JP2019099752A - 多糖誘導体 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、特許文献1には、洗濯用仕上げ剤として有用な剤として、多糖類又はその誘導体のヒドロキシル基の水素原子の一部又は全てが、次の基(A)、(B)及び(C)で置換されている多糖誘導体が記載されている。
(A)ヒドロキシル基が置換していてもよく、またオキシカルボニル基(−COO−又は−OCO−)又はエーテル結合が挿入されていてもよい炭素数10〜43の直鎖又は分岐のアルキル基、アルケニル基又はアシル基
(B)カルボキシメチル基又はその塩
(C)特定のカチオン基
(A)アニオン界面活性剤
(B)アンヒドログルコース由来の主鎖を有し、該アンヒドログルコース単位あたりのカチオン化オキシアルキレン基の置換度が0.01以上1.0以下であり、グリセロール基の置換度が0.5以上5.0以下であり、また、炭素数3以上18以下の炭化水素基を含有する基の置換度が0以上0.2以下であるカチオン性基含有セルロースエーテル
(C)炭素数4以上12以下のアルキル基又はアルケニル基を有するモノアルキルグリセリルエーテル又はモノアルケニルグリセリルエーテル
しかしながら、従来の剤では、充分な性能を発揮することができていない。
本発明は、洗浄時の皮脂汚れの洗浄性を向上することができると共に、洗浄時の泥汚れによる再汚染を抑制することができる、多糖誘導体に関する。
すなわち、本発明は以下の<1>に関する。
<1> ヒドロキシアルキル化多糖にカチオン性基が結合した多糖誘導体であって、前記ヒドロキシアルキル化多糖は、重量平均分子量が1万以上79万以下であり、前記カチオン性基の置換度(MSC)が0.001以上1以下であり、下記HPLC条件にて測定されるピーク半値幅が8分以下である、多糖誘導体。
[HPLC条件]
カラム:TSKgel CM−5PW
カラム温度:40℃
検出器:荷電化粒子検出器
移動相:A液/B液=95/5(v/v):0〜3分
A液/B液=30/70(v/v):3〜20分(グラデーション)
A液:B液=30:70(v/v):20〜25分
A液/B液=95/5(v/v):25〜30分(グラデーション)
A液:水/イソプロピルアルコール=80/20(v/v)
B液:水/イソプロピルアルコール/トリフルオロ酢酸=79.95/19.95/0.1(v/v/v)
流速:1.0mL/分
サンプル量:100μL(サンプル濃度=1mg/mL)
以下の説明において、「洗浄性能」とは、着衣時などの使用時に皮脂汚れの強固な付着を抑制し、洗浄時の皮脂汚れを除去する性能を向上させる性能を意味し、また、「再汚染防止性能」とは、洗浄時の泥汚れによる再汚染を抑制する性能を意味する。
本発明の多糖誘導体はヒドロキシアルキル化多糖にカチオン性基が結合した多糖誘導体であって、前記ヒドロキシアルキル化多糖は、重量平均分子量が1万以上79万以下であり、前記カチオン性基の置換度(MSC)が0.001以上1以下であり、上記HPLC条件にて測定されるピーク半値幅が8分以下である。
本発明者らは、本発明の多糖誘導体を含む洗浄剤組成物などを、衣類等の布帛に処理することにより、皮脂汚れの付着が抑制されると共に、洗浄時の泥汚れによる再汚染が抑制されることを見出した。その詳細な作用機構は不明であるが、一部は以下のように推定される。
本発明の多糖誘導体はカチオン性基を有することで、疎水性繊維が有するアニオン性基との静電的相互作用や衣類等をアニオン性界面活性剤の存在下に処理する場合には、布帛表面に吸着したアニオン性界面活性剤との静電的相互作用等により多糖誘導体が布帛表面に吸着する。本発明の多糖誘導体は炭素数が2以上の炭化水素基(R)を有する場合には、特に布帛が疎水性である場合に疎水性の相互作用によって布帛表面への付着性が向上する。
布帛表面に本発明の多糖誘導体が吸着することで、疎水性繊維で形成された布帛表面を親水化すると共に、撥油性が向上すると考えられる。これにより、皮脂汚れの強固な付着が抑制されると推定される。
また、本発明の多糖誘導体の重量平均分子量が特定量以下であることで、泥汚れに対する再汚染も抑制されるが、これは、本発明の多糖誘導体が繊維表面により均一に吸着するため、多糖誘導体が有するカチオン性基が局在化せず、該カチオン性基が、繊維が有するアニオン性基と静電的作用を生じやすく、静電的作用に関与しない、フリーのカチオン性基が減少し、負の電荷を帯びた泥との相互作用が低減するためではないかと推定される。
HPLCの半値幅が大きいことは、多糖誘導体中のカチオン性基の置換度の分布が広いこと相関すると考えられ、多糖誘導体中のカチオン性基の置換度の分布を狭くすることで、洗浄性能にも優れる多糖誘導体が得られることを見出した。ここでのカチオン性基の置換度の分布が狭いということは、多糖誘導体間のカチオン性基の置換度の数の分布が狭いということであり、カチオン性基数の分布をより均一化させることで、多糖誘導体の布帛表面への吸着量が向上すると考えられる。本発明の多糖誘導体は、疎水性繊維で形成された布帛に特に有効であるが、これに限定されるものではない。また、アニオン性界面活性剤の存在下で布帛を処理することが好ましいが、これに限定されるものではなく、アニオン性界面活性剤の非存在下であっても、布帛に対して吸着性を示すことが確認されている。
また、本発明の多糖誘導体は、カチオン性基及び炭化水素基(R)を有することが好ましいが、これに限定されず、少なくともカチオン性基を有していればよい。
本発明の多糖誘導体は、重量平均分子量が1万以上79万以下であるヒドロキシアルキル化多糖に、カチオン性基が結合している。
本発明に用いられるヒドロキシアルキル化多糖としては、セルロース、グアーガム、スターチ等の多糖、又はこれらにメチル基が置換基が導入された多糖に、更に、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等のヒドロキシアルキル基を有するものが挙げられる。
ヒドロキシアルキル化多糖の例としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルグアーガム、ヒドロキシエチルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルグアーガム、ヒドロキシエチルメチルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルグアーガム、ヒドロキシプロピルメチルスターチ等が挙げられる。
多糖は、好ましくはセルロース又はグアーガム、より好ましくはセルロースである。
また、ヒドロキシアルキル化多糖は、好ましくはヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、より好ましくはヒドロキシエチルセルロースである。
本発明において、ヒドロキシアルキル化多糖は、多糖にヒドロキシアルキル基が導入されている。該ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基が好ましい。ヒドロキシアルキル化多糖は、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基から選ばれる少なくとも1つを有することが好ましく、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基のみを有することがより好ましく、ヒドロキシエチル基のみを有することが更に好ましい。すなわち、ヒドロキシアルキル化多糖は、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基の双方を有していてもよいが、いずれか一方のみを有することが好ましく、ヒドロキシエチル基のみを有することがより好ましい。
ヒドロキシアルキル基の置換度は、水への溶解性の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1以上、より更に好ましくは1.5以上である。また、洗浄性能の観点から、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは5以下、より更に好ましくは3以下である。
ここで、ヒドロキシアルキル基の置換度とは、例えば、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基のみを有する場合には、いずれかの基の置換度である。一方、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基の双方を有する場合には、ヒドロキシエチル基の置換度と、ヒドロキシプロピル基の置換度の合計である。
また、本発明において、X基の置換度とは、X基のモル平均置換度(MS)であり、多糖誘導体又は多糖の主鎖を構成する構成単糖単位1モルあたりのX基の平均置換モル数を意味する。例えば、ヒドロキシアルキル化多糖がヒドロキシエチルセルロースの場合には、「ヒドロキシエチル基の置換度」は、アンヒドログルコース単位1モルに対して導入された(結合している)ヒドロキシエチル基の平均モル数を意味する。
グリセロール基を有するヒドロキシアルキル化多糖は、多糖にグリセロール化剤を作用させることによって得られ、該グリセロール化剤としては、グリシドール;3−クロロ−1,2−プロパンジオール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール等の3−ハロ−1,2−プロパンジオール;グリセリン;グリセリンカーボネートが挙げられる。これらの中では、塩が副生しないこと、及び反応性の観点から、グリシドールが好ましい。
本発明において、ヒドロキシアルキル化多糖の重量平均分子量は、洗浄性能を向上させる観点から、1万以上、好ましくは3万以上、より好ましくは5万以上、更に好ましくは7万以上、より更に好ましくは10万以上、より更に好ましくは13万以上である。
また、再汚染防止性能の観点から、79万以下、好ましくは60万以下、より好ましくは50万以下、更に好ましくは40万以下、より更に好ましくは30万以下、より更に好ましくは20万以下である。
ヒドロキシアルキル化多糖の重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定される。また、ヒドロキシアルキル化多糖として、製品を入手して使用する場合には、製造社の公表値を使用してもよい。
本発明の多糖誘導体は、上述したヒドロキシアルキル化多糖にカチオン性基が結合している。
カチオン性基の置換度(MSC)は、洗浄性能を向上させる観点から、0.001以上、好ましくは0.005以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.05以上、より更に好ましくは0.07以上である。
また、カチオン性基の置換度(MSC)は、再汚染防止性能の観点から、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.4以下、より更に好ましくは0.35以下、より更に好ましくは0.3以下、より更に好ましくは0.25以下、より更に好ましくは0.2以下、より更に好ましくは0.15以下である。
カチオン性基の置換度は、実施例に記載の方法により測定される。
(式(2−1)及び式(2−2)中、R21〜R23はそれぞれ独立に、炭素数1以上24以下の炭化水素基を示し、X−はアニオンを示し、tは0以上3以下の整数を示し、*はヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。)
好ましい一態様としては、R21〜R23はそれぞれ独立に、炭素数1以上3以下の直鎖又は分岐の炭化水素基を示す。炭素数1以上3以下の直鎖又は分岐の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が例示される。これらの中でも、メチル基又はエチル基が好ましく、R21〜R23の全てがメチル基又はエチル基であることがより好ましく、R21〜R23の全てがメチル基であることが更に好ましい。
また、他の好ましい一態様としては、R21〜R23のうち、少なくとも1つが炭素数4以上24以下の炭化水素基を示す。R21〜R23のうち、1つが炭素数4以上24以下の炭化水素基を示し、残りの2つが炭素数1以上3以下の炭化水素基を示すことが好ましい。炭素数4以上24以下の炭化水素基は、洗浄性能の観点から、炭素数が好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは15以下、より更に好ましくは14以下である。
これらの中でも、R21〜R23が炭素数1以上3以下の直鎖又は分岐の炭化水素基を示すことが好ましく、R21〜R23が炭素数1以上3以下の直鎖又は分岐の炭化水素基を示し、かつ、多糖誘導体が更に後述する炭素数2以上の炭化水素基(R)を有することがより好ましい。
X−はアニオンを示し、第4級アンモニウムカチオンの対イオンである。具体的には、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、炭素数1以上3以下のカルボン酸イオン(ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン)、及びハロゲン化物イオンが例示される。
これらの中でも、製造の容易性及び原料入手容易性の観点から、X−は、好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、及びハロゲン化物イオンから選択される1種以上、より好ましくはハロゲン化物イオンである。ハロゲン化物イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンが挙げられるが、得られる多糖誘導体の水溶性及び化学的安定性の観点から、好ましくは塩化物イオン及び臭化物イオンから選択される1種以上、より好ましくは塩化物イオンである。
X−は1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
以下、HPLC条件について説明する。
使用するカラムは、TSKgel CM−5PW(東ソー株式会社製)である。
また、カラム温度は40℃である。カラム温度は、一定とすることが好ましく、好ましくは40±5℃、より好ましくは40±3℃、更に好ましくは40±1℃である。
検出器としては、荷電化粒子検出器(CAD(Charged Aerosol Detector)、製品名:Dionex corona CAD、Thermo scientific社製)を使用する。
移動相は、0分〜3分をA液/B液=95/5(v/v)で送液し、続く3分〜20分で、A液/B液=95/5(v/v)から、A液/B液=30/70(v/v)にグラデーション(一定速度)で変化させながら送液する。次に、20分〜25分は、A液/B液=30/70(v/v)で送液し、25分〜30分は、A液/B液=30/70(v/v)から、A液/B液=95/5(v/v)にグラデーション(一定速度)で変化させながらで送液する。
A液は、水/イソプロピルアルコール(IPA)=80/20(v/v)である。また、B液は、水/イソプロピルアルコール(IPA)/トリフルオロ酢酸(TFA)=79.95/19.95/0.1(v/v/v)である。
また、移動相の流速は1.0mL/分とし、サンプル量は、100μLとする。
サンプル濃度は、1mg/mLとした。
カチオン性基の分布を狭くする、すなわち、半値幅が小さい多糖誘導体を得るには、例えば、ヒドロキシアルキル化多糖とカチオン性基の導入剤(カチオン化剤)とを反応させる際に、溶媒量を多く使用する、撹拌力を高める、適切な溶媒を選択するなどの方法で達成することができる。
溶媒は、溶媒中にヒドロキシアルキル化多糖が均一に分散したスラリーを調製すると共に、スラリー粘度を低減し、ヒドロキシアルキル化多糖とカチオン化剤とが均一に反応することで、半値幅が小さい多糖誘導体を得る観点から、非水溶剤と水とを併用することが好ましい。非水溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール等の2級又は3級の炭素数3以上4以下の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の炭素数3以上6以下のケトン;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤等が挙げられる。これらの中でも、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、及びイソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール等の2級又は3級の炭素数3以上4以下の低級アルコールが好ましく、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコールがより好ましい。
非水溶剤と水と併用する際に、非水溶剤に対する水の質量比(水/非水溶剤)は、ヒドロキシアルキル化多糖とカチオン化剤との反応性の観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上であり、ヒドロキシアルキル化多糖の分散性の観点から、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下である。
また、溶媒中、ヒドロキシアルキル化多糖の固形分濃度は、生産性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、ヒドロキシアルキル化多糖とカチオン化剤とが均一に反応することで、半値幅が小さい多糖誘導体を得る観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
更に、溶媒中、ヒドロキシアルキル化多糖とカチオン化剤と反応時には、ヒドロキシアルキル化多糖とカチオン化剤とを均一に反応させ、半値幅が小さい多糖誘導体を得る観点から、撹拌することが好ましい。
本発明の多糖誘導体は、炭素数2以上の炭化水素基(R)を有することが好ましい。
本発明の多糖誘導体における炭化水素基(R)の置換度(MSR)は、洗浄性能を向上させる観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.003以上、更に好ましくは0.005以上、より更に好ましくは0.008以上、より更に好ましくは0.01以上、より更に好ましくは0.015以上である。また、本発明の多糖誘導体における炭化水素基(R)の置換度(MS)は、水への溶解性の観点から、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.08以下、更に好ましくは0.06以下、より更に好ましくは0.05以下、より更に好ましくは0.04以下、より更に好ましくは0.03以下である。
炭化水素基(R)の炭素数は、洗浄性能を向上させる観点から、2以上、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは8以上、より更に好ましくは10以上である。また、洗浄性能を向上させる観点から、好ましくは22以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは15以下、より更に好ましくは14以下である。
本発明の多糖誘導体は、直接又は酸素原子を有する二価の炭化水素基を介してヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基と結合している炭化水素基(R)を有することが好ましい。本発明の多糖誘導体は、式(2−1)及び式(2−2)から選択される少なくとも1つの基と、直接又は酸素原子を有する二価の炭化水素基を介してヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基と結合している炭素数2以上の炭化水素基(R)との両方を有することがより好ましい。
(式(1)中、Zは単結合又は連結基を示し、Rは炭素数2以上の炭化水素基を示し、*はヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示し、mは1以上の整数を示す。)
式(1)中、Zは単結合又は連結基を示す。前記連結基は、官能基を有するアルキレン基であることが好ましく、官能基としてはエステル基、エーテル基、アミド基、アミノ基、アンモニウム基、カルボニル基、ウレア基、水酸基等が挙げられ、該アルキレン基の一部のメチレン基がエーテル結合、アミド結合、カルボニル炭素(−C(=O)−)、アミノ基又はアンモニウム基等のカチオン性基で置換されていてもよく、また、アルキレン基の一部の水素原子が、水酸基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カチオン性基で置換されていてもよい。アンモニウム基で置換された場合として、前述の式(2−1)及び式(2−2)に記載した第4級アンモニウムカチオンが挙げられ、その場合、Z中のRと結合する原子が窒素原子、mは3、R21、R22及びR23の内、少なくとも1つが炭素数2以上の炭化水素基である。
Zは、好ましくは単結合又は酸素原子を有する二価の炭化水素基を表す。酸素原子を有する二価の炭化水素基は、好ましくはエステル基及び/又はエーテル基を含み、より好ましくはエーテル基を含む。
Zが酸素原子を有する二価の炭化水素基(以下、炭化水素基(Z)ともいう。)である場合、炭化水素基(Z)は、エポキシ基由来の基又は、オキシグリシジル基由来の基を有することが好ましく、洗浄性能の観点から、オキシグリシジル基由来の基を有することがより好ましい。Zが酸素原子を有する二価の炭化水素基である場合、炭化水素基の炭素数は、好ましくは1以上6以下であり、より好ましくは1以上3以下である。
式(1)中、Rの炭素数は、洗浄性能を向上させる観点から、2以上、好ましくは4以上、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上である。また、洗浄性能を向上させる観点から、好ましくは22以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは15以下、より更に好ましくは14以下である。
Rは、炭化水素基の炭素数が最大となるように定義される。従って、式(1)中のRと結合するZは、例えば酸素原子、窒素原子、カーボネート炭素、水酸基が結合している炭素原子、ヒドロキシアルキル基が結合している炭素原子である。
式(1)で表される基は、下記式(1−1−1)〜(1−4)のいずれかで表される基であることがより好ましい。
(式(1−1−1)〜式(1−4)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、炭素数2〜4のアルキレン基を示し、Rは炭素数2以上の炭化水素基を示し、*はヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示し、n1は−R11O−の平均付加モル数を示し、n2は−R12−O−の平均付加モル数を示し、n1及びn2は0以上30以下である。)
式(1−1−1)〜式(1−4)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、炭素数2〜4のアルキレン基を示し、好ましくは炭素数2又は3、すなわち、エチレン基又はプロピレン基である。R11及びR12が複数存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。n1及びn2は0以上30以下であり、好ましくは0以上20以下、より好ましくは0以上10以下、更に好ましくは0以上5以下であり、0であってもよい。
また、式(1−2−1)及び式(1−2−2)は、式(1)中のZがエポキシ基に由来する基である。式(1−2−1)及び式(1−2−2)で表される基は、疎水化剤として、末端エポキシ化炭化水素、好ましくは末端エポキシ化アルキルを使用することで得られる。
更に、式(1−3)は、炭化水素基(R)が直接にヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基と結合している場合である。式(1−3)で表される基は、疎水化剤として、ハロゲン化炭化水素を使用することで得られる。
式(1−4)は、Zがカルボキシ基等に由来する基を含有する。式(1−4)で表される基は、疎水化剤として、R−(O−R12)n2−C(=O)−OH、R−(O−R12)n2−C(=O)−A(Aはハロゲン原子を示す。)、R−(O−R12)n2−C(=O)−O−C(=O)−(R12−O)n2−R等を使用することで得られる。
これらの中でも、多糖誘導体の合成時に塩の副生がなく、また、洗浄性能の観点から、式(1−1−1)、式(1−1−2)、式(1−2−1)又は式(1−2−2)で表される基であることが好ましく、より好ましくは式(1−1−1)又は式(1−1−2)で表される基である。
また、多糖誘導体におけるアニオン性基の置換度(MSA)は、洗浄性能の観点から、好ましくは0.01未満、より好ましくは0.001以下である。
多糖誘導体がアニオン性基を有する場合、該アニオン性基としては、硫酸エステル基、スルホン酸基、カルボキシメチル基等が例示される。
モノハロゲン化酢酸及びモノハロゲン化酢酸金属塩としては、具体的には、モノクロル酢酸、モノクロロ酢酸ナトリウム、モノクロロ酢酸カリウム、モノブロモ酢酸ナトリウム、モノブロモ酢酸カリウム等が例示される。これらモノハロゲン化酢酸及びその金属塩は単独あるいは2種以上を組み合せても使用することができる。
本発明の多糖誘導体は、衣類等の布帛に処理することにより、布帛に対する皮脂汚れ等の油性の汚れの強固な付着を抑制し、洗浄時の皮脂汚れの洗浄性を向上することができると共に、洗浄時に泥汚れが布帛に再付着する再汚染を抑制することができる。
本発明の多糖誘導体は、衣類用洗浄剤組成物に添加することが好ましい。着衣前に、予め衣類を処理することで、着衣時などの使用時に皮脂汚れの強固な付着を抑制し、洗浄時の皮脂汚れの洗浄性を向上することが期待できる。衣類用洗浄剤組成物が、本発明の多糖誘導体を、その構成成分として含有していてもよく、また、別途に添加してもよく、特に限定されない。
本発明の多糖誘導体は、洗浄性能及び再汚染防止性能の観点から、衣類等の布帛に対する処理する際の水溶液中の濃度が、好ましくは0.01mg/L以上、より好ましくは0.1mg/L以上、更に好ましくは0.3mg/以上、より更に好ましくは0.5mg/L以上であり、そして、経済性の観点から、好ましくは10,000mg/L以下、より好ましくは1,000mg/L以下、更に好ましくは500mg/以下、より更に好ましくは100mg/L以下である。
<ヒドロキシアルキル化多糖>
ヒドロキシアルキル化多糖は、多糖と、ヒドロキシアルキル化剤とを、塩基性化合物の存在下で反応させることによって得られる。
以下、多糖がセルロースである場合を例にとって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。セルロースは一般に高い結晶性を有し、反応性に乏しいため、反応前にその結晶性を低下させ、反応性を改善させる処理を行うことが好ましい。
方法(i):一般にアルセル化又はマーセル化と呼ばれる活性化方法、すなわち、原料セルロースと大量の水、及び大過剰のアルカリ金属水酸化物を混合して、アルカリセルロースを得たのち、ヒドロキシアルキル化剤と反応させる方法。
方法(ii):セルロースを、例えば、テトラブチルアンモニウムフルオリドを含むジメチルスルホキシド、パラホルムアルデヒドを含むジメチルスルホキシド、塩化リチウムを含むジメチルアセトアミド等の溶媒、「セルロースの事典、編者:セルロース学会、発行所:株式会社朝倉書店」、Macromol.Chem.Phys.201,627−631(2000)等に記載されるセルロースの溶解が可能な溶媒を用い、原料セルロースを溶解させ、その後原料セルロースとヒドロキシアルキル化剤とを反応させる方法。
方法(iii):前記(i)や(ii)の方法のように、過剰のアルカリやセルロースを溶解可能な特殊な溶媒を用いず、粉末状、又は綿状の原料セルロースとヒドロキシアルキル化剤とをアルカリ共存下に反応させる方法。
以下、ヒドロキシアルキルセルロースの製造原料に用いられるヒドロキシアルキル化剤、カチオン化剤、疎水化剤、及び活性化法等について述べる。
本発明の多糖誘導体の製造に使用されるヒドロキシアルキル化剤の具体例としては、エポキシアルカン、アルキルグリシジルエーテル、アルキルハロヒドリンエーテル等が挙げられる。これらの中でも、反応時に塩の生成がない観点から、エポキシアルカン及びアルキルグリシジルエーテルから選ばれる1種以上が好ましく、エポキシアルカンがより好ましい。
上記の中でも、ヒドロキシアルキル化剤としてはエチレンオキシド及びプロピレンオキシドから選ばれる1種以上が好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。
ヒドロキシアルキル化剤の使用量に限定はなく、所望の置換度に応じて適宜調整すればよい。
具体的には、ヒドロキシエチルセルロースとしては、Natrosolシリーズ(Ashland社)が例示される。また、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースは、信越化学工業株式会社、ダウ・ケミカル社、日本曹達株式会社、住友精化株式会社、三晶株式会社、ダイセルファインケム株式会社、東京化成工業株式会社等からも入手可能である。
本発明の多糖誘導体の製造に用いられるカチオン化剤としては、下記式(3)又は式(4)で表される化合物等が挙げられる。
これらの中では、原料の入手の容易性及び化学的安定性の観点から、グリシジルトリメチルアンモニウム又はグリシジルトリエチルアンモニウムの塩化物又は臭化物;3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム又は3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウムの塩化物;3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム又は3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウムの臭化物から選ばれる1種以上が好ましく、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド及び3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドから選ばれる1種以上がより好ましく、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライドが更に好ましい。
これらのカチオン化剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
カチオン化剤の添加方法は一括、間欠、連続のいずれでもよい。
本発明の多糖誘導体の製造に用いられる炭化水素基(R)の導入剤(疎水化剤)としては、前記式(1)で表される基を導入できるものであることが好ましい。
前記式(1−1−1)及び式(1−1−2)で表される基を導入しうる導入剤としては、下記式(5)又は(6)で表される化合物が挙げられる。
前記式(5)で表される化合物の具体例としては、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ペンチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、ヘプチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、ノニルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、ペンタデシルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、ヘプタデシルグリシジルエーテル、オクタデシルグリシジルエーテル等のアルキル基を有するグリシジルエーテル;ブテニルグリシジルエーテル、ペンテニルグリシジルエーテル、ヘキセニルグリシジルエーテル、ヘプテニルグリシジルエーテル、オクテニルグリシジルエーテル、ノネニルグリシジルエーテル、デセニルグリシジルエーテル、ウンデセニルグリシジルエーテル、ドデセニルグリシジルエーテル、トリデセニルグリシジルエーテル、テトラデセニルグリシジルエーテル、ペンタデセニルグリシジルエーテル、ヘキサデセニルグリシジルエーテル、ヘプタデセニルグリシジルエーテル、オクタデセニルグリシジルエーテル等のアルケニル基を有するグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、ラウリルグリシジルエーテル、セチルグリシジルエーテル等の、炭化水素基を有する炭素数5以上25以下のアルキルグリシジルエーテルが好ましい。
前記式(6)で表される化合物の具体例としては、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル−ドデシルエーテル等の3−ハロ−2−ヒドロキシ−プロピルアルキルエーテル等が挙げられる。
これらの中では、疎水化剤とヒドロキシアルキル化多糖との反応時に塩の副生がない点、疎水化剤の入手の容易性及び化学的安定性の観点から、前記式(5)で表される化合物が好ましい。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記式(7)で表される化合物の具体例としては、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシへプタン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシオクタデカン等の、炭化水素基を有する炭素数4以上24以下の1,2−エポキシアルカンが挙げられる。前記式(8)で表される化合物の具体例としては、1−クロロ−2−ヒドロキシテトラデカン等の、炭化水素基を有する炭素数4以上24以下の1−ハロ−2−ヒドロキシアルカン等が挙げられる。
これらの中では、疎水化剤とヒドロキシアルキル化多糖との反応時に塩の副生がない点、疎水化剤の入手の容易性及び化学的安定性の観点から、前記式(7)で表される化合物が好ましい。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記式(9)で表される化合物の具体例としては、前記所望の炭素数を有するハロゲン化アルカンが挙げられる。
式(10)〜式(12)中、R12、n2及びその好ましい態様は、式(1−4)のR12及びn2と同様である。
前記式(10)〜式(12)で表される化合物の具体例としては、前記所望の炭素数を有する脂肪酸、脂肪酸ハライド、脂肪酸無水物が挙げられる。
疎水化剤の添加方法は一括、間欠、連続のいずれでもよい。
本発明の多糖誘導体は、ヒドロキシアルキル化多糖を前述したカチオン化剤及び炭化水素基(R)の導入剤(疎水化剤)と反応させて、カチオン性基及び炭化水素基(R)を導入することが好ましい。
これらの反応は、いずれもアルカリ化合物共存下で行うことが好ましい。該反応で用いられるアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン化合物類等が挙げられる。これらの中では導入反応の反応速度の観点から、アルカリ金属水酸化物、又はアルカリ土類金属水酸化物が好ましく、アルカリ金属水酸化物がより好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが更に好ましい。これらのアルカリ化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
アルカリ化合物の添加方法に特に限定はなく、一括添加でも、分割添加でもよい。また、アルカリ化合物は固体状態で添加してもよく、水溶液としてから添加してもよい。
炭化水素基(R)の導入反応及びカチオン性基の導入反応を同時に行う場合に用いられるアルカリ化合物の好ましい量も、上記炭化水素基(R)の導入反応及びカチオン性基の導入反応においてそれぞれに用いられるアルカリ化合物の量と同じである。
ヒドロキシアルキル基の導入反応、炭化水素基(R)の導入反応、又はカチオン性基の導入反応において用いられるアルカリ化合物がアルカリ土類金属水酸化物などの多価塩基である場合、用いられるアルカリ化合物の量の好ましい範囲は、上記それぞれの反応におけるアルカリ化合物の好ましい量の範囲を、該多価塩基価数で除した範囲である。例えば用いられるアルカリ化合物が水酸化カルシウム(ニ価の塩基)である場合、カチオン化反応又は炭化水素基(R)の導入反応において用いられる水酸化カルシウムの量は、反応選択性の観点から、ヒドロキシアルキル化多糖の構成単糖単位1モルに対して、好ましくは0.005モル以上、より好ましくは0.025モル以上、更に好ましくは0.05モル以上であり、同様の観点から、好ましくは0.5モル以下、より好ましくは0.4モル以下、更に好ましくは0.25モル以下である。
以下、ヒドロキシアルキル基の導入反応(ヒドロキシアルキル化反応)、カチオン性基の導入反応(カチオン化反応)、及び炭化水素基(R)の導入反応(疎水化反応)を総称して、「多糖誘導体製造時の反応」ともいう。
多糖誘導体製造時の各反応において、それぞれヒドロキシアルキル化剤、カチオン化剤及び疎水化剤の添加時の形態に特に制限はない。ヒドロキシアルキル化剤、カチオン化剤及び疎水化剤が液体状態である場合はそのまま用いてもよいし、水や非水溶剤等の、ヒドロキシアルキル化剤やカチオン化剤や疎水化剤の良溶剤で希釈した形で用いてもよい。
希釈に用いる非水溶剤としては、前述したものが挙げられる。
多糖誘導体製造時の各反応は、前記方法(ii)においては、反応時にセルロースの溶解が可能な溶媒を用い、原料セルロースを溶解させて反応を行うが、方法(i)及び(iii)においても、ヒドロキシアルキル化剤、カチオン化剤及び疎水化剤の反応収率の観点から、非水溶剤の存在下に行うこともできる。その非水溶剤としては、上記と同じ非水溶剤を用いることができる。
多糖誘導体製造時の各反応の反応時の温度は、反応速度の観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは30℃以上である。また、ヒドロキシアルキル化剤、カチオン化剤、又は疎水化剤の分解抑制から、好ましくは200℃以下、より好ましくは100℃以下である。
多糖誘導体製造時の各反応は、着色、及び単糖単位由来の主鎖の分子量低下を抑制する観点から、それぞれ必要に応じて窒素等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
多糖誘導体製造時のすべての反応終了後に得られた多糖誘導体は、必要に応じて、濾過等により分別したり、熱水、含水イソプロピルアルコール、含水アセトン溶媒等で洗浄して未反応のヒドロキシアルキル化剤、カチオン化剤、疎水化剤、並びにこれらの反応剤由来の副生物、中和等により副生した塩類を除去したりしてから使用することもできる。その他、精製方法としては、再沈殿精製、遠心分離、透析等一般的な精製方法を用いることができる。
[置換度(モル平均置換度(MS))の測定]
・前処理
粉末状のセルロース誘導体1gを100gの水に溶かした後、水溶液を透析膜(スペクトラポア、分画分子量1,000)に入れ、2日間透析を行った。得られた水溶液を、凍結乾燥機(eyela,FDU1100)を用いて凍結乾燥することで精製多糖誘導体(精製セルロース誘導体)を得た。
精製多糖誘導体(セルロース誘導体)200mgを精秤し、硫酸10mLとケルダール錠(Merck)1錠を加え、ケルダール分解装置(BUCHI社、K−432)にて加熱分解を行った。分解終了後、サンプルにイオン交換水30mLを加え、自動ケルダール蒸留装置(BUCHI社、K−370)を用いてサンプルの窒素含量(質量%)を求めることで、カチオン性基の質量を算出した。
以下に、実施例1(炭化水素基の導入剤(疎水化剤)として、ラウリルグリシジルエーテルを使用)の場合を例に、炭化水素基(R)であるアルキル基質量の算出方法を説明する。他の導入剤を使用した場合も、検量線用の試料(ヨードアルカンや炭化水素基の導入剤(疎水化剤)など)を適宜選択することによって測定可能である。
精製多糖誘導体200mg、アジピン酸220mgを10mLバイアル(マイティーバイアルNo.3)に精秤し、内標溶液(テトラデカン/o−キシレン=1/25(v/v)) 3mL及びヨウ化水素酸3mLを加えて密栓した。また、セルロース誘導体の代わりに1−ヨードドデカンを2、4、又は9mg加えた検量線用の試料を調製した。各試料をスターラーチップにより撹拌しながら、ブロックヒーター(PIERCE社、Reacti−ThermIII Heating/Stirring module)を用いて160℃、2時間の条件で加熱した。試料を放冷した後、上層(o−キシレン層)を回収し、ガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所、GC−2010 plus)にて、1−ヨードドデカン量を分析した。
カラム:Agilent HP−1(長さ:30m、液相膜厚:0.25μL、内径:32mm)
スプリット比:20
カラム温度:100℃(2min)→10℃/min→300℃(15min)
インジェクター温度:300℃
検出器:FID
検出器温度:330℃
打ち込み量:2μL
GCにより得られた1−ヨードドデカンの検出量から、サンプル中のアルキル基の質量を求めた。
ヒドロキシアルキル基由来のヨウ化アルキルを定量することで、前述のアルキル基質量の測定と同様にして行った。
上述のカチオン性基と炭化水素基(R)であるアルキル基の質量及び全サンプル質量からHEC骨格の質量を計算し、それぞれ物質量(mol)に変換することで、カチオン性基の置換度(MSC)、及びアルキル基の置換度(MSR)を算出した。
ヒドロキシアルキル基についても同様にして置換度を算出した。
ヒドロキシエチルセルロース(HEC)等のヒドロキシアルキル化多糖の重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリエチレングリコール換算により算出した。
測定条件は、以下の通りである。
・カラム:TSKgel α−M
・溶離液:50mmol/L LiBr、1%CH3COOH、エタノール/水=3/7
・温度:40℃
・流速:0.6mL/min
(1)前処理
置換度の測定における前処理と同様にして、精製多糖誘導体(精製セルロース誘導体)を得た。
(2)カチオン性基の分布の測定
前記(1)で得られた精製多糖誘導体(精製セルロース誘導体)を用いて、1mg/mL水溶液を調製した。得られた溶液をフィルター(DISMIC 25HP045AN)に通した後、高速液体クロマトグラフィー(1260 infinity, Agilent社)を用いて下記の条件下で分析を行った。
<HPLC分析条件:カチオン基の置換基分布>
カラム:TSKgel CM−5PW(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
検出器:荷電化粒子検出器(CAD、Dionex corona CAD、Thermo scientific社製)
移動相:A液/B液=95/5(v/v):0〜3分
A液/B液=30/70(v/v):3〜20分(グラデーション)
A液/B液=30/70(v/v):20〜25分
A液/B液=95/5(v/v):25〜30分(グラデーション)
A液:水/イソプロピルアルコール=80/20(v/v)
B液:水/イソプロピルアルコール/トリフルオロ酢酸=79.95/19.95/0.1(v/v/v)
流速:1.0mL/分
サンプル量:100μL(サンプル濃度=1mg/mL)
カチオン性基の置換基分布は、上記測定方法で求められるHPLCチャートから、ピーク半値幅(ピーク高さが半分となる位置のピーク幅)を求めた。
(1)セルロース誘導体の合成
ヒドロキシエチルセルロース(以下、「HEC」という。)(Ashland社、Natrosol 250 JR、重量平均分子量15万、ヒドロキシエチル基置換度:2.5)90gを1Lセパラフラスコに入れ、窒素フローを行った。イオン交換水77.2g、イソプロピルアルコール(以下IPAという)414.5gを加え、200r.p.m.で5分撹拌した後、48%水酸化ナトリウム水溶液10.9gを加え、更に15分撹拌した。次に、ラウリルグリシジルエーテル(四日市合成株式会社、LA−EP)3.9gを加え、80℃で13時間アルキル化反応を行った。更にグリシジルトリメチルアンモニウムクロライド(以下、「GMAC」ともいう。阪本薬品工業株式会社、SY−GTA80)14.5gを加え、50℃で1.5時間カチオン化反応を行った。その後、90%酢酸水溶液10.9gを加え、30分撹拌することで中和反応を行った。得られた懸濁液を500mLの遠沈管2本に均等に移し替え、高速冷却遠心機(日立工機株式会社製、CR21G III)を用いて遠心分離を行った。上澄みをデカンテーションにより取り除き、取り除いた上澄みと同量の85%IPA水溶液を加え、再分散を行った。再度、遠心分離と再分散の操作を繰り返し、3回目の遠心分離を行った後に沈殿物を取り出した。得られた沈殿物を真空乾燥機(アドバンテック社、VR−420)を用いて80℃で12時間減圧乾燥し、エクストリームミル(ワーリング社、MX−1200XTM)により解砕することで、粉末状の多糖誘導体(セルロース誘導体)を得た。
使用するヒドロキシエチルセルロース、疎水化剤の種類及び量、並びにカチオン化剤の量を変更した以外は実施例3と同様にして、多糖誘導体を作製した。
(1)セルロース誘導体の合成
ヒドロキシエチルセルロース(以下、「HEC」ともいう。)(Ashland社、Natrosol 250 JR、重量平均分子量15万)22gにイオン交換水1.8g、イソプロピルアルコール(以下IPAという)8.6g、48%水酸化ナトリウム水溶液2.6gを加え、更に、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド(阪本薬品工業株式会社製、SY−GTA80)2.4gを乳鉢を用いて5分間よく混合し、50℃の恒温槽(東京理化器械株式会社、FMS−1000)内に1.5時間静置することでカチオン化反応を行った。その後、IPA88.7g、イオン交換水15.6gを添加してスラリーを再分散し、90%酢酸水溶液2.7gを加え、30分撹拌することで中和反応を行った。得られた懸濁液を500mLの遠沈管2本に均等に移し替え、高速冷却遠心機(日立工機株式会社製、CR21G III)を用いて遠心分離を行った。上澄みをデカンテーションにより取り除き、取り除いた上澄みと同量の85%IPA水溶液を加え、再分散を行った。再度、遠心分離と再分散の操作を繰り返し、3回目の遠心分離を行った後に沈殿物を取り出した。得られた沈殿物を真空乾燥機(アドバンテック社、VR−420)を用いて80℃で12時間減圧乾燥し、エクストリームミル(ワーリング社、MX−1200XTM)により解砕することで、粉末状の多糖誘導体(セルロース誘導体)を得た。
100mLのスクリュー管に、下記組成の処理液40mLとポリエステル布(6cm×6cm、ポリエステルファイユ、染色試材株式会社製)5枚を投入した。振とう器(ヤマト科学株式会社製、型番:SA300)を用い、300r.p.m.、5分の条件で水平往復振とうし、ポリエステル布に処理液を処理した。処理後、2槽式洗濯機(株式会社日立製作所製、PS−H45L形)でポリエステル布を1分間脱水した。次に、100mLのスクリュー管に洗浄用のイオン交換水40mLと得られたポリエステル布を投入し、振とう器を用いて300r.p.m.、3分の条件でポリエステル布を濯いだ。濯ぎ後、2槽式洗濯機で1分間脱水し、24時間自然乾燥させた。
(A)セルロース誘導体:0又は30mg/kg
(B)界面活性剤(ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(商品名:エマール20C)/ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル(商品名:エマルゲン110L)=有効分で1/1(w/w)):80mg/kg
オレイン酸に0.02%のスダンIIIを混合したモデル皮脂人口汚染液0.1mLを、前記(2−1)において調製したポリエステル布(36cm2)に均一に塗布し、恒温乾燥機(EYELA社、incubator FMS)を用いて40℃で1時間乾燥させた。
界面活性剤(ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム/ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル=1/1(w/w))が150mg/kgとなるようにイオン交換水により希釈し、洗浄液を調製した。洗浄試験用の1Lのステンレスビーカーに、洗浄液600mLと前記(2−2)で得られたポリエステル布5枚を投入した。ターゴトメーター(株式会社上島製作所製、MS−8212)を用いて、85r.p.m.、20℃、10分の条件でポリエステル布を洗浄した。得られたポリエステル布を多量の水で濯ぎ、2槽式洗濯機で脱水した後、24時間自然乾燥した。
汚染前のポリエステル原布、及び洗浄前後のポリエステル布の460nmにおける反射率を測色色差計(日本電色工業株式会社製、SE−2000)にて測定し、次式によって洗浄率(%)を求めた。
洗浄率(%)=100×[(洗浄後の反射率−洗浄前の反射率)/(原布の反射率−洗浄前の反射率)]
また、前記(2−1)で(A)成分を0mg/kgとしたブランクの洗浄率との差から、次式によって洗浄率向上性能(%)を求めた。
洗浄率向上性能(%)=[(A)成分30mg/kgの洗浄率(%)−(A)成分0mg/kgの洗浄率(%)]
界面活性剤(ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム/ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル=1/1(w/w))が150mg/kgとなるようにイオン交換水により希釈し、洗浄液を得た。この洗浄液600mLに、泥粒子(園芸用鹿沼赤土、株式会社国幸園)200mgを入れ、超音波発振器(UT206、シャープマニュファクチャリングシステム社)を用いて1時間超音波照射した。次に、この分散液をターゴトメーターの1Lステンレスビーカーに移し、前記の(2−1)で得られたポリエステル布5枚を投入した。ターゴトメーターを用いて、85r.p.m.、20℃、10分の条件で、ポリエステルに対して泥の再汚染処理を行った。得られたポリエステル布を多量の水で濯ぎ、2槽式洗濯機で脱水した後、24時間自然乾燥した。次に、再汚染前のポリエステル原布、及び再汚染後の550nmにおける反射率を測色色差計にて測定し、次式によって泥汚れ再汚染防止率(%)を求めた。
泥汚れ再汚染防止率(%)=100×(再汚染後の反射率/原布の反射率)
*2:泥汚れ再汚染防止率=泥の再付着の抑制度合(反射率により測定)
*3:半値幅は四捨五入して算出
・HEC、分子量15万:Ashland社製のヒドロキシエチルセルロース、Natrosol 250JR(商品名)、重量平均分子量=15万、ヒドロキシエチル基の置換度=2.5
・HEC、分子量9万:Ashland社製のヒドロキシエチルセルロース、Natrosol 250LR(商品名)、重量平均分子量=9万、ヒドロキシエチル基の置換度=2.5
・HEC、分子量30万:Ashland社製のヒドロキシエチルセルロース、Natrosol 250GR(商品名)、重量平均分子量=30万、ヒドロキシエチル基の置換度=2.5
・HEC、分子量72万:Ashland社製のヒドロキシエチルセルロース、Natrosol 250MR(商品名)、重量平均分子量=72万、ヒドロキシエチル基の置換度=2.5
・HEC、分子量100万:Ashland社製のヒドロキシエチルセルロース、Natrosol 250HR(商品名)、重量平均分子量=100万、ヒドロキシエチル基の置換度=2.5
・グリシジル、C12:ラウリルグリシジルエーテル、四日市合成株式会社製、エポゴーセーLA(D)(商品名)
・グリシジル、C4:ブチルグリシジルエーテル、四日市合成株式会社製、DY−BP(商品名)
・エポキシ、C4:1,2−エポキシヘキサン、和光純薬工業株式会社製
・エポキシ、C12:1,2−エポキシテトラデカン、和光純薬工業株式会社製
・エポキシ、C14:1,2−エポキシヘキサデカン、和光純薬工業株式会社製
比較例1に示すように、半値幅が8分以上である場合には、カチオン性基を有していても、十分な洗浄性能を得ることができなった。
更に、比較例2に示すように、ヒドロキシアルキル化多糖の分子量が79万を超える場合には、再汚染防止性能の低下が認められた。
Claims (7)
- ヒドロキシアルキル化多糖にカチオン性基が結合した多糖誘導体であって、
前記ヒドロキシアルキル化多糖は、重量平均分子量が1万以上79万以下であり、
前記カチオン性基の置換度(MSC)が0.001以上1以下であり、
下記HPLC条件にて測定されるピーク半値幅が8分以下である、
多糖誘導体。
[HPLC条件]
カラム:TSKgel CM−5PW
カラム温度:40℃
検出器:荷電化粒子検出器
移動相:A液/B液=95/5(v/v):0〜3分
A液/B液=30/70(v/v):3〜20分(グラデーション)
A液:B液=30:70(v/v):20〜25分
A液/B液=95/5(v/v):25〜30分(グラデーション)
A液:水/イソプロピルアルコール=80/20(v/v)
B液:水/イソプロピルアルコール/トリフルオロ酢酸=79.95/19.95/0.1(v/v/v)
流速:1.0mL/分
サンプル量:100μL(サンプル濃度=1mg/mL) - カチオン性基が、式(2−1)又は式(2−2)で表される、請求項1に記載の多糖誘導体。
(式(2−1)及び式(2−2)中、R21〜R23はそれぞれ独立に、炭素数1以上24以下の炭化水素基を示し、X−はアニオンを示し、tは0以上3以下の整数を示し、*はヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。) - 多糖誘導体が、炭素数2以上の炭化水素基(R)を有する、請求項1又は2に記載の多糖誘導体。
- 炭化水素基(R)の置換度(MSR)が、0.001以上1以下である、請求項3に記載の多糖誘導体。
- 炭化水素基(R)が、式(1−1−1)〜式(1−4)のいずれかで表される基によりヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基と結合する、請求項3又は4に記載の多糖誘導体。
(式(1−1−1)〜式(1−4)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、炭素数2〜4のアルキレン基を示し、Rは炭素数2以上の炭化水素基を示し、*はヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示し、n1は−R11O−の平均付加モル数を示し、n2は−R12−O−の平均付加モル数を示し、n1及びn2は0以上30以下である。) - 炭化水素基(R)の炭素数が、4以上22以下である、請求項3〜5のいずれかに記載の多糖誘導体。
- 多糖が、セルロース又はグアーガムである、請求項1〜6のいずれかに記載の多糖誘導体。
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