以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。便宜上、実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
図1は、本実施形態に係る画像取得装置の構成を示す図である。図1に示すように、画像取得装置1は、試料Sが保持されるステージ2と、ステージ2上の試料Sと対峙するように配置された対物レンズ3と、試料Sに向けて光を照射する照射光学系5と、対物レンズ3によって導光された光像を撮像する撮像素子6とを備えている。
ステージ2には、対物レンズ3に対峙するように試料Sが載置される。本実施形態では、試料Sは、組織細胞などの生体サンプルであってよい。試料Sは、例えばスライドガラスに密封された状態でステージ2に載置される。対物レンズ3に対するステージ2の相対的な位置は、対物レンズ3の光軸に交差するスキャン方向に移動可能となっている。対物レンズ3の倍率は、例えば、20倍、40倍、100倍等の高倍率であってよい。
照射光学系5は、画像を撮像するためのスキャン用照射光学系(第2の照射光学系)10と、オートフォーカス(AF)を制御するためのAF用照射光学系(第1の照射光学系)20とを有する。スキャン用照射光学系10は、スキャン用の光源11から出射された光(第2の照射光)L1をステージ2に配置された試料Sに照射する。光源11は、照明光として白色光を出力する光源であり、ステージ2の底面側に配置されている。光源11としては、例えばレーザダイオード(LD)、発光ダイオード(LED)、スーパールミネッセントダイオード(SLD)、キセノンフラッシュランプといったフラッシュランプ方式光源などが用いられる。
スキャン用照射光学系10は、コレクタレンズ12、一対のリレーレンズ13,14、及びコンデンサレンズ15を有している。コレクタレンズ12とリレーレンズ13との間には、視野絞り16が配置されている。一対のリレーレンズ13,14の間には、ビームスプリッタ17及びミラー18が配置されている。スキャン用の光源11から出射された光L1は、コレクタレンズ12に入力される。一対のリレーレンズ13,14は、コレクタレンズ12から出力された光L1をコンデンサレンズ15にリレーする。コンデンサレンズ15は、スキャン用の光源11から出射された光L1を試料Sに照射する。スキャン用照射光学系10の開口数(NA)は、変更可能となっている。
AF用照射光学系20は、AF用の光源21から出射された光(第1の照射光)L2をステージ2に配置された試料Sに照射する。AF用の光源21は、ステージ2の底面側に配置されている。光源21としては、例えばレーザダイオード(LD)、発光ダイオード(LED)、スーパールミネッセントダイオード(SLD)、キセノンフラッシュランプといったフラッシュランプ方式光源などが用いられる。照明光は、白色光であってよい。また、照射光は、近赤外光のような赤外光であってもよい。光源11及び光源21は、後述する駆動制御部(制御部)62からの制御信号を受けて照明光を出力する。
AF用照射光学系20は、コレクタレンズ22、一対のリレーレンズ23,14、及びコンデンサレンズ15を有している。コレクタレンズ22とリレーレンズ23との間には、視野絞り26が配置されている。AF用照射光学系20の視野絞り26及びスキャン用照射光学系10の視野絞り16によって、AF用照射光学系20の照射範囲は、スキャン用照射光学系10による照射範囲を含み、より広い範囲を照明できるように設定されている。一対のリレーレンズ23,14の間には、ビームスプリッタ17及びミラー18が配置されている。このビームスプリッタ17及びミラー18と後段のリレーレンズ14及びコンデンサレンズ15とは、スキャン用照射光学系10と共通している。すなわち、AF用の光源21からコレクタレンズ22に入力されて前段のリレーレンズ23から出力された光L2は、ビームスプリッタ17によって反射され、後段のリレーレンズ14に入力される。AF用の光源21から出射された光L2は、最終的にスキャン用照射光学系10と同じ光路を辿り、コンデンサレンズ15から出力される。すなわち、スキャン用照射光学系10とAF用照射光学系20とは、ビームスプリッタ17の後段において同じ光軸を有している。
撮像素子6は、対物レンズ3によって導光された試料Sの光像を撮像する。なお、試料Sの光像とは、明視野照明の場合は透過光による像、暗視野照明の場合は散乱光による像、発光観察(蛍光観察)の場合は発光(蛍光)による像である。撮像素子6は、複数の画素列を有する撮像素子である。撮像素子6としては、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサが挙げられる。
本実施形態では、撮像素子6として、AF用撮像素子(第1の撮像素子)30と、スキャン用撮像素子(第2の撮像素子)40とが用いられる。AF用撮像素子30は、AF用の光源21からの光が試料Sに照射されたときの試料Sの光像を撮像する。スキャン用撮像素子40は、スキャン用の光源11からの光が試料Sに照射されたときの試料Sの光像を撮像する。画像取得装置1では、図示されるように、対物レンズ3と撮像素子6との間にビームスプリッタ7が配置されている。このビームスプリッタ7によって、対物レンズ3を導光された試料Sの光像(すなわち光L1、L2)は、AF用光路(第1の光路)K1とスキャン用光路(第2の光路)K2とに分岐する。ビームスプリッタ7は、例えば、ハーフミラー、ダイクロイックミラー、偏光ビームスプリッタ等によって構成されている。
スキャン用撮像素子40は、スキャン用光路K2において、スキャン用の結像レンズ(第2の結像レンズ)41によって結像された試料Sの光像を撮像し、画像データ(第2の画像データ)を取得する。すなわち、結像レンズ41は、対物レンズ3と光学的に結合しており、ビームスプリッタ7で分割されたスキャン用光路K2の光像をスキャン用撮像素子40に結像する。
AF用光路K1には、ビームスプリッタ7の後段に、リレー光学系31、マスク32、瞳分割素子33、結像レンズ(第1の結像レンズ)35及びAF用撮像素子30が配置されている。図5は、AF用光路の構成を示す図である。リレー光学系31は、ビームスプリッタ7と瞳分割素子33との間に配置されており、対物レンズ3の瞳をリレーする。リレー光学系31は、一対のリレーレンズ31A,31Bによって構成されている。リレー光学系31における一次結像面には、視野絞り36が配置されている。図2は、視野絞り36の形状の一例を示す図である。例えば、視野絞り36は、円形と矩形とを組み合わせた形状であってよい(図2の(a)参照)。換言すると、視野絞り36は、矩形の対向する一対の辺36a,36bが矩形の対角線を直径とする円弧となっている形状であってよい。また、視野絞り36は、図2の(b)に示すように、矩形であってもよい。
マスク32は、リレー光学系31によってリレーされた対物レンズ3の瞳の位置に配置されており、対物レンズ3のNA成分を制限する。図示例では、マスク32は、リレー光学系31によってリレーされた対物レンズ3の瞳の位置に配置されている。図3は、マスク32の形状を示す図である。図3に示されるように、本実施形態では、マスク32は、第1の光像P1を透過させる開口32aと、第2の光像P2を透過させる開口32bとを有している。開口32aと開口32bとは、マスク32の中心32cから等距離の位置に形成されており、互いに同じ径を有している。マスク32の中心32cは、AF用光路K1の光軸に一致している。なお、図3において、ハッチングで描かれている領域は遮光性を有している。なお、マスク32は、対物レンズ3の瞳の位置に直接配置されてもよい。
瞳分割素子33は、AF用の光源21から出射された光L2が試料Sに照射されたときのAF用光路K1における試料Sの光像を第1の光像P1と第2の光像P2とに分割する。本実施形態では、瞳分割素子33はマスク32の後段に配置されており、マスク32の開口32a,32bを透過した第1の光像P1と第2の光像P2とを分割する。図4は、瞳分割素子33の例を示す断面図である。図示のように、瞳分割素子33は、瞳分割プリズム33aと色消しプリズム33bとが組み合わされて構成されている。本実施形態では、図4の(a)、図4の(b)、及び図4の(c)に示されるいずれの瞳分割素子33を用いてもよい。いずれの瞳分割素子33においても、瞳分割プリズム33aは、中央から外側にかけて厚さが徐々に小さくなっている。また、色消しプリズム33bは、中央から外側にかけて厚さが徐々に大きくなっている。色消しプリズム33bは、瞳分割プリズム33aによって発生する色収差を抑制するように、瞳分割プリズム33aの屈折率と異なる屈折率を有する。
結像レンズ35は、第1の光像P1と第2の光像P2とをそれぞれ結像する。結像レンズ35は、結像レンズ41における結像倍率より低い結像倍率を有する。結像レンズ35は、リレー光学系31を介して、対物レンズ3と光学的に結合している。結像レンズ35は、瞳分割素子33によって分離された第1の光像P1及び第2の光像P2をそれぞれAF用撮像素子30の撮像面30aに結像する。撮像面30aは、2次元に配列された複数の画素を有している。AF用撮像素子30は、結像された第1の光像P1及び第2の光像P2に含まれる範囲に対応する撮像面30aの複数の画素をサブアレイ読み出しにより撮像することができる。サブアレイ読み出しとは、撮像素子の撮像面を構成する複数の画素のうちの、設定された複数の画素が構成するサブアレイ領域を読み出す撮像素子の読み出し方法である。なお、AF用撮像素子30のサイズによっては、結像レンズ35は、必ずしも結像レンズ41における結像倍率より低い結像倍率を有する必要はない。
また、画像取得装置1は、試料Sに対する対物レンズ3の焦点位置を変更させる対物レンズ駆動部50と、試料Sを対物レンズ3の光軸に交差する方向(スキャン方向)に所定速度で移動させるステージ駆動部55と、画像取得装置1の動作を統括するコンピュータ60とを備えている。
対物レンズ駆動部50は、例えばステッピングモータ(パルスモータ)といったモータやピエゾアクチュエータなどのアクチュエータによって構成されている。対物レンズ駆動部50は、後述する駆動制御部62による制御に基づき、対物レンズ3を対物レンズ3の光軸に沿ったZ方向に駆動する。これにより、試料Sに対する対物レンズ3の焦点位置が移動する。
ステージ駆動部55は、例えばステッピングモータ(パルスモータ)といったモータやピエゾアクチュエータなどのアクチュエータによって構成されている。ステージ駆動部55は、後述する駆動制御部62による制御に基づき、ステージ2を対物レンズ3の光軸の直交面に対して所定の角度(例えば90度)を有する面についてXY方向に駆動する。これにより、ステージ2に保持された試料Sが対物レンズ3の光軸に対して移動し、試料Sに対する対物レンズ3の視野位置が移動することとなる。また、ステージ駆動部55は、ステージ2の位置を検出し得る。例えば、ステージ駆動部55は、ステージ2に取り付けられたリニアエンコーダによって、ステージ2のXY座標を検出する。ステージ駆動部55は、検出結果を示す位置情報を生成し、コンピュータ60に出力する。
コンピュータ60は、物理的には、RAM、ROM等のメモリ、及びCPU等のプロセッサ(演算回路)、通信インターフェイス、ハードディスク等の格納部、ディスプレイ等の表示部を備えて構成されている。かかるコンピュータ60としては、例えばパーソナルコンピュータ、マイクロコンピュータ、クラウドサーバ、スマートデバイス(スマートフォン、タブレット端末など)などが挙げられる。
コンピュータ60は、画像処理部(解析部)61と駆動制御部62とを有している。画像処理部61は、スキャン用撮像素子40から出力される画像データに基づいて、試料Sのバーチャルスライド画像を作成する。また、画像処理部61は、AF用撮像素子30から出力されるサブアレイデータに基づいて、試料S上の焦点制御領域39における合焦点位置(焦点情報の一例)を算出する。駆動制御部62は、解析結果に基づいて対物レンズ3の焦点位置が合焦点位置になるように対物レンズ駆動部50を制御する。
本実施形態では、いわゆる位相差方式のフォーカシングによって合焦点位置の算出が行われる。位相差方式のフォーカシングでは、瞳分割プリズム33aによって分離された第1の光像P1のサブアレイデータと第2の光像P2のサブアレイデータとの結像位置の距離PLに基づいて、合焦点位置を算出する。結像位置の距離PLは、例えば、SAD(Sum of Absolute Difference)法、SSD(Sum of Squared Difference)法、NCC(正規化相互相関:Normalized Cross Correlation)法、ZNCC(正規化相互相関:Zero−mean Normalized Cross Correlation)法、POC(位相限定相関:Phase Only Correlation)法等を利用して算出され得る。
例えば、SAD法では、第1の光像P1と第2の光像P2との同じ位置の画素における輝度値の差の絶対値の合計を用い、この値が小さい位置を求めることによって、距離PLを導出し得る。SSD法では、同じ位置の画素における輝度値の差の2乗の合計を用い、この値が小さい位置を求めることによって、距離PLを導出し得る。NCC法及びZNCC法では、正規化相互相関を画像の類似度として、類似度する位置を求めることによって、距離PLを導出し得る。POC法では、位相限定相関データの重心位置を求めることによって、距離PLを導出し得る。
また、結像位置の距離PLは、ピクセル位置を計算することによって算出されてもよい。駆動制御部62では、結像位置の距離PLと合焦点位置との関係を示すテーブル、又は、結像位置の距離PLから合焦点位置を導出する導出式によって、合焦点位置が導出され得る。
また、駆動制御部62は、ステージ駆動部55の動作を制御することによって、ステージ2の移動を制御する。さらに、駆動制御部62は、スキャン用の光源11及びAF用の光源21に制御信号を出力し、スキャン用の光源11及びAF用の光源21による光の出射を制御する。コンピュータ60は、画像処理部61及び駆動制御部62によって、光源11,21、ステージ駆動部55、及び撮像素子6によるレーンスキャンの実行を制御する。以下、レーンスキャンについて説明する。
上述のとおり、20倍、40倍、100倍等といった高倍率を有する対物レンズ3の視野は、試料Sの大きさに対して小さい範囲となっている。そのため、一回の撮像で画像を取得できる領域も試料Sに対して小さくなる。したがって、試料Sの全体を撮像するためには、対物レンズ3の視野を試料Sに対して移動させる必要がある。そこで、画像取得装置1では、試料Sを保持するスライドガラスに対して試料Sを含むように画像取得領域が設定され、画像取得領域に対するレーンスキャンが実行される。
図6は、画像取得装置によるレーンスキャンを説明するための図である。本実施形態では、予め設定された画像取得領域71に対してスキャン用撮像素子40の撮像視野領域の大きさを割り当てることで、画像取得領域71に複数の撮像位置がマトリクス状に設定される。図6に示す例では、画像取得領域71には、X方向に第1〜第nまでの複数のレーンが設定され、各レーンには、Y方向(スキャン方向)に第1〜第mまでの複数の撮像位置73が設定されている。
レーンスキャンでは、ステージ2をXY方向に移動させながら、瞬間光によって試料Sの一部をストロボ撮影する。画像取得装置1は、撮像位置73に対応する試料Sの一部をスキャン用撮像素子40によって撮像することで、撮像位置73に対応するタイル画像Tをそれぞれ取得する。撮像視野が次に撮像する撮像位置73に移動した後、再び撮像を行って次のタイル画像Tを取得する。以降、画像取得装置1では、レーン毎に撮像位置73を順次撮像する動作が繰り返し実行され、複数のタイル画像列Rからなる画像データの取得が行われる。取得された画像データが画像処理部61によって合成され、試料S全体を示す画像が形成される。
ステージ駆動部55による対物レンズ3の視野位置の移動方式には、例えば図6に示すように、隣り合うレーン間でスキャン方向が反転する双方向スキャン(Bi−directional scanning)が採用される。対物レンズ3の視野位置の移動方式には、双方向スキャンに限られず、各レーンでスキャン方向が同方向となる一方向スキャン(Uni−directional scanning)を採用してもよい。図6では、画像取得領域71に対する対物レンズ3の相対的な移動方向が二点鎖線の矢印によって示されている。
図7は、撮像視野領域とAF用照射光の照射範囲との関係を説明する図である。図7では、試料S上における撮像視野領域(第2の撮像領域)40Aと焦点制御領域(第1の撮像領域)39との範囲の関係が模式的に示されている。なお、撮像視野領域40Aは、スキャン用撮像素子40によって撮像される領域であって、タイル画像Tを構成する領域である。焦点制御領域39は、合焦点位置の算出がなされる領域である。
図7に示すように、AF用照射光学系20による照射光の照射範囲21Aは、スキャン用撮像素子40の撮像視野領域40Aを含んでいる。また、本実施形態では、上述のとおり双方向スキャンが採用されているため、撮像視野領域40Aの一方側及び他方側に隣接してそれぞれ焦点制御領域39が設定され得る(図7参照)。図7の例では、第1スキャン方向にステージ2が移動される場合の焦点制御領域39Aと、第2スキャン方向にステージ2が移動される場合の焦点制御領域39Bとが示されている。このように、撮像視野領域40Aは、スキャン方向において焦点制御領域39よりも後方である。
図8は、AF用撮像素子のサブアレイ領域と第1の光像及び第2の光像の関係を説明する図である。図8では、第1の光像P1及び第2の光像P2は、AF用撮像素子30の撮像面30aに結像されている。これら第1の光像P1及び第2の光像P2には、試料Sの焦点制御領域39の光像である部分領域39a及び部分領域39bがそれぞれ含まれている。AF用撮像素子30では、これらの部分領域39a及び部分領域39bが含まれるようにサブアレイ領域38が設定されている。そのため、AF用撮像素子30は、焦点制御に必要な画像データを高速に取得することができる。なお、AF用撮像素子30の撮像面30aでは、瞳分割素子33によって分割された第1の光像P1と第2の光像P2とが互いに離間している。また、第1の光像P1と第2の光像P2とは、視野絞りの形状と同じ形状をなしている。
続いて、画像取得装置1の動作について説明する。図9は、画像取得装置1の動作を示すフローチャートである。図9のフローチャートでは、画像取得方法の一例として、焦点制御から画像取得までの基本的な流れが示されている。本実施形態では、事前に、対物レンズ3に対峙するように試料Sがステージ2に載置される(準備ステップ)。続いて、ステージ駆動部55の駆動によって、対物レンズ3に対してステージ2の位置がスキャン方向に沿って移動する(ステップS1:移動ステップ)。本実施形態では、ステージ2がスキャン方向に一定の速度で移動することによって、対物レンズ3がステージ2に対してスキャン方向と反対側に相対的に移動する。
続いて、対物レンズ3に対峙した試料SにAF用の光源21からの照射光が照射される(ステップS2:第1の照射ステップ)。試料Sに照射された照射光は、対物レンズ3によって導光される。試料Sの光像は、瞳分割によって第1の光像P1と第2の光像P2とに分割されて(瞳分割ステップ)、AF用撮像素子30によって撮像される。本実施形態では、AF用撮像素子30では、第1の光像P1と第2の光像P2との一部の領域である部分領域39a、39bが含まれるようにサブアレイ領域38が設定されている。そのため、AF用撮像素子30は、サブアレイ領域38をサブアレイ読み出しすることにより、試料Sにおける焦点制御領域39を撮像することができる。撮像されたデータは第1の画像データとして取得される(ステップS3:第1の画像取得ステップ)。取得された第1の画像データは、画像処理部61によって解析され、焦点制御領域における合焦点位置が算出される(ステップS4:解析ステップ)。この算出結果に基づいて対物レンズ駆動部50が駆動されることで、試料Sに対する対物レンズ3の焦点位置が制御される(ステップS5:焦点制御ステップ)。
続いて、対物レンズ3の焦点位置が制御された状態において、スキャン用の光源11からの照射光が照射され(ステップS6)、スキャン用撮像素子40によって撮像視野領域における試料Sの光像が撮像される。すなわち、スキャン用撮像素子40による撮像視野領域の撮像前に対物レンズ3の焦点位置が制御されている。これにより、タイル画像Tである第2の画像データが取得される(ステップS7:第2の画像取得ステップ)。ステップS1におけるステージ2の移動は継続的に行われており、ステップS3からステップS6までの間に、ステップS3で撮像された焦点制御領域はステップS6における焦点制御領域まで移動している。すなわち、第2の画像取得ステップでは、スキャン動作によって撮像視野領域を焦点制御領域まで移動させた状態で第2の画像データが撮像される。
続いて、駆動制御部62によって、当該レーンにおいて次のタイル画像Tがあるか否かが判定される(ステップS8)。次のタイル画像Tがあると判定された場合、再びステップS2に戻る。一方、次のタイル画像Tがないと判定された場合には、当該レーンにおける画像の取得が終了する。なお、次のレーンがある場合には、ステージ2がX方向に移動されることによって、ステージ2に対する対物レンズ3の位置が次のレーンの位置に移動する。そして、スキャン方向が逆向きに設定された状態で、ステップS1から処理が再開される。
図10は、画像取得装置1の動作を説明するためのタイミングチャートである。図10は、一つのレーンの画像を取得する際のタイミングチャートである。画像取得装置1による撮像動作が実行されている場合、図10に示すように、ステージ2は、Y軸方向をスキャン方向として、一定の速度で移動する。駆動制御部62によってステージ2のY座標の位置がタイル画像Tの撮像位置まで移動したことが検出されると、駆動制御部62は、スキャン用撮像素子40の露光開始を指示するトリガ信号をスキャン用撮像素子40に出力する。これと同時に、駆動制御部62は、スキャン用の光源11による瞬間光の照射を指示するトリガ信号を光源に出力する。
さらに、露光開始トリガ信号によるスキャン用撮像素子40の露光終了のタイミングで、駆動制御部62は、AF用撮像素子30の露光開始を指示するトリガ信号をAF用撮像素子30に出力する。これと同時に、駆動制御部62は、AF用の光源21による瞬間光の照射を指示するトリガ信号をAF用の光源21に指示する。AF用撮像素子30によって撮像される焦点制御領域は、スキャン用撮像素子40によって次に撮像される予定の領域である。駆動制御部62は、AF用撮像素子30から出力されたデータを基にオートフォーカス演算(AF演算)を行い、AF演算の結果に基づいて対物レンズ3をZ軸方向に沿って移動させる。Z軸方向における対物レンズ3の移動は、次のタイル画像Tを取得する位置にステージ2が移動するまでに終了する。そのため、次のタイル画像Tを取得する時点では、合焦点状態になっている。そして、駆動制御部62によってステージ2のY座標の位置が次のタイル画像Tの撮像位置まで移動したことが検出されると、上述の通り、トリガ信号が出力される。この制御はレーンスキャンが終了するまで繰り返し行われる。第nレーンスキャンが終了すると、第n+1レーンスキャンを開始するために、ステージ2は、X方向に沿って移動する。なお、本実施形態では、各レーンにおいてタイル画像一つ分だけ撮像領域よりも外側から撮像処理が開始される。そのため、図10のタイミングチャートにおける最初に取得されるタイル画像は撮像領域の外側となっている。
以上説明したように、画像取得装置1では、対物レンズ3によって導光された試料Sの光像が、ビームスプリッタによって、AF用光路K1とスキャン用光路K2とに分岐されている。AF用光路K1では、光L2が試料Sに照射されたときの光像がAF用撮像素子30によって撮像される。この光像は、瞳分割素子33によって第1の光像P1と第2の光像P2とに分割されている。AF用撮像素子30では、結像レンズ35によって結像された第1の光像P1の部分領域39aと第2の光像P2の部分領域39bとをサブアレイ読み出しして、第1の画像データを取得している。画像処理部61では、第1の画像データを解析することによって、試料Sの焦点制御領域における合焦点位置を算出する。そのため、対物レンズ駆動部50によって、スキャン用撮像素子40による撮像視野領域40Aの撮像前に、解析結果に基づく対物レンズ3の焦点位置の制御が可能となる。
一方、スキャン用光路K2では、光L1が試料Sに照射されたときの光像がスキャン用撮像素子40によって撮像される。ここで、スキャン用撮像素子40の撮像視野領域は、スキャン方向において焦点制御領域よりも後方であるため、焦点制御領域であった領域は、ステージ2の移動に伴って撮像視野領域まで移動し得る。撮像視野領域が焦点制御領域まで移動しているときに、対物レンズ3の焦点位置が制御されていることによって、適切な焦点位置で第2の画像データが取得される。上述の通り、画像取得装置1では、サブアレイ読み出しによって焦点制御領域の画像を取得している。光L2の照射範囲が撮像視野領域を含むように広く設定されていることによって、光L2の照射範囲に撮像視野領域が含まれた状態で焦点制御領域の画像データを取得することができる。したがって、例えばスキャン用照射光学系10とAF用照射光学系20との光軸を一致させることができ、光学調整を容易に行うことができる。
また、瞳分割素子33は、瞳分割プリズム33aと、瞳分割プリズム33aの屈折率とは異なる屈折率を有する色消しプリズム33bと、を含んでいてよい。この構成では、瞳分割プリズム33aで発生する色収差を色消しプリズム33bによって補正することができる。
また、結像レンズ35は、結像レンズ41の倍率よりも小さい倍率を有してもよい。この構成では、結像レンズ35によって結像された光像の範囲を結像レンズ41によって結像された光像の範囲よりも大きくし易い。
また、対物レンズ3の瞳の位置に第1の光像P1及び第2の光像P2をそれぞれ通過させるマスク32を更に有する。この構成では、対物レンズ3の瞳の位置に直接、もしくはリレー光学系31でリレーされた対物レンズ3の瞳の位置にマスク32を配置できるので、対物レンズ3の開口数(NA)を制限することができる。
また、リレー光学系31における一次結像面に視野絞り36が配置されているので、結像レンズ35によって結像された第1の光像P1と第2の光像P2とが互いに干渉することが抑制される。
また、光L1及び光L2は、互いに異なるタイミングで照射される瞬間光なので、光L2が照射されるタイミングでは、光L1の照射は停止されている。これにより、光L2が照射された際の光像に対する光L1の影響を排除できる。
[第2実施形態]
本実施形態に係る画像取得装置1は、暗視野用マスクを更に備えている点で第1実施形態の画像取得装置1と相違している。以下、主として第1実施形態と相違する点について説明し、同一の要素や部材については同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
図11に示すように、画像取得装置101は、第1実施形態における画像取得装置1の構成に加えて、更に暗視野用マスクを有している。暗視野用マスクは、対物レンズ3の瞳と共役な位置に配置されている。本実施形態では、AF用の光源21とコレクタレンズ22との間に暗視野用マスク106が配置されている。図12は、暗視野用マスクの形状を示す図である。暗視野用マスク106の形状は、マスク32と相補的な関係を有している。すなわち、暗視野用マスク106は、マスク32における第1の光像P1を透過させる開口32a、及び、第2の光像P2を透過させる開口32bの位置に対応する位置のみに遮光部106a,106bが設けられている。暗視野用マスク106における遮光部106a,106b以外の部分は、光を透過する。
暗視野照明を実現するためには、対物レンズ3のNAより高いNAで照射光を試料Sに照射する必要がある。高いNAで試料Sを照明しようとすると、一般に、照射用のレンズ等の構造が大きくなってしまう。暗視野用マスク106を使用することによって、対物レンズ3よりも高いNAで照明する必要がなくなり、照射用のレンズを大きくする必要がない。よって、試料Sが蛍光試料であっても、観察を好適に行うことができる。
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態では、撮像視野領域と焦点制御領域とが隣接する例を示したがこれに限定されない。焦点制御領域は、次回以降に撮像が予定されるタイル画像に相当する領域であればよい。