JP2019067957A - ボンド磁石とボンド磁石用組成物 - Google Patents

ボンド磁石とボンド磁石用組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】成形性を確保しつつ、耐熱性と磁気特性の両方に優れたボンド磁石が得られるボンド磁石用の組成物を提供する。【解決手段】本発明の組成物は、一種以上の希土類磁石粒子と結合樹脂からなり、ボンド磁石の製造に用いられる。希土類磁石粒子は、希土類元素がNdであるNd系磁石粒子を少なくとも含み、希土類磁石粒子の総量は、組成物全体に対して90〜95質量%である。結合樹脂は、カルボキシル基とアミノ基からなる末端基の総量が結合樹脂全体に対して175mmol/kg以下のポリアミド66(PA66)からなる。末端基の総量が調整されたPA66は、触媒作用を果たす希土類磁石粒子と接触しても、増粘開始が遅延され、希土類磁石粒子の含有率が多い場合でも、安定した成形性が確保される。このような組成物から得られるボンド磁石は、磁気特性と耐熱性の両方に優れる。【選択図】図2A

Description

本発明は、希土類磁石粒子と結合樹脂からなるボンド磁石用組成物等に関する。
希土類磁石は、高い磁気特性を発揮するため、省エネルギー化や軽量化が望まれる電化製品や自動車等の各種機器に利用されている。希土類磁石には、希土類磁石粉末(適宜「磁石粉末」という。)の焼結体や熱間成形体からなる緻密磁石と、射出成形、圧縮成形、押出成形等により磁石粉末を結合樹脂(バインダー樹脂)で結着させたボンド磁石とがある。最近は、成形自由度が高く軽薄部品等の製造にも適したボンド磁石が多用される傾向にある。
ボンド磁石を用いる場合、その磁気特性の向上を図るのみならず、磁石粉末と結合樹脂を加熱混練してコンパウンド等の磁石原料(組成物)を得るときの混練性や、その結合樹脂を溶融させて射出成形等するときの成形性を確保することも重要となる。これに関連する記載が下記の特許文献にある。
特開平7−226312号公報 特開平9−162019号公報 特開2003−342468号公報 特開平9−71721号公報
特許文献1および特許文献2は、脂肪族ポリアミド樹脂の一種である末端調整した12―ナイロン(PA12)と、希土類磁石粉末の一種であるSmFe17粉末(平均粒径約4μm)とからなる組成物を提案している。この組成物を用いることにより、射出成形したボンド磁石のリサイクル性と磁気特性が両立される旨が、それら特許文献には記載されている。
しかし、融点(軟化点)が低いPA12を結合樹脂としたボンド磁石は、耐熱性が劣り、その用途は限定的である。また、融点(軟化点)が低いPA12を用いる限り、磁石粉末の含有率と成形性の両立は、末端調整するまでもなく可能である。
特許文献3は、末端調整した芳香族ポリアミド樹脂と、希土類磁石粉末の一種であるNd−Fe−B系磁性粉末とからなる組成物を提案している。この組成物を用いることにより、ボンド磁石の成形性と耐熱性が両立される旨が、その特許文献には記載されている。
しかし、特許文献3で使用されている芳香族ポリアミド樹脂は、融点がかなり高いため、金型内へ溶融混合物を射出したときの温度低下により金型内で固化し易い。このため特許文献3に係る組成物は、PA12を用いた組成物よりも成形性や配向性等が大きく劣る。特に、磁石粉末の含有率を増加させたとき、特許文献3に係る組成物では、量産に適した成形性を確保することが困難であると考えられる。
特許文献4は、末端調整したポリアミド6樹脂と、希土類酸化物系磁石粉末の一種であるストロンチウムフェライト磁性粉末とからなる組成物を提案している。この組成物を用いることにより、流動性が向上する旨が、その特許文献には記載されている。
しかし、特許文献4で記載されているポリアミド、特にポリアミド66を用いたボンド磁石では、加工温度域で一定時間以上経過すると組成物の増粘が起こり成形性が著しく低下するという滞留安定性に課題があった。そのため、特許文献4に係る組成物では、量産時に滞留による増粘の可能性があり、量産に適した成形性を確保することが困難であった。
ちなみに、現状市販(量産)されているボンド磁石の多くは、PA12またはポリフェニレンサルファイド(PPS)のいずれかを結合樹脂として用いている。PA12は、上述したように耐熱性が劣る。PPSは、融点が高くて耐熱性に優れるが、その融点からある程度以上昇温すると、希土類磁石粉末が急激に酸化してその磁気特性が劣化してしまう。このため、注入温度をPPSの融点よりもあまり上げることができず、PPSからなる溶融混合物は金型内へ射出されたときに固化し易くなり、成形性が劣る。また、PPSを用いたときの注入温度は、PA12を用いたときの注入温度のように、融点よりも50〜100℃も高くできないため、PPSからなる溶融混合物を金型内へ射出成形したとき、樹脂温度の低下によって流動性(粘度)も低下する。その結果、PPSを用いたボンド磁石は、その密度や配向度を十分に確保することも困難となる。
この傾向は、ボンド磁石の磁気特性を高めるために磁石粉末の含有率(充填率)を増加させたときに顕著となる。このため、耐熱性よりも磁気特性を優先するときはPA12が結合樹脂として用いられ、磁気特性よりも耐熱性を優先するときはPPSが結合樹脂として用いられているのが実情である。なお、PA12とPPSは共に熱可塑性樹脂であり、それら自体は熱履歴とは関係なく、融点以上の温度域で安定した高い流動性(低い粘度)を示す。この傾向は、PA12またはPPSが希土類磁石粒子と共存するときでも同様である。このため、PA12やPPSは、磁石粉末と混練等される際に増粘を生じることもない。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、成形性を確保しつつ、磁気特性および耐熱性に優れたボンド磁石を得ることができるボンド磁石用組成物等を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、PA12よりも融点の高いPA66は、PA12やPPSと同じ熱可塑性樹脂でありながら、高含有率の希土類磁石粒子と共存したとき、PA12やPPSでは実質的に生じない特有な増粘現象を生じることを見出した。この新たな知見に基づいて本発明者は以降に述べる本発明を完成するに至った。
《ボンド磁石用組成物》
本発明のボンド磁石用組成物は、一種以上の希土類磁石粒子と結合樹脂からなり、ボンド磁石の製造に用いられる組成物であって、前記希土類磁石粒子は、希土類元素がNdであるNd系磁石粒子を少なくとも含み、該希土類磁石粒子の総量は、前記組成物全体に対して90〜95質量%であり、前記結合樹脂は、カルボキシル基とアミノ基からなる末端基の総量が該結合樹脂全体に対して175mmol/kg以下のポリアミド66(PA66)からなる。
本発明のボンド磁石用組成物(単に「組成物」ともいう。)を用いると、安定した成形性を確保しつつ、希土類磁石粉末の高含有率化による磁気特性の向上と耐熱性の向上とを高次元で両立させたボンド磁石を得ることができる。
《ボンド磁石》
本発明は、上述した組成物を用いたボンド磁石としても把握できる。例えば、本発明は、ボンド磁石用組成物の射出成形体からなるボンド磁石でもよい。
《製造方法》
(1)本発明は、上述した組成物の製造方法としても把握できる。例えば、本発明は、一種以上の希土類磁石粉末と結合樹脂を混練する混練工程を備える組成物の製造方法であって、前記希土類磁石粉末は、希土類元素がNdであるNd系磁石粒子を少なくとも含み、該希土類磁石粉末の総量は、前記組成物全体に対して90〜95質量%であり、前記結合樹脂は、カルボキシル基とアミノ基からなる末端基の総量が該結合樹脂全体に対して175mmol/kg以下のポリアミド66(PA66)からなるボンド磁石用組成物の製造方法でもよい。
(2)本発明は、上述したボンド磁石の製造方法としても把握できる。例えば、本発明は、上述した組成物を加熱して溶融した結合樹脂と希土類磁石粉末の混合物である溶融混合物をキャビティへ充填する射出工程を備えるボンド磁石の製造方法でもよい。なお、希土類磁石粉末が希土類異方性磁石粉末であるとき、射出工程は、配向磁場中のキャビティへ溶融混合物を充填する工程とするとよい。
《その他》
(1)本明細書でいうPA66には、末端調整していないPA66、末端調整したPA66、およびPA66の分子同士が縮重合や架橋反応等して変質したPA66も含まれる。それらを区別するときは、順に、適宜、「未改質PA66」、「改質PA66」、「変質PA66」という。
(2)PA66は希土類磁石粒子と接触して、組成物さらにはボンド磁石となるにつれて、その末端基の総量が減少する。換言すれば、PA66は、希土類磁石粒子と接触する前の原料段階において、末端基の総量が最大となっている。そこで本発明では、原料段階で求めたPA66の末端基の総量を上限値として、組成物またはボンド磁石を構成するPA66の末端基の総量を規定している。
なお、本明細書でいう「mmol/kg」は、1kgのPA66中に存在する末端基の量(mmol)を意味する。
(3)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
未改質PA66の分子同士が希土類磁石粒子と接触して、分子量の大きな変質PA66となる様子を示す説明図である。 末端調整により、PA66の末端にある官能基が非反応性の置換基となる様子を示す説明図である。 PA66と希土類磁石粉末の混練に要するトルクの経時変化を示すグラフである。 PA66の末端基の総量と、増粘開始時間または固化時間との関係を示す散布図である。
本発明の構成要素には、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。本明細書で説明する内容は、本発明の組成物やボンド磁石のみならず、それらの製造方法にも適宜該当し得る。方法的な構成要素でも物に関する構成要素となり得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《希土類磁石粒子(粉末)》
(1)希土類磁石粒子は、少なくともNd系磁石粒子を含み、他の希土類磁石粒子を一種以上含んでもよい。さらにいえば、本発明の組成物は、希土類磁石粒子以外の磁石粒子(例えばフェライト粒子)を少量含んでもよい。
Nd系磁石粒子は、希土類元素をNdとすればよいが、通常は、Nd―TM―B系磁石粒子、さらにいえば、NdTM14(TM:遷移金属元素、特にFe)を主相とする磁石粒子である。但し、Nd系磁石粒子は、その磁気特性を高める種々の改質元素を含み得る。改質元素は、主相に固溶する元素でも、粒界相を構成する元素でもよい。このような元素は、例えば、Co、Ni、Al、Cu、Ga、Nb、Ti、V、Zr、Cr、Mn、Hf、W、Ta、Zn、Sn等の一種以上である。
Nd系磁石粒子以外の希土類磁石粒子として、Sm系磁石粒子等がある。Sm系磁石粒子は、Sm―TM―N系磁石粒子、Sm―TM系磁石粒子等である。Sm―TM―N系磁石粒子は、例えば、SmFe17Nを主相とする磁石粒子であり、Sm―TM系磁石粒子は、例えば、SmCoやSmCo17を主相とする磁石粒子である。
(2)希土類磁石粒子は、平均粒径が1〜300μmさらには5〜250μmであると好ましい。平均粒径が過小になると、粒子の総表面積が増加してPA66が増粘し易くなる。平均粒径が過大になると、粒子が割れ易くなり、粒子の微細化や新生面の出現により、やはり、粒子の総表面積が増加してPA66が増粘し易くなる。
Nd系磁石粒子の平均粒径は、例えば、40〜250μm、60〜200μmさらには80〜150μmである。このようなNd系磁石粒子は、例えば、水素処理(HDDR等)により製造される。
Sm系磁石粒子は、通常、Nd系磁石粒子よりも平均粒径が小さい。その平均粒径は、例えば、1〜20μmさらには3〜15μmである。Nd系磁石粒子からなる粗粉末とSm系磁石粒子からなる微粉末との混合粉末を用いることにより、磁石粉末の高含有率化が図れると共に、混練時や成形時における流動性が却って改善し得る。
なお、本明細書でいう「平均粒径」は、レーザ回折式粒度分布測定器(マイクロトラック・ベル社製 NanotracWaveII)による測定により特定される。
(3)PA66の増粘は、希土類磁石粒子(特に活性な希土類元素)が触媒的に作用してPA66の縮重合反応や架橋反応が促進され、その分子量が増大するためと考えられる。この観点からすると、希土類磁石粒子は、等方性磁石粒子でも異方性磁石粒子でもよい。
但し、希土類異方性磁石粒子と溶融した結合樹脂とからなる溶融混合物を磁場中成形したボンド磁石は、希土類異方性磁石粒子の配向により、一層高い磁気特性を発揮する。そして本発明の組成物を用いると、その磁場中成形時もPA66の増粘が抑制されて溶融混合物の流動性が確保されるため、希土類異方性磁石粒子は姿勢を変化させ易く、より高配向で高磁気特性なボンド磁石が得られる。
《結合樹脂》
(1)増粘
一般的に、末端調整されていないPA66(未改質PA66)の分子式はHO[CO(CHCONH(CHNH]Hまたは(C1222(n:整数)等であり、その各分子(ポリマー)の末端はカルボキシル基(COOH)若しくはアミノ基(NH)となっている。PA66自体は、熱可塑性樹脂であり、単独で加熱、混練等しても増粘や固化を生じない。
ところが、未改質PA66の各分子が遷移金属元素や希土類元素等を含む磁石粒子と接触すると、例えば、一例として図1Aに示すように、カルボキシル基とアミノ基の間で脱水(縮重合)反応や架橋反応等を生じて、さらに高分子化した変質PA66になり得る。このような分子量の増加により、単独では生じない増粘や固化が、希土類磁石粒子との共存下で生じるようになったと考えられる。
本発明の結合樹脂は末端調整されたPA66(改質PA66)からなる。改質PA66は、図1Bに示すように、未改質PA66の末端にあったカルボキシル基および/またはアミノ基の少なくとも一部が、非反応性または低反応性の末端基で置換された状態にあると考えられる。この結果、本発明に係る改質PA66は、触媒的作用をする希土類磁石粒子と接触しても、急激な増粘現象を示さなくなったと推察される。
実際に、未改質PA66または改質PA66とNd−Fe−B系磁石粉末との混合物をそれぞれ加熱混練したときの混練トルクが時間的に変化する様子を図2Aに示した。なお、本実験は後述するラボプラストミルを用いて行ったものであり、未改質PA66と改質PA66に係るデータは、表1に示す試料20と試料22にそれぞれ対応している。
図2Aから明らかなように、いずれのPA66も増粘現象を示すものの、未改質PA66は、混練開始後約1200秒(約20分)経過した付近から増粘を開始している。これに対して改質PA66の場合、その増粘の開始が大幅に遅延されて、混練開始後から2400秒(40分)位までの間、PA66本来の低粘度が維持されている。
組成物(コンパウンド等)を製造する際の混練時間(加熱時間)は約600〜1500秒(10〜25分)である。未改質PA66では、混練途中に急激な増粘が起こり得るが、改質PA66を用いれば、増粘が起こる前に混練を終えることができ、安定した混練ができる。
また、ボンド磁石を射出成形する場合、加熱開始された原料(組成物)が溶融状態となって金型(電磁部品)のキャビティへ充填完了されるまでの所要時間が、通常30〜300秒程度である。混練と成形の熱履歴を併せても、改質PA66を用いれば、その増粘開始時間内に十分に射出成形を終えることができ、安定した成形性の確保が可能になるといえる。
なお、本明細書では、混練開始後に混練トルクが最低トルクの1.2倍を示した時間を増粘開始時間といい、混練開始後に混練トルクが極大(ピーク)となるとき(一次微分係数が次に零となるとき)を固化時間という。
(2)末端基の総量
化学修飾剤(末端調整剤、封止剤)を用いて末端基の総量(カルボキシル基とアミノ基の合計量)が異なる複数の改質PA66を調製した。これら改質PA66または未改質PA66と希土類磁石粉末とを上述したように加熱混練して、末端基の総量と増粘開始時間または固化時間との関係を求めた。こうして得られた結果を図2Bに示した。なお、未改質PA66は末端基の総量が224mmol/kgであった。図2Bから明らかなように、末端基の総量が175mmol/kg以下、150mmol/kg以下、125mmol/kg以下、さらには100mmol/kg以下となる範囲において、増粘開始時間および固化時間が急激に延長されることがわかる。
(3)化学修飾剤
PA66の末端調整は、例えば、未改質PA66に化学修飾剤を添加して反応させることにより行える。これにより、末端官能基であるカルボキシル基および/またはアミノ基が異なる他の非反応性官能基に置換される。化学修飾剤として、種々のカルボジイミド化合物、カルボン酸類、アミン類等を利用できる。中でもカルボジイミド化合物はボンド磁石組成物とした際、成形時のガスの発生が少なく、成形性が安定し、ボンド磁石強度も得られるため好適である。
(4)希土類磁石粒子
PA66の増粘(分子量増大)は希土類磁石粒子との接触により生じ得るが、その程度(増粘開始時間)は希土類磁石粒子の含有率、サイズ(比表面積)、種類(構成元素や成分組成)等により変化する。
例えば、希土類磁石粒子の含有率が高くなるほど、また、そのサイズ(平均粒径)が小さくなるほど、PA66の末端基が希土類磁石粒子と接触する確率が高くなって、PA66は増粘し易くなる。このため、微細な希土類磁石粒子(例えばSmFeN系磁石粒子)の含有率を大幅に高めると(例えば50質量%以上にすると)、改質PA66を用いたとしても、増粘開始の大幅な遅延はない。
その一方で、粗い希土類磁石粒子(例えばNdFeB系磁石粒子)のみよりも、微細な希土類磁石粒子が多少混在している方が、溶融混合物の流動性が向上し、かえって、成形性のみならず希土類磁石粒子の配向度ひいてはボンド磁石の磁気特性が高まることもある。また、粗い希土類磁石粒子のみでは、含有率の向上に限界があると共に、割れ等による粒子微細化も生じ得る。
このような事情を踏まえて、例えば、粗いNd系磁石粒子が組成物全体に対して90質量%以上、91質量%以上さらには92質量%以上含まれる場合、PA66の末端基の総量は100mmol/kg以下、85mmol/kg以下さらには75mmol/kg以下とすると好ましい。
また、粗いNd系磁石粒子と細かいSm系磁石粒子が混在しており、全体(合計)として希土類磁石粒子が90質量%以上となっている場合であれば、PA66の末端基の総量は150mmol/kg以下、125mmol/kg以下さらには100mmol/kg以下としてもよい。このとき、Sm系磁石粒子は、組成物全体に対して1〜40質量%、5〜35質量%さらには15〜30質量%とするとよい。
具体的にいうと、例えば、Nd系磁石粒子は平均粒径が40〜150μmであると共に組成物全体に対して65〜89質量%含まれ、Sm系磁石粒子は平均粒径が1〜20μmであると共に組成物全体に対して1〜30質量%含まれ、PA66の末端基の総量は150mmol/kg以下としてもよい。
(5)その他
改質PA66は、重量平均分子量(Mw)が12000〜40000さらには13000〜30000であると好ましい。Mwが過小ではボンド磁石の強度が低くなってしまい、Mwが過大になると、増粘した場合と同様に、混練性や成形性、磁石粒子の含有率や配向度等が低下し得る。
本明細書でいう末端基の総量は、H−NMR(核磁気共鳴分光法)により測定されたピーク強度から算出される。また、本明細書でいうMwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定することにより特定される。なお、特に断らない限り、本明細書でいう分子量は重量平均分子量を意味する。
本発明の組成物またはボンド磁石は、改質PA66および希土類磁石粒子の他に、カップリング剤や滑剤、さらにはPA66以外の樹脂を少量含有してもよい。また、磁石粒子は、カップリング剤により予め表面処理されていてもよい。
《用途》
本発明のボンド磁石は耐熱性に優れるため、常温域で使用される電磁機器は勿論、高温域で使用される電磁機器、使用中に高温となる電磁機器等に好適である。例えば、150℃以上さらには200℃以上の耐熱性が要求される車載用電磁機器(電動機、発電機等)の界磁源として、本発明のボンド磁石は好適である。
末端基の総量が異なるPA66を用いてボンド磁石の原料となる種々のコンパウンド(ボンド磁石用組成物)を製造した。また、各コンパウンドを用いた射出成形によりボンド磁石も製造した。各製造時の成形性と、各ボンド磁石の磁気特性を評価した。このような具体例に基づいて本発明をさらに詳しく説明する。
《試料の製造》
(1)原料
末端調整されていない市販のPA66(ユニチカ社製)と、PA66の末端調整剤となるカルボジイミド化合物(ラインケミー社製 スタバックゾールI)を用意した。
また、Nd系磁石粉末(粗粉末)として市販のNdFeB系異方性磁石粉末(愛知製鋼株式会社製MF18Pと、Sm系磁石粉末(微粉末)として市販のSmFeN系異方性磁石粉末(住友金属鉱山社製 SmFeN合金微粉C)を用意した。
(2)末端調整
PA66の末端調整は、未改質のPA66と所定量のカルボジイミド化合物をドライブレンドした混合物を二軸押出機(東芝機械社製 TEM26SS、スクリュー径26mm)の主ホッパーへ供給し、280℃で溶融混練し、ストランド状に押出して冷却固化した後、それをペレタイザーでカッティングして得た。こうして末端基の総量が異なる2種類の改質PA66を得た。これら改質PA66と、末端調整していないPA66(未改質PA66)を、以下に示す試料の製造に供した。
(3)コンパウンドの製造
各試料毎に、表1に示す質量割合に秤量した各希土類磁石粉末と各PA66との混合物を、二軸混練機(東芝機械社製 TEM−26SS)を用いて、280℃に加熱しつつ混練した。こうして得られた混練物をペレタイザーでカッティングして樹脂組成物のペレット(φ3mm×3mm)を得た。
(4)ボンド磁石の製造
各試料毎に、コンパウンドを射出成形機(東芝機械社製 EC−100)のホッパーへ投入して加熱し、溶融混合物を金型のキャビティへ充填した。こうして長さ127mm×幅12mm×厚み3mmのボンド磁石を得た。射出成形は、金型のキャビティに配向磁場を印加しつつ、金型温度:120℃、ノズル温度:280℃として行った。
《測定》
(1)末端基の総量
各PA66の末端官能基であるカルボキシル基とアミノ基の各濃度を次のようにして求めた。試料をトリフルオロ酢酸‐d(CFCOOD)と重水(DO)の混合溶液に溶解し、H−NMR測定を行った。得られたスペクトルのピーク強度に基づいて、−NH末端および−COOH末端の総量を算出した。各PA66のカルボキシル基濃度、アミノ基濃度およびそれらの合計濃度(総量)を表1に併せて示した。
(2)磁気特性
各試料毎に、ボンド磁石の磁気特性(残留磁束密度:Br、保磁力:iHc、最大エネルギー積:BHmax)を、直流磁化特性自動記録装置(理研電子社製 Model BHU−20)を用いて常温で測定した。得られた結果を表1に併せて示した。
(3)成形性(混練トルク)
各試料毎に、表1に示す質量割合に秤量した希土類磁石粉末と各PA66との混合物を、ラボプラストミル(東洋精機社製 R−60)を用いて加熱混練し、混練中に要するトルク(混練トルク)の経時変化を測定した。この際、加熱温度:280℃、スクリュー回転数:50rpm(一定)とした。
混練開始時から起算して、混練トルクが最小値に対して1.2倍となった時までの時間を増粘開始時間とした。増粘開始時間が1500秒超のとき:○、増粘開始時間が1200〜1500秒のとき:△、増粘開始時間が1200秒未満のとき:×として、表1に併せて示した。
《評価》
(1)表1に示した試料10と試料C1の比較から次のことがわかる。希土類磁石粉末がNd系磁石粉末のみで、結合樹脂が未改質PA66である場合、Nd系磁石粉末の含有率が90質量%未満であれば成形性が確保される。しかし、磁気特性を十分に確保するためにNd系磁石粉末の含有率を90質量以上にすると、高磁気特性は確保されるものの、成形性の確保が困難となった。
(2)試料C3と試料C4から明らかなように、希土類磁石粉末が微細なSm系磁石粉末のみである場合、その含有率が90質量%未満であっても、結合樹脂の末端調整の有無に拘わらず、成形性の確保が困難であった。
(3)試料11と試料12から、Nd系磁石粉末の含有率を90質量%以上にしても、改質PA66を用いることにより、ボンド磁石の磁気特性を十分に確保しつつ、成形性も確保できることもわかった。特に、改質PA66の末端基の総量が100mmol/kg以下であると、成形性とボンド磁石の磁気特性がより高次元で両立することもわかった。
(4)試料20〜22から、希土類磁石粉末全体の含有率を90質量%以上にする場合でも、Nd系磁石粉末(粗粉末)とSm系磁石粉末(微粉末)の混合粉末を用いることにより、成形性を確保しつつ、ボンド磁石の磁気特性を向上させ得ることがわかった。特に、末端基の総量が175mmol/kg以下さらには150mmol/kg以下である改質PA66を用いることにより、成形性とボンド磁石の磁気特性をより高次元で両立させ得ることもわかった。
以上から、本発明の組成物を用いれば、混練性や成形性を確保しつつ、耐熱性と磁気特性の両方に優れたボンド磁石が得られることが明らかとなった。

Claims (8)

  1. 一種以上の希土類磁石粒子と結合樹脂からなり、ボンド磁石の製造に用いられる組成物であって、
    前記希土類磁石粒子は、希土類元素がNdであるNd系磁石粒子を少なくとも含み、
    該希土類磁石粒子の総量は、前記組成物全体に対して90〜95質量%であり、
    前記結合樹脂は、カルボキシル基とアミノ基からなる末端基の総量が該結合樹脂全体に対して175mmol/kg以下のポリアミド66(PA66)からなるボンド磁石用組成物。
  2. 前記Nd系磁石粒子は、前記組成物全体に対して90質量%以上含まれ、
    前記PA66の末端基の総量は、100mmol/kg以下である請求項1に記載のボンド磁石用組成物。
  3. 前記Nd系磁石粒子は、平均粒径が40〜250μmである請求項1または2に記載のボンド磁石用組成物。
  4. 前記希土類磁石粒子は、さらに希土類元素がSmであるSm系磁石粒子を含み、
    該Sm系磁石粒子は、平均粒径が1〜20μmである請求項1〜3のいずれかに記載のボンド磁石用組成物。
  5. 前記Nd系磁石粒子は、平均粒径が40〜150μmであると共に前記組成物全体に対して65〜89質量%含まれ、
    前記希土類磁石粒子は、さらに希土類元素がSmであるSm系磁石粒子を含み、
    該Sm系磁石粒子は、平均粒径が1〜20μmであると共に該組成物全体に対して1〜30質量%含まれ、
    前記PA66の末端基の総量は、150mmol/kg以下である請求項1に記載のボンド磁石用組成物。
  6. 前記希土類磁石粒子は、希土類異方性磁石粒子である請求項1〜5のいずれかに記載のボンド磁石用組成物。
  7. 前記PA66は、重量平均分子量(Mw)が12000〜40000である請求項1〜6のいずれかに記載のボンド磁石用組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のボンド磁石用組成物の射出成形体からなるボンド磁石。
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