配列表の簡単な説明
配列番号1〜467,030は、S.pyogenes Cas9エンドヌクレアーゼでジストロフィン遺伝子をターゲティングするためのgRNA 20bpスペーサー配列のリストである。
配列番号467,031〜528,196は、S.aureus Cas9エンドヌクレアーゼでジストロフィン遺伝子をターゲティングするためのgRNA 20bpスペーサー配列のリストである。
配列番号528,197〜553,198は、S.thermophilus Cas9エンドヌクレアーゼでジストロフィン遺伝子をターゲティングするためのgRNA 24bpスペーサー配列のリストである。
配列番号553,199〜563,911は、T.denticola Cas9エンドヌクレアーゼでジストロフィン遺伝子をターゲティングするためのgRNA 24bpスペーサー配列のリストである。
配列番号563,912〜627,854は、N.meningitides Cas9エンドヌクレアーゼでジストロフィン遺伝子をターゲティングするためのgRNA 24bpスペーサー配列のリストである。
配列番号627,855〜1,410,399は、Acidominoccoccus、Lachnospiraceae、およびFranciscella Novicida Cpf1エンドヌクレアーゼでジストロフィン遺伝子をターゲティングするためのgRNA 20〜24bpスペーサー配列のリストである。
配列番号1,410,400〜1,410,402は、N.meningitides Cas9エンドヌクレアーゼでジストロフィン遺伝子をターゲティングするためのgRNA 24bpスペーサー配列のリストである。
配列番号1,410,403〜1,410,429は、Acidominoccoccus、Lachnospiraceae、およびFranciscella Novicida Cpf1エンドヌクレアーゼでジストロフィン遺伝子をターゲティングするためのgRNA 23bpスペーサー配列のリストである。
配列番号1,410,430〜1,410,472は、S.pyogenes Cas9エンドヌクレアーゼでジストロフィン遺伝子をターゲティングするためのgRNA 19bpスペーサー配列のリストである。
詳細な説明
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)
DMDは、ジストロフィン遺伝子(X染色体:31,117,228〜33,344,609(Genome Reference Consortium:GRCh38/hg38))内の突然変異により引き起こされる。2.2メガ塩基の長さにわたるゲノム領域を伴うジストロフィンは、2番目に大きなヒト遺伝子である。ジストロフィン遺伝子は、79のエクソンを含有し、これが、11,000塩基対のmRNAへとプロセシングされ、これが、427kDaのタンパク質へと翻訳される。機能的に、ジストロフィンは、アクチンフィラメントと、筋線維内の細胞外マトリックスとの間のリンカーとして作用する。ジストロフィンのN末端は、アクチン結合性ドメインであるが、C末端は、筋線維を、細胞外マトリックスへとアンカリングする膜貫通スキャフォールドと相互作用する。筋収縮時に、ジストロフィンは、筋組織が、機械的な力に抗することを可能とする、構造的支持をもたらす。DMDは、ジストロフィン遺伝子内の多種多様な突然変異であって、早期終止コドンをもたらし、したがって、切断型ジストロフィンタンパク質をもたらす突然変異により引き起こされる。切断型ジストロフィンタンパク質は、C末端を含有せず、したがって、筋収縮の応力に抗するのに必要な構造的支持をもたらすことができない。結果として、筋線維は、引き離され、筋消耗をもたらす。
治療法
本明細書では、ゲノム操作ツールを使用して、ジストロフィンのリーディングフレームを修復し、ジストロフィンタンパク質の活性を修復しうる恒久的変化を、ゲノムに対して創出するための、細胞のex vivoおよびin vivo方法が提示される。このような方法は、CRISPR/Cas9ヌクレアーゼなどのエンドヌクレアーゼを使用して、ジストロフィン遺伝子の、ゲノムローカス内のエクソンを、恒久的に欠失させる(切り出す)か、挿入するか、または置きかえる(欠失させ、かつ、挿入する)(すなわち、コーディングおよび/またはスプライシング配列内の突然変異)。このようにして、本発明は、単回というわずかな回数の処置で(エクソンスキッピングオリゴを、患者の生涯にわたり送達するのではなく)、エクソンスキッピングにより作製される産物を模倣し、かつ/またはリーディングフレームを修復する。前臨床研究は、亜鉛フィンガー、TALE、およびCRISPR/Cas9ベースのヌクレアーゼを使用して、ターゲティングされた変化を、ゲノムへと施すことにより、ジストロフィンのC末端の発現に関して実施した。一例では、DMDを伴う患者のうちの60%を超える患者を処置すると推定される、大きなゲノム領域の欠失を行った。
本明細書では、DMDを伴う患者を処置するための方法が提示される。このような方法の例は、ex vivoにおける細胞ベースの療法である。例えば、DMD患者特異的なiPS細胞株を創出する。次いで、本明細書で記載される材料および方法を使用して、これらのiPS細胞の染色体DNAを矯正する。次に、矯正されたiPSCを、Pax7+筋始原細胞へと分化させる。最後に、始原細胞を、患者へと植え込む。このex vivo方法には、多くの利点が存在する。
ex vivoにおける細胞療法の1つの利点は、投与前において、治療剤についての包括的な解析を行う能力である。全てのヌクレアーゼベースの治療剤は、あるレベルのオフ標的作用を及ぼす。ex vivoにおける遺伝子矯正の実施は、植込みの前に、矯正された細胞集団を完全に特徴付けることを可能とする。本開示の態様は、矯正された細胞の全ゲノムをシークエンシングして、オフ標的切断が、存在する場合、患者に対する最小限の危険性と関連するゲノム位置にあることを確保することを含む。さらに、細胞のクローン集団を、植込みの前に単離することができる。
ex vivoにおける細胞療法の別の利点は、他の初代細胞供給源と比較した、iPSC内の遺伝子矯正に関する。iPSCは、多産であり、細胞ベースの療法に要求される多数の細胞を得ることを容易とする。さらに、iPSCは、クローン単離を実施するために理想的な細胞型である。これは、生存率を低下させる危険を犯さずに、正確なゲノム矯正のためのスクリーニングを可能とする。これに対し、初代筋芽細胞など、他の潜在的な細胞型は、少数の継代だけにわたり生存可能であり、クローン的に拡大することが困難である。また、患者特異的DMD筋芽細胞は、ジストロフィンタンパク質の欠如のために、不健全でもありうる。他方、患者由来のDMD iPSCは、この分化状態では、ジストロフィンを発現しないので、罹患表現型を提示しない。したがって、DMD iPSCの操作は、はるかに容易であり、所望の遺伝子矯正を施すのに必要とされる時間の量を短縮しうる。
ex vivoにおける細胞療法のさらなる利点は、筋芽細胞と対比した、筋原性Pax7+始原細胞の植込みに関する。Pax7+細胞は、筋原性サテライト細胞として許容されている。Pax7+始原細胞は、多核化筋線維の周縁部に存在する単核細胞である。損傷に応答して、始原細胞は、***し、既存の線維と融合する。これに対し、筋芽細胞は、植込み時に、筋線維と直接融合し、in vivoにおける増殖能は最小限である。したがって、筋芽細胞が、反復的な損傷後における治癒の一助となりえないのに対し、Pax7+始原細胞は、リザーバーとして機能し、患者の生涯にわたり、筋肉を治癒させる一助となりうる。
このような方法の別の例は、in vivoベースの療法である。この方法では、本明細書で記載される材料および方法を使用して、患者における細胞の染色体DNAを矯正する。
in vivoにおける遺伝子治療の利点は、治療剤の作製および投与の容易さである。同じ治療的カクテルが、DMD患者集団のサブセット(n>1)に到達する潜在的可能性を有しうる。これに対し、提起される、ex vivoにおける細胞療法は、各患者(n=1)のために、カスタムメイドの治療剤を開発することを要求する。ex vivoにおける細胞療法の開発には時間が要求されるが、ある特定の進行DMD患者にはその時間はないことがある。
本明細書ではまた、ゲノム編集により、ヒト細胞内のジストロフィン遺伝子を編集するための細胞方法も提示される。例えば、細胞を、患者または動物から単離する。次いで、本明細書で記載される材料および方法を使用して、細胞の染色体DNAを矯正する。
コーディングおよびスプライシング配列内の突然変異に加えて、いくつかの種類のゲノム標的部位が存在しうる。
転写および翻訳の調節には、細胞内のタンパク質またはヌクレオチドと相互作用する、いくつかの異なるクラスの部位が関与する。転写因子または他のタンパク質のDNA結合性部位は、部位の役割について研究するのに突然変異または欠失のためにターゲティングされうることが多いが、それらはまた、遺伝子発現を変化させるのにターゲティングすることもできる。部位は、非相同末端結合(NHEJ)または相同性により導かれる修復(HDR)による直接的ゲノム編集を介して付加されうる。ゲノムシークエンシング、RNA発現、および転写因子の結合についてのゲノムワイドの研究の使用の増大は、部位が、どのようにして、発生的または一時的な遺伝子調節をもたらすのかを同定する能力を増大させている。これらの制御系は直接的なものでありうるか、または複数のエンハンサーに由来する活性の統合を要求しうる広範な協同的調節を伴いうる。転写因子は、6〜12bp長の縮重DNA配列に結合することが典型的である。個々の部位によりもたらされる低レベルの特異性は、結合および機能的な結果に、複雑な相互作用および規則が関与することを示唆する。縮重性が小さな結合性部位は、調節のより簡便手段をもたらしうる。ゲノム内で類似する配列が少なく、オフ標的切断の潜在的可能性が小さい、より長い配列を指定するように、人工転写因子をデザインすることができる。遺伝子の調節または発現の変化を可能とするように、これらの種類の結合性部位のうちのいずれかを、突然変異させるか、欠失させるか、または創出することさえできる(Canver, M.C.ら、Nature(2015年))。
これらの特色を有する、遺伝子調節的領域の別のクラスは、マイクロRNA(miRNA)結合性部位である。miRNAとは、転写後遺伝子調節において鍵となる役割を果たすノンコーディングRNAである。miRNAは、全ての哺乳動物タンパク質コード遺伝子のうちの30%の発現を調節しうる。さらなる低分子非コードRNAを加えた、二本鎖RNAによる、特異的かつ強力な遺伝子サイレンシング(RNAi)が発見された(Canver, M.C.ら、Nature(2015年))。遺伝子サイレンシングに重要な非コードRNAの最大のクラスは、miRNAである。哺乳動物では、miRNAはまず、個別の転写単位、タンパク質イントロンの一部、または他の転写物でありうる、長いRNA転写物として転写される。長い転写物は、pri−miRNA(primary miRNA)と呼ばれ、塩基対合の不完全なヘアピン構造を含む。これらのpri−miRNAは、Droshaを伴う、核内のタンパク質複合体である、Microprocesssorにより、1または複数の短いpre−miRNA(precursor miRNA)へと切断されうる。
pre−miRNAは、移出される、2ヌクレオチドの3’突出を伴う約70ヌクレオチドの長さの短いステムループであり、19〜25ヌクレオチドの成熟miRNA:miRNA*二重鎖になる。塩基対合安定性の小さなmiRNA鎖(ガイド鎖)は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)へとロードされうる。パッセンジャーガイド鎖(*でマークされる)は、機能的でありうるが、通例分解される。成熟miRNAは、RISCを、標的mRNA内の部分的に相補的な配列モチーフであって、3’非翻訳領域(UTR)内に主に見出される相補的配列モチーフへとテザリングし、転写後遺伝子サイレンシングを誘導する(Bartel, D.P.、Cell、136巻、215〜233頁(2009年);Saj, A.およびLai, E.C.、Curr Opin Genet Dev、21巻、504〜510頁(2011年))。
miRNAは、発生、分化、細胞周期、および増殖の制御、ならびに哺乳動物および他の多細胞の生物の事実上全ての生物学的経路において重要でありうる。miRNAはまた、細胞周期の制御、アポトーシス、および幹細胞分化、造血、低酸素状態、筋発生、神経発生、インスリン分泌、コレステロール代謝、老化、ウイルスの複製、および免疫応答にも関与しうる。
単一のmiRNAが、数百の異なるmRNA転写物をターゲティングしうる一方で、個々の転写物は、多くの異なるmiRNAによりターゲティングされうる。最新版のmiRBase(v.21)では、28645を超えるマイクロRNAが、注釈されている。一部のmiRNAは、複数のローカスによりコードされる場合があり、それらの一部は、タンデムに共転写されたクラスターから発現しうる。特色は、複数の経路およびフィードバック制御を伴う、複雑な調節ネットワークを可能とする。miRNAは、これらのフィードバックおよび調節回路の不可欠な部分である可能性があり、タンパク質の産生を限界内に保つことにより、遺伝子発現を調節する一助となりうる(Herranz, H.およびCohen, S.M.、Gene Dev、24巻、1339〜1344頁(2010年);Posadas, D.M.およびCarthew, R.W.、Curr Opin Genet Dev、27巻、1〜6頁(2014年))。
miRNAはまた、異常なmiRNA発現と関連する多数のヒト疾患においても重要でありうる。この関連は、miRNA調節経路の重要性を裏書きする。最近のmiRNA欠失研究は、miRNAを、免疫応答の調節と連関させている(Stern-Ginossar, N.ら、Science、317巻、376〜381頁(2007年))。
miRNAはまた、がんとも強力な連関を有し、異なる種類のがんにおいて役割を果たしうる。miRNAは、いくつかの腫瘍において、下方調節されることが見出されている。miRNAは、細胞周期の制御およびDNAの損傷への応答など、鍵となるがん関連経路の調節において重要な場合があり、したがって、診断において使用することができ、臨床においてターゲティングすることができる。マイクロRNAは、全てのマイクロRNAを枯渇させる実験が、腫瘍血管新生を抑制するように、血管新生の平衡を精密に調節しうる(Chen, S.ら、Genes Dev、28巻、1054〜1067頁(2014年))。
タンパク質コーディング遺伝子について示されている通り、miRNA遺伝子はまた、がんと共に生じる後成的(epigenetic)変化下にも置かれうる。多くのmiRNAローカスは、DNAのメチル化によるそれらの調節の機会を増大させるCpGアイランドと関連しうる(Weber, B.、Stresemann, C.、Brueckner, B.、およびLyko, F.、Cell Cycle、6巻、1001〜1005頁(2007年))。研究の大半は、クロマチンリモデリング薬による処理を使用して、miRNAの後成的サイレンシングを明らかにしている。
RNAサイレンシングにおけるそれらの役割に加えて、miRNAはまた、翻訳も活性化させうる(Posadas, D.M.およびCarthew, R.W.、Curr Opin Genet Dev、27巻、1〜6頁(2014年))。これらの部位のノックアウトが、標的遺伝子の発現の低下をもたらしうるのに対し、これらの部位の導入は、発現を増大させうる。
個々のmiRNAは、結合特異性に重要でありうる、シード配列(2〜8塩基のマイクロRNA)を突然変異させることにより、最も効果的にノックアウトすることができる。この領域内の切断、続いてNHEJによる誤修復は、標的部位への結合を遮断することにより、miRNAの機能を効果的に消失させうる。miRNAはまた、回文配列に隣接する特殊なループ領域の特異的ターゲティングによっても阻害しうるであろう。触媒的に不活性なCas9はまた、shRNAの発現を阻害するのにのにも使用することができる(Zhao, Y.ら、Sci Rep、4巻、3943頁(2014年))。miRNAのターゲティングに加えて、結合部位もまた、ターゲティングされ、突然変異させて、miRNAによるサイレンシングを防止することができる。
ヒト細胞
本明細書で記載および例示される通りに、DMDを改善するために、遺伝子編集のための主要な標的は、ヒト細胞である。例えば、ex vivo方法では、ヒト細胞は、記載される技法を使用して改変された後に、Pax7+筋始原細胞をもたらしうる体細胞でありうる。例えば、in vivo方法では、ヒト細胞は、筋細胞または筋前駆細胞でありうる。
それを必要とする患者に由来し、したがって、既に患者と完全にマッチしている自家細胞内で遺伝子編集を実施することにより、患者へと安全に再導入することが可能であり、患者の疾患と関連する、1または複数の臨床状態の改善において有効でありうる細胞集団を効果的にもたらす細胞を作出することが可能である。
始原細胞(本明細書ではまた、幹細胞とも称する)は、増殖およびより多くの始原細胞をもたらすことのいずれもが可能であり、分化細胞または分化可能な娘細胞をもたらしうる、多数の母細胞を発生させる能力を有する。娘細胞自体が、増殖し、その後、1または複数の成熟細胞型へと分化する一方で、また、親の発生的潜在能を伴う1または複数の細胞も保持する後代をもたらすように、誘導することができる。次いで、「幹細胞」という用語は、特定の状況下では、より特化したまたは分化した表現型へと分化する能力または潜在的能力を伴い、ある特定の状況下では、実質的に分化せずに、増殖する能力を保持する細胞を指す。一態様では、始原細胞または幹細胞という用語は、それらの子孫細胞(後代)が分化により、例えば、胚細胞および組織の、進行する多様化においてそうであるように、完全に個別の性格を獲得することにより、しばしば、異なる方向に特化する汎用母細胞を指す。細胞の分化とは、典型的に、多くの細胞***を介して生じる、複雑な過程である。分化細胞は、複能性細胞に由来することが可能であり、複能性細胞はそれ自体、複能性細胞に由来するなどである。これらの複能性細胞の各々は、幹細胞であると考えられるが、各々がもたらしうる細胞型の範囲は、大幅に変動しうる。一部の分化細胞もまた、発生的潜在能が大きな細胞をもたらす能力を有する。このような能力は、天然の場合もあり、多様な因子による処理時に、人工的に誘導される場合もある。多くの生物学的事例では、幹細胞はまた、1つを超える別個の細胞型の後代をもたらしうるため、「複能性」でもありうるが、これは、「幹細胞性」であるために必要ではない。
自己再生は、幹細胞の別の重要な側面でありうる。理論的に、自己再生は、2つの主要な機構のうちのいずれかにより生じうる。幹細胞は、一方の娘細胞が、幹細胞状態を保持し、他方の娘細胞が、何らかの別個の他の特異的機能および表現型を発現して、非対称的に***する場合がある。代替的に、集団内の幹細胞の一部が、2つの幹細胞へと、対称的に***することが可能であり、これにより、全体としての集団内に一部の幹細胞を維持するのに対し、集団内の他の細胞は、分化した後代だけをもたらす。一般に、「始原細胞」は、より始原性である(すなわち、発生経路または進行に沿って、完全な分化細胞より早期の段階にある)、細胞の表現型を有する。始原細胞はまた、顕著な、または極めて高度な、増殖潜在能も有する。始原細胞は、細胞が発生および分化する、発生の経路および環境に応じて、複数の別個の分化細胞型をもたらす場合もあり、単一の分化細胞型をもたらす場合もある。
細胞の個体発生の文脈では、「分化した」または「〜を分化させること」という形容詞は、相対的な用語である。「分化細胞」とは、比較する細胞より、発生経路をさらに下に進んだ細胞である。したがって、幹細胞は、分化系統限定前駆細胞(筋細胞の始原細胞など)へと分化することが可能であり、これは、経路をさらに下った、他の種類の前駆細胞(筋細胞の前駆細胞など)へと分化することが可能であり、次いで、筋細胞など、最終段階の分化細胞へと分化し、ある特定の組織型において、特徴的な役割を果たし、さらに増殖する能力を保持する場合もあり、保持しない場合もある。
誘導多能性幹細胞
一部の例では、本明細書で記載される、遺伝子操作されたヒト細胞は、誘導多能性幹細胞(iPSC)でありうる。iPSCを使用する利点は、細胞を、始原細胞が投与される同じ対象から導出しうることである。すなわち、体細胞は、対象から得、誘導多能性幹細胞へと再プログラム化し、次いで、対象へと投与するように、始原細胞へと再分化させることができる(例えば、自家細胞)。始原細胞は、自家供給源から本質的に導出されるため、別の対象または対象群に由来する細胞の使用と比較して、生着拒絶またはアレルギー応答の危険性を低減することができる。加えて、iPSCの使用は、胚供給源から得られた細胞に対する必要も無化する。したがって、一態様では、開示される方法で使用される幹細胞は、胚性幹細胞ではない。
分化は、生理学的文脈では、一般に、不可逆的であるが、体細胞を、iPSCへと再プログラム化するためのいくつかの方法が最近開発されている。当業者には、例示的な方法が公知であり、本明細書の下記で略述する。
「〜を再プログラム化すること」という用語は、分化細胞(例えば、体細胞)の分化状態を変更するまたは逆行させ工程を指す。言い換えると、再プログラム化することとは、細胞の分化を、より未分化なまたはより始原的な細胞型へと戻すように駆動する工程を指す。多くの初代細胞を培養することは、完全な分化特徴の、何らかの喪失をもたらしうることに留意されたい。したがって、分化細胞という用語に含まれるこのような細胞を単に培養するだけで、これらの細胞が、非分化細胞(例えば、未分化細胞)または多能性細胞となるわけではない。分化細胞から多能性への移行は、培養物中で分化的性格の部分的な喪失をもたらす刺激を越えた、再プログラム化刺激を要求する。再プログラム化細胞はまた、培養物中では一般に、回数の限定された***能だけを有する初代親細胞と比べて、増殖可能性の喪失を伴わない、拡大継代能の特徴も有する。
再プログラム化されるべき細胞は、再プログラム化する前に、部分分化している場合もあり、最終分化している場合もある。再プログラム化は、分化細胞(例えば、体細胞)の分化状態の、多能性状態または複能性状態への完全な逆行を包含する。再プログラム化は、分化細胞(例えば、体細胞)の分化状態の、未分化細胞(例えば、胚様細胞)への完全なまたは部分的な逆行を包含しうる。再プログラム化は、細胞による特定の遺伝子であって、その発現が、再プログラム化にさらに寄与する遺伝子の発現をもたらしうる。本明細書で記載されるある特定の例では、分化細胞(例えば、体細胞)の再プログラム化は、分化細胞に、未分化状態を取らせうる(例えば、分化細胞を、未分化細胞としうる)。結果として得られる細胞を、「再プログラム化細胞」または「誘導多能性幹細胞(iPSCまたはiPS細胞)」と称する。
再プログラム化は、細胞の分化の間に生じる遺伝パターンであって、核酸修飾(例えば、メチル化)、クロマチン凝縮、後成的変化、ゲノムインプリンティングなどの遺伝性パターンの少なくとも一部の変更、例えば、逆行を伴いうる。再プログラム化は、既に多能性である細胞の、既存の未分化状態を単に維持すること、または既に複能性細胞(例えば、筋原性幹細胞)である細胞の、既存の完全未満の分化状態を維持することとは別個である。再プログラム化はまた、既に多能性または複能性である細胞の自己再生または増殖の促進とも別個であるが、一部の例では、本明細書で記載される組成物および方法はまた、このような目的でも有用でありうる。
当技術分野では、体細胞から多能性幹細胞を作出するのに使用しうる多くの方法が公知である。体細胞を、多能性表現型へと再プログラム化する、任意のこのような方法が、本明細書で記載される方法における使用に適切であろう。
転写因子の規定された組合せを使用して、多能性細胞を作出するための再プログラム化法については記載されている。Oct4、Sox2、Klf4、およびc−Mycの直接的な形質導入により、マウス体細胞を、発生の潜在能を拡大した、ES細胞様細胞へと転換することができる(例えば、TakahashiおよびYamanaka、Cell、126巻(4号):663〜76頁(2006年)を参照されたい)。iPSCは、多能性関連の転写回路およびエピジェネティックランドスケープの大半を修復するので、ES細胞に似ている。加えて、マウスiPSCは、多能性についての全ての標準的アッセイ:具体的には、in vitroにおける、三胚葉の細胞型への分化、奇形腫の形成、キメラへの寄与、生殖細胞系列伝達[例えば、MaheraliおよびHochedlinger、Cell Stem Cell、3巻(6号):595〜605頁(2008年)を参照されたい]、および四倍体補完法を満たす。
ヒトiPSCは、同様の形質導入法を使用して得ることができ、転写因子のトリオである、OCT4、SOX2、およびNANOGは、多能性を統御する転写因子のコアセットとして確立されている(例えば、BudniatzkyおよびGepstein、Stem Cell Transl Med.、3巻(4号):448〜57頁(2014年);Barrettら、Stem Cell Trans Med、3巻:1〜6頁、sctm.2014−0121(2014年);Focosiら、Blood Cancer Journal、4巻:e211頁(2014年);ならびにこれらにおいて引用されている参考文献を参照されたい)。iPSCの作製は、従来通りにウイルスベクターを使用して、幹細胞関連遺伝子をコードする核酸配列を、成体の体細胞へと導入することにより達成することができる。
iPSCは、最終分化した体細胞から作出または導出しうるほか、成体幹細胞または体細胞性幹細胞から作出または導出することもできる。すなわち、非多能性始原細胞を、再プログラム化することにより、多能性または複能性とすることができる。このような場合、最終分化細胞を再プログラム化するのに要求されるほど多くの再プログラム化因子を含むことが必要ではない場合がある。さらに、再プログラム化は、再プログラム化因子の非ウイルス的導入により誘導することができ、例えば、タンパク質自体を導入することにより、または再プログラム化因子をコードする核酸を導入することにより、または翻訳時に再プログラム化因子をもたらすメッセンジャーRNAを導入することにより誘導することができる(例えば、Warrenら、Cell Stem Cell、7巻(5号):618〜30頁(2010年)を参照されたい)。再プログラム化は、例えば、Oct−4(Oct−3/4またはPouf51としてもまた公知)、Sox1、Sox2、Sox3、Sox15、Sox18、NANOG、Klf1、Klf2、Klf4、Klf5、NR5A2、c−Myc、1−Myc、n−Myc、Rem2、Tert、およびLIN28を含む幹細胞関連遺伝子をコードする核酸の組合せを導入することにより達成することができる。本明細書で記載される方法および組成物を使用する再プログラム化は、Oct−3/4、Soxファミリーのメンバー、Klfファミリーのメンバー、およびMycファミリーのメンバーのうちの1または複数を、体細胞へと導入することをさらに含みうる。本明細書で記載される方法および組成物は、Oct−4、Sox2、Nanog、c−MYC、およびKlf4のそれぞれのうちの1もしくは複数を、再プログラム化のために導入することをさらに含みうる。上記で言及した通り、再プログラム化のために使用される正確な方法は、本明細書で記載される方法および組成物にとって、必ずしも不可欠なわけではない。しかし、再プログラム化細胞から分化させた細胞を、例えば、ヒト治療において使用するべき場合、一態様では、再プログラム化は、ゲノムを変更する方法により行うわけではない。したがって、このような例では、再プログラム化は、例えば、ウイルスまたはプラスミドベクターを使用せずに達成することができる。
出発細胞集団から導出される再プログラム化の効率(すなわち、再プログラム化細胞の数)は、Shiら、Cell-Stem Cell、2巻:525〜528頁(2008年);Huangfuら、Nature Biotechnology、26巻(7号):795〜797頁(2008年);およびMarsonら、Cell-Stem Cell、3巻:132〜135頁(2008年)により示される通り、多様な薬剤、例えば、低分子の添加により増強することができる。したがって、誘導多能性幹細胞作製の効率または速度を増強する薬剤または薬剤の組合せを、患者特異的または疾患特異的iPSCの作製において使用することができる。再プログラム化効率を増強する薬剤の一部の非限定的な例は、とりわけ、可溶性Wnt、Wnt馴化培地、BIX−01294(G9aヒストンメチルトランスフェラーゼ)、PD0325901(MEK阻害剤)、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、バルプロ酸、5’−アザシチジン、デキサメタゾン、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、ビタミンC、およびトリコスタチン(TSA)を含む。
再プログラム化増強剤の他の非限定的な例は、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA(例えば、MK0683、ボリノスタット)および他のヒドロキサム酸)、BML−210、Depudecin(例えば、(−)−Depudecin)、HCトキシン、Nullscript(4−(1,3−ジオキソ−1H,3H−ベンゾ[デ]イソキノリン−2−イル)−N−ヒドロキシブタンアミド)、フェニルブチレート(例えば、フェニル酪酸ナトリウムおよびバルプロ酸(VPA)および他の短鎖脂肪酸)、Scriptaid、スラミンナトリウム、トリコスタチンA(TSA)、APHA化合物8、Apicidin、酪酸ナトリウム、酪酸ピバロイルオキシメチル(Pivanex、AN−9)、Trapoxin B、クラミドシン、デプシペプチド(FR901228またはFK228としてもまた公知である)、ベンズアミド(例えば、CI−994(例えば、N−アセチルジナリン)およびMS−27−275)、MGCD0103、NVP−LAQ−824、CBHA(m−カルボキシ桂皮酸ビスヒドロキサム酸)、JNJ16241199、Tubacin、A−161906、プロキサミド、オキサムフラチン、3−Cl−UCHA(例えば、6−(3−クロロフェニルウレイド)カプロンヒドロキサム酸)、AOE(2−アミノ−8−オキソ−9,10−エポキシデカン酸)、CHAP31、およびCHAP50を含む。他の再プログラム化増強剤は、例えば、HDACのドミナントネガティブ形態(例えば、触媒不活性形態)、siRNAによるHDAC阻害剤、およびHDACに特異的に結合する抗体を含む。このような阻害剤は、例えば、BIOMOL International、Fukasawa、Merck Biosciences、Novartis、Gloucester Pharmaceuticals、Titan Pharmaceuticals、MethylGene、およびSigma Aldrichから入手可能である。
本明細書で記載される方法による使用のための多能性幹細胞の誘導を確認するために、単離されたクローンを、幹細胞マーカーの発現について調べることができる。体細胞から導出された細胞内のこのような発現により、細胞を、誘導多能性幹細胞として同定する。幹細胞マーカーは、SSEA3、SSEA4、CD9、Nanog、Fbxl5、Ecatl、Esgl、Eras、Gdf3、Fgf4、Cripto、Daxl、Zpf296、Slc2a3、Rexl、Utfl、およびNatlを含む非限定的な群から選択することができる。1つの場合には、例えば、Oct4またはNanogを発現しる細胞は、多能性であると同定される。このようなマーカーの発現を検出するための方法は、例えば、RT−PCR、およびウェスタンブロットまたはフローサイトメトリー解析など、コードされたポリペプチドの存在を検出する免疫学的方法を含みうる。検出は、RT−PCRを伴いうるだけでなく、タンパク質マーカーの検出も含みうる。細胞内マーカーは、RT−PCR、または免疫細胞化学などのタンパク質検出法を介して、最もよく同定しうるが、細胞表面マーカーは、例えば、免疫細胞化学によりたやすく同定される。
単離された細胞の多能性幹細胞性は、iPSCが、三胚葉の各々の細胞へと分化する能力について査定する試験により確認することができる。一例として述べると、ヌードマウスにおける奇形腫形成を使用して、単離されたクローンの多能性について査定することができる。細胞を、ヌードマウスへと導入し、細胞から生じる腫瘍に対して、組織学および/または免疫組織化学を実施することができる。三胚葉全てに由来する細胞を含む腫瘍の増殖は、例えば、細胞が多能性幹細胞であることをさらに指し示す。
DMD患者特異的なiPSCの創出
本開示のex vivo方法の1つのステップは、DMD患者特異的な1つのiPS細胞、DMD患者特異的な複数のiPS細胞、またはDMD患者特異的なiPS細胞株を創出することを伴いうる。TakahashiおよびYamanaka、2006年;Takahashi、Tanabeら、2007年において記載されている通り、当技術分野では、患者特異的iPS細胞を創出するための、多くの方法が確立されている。加えて、多能性細胞の、筋系統への分化は、国際特許出願公開第WO2013/030243号および同第WO2012/101114号において記載されている通り、Anagenesis Biotechnologiesにより開発された技術により達することができる。例えば、創出するステップは、a)皮膚細胞または線維芽細胞などの体細胞を、患者から単離することと;b)細胞を、多能性幹細胞となるように誘導するために、多能性関連遺伝子のセットを、体細胞へと導入することとを含みうる。多能性関連遺伝子のセットは、OCT4、SOX2、KLF4、Lin28、NANOG、およびcMYCからなる群から選択される遺伝子のうちの1または複数でありうる。
ゲノム編集
ゲノム編集とは一般に、ゲノムのヌクレオチド配列を、好ましくは、精密なまたは所定の方式で修飾する工程を指す。本明細書で記載されるゲノム編集法の例は、部位特異的ヌクレアーゼを使用して、デオキシリボ核酸(DNA)を、ゲノム内の正確な標的位置で切断し、これにより、一本鎖または二本鎖DNA切断を、ゲノム内の特定の位置において創出する方法を含む。このような切断は、最近、Coxら、Nature Medicine、21巻(2号)、121〜31頁(2015年)において総説された通り、相同性により導かれる修復(HDR)および非相同末端結合(NHEJ)など、天然の内因性細胞過程により修復することが可能であり、規則的に修復されている。NHEJは、二本鎖切断から生じるDNA末端を直接接合させるが、場合によって、ヌクレオチド配列の喪失または付加であって、遺伝子発現を破壊する場合もあり、増強する場合もある、喪失または付加を伴う。HDRは、相同配列またはドナー配列を、規定されたDNA配列を切断点に挿入するための鋳型として利用する。相同配列は、姉妹染色分体など、内因性ゲノム内に存在しうる。代替的に、ドナーは、ヌクレアーゼにより切断されるローカスとの相同性が大きな領域を有するが、切断された標的ローカスへと組み込まれうる欠失を含む、さらなる配列または配列変化も含有しうる、プラスミド、一本鎖オリゴヌクレオチド、二本鎖オリゴヌクレオチド、二重鎖オリゴヌクレオチド、またはウイルスなどの外因性核酸でありうる。第3の修復機構は、「代替的NHEJ」ともまた称する、マイクロ相同性媒介型末端結合(MMEJ)であって、切断部位において、小規模の欠失および挿入が生じうるという点で、遺伝子結果がNHEJと同様である、MMEJでありうる。MMEJは、より好適な、DNA末端の接合による修復結果を駆動するように、DNA切断部位を挟む、少数の塩基対による相同配列を使用することができ、最近の報告は、この工程の分子機構についてさらに解明している(例えば、ChoおよびGreenberg、Nature、518巻、174〜76頁(2015年);Kentら、Nature Structural and Molecular Biology、Adv.Online doi:10.1038/nsmb.2961(2015年);Mateos-Gomezら、Nature、518巻、254〜57頁(2015年);Ceccaldiら、Nature、528巻、258〜62頁(2015年)を参照されたい)。一部の場合には、DNA切断部位における潜在的なマイクロ相同性についての解析に基づき、可能性が高い修復結果を予測することが可能でありうる。
これらのゲノム編集機構の各々を使用して、所望のゲノムの変更を創出することができる。ゲノム編集工程内のステップは、意図される突然変異部位の近傍にまで近接した、標的ローカス内で、1つのDNA切断、または2つのDNA切断であって、二本鎖切断または2つの一本鎖切断としての2つのDNA切断を創出することでありうる。これは、本明細書で記載および例示される通り、部位特異的ポリペプチドの使用を介して達成することができる。
DNAエンドヌクレアーゼなどの部位特異的ポリペプチドは、二本鎖切断または一本鎖切断を、核酸内、例えば、ゲノムDNA内に導入しうる。二本鎖切断は、細胞の内因性DNA修復経路(例えば、相同性依存型修復あるいは非相同末端結合または代替的非相同末端結合(A−NHEJ)もしくはマイクロ相同性媒介型末端結合)を刺激しうる。NHEJは、相同鋳型を必要とせずに、切断された標的核酸を修復しうる。これは、場合によって、標的核酸内の切断部位において、小規模の欠失または挿入(インデル)をもたらす可能性があり、遺伝子発現の破壊または変更をもたらしうる。HDRは、相同な修復鋳型またはドナーが利用可能である場合に生じうる。相同なドナー鋳型は、標的核酸切断部位を挟む配列と相同でありうる配列を含みうる。姉妹染色分体は、細胞により、修復鋳型として使用されうる。しかし、ゲノム編集の目的では、修復鋳型は、プラスミド、二重鎖オリゴヌクレオチド、一本鎖オリゴヌクレオチド、二本鎖オリゴヌクレオチド、またはウイルス核酸などの外因性核酸として供給することができる。さらなるまたは変更された核酸配列もまた、標的ローカスへと組み込まれるように、外因性ドナー鋳型と共に、さらなる核酸配列(トランス遺伝子など)または修飾(単一または複数の塩基変化または欠失など)を、相同性のフランキング領域の間に導入することができる。MMEJは、切断部位において、小規模の欠失および挿入が生じうるという点で、NHEJと同様な遺伝子結果をもたらしうる。MMEJは、好適な、末端接合によるDNA修復結果を駆動するように、切断部位を挟む、少数の塩基対の相同配列を使用しうる。一部の場合には、ヌクレアーゼ標的領域内の潜在的なマイクロ相同性についての解析に基づき、可能性が高い修復結果を予測することが可能でありうる。
したがって、場合によって、相同組換えを使用して、外因性ポリヌクレオチド配列を、標的核酸切断部位へと挿入することができる。本明細書では、外因性ポリヌクレオチド配列を、ドナーポリヌクレオチド(またはドナーもしくはドナー配列もしくはポリヌクレオチドドナー鋳型)と称する。ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部、ドナーポリヌクレオチドのコピー、またはドナーポリヌクレオチドのコピーの一部を、標的核酸切断部位へと挿入することができる。ドナーポリヌクレオチドは、外因性ポリヌクレオチド配列、すなわち、標的核酸切断部位において、天然には存在しない配列でありうる。
NHEJおよび/またはHDRによる標的DNAの修飾は、例えば、突然変異、欠失、変更、組込み、遺伝子の矯正、遺伝子の置きかえ、遺伝子のタグ付け、トランス遺伝子の挿入、ヌクレオチドの欠失、遺伝子の破壊、転座、および/または遺伝子の突然変異をもたらしうる。ゲノムDNAを欠失させ、非天然核酸を、ゲノムDNAへと組み込む工程は、ゲノム編集の例である。
CRISPRエンドヌクレアーゼ系
CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)ゲノムローカスは、多くの原核生物(例えば、細菌および古細菌)のゲノム内で見出すことができる。原核生物では、CRISPRローカスは、原核生物を、ウイルスおよびファージなど、外来の侵入者に対して防御する一助となる、ある種の免疫系として機能する産物をコードする。CRISPRローカスの機能の3つの段階:新たな配列の、CRISPRローカスへの組込み、CRISPR RNA(crRNA)の発現、および外来の侵入者核酸のサイレンシングが存在する。5種類のCRISPR系(例えば、I型、II型、III型、U型、およびV型)が同定されている。
CRISPRローカスは、「リピート」と称する、いくつかの短い反復配列を含む。発現すると、リピートは、二次構造(例えば、ヘアピン)を形成する場合もあり、かつ/または非構造化一本鎖配列を構成する場合もある。リピートは通例、クラスターで生じ、種間で顕著に異なることが多い。リピートは、「スペーサー」と称する固有の介在配列で規則的に隔てられる結果として、リピート−スペーサー−リピートローカスアーキテクチャーをもたらす。スペーサーは、既知の外来インベーダー配列と同一であるか、またはこれと高度な相同性を有する。スペーサー−リピート単位は、スペーサー−リピート単位の成熟形態へとプロセシングされる、crisprRNA(crRNA)をコードする。crRNAは、標的核酸のターゲティングに関与する、「シード」またはスペーサー配列(原核生物における天然に存在する形態では、スペーサー配列は、外来のインベーダー核酸をターゲティングする)を含む。スペーサー配列は、crRNAの5’または3’末端に位置する。
CRISPRローカスはまた、CRISPR関連(Cas)遺伝子をコードするポリヌクレオチド配列も含む。Cas遺伝子は、原核生物におけるcrRNA機能の生合成および干渉段階に関与するエンドヌクレアーゼをコードする。一部のCas遺伝子は、相同な二次および/または三次構造を含む。
II型CRISPR系
天然のII型CRISPR系におけるcrRNAの生合成は、tracrRNA(trans−activating CRISPR RNA)を要求する。tracrRNAは、内因性RNアーゼIIIにより修飾され、次いで、pre−crRNAアレイ内のcrRNAリピートとハイブリダイズすることができる。内因性RNアーゼIIIを動員して、pre−crRNAを切断することができる。切断されたcrRNAを、エクソリボヌクレアーゼによるトリミング(例えば、5’トリミング)にかけて、成熟crRNA形態をもたらすことができる。tracrRNAを、さらに、crRNAとハイブリダイズさせたままにすることができ、tracrRNAおよびcrRNAは、部位特異的ポリペプチド(例えば、Cas9)と会合する。crRNA−tracrRNA−Cas9複合体のcrRNAは、複合体を、crRNAがハイブリダイズしうる標的核酸へとガイドしうる。crRNAの、標的核酸とのハイブリダイゼーションは、Cas9を、ターゲティングされた核酸切断のために活性化させうる。II型CRISPR系内の標的核酸を、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と称する。天然では、PAMは、部位特異的ポリペプチド(例えば、Cas9)の、標的核酸への結合を容易とするのに不可欠である。II型系(また、NmeniまたはCASS4とも称する)は、II−A型(CASS4)およびII−B(CASS4a)へとさらに細分することができる。Jinekら、Science、337巻(6096号):816〜821頁(2012年)は、CRISPR/Cas9系が、RNAによりプログラム可能なゲノム編集に有用であることを示し、国際特許出願公開第WO2013/176772号は、部位特異的遺伝子編集のための、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ系の多数の例および適用を提示する。
V型CRISPR系
V型CRISPR系は、II型系との、いくつかの重要な差違を有する。例えば、Cpf1は、II型系とは対照的に、tracrRNAを欠く、単一のRNAによりガイドされるエンドヌクレアーゼである。実際、Cpf1関連CRISPRアレイは、tracrRNAをさらにトランス活性化させる要件なしに、成熟crRNAへとプロセシングされうる。V型CRISPRアレイは、各成熟crRNAが、19ヌクレオチドのダイレクトリピートで始まり、23〜25ヌクレオチドのスペーサー配列を後続させる、42〜44ヌクレオチドの長さの短い成熟crRNAへとプロセシングされうる。これに対し、II型系における成熟crRNAは、20〜24ヌクレオチドのスペーサー配列で始まり、約22ヌクレオチドのダイレクトリピートを後続させうる。また、Cpf1は、Cpf1−crRNA複合体が、短いTリッチPAMを先行させる標的DNAを効率的に切断するように、Tリッチプロトスペーサー隣接モチーフを利用するが、これは、II型系についての標的DNAが、GリッチPAMを後続させるのと対照的である。したがって、V型系が、PAMから遠い点で切断するのに対し、II型系は、PAMと隣接する点で切断する。加えて、II型系とは対照的に、Cpf1は、4または5ヌクレオチドの5’突出を伴う、ずれた位置でのDNAの二本鎖切断を介してDNAを切断する。II型系は、平滑末端型二本鎖切断を介して切断する。II型系と同様に、Cpf1は、予測されるRuvC様エンドヌクレアーゼドメインを含有するが、第2のHNHエンドヌクレアーゼドメインを欠き、これは、II型系と対照的である。
Cas遺伝子/ポリペプチドおよびプロトスペーサー隣接モチーフ
例示的なCRISPR/Casポリペプチドは、Fonfaraら、Nucleic Acids Research、42巻:2577〜2590頁(2014年)の図1におけるCas9ポリペプチドを含む。CRISPR/Cas遺伝子を名乗る系は、Cas遺伝子が発見されて以来、広範にわたり書き換えられている。Fonfara、前出の図5は、多様な種に由来するCas9ポリペプチドのPAM配列を提示する。
部位特異的ポリペプチド
部位特異的ポリペプチドは、DNAを切断するためにゲノム編集において使用されるヌクレアーゼである。部位特異的ポリペプチドは、細胞または患者へと、1または複数のポリペプチドとして投与することもでき、ポリペプチドをコードする1または複数のmRNAとして投与することもできる。
CRISPR/Cas系またはCRISPR/Cpf1系の文脈では、部位特異的ポリペプチドは、ガイドRNAに結合することが可能であり、ガイドRNAは、ポリペプチドが導かれる標的DNA内の部位を指定する。本明細書で開示されるCRISPR/CasまたはCRISPR/Cpf1系では、部位特異的ポリペプチドは、DNAエンドヌクレアーゼなどのエンドヌクレアーゼでありうる。
部位特異的ポリペプチドは、複数の核酸切断(すなわち、ヌクレアーゼ)ドメインを含みうる。2つまたはこれを超える核酸切断ドメインは、リンカーを介して、併せて連結することができる。例えば、リンカーは、可撓性リンカーを含みうる。リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、またはこれを超えるアミノ酸の長さを含みうる。
天然に存在する野生型のCas9酵素は、2つのヌクレアーゼドメインである、HNHヌクレアーゼドメインおよびRuvCドメインを含む。本明細書において、「Cas9」とは、天然に存在するCas9および組換えCas9の両方を指す。本明細書で想定されるCas9酵素は、HNHもしくはHNH様ヌクレアーゼドメイン、および/またはRuvCもしくはRuvC様ヌクレアーゼドメインを含みうる。
HNHまたはHNH様ドメインは、McrA様フォールドを含む。HNHまたはHNH様ドメインは、2つのアンチパラレルのβ鎖およびα螺旋を含む。HNHまたはHNH様ドメインは、金属結合性部位(例えば、二価カチオン結合性部位)を含む。HNHまたはHNH様ドメインは、標的核酸(例えば、crRNAによりターゲティングされる鎖の相補鎖)の1つの鎖を切断しうる。
RuvCまたはRuvC様ドメインは、RNアーゼHまたはRNアーゼH様フォールドを含む。RuvC/RNアーゼHドメインは、RNAおよびDNAの両方に対する作用を含む核酸ベースの機能の多様なセットに関与する。RNアーゼHドメインは、複数のα螺旋により取り囲まれた、5つのβ鎖を含む。RuvC/RNアーゼHまたはRuvC/RNアーゼH様ドメインは、金属結合性部位(例えば、二価カチオン結合性部位)を含む。RuvC/RNアーゼHまたはRuvC/RNアーゼH様ドメインは、標的核酸(例えば、二本鎖標的DNAの非相補鎖)の1つの鎖を切断しうる。
部位特異的ポリペプチドは、二本鎖切断または一本鎖切断を、核酸内、例えば、ゲノムDNA内に導入しうる。二本鎖切断は、細胞の内因性DNA修復経路(例えば、相同性依存型修復(HDR)あるいは非相同末端結合(NHEJ)または代替的非相同末端結合(A−NHEJ)もしくはマイクロ相同性媒介型末端結合(MMEJ))を刺激しうる。NHEJは、相同鋳型を必要とせずに、切断された標的核酸を修復しうる。これは、場合によって、標的核酸内の切断部位において、小規模の欠失または挿入(インデル)をもたらす可能性があり、遺伝子発現の破壊または変更をもたらしうる。HDRは、相同な修復鋳型またはドナーが利用可能である場合に生じうる。相同なドナー鋳型は、標的核酸切断部位を挟む配列と相同である配列を含みうる。姉妹染色分体は、細胞により、修復鋳型として使用されうる。しかし、ゲノム編集の目的では、修復鋳型は、プラスミド、二重鎖オリゴヌクレオチド、一本鎖オリゴヌクレオチドまたはウイルス核酸などの外因性核酸として供給することができる。さらなるまたは変更された核酸配列もまた、標的ローカスへと組み込まれるように、外因性ドナー鋳型と共に、さらなる核酸配列(トランス遺伝子など)または修飾(単一または複数の塩基変化または欠失など)を、相同性のフランキング領域の間に導入することができる。MMEJは、切断部位において、小規模の欠失および挿入が生じうるという点で、NHEJと同様な遺伝子結果をもたらしうる。MMEJは、好適な、末端接合によるDNA修復結果を駆動するように、切断部位を挟む、少数の塩基対による相同配列を使用しうる。一部の場合には、ヌクレアーゼ標的領域内の潜在的なマイクロ相同性についての解析に基づき、可能性が高い修復結果を予測することが可能でありうる。
したがって、場合によって、相同組換えを使用して、外因性ポリヌクレオチド配列を、標的核酸切断部位へと挿入することができる。本明細書では、外因性ポリヌクレオチド配列を、ドナーポリヌクレオチド(またはドナーもしくはドナー配列)と称する。ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部分、ドナーポリヌクレオチドのコピー、またはドナーポリヌクレオチドのコピーの一部を、標的核酸切断部位へと挿入することができる。ドナーポリヌクレオチドは、外因性ポリヌクレオチド配列、すなわち、標的核酸切断部位において、天然には存在しない配列でありうる。
NHEJおよび/またはHDRによる標的DNAの修飾は、例えば、突然変異、欠失、変更、組込み、遺伝子の矯正、遺伝子の置きかえ、遺伝子のタグ付け、トランス遺伝子の挿入、ヌクレオチドの欠失、遺伝子の破壊、転座、および/または遺伝子の突然変異をもたらしうる。ゲノムDNAを欠失させ、非天然核酸を、ゲノムDNAへと組み込む工程は、ゲノム編集の例である。
部位特異的ポリペプチドは、例示的な、野生型の部位特異的ポリペプチド[例えば、S.pyogenesに由来するCas9;US2014/0068797における配列番号8;またはSapranauskasら、Nucleic Acids Res、39巻(21号):9275〜9282頁(2011年)]、および多様な他の部位特異的ポリペプチドに対する、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含みうる。
部位特異的ポリペプチドは、10連続アミノ酸にわたり、野生型の部位特異的ポリペプチド(例えば、S.pyogenesに由来するCas9、前出)に対する、少なくとも70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を含む。部位特異的ポリペプチドは、10連続アミノ酸にわたり、野生型の部位特異的ポリペプチド(例えば、S.pyogenesに由来するCas9、前出)に対する、最大で70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を含みうる。部位特異的ポリペプチドは、部位特異的ポリペプチドのHNHヌクレアーゼドメイン内の10連続アミノ酸にわたり、野生型の部位特異的ポリペプチド(例えば、S.pyogenesに由来するCas9、前出)に対する、少なくとも70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を含みうる。部位特異的ポリペプチドは、部位特異的ポリペプチドのHNHヌクレアーゼドメイン内の10連続アミノ酸にわたり、野生型の部位特異的ポリペプチド(例えば、S.pyogenesに由来するCas9、前出)に対する、最大で70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を含みうる。部位特異的ポリペプチドは、部位特異的ポリペプチドのRuvCヌクレアーゼドメイン内の10連続アミノ酸にわたり、野生型の部位特異的ポリペプチド(例えば、S.pyogenesに由来するCas9、前出)に対する、少なくとも70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を含みうる。部位特異的ポリペプチドは、部位特異的ポリペプチドのRuvCヌクレアーゼドメイン内の10連続アミノ酸にわたり、野生型の部位特異的ポリペプチド(例えば、S.pyogenesに由来するCas9、前出)に対する、最大で70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を含む。
部位特異的ポリペプチドは、例示的な野生型の部位特異的ポリペプチドの修飾形態を含みうる。例示的な野生型の部位特異的ポリペプチドの修飾形態は、部位特異的ポリペプチドの核酸切断活性を低減する突然変異を含みうる。例示的な野生型の部位特異的ポリペプチドの修飾形態は、例示的な野生型の部位特異的ポリペプチド(例えば、S.pyogenesに由来するCas9、前出)の核酸切断活性のうちの、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満を有しうる。部位特異的ポリペプチドの修飾形態は、実質的な核酸切断活性を有さない場合がある。部位特異的ポリペプチドが、実質的な核酸切断活性を有さない修飾形態である場合、本明細書では、「酵素的に不活性」と称する。
部位特異的ポリペプチドの修飾形態は、それが、標的核酸上の一本鎖切断(SSB)を誘導しうる(例えば、二本鎖標的核酸の糖−リン酸骨格のうちの1つだけを切断することにより)ように、突然変異を含みうる。突然変異は、野生型の部位特異的ポリペプチド(例えば、S.pyogenesに由来するCas9、前出)の複数の核酸切断ドメインのうちの1または複数における核酸切断活性のうちの、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満をもたらしうる。突然変異は、標的核酸の相補鎖を切断する能力は保持するが、標的核酸の非相補鎖を切断するその能力は低減する、複数の核酸切断ドメインのうちの1または複数をもたらしうる。突然変異は、標的核酸の非相補鎖を切断する能力は保持するが、標的核酸の相補鎖を切断するその能力は低減する、複数の核酸切断ドメインのうちの1または複数をもたらしうる。例えば、例示的な野生型S.pyogenes Cas9ポリペプチド内の残基、例えば、Asp10、His840、Asn854、およびAsn856を突然変異させて、複数の核酸切断ドメイン(例えば、ヌクレアーゼドメイン)のうちの1または複数を不活化する。突然変異させるべき残基は、例示的な野生型S.pyogenes Cas9ポリペプチド内の残基Asp10、His840、Asn854、およびAsn856(例えば、配列および/または構造アライメントにより決定される)に対応しうる。突然変異の非限定的な例は、D10A、H840A、N854A、またはN856Aを含む。当業者は、アラニン置換以外の突然変異が適しうることを認識しうる。
D10A突然変異を、H840A、N854A、またはN856A突然変異のうちの1または複数と組み合わせて、DNA切断活性を実質的に欠く部位特異的ポリペプチドを作製することができる。H840A突然変異を、D10A、N854A、またはN856A突然変異のうちの1または複数と組み合わせて、DNA切断活性を実質的に欠く部位特異的ポリペプチドを作製することができる。N854A突然変異を、H840A、D10A、またはN856A突然変異のうちの1または複数と組み合わせて、DNA切断活性を実質的に欠く部位特異的ポリペプチドを作製することができる。N856A突然変異を、H840A、N854A、またはD10A突然変異のうちの1または複数と組み合わせて、DNA切断活性を実質的に欠く部位特異的ポリペプチドを作製することができる。1つの実質的に不活性なヌクレアーゼドメインを含む部位特異的ポリペプチドを、「ニッカーゼ」と称する。
RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼ、例えば、Cas9のニッカーゼ変異体を使用して、CRISPRにより媒介されるゲノム編集の特異性を増大させることができる。野生型のCas9は、標的配列(内因性のゲノムローカスなど)内の、指定された約20ヌクレオチドの配列とハイブリダイズするようにデザインされた、単一のガイドRNAによりガイドされることが典型的である。しかし、ガイドRNAと標的ローカスとのいくつかのミスマッチが許容される可能性があり、標的部位内で要求される相同性の長さを、例えば、最小で13ntの相同性まで効果的に低減し、これにより、標的ゲノム内の他の場所で、CRISPR/Cas9複合体による、結合および二本鎖核酸切断(オフ標的切断としてもまた公知である)の潜在的可能性の上昇をもたらす。Cas9のニッカーゼ変異体は各々、1つの鎖だけを切断するため、二本鎖切断を創出するためには、1対のニッカーゼが、近接して、かつ、標的核酸の逆鎖上で結合し、これにより、二本鎖切断の同等物である、1対のニックを創出することが必要である。これは、2つの別個のガイドRNA(各ニッカーゼにつき1つずつ)が、近接して、かつ、標的核酸の逆鎖上で結合しなければならないことを要求する。この要件は本質的に、二本鎖切断が生じるために必要とされる、最小の相同性の長さを二倍にし、これにより、2つのガイドRNA部位(存在する場合)が、二本鎖切断の形成を可能とするのに十分な程度に、互いと近接する可能性が低い場合に、二本鎖切断イベントが、ゲノム内の別の場所で生じる可能性を低減する。当技術分野で記載される通り、ニッカーゼはまた、HDRを、NHEJと対比して促進するのにも使用することができる。HDRを使用して、所望の変化を効果的に媒介する特異的ドナー配列の使用を介して、選択された変化を、ゲノム内の標的部位へと導入することができる。遺伝子編集における使用のための、多様なCRISPR/Cas系についての記載は、例えば、国際特許出願公開第WO2013/176772号;およびNature Biotechnology、32巻、347〜355頁(2014年);ならびにこれらにおいて引用されている参考文献において見出すことができる。
想定される突然変異は、置換、付加、および欠失、またはこれらの任意の組合せを含みうる。突然変異は、突然変異させるアミノ酸を、アラニンへと転換する。突然変異は、突然変異させるアミノ酸を、別のアミノ酸(例えば、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リシン、またはアルギニン)へと転換する。突然変異は、突然変異させるアミノ酸を、天然のアミノ酸(例えば、セレノメチオニン)へと転換する。突然変異は、突然変異させるアミノ酸を、アミノ酸模倣体(例えば、リン酸化模倣体)へと転換する。突然変異は、保存的突然変異でありうる。例えば、突然変異は、突然変異させるアミノ酸を、サイズ、形状、電荷、極性、コンフォメーションが相似するアミノ酸、および/または突然変異させるアミノ酸のロタマー(例えば、システイン/セリン突然変異、リシン/アスパラギン突然変異、ヒスチジン/フェニルアラニン突然変異)へと転換しうる。突然変異は、リーディングフレームのシフトおよび/または早期終止コドンの創出を引き起こしうる。突然変異は、遺伝子の調節的領域、または1もしくは複数の遺伝子の発現に影響を及ぼすローカスへの変化を引き起こしうる。
部位特異的ポリペプチド(例えば、変異体の、突然変異させた、酵素的に不活性の、および/または条件的に酵素的に不活性の部位特異的ポリペプチド)は、核酸をターゲティングしうる。部位特異的ポリペプチド(例えば、変異体の、突然変異させた、酵素的に不活性の、および/または条件的に酵素的に不活性のエンドリボヌクレアーゼ)は、DNAをターゲティングしうる。部位特異的ポリペプチド(例えば、変異体の、突然変異させた、酵素的に不活性の、および/または条件的に酵素的に不活性のエンドリボヌクレアーゼ)は、RNAをターゲティングしうる。
部位特異的ポリペプチドは、1または複数の非天然配列(例えば、部位特異的ポリペプチドは、融合タンパク質である)を含みうる。
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、S.pyogenes)に由来するCas9、核酸結合性ドメイン、および2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメインおよびRuvCドメイン)に対して、少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列を含みうる。
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、S.pyogenes)に由来するCas9、および2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメインおよびRuvCドメイン)に対して、少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列を含みうる。
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、S.pyogenes)に由来するCas9、および2つの核酸切断ドメインに対して、少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列を含むことが可能であり、この場合、核酸切断ドメインの一方または両方は、細菌(例えば、S.pyogenes)に由来するCas9に由来するヌクレアーゼドメインに対する、少なくとも50%のアミノ酸同一性を含む。
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、S.pyogenes)に由来するCas9、2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメインおよびRuvCドメイン)、および部位特異的ポリペプチドを、非天然配列へと連結する、非天然配列(例えば、核局在化シグナル)またはリンカーに対して、少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列を含みうる。
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、S.pyogenes)に由来するCas9、2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメインおよびRuvCドメイン)に対して、少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列を含むことが可能であり、この場合、部位特異的ポリペプチドは、核酸切断ドメインの一方または両方における突然変異であって、ヌクレアーゼドメインの切断活性を、少なくとも50%低減する突然変異を含む。
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、S.pyogenes)に由来するCas9、および2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメインおよびRuvCドメイン)に対して、少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列を含むことが可能であり、この場合、ヌクレアーゼドメインのうちの1つは、アスパラギン酸10の突然変異を含み、かつ/またはヌクレアーゼドメインのうちの1つは、ヒスチジン840の突然変異を含むことが可能であり、突然変異は、ヌクレアーゼドメインの切断活性を、少なくとも50%低減する。
1または複数の部位特異的ポリペプチド、例えば、DNAエンドヌクレアーゼは、ゲノム内の特異的ローカスにおいて、1つの二本鎖切断を併せて生じさせる2つのニッカーゼ、またはゲノム内の特異的ローカスにおいて、2つの二本鎖切断を併せて生じさせるかまたは引き起こす4つのニッカーゼを含みうる。代替的に、1つの部位特異的ポリペプチド、例えば、DNAエンドヌクレアーゼは、ゲノム内の特異的ローカスにおいて、1つの二本鎖切断を生じさせうるかまたは引き起こしうる。
ゲノムターゲティング核酸
本開示は、会合させたポリペプチド(例えば、部位特異的ポリペプチド)の活性を、標的核酸内の特異的標的配列へと導きうるゲノムターゲティング核酸を提示する。ゲノムターゲティング核酸は、RNAでありうる。本明細書では、ゲノムターゲティングRNAを、「ガイドRNA」または「gRNA」と称する。ガイドRNAは、少なくとも目的の標的核酸配列とハイブリダイズするスペーサー配列と、CRISPRリピート配列とを含みうる。II型系では、gRNAはまた、tracrRNA配列と呼ばれる第2のRNAも含む。II型ガイドRNA(gRNA)では、CRISPRリピート配列と、tracrRNA配列とは、互いとハイブリダイズして、二重鎖を形成する。V型ガイドRNA(gRNA)では、crRNAが二重鎖を形成する。いずれの系でも、ガイドRNAと、部位特異的ポリペプチドとが、複合体を形成するように、二重鎖は、部位特異的ポリペプチドに結合しうる。ゲノムターゲティング核酸は、部位特異的ポリペプチドとのその会合により、複合体に、標的特異性をもたらしうる。したがって、ゲノムターゲティング核酸は、部位特異的ポリペプチドの活性を導きうる。
例示的なガイドRNAは、配列表内のスペーサー配列であって、ジストロフィン遺伝子内またはその近傍にあるそれらの標的配列のゲノム位置、および関連する、Cas9により切断される部位と共に示されるスペーサー配列を含み、ここで、ゲノム位置は、GRCh38/hg38ヒトゲノムアセンブリーに基づく。
各ガイドRNAは、ジストロフィン遺伝子内またはその近傍にある、そのゲノムの標的配列と相補的なスペーサー配列を含むようにデザインすることができる。例えば、配列表内のスペーサー配列の各々を、単鎖ガイドRNA(sgRNA)(例えば、RNAキメラ)またはcrRNA(対応するtracrRNAと共に)へとまとめることができる。Jinekら、Science、337巻、816〜821頁(2012年);およびDeltchevaら、Nature、471巻、602〜607頁(2011年)を参照されたい。
ゲノムターゲティング核酸は、二重分子ガイドRNAでありうる。ゲノムターゲティング核酸は、単一分子ガイドRNAでありうる。
二重分子ガイドRNAは、RNAの2つの鎖を含みうる。第1の鎖は、5’〜3’方向に、任意選択のスペーサー伸長配列、スペーサー配列、および最小CRISPRリピート配列を含む。第2の鎖は、最小tracrRNA配列(最小CRISPRリピート配列と相補的)、3’tracrRNA配列、および任意選択のtracrRNA伸長配列を含みうる。
II型系内の単一分子ガイドRNA(sgRNA)は、5’〜3’方向に、任意選択のスペーサー伸長配列、スペーサー配列、最小CRISPRリピート配列、単一分子ガイドリンカー、最小tracrRNA配列、3’tracrRNA配列、および任意選択のtracrRNA伸長配列を含みうる。任意選択のtracrRNA伸長は、ガイドRNAの、さらなる機能性(例えば、安定性)に寄与するエレメントを含みうる。単一分子ガイドリンカーは、最小CRISPRリピートと、最小tracrRNA配列とを連結して、ヘアピン構造を形成しうる。任意選択のtracrRNA伸長は、1または複数のヘアピンを含みうる。
V型系内の単一分子ガイドRNA(sgRNA)は、5’〜3’方向に、最小CRISPRリピート配列およびスペーサー配列を含みうる。
例示を目的として述べると、CRISPR/Cas/Cpf1系において使用されるガイドRNA、または他のより低分子のRNAは、下記で例示され、当技術分野で記載される通り、化学的手段によりたやすく合成することができる。化学合成手順が、持続的に拡大しつつある一方で、高速液体クロマトグラフィー(HPLC;PAGEなど、ゲルの使用を回避する)などの手順による、このようなRNAの精製は、ポリヌクレオチド長が、100ほどのヌクレオチドを優に超えて増大するにつれて、難しくなる傾向がある。より長いRNAを作出するために使用される1つの手法は、併せてライゲーションされる、2つまたはこれを超える分子を作製することである。Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼをコードするRNAなど、はるかに長いRNAは、酵素により、よりたやすく作出される。多様な種類のRNA修飾、例えば、当技術分野で記載される、安定性を増強し、自然免疫応答の可能性もしくは程度を低減し、かつ/または他の属性を増強する修飾は、RNAの化学合成および/または酵素による作出中に導入することもでき、これらの後で導入することもできる。
スペーサー伸長配列
ゲノムターゲティング核酸についての一部の例では、スペーサー伸長配列は、活性を修飾することも可能であり、安定性をもたらすことも可能であり、かつ/またはゲノムターゲティング核酸を修飾するための位置をもたらすこともできる。スペーサー伸長配列は、オンまたはオフ標的活性または特異性を修飾しうる。一部の例では、スペーサー伸長配列を提供することができる。スペーサー伸長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、1000、2000、3000、4000、5000、6000、もしくは7000、またはこれを超えるヌクレオチドを超える長さを有しうる。スペーサー伸長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、またはこれを超えるヌクレオチド未満の長さを有しうる。スペーサー伸長配列は、10ヌクレオチド未満の長さでありうる。スペーサー伸長配列は、10〜30ヌクレオチドの間の長さでありうる。スペーサー伸長配列は、30〜70ヌクレオチドの間の長さでありうる。
スペーサー伸長配列は、別の部分(例えば、安定性制御配列、エンドリボヌクレアーゼ結合配列、リボザイム)を含みうる。この部分は、核酸ターゲティング核酸の安定性を低下させる場合もあり、増大させる場合もある。この部分は、転写ターミネーターセグメント(すなわち、転写終結配列)でありうる。この部分は、真核細胞内で機能しうる。この部分は、原核細胞内で機能しうる。この部分は、真核細胞内および原核細胞内の両方で機能しうる。適切な部分の非限定的な例は、5’キャップ(例えば、7−メチルグアニル酸キャップ(m7G))、リボスイッチ配列(例えば、安定性の調節ならびに/またはタンパク質およびタンパク質複合体のアクセシビリティの調節を可能とする)、dsRNA二重鎖(すなわち、ヘアピン)を形成する配列、RNAを、細胞内の場所(例えば、核、ミトコンドリア、クロロプラストなど)へとターゲティングする配列、トラッキングをもたらす修飾もしくは配列(例えば、蛍光分子への直接のコンジュゲーション、蛍光の検出を容易とする部分へのコンジュゲーション、蛍光の検出を可能とする配列など)、および/またはタンパク質の結合部位をもたらす修飾もしくは配列(例えば、転写活性化因子、転写抑制因子、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどを含む、DNAに対して作用するタンパク質)を含む。
スペーサー配列
スペーサー配列は、目的の標的核酸内の配列とハイブリダイズする。ゲノムターゲティング核酸のスペーサーは、ハイブリダイゼーション(すなわち、塩基対合)を介して、配列特異的に、標的核酸と相互作用しうる。スペーサーのヌクレオチド配列は、目的の標的核酸の配列に応じて変動しうる。
本明細書のCRISPR/Cas系では、スペーサー配列は、系内で使用されるCas9酵素のPAMの5’側に位置する標的核酸とハイブリダイズするようにデザインすることができる。スペーサーは、標的配列に完全にマッチする場合もあり、ミスマッチを有する場合もある。各Cas9酵素は、それが標的DNA内で認識する、特定のPAM配列を有する。例えば、S.pyogenesは、標的核酸内で、配列5’−NRG−3’[配列中、Rは、AまたはGを含み、Nは、任意のヌクレオチドであり、Nは、スペーサー配列によりターゲティングされる標的核酸配列のすぐ3’側にある]を含むPAMを認識する。
標的核酸配列は、20ヌクレオチドを含みうる。標的核酸は、20未満のヌクレオチドを含みうる。標的核酸は、20を超えるヌクレオチドを含みうる。標的核酸は、少なくとも5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、またはこれを超えるヌクレオチドを含みうる。一部の例では、標的核酸は、最大で5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、またはこれを超えるヌクレオチドを含む。標的核酸配列は、PAMの最初のヌクレオチドのすぐ5’側の20塩基を含みうる。例えば、5’−NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNRG−3’(配列番号1,410,473)を含む配列では、標的核酸は、複数のNに対応する配列[配列中、Nは、任意のヌクレオチドであり、下線を付したNRG配列は、S.pyogenesのPAMである]を含みうる。
標的核酸とハイブリダイズするスペーサー配列は、少なくとも約6ヌクレオチド(nt)の長さを有しうる。スペーサー配列は、少なくとも約6nt、少なくとも約10nt、少なくとも約15nt、少なくとも約18nt、少なくとも約19nt、少なくとも約20nt、少なくとも約25nt、少なくとも約30nt、少なくとも約35nt、または少なくとも約40nt、約6nt〜約80nt、約6nt〜約50nt、約6nt〜約45nt、約6nt〜約40nt、約6nt〜約35nt、約6nt〜約30nt、約6nt〜約25nt、約6nt〜約20nt、約6nt〜約19nt、約10nt〜約50nt、約10nt〜約45nt、約10nt〜約40nt、約10nt〜約35nt、約10nt〜約30nt、約10nt〜約25nt、約10nt〜約20nt、約10nt〜約19nt、約19nt〜約25nt、約19nt〜約30nt、約19nt〜約35nt、約19nt〜約40nt、約19nt〜約45nt、約19nt〜約50nt、約19nt〜約60nt、約20nt〜約25nt、約20nt〜約30nt、約20nt〜約35nt、約20nt〜約40nt、約20nt〜約45nt、約20nt〜約50nt、または約20nt〜約60ntでありうる。一部の例では、スペーサー配列は、20ヌクレオチドを含みうる。スペーサー配列は、19ヌクレオチドを含みうる。
一部の例では、スペーサー配列と標的核酸との相補性パーセントは、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%である。一部の例では、スペーサー配列と標的核酸との相補性パーセントは、最大で約30%、最大で約40%、最大で約50%、最大で約60%、最大で約65%、最大で約70%、最大で約75%、最大で約80%、最大で約85%、最大で約90%、最大で約95%、最大で約97%、最大で約98%、最大で約99%、または100%である。一部の例では、スペーサー配列と標的核酸との相補性パーセントは、標的核酸の相補鎖の標的配列のうちの、最も5’側の6つの連続ヌクレオチドにわたり、100%である。スペーサー配列と標的核酸との相補性パーセントは、約20連続ヌクレオチドにわたり、少なくとも60%でありうる。スペーサー配列および標的核酸の長さは、1〜6ヌクレオチド異なる場合があるが、これは、1または複数のバルジ(bulge)と考えることができる。
スペーサー配列は、コンピュータプログラムを使用して、デザインすることもでき、選び出すこともできる。コンピュータプログラムは、予測溶融温度、二次構造形成、予測アニーリング温度、配列同一性、ゲノムコンテキスト、クロマチンアクセシビリティ、%GC、ゲノム発生頻度(例えば、同一であるかまたは類似するが、ミスマッチ、挿入、または欠失の結果として、1または複数のスポットで変動する配列)、メチル化状態、SNPの存在などの変数を使用しうる。
最小CRISPRリピート配列
最小CRISPRリピート配列は、基準CRISPRリピート配列(例えば、S.pyogenesに由来するcrRNA)に対する、少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%の配列同一性を伴う配列である。
最小CRISPRリピート配列は、細胞内の最小tracrRNA配列とハイブリダイズしうるヌクレオチドを含みうる。最小CRISPRリピート配列と最小tracrRNA配列とは、二重鎖、すなわち、塩基対合した二本鎖構造を形成しうる。一体となって、最小CRISPRリピート配列および最小tracrRNA配列は、部位特異的ポリペプチドに結合しうる。最小CRISPRリピート配列の少なくとも一部は、最小tracrRNA配列とハイブリダイズしうる。最小CRISPRリピート配列の少なくとも一部は、最小tracrRNA配列に対する、少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%の相補性を含みうる。最小CRISPRリピート配列の少なくとも一部は、最小tracrRNA配列に対する、最大で約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%の相補性を含みうる。
最小CRISPRリピート配列は、約7ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドの長さを有しうる。例えば、最小CRISPRリピート配列の長さは、約7ヌクレオチド(nt)〜約50nt、約7nt〜約40nt、約7nt〜約30nt、約7nt〜約25nt、約7nt〜約20nt、約7nt〜約15nt、約8nt〜約40nt、約8nt〜約30nt、約8nt〜約25nt、約8nt〜約20nt、約8nt〜約15nt、約15nt〜約100nt、約15nt〜約80nt、約15nt〜約50nt、約15nt〜約40nt、約15nt〜約30nt、または約15nt〜約25ntである。一部の例では、最小CRISPRリピート配列は、約9ヌクレオチドの長さである。最小CRISPRリピート配列は、約12ヌクレオチドの長さでありうる。
最小CRISPRリピート配列は、少なくとも6、7、または8連続ヌクレオチドの連なりにわたり、基準最小CRISPRリピート配列(例えば、S.pyogenesに由来する野生型crRNA)に対して、少なくとも約60%同一でありうる。例えば、最小CRISPRリピート配列は、少なくとも6、7、または8連続ヌクレオチドの連なりにわたり、基準最小CRISPRリピート配列に対して、少なくとも約65%同一、少なくとも約70%同一、少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約98%同一、少なくとも約99%同一、または100%同一である。
最小tracrRNA配列
最小tracrRNA配列は、基準tracrRNA配列(例えば、S.pyogenesに由来する野生型tracrRNA)に対する、少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%の配列同一性を伴う配列でありうる。
最小tracrRNA配列は、細胞内の最小CRISPRリピート配列とハイブリダイズするヌクレオチドを含みうる。最小tracrRNA配列と最小CRISPRリピート配列とは、二重鎖、すなわち、塩基対合した二本鎖構造を形成する。一体となって、最小tracrRNA配列および最小CRISPRリピートは、部位特異的ポリペプチドに結合する。最小tracrRNA配列の少なくとも一部は、最小CRISPRリピート配列とハイブリダイズしうる。最小tracrRNA配列は、最小CRISPRリピート配列と、少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%相補的でありうる。
最小tracrRNA配列は、約7ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドの長さを有しうる。例えば、最小tracrRNA配列は、約7ヌクレオチド(nt)〜約50nt、約7nt〜約40nt、約7nt〜約30nt、約7nt〜約25nt、約7nt〜約20nt、約7nt〜約15nt、約8nt〜約40nt、約8nt〜約30nt、約8nt〜約25nt、約8nt〜約20nt、約8nt〜約15nt、約15nt〜約100nt、約15nt〜約80nt、約15nt〜約50nt、約15nt〜約40nt、約15nt〜約30nt、または約15nt〜約25nt長でありうる。最小tracrRNA配列は、約9ヌクレオチドの長さでありうる。最小tracrRNA配列は、約12ヌクレオチドでありうる。最小tracrRNAは、Jinekら、前出において記載されている、tracrRNAのnt23〜48からなりうる。
最小tracrRNA配列は、少なくとも6、7、または8連続ヌクレオチドの連なりにわたり、基準最小tracrRNA(例えば、S.pyogenesに由来する野生型、tracrRNA)配列に対して、少なくとも約60%同一でありうる。例えば、最小tracrRNA配列は、少なくとも6、7、または8連続ヌクレオチドの連なりにわたり、基準最小tracrRNA配列に対して、少なくとも約65%同一、約70%同一、約75%同一、約80%同一、約85%同一、約90%同一、約95%同一、約98%同一、約99%同一、または100%同一でありうる。
最小CRISPR RNAと、最小tracrRNAとの二重鎖は、二重螺旋を含みうる。最小CRISPR RNAと、最小tracrRNAとの二重鎖は、少なくとも約1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはこれを超えるヌクレオチドを含みうる。最小CRISPR RNAと、最小tracrRNAとの二重鎖は、最大で約1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはこれを超えるヌクレオチドを含みうる。
二重鎖は、ミスマッチを含みうる(すなわち、二重鎖の2つの鎖は、100%相補的ではない)。二重鎖は、少なくとも約1つ、2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、またはこれを超えるミスマッチを含みうる。二重鎖は、最大で約1つ、2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、またはこれを超えるミスマッチを含みうる。二重鎖は、2つ以下のミスマッチを含みうる。
バルジ(bulge)
場合によって、最小CRISPR RNAと、最小tracrRNAとの二重鎖内には、「バルジ」が存在しうる。バルジとは、二重鎖内のヌクレオチドの非対合領域である。バルジは、二重鎖の、部位特異的ポリペプチドへの結合に寄与しうる。バルジは、二重鎖の一方の側に、非対合の5’−XXXY−3’[配列中、Xは、任意のプリンであり、Yは、逆鎖上のヌクレオチドと、揺らぎ対を形成しうるヌクレオチドを含む]を含むことが可能であり、二重鎖の他の側に、非対合ヌクレオチド領域を含みうる。二重鎖の2つの側における非対合ヌクレオチドの数は、異なりうる。
一例では、バルジは、バルジの最小CRISPRリピート鎖上に、非対合プリン(例えば、アデニン)を含みうる。一部の例では、バルジは、バルジの最小tracrRNA配列鎖の非対合5’−AAGY−3’[配列中、Yは、最小CRISPRリピート鎖上のヌクレオチドと、揺らぎ対合を形成しうる、ヌクレオチドを含む]を含みうる。
二重鎖の、最小CRISPRリピート側のバルジは、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、またはこれを超える非対合ヌクレオチドを含みうる。二重鎖の、最小CRISPRリピート側のバルジは、最大で1つ、2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、またはこれを超える非対合ヌクレオチドを含みうる。二重鎖の、最小CRISPRリピート側のバルジは、1つの非対合ヌクレオチドを含みうる。
二重鎖の、最小tracrRNA配列側のバルジは、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはこれを超える非対合ヌクレオチドを含みうる。二重鎖の、最小tracrRNA配列側のバルジは、最大で1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはこれを超える非対合ヌクレオチドを含みうる。二重鎖の、第2の側のバルジ(例えば、二重鎖の、最小tracrRNA配列側)は、4つの非対合ヌクレオチドを含みうる。
バルジは、少なくとも1つの揺らぎ対合を含みうる。一部の例では、バルジは、最大で1つの揺らぎ対合を含む。一部の例では、バルジは、少なくとも1つのプリンヌクレオチドを含みうる。バルジは、少なくとも3つのプリンヌクレオチドを含みうる。バルジ配列は、少なくとも5つのプリンヌクレオチドを含みうる。バルジ配列は、少なくとも1つのグアニンヌクレオチドを含みうる。バルジ配列は、少なくとも1つのアデニンヌクレオチドを含みうる。
ヘアピン
多様な例では、1または複数のヘアピンは、3’tracrRNA配列内の最小tracrRNAに対して3’側に位置しうる。
ヘアピンは、最小CRISPRリピートと最小tracrRNA配列との二重鎖内の、最後の対合ヌクレオチドの3’側の、少なくとも約1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、15、もしくは20、またはこれを超えるヌクレオチドから始まりうる。ヘアピンは、最小CRISPRリピートと最小tracrRNA配列との二重鎖内の、最後の対合ヌクレオチドの3’側の、最大で約1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはこれを超えるヌクレオチドから始まりうる。
ヘアピンは、少なくとも約1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、15、もしくは20、またはこれを超える連続ヌクレオチドを含みうる。ヘアピンは、最大で約1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、15、またはこれを超える連続ヌクレオチドを含みうる。
ヘアピンは、CCジヌクレオチド(すなわち、2つの連続シトシンヌクレオチド)を含みうる。
ヘアピンは、二重鎖ヌクレオチド(例えば、ヘアピン内で一体にハイブリダイズしたヌクレオチド)を含みうる。例えば、ヘアピンは、3’tracrRNA配列のヘアピン二重鎖内の、GGジヌクレオチドへとハイブリダイズしたCCジヌクレオチドを含みうる。
ヘアピンのうちの1または複数は、部位特異的ポリペプチドの、ガイドRNAと相互作用する領域と相互作用しうる。
ある例では、2つまたはこれを超えるヘアピンが存在し、他の例では、3つまたはこれを超えるヘアピンが存在する。
3’tracrRNA配列
3’tracrRNA配列は、基準tracrRNA配列(例えば、S.pyogenesに由来するtracrRNA)に対する、少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%の配列同一性を伴う配列を含みうる。
3’tracrRNA配列は、約6ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドの長さを有しうる。例えば、3’tracrRNA配列は、約6ヌクレオチド(nt)〜約50nt、約6nt〜約40nt、約6nt〜約30nt、約6nt〜約25nt、約6nt〜約20nt、約6nt〜約15nt、約8nt〜約40nt、約8nt〜約30nt、約8nt〜約25nt、約8nt〜約20nt、約8nt〜約15nt、約15nt〜約100nt、約15nt〜約80nt、約15nt〜約50nt、約15nt〜約40nt、約15nt〜約30nt、または約15nt〜約25ntの長さを有しうる。3’tracrRNA配列は、約14ヌクレオチドの長さを有しうる。
3’tracrRNA配列は、少なくとも6、7、または8連続ヌクレオチドの連なり(stretch)にわたり、基準3’tracrRNA配列(例えば、S.pyogenesに由来する野生型3’tracrRNA配列)に対して、少なくとも約60%同一でありうる。例えば、3’tracrRNA配列は、少なくとも6、7、または8連続ヌクレオチドの連なりにわたり、基準3’tracrRNA配列(例えば、S.pyogenesに由来する野生型3’tracrRNA配列)に対して、少なくとも約60%同一、約65%同一、約70%同一、約75%同一、約80%同一、約85%同一、約90%同一、約95%同一、約98%同一、約99%同一、または100%同一でありうる。
3’tracrRNA配列は、1つを超える二重鎖領域(例えば、ヘアピン領域、ハイブリダイズ領域)を含みうる。3’tracrRNA配列は、2つの二重鎖領域を含みうる。
3’tracrRNA配列は、ステムループ構造を含みうる。3’tracrRNA内のステムループ構造は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、もしくは20、またはこれを超えるヌクレオチドを含みうる。3’tracrRNA内のステムループ構造は、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10、またはこれを超えるヌクレオチドを含みうる。ステムループ構造は、機能的部分を含みうる。例えば、ステムループ構造は、アプタマー、リボザイム、タンパク質と相互作用するヘアピン、CRISPRアレイ、イントロン、またはエクソンを含みうる。ステムループ構造は、少なくとも約1、2、3、4、もしくは5、またはこれを超える機能的部分を含みうる。ステムループ構造は、最大で約1、2、3、4、もしくは5、またはこれを超える機能的部分を含みうる。
3’tracrRNA配列内のヘアピンは、Pドメインを含みうる。一部の例では、Pドメインは、ヘアピン内の二本鎖領域を含みうる。
tracrRNA伸長配列
tracrRNAが、単一分子ガイドの文脈にある場合であれ、二重分子ガイドの文脈にある場合であれ、tracrRNA伸長配列をもたらすことができる。tracrRNA伸長配列は、約1ヌクレオチド〜約400ヌクレオチドの長さを有しうる。tracrRNA伸長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、または400ヌクレオチドを超える長さを有しうる。tracrRNA伸長配列は、約20〜約5000またはこれを超えるヌクレオチドの長さを有しうる。tracrRNA伸長配列は、1000ヌクレオチドを超える長さを有しうる。tracrRNA伸長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、またはこれを超えるヌクレオチド未満の長さを有しうる。tracrRNA伸長配列は、1000ヌクレオチド未満の長さを有しうる。tracrRNA伸長配列は、10ヌクレオチド未満の長さを含みうる。tracrRNA伸長配列は、10〜30ヌクレオチドの長さでありうる。tracrRNA伸長配列は、30〜70ヌクレオチドの長さでありうる。
tracrRNA伸長配列は、機能的部分(例えば、安定性制御配列、リボザイム、エンドリボヌクレアーゼ結合配列)を含みうる。機能的部分は、転写ターミネーターセグメント(すなわち、転写終結配列)を含みうる。機能的部分は、約10ヌクレオチド(nt)〜約100ヌクレオチド、約10nt〜約20nt、約20nt〜約30nt、約30nt〜約40nt、約40nt〜約50nt、約50nt〜約60nt、約60nt〜約70nt、約70nt〜約80nt、約80nt〜約90nt、または約90nt〜約100nt、約15nt〜約80nt、約15nt〜約50nt、約15nt〜約40nt、約15nt〜約30nt、または約15nt〜約25ntの全長を有しうる。機能的部分は、真核細胞内で機能しうる。機能的部分は、原核細胞内で機能しうる。機能的部分は、真核細胞内および原核細胞内の両方で機能しうる。
適切なtracrRNA伸長の機能的部分の非限定的な例は、3’ポリアデニル化テール、リボスイッチ配列(例えば、安定性の調節ならびに/またはタンパク質およびタンパク質複合体によるアクセシビリティの調節を可能とする)、dsRNA二重鎖(すなわち、ヘアピン)を形成する配列、RNAを細胞内の場所(例えば、核、ミトコンドリア、クロロプラストなど)へとターゲティングする配列、トラッキングをもたらす修飾もしくは配列(例えば、蛍光分子への直接のコンジュゲーション、蛍光の検出を容易とする部分へのコンジュゲーション、蛍光の検出を可能とする配列など)、および/またはタンパク質の結合性部位をもたらす修飾もしくは配列(例えば、転写活性化因子、転写抑制因子、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどを含む、DNAに対して作用するタンパク質)を含む。tracrRNA伸長配列は、プライマー結合性部位または分子インデックス(例えば、バーコード配列)を含みうる。tracrRNA伸長配列は、1または複数のアフィニティータグを含みうる。
単一分子ガイドリンカー配列
単一分子ガイド核酸のリンカー配列は、約3ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドの長さを有しうる。Jinekら、前出では、例えば、単純な4ヌクレオチドの「テトラループ」(−GAAA−)が使用された(Science、337巻(6096号):816〜821頁(2012年))。例示的なリンカーは、約3ヌクレオチド(nt)〜約90nt、約3nt〜約80nt、約3nt〜約70nt、約3nt〜約60nt、約3nt〜約50nt、約3nt〜約40nt、約3nt〜約30nt、約3nt〜約20nt、約3nt〜約10ntの長さを有する。例えば、リンカーは、約3nt〜約5nt、約5nt〜約10nt、約10nt〜約15nt、約15nt〜約20nt、約20nt〜約25nt、約25nt〜約30nt、約30nt〜約35nt、約35nt〜約40nt、約40nt〜約50nt、約50nt〜約60nt、約60nt〜約70nt、約70nt〜約80nt、約80nt〜約90nt、または約90nt〜約100ntの長さを有しうる。単一分子ガイド核酸のリンカーは、4〜40ヌクレオチドの間でありうる。リンカーは、少なくとも約100、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、もしくは7000、またはこれを超えるヌクレオチドでありうる。リンカーは、最大で約100、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、もしくは7000、またはこれを超えるヌクレオチドでありうる。
リンカーは、様々な配列のうちのいずれも含みうるが、一部の例では、リンカーは、ガイドRNAの他の部分と相同的である広範な領域であって、ガイドの他の機能的な領域に干渉する可能性のある分子内結合を引き起こしうる領域を有する配列を含まない。Jinekら、前出では、単純な4ヌクレオチドの配列である、−GAAA−が使用された(Science、337巻(6096号):816〜821頁(2012年))が、より長い配列を含む、多数の他の配列も同様に、使用することができる。
リンカー配列は、機能的部分を含みうる。例えば、リンカー配列は、アプタマー、リボザイム、タンパク質と相互作用するヘアピン、タンパク質結合性部位、CRISPRアレイ、イントロン、またはエクソンを含む、1または複数の特色を含みうる。リンカー配列は、少なくとも約1、2、3、4、もしくは5、またはこれを超える機能的部分を含みうる。一部の例では、リンカー配列は、最大で約1、2、3、4、もしくは5、またはこれを超える機能的部分を含みうる。
1もしくは複数のエクソン、または異常なイントロンのスプライスアクセプターもしくはドナー部位の欠失(切出し)、挿入、または置きかえ(欠失および挿入)により、細胞を矯正するゲノム操作戦略
本開示のex vivo方法のステップは、ゲノム操作を使用して、DMD患者特異的なiPS細胞のゲノムを編集/矯正することを伴う。同様に、本開示のin vivo方法のステップは、ゲノム操作を使用して、DMD患者における筋細胞のゲノムを編集/矯正することを伴う。同様に、本開示の細胞方法におけるステップは、ゲノム操作により、ヒト細胞内のジストロフィン遺伝子を編集/矯正することを伴う。
DMD患者は、ジストロフィン遺伝子内の広範にわたる突然変異を呈する。したがって、異なる患者は一般に、異なる矯正戦略を要求するであろう。任意のCRISPRエンドヌクレアーゼを本開示の方法で使用することができ、各CRISPRエンドヌクレアーゼは、疾患特異的な場合もあり、疾患特異的でない場合もある、それ自体と関連するPAMを有する。例えば、ジストロフィン遺伝子を、S.pyogenesに由来するCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼでターゲティングするためのgRNAスペーサー配列は、配列表の配列番号1〜467,030および1,410,430〜1,410,472において同定されている。ジストロフィン遺伝子を、S.aureusに由来するCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼでターゲティングするためのgRNAスペーサー配列は、配列表の配列番号467,031〜528,196において同定されている。ジストロフィン遺伝子を、S.thermophilusに由来するCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼでターゲティングするためのgRNAスペーサー配列は、配列表の配列番号528,197〜553,198において同定されている。ジストロフィン遺伝子を、T.denticolaに由来するCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼでターゲティングするためのgRNAスペーサー配列は、配列表の配列番号553,199〜563,911において同定されている。ジストロフィン遺伝子を、N.meningitidesに由来するCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼでターゲティングするためのgRNAスペーサー配列は、配列表の配列番号563,912〜627,854および1,410,400〜1,410,402において同定されている。ジストロフィン遺伝子を、Acidominoccoccus、Lachnospiraceae、およびFranciscella Novicidaに由来するCRISPR/Cpf1エンドヌクレアーゼでターゲティングするためのgRNAスペーサー配列は、配列表の配列番号627,855〜1,410,399および1,410,403〜1,410,429において同定されている。
1つのゲノム操作戦略は、エクソンの欠失を伴う。特異的エクソンのターゲティングされた欠失は、単一の治療用カクテルで、患者の大規模なサブセットを処置するための、魅力的な戦略でありうる。ジストロフィンのリーディングフレームを修復することにより、単一エクソンの欠失が、患者のうちの最大で13%を処置しうるのに対し、マルチエクソンの欠失は、患者のうちの最大で62%を処置しうることが予測される。マルチエクソンの欠失は、より多数の患者に到達しうるが、より大きな欠失では、サイズの増大と共に、欠失効率が大幅に低下する。したがって、好ましい欠失は、400〜350,000塩基対(bp)のサイズの範囲でありうる。例えば、欠失は、400〜1,000;1,000〜5,000;5,000〜10,000、10,000〜25,000;25,000〜50,000、50,000〜100,000;100,000〜200,000;または200,000〜350,000塩基対のサイズの範囲でありうる。
既に言明した通り、DMD遺伝子は、79のエクソンを含有する。79のエクソン、または異常なイントロンのスプライスアクセプターもしくはドナー部位のうちの、任意の1または複数は、ジストロフィンのリーディングフレームを修復するために、欠失させることができる。これらの方法は、これらは、患者の最大のサブセットに到達することが予測される領域であるので、エクソン2、8、43、44、45、46、50、51、52、53、70、45〜53、または45〜55を欠失させるのに使用しうるgRNA対を提供する(表1および2を参照されたい;表2に与えられる百分率は、文献により報告されている平均である)。
DMD遺伝子の異なる領域は、欠失により修復することもでき、かつ/またはHDRにより修復することもできる。目的のゲノム領域内で切断するgRNAの、ある特定の組合せを使用して、標的エクソン内の突然変異を矯正することができる。座標は、GRch38/hg38ゲノムアセンブリー(表1)に基づく。
方法は、遺伝子を2回にわたり切断することにより、エクソン2を欠失させるgRNA対であって、エクソン2の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン2の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
方法は、遺伝子を2回にわたり切断することにより、エクソン8を欠失させるgRNA対であって、エクソン8の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン8の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
方法は、遺伝子を2回にわたり切断することにより、エクソン43を欠失させるgRNA対であって、エクソン43の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン43の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
方法は、遺伝子を2回にわたり切断することにより、エクソン44を欠失させるgRNA対であって、エクソン44の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン44の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
方法は、遺伝子を2回にわたり切断することにより、エクソン45を欠失させるgRNA対であって、エクソン45の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン45の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
方法は、遺伝子を2回にわたり切断することにより、エクソン46を欠失させるgRNA対であって、エクソン46の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン46の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
方法は、遺伝子を2回にわたり切断することにより、エクソン50を欠失させるgRNA対であって、エクソン50の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン50の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
方法は、遺伝子を2回にわたり切断することにより、エクソン51を欠失させるgRNA対であって、エクソン51の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン51の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
方法は、遺伝子を2回にわたり切断することにより、エクソン52を欠失させるgRNA対であって、エクソン52の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン52の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
方法は、遺伝子を2回にわたり切断することにより、エクソン53を欠失させるgRNA対であって、エクソン53の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン53の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
方法は、遺伝子を2回にわたり切断することにより、エクソン70を欠失させるgRNA対であって、エクソン70の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン70の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
方法は、遺伝子を2回にわたり切断することにより、エクソン45〜53を欠失させるgRNA対であって、エクソン45の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン53の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
方法は、遺伝子を2回にわたり切断することにより、エクソン45〜55を欠失させるgRNA対であって、エクソン45の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン55の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
別のゲノム操作戦略は、1もしくは複数のエクソン、または異常なイントロンのスプライスアクセプターもしくはドナー部位への挿入またはこれらの置きかえであって、相同組換え(HR)としてもまた公知である、相同性により導かれる修復(HDR)による挿入または置きかえを伴う。相同性により導かれる修復は、小規模な挿入/欠失または点突然変異に起因して、早期終止コドンを有する患者を処置するための1つの戦略である。DMD表現型を、BMD表現型へと転換する、大規模なゲノム欠失をもたらすのではなく、この戦略は、全リーディングフレームを修復し、罹患状態を完全に逆行させる。この戦略は、患者の早期終止の位置に基づく、よりカスタムメイドの手法を要求する。ジストロフィンエクソンの大半は、小型(<300bp)である。HDR効率は、ドナー分子のサイズと反比例するので、これは有利である。また、ドナー鋳型が、サイズに制約されるアデノ随伴ウイルス(AAV)分子であって、ドナー鋳型送達の有効な手段であることが示されているAAV分子に適合することも予測される。
相同性により導かれる修復とは、二本鎖切断(DSB)を修復するための細胞機構である。最も一般的な形態は、相同組換えである。HDRには、一本鎖アニーリングおよび代替的HDRを含む、さらなる経路が存在する。ゲノム操作ツールは、研究者が、ゲノムに対して、部位特異的修飾を創出するように、細胞の相同組換え経路を操作することを可能とする。細胞は、トランスに供給される合成のドナー分子を使用して、二本鎖切断を修復しうることが見出されている。したがって、特異的突然変異の近傍において二本鎖切断を導入し、適切なドナーを供給することにより、ゲノム内に、ターゲティングされた変化を施すことができる。特異的切断は、相同なドナー単独を供給される細胞106個中に1回の比率の1,000倍を超えて、HDR率を増大させる。特定のヌクレオチドにおける相同性により導かれる修復(HDR)率は、切断部位までの距離の関数であるので、重複するかまたは最近傍の標的部位を選び出すことが重要である。in situにおける矯正は、ゲノムの残余部分を撹乱せずにおくので、遺伝子編集は、遺伝子付加に対する利点をもたらす。
HDRによる編集のために供給されるドナーは、顕著に変動するが、小型または大型のフランキング相同性アームを伴う配列であって、ゲノムDNAとのアニーリングを可能とする意図される配列を含有しうる。導入される遺伝子変化を挟む相同性領域は、30bpまたはこれより小型の場合もあり、マルチキロベースという大型のカセットの場合もあり、これらは、プロモーター、cDNAなどを含有しうる。一本鎖オリゴヌクレオチドドナーおよび二本鎖オリゴヌクレオチドドナーのいずれも使用されている。これらのオリゴヌクレオチドは、100nt未満〜200ntを超えるサイズの範囲でありうるが、より長いssDNAもまた、作出および使用しうる。PCR単位複製配列、プラスミド、およびミニサークルを含む、二本鎖ドナーを使用することができる。一般に、AAVベクターは、ドナー鋳型の送達の極めて有効な手段でありうることが見出されているが、個々のドナーに対するパッケージング限界が<5kbである。ドナーの能動的転写が、HDRを3倍に増大させたことから、プロモーターを含むことが、転換を増大させうることが指し示される。逆に、ドナーのCpGのメチル化は、遺伝子発現およびHDRを減少させる。
Cas9などの野生型エンドヌクレアーゼに加えて、一方のヌクレアーゼドメインまたは他方のヌクレアーゼドメインを不活化させる結果として、1つのDNA鎖だけの切断をもたらしうる、ニッカーゼ変異体が存在する。HDRは、個々のCasニッカーゼにより導くこともでき、標的領域を挟むニッカーゼ対を使用して導くこともできる。ドナーは、一本鎖の場合もあり、ニック処理されている場合もあり、dsDNAの場合もある。
ドナーDNAは、ヌクレアーゼと共に供給することもでき、様々な異なる方法、例えば、トランスフェクション、ナノ粒子、マイクロインジェクション、またはウイルスを介する形質導入により、独立に供給することもできる。ある範囲のテザリングの選択肢であって、HDRのためのドナーのアベイラビリティーを増大させる選択肢が提起されている。例は、ドナーの、ヌクレアーゼへの接合、近傍に結合するDNA結合性タンパク質への接合、またはDNA末端における結合もしくは修復に関与するタンパク質への接合を含む。
修復経路の選択は、細胞周期に影響を及ぼす培養条件など、いくつかの培養条件により導くこともでき、DNA修復および関連タンパク質のターゲティングにより導くこともできる。例えば、HDRを増大させるために、KU70、KU80、またはDNAリガーゼIVなど、鍵となるNHEJ分子を抑制することができる。
ドナーが存在しない場合、接合部において塩基対合をほとんどまたは全く伴わずにDNA末端を接合させる、いくつかの非相同性修復経路を使用して、DNA切断に由来する末端または異なる切断に由来する末端を接合させることができる。カノニカルのNHEJに加えて、alt−NHEJなど、同様の修復機構が存在する。2つの切断が存在する場合、介在するセグメントを、欠失させることもでき、反転させることもできる。NHEJ修復経路は、接合部において、挿入、欠失、または突然変異をもたらしうる。
NHEJは、ヌクレアーゼによる切断の後において、15kbの誘導的遺伝子発現カセットを、ヒト細胞株内の規定されたローカスへと挿入するのに使用された(Maresca, M.、Lin, V.G.、Guo, N.、およびYang, Y.、Obligate ligation-gated recombination (ObLiGaRe): custom-designed nuclease-mediated targeted integration through nonhomologous end joining、Genome Res、23巻、539〜546頁(2013年))。
NHEJまたはHDRによるゲノム編集に加えて、NHEJ経路およびHRの両方を使用する、部位特異的遺伝子挿入が行われている。可能性として、イントロン/エクソン間境界部を含む、ある特定の状況では、組合せ法が適用可能でありうる。NHEJが、イントロン内のライゲーションに有効であることがわかるのに対し、エラーフリーHDRは、コーディング領域内でより良好に適しうる。
既に言明した通り、DMD遺伝子は、79のエクソンを含有する。79のエクソンのうちの、任意の1または複数は、突然変異を矯正し、ジストロフィンのリーディングフレームを修復するために、正すことができる。データは、ジストロフィン遺伝子内の大半の早期終止コドンはエクソン70にある傾向があることを示しているので、一部の方法は、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の組込みであって、エクソン70に配列を挿入するか、またはエクソン70内の配列を置きかえる組込みを容易とするために使用しうる、1つのgRNAまたは1対のgRNAを提供する(Tuffery-Giraud, S.ら、Hum Mutat、2009年、30巻(6号):934〜45頁)(Flanigan, K.M.ら、Hum Mutat、2009年、30巻(12号):1657〜66頁)。方法を、最大の数の患者に対して適用可能とするために、方法は、全エクソン70を挿入するかまたは置きかえうるドナー鋳型を伴う。代替的に、方法は、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の組込みであって、エクソン2、エクソン8、エクソン43、エクソン44、エクソン45、エクソン46、エクソン50、エクソン51、エクソン52、エクソン53、またはエクソン70内に配列を挿入するか、またはこれらの中の配列を置きかえる組込みを容易とするために使用しうる、1つのgRNAまたは1対のgRNAを提供する。表1を参照されたい。
HDR後において、pre−mRNAが、適正にプロセシングされることを確保するために、周囲のスプライシングシグナルをインタクトに保つことが重要である。スプライシングドナーおよびアクセプターは一般に、隣接イントロンの100塩基対以内にありうる。したがって、一部の例では、方法は、エクソンのイントロン接合部に照らして±約0〜3100bpを切断する、全てのgRNAをもたらしうる。
一部の方法は、遺伝子を2回にわたり切断することにより欠失をもたらすgRNA対であって、エクソン2内の配列を置きかえるために、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の組込みを容易とする、エクソン2の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン2の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
代替的に、一部の方法は、先行する段落による1つのgRNAであって、エクソン2内の配列を置きかえるために、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の挿入を容易とする、1つの二本鎖切断をもたらすgRNAを提供する。
方法の一部の例は、遺伝子を2回にわたり切断することにより欠失をもたらすgRNA対であって、エクソン8内の配列を置きかえるために、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の組込みを容易とする、エクソン8の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン8の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
代替的に、一部の方法は、先行する段落による1つのgRNAであって、エクソン8内の配列を置きかえるために、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の挿入を容易とする、1つの二本鎖切断をもたらすgRNAを提供する。
一部の方法は、遺伝子を2回にわたり切断することにより欠失をもたらすgRNA対であって、エクソン43内の配列を置きかえるために、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の組込みを容易とする、エクソン43の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン43の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
代替的に、一部の方法は、先行する段落による1つのgRNAであって、エクソン43内の配列を置きかえるために、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の挿入を容易とする、1つの二本鎖切断をもたらすgRNAを提供する。
一部の方法は、遺伝子を2回にわたり切断することにより欠失をもたらすgRNA対であって、エクソン44内の配列を置きかえるために、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の組込みを容易とする、エクソン44の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン44の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
代替的に、一部の方法は、先行する段落による1つのgRNAであって、エクソン44内の配列を置きかえるために、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の挿入を容易とする、1つの二本鎖切断をもたらすgRNAを提供する。
一部の方法は、遺伝子を2回にわたり切断することにより欠失をもたらすgRNA対であって、エクソン45内の配列を置きかえるために、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の組込みを容易とする、エクソン45の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン45の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
代替的に、一部の方法は、先行する段落による1つのgRNAであって、エクソン45内の配列を置きかえるために、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の挿入を容易とする、1つの二本鎖切断をもたらすgRNAを提供する。
一部の方法は、遺伝子を2回にわたり切断することにより欠失をもたらすgRNA対であって、エクソン46内の配列を置きかえるために、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の組込みを容易とする、エクソン46の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン46の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
代替的に、一部の方法は、先行する段落による1つのgRNAであって、エクソン46内の配列を置きかえるために、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の挿入を容易とする、1つの二本鎖切断をもたらすgRNAを提供する。
一部の方法は、遺伝子を2回にわたり切断することにより欠失をもたらすgRNA対であって、エクソン50内の配列を置きかえるために、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の組込みを容易とする、エクソン50の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン50の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
代替的に、一部の方法は、先行する段落による1つのgRNAであって、エクソン50内の配列を置きかえるために、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の挿入を容易とする、1つの二本鎖切断をもたらすgRNAを提供する。
一部の方法は、遺伝子を2回にわたり切断することにより欠失をもたらすgRNA対であって、エクソン51内の配列を置きかえるために、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の組込みを容易とする、エクソン51の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン51の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
代替的に、一部の方法は、先行する段落による1つのgRNAであって、エクソン51内の配列を置きかえるために、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の挿入を容易とする、1つの二本鎖切断をもたらすgRNAを提供する。
一部の方法は、遺伝子を2回にわたり切断することにより欠失をもたらすgRNA対であって、エクソン52内の配列を置きかえるために、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の組込みを容易とする、エクソン52の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン52の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
代替的に、一部の方法は、先行する段落による1つのgRNAであって、エクソン52内の配列を置きかえるために、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の挿入を容易とする、1つの二本鎖切断をもたらすgRNAを提供する。
一部の方法は、遺伝子を2回にわたり切断することにより欠失をもたらすgRNA対であって、エクソン53内の配列を置きかえるために、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の組込みを容易とする、エクソン53の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン53の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
代替的に、一部の方法は、先行する段落による1つのgRNAであって、エクソン53内の配列を置きかえるために、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の挿入を容易とする、1つの二本鎖切断をもたらすgRNAを提供する。
一部の方法は、遺伝子を2回にわたり切断することにより欠失をもたらすgRNA対であって、エクソン70内の配列を置きかえるために、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の組込みを容易とする、エクソン70の5’末端において切断する一方のgRNAと、エクソン70の3’末端において切断する他方のgRNAとによるgRNA対を提供する。
代替的に、一部の方法は、先行する段落による1つのgRNAであって、エクソン70内の配列を置きかえるために、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の挿入を容易とする、1つの二本鎖切断をもたらすgRNAを提供する。
相同性により導かれる修復による単一エクソンの組換えに加えて、本発明者らはまた、DMD遺伝子内で見出される突然変異ホットスポットの、部分的なcDNAのノックインを実行するための方法についても記載する。例えば、エクソン45〜55を修復する処置は、患者のうちの最大で62%を処置しうる。本明細書で記載される通りに、エクソン45〜55を欠失させるか、または置きかえるのではない、別の処置選択肢は、エクソン45〜55のゲノム領域全体(>350,000bpにわたるイントロンを含む)を、約1800bpにわたる、エクソン45〜55のコーディング領域だけを含有するcDNAで置きかえる。置きかえは、相同性により導かれる修復法を使用して行うことができる。遺伝子間領域を除外することにより、エクソン45〜55のcDNAは(全ゲノム領域よりも)、相同性アームと共に、より容易に、本出願の「系の構成要素をコードする核酸」と題する節で記載される任意のドナーベクター中に含めることができる。この手法では、エクソン45〜55のゲノムの領域を除去する、2つのgRNAおよびCas9またはCpf1を、欠失させた領域を、所望のcDNAノックインで置きかえるドナー構築物と共に送達することができる。
cDNAノックイン法を使用して、エクソンの任意のシリーズを置きかえることができる。
cDNAノックイン配列は、合成のイントロン配列を含有するように最適化することができる。DMDローカスの適正な発現およびプロセシングを確保するように、天然のイントロンよりも小型の合成イントロンを、ドナー構築物内のエクソン間に付加することができる。
ジストロフィン遺伝子内の例示的な修飾は、特異的エクソンの上流または下流3kb未満、2kb未満、1kb未満、0.5kb未満の領域内など、上記で言及したジストロフィンローカス内またはこれらに対して近位における、欠失、挿入、または組換えを含む。ジストロフィン遺伝子内の突然変異の、比較的広範なバリエーションを踏まえると、上記で言及した欠失、挿入、または組換えの多数のバリエーション(限定なしに述べると、大型の欠失のほか、小型の欠失も含む)は、ジストロフィンのリーディングフレームの修復、およびジストロフィンタンパク質の活性の修復をもたらすと予測されることが察知されるであろう。
このような変異体は、問題となる特異的エクソンより5’および/もしくは3’方向において大規模となるか、またはいずれかの方向において小規模となる、欠失、挿入、または組換えを含みうる。したがって、特異的エクソンの欠失、挿入、または組換えに関する「近傍」または「近位」とは、所望の欠失、挿入、または置きかえの境界部(本明細書ではまた、端点とも称する)と関連するSSBまたはDSBローカスが、言及される基準ローカスから約3kb未満の領域内にありうることを意図する。SSBまたはDSBローカスは、より近位の場合もあり、2kb以内、1kb以内、0.5kb以内、または0.1kb以内でありうる。小規模の欠失の場合、所望の端点は、基準ローカスにあるか、またはこれ「と隣接する」ことが可能であり、これにより、端点が、基準ローカスから100bp以内、50bp以内、25bp以内、または約10bp〜5bp未満でありうることを意図する。
DMDを伴う患者のための、エクソンスキッピングにより産生される産物を複製もしくは模倣すること、および/またはリーディングフレームを修復することの1つの利点は、それが、安全であり、かつ、DMDの改善と関連することが既に公知である点である。大型または小型の欠失/挿入/組換えを含む他の例は、ジストロフィンのリーディングフレームを修復する限りにおいて、同じ利益をもたらすことが予測されうる。したがって、本明細書で記載および例示される、欠失、挿入、および組換えの多くのバリエーションは、DMDを改善するために有効でありうることが予測されうる。
標的配列の選択
5’境界部および/または3’境界部の位置の、特定の基準ローカスと比べたシフトを使用して、本明細書でさらに記載および例示される、編集のために選択されるエンドヌクレアーゼ系に部分的に依存する、遺伝子編集の特定の適用を容易とするかまたは増強することができる。
このような標的配列選択の第1の非限定的例では、多くのエンドヌクレアーゼ系は、切断のための潜在的な標的部位の初期の選択を導きうる規則または基準であって、PAM配列モチーフの要件、特に、II型またはV型のCRISPRエンドヌクレアーゼの場合における、DNA切断部位に隣接する位置などの規則または基準を有する。
標的配列の選択または最適化についての別の非限定的例では、標的配列と遺伝子編集エンドヌクレアーゼとの特定の組合せについての「オフ標的」活性の頻度(すなわち、選択された標的配列以外の部位で、DSBが生じる頻度)を、オン標的活性の頻度と比べて評価することができる。場合によって、所望のローカスにおいて適正に編集された細胞は、他の細胞と比べて、選択的利点を有しうる。選択的利点についての、例示的であるが非限定的な例は、複製速度の増強、存続性、ある特定の条件に対する耐性、患者への導入後のin vivoにおける、生着成功率または存続率の増強などの属性、およびこのような細胞の維持または数もしくは生存率の増大と関連する他の属性の獲得を含む。他の場合には、所望のローカスで適正に編集された細胞を、適正に編集された細胞を同定するか、分取するか、または他の形で選択するのに使用される、1または複数のスクリーニング法により、正に選択することができる。選択的利点および指向選択法のいずれも、矯正と関連する表現型を利用しうる。場合によって、意図された細胞集団を選択または精製するのに使用される新たな表現型を創出する第2の修飾を創出するために、細胞を、2回またはこれを超える回数にわたり編集することができる。このような第2の修飾は、選択可能またはスクリーニング可能マーカーのための、第2のgRNAを付加することにより創出しうるであろう。場合によって、cDNAを含有し、また、選択可能マーカーも含有するDNA断片を使用して、細胞を、所望のローカスにおいて、適正に編集することができる。
特定の場合に、いずれかの選択的利点が適用可能であるのであれ、いずれかの指向選択を適用するのであれ、適用の有効性を増強し、かつ/または所望の標的以外の部位における、所望されない変更の潜在的可能性を低減するために、標的配列の選択はまた、オフ標的頻度の考慮によっても導くことができる。本明細書および当技術分野で、さらに記載および例示される通り、オフ標的活性の発生は、標的部位と多様なオフ標的部位との間の類似性および相違性のほか、使用される特定のエンドヌクレアーゼも含む、いくつかの因子の影響を受ける可能性がある。オフ標的活性の予測の一助となる、バイオインフォマティクスツールが利用可能であり、このようなツールはまた、オフ標的活性の可能性が最も高い部位を同定し、次いで、これを、実験状況下で評価して、オフ標的の、オン標的活性に対する相対頻度について査定することができ、これにより、より高度な相対オン標的活性を有する配列の選択を可能とするのにも使用しうることが多い。本明細書では、このような技法の実例を提示するが、当技術分野では、他の例が公知である。
標的配列選択の別の態様は、相同組換えイベントに関する。相同性領域を共有する配列は、介在配列の欠失をもたらす、相同組換えイベントのための焦点として用いられうる。このような組換えイベントは、染色体および他のDNA配列の、通常の複製経過中に生じ、また、通常の細胞複製周期中に定期的に生じるが、多様なイベント(UV光およびDNA切断の他の誘導因子など)の発生により増強される場合もあり、ある特定の薬剤(多様な化学的誘導因子など)の存在により増強される場合もある、二本鎖切断(DSB)の修復の場合など、DNA配列が合成される他の時点においても生じる。多くのこのような誘導因子は、DSBを、ゲノム内で、無差別的に生じさせ、DSBは、通常の細胞内で、定期的に誘導および修復されうる。修復中に、元の配列は、完全な忠実度で再構築されうるが、場合によって、小規模の挿入または欠失(「インデル」と称する)が、DSB部位に導入される。
DSBはまた、本明細書で記載されるエンドヌクレアーゼ系の場合のように、特定の位置において、特異的に誘導することもできるが、これを使用して、選択された染色***置において、導かれたかまたは優先的な遺伝子修飾イベントを引き起こすことができる。相同な配列が、DNA修復(ならびに複製)において組換えを起こす傾向は、いくつかの状況において利用することができ、相同性により導かれる修復を使用して、「ドナー」ポリヌクレオチドの使用を介して供給される目的の配列を、所望の染色***置へと挿入する、CRISPRなど、遺伝子編集系の1つの適用のための基盤である。
「マイクロ相同性」の小領域であって、10塩基対またはこれ未満という少数の塩基対を含みうる小領域でありうる、特定の配列の間の相同性の領域もまた、所望の欠失をもたらすのに使用することができる。例えば、単一のDSBを、近傍の配列とのマイクロ相同性を呈する部位に導入することができる。このようなDSBの修復の通常の経過中に、高頻度で生じる結果は、DSBおよび共時的な細胞の修復工程により容易とされる組換えの結果としての、介在配列の欠失である。
しかし、一部の状況では、相同性の領域内で、標的配列を選択することはまた、遺伝子融合(欠失が、コーディング領域内にある場合)を含む、はるかに大型の欠失ももたらしうるが、これは、特定の状況下を考慮して、所望される場合もあり、所望されない場合もある。
本明細書で提示される例は、ジストロフィンのリーディングフレームの修復をもたらす、破壊、欠失、または組換えを誘導するようにデザインされたDSBを創出するための、多様な標的領域の選択、ならびにオン標的イベントと比べてオフ標的イベントを最小化するようにデザインされた、このような領域内の、特異的標的配列の選択をさらに例示する。
核酸の修飾
場合によって、細胞へと導入されたポリヌクレオチドは、例えば、活性、安定性、もしくは特異性を増強するか、送達を変更するか、宿主細胞内の自然免疫応答を低減するか、または本明細書でさらに記載され、当技術分野でも公知の他の増強のために、個別に、または組合せで使用されうる、1または複数の修飾を含みうる。
ある特定の例では、修飾ポリヌクレオチドを、CRISPR/Cas9/Cpf1系で使用しうるが、この場合、ガイドRNA(単一分子ガイドまたは二重分子ガイド)、および/または細胞へと導入されるCasもしくはCpf1エンドヌクレアーゼをコードするDNAもしくはRNAは、下記で記載および例示される通りに修飾することができる。このような修飾ポリヌクレオチドを、CRISPR/Cas9/Cpf1系で使用して、任意の1または複数のゲノムローカスを編集することができる。
CRISPR/Cas9/Cpf1系を、このような使用の非限定的例示を目的として使用して、単一分子ガイドの場合もあり、二重分子の場合もある、ガイドRNAと、CasまたはCpf1エンドヌクレアーゼとを含む、CRISPR/Cas9/Cpf1ゲノム編集複合体の形成または安定性を増強するのに、ガイドRNAの修飾を使用することができる。ガイドRNAの修飾はまた、または代替的に、ゲノム編集複合体と、ゲノム内の標的配列との相互作用であって、例えば、オン標的活性を増強するのに使用されうる相互作用の開始、安定性、または反応速度を増強するのに使用することができる。ガイドRNAの修飾はまた、または代替的に、特異性、例えば、オン標的部位におけるゲノム編集の、他の(オフ標的)部位における効果と比較した相対速度を増強するのに使用することができる。
修飾はまた、または代替的に、例えば、細胞内に存在するリボヌクレアーゼ(RNアーゼ)による分解に対するその耐性を増大させ、これにより、細胞内のその半減期を延長することにより、ガイドRNAの安定性を増大させるのに使用することができる。ガイドRNAの半減期を延長する修飾は、エンドヌクレアーゼを発生させるために翻訳される必要があるRNAを介して編集される細胞へと、CasまたはCpf1エンドヌクレアーゼを導入する態様において、特に有用でありうる。エンドヌクレアーゼをコードするRNAと同時に導入される、ガイドRNA半減期の延長を使用して、ガイドRNAと、コードされるCasまたはCpf1エンドヌクレアーゼとが細胞内に共存する時間を延長しうるためである。
修飾はまた、または代替的に、細胞へと導入されたRNAが、自然免疫応答を誘発する可能性または程度を減少させるのに使用することができる。低分子干渉RNA(siRNA)を含むRNA干渉(RNAi)の文脈では、十分に特徴付けられており、下記および当技術分野で記載されるこのような応答は、RNAの半減期の短縮および/またはサイトカインもしくは免疫応答と関連する他の因子の誘発と関連する傾向がある。
限定なしに述べると、RNAの安定性を増強する(細胞内に存在するRNアーゼによる分解に対するその耐性を増大させることなどにより)修飾、結果として得られる産物(すなわち、エンドヌクレアーゼ)の翻訳を増強する修飾、および/または細胞へと導入されたRNAが、自然免疫応答を誘発する可能性もしくは程度を減少させる修飾を含む、1種または複数種の修飾もまた、細胞へと導入されるエンドヌクレアーゼをコードするRNAへと施すことができる。
前出および他のものなどの修飾の組合せも同様に、使用することができる。CRISPR/Cas9/Cpf1の場合、例えば、1種または複数種の修飾を、ガイドRNA(上記で例示したガイドRNAを含む)へと施すこともでき、かつ/または1種または複数種の修飾を、CasエンドヌクレアーゼをコードするRNA(上記で例示したCasエンドヌクレアーゼをコードするRNAを含む)へと施すこともできる。
例示を目的として述べると、CRISPR/Cas9/Cpf1系で使用されるガイドRNA、または他の低分子RNAは、化学的手段によりたやすく合成することができ、下記で例示され、当技術分野で記載される通り、いくつかの修飾をたやすく組み込むことを可能とする。化学合成手順が、持続的に拡大しつつある一方で、高速液体クロマトグラフィー(HPLC;PAGEなど、ゲルの使用を回避する)などの手順による、このようなRNAの精製は、ポリヌクレオチド長が、100ほどのヌクレオチドを優に超えて増大するにつれて、難しくなる傾向がある。より長い化学修飾RNAを作出するために使用しうる1つの手法は、併せてライゲーションされる、2つまたはこれを超える分子を作製することである。Cas9エンドヌクレアーゼをコードするRNAなど、はるかに長いRNAは、酵素により、よりたやすく作出される。酵素により作製されたRNAにおける使用のために、少数種類の修飾が利用可能であるが、下記および当技術分野でさらに記載される通り、例えば、安定性を増強し、自然免疫応答の可能性もしくは程度を低減し、かつ/または他の属性を増強するのに使用しうる修飾がまだ存在し、新たな種類の修飾が、定期的に開発されている。
多様な種類の修飾、とりわけ、化学合成される低分子RNAと共に頻繁に使用される修飾についての例示を目的として述べると、修飾は、糖の2’位において修飾された、1または複数のヌクレオチド、一部の態様では、2’−O−アルキル、2’−O−アルキル−O−アルキル、または2’−フルオロで修飾されたヌクレオチドを含みうる。一部の態様では、RNA修飾は、ピリミジンのリボース、非塩基性残基、またはRNAの3’末端における逆塩基における、2’−フルオロ、2’−アミノ、または2’O−メチル修飾を含みうる。このような修飾は、規定の方式で、オリゴヌクレオチドへと組み込むことができ、これらのオリゴヌクレオチドは、所与の標的に対する2’−デオキシオリゴヌクレオチドよりTmが大きい(すなわち、標的への結合アフィニティーが大きい)ことが示されている。
いくつかのヌクレオチドおよびヌクレオシド修飾は、それらが組み込まれるオリゴヌクレオチドを、ヌクレアーゼ消化に対して、天然のオリゴヌクレオチドより耐性とすることが示されており、これらの修飾オリゴは、非修飾オリゴヌクレオチドより長時間にわたりインタクトのまま存続する。修飾オリゴヌクレオチドの具体例は、修飾骨格、例えば、ホスホロチオエート、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルによる糖間連結、または短鎖ヘテロ原子もしくは複素環による糖間連結を含む修飾オリゴヌクレオチドを含む。一部のオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート骨格を伴うオリゴヌクレオチド、およびヘテロ原子骨格、特に、CH2−NH−O−CH2、CH、〜N(CH3)〜O〜CH2(メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として公知である)、CH2--O--N(CH3)−CH2骨格、CH2−N(CH3)−N(CH3)−CH2、およびO−N(CH3)−CH2−CH2骨格[式中、天然のホスホジエステル骨格を、O−P−O−CHとして表す];アミド骨格[De Mesmaekerら、Ace. Chem. Res.、28巻:366〜374頁(1995年)を参照されたい];モルホリノ骨格構造(SummertonおよびWeller、米国特許第5,034,506号を参照されたい);ペプチド核酸(PNA)骨格(オリゴヌクレオチドのホスホジエステル骨格を、ポリアミド骨格で置きかえ、ヌクレオチドを、ポリアミド骨格のアザ窒素原子へと、直接的または間接的に結合させる;Nielsenら、Science、1991年、254巻、1497頁を参照されたい)を伴うオリゴヌクレオチドである。リン含有連結は、ホスホロチオエート、キラルのホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’アルキレンホスホネートおよびキラルのホスホネートを含む、メチルホスホネートおよび他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’−アミノホスホルアミデートおよびアミノアルキルホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、およびボラノホスフェートであって、通常の3’−5’連結を有するこれら、2’−5’連結されたこれらの類似体、およびヌクレオシド単位の隣接する対が、5’−3’に対する3’−5’、または5’−2’に対する2’−5’で連結される逆極性を有するリン含有連結を含むがこれらに限定されない(米国特許第3,687,808号;同第4,469,863号;同第4,476,301号;同第5,023,243号;同第5,177,196号;同第5,188,897号;同第5,264,423号;同第5,276,019号;同第5,278,302号;同第5,286,717号;同第5,321,131号;同第5,399,676号;同第5,405,939号;同第5,453,496号;同第5,455,233号;同第5,466,677号;同第5,476,925号;同第5,519,126号;同第5,536,821号;同第5,541,306号;同第5,550,111号;同第5,563,253号;同第5,571,799号;同第5,587,361号;および同第5,625,050号を参照されたい)。
モルホリノベースのオリゴマー性化合物については、BraaschおよびDavid Corey、Biochemistry、41巻(14号):4503〜4510頁(2002年);Genesis、30巻、3号(2001年);Heasman、Dev. Biol.、243巻:209〜214頁(2002年);Naseviciusら、Nat. Genet.、26巻:216〜220頁(2000年);Lacerraら、Proc. Natl. Acad. Sci.、97巻:9591〜9596頁(2000年);および1991年7月23日に公布された、米国特許第5,034,506号において記載されている。
シクロヘキセニル核酸オリゴヌクレオチド模倣体については、Wangら、J. Am. Chem. Soc.、122巻:8595〜8602頁(2000年)において記載されている。
その中にリン原子を含まない修飾オリゴヌクレオチド骨格は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルによるヌクレオシド間連結、ヘテロ原子とアルキルもしくはシクロアルキルとの混合によるヌクレオシド間連結、または1もしくは複数の短鎖のヘテロ原子もしくは複素環によるヌクレオシド間連結により形成される骨格を有する。これらは、モルホリノ連結を有する骨格(ヌクレオシドの糖部分から部分的に形成される);シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシド、およびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホネートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格;ならびにN、O、S、およびCH2の構成要素部分の混合を有する他の骨格(それらの各々が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,034,506号;同第5,166,315号;同第5,185,444号;同第5,214,134号;同第5,216,141号;同第5,235,033号;同第5,264,562号;同第5,264,564号;同第5,405,938号;同第5,434,257号;同第5,466,677号;同第5,470,967号;同第5,489,677号;同第5,541,307号;同第5,561,225号;同第5,596,086号;同第5,602,240号;同第5,610,289号;同第5,602,240号;同第5,608,046号;同第5,610,289号;同第5,618,704号;同第5,623,070号;同第5,663,312号;同第5,633,360号;同第5,677,437号;および同第5,677,439号を参照されたい)を含む。
1または複数の置換糖部分、例えば、2’位における以下:OH、SH、SCH3、F、OCN、OCH3OCH3、OCH3O(CH2)nCH3、O(CH2)nNH2、またはO(CH2)nCH3[式中、nは、1〜約10である];C1〜C10の低級アルキル、アルコキシアルコキシ、置換低級アルキル、アルカリールまたはアラルキル;Cl;Br;CN;CF3;OCF3;O−、S−、またはN−アルキル;O−、S−、またはN−アルケニル;SOCH3;SO2CH3;ONO2;NO2;N3;NH2;ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリール;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ;置換シリル;RNA切断基;レポーター基;挿入剤;オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善するための基;またはオリゴヌクレオチドの薬力学特性を改善するための基;および同様の特性を有する他の置換基のうちの1つも含まれうる。一部の態様では、修飾は、2’−メトキシエトキシ(2’−O−(2−メトキシエチル)としてもまた公知の、2’−0−CH2CH2OCH3)修飾(Martinら、HeIv. Chim. Acta、1995年、78巻、486頁)を含む。他の修飾は、2’−メトキシ(2’−0−CH3)、2’−プロポキシ(2’−OCH2CH2CH3)、および2’−フルオロ(2’−F)を含む。同様の修飾を、オリゴヌクレオチド上の他の位置、特に、3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位および5’末端ヌクレオチドの5’位においても施すことができる。オリゴヌクレオチドはまた、ペントフラノシル基の代わりに、シクロブチルなどの糖模倣体も有しうる。
一部の例では、糖およびヌクレオシド間連結の両方、すなわち、ヌクレオチド単位の骨格を、新規の基で置きかえることができる。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持することができる。1つのこのようなオリゴマー性化合物であるオリゴヌクレオチド模倣体であって、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているオリゴヌクレオチド模倣体を、ペプチド核酸(PNA)と称する。PNA化合物中では、オリゴヌクレオチドの糖骨格を、アミド含有骨格、例えば、アミノエチルグリシン骨格で置きかえることができる。ヌクレオ塩基は保持し、骨格のアミド部分のアザ窒素原子へと、直接的または間接的に結合させることができる。PNA化合物の調製について教示する、代表的な米国特許は、米国特許第5,539,082号;同第5,714,331号;および同第5,719,262号を含むがこれらに限定されない。PNA化合物についてのさらなる教示は、Nielsenら、Science、254巻:1497〜1500頁(1991年)において見出すことができる。
ガイドRNAはまた、加えてまたは代替的に、ヌクレオ塩基(当技術分野では単に「塩基」と称することが多い)の修飾または置換も含みうる。本明細書で使用される場合、「非修飾」または「天然」ヌクレオ塩基は、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)を含む。修飾ヌクレオ塩基は、天然の核酸内で、低頻度で、または一過性に見出されるに過ぎないヌクレオ塩基、例えば、ヒポキサンチン、6−メチルアデニン、5−Meピリミジン、特に、5−メチルシトシン(また、5−メチル−2’デオキシシトシンとも称され、当技術分野では、5−Me−Cと称されることが多い)、5−ヒドロキシメチルシトシン(HMC)、グリコシルHMC、およびゲントビオシルHMC、ならびに合成のヌクレオ塩基、例えば、2−アミノアデニン、2−(メチルアミノ)アデニン、2−(イミダゾイルアルキル)アデニン、2−(アミノアルキル(alkly)アミノ)アデニンまたは他のヘテロ置換アルキルアデニン、2−チオウラシル、2−チオチミン、5−ブロモウラシル、5−ヒドロキシメチルウラシル、8−アザグアニン、7−デアザグアニン、N6(6−アミノヘキシル)アデニン、および2,6−ジアミノプリンを含む(Kornberg, A.、DNA Replication、W. H. Freeman & Co.、San Francisco、75〜77頁(1980年);Gebeyehuら、Nucl. Acids Res.、15巻:4513頁(1997年))。当技術分野で公知の「ユニバーサル」塩基、例えば、イノシンもまた、組み入れることができる。5−Me−C置換は、核酸二重鎖の安定性を、0.6〜1.2℃だけ上昇させることが示されており(Sanghvi, Y. S.、Crooke, S. T.およびLebleu, B.編、Antisense Research and Applications、CRC Press、Boca Raton、1993年、276〜278頁)、塩基置換の態様である。
修飾ヌクレオ塩基は、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよび他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミン、および2−チオシトシン、5−ハロウラシルおよび5−ハロシトシン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシン、6−アゾウラシル、6−アゾシトシン、および6−アゾチミン、5−ウラシル(シュードウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルアデニンおよび8−ヒドロキシルグアニンならびに他の8−置換アデニンおよび8−置換グアニン、5−ハロウラシルおよび5−ハロシトシン、特に、5−ブロモウラシルおよび5−ブロモシトシン、5−トリフルオロメチルウラシルおよび5−トリフルオロメチルシトシン、ならびに他の5−置換ウラシルおよび5−置換シトシン、7−メチルグアニン(quanine)および7−メチルアデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニン、ならびに3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンなど、他の合成および天然ヌクレオ塩基を含みうる。
さらに、ヌクレオ塩基は、;米国特許第3,687,808号において開示されているヌクレオ塩基;「The Concise Encyclopedia of Polymer Science And Engineering」、858〜859頁、Kroschwitz, J.I.編、John Wiley & Sons、1990年において開示されているヌクレオ塩基;Englischら、「Angewandle Chemie, International Edition」、1991年、30巻、613頁により開示されているヌクレオ塩基;およびSanghvi, Y. S.、15章、「Antisense Research and Applications」、289〜302頁、Crooke, S.T.およびLebleu, B.編著、CRC Press、1993年により開示されているヌクレオ塩基を含みうる。これらのヌクレオ塩基のうちのいくつかは、本発明のオリゴマー性化合物の結合アフィニティーを増大させるために、特に有用である。これらは、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジン、ならびに2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシル、および5−プロピニルシトシンを含む、N−2、N−6、および0−6置換プリンを含む。5−メチルシトシン置換は、核酸二重鎖の安定性を、0.6〜1.2℃だけ上昇させることが示されており(Sanghvi, Y. S.、Crooke, S. T.およびLebleu, B.編、「Antisense Research and Applications」、CRC Press、Boca Raton、1993年、276〜278頁)、なおより特に、2’−O−メトキシエチル糖修飾と組み合わせた場合、塩基置換の態様である。修飾ヌクレオ塩基については、米国特許第3,687,808号のほか、同第4,845,205号;同第5,130,302号;同第5,134,066号;同第5,175,273号;同第5,367,066号;同第5,432,272号;同第5,457,187号;同第5,459,255号;同第5,484,908号;同第5,502,177号;同第5,525,711号;同第5,552,540号;同第5,587,469号;同第5,596,091号;同第5,614,617号;同第5,681,941号;同第5,750,692号;同第5,763,588号;同第5,830,653号;同第6,005,096号;および米国特許出願公開第2003/0158403号において記載されている。
したがって、「修飾された」という用語は、ガイドRNA、エンドヌクレアーゼ、またはガイドRNAおよびエンドヌクレアーゼの両方へと組み込まれた、非天然の糖、リン酸、または塩基を指す。所与のオリゴヌクレオチド内の全ての位置が、一様に修飾される必要はなく、実際、前述の修飾のうちの1つを超える修飾は、単一のオリゴヌクレオチドに組み込むこともでき、オリゴヌクレオチド内の単一のヌクレオシドに組み込むこともできる。
ガイドRNAおよび/またはエンドヌクレアーゼをコードするmRNA(またはDNA)は、活性、細胞の分布、またはオリゴヌクレオチドの細胞による取込みを増強する、1または複数の部分またはコンジュゲートへと化学的に連結することができる。このような部分は、コレステロール部分などの脂質部分[Letsingerら、Proc. Natl. Acad.、Sci. USA、86巻:6553〜6556頁(1989年)];コール酸[Manoharanら、Bioorg. Med. Chem. Let.、4巻:1053〜1060頁(1994年)];チオエーテル、例えば、ヘキシル−S−トリチルチオール[Manoharanら、Ann. N. Y. Acad. Sci.、660巻:306〜309頁(1992年);およびManoharanら、Bioorg. Med. Chem. Let.、3巻:2765〜2770頁(1993年)];チオコレステロール[Oberhauserら、Nucl. Acids Res.、20巻:533〜538頁(1992年)];脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシル残基[Kabanovら、FEBS Lett.、259巻:327〜330頁(1990年);およびSvinarchukら、Biochimie、75巻:49〜54頁(1993年)];リン脂質、例えば、ジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート[Manoharanら、Tetrahedron Lett.、36巻:3651〜3654頁(1995年);およびSheaら、Nucl. Acids Res.、18巻:3777〜3783頁(1990年)];ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖[Mancharanら、Nucleosides & Nucleotides、14巻:969〜973頁(1995年)];アダマンタン酢酸[Manoharanら、Tetrahedron Lett.、36巻:3651〜3654頁(1995年)];パルミチル部分[(Mishraら、Biochim. Biophys. Acta、1264巻:229〜237頁(1995年)];またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ−カルボニル−tオキシコレステロール(hexylamino-carbonyl-t oxycholesterol)部分[Crookeら、J. Pharmacol. Exp. Ther.、277巻:923〜937頁(1996年)]を含むがこれらに限定されない。また、米国特許第4,828,979号;同第4,948,882号;同第5,218,105号;同第5,525,465号;同第5,541,313号;同第5,545,730号;同第5,552,538号;同第5,578,717号;同第5,580,731号;同第5,580,731号;同第5,591,584号;同第5,109,124号;同第5,118,802号;同第5,138,045号;同第5,414,077号;同第5,486,603号;同第5,512,439号;同第5,578,718号;同第5,608,046号;同第4,587,044号;同第4,605,735号;同第4,667,025号;同第4,762,779号;同第4,789,737号;同第4,824,941号;同第4,835,263号;同第4,876,335号;同第4,904,582号;同第4,958,013号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,214,136号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,214,136号;同第5,245,022号;同第5,254,469号;同第5,258,506号;同第5,262,536号;同第5,272,250号;同第5,292,873号;同第5,317,098号;同第5,371,241号;同第5,391,723号;同第5,416,203号;同第5,451,463号;同第5,510,475号;同第5,512,667号;同第5,514,785号;同第5,565,552号;同第5,567,810号;同第5,574,142号;同第5,585,481号;同第5,587,371号;同第5,595,726号;同第5,597,696号;同第5,599,923号;同第5,599,928号;および同第5,688,941号も参照されたい。
糖および他の部分を使用して、タンパク質と、カチオン性のポリソームおよびリポソームなど、ヌクレオチドを含む複合体とを、特定の部位へとターゲティングすることができる。例えば、肝細胞指向移入は、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)を媒介しうる(例えば、Huら、Protein Pept Lett.、21巻(10号):1025〜30頁(2014年)を参照されたい)。当技術分野で公知であり、定期的に開発されている他の系は、本場合において使用される生体分子および/またはその複合体を、目的の、特定の標的細胞へとターゲティングするのに使用することができる。
これらのターゲティング部分またはコンジュゲートは、一級または二級ヒドロキシル基などの官能基へと共有結合的に結合させたコンジュゲート基を含みうる。本発明のコンジュゲート基は、挿入剤、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学特性を増強する基、およびオリゴマーの薬物動態特性を増強する基を含む。典型的なコンジュゲート基は、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸塩、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、および色素を含む。本開示の文脈における、薬力学特性を増強する基は、取込みを改善する基、分解に対する耐性を増強する基、および/または標的核酸との配列特異的ハイブリダイゼーションを強化する基を含む。本発明の文脈における、薬物動態特性を増強する基は、本発明の化合物の、取込み、分布、代謝、または排出を改善する基を含む。代表的なコンジュゲート基は、1992年10月23日に出願された、国際特許出願第PCT/US92/09196号、および米国特許第6,287,860号において開示されている。コンジュゲート部分は、コレステロール部分などの脂質部分、コール酸、チオエーテル、例えば、ヘキシル−5−トリチルチオール、チオコレステロール、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基、リン脂質、例えば、ジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート、ポリアミン鎖もしくはポリエチレングリコール鎖、またはアダマンタン酢酸、パルミチル部分、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分を含むがこれらに限定されない。例えば、米国特許第4,828,979号;同第4,948,882号;同第5,218,105号;同第5,525,465号;同第5,541,313号;同第5,545,730号;同第5,552,538号;同第5,578,717号;同第5,580,731号;同第5,580,731号;同第5,591,584号;同第5,109,124号;同第5,118,802号;同第5,138,045号;同第5,414,077号;同第5,486,603号;同第5,512,439号;同第5,578,718号;同第5,608,046号;同第4,587,044号;同第4,605,735号;同第4,667,025号;同第4,762,779号;同第4,789,737号;同第4,824,941号;同第4,835,263号;同第4,876,335号;同第4,904,582号;同第4,958,013号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,214,136号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,214,136号;同第5,245,022号;同第5,254,469号;同第5,258,506号;同第5,262,536号;同第5,272,250号;同第5,292,873号;同第5,317,098号;同第5,371,241号;同第5,391,723号;同第5,416,203号;同第5,451,463号;同第5,510,475号;同第5,512,667号;同第5,514,785号;同第5,565,552号;同第5,567,810号;同第5,574,142号;同第5,585,481号;同第5,587,371号;同第5,595,726号;同第5,597,696号;同第5,599,923号;同第5,599,928号;および同第5,688,941号を参照されたい。
化学合成にあまり適さず、酵素的合成により作製することが典型的な、長型のポリヌクレオチドもまた、多様な手段により修飾することができる。このような修飾は、例えば、ある特定のヌクレオチド類似体の導入、特定の配列または他の部分の、分子の5’または3’末端における組込み、および他の修飾を含みうる。例示を目的として述べると、Cas9をコードするmRNAは、約4kbの長さであり、in vitroにおける転写により合成することができる。mRNAへの修飾は、例えば、その翻訳または安定性を増大させる(細胞による分解に対するその耐性を増大させることなどによる)ように適用することもでき、RNAの、自然免疫応答を誘発する傾向であって、外因性RNA、特に、Cas9をコードするRNAなど、長いRNAの導入後において、細胞内で観察されることが多い傾向を低減するように適用することもできる。
当技術分野では、ポリAテール、5’キャップ類似体(例えば、ARCA(Anti−Reverse Cap Analog)またはm7G(5’)ppp(5’)G(mCAP))、修飾5’または3’非翻訳領域(UTR)、修飾塩基(シュードUTP、2−チオ−UTP、5−メチルシチジン−5’−三リン酸(5−メチル−CTP)またはN6−メチル−ATPなど)の使用、または5’末端リン酸を除去する、ホスファターゼによる処理など、多数のこのような修飾について記載されている。当技術分野では、これらの修飾および他の修飾が公知であり、RNAの新たな修飾が、定期的に開発されている。
例えば、TriLink Biotech、AxoLabs、Bio−Synthesis Inc.、Dharmacon、および多くの他の供給元を含む、修飾RNAの多数の市販品の供給元が存在する。TriLinkにより記載されている通り、例えば、5−メチル−CTPを使用して、ヌクレアーゼの安定性の増大、翻訳の増大、または生得的免疫受容体の、in vitroにおいて転写されたRNAとの相互作用の低減など、望ましい特徴を付与することができる。下記で言及される、KormannらおよびWarrenらによる刊行物において例示されている通り、5−メチルシチジン−5’−三リン酸(5−メチル−CTP)、N6−メチル−ATP、ならびにシュードUTPおよび2−チオ−UTPはまた、培養物中およびin vivoにおける生得的免疫刺激を低減する一方で、翻訳を増強することも示されている。
in vivoにおいて送達される化学修飾mRNAを使用して、治療効果の改善を達成しうることが示されている(例えば、Kormannら、Nature Biotechnology、29巻、154〜157頁(2011年)を参照されたい)。このような修飾を使用して、例えば、RNA分子の安定性を増大させ、かつ/またはその免疫原性を低減することができる。シュードU、N6−メチル−A、2−チオ−U、および5−メチル−Cなどの化学修飾を使用して、ウリジンおよびシチジン残基のうちの4分の1だけを、それぞれ、2−チオ−Uおよび5−メチル−Cで置換する結果として、マウスにおける、toll様受容体(TLR)により媒介されるmRNAの認識の顕著な低下がもたらされることが見出された。生得的免疫系の活性化を低減することにより、これらの修飾を使用して、in vivoにおけるmRNAの安定性および寿命を効果的に増大させることができる(例えば、Kormannら、前出を参照されたい)。
また、生得的抗ウイルス応答を迂回するようにデザインされた修飾を組み込む、合成のメッセンジャーRNAの反復投与は、分化ヒト細胞を、多能性へと再プログラム化できることも示されている。例えば、Warrenら、Cell Stem Cell、7巻(5号):618〜30頁(2010年)を参照されたい。一次再プログラム化タンパク質として作用する、このような修飾mRNAは、複数のヒト細胞型を再プログラム化する、効率的な手段でありうる。このような細胞を、誘導多能性幹細胞(iPSC)と称し、5−メチル−CTP、シュードUTP、およびARCA(Anti−Reverse Cap Analog)を組み込む、酵素的に合成されたRNAであれば、細胞の抗ウイルス応答を効果的に逃避するのに使用されうることが見出された(例えば、Warrenら、前出を参照されたい)。
当技術分野で記載されるポリヌクレオチドの他の修飾は、例えば、ポリAテールの使用、5’キャップ類似体(m7G(5’)ppp(5’)G(mCAP)など)の付加、5’もしくは3’非翻訳領域UTRの修飾、または5’末端リン酸を除去する、ホスファターゼによる処理(そして、新たな手法が定期的に開発されている)を含む。
本明細書における使用のための修飾RNAを作出するのに適用可能な、いくつかの組成物および技法が、低分子干渉RNA(siRNA)を含む、RNA干渉(RNAi)の修飾との関連で開発されている。siRNAは、mRNA干渉を介する、遺伝子サイレンシングに対するそれらの効果は一般に、一過性であり、これは、反復投与を要求しうるため、in vivoでは、特定の課題を提示する。加えて、siRNAは、二本鎖RNA(dsRNA)であり、哺乳動物細胞は、ウイルス感染の副産物であることが多い、dsRNAを検出および中和するように進化した免疫応答を有する。こうして、dsRNAに対する細胞応答を媒介しうる、PKR(dsRNA−responsive kinase)など、哺乳動物の酵素、および、潜在的に、レチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG−I)のほか、このような分子に応答してサイトカインの誘導を惹起しうる、Toll様受容体(TLR3、TLR7、およびTLR8など)が存在する(例えば、Angartら、Pharmaceuticals(Basel)、6巻(4号):440〜468頁(2013年);Kanastyら、Molecular Therapy、20巻(3号):513〜524頁(2012年);Burnettら、Biotechnol J.、6巻(9号):1130〜46頁(2011年);JudgeおよびMacLachlan、Hum Gene Ther、19巻(2号):111〜24頁(2008年)による総説;ならびにこれらにおいて引用されている参考文献を参照されたい)。
RNAの安定性を増強し、自然免疫応答を低減し、かつ/またはポリヌクレオチドの、ヒト細胞への導入であって、本明細書で記載される導入との関連で有用でありうる他の利益を達成するように、多種多様な修飾が、開発および適用されている(例えば、Whitehead KAら、Annual Review of Chemical and Biomolecular Engineering、2巻:77〜96頁(2011年);GaglioneおよびMessere、Mini Rev Med Chem、10巻(7号):578〜95頁(2010年);Chernolovskayaら、Curr Opin Mol Ther.、12巻(2号):158〜67頁(2010年);Deleaveyら、Curr Protoc Nucleic Acids Chem、16章:16.3部(2009年);Behlke、Oligonucleotides、18巻(4号):305〜19頁(2008年);Fuciniら、Nucleic Acid Ther、22巻(3号):205〜210頁(2012年);Bremsenら、Front Genet、3巻:154頁(2012年)による総説を参照されたい)。
上記で言及した通り、それらの多くが、siRNAの有効性を改善するようにデザインされた修飾に特化した、修飾RNAのいくつかの市販品の供給元が存在する。文献で報告されている多様な知見に基づき、様々な手法が提供されている。例えば、Dharmaconは、Kole、Nature Reviews Drug Discovery、11巻:125〜140頁(2012年)により報告されている通り、非架橋酸素の、硫黄(ホスホロチオエート、PS)による置きかえが、siRNAのヌクレアーゼ耐性を改善するのに使用されていることについて言及している。リボースの2’位の修飾は、ヌクレオチド間のリン酸結合のヌクレアーゼ耐性を改善する一方で、二重鎖の安定性(Tm)を増大させ、これはまた、免疫活性化からの保護をもたらすことも示されていることが報告されている。Soutschekら、Nature、432巻:173〜178頁(2004年)により報告されている通り、中程度のPS骨格の修飾の、小型の、十分に忍容される2’−置換(2’−O−メチル、2’−フルオロ、2’−ヒドロ)との組合せは、in vivoにおける適用のための、高度に安定的なsiRNAと関連しており、Volkov、Oligonucleotides、19巻:191〜202頁(2009年)により報告されている通り、2’−O−メチル修飾は、安定性の改善において有効であることが報告されている。自然免疫応答の誘導を減少させることとの関連で、特異的配列を、2’−O−メチル、2’−フルオロ、2’−ヒドロで修飾することは、TLR7/TLR8の相互作用を低減する一方で、一般に、サイレンシング活性を保存することが報告されている(例えば、Judgeら、Mol. Ther.、13巻:494〜505頁(2006年);およびCekaiteら、J. Mol. Biol.、365巻:90〜108頁(2007年)を参照されたい)。2−チオウラシル、シュードウラシル、5−メチルシトシン、5−メチルウラシル、およびN6−メチルアデノシンなどのさらなる修飾もまた、TLR3、TLR7、およびTLR8により媒介される免疫作用を最小化することが示されている(例えば、Kariko, K.ら、Immunity、23巻:165〜175頁(2005年)を参照されたい)。
また、当技術分野で公知であり、市販されている、いくつかのコンジュゲートであって、例えば、コレステロール、トコフェロール、および葉酸、脂質、ペプチド、ポリマー、リンカー、およびアプタマーを含み、それらの送達および/または細胞による取込みを増強しうるコンジュゲートを、本明細書での使用のための、RNAなどのポリヌクレオチドへと適用することができる(例えば、Winkler、Ther. Deliv.、4巻:791〜809頁(2013年)による総説、およびこれにおいて引用されている参考文献を参照されたい)。
コドンの最適化
部位特異的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、当技術分野で標準的な方法に従い、目的の標的DNAを含有する細胞内の発現のために、コドンを最適化することができる。例えば、意図された標的核酸が、ヒト細胞内にある場合、Cas9をコードする、コドンを最適化したヒトポリヌクレオチドを、Cas9ポリペプチドを産生するための使用に想定する。
ゲノムターゲティング核酸と部位特異的ポリペプチドとの複合体
ゲノムターゲティング核酸は、部位特異的ポリペプチド(例えば、Cas9など、核酸にガイドされるヌクレアーゼ)と相互作用し、これにより、複合体を形成する。ゲノムターゲティング核酸は、部位特異的ポリペプチドを、標的核酸へと導く。
RNP
部位特異的ポリペプチドおよびゲノムターゲティング核酸は各々、細胞または患者へと、個別に投与することができる。他方、部位特異的ポリペプチドは、1もしくは複数のガイドRNA、またはtracrRNAと併せた1もしくは複数のcrRNAと、あらかじめ複合体化させることができる。次いで、あらかじめ複合体化させた材料を、細胞または患者へと投与することができる。このようなあらかじめ複合体化させた材料は、リボヌクレオタンパク質粒子(RNP)として公知である。
系の構成要素をコードする核酸
本開示は、本開示のゲノムターゲティング核酸、本開示の部位特異的ポリペプチド、および/または本開示の方法の態様を実行するのに必要な、任意の核酸もしくはタンパク質性分子をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提示する。
本開示のゲノムターゲティング核酸、本開示の部位特異的ポリペプチド、および/または本開示の方法の態様を実行するのに必要な、任意の核酸もしくはタンパク質性分子をコードする核酸は、ベクター(例えば、組換え発現ベクター)を含みうる。
「ベクター」という用語は、それを連結した別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指す。ベクターの1つの種類は、さらなる核酸セグメントをライゲーションしうる、環状の二本鎖DNAループを指す、「プラスミド」である。ベクターの別の種類は、さらなる核酸セグメントを、ウイルスゲノムへとライゲーションしうる、ウイルスベクターである。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞内の自己複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター、および哺乳動物のエピソームベクター)。他のベクター(例えば、哺乳動物の非エピソームベクター)は、宿主細胞への導入時に、宿主細胞のゲノムへと組み込まれ、これにより、宿主ゲノムと共に複製される。
一部の例では、ベクターは、それらが作動的に連結された核酸の発現を導くことが可能でありうる。本明細書では、このようなベクターを、「組換え発現ベクター」、またはより簡単に、「発現ベクター」と称するが、これらは、同等の機能を果たす。
「作動可能に連結された」という用語は、目的のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現を可能とする形で、調節配列へと連結されていることを意味する。「調節配列」という用語は、例えば、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図する。当技術分野では、このような調節配列が周知であり、例えば、Goeddel、Gene Expression Technology、Methods in Enzymology、185巻、Academic Press、San Diego、CA(1990年)において記載されている。調節配列は、多くの種類の宿主細胞内のヌクレオチド配列の構成的発現を導く調節配列と、ある特定の宿主細胞内だけのヌクレオチド配列の発現を導く調節配列(例えば、組織特異的調節配列)とを含む。当業者は、発現ベクターのデザインが、標的細胞の選び出し、所望の発現レベルなどの因子に依存しうることを察知するであろう。
想定される発現ベクターは、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、レトロウイルス(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、ならびにラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、および乳腺腫瘍ウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクター)、および他の組換えベクターに基づくウイルスベクターを含むがこれらに限定されない。真核標的細胞のために想定される他のベクターは、ベクターである、pXT1、pSG5、pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVLSV40(Pharmacia)を含むがこれらに限定されない。真核標的細胞のために想定されるさらなるベクターは、図1A〜1Cに記載されているベクターである、pCTx−1、pCTx−2、およびpCTx−3を含むがこれらに限定されない。宿主細胞と適合性である限りにおいて、他のベクターを使用することができる。
一部の例では、ベクターは、1または複数の転写および/または翻訳制御エレメントを含みうる。利用される宿主/ベクター系に応じて、構成的および誘導的プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含む、いくつかの適切な転写および翻訳制御エレメントのいずれかを、発現ベクター内で使用することができる。ベクターは、ウイルス配列またはCRISPR機構もしくは他のエレメントの構成要素を不活化させる、自己不活化ベクターでありうる。
適切な真核プロモーター(すなわち、真核細胞内で機能的なプロモーター)の非限定的な例は、サイトメガロウイルス(CMV)即初期、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルスに由来するLTR(long terminal repeat)、ヒト伸長因子1プロモーター(EF1)、ニワトリベータ−アクチンプロモーター(CAG)へと融合させたサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーを含むハイブリッド構築物、マウス幹細胞ウイルスプロモーター(MSCV)、ホスホグリセリン酸キナーゼ−1ローカスプロモーター(PGK)、およびマウスメタロチオネインIに由来するプロモーターを含む。
Casエンドヌクレアーゼとの関連で使用されるガイドRNAを含む低分子RNAを発現するためには、例えば、U6およびH1を含む、RNAポリメラーゼIIIプロモーターなどの多様なプロモーターが有利でありうる。当技術分野では、このようなプロモーターの使用を増強することについての記載、およびこのためのパラメータが公知であり、さらなる情報および手法が、定期的に記載されている(例えば、Ma, H.ら、Molecular Therapy - Nucleic Acids、3巻、e161頁(2014年)、doi:10.1038/mtna.2014.12を参照されたい)。
発現ベクターはまた、翻訳開始のためのリボソーム結合性部位および転写ターミネーターも含有しうる。発現ベクターはまた、発現を増幅するのに適切な配列も含みうる。発現ベクターはまた、非天然タグ(例えば、ヒスチジンタグ、ヘマグルチニンタグ、緑色蛍光タンパク質など)をコードするヌクレオチド配列であって、部位特異的ポリペプチドへと融合させ、したがって、融合タンパク質をもたらすヌクレオチド配列も含みうる。
プロモーターは、誘導的プロモーター(例えば、熱ショックプロモーター、テトラサイクリン調節型プロモーター、ステロイド調節型プロモーター、金属調節型プロモーター、エストロゲン受容体調節型プロモーターなど)でありうる。プロモーターは、構成的プロモーター(例えば、CMVプロモーター、UBCプロモーター)でありうる。場合によって、プロモーターは、空間限定型および/または時間限定型プロモーター(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーターなど)でありうる。
本開示のゲノムターゲティング核酸および/または部位特異的ポリペプチドをコードする核酸は、細胞への送達のための送達媒体内またはその表面上にパッケージングすることができる。想定される送達媒体は、ナノスフェア、リポソーム、量子ドット、ナノ粒子、ポリエチレングリコール粒子、ハイドロゲル、およびミセルを含むがこれらに限定されない。様々なターゲティング部分を使用して、このような媒体の、所望される細胞型または場所との優先的な相互作用を増強することができる。
本開示の複合体、ポリペプチド、および核酸の、細胞への導入は、ウイルスまたはバクテリオファージ感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、電気穿孔、ヌクレオフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介型トランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介型トランスフェクション、リポソーム媒介型トランスフェクション、遺伝子銃技術、リン酸カルシウム沈殿、直接的マイクロインジェクション、ナノ粒子媒介型核酸送達などにより行うことができる。
送達
ガイドRNAポリヌクレオチド(RNAまたはDNA)および/またはエンドヌクレアーゼポリヌクレオチド(RNAまたはDNA)は、ウイルスにより送達することもでき、当技術分野で公知の非ウイルス性送達媒体により送達することもできる。代替的に、エンドヌクレアーゼポリペプチドを、電気穿孔または脂質ナノ粒子など、当技術分野で公知の非ウイルス性送達媒体により送達することができる。さらに代替的な態様では、DNAエンドヌクレアーゼを、1または複数のポリペプチド単独として送達することもでき、1もしくは複数のガイドRNA、またはtracrRNAと併せた、1もしくは複数のcrRNAとあらかじめ複合体化させた、1または複数のポリペプチドとして送達することもできる。
ポリヌクレオチドは、ナノ粒子、リポソーム、リボヌクレオタンパク質、正に帯電させたペプチド、低分子RNAコンジュゲート、アプタマー−RNAキメラ、およびRNA−融合タンパク質複合体を含むがこれらに限定されない、非ウイルス性送達媒体により送達することができる。一部の例示的な非ウイルス性送達媒体については、PeerおよびLieberman、Gene Therapy、18巻:1127〜1133頁(2011年)(これは、他のポリヌクレオチドの送達にもまた有用な、siRNAのための非ウイルス性送達媒体に焦点を当てている)において記載されている。
ガイドRNA、sgRNA、およびエンドヌクレアーゼをコードするmRNAなどのポリヌクレオチドは、脂質ナノ粒子(LNP)により、細胞または患者へと送達することができる。
LNPは、1000nm、500nm、250nm、200nm、150nm、100nm、75nm、50nm、または25nm未満の直径を有する任意の粒子を指す。代替的に、ナノ粒子は、1〜1000nm、1〜500nm、1〜250nm、25〜200nm、25〜100nm、35〜75nm、または25〜60nmのサイズの範囲でありうる。
LNPは、カチオン性脂質から作製することもでき、アニオン性脂質から作製することもでき、中性脂質から作製することもできる。融合性リン脂質であるDOPEまたは膜成分であるコレステロールなどの中性脂質を、トランスフェクション活性およびナノ粒子安定性を増強する「ヘルパー脂質」として、LNP中に組み入れることができる。カチオン性脂質の限界は、低い安定性および急速なクリアランスに起因する低い効能ならびに炎症性または抗炎症性応答の発生を含む。
LNPはまた、疎水性脂質から構成される場合もあり、親水性脂質から構成される場合もあり、疎水性脂質および親水性脂質の両方から構成される場合もある。
当技術分野で公知の、任意の脂質または脂質の組合せを使用して、LNPを作製することができる。LNPを作製するのに使用される脂質の例は、DOTMA、DOSPA、DOTAP、DMRIE、DC−コレステロール、DOTAP−コレステロール、GAP−DMORIE−DPyPE、およびGL67A−DOPE−DMPE−ポリエチレングリコール(PEG)である。カチオン性脂質の例は、98N12−5、C12−200、DLin−KC2−DMA(KC2)、DLin−MC3−DMA(MC3)、XTC、MD1、および7C1である。中性脂質の例は、DPSC、DPPC、POPC、DOPE、およびSMである。PEGで修飾された脂質の例は、PEG−DMG、PEG−CerC14、およびPEG−CerC20である。
脂質を、任意の数のモル比で組み合わせて、LNPを作製することができる。加えて、ポリヌクレオチドを、脂質と、広範にわたるモル比で組み合わせて、LNPを作製することができる。
既に言明した通り、部位特異的ポリペプチドおよびゲノムターゲティング核酸の各々を、細胞または患者へと、個別に投与することができる。他方、部位特異的ポリペプチドは、1もしくは複数のガイドRNA、またはtracrRNAと併せた1もしくは複数のcrRNAと、あらかじめ複合体化させることができる。次いで、あらかじめ複合体化させた材料を、細胞または患者へと投与することができる。このようなあらかじめ複合体化させた材料は、リボヌクレオタンパク質粒子(RNP)として公知である。
RNAは、RNAまたはDNAとの特異的相互作用を形成することが可能である。この特性は、多くの生物学的工程で利用されているが、核酸に富む細胞内環境における、無差別的な相互作用の危険性とも隣り合わせである。この問題に対する1つの解決法は、RNAを、エンドヌクレアーゼと、あらかじめ複合体化させる、リボヌクレオタンパク質粒子(RNP)の形成である。RNPの別の利益は、RNAの、分解からの保護である。
RNP内のエンドヌクレアーゼは、修飾することもでき、非修飾とすることもできる。同様に、gRNA、crRNA、tracrRNA、またはsgRNAは、修飾することもでき、非修飾とすることもできる。当技術分野では、多数の修飾が公知であり、使用することができる。
エンドヌクレアーゼと、sgRNAとは、1:1のモル比で組み合わせることができる。代替的に、エンドヌクレアーゼと、crRNAと、tracrRNAとは一般に、1:1:1のモル比で組み合わせることができる。しかし、広範にわたるモル比を使用して、RNPを作製することができる。
組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを、送達のために使用することができる。当技術分野では、パッケージングされるAAVゲノムであって、送達されるポリヌクレオチド、repおよびcap遺伝子、ならびにヘルパーウイルス機能を含むAAVゲノムを、細胞へともたらすrAAV粒子を作製する技法が標準的である。rAAVの作製は典型的に、以下の構成要素:rAAVゲノム、rAAVゲノムとは別個の(すなわち、rAAVゲノム内には存在しない)AAV repおよびcap遺伝子、ならびにヘルパーウイルス機能が、単一の細胞(本明細書では、パッケージング細胞と描示する)内に存在することを要求する。AAV repおよびcap遺伝子は、組換えウイルスを導出することができる、任意のAAV血清型に由来することが可能であり、rAAVゲノムITRとは異なるAAV血清型であって、AAV血清型である、AAV−1、AAV−2、AAV−3、AAV−4、AAV−5、AAV−6、AAV−7、AAV−8、AAV−9、AAV−10、AAV−11、AAV−12、AAV−13、およびAAV rh.74を含むがこれらに限定されないAAV血清型に由来しうる。偽型rAAVの作製については、例えば、国際特許出願公開第WO01/83692号に開示されている。表3を参照されたい。
パッケージング細胞を作出する方法は、AAV粒子を作製するために必要な構成要素の全てを安定的に発現する細胞株を創出するステップを伴う。例えば、AAV repおよびcap遺伝子を欠くrAAVゲノム、rAAVゲノムとは別個のAAV repおよびcap遺伝子、ならびにネオマイシン耐性遺伝子などの選択可能マーカーを含むプラスミド(または複数のプラスミド)を、細胞のゲノムへと組み込む。AAVゲノムは、GCテーリング(Samulskiら、1982年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、79巻:2077〜2081頁)、制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含有する合成リンカーの付加(Laughlinら、1983年、Gene、23巻:65〜73頁)などの手順により、または直接的平滑末端ライゲーション(SenapathyおよびCarter、1984年、J. Biol. Chem.、259巻:4661〜4666頁)により、細菌プラスミドへと導入されている。次いで、パッケージング細胞株に、アデノウイルスなどのヘルパーウイルスを感染させることができる。この方法の利点は、細胞が選択可能であり、rAAVの大スケールの作製に適することである。適切な方法の他の例は、プラスミドではなく、アデノウイルスまたはバキュロウイルスを利用して、rAAVゲノムならびに/またはrepおよびcap遺伝子を、パッケージング細胞へと導入する。
rAAV作製の一般原理については、例えば、Carter、1992年、Current Opinions in Biotechnology、1533〜539頁;およびMuzyczka、1992年、Curr. Topics in Microbial. and Immunol.、158巻:97〜129頁において総説されている。多様な手法については、Ratschinら、Mol. Cell. Biol.、4巻:2072頁(1984年);Hermonatら、Proc. Natl. Acad.、Sci. USA、81巻:6466頁(1984年);Tratschinら、Mol. Cell. Biol.、5巻:3251頁(1985年);McLaughlinら、J. Virol.、62巻:1963頁(1988年);およびLebkowskiら、1988年、Mol. Cell. Biol.、7巻:349頁(1988年)において記載されている。Samulskiら(1989年、J. Virol.、63巻:3822〜3828頁);米国特許第5,173,414号;WO95/13365および対応する米国特許第5,658,776号;WO95/13392;WO96/17947;PCT/US98/18600;WO97/09441(PCT/US96/14423);WO97/08298(PCT/US96/13872);WO97/21825(PCT/US96/20777);WO97/06243(PCT/FR96/01064);WO99/11764;Perrinら(1995年)、Vaccine、13巻:1244〜1250頁;Paulら(1993年)、Human Gene Therapy、4巻:609〜615頁;Clarkら(1996年)、Gene Therapy、3巻:1124〜1132頁;米国特許第5,786,211号;米国特許第5,871,982号;および米国特許第6,258,595号。
AAVベクターの血清型は、標的細胞型とマッチさせることができる。例えば、以下の例示的な細胞型にはとりわけ、表示のAAV血清型を形質導入することができる。表4を参照されたい。
遺伝子改変細胞
「遺伝子改変細胞」という用語は、ゲノム編集(例えば、CRISPR/Cas系を使用する)により導入される、少なくとも1つの遺伝子改変を含む細胞を指す。本明細書の、一部のex vivo例では、遺伝子改変細胞は、遺伝子改変始原細胞でありうる。本明細書の、一部のin vivo例では、遺伝子改変細胞は、遺伝子改変筋細胞または遺伝子改変筋前駆細胞でありうる。本明細書では、外因性ゲノムターゲティング核酸および/またはゲノムターゲティング核酸をコードする外因性核酸を含む遺伝子改変細胞が想定される。
「対照で処置された集団」という用語は、ゲノム編集の構成要素の付加を除き、同一な培地、ウイルスによる誘導、核酸配列、温度、コンフルエンシー、フラスコサイズ、pHなどで処置された細胞の集団について記載する。当技術分野で公知の任意の方法、例えば、ジストロフィンタンパク質についてのウェスタンブロット解析、またはジストロフィンmRNAの定量化を使用して、ジストロフィンのリーディングフレームの修復を測定することができる。
「単離細胞」という用語は、それが元来見出される生物から取り出された細胞、またはこのような細胞の子孫を指す。任意選択で、細胞は、in vitroにおいて、例えば、規定された条件下、または他の細胞の存在下で培養することができる。任意選択で、細胞は、後に、第2の生物へと導入することもでき、それが単離された生物(またはそれを子孫とする細胞)へと再導入することもできる。
細胞の単離集団に関する「単離集団」という用語は、混合細胞集団または異質細胞集団から、取り出され、分離された細胞集団を指す。場合によって、単離集団は、細胞がそこから単離されるかまたは濃縮された異質集団と比較して、実質的に純粋な細胞集団でありうる。場合によって、単離集団は、ヒト始原細胞の単離集団、例えば、ヒト始原細胞と、ヒト始原細胞がそこから導出された細胞とを含む異質細胞集団と比較して、実質的に純粋なヒト始原細胞の集団でありうる。
特定の細胞集団に関する、「実質的に増強された」という用語は、特定の種類の細胞の発生が、例えば、DMDを改善するための、このような細胞の所望のレベルに応じて、既存のまたは基準レベルと比べて、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも400倍、少なくとも1000倍、少なくとも5000倍、少なくとも20000倍、少なくとも100000倍、またはこれを超える倍数だけ増大する細胞集団を指す。
特定の細胞集団に関する「実質的に濃縮された」という用語は、全細胞集団を構成する細胞に照らして、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、またはこれを超える細胞集団を指す。
特定の細胞集団に関する「実質的に純粋」という用語は、全細胞集団を構成する細胞に照らして、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%純粋である細胞集団を指す。すなわち、始原細胞集団に関して、「実質的に純粋」または「本質的に精製された」という用語は、本明細書の用語により規定される始原細胞ではない細胞であって、約20%、約15%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、または1%未満より少数の細胞を含有する細胞集団を指す。
矯正iPSCの、Pax7+筋始原細胞への分化
本開示のex vivo方法の別のステップは、矯正iPSCを、Pax7+筋始原細胞へと分化させることを伴う。分化させるステップは、当技術分野で公知の任意の方法に従い実施することができる。例えば、分化させるステップは、Chal、Oginumaら、2015年において示される通り、ゲノム編集されたiPSCを、低分子薬物を含む特異的培地処方物と接触させて、Pax7+筋始原細胞へと分化させることを含みうる。代替的に、iPSC、筋原性始原細胞、および他の系統の細胞は、Tapscott、Davisら、1988年;Langen、Scholsら、2003年;Fujita、Endoら、2010年;Xu、Tabebordbarら、2013年;Shoji、Woltjenら、2015年の方法において示される通り、トランス遺伝子の過剰発現、血清枯渇、および/または低分子薬物を伴う、いくつかの確立された方法のうちの任意の1つを使用して、筋肉へと分化させることができる。
Pax7+筋始原細胞の、患者への植込み
本開示のex vivo方法の別のステップは、Pax7+筋始原細胞を、患者へと植え込むことを伴う。この植え込むステップは、当技術分野で公知の任意の植込み法を使用して達することができる。例えば、遺伝子改変細胞を、患者の筋肉に直接注射することができる。
薬学的に許容される担体
本明細書で想定される、始原細胞を対象へと投与するex vivo方法は、始原細胞を含む治療用組成物の使用を伴う。
治療用組成物は、細胞組成物と併せた、生理学的に忍容可能な担体と、任意選択で、本明細書で記載される、少なくとも1つのさらなる生体活性薬剤であって、その中に、有効成分として溶解または分散させた生体活性薬剤とを含有しうる。場合によって、治療用組成物は、治療目的で、哺乳動物またはヒト患者へと投与される場合、そうであることが所望されない限りにおいて、実質的に免疫原性ではない。
一般に、本明細書で記載される始原細胞は、薬学的に許容される担体を伴う懸濁液として投与することができる。当業者は、細胞組成物中で使用される、薬学的に許容される担体は、緩衝剤、化合物、低温保存剤、保存剤、または他の薬剤を、対象へと送達される細胞の生存率に実質的に干渉する量では含みえないことを認識しうる。細胞を含む製剤は、例えば、細胞膜の完全性の維持を可能とする浸透圧緩衝剤と、任意選択で、細胞生存率を維持するか、または投与時における生着を増強する栄養物質とを含みうる。このような処方物および懸濁液は、当業者に公知であり、かつ/または規定の実験を使用して、本明細書で記載される始原細胞を伴う使用に適合させることができる。
細胞組成物はまた、乳化手順が、細胞の生存率に有害な影響を及ぼさないことを条件として、乳化することもでき、リポソーム組成物として提示することもできる。細胞および任意の他の有効成分は、薬学的に許容され、有効成分に対して適合性であり、本明細書で記載される治療法における使用に適する量の賦形剤と混合することができる。
細胞組成物中に含まれるさらなる薬剤は、その中の成分の薬学的に許容される塩を含みうる。薬学的に許容される塩は、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸により形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基により形成される)を含む。遊離カルボキシル基により形成される塩はまた、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基に由来しうる。
当技術分野では、生理学的に忍容可能な担体が周知である。例示的な液体担体は、有効成分および水に加えて、材料を含有しないか、または、生理学的pH値のリン酸ナトリウム、生理学的生理食塩液、またはリン酸緩衝生理食塩液など、これらの両方などの緩衝剤を含有する滅菌水溶液である。なおさらに、水性担体は、1つを超える緩衝液塩のほか、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムなどの塩、デキストロース、ポリエチレングリコール、および他の溶質を含有しうる。液体組成物はまた、水に加えた液相および水を除く液相も含有しうる。このようなさらなる液相の例は、グリセリン、綿実油などの植物油、および水−油エマルジョンである。特定の障害または状態の処置において有効な細胞組成物中で使用される活性化合物の量は、障害または状態の性格に依存する場合があり、標準的な臨床法により決定することができる。
投与および効能
所望の効果をもたらすような、損傷または修復部位など、所望の部位における、導入された細胞の、少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路による、細胞、例えば、始原細胞の、対象への移入の文脈では、「〜を投与すること」、「〜を導入すること」、および「〜を植え込むこと」という用語は、互換的に使用される。細胞、例えば、始原細胞、またはそれらの分化した後代を、対象における所望の場所への送達をもたらす、任意の適切な経路により投与することができ、この場合、植え込まれた細胞または細胞の構成要素のうちの少なくとも一部は、依然として生存可能なままである。対象への投与後における細胞生存期間は、数時間、例えば、24時間という短時間〜数日間〜数年間、またはさらに患者の生涯という長期間、すなわち、長期にわたる生着でありうる。例えば、本明細書で記載される一部の態様では、有効量の筋原性始原細胞を、腹腔内または静脈内経路などの全身投与経路を介して投与する。
本明細書では、「個体」、「対象」、「宿主」、および「患者」という用語が、互換的に使用され、診断、処置、または治療が所望される任意の対象を指す。一部の態様では、対象は、哺乳動物である。一部の態様では、対象は、ヒトである。
予防的に施される場合、本明細書で記載される始原細胞は、対象へと、DMDの任意の症状に先立ち、例えば、筋量減少の発生の前に投与することができる。したがって、筋始原細胞集団の予防的投与は、DMDを防止するように用いられうる。
治療的に施される場合、筋始原細胞は、DMDの症状または兆候の発症時(または発症後)に、例えば、筋量減少の発症時に施すことができる。
本明細書で記載される方法に従い投与される筋始原細胞集団は、1または複数のドナーから得られた、同種筋始原細胞を含みうる。「同種」とは、同じ種の1または複数の異なるドナーから得られた、筋始原細胞または筋始原細胞を含む生物学的試料であって、1または複数のローカスにおける遺伝子が同一ではない、筋始原細胞または筋始原細胞を含む生物学的試料を指す。例えば、対象へと投与される筋始原細胞集団は、1または複数の非類縁ドナー対象に由来する場合もあり、1または複数の同一でない同胞種に由来する場合もある。場合によって、遺伝子的に同一な動物、または一卵性双生児から得られた集団など、同系筋始原細胞集団も使用することができる。筋始原細胞は、自家細胞の場合もある、すなわち、筋始原細胞を、対象から得るか、または単離し、同じ対象へと投与する、すなわち、ドナーとレシピエントとは同じである。
「有効量」という用語は、DMDの、少なくとも1つまたは複数の徴候または症状を防止または緩和するのに必要とされる、始原細胞またはそれらの後代の集団の量を指し、所望の効果をもたらす、例えば、DMDを有する対象を処置するのに十分な、組成物の量に関する。したがって、「治療有効量」という用語は、DMDを有するか、またはその危険性がある対象など典型的な対象へと投与されると、特定の効果を促進するのに十分な、始原細胞または始原細胞を含む組成物の量を指す。有効量はまた、疾患の症状の発生を防止するかもしくは遅延させるか、疾患の症状の経過を変更する(例えば、疾患の症状の進行を緩徐化させることであるが、これに限定されない)か、または疾患の症状を逆行させるのに十分な量も含むであろう。任意の所与の場合について、適切な「有効量」とは、規定の実験を使用して、当業者により決定されうることが理解される。
本明細書で記載される多様な態様における使用のために、有効量の始原細胞は、始原細胞少なくとも102個、始原細胞少なくとも5×102個、始原細胞少なくとも103個、始原細胞少なくとも5×103個、始原細胞少なくとも104個、始原細胞少なくとも5×104個、始原細胞少なくとも105個、始原細胞少なくとも2×105個、始原細胞少なくとも3×105個、始原細胞少なくとも4×105個、始原細胞少なくとも5×105個、始原細胞少なくとも6×105個、始原細胞少なくとも7×105個、始原細胞少なくとも8×105個、始原細胞少なくとも9×105個、始原細胞少なくとも1×106個、始原細胞少なくとも2×106個、始原細胞少なくとも3×106個、始原細胞少なくとも4×106個、始原細胞少なくとも5×106個、始原細胞少なくとも6×106個、始原細胞少なくとも7×106個、始原細胞少なくとも8×106個、始原細胞少なくとも9×106個、またはこれらの倍数個を含む。始原細胞は、1または複数のドナーから導出することもでき、自家供給源から得ることもできる。本明細書で記載される一部の例では、始原細胞は、それを必要とする対象への投与の前に、培養物中で拡大することができる。
DMDを有する患者の細胞内で発現する機能的ジストロフィンのレベルを、わずかずつ、徐々に上昇させることは、疾患の1もしくは複数の症状を改善し、長期にわたる生存を増大させ、かつ/または他の処置と関連する副作用を低減するために有益でありうる。このような細胞の、ヒト患者への投与時には、機能的ジストロフィンレベルの上昇をもたらす、筋始原細胞の存在が有益である。場合によって、対象の有効な処置は、処置される対象における総ジストロフィンと比べて、少なくとも約3%、5%、または7%の機能的ジストロフィンをもたらす。一部の例では、機能的ジストロフィンは、総ジストロフィンのうちの、少なくとも約10%であろう。一部の例では、機能的ジストロフィンは、総ジストロフィンのうちの、少なくとも約20%〜30%であろう。同様に、一部の状況では、正常化された細胞は、罹患細胞と比べて選択的利点を有するため、機能的ジストロフィンレベルを顕著に上昇させた細胞の、比較的限定的な亜集団の導入であってもなお、多様な患者において、有益でありうる。しかし、わずかなレベルの筋始原細胞であっても、機能的ジストロフィンレベルを上昇させた筋始原細胞は、患者におけるDMDの1または複数の側面を改善するために有益でありうる。一部の例では、このような細胞を投与した患者における筋始原細胞のうちの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、またはこれを超える筋始原細胞は、高レベルの機能的ジストロフィンを産生している。
「投与された」とは、所望の部位において、細胞組成物の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路による、始原細胞組成物の、対象への送達を指す。細胞組成物は、対象において有効な処置をもたらす、任意の適切な経路により、すなわち、対象における所望の位置への送達をもたらす投与であって、送達される組成物のうちの少なくとも一部、すなわち、細胞少なくとも1×104個を、所望の部位へと、ある期間にわたり送達する投与により投与することができる。投与方式は、注射、注入、点滴、または内服を含む。「注射」は、限定せずに述べると、静脈内、筋内、動脈内、髄腔内、心室内、関節包内、眼窩内、心内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内注、脳脊髄内、ならびに胸骨内(intrasternal)注射および注入を含む。一部の例では、経路は静脈内である。細胞を送達するためには、注射または注入による投与を行うことができる。
細胞は、全身投与される。「全身投与」、「全身投与された」、「末梢投与」、および「末梢投与された」という語句は、始原細胞の集団の、標的部位、組織、または臓器への直接投与以外の投与であって、代わりに、それが、対象の循環系に入り、したがって、代謝および他の同様の過程下に置かれるような投与を指す。
当業者は、DMDを処置するための組成物を含む処置の効能を決定しうる。しかし、ごく一例として述べると、機能的ジストロフィンのレベルの徴候または症状の任意の1つまたは全てが、有益な形で変更される(例えば、少なくとも10%上昇する)か、または疾患の、他の臨床的に許容される症状もしくはマーカーが、改善されるかまたは軽快する場合に、処置は、「有効な処置」と考えられる。効能はまた、入院または医療的介入の必要により評価される、個体の非悪化(例えば、筋量の減少が軽減されるか、または疾患の進行が止まるか、もしくは少なくとも緩徐化する)により測定することもできる。これらの指標を測定する方法は、当業者に公知であり、かつ/または本明細書で記載されている。処置は、個体または動物(一部の非限定的な例は、ヒトまたは哺乳動物を含む)における、疾患の任意の処置を含み、(1)疾患の阻害、例えば、症状の進行を止めるか、もしくは緩徐化させること;または(2)疾患を和らげること、例えば、症状の減退を引き起こすこと;および(3)症状の発症の可能性を防止または低減することを含む。
本開示に従う処置は、個体における機能的ジストロフィンの量を増大させることにより、DMDと関連する1または複数の症状を軽快させうる。DMDと典型的に関連する初期の徴候は、例えば、歩行の遅延、腓筋の肥大(瘢痕組織に起因する)、および高頻度の転倒を含む。疾患が進行するにつれて、小児は、筋量の減少および疼痛に起因して、車椅子に束縛されるようになる。疾患は、心臓および/または呼吸器の合併症に起因して、致死性となる。
キット
本開示は、本明細書で記載される方法を実行するためのキットを提示する。キットは、ゲノムターゲティング核酸、ゲノムターゲティング核酸をコードするポリヌクレオチド、部位特異的ポリペプチド、部位特異的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/または本明細書で記載される方法の態様を実行するのに必要な、任意の核酸もしくはタンパク質性分子のうちの1または複数、あるいはこれらの任意の組合せを含みうる。
キットは、(1)ゲノムターゲティング核酸をコードするヌクレオチド配列を含むベクターと、(2)部位特異的ポリペプチドまたは部位特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むベクターと、(3)ベクターおよび/またはポリペプチドを修復および/または希釈するための試薬とを含みうる。
キットは、(1)(i)ゲノムターゲティング核酸をコードするヌクレオチド配列、および(ii)部位特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むベクターと、(2)ベクターを修復および/または希釈するための試薬とを含みうる。
キットのうちの一部では、キットは、単一分子ゲノムターゲティングガイド核酸を含みうる。上記のキットのうちのいずれかでは、キットは、二重分子ゲノムターゲティング核酸を含みうる。キットのうちのいずれかでは、キットは、2つまたはこれを超える、二重分子ガイドまたは単一分子ガイドを含みうる。キットは、核酸ターゲティング核酸をコードするベクターを含みうる。
キットのうちのいずれかでは、キットは、所望の遺伝子改変を生じさせるように挿入されるポリヌクレオチドをさらに含みうる。
キットの構成要素は、別個の容器内の場合もあり、単一の容器内で組み合わせる場合もある。
任意のキットは、1または複数のさらなる試薬をさらに含む場合があるが、この場合、このようなさらなる試薬は、緩衝液、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを細胞へと導入するための緩衝液、洗浄緩衝液、対照試薬、対照ベクター、対照RNAポリヌクレオチド、DNAからのポリペプチドのin vitroにおける作製のための試薬、シークエンシングのためのアダプターなどから選択される。緩衝液は、安定化緩衝液、修復緩衝液、希釈緩衝液などでありうる。キットはまた、オン標的への結合もしくはエンドヌクレアーゼによるDNAの切断を容易とするかもしくは増強するか、またはターゲティングの特異性を改善するのに使用しうる、1または複数の構成要素も含みうる。
上記で言及した構成要素に加えて、キットは、キットの構成要素を使用して、方法を実施するための指示書をさらに含みうる。方法を実施するための指示書は、適切な記録媒体上に記録することができる。例えば、指示書は、紙またはプラスチックなどの基板上に印刷することができる。指示書は、キット内に、パッケージ添付文書として存在する場合もあり、キットまたはその構成要素の容器(すなわち、パッケージングまたは部分パッケージングと関連する)の表示中に存在する場合などもある。指示書は、適切なコンピュータ読取り用保存媒体、例えば、CD−ROM、ディスケット、フラッシュドライブなどに存在する電子保存データファイルとして存在しうる。一部の場合には、実際の指示書は、キット内に存在しないが、遠隔の供給源から、指示書を得る(例えば、インターネットを介して)ための手段を提供することができる。この場合の例は、指示書を閲覧することができ、かつ/または指示書をダウンロードしうるウェブアドレスを含むキットである。指示書と同様に、指示書を得るためのこの手段は、適切な基板上に記録することができる。
ガイドRNA製剤
本開示のガイドRNAは、特定の投与方式および剤形に応じて、担体、溶媒、安定化剤、アジュバント、希釈剤など、薬学的に許容される賦形剤と共に製剤化することができる。ガイドRNA組成物は、製剤および投与経路に応じて、生理学的に適合性のpHを達成し、約3のpH〜約11のpH、pH約3〜pH約7の範囲となるように製剤化することができる。場合によって、pHは、pH約5.0〜pH約8の範囲に調整することができる。場合によって、組成物は、本明細書で記載される、治療有効量の少なくとも1つの化合物を、1または複数の薬学的に許容される賦形剤と併せて含みうる。任意選択で、組成物は、本明細書で記載される化合物の組合せを含む場合もあり、細菌の増殖の処理または防止において有用な、第2の有効成分(例えば、かつ、限定なしに述べると、抗菌剤または抗微生物剤)を含む場合もあり、本開示の試薬の組合せを含む場合もある。
適切な賦形剤は、例えば、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および不活性ウイルス粒子など、大型で、ゆっくりと代謝される高分子を含む担体分子を含む。他の例示的な賦形剤は、抗酸化剤(例えば、かつ、限定なしに述べると、アスコルビン酸)、キレート化剤(例えば、かつ、限定なしに述べると、EDTA)、炭水化物(例えば、かつ、限定なしに述べると、デキストリン、ヒドロキシアルキルセルロース、およびヒドロキシアルキルメチルセルロース)、ステアリン酸、液体(例えば、かつ、限定なしに述べると、油、水、生理食塩液、グリセロール、およびエタノール)、保湿剤または乳化剤、pH緩衝物質などを含みうる。
他の可能な治療法
遺伝子編集は、特異的配列をターゲティングするように操作されたヌクレアーゼを使用して行うことができる。現在のところ、ヌクレアーゼの4つ主要な種類:メガヌクレアーゼおよびそれらの誘導体、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ならびにCRISPR−Cas9ヌクレアーゼ系が存在する。特に、ZFNおよびTALENの特異性が、タンパク質−DNA間相互作用を介するのに対し、RNA−DNA間相互作用は、主にCas9をガイドするので、ヌクレアーゼプラットフォームは、デザインの難易度、ターゲティングの密度、および作用方式にばらつきがある。Cas9による切断はまた、異なるCRISPR系の間で異なる隣接モチーフである、PAMも要求する。Streptococcus pyogenesに由来するCas9は、NGGであるPAMを使用して切断し、Neisseria meningitidisに由来するCRISPRは、NNNNGATT、NNNNNGTTT、およびNNNNGCTTを含むPAMを伴う部位において切断しうる。いくつかの他のCas9オーソログは、代替的なPAMと隣接するプロトスペーサーをターゲティングする。
本開示の方法では、Cas9などのCRISPRエンドヌクレアーゼを使用することができる。しかし、治療のための標的部位など、本明細書で記載される教示は、ZFN、TALEN、HE、またはMegaTALなど、エンドヌクレアーゼの他の形態へと適用することもでき、ヌクレアーゼの組合せの使用へと適用することもできる。しかし、本開示の教示を、このようなエンドヌクレアーゼへと適用するためには、とりわけ、特異的標的部位へと導かれるタンパク質を操作することが必要となろう。
さらなる結合性ドメインをCas9タンパク質へと融合させて、特異性を増大させることができる。これらの構築物の標的部位は、同定されたgRNA指定部位へとマップされるが、亜鉛フィンガードメインなどのための、さらなる結合モチーフを要求するであろう。Mega−TALの場合は、メガヌクレアーゼを、TALE DNA結合性ドメインへと融合させることができる。メガヌクレアーゼドメインは、特異性を増大させ、切断をもたらしうる。同様に、不活化Cas9またはdead Cas9(dCas9)は、切断ドメインへと融合させることができ、これは、sgRNA/Cas9標的部位と、融合させたDNA結合性ドメインのための隣接結合性部位とを要求する。これは、さらなる結合性部位がなければ、結合を減少させるように、触媒性の不活化に加えて、dCas9の何らかのタンパク質操作を要求する可能性が高い。
亜鉛フィンガーヌクレアーゼ
亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)とは、II型エンドヌクレアーゼであるFokIの触媒性ドメインへと連結された、操作亜鉛フィンガーDNA結合性ドメインから構成されるモジュラータンパク質である。FokIは、二量体としてだけ機能するため、1対のZFNを、逆DNA鎖上にあり、それらの間に正確な間隔を伴う、コグネイトの標的「半部位」配列に結合するように操作して、触媒的に活性のFokI二量体の形成を可能としなければならない。それ自体では配列特異性を有さないFokIドメインが二量体化すると、ZFN半部位間で、ゲノム編集における開始ステップとして、DNA二本鎖切断が作出される。
各ZFNのDNA結合性ドメインは、夥多なCys2−His2アーキテクチャーによる、3〜6つの亜鉛フィンガーであって、各フィンガーが、標的DNA配列の1つの鎖のヌクレオチドのトリプレットを主に認識する亜鉛フィンガーから構成されることが典型的であるが、4番目のヌクレオチドとの交差相互作用もまた、重要でありうる。DNAとの鍵となる接触点を作る位置における、フィンガーのアミノ酸の変更は、所与のフィンガーの配列特異性を変更する。したがって、4フィンガーによる亜鉛フィンガータンパク質は、12bpの標的配列を選択的に認識するが、この場合、トリプレットの優先性は、可変的な程度で、隣接するフィンガーの影響を受けうるが、標的配列は、各フィンガーが寄与するトリプレット優先性の複合物である。ZFNの重要な側面は、個々のフィンガーを修飾するだけで、ほぼ任意のゲノムアドレスへと、たやすく再ターゲティングしうるが、これを十分に行うには、かなりの熟練が要求されることである。ZFNの大半の適用では、それぞれ、12〜18bpずつを認識する、4〜6フィンガーのタンパク質が使用される。よって、1対のZFNは、24〜36bpの標的配列の組合せであって、半部位間の、典型的に5〜7bpのスペーサーを含まない組合せを認識することが典型的であろう。結合性部位は、15〜17bpを含む大型のスペーサーにより、さらに分離することができる。この長さの標的配列は、デザイン工程時に、リピートの配列または遺伝子の相同体を除外することを仮定すると、ヒトゲノム内で固有である可能性が高い。しかしながら、ZFNタンパク質−DNA間相互作用は、それらの特異性において絶対的ではないので、オフ標的結合および切断イベントが、2つのZFNの間のヘテロ二量体、またはZFNの一方もしくは他方によるホモ二量体として生じる。後者の可能性は、互いとだけ二量体化することが可能であり、それら自体では二量体化しえない、偏性ヘテロ二量体変異体としてもまた公知の、「プラス」および「マイナス」変異体を創出するように、FokIドメインの二量体化界面を操作することにより効果的に排されている。偏性ヘテロ二量体を強いることにより、ホモ二量体の形成が防止される。これは、ZFN、ならびにこれらのFokI変異体を採用する任意の他のヌクレアーゼの特異性を大いに増強している。
当技術分野では、様々なZFNベースの系が記載されており、それらの改変は、定期的に報告され、多数の参考文献が、ZFNのデザインを導くのに使用される規則およびパラメータについて記載している(例えば、Segalら、Proc Natl Acad Sci USA、96巻(6号):2758〜63頁(1999年);Dreier Bら、J Mol Biol.、303巻(4号):489〜502頁(2000年);Liu Qら、J Biol Chem.、277巻(6号):3850〜6頁(2002年);Dreierら、J Biol Chem、280巻(42号):35588〜97頁(2005年);およびDreierら、J Biol Chem.、276巻(31号):29466〜78頁(2001年)を参照されたい)。
転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)
TALENとは、モジュラーヌクレアーゼの別のフォーマットであって、ZFNと同様に、操作されたDNA結合性ドメインを、FokIヌクレアーゼドメインへと連結し、1対のTALENが、タンデムに作動して、ターゲティングされたDNA切断を達成するフォーマットを表す。ZFNとの主要な差違は、DNA結合性ドメインおよび関連する標的DNA配列認識特性の性格である。TALENのDNA結合性ドメインは、元来、植物の細菌性病原体であるXanthomonas sp.において記載された、TALEタンパク質に由来する。TALEは、33〜35アミノ酸のリピートによるタンデムアレイであって、典型的には、最大で20bpの長さの標的DNA配列であり、全標的配列の長さを最大で40bpとする、標的DNA配列内の単一の塩基対を、各リピートが認識するタンデムアレイから構成される。各リピートのヌクレオチド特異性は、12および13位における、2つのアミノ酸だけを含む、RVD(repeat variable diresidue)により決定される。塩基である、グアニン、アデニン、シトシン、およびチミンは主に、4つのRVD:それぞれ、Asn−Asn、Asn−Ile、His−Asp、およびAsn−Glyにより認識される。これは、亜鉛フィンガーの場合より、はるかに単純な認識コードを構成し、したがって、ヌクレアーゼデザインのために、後者を上回る利点を表す。しかしながら、ZFNと同様に、TALENのタンパク質−DNA間相互作用は、それらの特異性において絶対的ではなく、TALENもまた、オフ標的活性を低減するように、FokIドメインの偏性ヘテロ二量体変異体の使用から利益を得ている。
それらの触媒機能を失活させた、FokIドメインのさらなる変異体も創出されている。TALENまたはZFN対の片方が、不活性のFokIドメインを含有する場合は、標的部位において、DSBではなく、一本鎖DNA切断(ニッキング)だけが生じるであろう。結果は、Cas9切断ドメインのうちの一方を失活させた、CRISPR/Cas9/Cpf1の「ニッカーゼ」突然変異体の使用と同等である。DNAニックを使用して、HDRによるゲノム編集を駆動しうるが、効率は、DSBによる場合より低下する。主要な利益は、オフ標的のニックは、NHEJにより媒介される誤修復を受けやすいDSBと異なり、迅速かつ正確に修復されることである。
当技術分野では、様々なTALENベースの系が記載されており、それらの改変も、定期的に報告されている(例えば、Boch、Science、326巻(5959号):1509〜12頁(2009年);Makら、Science、335巻(6069号):716〜9頁(2012年);およびMoscouら、Science、326巻(5959号):1501頁(2009年)を参照されたい)。「GoldenGate」プラットフォームまたはクローニングスキームに基づくTALENの使用については、複数のグループにより記載されている(例えば、Cermakら、Nucleic Acids Res.、39巻(12号):e82頁(2011年);Liら、Nucleic Acids Res.、39巻(14号):6315〜25頁(2011年);Weberら、PLoS One.、6巻(2号):e16765頁(2011年);Wangら、J Genet Genomics、41巻(6号):339〜47頁、Epub、2014年5月17日(2014年);およびCermak Tら、Methods Mol Biol.、1239巻:133〜59頁(2015年)を参照されたい)。
ホーミングエンドヌクレアーゼ
ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)とは、長い認識配列(14〜44塩基対)を有し、DNAを、高特異性で切断する(ゲノム内の固有の部位であることが多い)、配列特異的エンドヌクレアーゼである。HEの、少なくとも6つの公知のファミリーであって、真核生物、原生生物、細菌、古細菌、シアノバクテリア、およびファージを含む、広範囲にわたる宿主に由来するLAGLIDADG(配列番号1,410,474)、GIY−YIG、His−Cisボックス、H−N−H、PD−(D/E)xK、およびVsr様を含む、それらの構造により分類されるファミリーが存在する。ZFNおよびTALENと同様に、HEを使用して、ゲノム編集における最初のステップとして、標的ローカスにおけるDSBを創出することができる。加えて、一部の天然および操作HEは、DNAの単一の鎖だけを切断し、これにより、部位特異的ニッカーゼとして機能する。HEの大型の標的配列およびそれらがもたらす特異性のために、HEは、部位特異的DSBを創出するのに魅力的な候補物質となっている。
当技術分野では、様々なHEベースの系が記載されており、それらの改変は、定期的に報告されている(例えば、Steentoftら、Glycobiology、24巻(8号):663〜80頁(2014年);BelfortおよびBonocora、Methods Mol Biol.、1123巻:1〜26頁(2014年);HafezおよびHausner、Genome、55巻(8号):553〜69頁(2012年)による総説;ならびにこれらにおいて引用されている参考文献を参照されたい)。
MegaTAL/Tev−mTALEN/MegaTev
ハイブリッド体のヌクレアーゼのさらなる例として、MegaTALプラットフォームおよびTev−mTALENプラットフォームは、TALE DNA結合性ドメインと、触媒的に活性のHEとの融合体を使用し、微調整可能なDNA結合およびTALEの特異性の両方、ならびにHEの切断配列特異性を利用する(例えば、Boisselら、NAR、42巻:2591〜2601頁(2014年);Kleinstiverら、G3、4巻:1155〜65頁(2014年);ならびにBoisselおよびScharenberg、Methods Mol. Biol.、1239巻:171〜96頁(2015年)を参照されたい)。
さらなる変化形では、MegaTevアーキテクチャーは、メガヌクレアーゼ(Mega)の、GIY−YIGホーミングエンドヌクレアーゼに由来するヌクレアーゼドメインである、I−TevI(Tev)との融合体である。2つの活性部位は、DNA基質で、約30bp離れて位置し、非適合性の粘着末端を伴う2つのDSBを発生させる(例えば、Wolfsら、NAR、42巻、8816〜29頁(2014年)を参照されたい)。既存のヌクレアーゼベースの手法の他の組合せが進化し、本明細書で記載される、ターゲティングされたゲノム修飾の達成において有用となることが予期される。
dCas9−FokIまたはdCpf1−Fok1および他のヌクレアーゼ
上記で記載したヌクレアーゼプラットフォームの構造的特性と機能的特性とを組み合わせることにより、ゲノム編集のためのさらなる手法であって、固有の欠点のうちの一部を潜在的に克服しうる手法を提供する。例として述べると、CRISPRによるゲノム編集系は、単一のCas9エンドヌクレアーゼを使用して、DSBを創出することが典型的である。ターゲティングの特異性は、標的DNA(S.pyogenesに由来するCas9の場合、隣接するNAGまたはNGGであるPAM配列内のさらなる2塩基を加えた)とのワトソン−クリック型塩基対合を経るガイドRNA内の、20または24ヌクレオチドの配列により駆動される。このような配列は、ヒトゲノム内では、固有となるのに十分に長いが、RNA/DNA間相互作用の特異性は絶対的ではなく、場合によって、顕著な無差別性が、特に、標的配列の5’側において許容され、特異性を駆動する塩基の数を有効に低減する。これに対する1つの解決法は、Cas9またはCpf1の触媒性機能を完全に失活させる(RNAにガイドされるDNA結合機能だけを保持しながら)代わりに、FokIドメインを、失活させたCas9へと融合させることであった(例えば、Tsaiら、Nature Biotech、32巻:569〜76頁(2014年);およびGuilingerら、Nature Biotech.、32巻:577〜82頁(2014年)を参照されたい)。FokIは、触媒的に活性となるには、二量体化しなければならないため、2つのガイドRNAは、2つのFokI融合体を、近接してテザリングして、二量体を形成し、DNAを切断することが要求される。これは本質的に、標的部位の組合せにおける塩基の数を二倍化し、これにより、CRISPRベースの系によるターゲティングの厳密性を増大させる。
さらなる例として述べると、TALE DNA結合性ドメインの、I−TevIなど、触媒的に活性なHEへの融合は、オフ標的切断をさらに低減しうることを期待して、微調整可能なDNA結合およびTALEの特異性の両方のほか、I−TevIの切断配列特異性も利用する。
本発明の方法および組成物
したがって、本開示は、特に、以下の非限定的な発明に関する。第1の方法である、方法1では、本開示は、ヒト細胞内のジストロフィン遺伝子を、ゲノム編集により編集するための方法であって、ヒト細胞へと、1または複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、ジストロフィン遺伝子内またはその近傍に、1または複数の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)であって、ジストロフィン遺伝子内またはその近傍に、1もしくは複数のエクソン、または異常なイントロンのスプライスアクセプターもしくはドナー部位の恒久的な欠失、挿入、または置きかえをもたらし、ジストロフィンのリーディングフレームの修復、およびジストロフィンタンパク質の活性の修復をもたらすSSBまたはDSBを生じさせるステップを含む方法を提示する。
別の方法である、方法2では、本開示は、方法1において提示される、ヒト細胞内のジストロフィン遺伝子を、ゲノム編集により編集するための方法であって、ヒト細胞が、筋細胞または筋前駆細胞である方法を提示する。
別の方法である、方法3では、本開示は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を伴う患者を処置するためのex vivo方法であって、i)DMD患者特異的な誘導多能性幹細胞(iPSC)を創出するステップと;ii)iPSCのジストロフィン遺伝子内またはその近傍で編集するステップと;iii)ゲノム編集されたiPSCを、Pax7+筋始原細胞へと分化させるステップと;iv)Pax7+筋始原細胞を、患者へと植え込むステップとを含むex vivo方法を提示する。
別の方法である、方法4では、本開示は、方法3において提示される、DMDを伴う患者を処置するためのex vivo方法であって、創出するステップが、a)体細胞を、患者から単離することと;b)多能性関連遺伝子のセットを、体細胞へと導入して、体細胞が多能性幹細胞となるように誘導することを含むex vivo方法を提示する。
別の方法である、方法5では、本開示は、方法4において提示される、DMDを伴う患者を処置するためのex vivo方法であって、体細胞が、線維芽細胞であるex vivo方法を提示する。
別の方法である、方法6では、本開示は、方法4および5において提示される、DMDを伴う患者を処置するためのex vivo方法であって、多能性関連遺伝子のセットが、OCT4、SOX2、KLF4、Lin28、NANOG、およびcMYCからなる群から選択される遺伝子のうちの1または複数である、ex vivo方法を提示する。
別の方法である、方法7では、本開示は、方法3〜6のうちのいずれか1つにおいて提示される、DMDを伴う患者を処置するためのex vivo方法であって、編集するステップが、iPSCへと、1または複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、ジストロフィン遺伝子内またはその近傍に、1または複数の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)であって、ジストロフィン遺伝子内またはその近傍に、1もしくは複数のエクソン、または異常なイントロンのスプライスアクセプターもしくはドナー部位の恒久的な欠失、挿入、または置きかえをもたらし、ジストロフィンのリーディングフレームの修復、およびジストロフィンタンパク質の活性の修復をもたらすSSBまたはDSBを生じさせることを含む、ex vivo方法を提示する。
別の方法である、方法8では、本開示は、方法3〜7のうちのいずれか1つにおいて提示される、DMDを伴う患者を処置するためのex vivo方法であって、分化させるステップが、ゲノム編集されたiPSCを、Pax7+筋始原細胞へと分化させるように、以下:ゲノム編集されたiPSCを、低分子薬物を含む特異的培地処方物と接触させること;トランス遺伝子の過剰発現;または血清枯渇のうちの1または複数を含む、ex vivo方法を提示する。
別の方法である、方法9では、本開示は、方法3〜8のうちのいずれか1つにおいて提示される、DMDを伴う患者を処置するためのex vivo方法であって、植え込むステップが、所望の筋肉への局所注射により、Pax7+筋始原細胞を、患者へと植え込むことを含む、ex vivo方法を提示する。
別の方法である、方法10では、本開示は、DMDを伴う患者を処置するためのin vivo方法であって、患者の細胞内のジストロフィン遺伝子を編集するステップを含むin vivo方法を提示する。
別の方法である、方法11では、本開示は、方法10において提示される、DMDを伴う患者を処置するためのin vivo方法であって、編集するステップが、患者の細胞へと、1または複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、ジストロフィン遺伝子内またはその近傍に、1または複数の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)であって、ジストロフィン遺伝子内またはその近傍に、1もしくは複数のエクソン、または異常なイントロンのスプライスアクセプター部位もしくはドナー部位の恒久的な欠失、挿入、または置きかえをもたらし、ジストロフィンのリーディングフレームの修復、およびジストロフィンタンパク質の活性の修復をもたらすSSBまたはDSBを生じさせることを含むin vivo方法を提示する。
別の方法である、方法12では、本開示は、方法11において提示される、DMDを伴う患者を処置するためのin vivo方法であって、細胞が、筋細胞または筋前駆細胞であるin vivo方法を提示する。
別の方法である、方法13では、本開示は、方法1、7、および11のうちのいずれか1つにおいて提示される、DMDを伴う患者を処置するためのin vivo方法であって、1または複数のDNAエンドヌクレアーゼが、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(また、Csn1およびCsx12としても公知である)、Cas100、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、またはCpf1エンドヌクレアーゼ;これらの相同体、これらの天然に存在する分子の組換え体、これらのコドン最適化体、これらの修飾形、およびこれらの組合せであるin vivo方法を提示する。
別の方法である、方法14では、本開示は、細胞へと、1または複数のDNAエンドヌクレアーゼをコードする、1または複数のポリヌクレオチドを導入するステップを含む、方法13において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法15では、本開示は、細胞へと、1または複数のDNAエンドヌクレアーゼをコードする、1または複数のリボ核酸(RNA)を導入するステップを含む、方法13において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法16では、本開示は、1もしくは複数のポリヌクレオチド、または1もしくは複数のRNAが、1もしくは複数の修飾ポリヌクレオチド、または1もしくは複数の修飾RNAである、方法14および15において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法17では、本開示は、1または複数のDNAエンドヌクレアーゼが、1または複数のタンパク質またはポリペプチドである、方法13において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法18では、本開示は、細胞へと、1または複数のガイドリボ核酸(gRNA)を導入するステップをさらに含む、方法1〜17のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法19では、本開示は、1または複数のgRNAが、単一分子ガイドRNA(sgRNA)である、方法18において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法20では、本開示は、1もしくは複数のgRNA、または1もしくは複数のsgRNAが、1もしくは複数の修飾gRNA、または1もしくは複数の修飾sgRNAである、方法18および19において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法21では、本開示は、1または複数のDNAエンドヌクレアーゼを、1もしくは複数のgRNA、または1もしくは複数のsgRNAとあらかじめ複合体化させる、方法18〜20のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法22では、本開示は、細胞へと、野生型ジストロフィンの遺伝子またはcDNAの少なくとも一部分を含む、ポリヌクレオチドドナー鋳型を導入するステップをさらに含む、方法1〜21のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法23では、本開示は、野生型ジストロフィンの遺伝子またはcDNAの少なくとも一部分が、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、エクソン19、エクソン20、エクソン21、エクソン22、エクソン23、エクソン24、エクソン25、エクソン26、エクソン27、エクソン28、エクソン29、エクソン30、エクソン31、エクソン32、エクソン33、エクソン34、エクソン35、エクソン36、エクソン37、エクソン38、エクソン39、エクソン40、エクソン41、エクソン42、エクソン43、エクソン44、エクソン45、エクソン46、エクソン47、エクソン48、エクソン49、エクソン50、エクソン51、エクソン52、エクソン53、エクソン54、エクソン55、エクソン56、エクソン57、エクソン58、エクソン59、エクソン60、エクソン61、エクソン62、エクソン63、エクソン64、エクソン65、エクソン66、エクソン67、エクソン68、エクソン69、エクソン70、エクソン71、エクソン72、エクソン73、エクソン74、エクソン75、エクソン76、エクソン77、エクソン78、エクソン79、イントロン領域、合成イントロン領域、断片、これらの組合せ、またはジストロフィン遺伝子もしくはcDNA全体の少なくとも一部を含む、方法22において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法24では、本開示は、野生型ジストロフィンの遺伝子またはcDNAの少なくとも一部分が、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、エクソン19、エクソン20、エクソン21、エクソン22、エクソン23、エクソン24、エクソン25、エクソン26、エクソン27、エクソン28、エクソン29、エクソン30、エクソン31、エクソン32、エクソン33、エクソン34、エクソン35、エクソン36、エクソン37、エクソン38、エクソン39、エクソン40、エクソン41、エクソン42、エクソン43、エクソン44、エクソン45、エクソン46、エクソン47、エクソン48、エクソン49、エクソン50、エクソン51、エクソン52、エクソン53、エクソン54、エクソン55、エクソン56、エクソン57、エクソン58、エクソン59、エクソン60、エクソン61、エクソン62、エクソン63、エクソン64、エクソン65、エクソン66、エクソン67、エクソン68、エクソン69、エクソン70、エクソン71、エクソン72、エクソン73、エクソン74、エクソン75、エクソン76、エクソン77、エクソン78、エクソン79、イントロン領域、合成イントロン領域、断片、これらの組合せ、またはジストロフィン遺伝子もしくはcDNA全体を含む、方法22において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法25では、本開示は、ドナー鋳型が、一本鎖または二本鎖ポリヌクレオチドである、方法22〜24のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法26では、本開示は、細胞へと、1または複数のガイドリボ核酸(gRNA)を導入するステップをさらに含み、1または複数のDNAエンドヌクレアーゼが、5’ローカスにおける第1のSSBまたはDSBによる切断、および3’ローカスにおける第2のSSBまたはDSBによる切断である1対の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)であって、ジストロフィン遺伝子内またはその近傍の5’ローカスと3’ローカスとの間に、1もしくは複数のエクソン、または異常なイントロンのスプライスアクセプターもしくはドナー部位の恒久的な欠失または置きかえをもたらし、ジストロフィンのリーディングフレームの修復、およびジストロフィンタンパク質の活性の修復をもたらすSSBまたはDSBを生じさせる1または複数のCas9またはCpf1エンドヌクレアーゼである、方法1、7、および11のいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法27では、本開示は、1つのgRNAが、1対のSSBまたはDSBを創出する、方法26において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法28では、本開示は、1つのgRNAが、5’ローカス、3’ローカス、または5’ローカスと3’ローカスとの間のセグメントと相補的であるスペーサー配列を含む、方法26において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法29では、本開示は、第1のgRNAおよび第2のgRNAを含み、第1のgRNAが、5’ローカスのセグメントと相補的であるスペーサー配列を含み、第2のgRNAが、3’ローカスのセグメントと相補的であるスペーサー配列を含む、方法26において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法30では、本開示は、1または複数のgRNAが、1または複数の単一分子ガイドRNA(sgRNA)である、方法26〜29において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法31では、本開示は、1もしくは複数のgRNA、または1もしくは複数のsgRNAが、1もしくは複数の修飾gRNA、または1もしくは複数の修飾sgRNAである、方法26〜30において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法32では、本開示は、1または複数のDNAエンドヌクレアーゼを、1もしくは複数のgRNA、または1もしくは複数のsgRNAとあらかじめ複合体化させる、方法26〜31のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法33では、本開示は、5’ローカスと3’ローカスとの間に染色体DNAの欠失が存在する、方法26〜32のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法34では、本開示は、欠失が、単一エクソンの欠失である、方法26〜33のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法35では、本開示は、単一エクソンの欠失が、エクソン2、エクソン8、エクソン43、エクソン44、エクソン45、エクソン46、エクソン50、エクソン51、エクソン52、またはエクソン53の欠失である、方法34において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法36では、本開示は、5’ローカスが、エクソン2、エクソン8、エクソン43、エクソン44、エクソン45、エクソン46、エクソン50、エクソン51、エクソン52、およびエクソン53からなる群から選択される単一エクソンの5’境界部に対して近位である、方法34または35において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法37では、本開示は、3’ローカスが、エクソン2、エクソン8、エクソン43、エクソン44、エクソン45、エクソン46、エクソン50、エクソン51、エクソン52、およびエクソン53からなる群から選択される単一エクソンの3’境界部に対して近位である、方法34〜36のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法38では、本開示は、5’ローカスが、エクソン2、エクソン8、エクソン43、エクソン44、エクソン45、エクソン46、エクソン50、エクソン51、エクソン52、およびエクソン53からなる群から選択される単一エクソンの5’境界部に対して近位であり、3’ローカスが、これらの3’境界部に対して近位である、方法34〜37のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法39では、本開示は、エクソンの境界部に対する近位が、隣接イントロンの周囲のスプライスドナーおよびアクセプターを含む、方法36〜38のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法40では、本開示は、欠失が、マルチエクソンの欠失である、方法26〜33のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法41では、本開示は、マルチエクソンの欠失が、エクソン45〜53またはエクソン45〜55の欠失である、方法40において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法42では、本開示は、5’ローカスが、エクソン45〜53およびエクソン45〜55からなる群から選択される複数のエクソンの5’境界部に対して近位である、方法40〜41のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法43では、本開示は、3’ローカスが、エクソン45〜53およびエクソン45〜55からなる群から選択される複数のエクソンの3’境界部に対して近位である、方法40〜42のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法44では、本開示は、5’ローカスが、エクソン45〜53およびエクソン45〜55からなる群から選択される複数のエクソンの5’境界部に対して近位であり、3’ローカスが、これらの3’境界部に対して近位である、方法40〜43のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法45では、本開示は、エクソンの境界部に対する近位が、隣接イントロンの周囲のスプライスドナーおよびアクセプターを含む、方法42〜44のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法46では、本開示は、5’ローカスと3’ローカスとの間に染色体DNAの置きかえが存在する、方法26〜32のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法47では、本開示は、置きかえが、単一エクソンの置きかえである、方法26〜32および46のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法48では、本開示は、単一エクソンの置きかえが、エクソン2、エクソン8、エクソン43、エクソン44、エクソン45、エクソン46、エクソン50、エクソン51、エクソン52、エクソン53、またはエクソン70の置きかえである、方法26〜32および46〜47のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法49では、本開示は、5’ローカスが、エクソン2、エクソン8、エクソン43、エクソン44、エクソン45、エクソン46、エクソン50、エクソン51、エクソン52、エクソン53、またはエクソン70からなる群から選択される単一エクソンの5’境界部に対して近位である、方法47〜48のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法50では、本開示は、3’ローカスが、エクソン2、エクソン8、エクソン43、エクソン44、エクソン45、エクソン46、エクソン50、エクソン51、エクソン52、エクソン53、またはエクソン70からなる群から選択される単一エクソンの3’境界部に対して近位である、方法47〜49のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法51では、本開示は、5’ローカスが、エクソン2、エクソン8、エクソン43、エクソン44、エクソン45、エクソン46、エクソン50、エクソン51、エクソン52、エクソン53、またはエクソン70からなる群から選択される単一エクソンの5’境界部に対して近位であり、3’ローカスが、これらの3’境界部に対して近位である、方法47〜50のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法52では、本開示は、エクソンの境界部に対する近位が、隣接イントロンまたは隣接エクソンの周囲のスプライスドナーおよびアクセプターを含む、方法49〜51のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法53では、本開示は、置きかえが、マルチエクソンの置きかえである、方法26〜32または46のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法54では、本開示は、マルチエクソンの置きかえが、エクソン45〜53またはエクソン45〜55の置きかえである、方法53において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法55では、本開示は、5’ローカスが、エクソン45〜53およびエクソン45〜55からなる群から選択される複数のエクソンの5’境界部に対して近位である、方法53〜54のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法56では、本開示は、3’ローカスが、エクソン45〜53およびエクソン45〜55からなる群から選択される複数のエクソンの3’境界部に対して近位である、方法53〜55のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法57では、本開示は、5’ローカスが、エクソン45〜53およびエクソン45〜55からなる群から選択される複数のエクソンの5’境界部に対して近位であり、3’ローカスが、これらの3’境界部に対して近位である、方法53〜56のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法58では、本開示は、エクソンの境界部に対する近位が、隣接イントロンの周囲のスプライスドナーおよびアクセプターを含む、方法55〜57のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法59では、本開示は、細胞へと、野生型ジストロフィンの遺伝子またはcDNAの少なくとも一部分を含むポリヌクレオチドドナー鋳型を導入するステップをさらに含み、置きかえが、相同性により導かれる修復(HDR)によるものである、方法46〜58のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法60では、本開示は、野生型ジストロフィンの遺伝子またはcDNAの少なくとも一部分が、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、エクソン19、エクソン20、エクソン21、エクソン22、エクソン23、エクソン24、エクソン25、エクソン26、エクソン27、エクソン28、エクソン29、エクソン30、エクソン31、エクソン32、エクソン33、エクソン34、エクソン35、エクソン36、エクソン37、エクソン38、エクソン39、エクソン40、エクソン41、エクソン42、エクソン43、エクソン44、エクソン45、エクソン46、エクソン47、エクソン48、エクソン49、エクソン50、エクソン51、エクソン52、エクソン53、エクソン54、エクソン55、エクソン56、エクソン57、エクソン58、エクソン59、エクソン60、エクソン61、エクソン62、エクソン63、エクソン64、エクソン65、エクソン66、エクソン67、エクソン68、エクソン69、エクソン70、エクソン71、エクソン72、エクソン73、エクソン74、エクソン75、エクソン76、エクソン77、エクソン78、エクソン79、イントロン領域、合成イントロン領域、断片、これらの組合せ、またはジストロフィン遺伝子もしくはcDNA全体の少なくとも一部を含む、方法59において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法61では、本開示は、野生型ジストロフィンの遺伝子またはcDNAの少なくとも一部分が、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、エクソン19、エクソン20、エクソン21、エクソン22、エクソン23、エクソン24、エクソン25、エクソン26、エクソン27、エクソン28、エクソン29、エクソン30、エクソン31、エクソン32、エクソン33、エクソン34、エクソン35、エクソン36、エクソン37、エクソン38、エクソン39、エクソン40、エクソン41、エクソン42、エクソン43、エクソン44、エクソン45、エクソン46、エクソン47、エクソン48、エクソン49、エクソン50、エクソン51、エクソン52、エクソン53、エクソン54、エクソン55、エクソン56、エクソン57、エクソン58、エクソン59、エクソン60、エクソン61、エクソン62、エクソン63、エクソン64、エクソン65、エクソン66、エクソン67、エクソン68、エクソン69、エクソン70、エクソン71、エクソン72、エクソン73、エクソン74、エクソン75、エクソン76、エクソン77、エクソン78、エクソン79、イントロン領域、合成イントロン領域、断片、これらの組合せ、またはジストロフィン遺伝子もしくはcDNA全体を含む、方法59において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法62では、本開示は、細胞へと、1つのガイドリボ核酸(gRNA)と、野生型ジストロフィンの遺伝子の少なくとも一部分を含むポリヌクレオチドドナー鋳型とを導入するステップをさらに含み、1または複数のDNAエンドヌクレアーゼが、ジストロフィン遺伝子内またはその近傍のローカスに、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の、ローカスにおける染色体DNAへの挿入を容易とする1つの一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)であって、ジストロフィン遺伝子内またはその近傍に、1もしくは複数のエクソン、または異常なイントロンのスプライスアクセプターもしくはドナー部位の恒久的な挿入または矯正をもたらし、ジストロフィンのリーディングフレームの修復、およびジストロフィンタンパク質の活性の修復をもたらすSSBまたはDSBを生じさせる1または複数のCas9またはCpf1エンドヌクレアーゼであり、gRNAが、ローカスのセグメントと相補的であるスペーサー配列を含む、方法1、7、または11のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法63では、本開示は、細胞へと、1または複数のガイドリボ核酸(gRNA)と、野生型ジストロフィンの遺伝子の少なくとも一部分を含むポリヌクレオチドドナー鋳型とを導入するステップをさらに含み、1または複数のDNAエンドヌクレアーゼが、ジストロフィン遺伝子内またはその近傍に、ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新たな配列の、5’ローカスと3’ローカスとの間における染色体DNAへの挿入を容易とする、5’ローカスにおける第1の切断、および3’ローカスにおける第2の切断である1対の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)であって、ジストロフィン遺伝子内またはその近傍の5’ローカスと3’ローカスとの間に、1もしくは複数のエクソン、または異常なイントロンのスプライスアクセプターもしくはドナー部位の恒久的な挿入または矯正をもたらし、ジストロフィンのリーディングフレームの修復、およびジストロフィンタンパク質の活性の修復をもたらすSSBまたはDSBを生じさせる1または複数のCas9またはCpf1エンドヌクレアーゼである、方法1、7、または11のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法64では、本開示は、1つのgRNAが、1対のSSBまたはDSBを創出する、方法63において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法65では、本開示は、1つのgRNAが、5’ローカス、3’ローカス、または5’ローカスと3’ローカスとの間のセグメントと相補的であるスペーサー配列を含む、方法63において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法66では、本開示は、第1のgRNAおよび第2のgRNAを含み、第1のgRNAが、5’ローカスのセグメントと相補的であるスペーサー配列を含み、第2のgRNAが、3’ローカスのセグメントと相補的であるスペーサー配列を含む、方法63において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法67では、本開示は、1または複数のgRNAが、1または複数の単一分子ガイドRNA(sgRNA)である、方法62または63において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法68では、本開示は、1もしくは複数のgRNA、または1もしくは複数のsgRNAが、1もしくは複数の修飾gRNA、または1もしくは複数の修飾sgRNAである、方法62〜63または67において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法69では、本開示は、1または複数のDNAエンドヌクレアーゼを、1もしくは複数のgRNA、または1もしくは複数のsgRNAとあらかじめ複合体化させる、方法62〜63または67〜68のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法70では、本開示は、挿入が、単一エクソンの挿入である、方法62〜69のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法71では、本開示は、単一エクソンの挿入が、エクソン2、エクソン8、エクソン43、エクソン44、エクソン45、エクソン46、エクソン50、エクソン51、エクソン52、エクソン53またはエクソン70の挿入である、方法70において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法72では、本開示は、ローカス、5’ローカスまたは3’ローカスが、エクソン2、エクソン8、エクソン43、エクソン44、エクソン45、エクソン46、エクソン50、エクソン51、エクソン52、エクソン53およびエクソン70からなる群から選択される単一エクソンの境界部に対して近位である、方法70〜71のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法73では、本開示は、エクソンの境界部に対する近位が、隣接イントロンまたは隣接エクソンの周囲のスプライスドナーおよびアクセプターを含む、方法72において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法74では、本開示は、挿入が、マルチエクソンの挿入である、方法62〜69のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法75では、本開示は、マルチエクソンの挿入が、エクソン45〜53またはエクソン45〜55の挿入である、方法74において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法76では、本開示は、ローカス、5’ローカスまたは3’ローカスが、エクソン45〜53またはエクソン45〜55からなる群から選択されるマルチエクソンの境界部に対して近位である、方法74〜75のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法77では、本開示は、エクソンの境界部に対する近位が、隣接イントロンの周囲のスプライスドナーおよびアクセプターを含む、方法76において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法78では、本開示は、野生型ジストロフィンの遺伝子またはcDNAの少なくとも一部分が、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、エクソン19、エクソン20、エクソン21、エクソン22、エクソン23、エクソン24、エクソン25、エクソン26、エクソン27、エクソン28、エクソン29、エクソン30、エクソン31、エクソン32、エクソン33、エクソン34、エクソン35、エクソン36、エクソン37、エクソン38、エクソン39、エクソン40、エクソン41、エクソン42、エクソン43、エクソン44、エクソン45、エクソン46、エクソン47、エクソン48、エクソン49、エクソン50、エクソン51、エクソン52、エクソン53、エクソン54、エクソン55、エクソン56、エクソン57、エクソン58、エクソン59、エクソン60、エクソン61、エクソン62、エクソン63、エクソン64、エクソン65、エクソン66、エクソン67、エクソン68、エクソン69、エクソン70、エクソン71、エクソン72、エクソン73、エクソン74、エクソン75、エクソン76、エクソン77、エクソン78、エクソン79、イントロン領域、合成イントロン領域、断片、これらの組合せ、またはジストロフィン遺伝子もしくはcDNA全体の少なくとも一部を含む、方法62または63において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法79では、本開示は、野生型ジストロフィンの遺伝子またはcDNAの少なくとも一部分が、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、
エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、エクソン19、エクソン20、エクソン21、エクソン22、エクソン23、エクソン24、エクソン25、エクソン26、エクソン27、エクソン28、エクソン29、エクソン30、エクソン31、エクソン32、エクソン33、エクソン34、エクソン35、エクソン36、エクソン37、エクソン38、エクソン39、エクソン40、エクソン41、エクソン42、エクソン43、エクソン44、エクソン45、エクソン46、エクソン47、エクソン48、エクソン49、エクソン50、エクソン51、エクソン52、エクソン53、エクソン54、エクソン55、エクソン56、エクソン57、エクソン58、エクソン59、エクソン60、エクソン61、エクソン62、エクソン63、エクソン64、エクソン65、エクソン66、エクソン67、エクソン68、エクソン69、エクソン70、エクソン71、エクソン72、エクソン73、エクソン74、エクソン75、エクソン76、エクソン77、エクソン78、エクソン79、イントロン領域、合成イントロン領域、断片、これらの組合せ、またはジストロフィン遺伝子もしくはcDNA全体を含む、方法62または63において提示される方法を提示する。
別の方法である、方法80では、本開示は、挿入が、相同性により導かれる修復(HDR)によるものである、方法62〜79のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法81では、本開示は、ドナー鋳型が、一本鎖または二本鎖ポリヌクレオチドである、方法62〜80のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法82では、本開示は、Cas9またはCpf1の、mRNA、gRNA、およびドナー鋳型を、各々別個の脂質ナノ粒子へと製剤化するか、またはこれらの全てを、脂質ナノ粒子へと共製剤化する、方法26〜81のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法83では、本開示は、Cas9またはCpf1のmRNAを、脂質ナノ粒子へと製剤化し、gRNAおよびドナー鋳型の両方を、細胞へと、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターにより送達する、方法26〜81のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法84では、本開示は、Cas9またはCpf1のmRNAを、脂質ナノ粒子へと製剤化し、gRNAを、細胞へと、電気穿孔により送達し、ドナー鋳型を、細胞へと、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターにより送達する、方法26〜81のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
別の方法である、方法85では、本開示は、ジストロフィン遺伝子が、X染色体:31,117,228〜33,344,609(Genome Reference Consortium:GRCh38/hg38)に位置する、方法1〜84のうちのいずれか1つにおいて提示される方法を提示する。
第1の組成物である、組成物1では、本開示は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を伴う患者に由来する細胞内のジストロフィン遺伝子を編集するための、1または複数のガイドリボ核酸(gRNA)であって、配列表の配列番号1〜1,410,472内の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む、1または複数のgRNAを提示する。
別の組成物である、組成物2では、本開示は、1または複数のgRNAが、1または複数の単一分子ガイドRNA(sgRNA)である、組成物1の1または複数のgRNAを提示する。
別の組成物である、組成物3では、本開示は、1もしくは複数のgRNA、または1もしくは複数のsgRNAが、1もしくは複数の修飾gRNA、または1もしくは複数の修飾sgRNAである、組成物1または2の1または複数のgRNAまたはsgRNAを提示する。
定義
「〜を含むこと」または「〜を含む」という用語は、本発明に不可欠であるが、不可欠なものであれ、可欠なものであれ、未指定の要素の包含に対しても開かれた、組成物、方法、およびこれらのそれぞれの構成要素に言及して使用される。
「〜から本質的になる」という用語は、所与の態様に要求される要素を指す。用語は、本発明のその態様の、基本的かつ新規のまたは機能的な特徴に実質的に影響を及ぼさない、さらなる要素の存在を許容する。
「〜からなる」という用語は、態様についてのその記載において列挙されない任意の要素を除外して、本明細書で記載される組成物、方法、およびこれらのそれぞれの構成要素を指す。
単数形の「ある(a)」、「ある(an)」、および「その」は、文脈により、そうでないことが明確に指示されない限りにおいて、複数の指示対象を含む。
本明細書で列挙される任意の数値範囲は、数値精度が同じである(すなわち、指定された桁数と同じ桁数を有する)全ての部分範囲であって、列挙された範囲内に包含される部分範囲について記載する。例えば、「1.0〜10.0」という列挙範囲は、本明細書の本文中で、「2.4〜7.6」という範囲が、明示的に列挙されていない場合であってもなお、例えば、「2.4〜7.6」など、列挙された最小値である1.0と、列挙された最大値である10.0との間(およびこれらを含む)の、全ての部分範囲について記載する。したがって、本出願者は、本明細書で明示的に列挙される範囲内に包含される、同じ数値精度の、任意の部分範囲を、明示的に列挙するように、特許請求の範囲を含む本明細書を矯正する権利を留保する。任意のこのような部分範囲を明示的に列挙するように矯正することが、記載、記載の十分性、ならびに35 U.S.C.§112(a)およびEPC 123(2)条下の要件を含む、新規事項の要件に準拠するように、全てのこのような範囲は本明細書で固有に記載される。文脈により、明示的に指定またはそうでないことが要求されない限りにおいて、本明細書で記載される、全ての数値パラメータ(値、範囲、量、百分率などを表す数値パラメータ)はまた、「約」という語が、数の前に明示的に現れない場合であってもなお、「約」という語を前置しているかのように読むことができる。加えて、本明細書で記載される数値パラメータは、報告される有効桁数である、数値精度に照らして、通常の丸め法を適用することにより解釈されるものとする。また、本明細書で記載される数値パラメータは、必然的に、パラメータの数値を決定するのに使用される基礎的な測定法に特徴的な、固有のばらつきを有することも理解される。
本発明は、本発明の例示的で非限定的な態様を提供する以下の実施例を参照して、より完全に理解される。
本実施例は、ジストロフィンリーディングフレームを修復し、ジストロフィンタンパク質活性を修復する、ゲノムローカス(遺伝子座)からの問題のあるエクソンの恒久的な欠失または矯正をもたらす、ジストロフィン遺伝子(DMD遺伝子)における、本明細書で集合的に「ゲノム改変」と呼ばれる、定義された治療的ゲノム欠失、挿入、または置きかえを創出するための例示的なゲノム編集技術としてのCRISPR系の使用を説明する。
DMD遺伝子の様々な領域(region)にわたる単鎖gRNAを、切断効率について選択および試験した(表5)。gRNAは、DMD遺伝子における多数の目的の領域(areas)のエクソン、イントロン、およびスプライスアクセプターをターゲティングした。実施例において論議される全てのgRNAの命名規則は、#(gRNAに対応する)−NN(Casタンパク質:SP−S.pyogenes、SA−S.aureus、NM−N.meningitides、ST−S.thermophiles、TD−T.denticola、Cpf1)−NN##(SA−スプライスアクセプター、E−エクソン、I−イントロン)である。
全ての試験したgRNAは、HDR/矯正ベースの編集手法のために使用することができる。スプライスアクセプターをターゲティングする単鎖gRNAは、エクソンスキッピングを誘導して、DMD遺伝子のリーディングフレームを修復するために使用することができる。選択したgRNA対を、リーディングフレームを修復するDMD遺伝子における欠失を作製するために使用することができる。選択したgRNA対を、患者突然変異をシミュレートする欠失を作製するために使用することができ、モデルDMD突然変異株を発生させるために使用することができる。
様々なCasオルソログを、切断について評価した。SP、NM、ST、SA、およびCpf1 gRNAを、プラスミドにおいてU6プロモーターから発現させる、またはレンチウイルスにおいてU6プロモーターから発現させるRNAとして送達した。対応するCasタンパク質は、目的の細胞株にノックインして構成的に発現させるか、mRNAとして送達するか、またはタンパク質として送達した。全ての上記に挙げた形式のgRNAの活性を、HEK293T細胞、K562細胞、または人工多能性幹細胞(iPSC)においてTIDE解析または次世代シークエンシングを使用して評価した。
全体で、試験したほとんどのgRNAが切断を誘導したことが決定された。しかしながら、切断の量は、試験したCasタンパク質に非常に依存していた。一般的に、SP Cas9 gRNAが最も高い切断レベルを誘導し、SA Cas9 gRNAは2番目に高い切断レベルを誘導することが分かった。一般的に、可能な最も高い切断効率を有するgRNAを治療適用に選択することは有益である。しかしながら、iPSCベースの治療については、切断効率はそれほど重要ではない。iPSCは、高増殖性であり、編集効率が10%未満である場合でさえも、所望の編集を有する細胞のクローン集団を単離することを単純化する。
上記に説明する定義された治療改変の導入は、本明細書でさらに説明し、例示するように、DMDの改善の潜在的可能性のための新規治療戦略を代表する。
(実施例1)
ジストロフィン遺伝子のCRISPR/SPCas9標的部位
ジストロフィン遺伝子の領域を標的部位についてスキャンした。各領域を、配列NRGを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)についてスキャンした。配列番号1〜467,030で示されるように、PAMに対応するgRNA 20bpスペーサー配列を特定した。配列表の配列番号1,410,430〜1,410,472で示されるように、PAMに対応するgRNA 19bpスペーサー配列を特定した。
(実施例2)
ジストロフィン遺伝子のCRISPR/SACas9標的部位
ジストロフィン遺伝子の領域を標的部位についてスキャンした。各領域を、配列NNGRRTを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)についてスキャンした。配列表の配列番号467,031〜528,196で示されるように、PAMに対応するgRNA 20bpスペーサー配列を特定した。
(実施例3)
ジストロフィン遺伝子のCRISPR/STCas9標的部位
ジストロフィン遺伝子の領域を標的部位についてスキャンした。各領域を、配列NNAGAAWを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)についてスキャンした。配列表の配列番号528,197〜553,198で示されるように、PAMに対応するgRNA 24bpスペーサー配列を特定した。
(実施例4)
ジストロフィン遺伝子のCRISPR/TDCas9標的部位
ジストロフィン遺伝子の領域を標的部位についてスキャンした。各領域を、配列NAAAACを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)についてスキャンした。配列表の配列番号553,199〜563,911で示されるように、PAMに対応するgRNA 24bpスペーサー配列を特定した。
(実施例5)
ジストロフィン遺伝子のCRISPR/NMCas9標的部位
ジストロフィン遺伝子の領域を標的部位についてスキャンした。各領域を、配列NNNNGHTTを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)についてスキャンした。配列表の配列番号563,912〜627,854および1,410,400〜1,410,402で示されるように、PAMに対応するgRNA 24bpスペーサー配列を特定した。
(実施例6)
ジストロフィン遺伝子のCRISPR/Cpf1標的部位
ジストロフィン遺伝子の領域を標的部位についてスキャンした。各領域を、配列YTNを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)についてスキャンした。配列表の配列番号627,855〜1,410,399および1,410,403〜1,410,429で示されるように、PAMに対応するgRNA 20〜24bpスペーサー配列を特定した。
(実施例7)
エクソン2をターゲティングする例示的なゲノム編集戦略
いくつかの方法は、遺伝子を2回切断することによりエクソン2を欠失させるgRNA対を提供し、1つのgRNAはエクソン2の5’末端で切断し、他方のgRNAはエクソン2の3’末端で切断する。
(実施例8)
エクソン8をターゲティングする例示的なゲノム編集戦略
いくつかの方法は、遺伝子を2回切断することによりエクソン8を欠失させるgRNA対を提供し、1つのgRNAはエクソン8の5’末端で切断し、他方のgRNAはエクソン8の3’末端で切断する。
(実施例9)
エクソン43をターゲティングする例示的なゲノム編集戦略
いくつかの方法は、遺伝子を2回切断することによりエクソン43を欠失させるgRNA対を提供し、1つのgRNAはエクソン43の5’末端で切断し、他方のgRNAはエクソン43の3’末端で切断する。
(実施例10)
エクソン44をターゲティングする例示的なゲノム編集法
いくつかの方法は、遺伝子を2回切断することによりエクソン44を欠失させるgRNA対を提供し、1つのgRNAはエクソン44の5’末端で切断し、他方のgRNAはエクソン44の3’末端で切断する。
(実施例11)
エクソン45をターゲティングする例示的なゲノム編集戦略
いくつかの方法は、遺伝子を2回切断することによりエクソン45を欠失させるgRNA対を提供し、1つのgRNAはエクソン45の5’末端で切断し、他方のgRNAはエクソン45の3’末端で切断する。
(実施例12)
エクソン46をターゲティングする例示的なゲノム編集戦略
いくつかの方法は、遺伝子を2回切断することによりエクソン46を欠失させるgRNA対を提供し、1つのgRNAはエクソン46の5’末端で切断し、他方のgRNAはエクソン46の3’末端で切断する。
(実施例13)
エクソン50をターゲティングする例示的なゲノム編集戦略
いくつかの方法は、遺伝子を2回切断することによりエクソン50を欠失させるgRNA対を提供し、1つのgRNAはエクソン50の5’末端で切断し、他方のgRNAはエクソン50の3’末端で切断する。
(実施例14)
エクソン51をターゲティングする例示的なゲノム編集戦略
いくつかの方法は、遺伝子を2回切断することによりエクソン51を欠失させるgRNA対を提供し、1つのgRNAはエクソン51の5’末端で切断し、他方のgRNAはエクソン51の3’末端で切断する。
(実施例15)
エクソン52をターゲティングする例示的なゲノム編集戦略
いくつかの方法は、遺伝子を2回切断することによりエクソン52を欠失させるgRNA対を提供し、1つのgRNAはエクソン52の5’末端で切断し、他方のgRNAはエクソン52の3’末端で切断する。
(実施例16)
エクソン53をターゲティングする例示的なゲノム編集戦略
いくつかの方法は、遺伝子を2回切断することによりエクソン53を欠失させるgRNA対を提供し、1つのgRNAはエクソン53の5’末端で切断し、他方のgRNAはエクソン53の3’末端で切断する。
(実施例17)
エクソン70をターゲティングする例示的なゲノム編集戦略
いくつかの方法は、遺伝子を2回切断することによりエクソン70を欠失させるgRNA対を提供し、1つのgRNAはエクソン70の5’末端で切断し、他方のgRNAはエクソン70の3’末端で切断する。
(実施例18)
エクソン45〜53をターゲティングする例示的なゲノム編集戦略
いくつかの方法は、遺伝子を2回切断することによりエクソン45〜53を欠失させるgRNA対を提供し、1つのgRNAはエクソン45の5’末端で切断し、他方のgRNAはエクソン53の3’末端で切断する。
(実施例19)
エクソン45〜55をターゲティングする例示的なゲノム編集戦略
いくつかの方法は、遺伝子を2回切断することによりエクソン45〜55を欠失させるgRNA対を提供し、1つのgRNAはエクソン45の5’末端で切断し、他方のgRNAはエクソン55の3’末端で切断する。
(実施例20)
ガイド鎖のバイオインフォマティクス解析
理論的結合および実験的に査定した活性の両方を含む多段階プロセスで、候補ガイドをスクリーニングおよび選択した。例示として、意図される染色***置以外の染色***置での効果の可能性を査定するために、以下により詳細に説明および例示するように、オフターゲット結合を査定するために使用可能な様々なバイオインフォマティクスツールの1つまたは複数を使用して、隣接するPAMを有する、ジストロフィン遺伝子内またはその近傍の部位などの、特定のオンターゲット部位に適合する配列を有する候補ガイドを、同様の配列を有するオフターゲット部位で切断するそれらの潜在的可能性について査定することができる。その後、オフターゲット活性について比較的低い潜在的可能性を有することが予測される候補は、それらのオンターゲット活性、およびその後様々な部位でのオフターゲット活性を測定するために実験的に査定することができる。好ましいガイドは、選択した遺伝子座で所望の遺伝子編集レベルを達成するために十分に高いオンターゲット活性を有し、他の染色体遺伝子座では改変の可能性を低減させるために比較的低いオフターゲット活性を有する。オンターゲット対オフターゲット活性の比は多くの場合、ガイドの「特異性」と呼ばれる。
予測されるオフターゲット活性の最初のスクリーニングのために、最も可能性が高いオフターゲット部位を予測するために使用され得る、いくつかの公知かつ一般に利用可能なバイオインフォマティクスツールがあり、CRISPR/Cas9ヌクレアーゼ系における標的部位への結合は相補的配列間のワトソン・クリック塩基対形成により駆動されるので、相違の程度(およびそれゆえオフターゲット結合の潜在的可能性の低減)は本質的に、標的部位に対する、潜在的可能性があるオフターゲット部位における、一次配列の差、ミスマッチおよびバルジ、すなわち、非相補的塩基に変えられた塩基、ならびに塩基の挿入または欠失に関連する。COSMID(CRISPR Off−target Sites with Mismatches,Insertions and Deletions)(ウェブ上でcrispr.bme.gatech.eduにて使用可能)と呼ばれる例示的なバイオインフォマティクスツールは、かかる類似点を集計する。他のバイオインフォマティクスツールとして、GUIDO、autoCOSMID、およびCCtopが挙げられるが、これらに限定されない。
オフターゲット切断を最小限にして、突然変異および染色体再編の有害効果を低減させるために、バイオインフォマティクスを使用した。CRISPR/Cas9系についての研究は、特にPAM領域から遠位位置での、塩基対ミスマッチおよび/またはバルジを有するDNA配列へのガイド鎖の非特異的ハイブリダイゼーションに起因する高いオフターゲット活性の可能性を示唆した。それゆえ、塩基対ミスマッチに加えて、RNAガイド鎖とゲノム配列との間の挿入および/または欠失を有する、潜在的可能性があるオフターゲット部位を特定することができるバイオインフォマティクスツールを有することは重要である。バイオインフォマティクスベースのツール、COSMID(CRISPR Off−target Sites with Mismatches,Insertions and Deletions)をそれゆえ、潜在的可能性があるCRISPRオ30D5ターゲット部位についてゲノムを検索するために使用した(ウェブ上でcrispr.bme.gatech.eduにて使用可能)。COSMID出力は、ミスマッチの数および位置に基づいて潜在的可能性があるオフターゲット部位のリストをランク付けし、標的部位のより情報に通じた選択を可能にし、より可能性があるオフターゲット切断を有する部位の使用を避ける。
ある領域におけるgRNA標的化部位の見積もられたオンターゲット活性および/またはオフターゲット活性を比較検討する、追加のバイオインフォマティクスパイプラインを使用した。活性を予測するために使用することができる他の特徴として、問題の細胞種、DNAのアクセシビリティ、クロマチン状態、転写因子結合部位、転写因子結合データ、および他のCHIP−seqデータについての情報が挙げられる。gRNA対の相対的位置および方向、局所配列特徴、ならびにマイクロホモロジーなどの、編集効率を予測する追加の要素を比較検討する。
(実施例21)
オンターゲット活性についての、細胞における好ましいガイドの試験
その後、最も低いオフターゲット活性を有すると予測されるgRNAを、一過性トランスフェクションにより、ヒト胎児腎臓由来上皮細胞、HEK293Tにおけるオンターゲット活性について試験し、TIDEまたは次世代シークエンシングを使用してインデル頻度について評価する。TIDEは、ガイドRNA(gRNAまたはsgRNA)により決定される標的遺伝子座のCRISPR−Cas9によるゲノム編集を迅速に査定するためのウェブツールである。2つの標準のキャピラリーシークエンシング反応からの定量的配列トレースデータに基づいて、TIDEソフトウェアは、編集有効性を定量し、標的細胞プールのDNAにおける挿入および欠失(インデル)の優勢なタイプを特定する。詳細な説明および例についてはBrinkmanら、Nucl. Acids Res.(2014年)を参照のこと。ハイスループットシークエンシングとしても公知の、次世代シークエンシング(NGS:next−generation sequencing)は、Illumina(Solexa)シークエンシング、Roche 454シークエンシング、Ion torrent:Proton/PGMシークエンシング、およびSOLiDシークエンシングを含む、いくつかの異なる現代のシークエンシング技術を説明するために使用される包括的用語である。これらの最近の技術は、以前に使用されていたサンガーシークエンシングよりかなり迅速かつ安価に、DNAおよびRNAをシークエンシングすることを可能にし、そのためゲノミクスおよび分子生物学の研究に革命を起こした。HEK293TおよびiPSCの両方の細胞種はゆるいクロマチン構造を有することが公知なので、HEK293Tは、iPSCにおける遺伝子矯正についての優れたモデル系である。
クロマチンは、コイリングして、ヌクレオソームと呼ばれる個別の構造になることにより組織化されている。このコイリングは、転写機構へのゲノム材料のアクセシビリティに影響する。開放しているゲノム領域はユークロマチンと呼ばれ、きついコイリング領域はヘテロクロマチンと呼ばれる。幹細胞は一般的にゆるいクロマチンコンフォメーションを有し、細胞がより特殊化した細胞種に分化するにつれて、ゲノムのある特定の領域は閉鎖してヘテロクロマチンを形成することは、十分に受け入れられているパラダイムである(Sims, R. J.およびD. Reinberg(2009年)、「Stem cells: Escaping fates with open states.」、Nature 460巻(7257号):802〜803頁)。
(実施例22)
関連するモデル細胞株における試験
ガイドRNAの全てを個々に評価し、有効なgRNAを特定すると、gRNA対の全ての順列を、ジストロフィンリーディングフレームを修復すると予測され得るジストロフィン遺伝子のDNA配列を改変するそれらの能力について関連するモデル細胞株で試験する。患者試料で発見される改変と同様または同一の改変を有する筋芽細胞およびiPSC細胞株を発生させた。これらの細胞を、適用可能である場合および適用可能であるとき、gRNAおよびドナーDNA鋳型の様々な個々のおよび対の組合せで処理する。その後、試料を、当業者に公知の1つまたは複数の生物学的方法、例えばジストロフィンタンパク質のC末端を特異的に認識する(トランケートされたタンパク質はインタクトなC末端を含有しないことに留意されたい)酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して、ジストロフィン発現の修復について評価することができる。その後、ジストロフィン発現を修復するgRNA対は、ジストロフィンタンパク質の適切なサイズの発現を確認するためのウェスタンブロットなどの追加の生物学的技術によりさらに評価することができる。
(実施例23)
HDR遺伝子編集のための様々な手法の試験
オンターゲット活性およびオフターゲット活性の両方についてgRNAを試験した後、エクソン矯正およびノックイン戦略を、HDR遺伝子編集について試験する。
エクソン矯正手法のために、ドナーDNA鋳型を、短い一本鎖オリゴヌクレオチド、短い二本鎖オリゴヌクレオチド(PAM配列インタクト/PAM配列突然変異)、長い一本鎖DNA分子(PAM配列インタクト/PAM配列突然変異)、または長い二本鎖DNA分子(PAM配列インタクト/PAM配列突然変異)として提供する。加えて、ドナーDNA鋳型をAAVにより送達する。
DNAノックイン手法のために、Xp21.2遺伝子座への相同性アームを有する一本鎖または二本鎖DNAは、ジストロフィン遺伝子の第1の標的エクソン(第1のコーディングエクソン)の40ntまたはそれよりも多く、ジストロフィン遺伝子の完全なコーディングDNA配列(CDS:coding DNA sequence)、およびジストロフィン遺伝子の3’UTR、ならびに続くイントロンの少なくとも40ntを含み得る。Xp21.2遺伝子座への相同性アームを有する一本鎖または二本鎖DNAは、ジストロフィン遺伝子の第1の標的エクソン(第1のコーディングエクソン)の80ntまたはそれよりも多く、ジストロフィン遺伝子の完全なコーディングDNA配列(CDS)、およびジストロフィン遺伝子の3’UTR、ならびに続くイントロンの少なくとも80ntを含み得る。Xp21.2遺伝子座への相同性アームを有する一本鎖または二本鎖DNAは、ジストロフィン遺伝子の第1の標的エクソン(第1のコーディングエクソン)の100ntまたはそれよりも多く、ジストロフィン遺伝子の完全なコーディングDNA配列(CDS)、およびジストロフィン遺伝子の3’UTR、ならびに続くイントロンの少なくとも100ntを含み得る。Xp21.2遺伝子座への相同性アームを有する一本鎖または二本鎖DNAは、ジストロフィン遺伝子の第1の標的エクソン(第1のコーディングエクソン)の150ntまたはそれよりも多く、ジストロフィン遺伝子の完全なコーディングDNA配列(CDS)、およびジストロフィン遺伝子の3’UTR、ならびに続くイントロンの少なくとも150ntを含み得る。Xp21.2遺伝子座への相同性アームを有する一本鎖または二本鎖DNAは、ジストロフィン遺伝子の第1の標的エクソン(第1のコーディングエクソン)の300ntまたはそれよりも多く、ジストロフィン遺伝子の完全なコーディングDNA配列(CDS)、およびジストロフィン遺伝子の3’UTR、ならびに続くイントロンの少なくとも300ntを含み得る。Xp21.2遺伝子座への相同性アームを有する一本鎖または二本鎖DNAは、ジストロフィン遺伝子の第1の標的エクソン(第1のコーディングエクソン)の400ntまたはそれよりも多く、ジストロフィン遺伝子の完全なCDS、およびジストロフィン遺伝子の3’UTR、ならびに続くイントロンの少なくとも400ntを含み得る。あるいは、DNA鋳型を、AAVにより送達する。
cDNAノックイン手法のために、一本鎖または二本鎖cDNAは、ジストロフィン遺伝子の単一のエクソン標的の40ntまたはそれよりも多くを含み得る。一本鎖または二本鎖cDNAは、ジストロフィン遺伝子の単一のエクソン標的の80ntまたはそれよりも多くを含み得る。一本鎖または二本鎖cDNAは、ジストロフィン遺伝子の単一のエクソン標的の100ntまたはそれよりも多くを含み得る。一本鎖または二本鎖cDNAは、ジストロフィン遺伝子の単一のエクソン標的の150ntまたはそれよりも多くを含み得る。一本鎖または二本鎖cDNAは、ジストロフィン遺伝子の単一のエクソン標的の300ntまたはそれよりも多くを含み得る。一本鎖または二本鎖cDNAは、ジストロフィン遺伝子の単一のエクソン標的の400ntまたはそれよりも多くを含み得る。あるいは、DNA鋳型を、AAVにより送達する。
cDNAノックイン手法のために、一本鎖または二本鎖cDNAは、ジストロフィン遺伝子の多数のエクソン標的の40ntまたはそれよりも多くを含み得る。一本鎖または二本鎖cDNAは、ジストロフィン遺伝子の多数のエクソン標的の80ntまたはそれよりも多くを含み得る。一本鎖または二本鎖cDNAは、ジストロフィン遺伝子の多数のエクソン標的の100ntまたはそれよりも多くを含み得る。一本鎖または二本鎖cDNAは、ジストロフィン遺伝子の多数のエクソン標的の150ntまたはそれよりも多くを含み得る。一本鎖または二本鎖cDNAは、ジストロフィン遺伝子の多数のエクソン標的の300ntまたはそれよりも多くを含み得る。一本鎖または二本鎖cDNAは、ジストロフィン遺伝子の多数のエクソン標的の400ntまたはそれよりも多くを含み得る。あるいは、DNA鋳型を、AAVにより送達する。
(実施例24)
リードCRISPR−Cas9/DNAドナーの組合せの再査定
HDR遺伝子編集のための様々な戦略を試験した後、リードCRISPR−Cas9/DNAドナーの組合せを、欠失の効率、組換え、およびオフターゲット特異性について治療的に関連する細胞において再査定する。Cas9 mRNAまたはRNPは送達のための脂質ナノ粒子へと製剤化され、sgRNAはナノ粒子へと製剤化されるか、またはAANとして送達され、ドナーDNAはナノ粒子へと製剤化されるか、またはAAVとして送達される。
(実施例25)
関連する動物モデルにおけるin vivo試験
CRISPR−Cas9/DNAドナーの組合せを再査定した後、リード製剤を治療的に関連するマウスモデルにおいてin vivoで試験する。
ヒト細胞での培養は、上記に説明するように、ヒト標的およびバックグラウンドヒトゲノムについての直接的な試験を可能にする。
前臨床有効性および安全性評価は、治療的に関連するマウスモデルにおける改変マウスまたはヒト細胞の生着を通して観察することができる。改変細胞は、生着後数ヶ月で観察することができる。
(実施例26)
DMD遺伝子のエクソン45、51、53、55、および70をターゲティングするS.pyogenes gRNAの切断効率
DMD遺伝子のエクソン45、51、53、55、および70をターゲティングするS.pyogenes(SP)gRNAを試験した(図3A〜3B)。エクソン45、51、53、55、および70の各々は、HDR/矯正ベースの手法を使用して編集してもよい。
SP gRNAを、SP Casタンパク質を共発現するプラスミドにクローニングした。これらのプラスミドを、リポフェクタミン2000を使用してHEK293T細胞にトランスフェクトした。細胞をトランスフェクション48時間後に回収し、ゲノムDNAを単離し、切断効率を、TIDE解析を使用して評価した。データを3〜4つの反復を含有する1回の実験から集計した(N=3〜4)。データを平均値およびSEMとしてプロットした。
図3A〜3Bからのデータは、ほとんどのgRNAがHEK293T細胞において50%を超える効率で切断することを示す。
(実施例27)
DMD遺伝子のエクソン43、44、45、46、50、51、52、53、および55のスプライスアクセプターをターゲティングするgRNAの切断効率
DMDを処置するための実行可能な選択肢は、DMD遺伝子のリーディングフレームを修復するためにエクソンスキッピングを誘導することである。エクソンスキッピングを誘導するために、遺伝子編集手法は、内因性スプライシング機構により認識されるエクソンのすぐ上流のAG配列を除去しなければならない。単鎖gRNAが二重鎖切断を誘導した場合、細胞は切断を修復する。この時間の一部で、内因性修復機構は、誤りを生じ、切断部位に隣接する塩基を挿入または欠失させる。AG配列を突然変異させるgRNAは、スプライシング機構がもはやこの部位をスプライスアクセプター部位として認識することができず、隣接エクソンの次のスプライスアクセプターにスキップするので、この部位でエクソンスキッピングを誘導する可能性がある。
DMD遺伝子のエクソン43、44、45、46、50、51、52、53、および55のスプライスアクセプターをターゲティングするS.pyogenes(SP)、S.aureus(SA)、S.thermophiles(ST)、N.Meningitides(NM)、およびCpf1 gRNAを設計し、試験した(図4A、4B、および4C)。
SP gRNAを、DMD遺伝子の9つのエクソンのスプライスアクセプターをターゲティングするように設計した。gRNAをIntegrated DNA Technologies(IDT)社からsplit RNA gRNAとして注文した。split gRNAを製造業者の教示によってtracRNAにアニーリングした。その後、アニーリングしたsplit gRNAを、RNAiMaxを使用して、SP Cas9タンパク質細胞を安定に発現するHEK293T細胞にトランスフェクトした。細胞をトランスフェクション48時間後に回収し、ゲノムDNAを単離し、切断効率を、TIDE解析を使用して評価した(図4A)。データを、各々3つの反復を含有する2回の独立した実験間で集計した(N=2〜6)。データを平均値およびSEMとしてプロットした。
NM、ST、およびSA gRNAを、9つのエクソンのスプライスアクセプターをターゲティングするように設計した。gRNAを、対応するgRNAと共に目的のCasタンパク質を共発現するプラスミドにクローニングした。プラスミドを、リポフェクタミン2000を使用してHEK293T細胞にトランスフェクトした。細胞をトランスフェクション48時間後に回収し、ゲノムDNAを単離し、切断効率を、TIDE解析を使用して評価した(図4B)。データを、各々3つの反復を含有する2〜4回の独立した実験間で集計した(N=6〜12)。データを平均値およびSEMとしてプロットした。
Cpf1 gRNAを、DMD遺伝子の9つのエクソンのスプライスアクセプターをターゲティングするように設計した。gRNAを、gRNAを発現するプラスミドにクローニングした。HEK293Tに、リポフェクタミン2000を使用して、目的のgRNAプラスミドおよびCpf1を発現する第2のプラスミドをコトランスフェクトした。細胞をトランスフェクション48時間後に回収し、ゲノムDNAを単離し、切断効率を、TIDE解析を使用して評価した(図4C)。データを、各々3つの反復を含有する2回の独立した実験間で集計した(N=3〜6)。データを平均値およびSEMとしてプロットした。
(実施例28)
DMD遺伝子のエクソン43、44、45、46、50、51、52、53、および55をターゲティングするgRNAの切断効率およびスプライスアクセプターノックアウト効率
スプライスアクセプターをターゲティングするgRNAの多くは、所望のスプライス部位で効率的に切断する。gRNAが有効に所望のAG配列をノックアウトするかどうかを評価するために、切断部位の周囲のPCRアンプリコンを次世代シークエンシングに供した。スプライスアクセプター部位が除去されたインデル百分率の読み取りを定量した(図5A〜Bおよび図6)。非限定的に、読み取りの大きな割合でスプライスアクセプター部位を除去する8−SA−SA55、3−SP−SA45、31−SP−SA50、および40−SP−SA55を含む、いくつかの有望なgRNAを特定した。
S.pyogenes gRNAを、DMD遺伝子の9つのエクソンのスプライスアクセプターをターゲティングするように設計した。gRNAを、IDT社からsplit RNA gRNAとして注文した。split gRNAを、製造業者の教示によりtracRNAにアニーリングした。アニーリングしたsplit gRNAを、RNAiMaxを使用して、S.pyogenes Cas9タンパク質細胞を安定に発現するHEK293T細胞にトランスフェクトした。細胞をトランスフェクション48時間後に回収し、ゲノムDNAを単離し、所望のスプライスアクセプターを囲む所望の100〜250bp PCRアンプリコンを次世代シークエンシングに供した。データを、各々3つの反復を含有する2回の独立した実験間で集計した(N=6)。平均を集団の平均として表した(図5A〜B)。
N.meningitides(NM)、S.thermophiles(ST)、およびS.aureus(SA)gRNAを、9つのエクソンのスプライスアクセプターをターゲティングするように設計した。gRNAを、対応するgRNAと共に目的のCasタンパク質を共発現するプラスミドにクローニングした。プラスミドを、リポフェクタミン2000を使用してHEK293T細胞にトランスフェクトした。細胞をトランスフェクション48時間後に回収し、ゲノムDNAを単離し、所望のスプライスアクセプターを囲む所望の100〜250bp PCRアンプリコンを次世代シークエンシングに供した。データを、各々3つの反復を含有する2回の独立した実験間で集計した(N=6)。平均を集団の平均として表した(図6)。
(実施例29)
DMD遺伝子のエクソン44、45、52、および54を囲む領域をターゲティングするgRNAの切断効率
編集手法を有効に評価するために、in vitro試験のために患者の細胞株にアクセスすることは重要である。しかしながら、患者材料は、アクセス困難である場合があり、試料間で大きな患者毎の変動があり得る。それゆえ、一般的な患者突然変異を模倣するDMD突然変異細胞株を創出することは重要であった。これは、研究者が、編集効率の変動が患者特異的でないことを確実にするために同じバックグラウンドで修復戦略の有効性を試験することを可能にする。これに取り組むために、DMD患者で発見される一般的な欠失(Δ52、Δ44、Δ45、およびΔ54)を創出するように対にされ得る、様々なgRNAを設計した。得られた細胞株は、HDRまたはエクソンスキッピング手法のいずれかを使用して矯正することができる。これらのgRNAは、モデル株の創出または目的の突然変異のHDRベースの矯正のいずれかのために使用することができることに留意することが重要である。
領域(目的のエクソンの100bp〜1kb上流および下流)を、gRNA設計ソフトウェアを使用してスクリーニングした。目的のエクソン(例えばDMD遺伝子のエクソン44、45、52、および54)の各側上で、最も少ない予測されるオフターゲット効果に基づく最も優れた6つのgRNAを選択した。これらのgRNAを、最初に切断効率についてHEK293Tで評価し(図7A〜7B)、iPSCで切断効率について確認した(図8A〜8B)。
エクソン44、45、52、および54の周囲の単一のS.pyogenes gRNAを選択した。gRNAをIDT社からsplit gRNAとして注文した。split gRNAを、製造業者の教示を使用してトレーサー配列にアニーリングした。
アニーリングしたgRNAを、RNAiMaxを使用して、SP Cas9タンパク質セルを安定に発現するHEK293Tにトランスフェクトした。細胞をトランスフェクション48時間後に回収し、ゲノムDNAを単離し、切断効率を、TIDE解析を使用して評価した(図7A〜7B)。データを、各々3つの反復を含有する1回の実験から集計した(N=1〜3)。データを平均値およびSEMとしてプロットした。
また、アニーリングしたgRNAを、続いてCas9タンパク質と複合体形成させてリボヌクレオタンパク質複合体(RNP:ribonucleoprotein complex)を形成した。RNAiMaxを使用して、RNPをiPSC(DiPS 1016SevA)にトランスフェクトした。細胞をトランスフェクション48時間後に回収し、ゲノムDNAを単離し、切断効率を、TIDE解析を使用して評価した(図8A〜8B)。データを、3つの反復を含有する1回の実験から集計した(N=1〜3)。データを平均値およびSEMとしてプロットした。
エクソン44、45、52、および54の周囲の単一のS.pyogenes gRNAを選択した。gRNAをIDT社からsplit gRNAとして注文した。split gRNAを、製造業者の教示を使用してトレーサー配列にアニーリングした。gRNAを、RNAiMaxを使用して、SP Cas9タンパク質セルを安定に発現するHEK293Tにトランスフェクトした。また、同じgRNAを、Cas9タンパク質と複合体形成させてリボヌクレオタンパク質複合体(RNP)を形成した。RNAiMaxを使用して、RNPをiPSC(DiPS 1016SevA)にトランスフェクトした。細胞をトランスフェクション48時間後に回収し、ゲノムDNAを単離し、切断を、TIDE解析を使用して評価した。データを、多数の実験から集計した。平均値のみをプロットした。
HEK293T細胞およびiPSCにおける編集効率の間で高い相関があり、ピアソンの相関係数は全体で0.51であった。そのため、HEK293T細胞におけるスクリーニングは、本発明者らの目的の治療細胞株−iPSCについての優れた代用物であると考えられた(図9)。
(実施例30)
クローン欠失事象のクローン解析
iPSCで20%を超える切断効率を有するgRNAを、イントロン55を除く目的の各イントロンで特定した。所望の欠失を生じる最も優れた切断効率を有する単一のgRNAを選択した。
2組のgRNA対を、クローンΔ52細胞株を創出するために使用した(1−SP−I52+2−SP−I53および2−SP−I52+2−SP−I53)。PCR解析によりアクセスされるように、スクリーニングした261個の全クローンのうち、57個は所望の欠失を有した(図10A、10C)。
予測されるΔ52欠失の存在を確認するために、目的の各クローンからのゲノムDNAを回収した。欠失を挟むPCRプライマーを設計した。欠失は小さかった(<900bp)ので、欠失を検出するために単一のプライマー対を使用することができた。これは、より小さな欠失バンド(約500bp)または野生型(WT:wild−type)バンド(約1000bp)をもたらし得る。欠失(del)または野生型(WT)生成物の代表的なゲルを、図10Aで示す。
欠失PCR生成物をサンガーシークエンシングに供することにより、7つのクローンで欠失事象を確認した(7/7クローンは、予測された欠失事象を有し、小挿入および欠失を伴った)(図11A〜B)。7つのクローンからの欠失バンド(図8Aで発生させたPCR)をゲル調製し、サンガーシークエンシングに供した。gRNA 1−SP−I52および2−SP−I53を使用して創出した2つのクローンをシークエンシングし、予測される欠失生成物に整列させた(S.pyogenes Cas9はgRNAの3’末端から3BPを切断すると仮定して)(図11A)。gRNA 2−SP−I52および2−SP−I53を使用して創出した5つのクローンをシークエンシングし、予測される欠失生成物に整列させた(S.pyogenes Cas9はgRNAの3’末端から3BPを切断すると仮定して)(図11B)。
同様に、2組のgRNA対を、クローンΔ44細胞株を創出するために使用した(2−SP−I44+3−SP−I45および2−SP−I44+4−SP−I45)。PCR解析によりアクセスされるように、スクリーニングした256個の全クローンのうち、16個は所望の欠失を有した(図10B、10C)。
予測されるΔ44欠失の存在を確認するために、目的の各クローンからのゲノムDNAを回収した。Δ44 gRNAは、Δ52 gRNAと比較してより大きな欠失を生成するので、欠失バンドまたはWTバンドのいずれかを検出するために、2組のPCRプライマー対を設計した。予測される欠失バンドは約400bpであり、予測されるWTバンドは約500bpであった。欠失(del)、野生型生成物(WT+)、および野生型プライマーで増幅した陰性試料(WT−)の代表的なゲルを図10Bに示す。
(実施例31)
レンチウイルススクリーニング
エクソン51スキッピングを誘導することができるgRNA対の大きなスペクトルを特定するために、本発明者らは、ラージスケールレンチウイルススクリーニングを行った。イントロン51およびイントロン52ゲノム配列を、gRNA設計ソフトウェアを使用して解析に供した。得られたgRNAリストを、エクソン51スプライスアクセプターに隣接する約3000個の左gRNAおよび3000個の右gRNAに狭めた。リストは、配列の固有性(ゲノム内のどこか他のところとの完全な適合を有しないgRNAのみをスクリーニングした)、および最小限の予測されるオフターゲットに基づいて狭めた。右gRNAと対になった左gRNAは、エクソン51スキッピングを誘導するはずである。6000個のgRNAを、U6プロモーターから目的の各gRNAを発現し、ピューロマイシン耐性を与えるレンチウイルスベクターにクローニングした。K562細胞にMOI 2にてウイルスを形質導入し、ピューロマイシンで選択して、目的のgRNAを発現している細胞集団を得た。その後、これらの細胞にCas9 mRNAを遺伝子導入して(nucleofeted)、一過性の切断期間を誘導した。7日後、これらの細胞をペレット化し、ゲノムDNAを抽出した。ゲノムDNAを、ハイブリッドキャプチャーを使用してエクソン51の周囲の目的の領域について富化した。富化DNAを次世代シークエンシングに供した(図19A〜19VV)。
(実施例32)
in vitroで転写される(IVT)gRNAスクリーニング
エクソン45スキッピングを誘導することができるgRNA対の大きなスペクトルを特定するために、in vitro転写(IVT)gRNAスクリーニングを行った。イントロン45およびイントロン46ゲノム配列を、gRNA設計ソフトウェアを使用して解析に供した。得られたgRNAリストを、配列の固有性(ゲノム内のどこか他のところとの完全な適合を有しないgRNAのみをスクリーニングした)、および最小限の予測されるオフターゲットに基づいて約100個の左gRNAおよび約100個の右gRNAのリストに狭めた。このgRNAの組をin vitro転写し、メッセンジャーMaxを使用してCas9を安定に発現するHEK293T細胞にトランスフェクトした。細胞をトランスフェクション48時間後に回収し、ゲノムDNAを単離し、切断効率を、TIDE解析を使用して評価した(図12A〜E)。試験したgRNAの約18%が50%を超える切断効率を誘導したことが分かった。
(実施例33)
DMD遺伝子のエクソン45〜55間の部分的cDNAノックイン
DMD遺伝子を矯正するための別の手法は、部分的cDNAノックインである。原理の証明として、DMD遺伝子の領域エクソン45〜55を置きかえるための研究を行った(これは、DMD患者の最大62%を処置することができ得る)。エクソン45〜55のcDNAは、3.2kbである。Trilink社からの2固相合成gRNA[1つはエクソン45(配列番号1410449)および2つ目はエクソン55(配列番号114738)にある]を切断に使用した。2つのTrilink社製gRNAをCas9タンパク質と複合体形成させ、プラスミドドナーと共にiPSCに遺伝子導入した(nucleofeted)。プラスミドドナーは、エクソン45〜55部位への組み込みを誘導するために両側に1kbホモロジーアームを伴う、GFPを構成的に発現する3.2kbカセット(所望のcDNAノックインと同じサイズ)を有するように設計した。細胞を23日間にわたり追跡した。全ての実験条件は、高効率で(60%を超えて)遺伝子導入されたが、しかしながら、ドナーおよびgRNAを受容した細胞からのGFP発現のみが経時的に安定化し、HDRが細胞の約16パーセントで起こったことを示した(図13A)。これらの試料からのゲノムDNAを単離し、ドナー構築物の部位特異的統合について試験した。試料を、WT対立遺伝子または所望のノックイン対立遺伝子に特異的なプライマーで増幅した。予測されるように、WTおよびノックイン対立遺伝子の両方を検出することができた(図13B)。
(実施例34)
内部欠失しているが、それでもなお機能的なジストロフィンタンパク質
概念の証明として、本発明者らが、iPSCで編集し、編集した細胞のクローン集団を単離し、かつそれらの細胞を筋原性系列に分化させて、内部欠失しているが、それでもなお機能的なジストロフィンタンパク質を生成することができることを示した。
DMD遺伝子を矯正するための1つの魅力的な方法は、Δ45〜55欠失を創出することである。この欠失は、DMDリーディングフレームを維持し、DMD患者の約62%でジストロフィン発現を修復することができる。所望のΔ45〜55欠失を創出するために、2つの公開されたSP gRNA(CR6:配列番号1,410,475およびCR36:配列番号91033)を、SP Cas9 T2A橙色蛍光タンパク質(OFP:orange florescent protein)もまた発現するプラスミドにクローニングした。
これらの2つのプラスミドを、Mirus LT1トランスフェクション試薬を使用して、iPSCにコトランスフェクトした。2日後、OFP発現により示されるCas9を発現している細胞を、蛍光標識細胞分取(FACS:florescence activated cell sorting)を使用して単離した。細胞を低密度で播種し、単一細胞クローンが皿に出現するまで7〜10日間生育させた。これらのクローンを顕微鏡下で手作業にて採り、96ウェルプレートに移した。細胞がコンフルエンスに達すると、試料を1:2で継代し、ゲノムDNAを残りの細胞から単離した。
所望の欠失を有するクローンを特定するために、3プライマーPCRアッセイを設計した(図14Aおよび14B)。このアッセイは、同じPCR反応で野生型(WT)および欠失バンドの検出を可能にする。このアッセイを使用して、本発明者らは、編集事象を有する26/100クローンを特定した(図14C)。
これらのクローンが所望のΔ45〜55欠失を有することをさらに確証するために、5つのクローンを、サンガーシークエンシングに供した。5つ全てが、所望の欠失事象を有することが確認された。1つのクローンは挿入を有し、1つは単一塩基対欠失を有した。他の3つのクローンは、完全な欠失事象を含有した(図15)。
また、シークエンシングした全ての5つのクローンを、核型分析に供し、核型分析的に正常であることが分かった。さらに、全てのクローンは多能性を維持し、SSEA−4およびTRA−160の両方について99%を超えて陽性染色された(図16A〜B)。
その後、公開されたChalらのプロトコール[Chalら(2015年)Differentiation of Pluripotent stem cells to muscle fiber to model Duchenne Muscular Dystrophy、Nature Biotechnology]を使用して、クローンのうちの4つを筋管(mytotubes)に分化させて、ジストロフィン発現を誘導した。ウェスタンブロットおよび免疫組織化学のために試料を回収した。全ての5つの編集済みクローンは、内部欠失ジストロフィンタンパク質の発現を誘導した(図17)。これらのサイズを、WTジストロフィンタンパク質またはΔ45〜55ジストロフィンタンパク質のいずれかを発現する対照cDNAプラスミドをトランスフェクトしたHEK293T細胞から単離したタンパク質と比較した。分化細胞は、ミオシン重鎖染色により示されるように、表現型として筋管を生成した。分化したクローン56の代表的な画像を図18に示す。
例示的な態様についての注釈
本開示は、本発明の様々な態様および/またはその潜在的可能性がある適用を例示する目的のために様々な特定の態様の説明を提供するが、変形および改変が当業者に想起されることが理解される。したがって、本明細書で説明する発明(単数)または発明(複数)は、少なくともそれらが請求されるのと同程度に広いものであり、本明細書で提供される特定の例示的な態様により、より狭く定義されるものではないと理解されるべきである。
本明細書で特定される任意の特許、刊行物、または他の開示材料は、別に示されない限り、組み込まれる材料が本明細書で明白に示される存在する説明、定義、記述、または他の開示材料と矛盾しない限り、その全体が本明細書に参照により組み込まれる。そのため、および必要な限り、本明細書で示される明らかな開示は、参照により組み込まれる任意の矛盾する材料に取って代わる。本明細書に参照により組み込まれると述べられているが、本明細書で示される存在する定義、記述、または他の開示材料と矛盾する任意の材料またはその部分は、その組み込まれる材料と存在する開示材料との間で矛盾が生じない限りにおいてのみ組み込まれる。出願人らは、本明細書に参照により組み込まれる、任意の主題またはその部分を明白に列挙するために、本明細書を訂正する権利を有する。