JP2019119949A - セルロースナノファイバーを含有する紙または板紙 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]古紙パルプを20重量%以上含有し、
少なくとも1つの紙層が、当該紙層のパルプに対して0を超え3重量ppm未満のセルロースナノファイバーを含有する、紙または板紙。
[2]前記セルロースナノファイバーがカルボキシル化セルロースナノファイバーである、[1]に記載の紙または板紙。
[3]前記セルロースナノファイバーが、N−オキシル化合物を用いた酸化により得られたカルボキシル化セルロースナノファイバーである、[1]または[2]に記載の紙または板紙。
[4]前記古紙パルプが、未脱墨古紙パルプ、脱墨古紙パルプ、およびこれらの組合せからなる群から選択される、[1]〜[3]のいずれかに記載の紙または板紙。
[5]前記古紙パルプが雑誌古紙パルプである、[1]〜[4]のいずれかに記載の紙または板紙。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の紙または板紙の製造方法であって、
古紙パルプおよびセルロースナノファイバーを含有するパルプスラリーを抄紙する工程を含む、紙または板紙の製造方法。
本発明の紙または板紙は特定量の古紙パルプおよびセルロースナノファイバー(以下「CNF」ともいう)を含む。板紙とは、一般に紙の中でも特に厚いものを指すが、本発明においては、例えば、ライナーや中芯原紙などの段ボール原紙、板紙原紙、白板紙、チップボール、黄ボール、キャリアテープ、紙器原紙等の多層紙を「板紙」といい、単層紙を「紙」という。本発明の紙または板紙は少なくとも1つの紙層にセルロースナノファイバーを含有する。
単層紙である紙はパルプを主原料とした1つの紙層を備え、多層紙である板紙はパルプを主原料とした複数の紙層を備える。板紙における紙層は2層以上が好ましく、例えば2層の場合は「表層」「裏層」、3層の場合は「表層」「中層」「裏層」、4層の場合は「表層」「表下層」「裏下層」「裏層」、5層の場合は「表層」「表下層」「中層」「裏下層」「裏層」から構成される。5層以上の場合は、「表層」「表下層」「中層」「裏下層」「裏層」のいずれの層を複数層としてもよいが、中層を複数層とすることが好ましい。前記各層の処方は全て同一でもよく、全て異なっていてもよいが、前記紙層のいずれか2層以上を同一の処方としてもよい。
CNFの含有量は紙層中のパルプ(絶乾)に対し0を超え3重量ppm未満である。本発明においてCNFはパルプとは異なる。紙層がCNFを含有することで、古紙パルプを含む紙または板紙の強度を向上できる。この観点から、CNF含有量の下限は0.1重量ppm以上であることが好ましく、0.5重量ppm以上であることがより好ましい。上限は2.5重量ppm以下であることが好ましく、1.5重量ppm以下であることがより好ましい。発明者らは古紙パルプを20重量%以上含有するパルプスラリーに極微量のCNFを添加することで、パルプスラリーの物性を大きく変化させることなく高い紙力向上効果が得られることを見出した。
セルロース系原料は特に限定されず、各種木材由来のクラフトパルプまたはサルファイトパルプ、それらを高圧ホモジナイザーやミル等で粉砕した粉末セルロース、あるいはそれらを酸加水分解などの化学処理により精製した微結晶セルロース粉末などを使用できる。また、ケナフ、麻、イネ、バガス、竹等の植物を使用することもできる。この中でも、漂白済みクラフトパルプ、漂白済みサルファイトパルプ、粉末セルロース、微結晶セルロース粉末が好ましく、粉末セルロース、微結晶セルロース粉末がより好ましい。
酸化は、(1)N−オキシル化合物、および(2)臭化物、ヨウ化物またはそれらの混合物の存在下で、酸化剤を用いて実施できる。セルロース系原料を酸化する際に用いるN−オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。例えば、本発明で使用されるN−オキシル化合物としては、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシラジカル(以下、「TEMPO」ともいう)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシラジカル(以下、「4−ヒドロキシTEMPO」ともいう)を発生する化合物が好ましい。また、TEMPOまたは4−ヒドロキシTEMPOから得られる誘導体も用いることができ、特に、4−ヒドロキシTEMPOの誘導体が最も好ましい。4−ヒドロキシTEMPO誘導体としては、4−ヒドロキシTEMPOの水酸基を、炭素数4以下の直鎖または分岐状炭素鎖を有するアルコールでエーテル化して得られる誘導体、あるいはカルボン酸またはスルホン酸でエステル化して得られる誘導体が好ましい。4−ヒドロキシTEMPOをエーテル化する際には、炭素数が4以下のアルコールを用いれば、アルコール中の飽和、不飽和結合の有無にかかわらず、得られる誘導体が水溶性となり、酸化触媒として良好に機能する4−ヒドロキシTEMPO誘導体を得ることができる。さらに、アザアダマンタン型ニトロキシラジカルも短時間で均一なCNFを製造できるため好ましい。
カルボキシル基量(mmol/gパルプ)=a(mL)×0.05/セルロース重量(g)
エーテル化は、発底原料としてのセルロース原料をマーセル化し、その後エーテル化することで実施できる。当該反応には通常、溶媒が使用される。溶媒としては例えば、水、アルコール(例えば低級アルコール)およびこれらの混合溶媒が挙げられる。低級アルコールとしては例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノールが挙げられる。混合溶媒における低級アルコールの混合割合は、通常は60重量%以上または95重量%以下であり、60〜95重量%であることが好ましい。溶媒の量は、セルロース原料に対し通常は3重量倍である。当該量の上限は特に限定されないが20重量倍である。従って、溶媒の量は3〜20重量倍であることが好ましい。
A=[(100×F’−(0.1NのH2SO4)(mL)×F)×0.1]/(水素型カルボキシメチル化セルロースの絶乾重量(g))
DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:水素型カルボキシメチル化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F:0.1NのH2SO4のファクター
F’:0.1NのNaOHのファクター
このようにして化学変性されたセルロース系原料を、湿式微粒化処理して解繊することにより、CNFを製造できる。湿式微粒化処理としては、例えば、高速せん断ミキサーや高圧ホモジナイザー等の混合、撹拌、乳化、分散装置を必要に応じて単独もしくは2種類以上組合せて用いることができる。特に、100MPa以上、好ましくは120MPa以上、さらに好ましくは140MPa以上の圧力を印加できる超高圧ホモジナイザーを用いて湿式微粒化処理を行なうとCNFを効率よく製造できる。
CNFを混合したパルプの濾水度(c.s.f)は限定されないが、0〜600mLであることが好ましい。当該パルプを板紙に用いる場合、濾水度(c.s.f)の下限は50mL以上であることが好ましい。当該パルプを紙(板紙以外)に用いる場合、濾水度(c.s.f)の上限は500mL以下であることが好ましい。パルプ濾水度が低すぎると、抄紙時の水切れが悪く、抄速が上がらない、得られる紙の地合いが悪化する等の問題が生じる可能性があるため、パルプ濾水度は100mL以上であることがより好ましい。
本発明のCNF含有紙の坪量は10〜500g/m2であることが好ましく、20〜260g/m2であることがより好ましい。また、紙厚は10〜1000μmであることが好ましい。また、本発明のCNF含有板紙の坪量は90〜1600g/m2であることが好ましく、150〜900g/m2であることがより好ましい。また、多層紙の各層の紙厚の合計は、100〜1700μm程度であることが好ましく、150〜1000μmであることが好ましい。
本発明のCNF含有紙または板紙は、パルプスラリー(紙料)にCNFを混合し、当該試料を用いて抄紙することで製造できる。抄紙には長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網式抄紙機等の公知の抄紙機を用いることができ、その抄紙条件も限定されない。本発明では全パルプ中20重量%以上の古紙パルプを必須として用いるが、これ以外に化学パルプ(針葉樹の晒クラフトパルプ(NBKP)または未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹の晒クラフトパルプ(LBKP)または未晒クラフトパルプ(LUKP)等)、機械パルプ(グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等)を、単独または任意の割合で混合して使用してもよい。本発明の紙または板紙は、古紙パルプとCNFを同一の層に含有させることが好ましく、板紙の場合は、いずれかの紙層が前記古紙パルプとCNFを含有していることが好ましい。抄紙時のpHは、酸性、中性、アルカリ性のいずれでもよい。当該パルプスラリーは抄紙時の歩留りが高い。この理由は限定されないが、前述のとおりCNFによって古紙パルプ中の微細繊維が多く紙中にとどめられるためと推察される。
本発明のCNF含有紙または板紙の用途は限定されず、例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、湿式又は乾式電子写真印刷等の各種印刷用紙、感熱紙、感圧紙等の各種情報用紙、新聞用紙、包装用紙、はがき用紙、ライナーや中芯原紙等の段ボール原紙、板紙原紙、白板紙、家庭紙等に使用できる。
(1)CNFの製造
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%:日本製紙株式会社製)5.00g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社製)39mg(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが5.5mmol/gになるように添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗して酸化パルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。パルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.6mmol/gであった。これを水で0.55%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で3回処理して、酸化セルロースナノファイバーの水分散液を得た。酸化セルロースナノファイバーの平均繊維径は3nm、アスペクト比は250であった。
新聞古紙由来の脱墨古紙パルプ(日本製紙株式会社製)をスリーワン・モーターにて500rpmの速度で撹拌し、パルプ100重量%に対し、1.5重量%(固形分)の硫酸バンド、0.025重量%のポリエチレンイミン、CNF、紙力剤として0.6重量%のポリアクリルアミド、0.2重量%サイズ剤を順次添加し、パルプスラリーを調製した。CNFの添加量は古紙パルプ絶乾重量に対して、1ppmとした。当該CNF含有パルプの濾水度(c.s.f)は210mLであった。当該スラリーを濃度調整した後、手すきシートを作成した。坪量は33.8g/m2であった。当該紙について評価した。結果を表1に示す。
CNFを添加しない以外は実施例1と同様にして紙を製造し、評価した。結果を表1に示す。
新聞古紙由来の脱墨古紙パルプの代わりに、雑誌古紙由来の未脱墨古紙パルプ(日本製紙株式会社製、c.s.f.360mL)を用いた以外は実施例1と同様にして紙を製造し評価した。
CNFを添加しない以外は実施例2と同様にして紙を製造し、評価した。結果を表1に示す。
新聞古紙由来の脱墨古紙パルプの代わりに、LBKP(日本製紙株式会社製、c.s.f.420mL)を用いた以外は実施例1および比較例1と同様にして紙を製造し評価した。
(1)坪量:JIS P 8124に準じて測定した。
(2)紙厚:JIS P 8118に準じて測定した。
(3)密度:JIS P 8118に準じて坪量と紙厚から求めた。
(4)灰分:JIS P 8251:2003に準じて測定した。
(5)PPSラフネス(ソフト1M):ISO8791に準じて測定したPPS表面粗さ。
(6)引張強度:JIS P8113に準じて測定した。
(7)裂断長:JIS P81113:1998に準じて測定した。
(8)引張こわさ:Lorentzen&Wettre社製 引張強度測定機sEO62/064を用いて測定した。
Claims (6)
- 古紙パルプを20重量%以上含有し、
少なくとも1つの紙層が、当該紙層のパルプに対して0を超え3重量ppm未満のセルロースナノファイバーを含有する、紙または板紙。 - 前記セルロースナノファイバーがカルボキシル化セルロースナノファイバーである、請求項1に記載の紙または板紙。
- 前記セルロースナノファイバーが、N−オキシル化合物を用いた酸化により得られたカルボキシル化セルロースナノファイバーである、請求項1または2に記載の紙または板紙。
- 前記古紙パルプが、未脱墨古紙パルプ、脱墨古紙パルプ、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の紙または板紙。
- 前記古紙パルプが雑誌古紙パルプである、請求項1〜4のいずれかに記載の紙または板紙。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の紙または板紙の製造方法であって、
古紙パルプおよびセルロースナノファイバーを含有するパルプスラリーを抄紙する工程を含む、紙または板紙の製造方法。
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