JP2019128995A - 巻線用被覆電線 - Google Patents

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慶吾 稲葉
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Abstract

【課題】絶縁被膜の厚さを厚くすることなく、部分放電による侵食が抑制される絶縁被膜を備える巻線用被覆電線を提供する。【解決手段】導体と導体の周りに被覆される絶縁被膜とを含む巻線用被覆電線であって、絶縁被膜が、導体上に被覆される下層及び下層上に被覆される上層からなる2層構造を有し、上層及び/又は下層が、絶縁樹脂中に、特定の平均粒径を有する無機フィラーを、一定の量で含む、前記巻線用被覆電線に関する。【選択図】図5

Description

本発明は、モータのコイル(巻線)などに用いられる巻線用被覆電線に関するものである。
ハイブリッド車や電気自動車などの駆動用モータをはじめ、車両に搭載される多くのモータにおいては、その小型化と高出力化を図るための技術開発が日々おこなわれている。双方の目的を満たす方策の一つとして、ステータコアのスロット内における巻線の占積率を高めることが挙げられる。また、磁界を高めるために、その巻線に流す電流も大電流にすることが要求される。
前記のように、高占積率の巻線に大電流を流すことにより、小型化した電動機による出力向上・高効率化が可能になるが、一方で、銅損や渦電流損、鉄損なども大きくなる。このような損失で発生する熱は、絶縁被膜を劣化させる原因になる。
熱による絶縁被膜の劣化を防止するために、例えば、特許文献1には、電動機に用いられる巻線であって、銅99.96重量%以上、酸素0.005重量%以下の無酸素銅の導体と、その導体を被覆し、無機フィラーを含む有機系樹脂の絶縁体層とを備えることを特徴とする、巻線が記載されている。
特開2008−278664号公報
前記のような熱による絶縁被膜の劣化に加え、大電流を流すことによって、部分放電の問題が生じ得る。電流を流すと、巻線間や巻線とコアの間などで電位差が生じる。その電位差がある箇所では、絶縁性が不十分である場合、例えば、絶縁被膜が薄かったり、絶縁距離が不十分だったりする場合、部分放電が発生しやすくなる。この部分放電は、巻線表面の絶縁被膜を侵食し、絶縁性の低下、最悪の場合、絶縁破壊を引き起こす。
図1に、部分放電によって絶縁破壊が起こるまでのメカニズムを模式的に示す。図1の上部の図は、導体としての平角線の周りに絶縁被膜が被覆されている電線が、縦に2つ並んでいる図である。まず、2つの電線間に電位差が発生すると、電線同士の接触部分から少し離れた箇所で部分放電が起こる。部分放電は、各絶縁被膜中の樹脂を溶解・劣化させ、各絶縁被膜は徐々に侵食されていく(本明細書では、溶解・劣化による侵食を「第1の侵食」ともいう)。侵食が進むと、あるところで、侵食箇所に電界が集中し、電気トリーが発生する。電気トリーは、急速に絶縁被膜中を進展し、絶縁被膜を貫通することにより絶縁破壊を引き起こす(本明細書では、電気トリーによる侵食を「第2の侵食」ともいう)。絶縁破壊が起こると、モータは機能停止してしまう。
このような部分放電を防ぐために、絶縁性を十分に確保することができるような厚さで絶縁被膜を導体に被覆する必要がある。
しかしながら、絶縁被膜が厚くなると、その分、導体の体積割合が小さくなってしまう。そうすると、モータの体格を大きくする必要がでてきたり、電気抵抗が大きくなったりするため、前記の小型化及び高出力化の技術的課題と相反する結果になり得る。
そこで、本発明は、絶縁被膜の厚さを厚くすることなく、部分放電による侵食が抑制される絶縁被膜を備える巻線用被覆電線を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した結果、導体と導体の周りに被覆される絶縁被膜とを含む巻線用被覆電線において、絶縁被膜を2層構造から構成し、各層のいずれか一方又は両方に特定の粒径を有する無機フィラーを一定量包含させることによって、絶縁破壊に至るまでに起こり得る絶縁被膜における第1の侵食及び/又は第2の侵食を抑制し、巻線用被覆電線の絶縁寿命を向上できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)導体と導体の周りに被覆される絶縁被膜とを含む巻線用被覆電線であって、
絶縁被膜が、導体上に被覆される下層及び下層上に被覆される上層からなる2層構造を有し、
上層が、絶縁樹脂中に、0.5nm〜100nmの平均粒径を有する無機フィラーを、上層の総体積に基づいて3.5体積%以上で含む、
前記巻線用被覆電線。
(2)導体と導体の周りに被覆される絶縁被膜とを含む巻線用被覆電線であって、
絶縁被膜が、導体上に被覆される下層及び下層上に被覆される上層からなる2層構造を有し、
下層が、絶縁樹脂中に、0.5nm〜40nmの平均粒径を有する無機フィラーを、下層の総体積に基づいて0.70体積%〜1.75体積%で含む、
前記巻線用被覆電線。
(3)導体と導体の周りに被覆される絶縁被膜とを含む巻線用被覆電線であって、
絶縁被膜が、導体上に被覆される下層及び下層上に被覆される上層からなる2層構造を有し、
上層が、絶縁樹脂中に、0.5nm〜100nmの平均粒径を有する無機フィラーを、上層の総体積に基づいて3.5体積%以上で含み、
下層が、絶縁樹脂中に、0.5nm〜40nmの平均粒径を有する無機フィラーを、下層の総体積に基づいて0.70体積%〜1.75体積%で含む、
前記巻線用被覆電線。
本発明の第1の態様では、巻線用被覆電線の絶縁被膜における第1の侵食が、特定の粒径を有する無機フィラーを一定量含む上層によって抑制される。本発明の第2の態様では、巻線用被覆電線の絶縁被膜における第2の侵食が、特定の粒径を有する無機フィラーを一定量含む下層によって抑制される。本発明の第3の態様では、巻線用被覆電線の絶縁被膜における第1の侵食が特定の粒径を有する無機フィラーを一定量含む上層によって抑制され、第2の侵食が上層の下に配置される特定の粒径を有する無機フィラーを一定量含む下層によって抑制される。結果として、本発明の巻線用被覆電線では、絶縁破壊に至るまでに起こり得る絶縁被膜における第1の侵食及び/又は第2の侵食が特定の無機フィラーにより抑制されるため、絶縁被膜の厚さを厚くすることなく、絶縁寿命が向上される。
部分放電によって絶縁破壊が起こるまでのメカニズムを模式的に示す。 本発明の第1の態様の一例の模式図を示す。 本発明の第2の態様の一例の模式図を示す。 本発明の第3の態様の一例の模式図を示す。 本発明の第3の態様の一例における、部分放電による侵食の抑制メカニズムを模式的に示す。 実施例において第1の侵食の影響の検証実験に使用した装置を模式的に示す。 実施例の第1の侵食の影響の検証実験における、絶縁破壊後の膜サンプルの断面概略図を示す。 実施例の1−1−2で調製した膜サンプルの絶縁破壊後の状態を真上から見た写真を示す。 実施例の1−1−1〜1−1−4で調製した膜サンプルにおける、印加した電圧に対する絶縁破壊に至るまでの放電回数(回)の積算値を示す。 実施例の2−1−2で調製した膜サンプルの絶縁破壊後の状態を真上から見た写真を示す。 実施例の1−1−1及び1−1−2並びに2−1−1及び2−1−2で調製した膜サンプルにおける、印加した電圧に対する絶縁破壊に至るまでの放電回数(回)の積算値を示す。 実施例において第2の侵食の影響の検証実験に使用した実験サンプルを模式的に示す。 実施例において第2の侵食の影響の検証実験に使用した実験サンプルへの電圧の印加方法を模式的に示す。 実施例の3−1−2で調製した実験サンプルの絶縁破壊に至るまでの様子を示した写真を示す。 実施例の3−1−1〜3−1−4で調製した実験サンプルの電圧印加から絶縁破壊に至るまでの時間を示す。 実施例の4−1−2で調製した実験サンプルの絶縁破壊に至るまでの様子を示した写真を示す。 実施例の4−1−1〜4−1−4で調製した実験サンプルの電圧印加から絶縁破壊に至るまでの時間を示す。
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
本明細書では、適宜図面を参照して本発明の特徴を説明する。図面では、明確化のために各部の寸法及び形状を誇張しており、実際の寸法及び形状を正確に描写してはいない。それ故、本発明の技術的範囲は、これら図面に表された各部の寸法及び形状に限定されるものではない。なお、本発明の巻線用被覆電線は、下記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良などを施した種々の形態にて実施することができる。
本発明の第1の態様は、導体と導体の周りに被覆される絶縁被膜とを含む巻線用被覆電線であって、絶縁被膜が、導体上に被覆される下層及び下層上に被覆される上層からなる2層構造を有し、上層が、絶縁樹脂中に、特定の平均粒径を有する無機フィラーを、一定量で含む、前記巻線用被覆電線に関する。
本発明において、導体とは、電気を流す材料をひも(線)状に成形した導線である。導体としては、当該技術分野において通常使用されているものを使用することができ、限定されないが、銅線、アルミ線などを挙げることができる。導体としては、電気伝導率が高く、加工性がよいことから、銅線を使用することが好ましい。
導体の形状としては、限定されないが、丸線状や、平角線状を挙げることができる。導体の形状としては、巻線にした場合のスロット断面における占積率を確保できる利点があることから、平角線状を使用することが好ましい。
本発明では、導体として、例えば古河電工製の無酸素銅やタフピッチ銅などを使用することができる。
導体の周りに被覆される絶縁被膜は、導体上に被覆される下層及び下層上に被覆される上層からなる2層構造を有する。
絶縁被膜を構成する上層は、絶縁樹脂及び無機フィラーを含む。絶縁被膜を構成する上層は、絶縁樹脂及び無機フィラーからなることが好ましい。
絶縁樹脂(本明細書等では、単に「樹脂」ともいう)としては、当該技術分野において通常使用されているものを使用することができ、限定されないが、例えばポリイミド(PI)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニルサルホン樹脂、エナメル樹脂などを挙げることができる。本発明では、絶縁樹脂として、耐熱性、耐反応性(耐加水分解など)、耐変形性、絶縁性(低誘電性)に優れたPI樹脂を使用することが好ましい。本発明では、絶縁樹脂として、例えばIST社製のポリイミド樹脂を使用することができる。
無機フィラーは、絶縁材料であり、絶縁性を有し、絶縁被膜樹脂と同等の誘電率を有することが好ましい。無機フィラーとしては、限定されないが、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化ベリリウム、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ホウ素、タングステンカーバイド、窒化ホウ素、窒化ケイ素などが挙げられる。無機フィラーは、絶縁性、ナノサイズでの製造安定性を考慮して、シリカ、特に球状シリカが好ましい。
無機フィラーの形状は、限定されないが、球状であることが好ましい。ここで、球状とは、必ずしも真球という意味ではなく、長球状、扁球状などの楕円状、ドーナツ状などその他の様々な形状も含まれる。無機フィラーの形状は、球状であることで、大きさを制御しやすい利点がある。
無機フィラーは、表面処理されているものを使用してもよい。表面処理剤としては、当該技術分野において通常使用されているものを使用することができ、限定されないが、例えばシランカップリング剤が挙げられる。無機フィラーを表面処理することによって、無機フィラーの樹脂中への相溶性、分散性を向上させることができ、無機フィラーの樹脂中での局所的な凝集を防ぐことができる。
上層が無機フィラーを含むことにより、無機フィラーの方が樹脂よりも部分放電による溶解・劣化に強いことから、絶縁被膜を溶解・劣化させる部分放電による第1の侵食を物理的に効率よく抑制することができる。
上層に包含させる無機フィラーの平均粒径は、0.5nm〜100nm、好ましくは1nm〜40nm、より好ましくは2nm〜20nmである。ここで、無機フィラーの平均粒径は、拡大顕微鏡などで約20個以上をランダムに測定し、それらを平均化した数値により決定される。なお、無機フィラーの粒径範囲は、限定されないが、通常平均粒径の5%〜400%、好ましくは10%〜400%であり、例えば無機フィラーの平均粒径が10nmである場合、無機フィラーの粒径範囲は、0.5nm〜40nm、好ましくは1nm〜40nmである。
上層に包含させる無機フィラーの平均粒径が前記範囲に含まれることにより、平均粒径が前記範囲より大きくなる場合と比較して、部分放電による第1の侵食を効率よく抑制することができる。
前記効果は、下記のように推察されるが、本発明は、下記推察によって限定されない。
第1の侵食では、部分放電によって絶縁被膜が溶解・劣化される。平均粒径が大きい無機フィラーを含む樹脂と平均粒径が小さい無機フィラーを含む樹脂を比較した場合、樹脂中の無機フィラーの表面積は、無機フィラーの量が同じであれば、平均粒径が小さい無機フィラーを含む樹脂の方が大きい。つまり、第1の侵食を引き起こす部分放電が起こった場合、樹脂中において、部分放電が、溶解・劣化に強い無機フィラーと物理的に接触する面積が大きいのは、平均粒径が小さい無機フィラーを含む樹脂である。したがって、部分放電と無機フィラーとの接触頻度がより高い粒径が小さい無機フィラーを含む樹脂の方が、平均粒径が大きい無機フィラーを含む樹脂と比較して、第1の侵食を効率よく抑制することができる。
上層に包含させる無機フィラーの量は、上層の総体積に基づいて、3.5体積%以上、好ましくは9.0体積%以上、より好ましくは10体積%以上であり、上限は限定されないが、上層の総体積に基づいて、通常15体積%以下、好ましくは20体積%以下である。
上層に包含させる無機フィラーの量が前記範囲に含まれることにより、部分放電と無機フィラーの接触頻度が高くなり、第1の侵食を物理的に効率よく抑制することができる。
上層の膜厚は、限定されるものではないが、通常3μm〜50μm、好ましくは3μm〜30μmである。
上層を前記の膜厚にすることにより、導体の体積割合を確保しつつ、絶縁被膜を溶解・劣化させる部分放電による第1の侵食を効率よく抑制することができる。
絶縁被膜を構成する下層は、絶縁樹脂を含む。
絶縁樹脂としては、上層で説明したものと同様の絶縁樹脂を使用することができる。本発明では、絶縁樹脂として、上層と同じ絶縁樹脂を使用することが好ましい。
下層の膜厚は、限定されるものではないが、通常3μm〜100μm、好ましくは3μm〜30μmである。
下層を前記の膜厚にすることにより、導体の体積割合を確保しつつ、絶縁被膜に電気トリーを形成させる部分放電による第2の侵食を抑制することができる。
なお、下層は、無機フィラーを含むこともできる。下層が無機フィラーを含む場合、下層の無機フィラーの種類、粒径及び量などは、限定されないが、上層と同じにしてもよい。
図2に本発明の第1の態様の一例の模式図を示す。図2では、平角状の導体と導体の周りに被覆される絶縁被膜とを含む巻線用被覆電線が縦に2つ並んでおり、各電線の絶縁被膜は、導体上に被覆される下層及び下層上に被覆される上層からなる2層構造を有し、上層は、絶縁樹脂中に、前記で説明した平均粒径を有する無機フィラーを、前記で説明した量で含み、下層は、絶縁樹脂からなる。
本発明の第2の態様は、導体と導体の周りに被覆される絶縁被膜とを含む巻線用被覆電線であって、絶縁被膜が、導体上に被覆される下層及び下層上に被覆される上層からなる2層構造を有し、下層が、絶縁樹脂中に、特定の平均粒径を有する無機フィラーを、一定量で含む、前記巻線用被覆電線に関する。
本発明の第2の態様において、下記で別に説明している事項以外の事項(例えば、導体、絶縁樹脂、上層及び/又は下層に包含される無機フィラー(下記で別に説明している下層に包含される無機フィラーの粒径及び量を除く)の条件など)は、本発明の第1の態様と同じにすることができる。
絶縁被膜を構成する下層は、絶縁樹脂及び無機フィラーを含む。絶縁被膜を構成する下層は、絶縁樹脂及び無機フィラーからなることが好ましい。
下層が無機フィラーを含むことにより、電気トリーが発生した場合であっても、絶縁破壊に至るまでの電気トリーの成長距離が物理的に長くなり、その結果、絶縁破壊までの時間が長くなり、部分放電による第2の侵食を効率よく抑制することができる。
下層に包含させる無機フィラーの平均粒径は、0.5nm〜40nm、好ましくは0.5nm〜30nm、より好ましくは0.5nm〜20nmである。ここで、無機フィラーの平均粒径は、拡大顕微鏡などで約20個以上をランダムに測定し、それらを平均化した数値により決定される。なお、無機フィラーの粒径範囲は、限定されないが、通常平均粒径の5%〜400%、好ましくは5%〜200%であり、例えば無機フィラーの平均粒径が10nmである場合、無機フィラーの粒径範囲は、0.5nm〜40nm、好ましくは0.5nm〜20nmである。
下層に包含させる無機フィラーの平均粒径が前記範囲に含まれることにより、絶縁被膜に電気トリーを形成させる部分放電による第2の侵食を効率よく抑制することができる。
前記効果は、下記のように推察されるが、本発明は、下記推察によって限定されない。
第2の侵食では、部分放電によって絶縁被膜に電気トリーが形成される。ここで、電気トリーは、侵食箇所に部分放電による電界が集中することにより起こる。この時、侵食箇所付近に樹脂と異なる誘電率を有する無機フィラーが存在すると、電界集中が無機フィラーにより緩和され、電気トリーの形成が抑制される。平均粒径が大きい無機フィラーを含む樹脂と平均粒径が小さい無機フィラーを含む樹脂を比較した場合、樹脂中の無機フィラーの表面積は、無機フィラーの量が同じであれば、平均粒径が小さい無機フィラーを含む樹脂の方が大きい。つまり、第2の侵食を引き起こす部分放電が起こった場合、樹脂中において、部分放電が、電界集中を緩和することができる無機フィラーと物理的に接触する面積が大きいのは、平均粒径が小さい無機フィラーを含む樹脂である。したがって、無機フィラーが適正量含まれる場合には、部分放電と無機フィラーとの接触頻度がより高い粒径が小さい無機フィラーを含む樹脂の方が、平均粒径が大きい無機フィラーを含む樹脂と比較して、第2の侵食を効率よく抑制することができる。
下層に包含させる無機フィラーの量は、下層の総体積に基づいて、0.70体積%〜1.75体積%、好ましくは0.70体積%〜1.50体積%である。
下層に包含させる無機フィラーの量が前記範囲に含まれることにより、絶縁被膜に電気トリーを形成させる部分放電による第2の侵食を効率よく抑制することができる。
前記効果は、下記のように推察されるが、本発明は、下記推察によって限定されない。
第2の侵食では、部分放電によって絶縁被膜に電気トリーが形成される。ここで、電気トリーは、侵食箇所に部分放電による電界が集中することにより起こる。この時、侵食箇所付近に樹脂と異なる誘電率を有する無機フィラーが存在すると、電界集中が無機フィラーにより緩和され、電気トリーの形成が抑制される。一方で、無機フィラーの誘電率は、一般に樹脂よりも大きい。そのため、無機フィラーは、多量に配合されるにつれて、電気を誘引しやすくなり、逆に電気トリーを発生させてしまう。したがって、電気トリーの形成を引き起こす部分放電が起こった場合、無機フィラーが、樹脂中に、部分放電による電界を緩和し、且つ電気を過度に誘引することのない量存在することで、第2の侵食を効率よく抑制することができる。
下層の膜厚は、限定されるものではないが、通常3μm〜100μm、好ましくは3μm〜30μmである。
下層を前記の膜厚にすることにより、導体の体積割合を確保しつつ、絶縁被膜に電気トリーを形成させる部分放電による第2の侵食を効率よく抑制することができる。
絶縁被膜を構成する上層は、絶縁樹脂を含む。
上層の膜厚は、限定されるものではないが、通常3μm〜50μm、好ましくは3μm〜30μmである。
上層を前記の膜厚にすることにより、導体の体積割合を確保しつつ、絶縁被膜を溶解・劣化させる部分放電による第1の侵食を抑制することができる。
なお、上層は、無機フィラーを含むこともできる。上層が無機フィラーを含む場合、上層の無機フィラーの種類、粒径及び量などは、限定されないが、下層と同じにしてもよい。
図3に本発明の第2の態様の一例の模式図を示す。図3では、平角状の導体と導体の周りに被覆される絶縁被膜とを含む巻線用被覆電線が縦に2つ並んでおり、各電線の絶縁被膜は、導体上に被覆される下層及び下層上に被覆される上層からなる2層構造を有し、上層は、絶縁樹脂からなり、下層は、絶縁樹脂中に、前記で説明した平均粒径を有する無機フィラーを、前記で説明した量で含む。
本発明の第3の態様は、導体と導体の周りに被覆される絶縁被膜とを含む巻線用被覆電線であって、絶縁被膜が、導体上に被覆される下層及び下層上に被覆される上層からなる2層構造を有し、上層及び下層が、絶縁樹脂中に、特定の平均粒径を有する無機フィラーを、一定量で含む、前記巻線用被覆電線に関する。
本発明の第3の態様において、下記で別に説明している事項以外の事項(例えば、導体、樹脂、上層及び下層に包含される無機フィラー(下記で別に説明している粒径及び量を除く)の条件など)は、本発明の第1の態様又は第2の態様と同じにすることができる。
本発明の第3の態様では、上層に包含される無機フィラーの粒径及び量の条件は、本発明の第1の態様における上層に包含される無機フィラーの粒径及び量の条件と同じであり、下層に包含される無機フィラーの粒径及び量の条件は、本発明の第2の態様における下層に包含される無機フィラーの粒径及び量の条件と同じである。
本発明の第3の態様では、本発明の第1の態様における上層に無機フィラーを包含させることによる利点と、本発明の第2の態様における下層に無機フィラーを包含させることによる利点の両方を得ることができる。
図4に本発明の第3の態様の一例の模式図を示す。図4では、平角状の導体と導体の周りに被覆される絶縁被膜とを含む巻線用被覆電線が縦に2つ並んでおり、各電線の絶縁被膜は、導体上に被覆される下層及び下層上に被覆される上層からなる2層構造を有し、上層は、絶縁樹脂中に、前記の第1の態様で説明した平均粒径を有する無機フィラーを、前記の第1の態様で説明した量で含み、下層は、絶縁樹脂中に、前記の第2の態様で説明した平均粒径を有する無機フィラーを、前記の第2の態様で説明した量で含む。
さらに、図5には、本発明の第3の態様における、部分放電による侵食の抑制メカニズムを模式的に示す。本発明の2つの巻線用被覆電線間に電位差が発生すると、電線同士の接触部分から少し離れた箇所で部分放電が起こる。部分放電は、各絶縁被膜中の樹脂を徐々に溶解・劣化させる第1の侵食を引き起こすが、絶縁被膜の上層中には樹脂よりも溶解・劣化に強い無機フィラーが含まれている。無機フィラーは、部分放電と物理的に接触することで、各絶縁被膜の第1の侵食を、樹脂のみからなる絶縁被膜のものよりも抑制する。
侵食が進むと、あるところで、侵食箇所に電界が集中する。電界集中は、電気トリーを引き起こし得るが、絶縁被膜の下層中には無機フィラーが含まれている。無機フィラーは、電界集中を緩和することで、電気トリーの発生を抑制する。
さらに、電気トリーが発生した場合、電気トリーは、急速に絶縁被膜中を進展するが、絶縁被膜の下層中には無機フィラーが含まれている。無機フィラーは、絶縁破壊に至るまでの電気トリーの成長距離を物理的に長くし、各絶縁被膜の第2の侵食を、樹脂のみからなる絶縁被膜のものよりも抑制する。
なお、本発明の第1〜3の態様では、下層の膜厚は、上層の膜厚に比べて厚い方が好ましい。上層により抑制される第1の侵食は徐々に進行するのに対し、下層により抑制される第2の侵食は急速に進行する。したがって、下層の膜厚が厚いことによって、急速に進行する絶縁破壊に至るまでの電気トリーの成長距離を長くすることができ、その結果、絶縁寿命が長くなる。
また、本発明では、絶縁被膜中に特定の無機フィラーを一定量包含させることにより従来技術と比較して絶縁被膜の部分放電による侵食を抑制している。したがって、巻線用被覆電線の目的に応じて、モータの体格を維持したまま絶縁寿命を長くしたい場合は、上層と下層を合わせた総膜厚を従来の絶縁被膜の厚さと同等にすればよく、あるいは、絶縁寿命を維持したままモータを小型化したい場合は、上層と下層を合わせた総膜厚を従来の絶縁被膜の厚さより薄くすればよい。
本発明の巻線用被覆電線は、ハイブリッド車や電気自動車などの駆動用モータ、発電機、補機モータなどに使用することができる。
本発明の巻線用被覆電線は、当該技術分野で通常使用されている方法を使用して、導体上に絶縁被膜を形成し、製造することができる。本発明の巻線用被覆電線は、例えば、有機溶剤と、樹脂と、場合により適量の無機フィラーとを含む下層用混合溶液を、導体と共に押出成形又は繰り返し塗装することにより、導体上に下層を形成させた下層被膜導体を得る。その後、有機溶剤と、樹脂と、場合により適量の無機フィラーとを含む上層用混合溶液を、下層被膜導体と共に押出成形又は繰り返し塗装することにより、上層及び下層を含む絶縁被膜を備える本発明の巻線用被覆電線を得る。ここで、有機溶剤としては、樹脂を溶解することができる有機溶剤を使用し、例えば樹脂としてPI樹脂を使用する場合には、有機溶剤としてN−メチルピロリドン(NMP)を使用することができる。
以下、本発明に関するいくつかの実施例につき説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
1.耐サージ効果(絶縁寿命向上効果)の検証実験1
本検証実験では、無機フィラーの粒径の違いが第1の侵食に与える影響を調査した。
1−1.膜サンプルの調製
1−1−1.PI樹脂単体(無機フィラー添加なし)の膜サンプル
(1)NMP(三菱化学製、85g)中に、PI樹脂(パイヤー製、15g)を複合し、23℃±10℃で、60分間撹拌することにより、樹脂組成物を調製した。
(2)(1)で調製した樹脂組成物を、硬化後に24μmの膜が得られるように、手動アプリケータにより、銅板(100mm×100mm×1mm)上に塗装した。
(3)(2)で塗装した樹脂組成物を、120℃×60分→200℃×10分→250℃×60分で熱処理し、PI樹脂を硬化させ、膜サンプルを調製した。
1−1−2.PI樹脂+無機フィラー(平均粒径10nm、PI樹脂及び無機フィラーの総体積に基づいて3.5体積%(「体積%」は、図中では「vol%」とも示す)の膜サンプル
(1)NMP(87g)中に、無機フィラー(球状シリカ、平均粒径10nm、0.62g)を複合し、23℃±10℃で、60分間撹拌することにより、混合液を調製した。なお、無機フィラーである球状シリカの平均粒径は、拡大顕微鏡などで約20個以上をランダムに測定し、それらを平均化した数値により決定した。
(2)(1)で調製した混合液に、PI樹脂(パイヤー製、12.42g)を複合し、23℃±10℃で、60分間撹拌することにより、樹脂組成物を調製した。
(3)(2)で調製した樹脂組成物を、硬化後に24μmの膜が得られるように、手動アプリケータにより、銅板(100mm×100mm×1mm)上に塗装した。
(4)(3)で塗装した樹脂組成物を、120℃×60分→200℃×10分→250℃×60分で熱処理し、PI樹脂を硬化させ、膜サンプルを調製した。
1−1−3.PI樹脂+無機フィラー(平均粒径100nm、PI樹脂及び無機フィラーの総体積に基づいて3.5体積%)の膜サンプル
1−1−2に記載の調製方法において、(1)で添加する無機フィラー(球状シリカ、平均粒径10nm、0.62g)を無機フィラー(球状シリカ、平均粒径100nm、0.62g)に変更した以外は、1−1−2に記載の調製方法と同様にして膜サンプルを調製した。
1−1−4.PI樹脂+無機フィラー(平均粒径1000nm、PI樹脂及び無機フィラーの総体積に基づいて3.5体積%)の膜サンプル
1−1−2に記載の調製方法において、無機フィラー(球状シリカ、平均粒径10nm、0.62g)を無機フィラー(球状シリカ、平均粒径1000nm、0.62g)に変更した以外は、1−1−2に記載の調製方法と同様にして膜サンプルを調製した。
1−2.第1の侵食の影響の検証実験
1−1−1〜1−1−4で調製した膜サンプルを、図6(A)及び(B)に示す、球形電極(Φ25mm、R5)に挟み、23℃±10℃で、インバータパルス電圧を印加し、絶縁破壊に至るまでの時間を測定した。なお、図6(B)は、(A)の断面図である。
図7に絶縁破壊後の膜サンプルの断面概略図を示し、図8に、1−1−2で調製した膜サンプルの絶縁破壊後の状態を真上(図7の(a))から見た写真を示す。
図7及び8に示すように、インバータパルス電圧を長時間印加することにより、徐々に放電侵食部が形成され、最終的には絶縁破壊部が形成される。
図9に、印加した電圧に対する絶縁破壊に至るまでの放電回数(回)の積算値を示す。
図9に示すように、無機フィラーを添加することにより絶縁寿命が向上することが分かった。
さらに、無機フィラーの平均粒径が10nmである1−1−2で調製した膜サンプルの絶縁寿命が一番良好であった。例えば印加電圧が500Vpである場合、1−1−2で調製した膜サンプルの絶縁寿命は、無機フィラーを含まない1−1−1で調製した膜サンプルの絶縁寿命と比較して、約1.5倍も向上していた。
2.耐サージ効果(絶縁寿命向上効果)の検証実験2
本検証実験では、無機フィラーの量の違いが第1の侵食に与える影響を調査した。
2−1.膜サンプルの調製
2−1−1.PI樹脂+無機フィラー(平均粒径10nm、PI樹脂及び無機フィラーの総体積に基づいて6.7体積%)の膜サンプル
1−1−2に記載の調製方法において、無機フィラー(球状シリカ、平均粒径10nm、0.62g)を無機フィラー(球状シリカ、平均粒径10nm、1.24g)に変更した以外は、1−1−2に記載の調製方法と同様にして膜サンプルを調製した。
2−1−2.PI樹脂+無機フィラー(平均粒径10nm、PI樹脂及び無機フィラーの総体積に基づいて9.7体積%)の膜サンプル
1−1−2に記載の調製方法において、無機フィラー(球状シリカ、平均粒径10nm、0.62g)を無機フィラー(球状シリカ、平均粒径10nm、1.86g)に変更した以外は、1−1−2に記載の調製方法と同様にして膜サンプルを調製した。
2−2.第1の侵食の影響の検証実験
1−1−1及び1−1−2並びに2−1−1及び2−1−2で調製した膜サンプルを、図6(A)及び(B)に示す、球形電極(Φ25mm、R5)に挟み、23℃±10℃で、インバータパルス電圧を印加し、絶縁破壊に至るまでの時間を測定した。なお、図6(B)は、(A)の断面図である。
図10に、2−1−2で調製した膜サンプルの絶縁破壊後の状態を真上から見た写真を示す。
図8と図10を比較すると、無機フィラーの量がPI樹脂及び無機フィラーの総体積に基づいて9.7体積%である2−1−2で調製した膜サンプルでは、無機フィラーの量がPI樹脂及び無機フィラーの総体積に基づいて3.5体積%である1−1−2で調製した膜サンプルと比較して、放電侵食部が小さいことが分かった。
図11に、印加した電圧に対する絶縁破壊に至るまでの放電回数(回)の積算値を示す。なお、無機フィラーの量がPI樹脂及び無機フィラーの総体積に基づいて9.7体積%である2−1−2で調製した膜サンプルの約500Vpにおける第1の侵食の影響の検証実験には、約1400時間以上かかるため、2−1−2で調製した膜サンプルの500Vpにおける放電回数の積算値としては、2−1−2で調製した膜サンプルの約600Vp、約750Vp、約900Vp及び約1050Vpの検証実験結果からの近似線から得られる予測値をプロットした。
図11に示すように、無機フィラーの量を増加することにより絶縁寿命が向上することが分かった。さらに、無機フィラーの量がPI樹脂及び無機フィラーの総体積に基づいて9.7体積%である2−1−2で調製した膜サンプルの絶縁寿命が一番良好であった。例えば印加電圧が500Vpである場合、2−1−2で調製した膜サンプルの絶縁寿命の予測値は、無機フィラーを含まない1−1−1で調製した膜サンプルの絶縁寿命と比較して、約6.3倍も向上すると試算された。
3.耐サージ効果(絶縁寿命向上効果)の検証実験3
本検証実験では、無機フィラーの粒径の違いが第2の侵食に与える影響を調査した。
3−1.実験サンプルの調製
3−1−1.PI樹脂単体(無機フィラー添加なし)の実験サンプル
(1)NMP(三菱化学製、85g)中に、PI樹脂(パイヤー製、15g)を複合し、23℃±10℃で、60分間撹拌することにより、樹脂組成物を調製した。
(2)(1)で調製した樹脂組成物を、スライドガラス上にエポキシ樹脂並びに耐熱パテにより固定された針電極及び線電極を備える実験装置に配置した。
(3)(2)で配置した樹脂組成物を、120℃×60分→200℃×10分→250℃×60分で熱処理し、PI樹脂を硬化させ、その後エポキシ(EP)樹脂、カバーガラスを被せることで、図12に示す実験サンプル(d=0.6mm)を調製した。図12の(A)は、実験サンプルの上面図であり、(B)は、実験サンプルの断面図である。なお、エポキシ樹脂は、23℃±10℃雰囲気内で硬化させており、実験サンプルを補強するために使用した。
3−1−2.PI樹脂+無機フィラー(平均粒径10nm、PI樹脂及び無機フィラーの総体積に基づいて3.5体積%)の実験サンプル
(1)NMP(三菱化学製、87g)中に、無機フィラー(球状シリカ、平均粒径10nm、0.62g)を複合し、23℃±10℃で、60分間撹拌することにより、混合液を調製した。なお、無機フィラーである球状シリカの平均粒径は、拡大顕微鏡などで約20個以上をランダムに測定し、それらを平均化した数値により決定した。
(2)(1)で調製した混合液に、PI樹脂(パイヤー製、12.42g)を複合し、23℃±10℃で、60分間撹拌することにより、樹脂組成物を調製した。
(3)(2)で調製した樹脂組成物を、スライドガラス上にエポキシ樹脂並びに耐熱パテにより固定された針電極及び線電極を備える実験装置に配置した。
(4)(3)で配置した樹脂組成物を、120℃×60分→200℃×10分→250℃×60分で熱処理し、PI樹脂を硬化させ、その後エポキシ樹脂、カバーガラスを被せることで、図12に示す実験サンプル(d=0.6mm)を調製した。図12の(A)は、実験サンプルの上面図であり、(B)は、実験サンプルの断面図である。なお、エポキシ樹脂は、23℃±10℃雰囲気内で硬化させており、実験サンプルを補強するために使用した。
3−1−3.PI樹脂+無機フィラー(平均粒径100nm、PI樹脂及び無機フィラーの総体積に基づいて3.5体積%)の実験サンプル
3−1−2に記載の調製方法において、無機フィラー(球状シリカ、平均粒径10nm、0.62g)を無機フィラー(球状シリカ、平均粒径100nm、0.62g)に変更した以外は、3−1−2に記載の調製方法と同様にして実験サンプルを調製した。
3−1−4.PI樹脂+無機フィラー(平均粒径1000nm、PI樹脂及び無機フィラーの総体積に基づいて3.5体積%)の実験サンプル
3−1−2に記載の調製方法において、無機フィラー(球状シリカ、平均粒径10nm、0.62g)を無機フィラー(球状シリカ、平均粒径1000nm、0.62g)に変更した以外は、3−1−2に記載の調製方法と同様にして実験サンプルを調製した。
3−2.第2の侵食の影響の検証実験
3−1−1〜3−1−4で調製した実験サンプルの針電極と線電極の間に、23℃±10℃で、図13に示すようにインバータパルス電圧を印加し、絶縁破壊に至るまでの時間を測定した。
図14に、3−1−2で調製した実験サンプルの絶縁破壊に至るまでの様子を示した写真を示す。
図14に示すようにインバータパルス電圧を印加することにより、電気トリーが形成され、最終的には、絶縁破壊に至る。
図15に、各実験サンプルの電圧印加から絶縁破壊に至るまでの時間を示す。なお、図15の各実験サンプルの「No.X」はX回目の実験結果であることを示す。例えば、PI樹脂単体のNo.5は、PI樹脂単体の5回目の実験結果であることを示す。また、棒グラフの塗りつぶし部分は電圧印加から絶縁破壊又は電気トリー発生時間までの時間(絶縁破壊までの時間)を示し、棒グラフの斜線部分は電気トリーが発生してから絶縁破壊までの時間(電気トリー発生時間)を示す。
図15に示すように、絶縁被膜に平均粒径が10nmである無機フィラーを添加することにより、無機フィラーを添加しない場合と比較して、約3倍以上も絶縁寿命が向上することが分かった。なお、絶縁被膜に平均粒径が100nm以上である無機フィラーを添加しても、絶縁寿命は向上しなかった。
4.耐サージ効果(絶縁寿命向上効果)の検証実験4
本検証実験では、無機フィラーの量の違いが第2の侵食に与える影響を調査した。
4−1.実験サンプルの調製
4−1−1.PI樹脂単体(無機フィラー添加なし)の実験サンプル
(1)NMP(三菱化学製、85g)中に、PI樹脂(パイヤー製、15g)を複合し、23℃±10℃で、60分間撹拌することにより、樹脂組成物を調製した。
(2)(1)で調製した樹脂組成物を、スライドガラス上にエポキシ樹脂並びに耐熱パテにより固定された針電極及び線電極を備える実験装置に配置した。
(3)(2)で配置した樹脂組成物を、120℃×60分→200℃×10分→250℃×60分で熱処理し、PI樹脂を硬化させ、その後エポキシ樹脂、カバーガラスを被せることで、図12に示す実験サンプル(d=0.6mm)を調製した。図12の(A)は、実験サンプルの上面図であり、(B)は、実験サンプルの断面図である。なお、エポキシ樹脂は、23℃±10℃雰囲気内で硬化させており、実験サンプルを補強するために使用した。
4−1−2.PI樹脂+無機フィラー(平均粒径10nm、PI樹脂及び無機フィラーの総体積に基づいて0.7体積%)の実験サンプル
(1)NMP(三菱化学製、87g)中に、無機フィラー(球状シリカ、平均粒径10nm、0.124g)を複合し、23℃±10℃で、60分間撹拌することにより、混合液を調製した。なお、無機フィラーである球状シリカの平均粒径は、拡大顕微鏡などで約20個以上をランダムに測定し、それらを平均化した数値により決定した。
(2)(1)で調製した混合液に、PI樹脂(パイヤー製、12.42g)を複合し、23℃±10℃で、60分間撹拌することにより、樹脂組成物を調製した。
(3)(2)で調製した樹脂組成物を、スライドガラス上にエポキシ樹脂並びに耐熱パテにより固定された針電極及び線電極を備える実験装置に配置した。
(4)(3)で配置した樹脂組成物を、120℃×60分→200℃×10分→250℃×60分で熱処理し、PI樹脂を硬化させ、その後エポキシ樹脂、カバーガラスを被せることで、図12に示す実験サンプル(d=0.6mm)を調製した。図12の(A)は、実験サンプルの上面図であり、(B)は、実験サンプルの断面図である。なお、エポキシ樹脂は、23℃±10℃雰囲気内で硬化させており、実験サンプルを補強するために使用した。
4−1−3.PI樹脂+無機フィラー(平均粒径10nm、PI樹脂及び無機フィラーの総体積に基づいて1.75体積%)の実験サンプル
4−1−2に記載の調製方法において、無機フィラー(球状シリカ、平均粒径10nm、0.124g)を無機フィラー(球状シリカ、平均粒径10nm、0.31g)に変更した以外は、4−1−2に記載の調製方法と同様にして実験サンプルを調製した。
4−1−4.PI樹脂+無機フィラー(平均粒径10nm、PI樹脂及び無機フィラーの総体積に基づいて3.5体積%)の実験サンプル
4−1−2に記載の調製方法において、無機フィラー(球状シリカ、平均粒径10nm、0.124g)を無機フィラー(球状シリカ、平均粒径10nm、0.62g)に変更した以外は、4−1−2に記載の調製方法と同様にして実験サンプルを調製した。
4−2.第2の侵食の影響の検証実験
4−1−1〜4−1−4で調製した実験サンプルの針電極と線電極の間に、30℃又は90℃で、図13に示すようにインバータパルス電圧を印加し、絶縁破壊に至るまでの時間を測定した。
図16に、4−1−2で調製した実験サンプルの絶縁破壊に至るまでの様子を示した写真を示す。
図16に示すように、インバータパルス電圧を印加することにより、電気トリーが形成され、最終的には、絶縁破壊に至る。
図17に、各実験サンプルの電圧印加から絶縁破壊に至るまでの時間を示す。なお、図17の各実験サンプルの「No.X」はX回目の実験結果であることを示す。例えば、PI樹脂単体の30℃におけるNo.5は、PI樹脂単体の30℃における5回目の実験結果であることを示す。また、棒グラフの塗りつぶし部分は電圧印加から絶縁破壊又は電気トリー発生時間までの時間(絶縁破壊までの時間)を示し、棒グラフの斜線部分は電気トリーが発生してから絶縁破壊まで時間(電気トリー発生時間)を示す。
図17に示すように、絶縁被膜に無機フィラーを0.7体積%〜1.75体積%添加することにより、無機フィラーを添加しない場合と比較して、約3倍以上も絶縁寿命が向上することが分かった。なお、絶縁被膜に無機フィラーを5体積%添加しても、絶縁寿命は向上しなかった。

Claims (3)

  1. 導体と導体の周りに被覆される絶縁被膜とを含む巻線用被覆電線であって、
    絶縁被膜が、導体上に被覆される下層及び下層上に被覆される上層からなる2層構造を有し、
    上層が、絶縁樹脂中に、0.5nm〜100nmの平均粒径を有する無機フィラーを、上層の総体積に基づいて3.5体積%以上で含む、
    前記巻線用被覆電線。
  2. 導体と導体の周りに被覆される絶縁被膜とを含む巻線用被覆電線であって、
    絶縁被膜が、導体上に被覆される下層及び下層上に被覆される上層からなる2層構造を有し、
    下層が、絶縁樹脂中に、0.5nm〜40nmの平均粒径を有する無機フィラーを、下層の総体積に基づいて0.70体積%〜1.75体積%で含む、
    前記巻線用被覆電線。
  3. 導体と導体の周りに被覆される絶縁被膜とを含む巻線用被覆電線であって、
    絶縁被膜が、導体上に被覆される下層及び下層上に被覆される上層からなる2層構造を有し、
    上層が、絶縁樹脂中に、0.5nm〜100nmの平均粒径を有する無機フィラーを、上層の総体積に基づいて3.5体積%以上で含み、
    下層が、絶縁樹脂中に、0.5nm〜40nmの平均粒径を有する無機フィラーを、下層の総体積に基づいて0.70体積%〜1.75体積%で含む、
    前記巻線用被覆電線。
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