以下、本発明の実施例を図1乃至4を用いて説明する。図1は、本発明の実施例に係るプラズマ処理装置の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。本例では、処理室内にプラズマを形成するための電界としてマイクロ波帯の特定の周波数のものを用い、さらに処理室内に当該電界の周波数に対応した強度を有する磁界を供給しこれらの相互作用によりECR(Electron Cyclotron Resonance)を生起して処理室内に供給されたガスの原子または分子を励起してプラズマを形成して半導体ウエハ上面の処理対象の膜をエッチングするマイクロ波ECRプラズマエッチング装置を示している。
本実施例のプラズマ処理装置は、内部に円筒形状を有する処理室104が配置された真空容器101と、その上方及びその外周に配置され当該真空容器101内の処理室104の内部にプラズマを形成するための電界及び磁界を供給するプラズマ形成手段と、真空容器101の下方に連結されて処理室104内部を排気するターボ分子ポンプ及びロータリーポンプ等粗引き用の真空ポンプを有する真空排気手段とを備えている。処理室104の上部は円板形状の例えば石英製の誘電体窓103が配置されて処理室104の内外を気密に区画しており、処理室104の上方を覆ってその天井面を構成している。
誘電体窓103の下方の処理室104内にはエッチング用のガスを導入するための複数の貫通孔が配置された誘電体製(例えば石英製)のシャワープレート102が配置されている。シャワープレート102と誘電体窓103との間には、供給されるエッチング用のガスが拡散して充填される高さの小さい略円筒形の空間が配置され、この空間はエッチング用のガスを供給するガス供給装置117とガス導入管路により連結されている。また、真空容器101下方には処理室104の下部と連通された真空排気口110が配置され、真空排気口110の下方には図示しないターボ分子ポンプを含む真空排気手段である真空排気装置が接続されている。
プラズマ形成手段として、誘電体窓103の上方には処理室104内に導入される電界を伝搬する導波管107が配置されている。本実施例の導波管107は2つの部分に大きく分けられており、処理室104の上方でその軸が鉛直上方に延在する断面が円形の円筒管部分及びこれの上端部に接続されてその軸の向きが円筒部分から曲げられて水平方向に延在する断面が矩形の角柱管部分を有している。角柱管部分の端部には、マイクロ波の電界を発信して形成するマグネトロン等の電界発生用電源106が配置され、この電界発生用電源106で発振されて形成された電界は、導波管105を伝播して円筒管部分の下端部の下方に接続された共振用の円筒形状の空間に進入して所定の電界のモードにされた後、誘電体窓103を透過して処理室104内に供給される。
電磁波の周波数は特に限定されないが、本実施例では2.45GHzのマイクロ波が使用される。さらに、真空容器101の処理室104の外周側には、処理室104内に供給する磁場を形成するためのソレノイドコイルである磁場発生コイル107が処理室104の上方及び側方を囲み配置されている。処理室104内に伝播して導入された電界は、磁場発生コイル107により形成され処理室104内に導入された磁場と相互作用を生起して、同じく処理室104内に供給されたエッチング用ガスの粒子を励起して処理室104内にプラズマが生成される。
また、処理室104内の下部には試料台108が配置されている。試料台108の上面は溶射によって形成された誘電体を含む材料の膜である誘電体膜により被覆されており、その誘電体膜の上面に処理対象の基板状の試料であるウエハ109が載せられて保持される。ウエハ109が載置される載置面は誘電体窓103またはシャワープレート102に対向している。
誘電体膜の内部には導電体材料から構成された導電体膜111が配置されており高周波フィルター125を介して直流電源126が接続され、膜状の電極として構成されている。さらに、試料台111は処理室104と軸を併せて配置された略円筒形状を有しており、その内部には整合器129を介して第1の高周波電源124が電気的に接続された電極である円板形状を有した金属製の基材131が配置されている。
基材131の上面に配置されウエハ109の形状に併せて実質的に円形を有した誘電体製の皮膜(誘電体膜)の外周側には、石英等の誘電体製のリング状部材であるサセプタ113が配置される。このため、試料台108の載置面である誘電体膜の外周側の箇所は基材131のその高さが凹まされて低くされ、誘電体膜上面と段差を構成しており、この段差を構成するリング状の凹み部にサセプタ113が載せられて、試料台108の上面及び側面はプラズマから覆われて保護される。
このようなプラズマ処理装置100では、真空容器101はその側面において図示していない搬送用の真空容器と、ゲートを介して連結され、搬送用の真空容器(真空搬送容器)内に配置された搬送ロボットのアーム上に載せられて保持された未処理のウエハ109がゲートを通って処理室104内に搬入される。処理室104内に搬送されたウエハ109は、試料台108にアームから受け渡されてその上面を構成する誘電体膜上に載せられる。この後、直流電源126から直流電圧に導電体膜111に供給されてウエハ109との間に形成された静電気力によってウエハ109が誘電体膜上に吸着されて保持される。
なお、処理室104は、処理に際して図示していないゲートを開閉するゲートバルブによって真空搬送容器に対して気密に閉塞され、内部が密封される。この後、シャワープレート102からエッチング用のガスが処理室104内に導入されるともに真空排気装置108が駆動されて処理室104の内部の圧力がガスの供給量速度と排気量速度とのバランスにより所定の圧力に維持される。この状態でプラズマ形成手段から供給された電界及び磁界の相互作用によって処理室104内にプラズマ116が形成される。
プラズマ116が試料台108の上方の処理室104内に形成されると、試料台108内の基材131に接続された高周波電源124から高周波電力が基材131に供給され、試料台108上面の誘電体膜上及びウエハ108上にバイアス電位が形成される。このバイアス電位とプラズマ116の電位との間の電位差によってプラズマ116内のイオン等の荷電粒子がウエハ109上面に向けて誘引されウエハ109上面に予め形成された膜構造の表面と衝突することによりウエハ109上面に配置された半導体デバイスの回路を形成するための膜構造の処理対象の膜層がエッチング処理される。
なお、図示していないが、エッチング処理が行われている間はウエハ109の裏面と試料台108の誘電体膜上面との間にヘリウム等の熱伝達を促進するためのガスが導入され試料台108の基材131の内部に配置され冷却用の冷媒が通流する冷媒流路との間の熱交換を促進することで、ウエハ109の温度を処理に適した範囲の値に調節することが行われている。また、エッチングガスやエッチングにより発生した反応生成物は真空容器101の底部に配置されて処理室104の下部及び真空排気装置の真空ポンプ入り口と連通された真空排気口110から排気される。
所定のウエハ109上面の膜構造のエッチング処理が終了すると、高周波電源124からの高周波電力の供給が停止され、直流電源126からの吸着用の電力の供給が停止されて静電気が取り除かれた後、ウエハ109が試料台108上方に持ち上げられて、ゲートバルブが開放したゲートを通って処理室104内に進入した搬送ロボットのアームに受け渡された後、未処理のウエハ109が再度試料台108上方まで搬入される。この後、未処理のウエハ109が試料台108上方に載せられて当該ウエハ109の処理が開始される。処理されるべき未処理のウエハ109が無い場合には、プラズマ処理装置100のウエハ処理のための動作が終了して休停止またはメンテナンスの動作が行われる。
また、試料台108の円筒形状を有した基材131または円板または円形の誘電体膜の内側にはヒータ(図示省略)が配置されて、試料台108または誘電体膜上面上方に載せられたウエハ109を処理に適した温度に加熱可能に構成されていても良い。また、ヒータにより又は処理中にプラズマ116に曝されることにより加熱されるウエハ109の温度の増大を低減または抑制するため、基材131の内部には、図示しない温調装置によりその温度が所定の値の範囲内の値にされた熱伝達媒体(冷媒)が流れ基材131の中心周りに同心状または螺旋状に配置された冷媒流路が配置されている。
このような試料台108の基材131内部には、上記温度の調節のため基材131または試料台の温度を検知するための図示していない温度センサやウエハ109を誘電体膜の上方に離間または膜上面にウエハを載せるため降下させる複数本のピンとその位置センサ、導電体膜111や基材131への給電経路上のコネクタ等が配置され、これらは電気的ノイズが多い環境にあると誤動作する恐れがある。また、冷媒も電気的ノイズの環境下では静電気を帯びる恐れがある。本実施例では、図示されるように基材131は電気的に接地112に接続されている。
本実施例のサセプタ113内部には、ウエハ109または基材131上面の誘電体膜のウエハ載置面を囲んで配置された金属製の導体リング132が配置され、高周波電源127と整合器128と負荷インピーダンス可変ボックス130を介し電気的に接続されている。高周波電源127から発生した所定の周波数の高周波電力は導体リング132に導入され、その上面上方にプラズマ116との間で電位が形成される
なお、図1の例では、高周波電源127と導体リング132との間の給電用の経路は、高周波電源124と誘電体膜内の導電体膜111との間の給電用の経路とは別の箇所に配置されている。このような構成に換えて、図2に示すように、整合器129を介して導電体膜111と高周波電源124との間を電気的に接続する給電用の経路上で整合器129と導電体膜111との間で分岐して負荷インピーダンス可変ボックス130を介して導体リング131との間を電気的に接続する給電用の経路を配置して、導体リング132に高周波電力130を導入する構成を備えても良い。
図2は、図1に示す実施例に係るプラズマ処理装置の変形例の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。本図の変形例では、導体リング132に対する高周波電力の給電経路の構成が図1の実施例との構成上の差異であり、他の構成についてはこれを同じくしていることから、これらの説明は省略する。
図1及び2に示した例において、負荷インピーダンス可変ボックス130と誘電体製のサセプタ113上部に配置される高インピーダンス部分との組み合わせにより、高周波電源127からウエハ109の外周部までのインピーダンスの大きさを低下させることにより、ウエハ109の外周側の領域に高周波を印加して、プラズマ116中のイオン等荷電粒子をウエハ109の外周側に向けて引き込むことが可能となる。このことにより、ウエハ109外周縁部分での電界の集中が抑制される。高周波電源127の周波数は高周波電源124と同じか定数倍が好ましい。
図3を用いて負荷インピーダンス可変ボックス130の構成を説明する。図3は、図1に示す実施例に係る試料台外周側部分の構成を拡大して模式的に示す縦断面図である。本図では、サセプタ113内に配置された導体リング132に接続された給電経路上に配置された負荷インピーダンス可変ボックス130の構成が示されている。
プラズマ116が形成されている状態で、サセプタ113内部の導体リング132とウエハ108との間には容量性のシース部が存在している。導体リング132を含む高周波電力の回路を考察する上で、導体リング132とウエハ108外周縁との間の当該容量を便宜的にコンデンサ300で表す。
本実施例では、負荷インピーダンス可変ボックス130の内部に配置された可変コイル133のインダクタンスを適切なものに調節することで、容量成分であるコンデンサ300を含む等価回路上で直列共振を生起させることによって等価回路上のインピーダンスを低減する。この構成により、ウエハ109に高周波電源127からの高周波電力を効率的に供給してバイアス電位を形成させることが可能となる。
また、負荷インピーダンス可変ボックス130には、さらに可変コイル133と高周波電源127との間に可変抵抗135が配置され、可変抵抗135の抵抗値を調節することで、上記直列共振のピーク値を緩和させるQ値を下げることが可能となるため、制御性を改善することが可能となる。すなわち、図19に示すように制御ロバスト性をアップさせることができる。
図15は、図3に示す負荷インピーダンス可変ボックス130内の可変抵抗の抵抗値を増減することにより得られる結果を模式的に示すグラフである。また、上記コンデンサ300は経過的にプラズマによるサセプタの消耗で容量が変わっていくため、これを補正するために負荷インピーダンス可変ボックス130内にその容量を変化可能な可変コンデンサ134を可変抵抗135と高周波電源127との間に配置しても良い。
さらに、負荷インピーダンス可変ボックス130内で給電経路と電気的に接続された電圧計等の電圧を検出するセンサである電圧モニタ136を配置して検知した電圧を用いて高周波電源127からプラズマ116を通した高周波電力の回路上の負荷の変動を検出することができる。或いは、整合器128の内部の整合定数(例えば可変コイルの容量値)を検知した結果或いは電圧値を電圧モニタ138を用いて検知した結果から、サセプタ113を使用開始した初期からの負荷の変化を間接的に検出することができる。これにより、初期からのサセプタ113の消耗量を推定することができる。
また、図3に示した負荷インピーダンス可変ボックス130を、図2に示す分岐されて導体リング132に接続された給電用の経路上に配置しても良い。この場合は導電体膜111に高周波電力を供給する給電経路の高周波電源124から見えるインピーダンスが導体リング132への給電経路が並列に接続されたことで図3の場合から相対的に低く見えるため、導電体膜111上に形成される高周波電圧が低下してウエハ109の処理の速度(レート)が低下してしまう虞がある。
このことを防止するため、負荷整合器129内部に電圧モニタ137を配置して検出した電圧値を所期の処理のレート等特性を実現できる目標の値となるように負荷整合器129のインピーダンスまたは整合定数を調節するようにしても良い。また、図4に示すように高周波電源124,127が発生する電力の信号を同期して発生させるためこれらとクロックジェネレータ220とを電気的に接続して、クロックジェネレータ220から周期的にパルスあるいは方形波等の信号をこれら電源に出力させることで、それぞれで発振される電力の周期をこれらの間で同期させて出力させウエハ106を介して干渉して発生するビート信号が抑制される。
上記の実施例では、誘電体膜内の導電体111に高周波電源124からの高周波電力と直流電源126からの直流電力とが供給される構成が示されているが、基材131上面に配置された誘電体製の膜の内部の異なる箇所に配置された異なる導電体製の膜各々にこれら各々の電源から電力が供給される構成を備えていても良い。例えば、誘電体材料の粒子を溶射して形成される誘電体膜内の上方に静電吸着用の直流電力が供給される導電体製の膜が配置され、誘電体膜内の下方に高周波電力が供給される別の導電体製の膜が配置される構成であっても良い。このような構成においても、図4に示したクロックジェネレータ220を備え2つの高周波電源124,127に出力を同期させるための信号を発信する構成を備えていても良い。
次に、上記実施例のサセプタ113の構成を図5乃至7を用いて説明する。図5は、図1に示す実施例のサセプタの上部の構成を拡大して模式的に示す縦断面図である。図6は、図5に示す実施例の作用を模式的に示す縦断面図である。図7は、図5に示した実施例の変形例のサセプタ上部の構成を模式的に示す縦断面図である。
図5において、本実施例のサセプタ113は、上下に配置された複数の部材から構成され、上方に配置される上部サセプタ151は誘電体製のリング状の部材であって、基材131の上部外周側部分にリング状に配置された凹み部上方に載せられて配置されたリング状の下部サセプタ150とその上面上に載せられた導体リング132の上方にこれを覆って配置される。本実施例では、このような構成により第2の高周波電源127から導体リング132に供給される高周波電力により生起される高周波バイアス電位を効率良く上部サセプタ151内部を通してその上面上方に形成しイオンシース160を生成することができる。
このようなイオンシース160により、従来の技術で生じていたウエハ106外周縁に生起する電界集中により特異な形状のシースが形成されることが抑制され、シース160内に形成される等電位面はウエハ106の外周側部分においてウエハ106の上面に対して平行でない部分が低減される。これによりイオンがウエハ106に対して入射する角度が所望の角度、例えば垂直な角度となる範囲がより外周端まで拡大され、ウエハ106の処理の特性、例えばエッチングレートをウエハ106の面内方向についてバラつきを低減することができる。
また、上部サセプタ151は下部サセプタ150の側に高周波電力が印加されないような厚さを十分とる必要がある。本実施例では、上部サセプタ151の導体リング上の厚さは1乃至3mm、導体リング132下方の下部サセプタ150の厚さは3乃至10mmの範囲内の値にされている。このような厚さの大小関係は、上部サセプタ151を介した導体リング132とプラズマシース160との間の距離が下部サセプタ150における導体リング132と基材131との間の距離より小さくなるように構成されることが望ましい。
図16を用いて図5に示した構成の動作の原理を説明する。図16は、図5に示す実施例の構成が奏する作用を模式的に示す縦断面図である。
図16(a)には、本実施例のサセプタ113の上部の構成が拡大されて模式的に縦断面として示されている。本図の構成における等価回路では、第2の高周波電源127から導体リング132に供給される高周波電力が流れる経路としては、図16(a)に矢印として示したように経路1と経路2とが考えられる。図16(b)には、図5に示す実施例における可変コイル133の電圧であるVLcと電圧モニタ136の出力から検出される電圧値V1との関係がグラフとして模式的に示されている。本図では当該相関関係が経路1と経路2との各々について示されている。
経路2に伝達される電力は小さいほうがウエハ106にプラズマ中のイオンを誘引するために供給される電力の効率を向上させるうえで好ましい。このためには、本実施例では、経路2での共振点のVLcの値と経路1での共振点の値との差VL12が経路1での共振点のVLcの値VL11より大きくされる。
このことにより経路1の制御部において経路2へ供給される電力の割合を実質的に無視可能程度に小さいものにすることが可能となる。本実施例では、このVL12>VL11の条件を実現するため、等価回路上で経路1における上部サセプタ151が有する静電容量C1を十分に大きくする一方で、経路2における下部サセプタ150が有する静電容量C2を十分に小さくするようにこれらを構成する材質やその形状の厚みや幅等の寸法が選択される。この状態で、図16(b)の経路1のV1がVLcの変化に対して単調に増大している領域で所期のシース160厚さと領域とが得られる所定の許容範囲内の値になるように、後述する制御装置180が検出されたC1の値に応じてVLcを調節する。
さらに、下部サセプタ150と上部サセプタ151との間に隙間155が配置されて、シース160と金属製の導体リング132との間でエネルギーの伝達が行われる構成を備えている。しかしながら、このような隙間155の端部が処理室104に面して連通されていると、処理室104内に形成されるプラズマ116中の荷電粒子や活性種等の反応性が高くされた粒子が当該隙間155内に進入して隙間115を構成する部材の壁面と相互作用を生起する虞が有る。
このような課題に対して、図6(a)に示す変形例のように、図5に示す金属製の導体リング132に換えて石英やアルミナあるいはイットリア等のセラミクスで構成された絶縁体リング153の内部に金属製の導電体膜153’を配置しても良い。この構成によれば、金属製の導体リング132がプラズマ116に接することを低減して両者の相互作用により生じた生成物によりウエハ106が汚染されてしまうことが抑制される。下部サセプタ150側へのインピーダンスを相対的に高くでき上部サセプタ151の側へのエネルギー伝達を効率的に行うことが可能となるとともに、絶縁体あるいは誘電体による部材で隙間155が囲まれて構成されるため、上記導体製リング132とプラズマ116との相互作用によりウエハ106の金属の汚染が生起することが抑制される。
さらにまた、供給する電力に対するシース160の厚さや分布あるいは得られる処理の特性の制御性を高めるため、図6(b)に示すように、上部サセプタ150の下面と導体膜が内部に配置された絶縁体リング153上面との間に隙間210を配置しても良い。この例は、上部サセプタ151が下部サセプタ150の上に載せられた状態で絶縁体リング153の内周側の側壁面、外周側の側壁面及び上面が覆われる構成を有して、絶縁体リング153がプラズマと面することが抑制され金属膜をプラズマから遮蔽することが可能となる。本例では空間210の隙間は0.01〜1mmの範囲内から選択され設定される。
次に、本実施例のプラズマ処理装置の導体リング132に供給する電力の制御の態様とその作用・効果について、図7乃至12を用いて説明する。図7は、図6に示した変形例のサセプタを含むウエハ外周縁の近傍で奏する作用を模式的に示す縦断面図である。
図7(a)は、導体リング132が内側に配置されていない上部サセプタ153と下部サセプタ150を有する従来技術のサセプタ113を含むウエハ106の外周縁近傍の構成を拡大して模式的に示す縦断面図である。本図に示されるように、この従来技術では、ウエハ106外周部の上部サセプタ151上面上方のシース160がウエハ116上面と上部サセプタ151のリング形状の内周側部分を構成する傾斜面の上方及びウエハ106が基材131の***部の凸部上面の誘電体膜から外周側に突出したオーバーハング部分の下面を含む外周縁周囲に限定されたものとなり、プラズマ116中に形成されるイオンがウエハ106外周縁部において外周側から中央側に向って傾斜した軌道161に沿ってウエハ106に衝突して当該箇所に集中してしまう構成となっていることが判る。
図7(b)は、図6(b)に示した絶縁リング153に内包された導体膜に第2の高周波バイアス電源127から負荷インピーダンス可変ボックス130内に配置された共振回路を介して所定の周波数の高周波電力が供給される変形例において生起されるシース160の構成を模式的に示す縦断面図である。本図において示すように、本例では上部サセプタ151上面の導体膜上方にはマイナス電位に沈みこんだ交流の電圧が発生し、プラス電位のプラズマとの電位差が大きくなり所定以上の厚さを有したシース160が形成される。このことにより、図7(a)の例でウエハ106の外周縁で生起した電界の集中或いはシース160の等電位面の外周側に向かうに伴なう下降が緩和され、ウエハ106の外周縁上方でイオン等荷電粒子は上方からウエハ106外側の上部サセプタ151上面に向かう方向の軌道161に沿って外周側に引き込まれ、エッチングレート等の処理の特性はウエハ106の中央部から外周縁部の間で変動が抑制される。
図7(c)は、図7(b)と比較して、絶縁体リング153内部の導体膜に高周波電力を供給する第2の高周波電源127を有さず可変コイル200を含む共振回路を介して接地されるものにおいて生起されるシース160の構成を模式的に示す縦断面図である。この構成では、上部サセプタ151上面の電位は接地電位にされプラズマ116の電位との電位差が小さくなるため図7(a)に示したものよりも上部サセプタ113上面のシース160はさらに形成され難く、ウエハ106の上面とオーバーハング部分を含む外周縁部の周囲に限定的にシース160が成長するものとなる。このため、本例の構成では、ウエハ106の外周縁部分にプラズマ116中のイオン等荷電粒子がさらに集中し易いものとなり、外周縁部分近傍のウエハ106の処理の特性は中央部のものから更にズレが大きくなってしまう。
図7に示した構成各々において、このような処理の特性、特にエッチングレートの例を図8に示す。図8は、図5に示す実施例と従来技術とにおけるウエハ106上面の半径方向についてのエッチングレートの分布例を模式的に示すグラフである。
図7(a)や図7(c)の例におけるエッチングレートは図8(a)に示すように、ほぼ一定にされる中央側の部分に対して外周側部分で増大するものとなる。一方で、図7(b)の例では、可変コイル133の電圧値VLcや第2の高周波電源127からの出力の大きさや周波数の値によって、上部サセプタ151上面上方に形成されるシース160の厚さや等電位面の高さを調節可能である。このような調節が行われる本実施例では、ウエハ106の外周側部分におけるエッチングレートは、図8(a)のように外周側の領域で増大する分布と図8(b)に示されるように減少するものとの間で所望のものに形成される。
また、上記実施例において、図9に示すように、負荷インピーダンス可変ボックス130の内部に配置されたスイッチ201によって図7(b)に示した導体膜が可変コイル133を含む可変RLCの回路を介して第2の高周波電源127に接続される給電経路と図7(c)に示した導体膜が可変コイル200を介して接地される経路との間で切り替えられて、各々によって機能するウエハエッジ可変リリースモードとウエハエッジアクセスモードとの間で切り替え可能な構成を備えても良い。
図10に、図5または6に示した構成を備えた実施例を用いてウエハ106を処理した結果を説明する。図10は、図5または6に示した実施例に係るプラズマ処理装置において処理されたウエハの半径方向についてのエッチングレートの分布を検出した結果を示すグラフである。
本例では、VLc=53μHとしてバイアス形成用の高周波電力の大きさを異ならせた複数の場合について検出した結果を示している。図10(a)〜(c)に示されるグラフ各々の左側のものは直径300mmのウエハ106の中心から外周縁までのエッチングレートの大きさの分布を示すグラフであり、右側のものは図上右端の外周縁近傍のエッチングレートの大きさの分布を拡大して示すグラフである。
図10(a)は、基材131の凸部上面に配置された誘電体膜内の導電体膜111に第1の高周波電源124から200Wの高周波電力が供給され、さらに導電体膜111外周側に配置されたサセプタ113内の導体リング132または絶縁体リング153内の導体膜に0Wの高周波電力が供給された場合を示している。図10(b)は、導電体膜111に200Wの高周波電力及びサセプタ113内の導体リング132または導体膜に20Wの高周波電力が供給された場合、図10(c)は各々200W,50Wが供給された場合の処理中の特性を検出した結果を示している。
これらの図に示されるように、本実施例の可変コイル133を含む負荷インピーダンス可変ボックス130を介して導体リング132あるいは絶縁体リング153内部の導体膜に供給される高周波電力の大きさを調節することにより、ウエハ106の外周縁から10mm程度の領域におけるエッチングレートが中央側部分のレートに与える影響を抑制しつつ増減される。
また、発明者らは、バイアス形成用の高周波電力の大きさを一定として可変コイル133の電圧値VLcを異ならせた複数の場合についてエッチングレートの分布を検出した。これらの場合も、図10に示したものと同様に、ウエハ106の外周側部分のエッチングレートの分布を中央部側のものと独立に調節できることが示された。また、処理の特性としてエッチングレート以外にもエッチング形状、特に加工後の膜構造の形状における角度も、上記実施例における高周波電力あるいは負荷インピーダンスの調節をすることで所望のものに実現できることが判った。
次に、上記実施例においてウエハ106を処理した時間或いは枚数が増大するに伴なってサセプタ113が消耗する量に対して第2の高周波電源127からサセプタ113に供給される高周波電源を調節する構成について図11および12を用いて説明する。
上部サセプタ151の上面及び外周側の側面はプラズマ116に面しており、これとの間の相互作用により削られたり変質したりして消耗される部材である。このため、このような消耗によるシース160の形状が変化してしまい処理の特性の分布が変化してしまうことになる。
例えば、誘電体である上部サセプタ151の導体リング132或いは絶縁体リング153上方の部分が消耗して厚さが低減すると、この部分の高周波電力に対する静電容量170の値Cvが大きくなり、上部サセプタ151上面の電位が増大する。このため、消耗が生じた状態で以前と同じ値の高周波電力が導体リング132または絶縁体リング153内の導体膜に供給された場合には、同じ処理の特性が実現されないという問題が生じる。
このような問題を解決するため、本実施例では、半導体デバイスを製造するために処理される製品用のウエハ106の処理開始前に予めCvの値の変化に対する基準となるウエハ106の所定の箇所における或いは面内方向で平均された処理の特性、例えばエッチングレートの値との相関を示す情報を検出し、このデータを目標または標準のデータとしてテーブル或いはデータベースとして図示しない制御装置内に配置されたハードディスク、RAM或いはリムーバブルディスク等の記憶装置内に記憶する。図11は、このような図1に示す実施例に係るプラズマ処理装置のサセプタの構成の概略を模式的に示す縦断面図及び当該プラズマ処理装置が用いるデータテーブルの例を模式的に示すグラフである。
基準となるデータを得るためのウエハ106は、製品用のものと同一または同等と見做せる程度に近似した構成を有した膜構造が上面に配置されたものであって、異なる厚さの上部サセプタ151を用いた複数の装置の仕様において可変コイル133の電圧VLcの値を変化させて製品用のウエハ106の処理の開始前に予め実施される。これら各々の条件での処理中または処理後に得られるエッチングレート等処理の特性の値とその分布や加工形状の分布とVLcの値との相対の関係から、目標の処理の特性の値やその分布や加工形状の分布を得ることのできる上部サセプタ153の静電容量CvとVLcの値との対応を示すデータがテーブルとして抽出される。このような目標のデータを抽出するために処理される基準となるウエハ106は複数枚が用いられても良い。
本実施例では、データベースとして記憶されたこのデータテーブルの情報に基づいて、制御装置180がVLcあるいは第2の高周波電源からの出力の値Pfを算出し、これらに設定すべき値として指令信号を送信する。制御装置180は、負荷インピーダンス可変ボックス130またはその内部に配置された可変コイル133、可変コンデンサ134、可変抵抗135等の素子やデバイスと通信可能に接続され、さらに第2の高周波電源127、整合器128、電圧モニタ136,138と通信可能に接続され、通信される信号のインターフェースとRAM、ハードディスク等の記憶装置及び半導体製のマイクロプロセッサ等の演算器ならびにこれらと電気的に接続されて信号が通信される通信経路とを有している。なお、記憶装置は制御装置180のユニット内部に収納されている必要はなく、遠隔された箇所に配置され通信可能に接続されていても良い。
制御装置180は、具体的には、本実施例のプラズマ処理装置が運転される所定の期間について、その開始前における第2の高周波電源127から上部サセプタ151上面までのバイアス電位形成用の高周波電力が供給される給電経路の初期の負荷、インピーダンスの値Zsを検出し、これを制御装置180を構成する記憶装置内に記憶する。さらに、任意の枚数目のウエハ106の処理前あるいは処理中に検出された当該給電経路の負荷Zpを検出し、これを記憶装置に記憶されたZsと比較することで、給電経路上の導体リング132または導体膜と上部サセプタ151上面との間または上部サセプタ151を介したプラズマ116との間の静電容量Cvを検出する。
具体的には、制御装置の演算器は、記憶装置内に予め記憶されて格納されたソフトウエアのアルゴリズムに沿ってZs−Zpから上部サセプタ151が消耗して厚さが低減した量を検出し、これを用いて現在のCvを算出する。このCvと記憶装置に記憶されたデータテーブルとを用いて目標とするVLcの値を算出する。さらに、当該算出した目標の値となるようにVLcに対してそのインダクタンスを設定する指令を可変コイル133或いは負荷インピーダンス可変ボックス130内の素子に発信する。
図11の例では、上部サセプタ153を介した給電経路の等価回路上の静電容量の値Cvと負荷インピーダンス可変ボックス130の可変コイル133の電圧値VLcとの対応する関係を示すデータテーブルを用いたが、図12に示すように、負荷インピーダンス可変ボックス130と導体リング132または絶縁体リング153内の導体膜との間の給電経路に接続されて配置された電圧モニタ136からの出力値V1と静電容量Cvとの関係を示すデータを用いても良い。図12は、図1に示す実施例に係るプラズマ処理装置が用いるデータテーブルの別の例を模式的に示すグラフである。
本例において、Cvが変化するとエッチングレート等の処理の特性に間接的に影響を与える電圧値V1が変化する。そこで、図11に説明した例と同様に、半導体デバイスを製造するために処理される製品用のウエハ106の処理開始前に予めCvの値の変化に対する基準となるウエハ106の所定の箇所における或いは面内方向で平均された処理の特性、例えばエッチングレートの目標値に対応するV1の値との相関を示すデータを検出し、このデータを目標または標準のデータとしてテーブル或いはデータベースとして図示しない制御装置内に配置されたハードディスク、RAM或いはリムーバブルディスク等の記憶装置内に記憶する。
このようなデータの検出は、製品用のウエハ106の処理を開始する前に異なる厚さの上部サセプタ151を用いた複数の装置の仕様において製品用のウエハ106の処理の開始前に予め実施される。これら各々の条件での処理中または処理後に得られるエッチングレート等処理の特性の値とその分布や加工形状の分布と検出されるV1の値との相対の関係から、目標の処理の特性の値やその分布や加工形状の分布を得ることのできる上部サセプタ153の静電容量CvとV1の値との対応を示すデータがテーブルとして抽出され、データベースのデータとして記憶される。
制御装置180は、電圧モニタ136からの出力を受信して所期の処理の特性や加工形状を実現できる所定のV1の値となるように、負荷インピーダンス可変ボックス130内の可変コイル133の電圧値VLcを変化させるように指令信号を負荷インピーダンス可変ボックス130に発信する。制御装置180は、製品用のウエハ106の処理においてV1の値を一定となるように調節するものであっても良く、また、図11の例と同様に、処理の開始前あるいは開始直後の初期の負荷、インピーダンスの値Zsと任意の枚数目のウエハ106の処理前あるいは処理中に検出された当該給電経路の負荷Zpとを比較し、得られたZs−Zpの値から給電経路上の導体リング132または導体膜と上部サセプタ151上面との間または上部サセプタ151を介したプラズマ116との間の静電容量Cvを検出して、上記データテーブルを用いてこのCvの値に対応するV1の値を算出してこの値となるように負荷インピーダンス可変ボックス130をフィードバック制御を実施するものであっても良い。
さらには、第2の高周波電源からの高周波電力の大きさの値Pfが変化するとV1も変動することになるが、このようなV1の増減が生じる場合であっても、負荷インピーダンス可変ボックス130と整合器128との間の給電経路に接続されて配置された電圧モニタ138の出力から検出された電圧値V2とV1との比V1/V2が所定の値の許容範囲内となるようにVLcの値が調節されることで、所期の処理の特性や加工形状が実現できる。また、導体膜111と第1の高周波電源124との間の給電経路に接続されて配置された電圧モニタ137の出力から検出される電圧値V3とV1との比V1/V3の値を、ウエハ106上面の中央側部分におけるエッチングレートと外周側部分におけるエッチングレートとの比が所定の許容範囲内の値になるように調節するように構成されていても良い。
さらにまた、負荷インピーダンス可変ボックス130と導体リング132または絶縁体リング153内の導体膜との間の給電経路を流れる高周波電力の電流の値Aを検出し、整合器129においてその内部の電圧を検出して、これらの乗積が一定あるいは所定の許容範囲内の値となるように負荷インピーダンス可変ボックス130の可変コイル133の電圧値VLcを調節することもできる。ただし、本実施例では第2の高周波電源127からの出力値Pfは所定の許容範囲内の値に調節され、整合器129において負荷の変化に対応してインピーダンスが整合される。電流値Aと整合器129の電圧値との乗積が一定となるように調節することで、上部サセプタ151を介した導体リング132または導体膜とプラズマとの間の静電容量値Cvを有した部分に印加される局所的でエッチングレート等処理の特性や加工形状に大きく影響する部分のパワーのことである。
さらに、V3とV1との相乗効果によりウエハ106の外周縁部のシース160の厚さが増減することから、これを用いてウエハ106の外周縁部のエッチングレートを調節することもできる。すなわち、エッチングレートを補正すべき量(検出された処理中の任意の時刻でのエッチングレートと目標となるエッチングレートとの差)と電圧値V1の変化量との関係は、以下の式(1)に示すような関係となることが、発明者らの検討により判明した。
ΔER=K×(V3×ΔV1)×Ks+B (1)
ここで、ΔER=処理中の任意の時刻でのエッチングレートと目標となるエッチングレートとの差、K=比例定数、KS=V3のシース160の厚さへの影響の大きさを示す比例定数、B=定数、ΔV1=所期のエッチングレートを実現するための制御量である。一般的に電圧の定数乗がシース160の厚さに寄与することが知られており、この定数乗をKsとして表した。
発明者らによれば、検討の結果、ウエハ106の外周縁側部分のエッチングレートの補正に(V3×V1)の定数乗がエッチングレートの補正量に比例するものであることが判った。このことから、所望のエッチングレートの補正量を得るために、制御装置180が必要なV1の変化量を式(1)を用いて求め、当該V1の変化量を実現できるVLcあるいは高周波電源127のPfとなるようにこれらを制御することで、エッチングレートの値とその分布を目標のものに近づける、あるいはこれからのズレを低減することができる。
次に、ユーザが本実施例のプラズマ処理装置を使用する際に表示されるユーザインターフェースについて図13を用いて説明する。図13は、図1に示す実施例に係るプラズマ処理装置に備えられた表示器が表示する画面の一例を示す図である。
このような表示によるユーザインターフェースを用いて、上記実施例の使用者は、外周側部分のレートモードを自動制御かマニュアル制御か切り替え、オートモードではウエハ106の外周側部分のレートを中心側部分のレートに比べて下げるのか、上げるのか、あるいは等しくするのかを選択する。また、そのレート比率を設定して、サセプタ113の消耗限界を設定することで、その消耗限界になればサセプタ交換アラームが自動で表示されるシステムである。
また、マニュアルモードでは、ウエハ外周側の領域でのレートを中心側の領域でのレートに比べ上げるか下げるか等しくするかを選択した後に、可変コイル133のインダクタンス値(電圧値)VLcを直接的に設定し、直接VLcを一定に調節される。また、本実施例においてモニタ上には、オートモードでもマニュアルモードでも、消耗量を表すCvの値、及びサセプタ113内部の導体リング132の電位Vppを表示することができる。
次に、上記実施例の別の変形例について図14を用いて説明する。図14は、図1に示す実施例に係るプラズマ処理装置のサセプタ近傍の別の変形例の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。
本例では、第2の高周波電源と導体リング132または絶縁体リング153内の導体膜との間の給電経路上の導体リング132または導体膜と負荷インピーダンス可変ボックス130との間の箇所に、整合器332を介して第3の高周波電源333からの高周波電力が供給される給電経路と接続する部分を有している。この接続部は電圧モニタ136が;接続された箇所と負荷インピーダンス可変ボックス130との間に配置されている。
本変形例では、第3の高周波電源333の高周波電力は第1または第2の高周波電源のものの10倍以上大きな周波数が用いられており、当該電力によって処理室104内にプラズマを生成可能な構成を備えている。すなわち、このような構成によれば、静電容量170の値Cvによるインピーダンスは相対的には小さくなるため、処理室104の上方から供給された電界または磁界を用いて形成されたプラズマ116とは別に、ウエハ106の外周側の部分及び上部サセプタ151上方に第2のプラズマ331が生成される。
この際に、可変コイル133の電圧値VLc133が第3の高周波電源333から供給されたた高周波電力を遮断して整合器129及び第2の高周波電源127の側に流れないようにすることのできるインダクタンス値を有している。
第2のプラズマ331は、ウエハ106の上方であってその中央部上方から外周縁の近傍およびその外周側の上部サセプタ151の上方までの処理室104内に生成されるプラズマであり、その強度や密度の値とその分布は上記実施例の構成の何れかまたはこれらの組み合わせの構成によって調節される。この構成により、本例のプラズマ処理装置は、ウエハ106上面の中央部から外周側部分までの広い範囲で、エッチングレート等の処理の特性の値とその分布や処理後に得られる加工形状の寸法とそのバラつきを所期の範囲内のものとすることが可能となる。
また、上記実施例において第1の高周波電源124からの電力が供給される導電体膜111に代えて、その面内方向について複数の領域に分けられた導電体膜を備え、中心側の領域に配置された導電体膜に給電経路を電気的に接続してこれを通して第1の高周波電源124からの高周波電力を供給し、中心側の領域の外周側でこれを囲んだリング状の外周側の領域内に配置された外周側のリング状導電体膜にこれと電気的に接続された給電経路を通して第3の高周波電源333からの上記プラズマ形成用の高周波電力を供給する構成を備えても良い。このような構成によっても、第2のプラズマ331がウエハ106上面の外周側の部分の上方に形成され、リング状の導電体膜に供給される高周波電力を調節することにより、第2のプラズマの強度や密度の値とその分布とを所期のものに調節でき、ウエハ106の加工形状の寸法や処理の特性の値あるいはその分布をバラつきを低減して、処理の歩留まりを向上することができる。
本実施例では、被エッチング材料をシリコン酸化膜とし、エッチングガス及びクリーニングガスとして例えば、前述の四フッ化メタンガス、酸素ガス、トリフルオロメタンガスを用いたが、被エッチング材料としては、シリコン酸化膜だけでなく、ポリシリコン膜、フォトレジスト膜、反射防止有機膜、反射防止無機膜、有機系材料、無機系材料、シリコン酸化膜、窒化シリコン酸化膜、窒化シリコン膜、Low-k 材料、High-k 材料、アモルファスカーボン膜、Si 基板、メタル材料等においても同等の効果が得られる。
またエッチングを実施するガスとしては、例えば、例えば、塩素ガス、臭化水素ガス、四フッ化メタンガス、三フッ化メタン、二フッ化メタン、アルゴンガス、ヘリウムガス、酸素ガス、窒素ガス、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、アンモニア、八フッ化プロパン、三フッ化窒素、六フッ化硫黄ガス、メタンガス、四フッ化シリコンガス、四塩化シリコンガス、塩素ガス、臭化水素ガス、四フッ化メタンガス、三フッ化メタン、二フッ化メタン、アルゴンガス、ヘリウムガス、酸素ガス、窒素ガス、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、アンモニア、八フッ化プロパン、三フッ化窒素、六フッ化硫黄ガス、メタンガス、四フッ化シリコンガス、四塩化シリコンガスヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガス、キセノンガス、ラドンガス等が使用できる。
上記の例では、マイクロ波ECR放電を利用してエッチング処理を行うプラズマ処理装置の例を説明したが、他の放電(有磁場UHF放電、容量結合型放電、誘導結合型放電、マグネトロン放電、表面波励起放電、トランスファー・カップルド放電)を利用したプラズマ処理装置、例えばプラズマCVD装置、アッシング装置、表面改質装置等においても、上記の構成を適用することにより同様の作用効果が奏される。