JP2019097428A - リモネンを含有する柑橘系アルコール飲料 - Google Patents
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(1)リモネンの含有量が0.5mg/L〜30mg/Lであり、かつ、アルコールの含有量が1v/v%〜15v/v%である柑橘系アルコール飲料であって、
メチルヘプテノンの含有量が15μg/L〜75μg/Lである、上記柑橘系アルコール飲料。
(2)p−メチルクレゾールの含有量が55μg/L以下である、(1)に記載の柑橘系アルコール飲料。
(3)メチルヘプテノンの含有量に対する、p−クレゾールの含有量の比(質量比)が、2.8以下である、(1)または(2)に記載の柑橘系アルコール飲料。
(4)リモネンの含有量が0.5mg/L〜30mg/Lであり、かつ、アルコールの含有量が1v/v%〜15v/v%である柑橘系アルコール飲料における苦味をマスキングする方法であって、
飲料中のメチルヘプテノンの含有量を15μg/L〜75μg/Lに調整することを含む、上記方法。
(5)飲料中のp−メチルクレゾールの含有量が55μg/L以下である、(4)に記載の方法。
本発明において、「柑橘系」の飲料とは、柑橘系果実の香味を有する飲料を意味し、飲用した際に、柑橘系果実を連想させるような香気と味とを有する飲料をいう。柑橘系果実としては、例えば、バレンシアオレンジ、ネーブルオレンジなどのオレンジ類、グレープフルーツなどのグレープフルーツ類、レモン、ライム、シークヮーサー、ダイダイ、ユズ、カボス、スダチ、シトロン、ブッシュカンなどの香酸柑橘類、ナツミカン、ハッサク、ヒュウガナツ、スウィーティー、デコポンなどの雑柑類、イヨカン、タンカンなどのブンタン類、マンダリンオレンジ、ウンシュウミカン、ポンカン、紀州ミカンなどのミカン類、キンカンなどのキンカン類が挙げられる。
本発明の飲料は、リモネンを含有する。ここで、リモネンとは、d−リモネンを意味する。リモネンは、モノテルペン系炭化水素化合物であり、柑橘系果実を想起させるような甘酸っぱい香りや爽やかさを有する成分であり、柑橘系の香味を呈するフレーバー中によくみられる成分である。本発明の飲料に含まれるリモネンは、柑橘系果実または柑橘系果実の果汁由来であってもよいし、その他の添加成分、例えば柑橘系果実以外の果実や食品由来のもの、香料、または人工的に合成されたものなどであってもよい。
飲料中のリモネンの含有量は、ガスクロマトグラフィーを用いて、以下の条件で測定することができる。
Instrument GC 6890N (Agilent Technologies)
Column: HP-ULTRA2(J&W社製)内径0.32mm、長さ50m、膜厚0.52μm
Carrier gas He
Flow 2.2mL/min
Inlet Splitless
Inlet temp. 250℃
Oven temp. 45℃(1min)⇒5℃/min⇒230℃(2min)
Detector FID
Det.temp. 260℃
Injection volume 2.0 microliters。
本発明の飲料はアルコールを含有する。なお、本明細書において、アルコールとは、エタノールを意味する。本発明者らは、リモネンを含有する飲料において、アルコールが共存すると、苦味が強く感じられるようになることを見出した。
本発明の飲料におけるアルコール含有量は、振動式密度計によって測定することができる。具体的には、アルコール飲料から濾過又は超音波によって炭酸ガスを抜いた試料を調製し、次いで試料を直火蒸留し、得られた留液の15℃における密度を測定し、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)の付表である「第2表 アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」を用いて換算して求める。
本発明の飲料は、メチルヘプテノンを特定範囲の含有量で含有することにより、リモネンとアルコールとによる苦味がマスキングされる。ここで、メチルヘプテノンとは、6−メチル−5−ヘプテン−2−オンを指す。メチルヘプテノンは、C8H14Oの化学式を有する脂肪族ケトンの一種であり、トマト等に含まれることが知られており、ハーブ様、グリーン様または果実様の香りを呈する成分である。本発明の飲料に含まれるメチルヘプテノンは、果実等の食品由来のものであってもよいし、その他の添加成分、例えば、香料、人工的に合成されたものなどであってもよい。
(メチルヘプテノンの含有量の測定)
飲料中のメチルヘプテノンの含有量は、ヘッドスペース−ガスクロマトグラフ−質量分析法(HS−GC−MS法)用いて、以下の条件で測定することができる。
ガスクロマトグラフ:GC7890A(Agilent社製)
質量分析器:MSD5975C(Agilent社製)
カラム:DB−WAX(Agilent社製) 内径0.25mm、長さ60m、膜厚0.5μm
移動相:He(流速:1.0mL/分 定流量)
注入方法:スプリット注入
スプリット比:15:1
注入口温度:220℃
オーブン温度:40℃(3分)→4℃/分→230℃(1分)
トランスファーライン温度:220℃
イオン源温度:230℃
四重極温度:150℃
定量に用いたイオン:m/z=108。
上記の通り、リモネンとアルコールとの共存による苦味は、メチルヘプテノンを特定範囲の含有量で含有させることによりマスキングすることができるが、本発明者らがさらに研究した結果、飲料中にp−クレゾールが比較的多く含まれる場合には、この苦味マスキング効果が低減することを見出した。したがって、本発明の飲料において、p−クレゾールの含有量は、55μg/L以下であることが好ましい。p−クレゾールの含有量が55μg/L以下であると、メチルヘプテノンによる苦味マスキング効果を確認することができる。p−クレゾールの含有量は、さらに好ましくは、40μg/L以下であり、さらに好ましくは、30μg/L以下であり、さらに好ましくは、5μg/L以下である。なお、p−クレゾールの含有量が30μg/L以下であると、p−クレゾール自体の臭い(クレゾール臭)が感じられにくくなり、5μg/L以下であると、p−クレゾールを含まないものと同等の苦味マスキング効果が得られるようになる。 また、p−クレゾールとメチルヘプテノンとの質量比の観点からは、p−クレゾール/メチルヘプテノン(質量比)が2.8以下であることが好ましい。メチルヘプテノンの含有量に対してp−クレゾールの含有量が2.8以下であると、メチルヘプテノンによる苦味マスキング効果を確認することができる。p−クレゾール/メチルヘプテノン(質量比)は、さらに好ましくは、1.6以下であり、より好ましくは0.3以下であり、より好ましくは0.1以下である。p−クレゾール/メチルヘプテノン(質量比)が0.1以下であると、p−クレゾールを含まないものと同等の苦味マスキング効果が得られるようになる。
飲料中のp−クレゾールの含有量は、高速液体クロマトグラフ法(HPLC法)を用いて、以下の条件で測定することができる。
・HPLC装置:島津製作所 Prominence
ポンプ:LC−20AD
検出器:RF−20A
カラムオーブン:CTO−20A
オートサンプラー:SIL−20AHT
・カラム:TSKgel ODS−80TsQA(4.6mm×150mm)
・カラム温度:40℃
・移動相A:水−アセトニトリル−トリフルオロ酢酸(950:50:0.5)
・移動相B:水−アセトニトリル−トリフルオロ酢酸(50:950:0.5)
・検出:Ex280nm、Em310nm
・注入量:10μL
・流速:1.0mL/min
・グラジエントプログラム:
時間(分) %A %B
0 100 0
19 55 45
19.5 0 100
24.5 0 100
25 100 0。
上記の通り、本発明の柑橘系アルコール飲料においては、特定範囲の含有量のメチルヘプテノンを含有させることにより、リモネンとアルコールとの共存による苦味をマスキングする効果が得られるが、飲料としての美味しさの観点から本発明者らがさらに研究した結果、リモネンとアルコールとメチルヘプテノンとを含有する飲料においてpHを2.3〜4.5の範囲内とした場合に、一定レベル以上の飲料としての美味しさが得られることを見出した。したがって、本発明の飲料において、pHは好ましくは2.3〜4.5の範囲内である。pHが2.3未満であると、メチルヘプテノンに特有のハーブ様の香りが目立ち、飲料の味に影響する場合がある。また、pHが4.5を超えると、飲料に若干のえぐみが感じられるようになることがある。pHは、さらに好ましくは2.8〜4.1の範囲内であり、更に好ましくは3.3〜4.1の範囲内である。pHが3.3.〜4.1の範囲内であると、苦味のマスキング効果がありながら、飲料としての美味しさも最もよく感じられるようになる。
本発明の飲料は、上記の他にも、本発明の性質を損なわない限り、飲料に通常配合する各種成分、例えば、糖類、酸類、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、甘味料、酸味料、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定剤等を配合することができる。
ニュートラルアルコールに純水を加え、アルコール含有量を以下の表1に記載の含有量に調整した。ここに、リモネン(ナカライテスク株式会社D―リモネン)を以下の表1に記載の含有量となるように溶解させて、各サンプルを作成した。得られた各サンプルの苦味の強さについて、6名の訓練されたパネラーにより、以下の基準に基づいて官能試験による評価を行った。なお、官能試験を行う前に、純水(リモネン無添加)と、15v/v%のアルコール水にリモネンを30mg/L溶解させた溶液とを準備し、前者を6点、後者を1点とすることを6名の訓練されたパネラー間で確認し、それらを基準として苦味の点数付けを行った。
非常に苦い 1点
苦味を感じる 2点
苦味をやや感じる 3点
苦味をあまり感じない 4点
苦味をほとんど感じない 5点
まったく苦くない 6点
パネラー6名の評価点から平均点を算出し、平均点に応じて「苦味の強さ」に関して以下の5段階の評価とした。
平均点 2以上3未満 「++」
平均点 3以上4未満 「+」
平均点 4以上5未満 「±」
平均点 5以上 「−」
ニュートラルアルコールに純水を加え、アルコール含有量が5v/v%または10v/v%となるように調整した。ここに、含有量が15μg/Lとなるようにリモネン(ナカライテスク株式会社D―リモネン)を溶解させ、さらに、以下の表2に記載の含有量となるように、メチルヘプテノン(東京化成工業株式会社6-Methyl-5-hepten-2-one)を溶解させて、各サンプルを作成した。得られた各サンプルの苦味のマスキング効果及び飲料としての美味しさについて、6名の訓練されたパネラーにより、以下の基準に従って官能試験による評価を行った。なお、苦味のマスキング効果については、得られた各サンプルについて、苦味がまったく感じられない場合(苦味が純水と同等の場合)を6点とし、各サンプルにおいてメチルヘプテノンを添加していないものと同程度の苦味を感じるものを1点とすること、及び3点を製品としての合格ラインとすることを6名の訓練されたパネラー間で事前に確認し、それらを基準として点数付けを行った。また、飲料としての美味しさについては、柑橘らしい香味が感じられるか、、また、不自然な香味や異味異臭がないか、といった観点から評価すること、これらが良好なものから順に6点から1点の点数をつけること、及び3点を製品としての合格ラインとすることを事前に確認し、点数付けを行った。
感じない 1点
わずかに感じる 2点
やや感じる 3点
感じる 4点
よく感じる 5点
非常によく感じる 6点
パネラー6名の評価点から平均点を算出し、平均点に応じて以下の5段階の評価とした。
平均点 2以上3未満 「±」
平均点 3以上4未満 「+」
平均点 4以上5未満 「++」
平均点 5以上 「+++」。
ニュートラルアルコールに純水を加え、アルコール含有量が10v/v%となるように調整した。ここに、以下の表3に記載の含有量となるように、リモネン(ナカライテスク株式会社D―リモネン)及びメチルヘプテノン(東京化成工業株式会社6-Methyl-5-hepten-2-one)を溶解させた。さらに、以下の表3に記載の含有量となるようにp−クレゾール(ナカライテスク株式会社p−クレゾール)を溶解させて、各サンプルを作成した。得られた各サンプルの苦味のマスキング効果及び飲料としての美味しさについて、実施例1と同様にして評価を行った。
(1)リモネンの含有量が0.5mg/L〜30mg/Lであり、かつ、アルコールの含有量が1v/v%〜15v/v%である柑橘系アルコール飲料であって、
メチルヘプテノンの含有量が15μg/L〜75μg/Lである、上記柑橘系アルコール飲料。
(2)p−クレゾールの含有量が55μg/L以下である、(1)に記載の柑橘系アルコール飲料。
(3)メチルヘプテノンの含有量に対する、p−クレゾールの含有量の比(質量比)が、2.8以下である、(1)または(2)に記載の柑橘系アルコール飲料。
(4)リモネンの含有量が0.5mg/L〜30mg/Lであり、かつ、アルコールの含有量が1v/v%〜15v/v%である柑橘系アルコール飲料における苦味をマスキングする方法であって、
飲料中のメチルヘプテノンの含有量を15μg/L〜75μg/Lに調整することを含む、上記方法。
(5)飲料中のp−クレゾールの含有量が55μg/L以下である、(4)に記載の方法。
Claims (5)
- リモネンの含有量が0.5mg/L〜30mg/Lであり、かつ、アルコール含有量が1v/v%〜15v/v%である柑橘系アルコール飲料であって、メチルヘプテノンの含有量が15μg/L〜75μg/Lである、上記柑橘系アルコール飲料。
- p−メチルクレゾールの含有量が55μg/L以下である、請求項1に記載の柑橘系アルコール飲料。
- メチルヘプテノンの含有量に対する、p−クレゾールの含有量の比(質量比)が、2.8以下である、請求項1または2に記載の柑橘系アルコール飲料。
- リモネンの含有量が0.5mg/L〜30mg/Lであり、かつ、アルコールの含有量が1v/v%〜15v/v%である柑橘系アルコール飲料における苦味をマスキングする方法であって、
飲料中のメチルヘプテノンの含有量を15μg/L〜75μg/Lに調整することを含む、上記方法。 - 飲料中のp−メチルクレゾールの含有量が55μg/L以下である、請求項4に記載の方法。
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