する。上記出願の全教示は、参照により本明細書に援用される。
政府支援
本発明は、国立衛生研究所(NIH)により授与された交付金番号143DK107018の下、政府支援によりなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
本発明は、国立衛生研究所(NIH)により授与された交付金番号143DK107018の下、政府支援によりなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
発明の背景
3000万人を超える米国人が糖尿病に罹っており、彼らは疾患およびその長期間の病理的影響の治療のために、2450億ドルの健康管理費を消費している。膵臓の島は、インスリンを分泌するβ細胞およびグルカゴンを分泌するα細胞を含む5種類の異なるホルモン分泌細胞型を含み、これらのホルモンは血清グルコースの決定的な制御因子である。β細胞は、1型糖尿病(T1D)において自己免疫攻撃により破壊されるので(Meier, J.J. et al, Diabetalogia 48:2221-28, 2005)、これらの患者には毎日の複数回のインスリン注射が主な治療となる。2型糖尿病(T2D)は、残存するβ細胞による不十分なインスリン産生と循環インスリンの有効性の低下の組合せにより引き起こされる(Butler, A.E. et al, Diabetes 52:102-110, 2003)。これらの患者は、糖尿病の症状に対処するために主にインスリン産生の増加またはその有効性の増加に焦点を当てたいくつかの見込みのある治療を有する。しかしながら、時が過ぎて(over time)、T2Dは、インスリン注射のみがグルコースを十分に制御し得るという点に前進している。最近報告された、ヒト誘導多能性幹細胞(iPSC)を機能性β細胞に分化させるためのインビトロ手法(Pagliuca, F.W. et al, Cell 159:428-39, 2014)により、iPSC由来のβ細胞を埋め込むことで失われたβ細胞が最終的に取って代わられ得、T1DおよびT2Dの両方を効果的に治療し得る可能性がもたらされる。しかしながら、レシピエントの免疫系からの攻撃を防ぐための封入物質の他に均一な機能性β細胞の大規模な製造など、乗り越えるべきいくつかの技術的障害が残る。失われたβ細胞に取って代えるための代替的な供給源は、マウスおよびヒトの膵臓組織の両方において生じることが最近示された(Ben-Othman et al, Cell 168:1-13, 2017; Thorel, F. et al., Nature 464: 1149-1154, 2010)分化転換として知られるプロセスにおいて、α細胞などの密接に関係のある膵臓細胞をβ細胞に変えることからなり得る。
3000万人を超える米国人が糖尿病に罹っており、彼らは疾患およびその長期間の病理的影響の治療のために、2450億ドルの健康管理費を消費している。膵臓の島は、インスリンを分泌するβ細胞およびグルカゴンを分泌するα細胞を含む5種類の異なるホルモン分泌細胞型を含み、これらのホルモンは血清グルコースの決定的な制御因子である。β細胞は、1型糖尿病(T1D)において自己免疫攻撃により破壊されるので(Meier, J.J. et al, Diabetalogia 48:2221-28, 2005)、これらの患者には毎日の複数回のインスリン注射が主な治療となる。2型糖尿病(T2D)は、残存するβ細胞による不十分なインスリン産生と循環インスリンの有効性の低下の組合せにより引き起こされる(Butler, A.E. et al, Diabetes 52:102-110, 2003)。これらの患者は、糖尿病の症状に対処するために主にインスリン産生の増加またはその有効性の増加に焦点を当てたいくつかの見込みのある治療を有する。しかしながら、時が過ぎて(over time)、T2Dは、インスリン注射のみがグルコースを十分に制御し得るという点に前進している。最近報告された、ヒト誘導多能性幹細胞(iPSC)を機能性β細胞に分化させるためのインビトロ手法(Pagliuca, F.W. et al, Cell 159:428-39, 2014)により、iPSC由来のβ細胞を埋め込むことで失われたβ細胞が最終的に取って代わられ得、T1DおよびT2Dの両方を効果的に治療し得る可能性がもたらされる。しかしながら、レシピエントの免疫系からの攻撃を防ぐための封入物質の他に均一な機能性β細胞の大規模な製造など、乗り越えるべきいくつかの技術的障害が残る。失われたβ細胞に取って代えるための代替的な供給源は、マウスおよびヒトの膵臓組織の両方において生じることが最近示された(Ben-Othman et al, Cell 168:1-13, 2017; Thorel, F. et al., Nature 464: 1149-1154, 2010)分化転換として知られるプロセスにおいて、α細胞などの密接に関係のある膵臓細胞をβ細胞に変えることからなり得る。
糖尿病のために最近利用可能な治療選択肢は、特に疾患が進行するにつれて有効性が制限される。さらに、ほとんどの治療は、疾患の症状に対処すており、β細胞からのインスリンの消失である根源的な原因に対処するものはない。したがって、糖尿病のための新規でより効果的な治療についての緊急の必要性がある。
発明の概要
本発明は一般的に、フォリスタチン様3(FSTL3)タンパク質に結合してその1つ以上の活性を阻害する抗体、およびかかる抗体を含む組成物、ならびに(例えば糖尿病の治療において)かかる抗体を作製および使用する方法を提供する。
本発明は一般的に、フォリスタチン様3(FSTL3)タンパク質に結合してその1つ以上の活性を阻害する抗体、およびかかる抗体を含む組成物、ならびに(例えば糖尿病の治療において)かかる抗体を作製および使用する方法を提供する。
いくつかの態様において、本発明は、ヒトフォリスタチン様3(FSTL3)タンパク質に結合してFSTL3のFSTL3リガンド(例えばアクチビン)への結合を中和する単離された抗体またはその抗原結合断片を提供する。特定の態様において、抗体またはその抗原結合断片は、β細胞からのインスリン分泌の増加、β細胞再生の増加、α細胞もしくは任意の他の膵臓細胞のβ細胞への分化転換の促進、およびβ細胞のα細胞への分化転換の阻害、またはそれらの任意の組合せからなる群より選択される膵臓島細胞に対する1つ以上の活性を有する。
本明細書に開示されるように、本発明の抗体は(例えば糖尿病の治療において)治療剤として有用である。したがって、他の態様において、本発明は、糖尿病の治療を必要とする被験体にヒトフォリスタチン様3(FSTL3)タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片の有効量を投与する工程を含む、該被験体において糖尿病を治療する方法を提供する。
いくつかの態様において、本発明はまた島細胞(例えばβ細胞)からのインスリン分泌を増加させる方法を提供する。該方法は、β細胞または他の島細胞(例えばδ細胞、グレリン細胞)と、ヒトフォリスタチン様3(FSTL3)タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片の有効量を接触させる工程を含み、該抗体は、FSTL3のFSTL3リガンドへの結合を阻害し、それによりインスリン分泌を増加させる。
他の態様において、本発明はまた、β細胞再生を増加させる方法を提供する。該方法は、β細胞もしくは他の島細胞(例えばδ細胞、グレリン細胞)、または島中もしくはその周囲にある他のアクチビン産生細胞(例えば腺房細胞、血管細胞、マクロファージ、血球、線維芽細胞)と、ヒトフォリスタチン様3(FSTL3)タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片の有効量を接触させる工程を含み、該抗体は、FSTL3のFSTL3リガンドへの結合を阻害し、それによりβ細胞再生を促進する。
さらなる態様において、本発明はまた、α細胞または他の膵臓細胞のβ細胞への分化転換を促進する方法を提供する。該方法は、α細胞または他の膵臓細胞と、ヒトフォリスタチン様3(FSTL3)タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片の有効量を接触させる工程を含み、該抗体は、FSTL3のFSTL3リガンドへの結合を阻害する。
さらなる態様において、本発明はまた、β細胞の、α細胞または他の島細胞(例えばδ細胞、グレリン細胞)への分化転換を阻害する方法を提供する。一態様において、該方法は、β細胞のα細胞への分化転換を阻害するためのものである。該方法は、β細胞もしくは他の島細胞(例えばδ細胞、グレリン細胞)または島中もしくはその周囲の他のアクチビン産生細胞(例えば、腺房細胞、血管細胞、マクロファージ、血球、線維芽細胞)と、ヒトフォリスタチン様3(FSTL3)タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片の有効量を接触させる工程を含み、該抗体は、FSTL3のFSTL3リガンドへの結合を阻害する。
本明細書に記載される抗体は、密接に関連するフォリスタチン(FST)タンパク質への交差反応性が最小である、FSTL3タンパク質の特異的および/または高められた阻害を提供する。かかる抗体の使用は、望ましくないかまたは有害な効果の可能性が低減された、インビボにおいてグルコース代謝を調節する能力を含む特定の利点を付与する。
本発明は、以下の図面を参照して、より完全に理解され得る。
図1Aおよび1Bは、FSTL3中和アッセイの特徴を示す。アクチビンの濃度が増加するにつれて、アッセイにおけるシグナル伝達も正比例して増加する。中和アッセイに必要とされるアクチビンAの最適用量は、HEK 293細胞中で安定に発現されるCAGA-Lucレポーターの100,000RLUの刺激を生じるアクチビンAの量として決定された(図1A)。アクチビンの活性を中和するFSTL3の能力は、FSTL3濃度の増加に伴うアッセイにおけるシグナル伝達の低下として示される(図1B)。この中和の阻害剤を検出するためのヒトFSTL3の最適量は、アクチビンシグナル伝達の90〜95%を阻害するヒトFSTL3の量として決定された(図1B)。
図2は、その全てがFSTL3にある程度まで結合する10個の抗体のスクリーニング結果を要約する棒グラフである。FSTL3活性の中和は、クローンのサブセットにおいて検出可能であり、大きく変化し、中和を検出するためのスクリーニングアッセイの必要性を示した。
図3は、ヒトFSTL3(hFSTL3)に対して精製された抗体を使用した細胞ベース中和アッセイの結果を示す。中和活性について3個の抗hFSTL3抗体および1個の対照抗体を評価した。中和活性を、FSTL3のアクチビンへの結合を中和する試験抗体の能力によりモニタリングし、該能力は、CAGA-Lucレポーターにより生成される光を刺激する遊離アクチビンの量を増加させる。抗体FP-101は最も高い中和活性を示し、FP-102およびFP-103抗体が続いた。FSTL3に結合したが中和しなかった対照抗体はこのアッセイにおいて活性を有さなかった。
図4は、異なるTGFβファミリーリガンドに対するFSTL3の中和効果における変化を示す。中和アッセイにおいて約100,000光単位を生じるリガンドの用量は、FSTL3の量を増加させながら試験して、アクチビンA(黒丸)は、最も少ない量のFSTL3により中和され、GDF11(黒逆三角)、アクチビンB(黒三角)が続き、MSTN(黒四角)はFSTL3による最も低い阻害を発揮することが示された。これは、FSTL3がそれぞれのリガンドに結合する親和性を反映するが、FSTL3が4つ全てのリガンドを中和し得ることを示す。
図5A〜5Dは、TGFβファミリーリガンドに対する3つの抗FSTL3抗体の中和効果を示す。FP-101、FP-102およびFP-103抗体ならびに対照抗体は、アクチビンA(図5A)、アクチビンB(図5B)、GDF11(図5C)およびミオスタチン(図5D)の予め決定された用量に対するそれらの中和効果について試験された。該図は、FP-101およびFP-102はFSTL3結合および4つ全てのリガンドの中和を中和するが、FP-103はFSTL3結合およびミオスタチンの中和の中和において最も効果的であることを示す。対照抗体は中和活性を有さなかった。
図6A〜6Cは、3つの抗FSTL3抗体のヒトまたはマウスFSTL3タンパク質への結合を示す。直接結合はウエスタンブロットを使用して評価した。FP-101は、還元および非還元hFSTL3の両方を認識したが、mFSTL3への結合はほんのわずかに検出可能なだけだった(図6A)。FP-102は還元および非還元hFSTL3の両方を認識し、FP-101よりも良好にマウスFSTL3も認識したが、ヒトFSTL3への結合よりもかなり低い程度であった(図6B)。FP-103は還元および非還元hFSTL3の両方を認識したが、mFSTL3は認識しない(図6C)。
図7Aおよび7Bは、FP-101およびFP-102抗体のヒトFSTL3およびヒトフォリスタチンタンパク質への比較結合を示す。ウエスタンブロットを使用して直接結合を評価した。FP-101(図7A)およびFP-102(図7B)抗体の両方は、還元(RED)および非還元(NR)ヒトFSTL3(ASL11)に結合するが、FP-101(図7A)もFP-102(図7B)もいずれも還元および非還元ヒトフォリスタチン(hFST)に結合しない。
図8は、FP-101抗体の重鎖要素のアミノ酸およびヌクレオチド配列を示す。
図9は、FP-101抗体の軽鎖要素のアミノ酸およびヌクレオチド配列を示す。
図10は、FP-102抗体の重鎖要素のアミノ酸およびヌクレオチド配列を示す。
図11は、FP-102抗体の軽鎖要素のアミノ酸およびヌクレオチド配列を示す。
図12は、FP-101およびFP-102抗体が24時間培養したマウスの島からのインスリン放出を刺激することを示す。該抗体は、対照抗体と比較してインスリン分泌を促進し、該効果は、インスリン産生が血糖レベルを制御するのに不十分である糖尿病を有する患者に有益である。
図13は、FP-101治療が、糖尿病マウスの島からのグルコース刺激インスリン分泌を回復させることを示す。治療を適用しない場合(対照)、正常な島は、低いグルコースと比較して高いグルコースにおいてより多くのインスリンを分泌した(最初の2つのバー)。しかしながら、糖尿病の島は、糖尿病の島に典型的であるより高いグルコースにおいてインスリン分泌を増加しなかった(バー3および4)。対照的に、FP-101での24時間の島の治療後、正常な島と同様に高いグルコースにおけるインスリン放出の増加が観察された(バー7および8と、バー3および4および5および6を比較)。
図14は、FP-101治療がヒトの島においてグルコース刺激インスリン分泌を回復させることを示す。治療なし対照において(最初の2つのバー)、正常な島では観察されるような、高いグルコース中で培養した場合のインスリン分泌の増加はなく、これは治療なし対照が糖尿病の島と同様にふるまっていることを示した。FP-101での治療は、高いグルコースにおいてインスリン分泌の上昇を回復させたので、糖尿病の島はこの時には正常な島と同様にふるまう。FP-102は同じ効果を有する傾向を示したが、おそらくはFP-101と比較してFSTL3を中和するFP-102の能力の低下のために、小さかった。
図15Aおよび15Bは、腹腔内(IP)(図15A)または静脈内(IV)注射(図15B)後のマウス血清におけるmAb FP-101の薬力学を示す。図15A:1〜2時間後、ウェルを洗浄し、ウェルにおいてmAbに結合する酵素標識抗マウス抗体を添加した。mAbは全ての試料中で検出され、値は変化せず、これは早い吸収であるが遅いクリアランスを示唆したので、糖尿病の治療においては頻度の低いmAbの投与が効果的であり得る。図15B:mAbの遅いクリアランスが再度観察され、検出されたmAbは3時間にわたり有意に変化しなかった。
発明の詳細な説明
本発明の例示態様の記載を以下にする。
本発明の例示態様の記載を以下にする。
TGFβスーパーファミリーの一員、例えばアクチビン(アクチビンAおよびB)、ミオスタチン(MSTN;GDF8としても公知)および増殖分化因子(growth and differentiation factor)11 (GDF11)は、種々の重要な生物学的プロセス、例えば胚形成の間および成体組織中の両方で脂質およびグルコース代謝を調節する。フォリスタチン(FST)およびFST様3(FSTL3)タンパク質は、いくつかのTGFβスーパーファミリータンパク質、例えばアクチビン、GDF11およびGDF8に結合して中和する分泌糖タンパク質である。
本明細書に開示されるヒトFSTL3(hFSTL3)に対する抗体、または抗hFSTL3抗体は、hFSTL3タンパク質(UniProt # O95633)への結合に基づいて選択される特定のモノクローナル抗体の抗原結合部位に基づく。該抗体は、hFSTL3タンパク質に対する抗hFSTL3抗体についての抗原結合部位を画定する相補性決定領域(CDR)配列を有する免疫グロブリン可変領域を含む。
本明細書に記載される抗体は、FSTL3中和活性を有し、すなわち該抗体はFSTL3に結合して、FSTL3が増殖因子のTGFβファミリーのサブセット、例えばアクチビンAおよびB、ミオスタチン(MSTN;GDF8とも称される)ならびに増殖分化因子11(GDF11)に結合および/または中和することを防ぎ、そのために種々の型の代謝疾患およびインスリン関連障害、例えばI型およびII型糖尿病を治療するために有用である。いくつかの態様において(例えば治療剤として使用する場合)、該抗体は、ヒト患者に投与された場合に抗体に対する免疫応答を最小化または排除するように作り変えられ得る。本発明の種々の特徴および局面を以下により詳細に記載する。
本明細書で使用する場合、「単離された抗体」は、実質的にその天然の環境から離れた抗体を意味する。例えば、単離された抗体または核酸は、細胞またはそれが由来する組織供給源由来の細胞材料および他のタンパク質から実質的に離れている。
本明細書で使用する場合、そうではないと示されない限り、「抗体」は、インタクトな抗体または抗体の抗原結合断片、例えば修飾されたもしくは作り変えられたまたはヒト抗体であるインタクトな抗体または抗原結合断片を意味する。修飾されたまたは作り変えられた抗体の例は、キメラ抗体、ヒト化抗体、多パラトピック(multiparatopic)抗体(例えば二パラトピック(biparatopic)抗体)および多特異的(multispecific)抗体(例えば二特異的(bispecific)抗体)である。抗原結合断片の例としては、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、単鎖抗体(例えばscFv)、二本鎖Fv(dsFv)、ミニボディ(minibody)およびダイアボディ(diabody)が挙げられる。
本明細書に開示される抗体は、完全抗体(whole antibody)または抗体断片(例えば単鎖Fv断片またはFab抗体断片)であり得るが、ただし該抗体または抗体断片は、インビトロまたはインビボでその特異的な抗原(例えばhFSTL3タンパク質)を認識および結合し得る。かかる抗体は、1つ以上のhFSTL3活性(例えばhFSTL3の1つ以上のそのリガンドへの結合)を阻害(例えば低減、遮断、干渉)し得、それにより標的の中和をもたらす。
本明細書に開示される完全抗体は一般的に、古典的な「Y」モチーフ中に整列される4本の鎖を含む。互いに共有結合する2本の重鎖およびそれぞれ重鎖の1本に共有結合する2本の軽鎖がある。「Y」の底部の「レグ」は、Fc領域と称される。「Y」の頂部の2本の「アーム」は、Fab領域と称される。FcおよびFab領域は共有結合している。それぞれのFab領域は、定常領域および(「Y」の先端まで伸長する)可変領域を含む。それぞれの可変領域は、「Y」のそれぞれの先端に(「超可変」領域と称される可変領域中の領域で)抗原結合部位を含む。したがって、それぞれのFab領域は、少なくとも1つの抗原結合部位を有し、そのため完全抗体分子は2つの抗原結合部位を有する(すなわち「二価」である)。
本明細書に開示される抗体は、(a)構造CDRH1-CDRH2-CDRH3を含む免疫グロブリン重鎖可変領域および(b)構造CDRL1-CDRL2-CDRL3を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含み、ここで重鎖可変領域および軽鎖可変領域は一緒になって、FSTL3タンパク質に結合するための1つの結合部位を画定する。
本発明の例示的な抗体としては、限定されないが、本明細書に記載されるFP-101およびFP-102抗体が挙げられる(例えば図8〜11参照)。本発明の抗体としては例えば、FP-101および/またはFP-102抗体の1つ以上(例えば1、2、3、4、5または6)の重鎖相補性決定領域(CDR)、および/または1つ以上(例えば1、2、3、4、5または6)の軽鎖CDRを有する抗体が挙げられる。したがって、一態様において、本発明は、a)配列番号:3からなるCDR1;b)配列番号:13からなるCDR1;c)配列番号:4からなるCDR2;d)配列番号:14からなるCDR2;e)配列番号:5からなるCDR3;およびf)配列番号:15からなるCDR3からなる群より選択される少なくとも1つ(例えば1、2、3、4、5または6)のCDRを有する抗体重鎖可変(VH)ドメインを含む抗体または抗原結合断片を提供する。特定の態様において、該抗体または抗原結合断片は、FP-101抗体の3つ全ての重鎖CDR(配列番号:3、配列番号:4および配列番号:5)またはFP-102抗体の3つ全ての重鎖CDR(配列番号:13、配列番号:14および配列番号:15)を有する。
いくつかの態様において、該抗体または抗原結合断片は、FP-101および/またはFP-102抗体の少なくとも1つのCDRを有する抗体可変軽鎖(VL)ドメインを含む。従って一態様において、本発明は、配列番号:8からなるCDR1;配列番号:18からなるCDR1;配列番号:9からなるCDR2;配列番号:19からなるCDR2;配列番号:10からなるCDR3および配列番号:20からなるCDR3からなる群より選択される少なくとも1つ(例えば1、2、3、4、5または6)のCDRを有する抗体軽鎖可変(VL)ドメインを含む抗体または抗原結合断片を提供する。特定の態様において、該抗体または抗原結合断片は、FP-101抗体の3つ全ての軽鎖CDR(配列番号:8、配列番号:9および配列番号:10)またはFP-102抗体の3つ全ての軽鎖CDR(配列番号:18、配列番号:19および配列番号:20)を有する。
ある態様において、本発明の抗体は、FP-101抗体の3つ全てのVH CDR(配列番号:3、配列番号:4および配列番号:5)および3つ全てのVL CDR(配列番号:8、配列番号:9および配列番号:10)を含む。他の態様において、本発明の抗体は、FP-102抗体の3つ全てのVH CDR(配列番号:13、配列番号:14および配列番号:15)および3つ全てのVL CDR(配列番号:18、配列番号:19および配列番号:20)を含む。さらに他の態様において、本発明の抗体は、FP-101抗体の3つ全てのVH CDR(配列番号:3、配列番号:4および配列番号:5)およびFP-102抗体の3つ全てのVL CDR(配列番号:18、配列番号:19および配列番号:20)を含む。さらなる態様において、本発明の抗体は、FP-102抗体の3つ全てのVH CDR(配列番号:13、配列番号:14および配列番号:15)およびFP-101抗体の3つ全てのVL CDR(配列番号:8、配列番号:9および配列番号:10)を含む。
当業者は、いくつかの例において、FP-101抗体由来の1つ以上のCDRとFP-102抗体由来の1つ以上のCDR(同じ鎖または異なる鎖上のいずれか)を組み合わせて、FSTL3への結合(例えば特異的結合)を保持する抗体を作製することが可能であり得ることを理解する。したがって、本発明は、任意の組合せで(例えばFP-101由来のVH CDR1および3ならびにFP-102由来のVH CDR2を含む重鎖)FP-101およびFP-102抗体の両方由来のCDRを有する抗体を包含する。
いくつかの態様において、本発明の抗体は、FP-101抗体由来の重鎖可変領域(HCVR)(配列番号:2)、FP-102抗体由来の重鎖可変領域(HCVR)(配列番号:12)、またはその両方を含む。他の態様において、本発明の抗体は、FP-101抗体由来の軽鎖可変領域(HCVR)(配列番号:7)、FP-102抗体由来の軽鎖可変領域(LCVR)(配列番号:17)、またはその両方を含む。したがって、本発明の抗体のための可能なHCVR/LCVR組合せとしては、配列番号:2/配列番号:12;配列番号:2/配列番号:17;配列番号:7/配列番号:12および配列番号:7/配列番号:17が挙げられる。さらなる機能性HCVR/LCVR組合せは本発明の範囲内にある。
本明細書で使用する場合、HCVRまたはLCVR「を含むFSTL3に結合する抗体」は、HCVRまたはLCVRを含むFSTL3タンパク質とは異なり、HCVRまたはLCVRを含む抗体を意味する。
いくつかの態様において、該抗体は、哺乳動物FSTL3(例えばヒトFSTL3またはhFSTL3)に特異的に結合する。これは、該抗体が、所定の組の結合反応条件下で、試料中に存在する他のタンパク質への無視できる結合を伴って、試料中のFSTL3タンパク質に結合することを意味する。
いくつかの態様において、該抗体はFSTL3に特異的に結合するが、フォリスタチン(FST)(例えばヒトフォリスタチン(hFST))には結合しない。これは、該抗体が、所定の組の結合条件下で、試料中に存在するFSTへの無視できる結合を伴って、試料中のFSTL3タンパク質に結合することを意味する。
抗体の抗原結合断片の例としては、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、scFv、dsFv、dAbおよびダイアボディが挙げられる。
「Fab断片」は、1つの軽鎖ならびに1つの重鎖のCH1および可変領域を含む。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成し得ない。
「Fc」領域は、抗体のCH2およびCH3ドメインを含む2つの重鎖断片を含む。2つの重鎖断片は、CH3ドメインの2つ以上のジスルフィド結合および疎水性相互作用により一緒に保持される。
「Fab'断片」は、1つの軽鎖ならびにVHドメインおよびCH1ドメインおよびCH1とCH2ドメインとの間の領域も含む1つの重鎖の一部を含むので、鎖間のジスルフィド結合は、F(ab')2分子を形成するために2つのFab'断片の2つの重鎖の間に形成され得る。
「F(ab')2断片」は、2つの軽鎖およびCH1とCH2ドメインとの間の定常領域の一部を含む2つの重鎖を含むので、鎖間のジスルフィド結合は2つの重鎖の間に形成される。したがって、F(ab')2断片は、2つの重鎖の間のジスルフィド結合により一緒に保持される2つのFab'断片で構成される。
「Fv領域」は、重鎖および軽鎖の両方由来の可変領域を含むが、定常領域を欠く。
「単鎖Fv抗体」(または「scFv抗体」)は、抗体のVHおよびVLドメインを含む抗体断片をいい、ここでこれらのドメインは、単一ポリペプチド鎖中に存在する。一般的に、Fvポリペプチドはさらに、scFvが抗原結合のために所望の構造を形成することを可能にする、VHおよびVLドメインの間のポリペプチドリンカーを含む。scFvの総説について、Pluckthun (1994) The Pharmacology Of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds. Springer-Verlag, New York, pp. 269-315参照。PCT公開公報WO 88/01649ならびに米国特許第4,946,778号および第5,260,203号も参照。
dsFv断片は、Fab断片マイナス定常領域からなり、すなわち互いに共有結合する重鎖および軽鎖の可変領域のみからなる。dsFvの総説について、Pluckthun (1994) The Pharmacology Of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds. Springer-Verlag, New York, pp. 269-315参照。
古典的に、dsFvおよびscFv断片の両方は一価である(従って一特異的)。しかしながら2つのdsFv断片または2つのscFv断片は、それら自体で結合して二特異的断片を形成し得る(これは定常領域を有さないF(ab')2断片に類似する)。さらに2つのdsFv断片またはscFv断片と異なる抗原結合部位(すなわち異なる特異性)を結合させて、二特異的断片を形成することが可能である。
「ダイアボディ」は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片である。該断片は、同じポリペプチド鎖中で軽鎖可変領域(VL)に結合した重鎖可変領域(VH)を含む(VH-VLまたはVL-VH)。短すぎて同じ鎖上で2つのドメインの間の組合せを可能にできないリンカーを使用することにより、該ドメインは別の鎖の相補性ドメインと対になり、2つの抗原結合部位を生じる。ダイアボディは、例えば特許文献EP 404,097;WO 93/11161;およびHolliger et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448に記載される。
「ドメイン抗体断片」は、重鎖の可変領域または軽鎖の可変領域のみを含む免疫学的に機能性の免疫グロブリン断片である。いくつかの例において、2つ以上のVH領域は、ペプチドリンカーにより共有結合して二価のドメイン抗体断片を生じる。二価のドメイン抗体断片の2つのVH領域は同じまたは異なる抗原を標的化し得る。
いくつかの態様において、抗体は修飾されるかまたは作り変えられる。修飾されたかまたは作り変えられた抗体の例としては、キメラ抗体、多パラトピック抗体(例えば二パラトピック抗体)および多特異的抗体(例えば二特異性抗体)が挙げられる。
本明細書で使用する場合、「多パラトピック抗体」は、少なくとも二つの単一ドメイン抗体を含む抗体を意味し、ここで少なくとも1つの単一ドメイン抗体は、抗原上の第1の抗原性決定基に指向され、少なくとも1つの他の単一ドメイン抗体は同じ抗原上の第2の抗原性決定基に指向される。したがって、例えば「二パラトピック」抗体は、抗原上の第1の抗原性決定基に指向される少なくとも1つの単一ドメイン抗体および同じ抗原上の第2の抗原性決定基に指向される少なくとも1つのさらなる単一ドメイン抗体を含む。
本明細書で使用する場合、「多特異的抗体」は、少なくとも2つの単一ドメイン抗体を含む抗体を意味し、ここで少なくとも1つの単一ドメイン抗体は第1の抗原に指向され、少なくとも1つの他の単一ドメイン抗体は第2の抗原(第1の抗原とは異なる)に指向される。したがって、例えば「二特異性」抗体は、第1の抗原に指向される少なくとも1つの単一ドメイン抗体および例えば第1の抗原とは異なる第2の抗原に指向される少なくとも1つのさらなる単一ドメイン抗体を含む抗体である。
いくつかの態様において、本明細書に開示される抗体は、モノクローナル抗体、例えばマウスモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体を作製する方法は当該技術分野で公知である。例えばPluckthun (1994) The Pharmacology Of Monoclonal Antibodies, Vol. 113, Rosenburg and Moore eds. Springer-Verlag, New York, pp. 269-315参照。
いくつかの態様において、抗体は免疫原性を低減するように改変される。抗体がヒトに投与される場合、該抗体は、ヒトにおける抗原性を低減または排除するために「ヒト化」され得る。したがって、いくつかの態様において、該抗体はヒト化またはヒトフレームワーク領域(FR)を含む。
抗体および抗体断片の抗原性を低減または排除するための方法は当該技術分野で公知である。一アプローチにおいて、本明細書に開示される抗hFSTL3抗体をコードする核酸配列は、一般的にキメラ抗体と称されるものを作製するために、例えばマウス定常領域をヒト重鎖および軽鎖定常領域で置き換えることにより改変される(例えば米国特許第4,816,567号;Morrison, et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851)。
ヒト化抗体は一般的に、非ヒトである供給源由来の1つ以上のアミノ酸残基を有する。該非ヒトアミノ酸残基はしばしば「インポート(import)」残基と称され、典型的に「インポート」可変ドメインからとられる。ヒト化は一般的にWinterおよび共同研究者の方法(Jones et al., 1986, Nature 321:522-525;Riechmann et al., 1988, Nature, 332:323-327;Verhoeyen et al., 1988, Science 239:1534-1536)に従って、非ヒトCDR(1つまたは複数)配列をヒト抗体の対応する配列の代わりに用いることにより実施され得る。実際には、ヒト化抗体は典型的に、いくつかのCDR残基およびできる限りいくつかのFR残基が非ヒト、例えばマウス抗体における類似の部位由来の残基により置換されるヒト抗体である。好ましくは、ヒト化抗体は、それが由来した非ヒト、例えばマウス抗体と同じまたは実質的に同じである抗原に対する親和性および/または特異性を有する。
CDR移植として公知のアプローチにおいて、軽鎖および重鎖可変領域のCDRは、別の種由来のフレームワークに移植される。例えば、マウスCDRはヒトFRに移植され得る。いくつかの態様において、抗hFSTL3抗体の軽鎖および重鎖可変領域のCDRは、ヒトFRまたはコンセンサスヒトFRに移植される。コンセンサスヒトFRを作製するために、いくつかのヒト重鎖または軽鎖アミノ酸配列由来のFRをアライメントして、コンセンサスアミノ酸配列を同定する。CDR移植は、例えば米国特許第7,022,500号(Queen);米国特許第6,982,321号(Winter);米国特許第6,180,370号(Queen);米国特許第6,054,297号(Carter);米国特許第5,693,762号(Queen);米国特許第5,859,205号(Adair);米国特許第5,693,761号(Queen);米国特許第5,565,332号(Hoogenboom);米国特許第5,585,089号(Queen);米国特許第5,530,101号(Queen);Jones et al. (1986) Nature 321: 522-525;Riechmann et al. (1988) Nature 332: 323-327;Verhoeyen et al. (1988) Science 239: 1534-1536およびWinter (1998) FEBS Lett 430: 92-94に記載される。
ヒト化抗体の作製に使用される軽鎖および重鎖の両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性を低減するために重要である。いわゆる「最良適合(best-fit)」法によると、げっ歯類抗体の可変ドメインの配列を、公知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対してスクリーニングする。次いでマウスの配列に最も近いヒト配列を、ヒト化抗体のためのFRとして採用する(Sims et al., 1987, J. Immunol. 151:2296;Chothia et al., 1987, J. Mol. Biol. 196:901)。別の方法では、軽鎖または重鎖の特定のサブグループの全てのヒト抗体のコンセンサス配列由来の特定のフレームワークを使用する。いくつかの異なるヒト化抗体について同じフレームワークを使用し得る(Carter et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4285;Presta et al., 1993, J. Immunol. 151:2623)。
ヒト化抗体について、抗原に対する親和性および他の所望の生物学的特性(例えば特異性および/または中和活性など)を維持することが重要である。この結果を達成するために、ヒト化抗体は、親配列およびヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列および種々の概念的ヒト化産物を分析することにより設計され得る。三次元免疫グロブリンモデルは一般に入手可能であり、当業者に良く知られる。選択された候補免疫グロブリン配列のあり得る三次元立体配置構造を説明して表示するコンピュータープログラムが利用可能である。これらの表示の調査により、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のあり得る役割の分析、すなわち候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響する残基の分析が可能になる。この方法において、FR残基は、標的抗原(1つまたは複数)についての増加された親和性などの所望の抗体特性が達成されるようにレシピエントおよびインポート配列から選択されて組み合される。
免疫原性を低減するための他の方法としては、「作り直し(reshaping)」、「過キメラ化(hyperchimerization)」および「張り合わせ(veneering)/表面交換(resurfacing)」が挙げられる。例えばVaswami et al., 1998, Ann. Allergy & Immunol. 81:105;Roguska et al., 1996, Prot. Engineer. 9:895-904および米国特許第6,072,035号(Hardman)参照。張り合わせ/表面交換アプローチにおいて、マウス抗体中の表面アクセス可能な(surface accessible)アミノ酸残基を、ヒト抗体の同じ位置でより頻繁にみられるアミノ酸残基で置き換える。この型の抗体表面交換は例えば米国特許第5,639,641号(Pedersen)に記載される。
マウス抗体をヒトにおける医学用途に適した形態に変換するための別のアプローチは、ACTIVMABTM技術(Vaccinex, Inc., Rochester, N.Y.)として公知であり、該技術は哺乳動物細胞で抗体を発現するためのワクシニアウイルス系ベクターの使用を含む。IgG重鎖および軽鎖の高レベルのコンビナトリアル多様性が生じるといえる。例えば、米国特許第6,706,477号(Zauderer);米国特許第6,800,442号(Zauderer)および米国特許第6,872,518号(Zauderer)参照。
マウス抗体をヒトにおける使用に適した形態に変換するための別のアプローチは、KaloBios Pharmaceuticals, Inc. (Palo Alto, CA)により商業的に実施される技術である。この技術は、抗体選択のための「エピトープに焦点を当てた(epitope focused)」ライブラリーを作製するために、専売のヒト「アクセプター」ライブラリーの使用を含む。
マウス抗体をヒトにおける医学用途に適した形態に改変するための別のアプローチはHUMAN ENGINEERINGTM技術であり、該技術は、XOMA (US) LLCにより商業的に実施される。例えばPCT公開公報WO 93/11794ならびに米国特許第5,766,886号(Studnicka);米国特許第5,770,196号(Studnicka);米国特許第5,821,123号(Studnicka)および米国特許第5,869,619号(Studnicka)参照。
抗体のヒト化は常套的なタンパク質作り変えである。ほぼ全てのマウス抗体は、CDR移植によりヒト化され得、これは抗原結合の保持を生じる。例えばLo, Benny, K. C., editor, in Antibody Engineering: Methods and Protocols, Vol. 248, Humana Press, New Jersey, 2004参照。
いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片はアンタゴニストである。本明細書で使用する場合、抗hFSTL3抗体に関する「アンタゴニスト」は、リガンドのTGFβファミリー、例えばアクチビン(アクチビンAおよびB)、ミオスタチンおよびGDF11へのFSTL3タンパク質による結合および/またはそれらの中和を阻害する抗体を意味する。アンタゴニスト抗hFSTL3抗体は、FSTL3のアクチビンAへの結合、FSTL3のアクチビンBへの結合、FSTL3のミオスタチンへの結合、FSTL3の増殖分化因子(growth differentiation factor)11(GDF11)への結合、アクチビンAシグナル伝達の阻害、アクチビンBシグナル伝達の阻害、ミオスタチンシグナル伝達の阻害およびGDF11シグナル伝達の阻害またはそれらの組合せからなる群より選択されるヒトFSTL3タンパク質の1つ以上の活性を阻害し得る。
いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、「中和」抗体または抗原結合断片である。本明細書で使用する場合、「中和抗体または抗原結合断片」は、FSTL3への結合の際にリガンドのTGFβファミリー(例えばアクチビン(アクチビンAおよびB)、ミオスタチンおよびGDF11)のいずれか1つ以上のFSTL3への結合を阻害(例えば遮断、妨害)するおよび/またはFSTL3にすでに結合しているリガンドを放出させる抗体または抗原結合断片をいう。両方の場合において、中和抗体がFSTL3に結合する効果は、遊離リガンドを増加して、その下流のシグナル伝達および活性を刺激することである。本発明の抗体の中和活性は、例えば本明細書に開示されるCAGA-lucアッセイを使用して評価され得る。
いくつかの態様において、「中和抗体または抗原結合断片」は、対照(例えば抗体が存在しない)と比較して、FSTL3の、そのリガンドの1つ以上への結合を約50%より大きく阻害し得(リガンド結合の50%より大きい減少)、例えば約60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%または100%阻害である。パーセント阻害は、CAGA-Luc活性のアクチビン刺激について図1Bおよび3に示されるように、FSTL3のアクチビンAへの結合、FSTL3のアクチビンBへの結合、FSTL3のミオスタチンへの結合、FSTL3の増殖分化因子11(GDF11)への結合、アクチビンAシグナル伝達の阻害、アクチビンBシグナル伝達の阻害、ミオスタチンシグナル伝達の阻害およびGDF11シグナル伝達の阻害またはそれらの組合せからなる群より選択されるヒトFSTL3タンパク質の1つ以上の活性を、阻害剤(例えば抗hFSTL3抗体)が阻害する能力により測定され得る。パーセント阻害は一定の特徴ではなく、FSTL3に対する抗体の親和性およびそれらの相対的な濃度に依存する。一般的に、FSTL3に対して存在する抗体が多いほど、中和されるパーセントは大きくなり、抗体が任意の中和活性を有することが推定される。
試験抗体(例えば本明細書に記載される抗体)が標的抗原に結合するかどうかを決定するための方法は、当該技術分野で公知である。例えばウエスタンブロット、固相ELISAおよび/または従来のELISAアッセイを使用して、試験抗体が標的抗原に結合するかどうかを決定し得る。結合特異性、親和性、機能的活性および生物学的活性の決定などの抗体の特徴付けのための方法は、当該技術分野で周知である。例えば、本明細書の実施例セクションに記載される「中和アッセイ」を使用して、試験抗体の機能的活性(例えばリガンドのTGFβファミリーへのFSTL3による結合の阻害および/またはFSTL3によるリガンドのTGFβファミリーの中和の阻害)を決定し得る。
FSTL3に結合し、本明細書に開示される本発明の抗体(例えばFP-101またはFP-102)の結合を競合的に阻害する抗体も本発明の範囲内にある。2つ以上の抗体が同じ標的への結合について競合するかどうかを決定するための方法は、当該技術分野で公知である。例えば、競合的結合または競合アッセイを使用して、1つの抗体が別の抗体の標的への結合を妨げるかどうかを決定し得る。典型的に、競合アッセイは、固体基板に結合するかまたは細胞上に発現される精製された標的抗原(例えばFSTL3)、標識されない試験結合分子(例えば試験抗hFSTL3抗体)および標識された参照結合分子(例えば本明細書に開示される抗体)の使用を含む。競合的阻害は、試験分子の存在下で固体基板または細胞に結合した標識の量を決定することにより測定される。通常(必ずではないが)、該分子は、少なくとも2倍の過剰で存在する。試験抗体は、競合アッセイにおいて測定される際に過剰な1つの抗体が他の抗体の結合を少なくとも50%阻害する場合、抗原への特異的結合について参照抗体と競合する。
本発明は、抗体または断片(例えば本明細書に開示されるHCVRおよび/またはLCVRまたはその断片)をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸を提供する。本発明による核酸は、DNAまたはRNAを含み得、全体的または部分的に合成であり得る。例えば、本明細書に開示されるHCVRおよび/またはLCVRをコードするDNA分子は、化学的に合成され得る。合成DNA分子は、所望の抗体をコードする従来の遺伝子発現構築物を作製するために、例えば定常領域コーディング配列および発現制御配列などの他の適切なヌクレオチド配列に連結され得る。所定の遺伝子構築物の作製は当該技術分野における常套的な技術の範囲内である。代替的に、ヌクレオチド配列は、例えば従来のハイブリダイゼーション技術またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術により、その配列が本明細書に提供される配列情報またはハイブリドーマ細胞中のマウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に関する先行技術の配列情報に基づく合成核酸プローブを使用して、ハイブリドーマからクローニングされ得る。
核酸の作り変えおよび作製のための技術およびプロトコルは当該技術分野で公知である。例えばCurrent Protocols in Molecular Biology, Second Edition, Ausubel et al. eds., John Wiley & Sons, 1992参照。
本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列は、宿主細胞における抗体の発現に影響するようにプロモーターに操作可能に連結され得る。該配列は、その5'末端に宿主細胞における発現および/または宿主細胞からの抗体の分泌を容易にするためのリーダー配列を含み得る。適切なリーダー配列は当該技術分野で公知であり、宿主細胞を考慮して当業者によち選択され得る。
いくつかの態様において、核酸はベクターに組み込まれる。適切な制御配列、例えばプロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および適切な場合に他の配列を含む適切なベクターは、商業的に得られ得るかまたは当業者により構築され得る。さらなる詳細について、例えばMolecular Cloning: a Laboratory Manual, 2nd edition, Sambrook et al., 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press参照。ベクターの例としては、プラスミド、ファージ、ファージミドおよびコスミド、ならびに転写および発現カセットが挙げられる。
本明細書に開示されるHCVRおよび/またはLCVRをコードする核酸は、従来のトランスフェクションまたは形質転換技術により宿主細胞に導入され得る発現ベクターに組み込まれ(連結され)得る。したがって、宿主細胞は、HCVRおよび/またはLCVRまたはそれらの断片をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターで形質転換され得る。宿主細胞の例としては、大腸菌細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胚性腎臓293(HEK 293)細胞、HeLa細胞、新生児ハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)およびヒト肝細胞癌細胞(例えばHep G2)が挙げられる。
抗体または断片(例えば本明細書に開示されるHCVRおよび/またはLCVRあるいはそれらの断片)を作製する方法は本発明の範囲内にある。いくつかの態様において、該方法は、(a)HCVRおよび/またはLCVRをコードする発現ベクターを含む宿主細胞を、宿主細胞がHCVRおよび/またはLCVRあるいはその断片を含む抗体を発現する条件下で成長させる工程;ならびに(b)HCVRおよび/またはLCVRあるいはその断片を含む抗体を単離する工程を含む。
抗体発現および単離または精製のための適切な条件は、使用する発現系に依存する。例えば、遺伝子が大腸菌中で発現される場合、適切な細菌性プロモーター、例えばTrpまたはTacおよび原核生物シグナル配列の下流に作り変えられた遺伝子を配置することにより、遺伝子を最初に発現ベクターにクローニングする。発現され、分泌されたタンパク質は屈折体(refractile)または封入体に蓄積し、フレンチプレスまたは超音波処理による細胞の破砕の後に回収され得る。次いで屈折体を可溶化して、タンパク質を当該技術分野で公知の方法により再度折り畳ませ、切断する。
作り変えられた遺伝子が真核生物宿主細胞、例えばCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞中で発現される場合、該遺伝子は最初に、適切な真核生物プロモーター、分泌シグナル、ポリA配列および停止コドンを含む発現ベクターに挿入される。任意に、ベクターまたは遺伝子構築物はエンハンサーおよびイントロンを含む。この発現ベクターは任意に、定常領域の全部または一部をコードし、重鎖または軽鎖の全体または一部を発現させることができる配列を含む。該遺伝子構築物は、従来の技術を使用して真核生物宿主細胞に導入され得る。宿主細胞は、VLもしくはVH断片、VL-VHヘテロダイマー、VH-VLもしくはVL-VH単鎖ポリペプチド、完全重鎖もしくは軽鎖免疫グロブリン、またはそれらの一部を発現し、それらのそれぞれは、別の機能(例えば細胞傷害性)を有する部分に結合され得る。
いくつかの態様において、宿主細胞は、重鎖(例えば重鎖可変領域)または軽鎖(例えば軽鎖可変領域)の全体または一部を発現するポリペプチドを発現する単一のベクターでトランスフェクトされる。いくつかの態様において、宿主細胞は、(a)重鎖可変領域を含むポリペプチドおよび軽鎖可変領域を含むポリペプチド、または(b)完全免疫グロブリン重鎖および完全免疫グロブリン軽鎖をコードする単一ベクターでトランスフェクトされる。いくつかの態様において、宿主細胞は、1つより多くの発現ベクター(例えば重鎖または重鎖可変領域の全体または一部を含むポリペプチドを発現する1つの発現ベクター、および軽鎖または軽鎖可変領域の全体または一部を含むポリペプチドを発現する別の発現ベクター)で共トランスフェクトされる。
免疫グロブリン重鎖可変領域または軽鎖可変領域を含むポリペプチドは、例えばかかる可変領域をコードする発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞を、ポリペプチドの発現を可能にする条件下で成長させる(培養する)ことにより産生され得る。発現に続いて、ポリペプチドは、当該技術分野で公知の技術、例えばプロテインA、プロテインG、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)またはヒスチジンタグなどの親和性タグを使用して、回収および精製または単離され得る。
本発明の抗体は、抗体を発現するハイブリドーマ(例えば旧来のモノクローナル抗体技術により得られる)を成長させる(培養する)ことにより作製され得る。本発明の抗体はまた、例えば(a)完全もしくは部分的免疫グロブリン重鎖をコードする発現ベクターおよび完全もしくは部分的免疫グロブリン軽鎖をコードする別の発現ベクター;または(b)両方の鎖(例えば完全もしくは部分重鎖および軽鎖)をコードする単一の発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞を、両方の鎖の発現を可能にする条件下で成長させる(培養する)ことにより作製され得る。インタクトな抗体(または抗原結合断片)は、当該技術分野で公知の技術、例えばプロテインA、プロテインG、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)またはヒスチジンタグなどの親和性タグを使用して、回収および精製または単離され得る。単一の発現ベクターまたは2つの別々の発現ベクターから重鎖および軽鎖を発現することは当該技術分野の通常の技術の範囲内にある。
いくつかの態様において、抗hFSTL3抗体は、異なる機能的分子または部分、例えばペプチド、タンパク質、毒素、放射性同位体または細胞増殖抑制剤に、治療用途などの種々の目的のために連結される。抗体は、化学的架橋または組み換え法により連結され得る。抗体はまた、種々の非タンパク質性ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレンのいずれかに、米国特許第4,640,835号;第4,496,689号;第4,301,144号;第4,670,417号;第4,791,192号または第4,179,337号に記載される様式で連結され得る。該抗体は、例えばその循環半減期を増加するために、ポリマーへの共有結合により化学的に改変され得る。抗体を結合させるためのポリマーおよび方法の例は、米国特許第4,766,106号;第4,179,337号;第4,495,285号および第4,609,546号に記載される。
製剤
いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、哺乳動物、例えばヒト患者への投与に適した組成物(例えば医薬組成物)に製剤化される。典型的に、該組成物は、1つ以上の本発明の抗体および薬学的に許容され得る賦形剤を含む。用語「薬学的に許容され得る賦形剤」としては、薬学的投与に適合性の適切な溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤、および吸収遅延剤等が挙げられる。薬学的に活性な物質のためのかかる媒体および薬剤の使用は当該技術分野で公知である。該組成物はまた、補助的、追加的または増加された治療機能を提供する他の活性化合物を含み得る。一態様において、該組成物は、ミオスタチン阻害剤を含み得る。医薬組成物はまた、投与のための指示書と共に容器、パックまたはディスペンサーに含まれ得る。
いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、哺乳動物、例えばヒト患者への投与に適した組成物(例えば医薬組成物)に製剤化される。典型的に、該組成物は、1つ以上の本発明の抗体および薬学的に許容され得る賦形剤を含む。用語「薬学的に許容され得る賦形剤」としては、薬学的投与に適合性の適切な溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤、および吸収遅延剤等が挙げられる。薬学的に活性な物質のためのかかる媒体および薬剤の使用は当該技術分野で公知である。該組成物はまた、補助的、追加的または増加された治療機能を提供する他の活性化合物を含み得る。一態様において、該組成物は、ミオスタチン阻害剤を含み得る。医薬組成物はまた、投与のための指示書と共に容器、パックまたはディスペンサーに含まれ得る。
本発明の医薬組成物は、その意図する投与経路に適合性であるように製剤化され得る。投与を達成する方法は当該技術分野で公知である。投与は、経口または非経口、例えば静脈内、動脈内、腹腔内、筋内、空洞内、皮下、皮内、局所、吸入、経粘膜、直腸または経皮であり得る。
皮内または皮下適用のために使用される溶液または懸濁液は、典型的に、以下の成分:注射用水、食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤;EDTAなどのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤;および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの浸透圧の調整のための薬剤の1つ以上を含む。pHは、必要に応じて酸または塩基により調整され得る。かかる製剤は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジもしくは複数用量バイアルに封入され得る。
注射に適した医薬組成物は、滅菌注射可能な溶液または分散液の即席調製のための滅菌水溶液または分散液および滅菌粉末を含む。滅菌は、例えば滅菌濾過膜を通した濾過により達成され得る。静脈内投与について、適切な担体としては、例えば生理学的食塩水、静菌水、クレモフォールEL (BASF, Parsippany, N.J.)またはリン酸緩衝化食塩水(PBS)が挙げられる。好ましくは、該医薬組成物は、製造および保存の条件下で安定であり、細菌および真菌などの微生物による汚染に対して保護される。微生物の回避は、抗菌剤および/または抗真菌剤を含むことにより達成され得る。例としては、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等が挙げられる。多くの場合において、等張化剤、例えば糖類、マンニトール、ソルビトール等のポリアルコール、および塩化ナトリウムを組成物に含むことが好ましい。担体は、例えば水、エタノール、例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等のポリオール、ならびにそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングの使用、分散剤の場合は必要な粒径の維持および/または界面活性剤の使用により維持され得る。注射可能組成物の延長された吸収は、組成物中に、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを含むことにより達成され得る。
経口組成物は一般的に、不活性希釈剤または可食担体を含む。それらはゼラチンカプセルに封入され得るかまたは錠剤に圧縮され得る。経口投与のために、抗体は、賦形剤と組み合され得、錠剤、トローチまたはカプセルの形態で使用され得る。
経粘膜または経皮投与のために、浸透される障壁に適切な浸透剤が製剤中で使用され得る。かかる浸透剤は当該技術分野で公知であり、例えば界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、例えばロゼンジ、鼻腔スプレー、吸入器または坐剤の使用により達成され得る。例えば、Fc部分を含む抗体の場合、組成物は、(例えば米国特許第6,030,613号に記載されるようにFcRn受容体媒介経路を介して)小腸、口または肺内の粘膜を透過することができる。経皮投与のために、活性化合物は、当該技術分野で一般的に知られる軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲルまたはクリームに製剤化され得る。吸入による投与のために、抗体は、適切な高圧ガス、例えば二酸化炭素などのガスを含む加圧された容器またはディスペンサーあるいはネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で送達され得る。
いくつかの態様において、本明細書に開示される抗体は、移植物および微小封入送達系を含む制御放出製剤など、身体からの迅速な排除に対して抗体を保護する担体と共に製剤化される。生分解性で生体適合性のポリマーが使用され得る。例示的なポリマーとしては、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸およびポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。かかる製剤の調製のための方法は当業者に明らかである。本明細書に開示される抗体を含むリポソーム性懸濁液も、薬学的に許容され得る担体として使用され得る。これらは当該技術分野で公知の方法に従って調製され得る。例えば米国特許第4,522,811号参照。
いくつかの態様において、医薬組成物は、本発明の抗体に加えて、細胞傷害性、細胞増殖抑制性、抗脈管形成剤、腫瘍標的化剤、免疫刺激もしくは免疫調節剤、または細胞傷害性、細胞増殖抑制剤もしくは他の毒性剤にコンジュゲートされた抗体を含む。一態様において、本発明の抗体または抗原結合断片を含む医薬組成物は、ミオスタチン阻害剤をさらに含む。該医薬組成物は任意に、手術、化学療法および放射線などの他の治療様式と共に使用され得る。
本発明の組成物の毒性および治療有効性は、例えばLD50(集団の50%に対して致死である用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するために、細胞培養または実験動物における従来の薬学的手法により決定され得る。毒性効果と治療効果の用量比は治療指標であり、比LD50/ED50として表され得る。大きい治療指数を発揮する組成物が好ましい。
抗体の治療有効用量は、例えば細胞培養アッセイから最初に推定され得る。適切なバイオアッセイの例としては、DNA複製アッセイ、サイトカイン放出アッセイ、転写系アッセイ、結合アッセイ、中和アッセイ、前脂肪細胞の分化に基づくアッセイ、脂肪細胞におけるグルコース取り込みに基づくアッセイ、代謝アッセイ、例えば実施例に記載されるような他のアッセイが挙げられる。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られるデータは、ヒトにおける使用のための用量の範囲の処方に使用され得る。IC50(すなわち症状の半数最大阻害(half-maximal inhibition)を達成する抗体の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために、用量は動物モデルにおいて処方され得る。血漿中の循環レベルは、例えば高性能液体クロマトグラフィーにより測定され得る。任意の特定の用量の効果は、適切なバイオアッセイによりモニタリングされ得る。用量は、好ましくは毒性がほとんどないかまたはない循環濃度の範囲内にある。用量は、使用される剤型および投与経路によって変化し得る。
一般的に、本明細書に記載される抗体または組成物の治療有効量は、0.1mg/kg〜100mg/kg、好ましくは0.1mg/kg〜50mg/kgの範囲である。投与量は、治療される疾患または徴候の種類および程度、患者の全体的な健康、抗体のインビボ効力、医薬製剤、抗体の血清半減期、抗体の投与経路および生体分布などの変数に依存する。
投与頻度は、投与経路、投与量、抗体またはその抗原結合断片の血清半減期、および治療される疾患などの要因により変化し得る。
本発明のFSTL3抗体の使用
本発明は、他の態様において、本発明の抗体または抗原結合断片の有効量を、代謝疾患(例えば糖尿病)または障害の治療を必要とする哺乳動物に投与する工程を含む、被験体、例えばヒト患者における、代謝疾患(例えば糖尿病)または障害を治療する方法を提供する。いくつかの態様において、該方法は、インスリン関連障害を治療する方法である。本明細書で使用する場合、「インスリン関連障害」は、被験体におけるインスリンの産生、制御、代謝および作用に関連する障害をいう。インスリン関連障害としては限定されないが、糖尿病前症、1型糖尿病、2型糖尿病、低血糖、高血糖、インスリン抵抗性、分泌機能不全、膵臓β細胞機能の消失および膵臓β細胞の消失が挙げられる。いくつかの態様において、該方法は、糖尿病(例えばI型またはII型)を治療する方法である。
本発明は、他の態様において、本発明の抗体または抗原結合断片の有効量を、代謝疾患(例えば糖尿病)または障害の治療を必要とする哺乳動物に投与する工程を含む、被験体、例えばヒト患者における、代謝疾患(例えば糖尿病)または障害を治療する方法を提供する。いくつかの態様において、該方法は、インスリン関連障害を治療する方法である。本明細書で使用する場合、「インスリン関連障害」は、被験体におけるインスリンの産生、制御、代謝および作用に関連する障害をいう。インスリン関連障害としては限定されないが、糖尿病前症、1型糖尿病、2型糖尿病、低血糖、高血糖、インスリン抵抗性、分泌機能不全、膵臓β細胞機能の消失および膵臓β細胞の消失が挙げられる。いくつかの態様において、該方法は、糖尿病(例えばI型またはII型)を治療する方法である。
本明細書で使用する場合、「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」または「治療(treatment)」は、疾患または障害を阻害または軽減することを意味する。例えば、治療は、疾患もしくは障害に関連する症状の発症の延期、および/または前記疾患を発症するもしくは発症することが予測されるかかる症状の重症度の低減を含み得る。該用語は、現在の症状の改善、さらなる症状の予防、およびかかる症状のもとにある原因の改善または予防を含む。したがって、該用語は、治療されている哺乳動物、例えばヒト患者の少なくともいくらかに有益な結果が付与されていることを示す。多くの医学的治療は治療を受ける全てではないがいくらかの患者に有効である。
本明細書で使用する場合、「被験体」は、哺乳動物(例えばヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス)をいう。特定の態様において、被験体はヒトである。「それを必要とする被験体」は、本発明の抗体または抗原結合断片(例えば抗hFSTL3抗体)により治療(例えば向上、改善、予防)され得る疾患または状態を有するかまたは発症するリスクを有する被験体(例えば患者)をいう。ある態様において、被験体はヒトである。いくつかの態様において、被験体はI型またはII型糖尿病を有すると診断されている。他の態様において、被験体は糖尿病前症である。いくつかの態様において、糖尿病の被験体はまた、代謝疾患を有すると診断されるかもしくは55歳を超えるかまたはその両方である被験体である。ある態様において、被験体は、代謝疾患(例えば糖尿病)を有すると診断される獣医学的動物である。いくつかの態様において、その必要のある被験体は、良好にまたは不十分に制御された遊離血糖(FBG)および/または食後血糖(PPG)を有する血糖調節の向上を必要とする、2型糖尿病を有する被験体である。該態様の種々の局面において、血糖調節の向上の必要性は、HbA1cレベル、1もしくは2時間PPG、または酸化ストレスの決定を含む、当該技術分野で周知である種々の方法により決定される。一態様において、被験体は現在、任意の他の薬物治療を受けておらず、本明細書に記載される薬剤(例えば抗hFSTL3抗体)が唯一の薬剤として使用される。別の態様において、被験体は肝臓グルコース産生の経口抑制剤(例えばメトフォルミン(metformin))による治療を受けており、本明細書に記載される薬剤(例えば抗hFSTL3抗体)が治療計画に追加される。
薬剤(例えば本明細書に記載されるFSTL3タンパク質の1つ以上の活性を阻害する(およびそれにより糖尿病などの代謝疾患を治療する)抗体またはその抗原結合断片)は、例えば経口、食事、局所、経皮、吸入、経粘膜、経直腸、または非経口(例えば動脈内、静脈内、筋内、皮下注射、皮内注射、腹腔内、空洞内)の投与経路を含む当該技術分野で周知の種々の投与経路により、その必要のある被験体に投与され得る。投与は、局所もしくは全身またはそれらの組合せであり得る。選択される投与様式は、限定されないが、治療される疾患の性質、被験体、選択される薬剤の用量および/または投与の頻度を含む複数の要因により変化し得る。薬剤の実際の用量および治療計画は、治療されている状態の性質および患者の特徴を考慮して、当該技術分野の医師により決定され得る。
本明細書で使用する場合、用語「有効量」は、単独またはさらなる治療剤と組み合わせて細胞、組織または被験体に投与される場合に、投与条件下で所望の治療または予防効果を達成するのに有効な抗hFSTL3抗体の量を意味する。例えば、有効量は、治療の有効性をもたらす免疫応答を高めるかまたは減少させるために十分なものである。治療の有効性(例えばアクチビンシグナル伝達の活性化、島におけるインスリンの感受性の増加、細胞からのインスリン分泌の増加またはグルコース代謝の制御)は当該技術分野で公知の適切な方法により決定され得る。
いくつかの態様において、本発明の抗hFSTL3抗体は、1つ以上のさらなる治療剤、例えば抗糖尿病剤(例えばインスリン)または阻害剤(例えばミオスタチン阻害剤)と共に投与される。該抗体は、(免疫複合体として)薬剤に連結され得るかまたは別々に投与され得る。いくつかの態様において、さらなる治療剤は、増殖因子のTGFβスーパーファミリーの阻害剤である(例えばアクチビンまたはミオスタチン阻害剤)。別々の投与において、抗体は、薬剤の前、後もしくは同時に投与され得るか、または他の公知の治療と共投与され得る。併用療法は当該技術分野において公知である。例えばHardman, et al. (eds.) (2001) Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, 10th ed., McGraw-Hill, New York, N.Y.;Poole and Peterson (eds.) (2001) Pharmacotherapeutics for Advanced Practice: A Practical Approach, Lippincott, Williams & Wilkins, Phila., PA;Chabner and Longo (eds.) (2001) Cancer Chemotherapy and Biotherapy, Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, PA参照。
いくつかの態様において、本明細書に開示される抗体は、ペイロード(payload)、例えば毒素の、FSTL3を発現する細胞への送達のための標的化剤として使用される。該方法は、ペイロード部分にコンジュゲートされた抗hFSTL3抗体を投与する工程を含む。適切なコンジュゲート方法は当該技術分野で公知である。
いくつかの態様において、本発明はまた、島細胞(例えばβ細胞)からのインスリン分泌を増加させる方法を提供する。該方法は、β細胞または他の島細胞(例えばδ細胞、グレリン細胞)と、ヒトフォリスタチン様3(FSTL3)タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片の有効量を接触させる工程を含み、ここで該抗体は、FSTL3のFSTL3リガンドへの結合を阻害する。インスリン分泌は、これらの細胞により培養培地に、または動物もしくはヒト内部にある場合は循環中に分泌されるインスリンのレベルを直接測定することにより測定され得る。インスリンのレベルを測定および定量する方法は、関連のある分野において周知であり、商業的に容易に利用可能である。該方法は、インビトロ、インビボまたはエキソビボで実施され得る。
他の態様において、本発明はまた、β細胞再生を増加させる方法を提供する。該方法は、β細胞または他の島細胞(例えばδ細胞、グレリン細胞)または島中もしくはその周囲にある他のアクチビン産生細胞(例えば腺房細胞、血管細胞、マクロファージ、血球、線維芽細胞)と、ヒトフォリスタチン様3(FSTL3)タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片の有効量を接触させる工程を含み、ここで該抗体は、FSTL3のFSTL3リガンドへの結合を阻害する。β細胞再生を評価するための技術およびアッセイは当該技術分野で公知である。該方法はインビトロ、インビボまたはエキソビボで実施され得る。
さらなる態様において、本発明はまた、α細胞または他の膵臓細胞のβ細胞への分化転換を促進する方法を提供する。該方法は、α細胞または他の膵臓細胞と、ヒトフォリスタチン様3(FSTL3)タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片の有効量を接触させる工程を含み、ここで該抗体は、FSTL3のFSTL3リガンドへの結合を阻害する。α細胞のβ細胞への分化転換を評価するための技術およびアッセイは当該技術分野で公知である。該方法は、インビトロ、インビボまたはエキソビボで実施され得る。
さらなる態様において、本発明はまた、β細胞のα細胞または他の膵臓細胞への分化転換を阻害する方法を提供する。該方法は、β細胞と、ヒトフォリスタチン様3(FSTL3)タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片の有効量を接触させる工程を含み、ここで該抗体は、FSTL3のFSTL3リガンドへの結合を阻害する。β細胞のα細胞への分化転換を評価するための技術およびアッセイは、当該技術分野で公知である。該方法は、インビトロ、インビボまたはエキソビボで実施され得る。
治療に応答すると予測される細胞は、インスリンを産生する細胞であり、インビボで脳以外のβ細胞(例えば膵臓β細胞)、および例えばIns1、TC、RIN、MINなどのインビトロ試験に使用される種々の細胞株に限定される。本明細書に記載されるインスリン分泌細胞は、当該技術分野で公知の方法を使用して種々の供給源から得られ得る。かかる細胞は、種々のインビトロ、インビボおよび/またはエキソビボ用途に使用され得る。島単離(Brown et al Islets 3:367-75, 2011およびその中の参照文献)または胚性幹細胞もしくは誘導多能性幹細胞の機能的β細胞への分化(Pagliuca et al Cell 159:428-439 2014)などの手法は、本明細書に記載される方法で使用されるβ細胞の富化された集団を得るために常套的に使用される。
実施例
以下の実施例は単なる例示であり、いかなる方法においても本発明の範囲または内容を限定することを意図しない。
以下の実施例は単なる例示であり、いかなる方法においても本発明の範囲または内容を限定することを意図しない。
材料および試薬
抗体:ウエスタンブロットについて、一次抗体は、FP-101、FP-102およびFP-103などの、Neo Scientific in Woburn MAによりFairbanks Pharmaceuticalsのために作製された抗FSTL3モノクローナルである。二次抗体(ロバ抗マウスIgG-西洋ワサビペルオキシダーゼ標識)はWest Grove PAのJackson Immuno Researchから購入した。ヒトFSTL3は、ヒトFSTL3 cDNAを、6-Hisタグを含む発現プラスミドにクローニングすることによりFairbanks Pharmaceuticalsにより作製された。293細胞を、このプラスミドによりトランスフェクトして、安定なコロニーを選択した。細胞を7〜14日間増殖させ、培地を回収し、FSTL3を、ニッケル-セファロース-Sephadexビーズ(GE Healthcare Life Sciences, Pittsburgh PAで精製した。リガンド:アクチビンA(カタログ番号:338-AC-050)、アクチビンB(カタログ番号:659-AB-005)およびMSTN(カタログ番号:788-68-010)はR&D Systems (Minneapolis, MN)から購入した。GDF11(カタログ番号:TP723130)はOrigene (Rockville MD)から購入した。
抗体:ウエスタンブロットについて、一次抗体は、FP-101、FP-102およびFP-103などの、Neo Scientific in Woburn MAによりFairbanks Pharmaceuticalsのために作製された抗FSTL3モノクローナルである。二次抗体(ロバ抗マウスIgG-西洋ワサビペルオキシダーゼ標識)はWest Grove PAのJackson Immuno Researchから購入した。ヒトFSTL3は、ヒトFSTL3 cDNAを、6-Hisタグを含む発現プラスミドにクローニングすることによりFairbanks Pharmaceuticalsにより作製された。293細胞を、このプラスミドによりトランスフェクトして、安定なコロニーを選択した。細胞を7〜14日間増殖させ、培地を回収し、FSTL3を、ニッケル-セファロース-Sephadexビーズ(GE Healthcare Life Sciences, Pittsburgh PAで精製した。リガンド:アクチビンA(カタログ番号:338-AC-050)、アクチビンB(カタログ番号:659-AB-005)およびMSTN(カタログ番号:788-68-010)はR&D Systems (Minneapolis, MN)から購入した。GDF11(カタログ番号:TP723130)はOrigene (Rockville MD)から購入した。
実施例1. アクチビンAの中和に必要なヒトFSTL3の最適量を決定するためのルシフェラーゼアッセイ:
その全体において参照により援用されるCash et.al., (J. Biol. Chem. 2012, 287, 1043-1053)に以前に記載されるように作製された、(CAGA)-ルシフェラーゼレポーター遺伝子を安定に発現するHEK293-(CAGA)細胞株を用いてルシフェラーゼレポーターアッセイを行った。細胞を、血清非含有培地中変化量のアクチビンAで24時間処理して、アッセイに必要なアクチビンAの最適用量を決定した。増殖培地の除去と0.1% BSA (Sigma, St Louis)を有するDMEMである試験培地中のアクチビンAの添加の間に、細胞をDPBSで洗浄した。図1Aは、アクチビンA用量の増加により、ルシフェラーゼ生合成の増加が引き起こされ、これは二元発光溶液(dual glow solution) (Promega E2910)または同様の商品を添加した場合に光として可視化されることを示す。アクチビンAなしの処理により細胞から得られたバックグラウンドは、1000相対光単位(RLU)未満であった。中和アッセイにおける信頼性のある検出に必要とされるアクチビンAの最適用量は、アクチビンAで処理した100,000RLUの細胞の刺激を生じたアクチビンAの量により決定した。この量は、0.005〜0.010nMアクチビンAに対応すると決定された(図1A)。図1Bは、各ウェル中に存在するヒトFSTL3の量に依存するアクチビンAの線形阻害を示す。中和アッセイのために、90〜95%のアクチビンAシグナル伝達を阻害するのに必要なヒトFSTL3の量を、観察されたRLU読み出しをさらに低減するアッセイにおける中和化合物および非特異的干渉の両方を信頼性高く検出するために必要な最適量として選択した。この量は、0.0625〜0.123nMのヒトFSTL3に対応すると決定された(図1B)。そのため、実施例2に記載されるスクリーニングアッセイは、CAGA-Lucレポーターを安定に発現するHEK293細胞、0.005nMアクチビンAおよび0.0625nMヒトFSTL3で構成されることが決定された。
その全体において参照により援用されるCash et.al., (J. Biol. Chem. 2012, 287, 1043-1053)に以前に記載されるように作製された、(CAGA)-ルシフェラーゼレポーター遺伝子を安定に発現するHEK293-(CAGA)細胞株を用いてルシフェラーゼレポーターアッセイを行った。細胞を、血清非含有培地中変化量のアクチビンAで24時間処理して、アッセイに必要なアクチビンAの最適用量を決定した。増殖培地の除去と0.1% BSA (Sigma, St Louis)を有するDMEMである試験培地中のアクチビンAの添加の間に、細胞をDPBSで洗浄した。図1Aは、アクチビンA用量の増加により、ルシフェラーゼ生合成の増加が引き起こされ、これは二元発光溶液(dual glow solution) (Promega E2910)または同様の商品を添加した場合に光として可視化されることを示す。アクチビンAなしの処理により細胞から得られたバックグラウンドは、1000相対光単位(RLU)未満であった。中和アッセイにおける信頼性のある検出に必要とされるアクチビンAの最適用量は、アクチビンAで処理した100,000RLUの細胞の刺激を生じたアクチビンAの量により決定した。この量は、0.005〜0.010nMアクチビンAに対応すると決定された(図1A)。図1Bは、各ウェル中に存在するヒトFSTL3の量に依存するアクチビンAの線形阻害を示す。中和アッセイのために、90〜95%のアクチビンAシグナル伝達を阻害するのに必要なヒトFSTL3の量を、観察されたRLU読み出しをさらに低減するアッセイにおける中和化合物および非特異的干渉の両方を信頼性高く検出するために必要な最適量として選択した。この量は、0.0625〜0.123nMのヒトFSTL3に対応すると決定された(図1B)。そのため、実施例2に記載されるスクリーニングアッセイは、CAGA-Lucレポーターを安定に発現するHEK293細胞、0.005nMアクチビンAおよび0.0625nMヒトFSTL3で構成されることが決定された。
実施例2. モノクローナル抗体のスクリーニングおよび抗体特徴付け:
A. ヒトFSTL3への結合についての抗体のスクリーニング
FSTL3への抗体の結合は、immulonプラスチック96ウェルプレート中一晩、100μlの0.1M炭酸塩バッファpH9中250ng hFSTL3/ウェルをインキュベートすることにより決定した。培地を吸引して、リン酸緩衝化食塩水中200μlの3% BSAを2時間添加して、非特異的結合をブロッキングした。この物質を吸引して、抗FSTL3モノクローナル抗体(正常Balb-Cマウス中標準モノクローナル抗体法によりNeo ScientificによりFairbanks Pharmaceuticalsのために作製)を含む50μlのコンディションドメディウムを2〜4時間添加した。200μl洗浄バッファ(10mm PBS溶液中0.01% Tween)で5分間、3回洗浄することにより未結合タンパク質を除去した。次いで100μlの二次抗体(ヤギ-抗マウスIgG-アルカリ性ホスファターゼ)をウェルに入れた。この工程の終了時に、ウェルを再度洗浄して、酵素の基質を添加し、結合した抗体量に正比例する黄色の生成が生じた。ヒトFSTL3への抗体の結合を決定して、結果を棒グラフにプロットした。図2は、全てのクローンはヒトFSTL3をある程度まで認識したが、ヒトFSTL3に結合した抗体の量は、異なる抗体クローン間で大きく変化したことを示す。一貫したFSTL3結合を有するこれらの同じ10個のコロニーを、以下に記載されるように中和活性を評価するために使用した。
A. ヒトFSTL3への結合についての抗体のスクリーニング
FSTL3への抗体の結合は、immulonプラスチック96ウェルプレート中一晩、100μlの0.1M炭酸塩バッファpH9中250ng hFSTL3/ウェルをインキュベートすることにより決定した。培地を吸引して、リン酸緩衝化食塩水中200μlの3% BSAを2時間添加して、非特異的結合をブロッキングした。この物質を吸引して、抗FSTL3モノクローナル抗体(正常Balb-Cマウス中標準モノクローナル抗体法によりNeo ScientificによりFairbanks Pharmaceuticalsのために作製)を含む50μlのコンディションドメディウムを2〜4時間添加した。200μl洗浄バッファ(10mm PBS溶液中0.01% Tween)で5分間、3回洗浄することにより未結合タンパク質を除去した。次いで100μlの二次抗体(ヤギ-抗マウスIgG-アルカリ性ホスファターゼ)をウェルに入れた。この工程の終了時に、ウェルを再度洗浄して、酵素の基質を添加し、結合した抗体量に正比例する黄色の生成が生じた。ヒトFSTL3への抗体の結合を決定して、結果を棒グラフにプロットした。図2は、全てのクローンはヒトFSTL3をある程度まで認識したが、ヒトFSTL3に結合した抗体の量は、異なる抗体クローン間で大きく変化したことを示す。一貫したFSTL3結合を有するこれらの同じ10個のコロニーを、以下に記載されるように中和活性を評価するために使用した。
B. ヒトFSTL3に対する中和活性についての抗体のスクリーニング
実施例1に上記されるように中和アッセイを行った。簡潔に、上述の結合アッセイに使用した10コロニーのそれぞれ由来の50μlの培地を、0.005nMアクチビンAおよび0.0625nMヒトFSTL3を含むチューブに添加して、混合物を、CAGA-Lucレポーターを安定に発現するHEK293細胞を含む96ウェルプレートに添加した。16〜24時間後、前述のように発光測定を行った。「中和活性」は、(100-(抗体培地RLU/最大RLUx100))として計算し、それぞれのクローンについての結合結果と一緒に結果を棒グラフにプロットした(図2)。図2は、試験した抗体の「中和活性」が大きく変化し、6個の抗体(1、12、31、33、39および42)のみが検出可能な中和活性を示したことを示す。これら6個の親抗体由来の最良の3個のサブクローンを選択し、コンディションドメディウムのより大きなバッチから抗体を精製した。ここでこれらのクローンを、クローン12(FP-101)、33(FP-102)および1(FP-103)と称する。それぞれのクローンから精製された抗体をさらに中和活性について評価した。図3は、増加用量の3つの抗体クローンが中和の量の増加を示す4回の実験からの組み合わせた結果を示す。抗体のそれぞれの用量で、抗体FP-101は、最も高い中和活性を示し、FP-102およびFP-103抗体が続いた。ヒトFSTL3に結合したが中和しなかった対照抗体は、このアッセイにおいて活性を有さなかった。
実施例1に上記されるように中和アッセイを行った。簡潔に、上述の結合アッセイに使用した10コロニーのそれぞれ由来の50μlの培地を、0.005nMアクチビンAおよび0.0625nMヒトFSTL3を含むチューブに添加して、混合物を、CAGA-Lucレポーターを安定に発現するHEK293細胞を含む96ウェルプレートに添加した。16〜24時間後、前述のように発光測定を行った。「中和活性」は、(100-(抗体培地RLU/最大RLUx100))として計算し、それぞれのクローンについての結合結果と一緒に結果を棒グラフにプロットした(図2)。図2は、試験した抗体の「中和活性」が大きく変化し、6個の抗体(1、12、31、33、39および42)のみが検出可能な中和活性を示したことを示す。これら6個の親抗体由来の最良の3個のサブクローンを選択し、コンディションドメディウムのより大きなバッチから抗体を精製した。ここでこれらのクローンを、クローン12(FP-101)、33(FP-102)および1(FP-103)と称する。それぞれのクローンから精製された抗体をさらに中和活性について評価した。図3は、増加用量の3つの抗体クローンが中和の量の増加を示す4回の実験からの組み合わせた結果を示す。抗体のそれぞれの用量で、抗体FP-101は、最も高い中和活性を示し、FP-102およびFP-103抗体が続いた。ヒトFSTL3に結合したが中和しなかった対照抗体は、このアッセイにおいて活性を有さなかった。
実施例3. TGFβファミリーリガンドに結合したヒトFSTL3に対する抗hFSTL3抗体の中和活性:
A. ヒトFSTL3によるTGFβファミリーリガンドの中和
実施例1に上述されるようにルシフェラーゼアッセイを行った。293-Caga Luc細胞を含む96ウェルプレート中で、変化量のヒトFSTL3を所定の変化量のアクチビンA、アクチビンB、GDF11またはミオスタチンリガンド(約100,000RLUを生じる)と混合した。発光測定は前述のように行い、結果をプロットした(図4)。図4は、中和に必要なヒトFSTL3の量が試験した異なるリガンド間で大きく変化したことを示す。他のリガンドと比較して、アクチビンA(黒丸)を中和するためには最小量のFSTL3が必要であった(図4参照、黒丸を有する曲線が他の曲線に対して左にシフトする)。GDF11(黒逆三角)およびアクチビンB(黒三角)は、本明細書で参照される順序で増加量のFSTL3により中和された。MSTN(黒四角)は、FSTL3による最小の阻害を示す。しかしながら、これらの結果は、FSTL3は4つ全てのリガンドを中和するので、FSTL3の中和は、特定の細胞、細胞培地、または血液、尿もしくは***の血漿などの生理学的液体中に存在する場合、これら4つのリガンドのいずれかまたは全ての生物活性を増加し得たことを示す。
A. ヒトFSTL3によるTGFβファミリーリガンドの中和
実施例1に上述されるようにルシフェラーゼアッセイを行った。293-Caga Luc細胞を含む96ウェルプレート中で、変化量のヒトFSTL3を所定の変化量のアクチビンA、アクチビンB、GDF11またはミオスタチンリガンド(約100,000RLUを生じる)と混合した。発光測定は前述のように行い、結果をプロットした(図4)。図4は、中和に必要なヒトFSTL3の量が試験した異なるリガンド間で大きく変化したことを示す。他のリガンドと比較して、アクチビンA(黒丸)を中和するためには最小量のFSTL3が必要であった(図4参照、黒丸を有する曲線が他の曲線に対して左にシフトする)。GDF11(黒逆三角)およびアクチビンB(黒三角)は、本明細書で参照される順序で増加量のFSTL3により中和された。MSTN(黒四角)は、FSTL3による最小の阻害を示す。しかしながら、これらの結果は、FSTL3は4つ全てのリガンドを中和するので、FSTL3の中和は、特定の細胞、細胞培地、または血液、尿もしくは***の血漿などの生理学的液体中に存在する場合、これら4つのリガンドのいずれかまたは全ての生物活性を増加し得たことを示す。
B. 抗hFSTL3抗体およびTGFβファミリーリガンドによる中和アッセイ
実施例2に上述されるように中和アッセイを行った。1000ng/ウェルの試験抗hFSTL3抗体を、96ウェルプレート中で、CAGA-Lucレポーターを安定に発現するHEK293細胞ならびに所定量(図4の挿入図参照)のアクチビンA、アクチビンB、GDF11またはミオスタチンリガンドおよびhFSTL3(図4参照)と共に予めインキュベートしたウェルと混合した。発光測定は前述のように行い結果を棒グラフにプロットした(図5A〜5D)。結果は、FP-101およびFP-102の両方がアクチビンA(図5A)、アクチビンB(図5B)およびGDF11(図5C)に結合したFSTL3を完全に中和し得ることを示す。FP-103は、アクチビンA(図5A)、アクチビンB(図5B)およびGDF11(図5C)に結合したFSTL3の活性の約40%のみを中和する。ミオスタチン(図5D)に結合したFSTL3のFP-101およびFP-102に誘導された中和の結果は、他の試験したリガンドに対するこれらの抗体の効果と同様であった。FP-103も、他の抗体と同様にミオスタチンシグナル伝達を良好に中和し得た。対照抗体は、試験されたリガンドのいずれについても検出可能な「中和活性」を何ら示さなかった。これらの結果により、FSTL3を中和する処理は、増加した遊離(そのために生物活性の)アクチビンAおよびB、GDF11ならびにミオスタチンをもたらすことが確認される。
実施例2に上述されるように中和アッセイを行った。1000ng/ウェルの試験抗hFSTL3抗体を、96ウェルプレート中で、CAGA-Lucレポーターを安定に発現するHEK293細胞ならびに所定量(図4の挿入図参照)のアクチビンA、アクチビンB、GDF11またはミオスタチンリガンドおよびhFSTL3(図4参照)と共に予めインキュベートしたウェルと混合した。発光測定は前述のように行い結果を棒グラフにプロットした(図5A〜5D)。結果は、FP-101およびFP-102の両方がアクチビンA(図5A)、アクチビンB(図5B)およびGDF11(図5C)に結合したFSTL3を完全に中和し得ることを示す。FP-103は、アクチビンA(図5A)、アクチビンB(図5B)およびGDF11(図5C)に結合したFSTL3の活性の約40%のみを中和する。ミオスタチン(図5D)に結合したFSTL3のFP-101およびFP-102に誘導された中和の結果は、他の試験したリガンドに対するこれらの抗体の効果と同様であった。FP-103も、他の抗体と同様にミオスタチンシグナル伝達を良好に中和し得た。対照抗体は、試験されたリガンドのいずれについても検出可能な「中和活性」を何ら示さなかった。これらの結果により、FSTL3を中和する処理は、増加した遊離(そのために生物活性の)アクチビンAおよびB、GDF11ならびにミオスタチンをもたらすことが確認される。
実施例4. マウスおよびヒトFSTL3への抗hFSTL3抗体の結合、ヒトフォリスタチンへの非結合:
当該技術分野で周知な技術であるウエスタンブロットを実施することにより直接結合試験を行った。実験の終了時に容易に検出可能である所定用量のヒトFSTL3(hFSTL3)またはマウスFSTL3(mFSTL3)をSDSゲル(10% NuPageゲル)に充填した。電気泳動後、タンパク質をPVDF膜に転写して、次いで図3から選択された精製抗hFSTL3抗体により試験した。ヒトまたはマウスFSTL3への試験抗体の結合を決定して図6A〜6Cに示した。FP-101は、還元および非還元hFSTL3の両方を認識したが、mFSTL3への結合はわずかに検出可能なだけだった(図6A)。FP-102は還元および非還元hFSTL3の両方を認識し、FP-101よりも良好にマウスFSTL3も認識したが、ヒトFSTL3に結合するよりもかなり低い程度であった(図6B)。FP-103は還元および非還元hFSTL3の両方を認識したが、マウスFSTL3は認識しなかった(図6C)。
当該技術分野で周知な技術であるウエスタンブロットを実施することにより直接結合試験を行った。実験の終了時に容易に検出可能である所定用量のヒトFSTL3(hFSTL3)またはマウスFSTL3(mFSTL3)をSDSゲル(10% NuPageゲル)に充填した。電気泳動後、タンパク質をPVDF膜に転写して、次いで図3から選択された精製抗hFSTL3抗体により試験した。ヒトまたはマウスFSTL3への試験抗体の結合を決定して図6A〜6Cに示した。FP-101は、還元および非還元hFSTL3の両方を認識したが、mFSTL3への結合はわずかに検出可能なだけだった(図6A)。FP-102は還元および非還元hFSTL3の両方を認識し、FP-101よりも良好にマウスFSTL3も認識したが、ヒトFSTL3に結合するよりもかなり低い程度であった(図6B)。FP-103は還元および非還元hFSTL3の両方を認識したが、マウスFSTL3は認識しなかった(図6C)。
上述のようにウエスタンブロットを使用して、ヒトフォリスタチン(hFST)への抗hFSTL3試験抗体の結合を評価した。上述の実験におけるものと同じ範囲にあった所定用量のhFSTL3またはhFSTをSDSゲル(10% NuPageゲル)に充填した。図7A〜7Bは、試験抗体のhFSTL3またはhFSTへの結合を示す。FP-101(図7A)およびFP-102(図7B)抗体の両方は、ヒトFSTL3に結合するが、FP-101(図7A)とFP-102(図7B)のいずれもヒトFSTに結合しない。これらの結果は、試験抗体(FP-101およびFP-102)のパネルが、ヒトフォリスタチンに対する交差反応性を有することなくヒトFSTL3タンパク質への特異性の有利な特性を有することを示す。そのためフォリスタチン中和による副作用の可能性は低減されるかまたは排除される。
実施例5. 抗hFSTL3抗体の相補性決定領域(CDR)の同定:
FP-101抗hFSTL3抗体を産生して分泌する細胞を均質化してインタクトなRNAを抽出した。当該技術分野で周知の標準的な技術を使用して、インタクトなRNA転写産物をcDNAに変換し、次いで全てのマウス抗体に見られる配列に結合するプライマーを使用して増幅した。生じた増幅されたDNAは、当該技術分野で周知の標準的な技術を使用して配列決定した。当該技術分野で周知の標準的なアライメントプログラムおよび他のバイオインフォマティクスツールを使用して、増幅されたDNA配列の一部とマウス重鎖についての公知の非可変配列をアライメントする。この分析に基づいて、構造コンセンサス領域の葉に該であるが伝統的に画定された超可変または相補性決定領域(CDR)に含まれる抗原結合残基を同定した。同定されたCDRは公知のマウス重鎖配列と整列しなかった(図8)。これらの超可変配列のタンパク質への翻訳は、FP-101の重鎖上の3つのCDRのアミノ酸配列の同定を提供した。
FP-101抗hFSTL3抗体を産生して分泌する細胞を均質化してインタクトなRNAを抽出した。当該技術分野で周知の標準的な技術を使用して、インタクトなRNA転写産物をcDNAに変換し、次いで全てのマウス抗体に見られる配列に結合するプライマーを使用して増幅した。生じた増幅されたDNAは、当該技術分野で周知の標準的な技術を使用して配列決定した。当該技術分野で周知の標準的なアライメントプログラムおよび他のバイオインフォマティクスツールを使用して、増幅されたDNA配列の一部とマウス重鎖についての公知の非可変配列をアライメントする。この分析に基づいて、構造コンセンサス領域の葉に該であるが伝統的に画定された超可変または相補性決定領域(CDR)に含まれる抗原結合残基を同定した。同定されたCDRは公知のマウス重鎖配列と整列しなかった(図8)。これらの超可変配列のタンパク質への翻訳は、FP-101の重鎖上の3つのCDRのアミノ酸配列の同定を提供した。
同じ方法を使用して、FP-101の軽鎖をクローニングして配列決定し、軽鎖上の3つのCDRを同定した。一緒に、これらのCDRは、hFSTL3を中和し得、フォリスタチンと交差反応しない抗体の結合領域を画定する。
同じ方法を使用してFP-102の重鎖および軽鎖をクローニングし、次いで配列決定し、CDR、およびhFSTL3を中和し得、フォリスタチンと交差反応しないこの抗体の結合領域を同定した。
所望の特徴(例えばhFSTL3に結合するがhFSTには結合しない試験リガンドのいずれかに結合するヒトFSTL3に対して「中和活性」を示す)を示す抗hFSTL3抗体のCDRを表1に示す。所望の特徴(例えばhFSTL3に結合するがhFSTには結合せず試験リガンドのいずれかに結合するヒトFSTL3に対して「中和活性」を示す)を示す特定の抗hFSTL3抗体の重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)アミノ酸配列を表2に示し、それらの対応ヌクレオチド配列を表3に示す。
同じ方法を使用してFP-103の重鎖および軽鎖をクローニングして、次いで配列決定し、CDR、およびhFSTL3を中和し得、フォリスタチンと交差反応しないこの抗体の結合領域を同定する。
実施例6. マウス島において示される抗hFSTL3抗体の中和活性:
以前に記載されたようにC57BL6マウスから島を単離した(Brown, ML et al Islets 3:367-75, 2011)。24時間の回復期間後、培養培地を変えて、5μgのそれぞれの抗体または対照について等体積のPBSを添加して、島をさらに24時間培養した。培養の終了時点で培地を除去して、ELISAを使用してインスリン分泌を測定した(MercodiaマウスインスリンELISA 10-1247-01)。結果は、FP-101およびFP-102の両方が、マウスの島のβ細胞からのインスリン放出を有意に増加し得、FP-101はFP-102よりも約2倍良好であることを示す(図12)。これらの結果は、FSTL3を中和する抗体が増加したインスリン放出を生じ得、このことは例えばインスリンが血糖レベルを調節するのに不適切である糖尿病の治療として有益であることを示す。
以前に記載されたようにC57BL6マウスから島を単離した(Brown, ML et al Islets 3:367-75, 2011)。24時間の回復期間後、培養培地を変えて、5μgのそれぞれの抗体または対照について等体積のPBSを添加して、島をさらに24時間培養した。培養の終了時点で培地を除去して、ELISAを使用してインスリン分泌を測定した(MercodiaマウスインスリンELISA 10-1247-01)。結果は、FP-101およびFP-102の両方が、マウスの島のβ細胞からのインスリン放出を有意に増加し得、FP-101はFP-102よりも約2倍良好であることを示す(図12)。これらの結果は、FSTL3を中和する抗体が増加したインスリン放出を生じ得、このことは例えばインスリンが血糖レベルを調節するのに不適切である糖尿病の治療として有益であることを示す。
実施例7. 作り変えられた抗hFSTL3抗体
マウスに基づく抗体の見かけの免疫原性を低減するために選択された抗hFSTL3抗体のヒト化を行う。当該技術分野で周知である抗体作り変え情報および従来のバイオインフォマティクスツールを使用して、本発明の特定のマウス抗hFSTL3抗体(例えばFP-101、FP-102およびFP-103)のアミノ酸配列を分析して公知のヒト抗体配列と比較する。これらの分析および比較に基づいて、従来の表面交換、マウスCDR移植および適切な復帰変異の含入のために特定のヒト配列を選択する。ヒトFSTL3への結合の試験において、これらのヒト化抗体を、親和性、アビディティ、結合速度論、および生化学的挙動、例えば凝集、ならびに発現レベルなどの基準に関して評価する。これらの抗体をヒトフォリスタチンとの交差反応性について試験して、ヒトフォリスタチンタンパク質への結合を最小化するように最適化する。また、これらの抗体を試験して、試験リガンド(例えばアクチビンA、アクチビンB、GDF11またはミオスタチンリガンド)のいずれかに結合するヒトFSTL3に対して最適な「中和活性」を示すように最適化する。
マウスに基づく抗体の見かけの免疫原性を低減するために選択された抗hFSTL3抗体のヒト化を行う。当該技術分野で周知である抗体作り変え情報および従来のバイオインフォマティクスツールを使用して、本発明の特定のマウス抗hFSTL3抗体(例えばFP-101、FP-102およびFP-103)のアミノ酸配列を分析して公知のヒト抗体配列と比較する。これらの分析および比較に基づいて、従来の表面交換、マウスCDR移植および適切な復帰変異の含入のために特定のヒト配列を選択する。ヒトFSTL3への結合の試験において、これらのヒト化抗体を、親和性、アビディティ、結合速度論、および生化学的挙動、例えば凝集、ならびに発現レベルなどの基準に関して評価する。これらの抗体をヒトフォリスタチンとの交差反応性について試験して、ヒトフォリスタチンタンパク質への結合を最小化するように最適化する。また、これらの抗体を試験して、試験リガンド(例えばアクチビンA、アクチビンB、GDF11またはミオスタチンリガンド)のいずれかに結合するヒトFSTL3に対して最適な「中和活性」を示すように最適化する。
実施例8. 抗hFSTL3抗体を用いた島の治療はグルコース刺激インスリン分泌を回復および増強する
正常または糖尿病のマウスからマウス島を単離して、標準的な条件を使用して培養した。高脂肪食を1週間与えてマウスを糖尿病にした。島を低グルコース中で1時間培養し、次いで高グルコースに1時間移す標準的なグルコース刺激インスリン分泌(GSIS)試験を使用して島の機能を試験した。
正常または糖尿病のマウスからマウス島を単離して、標準的な条件を使用して培養した。高脂肪食を1週間与えてマウスを糖尿病にした。島を低グルコース中で1時間培養し、次いで高グルコースに1時間移す標準的なグルコース刺激インスリン分泌(GSIS)試験を使用して島の機能を試験した。
ヒト島を低グルコース中で培養し、次いで高グルコースに移し(標準的GSIS試験)それらの機能を評価した。2型糖尿のドナーから島を得ることは非常にまれであるので、最初に正常な島を高グルコース中で24〜48時間培養して糖尿病を刺激し、その後標準GSIS試験を行った。
非治療対象と比較して、FP-101治療により、糖尿病マウスの島(図13)およびヒトの島(図14)の両方からのグルコース刺激インスリン分泌が回復され増強された。ヒトの島において、FP-102は同様の効果を有する傾向があったが、FP-101と比較しておそらくはFSTL3を中和するFP-102の能力の低下のために小さかった(図14)。FP-101を用いた治療は、高グルコース中での高められたインスリン分泌を回復したので、現在は糖尿病の島は正常の島と同様にふるまう。これらの結果は、マウスにより見られるようにヒトの島においてFSTL3経路は機能的であること(図13)およびFSTL3の阻害は糖尿病の島におけるグルコース応答性のインスリン分泌を刺激し、このことは糖尿病患者の治療に有益であることを示す。
実施例9. 腹腔内(IP)または静脈内(IV)注射後のマウス血清におけるmAb FP-101の薬力学
モノクローナル抗体(mAb)FP-101をIPまたはIVのいずれかにより10mg/kgで正常マウスに注射して、24時間にわたり示された時点で血液試料を採取して、この抗体の血液への吸収およびクリアランスを決定した。マウス血液中のmAbを測定するために、ヒトFSTL3を96ウェルプレートに固定した。マウス血清をリン酸緩衝化食塩水(標準実験室試薬)で1:10に希釈し、50ulのこの希釈液を添加した。1〜2時間後、ウェルを洗浄して、ウェル中で、mAbに結合する酵素標識抗マウス抗体を添加した。
モノクローナル抗体(mAb)FP-101をIPまたはIVのいずれかにより10mg/kgで正常マウスに注射して、24時間にわたり示された時点で血液試料を採取して、この抗体の血液への吸収およびクリアランスを決定した。マウス血液中のmAbを測定するために、ヒトFSTL3を96ウェルプレートに固定した。マウス血清をリン酸緩衝化食塩水(標準実験室試薬)で1:10に希釈し、50ulのこの希釈液を添加した。1〜2時間後、ウェルを洗浄して、ウェル中で、mAbに結合する酵素標識抗マウス抗体を添加した。
IP投与について、全ての試料中でmAbが検出され、値は変化せず、このことから速い吸収であるが遅いクリアランスが示唆されたので、mAbの頻繁ではない投与は糖尿病の治療に有効であり得る(図15A)。mAbの遅いクリアランスはIV投与時にも検出され、mAbが3時間にわたり大きくは変化しなかった(図15B)。これらの結果は、FP-101はマウス血液における長い半減期、抗体治療についての望ましい特徴を有することを示す。
本明細書において引用される全ての特許、公開出願および刊行物の教示は、それらの全体において参照により援用される。
本発明は、その例示態様を参照して具体的に示され記載されるが、添付の特許請求の範囲に包含される発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更が本発明においてなされ得ることが当業者に理解される。
Claims (30)
- ヒトフォリスタチン様3(FSTL3)タンパク質に結合し、FSTL3のFSTL3リガンドへの結合を中和する、単離された抗体またはその抗原結合断片であって、該抗体が、β細胞からのインスリン分泌の増加、β細胞再生の増加、α細胞または他の膵臓細胞のβ細胞への分化転換の促進、およびβ細胞のα細胞への分化転換の阻害、またはそれらの任意の組合せからなる群より選択される膵臓島細胞に対する1つ以上の活性を有する、抗体またはその抗原結合断片。
- a)配列番号:3からなるCDR1;
b)配列番号:13からなるCDR1;
c)配列番号:4からなるCDR2;
d)配列番号:14からなるCDR2;
e)配列番号:5からなるCDR3;および
f)配列番号:15からなるCDR3からなる群より選択される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を有する抗体重鎖可変(VH)ドメインを含む、請求項1記載の抗体または抗原結合断片。 - a)配列番号:3からなるCDR1;
c)配列番号:4からなるCDR2;および
e)配列番号:5からなるCDR3;
または
b)配列番号:13からなるCDR1;
d)配列番号:14からなるCDR2;および
f)配列番号:15からなるCDR3を含む抗体重鎖可変(VH)ドメインを含む、請求項2記載の抗体または抗原結合断片。 - g)配列番号:8からなるCDR1;
h)配列番号:18からなるCDR1;
i)配列番号:9からなるCDR2;
j)配列番号:19からなるCDR2;
k)配列番号:10からなるCDR3;および
l)配列番号:20からなるCDR3からなる群より選択される少なくとも1つのCDRを有する抗体軽鎖可変(VL)ドメインをさらに含む、請求項1〜3いずれか記載の抗体または抗原結合断片。 - 抗体軽鎖可変(VL)ドメインが、
g)配列番号:8からなるCDR1;
i)配列番号:9からなるCDR2;および
k)配列番号:10からなるCDR3;
または
h)配列番号:18からなるCDR1;
j)配列番号:19からなるCDR2;および
l)配列番号:20からなるCDR3を含む、請求項4記載の抗体または抗原結合断片。 - 配列番号:2または配列番号:12を含む抗体重鎖可変(VH)ドメインを含む、前記請求項いずれか記載の抗体または抗原結合断片。
- 配列番号:7または配列番号:17を含む抗体軽鎖可変(VL)ドメインを含む、前記請求項いずれか記載の抗体または抗原結合断片。
- 該抗体が、FSTL3のアクチビンAへの結合、FSTL3のアクチビンBへの結合、FSTL3のミオスタチンへの結合、FSTL3の増殖分化因子11(GDF11)への結合、アクチビンAシグナル伝達の阻害、アクチビンBシグナル伝達の阻害、ミオスタチンシグナル伝達の阻害およびGDF11シグナル伝達の阻害、またはそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の活性を阻害する、前記請求項いずれか記載の抗体または抗原結合断片。
- 該抗体がヒト化抗体である、前記請求項いずれか記載の抗体または抗原結合断片。
- 該抗体がヒト抗体である、請求項1〜8いずれか記載の抗体または抗原結合断片。
- 該抗体が完全抗体である、請求項1〜10いずれか記載の抗体または抗原結合断片。
- 該抗体が、抗体の抗原結合断片である、請求項1〜11いずれか記載の抗体または抗原結合断片。
- 該抗原結合断片が、Fab、Fab'、F(ab')2およびscFvからなる群より選択される、請求項12記載の抗体または抗原結合断片。
- 前記請求項いずれか記載の抗体または抗原結合断片および薬学的に許容され得る担体を含む組成物。
- ミオスタチン阻害剤をさらに含む、請求項14記載の組成物。
- 糖尿病の治療を必要とする被験体に、ヒトフォリスタチン様3(FSTL3)タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片の有効量を投与する工程を含む、該被験体おける糖尿病を治療する方法。
- β細胞と、ヒトフォリスタチン様3(FSTL3)タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片の有効量を接触させる工程を含む、β細胞からのインスリン分泌を増加させる方法であって、該抗体が、FSTL3のFSTL3リガンドへの結合を阻害する、方法。
- β細胞、他の島細胞、または島中もしくは島の周囲にある他のアクチビン産生細胞と、ヒトフォリスタチン様3(FSTL3)タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片の有効量を接触させる工程を含む、β細胞再生を増加させる方法であって、該抗体が、FSTL3のFSTL3リガンドへの結合を阻害する、方法。
- α細胞または他の膵臓細胞と、ヒトフォリスタチン様3(FSTL3)タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片の有効量を接触させる工程を含む、α細胞または他の膵臓細胞のβ細胞への分化転換を促進する方法であって、該抗体が、FSTL3のFSTL3リガンドへの結合を阻害する、方法。
- β細胞、他の島細胞、または島中もしくは島の周囲にある他のアクチビン産生細胞と、ヒトフォリスタチン様3(FSTL3)タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片の有効量を接触させる工程を含む、β細胞のα細胞または他の膵臓細胞への分化転換を阻害する方法であって、該抗体が、FSTL3のFSTL3リガンドへの結合を阻害する、方法。
- 該抗体または抗原結合断片が、
a)配列番号:3からなるCDR1;
b)配列番号:13からなるCDR1;
c)配列番号:4からなるCDR2;
d)配列番号:14からなるCDR2;
e)配列番号:5からなるCDR3;および
f)配列番号:15からなるCDR3からなる群より選択される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を有する抗体重鎖可変(VH)ドメインを含む、請求項16〜20いずれか記載の方法。 - 該VHドメインが、
a)配列番号:3からなるCDR1;
c)配列番号:4からなるCDR2;および
e)配列番号:5からなるCDR3;
または
b)配列番号:13からなるCDR1;
d)配列番号:14からなるCDR2;および
f)配列番号:15からなるCDR3を含む、請求項21記載の方法。 - 該抗体または抗原結合断片が、
g)配列番号:8からなるCDR1;
h)配列番号:18からなるCDR1;
i)配列番号:9からなるCDR2;
j)配列番号:19からなるCDR2;
k)配列番号:10からなるCDR3;および
l)配列番号:20からなるCDR3からなる群より選択される少なくとも1つのCDRを有する抗体軽鎖可変(VL)ドメインを含む、請求項16〜22いずれか記載の方法。 - 該VLドメインが、
g)配列番号:8からなるCDR1;
i)配列番号:9からなるCDR2;および
k)配列番号:10からなるCDR3;
または
h)配列番号:18からなるCDR1;
j)配列番号:19からなるCDR2;および
l)配列番号:20からなるCDR3を含む、請求項23記載の方法。 - 該抗体または抗原結合断片が、
(i) a)配列番号:3からなるCDR1;
c)配列番号:4からなるCDR2;および
e)配列番号:5からなるCDR3を有する抗体重鎖可変(VH)ドメイン、ならびに
(ii) g)配列番号:8からなるCDR1;
i)配列番号:9からなるCDR2;および
k)配列番号:10からなるCDR3を有する抗体軽鎖可変(VL)ドメインを含む、請求項1記載の抗体もしくは抗原結合断片、または請求項21〜24いずれか記載の方法。 - 該抗体または抗原結合断片が、
(i) b)配列番号:13からなるCDR1;
d)配列番号:14からなるCDR2;および
f)配列番号:15からなるCDR3を有する抗体重鎖可変(VH)ドメイン、ならびに
(ii) h)配列番号:18からなるCDR1;
j)配列番号:19からなるCDR2;および
l)配列番号:20からなるCDR3を有する抗体軽鎖可変(VL)ドメインを含む、請求項1記載の抗体もしくは抗原結合断片、または請求項21〜24いずれか記載の方法。 - 該方法がインビトロで実施される、請求項17〜20いずれか記載の方法。
- 該方法が被験体に対して実施される、請求項17〜20いずれか記載の方法。
- 該被験体が1型糖尿病を有する、請求項16または28記載の方法。
- 該被験体が2型糖尿病を有する、請求項16または28記載の方法。
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