バクテリオファージに基づく適用を用いる際の大きな限界は、その宿主範囲の狭さである。宿主範囲を拡張するアプローチは、ファージ制限的な宿主にDNAを形質導入する能力を拡張するアプローチよりも、主にその伝播を支持する宿主における溶菌ファージに焦点を当てている。
より具体的には、形質導入粒子は、ファージを上回るいくつかの重要な技術的利点も示す。ファージの産生と違い、パッケージされたファージゲノムの統合性は、形質導入粒子の産生に必須ではない。実際には、唯一の必要条件は、ファージ粒子の全ての成分が(シス又はトランスの何れかで)産生宿主にコードされることである。トランスのいくつかの成分の発現は、ハイブリッド粒子の生成を劇的に単純にし、これは、これらの成分がスワップしたファージゲノムを生成するために先行技術で使用した面倒で費用のかかる合成生物学的技術(10)より、通常の分子生物学的技術を使用して構築されるプラスミドに発現することができるためである。先行技術の方法を上回る本発明のプラットフォームの利点を図8に明白に説明する。形質導入粒子を産生するために使用するファージゲノムは、(トランスで発現する重要な遺伝子が存在しないため)自家伝播能力を欠いている。そのため、形質導入粒子の産生はより安全で、より制御可能であり、結果として、規制機関によるより緩やかな承認手続きを必要としてもよい。したがって、形質導入粒子は、いくつかの技術的態様において、感染性ファージの使用より優れている。
伝播を支持しない宿主にDNAを形質導入するファージを単離するために、本発明の発明者は、初めに、宿主認識要素(複数可)を有するハイブリッドカプシド、特に、様々な病因宿主の異なるファージに由来する尾/尾繊維(簡潔さのために、尾/尾繊維はここでは「尾(tail)」と呼ぶ)の形質導入能力を測定した。本発明の発明者は、実質的に、これらのハイブリッド粒子のいくつかの初期の媒体−形質導入効率も改善した。このために、本発明の発明者は、GOTraP(General Optimization of Transducing Particles)を開発し、GOTraPとは、表現型(すなわちDNAの形質導入)をこの形質導入を可能にする望ましい遺伝子型(すなわち尾コード遺伝子の変異)に結合するプラットフォームである。重要なこととして、GOTraPは望ましい宿主に適合性の尾を有するファージを選択することができる。本発明の発明者は、パッケージングシグナルをコードする望ましいDNAが病原株に形質導入することができることを見つけ、したがって、DNAが本発明のプログラムされた形質導入粒子を用いて特に形質導入することができることを実証する。
より具体的には、本開示は、尾適合性を有するDNA形質導入能力を新しい宿主に結合するプラットフォームを確立した。以下に示すように、このプラットフォームは、自然にはファージの増殖を支持しない宿主に適合する尾を有するファージの選択を可能にする。このプラットフォームを使用して、適切な選択スキームがあれば、真核生物であっても如何なる理論に縛られることなく、望ましい核酸分子又は配列を遠縁の細菌に注入するファージを選択することができる。
したがって、第一の態様において、本発明は、目的の標的細胞に適合性の宿主認識要素(複数可)を識別し、及び/又は単離し、及び/又は最適化する方法を提供する。より特定の実施形態において、方法は、少なくとも1つの宿主認識要素、又はそのバリアント、変異体、タンパク質又はフラグメントをコードする複数の核酸分子を提供することを含む第1ステップ(a)を含む。これらの核酸分子は、少なくとも1つのパッケージングシグナル及び選択可能な要素をコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含むことに留意されたい。次のステップ(b)において、複数の核酸分子を含む第1宿主細胞を、少なくとも1つの不完全な宿主認識要素又はそのタンパク質もしくはフラグメントをコードする不完全な核酸配列を有する送達ビヒクルに接触させる。前記送達ビヒクルの伝播及び/又はパッケージングを可能にする条件下で、宿主細胞が不完全なビヒクルに接触することに留意されたい。このステップは、第1宿主細胞(複数可)に伝播又はパッケージした結果として得られる送達ビヒクルバリアントを回収することによってさらに達成される。次のステップ(c)は、第2宿主細胞をステップ(b)で回収した送達ビヒクルバリアントに接触させることを伴う。次のステップ(d)では、前記選択可能な要素を含むステップ(c)で得た宿主細胞を選択する。次のステップ(e)は、少なくとも1つの宿主認識要素(複数可)又は少なくとも1つの宿主認識要素をコードする核酸配列を、ステップ(d)で選択した宿主細胞から単離し、及び/又は特徴付けして、いくつかの実施形態では第2宿主細胞(複数可)と適合性であってもよく、及び/又は目的の標的宿主細胞と適合性であってもよい宿主認識要素又は同要素をコードする核酸配列を得ることを伴う。
特定の実施形態において、ステップ(b)から(e)の少なくとも1つ、例えば、ステップ(b)から(d)又はステップの他の組み合わせを、前述のようにさらにもう1回以上繰り返してもよい。
前述のように、本開示は、宿主認識要素(複数可)又は目的の標的細胞に適合性のそのタンパク質を識別し、最適化し、改善し及び/又は単離する方法を提供する。「識別する」とは、目的の標的細胞に適合性の宿主認識要素(複数可)を決定、分類、発見、最適化及び/又は選択の少なくとも1つを意味する。少なくとも1つの宿主認識要素をコードする核酸配列において、「単離する」及び「特徴付ける」は、少なくとも1つの宿主認識要素をコードする及びその核酸配列を決定する核酸配列(複数可)を自然環境から分離し、それによって特徴付けることを意味する。
「単離される」は、核酸配列が精製された範囲を必ずしも反映していない。しかしながら、ある程度にまで精製されたこのような分子は「単離される」ことが理解される。核酸は、全細胞、細胞可溶化液、送達ビヒクル、又は部分的に精製され又は実質的に純粋な形態で存在しうる。核酸は、自然環境に通常関連するその他の細胞成分から精製されるとき、「単離される」又は「実質的に純粋になる」。核酸を単離するために、以下の標準的技術:アルカリ性/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動及び技術分野で周知の他の技術を使用することができる。
本発明の他の態様に関連して以降に詳しく説明するように、本発明の方法によって識別され、提供され、調製され、最適化され、及び/又は特徴付けされた宿主認識要素(複数可)は、いくつかの実施形態において使用されて、少なくとも1つの目的の標的宿主細胞に適合性であり、そのためこのような標的細胞に目的の核酸分子の少なくとも1つを形質導入するのに適しうる送達ビヒクルを調製することができる。
前述のように、宿主細胞と核酸送達ビヒクルとの物理的相互作用は、宿主細胞と送達ビヒクルとの認識を決定し、送達ビヒクルの宿主細胞に進入する(又は感染する)能力を規定する。したがって、本開示の文脈における「適合性の」という用語は、特定の宿主認識要素が、送達ビヒクルに含まれるとき、当該要素を有する送達ビヒクルと目的の特定の標的宿主細胞との認識を可能にすることを意味する。「認識」は、本明細書で使用する場合、本明細書では「第2宿主細胞」と示される目的の標的宿主細胞に、送達ビヒクルが結合、付着、吸収、浸透することも含む。言い換えれば、適合性の宿主認識要素を含む送達ベクターは、進入することができ、それにより特定の宿主細胞に形質導入することができる。
いくつかの特定の実施形態において、本明細書に記載の方法は、少なくとも1つの変異原に供し、それにより少なくとも1つの変異した宿主認識要素をコードする複数の核酸分子(複数可)を得ることによって、ステップ(a)で提供される複数の核酸分子を変異誘発することをさらに含む。
実施例1、2及びとりわけ図3Bにも示されるように、いくつかの実施形態において、本発明の方法は、数回のラウンドの選択及び富化を含んでもよく、したがって、ステップ(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)、あるいはステップ(b)、(c)、(d)及び(e)の少なくとも1つを、少なくとも1回以上繰り返すオプションをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、ステップ(b)、(c)及び(d)を少なくとも1回以上繰り返すことを含んでもよい。図4Bに示すように、これらのステップを繰り返すことで、本発明の方法によって調製した宿主認識要素(複数可)を含むビヒクルの形質導入効率を改善する。これらの送達ビヒクル、その調製方法は、本発明の他の態様と関連して以降に詳しく説明する。これらステップは、少なくとも1回以上、2、3、4、5、6、7、8、9、20、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、7、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、8、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000回以上繰り返すことができることが理解される。本発明の方法が、ステップ(a)で提供される少なくとも1つの宿主認識要素をコードする複数の核酸分子を、少なくとも1つの変異原に暴露する、あるいは以降に記載する他の方法によって当該核酸配列(複数可)を変異誘発することを伴う場合、このステップは少なくとも1回以上繰り返してもよいことが理解される。核酸配列の変異原への暴露は、細胞内(第1又は第3宿主細胞)又は細胞外の何れかで行うことができる。
技術分野で周知のように、宿主細胞と核酸送達ビヒクルとの物理的相互作用は、宿主細胞と送達ビヒクルとの認識を決定し、送達ビヒクルの宿主細胞に進入する(又は感染する)能力を規定する。
例えば、ファージの生存は、ファージ進入の最中にその細菌宿主を感染する能力に依存する。バクテリオファージ及び細菌宿主において、ファージの宿主認識要素と細菌受容体の共進化は、細菌宿主範囲、ファージ進入のメカニズム及び他の感染パラメータを決定する。
本来は制限的で、すなわち、特定の種類の送達ビヒクルに許容的ではなく、送達ビヒクルが伝播することができない宿主(又は目的の標的細胞)に、DNAを移行させる核酸送達ビヒクル(例えばバクテリオファージ)を単離するために、表現型、すなわち、宿主認識を可能にする望ましい遺伝子型に連結する方法を開発しなければならない。
このために、本明細書に記載の方法は、とりわけ、宿主認識要素またはそのフラグメント、ならびに少なくとも1つの宿主認識要素、又はそのバリアント、変異体又はフラグメントをコードする複数の核酸分子を含む第1宿主細胞をコードする不完全な核酸配列(複数可)を有する送達ビヒクルの使用を含む。前述のように、これらの核酸分子は、(不完全な宿主認識要素を有する)ビヒクルならびにその選択及び識別を可能にする選択可能な要素をコードする少なくとも1つの核酸配列に、当該核酸分子をパッケージングするのを容易にする少なくとも1つのパッケージングシグナルをさらに含む。
前述のように、本発明の方法のステップ(b)において、「第1宿主細胞(複数可)」は、複数の認識要素を含み、本明細書では「産生細胞(複数可)」として使用され、不完全な認識要素をコードする不完全な核酸配列を有する送達ビヒクルに接触する。前述の文脈において「不完全な」という用語は、本明細書に規定する宿主認識要素の少なくとも1つをコードする送達ビヒクルの未変性の核酸配列(複数可)が欠失しており、(遺伝子のコード領域又は非コード領域の何れかで)変異され、部分的又は不完全に損なわれ、又はあるいは少なくとも1つの不完全な宿主認識要素をコードする核酸が、送達ビヒクルゲノムから完全に失われている(それにより、このようなビヒクルは宿主認識要素をコードする核酸配列を欠失している)ことを意味する。したがって、不完全な核酸配列は、望ましい宿主細胞又は任意の宿主細胞の認識を支持することができない不完全な、損なわれた、変異した又は完全ではない(または失われてもいる)宿主認識要素をコードする。いくつかの実施形態において、本発明は、ビヒクル、特に(複数の核酸配列として提供される)宿主認識要素をコードする核酸配列(複数可)のパッケージングに必要とされる要素のみを含みうる本発明に開示する送達ビヒクルを含むことに留意されたい。例えば、送達ビヒクルは、これらの核酸配列をパッケージする能力以外のその他の特性又は活動を欠いている。しかしながら、いくつかの代替又は追加の実施形態において、(例えば、宿主認識要素をコードする核酸配列が不完全ではない)不完全ではない送達ビヒクル(複数可)又は野生型の送達ビヒクルであっても、その使用が本発明に適用可能であることも留意されたい。
少なくとも1つの宿主認識要素(又はそのバリアント、変異体、タンパク質又はフラグメント)をコードする複数の核酸分子、さらに前述の送達ビヒクルによるパッケージング要素を含む第1宿主細胞(複数可)を接触することで、宿主細胞によって運ばれる宿主認識要素を結果として得られる送達ビヒクル(複数可)にパッケージングする。このプロセスは、それぞれ少なくとも1つの宿主認識要素(又はそのバリアント、タンパク質又は変異体)を含む送達ビヒクルバリアントの集団を得ることを容易にし、それにより新しい表現型/遺伝子型を獲得する。これらの要素の少なくともいくつかは、拡張した範囲の標的宿主細胞に感染/インターフェースするのに適合可能である。前述のように、これらのバリアントは、目的の標的宿主に適合性でありうる宿主細胞認識要素を有する送達ビヒクルのためにさらに選択される。以降に詳しく説明するように、本明細書では「産生細胞」としても呼ばれる「第3宿主細胞」は、細胞または部分又はその小器官を模倣する人工細胞、小胞又は系をさらに含みうる。
より具体的には、本明細書に規定し、本発明の方法のステップ(b)で得られる「送達ビヒクルバリアント」という用語は、それぞれがユニークな遺伝子型/表現型を含む送達ビヒクル種の集団又は複数を指す。送達ビヒクルバリアントは、その核酸配列の含量及び/又はそのタンパク質のアミノ酸配列によって、互いに異なっていてもよい。送達ビヒクルバリアントは、相同又は異種、ハイブリッド、未変性、変異した又はその組み合わせでありうる宿主認識要素(複数可)をコードする核酸配列を有することができる。特に、これらのバリアントは、目的の標的宿主細胞に適合性の望ましい宿主認識要素を有することができる。
本開示の文脈において「核酸送達ビヒクル」という用語は、本明細書で使用する場合、最も広義に使用する。「ビヒクル」又は「送達ビヒクル」は、本発明で使用する場合、バクテリオファージ、プラスミド、ファージミド、ウイルス、統合可能なDNAフラグメント及びその他のビヒクル等のベクターを含み、核酸分子を望ましい標的宿主細胞に移行させることができ、いくつかのさらなる実施形態において、当該形質導入された核酸分子を標的細胞に発現することを導く。
ベクターは、典型的には自己複製するDNA又はRNA構築物であり、望ましい核酸配列、及び適切な宿主細胞において認識され、望ましい遺伝子の翻訳に影響を与える操作可能に結合された遺伝的制御要素を含む。概して、遺伝的制御要素は、原核生物のプロモーター系又は真核生物のプロモーター発現制御系を含むことができる。このような系は、典型的には、転写プロモーター、RNA発現のレベルを高める転写エンハンサーを含む。ベクターは、通常、宿主細胞を独立して複製することができる複製の起源を含む。
したがって、制御及び制御要素という用語は、プロモーター、ターミネーター及び他の発現制御要素を含む。このような制御要素は、Goeddel;[Goeddel.,等、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、Calif.(1990)]に記述がある。例えば、DNA配列に操作可能に連結するとき、DNA配列の発現を制御する多様な発現制御配列は、本発明の方法を使用して望ましいタンパク質をコードするDNA配列を発現するために、これらのベクターに使用することができる。
ベクター又は送達ビヒクルは、さらに、ベクター含有細胞を選択するために、適切な制限部位、抗生物質耐性又は他のマーカーを含みうる。プラスミドが最も多く使用されるベクターの形態であるが、同様の機能を提供し、技術分野で知られている又は知られるようになったベクターの他の形態も本明細書での使用に適している。例えば、Pouwels等、Cloning Vectors:a Laboratory Manual(1985 and supplements)、Elsevier、N.Y.;and Rodriquez,等(編)Vectors:a Survey of Molecular Cloning Vectors and their Uses、Buttersworth、Boston,Mass(1988)を参照のこと、本文献は参照により本明細書に援用される。送達ビヒクル(複数可)のこの定義は、本発明の他の態様に記載するステップ又は組成物に関連する。
いくつかの実施形態において、本開示に係る方法で使用する送達ビヒクルは、少なくとも1つのバクテリオファージであってもよい。したがって、いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、送達ビヒクルとして使用して、本発明の宿主認識要素を調製し、識別することができる。さらなるいくつかの実施形態において、バクテリオファージは、本発明の方法によって得た宿主認識要素(複数可)を含む送達ビヒクルの調製のために、本明細書で使用することもできる。このような送達ビヒクルは、目的の望ましい標的細胞及び/又は本明細書で使用する第2宿主細胞に適合可能である。いくつかの実施形態において、第2宿主細胞(複数可)は、目的の標的宿主細胞(複数可)に同一であっても、類似していてもよい。
「バクテリオファージ」という用語は、細菌等の原核生物の内部で感染し、複製し、構築するウイルスを意味する。「バクテリオファージ」という用語は、「ファージ」という用語と同義であることに留意されたい。ファージは、DNA又はRNAゲノムを被包するタンパク質から成り、数百個の遺伝子しかコードすることができず、それにより比較的単純又は精巧な構造を有するウイルス粒子を産生する。ファージは、核酸の形態及び種類(DNA又はRNA、一本鎖又は二本鎖、直線又は環状)を検討する国際ウイルス分類委員会(ICTV)に従って分類される。これまで、細菌及び/又は古細菌(古細菌として以前に分類された原核生物ドメイン)を感染させる約19個のファージファミリーが認識されてきた。多くのバクテリオファージが細胞の特定の属又は種又は株に特異的である。本開示の方法、キット及び組成物によって、適したファージを送達ビヒクルとして使用してもよいことが理解される。
いくつかの非限定的な実施形態において、本開示の主題のバクテリオファージは、(例えば、ポドウイルス科、ミオウイルス科又はシホウイルス科のファミリーに対する)カウドウイルス目又は(例えば、リポスリクスウイルス科又はルディウイルス科のファミリーに対する)リガメンウイルス目に属する。他のファミリーのファージ、例えば、ほんの2、3例であるが、アンプラウイルス科、Bicaudaviridae及びClavaviridaeも本発明に含まれる。
他の実施形態において、本開示に係るバクテリオファージは、(限定されないが)バクテリオファージファミリー、ポドウイルス科、マイオウイルス科又はシホウイルス科、リポスリクスウイルス科又はルディウイルス科の1つである。
特定の実施形態において、本開示に係るバクテリオファージはT7様ウイルス又はT4様ウイルスの少なくとも1つである。
さらなる特定の実施形態において、本発明の方法による送達ビヒクルとして使用されるファージ、ならびに改変バクテリオファージ、以降に記述する本開示のキット及び組成物は、T7様ウイルス、特に腸内細菌ファージT7であってもよい。バクテリオファージT7は、溶菌ライフサイクルを有するDNAウイルスである。
より具体的には、本開示に係るファージは、Escherichia coliファージT7(前述のカウドウイルス目(尾ファージ)のポドウイルス科ファミリーのメンバー)であってもよい。T7は、頂点の1つに20nmの短い尾を有する正二十面体カプシドから成る。カプシドは、シェルタンパク質遺伝子産物(gp)10によって形成され、40kbのDNAを囲む。gp14、gp15、及びgp16から成る円柱構造がカプシドの内部に存在し、gp8(8、10)の環状の十二量体であるコネクタによって形成される特別な頂点に付着する。タンパク質gp11及びgp12は尾を形成し、gp13、gp6.7、及びgp7.3は、また、その位置は確立されていないが、ウイルス粒子の部分であり、感染に必要であることが分かっている。尾の主要な部分は、6つのコピーが存在する大きなタンパク質であるgp12から成り、小さいgp11タンパク質も尾に位置する。6つの繊維が尾に付着し、それぞれgp17タンパク質の3つのコピーを含む。
本開示の方法、キット及び組成物による送達ビヒクルとして使用するファージは、ファミリーポドウイルス科の他のグループメンバー、例えば、限定されないが、T3ファージ、φ29、P22、P−SPP7、N4、ε15、K1E、K1−5及びP37を含んでもよい。
いくつかの実施形態において、本開示の方法、キット及び組成物による送達ビヒクルとして使用するファージは、限定されないが、腸内細菌ファージT7、腸内細菌ファージ13a、エルシニアファージYpsP−G、腸内細菌ファージT3、エルシニアファージYpP−R、サルモネラファージphiSG−JL2、サルモネラファージVi06、シュードモナスファージgh−1、クレブシエラファージK11、エンテロバクターファージphiEap−1、エンテロバクターファージE−2、クレブシエラファージKP32、クレブシエラファージKP34、クレブシエラファージvB_KpnP_KpV289及びシュードモナスファージphiKMVを含んでもよい。
別の例において、バクテリオファージは、限定されないが、プロテオバクテリア、ファーミキューテス、バクテロイデス門の何れか1つを含む細菌を感染させることができるバクテリオファージを含む。
さらなる例において、バクテリオファージは限定されないが、以下の属:Escherichia coli、シュードモナス、連鎖球菌、ブドウ球菌、サルモネラ菌、赤痢菌、クロストリジウム、腸球菌、クレブシエラ属アシネトバクター及びエンテロバクターに属する細菌を感染させることができるバクテリオファージを含む。
特に「ESKAPE」病原体を特に標的にするバクテリオファージが特に興味深い。本明細書で使用する場合、これらの病原体として、限定されないが、Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumanii、Pseudomonas aeruginosa及びEnterobacterが挙げられる。
ほんの2、3例であるが、これらのバクテリオファージとして、限定されないが、Staphylococcus aureus、特にvB_Sau.My D1、vB_Sau My 1140、vB_SauM 142、Sb−1、vB_SauM 232、vB_SauS 175、vB_SauM 50、vB_Sau 51/18、vB_Sau.M.1,vB_Sau.M.2、vB_Sau.S.3、vB_Sau.M.4、vB_Sau.S.5、vB_Sau.S.6、vB_Sau.M.7、vB_Sau.S.8、vB_Sau.S.9、vB_Sau.M.10、vB_Sau.M.11の少なくとも1つに特異的なバクテリオファージが挙げられる。いくつかのさらなる実施形態において、Klebsiella pneumoniaeに特異的なバクテリオファージも、本発明に適用することができる。さらに特定の実施形態において、これらのファージとして、vB_Klp 1、vB_Klp 2、vB_Klp.M.1、vB_Klp.M.2、vB_Klp.P.3、vB_Klp.M.4、vB_Klp.M.5、vB_Klp.M.6、vB_Klp.7、vB_Klp.M.8、vB_Klp.M.9、vB_Klp.M.10、vB_Klp.P.11、vB_Klp.P.12、vB_Klp.13、vB_Klp.P.14、vB_Klp.15、vB_Klp.M.16も挙げられる。さらに特定の実施形態において、Pseudomonas aeruginosaに特異的なバクテリオファージは、本発明の送達ビヒクルとして、あるいは異種宿主認識要素の源として適用することができる。このようなバクテリオファージの非限定的な例として、限定されないが、vB_Psa.Shis 1、vB_PsaM PAT 5、vB_PsaP PAT 14、vB_PsaM PAT 13、vB_PsaM ST−1、vB_Psa ст 27、vB_Psa ст 44 K、vB_Psa ст 44 M、vB_Psa 16、vB_Psa Ps−1、vB_Psa 8−40、vB_Psa 35 K、vB_Psa 44、vB_Psa 1、vB_Psa 9、vB_Psa 6−131 M、vB_Psa ст 37、vB_Psa ст 45 S、vB_Psa ст 45 M、vB_Psa ст 16 MU、vB_Psa ст 41、vB_Psa ст 44 MU、vB_Psa ст 43、vB_Psa ст 11 K、vB_Psa 1638、vB_Psa Ps−2、vB_Psa 35 CT、vB_Psa 35 M、vB_Psa S.Ch.L、vB_Psa R1、vB_Psa SAN、vB_Psa L24、vB_Psa F8、vB_Psa BT−4、vB_Psa BT−2(8)、vB_Psa BT−1(10)、vB_Psa BT−4−16、vB_Psa BT−5、vB_Psa F−2、vB_Psa B−CF、vB_Psa Ph7/32、vB_Psa Ph7/63、vB_Psa Ph5/32、vB_Psa Ph8/16、vB_Psa Ph11/1、vB_Psa、vB_Psa 3、vB_Psa 4、vB_Psa 5、vB_Psa 6、vB_Psa 7、vB_Psa.P.15、vB_Psa.17、vB_Psa.M.18、vB_Psa.28、vB_Psa.M.2、vB_Psa.M 3、vB_Psa.23、vB_Psa.P.8、vB_Psa.M.PST7、vB_Psa.M.C5、vB_Psa.M D1038が挙げられる。さらなる実施形態において、Acinetobacter baumaniiに特異的なバクテリオファージも、本発明に適用することができる。このような容菌ファージ又はテンペレートファージは、vB_Aba B37、vB_Aba G865、vB_Aba G866、vB_Aba U7、vB_Aba U8、vB_Acb 1、vB_Acb 2の何れか1つを含んでもよい。いくつかのさらなる実施形態において、エンテロバクターに特異的なバクテリオファージ、特に、vB_Eb 1、vB_Eb 2、vB_Eb 3、vB_Eb 4バクテリオファージの何れか1つを本発明のキット及び方法に使用してもよい。いくつかのさらなる実施形態において、Enterococcus faecalis特異的バクテリオファージを使用してもよい。いくつかの非限定的な例として、vB_Ec 1、vB_Ec 2、vB_Enf.S.4、vB_Enf.S.5バクテリオファージの何れか1つを含む。
いくつかのさらなる実施形態において、Bacillus anthracisに特異的に感染するバクテリオファージ、例えば、vB_BaK1、vB_BaK2、vB_BaK6、vB_BaK7、vB_BaK9、vB_BaK10、vB_BaK11、vB_BaK12、vB_BaGa4、vB_BaGa5、vB_BaGa6も本発明に適用することができる。さらに、Brucella abortusに特異的なバクテリオファージとして、例えば、Tb、vB_BraP IV、vB_BraP V、vB_BraP VI、vB_BraP VII、vB_BraP VIII、vB_BraP IX、vB_BraP X、vB_BraP XII、vB_BraP 12(b)、vB_BraP BA、vB_BraP 544、vB_BraP 141я、vB_BraP 141m、vB_BraP 19я、vB_BraP 19m、vB_BraP 9、Brucella canisに特異的なバクテリオファージとして、特にvB_BrcP 1066、Clostridium perfigenesA.B.C.D.Eに特異的なバクテリオファージとして、例えば、vB_CpPI、vB_CpII、vB_CpIII、vB_CpIV、vB_Ec 1、vB_Ec 2、vB_Enf.S.4、vB_Enf.S.5、Desulfovibrio vulgarisに特異的なバクテリオファージとして、vB_DvRCH1/M1、vB_DvH/P15、vB_DvH/M15、Enterococcus faecalisに特異的なバクテリオファージとして、vB_Ec 1、vB_Ec 2、vB_Enf.S.4、vB_Enf.S.5、Escherichia coliに特異的なバクテリオファージとして、特に、vB_Eschc.pod 9、vB_Eschc.Pod 4、vB_Eschc.Shis 7、vB_Eschc.Shis 14、vB_Eschc.Shis 5、vB_Eschc.My 2、PhI−1、PhI−2、PhI3、PhI4、PhI5、T2、T4、T5、DDII、DDVI、DDVII、vB_Eschc.Shis 7/20、vB_Eschc.Shis 1161、vB_Eschc.Shis 8963、vB_Eschc 4、vB_Eschc 11/24、vB_Eschc.Shis 18、vB_Shis 3/14、vB_Sau A、vB_Shis G、vB_Eschc.Shis W、vB_Shis GE25、vB_Eschc.Shis 8962、vB_Eschc 90/25、vB_Eschc 5/25、vB_Eschc 12/25、vB_Eschc H、T3、T6、T7、vB_Eschc 4、vB_Eschc 121、vB_Eschc BaK2、vB_Eschc L7−2、vB_Eschc L7−3、vB_Eschc L7−7、vB_Eschc L7−8、vB_Eschc L7−9、vB_Eschc L7−10、vB_Eschc Ф8、vB_Eschc.Shis 20、vB_Eschc.Shis 25、vB_Eschc.Shis 27、vB_Eschc.Shis MY、vB_Eschc 11、vB_Eschc 12、vB_Eschc 13、vB_Eschc 17、vB_Eschc 18、vB_Eschc 19、vB_Eschc 20、vB_Eschc 21、vB_Eschc 22、vB_Eschc 23、vB_Eschc 24、vB_Eschc 25、vB_Eschc 26、vB_Eschc 27、vB_Eschc 28、vB_Eschc 29、vB_Eschc 30、vB_Eschc 31、vB_Eschc 32、vB_Eschc 34、vB_Eschc 35、vB_Eschc 37、vB_Eschc 38、vB_Eschc 39、vB_Eschc 44、vB_Eschc 45、vB_Eschc 46、vB_E.coli.M.1、vB_E.coli.M.2、vB_E.coli.P.3、vB_E.coli.P.4、vB_E.coli.P.5、vB_E.coli.P.6、vB_E.coli.P.7、vB_E.coli.P.8、Salmonella paratyphiに特異的なファージとして、特に、vB_ SPB Diag 1、vB_ SPB Diag 2、vB_ SPB Diag 3、vB_ SPB Diag 3b、vB_ SPB Diag Jersey、vB_ SPB Diag Beecles、vB_ SPB Diag Taunton、vB_ SPB DiagB.A.O.R、vB_ SPB Diag Dundee、vB_ SPBDiagWorksop、vB_ SPB Diag E、vB_ SPB Diag D、vB_ SPB Diag F、vB_ SPB Diag H、Salmonella typhi abdominalisに特異的なファージとして、vB_ Sta Diag A、vB_ Sta Diag B1、vB_ Sta Diag B2、vB_ Sta Diag C1、vB_ Sta Diag C2、vB_ Sta Diag C3、vB_ Sta Diag C4、vB_ Sta Diag C5、vB_ Sta Diag C6、vB_ Sta Diag C7、vB_ Sta Diag D1,vB_ Sta Diag D2、vB_ Sta Diag D4、vB_ Sta Diag D5、vB_ Sta Diag D6、vB_ Sta Diag D7、vB_ Sta Diag D8、vB_ Sta Diag E1、vB_ Sta Diag E2、vB_ Sta Diag E5、vB_ Sta Diag E10、vB_ Sta Diag F1、vB_ Sta Diag F2、vB_ Sta Diag F5、vB_ Sta Diag G、vB_ Sta Diag H、vB_ Sta Diag J1、vB_ Sta Diag J2、vB_ Sta Diag K、vB_ Sta Diag L1、vB_ Sta Diag L2、vB_ Sta Diag M1、vB_ Sta Diag M2、vB_ Sta Diag N、vB_ Sta Diag O、vB_ Sta Diag T、vB_ Sta Diag Vi1、vB_ Sta Diag27、vB_ Sta Diag 28、vB_ Sta Diag 38、vB_ Sta Diag 39、vB_ Sta Diag 40、vB_ Sta Diag 42、vB_ Sta Diag 46、Salmonella typhimurium、特に、vB_Stm.My 11、vB_Stm.My 28、vB_Stm.Shis 13、vB_Stm.My 760、vB_Stm.Shis 1、IRA、vB_Stm 16、vB_Stm 17、vB_Stm 18、vB_Stm 19、vB_Stm 20、vB_Stm 21、vB_Stm 29、vB_Stm 512、vB_Stm Diag I、vB_Stm Diag II、vB_Stm Diag III、vB_Stm Diag IV、vB_Stm Diag V、vB_Stm Diag VI、vB_Stm Diag VII、vB_Stm Diag VIII、vB_Stm Diag IX、vB_Stm Diag X、vB_Stm Diag XI、vB_Stm Diag XII、vB_Stm Diag XIII、vB_Stm Diag XIV、vB_Stm Diag XV、vB_Stm Diag XVI、vB_Stm Diag XVII、vB_Stm Diag XVIII、vB_Stm Diag XIX、vB_Stm Diag XX、vB_Stm Diag XXI、vB_Stm Diag 1、vB_Stm Diag 2、vB_Stm Diag 3、vB_Stm Diag 4、vB_Stm Diag 5、vB_Stm Diag 6、vB_Stm Diag 7、vB_Stm Diag 8、vB_Stm Diag 9、vB_Stm Diag 10、vB_Stm Diag 11、vB_Stm Diag 12、vB_Stm Diag 13、vB_Stm Diag 14、vB_Stm Diag 15、vB_Stm Diag 16、vB_Stm Diag 17、vB_Stm Diag 18、vB_Stm Diag 19、vB_Stm Diag 20、vB_Stm Diag 21、vB_Stm Diag 22、vB_Stm Diag 23、vB_Stm Diag 24、vB_Stm Diag 25、vB_Stm Diag 26、vB_Stm Diag 27、vB_Stm Diag 28、vB_Stm Diag 29、vB_Stm Diag 30、vB_Stm Diag 31、vB_Stm Diag 32、vB_Stm Diag 33、vB_Stm Diag 34、vB_Stm Diag 35、vB_Stm Diag 36、vB_Stm Diag 37、vB_Stm Diag 38、vB_Stm Diag 39、vB_Stm Diag 40、vB_Stm Diag 41、vB_Stm Diag 42、vB_Stm Diag 43、vB_Stm Diag 44、vB_Stm Diag 45、vB_Stm Diag 46、vB_Stm Diag 47、vB_Stm Diag 48、vB_Stm Diag 49、vB_Stm Diag 50、vB_Stm Diag 51、vB_Stm Diag 52、vB_Stm Diag 53、vB_Stm Diag 54、vB_Stm Diag 55、vB_Stm Diag 56、vB_Stm Diag 57、vB_Stm Diag 58、vB_Stm Diag 59、vB_Stm Diag 60、vB_Stm Diag 61、vB_Stm Diag 62、vB_Stm Diag 63、vB_Stm Diag 64、vB_Stm Diag 65、vB_Stm.P.1、vB_Stm.P.2、vB_Stm.P.3、vB_Stm.P.4、Shigella sonneiに特異的なファージとして、特に、vB_Shs.Pod 3、vB_Eschc.Shis 7/20、vB_Eschc.Shis 1161、vB_Eschc.Shis 8963、vB_Eschc.Shis 8962、vB_Shis GE25、vB_Eschc.Shis W、vB_Shis G、vB_Shis 3/14、vB_Eschc.Shis 18、vB_Shis 1188、vB_Shis 1188 Г、vB_Shis 1188 Y、vB_Shis 1188 X、vB_Shis 5514、vB_Shis L7−2、vB_Shis L7−4、vB_Shis L7−5、vB_Shis L7−11、vB_Shis K3、vB_Shis TuI A、vB_Shis Ox2、vB_Shis SCL、vB_Shis Bak C2、vB_Shis 4/1188,vB_Shis 8962、vB_Shis 8963、vB_Shis XIV、vB_Shis 116、vB_Shis 106/8、vB_Shis 20、vB_Shis 90/25、vB_Shis 87/25、vB_Shis 16/25、vB_Shs 7、vB_Shs 38、vB_Shs 92、vB_Shs 1391、vB_Shs.P.1、vB_Shs.P.2、vB_Shs.P.3が挙げられる。
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の方法によって宿主認識要素を調製するための送達ビヒクルとして本明細書に挙げられ、開示されたバクテリオファージの使用を含み、本発明の態様(複数可)にも定義されるように、当該宿主認識要素を含む送達ビヒクルの調製にも適していることが理解される。さらにいくつかの実施形態において、本発明の方法及び改変バクテリオファージに適用可能な認識要素は、尾及び繊維タンパク質に関連して以降に記述されるように、本明細書に挙げたバクテリオファージ又は本発明に開示したバクテリオファージ、その組み合わせ、変異体、バリアント又はオルソログに由来してもよい。
本発明は、宿主認識要素を識別し、最適化し、調製する方法を提供する。本発明のいくつかのさらなる態様において、これらの宿主認識要素は、目的の標的宿主細胞(複数可)に適合性の改善された送達ビヒクルを調製するために使用することができる。
「宿主認識要素」という用語は、本明細書で使用する場合、「宿主決定タンパク質」とも呼ばれ、すなわち、送達ビヒクルと宿主との相互作用を媒介する要素である送達宿主認識に関連するビヒクル要素を含む。特に、宿主認識要素という用語は、バクテリオファージの尾末端に局在化したバクテリオファージ成分を指す。さらに、「宿主認識要素」は、本明細書において最も広義に解釈することができ、したがって、いくつかの実施形態において、宿主認識、宿主への付着、核酸分子(又は他の形質導入した物質)の注入、さらに宿主内に注入された物質(例えば、宿主制限酵素等への耐性)、又は本明細書に記載のプロセスのステージに関係する要素、又はその組み合わせの少なくとも1つに関係し、容易にし、改善する送達ビヒクルの要素を含むことができる。本発明は、したがって、宿主認識要素又は宿主認識、付着、浸透、注入及び注入された物質(例えば核酸分子)の安定性の少なくとも1つに関係する要素の調製、単離、識別、改善及び最適化の少なくとも1つを行う効果的な方法を提供する。
前述のように、本発明の方法は、宿主認識要素(複数可)をコードする複数の核酸配列を変異誘発することを含みうる。「改変する」又は「変異する」又は「変異誘発する」という用語は、少なくとも1つの宿主認識要素をコードする未変性の核酸配列が変化し、修正され又は変異することを意味する。核酸配列を変異するための技術分野で周知の手順は、変異した核酸配列を得るために使用することができ、特に、その方法の例として、エチルメタンスルホン酸(EMS)、MP6等の変異誘発プラスミド、又は他の変異原、又はDNA合成又は修復に関連する低フィデリティータンパク質(複数可)の使用が挙げられる。「変異原」という用語は、所与の生命システム、例えば宿主細胞において、システムの変異の自然発生レベル以上にまで変異を誘発し、又は変異速度を増加する剤を指す。いくつかの例示的な変異原として、限定されないが、塩基類似体、脱アミノ剤(例えば亜硝酸)、挿入剤(例えば臭化エチジウム)、アルキル化剤(例えばエチルニトロソウレア)、トランスポゾン、臭素、アジド塩、ソラレン、ベンゼン、3−クロロ−4−(ジクロロメチル)−5−ヒドロキシ−2(5H)−フラノン(MX)(CAS no.77439−76−0)、0,0−ジメチル−S−(フタルイミドメチル)ホスホロジチオ酸(phos−met)(CAS no.732−11− 6)、ホルムアルデヒド(CAS no.50−00−0)、2−(2−フリル)−3−(5−ニトロ−2−フリル)アクリルアミド(AF−2)(CAS no.3688−53−7)、グリオキサール(CAS no.107−22−2)、6−メルカプトプリン(CAS no.50−44−2)、N−(トリクロロメチルチオ)−4−シクロヘキサン−1,2−ジカルボキシイミド(カプタン)(CAS no.133−06−2)、2−アミノプリン(CAS no.452−06−2)、メチルメタンスルホナート(MMS)(CAS No.66−27−3)、4−ニトロキノリン1−オキシド(4−NQO)(CAS No.56−57−5)、N4−アミノシチジン(CAS no.57294−74−3)、アジ化ナトリウム(CAS no.26628−22−8)、N−エチル−N−ニトロソウレア(ENU)(CAS no.759−73−9)、N−メチル−N−ニトロソウレア(MNU)(CAS no.820−60−0)、5−アザシチジン(CAS no.320−67−2)、クメンヒドロペルオキシド(CHP)(CAS no.80−15−9)、エチルメタンスルホン酸(EMS)(CAS no.62−50−0)、N−エチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(ENNG)(CAS no.4245−77−6)、N−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)(CAS no.70−25−7)、5−ジアゾウラシル(CAS no.2435−76−9)及びt−ブチルヒドロペロキシド(BHP)(CAS no.75−91−2)が挙げられる。追加の変異原を使用することができ、本発明にはこの観点に限定されず、例えば、本発明の複数の核酸配列を電離放射線又は紫外線照射に供することができる。さらに、いくつかの実施形態において、宿主認識要素又はそのタンパク質をコードする核酸配列をMP6等の変異誘発プラスミドを使用して変異することができる。より具体的には、MP6プラスミド(Badran AH1 and Liu DR、Nat Commun.2015 6:8425)は、基底レベルを上回る322,000倍の変異を高めるE.coliの強力な、誘導性、広域のベクターに基づく変異原性系である。XL1−Red等の変異誘発株も本明細書に適用可能である。これらのシステムは、染色体、インビボのエピソーム及びウイルスの広域変異原性を可能にし、細菌とバクテリオファージ媒介性実験室進化プラットフォームの両方に適用することができ、したがって、本発明の方法によってステップ(a)で提供される複数の核酸配列を変異誘発するために適用することができる。
変異原又は変異原の組み合わせを、所与の核酸集団の望ましい変異速度を誘発する濃度又は暴露レベルで使用するべきであることもさらに留意されたい。
本発明の方法のステップ(a)の複数の核酸配列によって提供され、本明細書に記載の方法によって調製される宿主認識要素は、同時に、又は前述に開示した少なくとも1つの変異原を使用して変異させることができる。いくつかの実施形態において、得られた変異誘発した核酸配列は、少なくとも1つの変異を含みうる宿主認識要素をコードする。「変異」という用語は、本明細書で使用する場合、1つ(点変異体)以上のヌクレオチドの交換を指す。変異は、本明細書で使用する場合、点変異(複数可)、ナンセンス変異、ミスセンス変異、アミノ酸産物を変化させないサイレント変異、欠失(複数可)、挿入(複数可)、トランケーション(複数可)又は再編成を含むことが理解される。特定の実施形態において、このような変異によって、1つ以上のアミノ酸残基に対して得られたアミノ酸残基を交換することができる。この用語は、コード配列及び非コード配列、例えば、制御配列(例えば、表7に開示されるクローン#1、#2及び#3の変異体に例示されるように、リボソーム結合部位であるシャイン・ダルガノ(SD)配列)等の変異を含むことが理解される。
変異は、したがって、少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失又は挿入又はその組み合わせになることができる。そのため、得られるタンパク質は不完全であり、又はさもなくば非機能的又は部分的に機能的なタンパク質になりうる。いくつかのさらなる代替の実施形態において、変異(複数可)は、得られるポリペプチド、この場合は宿主認識要素の機能を修正することができ、したがって、異なる宿主及び特に目的の宿主細胞(複数可)に対する宿主の特異性、又は競合能力を修正、及び/又は拡張、増加、向上させることができる。
アミノ酸「置換」は、1つのアミノ酸を、類似の又は異なる構造的及び/又は化学特性を有する別のアミノ酸に置換した結果であり、すなわち、保存的アミノ酸置換である。アミノ酸置換は、極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性、及び/又は関与する残基の両親媒性の類似性に基づいて行うことができる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸として、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニン;中極性アミノ酸として、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミン酸;正電荷(塩基性)アミノ酸として、アルギニン、リジン及びヒスチジンが挙げられ;負電荷(酸性)アミノ酸として、アスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられる。
例えば、置換は、脂質アミノ酸(G、A、I、L又はV)が基の別の員で置換され、又は例えば、リジンについてアルギニン、アスパラギン酸についてグルタミン酸、又はアスパラギンについてグルタミンというように、極性残基を別の残基に置換して行うことができる。以下の8つの基のそれぞれが、互いにとって保存的な置換である他の例示的なアミノ酸を含む。
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、スレオニン(T);及び
8)システイン(C)、メチオニン(M)
保存的核酸置換は、前述のように保存的アミノ酸置換になる核酸置換である。
「挿入」又は「欠失」は、本明細書に規定する宿主認識要素のアミノ酸配列にアミノ酸残基を加えること、又は同アミノ酸配列からアミノ酸残基を削除することを指す。挿入は、例えば、約1〜10個の範囲のアミノ酸、特に1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸で行われる。より具体的には、約1、2又は3個のアミノ酸が挿入又は欠失する。アミノ酸の追加は、通常はせいぜい100個、より具体的にはせいぜい80個、より具体的にはせいぜい50個、より具体的にはせいぜい20個のアミノ酸が、本開示の宿主認識要素に加えられる、及び/又は挿入される。
「改変」は、以降に詳しく説明するように、例えば前述のように、本発明の方法によって調製した送達ビヒクルによって実行される本発明の宿主認識要素の未変性の核酸又はアミノ酸配列の変化である。
したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法のステップ(a)で提供される複数の核酸分子は、変異誘発し、例えば、第1宿主細胞に形質転換される前に又は後に変異原に供される。
前述のように、本発明の方法は、ステップ(a)で提供される複数の核酸分子を変異原に供することを含むことができ、それにより少なくとも1つの変異した宿主認識要素をコードする複数の核酸分子を得る。特定の実施形態において、得られる宿主認識要素のそれぞれ1つは、宿主認識要素の内部に含まれる繊維又は尾タンパク質(複数可)の少なくとも1つを変異又は改変することを少なくとも1つ含んでもよい。本発明の方法によって調製した宿主認識要素、例えば、GOTraPを用いて、核酸配列を変異原に暴露するステップを用いて、調製した送達ビヒクルの特定の非限定的な例を図4C、5B及び7に開示する。より具体的には、本発明の宿主認識要素は、少なくとも1つの変異したT7 gp17タンパク質、特に540位において変異を行う変異したT7遺伝子17を含んでもよく、特に、SEQ ID NO.123に示すアミノ酸配列又はそのバリアントもしくは誘導体を含むD540N変異体に示されるように、アスパラギン酸(D又はAsp)をアスパラギン(N又はAsn)で置換する。さらなるいくつかの実施形態において、前記アミノ酸配列は、SEQ ID NO.124に示す核酸又はそのバリアントもしくは誘導体によって示されるように、核酸によってコードされてもよい。さらなるいくつかの実施形態において、宿主認識要素は、540位において変異を有する変異したT7遺伝子17を含んでもよく、特にSEQ ID NO.162に示すアミノ酸配列又はそのバリアントもしくは誘導体を含みうるD540Y変異体に示されるように、アスパラギン酸(D又はAsp)をチロシン(Y又はTyr)で置換する。さらなるいくつかの実施形態において、前記アミノ酸配列は、SEQ ID NO.163に示す核酸又はそのバリアントもしくは誘導体によってコードされてもよい。さらなるいくつかの実施形態において、宿主認識要素は、541位において変異を有する変異したT7遺伝子17を含んでもよく、特にSEQ ID NO.164に示すアミノ酸配列又はそのバリアントもしくは誘導体を含みうるS541R変異体に示されるように、セリン(S又はSer)をアルギニン(R又はArg)で置換する。さらなるいくつかの実施形態において、前記アミノ酸配列は、SEQ ID NO.165に示す核酸又はそのバリアントもしくは誘導体によってコードされてもよい。さらなるいくつかの実施形態において、宿主認識要素は、479位において変異を有する変異したT7遺伝子17を含んでもよく、特にSEQ ID NO.125に示すアミノ酸配列又はそのバリアントもしくは誘導体によって示されるように、アミノ酸配列を含みうるG479S変異体に示されるように、グリシン(G又はGly)をセリン(S又はSer)で置換する。さらなるいくつかの実施形態において、前記アミノ酸配列は、SEQ ID NO.126に示す核酸又はそのバリアントもしくは誘導体によってコードされてもよい。さらに、宿主認識要素は、ファージT7に由来する変異した尾繊維gp12、特に、733位において変異を有するT7 gp12を含んでもよく、特にSEQ ID NO.127に示すアミノ酸配列又はそのバリアントもしくは誘導体によって示されるように、アミノ酸配列を含みうるG733D変異体に示されるように、グリシン(G又はGly)をアスパラギン酸(D又はAsp)で置換する。さらなるいくつかの実施形態において、前記アミノ酸配列は、SEQ ID NO.128に示す核酸又はそのバリアントもしくは誘導体によってコードされてもよい。さらなるいくつかの実施形態において、宿主認識要素は、106位において変異を有する変異したT7遺伝子11を含んでもよく、特にSEQ ID NO.129に示すアミノ酸配列又はそのバリアントもしくは誘導体を含みうる R106Q変異体に示されるように、アルギニン(R又はArg)をグルタミン(Q又はGln)で置換する。さらなるいくつかの実施形態において、前記アミノ酸配列は、SEQ ID NO.130に示す核酸又はそのバリアントもしくは誘導体によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、宿主認識要素は、40位において変異を有する変異したT7遺伝子11を含んでもよく、特にSEQ ID NO.131に示すアミノ酸配列又はそのバリアントもしくは誘導体を含みうる A40T変異体に示されるように、アラニン(A又はAla)をスレオニン(T又はThr)で置換する。さらなるいくつかの実施形態において、前記アミノ酸配列は、SEQ ID NO.132に示す核酸又はそのバリアントもしくは誘導体によってコードされてもよい。さらなるいくつかの実施形態において、宿主認識要素は、487位において変異を有する変異したT7遺伝子12を含んでもよく、特にSEQ ID NO.133に示す核酸配列又はそのバリアントもしくは誘導体を含みうるD487N変異体に示されるように、アスパラギン酸(D又はAsp)をアスパラギン(N又はAsn)で置換する。さらなるいくつかの実施形態において、前記アミノ酸配列は、SEQ ID NO.134に示す核酸又はそのバリアントもしくは誘導体によってコードされてもよい。さらなるいくつかの実施形態において、宿主認識要素は、694位において変異を行う変異したT7遺伝子12を含んでもよく、特にSEQ ID NO.158又はその誘導体によって示されるように、アミノ酸配列を含みうるS694P変異体に示されるように、セリン(S又はSer)をプロリン(P又はPro)で置換する。いくつかのさらなる実施形態において、前記アミノ酸配列は、SEQ ID NO.159に示す核酸又はそのバリアントもしくは誘導体によってコードされてもよい。さらに、宿主認識要素は、変異したT7遺伝子12を含んでもよく、T7遺伝子12は、694位において変異を有し、特に、セリン(S又はSer)をプロリン(P又はPro)で置換し、及び733位における追加の変異を有し、、特にSEQ ID NO.160に示すアミノ酸配列又はそのバリアントもしくは誘導体によって示されるように、アミノ酸配列を含みうる変異体であるS694P−G733D変異体に示されるように、グリシン(G又はGly)をアスパラギン酸(Asp又はD)で置換する。いくつかのさらなる実施形態において、前記アミノ酸配列は、SEQ ID NO.161に示す核酸又はそのバリアントもしくは誘導体によってコードされてもよい。さらなるいくつかの実施形態において宿主認識要素は、580位において変異を有する変異したT7遺伝子12を含んでもよい。しかしながら、この変異は同位置のリジン残基(K580K)になるサイレント変異である。いくつかの実施形態において、このT7遺伝子12 K580Kは、SEQ ID NO.135に示す核酸又はそのバリアントもしくは誘導体によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において宿主認識要素は、694位及び487位において変異を有する変異したT7遺伝子12、特にS694P、D487N変異を含んでもよい。このような変異体は、SEQ ID NO.209に示すアミノ酸配列又はそのバリアントもしくは誘導体を含んでもよい。いくつかのさらなる実施形態において、前記アミノ酸配列は、SEQ ID NO.210に示す核酸又はそのバリアントもしくは誘導体によってコードされてもよい。さらなるいくつかの実施形態において宿主認識要素は、694位、487位及び580位において変異を有する変異したT7遺伝子12、特にS694P、D487N及び変異K580Kを含んでもよい。このような変異体は、SEQ ID NO.209に示すアミノ酸配列又はそのバリアントもしくは誘導体を含んでもよい。いくつかのさらなる実施形態において、前記アミノ酸配列は、SEQ ID NO.211に示す核酸又はそのバリアントもしくは誘導体によってコードされてもよい。さらに、いくつかの実施形態において、本発明の変異体は、非コード領域に変異を有してもよい。より具体的には、いくつかの実施形態において、本発明の宿主認識要素をコードする核酸配列は、YpsP−Gバクテリオファージ又はそのバリアントもしくは変異体に由来するgp17遺伝子、例えば、gp17の開始ATGコドンに対して−9bp上流のG(グアニン)からA(アデニン)の変異を有するgp17遺伝子を含んでもよい。さらにいくつかの実施形態において、gp17遺伝子は、SEQ ID NO.136によって示す核酸配列を含んでもよい。さらなるいくつかの他の実施形態において、本発明の宿主認識要素は、YpsP−Gバクテリオファージに由来するgp17遺伝子、例えば、gp17の開始ATGコドンに対して−10bp上流のA(アデニン)からG(グアニン)の変異を有するgp17遺伝子を含んでもよい。さらにいくつかの実施形態において、前記gp17遺伝子は、SEQ ID NO.137によって示す核酸配列を含んでもよい。本発明の送達ビヒクルに関連してより詳細に説明するように、特に、本発明の改変バクテリオファージ、その宿主認識要素は、未変性であっても、本明細書に開示する変異の少なくとも1つ、又はその組み合わせを含んでもよい異なるバクテリオファージの異なるタンパク質(例えば、gp11、12、17)を含んでもよい。
本明細書に記載の方法、キット及び組成物のいくつかの実施形態において、宿主認識要素は、少なくとも1つのタンパク質、少なくとも2つのタンパク質、少なくとも3つのタンパク質又はそれ以上の数のタンパク質、特に、宿主受容体と相互作用する構造的バクテリオファージタンパク質(複数可)を含んでもよい。いくつかの実施形態において、このような構造的バクテリオファージタンパク質は、バクテリオファージの尾領域に存在するタンパク質(複数可)であってもよい。技術分野で周知のように、バクテリオファージにおいて、尾は、大多数のファージに存在するタンパク質複合体であり、宿主認識及びゲノム送達に関与する。2つの主要な特徴が尾構造によってもたらされる。尾は、DNA放出のチャンネルを形成する中心管状構造を有し、宿主認識の最初のステップに欠かせない繊維又はスパイクによって囲まれている。例えば、T7ファージの尾は、gp11(アダプター)の十二量体(すなわち12個のコピー)、及びgp12(ノズル)の六量体(すなわち6個のコピー)から構築され、そこにgp17の6つの三量体が付着する。T7の6つの尾繊維がアダプターとノズルの間のインターフェースに付着し、そのため、両方のタンパク質に接触する。アダプターリングは、gp8(8)の12個のサブユニットから成るポータルと相互作用することによって、前形成された尾をプロヘッドに付着させる役割を担う。バクテリオファージの尾末端で局在化したバクテリオファージ成分は、「尾タンパク質」又は「尾−チューブタンパク質」(例えば、gp11及びgp12を指す)及び尾繊維(gp17を指す)として分類することができる。前述のように、本発明の宿主認識要素は、変異の組み合わせ、特に、本発明に開示する変異の組み合わせを含みうる本発明に開示するバクテリオファージに由来するこれらのタンパク質の少なくとも1つを含みうる。
したがって、バクテリオファージの尾末端で局在化したバクテリオファージ成分は、尾タンパク質(例えば、gp11及びgp12を指す)及び尾繊維(gp17を指す)として分類することができる。特定の実施形態において、本発明の宿主認識要素は、少なくとも1つの尾繊維又は少なくとも1つの尾タンパク質を含んでもよい。
いくつかの実施形態において、前記バクテリオファージの尾領域に存在する少なくとも1つのタンパク質は、尾タンパク質及び繊維タンパク質であってもよい。
特定の実施形態において、本明細書に記載の宿主認識要素は、gp11、gp12及びgp17の少なくとも1つ、又はその組み合わせを含んでもよい。いくつかの特定の非限定的な実施形態において、これらのタンパク質は、限定されないが、T7 gp17、gp11又はgp12、本明細書に記載のその変異体、又は以下に説明する未変性又は変異した異種バリアント、又はその組み合わせであってもよい。
本明細書に規定する標的細胞を感染させる自然発生のバクテリオファージの尾領域に存在するタンパク質は、特に、本発明の宿主認識要素の部分として、及びその組み合わせとして本開示に含まれる。特に、本開示は、T7様バクテリオファージの尾領域(例えば、「尾タンパク質」又は「尾−チューブタンパク質」)に存在するタンパク質に関する。
様々なバクテリオファージ(T7 gp17異種タンパク質)の繊維タンパク質のアミノ酸配列の特定の非限定的な例をSEQ ID NO:1−SEQ ID NO:9及びSEQ ID NO:49、55、61、67、73及び79によって示す。以降に開示する方法において、本明細書で使用する本発明の方法によって単離され、識別される宿主認識要素は、gp17タンパク質、又は任意の相同体、オルソログ、又はその改変(複数可)又はバリアントを指してもよい。このようなgp17について特定の非限定的な例を表2に提供する(実験手順の節で開示し、それぞれのコード核酸配列を添付の配列表に記載する)。
言い換えれば、いくつかの実施形態において、本開示に係る宿主認識要素は、NP_042005.1(SEQ ID NO:1で示される)、YP_002003979.1(SEQ ID NO:2で示される)、AFK13534.1(SEQ ID NO:3で示される)、NP_523342.1(SEQ ID NO:4で示される)、AFK13438.1(SEQ ID NO:5で示される)、YP_001949790.1(SEQ ID NO:6で示される)、YP_004306691.1(SEQ ID NO:7で示される)、NP_813781.1(SEQ ID NO:8で示される)、YP_002003830.1(SEQ ID NO:55で示される)、YP_009196379.1(SEQ ID NO:49で示される)、YP_009226215.1(SEQ ID NO:9で示される)、YP_003347555.1(SEQ ID NO:61で示される)、YP_003347643.1(SEQ ID NO:67で示される)、YP_009215498.1(SEQ ID NO:73で示される)、NP_877477.1(SEQ ID NO:79で示される)から選択される受託番号を有するアミノ酸配列を含む繊維タンパク質gp17又はその改変もしくはフラグメントを含んでもよい。
前述のgp17様タンパク質のアミノ酸配列をコードする対応する核酸配列は、SEQ ID NO:25(腸内細菌ファージT7)、SEQ ID NO:26(腸内細菌ファージ13a)、SEQ ID NO:27(エルシニアファージYpsP−G)、SEQ ID NO:28(腸内細菌ファージT3)、SEQ ID NO:29(エルシニアファージYpP−R)、SEQ ID NO:30(サルモネラファージphiSG−JL2)、SEQ ID NO:31(サルモネラファージVi06)、SEQ ID NO:32(シュードモナスファージgh−1)、SEQ ID NO:33(クレブシエラファージK11)、SEQ ID NO:50(エンテロバクターファージphiEap−1)、SEQ ID NO:56(エンテロバクターファージE−2)、SEQ ID NO:62(クレブシエラファージKP32)、SEQ ID NO:68(クレブシエラファージKP34)、SEQ ID NO:74(クレブシエラファージvB_KpnP_KpV289)及びSEQ ID NO:80(シュードモナスファージphiKMV)によって示される。特定の実施形態において、本明細書に規定する繊維タンパク質は、gp17であってもよい。
特定の実施形態において、本開示の宿主認識要素は、T7遺伝子産物17(gp17)を含みうる。T7 gp17は、SEQ ID NO:1によって示され、SEQ ID NO:25によって示される核酸配列によってコードされ、6つの尾繊維を形成し、それぞれがgp17のホモ三量体から成る。gp17尾繊維は、Escherichia coli LPSに最初に特異的に付着する役割を担うと考えられる。タンパク質三量体は、アミノ−末端尾−付着ドメイン、細長いシャフト、及びいくつかのノジュール(10)から成るカルボキシル末端ドメインから成る捻じれた繊維を形成する。
したがって、本発明の宿主認識要素は、以前に記述した変異したgp17、あるいは自然発生又は変異した異種gp17タンパク質、例えば、表2に開示するgp17タンパク質のそれぞれを含んでもよい。本発明の第2態様で詳細に示すように、これらの宿主認識要素は、本発明で調製した送達ビヒクルにトランスで提供してもよい。
いくつかの実施形態において、本明細書に規定する本発明の宿主認識要素の内部に含まれる尾タンパク質は、gp11及びgp12の少なくとも1つであってもよい。
様々なバクテリオファージ(T7 gp11及びgp12異種タンパク質)の尾タンパク質のアミノ酸配列の特定の非限定的な例を、実験手順において、以下の表2のSEQ ID NO:10−SEQ ID NO:19及びSEQ ID NO:45、47、51、53、57、59、63、65、69、71、75及び77に示す(核酸配列をコードするそれぞれを添付の配列表に記述し、表により示す)。
言い換えれば、本開示の宿主認識要素は、NP_041999.1(SEQ ID NO:10で示される)、YP_004306685.1(SEQ ID NO:11で示される)、YP_001949784.1(SEQ ID NO:12で示される)、NP_813775.1(SEQ ID NO:13で示される)及びYP_002003824.1(SEQ ID NO:14で示される)、YP_009196373.1(SEQ ID NO:45で示される)、YP_009226221.1(SEQ ID NO:51で示される)、YP_003347549.1(SEQ ID NO:57で示される)、YP_003347638.1(SEQ ID NO:63で示される)、YP_009215492.1(SEQ ID NO:69で示される)及びNP_877472.1(SEQ ID NO:75で示される)から選択される受託番号を有するアミノ酸配列を有する尾タンパク質gp11又はその改変、バリアントもしくはフラグメントを含んでもよい。
特定の実施形態において、前述のgp11様タンパク質のアミノ酸配列をコードする対応する核酸配列は、SEQ ID NO:34(腸内細菌ファージT7)、SEQ ID NO:35(サルモネラファージVi06)、SEQ ID NO:36(サルモネラファージphiSG−JL2)、SEQ ID NO:37(シュードモナスファージgh−1)、SEQ ID NO:38(クレブシエラファージK11)、SEQ ID NO:46(腸内細菌ファージphiEap−1)、SEQ ID NO:52(腸内細菌ファージE−2)、SEQ ID NO:58(クレブシエラファージKP32)、SEQ ID NO:64(クレブシエラファージKP34)、SEQ ID NO:70(クレブシエラファージvB_KpnP_KpV289)及びSEQ ID NO:76(シュードモナスファージphiKMV)によって示される。
さらに、実施形態は、NP_042000.1(SEQ ID NO:15で示される)、YP_004306686.1(SEQ ID NO:16で示される)、YP_001949785.1(SEQ ID NO:17で示される)、YP_002003825.1(SEQ ID NO:18で示される)及びNP_813776.1(SEQ ID NO:19で示される)、YP_009196374.1(SEQ ID NO:47で示される)、YP_009226220.1(SEQ ID NO:53で示される)、YP_003347550.1(SEQ ID NO:59で示される)、YP_003347639.1(SEQ ID NO:65で示される)、YP_009215493.1(SEQ ID NO:71で示される)及びNP_877473.1(SEQ ID NO:77で示される)から選択される受託番号を有するアミノ酸配列を有する尾タンパク質gp12又はその改変、又はフラグメントを含む本開示の宿主認識要素を指す。
いくつかの実施形態において、前述のgp12様タンパク質のアミノ酸配列をコードする対応する核酸配列は、SEQ ID NO:39(腸内細菌ファージT7)、SEQ ID NO:40(サルモネラファージVi06)、SEQ ID NO:41(サルモネラファージphiSG−JL2)、SEQ ID NO:42(クレブシエラファージ K11)、SEQ ID NO:43(シュードモナスファージ gh−1)SEQ ID NO:48(腸内細菌ファージphiEap−1)、SEQ ID NO:54(腸内細菌ファージE−2)、SEQ ID NO:60(クレブシエラファージKP32)、SEQ ID NO:66(クレブシエラファージKP34)、SEQ ID NO:72(クレブシエラファージvB_KpnP_KpV289)及びSEQ ID NO:78(シュードモナスファージphiKMV)によって示される。
本開示の他の特定の実施形態において、宿主認識要素は、T7遺伝子産物11(SEQ ID NO:10で示されるアミノ酸配列を有し、及びSEQ ID NO:34で示される核酸配列でコードするT7 gp11)及び/又はT7遺伝子産物12(SEQ ID NO:15で示されるアミノ酸配列を有し、及びSEQ ID NO:39で示される核酸配列でコードするgp12)を含みうる。
前述のように、本明細書に規定する尾及び繊維タンパク質は、同じバクテリオファージ(又は他の送達ビヒクル)、特に変異した、さもなくば修飾タンパク質の何れかであってもよい。あるいは、認識要素の内部に含まれるこれらの尾又は繊維タンパク質は、本明細書に規定する少なくとも1つのバクテリオファージに由来してもよく、したがって、使用する宿主認識要素を含むバクテリオファージに対して異種性のタンパク質(複数可)として考えてもよい。これらのバクテリオファージは、本発明の他の態様に関連して本明細書により詳細に記述する。このような異種タンパク質は、変異されてもよいし、未変性の野生型形態であってもよい。
尾及び繊維タンパク質は、本発明によって開示されるバクテリオファージ、特に送達ビヒクル及びその組み合わせとして本明細書に示すバクテリオファージに由来してもよいことが理解される。
本発明の宿主認識要素が、変異体、特に本発明に開示する変異体又は本明細書に開示する組み合わせ又は変異体を含んでもよいことがさらに理解される。そのため、本発明の宿主認識要素は、本明細書に開示するタンパク質、特に、バクテリオファージのgp11、gp12、gp17、特に本明細書に開示するgp11、gp12、gp17又はその相同体を含んでもよい。「相同体」という用語は、本発明に規定するアミノ酸配列に最小の相同性、特に、例えば、認識要素のアミノ酸配列、又はgp11、gp12、gp17、又は前述に構造的に規定した本明細書に開示する変異体と、具体的には少なくとも約50%、より具体的には少なくとも約75%、さらに具体的には少なくとも約85%、最も具体的には少なくとも約95%の全体配列の相同性を保持するアミノ酸配列(ポリペプチド)を規定するために使用される。
前述に示すように、本開示は、前述のように、少なくとも1つの宿主認識要素又はそのタンパク質(例えば、gp11、gp12、gp17又はその組み合わせの少なくとも1つ)、又はその変異体、バリアント又はフラグメントをコードする複数の核酸分子を提供する。これらの核酸分子は、少なくとも1つのパッケージングシグナル及び選択可能な要素をコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含む。「複数」という用語は、本明細書に規定するように、少なくとも1つ、少なくとも2つ、3つ、又はそれ以上の核酸分子、特に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上、20、30、40、50、60、70、80、90、100又はそれ以上、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、750、800、850、900、950、1000又はそれ以上、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000又はそれ以上、10、000、20、000、30、000、40、000、50、000、60、000、70、000、80、000、90、000、100、000又はそれ以上、106、107、108、109、1010又はそれ以上の核酸分子を指す。ステップ(a)で提供する核酸分子は、直線又は環状のプラスミドDNAとして提供することができる。さらなる実施形態において、当該分子は、プラスミドライブラリ、ファージミドライブラリ又は組み合わせのライブラリとして提供することができる。
前述に示したように、本発明で提供する核酸分子は、少なくとも1つの宿主認識要素、パッケージングシグナル及び少なくとも1つの選択可能な要素、又は前記要素をコードする核酸分子を含む、及び/又は発現する細胞を識別し、及び/又は選択することができる指示要素を含む。したがって、このような選択可能な要素は、検出可能部分、検出器、又は指示器であってもよく、あるいは、選択可能なマーカー又は要素であってもよい。選択的要素(本明細書では「選択可能な要素」とも記述する)は、利点、例えば増殖の利点、又は生存の利点、又は他のパラメータを提供する遺伝子(又は複数の遺伝子)であってもよい。非限定的な例は、選択可能なマーカーとして抗生物質耐性遺伝子の使用に関する。これらの遺伝子は、耐性を提供し、又は言い換えれば、細胞、特に細菌の抗菌薬に対する感受性を阻害、減少、抑制又は弱める。
「抗菌薬」という用語は、本明細書で使用する場合、抗菌作用(殺菌性又は静菌性の何れか)、すなわち、増殖を抑制し、及び/又は細菌、例えばグラム陽性菌及びグラム陰性菌を殺傷する能力を有する属性を指す。抗菌薬は、抗菌薬がない場合と比べて、少なくとも約10%、20%、30%又は少なくとも約40%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約60%又は少なくとも約70%又は70%以上、例えば、75%、80%、85%、90%、95%、100%、又は30%と70%以上の間の整数の細菌の増殖を抑制し、生存率を減少させる薬剤であってもよい。別の方法で言い換えれば、抗菌薬は、抗菌薬がない場合と比べて、少なくとも約30%又は少なくとも約40%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約60%又は少なくとも約70%又は70%以上、又は30%と70%以上の間の整数の細菌等の細菌集団を減少させる剤である。一実施形態において、抗菌薬は、特に細菌細胞を標的にする剤である。別の実施形態において、抗菌薬は、細菌細胞に特に発現する経路を改変(すなわち阻害、又は活性化又は増加)する。抗菌薬として、化学物質、ペプチド(すなわち抗菌ペプチド)、ペプチド模倣、属性又は部分、又はそのハイブリッドの類似体、限定されないが、合成及び自然発生の非タンパク質性属性を含むことができる。
いくつかの実施形態において、抗菌薬は化学的部分を有する小分子である。例えば、化学的部分は、非置換又は置換アルキル、芳香族又はマクロライドを含むヘテロシクリル部分、レプトマイシン及び関連する自然産物又はその類似体を含む。抗菌薬は、望ましい作用及び/又は特性を有することが知られている属性であってもよく、又は多様な化合物のライブラリから選択することができる。
したがって、いくつかの実施形態において、複数の核酸分子として提供される核酸分子は、前述のように少なくとも1つの宿主認識要素、少なくとも1つのパッケージングシグナル及び少なくとも1つの抗生物質耐性遺伝子を含む。
「抗生物質耐性遺伝子」というフレーズは、本明細書で使用する場合、例えば、前記抗生物質化合物を破壊する酵素のためにコードすることによって、抗生物質化合物が細菌に進入するのを防ぎ、活性して抗生物質化合物を排出する表面タンパク質のためにコードすることによって、又は抗生物質の標的の変異形態になり、それによって抗生物質機能を防ぐことによって、抗生物質に対する耐性を与える遺伝子を指す。
本発明に係る選択的要素として有用な抗生物質耐性遺伝子として、限定されないが、ホスホマイシン耐性遺伝子fosB、テトラサイクリン耐性遺伝子tetM、カナマイシンヌクレオチジルトランスフェラーゼaadD、二官能基アミノグリコシド修飾酵素遺伝子aacA−aphD、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼcat、ムピロシン耐性遺伝子ileS2、バンコマイシン耐性遺伝子vanX、vanR、vanH、vraE、vraD、メチシリン耐性因子femA、fmtA、mecl、ストレプトマイシンアデニリルトランスフェラーゼspcl、spc2、antl、ant2、ペクチノマイシンアデニリルトランスフェラーゼspd、ant9、aadA2、テルル酸耐性遺伝子tehA、tehB、kilA、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ耐性遺伝子hpt、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII耐性遺伝子npt II、栄養要求性選択可能マーカー遺伝子URA3、MET15/17、LYS2、HIS3、LEU2、TRP1及びMET15、アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子APRT、チミジンキナーゼ遺伝子TK1、ゼオシン耐性遺伝子sh ble及び他の耐性遺伝子が挙げられる。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の選択可能な要素が抗生物質耐性遺伝子である場合、選択ステップ(d)は、当該宿主細胞、特に、前記抗生物質再選択可能なマーカーの存在下で「第2宿主細胞」を増殖させることを含みうる。
選択的要素という用語は選択的条件(複数可)、例えばlac遺伝子下において、別の増殖利点を提供する遺伝子(又は複数の遺伝子)も含むことが理解される。このように、選択ステップ(d)は、対応する条件(例えば、ラクトース、X−gal等)、又は真核生物の宿主細胞ではチミジンキナーゼ下で前記宿主細胞を増殖させることを含む。
さらに、本発明は、視覚化され、又は測定され、指示器として本明細書で使用される他の選択可能な要素又はマーカーを含んで、選択可能要素及び核酸分子を望ましい宿主細胞に形質導入することができる付着した適合性の宿主認識要素を含み、又は有する細胞を区別し、識別し、及び/又は選択することができることが理解される。
「選択する」という用語は、本明細書で記述する場合、送達ビヒクル(例えばバクテリオファージ)バリアントによる選択可能な要素を含む核酸配列を注入し、又は形質導入することによって得られる選択可能な要素を含む宿主細胞(特に「第2宿主細胞(複数可)」)を単離するプロセスを指す。選択可能な要素を含む宿主細胞の選択は、例えば、抗生物質耐性遺伝子を有するバクテリオファージ(複数可)によって感染した宿主細胞を選択するために、抗生物質を含む培地を用いることによって、送達ビヒクルによって運ばれる選択可能な要素に対応する選択条件下で、行うことができる。指示器である選択可能な要素の場合、第2宿主細胞は、セルソーティングに適した方法、又は選択可能な要素を含む細胞を細胞分離する又は富化する方法によって、選択することができる。
前述のように、本発明が提供する核酸配列は、パッケージングシグナルを含む。「パッケージングシグナル」という用語は、本明細書に規定する場合、例えば、ウイルス又はバクテリオファージゲノムを、感染サイクルの最中に事前に形成されたカプシド(エンベロープ)にパッケージングすることを指示するウイルス又はバクテリオファージゲノムのヌクレオチド配列を指す。
いくつかの特定の実施形態において、パッケージングシグナルは、T7パッケージングシグナル、特に、以下にSEQ ID NO:20、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22で示されるT7 161−207、T7 38981−39364及びT7 39718−39937又はその組み合わせであってもよい。組み合わせについて非限定的な例は、SEQ ID NO:23で示される。前述のパッケージングシグナルは、特にT7に適合性のパッケージングシグナルについての非限定的な例である。これらのパッケージングシグナルは、したがって、本発明の他の態様と関連して記述するように、特に、本発明の宿主認識要素を含む送達ビヒクルに関して、T7を本発明の送達ビヒクルとして使用する場合に、使用することができる。しかしながら、本発明に開示するバクテリオファージは、送達ビヒクルとして使用することができ(例えば、M13、P1、ブドウ球菌ファージ等)、したがって、使用するファージ(複数可)に適合性のパッケージングシグナルを適用することができ、当該パッケージングシグナルは本発明に含まれることが理解される。
前述のように、少なくとも1つの宿主認識要素又はそのバリアントもしくは変異体をコードする核酸分子は、当該宿主認識要素のタンパク質又はフラグメントもコードすることができる。
より具体的には、核酸配列は、前に開示した尾及び繊維タンパク質、又はその組み合わせの少なくとも1つをコードすることができる。例えば、gp11,gp12及びgp17の少なくとも1つ;少なくとも1つのgp11、少なくとも1つのgp12及び少なくとも1つのgp17;少なくとも1つのgp11及び少なくとも1つのgp12;少なくとも1つのgp11及び少なくとも1つのgp17;少なくとも1つのgp12及び少なくとも1つのgp17、又はその変異体、バリアント、フラグメントもしくは組み合わせ、特に本発明に開示するバリアント又は変異体。
「フラグメント」は、本明細書で使用する場合、特定の領域のアミノ酸又はDNA配列の部分を構成する。ペプチド配列のフラグメントは、特定の領域より短い少なくとも1つのアミノ酸であり、DNA配列のフラグメントは、特定の領域より短い少なくとも1つの塩基対である。「バリアント」及び「変異体」は、本明細書で使用する場合、変異原の使用と関連する前に、本明細書で示される少なくとも1つの変異又は置換を有する宿主認識要素(複数可)又はそのタンパク質を指すことがさらに理解される。しかしながら、変異体という用語は、本明細書で使用する場合、変異原が存在しない場合に発生しうる(又は富化ステップの最中に単離されうる)自発的な変異も含む。
さらに、本発明の方法は、本明細書に規定する複数の核酸分子を含む第1宿主細胞を、前記送達ビヒクルの伝播を可能にする条件下で、少なくとも1つの前記宿主認識要素又はそのタンパク質もしくはフラグメントをコードする不完全な核酸配列(複数可)を有する送達ビヒクルに接触させ、前記第1宿主細胞に伝播した得られた送達ビヒクルバリアントを回収するステップを伴う。
「接触する」という用語は、バクテリオファージが宿主細胞に直接的又は間接的に接触するように、送達ビヒクル、例えば、本発明のバクテリオファージの位置を決めることを指す。そのため、本発明は、本発明で使用する送達ビヒクルを望ましい表面に適用することと、及び/又は細菌細胞に直接適用することの両方を考慮している。このような接触によって、送達ビヒクル、特に本発明で使用するバクテリオファージによる宿主細胞の感染を導く。
「伝播」という用語は、本明細書に規定する場合、新しい個別の生物(すなわち、送達ビヒクル、例えばバクテリオファージ)が、その「親」から産生されるプロセスを指す。本明細書で使用する送達ビヒクルの伝播を可能にする条件は、とりわけ、温度は(例えば、ファージ及び宿主に応じて、4〜100℃の範囲の温度、特に、T7の場合は10〜42℃の範囲の温度、より具体的には37℃)、インキュベーション時間は、使用するファージ及び宿主に応じて10分〜48時間(T7の場合は10〜120分のインキュベーション時間を適用することができる)、培地は、以下の実施例に示すように、送達ビヒクル(例えばファージ)による宿主細胞の感染に適した技術分野で周知の培地で、送達ビヒクルに受動的な第1宿主細胞を、少なくとも1つの送達ビヒクルでインキュベート又は接触させることを指す。
伝播したファージの回収(又は収集)は、例えば、クロロホルム及び以下に例示する遠心分離を使用して、技術分野で周知の方法で実施することができる。人工的又はインビトロ系を「第1宿主細胞」として使用する場合、パッケージした得られたバリアント(例えば、インビトロパッケージング)はその後回収することが理解される。
本開示の方法は、選択的条件下、又は選択可能な要素を検出することができる条件下で、本明細書に記載の方法によって得られる潜在的に適合性の送達ビヒクルバリアントに第2宿主細胞を接触させ、それによって目的の核酸分子を目的の標的細胞に送達することができる少なくとも1つの適合性の宿主認識要素を含む送達ビヒクルバリアント(複数可)を単離することをさらに伴う。「適合性の」という用語は、送達ビヒクル(例えば、バクテリオファージ)が、認識することができる宿主認識要素を運び、それにより本発明が提供する第2宿主細胞によって表される標的宿主細胞を感染させることを意味する。このようなバクテリオファージは、目的の核酸分子を標的細胞に形質導入することもできる。
前述のように、本開示は、宿主認識要素又はステップ(d)で選択した宿主細胞から少なくとも1つの宿主認識要素をコードする核酸配列を単離し、特徴付け、第2宿主細胞及び獲得した選択的要素をこれらの細胞に感染させることを可能にすることに関する。それにより、適合性の宿主認識要素をコードする核酸配列を得る。より具体的には、「特徴付け」は、本明細書で使用する場合、適合性の認識要素を単離、精製、(例えば、制限マップを使用した)マッピング、シークエンシングすることを伴う方法を含む。
本発明は、適合性であり、したがって、望ましい分子を認識し、目的の標的宿主細胞(複数可)に送達することができる少なくとも1つの宿主認識要素の調製、識別、特徴付け、改善及び最適化する方法を提供する。以下に記述する宿主細胞は、宿主認識要素を単離する態様、ならびに本発明に記載の態様及び方法、例えば、本発明の宿主認識要素を含む送達ビヒクル(複数可)を調製する方法に適用することができる。
前述のように、本発明は、目的の望ましい標的宿主細胞に適合性の本発明の宿主認識要素を含む送達ビヒクルの効率的な調製方法を提供する。いくつかの実施形態において、適切な宿主認識要素を選択するために、「第2宿主細胞」を望ましい標的宿主細胞についてのモデルとして使用する。したがって、さらにいくつかの実施形態において、第2宿主細胞は、目的の標的細胞(複数可)に同一であっても、類似していてもよい。
いくつかの実施形態において、本開示に係る第2宿主細胞及び目的の前記標的細胞の少なくとも1つは、原核生物及び真核生物宿主細胞の何れか1つである。
「宿主細胞」は、本明細書で使用する場合、技術分野で周知の手順を使用して、裸のDNA又は本明細書に規定する送達ビヒクルで、組み換えで形質転換し、形質導入し、又はトランスフェクトすることができる技術分野で周知の細胞を指す。「形質転換」及び「トランスフェクション」は、核酸媒介性遺伝子導入によって、核酸、例えば裸のDNA又は本明細書に規定する送達ビヒクルをレシピエント細胞に導入することを意味する。
本開示に係る宿主細胞、特に目的の標的宿主細胞は、原核生物(膜結合核又は他の膜結合小器官を欠失している単細胞生物、例えば、細菌、例えば真正細菌及び古細菌)又は真核生物(動物細胞、植物細胞及び真菌細胞を含む膜内部に囲まれた核及び他の小器官を含む細胞)であってもよい。「真核生物細胞」という用語は、本明細書で使用する場合、技術分野で知られており、細胞質に特別な小器官、染色体に組織化された遺伝物質を封入している膜結合核、及び有糸***又は減数***による***の精巧なシステムを含む細胞を有する生物を指す。真核生物細胞の例として、限定されないが、動物細胞、植物細胞、真菌及び原生生物が挙げられる。より具体的には、動物とは動物界(後生動物とも呼ぶ)の多細胞、真核生物であり、脊椎動物と無脊椎動物に大きく分けることができる。脊椎動物は、背骨又は脊椎(脊柱)を有し、魚類、両生類、爬虫類、鳥類及び哺乳動物が挙げられる。背骨のない無脊椎動物として、軟体動物(二枚貝、カキ、タコ、イカ、カタツムリヘビ);節足動物(ヤスデ、ムカデ、昆虫、クモ、サソリ、カニ、ロブスター、エビ);環形動物(ミミズ、ヒル)、線虫(フィラリア、鉤虫)、扁形動物(条虫、肝蛭)、刺胞動物(クラゲ、イソギンチャク、サンゴ)、有櫛動物(クシクラゲ)及び海綿が挙げられる。したがって、本明細書で使用する動物細胞は、前に開示した動物細胞、特に哺乳動物細胞に由来する細胞に関する。
さらに、本発明に係る真核生物の宿主細胞は、植物細胞であってもよい。植物は、主に多細胞であり、植物界の光合成の真核生物を主とする。この用語は、今日では、概して、顕花植物、針葉樹及び他の裸子植物、シダ、ヒカゲノカズラ類、ツノゴケ類、苔類、コケ及び緑藻を含むが紅藻及び褐藻は除外する、緑色植物「clade Viridiplantae」に限定される。植物細胞は、セルロース、ヘミセルロース及びペクチンを含む液胞及び細胞壁を特徴とする。さらに、本発明の方法で標的細胞として使用する真核生物の宿主細胞は、菌類であってもよい。菌類又は真菌類は、酵母及びカビ及びマッシュルーム等の微生物を含む真核生物のグループのメンバーである。
さらなるいくつかの実施形態において、本発明で使用される宿主細胞は原生生物であってもよい。原生生物という用語は、顕微鏡生物、ならびにケルプ、紅藻及び粘菌等の特定の大きな多細胞真核生物のために保持される。本発明の態様で使用することができる原核生物の細胞を以下に記述する。
本発明の方法、及び本発明の態様に記述する方法は、以降で、その異なるステップにおいて宿主細胞を使用することを伴う。これらの宿主細胞は、本発明では、「第1」、「第2」及び「第3」宿主細胞、ならびに目的の標的宿主細胞を指すが(第3宿主細胞は、本発明の宿主認識要素を含む送達ビヒクルの調製に関する他の態様に関連して記述される)、異なる宿主細胞であっても、あるいは同じ宿主細胞であってもよい。いくつかの実施形態において、「第1」宿主細胞又は「産生宿主細胞」は、本発明の方法のステップ(a)で提供する複数の核酸分子によって運ばれ、又は形質転換し、又はトランスフェクションされる細胞である。これらの細胞を宿主認識要素又はそのタンパク質又はフラグメントの多様性を示すため、異なる宿主認識要素の最初のパッケージングのために使用して、宿主認識要素の少なくとも1つのバリアント又はそのタンパク質をそれぞれ有する様々な送達ビヒクル、特にバクテリオファージを得る。いくつかの実施形態において、これらの第1宿主細胞は、本発明で使用する送達ビヒクルに許容的であってもよい。これらのバリアントバクテリオファージは、「第2」宿主細胞を使用して次のステップで選択される。
いくつかのさらなる実施形態において、「第2」宿主細胞は、本明細書で使用する場合、目的の標的宿主細胞であってもよく、又は少なくとも、目的の標的細胞と充分に類似する細胞である。より特定の実施形態において、本発明の方法は、目的の核酸分子を認識し、「第2」宿主細胞によって表される標的細胞に形質導入することができる少なくとも1つの宿主認識要素を有する送達ビヒクルバリアントを識別することに関し、識別することを目的とする。これらの細胞は選択ステップで使用する。これらの「第2」宿主細胞又は目的の宿主細胞は、(前述の)真核生物細胞であってもよいし、原核生物細胞であってもよいことに留意されたい。いくつかのさらなる実施形態において、本発明の方法で使用する「第2」宿主細胞は、標的細胞と同一であっても、類似していてもよい。宿主細胞の非限定的な例は、以下の実施例で使用するΔtrxAΔwaaCであってもよい。さらにいくつかの特定の非限定的な実施形態において、「第2宿主細胞」は、BW25113Δtrx、E.coli ΔtrxA;Sso4727、Shigella Sonnei4727;Sen4510、Salmonella enterica serovar arizonae str.SARC 5;Kpn4718,Klebsiella pneumoniae亜種pneumoniae ATCC 10031;Kpn4800II、Klebsiella pneumoniae亜種pneumoniae ATCC 9997;Ecl4723、Enterobacter cloacae亜種cloacae ATCC 13047;Sen4001、Salmonella enterica亜種enterica serovar Typhimurium str.LT2;K390、クレブシエラ菌種390;Eae4739、Enterobacter aerogenes ATCC 51697;Sen4513、Salmonella enterica PT4;Kpn4719、Klebsiella pneumoniae亜種pneumoniae ATCC13882;及びEco4507、Escherichia coli ATCC 25922であってもよい。本明細書で使用するこれらの宿主細胞は、望ましい目的の標的宿主細胞である臨床的単離体を表すことができる。いくつかの実施形態において、目的の標的宿主細胞を反映することができる「第2宿主細胞」は、特徴付けられた又は特徴付けられていない細胞の同種集団、又は(少なくとも2つの異なる種類、株、単離体等を含む)あるいは特徴付けられた又は特徴付けられていない細胞の異種集団又は混合物を含んでもよい。これらの細胞は、目的の宿主細胞を反映して、周知で識別された細胞又は知られていない細胞であってもよく、目的の宿主細胞を含む生物学的又は環境的試料(感染した対象から得た試料、又はこれらの細胞を含む物質、表面又は物品から得た試料)から単離してもよい。
さらに、特定の実施形態において、本発明の他の態様に関連して使用される「第3」宿主細胞は、本発明の送達ビヒクル、特に標的宿主細胞に適合性の少なくとも1つの宿主認識要素を有する改変バクテリオファージをパッケージング及び作製するための本発明の方法で使用する。いくつかの実施形態において、これらの「第3」宿主細胞は、本発明で作製したビヒクル(例えば改変バクテリオファージ)によって形質導入されるはずの目的の核酸分子を、標的宿主細胞にパッケージングするためにさらに使用することができる。これらの「第3宿主細胞」は、本明細書では、「産生細胞」としても示される(例えば図5A)。
前述のように、「第1」、「第2」及び「第3」宿主細胞及び目的の標的宿主細胞は、前述のように真核生物細胞、又はあるいは原核生物細胞、特に細菌細胞の何れかであってもよい。
いくつかのさらなる実施形態において、「第2」宿主細胞及び目的の「標的宿主細胞」は、原核生物細胞、特に細菌細胞であってもよい。
本開示に係る原核生物細胞は細菌細胞を含む。この文脈における「細菌(bacteria)」(単数形は「bacterium」)は、単一細胞の微生物の種類を指す。本明細書では、用語「細菌(bacterium)」と「微生物(microbe)」は同じ意味である。この用語は、基本的な形状、すなわち、球状(球菌)、桿体(桿菌)、らせん状(スピリルム)、コンマ(ビブリオ)又はコルク抜き(スピロヘータ)ならびに対、鎖又はクラスターで単一細胞として存在する細菌に従う一般的なクラスに属する細菌を含む。
「細菌」という用語は、本明細書で使用する場合、単一細胞として、又は単一細胞のクラスター又は凝集体に存在する原核生物の微生物を指す。より特定の実施形態において、「細菌」という用語は、特に、グラム陽性、グラム陰性又は抗酸性生物を指す。グラム陽性細菌は、細菌分化のグラム染色法で使用するクリスタルバイオレット株を保持するものであると認識することができ、したがって、顕微鏡で紫色に見える。グラム陰性細菌は、陽性識別を可能にするクリスタルバイオレットを保持しない。言い換えれば、「細菌」という用語は、細胞膜の外側の細胞壁のより厚みのあるペプチドグリカン層を有する細菌(グラム陽性)、及び内側の細胞質細胞膜と細菌外膜との間で挟まれた細胞壁の薄いペプチドグリカン層を有する細菌(グラム陰性)に適用する。この用語は、さらに厚いペプチドグリカン層があるためにグラム陽性を染色するディノコッカス等のいくつかの細菌に適用するが、外細胞膜も有し、monoderm(グラム陽性)とdiderm(グラム陰性)間の移動の中間体として示唆される。マイコバクテリウムのような抗酸性生物は、グラム染色等の通常の方法によって染色に抵抗するミコール酸と呼ばれる細胞壁の内側に脂質物質を大量に含む。
目的の標的宿主細胞(「第2」宿主細胞としても使用する)の特に興味深い点は、院内感染に関与する細菌又はこのような細菌の混合物でありうることである。「院内感染」という用語は、病院での感染を指し、すなわち、病院環境、例えば、表面及び/又は医療従事者による発症が流行する感染症であり、入院中の患者に感染する。院内感染は、抗生物質に耐性のある生物によって潜在的に発生する感染症である。院内感染は、罹患率及び死亡率に影響を与え、かなりの経済的負荷が掛かる。抗生物質耐性の増加レベル及び入院患者の病気の重症率の増加の点で、この問題は早急の解決策を必要とする。
一般的な院内の生物として、Clostridium difficile、methicillin−resistant Staphylococcus aureus、coagulase−negative Staphylococci、vancomycin−resistant Enteroccocci、耐性Enterobacteriaceae、Pseudomonas aeruginosa、Acinetobacter及びStenotrophomonas maltophiliaが挙げられる。
院内感染病原体は、グラム陽性細菌(Staphylococcus aureus、Coagulase−negative staphylococci)、グラム陽性球菌(Enterococcus faecalis及びEnterococcus faecium)、グラム陰性桿状生物(Klebsiella pneumonia,Klebsiella oxytoca、Escherichia coli、Proteus aeruginosa、Serratia spp)、グラム陰性桿菌(Enterobacter aerogenes、Enterobacter cloacae)、好気性グラム陰性桿菌(Acinetobacter baumanii、Stenotrophomonas maltophilia)及びグラム陰性好気性桿菌(Pseudomonas maltophiliaとして知られているStenotrophomonas maltophilia)に分けることができる。その中でも、Pseudomonas aeruginosaが非常に重要な院内グラム陰性好気性桿状病原体である。特に、非限定的な実施形態において、目的のこのような標的細胞は、抗生物質耐性標的細胞、又は当該細胞を含む混合物もしくは集団でありうる。「ESKAPE」病原体に適合性の宿主認識要素(複数可)を識別することが特に興味深い。本明細書に示されるように、これらの病原体として、限定されないが、Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumanii、Pseudomonas aeruginosa及びEnterobacterが挙げられる。
したがって、本発明のいくつかの実施形態は、E.coli、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、Streptococcus pyogenes、Clostidium difficile、Enterococcus faecium、Klebsiella pneumonia、Acinetobacter baumanni、及びEnterobacter種(特にESKAPE細菌)の少なくとも1つの株の細菌でありうる標的宿主細胞に関する。
特定の実施形態において、細菌は、Pseudomonas aeruginosa、Streptococcus pyogene、Clostidium difficile及びStaphylococcus aureusの何れか1つであってもよい。
さらなる実施形態において、本発明で示す細菌として、Yersinia enterocolitica、Yersinia pseudotuberculosis、Salmonella typhi、Pseudomonas aeruginosa、Vibrio cholerae、Shigella sonnei、Bordetella Pertussis、Plasmodium falciparum、Chlamydia trachomatis、Bacillus anthracis、Helicobacter pylori及びListeria monocytogensが挙げられる。
他の特定の実施形態において、目的の標的細胞は、E.coli株、特に、O157:H7、腸管凝集性(EAEC)、腸管出血性(EHEC)、腸管侵入性(EIEC)、腸管病原性(EPEC)、腸内毒素原性(ETEC)、びまん付着性(DAEC)E.coliであってもよい。
さらなる実施形態において、本開示に係る原核生物は、E.coli、シュードモナス菌種、特に、Pseudomonas aeruginosa、スタフィロコッカス種、特にStaphylococcus aureus、連鎖球菌、特にStreptococcus pyogenes、サルモネラ菌種、シゲラ菌種、クロストリジウム菌種、特にClostidium difficile、エンテロコッカス菌種、特にEnterococcus faecium、クレブシエラ菌種、特にKlebsiella pneumonia、アシネトバクター菌種、特にAcinetobacter baumanni、エルシニア菌種、特にYersinia pestis及びEnterobacter種又はその変異体、バリアント単離体又は組み合わせの少なくとも1つの細菌細胞であってもよい。さらにいくつかの実施形態において、Campylobacter Jejuni又はその単離体又はバリアントは、「第2細胞」及び/又は本発明に係る目的の標的細胞として、本明細書で使用することができる。
いくつかのさらなる実施形態において、本明細書で使用する第2宿主細胞は、制限宿主であってもよく、当該細胞を感染させるバクテリオファージバリアント(すなわち、使用する送達ビヒクル)は、(自然では)当該制限宿主で伝播することができない。特定の実施形態において、本明細書で使用する「第2宿主細胞」によって表されるように、標的宿主細胞(第2宿主細胞と同一、又は充分に類似するかの何れかである)は制限宿主であってもよいことが理解される。言い換えれば、特定の実施形態において、本明細書に記載の標的細胞は、制限宿主細胞である。いくつかのさらなる実施形態において、本明細書の方法ステップ(c)で使用する第2宿主細胞は、目的の標的細胞、又はその混合物もしくは集団、又は目的の標的細胞と充分に類似する細胞の何れかである細胞であってもよい。
いくつかの実施形態において、「第1」宿主細胞は、目的の標的細胞と異なる宿主細胞であってもよいと理解される。いくつかの実施形態において、第1宿主細胞は細菌細胞である。同様に、「第3」宿主細胞は、目的の宿主細胞と異なっていてもよく、それにより、細菌細胞であってもよいが、「第2」宿主細胞と異なっていてもよい。さらなる実施形態において、「第1」及び「第3」宿主細胞は、類似又は同一の細菌細胞であってもよい。それにもかかわらず、本明細書に記述したように、「宿主細胞」という用語は、本発明の方法、組成物、改変バクテリオファージ及びキットの何れかで使用する宿主細胞を指す場合、人工細胞又は細胞、小胞、細胞小器官及びインビトロのパッケージング系を模倣した系の使用をさらに含む。
本発明は、本発明の方法によって調製し、又は生じた宿主認識要素をさらに含むことが理解される。さらなるいくつかの特定の実施形態において、本発明は、本発明で開示する宿主認識要素又はハイブリッド又は本明細書に開示する変異体をさらに含む。本発明は、本明細書で提供する宿主認識要素の内部に含まれるタンパク質、特に、本明細書で開示する変異gp11、gp12及びgp17変異タンパク質の何れかをさらに含む。
別の態様によって、本発明は、核酸送達ビヒクルを調製する方法に関する。特に、広い宿主範囲を有する送達ビヒクルに関する。より特定の実施形態において、方法は、第1ステップ(a)において、少なくとも1つの宿主認識要素、又はそのバリアント、変異体、タンパク質又はフラグメントをコードする複数の核酸分子(複数可)を提供することを含んでもよい。これらの核酸分子は、少なくとも1つのパッケージングシグナル及び選択可能な要素をコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含むことに留意されたい。次のステップ(b)は、前記複数の核酸分子を含む第1宿主細胞を、前記送達ビヒクルの伝播及び/又はパッケージングを可能にする条件下で、少なくとも1つの不完全な認識要素又はそのタンパク質又はフラグメントをコードする不完全な核酸配列(複数可)を有する少なくとも1つの送達ビヒクルに接触させることを伴う。このステップは、次に、これらの第1宿主細胞に伝播し、及び/又はパッケージした結果として得られる送達ビヒクルバリアントを回収する。次にステップ(c)において、第2宿主細胞(複数可)をステップ(b)で回収した送達ビヒクルバリアントに接触させる。その後、これらの第2宿主細胞は、選択可能な要素を含むステップ(c)で得られる又は生じた細胞について、ステップ(d)で選択される。次のステップ(e)は、少なくとも1つの宿主認識要素又は同要素をコードする核酸配列を、ステップ(d)で選択した宿主細胞から単離し、及び/又は特徴付けして、第2宿主細胞(複数可)に適合性の少なくとも1つの宿主認識要素をコードする核酸配列を得ることを伴う。最後に、ステップ(f)において、ステップ(e)で得た適合性の宿主認識要素をコードする核酸配列を、第3宿主細胞に導入する。核酸配列の細胞への導入は、以降に詳細に説明するように、技術分野で周知の方法(例えば、トランスフェクション、形質導入及び形質転換)によって行うことができることに留意されたい。その後、これらの宿主細胞を、少なくとも1つの不完全な宿主認識要素又はそのタンパク質(複数可)又はフラグメントをコードする不完全な核酸配列を有する少なくとも1つの送達ビヒクルに接触させる。この関連において、以前に規定し、開示した送達ビヒクルは、本明細書に適用することができる。これは、いくつかの実施形態において、ステップ(e)で得た適合性の宿主認識要素を含む前記送達ビヒクルのパッケージング及び/又は伝播を可能にする条件下で行う。したがって、このステップにより、いくつかの実施形態において、第3宿主細胞(複数可)によってトランスに提供されうる当該適合性の宿主認識要素を少なくとも1つ含む送達ビヒクルバリアント(複数可)を得る。本発明の方法で得た送達ビヒクルバリアントは、目的の核酸分子を目的の標的細胞に送達することができる。
前述に説明したように、本開示は、とりわけ、本明細書に記載の複数の核酸分子を含む第1宿主細胞を送達ビヒクルに接触させ、第3宿主細胞を、本開示の方法で得た適合性の宿主認識要素をコードする核酸配列で形質転換することに関する。いくつかの実施形態において、第1及び第3宿主細胞は、以下に記載し、特に本発明の発明者によって例示されるように、細菌細胞であってもよい。いくつかのさらなる実施形態において、宿主細胞は、同種又は株の細菌細胞であってもよい。第1及び第3宿主細胞は、「産生細胞」として、本明細書(例えば図3A、5A)にも示される。
いくつかの実施形態において、第3宿主細胞は、少なくとも1つの宿主認識要素(複数可)(同一であっても異なっていてもよい)をコードする少なくとも1つの核酸配列を含みうる。そのため、本発明は、そのいくつかの実施形態において、このステップで得られ、少なくとも1つ以上の同一又は異なる宿主認識要素を含む送達ビヒクルをさらに含む。特に、少なくとも部分的に、互いに同一であっても異なっていてもよい少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100又はそれ以上、より具体的には1〜10個、さらに特定すると6つの異なる宿主認識要素を含む。少なくとも2つの異なる宿主認識要素を含む場合において、本発明の方法で調製した送達ビヒクルは、目的の少なくとも1つ以上の宿主細胞(複数可)に適合性であってもよい。このような場合では、当該ビヒクルの宿主範囲は拡張しうる。
いくつかの実施形態において、「第1宿主細胞(複数可)」及び「第3宿主細胞(複数可)」の少なくとも1つは、本明細書では、「産生細胞」と呼ぶことができることに留意されたい。いくつかの実施形態において、これらの細胞は、送達ビヒクルの伝播を支持し、したがって、そのパッケージング及び/又は調整及び回収のために使用する。さらにいくつかの実施形態において、本発明の方法は、望ましい標的細胞に適合性の送達ビヒクルを調製するために使用する。いくつかの特定の実施形態において、本発明の方法で使用する「第2宿主細胞(複数可)」は、望ましい標的宿主細胞のモデルとして、目的の望ましい標的宿主細胞と同一又は充分に類似しうる。そのため、本発明の方法は、目的の望ましい標的宿主に特に適合性の送達ビヒクルの調製を目的としている。
しかしながら、「細胞」(例えば、第1、第2、第3、産生細胞及び目的の宿主細胞(複数可))という場合、本発明は、本発明で例示し、開示する真核生物又は原核生物細胞のアドオンで、いくつかの実施形態では、細胞を模倣し、真似る他の系、人工細胞、小胞等を含むことが理解される。
ステップ(b)において、宿主認識要素(複数可)をコードする複数の核酸配列を含む細胞に送達ビヒクルを接触させるステップを示す場合、インビトロのパッケージング系も本発明に含まれることが理解される。したがって、いくつかの実施形態において、複数の核酸配列のパッケージングを可能にする条件で、複数の核酸配列を当該送達ビヒクルに接触させ又は暴露することも可能である。より具体的には、インビトロのパッケージングは、「細胞」として提供することができる水−油エマルジョンに水を滴下しても生じさせることができる。この方法は、ICV((In Vitro compartmentalization)と呼ばれ、タンパク質のインビトロの進化[(Tawfik,D.S.& Griffiths,A.D.Man−made cell−like compartments for molecular evolution.Nat.Biotechnol.16、652−656(1998)]に開発されたが、ファージパッケージングのプラットフォームとしても使用することができる。したがって、いくつかの実施形態において、これらの系は、本発明に適用することができる人工的な系の非限定的な例でありうる。
したがって、いくつかの実施形態において、本発明の方法は、前記送達ビヒクルの宿主範囲を拡張し、又は調整することに特に適用することができることに留意されたい。
本明細書で使用する場合に、宿主範囲の文脈で「拡張する」又は「調整する」という用語は、特定の核酸送達ビヒクルの能力に影響を与え、変化させ、向上させ、調整し、又は変化させて、目的の核酸を認識し、その自然の宿主であるとは考えられない特定の宿主細胞に形質導入することを意味する。
より具体的には、いくつかの実施形態において、核酸送達ビヒクルは、本発明に開示するように、宿主認識要素(複数可)、そのタンパク質、又はその組み合わせの少なくとも1つによって、宿主認識要素(複数可)又はそのタンパク質又はフラグメントの少なくとも1つを置き換えるとき、自然の宿主ではない宿主を認識することができる。特に、他の自然発生の送達ビヒクル(複数可)(例えば異種宿主認識要素又はそのタンパク質)から、あるいは本発明のGoTraPプラットフォームによって実施した変異した又は変化した宿主認識要素で置き換えることによって、宿主認識要素を得る。本発明は、前述の組み合わせ、特に、そのコード領域又は非コード領域の何れかで、少なくとも1つの変異又は少なくとも2つの変異の組み合わせを有することができるハイブリッドビヒクルの使用をさらに含むことが理解される。
より具体的には、このような置換は、(いくつかの実施形態において、不完全な認識要素を有する)本発明の送達ビヒクルによって、宿主認識要素をパッケージングする結果であってもよく、次に、その自然の宿主ではない宿主細胞の認識を可能にし、容易にすることができる。前述したように、置換宿主認識要素は、異なる宿主に特異的な異なる送達ビヒクルから生じた異種要素(複数可)、あるいは、変異され、又は変化して、宿主又は両方の宿主の組み合わせを認識する変化した同種認識要素(複数可)の何れかであってもよい。いくつかの特定の実施形態において、宿主認識要素又は少なくともいくつかの認識要素(複数可)を置換することによって、核酸送達ビヒクルは、その自然の宿主ではない宿主を認識することができる。さらなる実施形態において、このような非自然の宿主は、制限宿主又は非許容宿主であってもよい。
「制限」又は「非許容」という用語は、本明細書で使用するとき、特定の核酸送達ビヒクルによる感染又は浸透、及び/又はその伝播を許容しない又は可能にしない宿主を指す。制限宿主細胞は、特定の核酸送達ビヒクルの浸透を禁止する細胞である。
特定の実施形態において、目的の標的細胞に適合性の宿主認識要素(複数可)を識別し、及び/又は単離する方法では、前記第2宿主細胞は、目的の前記標的細胞(複数可)に同一又は類似してもよい。
選択的ステップ(d)における「第2宿主細胞」について、標的宿主細胞(例えば、臨床株、例えば、Sso4727、Shigella Sonnei4727;Sen4510、Salmonella enterica serovar arizonae str.SARC5;Kpn4718、Klebsiella pneumoniae亜種pneumoniaeATCC10031;Kpn4800II、Klebsiella pneumoniae亜種pneumoniaeATCC9997;Ecl4723、nterobacter cloacae亜種cloacae ATCC13047;Sen4001、Salmonella enterica亜種enterica serovar Typhimurium str.LT2;Salmonella enterica亜種enterica serovar Typhimurium(ATCC14028);K390,クレブシエラ菌種390;Eae4739、Enterobacter aerogenes ATCC51697;Sen4513、Salmonella enterica serovar EnteritidisPT4;Kpn4719、Klebsiella pneumonia亜種pneumoniaeATCC13882;Eco4507、Escherichia coli ATCC 25922、その組み合わせ、又は本発明で開示する細菌細胞)を使用することができる。あるいは、前記望ましい標的宿主細胞と類似性を示す宿主細胞モデル(例えば、ファージの増殖を支持せず、ファージ受容体を欠失しているΔtrxAΔwaaC等の宿主株)を使用してもよい。さらに、特定の実施形態において、「第2宿主細胞」のように、臨床生物試料から得ることができる、特徴付けられた又は特徴付けられていない細胞の使用も本発明に含まれる。
前述のように、本発明は、核酸送達ビヒクルの宿主範囲を拡張する又は調整する方法に関する。本開示に係る核酸送達ビヒクルの宿主範囲の調整は、とりわけ、宿主ビヒクル認識プラットフォームを変化させ、拡張し、又は調整するために、核酸送達ビヒクル、特にバクテリオファージを調整し、置き換え、又は変化させることによって可能となる。本発明は、さらに、少なくとも1つの宿主認識要素を、同一の又は異なる宿主認識要素に置き換え、それにより、同一又は異なっていてもよい少なくとも2つ以上の認識要素を含むビヒクルを提供し、さらに標的宿主(複数可)を認識しうることを含む。
技術分野で周知のように、感染又は形質導入を開始するために、ファージは、宿主表面に吸着し、細胞壁を貫通し、遺伝物質を宿主に注入する必要がある。ファージゲノムの注入の前に細菌宿主への接続を開始するために使用するメカニズムは、尾として呼ばれ、特定の宿主認識に専念する吸着機構は、尾末端に局在化する。ファージと宿主の相互作用は、タンパク質又はリポ多糖(LPS)であるファージ尾タンパク質と細菌受容体の間で生じる。これらの相互作用は、バクテリオファージの宿主特異性及び宿主範囲を決定する。
バクテリオファージ等の送達ビヒクルの宿主範囲を拡張し、変化させるために、本発明は、少なくとも1つの宿主認識要素又はそのタンパク質もしくは部分を置き換えることに基づいて、適合性であり、そのため目的の宿主の認識を可能にする宿主認識要素を有する所与のバクテリオファージの方法を提供する。したがって、本開示は、少なくとも1つの宿主認識要素又はタンパク質、そのフラグメント部分、又はそのバリアントもしくは変異体をコードする複数の核酸分子を提供する。前述のように、これらの核酸分子は、バクテリオファージにパッケージングすることが可能な少なくとも1つのパッケージングシグナルをさらに含む。これらの核酸分子は、適切で、適合性の宿主認識要素を選択することを可能にする選択可能な要素をコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含む。
いくつかの非限定的な実施形態において、核酸送達ビヒクルは、「適合性」であってもよく、又は他の自然発生の送達ビヒクルから得た宿主認識要素によって、送達ビヒクル、特にバクテリオファージにおいて、少なくとも1つの宿主認識要素を置き換えるときに、自然に許容されない(「制限的」又は非許容宿主)宿主細胞を認識してもよい。すなわち、少なくとも1つの宿主認識要素を、未変性であっても、改変されてもよい異種要素によって、置き換える。
バクテリオファージ又はそのタンパク質、部分もしくはフラグメントの宿主認識要素を、(望ましい宿主の認識を可能にする)少なくとも1つの異種宿主認識要素で置き換えることに関して、これらの宿主認識要素がバクテリオファージに由来する要素であってもよいことが理解される。より具体的には、これらの宿主認識要素(複数可)は、前に本明細書で開示したバクテリオファージに由来してもよい。さらにいくつかの実施形態において、これらの認識要素は、(異種要素の場合は)未変性形態、あるいは変化形態、例えば、(異種又は同種要素の場合には)変異又はトランケートした形態、又はその組み合わせの何れかで使用してもよい。そのため、いくつかの他の非限定的な実施形態において、核酸送達ビヒクルは、以下に詳細に説明する宿主認識要素(複数可)の少なくとも1つを改変し又は変異するときに、自然では許容しない宿主に適合性であっても、認識してもよい。本発明の方法は、以前に規定した送達ビヒクルの調製に適しうる。
さらなる実施形態において、本発明の方法によって調製される送達ビヒクルは、少なくとも1つのバクテリオファージであってもよい。前述のように、バクテリオファージは、例えば、ポドウイルス科、ミオウイルス科又はシホウイルス科、リポスリクスウイルス科又はルディウイルス科に由来しうる。
いくつかのさらなる実施形態において、ビヒクルとして使用するバクテリオファージ及び/又は本発明の方法によって調製される改変バクテリオファージは、T7様ウイルス及びT4様ウイルスの少なくとも1つでありうる。
本発明で開示するバクテリオファージは、この態様にも適用することができることに留意されたい。
特定の実施形態において、第2宿主細胞(複数可)及び目的の標的細胞(複数可)の少なくとも1つは、原核生物及び真核生物宿主細胞(複数可)の何れか1つであってもよい。
より特定の実施形態において、このような原核生物細胞は、E.coli、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、Streptococcus pyogenes、Clostidium difficile、Enterococcus faecium、シゲラ菌種(例えば、Shigella sonnei、Shigella boydii、Shigella flexneri及びShigella dysenteriae)、サルモネラ菌種(例えば、Salmonella enterica及びSalmonella bongori)、Klebsiella pneumonia、Acinetobacter baumanni、Yersinia pestis、及びEnterobacter種又はその変異体、バリアント又はその組み合わせ又は混合物、又は試料に存在する特徴付けされた又は特徴付けされていない細胞の混合物の少なくとも1つの細菌細胞であってもよい。
いくつかの実施形態において、第1及び第3宿主細胞は細菌細胞である。いくつかのさらなる実施形態において、前記細胞は、同種株の細菌細胞であってもよい。
いくつかの実施形態において、本発明の方法で使用する第2宿主細胞は、制限宿主であってもよい。このように、前記宿主を感染させるバクテリオファージバリアントは、前記制限宿主では伝播することができない。
さらなる実施形態において、宿主認識要素又はそのタンパク質もしくはフラグメントは、本発明で提供し、(未変性又は変化した)異種要素あるいは変化した又は変異した同種要素の何れかであってもよい。したがって、前述のように、本発明の方法は、特にGoTraPプラットフォームとして本明細書で示される場合、ステップ(a)で提供される複数の核酸分子を変異原に供することをさらに含むことができ、それにより少なくとも1つの変異した宿主認識要素をコードする複数の核酸分子を得ることが理解される。特定の実施形態において、本発明の方法の前記バージョンにおけるステップは、少なくとも1回、特に少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回以上、20、30、40、50、60、70、80、90、100回以上繰り返してもよいことに留意されたい。特定の実施形態において、前記宿主認識要素のそれぞれは、少なくとも1つの変異又は改変を含む。
さらに、特定の実施形態において、本発明の送達ビヒクルを調製するために、本明細書で使用する宿主認識要素は、バクテリオファージの尾領域に存在する少なくとも1つのタンパク質を含みうる。より具体的には、前記バクテリオファージの尾領域に存在する少なくとも1つのタンパク質は、尾タンパク質及び繊維タンパク質の少なくとも1つであってもよい。さらにいくつかの実施形態において、宿主認識要素は、線維、特にgp17を含みうる。いくつかのさらなる実施形態において、尾タンパク質は、gp11及びgp12の少なくとも1つを含みうる。
しかし、特定の実施形態において、本発明の方法で調製した送達ビヒクルの内部に含まれる宿主認識要素は、gp11、gp11及びgp17又はその組み合わせを含みうることが理解される。このような組み合わせの特定の非限定的な例として、本明細書に開示するバクテリオファージに由来する、及び/又は本発明に開示する変異及びその組み合わせを含むgp11、gp12及びgp17;gp11、gp12及びgp17、gp11及びgp12の1つ;gp11及びgp17;gp12及びgp17が挙げられる。
いくつかの特定の実施形態において、本発明の方法で提供する核酸分子は、宿主認識要素の他に、抗生物質耐性遺伝子でありうる選択可能な要素も含む。
いくつかの特定の実施形態において、第2宿主細胞は、目的の標的細胞(複数可)に同一であっても、類似していてもよい。
いくつかのさらなる実施形態において、第3宿主細胞(複数可)は、少なくとも1つのパッケージングシグナルに操作可能に連結してもよい目的の核酸分子を少なくとも1つさらに含んでもよい。したがって、このような実施形態において、ステップ(f)で得た送達ビヒクルは、そこにパッケージされた目的の当該核酸分子さらに含んでもよい。
本発明のさらなる態様は、目的の核酸分子を目的の標的宿主細胞に形質導入する方法に関し、方法は、以下のステップを含む。第1のステップ(a)において、少なくとも1つのパッケージングシグナルに操作可能に結合してもよい目的の核酸分子を提供する。次のステップ(b)は、少なくとも1つの宿主認識要素(複数可)、又はそのバリアント、変異体、タンパク質又はフラグメントをコードする核酸配列(複数可)を提供することを伴う。特定の実施形態において、認識要素は目的の前記標的細胞に適合性であることに留意されたい。次のステップ(c)は、(a)の核酸分子及び(b)の核酸配列を産生宿主細胞(複数可)に導入して、目的の核酸分子及び目的の宿主に適合性の宿主認識要素をコードする核酸配列を含む宿主細胞を得ることを伴う。次にステップ(d)において、ステップ(c)で得た形質転換した宿主細胞(複数可)を、少なくとも1つの不完全な宿主認識要素(複数可)又はそのタンパク質又はフラグメントをコードする不完全な核酸配列(複数可)を有する送達ビヒクルに接触させる。次に、ステップ(e)において、(d)の感染した宿主細胞から、宿主細胞にパッケージされた目的の核酸分子を含む送達ビヒクル(複数可)を回収する。回収した送達ビヒクルが、目的の標的細胞に適合性である適合性の宿主認識要素(複数可)を含むことに留意されたい。特定の実施形態において、宿主認識要素は、送達ビヒクルとして本発明によって使用されるバクテリオファージにトランスに提供されてもよい。
次のステップ(f)は、目的の標的細胞(複数可)を含む対象、組織、臓器、表面、物質及び物品の少なくとも1つの目的の標的細胞(複数可)を、ステップ(e)で得た前記送達ビヒクル(複数可)の少なくとも1つの有効量に接触させ、それにより目的の前記核酸分子を目的の標的宿主細胞に伝達することを伴う。
いくつかの実施形態において、ステップ(c)において、本明細書で使用する場合の「産生宿主細胞」は、本発明の他の態様と関連して、前述の「第3宿主細胞」と同等でありうる。本明細書のステップ(c)で使用する場合の「宿主細胞に導入すること」という用語は、外因性DNAをこれらの細胞に組み込むことを指す。外因性DNAを宿主細胞に導入する非限定的な方法として、形質転換、リン酸カルシウム媒介性トランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介性形質転換及びリポソーム媒介性形質転換、電気穿孔法及びウイルスベクター形質導入が挙げられる。技術分野で認識されている外因性DNA送達方法を使用して、目的の核酸分子及び/又は本発明の方法によって単離した宿主認識要素をコードする核酸配列を宿主細胞に導入することができる。さらに非限定的な例として、直接注入、アミノ酸媒介性遺伝子送達、遺伝子銃遺伝子送達及びヒートショックといった外因性DNA送達方法を使用して、目的の核酸分子を導入することができる。
前述のように、本発明の方法は、本発明の改善された送達ビヒクルを使用して、目的の少なくとも1つの核酸配列を望ましい宿主細胞に形質導入することを目的とする。
「ポリヌクレオチド」又は「核酸配列」又は「核酸分子」という用語は、本明細書では、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)等の核酸のポリマーを指す。本明細書で使用する場合、「核酸(複数可)」(核酸分子又はヌクレオチドとも呼ばれる)は、DNA又はRNAポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成したフラグメント及びライゲーション、切断、エンドヌクレアーゼ作用、及び一本鎖又は二本鎖の何れかのエキソヌクレアーゼ作用を指す。核酸分子は、(DNA及びRNA等の)自然発生のヌクレオチド、又は(自然発生のヌクレオチドのα−エナンチオマー形態といった)自然発生ヌクレオチドの類似体、又は修飾ヌクレオチド又はその組み合わせから構成することができる。本明細書において、この用語は、cDNA、すなわち、逆転写酵素(RNA依存性DNAポリメラーゼ)によるRNAテンプレートから生成した相補的又はコピーDNAも含む。
本明細書で規定する「目的の核酸分子」という用語は、特定の非許容的宿主において、目的の標的宿主細胞(複数可)に望まれる挿入の核酸配列を指す。目的の核酸配列は、宿主細胞への形質導入が、性質、量、パーセンテージ、生存率、安定性、分布、位置、又は目的の標的細胞を含む細胞又は細胞集団の他のパラメータを操作することができるタンパク質産物又は産物をコードする制御配列又は配列の何れかでありうることに留意されたい。
特定の実施形態において、目的の核酸配列は、以降に本明細書に開示するCRISPR−Cas系を含んでいてもよく、あるいは、望ましい物質、例えば、治療的、診断的又は産業上の利用性を有する物質をコードしてもよい。本発明が提供するプラットフォームの適用をいくつかを例証するいくつかの非限定的な実施形態は、本発明のビヒクル及び方法によって送達することができ、以降に本明細書に開示する有用な「目的の核酸配列」のいくつかの非限定的な実施形態も説明する。
本発明は、核酸分子の送達に特に適合するビヒクルに関するが、本発明は、タンパク質、ポリペプチド及び小分子(又は、本発明のビヒクルによってパッケージすることができる他の物質)を目的の標的細胞に送達するための本発明の送達ビヒクルの使用をさらに含むことが理解される。
いくつかの特定の実施形態において、本発明の方法は、送達ビヒクル、特に本発明の改変バクテリオファージを有する標的細菌細胞を含む表面、物質又は物品、特に固体もしくは液体表面、物品又は物質において、標的細胞を接触させるステップを伴う。
「接触する」という用語は、本明細書で使用する場合、本発明のバクテリオファージが細菌細胞に直接的又は間接的に接触するように、本発明のバクテリオファージの位置を決めることを指す。そのため、本発明は、本発明のバクテリオファージを望ましい表面に適用することと、及び/又は細菌細胞に直接適用することの両方を考慮している。本発明で開示するバクテリオファージ、又はキット及びその組成物に表面を接触させることは、噴霧、拡散、湿潤、浸漬、液浸、塗布、超音波溶接、溶接、結合又は接着を含む技術分野で周知の方法を用いて行うことができる。本発明のこの態様に適用可能な様々な表面(生物学的又は非生物学的表面)は、本発明の方法及びビヒクルによる、細胞集団を操作する態様と関連して、本明細書の以降に記述する。
さらに、本発明の方法は、目的の標的細胞を有効量のバクテリオファージ、本発明のキット及び組成物に接触させることをさらに含み、また、細胞は、対象、特に哺乳動物の対象の細胞である。そのため、いくつかの実施形態において、本発明の方法は、必要とする対象に、有効量の本発明のバクテリオファージ、キット及び組成物を投与するステップをさらに含みうる。様々な適用可能な投与モードを、本発明の他の態様と関連して本明細書の以降に記述し、当該モードはこの態様にも全て適用することができる。
特定の実施形態において、ステップ(b)で提供される少なくとも1つの適合性の宿主認識要素(複数可)をコードする核酸配列(複数可)は、以下のステップを含む方法によって得ることができることに留意されたい。第1ステップ(a)では、少なくとも1つの宿主認識要素、又はそのバリアント、変異体、タンパク質又はフラグメントをコードする複数の核酸分子を提供する。これらの核酸分子は、少なくとも1つのパッケージングシグナル及び選択可能な要素をコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含みうることに留意されたい。次のステップ(b)では、前記複数の核酸分子を含む第1宿主細胞(複数可)を、前記送達ビヒクルの伝播を可能にする条件下で、少なくとも1つの不完全な宿主認識要素(複数可)又はそのタンパク質又はフラグメントをコードする不完全な核酸配列(複数可)を有する送達ビヒクルに接触させ、前記第1宿主細胞(複数可)に伝播した得られた送達ビヒクルバリアントを回収する。次のステップ(c)は、第2宿主細胞をステップ(b)で得た/回収した送達ビヒクルバリアントに接触させることを伴う。ステップ(d)では、前記選択可能な要素を含むステップ(c)で得た宿主細胞(複数可)のコロニーを選択し、ステップ(e)では、ステップ(d)で選択した宿主細胞から宿主認識要素(複数可)をコードする核酸配列を単離し、特徴付けを行って、前記目的の標的細胞に適合性の適合する宿主認識要素をコードする核酸配列を得る。
いくつかのさらなる実施形態において、適合性の宿主認識要素(複数可)は、本明細書に開示する実施形態において、本発明で規定する方法で提供することができる。
いくつかの特定の実施形態において、オプション(a)で示すように、本発明の方法によって形質導入した目的の核酸配列は、CRISPR系に基づいていてもよい。より具体的には、このような核酸配列は、目的の標的宿主細胞、例えば、細菌において、望ましくない又は病原性遺伝子を標的にする少なくとも1つの感作成分を含んでいてもよく、同時に、目的の形質導入された標的宿主細胞に選択的な利点を提供する。より具体的には、このような成分は、少なくとも1つのcas遺伝子及び少なくとも1つのクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)アレイを含むことができる。CRISPRの少なくとも1つのスペーサーは、細菌の病原性又は望ましくない遺伝子の内部に含まれるプロトスペーサーを標的にし、前記病原性又は望ましくない遺伝子を特に不活性にし、前記CRISPR標的の少なくとも1つのスペーサーは、選択的成分の内部に含まれるプロトスペーサーを標的にし、前記選択的成分を特に不活性にすることに留意されたい。
オプション(b)に示す特定の代替又は追加の実施形態において、目的の核酸配列を本明細書で使用して、少なくとも1つのプロトスペーサー、特に、本明細書(オプション(a))に記載の感作成分のスペーサーによって標的にされた少なくとも1つのプロトスペーサーを含む少なくとも1つの核酸配列を含む本発明の改変バクテリオファージビヒクルを含む選択的成分を作製することができる。したがって、いくつかの特定の実施形態において、本発明の方法は、選択的要素を調製するのに適用することができる。
本発明は、本明細書に開示する少なくとも1つの選択的成分及び少なくとも1つの感作成分の組み合わせを含むキットをさらに提供することが理解される。
さらにいくつかの特定の実施形態において、本発明の方法は、目的の前記標的宿主細胞(複数可)を含む細胞集団を操作するために使用することができる。
本発明は、本発明の方法によって調製した送達ビヒクルをさらに含むことが理解される。いくつかの特定の実施形態において、本発明は、本発明で開示する送達ビヒクルを含む。
本発明のさらなる態様は、以下を含むキットに関する。
(a)少なくとも1つの宿主認識要素、又はそのバリアント、変異体、タンパク質又はフラグメントをコードする複数の核酸分子。核酸分子は、少なくとも1つのパッケージングシグナル及び選択可能な要素をコードする少なくとも1つの核酸配列、(b)少なくとも1つの不完全な認識要素(複数可)又はそのタンパク質又はフラグメントをコードする不完全な核酸配列(複数可)を有する少なくとも1つの送達ビヒクル(バクテリオファージ)、任意に(c)前記選択可能な要素を有する細胞を選択するために少なくとも1つの化合物をさらに含む。
いくつかの特定の実施形態において、本発明のキットで使用する送達ビヒクルは、少なくとも1つのバクテリオファージであってもよい。
いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、T7様ウイルス及びT4様ウイルスの少なくとも1つであってもよい。
いくつかのさらなる実施形態において、本発明のキットで使用する複数の核酸分子は、少なくとも1つの変異した宿主認識要素をコードしてもよい。特定の実施形態において、前記宿主認識要素又はそのタンパク質(複数可)のそれぞれは、少なくとも1つの変異又は改変を含む。
いくつかのさらなる実施形態において、本発明のキットの宿主認識要素は、前記バクテリオファージの尾領域に存在する少なくとも1つのタンパク質を含みうる。
いくつかの実施形態において、バクテリオファージの尾領域に存在する少なくとも1つのタンパク質は、尾タンパク質及び繊維タンパク質であってもよい。さらなる特定の実施形態において、繊維タンパク質は、gp17であってもよい。いくつかのさらなる実施形態において、尾タンパク質は、gp11及びgp12の少なくとも1つであってもよい。さらなる実施形態において、本発明の認識要素は、本明細書に開示する繊維と尾タンパク質の組み合わせを含んでもよい。特定の実施形態において、本明細書に開示するバクテリオファージに由来する本明細書に開示する尾及び繊維タンパク質は、本発明のキットにも適用することができることが理解される。
さらなる実施形態において、本発明のキットで使用する選択可能な要素は、抗生物質耐性遺伝子であってもよい。本発明の方法に関連して、本発明に開示する抗生物質耐性遺伝子又は選択可能な要素もこの態様に適用することができることが理解される。本発明は、本発明のキットの成分について容器又は他のパッキング方法をさらに含むことが理解される。このようなキットは、本発明の送達ビヒクルを調製するための説明書、方法、試薬、材料、酵素、バッファ、培地又は選択可能な要素をさらに含んでもよい。
さらなる実施形態は、核酸送達ビヒクルの宿主範囲を拡張し、又は調整する方法において、前述の本発明のキットの使用を提供する。さらに特定の実施形態において、本発明のキットは、特に、前に指定した実施形態に開示したように、本発明の方法のために使用することができる。
本発明は、新規の改変バクテリオファージ、特に、DNAを新しい望ましい宿主に形質導入するT7ハイブリッド粒子の設計を開示する。重要なこととして、このアプローチは、これらの宿主におけるファージの伝播を必要としない。したがって、先行技術の方法とは対照的に、このアプローチを宿主のスペクトルをファージの伝播を支持しないスペクトルにまで拡張するために使用することができる。これらの宿主は、(例えば表6に開示する)宿主のレパートリーのかなりの割合を構成する。これまで、ファージの伝播能力の依存性は、新しいファージ−宿主相互作用の検出を限定した。例えば、Luのグループによる最近の研究では、異なるファージ(10)の尾を有するハイブリッドT7ファージカプシドを構築することに成功した。この研究は、これらのハイブリッド粒子の宿主範囲をE.coli以外の宿主の2、3個の株(クレブシエラの1つの株及びエルシニアの2つの株)にまで拡張しようとした。重要なこととして、本発明は、どれもT7伝播を支持しないため、Luのアプローチによって識別することができなかったクレブシエラ、サルモネラ、エシェリキア、シゲラ及びエンテロバクターのいくつかの種の宿主のスペクトル拡大した(表6)。本発明は、ハイブリッド粒子をLuの研究で識別された同クレブシエラにDNA形質導入することも実証した(図3B、K390)。本発明の発明者は、最適化したDNA形質導入ハイブリッド粒子を選択するプラットフォームであるGOTraPを開発することによって、新しい宿主に形質導入する効率性も最適化した。最後に、我々は、ハイブリッド粒子を、特にDNAを望ましい宿主に移行するようにプログラムすることができることを実証した。
ハイブリッド粒子は、DNAも有することができる自然のテンペレートファージを上回るいくつかの主要な利点を有する。第一に、このようなモジュラーのファージ粒子をカスタマイズすることは、それぞれの宿主について自然のテンペレートファージを単離し、特徴付けを行うよりも有効である。第二に、ハイブリッド粒子は望ましいプラスミドDNAのみを有するが、複製コンピテントなファージDNAは形質導入されない。このことは、潜在的に望ましくない副作用を有するファージ遺伝子も標的に運ばれるテンペレートファージによるDNA送達とは対照的である。第三に、モジュラーのハイブリッド粒子の単一の種類は、産生、制御及び生物学的モニタリングの容易性といったいくつかの異なるファージのカクテルを使用することに関連する多くの課題を克服する。
本発明は、宿主受容体との尾の適合性を変化させることによって、DNA形質導入の最適化を実証した。それにもかかわらず、宿主の制限酵素等のその他の因子がDNA形質導入の障害にもなりうる。これらの障害もGOTraPによって克服することができ、それはGOTraPが根本的なメカニズムに関わらず、DNA形質導入の効率性を向上する変異体を選択するためである。これらの障害を克服する変異体の選択は、形質導入したDNAと、いわゆる形質導入の有効性を増加させる表現型との結合によって可能となる。したがって、制限認識部位がDNAの効率的な移行をブロックする場合、この部位において変異を獲得しているプラスミドがより良く形質導入し、富化する。さらに、この方法を使用して、制限酵素阻害因子(例えば、T7ファージの遺伝子0.3)をコードする遺伝子の代わりにプラスミドコード尾遺伝子を用いることによって、制限酵素の改善した阻害因子を単離することができる。この結合によって、その産物が効率的な形質導入を行う最適な遺伝子をコードする最適な形質導入したDNAを富化することができる。したがって、GOTraPは、DNA形質導入効率の多くの態様を潜在的に解決することができる対象範囲の広い技術である。
そのため、さらなる態様において、本発明は、本明細書において「本発明のビヒクル」とも呼ばれる改変バクテリオファージを提供する。より具体的には、改変バクテリオファージ又は本発明の送達ビヒクルは、(a)少なくとも1つの改変した宿主認識要素、及び任意に(b)目的の少なくとも1つの核酸分子を含むことができる。特定の実施形態において、改変した宿主認識要素は、目的の標的細胞に適合性でありうることに留意されたい。特定の実施形態において、本発明の改変バクテリオファージは、目的の核酸分子を目的の標的細胞に形質導入することができる。
さらに、目的の標的宿主細胞は、特定の実施形態において、制限宿主となりうる。より具体的には、これらの実施形態において、本発明のバクテリオファージは、このような制限宿主を伝播することはできない。
さらに、目的の標的細胞(複数可)は、原核生物及び真核生物の宿主細胞(複数可)、又はその混合物もしくは組み合わせの何れか1つであってもよい。
特定の実施形態において、本発明の改変バクテリオファージによって標的にされた原核生物細胞は、E.coli、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、Streptococcus pyogenes、サルモネラ菌種、シゲラ菌種、Clostidium difficile、Enterococcus faecium、Klebsiella pneumonia、Acinetobacter baumanni、Yersinia pestis、及びEnterobacter種又はその変異体、バリアント又はその組み合わせ又は混合物の少なくとも1つの細菌細胞であってもよい。
特定の実施形態において、本発明の改変バクテリオファージは、目的の核酸配列を望ましい宿主細胞に送達し、又は形質導入するために適合することができることに留意されたい。特に、方法、キット及び組成物の何れか1つと関連して、本発明に開示する宿主細胞の何れか1つを本明細書の前後で開示する。より特定すると、いくつかの実施形態において、本発明の改変バクテリオファージは、目的の少なくとも1つの宿主細胞又は目的のいくつかの宿主細胞又は目的の細胞の混合物と適合性となりうる「宿主認識要素」を含んでもよい。したがって、改変バクテリオファージは、少なくとも1つの宿主細胞又は様々な宿主細胞と適合性の宿主認識要素又はそのタンパク質もしくはフラグメントの組み合わせを含みうる。異なる宿主に適合性の異なる要素を組み合わせることによって、本発明の方法は、本発明の送達ビヒクルの宿主範囲をさらに拡張する。
特定の実施形態において、本発明で使用する改変バクテリオファージは、T7様ウイルス及びT4様ウイルスの少なくとも1つであってもよい。より特定の実施形態において、バクテリオファージはT7様ウイルスであり、より具体的には、少なくとも1つの腸内細菌ファージT7である。
いくつかの実施形態において、本発明の改変バクテリオファージの宿主認識要素は、前記バクテリオファージの尾領域に存在する少なくとも1つのタンパク質を含みうる。いくつかの実施形態において、このようなタンパク質は、尾タンパク質及び繊維タンパク質の少なくとも1つであってもよい。
さらなるより特定の実施形態において、繊維タンパク質は、gp17であってもよい。さらなるいくつかの実施形態において、尾タンパク質は、gp11及びgp12又はその組み合わせの少なくとも1つであってもよく、特に、本発明に開示するバクテリオファージに由来してもよい。
いくつかの特定の実施形態において、本発明の改変バクテリオファージの宿主認識要素は、(同種又は異種の)変異した宿主認識要素であってもよい。
さらなる実施形態において、本発明のバクテリオファージは、(目的の1つの標的宿主細胞又は複数の宿主細胞に特異的な)拡張し、又は改変した宿主範囲を有し、本発明の方法、特に本明細書に開示した実施形態に記載の方法によって調製してもよい。いくつかのさらなる特定の実施形態において、本発明の改変バクテリオファージは、本発明に開示するバクテリオファージであってもよいし、本発明の方法で調製した改変バクテリオファージであってもよい。
実施例によって説明し、前述で示したように、本発明は、本発明の改変バクテリオファージとしても呼ばれるハイブリッド形質導入粒子を提供する。前述のように、これらのハイブリッド粒子は、宿主認識要素又は本発明に開示する異種又は同種ファージに由来するタンパク質から成る本発明に開示するバクテリオファージから構成される、又は基づいていてもよい。図3Bは、異なる宿主細胞を効率的に形質導入するものとしても実証したこのようなハイブリッド粒子のいくつかの非限定的な例を示す。図3Bに表すハイブリッド粒子を以下に記述する。本発明の特定の実施形態は、本発明の宿主認識要素を含む様々な改変バクテリオファージを提供する。簡潔にするために、宿主認識要素を本明細書では「尾(複数可)」として示す。そのため、いくつかの特定の実施形態において、本発明は、ファージT7、特に未変性であっても、変異したものでもよいgp17、gp11及びgp12タンパク質、又はその組み合わせに少なくとも部分的に由来する尾を含むT7ハイブリッドであってもよい改変バクテリオファージを提供する。いくつかの特定の実施形態において、本発明の改変バクテリオファージは、T7 gp11タンパク質を含むT7バクテリオファージであってもよい。いくつかのより特定の実施形態において、このような改変バクテリオファージは、SEQ ID NO.10によって示されるアミノ酸配列を含むT7 gp11タンパク質又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。あるいは、又は追加で、このようなハイブリッドファージは、尾として、T7 gp12、特にSEQ ID NO.15によって示されるアミノ酸配列を含むT7 gp12を含む宿主認識要素、又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。本発明で提供する別の代替のT7粒子は、T7 gp17タンパク質、特にSEQ ID NO.1によって示されるアミノ酸配列を含むgp17又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。いくつかのさらなる実施形態において、このような特定のT7ハイブリッド粒子は、目的の望ましい核酸配列を、BW25113Δtrx(E.coli ΔtrxA);Sso4727(Shigella Sonnei4727);Sen4510(Salmonella enterica serovar arizonae str.)SARC5);Kpn4718(Klebsiella pneumoniae亜種pneumoniaeATCC10031);Kpn4800II(Klebsiella pneumoniae亜種pneumoniaeATCC9997);及びEcl4723(Enterobacter cloacae亜種クロアカATCC13047)宿主細胞の少なくとも1つに効率的に形質導入することができる。
さらなる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも部分的にファージT3に由来する尾を含むT7ハイブリッドであってもよい改変バクテリオファージを提供する。いくつかの特定の実施形態において、T7ハイブリッドは、T3 gp17タンパク質を含んでもよい。さらにいくつかの特定の実施形態において、このようなT3 gp17は、SEQ ID NO.4によって示されるアミノ酸配列又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。いくつかのさらなる実施形態において、このような特定のT7−T3ハイブリッド粒子は、目的の望ましい核酸配列を、BW25113Δtrx;Sso4727;Sen4510;Kpn4718;Kpn4800II及びEcl4723宿主細胞の少なくとも1つに効率的に形質導入することができる。
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも部分的にファージYpsP−Gに由来する尾を含むT7ハイブリッドであってもよい改変バクテリオファージを提供する。いくつかの特定の実施形態において、T7ハイブリッドは、YpsP−G gp17タンパク質を含んでもよい。さらにいくつかの特定の実施形態において、このようなYpsP−G gp17は、SEQ ID NO.3によって示されるアミノ酸配列又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。さらなるいくつかの実施形態において、このような特定のT7−YpsP−Gハイブリッド粒子は、目的の望ましい核酸配列を、BW25113Δtrx;Sso4727;Sen4510;Kpn4718;Kpn4800II及びEcl4723宿主細胞に効率的に形質導入することができる。
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも部分的にファージ13aに由来する尾を含むT7ハイブリッドであってもよい改変バクテリオファージを提供する。いくつかの特定の実施形態において、T7ハイブリッドは、13a gp17タンパク質を含んでもよい。さらにいくつかの特定の実施形態において、このような13a gp17は、SEQ ID NO.2によって示されるアミノ酸配列又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。いくつかのさらなる実施形態において、このような特定のT7−13aハイブリッド粒子は、目的の望ましい核酸配列を、BW25113Δtrx;Sso4727;Sen4510;Kpn4718;Kpn4800II及びEcl4723宿主細胞に効率的に形質導入することができる。
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも部分的にファージYpP−Rに由来する尾を含むT7ハイブリッドであってもよい改変バクテリオファージを提供する。いくつかの特定の実施形態において、T7ハイブリッドは、YpP−R gp17タンパク質を含んでもよい。さらにいくつかの特定の実施形態において、このようなYpP−R gp17は、SEQ ID NO.5によって示されるアミノ酸配列又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。いくつかのさらなる実施形態において、このような特定のT7−YpP−Rハイブリッド粒子は、目的の望ましい核酸配列を、BW25113Δtrx;Sso4727;Sen4510;Kpn4718;Kpn4800II宿主細胞に効率的に形質導入することができる。
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも部分的にファージVi06に由来する尾を含むT7ハイブリッドであってもよい改変バクテリオファージを提供する。いくつかの特定の実施形態において、T7ハイブリッドは、Vi06 gp11タンパク質を含んでもよい。より特定の実施形態において、このような改変バクテリオファージは、SEQ ID NO.11によって示されるアミノ酸配列を含むVi06 gp11タンパク質又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。あるいは、又は追加で、このようなハイブリッドファージは、Vi06 gp12、特にSEQ ID NO.16によって示されるアミノ酸配列を含むVi06 gp12を含む尾又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。あるいは、又は追加で、このようなハイブリッドファージは、Vi06 gp17に少なくとも部分的に由来する尾として、特にSEQ ID NO.7によって示されるアミノ酸配列を含むVi06 gp17又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。いくつかのさらなる実施形態において、このような特定のT7−Vi06ハイブリッド粒子は、目的の望ましい核酸配列を、BW25113Δtrx;Sso4727;Sen4510;Kpn4718;Kpn4800II;Sen4001(Salmonella enteric亜種enterica serovar Typhimurium str.LT2);Eco4507(E.coli ATCC 25922)宿主細胞の少なくとも1つに効率的に形質導入することができる。
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも部分的にファージgh−1に由来する尾を含むT7ハイブリッドであってもよい改変バクテリオファージを提供する。いくつかの特定の実施形態において、T7ハイブリッドは、gh−1 gp11タンパク質を含んでもよい。より特定の実施形態において、このような改変バクテリオファージは、SEQ ID NO.13によって示されるアミノ酸配列を含むgh−1 gp11タンパク質又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。あるいは、又は追加で、このようなハイブリッドファージは、gh−1 gp12、特にSEQ ID NO.19によって示されるアミノ酸配列を含むgh−1 gp12又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。あるいは、このようなハイブリッドファージは、gh−1に少なくとも部分的に由来する尾として、gh−1 gp17、特にSEQ ID NO.8によって示されるアミノ酸配列を含むgh−1 gp17又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。いくつかのさらなる実施形態において、このような特定のT7−gh−1ハイブリッド粒子は、目的の望ましい核酸配列を、BW25113Δtrx;Sso4727;Sen4510;Kpn4718;Kpn4800II;Ecl4723宿主細胞に効率的に形質導入することができる。
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも部分的にファージφSG−JL2に由来する尾を含むT7ハイブリッドであってもよい改変バクテリオファージを提供する。いくつかの特定の実施形態において、T7ハイブリッドは、φSG−JL2 gp11タンパク質を含んでもよい。より特定の実施形態において、このような改変バクテリオファージは、SEQ ID NO.12によって示されるアミノ酸配列を含むφSG−JL2 gp11タンパク質又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。あるいは、又は追加で、このようなハイブリッドファージは、φSG−JL2 gp12、特にSEQ ID NO.17によって示されるアミノ酸配列を含むφSG−JL2 gp12又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。あるいは、又は追加で、このようなハイブリッドファージは、φSG−JL2 gp17、特にSEQ ID NO.6によって示されるアミノ酸配列を含むφSG−JL2 gp17又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。さらなるいくつかの実施形態において、このような特定のT7− φSG−JL2ハイブリッド粒子は、目的の望ましい核酸配列を、BW25113Δtrx;Sso4727;Sen4510;Kpn4718;Ecl4723;Sen4001;Sen4513(Salmonella enterica serovar EnteritidisPT4;Kpn4719;Klebsiella pneumoniae亜種pneumoniae ATCC13882)宿主細胞の少なくとも1つに効率的に形質導入することができる。
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも部分的にファージK11に由来する尾を含むT7ハイブリッドであってもよい改変バクテリオファージを提供する。いくつかの特定の実施形態において、T7ハイブリッドは、K11 gp11タンパク質を含んでもよい。いくつかのより特定の実施形態において、このような改変バクテリオファージは、SEQ ID NO.14によって示されるアミノ酸配列を含むK11 gp11タンパク質又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。あるいは、又は追加で、このようなハイブリッドファージは、K11 gp12、特にSEQ ID NO.18によって示されるアミノ酸配列を含むK11 gp12又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。あるいは、又は追加で、このようなハイブリッドファージは、K11 gp17、特にSEQ ID NO.9によって示されるアミノ酸配列を含むK11gp17又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。いくつかのさらなる実施形態において、このような特定のT7− K11ハイブリッド粒子は、目的の望ましい核酸配列を、BW25113Δtrx;Sso4727;K390(クレブシエラ菌種)390);宿主細胞に効率的に形質導入することができる。
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも部分的にファージφEap−1に由来する尾を含むT7ハイブリッドであってもよい改変バクテリオファージを提供する。いくつかの特定の実施形態において、T7ハイブリッドは、φEap−1 gp11タンパク質を含んでもよい。より特定の実施形態において、このような改変バクテリオファージは、SEQ ID NO.45によって示されるアミノ酸配列を含むφEap−1 gp11タンパク質又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。あるいは、又は追加で、このようなハイブリッドファージは、φEap−1 gp12、特にSEQ ID NO.47によって示されるアミノ酸配列を含むφEap−1 gp12又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。あるいは、又は追加で、このようなハイブリッドファージは、φEap−1 gp17、特にSEQ ID NO.49によって示されるアミノ酸配列を含むφEap−1 gp17又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。いくつかのさらなる実施形態において、このような特定のT7−φEap−1ハイブリッド粒子は、目的の望ましい核酸配列を、BW25113Δtrx;Eae4739(Enterobacter aerogenes ATCC 51697)宿主細胞の少なくとも1つに効率的に形質導入することができる。
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも部分的にファージE−2に由来する尾を含むT7ハイブリッドであってもよい改変バクテリオファージを提供する。いくつかの特定の実施形態において、T7ハイブリッドは、E−2 gp11タンパク質を含んでもよい。より特定の実施形態において、このような改変バクテリオファージは、SEQ ID NO.51によって示されるアミノ酸配列を含むE−2 gp11タンパク質又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。あるいは、又は追加で、このようなハイブリッドファージは、E−2 gp12、特にSEQ ID NO.53によって示されるアミノ酸配列を含むE−2 gp12又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。あるいは、又は追加で、このようなハイブリッドファージは、E−2 gp17、特にSEQ ID NO.55によって示されるアミノ酸配列を含むE−2 gp17又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。いくつかのさらなる実施形態において、このような特定のT7−E−2ハイブリッド粒子は、目的の望ましい核酸配列を、BW25113Δtrx;Sso4727;Sen4510宿主細胞の少なくとも1つに効率的に形質導入することができる。
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも部分的にファージKP32に由来する尾を含むT7ハイブリッドであってもよい改変バクテリオファージを提供する。いくつかの特定の実施形態において、T7ハイブリッドは、KP32 gp11タンパク質を含んでもよい。より特定の実施形態において、このような改変バクテリオファージは、SEQ ID NO.57によって示されるアミノ酸配列を含むKP32 gp11タンパク質又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。あるいは、又は追加で、このようなハイブリッドファージは、KP32 gp12、特にSEQ ID NO.59によって示されるアミノ酸配列を含むKP32 gp12又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。あるいは、又は追加で、このようなハイブリッドファージは、KP32 gp17、特にSEQ ID NO.61によって示されるアミノ酸配列を含むKP32 gp17又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。いくつかのさらなる実施形態において、このような特定のT7−KP32ハイブリッド粒子は、目的の望ましい核酸配列を、BW25113Δtrx;Sso4727宿主細胞の少なくとも1つに効率的に形質導入することができる。
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも部分的にファージKP34に由来する尾を含むT7ハイブリッドであってもよい改変バクテリオファージを提供する。いくつかの特定の実施形態において、T7ハイブリッドは、KP34 gp11タンパク質を含んでもよい。より特定の実施形態において、このような改変バクテリオファージは、SEQ ID NO.63によって示されるアミノ酸配列を含むKP34 gp11タンパク質又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。あるいは、又は追加で、このようなハイブリッドファージは、KP34 gp12、特にSEQ ID NO.65によって示されるアミノ酸配列を含むKP34 gp12又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。あるいは、又は追加で、このようなハイブリッドファージは、KP34 gp17、特にSEQ ID NO.67によって示されるアミノ酸配列を含むKP34 gp17又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも部分的にファージKPV289に由来する尾を含むT7ハイブリッドであってもよい改変バクテリオファージを提供する。いくつかの特定の実施形態において、T7ハイブリッドは、KPV289 gp11タンパク質を含んでもよい。より特定の実施形態において、このような改変バクテリオファージは、SEQ ID NO.69によって示されるアミノ酸配列を含むKPV289 gp11タンパク質又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。あるいは、又は追加で、このようなハイブリッドファージは、KPV289 gp12、特にSEQ ID NO.71によって示されるアミノ酸配列を含むKPV289 gp12タンパク質又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。あるいは、又は追加で、このようなハイブリッドファージは、KPV289 gp17、特にSEQ ID NO.73によって示されるアミノ酸配列を含むKPV289 gp17又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。さらなるいくつかの実施形態において、このような特定のT7−KPV289ハイブリッド粒子は、目的の望ましい核酸配列を、BW25113Δtrx;Sso4727;Sen4510宿主細胞の少なくとも1つに効率的に形質導入することができる。
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも部分的にファージφKMVに由来する尾を含むT7ハイブリッドであってもよい改変バクテリオファージを提供する。いくつかの特定の実施形態において、T7ハイブリッドは、φKMV gp11タンパク質を含んでもよい。より特定の実施形態において、このような改変バクテリオファージは、SEQ ID NO.75によって示されるアミノ酸配列を含むφKMV gp11タンパク質又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。あるいは、又は追加で、このようなハイブリッドファージは、φKMV gp12、特にSEQ ID NO.77によって示されるアミノ酸配列を含むφKMV gp12又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。あるいは、又は追加で、このようなハイブリッドファージは、φKMV gp17、特にSEQ ID NO.79によって示されるアミノ酸配列を含むφKMV gp17又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。
特定の実施形態において、本発明は、そのいくつかの実施形態において、本発明の方法のステップ(a)で提供する複数の核酸分子を、少なくとも1つの変異原(例えば、EMS又はMP6プラスミド)に供することを伴うGOTraP技術によって改変バクテリオファージを提供する。この技術は、したがって、変異を、宿主範囲を拡張するハイブリッド粒子に導入することを伴う。本発明のこのような改変バクテリオファージについて、いくつかの非限定的な例は、T7ハイブリッドであるバクテリオファージを含んでもよい。いくつかの実施形態において、このような改変バクテリオファージは、ファージT7に少なくとも部分的に由来する尾を含んでもよい。いくつかの特定の実施形態において、T7ハイブリッドは、D540N変異を有するT7 gp17タンパク質を含んでもよい。より特定の実施形態において、このような改変バクテリオファージは、SEQ ID NO.123によって示されるアミノ酸配列を含むD540N変異タンパク質を有するT7 gp17タンパク質又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。特定の実施形態において、当該変異T7 gp17は、SEQ ID NO.124によって示される核酸配列又はそのバリアントもしくは変異体によってコードされてもよい。さらなるいくつかの実施形態において、このようなD540N変異ハイブリッド粒子を有する特定のT7 gp17タンパク質は、目的の望ましい核酸配列を、BW25113Δtrx宿主細胞の少なくとも1つに効率的に形質導入することができる。
さらなる特定の実施形態において、本発明は、GOTraP技術によって、ファージT7に由来する尾を含むT7ハイブリッドであってもよい改変バクテリオファージを提供する。いくつかの特定の実施形態において、T7ハイブリッドは、G479S変異を有するT7 gp17タンパク質を含んでもよい。より特定の実施形態において、このような改変バクテリオファージは、SEQ ID NO.125によって示されるアミノ酸配列を含むG479S変異タンパク質を有するT7 gp17タンパク質又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。特定の実施形態において、当該変異T7 gp17は、SEQ ID NO.126によって示される核酸配列又はそのバリアントもしくは変異体によってコードすることができる。いくつかのさらなる実施形態において、このようなG479S変異ハイブリッド粒子を有するT7 gp17タンパク質は、目的の望ましい核酸配列を、Sso4727、Shigella Sonnei4727宿主細胞に効率的に形質導入することができる。
いくつかのさらなる特定の実施形態において、本発明は、GOTraP技術によって、ファージT7に少なくとも部分的に由来する尾を含むT7ハイブリッドであってもよい改変バクテリオファージを提供する。いくつかの特定の実施形態において、T7ハイブリッドは、T7及びG733D変異を有するファージT7の繊維タンパク質を含んでもよい。より特定の実施形態において、このような改変バクテリオファージは、SEQ ID NO.127によって示されるアミノ酸配列を含むG733D変異タンパク質を有するT7 gp12タンパク質又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。いくつかの特定の実施形態において、当該変異T7 gp12は、SEQ ID NO.128によって示される核酸配列又はそのバリアントもしくは変異体によってコードすることができる。いくつかのさらなる実施形態において、このようなG733D変異ハイブリッド粒子を有するT7 gp12タンパク質は、目的の望ましい核酸配列を、Kpn4800II、Klebsiella pneumoniae亜種pneumoniae ATCC 9997宿主細胞の少なくとも1つに効率的に形質導入することができる。
さらなる特定の実施形態において、本発明は、GOTraP技術によって、ファージT7に少なくとも部分的に由来する尾を含むT7ハイブリッドであってもよい改変バクテリオファージを提供する。いくつかの特定の実施形態において、T7ハイブリッドは、R106Q変異を有するT7 gp11タンパク質を含んでもよい。より特定の実施形態において、このような改変バクテリオファージは、SEQ ID NO.129によって示されるアミノ酸配列を含むR106Q変異タンパク質を有するT7 gp11タンパク質又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。特定の実施形態において、当該変異T7 gp11は、SEQ ID NO.130によって示される核酸配列又はそのバリアントもしくは変異体によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、T7ハイブリッドは、A40T変異を有するT7 gp11タンパク質を含んでもよい。より特定の実施形態において、このような改変バクテリオファージは、SEQ ID NO.131によって示されるアミノ酸配列を含むA40T変異タンパク質を有するT7 gp11タンパク質又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。特定の実施形態において、当該変異T7 gp11は、SEQ ID NO.132によって示される核酸配列又はそのバリアントもしくは変異体によってコードされてもよい。さらなる特定の実施形態において、本発明は、GOTraP技術によって、D487N変異を有するT7 gp12タンパク質を含むT7ハイブリッドであってもよい改変バクテリオファージを提供する。より特定の実施形態において、このような改変バクテリオファージは、SEQ ID NO.133によって示されるアミノ酸配列を含むD487N変異タンパク質を有するT7 gp12タンパク質又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。いくつかの特定の実施形態において、当該変異T7 gp12は、SEQ ID NO.134によって示される核酸配列又はそのバリアントもしくは変異体によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、T7ハイブリッドは、S694P変異を有するT7 gp12タンパク質を含んでもよい。より特定の実施形態において、このような改変バクテリオファージは、SEQ ID NO.158によって示されるアミノ酸配列を含むS694P変異タンパク質を有するT7 gp12タンパク質又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。特定の実施形態において、当該変異T7 gp12は、SEQ ID NO.159によって示される核酸配列又はそのバリアントもしくは変異体によってコードされてもよい。さらに本明細書に適用することができるT7 gp12、例えばS694P−G733Dは、SEQ ID NO.160によって示され、SEQ ID NO.161によってコードされるアミノ酸配列を含んでもよい。
さらなる特定の実施形態において、本発明は、GOTraP技術によって、YpsP−Gバクテリオファージに少なくとも部分的に由来する尾を含むT7ハイブリッドであってもよい改変バクテリオファージを提供する。いくつかの特定の実施形態において、T7ハイブリッドは、遺伝子の非コード領域に変異を有するYpsP−G gp17タンパク質を含んでもよい。より特定の実施形態において、このような改変バクテリオファージは、gp17の開始ATGコドンに対して−9上流に位置するGからAの点変異を有するYpsP−G gp17核酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態において、このような変異したバクテリオファージは、SEQ ID NO.136によって示される核酸配列又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。いくつかのより特定の実施形態において、改変バクテリオファージは、gp17の開始ATGコドンに対して−10上流に位置するAからGの点変異を有するYpsP−G gp17核酸配列を含んでもよい。いくつかの特定の実施形態において、このような変異したバクテリオファージは、SEQ ID NO.137によって示される核酸配列又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。
さらなるいくつかの実施形態において、このような特定のT7変異ハイブリッド粒子は、特に、非コード領域に指示した点変異を有するT7 gp11R106Q、T7gp11A40T、T7gp12D487N、YpsP−G gp17の何れか1つであり、目的の望ましい核酸配列をSalmonella typhimurium宿主細胞に効率的に形質導入することができる。
さらなる特定の実施形態において、本発明は、GOTraP技術によって、ファージT7ハイブリッドに少なくとも部分的に由来する尾を含むT7ハイブリッドであってもよい改変バクテリオファージを提供する。このようなファージは、サイレントK580K変異を有するT7 gp12タンパク質を含んでもよい。より特定の実施形態において、このような改変バクテリオファージは、SEQ ID NO.135によって示される核酸配列又はそのバリアントもしくは変異体によってコードされてもよいK580K変異を有するT7 gp12タンパク質を含んでもよい。本発明で提供するさらなるファージバリアントは、S694PとD487N変異の両方を含む T7 gp12タンパク質を含んでもよく、このようなgp12は、SEQ ID NO.209によって示され、SEQ ID NO.210によって示される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含んでもよい。さらなる実施形態において、本発明で提供するファージバリアントは、S694PとD487N及びK580K変異を含む T7 gp12タンパク質を含んでもよく、このようなgp12は、SEQ ID NO.209によって示され、SEQ ID NO.211によって示される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含んでもよい。
いくつかのさらなる実施形態において、本発明で提供するT7バクテリオファージは、(本発明の方法のステップ(a)で提供される)複数の核酸配列を変異誘発プラスミドMP6に暴露することによって得た変異した宿主認識要素を含むことができる。いくつかの特定の実施形態において、このような変異したバクテリオファージは、D540Y変異を含むT7 gp17タンパク質を含んでもよい。いくつかの特定の実施形態において、このようなT7 gp17 D540Y変異体は、SEQ ID NO.162によって示されるアミノ酸配列又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。いくつかのさらなる実施形態において、このようなT7 gp17 D540Y変異体は、SEQ ID NO.163によって示される核酸配列によってコードされてもよい。
いくつかのさらなる実施形態において、本発明で提供するT7バクテリオファージは、ゾル化サイクルの最中に自発的に得られる変異した宿主認識要素を含んでもよい。いくつかの特定の実施形態において、このような変異したバクテリオファージは、S541R変異を含むT7 gp17タンパク質を含んでもよい。いくつかの特定の実施形態において、このようなT7 gp17 S541R変異体は、SEQ ID NO.164によって示されるアミノ酸配列又はそのバリアントもしくは変異体を含んでもよい。いくつかのさらなる実施形態において、このようなT7 gp17 S541R変異体は、SEQ ID NO.165によって示される核酸配列によってコードされてもよい。
前述のように、送達ビヒクル(複数可)として提供する本発明の改変バクテリオファージは、前に開示した繊維又は尾タンパク質、その源又は組み合わせの宿主認識要素として含んでもよい。特定の実施形態において、このような改変バクテリオファージは、本明細書に開示する変異、特に、少なくとも2つ以上の組み合わせ、特にT7 gp17 D540Nの1、2、3、4、5、6、7、8、9、20、11、12、T7 gp17 G479S、T7 gp12 G733D、T7 gp11 R106Q、T7 gp11 A40T、T7 gp12 D487N、T7 gp12 S694P、T7 gp12 K580K、T7 gp17 D540Y、T7 gp17 S541R、gp17の開始コドンATGに対して−9上流に位置するGからAの点変異を有するYpsP−G gp17核酸配列、gp17の開始コドンATGに対して−10上流に位置するAからGの点変異を有するYpsP−G gp17核酸配列、及びその組み合わせ又は他の変異体又はバリアントを有するその組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態においてこれらの組み合わせは、得られるビヒクルの宿主範囲を拡張する。さらに、異なる変異を有する異なるバクテリオファージの繊維又は尾タンパク質の組み合わせを含む認識要素についてのいくつかの例示的な非限定的な実施形態として、限定されないが、T7(gp11−R106Q、gp12)YpsP−G(gp17)が挙げられ、SEQ ID NO.166(本明細書ではクローン#1としても呼ばれる)によってコードされる核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.129、15又は158及び3;T7(gp11−A40T、gp12)YpsP−G(gp17)の何れか1つによって示されるアミノ酸配列を含むタンパク質を、SEQ ID NO.167(本明細書ではクローン#2としても呼ばれる)によってコードされる核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.131、15又は158及び3;T7(gp11、gp12−D487N、K580K)YpsP−G(gp17)の何れか1つによって示されるアミノ酸配列を含むタンパク質を、SEQ ID NO.168(本明細書ではクローン#3としても呼ばれる)によってコードされる核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.10、133又は213及び3[INVENTOR PLEASE CONFIRM SEQ ID 133 HERE];T7(gp11、gp12)YpsP−G(gp17)及びgp17の開始コドンATGに対してG=>A9bp上流の何れか1つによって示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしてもよく、SEQ ID NO.169(本明細書ではmut1としても呼ばれる)によって示される核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.10、15又は158及び3;T7(gp11、gp12)YpsP−G(gp17)及びgp17の開始コドンATGに対してA=>G10bp上流の何れか1つによって示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしてもよく、SEQ ID NO.170(本明細書ではmut2としても呼ばれる)によって示される核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.10、15又は158及び3;T7(gp11、gp12、及びgp17G479S)の何れか1つによってコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしてもよく、SEQ ID NO.189によって示される核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.10、15又は158及び125;T7 gp12 S694Pに点変異を含むT7(gp11、gp12、gp17)発明者wt−T7の何れか1つによって示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしてもよく、SEQ ID NO.171によって示される核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.10、15又は158及び1;T7(gp11、gp12、gp17−D540N)の何れか1つによって示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしてもよく、SEQ ID NO.172によって示される核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.10、15又は158及び123;T7(gp11、gp12、gp17−D540Y)の何れか1つによって示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしてもよく、SEQ ID NO.173によって示される核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.10、15又は158及び162;T7(gp11、gp12、gp17−S541R)の何れか1つによって示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしてもよく、SEQ ID NO.174によって示される核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.10、15又は158及び164;T7(gp11、gp12)13a(gp17)の何れか1つによって示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしてもよく、SEQ ID NO.175によって示される核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.10、15又は158及び2;T7(gp11、gp12)T3(gp17)の何れか1つによって示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしてもよく、SEQ ID NO.176によって示される核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.10、15又は158及び4;T7(gp11、gp12)YpP−R(gp17)の何れか1つによって示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしてもよく、SEQ ID NO.177によって示される核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.10、15又は158及び5;T7(gp11、gp12)YpsP−G(gp17)の何れか1つによって示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしてもよく、SEQ ID NO.178によって示される核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.10、15又は158及び3;Vi06(gp11、gp12、gp17)の何れか1つによって示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしてもよく、SEQ ID NO.179によって示される核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.11、16又は7;gh−1(gp11、gp12、gp17)の何れか1つによって示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしてもよく、SEQ ID NO.180によって示される核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.13、19及び8;phiSG−JL2(gp11、gp12、gp17)の何れか1つによって示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしてもよく、SEQ ID NO.181によって示される核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.12、17及び6;K11(gp11、gp12、gp17)の何れか1つによって示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしてもよく、SEQ ID NO.182によって示される核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.14、18及び9;phiEap−1(gp11、gp12、gp17)の何れか1つによって示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしてもよく、SEQ ID NO.183によって示される核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.45、47及び49;E−2(gp11、gp12、gp17)の何れか1つによって示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしてもよく、SEQ ID NO.184によって示される核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.51、53及び55;KP32(gp11、gp12、gp17)の何れか1つによって示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしてもよく、SEQ ID NO.185によって示される核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.57、59及び61;KP34(gp11、gp12、gp17)の何れか1つによって示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしてもよく、SEQ ID NO.186によって示される核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.63、65及び67;KpV289(gp11、gp12、gp17)の何れか1つによって示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしてもよく、SEQ ID NO.187によって示される核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.69、71及び73;phiKMV(gp11、gp12、gp17)の何れか1つによって示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしてもよく、SEQ ID NO.188によって示される核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.75、77及び79;T7(gp11)13a(G733D、gp17)の何れか1つによって示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしてもよく、SEQ ID NO.190によって示される核酸配列によってコードされてもよい。いくつかのさらなる実施形態において、これらの核酸は、SEQ ID NO.10、127又は160及び2の何れか1つによって示されるアミノ酸配列又はそのバリアントもしくは誘導体を含むタンパク質をコードしてもよい。本発明で提供する特定のバクテリオファージは、本明細書では、非限定的な実施形態としてのみ示し、本明細書に開示する変異体又は本発明の方法によって得ることができる追加の変異体とさらに組み合わせることができる。これらの組み合わせは、いくつかの実施形態において、宿主細胞Aに適合性の変異と、宿主細胞Bに適合性の変異を組み合わせることによって、特定のバクテリオファージの宿主範囲を拡張し、バクテリオファージは、宿主細胞AとBに適合性となりうる両方の変異を含む。本発明は、いくつかの実施形態において、本発明の方法によって得られる宿主認識要素又はその組み合わせを含む本発明の方法によって調製した改変バクテリオファージを含むことがさらに理解される。
本発明の改変バクテリオファージは、本明細書では、「改変した粒子」、「形質導入粒子」、「プログラムされた形質導入粒子」、「形質導入ビヒクル」、「本発明のビヒクル」、「バクテリオファージ又はファージ粒子」、「送達ビヒクル」等とも呼ぶことができ、全ては、本発明の方法によって調製したビヒクルに関する。
前述に指定したように、本発明の改変バクテリオファージは目的の核酸配列を望ましい宿主細胞に形質導入するために使用される。
いくつかの特定の実施形態において、本発明の改変バクテリオファージは、目的の核酸配列を含んでいてもよく、そのため、当該核酸配列を標的細胞に形質導入することができる。いくつかの特定の実施形態において、このような目的の核酸配列は、少なくとも1つの感作成分を含んでもよい。より具体的には、このような成分は、少なくとも1つのcas遺伝子及び少なくとも1つのクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)アレイを含むことができる。CRISPRの少なくとも1つのスペーサーは、標的宿主細胞、特に細菌の病原性又は望ましくない遺伝子の内部に含まれるプロトスペーサーを標的にし、前記病原性又は望ましくない遺伝子を特異的に不活性にし、前記CRISPR標的の少なくとも1つのスペーサーは、選択的成分の内部に含まれるプロトスペーサーを標的にし、前記選択的成分を特異的に不活性にすることを留意されたい。
より具体的には、本発明の方法によって調製した送達ビヒクルの内部に含まれる宿主認識要素の高い特異性によって、本発明のこれらの改変バクテリオファージは、目的の核酸配列を特定の望ましい標的宿主細胞又は目的のいくつかの宿主細胞に特異的に送達するための強力なツールとして使用することができる。いくつかの実施形態において、例えば、特定の細胞亜集団の標的化削除、及び/又は望ましい亜集団による置換によって、あるいは、本発明の送達ビヒクルを用いて目的の核酸配列で形質導入される細胞の特定のサブグループによって、特定の物質の発現を誘導する(例えば、代謝経路、特定のペプチド又はタンパク質の発現の調整)ことによって、本発明の改変バクテリオファージは、異なる細胞集団、例えば、細菌細胞集団の組成物及び含有量を操作し、又は編集するための方法に使用することができる。いくつかの特定の実施形態において、本発明のビヒクルは、抗生物質耐性遺伝子を有する細菌細胞の特定の削除、及び抗生物質に感受性の亜集団又は細胞に置き換えるために使用することができる。他の実施形態において、本発明のビヒクルは、バイオフィルム形成に関与する細菌遺伝子を標的化することができる。さらにいくつかの他の実施形態において、本発明のビヒクルは、匂い物質を産生する細菌細胞を無臭の細胞に特別に置き換えるために使用することができる。いくつかの特定の実施形態において、標的細胞、例えば、抗生物質耐性遺伝子、又は毒性、病原性又は望ましくない産物をコードする遺伝子において、核酸配列を標的化削除及び破壊するために設計された特定のCRISPR−Cas系は、「目的の核酸」として使用し、本発明の送達ビヒクル(例えば、本発明に記載の改変バクテリオファージ)の内部にパックされてもよい。この技術において、CRISPR−Cas系は、例えば、抗生物質耐性を与える特定のDNAを破壊し、同時に抗生物質感作性細菌に対する選択的利点を与えるために使用する。選択的利点によって、本発明の送達ビヒクルによって形質導入されたCRISPR−Cas系を有しない未処理の細菌に対して選択することによって、集団を抗生物質感作性細菌に効率的に置き換えることができる。より具体的には、いくつかの実施形態において、本発明の改変バクテリオファージは、有用であり、したがって、2つの成分を含むキット又は系に含めることができる。第1成分(i)は、少なくとも1つのプロトスペーサーを含む核酸配列を含む選択的成分である。したがって、このような改変バクテリオファージに含まれる「目的の核酸配列」は、前記少なくとも1つのプロトスペーサーを含んでもよい。さらにいくつかの実施形態において、第2成分(ii)は、少なくとも1つのcas遺伝子及び少なくとも1つのクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)アレイを含む少なくとも1つの感作成分を含む。CRISPRの少なくとも1つのスペーサーは、標的宿主細胞、特に細菌の病原性又は望ましくない遺伝子(細菌病原性又は望ましくない遺伝子)の内部に含まれるプロトスペーサーを標的にして、標的宿主細胞の病原性又は望ましくない遺伝子を特に不活性にすることに留意されたい。さらに、さらなる実施形態において、本発明のCRISPRの少なくとも1つのスペーサーは、選択的成分を特に不活性にするために、(i)の選択的成分の内部に含まれるプロトスペーサーを標的にする。より特定の実施形態において、本発明のCRISPRアレイの少なくとも1つのスペーサーは、標的宿主細胞、特に細菌の少なくとも1つの病変性又は望ましくない遺伝子(又は当該遺伝子の部分)に含まれる核酸配列に充分に相補的であってもよく、このスペーサーは、当該細菌の少なくとも1つの病原性又は望ましくない遺伝子を標的にし、不活性にするように「プロトスペーサー」としても呼ばれる。これらの成分のそれぞれ(例えば、感作成分又は選択的成分)が本発明の送達ビヒクルの内部に「目的の核酸配列」として含まれてもよく、したがって、本発明のビヒクルによって、特定の標的宿主細胞に送達し、形質導入することができることが理解される。
したがって、いくつかの実施形態において、本発明のバクテリオファージは、目的の核酸配列として、(a)少なくとも1つのcas遺伝子を含む少なくとも1つの感作成分及び少なくとも1つのCRISPRアレイの何れか1つを含むことができる。いくつかの実施形態において、前記CRISPRの少なくとも1つのスペーサーは、目的の標的細胞の病原性又は望ましくない遺伝子の内部に含まれるプロトスペーサーを標的にし、前記病原性又は望ましくない遺伝子を特異的に不活性にし、前記CRISPR標的の少なくとも1つのスペーサーは、選択的成分の内部に含まれるプロトスペーサーを標的にし、前記選択的成分を特に不活性にする。これらの配列を含む改変バクテリオファージは、感作成分として使用することができる。
さらにいくつかの他の実施形態において、本発明のバクテリオファージは、目的の核酸配列として、(b)少なくとも1つのプロトスペーサーを含む少なくとも1つの核酸配列を含むことができる。このようなプロトスペーサーは、トキシンをコードする遺伝子の内部に含まれうる。これらのバクテリオファージは、本明細書では、選択的成分として使用することができる。
「選択的成分」は、本明細書で使用する場合、細菌細胞の特定の集団、特に、本発明のcas−CRISPR系を有する細胞集団、より具体的には、本発明の感作成分を有する細菌細胞の集団を選択し(selecting、choosing、electing)又は富化するように作用することを可能にする、容易にする、導く本発明の系の要素又は成分を指す。選択的成分は、例えば、選択した望ましい集団(特定の実施形態においては、本発明の感作成分を有する集団又は細胞)の生存のみを可能にする条件を課すことによって、望ましい集団に選択的利点を提供する。
「感作成分」は、本明細書で使用する場合、特定の物質、例えば、抗生物質に対して、前記要素又は成分を有する生物の感受性(sensitivity又はsusceptibility)を増加し、及び/又は耐性を減少させることができる本発明の系の要素を指す。いくつかのさらなる実施形態において、感作成分は、望ましくない産物(複数可)(例えば、バイオフィルム形成又は匂い物質に関与するトキシン、タンパク質)を産生する形質導入された細菌の能力を除くことができる。より特定の実施形態において、本発明の感作成分は、病原性細菌遺伝子又は望ましくない産物をコードする遺伝子、例えば、抗生物質耐性をコードする遺伝子、又は毒性化合物をコードする遺伝子、又は匂い形成に関与する産物をコードする遺伝子を特異的に標的にし、不活性にし、及び/又は破壊することによって、細胞の感作及びその復帰の耐性を低下させ、より感受性のある細胞又は望ましくない産物を産生しない細胞にすることができる。特定の実施形態において、「標的化」は、選択された(elected又はchoosed)対象(複数可)又は要素が、攻撃され、取られ、分解され、不活性にされ、又は破壊される場合に、要素又は対象又は要素もしくは対象、標的のグループに、そこで作用する要素又は対象、標的のグループを選択させる(elect又はchoose)ことであると理解される。
さらに、本発明のCRISPRアレイの少なくとも1つのスペーサーは、「不活性にする」が選択的要素の活性を遅らせる、低下させる、阻害する、除く、弱くする又は停止させることを意味する場合、選択的成分を標的にし、不活性にするように、本発明の改変バクテリオファージビヒクルの選択的成分又はそのキットもしくは系の内部に、目的の核酸配列として含まれる核酸配列(又はプロトスペーサー)に充分に相補的でありうる。このような不活性化が、前記感作要素を含む細菌を、本発明の改変バクテリオファージビヒクルの選択的成分又はそのキットもしくは系に対して、非感受性にし、耐性にすることに留意されたい。充分な相補性は、本明細書で使用する場合、約10%〜100%相補的、より具体的には、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%及び100%相補的であることを示す。
特定の実施形態において、「相補性」は、鍵と鍵穴モデルにそれぞれ従った2つの構造の関係を指す。本質的に、相補性は、2つのDNA又はRNAに与えられる特性であるため、DNA複製及び転写の基本原理であり、DNA又はRNAが互いに逆平行に配列されると、配列の各位置の核酸塩基が相補的になる(例えばAとT又はU、CとG)。
さらに、特定の実施形態において、本発明の感作要素は、目的の核酸配列として、(いくつかの実施形態において、プロトスペーサー、又は溶菌バクテリオファージの必須遺伝子を含むトキシンをコードするバクテリオファージであってもよい)前記選択的成分の内部に含まれる少なくとも1つの核酸配列を標的にする少なくとも1つのCRISPRスペーサー、及び前記少なくとも1つの病原性又は望ましくない遺伝子の内部に含まれる核酸配列を標的にする少なくとも1つのCRISPRスペーサーを含む本発明の遺伝子改変のバクテリオファージを含むことができる。このように、本発明の感作成分は、選択的成分として働く溶菌ファージ(複数可)と目的の病原性又は望ましくない遺伝子の両方を標的にし、及び/又は不活性にすることができる。
特定の実施形態において、本発明の改変バクテリオファージは、選択的成分としても使用することができることに留意されたい。いくつかの実施形態において、このような改変バクテリオファージは、目的の核酸配列として、少なくとも1つのプロトスペーサーを含みうる。特に、本発明の感作成分によって標的化される少なくとも1つのプロトスペーサー。いくつかの実施形態において、このようなプロトスペーサーは、トキシンをコードする遺伝子の部分でありうる。このような実施形態において、本発明の感作成分によって形質導入されなかった細胞は、トキシン(又は溶菌ファージ)によって殺される。本発明の感作成分を含む形質導入された細胞は、感作粒子によって提供されたCRISPRによってこれらのトキシンから保護される。いくつかの実施形態において、本発明の系に使用する本発明の改変バクテリオファージは、選択的及び/又は感作成分の何れかとして、細菌の病原性タイプ、又は混合した細菌集団において異なる種類の細菌を感染させることができるある種類の細菌を選択的に感染させるハイブリッド粒子であってもよい。
他の特異的な実施形態において、本発明の改変バクテリオファージは、目的の核酸配列として、病原性又は望ましくない遺伝子を標的にするCRISPR系を含みうる。このようなバクテリオファージは、感作成分として使用される。いくつかのさらなる実施形態において、本発明のCRISPR系によって標的にされた細菌の標的病原性又は望ましくない遺伝子、又はそこから転写されたRNAは、細菌外因性遺伝子でありうる。「外因性遺伝子」は、本明細書で使用する場合、特定の生物、この場合では、細菌から生じるDNAを指し、したがって、染色体DNAの一部でありうることに留意されたい。
他の実施形態において、細菌の標的病原性又は望ましくない遺伝子は、染色体外(epichromosomal)であってもよい。いくつかの特定の非限定的な実施形態において、このような非外因性遺伝子は、水平伝播によって得ることができる。「染色体外(epichromosomal)遺伝子」は、本明細書で使用する場合、遺伝子物質、特に細菌のDNA、例えばプラスミドの単位に関係し、染色体外(extrachromosomal)DNAとして独立して複製することもでき、又は特定の実施形態において、宿主染色体に統合されてもよい。
いくつかの特定の実施形態において、細菌の少なくとも1つの標的病原性又は望ましくない遺伝子は、病原性因子又はトキシンをコードする遺伝子であってもよく、それによって前記細菌を病原性にする。「病原性の」という用語は、本明細書で使用する場合、細菌疾患又は感染を起こしうる細菌を意味する。いくつかの特定の実施形態において、病原性細菌は、易感染性の免疫系を有しないヒト対象、又は限定されないが、げっ歯類、鳥類、爬虫類、昆虫又は植物を含む他の生物において、細菌疾患又は感染を起こす細菌である。典型的には、病原性細菌は、「病原性因子」として呼ばれる特定のタンパク質を産生する。病原性細菌は、1つ以上の宿主の健康な宿主」組織を通常コロニー形成する細菌とは区別され、後者の細菌は、病原性因子を通常は発現せず、又は病原性細菌に関連する病原性因子を定量しか発現しないため、通常の治療的状況下で殺すことは望ましくない。前述のように、本開示は、いくつかの実施、病原性因子又は望ましくない産物をコードする細菌DNA配列に関する標的RNAをコードする配列を含むCRISPR系を含む。このような、病原性因子として、病原性の付着、コロニー形成、進入、バイオフィルム形成又は免疫応答阻害物質又はトキシンに関与する細菌タンパク質が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。病原性遺伝子として、限定されないが、トキシン(例えば、志賀毒素及びこれら毒素)、ヘモリジン、線毛性付着及び非線毛性付着、プロテアーゼ、リパーゼ、エンドヌクレアーゼ、内毒素及び外毒素細胞障害性因子、ミクロシン及びコリシン、ならびに技術分野で識別された遺伝子が挙げられる。これらの及び他の病原性因子をコードする広い配列の細菌種の細菌遺伝子の配列は、技術分野で知られている。病原性因子は、細菌染色体、又は細菌のプラスミド、又はその両方にコードすることができる。いくつかの特定の実施形態において、病原性因子は、S.aureus Sek遺伝子といった非限定的な例であるスーパー抗原エンテロトキシン遺伝子等の細菌スーパー抗原遺伝子によってコードすることができる。S.aureusについての追加の病原性因子として、限定されないが、α−ヘモリジン、β−ヘモリジン、γ−ヘモリジン、ロイコシジン、Panton−Valentine leukocidin(PVL)等の細胞溶解性トキシン;毒素性ショック症候群毒素1(型)(TSST−1)等の外毒素;SEA、SEB、SECn、SED、SEE、SEG、SEH、及びSEI等のエンテロトキシン、ならびにETA及びETB等の表皮剥脱毒素が挙げられる。他の種類の細菌によって発現するこれらのトキシンの全ての相同体は、同様に、病原性遺伝子標的として本明細書で考慮される。
より具体的には、「トキシン」という用語は、本明細書で使用する場合、外毒素又は内毒素の何れかとして分類することができる細菌によって生成される物質を意味する。外毒素は生成され、活発に分泌され、内毒素は細菌の部分を保持する。通常、外毒素は、細菌外膜の部分であり、細菌が免疫系によって殺されるまで放出されない。
本発明のいくつかの特定の非減的な実施形態において、本発明の送達ビヒクルによって送達されるCRISPR系によって標的にされうる細菌病原性遺伝子は、actA(例えば、genebank受託番号NC_003210.1)、Tem(例えば、genebank受託番号NC_009980)、Shv(例えば、genebank受託番号NC_009648)、oxa−1(例えば、genebank受託番号NW_139440)、oxa−7(例えば、genebank受託番号X75562)、pse−4(例えば、genebank受託番号J05162)、ctx−m(例えば、genebank受託番号NC_010870)、ant(3’’)−Ia(aadA1)(例えば、genebank受託番号DQ489717)、ant(2’’)−Ia(aadB)b(例えば、genebank受託番号DQ176450)、aac(3)−IIa(aacC2)(例えば、genebank受託番号NC_010886)、aac(3)−IV(例えば、genebank受託番号DQ241380)、aph(3’)−Ia(aphA1)(例えば、genebank受託番号NC_007682)、aph(3’)−IIa(aphA2)(例えば、genebank受託番号NC_010170)、tet(A)(例えば、genebank受託番号NC_005327)、tet(B)(例えば、genebank受託番号FJ411076)、tet(C)(例えば、genebank受託番号NC_010558)、tet(D)(例えば、genebank受託番号NC_010558)、tet(E)(例えば、genebank受託番号M34933)、tet(Y)(例えば、genebank受託番号AB089608)、catI(例えば、genebank受託番号NC_005773)、catII NC_010119、catIII(例えば、genebank受託番号X07848)、floR(例えば、genebank受託番号NC_009140)、dhfrI(例えば、genebank受託番号NC_002525)、dhfrV(例えば、genebank受託番号NC_010488)、dhfrVII(例えば、genebank受託番号DQ388126)、dhfrIX(例えば、genebank受託番号NC_010410)、dhfrXIII(例えば、genebank受託番号NC_000962)、dhfrXV(例えば、genebank受託番号Z83311)、suII(例えば、genebank受託番号NC_000913)、suIII(例えば、genebank受託番号NC_000913)、インテグロンクラス1 3’−CS(例えば、genebank受託番号AJ867812)、vat(例えば、genebank受託番号NC_011742)、vatC(例えば、genebank受託番号AF015628)、vatD(例えば、genebank受託番号AF368302)、vatE(例えば、genebank受託番号NC_004566)、vga(例えば、genebank受託番号AF117259)、vgb(例えば、genebank受託番号AF117258)、及びvgbB(例えば、genebank受託番号AF015628)から成る群から選択することができる。
前述のように、本発明の改変バクテリオファージビヒクル又はそのキットもしくは系は、病原性又は望ましくない細菌遺伝子、例えば、耐性を提供し、言い換えれば、抗菌薬に対する細菌の感受性を阻害し、減少し、抑制し、又は軽減する遺伝子を特異的に標的にすることができる。
前述のように、本発明のキット、系及び方法の感作要素は、抗生物質耐性を提供する遺伝子を標的にすることができる。本明細書で使用する場合、「耐性」という用語は、細菌細胞集団が、特定の抗生物質化合物に対して100%耐性であることを示していないが、抗生物質又はその誘導体に耐性のある細菌を含む。より具体的には、「細菌耐性遺伝子(複数可)」という用語は、抗生物質化合物からの約100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%又は10%の保護を与える遺伝子(複数可)を指し、それにより、前記抗生物質化合物に対する感受性(susceptibility及びsensitivity)を逆転する。
したがって、いくつかの実施形態において、細菌病原性又は望ましくない遺伝子は、前述の抗細菌化合物に対する耐性を提供する遺伝子であってもよい。
さらに、他の実施形態において、細菌の少なくとも1つの病原性又は望ましくない遺伝子は、抗生物質耐性因子をコードする遺伝子であってもよい。
「抗生物質耐性遺伝子」というフレーズは、本明細書で使用する場合、例えば、前記抗生物質化合物を破壊する酵素のためにコードすることによって、抗生物質化合物が細菌に進入するのを防ぎ、活性して抗生物質化合物を排出する表面タンパク質のためにコードすることによって、又は抗生物質の標的の変異形態になり、それによって抗生物質機能を防ぐことによって、抗生物質に対する耐性を与える遺伝子を指す。
多様な細菌が有する抗生物質耐性遺伝子は、技術分野で知られており、特定の細菌の抗生物質耐性遺伝子の配列は、望ましい場合、決定することができる。特定の非限定的な実施形態において、本開示は、抗生物質耐性遺伝子を含む細菌DNA配列に関する標的RNAをコードするスペーサーを含むCRISPR系を含む。いくつかの実施形態において、耐性遺伝子は、抗生物質のペニシリンクラスの狭域性β−ラクタム抗生物質に対する耐性を与える。他の実施形態において、耐性遺伝子は、メチシリン(例えば、メチシリン又はオキサシリン)又はフルクロキサシリン又はジクロキサシリン、又はこれらの抗生物質のいくつかもしくは全てに対する耐性を与える。そのため、いくつかの実施形態において、CRISPR系は、実際に、ペニシリンの多く又は全てに非感受性である、又は減少した感受性を有するS.aureusの株を指す口語的にメチシリン耐性S.aureus(MRSA)として知られている耐性遺伝子を選択的に標的にするのに適している。他の実施形態において、CRISPR系は、バンコマイシン耐性S.aureus(VRSA)のバンコマイシン耐性を標的にするのに適している。特定の実施形態において、バンコマイシン耐性S.aureusは、リネゾリド(ZYVOX(商標))、ダプトマイシン(CUBICIN(商標))及びキヌプリスチン/ダルホプリスチン(SYERCID(商標))の少なくとも1つにも耐性でありうる。
追加の抗生物質耐性遺伝子として、限定されないが、ホスホマイシン耐性遺伝子fosB、テトラサイクリン耐性遺伝子tetM、カナマイシンヌクレオチジルトランスフェラーゼaadD、二官能性アミノグリコシド修飾酵素遺伝子aacA−aphD、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼcat、ムピロシン耐性遺伝子ileS2、バンコマイシン耐性遺伝子vanX、vanR、vanH、vraE、vraD、メチシリン耐性因子femA、fmtA、mecl、ストレプトマイシンアデニリルトランスフェラーゼ spcl、spc2、antl、ant2、ペクチノマイシン アデニリルトランスフェラーゼ spd、ant9、aadA2及び他の耐性遺伝子が挙げられる。
いくつかの特定の実施形態において、病原性又は望ましくない遺伝子は、β−ラクタム抗生物質化合物に対する耐性を与える遺伝子をコードする遺伝子であってもよい。さらなる特定の実施形態において、このような遺伝子は、少なくとも1つのβ−ラクタマーゼをコードすることができる。本明細書で使用する場合、「β−ラクタマーゼ」という用語は、β−ラクタム含有分子(β−ラクタム抗生物質等)又はその誘導体等のβ−ラクタマーゼ基質の切断を触媒することができるタンパク質を示す。
β−ラクタマーゼは、そのアミノ酸配列に基づいて4つの分子クラス(A、B、C及びD)に組織化される。クラスA酵素は、約29kDaの分子量を有し、好ましくはペニシリンを加水分解する。クラスA酵素の例として、RTEM及びStaphylococcus aureusのβ−ラクタマーゼが挙げられる。クラスB酵素は、β−ラクタマーゼの他のクラスよりも広い基質特性を有する金属酵素を含む。クラスC酵素は、約39kDaの分子量を有し、グラム陰性細菌の染色体セファロスポリナーゼを含み、多様な古い及び新しく設計された抗生物質の両方に対してグラム陰性細菌の耐性を担う。さらに、クラスC酵素は、P99 Enterobacter cloacaeのP99のラクタマーゼも含み、このエンテロバクター種を、米国の病因で最も広まった細菌製剤の1つにする役割を担う。クラスD酵素は、セリンヒドロラーゼであり、ユニークな基質特性を示す。前述のように、より特定の実施形態において、本発明のキット及び系は、β−ラクタム抗生物質に対する耐性を与えることができる遺伝子に関するものでありうる。「β−ラクタム」又は「β−ラクタム抗生物質」という用語は、本明細書で使用する場合、その分子構造において、b−ラクタム環を含む抗菌薬を指す。β−ラクタム抗生物質は、未変性の半合成ペニシリン、クラブラン酸、カルバペネム、ペニシリン誘導体(ペナム)、セファロスポリン(セファム)、セファマイシン及びモノバクタム等の異なるクラスを含む抗生物質の広いグループであり、すなわち、その分子構造にβ−ラクタム環を含む抗菌薬である。β−ラクタム又はβ−ラクタム抗生物質は、最も広く使用される抗生物質のグループである。本当の抗生物質ではないが、β−ラクタマーゼ阻害剤は、このグループに含まれることが多い。β−ラクタム抗生物質は、発生期のペプチドグリカン層の前駆体NAM/NAGペプチドサブユニット上のD−アラニル−D−アラニン末端アミノ酸残基の類似体である。β−ラクタム抗生物質とD−アラニル−D−アラニンとの構造的類似性は、発生期のペプチドグリカン層の最後の架橋(ペプチド転移)を防ぎ、細胞壁の合成を破壊する。通常の状況下において、ペプチドグリカン前駆体は、細菌細胞壁の再編成を合図し、結果として、自己溶菌細胞壁ヒドロラーゼの活性化を起こす。β−ラクタムによる架橋の阻害により、ペプチドグリカン前駆体の構築が生じ、新しいペプチドグリカンを産生せずに、自己溶菌ヒドロラーゼによる既存のペプチドグリカンの消化を起こす。結果として、β−ラクタム抗生物質の殺菌作用がさらに高まる。概して、β−ラクタムは分類され、そのコアリング構造に従ってグループ化され、それぞれのグループを異なるカテゴリーに分けることができる。「ペナム」という用語は、ペニシリン抗生物質、いわゆるチアゾリジン環を含むβ−ラクタムのメンバーのコア骨格を示すために使用される。ペニシリンは、環の原子の1つが硫黄であり、環が完全飽和される場合、5員環に縮合されたβ−ラクタム環を含む。ペニシリンは、ベンザチンペニシリン、ベンジルペニシリン(ペニシリンG)、フェノキシメチルペニシリン(ペニシリンV)、プロカインペニシリン及びオキサシリン等の狭いスペクトルのペニシリンを含むことができる。狭いスペクトルのペニシリナーゼ耐性ペニシリンは、メチシリン、ジクロキサシリン及びフルクロキサシリンを含む。狭いスペクトルのβ−ラクタマーゼ耐性ペニシリンはテモシリンを含む。中程度のスペクトルのペニシリンとして、例えば、アモキシシリン及びアンピシリンが挙げられる。広いスペクトルのペニシリンは、アモキシシリン・クラブラン酸カリウム合剤(co−amoxiclav)(アモキシシリン+クラブラン酸)を含む。最後に、ペニシリンのグループとして、拡張したスペクトルのペニシリン、例えば、アズロシリン、カルベニシリン、チカルシリン、メズロシリン及びピペラシリンも挙げられる。このクラスの他のメンバーとして、ピバンピシリン、ヘタシリン、バカンピシリン、メタンピシリン、タランピシリン、エピシリン、カルベニシリン、カリンダシリン、チカルシリン、アズロシリン、ピペラシリン、メズロシリン、メシリナム、ピブメシリナム、スルベニシリン、クロメトシリン、プロカインベンジルペニシリン、アジドシリン、ペナメシリン、プロピシリン、フェネチシリン、クロキサシリン及びナフシリンが挙げられる。ピロリジン環を含むβ−ラクタムは、カルバペナムと呼ばれる。カルバペネムは、飽和カルバペネムであるβ−ラクタム化合物である。それらは、カルバペネム抗生物質の軌道に生合成中間体として主に存在する。カルバペネムは、β−ラクタマーゼに高い耐性を与える構造を有し、したがって、β−ラクタム抗生物質の最も広いスペクトルとして考えられる。カルバペネムは、構造的にペニシリンに非常に類似しているが、構造の1位の硫黄原子は炭素原子で置換されており、したがって基の名前、カルバペネムである。カルバペネム抗生物質は、ストレプトマイセスカトレアの自然由来産物であるチエナマイシンから元来生じた。カルバペネム群として、ビアペネム、ドリペネム、エルタペネム、イミペネム、メロペネム、パニペネム及びPZ−601である。2,3−ジヒドロチアゾール環を含むβ−ラクタムは、ペネムと呼ばれる。ペネムは、カルバペネムと構造が類似している。しかしながら、ペネムが硫黄を有する場合、カルバペネムは別の炭素を有する。自然発生のペネムがなく、その全ては合成して作製されている。ペネムの例はファロペネムである。3,6−ジヒドロ−2H−1,3−チアジン環を含むβ−ラクタムは、セフェムと呼ばれる。セフェムは、b−ラクタム抗生物質のサブグループであり、セファロスポリン及びセファマイシンを含む。セファロスポリンは、7−アミノセファロスポラン酸の核を提供する広いスペクトルの半合成抗生物質である。第1世代セファロスポリンは、中程度のスペクトルとしても考えられ、セファレキシン、セファロチン及びセファゾリンが挙げられる。抗ヘモフィルス活性を有する中程度のスペクトルを有すると考えられる第2世代セファロスポリンは、セファクロル、セフロキシム及びセファマンドールを含みうる。抗嫌気的活性を有する中程度のスペクトルを示す第2世代セファマイシンは、セフォテタン及びセフォキシチンを含む。広い活性スペクトルを有すると考えられる第3世代セファロスポリンは、セフォタキシム及びセフポドキシムを含む。
最後に、グラム陽性細菌及びβ−ラクタマーゼに対する高い活性を有する広いスペクトルとして考えられる第4世代セファロスポリンは、セフェピム及びセフピロムを含む。セファロスポリンクラスは、さらに、セファドロキシル、セフィキシム、セフプロジル、セファレキシン、セファロチン、セフロキシム、セファマンドール、セフェピム及びセフピロムをさらに含む。
セファマイシンは、セファロスポリンに非常に類似しており、セファロスポリンとして分類されることもある。セファロスポリンのように、セファマイシンはセフェム核に基づいている。セファマイシンは、元来ストレプトマイセスによって産生されたが、合成したものも産生された。セファマイシンは、7−α位にメトキシ基を有し、セフォキシチン、セフォテタン、セフメタゾール及びフロモキセフを含む。
1,2,3,4−テトラヒドロピリジン環を含むβ−ラクタムは、カルバセフェムと呼ばれる。カルバセフェムは、セファロスポリン、セフェムの構造に基づいて、合成して作製された抗生物質である。カルバセフェムは、セフェムに類似しているが、硫黄を置換する炭素を有する。カルバセフェムの例は、ロラカルベフである。
モノバクタムは、b−ラクタム化合物であり、β−ラクタム環は単独であり、(2つの環を有する多くのβ−ラクタムとは対照的に)別の環に縮合されない。モノバクタムは、グラム陰性細菌に対してのみ働く。モノバクタムの他の例は、チゲモナム、ノカルディシンA及びタブトキシンである。
3,6−ジヒドロ−2H−1、3−オキサジン環を含むβ−ラクタムは、オキサセフェム又はクラバムと呼ばれる。オキサセフェムは、セフェムと同様の分子であるが、硫黄を置換する酸素を有する。したがって、オキサセフェムとしても知られる。オキサセフェムの例は、クラブラン酸である。オキサセフェムは、合成して作製された化合物であり、自然では見つかっていない。オキサセフェムの他の例として、モキサラクタム及びフロモキセフが挙げられる。
β−ラクタム抗生物質の別のグループは、β−ラクタマーゼ阻害剤、例えば、クラブラン酸である。β−ラクタム抗生物質の別のグループは、無視することができない抗抗生物質活性を示すが、β−ラクタム環を含む。唯一の目的は、β−ラクタマーゼに結合することによってβ−ラクタム抗生物質の不活性化を防ぎ、このように、β−ラクタム抗生物質と共投与する。臨床使用におけるβ−ラクタマーゼ阻害剤は、(通常アモキシシリン又はチカルシリンと組み合わせて)クラブラン酸及びそのカリウム塩、スルバクタム及びタゾバクタムを含む。
本発明の系は、本発明の改変バクテリオファージによって送達されるCRISPR−Casによって、抗生物質耐性遺伝子を標的にし、破壊することによって、前に示した抗生物質化合物の細菌集団の感作を導くことが理解される。このような感受性は、前記化合物に対する細菌の感作を増加させ、それにより、必要とされる量の減少を導きうる有効性を高めることが理解される。本発明の系及び本明細書に開示する抗生物質化合物の併用治療も本発明において考慮される。いくつかのさらなる実施形態において、本発明のキット及び系は、感作成分を含む送達ビヒクルの他に、選択的成分及び少なくとも1つの抗生物質化合物も含む。より特定の実施形態において、このような化合物は、本発明に開示する抗生物質化合物であってもよい。
より特定の実施形態において、抗生物質耐性因子又は遺伝子は、本発明のキットについて標的病原性遺伝子又は望ましくない遺伝子であり、拡張スペクトルβラクタマーゼ耐性因子(ESBL因子)、カルバペネマーゼ、CTX−M−15、βラクタマーゼ、ニューデリーメタロ−β−ラクタマーゼ(NDM)−1,2,5,6,Klebsiella pneumoniaeカルバペネマーゼ(KPC)−1,2,3,4,5,OXA−48カルバペネマーゼ、ベロナインテグロンコードメタロ−β−ラクタマーゼ(VIM)、IMPメタロ−β−ラクタマーゼの1つであってもよい。新しいニューデリーメタロ−β−ラクタマーゼ(NDM−1)は、細菌を本発明で使用する全てのβ−ラクタム抗生物質に対して耐性にする酵素である。NDM−1耐性スペクトルは、抗生物質耐性細菌感染の治療の柱であるカルバペネムファミリーの抗生物質を含む。NDM−1についての遺伝子は、カルバペネマーゼと呼ばれるβ−ラクタマーゼ酵素をコードする大きな遺伝子ファミリーの一員である。カルバペネマーゼを産生する細菌は、処理するのが非常に困難である。重要なこととして、NDM−1についての遺伝子は、遺伝子水平伝播によって、ある細菌株から別の細菌株へ核酸することができ、したがって、容易に拡散させることができる。特定の非限定的な実施形態において、NDM−1タンパク質は、タンパク質ID CAZ39946.1のKlebsiella pneumoniaeメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子blaNDM−1であってもよい。いくつかの特定の実施形態において、前記NDM−1タンパク質は、SEQ ID NO.191によって示される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含んでもよい。さらにいくつかの特定の実施形態において、本発明のNDM−1タンパク質は、SEQ ID NO.192によって示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
さらに、CTX−M−15は、本明細書で使用する場合、E.coli、Klebsiella pneumoniae、及びサルモネラ菌種に最初に記述された拡張したスペクトルβ−ラクタマーゼ(ESBL)のCTX−Mファミリー(セフォタキシマーゼ(CTX−M−ases))のメンバーであるが、他のEnterobacteriaceae及びPseudomonas aeruginosaを含むEnterobacteriaceae種に急速に現れる。このファミリーとしてCTX−M−3、CTX−M−9、CTX−M−14及びCTX−M−15酵素が挙げられる。いくつかの特定の実施形態において、本発明のキットについて標的として使用するCTX−M−15は、タンパク質ID AAL02127.1のEscherichia coli β−ラクタマーゼCTX−M−15であってもよい。いくつかの特定の実施形態において、前記CTX−M−15タンパク質は、SEQ ID NO.138によって示される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含んでもよい。さらにいくつかの特定の実施形態において、本発明のCTX−M−15タンパク質は、SEQ ID NO.139によって示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
さらにいくつかの他の特定の非限定的な実施形態において、本発明のCRISPR系、特にその感作成分は、本発明の送達ビヒクル(改変バクテリオファージ)によって送達され、CTX−M−15の少なくとも1つのプロトスペーサーを標的にする少なくとも1つのスペーサーを含みうる。より特定の実施形態において、このようなプロトスペーサー(複数可)は、SEQ ID NO:140、141及び142の何れか1つ又はその組み合わせ(本明細書ではそれぞれC1、C2及びC3とも呼ばれる)によって示される核酸配列を含んでもよい。いくつかのさらなる実施形態において、本発明のCRISPR系、特にその感作成分は、NDM−1の少なくとも1つのプロトスペーサーを標的にする少なくとも1つのスペーサーを含んでもよく、特にこのようなプロトスペーサーは、SEQ ID NO:143、144及び145の何れか1つ又はその組み合わせ(本明細書ではそれぞれN1、N2及びN3とも呼ばれる)によって示される核酸配列を含んでもよい。
本発明の改変バクテリオファージ(本明細書では送達ビヒクルとも呼ばれる)を選択的成分として使用する場合、そこにパッケージされた「目的の核酸配列」は、前に示されたプロトスペーサー、特に、SEQ ID NO:140、141及び142、及び/又はSEQ ID NO:143、144及び145の何れか1つを含んでもよい。NDMに使用されるスペーサーの非限定的な例は、核酸配列SEQ ID NO.212及び213によって示されるスペーサーを含む。CTX−Mに有用なスペーサーの非限定的な例は、核酸配列SEQ ID NO.214及び215によって示されるスペーサーを含む。
いくつかのさらなる実施形態において、Klebsiella pneumoniaeルバペネマーゼ(KPC)産生細菌は、顕著な罹患率及び死亡率に関連する感染症を引き起こす高度に薬剤耐性グラム陰性桿菌を出現させるグループである。
OXA−48カルバペネマーゼは、Klebsiella pneumoniaeの流行において最初に述べた。さらに、OXA−48は、Escherichia coli、Enterobacter cloacae、Citrobacter freundii及びProvidencia rettgeriにおいて識別された。この酵素は、ペニシリン及びカルバペネムを加水分解することができるが、広いスペクトルのセファロスポリンに対しての活性が乏しい。OXA−48産生株の多剤耐性は、様々な耐性メカニズム、特に拡張したスペクトルβ−ラクタマーゼ(ESBL)及び他の耐性決定因子から生じることが多い。このように、これらのカルバペネマーゼは、本発明の送達ビヒクルによって含まれる目的の核酸配列によって標的にされてもよい。
したがって、いくつかの実施形態において、本発明の感作要素は、AAG13410.1、及びSEQ ID NO.193によって示され、SEQ ID NO.194(AF297554)によって示されるKlebsiella pneumoniaeカルバペネム加水分解β−ラクタマーゼKPC−1を標的にすることができる。さらに、このような標的カルバペネマーゼは、AAK70220.1によって示されるKlebsiella pneumoniaeカルバペネム加水分解β−ラクタマーゼKPC−2であってもよく、SEQ ID NO.195のアミノ酸配列を含み、SEQ ID NO.196(AY034847)によってコードされる。さらなるいくつかの実施形態において、本発明の感作要素は、AAL05630.1及びSEQ ID NO.197によって示され、SEQ ID NO.198(AF395881)によって示されるKlebsiella pneumoniaeカルバペネム加水分解β−ラクタマーゼKPC−3を標的にすることができる。
いくつかのさらなる実施形態において、本発明の感作要素は、AAU06362.1及びSEQ ID NO.199によって示され、SEQ ID NO.200(AY700571)によってコードされるエンテロバクター種E624カルバペネム加水分解β−ラクタマーゼKPC−4を標的にすることができる。さらに、このような標的カルバペネマーゼは、ABY91240.1によって示されるPseudomonas aeruginosa β−ラクタマーゼKPC−5であってもよく、SEQ ID NO.201のアミノ酸配列を含み、SEQ ID NO.202(EU400222.2)によってコードされる。さらなる実施形態は、SEQ ID NO.203によって示され、SEQ ID NO.204(AY236073.2)によってコードされるAAP70012.1のKlebsiella pneumoniae OXA−48に関する。さらに別の実施形態において、SEQ ID NO.216によって示され、SEQ ID NO.217(NG_050417.1)によってコードされるWP_049589868.1のEnterobacteriaceaeホスホエタノールアミン−脂質AトランスフェラーゼMCR−1である。さらなる実施形態は、WP_065419574.1によって示されるEscherichia coliホスホエタノールアミン−脂質AトランスフェラーゼMCR−2に関するものであってもよく、SEQ ID NO.218を含み、SEQ ID NO.219(NG_051171.1)によってコードされる。
さらにいくつかの他の特定の非限定的な実施形態において、本発明のCRISPR系、特にその感作成分は、本発明の送達ビヒクル(改変バクテリオファージ)によって送達され、KPC−1、2、3、4、5又はOXA−48の少なくとも1つのプロトスペーサーを標的にする少なくとも1つのスペーサーを含みうる。より特定の実施形態において、このようなスペーサー(複数可)は、(KPC−1、2、3、4、5について)SEQ ID NO:205及び206又はその組み合わせの何れか1つによって示される核酸配列を含んでもよい。より特定の実施形態において、このようなスペーサー(複数可)は、(OXA−48について)SEQ ID NO:207及び208又はその組み合わせの何れか1つによって示される核酸配列を含んでもよい。
いくつかのさらなる実施形態において、本発明の送達ビヒクルは、目的の核酸配列として、望ましくない産物をコードする細菌遺伝子を標的にするCRSPR−Cas系に基づく少なくとも1つの感作成分を含んでもよい。いくつかの特定の非限定的な実施形態において、このような望ましくない細菌遺伝子は、例えば、酪酸又は好ましくない匂いを有するチオアルコール化合物等の産物を形成する経路に属するリパーゼをコードすることができる。さらにいくつかの他の代替実施形態において、本発明のビヒクルによって送達されるCRISPR系は、バイオフィルム形成、例えば、pstSタンパク質等に属するタンパク質をコードする遺伝子を標的にすることができる。前述のように、本発明が提供する系の感作成分として提供する本発明の改変バクテリオファージは、cas遺伝子と共に、CRISPR(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)アレイを含み、CRISPR系を形成する。本明細書で使用する場合、SPIDR(Spacer Interspersed Direct Repeats)としても知られるCRISPRアレイは、特定の細菌種に通常特異的な本発明に記載のDNA遺伝子座のファミリーを構成する。CRISPRアレイは、E.coliで最初に認識されたinterspersed short sequence repeats(SSR)の固有のクラスである。さらに時代を下ると、同様のCRISPRアレイが、Mycobacterium tuberculosis、Haloferax mediterranei、Methanocaldococcus jannaschii、Thermotoga maritimaならびに他の細菌及び古細菌で見つかった。本発明は、知られているCRISPR系、特に本明細書開示するCRISPR系の使用を考慮する。
本明細書で使用する場合、「CRISPRアレイポリヌクレオチド」は、充分なCRISPRリピートを含むDNA又はRNAセグメントを指し、相補的遺伝子をダウンレギュレートする(例えば、切断、標的にする)ことができる。
一実施形態において、本発明のビヒクルにおける目的の核酸配列として含まれるCRISPRアレイポリヌクレオチドは、その間に1つのスペーサーを有する少なくとも2つのリピートを含む。いくつかのさらなる実施形態において、本発明の感作成分のCRISPRアレイは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100以上、特に110、120、130、140、150、160、170、180、190、200以上のスペーサーを含む。本発明の感作成分のスペーサーは同じスペーサーであっても、異なるスペーサーであってもよいことがさらに理解される。さらなる実施形態において、これらのスペーサーは、同一の又は異なる標的細菌病原性もしくは望ましくない遺伝子(複数可)の何れかを標的にすることができる。さらにいくつかの他の実施形態において、このようなスペーサーは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100以上の病原性又は望ましくない細菌遺伝子(複数可)を標的にすることができる。
例示的な実施形態において、CRISPRアレイポリヌクレオチドは、全てのCRISPRリピートを含み、第1のCRISPRリピートの第1のヌクレオチドから始まり、最後の(終端の)リピートの最後のヌクレオチドで終わる。
本明細書で使用する場合、「スペーサー」という用語は、CRISPRアレイの複数の短い直接的なリピート(すなわちCRISPRリピート)の間で見られる非反復スペーサー配列を指す。いくつかの実施形態において、CRISPRスペーサーは、2つの同一のCRISPRリピートの間に位置する。
いくつかの実施形態において、CRISPRスペーサーは、回文構造の2つの同じ、短い直接的なリピートに自然に存在する。本発明のスペーサーは、2つの同一の又は同一でないリピートの間に位置する、又は存在することができ、さらに、これらのスペーサーは、病原性又は望ましくない細菌遺伝子の内部のプロトスペーサー、及び/又は選択的成分の内部のプロトスペーサーを標的にするcrRNAをコードすることに留意されたい。
本明細書で使用する場合、「cas遺伝子」という用語は、概して、Casタンパク質をコードする隣接しているCRISPRアレイに連結し、結合し、又は接して、もしくはその近くにある遺伝子を指す。
CRISPRアレイは、通常、cas1〜cas4と名付けた4つの遺伝子の近くに見られる。これらの遺伝子の最も多い配置は、cas3−cas4−casl−cas2である。Cas3タンパク質は、ヘリカーゼであるように見え、Cas4は、エキソヌクレアーゼのRecBファミリーに似ており、DNA結合を思わせるシステインが豊富なモチーフを含む。cas1遺伝子(NCBI COGデータベースコード:COG1518)は、特に注目すべき遺伝子であり、(Pyrococcus abyssiiを除く全てのCRISPR系に接続する)CRISPR系の普遍的なマーカーとしての役割を担う。cas2は、特徴付けされていないままである。casl−4は、通常、CRISPR遺伝子座のすぐそばにあり、細菌及び古細菌種にわたって広く分布することが特徴付けられている。全てのcasl−4遺伝子がCRISPR遺伝子座に結合しているわけではないが、casl−4遺伝子は全て複数のサブタイプに見られる。
さらに、CRISPR-Cas系:I型、II型及びIII型の3つの主要な種類を示す。本発明の改変バクテリオファージの内部にパッケージされた目的の核酸が、CRISPR-Cas系の種類に由来するCRISPR系(例えば、casタンパク質及びスペーサーをコードする遺伝子)を含みうることが理解される。
より具体的には、I型CRISPR-Cas系は、cas3遺伝子を含み、異なる組成物を有するカスケード様複合体をおそらく形成するタンパク質をコードする遺伝子の他に、別個のヘリカーゼ及びデオキシリボヌクレアーゼ活性で、大きいタンパク質をコードする。これらの複合体は、repeat−associated mysterious protein(RAMP)に含まれている多くのタンパク質を含み、Casタンパク質の大きいスーパーファミリーを形成し、少なくとも1つのRNA認識モチーフ(RRM;フェレドキシンフォールドドメインとしても知られる)及び特徴的なグリシンが豊富なループを含む。RAMPスーパーファミリーは、広範囲な配列及び構造的比較に基づいて、大きいCas5及びCas6ファミリーを含む。さらに、Cas7(COG1857)タンパク質は、RAMPスーパーファミリーの別の固有の大きいファミリーを示す。
I型CRISPR-Cas系は、標的の切断がCas3のHDヌクレアーゼドメインによって触媒される場合に、DNAを標的にするように思われる。Cas4のRecBヌクレアーゼドメインは、いくつかのI型CRISPR-Cas系のCas1に縮合するため、Cas4は、代わりにスペーサーの取得の役割を潜在的に担う。I型CRISPR−Cas系が、本発明、特にI−A、B、C、D、E及びF型の何れか1つに適用することができることに留意されたい。
II型CRISPR−Cas系は、「HNH」型系(連鎖球菌様;ナイセリア・メニンギティディス血清型A str.Z2491又はCASS4)を含み、Cas9、単一の非常に大きいタンパク質は、遍在性のCas1及びCas2の他に、crRNAを生成し、標的DNAを切断するのに充分であると思われる。Cas9は、少なくとも2つのヌクレアーゼドメイン、アミノ末端に近いRuvC様ヌクレアーゼドメイン及びタンパク質の中間のHNH(又はMcrA様)ヌクレアーゼドメインを含むが、これらのドメインの機能は解明されていない。しかしながら、HNHヌクレアーゼドメインは、制限酵素に豊富にあり、エンドヌクレアーゼ活性を有し、標的の切断を担う可能性がある。
II型システムは、tracrRNAとpre−crRNAのリピート部分との間に二本鎖形成を伴う普通でないメカニズムによってpre−crRNAを切断し、次にpre−crRNAプロセッシング経路の第1切断が、このリピート領域で起こる。この切断は、Cas9の存在下で、ハウスキーピング、二本鎖RNA特異的リボヌクレアーゼIIIによって触媒される。さらに、II型系は、cas9、cas1、cas2 csn2及びcas4遺伝子の少なくとも1つを含む。II型CRISPR−Cas系が、本発明、特にII−A型又はB型の何れか1つに適用することができることに留意されたい。
III型CRISPR−Cas系は、RAMPの少なくともいくつかがカスケード複合体に類似してスペーサーリピート転写物のプロセッシングに関与していると思われるポリメラーゼ及びRAMPモジュールを含む。III型系は、さらにサブタイプIII−A(Mtube又はCASS6としても知られる)及びIII−B(ポリメラーゼ−RAMPモジュールとしても知られる)に分けることができる。サブタイプIII−A系は、S.epidermidisについてインビボで実証されたように、プラスミドを標的にすることができ、このサブタイプ(COG1353)にコードされるポリメラーゼ様タンパク質のHDドメインが、標的DNAの切断に関与しうると思われる。furiosusのサブタイプIII−B系について示されるように、少なくともインビトロで、III−B型CRISPR−;Cas系がRNAを標的にすることができるという強力な証拠がある。III型CRISPR系に属するcas遺伝子、例えば、cas6、cas10、csm2、csm3、csm4、csm5、csm6、cmr1、cmr3、cmr4、cmr5、cmr6、cas1及びcas2の何れか1つが本発明の目的に使用することができることが理解される。さらにIII−A型又はIII−B型系の何れか1つを本発明のキット、成分及び方法に使用することができる。特に興味深いこととして、特に、外因性病原性又は望ましくない遺伝子が、本発明の系及び方法によって標的にされる場合、本発明の方法、III−B系を使用することができる。
いくつかの特定の実施形態において、本発明のビヒクルに、目的の核酸配列として使用するCRISPR−Cas系の少なくとも1つのcas遺伝子は、I−E型CRISPR系の少なくとも1つのcas遺伝子であってもよい。「IE型CRISPR」系は、K型Escherichia coliを原産とする系を指す。IE型CRISPR系は、ファージ感染を阻害し、プラスミドを硬化し、接合要素伝達を防ぎ、細胞を殺すことが示されている。CRISPR機構を使用して、残りのDNAを無傷のまま、誘導性及び標的化様式で、特定の細胞内DNAを分解することができる。
いくつかの他の実施形態において、本発明の改変バクテリオファージビヒクルの内部に含まれる少なくとも1つのI−E型cas遺伝子は、cse1、cse2、cas7、cas5、cas6e及びcas3遺伝子の少なくとも1つでありうる。特定の実施形態において、cse1、cse2、cas7、cas5、cas6e及びcas3遺伝子の少なくとも1つの他に、本発明の感作成分は、cas1及びcas2遺伝子の少なくとも1つをさらに含むことができる。
いくつかの特定の実施形態において、本発明のビヒクルにおける目的の核酸配列として含まれる感作成分は、cse1遺伝子を含む。より特定の実施形態において、このようなcse1遺伝子は、タンパク質ID AAC75802.1によって示されるように、Escherichia coli str.K−12 substr.MG1655のCse1タンパク質をコードする。より特定の実施形態において、前記cse1遺伝子は、SEQ ID NO.146によって示されるように、核酸配列を含むことができる。より特定の実施形態において、前記cse1遺伝子は、SEQ ID NO.147によって示されるように、アミノ酸配列を含むCse1タンパク質をコードする。いくつかのさらなる実施形態において、本発明の感作成分は、cse2遺伝子を含む。より特定の実施形態において、このようなCse2タンパク質は、タンパク質ID AAC75801.1によって示されるように、Escherichia coli str.K−12 substr.MG1655であってもよい。さらなる実施形態において、本発明で使用するCse2タンパク質は、SEQ ID NO.148によって示される核酸配列によってコードされてもよい。より特定の実施形態において、前記cse2タンパク質は、SEQ ID NO.149によって示されるアミノ酸配列を含んでもよい。さらに、特定の実施形態において、本発明の感作成分は、cas7を含むことができる。より特定の実施形態において、前記cas7タンパク質は、タンパク質ID AAC75800.1によって示されるように、Escherichia coli str.K−12 substr.MG1655 Cas7であってもよい。いくつかの実施形態において、Cas7タンパク質は、SEQ ID NO.150によって示される核酸配列によってコードされる。さらなる実施形態において、SEQ ID NO:151によって示されるアミノ酸配列を含むCas7タンパク質に関する。
さらに、本発明の感作成分は、cas5を含むことができる。より具体的には、Escherichia coli str.K−12 substr.MG1655 Cas5 タンパク質ID AAC75799.2である。いくつかの実施形態において、Cas5タンパク質は、SEQ ID NO.152によって示される核酸配列によってコードされる。さらなる実施形態において、Cas5タンパク質は、SEQ ID NO:153によって示されるアミノ酸配列を含む。
いくつかのさらなる実施形態において、本発明の感作成分は、cas6eを含むことができる。より特定の実施形態において、cas6eタンパク質は、Escherichia coli str.K−12 substr.MG1655 Cas6e タンパク質ID AAC75798.1であってもよい。特定の実施形態において、本発明で使用する Cas6eタンパク質は、SEQ ID NO.154によって示される核酸配列によってコードすることができる。さらなる実施形態において、Cas6eタンパク質は、SEQ ID NO:155によって示されるアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかのさらなる実施形態において、本発明のビヒクルにおける目的の核酸配列は、cas3遺伝子をさらに含むことができる。より特定の実施形態において、cas3遺伝子は、ID AAC75803.1のEscherichia coli str.K−12 substr.MG1655 Cas3タンパク質をコードする。さらなる実施形態において、Cas3タンパク質は、SEQ ID NO.156によって示される核酸配列によってコードされる。さらなる実施形態において、Cas3タンパク質は、SEQ ID NO:157によって示されるアミノ酸配列を含むことができる。
DNA形質導入のために新しいファージ粒子の生成を分子生物学に使用して、例えば、現在の遺伝子操作系を使用することができない宿主について、形質導入系を確立することができる。重要なこととして、本発明に記載の原理を使用して、DNA送達のための他のプラットフォームを細菌宿主の他のグループに生成することができる。例えば、潜在的に、グラム陽性宿主を感染させるファージを発現させて、本発明の技術を用いて、グラム陽性細菌の全体のグループを形質導入することができる。本発明は、さらに、酵母等の真核生物及びさらに高次の生物を形質導入するために、特定の操作されたファージカプシドを使用し、DNAを望ましい動物細胞に形質導入するための刺激的で新しいプラットフォームを作製することを予想している。
いくつかの最適化したT7粒子で様々な宿主を形質導入する能力によって、特異的にも効率的にも、特定の細菌集団を容易に編集することができる。本発明の発明者等は、前に開示したCRISPR−Cas系(1、2、3)を使用して細菌集団を全体的に編集することを実証した。これらの戦略において、粒子を形質導入することは、テーラーメイドのCRISPR−Cas系を移行して、患者又は病院表面に見られる又は皮膚及び腸等の天然のフローラに由来する病原体の抗生物質耐性決定因子を除くことができる。そのため、本明細書に記載のプラットフォームによって得た粒子をこれらの設定に適用し、抗生物質耐性病原体に対する縮小しつつある武器庫に重要な新しい武器を提供することができる。
したがって、追加の態様において、本発明は、目的の少なくとも1つの核酸配列を前記細胞集団に含まれる標的細胞(複数可)に形質導入することによって、細胞集団を操作する方法を提供する。いくつかの特定の実施形態において、方法は、対象、組織、臓器、表面、物質及び標的細胞(複数可)も含む物品の少なくとも1つに存在しうる細胞集団を、有効量の送達ビヒクル又はキット、系、又は同送達ビヒクルを含む組成物の少なくとも1つに接触させるステップを含むことができる。いくつかの実施形態において、このような送達ビヒクルは、(a)標的細胞(複数可)、又はバリアント、変異体又はそのフラグメントに適合性の少なくとも1つの宿主認識要素、及び(b)目的の少なくとも1つの核酸分子(複数可)を含むことができる。
いくつかの特定の実施形態において、細胞集団を操作するために本発明で使用する送達ビヒクルは、本発明の方法によって調製されるビヒクルであってもよい。いくつかのさらなる実施形態において、このようなバクテリオファージは、本発明に記載の改変バクテリオファージであってもよい。
いくつかの特定の実施形態において、本発明の方法は、原核生物の細胞集団、真核生物の細菌集団又はその組み合わせもしくは混合物を操作するのに特に適しうる。本発明に開示する原核生物細胞又は真核生物細胞は、同様にこの態様に適用することもできることが理解される。
前述のように、本発明は、特定の標的細胞を特に標的にし、目的の核酸配列(複数可)を標的細胞に形質導入する強力な方法を提供する。この方法は、さらに、対象又は表面物品もしくは物質の何れかに目的の標的細胞を含む異なる細胞集団を操作し、編集することができる。標的細胞は、望ましい化合物を発現し、又は分泌するために操作することができ、あるいは、対象又は表面、物品又は物質(生物学的、人工的又は環境的の何れか)の何れかの標的細胞集団の組成物及び分布を置き換え、変化させる選択的利点を提供することによって、操作することができる。いくつかの特定の実施形態において、本発明の方法は、必要とする対象のマイクロバイオームを操作し、編集し、変化させるために使用することができる。
「マイクロバイオーム」という用語は、本明細書で使用する場合、試料の共生の、相利共生の又は病原微生物の生態群集を指す。本開示で使用することができるマイクロバイオームの例として、限定されないが、皮膚マイクロバイオーム、臍マイクロバイオーム、膣マイクロバイオーム、結膜マイクロバイオーム、腸(intestinal)マイクロバイオーム、胃マイクロバイオーム、腸(gut)マイクロバイオーム及び口腔マイクロバイオーム、鼻腔マイクロバイオーム、消化器官マイクロバイオーム及び尿生殖路マイクロバイオームが挙げられる。
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、対象の腸マイクロバイオームの操作に適用することができる。「腸(gut)マイクロバイオーム」(口語では腸管内菌叢)は、動物(この場合は哺乳動物)の消化管に住んでいる微生物種の複雑な群集を含む。この文脈において、腸(gut)は、微生物叢及びミクロフローラを有する腸(intestinal)及びフローラと同義である。腸マイクロバイオームは、腸微生物叢のゲノムを指す。哺乳動物の宿主は、腸フローラがなくともほとんどおそらく生存することができるが、この2者の関係は、単なる共生ではなく(無害の共存)、相利共生である。哺乳動物の腸ミクロフローラは、使用していないエネルギー基質の消化、細胞成長に刺激を与えること、有害な微生物の成長を抑制すること、病原体にのみ反応するように免疫系を訓練すること、及びいくつかの疾患に対して防御することを含む様々な有用な機能を満たしている。特定の条件において、しかしながら、いくつかの種は、感染を作り出し、又は癌のリスクを増加させることで、疾患を発症させることができる。したがって、腸マイクロバイオームの特定の亜集団を標的にすることによって、本発明は、腸マイクロバイオームの部分である特定の微生物によって生じる条件を調整するためのテーラーメイドのツールを提供する。
哺乳動物の腸マイクロバイオームの組成物は、優位にその大部分が嫌気的グラム陽性及びグラム陰性株についての細菌から成り、真菌、原虫及び古細菌の範囲を減少させる。細菌種の集団は、異なる個体ごとに広く変化するが、経時的には個体の内部で相対的に一定であるが、生活様式、食事及び年齢と共にいくらか変化しうる。腸マイクロバイオームの組成物の一般的な進化のパターンがヒト個体の寿命の間に観察されている。腸マイクロバイオーム組成物及び含有量は、長期の食事に従って変化する可能性があるが、地理的起源にも依存する。
より具体的には、ヒトマイクロバイオーム又は微生物叢の組成物又は含有量を指すとき、4つの優勢な細菌門、すなわちファーミキューテス門、バクテロイデス門、放線菌門及びプロテオバクテリアに関する組成物を意味し、あるいは、優勢な細菌属、すなわちバクテロイデス属、クロストリジウム属、フソバクテリウム属、ユーバクテリウム属、ルミノコッカス属、ペプトコッカス属、ペプトストレプトコッカス属及びビフィドバクテリウム属に関する組成物を意味する。特に、バクテロイデス属が最も優勢であり、宿主の機能に重要となりうる。Escherichia属及びLactobacillus属等の他の属は、少ない範囲で存在するが、宿主の機能に寄与することが分かった。
さらに、特にヒト腸マイクロバイオームに関連するのが、年齢、ジェンダー、体重、又は国の区分に依存しない、細菌学的生態系に基づいたエンテロタイプ分類がある。3つのヒトエンテロタイプがあり、1型は、高レベルのバクテロイデス属(グラム陰性)を特徴とし、2型は、バクテロイデス属をほとんど有しないが、プレボテラ属(グラム陰性)が一般的であり、3型は高レベルのルミノコッカス属(グラム陽性)を特徴とする。エンテロタイプは、しかしながら、長期間の食事の影響を受ける可能性があり、例えば、高タンパク質及び脂肪を摂取している人は、1型エンテロタイプが優勢であり、食事パターンが高炭水化物の食事に長期間変化すると、2型エンテロタイプになる。
そのため、本発明の方法は、質的、量的側面を含む哺乳動物の腸マイクロバイオームを構成する細菌種の全範囲に関する。本発明の方法は、偏在性の低いマイクロバイオーム成分に関し、例えば、カンジダ属、サッカロミセス属、アスペルギルス属及びアオカビ属を含む周知の属、ならびに古細菌(Archaea)(古細菌(Archaebacteria)とも)のドメインに属する微生物、さらに培養することができない未分類の種がある。
本発明に戻ると、特定の実施形態において、目的の核酸配列を標的にし、マイクロバイオーム内部の特定の宿主細胞に、特異的に形質導入することによる本発明の方法及び組成物は、哺乳動物の腸マイクロバイオームの組成物又は含有量に影響し、それによって、そこに不随する条件の範囲を調整する手段を提供することを意味する。この文脈において、「条件」という用語は、生物、特に哺乳動物の機能性及び代謝効率の観点での「健康状態」を示す。ヒトの場合、「条件」という用語は、身体的、精神的又は社会的困難に直面したとき、適応し、自己管理する能力をさらに示す。
しかしながら、本発明は、動物の健康、特に獣医学が網羅する哺乳動物の健康状態にも関係することが理解される。
いくつかのさらなる実施形態において、本発明の方法及びビヒクルによって細胞集団を操作することが、特に哺乳動物の対象の腸マイクロバイオームの細菌集団を変化させて、ビタミン、ペプチド、糖類、脂肪等の特定の有益な物質を産生することに適用することができる。これらの有益な物質は、目的の核酸配列によってコードすることができ、あるいは目的の核酸配列は、その合成に関与する産生物をコードすることができる。目的のこれらの核酸配列を本発明のビヒクル及び方法によって、特定の標的細胞に形質導入する。より具体的には、腸微生物は、広範囲の産生物を産生することができ、その生成は、養分可給性及び管腔環境、特にpHを含む多くの要因に依存しうる。微生物産物は、消化管の組織によって摂取され、潜在的には循環及び他の組織に到達し、尿及び呼吸に排出することができる。大腸の細菌による繊維及びタンパク質の発酵により、多くの豊富な生理学的に重要な産物のいくつか、すなわち、結腸直腸の組織及び細菌のエネルギーの鍵となる源として作用し、組織統合性を維持する細胞メカニズムを促進する短鎖脂肪酸(SCFA)になる。SCFAは循環に到達し、免疫機能及び肺等の組織の炎症に影響を与える。健康への影響について言及に値する他の産物が多く存在する。ビフィズス菌等の細菌はビタミン(例えば、K、B12、ビオチン、葉酸、チアミン)を生成することができる。ヒトにおいて脂質の輸送及びターンオーバーの重要な成分である二次胆汁酸の合成は、ラクトバチルス、ビフィズス菌及びバクテロイデスを含む細菌を介して媒介する。生物学的作用を有する多くの脂質が、組織の炎症を引き起こしうるグラム陰性細菌の細胞壁の成分であるリポ多糖(LPS)を含む細菌によって産生される。ビフィズス菌等の細菌は、酢酸の生成によって、病原性感染を予防するのを助けることもできる。
微生物が産生した多くの酵素は、消化及び健康に影響する。確かに、ヒトの腸における細菌の多様性の多くは、栄養素を分解するのに必要な微生物酵素能力のスペクトル、特に、ヒトが消化する複合多糖の多くの形態に起因しうる。Bacteroides thetaiotamicron等のいくつかの細菌は、炭水化物の分解に必要な酵素のアレイを産生する能力を有する。大腸の細菌フィターゼは、穀物に存在するフィチン酸を分解し、フィチン酸と複合化されたカルシウム、マグネシウム及びリン酸塩等のミネラルを放出し、これらを宿主組織(骨)に使用することができるようにする。ムチンを分解する酵素は、エネルギーの必要性を満足するように細菌を助け、腸の内側の粘液バリアの正常なターンオーバーを補助する。そのため、本明細書に開示する方法及びビヒクルによって、マイクロバイオームを操作することによって、本発明は、対象の内部の必須物質の産生、濃度及び性質に影響を与える方法を提供する。いくつかの特定の非限定的な実施形態において、このような物質は、本明細書に開示する細菌によって生成される物質であってもよい。
いくつかのさらなる実施形態において、本発明の方法及びビヒクルによる細胞集団の操作は、例えば、膣マイクロバイオームにおいて、受胎調節のアプローチとして適用することができる。より具体的には、いくつかの種類の膣群集(群集状態タイプ)は、正常な健康な女性に存在し、それぞれが顕著に異なる細菌種生成物を有する。これらの群集は、4つのラクトバチルス菌種(L.crispatus、L.iners、L.gasseri及びL.jensenii)の1つによって占有されているか、それほど多くラクトバチルスを含まないが、厳しい通性嫌気性菌の多様なアレイを有する。最近の研究では、無症候性、さもなくば健康な女性20〜30%が、認識できる数のラクトバチルスを損なっている膣群集を有するが、いくらか高いpH(5.3〜5.5)に関連する通性又は厳しい嫌気性細菌の多様なアレイを含むことが分かった。これらの微生物叢は、とりわけ、アトポビウム属、コリネバクテリウム属、アネロコッカス属、ペプトニフィラス属、プレボテラ属、ガードネレラ属、スネシア属、エガセラ属、モビルンカス属、ファインゴルディア属のメンバーを含む。
本発明の方法は、受胎調節レジメン、より具体的には、男性避妊薬としての役割を果たす受胎調節レジメンの部分であってもよい。そのため、特定の実施形態において、本発明のビヒクル及び方法を用いて、膣マイクロバイオームの内部の特定の細胞を標的にすること、及び目的の核酸配列を形質導入することを使用して、卵子もしくは***の生存率又は安定性又は***の運動性に影響する物質を生成する細菌を産生することができ、したがって可逆的な避妊具として使用することができる。そのため、いくつかの実施形態において、本発明は、殺***産物をコードし、又は殺***産物の形成及び合成に関係する産物をコードする目的の核酸配列で、膣マイクロバイオームの細菌細胞を特に形質導入送達ビヒクルを提供することができる。本発明の殺***核酸送達ビヒクル及び当該ビヒクルを含む避妊組成物が、当業者に周知の方法で、雌の哺乳動物の膣に送ることができることが理解される。組成物の送達について典型的な形態として、例えば、クリーム、ローション、ゲル、丸剤、エアロゾル、泡、海綿、女性用コンドームを含むコンドーム、坐剤及びフィルム等の膣内装置が挙げられる。さらに、本発明の殺***組成物は、例えば、コンドーム潤滑剤等のパーソナルケア製品として使用することができる。
いくつかのさらなる実施形態において、本発明の方法は、対象の皮膚マイクロバイオームの操作に適用することができる。多くの皮膚細菌は、4つの門:Actinobacteria、Firmicutes、Bacteroidetes及びProteobacteriaに分けられる。これらの4つの優勢な門は、内側の粘膜面(消化器管及び口腔)に見られる微生物叢も構築する。しかしながら、その割合は大きく異なり、Actinobacteriaのメンバーは皮膚により豊富に存在し、Firmicutes及びBacteroidetesのメンバーは、消化器管により豊富に存在する。腸及び皮膚微生物群集の共通の特徴は、門のレベルでは多様性が低いが、種のレベルでは多様性が高いように思われることである。したがって、本明細書で使用する場合、「皮膚マイクロバイオーム」という用語は、限定されないが、Propionibacterium種、Paenibacillusス種、Staphylococcus種、及びその組み合わせを含む。さらに、Propionibacterium種として、限定されないが、P.acnes、P.granulosum、P.avidum及びその組み合わせが挙げられる。StaphylococcusはS.epidermidisを含む。より具体的には、皮膚は、多くは有益又は無害である多くの微生物によってコロニー形成される。しかしながら、尋常性ざ瘡等の疾患は、マイクロバイオームの強い変化に関連する。ニキビは、特に、ヒト皮膚マイクロバイオームの歪みに関係すると考えられている。この歪みは、皮膚細菌P.acnesの特定のサブセットによって生じる可能性がある。本明細書で使用する場合、「尋常性ざ瘡」及び「ニキビ」は、同義に使用し、未成年者に特に流行性の皮膚病態を指す。ニキビは、皮膚の炎症性及び非炎症性病変の形成に多くは関連する。ニキビは、ヒト皮膚マイクロバイオームの歪みに関係すると考えられている。この歪みは、皮膚細菌P.acnesの特定の株によって生じうる。したがって、皮膚マイクロバイオームを操作し、P.acnesを特異的に標的にすることによって、本発明は、ニキビ等の皮膚障害を予防し、治療するための方法及び組成物を提供する。
本発明の態様のいくつかのさらなる実施形態において、本発明のビヒクル及び方法によって細胞集団を操作することは、化粧品用途も有しうる。より具体的には、匂いを生じさせる細菌を、本発明の方法によって、匂いのない細菌又は匂い発生物質と戦う細菌に置き換えることができる。
いくつかのさらなる特定の実施形態において、本発明の送達ビヒクルによって送達される目的の核酸配列は、例えば、匂いの形成に関与する産物をコードする細菌性の望ましくない遺伝子、例えば、本明細書に開示するリパーゼをコードする遺伝子に向けられるCRISPR−Cas系を含むことができる。(特に、選択的要素と共に感作要素として)このような系は、リパーゼを産生する細菌を、例えば、不完全なリパーゼ、又はしたがって匂いの形成に関係することができないリパーゼのない細菌に置き換えることができる。
ヒトにおいて、身体の匂いは、主に、皮膚腺の分泌及び細菌活性によって形成される。異なる種類の皮膚腺の間で、ヒトの身体の匂いは、主に、皮膚フローラ(すなわち、微生物又は細菌)にとって必要な多数の化学化合物を分泌して、匂い物質に代謝するアポクリン汗腺が発したものである。
身体の匂いは、Corynebacteriumのメンバーを含む皮膚フローラの活動の影響を受け、Corynebacteriumのメンバーは、汗の脂質を分解するリパーゼと呼ばれる酵素を生成して、酪酸のような小分子を作る。Staphylococcus hominisも、匂いに寄与するチオアルコール化合物を生成することが知られている。これらの小分子は匂いがし、身体の匂いに特徴的な香りを与える。汗の試料の多くにプロピオン酸(プロパン酸)が存在する。この酸は、青年及び成人の皮脂腺の管に成長するpropionibacteriaによるいくつかのアミノ酸の分解産物である。プロピオン酸は、匂いを含む同様の特徴を有する酢酸と化学的に類似しており、身体の匂いは、特定の人にはビネガーのような匂いを有すると判断されうる。イソ吉草酸(3−メチルブタン酸)は、いくつかの強いチーズの種類にも存在する細菌のStaphylococcus epidermidisの活動結果として生じる身体の匂いの他の源である。
したがって、特定の実施形態において、本発明は身体の匂いを抑制する剤をさらに提供する。本発明の身体の匂いを抑制する剤は、ローション、エアロゾルスプレー、通常のスプレー、スティック、粉末、ロールオン、クリーム、ゲル、エマルジョン、シート(紙)、(ボディシャンプー及び棒状の石鹸等の)ボディソープ及び(シャンプー及びリンス等の)洗髪用化粧品等の様々な形態に調製することができる。本発明の身体の匂いを抑制する剤、一般的に知られている調製方法で、剤形に調製することができる。本発明の身体の匂いを抑制する剤を適用することができる身体領域の例として、必ずしも限定されないが、腋窩、腕、脚、踵、首、胸及び臀部が挙げられる。多くはヒト対象に適用することができるが、本発明の匂いを抑制する剤は、限定されないが、強い匂いを発するコンパニオンアニマル(ペット)、家畜、実験用動物、仕事用動物、及びスポーツ用動物を含む動物に適用することもできることに留意されたい。
より具体的には、動物の匂いは、細菌及び酵母代謝分泌物、特に皮脂によって生じることが最も多い。皮膚が湿気を帯びる場所は、口腔内、耳、皮膚の重なり、尾の下であり、最も高濃度の酵母及び細菌ならびに最も強い匂いを有する。酵母及び細菌は、健康なペットであっても動物の皮膚に存在し、これらの生物の数は、皮膚が健康な場合、最小限に維持される。
特に、本発明の送達ビヒクル及び方法によって個別化医療のためのツールとして、マイクロバイオームを操作し、編集する治療用途の他に、細胞集団の特異的な標的化操作も、例えば農業及び食品業界において産業上の利用可能性を示すことができる。したがって、いくつかの非限定的な実施形態において、本発明の送達ビヒクル及び方法は、食物の消化を改善し、乳の生産及び/又は肉の品質を改善するために、反芻動物の消化系の細菌集団を操作するのに有効となりうる。
反芻動物の前胃は、宿主動物が摂取した飼料を一緒に分解し、発酵させる非常に多様な原核生物(細菌、古細菌、ウイルス)及び真核生物(原虫及び真菌)微生物を含む。反芻動物は、飼料の摂取についての微生物叢、結果としてその生存率に完全に依存する。常在性ルーメン細菌分類群の組成物と豊富さと宿主の生理学的パラメータとの繋がりがはっきりと示された。例えば、Bacteroidetes門に対するFirmicutes門の比と乳脂肪率の強い相関は知られている。したがって、ルーメンマイクロバイオームの調整は、細菌群集の設計によって、より良い農業収率に有用となりうる。
改善された飼料の使用、より良い飼料転換効率及び動物の生産性のために、ルーメン細菌株の選択及び改善にかなりの範囲が存在する。ルーメン細菌生態系は、糞中の未消化の飼料の計測可能な部分の存在及び動物によるエネルギー源として使用することができるルーメンの大量のメタンガスの生成から、自明のこととして未消化の飼料の消化にとって効率的に充分ではない。
遺伝子的ルーメン操作によって、セルロース分解等の望ましい活動の導入又は増加、及びタンパク質分解、脱アミノ化及びメタン生成等の望ましくない活動の減少を可能にする。この目的のために、1つのアプローチは、望ましい遺伝子を選択し、優勢なルーメン細菌に当該遺伝子を発現させることであると思われる。本発明の改変バクテリオファージを使用して、ルーメンに自然に存在する微生物を遺伝子的に改変して、規定した機能の能力を高め、又は新しい機能を加えることができる。多様な遺伝子を腸微生物に導入することは、広く発見されている。遺伝子改変微生物は、繊維成分及び飼料のリグニンを消化するか、又はトキシンを分解し、必須アミノ酸を合成し、反芻動物のメタン生成を減少させ、酸を許容することができるかの何れかである。
本発明で考慮する反芻動物として、例えば、ウシ(例えば乳牛)、ヤギ、ヒツジ、アメリカバイソン、ヨーロッパバイソン、ヤク、水牛、シカ、ラクダ、アルパカ、リャマ、ウシカモシカ、アンテロープ、プロングホーン及びニルガイが挙げられる。
いくつかの実施形態において、反芻動物のマイクロバイオームは、以下の微生物のリスト:Lactobacillus、Acidaminococcus、Bifidobacterium、Dialister、RF39、Olsenella、(科)Prevotellaceae、Catonella、Treponema(目)Coriobacteriales、(科)Coriobacteriaceae、Adlercreutzia、Atopobium、(目)Bacteroidales、Prevotella、(目)YS2、(目)Clostridiales、Clostridiales科、Eubacterium、(科)Lachnospiraceae、Blautia、Butyrivibrio、Clostridium、Lachnobacterium,Lachnospira、Lachnospira、Moryella、Pseudobutyrivibrio、Roseburia、Shuttleworthia、(科)Ruminococcaceae、Oscillospira、Ruminococcus、Selenomonas、Desulfovibrio、(目)Aeromonadales、F16科、Bulleidia、p−75−a5、Mitsuokella及びsucciniclasticumの少なくとも1つを含む。
さらに、本明細書に開示するプラットフォームは、様々な産業的用途に使用する細胞集団を操作するためのツールを提供する。より具体的には、バイオテクノロジー業界は、燃料、食物、医薬、ホルモン、酵素、タンパク質及び核酸を含むヒトの存在に有用な生物学的物質の製造のために、細菌細胞を使用する。バイオテクノロジーの可能性は、遺伝子蓄積及び細菌の遺伝子的能力を考えると、無限である。
宿主細菌に関して、本発明は、産業製品の製造に使用する、又は産業プロセスにおいて使用する細菌、特に、プロテオバクテリア門、ファーミキューテス門、バクテロイデス門に属する細菌に適用することができる。
より具体的には、医薬業界において、細菌は、臨床的に有用な抗生物質及び酵素の主要な生産者であり、細菌は、かつて恐れられた疾患のワクチンの源であり、細菌は、哺乳動物の健康を向上させるプロバイオティクスである。実際に、多くの抗生物質が土壌に生きる細菌から作製されている。Streptomyces等の放線菌は、テトラサイクリン、エリスロマイシン、ストレプトマイシン、リファマイシン及びイベルメクチンを産生する。バチルス及びパエニバチルス種は、バシトラシン及びポリミキシンを産生する。細菌産物は、感染性疾患に対する免疫化のワクチンの製造に使用される。ジフテリア、百日咳、テタヌス、腸チフス及びコレラに対するワクチンは、それぞれの疾患を引き起こす細菌の成分から作製されている。
バイオテクノロジーは、インスリン等のホルモン、ストレプトキナーゼ等の酵素、及びインターフェロン及び腫瘍壊死因子等のヒトタンパク質を製造している。これらの製品は、糖尿病、心発作、結核、AIDS及びSLEを含む様々な医学的病態及び疾患の治療に使用される。ボツリヌストキシンは医療において、BT殺虫剤は防除に使用される細菌産物である。
細菌のバイオテクノロジーの適用は、生物のスーパー株の遺伝子的構築を伴って、環境における特定の代謝タスクを実施する。例えば、石油製品を分解するように遺伝子操作された細菌は、石油流出の清掃及び他のバイオレメディエーションの試みに使用される。
本発明の特定の実施形態は、本発明の送達ビヒクルを使用して、集団における有益な細菌、すなわち、治療用タンパク質、ビタミン、ワクチン、酵素、バイオ燃料及びその他の溶媒、例えば、E.coli属の異なる株を産生する細菌の増殖を促進する方法に関する。さらなる実施形態において、本発明の方法は、生物乳化剤を製造する細菌に適用することができる。特定の実施形態は、アシネトバクター属の異なる株に関する。さらなる実施形態は、生分解性プラスチックを生成する細菌について本発明の方法及び送達ビヒクルの使用を含む。特定の実施形態は、ビブリオ属の株に関する。本発明のさらなる実施形態は、バイオレメディエーションにおいて現れる細菌についての方法に関する。このような細菌について非限定的な例として、シュードモナス及びステノトロホモナス属の異なる株が挙げられる。
より具体的には、食品業界において、細菌は、乳製品及び多くの他の食品の発酵に主に関係する。ラクトバチルス、ラクトコッカス及び連鎖球菌等の乳酸細菌は、カッテージチーズ及びクリームチーズを含むチーズ、発酵バター、サワークリーム、バターミルク、ヨーグルト及びケフィア等の乳製品の製造に使用する。乳酸細菌及び酢酸細菌は、オリーブ、キュウリのピクルス及びザワークラウト等のピクルスの工程で使用する。細菌発酵は、紅茶、コーヒー、ココア、醤油、ソーセージ及び我々の日々の生活における驚くほど多様な食品を加工するときに使用する。
したがって、より特定の実施形態において、本発明は、Escherichia coli、Acinetobacter、Pseudomonas、Vibrio、Lactobacillus、Lactococcus、Citrobacter及びStenotrophomonas属の何れか1つの株の細菌に適用することができる。
さらなる実施形態は、本発明の方法の利用性をラクトコッカスの異なる株に拡張する。ラクトコッカスは、発酵乳製品の工業生産に広く使用される球状のグラム陽性細菌である。L.lactisを完全に調査し、多くの用途に使用する。L.lactisはいくつかの発酵経路を有するが、最も重要な目的は、チーズ及びミルク等の乳製品を製造するその性質である。L.lactisは、乳酸を排出する乳酸脱水素酵素に特殊化し、食品を保存し、食品の保存期間を延長させるために使用する。乳業は、環境及び細胞の挙動を操作することによって、L.lactisの活動及び有効性を改善し続ける。
さらに、本発明が提供する方法及びビヒクルによって細菌集団を操作することは、生物防除におけるいくつかの実施形態に適用することができる。より具体的には、シュードモナス属の特定のメンバー(例えば、P.fluorescens及びP.protegens)を穀物の種子に適用する、又は作物の病原体の増殖もしくは確立を防ぐ方法として、土壌に直接適用しており、この実践を概して、生物防除と呼ぶ。生物防除の下では、細菌は宿主植物の全身抵抗を誘発することができ、そのため、真の病原体による攻撃に良好に抵抗することができ、細菌は、例えば、鉄を取り込む競合優位性を与えるシデロホアによって、他の(病原性)土壌微生物を打ち負かすことができ、細菌は、フェナジン型抗生物質又はシアン化水素等の他の土壌微生物に拮抗性の化合物を産生することができる。
例えば、腸マイクロバイオームの細胞集団を操作することは、プロバイオティクスの利用性も有することができる。そのため、さらなる実施形態において、本発明の方法は、異なる株のラクトバチルスに適用することができる。ラクトバチルスは、桿状のグラム陽性、発酵性、有機栄養生物細菌である。ラクトバチルスの株は、特定の条件下で、らせん状又は球桿菌状形状を形成することができるが、通常は直線的である。ラクトバチルスは、長さを変化させる対又は鎖で見られることが多い。乳酸桿菌は、乳酸細菌として分類され、ホモ乳酸発酵の最中に、グルコースを乳酸塩に転換することから、ほぼ全てのエネルギーを引き出す。乳酸桿菌、特にL.acidophilusは、プロバイオティクス用途を有すると考えられている。L.acidophilus菌は、糞便細菌叢の重要な部分である感受性の有益な微生物を増殖させることができる乳酸の生成によって腸のpHレベルを維持することを助け、そうすることで、重い抗生物質を使用した後でも腸管の有用な細菌を交換することを助けることができる。L.acidophilus菌は、過敏性腸症候群、肝性脳症、喘息、高コレステロール、乳糖不耐症及び壊死性腸炎と戦うときの用途も有する。L.acidophilusは、特定の酵素の産生によって、食物の消化を助けると思われるため、家畜の飼料の添加物としても使用する。
バイオテクノロジーの別の領域は、遺伝子操作によって植物の品質の改善に関わる。本発明の送達ビヒクル及び本明細書では、植物が特定の害虫、除草剤及び疾患に耐性があるように、望ましい宿主細胞としても示される遺伝子操作した植物細胞によって、その植物に遺伝子を導入することができる。
前述のように、本発明が提供する系は、表面、物品及び物質に存在する細胞集団を操作するために適用することができる。非限定的な例は、望ましい核酸配列として、抗生物質耐性遺伝子又はその他の望ましくない遺伝子を標的にする前述のCRISPR−Cas系を有する本発明の改変バクテリオファージに関し、したがって、抗生物質耐性細菌の細菌集団を抗生物質治療に感受性の細菌集団に置き換えるために使用する。より具体的には、このような送達ビヒクルは、例えば、病院表面を処理するため、手の消毒石鹸又は医療関係者の皮膚フローラを標的にするための他の液体に使用することができる。耐性病原体について選択する抗生物質及び消毒薬とは対照的に、提案する治療は、感受性の病原体について豊富にし、選択する。特に、この戦略は、抗生物質耐性が生命脅威の状態にある免疫無防備の患者が入院する場合に、医療部門をさらに広げることができる。いくつかのさらなる実施形態において、この戦略は、高齢者、例えば、C.difficileに感染し、抗生物質耐性が原因で合併症を発症するかもしれない対象に適用することもできる。
本発明は、布、繊維、泡、フィルム、コンクリート、石工、ガラス、金属、プラスチック、ポリマー等を含む多様な表面を、本発明のバクテリオファージに接触させることを含む。
特定の実施形態において、バクテリオファージが病院、ホスピス、高齢者住宅又は他のケア施設にある表面に接触する。
健康に関係する他の表面として、水質浄化、貯水及び送水、及び食品加工に関係する物品の内面及び外面が挙げられる。そのため、本発明は、食品又は飲料工場の固体表面をコーティングすることを含む。
健康に関係する表面として、栄養、衛生又は疾患予防を提供することに関係する家庭用品の内面及び外面も挙げられる。したがって、本発明のバクテリオファージは、便器、カテーテル、NGチューブ、吸入器等を消毒するために使用することもできる。より具体的には、カテーテルの内側表面又は装置の他の部分に細菌がコロニー形成することは、深刻な合併症を引き起こす可能性があり、移植した装置を取り除く、及び/又は置き換える、ならびに二次感染病態を厳しく治療する必要性を含む。
本発明のキット及び系でコーティング、洗浄、フラッシング又は保管することができる医療装置は、概して、ポリエチレン、ダクロン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ラテックス、シリコンエラストマー等の熱可塑性又はポリマー材料から成る表面を有する。金属表面を有する装置も本発明のキット、又は当該キットを含む溶液もしくは材料で、コーティング、洗浄又は保管することができる。本発明のキットの適用に特に適した特定の装置として、血管内、腹膜、胸膜、及び泌尿器科カテーテル、心臓弁、心臓ペースメーカー、血管シャント及び整形外科の、眼内又は陰茎補綴物が挙げられる。
さらに、精製されている又は精製されていない通常の水道水を送る小孔管、歯科用ユニット等の固定具、内部顕微鏡管、カテーテル管、無菌充填口、及び無菌製造、食品加工等に使用される管には、周知のように、内面に細菌の増殖及び細菌耐性が生じる。本発明のキット及び系が、本明細書に記載の小孔管における細菌耐性を防ぎ、減少させるために使用することができることが理解される。
他の実施形態において、本発明の(例えば、感作成分及び/又は選択的成分を有する)改変バクテリオファージを含むキット及び系は、治療対象の近位に適用することができる。いくつかの特定の実施形態において、キット又は系は、治療対象の近位の表面、装置又は物体に適用することができる。「治療対象の近位」という表現は、抗生物質耐性遺伝子(複数可)を水平伝播することを防ぐために、本発明に係るキット又は系を適用することができる前記対象のペリメータ周囲に関する。したがって、「前記対象の近位」は、前記対象の少なくとも約1センチメートル(cm)、2cm、3cm、4cm、5cm、6cm、7cm、8m、9m、10cm、20cm、30cm、40cm、50cm、60cm、70cm、80cm、90cm、1メートル(m)、2m、3m、4m、5m、6m、7m、8m、9m、10m、11m、12m、13m、14m、15m、16m、17m、18m、19m、20m、30m、40m又は50mもの範囲に存在する物体全てを含む。「前記対象の近位」という用語は、また、本発明の改変バクテリオファージビヒクル又は本発明のキットもしくは系を治療対象の前記範囲に配置する前に、適用される物体に関する。
いくつかの実施形態において、本発明のキット又は成分又はバクテリオファージは、12時間毎、毎日、週に6回、週に5回、週に4回、週に3回、週に2回、又は週に1回でも固体表面に適用することができる。
いくつかの実施形態において、本発明のビヒクルを含むキット及び系は、食品業界で使用する表面に使用し、適用することができ、又は食品又は食料製品に接触させる。例えば、食品又は食料製品として、限定されないが、ブタ、ウシ、子牛、マトン、ラム、ヒツジ、ヤギ、バイソン、ヘラジカ、シカ、アンテロープ、ウマ、イヌ、家禽(例えば、ニワトリ、七面鳥、カモ、ガン、ホロホロチョウ、ダチョウ、ウズラ、ハト(dove)、ハト(pigeon)、エミュー、クジャクの雌等)又は他の哺乳動物もしくはトリ(鳥類)に由来する適切な肉又は肉製品が挙げられる。「牛肉製品」は、ウシ、バッファロー、バイソン及びクーズーを含むサブファミリーウシ亜科の成人哺乳動物の肉を含む。「豚肉製品」はブタの肉を含む。「鶏肉加工品」は、ニワトリ、カモ、ガン、七面鳥、ダチョウ、エミュー、ハト(dove)、ハト(pigeon)、ウズラ、キジ、クジャク又はホロホロチョウ等の鳥類の肉を含む。「肉」は、全筋又はひいた筋肉又は臓器(例えば肝臓)を含むことに留意されたい。
動物を屠殺することは、相互汚染によって製造された肉に重い細菌負荷が生じる厳しい衛生問題による課題がある。したがって、いくつかの実施形態において、本発明のキットは、肉又は肉製品を準備し、保管する屠殺場又はスーパーで使用される表面又は物品、特に、容器、ステンレス鋼の箱、牛肉テンダライザ、グラインダー、包丁、ミキサー、腸詰め器具、プラスチックの箱、フロア及びドレインに適用することができる。屠殺場において、このような表面として腸詰め器具、プラットフォーム、フロア及びドレインが挙げられる。いくつかのさらなる実施形態において、本発明の改変バクテリオファージビヒクル又はキットもしくは系は、食品業界で使用される生物学的又は非生物学的表面、特に、肉製品を準備し、送り、保管することに関係する表面に適用することができる。より具体的には、屠殺場における表面として、ブタ、ウシ及び他の家畜の屠殺体を本発明のキットで処理をして、細菌負荷を減少させ、抗生物質に対する感受性を増加させることができる。より具体的には、動物の屠殺体全体を、本発明の改変バクテリオファージ、又は本発明に係るキットもしくは系を含む溶液又は液体に漬ける又は噴霧することができる。
いくつかのさらなる実施形態において、本発明のキット及び系は、容器及び食料品をつかむための食品取り扱い器具に適用することができ、食品を含む、包装する、覆う、保管する、表示する、加工する、切る、せん断する、突き刺す、こねる、操作する、又は取り扱うことを含み、食品容器又は器具の表面は、食品に接触する。
前述のように、本発明のビヒクル又はそのキットもしくは系は、食品、特に肉を保管する又は送るために使用される表面に適用することができる。包装は、通常の肉包装手段であってもよく、肉製品を、トレイ、収縮包装又はサラン等の透明フィルム、又はワックスのかかっていない又はワックスのかかった紙を含む紙で入れること、又は肉製品に適した方法で、包むこと、袋に入れること、箱に入れること、缶詰めすること、又は瓶詰めすることを含む。
より具体的には、容器及び器具は、食品をつかむことができる使い捨て(すなわち1回だけの使用)又は使い捨てではない(すなわち複数回使用)の構造である。これらの構造として、限定されないが、せん断ラップ、シート、紙、ワックスのかかった紙、袋、カートン、トレイ、皿、ボウル、覆われた及び覆われていない保管容器、食べ物を出す皿、カップ、缶、瓶、ボトル、又は特定の食品について他の適切な容器の構造が挙げられる。食品を取り扱う目的に有用な追加の構造として、限定されないが、グローブ又はミトン、フォーク、スプーン、ナイフ、スライサー、プロセッサー、ジューサー、グラインダー、チッパ、フック、プレス、スクリュー、オープナー、カッター、ピーラー、トング、スクープ、カップ、シュート又はスパチュラ等の用具;カッティングボード、こねるためのボード、混合用ボウル、乾燥又は冷却ラック、又は棚が挙げられる。
いくつかのさらなる実施形態において、本発明のビヒクル又はそのキットもしくは系は、シーフードに使用される表面又は容器に使用することができる。特に、シーフードとして、海水又は淡水水生生物、例えば、様々な魚類(例えば、ツナ、サーモン、オヒョウ、タラ、サメ、メカジキ、バス、ニシン、イワシ、トラウト、鯉、白身魚、及びパーチ)、軟体動物(例えば、貝、ホタテガイ、カキ、ムール貝、カタツムリ、タコ及びイカ)又は甲殻類(例えば、カニ、エビ、ロブスター及びザリガニ)が挙げられる。
卵も特にサルモネラ菌といった汚染の対象であり、ニワトリの卵の汚染は、多くの方法で汚染される可能性がある。ニワトリの卵は、産まれる前に水平感染する可能性があり、卵が雌鳥の卵管にある最中に、細菌が生育中の卵に移動する。
細菌汚染は、産卵過程において垂直感染によって生じる可能性もある。雌鳥は、多くの細菌のコモンキャリアであり、その多くはサルモネラ菌のように、消化管に存在する。卵は、生殖管、尿管及び腸管の末端としての役割を担う構造の***腔を通って産みつけられるときにこれらの細菌に汚染される可能性がある。概して、ニワトリの表面及び体内に存在する細菌(病原性フローラと正常なフローラの両方)は、卵と一緒に産みつけられ、接触すると、細菌は外層(角質)が硬化する前に、殻を通過することもできる。卵は、産みつけられると、環境細菌にも接触しうる。これらの細菌は、殻を通過し、特に、産まれて短時間に汚染が発生し、又は殻に蓄積しうると、結果的に殻に浸透する。殻に蓄積する細菌は、加工中に殻に浸透しうる。より具体的には、卵は、市販用卵の洗浄及び殺菌の最中にしばしば起こる温度変化に曝されると、卵の中身が感染し、負圧勾配を作りだし、細菌を効果的に殻及び外膜に運ぶ。したがって、いくつかの実施形態において、本発明のキットは、卵に振りかけることができる。あるいは、卵は、本発明のビヒクル又はそのキットもしくは系を含む粉末の中で回転する、又は同ビヒクル又はそのキットもしくは系を含有する溶液に浸漬してもよい。
さらに、いくつかの実施形態において、本発明のビヒクル又はそのキットもしくは系は、筐体システム、産卵している雌鳥に使用される、及び接触するケージ及び装置に適用することができる。
いくつかのさらなる実施形態において、本発明のビヒクル又はそのキットもしくは系は、ペットフードの食品添加物として使用して、抗生物質耐性病原体がヒトに伝播することを減少させ、必要な場合、抗生物質で効率的にヒトを治療することができ、本明細書に記載の産物は、また、本質的に家畜化され、又は飼いならされた動物又は鳥、例えば、ウサギ、モルモット、熱帯魚及び鳥類によって消費されることを意図した食品に又はその添加物として、使用することをもできる。「ペットフード」という用語は、本明細書で使用する場合、概して、ペットによって消費されることを意図した食品を指す。特に、「ペットフード添加物」は、本明細書で使用する場合、概して、例えば、食品を消費している最中に、又は消費する直前に、ペットフードに添加する(例えば、組み込む及び/又は適用される)ことを意図した産物を指す。
いくつかの実施形態において、本発明のビヒクル又はそのキットもしくは系は、生体表面又は組織に、特に、このような表面の細菌細胞集団を操作するために、適用することができることが理解される。いくつかのさらなる特定の実施形態において、本発明のビヒクル又はそのキットもしくは系は、粘膜表面に適用することができる。より具体的には、粘膜表面又は粘膜(1つの粘膜)は、本明細書で使用する場合、粘液を分泌する粘膜上皮を指し、消化器官、呼吸器官、生殖路、及び尿生殖路を覆い、これらの臓器:膵臓、目の結膜及び涙腺、唾液腺及び授乳乳腺の乳腺に関連する外分泌腺にも存在する。ガス交換(肺)、食物吸収(腸)、知覚性活動(目、鼻、口及び喉)及び生殖(子宮、膣及び***)の生理学的機能のために、粘膜表面は、必要に応じて、身体の内部に対して動的な、薄い、浸透性のバリアになる。これらの特性は、粘膜組織を病原体による破壊及び侵害に特に脆弱にする。したがって、本発明のビヒクル又はそのキットもしくは系を粘膜表面に適用することで、このような生体表面の細胞集団を操作することができ、例えば、(選択的成分による)細菌負荷を減少させ、(感作成分による)残っている病原体を感作し、それによって、細菌感染及び関連の病態の抗生物質治療を高めることができる。本明細書で使用する場合、細菌負荷の減少は、約1%〜100%、特に約1%〜約5%、約5%〜10%、約10%〜15%、約15%〜20%、約20%〜25%、約25%〜30%、約30%〜35%、約35%〜40%、約40%〜45%、約45%〜50%、約50%〜55%、約55%〜60%、約60%〜65%、約65%〜70%、約75%〜80%、約80%〜85%、約85%〜90%、約90%〜95%、約95%〜99%、又は約99%〜99.9%以上、特に100%の細菌負荷の何れか1つを指す。
いくつかのさらなる特定の実施形態において、本発明のビヒクル又はそのキットもしくは系を粘膜表面、例えば、(例えば、吸引器を使用して)肺組織に適用することは、慢性呼吸器感染症をり患している患者に特に適用することができる。例えば、Pseudomonas aeruginosa(PA)は、嚢胞性線維症を有する個体の気道から通常単離され、これらの患者の肺機能の加速度的な低下に関連し、したがって、本発明のキットを使用して抗生物質治療に対するこれらの細菌の感受性を増加させることで、CF患者の病態及び関連する症状を改善し、軽減することができる。より具体的には、嚢胞性線維症(CFとしても知られる)は、本明細書で使用する場合、膵臓倍部の特徴的な瘢痕(線維症)及び嚢胞の形成を指す。呼吸困難が最も深刻な症状であり、抗生物質及び他の治療薬によって治療するが、治癒しない多くの肺感染症から生じる。副鼻腔感染症、乏しい成長、下痢及び不妊症を含む他の症状の多くは、身体の他の部分に対するCFの影響から生じる。CFは、タンパク質嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)の遺伝子の変異によって発症し、常染色体劣性遺伝疾患として考えられている。前述のように、本発明のキットをCF患者の肺組織に適用することで、患者の病態が改善しうる。
さらに、本発明のビヒクル又はそのキットもしくは系は、慢性肺コロニー形成及び気管支拡張症、気管支樹の疾患、慢性閉塞性肺疾患、気道が狭くなり、気流の異常を特徴とする疾患にも生じることもある感染症に適用することができる。さらに、本発明のビヒクル又はそのキットもしくは系は、入院患者、特に機械的に換気される患者の肺炎にも適用することができる。
いくつかのさらなる実施形態において、泌尿生殖器又は生殖器に本発明のビヒクル又はそのキットもしくは系を適用することは、***症にも適用することができる。本発明のキットは、粘膜組織に接触する表面、例えば、パッド、タンポン等に適用することもできることが理解される。
さらに、生体表面として、本発明のビヒクル又はそのキットもしくは系は、特に創傷した皮膚、例えば、火傷の場合に、皮膚に適用する、又は噴霧することができる。したがって、本発明のキット(複数可)を含有する軟膏、クリーム、懸濁液、ペースト、ローション、粉末、溶液、油状物、ゲル又は粉末、又は本発明に開示するキットを含有する噴霧可能なエアロゾルもしくは蒸気を発症した皮膚領域に噴霧する、又は局所投与する、又はドレッシングすることも本発明に含まれる。通常の薬学的担体、水溶液、粉末又は油性基剤、増粘剤等が必要又は望ましい場合もある。「局所的用される」又は「局所投与される」という用語は、軟膏(ointment)、クリーム、皮膚軟化薬、バーム、ローション、溶液、軟膏(salve)、軟膏(unguent)又は他の薬学的剤形を、細菌感染性疾患又は皮膚に関係する他の症状の1つ以上の症状を発症するもしくは発症した、又は示すもしくは示した患者の皮膚の部分のいくらか又は全てに適用することを意味する。本発明のキットは、皮膚障害を治療するために使用されるマトリックス、布又は包帯に適用することができ、それにより抗生物質治療に対して細菌集団を感作することが理解される。
前述のように、本発明のビヒクル又はそのキットもしくは系又はその成分を、粘膜組織に接触しうる表面、装置、容器又は器具に適用することができることが理解される。さらにいくつかの特定の例において、コンタクトレンズ(CL)CL保管ケース及びケア溶液の細菌によって生じる目の感染症は、CL関連角膜感染症のリスクファクターであり得、CL保管ケースの生物の持続性を説明しうる。異なる種類のレンズ装着様式は、コンタクトレンズ保管ケース、及び一晩の保管及び消毒のためのケア溶液の使用を必要とする。しかしながら、コンタクトレンズ保管ケース及び保管溶液は、細菌によって汚染される可能性がある。衛生行動以外の因子として、微生物耐性があり、コンタクトレンズの保管ケース及びケア溶液の持続的な微生物汚染に関連しうる。保管中に、レンズが、様々な細菌株及び他の微生物によるコロニー形成の影響を受けやすく、この問題は、レンズが過酸化水素、クロルヘキシジン、ビグアナイド又は四級アンモニウム化合物を含む消毒溶液に保管していても、存在する。コンタクトレンズの使用に関連する多くの深刻な感染症は細菌性角膜炎でありうるが、レンズケアシステムの汚染が目に影響を及ぼしうる毒素の産生につながりうる。効率的な感作キット(複数可)を提供することによって、本発明は、コンタクトレンズを保管する組成物及び方法を提供し、したがって、角膜感染症を抑制し、減少させ又は除く方法も含む。前述の方法は、本発明のキット(複数可)又は素の成分でコーティングしたレンズ保管容器を提供し、あるいは、さらに本発明のキットを含むケア溶液(保管溶液)を提供し、コンタクトレンズを本発明のキットでコーティングした容器に挿入し、及び/又は本発明の有効量のキットを含む溶液でコンタクトレンズを洗浄するステップを含みうる。
本発明は、したがって、本発明の改変バクテリオファージビヒクル又はそのキットもしくは系でコーティングし、適用し、又は含有するコンタクトレンズ保管ケース(複数可)を提供することがさらに理解される。いくつかのさらなる実施形態において、本発明は、本発明のキットを含むコンタクトレンズ保管及びケア溶液を提供する。
さらに、本発明は、任意に、少なくとも1つの抗生物質化合物(特に前に開示した抗生物質)と組み合わせて、本発明の改変バクテリオファージビヒクルの治療有効量又はそのキットもしくは系を、感染性疾患をり患している対象に投与するステップを含む治療的方法をさらに提供する。本発明のキット又はその成分の適用が感染性疾患又は病態をり患している対象の補完治療を形成することができることをさらに留意されたい。
本発明は、その別の態様において、少なくとも1つの改変バクテリオファージ又は改変バクテリオファージのカクテルもしくは混合物の有効量を含む組成物をさらに提供する。
より具体的には、このようなバクテリオファージは、(a)少なくとも1つの改変した宿主認識要素、及び任意に(b)目的の少なくとも1つの核酸分子を含むことができる。
より特定の実施形態において、本発明の組成物に使用される改変バクテリオファージは、本発明に開示される実施形態に規定することができる。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、スプレー、スティック、塗料、ゲル、クリーム、洗浄、ふき取り、泡、石鹸、油、溶液、ローション、軟膏、手指消毒薬又はペーストとして配合することができる。
「有効量」という用語は、当該組成物を投与した場合に、予測した生理学的反応を与えるように治療を受け、操作された個体の活性部位に望ましいレベルの活性剤を提供するために必要な組成物、特に、本明細書に記載の本発明の核酸送達ビヒクルに存在する活性剤の量に関する。正確な量は、多くの要因、例えば、活性剤、組成物の活動、使用する送達装置、組成物の物理的特徴、意図した患者への使用(すなわち、1日に投与する投与数)、疾患対象の場合の患者の配慮に依存し、本明細書で提供する情報に基づいて当業者によって、容易に決定することができる。本発明の核酸送達ビヒクルの「有効量」は、合計の有効量の1回の投与、又は複数回の投与によって投与することができる。有効量は、適量及び投与のタイミングを決定する標準的な臨床手順を用いて、決定することができる。「有効量」は、治療ヘルスケア専門家及び/又は個人によって、経験的及び/又は個別(ケースバイケース)の決定の結果になりうる。
本発明の医薬組成物は、良好な医療行為に従って、本発明の方法によって、全身に、例えば、非経口、例えば、胸腺内に、骨髄及び静脈内、腹腔内、皮下、経皮的、局所的、筋肉内、関節内、結膜下、又は粘膜、例えば、経口、鼻腔内又は眼内投与によって、投与する及び服用することができる。
治療を必要とする領域への局所投与は、例えば、手術中の局所適用、局所提供、特定の臓器に直接注射することによって達成することができる。より具体的には、前述の本発明の方法で使用する組成物は、非経口、腹腔内、経皮的、(頬側又は舌下を含む)経口、直腸、(頬側又は舌下を含む)局所、膣内、鼻腔内及びその他の適切な経路による投与に適合させることができる。このような製剤は、薬学の分野で周知の方法によって、例えば、有効成分を担体(複数可)又は賦形剤(複数可)と関連させて調製することができる。
いくつかのさらなる実施形態において、本発明の組成物は、さらに、薬学的に許容される担体(複数可)、賦形剤(複数可)、添加物(複数可)、希釈剤(複数可)及びアジュバント(複数可)の少なくとも1つを含んでもよい。
より具体的には、本発明に従って必要とする対象を治療するために使用する医薬組成物は、通常は単位剤形で存在してもよく、医薬業界で周知の通常の技術に従って調製してもよい。このような技術は、有効成分を担体(複数可)又は賦形剤(複数可)と関連させるステップを含む。概して、製剤は、有効成分、特に本発明の核酸送達ビヒクルを液体担体又は微細な固体担体又はその両方と均一に密に関連させて、必要な場合、製品を形成することによって調製する。組成物は、例えば、限定されないが、錠剤、カプセル、液体シロップ、軟化ゲル、座薬及び浣腸剤等の多くの可能な剤形に製剤化することができる。本発明の組成物は、水性、非水性又は混合培地の懸濁液として配合することもできる。水性懸濁液は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール及び/又はデキストランを含む懸濁液の粘度を増加させる物質をさらに含むことができる。懸濁液は、安定化剤も含んでもよい。本発明の医薬組成物は、限定されないが、エマルジョン、及びリポソーム含有製剤も含む。
さらに、補助剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤及び着色剤を使用してもよい。医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末、粒剤、軟膏、溶液、座薬、注入薬、吸入剤、ゲル、微粒子及びエアロゾル等の固体、半固体、液体又は気体形態の調製物に配合してもよい。活性剤は、投与後に全身性であってもよく、又は領域投与、壁内投与の使用、又は移植部位において活性用量を維持するように作用する移植片の使用によって局所化してもよい。活性剤は、即座の活性のために製剤化されても、徐放性に製剤化されてもよい。
前述のように、本発明は、産業的及び治療的用途を有する送達ビヒクルの調製のためのプラットフォームを提供する。したがって、本発明は、細菌集団が関与する障害の治療のために、本発明のビヒクルの方法及び用途を提供する。より具体的には、核酸配列を目的の標的細胞に形質導入する改変したビヒクルを提供することによって、本発明は、特別に適合させた治療のための強力なプラットフォームを提供し、そのため、細胞によって生じた又は関連する病態をり患している対象の特定の細胞又は細胞集団を標的にする個別化医療に関する。細胞は、前述で特徴付けされていてもいなくとも、対象から単離することができ、患者の特定の病因細胞を標的にする特定の送達ビヒクルは、本明細書に記載のように調製することができる。
したがって、いくつかのさらなる態様において、本発明は、病因細胞(複数可)によって生じた、又は関連する対象の病的障害の発症を治療、予防、改善、抑制又は遅延する方法を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、前記対象に治療有効量の送達ビヒクル又はキット、系又は同送達ビヒクルを含む組成物の少なくとも1つを投与するステップを含む。より具体的には、送達ビヒクルは、(a)前記病因細胞(複数可)、又はそのバリアント、変異体、タンパク質又はフラグメントに適合性の少なくとも1つの宿主認識要素、及び(b)目的の少なくとも1つの核酸分子を含むことができる。
いくつかの実施形態において、送達ビヒクルの内部に含まれる少なくとも1つの適合性の宿主認識要素(複数可)は、本発明の方法によって得ることができる。特に、最初の(a)では、少なくとも1つの宿主認識要素、そのバリアント、変異体、タンパク質又はフラグメントをコードする複数の核酸分子を提供する。これらの核酸分子は、少なくとも1つのパッケージングシグナル及び選択可能な要素をコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含む。ステップ(b)では、前記複数の核酸分子を含む第1宿主細胞(複数可)を、前記送達ビヒクルの伝播を可能にする条件下で、少なくとも1つの不完全な宿主認識要素(複数可)又はそのタンパク質又はフラグメントをコードする核酸配列(複数可)を有する送達ビヒクルに接触させ、前記第1宿主細胞に伝播した得られた送達ビヒクルバリアントを回収する。次のステップ(c)は、第2宿主細胞(複数可)をステップ(b)で回収した送達ビヒクルバリアント(複数可)に接触させることを伴う。いくつかの実施形態において、「第2宿主細胞」として、前記対象の試料から得られる病因細胞を使用することができることに留意されたい。次のステップ(d)では、前記選択可能な要素を含むステップ(c)で得た宿主細胞(複数可)のコロニーを選択する。ステップ(e)では、宿主認識要素(複数可)をコードする核酸配列を、ステップ(d)で選択した宿主細胞から単離し、及び/又は特徴付けして、前記病因細胞(複数可)に適合性の宿主認識要素をコードする核酸配列を得る。その後、パッケージされたこれらの特定の宿主認識要素治療用核酸配列を含むビヒクルを調製することができる。これらのビヒクルは、対象に特別に適合される。「第2宿主細胞」は、対象の試料、体液、組織又はその臓器の試料から得ることができることに留意されたい。これらの細胞は、対象の周囲の表面、物品又は物質から取り出される環境的試料から得ることもできる。
いくつかのさらなる実施形態において、本発明の方法で使用するバクテリオファージに含まれる目的の核酸配列は、(a)少なくとも1つのcas遺伝子及び少なくともCRISPRアレイを含む少なくとも1つの感作成分であり、前記CRISPRの少なくとも1つのスペーサーは、前記病因細胞(複数可)の病原性又は望ましくない遺伝子の内部に含まれるプロトスペーサーを標的にし、前記病原性又は望ましくない遺伝子を特異的に不活性にし、前記CRISPR標的の少なくとも1つのスペーサーは、選択的成分の内部に含まれるプロトスペーサーを標的にし、前記選択的成分を特異的に不活性にし;又は(b)少なくとも1つのプロトスペーサーを含む少なくとも1つの核酸配列の何れか1つを含みうる。
感染性病態に関連する障害に係る「治療」という用語は、前記感染性病態に関連する障害の強度又は頻度をなくすこと、低下又は減少させることの1つ以上を指してもよい。治療は、前記感染症に関連する障害が発症したときに行われ、又は前記病態にかかりやすい個体の感染性病態の発生を予防し、又は減少させるために、例えば、1〜14日毎に投与するといった連続投与であってもよい。
「予防」という用語は、生物学的又は医学的事象の発生リスク、特に、感染性疾患に関連する障害の発生又は再発を予防する、又は低下させることを指し、研究者、獣医、医者又はその他の臨床医によって、組織、系、動物又はヒトにおいて予防することが求められ、「予防的有効量」という用語は、この目的を達成する医薬組成物の量を意味することを意図している。したがって、特定の実施形態において、本発明の方法は、予防、すなわち感染性疾患に関連する病態の予防に特に有効である。したがって、前記組成物を投与された対象は、過去にすでに感染性病態を経験した対象における再発の可能性の低い感染性病態に関連する症状を経験する可能性が低い。
本明細書に示す「改善」という用語は、本発明に係る組成物及び方法によって、症状の減少、引き起こされた対象の病態の改善に関係し、前記改善は、細菌感染に感染する病理過程の抑制、その規模の著しい減少、又は疾患の対象の病理学的状態の改善という形態で明白にすることができる。
「抑制」という用語及びこの用語の全てのバリエーションは、前記病理過程症状又は過程が関連する病的症状の進行及び悪化、又は病理過程の進行の制限又は禁止を含むことを意図する。
「除く」という用語は、任意に以下に記載の本発明の方法に従って、病的症状及びおそらく病因の実質的な根絶又は除去に関する。
「遅延」、「発症を遅延させる」、「遅延させる」という用語及びその全てのバリエーションは、病的障害又は感染性疾患及びその症状の進行及び/又は悪化を緩慢にすること、さらに進行、さらに悪化又は発症を緩慢にし、本発明に係る治療がない場合よりも遅延したように見えることを意図する。
「方法」という用語は、本明細書で使用する場合、限定されないが、化学、薬学、生物学、生化学及び医療分野の当業者が周知の方法、手段、技術及び手順から、知られる又は容易に開発される様式、手段、技術及び手順を含む、所与の仕事を達成するための様式、手段、技術及び手順を指す。
「治療する」という用語は、本明細書で使用する場合、病態の進行を廃する、実質的に抑制する、又は逆転させる、病態の臨床的又は審美的症状を実質的に改善する、又は病態の臨床的又は審美的症状の出現を実質的に予防することを含む。
「疾患、「障害」、「病態」等は、本明細書で使用する場合、対象の健康に関係し、同義に使用し、当該用語のそれぞれ及び全てに帰する意味を有する。
本発明は、必要とする対象又は患者の治療に関する。「患者」又は「必要とする対象」は、前述の病原体に感染しうる生物及び本明細書に記載の予防(preventive、prophylactic)キット(複数可)系(複数可)及び方法を望む者を意味し、ヒト、イヌ科及びネコ科、ウシ、サル、ウマ及びマウス対象、げっ歯類、家畜用鳥類、水産養殖、魚類、及び外来種の観賞魚等の家畜及び非家畜哺乳動物を含む。治療対象は、爬虫類又は動物園の動物であってもよい。より具体的には、本発明のキット(複数可)及び方法(複数可)は、哺乳動物の病態を予防することを意図する。「哺乳動物対象」は、示した治療が望まれる哺乳動物を意味し、ヒト、サル、イヌ、及びネコ対象、多くは特にヒトを含む。特に、非ヒト対象に場合、本発明の方法は、注射、飲料水、食事、スプレー、経管栄養及び必要とする対象の消化器官に直接注入による投与を用いて実施することができるに留意されたい。
さらに、本発明は、本発明のキット及びその成分を細菌集団に適用することによって、前記細菌集団を感作し、又は少なくとも1つの抗生物質化合物に対する前記集団の感作を増加させる方法をさらに提供する。
いくつかのさらなる態様において、本発明は、本発明のキット及びその成分を使用して少なくとも1つの抗生物質化合物に対する細菌又は細菌集団(複数可)の耐性を防ぎ又は減少させる方法を提供する。
本発明は、本発明のキット又はその成分を、前記細菌を含む表面に適用することによって、病原性細菌の発生を処理する方法を提供する。
前述のように、本発明は、望ましい標的細胞を特異的に形質導入する非常に特別で効率的なビヒクルを提供する。そのため、この特異性は、診断用途に使用することができる。より具体的には、本発明のビヒクルは、特定の病原体に専ら向けられ、特に、前記標的病原体にレポーター遺伝子を導入するように設計することができる。生物学的又は環境試料におけるこの病原体の診断は、レポーター遺伝子、特に、前記レポーター遺伝子によって形成された検出可能なシグナルによって決定することができる。したがって、いくつかのさらなる実施形態において、本発明は、生物学的又は環境試料を望ましい病原体、及びレポーター遺伝子をコードする核酸配列に向けた宿主認識要素を含む本発明の送達ビヒクルに接触させることを伴う診断方法を提供する。レポーター遺伝子によって生成されたシグナルの検出は、試料における前記病原体の存在を示す。「レポーター遺伝子」という用語は、ポリペプチドをコードする遺伝子に関し、その発現は、様々な周知のアッセイで検出することができ、検出したシグナルのレベルは、レポートされたものの存在を示す。レポーター遺伝子の非限定的な例は、ルシフェラーゼ、NanoLUCルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(gfp)、赤色蛍光タンパク質(rfp)、分泌アルカリホスファターゼ(seap)、βガラクトシダーゼ(gus)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)、及びクロラムフェニコールアセチル基転移酵素(cat)をコードし、発現する遺伝子である。
本発明の特定の特性は、明白にするために、別々の実施形態の文脈に記載し、1つの実施形態において組み合わせて提供することもできることが理解される。逆に、本発明の特定の特性は、簡潔にするために、1つの実施形態の文脈に記載し、別々に、又は適切な副組み合わせで、又は本発明に記載の他の実施形態において適切に提供することもできる。様々な実施形態の文脈に記載する特定の特性は、これらの実施形態の実施にこれらの要素が必須でない限り、実施形態の基本的な特性と考えない。
前述し、以下の請求項において請求する本発明の様々な実施形態及び態様の実験的支持が、以下の例において分かる。
本明細書で使用する全ての科学用語及び技術用語は、他に断りがない限り、技術分野で一般的に使用される意味を有する。本明細書が提供する定義は、本明細書で頻繁に使用される特定の用語の理解を容易にするためにあり、本開示の範囲を限定することを意味していない。
「約」という用語は、本明細書で使用する場合、最大1%、より特定すると5%、より特定すると10%、より特定すると15%逸脱する値、いくつかの場合では指示値より最大20%より高いか低い値を示し、偏移範囲は整数値を含み、適用可能な場合、非整数値も含み、連続範囲を構成する。本明細書で使用する場合、「約」という用語は、±10%を指す。
「含む」(comprises、comprising、includes、including)、「有する」という用語及びその複合体は、「限定されないが〜を含む」ことを意味する。この用語は、「〜から成る」及び「本質的に〜から成る」という用語を含む。「本質的に〜から成る」というフレーズは、組成物又は方法が、追加の成分及び/又はステップを含みうるが、追加の成分及び/又はステップが、請求する組成物又は方法の基本的な新規特徴を物質的に変化させない場合に限られる。本明細書、実施例、以下の請求項の全体を通じて、文脈において別のことを要求しない限り、「含む」(comprise)及びその変化形(comprises、及びcomprising)は、記載の整数もしくはステップ、又は整数もしくはステップの群を含むことを意味するが、その他の整数もしくはステップ、又は整数もしくはステップの群を除外しないことが理解される。
本発明の様々な実施形態が、範囲のフォーマットで示すことができることに留意されたい。範囲のフォーマットにおける記述は、利便性及び簡潔性のためだけにあり、本発明の範囲を堅固に限定するものとして考えるべきではないことが理解される。したがって、範囲の記述は、可能な全ての部分範囲及びその範囲の内部の個別の数値を特別に開示していると考えられるべきである。例えば、1〜6等の範囲の記述は、特に、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6等の部分範囲、ならびにその範囲の内部の個別の数字、例えば、1、2、3、4、5、及び6を特に開示していると考えるべきである。この記述は、範囲の幅にかかわらず適用する。数値範囲を本明細書で示す場合はいつでも、指示範囲の内部に示される数値(分数又は積分)を含むことを意味する。第1指示数字と第2指示数字との「間の範囲」ならびに第1指示数字「から」第2指示数字「まで」の「範囲」は、本明細書では同義に使用し、第1指示数字及び第2指示数字、ならびにその間の全ての分数及び積分数値を含むことを意味する。
開示し、記載してきたように、本発明は、当該方法のステップ及び組成物はいくらか変化しうるように、本明細書に開示する特定の例、方法、ステップ及び組成物に限定されない。本明細書で使用する用語は、特定の実施形態のみを記述する目的で使用し、本発明の範囲が、添付の請求及びその等価物によってのみ限定されるため、限定することを意図していないことが理解される。
本明細書及び添付の請求項で使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈でそうではないと断りがない限り、複数指示物を含むことに留意されたい。
以下の例は、本発明の態様を実施する上で本発明の発明者が使用する技術の代表例である。これらの技術は本発明を実施するための好ましい実施形態の例であるが、当業者は、本開示の観点から、本発明の趣旨及び意図する範囲から逸脱することなく、多く修正することができることを認識していることが理解される。
以下の実施例は、前述と共に非限定的な様式で本発明のいくつかの実施形態を説明する。
概して、本明細書で使用する命名法及び実験室の手順は、分子的、生化学的、微生物学的及び組み換えDNA技術を含む。このような技術は、文献に完全に説明されている。例えば、‘‘Molecular Cloning:A laboratory Manual’’Sambrook等、(1989);‘‘Current Protocols in Molecular Biology’’I−III巻 Ausubel,R.M.,編(1994);Ausubel等、‘‘Current Protocols in Molecular Biology’’,John Wiley and Sons、Baltimore、Maryland(1989);Perbal,‘‘A Practical Guide to Molecular Cloning’’,John Wiley & Sons、New York(1988);Watson等、‘‘Recombinant DNA’’、Scientific American Books、New York;Birren等(編)‘‘Genome Analysis:A Laboratory Manual Series’’、1−4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York(1998);米国特許第4,666,828号;4,683,202号;4,801,531号;5,192,659号及び5,272,057号に記載の方法;‘‘Cell Biology:A Laboratory Handbook’’、I−III巻 Cellis,J.E.,編(1994);‘‘Culture of Animal Cells−A Manual of Basic Technique’’ by Freshney、Wiley−Liss、N.Y.(1994)、3編;‘‘Current Protocols in Immunology’’I−III巻 Coligan J.E.,編(1994);Stites等(編)、‘‘Basic and Clinical Immunology’’(8版)、Appleton & Lange、Norwalk、CT(1994);Mishell and Shiigi(編)、‘‘Selected Methods in Cellular Immunology’’、W.H.Freeman and Co.,New York(1980)を参照のこと;利用可能な免疫アッセイは、特許及び科学文献に広く記述され、例えば、米国特許第3,791,932号;3,839,153号;3,850,752号;3,850,578号;3,853,987号;3,867,517号;3,879,262号;3,901,654号;3,935,074号;3,984,533号;3,996,345号;4,034,074号;4,098,876号;4,879,219号;5,011,771号及び5,281,521号;‘‘Oligonucleotide Synthesis’’Gait,M.J.,編(1984);‘‘Nucleic Acid Hybridization’’ Hames,B.D.,and Higgins S.J.,編(1985);‘‘Transcription and Translation’’Hames,B.D.,and Higgins S.J.,編(1984);‘‘Animal Cell Culture’’Freshney,R.I.,編(1986);‘‘Immobilized Cells and Enzymes’’IRL Press、(1986);‘‘A Practical Guide to Molecular Cloning’’Perbal,B.,(1984)及び‘‘Methods in Enzymology’’1−317巻、Academic Press;‘‘PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications’’、Academic Press、San Diego、CA(1990);Marshak等、‘‘Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual’’CSHL Press(1996)を参照こと;これらは、あたかも本明細書に全文が記載されているように参照により援用される。その他の一般的な参照は、本明細書に提供する。前記の手順は技術分野で周知と考えられ、読者の利便性のために提供する。本明細書に含まれる全ての情報は、参照により本明細書に組み込まれる。
実験手順
試薬、株及びプラスミド
Luria−Bertani(LB)培地(トリプトン10g/L、酵母抽出物5g/L、及びNaCl5g/L)及び寒天は、Acumedia製であった。2YT培地は、Bacto−トリプトン1.6%(w/v)(Acumedia)、Bacto−酵母抽出物(Acumedia)1%(w/v)、及び蒸留水中のNaCl0.5%(w/v)(Acumedia)を含んだ。抗生物質、リゾチーム、L‐アラビノース及びマルトースは、Calbiochemに由来した。制限酵素、ライゲーション酵素、DNA修飾酵素、及びPhusion(登録商標)高忠実度DNAポリメラーゼは、New England Biolabs製であった。本発明で使用する細菌株及びファージは、表1に列挙する。
プラスミドの構築
標準的な分子生物学技術を用いてプラスミドを構築した。DNAセグメントはPCRで増幅した。標準DNA消化及びライゲーションは、製造者の指示に従って行った。本発明で使用するファージ尾遺伝子を表2に列挙し、GeneScriptによって最適化し、合成したコドンであった。本研究で使用したプラスミドを表3に列挙し、構築に使用したオリゴヌクレオチドを表4に挙げ、構築に使用したプライマー及びテンプレートを表5に挙げた。
株の構築
BW25113ΔtrxA::kanをKeioコレクション(15)から得た。BW25113ΔtrxAΔwaaCをpCP2016)を用いてカナマイシン耐性マーカーを切除することによって構築した。得た株(BW25113ΔtrxA)をドナー株としてKeioコレクションのBW25113ΔwaaC::kanを用いてP1形質導入のアクセプター株として使用した。P1形質導入は、Yosef等,2011(18)に記載のように実施した。
エチルメタンスルホン酸(EMS)変異原を用いたプラスミドライブラリの調製
一晩、T7パッケージングプラスミドを内部に有するE.coli BW25113の培養物を適切な抗生物質を含むLB培地5mlに1:50に希釈した。培地を37℃で数時間曝気した。中間対数期に到達したときに、細胞を2回洗浄し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁した。その後、EMS(Sigma−Aldrich)を培地に1%加え、細胞を37℃で1時間曝気した。細胞をPBSで3回洗浄し、適切な抗生物質を補充した50mlのLBに再懸濁し、37℃で16時間曝気した。一晩の培地を使用して、以下に記載のT7ファージのライブラリを調製した。この手順は、本発明のパッケージングプラスミド、例えば、パッケージングプラスミドpIYPE19(その核酸配列はSEQ ID NO:24に記載)を調製するために使用し、パッケージングプラスミドpIYPE19は、尾繊維タンパク質gp11、gp12及びgp17の少なくとも1つ(それぞれSEQ ID NO:34、39、25に記載)、パッケージングシグナル(複数可)(例えば、SEQ ID NO:20、21、22又は23)及び抗生物質耐性遺伝子(SEQ ID NO.44に記載)の少なくとも1つをコードする核酸配列を特異的に変異する配列を含み、適切な抗生物質を含む2YT培地に1:50で希釈した。
gp11、gp12、及びgp17を欠失したバクテリオファージT7の調製
遺伝子17の代わりにtrxA−FLPを有するT7ファージを前述(17)の相同組み換えによって構築した。端的には、pGEMIY398F(gp17をコード)及びpCAIY396(遺伝子17の末端に対して隣接する相同配列でtrxA−FLPをコード)を有するBW25113細胞を一晩培養した。その後、trxAをコードするファージをBW25113ΔtrxA/pGEMIY398Fで選択した。FLPリコンビナーゼを使用して、trxA遺伝子をBW25113/pGEMIY398F/pAC−FRTのファージの連続的伝播によって、T7Δ17trxA−FLPファージからtrxA遺伝子を切除した。最後に、T7Δ17ファージを(17)に記載のように単離した。
T7Δgp(11−12−17)を構築するために、遺伝子11−12を同様の手順を用いてファージT7Δ17から削除した。端的には、pGEM3RCF(gp11、gp12及びgp17をコード)及びプラスミドpCAIY405(遺伝子11−12の末端に隣接する相同配列でtrxA−FLPをコード)を有するBW25113細胞を使用して、遺伝子11−12をtrxA−FLPで置換した。その後、trxAをコードするファージをBW25113ΔtrxA/pGEM3RCFで選択した。FLPリコンビナーゼを使用して、BW25113/pGEM3RCF/pAC−FRTのファージの連続的伝播によって、T7Δgp17Δgp(11−12):trxA−FRTファージからtrxA遺伝子を切除した。最後に、T7Δ(11−12−17)ファージを(17)に記載のように単離した。
形質導入形成ユニット(TFU)を含む可溶化液の調製
T7パッケージングシグナル及び尾タンパク質をコードするプラスミドを内部に有するドナー株E.coli BW25113を一晩培養したものをLBで1:5に希釈し、37℃で追加の時間、曝気した。細胞を遠心分離で洗浄し、新鮮なLBで再懸濁した。培養物を約2の感染効率(MOI)で、T7Δ(11−12−17)の約5*108PFUで感染させた。感染させた培養物を溶解が発生するまで、37℃で1.5〜2時間曝気した。溶解した後、クロロホルムを添加し、可溶化液を最大速度で2分間遠心分離にかけた。得られた可溶化液は、ファージDNAを粒子の約半分及びプラスミドコーディング遺伝子11、12、及び17を含む粒子の半分を含んでいた。プラスミドの形質導入の特異性を決定するための実験において、2つのプラスミド:T7パッケージングシグナルを有するプラスミド、及びパッケージングシグナルを欠失している尾タンパク質を内部に有する追加のプラスミドの一晩の培養物がE.coli BW25113を有していたことを除いて、可溶化液を前述のように調製した。
TFUアッセイ
抗生物質を補充した無菌LBを、trxA遺伝子(BW25113ΔtrxA又はΔtrxAΔwaaC)(16)を欠失しているレシピエントE.coli株の単一コロニーに接種させた。培養物を37℃で一晩、250rpmで振盪した。次の朝、新鮮な一晩の培養物を、抗生物質を補充した5mlのLBに1/50で希釈し、約0.5のO.Dに達するまで37℃で振盪した。レシピエント培養物を使用するまで氷の上で保管した。
可溶化液を連続希釈するために、96ウェルプレートを使用した(可溶化液が高力価である場合、最大10−9の希釈、そうでなければ最大10−7の希釈で調製するべきである)。次に、前述のように調製した10μlの可溶化液を10μlのレシピエント培養物と混合した。プレートを強く振盪させて37℃で1時間置いた。回収時間の間、抗生物質を補充したLBプレートをフードで1時間乾燥させた。最後に、10μlの得られた培養物を乾燥したプレートに、所々に置いた。プレートを一晩(O.N.)37℃で培養した。コロニーの数を数え、BW25113ΔtrxAのTFU力価を、宿主のファージ伝播を可能にするために使用し、測定した。
形質導入アッセイ
指数関数的培養期のレシピエント細胞を、前述のように調製したT7 TFU可溶化液の連続希釈で、1:1比(v/v)で混合した。培養物を振盪しながら37℃で60分間インキュベートした。次に、培養物を適切な抗生物質を含むLB−寒天プレートに置き、37℃で一晩インキュベートした。TFU/mlを、示した参照株で得られた108形質導入体に正規化した。
ハイブリッドT7粒子の新しい宿主(GOTraP)にDNA形質導入を行う能力の向上
総量10mlのレシピエント細胞及びT7 TFU可溶化液による形質導入アッセイを前述のように行った。形質導入体を選択的プレートからプールし、プラスミドを抽出した。精製したプラスミド(100ng)をBW25113に再形質転換し、50μg/mlのカナマイシンを補充したLBプレートに播種した。形質転換体を一晩のインキュベーション(約1*106)の後に回収し、前述のようにEMSで変異誘発させた。T7可溶化液をEMS処理細胞から調製し、レシピエント細胞を形質導入するために使用した。T7可溶化液は、レシピエント細胞のTFUを正規化するために、参照株を形質導入するためにも使用した。
実施例1
野生型パッケージプラスミドからの許容的T7受容体結合タンパク質の選択
T7ファージの尾タンパク質が、T7ファージによる異なる宿主の認識を示すことを以前に示した(10)。ファージの宿主範囲を拡張する以前の試みは、宿主のファージの増殖を指示する能力に依存した(10)。ユニークな選択圧力下で、これらの尾タンパク質の定向進化によって、これらの宿主に伝播するファージの能力に関わらず、核酸(例えばDNA)を望ましい宿主に挿入するために使用することができることが推測される。
このために、T7ファージ粒子のプラスミドDNAをパッケージし、形質導入する能力を使用した。このようなパッケージングは、プラスミドが適切なパッケージング配列をコードする場合に生じる(13)。パッケージされたDNAは、抗生物質耐性を与え、したがってパッケージされたDNAを内部に有する細菌を適切な抗生物質で選択することができる。ユニークな選択圧力下で、これらの尾タンパク質の定向進化によって、これらの宿主に伝播するファージの能力に関わらず、DNAを望ましい宿主に挿入するために使用することができることが推測される。
この特徴を用いて、T7受容体結合タンパク質をコードする尾遺伝子(主に遺伝子gp11、gp12及び17)をパッケージする。遺伝子gp11、gp12及び17をコードするプラスミドをパッケージするために使用するファージは、これらの尾遺伝子を欠失しており、したがって、DNA形質導入は、プラスミドから発現した受容体結合タンパク質に依存する。パッケージされたDNAは、コードした受容体結合タンパク質が、宿主受容体と適合性にする変異を有する場合にのみ、挿入することができることがさらに推測される。受容体が野生型尾タンパク質に適合しない宿主は、変異した適合性の尾タンパク質が形質導入されたプラスミドでコードされる場合にしか形質導入されない。したがって、系は、望ましい宿主を認識する変異した尾遺伝子の選択を可能にする。形質導入されたプラスミドを抽出し、この手順を繰り返すことで、図1の例について実証したように、高い形質導入の有効性を有する尾タンパク質がさらに選択される。
系が確かに、新しい宿主について、受容体結合タンパク質をコードする遺伝子を選択することができることを本発明者の発明者が最初に確認した。これは、制限標的宿主のモデルとして提供されるwaaC受容体及びtrxAを欠失しているE.coli株について実証した。この宿主は、T7 DNAポリメラーゼの本質的なサブユニットであるtrxAを欠失しているため、T7の増殖を支持しない。この宿主は、LPS生合成に必要な遺伝子であるwaaCを欠失しているため、認識可能なT7受容体も欠失している。したがって、この宿主は、T7ファージの増殖又はDNA形質導入を支持しない。適合性の尾タンパク質を有するT7ファージは、DNAを伝播することができないが、形質導入することができ、一方では野生型T7は、DNAを形質導入することも伝播することもできない。
操作していないパッケージラスミドの集団からプラスミドを選択することを最初に説明した。そのため、T7ファージは、野生型のパック可能なプラスミドを内部に有するBW25113 E.coli株に伝播した。(図1Bに画像で示すように)得られた可溶化液を用いて、図1Cに示す「臨床株」(本明細書では「標的宿主」又は「望ましい株」とも呼ばれる)のモデルとして役割を担う制限的E.coli ΔtrxA ΔwaaCを形質導入した。この可溶化液を使用した形質導入は、コロニーを生成し、そのいくつかは、おそらく、本明細書では「宿主認識要素」とも呼ばれる適合性の受容体結合タンパク質をコードするプラスミドを内部に有した。これらのコロニーをプールし、プラスミドを抽出し、BW25113に形質転換した。これらの細胞を別のパッケージングサイクルに供した。この可溶化液を使用した形質導入は、少なくとも2回以上コロニーを生成し、2回以上繰り返したサイクルで、104倍以上のコロニーを生成し、形質導入されたプラスミドが、結果的にT7ファージによってパッケージされ、再形質導入され、適合性の受容体結合タンパク質を有するプラスミドをコードする(図2)。
この推測をさらに検証するために、異なるサイクルから精製したプラスミドを配列決定した。注目すべきことに、遺伝子17の変異(S541R)を確認し、waaC遺伝子を欠失しているE.coliの受容体の認識が向上した。独立した実験では、同じ独立した変異が生じ、プラットフォームの再現性及び新しい宿主に適合性を有する新しい尾を生成する効率性を実証した。したがって、選択スキーム及び結果としての富化は、確かに、望ましい表現型を生み出す変異を有する粒子を直接的に発達させた。
実施例2
ハイブリッドT7ファージはDNAを新しい宿主に効率的に形質導入する
本明細書の実施例1に示し、実証したように、T7ファージはプラスミドをパッケージし、形質導入するため、本発明の発明者は、異なる尾が異なる宿主の特異性を決定し、上手くこれらの宿主に伝播させるファージの能力に関わらず、望ましい宿主にDNA形質導入することができると仮説を立てた。ここで、プラスミドをパッケージするために使用するT7ファージは、その尾遺伝子(遺伝子11、12、及び17)を欠失していた。結果として、形質導入粒子への成熟は、形質導入されたプラスミドによってトランスに産生される尾遺伝子に依存する。したがって、プラスミド形質導入は、尾遺伝子産物がハイブリッド粒子に構築される場合にのみ、及びこの尾遺伝子産物が形質導入した宿主の受容体を認識する場合にのみ、生じる可能性がある(図3A)。望ましいハイブリッドは、抗生物質耐性を標的宿主に与えるプラスミド形質導入を可能にする。さらに、本発明の発明者の仮説を支持する本発明のプラットフォームを確立するために、前述の表2に記載の15個の異なるファージの尾遺伝子、ならびに抗生物質耐性マーカー及びT7パッケージング配列をコードするプラスミドを設計した(13)。
前述の実施例1に示した設計と同じように、15個の異なるハイブリッド粒子可溶化液を異なるプラスミドを内部に有するE.coliで調製した。図3Bに示すように、産生したハイブリッド粒子可溶化液の形質導入効率を、図に示す12個の異なる標的宿主で試験を行った。形質導入効率は、形質導入されたプラスミドによってコードした抗生物質耐性マーカーを獲得するコロニー形成ユニットの数を数えることとで決定した。
BW25113ΔtrxA宿主株は、trxAを欠失しているためにT7ファージの伝播を支持しないE.coli K−12の誘導体であり(T7 DNAポリメラーゼサブユニットをコードする宿主遺伝子[[Modrich and Richardson,Bacteriophage T7 deoxyribonucleic acid replication invitro. Bacteriophage T7 DNA polymerase:an an emzyme composed of phage− and host−specific subunits.J Biol Chem 250、5515−5522(1975)]を標的宿主として使用した。図3Bに示すように、T7尾タンパク質をコードする宿主において産生するハイブリッド粒子は、効率的にDNAをBW25113ΔtrxA宿主株に形質導入した。さらに、前(10)に示したように、KlebsiellaファージK11を示すハイブリッド粒子は、DNAをKlebsiella菌種390に効率的に形質導入した。
(図3に示すように)試験を行ったその他のKlebsiella株は、図3Bに示すように、ハイブリッド粒子の少なくとも1つによってDNA形質導入を示した。Enterobacter cloacae及びEnterobacter aerogenes(図3Bに示す)も、いくつかのハイブリッド粒子によって、低から中程度の効率で形質導入した。細菌の同属の内部の適合性のハイブリッドの数の偏差は、劇的に変化することができる(例えば、Sen4513対Sen4510)。いくつかの宿主は、単一のハイブリッド粒子によってしか形質導入されなかったが、このことは、複数のハイブリッドの試験が、少なくとも1つのハイブリッド粒子と新しい宿主の適合性の組み合わせを見つけるために欠かせないことを示している。一方で、いくつかの宿主は、複数のハイブリッド粒子によって効率的に形質導入され(例えば、Sso4727は、試験対象の15個のハイブリッド粒子のうち12個によって形質導入された)、このことは、適合性のハイブリッド粒子を見つけることは、多くの細菌宿主にとっておそらく実行可能であることを示している。まとめると、これらの実験は、このアプローチが、DNAを新しい宿主に形質導入するために、ファージの使用を著しく拡張すれば、本発明のプラットフォームの実行性が明らかに確立する。この目的は、ファージの伝播を必要とする先行技術研究では、取り組みも実証することもできなかった。したがって、図8の模式図にも示すように、本発明のプラットフォームは、先行技術の方法を上回る明らかな利点を示している。
実施例3
変異誘発した野生型パッケージプラスミドからの許容的T7受容体結合タンパク質の選択
さらに、適合性のプラスミド(すなわち、適合性の受容体結合タンパク質をコードするプラスミド)を変異したパッケージプラスミドの集団から選択し、尾タンパク質のバリアントをコードすることを次に実証した。本発明の発明者は、コードする改変した尾遺伝子によってより効率的に形質導入されたプラスミドを選択することによって、形質導入効率を改善することができるという仮説を立てた。より具体的には、本発明の発明者は、DNA形質導入の実験において、このような改変した尾をコードするプラスミドが親の尾をコードするプラスミドよりも効率的に形質導入され、その理由は、改変した尾をコードするプラスミドを示す粒子が、親の尾を示す粒子よりも優れてDNAを形質導入するためであると推測した。以下のいくつかの形質導入サイクルに従って、形質導入したプラスミドを回収し、使用して、より多くのハイブリッド粒子を産生し、高い形質導入能力を有する尾タンパク質をコードする変異体プラスミドの単離が可能になる(図4A)。この原理は、本明細書に記載の手順「GOTraP」を発展させることに基づいていた。
GOTraP手順(General Optimization of Transducing Particles)を、表現型(すなわちDNAの形質導入)をこの形質導入を可能にする望ましい遺伝子型(すなわち尾コード遺伝子の変異)に結合するプラットフォームとして開発し、変異原の存在下で、図4Aに模式的に説明した手順を含む。
GOTraPの実現可能性試験として、変異原EMSを使用して、前述のように尾タンパク質11、12及び17をコードするパッケージ可能なプラスミドにランダムな変異を生成した。遺伝子11、12及び17を欠失しているT7ファージをこれらのプラスミドを内部に有する宿主で伝播させた。その後、得られた可溶化液を使用して、実施例1に記載のE.coli ΔtrxAΔwaaC(BW25113ΔtrxAΔwaaC)を形質導入した。この宿主は、trxAを欠失しているためT7ファージの伝播を支持せず、LPS生合成(19)に必要な遺伝子であるwaaCを欠失しているため、T7宿主受容体、リポ多糖(LPS)をコードしない。したがって、この宿主は、T7ファージの増殖又はDNA形質導入を支持しない。次に、DNAを形質導入することができる変化した適合性の尾タンパク質でT7粒子を単離することを目的として、さらなる実験を行った。EMS変異原性を使用して、T7尾タンパク質をコードするパッケージ可能なプラスミドにランダムな変異を生成した。その後、これらのプラスミドを内部に有するE.coli宿主を使用して、プラスミドをコードした変異体尾を示す粒子を生成した。その後、得られた粒子を使用して、制限的E.coli BW25113ΔtrxAΔwaaCを形質導入した。抗生物質を使用して、形質導入体を選択して、数を数えた(図4B、サイクル0)。これらの形質導入体をプールし、そのプラスミドを抽出し、粒子を形質導入するための追加の可溶化液を生成するために使用する新鮮なE.coli宿主に形質転換した。この可溶化液を用いて形質導入すると、最初の可溶化液(図4B、サイクル1)よりも104倍以上のコロニーを生成し、2回以上サイクルを繰り返すと、最初の可溶化液(図4B)よりも約107倍以上のコロニーを生成した。これらの結果は、形質導入したプラスミドがT7ファージによって再パッケージされ、再び形質導入され、制限宿主に対して変異した適合性の尾をコードすることを示している。この推測を検証するために、サイクル3から精製したプラスミドを配列決定した。前述の結果と同様に、遺伝子17の変異を、T7ファージをE.coli LPS変異体(19)に吸着することができることが知られる残基の隣の位置のすなわちD540Nで識別した。
確かに、この特異的変異で導入されたプラスミドは、図4Cに示した親プラスミドよりも約106倍以上の形質導入の効率性を増加させた。この結果は、識別された変異が観察した表現型に関与することを確認した。4つの独立した実験では、同じ独立した変異が生じ、GOTraPの再現性及び新しい宿主に適合性の新しい尾を発達させる効率を実証した。D540をチロシン残基(D540Y)に置換する同位置の変異は、変異体プラスミドMP6を使用したときに明らかになった。興味深いこととして、実施例1に示す選択スキーム及び結果的な富化によって、変異原(例えばD541R)を使用して得られた同様の位置に、望ましい表現型を生み出す変異を有する粒子を直接的になんとか発達させた。
GOTraPをE.coli以外の株にも適用することをさらに示すために、前述のアッセイを使用して、Shigella sonnei(T7ファージ伝播を支持しない株、表6)の臨床単離体を中程度の効率で形質導入した粒子の形質導入効率を改善した。このために、T7尾タンパク質をコードする変異したプラスミドをS.sonnei(すなわちSso4727)に形質導入し、抽出し、その後、E.coli宿主に戻って形質転換した。これらの宿主は、結果として新しい可溶化液を生成するために使用した。新しい可溶化液を使用して、S.sonneiを再び形質導入し、これらのサイクルを3回繰り返した。1回目、2回目及び3回目サイクルに従って、おそらく変異したプラスミドを高い形質導入効率で富化するため、最初の効率性より約50、120及び150倍の粒子を形質導入する力価の増加を、それぞれ連続してモニターした(図4B)。この効率は、おそらく全てのプラスミドが増加した形質導入効率で変異体になった場合に、3回目のサイクルで安定した。
抽出したプラスミドのDNAシーケンシングは、遺伝子17の変異を明らかにし、479位でグリシンをセリンに置換した。確かにこの変異が形質導入効率の増加を担う唯一の変異であることを検証するために、親プラスミドをこの位置で変異させ、その形質導入効率を変異していないプラスミドと比較してモニターした。興味深いこととして、変異したプラスミドは、図4Cに示した親プラスミドよりも約150倍以上、形質導入効率を増加させた。この結果は、識別された変異が観察した表現型に関与することを確認した。
さらに、以下に示すように、非T7尾を含むハイブリッド粒子は、GOTraPアッセイによって最適化することもできる。T7カプシド及び尾から構成されるが、ファージ13aに由来する尾繊維を有するハイブリッドを、さらにDNAをKlebsiella pneumonia 4800IIに形質導入するように最適化した。この場合も同様に、図4Bに示すようにハイブリッド粒子の形質導入効率を著しく改善するのに充分な3回のサイクルを実施した。この場合では、遺伝子12に変異を識別し、733位において、グリシンをアスパラギン酸置換した。確かに、前述の特異的変異で構築された変異プラスミドは、図4Cに示す対照プラスミドよりも形質導入効率を増加させた。全体として、これらの結果は、GOTraPアッセイが複数の細菌属にわたって、粒子のDNA形質導入効率を著しく増加させることができることを示す。
実施例4
望ましい核酸分子の目的のレシピエント標的宿主細胞への形質導入
前述のように、望ましい宿主を認識する適切な尾及び尾タンパク質を選択することで望ましいDNA送達を可能にすると思われる。これらの尾タンパク質をパッケージングシグナルのないプラスミドにクローンする。追加のプラスミド、すなわち、例えば、CRISPR−Cas又は他の抗生物質感作要素、又はパッケージングシグナルをコードする望ましいDNAを含む送達される構築物を同時導入する。これらのファージを有する2つのプラスミドを内部に有する宿主の感染によって、望ましいDNAを望ましい宿主に注入する適合性の尾タンパク質を有するハイブリッドファージにする。
したがって、尾遺伝子をコードしない望ましいプラスミドを新しい宿主に形質導入することができる再プログラムファージカプシドの能力を以下に詳細に説明した。このために、2つのプラスミド、1つはGOTraPアッセイで得た親又は変異した尾遺伝子をコードするパッケージすることができないプラスミド、もう1つは、図5Aに模式的に示した抗生物質マーカーを有するパッケージ可能なプラスミドを、粒子を産生するために使用したE.coli宿主に形質導入した。
前述に示した結果から、変異した尾をコードする宿主に産生されるパッケージ可能なプラスミドを内部に有する産生した粒子は、このプラスミド(すなわち、パッケージ可能なプラスミド)を、親の尾で産生されたプラスミドよりも効率的に形質導入することが推測された。可溶化液を使用して、E.coliΔtrxAΔwaaC、Shigella sonnei4727、及びKlebsiella pneumonia 4800IIを形質導入した。結果として、形質導入したプラスミドが耐性を与える抗生物質を補充したプレートに株を播種し、次の日に数を数えた。
図5Bに示すように、パッケージ可能なプラスミドの形質導入は、測定した親及び変異体尾の形質導入効率に対応した。
パッケージングシグナル(尾遺伝子ではない)をコードするプラスミドの移行を、図6に示すこの研究において識別した適合性の尾をコードする宿主で産生したその他のハイブリッド粒子を使用して観察した。特異性の対照として、形質導入した細胞を、尾をコードしたプラスミドによって与えられた抗生物質耐性を含むプレートに播種した。パッケージすることができないプラスミドは、パッケージングシグナルを有するプラスミドより、少なくとも100倍低い効率で形質導入され、このことは、パッケージ可能なプラスミドが、パッケージすることができないプラスミドよりも少なくとも100倍以上、特別に送達されることを示している(図6)。これらの実験は、ハイブリッド粒子カプシドが、確かにプログラムされ、望ましいDNAプラスミドを新しい宿主に形質導入することを効率的、特別に促すことができることを示す。
本発明の発明者は、GOTraPプロトコルをレシピエントSalmonella typhimurium ATCC 14028株にさらに適用した。レシピエントは、BW25113/MGP4187で調製したファージハイブリッド粒子[T7(gp11−12)YpsP−G(gp17)]で形質導入した。形質導入したプラスミドを回収し、より多くのハイブリッド粒子を産生するために使用する10回の形質導入サイクルの後、最初の可溶化液よりも103倍以上のコロニーを産生する可溶化液を得た(図7)。これらの結果は、形質導入したプラスミドがT7ファージによって再パッケージされ、再び形質導入され、制限宿主に対して変異した適合性の尾をコードすることを示している。このことを検証するために、サイクル10の可溶化液で形質導入した後に、いくつかのS.typhimuriumクローンの尾遺伝子をシーケンシングした。いくつかの変異が、遺伝子11、遺伝子12、及び遺伝子17に対して上流領域で識別された(表7)。
遺伝子17の上流で変異の効果を確認するために、親プラスミドをこれらの位置(mut1及びmut2、表7)で変異させ、親プラスミドと比較して形質導入効率をモニターした。このために、それぞれがgp17のATG開始コドンに対して−9位又は−10位上流の点変異を有する2つのプラスミドを構築した。変異したプラスミドは、親プラスミドよりも約50倍以上、形質導入効率を増加させた(図7B)。この結果は、これらの変異が観察した表現型に部分的に関与していることを明白に示している。