以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
図1は、第1実施形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。
極低温冷凍機10は、圧縮機12と、膨張機14とを備える。圧縮機12は、極低温冷凍機10の作動ガスを膨張機14から回収し、回収した作動ガスを昇圧して、再び作動ガスを膨張機14に供給するよう構成されている。膨張機14は、コールドヘッドとも称され、室温部14aと、冷却ステージとも称される低温部14bとを有する。圧縮機12と膨張機14により極低温冷凍機10の冷凍サイクルが構成され、それにより低温部14bが所望の極低温に冷却される。作動ガスは、冷媒ガスとも称され、通例はヘリウムガスであるが、適切な他のガスが用いられてもよい。理解のために、作動ガスの流れる方向を図1に矢印で示す。
極低温冷凍機10は、一例として、単段式または二段式のギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機であるが、パルス管冷凍機、スターリング冷凍機、またはそのほかのタイプの極低温冷凍機であってもよい。膨張機14は、極低温冷凍機10のタイプに応じて異なる構成を有するが、圧縮機12は、極低温冷凍機10のタイプによらず、以下に説明する構成を用いることができる。
なお、一般に、圧縮機12から膨張機14に供給される作動ガスの圧力と、膨張機14から圧縮機12に回収される作動ガスの圧力は、ともに大気圧よりかなり高く、それぞれ第1高圧及び第2高圧と呼ぶことができる。説明の便宜上、第1高圧及び第2高圧はそれぞれ単に高圧及び低圧とも呼ばれる。典型的には、高圧は例えば2〜3MPaである。低圧は例えば0.5〜1.5MPaであり、例えば約0.8MPaである。
圧縮機12は、高圧ガス出口18、低圧ガス入口19、高圧流路20、低圧流路21、第1圧力センサ22、第2圧力センサ23、バイパスライン24、圧縮機本体25、および圧縮機筐体26を備える。高圧ガス出口18は、圧縮機12の作動ガス吐出ポートとして圧縮機筐体26に設置され、低圧ガス入口19は、圧縮機12の作動ガス吸入ポートとして圧縮機筐体26に設置されている。高圧流路20は、圧縮機本体25の吐出口を高圧ガス出口18に接続し、低圧流路21は、低圧ガス入口19を圧縮機本体25の吸入口に接続する。圧縮機筐体26は、高圧流路20、低圧流路21、第1圧力センサ22、第2圧力センサ23、バイパスライン24、および圧縮機本体25を収容する。圧縮機12は、圧縮機ユニットとも称される。
圧縮機本体25は、その吸入口から吸入される作動ガスを内部で圧縮して吐出口から吐出するよう構成されている。圧縮機本体25は、例えば、スクロール方式、ロータリ式、または作動ガスを昇圧するそのほかのポンプであってもよい。圧縮機本体25は、固定された一定の作動ガス流量を吐出するよう構成されていてもよい。あるいは、圧縮機本体25は、吐出する作動ガス流量を可変とするよう構成されていてもよい。圧縮機本体25は、圧縮カプセルと称されることもある。
第1圧力センサ22は、高圧流路20を流れる作動ガスの圧力を測定するよう高圧流路20に配置されている。第1圧力センサ22は、測定された圧力を表す第1測定圧信号P1を出力するよう構成されている。第2圧力センサ23は、低圧流路21を流れる作動ガスの圧力を測定するよう低圧流路21に配置されている。第2圧力センサ23は、測定された圧力を表す第2測定圧信号P2を出力するよう構成されている。よって第1圧力センサ22、第2圧力センサ23はそれぞれ、高圧センサ、低圧センサと呼ぶこともできる。また本書では、第1圧力センサ22と第2圧力センサ23のいずれか指して、または両方を総称して、単に「圧力センサ」と表記することもある。
バイパスライン24は、膨張機14を迂回して高圧流路20から低圧流路21に作動ガスを還流させるように高圧流路20を低圧流路21に接続する。バイパスライン24は、高圧流路20を低圧流路21に接続する可変流量バイパス27と、可変流量バイパス27と並列に高圧流路20を低圧流路21に接続する固定流量バイパス28と、を備える。
可変流量バイパス27は、流量調整機器の一例としての流量制御弁30を備える。流量制御弁30は、可変流量バイパス27を流れる作動ガスの流量を制御するよう可変流量バイパス27に配置されている。流量制御弁30は、開度指令信号S1に従って動作するよう構成されている。開度指令信号S1は、流量制御弁30がとるべき開度(%)を表す制御信号またはそのほかの電気信号である。流量制御弁30の開度が大きくなるとき可変流量バイパス27の作動ガス流量は増え、流量制御弁30の開度が小さくなるとき可変流量バイパス27の作動ガス流量は減る。流量制御弁30が100%の開度をとるとき流量制御弁30は全開となり、可変流量バイパス27には最大流量で作動ガスが流れる。流量制御弁30が0%の開度をとるとき流量制御弁30は全閉となり、可変流量バイパス27に作動ガスは流れない。流量制御弁30の開度を変化させることによって、可変流量バイパス27を流れる作動ガスの流量を連続的または段階的に制御することができる。
流量制御弁30は、例えば電動弁、すなわち電気モータで駆動される弁である。電動弁は開度指令信号S1に従って開度を制御することができるように構成されている。開度指令信号S1は、電動弁の開度を制御するよう電動弁(電気モータ)に入力される駆動電流または駆動電圧であってもよい。
固定流量バイパス28は、流量調整機器の一例としてのオンオフ弁32を備える。オンオフ弁32は、固定流量バイパス28を流れる作動ガスの流量を制御するよう固定流量バイパス28に配置されている。オンオフ弁32は、オンオフ指令信号S2に従って動作するよう構成されている。オンオフ指令信号S2は、オンオフ弁32がとるべきオンオフ状態(すなわち開閉状態)を表す制御信号またはそのほかの電気信号である。オンオフ弁32がオンのときオンオフ弁32は開き、固定流量バイパス28に作動ガスが流れる。オンオフ弁32がオフのときオンオフ弁32は閉じ、固定流量バイパス28に作動ガスが流れない。オンオフ弁32のオンオフ状態を変更することによって、固定流量バイパス28を流れる作動ガスの流量を二値的に制御することができる。
オンオフ弁32は、例えば電磁弁、いわゆるソレノイドバルブである。電磁弁はオンオフ指令信号S2に従ってオンオフを制御することができるように構成されている。オンオフ指令信号S2は、電磁弁のオンオフを制御するよう電磁弁に入力される駆動電流または駆動電圧であってもよい。
したがって、流量制御弁30の開度調節とオンオフ弁32の切り替えとを組み合わせてバイパスライン24を流れる作動ガス流量を制御することができる。流量制御弁30とオンオフ弁32は並列に設置されているので、いずれか1つの弁だけがバイパスライン24に設けられている場合に比べて、バイパスライン24の総流量を大きくすることができる。言い換えれば、バイパスライン24の制御可能な流量範囲を広くすることができる。また、流量制御弁30は、バイパスライン24の精密な流量制御を担い、オンオフ弁32は、バイパスライン24の粗い流量制御を担っているとも言える。
なお、圧縮機12は、そのほか種々の構成要素を有しうる。例えば、高圧流路20には、オイルセパレータ、アドソーバなどが設けられていてもよい。低圧流路21には、ストレージタンクそのほかの構成要素が設けられていてもよい。また、圧縮機12には、圧縮機本体25をオイルで冷却するオイル循環系や、オイルを冷却する冷却系などが設けられていてもよい。
また、極低温冷凍機10は、圧縮機12と膨張機14の間で作動ガスを循環させるガスライン34を備える。ガスライン34は、圧縮機12から膨張機14に作動ガスを供給する高圧ライン35と、膨張機14から圧縮機12に作動ガスを回収する低圧ライン36とを備える。膨張機14の室温部14aは、高圧ガス入口37と低圧ガス出口38とを備える。高圧ガス入口37は、高圧配管39によって高圧ガス出口18に接続され、低圧ガス出口38は、低圧配管40によって低圧ガス入口19に接続されている。高圧ライン35は、高圧配管39と高圧流路20からなり、低圧ライン36は、低圧配管40と低圧流路21からなる。
バイパスライン24は、膨張機14を迂回して高圧ライン35から低圧ライン36に作動ガスを還流させるように高圧ライン35を低圧ライン36に流体的に接続する。可変流量バイパス27は、高圧ライン35を低圧ライン36に流体的に接続し、固定流量バイパス28は、可変流量バイパス27と並列に高圧ライン35を低圧ライン36に流体的に接続する。
したがって、膨張機14から圧縮機12に回収される作動ガスは、膨張機14の低圧ガス出口38から低圧配管40を通じて圧縮機12の低圧ガス入口19に入り、さらに低圧流路21を経て圧縮機本体25に戻り、圧縮機本体25によって圧縮され昇圧される。圧縮機12から膨張機14に供給される作動ガスは、圧縮機本体25から高圧流路20を通じて圧縮機12の高圧ガス出口18から出て、さらに高圧配管39と膨張機14の高圧ガス入口37を経て膨張機14に供給される。
高圧流路20はバイパスライン24に分岐しているので、高圧流路20を流れる作動ガスの一部は、高圧流路20からバイパスライン24へと分流される。バイパスライン24、具体的には可変流量バイパス27と固定流量バイパス28には、流量制御弁30の開度とオンオフ弁32のオンオフに応じた流量で作動ガスが流れる。バイパスライン24は低圧流路21に合流しているので、作動ガスは膨張機14を迂回して圧縮機本体25に還流する。
極低温冷凍機10は、極低温冷凍機10を制御する制御装置50を備える。制御装置50は、バイパスライン24を流れる作動ガス流量を制御するよう構成されたバイパス流量制御部52を備える。バイパス流量制御部52は、バイパスライン24の作動ガス流量を制御することによって、ガスライン34の圧力制御を提供するよう構成されている。バイパス流量制御部52は、流量制御弁30の開度調節とオンオフ弁32の切り替えとを組み合わせてバイパスライン24を流れる作動ガス流量を制御するよう構成されている。
バイパス流量制御部52は、圧力比較部54と、弁制御部56とを備える。圧力比較部54は、ガスライン34の測定圧を目標圧と比較するよう構成されている。弁制御部56は、圧力比較部54による比較結果と、流量制御弁30の開度と、オンオフ弁32のオンオフとに基づいて流量制御弁30およびオンオフ弁32を制御するよう構成されている。
制御装置50は、第1測定圧信号P1および第2測定圧信号P2を取得するよう第1圧力センサ22および第2圧力センサ23と電気的に接続されている。また、制御装置50は、開度指令信号S1を供給するよう流量制御弁30と電気的に接続され、オンオフ指令信号S2を供給するようオンオフ弁32と電気的に接続されている。
制御装置50は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、図1では適宜、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
図2は、第1実施形態に係るバイパスライン24での流量配分を説明するための概念図である。所望されるバイパス流量が小さい場合には(低流量範囲C1)、オンオフ弁32はオフとされ、所望されるバイパス流量が大きい場合には(高流量範囲C2)、オンオフ弁32はオンとされる。流量制御弁30は、所望されるバイパス流量の大きさにかかわらず、所望のバイパス流量に応じて開度が制御される。
図2に例示されるように、低流量範囲C1に含まれるバイパス流量B1が望まれる場合には、流量制御弁30の開度調節のみによって所望のバイパス流量B1を実現することができる。この場合、可変流量バイパス27のみが利用され、固定流量バイパス28は利用されない。
低流量範囲C1と高流量範囲C2の境界となるバイパス流量B2が望まれる場合には、オンオフ弁32の開放または流量制御弁30の開度調節のいずれかによって所望のバイパス流量B2を実現することができる。説明の便宜上、バイパス流量B2を実現する流量制御弁30の開度を「特定開度」と称する。
バイパスライン24は、流量制御弁30を特定開度に開いた状態で可変流量バイパス27に流れる作動ガス流量が、オンオフ弁32のオン状態で固定流量バイパス28に流れる作動ガス流量に等しくなるように構成されている。
高流量範囲C2に含まれるバイパス流量B3が望まれる場合には、オンオフ弁32の開放と同時に流量制御弁30の開度調節がなされて、所望のバイパス流量B3を実現することができる。この場合、可変流量バイパス27と固定流量バイパス28が併用される。可変流量バイパス27に流れる作動ガス流量と、固定流量バイパス28に流れる作動ガス流量の合計により、所望のバイパス流量B3を得ることができる。
図3は、第1実施形態に係る極低温冷凍機10の圧力制御方法を説明するフローチャートである。制御装置50のバイパス流量制御部52は、以下に説明される、ガスライン34の圧力制御処理を実行するよう構成されている。ガスライン34の圧力制御は、極低温冷凍機10の運転中に所定の周期で繰り返し実行される。
ガスライン34の圧力が測定される(S10)。ガスライン34の圧力は、圧力センサを使用して測定される。バイパス流量制御部52は、第1測定圧信号P1及び/または第2測定圧信号P2からガスライン34の測定圧PMを取得する。
次に、ガスライン34の測定圧PMが目標圧PTと比較される(S12)。ガスライン34の目標圧PTは、極低温冷凍機10の使用者によって制御装置50に予め入力され、または制御装置50によって自動的に設定され、制御装置50に保存されている。圧力比較部54は、測定圧PMを目標圧PTと比較し、比較結果として両者の大小関係を出力する。すなわち、圧力比較部54による比較結果は、次の3つの状態、(i)測定圧PMが目標圧PTより大きい、(ii)測定圧PMが目標圧PTより小さい、(iii)測定圧PMが目標圧PTと等しい、のうちいずれかを表す。
圧力比較部54による比較結果に基づいてバイパス流量増加処理(S14)またはバイパス流量減少処理(S16)が選択され、選択されたバイパス流量制御が実行される。バイパス流量制御の結果として開度指令信号S1とオンオフ指令信号S2が生成され、バイパス流量制御部52は、それらを流量制御弁30とオンオフ弁32に出力する。それにより、ガスライン34の測定圧PMが目標圧PTに近づくように変化する。このようにして、ガスライン34の圧力制御が提供され、ガスライン34の測定圧PMを目標圧PTに追従させることができる。
具体的には、(i)測定圧PMが目標圧PTより大きい場合には、弁制御部56は、バイパス流量増加処理を実行する(S14)。(ii)測定圧PMが目標圧PTより小さい場合には、弁制御部56は、バイパス流量減少処理を実行する(S16)。(iii)測定圧PMが目標圧PTと等しい場合には、バイパス流量を増減させる必要が無いので、バイパス流量増加処理もバイパス流量減少処理も行われない。流量制御弁30の開度とオンオフ弁32のオンオフは変更されず、バイパス流量は維持される。
ガスライン34の圧力制御の一例は、高圧ライン35の作動ガス圧力を目標値に保つ高圧制御である。高圧制御が実行される場合、第1圧力センサ22による測定値が測定圧PMとして使用される。測定圧PMが目標圧PTより大きい(小さい)場合には、バイパス流量を増加(減少)させることによって、測定圧PMを小さく(大きく)して目標圧PTに近づけることができる。
ガスライン34の圧力制御の他の一例は、高圧ライン35と低圧ライン36との圧力差を目標値に保つ差圧制御である。差圧制御が実行される場合、第1圧力センサ22の測定値から第2圧力センサ23の測定値を引いて得られる差圧測定値が測定圧PMとして使用される。測定圧PMが目標圧PTより大きい(小さい)場合には、バイパス流量を増加(減少)させることによって、測定圧PMを小さく(大きく)して目標圧PTに近づけることができる。
なお、ガスライン34の圧力制御として、低圧ライン36の作動ガス圧力を目標値に保つ低圧制御が実行されることも可能である。第2圧力センサ23による測定値が測定圧PMとして使用される。ただし、高圧制御とは逆に、測定圧PMが目標圧PTより大きい場合にバイパス流量減少処理が行われ、測定圧PMが目標圧PTより小さい場合にバイパス流量増加処理が行われる。
圧縮機本体25が固定された一定の作動ガス流量を吐出するよう構成されている実施形態においては、図3に示されるバイパス流量制御を用いる圧力制御方法は極低温冷凍機10の運転中に常時実行されてもよい。
圧縮機本体25が作動ガス吐出流量を可変とするよう構成されている実施形態においては、圧縮機本体25が最小の吐出流量で運転しているときに限り、図3に示されるバイパス流量制御を用いる圧力制御方法が実行されてもよい。圧縮機12から膨張機14に供給される作動ガス流量を、圧縮機本体25の最小吐出流量よりもさらに小さくするよう制御することができる。
図4は、第1実施形態に係り、図3に示されるバイパス流量増加処理(S14)を説明するフローチャートである。まず、弁制御部56は、流量制御弁30の現在の開度Aが特定開度A0より小さいか否かを判定する(S20)。ここで、特定開度A0は、100%の開度に設定されている。そのため、現在の開度Aが特定開度A0を超える場合を考える必要はない。
流量制御弁30の現在の開度Aが特定開度A0より小さい場合には(S20の「A<A0」)、弁制御部56は、流量制御弁30の開度を大きくする(S22)。開度変化量ΔAは、予め設定されている。バイパス流量を精密に制御するには、開度変化量ΔAはなるべく小さいことが望ましい。そこで、開度変化量ΔAは例えば1%に設定される。弁制御部56は、オンオフ弁32のオンオフは変更しない。したがって、弁制御部56は、流量制御弁30の開度を現在の開度Aに開度変化量ΔAを加えるように開度指令信号S1を決定するとともに、オンオフ弁32の現在のオンオフ状態を保持するようにオンオフ指令信号S2を決定する。
流量制御弁30の現在の開度Aが特定開度A0に等しい場合には(S20の「A=A0」)、弁制御部56はさらに、オンオフ弁32の現在のオンオフ状態を判定する(S24)。オンオフ弁32がオフの場合(S24のオフ)、弁制御部56は、流量制御弁30の開度を0%に変更するように開度指令信号S1を決定するとともに、オンオフ弁32をオンに切り替えるようにオンオフ指令信号S2を決定する(S26)。上述のように、流量制御弁30を特定開度に開いた状態で可変流量バイパス27に流れる作動ガス流量は、オンオフ弁32のオン状態で固定流量バイパス28に流れる作動ガス流量に等しいから、バイパス流量は変化しない。こうして、図2に示される低流量範囲C1から高流量範囲C2に切り替えることができる。
流量制御弁30の現在の開度Aが特定開度A0(=100%)に等しくかつオンオフ弁32がオンの場合には(S24のオン)、流量制御弁30とオンオフ弁32はともに完全に開かれ、バイパス流量をこれ以上増加させることはできない。よって、弁制御部56は、流量制御弁30とオンオフ弁32をそれぞれ現在の状態に保持する。
このようにして、バイパス流量制御部52は、図2に示される流量配分に従ってバイパス流量を増加させることができる。
図5は、第1実施形態に係り、図3に示されるバイパス流量減少処理(S16)を説明するフローチャートである。まず、弁制御部56は、流量制御弁30の現在の開度Aが0%より大きいか否かを判定する(S30)。流量制御弁30の現在の開度Aが0%より大きい場合には(S30の「A>0%」)、弁制御部56は、流量制御弁30の開度を開度変化量ΔAだけ小さくする(S32)。弁制御部56は、オンオフ弁32のオンオフは変更しない。弁制御部56は、流量制御弁30の開度を現在の開度Aから開度変化量ΔAを差し引くように開度指令信号S1を決定するとともに、オンオフ弁32の現在のオンオフ状態を保持するようにオンオフ指令信号S2を決定する。
流量制御弁30の現在の開度Aが0%である場合には(S30の「A=0%」)、弁制御部56はさらに、オンオフ弁32の現在のオンオフ状態を判定する(S34)。オンオフ弁32がオンの場合(S34のオン)、弁制御部56は、流量制御弁30の開度を特定開度A0に変更するように開度指令信号S1を決定するとともに、オンオフ弁32をオフに切り替えるようにオンオフ指令信号S2を決定する(S36)。こうして、図2に示される高流量範囲C2から低流量範囲C1に切り替わる。
流量制御弁30の現在の開度Aが0%でありかつオンオフ弁32がオフの場合には(S34のオフ)、流量制御弁30とオンオフ弁32はともに完全に閉じている。バイパスライン24に作動ガスは流れていない。弁制御部56は、流量制御弁30とオンオフ弁32をそれぞれ現在の状態に保持する。
このようにして、バイパス流量制御部52は、図2に示される流量配分に従ってバイパス流量を減少させることができる。
ところで、ガスライン34を循環する作動ガス流量は、極低温冷凍機10の冷凍能力に応じて異なる。大きな冷凍能力を実現するように設計された極低温冷凍機10では圧縮機12と膨張機14を循環する作動ガス流量は増え、よって圧力制御に要するバイパスライン24の作動ガス流量も増える。大型の流量調整機器が必要となりうる。
比較例として、バイパスラインの流量調整機器として単一の電動弁を有する(すなわち、並列の電磁弁は有しない)大型極低温冷凍機の設計を考える。本発明者の検討によれば、所望される大きな冷凍能力に見合う流量制御を実現する電動弁は、かなり大きな駆動電流を要する。これは消費電力の増大を招く。それだけでなく、駆動電流の増加に伴って、電動弁に付随する電装品に高い要求仕様が求められ、その結果、電動弁と電装品を合わせた電動弁装置全体として顕著な大型化を避けがたいことが判明した。
第1実施形態に係る極低温冷凍機10によれば、バイパス流量制御部52は、流量制御弁30の開度調節とオンオフ弁32の切り替えとを組み合わせてバイパスライン24を流れる作動ガス流量を制御する。
これにより、比較例における不都合を克服することができる。バイパス流量が複数の流量調整機器に配分されるので、個々の機器の流量は少なくて済む。よって、比較的小型の機器を採用することができる。本発明者の検討によれば、小型極低温冷凍機での圧力制御に適合する小型の流量制御弁30と小型のオンオフ弁32との並列配置により、大型極低温冷凍機のバイパスライン24を設計することができる。こうした流量制御弁30とオンオフ弁32の組み合わせは、比較例において想定される大型の電動弁装置に比べて、コンパクトなサイズにまとめることが可能である。したがって、比較的大型の極低温冷凍機10に用いられうる流量調整機器について、その大型化を抑制することができる。
また、第1実施形態に係る極低温冷凍機10によれば、バイパス流量制御部52は、ガスライン34の測定圧を目標圧と比較する圧力比較部54と、圧力比較部54による比較結果と、流量制御弁30の開度と、オンオフ弁32のオンオフとに基づいて流量制御弁30およびオンオフ弁32を制御する弁制御部56と、を備える。このようにすれば、比較的簡単な制御処理でガスライン34の圧力制御を提供することができ、実装が容易となる。
バイパスライン24は、流量制御弁30を特定開度に開いた状態で可変流量バイパス27に流れる作動ガス流量が、オンオフ弁32のオン状態で固定流量バイパス28に流れる作動ガス流量に等しくなるように構成されている。弁制御部56は、次の(a)から(d)に従って流量制御弁30とオンオフ弁32を制御する。
弁制御部56は、(a)ガスライン34の測定圧が目標圧より大きい場合において、流量制御弁30の開度が特定開度より小さいときは、オンオフ弁32のオンオフを切り替えることなく流量制御弁30の開度を特定開度を上限として所定量大きくするように、流量制御弁30の開度およびオンオフ弁32のオンオフを決定する。
弁制御部56は、(b)ガスライン34の測定圧が目標圧より大きい場合において、流量制御弁30が特定開度で開かれかつオンオフ弁32がオフとされているときは、オンオフ弁32をオンに切り替えるとともに流量制御弁30の開度を0%とするように、流量制御弁30の開度およびオンオフ弁32のオンオフを決定する。
弁制御部56は、(c)ガスライン34の測定圧が目標圧より小さい場合において、流量制御弁30の開度が0%より大きいときは、オンオフ弁32のオンオフを切り替えることなく流量制御弁30の開度を所定量小さくするように、流量制御弁30の開度およびオンオフ弁32のオンオフを決定する。
弁制御部56は、(d)ガスライン34の測定圧が目標圧より小さい場合において、流量制御弁30の開度が0%でありかつオンオフ弁32がオンとされているときは、オンオフ弁32をオフに切り替えるとともに流量制御弁30を特定開度に開くように、流量制御弁30の開度およびオンオフ弁32のオンオフを決定する。
このようにすれば、バイパス流量を精密に調整するとともに、低流量範囲C1と高流量範囲C2を滑らかに切り替えることができる。それにより、実用に適するガスライン34の圧力制御を提供することができる。
特定開度は、100%の開度である。このようにすれば、流量制御弁30が全開のときの可変流量バイパス27の流量と、オンオフ弁32が開いているときの固定流量バイパス28の流量が等しくなる。これも制御構成を簡単にするのに役立つ。
圧力比較部54は、高圧ライン35の測定圧を目標圧と比較してもよい。このようにすれば、ガスライン34の高圧制御を提供することができる。圧力比較部54は、高圧ライン35と低圧ライン36の測定差圧を目標圧と比較してもよい。このようにすれば、ガスライン34の差圧制御を提供することができる。
流量制御弁30は、電動弁である。オンオフ弁32は、電磁弁である。こうした汎用の製品を利用することにより、バイパスライン24を低コストに構成することができる。なお、バイパスライン24に設置される流量調整機器は、これに限られず、電気的に駆動される弁、または、その他の駆動方式で流量調整を可能とする弁であってもよい。
図6を参照して説明するように、特定開度が100%であることは必須ではない。特定開度は、100%未満の任意に選択された開度であってもよい。
図6は、図3に示されるバイパス流量増加処理(S14)の他の例を説明するフローチャートである。図6に示されるバイパス流量制御処理は特定開度A0が100%未満である点で、図4に示されるバイパス流量制御処理と異なり、その余は共通である。具体的には、図6に示される処理は、「S24のオン」を除いて、図6に示される処理と同一である。よって、共通する処理の説明は省略される。
例えば特定開度A0が70%の場合を考える。バイパス流量増加処理においては、低流量範囲C1では流量制御弁30の開度が0%から70%へと増加される。流量制御弁30の開度が70%に達すると(S20の「A=A0」)、流量制御弁30が閉じられるとともにオンオフ弁32がオフからオンに切り替えられ(S26)、低流量範囲C1から高流量範囲C2に移行する。
図6に示されるように、弁制御部56は、ガスライン34の測定圧が目標圧より大きい場合において、流量制御弁30が特定開度A0で開かれかつオンオフ弁32がオンとされているときは(S24のオン)、オンオフ弁32のオンオフを切り替えることなく流量制御弁30の開度Aを所定量(すなわち開度変化量ΔA)大きくするように流量制御弁30の開度およびオンオフ弁32のオンオフを決定する(S28)。また、流量制御弁30の開度が特定開度A0を超える場合には(S20の「A>A0」)、オンオフ弁32のオンオフを切り替えることなく流量制御弁30の開度Aを所定量(すなわち開度変化量ΔA)大きくすればよい(S28)。高流量範囲C2では、既にオンオフ弁32が開いているので流量制御弁30の開度を70%以下に制限する必要が無い。より大きなバイパス流量が望まれる局面では、流量制御弁30は70%を超える開度に調整されてもよい。このようにして、バイパス流量の制御範囲を大きくすることができる。
図7は、第2実施形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。第2実施形態に係る極低温冷凍機10は、複数のオンオフ弁を並列に有することを除いて、第1実施形態に係る極低温冷凍機10と共通する。以下では、両者の異なる構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。
固定流量バイパス28は、可変流量バイパス27と並列に高圧ライン35を低圧ライン36に接続する複数のサブバイパスを備える。一例として、固定流量バイパス28は、第1サブバイパス28aと、第2サブバイパス28bとを有する。サブバイパスの数はとくに限定されず、3つ以上設けられていてもよい。複数のサブバイパスの各々がオンオフ弁を備える。よって、第1サブバイパス28aには第1オンオフ弁32aが配置され、第2サブバイパス28bには第2オンオフ弁32bが配置されている。
図8は、第2実施形態に係るバイパスライン24での流量配分を説明するための概念図である。所望されるバイパス流量が小さい場合には、第1オンオフ弁32aと第2オンオフ弁32bはともにオフとされ、所望されるバイパス流量が大きい場合には、第1オンオフ弁32aはオンとされ、第2オンオフ弁32bはオフとされる。所望されるバイパス流量がさらに大きい場合には、第1オンオフ弁32aと第2オンオフ弁32bがともにオンとされる。流量制御弁30は、所望されるバイパス流量の大きさにかかわらず、所望のバイパス流量に応じて開度が制御される。
第2実施形態に係る極低温冷凍機10にも、第1実施形態と同様に、図3に示される圧力制御方法が適用されうる。
図9は、第2実施形態に係り、図3に示されるバイパス流量増加処理(S14)を説明するフローチャートである。弁制御部56は、流量制御弁30の現在の開度Aが特定開度A0より小さいか否かを判定する(S20)。流量制御弁30の現在の開度Aが特定開度A0より小さい場合には(S20の「A<A0」)、弁制御部56は、流量制御弁30の開度を開度変化量ΔAだけ大きくする(S22)。弁制御部56は、第1オンオフ弁32a、第2オンオフ弁32bのオンオフを変更しない。
流量制御弁30の現在の開度Aが特定開度A0に等しい場合には(S20の「A=A0」)、弁制御部56は、第1オンオフ弁32aの現在のオンオフ状態を判定する(S24)。第1オンオフ弁32aがオフの場合(S24のオフ)、弁制御部56は、流量制御弁30の開度を0%に変更するとともに、第1オンオフ弁32aをオンに切り替える(S26)。第2オンオフ弁32bはオフのままとされる。
第1オンオフ弁32aがオンの場合(S24のオン)、弁制御部56はさらに、第2オンオフ弁32bの現在のオンオフ状態を判定する(S40)。第2オンオフ弁32bがオフの場合(S40のオフ)、弁制御部56は、流量制御弁30の開度を0%に変更するとともに、第2オンオフ弁32bをオンに切り替える(S42)。第1オンオフ弁32aはオンのままとされる。第1オンオフ弁32aと第2オンオフ弁32bがともにオンの場合(S40のオン)、弁制御部56は、流量制御弁30、第1オンオフ弁32a、および第2オンオフ弁32bをそれぞれ現在の状態に保持する。
図10は、第2実施形態に係り、図3に示されるバイパス流量減少処理(S16)を説明するフローチャートである。弁制御部56は、流量制御弁30の現在の開度Aが0%より大きいか否かを判定する(S30)。流量制御弁30の現在の開度Aが0%より大きい場合には(S30の「A>0%」)、弁制御部56は、流量制御弁30の開度を開度変化量ΔAだけ小さくする(S32)。弁制御部56は、第1オンオフ弁32a、第2オンオフ弁32bのオンオフを変更しない。
流量制御弁30の現在の開度Aが0%である場合には(S30の「A=0%」)、弁制御部56は、第2オンオフ弁32bの現在のオンオフ状態を判定する(S34)。第2オンオフ弁32bがオンの場合(S34のオン)、弁制御部56は、流量制御弁30の開度を特定開度A0に変更するとともに、第2オンオフ弁32bをオフに切り替える(S36)。第1オンオフ弁32aはオンのままとされる。
第2オンオフ弁32bがオフの場合(S34のオフ)、弁制御部56はさらに、第1オンオフ弁32aの現在のオンオフ状態を判定する(S50)。第1オンオフ弁32aがオンの場合(S50のオン)、弁制御部56は、流量制御弁30の開度を特定開度A0に変更するとともに、第1オンオフ弁32aをオフに切り替える(S52)。第2オンオフ弁32bはオフのままとされる。第1オンオフ弁32aと第2オンオフ弁32bがともにオフの場合(S50のオフ)、弁制御部56は、流量制御弁30、第1オンオフ弁32a、および第2オンオフ弁32bをそれぞれ現在の状態に保持する。
このようにして、バイパス流量制御部52は、図8に示される流量配分に従ってバイパス流量を増減させることができる。第2実施形態に係る極低温冷凍機10によれば、バイパス流量の制御範囲をより大きくすることができる。
また、単一の固定流量バイパス28を有する第1実施形態と異なり、第2実施形態に係る極低温冷凍機10によれば、固定流量バイパス28が複数のサブバイパスを有し、各々がオンオフ弁を備える。より多数のバイパス弁が並列に設置されているので、個々の弁を通る作動ガス流量をより小さくすることができる。よって、より小型の流量調整機器を採用することができる。
第1実施形態と同様に、第2実施形態においても、特定開度は100%に限定されず、任意に選択された開度であってよい。
図11は、第3実施形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。第3実施形態に係る極低温冷凍機10は、バイパスライン24の配置を除いて、第1実施形態に係る極低温冷凍機10と共通する。以下では、両者の異なる構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。
図11に示されるように、バイパスライン24は、圧縮機12の外に配置されてもよい。バイパスライン24は、膨張機14を迂回して高圧配管39から低圧配管40に作動ガスを還流させるように高圧配管39を低圧配管40に接続する。可変流量バイパス27は、流量制御弁30を備え、高圧配管39を低圧配管40に接続する。固定流量バイパス28は、オンオフ弁32を備え、可変流量バイパス27と並列に高圧配管39を低圧配管40に接続する。
このようにしても、既述の実施形態と同様に、極低温冷凍機10を構成することができる。
第3実施形態においても、オンオフ弁32は複数設けられ、並列に配置されてもよい。第1圧力センサ22および第2圧力センサ23も、圧縮機12の外に配置されてもよい。第1圧力センサ22は、高圧配管39の圧力を測定するよう高圧配管39に配置されてもよい。第2圧力センサ23は、低圧配管40の圧力を測定するよう低圧配管40に配置されてもよい。
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。