以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
図1から図6に、本発明の膜状部材の支持方法及び膜状部材の支持構造の実施形態の一例を示す。
本実施形態の膜状部材の支持方法は、支持部4を備える枠体3に支持部4を介して支持される線状部材2によって膜状部材1の周縁部が全周に亙って支持されるようにしている。
また、本実施形態の膜状部材の支持構造は、膜状部材1と、線状部材2と、支持部4を備える枠体3とを有し、線状部材2は支持部4を介して枠体3に支持され、膜状部材1の周縁部が全周に亙って線状部材2によって支持されるようにしている。
さらに、本実施形態の膜状部材の支持構造は、支持部4が緩衝体6を有し、具体的には、支持部4が外周壁としての外径保持部材4aを有すると共に、当該外径保持部材4aの内側に緩衝体6が収容され、当該緩衝体6が外周壁を構成する外筒6Aと当該外筒6Aの内側に配設される緩衝部材6Bとを有するようにしている。
枠体3は、膜状部材1を支持するためのものであり、膜状部材1によって防護する物、具体的には例えば構造物全体若しくは一部や種々の設備など(以下、防護対象物という)を覆う範囲を囲むように設けられる。
枠体3は、防護対象物を覆う範囲を閉じた領域として区画するように一回り連続するものとして設けられることが好ましいものの、部分的に途切れていても構わない。また、枠体3として独立した部材によって枠体3が構成されることが好ましいものの、防護対象物に纏わる設備・施設としてもとより存在するものを枠体3として利用するようにしても良い。
枠体3の材質及び断面形状は、特定のものに限定されるものではなく、想定される飛来物などに対する防護設備として通常必要とされる強度を発揮し得るものであれば良い。具体的には例えばH形鋼,I形鋼,山形鋼,溝形鋼が用いられ得る。
枠体3の平面視形状は、特定の形状に限定されるものではなく、防護対象物を覆う範囲を囲むように適当な形状(具体的には例えば、種々の多角形や楕円形・円形やこれらが複数組み合わされた形状)に設定される。本実施形態では、枠体3は、平面視形状が長方形であるように形成される。
枠体3は、本実施形態では具体的には、長方形の各辺がH形鋼によって構成されると共に長方形の各角部3Aが対向する一対の上下の鋼板3a,3bによって構成され、これらH形鋼と上下の鋼板3a,3bそれぞれとが溶接されて形成される。なお、図1は、枠体3の各辺を構成するH形鋼の上フランジと枠体3の各角部3Aの上側鋼板3aとを取り除いた状態(言い換えると、上フランジ及び上側鋼板3aを透明にした状態)の図である。
膜状部材1は、飛来物などから防護対象物を防護するためのものであり、枠体3に支持されて防護対象物を覆うように張られて設けられる。
膜状部材1の態様や材質は、特定のものに限定されるものではなく、想定される飛来物などに対する防護設備として通常必要とされる強度を有するものであれば良い。具体的には例えばステンレス鋼や鉄などの金属材料製の金網(例えば、菱形金網(高強度金網や特殊菱形金網とも呼ばれるものを含む),亀甲金網など),種々の合成樹脂繊維製や天然繊維製の繊維網などが用いられ得る。
膜状部材1として、本実施形態では具体的には、素線径(言い換えると、列線の径)が4.0 mm で素線強度が1400 N/mm2 の亜鉛メッキ鋼線を用いて網目の開口寸法(目合い寸法とも呼ばれる)が50 mm として三次元的に編み込まれた菱形金網が用いられる。本実施形態の膜状部材1は、また、枠体3の各辺を構成する各H形鋼のウェブによって囲まれる空間よりも若干小さい平面視矩形に形成される。
なお、上記の例は好ましい一例であると言えるものの、膜状部材1として金網が用いられる場合の当該金網の素線径,素線強度,及び開口寸法は、上記の例に限定されるものではなく、また、特定の値や範囲に限定されるものではない。具体的には例えば、素線径は大凡3.5〜4.5 mm 程度の範囲のいずれかの値に設定されることが一例として挙げられる。また、素線強度は、大凡1000 N/mm2 程度以上のものが選択されることが一例として挙げられ、そして、大凡1200 N/mm2 程度以上のものが好ましい範囲として挙げられ、さらに、大凡1400 N/mm2 程度以上のものがより一層好ましい範囲として挙げられる。また、開口寸法は大凡35〜55 mm 程度の範囲のいずれかの値に設定されることが一例として挙げられる。
線状部材2は、膜状部材1と枠体3との間に介在して膜状部材1を枠体3に支持させるためのものであり、膜状部材1の周縁部に配設される。
線状部材2の材質は、特定のものに限定されるものではなく、想定される飛来物などに対する防護設備としての膜状部材1を支持する部材として通常必要とされる強度を有するものであれば良い。具体的には例えば硬鋼線やステンレス鋼線やピアノ線などによって撚られたワイヤロープが用いられ得る。
膜状部材1への線状部材2の取り付け方は、特定のものに限定されるものではなく、膜状部材1の態様などに合わせて適当なものが適宜選択される。具体的には例えば、膜状部材1を縫うようにして線状部材2が取り付けられるようにしても良いし、グリップなどを用いて線状部材2が取り付けられるようにしても良い。
本実施形態では具体的には、線状部材2としてステンレスロープが用いられ、そして、線状部材2としてのステンレスロープは膜状部材1の各辺の周縁部を並縫い(ぐし縫いとも呼ばれる)するように金網の目に通されることによって膜状部材1に取り付けられる。
線状部材2の両端は、第一の取付具と第二の取付具とによってそれぞれ枠体3に取り付けられる。
本実施形態では、線状部材2の一端にはアルミロック加工2aによって輪2Aが形成され、他端にはワイヤグリップ10が用いられて輪2Bが形成される。なお、図1では、ワイヤグリップ10の図示を省略している。
また、枠体3を構成する二組の対向する一対の辺のうち、一方の対向する一対の辺のそれぞれには第一の取付具としてのシャックル11,11が取り付けられ、他方の対向する一対の辺のそれぞれには第二の取付具としてのパイプ式ターンバックル12,12が取り付けられる。なお、本実施形態では、シャックル11,11及びパイプ式ターンバックル12,12は、枠体3を構成するH形鋼の上下のフランジとウェブとに固定された取付部を介し、ウェブの外側(即ち、膜状部材1側の反対側)に取り付けられる。ただし、シャックル11やパイプ式ターンバックル12の取り付け構造はこれに限られるものではない。
そして、線状部材2の一端の輪2Aがシャックル11に連結され、他端の輪2Bがパイプ式ターンバックル12に連結される。これにより、線状部材2の両端が枠体3に取り付けられる。
なお、線状部材2の枠体3への取り付けの態様は上述のものには限られない。すなわち、アルミロック加工2aやワイヤグリップ10の利用によって線状部材2の端部に輪2A,2Bが形成されることは本発明において必須の構成ではなく、また、第一の取付具や第二の取付具としてシャックルやパイプ式ターンバックルを用いることも本発明において必須の構成ではない。
支持部4は、線状部材2を枠体3に支持させるためのもの、言い換えると、周縁部に線状部材2が取り付けられた膜状部材1を枠体3に装着させるためのものであると共に、膜状部材1及び線状部材2に作用する飛来物などの衝撃荷重を吸収するためのものである。
支持部4は、本実施形態では、平面視長方形の枠体3の四つの角部3Aのそれぞれに一つずつ合計四つ設けられる。
支持部4は、外周壁である外径保持部材4a、及び、当該外径保持部材4aの内側に収容される固定ボルト5と緩衝体6と抑え板7とを有する。本実施形態では、支持部4は、枠体3の角部3Aを構成する上側鋼板3aと下側鋼板3bとの間に配設される。
外径保持部材4aは、支持部4が変形する際に当該支持部4がそのまとまりを維持するためのものであり、円筒状に形成される。
外径保持部材4aの材質及び板厚は、特定のものに限定されるものではなく、或る程度の荷重(具体的には、線状部材2に発生すると想定される張力)によって変形はするものの破断はしない材質と板厚との組み合わせが適宜選択される。本実施形態では、外径保持部材4aとして、適当な板厚を有する鋼管が用いられる。
固定ボルト5は、支持部4を枠体3に対して位置固定するためのものであり、枠体3の角部3Aを構成する上側鋼板3aと下側鋼板3bとに対して固定されて取り付けられる。本実施形態では具体的には、下側鋼板3bの上面に台座3cが溶接によって取り付けられ、三本の固定ボルト5が上側鋼板3aと台座3cの天板とを貫通してナットにより締め付けられることによって上下の鋼板3a,3bに固定されて取り付けられる。なお、固定ボルト5の本数は、三本に限られるものではなく、一本又は二本でも良いし、四本以上でも良い。
緩衝体6は、自身が横方向に変形する(言い換えると、横方向に押し潰される)ことにより、線状部材2によって伝達される、膜状部材1に作用する飛来物などの衝撃荷重を吸収するためのものである。
緩衝体6は、外周壁を構成する外筒6Aと、当該外筒6Aの内側に配設される緩衝部材6Bとを有する。
外筒6Aは、自身が変形することによって衝撃荷重を吸収すると共に、緩衝体6が変形する際に当該緩衝体6がそのまとまりを維持するためのものである。
外筒6Aの材質及び板厚は、特定のものに限定されるものではなく、想定される荷重(具体的には、線状部材2に発生すると想定される張力)を変形することによって吸収するのに適当な材質と板厚との組み合わせが適宜選択される。本実施形態では、外筒6Aとして、想定される衝突荷重に基づいて決定された適当な板厚を有する鋼管が用いられる。
緩衝部材6Bは、外筒6Aと共に変形することによって衝撃荷重を吸収するためのものである。
緩衝部材6Bの材質は、特定のものに限定されるものではなく、想定される荷重(具体的には、線状部材2に発生すると想定される張力)を変形することによって吸収するのに適当なものが適宜選択される。
本実施形態では、緩衝部材6Bとして、複数の鋼管が外筒6Aの内側に配設される。具体的には、図5に示すように、外筒6A内に、同一寸法の七本の緩衝部材6Bが、相互の隙間及び外筒6A内周面との隙間が殆ど無い態様で配設される。
なお、緩衝体6は、上述のように自身が横方向に変形する(言い換えると、横方向に押し潰される)ことにより線状部材2によって伝達される膜状部材1に作用する衝撃荷重を吸収し得るのであれば、支持部4の内側に完全に収容される態様に限られるものではなく、一部若しくは全部が露出していても良い。
抑え板7は、固定ボルト5と緩衝体6との間に配設され、支持部4の外径保持部材4a内における緩衝体6の移動を制限するためのものである。具体的には、緩衝体6が、外径保持部材4a内において、固定ボルト5の、当初配置される膜状部材1側の反対側から膜状部材1側へと移動しないようにするためのものである。
抑え板7の材質は、特定のものに限定されるものではなく、緩衝体6が変形する際に固定ボルト5と緩衝体6との間に介在して緩衝体6の移動を制限するときに大きく変形したり破断したりしない程度の強度を有するものが適宜選択される。本実施形態では、抑え板7として、鋼板が用いられる。
抑え板7は、当該抑え板7が配設されている支持部4を頂点として当該支持部4と両側の隣接する支持部4,4とを結んだときの角の二等分線と、抑え板7の面が直交する向き(言い換えると、角度)に配設されることが好ましい。
本実施形態では、支持部4は平面視長方形の枠体3の四つの角部3Aのそれぞれに設けられているので、或る支持部4を頂点として当該支持部4と両側の隣接する支持部4,4とを結んだときの角は90度である。そこで、本実施形態では具体的には、この90度をなす角の二等分線と、三本の固定ボルト5の横並びの方向(角度)が直交するように三本の固定ボルト5が配設されると共に、抑え板7の面が直交するように抑え板7が配設される。
上述のように抑え板7の面の向きを調整することにより、或る支持部4から両側の隣接する支持部4,4それぞれに架け渡される線状部材2,2に発生する張力の合力の向きが抑え板7の面に直交することになり、或る支持部4が線状部材2によって変形する際に緩衝体6に作用する荷重を当該緩衝体6に偏りなく作用させることが可能になる。
そして、支持部4全体としては、三本横並びの固定ボルト5の外側(即ち、膜状部材1側の反対側)に抑え板7が配設され、当該抑え板7の外側(即ち、膜状部材1及び固定ボルト5側の反対側)に緩衝体6が配設され、これらボルト5と抑え板7と緩衝体6とを囲むように外径保持部材4aが配設される。
なお、本実施形態の抑え板7には、固定ボルト5側の面に、対向する一対の垂直板7a,7aが設けられる。そして、これら垂直板7a,7aが固定ボルト5の間に挿し入れられることにより、固定ボルト5に対する抑え板7の横移動が制限される。ただし、垂直板7aが設けられることは本発明における抑え板7としての必須の構成ではなく、抑え板7が単なる板状の部材として形成されるようにしても良い。
また、固定ボルト5が一本のみ配設される場合には、当初配設された方向(角度)から抑え板7が回転しないように、抑え板7が固定ボルト5に固定されることが好ましい。
なお、支持部4の内側に抑え板7を配設することは本発明において必須の構成ではない。すなわち、例えば本実施形態のように支持部4内に複数の固定ボルト5を配設し、これら複数の固定ボルト5によって外径保持部材4a内における緩衝体6の移動が制限される場合には、抑え板7を配設しないようにしても良い。
ただし、抑え板7を配設することにより、緩衝体6が変形する際に固定ボルト5に作用する荷重が複数の固定ボルト5に分散されるので、特定の固定ボルトのみに荷重が集中して固定ボルトが破損してしまうことが防止される。
続いて、主に図1及び図6を参照しながら、支持部4による線状部材2の支持について説明する。ここで、説明の便宜のため、本実施形態の平面視長方形の枠体3の四つの角部3Aのそれぞれに一つずつ設けられた各支持部4について、或る角部3Aの支持部4(図6では左上の支持部4)から時計回りに順に4A,4B,4C,4Dとする。また、膜状部材1の各辺について、支持部4Aと4Bとの間の一辺から時計回りに順に1A,1B,1C,1Dとする。
まず、膜状部材1の辺1Aに沿う枠体3の一辺に第一の取付具であるシャックル11によって一端が固定された線状部材2が、膜状部材1の辺1Aに沿って支持部4Aに向けて配設され、膜状部材1側の反対側から膜状部材1側へと支持部4Aに巻き回され(外径保持部材4a外周との接触は2分の1周)、膜状部材1側から支持部4Aを離れて膜状部材1の辺1Aの縁部を並縫いするように膜状部材1(金網)の目に通されて支持部4Bに向けて配設され、膜状部材1から抜けて膜状部材1(辺1A)側から膜状部材1(辺1B)側へと支持部4Bに巻き回され(外径保持部材4a外周との接触は4分の3周)、膜状部材1側から支持部4Bを離れて膜状部材1の辺1Bの縁部を並縫いするように膜状部材1(金網)の目に通されて支持部4Cに向けて配設され、膜状部材1から抜けて膜状部材1側から膜状部材1側の反対側へと支持部4Cに巻き回され(外径保持部材4a外周との接触は2分の1周)、膜状部材1側の反対側から支持部4Cを離れて膜状部材1の辺1Bに沿って配設され、膜状部材1の辺1Bに沿う枠体3の一辺に第二の取付具であるパイプ式ターンバックル12によって他端が固定される。
さらに、上述の支持の仕組みを膜状部材1の重心を中心として180度回転させたもう一つの支持の仕組みが組み合わされる。すなわち、膜状部材1の辺1Cに沿う枠体3の一辺に第一の取付具であるシャックル11によって一端が固定された線状部材2が、膜状部材1の辺1Cに沿って支持部4Cに向けて配設され、膜状部材1側の反対側から膜状部材1側へと支持部4Cに巻き回され(外径保持部材4a外周との接触は2分の1周)、膜状部材1側から支持部4Cを離れて膜状部材1の辺1Cの縁部を並縫いするように膜状部材1(金網)の目に通されて支持部4Dに向けて配設され、膜状部材1から抜けて膜状部材1(辺1C)側から膜状部材1(辺1D)側へと支持部4Dに巻き回され(外径保持部材4a外周との接触は4分の3周)、膜状部材1側から支持部4Dを離れて膜状部材1の辺1Dの縁部を並縫いするように膜状部材1(金網)の目に通されて支持部4Aに向けて配設され、膜状部材1から抜けて膜状部材1側から膜状部材1側の反対側へと支持部4Aに巻き回され(外径保持部材4a外周との接触は2分の1周)、膜状部材1側の反対側から支持部4Aを離れて膜状部材1の辺1Dに沿って配設され、膜状部材1の辺1Dに沿う枠体3の一辺に第二の取付具であるパイプ式ターンバックル12によって他端が固定される。
上述の二つの支持の仕組みの組み合わせにより、二本の線状部材2が支持部4を介して枠体3に支持され、延いては、これら二本の線状部材2により各辺1A,1B,1C,1D(即ち、膜状部材1の周縁部の全周)が支持されることによって膜状部材1が支持部4を介して枠体3に支持される。
また、支持部4による線状部材2の支持の態様を図1や図6に示すようなものにすることにより、枠体3の各辺を構成するH形鋼のウェブの膜状部材1側に膜状部材1を支持するための線状部材2を配設すると共に膜状部材1側の反対側に第一の取付具としてのシャックル11,11及び第二の取付具としてのパイプ式ターンバックル12,12を配設し且つ線状部材2を支持部4に巻き回す構成が実現される。
上述のように支持部4を緩衝体6を有する構造にすると共に当該支持部4に支持される線状部材2によって膜状部材1を支持することにより、膜状部材1に飛来物などが衝突したときの衝撃荷重によって破壊されることなく、例えば構造物全体若しくは一部や種々の設備などの防護設備として確実な防護機能を発揮することが可能になる。
具体的には、膜状部材1に飛来物などが衝突すると、衝撃荷重が膜状部材1から線状部材2へと伝達され、各支持部4の間の線状部材2のそれぞれに張力が発生する。そして、膜状部材1から線状部材2へと伝達された衝撃荷重が、枠体3の角部3Aに、具体的には角部3Aに設けられた支持部4に集中する。そして、線状部材2が巻き回されている支持部4には、支持部4を横方向に押し潰そうとする荷重が線状部材2によって作用する。
このとき、上述のような線状部材2の配設及び線状部材2の支持部4への巻き回しの仕方により、膜状部材1側の反対側から膜状部材1側に向けて支持部4を横方向に押し潰そうとする荷重、具体的には支持部4の両側の線状部材2,2に発生する張力の合力が支持部4に作用する。
そして、固定ボルト5及び抑え板7の外側(即ち、膜状部材1側の反対側)に緩衝体6が配設され、外径保持部材4aと共に緩衝体6を構成する外筒6A及び緩衝部材6Bが圧縮変形することにより、膜状部材1に作用する飛来物などの衝撃荷重が吸収される。
以上のように構成された本発明の膜状部材の支持方法及び膜状部材の支持構造によれば、膜状部材1の耐衝撃性能を十分に発揮させることができ、尚且つ、膜状部材1が装着される枠体3の変形を抑制すると共に膜状部材1を支持する線状部材2に発生する張力の急激な増加を緩和して線状部材2の脆性的な破断を防止することができる。
なお、上述の形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施が可能である。例えば、上述の実施形態では全ての支持部4が緩衝体6を有するようにしているが、全ての支持部4が緩衝体6を有することは本発明において必須の構成ではない。すなわち、一部の支持部4が緩衝体6を有しないようにしても良いし、全ての支持部4が緩衝体6を有しないようにしても良い(なお、支持部4が緩衝体6を有しない場合には抑え板7は不要である)。このとき、緩衝体6を有しない支持部4は、例えば上述の実施形態のように外径保持部材4aが円筒状に形成されて自身が変形することを前提にした形態でも良いし、自身が変形することを前提にしない形態でも良い。そして、支持部4が緩衝体6を有しないものの自身が変形することを前提にした形態の場合には、外径保持部材4aの材質と板厚との組み合わせを適当に調整することにより、外径保持部材4aが圧縮変形することによって膜状部材1に作用する飛来物などの衝撃荷重が吸収される。一方、支持部4が緩衝体6を有さず且つ自身が変形することを前提にしない形態であっても、本発明者が実施した、全周をワイヤロープで支持した全周可動型試験体を用いての重錘等を衝突させる自由落下試験の結果では、金網が過度に拘束されておらずワイヤロープのたわみによって自由に変形することができるために金網の所定の耐衝撃性能が発揮されて重錘の貫通が防止されると共にワイヤロープの破断が防止されることが明らかになっている。すなわち、全ての支持部4が緩衝体6を有しない場合でも、膜状部材1の全周を線状部材2で支持する構成であれば一定の効果は発揮される。なお、この場合の支持部4は、線状部材2を枠体3の形状に合わせて方向転換させる働きをし、枠体3の適当な位置に適宜設けられる。
また、上述の実施形態では二本の線状部材2が用いられて一枚の膜状部材1が枠体3に支持されるようにしているが、膜状部材1の枚数は一枚に限られるものではなく、各部材の裏面と表面とが上下方向において対向して配置された二枚以上の膜状部材1が一つの枠体3に支持されるようにしても良い。なお、上下に対向して配置された二枚の膜状部材1が支持される場合には、例えば図7に示すように上述の形態における支持の仕組みを裏返して重ね合わせるようにすることが考えられる。図7に示すようにすることにより、各支持部4への線状部材2の巻き回しの偏りをなくして衝突荷重を適切に分散させることができると共に、第一の取付具(シャックル11)及び第二の取付具(パイプ式ターンバックル12)の枠体3への収まり・取り付けを適切なものにすることができる。なお、図7では、ワイヤグリップ10の図示を省略している。
また、一枚以上の膜状部材1を支持する枠体3が複数段積み重ねられ、これによって膜状部材1が複数枚重ねられて配設されるようにしても勿論良い。
また、上述の実施形態では二本の線状部材2によって膜状部材1の各辺1A,1B,1C,1Dが支持される、即ち、膜状部材1の周縁部が全周に亙って支持されるようにしているが、膜状部材1の全周縁部の支持の態様はこれに限られるものではない。具体的には例えば、図8に示すように一本の線状部材2によって膜状部材1の周縁部が全周に亙って支持されるようにしても良いし、図9に示すように四本の線状部材2によって膜状部材1の周縁部が全周に亙って支持されるようにしても良い。
また、上述の実施形態では、図1及び図6を用いて説明したように、支持部4A及び支持部4Cに対しては外径保持部材4a外周との接触が2分の1周になるように線状部材2が巻き回され、また、支持部4B及び支持部4Dに対しては外径保持部材4a外周との接触が4分の3周になるように線状部材2が巻き回されるようにしているが、支持部4への線状部材2の巻き回され方は上述の実施形態における態様に限られるものではない。具体的には例えば、支持部4の膜状部材1側の反対側に単に配設される(外径保持部材4a外周との接触は4分の1周)ようにしても良い。
また、上述の実施形態では第一の取付具としてのシャックル11,11と第二の取付具としてのパイプ式ターンバックル12,12とが用いられて線状部材2が枠体3に取り付けられるようにしているが、線状部材2の枠体3への取り付けの態様はこれに限られるものではなく、線状部材2の少なくとも一端が引張力に対して引張りの向きに変形しつつ抵抗力を発揮する(言い換えると、引張りの向きに変形しつつ抵抗を発生させて引張のエネルギーを変換・吸収する)機構によって(言い換えると、機構を介在させて)枠体3に取り付けられるようにしても良い。そして、この場合には特に、支持部4が緩衝体6を有しないようにしても良い。すなわち、引張力に対して引張りの向きに変形しつつ抵抗力を発揮する機構を用いることにより、線状部材に発生する張力の急激な増加を緩和することができる。引張力に対して引張りの向きに変形しつつ抵抗力を発揮する機構としては、具体的には例えば引張コイルばねやオイルダンパなどが考えられる。
また、上述の実施形態では支持部4内の緩衝体6を外筒6Aと当該外筒6A内の緩衝部材6Bとで構成するようにしているが、緩衝体6の構成は、自身が横方向に変形する(言い換えると、横方向に押し潰される)ことによって衝撃荷重を吸収し得るものであれば、上述の実施形態におけるものには限られない。具体的には例えば、図10(A)に示すように外筒6Aを設けずに複数の管状の緩衝部材6Bを配設するようにしたり、同図(B)に示すように複数の管状部材6Cを同心円状に複層になるように配設するようにしたりしても良い。なお、これらの場合の緩衝部材6Bや管状部材6Cとしては鋼管が用いられることが考えられる。ただ、上述の実施形態における緩衝体6の構成は、1)緩衝部材6Bの変形を許容する空隙が確保される、2)緩衝部材6Bが圧縮変形すると剛性が低下するので作用する荷重が低下しても変形が進行することによって緩衝部材6Bがエネルギー吸収する時間が長時間化する、3)実際の設置(組立て)の際の緩衝部材6Bの初期配置位置の乱れが低減されると共に設置後及び変形時の緩衝部材6Bのばらつきが制限されることによって緩衝効果の品質が確保されるなどの点において好ましい。
また、上述の実施形態では支持部4内の緩衝体6を管状部材(具体的には鋼管)によって構成するようにしているが、緩衝体6は、自身が横方向に変形する(言い換えると、横方向に押し潰される)ことによって衝撃荷重を吸収し得るものであれば、上述の実施形態におけるものには限られない。具体的には例えば、水平断面においてハニカム構造を有する部材を用いるようにしたり、圧縮力に対して圧縮の向きに変形しつつ抵抗力を発揮する(言い換えると、圧縮の向きに変形しつつ抵抗を発生させて圧縮のエネルギーを変換・吸収する)機構を用いるようにしたりしても良い。圧縮力に対して圧縮の向きに変形しつつ抵抗力を発揮する機構としては、具体的には例えば圧縮コイルばねやオイルダンパなどが考えられる。
また、本発明の膜状部材の支持方法及び膜状部材の支持構造は、膜状部材1の上面側(言い換えると、表面側)や下面側(言い換えると、裏面側)に、補助膜状部材が更に配設されるようにしても良い。具体的には、例えば図1乃至図6に示す形態のように一枚の膜状部材1が枠体3に支持される場合に、補助膜状部材13が、膜状部材1の上面側に配設されたり(図11(A)参照)、膜状部材1の下面側に配設されたり(図11(B)参照)、膜状部材1の上面側及び下面側のそれぞれに配設されたり(図11(C)参照)するようにしても良い。なお、二枚以上の補助膜状部材13が重ねられて配設されるようにしても良い。
ここで、図11は膜状部材1と補助膜状部材13との上下方向における配置関係の例を説明するための概念図であり、各々の構造や寸法(相互の配置間隔を含む)は厳密なものではなく、また、膜状部材1及び補助膜状部材13以外の構成の図示は省略している。さらに、図11において膜状部材1を一点鎖線で図示しているのは、単に補助膜状部材13との区別の分かり易さを考慮してのものであり、その他の意味はない。
また、例えば図7に示す形態のように各部材の裏面と表面とが上下方向において対向して配置された二枚の膜状部材1が枠体3に支持される場合には、補助膜状部材13は、上側の膜状部材1upの上面側と下面側並びに下側の膜状部材1loの上面側と下面側とのうちのいずれの位置に配設されるようにしても良く、また、一枚若しくは複数枚配設されるようにしても良い。具体的には例えば、補助膜状部材13が、上側の膜状部材1upの上面側に配設されたり(図12(A)参照)、下側の膜状部材1loの上面側に配設されたり(図12(B)参照)、下側の膜状部材1loの下面側に配設されたり(図12(C)参照)、或いは、上側の膜状部材1upの上面側及び下側の膜状部材1loの上面側のそれぞれに配設されたり(図12(D)参照)、下側の膜状部材1loの上面側及び下側の膜状部材1loの下面側のそれぞれに配設されたり、上側の膜状部材1upの上面側及び下側の膜状部材1loの下面側のそれぞれに配設されたり、さらに、上側の膜状部材1upの上面側,下側の膜状部材1loの上面側,及び下側の膜状部材1loの下面側のそれぞれに配設されたりするようにしても良い。なお、二枚以上の補助膜状部材13が重ねられて配設されるようにしても良い。
ここで、図12は膜状部材1と補助膜状部材13との上下方向における配置関係の例を説明するための概念図であり、各々の構造や寸法(相互の配置間隔を含む)は厳密なものではなく、また、膜状部材1及び補助膜状部材13以外の構成の図示は省略している。さらに、図12において膜状部材1を一点鎖線で図示しているのは、単に補助膜状部材13との区別の分かり易さを考慮してのものであり、その他の意味はない。
補助膜状部材13としては、膜状部材1(膜状部材1up,1loを含む)と、同じ態様,材質のものが用いられても良いし、異なる態様,材質のものが用いられても良い。例えば、ステンレス鋼や鉄などの金属材料製の金網,種々の合成樹脂繊維製や天然繊維製の繊維網などが用いられ得る。
更に具体的には例えば、上述の実施形態における膜状部材1の例と同様に、素線径が大凡3.5〜4.5 mm 程度で素線強度が大凡1000 N/mm2 程度以上(なお、大凡1200 N/mm2 程度以上が好ましく、大凡1400 N/mm2 程度以上がより一層好ましい)の亜鉛メッキ鋼線が、開口寸法が大凡35〜55 mm 程度として三次元的に編み込まれた菱形金網が用いられても良い。
補助膜状部材13は、平面視において膜状部材1の全体若しくは概ね全体を覆う形状及び大きさに形成され、すなわち、平面視において膜状部材1と同じ若しくは概ね同じ形状及び大きさに、或いは、平面視において膜状部材1よりも大きく形成される。
補助膜状部材13は、膜状部材1の上面側や下面側に配設された状態で、補助膜状部材13の周縁部或いは当該周縁部の周辺の部分(言い換えると、周縁部よりもやや内側の部分)において、膜状部材1の周縁部を支持している線状部材2に取付部材14によって取り付けられる。
取付部材14は、飛来物などの衝突による衝撃荷重が加えられたときに外れてしまわない程度の強固さを発揮して補助膜状部材13を線状部材2に取り付けるものであれば、どのようなものであっても構わない。
取付部材14としては、例えば、螺旋状に巻かれたコイル(結合コイルとも呼ばれる)や結束・結合リングや結束具などが用いられ得る。
例えば、膜状部材1が金網であると共に線状部材2がロープであって膜状部材1の各辺の周縁部を並縫いするように線状部材2が金網の目に通されている場合で、補助膜状部材13も金網であり且つ取付部材14として螺旋状のコイルが用いられる場合には、具体的には例えば図13に示すように、螺旋状のコイル14の一端14aが線状部材2の内側位置(符号1eの位置)において膜状部材1の網目に挿し込まれたうえで螺旋状のコイル14が軸回転することによって線状部材2の周面外側が螺旋状のコイル14に囲まれるように(言い換えると、螺旋状のコイル14の中空の軸部に線状部材2が取り込まれるように)螺旋状のコイル14が金網の目を縫いながら進む際に、膜状部材1の上面側に配設された補助膜状部材13を一緒に刺し綴る、言い換えると巻き込むことにより、補助膜状部材13が螺旋状のコイル14によって線状部材2に取り付けられる。なお、図13では膜状部材1の上面側に補助膜状部材13が配設される場合の例を示しているが、膜状部材1の下面側に補助膜状部材13が配設される場合も、また、膜状部材1の上面側及び下面側のそれぞれに補助膜状部材13が配設される場合も同様の取り付け方が可能である。
ここで、図13は補助膜状部材13の取り付け方の例を説明するための概念図であり、膜状部材1,線状部材2,補助膜状部材13,及び螺旋状のコイル14の構造や寸法は厳密なものではない。具体的には例えば、分かり易さを考慮して膜状部材1及び補助膜状部材13の網目の図示は省略しており、また、相互の配置間隔は厳密なものではない。また、前記部材以外の構成の図示は省略している。さらに、図13において膜状部材1を一点鎖線で図示しているのは、単に他の部材との区別の分かり易さを考慮してのものであり、その他の意味はない。
あるいは、膜状部材1と線状部材2とが上述の構成の場合で、補助膜状部材13も金網であり且つ取付部材14として結束・結合リング、具体的には例えばステンレス製のねじ式接続ワイヤーリングが用いられる場合には、膜状部材1と補助膜状部材13との網目を貫通しつつ線状部材2の周囲に環状に配設されたワイヤーリングの接続部がねじ止めされることにより、補助膜状部材13がワイヤーリングによって線状部材2に取り付けられる。
あるいはまた、膜状部材1と線状部材2とが上述の構成の場合で、補助膜状部材13も金網であり且つ取付部材14として結束具、具体的には例えば結束線や結束バンドが用いられる場合には、膜状部材1と補助膜状部材13との網目を貫通しつつ線状部材2の周囲に巻き付けられた結束線や結束バンドが締められることにより、補助膜状部材13が結束線や結束バンドによって線状部材2に取り付けられる。
ここで、補助膜状部材13が線状部材2に取り付けられる際には、補助膜状部材13の周縁の全周が隙間なく線状部材2に取り付けられるようにしても良いし、周縁のうちの一部が線状部材2に取り付けられるようにしても良い。そして、必要に応じて複数個の取付部材14が用いられて良い。ただし、補助膜状部材13が四角形である場合の四辺のそれぞれのように、平面視における四方において補助膜状部材13が線状部材2に取り付けられることが好ましい。
なお、上述のような取り付け方によって補助膜状部材13が取り付けられることにより、補助膜状部材13が膜状部材1の上面に配設される場合には特に補助膜状部材13が膜状部材1に自然に接触しながら配設されることが考えられるものの、補助膜状部材13が膜状部材1の上面(言い換えると、表面)若しくは下面(言い換えると、裏面)に接触していることは本発明において必須の条件ではない。また、補助膜状部材13は膜状部材1と離隔された状態で(即ち、両者の面間に所定の隙間が設けられた状態で)配設されても良い。
ここで、金網は、編み込みの向き(方向)によって荷重分担(言い換えると、エネルギー吸収性能)が異なる異方性材料である。そして、例えば図14に一部が示される菱形金網などの金網では、飛来物などの衝突による衝撃によって図における左右方向に配設される列線15の引き抜けが生じると、当該引き抜かれた列線15の箇所が列状の裂け目となって金網は断裂し、エネルギー吸収性能を発揮し得なくなってしまう。
このため、膜状部材1及び補助膜状部材13として金網が用いられる場合に、金網各々の編み込みの向きが異なるように膜状部材1と補助膜状部材13とが配設されることにより、飛来物などの衝突による衝撃荷重が加えられた際のエネルギー吸収性能と局所貫通防止性能との両方を良好に発揮させることが可能になる。
編み込みの向きについて、図14に一部が示される菱形金網において、鋸歯型に屈曲して隣り合うものと係合する列線15が配設される方向(言い換えると列線15の軸方向・長手方向であり、図14における左右方向である)を展開直角方向(図中の符号Odの矢印の方向)と呼び、前記列線15が配設される方向と直交する方向(即ち、図14における上下方向である)を展開方向(図中の符号Ddの矢印の方向)と呼ぶ。なお、このような展開方向(矢印Dd)及び展開直角方向(矢印Od)の考え方は、亀甲金網でも同じである。
そして、防護対象物を覆うように張られて設けられる膜状部材1(言い換えると、防護対象物を保護するために膜状部材1によって覆う範囲)が例えば長方形や楕円形のように平面視における直交する二方向の寸法が異なる場合に、金網の展開方向が長手方向になるように膜状部材1が形成され配設されることにより、良好なエネルギー吸収性能が膜状部材1によって発揮され得る。
一方、金網の展開方向が膜状部材1の展開方向と直交する方向になるように補助膜状部材13が形成され配置されることにより、良好な貫通防止性能が補助膜状部材13によって発揮され得る。
すなわち、本発明の膜状部材の支持方法及び膜状部材の支持構造は、例えば図1に示す形態を例に挙げると、膜状部材1の平面視における長手方向は図における上下方向であるので金網の展開方向が図における上下方向になるように膜状部材1が形成され配置されることによって良好なエネルギー吸収性能が発揮され得る。本発明の膜状部材の支持方法及び膜状部材の支持構造は、また、例えば図7に示す形態を例に挙げると、各部材の裏面と表面とが上下方向において対向して配置された二枚の膜状部材1の平面視における長手方向は図における上下方向であるので金網の展開方向が図における上下方向になるように二枚の膜状部材1のどちらもが形成され配置されることによって更に良好なエネルギー吸収性能が発揮され得る。つまり、膜状部材1が一枚若しくは上下に対向して配置された二枚以上である場合に、金網の展開方向が長手方向になるように全ての膜状部材1が形成され配置されることにより、良好なエネルギー吸収性能が発揮され得る。したがって、この態様は、想定される飛来物などが例えば球体のようなものであって飛来物などによる金網の貫通防止を重視する必要がない場合に特に、確実な防護機能を発揮することが可能である。
そして、本発明の膜状部材の支持方法及び膜状部材の支持構造は、金網の展開方向が長手方向になるように形成され配置された膜状部材1に加え、金網の展開方向が前記膜状部材1の展開方向と直交する方向になるように補助膜状部材13が形成され配置されることにより、良好なエネルギー吸収性能に加えて良好な貫通防止性能が発揮され得る。したがって、この態様は、想定される飛来物などが例えば柱体のようなものであって飛来物などによる金網の貫通防止を重視する必要がある場合にも、確実な防護機能を発揮することが可能である。
ここで、膜状部材1と補助膜状部材13とが組み合わされて使用される場合には、金網の展開方向が上述のように調整されると共に膜状部材1の上面側に補助膜状部材13が配設されることが好ましい。
したがって、膜状部材1と補助膜状部材13とが組み合わされて使用される場合の好ましい構成の例を挙げると、例えば、図15(A)に示すように一枚の膜状部材1が用いられる場合には、防護対象物を保護するために覆う範囲の長手方向(図中の符号Ldの矢印の方向)に金網の展開方向(図中の符号Ddの矢印の方向)が沿うように形成され配置された一枚の膜状部材1の上面側に、膜状部材1の展開方向(矢印Dd)と直交する方向に金網の展開方向(矢印Dd)が沿うように形成された補助膜状部材13が配設されることが好ましい。また、図15(B)に示すように各部材の裏面と表面とが上下方向において対向して配置された二枚の膜状部材1が用いられる場合には、防護対象物を保護するために覆う範囲の長手方向(矢印Ld)に金網の展開方向(矢印Dd)が沿うように形成され配置された上下二枚の膜状部材1up,1loのうちの上側の膜状部材1upの上面側に、膜状部材1up,1loの展開方向(矢印Dd)と直交する方向に金網の展開方向(矢印Dd)が沿うように形成された補助膜状部材13が配設されることが好ましい。
ここで、図15は膜状部材1,1up,1loの展開方向と補助膜状部材13の展開方向との関係を説明するための概念図であり、各々の構造や寸法(相互の配置間隔を含む)は厳密なものではなく、また、膜状部材1,1up,1lo及び補助膜状部材13以外の構成の図示は省略している。
本発明の膜状部材の支持方法及び膜状部材の支持構造における緩衝体6によるエネルギー吸収性能を検証した実施例を図16及び図17を用いて説明する。
緩衝体6は、枠体3の変形を抑制すると共に線状部材2に発生する張力の急激な増加を緩和するためのものであり、緩やか且つ長時間に亙って進行する変形性能(エネルギー吸収性能)が求められる。
そこで、ここでは、有限要素法を用いた数値解析により、緩衝体6による緩やか且つ長時間に亙って進行する変形性能(エネルギー吸収性能)の発現性を検証した。
検証では、想定した飛来物が膜状部材1に衝突したときの作用荷重を同定して線状部材2に発生する張力を同定し、当該同定された張力を用いて緩衝体6のエネルギー吸収性能を解析した。本実施例では、重錘等を実際に衝突させて実施した自由落下試験の測定結果に基づいて数値解析によって作用荷重を同定して線状部材2に発生する張力を同定した。数値解析の結果、具体的には、飛来物の衝突から約0.05秒後に最大作用荷重が発生する荷重が同定され、当該同定された荷重が検証用の入力荷重として用いられた。
そして、図16(A)に示す緩衝体6の解析モデルを用いて有限要素法を用いた数値解析を行った。なお、図16(A)に示す緩衝体6の解析モデルは図5に示す緩衝体6の構成と、固定ボルト5の本数及び抑え板7の垂直板7aの有無を除いて同じ構成であり、支持部4の外径保持部材4a並びに緩衝体6の外筒6A及び緩衝部材6Bはいずれも円柱鋼管とされ、抑え板7は鋼板とされた。
数値解析により、解析終了時の解析モデルの変形図として図16(B)に示す結果が得られ、また、吸収エネルギーの時刻歴として図17に示す結果が得られた。なお、図17は、具体的には、高さ10 mm の緩衝構造の吸収エネルギー量の推移を示している。
図16(B)に示す結果から、荷重を受ける外径保持部材4aが前方に(即ち、膜状部材1に向けて)移動し、外筒6Aと共に内部の緩衝部材6Bを圧縮変形させることでエネルギーが吸収されることが確認された。
なお、緩衝部材6Bは円柱鋼管を組み合わせた構成であり、圧縮荷重を受ける円柱鋼管は、初期段階ではアーチ効果によって強い抵抗力を示すものの、変形が進行して内部への変形が発生すると剛性が低下し、作用する荷重が低下しても鋼管の変形が進行することが確認された。
また、作用する荷重の大きさに対して緩衝部材6Bとしての鋼管の板厚を適切に設定することにより、吸収エネルギーが緩やかに増加し且つ最終変形時に鋼管の変形が内側に発生するようにさせることが可能であることが確認された。
そして、緩衝部材6Bとしての鋼管の板厚が適切に設定された場合には、図17に示すように、入力する荷重が0.05秒以降で低下する一方で、吸収エネルギーは0.06秒程度まで増加し、本発明の緩衝体6の構造は優れた緩衝性能を発現し得ることが確認された。
本実施例における検証から、図5や図16に示す構造を有する緩衝体6を膜状部材1の支持構造物に組み込むことで、膜状部材1を支持する線状部材2に発生する張力の増加が緩和され、膜状部材を支持する枠体の変形も抑制されることが確認された。なお、図5に示す例では外筒6A内に同一寸法の七本の緩衝部材6Bが相互の隙間及び外筒6A内周面との隙間が殆ど無い(言い換えると、ほぼ接する)態様で配設されるようにしているが、同一寸法の七本の緩衝部材6Bが相互に完全に接すると共に外筒6A内周面と完全に接する態様で配設されるようにしても良い。