JP2019136204A - 組織代用人工繊維布の装着方法、補助人工心臓用の接続ケーブル及び補助人工心臓システム - Google Patents

組織代用人工繊維布の装着方法、補助人工心臓用の接続ケーブル及び補助人工心臓システム Download PDF

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達見 笠原
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Abstract

【課題】組織代用人工繊維布のケーブル本体への装着状態を確実なものとするとともに、組織代用人工繊維布が有している品質を維持することができ、組織代用人工繊維布の装着作業を容易なものとして生産性にも優れた方法を提供する。【解決手段】組織代用人工繊維布(ファブリック)をケーブル本体に被覆する組織代用人工繊維布被覆工程S1と、ファブリックの溶解度パラメーターよりもケーブル本体の溶解度パラメーターに近い溶解度パラメーターを有する揮発性溶媒をファブリックに含浸させる溶媒含浸工程S2と、ケーブル本体の外周面を溶解させて溶解部を形成して、ファブリックを形成する繊維のうちケーブル本体の外周面の側に位置する繊維が溶解部に浸った状態とする溶解部形成工程S3と、溶媒を揮発させるとともに溶解部を硬化させてケーブル本体の外周面の側に位置する繊維を、硬化した状態となった溶解部に埋め込んだ状態とする接合工程S4と有する。【選択図】図3

Description

本発明は、組織代用人工繊維布の装着方法、補助人工心臓用の接続ケーブル及び補助人工心臓システムに関する。
重症の心不全患者を対象に用いる医療機器として、心臓の機能の一部を補う補助人工心臓システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
図12は、特許文献1に記載されている補助人工心臓システム900を説明するために示す図である。特許文献1に記載されている補助人工心臓システム900は、図12に示すように、生体に埋め込まれる血液ポンプ910と、血液ポンプ910と心臓の血流とを接続するための人工血管920,930と、血液ポンプ910を生体外において制御する機能を有する制御装置(図12においては図示せず。)と、血液ポンプ910と制御装置との間に配設される補助人工心臓用の接続ケーブル950とを有している。
なお、制御装置は、例えば、可搬型の制御装置収納部(図12においては図示せず。)に収納されている。また、接続ケーブル950は、内部に血液ポンプ910を制御するための電気信号線(図12においては図示せず。)が内蔵されている。
また、特許文献1に記載されている補助人工心臓システム900においては、血液ポンプ910内部の潤滑、冷却及びシール性能維持などの機能を有する液体(パージ液と呼ぶこととする。)を、循環させるようにしているため、図示されていない可搬型の制御装置収納部には、パージ液を循環させるためのパージ液循環装置も設けられており、また、接続ケーブル950には、パージ液を循環させるためのパージ液循環チューブ(図12においては図示せず。)も内蔵されている。
このような補助人工心臓システム900において、特許文献1においては特に明示されてはいないが、接続ケーブル950には、血液ポンプ910と図示されていない制御装置との間のうち、少なくとも生体への入口部Aと血液ポンプ910との間に、当該接続ケーブル950の外周面を被覆するように組織代用人工繊維布が装着されている。
図13は、ケーブル本体951の外周面を被覆するよう組織代用人工繊維布が装着されている接続ケーブル950を用いた補助人工心臓システム900を示す図である。図13に示す補助人工心臓システム900において用いられている接続ケーブル950は、血液ポンプ910を制御するための制御信号線などが内蔵されている細長い管状のケーブル本体951と、当該ケーブル本体951の外周面を被覆するよう装着されている組織代用人工繊維布952と、を有したものとなっている。なお、組織代用人工繊維布は「ファブリック」とも呼ばれているため、以下においては、組織代用人工繊維布をファブリックと表記する場合もある。なお、ファブリックはポリエステルなどからなる不織布が用いられていることが多い。
また、ファブリック952はケーブル本体951の外周面を被覆するように装着されているが、以下の説明においては、「外周面を被覆するように」を省略する場合もある。例えば、上記「ファブリックはケーブル本体の外周面を被覆するように装着され」という表記は、「ファブリックはケーブル本体に装着され」というように略記する場合もある。
なお、図13においては、ファブリック952は、ケーブル本体951の外周面において、血液ポンプ910から生体の入口部Aを通って、体外に露出する部分にまで装着されている。これは、既成品としてのファブリックは、幅が50mm〜60mm程度で、長さが300mm程度のサイズを有しているものが一般的であるためであり、このようなサイズを有するファブリックをそのまま用いて、ケーブル本体951における血液ポンプ910との接続部951aを起点に装着すると、通常の体格の人においては、図13に示すように、ファブリック952は、血液ポンプ910から生体への入口部Aを通ってさらに生体外に露出した状態となる。なお、ファブリック952の生体外に露出している部分の長さは、個人差はあるが、100mm程度であることが一般的である。
ここで、ケーブル本体951にファブリック952を装着する主な理由は、雑菌などがケーブル本体951の外周面を伝わって生体への入口部Aから侵入し、血液ポンプ910にまで到達してしまうことを防ぐとともに、接続ケーブル950に外力が加わったときに、接続ケーブル950に加わる外力が血液ポンプに伝わることを防ぐためである。
すなわち、ケーブル本体951に装着されているファブリック952と生体組織とが癒着することにより、細菌などが血液ポンプ910に到達しにくくなるとともに、接続ケーブル950が容易に動いてしまうということを防ぐことができる。特に、生体への入口部Aの部分において、ファブリック952と生体組織とが癒着することによって、ファブリック952が生体組織と一体化すれば、細菌などの侵入を防ぐ効果及び接続ケーブルを固定する効果がより大きくなる。
ところで、ファブリック952をケーブル本体951に装着する際には、従来、ファブリック952をケーブル本体951の外周面に巻き付けたのちに、ファブリック952の長手方向の各縁部付近を縫合している。
特許第5899528号公報
図14は、図13に示す接続ケーブル950の要部を拡大して示す図である。図14(a)は斜視図であり、図14(b)は図14(a)のa−a矢視断面拡大図である。なお、特許文献1に記載されている補助人工心臓システム900においては、前述したように、パージ液を循環させるようにしているため、接続ケーブル950のケーブル本体951には、内部に血液ポンプ910を制御するための電気信号線961の他に、パージ液を循環させるためのパージ液循環チューブ962も内蔵されている。
ファブリック952は、図14に示すように、ファブリック952の長手方向に沿った各縁部がそれぞれ内側(ケーブル本体951の外周面側)に折り返されていて、各折り返し部952a、952bが、糸960によって縫合されたものとなっている。なお、折り返し部952a,952bの縫合は、一般的には、切除手術の縫合に用いられる糸と針とを用いて行われる。
このとき、ファブリック952の長手方向の長さを300mmとした場合、縫合すべき長さは、ほぼ300mmとなる。このときの縫合の仕方は、ファブリック952の長手方向端部から数十mm程度を1つの単位(1縫合単位とする。)として、1縫合単位ごとに順次行って行くのが一般的である。また、1縫合単位ごとの縫合を行う前に、縫合に先立ってケーブル本体951の外周面に接着剤の塗布も行われる。
ここで、ファブリック952をケーブル本体951に装着する際の具体的な手順について説明する。まずは、ファブリックの長手方向端部からケーブル本体951の外周面に1縫合単位(数十mm程度)の長さに相当する範囲に接着剤を塗布して、当該1縫合単位について縫合を行う。このとき、前述したように、ファブリック952の長手方向の各縁部を内側に折り返し、折り返しによって形成された各折り返し部952a,952bを互いに対向させた状態で縫合する。この動作を1縫合単位ごとに順次繰り返して行う。なお、ファブリック952は平均的な厚みが1.5mm程度と薄いため、縫合の仕方としては、レンベルト(Lembert)法などによる縫合が好ましいとされる。
このように、数十mm程度を1縫合単位として、1縫合単位ごとに、上記したような縫合作業を順次繰り返して行くこととなるが、このような縫合作業には、熟練が必要であり、300mm程度の長さをすべて縫合し終わるは、熟練者であっても5時間から6時間を要しているのが現状である。なお、上記したように、1縫合単位ごとに、接着剤を塗布して縫合するといった縫合作業を順次繰り返して行く理由は、接着剤をファブリック952全体の長さ分だけ一度に塗布してしまうと、ファブリック952全体の縫合が終了する前に接着剤の硬化が進行してしまうおそれがあるからである。
また、接着剤としては、ケーブル本体951及びファブリック952の耐熱性があまり高くないことから、常温で硬化する接着剤(常温硬化タイプ接着剤という。)が使用されていることが多い。このような常温硬化タイプ接着剤として広く使用されているのが、アクリル系樹脂を主成分とした2液性接着剤である。このようなアクリル系樹脂を主成分とした接着剤(アクリル系接着剤という。)を使用した場合、次のような課題がある。
すなわち、ケーブル本体に951にファブリック952が装着されている接続ケーブル950を、水分の存在する環境下で長期間使用していると、生体内水分などにより、接着剤が加水分解して接着強度が弱まって接着浮きが発生し、ケーブル本体951の外周面とファブリック952との間に隙間が生じてしまう場合がある。このように、ケーブル本体951の外周面とファブリック952との間に隙間が生じると、隙間から細菌が侵入し易くなり患者に感染症を発生させる原因ともなり得る。
図15は、アクリル系接着剤を使用してケーブル本体951の外周面にファブリック952を接着させた状態を示す図である。なお、図15は図14に示す接続ケーブル950を長手方向に切断した断面(図14(b)におけるb−b矢視断面)の一部を拡大して示す模式図である。なお、図15においては、電気信号線961及びパージ液循環チューブ962などは図示が省略されている。図15に示すように、ファブリック952はアクリル系接着剤971によってケーブル本体951の外周面に接着されたものとなっている。
このように、アクリル系接着剤971を使用してファブリック952をケーブル本体951の外周面に接着させた場合、ファブリック952とケーブル本体951との間にはアクリル系接着剤971による接着剤層972が介在する構造、すなわち、ケーブル本体951、接着剤層972及びファブリック952の3層構造となっている。このため、アクリル系接着剤971による接着剤層972が加水分解して接着強度が弱まると、接着浮きが発生し、ケーブル本体951の外周面とファブリック952との間に隙間が生じてしまう場合がある。この場合、細菌などが生体外から隙間を通って生体内に侵入し易くなり、患者に感染症を発生させる原因となり得る。
図16は、接続ケーブル950を生体に植え込んだ後に接着浮きが発生することによって細菌が生体に侵入する例を説明するために示す図である。なお、図16における接続ケーブル950は、図14に示す接続ケーブル950を長手方向に切断した断面(図14(b)におけるb−b矢視断面)の一部を拡大して示す模式図であり、この場合、生体組織も示されている。なお、生体組織は図16においてハッチングで示されている。また、図16に示す接着剤層972は、図15に示す接着剤層972に対応するものであるが、ケーブル本体951、接着剤層972及びファブリック952の3層構造をより明確化するために、図15の場合よりもさらに模式化し、かつ、誇張して示されている。
図16(a)は接続ケーブル950を生体に植え込んで間もない状態であり、この状態では、アクリル系接着剤971による接着剤層972は接着浮きが生じておらず、また、ファブリック952は生体組織と適正な状態で癒着しているため、細菌などの侵入を防止できる。その後、時間の経過によって、アクリル系接着剤971による接着剤層972が生体内水分によって加水分解して、接着浮きが生じる場合がある。図16(b)は接着剤層972が加水分解して接着浮きが生じて隙間Sが生じた様子を示している。なお、隙間Sは薄い灰色で示されている。このように、隙間Sが生じると、当該隙間が細菌の侵入経路となって、図16(c)の破線矢印Rに示すように、細菌などが生体外から隙間を通って生体内に侵入し易くなり、患者に感染症を発生させる原因となり得る。
また、接着剤としては、アクリル系接着剤の中でも作業性の面を考慮して低粘度のアクリル系接着剤を使用することが多く、低粘度であるがために、アクリル系接着剤971がファブリック952を形成する繊維間の隙間に毛細管現象によって入り込んでしまい、アクリル系接着剤971がファブリック952を形成する繊維間の隙間で硬化してしまうこととなる。
このように、アクリル系接着剤971がファブリック952を形成する繊維間の隙間で硬化してしまうと、ファブリック952を形成する繊維が目詰まりして、ファブリック952がもともと有している「ふわふわ感」が損なわれ、生体への入口部Aの部分において、ファブリック952と生体組織との癒着が不十分なものとなる。ファブリック952と生体組織との癒着が不十分なものとなることによっても、細菌などが生体外から隙間を通って生体内に侵入し易くなり、患者に感染症を発生させる原因となり得る。また、アクリル系接着剤がファブリック952を形成する繊維間の隙間で硬化してしまうと、ケーブル本体951とファブリック952との接着強度ムラが発生し易くなる。
また、アクリル系接着剤は、常温で硬化するものであり、また、冷凍保存の状態から解凍して使用することが多い。このため、解凍後においては、常温下で硬化が進行し、数十分程度で粘度が高くなって使用可能な粘度では無くなってしまうことから、当該アクリル系接着剤をケーブル本体951に塗布した後においては、ファブリック952の縫合作業を迅速に行う必要がある。
しかし、前述したように、ファブリック952の縫合作業には多くの時間と熟練とを要するため、常に接着剤の粘度すなわち硬化の進行具合を意識しながらファブリック952の縫合作業を行う必要があり、作業性が悪く生産性に劣る。また、アクリル系接着剤に限らず接着剤は、硬化の進行具合が所定以上に進んでしまうと使用できなくなってしまうため、使用前の段階で使用不可となってしまい、廃棄せざるを得なくなってしまう。
このように、従来の組織代用人工繊維布(ファブリック952)の装着方法では、「接着浮き」によりケーブル本体951の外周面とファブリック952との間に隙間が生じてしまい、ファブリック952のケーブル本体951への装着状態が確実なものとならないとともに、ファブリック952がもともと有している「ふわふわ感」が損なわれてしまうことにより、ファブリック952がもともと有している品質を維持することができないといった課題がある。また、ファブリック952をケーブル本体951に装着する際のファブリックの装着作業が面倒であり、多くの時間を要することから、生産性に劣るという課題もある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、組織代用人工繊維布のケーブル本体への装着状態を確実なものとするとともに、組織代用人工繊維布がもともと有している品質を維持することができ、かつ、組織代用人工繊維布の装着作業を容易なものとして生産性にも優れる組織代用人工繊維布の装着方法を提供することを目的とする。また、補助人工心臓用の接続ケーブルとしての品質が高品質なものとなり、かつ、生産性にも優れた補助人工心臓用の接続ケーブルを提供することを目的とする。また、本発明の補助人工心臓用の接続ケーブルを採用することによって、システム全体としての生産性に優れ、かつ、信頼性の高い補助人工心臓システムを提供することを目的とする。
[1]本発明の組織代用人工繊維布の装着方法は、生体内に埋め込まれる血液ポンプと当該血液ポンプを生体外において制御する機能を有する制御装置との間に配設される補助人工心臓用の接続ケーブルにおける管状のケーブル本体の前記制御装置と前記血液ポンプとの間のうち、少なくとも生体内への入口部と前記血液ポンプとの間のケーブル本体の外周面を被覆するように組織代用人工繊維布を装着する組織代用人工繊維布の装着方法であって、前記ケーブル本体及び前記組織代用人工繊維布は、それぞれが互いに異なった溶解度パラメーターを有する素材でなり、前記組織代用人工繊維布を前記ケーブル本体の外周面に被覆する組織代用人工繊維布の被覆工程と、前記組織代用人工繊維布が有する溶解度パラメーターよりも前記ケーブル本体が有する溶解度パラメーターに近い溶解度パラメーターを有する揮発性の溶媒を前記組織代用人工繊維布に含浸させて、当該溶媒を前記ケーブル本体の外周面に達するまで浸透させる溶媒含浸工程と、前記溶媒によって当該ケーブル本体の外周面を溶解させて溶解部を形成し、前記組織代用人工繊維布を形成する繊維のうち、前記ケーブル本体の外周面の側に位置する繊維が前記溶解部に浸った状態とする溶解部形成工程と、前記ケーブル本体の外周面の側に位置する繊維が前記溶解部に浸った状態で、前記溶媒を揮発させるとともに前記溶解部を硬化させることによって、前記組織代用人工繊維布を形成する繊維のうち、前記ケーブル本体の外周面の側に位置する繊維を、硬化した状態となった前記溶解部に埋め込んだ状態とする接合工程と、有することを特徴とする。
本発明の組織代用人工繊維布の装着方法によれば、組織代用人工繊維布(ファブリック)は、当該組織代用人工繊維布を形成する繊維のうち、ケーブル本体の外周面の側に位置する繊維が、ケーブル本体に形成されている溶解部(硬化した状態となった溶解部)に埋め込まれた状態でケーブル本体に接合されたものとなる。このため、組織代用人工繊維布とケーブル本体との間に接着剤層が存在せず、組織代用人工繊維布とケーブル本体との2層構造によって組織代用人工繊維布をケーブル本体に接合させることができる。これにより、組織代用人工繊維布が装着されてなる接続ケーブルを、水分の存在する生体内で使用した場合でも、アクリル系接着剤を使用した場合のように、接着剤が加水分解して接着強度が弱まり、接着浮きが発生して、ケーブル本体の外周面と組織代用人工繊維布との間に隙間が生じてしまうといった不具合の発生を防止できる。これにより、細菌などが生体内に侵入することを防ぐことができ、感染症の発生を抑制できる。
また、溶媒としては、組織代用人工繊維布が有する溶解度パラメーターから離れた溶解度パラメーターを有する揮発性の溶媒を用いているため、当該溶媒を組織代用人工繊維布に含浸させても、溶媒が組織代用人工繊維布を溶解させることがなく、また、当該溶媒は揮発性を有していることから、時間の経過とともに揮発してしまい、組織代用人工繊維布には残存しないため、組織代用人工繊維布がもともと有している「ふわふわ感」が損なわれることがない。このように、「ふわふわ感」が損なわれることがないため、生体への入口部において、ファブリックと生体組織との癒着が確実なものとなり、これによっても、細菌などが生体内に侵入することを防ぐことができ、感染症の発生を抑制できる。
また、組織代用人工繊維布をケーブル本体に被覆した状態で、溶媒を組織代用人工繊維布に含浸させるようにしている。このため、1縫合単位ごとにケーブル本体に接着剤を塗布して組織代用人工繊維布を縫合して行くといった従来の組織代用人工繊維布の装着方法に比べて、組織代用人工繊維布の装着作業を容易なものとすることができ、生産性の向上を図ることができる。
このように、本発明の組織代用人工繊維布の装着方法によれば、組織代用人工繊維布のケーブル本体への装着状態を確実なものとするとともに、組織代用人工繊維布がもともと有している品質を維持することができ、かつ、組織代用人工繊維布の装着作業を容易なものとして生産性にも優れたものとなる。
[2]本発明の組織代用人工繊維布の装着方法においては、前記溶媒含浸工程は、前記溶媒が貯留されている容器の中に前記組織代用人工繊維布を被覆した状態のケーブル本体を浸漬させることよって、当該溶媒を前記組織代用人工繊維布に含浸させることが好ましい。
このように、溶媒が貯留されている容器の中に組織代用人工繊維布を被覆した状態のケーブル本体を浸漬させることよって、溶媒をケーブル本体の外周面に達するまで浸透させることができる。
[3]本発明の組織代用人工繊維布の装着方法においては、前記溶媒含浸工程は、前記溶媒を前記組織代用人工繊維布の表面から塗布することによって、当該溶媒を前記組織代用人工繊維布に含浸させることも可能である。
このように、溶媒を組織代用人工繊維布の表面から塗布することによっても、溶媒をケーブル本体の外周面に達するまで浸透させることができる。
[4]本発明の組織代用人工繊維布の装着方法においては、前記溶解部は、前記ケーブル本体の外周面から当該ケーブル本体の肉厚方向の所定深さまで形成され、当該ケーブル本体の肉厚方向の所定深さは、前記組織代用人工繊維布を形成する繊維の平均繊維径よりも大きな値で、かつ、前記ケーブル本体の肉厚よりも小さい値であることが好ましい。
ケーブル本体に形成する溶解部の深さをこのように設定することにより、組織代用人工繊維布を形成する繊維を、溶解部に確実に埋め込ませることができるとともに、ケーブル本体の肉厚以上にケーブル本体を溶解させてしまうことを確実に防止できる。
[5]本発明の組織代用人工繊維布の装着方法においては、前記組織代用人工繊維布を形成する繊維の平均繊維径よりも大きな値で、かつ、ケーブル本体の肉厚よりも小さい値は、前記組織代用人工繊維布を形成する繊維の平均繊維径の1.2倍から4.0倍の範囲の値であることが好ましい。
ケーブル本体に形成する溶解部の深さをこのように設定することにより、組織代用人工繊維布を形成する繊維を、溶解部により確実に埋め込ませることができるとともに、ケーブル本体を当該ケーブル本体の肉厚以上に溶解させてしまうことをより確実に防止できる。
[6]本発明の組織代用人工繊維布の装着方法においては、前記溶媒に前記ケーブル本体を形成する素材を溶解させてなる溶液を生成する工程をさらに有し、前記溶媒含浸工程は、「前記溶媒に前記ケーブル本体を形成する素材を溶解させてなる溶液」を前記組織代用人工繊維布に含浸させて、「前記溶媒に前記ケーブル本体を形成する素材を溶解させてなる溶液」を前記ケーブル本体の外周面に達するまで浸透させることが好ましい。
このように、溶媒にケーブル本体を形成する素材を溶け込ませてなる溶液を組織代用人工繊維布に含浸させることにより、溶媒が揮発したあとにおいては、ケーブル本体を形成する素材が硬化した状態でケーブル本体の外周面に残存することとなる。このため、溶解部211の深さを浅くしても、組織代用人工繊維布を確実にケーブル本体に接合された状態とすることができる。これにより、ケーブル本体の肉厚を薄くすることができる。すなわち、溶解部の深さを浅くできるということは、その結果として、ケーブル本体の肉厚を薄くできるということであり、それによって、ケーブル本体の太さを細く(ケーブル本体を細径化)することが可能となる。また、溶解部の深さを浅くできるということは、ケーブルル本体を溶解させる際の時間を短縮することができるため、生産性の向上にも寄与する。
[7]本発明の組織代用人工繊維布の装着方法においては、前記ケーブル本体はポリウレタンでなり、前記組織代用人工繊維布はポリエステルでなることが好ましい。
このように、ケーブル本体及び組織代用人工繊維布としてこれらの素材を用いることにより、ケーブル本体及び組織代用人工繊維布を、それぞれに適した品質のものとして製造できる。
[8]本発明の組織代用人工繊維布の装着方法においては、前記溶媒はテトラヒドロフランでなることが好ましい。
テトラヒドロフランは、安定な物質でかつ優れた溶解性を持っており、また、揮発性にも優れているため、本発明の組織代用人工繊維布の装着方法において用いる溶媒として好適なものとなる。また、ケーブル本体が例えばポリウレタンでなり、組織代用人工繊維布が例えばポリエステルでなる場合、当該テトラヒドロフランの溶解度パラメーターが、ポリウレタンに近く、ポリエステルからは離れているため、ポリエステルでなる組織代用人工繊維布は溶解させずに、ポリウレタンでなるケーブル本体を溶解させることができる。このため、当該テトラヒドロフランを溶媒として用いることにより、ポリエステルでなる組織代用人工繊維布は溶解させずに、ポリウレタンでなるケーブル本体のみを溶解させて、当該ケーブル本体の外周面に溶解部を形成することができる。
[9]本発明の補助人工心臓用の接続ケーブルは、生体内に埋め込まれる血液ポンプと当該血液ポンプを生体外において制御する機能を有する制御装置との間に配設される補助人工心臓用の接続ケーブルであって、少なくとも前記血液ポンプを制御するための制御信号線が内蔵されている管状のケーブル本体と、当該ケーブル本体の前記血液ポンプと前記制御装置との間のうち、少なくとも生体内への入口部と前記血液ポンプとの間には、前記ケーブル本体の外周面を被覆するように当該ケーブル本体に装着されている組織代用人工繊維布と、を有し、前記ケーブル本体及び前記組織代用人工繊維布は、それぞれが互いに異なった溶解度パラメーターを有する素材でなり、前記ケーブル本体の外周面には、前記組織代用人工繊維布が有する溶解度パラメーターよりも前記ケーブル本体が有する溶解度パラメーターに近い溶解度パラメーターを有する揮発性の溶媒によって溶解された後に硬化した状態となった溶解部が存在し、当該硬化した状態となった溶解部には、前記組織代用人工繊維布を形成する繊維のうち、前記ケーブル本体の外周面の側に位置する繊維が埋め込まれてなる構造を有することを特徴とする。
本発明の補助人工心臓用の接続ケーブルによれば、補助人工心臓用の接続ケーブルとしての品質が高品質なものとなり、かつ、生産性にも優れた補助人工心臓用の接続ケーブルとなる。
具体的には、本発明の補助人工心臓用の接続ケーブルにおいては、組織代用人工繊維布は、当該組織代用人工繊維布を形成する繊維のうち、ケーブル本体の外周面の側に位置する繊維が、ケーブル本体に形成された溶解部(硬化した状態となった溶解部)に埋め込まれた状態でケーブル本体に接合されたものとなっている。このため、組織代用人工繊維布とケーブル本体との間に接着剤層が存在せず、組織代用人工繊維布とケーブル本体との2層構造によって組織代用人工繊維布がケーブル本体に接合されたものとなっている。
本発明の補助人工心臓用の接続ケーブルは、このような2層構造となっていることから、組織代用人工繊維布が装着されてなる接続ケーブルを、水分の存在する生体内で使用した場合でも、アクリル系接着剤を使用した場合のように、接着剤が加水分解して接着強度が弱まり、接着浮きが発生して、ケーブル本体の外周面と組織代用人工繊維布との間に隙間が生じてしまうといった不具合の発生を防止できる。これにより、細菌などが生体内に侵入することを防ぐことができ、感染症の発生を抑制できる。
また、本発明の補助人工心臓用の接続ケーブルにおいては、組織代用人工繊維布がもともと有している「ふわふわ感」が損なわれることがない。このため、生体への入口部において、ファブリックと生体組織との癒着が確実なものとなり、これによっても、細菌などが生体内に侵入することを防ぐことができ、感染症の発生を抑制できる。このように、本発明の補助人工心臓用の接続ケーブルは、補助人工心臓用の接続ケーブルとしての品質を高品質なものとすることができる。
また、本発明の補助人工心臓用の接続ケーブルにおいては、組織代用人工繊維布をケーブル本体に被覆した状態で、溶媒を組織代用人工繊維布に含浸させて、組織代用人工繊維布をケーブル本体に接合させるようにしているため、組織代用人工繊維布の装着作業を容易なものとすることができ、生産性の向上を図ることができる。
[10]本発明の補助人工心臓システムは、生体内に埋め込まれる血液ポンプと、当該血液ポンプを生体外において制御する機能を有する制御装置と、前記血液ポンプと前記制御装置との間に配設される補助人工心臓用の接続ケーブルとを有する補助人工心臓システムであって、前記補助人工心臓用の接続ケーブルは、[9]に記載の補助人工心臓用の接続ケーブルであることを特徴とする。
本発明の補助人工心臓システムによれば、血液ポンプと前記制御装置との間に配設される補助人工心臓用の接続ケーブルとして、[9]に記載の補助人工心臓用の接続ケーブルを採用しているため、補助人工心臓システム全体としての生産性に優れ、かつ、信頼性の高い補助人工心臓システムとすることができる。
実施形態1に係る補助人工心臓システム100を説明するために示す図である。 実施形態1に係る補助人工心臓システム100に用いる補助人工心臓用の接続ケーブル200の断面図である。 実施形態1に係る組織代用人工繊維布の装着方法における各工程を示すフローチャートである。 溶解部形成工程S3がなされた状態の接続ケーブル200を長手方向に沿って切断した断面(図2におけるb−b矢視断面)の一部を拡大して模式的に示す図である。 ファブリック220を形成する繊維のうち、ケーブル本体210の外周面の側に位置する繊維が溶解部211に浸った状態となっている様子を模式的に示す図である。 接合工程S4がなされた状態の接続ケーブル200を長手方向に沿って切断した断面の一部を拡大して模式的に示す図である。 180度剥離接着強さ試験において使用する試験用サンプルの一例を模式的に示す図である。 試験用サンプル300を容器500に貯留されているTHFに浸漬させた状態を示す図である。 180度剥離接着強さ試験によってケーブル本体210からファブリック220を引き剥がした後のケーブル本体210の各領域(領域A1,A2,A3)の様子を顕微鏡写真で示す図である。 実施形態2に係る組織代用人工繊維布の装着方法における各工程を示すフローチャートである。 THFのみを用いて溶解させる場合に比べて溶解部211の深さd1を浅くすることができる理由を説明するために示す図である。 特許文献1に記載されている補助人工心臓システム900を説明するために示す図である。 ケーブル本体951にファブリック952が装着されている接続ケーブル950を用いた補助人工心臓システム900を示す図である。 図13に示す接続ケーブル950の要部を拡大して示す図である。 アクリル系接着剤を使用してファブリック952をケーブル本体951の外周面に接着させた状態を示す図である。 接続ケーブル950を生体に植え込んだ後に接着浮きが発生することによって細菌が生体に侵入する例を説明するために示す図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
[実施形態1]
実施形態1に係る組織代用人工繊維布の装着方法を説明する前に、実施形態1に係る補助人工心臓システム100の構成及び当該実施形態1に係る補助人工心臓システム100に用いる補助人工心臓用の接続ケーブル200について概略的に説明する。
図1は、実施形態1に係る補助人工心臓システム100を概略的に説明するために示す図である。実施形態1に係る補助人工心臓システム100は、図1に示すように、生体に埋め込まれる血液ポンプ110と、血液ポンプ110と心臓の血流とを接続するための人工血管120,130と、血液ポンプ110を生体外において制御する制御装置140を収納する可搬型の制御装置収納部150と、血液ポンプ110と制御装置140との間に配設される補助人工心臓用の接続ケーブル200とを有している。
図2は、実施形態1に係る補助人工心臓システム100に用いる補助人工心臓用の接続ケーブル200の断面図である。なお、図2は図1においてケーブル本体210にファブリック22が装着されている部分の断面(図2におけるa−a矢視断面)を拡大して示している。実施形態1に係る補助人工心臓システム100に用いる補助人工心臓用の接続ケーブル200(実施形態1に係る補助人工心臓用の接続ケーブル200とする。)は、図2に示すように、柔軟性を有する細長い管状のケーブル本体210と、当該ケーブル本体210に装着されているファブリック(組織代用人工繊維布)220とを有する。なお、ケーブル本体210及びファブリック220は、それぞれが互いに異なる溶解度パラメーターを有する素材(合成性樹脂とする。)でなる。
ここで、ケーブル本体210を形成する素材(合成樹脂)としては、ポリウレタンを例示することができ、当該ポリウレタンの溶解度パラメーター(Solubility Parameter)は、10.0である。また、ファブリック220を形成する素材(合成樹脂)としては、ポリエステルを例示することができ、当該ポリエステルの溶解度パラメーターは、10.7である。以下、溶解度パラメーターをSP値と表記する場合もある。
ファブリック220は、ケーブル本体210の血液ポンプ110と制御装置140との間のうち、少なくとも、生体への入口部Aと血液ポンプ110との間の外周面を被覆するように装着されている。なお、ファブリック220として、既成のファブリック(長辺の長さが300mmのファブリックとする。)をそのままのサイズで用いた場合には、前述したように、通常の体格の人においては、ファブリック220は、血液ポンプ110から生体への入口部Aを通ってさらに生体外に露出した状態となる。生体外に露出している部分の長さは、個人差はあるが、100mm程度であることが一般的である。
ファブリック220のケーブル本体210への装着は、従来の接続ケーブル950と同様に行うものとする。すなわち、図14において説明したように、ファブリック220(図14においてはファブリック952)をケーブル本体210(図14においてはケーブル本体951)の外周面に巻き付けたのちに、図4と同様に、ファブリック220の長手方向の各縁部を内側に折り返し、折り返しによって形成された各折り返し部(図2においては符号は省略されている。)を互いに対向させた状態で縫合することによって行うものとする。
また、実施形態1に係る補助人工心臓システム100においては、血液ポンプ110内部の潤滑、冷却及びシール性能維持などの機能を有するパージ液を循環させるようにしているものとする。このため、制御装置収納部150内には、パージ液を循環させるためのパージ液循環装置(図示せず。)も設けられており、また、接続ケーブル200のケーブル本体210の内部には、血液ポンプ110(図1参照。)を制御するための電気信号線231の他に、パージ液を循環させるためのパージ液循環チューブ232も内蔵されている。
ここで、ケーブル本体210の肉厚は0.2mm(200μm)〜0.3mm(300μm)程度であり、外径は10mm程度である。ただし、ケーブル本体210の肉厚及びケーブル本体210の外径は、このような値に限られるものではなく、適宜、最適な値のものを使用することができる。なお、「ケーブル本体210の肉厚」というのは、筒状のケーブル本体を形成するポリウレタン部(ポリウレタン層という。)の厚みを指している。
次に、実施形態1に係る組織代用人工繊維布(ファブリック220)の装着方法について説明する。
図3は、実施形態1に係る組織代用人工繊維布の装着方法における各工程を示すフローチャートである。実施形態1に係る組織代用人工繊維布の装着方法は、図3に示すように、組織代用人工繊維布(ファブリック220)をケーブル本体210の外周面に被覆する組織代用人工繊維布の被覆工程S1と、ファブリック220が有する溶解度パラメーターよりもケーブル本体210が有する溶解度パラメーターに近い溶解度パラメーターを有する揮発性の溶媒をファブリック220に含浸させて、当該溶媒をケーブル本体210の外周面に達するまで浸透させる溶媒含浸工程S2と、溶媒によって当該ケーブル本体210の外周面を溶解させて溶解部211(後述する図4参照。)を形成し、ファブリック220を形成する繊維のうち、ケーブル本体210の外周面の側に位置する繊維が溶解部211に浸った状態とする溶解部形成工程S3と、ファブリック220を形成する繊維のうち、ケーブル本体210の外周面の側に位置する繊維が溶解部211に浸った状態で溶媒を揮発させるとともに溶解部211を硬化させることによって、ファブリック220を形成する繊維のうち、ケーブル本体210の外周面の側に位置する繊維を、硬化した状態となった溶解部211に埋め込んだ状態とする接合工程S4と、有する。
なお、組織代用人工繊維布の被覆工程S1において、ファブリック220をケーブル本体210の外周面に被覆する」というのは、図2及び図14において説明したように、ファブリック220の長手方向の各縁部を内側に折り返し、折り返しによって形成された各折り返し部を互いに対向させた状態で縫合することである。当該組織代用人工繊維布の被覆工程S1によって、「ファブリック220が被覆されたケーブル本体210」が作成される。
「ファブリック220が被覆されたケーブル本体210」は、外観的には、図14(a)に示すものと同様である。但し、図14に示すものは、ファブリック952はケーブル本体951に接着剤によって接合されたものとなっているが、組織代用人工繊維布の被覆工程S1(図3参照。)によって作成された「ファブリック220が被覆されたケーブル本体210」は、単に、ファブリック220がケーブル本体210被覆されただけの状態である。
このような組織代用人工繊維布の被覆工程S1がなされた後、溶媒含浸工程S2がなされる。当該溶媒含浸工程S2において用いられる溶媒は、実施形態1に係る組織代用人工繊維布の装着方法においては、SP値が9.1の液状のテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)を用いるものとする。以下、テトラヒドロフランをTHFと表記する。
溶媒としてSP値が9.1のTHFを用いることによって、THFのSP値に近いSP値を有するケーブル本体(ポリウレタン:SP値が10.0)は溶解され易いが、THFのSP値から離れたSP値を有するファブリック(ポリエステル:SP値が10.7)は溶解されにくい。なお、この明細書においては、溶解というのは、液化だけでなく膨潤も含むものとする。このため、例えば「溶解した状態」いうのは、液化した状態だけはなく、膨潤した状態をも含むものとする。
ここで、「ファブリック220が被覆されたケーブル本体210」のファブリック220にTHFを含浸させる方法としては、THFを貯留した容器(例えば、後述する図8における容器500)の中に「ファブリック220が被覆されたケーブル本体210」を浸漬させることよって、THFをファブリック220に含浸させる方法(浸漬方法とする。)と、THFをファブリック220の外周面から塗布することによって含浸させる方法(塗布方法とする。)とを例示できる。実施形態1に係る組織代用人工繊維布の装着方法及び後述する実施形態2に係る組織代用人工繊維布の装着方法においては、浸漬方法によってTHFをファブリック220に含浸させるものとする。なお、THFは、例えば、約1cP(センチポアズ)の低粘度のものを使用する。この溶媒含浸工程S2がなされると、THFはファブリック220を通ってケーブル本体210の外周面に達するまで浸透する。
以上のようにして溶媒含浸工程S2がなされると、続いて、溶解部形成工程S3がなされる。溶解部形成工程S3は、ケーブル本体210の外周面に達するまで浸透したTHFによって、ケーブル本体210の外周面から所定深さまでを溶解させて溶解部211を形成する工程である。
図4は、溶解部形成工程S3がなされた状態の接続ケーブル200を長手方向に沿って切断した断面(図2におけるb−b矢視断面)の一部を拡大して模式的に示す図である。図4に示すように、溶媒含浸工程S2によって、ファブリック220にTHFを含浸させると、当該THFは、ケーブル本体210の外周面に達するまで浸透し、THFのSP値近いSP値を有するケーブル本体210の外周面から当該ケーブル本体210の肉厚方向所定深さd1まで溶解させる。これにより、ケーブル本体210には溶解部211が形成される。一方、ファブリック220はSP値がTHFのSP値から離れているため溶解しない。
図4において、濃い灰色で塗りつぶした部分がケーブル本体210に形成された溶解部211である。溶解部形成工程S3がなされることによって、ファブリック220を形成する繊維のうち、ケーブル本体210の外周面の側に位置する繊維が溶解部211に浸った状態となる。
ここで、ケーブル本体210の肉厚方向所定深さd1(μm)は、ファブリック220を形成する繊維の平均繊維径(μm)よりも大きな値で、かつ、ケーブル本体210の肉厚t1(μm)よりも小さい値となるようにする。なお、「ケーブル本体210の肉厚方向所定深さd1」を「溶解部211の深さd1」と表記する場合もある。
溶解部の深さd1(μm)は、例えば、ファブリック220を形成する繊維の平均繊維径Φ(後述する図5参照。)の1.2倍から4.0倍の範囲に設定することが好ましい。なお、溶解部211の深さd1の範囲は、より狭く設定することも可能であり、ファブリック220を形成する繊維の平均繊維径Φの1.5倍から3.0倍の範囲、さらには、ファブリック220を形成する繊維の平均繊維径Φの1.8倍から2.2倍の範囲に設定してもよい。
具体的には、ファブリック220を形成する繊維の平均繊維径Φが16μmであるとすれば、ファブリック220を形成する繊維の平均繊維径Φの1.2倍から4.0倍の範囲に設定するというのは、溶解部211の深さd1を、19.2μmから64μmの範囲のいずれかの値(深さ)に設定することである。また、ファブリック220を形成する繊維の平均繊維径Φの1.5倍から3.0倍の範囲に設定するというのは、溶解部211の深さd1を、24μm〜48μmの範囲のいずれかの値(深さ)に設定することである。また、ファブリック220を形成する繊維の平均繊維径Φの1.8倍から2.2倍の範囲に設定するというのは、溶解部211の深さd1を、28.8μm〜35.2μmの範囲のいずれかの値(深さ)に設定することである。
一方、ケーブル本体210の肉厚は200μm〜300μm程度である。このため、溶解部211の深さd1を最も深い64μmに設定したとしても、ケーブル本体210の肉厚t1を超えることがなく、ケーブル本体210のポリウレタン層を貫くまで溶解させてしまうことを防ぐことができる。
図5は、ファブリック220を形成する繊維のうち、ケーブル本体210の外周面の側に位置する繊維が溶解部211に浸った状態となっている様子を模式的に示す図である。なお、図5は図4の要部をさらに拡大して示している。また、ファブリック220の繊維は断面が円形をなすだけではなく、楕円形など種々の形状をなしている場合もあるが、ここでは、繊維の断面は円形として説明する。
また、図5において、濃い灰色で示した領域は、ケーブル本体210に形成された溶解部211を示しており、薄い灰色で示した領域は、ケーブル本体210のポリウレタン部(ポリウレタン層)における溶解部211以外の領域(溶解していない領域)を示している。なお、前述したように、溶解部211の深さd1は、ファブリック220を形成する繊維の平均繊維径Φよりも大きな値で、かつ、ケーブル本体210の肉厚t1(200μm〜300μm程度)よりも小さい値とし、ここでは、30μm程度であるとする。
ケーブル本体210に形成された溶解部211の深さd1を30μm程度とすることにより、当該溶解部211の深さd1が、ファブリック220を形成する繊維の平均繊維径Φ(例えば、約16μm)を超えるため、ファブリック220を形成する繊維のうち、ケーブル本体210の外周面の側に位置する繊維221は、図5に示すように、ケーブル本体210に形成された溶解部211に浸った状態となる。ここで、「ケーブル本体210に形成された溶解部211に浸った状態」というのは、ケーブル本体210の外周面の側に位置する繊維221が、ケーブル本体210に形成された溶解部211に埋没した状態で浸っている状態又は一部に露出部分を残した状態で溶解部211に浸っている状態を指すものとする。
なお、ここでは、溶解部211の深さd1を30μmとしたが、仮に、最も浅く(19.2μm)した場合でも、溶解部211の深さd1がファブリック220を形成する繊維の平均繊維径Φ(Φは約16μm)を超えるため、ファブリック220を形成する繊維のうち、ケーブル本体210の外周面の側に位置する繊維221は、ケーブル本体210に形成された溶解部211に浸った状態、すなわち、ケーブル本体210の外周面の側に位置する繊維221が、ケーブル本体210に形成された溶解部211に埋没した状態で浸っている状態又は一部に露出部分を残した状態で溶解部211に浸っている状態となる。
このような溶解部形成工程S3がなされると、続いて、接合工程S4がなされる。当該接合工程S4は、ファブリック220を形成する繊維のうち、ケーブル本体210の外周面の側に位置する繊維が溶解部211に浸った状態で溶媒を揮発させるとともに溶解部211を硬化させることによって、ファブリック220を形成する繊維のうち、ケーブル本体210の外周面の側に位置する繊維を、硬化した状態となった溶解部211に埋め込んだ状態とする工程である。
このような接合工程S4がなされることによって、ケーブル本体210に形成された溶解部211が硬化した後においては、ファブリック220は、当該ファブリック220を形成する繊維のうち、ケーブル本体210の外周面の側に位置する繊維221がケーブル本体210に形成された溶解部211(硬化した状態となった溶解部211)に埋め込まれた状態で接合されたものとなる。このため、ファブリック220は、ケーブル本体210に強固に接合されたものとなる。
図6は、接合工程S4がなされた状態の接続ケーブル200を長手方向に沿って切断した断面の一部を拡大して模式的に示す図である。なお、図6は図4と同様に、図2におけるb−b矢視断面の一部を示す図である。図6に示すように、接合工程S4がなされた状態においては、ケーブル本体210に形成された溶解部211は、THFが揮発しているとともに溶解部211(図4参照。)が硬化した状態となるため、ケーブル本体210と一体化されたものとなっている。
接合工程S4がなされた後においては、図6に示すように、ファブリック220とケーブル本体210との間には、図15において示した従来の接続ケーブル950のような接着剤層(図15における接着剤層972)が存在せず、ファブリック220とケーブル本体210とによる2層構造となる。
このように、接合工程S4がなされた状態の接続ケーブル200は、接着剤層が存在しないことから、水分が存在する生体内で使用した場合でも、アクリル系接着剤を使用した場合のように、接着剤が加水分解して接着強度が弱まり、接着浮きが発生して、ファブリックとケーブル本体の外周面との間に隙間が生じてしまう場合があるといった不具合の発生を防止できる。これにより、細菌などが生体内に侵入することを防ぐことができ、感染症の発生を抑制できる。
また、ファブリック220は、当該ファブリック220を形成する繊維のうち、ケーブル本体210の外周面の側に位置する繊維221が、ケーブル本体210に形成された溶解部211(硬化した状態となった溶解部211)に埋め込まれた状態でケーブル本体210に接合されたものとなるため、高い接合強度が得られる。本願の発明者らが行った「180度剥離接着強さ試験」によれば、ファブリック220が千切れてしまうほどの接合強度が得られることが確かめられた。
図7は、180度剥離接着強さ試験において使用する試験用サンプルの一例を模式的に示す図である。180度剥離接着強さ試験は、一般的に行われている接着剤の剥離接着強さ試験であり、例えば、帯状をなす繊維などの被接着部材を接着剤によって板状の接着対象部材に接着させたのちに、当該被接着部材を180度に折り返して、折返し方向に引張り力を与える試験である。
このような180度剥離接着強さ試験を行うに際して、図7に示すような試験用サンプル300を作成した。実際の接続ケーブルにおいては、ファブリック220は縫合などによってケーブル本体210の外周面の周方向全体を被覆されたものとなっているが、試験用サンプル300においては、図7に示すように、ファブリック220をケーブル本体210に巻き付けた状態で、クリップ400によってファブリック220の長手方向に沿った各縁部付近を挟んで当該ファブリック220をケーブル本体210に被覆したものとなっている。なお、図7においては、ファブリック220の厚みは誇張して描かれている。また、ケーブル本体210に内蔵されている電気信号線及びパージ液循環チューブなどの図示は省略されている。
また、試験用サンプル300は、剥離試験を行う際に、ファブリック220を剥がしやすくするために、ファブリック220をケーブル本体210の外周の周方向全体に被覆させた状態とするのではなく、ファブリック220がケーブル本体210の外周面に接触しない領域A1(非接触領域A1とする。)が形成されるようにファブリック220をケーブル本体210に巻き付けるとともに左右両側の端部を外方に突出させて、当該突出部分をクリップ400で挟むようにしている。このため、ファブリック220とケーブル本体210の外周面との間には、当該非接触領域A1の他に、ファブリック220がケーブル本体210の外周面に対して弱い接触状態で接触している領域A2(接触度合いの弱い領域A2という。)と、ファブリック220がケーブル本体210の外周面に対して密着状態で接触している領域A3(密着領域A3という。)とが形成される。
このような試験用サンプル300を用いて180度剥離接着強さ試験を行った。この場合の180度剥離接着強さ試験は、まず、ファブリック220にTHFを十分に含浸させる。含浸の方法としては、当該試験においては、図8に示すように、容器500に貯留されている液状のTHFに所定時間(例えば、約30秒から40秒間)浸漬させる方法を採用した。このとき、THFがファブリック220内に均等に含浸するように、試験用サンプル300をTHFに浸漬させた状態で、例えば、上下方向及び左右方向に揺すったり、円弧を描くように往復動させたり、接続ケーブル200の長手方向に沿った仮想的な中心軸を回転軸として回転させたりすることが好ましい。
このようにして、ファブリック220にTHFを含浸させた後、試験用サンプル300を容器500から取り出す。このとき、ケーブル本体210の外周面には、THFにより溶解された所定深さの溶解部211(例えば、図4参照。)が形成された状態となっている。その後、試験用サンプル300を乾燥(例えば自然乾燥)させてTHFを揮発させるとともに溶解部211を硬化させる。このようにすることで、ファブリック220の繊維のうち、ケーブル本体210の外周面の側に位置する繊維が、ケーブル本体210に形成された溶解部211(硬化した状態となった溶解部211)に埋め込まれた状態となる。これを用いて180度剥離接着強さ試験を行った。
図9は、180度剥離接着強さ試験によってケーブル本体210からファブリック220を引き剥がした後のケーブル本体210の各領域(領域A1,A2,A3)の様子を顕微鏡写真で示す図である。なお、図9に示すケーブル本体210の各領域(領域A1,A2,A3)は、図7に示す非接触領域A1、接触度合いの弱い領域A2及び密着領域A3に対応するものである。図9において、黒色で示されている部分がケーブル本体210の外周面を示し、白色で示されている部分が千切れてケーブル本体側に残ったファブリック220の繊維を示している。
図9に示す領域A1は、図7における非接触領域A1であり、もともとファブリック220がケーブル本体210被覆されていないため、ケーブル本体210の外周面がむき出しとなっている。また、図9に示す領域A2は、図7に示す接触度合いが弱い領域A2であり、ファブリック220がケーブル本体210に接触している部分と接触していない部分とが混在している。このため、溶解部211が硬化した状態においては、ファブリック220を形成する繊維のうち、ケーブル本体の外周面の側に位置する繊維が、ケーブル本体の外周面に埋め込まれている部分と埋め込まれていない部分とが混在している。従って、ファブリック220が引き剥がされると、ケーブル本体210の外周面(黒色)と、千切れてケーブル本体210の外周面の側に残ったファブリック220の繊維(白色)とが混在した状態となっている。
一方、図9に示す領域A3は、図7における密着領域A3であり、溶解部211が硬化した状態においては、ファブリック220を形成する繊維のうち、ケーブル本体の外周面の側に位置する繊維の殆どの繊維が、ケーブル本体の外周面に埋め込まれた状態となっている。このため、ファブリック220が引き剥がされると、ケーブル本体210の外周面のほぼ全体が、千切れてケーブル本体210の外周面の側に残ったファブリック220の繊維(白色)で埋め尽くされた状態となっている。すなわち、図7における密着領域A3はファブリック220がケーブル本体210に確実に接合された状態となっていることを示している。
ところで、図7は180度剥離接着強さ試験を行う際に用いた試験用サンプル300であるため、ファブリック220はケーブル本体210に対して非接触領域A1、接触度合いの弱い領域A2が存在したが、実際には、ファブリック220はケーブル本体210に対して密着領域A3と同様にファブリック220の全面がケーブル本体210の外周面に密着した状態となっている。このため、接合工程S4がなされた状態においては、ファブリック220はケーブル本体210に対して強固に接合されたものとなる。
このように、ファブリック220がケーブル本体210に強固に接合されるのは、ケーブル本体210とファブリック220との間に接着剤層が存在せず、ケーブル本体210とファブリック220との2層構造となっているためである。すなわち、ファブリック220は、当該ファブリック220を形成する繊維のうち、ケーブル本体210の外周面の側に位置する繊維が、ケーブル本体210に形成された溶解部211(硬化した状態となった溶解部211)に埋め込まれた状態でケーブル本体210に接合されるからである。
また、ファブリック220は、当該ファブリック220がもともと有している「ふわふわ感」が損なわれていないことも確かめられた。このように、ファブリック220がもともと有している「ふわふわ感」が損なわれることがないのは、溶媒含浸工程S2において用いる溶媒は、ファブリック220が有する溶解度パラメーターから離れた溶解度パラメーターを有し、かつ、揮発性のTHFを用いているためである。
すなわち、THFをファブリック220に含浸させても、THFがファブリック220を溶解させることがなく、THFがファブリック220に浸透して行く過程において、ファブリック220にはTHFが付着しても、THFは時間の経過とともに揮発してしまい、ファブリック220にはTHFが残存しないためである。
また、THFがファブリック220にケーブル本体210の外周面に達するまで浸透した後においては、ケーブル本体210の外周面に達したTHFが毛細管現象によってファブリック220側に上昇して行くが、THFは揮発性が高いため、THFが毛細管現象によってファブリック220側に上昇しても、THFは時間の経過とともに揮発してしまい、ファブリック220にはTHFが残存しないためである。これらの理由から、ファブリック220がもともと有している「ふわふわ感」が損なわれることがない。
また、試験用サンプル300においては、ファブリック220をケーブル本体210に被覆する際には、ファブリック220の長手方向の各縁部付近を縫合する代わりにクリップ400によってケーブル本体210に被覆するようにしたが、実際には、縫合によってファブリック220をケーブル本体210に被覆する。このように、縫合によってファブリック220をケーブル本体210に被覆する場合であっても、予め、縫合によってファブリック220をケーブルに被覆した状態で、溶媒含浸工程S2以降の工程を行えばよい。
これにより、例えば、1つの縫合単位ごとにケーブル本体に接着剤を塗布してファブリックを220縫合する作業を繰り返し行う従来のファブリックの装着方法に比べて、ファブリック220の装着作業を容易なものとすることができ、生産性の向上を図ることができる。すなわち、ケーブル本体に接着剤を塗布しながらファブリックを装着する従来の方法では、接着剤の硬化具合を常に意識しながらファブリックの縫合作業を行う必要があるため、作業性が悪く生産性に劣るといった課題がある。
これに対して、実施形態に係る組織代用人工繊維布の装着方法によれば、ファブリック220の縫合作業をすべて終了してからファブリック220をケーブル本体210に接合させることができる。このため、接着剤の硬化具合を何ら意識することなく、ファブリック220の縫合作業を行うことができる。これにより、従来のように、接着剤の硬化具合を常に意識しながらファブリックの縫合作業を行う必要がなくなる。また、ファブリック220の縫合作業時に接着剤を塗布する作業を行う必要がなくなることから、ファブリック220に接着剤が付着してしまうといった作業ミスをなくすことができ、品質向上も図れる。このように、実施形態に係る組織代用人工繊維布の装着方法によれば、作業性に優れ生産性の向上が図れるだけでなく、品質の向上も図れる。
以上説明したように、実施形態1に係る組織代用人工繊維布の装着方法によれば、ファブリック220は、当該ファブリック220を形成する繊維のうち、ケーブル本体210の外周面の側に位置する繊維が、ケーブル本体210に形成された溶解部211(硬化した状態となった溶解部211)に埋め込まれた状態でケーブル本体210に接合されたものとなる。このため、ファブリック220とケーブル本体210との間に接着剤層が存在せず、ファブリック220とケーブル本体210との2層構造によってファブリック220をケーブル本体210に接合させることができる。
このように、ファブリック220とケーブル本体210とを2層構造によって接合させることができることにより、ファブリック220が装着されてなる接続ケーブル200を、水分の存在する生体内で使用した場合でも、アクリル系接着剤を使用した場合のように、接着剤が加水分解して接着強度が弱まり、接着浮きが発生して、ケーブル本体210の外周面とファブリック220との間に隙間が生じてしまうといった不具合の発生を防止できる。これにより、細菌などが生体内に侵入することを防ぐことができ、感染症の発生を抑制できる。
また、溶解部形成工程S3において用いる溶媒は、ファブリック220が有する溶解度パラメーターから離れた溶解度パラメーターを有し、かつ、揮発性のTHFを用いている。このため、当該THFをファブリック220に含浸させても、THFがファブリック220を溶解させることがなく、また、THFがファブリック220に付着しても、THFは後に揮発してしまい、ファブリック220には残存しないため、ファブリック220がもともと有している「ふわふわ感」が損なわれることがない。このように、「ふわふわ感」が損なわれることがないため、生体への入口部Aにおいて、ファブリック220と生体組織との癒着が確実なものとなるため、これによっても、細菌などが生体内に侵入することを防ぐことができ、感染症の発生を抑制できる。
また、ファブリック220をケーブル本体210に被覆した状態で、THFをファブリック220に含浸させて、ファブリック220をケーブル本体210に接合させるようにしている。すなわち、実施形態に係る組織代用人工繊維布の装着方法においては、ファブリック229の縫合作業をすべて終了してからファブリック220をケーブル本体210に接合するようにしている。このため、接着剤の硬化具合を何ら意識することなく、ファブリック220の縫合作業を行うことができる。これにより、従来のように、接着剤の硬化具合を常に意識しながらファブリックの縫合作業を行う必要がなくなる。また、ファブリック220の縫合作業時に接着剤の塗布作業を行う必要がなくなることによって、ファブリック220に接着剤が付着してしまうといった作業ミスもなくなり、品質向上も図れる。このように、実施形態に係る組織代用人工繊維布の装着方法によれば、作業性に優れ生産性の向上が図れるだけでなく、品質の向上も図れる。
以上説明したように、実施形態1に係る組織代用人工繊維布の装着方法によれば、ファブリック220のケーブル本体210への装着状態を確実なものとするとともに、ファブリック220がもともと有している品質を維持することができ、かつ、ファブリック220の装着作業を容易なものとして生産性にも優れたものとなる。
また、実施形態1に係る補助人工心臓用の接続ケーブル200は、実施形態1に係る組織代用人工繊維布の装着方法によって、ファブリック220がケーブル本体210に装着されたものとなっている。このため、実施形態1に係る補助人工心臓用の接続ケーブル200は、ケーブル本体210の外周面には、THFによって溶解された後に硬化した状態となった溶解部が存在し、当該硬化した状態となった溶解部には、ファブリック220を形成する繊維のうち、ケーブル本体210の外周面の側に位置する繊維が埋め込まれてなる構造を有している。このような構成を有しているため、補助人工心臓用の接続ケーブルとしての品質が高品質なものとなり、かつ、生産性にも優れた補助人工心臓用の接続ケーブルとなる。
具体的には、実施形態1に係る補助人工心臓用の接続ケーブル200においては、ファブリック220は、当該ファブリック220を形成する繊維のうち、ケーブル本体210の外周面の側に位置する繊維が、ケーブル本体210に形成された溶解部211(硬化した状態となった溶解部211)に埋め込まれた状態でケーブル本体210に接合されたものとなっている。このため、ファブリック220とケーブル本体210との間に接着剤層が存在せず、ファブリック220とケーブル本体210との2層構造によってファブリック220がケーブル本体210に接合されたものとなっている。
ここで、ケーブル本体210に注目すると、当該ケーブル本体210は、さらに、2つの層を有する構成となっている。すなわち、ケーブル本体210は、当該ケーブル本体210の元々の素材であるポリウレタンそのものからなる層(第1層とする。)と、当該第1層の外側に位置し、当該ケーブル本体210の元々の素材(ポリウレタン)とファブリック220を形成する繊維とが混在している層(第2層とする。)とを有する構成となっている。当該第2層を構成する「ケーブル本体210の元々の素材(ポリウレタン)」は、ファブリック220が有する溶解度パラメーターよりもケーブル本体210が有する溶解度パラメーターに近い溶解度パラメーターを有する揮発性の溶媒(この場合、THF)によって溶解された後に硬化した状態となることによって形成されたものである。なお、第1層は、図5を例にとって説明すると、ケーブル本体210のうちの薄い灰色で示した領域(溶解していない領域)に対応し、第2層は、同じく図5を例にとって説明すると、濃い灰色で示した領域(溶解部211)に対応する。
実施形態1に係る補助人工心臓用の接続ケーブル200は、このような構造となっていることから、ケーブル本体210にファブリック220が装着されてなる接続ケーブル200を、水分の存在する生体内で使用した場合でも、アクリル系接着剤を使用した場合のように、接着剤が加水分解して接着強度が弱まり、接着浮きが発生して、ケーブル本体210の外周面とファブリック220との間に隙間が生じてしまうといった不具合の発生を防止できる。これにより、細菌などが生体内に侵入することを防ぐことができ、感染症の発生を抑制できる。
また、実施形態1に係る補助人工心臓用の接続ケーブル200においては、ファブリック220がもともと有している「ふわふわ感」が損なわれることがない。このように、「ふわふわ感」が損なわれることがないため、生体への入口部Aにおいて、ファブリック220と生体組織との癒着が確実なものとなり、これによっても、細菌などが生体内に侵入することを防ぐことができ、感染症の発生を抑制できる。
また、実施形態1に係る補助人工心臓用の接続ケーブル200においては、ファブリック220をケーブル本体210に被覆した状態で、THFをファブリック220に含浸させて、ファブリック220をケーブル本体210に接合させるようにしているため、ファブリック220の装着作業を容易なものとすることができ、生産性の向上を図ることができる。
また、実施形態1に係る補助人工心臓システム100は、接続ケーブルとして実施形態1に係る接続ケーブル200を備えるため、補助人工心臓システム全体としての生産性に優れ、かつ、信頼性の高い補助人工心臓システムとすることができる。
[実施形態2]
上述した実施形態1においては、溶媒としては、THFのみを用いて、当該THFをファブリック220に含浸させるようにしたが、実施形態2に係る組織代用人工繊維の装着方法においては、溶媒としてのTHFにケーブル本体210を形成する素材(ポリウレタン)を溶解させた溶液を生成し、当該THFにケーブル本体210を形成する素材(ポリウレタン)を溶解させた溶液をファブリック220に含浸させる。なお、「THFにケーブル本体210を形成する素材(ポリウレタン)を溶解させた溶液」をここでは「ポリウレタン溶解溶液」と呼ぶこととする。当該ポリウレタン溶解溶液の粘度は、約4cPとする。また、ポリウレタン溶解溶液を生成する際に、THFに溶解させるポリウレタンは、ポリウレタンをビーズ状としたポリウレタンチップを用いることが好ましい。
ここで、実施形態2に係る組織代用人工繊維布の装着方法においては、20℃でTHFを90グラムとし、ポリウレタン(ポリウレタンチップ)を6グラムとしている。このため、THFとポリウレタンとの比率(重量比)は、90:6=15:1である。なお、THFとポリウレタンとの比率(重量比)は、このような比率に限定されるものではなく、適宜、変更可能である。但し、ポリウレタンの比率を高めると、ファブリック220の「ふわふわ感」が損なわれるため、THFとポリウレタンとの好ましい比率は、20:1〜8:1であり、より好ましい比率は、18:1〜10:1である。
図10は、実施形態2に係る組織代用人工繊維布の装着方法における各工程を示すフローチャートである。実施形態2に係る組織代用人工繊維布の装着方法が、実施形態1に係る組織代用人工繊維布方法における各工程(図3参照。)と異なる点は、THFにポリウレタンを溶解させた溶液(ポリウレタン溶解溶液)を生成する工程S0が新たに加わった点であり、その他の各工程S1〜S4は、図3に示す各工程S1〜S4と基本的には同様である。
なお、図10において、ポリウレタン溶解溶液生成工程S0と、組織代用人工繊維布(ファブリック220)をケーブル本体210の外周面に被覆する組織代用人工繊維布の被覆工程S1とは順序が逆であってもよい。すなわち、ファブリック220をケーブル本体210の外周面に被覆する組織代用人工繊維布の被覆工程S1を行ってから、ポリウレタン溶解溶液生成工程S0を行ってもよい。
前述したように、図10に示す各工程S1〜S4は、図2に示す各工程S1〜S4と基本的には同様であるが、実施形態2に係る組織代用人工繊維布の装着方法における溶媒含浸工程S2は、THFのみをファブリック220に含浸させるのではなく、ポリウレタン溶解溶液をファブリック220に含浸させるようにしている。
このように、ポリウレタン溶解溶液をファブリック220に含浸させることにより、当該ポリウレタン溶解溶液に含まれる溶媒としてのTHFが揮発したあとにおいては、ポリウレタン溶解溶液に含まれるポリウレタンが硬化した状態でケーブル本体210の外周面に残存することとなる。
このため、実施形態2に係る組織代用人工繊維布の装着方法によれば、実施形態1に係る組織代用人工繊維布の装着方法のようにTHFのみを用いて溶解させる場合に比べて溶解部211の深さd1を浅くすることができる。このように、THFのみを用いて溶解させる場合に比べて溶解部211の深さd1を浅くすることができる理由について以下に説明する。
図11は、THFのみを用いて溶解させる場合に比べて溶解部211の深さd1を浅くすることができる理由を説明するために示す図である。なお、図11はTHFのみを用いてケーブル本体210を溶解させた場合とポリウレタン溶解溶液を用いてケーブル本体210を溶解させた場合とを比較して示す図である。
図11(a)はTHFのみを用いてケーブル本体210を溶解させた場合を示しており、図11(b)はポリウレタン溶解溶液を用いてケーブル本体210を溶解させた場合を示している。ここで、図11(a)における(a1),(a2)及び図11(b)における(b1),(b2)は、ケーブル本体210のポリウレタン層の一部を拡大して示す図である。例えば、図11(a)における(a1)及び図11(b)における(b1)は、図2におけるb−b矢視断面の一部である。但し、図11においては、ファブリック220は図示が省略されている。
以下の説明においては、図11(a)における(a1)を図11(a1)と表記し、図11(a)における(a2)を図11(a2)と表記する。同様に、図11(b)における(b1)を図11(b1)と表記し、図11(b)における(b2)を図11(b2)と表記する。
また、図11(a2)は、ケーブル本体210(ポリウレタン層)の厚みt1に対して、溶解部211がケーブル本体210の外周面から深さd1まで形成された状態を示している。この場合、溶解部211はTHFのみによって形成されたものとなっている。
一方、図11(b2)は、ケーブル本体210(ポリウレタン層)の厚みt1に対して、溶解部211(薄い灰色で示す領域)がケーブル本体210のもともとの外周面から深さd3(d3<d1)まで形成された状態を示している。この場合、溶解部211はポリウレタン溶解溶液によって形成されたものとなっている。なお、図11(b2)は、ポリウレタン溶解溶液に含まれているTHFの一部が揮発することによって、ポリウレタン溶解溶液に含まれているポリウレタンによるポリウレタン層212(濃い灰色で示す領域)が、表面側から1/3程度の深さd2まで形成された状態を示している。
THFのみを用いてケーブル本体210を溶解させた場合(図11(a2)参照。)は、ケーブル本体210(ポリウレタン層)の厚みt1に対する溶解部211の深さd1は、前述したように、例えば、30μm程度の深さd3まで形成されている。溶解部221の深さd1をこの程度まで形成することによって、溶解部211が硬化した後においては、前述したように、ファブリック220が確実にケーブル本体に接合された状態となる。なお、図11(a2)においては、溶解部211の深さd1はやや誇張して描かれている。
ここで、「ファブリック220が確実にケーブル本体に接合された状態となる」というのは、ファブリック220を形成する繊維のうち、ケーブル本体210の外周面の側に位置する繊維が、ケーブル本体210に形成された溶解部211(硬化した状態となった溶解部211)に埋め込まれた状態でケーブル本体210に接合されることを意味している。
このように、溶解部221の深さd1を適切な深さまで形成することによって、溶解部211の硬化後においては、ファブリック220が確実にケーブル本体210に接合された状態となる。
ところで、接続ケーブル200の扱い易さなどの理由からケーブル本体210の太さをより細くしたい(ケーブル本体210を細径化したい)という要求も多い。ケーブル本体210を細径化するには、その空洞部の径(内径)を細径化することも一案であるが、空洞部に収納されている電気信号線231及びパージ液循環パイプ231(図2参照。)などを細くすることが難しいため、ケーブル本体210の内径を小さくすることは非現実的である。このため、ケーブル本体210を細径化するには、ケーブル本体210の肉厚(ポリウレタン層の厚み)を薄くすればよいが、ケーブル本体210の肉厚(ポリウレタン層の厚み)を薄くすることにも課題がある。
すなわち、ケーブル本体210には溶解部211が形成されるが、当該溶解部211は、ファブリック220を確実に接合できるだけの深さが必要である。このため、ケーブル本体210の肉厚(ポリウレタン層の厚み)は、ファブリック220を確実に接合できるだけの深さまで溶解部211の形成が可能な厚みを確保する必要がある。換言すれば、溶解部211の深さを浅くしても、ファブリック220を確実に接合できるようにすれば、ケーブル本体210の肉厚(ポリウレタン層の厚み)を薄くすることが可能となる。
実施形態2に係る組織代用人工繊維布の装着方法は、この点の考慮したものである。すなわち、溶解部211の深さを浅くしても、ファブリック220を確実に接合できるようにするものであり、溶解部211の深さを浅くすることができれば、ケーブル本体の肉厚(ポリウレタン層の厚み)を薄くすることができる。
図11(b2)は、前述したように、ポリウレタン溶解溶液を用いてケーブル本体210を溶解させた場合であり、図11(b2)示すように、ポリウレタン溶解溶液によってケーブル本体210に形成された溶解部211の深さd3は、THFのみによってケーブル本体210に形成された溶解部211の深さd1に比べて浅くすることができる。
これは、ポリウレタン溶解溶液によってケーブル本体210に形成された溶解部211の深さd3が浅くても、THFが揮発した後は、ポリウレタン溶解溶液に溶け込んでいるポリウレタン(ケーブル本体210と同じ素材)が残存するため、残存したポリウレタンが硬化するとともに、ケーブル本体210に形成された溶解部211に存在するケーブル本体211のもともとのポリウレタン層が硬化することによって、ファブリック220(図11では図示が省略されている。)を接合させることができるからである。
このように、溶解部211の深さを浅くしても、ファブリック220が確実にケーブル本体210に接合された状態とすることができる。これにより、ケーブル本体210の肉厚を薄くすることができる。すなわち、溶解部211の深さを浅くできるということは、その結果として、ケーブル本体210の肉厚を薄くできるということであり、それによって、ケーブル本体210を細径化することが可能となる。
また、溶解部211の深さを浅くできるということは、図10における溶媒含浸工程S2において、ファブリック220が被覆されたケーブル本体210にポリウレタン溶解溶液を含浸させる際の含浸時間の短縮化が図れる。例えば、ファブリック220が被覆されたケーブル本体210を、図8と同様に、容器に貯留されている溶媒(この場合、ポリウレタン溶解溶液)に浸漬させる場合、浸漬時間の短縮化が図れる。このように、ポリウレタン溶解溶液を含浸させる際の含浸時間の短縮化が図れることは、生産性の向上にも寄与する。
以上説明したように、実施形態2に係る組織代用人工繊維布の装着方法によれば、実施形態1に係る組織代用人工繊維布の装着方法と同様、ファブリック220のケーブル本体210への装着状態を確実なものとするとともに、ファブリック220がもともと有している品質が損なわれることなく、かつ、ファブリック220の装着作業を容易なものとして生産性にも優れたものとなる。
さらに、実施形態2に係る組織代用人工繊維布の装着方法においては、ケーブル本体210に形成された溶解部211の深さを、THFのみによってケーブル本体210に形成された溶解部211の深さに比べて浅くすることができる。これにより、ケーブル本体210の肉厚を薄くすることができ、ケーブル本体210の細径化が可能となる。また、浸漬時間の短縮化が図れ、生産性の向上にも寄与する。
また、実施形態2に係る補助人工心臓用の接続ケーブル200は、実施形態2に係る組織代用人工繊維布の装着方法によって、ファブリック220がケーブル本体210に装着されたものとなっているため、補助人工心臓用の接続ケーブルとしての品質が高品質なものとなり、かつ、生産性にも優れた補助人工心臓用の接続ケーブルとなる。また、実施形態2に係る補助人工心臓用の接続ケーブル200においては、接続ケーブル200を細径化することができる。なお、実施形態2に係る補助人工心臓用の接続ケーブル200においても、実施形態1に係る補助人工心臓用の接続ケーブル200と同様に、ケーブル本体210に注目すると、当該ケーブル本体210は、さらに、2つの層を有するものとなっている。すなわち、ケーブル本体210は、当該ケーブル本体210の元々の素材であるポリウレタンそのものからなる層(第1層という。)と、当該第1層の外側に位置し、当該ケーブル本体210の元々の素材(ポリウレタン)とファブリック220を形成する繊維とが混在している層(第2層)とを有するものとなっている。
また、実施形態2に係る補助人工心臓システム100は、接続ケーブルとして実施形態2に係る接続ケーブル200を備えるため、補助人工心臓システム全体としての生産性に優れ、かつ、信頼性の高い補助人工心臓システムとすることができる。
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、下記に示すような変形実施も可能である。
(1)上記各実施形態においては、ファブリック220をケーブル本体210に被覆する際には、図2に示すように、ファブリック220をケーブル本体210の外周面に巻き付けたのちに、ファブリック220の長手方向の各縁部を内側に折り返し、折り返しによって形成された各折り返し部を互いに対向させた状態で縫合することによってケーブル本体210に被覆するようにしたが、縫合に限られるものではなく、他の方法を採用することもできる。例えば、ファブリック220の長手方向の対向する各縁部同士を超音波溶着によって接合してケーブル本体に被覆するようにしてもよい。
(2)上記各実施形態においては、ケーブル本体210の素材としてはポリウレタンを用い、ファブリック220の素材としてはポリエステルを用いたが他の素材であってもよい。また、溶媒としては、THFを用いた場合を例示したが、THFに限られるものではない。ただし、ケーブル本体210の素材のSP値、ファブリック220の素材のSP値及び溶媒のSP値が、前述した条件を満たすことが必要である。すなわち、溶媒のSP値がファブリック220の素材のSP値よりもケーブル本体210の素材のSP値に近いものであることが必要である。また、溶媒は揮発性を有するものであることが必要である。
(3)上記各実施形態においては、ファブリックは300mmの長さを有する既成品を使用したため、図1に示すように、通常の体格の人の場合、ファブリック220の一部(100mm程度)が体の外部に露出したが、ファブリック220の長さを適宜選択又は設定できるようにすれば、ファブリック220が体の外部に露出する長さを最適な長さに設定することも可能である。
(4)上記各実施形態における各構成要素の寸法を表す数値(例えば、ケーブル本体210の肉厚及びファブリック220の厚みなど)は、一例であって、これらの数値に限られるものではなく、適宜最適な数値に設定することができる。
(5)上記各実施形態においては、補助人工心臓システム100は、血液ポンプ110内部にパージ液を循環させる場合を例示したが、パージ液を循環させない補助人工心臓システムにおいて用いる接続ケーブルにファブリックを装着する場合にも適用できる。
100・・・補助人工心臓システム、110・・・血液ポンプ、140・・・制御装置、150・・・制御装置収納部、200・・・接続ケーブル、210・・・ケーブル本体、211・・・溶解部、220・・・ファブリック(組織代用人工繊維布)、221・・・ファブリックを形成する繊維のうちケーブル本体の外周面の側に位置する繊維、A・・・生体への入口部、d1・・・外周面の表面から所定深さ、d3・・・ポリウレタン溶解溶液によってケーブル本体210に形成された溶解部211の深さ、S0・・・溶媒にケーブル本体を形成する素材を溶け込ませた溶液(ポリウレタン溶解溶液)を生成する工程、S1・・・組織代用人工繊維布の被覆工程、S2・・・溶媒含浸工程、S3・・・溶解部形成工程、S4・・・接合工程、t1・・・ケーブル本体の肉厚、Φ・・・ファブリックを形成する繊維の平均繊維径

Claims (10)

  1. 生体内に埋め込まれる血液ポンプと当該血液ポンプを生体外において制御する機能を有する制御装置との間に配設される補助人工心臓用の接続ケーブルにおける管状のケーブル本体の前記制御装置と前記血液ポンプとの間のうち、少なくとも生体内への入口部と前記血液ポンプとの間のケーブル本体の外周面を被覆するように組織代用人工繊維布を装着する組織代用人工繊維布の装着方法であって、
    前記ケーブル本体及び前記組織代用人工繊維布は、それぞれが互いに異なった溶解度パラメーターを有する素材でなり、
    前記組織代用人工繊維布を前記ケーブル本体の外周面に被覆する組織代用人工繊維布の被覆工程と、
    前記組織代用人工繊維布が有する溶解度パラメーターよりも前記ケーブル本体が有する溶解度パラメーターに近い溶解度パラメーターを有する揮発性の溶媒を前記組織代用人工繊維布に含浸させて、当該溶媒を前記ケーブル本体の外周面に達するまで浸透させる溶媒含浸工程と、
    前記溶媒によって当該ケーブル本体の外周面を溶解させて溶解部を形成し、前記組織代用人工繊維布を形成する繊維のうち、前記ケーブル本体の外周面の側に位置する繊維が前記溶解部に浸った状態とする溶解部形成工程と、
    前記ケーブル本体の外周面の側に位置する繊維が前記溶解部に浸った状態で、前記溶媒を揮発させるとともに前記溶解部を硬化させることによって、前記組織代用人工繊維布を形成する繊維のうち、前記ケーブル本体の外周面の側に位置する繊維を、硬化した状態となった前記溶解部に埋め込んだ状態とする接合工程と、
    有することを特徴とする組織代用人工繊維布の装着方法。
  2. 請求項1に記載の組織代用人工繊維布の装着方法において、
    前記溶媒含浸工程は、前記溶媒が貯留されている溶媒貯留槽の中に前記組織代用人工繊維布を被覆した状態のケーブル本体を浸漬させることよって、当該溶媒を前記組織代用人工繊維布に含浸させることを特徴とする組織代用人工繊維布の装着方法。
  3. 請求項1に記載の組織代用人工繊維布の装着方法において、
    前記溶媒含浸工程は、前記溶媒を前記組織代用人工繊維布の表面から塗布することによって、当該溶媒を前記組織代用人工繊維布に含浸させることを特徴とする組織代用人工繊維布の装着方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の組織代用人工繊維布の装着方法において、
    前記溶解部は、前記ケーブル本体の外周面から当該ケーブル本体の肉厚方向の所定深さまで形成され、当該ケーブル本体の肉厚方向の所定深さは、前記組織代用人工繊維布を形成する繊維の平均繊維径よりも大きな値で、かつ、前記ケーブル本体の肉厚よりも小さい値であることを特徴とする組織代用人工繊維布の装着方法。
  5. 請求項4に記載の組織代用人工繊維布の装着方法において、
    前記組織代用人工繊維布を形成する繊維の平均繊維径よりも大きな値で、かつ、ケーブル本体の肉厚よりも小さい値は、
    前記組織代用人工繊維布を形成する繊維の平均繊維径の1.2倍から4.0倍の範囲の値であることを特徴とする組織代用人工繊維布の装着方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の組織代用人工繊維布の装着方法において、
    前記溶媒に前記ケーブル本体を形成する素材を溶解させてなる溶液を生成する工程をさらに有し、
    前記溶媒含浸工程は、「前記溶媒に前記ケーブル本体を形成する素材を溶解させてなる溶液」を前記組織代用人工繊維布に含浸させて、「前記溶媒に前記ケーブル本体を形成する素材を溶解させてなる溶液」を前記ケーブル本体の外周面に達するまで浸透させることを特徴とする組織代用人工繊維布の装着方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の組織代用人工繊維布の装着方法において、
    前記ケーブル本体はポリウレタンでなり、前記組織代用人工繊維布はポリエステルでなることを特徴とする組織代用人工繊維布の装着方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の組織代用人工繊維布の装着方法において、
    前記溶媒はテトラヒドロフランでなることを特徴とする組織代用人工繊維布の装着方法。
  9. 生体内に埋め込まれる血液ポンプと当該血液ポンプを生体外において制御する機能を有する制御装置との間に配設される補助人工心臓用の接続ケーブルであって、
    少なくとも前記血液ポンプを制御するための制御信号線が内蔵されている管状のケーブル本体と、
    当該ケーブル本体の前記血液ポンプと前記制御装置との間のうち、少なくとも生体内への入口部と前記血液ポンプとの間には、前記ケーブル本体の外周面を被覆するように当該ケーブル本体に装着されている組織代用人工繊維布と、
    を有し、
    前記ケーブル本体及び前記組織代用人工繊維布は、それぞれが互いに異なった溶解度パラメーターを有する素材でなり、
    前記ケーブル本体の外周面には、前記組織代用人工繊維布が有する溶解度パラメーターよりも前記ケーブル本体が有する溶解度パラメーターに近い溶解度パラメーターを有する揮発性の溶媒によって溶解された後に硬化した状態となった溶解部が存在し、当該硬化した状態となった溶解部には、前記組織代用人工繊維布を形成する繊維のうち、前記ケーブル本体の外周面の側に位置する繊維が埋め込まれてなる構造を有することを特徴とする補助人工心臓用の接続ケーブル。
  10. 生体内に埋め込まれる血液ポンプと、当該血液ポンプを生体外において制御する機能を有する制御装置と、前記血液ポンプと前記制御装置との間に配設される補助人工心臓用の接続ケーブルとを有する補助人工心臓システムであって、
    前記補助人工心臓用の接続ケーブルは、請求項9に記載の補助人工心臓用の接続ケーブルであることを特徴とする補助人工心臓システム。
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