JP2019133109A - 光学素子及びそれを用いた映像表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】光学素子において、実鏡映像の結像に寄与しない光も利用できるようにし、明るく鮮明な立体映像を表示することができるようにする。【解決手段】光学素子1は、透明材料により形成されて一平面を成す基盤2と、基盤2から突出するよう一体形成された複数の突状部3と、を有する。突状部3を構成する側面のうちの隣り合う反射面31、32は、互いに略直交した2面コーナーリフレクタ30を成す。突状部3の少なくとも1面は、反射面31、32に対して傾斜した傾斜面33である。複数の突状部3間には、突状部3を成す透明材料の屈折率と略等しい屈折率の媒質から成る溝埋部5が配置されている。この構成によれば、突状部3の傾斜面33から溝埋部5に光が導波する際には屈折することなく、溝埋部5の表面51から外部に出射され、この表面51から出射した光は、頭頂面35から出射した光と同様に、実鏡映像を結像する。【選択図】図3
Description
本発明は、一方の面側にある被観察物の実像を他方の面側の空間に結像させる光学素子及びそれを用いた映像表示装置に関する。
ある空間を仕切る平面体の一方の面側に被投影物を配置し、他方の一面側の空間において面対称となる位置に、被投影物の鏡映像を結像させる光学素子が発案されている。この種のものとして、各々が互いに直交する2つの微小な鏡面(反射面)から成る2面コーナーリフレクタを複数、平面的に集合させた構造を有する光学素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。
上記特許文献1は、複数の2面コーナーリフレクタが一平面上に格子状に整列配置されて成る2面コーナーリフレクタアレイを有する光学素子を開示している。この光学素子では、2面コーナーリフレクタを成す各鏡面が、光学素子の素子面に対して垂直に配置されている。そのため、素子面の一方の面側に配置した被観察物から発せられた光は、光学素子を通過する際に2面コーナーリフレクタで2回反射されて屈曲し、被観察物がない他方の一面側の空間に実像として結像する。これにより、被観察物が、光学素子の素子面に対して対称位置に存在するように、その実像が結像される。
上記特許文献1に記載の光学素子では、基盤の表面から突出した立方体形状の突状部(2面コーナーリフレクタ)が複数、配置されており、基盤に対して垂直な突状部の内壁を鏡面とし、当該内壁での光の全反射を利用して実鏡映像を結像している。このような2面コーナーリフレクタを有する光学素子は、一般的に、スタンパ等の金型を用いて、透光性樹脂から成る媒質を射出成形することにより作製される。しかしながら、作製された光学素子を金型から取り外す際には、立方体形状の突状部では、反射面が金型の抜き方向に金型と密着しているので、摩擦が大きく、離型が困難となる。
そこで、図13に示すように、光学素子101の突状部103のうち、実鏡映像の結像に寄与しない面を、勾配を設けた傾斜面133とすることで、当該面が垂直である場合に比べて、離型が容易となる。しかしながら、この場合、被観察物から光学素子101に入射して反射面131で全反射された光のうち、頭頂面135から出射した光R1は、実鏡映像を結像する一方で、傾斜面133から出射した光R2は、結像に寄与せず、有効光として利用することができない。その結果、被観察物から光学素子101に入射した光の一部しか有効光として利用できず、結像される立体映像が暗く不鮮明になる。
本発明は、上記課題を解決するものであり、従来構造では実鏡映像の結像に寄与しない光も有効光として利用することができ、明るく鮮明な立体映像を表示することができる光学素子及びそれを用いた映像表示装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、一方の面側にある被観察物の実像を他方の面側の空間に結像させる光学素子であって、透明材料により形成されて一平面を成す基盤と、前記基盤から突出するように該基盤と一体的に形成された複数の突状部と、を有し、前記突状部は、前記基盤に対して角度を持つ3つ以上の側面と、前記基盤とは反対側の面を成し前記基盤と平行な頭頂面と、を有し、前記側面のうちの隣り合う2面は、前記基盤に対して垂直で且つ互いに略直交しており、被観察物から発せられる光を反射する2面コーナーリフレクタを成す反射面であり、前記側面のうち前記反射面以外の少なくとも1面は、前記反射面に対して傾斜した傾斜面であり、前記反射面及び前記傾斜面間の溝部には、前記突状部を成す透明材料の屈折率と略等しい屈折率の媒質から成る溝埋部が配置されており、前記溝埋部は、前記傾斜面と接しており、前記基盤とは反対側の面が前記頭頂面と平行であることを特徴とする。
また、一方の面側にある被観察物の実像を他方の面側の空間に結像させる光学素子であって、透明材料により形成されて一平面を成す基盤に対して垂直な帯状の反射面を複数、定間隔で配列させたスリットミラーアレイを有する第1光学パネル及び第2光学パネルを備え、前記第1光学パネル及び前記第2光学パネルは、夫々の前記スリットミラーアレイの配列方向が直交するように互いに向かい合わせて配置され、前記第1光学パネル及び前記第2光学パネルは、前記基盤とは反対側の面を成し前記基盤と平行な出射面と、前記反射面に対して傾斜するように設けられた傾斜面と、を更に有し、前記反射面及び前記傾斜面間の溝部には、前記突状部を成す透明材料の屈折率と略等しい屈折率の媒質から成る溝埋部が配置されており、前記溝埋部は、前記傾斜面と接しており、前記基盤とは反対側の面が前記頭頂面と平行であることを特徴とする。
上記光学素子において、前記溝埋部は、前記頭頂面を被覆していることが好ましい。
上記光学素子において、前記溝部には、前記突状部を成す透明材料の屈折率よりも屈折率の低い媒質から成る低屈折率部が配置されており、前記低屈折率部は、前記反射面と接することが好ましい。
上記光学素子において、前記溝部には、前記突状部を成す透明材料の屈折率よりも屈折率の低い媒質から成る低屈折率部が配置されており、前記低屈折率部は、前記反射面と接することが好ましい。
上記光学素子において、前記溝部には、金属反射膜が配置されており、前記金属反射膜は、前記反射面と接することが好ましい。
上記光学素子は、映像表示記装置に用いられることが好ましい。
本発明の光学素子によれば、溝埋部は、突状部を成す透明材料と略等しい屈折率の媒質で形成されているので、突状部の傾斜面から溝埋部に光が導波する際には屈折することなく、溝埋部の表面から外部に出射され、この表面から出射した光は、頭頂面から出射した光と同様に、実鏡映像を結像する。従って、光学素子の光出射面が、突状部の頭頂面だけでなく、溝埋部の表面にも実質的に拡大され、従来構成では頭頂面から出射せずに結像に寄与しない光も、有効光として利用することができ、明るく鮮明な立体映像を表示することができる。
本発明の第1の実施形態に係る光学素子について、図面を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態の光学素子1は、一平面を成す基盤2に対して垂直で且つ互いに略直交した鏡面(反射面31、32)から成る2面コーナーリフレクタ30を有する。複数の2面コーナーリフレクタ30は、基盤2上に格子状に整列配置されて2面コーナーリフレクタアレイ30Sを成す。
光学素子1は、その一方の面側に被観察物Oが配置されたとき、被観察物Oの実像(実鏡映像P)を、光学素子1の素子面1Sの他方の面側の空間に結像させる。すなわち、光学素子1は、その素子面1Sを対称面とする面対称位置に、被観察物Oの実鏡映像Pを結像させる。ここで、素子面1Sとは、2面コーナーリフレクタ30を構成する2つの反射面31、32と直交する仮想的な平面を言う。なお、光学素子1の全体の大きさがcm又はmオーダーであるのに比べて、2面コーナーリフレクタ30はμmオーダーと微細であり、図1では、2面コーナーリフレクタ30の集合体を、V字形状で概念的に示している。
2面コーナーリフレクタアレイ30Sによる結像様式について、図2(a)(b)を参照して説明する。なお、図2(a)では、被投影物として点光源oから発せられた光は、3次元的には紙面奥側から紙面手前側へ進行するものとする。点光源oから発せられた光(実線矢印)は、光学素子1(図2(a)では省略)を通過する際に、2面コーナーリフレクタ30を構成する一方の反射面31で反射して、更に他方の反射面32で反射した後、素子面1S(図2(b)参照)を透過する。このようにして光学素子1から出射された光(一点鎖線矢印)は、素子面1Sに対して点光源oの面対称位置pを透過して広がっていく。その結果、点光源oの素子面1Sに対する面対称位置pに、光学素子1の透過光が集束し、実鏡映像P(図1参照)として結像する。
図3及び図4(a)(b)は、本実施形態の光学素子1の具体構成を示す。基盤2は、透明材料により形成されて一平面を成している。光学素子1は、この基盤2から突出するように形成された複数の突状部3を有する。複数の突状部3は、基盤2と同じ透明材料によって基盤2と一体的に形成されている。
突状部3は、基盤2に対して角度を持つ3つ以上の側面を有する。本実施形態の突状部3は、角錐台形状であり、基盤2に対して垂直な2面(反射面31、32)及び基盤2に対して傾斜した2面(傾斜面33、34)から成る4面の側面と、基盤2と平行な面を成す頭頂面35を有する。上記側面のうち、反射面31、32の2面が隣り合い、傾斜面33、34の2面が隣り合っている。また、反射面31、32は、互いに略直交するように配置されている。基盤2から突状部3に入射した光R1は、反射面31、32の内壁面で2回全反射され、突状部3の頭頂面35から出射する。
頭頂面35は、反射面31、32及び傾斜面33、34との各稜線によって画定され、それらの長さは略等しく、上面視(図3も参照)において、略正方形である。反射面31(32)は、側面視において、基盤2との境界線(図4(a)の点線)を下底辺、頭頂面35との稜線を上底辺、傾斜面33、34との稜線を斜辺、隣り合う反射面32(31)との稜線を垂直辺とする台形である。
光学素子1の表面には、上記形状の突状部3が、複数、格子状に整列配置されている。隣り合う突状部3は、一方の反射面31と他方の傾斜面33とが対峙し、一方の反射面32と他方の傾斜面34が対峙する。言い換えると、複数の突状部3は、対峙する反射面31、32及び傾斜面33、34の夫々の間に、格子状の溝部21が形成されている。
また、光学素子1は、複数の突状部3間の溝部21に、突状部3を成す透明材料の屈折率よりも屈折率の低い媒質から成る低屈折率部4と、突状部3を成す透明材料の屈折率と略等しい屈折率の媒質から成る溝埋部5と、が配置されている。低屈折率部4は、少なくとも2面コーナーリフレクタを成す反射面31(32)と接している。溝埋部5は、傾斜面33(34)及び低屈折率部4の夫々に接しており、基盤2とは反対側の面、すなわち、溝埋部5の表面51は、頭頂面35と平行である。好ましくは、この溝埋部5の表面51は、突状部3の頭頂面35と滑らかに連続した平面を成す。
溝部21を含む突状部3の1ピッチの上面視における一辺の幅Wは、例えば、100〜1000μmとされる。なお、ピッチ幅Wは、実鏡映像Pの飛び出し距離(図1参照)に応じて設定される。例えば、飛び出し距離が10cmである場合には、ピッチ幅Wは約300μmとされる。このうち、反射面31(2面コーナリフレクタ)の上辺の幅Lは200μm(図4(b)参照)、溝部21の幅が100μmに設定される。基盤2及び突状部3を含む光学素子1の板厚は、一般的には1〜3mmである。基盤2(溝部21の底面22)から突状部3の高さH(溝部21の深さ)は、ピッチ幅Wの1〜3倍に設定される。
傾斜面33の基盤2の法線に対する傾斜角θは、少なくとも1°以上であり、5°以上であることが好ましい。この傾斜角θを設けることで、後述するように、必要な抜きテーパを確保し、2面コーナーリフレクタアレイ30Sの作製時に金型からの取り外しを容易にすることができる。なお、ここで示す数値は、本実施形態の一例として示す代表値であり、本発明は、これらの数値に限定されない。
光学素子1を構成する基盤2、突状部3及び溝埋部5の媒質には、光透過率80%以上、屈折率1.3以上で、熱や湿度による変質の少ない透明材料が用いられる。このような透明材料としては、例えば、アクリル樹脂やガラスが挙げられる。本実施形態の光学素子1では、特に、低吸水性・非晶質で脂環構造を持つ炭化水素系ポリマーであるシクロオレフィンポリマー(COP)を用いることが好ましい。シクロオレフィンポリマーとしては、例えば、日本ゼオン社製の商品名:ZEONOR(登録商標)(グレード:1020R、光透過率92%、屈折率1.53)が挙げられる。また、低屈折率部4は、反射面31(32)における臨界角を小さくして全反射を生じやすくするために、その媒質の屈折率は1.4以下であることが望ましい。このような媒質としては、例えば、フッ素コート剤等が挙げられ、その他、中空シリカ粒子、又はメソポーラスシリカ粒子等が適宜に適用されてもよい。また、低屈折率部4の媒質は、樹脂材料に限らず、後述する変形例で示すような空気層であってもよい。
次に、本実施形態の光学素子1の作製方法について説明する。光学素子1の作製方法は、光学素子1の構成に応じて複数の方法が挙げられるが、低屈折率部4が空気ではない媒質である構成の作製方法を、図5(a)乃至(d)を参照して説明する。
図5(a)に示すように、まず、低屈折率部4及び溝埋部5を除く部分、すなわち基盤2及び複数の突状部3から成る2面コーナーリフレクタアレイ30Sが作製される。なお、図例では、2面コーナーリフレクタアレイ30Sを、反射面31及び傾斜面33と直交する断面において、模式的に示している。2面コーナーリフレクタアレイ30Sの作製方法としては、例えば、スタンパ等の金型Mを用いて、透光性樹脂を射出成形する方法、ナノインプリント又は熱プレス成形方法が挙げられる。金型Mは、例えば、ナノ加工により金属製マスター板に上述した突状部3及び溝部21の形状に対応した形状を作製した後、電珠反転する方法により作製される。また、例えば、X線リソグラフィ法を用いることにより、透明材料から成る基盤2に直接的に4つの側面を有する突状部3及び溝部21を作製することができる。
上述したように、本実施形態の光学素子1は、突状部3を成す4面のうちの2面が傾斜面33、34(図3も参照)である。すなわち、突状部3は角錐台形状とされている。このように、μmオーダーの微細な構造体である突状部3に、いわゆる「抜きテーパ」を付けることで、金型成形で2面コーナーリフレクタアレイ30Sを作成した際に、2面コーナーリフレクタアレイ30Sをスタンパ等の金型Mからの取り外しを容易にすることができる。
次に、上記にようにして突状部3が作成された2面コーナーリフレクタアレイ30Sに、低屈折率部4が形成される。低屈折率部4は、突状部3の反射面31と接するように形成される。低屈折率部4の形成方法としては、例えば、図5(b)に示すように、フッ素コート剤といった低屈折率材料の溶液40に、2面コーナーリフレクタアレイ30Sを浸漬するディップコート法が用いられる。
反射面31が上方に向く配置で2面コーナーリフレクタアレイ30Sを溶液40に浸漬し、その後、2面コーナーリフレクタアレイ30Sを上方に引き抜けば、主に反射面31に溶液40が付着する。この反射面31に付着した溶液40を硬化させることで、低屈折率部4を形成することができる。なお、ディップコート法では、反射面31以外の他の面にも溶液40が付着するので、外面については溶液40が硬化する前に拭き取る等により除去される。また、溶液40に比較的粘性の低いものを使用すれば、傾斜面33に付着する溶液40の厚みを、実質的に無視できる程度に薄くすることができる。
低屈折率部4は、2面コーナーリフレクタを成す反射面31の表面から1μm以上の厚みを成していることが好ましい。なお、低屈折率部4は、2面コーナーリフレクタを成す反射面31の表面から1μm以上の厚みを有する部分が、反射面31の全面積の50%以上となるように形成されていればよい。2面コーナーリフレクタ30を成す反射面31で光を全反射させる際に、反射面31の外側に、光の波長程度の間隔を置いて屈折率の高い媒質があると、エバネッセント波を介して光が透過してしまい、反射面31の内壁面での全反射が抑制されることがある。そこで、反射面31の外側において、少なくともエバネッセント波がしみ出し得る領域に、1μm以上の厚さの低屈折率部4を、反射面31の全面積の50%以上に配置することで、全反射効率の低下を抑制し、実鏡映像Pの輝度低下を防ぐことができる。
次に、図5(c)に示すように、基盤2や突状部3と略等しい屈折率の樹脂材料50を、突状部3上に塗布して、スキージングにより溝部21に樹脂材料50を充填する。そして、樹脂材料50を硬化させることで、図5(d)に示すように、溝埋部5が形成される。なお、樹脂材料50は、硬化の際に僅かに収縮するので、突状部3間の溝部21内だけに充填した場合、溝埋部5の表面51が僅かに凹むことがある。そのため、突状部3の頭頂面35と溝埋部5の表面51が滑らかに連続する面となるように、研磨による鏡面加工が施されることが好ましい。このようにして、溝埋部5を有する光学素子1を作製することができる。
本実施形態の光学素子1では、被観察物から基盤2の底面から光学素子1の媒質内に入射した光は、低屈折率部4と隣接する反射面31の内面で全反射される。なお、反射面31で全反射された光は、実際には隣り合う反射面32で再び全反射されてから頭頂面35へ向かう3次元的な反射をするが、図例では省略する。
反射面31で全反射した光のうち、頭頂面35から出射した光R1は、実鏡映像を結像する。一方、傾斜面33から出射した光R2は、溝埋部5に入射する。溝埋部5は、突状部3を成す透明材料と略等しい屈折率の媒質で形成されているので、突状部3の傾斜面33から溝埋部5に光が導波する際には屈折することなく、溝埋部5の表面51から外部に出射される。溝埋部5の表面51は、突状部3の頭頂面35と平行なので、溝埋部5の表面51から出射した光R2は、頭頂面35から出射した光R1と同様に、実鏡映像を結像する。
すなわち、本実施形態の光学素子1では、光学素子1の光出射面が、突状部3の頭頂面35だけでなく、溝埋部5の表面51にも実質的に拡大され、従来構成では頭頂面から出射せずに結像に寄与しない光も、有効光として利用することができ、明るく鮮明な立体映像を表示することができる。
低屈折率部4及び溝埋部5の構成、並びにそれらの形成方法は、上記で説明したものに限られない。以下、低屈折率部4及び溝埋部5の構成に係る変形例、並びにそれらの形成方法について説明する。
第1の変形例は、図6に示すように、溝埋部5が、突状部3間の溝部21内に限らず、突状部3の頭頂面35を被覆しているものである。本変形例では、基盤2や突状部3と略等しい屈折率の樹脂材料50を、上記実施形態よりも多めに突状部3上に塗布して、図6(a)に示すように、平滑なガラス板G等で押さえつける。これにより、図6(b)に示すように、樹脂材料50の表面を平面化することができる。
突状部3の頭頂面35にも被覆された溝埋部5は、突状部3と略等しい屈折率なので、それらの界面で光は屈折せず、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本変形例では、鏡面加工を施さなくても、光学素子1の光出射面を容易に平滑化することができる。
第2の変形例は、低屈折率部を空気層41としたものである。この第2の変形例における光学素子1の作製方法について、ここでは図7及び図8に示す2例の方法を挙げる。まず、上記実施形態と同様の手順で、2面コーナーリフレクタアレイ30Sを作製する。そして、図7(a)に示すように、基盤2や突状部3と略等しい屈折率の樹脂材料50を、突状部3上に塗布して、スキージングにより溝部21に樹脂材料50を充填し、樹脂材料50を硬化させることで、溝埋部5が形成される。その後、図7(b)に示すように、レーザ等により、反射面31に接触している材料を除去することで、溝埋部5と反射面31との間に1〜10μmの隙間(空気層41)が設けられる。
また、図8(a)に示すように、2面コーナーリフレクタアレイ30Sの反射面31にネガ型フォトレジスト6を膜厚1〜10μmで予め塗布しておく。なお、フォトレジスト6は、後の工程で除去されるので、その一部が頭頂面35にはみ出していてもよい。そして、図8(b)に示すように、基盤2や突状部3と略等しい屈折率の樹脂材料50を、突状部3上に塗布して、スキージングにより溝部21に樹脂材料50を充填し、樹脂材料50を硬化させることで、溝埋部5が形成される。その後、図8(c)に示すように、レーザ等により、フォトレジストを除去することで、溝埋部5と反射面31との間に1〜10μmの隙間(空気層41)が設けられる。このようにして設けられた空気層41が、本変形例における低屈折率部となる。
本変形例のように、低屈折率部4が空気層であると、突状部3(反射面31)と空気層との屈折率差が大きくなるので、界面における臨界角が小さくなり、全反射を生じやすくなる。そのため、被観察物から光学素子1に入射した光のうち、反射面31に対する入射角が小さい光も全反射して、実鏡映像として結像する有効光を増やすことができる。
第3の変形例は、突状部3間の溝部21に、金属反射膜7が配置されており、金属反射膜7が、反射面31に接しているものである。まず、上記実施形態と同様の手順で、2面コーナーリフレクタアレイ30Sを作製する。そして、図9(a)に示すように、例えば、斜め方向のスパッタリング等により、反射面31に選択的に金属反射膜7を成膜する。次に、図9(b)に示すように、頭頂面35に付着した金属反射膜を、表面切削等により除去する。そして、図9(c)に示すように、基盤2や突状部3と略等しい屈折率の樹脂材料50を、突状部3上に塗布して、スキージングにより溝部21に樹脂材料50を充填し、樹脂材料50を硬化させる。これにより、図9(d)に示すように、溝埋部5を有する光学素子1を作製することができる。
低屈折率部4を用いた構成では、反射面31に対して臨界角よりも小さい入射角で入射した光は全反射されないが、本変形例のように、反射面31に金属反射膜7を持ちれば、そのような入射角が小さい光も反射させることができる。従って、より多くの光を有効光として利用することができ、明るく鮮明な立体映像を表示することができる。
本発明の第2実施形態に係る光学素子について、図10及び図11を参照して説明する。図10に示すように、本実施形態の光学素子1は、透明材料により形成された第1光学パネル1A及び第2光学パネル1Bを備える。第1光学パネル1A及び第2光学パネル1Bは、一平面を成す基盤2A、2Bに対して垂直な帯状の反射面31、32を複数、定間隔で配列させたスリットミラーアレイ30A、30Bを夫々有する。
盤2A、2Bは、いずれも透明材料により形成されて一平面を成している。第1光学パネル1A及び第2光学パネル1Bは、基盤2A、2Bから突出するように形成された複数の突条3A、3Bを有する。複数の突状部(突条3A、3B)は、基盤2A、2Bと同じ透明材料によって基盤2A、2Bと一体的に形成されている。なお、図10では、光学素子1の構造を説明するために、第1光学パネル1Aと第2光学パネル1Bとが離れた状態で示しているが、実際には、それらは接している、又はスリットミラーアレイのピッチ幅と同程度、離れていてもよい。また、図11では、第1光学パネル1Aのみを図示しているが、第2光学パネル1Bは同形状であり、以下、第1光学パネル1Aに基づいて説明する。
第1光学パネル1Aの突条3Aは、基盤2Aに対して角度を持つ2面を有する。本実施形態の突条3Aは、断面が台形形状であり、基盤2Aに対して垂直な反射面31と、基盤2Aに対して傾斜した傾斜面33と、基盤2Aと平行な面を成す頭頂面35と、を有する。同様に、第2光学パネル1Bの突条3Bも、基盤2Bに対して垂直な反射面32と、基盤2Bに対して傾斜した傾斜面34と、基盤2Bと平行な面を成す頭頂面36と、を有する。第1光学パネル1A及び第2光学パネル1Bは、夫々のスリットミラーアレイ30A、30Bの配列方向が直交するように互いに向かい合わせて配置されている。第1光学パネル1Aの基盤2Aから突条3Aに入射した光(図11の実線矢印)は、反射面31の内壁面で全反射され、突条3Aの頭頂面35から出射する。第1光学パネル1Aを出射した光は、第2光学パネル1Bの反射面32の内壁面で再び全反射され、基盤2Bの底面22から出射する。
頭頂面35は、反射面31及び傾斜面33の各稜線によって画定され、上面視(不図示)で帯長形状である。第1光学パネル1Aの表面には、上記形状の突条3Aが、複数、定間隔で整列配置されている。隣り合う突条3Aは、一方の反射面31と他方の傾斜面33とが対峙している。言い換えると、複数の突条3Aは、対峙する反射面31及び傾斜面33の夫々の間に、一方向に伸びる溝部21が形成されている。
また、第1光学パネル1Aは、複数の突条3A間の溝部21に、突条3Aを成す透明材料の屈折率よりも屈折率の低い媒質から成る低屈折率部4と、突条3Aを成す透明材料の屈折率と略等しい屈折率の媒質から成る溝埋部5と、が配置されている。低屈折率部4は、反射面31と接している。溝埋部5は、傾斜面33と接しており、基盤2とは反対側の面が頭頂面35と平行である。第2光学パネル1Bにも、上記と同様に、低屈折率部4及び溝埋部5が設けられている。
本実施形態においても、第1光学パネル1Aの光出射面が、突条3Aの頭頂面35だけでなく、溝埋部5の表面にも実質的に拡大される。また、第2光学パネル1Bの光入射面も、同様に拡大される。その結果、従来構成では各頭頂面から出射及び入射せずに結像に寄与しない光も、有効光として利用することができ、明るく鮮明な立体映像を表示することができる。
次に、本発明の一実施形態に係る映像表示装置について、図12を参照して説明する。映像表示装置10は、上述した光学素子1を具体的に適用したものであり、上面に開口部11を有する箱体12と、箱体12の内側面に設けられた映像表示部13と、を備える。光学素子1は、箱体12の開口部11に取り付けられている。図例では、映像表示部13は、例えば、液晶ディスプレイ装置が用いられ、図例では、文字「A」を上下反転させた倒立姿勢で表示している。映像表示部13から出射された光は、光学素子1により屈曲反射され、文字「A」の実鏡映像を結像させる。観察者は、映像表示装置10の斜め上方位置に視点Epを置いて光学素子1を覗き込んだ際に、文字「A」の実鏡映像を空中映像として視認することができる。
本発明は、上記実施形態及び各種変形例に限られず、種々変形が可能である。上記実施形態及び変形例では、いずれも突状部3が、4面の側面を有する角錐台形状又は立方体形状のものを挙げたが、2面の反射面と光を出射する頭頂面を有していればよく、例えば、三角錐台形状、又は五角以上の角錐台形状形であってもよい。また、溝埋部5は、反射面31、32との間に低屈折率部4又は金属反射膜7が形成されるように、複数の突状部3間に存在していれば、必ずしも上述した構成例に限られない。
1 光学素子
10 映像表示装置
2 基盤
21 溝部
3 突状部
3A、3B 突条
30 2面コーナーリフレクタ
31、32 反射面(側面)
33、34 傾斜面(側面)
4 低屈折率部
5 溝埋部
7 金属反射膜
10 映像表示装置
2 基盤
21 溝部
3 突状部
3A、3B 突条
30 2面コーナーリフレクタ
31、32 反射面(側面)
33、34 傾斜面(側面)
4 低屈折率部
5 溝埋部
7 金属反射膜
Claims (6)
- 一方の面側にある被観察物の実像を他方の面側の空間に結像させる光学素子であって、
透明材料により形成されて一平面を成す基盤と、前記基盤から突出するように該基盤と一体的に形成された複数の突状部と、を有し、
前記突状部は、前記基盤に対して角度を持つ3つ以上の側面と、前記基盤とは反対側の面を成し前記基盤と平行な頭頂面と、を有し、
前記側面のうちの隣り合う2面は、前記基盤に対して垂直で且つ互いに略直交しており、被観察物から発せられる光を反射する2面コーナーリフレクタを成す反射面であり、
前記側面のうち前記反射面以外の少なくとも1面は、前記反射面に対して傾斜した傾斜面であり、
前記反射面及び前記傾斜面間の溝部には、前記突状部を成す透明材料の屈折率と略等しい屈折率の媒質から成る溝埋部が配置されており、
前記溝埋部は、前記傾斜面と接しており、前記基盤とは反対側の面が前記頭頂面と平行であることを特徴とする光学素子。 - 一方の面側にある被観察物の実像を他方の面側の空間に結像させる光学素子であって、
透明材料により形成されて一平面を成す基盤に対して垂直な帯状の反射面を有する突条を複数、定間隔で配列させたスリットミラーアレイを有する第1光学パネル及び第2光学パネルを備え、
前記第1光学パネル及び前記第2光学パネルは、夫々の前記スリットミラーアレイの配列方向が直交するように互いに向かい合わせて配置され、
前記第1光学パネル及び前記第2光学パネルは、前記基盤とは反対側の面を成し前記基盤と平行な出射面と、前記反射面に対して傾斜するように設けられた傾斜面と、を更に有し、
前記反射面及び前記傾斜面間の溝部には、前記突条を成す透明材料の屈折率と略等しい屈折率の媒質から成る溝埋部が配置されており、
前記溝埋部は、前記傾斜面と接しており、前記基盤とは反対側の面が前記頭頂面と平行であることを特徴とする光学素子。 - 前記溝埋部は、前記頭頂面を被覆していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学素子。
- 前記溝部には、前記突状部を成す透明材料の屈折率よりも屈折率の低い媒質から成る低屈折率部が配置されており、
前記低屈折率部は、前記反射面と接することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光学素子。 - 前記溝部には、金属反射膜が配置されており、
前記金属反射膜は、前記反射面と接することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光学素子。 - 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載された光学素子を用いた映像表示装置。
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- 2018-02-02 JP JP2018017636A patent/JP2019133109A/ja active Pending
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