以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳説する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
本形態による個装吸収性物品は、表面シートと、裏面シートと、これらの間に介在する吸収体とを有する吸収性物品と、この吸収性物品を個装するための包装シートとを備えている。
まず、本発明の一形態において用いられる吸収性物品の基本的な構造について説明する。図1に、吸収性物品10の、上面(表面)から見た部分破断図を示す。また、図2に、図のI−I線に沿った断面図を示す。図1、2に示すように、吸収性物品10は、不透液性の裏面シート2と、透液性の表面シート3と、これら両シート2、3間に設けられた吸収体4とを有する本体(吸収性物品本体)8とを備えている。吸収体4の形状保持等のために、吸収体4は、クレープ紙又は不織布等からなる被包シート5によって包まれていてもよい。
図1の形態では、吸収性物品10は、上面視で、全体として第1方向D1に長い細長形状を有している。このような細長形状の吸収性物品10を装着する場合には、吸収性物品10の第1方向(長手方向)D1を、ショーツ等の被装着体の前後方向に沿わせて装着することができる。また、吸収性物品10は、第1方向D1に延びる中心線CLに対し略線対称の形状になっていてよい。なお、吸収性物品10の形状は、図示の細長形状に限られず、第1方向D1と、第1方向D1に直交する第2方向D2とがほぼ同じ長さである形状であってもよい。
表面シート3側の両側部には、それぞれ第1方向D1に沿って、サイド不織布7が設けられている。サイド不織布7は、本体8の側方に突出し、同じく側方に突出する裏面シート2に積層され、ホットメルト等の接着剤やヒートシール、超音波シール等の接着手段によって接合されていてよい。サイド不織布7としては、撥水処理不織布又は親水処理不織布を使用することができる。
裏面シート2としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シート等の少なくとも遮水性を有するシート材を用いることができる。ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、ムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられることがさらに望ましい。このような遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。
表面シート3は、経血、おりもの、尿等の体液を速やかに透過させる透液性のシートである。表面シート3としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、融点の異なる合成繊維を組み合わせた複合繊維を用いることもできる。不織布の加工法としては、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等が挙げられる。
裏面シート2と表面シート3との間に介在される吸収体4は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。化学パルプの原料材としては、広葉樹材、針葉樹材等が用いられるが、繊維長が長いこと等から針葉樹材が好適に使用される。また、吸収体4には合成繊維を混合してもよい。
吸収体4の厚みは、0.3〜30mmの範囲内とすることができ、1.0〜15mmの範囲であると好ましい。吸収体4の厚みは、全面にわたって均一でなくともよく、本体8の第1方向D1の中央部分、また臀部の溝に対応する部分等を膨出させた構造とすることもできる。
図1、2に示すように、本体8の裏面シート2側には、ショーツ等の被装着体に吸収性物品10を固定するためのズレ止め材9が配置されていてよい。ズレ止め材9は、粘着性又は非粘着性の層であってよい。粘着剤層としては、例えば、スチレン系ポリマー、粘着付与剤、可塑剤及びこれらの組合せを主成分とするものが好適に使用される。
スチレン系ポリマーとしては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。
また、粘着付与剤及び可塑剤としては、常温で固体のものを用いることができる。粘着付与剤としては、例えば、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ロジン系石油樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、リン酸トリフレシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のモノマー可塑剤の他、ビニル重合体やポリエステル等のポリマー可塑剤が挙げられる。
非粘着性の層として形成されるズレ止め材9の材料としては、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、スチレン−イソプレンゴム等をベースポリマーとする材料を単独で又は組み合わせて用いることができる。これらの中でも、シリコーンゴムあるいはSIS、SBSの水添タイプエラストマーが好ましい。また、ズレ止め材9として、メカニカルファスナーのフック材を利用することもできる。
図示の形態では、第1方向D1に延びる3本のズレ止め材9が設けられている。しかし、ズレ止め材9の形状、大きさ、及び個数は、図示のものに限られず、吸収性物品10の構成や用途に応じて形成することができる。
なお、吸収性物品10は、本体8の第1方向D1の中央付近に、吸収性物品10の側縁部から張り出すウィングを有していてもよい。ウィングは、装着の際にショーツの外側に折り返すことができ、これにより、吸収性物品10を確実に固定することができる。また、吸収性物品10の本体8には、使用者の身体へのフィット性を高めること、体液の流れを制御すること等を目的として、表面シート3側から裏面シート2側へ圧搾溝(フィットエンボスとも言う)が設けられていてもよい。
本形態に含まれる吸収性物品10は、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド(尿取りパッド)であってよく、またこれらの補助として用いられるパッドやシートであってもよい。吸収性物品10の全長(第1方向D1の長さ)は特に限定されないが、100〜450mmとすることができ、140〜360mmであると好ましく、170〜290mmであるとより好ましい。また、吸収性物品10の幅(第2方向D2の長さ)は、50〜200mmであると好ましく、70〜120mmであるとより好ましい。
図3A〜3Cに、本発明の一形態による個装吸収性物品100の個装工程を示す。なお、図3A及び図3Bは、個装吸収性物品100を展開した図でもある。図3Aに示すように、個装吸収性物品100は、吸収性物品10に、吸収性物品10の表面シート3側に包装シート20を重ねて形成することができる。図示の形態では、吸収性物品10及び包装シート20はともに細長形状を有し、その長手方向(第1方向D1)が互いにほぼ一致するように配置されている。
包装シート20は、吸収性物品10を少なくとも部分的に包み込み、吸収性物品10を収容するためのシートである。包装シート20としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリエステル、ポリビニルアルコール等のフィルムや、不織布、ラミネート不織布(ポリラミ不織布を含む)等を用いることができる。印刷によるデザイン等を重視するのであればフィルムが好ましく、風合いやソフト感等を重視するのであれば不織布等が好ましい。包装シート20は未処理のシートであってもよいし、吸収性物品10の裏面シート2側にズレ止め材9が設けられている場合等には、包装シート20の、少なくともズレ止め材9と接触する部分に離形処理が施されていてもよい。その場合には、後述の剥離シート30は不要となる。
図3Aに示す形態では、吸収性物品10のズレ止め材9の側(裏面シート2側)に、ズレ止め材9を覆う大きさ及び形状を有する剥離シート30を重ねることができる。剥離シート30の材料は特に限定されず、ズレ止め材9を保護し、吸収性物品10の使用時に吸収性物品10から容易に剥離してズレ止め材9を露出させることのできる材料であればよい。具体的には、剥離シート30は、例えばシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、又は四フッ化エチレン系樹脂などの離型処理液を、少なくともズレ止め材9と接触する部分、又は少なくともズレ止め材9と接触する側に塗工するかスプレー塗布することによって離型処理した紙又はプラスチックシートであってよい。
図3Bに、吸収性物品10を包装シート20上に重ね、さらに包装シート20の一端を、吸収性物品の一端11を包み込むように折り返した後の状態を示す。上記の包装シート20の折返しによって、第1折返し部21が形成されている。図示のように、第1折返し部21は、吸収性物品10の裏面シート2を部分的に覆っている。そして、第1折返し部21によって覆われていない領域は、後述のように開封時に露出する領域となる。装着時には、この裏面シート2側の露出領域を被装着体に対向させて被装着体に装着するので、第1折返し部21によって覆われていない領域は大きい方が好ましい。具体的には、包装シート20が折り返される長さ(図3Bでは、第1折返し部21の第1方向D1の長さ)は、吸収性物品10の全長の35%以下、好ましくは30%以下、25%以下であると好ましい。但し、装着時に吸収性物品10の一端11を把持できるよう、第1折返し部21の長さは、1.5cm以上、好ましくは2cm以上、より好ましくは3cm以上であってよい。また、第1折返し部21は、吸収性物品10の裏面シート2側の10〜90cm2、好ましくは20〜60cm2程度を覆っていてよい。
なお、第1折返し部21によって包み込まれる一端は、吸収性物品10の長手方向(第1方向D1)のどちらの端であってもよい。これは、吸収性物品10の装着時の前後方向が決められている場合(第2方向D2に延びる中心線に対して線対称でない形状を有する場合等)でも同様である。
図3Bに示すように、第1折返し部21の側縁部(図中の第2方向D2の縁部)21aは、その下の包装シート20と接合され、これにより、ポケット28が形成されていてよい。この構成により、吸収性物品10の一端11を包んでいる包装シート20同士(第1折返し部21及びそれに隣接する領域23)が互いにずれにくくなる。そのため、吸収性物品10の装着時に吸収性物品10の一端11を把持する際、包装シート20同士が互いにずれて吸収性物品10がその間から脱落してしまうことを防止できる。また、個装吸収性物品100の密封性も高まるため、衛生面からも好ましい。
上記の第1折返し部21の側縁部21aの接合は、例えば、ホットメルト等の接着剤、ヒートシール、超音波シール等の接着手段によって形成されていてよい。
図示の形態では、第1折返し部21の端縁(包装シート20の一端の縁)は、第2方向D2に沿ってほぼ直線状になっている。しかし、端縁が直線状ではなく、例えば端縁の輪郭形状が凹凸を有する場合や、第2方向D2に対して斜めに延びている場合には、上記の第1折返し部21の長さは、最長の長さと最短の長さとの平均としてもよいし、第1折返し部21の面積を包装シートの第2方向D2の長さで割った値としてもよいし、また第2方向D2の中央部の長さとしてもよい。
図示の形態では、第1折返し部21は、吸収性物品10の長手方向(第1方向D1)の一端11を覆っているが、包装シート20を、吸収性物品10の短手方向(第2方向D2)の一端を覆うように折り返すことによって、第1折返し部21を形成することもできる。その場合、個装吸収性物品100の開封後、包装シート20で包まれた、吸収性物品10の短手方向の一端(第2方向D2の一端)を把持して、吸収性物品10を被装着体に装着することができる。
図3Cに、第1折返し部21の反対側の端部(包装シート20の他端)が、第2折返し部22として折り返されて、吸収性物品10が個装された状態を示す。また、図4に、図3CのII−II線に沿った断面図を示す。図3C及び図4に示すように、第2折返し部22は、第1折返し部21の上に部分的に重ねられている。第2折返し部22の端部にはタブテープ60が設けられており、開封時には、このタブテープ60を把持して引っ張ると、第2折返し部22が付随して引っ張られて開く。これにより、個装吸収性物品100を容易に開封することができる。
図3Cに示す個装吸収性物品100の第1方向D1の側縁部は、第1折返し部21の側縁部21aの接合について説明したものと同様の手段を用いて、重ねられた包装シート20同士を接合されていてよい。これにより、個装吸収性物品100を封止することができる。
図4に示すように、個装吸収性物品100では、剥離シート30は、包装シート20の第2折返し部22に剥離不能に接着されていてよい。これにより、第2折返し部22を開く際に、第2折返し部22とともに剥離シート30をズレ止め材9から剥がして、ズレ止め材9を露出させることができる。なお、本明細書において、剥離不能とは、通常の開封作業や装着作業では剥がすことのできない状態を指す。また、剥離可能とは、通常の開封作業や装着作業では剥がすことができる状態を指す。
また、図3B及び図4に示すように、個装吸収性物品100においては、第1折返し部21は、ズレ止め材9及び剥離シート30に重なっていない。しかし、第2折返し部22を開く妨げとならなければ、第1折返し部21は、剥離シート30に、又はズレ止め材9及び剥離シート30に重なっていてもよい。また、剥離シート30は、後述の形態(図5A〜5C、図6)で説明するように、2枚で構成されていてよい。
図5A〜図5Cに、本発明の別の形態による個装吸収性物品200の個装工程を示す。なお、図5A及び図5Bは、個装吸収性物品200を展開した図でもある。上述の個装吸収性物品100(図3A〜3C、図4)と同様、個装吸収性物品200は、吸収性物品10に、吸収性物品10の表面シート3側に包装シート220を重ねて形成することができる。
図5A〜5Cに示す個装吸収性物品200は、吸収性物品10が、その表面シート3が内側となるように2つに折り畳まれている点で、個装吸収性物品100(図3A〜3C、図4)と異なる。図示の個装吸収性物品200においては、吸収性物品10は、長手方向(第1方向D1)に直交する短手方向(第2方向D2)に沿って延びる折り位置で折り畳まれている。これにより、吸収性物品10をコンパクトに個装することができる。すなわち、個装吸収性物品200の上面視の面積を小さくすることができ、持ち運びにも便利となる。
図5Aに示すように、吸収性物品10が折り畳まれるのは、後述の第1折返し部221(図5B)によって覆われる長手方向(第1方向D1)の一端11とは反対側の他端12である。吸収性物品10の折り位置は、吸収性物品10の全長や厚さに応じて選択することができるが、吸収性物品10の他端12から折り位置までの長さは、吸収性物品10の全長に対して50%未満であると好ましく、40%以下であるとより好ましく、35%以下であるとより好ましい。折り位置を上記のようにすることで、個装吸収性物品200を開封した際に吸収性物品10の裏面シート側が露出する面積を増やすことができる。これにより、装着時に、被装着体に接触する面の面積が大きくなるので、吸収性物品10の装着がより容易となる。また、吸収性物品10が折り畳まれた状態を安定させる観点からは、吸収性物品10の他端12から折り位置までの長さは3cm以上、好ましくは5cm以上、より好ましくは6cm以上とすることができる。折り位置は、吸収性物品10を装着した際に体液排出部に対応する領域を避けることが好ましい。
また、個装吸収性物品200は、剥離シートの構成が異なる点でも、個装吸収性物品100(図3A〜3C、図4)と異なる。具体的には、個装吸収性物品200は、図5Aに示すように、包装シート220に、吸収性物品10のズレ止め材9を覆うための2つの剥離シート230a、230b(合せて、剥離シート230とも呼ぶ)が配置されている。なお、この剥離シート230a、230bは、吸収性物品10を折り畳む前に、吸収性物品10のズレ止め材9を覆うように吸収性物品10に予め配置しておくこともできる。
図5Bに、上記の折り畳まれた吸収性物品10を包装シート220上に重ね、さらに包装シート220の一端を、吸収性物品10の一端11を包むように折り返した後の状態を示す。包装シート220の一端を折り返すことによって、第1折返し部221が形成されている。第1折返し部221は、吸収性物品10の裏面シート2側を部分的に覆っており、またズレ止め材9を部分的に覆っている。ここで、包装シート220に予め配置されていた剥離シート230aが、第1折返し部221とズレ止め材9との間に介在して、第1折返し部221とズレ止め材9とが直接接触しないようになっている。
図5Cに、第1折返し部221の反対側の端部(包装シート20の他端)が、第2折返し部222として折り返されて、吸収性物品10が個装された状態を示す。また、図6に、図5CのIII−III線に沿った断面図を示す。第2折返し部222の端部にはタブテープ260が設けられており、開封時には、このタブテープ260を把持して第2折返し部222を引っ張ることにより、個装吸収性物品200を容易に開封することができる。
図5B及び図6に示すように、個装吸収性物品200では、ズレ止め材9は、2つの剥離シート230a、230bによって覆われている。剥離シート230aは、第1折返し部221に剥離不能に接着されており、第1折返し部221を開く際にズレ止め材9から剥がすことができる。また、剥離シート230bは、第2折返し部222に剥離不能に接着されており、第2折返し部222を開く際にズレ止め材9から剥がすことができる。
なお、個装吸収性物品200(図5A〜5C、図6)においても、包装シート220の、少なくともズレ止め材9に接触する部分に離形処理が施されている場合には、剥離シート230は不要となる。
図7A〜7Cに、本発明の別の形態による個装吸収性物品300の個装工程を示す。なお、図7A及び図7Bは、個装吸収性物品300を展開した図でもある。上述の個装吸収性物品100(図3A〜3C、図4)及び個装吸収性物品200(図5A〜5C、図6)と同様に、個装吸収性物品300は、吸収性物品10に、吸収性物品10の表面シート3側に包装シート320を重ねて形成することができる。しかし、図7Aに示すように、個装吸収性物品300では、吸収性物品10の表面シート2側に基材シート50が設けられる。
基材シート50は、ズレ止め材9に接触するシートであり、上述の剥離シート30、230と同様に、少なくともズレ止め材9と接触する部分に離形処理が施されている。基材シート50は、包装シート220よりも剛性の高いシートであると、個装吸収性物品300を開封する際に、安定した開封作業が可能になるので、好ましい。
基材シートの材料は、特に限定されず、吸水性物品の使用時に吸水性物品から容易に剥離してズレ止め材を露出させることのできる材料であればよい。具体的には、半晒、上質紙、グラシン紙、又はポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラートを材料とし、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、又は四フッ化エチレン系樹脂等の離型処理液を塗工またはスプレーすることで、離型処理した紙またはプラスチックシートであってよい。基材シートの厚みは、1mm以下が好ましく、さらに100μm以下がより好ましい。
また、図7Aに示すように、個装吸収性物品300の包装シート320の、後述の第1折返し321(図7B)が形成される一端とは反対側の他端には、易破断部325が形成されている。この易破断部325は、ミシン目等の線状の脆弱部であり、開封時には、この易破断部325にて包装シート320が破断されるようになっている。
図7Bに、吸収性物品10と包装シート320とを重ね、さらに包装シート320の一端を、吸収性物品10の一端11を包み込むように折り返した後の状態を示す。包装シート320の一端を折り返すことによって、第1折返し部321が形成されており、第1折返し部321は、吸収性物品10の裏面シート2側を部分的に覆っている。
図7Cに、吸収性物品10と包装シート320とが重ね合され且つ包装シート320の一端が折り返された構成(図7B)に、さらに基材シート50が重ねることによって得られた個装吸収性物品300を示す。但し、図7Cは、包装シート320が上側を、基材シート50が下側を向いた状態を示す。また、図8に、図7CのIII−III線に沿った断面図を示す。
個装吸収性物品300においては、図7Cに示すように、包装シート320が折り返されている部分(第1折返し部321が重ねられている部分)以外の、包装シート320の短手方向(第2方向D2)の側縁部320a、320aは、基材シート50に、剥離可能に接着されていてよい。これにより、密閉性を高めることができる。
また、図7Cに示すように、包装シート320の、第1折返し部321が形成されていない側の端縁部328は、基材シート50に剥離不能に接着されていてよい。個装吸収性物品300の開封時には、第1折返し部321と基材シート50との間に指を入れ、包装シート320の第1折返し部321とそれに隣接する領域323とに挟まれた吸収性物品の一端を把持して、吸収性物品10及び包装シート320をともに第1方向D1に、基材シート50から剥がすことができる。
なお、図7Cに示す形態では、基材シート50は、基材シート50の長さは、長手方向(第1方向D1)及び短手方向(第2方向D2)のいずれにおいても、包装シート320が載置されている範囲よりも大きな寸法を有している。すなわち、基材シート50は、上面視で、基材シート50から吸収性物品10がはみ出さないような大きさ及び形状を有している。しかし、基材シート50の大きさは図示のものに限られず、例えば、長手方向(第1方向D1)及び短手方向(第2方向D2)の少なくとも一方において、包装シート320の寸法と基材シート50の寸法とは同じであってもよいし、包装シート320の寸法が基材シート50の寸法よりも大きくなっていてもよい。
次に、本形態による個装吸収性物品の使用方法(吸収性物品の装着方法)について、より具体的に説明する。図9A〜9Eに、一例として、個装吸収性物品100(図3A〜3C)の使用方法を示す。図9A〜9Eは、図3CのII−II線に沿った模式的な断面図である。なお、図9A〜9Eでは、吸収性物品10の詳細な構造は省略している。
まず、個装吸収性物品100を開封するには、図9Aに示すように、タブテープ60を剥がして、タブテープ60とともに、矢印の方向に第2折返し部22を持ち上げて開く。上述のように、剥離シート30は第2折返し部22に剥離不能に接着されているので、第2折返し部22に付随して剥離シート30も持ち上げられ、接触していたズレ止め材9から剥がされる(図9B)。そして、第2折返し部22が開かれると、吸収性物品10の裏面シート2側が部分的に露出する。具体的には、図9Cに示すように、吸収性物品10のズレ止め材9を露出させることができる。
図9Cに示すように、吸収性物品10の一端11は、包装シート20に包まれて(くるまれて)いる。言い換えれば、包装シート20の第1折返し部21とそれに隣接する領域23とで挟まれている。使用者は、この包装シート20で挟まれた吸収性物品10の一端11を上下から(短矢印H、H)、例えば親指とその他の指とで挟んで把持することができる。
続いて、包装シート20に挟まれた吸収性物品10の一端11を把持したまま、吸収性物品10を裏返して被装着体に装着する。図9Dに、吸収性物品10の一部が被装着体Sに載置された状態を示す。図9Dに示すように、吸収性物品10は、裏面シート2側が、すなわちズレ止め材9が、ショーツ等の被装着体Sに対向するように載置される。包装シート20を備えたままの吸収性物品10を被装着体S上に載置した後、例えば吸収性物品10を、吸収性物品10に直接触れることなく包装シート20の上から押さえて、ズレ止め材9を被装着体Sに確実に粘着させることもできる。
その後、図9Eに示すように、包装シート20を、吸収性物品10から取り外すことができる。
このように、個装吸収性物品100は、開封し、吸収性物品10の裏面シート2側を露出させ、その露出させた側が被装着体Sに対向するように、吸収性物品10を被装着体Sに載置することによって装着を行うことができる。よって、本形態では、従来技術では必須であった吸収性物品を取り外す作業を省くことができる。また、使用者は、包装シート20に包まれた一端11を持って吸収性物品10を被装着体Sへ装着できるので、吸収性物品に直接接触することなく吸収性物品を装着可能であり、衛生的にも好ましい。
個装吸収性物品200(図5A〜5C)も、個装吸収性物品100と同様に装着を行うことができ、同様の効果を奏する。
図10A〜10Eに、個装吸収性物品300(図7A〜7C)の使用方法(吸収性物品の装着方法)を示す。図10A〜10Eは、図7CのII−II線に沿った模式的な断面図である。なお、図10A〜10Eにおいても、吸収性物品10の詳細な構造は省略している。
図10Aに示すように、個装吸収性物品300に収容された吸収性物品10の一端11は、包装シート320に包まれた状態、すなわち、包装シート320の第1折返し部321とそれに隣接する領域323との間に挟まれた状態となっている。使用者は、包装シート320と基材シート50との間に指を差し入れ、包装シート20に挟まれた吸収性物品10の一端11を、矢印で示す方向に持ち上げることができる。そして、図10Bに示すように、包装シート20で挟まれた吸収性物品10の一端11を上下から(短矢印H、H)、例えば親指とその他の指とで挟んで把持し、吸収性物品10を包装シート20とともに、基材シート50から持ち上げ、剥がすことができる。
上述のように、包装シート320は、第1折返し部321が形成されている側とは反対側の端縁部328で、基材シート50に剥離不能に接着されている。しかし、端部328の近傍に易破断部325が設けられているので、包装シート320は、易破断部325にて切り離すことができる。図10Cに、吸収性物品10が包装シート20とともに基材シート50から剥がされ、包装シート320が易破断部325で切り離された状態を示す。
なお、易破断部325を設けず、端縁部328を、側縁部320aと同様に基材シート50に剥離可能に接着させておくこともできる。その場合には、端縁部328を含む包装シート320全体を剥がすことができる。
図10Cに示すように、基材シート50から剥がされた吸収性物品10は、その裏面シート2側が露出した状態、すなわちズレ止め材9が露出した状態となっている。そのため、追加的な作業を行う必要なく、また吸収性物品10を持ち替える必要なく、吸収性物品10を直ちに被装着体Sへと装着させることができる。
図10Dに、吸収性物品10の一部が、ズレ止め材9が被装着体Sに対向するように、被装着体Sに載置された状態を示す。ここで、例えば吸収性物品10を包装シート20の上から直接触れることなく押さえて、ズレ止め材9全体を被装着体Sに確実に粘着させることもできる。
その後、図10Eに示すように、包装シート20を、吸収性物品10から取り外すことができる。
このように、個装吸収性物品300は、吸収性物品10を基材シート50から剥がすことによって、収性物品10の裏面シート2側を露出させることができる。その後直ちに、露出させた裏面シート2側が装着体Sに対向するように吸収性物品10を被装着体Sに載置することによって、装着を行うことができる。よって、本形態では、従来技術では必須である吸収性物品を包装シートから取り外す作業を省くことができる。また、基材シート50が別の保持装置等に固定されていれば、開封から装着までを片手で行うこともできる。さらに、個装吸収性物品300も、吸収性物品10に直接接触することなく吸収性物品を装着可能であり、衛生的に優れている。
本発明の一形態は、基材シートを備えた個装吸収性物品を複数含むロール状体であってよい。このロール状体は、複数の個装吸収性物品300を連結し、これらをロール状に巻くことによって得ることができる。
図11に、一例として、複数の個装吸収性物品300'を含むロール状体500を示す。ロール状体500では、各個装吸収性物品300'の構成は上述の個装吸収性物品300(図7A〜7C、図8)と同様であるが、基材シートとして、複数の個装吸収性物品300'に共通の長尺の基材シート550を用いており、基材シート550が外側となるように巻かれている。言い換えれば、基材シート550は、複数の個装吸収性物品300'間で連続して帯状に繋がっている。図示の形態では、複数の個装吸収性物品300'の長手方向が、基材シート550の長手方向(使用時に基材シート550を引き出す方向)とほぼ一致している。個装吸収性物品300'を開封し、装着する方法は、図10A〜10Eを参照して説明した通りである。
このように、個装吸収性物品を連結させてロール状体500としたことにより、吸収性物品をコンパクトに収容することができる。また、ロール状体500としたことで、個装吸収性物品300'は使用直前まで、基材シート550が外側となるように巻かれているので、使用前に個装吸収性物品300'の包装シート320'側が露出することを避けることができる。また、巻かれている状態で重ねられた個装吸収性物品300'同士は、互いに押さえ付けられているため、図7Cに示したように包装シート320'の側縁部(図7Cにおいて320aで示した部分)を剥離可能に基材シート550に接着しておかなくてもよく、上記側縁部の接着を省くことができる。
また、ロール状体500が保持装置等によって保持されていれば、吸収性物品10を基材シート550から剥がす際に、片手で簡単に剥がすことができる。
図12に、ロール状体の別の形態として、複数の個装吸収性物品300''を含むロール状体600を示す。ロール状体500と同様、ロール状体600も、基材シートとして、複数の個装吸収性物品300''に共通の長尺の基材シート650を用いている。但し、図12に示すロール状体600は、複数の個装吸収性物品300''の長手方向は、基材シート650の長手方向(使用時に基材シート550を引き出す方向)に直交する方向となっている点で、ロール状体500と異なる。
図12に示すロール状体600では、個装吸収性物品300''の包装シート320''の第1折返し部321''は、吸収性物品10の短手方向の一端を覆うように折り返されている。使用時には、吸収性物品10の短手方向の一端を包装シート320''とともに把持して、吸収性物品10を基材シート650から剥がし、その後直ぐに、吸収性物品10の裏面シート側を被装着体に対向させて吸収性物品10を装着させることができる。