JP2019157067A - 熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる部材 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる部材 Download PDF

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啓志 大島
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Abstract

【課題】極性材料との接着性、および成形性に優れ、極性材料と接合した際にも、極性材料を汚染することのない芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体を含む組成物、およびそれからなる部材を提供する。【解決手段】芳香族ビニル化合物単位からなる少なくとも1個の重合体ブロック(a−1)と炭素−炭素不飽和二重結合の少なくとも一部が水素添加されていてもよい共役ジエン化合物単位からなる少なくとも1個の重合体ブロック(a−2)とを有する芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)、アクリル酸エステル単位からなる少なくとも1個の重合体ブロック(b−1)とメタクリル酸エステル単位からなる少なくとも1個の重合体ブロック(b−2)とを有するアクリル系ブロック共重合体(B)、および軟化剤(C)を、下記式(1)および(2)を満たす割合で含有する熱可塑性樹脂組成物0.05≦W(B)/W(A)≦19 (1)0≦W(C)/(W(A)+W(B)+W(C))≦0.5 (2)(式(1)および(2)中、W(A)、W(B)およびW(C)は、それぞれ前記熱可塑性樹脂組成物中の芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)、アクリル系ブロック共重合体(B)および軟化剤(C)の、含有量(質量基準)を示す。)【選択図】なし

Description

本発明は熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる部材に関する。
芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物は、従来から、成形性に優れることから、射出成形、押出成形などの熱溶融成形をした成形体として、家電製品、電子部品、自動車部品、機械部品などの種々の部材に利用されてきている。これら部材では、物性改善などを目的として、異なる材料同士を接着または複合化した部材で使用する場合があり、例えば、二色成形、共押出などにより所望の成形体として得ることが求められる。
しかし、芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体は、ABS樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびアクリル系樹脂などの極性樹脂、アルミ板などの無機材料に代表される極性材料との接着性が必ずしも十分ではなかった。このような問題を解決する方法として、芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体に極性の高い粘着付与樹脂等を添加した組成物を使用する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−089778号公報
特許文献1の方法は、極性材料との接着性が改善する傾向にはあるものの、その粘着付与樹脂に由来して極性材料を汚染してしまう点で問題があった。
しかして、本発明の目的は、極性材料との接着性、および成形性に優れ、極性材料と接合した際にも、極性材料を汚染することのない芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体を含む組成物、およびそれからなる部材を提供することである。
本発明によれば、上記目的は、
[1]芳香族ビニル化合物単位からなる少なくとも1個の重合体ブロック(a−1)と炭素−炭素不飽和二重結合の少なくとも一部が水素添加されていてもよい共役ジエン化合物単位からなる少なくとも1個の重合体ブロック(a−2)とを有する芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)、
アクリル酸エステル単位からなる少なくとも1個の重合体ブロック(b−1)とメタクリル酸エステル単位からなる少なくとも1個の重合体ブロック(b−2)とを有するアクリル系ブロック共重合体(B)、および
軟化剤(C)を、下記式(1)および(2)を満たす割合で含有する熱可塑性樹脂組成物0.05≦W(B)/W(A)≦19 (1)
0≦W(C)/(W(A)+W(B)+W(C))≦0.5 (2)
(式(1)および(2)中、W(A)、W(B)およびW(C)は、それぞれ前記熱可塑性樹脂組成物中の芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)、アクリル系ブロック共重合体(B)および軟化剤(C)の、含有量(質量基準)を示す。);
[2]前記芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)中の重合体ブロック(a−1)の含有量が5〜40質量%である[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物;
[3]前記アクリル系ブロック共重合体(B)中の重合体ブロック(b−2)の含有量が10〜55質量%である[1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物;
[4]前記アクリル系ブロック共重合体(B)の230℃、荷重21.6Nで測定したメルトフローレートが35g/10min以上である[1]〜[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物;
[5]前記アクリル系ブロック共重合体(B)のISO7619−1に規定されるタイプA硬度が10〜60である[1]〜[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物;
[6]前記アクリル系ブロック共重合体(B)の重合体ブロック(b−1)を構成するアクリル酸エステル単位が、一般式CH2=CH−COOR1(X)(式(X)中、R1は炭素数4〜6の有機基を表す)で示されるアクリル酸エステル(i−1)単位および一般式CH2=CH−COOR2(Y)(式(Y)中、R2は炭素数7〜12の有機基を表す)で示されるアクリル酸エステル(i−2)単位からなり、かつ、前記アクリル酸エステル(i−1)単位および前記アクリル酸エステル(i−2)単位の質量比(i−1)/(i−2)が90/10〜10/90である[1]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物;
[7][1]〜[6]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる部材;
[8]粘着性を有する[7]に記載の部材;
[9]押出成形により得られる[7]または[8]に記載の部材;
[10]射出成形により得られる[7]または[8]に記載の部材;
を提供することにより達成される。
本発明によれば、極性材料との接着性、および成形性に優れ、極性材料と接合した際にも、極性材料を汚染することのない芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体を含む組成物、およびそれからなる部材を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸エステル」は、「メタクリル酸エステル」と「アクリル酸エステル」との総称であり、また「(メタ)アクリル」は、「メタクリル」と「アクリル」との総称である。
[芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)]
本発明において用いる芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)は、芳香族ビニル化合物単位からなる少なくとも1個の重合体ブロック(a−1)と炭素−炭素不飽和二重結合の少なくとも一部が水素添加されていてもよい共役ジエン化合物単位からなる少なくとも1個の重合体ブロック(a−2)とを有する。
上記重合体ブロック(a−1)の構成単位となる芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、tert−ブチルスチレン、4−(1−アダマンチル)スチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレンおよびビニルピリジンなどが挙げられる。
これらの中でも、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形性を損なわずに耐熱性、耐久性を向上させる観点から、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、tert−ブチルスチレン、4−(1−アダマンチル)スチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンが好ましく、スチレンおよびα−メチルスチレンがより好ましい。重合体ブロック(a−1)は、これら芳香族ビニル化合物の1種から構成されていても、2種以上から構成されていてもよい。また、芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)は、重合体ブロック(a−1)を2つ以上有することが耐久性を高める観点から好ましい。その場合、それら重合体ブロック(a−1)は、同一であっても異なっていてもよい。
重合体ブロック(a−1)の数平均分子量(Mn)は特に限定されないが、2,500〜100,000の範囲にあることが好ましく、3,000〜50,000の範囲にあることがより好ましい。重合体ブロック(a−1)のMnがこの範囲より小さい場合には、得られる芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)の凝集力が不足する場合がある。また、重合体ブロック(a−1)のMnがこの範囲より大きい場合には、得られる芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)の溶融粘度が高くなり、熱可塑性樹脂組成物を製造する際の生産性に劣る場合がある。なお、芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)に複数の重合体ブロック(a−1)が含まれる場合には、それぞれの重合体ブロックが、上記Mnの範囲にあることが望ましい。また、本明細書におけるMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により求めた標準ポリスチレン換算の数平均分子量である。重合体ブロック(a−1)中に含まれる芳香族ビニル化合物単位の割合は、重合体ブロック(a−1)中60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
上記重合体ブロック(a−1)のガラス転移温度は70〜180℃であることが好ましく、80〜150℃であることがより好ましく、90〜120℃であることがさらに好ましい。ガラス転移温度がこの範囲にあると、熱可塑性樹脂組成物の通常の使用温度においてこの重合体ブロック(a−1)は物理的な疑似架橋点として作用し、機械物性、耐久性、耐熱性に優れる。なお、ガラス転移温度は、DSC測定で得られた曲線の外挿開始温度である。
上記重合体ブロック(a−2)の構成単位となる共役ジエン化合物としては、例えばブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、ミルセンおよびクロロプレンなどが挙げられる。
これらの中でも、得られる熱可塑性樹脂組成物の柔軟性が高まる点から、イソプレン、ブタジエンまたはこれらの混合物が好ましい。重合体ブロック(a−2)は、これら共役ジエン化合物の1種から構成されていても、2種以上から構成されていてもよい。なお、重合体ブロック(a−2)が2種以上の共役ジエン(例えばブタジエンとイソプレン)から構成されている場合は、それらの結合形態は、完全交互、ランダム、テーパー、一部ブロック状、またはそれら2種以上の組み合わせであってもよい。
重合体ブロック(a−2)に含まれる共役ジエン化合物単位のミクロ構造は特に限定されないが、例えば、共役ジエン化合物単位がイソプレン単位である場合には、その1,4−結合量が70モル%以上であることが望ましく。共役ジエン化合物単位がブタジエン単位である場合には、その1,4−結合量が40〜80モル%であることが望ましい。
重合体ブロック(a−2)中に含まれる共役ジエン化合物単位の割合は、重合体ブロック(a−2)中60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
また、重合体ブロック(a−2)は、共役ジエン化合物単位に加えて、芳香族ビニル化合物単位が含まれていることも好ましい一態様である。重合体ブロック(a−2)に芳香族ビニル化合物単位が含まれている場合には、重合体ブロック(a−2)における芳香族ビニル化合物単位の割合は、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。共役ジエン化合物単位に加えて、芳香族ビニル化合物単位が含まれている場合には、それらの結合形態は、特に制限されず、例えば完全交互、ランダム、テーパー、一部ブロック状、またはそれら2種以上の組み合わせであってもよい。
上記重合体ブロック(a−2)中の共役ジエン化合物単位に含まれる炭素−炭素不飽和二重結合の少なくとも一部は水素添加(水添)されていてもよい。水素添加の方法は、特に制限はなく、未水添のブロック共重合体を製造後、公知の方法により水素添加することにより行うことができる。例えば、水添触媒の存在下、反応および水添触媒に対して不活性なn−ヘキサンやシクロヘキサンなどの不活性有機溶媒に未水添のブロック共重合体を溶解させた状態で、水素を反応させる方法が好ましく用いられる。水添触媒としては、ラネーニッケル;Pt、Pd、Ru、Rh、Niなどの金属をカーボン、アルミナ、珪藻土などの単体に担持させた不均一触媒;遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物、アルキルリチウム化合物などの組み合わせからなるチーグラー系触媒などが用いられる。反応は、通常、水素圧力が0.1〜20MPa、反応温度が20℃〜250℃、反応時間が0.1〜100時間の範囲で行われる。
重合体ブロック(a−2)中の共役ジエン化合物単位に基づく炭素−炭素二重結合の50モル%以上が水素添加されていることが好ましく、70モル%以上が水素添加されていることがより好ましく、90モル%以上が水素添加されていることがさらに好ましい。共役ジエン化合物単位の水素添加率が上記範囲にあることにより、耐久性、耐熱性に優れる熱可塑性樹脂組成物が得られる。なお、重合体ブロック(a−2)における炭素−炭素不飽和二重結合の水素添加率は、例えば、重合体ブロック(a−2)の水素添加前後のヨウ素価測定から算出することができる。
なお、重合体ブロック(a−2)が水素添加されていない未水添の芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)も本発明では使用できる。
上記重合体ブロック(a−2)のガラス転移温度は−100〜30℃であることが好ましく、−90〜20℃であることがより好ましく、−85〜10℃であることがさらに好ましく、−80〜0℃であることが最も好ましい。ガラス転移温度がこの範囲にあると、熱可塑性樹脂組成物として用いた場合、常温での柔軟性を有することができる。
上記重合体ブロック(a−1)および重合体ブロック(a−2)には、本発明の効果を損なわない範囲で、お互いの構成単位が含有されていてもよい。また、必要に応じて他の構成単位を含有してもよい。かかる他の構成単位となる単量体しては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、ペンテン、ヘキセン等のオレフィン系単量体;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基を有するビニル系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル;アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル;ε−カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系単量体、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどが挙げられる。これら単量体を用いる場合は、各重合体ブロックに使用する単量体の全質量に対して、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下の量で使用される。
本発明に用いる芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)は、上記重合体ブロック(a−1)および重合体ブロック(a−2)の他に、必要に応じて他の重合体ブロックを有していてもよい。かかる他の重合体ブロックとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレン、プロピレン、イソブテン、オクテン、酢酸ビニル、無水マレイン酸、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の単量体から構成される重合体ブロックまたは共重合体ブロック;ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサンからなる重合体ブロックなどが挙げられる。
上記芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)は、重合体ブロック(a−1)を「(a−1)」;重合体ブロック(a−2)を「(a−2)」としたときに、一般式:
[(a−1)−(a−2)]n
[(a−1)−(a−2)]n−(a−1)
(a−2)−[(a−1)−(a−2)]n
[(a−1)−(a−2)]n−Z
[(a−2)−(a−1)]n−Z
(式中、nは1〜30の整数、Zはカップリング部位(カップリング剤がポリマー末端と反応して化学結合を形成した後のカップリング部位、−は各重合体ブロックの結合手を示す。)を表す。なお、式中複数の重合体ブロック(a−1)、重合体ブロック(a−2)が含まれる場合には、それらは同一構造の重合体ブロックであってもよいし、異なる構造の重合体ブロックであってもよい。)で表されるものであることが好ましい。ここで、「異なる構造」とは、重合体ブロックを構成するモノマー単位、分子量、分子量分布、立体規則性、および複数のモノマー単位を有する場合には各モノマー単位の比率および共重合の形態(ランダム、グラジェント、ブロック)のうち少なくとも1つが異なる構造を意味する。また上記nの値は、1〜15であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜4であることがさらに好ましい。上記の構造の中でも、[(a−1)−(a−2)]n、[(a−1)−(a−2)]n−(a−1)、(a−2)−[(a−1)−(a−2)]nで表される直鎖状のブロック共重合体、および[(a−1)−(a−2)]n−Zで表されるスター状のブロック共重合体が好ましく、(a−1)−(a−2)で表されるジブロック共重合体、(a−1)−(a−2)−(a−1)で表されるトリブロック共重合体、および[(a−1)−(a−2)]n−Zで表されるスター状のブロック共重合体が、熱可塑性樹脂組成物とした際に耐久性に優れる観点からより好ましい。また、上記ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、およびスター状のブロック共重合体のうち少なくとも2つのブロック共重合体の混合物も、成形性や接着性が優れる観点から好ましい。
本発明に用いる上記芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)のMnは20,000〜500,000であることが好ましい。中でも、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー成形法、ラミネーション法など、加熱溶融して本発明の熱可塑性樹脂組成物をシート状またはフィルム状に成形加工する際の生産性の観点から、上記Mnは30,000〜400,000が好ましく、さらに、より高速で成形可能となる観点から35,000〜300,000がより好ましく、40,000〜250,000がさらに好ましい。
上記芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は1.0〜1.8であることが好ましい。熱可塑性樹脂組成物とした際に耐久性に優れる点から、Mw/Mnは、1.0〜1.5であることがより好ましく、1.0〜1.3であることがさらに好ましい。
上記芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)中の重合体ブロック(a−1)の含有量は特に制限されるものではないが、得られる熱可塑性樹脂組成物の接着性および柔軟性などの点から、5〜40質量%の範囲にあることが好ましく、5〜30質量%の範囲内であることがより好ましく、10〜20質量%の範囲内であることがさらに好ましい。また、上記ブロック共重合体(A)における重合体ブロック(a−2)の含有量は、得られる熱可塑性樹脂組成物の接着性および柔軟性などの点から、60〜95質量%の範囲にあることが好ましく、70〜95質量%の範囲内であることがより好ましく、80〜90質量%の範囲内であることがよりさらに好ましい。なお、芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)における重合体ブロック(a−1)および重合体ブロック(a−2)の含有量は、1H−NMRスペクトルから求めることができる。また、重合体ブロック(a−1)または重合体ブロック(a−2)が複数含まれる場合には、上記ブロック共重合体(A)における上記含有量は、上記ブロック共重合体(A)中の重合体ブロックの合計含有量を意味する。
上記芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)は、本発明の主旨を損なわない限り、場合により、分子鎖中および/または分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基などの官能基の1種または2種以上を有していてもよい。
上記芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)の製造方法は特に制限されず、例えば、アルキルリチウム化合物を開始剤として、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の重合反応に不活性な有機溶媒中で、芳香族ビニル化合物、共役ジエンを逐次アニオン重合して、各重合体ブロックを形成し、さらに必要に応じてカップリング反応等を行うことにより製造できる。
また、上記芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)として、市販されている製品を使用してもよい。上記製品の具体例としては、KRATON D1161、D1101、G1651(いずれもKRATON Polymers社製);JSR SIS5200、SIS5250、TR2827(いずれもJSR社製)等が挙げられる。
[アクリル系ブロック共重合体(B)]
本発明において用いるアクリル系ブロック共重合体(B)は、アクリル酸エステル単位からなる少なくとも1個の重合体ブロック(b−1)と、メタクリル酸エステル単位からなる少なくとも1個の重合体ブロック(b−2)とを有する。
上記重合体ブロック(b−1)の構成単位となるアクリル酸エステルは、一般式CH2=CH−COOR1(X)(式(X)中、R1は炭素数4〜6の有機基を表す)で示されるアクリル酸エステル(以下、アクリル酸エステル(i−1)と称する)、一般式CH2=CH−COOR2(Y)(式(Y)中、R2は炭素数7〜12の有機基を表す)で示されるアクリル酸エステル(以下、アクリル酸エステル(i−2)と称する)、これら以外のアクリル酸エステルに大別される。
上記R1が示す炭素数4〜6の有機基としては、例えばブチル基、アミル基(ペンチル基)、ヘキシル基、シクロヘキシル基などの炭素数4〜6のアルキル基;フェニル基などの炭素数6の芳香族環基;エトキシエチル基、テトラヒドロフルフリル基、ジエチルアミノエチル基などの炭素数の合計が4〜6である酸素などの炭素以外の元素を含む有機基などが挙げられる。そして、アクリル酸エステル(i−1)としては、例えば、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニルなどの官能基を有さないアクリル酸エステル;アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸ジエチルアミノエチルなどの官能基を有するアクリル酸エステルなどが挙げられる。
上記R2が示す炭素数7〜12の有機基としては、例えばエチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、イソボルニル基、ラウリル基などの炭素数7〜12のアルキル基;ベンジル基などの炭素数7〜12の芳香族環基、フェノキシエチル基などの炭素数の合計が7〜12である酸素などの炭素以外の元素を含む有機基などが挙げられる。そして、アクリル酸エステル(i−2)としては、例えば、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジルなどの官能基を有さないアクリル酸エステル;アクリル酸フェノキシエチルなどの官能基を有するアクリル酸エステルなどが挙げられる。
アクリル酸エステル(i−1)およびアクリル酸エステル(i−2)以外のアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸オクタデシルなどの官能基を有さないアクリル酸エステル;アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−アミノエチル、アクリル酸グリシジルなどの官能基を有するアクリル酸エステルなどが挙げられる。
アクリル酸エステル(i−1)の中でも、得られる熱可塑性樹脂組成物の柔軟性の観点から、官能基を有さないアクリル酸エステルが好ましく、アクリル酸n−ブチルがより好ましい。
アクリル酸エステル(i−2)の中でも、重合体ブロック(b−1)と重合体ブロック(b−2)との相分離がより明瞭となるため、熱可塑性樹脂組成物としたときに高い凝集力を発現する点から、官能基を有さないアクリル酸エステルが好ましく、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸ベンジルがより好ましい。また、得られる熱可塑性樹脂組成物が広い温度範囲で安定した耐久性を発現する点から、アクリル酸2−エチルヘキシルがより好ましい。
上記アクリル酸エステルは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、重合体ブロック(b−1)中に含まれるアクリル酸エステル単位の割合は、重合体ブロック(b−1)中60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
上記重合体ブロック(b−1)を構成するアクリル酸エステル単位は、常温で再剥離可能な適度な粘着性を発現する点から、アクリル酸エステル(i−2)およびアクリル酸エステル(i−1)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
上記重合体ブロック(b−1)を構成するアクリル酸エステル単位が、アクリル酸エステル(i−1)から選ばれる少なくとも1種とアクリル酸エステル(i−2)から選ばれる少なくとも1種とからなる単位であることは好ましい一態様である。その場合、アクリル酸エステル(i−1)単位および前記アクリル酸エステル(i−2)単位の質量比(i−1)/(i−2)は、90/10〜10/90であることが好ましく、60/40〜40/60であることがより好ましい。
(i−1)/(i−2)が上記範囲にあることにより、アクリル系ブロック共重合体(B)と芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)との相容性が高まり、安定した接着性、成形性を発現することができる。なお、アクリル酸エステル(i−1)およびアクリル酸エステル(i−2)の質量比は1H−NMR測定により求めることができる。
上記重合体ブロック(b−1)に用いるアクリル酸エステル(i−1)およびアクリル酸エステル(i−2)の組み合わせとしては、例えば、アクリル酸n−ブチル/アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。このとき、用いるアクリル酸エステル(i−1)およびアクリル酸エステル(i−2)としては、アクリル酸エステル(i−1)およびアクリル酸エステル(i−2)の溶解度パラメーターの差が0.3〜2.5(MPa)1/2であることがより好ましい。なお、かかる溶解度パラメーターは、"POLYMER HANDBOOK Forth Edition"、VII 675頁〜714頁(Wiley Interscience社、1999年発行)および"Polymer Engineering and Science"、1974年、第14巻、147頁〜154頁に記載の方法で計算することができる。また、上記アクリル系ブロック共重合体(B)に、重合体ブロック(b−1)が2つ以上含まれる場合には、それら重合体ブロック(b−1)を構成するアクリル酸エステル単位の組み合わせは、同一であっても異なっていてもよい。
上記重合体ブロック(b−1)が、アクリル酸エステル(i−1)単位およびアクリル酸エステル(i−2)単位の両方を含む共重合体である場合には、アクリル酸エステル(i−1)およびアクリル酸エステル(i−2)のランダム共重合体からなるものでもよいし、ブロック共重合体からなるものでもよいし、さらにグラジェント共重合体からなるものでもよい。上記アクリル系ブロック共重合体(B)に、重合体ブロック(b−1)が2つ以上含まれる場合には、それら重合体ブロック(b−1)の構造は、同一であっても異なっていてもよい。また、重合体ブロック(b−1)中に含まれるアクリル酸エステル(i−1)および(i−2)の合計単位の割合は、重合体ブロック(b−1)中60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
上記重合体ブロック(b−1)のガラス転移温度は−100〜30℃であることが好ましく、−80〜10℃であることがより好ましく、−70〜0℃であることがさらに好ましく、−60〜−10℃であることが最も好ましい。ガラス転移温度がこの範囲にあると、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、常温での優れた接着性を有することができる。
上記重合体ブロック(b−2)の構成単位となるメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジルなどの官能基を有さないメタクリル酸エステル;メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−アミノエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル等の官能基を有するメタクリル酸エステルなどが挙げられる。
これらの中でも、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐熱性、耐久性を向上させる観点から、官能基を有さないメタクリル酸エステルが好ましく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジルがより好ましく、重合体ブロック(b−1)と重合体ブロック(b−2)との相分離がより明瞭となり、熱可塑性樹脂組成物の機械物性が良好になる点からメタクリル酸メチルがさらに好ましい。重合体ブロック(b−2)は、これらメタクリル酸エステルの1種から構成されていても、2種以上から構成されていてもよい。また、上記アクリル系ブロック共重合体(B)は、重合体ブロック(b−2)を2つ以上有することが粘着耐久性を高める観点から好ましい。その場合、それら重合体ブロック(b−2)は、同一であっても異なっていてもよい。
重合体ブロック(b−2)のMnは特に限定されないが、1,000〜50,000の範囲にあることが好ましく、2,000〜30,000の範囲にあることがより好ましい。重合体ブロック(b−2)のMnがこの範囲より小さい場合には、得られるアクリル系ブロック共重合体(B)の凝集力が不足する場合がある。また、重合体ブロック(b−2)のMnがこの範囲より大きい場合には、得られるアクリル系ブロック共重合体(B)の溶融粘度が高くなり、熱可塑性樹脂組成物を製造する際の生産性に劣る場合がある。重合体ブロック(b−2)中に含まれるメタクリル酸エステル単位の割合は、重合体ブロック(b−2)中60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
上記重合体ブロック(b−2)のガラス転移温度は80〜140℃であることが好ましく、90〜130℃であることがより好ましく、100〜120℃であることがさらに好ましい。ガラス転移温度がこの範囲にあると、熱可塑性樹脂組成物の通常の使用温度においてこの重合体ブロック(b−2)は物理的な疑似架橋点として作用し、接着性、耐久性、耐熱性に優れる。
上記重合体ブロック(b−1)および重合体ブロック(b−2)には、本発明の効果を損なわない範囲で、お互いの構成単位が含有されていてもよい。また、必要に応じて他の1構成単位を含有してもよい。かかる他の構成単位となる単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基を有するビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブテン、オクテン等のオレフィン系単量体;ε−カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系単量体;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどが挙げられる。これら単量体を用いる場合は、各重合体ブロックに使用する単量体の全質量に対して、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下の量で使用される。
本発明に用いる上記アクリル系ブロック共重合体(B)は、上記重合体ブロック(b−1)および重合体ブロック(b−2)の他に、必要に応じて他の重合体ブロックを有していてもよい。かかる他の重合体ブロックとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、イソプレン、オクテン、酢酸ビニル、無水マレイン酸、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の単量体から構成される重合体ブロックまたは共重合体ブロック;ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサンからなる重合体ブロックなどが挙げられる。また、上記重合体ブロックには、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン化合物から構成される重合体ブロックの水素添加物も含まれる。
上記アクリル系ブロック共重合体(B)は、重合体ブロック(b−1)を「(b−1)」;重合体ブロック(b−1)とは異なる構造の重合体ブロック(b−1)を「(b−1’)」;重合体ブロック(b−2)を「(b−2)」としたときに、一般式:
[(b−2)−(b−1)]n
[(b−2)−(b−1)]n−(b−2)
(b−1)−[(b−2)−(b−1)]n
[(b−2)−(b−1)]n−(b−1’)
[(b−2)−(b−1)]n−Z
[(b−1)−(b−2)]n−Z
(式中、nは1〜30の整数、Zはカップリング部位(カップリング剤がポリマー末端と反応して化学結合を形成した後のカップリング部位、−は各重合体ブロックの結合手を示す。)を表す。なお、式中複数の(b−1)、(b−2)が含まれる場合には、それらは同一構造の重合体ブロックであってもよいし、異なる構造の重合体ブロックであってもよい。)で表されるものであることが好ましい。ここで、「異なる構造」とは、重合体ブロックを構成するモノマー単位、分子量、分子量分布、立体規則性、および複数のモノマー単位を有する場合には各モノマー単位の比率および共重合の形態(ランダム、グラジェント、ブロック)のうち少なくとも1つが異なる構造を意味する。また上記nの値は、1〜15であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜4であることがさらに好ましい。上記の構造の中でも、[(b−2)−(b−1)]n、[(b−2)−(b−1)]n−(b−2)、(b−1)−[(b−2)−(b−1)]n、[(b−2)−(b−1)]n−(b−1’)で表される直鎖状のブロック共重合体が好ましく、(b−2)−(b−1)で表されるジブロック共重合体、式:(b−2)−(b−1)−(b−1’)で表されるトリブロック共重合体、および式:(b−2)−(b−1)−(b−2)で表されるトリブロック共重合体が、熱可塑性樹脂組成物の耐久性に優れる観点からより好ましい。
上記アクリル系ブロック共重合体(B)のMnは10,000〜300,0000であることが好ましい。中でも、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー成形法、ラミネーション法など、加熱溶融して本発明の熱可塑性樹脂組成物をシート状またはフィルム状に成形加工する際の生産性の観点から、上記Mnは10,000〜200,000がより好ましく、さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて極性材料などの他の材料と接合する際に、他の材料の汚染を少なくできる点から20,000〜150,000がさらに好ましく、50,000〜100,000が特に好ましい。
上記アクリル系ブロック共重合体(B)のMw/Mnは1.0〜1.5であることが好ましい。熱可塑性樹脂組成物とした際に耐久性に優れる点から、Mw/Mnは、1.0〜1.4であることがより好ましく、1.0〜1.3であることがさらに好ましく、1.0〜1.25であることが特に好ましい。
上記アクリル系ブロック共重合体(B)中の重合体ブロック(b−2)の含有量は10〜55質量%であることが好ましく、熱可塑性樹脂組成物とした場合に常温での接着性と機械物性の観点から、重合体ブロック(b−2)の含有量は10〜30質量%であることがより好ましく、10〜25質量%であることがさらに好ましく、15〜25質量%であることがよりさらに好ましく、20〜25質量%であることが特に好ましい。
また、本発明に用いる上記アクリル系ブロック共重合体(B)中の重合体ブロック(b−1)の含有量は45〜90質量%であることが好ましく、上記と同様の観点から70〜90質量%であることがより好ましく、75〜90質量%であることがさらに好ましく、75〜85質量%であることがよりさらに好ましく、75〜80質量%であることが特に好ましい。
アクリル系ブロック共重合体(B)の230℃、荷重21.6Nで測定したメルトフローレートは、35g/10min以上であることが好ましく、35〜150g/10minであることがより好ましく、40〜80g/10minであることがさらに好ましい。アクリル系ブロック共重合体(B)のメルトフローレートが上記範囲にあることにより、他樹脂との共押出加工性が優れる。
アクリル系ブロック共重合体(B)のISO7619−1に規定されるタイプA硬度は、10〜60であることが好ましく、15〜40であることがより好ましく、20〜30であることがさらに好ましい。アクリル系ブロック共重合体(B)のタイプA硬度が上記範囲にあることにより、粗面状の被着体への接着性が優れる。
本発明に用いる上記アクリル系ブロック共重合体(B)の製造方法は、本発明の条件を満足する重合体が得られる限りにおいて特に限定されることなく、公知の手法に準じた方法を採用することができる。一般に、分子量分布の狭いブロック共重合体を得る方法としては、構成単位となる単量体をリビング重合する方法が取られる。このようなリビング重合の手法としては、例えば、有機希土類金属錯体を重合開始剤としてリビング重合する方法(特開平06−93060号公報参照)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩などの鉱酸塩の存在下でリビングアニオン重合する方法(特表平05−507737号公報参照)、有機アルミニウム化合物の存在下で、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としリビングアニオン重合する方法(特開平11−335432号公報参照)、原子移動ラジカル重合法(ATRP)(Macromolecular Chemistry and Physics、2000年、201巻、p.1108〜1114参照)などが挙げられる。
上記製造方法のうち、有機アルミニウム化合物の存在下で有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としてリビングアニオン重合する方法は、得られるブロック共重合体の透明性が高いものとなり、残存単量体が少なく臭気が抑えられ、熱可塑性樹脂組成物を成形する際、気泡の発生を抑制できるため好ましい。また、メタクリル酸エステル重合体ブロックの分子構造が高シンジオタクチックとなり、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性を高める効果がある点からも好ましい。
上記有機アルミニウム化合物としては、例えば下記一般式(3)
AlR345 (3)
(式中、R3、R4およびR5はそれぞれ独立して置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基またはN,N−二置換アミノ基を表すか、或いはR3が上記したいずれかの基であり、R4およびR5が一緒になって置換基を有していてもよいアリーレンジオキシ基を形成している。)
で表される有機アルミニウム化合物が挙げられる。
上記一般式(3)で表される有機アルミニウム化合物としては、重合のリビング性の高さや取り扱いの容易さなどの点から、イソブチルビス(2,6−ジtert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジtert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチル〔2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウムなどが好ましく挙げられる。
上記有機アルカリ金属化合物としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、イソブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、テトラメチレンジリチウム等のアルキルリチウムおよびアルキルジリチウム;フェニルリチウム、p−トリルリチウム、リチウムナフタレン等のアリールリチウムおよびアリールジリチウム;ベンジルリチウム、ジフェニルメチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムの反応により生成するジリチウム等のアラルキルリチウムおよびアラルキルジリチウム;リチウムジメチルアミド等のリチウムアミド;メトキシリチウム、エトキシリチウム等のリチウムアルコキシドなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも重合開始効率が高いことから、アルキルリチウムが好ましく、中でもtert−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムがより好ましく、sec−ブチルリチウムがさらに好ましい。
上記リビングアニオン重合は、通常、重合反応に不活性な溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテルなどが挙げられる。
アクリル系ブロック共重合体(B)は、例えば、単量体を重合して得た所望のリビングポリマー末端に、所望の重合体ブロック(重合体ブロック(b−2)、重合体ブロック(b−1)など)を形成する工程を所望の回数繰り返した後、重合反応を停止させることにより製造できる。具体的には、例えば有機アルミニウム化合物の存在下、有機アルカリ金属化合物からなる重合開始剤により、第1の重合体ブロックを形成する単量体を重合する第1工程、第2の重合体ブロックを形成する単量体を重合する第2工程および必要に応じて第3の重合体ブロックを形成する単量体を重合する第3工程を含む複数段階の重合工程を経て、得られた重合体の活性末端をアルコールなどと反応させ、重合反応を停止させることにより、アクリル系ブロック共重合体(B)を製造できる。上記のような方法によれば、重合体ブロック(b−2)−重合体ブロック(b−1)からなる二元ブロック(ジブロック)共重合体;重合体ブロック(b−2)−重合体ブロック(b−1)−重合体ブロック(b−2)や、重合体ブロック(b−2)−重合体ブロック(b−1)−重合体ブロック(B’)からなる三元ブロック(トリブロック)共重合体;重合体ブロック(b−2)−重合体ブロック(b−1)−重合体ブロック(b−2)−重合体ブロック(b−1)からなる四元ブロック共重合体などを製造できる。
重合温度としては、重合体ブロック(b−2)を形成する際は0〜100℃、重合体ブロック(b−1)を形成する際は−50〜50℃が好ましい。上記範囲より重合温度が低い場合には、反応の進行が遅くなり、反応を完結させるのに長時間必要となる。一方、上記範囲より重合温度が高い場合には、リビングポリマー末端の失活が増え、分子量分布が広くなったり、所望のブロック共重合体が得られなくなったりする。また、重合体ブロック(b−2)および重合体ブロック(b−1)はそれぞれ1秒〜20時間の範囲で重合できる。
[軟化剤(C)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物では、軟化剤が含まれていてもよい。本発明において用いられる軟化剤(C)は、本発明の熱可塑性樹脂組成物において、成形性向上等の役割を担う。
上記軟化剤(C)としては、例えば、ジブチルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ビス−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−デシルフタレート、ジイソデシルフタレートなどのフタル酸エステル類、ビス−2−エチルヘキシルセバケート、ジ−n−ブチルセバケートなどのセバシン酸エステル類、ビス−2−エチルヘキシルアゼレートなどのアゼライン酸エステル類、ビス−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−n−オクチルアジペートなどのアジピン酸エステル類などの脂肪酸エステル類;塩素化パラフィンなどのパラフィン類;ポリプロピレングリコールなどのグリコール類;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油などのエポキシ系高分子可塑剤;トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェートなどのリン酸エステル類;トリフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類;ポリ(メタ)アクリル酸n−ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル系オリゴマー;液状ポリブテン;液状ポリイソブチレン;液状ポリイソプレン;プロセスオイルなどが挙げられる。これらの中でも、プロセスオイルが接着性に優れる観点から好ましい。上記、プロセスオイルの具体例としては、例えばSUNPURE N90およびNX90、SUNTHENEシリーズ(日本サン石油株式会社製)等のナフテン系オイル;ダイアナプロセスオイルPWシリーズ(出光興産株式会社製)、SUNPURE LW70およびPシリーズ(日本サン石油株式会社製)等のパラフィン系オイル;JSO AROMA790(日本サン石油株式会社製)、Vivatec500(H&R社製)等のアロマ系オイル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明の熱可塑性樹脂組成物では、芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)、アクリル系ブロック共重合体(B)、および軟化剤(C)を、下記式(1)および(2)を満たす割合で含有する。
0.05≦W(B)/W(A)≦19 (1)
0≦W(C)/(W(A)+W(B)+W(C))≦0.5 (2)
式(1)および(2)中、W(A)、W(B)およびW(C)は、それぞれ前記熱可塑性樹脂組成物中の芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)、アクリル系ブロック共重合体(B)および軟化剤(C)の含有量(質量基準)を示す。
上記式(1)の関係を満たすことにより、極性樹脂および非極性樹脂への接着性が優れる。上記式(2)の関係を満たすことにより、機械的特性が優れる。
W(A)およびW(B)は、押出加工性と極性樹脂および非極性樹脂への接着性を両立させる観点で、下記式(1’)の関係を満たすことが好ましく、下記式(1”)の関係を満たすことがさらに好ましい。
0.25≦W(B)/W(A)≦4 (1’)
0.4≦W(B)/W(A)≦2.4 (1”)
W(A)、W(B)、およびW(C)は、押出加工性と機械的物性を両立させる観点で、下記式(2’)を満たすことが好ましく、下記式(2”)を満たすことがさらに好ましい。
0≦W(C)/(W(A)+W(B)+W(C))≦0.3 (2’)
0≦W(C)/(W(A)+W(B)+W(C))≦0.1 (2”)
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の重合体、ワックス、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、撥水剤、防水剤、粘着付与樹脂、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、電磁波シールド性付与剤、蛍光剤、アンチブロッキング剤、防菌剤、フィラー、硬化剤などの添加剤が含まれていてもよい。これら他の重合体や添加剤は、1種が含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
上記他の重合体としては、例えば、ポリメタクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸エステル共重合体などの、本明細書におけるアクリル系ブロック共重合体(B)を除くアクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリノルボルネン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等のオレフィン系樹脂;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂等のスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマー等のポリアミド;ポリカーボネート;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリビニルアルコール;エチレン−ビニルアルコール共重合体;ポリアセタール;ポリフッ化ビニリデン;ポリウレタン;変性ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンスルフィド;シリコーンゴム変性樹脂;アクリル系ゴム;シリコーン系ゴム;IR、EPR、EPDM等のオレフィン系ゴムなどが挙げられる。
本発明における熱可塑性樹脂組成物は、粘着付与樹脂を含有しなくても、実用上十分な接着力を得ることができる。このような粘着付与樹脂を含有しない熱可塑性樹脂組成物の例としては、当該熱可塑性樹脂組成物における上記アクリル系ブロック共重合体(B)の割合が、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
一方、本発明における熱可塑性樹脂組成物は、粘着付与樹脂を含有してもよい。熱可塑性樹脂組成物が粘着付与樹脂を含有することで、より高い接着力を得ることができる。
上記粘着付与樹脂としては、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等のロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等の変性ロジン;これらロジン、変性ロジンのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル等のロジンエステル等のロジン系樹脂;α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン等を主体とするテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等のテルペン系樹脂;(水添)脂肪族系(C5系)石油樹脂、(水添)芳香族系(C9系)石油樹脂、(水添)共重合系(C5/C9系)石油樹脂、(水添)ジシクロペンタジエン系石油樹脂、脂環式飽和炭化水素樹脂等の(水添)石油樹脂;ポリα−メチルスチレン、α−メチルスチレン/スチレン共重合体、スチレン系単量体/脂肪族系単量体共重合体、スチレン系単量体/α−メチルスチレン/脂肪族系単量体共重合体、スチレン系単量体/芳香族系単量体共重合体等のスチレン系樹脂;クマロン−インデン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂等の合成樹脂などが挙げられる。これらの粘着付与樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、上記粘着付与樹脂の軟化点については、高い接着力を発現する点から、50〜150℃のものが好ましい。
また、押出成形体に粘着付与樹脂を含有させる場合、その含有量としては、接着力と耐久性の観点から、上記熱可塑性樹脂組成物100質量部に対し、1〜50質量部であることが好ましく、3〜45質量部であることがより好ましく、5〜40質量部であることがさらに好ましく、5〜35質量部であることが最も好ましい。
ロジン系樹脂としては、パインクリスタルKE−100、パインクリスタルKE−311、パインクリスタルKE−359、パインクリスタルKE−604、パインクリスタルD−6250(いずれも荒川化学工業株式会社製)などの市販品を使用できる。テルペン系樹脂としては、タマノル901(荒川化学工業株式会社製)などの市販品を使用できる。スチレン系樹脂としては、FTR6000シリーズ、FTR7000シリーズ(三井化学株式会社製)、YSレジンSX100(ヤスハラケミカル株式会社製)などの市販品を使用できる。脂環族飽和炭化水素樹脂としては、アルコンシリーズ(荒川化学工業株式会社製)、リガライトシリーズ(イーストマン社製)、クイントンシリーズ(日本ゼオン株式会社製)、ペトコール/ペトロタックシリーズ(東ソー株式会社製)、エスコレッツシリーズ(エクソンモービル社製)、HIKOTACKシリーズ/SUKOREZシリーズ/HIKOREZシリーズ(KOLON INDUSTRIES社)などの市販品を使用できる。
上記フィラーとしては、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維などの無機繊維および有機繊維;炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、アルなどの無機充填剤などが挙げられる。無機繊維、有機繊維が含まれていると、得られる熱可塑性樹脂組成物に耐久性が付与される。無機充填剤が含まれていると、得られる熱可塑性樹脂組成物に耐熱性、耐候性が付与される。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は特に制限されず、例えば、各成分をニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー等の既知の混合または混練装置を使用して、100〜250℃の範囲内の温度で混合することにより製造できる。また、各成分を有機溶媒に溶解して混合した後、該有機溶媒を留去することによって製造してもよい。得られた組成物は、加熱溶融して成形することが可能である。なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物を加熱溶融して使用する場合、成形性・取扱性の観点から、190℃前後での溶融粘度が200,000mPa・s以下であることが好ましく、100,000mPa・s以下であることがより好ましく、50,000mPa・s以下であることがさらに好ましく、30,000mPa・s以下であることが特に好ましい。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ブロック、ペレット、およびスティック等の成形加工の際の取り扱い性に優れた形態にして提供することができる。例えば、ペレットの形態にする場合には、本発明の熱可塑性樹脂組成物をロール混練機にて溶融混練し、続いて押出機に供給してダイの細孔よりストランド状に押出し、必要に応じて膠着防止剤を分散させた冷却水浴中を通して固化させた後にペレット状に切断し、さらに必要に応じて該ペレットに膠着防止剤を添加することにより、本発明の熱可塑性樹脂組成物のペレットを得ることができる。上記ロール混練機の代わりに二軸押出機を使用して溶融混練と押出を同時に行うこともできる。また、押出し後直ちにダイ表面で回転刃にてカットしペレット状とし、必要に応じて膠着防止剤を分散させた冷却水中に浸漬して固化させた後、脱水し、さらに必要に応じて該ペレットに膠着防止剤を添加することによっても、本発明の熱可塑性樹脂組成物のペレットを得ることができる。
上記膠着防止剤は、本発明の熱可塑性樹脂組成物のペレットが膠着するのを防止するために使用される。上記膠着防止剤の具体例としては、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム等の脂肪酸金属塩;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、モンタン酸系ワックス等のワックス類;低分子量ポリエチレンや低分子量ポリプロピレン等の低分子量ポリオレフィン;アクリル系樹脂粉末;ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン;オクタデシルアミン、リン酸アルキル、脂肪酸エステル、エチレンビスステアリルアミド等のアミド系樹脂の粉末または水分散液、4フッ化エチレン樹脂等のフッ素樹脂粉末、二硫化モリブデン粉末、シリコーン樹脂粉末、シリコーンゴム粉末、シリカ等が挙げられる。
[部材]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、溶融流動性に優れ、熱可塑性樹脂に対して一般に用いられている成形加工方法や成形加工装置を用いて成形できる。例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形などによって成形加工でき、型物、パイプ、板、シート、フィルム、繊維状物、該樹脂組成物からなる層を含む積層体等の任意の形態の部材を得ることができる。前記部材は、粘着特性を有することが好ましい。ここで、「粘着特性を有する」とは、後述する実施例に記載した方法により評価される値が、1N/25mm以上であり、試験中にポリオレフィン系樹脂からなる層と本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる層が界面剥離しないことを意味する。
本発明によって得られる部材の用途は特に限定されないが、建材、自動車内外装部材、電気及び電子機器部材、工業機器部材、光学部材、医療用部材並びにスポーツ用品からなる群より選ばれるいずれかにおける成形材料部品や粘接着部品(接着層など)として使用する。
建材における使用方法としては、例えば、養生用、気密防水用、壁紙用、断熱材貼合わせ用、ウィンドウフィルム用、シーリング材用、表面保護用、塗装保護用、防音用、固定・仮固定用、透湿・防水シート用、建築ボード用、電気絶縁用、防食用、配管保護用、看板施工用などが挙げられる。
自動車内外装部材における使用方法としては、例えば、電気絶縁などの電装部品用、電気絶縁や電磁波シールド・静電気除去などのモーター用、外装・内装部品や部品固定用や仮止め用、ハーネス・屋根配線用、自動車表面や塗装などの保護用などが挙げられる。
電気機器部材ないし電子機器部材における使用方法としては、例えば、耐熱絶縁用、電気絶縁用、帯電防止用、部品固定・仮固定用、プリント基板固定用、工程用・出荷用、熱伝導材料用などが挙げられる。
工業機器部材における使用方法としては、例えば、不織布基材用、樹脂フィルム基材用、発泡体基材用、難燃性テープ用、透明両面テープ用、遮光・反射両面テープ用などが挙げられる。
光学部材における使用方法としては、例えば、部材固定用・仮止め用、表面保護用、透明両面テープ用などが挙げられる。
医療用部材における使用方法としては、例えば、絆創膏用、サージカルテープ用、サージカルドレッシング用、皮膚用両面テープ用などが挙げられる。
スポーツ用品における使用方法としては、例えば、シューズ用、ボール、卓球やテニスなどのラケット用、ゴルフのクラブなどが挙げられる。
押出成形体を粘接着部品として用いる際の具体的な態様に特に制限はなく、例えば、当該押出成形体を、熱可塑性極性樹脂からなる部品(熱可塑性極性樹脂からなる層など)と積層して使用する態様などが挙げられる。押出成形体と熱可塑性極性樹脂からなる層との積層体は任意の成形加工法により製造でき、例えば、ラミネート成形法、共押出法等の溶融押出成形法などを採用できる。
前記熱可塑性極性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂、メチルメタクリレート・スチレン系共重合体、アクリロニトリル・スチレン系共重合体、ポリエチレンテレフタレート系共重合体、ポリブチレンテレフタレート系共重合体、ポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリウレタン系樹脂などが挙げられる。
また、上記押出成形体を上記の各用途に用いるにあたっては、前記押出成形体を熱可塑性樹脂からなる部品と熱可塑性樹脂からなる部品との間の粘接着部品(接着層など)として使用することができる。この場合、両熱可塑性樹脂からなる部品は同一の素材であっても異なる素材であってもよい。また、前記押出成形体を金属からなる部品と熱可塑性樹脂からなる部品との間の粘接着部品(接着層など)として使用することもできる。当該熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが極性樹脂が好ましく、例えば、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系共重合体、ポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、エチレン・四フッ化エチレン系共重合体などが挙げられる。
上記押出成形体からなる粘接着部品を用いた接着方法としては、(1)上述した方法にて押出成形体を作製し、該成形体をそのまま両面テープとして使用して接着させる方法;(2)一方の被着体上にアクリル系ブロック共重合体を単独でまたはそれを含む樹脂組成物の形態で押出した後、もう一方の被着体を圧着させる方法;(3)熱可塑性極性樹脂と上記アクリル系ブロック共重合体ないしそれを含む樹脂組成物とを共押出して積層体を作製し、その粘着面を被着体に接着させて接着させる方法;等が挙げられる。特に方法(3)は、押出成形体を、熱可塑性極性樹脂からなる部品と金属からなる部品との間の粘接着部品として使用する際に好適である。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらにより何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の各種物性は以下の方法により測定または評価した。
(1)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)
芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)ならびにアクリル系ブロック共重合体(B)の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)はゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(以下GPCと略記する)によりポリスチレン換算分子量で求めた。
・装置:東ソー株式会社製GPC装置「HLC−8020」
・分離カラム:東ソー株式会社製の「TSKgel GMHXL」、「G4000HXL」および「G5000HXL」を直列に連結
・溶離剤:テトラヒドロフラン
・溶離剤流量:1.0ml/分
・カラム温度:40℃
・検出方法:示差屈折率(RI)
(2)各重合体ブロックの含有量およびビニル化度
芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)における重合体ブロック(a−1)の含有量(質量%)、重合体ブロック(a−2)のビニル化度およびアクリル系ブロック共重合体(B)におけるメタアクリル酸エステル単位からなる重合体ブロック(b−2)の含有量(質量%)は、1H−NMR(1H−核磁気共鳴)測定によって求めた。
・装置:日本電子株式会社製核磁気共鳴装置「JNM−LA400」
・重溶媒:重水素化クロロホルム
(3)芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)における重合体ブロック(a−2)の水素添加率
水素添加前後のブロック共重合体のヨウ素価を測定し、その比よりブロック共重合体の水素添加率を計算した。
(4)メルトフローレート
芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)とアクリル系ブロック共重合体(B)のメルトフローレート(表1および2では、MFRと略記する)は、ISO 1133に準拠して230℃、荷重21.6Nの条件により測定した。
(5)タイプA硬度
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて、射出成形機(住友重機械工業株式会社製「SE18DU」)により、下記のシリンダー温度および金型温度で、50mm×50mm、厚み3mmの成形体を作製した。得られた成形体を3枚重ね合わせ、ISO 7619−1に準拠して15秒後のタイプA硬度を測定した。
・シリンダー温度:200〜210℃
・金型温度:50℃
(6)共押出成形加工性
2種2層フィードブロック式Tダイ共押出装置を用いて、ポリオレフィン系樹脂(「ノバテックBC4FC」日本ポリプロ株式会社製のブロック型ポリプロピレン樹脂)と本発明の熱可塑性樹脂組成物をそれぞれTダイにフィードし、下記の共押出成形加工条件で積層体を作製した。
共押出成形加工条件:
・層構成と各層の厚み
ポリオレフィン系樹脂からなる層/熱可塑性樹脂組成物からなる層=50μm/10μmとなるように成形した。
・押出機の仕様および押出温度
単軸押出機を使用した。各層の押出時の各押出機での成形温度は、ポリオレフィン系樹脂からなる層は220℃、熱可塑性樹脂組成物からなる層は190〜200℃とした。
・Tダイ、フィードブロック、冷却ロールの仕様および成形時の温度、引取速度
Tダイの幅は300mmであり、2種の合流地点までのアダプタ(AD)、Tダイ、2種2層用フィードブロック(合流地点での成形装置)の温度はいずれも200℃とした。Tダイから吐出された積層体を引き取る冷却ロールの温度は40℃、引取速度は8.0m/minとした。
得られた積層体の各層の均一性および表面平滑性を下記評価基準に従って評価し、これを共押出成形加工性の指標とした。
(各層の均一性)
積層体を、幅方向に均等に10分割した断面を光学顕微鏡(Digital Microscope VHX−900 株式会社キーエンス製)にて観察し、各層の厚みを測定した。次に、測定した積層体の各層の中での最大値または最小値のうち平均厚みとの差が大きいいずれかを用い、以下の計算式にて各層の厚み変動率を算出した。
厚み変動率(%)=|(平均厚み)―(最大値または最小値)|/(平均厚み)×100
+:積層体を構成する各層の厚み変動率のうち、最も大きいものが10%未満である。
−:積層体を構成する各層の厚み変動率のうち、最も大きいものが10%以上である。
(表面平滑性)
目視にて判断した。
+:得られた積層体を可視光に透かして目視で観察した際に、凹凸がなく、平滑である。
−:得られた積層体を可視光に透かさない場合でも、目視にてシボ調の凹凸や流れ方向のスジ等の凹凸が観察される。
(7)粘着特性
上記(6)に記載の方法で作製した積層体を、幅25mm、長さ100mmの大きさにカットし、アルミ板に貼り付け、サンプルを室温(23℃)にて貼合後24時間保管した後、ISO29862に準拠して、計測器「5566型」(インストロン社製)を用いて、23℃において300mm/minの速度で180°の方向に剥離して測定し、この値を粘着特性の指標とした。
+:1N/25mm以上であり、試験中にポリオレフィン系樹脂からなる層と本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる層が界面剥離しない場合。
−:1N/25mm未満あるいは1N/25mm以上ではあるが試験中にポリオレフィン系樹脂からなる層と本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる層が界面剥離する場合。
(8)極性樹脂との接着力
極性樹脂(ABS樹脂、ポリカーボネート系樹脂(PC)およびアクリル系樹脂(PMMA))からなる長さ100mm、幅40mm、厚み1mmの板を射出成形金型にセットし、射出インサート成形により、本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる層を厚み1mmで積層させた試験片を作製し、計測器「5566型」(インストロン社製)を用いて、ISO11339に準拠して、層間接着力を剥離速度100mm/minで測定し、この値を極性樹脂との接着力の指標とした。
+:10N/25mm以上
−:10N/25mm未満
[実施例で使用した原料重合体]
以下に、実施例および比較例で用いた原料重合体の詳細を示す。また、表1および表2にそれらの物性値を示す。
<芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)>
[製造例1]芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A−1)の製造
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)76g(sec−ブチルリチウム8.0g)を仕込み、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン313gを仕込んだ。50℃に昇温した後、スチレン(1)0.5kgを加えて1時間重合させ、引き続いてイソプレン8.2kgおよびブタジエン6.5kgの混合液を加えて2時間重合を行い、さらにスチレン(2)1.5kgを加えて1時間重合することにより、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応液を得た。この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(以下、芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A−1)と称する)を得た。芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A−1)の物性測定結果を表1に示す。
<アクリル系ブロック共重合体(B)>
[製造例2]有機アルミニウム化合物:イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムの調製
ナトリウムで乾燥後、アルゴン雰囲気下に蒸留して得た乾燥トルエン25mlと、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール11gを、内部雰囲気をアルゴンで置換した内容積200mlのフラスコ内に添加し、室温で攪拌しながら溶解した。得られた溶液にトリイソブチルアルミニウム6.8mlを添加し、80℃で約18時間攪拌することによって、対応する有機アルミニウム化合物[イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム]を0.6mol/lの濃度で含有するトルエン溶液を調製した。
[製造例3]アクリル系ブロック共重合体(B−1)の合成
イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムの存在下、sec−ブチルリチウムを重合開始剤として用い、トルエン中で各ブロックに相当するモノマー(メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチル)を逐次添加してリビングアニオン重合し、用いたアルミニウム分、リチウム分を除去後、脱揮二軸押出機によりアクリル系ブロック共重合体(B−1)を得た。
得られたアクリル系ブロック共重合体(B−1)の構造は、メタクリル酸メチル重合体ブロック(PMMA)−アクリル酸n−ブチル重合体ブロック(PnBA)−メタクリル酸メチル重合体ブロック(PMMA)のトリブロック共重合体であり、PMMA含量23質量%、重量平均分子量81,000、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)1.15であった。アクリル系ブロック共重合体(B−1)の物性測定結果を表2に示す。
[製造例4]アクリル系ブロック共重合体(B−2)の合成
用いるモノマーの比率を変えたこと以外は製造例3と同様にリビングアニオン重合を行い、以下のアクリル系ブロック共重合体(B−2)を得た。
得られたアクリル系ブロック共重合体(B−2)の構造は、PMMA−PnBA−PMMAのトリブロック共重合体であり、PMMA含量22質量%、重量平均分子量130,000、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)1.14であった。アクリル系ブロック共重合体(B−2)の物性測定結果を表2に示す。
[製造例5]アクリル系ブロック共重合体(B−3)の合成]
用いるモノマーを変えたこと以外は製造例3と同様にリビングアニオン重合を行い、以下のアクリル系ブロック共重合体(B−3)を得た。
得られたアクリル系ブロック共重合体(B−3)の構造は、メタクリル酸メチル重合体ブロック(PMMA)−アクリル酸n−ブチル/アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体ブロック(P(nBA/2EHA))−メタクリル酸メチル重合体ブロック(PMMA)のトリブロック共重合体であり、PMMA含量50質量%、アクリル酸n−ブチル/アクリル酸2−エチルヘキシルの質量比が50/50、重量平均分子量90,000、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)1.16であった。アクリル系ブロック共重合体(B−3)の物性測定結果を表2に示す。
Figure 2019157067
Figure 2019157067
<軟化剤(C)>
「ダイアナプロセスオイルPW380」(商品名、出光興産株式会社製のパラフィン系プロセスオイル、動粘度(40℃)=386.1mm2/s)
〔実施例1〜7および比較例1〜5〕
前記表1、2に記載の材料を用いて、下記表3に示す配合割合で、二軸押出機により230℃で溶融混練した後、押出し、切断することによって、熱可塑性樹脂組成物のペレットを製造した。
得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いて、前記(5)タイプA硬度の欄に記載の方法で試験片を作製した。得られた試験片を用いて、タイプA硬度を測定した。また、前記(6)共押出成形加工性の欄に記載の方法で積層体を作製した。得られた積層体から試験片を採取し、共押出成形加工性、粘着特性を評価した。さらに、前記(8)極性樹脂との接着力の欄に記載の方法で試験片を作製した。得られた試験片を用いて、極性樹脂との接着力を評価した。それぞれの結果を表3に示す。
Figure 2019157067
表3の結果から、実施例1〜7で得られた熱可塑性樹脂組成物は、共押出成形加工性に優れており、被着体汚染の原因となる粘着付与樹脂を加えなくてもアルミ板のような粗面被着体に対する粘着特性が優れる。また、ABS樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびアクリル系樹脂などの極性樹脂との接着性が良好なので、射出成形用途や押出成形用途などへの幅広い展開が期待できる。
比較例1で得られた熱可塑性樹脂組成物は、非極性系であるため、極性樹脂との接着性が低くなり、剥離してしまった。また、比較例5で得られた熱可塑性樹脂組成物は、極性樹脂のアクリル系ブロック共重合体の添加量が少ないため、比較例1で得られた熱可塑性樹脂組成物と同様に剥離してしまった。比較例2〜4で得られた熱可塑性樹脂組成物は極性系であるため、非極性樹脂であるポリオレフィン系樹脂と共押出成形した場合、実使用時に界面剥離が生じてしまった。また、比較例2で得られた熱可塑性樹脂組成物は、流動性が高すぎるため、共押出成形加工性に劣る。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、光学分野、自動車分野、エレクトロニクス分野、医療分野、建築分野、環境分野などで使用される粘着製品、射出成形部材および押出成形部材などとして好適に使用できる。

Claims (10)

  1. 芳香族ビニル化合物単位からなる少なくとも1個の重合体ブロック(a−1)と炭素−炭素不飽和二重結合の少なくとも一部が水素添加されていてもよい共役ジエン化合物単位からなる少なくとも1個の重合体ブロック(a−2)とを有する芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)、
    アクリル酸エステル単位からなる少なくとも1個の重合体ブロック(b−1)とメタクリル酸エステル単位からなる少なくとも1個の重合体ブロック(b−2)とを有するアクリル系ブロック共重合体(B)、および
    軟化剤(C)を、下記式(1)および(2)を満たす割合で含有する熱可塑性樹脂組成物。
    0.05≦W(B)/W(A)≦19 (1)
    0≦W(C)/(W(A)+W(B)+W(C))≦0.5 (2)
    (式(1)および(2)中、W(A)、W(B)およびW(C)は、それぞれ前記熱可塑性樹脂組成物中の芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)、アクリル系ブロック共重合体(B)および軟化剤(C)の含有量(質量基準)を示す。)
  2. 前記芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体(A)中の重合体ブロック(a−1)の含有量が5〜40質量%である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記アクリル系ブロック共重合体(B)中の重合体ブロック(b−2)の含有量が10〜55質量%である請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記アクリル系ブロック共重合体(B)の230℃、荷重21.6Nで測定したメルトフローレートが35g/10min以上である請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 前記アクリル系ブロック共重合体(B)のISO7619−1に規定されるタイプA硬度が10〜60である請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 前記アクリル系ブロック共重合体(B)の重合体ブロック(b−1)を構成するアクリル酸エステル単位が、一般式CH2=CH−COOR1(X)(式(X)中、R1は炭素数4〜6の有機基を表す)で示されるアクリル酸エステル(i−1)単位および一般式CH2=CH−COOR2(Y)(式(Y)中、R2は炭素数7〜12の有機基を表す)で示されるアクリル酸エステル(i−2)単位からなり、かつ、前記アクリル酸エステル(i−1)単位および前記アクリル酸エステル(i−2)単位の質量比(i−1)/(i−2)が90/10〜10/90である請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる部材。
  8. 粘着特性を有する請求項7に記載の部材。
  9. 押出成形により得られる請求項7または8に記載の部材。
  10. 射出成形により得られる請求項7または8に記載の部材。
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