JP2019196434A - 高熱伝導性硬化性組成物、高熱伝導性硬化膜、積層体およびパワーモジュール - Google Patents
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Abstract
Description
近年、特に、パワーモジュールの発展に伴い、放熱性の大きな硬化性組成物などについて様々な開発がなされている。
特許文献2および3にも、同様に、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂を用いた、高い熱伝導率を有する材料が記載されている。
シアネート化合物と、
以下一般式(B−1)および/または(B−2)で表される構造を有するベンゾオキサジン化合物と、
アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化珪素および酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の熱伝導性粒子と
を含む、高熱伝導性硬化性組成物
が提供される。
aは0〜3の整数を表し、
R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表し、aが2以上の場合、複数のR2は同一でも異なっていてもよい。
前記高熱伝導性硬化性組成物を用いて作製した高熱伝導性硬化膜であって、
50〜150℃における線膨張係数が、36〜47ppm/℃である、高熱伝導性硬化膜
が提供される。
金属層と、
前記金属層の少なくとも片面に設けられた、前記高熱伝導性硬化性組成物の硬化物と
を備える積層体
が提供される。
前記積層体と、
前記積層体上に設けられた電子部品と、を備えるパワーモジュール
が提供される。
図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
本実施形態の高熱伝導性硬化性組成物は、
シアネート化合物と、
以下一般式(B−1)および/または(B−2)で表される構造を含むベンゾオキサジン化合物と、
アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化珪素および酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の熱伝導性粒子と
を含む。
aは0〜3の整数を表し、
R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表し、aが2以上の場合、複数のR2は同一でも異なっていてもよい。
一般式(B−2)中、
bは0〜4の整数を表し、
R3は、水素原子または1価の有機基を表し、bが2以上の場合、複数のR3は同一でも異なっていてもよい。
エポキシ系ベースの従来の組成物の硬化物は、銅との熱膨張率の差が大きく、繰返しの熱膨張−収縮により損傷・剥がれ等が発生しやすい懸念があった。本実施形態の高熱伝導性硬化性組成物の硬化膜は、従来の組成物の硬化物に比べて銅との熱膨張率の差を小さくしやすく、好ましい。この理由は、おそらくは、シアネート化合物とベンゾオキサジン化合物との反応により形成される構造が剛直であるためと推定される。
本実施形態の高熱伝導性硬化性組成物が含むシアネート化合物は、シアネート基(−O−CNで表される官能基)を有するものである限り特に限定されない。
シアネート化合物は、好ましくは、1分子中に複数のシアネート基を有する。より具体的には、シアネート化合物は、好ましくは1分子中に2〜4個、より好ましくは2個のシアネート基を有する。このようなシアネート化合物を用いることで、硬化性能をより高められることができ、耐熱性も向上すると考えられる。
このようなシアネート化合物としては、例えば、以下の一般式(a1)で表される化合物において、Rの部分に共役二重結合を含むものを挙げることができる。
より具体的には、Rは、一般式−A1−X−A2−で表される基である。この一般式において、A1およびA2は、各々独立に、芳香族基、縮合芳香族基、脂環基、脂環式複素環基から選ばれる基を示す。また、Xは単結合または2価の連結基である。
Rの1価の置換基として具体的には、1価の有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基等を挙げることができる。1価の有機基の例としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキニル基などが挙げられる。
組成物中のシアネート化合物の量は、特に限定されないが、例えば、樹脂成分全体に対するシアネート化合物の量は、20〜70質量%、好ましくは30〜60質量%である。なお、「樹脂成分」とは、シアネート化合物、ベンゾオキサジン化合物およびフェノール化合物を表す(以下でも同様である)。
本実施形態の高熱伝導性硬化性組成物が含むベンゾオキサジン化合物は、一般式(B−1)および/または(B−2)で表される構造を有する化合物である限り、特に限定されない。
aは0〜3の整数を表し、
R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表し、aが2以上の場合、複数のR2は同一でも異なっていてもよい。
一般式(B−2)中、
bは0〜4の整数を表し、
R3は、水素原子または1価の有機基を表し、bが2以上の場合、複数のR3は同一でも異なっていてもよい。
なお、*は、他の化学構造との結合手を表す。
R1としては、アリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。これにより耐熱性をより高めることができると考えられる。
aは、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。
bは、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。
このようなベンゾオキサジン化合物としては、例えば、以下の一般式(b1)または(b2)で表される化合物において、Rの部分に共役二重結合を含むものや、一般式(b1)においてRが単結合であるものを挙げることができる。
一般式(b1)中、2つのR1は、同じであっても異なっていてもよい。また、2以上のR2が存在する場合、各々のR2は同じであっても異なっていてもよい。
一般式(b1)中、Rが2価の連結基である場合、その具体例などは、一般式(a1)におけるRと同様である。
一般式(b1)中、2以上のR3が存在する場合、各々のR3は同じであっても異なっていてもよい。
一般式(b1)中、Rの具体例などは、一般式(a1)におけるRと同様である。
組成物中のベンゾオキサジン化合物の量は、特に限定されないが、例えば、樹脂成分全体に対して30〜80質量%、好ましくは40〜70質量%である。
本実施形態の高熱伝導性硬化性組成物は、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化珪素および酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の熱伝導性粒子を含む。
この中でも、熱伝導性の観点から、熱伝導性粒子は、窒化ホウ素または窒化アルミニウムを含むことが好ましい。
窒化ホウ素は、鱗片状窒化ホウ素の、単分散粒子、凝集粒子またはこれらの混合物を含むことができる。
また、熱伝導性と絶縁性のバランスの観点から、酸化マグネシウムまたはアルミナの少なくとも1種以上を用いてもよい。
熱伝導性粒子の形状は、特に限定されないが、通常は球状とすることができる。
2種以上の熱伝導性粒子を含む場合として具体的には、元素組成が互いに異なる2種以上の熱伝導性粒子を含む場合や、元素組成は同じだが粒径が互いに異なる2種以上の熱伝導性粒子を含む場合などがある。後者の場合、熱伝導性粒子は、その粒子径分布曲線が少なくとも2つのピークを有してもよく、少なくとも3つのピークを有してもよい。
本実施形態の高熱伝導性硬化性組成物は、好ましくは、フェノール系化合物を含む。
本発明者らの知見によれば、本実施形態の高熱伝導性硬化性組成物にフェノール系化合物を含ませることで、硬化物中にメソゲン構造が形成されやすくなるようであり、熱伝導性(放熱性)をより高めることができる。推測であるが、この理由としては、フェノールがシアネート化合物に対して触媒的に働き、トリアジン骨格が形成されやすくなるためとも考えられる。
フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、レゾール型フェノール樹脂、などのフェノール化合物とアルデヒド化合物との反応物;フェノールアラルキル、フェノールビフェニルアラルキルなどのフェノール化合物とジメチロール化合物、ジメトキシメチル化合物およびジハロアルキル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物との反応物などが挙げられる。
より具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレンなどを挙げることができる。
組成物中のフェノール系化合物の量は、特に限定されないが、前述のシアネート化合物およびベンゾオキサジン化合物の合計量を100質量部としたとき、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは1〜5質量部である。適度な量のフェノール系化合物を組成物に含ませることで、組成物を硬化させた際にメソゲン構造が形成されやすくなり、熱伝導性がさらに良化する傾向にある。
本実施形態の高熱伝導性硬化性組成物は、好ましくは、シリカ粒子を含む。
シリカ粒子を組成物中に含ませることで、熱伝導性粒子の組成物中での沈降、偏在等を抑制することができ、組成物を硬化させた際の熱伝導性粒子の分布の均一性を高めることができる(詳細は不明だが、シリカ粒子が持つ電荷による効果と推定される)。これにより、熱伝導性等の性能も良化しうる。
シリカ粒子はどのようなものであってもよく、フュームドシリカやコロイダルシリカを用いることができる。コストや性能などの点はフュームドシリカが好ましい。
なお、ここでの粒子径は、レーザー回折法による1次粒子平均径を意味する。
なお、ここでの見かけ比重は、ISO 787/XIに基づき測定することができる。
本実施形態の高熱伝導性硬化性組成物は、シリカ粒子を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
組成物中のシリカ粒子の量は、特に限定されないが、例えば、組成物の固形分全体に対して0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%である。
本実施形態の高熱伝導性硬化性組成物は、本発明の目的を損なわない限りにおいて、上記以外の各種成分を含んでもよい。例えば、樹脂、硬化促進剤、離型添加剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、表面調整剤(レベリング剤や界面活性剤)などを含んでもよい。これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
硬化促進剤としては、イミダゾール類、有機リン化合物、有機金属塩、3級アミン類、フェノール化合物、有機酸などが挙げられる。
離型添加剤としては、酸化型及び非酸化型のポリオレフィン、カルナバワックス、モンタン酸エステル、モンタン酸並びにステアリン酸などが挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、カチオニック系シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル型カップリング剤などを挙げることができる。
本実施形態の高熱伝導性硬化性組成物においては、特に、シアネート化合物の量とベンゾオキサジン化合物の量とを適切に調整することにより、熱伝導性をより高めうる(硬化物中でメソゲン構造が適切に配列しやすくなる可能性がある)。また、硬化物の機械物性や耐久性などもより高めうる。
本実施形態の高熱伝導性硬化性組成物の製造方法として、例えば、次のような方法がある。
熱伝導性粒子以外の各成分を、溶剤中に溶解、混合、撹拌することにより樹脂ワニス(ワニス状の熱硬化性樹脂組成物)を調整することができる。この混合は、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、自転公転式分散方式などの各種混合機を用いることができる。
もちろん、熱伝導性粒子は、混練時に添加してもよいし、樹脂ワニスの混合時に添加してもよい。
なお、分散性の観点から、熱伝導性粒子は、例えば、所定の溶剤に分散させもの(ナノ粒子分散液)を樹脂ワニス中に添加することが好ましい。
上述の高熱伝導性硬化性組成物を硬化させることで、その硬化物を得ることができる。
例えば、金属層を表面に備える基材のその金属層表面に、高熱伝導性硬化性組成物の硬化物による高熱伝導性硬化膜を設けることができる。つまり、金属層と、その金属層の少なくとも片面に設けられた高熱伝導性硬化性組成物の硬化物とを備える積層体を得ることができる。
ここでの硬化物ないし硬化膜は、熱伝導性が高いため、放熱部材などとして好ましく用いることができる。
前述したが、本実施形態の高熱伝導性硬化性組成物は、硬化膜としたとき、従来の組成物の硬化物に比べて銅との熱膨張率の差を小さくしやすい。よって、銅層上に硬化膜が設けられた場合、繰返しの熱膨張−収縮などによる損傷・剥がれ等を抑制しうる。
高熱伝導性硬化性組成物の性状がワニス状である場合には、例えば、適当な基材(例えば、上述の金属層を表面に備える基材)の表面に組成物を塗布し、溶剤を乾燥させ、そして熱硬化させることで、硬化膜ないし硬化物を得ることができる。
組成物の塗布方法は特に限定されず、スピナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、バーコーティング、浸漬、印刷、ロールコーティング、インクジェット法などにより行うことができる。
乾燥は、ホットプレート、熱風、オーブン等の任意の方法で加熱処理することで行うことができる。加熱温度は、通常80〜150℃、好ましくは90〜140℃である。また、加熱の時間は、通常30〜600秒、好ましくは30〜450秒程度である。
熱硬化も、任意の方法で加熱することで行うことができる。なお、加熱と同時にプレスするなどして、他の部材(基材)を含む積層体を成すようにしてもよい。プレスをする場合、その条件は、1〜100MPa、120〜260℃、10〜300分とすることができる。なお、加熱は2段階以上の異なる条件を組み合わせることができ、上記の圧力、温度、時間等の条件はそれぞれの段階に適用されうる。
図1は、パワーモジュール11の構成を示す断面図である。
パワーモジュール11は、金属ベース積層板100(金属基板101、絶縁層102および金属層103を備える)と、その金属ベース積層板100上に設けられた電子部品と、を備えることができる。
動作により発熱する電子部品(各種の発熱素子)からの熱に対して、金属ベース積層板100はヒートスプレッターとして機能することができる。
金属基板101の厚さの上限値は、例えば、20.0mm以下であり、好ましくは5.0mm以下である。この数値以下の厚さの金属基板101を用いることで、金属ベース積層板100全体としての薄型化を行うことができる。また、金属ベース積層板100の外形加工や切り出し加工等における加工性を向上させることができる。
また、金属基板101の厚さの下限値は、例えば、0.1mm以上であり、好ましくは1.0mm以上であり、さらに好ましくは2.0mm以上である。この数値以上の金属基板101を用いることで、金属ベース積層板100全体としての放熱性を向上させることができる。
また、金属層103の厚みの上限値は、例えば、2.0mm以下であり、好ましくは1.5mm以下であり、さらに好ましくは1.0mm以下である。このような数値以下であれば、回路加工性を向上させることができ、また、基板全体としての薄型化を図ることができる。
以下手順により、熱伝導性粒子の一種である凝集窒化ホウ素を作製した。
ホウ酸メラミンと鱗片状窒化ホウ素粉末を混合して得られた混合物を、ポリアクリル酸アンモニウム水溶液へ添加し、2時間混合して噴霧用スラリーを調製した。次いで、このスラリーを噴霧造粒機に供給し、アトマイザーの回転数15000rpm、温度200℃、スラリー供給量5ml/minの条件で噴霧することにより、複合粒子を作製した。次いで、得られた複合粒子を、窒素雰囲気下、2000℃の条件で焼成することにより、凝集窒化ホウ素を得た。
表1に示す割合に従い、樹脂成分(シアネート化合物、ベンゾオキサジン化合物、フェノール化合物等)を乳鉢にて混合し、実施例1〜4の組成物を得た。
一方、比較用の組成物として、表2に記載のエポキシ樹脂等を熱板上にて溶融混合し、冷却後粉砕して、比較例1〜3の組成物を得た。
まず、表1に示される樹脂成分(シアネート化合物、ベンゾオキサジン化合物、フェノール化合物等の混合物)を、溶媒であるシクロヘキサノンに添加し、これを撹拌して溶液を得た。
次いで、この溶液(樹脂成分換算で25.9質量部)に、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、品番:RX−200、一次粒子径:約12nm)0.7質量部と、熱伝導性粒子(上記の凝集窒化ホウ素)73.4質量部を加えて予備混合した。
その後、プラネタリーミキサー(遊星型ミキサー)にて均一に混合し、熱伝導性粒子を含むワニス状の組成物を得た。
表1または表2に示される樹脂成分を乳鉢で混合し、プレス圧10MPaで、220℃、2時間プレスし、直径1cm、厚さ1mmの円盤状の成形体(樹脂成分のみによる、軟化点測定用の試料)を得た。(ただし、実施例2については、プレス圧10MPaで、160℃、1時間プレスし、その後、さらに同じプレス圧で、220℃、2時間プレスした。)
(1)銅箔上への高熱伝導性硬化性組成物の塗布
まず、片面が粗化された、膜厚18μmの銅箔(福田金属箔粉工業社製、表面処理電解銅箔CF−T8G−UN−18)、を準備した。これの粗化面に、ハンドアプリケータを用いて、調製したワニス状の高熱伝導性硬化性組成物を厚み500μmで塗布した。これを、120℃に設定したホットプレートで5分加熱し、溶媒を乾燥させた。
これにより、高熱伝導性硬化性組成物の塗膜が形成された銅箔を得た。
下から順に、当て板、クッション材、SUS(ステンレス)板、上記(1)の高熱伝導性硬化性組成物の塗膜が形成された銅箔(塗膜面が上面)および銅箔(上記(1)で用いたものと同様)を重ね、これらを一括してプレスした。プレスには、株式会社東洋精機製作所の装置「ラボプレス」を用い、温度220℃、圧力10MPaで2時間プレスした(ただし、実施例2については、プレス圧10MPaで、160℃、1時間プレスし、その後、さらに同じプレス圧で、220℃、2時間プレスした。)。
これにより、高熱伝導性硬化性組成物の硬化物の層が、上と下から銅箔で挟まれた積層体(樹脂成形体)を得た。
・耐熱性:軟化点測定
上記で得られた樹脂成形体(熱伝導性粒子を含まない)について、軟化点(℃)を測定した。粒子は、軟化点の定量的な測定を妨げるため、熱伝導性粒子を含有しない組成物で測定した。
具体的には、TMA(Thermal Mechanical Analyzer)試験装置(セイコーインスツメルツ社製TMA/SS6100)を用いて、昇温速度10℃/分、荷重0.05N、圧縮モード、測定温度範囲30〜330℃の条件で、樹脂成形体(熱伝導性粒子を含まない)の熱膨張特性を測定し、横軸に温度、縦軸に変位をプロットした熱膨張曲線の屈折点の温度を外挿法により求め、軟化点とした。
上記の軟化点測定で得られた熱膨張曲線の、軟化点以下の線形変形部の傾きから、熱膨張率を求めた。
なお、本発明者らの知見として、熱伝導性粒子を含まない組成物で形成した樹脂成形体と、熱伝導性粒子を含まない組成物で形成した樹脂成形体とは、ほぼ同様の線膨張係数を示す。
示差熱熱重量同時測定装置(セイコ−インスツルメンツ社製、TG/DTA6200型)を用いて、乾燥窒素気流下、昇温速度10℃/分の条件により、サンプルを、30℃から650℃まで昇温させることにより、サンプルが5%重量減少する温度(Td5)を算出した。
なお、サンプルとしては、上記で調製した、熱伝導性粒子を含まない高熱伝導性硬化性組成物(表1または表2の成分を、乳鉢で混合して作製したもの)を、220℃で2時間(実施例2については160℃1時間の後に220℃2時間)で加熱して硬化物を得た後、測定前に100℃で1時間の乾燥処理を施したものを用いた。
上記で得られた樹脂成形体(熱伝導性粒子を含まない)または積層体(熱伝導性粒子を含む)から、直径10mm×厚み0.2mmの小片を切り出し、これを厚み方向の熱伝導率測定用の試験片とした。
次に、ULVAC社製のXeフラッシュアナライザーTD−1RTVを用いて、レーザーフラッシュ法により板状の試験片の厚み方向の熱拡散係数(α)の測定を行った。測定は、大気雰囲気下、25℃の条件下で行った。
得られた熱拡散係数(α)、比熱(Cp)、比重(SP)の測定値から、下記式に基づいて熱伝導率を算出した。
熱伝導率[W/m・K]=α[mm2/s]×Cp[J/kg・K]×Sp[g/cm3]
表1および2中、樹脂成形体(熱伝導性粒子を含まない)の熱伝導率を「熱伝導率(樹脂)」とし、積層体(熱伝導性粒子を含む)の熱伝導率を「熱伝導率(複合)」と記載している。
4HBAHY−OCN:下記の化学式で表される化合物
BP−a:下記の化学式で表される化合物
硬化剤2:4,4’−ジアミノジフェニルエタン(DDEt、東京化成工業社製)
硬化促進剤1:2−メチルイミダゾール(2MZ、東京化成工業社製)
・50〜150℃における線膨張係数は、30〜50ppm/℃であった。このことは、銅層上に本実施形態の組成物による膜が設けられた場合、繰返しの熱膨張−収縮などによる損傷・剥がれ等を抑制しうることを意味する。
・実施例1〜4の組成物の熱伝導率(樹脂)は、比較例と同程度か、または比較例よりも良好であった。つまり、シアネート化合物とベンゾオキサジン化合物の硬化物の放熱特性は、エポキシ化合物の硬化物の放熱特性とほぼ同等かそれ以上であると言える。
・実施例1、2および4の熱伝導率(複合)は、比較例と同程度か、または比較例よりも良好であった。本実施形態の高熱伝導性硬化性組成物の硬化物は、十分な熱伝導性を有しつつ、耐熱性が向上していると言える。なお、実施例3の熱伝導率(複合)の値は小さい。これについては、一部成分の、溶媒(シクロヘキサノン)への溶解性不良により、熱伝導性粒子やシリカ粒子を含めて均質な硬化膜が作製できなかったためと推測される。実施例3の熱伝導率(樹脂)の値は他と同程度であるから、熱伝導性粒子やシリカ粒子を適切に分散できれば、実施例1、2および4程度の熱伝導率(樹脂)が得られると考えられる。
・フェノール化合物を含む組成物が、フェノール化合物を含まない組成物よりも、熱伝導率の点で高性能な傾向が見られた。
3 接着層
4 熱伝導グリス
5 放熱フィン
6 封止材
7 ボンディングワイヤー
8 チップコンデンサ
9 チップ抵抗
10 ソルダーレジスト
11 パワーモジュール
100 金属ベース積層板
101 金属基板
102 絶縁層
103 金属層
103a 金属層
103b 金属層
Claims (8)
- シアネート化合物と、
以下一般式(B−1)および/または(B−2)で表される構造を有するベンゾオキサジン化合物と、
アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化珪素および酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の熱伝導性粒子と
を含む、高熱伝導性硬化性組成物。
aは0〜3の整数を表し、
R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表し、aが2以上の場合、複数のR2は同一でも異なっていてもよい。
一般式(B−2)中、
bは0〜4の整数を表し、
R3は、水素原子または1価の有機基を表し、bが2以上の場合、複数のR3は同一でも異なっていてもよい。 - 請求項1に記載の高熱伝導性硬化性組成物であって、
前記シアネート化合物および前記ベンゾオキサジン化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物が、共役二重結合を含む、高熱伝導性硬化性組成物。 - 請求項1または2に記載の高熱伝導性硬化性組成物であって、
更に、フェノール系化合物を含む、高熱伝導性硬化性組成物。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の高熱伝導性硬化性組成物であって、
更に、シリカ粒子を含む、高熱伝導性硬化性組成物。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の高熱伝導性硬化性組成物を用いて作製した高熱伝導性硬化膜であって、
50〜150℃における線膨張係数が、36〜47ppm/℃である、高熱伝導性硬化膜。 - 金属層と、
前記金属層の少なくとも片面に設けられた、請求項1〜4の高熱伝導性硬化性組成物の硬化物と
を備える積層体。 - 請求項6に記載の積層体であって、
前記金属層が、銅層である、積層体。 - 請求項6または7のいずれか1項に記載の積層体と、
前記積層体上に設けられた電子部品と、を備えるパワーモジュール。
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