JP2019502400A - キメラ胚補助臓器作製用の組成物及び方法 - Google Patents

キメラ胚補助臓器作製用の組成物及び方法 Download PDF

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Abstract

移植に適したヒトまたはヒト化された組織および臓器が本明細書において開示される。ホスト動物の遺伝子編集は、ドナー幹細胞による失われた遺伝情報の相補のためのニッチを提供する。標的臓器の成長および/または分化に関与する遺伝子をノックアウトまたは破壊するためにホストゲノムを編集すること、および胚段階にある動物にドナー幹細胞を注入し、臓器の成長および発生に関する失われた遺伝情報を相補すること。その結果は、相補された組織(ヒト/ヒト化された臓器)がドナーの遺伝子型および表現型に適合したキメラ動物である。かかる臓器は一世代で作製することができ、および患者自身の身体から幹細胞を採取および作製することができる。本明細書に開示されるように、相補組織のための「ニッチ」を生成する細胞または胚において複数の遺伝子を同時に編集することにより、上記を行うことが可能である。脊椎動物の細胞または胚において、複数の遺伝子を、標的化ヌクレアーゼおよび相同組み換え修復(HDR)の鋳型を使用した編集に対する標的とすることができる。【選択図】なし

Description

関連出願の相互参照
本出願は、各々2015年10月27日に出願された米国仮特許出願第62/246,926号明細書、第62/246,927号明細書、第62/246,929号明細書、第62/246,947号明細書、第62/247,092号明細書、第62/947,096号明細書、第62/247,115号明細書、第62/247,117号明細書、第62/247,118号明細書、および第62/247,122号明細書の優先権を主張する。上述の各仮出願の全内容は、参照により本明細書に援用される。
本出願の主題は、2015年11月5日に公開された国際特許出願公開WO2015/168125A1、2016年9月9日に公開されたWO2016/141234、2016年6月30日に出願された国際特許出願PCT/US2016/040378、および2016年6月30日に出願されたPCT/US2016/040431に開示された内容に関連し得る。上述の各国際特許出願の全内容は、参照により本明細書に援用される。
連邦政府支援研究の下でなされた本発明に関する権利の主張
本発明は、国防総省に与えられた助成金番号W81XWH−15−1−0393、ならびに国立衛生研究所に与えられた助成金番号1R43HL124781−01A1および1R43GM113525−01の下、政府のサポートを受けて為されたものである。政府は、本発明に一定の権利を有している。
過去100年間において、科学者および医師は、多くの加齢性疾患および障害が始まる少なくとも人生の最後の数十年まで、人々の生存および健康の維持に大きく貢献してきた。これら疾患の治療のために、米国では毎年、1兆ドル超が費やされている。臓器移植が効果的であるが利用可能な臓器はあまりにも少なく、多くの症例で免疫不適合が問題を生じさせている。たとえば2003年以降、臓器移植を待ちながら7,000人を超える米国人が死亡している。
様々な幹細胞による動物体細胞の遺伝子相補は、治療、移植、および再生医療における使用のためのヒト化された組織および臓器の操作および生産を可能とする。現在、移植用臓器の供給源は、機械的または生物的のいずれかであり、ヒトのドナー;死体に由来するか、ごく限定された場合では、他の哺乳類種、多くの場合ブタからの異種移植となる。不幸なことに、すべての場合で、ホスト身体による拒絶を受け、および/または他の副作用を惹起し得る。
以下の1〜92の連続して列挙される段落は、本発明の様々な態様および関連実施形態を記載するものである。
1.少なくとも1個のヒト細胞を有する非ヒト胚を備えたキメラ胚であって、1個以上の内因性臓器または組織の発生に関与する該非ヒト胚の1個以上の内因性遺伝子が破壊されており、および1個以上の対応するヒト臓器または組織の発生に関与する該ヒト細胞の1個以上の遺伝子が、該1個以上の破壊された内因性遺伝子の機能を相補し、それによって、該キメラ胚から発生した動物は、少なくとも1個のヒト臓器または組織を備えている、キメラ胚。
2.少なくとも1個のヒト細胞を有する非ヒト胚を備えたキメラ胚であって、1個以上の内因性臓器または組織の発生に関与する該非ヒト胚の1個以上の内因性遺伝子が破壊されており、および1個以上の対応するヒト臓器または組織の発生に関与する該ヒト細胞の1個以上の遺伝子が、該1個以上の破壊された内因性遺伝子の機能を相補し、それによって、該キメラ胚から発生した動物は、少なくとも1個のヒト臓器または組織を備えている、キメラ胚であるが、ただし以下の場合のキメラ胚は除く:
該内因性遺伝子が、MYF5、MYOD、および/またはMRF4を備え、該ヒトの臓器または組織が骨格筋細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、ETV2を備え、該ヒトの臓器または組織がヒトの血管細胞を備えている;および
該内因性遺伝子が、NKX2−5、HANDII、および/またはTBX5を備え、該ヒトの臓器または組織が心筋細胞を備えている。
3.少なくとも1個のヒト細胞を有する非ヒト胚を備えたキメラ胚であって、1個以上の内因性臓器または組織の発生に関与する該非ヒト胚の1個以上の内因性遺伝子の両アレルが破壊されており、および1個以上の対応するヒト臓器または組織の発生に関与する該ヒト細胞の1個以上の遺伝子が、該1個以上の破壊された内因性遺伝子の機能を相補し、それによって、該キメラ胚から発生した動物は、少なくとも1個のヒト臓器または組織を備えており、この場合において、
該内因性遺伝子は、NURR1、LMX1A、および/またはPITX3を備え、該ヒトの臓器または組織は、ドーパミン神経を備えている;
該内因性遺伝子は、OLIG、および/またはOLIG2を備え、該ヒトの臓器または組織は、乏突起膠細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、RAG2、IL2rg、C−KIT、および/またはETV2を備え、該ヒトの臓器または組織が若い血液を備えている;
該内因性遺伝子が、RUNX1、C−KIT、および/またはFLK1を備え、該ヒトの臓器または組織が造血細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、ETV2を備え、該ヒトの臓器または組織がヒトの血管細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、MYF5、MYOD、MRF4、および/またはPAX3を備え、該ヒトの臓器または組織が骨格筋細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、NKX2−5、HANDII、および/またはTBX5を備え、該ヒトの臓器または組織が心筋細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、Pdx、および/またはETV2を備え、該ヒトの臓器または組織が膵臓細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、HHEX、および/またはUbcを備え、該ヒトの臓器または組織がヒトの肝臓細胞を備えている;または
該内因性遺伝子が、Nkx2.1、Sox2、Id2、および/またはTbx4を備え、該ヒトの臓器または組織が肺細胞を備えている。
4.少なくとも1個のヒト細胞を有する非ヒト胚を備えたキメラ胚であって、1個以上の内因性臓器または組織の発生に関与する該非ヒト胚の1個以上の内因性遺伝子の両アレルが破壊されており、および1個以上の対応するヒト臓器または組織の発生に関与する該ヒト細胞の1個以上の遺伝子が、該1個以上の破壊された内因性遺伝子の機能を相補し、それによって、該キメラ胚から発生した動物は、少なくとも1個のヒト臓器または組織を備えており、この場合において、
該内因性遺伝子は、NURR1、LMX1A、および/またはPITX3を備え、該ヒトの臓器または組織は、ドーパミン神経を備えている;
該内因性遺伝子は、OLIG、および/またはOLIG2を備え、該ヒトの臓器または組織は、乏突起膠細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、RAG2、IL2rg、C−KIT、および/またはETV2を備え、該ヒトの臓器または組織が若い血液を備えている;
該内因性遺伝子が、RUNX1、C−KIT、および/またはFLK1を備え、該ヒトの臓器または組織が造血細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、PAX3を備え、該ヒトの臓器または組織が骨格筋細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、Pdx、および/またはETV2を備え、該ヒトの臓器または組織が膵臓細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、HHEX、および/またはUbcを備え、該ヒトの臓器または組織がヒトの肝臓細胞を備えている;または
該内因性遺伝子が、Nkx2.1、Sox2、Id2、および/またはTbx4を備え、該ヒトの臓器または組織が肺細胞を備えている、方法。
5.少なくとも1個のヒト細胞を有する非ヒト胚を備えたキメラ胚であって、1個以上の内因性臓器または組織の発生に関与する該非ヒト胚の1個以上の内因性遺伝子の両アレルが破壊されており、および1個以上の対応するヒト臓器または組織の発生に関与する該ヒト細胞の1個以上の遺伝子が、該1個以上の破壊された内因性遺伝子の機能を相補し、それによって、該キメラ胚から発生した動物は、少なくとも1個のヒト臓器または組織を備えており、
この場合において、
該内因性遺伝子は、RAG2およびIL2rgおよび/またはETV2であり、該ヒトの臓器または組織は若い血液を備えている;
該内因性遺伝子は、MYF5、MYOD、およびMRF4、および/またはPAX3であり、該ヒトの臓器または組織は骨格筋細胞を備えている;または
該内因性遺伝子は、NKX2−5、HANDII、および/またはTBX5であり、該ヒトの臓器または組織は心筋細胞を備えている。
6.少なくとも1個のヒト細胞を有する非ヒト胚を備えたキメラ胚であって、1個以上の内因性臓器または組織の発生に関与する該非ヒト胚の1個以上の内因性遺伝子の両アレルが破壊されており、および1個以上の対応するヒト臓器または組織の発生に関与する該ヒト細胞の1個以上の遺伝子が、該1個以上の破壊された内因性遺伝子の機能を相補し、それによって、該キメラ胚から発生した動物は、少なくとも1個のヒト臓器または組織を備えており、
この場合において、
該内因性遺伝子は、RAG2およびIL2rgおよび/またはETV2であり、該ヒトの臓器または組織は若い血液を備えている;
該内因性遺伝子は、PAX3であり、該ヒトの臓器または組織は骨格筋細胞を備えている;
該内因性遺伝子は、NKX2−5、HANDII、および/またはTBX5であり、該ヒトの臓器または組織は心筋細胞を備えている、該キメラ胚。
7.該内因性遺伝子は、NURR1、LMX1A、および/またはPITX3を備え、該ヒトの臓器または組織は、ドーパミン神経を備えている、段落1〜3のいずれか1つに記載のキメラ胚。
8.該内因性遺伝子は、OLIGおよび/またはOLIG2を備え、該ヒトの臓器または組織は、乏突起膠細胞を備えている、段落1〜3のいずれか1つに記載のキメラ胚。
9.該内因性遺伝子は、RAG2、IL2rg、C−KIT、および/またはETV2を備え、該ヒトの臓器または組織は、若い血を備えている、段落1〜3のいずれか1つに記載のキメラ胚。
10.該内因性遺伝子は、RUNX1、C−KIT、および/またはFLK1を備え、該ヒトの臓器または組織は、造血細胞を備えている、段落1〜3のいずれか1つに記載のキメラ胚。
11.該内因性遺伝子は、ETV2を備え、該ヒトの臓器または組織は、ヒトの血管細胞を備えている、段落1または3のいずれか1つに記載のキメラ胚。
12.該内因性遺伝子は、MYF5、MYOD、MRF4、および/またはPAX3を備え、該ヒトの臓器または組織は、ヒトの骨格筋細胞を備えている、段落1または3のいずれか1つに記載のキメラ胚。
13.該内因性遺伝子は、NKX2−5、HANDII、および/またはTBX5を備え、該ヒトの臓器または組織は、ヒトの心筋細胞を備えている、段落1または3のいずれか1つに記載のキメラ胚。
14.該内因性遺伝子は、Pdx、および/またはETV2を備え、該ヒトの臓器または組織は、膵臓細胞を備えている、段落1〜3のいずれか1つに記載のキメラ胚。
15.該内因性遺伝子は、HHEXまたはUbcを備え、該ヒトの臓器または組織は、ヒトの肝臓細胞を備えている、段落1〜3のいずれか1つに記載のキメラ胚。
16.該内因性遺伝子は、Nkx2.1、Sox2、Id2、および/またはTbx4を備え、該ヒトの臓器または組織は、肺細胞を備えている、段落1〜3のいずれか1つに記載のキメラ胚。
17.該内因性遺伝子の両方のアレルが、破壊されている、段落1または段落2に記載のキメラ胚。
18.該非ヒト胚は、非ヒト脊椎動物胚である、段落1〜17のいずれか1つに記載のキメラ胚。
19.非ヒト脊椎動物胚は、偶蹄目の胚または非ヒト霊長類の胚である、段落18に記載のキメラ胚。
20.非ヒト脊椎動物胚は、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、鳥類、ウサギ、ヤギ、イヌ、ネコ、実験動物、甲殻類、および魚類からなる群から選択される、段落18に記載のキメラ胚。
21.非ヒト脊椎動物胚は、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、またはウサギの胚である、段落20に記載のキメラ胚。
22.1個以上の内因性臓器または組織の発生に関与する非ヒト胚の1個以上の内因性遺伝子が、Transcription Activator−Like Effector Nucleases(TALENS)、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)、CRISPR associated protein 9(Cas9)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(Zinc Finger Nucleases:ZFNs)、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードする分子、合成人工染色体、RecA−gal4融合体、RNAi、CRISPRi、またはそれらの組み合わせにより破壊されている、段落1〜21のいずれか1つに記載のキメラ胚。
23.該1個以上の内因性遺伝子が、Cas9により破壊されている、段落22に記載のキメラ胚。
24.該ヒト細胞が、少なくとも1個のドナー細胞から誘導され、および該少なくとも1個のドナー細胞が、胚性幹細胞、組織特異的幹細胞、間葉系幹細胞、多能性幹細胞、または人工多能性幹細胞である、段落1〜23のいずれか1つに記載のキメラ胚。
25.破壊が、遺伝子の編集、ノックアウト、1個以上のDNA残基の挿入、1個以上の塩基の欠失、または1個以上のDNA残基の挿入と欠失の両方を含む、段落1〜24のいずれかに記載のキメラ胚。
26.破壊が、1個以上のDNA残基の置換を含む、段落1〜24のいずれかに記載のキメラ胚。
27.破壊が、1個以上のDNA残基の置換からなる、段落26に記載のキメラ胚。
28.段落1〜27のいずれか1つに記載のキメラ胚から発生した動物。
29.段落1〜27のいずれか1つに記載のキメラ胚から発生した動物から採取されたヒトの組織または臓器。
30.キメラ胚の作製方法であって、
a)少なくとも1個の非ヒト細胞または非ヒト胚において、1個以上の内因性臓器または組織の発生に関与する1個以上の内因性遺伝子を破壊すること、
b)工程a)が非ヒト細胞で行われた場合、細胞をクローン化し、胚を生成すること;および
c)工程a)または工程b)の胚に、少なくとも1個のヒト細胞を導入することであって、該ヒト細胞は、該1個以上の臓器または組織の発生に関与する1個以上の遺伝子を担持しており;それによりキメラ胚を作製すること、を含む方法。
31.キメラ胚の作製方法であって、
a)少なくとも1個の非ヒト細胞または非ヒト胚において、1個以上の内因性臓器または組織の発生に関与する1個以上の内因性遺伝子を破壊すること、
b)工程a)が非ヒト細胞で行われた場合、細胞をクローン化し、胚を生成すること;および
c)工程a)または工程b)の胚に、少なくとも1個のヒト細胞を導入することによりキメラホスト胚を生成することであって、該ヒト細胞が、1個以上の臓器または組織の発生に関与する遺伝子を1個以上担持すること;
それにより、以下のキメラ胚を除く、キメラ胚を作製する方法:
該内因性遺伝子が、MYF5、MYOD、および/またはMRF4を備え、該ヒトの臓器または組織が骨格筋細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、ETV2を備え、該ヒトの臓器または組織がヒトの血管細胞を備えている;および
該内因性遺伝子が、NKX2−5、HANDII、および/またはTBX5を備え、該ヒトの臓器または組織が心筋細胞を備えている。
32.キメラ胚の作製方法であって、
a)少なくとも1個の非ヒト細胞または非ヒト胚において、1個以上の臓器または組織の発生に関与する1個以上の内因性遺伝子の両アレルを破壊すること、
b)工程a)が非ヒト細胞で行われた場合、細胞をクローン化し、胚を生成すること;および
c)工程a)または工程b)の胚に、少なくとも1個のヒト細胞を導入することであって、該ヒト細胞は、該1個以上の臓器または組織の発生に関与する1個以上の遺伝子を担持しており;それによりキメラ胚を作製することであって、この場合において:
該内因性遺伝子は、NURR1、LMX1A、および/またはPITX3を備え、該ヒトの臓器または組織は、ドーパミン神経を備えている;
該内因性遺伝子は、OLIG、および/またはOLIG2を備え、該ヒトの臓器または組織は、乏突起膠細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、RAG2、IL2rg、C−KIT、および/またはETV2を備え、該ヒトの臓器または組織が若い血液を備えている;
該内因性遺伝子が、RUNX1、C−KIT、および/またはFLK1を備え、該ヒトの臓器または組織が造血細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、ETV2を備え、該ヒトの臓器または組織がヒトの血管細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、MYF5、MYOD、MRF4、および/またはPAX3を備え、該ヒトの臓器または組織が骨格筋細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、NKX2−5、HANDII、および/またはTBX5を備え、該ヒトの臓器または組織が心筋細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、Pdx、および/またはETV2を備え、該ヒトの臓器または組織が膵臓細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、HHEX、および/またはUbcを備え、該ヒトの臓器または組織がヒトの肝臓細胞を備えている;または
該内因性遺伝子が、Nkx2.1、Sox2、Id2、および/またはTbx4を備え、該ヒトの臓器または組織が肺細胞を備えている、方法。
33.キメラ胚の作製方法であって、
a)少なくとも1個の非ヒト細胞または非ヒト胚において、1個以上の臓器または組織の発生に関与する1個以上の内因性遺伝子の両アレルを破壊すること、
b)工程a)が非ヒト細胞で行われた場合、細胞をクローン化し、胚を生成すること;および
c)工程a)または工程b)の胚に、少なくとも1個のヒト細胞を導入することであって、該ヒト細胞は、該1個以上の臓器または組織の発生に関与する1個以上の遺伝子を担持しており;それによりキメラ胚を作製することであって、この場合において:
該内因性遺伝子は、NURR1、LMX1A、および/またはPITX3を備え、該ヒトの臓器または組織は、ドーパミン神経を備えている;
該内因性遺伝子は、OLIG、および/またはOLIG2を備え、該ヒトの臓器または組織は、乏突起膠細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、RAG2、IL2rg、C−KIT、および/またはETV2を備え、該ヒトの臓器または組織が若い血液を備えている;
該内因性遺伝子が、RUNX1、C−KIT、および/またはFLK1を備え、該ヒトの臓器または組織が造血細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、PAX3を備え、該ヒトの臓器または組織が骨格筋細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、Pdx、および/またはETV2を備え、該ヒトの臓器または組織が膵臓細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、HHEX、および/またはUbcを備え、該ヒトの臓器または組織がヒトの肝臓細胞を備えている;または
該内因性遺伝子が、Nkx2.1、Sox2、Id2、および/またはTbx4を備え、該ヒトの臓器または組織が肺細胞を備えている、方法。
34.キメラ胚の作製方法であって、
a)少なくとも1個の非ヒト細胞または非ヒト胚において、1個以上の臓器または組織の発生に関与する1個以上の内因性遺伝子の両アレルを破壊すること、
b)工程a)が非ヒト細胞で行われた場合、細胞をクローン化し、胚を生成すること;および
c)工程a)または工程b)の胚に、少なくとも1個のヒト細胞を導入することであって、該ヒト細胞は、該1個以上の臓器または組織の発生に関与する1個以上の遺伝子を担持しており;それによりキメラ胚を作製することであって、この場合において:
該内因性遺伝子は、RAG2およびIL2rgおよび/またはETV2であり、該ヒトの臓器または組織は若い血液を備えている;
該内因性遺伝子は、MYF5、MYOD、およびMRF4、および/またはPAX3であり、該ヒトの臓器または組織は骨格筋細胞を備えている;または
該内因性遺伝子は、NKX2−5、HANDII、およびTBX5であり、該ヒトの臓器または組織は心筋細胞を備えている。
35.キメラ胚の作製方法であって、
a)少なくとも1個の非ヒト細胞または非ヒト胚において、1個以上の臓器または組織の発生に関与する1個以上の内因性遺伝子の両アレルを破壊すること、
b)工程a)が非ヒト細胞で行われた場合、細胞をクローン化し、胚を生成すること;および
c)工程a)または工程b)の胚に、少なくとも1個のヒト細胞を導入することであって、該ヒト細胞は、該1個以上の臓器または組織の発生に関与する1個以上の遺伝子を担持しており;それによりキメラ胚を作製することであって、この場合において:
該内因性遺伝子は、RAG2およびIL2rgおよび/またはETV2であり、該ヒトの臓器または組織は若い血液を備えている;
該内因性遺伝子は、PAX3であり、該ヒトの臓器または組織は骨格筋細胞を備えている;または
該内因性遺伝子は、NKX2−5、HANDII、およびTBX5であり、該ヒトの臓器または組織は心筋細胞を備えている、方法。
36.該内因性遺伝子は、NURR1、LMX1A、および/またはPITX3を備え、該ヒトの臓器または組織は、ドーパミン神経を備えている、段落30〜32のいずれか1つに記載の方法。
37.該内因性遺伝子は、OLIGおよび/またはOLIG2を備え、該ヒトの臓器または組織は、乏突起膠細胞を備えている、段落30〜32のいずれか1つに記載の方法。
38.該内因性遺伝子は、RAG2、IL2rg、C−KIT、および/またはETV2を備え、該ヒトの臓器または組織は、若い血を備えている、段落30〜32のいずれか1つに記載の方法。
39.該内因性遺伝子は、RUNX1、C−KIT、および/またはFLK1を備え、該ヒトの臓器または組織は、造血細胞を備えている、段落30〜32のいずれか1つに記載の方法。
40.該内因性遺伝子は、ETV2を備え、該ヒトの臓器または組織は、ヒトの血管細胞を備えている、段落30または32のいずれか1つに記載の方法。
41.該内因性遺伝子は、MYF5、MYOD、MRF4、および/またはPAX3を備え、該ヒトの臓器または組織は、ヒトの骨格筋細胞を備えている、段落30または32のいずれか1つに記載の方法。
42.該内因性遺伝子は、NKX2−5、HANDII、および/またはTBX5を備え、該ヒトの臓器または組織は、ヒトの心筋細胞を備えている、段落30または32のいずれか1つに記載の方法。
43.該内因性遺伝子は、Pdx、および/またはETV2を備え、該ヒトの臓器または組織は、膵臓細胞を備えている、段落30〜32のいずれか1つに記載の方法。
44.該内因性遺伝子は、HHEX、および/またはUbcを備え、該ヒトの臓器または組織は、ヒトの肝臓細胞を備えている、段落30〜32のいずれか1つに記載の方法。
45.該内因性遺伝子は、Nkx2.1、Sox2、Id2、および/またはTbx4を備え、該ヒトの臓器または組織は、肺細胞を備えている、段落30〜32のいずれか1つに記載の方法。
46.該1個以上の内因性遺伝子の両方のアレルが破壊されている、段落30または段落31に記載の方法。
47.該非ヒト胚は、非ヒト脊椎動物胚である段落30〜46のいずれか1つに記載の方法。
48.該非ヒト脊椎動物胚は、偶蹄目の胚または非ヒト霊長類の胚である、段落47に記載の方法。
49.該非ヒト脊椎動物胚は、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、鳥類、ウサギ、ヤギ、イヌ、ネコ、実験動物、および魚類からなる群から選択される、段落47に記載の方法。
50.該少なくとも1個のヒトドナー細胞が、胚性幹細胞、組織特異的幹細胞、間葉系幹細胞、多能性幹細胞、または人工多能性幹細胞である、段落30〜49のいずれか1つに記載の方法。
51.該キメラ胚を動物の子宮に移植し、該キメラ胚はヒト細胞を備えたキメラ動物へと発生する、段落30〜50のいずれか1つに記載の方法。
52.キメラ動物からヒト細胞を採取することをさらに含む、段落51に記載の方法。
53.該ヒト細胞を、その必要のあるヒト患者に移植することをさらに含む、段落52に記載の方法。
54.該少なくとも1個のヒト細胞が、ヒト患者により提供される、段落53に記載の方法。
55.1個以上の内因性臓器または組織の発生に関与する該非ヒト胚の該1個以上の内因性遺伝子が、Transcription Activator−Like Effector Nucleases(TALENS)、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)、CRISPR associated protein 9(Cas9)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(Zinc Finger Nucleases:ZFNs)、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードする分子、合成人工染色体、RecA−gal4融合体、RNAi、CRISPRi、またはそれらの組み合わせにより破壊されている、段落30〜54のいずれか1つに記載の方法。
56.該方法が、Cas9である、段落55に記載の方法。
57.該内因性遺伝子のうちの1個に対する相同性を有する鋳型配列を有する相同組み換え修復(homology directed repair:HDR)の鋳型を導入し、該鋳型配列は、該内因性遺伝子配列の少なくとも一部を置き換え、該内因性遺伝子を破壊することをさらに含む、段落55〜56のいずれか1つに記載の方法。
58.該内因性遺伝子のうちの1個に対する相同性を有する鋳型配列を各々有する複数の相同組み換え修復(homology directed repair:HDR)の鋳型を導入し、該各鋳型配列は、該内因性遺伝子配列のうちの1個の少なくとも一部を置き換え、該内因性遺伝子を破壊することをさらに含む、段落57に記載の方法。
59.破壊が、該内因性遺伝子の1個以上のDNA残基の置換を含む、段落57または58に記載の方法。
60.破壊が、該内因性遺伝子の1個以上のDNA残基の置換からなる、段落57または58に記載の方法。
61.段落30〜60のいずれか1つに記載の方法を使用して作製されたキメラ胚またはキメラ動物。
62.以下を含む、非ヒトホスト動物においてヒトもしくはヒト化された臓器または組織を作製する方法:
a)非ヒト胚の少なくとも1個の細胞において、臓器または組織の発生に関与する1個以上の内因性遺伝子を破壊すること;
b)工程a)が動物ホストの細胞で行われた場合、細胞をクローン化し、胚を生成すること;および
c)工程a)または工程b)の胚に、少なくとも1個のヒト細胞を導入することによりキメラホスト胚を生成することであって、該ヒト細胞が、対応するヒトの臓器または組織の発生に関与する遺伝子を1個以上担持している、生成すること、を含み、
キメラホスト胚から発生する動物は、ヒトもしくはヒト化された臓器または組織を備えており、それによって、非ヒトホスト動物においてヒトもしくはヒト化された臓器または組織が作製されること。
63.以下を含む、非ヒトホスト動物においてヒトもしくはヒト化された臓器または組織を作製する方法:
a)少なくとも1個の非ヒト細胞または非ヒト胚において、1個以上の内因性臓器または組織の発生に関与する1個以上の内因性遺伝子を破壊すること、
b)工程a)が非ヒト細胞で行われた場合、細胞をクローン化し、胚を生成すること;および
c)工程a)または工程b)の胚に、少なくとも1個のヒト細胞を導入することであって、
該ヒト細胞は、該1個以上の臓器または組織の発生に関与する1個以上の遺伝子を担持しており;それにより、以下のキメラ胚を除くキメラ胚が作製されること、を含む方法:
該内因性遺伝子が、MYF5、MYOD、および/またはMRF4を備え、該ヒトの臓器または組織が骨格筋細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、ETV2を備え、該ヒトの臓器または組織がヒトの血管細胞を備えている;および
該内因性遺伝子が、NKX2−5、HANDII、および/またはTBX5を備え、該ヒトの臓器または組織が心筋細胞を備えている。
64.以下を含む、非ヒトホスト動物においてヒトもしくはヒト化された臓器または組織を作製する方法:
a)非ヒト胚の少なくとも1個の細胞において、臓器または組織の発生に関与する1個以上の内因性遺伝子の両アレルを破壊すること、
b)工程a)が動物ホストの細胞で行われた場合、細胞をクローン化し、胚を生成すること;および
c)工程a)または工程b)の胚に、少なくとも1個のヒト細胞を導入することによりキメラホスト胚を生成することであって、該ヒト細胞が、対応するヒトの臓器または組織の発生に関与する遺伝子を1個以上担持している、生成すること、を含み、
キメラホスト胚から発生する動物は、ヒトもしくはヒト化された臓器または組織を備えており、それによって、非ヒトホスト動物においてヒトもしくはヒト化された臓器または組織が作製されることであって、この場合において:
該内因性遺伝子は、NURR1、LMX1A、および/またはPITX3を備え、該ヒトの臓器または組織は、ドーパミン神経を備えている;
該内因性遺伝子は、OLIG、および/またはOLIG2を備え、該ヒトの臓器または組織は、乏突起膠細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、RAG2、IL2rg、C−KIT、および/またはETV2を備え、該ヒトの臓器または組織が若い血液を備えている;
該内因性遺伝子が、RUNX1、C−KIT、および/またはFLK1を備え、該ヒトの臓器または組織が造血細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、ETV2を備え、該ヒトの臓器または組織がヒトの血管細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、MYF5、MYOD、MRF4、および/またはPAX3を備え、該ヒトの臓器または組織が骨格筋細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、NKX2−5、HANDII、および/またはTBX5を備え、該ヒトの臓器または組織が心筋細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、Pdx、および/またはETV2を備え、該ヒトの臓器または組織が膵臓細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、HHEX、および/またはUbcを備え、該ヒトの臓器または組織がヒトの肝臓細胞を備えている;または
該内因性遺伝子が、Nkx2.1、Sox2、Id2、および/またはTbx4を備え、該ヒトの臓器または組織が肺細胞を備えている、方法。
65.以下を含む、非ヒトホスト動物においてヒトもしくはヒト化された臓器または組織を作製する方法:
a)非ヒト胚の少なくとも1個の細胞において、臓器または組織の発生に関与する1個以上の内因性遺伝子の両アレルを破壊すること、
b)工程a)が動物ホストの細胞で行われた場合、細胞をクローン化し、胚を生成すること;および
c)工程a)または工程b)の胚に、少なくとも1個のヒト細胞を導入することによりキメラホスト胚を生成することであって、該ヒト細胞が、対応するヒトの臓器または組織の発生に関与する遺伝子を1個以上担持している、生成すること、を含み、
キメラホスト胚から発生する動物は、ヒトもしくはヒト化された臓器または組織を備えており、それによって、非ヒトホスト動物においてヒトもしくはヒト化された臓器または組織が作製されることであって、この場合において:
該内因性遺伝子は、NURR1、LMX1A、および/またはPITX3を備え、該ヒトの臓器または組織は、ドーパミン神経を備えている;
該内因性遺伝子は、OLIG、および/またはOLIG2を備え、該ヒトの臓器または組織は、乏突起膠細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、RAG2、IL2rg、C−KIT、および/またはETV2を備え、該ヒトの臓器または組織が若い血液を備えている;
該内因性遺伝子が、RUNX1、C−KIT、および/またはFLK1を備え、該ヒトの臓器または組織が造血細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、PAX3を備え、該ヒトの臓器または組織が骨格筋細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、Pdx、および/またはETV2を備え、該ヒトの臓器または組織が膵臓細胞を備えている;
該内因性遺伝子が、HHEX、および/またはUbcを備え、該ヒトの臓器または組織がヒトの肝臓細胞を備えている;または
該内因性遺伝子が、Nkx2.1、Sox2、Id2、および/またはTbx4を備え、該ヒトの臓器または組織が肺細胞を備えている、方法。
66.以下を含む、非ヒトホスト動物においてヒトもしくはヒト化された臓器または組織を作製する方法:
a)非ヒト胚の少なくとも1個の細胞において、臓器または組織の発生に関与する1個以上の内因性遺伝子の両アレルを破壊すること、
b)工程a)が動物ホストの細胞で行われた場合、細胞をクローン化し、胚を生成すること;および
c)工程a)または工程b)の胚に、少なくとも1個のヒト細胞を導入することによりキメラホスト胚を生成することであって、該ヒト細胞は、対応するヒトの臓器または組織の発生に関与する遺伝子を1個以上担持しており、この場合において:
該内因性遺伝子は、RAG2およびIL2rgまたはETV2であり、該ヒトの臓器または組織は若い血液を備えている;
該内因性遺伝子は、MYF5、MYOD、およびMRF4またはPAX3であり、該ヒトの臓器または組織は骨格筋細胞を備えている;または
該内因性遺伝子が、NKX2−5、HANDII、および/またはTBX5を備え、該ヒトの臓器または組織が心筋細胞を備えている。
67.以下を含む、非ヒトホスト動物においてヒトもしくはヒト化された臓器または組織を作製する方法:
a)少なくとも1個の非ヒト細胞または非ヒト胚において、1個以上の臓器または組織の発生に関与する1個以上の内因性遺伝子の両アレルを破壊すること、
b)工程a)が非ヒト細胞で行われた場合、細胞をクローン化し、胚を生成すること;および
c)工程a)または工程b)の胚に、少なくとも1個のヒト細胞を導入することであって、該ヒト細胞は、該1個以上の臓器または組織の発生に関与する1個以上の遺伝子を担持しており;それによりキメラ胚を作製することであって、この場合において:
該内因性遺伝子は、RAG2およびIL2rgおよび/またはETV2であり、該ヒトの臓器または組織は若い血液を備えている;
該内因性遺伝子は、PAX3であり、該ヒトの臓器または組織は骨格筋細胞を備えている;または
該内因性遺伝子は、NKX2−5、HANDII、およびTBX5であり、該ヒトの臓器または組織は心筋細胞を備えている、方法。
68.該内因性遺伝子は、NURR1、LMX1A、および/またはPITX3を備え、該ヒトの臓器または組織は、ドーパミン神経を備えている、段落62〜64のいずれか1つに記載の方法。
69.該内因性遺伝子は、OLIGおよび/またはOLIG2を備え、該ヒトの臓器または組織は、乏突起膠細胞を備えている、段落62〜64のいずれか1つに記載の方法。
70.該内因性遺伝子は、RAG2、IL2rg、C−KIT、および/またはETV2を備え、該ヒトの臓器または組織は、若い血を備えている、段落62〜64のいずれか1つに記載の方法。
71.該内因性遺伝子は、RUNX1、C−KIT、および/またはFLK1を備え、該ヒトの臓器または組織は、造血細胞を備えている、段落62〜64のいずれか1つに記載の方法。
72.該内因性遺伝子は、ETV2を備え、該ヒトの臓器または組織は、ヒトの血管細胞を備えている、段落62または64のいずれか1つに記載の方法。
73.該内因性遺伝子は、MYF5、MYOD、MRF4、および/またはPAX3を備え、該ヒトの臓器または組織は、ヒトの骨格筋細胞を備えている、段落62または64のいずれか1つに記載の方法。
74.該内因性遺伝子は、NKX2−5、HANDII、および/またはTBX5を備え、該ヒトの臓器または組織は、ヒトの心筋細胞を備えている、段落62または64のいずれか1つに記載の方法。
75.該内因性遺伝子は、Pdx、および/またはETV2を備え、該ヒトの臓器または組織は、膵臓細胞を備えている、段落62〜64のいずれか1つに記載の方法。
76.該内因性遺伝子は、HHEX、および/またはUbcを備え、該ヒトの臓器または組織は、ヒトの肝臓細胞を備えている、段落62〜64のいずれか1つに記載の方法。
77.該内因性遺伝子は、Nkx2.1、Sox2、Id2、および/またはTbx4を備え、該ヒトの臓器または組織は、肺細胞を備えている、段落62〜64のいずれか1つに記載の方法。
78.該1個以上の内因性遺伝子の両方のアレルが破壊されている、段落62または段落63に記載の方法。
79.該非ヒト胚は、非ヒト脊椎動物胚である段落62〜78のいずれか1つに記載の方法。
80.該非ヒト脊椎動物胚は、偶蹄目の胚または非ヒト霊長類の胚である、段落79に記載の方法。
81.非ヒト脊椎動物胚は、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、鳥類、ウサギ、ヤギ、イヌ、ネコ、実験動物、および魚類からなる群から選択される、段落79に記載の方法。
82.少なくとも1個のヒト細胞が、胚性幹細胞、組織特異的幹細胞、間葉系幹細胞、多能性幹細胞、または人工多能性幹細胞である、段落62〜81のいずれか1つに記載の方法。
83.キメラ動物からヒト細胞を採取することをさらに含む、段落62〜82に記載の方法。
84.ヒト細胞を、その必要のあるヒト患者に移植することをさらに含む、段落83に記載の方法。
85.該少なくとも1個のヒト細胞が、ヒト患者により提供される、段落84に記載の方法。
86.該内因性遺伝子のうちの1個に対する相同性を有する鋳型配列を有する相同組み換え修復(homology directed repair:HDR)の鋳型を導入し、該鋳型配列は、該内因性遺伝子配列の少なくとも一部を置き換え、該内因性遺伝子を破壊することをさらに含む、段落62〜85のいずれか1つに記載の方法。
87.該内因性遺伝子のうちの1個に対する相同性を有する鋳型配列を各々有する複数の相同組み換え修復(homology directed repair:HDR)の鋳型を導入し、該各鋳型配列は、該内因性遺伝子配列のうちの1個の少なくとも一部を置き換え、該内因性遺伝子を破壊することをさらに含む、段落86に記載の方法。
88.破壊が、該内因性遺伝子の1個以上のDNA残基の置換を含む、段落86または87に記載の方法。
89.破壊が、該内因性遺伝子の1個以上のDNA残基の置換からなる、段落86または87に記載の方法。
90.1個以上の内因性臓器または組織の発生に関与する該非ヒト胚の該1個以上の内因性遺伝子が、Transcription Activator−Like Effector Nucleases(TALENS)、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)、CRISPR associated protein 9(Cas9)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(Zinc Finger Nucleases:ZFNs)、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードする分子、合成人工染色体、RecA−gal4融合体、RNAi、CRISPRi、またはそれらの組み合わせにより破壊されている、段落62〜89のいずれか1つに記載の方法。
91.1個以上の内因性臓器または組織の発生に関与する該非ヒト胚の該1個以上の内因性遺伝子が、Cas9により破壊されている、段落90に記載の方法。
92.段落62〜91のいずれか1つに記載の方法を使用して作製されたキメラ動物。
本発明の上述の態様および実施形態のいずれかの特定の要素は、本発明のその他の態様および実施形態の要素と組み合わせられることができ、または置き換えられることができる。さらに、本開示のある態様および実施形態に関連した利点は、これら態様および実施形態に照らして記載されているが、他の態様および実施形態もかかる利点を示すことができ、また態様および実施形態のすべてが、本発明の範囲内にあるかかる利点を必ずしも示す必要はない。
図1は、組織/臓器移植の課題と、臓器移植を目的としたヒト細胞および動物の遺伝子操作によりもたらされる解決法を図示する概略図である。 図2Aは、単一編集(single edits)を使用した2つのノックアウトに対しホモ接合性の動物を作製するプロセスを示す。図2Bは、同時に単一編集を行うことによる、複数編集を有する動物を作製する仮説のプロセスを示す。 図3は、F0世代の創始体を確立するために使用された多重遺伝子編集を示す。 図4A〜図4Dは、ブタのRAG2およびIL2Rγ(またはIL2Rg)の多重遺伝子編集を示す。図4Aは、トランスフェクションの3日後の細胞群に対する、非相同末端結合(NHEJ:non−homologous end joining)、および相同組み換え修復HDRの効率を決定するためのサーベイヤー(Suveyor)解析および制限断片長多形(RFLP:restriction fragment length polymorphism)解析を示すグラフである。図4Bは、トランスフェクションの11日後の細胞群に対する、相同組み換え修復に関するRFLP解析を示すグラフである。図4Cは、IL2Rγ、RAG2またはその両方でHDR陽性のコロニー割合を示すグラフである。図4Aにおいて「C」と示される群由来の細胞が播種された。図4Dは、IL2Rγ およびRAG2に対し、2μgおよび1μgのTranscription Activator−Like Effector Nucleases(TALENS)mRNA 30量、および1μMのHDR鋳型を各々に対して用いてトランスフェクトされた細胞のコロニー解析を示すグラフである。コロニーの遺伝子型分布を以下に示す。本出願において、IL2RγとIL2Rgは相互交換可能に使用されている。 同上。 図5A〜図5Dは、ブタのAPC およびp53の多重遺伝子編集を示す。図5Aは、トランスフェクションの3日後の細胞群に対する、非相同末端結合(NHEJ)、および相同組み換え修復(HDR)の効率を決定するためのサーベイヤー(Suveyor)解析およびRFLP解析を示すグラフである。図5Bは、トランスフェクションの11日後の細胞群に対する、相同組み換え修復に関するRFLP解析を示すグラフである。図5Cおよび図5Dは、APC、p53またはその両方でのHDRに関して、示される細胞群(図5Aにおいて、「C」および「D」と示される)に由来する陽性コロニーの割合を示すグラフである。3個以上のHDRアレルを有するコロニーを以下に列記する。 同上。 図6Aおよび図6Bは、5‐遺伝子多重HDR効率に対する、オリゴヌクレオチドHDR鋳型濃度の影響を示す。指定量のブタRAG2、IL2Rγ、p53、APCおよびLDLR指向性TALEN mRNAを、2μM(図6A)または1μM(図6B)の各同系HDR鋳型とともにブタ線維芽細胞に共トランスフェクトした。NHEJとHDRの割合は、サーベイヤーアッセイおよびRFLPアッセイにより測定された。 図7Aおよび図7Bは、5−遺伝子多重HDR効率に対する、オリゴヌクレオチドHDR鋳型濃度の影響に関する実験データのプロットを示す、5−遺伝子多重データセットである。指定量のブタRAG2、IL2Rγ、p53、APCおよびLDLR指向性TALEN mRNAを、2μMまたは1μMの各同系HDR鋳型とともにブタ線維芽細胞に共トランスフェクトした。NHEJとHDRの割合は、サーベイヤーアッセイおよびRFLPアッセイにより測定された。5−遺伝子多重HDRからのコロニー遺伝子型:コロニー遺伝子型はRFLP解析により評価された。図7Aにおいて、各線は、各特定座位での1つのコロニーの遺伝子型を表している。3つの遺伝子型が特定された;ヘテロ接合性またはホモ接合性のHDRの予測RFLP遺伝子型を有するもの、ならびにRFLP陽性断片を有するもの、それに加えて、挿入または欠失(インデル)アレルの指標となる、サイズの可視偏移を有する第二のアレルを有するもの。特定の座位で編集を有するコロニーの割合は、各列の下に示す。図7Bは、0〜5個の座位で編集されたコロニー数の集計を示す。 同上。 図8Aおよび図8Bは、5−遺伝子多重HDR効率に対する、オリゴヌクレオチドHDR鋳型濃度の効果を含む第二の実験に関する実験データのプロットを示す、別の5−遺伝子多重化データセットである。第二の5−遺伝子多重化試験のコロニー遺伝子型。図8Aにおいて、各線は、各特定座位での1つのコロニーの遺伝子型を表している。3つの遺伝子型が特定された;ヘテロ接合性またはホモ接合性のHDRの予測RFLP遺伝子型を有するもの、ならびにRFLP陽性断片を有するもの、それに加えて、挿入または欠失(インデル)アレルの指標となる、サイズの可視偏移を有する第二のアレルを有するもの。特定の座位で編集を有するコロニーの割合は、各列の下に示す。図8Bは、0〜5個の座位で編集されたコロニー数の集計を示す。 同上。 図9Aおよび図9Bは、コロニーの遺伝子型を示す、別の5−遺伝子多重化試験データセットである。図9Aにおいて、各線は、各特定座位での1つのコロニーの遺伝子型を表している。3つの遺伝子型が特定された;ヘテロ接合性またはホモ接合性のHDRの予測RFLP遺伝子型を有するもの、ならびにRFLP陽性断片を有するもの、それに加えて、挿入または欠失(インデル)アレルの指標となる、サイズの可視偏移を有する第二のアレルを有するもの。特定の座位で編集を有するコロニーの割合は、各列の下に示す。図9Bは、0〜5個の座位で編集されたコロニー数の集計を示す。 同上。 図10は、所望される遺伝子ノックアウトまたはアレル選択をもたらす標的化ヌクレアーゼを用いたF0世代キメラの作製プロセスを示す。 図11は、正常な表現型を有するF0世代動物、ならびに発育障害(FTT:failure to thrive)の表現型および遺伝子型を有する子孫物の確立を示す。 図12は、ドナー胚の遺伝的特徴を有する配偶子を用いたキメラ動物の作製プロセスを示す。 図13A〜Cは、NKX2−5、GATA4、およびMESP1の3個の標的化座位での多重編集を示す。図13Aは、実験の概略である。図13Bは、配列番号1〜3にそれぞれ列記されるNKX2−5、GATA4、およびMESP1を用いた、遺伝子の標的化を示す。図13Cは、実験に対するアッセイ結果を示す。各標的遺伝子のオリゴ配列。新規ヌクレオチドは大文字で表されている。PTCは、ボックス内の明色文字であらわされ、新規HindIII RFLP部位は下線が引かれている。 図14は、TALENsおよびRGENsの組み合わせを使用した多重遺伝子編集を示す。トランスフェクト細胞のアッセイは、RFLPにより評価され、両部位のHDRを明らかにした。 図15A〜Eは、単為生殖ブタ胚盤胞へのヒト臍帯血幹細胞(hUCBSC)の組み込みを示す画像である。図15Aは、胚盤胞の位相差画像である。図15Bは、胚盤胞内の細胞のDAPI画像である。図15Cは、ヒト核抗原(HNA:human nuclear antigen)染色である。図15Dは、重ね合わせたDAPI画像とHuNu画像である。図15Eは、重ね合わせた図15A〜図15Cの画像である。図15Fは、内部細胞塊(ICM:inner cell mass)、栄養外胚葉(TE:trophectoderm)、または卵割腔(CA:blastocoel cavity)におけるHuNu細胞の定量化を示すグラフである。図15Gは、卵母細胞の活性化後、6日目、7日目、および8日目のHNA細胞の増殖を示すグラフである。6日目にhUCBSCが注入された。 同上。 図16A〜図16Cは、キメラのヒト‐ブタ胎仔を示す画像である。図16Aは、単為生殖ブタ胚盤胞にhUCBSCを注入後、妊娠28日目のキメラ胎仔を示す画像である。図16Bは、ヒト核抗原(HNA)を赤で染色し、DAPIを青で染色した免疫組織化学染色画像である。図16Cは、図16Bの免疫組織化学染色に対する対照であり、染色中、一次抗体が加えられていない。 図17Aおよび図17Bは、ブタ遺伝子のTALEN介在ノックアウトを示す。図17Aは、LMXA1、NURR1、およびPITX3の切断部位を示す概略図である。図17Bは、二方向矢印で示されるように、TALEN切断産物を示す電気泳動画像である。 図18A〜Fは、ヒト臍帯血幹細胞を用いた、ブタ胚盤胞のPITX3ノックアウトの相補の眼への効果を示す画像である。図18A〜Fの画像は、妊娠62日目の胎仔のブタの眼の肉眼的形態を示す。図18Aおよび図18Bは、野生型ブタの眼を示す。図18Cおよび図18Dは、PITX3ノックアウトブタの小さな眼を示す。図18Eおよび図18Fは、ヒト臍帯血幹細胞(hUCBSC)相補を用いたPITX3ノックアウトの大きな眼を示す。図18A、図18C、および図18Eの矢印は、各胎仔の眼の位置を指している。 図19Aおよび図19Bは、ETV2のTALEN介在ノックアウトを示す。図19Aは、遺伝子編集を検出するために使用された三段階PCRアッセイを示す概略図である。プライマーa−dからの増幅により、欠失アレルの存在が示唆された。ヘテロ接合性クローンとホモ接合性クローンを識別するために、プライマーa−bとc−dを使用して、野生型アレルを増幅した。a−d産物が存在し、a−b、c−d産物が存在しない場合のみ、そのクローンは欠失アレルに対しホモ接合性であるとみなされた。図19Bは、ホモ接合性欠失の立証を示す電気泳動画像である。上述の基準を満たすクローンがグリーンボックスに囲まれている。 同上。 図20A〜図20Hは、ブタETV2の欠失は、マウスのEtv2突然変異表現型の再現であることを示す。図20Aは、野生型のE18.0ブタ胚を示し、図20Bは、同じ発生段階のETV2 ノックアウト胚を示す。差し込み図は、尿膜の拡大図を示す。突然変異体の血管網形成の欠落を伴う異常な全体形状を示している(差し込み図)。図20C〜図20Hは、それぞれ、AおよびBにおいて示された胚の尿膜を通る切片(図20Cおよび図20D)、心臓の位置を通る切片(図20Eおよび図20F)、および胴体部分を通る切片(図20Gおよび図20H)であり、内皮マーカーであるTie2、心臓系マーカーのGata4、および核対比染色の4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)で染色された。野生型の尿膜は、高度に血管が発達し、Tie2陽性内皮膜があり、血液が満たされていた(図20C、矢印)。一方で突然変異体はこれら一連を欠いていた(図20D)。野生型胚(E、G)において、心内膜、主動脈(CV)、および背部大動脈(DA)ははっきりと見える。対照的に、ETV2ヌル胚はこれら構造を完全に欠き、ただしGata4(緑)により示される心臓前駆体と消化管は存在していた(それぞれ、FおよびH)。スケールバー:1000μm(図20AおよびB)、200μm(図20AとBの差し込み図)、100μm(図20C〜図20H)。 図21A〜図21Cは、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSCs)を用いたETV2突然変異ブタ胚の相補を示す免疫組織化学染色画像である。ETV2突然変異胚盤胞はSCNTにより作製され、そして桑実胚期に10個のhiPSCsが注入され、続いてホルモン同期させた未経産ブタに導入された。図21Aは、ヒト特異的Alu配列を使用したin situハイブリダイゼーションを示す。図21Bおよび図21Cは、ヒトCD31(図21B)、HNA(図21C、赤)およびヒトvWF(図21C、緑)に対する免疫組織化学染色画像である。四角で囲まれた領域は、下のパネルで拡大されている。矢頭は陽性細胞を指している。血管様構造の形成を示す。すべてのスケールバーは50ミクロンを示している。nt:神経管、noto:脊索、som:体節。 図22A〜図22Dは、Nkx2−5とHandII(dHandとしても知られている)のダブルノックアウトは、両方の心室(rvとlv)を欠き、1つの小さな未発達の心房(dc)を有していることを示す画像である。図22Aは、野生型動物を示す。図22Bは、Nkx 2.5−/−動物を示す。図22Cは、dHand−/−動物を示す。図22Dは、NKx2.5−/−dHand−/−のダブルノックアウト動物を示す。 図23Aおよび図23Bは、ブタ線維芽細胞におけるNKX2−5とHANDIIのダブルノックアウトを示す。図23Aは、示されている各遺伝子のコード配列の概略である;色が変わるところはエクソン境界を示している。青の領域(下)は、各転写因子のDNA結合ドメインを示し、三角形はTALENs結合部位の位置を示す。図23Bは、HANDIIとNKX2−5の両アレルKOに関する、線維芽細胞コロニーのRFLP解析の電気泳動画像を示す。 図24A〜図24Cは、Nkx2−5/HANDII/TBX5の三重ノックアウトブタ胚が無心症であることを示している。図24Aは、Gata4タンパク質の免疫組織化学染色の画像を示す。野生型胚(上)は陽性で染色された一方で、三重ノックアウトブタ胚(下)は心臓を欠き、E18.0でGata4(心臓マーカー)免疫組織化学染色が陽性の細胞は本質的に無かった(h、心臓およびfg、前腸)。図24Bは、野生型胚(上)および三重ノックアウト胚(下)に対するDAPI染色の画像を示す。図24Cは、図24Aと図24Bを重ね合わせた画像を示す。 図25A〜図25Bは、Myod発現を表す画像である。Myf5、Myod、およびMrf4は、骨格筋の主制御因子であり、発生中および成人において骨格筋に限定されている。本明細書において、Myod−GFPトランスジェニック発現がE11.5で体節、隔壁、および確立された骨格筋に限定されていることを示す(図25A)。図25Bは、35S−標識MyoDリボプローブを使用したE13.5(妊娠中期)マウス胚の傍矢状切片のin situハイブリダイゼーションである。背筋、肋間筋、および四肢の筋肉群における発現を示す。 図26A〜図26Cは、ブタのMYOD、MYF5、およびMYF6の遺伝子のノックアウトを示す。図26Aは、それを示す概略図である。ブタのMYOD、MYF5、およびMYF6(MRF4としても知られる)遺伝子に対し、TALENペアが設計された。TALEN結合部位(赤い矢頭で示されている)は、各遺伝子に対し重要な基礎(+)ヘリックス−ループ−ヘリックス(HLH)ドメインの上流であった。TALEN結合部位を以下に示す(赤い矢印で示される)。相同組み換え修復(HDR)により未成熟停止コドンに対し標的化されたアミノ酸を黄色の矢印で示す。図26Bは、RFLP解析により確認されたHDR事象を示す電気泳動画像を示す。HDR鋳型は、未成熟停止コドンと新規制限酵素認識部位(HindIII)を導入し、HDR事象の解析が容易になるように設計された。各遺伝子に対する対象領域をPCRにより増幅し、RFLPをトランスフェクト細胞群に対し評価した。黒矢頭は、切断されていないアレルまたは野生型アレルを示し、一方で白矢頭はHDRアレルを示す。MYOD、MYF5、およびMYF6に対するHDRが陽性であるアレルの割合はそれぞれ14%、31%、および36%であった。図26Cは、三重ノックアウトを確認するための電気泳動画像と配列解析グラフを示す。これらの群は、個々のコロニーを単離するために播種された。768個のコロニーのうち38個(4.9%)が、4個以上のRFLP事象を示し、配列解析によりさらに解析された。未成熟停止コドンを組み込んだHDR、またはフレームシフトを生じさせ、その後に未成熟停止コドンを生じさせるin/delsを組み込んだHDRのいずれかにより、5個のコロニーが、3つすべての遺伝子に対しホモ接合性にノックアウトであることが特定された。MYOD/MYF5/MYF6の三重ノックアウトクローンのRFLP解析および配列解析の例を示す。 同上。 図27Aおよび図27Bは、MYF5/MYOD/MRF4三重ノックアウト(KO)の表現型を示す。E18.0で、野生型(Wt)胚は輪郭が明白な体節(s)、デスミン陽性(赤)の筋節(m)、および発達した筋肉組織を有していた(図27A)。加えて、発達した心菅は、強いデスミンシグナル(h)を示した。対照的に、MYF5/MYOD/MRF4 KO胚は、筋節形成の欠落を示した一方で、心臓はデスミン陽性を維持していた(図27B)。 図28A〜図28Cは、GFP標識卵割球で相補されたMYF5/MYOD/MRF4ヌル胚の相補を示す。図28Aは、GFP標識卵割球で相補されたE20ブタMYF5/MYOD/MRF4ヌル胚を示す画像である。天然GFPは、肝臓および胚の卵黄嚢で観察される。図28Bは、GFP標識卵割球で相補されたMYF5/MYOD/MRF4 ヌル胚(E20)に由来するブタ肝臓の切片を示す画像である。天然GFPは、肝臓の類洞に見ることができる。図28Cは、GFP標識卵割球で相補されたE20ブタMYF5/MYOD/MRF4ヌル胚に由来する卵黄嚢のPCRを示す棒グラフである(胚1[図28Aおよび図28Bに示される]、3、5)。GFP標識ブタ線維芽細胞は陽性対照であり、一方で野生型ブタの肝臓は陰性対照である。 図29A〜図29Eは、PDX1−/−ブタの作製を示す。図29Aは、ブタPDX1座位のTALEN遺伝子編集を示す概略図である。図29Bは、RFLP解析により、非改変のヘテロ接合性ノックアウト(白矢頭)またはホモ接合性ノックアウト(黒矢頭)が特定されたことを示す電気泳動画像を提示する。クローンの41%が、PDX1に対しホモ接合性のノックアウトであった。図29Cおよび図29Dは、野生型E30胚(図29C)における膵臓と比較した、クローン化E32 Pdx1−/−ブタ胚(図29D)における無膵臓(△)を示す画像である。図29Eは、野生型胎仔とPDX−/−突然変異体の胎仔の間の発生期β細胞の比較を示す画像である。野生型E30胎仔のP膵臓、S胃、D十二指腸。 同上。 図30A〜図30Cは、遺伝子編集によるHHEXノックアウト(KO)の作製を示す。図30Aは、HHEX遺伝子のノックアウトの概略図である。HHEX遺伝子は、4個のエクソンから構成される。HindIII KOアレルを遺伝子編集によりHHEX遺伝子のエクソン2に挿入した。図30Bは、HindIII RFLPアッセイによる、トランスフェクト群の遺伝子編集の効率測定を示す電気泳動画像を提示する。新規HindIII KOアレル(切断産物により示される、白三角)を有する染色体の割合を、ゲル上に示す。図30Cはまた、HindIII RFLPアッセイを使用した線維芽細胞クローンのスクリーニングを示す電気泳動画像を提示する。ホモ接合性KOクローンはアスタリスクで示されている。 図31Aおよび図31Bは、妊娠30日目の野生型(図31A)およびHHEX KOブタ(図31B)の胚における肝臓の発生を示す。図31Bにおいて、HHEX KO試料には肝臓の発生が無いことが記載される。同じ在胎期間の野生型対照を図31Aに示す。 図32A〜図32Fは、NKX2.1のノックアウトにより、胎仔の肺の消失がもたらされることを示す。図32A〜図32Cは、野生型動物において肺が発生することを示す画像である。図32D〜図32Fは、NKX2.1ノックアウト動物において、肺が発生し損ねることを示す画像である。 図33は、内臓器官を示す16.4Tの胎仔ブタのMR画像を提示する。頭殿長がおよそ20mmのとき、ブタの在胎期間は30日である。 図34は、ドーパミン神経/眼の水晶体の発生における、PITX3の機能を示す概略図である。差し込み図は、図17のPITX3遺伝子のTALEN切断産物を示す同じ電気泳動画像である。 図35は、PITX3KOブタ桑実胚へのドナーhiPSCまたはhUCBSCの導入を示す画像である。 図36は、キメラPITX3ノックアウト(KO)桑実胚の代理メスブタへの移植を示す概略図を提示する。 図37は、ヒト幹細胞の相補が、ブタPITX3ノックアウトにおいて眼の欠損をレスキューすることを示すドットプロットである。PITX3ノックアウトは、原則的に、眼瞼開裂を停止させた。野生型幹細胞(hiPSCまたはhUCBSC)を用いた相補は、PITX2のノックアウトにより生じた眼瞼開裂の停止を少なくとも部分的にレスキューした。図37のグラフは、図18A、18C、および18Eで示された「眼瞼」の定量的解析を示している。図18Aにおいて、野生型ブタ胎仔の眼を見ることができる。対照的に、PITX3ノックアウト(図18C)においては、覆っている皮膚や眼瞼は半透明状ではなく、眼を見ることはできない。幹細胞で相補された一部のPITX3ノックアウト胎仔では、透明な、または「開いた」眼瞼を通して、目を見ることができるようになっている(図18E)。これら定性的な所見は、9名の試験者の盲検解析により定量化され、「開」または「閉」のいずれかとして各眼が格付けされた。各データポイントは、各眼を「開」と格付けした個々の割合を表し、「開裂眼瞼インデックス」が作成される。 図38Aと38Bは、ブタPITX3ノックアウトによる、胎仔の黒質(SNc)におけるドーパミン神経の消失を示す免疫組織化学染色画像を示す。図38Aは、妊娠62日目の野生型ブタ胎仔のSNcにおける、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)陽性ニューロンを示す。図38Bは、PITX3ノックアウトブタ胎仔のSNcにおけるTH陽性ニューロンを示す。ノックアウトブタにおけるドーパミン神経の消失に注意されたい。VTA=腹側被蓋領域。 図39A〜39Dは、キメラ胎仔における、ヒトニューロンの組み込みを示す画像を提示する。図39Aは、5匹の胎仔ブタのHNA染色であり、少なくとも一部のキメラ胎仔においてヒトの神経細胞が存在したことを示す。図39Aと同じ5匹のブタ胎仔の、図39Bはチロシンヒドロキシラーゼ染色を示し、図39CはNeuN染色を示す。図39Dは、図39A〜39Cを重ね合わせた画像を示す。HNA:ヒト核抗原;TH:チロシンヒドロキシラーゼ。 図40は、黒質ドーパミン神経に対し、TH(チロシンヒドロキシラーゼ)、DAPIおよびNeuNで染色された黒質の染色を示す免疫組織化学染色を提示する。 図41は、hiPSCの相補が、黒質ドーパミン神経の生存を誘導したことを示す棒グラフを提示する。図41は、野生型ブタ(WT)、PITX3ノックアウトブタ(KO)、hUCBSCsで相補されたPITX3KO、およびhiPSCsで相補されたPITX3KOにおける、全黒質ドーパミン神経および内側黒質の両方における、TH−免疫反応(TH−IR)カウント数の推定を示す。 図42は、LMX1A/PITX3およびドーパミン神経の発生を示す概略図及び画像を提示する。差し込み図は、TALENを使用したLMXA1遺伝子とPITX3遺伝子のノックアウトに対する、図17と同じ概略図と電気泳動画像である。 図43は、ドーパミン神経ノックアウトと、GFP発現ブタ卵割球を用いた相補を有するキメラブタ作製を示す概略図である。LMX1A/PITX3ノックアウト線維芽細胞は、本明細書に記載されるように作製された。ノックアウト線維芽細胞から誘導されたLMX1A/PITX3胚盤胞に野生型のブタ卵割球を導入し、キメラ胚盤胞を作製した。キメラ胚盤胞を、ドナー起源の免疫系臓器/細胞を有するキメラブタへと生育させる。 図44A〜44Fは、PITX3/LMX1Aにおけるブタ−ブタ相補が、胎仔発生をレスキューしたことを示す画像を提示する。図44A〜44Cは、相補が成功したPITX3/LMX1Aノックアウト胎仔を例示するものであり、その在胎期間に対し正常な大きさに発育している。図44D〜44Fは、相補が乏しければ、胚の発育も乏しいことを示す。 図45Aは、野生型ブタ胎仔の水晶体(L)のヘマトキシリン&エオジン(H&E)染色を示す。図45Bは、PITX3ノックアウト胎仔における水晶体(L)発生の欠損を例示する。R=網膜、C=角膜。 図46A〜Cは、PITX3/LMX1Aノックアウト(KO)において、ブタ卵割球細胞を用いた幹細胞相補後のブタ−ブタ相補が、水晶体の発生を回復させることを示すヘマトキシリン&エオジン(H&E)染色を提示する。 図47A〜47Dは、ドナーGFP細胞が、ブタ胎仔脳に作用したことを示す免疫組織化学染色画像を示す。図47B〜47Dは、図47Aの対応する切片を拡大した詳細な画像である。 図48A〜48Cは、ブタ−ブタ相補が、PITX3/LMX1Aノックアウトブタ胎仔の原始腹側中脳(VM)において、DAニューロンの発生をもたらしたことを示すチロシンヒドロキシラーゼ免疫組織化学染色画像を示す。図48A〜48Cで示されるVMは、頭殿長に基づき正常な発育を示す胎仔から誘導された。 図49は、RAG2とIL2Rgが、T細胞、B細胞、およびNK細胞の発生に重要であることを示す概略図を提示する。 図50は、RAG2とIL2Rgが、胸腺の発生に重要であることを示す概略図を提示する。 図51は、造血系ノックアウトと、GFP発現ブタ卵割球を用いた相補の手順を示す概略図を提示する。IL2Rg/RAG2ノックアウト線維芽細胞は、本明細書に記載されるように作製された。野生型のブタ卵割球が、IL2RG/RAG2ノックアウト胚盤胞に導入され、キメラ胚盤胞が作製された。キメラ胚盤胞を、ドナー起源の免疫系臓器/細胞を有するキメラブタへと生育させる。 図52A〜52Cは、IL2Rg/RAG2/C−KITノックアウトにおける相補が、胸腺の生成をもたらしたことを示す画像を提示する。野生型のブタ胎仔では胸腺は発生した(図52A)が、IL2Rg/RAG2ノックアウトブタ胎仔では発生し損ねていた(図52B)。野生型動物由来の卵割球を用いた相補により、キメラIL2Rg/RAG2/C−KITノックアウトブタにおいて胸腺の発生が生じた(図52C)。 図53は、キメラブタにおけるGFP免疫細胞の生成を示すグラフを提示する。臍帯血、胸腺、脾臓、末梢血単核球細胞(PBMC)および腸間膜リンパ節(MLN)から細胞を採取した。染色せずに、生細胞をFACSにかけた。各グラフにおいて、生細胞のGFP細胞の割合を示している。 図54A〜54Fは、胸腺における免疫細胞の産生を示すグラフを提示する。野生型ブタ胚(図54A〜C)およびキメラブタ(図54D〜54F)の胸腺から細胞を採取し、T細胞、B細胞およびNK細胞を染色した。細胞をFACSにかけた。キメラブタは、野生型ブタと類似した胸腺の免疫細胞組成を示した。 図55は、IL2Rg/RAG2/C−KITノックアウトにおける相補が、血中においてT細胞(CD172aCD2CD3)を生成させたことを示すグラフを提示する。野生型胚、キメラブタ胚、およびノックアウトブタ胚の血液から細胞を採取し、染色した。採取された細胞をFACSにかけ、T細胞を同定し、計数した。 図56は、IL2Rg/RAG2/C−KITノックアウトにおける相補が、脾臓においてT細胞(CD172aCD2CD3)を生成させたことを示すグラフを提示する。野生型胚、キメラブタ胚、およびノックアウトブタ胚の脾臓から細胞を採取し、染色した。採取された細胞をFACSにかけ、T細胞を同定し、計数した。 図57は、IL2Rg/RAG2/C−KITノックアウトにおける相補が、血中においてB細胞(CD3CD79aCD21またはCD21)を生成させたことを示すグラフを提示する。野生型胚、キメラブタ胚、およびノックアウトブタ胚の血液から細胞を採取し、染色した。採取された細胞をFACSにかけ、B細胞を同定し、計数した。 図58は、IL2Rg/RAG2/C−KITノックアウトにおける相補が、脾臓においてB細胞(CD3CD79aCD21またはCD21)を生成させたことを示すグラフを提示する。野生型胚、キメラブタ胚、およびノックアウトブタ胚の脾臓から細胞を採取し、染色した。採取された細胞をFACSにかけ、B細胞を同定し、計数した。 図59は、IL2Rg/RAG2/C−KITノックアウトにおける相補が、血中においてNK細胞(CD172aCD16CD2)を生成させたことを示すグラフを提示する。野生型胚、キメラブタ胚、およびノックアウトブタ胚の血液から細胞を採取し、染色した。採取された細胞をFACSにかけ、NK細胞を同定し、計数した。 図60は、IL2Rg/RAG2/C−KITノックアウトにおける相補が、脾臓においてNK細胞(CD172aCD16CD2)を生成させたことを示すグラフを提示する。野生型胚、キメラブタ胚、およびノックアウトブタ胚の脾臓から細胞を採取し、染色した。採取された細胞をFACSにかけ、NK細胞を同定し、計数した。 図61は、PAX3が筋形成を制御していることを示す概略図を提示する。 図62Aと図62Bは、マウスにおけるPAX3の突然変異を示す画像を提示する。図62Aは、野生型マウスとPAX3突然変異マウスの間の比較を示す。Splotchdelayedマウスは、PAX3遺伝子突然変異のアレルを担持している。出生後、P0でSplotchdelayedの動物は、二分脊椎を示した(赤矢印)。四肢筋レベルで筋形成は発生していなかった(白矢印)。図62Bは、PAX3突然変異マウスを使用した胚盤胞相補の効果を示す。Act−GFP iPSCsは、野生型キメラと比較し、PAX3突然変異キメラにおいて四肢の骨格筋に選択的に効果があった。 図63は、PDX1が膵臓発生を制御することを示す概略図を提示する。 図64は、NKX2.1が肺発生を制御することを示す概略図を提示する。 図65は、OLIG1/OLIG2が乏突起膠細胞の発生に重要であることを示す概略図を提示する。 図66A〜66Cは、OLIG1/OLIG2ノックアウト線維芽細胞の作製を示す概略図、電気泳動画像、およびグラフを提示する。TALEN技術を使用して、本明細書に記載されるノックアウトを作製する。図66Aは、OLIG1/OLIG2ノックアウト動物を作製するための戦略を図示している。ssOLIG1 CDSとOLIG2 CDSを使用して、それぞれOLIG1とOLIG2のオープンリーディングフレームに停止コドンを導入した。これら2個のポリヌクレオチドは、RFLP解析用のHindIII制限酵素部位も導入する。図66Bは、OLIG1遺伝子およびOLIG2遺伝子に停止コドンが導入されたことをRFLP解析を使用して確認した電気泳動画像である。図66Cは、野生型(WT)細胞と、OLIG1/OLIG2ノックアウト細胞の3個のコロニーの配列解析結果を提示するものであり、突然変異体のゲノムのOLIG1遺伝子とOLIG2遺伝子のオープンリーディングフレームに停止コドンが導入されたことが確認される。 同上。 同上。 図67Aと67Bは、GFP発現ブタ卵割球を用いて相補されたOLIG1/OLIG2ノックアウトブタ胎仔を示す画像を提示する。発現している野生型卵割球が、OLIG1/OLIG2ノックアウト胚盤胞に導入された。図69Aは、妊娠30日目のブタ胎仔を示す。図69Bは、GFP相補ブタ胎仔の全身蛍光撮像を示す。 図68Aと68Bは、GFP発現ブタ卵割球が、OLIG1/OLIG2ノックアウトブタ胎仔の脳に効果があることを示す画像を提示する。図68Aは、ブタ胎仔の脳の画像である。図68Bは、キメラブタ胎仔の脳におけるGFP発現を示す画像であり、ノックアウトブタ胎仔の脳に野生型ドナー細胞が組み込まれたことを示している。 図69Aと69Bは、GFP卵割球相補を用いたOLIG1/OLIG2ノックアウト(KO)の脊髄におけるGFP標識の3D再構成を示す画像を提示する。図71Aは、冠状面の再構成を示す画像である。図71Bは、側面の再構成を示す画像である。 図70は、HHEXが肝臓の発生を制御することを示す概略図を提示する。 図71は、(妊娠)100日目のIl2rg/Rag2(RG−KO)ブタのFACSデータを示すプロットを提示しており、T細胞(CD172aCD2CD3)の割合を示している。 図72は、(妊娠)100日目のIl2rg/Rag2(RG−KO)ブタのFACSデータを示すプロットを提示しており、B細胞(CD3CD79aCD21)の割合を示している。 図73は、(妊娠)100日目のIl2rg/Rag2(RG−KO)ブタのFACSデータを示すプロットを提示しており、NK細胞(CD172a−CD16CD2)の割合を示している。 図74A〜74Cは、胚盤胞相補後のPax3突然変異キメラマウスにおける完全な後肢筋肉形成を示している。図74Aは、野生型マウスのIPSCs(人工多能性幹細胞)のPAX3突然変異マウスの胚盤胞への導入を示す概略図を提示する。図74Bは、PAX3ホモ接合性キメラマウスに後肢が存在していたことを示す画像である。破線は、後下肢の組織検査用の横断面が作製された場所を示している(図74)。図74Cは、後下肢の横断面の組織検査を示す画像を提示する。図74Cの説明:TP:後脛骨筋;TA:前脛骨筋;EDL:長趾伸筋;FHL:長母指屈筋;FB/FL:短腓骨/長腓骨筋;Sol:ヒラメ筋;M−Ga:内側腓腹筋腱膜;L−GA:外側腓腹筋腱膜。 図75A〜75Fは、PAX3突然変異ブタが、PAX3突然変異マウスの表現型を再現したことを示す。図75Aは、本明細書に記載されるようにTALEN法を使用したPAX3遺伝子ノックアウトを示す概略図である。図75Bは、本明細書に記載されるようにRFLP解析を使用した突然変異細胞の確認を示す電気泳動画像を提示する。図75C〜75Fは、野生型動物と突然変異動物の比較を示す画像を提示する。図75Cと75Dは、それぞれE30の野生型ブタと突然変異ブタの画像である。図75Eと75Fは、それぞれE12.5の野生型マウスと突然変異マウスの画像である。野生型動物(ブタとマウス、図75Cと75E)では後肢は存在している一方、突然変異動物(ブタとマウス、図75Dと75F)では後肢の発生は著しく影響を受けていた。 図76A〜76Dは、PAXs突然変異ブタは、肢の骨格筋の消失を呈することを示している。図76Aは、E30の野生型ブタ胚の画像である。図76Bは、E30の突然変異ブタ胚の画像である。図76Aと76Bの両方において、点線は、図76Cと76Dの免疫組織化学染色実験用に横断面が作製された場所を示している。図76Cは、野生型動物の後肢におけるデスミン、MHCおよびPax7の染色を示す画像を提示する。図76Dは、突然変異動物の後肢におけるデスミン、MHCおよびPax7の染色を示す画像を提示する。 図77は、妊娠100日目の仔豚におけるIL2Rg/RAG2(RG−KO)のノックアウトを示す電気泳動画像を提示する。仔豚は、出産2週前に摘出され、遺伝子型決定が行われた。IL2Rg/RAG2両アレルノックアウトの予測RFLPバンドパターンが観察された。仔豚2番の細胞を使用して、C−Kit遺伝子に別の突然変異を加えた。 図78A〜78Cは、IL2Rg/RAG2/C−KIT(RGK)細胞を作製するための、IL2Rg/RAG2RG−KO細胞へのV831Mの組み込みを示す。図78Aは、C−KIT遺伝子に導入された突然変異の位置と、C−Kit V831M HDRのポリヌクレオチド設計を示す概略図を提示する。図78Bは、ブタとマウスのC−KITタンパク質の一部のアライメントを提示しており、アミノ酸残基が置き換えられていることを示している。図78Aと78Bは、正確な残基が特定されたことを示している。図78Cは、ゲノムに突然変異が導入されたことの確認を示す電気泳動画像を提示する。コロニー285と286は、V−M RFLPに関しホモ接合性陽性の例である。 同上。 図79は、細胞ゲノムにC−Kit遺伝子突然変異が導入されたことの確認を示す配列解析グラフを提示する。クローン162、285、および286は、V831M突然変異を含有している。これらのクローンをキメラ作製に使用した。 図80は、IL2Rg/RAG2/C−KITのキメラ胎仔の遺伝子型解析の電気泳動画像を提示する。赤ボックスにより示される未切断のバンドは、胎仔がおそらくキメラであることを示している。
本開示は、たとえば心臓、肝臓、腎臓、肺、膵臓、および骨格筋などの生きた真のヒトの臓器;ならびにたとえば神経細胞およびオリゴデンドロサイト、免疫細胞、ならびに血管生成のための内皮細胞などの生きた真のヒトの細胞を操作および作製するための方法を提供する。この目的を達成するための戦略は、特定の臓器の発生に重要な、主要遺伝子を破壊することである。特定の遺伝子をノックアウトする遺伝子編集技術を使用してこれら遺伝子を評価し、それら遺伝子が単独で、または組み合わされて、マウスおよびブタの胚盤胞でノックアウトされた場合に特定の臓器または細胞型を発生させ得るかを決定する。胚盤胞での遺伝子ノックアウトはニッチを生成することができ、その中は、望ましい臓器または細胞の発生に寄与する正常な同系幹細胞または異系幹細胞が占有することとなっている(図1)。TALENS、CRISPR、および合成ブタ人工染色体を使用した新規の遺伝子編集技術および遺伝子調節技術を使用して、望ましい標的遺伝子をノックアウトし、オフターゲット効果を最小化することができる他の遺伝子の機能を増強させる。ヒト幹細胞を吟味し、どのタイプの幹細胞が、特定のヒト臓器および細胞の着実な複製を生じさせ得るかを決定する。この問題は、ブタ胚盤胞の内部細胞塊、およびキメラ胎仔の発生に対する様々なヒト幹細胞の関与を評価することにより対処される。真のヒト臓器および細胞の作製を成功させるためには、これら3つの技術領域間の相互作用が重要である。
定義
本発明をさらに解説する前に、本明細書、実施例および添付の請求の範囲で使用される特定の用語を簡便性を目的としてここに集めている。
本明細書で使用される場合、「ヒト化」とは、非ヒト動物から採取された臓器または組織を指し、その動物のタンパク質配列および遺伝的相補性は、当該非ヒトホストよりも、ヒトにより類似している。
本明細書で使用される場合、「臓器」とは、普遍的機能を果たすために構造単位中で連結されている組織の集まりを指す。本明細書で使用される場合、「組織」とは、類似した細胞の集まりを指し、それらがまとまって特定の機能を実行する。
本明細書で使用される場合、「メガヌクレアーゼ(meganuclease)」とは、遺伝子編集に有用な別の技術であり、大きな認識部位(12〜40塩基対の二本鎖DNA配列)が特徴のエンドデオキシリボヌクレアーゼである;結果として、この部位は概して、任意の所与のゲノム中で一か所のみ存在する。たとえば、I−SceIメガヌクレアーゼにより認識される18塩基対の配列が偶然に1か所存在するためには、平均してヒトゲノムの20倍の大きさのゲノムを必要とする(しかし、一塩基の不一致を有する配列は、ヒトサイズのゲノム当たり、およそ3回発生する)。ゆえにメガヌクレアーゼは、最も特異的な天然型制限酵素とみなされている。
「標的遺伝子」という用語は、たとえばTALENsやCRISPRなどのエンドヌクレアーゼ系の設計により、エンドヌクレアーゼの攻撃対象に選択された染色体DNAの部位を指す。
遺伝子編集とは、本明細書で当該用語が使用された場合、遺伝子を選択し、改変することを指す。無作為挿入、遺伝子トラッピング、およびその類似技術などは遺伝子編集ではない。標的部位での遺伝子ノックアウト、核酸付加、核酸除去、全機能の削除、アレルの遺伝子移入、発現亢進性改変(hypermorphic alteration)、発現低下性改変(hypomorphic alteration)、および1個以上のアレルの交換が遺伝子編集の例である。
本明細書において、「ノックアウト、不活化、および破壊された」ならびにその変化形の用語は、遺伝子発現産物が任意の手段により排除され、または大きく減少し、それによってその遺伝子発現がもはや全体として動物に対し大きな影響を与えなくなることを指すために相互交換可能に使用される。これら用語は場合により別段では、その遺伝子の役割が本質的に排除されることなく、観察可能な程度にその役割を減少させることを指すために使用される。これら用語は概して、機能性遺伝子産物の形成を阻害することを指す。遺伝子産物は、その通常の(野生型の)機能を果たす場合にのみ、機能性である。遺伝子の破壊は、当該遺伝子によりコードされた機能性因子の発現を阻害し、その遺伝子によりコードされた配列における、ならびに/または動物中でその遺伝子の発現に必要なプロモーターおよび/もしくはオペレーターにおける、1つ以上の塩基の挿入、欠失、または置換を含む。破壊される遺伝子は、たとえば、動物ゲノムから当該遺伝子の少なくとも一部を除去すること、当該遺伝子によりコードされた機能性因子の発現を阻害するために当該遺伝子を改変すること、RNA干渉、または外因性遺伝子によりドミナントネガティブ因子を発現させること、などにより破壊されることができる。
アレルの「交換」という用語は、インデルまたは一部の場合においては縮重置換を除く他の変化を伴わずに、天然アレルから外因性アレルへ変化させることを意味する。
「縮重置換」という用語は、コドン中の塩基が、コードされたアミノ酸を変化させずに別の塩基へと変化することを意味する。縮重置換は、エクソンまたはイントロン中であるように選択されてもよい。縮重置換の1つの用途は、遺伝子移入された配列の存在に関する検査を容易にするための制限酵素部位を作製することである。内因性アレルは本明細書において天然アレルとも呼称される。
「遺伝子」という用語は広義であり、機能性産物を生成するために発現される染色体DNAを指す。
「選択」という用語は、さらなる用途のために細胞を特定および単離する能力を指すために使用される;他の多くの方法と本プロセスを識別する非常に大きな利点である発現可能なレポーター遺伝子がそのプロセスにおいてどこにも無かった。
「胚盤胞」という用語は本明細書において広義に使用され、2細胞期から約3週目までの胚を指す。
「胚」という用語は広義に使用され、受精卵から誕生までの動物を指す。
「配偶子形成」という用語は、1倍体生殖細胞(卵子と***)の生成を意味し、各々、各親の生殖系細胞から、親の遺伝的相補の半分を担持している。***の生成は、***形成である。受精中に***と卵子が融合することにより、2倍体ゲノムを有する受精卵細胞が生じる。
「配偶子細胞」という用語は、卵子と***の前駆細胞を指し、典型的には生殖細胞または精原細胞である。
「大型脊椎動物」という用語は、サル、家畜、イヌおよびネコを指す。
「家畜」という用語は、たとえばウシ、ヒツジ、ヤギ、鳥類(ニワトリ、七面鳥)、ブタ、水牛、および魚類など慣習的に食物用に飼育されている動物を指す。
「同系」という用語は、たとえば受容体とそのリガンドなど、典型的には相互作用する2つの生体分子を指す。HDRプロセスの文脈において、生体分子のうちの1つは、意図される、すなわち同系のDNA部位またはタンパク質部位に結合する配列を用いて設計されてもよい。
「挿入」という用語は広義に使用され、染色体への文字通りの挿入、または修復用鋳型としての外因性配列の使用のいずれかを意味する。
「外因性核酸」という用語は、細胞または胚に加えられる核酸を意味し、当該核酸は、自然に当該細胞中にある核酸配列と同じであっても、異なっていてもよい。「核酸断片」という用語は広義であり、染色体、発現カセット、遺伝子、DNA、RNA、mRNA、またはそれらの一部を含む。細胞または胚は、たとえば非ヒト脊椎動物、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、鳥類、ウサギ、ヤギ、イヌ、ネコ、実験動物および魚類からなる群から選択されてもよい。
本明細書で使用される場合、「動作可能に連結される」とは、標的核酸の転写が可能となるような方法、または促進されるような方法で核酸配列に対して制御性領域を配置することを指す。
本明細書で使用される場合、「アレルの交換」とは、内因性アレルの上に外因性アレルを複製する非減数***プロセスを指す。遺伝子はアレルを有している。特定の座位に2個の同一のアレルが存在する場合、遺伝子型はホモ接合性であり、その2個のアレルが異なっていればヘテロ接合性である。アレルは、特定の染色体上の特定の場所に位置する遺伝子の別の形態である(対のうちの1つ)。アレルは、別個の形質を決定する。アレルはそのDNA配列中の特定の位置(識別(distinguishing)位置またはbp)に塩基対(bp)の差異を有しており、それにより異なる形質が生じ、および互いに識別される。これら識別位置はアレルマーカーとして役に立つ。アレルは、識別位置で同じ塩基を有する場合、同一であるとして、一般に解説されており、および本明細書に解説される;動物は自然に、他の位置の他のbpで、ある変異を有している。当業者は日常的に、アレルを比較する際には自然変異を調整している。厳密に同一という用語は本明細書において、DNAアライメント中にbpの差異またはインデルが完全に無いことを意味するために使用される。
遺伝的相補
古典的に、遺伝的相補とは、2つの異なる突然変異が二倍体または異核共存体中で混合されているときの、野生型の表現型の生成を指す。しかしながらキメラ作製に関する現代技術は幹細胞相補に依ることができ、それにより現在では、2個以上の胚起源の細胞を組み合わせて1つの遺伝的に混合された動物が作製される。この場合、相補は、個々の染色体の遺伝子型における変化はいずれも含まず、むしろ遺伝子産物の混合を表している。相補は2つの細胞型が同じ胚中に存在し、各々が機能を果たし得るときに発生する。その後、各々の個別の染色体は未改変で維持される。キメラの場合、相補は、染色体の2つの異なるセットが同じ胚中で活性であるときに発生する。しかしながら、この相補から生じた子孫物は、各遺伝子型の細胞を担持し得る。胚性相補において、ホスト胚の遺伝子は、ノックアウトを生じさせるように編集され、または別の手段で非機能性遺伝子が作製されるように編集される。ヒト幹細胞が遺伝子編集された胚盤胞に注入された場合、ヒト幹細胞はホスト(編集された)ゲノムの欠落をレスキューまたは「相補」することができる。ノックアウトされた遺伝子が特定の臓器または組織の成長をサポートしていた場合、得られた相補生成組織は、非編集物、たとえば幹細胞由来の遺伝子型の成長および分化の結果であり得る。ヒト幹細胞を使用してホスト編集ゲノムを相補する場合、得られた組織または臓器は、ヒト細胞から構成され得る。この方法において、完全なヒト臓器は、相補生成臓器に対して、ホストとして他の動物を使用してin vivoで生成され得る。
任意の特定の臓器または組織の成長および分化に対し、複数の遺伝子が関与している場合があるため、複数遺伝子の編集プロセスもまた記載する。複数の遺伝子を細胞または胚で改変またはノックアウトし、それを研究用に使用してもよく、または全キメラ動物作製のために使用してもよい。これらの実施形態は、ホストニッチ(host niches)の選択的群減少による細胞または臓器の損失の相補を含む。本発明は、モデル、食物として役立つ動物、ならびに産業および医療のための細胞源および細胞製品として役立つ動物の迅速な作製を提供するものである。
図1は、ホスト動物としてブタを使用した、その必要のある対象にオーダーメイド(personalized)ヒト臓器および組織を提供することに関する課題および提案方法に関する概略図を提示している。当業者であれば、人工多能性幹細胞(IPSC)の作製を可能とする技術は、患者に、自身の幹細胞に編集遺伝子の相補をもたらすこと、およびヒトまたはヒト化された「自己の」臓器または組織の作製が可能であることを認識し得る。
多重遺伝子編集の使用は、相補の必要がある複数の編集遺伝子を用いたホスト動物の作製に重要である。図2Aは、なぜたった2つの編集アレルを有する家畜を作製するために、1つの編集を使用して数年かかるかを解説するタイムラインであり、ウシに関しては、およそ6年の時間がかかっている。この文脈において、編集されたとは、遺伝子を選択し、それを改変することを指す。最初に、対象遺伝子は、培養体細胞中でたとえばノックアウト(KO)などの編集をされなければならず、その体細胞を、標的KOを有するヘテロ接合性仔牛を作製するためにクローン化する。ヘテロ接合体は、交配のために成熟するまで、ウシの場合は約2才まで育てて、第一世代(F1)のオスとメスのヘテロ接合性のウシを作製し、それらを互いに交配させて、ホモ接合性のノックアウト仔牛(F2)を作製する。ウシの場合、従来的な方法を使用して複数の標的突然変異のホモ接合体を作製することは実用的ではない。さらなる編集を行うための年数と使用される動物数は、図2Bに図示されるように使用される特定のスキームに応じてほぼ指数関数的に増大する。脊椎動物の中では、たとえウシよりも一世代当たりより多くの子供を残し、妊娠期間が短い動物であっても、複数の編集を行うためには非常に長い時間を要するであろう。たとえばブタは、1回の交配で多くの子供を有し、妊娠期間はおよそウシの半分であるが、複数の編集を行うための時間は数年を要し得る。さらに、積極的な近親交配を行う期間を最小化するスキームは、複数編集には合理的に可能とは言えないであろう。また連続クローン化は、プロセスと結果の観点から、特に動物が家畜または実験動物として有用であるべき場合には望ましいものではない。
本発明により提示される機会を図3に解説する。最初の世代の動物(F0)で行われる複数編集を示している。ヘテロ接合体またはホモ接合体であると独立して選択される2個以上の編集を伴う胚は、直接作製され、またはクローン化により作製され、妊娠のために代理メスに移植される。得られた動物は、F0世代の創始体である。複数の胚を作製して1匹以上の代理メスに移植し、雄雌両方の子孫を誕生させてもよく、または胚分割の公知技術を使用して複数のクローン胚を作製してもよい。たとえばブタなど、典型的には一度の出産で雌雄両方を出産する家畜を交配させ、増殖させてもよい。
標的化エンドヌクレアーゼまたは相同組み換え修復(HDR)を使用して細胞または胚において、複数のアレルを破壊してもよく、または別の手段で本明細書に記載されるように編集してもよい。ある実施形態は、複数の標的染色体DNA部位で脊椎動物の細胞または胚に遺伝子編集を行う方法であり、当該方法は、脊椎動物の細胞または胚に以下を導入することを含む:第一の標的染色体DNA部位を指向する第一の標的化エンドヌクレアーゼ、および第一の標的部位配列に対し相同な第一の相同組み換え修復(HDR)の鋳型;および第二の標的染色体DNA部位を指向する第二の標的化エンドヌクレアーゼ、および第二の標的部位配列に相同な第二のHDR鋳型。当該第一のHDR鋳型配列は、第一の標的部位で天然染色体DNA配列を置き換え、および第二のHDR鋳型配列は、第二の標的部位配列で天然染色体DNA配列に取って代わる。
たとえばノックアウトまたは交換などの複数編集が達成可能であったことが判明したことは予想外であり、驚きであり、および予測不可能な結果であった。1つの理論上のメカニズムは、細胞サイクルの特定の段階にあったために複数編集が受け入れ可能であった細胞が少数存在していたというものである。エンドヌクレアーゼとHDR鋳型に暴露されたとき、それら細胞はただちに反応する。関連する動作理論は、HDR鋳型化プロセスは、自身を複数置換させることに役立つというものであり、その理由は、1つの標的部位に対する細胞修復機構の活性化は、さらに他の部位の修復、すなわちHDR鋳型化に有利に働くためである。HDRは歴史的に低効率のプロセスであり、そのため複数HDR編集はあまり試みられたり、観測されたり、または認識されてはいなかったようであった。
これまでのところ、異種相補を用いた過去の実験は、単一編集ゲノムで行われたもののみである。しかしながら、多重遺伝子編集のための本開示プラットフォームは、ヒト幹細胞によるそれら編集の相補を可能にする、複数編集された遺伝子を有するホスト胚盤胞を提供し、およびそれらから生じた臓器および組織の製造を提供する。
本明細書の結果は、多すぎる、または少なすぎるエンドヌクレアーゼおよび/またはHDR鋳型は、負の影響を与える可能性があることを示しており、これは本領域における過去の研究を裏切るものであり得る。事実、標的化エンドヌクレアーゼを設計し、正確に作製することはできるが、それにもかかわらず失敗したのは、この酵素の効果が高すぎるためであることが観測されている。さらに、改変が成功した細胞群は、時間とともに改善されないことが多い。細胞を改変する当業者は通常、クローン化成功、または他用途に対する安定性および健康状態の指標として、細胞および改変の寿命を予測する。しかしその予測は、本明細書の多重化プロセスにおいて多くの場合役に立たない。さらに、相同組み換え(HR)遺伝子導入の効率は、単一座位遺伝子導入と比較し、多重化法では変化しやすい。一部の座位は非常に感受性であるが、その他は効率を大きく下げてしまった。明白にエンドヌクレアーゼ間の相互干渉が存在するが、たとえばエンドヌクレアーゼは共有リソースを競合するという仮定など、単純には真の影響を説明できない。
多くの遺伝子を無作為に、または不正確に染色体DNAの複数の位置に挿入するための様々な公知の技術、または複数の遺伝子を破壊する多くの無作為編集を行うための様々な公知の技術が存在している。明白なことではあるが、無作為または不正確なプロセスは、複数の特異的な標的遺伝子を編集して効果を発揮させる必要がある科学者の助けにはなりそうもない。したがって本明細書に教示されるHDRプロセスは、編集、および得られた生物体により容易に識別することができ、および意図された標的部位でのみ行うことができる。1つの違いは、本発明のHDR編集の実施形態は、余分な遺伝子コピーの挿入の必要がなく、および/またはエンドヌクレアーゼに標的とされた遺伝子以外の遺伝子は破壊されずに行うことができるという点である。そして特異的編集は、1つの位置で行われる。その理由は、HDR鋳型配列は、適切な相同性が無いと部位内に複製されないからである。実施形態は、外因性アレルが、その同系アレルの部位でのみ染色体DNA内に複製される生物体およびプロセスを含む。
HDR系編集の利点は、編集を選択することができるという点である。対照的に、非相同末端結合(NHEJ)プロセスによる他の試みでは、複数の位置でインデルを行うことができ、それによってフレームシフトを起こすことなくインデルは互いを相殺する。この課題は、多重化が含まれる場合に重大なものとなる。しかしHDRを上手く使用することにより、所望の場合には標的遺伝子が意図されるフレームシフトを確実に有するように編集を行うことができる。さらに、アレルの交換はHDRを必要とし、NHEJ、ベクター誘導核酸挿入、トランスポゾン挿入などでは行うことができない。さらに、望ましくない編集が無い生物体の選択は、困難性がさらに高い。
しかしながら、家畜もしくは大型脊椎動物に関連する細胞または動物中の標的部位で、本明細書に記載される多重編集が従前に達成されたことはないと一般的に信じられている。長期継代細胞から動物をクローン化すると、非常に多くの遺伝的損傷を有する動物が作製されてしまい、実験動物モデルまたは家畜のF0創始体としては有用ではなくなってしまう。
そして遺伝子編集は、確率論的なプロセスである;結果として、編集が成功した数パーセントの細胞を特定するために、当分野は伝統的に様々なスクリーニング技術に重きを置いてきた。確率論的なプロセスであるために、当業者は、目的とする編集の数が増加するにつれ、複数の編集を行う困難性は指数関数的に増加すると予測され得た。
本発明の実施形態は、単一細胞もしくは胚で複数の標的遺伝子ノックアウトまたは他の編集を生成するプロセスを提供するものであり、このプロセスは本明細書において多重遺伝子ノックアウトまたは編集と呼称される。
アレル同一性に関する類似試験は、外因性アレルの染色体DNAを有する改変生物体の染色体DNAを、自然界で認識されるように並べることである。外因性アレルは、1個以上のアレルマーカーを有していてもよい。マーカーの上流および下流のDNAアライメントは、ある距離に関し、同一であってもよい。所望される試験に応じて、その距離は、たとえば10〜4,000bpであってもよい。HDR鋳型は、正確に同一である配列を生成すると予測され得る一方で、鋳型領域のいずれか側の塩基はもちろん、いくつかの天然の変異を有していてもよい。当業者は日常的に、天然変異の存在にもかかわらず、アレルを識別している。当業者は、明記される境界の間のすべての範囲および値が予期されることをただちに認識することができ、以下の距離のすべてが、上限または下限として利用することができる:15、25、50、100、200、300、400、500、600、800、1000、1200、1400、1600、1800、2000、4000。
当業者はまた、有性生殖とは対照的な遺伝子編集の結果であるアレルに対する遺伝子編集を識別することができる。アレルが、有性生殖してアレルを混合させることができない別の種に由来する場合は自明である。そして多くの編集が、自然界ではまったく存在しない。また、アレルが1つの品種から次の品種へと移動した場合、たとえ別の品種では自然界で存在しているアレルを正確に複製する交換が行われたのだとしても、編集は容易に識別することができる。アレルは、ほとんどの場合、DNA上に安定的に位置付けられる。しかし配偶子形成の間の減数***は、オスおよびメスのDNAに、交差と呼ばれる事象であるアレルの交換を稀に発生させる。交差頻度と遺伝地図は、精力的に研究され、開発されている。家畜の場合、動物の血統は何世代もの間、極めて詳細に追跡されることができる。遺伝学において、センチモルガン(cM、地図単位(m.u.;map unit)とも呼称される)は、遺伝子連鎖を測定する単位である。染色体の位置(座位またはマーカー座位)の間の距離として定義されており、これに関し、一世代における介入染色体交差の予測平均数は、0.01である。染色体上で互いに近くにある遺伝子は、互いに離れている遺伝子と比較して交差が起こる可能性は低い。2つの遺伝子が染色体上ですぐ隣にある場合には、交差は非常に稀な事象である。単一アレルの、その隣接する2つのアレルに対する交差はほぼ起こりえないことであり、そのため、そのような事象は、遺伝子操作の産物のはずである。同品種の動物が含まれていた場合であっても、天然のアレル交換と遺伝子操作されたアレル交換は、親が判明している場合には容易に判別することができる。そして親の可能性がある個体を遺伝子型決定することにより、血統を高い精度で決定することができる。親子鑑別は、家畜群およびヒトにおいて日常的に行われている。
実施形態には、同時に行われる多重遺伝子編集法を含む。同時という用語は、連続ノックアウトまたは連続クローン化または動物育種の介入周期のような複数編集を達成するために複数回細胞を処置する仮想プロセスとは対照的である。同時とは、たとえば複数の標的化エンドヌクレアーゼが存在するなど、同時に有用な濃度で存在することを意味する。このプロセスを受精卵および胚に適用し、すべての細胞または本質的にすべての細胞が編集アレルまたはノックアウトを有する生物体を作製することができる。たとえばノックアウトなどの文脈において本質的にすべて細胞とは、多くの細胞の遺伝子をノックアウトし、それによって当該遺伝子の産物はその生物体の機能に対して効果が無い状態にあり、そのため当該遺伝子は実用的な目的に対して存在していない状態であることを指す。当該プロセスは、最小数の細胞***以上、好ましくはおよそゼロ〜およそ2***まで、細胞および胚の細胞を改変する。実施形態は、様々な時点にわたり発生する、または様々な細胞***数にわたり発生する:たとえば0〜20回の複製(細胞***)、迅速プロセスまたはプロセスが予期されることを含む。当業者であれば、明示的に記載される境界の内のすべての値および範囲、たとえば約0〜2回の複製、約0〜3回の複製、約4回以下の複製、約0〜10回の複製、10〜17;約7日未満、約1、約2、約3、約4、約5、または約6日未満、約0.5〜約18日などが予期されることを直ちに認識することができる。短期継代(low passage)とは、約20回以下の複製しか経ていない初代細胞を指す。
別の実施形態では、単一の胚において、母系アレル、親アレル、または両アレルは、ウシおよびブタの胚において編集され得ること、ゆえに両アレルの鋳型編集はその胚においてHDRを使用して行われ得ることが示されている。これらの編集は同じ座位で行われた。姉妹染色体からの特異的遺伝子導入が検出された。Carlson et al.PNAS 43(109):17382−17387 2012.
図4A〜4Dを参照し、実施例1は、同時に2個の遺伝子をノックアウトするHDR編集の使用を試みて成功し、さらには両ノックアウトに対しホモ接合性、または各ノックアウトに対しヘテロ接合性の細胞を選択することができた実験を記載している。細胞を処置して、第一および第二の標的化エンドヌクレアーゼ(各々、TALENSペアである)を導入し、各エンドヌクレアーゼはそれぞれ第一の遺伝子標的(Recombination Activating Gene 2、RAG2)および第二の遺伝子標的(Interleukin Receptor 2、ガンマ、IL2RgまたはILR2γ)に対し指向する。TALENSは目的とされる部位を標的とするよう設計され、および適切な量で作製されなければならなかった。細胞の処置にかかる時間は5分未満であった。エレクトロポレーション法を使用したが、本明細書には他の多くの適切なタンパク質またはDNAの導入方法が記載されている。次いで細胞を培養し、個々の細胞コロニーを形成させ、各コロニーは単一の処置細胞に由来している。様々なコロニーに由来する細胞を3日後または11日後に検査した。RAG2ノックアウト率は、IL2Rgノックアウト率よりも約6倍高かった。一部の遺伝子はその他の遺伝子よりもノックアウトが困難であったことが明白であった。両方の遺伝子のノックアウト効率は高く、両ノックアウトに対しヘテロ接合性またはホモ接合性の細胞の特定に成功した。重要なことは、TALEN mRNAとHDR鋳型の用量は、特異的効果および非特異的効果を有していたことであった。IL2Rgに対するTALEN mRNAを増加させると、IL2Rgに対するNHEJおよびHDRの両方が増加したが、一方でRAG2に対するNHEJ値は変化しなかった。IL2Rg HDR鋳型を増加させると、RAG2座位のHDRは減少したことから、オリゴヌクレオチド濃度を上昇させることによる、相同組み換え修復の非特異的阻害が示唆される。この用量感受性、特にこれら低用量での用量感受性が、多重化プロセス研究から研究者らを遠ざけたのであろう。実施例1の細胞をクローン化し、出願時、同細胞から誘導された胚で2匹の動物が妊娠していた。
図5A〜5Dを参照し、実施例2は、多重HDR編集に関し同じ目的であるが、異なる遺伝子を対象とした実験を記載している。第一の遺伝子標的は、Adenomatous polyposis coli(APC)であった。第二の遺伝子標的は、p53(TP53遺伝子)であった。両ノックアウトに対しホモ接合性の細胞、および両ノックアウトに対しヘテロ接合性の細胞を検出し、単離した。
図6〜9を参照し、実施例3は、2〜5個の遺伝子をノックアウトするための多重HDR編集を記載している。3つの実験が行われ、遺伝子型決定のために検査された細胞コロニー数は、各実験に対し72〜192個の範囲であった。遺伝子のAPC、p53、RAG2、Low Density Lipoprotein Receptor(LDLR)、IL2Rg、Kisspeptin Receptor(KISSRまたはGPR54)、およびEukaryotic Translation Initiation Factor 4GI(EIF4GI)の様々な組み合わせの多重ノックアウトのために細胞を処置した。遺伝子LDLRは、他の遺伝子よりも改変に対する受容性が一貫して低かった。結果から明らかなように、TALEN特異化された相同組み換え修復(HDR)を使用して同時に複数アレルを破壊することができた。5個のTALENペアは各々、20%を超えるHDR/部位を生じさせ、それらの同系HDR鋳型は3つの組み合わせで同時に共トランスフェクトされた(表A)。各複製からのコロニーの一部は、少なくとも4つの遺伝子でHDR事象が陽性であり、複製Aの2つのコロニーは、5つすべての遺伝子においてHDR事象を有していた。5つの遺伝子におけるインデルの同時形成が、マウス胚性幹細胞(ESまたはESC、相互交換可能に使用される)におけるCas9/CRISPR刺激NHEJにより示されたが、標的化ヌクレアーゼ刺激HDRによる5遺伝子(最大7アレル)の正確な改変は予想外かつ驚きであり、他に類を見ないものである。TALENSの複製がCas9/CRISPRを交換した場合(発現のためにベクターが細胞に導入された場合)、改変レベルは検出を下回っていた(データは示さず)。しかし、他のデータは、RGEN多重を示していた。たとえば以下の実施例9。すべての実験で4個の遺伝子が編集されていたことが判明し、1つの実験では5個の遺伝子が編集されていた。
このプロセスのスピードと効率はプロセスの規模拡大に役立つものであり、それによって、プロセスの性質を変化させることなく6個以上の遺伝子の多重ノックアウトが達成可能となる。表Aに関し、約72〜192個の細胞が検証された。このプロセスは確立されており、非常に多くの細胞に対する検査数を増加させることはいまや不合理ではなく、多数の遺伝子/アレルの多重化に期待することができる。多重化遺伝子またはアレルの数は2〜25個の範囲であってもよい。当業者はただちに、明記される境界の間のすべての範囲および値が予期されることを認識することができ、以下のすべてが、互いの組み合わせにおいて上限または下限として利用することができる:2、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20、25。
明らかなことではあるが、多重ノックアウトを伴う細胞および胚は、本発明の実施形態であり、それにより作製された動物も同様である。
実施例4は、様々な動物の作製プロセスを多少詳細に記載しており、例示を目的として特定の遺伝子に言及している。実施例5は、CRISPR/Cas9の設計と作製の例である。
実施例6は、標的化ヌクレアーゼ誘導HDRプロセスを用いた多重遺伝子編集のさらなる例を提示している。GATA binding protein 4(GATA4);homeobox protein NKX2−5(NKX2−5)、およびMesoderm Posterior Protein 1(MESP1)を同時にTALENsおよびHDR鋳型を用いて標的化させ、各遺伝子内にフレームシフト突然変異と未成熟停止コドンを誘導した。目的は、相補試験における使用のための、各遺伝子に対する両アレルノックアウトを作製することであった。プロセスは約0.5%の効率であり、2個のクローンが各遺伝子で目的とされる両アレルHDRを有していた。単一遺伝子での、または遺伝子の組み合わせでの所与の遺伝子のノックアウトにより、相補が行われずに遺伝子型の発育阻害が生じ、および早期の胚性致死が生じる場合がある。当業者であれば、これら遺伝子を個々にノックアウトし、ヘテロ接合体の異種交配を行い、FTTおよび相補実験のための三重ノックアウトを取得する(およそ1/66の確率)ことは家畜において実現不可能であると認識するであろう。
実施例7は、TALENsおよびCas9/CRISPRを組み合わせて遺伝子の多重編集を行うことができることのデータを提示している。一部の遺伝子/アレルはTALEN、またはCas9/CRISPRによる標的化がより容易であり、これらツールを組み合わせて多重化を行わなければならない状況は起こり得る。本実施例において、Eukaryotic Translation Initiation Factor 4GI(EIF4GI)をTALENsの標的とし、p65(RELA)遺伝子をCas9/CRISPRの標的とした。細胞は、HDR事象の指標であるRFLPアッセイにより解析された。HDRは両部位で明白であった。したがって、たとえば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のTALENsと1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のRGEN試薬などの任意の組み合わせをはじめとする組み合わせを多重化するために、TALENsとRGENsを一緒に使用し、または別々に使用することができる。
キメラ
キメラはホスト胚盤胞を作製し、ドナー動物からのドナー細胞を加えることにより作製することができる。得られた動物は、ホストとドナーの両方に由来する細胞を有するキメラになり得る。一部の遺伝子は、胚がある種の細胞および細胞系統を生成するために重要である。そのような遺伝子がホスト細胞でノックアウトされた場合、その失われた遺伝子を有するドナー細胞を導入することで、それら細胞および細胞系統がホスト胚に修復され得る。修復された細胞はドナーの遺伝子型を有する。かかるプロセスは、相補プロセスと呼称される。
Matsunari et al.,PNAS 110:4557−4562,2013において、ドナー由来ブタ膵臓を作製するための相補プロセスが記載されている。当該文献において、機能性膵臓の形成を阻害するよう改変されたホストブタ胚盤胞が作製された。ホスト胚盤胞は体細胞クローン化により作製された。体細胞を改変し、Pdx1(pancreatic and duodenal homeobox 1)のプロモーターの存在下でHes1を過剰発現させた。これは膵臓の発生を阻害することが知られていた。ホスト胚盤胞に加えられたドナー細胞はこの改変を受けていなかった。ドナー細胞は膵臓作製に必要とされる細胞系統を供給した。当該文献の筆者らは、器官形成ができないマウス胚において胚盤胞相補を行うことにより、in vivoで人工多能性幹細胞(PSCs)から機能性臓器が作製され得ることを別文献で示していた。当該文献の筆者らは、ヒト由来の多能性幹細胞(PSCs)を含む異種のPSCsを使用した将来的な研究について提言していた。実際に、異種移植は、40歳を超える人々に対する、臓器/組織の不足の解決法となる可能性があるとみなされている。遺伝子をノックアウトせずに、膵臓形成を不可能にさせたという事実は重要である。
従来的な方法を使用し、大型脊椎動物において1つの遺伝子をノックアウトすることさえ、多量の資源投資が必要である。対照的に、細胞中で遺伝子産物を過剰発現させることは当分野に現状存在する、たとえば複数の遺伝子カセットコピーをゲノム中に配置するプラスミドまたはベクターを使用することでも容易に達成可能である。遺伝子発現を加えることは、遺伝子標的化およびノックアウトよりもさらに簡単である。遺伝子産物の過剰発現で器官形成を阻害することは、現時点では稀なことと考えられている。実際に、大型動物ゲノムの遺伝子操作に限界があることは重大であろう。とはいえ、ブタは、ヒトに対するその大きさおよび生理的な類似性、ならびにその繁殖力と成長速度により異種移植の好ましいドナー動物である。
図10は、キメラに関する文脈において適用される遺伝子ノックアウトまたは他の遺伝子編集を行うために本明細書において使用される多重化プロセスを図示している。短期継代初代体細胞を、遺伝子ノックアウトを用いて作製する。ノックアウトに対し、所望されるヘテロ接合性およびホモ接合性の分布を厳密に備えた細胞を単離する。これらの細胞をクローン化で使用して胚を作製し、それをホスト胚盤胞として発生させる。ドナー胚を確立させ、それをノックアウトにより生じたニッチに投入する遺伝子を提供するドナー細胞源として使用する。ドナー細胞をホスト胚盤胞に導入し、ホスト細胞を用いて繁殖させ、ホスト細胞とドナー細胞の両方を有するキメラを形成させる。胚を代理メスに移入し、妊娠させる。キメラの子孫物は、ホスト細胞が配偶子を形成した場合にはホストの遺伝子型を有している。キメラは、自身のホスト胚盤胞により性別が決定される。
図11は、発育阻害の表現型(FTT)の相補プロセスを図示している。FTTとは、性的成熟年齢まで生存することが予測されない動物を指す。FTTの遺伝子型および表現型を有するホスト胚が提供される。たった1つの遺伝子のノックアウトにより利用可能なFTTは限定的であり、いくつかの臓器と組織に関しては判明していないことから、多重化プロセスが理想的である。ドナー細胞は、FTTに失われた遺伝子を提供し、および失われた細胞型を提供する。胚は大型脊椎動物であってもよく、およびノックアウトはたとえば2〜25個の遺伝子など多重であってもよい。さらに標的化エンドヌクレアーゼを使用してノックアウトが行われてもよい。免疫不全の実施形態において、IL2Rg−/y RAG2−/−のノックアウトは、ホストが本質的に免疫機能を失っていることから、FTTである。しかしドナー細胞はそれら遺伝子を失っておらず、得られるキメラは、動物を発生および維持することができるという目的に対して本質的に正常な表現型を有している。しかし子孫物はFTTの表現型を有している。ゆえに、動物を維持することはでき、FTT動物を簡便に生産することができる。キメラはノックアウトに対し、ヘテロ接合性とホモ接合性の任意の組み合わせであってもよい。ゆえに、他のプロセスが追加の世代以上を必要とする場合、発育不全(FTT)の表現型が生じるF0世代動物であるキメラを作製するプロセスが記載される。
キメラは通常、ホスト細胞に遺伝する。しかし本明細書において、ホスト細胞に遺伝するのではなく、ドナー細胞からその子孫物へと遺伝する別のキメラが開示される。遺伝的形質を切り替えることにより、なんらかの有用な機会を提供し得ることが判明した。図12に関しては、G−ホストとして標識された胚が図示されている。この胚は非機能的な配偶子で作製されている。ドナーの胚盤胞が作製され、ドナー細胞源として使用されている。ドナー細胞は、ドナー配偶子を作製するために必要とされる遺伝子および細胞系を提供する。得られたキメラは、ドナー細胞の配偶子を有し、ドナー細胞の遺伝的特徴を有する子孫物を産生する。この図において、ホスト胚はオスのブラフマン(Brahman)のウシである。ドナー細胞は、二重筋肉化(double−muscled)されたオスウシに由来する。キメラはブラフマンのオスウシの表現型を有していたが、その子孫物は二重筋肉化されている。ホストとドナーは、同じもしくは異なる品種に由来していてもよく、または同じもしくは異なる種に由来していてもよい。ホストは不妊であるように作製される。これは有性生殖できないことを意味する。数頭の不妊動物を使用して、たとえば運動性のない***などの非機能性の配偶子を作製させてもよく、またはたとえば早期に配偶子形成を破壊して配偶子を全く作製させなくてもよい。ドナー細胞はたとえば野生型の細胞、望ましい形質を有する動物品種に由来する細胞、または遺伝子改変された細胞であってもよい。
本発明の実施形態は、たとえばキメラ家畜などの不妊キメラ動物を含み、それらは配偶子形成または***形成が阻害された染色体へと遺伝子改変されている。染色体はX染色体、Y染色体、または常染色体であってもよい。改変は、既存遺伝子の破壊を含み得る。破壊は、既存の染色体遺伝子を改変し、発現されなくなるようにすることで行うことができ、または遺伝子の転写もしくは翻訳を阻害し得る因子を遺伝子発現させることにより行うことができる。1つの実施形態は、ホストの精原幹細胞(SSC:spermatogonial stem cells)のノックアウトである。動物は、所望される遺伝的特徴を有するドナー細胞を用いて作製されてもよく、当該動物は、ドナーの遺伝子型を有する配偶子を形成するSSC細胞を供給する。一部の遺伝子は、たとえば以下の組み合わせなどの組み合わせで破壊され、不妊を生じさせる1つ以上の効果を生み出す:Acr/H1.1/Smcp、Acr/Tnp2/Smcp、Tnp2/H1.1/Smcp、Acr/H1t/Smcp、Tnp2/H1t/Smcp(Nayernia K;Drabent B;Meinhardt A;Adham IM;Schwandt I;Muller C;Sancken U;Kleene KC;Engel W Triple knockouts reveal gene interactions affecting fertility of male mice.Mol.Reprod.Dev 70(4):406−5 16 2005)。実施形態は、第一の遺伝子のノックアウトを伴う動物の第一系統と、当該系統のオスの子孫が不妊となるような第二の遺伝子のノックアウトを伴う動物の第二の系統を含む。
遺伝子操作された大型脊椎動物を作製するための遺伝子操作の使用は、所望される遺伝的形質を有する動物の生成を加速させることができる。伝統的な家畜の交配は費用が高く、時間もかかるプロセスであり、遺伝的形質を注意深く選択し、世代的繁殖を長く待たなければならない。注意深く形質を選択したとしても、有性生殖によるバリエーションは、所望される形質の組み合わせを育て、伝播させることにかなりの困難をもたらす。しかしドナーの形質を伝播するキメラを作製することで、動物の繁殖方法がもたらされ、それにより、所望される遺伝的形質の迅速な普及ならびに当該形質の財産的管理の保護が可能となる。実施形態は、遺伝的およびゲノム的に不妊な動物の作製を含み、それら動物は、ドナー遺伝物質のホストとして役立つことができる。ホストによる性的交配は、ドナーの遺伝物質の再生産をもたらし得る。遺伝的に不妊な動物群を使用して、1つのドナーに由来する同一遺伝子の有性生殖による拡散を行うことができ、それにより多くのドナー子孫が迅速に作製され得る。実施形態は、改変され、たった1つの性別の動物のみを産生する動物を含み、それによって、当該動物を受け取るユーザーは、当該形質を有する動物を容易には交配できないようになる。
実施形態は、細胞または胚に遺伝的改変を行い、配偶子形成または***形成の活性に関し選択された遺伝子または複数の遺伝子を不活化することを含む。遺伝子改変の1つのプロセスは、たとえばCas9/CRISPR、または遺伝子に特異的に結合するTALENペアに対するmRNAなどの標的ヌクレアーゼの導入を含む。動物を細胞または改変胚からクローン化し、代理母で直接的に誕生させる。動物は家畜動物または他の動物であってもよい。配偶子形成は早い段階で阻害されてもよい。または、不妊にとっては重要だが、その他には動物にとって重要ではない***形成活性が破壊されてもよい。ゆえに、動物は、有性生殖ができないために不妊である。しかし、ARTsを使用し、改変***から子孫を誕生させてもよい。所望される遺伝的形質を有するドナー動物が(交配および/または遺伝子操作の結果として)選択される。
2個以上のノックアウトを備えたF0世代創始動物系統の迅速な確立
多重化を用いて、2個、3個、またはそれ以上の遺伝子(2〜25個)を同時にノックアウトし、所望されるアレルの組み合わせを伴うF0世代を創出してもよい。すべてのノックアウトに対しホモ接合性であるとFTTが生じる場合、1つの選択肢は、1個−すなわちその状況に対し最小のヘテロ接合性であればなんでもよい−をのぞき、すべてのノックアウトに対しホモ接合性の創始体を作製することである。その1つのヘテロ接合性の遺伝子によって、非FTT表現型が可能となり得る。あるいは、多重ノックアウトは、相補を組み合わせて使用し、FTT子孫物を有する、発育良好なキメラを作製してもよい。このプロセスは、複数ノックアウト動物作製の世代を除外することができる。
いずれかの場合でも、利点は大きく、多数のプロセスを現実的に達成可能とさせる。従来的な交配により2個の座位のノックアウトを伴う動物を作製することは、F2世代ではたった約6%の仔だけが所望される表現型を有することから、法外な費用がかかる(表B)。対照的に、多重化法は、F0世代で所望される遺伝子型の作製を行うことができ、従来のノックアウトと交配を超える大きな利点がある。時間と動物の節約は机上の空論ではないことを強調しなければならない。ある種の改変が可能となることは進歩であり、失敗ではなく成功が期待される。さらに、本実施例を踏まえると、1個または2個のキメラRG−KO親間での交配は、RG−KOの仔の産生率をそれぞれ25%および100%にまで大きく増加させるであろう(表B)。
免疫不全動物
実施形態のある群は、免疫不全のブタまたは他の家畜、およびそれらの作製方法に関する。これら実施形態は多重編集、たとえばホモ接合性およびヘテロ接合性のノックアウト遺伝子型の選択を管理する機会を活用するノックアウトの例である。これら実施形態は、創始系統を迅速に確立する多重化の性能を示す。またこれら実施形態は、キメラ作製を含む、本発明のさらなる態様を含む。
ブタは、ヒトの大きさおよび生理に類似した、最も関連性の高い非霊長類動物である。不幸なことに、完全免疫不全ブタは広く利用可能ではない。その理由は、(1)通常、単一遺伝子ノックアウト(KO)では充分ではない。(2)複数座位がヌルである動物を作製するための異種交配は非常に費用がかかり、Kosの数に依存している可能性がある。および(3)小規模の無菌施設しかブタは利用できない。本明細書において、実施形態は、RAG2およびIL2Rg(すなわち、RG−KO)の両方のノックアウトを伴う大型脊椎動物を含む。遺伝子は体細胞のノックアウトであってもよく、次いでそれら細胞をクローン化に使用し、動物全体が作製される。あるいは胚を処置して遺伝子をノックアウトしてもよく、当該動物は当該胚から直接誘導される。多重遺伝子標的化プラットフォームは、ブタにおいてT細胞、B細胞、およびNK細胞の発生を同時に破壊することができる。したがって、かかる細胞を有さず作製された動物は、F0創始体として、本明細書の方法を用いて直接作製することができるが、その表現型はFTTである。
多重編集に対する農業的標的
食物動物ゲノムの編集は、1度で1つではなく、同時に多くの座位を編集することで大きく加速されることができ、作製されるアレルを1つにまとめるために行われる動物の交配生殖を節約することができる。加えて、いくつかの農業的形質は複雑であり、これは、2個以上(2〜数百)の遺伝子のアレルの影響の結果として顕在化していることを意味する。たとえばDGAT、ABCG2の多型、および18番染色体上の多型はまとめて、乳牛のNet Dairy Meritにおける変異の大部分を構成する。家畜の細胞または胚に、多数遺伝子の多重編集を受けさせてもよく、遺伝子としては以下の様々な農業的標的が挙げられる:ACAN、AMELY、BLG、BMP 1B(FecB)、DAZL、DGAT、Eif4GI、GDF8、Horn−poll座位、IGF2、CWC15、KissR/GRP54、OFD1Y、p65、PRLR、Prmd14、PRNP、Rosa、Socs2、SRY、ZFY、β−ラクトグロブリン、CLPGのうちの1つ以上。
多重化の疾患モデル化標的
複数遺伝子での突然変異に基づき、癌などの一部の形質が生じる(APC/p53を参照)。加えて、多くの疾患形質はいわゆる複雑形質(Complex traits)とも呼称されており、2個以上の遺伝子のアレルの影響の結果として顕在化する。たとえば糖尿病、代謝、心疾患、および神経疾患は複雑形質とみなされている。実施形態は、個々のアレルに対しヘテロ接合性およびホモ接合性である動物モデル、または色々な組み合わせで他の遺伝子のアレルと組み合わせた動物モデルを含む。たとえばmature onset diabetes of the young(MODY)座位は、個々に、および以下に付加して糖尿病を引き起こす:MODY 1(HNF4α)、MODY 2(GCK)、MODY 3(HNF1α)、MODY 4(Pdx1)、MODY 5(HNF−1β)、MODY 6(eurogenic differentiation 1)、MODY 7(KLF11)、MODY 8(CEL)、MODY 9(PAX4)、MODY 10(INS)、MODY 11(BLK)。家畜の細胞または胚は、以下の様々な疾患モデル作製標的をはじめとする、動物モデル作製に対する多くの遺伝子の多重編集を受けてもよい:APC、ApoE、DMD、GHRHR、HR、HSD11B2、LDLR、NF1、NPPA、NR3C2、p53、PKD1、Rbm20、SCNN1G、tP53、DAZL、FAH、HBB、IL2RG、PDX1、PITX3、Runx1、RAG2、GGTA。実施形態は、たとえばKOなどの編集を受けた上述の標的を1つ以上伴う細胞、胚、および動物を含む。
ある種の遺伝子は一貫して他種におけるオルソログ(orthologs)を有する。ヒトおよびマウスの遺伝子は一貫して、家畜、特にウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、およびウサギにおけるオルソログを有する。これらの種と魚類の間の遺伝的オルソログは多くの場合、その遺伝子の機能に応じて一致している。生物学者であれば、遺伝子オルソログの発見方法に精通しており、そのため本明細書において、他種のオルソログを列記することなく、当該種のうちの1つに関して、遺伝子が記載される場合がある。ゆえに遺伝子破壊を記載する実施形態は、他種で同じ名称または別の名称を有するオルソログの破壊を含む。全般的な遺伝子データベースならびに遺伝子オルソログの特定に特化したデータベースが存在する。さらに当業者は、遺伝子に対し普遍的に使用されている略語に精通しており、遺伝子に対し2個以上の略語がある場合に、または2個の遺伝子が同じ略語で参照されている場合に、どの遺伝子が参照されているかを特定するために当該コンテクストを使用している。
精原幹細胞は、家畜の遺伝的改変の第二の方法を提供する。遺伝的改変または遺伝子編集を、ドナー精巣から単離された精原幹細胞においてin vitroで実施することができる。改変細胞を、レシピエントの生殖細胞枯渇精巣に移植する。移植された精原幹細胞は***を産生し、当該***は、人工授精を介した交配、または創始動物を誘導するためのin vitro受精(IVF:in vitro fertilization)に使用することができる遺伝的改変を担持している。
ホストニッチの選択的群減少による形態欠損(nullomorphic)の細胞または臓器損失の相補
多重編集を使用して、特定の胚性ニッチまたは動物ニッチから細胞または臓器を意図的に取り除き、より優れたドナー細胞の統合、増殖および分化に伝導性のある環境を創出し、胚、胎仔、または胎仔における、オルソログ性の細胞、組織または臓器の相補によりそれらの寄与を増大させることができる。ドナーの細胞と遺伝子により満たされることができる欠乏を有するよう創出されているため、空虚なニッチを伴う動物は欠乏キャリアである。具体的な例としては、配偶子形成細胞系統のレシピエント−除去とドナー−レスキューが挙げられる(DAZL、VASA、MIWI、PIWIなど)。
別の実施形態では、多重遺伝子編集を使用して先天性脱毛症を誘導し、ドナー誘導細胞が毛髪の濾胞形成に関与する機会を提供することができる。脱毛症を引き起こす多重遺伝子編集の対象となる遺伝子としては、OMIMおよびthru Human Phenotype Ontologyデータベースで特定されている遺伝子;DCAF17、VDR、PNPLA1、HRAS、Telomerase−vert、DSP、SNRPE、RPL21、LAMA3、UROD、EDAR、OFD1、PEX7、COL3A1、ALOX12B、HLCS、NIPAL4、CERS3、ANTXR1、B3GALT6、DSG4、UBR1、CTC1、MBTPS2 ,UROS、ABHD5、NOP10、ALMS1、LAMB3、EOGT、SAT1、RBPJ、ARHGAP31、ACVR1、IKBKG、LPAR6、HR、ATR、HTRA1、AIRE、BCS1L、MCCC2、DKC1、PORCN、EBP、SLITRK1、BTK、DOCK6、APCDD1、ZIP4、CASR、TERT、EDARADD、ATP6V0A2、PVRL1、MGP、KRT85、RAG2、RAG−1、ROR2、CLAUDIN1、ABCA12、SLA−DRA1、B4GALT7、COL7A1、NHP2、GNA11、WNT5A、USB1、LMNA、EPS8L3、NSDHL、TRPV3、KRAS、TINF2、TGM1、DCLRE1C、PKP1、WRAP53、KDM5C、ECM1、TP63、KRT14、RIPK4が挙げられる。濾胞形成の可能性を有するドナー細胞を用いたキメラ化を使用して、ヒトの毛包を成長させることができる。ブタまたは他の脊椎動物における臓器または組織の除去、およびヒト起源の臓器または組織の成長は、医療用臓器または組織の源として特に有用である。
多重化のためのさらなる相補標的は、以下である:PRKDC、BCL11a、BMI1、CCR5、CXCR4、DKK1、ETV2、FLI1、FLK1、GATA2、GATA4、HHEX、C−KIT、LMX1A、MYF5、MYOD1、MYOG、NKX2−5、NR4A2、PAX3、PDX1、PITX3、Runx1、RAG2、GGTA、HR、HANDII、TBX5。
実施形態は、多重化方法において、または他の方法により、上記の標的の1個、2個、またはそれ以上(2〜25個)を標的化することを含む。
編集される遺伝子
特定の標的および標的化エンドヌクレアーゼに関して本明細書に記載される本方法および本発明は広く適用可能である。以下の遺伝子のすべてを用いた編集を伴うクローン化に適した初代家畜細胞が調製される。

遺伝的改変動物
遺伝的に発現可能なマーカーを適所に配置して動物の異種交配を可能にする方法を使用して、またはかかるマーカーを動物内に配置しない方法のいずれかにより、染色体改変に対して単一アレルまたは両アレルの動物を作製することができる。たとえば相同組み換え修復(HDR)の方法を使用して、動物の染色体を変化させるか、または外因性遺伝子を挿入させる。たとえばTALENsなどのツール、リコンビナーゼ融合タンパク質、ならびに従来的な方法が、本明細書の別の箇所に記載されている。本明細書に開示される遺伝的改変を支持する実験データの一部は、以下のように要約される。改変細胞の多遺伝子群からクローニングを行う際に、非常に優れたクローニング効率が示されたこと。この優れた効率により、単離コロニーに対する体細胞核移植(SCNT:somatic cell nuclear transfer)によるクローニング効率の変動を本方法が回避することが支持されること(Carlson et al.,2011)。しかしながら加えて、TALEN介在性改変、ならびにリコンビナーゼ融合分子による改変によって、両アレル改変が一世代で達成される。たとえば、ノックアウト遺伝子に対しホモ接合性の動物は、ホモ接合体を作製するための近親交配を行うことなく、SCNTにより作製され得る。たとえばブタおよびウシなどの家畜の妊娠期間、および繁殖年齢までの成熟は、研究と生産にとって大きな障壁である。たとえばクローン化と交配により(両方の性別の)ヘテロ接合性突然変異細胞からホモ接合性のノックアウトを作製するには、ブタおよびウシのそれぞれで、16カ月および30カ月が必要である。一部には、遺伝的改変とSCNTの連続周期を用いて、この負荷を減少させたとされている(Kuroiwa et al.,2004)が、これらは両方とも困難で非常に高価な技術であり、さらには、F0世代作製のための連続クローン化を回避する多くの理由が存在するが、F0世代は大型実験脊椎動物また家畜にとって実際に有用であろう。SCNTを行う前に日常的に両アレルKO細胞を作製できれば、大型動物の遺伝子操作において大きな進歩となる。両アレルノックアウトは、たとえばZFNおよび希釈クローン化などの他の方法を使用した不死化細胞株で行われている(Liu et al.,2010)。別の研究グループで近年、市販のZFN試薬を使用したブタGGTA1の両アレルKOが報告されており(Hauschild et al.,2011)、当該報告において両アレルのヌル細胞が、GGTA1依存性表面エピトープの非存在に対してFACSにより富化され得ていた。これらの研究がある有用なコンセプトを示している一方で、単一クローン化希釈(simple clonal dilution)は一般的に初代線維芽細胞単離物にとって実行可能ではなく(線維芽細胞は低密度で増殖しにくい)、ヌル細胞に対する生物的富化は、大部分の遺伝子にとって利用可能ではないため、動物家畜を改変することができたとは示していない。
標的ヌクレアーゼ誘導相同組み換えを使用して、連鎖選択マーカーの必要性を排除することができる。TALENsを使用して、特定のアレルを家畜ゲノムに相同組み換え修復(HDR)により正確に移入してもよい。試験的な実験において、特定の11bp欠失(Belgian Blueアレル)(Grobet et al.,1997;Kambadur et al.,1997)をウシのGDF8座位に導入した(US2012/0222143を参照)。単独でトランスフェクトした場合、btGDF8.1 TALENペアは、標的座位で最大16%の染色体を切断した。11bp欠失を保有する超らせん相同DNA修復鋳型を用いた共トランスフェクトにより、所望される事象に対する選択を行うことなく3日目で最大5%の遺伝子転換頻度(HDR)が得られた。遺伝子転換は、スクリーニングされた単離コロニーの1.4%で特定された。これらの結果は、TALENsを使用することで、連鎖選択マーカーの補助なしに、効率的にHDRを誘導することができることを示している。
相同組み換え修復(HDR)
相同組み換え修復(HDR)は細胞のメカニズムであり、ssDNAと二本鎖DNA(dsDNA)の損傷を修復する。この修復メカニズムは、損傷部位に対して顕著に相同な配列を有するHDR鋳型が存在するときに細胞により行われる。特異的結合とは、生物学分野で普遍的に使用される用語であり、非標的組織と比較して、比較的高いアフィニティで標的に結合する分子を指し、概して、たとえば静電相互作用、ファンデルワールス相互作用、水素結合などの複数の非共有結合性相互作用が関与している。特異的ハイブリダイゼーションは、相補配列を有する核酸の間の特異的結合の形態である。たとえばTALENsまたはCRISPR/Cas9系において、またはGal4モチーフにより、タンパク質もまたDNAに特異的に結合することができる。アレルの遺伝子移入とは、鋳型−誘導プロセスを伴い内因性アレルの上に外因性アレルを複製するプロセスを指す。その内因性アレルは、一部の場合では実際に切除され、外因性核酸アレルにより交換されてもよいが、現在の理論では、このプロセスは複製メカニズムであることとなっている。アレルは遺伝子対であるため、それらの間には重要な相同性が存在する。このアレルはタンパク質をコードする遺伝子であってもよく、またはたとえば生物活性RNA鎖をコードする、または制御タンパク質もしくはRNAを受容する部位を提供するなどの他の機能を有する場合もある。
HDR鋳型は、遺伝子移入されるアレルを備えた核酸である。その鋳型は、dsRNAであってもよく、または一本鎖DNA(ssDNA)であってもよい。ssDNA鋳型は、好ましくは約20〜約5,000残基であるが、他の長さが使用されてもよい。当業者であれば、明示的に記載される範囲内のすべての範囲および値、たとえば500〜1500残基、20〜100残基などが予期されることを直ちに認識することができる。その鋳型は、内因性アレルまたは交換されるDNAに隣接するDNAに相同性を提供する隣接配列をさらに備えていてもよい。またその鋳型は、標的化ヌクレアーゼ系に結合され、したがって当該システムのDNA結合物質に対して同系結合部位である配列を備えていてもよい。
標的化エンドヌクレアーゼ系
たとえばtranscription activator−like effector nucleases(TALENs)およびジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)などのゲノム編集ツールは、生化学分野、遺伝子治療分野、および多くの生物体中の機能性ゲノム研究の分野に影響を与えている。さらに近年になり、RNAガイドエンドヌクレアーゼ(RGEN:RNA−guided endonucleases)が、相補RNA分子により、自身の標的部位に指向するようになった。Cas9/CRISPR系はREGENである。tracrRNAは別のかかるツールである。これらは標的化ヌクレアーゼ系の例である:これらの系は、ヌクレアーゼを標的部位に局在させるDNA結合物質を有している。次いで、その部位をヌクレアーゼにより切断する。TALENsとZFNsは、DNA結合物質に融合したヌクレアーゼを有している。Cas9/CRISPRは同系であり、標的DNA上で互いに存在している。DNA結合物質は、染色体DNA中で同系配列を有している。DNA結合物質は、典型的には、意図される部位でもなく、その近くでもないところで核酸分解作用を得るために、意図される同系配列を考慮して指定される。ある実施形態は、制限なくすべてのかかる計に適用可能である;ヌクレアーゼの再切断を最小化する実施形態、意図される残基で正確にSNPを覆うための実施形態、およびDNA結合部位で遺伝子移入されるアレルの配置を含む。
TALEN
本明細書において使用される場合、TALENという用語は広義であり、別のTALENの補助を伴わずに、二本鎖DNAを切断することができる単量体TALENを含む。また、TALENという用語は、同じ部位でDNAを開裂するために一緒に作用するよう操作されたTALENのペアのうちの1つ、または両方の物質を指すためにも使用される。一緒に作用するTALENは、左TALENと右TALENと呼称される場合もあり、DNAまたはTALENペアの利き手を基準とする。
TALsに対する暗号が報告されている(PCT公開WO2011/072246)。この場合において各DNA結合リピートが、標的DNA配列中の1塩基対の認識に関与する。残基は、DNA配列を標的化するためにアセンブリされてもよい。簡潔に述べると、TALEN結合の標的部位が決定され、標的部位を認識するヌクレアーゼと一連のRVDを備えた融合分子が作製される。結合すると、ヌクレアーゼはDNAを切断し、それによって、細胞修復機構が作動して、切断末端で遺伝的改変が行われる。TALENという用語は、Transcription Activator−like(TAL)エフェクター結合ドメインとヌクレアーゼドメインを備えたタンパク質を意味し、それ自身で機能性である単量体TALEN、ならびに別の単量体TALENとの二量体化を必要とするその他のTALENも含む。二量体化は、両方の単量体TALENが同一であればホモ二量体TALENを生じさせ得、単量体TALENが異なっていればヘテロ二量体TALENを生じさせ得る。TALENは、2つの主要な真核生物のDNA修復経路である、非相同末端結合(NHEJ)と相同組み換え修復の手段によって、不死化されたヒト細胞において遺伝子改変を誘導することが示されている。TALENは多くの場合ペアで使用されるが、単量体TALENも知られている。TALEN(およびその他の遺伝的ツール)により処置のための細胞としては、培養細胞、不死化細胞、初代細胞、初代体細胞、受精卵、生殖細胞、始原生殖細胞、胚盤胞、または幹細胞が挙げられる。一部の実施形態では、TALエフェクターを使用して、その他のタンパク質ドメイン(たとえば非ヌクレアーゼタンパク質ドメイン)を、特定のヌクレオチド配列に対して標的化してもよい。たとえば、TALエフェクターを、限定されないが、DNA20相互作用酵素(たとえば、メチラーゼ、トポイソメラーゼ、インテグラーゼ、トランスポーゼーズ、またはリガーゼなど)、転写アクチベーターもしくはリプレッサー、またはたとえばヒストンなどの他のタンパク質と相互作用するもしくは改変するタンパク質などからのタンパク質ドメインに連鎖させてもよい。かかるTALエフェクター融合の応用としては、たとえば、エピジェネティック制御因子の作製または改変、DNAにおける部位特異的挿入、欠失または修復の作製、遺伝子発現の制御、およびクロマチン構造の改変などが挙げられる。
ヌクレアーゼという用語は、エクソヌクレアーゼとエンドヌクレアーゼを含む。エンドヌクレアーゼという用語は、DNA分子またはRNA分子、好ましくはDNA分子内の核酸間の結合の加水分解(切断)を触媒することができる任意の野生型酵素または変異型酵素を指す。エンドヌクレアーゼの非限定的な例としては、たとえばFokI、HhaI、HindlII、NotI、BbvCl、EcoRI、BglII、およびAlwIなどのII型制限エンドヌクレアーゼが挙げられる。エンドヌクレアーゼはまた、典型的には約12〜45塩基対(bp)の長さ、より好ましくは14〜45bpの長さのポリヌクレオチド認識部位を有している場合に、レア切断エンドヌクレアーゼ(rare−cutting endonucleases)を含む。レア切断エンドヌクレアーゼは、所定の座位でDNA二本鎖破壊(DSBs:DNA double−strand breaks)を誘導する。レア切断エンドヌクレアーゼはたとえば標的化エンドヌクレアーゼ、キメラジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)であってもよく、ZFNは、たとえばFokIまたは化学エンドヌクレアーゼなどの制限酵素の触媒ドメインと、遺伝子操作ジンクフィンガードメインの融合から生成される。化学エンドヌクレアーゼにおいて、化学包丁またはペプチド包丁を、核酸ポリマーまたは特定の標的配列を認識する別のDNAのいずれかに結合させ、それによって、特定配列に対し、切断活性を標的化させる。化学エンドヌクレアーゼはまた、特定のDNA配列に結合することが知られている、オルトフェナントロリン、DNA切断分子、および三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO:triplex−forming oligonucleotide)の合成ヌクレアーゼ様複合体を包含する。かかる化学エンドヌクレアーゼは、本発明に従う「エンドヌクレアーゼ」という用語に含有される。
かかるエンドヌクレアーゼの例としては、I−See I、I−Chu L I−Cre I、I−Csm I、PI−See L PI−Tti L PI− Mtu I、I−Ceu I、I−See IL 1− See III、HO、PI−Civ I、PI−Ctr L PI−Aae I、PI−Bsu I、PI−Dha I、PI−Dra L PI−Mav L PI−Meh I、PI−Mfu L PI−Mfl I、PI−Mga L PI−Mgo I、PI−Min L PI−Mka L PI−Mle I、PI−Mma I、PI− 30 Msh L PI−Msm I、PI−Mth I、PI−Mtu I、PI−Mxe I、PI−Npu I、PI−Pfu L PI−Rma I、PI−Spb I、PI−Ssp L PI−Fae L PI−Mja I、PI−Pho L PI−Tag L PI−Thy I、PI−Tko I、PI−Tsp I、I−MsoIが挙げられる。
TALENSまたは他のツールにより生成される遺伝的改変は、たとえば、挿入、欠失、外因性核酸断片の挿入、および置換からなるリストから選択されてもよい。概して、標的DNA部位が特定され、その部位に特異的に結合することができるTALENペアが作製される。TALENを、たとえばタンパク質として、mRNAとして、または当該TALENをコードするベクターにより、細胞または胚に送達する。TALENはDNAを切断し、二本鎖が破壊され、その後それが修復される。多くの場合、インデルが形成され、または付随する外因性核酸に含有される配列または多型が組み込まれ、それらは染色体内に挿入されるか、または改変配列による破壊の修復のための鋳型として供される。この鋳型誘導修復は、染色体を変化させる有用なプロセスであり、細胞染色体に有効な変化をもたらす。
一部の実施形態は、遺伝子改変された家畜および/または偶蹄目動物の組み立て、または作製方法を含み、当該組み立て、または作製方法は、家畜および/もしくは偶蹄目動物の細胞または胚にTALENペアを導入し、そのTALENペアが特異的に結合する部位で当該細胞または胚のDNAに遺伝的改変を行うこと、および当該細胞から家畜動物/偶蹄目動物を作製することを含む。直接注入を細胞または胚に使用してもよく、たとえば受精卵、胚盤胞または胚に直接注入してもよい。あるいはタンパク質、RNA、mRNA、DNAまたはベクターの導入のための多くの公知の技術のいずれかを使用して、TALENおよび/または他の因子を細胞に導入してもよい。遺伝的に改変された動物は、たとえば妊娠ホストへの胚移植または様々なクローン化法などの公知のプロセスに従って胚または細胞から作製されてもよい。「TALENが特異的に結合する部位で細胞のDNAに遺伝的改変を行う」などの文言は、TALENがその標的部位に特異的に結合したときに、当該TALEN上のヌクレアーゼにより切断される部位で、当該遺伝的改変が行われることを意味する。当該ヌクレアーゼは、TALENペアが結合する場所そのものを切断するのではなく、むしろ2つの結合部位の間の所定の部位で切断する。
一部の実施形態は、動物のクローン化に使用される細胞の組成物または処置を含む。細胞は、家畜および/または偶蹄目動物の細胞、培養細胞、初代細胞、初代体細胞、受精卵、生殖細胞、始原生殖細胞、または幹細胞であってもよい。たとえば、実施形態は、培養中の複数の初代細胞をTALENタンパク質またはTALENもしくはTALENsをコードする核酸に暴露することを含む、遺伝的改変を行う方法、または組み立てである。TALENsは、たとえば、ベクターのmRNAもしくはDNAの配列によりコードされる、タンパク質として、または核酸断片として導入されてもよい。
ジンクフィンガーヌクレアーゼ
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、ジンクフィンガーDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合させることにより作製された人工制限酵素である。ジンクフィンガードメインを操作して、所望されるDNA配列を標的とすることができ、およびこれによって、複雑なゲノム内の固有配列をジンクフィンガーヌクレアーゼの標的とさせることができる。内因性DNA修復機構をうまく活用することにより、これら試薬を使用して高次生物体のゲノムを改変することができる。ZFNは、遺伝子を不活化させる方法で使用されてもよい。
ジンクフィンガーDNA結合ドメインは、約30アミノ酸を有し、安定構造へとフォールディングされる。各フィンガーは主に、DNA基質内のトリプレットに結合する。重要な位置のアミノ酸残基は、DNA部位内の配列特異的相互作用のほとんどに寄与する。これらアミノ酸を、必要構造を保つための残りのアミノ酸は維持しながら変化させることができる。長いDNA配列への結合は、いくつかのドメインをタンデムに連結することにより行われる。非特異的FokI切断ドメイン(N)、転写アクチベータードメイン(A)、転写リプレッサードメイン(R)、およびメチラーゼ(M)のような他の機能をZFPに融合させ、それぞれジンクフィンガー転写アクチベーター(ZFA)、ジンクフィンガー転写リプレッサー(ZFR)、およびジンクフィンガーメチラーゼ(ZFM)といったZFNを形成させることもできる。遺伝子改変動物を作製するためのジンクフィンガーおよびジンクフィンガーヌクレアーゼの使用に関する材料と方法は、たとえばU.S.8,106,255;U.S.2012/0192298;U.S.2011/0023159;およびU.S.2011/0281306に開示されている。
ベクターおよび核酸
ノックアウトを目的として、遺伝子の不活化を目的として、遺伝子の発現を得るために、または他の目的で、様々な核酸を細胞に導入することができる。本明細書において使用される場合、核酸という用語は、DNA、RNA、および核酸アナログ、ならびに二本鎖または一本鎖(すなわちセンスまたはアンチセンスの一本鎖)である核酸を含む。核酸アナログは、たとえば核酸の安定性、ハイブリダイゼーション、または可溶性を改善するために、塩基部分、糖部分、またはリン酸骨格部分で改変されていてもよい。デオキシリボースリン酸骨格を改変して、モルホリノ核酸を作製してもよく、その中の各塩基部分は6員モルホリノ環またはペプチド核酸に連結されており、その中でデオキシリン酸骨格は偽ペプチド骨格に置き換えられており、4つの塩基は維持されている。
標的核酸配列は、たとえばプロモーターなどの制御領域に動作可能に連結されていてもよい。制御領域は、ブタの制御領域であってもよく、または他の種由来であってもよい。
概して、ある種のプロモーターが、標的核酸配列に動作可能に連結されてもよい。プロモーターの例としては、限定されないが、組織特異的プロモーター、構造性プロモーター、誘導性プロモーター、および特定の刺激に反応性または無反応性のプロモーターが挙げられる。一部の実施形態では、顕著な組織特異性または時間的特異性を伴わずに、核酸分子の発現を促進するプロモーター(すなわち、構造プロモーター)を使用してもよい。たとえばニワトリベータ−アクチン遺伝子プロモーターなどのベータ−アクチンプロモーター、ユビキチンプロモーター、miniCAGsプロモーター、グリセルアルデヒド−3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)プロモーター、または3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターなどを使用してもよく、ならびにたとえば単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV−TK)プロモーター、SV40プロモーター、またはサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターなどのウイルスプロモーターを使用してもよい。一部の実施形態では、ニワトリベータアクチン遺伝子プロモーターとCMVエンハンサーの融合物がプロモーターとして使用される。たとえば、Xu et al.Hum.Gene Ther.12:563 2001;and Kiwaki et al.Hum.Gene Ther.7:821 1996を参照のこと。
核酸構築物で有用であり得る追加的制御領域としては、限定されないが、ポリアデニル化配列、翻訳制御配列(たとえば、内部リボソーム侵入部位、IRES)、エンハンサー、誘導性エレメント、またはイントロンが挙げられる。かかる制御領域は必須ではないが、それらは転写、mRNAの安定性、翻訳効率などに影響を与えることにより発現を上昇させることができる。かかる制御領域は、望ましい場合には、細胞における核酸の最適発現を得るために核酸構築物内に含まれてもよい。しかしながら、かかる追加的エレメントがなくとも充分な発現が得られる場合もある。
シグナルペプチドまたは選択発現マーカーをコードする核酸構築物を使用してもよい。シグナルペプチドは、コードされるポリペプチドが特定の細胞の位置(たとえば細胞表面など)に向かうように使用されてもよい。選択マーカーの非限定的な例としては、ピューロマイシン、ガンシクロビル、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(neo、G418、APH)、ジヒドロ葉酸リダクターゼ(DHFR)、ハイグロマイシン−B−ホスホトランスフェラーゼ、チミジンキナーゼ(TK)、およびキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)が挙げられる。かかるマーカーは、培養中の安定的形質転換体の選択に有用である。他の選択マーカーとしては、たとえば緑色蛍光タンパク質または黄色蛍光タンパク質などの蛍光ポリペプチドが挙げられる。
一部の実施形態では、選択マーカーをコードする配列を、たとえばCreまたはFlpなどのリコンビナーゼの認識配列に隣接させてもよい。たとえば、選択マーカーを、loxP認識部位(Creリコンビナーゼに認識される34bpの認識部位)またはFRT認識部位に隣接させ、それにより選択マーカーが構築物から切除されるようにしてもよい。Orban et al.Proc.Natl.Acad.Sci.89:6861 1992 for a review of Cre/lox technology and Brand and Dymecki Dev.Cell 6:7 2004を参照のこと。選択マーカー遺伝子が割り込んだCre−またはFlp−活性化導入遺伝子を含有するトランスポゾンを使用して、導入遺伝子の条件付き発現を伴うトランスジェニック動物を取得してもよい。たとえばマーカー/導入遺伝子のプロモーター誘導発現は、ユビキタスまたは組織特異的のいずれかであってもよく、それらにより、F0動物(たとえばブタ)においてユビキタスな、または組織特異的なマーカーの発現が生じる。導入遺伝子の組織特異的活性化は、たとえばユビキタスにマーカー断続導入遺伝子を発現するブタを、CreまたはFlpを組織特異的に発現するブタに交配することにより行われてもよく、またはマーカー断続導入遺伝子を組織特異的に発現するブタを、CreまたはFlpリコンビナーゼをユビキタスに発現するブタに交配させることにより行われてもよい。導入遺伝子の制御発現、またはマーカーの制御切除により、導入遺伝子の発現が可能となる。
一部の実施形態では、外因性核酸はポリペプチドをコードしている。ポリペプチドをコードしている核酸配列は、タグ配列を含んでいてもよく、タグ配列は、コードポリペプチドのその後の操作を容易にする(たとえば、局在または検出を容易にする)よう設計された「タグ」をコードしている。ポリペプチドをコードする核酸配列中にタグ配列を挿入してもよく、それによりコードされたタグが、そのポリペプチドのカルボキシル末端またはアミノ末端に配置される。コードされるタグの非限定的な例としては、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)およびFLAG(商標)タグ(Kodak社、ニューヘイブン、コネチカット州)が挙げられる。
核酸構築物は、たとえば卵母細胞または卵などの生殖細胞、前駆細胞、成体幹細胞もしくは胚性幹細胞、始原生殖細胞、たとえばPK−15細胞などの腎細胞、島細胞、ベータ細胞、肝細胞、またはたとえば皮膚線維芽細胞などの線維芽細胞をはじめとする任意のタイプの胚、胎仔、または成体の偶蹄目/家畜細胞へと様々な技術を使用して導入されてもよい。技術の非限定的な例としては、トランスポゾン系、細胞に感染可能な組み換えウイルス、もしくはリポソームの使用、またはたとえばエレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、もしくはリン酸カルシウム沈殿などの細胞に核酸を送達することができる他の非ウイルス系方法の使用が挙げられる。
トランスポゾン系において、核酸構築物の転写単位、すなわち外因性核酸配列に動作可能に連結された制御領域は、トランスポゾンの逆位反復配列に隣接している。マウス、ヒト、およびブタの細胞をはじめとする細胞への核酸導入のために、たとえばSleeping Beauty(U.S.6,613,752およびU.S.2005/0003542を参照);Frog Prince(Miskey et al.Nucleic Acids Res.31:6873 2003);Tol2(Kawakami Genome Biology 8(Suppl.1):S7 2007);Minos(Pavlopoulos et al.Genome Biology 8(Suppl.1):S2 2007);Hsmar1(Miskey et al.Mol Cell Biol.27:4589 2007);およびPassportをはじめとする数種のトランスポゾン系が開発されている。Sleeping Beautyトランスポゾンが特に有用である。トランスポーゼーズはタンパク質として送達されてもよく、同じ核酸構築物上で外因性核酸としてコードされていてもよく、別の核酸構築物上に導入されてもよく、またはmRNAとして提供されてもよい(たとえばin vitro転写され、キャップ化されるmRNA)。
核酸はベクター内に組み込まれてもよい。ベクターは、広義の用語であり、キャリアから標的DNAへと移動するよう設計された任意の固有DNA断片を含んでいる。ベクターとは、発現ベクターまたはベクター系と呼称されてもよく、それらはゲノムまたは標的DNA配列にDNAを挿入させるために必要とされる構成要素のセットであり、たとえばエピソーム、プラスミド、またはウイルス/ファージDNA断片などがある。たとえばウイルスベクター(たとえばレトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、および統合ファージウイルスなど)および非ウイルスベクター(たとえばトランスポゾンなど)のベクター系が動物における遺伝子送達に使用されており、以下の2つの基礎構成要素を有している:1)DNA(またはcDNAに逆転写されるRNA)から構成されるベクター、および2)トランスポーゼーズ、リコンビナーゼ、またはベクターとDNA標的配列の両方を認識し、標的DNA配列をベクターに挿入する他のインテグラーゼ酵素。ほとんどのベクターは多くの場合、1つ以上の発現制御配列を備えた発現カセットを1つ以上含有し、この場合において、発現制御配列は、別のDNA配列またはmRNAそれぞれの転写および/または翻訳を制御または調節するDNA配列である。
多くの様々なタイプのベクターが公知である。たとえばプラスミドおよびたとえばレトロウイルスベクターなどのウイルスベクターが公知である。哺乳類発現プラスミドは、典型的には、複製起源、適切なプロモーター、および任意のエンハンサーを有しており、ならびに任意の必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナー部位およびアクセプター部位、転写終結配列、ならびに5’隣接非転写配列もまた有している。ベクターの例としては以下が挙げられる:プラスミド(別タイプのベクターのキャリアであってもよい)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス(たとえば改変HIV−1、SIV、またはFIV)、レトロウイルス(たとえばASV、ALV、またはMoMLV)、およびトランスポゾン(たとえばSleeping Beauty、P−elements、Tol−2、Frog Prince、piggyBac)。
本明細書において使用される場合、核酸という用語は、たとえばcDNA、ゲノムDNA、合成(たとえば化学合成された)DNA、並びに天然核酸およびたとえば合成塩基または代替骨格などの化学修飾核酸をはじめとするRNAとDNAの両方を指す。核酸分子は二本鎖または一本鎖(すなわち、センス一本鎖またはアンチセンス一本鎖)であってもよい。トランスジェニックという用語は本明細書において広義に使用され、遺伝的に改変された生物体、またはその遺伝物質が遺伝子操作技術により変えられている遺伝子操作された生物体を指す。ゆえにノックアウト偶蹄目動物は、外因性の遺伝子または核酸が当該動物またはその子孫物で発現されているか否かにかかわらず、トランスジェニックである。
遺伝的改変動物
リコンビナーゼ融合タンパク質をはじめとするTALENsまたは他の遺伝子操作ツール、または公知の様々なベクターを使用して動物を改変してもよい。かかるツールにより行われた遺伝的改変は、遺伝子の破壊を含む場合がある。動物を遺伝的に改変するための材料と方法は、U.S.8,518,701;U.S.2010/0251395;およびU.S.2012/0222143に詳述されており、それらはすべての目的に対し、参照により本明細書に援用される。矛盾が生じる場合は、本出願が統制する。トランス作用(trans−acting)という用語は、別の分子から標的遺伝子に作用するプロセスを指す(すなわち分子間)。トランス作用エレメントは通常、遺伝子を含有するDNA配列である。この遺伝子は標的遺伝子の制御に使用されるタンパク質(またはmicroRNAもしくはその他の拡散性分子)をコードする。トランス作用遺伝子は、標的遺伝子と同じ染色体上にあってもよいが、活性は仲介タンパク質または自身がコードするRNAを介している。トランス作用遺伝子の実施形態は、たとえば標的化エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子である。ドミナントネガティブを使用した遺伝子の不活化は概してトランス作用エレメントを含んでいる。シス‐制御またはシス‐作用という用語は、タンパク質またはRNAのコードを伴わない作用を意味する。遺伝子不活化の文脈において、これは概して、遺伝子のコード部分の不活化、機能性遺伝子の発現に必須なプロモーターおよび/またはオペレーターの不活化を意味する。
当分野に公知の様々な技術を使用して、遺伝子を不活化し、ノックアウト動物を作製することができ、および/または核酸構築物を動物に導入して創始動物を生み出し、動物系統を作製することができる。その中で、ノックアウトまたは核酸構築物は、ゲノム内に統合される。かかる技術としては、限定されないが、前核マイクロインジェクション(U.S.4,873,191)、生殖系統へのレトロウイルス介在遺伝子導入(Van der Putten et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:6148−6152 1985)、胚性幹細胞内への遺伝子標的化(Thompson et al.Cell 56:313−321 1989)、胚のエレクトロポレーション(Lo Mol.Cell.Biol.3:1803−1814 1983)、***介在性遺伝子導入(Lavitrano et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:14230−14235 2002;Lavitrano et al.Reprod.Fert.Develop.18:19−23 2006)、およびたとえば卵丘細胞または乳腺細胞などの体細胞、または成体幹細胞、胎仔幹細胞、もしくは胚性幹細胞のin vitro形質転換、その後の核移植(Wilmut et al.Nature 385:810−813 1997;and Wakayama et al.Nature 394:369−374 1998)が挙げられる。前核マイクロインジェクション、***介在性遺伝子導入、および体細胞核導入が特に有用な技術である。ゲノム改変された動物は、生殖系統細胞を含むその細胞のすべてが遺伝的に改変された動物である。その遺伝的改変でモザイク動物を作製する方法が使用された場合、当該動物は近交系であってもよく、およびゲノム改変された子孫が選択されてもよい。その細胞が胚盤胞状態のときに改変された場合、たとえばクローン化を使用してモザイク動物を作製してもよく、または単一細胞が改変された場合にはゲノム改変が行われてもよい。性的成熟しないように改変された動物は、使用された特定の方法に応じて、当該改変に対しホモ接合性であっても、またはヘテロ接合性であってもよい。特定の遺伝子がノックアウト改変により不活化される場合、ホモ接合性は通常、充分ではない。特定の遺伝子がRNA干渉またはドミナントネガティブ戦略により不活化される場合、多くの場合、ヘテロ接合性が適切である。
典型的には、前核マイクロインジェクションにおいて、核酸構築物は受精卵に導入される;1個または2個の受精卵を、***由来の遺伝物質を含有する前核としてとして使用し、当該卵は原形質内で可視である。前核段階の受精卵は、in vitroまたはin vivoで取得することができる(すなわち、ドナー動物の卵管から外科的に採取する)。In vitroで受精卵は以下のように作製することができる:たとえばブタの卵巣を食肉処理場で採取し、輸送の間22〜28℃で維持してもよい。卵巣を洗浄し、濾胞吸引のために単離してもよく、および4〜8mmの濾胞を50mLのコニカル遠心管に18ゲージの針を使用して真空下で吸引してもよい。濾胞液と吸引された卵母細胞を、市販のTL−HEPES(Minitube社、ヴェローナ、ウィスコンシン州)を用いたプレフィルターを通してリンスしてもよい。コンパクトな卵丘細胞塊に囲まれた卵母細胞を選択し、38.7℃、5%CO2の加湿された空気中、およそ22時間、0.1mg/mLのシステイン、10ng/mLの上皮増殖因子、10%ブタ濾胞液、50μMの2−メルカプトエタノール、0.5mg/ml cAMP、10IU/mLの各妊馬血清性性腺刺激ホルモン(PMSG)、およびヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)が補充されたTCM−199 OOCYTE MATURATION MEDIUM(Minitube社、ヴェローナ、ウィスコンシン州)に播種してもよい。続いて、卵母細胞を、cAMP、PMSG、またはhCGを含まない新しいTCM−199成熟培地に移し、さらに22時間インキュベートしてもよい。成熟卵母細胞を、0.1%のヒアルロニダーゼ中、1分間ボルテックスすることにより、その卵丘細胞からはぎ取ってもよい。
ブタに関しては、成熟卵母細胞を、Minitube 5−ウェル受精ディッシュにおいて、500μlのMinitube PORCPRO IVF MEDIUM SYSTEM(Minitube社、ヴェローナ、ウィスコンシン州)中で受精させてもよい。in vitro受精(IVF)の調製において、新たに採取された、または凍結オス***を洗浄し、4x105***までPORCPRO IVF Medium中で再懸濁してもよい。***の濃度は、コンピューターを使用した***解析(SPERMVISION、Minitube社、ヴェローナ、ウィスコンシン州)により解析してもよい。最終in vitro受精は、オスに応じて、およそ40個の運動性***/卵母細胞の最終濃度で10μl体積中において行われてもよい。すべての妊娠卵母細胞を38.7℃、5.0%CO2大気中、6時間インキュベートする。受精の6時間後、推定受精卵をNCSU−23中で2回洗浄し、0.5mLの同培地に移してもよい。この系により、10〜30%の***過多受精率を有するほとんどのオスで日常的に20〜30%の胚盤胞が得られる。
直線状核酸構築物を前核の1つに注入してもよい。その後、注入卵をレシピエントのメスへ移し(たとえばレシピエントメスの卵管内に)、レシピエントメスで発生させ、トランスジェニック動物を産生させる。特に、in vitro受精胚を5分間、15,000xgで遠心させ、脂質を沈殿させることで、前核の可視化が可能となる。Eppendorf FEMTOJETインジェクターを使用して胚を注入し、胚盤胞形成まで培養してもよい。卵割速度、ならびに胚盤胞形成および質を記録してもよい。
胚は、非同期レシピエントの子宮内に外科的に移してもよい。典型的には、100〜200個(たとえば150〜200個)の胚を、5.5インチのTOMCAT(登録商標)カテーテルを使用し、卵管の膨大部−峡部のジャンクション内に配置してもよい。外科手術後、リアルタイムの妊娠超音波検査を行ってもよい。
体細胞核導入において、上述の核酸構築物を含有する、たとえば胚割球、胎仔線維芽細胞、成体耳線維芽細胞、または顆粒膜細胞などのトランスジェニック偶蹄目動物細胞(たとえばトランスジェニックのブタ細胞またはウシ細胞)を、除核卵母細胞に導入し、混合細胞を確立させてもよい。卵母細胞を、極体近くで透明体切開(partial zona dissection)を行い、次いで切開領域で細胞質を押し出すことにより除核してもよい。典型的には、鋭い傾斜のチップを備えた注入ピペットを使用して、トランスジェニック細胞を、第二減数***で停止した除核卵母細胞に注入する。一部の慣例では、第二減数***で停止した卵母細胞は、卵(egg)と名付けられている。ブタまたはウシの胚を(たとえば卵母細胞を融合および活性化することにより)作製した後、活性化の約20〜24時間後、胚をレシピエントのメスの卵管に移す。たとえば、Cibelli et al.Science 280:1256−1258 1998、および米国特許第6,548,741号を参照のこと。ブタに関しては、胚移植の約20〜21日後、レシピエントのメスを妊娠に関してチェックしてもよい。
標準的な交配技術を使用して、当初のヘテロ接合性創始動物に由来する外因性核酸に対しホモ接合性の動物を作製してもよい。しかしホモ接合性が必要とされない場合もある。本明細書に記載されるトランスジェニックブタを、対象の他のブタと交配してもよい。
一部の実施形態では、対象核酸と選択マーカーを別個のトランスポゾン上に置き、および等しくない量の胚または細胞のいずれかに導入してもよく、この場合において選択マーカーを含有するトランスポゾンの量は、対象核酸を含有するトランスポゾンをはるかに超えている(5〜10倍の超過)。対象核酸を発現するトランスジェニックの細胞または動物を、選択マーカーの存在および発現に基づき単離してもよい。トランスポゾンは、正確で連鎖していない様式でゲノム内に統合されることができるため(独立転移事象)、対象核酸と選択マーカーを遺伝的に連鎖させず、標準的な交配を介した遺伝的分離により、容易に分離させることができる。ゆえに、公衆安全の視点から懸念される問題である、後継世代での選択マーカーの保持を強いられないトランスジェニック動物を作製することができる。
トランスジェニック動物が作製された時点で、標準的な技術を使用して外因性核酸の発現を評価してもよい。サザンブロット解析により初期スクリーニングを行い、構築物の統合が行われたか否かを決定してもよい。サザン解析の解説に関しては、Sambrook et al.Molecular Cloning A Laboratory Manual second edition Cold Spring Harbor Press Plainview;NY.1989のセクション9.37−9.52を参照のこと。初期スクリーニングにおいてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用することもできる。PCRとは、標的核酸が増幅される手順または技術を指す。一般的に、対象領域の末端からの配列情報、または対象領域の末端の向こうの配列情報を利用して、増幅される鋳型の逆鎖と同一または類似した配列であるオリゴヌクレオチドプライマーを設計する。PCRを使用して、総ゲノムDNAまたは総細胞RNAからの配列を含む、DNAならびにRNAから特定の配列を増幅することができる。典型的には、プライマーは14〜40ヌクレオチドの長さであるが、10ヌクレオチドから数百ヌクレオチドの長さの範囲であってもよい。PCRは、たとえば、PCR Primer:A Laboratory Manual ed.Dieffenbach and Dveksler Cold Spring Harbor Laboratory Press 1995に解説されている。また、リガーゼ連鎖反応(ligase chain reaction)、鎖置換増幅(strand displacement amplification)、自家持続配列増幅(self−sustained sequence replication)、または核酸配列ベース増幅(nucleic acid sequence−based amplified)により核酸を増幅することもできる。たとえば、Lewis Genetic Engineering News 12:1 1992;Guatelli et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874 1990;and Weiss Science 254:1292 1991を参照のこと。PCR、サザンハイブリダイゼーション、およびスプリンケレッテPCR(splinkerette PCR)による解析のために、胚盤胞期で胚を個々に処理してもよい(たとえば、Dupuy et al.Proc Natl Acad Sci USA 99:4495 2002を参照のこと)。
トランスジェニックブタの組織におけるポリペプチドをコードする核酸配列の発現は、たとえば、動物から取得した組織サンプルのノーザンブロット解析、in situハイブリダイゼーション解析、ウェスタン解析、たとえば酵素結合免疫吸着検査法などの免疫アッセイ、および逆転写酵素PCR(RT−PCR)をはじめとする技術を使用して評価されてもよい。
干渉RNA
様々な干渉RNA(RNAi:interfering RNA)が公知である。二本鎖RNA(dsRNA:Double−stranded RNA)は、相同な遺伝子転写物の配列特異的分解を誘導する。RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC:RNA−induced silencing complex)は、dsRNAを、小さな21〜23ヌクレオチドの低分子干渉RNA(siRNA:small interfering RNA)へと代謝する。RISCは、二本鎖RNAse(dsRNase、たとえばDicer)とssRNase(たとえば、Argonaut 2またはAgo2)を含有する。RISCは、切断標的を発見するためのガイドとしてアンチセンス鎖を利用する。siRNAとmicroRNA(miRNA)の両方が公知である。遺伝的改変動物で遺伝子を破壊する方法は、標的の遺伝子および/または核酸に対するRNA干渉を誘導し、当該標的の遺伝子および/または核酸の発現を低下させることを含む。
たとえば外因性核酸配列は、ポリペプチドをコードする核酸に対するRNA干渉を誘導してもよい。たとえば、標的DNAに対して相同な二本鎖低分子干渉RNA(siRNA)または低分子ヘアピンRNA(shRNA)を使用して、当該DNAの発現を低下させてもよい。siRNA用の構築物は、たとえば、Fire et al.Nature 391:806 1998;Romano and Masino Mol.Microbiol.6:3343 1992;Cogoni et al.EMBO J.15:3153 1996;Cogoni and Masino Nature 399:166 1999;Misquitta and Paterson Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:1451 1999;およびKennerdell and Carthew Cell 95:1017 1998に解説されるように作製することができる。shRNA用の構築物は、McIntyre and Fanning(2006)BMC Biotechnology 6:1に解説されるように作製することができる。概して、shRNAは、相補領域を含有する一本鎖RNA分子として転写され、これがアニーリングし、短いヘアピンを形成し得る。
特定遺伝子に指向する1つの個別機能性siRNAまたはmiRNAを発見する可能性は高い。たとえばsiRNAの特異的配列の予測可能性は約50%であるが、多くの干渉RNAが優れた確実性で作製され、それらのうちの少なくとも1個が有効であり得る。
実施形態は、たとえばある発生段階に対し選択的な遺伝子などの遺伝子に対するRNAiを発現する、in vitro細胞、in vivo細胞、およびたとえば家畜動物などの遺伝的改変動物を含む。RNAiはたとえば、siRNA、shRNA、dsRNA、RISCおよびmiRNAからなる群から選択されてもよい。
誘導系
誘導系を使用して、遺伝子発現を制御してもよい。遺伝子発現の時空間的制御が可能な様々な誘導系が公知である。いくつかは、トランスジェニック動物においてin vivoで機能性であることが証明されている。誘導系という用語は、昔ながらのプロモーター、および誘導性遺伝子発現エレメントを含む。誘導系の例は、テトラサイクリン(tet)−オンプロモーター系であり、これを使用して核酸の転写を調節することができる。この系において、変異Tetリプレッサー(TetR)を単純ヘルペスウイルスVP16のトランスアクチベータータンパク質の活性化ドメインに融合させ、tetまたはドキシサイクリン(dox)により調節されるテトラサイクリン制御転写アクチベーター(tTA)を作製する。抗生物質の非存在下では、転写は最小限であり、一方でtetまたはdoxの存在下では、転写が誘導される。別の誘導系としては、エクジソン系またはラパマイシン系が挙げられる。エクジソンは昆虫の脱皮ホルモンであり、その産生はエクジソン受容体とultraspiracle遺伝子(USP)の産物のヘテロ二量体により制御されている。エクジソン、またはたとえばムリステロンA(muristerone A)などのエクジソンのアナログを用いた処置により発現が誘導される。誘導系を駆動させるために動物に投与される剤は導入剤と呼称される。
テトラサイクリン誘導系と、Cre/loxPリコンビナーゼ系(構造性または誘導性のいずれか)は、より普遍的に使用されている誘導系の1つである。テトラサイクリン誘導系は、テトラサイクリン制御トランスアクチベーター(tTA)/リバースtTA(rtTA)を含む。これらin vivo系の使用方法は、2系統の遺伝的改変動物の作製に関与する。1つの動物系統は、選択プロモーターの制御下でアクチベーター(tTA、rtTA、またはCreリコンビナーゼ)を発現する。別セットのトランスジェニック動物は、アクセプターを発現し、その場合の対象遺伝子の発現(または改変される遺伝子の発現)は、tTA/rtTAトランスアクチベーターの標的配列の制御下にある(またはloxP配列に隣接している)。2系統のマウスを交配させることで、遺伝子発現が制御される。
テトラサイクリン依存性の調節系(tet系)は、2つの構成要素、すなわちテトラサイクリン制御トランスアクチベーター(tTAまたはrtTA)と、tTA/rtTA依存性プロモーターに依っており、テトラサイクリン依存性の様式で下流cDNAの発現を制御する。テトラサイクリンまたはその誘導体(たとえばドキシサイクリン)の非存在下では、tTAはtetO配列に結合し、tTA依存性プロモーターの転写活性化を生じさせている。しかしドキシサイクリンの存在下では、tTAはその標的と相互作用することができず、転写が発生しない。tTAを使用するtet系は、tet−オフと名付けられている。その理由は、テトラサイクリンまたはドキシサイクリンが、転写の下方制御をもたらしているからである。テトラサイクリンまたはその誘導体の投与により、導入遺伝子のin vivo発現を一時的に制御することが可能となる。rtTAはtTAのバリアントであり、ドキシサイクリンの非存在下では機能せず、しかしトランス活性化のためにはそのリガンドの存在を必要とする。ゆえにこのtet系はtet−オンと名付けられている。たとえばレポーター遺伝子、がん遺伝子、またはシグナル伝達カスケードに関与するタンパク質などをコードするいくつかの導入遺伝子の誘導発現のために、tet系は、in vivoで使用されている。
Cre/loxP系はCreリコンビナーゼを使用する。この酵素は2つの遠く離れたCre認識配列、すなわちloxP部位の間の交差による部位特異的組み換えを触媒する。2つのloxP配列の間に導入されたDNA配列(loxP導入(floxed)DNAと名付けられる)は、Cre介在組み換えにより切除される。トランスジェニック動物におけるCre発現の制御は、空間制御(組織特異的プロモーターまたは細胞特異的プロモーターを用いる)または時間制御(誘導系を用いる)のいずれかを使用し、2つのloxP部位の間のDNA切除の制御を生じさせる。1つの応用は、条件付き遺伝子不活化である(条件付きノックアウト)。別の方法は、タンパク質の過剰発現であり、この場合においてloxP導入停止コドンは、プロモーター配列と対象DNAの間に挿入される。遺伝的改変動物はCreが発現されるまで導入遺伝子を発現せず、loxP導入停止コドンの切除が導かれる。この系を組織特異的な腫瘍形成に適用し、Bリンパ球における抗原受容体発現を制御する。誘導性Creリコンビナーゼも開発されている。誘導性Creリコンビナーゼは、外因性リガンドの投与によってのみ活性化される。誘導性Creリコンビナーゼは、元のCreリコンビナーゼと特異的リガンド−結合ドメインを含有する融合タンパク質である。Creリコンビナーゼの機能的活性は、融合タンパク質中のこの特異的ドメインに結合することができる外部リガンドに依存している。
実施形態は、誘導系の制御下にある遺伝子を備えた、in vitro細胞、in vivo細胞、およびたとえば家畜などの遺伝的改変動物を含む。動物の遺伝的改変は、ゲノム改変またはモザイク改変であってもよい。誘導系は、たとえば、Tet−オン、Tet−オフ、Cre−loxP、およびHif1アルファからなる群から選択されてもよい。実施形態は、本明細書に解説される遺伝子である。
ドミナントネガティブ
ゆえに、遺伝子は、除去またはRNAi抑制による破壊されるだけではなく、当該遺伝子産物の正常機能に対して阻害効果を有するタンパク質のドミナントネガティブバリアントの産生/発現により破壊されてもよい。ドミナントネガティブ(DN)遺伝子の発現は、表現型の改変を生じさせる。これは、a)漸増効果;DNは、受動的に、内因性遺伝子産物と、共同因子または当該内因性遺伝子の通常標的のいずれかに関し、同活性を生じさせることなく、競合する。b)ポイズンピル(またはモンキーレンチ(monkey wrench)効果。この場合においてドミナントネガティブ遺伝子産物は、能動的に、通常の遺伝子機能に重要なプロセスに干渉する。c)フィードバック効果。この場合においてDNは、能動的に、遺伝子機能の負のレギュレーターを刺激する。
創始動物、動物系統、形質、および繁殖
創始動物(F0世代)は、クローン化、および本明細書に記載されるその他の方法により作製されてもよい。創始動物は、受精卵または初代細胞がホモ接合性改変を受けている場合、遺伝的改変に対しホモ接合性であってもよい。同様に、ヘテロ接合性の創始動物が作製されてもよい。創始動物はゲノム改変されてもよく、これは、細胞がそのゲノムにおいて改変を受けていることを意味する。創始動物は、改変に関しモザイクであってもよく、ベクターが胚の複数の細胞のうちの1つに導入されたとき、典型的には胚盤胞期に偶然発生し得る。モザイク動物の子孫を検査し、ゲノム改変されている子孫を特定してもよい。動物系統は、有性生殖を行うことができるか、または繁殖技術の補助により繁殖することができ、ヘテロ接合性またはホモ接合性の子孫が常に改変を発現している動物のプールが作製されたときに確立される。
家畜において、多くのアレルが、たとえば生産形質、体型形質、作業能力形質、および他の機能的形質などの様々な形質に連鎖していることが知られている。当業者であれば、たとえば、Visscher et al.Livestock Production Science 40:123−137 1994、米国特許第7,709,206号、U.S.2001/0016315、U.S.2011/0023140、およびU.S.2005/0153317など、これら形質のモニタリングおよび定量に順応している。動物系統は、生産形質、体型形質、作業能力形質、繁殖形質、育児形質、および疾患抵抗性形質からなる群の形質から選択される形質を含んでもよい。さらなる形質としては、組み換え遺伝子産物の発現が挙げられる。
リコンビナーゼ
本発明の実施形態は、リコンビナーゼ(たとえばRecAタンパク質、Rad51など)、またはDNA組み換えに関与する他のDNA結合タンパク質を備えた標的化ヌクレアーゼ系を投与することを含む。リコンビナーゼは、核酸断片を有する繊維状物質を形成し、効果としては、細胞DNAを探索し、配列に対し実質的に相同なDNA配列を発見する。たとえばリコンビナーゼはHDRの鋳型として役立つ核酸配列と混合されてもよい。次いでリコンビナーゼは、HDR鋳型と混合され、繊維状物質を形成し、細胞内に入る。リコンビナーゼ、および/またはリコンビナーゼと混合されるHDR鋳型は、タンパク質、mRNAとして細胞または胚に入れられてもよく、またはリコンビナーゼをコードするベクターを用いて細胞または胚に入れられてもよい。U.S.2011/0059160(米国特許出願番号12/869,232)の開示内容は、すべての目的に対し、参照により本明細書に援用される。矛盾が生じる場合は、本出願が統制する。リコンビナーゼという用語は、細胞において、2つの比較的長いDNA鎖の間の比較的短いDNA小片の結合を酵素触媒する遺伝子組み換え酵素を指す。リコンビナーゼとしては、Creリコンビナーゼ、Hinリコンビナーゼ、RecA、RAD51、CreおよびFLPが挙げられる。Creリコンビナーゼは、P1バクテリオファージに由来するI型トポイソメラーゼであり、loxP部位間の部位特異的なDNA組み換えを触媒する。Hinリコンビナーゼは、サルモネラ菌に存在する、198アミノ酸から構成される21kDのタンパク質である。HinはDNAインベルターゼのセリンリコンビナーゼファミリーに属しており、活性部位のセリンに依存して、DNAの開裂と組み換えを開始させる。RAD51はヒトの遺伝子である。この遺伝子によりコードされるタンパク質は、RAD51タンパク質ファミリーの1種であり、DNA二本鎖の破損の修復を補助する。RAD51ファミリーは、細菌のRecAと酵母のRad51と相同である。Creリコンビナーゼは、loxP部位に隣接する特定の配列を欠失させる実験で使用される酵素である。FLPとは、 フリッパーゼ組み換え酵素(FLPまたはFlp)を指し、パン酵母のサッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)の2μプラスミドに由来する。
本明細書において、「RecA」または「RecAタンパク質」とは、RecA様組み換えタンパク質のファミリーを指し、それらは同じ機能、特に以下の機能の本質的にすべて、または大部分を有している:(i)その後のDNAポリメラーゼによる伸長のために、自身の相同標的上に、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを適切に配置する能力。(ii)DNA合成のために二本鎖核酸を調製するトポロジー的能力。および(iii)RecA/オリゴヌクレオチドまたはRecA/ポリヌクレオチドの複合体に、効率的に相補配列を発見させ、結合させる能力。最も特徴解析がなされているRecAタンパク質は、大腸菌(E.coli)に由来する。当該タンパク質の元々のアレル型に加えて、RecA803など、多くの変異型RecA様タンパク質が特定されている。さらに、多くの生物体がRecA様鎖移転タンパク質を有しており、たとえば、酵母、ショウジョウバエ(Drosophila)、ヒトを含む哺乳類、および植物が挙げられる。これらのタンパク質としては、たとえばRec1、Rec2、Rad51、Rad51B、Rad51C、Rad51D、Rad51E、XRCC2およびDMC1が挙げられる。組み換えタンパク質の実施形態は、大腸菌(E.coli)のRecAタンパク質である。あるいは、RecAタンパク質は、大腸菌(E.coli)の変異型RecA−803タンパク質、別の細菌の源に由来するRecAタンパク質、または別の生物体に由来する相同組み換えタンパク質であってもよい。
組成物およびキット
また本発明は、たとえば部位特異的エンドヌクレアーゼ、CRISPR、Cas9、ZNFs、TALENs、RecA−gal4融合体をコードする核酸分子、同ポリペプチド、かかる核酸分子もしくはポリペプチドを含有する組成物、または遺伝子操作細胞株を含有する組成物およびキットを提供する。また、指定されるアレルの遺伝子移入に有効なHDRが提供されてもよい。かかる製品は、たとえば研究ツール用に使用されてもよく、または医療用に使用されてもよい。
別段の記載がない限り、方法は以下のとおりである。
組織培養およびトランスフェクション
ブタを、10% ウシ胎仔血清、100 I.U./mlのペニシリンとストレプトマイシン、および2mM L−グルタミンを補充したDMEM中、37℃、5%CO2で維持した。トランスフェクションに関しては、NEONトランスフェクションシステム(Life Technologies社)を使用したトランスフェクションを介してすべてのTALENsとHDR鋳型を送達した。簡潔に述べると、100%コンフルエンスに達した短期継代のオサボウ(Ossabaw)ランドレース種を1:2に分割し、翌日、70〜80%コンフルエンスで回収した。各トランスフェクションは、TALEN mRNAとオリゴと混合された緩衝液「R」中に再懸濁された500,000〜600,000個の細胞から構成され、100μlチップを使用して100μlのワーキング量を提供し、以下のパラメーターによりエレクトロポレーションを行った:入力電圧;1800V;パルス幅;20ms;およびパルス数1。典型的には、対象遺伝子に特異的な、1〜2μgのTALEN mRNAと1〜4μMのHDR鋳型(一本鎖オリゴヌクレオチド)が各トランスフェクションが含有された。それら量からの偏差は、図および図の説明に示されている。トランスフェクション後、細胞を3日間、6ウェルディッシュのウェルに播種し、いずれも30℃で培養した。3日後、細胞群をコロニー解析用に播種し、および/または少なくとも10日目まで37℃で増殖させ、編集の安定性を評価した。
サーベイヤー変異検出およびRFLP解析
目的部位に隣接するPCRを、メーカーの推奨に従い1μlの細胞溶解物を用いて、PLATINUM Taq DNA ポリメラーゼ HiFi(Life Technologies社)を使用して行った。群の変異頻度は、上述のPCR産物を10μl使用し、メーカーの推奨に従ってSURVEYOR Mutation Detection Kit(Transgenomic社)を用いて解析した。RFLP解析は、指定される制限酵素を使用して、上述のPCR反応物10μlに対し行われた。サーベイヤーとRFLPの反応物を、10%TBEポリアクリルアミドゲル上で分離させ、エチジウムブロマイド染色で可視化させた。バンドの濃度測定はIMAGEJを使用して行われた。サーベイヤー反応の変異率は、Guschin et al.2010(1)に記載されるように算出された。相同組み換え修復(HDR)割合は、RFLP断片の総濃度を、親バンド+RFLP断片の総濃度で割ることにより算出された。コロニーのRFLP解析は、PCR産物が1X MYTAQ RED MIX(Bioline社)により増幅され、2.5%アガロースゲル上で分離された点を除き、同じように行われた。
希釈クローニング:
トランスフェクションの3日後、50〜200個の細胞を10cmディッシュ上に播種し、個々のコロニーの直系がおよそ5mmに到達するまで培養した。この時点で、PBS中で1:5(vol/vol)に希釈されたTRYPLE(Life Technologies社)を6ml加え、コロニーを吸引し、24ウェルディッシュのウェルに移し、同条件下で培養した。コンフルエンスに到達したコロニーを集め、凍結保存用と遺伝子型決定用に分けた。
サンプル調製:
3日目および10日目にトランスフェクトされた細胞群を6ウェルディッシュのウェルから集め、10〜30%を、50μlの1xPCR相溶性溶解緩衝液:200μg/ml Proteinase Kを新たに補充した10mM Tris−Cl pH 8.0、2mM EDTA、0.45% TRYTON X−100(vol/vol)、0.45% TWEEN−20(vol/vol)に再懸濁した。以下のプログラムを使用したサーマルサイクラー中で溶解物を処理した:55℃、60分間。95℃、15分間。希釈クローニングからのコロニーサンプルを、20〜30μlの溶解緩衝液を使用して上述のように処置した。

実施例1:ブタRAG2およびIL2Rγの多重遺伝子編集
ブタRAG2とIL2Rγを指向する6条件のTALEN mRNAとHDR鋳型をブタの線維芽細胞に共トランスフェクトした。定量のRAG2のmRNAと鋳型を各トランスフェクションに対し使用し、一方で、IL2RγのTALEN mRNAとHDR鋳型の量は指定される各条件に対して変更した。TALEN mRNAとHDR鋳型の投与量は、オンターゲット効果とオフターゲット効果の両方を有する。IL2Rγに対するTALEN mRNAを増加させると、IL2Rγに対するNHEJおよびHDRの両方が増加したが、一方でRAG2に対するNHEJ値は変化しなかった。IL2RγのHDR鋳型を増加させると、RAG2座位のHDRは減少したことから、オリゴヌクレオチド濃度を上昇させることによる、相同組み換え修復の非特異的阻害が示唆される。RAG2とIL2Rγの両アレルHDRを有するコロニーを、2条件(図4Cおよび図4D)から4%と2%で取得した。これは予測頻度の2%以上である。予測頻度は、独立した事象として各HDRアレルを取り扱う、3日目のHDR値の乗算により算出される。図4A〜4Dは、ブタのRAG2 およびIL2Rγの多重遺伝子編集である。図4Aは、トランスフェクションの3日後の細胞群に対する、非相同末端結合(NHEJ)、および相同組み換え修復(HDR)の効率を決定するためのサーベイヤー解析およびRFLP解析である。図4Bは、トランスフェクションの11日後の細胞群に対する、相同組み換え修復に対するRFLP解析である。図4Cは、IL2Rγ、RAG2 またはその両方でHDR陽性のコロニー割合である。図4Aにおいて「C」と示される群由来の細胞が播種された。コロニーの遺伝子型分布を以下に示す。図4Dは、IL2Rγ とRAG2に対し、2μgおよび1μgの量のTALEN mRNAと、1μMのHDR鋳型を各々に対して用いてトランスフェクトされた細胞のコロニー解析である。コロニーの遺伝子型分布を以下に示す。
実施例2:ブタRAG2およびIL2Rγの多重遺伝子編集
ブタのAPCとp53を指向する4条件のTALEN mRNAとHDR鋳型をブタの線維芽細胞に共トランスフェクトした。APC mRNAの量は、左から右に、連続的に減少させた(図5B)。その量の残りは、示されるように一定で維持された。APC mRNAの減少とともに、HDR割合も直線的に減少した。APC TALENsの投与量を変化させても、p53 HDRにはほとんど影響はなかった。コロニーの遺伝子型決定により、11日目の値と比べて、APCとp53の両方においてHDRアレルを有すると予測されたクローン体が多いことが明らかとなった。図5Cと図5Dに関し、それぞれ13.7パーセントと7.1パーセントに対し、18パーセントと20パーセントであった。図5A〜5Dは、ブタのAPCおよびp53の多重遺伝子編集である。図5Aは、トランスフェクションの3日後の細胞群に対する、非相同末端結合(NHEJ)、および相同組み換え修復(HDR)の効率を決定するためのサーベイヤー解析およびRFLP解析である。図5Bは、トランスフェクションの11日後の細胞群に対する、相同組み換え修復に対するRFLP解析である。図5Cおよび5D。APC、p53 またはその両方でのHDRに関して、示される細胞群(図5Aにおいて、「C」および「D」と示される)に由来する陽性コロニーの割合。3個以上のHDRアレルを有するコロニーを以下に列記する。
実施例3:少なくとも3個の遺伝子を用いた多重化
実施例1において、高濃度のHDRオリゴでHDRの非特異的減少が観察された。ゆえに2+HDRオリゴがHDR非特異的阻害を伴わずに有効であるか否かは不明であった。各標的部位に対し、1uMと2uMの2つの濃度を検証した。TALEN活性は2つの濃度の間で有意な変化はなかったが、HDRは各鋳型に対し、2uMの濃度で有意に鈍くなった。1uM条件に由来するクローンは様々な遺伝子型を有しており、それらの一部は各遺伝子で編集を有し、最大で7アレルであった(図7Aおよび図7B)。もし独立事象として処置された場合、7アレルの編集を伴う「a」と表示される遺伝子型の予測頻度は、0.001パーセントである。本明細書において行われたように、サンプルサイズが72で、かかる遺伝子型の2+コロニーが同定される可能性は0.000026パーセント未満であると二項分布では予測された。この高い成功率は予測できるものではなく、予想外であり驚きである。この結果は、TALENs/HDR鋳型の2つのさらなる組み合わせを用いて反復された(図8Aおよび図8B、ならびに図9Aおよび図9B)。最初の試験結果と同様に、最大で7アレルおよび最大で4遺伝子でHDR編集を有するコロニーが取得された(表A)。偶然によるものと予想される頻度よりもはるかに高い頻度で、いくつかの遺伝子型が回復された。いくつかの座位で同時に二本鎖を破損させることに関する懸念は、意図しない染色体再構成が誘導されてしまうことだが、検証された試験3の細胞由来の50核型のうち50核型が正常であった(データは示さず)。
図6Aおよび6Bに関して:5‐遺伝子多重HDR効率に対する、オリゴヌクレオチドHDR鋳型濃度の効果。指定量のブタRAG2、IL2Rg、p53、APCおよびLDLR 指向性TALEN mRNAを、2uM(図6A)または1uM(図6B)の各同系HDR鋳型とともにブタ線維芽細胞に共トランスフェクトした。NHEJとHDRの割合は、サーベイヤーアッセイおよびRFLPアッセイにより測定された。図7Aおよび7Bに関して:5−遺伝子多重HDRからのコロニー遺伝子型:コロニー遺伝子型はRFLP解析により評価された。図7Aにおいて、各線は、各特定座位での1つのコロニーの遺伝子型を表している。3つの遺伝子型が特定された;ヘテロ接合性またはホモ接合性のHDRの予測RFLP遺伝子型を有するもの、ならびにRFLP陽性断片を有するもの、それに加えて、挿入または欠失(インデル)アレルの指標となる、サイズの可視偏移を有する第二のアレルを有するもの。特定の座位で編集を有するコロニーの割合は、各列の下に示す。図7Bは、0〜5個の座位で編集されたコロニー数の集計を示す。図8Aおよび8Bに関して:第二の5−遺伝子多重化試験のコロニー遺伝子型。図8A:各線は、各特定座位での1つのコロニーの遺伝子型を表している。3つの遺伝子型が特定された;ヘテロ接合性またはホモ接合性のHDRの予測RFLP遺伝子型を有するもの、ならびにRFLP陽性断片を有するもの、それに加えて、挿入または欠失(インデル)アレルの指標となる、サイズの可視偏移を有する第二のアレルを有するもの。特定の座位で編集を有するコロニーの割合は、各列の下に示す。図8B:0〜5個の座位で編集されたコロニー数の集計。図9Aおよび9Bに関して:第三の5−遺伝子多重化試験のコロニー遺伝子型。図9A:各線は、各特定座位での1つのコロニーの遺伝子型を表している。3つの遺伝子型が特定された;ヘテロ接合性またはホモ接合性のHDRの予測RFLP遺伝子型を有するもの、ならびにRFLP陽性断片を有するもの、それに加えて、挿入または欠失(インデル)アレルの指標となる、サイズの可視偏移を有する第二のアレルを有するもの。特定の座位で編集を有するコロニーの割合は、各列の下に示す。図9B。0〜5個の座位で編集されたコロニー数の集計。
実施例4A〜4D
実施例4A:多重化遺伝子編集によるRAG2/IL2Rg ヌル(RG−KO)ブタ線維芽細胞の開発。オスのブタ胎仔線維芽細胞に、従前に規定される方法(Tan W.et al.Efficient nonmeiotic allele introgression in livestock using custom endonucleases.PNAS 110(41):16526−16531 2013)を使用して、RAG2およびIL2Rgの破壊を目的としたTALENsとオリゴヌクレオチド鋳型をトランスフェクトさせた。RG−KO候補は、配列解析により確認された際に、たとえばRFLPにより特定される。少なくとも約5個の確認済みRG−KOコロニーが、クローニングとキメラ作製用のリソースとしてプールされる。
実施例4B:RG−KOホストの胚盤胞を使用したキメラ胚の作製
ホストのRG−KO胚と、メスEGFP標識ドナー細胞を、クロマチン導入技術を使用して作製し、その後に胚盤胞期までin vitro培養を行った。実施例1のRG−KO細胞を使用してもよい。EGFP胚盤胞からの7日目細胞間集塊を、6日目RG−KO胚に注入し、その後に胚を同期したメスブタに導入した。この方法を使用して、Nagashimaらは、生まれた子ブタの50パーセント超にキメラ現象を確認した(Nagashima H.et al.Sex differentiation and germ cell production in chimeric pigs produced by inner cell mass injection into blastocysts.Biol Reprod 70(3):702−707 2004)。マウスとブタの両方とも、注入キメラではオスの表現型が顕性である。ゆえに、メスドナー細胞が注入されたXY RG−KOホストは、オスホストの遺伝的特徴を排他的に伝播する。妊娠チェックは、適切な時点、たとえば25日目、50日目、および100日目に行われる。妊娠約100日目の妊娠ブタを毎日4回モニタリングし、その後、約114日目までに帝王切開で子豚を出生させる。
実施例4C:キメラではない子豚がT細胞、B細胞、およびNK細胞を欠損しているかを決定する。
キメラではない子豚を検査し、T細胞、B細胞、およびNK細胞を欠損しているかを決定する。以下のプロセスは上記を行うための1つの技術である。キメラと推定される仔豚を妊娠している各メスブタ、および野生型の仔豚を妊娠している1頭の繁殖メスブタに対し帝王切開を行う。帝王切開後、ただちに各仔豚から臍帯血を単離する。臍帯血の白血球を、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)により、T細胞、B細胞、およびNK細胞の群、ならびにドナー由来EGFP発現に関して評価する。さらにキメラ現象を、臍帯血、耳生検、および尾生検からPCRにより評価する。この初期解析を誕生から6時間以内に完了させ、それにより非キメラ仔豚を入念にモニタリングできるようにし、感染の兆候があれば安楽死させる。非キメラ動物の一部、または免疫細胞を欠損している動物を、解剖のために安楽死させる。
実施例4D:キメラブタの特定と、T細胞、B細胞およびNK細胞の起源の決定。
キメラブタを検査し、T細胞、B細胞およびNK細胞の起源を決定する。以下のプロセスは上記を行うための1つの技術である。キメラの仔豚を、上述の方法を使用して特定する。循環リンパ球と血清イムノグロブリンを毎週評価し、キメラ仔豚、非キメラ仔豚、および野生型仔豚の間で2カ月間にわたり比較する。ソート化されたT細胞、B細胞およびNK細胞の群を、EGFP発現に関して評価し、マイクロサテライト解析を行い、ドナー起源を確認する。サンプルの維持と、キメラブタからの***採取は、第II相の財源支援が利用可能となるまでRCIによりサポートされる。
実施例A〜Dのサンプリング手順:
臍帯血および末梢血のFACS。
血液リンパ球とEGFPキメラ現象の評価は、ブタ試料用に改変を行い、上述の(2)のように行われる。帝王切開分娩後ただちに各仔豚から臍帯血が採取される。将来的な同種移植治療に備えて臍帯血の一部を処理、および凍結保存し、残りはリンパ球のFACS解析用に使用する。末梢血サンプルは、標準的な方法により2週齢、4週齢、6週齢、および8週齢で採取される。RBCを除去し、およそ1〜2E+5細胞をチューブに分配する。T細胞(CD4とCD8)、B細胞(CD45RAとCD3)、NK細胞(CD16とCD3)、および骨髄細胞(CD3)の同定用の抗ブタ抗体を用いて分注物を標識する。抗原発現は、LS RII Flow Cytometer(BD Biosciences社)で定量される。フルオロフォアを注意深く選択し、表面抗原とともにドナー由来EGFP細胞を多重的に評価できるようにする。脾臓由来の単一細胞懸濁液を同方法で解析する。
検証
すべての主要臓器と組織を、適切な解剖学的発達に関して肉眼検査し、膵臓、肝臓、心臓、腎臓、肺、消化管、免疫系(末梢リンパ節および粘膜リンパ節および脾臓)、およびCNSを含むすべての主要臓器と組織から、DNA単離用の適切なサンプルを採取する。FACS解析用に単一細胞懸濁液を脾臓から調製する。組織を、組織検査用に調製して、キメラ現象、キメラ状態に関連し得る何らかの変化、および何らかの基礎疾患の存在に関してさらに評価する。
キメラ現象の分析
定量的PCRを、EGFP導入遺伝子に特異的なプライマーを使用して、臍帯血、耳生検、および尾生検に対して行い、EGFP細胞と野生型細胞の既知の比率を用いた標準曲線と比較する。上述のRFLPアッセイを介して、RG−KOアレルに関しても試料を評価する。EGFP+細胞の生着を、解剖の間に動物全体と臓器に対し、肉眼的に評価する。主要臓器の組織を、EGFP免疫組織化学染色用に薄片化し、DAPI(4’ 6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)を用いて対比染色して、ドナー細胞とホスト細胞の比率を決定する。
マイクロサテライト解析
研究室で日常的に使用されているものからホストの遺伝的特徴とドナーの遺伝的特徴に対して有益なマイクロサテライトに関して動物をスクリーニングする。組織と血液(ソート化されたリンパ球系統または骨髄系統、EGFP陽性および陰性)のサンプルを評価する。ドナー細胞とホスト細胞の相対量を、MISEQ機器(Illumina社)上で多重化アンプリコン配列解析を行うことにより評価する。
動物
臍帯血および末梢血のT細胞、B細胞およびNK細胞を欠く非キメラブタを作製する。キメラブタは、ほぼ野生型のレベルに実質的に近いレベルを有する。さらに、T細胞、B細胞およびNK細胞が陽性のキメラは、実質的に正常な免疫機能を有し、標準的な条件下で飼育された場合に健康状態を維持する。
実施例5:CRISPR/Cas9の設計と作製
遺伝子特異的gRNA配列を、メーカーの方法に従いChurch lab gRNA ベクター(Addgene社 ID:41824)にクローニングした。Cas9ヌクレアーゼは、hCas9プラスミド(Addgene社 ID:41815)の共トランスフェクション、またはRCIScript−hCas9から合成されたmRNAのいずれかにより提供された。このRCIScript−hCas9は、hCas9プラスミド(hCas9 cDNAを包含する)からのXbaI−AgeI断片を、RCIScriptプラスミドにサブクローニングすることにより構築された。mRNAの合成は、KpnIを使用して直線化が行われた点を除き、上述のように行われた。
実施例6:標的化エンドヌクレアーゼおよびHDRを用いた多重遺伝子編集。
図13Aは、多重化実験の各遺伝子の概略図であり(別の色調で示されるcDNA−エクソンとして図示されている)、TALENSに標的とされる部位が示されている。各遺伝子に対するDNA結合ドメインをコードする配列を以下に示す。ブタの線維芽細胞に、各遺伝子を標的とし、遺伝子型決定用の未成熟終結コドンならびに新規HindIII RFLP部位を挿入するよう設計された1μgの各TALEN mRNAと、0.1nMolの各HDRオリゴを共トランスフェクトさせた(図13B)。遺伝子型決定用に、総数で384個のコロニーが単離された。GATA4およびNkx2−5のRFLPアッセイが行われ(図13C)、MESP1が配列解析により評価された(データは示さず)。2個のコロニー(2/384、0.52%)が、3個すべての遺伝子に対してホモ接合性のHDRノックアウトであった。三重ノックアウトはアスタリスクで標識してある(図13C)。図13Cにおいて追加の遺伝子型が確認される。例として、コロニー49はHDR編集が無い;コロニー52と63は、NKX2−5に対しヘテロ接合性の編集を有している;コロニー59は、NKX2−5とGATA4の両方に対してヘテロ接合性の編集を有しているなど。
実施例7:TALENsとRGENsの組み合わせを使用した多重化遺伝子編集。
図14を参照のこと。ブタの線維芽細胞を、各遺伝子に対するTALENS(1ug EIF4G 14.1 mRNA)+Cas9/CRISPR成分(2ug Cas9 mRNA+2ug p65 G1s ガイドRNA)および02 nMolのHDRを用いて共トランスフェクトした。トランスフェクト細胞を、RFLPアッセイにより評価し、両部位のHDRを明らかにした。この群の細胞をコロニー単離のために播種し、両遺伝子に編集を有する単離体を特定する。
実施例8:ヒト−ブタのキメラ胚盤胞。
胚盤胞相補を使用してヒト臓器/細胞をブタで作製するための重要な最初の工程は、ヒト幹細胞が、栄養外胚葉および卵割腔とは対照的に、内部細胞塊に組み込まれることができるかどうかを決定することである。ヒト幹細胞を内部細胞塊に組み込むことができるかどうかを決定するために、単為生殖胚盤胞を使用してアッセイ系を開発した。単為生殖生物は、ブタの卵母細胞を電気的活性化することにより作製され、これにより、母系前核と極体からのDNAの組み合わせから二倍体細胞が形成される。その後、1個の二倍体細胞は***し、活性化から6日後には、ヒト幹細胞の注入に適した、充分に形成された胚盤胞となる。電気的活性化後6日目に、hUCBSCを個々のブタ単為生殖胚盤胞へと注入した。次いでhUCBSCの分布を7日目と8日目に検証し、各時点でのヒト幹細胞数は、ヒト核抗原(HNA)を認識する抗体を使用して個々のhUCBSCを可視化し、定性した。hUCBSCの大部分が内部細胞塊に組み込まれていたことが判明した(図15A〜15G、および15F)。さらに胚盤胞への注入後2日間、hUCBSCは増殖し続けていた(図15G)。
実施例9:ヒト‐ブタのキメラ胎仔。
胚盤胞相補を介したヒト臓器/細胞の作製における別の重要な工程は、ヒト幹細胞が注入されたブタの胚盤胞から、ヒト細胞を含有するブタ胎仔が生まれることを示すことである。この課題に取り組むために、hUCBSCを単為生殖胚盤胞に注入し、このキメラ胚盤胞をホルモン同期させたメスブタに移植した。妊娠28日目で胎仔を採取した(図16A)。組織切片の組織解析により、キメラ胎仔の内部臓器内のHNA陽性細胞が明らかとなった(FIGB)。これらの結果から、ブタ胎仔の発生を継続させるhUCBSCの能力が示される。
相補されたPITX3ノックアウト胚盤胞から誘導されたヒト‐ブタキメラ胎仔。ブタ−ブタキメラのブタ黒質ドーパミン神経細胞も作製し、特徴解析する;およびヒト‐ブタキメラのヒト黒質ドーパミン神経細胞も作製し、特徴解析する。NURR1、LMX1A、およびPITX3のノックアウト胚盤胞は、線維芽細胞でTALEN技術を使用して作製され、クローン化される。ノックアウト胚盤胞が、相補を基礎とした黒質ドーパミン神経細胞の生成を行うことができるかどうかを、幹細胞源として標識ブタ卵割球を使用することにより決定する。この方法は、異種ブタ−ブタ膵臓を作製するために従前に使用されたことがある(Matsunari et al 2013)。胎仔の頭殿長が約17mmに達する34〜35日胎齢で、胎仔ブタを安楽死させる。この発生段階で、VMおよび他の脳構造は、E15日の胎仔ラット、および中間妊娠初期のヒト胎仔のサイズと同等であり、細胞移植に使用する。NURR1、LMX1A、またはPITX3の胚盤胞のいずれか由来の胎仔VMにおけるブタ−ブタ異種ドーパミン神経細胞の確認がマイルストーンであり、それにより、ヒト‐ブタキメラの作製を進めることができる。
ブタ線維芽細胞におけるLMX1A、PITX3、およびNURR1のTALENノックアウト。LMXA1、PITX3、およびまたドーパミン神経細胞の発生に主要な役割を果たすもう1つの遺伝子であるNURR1に対する、それぞれエクソン1、2および3を切断するようTALENsを開発した(図17Aを参照、黒三角)。新規停止コドン、HindIII部位、および新規停止コドン後にフレームシフトが導入されるよう設計された相同組み換え修復の鋳型とともに、TALENsを共トランスフェクトし、確実に標的アレルを破壊した。トランスフェクト細胞群を、PCR−制限酵素断片長多型アッセイにより産生されたHindIII依存性切断に対して分析した(図17B)。新規HindIII−ノックアウトアレル(切断産物により示される、白三角)を有する染色体の割合を、ゲル上に示す。この群に各クローンは由来しており、RFLPと配列解析により両アレルノックアウトと立証されたクローンを相補実験用に凍結保存した。
実施例10:ヒト幹細胞を用いたPITX3ノックアウトブタ胚盤胞の相補は、眼の表現型をレスキューする。
ヒト幹細胞がブタにおいてPITX3欠失を相補することができるかを決定するために、hUCBSCをPITX3ノックアウトブタの胚盤胞に注入し、胚盤胞をホルモン同期させた未経産ブタに移植した。キメラ胎仔を妊娠62日目に採取し、まぶたの状態を検証した(図18A、図18C、および図18E)。キメラ胎仔の一部は、野生型ブタ胎仔と同様に眼瞼開裂を示していたが、その他は眼瞼閉鎖を示した。これらの結果から、ブタ胚盤胞のPITX3ノックアウトは、外胚葉性系統に対するヒト幹細胞の寄与の研究に適したモデルであることが示唆される。
実施例11:ETV2ノックアウトブタ胚
Etv2は、血管系統および造血系統の主要な制御遺伝子であり、遺伝子編集実験の理想的な候補である。いくつかの理由によって、Etv2遺伝子の座位に突然変異を誘導し、血管および造血系欠損ブタ胚を作製した。第一に、Etv2がマウスにおいて血管および造血系の発生の主要な制御遺伝子であることが包括的に示されている(Ferdous 2009 Rasmussen 2011 Koyano−Nakagawa 2012 Rasmussen 2012 Chan 2013 Rasmussen 2013 Behrens 2014 Shi 2014)。遺伝系統の追跡戦略を使用して、Etv2発現細胞が血管/内皮細胞系統および造血系統を生じさせることが示されている(Rasmussen 2011 Koyano−Nakagawa 2012 Rasmussen 2012)。第二に、包括的遺伝子欠失戦略が行われ、Etv2変異マウス胚が、血管系統および造血系統を欠くために生存できなかったことが示されている(Ferdous 2009 Koyano−Nakagawa 2012 Rasmussen 2012 Rasmussen 2013)。トランスクリプトーム解析を使用し、Etv2の非存在下ではTie2が大幅に下方制御されていることが測定されている(Ferdous 2009 Koyano−Nakagawa 2012)。さらにトランスジェニック技術と分子生物技術を使用して(転写アッセイ、EMSA、ChIP、および突然変異誘導)、Spi1、Tie2 、およびLmo2 がEtv2の直接的な下流標的であったことが実証されている(Ferdous 2009 Koyano− Nakagawa 2012 Shi 2014)。第三に、ES/EB系の分化において、強制的にEtv2を過剰発現させると、内皮細胞系統および造血系統の群が大幅に増加することから、Etv2は、両系統を含む分子カスケードを統治する能力を有する単一要素であることが示される(Koyano−Nakagawa 2012)。
実施例12:ETV2ノックアウトのブタ胚は血管系統と造血系統を欠いている。
従前の研究から、Etv2を欠く胚は血管系と血液が存在せず、およそE9.5で死に至ることから、マウスにおいて脈管形成と造血にEtv2が重要であることが示されている(Ferdous 2009 Rasmussen 2011 Koyano−Nakagawa 2012)。いずれの学説にも拘束されることは意図していないが、ETV2は哺乳類において血管系および血液の重要な制御因子であり、ゆえにブタでETV2をノックアウトすることで、マウスの表現型が模写されると仮定される。ブタにおけるETV2の役割を検証するために、ブタ線維芽細胞において、当該遺伝子に隣接する2つのTALENペアを使用し、全ETV2コード配列を除去した(図19Aおよび図19B)。このプロセスにより、15%の効率で完全な遺伝子除去が行われた;遺伝子型決定されたクローン528個のうち79個が、ETV2遺伝子の欠失に関してホモ接合性であった。ETV2ホモ接合性のノックアウト線維芽細胞クローンを、核クローニングに使用し(体細胞核導入:SCNT:Somatic Cell Nuclear Transfer)、ETV2ヌル胚を作製し、それを代理メスブタに移植した。クローン化効率は29%であり、これは平均成功率の20%よりも高かった。
E18.0で胚を採取し、解析した(図20A〜図20H)。E18.0で、野生型(Wt)の胚は血管が形成され、尿膜で血管網がよく発達しており(図20A)、血液発生の証拠があった(図20C)。対照的に、ETV2 KO胚は、明白な発育障害を示していた。両方の胚ともに24体節期にあったが、野生型胚と比較して、ETV2 KOは成長が遅れており(図20B)、血液と血管系統の両方とも欠失していた(図20C〜図20H)。ETV2 KOの胚は、主静脈、背部大動脈、および心内膜を欠いており、一方で野生型の胚では明白に発達していた(図20E〜図20H)。これらの結果は、類似表現型を示しており、ETV2の機能はマウスとブタの間で保存されていることが示唆される。さらにこれらのデータは、複数変異をブタゲノムに誘導し、2個以上の細胞型でヒト化されたキメラ臓器の成長をサポートすることができるという仮説を強く支持するものである。
実施例13:ヒトiPSCsを用いたETV2ノックアウトブタ胚盤胞の相補
hiPSCsがブタにおいてETV2の欠落を相補することができるかを決定するためにさらなる実験が行われた。hiPSCsをETV2ノックアウトブタの胚盤胞に注入し、これら胚盤胞をホルモン同期させた未経産ブタに移植した。キメラ胎仔を妊娠18日で採取し、hiPSCsの状態に関し、免疫組織化学染色で検証した(図21A〜図21C)。ヒト細胞を、Alu反復配列に対するプローブを使用したゲノムin situハイブリダイゼーション、ならびにヒト核抗原(HNA)に対する染色により特定した。ヒトCD31とヒトvWF(血管/内皮マーカー)を発現するヒト細胞の存在が観察されたことから、ブタ胚盤胞におけるETV2ノックアウトは、血管系統および造血系統に対するヒト幹細胞の寄与の研究の優れたモデルであるという見解が支持される。
実施例14:心臓発生の重要な制御因子としてのNkx2−5およびHandII。
心臓発生は、電気的に結合されるようになり、最終的には機能的合胞体を形成する心臓前駆体の専門化、増殖、移動、および分化を含む複雑で高度に統合された事象である。これら心臓発生段階は、遺伝子破壊技術を使用して心臓形成と活性に重要であることが示されている転写ネットワークにより統制されている(Lyons 1995 Srivastava 1997 Tanaka 1999 Bruneau 2001 Yamagishi 2001 Garry 2006 Ferdous 2009 Caprioli 2011)(表1)。Nkx2−5は、ショウジョウバエ(Drosophila )ホメオドメインタンパク質のティンマン(Tinman)(Csx)の脊椎動物ホモログである。ティンマンの変異は、ハエにおいて心臓形成の欠落を生じさせる(Bodmer 1993)。Nkx2−5は、心臓系統で発現される早期転写因子の1つである。Nkx2−5の標的破壊により、無秩序な心臓の形態形成、重度の成長遅延、およびおよそE9.5で胚死亡が生じる(Lyons 1995 Tanaka 1999)。HandII(dHand)は、心臓の形態形成にも重要であることが示されているbHLH転写因子である。HandII 変異胚は、早期胚形成の間に死に至り、重度の右心室形成不全と大動脈弓の欠落を有する(Srivastava 1997)。さらに、Nkx2−5とHandIIの両方を欠いているマウスは、心室の発育不全を示し、たった1つの心房しか有していない(図22A〜図22D)(Yamagishi 2001)。マウスモデルにおける、これらの遺伝子破壊実験は、ブタモデルにおける遺伝子編集戦略使用の有効性を示している。
実施例15:ブタNKX2−5とHANDII遺伝子の多重ノックアウト。
NKX2−5/HANDII変異ブタ線維芽細胞を作製するために、TALEN刺激HDRの組み合わせを使用した。保存された転写因子/DNA結合ドメインの内、またはすぐ前のいずれかで、各遺伝子を標的化した(図23A)。下流のAUGでの開始により機能性ペプチドが産生されてしまう可能性を低くするためには、転写開始部位の近くの遺伝子を標的化するよりもこの戦略のほうが好ましい。NKX2−5に関しては、新規のインフレーム停止コドン、RFLPスクリーニング用の制限酵素部位、および機能性リードスルータンパク質を予防するための停止コドン後の追加の5塩基の挿入、を生成するために相同鋳型が提供された。二重変異体が特定された(図23B)。単発で二重ヌルのブタ線維芽細胞細胞株を確実に生成する能力はユニークであり、相補に重要な革新技術である。
実施例16:三重ノックアウトブタ胚における無秩序な心臓形成。
予備実験は多くの重要な転写因子(すなわち、MESP1、GATA4、NKX2−5、HANDII、TBX5など)を標的としており、無秩序な心臓形成を生じさせた。これは先天性心疾患の研究と有望な治療法のための新規の重要なブタの実験モデルを提供するであろう。本明細書において、概念実証としての標的化の成功と、NKX2−5/HANDII/TBX5遺伝子の欠失に関しホモ接合性のクローンの作製が示された。三重ノックアウト線維芽細胞クローンを、核クローニング(SCNT)に使用し、NKX2−5/HANDII/TBX5ヌルブタ胚を作製し、それを代理メスブタに移植した。E18で胚を採取し、解析した。E18はマウスのE11と等しい。E18で三重ノックアウトブタ胚は、血管構造、骨格筋、および血液を有しているが、野生型の対照ブタ胚と比較して本質的に心臓を欠いていた(GATA4免疫組織化学染色陽性の心筋細胞は最小限)(図24A〜図24C)。これらのデータは、他の系統(すなわち、TBX5KOの神経系統)の関与を限定し、より反映的な先天性心疾患モデルである(すなわち、形成不全の右心および左心の欠損)、NKX2−5/HANDII二重ノックアウトブタモデル利用の論理的根拠と実現可能性を支持するものである。この方法は、ブタモデルにおけるヒト化二心室心臓の遺伝子操作をもたらす。
実施例17:筋形成の重要な調節因子としてのMyf5、Myod、およびMrf4。
Myod、Myf5、Mrf4、およびMyogを含むMyodファミリーの発見は、骨格筋の筋形成の制御メカニズム理解に対する基盤的プラットフォームをもたらした(図25Aおよび25B)。
たとえばトランスクリプトーム解析、プロモーター解析およびChIP−seqなどの複数の戦略を活用し、筋形成が為される間のMyodファミリーの制御ネットワークが研究されている。Myodファミリーのメンバーは主要な筋原性調節因子であり、筋特異的遺伝子、転写因子、細胞サイクル遺伝子などをはじめとする広汎な遺伝子ファミリーをトランス活性化し、筋原細胞の運命を促す。従前の遺伝子破壊実験によって、Myf5/Myod/MRF4を欠くマウスは骨格筋を欠損し、誕生後早期に死に至ることが示されており、これはおそらく呼吸ができないことが原因であると推測されている(横隔膜の非存在が原因)。マウスモデルにおける、これら遺伝子の破壊実験は、ブタモデルにおける遺伝子編集戦略使用の有効性を示している。
MYOD、MYF5、およびMRF4をノックアウトするためのTALENsおよび相同組み換え修復(HDR)の利用。ブタにおけるMYF5/MYOD/MRF4(別名、MYF6)の役割を検証するために、TALEN刺激HDRを使用して各コード配列を破壊した(図26A〜図26C)。
MYF5/MYOD/MRF4ノックアウトブタ胚は、骨格筋系統を欠損している。E18.0で胚を採取し、解析した(図27Aおよび図27B)。マウスおよびブタにおける結果は、類似した表現型を示しており、MYF5/MYOD/MRF4の機能は、変異胚が骨格筋を欠損していることから、マウスとブタの間で保存されているという見解が支持される。さらにこれらのデータは、複数変異をブタゲノムに誘導し、2個以上の細胞型でヒト化されたキメラ臓器の成長をサポートすることができるという仮説を強く支持するものである。
実施例18:GFP野生型ブタ卵割球を用いたMYF5/MYOD/MRF4ノックアウト表現型の相補。
ブタのMYF5/MYOD/MRF4ヌル胚盤胞をSCNTを使用して作製し、GFP標識ブタ卵割球を注入した(認証されたブタES細胞は入手不可能であったため、卵割球を本実験に利用した)。得られたキメラを、偽妊娠メスブタに移植し、E20で検証した。肝臓および卵黄嚢がGFP陽性であったことから、相補の実現可能性が示された。さらに、ブタMYF5/MYOD/MRF4ヌル胚盤胞のおよそ10%がGFP標識されていたと推定された(図28A〜図28C)。これらのデータは、このブタ変異ホストにおける、ブタ;ブタの相補を支持するものである。これらのデータはさらに、ブタモデルにおいて、骨格筋を欠き、最終的には相補組織形成のためのニッチを生成する三重ノックアウトを作製することを支持している。ブタにおいてヒト化骨格筋を作製するためのこれら実験の全体を通じて、このデータが使用される。
実施例19:PDX1のノックアウトは、無膵胎仔ブタをもたらした。
Pdx1−/−マウスは膵臓が無く、成熟臓器へと発達する膵芽の不能が原因で、誕生後すぐに死亡する(Offield et al.1996)。胚盤胞相補によるマウスのPdx1−/−表現型のレスキューは、野生型マウスまたはラットのiPSCsをPdx1−/−マウスの胚盤胞に注入し、ドナー細胞に由来する正常に機能する膵臓を有するマウスを作製することにより示されている(Kobayashi et al.2010)。Pdx1欠失の胚盤胞相補もブタで最近報告されており、標識野生型卵割球細胞を、ドミナントPdx1:hes1導入遺伝子を発現するブタ胚盤胞に注入した後、トランスジェニック無膵ブタで機能性膵臓が作製されている(Matsunaria et al.2013)。クローン化されたPdx1ノックアウトブタは、導入遺伝子を使用した際にみられる位置効果または発現レベルの予想外の性質に影響を受けることはなく、無膵臓ブタの作製のための、より一貫性の高いプラットフォームを提供する。TALEN技術を広汎に使用して、ブタ線維芽細胞におけるPDX1遺伝子の両アレル性ノックアウトを行い(図29A)、これには、PDX1遺伝子の重要なホメオボックスドメインを標的とするTALENペアと、停止コドン、フレームシフト、および新規制限酵素部位を導入するためのHDR構築物が使用されている。ホモ接合性のPDX1ノックアウトは、41%の割合で取得された(76/184クローン)(図29B)。これらのPDX1−/−線維芽細胞とクロマチン導入クローニング技術を使用して、PDX1−/−胚盤胞が作製され、E30で採取されるPDX1−/−ブタ胚における無膵臓が示されている(図29Cおよび図29D)。E32で採取された野生型の胚のブタ膵臓中には、Pdx1とインスリンを発現する発生期のβ細胞が存在している(図29E)。
実施例20:HHEXノックアウトにより、胎仔ブタに肝臓の欠失が生じる
HHEX KOクローンの作製。いずれの学説にも拘束されることは意図していないが、HHEXは肝臓の発生を制御していると仮説が立てられている(図70)。初期実験において、HHEXKOクローンを作製し、この遺伝子編集法の有効性を検証した。DNA結合に重要なホメオドメイン様領域のN末端内でHHEX遺伝子のエクソン2を切断する構築物が開発された(図30A、黒三角を参照のこと)。新規停止コドン、HindIII部位、および新規指定コドン後にフレームシフト変異が導入されるよう設計された相同組み換え修復の鋳型とベクター構築物を線維芽細胞にトランスフェクトし、確実に標的アレルを破壊した。50%を超えるトランスフェクト群が、PCR−制限酵素断片長多型アッセイによるとHindIIIKOアレルに対し陽性であり(図30B)、および当該群由来のいくつかの各クローンが、当該KOアレルに対しヘテロ接合性またはホモ接合性のいずれかであった(図30C)。KOアレルが立証された配列を有する総計で22個のクローンが凍結保存された。同じベクター構築物を使用して、HHEXおよびUbcの両方のKO胚盤胞を作製する。
HHEX KOはブタにおいて胚性致死である。ブタにおけるHHEX KOの効果を決定するために、HHEX−/−線維芽細胞をクローン化SCNTを行い、同期されたレシピエントに移植された。妊娠30〜32日目に、胚を採取し、肝臓の発生に関して評価した。すべての胚を遺伝子型決定し、HHEXのノックアウトを確認した。すべての試料が、肝臓の明白な欠失を伴う発達遅延を示した(図31B)。各試料からサンプルを採取し、たとえばETV2などの他の標的遺伝子の編集とこのノックアウトを組み合わせ、ヒト血管系を有するヒト肝臓を作製する将来的な実験用のHHEXノックアウト細胞の源として、線維芽細胞を増殖させた。
実施例21:ブタ遺伝子ノックアウトと、胎仔ブタにおけるヒト幹細胞の組込に対する予備実験に関する要約。
予備実験から、眼、心臓、肺、肝臓、骨格筋、膵臓、血管系、造血細胞、およびドーパミン神経細胞の発生を破壊する、ブタにおける標的遺伝子ノックアウト能力が示された。また、ブタの桑実胚/胚盤胞に注入されたヒト幹細胞が、内部細胞塊内で自身の統合を生じさせることができること、および胎仔ブタの発生に関与することができることが示された。重要なことは、胚盤胞相補を背景として、胎仔ブタにおけるヒト幹細胞の関与も観察されたことであった。これらの結果は、ブタの中で、ヒトの臓器と細胞を操作することの実現可能性に関する強い証左を提供するものである。
実施例22:16.4Tでの胎仔ブタ臓器のMR画像解析
胚盤胞相補を介してブタで作製された臓器の画像解析は、強磁場MRIを使用することで促進される。UMN Center for Magnetic Resonance Researchの16.4T磁石が、現在世界で最も強力な画像解析用磁石である。図33は、妊娠30日のブタ胎仔を示しており(20mmの頭殿長)、内部臓器のすべてを非常に詳細に見ることができる。この図で使用されたパルスシーケンスは、肝臓の可視化に最適化された。3D形態分析に加え、たとえば臓器体積などのパラメーターの定量用に、他の臓器に対するコントラストを最適化するための他のパルスシーケンスも開発され、相補された臓器の解剖学的特性に関する重要な情報が提供される。これにより、特定の臓器を作製するための標的遺伝子のノックアウト後の相補の成功を測定するための迅速で定量的な方法が提供される。
実施例23:ドーパミン神経を操作して運動機能を回復させる
パーキンソン病は、脳の黒質領域におけるドーパミン神経の進行性の消失により生じる運動障害である。現在の治療法としては、たとえばドーパミン合成の前駆体であるL−DOPAなどの医薬品が挙げられる。L−DOPA治療は、一時的には有効だが、最終的には薬剤誘発性のジスキネジーが発生するため、この治療法は望ましくないものとなっている。パーキンソン病治療を目的としたヒト胎仔ドーパミン細胞移植の臨床試験では、運動障害の改善が示されている(Lindvall et al.1989;Freed et al.2001;Olanow et al.2003)。さらに、移植レシピエントに対し最大で移植後18年、長期追跡実験を行ったところ、パーキンソン病の症状治療のための投薬治療の中断が報告された(Kefalopoulou et al.2014)。パーキンソン病の全身治療を目的に、このタイプの細胞療法を適用するにあたっての主要なハードルは、ドナーのドーパミン作動性神経の供給源としてヒト胎仔の脳組織がわずかしか入手できないことである。現行のiPSC方法は、完全に真正の黒質ドーパミン神経を作製することはできない。黒質のドーパミン神経の発生に重要な遺伝子は特定されており、胚盤胞相補を介した真正神経の作製のためのノックアウトの標的となることができる。
胚盤胞は、各タイプの遺伝子ノックアウトマウスから作製される。GFP標識マウスiPSC細胞を、胚盤胞に注入し、代理母に移植する。脳内のGFP陽性細胞の組織学的証明のために、仔を分析する。ブタの実験に関しては、ブタ胚盤胞は各タイプの遺伝子ノックアウトから作製される。GFP標識ブタ卵割球細胞を、胚盤胞に注入し、代理雌ブタ/未経産ブタに移植する。脳内のGFP陽性細胞の組織学的証明のために妊娠60日目の胎仔を分析する。ヒト幹細胞を胚盤胞に注入し、ヒト‐ブタ相補を評価する。
いずれの学説にも拘束される事は意図していないが、PITX3は、ドーパミン神経/眼の水晶体の発生において機能していると仮説が立てられている(図34)。TALENsを使用したPITX3遺伝子の除去が成功した(図17および34)。図35は、PITX3KOのブタ桑実胚にドナーのhiPSCまたはヒト臍帯血幹細胞を導入するために使用される手順を示している。キメラ胎仔は、図36に示されるように作製された。ブタ胚盤胞におけるPITX3ノックアウトのヒト幹細胞を用いた相補は、眼の発生の欠落をレスキューした(図18および図37)。ブタPITX3ノックアウトは、胎仔の黒質においてドーパミン神経の消失も生じさせた(図38Aおよび38B)。ヒトを起源とする神経を用いた相補によって、キメラ胎仔においてヒト起源神経の組み込みがもたらされ、PITX3ノックアウトによるドーパミン神経の消失がレスキューされた(図39A〜39D)。hiPSC相補もまた、キメラ胎仔において野生型と同等レベルの黒質ドーパミン神経の生存を誘導し、一方でPITX3ノックアウトはドーパミン神経の消失を生じさせた(図40および41)。
いずれの学説にも拘束される事は意図していないが、LMX1AおよびPITX3遺伝子は、ドーパミン神経の発生において重要であると仮説が立てられている(図42)。相補によって、LMX1A/PITX3ノックアウトにより生じた表現型がレスキューされ得るかを実験するため、GFPを発現する野生型卵割球をLMX1A−/−/PITX3−/−胚盤胞に導入した(図43)。PITX3/LMX1Aノックアウト胎仔において、ブタ−ブタ相補が胎仔発生をレスキューした(図44A〜44F)。PITX3ノックアウト動物には水晶体は存在しなかった(図45Aおよび45B)。PITX3/LMX1Aノックアウト動物において、ブタ−ブタ相補が水晶体の発生を回復させた(図46A〜46C)。キメラ胎仔ブタの脳内に、ドナー起源の細胞(GFP陽性細胞)が存在していた(図47A〜47D)。キメラブタの原始腹側中脳にDA神経(ドーパミン神経)が存在していたことから、ブタ−ブタ相補によって、原始腹側中脳においてda神経の発生がもたらされたことが示唆される(図48A〜48C)。
表Eは、編集されたキャリア(ホスト)の遺伝子型、動物を相補(レスキュー)するために使用されたそのドナーの遺伝子型のリストを提示する。
実施例24:脊髄修復のための乏突起膠細胞の前駆体細胞の操作
たとえば多発性硬化症、大脳白質萎縮症、および外傷性脊髄損傷などの神経障害は、髄鞘形成の消失を生じさせる。これらの障害は、細胞系療法により、ミエリンのさらなる消失を防ぐ、または消失したミエリンを回復させるという利益が得られる可能性がある。ヒト胚性幹細胞からin vitro分化した高純度の乏突起膠細胞の前駆体細胞(OPCs)は、脊髄移植を行った後、神経を有髄化させた(Nistor et al.2005)。これは実際に機能を回復させる可能性のある作用機序として注目されている(Keirstead et al.2005;Sharp et al.2010)。ゆえに、乏突起膠細胞の前駆体細胞(OPCs)の製造は、治療戦略の候補である。現行のiPSC系の方法では収率が乏しく、不完全なOPCsのリプログラミングが生じる。OPCsの発生に関与する遺伝子は特定されており、ブタの脳内における真正のヒトOPCsの大規模作製を目的としたノックアウトの標的とすることができる。
マウスにおけるOLIG1とOLIG2の混合ノックアウトが研究され、ノックアウト胚盤胞はマウス−マウス相補後にマウスOPCsを発生させ得るかどうかが決定される。i)OLIG1とOLIG2のノックアウトマウスが作製され、OPC欠損について調べる、ii)マウスの乏突起膠細胞の前駆体細胞(OPCs)を、OLIG1/OLIG2(または選択として、NKX2.1、NKX2.2および/またはSOX10)ノックアウト胚盤胞の相補を介して若いマウスで生成させる、iii)OPCsの機能性は、それらを先天的に髄鞘形成不全のマウスに移植し、ミエリン形成を示すことにより確認する。
いずれの学説にも拘束される事は意図していないが、OLIG1/OLIG2は、乏突起膠細胞の発生において重要であると仮説が立てられている(図65)。OLIG1/OLIG2の機能を調べるために、OLIG1/OLIG2ノックアウト線維芽細胞を作製した(図66A〜図66C)。GFPを発現している野生型卵割球を、OLIG1/OLIG2ノックアウト胚盤胞に導入し、キメラブタを作製した。野生型細胞で相補されたブタ胎仔の全身の蛍光画像において、GFP発現が観察された(図67Aおよび67B)。またキメラブタの中枢神経系にもGFP発現細胞が組み込まれていた(図68Aおよび68B、ならびに図69Aおよび69B)。特に、キメラブタの脳(図68Aおよび68B)および脊髄(図69Aおよび69B)の両方においてGFP発現細胞が存在していた。
表Fは、編集されたキャリア(ホスト)の遺伝子型、動物を相補(レスキュー)するために使用されたそのドナーの遺伝子型のリストを提示する。
表F:
実施例25:若い血液を操作し、古い脳を若返らせる
近年の研究から、若いマウスと老いたマウスを並体結合(parabiotic coupling)することで、老いた動物の脳の機能を若返らせることができることが示されている。しかしながら、加齢/変性した脳を有する患者を治療するための本方法の臨床的解釈には、個々の患者が若いドナーから血液を受け取る必要がある。若い血液の入手には制限があり、この方法を大多数の患者に適用することはできないであろう。造血に関与する重要な遺伝子を編集することによって、自己の若い血液の源が生成される。マウスおよびブタにおいて、若い血液を生成する事を目的とした相補実験に、ノックアウト胚盤胞を使用することができる。若いマウスからの血液を、老齢のアルツハイマーのマウスに投与し、脳の機能を若返らせる。並行して、血液循環の直接的な共有を介した脳機能の若返りを示す「概念実証」として、並体結合の外科手術によって老齢のアルツハイマーのマウスと、生成された若いマウスをつなぎ合わせる。さらに、ブタにおいて生成された若いヒトの血液の有効性を、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)をはじめとする加齢に関連した神経変性疾患のマウスモデルにおいて、認知機能と運動機能のレスキューに関し評価する。成功すれば、老化および/または変性した脳の若返りのための自己の若い血液の無制限の供給源が得られることとなる。
RAG2、IL2rg、C−KIT、およびETV2を単独、または組み合わせてノックアウトした胚盤胞を使用し、GFP標識マウスiPSCsを使用した相補を介してマウスに血液を生成させることができる。マウスとヒトの細胞を識別するよう設計された一連の抗体パネルを介して、免疫細胞を特定することができる。T細胞パネルは、CD3を使用して、T細胞群を単離し、CD4を使用してヘルパーT細胞を染色し、CD8aは細胞障害性T細胞を染色し、そしてCD25は、これらT細胞サブタイプの各々に対する活性化マーカーとして使用される。別のパネルにおいて、FoxP3を使用して、制御性T細胞を特定することができ、そしてCD25を使用し、活性化された制御性T細胞が特定される。ミクログリア細胞は、CD45とCD11bに対する染色により分析される。またこのパネルにおいて、CD200は、ミクログリアの休止のマーカーであり、CD163は、交互に活性化されるM2様ミクログリアのマーカーである。安定した相補を示す若いマウスは、循環結合用の若い並体パートナーとして使用される。並体結合と血漿注入法の両方を使用して、老齢マウスとアルツハイマーのマウスに若い血液/血漿を提供する。ヒトの血液を生成するように操作された若いマウスを、並体結合手術により加齢マウスまたはアルツハイマーのマウスに連結させる。並行して、若いマウスから血漿をプールし、加齢マウスまたはアルツハイマーのマウスに静脈内注入する。手術/血漿注入後3〜6か月で、マウス(分離された並体結合ペア)に、認知機能評価用の一連の行動試験を行う。これはオープンフィールドの高架式十字迷路検査、新規物体認識検査、およびモリス水迷路検査が含まれる。並体結合を行っていない、および未処置で年齢を合致させたマウスを対照として使用する。
ブタ実験は、RAG2、IL2rg、C−KIT、およびETV2のノックアウト単独、または組み合わせで評価し、標識ブタ卵割球を使用してブタ造血細胞を生成する。図71〜73を参照のこと。マウスの実験と同様に、抗体パネル(αβT細胞およびγδT細胞の特定に対してはCD45、CD3、δ−鎖、TCR、CD8、CD4;B細胞に対してはCD3、CD21およびCD79a;NK細胞とマクロファージに対してはCD16、CD172a、CD2およびCD8;Tregsに対してはFoxP3)を使用し、ブタにおける細胞表現型を決定する。ブタ−ブタキメラから得られた結果から、ブタにおけるヒト造血の生成にどのノックアウトが適しているかに関する情報が提供される。ブタ−ブタキメラに対する実験が完了するときまでに、ブタでヒト血液を操作するための開始実験のために、Technical Aim IIIからの候補ヒト幹細胞を特定する。ヒトの血液細胞を特異的に認識する抗体のパネル(たとえばCD45、CD3、CD4、CD8、およびCD19)を使用し、マルチカラーフローサイトメトリー、および種特異的抗体が利用不可能な場合には階層分析を使用して細胞表現型を分析する。
使用されたホスト細胞(キャリア)の遺伝子型は以下である:RAG2−/−/IL2rg−/−/C−KIT−/−/ETV2−/−;RAG2−/−/IL2rg−/−/C−KIT−/−;RAG2−/−/IL2rg−/−/ETV2−/−;IL2rg−/−/C−KIT−/−/ETV2−/−;RAG2−/−/IL2rg−/−;RAG2−/−/C−KIT−/−;RAG2−/−/ETV2−/−;IL2rg−/−/C−KIT−/−/;IL2rg−/−/ETV2−/−;C−KIT−/−/ETV2−/−;RAG2−/−;IL2rg−/−;C−KIT−/−;ETV2−/−;C−KIT−/−
いずれかの学説に拘束されることは意図していないが、RAG2/IL2Rgは、T細胞、B細胞、およびNK細胞の発生と、胸腺の発生に重要であると仮説されている(図49および50)。また、C−KIT遺伝子が、T細胞、B細胞、およびNK細胞の発生と、胸腺の発生に重要であると仮説されている。IL2Rg/RAG2ノックアウト動物での相補の効果を調べるために、GFPを発現する野生型の卵割球を、IL2Rg/RAG2ノックアウト胚盤胞に導入することによりキメラ動物を作製した(図51)。さらに、IL2Rg/RAG2/C−KIT動物を作製した(図77〜79)。野生型細胞で相補されたIL2Rg/RAG2/C−KITの仔豚(レシピエントID6035)を回収し、さらなる実験に供した。表現型解析から、相補された動物は、野生型のゲノムと、突然変異ゲノムの両方を有し得ることが示された(図80)。IL2Rg/RAG2/C−KITノックアウトの相補は、遺伝子の破損をレスキューし、胸腺の生成をもたらした(図52A〜52B)。臍帯血、胸腺、脾臓、末梢血単核球細胞(PBMC)および腸間膜リンパ節(MLN)から採取された細胞において、GFP免疫細胞が観察された(図53)。キメラ動物の胸腺において、免疫細胞が産生されていた(図54A〜54F)。キメラブタ胚は、野生型ブタ胚と同じような量のT細胞を血液および脾臓に含有していた一方で、IL2Rg/RAG2/C−KITノックアウトブタ胚では、有意にT細胞が減少していた(図55および56)。B細胞およびNK細胞に関しても同様の表現型が観察された(図57〜60)。まとめると、キメラブタ胚は、野生型ブタ胚と似た免疫細胞プロファイルを有しており、一方で、ノックアウトブタ胚では免疫細胞は有意に減少している。
表Gは、編集されたキャリア(ホスト)の遺伝子型、動物を相補(レスキュー)するために使用されたそのドナーの遺伝子型のリストを提示する。
実施例26:造血細胞を操作して皮膚を修復する
使用されたキャリア(ホスト)の遺伝子型は、以下を含む:RUNX1−/−/C−KIT−/−/FLK1−/−;RUNX1−/−/FLK1−/−;RUNX1−/−/C−KIT−/−;C−KIT−/−/FLK1−/;RUNX1−/−;C−KIT−/−;FLK1−/−
胚盤胞は、各タイプのノックアウトマウスから作製される。GFP標識マウスiPSC細胞を、胚盤胞に注入し、代理母に移植する。血液、骨髄、胸腺、リンパ節および皮膚におけるGFP陽性細胞の組織学的実証のために仔を分析する。
マウスの血液、骨髄、胸腺、リンパ節および皮膚における、GFPで標識され、中胚葉および造血系マーカーのCD45、CD3およびPDGFR1アルファを発現する細胞の組織学的証明は、相補成功の指標である。
FACSプロットおよび顕微鏡写真は、マウスの血液、骨髄、胸腺、リンパ節、および皮膚における、GFP、CD45、Cd3およびPDGFR1アルファで標識された細胞の組織学的証拠を示しており、相補が成功したことが示唆される。
胚盤胞は、各タイプのノックアウトブタから作製される。GFP標識ブタ卵割球細胞を、胚盤胞に注入し、代理雌ブタ/未経産ブタに移植する。血液、骨髄、胸腺、リンパ節および皮膚におけるGFP陽性細胞の組織学的実証のために、妊娠60日目の胎仔を分析する。
ブタの血液、骨髄、胸腺、リンパ節および皮膚における、GFPで標識され、中胚葉および造血系マーカーのCD45、CD3およびPDGFR1アルファを発現する細胞の組織学的証明。
表Hは、編集されたキャリア(ホスト)の遺伝子型、動物を相補(レスキュー)するために使用されたそのドナーの遺伝子型のリストを提示する。
実施例27:血管を操作して、脈管構造を修復する
血管系の疾患は非常に普遍的なものであり、1000万人を超える米国人が末梢動脈疾患に罹患し、米国において毎年150,000件を超える手足の切断術が行われている(Hirsch 2013)。加えて、300,000人を超える患者が、冠動脈バイパス術(血管再開通手術)を受けている。糖尿病、肥満、および心血管系疾患の発生率が上昇すると、これらの疾患も集合的に増加する。重要なことは、これらの合併症は、非常に高い罹患死亡率をもたらすということである。血管系疾患に対する現行の治療法としては手足の切断術、血管バイパス術(患者の罹患した脈管系を使用している)、または血管移植が挙げられるが、これら治療的介入すべてに大きな制限がある。Etv2は、血管系および造血系の主要な発生調節因子として過去に発見されており、Etv2ヌル胚は致死性で、血管内皮系統を欠いていた(Ferdous 2009 Rasmussen 2011 Koyano−Nakagawa 2012 Rasmussen 2012 Rasmussen 2013 Behrens 2014 Shi 2014)。遺伝子編集技術を使用し、ETV2突然変異ブタ胚も血管内皮系統を欠いていたことを立証した。ETV2突然変異ブタモデルにおいて、ヒト化された脈管構造を生成する。これはヒト化された血管移植片の無制限の供給源を提供するだけでなく、他の遺伝子編集戦略との多重化、およびヒト化された脈管構造を有する様々な臓器を操作するためのプラットフォームとしても役に立つ。移植医療に与える影響は大きい。というのも、ブタの内皮細胞上に提示される細胞表面抗原(ガラクトース−アルファ(1,3)ガラクトース)が、異種移植時の超急性拒絶および血管内凝固の主要原因であることが判明している。
ETV2突然変異ブタ胚は、SCNTにより作製され、包括的に分析される。ETV2突然変異の桑実胚に、GFP標識ブタ卵割球を注入する。これらのGFP標識卵割球も、SCNTにより作製される。注入された桑実胚をメスブタに移植し、胚をE18、E24で採取し、出生後7日目で新生児を採取する(P7)。胚に対するGFP陽性細胞の寄与を検証する。ETV2突然変異桑実胚に、ヒト幹細胞を注入する(4つの別系統を分析する)。注入された桑実胚をメスブタに移植し、胚をE18、およびE24で採取する。ブタで相補された、またはヒトの幹細胞で相補されたETV2ヌルブタ胚を作製し、心臓機能と血管機能をそれぞれMRIと経胸壁心エコー検査により検査する。ブタ−ブタのキメラを、E18、E24、およびP7で分析する。そしてヒト‐ブタキメラをE18、およびE24で分析する。
ホストの遺伝子型には以下が含まれる:ETV2−/−
表Iは、編集されたキャリア(ホスト)の遺伝子型、動物を相補(レスキュー)するために使用されたドナーの遺伝子型のリストを提示する。
実施例28:血液心臓を操作して、心臓機能を修復する
先天性の心血管奇形はもっともありふれた出生時異常であり、小児群および成人群における進行性または末期の心不全の一因である。先天性心疾患は、全生児出生のおよそ1%が患い、罹患死亡率は高い(Garry 2006 Hoffman 1995 Kang 2000 Kramarow 2012 Rasmussen 2011)。先天性心疾患誘発性の心不全に対する唯一の治療法は、同所性心臓移植である。移植用臓器は不足しており、この救命治療を受けられるのは2%未満である。心臓移植を受けた患者は、生涯にわたり免疫抑制状態となる必要があり、これもまた有害な副作用があり、生存率を限定する。ゆえに、ヒト心臓組織の代替的な供給源の開発が必要とされている。ヒト化された二心室心が作製され、これが移植用臓器の無制限の供給源としての機能を果たし、先天性心疾患と末期心不全の治療にパラダイムシフトなプラットフォームをもたらしている。過去に発表された研究において、心室筋の専門化に対するNkx2−5とHand2の重要な役割が示されている(Yamagishi 2001)。ゆえに、遺伝子編集技術を使用して、心室筋を欠いたNKX2−5/HANDIIのダブルノックアウトブタ胚を操作することができる。ヒト幹細胞、SCNT、および胚盤胞相補を使用して、ヒト化二心室心を作製する。心血管系疾患治療のためのヒト心室筋の新たな供給源としての機能に加え、ヒト化ブタは、ヒト系統の再生研究または薬剤応答(複数含む)の研究に対する大型動物モデルとしての機能も果たし、右心低形成および左心低形成の先天的な心不全を含む、心血管系疾患の治療に改善をもたらす。
NKX2−5/HandII突然変異桑実胚を、SCNTを使用して作製し、E18およびE24で包括的に特徴解析する。NKX2−5/HandII突然変異の桑実胚に、GFP標識ブタ卵割球を注入する。これらのGFP標識卵割球も、SCNTにより作製される。注入された桑実胚をメスブタに移植し、胚をE18、E24で採取し、出生後7日目で新生児を採取する(P7)。胚に対するGFP陽性細胞の寄与を検証する。NKX2−5/HandII突然変異桑実胚に、ヒト幹細胞を注入する(4つの別系統を分析し、選択する。注入された桑実胚をメスブタに移植し、胚をE18、およびE24で採取する。サブタスクI−9.4に関しては、ブタで相補された、またはヒトの幹細胞で相補されたNKX2−5/HandIIダブルノックアウトブタ胚を作製し、心臓機能と血管機能をMRIと経胸壁心エコー検査により検査する。ブタ−ブタのキメラを、E18、E24、およびP7で分析する。そしてヒト‐ブタキメラをE18、およびE24で分析する。
使用されるホスト細胞とドナー細胞の遺伝子型は、以下を含む:NKX2−5−/−/HANDII−/−/TBX5−/−;NKX2−5−/−/HANDII−/−;HANDII−/−/TBX5−/−;NKX2−5−/−/TBX5−/−;HANDII−/−;TBX5−/−;NKX2−5−/−
表Jは、編集されたキャリア(ホスト)の遺伝子型、動物を相補(レスキュー)するために使用されたドナーの遺伝子型のリストを提示する。
実施例29:骨格筋を操作して、四肢の機能を修復する
たとえば筋ジストロフィーおよび加齢などの筋障害性疾患は普遍的であり、致死性である。骨格筋はすぐれた再生能力を有しているが、この潜在能力も最終的には疾患と加齢とともに低下する。終末期の筋疾患に現在利用可能な治療法はなく、高齢者において50%の低下は死につながる。さらに米国陸軍の兵士は、軽装歩兵軍であっても、筋骨格系の負傷が原因で相当な訓練期間を失っている。これら負傷の発生率は、すべての往診診断の56%を占めている。回復が長引くのは多くの場合、長期間の身体的療養が必要であるためである(Smith and Cashman 2002)。ブタの細胞外マトリクスの異種移植は、外傷後の筋肉再生に有益であると証明されている(Sicari et al.2014)。この提案の長期的な目的と臨床的意義は、MYF5/MYOD/MRF4(別名、Myf6)ノックアウトブタを使用したヒト化骨格筋の作製である。これらのヒト化されたブタは、ヒトの骨格筋の再生および/または薬剤への応答(複数含む)に関する研究の大型動物モデルとして役に立つ。この方法で操作された骨格筋は、筋移植の将来的な供給源としての可能性を保持している。過去に遺伝子操作マウスモデルが作製され、筋肉の形成と再生に必要十分なネットワークが規定されている。
MYF5/MYOD/MRF4三重突然変異ブタ胚は、SCNTにより作製され、包括的に分析される。MYF5/MYOD/MRF4三重突然変異の桑実胚に、GFP標識ブタ卵割球を注入する。これらのGFP標識卵割球も、SCNTにより作製される。注入された桑実胚をメスブタに移植し、胚をE24、E50で採取し、出生後7日目で新生児を採取する(P7)。胚に対するGFP陽性細胞の寄与を検証する。サブタスクI−10.3に関しては、MYF5/MYOD/MRF4三重突然変異の桑実胚にヒト幹細胞を注入してもよい(4つの別系統を分析してもよく、およびそれらが技術領域III(Technical Area III)に概要されるように選択される)。注入された桑実胚をメスブタに移植し、胚をE24、およびE50で採取する。サブタスクI−10.4に関しては、ブタ相補されたまたはヒト幹細胞相補されたMYF5/MYOD/MRF4ヌルブタ胚を作製し、骨格筋機能をMRI、収縮性アッセイ、および跛行検査により検査する。ブタ−ブタのキメラを、E24、E50、およびP7で分析する。そしてヒト‐ブタキメラをE24、およびE50で分析する。
使用されるホスト細胞とドナー細胞の遺伝子型は、以下を含む:MYF5−/−/MYOD−/−/MRF4−/−;MYF5−/−/MYOD−/−;MYF5−/−/MRF4−/−;MYOD−/−/MRF4−/−;MYF5−/−;MYOD−/−;MRF4−/−;PAX3−/−
いずれの学説にも拘束されることは意図していないが、PAX3は筋形成を制御していると仮説されている(図61)。相補が、PAX3ノックアウトにより生じた表現型をレスキューするかを調べるため、キメラマウスを作製した(図62A、62B、および74A)。GFP発現野生型iPSCで相補されたPax3突然変異マウスにおいて、GFP陽性細胞は選択的に四肢骨格筋に分布されていた(図62B)。また相補されたマウスは、後肢の筋組織/臓器構造を発生させた(図74Bおよび74C)。Pax3ノックアウトブタも作製した(図75A〜75B)。突然変異ブタは、突然変異マウスと類似した表現型を示した(図75C〜75F)。PAX3突然変異ブタは、四肢の骨格筋を欠いていた。
表Kは、編集されたキャリア(ホスト)の遺伝子型、動物を相補(レスキュー)するために使用されたドナーの遺伝子型のリストを提示する。
実施例30:肝臓を操作して、肝機能を修復する
アルコール、肥満、II型糖尿病、メタボリックシンドローム、およびウイルス感染が、慢性肝疾患の主要な原因である。非アルコール性脂肪肝(NAFLD)と肝細胞癌の発症は、今や世界的な疫病になりつつある。たとえば、米国におけるNAFLDの有病率は、一般的な集団の20〜30%であると推測されており、肥満(BMI>30)と病的肥満(BMI>40)の人々では75〜100%にも達する(Farrell and Larter 2006)。多くの治療選択がこれらの疾患に対して利用可能である一方、多くの症例で肝移植が最も生存可能な選択肢となっている。1988〜2009の間にこの方法は3.7倍に増加したが(Wertheim et al.2011)、ドナー肝臓に対する供給と需要のギャップは増しており、同所性肝移植はいまだ非常に困難である。
HHEXとUbcのノックアウト胚盤胞の作製−早期の肝臓の発生に重要であることが判明している遺伝子のうち、ホメオボックス遺伝子のHHEXとポリユビキチン遺伝子のUbc。(i)TALENとCRISPR遺伝子編集技術を使用し、マウス受精卵においてこれら遺伝子のいずれかをノックアウトする;(ii)KO受精卵のゲノムを配列解析し、全長HHEX遺伝子および全長Ubc遺伝子が欠失していることを測定する;および(iii)胚盤胞期に達するまで、作製されたHHEXKOおよびUbcKOの受精卵をin vitroで培養し、広範囲にそれらの特徴を解析する。
胚盤胞相補によるヒト‐マウス肝キメラの作製−hLDPCsは、健康なヒトの肝生検から単離された肝臓細胞から元々誘導されたものであり、これを使用して、ヒト‐マウスのキメラを生成することができる。予備実験において、hLDPCsを肝臓細胞へと分化させ、マウスの肝臓に効率的に生着できることが判明している。hLDPCsをHHEXKOおよびUbcKOのマウス胚盤胞に注入することにより胚盤胞相補を行い、それらをC57BL/6のメスマウスに移植する。マウス胚への注入後、LDPCsの生着が研究される。胚盤胞のメスレシピエントに生まれた仔豚の肝臓を分析する。注目すべきは、HHEXおよびUbcマウスは各々胚性致死であり、これらのマウスの胚は、移植されたhLDPCsにより肝臓細胞および肝上皮前駆細胞が相補された場合にのみ、E14.5段階を超えて生存する。
ヒト‐ブタ肝臓キメラの作製−ブタのキメラ肝臓をマウスと同様に作製し、以下を評価するためにブタで作製されたヒト化肝臓の機能性を検査する:
・ in vivoおよびex vivoの両方でのそれら肝機能;
・ 発生した肝臓から単離された肝臓細胞のヒト細胞キメラ現象;
・ 肝臓脈管構造の形成に対する、移植ヒトLDPCsの寄与;および
・ 単離された肝臓細胞の酵素機能、および初代ヒト肝臓細胞との比較。
使用されるホスト細胞とドナー細胞の遺伝子型は、以下を含む:HHEX−/−/Ubc−/−;HHEX−/−;Ubc−/−
表Lは、編集されたキャリア(ホスト)の遺伝子型、動物を相補(レスキュー)するために使用されたドナーの遺伝子型のリストを提示する。
実施例31:移植用、および糖尿病治療のための膵臓の操作
糖尿病をはじめとする膵臓の疾患及び障害の治療は現在、全臓器移植または膵島移植用に利用可能なヒト膵臓が不足しているために、非常に限定的となっている。Pdx1−/−マウスにおける異種ラットiPSCsを用いた無膵表現型の胚盤胞相補、およびPdx1:Hes1ブタにおける同系細胞を用いた無膵表現型の胚盤胞相補が実証されている(Kobayashi et al.2010 Matsunaria et al.2013)。両方のケースで、相補された動物で形成された膵臓は、完全にドナー細胞の子孫物に由来していた。クローン化Pdx1−/−ブタを作製し、これを使用して、ブタ−ヒトのキメラにおいて、ヒト幹細胞の子孫物に由来する全ヒト膵臓を作製する。これによって、移植用のヒト膵臓および膵島を無制限に作製することができ、自己移植用の患者固有の膵臓作製のための技術プラットフォームとなる。
Pdx1−/−ブタの利用可能な膵臓ニッチの相補は、野生型,GFP+veブタの卵割球をPdx1−/−ブタの胚盤胞に注入し、妊娠初期、妊娠中期および出生後早期の時点のキメラ胚中のGFP発現細胞の存在の有無に関し、仔豚達を分析することにより最初に立証される。ブタにおいて、ヒト幹細胞による、Pdx1遺伝子のノックアウト(およびPdx1遺伝子とETV2遺伝子のダブルノックアウト)の相補が調査される。クローン化されたPdx1−/−ブタまたはPdx1−/−Etv2−/−ブタの胚盤胞に、最適な相補ヒト幹細胞を注入してもよい。妊娠中期、出生後早期の新生児、および成体の相補ブタのキメラ胚を作製してヒトの膵臓組織および膵島を提供し、糖尿病の齧歯類モデルまたは非ヒト霊長類モデルにおいて、ブタで作製されたヒト膵島の血糖ホメオスタシスを回復させる能力の検査を含む、in vitroおよびin vivo検査を行う。
使用されるホスト細胞とドナー細胞の遺伝子型は、以下を含む:Pdx1−/−/Etv2−/−;Pdx1−/−;Etv2−/−
いずれの学説にも拘束されることは意図していないが、PDX1は、膵臓の発生を制御していると仮定されている(図63)。PDX1遺伝子の作用を研究するために、PDX1遺伝子ノックアウトブタを作製した。PDX1ノックアウトブタでは、膵臓は発生しなかった(図29A〜29E)。
表Mは、編集されたキャリア(ホスト)の遺伝子型、動物を相補(レスキュー)するために使用されたドナーの遺伝子型のリストを提示する。
実施例32:肺を操作して、肺機能を回復させる
米国において毎年400,000人が、肺疾患が主要因で死亡しており、たとえば慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、特発性肺線維症、原発性肺高血圧症、および嚢胞性繊維症を含む多くの末期肺疾患に対し、移植が唯一の「治療」である。しかしながら、1年当たりで行われる肺移植はわずか2,000件である。軍関係者にとって特に重要なことは、イラクおよびアフガニスタンから帰還した米国兵士の14%に吸入性の肺損傷が近年報告されていることである。これら損傷の長期的な作用としては、慢性の細気管支炎および肺血管リモデリングが挙げられる。これらは兵役経験者に、移植が必要な不可逆的肺疾患の発生率の上昇をもたらすであろう。肺移植の大きな障害としては、利用可能なドナー肺の不足と、通常肺はHLAが一致しないために慢性的な拒絶が発生すること、生涯にわたる免疫抑制状態の必要性、および高い死亡率が挙げられる。拒絶されない、移植可能な肺組織の新たな供給源が必要である。肺の発生に関与する遺伝子を検証し、どの遺伝子が胚盤胞相補実験のノックアウトの標的となりうるかを決定し、最終的にはヒトの肺を生成する。
ノックアウトは、肺発生の異なる段階および細胞系統(上皮のNkx2.1、Sox2、Id2、間葉系のTbx4)で活性な転写因子に関して検査を行い、対応する胚盤胞が、相補に関して異なる能力を有するかを決定する。Nkx2.1−/−は、MMRRCから入手可能なNkx2.1+/−を交配させることにより作製される。他のKO線維芽細胞は、TALENS遺伝子編集を使用して作製される。KOマウス胚盤胞に、野生型マウスGFPES細胞を注入する。マウスiPS細胞を使用して、相補を繰り返し成功させる。ノックアウトは、肺発生の異なる段階および細胞系統(上皮のNkx2.1、Sox2、Id2、間葉系のTbx4)で活性な転写因子に関して検査を行い、得られたブタ胎仔が胚を欠損しているかを決定する。胚盤胞相補が成功に導かれたノックアウトを、TALENS遺伝子編集を使用して作製されたKOブタ線維芽細胞を用いて再現する。KOブタを、単為生殖ブタ胚盤胞を使用してクローン化し、肺欠損表現型の出現を評価する。肺発生の欠損が確認されたKOに対し、GFP発現ブタ卵割球を、KO胚盤胞胚に注入する。ドナー細胞の生着と、肺表現型の相補は、妊娠30日目と60日目のキメラ胎仔ブタにおいて、KOの相補能力をチェックすることにより決定される。ヒト多能性幹細胞が、肺欠損ブタ胚盤胞を相補し得るかどうかを決定するために、GFP発現ヒトiPS細胞、未感作iPS細胞、UCBSCsまたはMAPCsをKOブタ胚盤胞に注入する。妊娠30日目および60日目で、肺をモザイク現象および相補に関し評価する。サブタスクI−13.3で特定された、最も有望なノックアウトの胚盤胞相補は、特定された最も生着したヒト幹細胞系統を使用して行われる。肺の形態形成が評価され、ヒト細胞は、免疫組織化学法とフローサイトメトリーを使用して特定される。臨月に近い妊娠後期で、肺成熟度を評価するために、肺機能の評価(肺機能検査)、サーファクタントおよびムチンの産生の評価に関して成功した組み合わせをさらに探索する。
使用されるホスト細胞とドナー細胞の遺伝子型は、以下を含む:Nkx2.1−/−/Sox2−/−/Id2−/−/Tbx4−/−;Nkx2.1−/−/Sox2−/−/Id2−/−;Nkx2.1−/−/Sox2−/−/Tbx4−/−;Nkx2.1−/−/Id2−/−/Tbx4−/−;Sox2−/−/Id2−/−/Tbx4−/−;Nkx2.1−/−/Sox2−/−;Nkx2.1−/−/Id2−/−;Nkx2.1−/−/Tbx4−/−;Sox2−/−/Id2−/−;Sox2−/−/Tbx4−/−;Id2−/−/Tbx4−/−;Nkx2.1−/−;Sox2−/−;Id2−/−;Tbx4−/−
いずれの学説にも拘束されることは意図していないが、NKX2.1は、肺の発生を制御していると仮説を立てられている(図64)。肺発生に対するNKX2.1遺伝子の作用を調べるために、NKX2.1ノックアウトブタを作製した。ブタ線維芽細胞を、肺発生に重要な遺伝子である転写因子のNKX2.1に対してノックアウトした(TALEN遺伝子編集)。30日目のブタ胚は、早期偽腺性段階で、肺の成長が鈍いことが示された(図32A〜図32F)。ゆえに、ヒト幹細胞を用いた胚盤胞段階での相補は、移植用または肺疾患研究用のヒト肺作製の供給源となり得る。NKX2.1ノックアウトブタを使用して、移植用ドナー胚の不足、およびヒト肺疾患の適切なin vivoモデルが無いという課題を解決することができる。
表Nは、編集されたキャリア(ホスト)の遺伝子型、動物を相補(レスキュー)するために使用されたドナーの遺伝子型のリストを提示する。
さらなる開示
本明細書に置いて言及される特許、特許出願、公表文献、および記事は、参照により本明細書に援用される。矛盾が生じる場合は、本出願が統制する。実施形態は様々な特性を有している。これら特性は、機能的実施形態を作製する必要性によりガイドとして組み合わされてもよく、および適合されてもよい。表題、および副表題は、簡便性のために提供されているが、実質的ではなく、記載される範囲を限定するものではない。

Claims (83)

  1. 少なくとも1個のヒト細胞を有する非ヒト胚を備えたキメラ胚であって、1個以上の内因性臓器または組織の発生に関与する前記非ヒト胚の1個以上の内因性遺伝子の両アレルが破壊されており、および1個以上の対応するヒト臓器または組織の発生に関与する前記ヒト細胞の1個以上の遺伝子が、前記1個以上の破壊された内因性遺伝子の機能を相補し、それによって、前記キメラ胚から発生した動物は、少なくとも1個のヒト臓器または組織を備えており:
    前記内因性遺伝子は、NURR1、LMX1A、および/またはPITX3を備え、前記ヒトの臓器または組織は、ドーパミン神経を備えている;
    前記内因性遺伝子は、OLIG、および/またはOLIG2を備え、前記ヒトの臓器または組織は、乏突起膠細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、RAG2、IL2rg、C−KIT、および/またはETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織が若い血液を備えている;
    前記内因性遺伝子が、RUNX1、C−KIT、および/またはFLK1を備え、前記ヒトの臓器または組織が造血細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、ETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織がヒトの血管細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、MYF5、MYOD、MRF4、および/またはPAX3を備え、前記ヒトの臓器または組織が骨格筋細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、NKX2−5、HANDII、および/またはTBX5を備え、前記ヒトの臓器または組織が心筋細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、Pdx、および/またはETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織が膵臓細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、HHEX、および/またはUbcを備え、前記ヒトの臓器または組織がヒトの肝臓細胞を備えている;または
    前記内因性遺伝子が、Nkx2.1、Sox2、Id2、および/またはTbx4を備え、前記ヒトの臓器または組織が肺細胞を備えている、キメラ胚。
  2. 少なくとも1個のヒト細胞を有する非ヒト胚を備えたキメラ胚であって、1個以上の内因性臓器または組織の発生に関与する前記非ヒト胚の1個以上の内因性遺伝子の両アレルが破壊されており、および1個以上の対応するヒト臓器または組織の発生に関与する前記ヒト細胞の1個以上の遺伝子が、前記1個以上の破壊された内因性遺伝子の機能を相補し、それによって、前記キメラ胚から発生した動物は、少なくとも1個のヒト臓器または組織を備えており:
    前記内因性遺伝子は、NURR1、LMX1A、および/またはPITX3を備え、前記ヒトの臓器または組織は、ドーパミン神経を備えている;
    前記内因性遺伝子は、OLIG、および/またはOLIG2を備え、前記ヒトの臓器または組織は、乏突起膠細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、RAG2、IL2rg、C−KIT、および/またはETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織が若い血液を備えている;
    前記内因性遺伝子が、RUNX1、C−KIT、および/またはFLK1を備え、前記ヒトの臓器または組織が造血細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、PAX3を備え、前記ヒトの臓器または組織が骨格筋細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、Pdx、および/またはETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織が膵臓細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、HHEX、および/またはUbcを備え、前記ヒトの臓器または組織がヒトの肝臓細胞を備えている;または
    前記内因性遺伝子が、Nkx2.1、Sox2、Id2、および/またはTbx4を備え、前記ヒトの臓器または組織が肺細胞を備えている、キメラ胚。
  3. 少なくとも1個のヒト細胞を有する非ヒト胚を備えたキメラ胚であって、1個以上の内因性臓器または組織の発生に関与する前記非ヒト胚の1個以上の内因性遺伝子の両アレルが破壊されており、および1個以上の対応するヒト臓器または組織の発生に関与する前記ヒト細胞の1個以上の遺伝子が、前記1個以上の破壊された内因性遺伝子の機能を相補し、それによって、前記キメラ胚から発生した動物は、少なくとも1個のヒト臓器または組織を備えており、
    前記内因性遺伝子は、RAG2およびIL2rgおよび/またはETV2であり、前記ヒトの臓器または組織は若い血液を備えている;
    前記内因性遺伝子は、MYF5、MYOD、およびMRF4、および/またはPAX3であり、前記ヒトの臓器または組織は骨格筋細胞を備えている;または
    前記内因性遺伝子は、NKX2−5、HANDII、および/またはTBX5であり、前記ヒトの臓器または組織は心筋細胞を備えている、キメラ胚。
  4. 少なくとも1個のヒト細胞を有する非ヒト胚を備えたキメラ胚であって、1個以上の内因性臓器または組織の発生に関与する前記非ヒト胚の1個以上の内因性遺伝子の両アレルが破壊されており、および1個以上の対応するヒト臓器または組織の発生に関与する前記ヒト細胞の1個以上の遺伝子が、前記1個以上の破壊された内因性遺伝子の機能を相補し、それによって、前記キメラ胚から発生した動物は、少なくとも1個のヒト臓器または組織を備えており、
    前記内因性遺伝子は、RAG2およびIL2rgおよび/またはETV2であり、前記ヒトの臓器または組織は若い血液を備えている;
    前記内因性遺伝子は、PAX3であり、前記ヒトの臓器または組織は骨格筋細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子は、NKX2−5、HANDII、および/またはTBX5であり、前記ヒトの臓器または組織は心筋細胞を備えている、キメラ胚。
  5. 前記内因性遺伝子は、NURR1、LMX1A、および/またはPITX3を備え、前記ヒトの臓器または組織は、ドーパミン神経を備えている、請求項1に記載のキメラ胚。
  6. 前記内因性遺伝子は、OLIGおよび/またはOLIG2を備え、前記ヒトの臓器または組織は、乏突起膠細胞を備えている、請求項1に記載のキメラ胚。
  7. 前記内因性遺伝子は、RAG2、IL2rg、C−KIT、および/またはETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織は、若い血を備えている、請求項1に記載のキメラ胚。
  8. 前記内因性遺伝子は、RUNX1、C−KIT、および/またはFLK1を備え、前記ヒトの臓器または組織は、造血細胞を備えている、請求項1に記載のキメラ胚。
  9. 前記内因性遺伝子は、ETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織は、ヒトの血管細胞を備えている、請求項1に記載のキメラ胚。
  10. 前記内因性遺伝子は、MYF5、MYOD、MRF4、および/またはPAX3を備え、前記ヒトの臓器または組織は、骨格筋細胞を備えている、請求項1に記載のキメラ胚。
  11. 前記内因性遺伝子は、NKX2−5、HANDII、および/またはTBX5を備え、前記ヒトの臓器または組織は、心筋細胞を備えている、請求項1に記載のキメラ胚。
  12. 前記内因性遺伝子は、Pdx、および/またはETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織は、膵臓細胞を備えている、請求項1に記載のキメラ胚。
  13. 前記内因性遺伝子は、HHEXまたはUbcを備え、前記ヒトの臓器または組織は、ヒトの肝臓細胞を備えている、請求項1に記載のキメラ胚。
  14. 前記内因性遺伝子は、Nkx2.1、Sox2、Id2、および/またはTbx4を備え、前記ヒトの臓器または組織は、肺細胞を備えている、請求項1に記載のキメラ胚。
  15. 前記非ヒト胚は、非ヒト脊椎動物胚である、請求項1〜14のいずれか1項に記載のキメラ胚。
  16. 前記非ヒト脊椎動物胚は、偶蹄目の胚または非ヒト霊長類の胚である、請求項15に記載のキメラ胚。
  17. 前記非ヒト脊椎動物胚は、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、鳥類、ウサギ、ヤギ、イヌ、ネコ、実験動物、甲殻類、および魚類からなる群から選択される、請求項15に記載のキメラ胚。
  18. 前記非ヒト脊椎動物胚は、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、またはウサギの胚である、請求項16に記載のキメラ胚。
  19. 1個以上の内因性臓器または組織の発生に関与する前記非ヒト胚の前記1個以上の内因性遺伝子が、Transcription Activator−Like Effector Nucleases(TALENS)、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)、CRISPR associated protein 9(Cas9)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(Zinc Finger Nucleases:ZFNs)、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードする分子、合成人工染色体、RecA−gal4融合体、RNAi、CRISPRi、またはそれらの組み合わせにより破壊されている、請求項1〜18のいずれか1項に記載のキメラ胚。
  20. 前記1個以上の内因性遺伝子が、Cas9により破壊されている、請求項19に記載のキメラ胚。
  21. 前記ヒト細胞が、少なくとも1個のドナー細胞から誘導され、および前記少なくとも1個のドナー細胞が、胚性幹細胞、組織特異的幹細胞、間葉系幹細胞、多能性幹細胞、または人工多能性幹細胞である、請求項1〜20のいずれか1項に記載のキメラ胚。
  22. 前記破壊が、遺伝子の編集、ノックアウト、1個以上のDNA残基の挿入、1個以上の塩基の欠失、または1個以上のDNA残基の挿入と欠失の両方を含む、請求項1〜21のいずれかに記載のキメラ胚。
  23. 前記破壊が、1個以上のDNA残基の置換を含む、請求項1〜21のいずれかに記載のキメラ胚。
  24. 前記破壊が、1個以上のDNA残基の置換からなる、請求項23に記載のキメラ胚。
  25. 請求項1〜24のいずれか1項に記載のキメラ胚から発生した動物。
  26. 請求項1〜25のいずれか1項に記載のキメラ胚から発生した動物から採取されたヒトの組織または臓器。
  27. キメラ胚の作製方法であって、
    a)少なくとも1個の非ヒト細胞または非ヒト胚において、1個以上の臓器または組織の発生に関与する1個以上の内因性遺伝子の両アレルを破壊すること、
    b)工程a)が非ヒト細胞で行われた場合、細胞をクローン化し、胚を生成すること;および
    c)工程a)または工程b)の胚に、少なくとも1個のヒト細胞を導入することであって、前記ヒト細胞は、前記1個以上の臓器または組織の発生に関与する1個以上の遺伝子を担持している、導入すること;それによりキメラ胚を作製すること、を含み:
    前記内因性遺伝子は、NURR1、LMX1A、および/またはPITX3を備え、前記ヒトの臓器または組織は、ドーパミン神経を備えている;
    前記内因性遺伝子は、OLIG、および/またはOLIG2を備え、前記ヒトの臓器または組織は、乏突起膠細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、RAG2、IL2rg、C−KIT、および/またはETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織が若い血液を備えている;
    前記内因性遺伝子が、RUNX1、C−KIT、および/またはFLK1を備え、前記ヒトの臓器または組織が造血細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、ETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織がヒトの血管細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、MYF5、MYOD、MRF4、および/またはPAX3を備え、前記ヒトの臓器または組織が骨格筋細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、NKX2−5、HANDII、および/またはTBX5を備え、前記ヒトの臓器または組織が心筋細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、Pdx、および/またはETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織が膵臓細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、HHEX、および/またはUbcを備え、前記ヒトの臓器または組織がヒトの肝臓細胞を備えている;または
    前記内因性遺伝子が、Nkx2.1、Sox2、Id2、および/またはTbx4を備え、前記ヒトの臓器または組織が肺細胞を備えている、方法。
  28. キメラ胚の作製方法であって、
    a)少なくとも1個の非ヒト細胞または非ヒト胚において、1個以上の臓器または組織の発生に関与する1個以上の内因性遺伝子の両アレルを破壊すること、
    b)工程a)が非ヒト細胞で行われた場合、細胞をクローン化し、胚を生成すること;および
    c)工程a)または工程b)の胚に、少なくとも1個のヒト細胞を導入することであって、前記ヒト細胞は、前記1個以上の臓器または組織の発生に関与する1個以上の遺伝子を担持している、導入すること;それによりキメラ胚を作製すること、とを含み:
    前記内因性遺伝子は、NURR1、LMX1A、および/またはPITX3を備え、前記ヒトの臓器または組織は、ドーパミン神経を備えている;
    前記内因性遺伝子は、OLIG、および/またはOLIG2を備え、前記ヒトの臓器または組織は、乏突起膠細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、RAG2、IL2rg、C−KIT、および/またはETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織が若い血液を備えている;
    前記内因性遺伝子が、RUNX1、C−KIT、および/またはFLK1を備え、前記ヒトの臓器または組織が造血細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、PAX3を備え、前記ヒトの臓器または組織が骨格筋細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、Pdx、および/またはETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織が膵臓細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、HHEX、および/またはUbcを備え、前記ヒトの臓器または組織がヒトの肝臓細胞を備えている;または
    前記内因性遺伝子が、Nkx2.1、Sox2、Id2、および/またはTbx4を備え、前記ヒトの臓器または組織が肺細胞を備えている、方法。
  29. キメラ胚の作製方法であって、
    a)少なくとも1個の非ヒト細胞または非ヒト胚において、1個以上の臓器または組織の発生に関与する1個以上の内因性遺伝子の両アレルを破壊すること、
    b)工程a)が非ヒト細胞で行われた場合、細胞をクローン化し、胚を生成すること;および
    c)工程a)または工程b)の胚に、少なくとも1個のヒト細胞を導入することであって、前記ヒト細胞は、前記1個以上の臓器または組織の発生に関与する1個以上の遺伝子を担持している、導入すること;それによりキメラ胚を作製すること、を含み:
    前記内因性遺伝子は、RAG2およびIL2rgおよび/またはETV2であり、前記ヒトの臓器または組織は若い血液を備えている;
    前記内因性遺伝子は、MYF5、MYOD、およびMRF4、および/またはPAX3であり、前記ヒトの臓器または組織は骨格筋細胞を備えている;または
    前記内因性遺伝子は、NKX2−5、HANDII、およびTBX5であり、前記ヒトの臓器または組織は心筋細胞を備えている、方法。
  30. キメラ胚の作製方法であって、
    a)少なくとも1個の非ヒト細胞または非ヒト胚において、1個以上の臓器または組織の発生に関与する1個以上の内因性遺伝子の両アレルを破壊すること、
    b)工程a)が非ヒト細胞で行われた場合、細胞をクローン化し、胚を生成すること;および
    c)工程a)または工程b)の胚に、少なくとも1個のヒト細胞を導入することであって、前記ヒト細胞は、前記1個以上の臓器または組織の発生に関与する1個以上の遺伝子を担持している、導入すること;それによりキメラ胚を作製すること、を含み:
    前記内因性遺伝子は、RAG2およびIL2rgおよび/またはETV2であり、前記ヒトの臓器または組織は若い血液を備えている;
    前記内因性遺伝子は、PAX3であり、前記ヒトの臓器または組織は骨格筋細胞を備えている;または
    前記内因性遺伝子は、NKX2−5、HANDII、およびTBX5であり、前記ヒトの臓器または組織は心筋細胞を備えている、方法。
  31. 前記内因性遺伝子は、NURR1、LMX1A、および/またはPITX3を備え、前記ヒトの臓器または組織は、ドーパミン神経を備えている、請求項30〜32のいずれか1項に記載の方法。
  32. 前記内因性遺伝子は、OLIGおよび/またはOLIG2を備え、前記ヒトの臓器または組織は、乏突起膠細胞を備えている、請求項27に記載の方法。
  33. 前記内因性遺伝子は、RAG2、IL2rg、C−KIT、および/またはETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織は、若い血を備えている、請求項27に記載の方法。
  34. 前記内因性遺伝子は、RUNX1、C−KIT、および/またはFLK1を備え、前記ヒトの臓器または組織は、造血細胞を備えている、請求項27に記載の方法。
  35. 前記内因性遺伝子は、ETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織は、ヒトの血管細胞を備えている、請求項27に記載の方法。
  36. 前記内因性遺伝子は、MYF5、MYOD、MRF4、および/またはPAX3を備え、前記ヒトの臓器または組織は、骨格筋細胞を備えている、請求項27に記載の方法。
  37. 前記内因性遺伝子は、NKX2−5、HANDII、および/またはTBX5を備え、前記ヒトの臓器または組織は、心筋細胞を備えている、請求項27に記載の方法。
  38. 前記内因性遺伝子は、Pdx、および/またはETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織は、膵臓細胞を備えている、請求項27に記載の方法。
  39. 前記内因性遺伝子は、HHEX、および/またはUbcを備え、前記ヒトの臓器または組織は、ヒトの肝臓細胞を備えている、請求項27に記載の方法。
  40. 前記内因性遺伝子は、Nkx2.1、Sox2、Id2、および/またはTbx4を備え、前記ヒトの臓器または組織は、肺細胞を備えている、請求項27に記載の方法。
  41. 前記非ヒト胚は、非ヒト脊椎動物胚である、請求項27〜40のいずれか1項に記載の方法。
  42. 前記非ヒト脊椎動物胚は、偶蹄目の胚または非ヒト霊長類の胚である、請求項41に記載の方法。
  43. 前記非ヒト脊椎動物胚は、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、鳥類、ウサギ、ヤギ、イヌ、ネコ、実験動物、および魚類からなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
  44. 前記少なくとも1個のヒトドナー細胞が、胚性幹細胞、組織特異的幹細胞、間葉系幹細胞、多能性幹細胞、または人工多能性幹細胞である、請求項27〜43のいずれか1項に記載の方法。
  45. 前記キメラ胚を動物の子宮に移植し、前記キメラ胚はヒト細胞を備えたキメラ動物へと発生する、請求項27〜44のいずれか1項に記載の方法。
  46. 前記キメラ動物から前記ヒト細胞を採取することをさらに含む、請求項45に記載の方法。
  47. 前記ヒト細胞を、その必要のあるヒト患者に移植することをさらに含む、請求項46に記載の方法。
  48. 前記少なくとも1個のヒト細胞が、前記ヒト患者により提供される、請求項47に記載の方法。
  49. 1個以上の内因性臓器または組織の発生に関与する前記非ヒト胚の前記1個以上の内因性遺伝子が、Transcription Activator−Like Effector Nucleases(TALENS)、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)、CRISPR associated protein 9(Cas9)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(Zinc Finger Nucleases:ZFNs)、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードする分子、合成人工染色体、RecA−gal4融合体、RNAi、CRISPRi、またはそれらの組み合わせにより破壊されている、請求項27〜48のいずれか1項に記載の方法。
  50. 前記方法が、Cas9である、請求項49に記載の方法。
  51. 前記内因性遺伝子のうちの1個に対する相同性を有する鋳型配列を有する相同組み換え修復(HDR)の鋳型を導入し、前記鋳型配列は、前記内因性遺伝子配列の少なくとも一部を置き換え、前記内因性遺伝子を破壊することをさらに含む、請求項49〜50のいずれか1項に記載の方法。
  52. 前記内因性遺伝子のうちの1個に対する相同性を有する鋳型配列を各々有する複数の相同組み換え修復(HDR)の鋳型を導入し、前記各鋳型配列は、前記内因性遺伝子配列のうちの1個の少なくとも一部を置き換え、前記内因性遺伝子を破壊することをさらに含む、請求項51に記載の方法。
  53. 前記破壊が、前記内因性遺伝子の1個以上のDNA残基の置換を含む、請求項51または52に記載の方法。
  54. 前記破壊が、前記内因性遺伝子の1個以上のDNA残基の置換からなる、請求項51または52に記載の方法。
  55. 請求項27〜54のいずれか1項に記載の方法を使用して作製されたキメラ胚またはキメラ動物。
  56. 非ヒトホスト動物においてヒトもしくはヒト化された臓器または組織を作製する方法であって:
    a)非ヒト胚の少なくとも1個の細胞において、臓器または組織の発生に関与する1個以上の内因性遺伝子の両アレルを破壊すること、
    b)工程a)が動物ホストの細胞で行われた場合、細胞をクローン化し、胚を生成すること;および
    c)工程a)または工程b)の胚に、少なくとも1個のヒト細胞を導入することによりキメラホスト胚を生成することであって、前記ヒト細胞が、対応するヒトの臓器または組織の発生に関与する遺伝子を1個以上担持している、生成すること、を含み、
    前記キメラホスト胚から発生する動物は、ヒトもしくはヒト化された臓器または組織を備えており、それによって、非ヒトホスト動物においてヒトもしくはヒト化された臓器または組織が作製され:
    前記内因性遺伝子は、NURR1、LMX1A、および/またはPITX3を備え、前記ヒトの臓器または組織は、ドーパミン神経を備えている;
    前記内因性遺伝子は、OLIG、および/またはOLIG2を備え、前記ヒトの臓器または組織は、乏突起膠細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、RAG2、IL2rg、C−KIT、および/またはETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織が若い血液を備えている;
    前記内因性遺伝子が、RUNX1、C−KIT、および/またはFLK1を備え、前記ヒトの臓器または組織が造血細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、ETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織がヒトの血管細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、MYF5、MYOD、MRF4、および/またはPAX3を備え、前記ヒトの臓器または組織が骨格筋細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、NKX2−5、HANDII、および/またはTBX5を備え、前記ヒトの臓器または組織が心筋細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、Pdx、および/またはETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織が膵臓細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、HHEX、および/またはUbcを備え、前記ヒトの臓器または組織がヒトの肝臓細胞を備えている;または
    前記内因性遺伝子が、Nkx2.1、Sox2、Id2、および/またはTbx4を備え、前記ヒトの臓器または組織が肺細胞を備えている、方法。
  57. 非ヒトホスト動物においてヒトもしくはヒト化された臓器または組織を作製する方法であって:
    a)非ヒト胚の少なくとも1個の細胞において、臓器または組織の発生に関与する1個以上の内因性遺伝子の両アレルを破壊すること、
    b)工程a)が動物ホストの細胞で行われた場合、細胞をクローン化し、胚を生成すること;および
    c)工程a)または工程b)の胚に、少なくとも1個のヒト細胞を導入することによりキメラホスト胚を生成することであって、前記ヒト細胞が、対応するヒトの臓器または組織の発生に関与する遺伝子を1個以上担持している、生成すること、を含み、
    前記キメラホスト胚から発生する動物は、前記ヒトもしくはヒト化された臓器または組織を備えており、それによって、非ヒトホスト動物においてヒトもしくはヒト化された臓器または組織が作製され:
    前記内因性遺伝子は、NURR1、LMX1A、および/またはPITX3を備え、前記ヒトの臓器または組織は、ドーパミン神経を備えている;
    前記内因性遺伝子は、OLIG、および/またはOLIG2を備え、前記ヒトの臓器または組織は、乏突起膠細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、RAG2、IL2rg、C−KIT、および/またはETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織が若い血液を備えている;
    前記内因性遺伝子が、RUNX1、C−KIT、および/またはFLK1を備え、前記ヒトの臓器または組織が造血細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、PAX3を備え、前記ヒトの臓器または組織が骨格筋細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、Pdx、および/またはETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織が膵臓細胞を備えている;
    前記内因性遺伝子が、HHEX、および/またはUbcを備え、前記ヒトの臓器または組織がヒトの肝臓細胞を備えている;または
    前記内因性遺伝子が、Nkx2.1、Sox2、Id2、および/またはTbx4を備え、前記ヒトの臓器または組織が肺細胞を備えている、方法。
  58. 非ヒトホスト動物においてヒトもしくはヒト化された臓器または組織を作製する方法であって:
    a)非ヒト胚の少なくとも1個の細胞において、臓器または組織の発生に関与する1個以上の内因性遺伝子の両アレルを破壊すること、
    b)工程a)が動物ホストの細胞で行われた場合、細胞をクローン化し、胚を生成すること;および
    c)工程a)または工程b)の胚に、少なくとも1個のヒト細胞を導入することによりキメラホスト胚を生成することであって、前記ヒト細胞が、対応するヒトの臓器または組織の発生に関与する遺伝子を1個以上担持している、生成することを含み;
    前記内因性遺伝子は、RAG2およびIL2rgまたはETV2であり、前記ヒトの臓器または組織は若い血液を備えている;
    前記内因性遺伝子は、MYF5、MYOD、およびMRF4またはPAX3であり、前記ヒトの臓器または組織は骨格筋細胞を備えている;または
    前記内因性遺伝子が、NKX2−5、HANDII、および/またはTBX5を備え、前記ヒトの臓器または組織が心筋細胞を備えている、方法。
  59. 非ヒトホスト動物においてヒトもしくはヒト化された臓器または組織を作製する方法であって:
    a)少なくとも1個の非ヒト細胞または非ヒト胚において、1個以上の臓器または組織の発生に関与する1個以上の内因性遺伝子の両アレルを破壊すること、
    b)工程a)が非ヒト細胞で行われた場合、細胞をクローン化し、胚を生成すること;および
    c)工程a)または工程b)の胚に、少なくとも1個のヒト細胞を導入することであって、前記ヒト細胞は、前記1個以上の臓器または組織の発生に関与する1個以上の遺伝子を担持している、導入すること;それによりキメラ胚を作製することを含み:
    前記内因性遺伝子は、RAG2およびIL2rgおよび/またはETV2であり、前記ヒトの臓器または組織は若い血液を備えている;
    前記内因性遺伝子は、PAX3であり、前記ヒトの臓器または組織は骨格筋細胞を備えている;または
    前記内因性遺伝子は、NKX2−5、HANDII、およびTBX5であり、前記ヒトの臓器または組織は心筋細胞を備えている、方法。
  60. 前記内因性遺伝子は、NURR1、LMX1A、および/またはPITX3を備え、前記ヒトの臓器または組織は、ドーパミン神経を備えている、請求項56に記載の方法。
  61. 前記内因性遺伝子は、OLIGおよび/またはOLIG2を備え、前記ヒトの臓器または組織は、乏突起膠細胞を備えている、請求項56に記載の方法。
  62. 前記内因性遺伝子は、RAG2、IL2rg、C−KIT、および/またはETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織は、若い血を備えている、請求項56に記載の方法。
  63. 前記内因性遺伝子は、RUNX1、C−KIT、および/またはFLK1を備え、前記ヒトの臓器または組織は、造血細胞を備えている、請求項56に記載の方法。
  64. 前記内因性遺伝子は、ETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織は、ヒトの血管細胞を備えている、請求項56に記載の方法。
  65. 前記内因性遺伝子は、MYF5、MYOD、MRF4、および/またはPAX3を備え、前記ヒトの臓器または組織は、骨格筋細胞を備えている、請求項56に記載の方法。
  66. 前記内因性遺伝子は、NKX2−5、HANDII、および/またはTBX5を備え、前記ヒトの臓器または組織は、心筋細胞を備えている、請求項56に記載の方法。
  67. 前記内因性遺伝子は、Pdx、および/またはETV2を備え、前記ヒトの臓器または組織は、膵臓細胞を備えている、請求項56に記載の方法。
  68. 前記内因性遺伝子は、HHEX、および/またはUbcを備え、前記ヒトの臓器または組織は、ヒトの肝臓細胞を備えている、請求項56に記載の方法。
  69. 前記内因性遺伝子は、Nkx2.1、Sox2、Id2、および/またはTbx4を備え、前記ヒトの臓器または組織は、肺細胞を備えている、請求項56に記載の方法。
  70. 前記非ヒト胚は、非ヒト脊椎動物胚である、請求項56〜69のいずれか1項に記載の方法。
  71. 前記非ヒト脊椎動物胚は、偶蹄目の胚または非ヒト霊長類の胚である、請求項70に記載の方法。
  72. 前記非ヒト脊椎動物胚は、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、鳥類、ウサギ、ヤギ、イヌ、ネコ、実験動物、および魚類からなる群から選択される、請求項70に記載の方法。
  73. 前記少なくとも1個のヒト細胞が、胚性幹細胞、組織特異的幹細胞、間葉系幹細胞、多能性幹細胞、または人工多能性幹細胞である、請求項56〜72のいずれか1項に記載の方法。
  74. 前記キメラ動物から前記ヒト細胞を採取することをさらに含む、請求項56〜73に記載の方法。
  75. 前記ヒト細胞を、その必要のあるヒト患者に移植することをさらに含む、請求項74に記載の方法。
  76. 前記少なくとも1個のヒト細胞が、前記ヒト患者により提供される、請求項75に記載の方法。
  77. 前記内因性遺伝子のうちの1個に対する相同性を有する鋳型配列を有する相同組み換え修復(HDR)の鋳型を導入し、前記鋳型配列は、前記内因性遺伝子配列の少なくとも一部を置き換え、前記内因性遺伝子を破壊することをさらに含む、請求項56〜76のいずれか1項に記載の方法。
  78. 前記内因性遺伝子のうちの1個に対する相同性を有する鋳型配列を各々有する複数の相同組み換え修復(HDR)の鋳型を導入し、前記各鋳型配列は、前記内因性遺伝子配列のうちの1個の少なくとも一部を置き換え、前記内因性遺伝子を破壊することをさらに含む、請求項77に記載の方法。
  79. 前記破壊が、前記内因性遺伝子の1個以上のDNA残基の置換を含む、請求項77または78に記載の方法。
  80. 前記破壊が、前記内因性遺伝子の1個以上のDNA残基の置換からなる、請求項77または78に記載の方法。
  81. 1個以上の内因性臓器または組織の発生に関与する前記非ヒト胚の前記1個以上の内因性遺伝子が、Transcription Activator−Like Effector Nucleases(TALENS)、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)、CRISPR associated protein 9(Cas9)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(Zinc Finger Nucleases:ZFNs)、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードする分子、合成人工染色体、RecA−gal4融合体、RNAi、CRISPRi、またはそれらの組み合わせにより破壊されている、請求項56〜80のいずれか1項に記載の方法。
  82. 1個以上の内因性臓器または組織の発生に関与する前記非ヒト胚の前記1個以上の内因性遺伝子が、Cas9により破壊されている、請求項81に記載の方法。
  83. 請求項56〜82のいずれか1項に記載の方法を使用して作製されたキメラ動物。
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