JP2019078544A - 鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法 - Google Patents

鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2019078544A
JP2019078544A JP2017203261A JP2017203261A JP2019078544A JP 2019078544 A JP2019078544 A JP 2019078544A JP 2017203261 A JP2017203261 A JP 2017203261A JP 2017203261 A JP2017203261 A JP 2017203261A JP 2019078544 A JP2019078544 A JP 2019078544A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
corrosion
reinforced concrete
concrete structure
life
occurrence
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2017203261A
Other languages
English (en)
Inventor
唯好 馬越
Tadayoshi Umagoe
唯好 馬越
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Shikoku Research Institute Inc
Shikoku Electric Power Co Inc
Original Assignee
Shikoku Research Institute Inc
Shikoku Electric Power Co Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Shikoku Research Institute Inc, Shikoku Electric Power Co Inc filed Critical Shikoku Research Institute Inc
Priority to JP2017203261A priority Critical patent/JP2019078544A/ja
Publication of JP2019078544A publication Critical patent/JP2019078544A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Testing Resistance To Weather, Investigating Materials By Mechanical Methods (AREA)

Abstract

【課題】鉄筋コンクリートの材料の評価を高精度に行うことができる、鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法を提供する。【解決手段】鉄筋コンクリート構造物を浸透する塩化物イオンの見かけの拡散係数と、鉄筋コンクリート構造物内部の鉄筋の腐食の発生が開始する、腐食発生限界塩化物イオン濃度と、腐食の発生が開始した後の、鉄筋の腐食速度と、鉄筋コンクリート構造物を構成するコンクリートの表面に腐食ひび割れが発生した時の鉄筋の腐食量と、を用いる鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法であって、鉄筋の体積減少率があらかじめ定められた限界値に達した場合を鉄筋コンクリート構造物の寿命の終点としている。この評価方法により、鉄筋コンクリート構造物の評価を総合的に行い、コンクリートを構成する材料の評価を高精度に行うことができる。【選択図】図1

Description

本発明は、鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法に関する。さらに詳しくは、複数のパラメータを組み合わせて、鉄筋コンクリート構造物の寿命を評価する鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法に関する。
鉄筋コンクリート構造物の品質の検査は、様々な観点から行われている。例えば、採取されたコアに対して、圧縮強度試験を実施することで、設計強度と比較して要求性能を具備しているかどうかを判断したり、密度試験を実施することで、鉄筋コンクリート構造物の空隙の量が適切かどうかを判断したりする。このような試験は、それぞれの試験において、試験の対象となった鉄筋コンクリート構造物自体が所定の耐久性を充足するか否かを判断するものである。換言すれば、同じ材料や鉄筋量の鉄筋コンクリート構造物であっても、環境など他の要件が異なる、別の鉄筋コンクリート構造物に同じ結果が当てはまるとは限らない。すなわち、ここで判断される耐久性は、鉄筋コンクリートの材料、鉄筋コンクリート構造物が置かれた環境など様々な要因の組合せに依存するものである。
コンクリートの材料であるセメントは、水や液剤などにより水和や重合し硬化する粉体であり、ポルトランドセメント、混合セメント、特殊セメントの3つに大別されている。さらに日本工業規格で混合セメントは、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメントに分類されている。鉄筋コンクリート構造物を構成するコンクリート材料は、このように多種多様であるものの、これらのコンクリート材料に焦点を当てて、鉄筋コンクリート構造物の耐久性について評価されることはほとんどなかった。
特許文献1では、塩害による鉄筋コンクリートの劣化のメカニズムは、塩化物イオンの挙動によるものであるとし、複数の評価パラメータ(鉄筋の腐食開始時期、腐食発生後の腐食速度、ひび割れ発生時の腐食量)に基づいて、鉄筋コンクリート構造物の耐久性である鉄筋コンクリートの寿命を評価する方法が開示されている。
特開2011−43352号公報
特許文献1に開示されている鉄筋コンクリートの寿命評価方法は、個々具体的な鉄筋コンクリート構造物に対して鉄筋コンクリートの寿命を導出しており、その寿命の終期を、鉄筋コンクリートの腐食ひび割れ発生時期としている。しかるに、現実の鉄筋コンクリート構造物は、腐食ひび割れが発生した後も十分な強度を保つため、腐食ひび割れ発生後の評価が加わっていない点で問題がある。特に、鉄筋コンクリートの材料の評価を高精度に行おうとした場合、腐食ひび割れ発生後に変化する可能性があるため、鉄筋コンクリートの材料の評価として不十分である。
また、腐食ひび割れ発生前後での、鉄筋腐食速度のパラメータの取扱いが変わることが考慮されていないという問題がある。
本発明は上記事情に鑑み、鉄筋コンクリートの材料の評価を高精度に行うことができる、鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法を提供することを目的とする。
第1発明の鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法は、鉄筋コンクリート構造物を浸透する塩化物イオンの見かけの拡散係数と、前記鉄筋コンクリート構造物内部の鉄筋の腐食の発生が開始する、腐食発生限界塩化物イオン濃度と、前記腐食の発生が開始した後の、前記鉄筋の腐食速度と、前記鉄筋コンクリート構造物を構成するコンクリートの表面に腐食ひび割れが発生した時の前記鉄筋の腐食量と、を用い、前記鉄筋の体積減少率があらかじめ定められた限界値に達した場合を前記鉄筋コンクリート構造物の寿命の終点としたことを特徴とする。
第2発明の鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法は、第1発明において、腐食ひび割れが発生した後の前記腐食速度は、腐食ひび割れが発生する前の前記腐食速度に基づいて定められていることを特徴とする。
第3発明の鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法は、第1発明または第2発明において、前記見かけの拡散係数は、前記鉄筋コンクリート構造物を構成するコンクリートの材料により製造された供試体から、コンクリートコアを採取して導出され、さらに、前記寿命評価方法は、前記供試体の材齢を用いることを特徴とする。
第4発明の鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法は、第1発明から第3発明のいずれかにおいて、前記寿命評価方法は、前記鉄筋コンクリート構造物の内在塩分量をさらに用いることを特徴とする。
第1発明によれば、4つのパラメータを用いて、鉄筋コンクリート構造物の寿命という、総合的で客観的なパラメータが導出され、かつ、体積減少率という現実に沿った限界値を基準にして、鉄筋コンクリート構造物の寿命の終点を定めている。これらのパラメータには、鉄筋コンクリート構造物の置かれた個別の環境や、個別の構造に対するパラメータは含まれていないので、これらに影響されずに、鉄筋コンクリート構造物に客観的に当て嵌まる評価を総合的に行い、コンクリートを構成する材料の評価を高精度に行うことができる。
第2発明によれば、腐食ひび割れが発生した後の腐食速度が、腐食ひび割れが発生する前の腐食速度に基づいて定められていることにより、腐食ひび割れ前後での腐食速度の相違を鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法に容易に反映できる。
第3発明によれば、見かけの拡散係数がコンクリートコアを採取して導出されることにより、現実の環境を模擬した環境で試験された結果で見かけの拡散係数が導出されるので、この点で、コンクリートを構成する材料の評価をより高精度に行うことができる。また、供試体の材齢を用いることで、さらにその評価の精度を上げることができる。
第4発明によれば、鉄筋コンクリート構造物の内在塩分量を用いることで、コンクリートを構成する材料の評価をさらに高精度に行うことができる。
本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法の説明図である。 塩化物イオンの見かけの拡散係数を求める際の試験体の位置の説明図である。 腐食発生限界塩化物イオン濃度の測定方法の説明図である。 腐食ひび割れ発生前後の腐食速度の比較図である。 図1の鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法を実施する際のフローチャートである。 本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法での評価結果である。
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。まず、鉄筋コンクリート構造物の劣化過程は、土木学会コンクリート標準示方書[維持管理編]で示されているように、その鉄筋コンクリート構造物が製造されてから一定の期間ごとに異なるので、その期間について説明を行い、その後にその期間における支配的なパラメータの導出方法について説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法を例示するものであって、鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法を以下のものに限定するものではない。
(各期間の説明)
図1には、本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法の説明図を示す。鉄筋コンクリート構造物の製造に瑕疵がない場合、鉄筋コンクリート構造物の劣化のほとんどは塩害によるものであり、その劣化の経過は、表面より侵入した塩化物イオンが鉄筋表面に到達し、鉄筋腐食が発生した後、コンクリートの表面にひび割れが発生し、その後鉄筋が所定の割合に腐食して構造物の寿命に達するというものである。この場合、図1に示すように、鉄筋コンクリート構造物が寿命に達するまでに、この劣化の期間は、鉄筋腐食開始までの「潜伏期」、鉄筋腐食開始直後から腐食ひび割れ発生までの「進展期」、腐食ひび割れ発生後、腐食速度が増大する「加速期」、腐食量の増加により耐力の低下が顕著な「劣化期」に分けられる。
潜伏期の始期は鉄筋コンクリート構造物が製造された時であり、終期は鉄筋コンクリート構造物内部の鉄筋の腐食が始まる時である。コンクリートの成分に含まれるセメントは高アルカリ性であるため、鉄筋は不動態化している。潜伏期は、鉄筋が不動態化している状態を保持している期間であり、その終期は、鉄筋位置での塩化物イオン濃度が増加することで、腐食が始まる時となる。この潜伏期の期間を導出するのに用いる主なパラメータは、鉄筋コンクリート構造物を浸透する「塩化物イオンの見かけの拡散係数」と、鉄筋コンクリート構造物を構成する鉄筋の腐食の発生が開始する「腐食発生限界塩化物イオン濃度」である。
具体的には、まず鉄筋コンクリート構造物の外側表面の塩化物イオン濃度を特定する。この外側表面の塩化物イオン濃度は、「塩化物イオンの見かけの拡散係数」を導出した際の値が用いられる。そして「塩化物イオンの見かけの拡散係数」により塩化物イオンが内部の鉄筋に向けてどの程度の速度で進むかを特定し、「腐食発生限界塩化物イオン濃度」により鉄筋近傍のコンクリートが到達する期間を特定する。これにより潜伏期の期間が導出される。
なお、鉄筋コンクリート構造物中の初期塩化物イオン濃度は、コンクリート材料に依存し、初期塩化物イオン濃度が高いときは、鉄筋コンクリート構造物の潜伏期の期間の導出に用いられる。
進展期の始期は鉄筋コンクリート構造物内部の鉄筋の腐食が始まる時であり、終期は鉄筋の腐食によるコンクリートのひび割れが、その鉄筋コンクリート構造物の表面に達した時である。コンクリート内部の鉄筋の腐食が始まると、鉄筋は錆により膨張する。コンクリート内部に位置している鉄筋が膨張するため、コンクリートのひび割れが内部より始まり、このひび割れが進行すると、ひび割れは鉄筋コンクリート構造物を構成するコンクリートの表面に達する。進展期の終期は、内部のひび割れがコンクリートの表面に達する時である。この進展期の期間を導出するのに用いる主なパラメータは、鉄筋の腐食速度と、コンクリートの表面に腐食ひび割れが発生した時の、鉄筋の腐食量である。
具体的には、コンクリートの表面に腐食ひび割れが発生した時の鉄筋の腐食量を特定し、腐食速度を用いてその腐食量に達する期間が導出される。
加速期は、腐食ひび割れ発生により腐食速度が増大する期間であり、鉄筋コンクリート構造物を構成するコンクリートの表面に腐食ひび割れが発生した後、錆汁や部分的な剥離が見られ、鉄筋腐食が広範囲となる期間である。また、劣化期は腐食量の増加により耐力の低下が顕著となる期間であり、鉄筋コンクリート構造物を構成するコンクリートの表面に腐食ひび割れが多数発生し、錆汁や剥離・鉄筋の露出が大部分で見られ、鉄筋コンクリート構造物を構成する鉄筋の断面の有意な現象が見られる期間である。なお、本願の鉄筋コンクリート構造物の寿命評価では、加速期および劣化期の寿命の算出は、ほぼ同じパラメータに基づいて行われている。このため加速期と劣化期は、本明細書では「加速期・劣化期」と言う表現で一括りとして取扱い、この加速期・劣化期の始期は、特許請求の範囲に記載の「腐食の発生が開始した後」に相当し、その終期は、特許請求の範囲に記載の「鉄筋の体積減少率があらかじめ定められた限界値に達した場合」に相当する。
現実の鉄筋コンクリート構造物は、腐食ひび割れが発生した後も十分な強度を保つ。例えば国土交通省国土技術政策研究所の第523号資料「道路橋の計画的管理に関する調査研究−橋梁マネジメントシステム(BMS)−」のコンクリートの塩害の劣化予測によれば、鋼材の体積減少率が20%に達した時点を耐久性の限界点とみなしている。本願では、先に述べたように、鉄筋の体積減少率が、あらかじめ定められた限界値に達した場合を、加速期・劣化期の終期とし、鉄筋コンクリート構造物の寿命の終点としている。
具体的には、鉄筋の体積減少率について、耐久性の限界点としてあらかじめ数値を定め、この数値に達するまでの期間を、鉄筋の腐食速度により導出する。この場合、この加速期・劣化期で用いられる腐食速度、すなわち腐食ひび割れが発生した後の腐食速度は、腐食ひび割れが発生する前の腐食速度に基づいて定められていることが好ましい。
(塩化物イオンの見かけの拡散係数の導出)
塩化物イオンの見かけの拡散係数とは、塩化物イオンが鉄筋コンクリート構造物内の細孔溶液中で固定化を伴いながら濃度勾配を駆動力として移動すると見なした場合、全ての塩化物イオンを対象として拡散の速さを規定する係数である。
この塩化物イオンの見かけの拡散係数は、複数の方法により導出することが可能である。例えば、電気泳動により塩化物イオンの実効拡散係数を求め、それを塩化物イオンの見かけの拡散係数に変換する方法がある。本実施形態では、以下の方法により直接塩化物イオンの見かけの拡散係数を求める。
塩化物イオンの見かけの拡散係数は、屋外暴露試験により得られた塩化物イオンの数値から拡散方程式を用いて求められる。図2は、塩化物イオンの見かけの拡散係数を求める際の試験体11の位置の説明図である。図2は、円柱形状のコンクリートコア10(φ10cm×50cm)の軸心を紙面上横方向にした断面図であり、紙面上の左端が、浸透面である表面である。屋外暴露試験では、実構造物を模擬した供試体(150cm×100cm×50cm)が用いられる。この供試体は、各コンクリート材料で製造され、製造された供試体が海域の干満帯に設置される。この供試体が、所定の材齢に達した時点で、この供試体から直径10cm(φ10cm×50cm)のコンクリートコア10を採取する。そして、このコンクリートコア10から、扁平な円柱形状で、高さが5mmの試験体11が複数取得される。試験体11同士の間は3mmである。採取した試験体11は微粉砕され、コンクリートの単位質量当たりの全塩化物イオン量が測定される(JIS A 1154)。
次に、数1で表されるFickの拡散方程式の解の式を用いて、供試体ごとに各深さ位置で測定された塩化物イオン濃度の値を回帰分析することで、塩化物イオンの見かけの拡散係数が導出される。
Figure 2019078544
Dc:見かけの拡散係数(cm/年)
C0:表面塩化物イオン濃度(kg/m
C’:初期塩化物イオン濃度(kg/m
X:かぶり(cm)
t:供用期間(年)
erf(x):誤差関数
なお、見かけの拡散係数は、供用期間に依存する数値である。このため、本実施形態では、見かけの拡散係数と合わせて供試体の材齢を用いて寿命を評価することが好ましい。
見かけの拡散係数がコンクリートコアを採取して導出されることにより、現実の環境を模擬した環境で試験された結果で見かけの拡散係数が導出されるので、この点で、コンクリートを構成する材料の評価をより高精度に行うことができる。また、供試体の材齢を用いることで、さらにその評価の精度を上げることができる。
(腐食発生限界塩化物イオン濃度の導出)
腐食発生限界塩化物イオン濃度とは、不動態被膜の破壊により鋼材の自然電位の低下が開始するイオン濃度をいう。具体的には、鋼材を埋め込んだ供試体を塩化ナトリウム水溶液に浸漬させ、外部から塩化物イオンを供給したときに、不動態被膜の破壊により鋼材の自然電位の低下が開始する時点を腐食開始時点とする。この時点における鋼材位置での塩化物イオン濃度が腐食発生限界塩化物イオン濃度である。本実施形態で、腐食発生限界塩化物イオン濃度は、以下の方法により導出されている。
図3には、本実施形態における腐食発生限界塩化物イオン濃度の測定方法の説明図を示す。測定装置20は、測定対象である角柱供試体21を収めることが可能な容器24と、この容器24内に貯えられた塩化ナトリウム水溶液22からの電位を検出する照合電極25と、この照合電極25からの電位を記録する記録装置23とを含んで構成されている。
角柱供試体21は、単鉄筋26(D13)を内部に備えた形で、コンクリート材料ごとに製作されている。角柱供試体21は、材齢28日まで封かん養生された後、その側面(図3の紙面において上下の面以外の面)の4面がエポキシ樹脂で被覆されている。
この測定装置で、自然電位が低下した時の鋼材(単鉄筋26)位置での塩化物イオン濃度を求める。測定は、容器24内に角柱供試体21を設置し、10%の塩化ナトリウム水溶液22を角柱供試体21の底面が浸漬するように注入する。単鉄筋26と塩化ナトリウム水溶液22間の自然電位を照合電極25で検出し、その値を記録装置23で記録する。
この自然電位が低下した時点が、鉄筋の腐食開始時点であるので、自然電位が低下した直後に角柱供試体21を容器24から取出し、角柱供試体21を割裂して、鋼材(単鉄筋26)に接触しているコンクリートの塩化物イオン濃度を測定する。なおこの際、単鉄筋26の腐食を目視で確認するとともに、このときの鉄筋かぶり位置での塩化物イオン濃度を、Fickの拡散方程式の解の式より導出する。
(鉄筋の腐食速度の導出)
本明細書で「鉄筋の腐食速度」とは、鉄筋コンクリート構造物を構成する鉄筋の質量損失速度を言い、例えば単位はmg/cm/年と言う形で表される。例えば、「腐食発生限界塩化物イオン濃度の導出」において用いられているものと同じ角柱供試体21をコンクリート材料ごとに製作し、その製作された角柱供試体21に対して、分極抵抗法により腐食速度を測定する。分極抵抗法による測定器としては、例えば(株)四国総合研究所の携帯型鉄筋腐食診断器CM−V相当品等を用いることができる。
本実施形態で用いられる鉄筋の腐食速度は、腐食発生限界塩化物イオン濃度に達した後のものであり、進展期および加速期・劣化期で用いられるパラメータである。図4には、腐食ひび割れ発生前後の腐食速度の比較図を示す。この図において、腐食ひび割れ発生前は、進展期に該当し、この時の腐食速度がX軸で表されている。これに対し腐食ひび割れ発生後は加速期・劣化期に該当し、この時の腐食速度がY軸で表されている。このグラフから、腐食ひび割れ発生後の腐食速度は、腐食ひび割れ発生前の腐食速度の一次関数として表されていることが分かる。この結果より、腐食ひび割れ発生後の腐食速度は、腐食ひび割れ発生前の腐食速度に基づいて定めることも可能である。
腐食ひび割れが発生した後の腐食速度が、腐食ひび割れが発生する前の腐食速度に基づいて定められている場合は、腐食ひび割れ前後での腐食速度の相違を鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法に容易に反映できる。
なお、腐食速度は、コンクリート材料内の内在塩分量により異なるので、それぞれのコンクリート材料に対して、内在塩分量を変更したもので腐食速度を導出することが好ましい。例えば、内在塩分量を腐食発生限界塩化物イオン濃度以上となる3kg/mおよび5kg/mとした角柱供試体を製作し、腐食速度を導出することができる。
鉄筋コンクリート構造物の内在塩分量を用いることで、コンクリートを構成する材料の評価をさらに高精度に行うことができる。
(鉄筋の腐食量)
本明細書で「鉄筋の腐食量」とは、鉄筋コンクリート構造物を構成する鉄筋について、腐食前の質量から、腐食後の質量を差し引くことで求められた値であり、例えば単位はmg/cmと言う形で表される。その鉄筋の腐食前の質量に対する、その鉄筋の腐食量の割合が、鉄筋の体積減少率である。例えば、「腐食発生限界塩化物イオン濃度の導出」において用いられているものと同じ角柱供試体21をコンクリート材料と後に製作し、その製作された角柱供試体21に対して、促進腐食試験を行い、実際の鉄筋の腐食量が求められる。
促進腐食試験は以下のように行われる。まず角柱供試体21を材齢28日まで封かん養生する。その後温度70℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽内にこの角柱供試体21を配置する。そして角柱供試体21のコンクリート表面に腐食ひび割れが発生した時点で、角柱供試体21を割裂し、取り出した鉄筋を10%濃度のクエン酸二アンモニウム溶液に浸漬し腐食生成物を除去する。最後に腐食生成物を除去した後の鉄筋の質量を測定し、実験前に測定していた鉄筋の質量からその質量を差し引くことで、鉄筋の腐食量が求められる。
(鉄筋コンクリート構造物の寿命導出)
図5には、本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法を実施する際のフローチャートを示す。このフローチャートを実施するためのソフトウェアは、コンピュータ内のメモリーに格納されており、コンピュータの使用者が、各パラメータを入力することで、鉄筋コンクリート構造物の寿命が導出される。
まず、ステップ01(以下S01のように記載する)としてコンピュータの使用者は、鉄筋コンクリート構造物を構成するコンクリート材料の配合などをコンピュータの入力画面から入力する。
次にS02でコンピュータの使用者は、(1)見かけの拡散係数、(2)腐食発生限界塩化物イオン濃度、(3)腐食速度、(4)腐食ひび割れ発生時の鉄筋腐食量の各パラメータを入力する。この際、見かけの拡散係数を導出する際に用いた供試体の材齢や、腐食速度等を導出する際に用いたコンクリートの材料の内在塩分量を入力することも可能である。
次にS03でコンピュータの使用者は、潜伏期および進展期の各期間を算出する。そしてS04で、コンピュータの使用者は加速期・劣化期の期間を算出し、これらの期間を加えることで、鉄筋コンクリート構造物の寿命を導出することができる。
上記したように、(1)見かけの拡散係数、(2)腐食発生限界塩化物イオン濃度、(3)腐食速度、(4)腐食ひび割れ発生時の鉄筋腐食量の4つのパラメータを用いて、鉄筋コンクリート構造物の寿命という、総合的で客観的なパラメータが導出され、かつ、体積減少率という現実に沿った限界値を基準にして、鉄筋コンクリート構造物の寿命の終点を定めている。これらの導出に用いたパラメータには、鉄筋コンクリート構造物の置かれた個別の環境や、個別の構造に対するパラメータは含まれていないので、本発明の鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法は、これらに影響されずに、鉄筋コンクリート構造物に客観的に当て嵌まる評価を総合的に行い、コンクリートを構成する材料の評価を高精度に行うことができる。
(実施例)
図6には、本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法で、複数のコンクリート材料ごとに導出した結果を示す。横軸は鉄筋コンクリート構造物の寿命であり、縦軸は異なる成分で構成されたコンクリート材料(材料1〜4)を示している。例えば材料1と2では、全体の寿命が異なっているが、潜伏期の期間の長さの影響が大きいことが分かった。また、材料1、2と材料3との間では、材料3が寿命の点では優れていることが分かるが、特に材料3では加速期・劣化期の期間の長さの影響が大きいことが分かった。
10 コンクリートコア
11 試験体
20 測定装置
21 角柱供試体
22 塩化ナトリウム水溶液
23 記録装置
24 容器
25 照合電極
26 単鉄筋

Claims (4)

  1. 鉄筋コンクリート構造物を浸透する塩化物イオンの見かけの拡散係数と、
    前記鉄筋コンクリート構造物内部の鉄筋の腐食の発生が開始する、腐食発生限界塩化物イオン濃度と、
    前記腐食の発生が開始した後の、前記鉄筋の腐食速度と、
    前記鉄筋コンクリート構造物を構成するコンクリートの表面に腐食ひび割れが発生した時の前記鉄筋の腐食量と、を用い、
    前記鉄筋の体積減少率があらかじめ定められた限界値に達した場合を前記鉄筋コンクリート構造物の寿命の終点とした、
    ことを特徴とする鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法。
  2. 腐食ひび割れが発生した後の前記腐食速度は、腐食ひび割れが発生する前の前記腐食速度に基づいて定められている、
    ことを特徴とする請求項1記載の鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法。
  3. 前記見かけの拡散係数は、
    前記鉄筋コンクリート構造物を構成するコンクリートの材料により製造された供試体から、コンクリートコアを採取して導出され、
    さらに、前記寿命評価方法は、前記供試体の材齢を用いる、
    ことを特徴とする請求項1または2記載の鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法。
  4. 前記寿命評価方法は、前記鉄筋コンクリート構造物の内在塩分量をさらに用いる、
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法。
JP2017203261A 2017-10-20 2017-10-20 鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法 Pending JP2019078544A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017203261A JP2019078544A (ja) 2017-10-20 2017-10-20 鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017203261A JP2019078544A (ja) 2017-10-20 2017-10-20 鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2019078544A true JP2019078544A (ja) 2019-05-23

Family

ID=66627597

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017203261A Pending JP2019078544A (ja) 2017-10-20 2017-10-20 鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2019078544A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021076427A (ja) * 2019-11-06 2021-05-20 鹿島建設株式会社 仕上材が塗布されたコンクリートの評価方法
CN113740140A (zh) * 2021-07-30 2021-12-03 淮浙电力有限责任公司凤台发电分公司 一种火电厂用铁素体钢焊接接头的失效风险等级获取方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021076427A (ja) * 2019-11-06 2021-05-20 鹿島建設株式会社 仕上材が塗布されたコンクリートの評価方法
CN113740140A (zh) * 2021-07-30 2021-12-03 淮浙电力有限责任公司凤台发电分公司 一种火电厂用铁素体钢焊接接头的失效风险等级获取方法
CN113740140B (zh) * 2021-07-30 2024-03-22 淮浙电力有限责任公司凤台发电分公司 一种火电厂用铁素体钢焊接接头的失效风险等级获取方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Mancini et al. Effect of bond degradation due to corrosion–a literature survey
Al-Harthy et al. Concrete cover cracking caused by steel reinforcement corrosion
Ouzaa et al. Numerical model for prediction of corrosion of steel reinforcements in reinforced concrete structures
Sun et al. Monitoring of steel corrosion and cracking in cement paste exposed to combined sulfate–chloride attack with X-ray microtomography
JP2019078544A (ja) 鉄筋コンクリート構造物の寿命評価方法
Li et al. Corrosion fatigue mechanism and life prediction of railway axle EA4T steel exposed to artificial rainwater
JP5278245B2 (ja) 鉄筋コンクリートの寿命評価方法及び装置
Apostolopoulos et al. Tensile properties of corroded embedded steel bars B500c in concrete
KR20160057136A (ko) 콘크리트 구조물의 잔존수명 예측 방법
Jiang et al. Influence of flexural fatigue on chloride threshold value for the corrosion of steels in Ca (OH) 2 solutions
Habibi Finite element modelling of corrosion damaged reinforced concrete structures
Qiao et al. Experimental and analytical evaluation of concrete cover spalling behavior due to local corrosion
Zhu et al. Entire process simulation of corrosion due to the ingress of chloride ions and CO2 in concrete
Patil et al. Performance evaluation of accelerated corrosion techniques using electrochemical measurements and acoustic emission parameters
Freddi et al. Phase-field simulations of cover cracking in corroded RC beams
Vishwanath et al. Three-dimensional corrosion propagation in steel rebars of RC columns with early-age cracks
JP2019200113A (ja) 鉄筋コンクリート構造物の寿命計算プログラムおよびこのプログラムを格納した記録媒体
Akiyama et al. Reliability-based durability design and service life assessment of concrete structures in a marine environment
Polies Asmaro Identification of concrete fracture parameters using digital image correlation and inverse analysis
Elinwa et al. Sawdust ash as an inhibitor for reinforcement corrosion in concrete
Aboalarab The Effect of Crack Opening Size and Repair Methods on Corrosion of Steel Reinforcement in Concrete
Chiarella Effect of mechanical cracking on the corrosion of steel reinforcement in concrete
Busba Effect of localized corrosion of steel on chloride-induced concrete cover cracking in reinforced concrete structures
Kawasaki et al. Corrosion-induced cracks in concrete and hybrid non-destructive evaluation (NDE) for evaluation in rebar corrosion
NGUYEN Service Life Assessment of Reinforced Concrete Structures Based on Numerical Analysis of Chloride Ingress into Concrete