JP2019163496A - ステンレス鋳片の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
更に、加工が厳しい用途に使用される場合は、Siを添加せずに、侵入型元素であるCやN(窒素)を固定するためにTi(チタン)を添加して、低Si−Ti含有の高純度ステンレス鋼(以下、単に「低Si−Ti含有鋼」とも記載)とすることが多い。
耐食性の向上には、鋼成分の影響が大きいが、さびの起点となる異物(介在物など)による初期の発銹性の改善も有効である。
初期の発銹については、異物と地金との界面でのさびの発生が課題であり、特に介在物がさびの起点となり易い。例えば、CaS(硫化カルシウム)は、さびの起点となるため、CaS介在物の生成抑制が必要である。
以下、従来のステンレス鋼の製造方法を示す。
また、特許文献2には、さびの起点となる介在物、特にCaO系酸化物の量とCaO濃度を、所定値以下に制御する技術が開示されている。
そして、特許文献3には、連続鋳造時のノズル閉塞(ノズル詰まり)を防止する技術の代表例が開示されており、金属Ca分を添加して介在物の組成を低融点化することを、主要な要件としている。
特に、脱硫に影響を与えるMnO、FeO、SiO2の濃度が高い場合には、十分な脱硫効果を得られないことが、本発明者らの知見により判明した。
更に、ステンレス鋳片を連続鋳造する際にノズル閉塞が発生する場合があり、生産性と歩留の低下の課題がある。また、ノズル閉塞の発生により、連続鋳造用鋳型内の溶鋼流が不安定となり、溶鋼湯面に浮上している介在物が溶鋼中に巻き込まれ、介在物起因によるさびが発生することも、強く懸念される。
また、介在物中のCaO濃度を低く制御する場合には、連続鋳造時にノズル閉塞が多発することも判明した。
また、特許文献5には、Ti添加の含クロム鋼において、Al添加によるAl2O3系介在物の悪影響を排除するためTiによる脱酸を行い、更に、Ti酸化物によるノズル閉塞を防止するためにCa添加を行い、溶鋼中の脱酸生成物に起因した介在物を、CaO:5〜50wt%、Ti酸化物(TiO2換算):20〜90wt%、Al2O3:50wt%以下の複合酸化物主体のものとする方法が提案されている。なお、特許文献5には、Tiの添加を、撹拌動力密度が10W/トン以上の溶鋼撹拌下で行うこと、更に、撹拌するためのガス吹き込み量として0.2〜5NL/分/トンが、好適としている。
また、特許文献5には、主としてS濃度が0.003質量%超の実施例が記載されているが、このレベルのS濃度であれば鋼材中にMnSが析出するため、発銹性を悪化させる。また、前記した特許文献2、3と同様に、介在物中のCaO濃度が50質量%以下であっても、CaSが生成する場合があり、発銹性に課題が残る。
前記取鍋精錬での脱硫及び脱酸工程後の合金調整時に、
Tiを溶鋼に添加する前に、溶鋼中のAl濃度を0.04質量%以上とし、かつ、前記取鍋内スラグの組成を、
1.2≦(質量%CaO)/(質量%Al2O3)≦1.5、
5質量%≦(質量%MgO)≦10質量%、
(質量%SiO2)≦4.0質量%、及び、
(質量%CaO)+(質量%Al2O3)+(質量%MgO)≧95質量%、とし、
前記Tiを溶鋼に添加した後に、前記取鍋の底吹き不活性ガス流量Q(NL/分/トン)と溶鋼の撹拌時間t(分)との積が、15(NL/トン)以上40(NL/トン)以下となるように、溶鋼を撹拌する。
ここで、溶鋼に添加するTiは、金属Tiでもよく、また、Ti合金でもよい。
本発明の課題は、製造されるステンレス鋼(鋳片)の耐食性の向上と連続鋳造時のノズル閉塞の抑制、更には防止である。特に、本発明は、特許文献4の技術を用いてもノズル閉塞が解消できなかった低Si−Ti含有の高純度ステンレス鋼の製造に関する。
例えば、Caを含む介在物には、1)スラグ粒子を巻き込んだもの、2)スラグ中のCaOと溶鋼中のAlとが反応して溶鋼中に溶け出したCa分が、Al2O3と反応してCaO−Al2O3系介在物となるもの、がある。
なお、最終的な介在物の組成は、Al濃度とスラグ組成(CaO濃度)で略決まる。
また、スラグ中のCaO濃度の低下は、脱硫能を持つ成分の濃度を低下させることになるため、S濃度の低減に悪影響を及ぼす原因にもなり得る。
上記の課題を解決した特許文献4の技術を用いても、低Si−Ti含有の高純度ステンレス鋼では、完全な課題解決に至らなかった。
以上のことから、本発明者らは、低Si−Ti含有の高純度ステンレス鋼の製造に際し、耐食性の向上と連続鋳造時のノズル閉塞の抑制(更には、防止)とが、両立し難い課題であることを知見し、本発明に想到した。
取鍋精錬での脱硫及び脱酸工程後の合金調整時に、
Tiを溶鋼に添加する前(以下、「Ti添加前」とも記載)に、溶鋼中のAl(金属Al)濃度を0.04質量%以上とし、かつ、取鍋内スラグの組成を、1.2≦(質量%CaO)/(質量%Al2O3)≦1.5、5質量%≦(質量%MgO)≦10質量%、(質量%SiO2)≦4.0質量%、及び、(質量%CaO)+(質量%Al2O3)+(質量%MgO)≧95質量%、とし、
Tiを溶鋼に添加した後(以下、「Ti添加後」とも記載)に、取鍋の底吹き不活性ガス流量Q(NL/分/トン)と溶鋼の撹拌時間t(分)との積が、15(NL/トン)以上40(NL/トン)以下となるように、溶鋼を撹拌する方法である。
なお、上記した連続鋳造は、取鍋精錬により溶製した溶鋼(撹拌後の溶鋼)をタンディッシュに供給した後、このタンディッシュ下部に設けられたノズル(浸漬ノズル)を介して鋳型(連続鋳造用鋳型)に供給することで行う。また、「(質量%CaO)/(質量%Al2O3)」は「C/A」、「(質量%MgO)」は「M」、「(質量%SiO2)」は「S」、「(質量%CaO)+(質量%Al2O3)+(質量%MgO)」は「C+A+M」とも記載する。
以下、詳しく説明する。
脱硫におけるS濃度は、脱硫能とスラグ滓化性によって決定される。
そこで、耐食性向上のためにスラグ中のCaOを低減し(即ち、C/A≦1.5)、これによって低減した脱硫能はその他の成分の制御により補完し(即ち、S≦4.0質量%、(C+A+M)≧95質量%)、更にはスラグ滓化性の向上によって(即ち、M≦10質量%)、低S濃度を維持することとした。
併せてCaO低減によるノズル閉塞の発生については、スラグのCaO濃度の低減に限界値を設けて(即ち、1.2≦C/A)、抑制した。
更に、溶鋼中の金属Al濃度を所定量確保すること(即ち、Al≧0.04質量%)、並びに、スラグのMgO濃度を制御することで(即ち、5質量%≦M)、ノズル閉塞を抑制した。
詳細は、以下の通りである。
これに対し、上記したように、溶鋼中の金属Al濃度とスラグのMgO濃度を所定量確保すると、金属AlによるMgOの還元によって溶鋼中に生成した金属Mgにより、スピネル介在物の増加とMgO介在物の生成とを促進でき、これら介在物が主体となり、Al2O3単独の介在物が減少するため、ノズル閉塞を抑制できる。
Ti添加により生成した、ノズルを閉塞させ易いAl2O3介在物の除去と組成制御のために、Ti添加前のスラグ中のMgO濃度を高めた条件で(即ち、5質量%≦M)、Ti添加後の撹拌処理を適正な条件(15≦Q×t≦40)で行うことにより、介在物の除去とノズル閉塞を生じない組成へ、制御可能となる。
詳細は、以下の通りである。
なお、図1に示すように、Q×t<15(NL/トン)の領域(図1中の点線の下側領域)では、撹拌が不十分でAl2O3が残存してしまい、ノズル閉塞を防止することができない。一方、Q×t>40(NL/トン)の領域(図1中の実線の上側領域)では、スラグとの反応が進行し、介在物中のCaO濃度が増加して、耐食性を劣化させるCaSの増加につながるため、ノズル閉塞には効果的ではあるが、耐食性(耐発銹性)には課題が残る。
上記した図1は、溶鋼1トンあたりの取鍋の底吹き不活性ガス(Arガス)流量Q(NL/分/トン)と、Al脱酸して合金調整した後(Ti合金を添加した後)の溶鋼の撹拌時間t(分)との関係を示している。
上記したTi添加後の撹拌処理の適正な条件(即ち、15≦Q×t≦40)の中でも、図1に示すように、底吹き不活性ガス流量を一定(5(NL/分/トン))以上にして、図2に示すように、溶鋼を強撹拌することで、スラグ/メタル反応の平衡値以上に、介在物中のMgO濃度が増加する現象(スラグ/メタル反応は、本来はスラグ組成へと徐々に近づく反応であるが、CaOの反応がMgOの反応に比べて遅いため、強撹拌することでMgO濃度のみが急激に変化する現象)を、本発明者らは見出した。
即ち、底吹き不活性ガス流量を上記した流量以上にすることで、短時間で効率的にAl2O3介在物をMgOリッチな介在物へと制御することが可能となる。一方、底吹き不活性ガス流量が10(NL/分/トン)を超えた場合、常用される取鍋の形状や浴深によっては、スラグの巻き込みが顕著になる場合があり、スラグを巻き込む確率が高まって、用途によってはさび発生の起点となる懸念がある。
なお、図2は、溶鋼の撹拌条件(強撹拌又は弱撹拌)が、介在物中のMgO濃度の経時変化に及ぼす影響を示した概念図であり、縦軸は上方向にMgO濃度の上昇を、また、横軸は右方向に時間の経過を、それぞれ示している。ここで、平衡MgO濃度とは、スラグと溶鋼の各組成が決まれば、最終的に到達することとなるMgO濃度を意味する。
Ti添加前の溶鋼中の金属Al濃度を高めると、耐食性は従来よりも改善できるものの、本発明の効果を低減することになるため、上限値を設けると更によい(即ち、Al≦0.10質量%)。
ステンレス鋳片のS濃度の低下により、ステンレス鋳片の耐食性を劣化させるCaS介在物を減少できる。
そこで、ステンレス鋳片のS濃度を0.003質量%以下(好ましくは、0.002質量%以下、更に好ましくは、0.0015質量%以下)とした。
なお、ステンレス鋳片のS濃度は、低ければ低いほど耐食性を向上できるため、下限値については特に規定していないが、例えば、0.0005質量%程度である。
Si濃度が0.2質量%以下(下限値は0.03質量%程度)、Ti濃度が0.1質量%以上0.4質量%以下のステンレス鋳片を製造する際に、耐食性の向上と連続鋳造時のノズル閉塞の抑制(更には、防止)とが、両立し難いという課題がある。
ここで、Ti濃度の下限値については、0.12質量%、更には0.15質量%とすることで、上記した課題が顕著になるため、本発明の効果がより顕著になる。一方、加工性を必要とする鋼種においては、おおよそ0.4質量%が上限値であるが、通常であれば0.3質量%程度が常用される。
溶鋼中のAl(金属Al)は、後述するスラグ中のMgOを還元するため、前記したように、ノズル閉塞の抑制が可能となる。
そこで、この効果を得るためには、溶鋼中のAl濃度を0.04質量%以上にする必要がある。
しかし、0.10質量%を超えると、溶鋼中の金属Alはスラグ中のCaOを還元し、溶鋼中に溶出する金属Caが介在物中のCaO濃度を高め、介在物の一部がCaO−Al2O3−MgO介在物となる。この介在物は、ノズル閉塞の原因にはならず、また、CaS介在物程度の顕著な発銹の起点にはならないものと考えられるものの、用途によっては発銹起点になり得る懸念がある。
即ち、Ti添加前の溶鋼中のAl濃度を0.10質量%以下とすることで、CaO−Al2O3−MgO介在物の生成を抑制でき、本発明の効果が顕著になる。
C/Aは、相対的なCaO濃度を示す指標であり、CaSの生成を抑制するため、1.5以下(好ましくは、1.4以下)とした。
また、C/Aを低減し過ぎると、相対的にスラグ中のAl2O3濃度が増加し、溶鋼中のAl2O3単独の介在物の個数が増加して、ノズル閉塞が発生するため、下限値を1.2とした。
スラグ中のMgOは、溶鋼中の金属Alと反応することで、上記したように、ノズル閉塞の抑制が可能となる。このため、スラグ中のMgO濃度の下限値を、前記した特許文献4では3質量%としているが、本発明ではTi添加後の組成変化を促進するために5質量%とした(MgOリッチな介在物を生成させるため)。
しかし、スラグ中のMgO濃度が高過ぎると、スラグの滓化性が低下し、溶鋼のS濃度が増加する原因となるため、上限値を10質量%とした。
SiO2は、脱硫能の維持向上には有効であると言われている。
本発明者らは、スラグ中のAl2O3濃度とSiO2濃度に対する脱硫能の依存性を調査した。その結果、脱硫能は、Al2O3濃度の変動よりもSiO2濃度の変動に敏感であることが判明した。
従って、SiO2濃度の上限値を4.0質量%としたが、特に、より安定して脱硫能を向上するには、3.5質量%以下、更には3.0質量%以下にすることが好ましい。
以上のことから、下限値については特に規定していないが、例えば、0.5質量%程度である。
スラグのCaO濃度を低減することで、スラグの脱硫能は低下しうるが、(C+A+M)を95質量%以上とすることで、脱硫能の低下抑制や維持向上ができる。詳細には、FeO、MnO、Cr2O3、SiO2等の脱硫能に悪影響を与える成分の質量割合を、相対的に低下させることで、脱硫能の低下抑制や維持向上ができる。
なお、上限値については、上記したSiO2濃度等によって決まる。
Ti添加後の撹拌を強めることで、介在物の浮上除去が促進されると共に、スラグ/メタル反応が促進される。
ここで、撹拌条件の下限は、MgOリッチな介在物となる必要最低限なガス量であり、上限は、スラグ中のCaOの反応によりCaO系介在物が増加して耐食性の劣化が生じること、更に、ガス使用量の増加と共にコスト増加になることから、規定している。
Ti添加後の溶鋼の撹拌を強めること(即ち、Q≧5(NL/分/トン))で、スラグ/メタル反応、特にMgOの反応が促進され、Al2O3介在物は短時間でMgOリッチな介在物に組成変化する。なお、溶鋼の撹拌を強め過ぎると(Q>10(NL/分/トン))と、前記したように、スラグを巻き込む確率が高まって、用途によってはさび発生の起点となる懸念がある。
この撹拌に使用する不活性ガスには、その一例として希ガスがあり、工業的によく利用されているものとして、Ar(アルゴン)ガスがある。
転炉での脱炭吹錬後に、二次精錬装置(脱ガス装置)を用いて極低炭素化のために更なる脱炭処理を行った溶鋼を、二次精錬装置(CAB)を用いてスラグ還元(取鍋内スラグ中のCr酸化物の還元)と脱酸を行い、引き続き脱硫処理を行った。この脱硫処理した溶鋼の合金成分を調整(以上、二次精錬)した後、溶製した溶鋼を、取鍋からタンディッシュへ供給し、連続鋳造機で鋳造(連続鋳造)して、ステンレス鋳片(鋳片)を製造した。
取鍋底部からArガスを用いたバブリングを行いながら、CaOとAlを添加した。なお、ここでは、スラグ還元のために十分な撹拌時間を確保した後、脱硫処理のためにCaOやAlなどの調整を行った。そして、脱硫処理の完了後にサンプリングして、溶鋼成分やスラグ組成を分析した。
更に、合金の添加に際し、最後にTi合金を添加した後、溶鋼に所定の撹拌処理(Arガスを用いた取鍋の底吹き)を行って、得られた溶鋼をタンディッシュに供給した。
舟型のタンディッシュに溶鋼を受けて、1ストランドの湾曲型の連続鋳造機で鋳造した。ここで、タンディッシュから連続鋳造機の鋳型に溶鋼を注入する浸漬ノズルは、アルミナグラファイトを主成分とし、溶鋼の流量制御を行うスライディングノズルにより、スループットを2トン/分として、1チャージあたりの鋳造時間を80分とした(取鍋内の溶鋼量:160トン)。
・浸漬ノズルの閉塞に関する指標
○:スライディングノズルの開度は一定で、浸漬ノズルの閉塞が全くない場合。
△:1チャージの鋳造中にスライディングノズルの開度が徐々に大きくなり、浸漬ノズルに閉塞傾向がみられる場合(実用可能)。
×:1チャージの鋳造中に浸漬ノズルの閉塞が大きくなったため、浸漬ノズルの洗浄又は交換を実施した場合(実用不可)。
JIS Z 2371に準拠した中性塩水噴霧試験において、暴露を96時間行った後の腐食面積率で、以下のように指標化した。
○:0.05%以下の場合。
△:0.05%超1%以下の場合(耐食性がやや劣化するが実用可能)。
×:1%超の場合(実用不可)。
溶鋼には、表1に示す成分を有する高純度のフェライト系ステンレス溶鋼を用いた。
なお、表1に記載の溶鋼成分は、上記した合金成分調整後(取鍋精錬後)にサンプリングし分析して得られた結果である。また、表2に記載のTi添加前の取鍋内スラグの組成と溶鋼中のAl濃度は、前記した脱硫処理の完了後にサンプリングし分析して得られた結果であり、Ti添加後の撹拌条件は、溶鋼に行った撹拌処理の条件である。
表2に記載のように、実施例1〜13は、Ti添加前の溶鋼中のAl濃度を適正範囲である下限値以上(0.04質量%以上)とし、Ti添加後の溶鋼の撹拌条件を適正範囲内(15〜40(NL/トン))としたためノズル閉塞の抑制が可能となり、また、表1に示すように、溶鋼中のS濃度(即ち、ステンレス鋳片のS濃度、以下同様)を0.003質量%以下に低減できたため、ステンレス鋳片の耐食性を劣化させるCaS介在物を減少できた。
従って、実施例1〜13の評価結果はいずれも、ノズル閉塞と耐食性が実用可能以上であった。
この実施例7のように、Arガス流量を最適範囲の下限値以上にすることで、Ti添加後の溶鋼の撹拌が強められ、MgOの反応が促進されて、Al2O3介在物を短時間でMgOリッチな介在物に組成変化させることができる。このため、実施例7は、Arガス流量が最適範囲の下限値未満である実施例9よりも、ノズル閉塞を抑制できた(「○」)。
一方、実施例8のように、Arガス流量を最適範囲の上限値以下にすることで、スラグの巻き込みを抑制できる。このため、実施例8は、Arガス流量が最適範囲の上限値超えである実施例10よりも、耐食性を向上できた(「○」)。
この実施例11のように、 Ti添加前の溶鋼中のAl濃度を最適範囲である上限値以下にすることで、CaO−Al2O3−MgO介在物の生成を抑制できる。このため、実施例11は、Ti添加前の溶鋼中のAl濃度が最適範囲の上限値超である実施例12よりも、耐食性を向上できた(「○」)。
前記したように、脱硫能は、Al2O3濃度の変動よりもSiO2濃度の変動に敏感であり、SiO2は、脱硫能の維持向上に有効である。このため、実施例1、4、13から明らかなように、表2に示すスラグのSiO2濃度が3.0〜4.0質量%程度の範囲で変動しただけで、表1に示す溶鋼中のS濃度が0.0020質量%(実施例13)〜0.0028質量%(実施例4)まで、大きく変動した(実施例1、13の耐食性が実施例4よりも向上した)。
このように、溶鋼中のAl濃度を低減し過ぎると、前記したように、スラグ中のMgOを還元するためのAl量が不足するため、表2に示すように、ノズル閉塞が発生した(「×」)。
このように、スラグの「CaO濃度+Al2O3濃度+MgO濃度」を低減し過ぎると、FeOやMnOのような脱硫能に悪影響を与える成分の質量割合が、相対的に増加する。このため、脱硫効率が悪化し、表1に示すように、溶鋼中のS濃度が適正範囲の上限値を超え(0.0040質量%)、表2に示すように、耐食性が悪化した(「×」)。
比較例3のように、スラグの「CaO濃度/Al2O3濃度」を低減し過ぎると、相対的にスラグ中のAl2O3濃度が増加するため、溶鋼中のAl2O3単独の介在物の個数が増加して、ノズル閉塞が発生した(「×」)。また、スラグの脱硫能もやや低下した。
一方、比較例4のように、スラグの「CaO濃度/Al2O3濃度」を増加し過ぎると、前記したように、CaSの生成を抑制できず、その結果、耐食性が悪化した(「×」)。
このように、スラグの「SiO2濃度」が増加し過ぎることで、スラグの脱硫能が不十分となり、表1に示すように、溶鋼中のS濃度が増加して適正範囲の上限値を超え(0.0050質量%)、その結果、耐食性が悪化した(「×」)。また、ノズルも閉塞傾向にあった(「△」)。
比較例6のように、スラグの「MgO濃度」を低減し過ぎると、前記したように、溶鋼中の金属Alと反応するMgO量が不足し、Al2O3主体の介在物が生成して、ノズル閉塞が発生した(「×」)。
一方、比較例7のように、スラグ中のMgO濃度が高過ぎると、スラグの滓化性が低下して脱硫能が低下し、溶鋼中のS濃度が増加して適正範囲の上限値を超え(0.0045質量%)、その結果、耐食性が悪化した(「×」)。
比較例8のように、撹拌条件を弱め過ぎると、撹拌が不十分となってAl2O3が残存し、ノズル閉塞が発生した(「×」)。
一方、比較例9のように、撹拌条件を強め過ぎると、スラグとの反応が進行し、介在物中のCaO濃度が増加して、耐食性を劣化させるCaSの増加につながり、耐食性が悪化した(「×」)。
Claims (3)
- 取鍋内スラグ中のCr酸化物を還元する工程と、脱硫及び脱酸を行う工程とを有する取鍋精錬により溶製した溶鋼を連続鋳造して、C濃度が0.01質量%以下、S濃度が0.003質量%以下、Si濃度が0.2質量%以下、かつ、Ti濃度が0.1質量%以上0.4質量%以下のステンレス鋳片を製造する方法であって、
前記取鍋精錬での脱硫及び脱酸工程後の合金調整時に、
Tiを溶鋼に添加する前に、溶鋼中のAl濃度を0.04質量%以上とし、かつ、前記取鍋内スラグの組成を、
1.2≦(質量%CaO)/(質量%Al2O3)≦1.5、
5質量%≦(質量%MgO)≦10質量%、
(質量%SiO2)≦4.0質量%、及び、
(質量%CaO)+(質量%Al2O3)+(質量%MgO)≧95質量%、とし、
前記Tiを溶鋼に添加した後に、前記取鍋の底吹き不活性ガス流量Q(NL/分/トン)と溶鋼の撹拌時間t(分)との積が、15(NL/トン)以上40(NL/トン)以下となるように、溶鋼を撹拌することを特徴とするステンレス鋳片の製造方法。 - 請求項1記載のステンレス鋳片の製造方法において、前記取鍋の底吹き不活性ガス流量Qが5(NL/分/トン)以上10(NL/分/トン)以下であることを特徴とするステンレス鋳片の製造方法。
- 請求項1又は2記載のステンレス鋳片の製造方法において、前記Tiを溶鋼に添加する前の溶鋼中のAl濃度を0.10質量%以下とすることを特徴とするステンレス鋳片の製造方法。
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