以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルの外観を模式的に示す側面図である。また、図2は、作業機械に搭載される作業員接近通知システムの一例を概略的に示す図である。
図1において、油圧ショベル1は、垂直方向にそれぞれ回動する複数のフロント部材(ブーム6A、アーム6B、バケット6C)を連結して構成された多関節型のフロント作業機6(作業機)と、車体本体を構成する上部旋回体3及び下部走行体2(走行装置)とを備えており、上部旋回体3は下部走行体2に対して旋回可能に設けられている。上部旋回体3は、基部となる旋回フレーム31上に各部材を配置して構成されており、上部旋回体3を構成する旋回フレーム31が下部走行体2に対して旋回可能となっている。また、フロント作業機6のブーム6Aの基端は上部旋回体3の前部に垂直方向に回動可能に支持されており、アーム6Bの一端はブーム6Aの基端とは異なる端部(先端)に垂直方向に回動可能に支持されており、アーム6Bの他端にはバケット6Cが垂直方向に回動可能に支持されている。
下部走行体2は、左右一対のクローラフレーム11a(11b)にそれぞれ掛け回された一対のクローラ12a(12b)と、クローラ12a(12b)をそれぞれ駆動する走行油圧モータ13a(13b)(図示しない減速機構を含む)とから構成されている。なお、図1において、下部走行体2の各構成については、左右一対の構成のうちの一方のみを図示して符号を付し、他方の構成については図中に括弧書きの符号のみを示して図示を省略する。
フロント部材6A〜6C、及び下部走行体2は、油圧アクチュエータであるブームシリンダ16A、アームシリンダ16B、バケットシリンダ16C、及び左右の走行油圧モータ13a(13b)によりそれぞれ駆動される。また、上部旋回体3は油圧アクチュエータである旋回油圧モータ32により下部走行体2に対して旋回動作を行う。
フロント作業機6のフロント部材6A〜6Cには、それぞれの姿勢情報を取得するための姿勢センサ75A〜75Cが配置されている。姿勢センサ75A〜75Cは、例えば、設置されたフロント部材の角速度及び加速度を計測する慣性計測装置(IMU: Inertial Measurement Unit)である。姿勢センサ75A〜75Cは、姿勢センサ75A〜75Cに設定されたIMU座標系における加速度や角速度の計測値を姿勢情報として出力する。これらの計測値と、姿勢センサ75A〜75Cの取り付け状態(つまり、姿勢センサ75A〜75Cとフロント部材6A〜6Cとの相対的な位置関係)などの情報とを用いることでフロント部材6A〜6Cの姿勢を知ることができる。
上部旋回体3を構成する旋回フレーム31上には、エンジン等の原動機33と、原動機33によって駆動される油圧ポンプ34と、油圧ポンプ34から吐出されてブームシリンダ16A、アームシリンダ16B、バケットシリンダ16C、旋回油圧モータ32及び左右の走行油圧モータ13a,13bなどの油圧アクチュエータに供給される作動油の方向及び流量を制御するコントロールバルブ35とが配置されており、油圧回路システムが構成されている。各油圧アクチュエータ16A〜16C,32,13a,13bの動作制御は、それぞれの操作に対応した操作レバー装置5から出力される操作信号に基づいてコントロールバルブ35を制御することにより行われる。
また、上部旋回体3を構成する旋回フレーム31上の前部であって、フロント作業機6のブーム6Aの基端の支持部の横側(本実施の形態では左側)には、オペレータが搭乗して油圧ショベル1の運転を行うための運転室4が配置されている。運転室4には、エンジンキースイッチ7、操作レバー装置5、ロックレバー8などが配置されている。
エンジンキースイッチ7は、油圧ショベル1の起動や停止を切り換えるものである。エンジンキースイッチ7が「OFF」の位置に切り換えられると油圧ショベル1は停止状態(すなわち、エンジン33が停止した状態)となり、エンジンキースイッチ7が「ON」の位置に切り換えられると油圧ショベル1が起動状態(すなわち、エンジン33や各種システムが起動した状態)となる。エンジンキースイッチ7には、その位置が「ON」又は「OFF」のいずれの位置に切り換えられているかを検知するキー状態検知センサ77(図1では符号を括弧書きで示す)が設けられている。
操作レバー装置5は、フロント作業機6の駆動操作や下部走行体2の走行操作、上部旋回体3の旋回操作などを行うものであり、各油圧アクチュエータ16A〜16C,32,13a,13bの操作に対応した複数の操作レバー(図示せず)により構成されている。操作レバー装置5には、各油圧アクチュエータ16A〜16C,32,13a,13bの操作に対応した操作レバーの操作量を検出するレバー操作量センサ79(図1では符号を括弧書きで示す)が設けられている。
ロックレバー8は、操作レバー装置5から出力される操作信号の遮断や接続を切り換えるものである。ロックレバー8が「ロック」の位置に切り換えられると、操作レバー装置5から出力される操作信号が遮断されて無効となり、各油圧アクチュエータ16A〜16C,32,13a,13bが駆動されない状態となる。また、ロックレバー8が「ロック解除」の位置に切り換えられると、操作レバー装置5から出力される操作信号の遮断が解除されて有効となり、操作レバー装置5による各油圧アクチュエータ16A〜16C,32,13a,13bの駆動が可能な状態となる。ロックレバー8には、その位置が「ロック」又は「ロック解除」のいずれの位置に切り換えられているかを検知するロック状態検知センサ78(図1では符号を括弧書きで示す)が設けられている。
ここで、姿勢センサ75A〜75Cは、フロント作業機6を構成する複数のフロント部材6A〜6Cの姿勢に関する姿勢情報をそれぞれ検出する姿勢検出装置71を構成している。また、エンジンキースイッチ7のキー状態検知センサ77、ロックレバー8のロック状態検知センサ78、及び、操作レバー装置5のレバー操作量センサ79は、油圧ショベルの動作状態を検出する機械作動状態検出装置72を構成している。そして、姿勢検出装置71と機械作動状態検出装置72は、油圧ショベル1の作業状態を検出する作業状態検出装置70を構成している(後の図4等参照)。
本実施の形態における作業員接近通知システム10は、このような油圧ショベル1に搭載されるものであり、次のような動作原理によって作業員の検知を行う。本実施の形態の作業員接近通知システム10では、検知対象の作業員(油圧ショベル1のオペレータを含む)にRFIDタグ40を携帯させている。油圧ショベル1に設置した磁界発生装置21A〜21Dが発生する誘導磁界(後述の磁界信号)の強度を周期的に変更し、この強度情報(後述の磁界強度設定情報/磁界強度設定情報受信値)をタグ検知装置20とRFIDタグ40との間で磁界信号及び電波信号により送受信される情報に含ませる。このとき、例えば、磁界発生装置21Aが発生したある特定の磁界強度以上の磁界信号をRFIDタグ40が受信したことが分かるので、磁界発生装置21Aが発生する磁界信号の磁界強度とRFIDタグ40による受信限界距離との関係から、磁界発生装置21AとRFIDタグ40との距離を簡易的に計測することができる。このとき、磁界発生装置21Aの選択しうる磁界強度の変更個数は要求される距離計測の分解能と磁界強度の変更周期および要求される応答時間を考慮して決定すればよい。また、各磁界発生装置21A〜21Dに固有のID(後述の磁界ID)の情報を発生元に対応させて磁界信号にそれぞれ含ませることで、複数の磁界発生装置21A〜21DとRFIDタグ40との距離をそれぞれ区別して計測することができる。したがって、各磁界発生装置21A〜21Dの油圧ショベル1における設置位置の情報を用いることで、油圧ショベル1に対するRFIDタグ40(つまり作業員)の位置を検知することができる。本実施の形態では、磁界発生装置21A〜21Dが発生する磁界信号の強度を離散的に変更することにより、油圧ショベル1に対して作業員の存在する位置(範囲:後述の作業員存在エリア)を検知する場合を例示して説明している。
図2において、本実施の形態の作業員接近通知システム10は、作業機械である油圧ショベル1の周辺で作業を行う可能性のある作業員が携帯するRFIDタグ40と、油圧ショベル1の周囲のRFIDタグ40を検知するタグ検知装置20と、油圧ショベル1の作業状態を検出する作業状態検出装置70と、タグ検知装置20の制御を行うとともに、タグ検知装置20や作業状態検出装置70で得られた情報に基づいてRFIDタグ40の存在や存在位置の判定などを行い、判定結果をオペレータに通知するための通知指令を生成する制御装置60と、油圧ショベル1の運転室4内に配置され、制御装置60からの通知指令に基づいて制御装置60での判定結果をオペレータに通知する通知装置80とから概略構成されている。
タグ検知装置20は、磁界強度を調整可能であって、その磁界信号の磁界強度に関する情報である磁界強度設定情報と磁界信号の発生元を識別する磁界IDとを含む磁界信号120A〜120Dをそれぞれ発生させる4台の磁界発生装置21A〜21Dと、RFIDタグ40から磁界信号120A〜120Dの受信を契機に発信される電波信号140を受信するタグ情報受信装置22と、磁界発生装置21A〜21Dで発生する磁界信号120A〜120Dの磁界強度を周期的に変更させるとともに、タグ情報受信装置22で受信した電波信号140に含まれる情報を取得するタグ検知装置制御部23とを有している。
図5は、油圧ショベルにおける磁界発生装置の配置の一例を示す上面図である。
図5に示すように、磁界発生装置21A〜21Dは油圧ショベル1に設置されるものであり、上部旋回体3の前後左右にそれぞれ1つずつ配置されている。例えば、磁界発生装置21A〜21Dが発生する磁界信号120A〜120Dの磁界強度がある一定の強度であると仮定した場合に、各磁界発生装置21A〜21Dが発生する磁界信号120A〜120DをRFIDタグ40の磁界検知感度で受信可能な範囲(以降、磁界検知可能エリアと称する)は、磁各磁界発生装置21A〜21Dをそれぞれ中心としたある一定の範囲となる。
本実施の形態では、磁界発生装置21A〜21Dが発生する磁界信号120A〜120Dによりそれぞれ楕円体状の磁界検知可能エリア221A〜221Dが形成され、その長軸が上部旋回体3の前後方向に沿うように磁界発生装置21A〜21Cが配置されるとともに、磁界検知可能エリア221Dの長軸が上部旋回体3の左右方向に沿うように磁界発生装置21Dが配置されている場合を例示している。図5では、説明の簡単のため、RFIDタグ40の存在が想定される高さ(例えば、作業員の胸部や腰部付近の高さの想定値)の水平面での磁界検知可能エリア221A〜221Dの断面を図示している。なお、磁界発生装置21A〜21Dが発生する磁界信号120A〜120Dにより形成される磁界検知可能エリアは必ずしも楕円である必要はなく、真円であっても良い。
磁界発生装置21Aは、磁界検知可能エリア221Aが油圧ショベル1の上部旋回体3を含む前方側の一定の範囲をカバーするように配置されている。同様に、磁界発生装置21B〜21Dは、それぞれの磁界検知可能エリア221B〜221Dが油圧ショベル1の上部旋回体3を含む左側方側、右側方側、後方側の一定の範囲をそれぞれカバーするように配置されている。
RFIDタグ40は、油圧ショベル1のオペレータ及び油圧ショベル1の外部で作業を行う作業員に携帯されるものである。RFIDタグ40は、タグ検知装置20の磁界発生装置21A〜21Dからそれぞれ発生される磁界信号120A〜120Dを受信した場合に、受信した磁界信号120A〜120Dの磁界ID(各磁界発生装置21A〜21Dにそれぞれ設定された固有のID)及び磁界強度設定情報と磁界信号を受信したRFIDタグ40自身を識別するタグIDとを含む電波信号140を送信する。すなわち、本実施の形態において、RFIDタグ40の存在およびその位置を検知するということは、RFIDタグ40を携帯する作業員の存在およびその位置を検知することと同意である。
制御装置60は、作業員接近通知システム10全体の動作を制御するものであり、作業状態検出装置70からの検出結果に基づいてタグ検知装置20を制御する演算部60Aと、演算部60Aでの処理に用いる各種情報を記憶する記憶部60Bとを有している。なお、制御装置60は、図示しないCPU、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、およびフラッシュメモリ等からなる記憶部、およびこれらを備えるマイクロコンピュータ並びに図示しない周辺回路などから構成され、例えば、ROMに格納されるプログラムにしたがって作動する。
演算部60Aは、油圧ショベル1の周辺におけるRFIDタグ40の存在位置の検知対象とする検知対象エリア(例えば、後述する図11の検知対象エリア230)と、検知対象エリアに含まれる範囲であってRFIDタグ40の接近通知の対象とする接近通知対象エリア(例えば、後述する図11の接近通知対象エリア280)とを油圧ショベル1の作業状態に応じて決定する検知警報エリア決定部61と、磁界発生装置21A〜21Dの油圧ショベル1における設置位置に関する情報とタグ検知装置制御部23で取得したタグ検知情報とを用いて、検知警報エリア決定部61で決定した検知対象エリアにおけるRFIDタグ40(すなわち、作業員)の存在する位置(範囲)を判定する作業員位置判定部62と、作業員位置判定部62で判定されたRFIDタグ40の位置が接近通知対象エリアである場合に、接近通知対象エリアで作業員(RFIDタグ40)を検知したことを油圧ショベル1のオペレータに通知するための通知指令を生成する通知指令生成部63とを備えている。
通知装置80は、作業機械1のオペレータに油圧ショベル1の周辺の作業員の存在(言い換えると、RFIDタグ40の存在)を通知するための装置であり、表示装置81と警報装置82とを備えている。表示装置81は、例えば、液晶パネル等からなり、油圧ショベル1の運転室4内のオペレータから見やすい位置、かつ、外部視野確保の妨げにならない位置に設けられている。表示装置81は、視覚情報によって油圧ショベル1のオペレータに作業員の存在を通知するために用いられ、制御装置60からの表示指令(通知指令)に基づいて、作業員が存在するエリアの表示や作業員の接近を通知する表示を行う。また、警報装置82は、音あるいは音声等を発生可能な装置であって、油圧ショベル1の運転室4内に設けられている。警報装置82は、聴覚情報によって油圧ショベル1のオペレータに作業員の接近を報知するために用いられ、制御装置60からの警報指令(通知指令)に基づいて、作業員の接近を通知する警報音を発生させる。
図3及び図4は作業員接近通知システムの詳細を示す図であり、図3はRFIDタグ及びタグ検知装置の詳細を、図4は作業状態検出装置及び制御装置の詳細をそれぞれ示す図である。
図3において、タグ検知装置20の磁界発生装置21A〜21Dは、磁界信号120A〜120Dとしての誘導磁界を駆動信号により発生するアンテナ(例えば、コイルなど)である磁界発生部25A〜25Dと、タグ検知装置制御部23からの制御信号に含まれる強度指令値(つまり、磁界強度設定情報)に基づいた磁界強度の磁界信号を磁界発生部25A〜25Dに発生させる駆動信号を生成する磁界強度変更部24A〜24Dをそれぞれ有している。磁界強度変更部24A〜24Dは、各磁界発生装置21A〜21Dに対応する磁界IDと磁界強度設定情報とを含む信号を生成して変調し、磁界発生部25A〜25Dに駆動信号として出力する。これにより磁界発生部25A〜25Dは、磁界IDと磁界強度設定情報(これらをまとめて誘導磁界情報と称する:図6参照)を含み、磁界強度設定情報に応じた磁界強度の変調信号である磁界信号120A〜120Dをそれぞれ発生する。
RFIDタグ40は、タグ検知装置20から発生される磁界信号120A〜120Dを検知するアンテナ(例えば、コイルなど)である磁界検出部41と、電波信号140を駆動信号により発生するアンテナ(例えば、コイルなど)である電波送信部43と、磁界検出部41で検知した磁界信号120A〜120Dに基づいて電波送信部43の駆動信号を生成する出力情報生成部42とを有している。出力情報生成部42は、磁界検出部41で検知した磁界信号120A〜120Dを復調し、その磁界信号120A〜120Dに含まれる磁界IDと磁界強度設定情報とを抽出する。そして、RFIDタグ40自身を識別する固有のIDであるタグIDと抽出した磁界ID(磁界ID受信値)及び抽出した磁界強度設定情報(磁界強度設定情報受信値)とを含む情報(以降、タグ情報と称する:図7参照)を生成して変調し、電波送信部43に駆動信号として出力する。これによりRFIDタグ40は、タグ情報(タグID、磁界ID受信値、及び磁界強度設定情報受信値)を含む所定の周波数及び強度の電波信号140を発信する。
RFIDタグ40は、例えば、セミアクティブタイプであって、磁界信号を受信するまでは電波信号の発信を行わない状態(待機状態)で待機し、タグ検知装置20からの磁界信号120A〜120Dの少なくとも1つを受信すると、これをトリガーとして各種処理を行い、必要な電波信号の発信が終了すると、新たに磁界信号を受信するまでは再び待機状態となる。つまり、RFIDタグ40は、磁界信号120A〜120Dの受信を契機に電波信号140を発信する。
タグ検知装置20のタグ情報受信装置22は、RFIDタグ40から発信される電波信号140を受信するアンテナ(例えば、コイルなど)である電波受信部26と、電波受信部26で受信した電波信号140を復調し、電波信号140に含まれるタグ情報を抽出してタグ検知装置制御部23に出力するタグ情報抽出部27とを有している。
タグ検知装置制御部23は、制御装置60から出力される、油圧ショベル1の周辺におけるRFIDタグ40の存在位置の検知対象とする範囲(すなわち、検知対象エリア)の情報に基づいて強度指令値(磁界強度設定情報)を生成し、磁界発生装置21A〜21Dの磁界強度変更部24A〜24Dに出力する磁界強度決定部28と、タグ情報受信装置22のタグ情報抽出部27から出力されるタグ情報を処理して制御装置60に出力する検知情報出力部29とを有している。磁界強度決定部28は、磁界発生装置21A〜21Dで発生する磁界信号120A〜120Dが検知対象エリアの範囲をカバーするのに必要な磁界強度(強度設定最大値)を設定し、その強度設定最大値の範囲で磁界強度を段階的かつ周期的に変更させるように強度指令値を生成する。本実施の形態では、磁界強度を複数(例えば3つ)の段階で周期的に変更させる場合を例示して説明する。ただし、段階の数は3つに限定されるものではなく、要求される分解能と磁界強度の変更周期および要求される応答時間を考慮して決定すればよい。検知情報出力部29は、タグ情報受信装置22からのタグ情報(タグID、磁界ID受信値、磁界強度設定情報受信値)をタグIDごとにまとめた情報(以降、タグ検知情報と称する:図8参照)を生成し、制御装置60に出力する。すなわち、タグ検知情報は、タグID毎に生成されるものであり、タグ情報に含まれる磁界IDごとの検知磁界強度(タグ検知情報に含まれる磁界強度設定情報受信値)がまとめられている。
図9は、磁界強度決定部の強度指令値の演算処理を示すフローチャートである。
図9に示すように、磁界強度決定部28は、まず、制御装置60からの検知対象エリアを設定する指令(検知範囲指令)が新たに入力されたかどうかを判定し(ステップS10)、判定結果がYESの場合には、強度設定最大値を強度指令値の候補値として設定する(ステップS20)。続いて、ステップS10での判定結果がNOの場合、又は、ステップS20での処理が終了した場合には、強度指令値の候補値が強度設定最大値以上であるかどうかを判定する(ステップS30)。ステップS30での判定結果がYESの場合、すなわち、強度指令値の候補値が強度設定最大値以上である場合には、強度指令値の候補値に磁界強度のとる複数の段階の最小値(強度設定最小値)を設定し(ステップ40)、その候補値を強度指令として出力する(ステップS50)。また、ステップS30での判定結果がNOの場合、すなわち、強度指令値の候補値が強度設定最大値以上でない場合には、強度指令値の候補値を磁界強度のとる複数の段階の1つ上の段階の強度指令値を設定し(ステップ41)、その候補値を強度指令として出力する(ステップS50)。
磁界強度決定部28は、例えば、取り得る磁界強度の設定が「弱」、「中」、「強」の3段階であり、制御装置60検知範囲指令(強度設定最大値)が「強」である場合は、「弱」→「中」→「強」→「弱」、というようにあらかじめ定められた磁界強度変更周期Tmごとに切り換えるように強度指令値を出力する。また、制御装置60検知範囲指令(強度設定最大値)が「中」である場合には、「弱」→「中」→「弱」→「中」と切り換えるように強度指令値を出力し、制御装置60検知範囲指令(強度設定最大値)が「弱」である場合には、常に「弱」を出力する。
なお、磁界強度の変更は磁界発生装置21ごとに行われるため、強度指令値の変更処理を各磁界発生装置21A〜21Dについて行う。
例えば、t=t0における制御装置60の検知範囲指令(強度設定最大値)が、(磁界発生装置21A:強、磁界発生装置21B:中、磁界発生装置21C:強、磁界発生装置21D:弱)である時、磁界強度決定部28の出力は、
t=t0:(21A:弱、21B:弱、21C:弱、21D:弱)
t=t0+Tm:(21A:中、21B:中、21C:中、21D:弱)
t=t0+2Tm:(21A:強、21B:弱、21C:強、21D:弱)
t=t0+3Tm:(21A:弱、21B:中、21C:弱、21D:弱)
・・・(括弧内には対応する磁界発生装置の符号のみを示す)
となる。なお、強度変更周期Tmは単一かつ固定とした場合を例示したが、磁界発生装置21A〜21D毎に別々の周期を設定しても良いし、周期をランダムに変更するように構成しても良い。
図10は、検知情報出力部のタグ検知情報の生成処理を示すフローチャートである。
図10に示すように、検知情報出力部29は、まず、前回のタグ検知情報の生成からの経過時間がタグ検知情報の生成周期として予め定めた時間Tsよりも小さいかどうかを判定する(ステップS100)。
ステップS100での判定結果がNOの場合、すなわち、タグ検知情報の生成周期を経過した場合には、生成したタグ検知情報を制御装置60に出力し(ステップS101)、経過時間をリセットするとともに生成中のタグ検知情報をクリアし(ステップS102)、ステップS100の処理に戻る。
また、ステップS100での判定結果がYESの場合には、新規のタグ情報を受信したかどうかを判定し(ステップS110)、判定結果がNOの場合にはステップS110での判定結果がYESになるまでステップS100およびステップS110の処理を繰り返す。ステップS110での判定結果がYESの場合、すなわち、新規のタグ情報を受信すると、生成中のタグ検知情報を読み込み(ステップS120)、新規のタグ情報のタグIDが新規であるかどうかを判定する(ステップS130)。
ステップS130での判定結果がYESの場合には、新規のタグIDに関するタグ検知情報を追加するとともに、生成中のタグ検知情報の各磁界IDに対応する検知磁界強度には初期値(検知「なし」)を入力する(ステップS140)。また、ステップS130での判定結果がNOの場合には、生成中のタグ検知情報における受信したタグ情報のタグIDに対応する検知磁界強度が、受信したタグ情報の磁界強度設定情報受信値よりも大きいかどうかを判定し(ステップS141)、判定結果がNOの場合には、ステップS100の処理に戻る。
ステップS140での処理が終了した場合、又は、ステップS141での判定結果がYESの場合には、作成中のタグ検知情報における受信したタグ情報のタグIDに対応する検知磁界強度に受信したタグ情報の磁界強度設定情報受信値を入力し(ステップS150)、ステップS100の処理に戻る。
上記のタグ検知情報の生成処理について一例を示して詳細に説明する。
タグ検知装置20から制御装置60へのタグ検知情報の出力周期TsとRFIDタグ40の電波信号140の送信周期との関係によっては、制御装置60への出力周期Tsの間に同一のRFIDタグ40から電波信号140を複数回受信する。このとき、受信した電波信号140に含まれるタグ情報のうち、タグIDが同一、かつ、磁界IDも同一の場合には、タグ検知情報の検知磁界強度を次のように決定する。すなわち、本実施の形態におけるタグ検知情報の生成処理では、そのような場合において、検知磁界強度として出力周期Tsの期間内における最も小さい磁界強度(磁界強度設定情報受信値)を選択し、タグ検知情報を生成する。例えば、作業員「α」のRFIDタグ40から、(タグID=「α」、磁界ID=「A」、磁界強度設定情報=「中」)と(タグID=「α」、磁界ID=「A」、磁界強度設定情報=「強」)の2つの電波信号140を受信した場合には、磁界ID「A」に関する検知磁界強度設定情報を「中」としてタグ検知情報を生成する。また、磁界発生装置21A〜21Dにそれぞれ対応する磁界IDのうち、受信した電波信号140のいずれにも含まれない磁界IDに関する情報については、検知磁界強度設定情報を「なし」とする。なお、タグ検知情報の生成処理は受信したタグIDごとに行う。
図4において、制御装置60の記憶部60Bは、演算部60Aでの演算に必要な情報を保持し、また、必要に応じて保持している情報を出力するものであり、磁界発生装置21A〜21Dの油圧ショベル1における設置位置に関する情報(設置位置情報)を記憶する磁界発生装置設置位置情報記憶部321と、RFIDタグ40を保持する作業員(オペレータを含む)およびその属性と保持するRFIDタグ40のタグIDとを対応させた作業員情報を記憶する作業員情報記憶部340とを有している。
磁界発生装置設置位置情報記憶部321は、磁界発生装置21A〜21Dの油圧ショベル1における設置位置に関する情報、すなわち、上部旋回体3について相対的に固定して設定される座標系等における位置や向きなどの情報(磁界発生装置設置位置情報)を記憶している。すなわち、磁界発生装置設置位置情報は、磁界発生装置21A〜21Dがそれぞれ油圧ショベル1のどの位置に設置され、どの方向に誘導磁界を発生させているかを示す情報である。なお、磁界発生装置設置位置情報は、各磁界発生装置21A〜21Dの取り得る磁界強度の情報と、磁界強度と磁界検知可能エリアの対応を示す情報とを含んでも良い。
作業員情報記憶部340は、作業員情報として、RFIDタグ40固有のタグIDと作業員の属性とを対応させたリストを保持する。作業員の属性とは、例えば、油圧ショベル1(自機)のオペレータ、補助作業員、周囲作業員、他の作業機械(他機)のオペレータ、監督者、などを区別する情報を含むものである。また、作業員の属性として、作業員の経験年数等の情報を含んでも良いし、これらを統合した指標を属性情報として作業員情報に含ませるようにしても良い。
図4において、制御装置60の演算部60Aにおける検知警報エリア決定部61は、姿勢検出装置71の検出結果に基づいて下部走行体2に対する上部旋回体3の旋回中心からフロント作業機6の最も遠い端部までの距離である旋回半径を演算する旋回半径演算部66と、機械作動状態検出装置72からの検出結果に基づいて、油圧ショベル1の作業状態を判別する作業状態判別部67と、旋回半径演算部66の演算結果と作業状態判別部67の判別結果とに基づいて検知対象エリアおよび接近通知対象エリアを演算する検知警報エリア演算部68とを有している。
旋回半径演算部66は、姿勢検出装置71(姿勢センサ75A〜75C)の検出結果に基づいて油圧ショベル1の旋回中心からフロント作業機6の端部までの距離を算出する。なお、旋回半径演算部66は、姿勢検出装置71からの検出信号を用いて油圧ショベル1の旋回中心からフロント作業機6の端部までの距離を旋回半径として算出するが、フロント作業機6の姿勢によっては、バケット6Cの先端よりもアーム6Bにおけるブーム6A側の端部等の方が旋回中心からの距離が長い場合がある。そこで、旋回半径演算部66では、ブーム6A、アーム6B、およびバケット6Cの姿勢に応じて、旋回中心から最も離れた箇所をフロント作業機6の端部(フロント作業機端部)とする。また、旋回中心からフロント作業機端部までの距離を旋回半径とし、油圧ショベル1の各部寸法情報と姿勢検出装置71からの入力信号とからリンク演算により算出する。なお、本実施の形態では、旋回中心から最も離れた箇所をフロント作業機端部として扱ったが、作業員の身長よりも十分高い箇所にフロント作業機6が存在する場合には、上部旋回体3の旋回によるフロント作業機6の移動範囲に作業員が入ることはない。そこで、上部旋回体3の旋回によるフロント作業機6の移動範囲に作業員が入る可能性のある高さをあらかじめ規定し、規定の高さ以下で旋回中心から最も離れたフロント作業機6における箇所をフロント作業機端部として扱っても良い。
作業状態判別部67は、機械作動状態検出装置72(キー状態検知センサ77、ロック状態検知センサ78、レバー操作量センサ79)からの入力信号を用いて油圧ショベル1の作業状態を判別する。作業状態判別部67は、キー状態検知センサ77からの入力状態によってエンジン始動状態を、ロック状態検知センサ78からの入力信号によってロックレバー8によるロック状態を、レバー操作量センサ79からの入力信号によって動作の種類を判別する。油圧ショベル1は、エンジンが始動状態であっても、ロックレバー8がロック状態である場合には、操作レバー装置5に対していかなる操作を行っても動作しない。そこで、油圧ショベル1の作業状態の種類として「エンジン停止状態」、「操作ロック状態」、「動作待機状態」、「動作状態」の4種類を定義する。また、油圧ショベル1の「動作状態」については、さらに詳細に「フロント動作状態」、「旋回動作状態」、「旋回フロント複合動作状態」、「走行動作状態」の4種類を定義する。
作業状態の判別方法として、まず、キー状態検知センサ77からの入力信号が、エンジンON状態以外の場合には「エンジン停止状態」と判定する。また、エンジンON状態の場合には、次のステップとして、ロック状態検知センサ78からの入力信号により、ロック状態の判定を行う。ロックレバー8がロック状態である場合には、「操作ロック状態」と判定する。また、ロック解除状態の場合には、レバー操作量センサ79からの入力信号により、操作レバー装置5の操作状態の判定を行う。操作レバー装置5に対していずれの操作も行われていない場合には、「動作待機状態」と判定する。また、操作レバー装置5に対していずれかの操作が行われている場合には、「動作状態」と判定し、走行、旋回、フロント作業機のいずれの操作が行われているかによって、状態をさらに詳細に判別する。すなわち、走行操作が行われている場合には「走行動作状態」、旋回の操作のみが行われている場合には「旋回動作状態」、フロント作業機6の操作のみが行われている場合には「フロント動作状態」、旋回とフロント作業機の操作が同時に行われている場合には「旋回フロント複合動作状態」と判定する。
検知警報エリア演算部68は、旋回半径演算部66で算出される旋回半径と作業状態判別部67で判別される作業状態に基づいて、作業員(すなわち、作業員が携帯するRFID40と同意である)の検知を行うエリア(検知対象エリア)および作業員の接近の通知を行うエリア(接近通知対象エリア)を決定する。また、記憶部60Bの磁界発生装置設置位置情報記憶部321に記憶される磁界発生装置位置情報を用いて、RFIDタグ40の磁界検知可能エリアが検知対象エリアとなるような磁界発生装置21A〜21Dの検知範囲指令(強度設定最大値)を算出する。検知対象エリアおよび接近通知対象エリアは、油圧ショベル1の特性や作業内容を考慮して決定する。なお、接近通知対象エリアは、全ての作業員で同一のものとしても良いし、作業員の役割等の属性に応じて接近通知の発令を変更できるように属性ごとに導出しても良い。本実施の形態では、油圧ショベル1の近傍で油圧ショベル1の作業を補助する作業補助員とそれ以外の作業員の2種類の作業員がRFID40を所持して作業を行っている場合を例にとり説明する。
ここで、作業状態判別部67で判別された作業状態毎の検知警報エリア演算部68による検知対象エリア及び接近通知対象エリアの決定方法について説明する。
エンジン停止状態では、油圧ショベル1は動かないため、油圧ショベル1の動作によって作業員と接触する恐れはなく、作業員の接近を通知する必要はないため、検知対象エリア及び接近通知対象エリアの設定は行わない。また、作業員接近通知システム10を油圧ショベル1に搭載する場合には、作業員接近通知システム10を構成する各装置を駆動するための電源を油圧ショベル1から得る構成が想定される。したがって、例えば、作業員接近通知システム10の始動をエンジンの始動と連動させ、エンジン停止状態には、作業員接近通知システム10が起動されないようにする。
操作ロック状態においては、操作レバー装置5の操作が行われた場合にも油圧ショベル1は動かないため、油圧ショベル1の動作によって作業員と接触する恐れはなく、作業員の接近を通知する必要はない。しかし、動作開始時に作業員と接触するリスクを低減するためには、ロックレバー8を解除する前に、油圧ショベル1の近傍に作業員が存在するか否かを確認することが有効である。そこで、操作ロック状態では、作業員の検知及びその検知情報の表示装置81への表示のみを行い、接近通知は行わない。この場合は、でき得るだけ広い範囲で作業員を検知することができるように検知対象エリアの設定を設定するために、磁界発生装置21A〜21Dへの検知範囲指令(強度設定最大値)は、全て「強」とする。また、接近通知は行わないため、接近通知対象エリアの設定は行わない。
動作待機状態においては、油圧ショベル1は動かないが、操作レバー装置5を操作されると直ちに動作状態となるため、油圧ショベル1が作業員に接触する可能性がある。したがって、油圧ショベル1のごく近傍に作業員が存在する場合には接近通知を行うことが望ましい。また、動作待機状態においては、作業補助員が作業補助のためにフロント作業機6の近傍に存在する可能性がある。そのため、接近通知対象エリアは、作業補助員とそれ以外の作業員とで異なる設定とすることが望ましい。一方、油圧ショベル1と作業員とが接触するリスクを低減する方策として、操作ロック状態と同様に、動作状態へ移行する前に、油圧ショベル1近傍に作業員が存在するか否かオペレータが確認することが有効である。そこで、動作待機状態では、作業員の検知及びその検知情報の表示装置81への表示は、でき得るだけ広いエリアで行い、接近通知は油圧ショベル1のごく近傍のエリアにおいてのみ行う。
動作待機状態における検知対象エリアおよび接近通知対象エリアの設定例を図11に示す。図11に示すように、作業員の検知を広いエリアで行うため、磁界発生装置21A〜21Dへの検知範囲指令(強度設定最大値)を全て「強」とする範囲に検知対象エリアを設定する。油圧ショベル1の前方の接近通知対象エリアは、旋回半径演算部66の算出結果によって決定する。また、油圧ショベル1の後方の接近通知対象エリアは、油圧ショベル1の後端半径を考慮して決定する。旋回半径演算部66から入力される旋回半径が、磁界強度設定情報の「中」に相当するエリア内の場合、接近通知対象エリアは検知対象エリア230のうち、実線で囲まれるエリア280A(斜線で示すエリア280Bを含む)に設定する。また、作業補助員については作業補助のためにフロント作業機6の近傍に存在する(すなわち、接近通知対象エリア280Aのうちエリア280Bの範囲で作業を行っている)可能性が高いが、作業補助は作業内容や作業位置について油圧ショベル1と一緒に行う作業であるという特徴があり、油圧ショベル1のオペレータが作業補助員を確実に認識して行う作業である。このため、オペレータが作業補助員を確実に認識しているにもかかわらず、作業補助員に関して必要以上に頻繁に接近通知が行われることが考えられる。このため、属性が「補助作業員」に設定されたタグIDのRFID40については、フロント作業機6の近傍(フロント作業機近傍エリア280B)では接近通知は行わないように設定する。すなわち、補助作業員においては、エリア280Aのうちフロント作業機近傍エリア280Bを除く範囲を接近通知対象エリアとして接近通知を行うように設定する。
動作状態は、油圧ショベル1が動いている状態であり、油圧ショベル1が作業員と接触するリスクが高く、また、油圧ショベル1と作業員との位置関係が時々刻々と変化する。そこで、走行、旋回、フロント作業機のそれぞれの動作によって短時間で油圧ショベル1が接近することが予想されるエリアに作業員が存在する場合には接近通知を行うことが望ましい。一方、時々刻々と変化する状況に対応するために、作業員の検知対象エリアは、接近通知を行うために必要なエリアのみとどめ、応答性良く作業員を検知することが重要である。
フロント動作状態における検知対象エリアおよび接近通知対象エリアの設定例を図12に示す。動作状態のうち、フロント動作状態においては、フロント作業機6の姿勢が変化するため、油圧ショベル1の前方のフロント作業機6到達エリアが時々刻々と変化する。また、旋回操作が行われると瞬時に旋回動作状態あるいは旋回複合動作状態へ移行し、油圧ショベル1の右前方あるいは左前方にフロント作業機6が到達し、右後方あるいは左後方に油圧ショベル1の後端部が到達する可能性がある。そこで、フロント動作状態では、図12に示すように、油圧ショベル1の前方の検知対象エリアは、旋回半径演算部66から入力される旋回半径よりもやや広く設定し、側方については前方よりは油圧ショベル1の近傍に限定するものの、旋回操作の可能性を考慮して、検知対象エリアを設定する。また、後方は油圧ショベル1の後端部の近傍をカバーすればよい。旋回半径演算部66から入力される旋回半径が、磁界強度設定情報の「中」に相当するエリア内の場合、上記を鑑みて検知対象エリア231を設定し、接近通知対象エリアは検知対象エリア231と同範囲のエリア281A(斜線で示すエリア281Bを含む)に設定する。また、作業補助員については作業補助のためにフロント作業機6の近傍に存在する(すなわち、接近通知対象エリア281Aのうちエリア281Bの範囲で作業を行っている)可能性が高いが、作業補助は作業内容や作業位置について油圧ショベル1と一緒に行う作業であるという特徴があり、油圧ショベル1のオペレータが作業補助員を確実に認識して行う作業である。このため、オペレータが作業補助員を確実に認識しているにもかかわらず、作業補助員に関して必要以上に頻繁に接近通知が行われることが考えられる。このため、属性が「補助作業員」に設定されたタグIDのRFID40については、フロント作業機6の近傍(フロント作業機近傍エリア281B)では接近通知は行わないように設定する。すなわち、補助作業員においては、エリア281Aのうちフロント作業機近傍エリア281Bを除く範囲を接近通知対象エリアとして接近通知を行うように設定する。
旋回動作状態における検知対象エリアおよび接近通知対象エリアの設定例を図13に示す。動作状態のうち、旋回動作状態においては、旋回動作によって、油圧ショベル1と作業員の位置関係が大きく変化し、油圧ショベル1の右前方あるいは左前方にフロント作業機6が到達し、右後方あるいは左後方に油圧ショベル1の後端部が到達する。そのため、油圧ショベル1の前方および側方の検知対象エリアは、旋回半径演算部66から入力される旋回半径を用いて決定し、油圧ショベル1の後方の検知対象エリアは、油圧ショベル1の後端部の到達エリアを考慮して設定する。旋回半径演算部66から入力される旋回半径が、磁界強度設定情報の「中」に相当するエリア内の場合、上記事情を鑑みた広めの範囲を検知対象エリア232に設定し、接近通知対象エリア282Aは検知対象エリア232の全体を設定する。また、旋回動作状態では、油圧ショベル1と作業員の接触のリスクが高いため、作業補助員であっても、油圧ショベル1の近傍に存在する場合には接近通知を行うことが望ましい。したがって、接近通知は、全ての作業員について行う。
動作状態のうち、旋回フロント複合動作では、フロント動作態と旋回動作が同時に行われるものであり、検知対象エリアおよび接近通知対象エリアは、フロント動作状態と旋回動作状態で設定した場合と同様に決定すればよい。
走行動作状態における検知対象エリアおよび接近通知対象エリアの設定例を図14に示す。動作状態のうち、走行動作状態においては、油圧ショベル1全体が前方あるいは後方に移動する点で他の動作状態とは異なる。油圧ショベル1の前後方への移動を考慮し、油圧ショベル1の前方および後方の検知対象エリアはでき得る限り広く設定することが望ましい。このため、前方、後方の油圧ショベル1の進路上を検知対象エリアとして図14の実線で囲むエリア233を設定し、接近通知対象エリア283Aは検知対象エリア233の全体(斜線で示すエリア283Bを含む)を設定する。また、走行動作状態においては、作業補助員が誘導のために油圧ショベル1の前方あるいは後方に存在する可能性がある。作業補助員の場合には、接近通知対象エリア283Aのうち、作業機械の左前方および左後方の油圧ショベル1からやや離れたエリア(斜線で示すエリア283B)では接近通知を行わないように設定する。
制御装置60における演算部60Aの作業員位置判定部62は、タグ検知装置20から入力されるタグ検知情報と検知警報エリア決定部61から入力される検知対象エリアおよび接近通知対象エリアの設定情報と、記憶部60Bの作業員情報記憶部340に記憶される作業員情報とを用いて作業員の存在するエリア(以降、作業員存在エリアと称する)を導出し、また、接近通知の対象か否かを判定する。また、作業員情報、作業員存在エリア、接近通知対象の要否情報からなる作業員存在情報を生成し、検知対象エリアの設定情報とともに通知指令生成部63に出力する。
タグ検知装置20における磁界強度の切り替え周期とタグ検知情報の出力周期によっては、強度設定最小値から強度設定最大値までの全ての強度の磁界信号120A〜120Dに対する電波信号140を受け取れていない可能性がある。そこで、作業員位置判定部62は所定の期間のタグ検知情報を用いて存在エリアの導出を行う。本実施の形態では、作業員位置判定部62に連続して入力される2回分のタグ検知情報を用いて存在エリアの導出を行う場合を例示して説明する。
作業員位置判定部62では、タグ検知情報が入力されると、タグ検知情報から作業員ごと、すなわち、検知タグIDおよび磁界IDごとの検知磁界強度を抽出する。検知タグIDおよび磁界IDごとの検知磁界強度が2回連続で取得したタグ検知情報の1回目と2回目とで異なる場合には、検知磁界強度として磁界強度の小さい方を選択し、当該検知タグIDおよび磁界IDの検知磁界強度とする。このような処理を各磁界IDについて行い、さらに、全ての検知タグIDについて同様の処理を行う。
例えば、磁界発生装置21A〜21Dに対応した磁界IDの検知磁界強度が、(21A:なし、21B:なし、21C:なし、21D:中)である場合には、作業員存在エリアは図15に示す油圧ショベル1の後方の網掛け部240のエリアであり、(21A:なし、21B:なし、21C:弱、21D:弱)である場合には、図15に示す油圧ショベル1の右後方の網掛け部241のエリアであること導出される。
また、作業員位置判定部62では、検知タグIDおよび導出した作業員存在エリアをもとに、作業員情報と接近通知対象エリアの情報とを用いて、接近通知の要否を判定する。作業員情報には、検知タグIDの作業員の属性情報が含まれている。作業員位置判定部62は、属性情報を用いて、作業員存在エリアがその属性の接近通知対象エリアであるかどうかを判定する。そして、検知タグIDあるいは作業員の属性情報、作業員存在エリアの情報、及び接近通知の要否情報を含んだ作業員存在情報を生成して通知指令生成部63に出力する。
通知指令生成部63は、作業員位置判定部62から入力される作業員存在情報と検知対象エリアの情報とを用いて表示装置81への表示指令(通知指令)および警報装置82への警報指令(通知指令)を生成する。
表示装置81に出力する表示指令としては、例えば、図16に示すような表示を行うようなものがある。図16に示した例では、油圧ショベル1の上面図を模したアイコン11を中央に配置して対応する検知対象エリア234を描画し、また、作業員が検知されて作業員存在情報が存在する場合には、作業員存在エリア242を検知対象エリア234内に描画する。作業員存在エリア242は、検知された作業員が接近通知の対象か否かによって表示方法を変えることが望ましい。例えば、図17に示すように、接近通知の対象となる作業員が存在する作業員存在エリア243は、接近通知の対象外の作業員存在エリア242と比べて強調されるように表示することが考えられる。また、接近通知の対象となる作業員の存在が検知されている場合には、作業員の接近を通知する接近通知としての表示を行う。接近通知としての表示内容としては、例えば、図17に示すように、表示領域内に表示する警告表示250などが考えられる。なお、接近通知としての表示内容としては、図17に示したものの他に、旋回半径や検知された作業員名、検知されている作業員の人数などの情報を加えても良い。
通知指令生成部63の警報装置82への警告指令(通知指令)の出力は、接近通知の対象となる作業員の有無によって決定する。接近通知の対象となる作業員が存在する場合には、警告指令の出力を行い、存在しない場合には警報指令の出力を行わない。また、検知されている作業員の人数や距離等の情報に応じて警報の種類を数段階設けるように構成しても良い。
以上のように構成した本実施の形態における作用効果を説明する。
一般に、作業機械に接近する作業員を検知してオペレータに警報等で通知する場合には、過度な警報によってオペレータに煩わしさを感じさせないように十分留意する必要がある。過度な警報の防止には、例えば、作業機械に対する作業員の存在の検知や警報を行う対象となるエリアを様々な状況に応じて適切に調整することが重要である。しかしながら、作業機械に対する作業員の存在の検知や警報を行う対象のエリアを調整することについては考慮されていないような技術においては、過度な警報によってオペレータが煩わしさを感じてしまい、作業効率の低下を招くことが懸念される。
これに対して本実施の形態においては、発生する磁界信号の磁界強度に関する情報である磁界強度設定情報と磁界信号の発生元を識別するための磁界IDとを含む磁界信号120A〜120Dを発生させる磁界発生装置21A〜21Dを油圧ショベル1の予め定めた位置に固定して設置するとともに、磁界発生装置21A〜21Dが発生する磁界信号120A〜120Dを受信した場合に、受信した磁界信号の磁界ID(磁界ID受信値)及び磁界強度設定情報(磁界強度設定情報受信値)と、磁界信号を受信したRFIDタグ40自身を識別するタグIDと、を含む電波信号を送信するRFIDタグ40を油圧ショベル1のオペレータ及び外部で作業を行う作業員に携帯させ、RFIDタグ40から発信する電波信号140をタグ情報受信装置22で受信する。このとき、磁界発生装置21A〜21Dで発生する磁界信号120A〜120Dの磁界強度を周期的に変更させるとともに、タグ情報受信装置22で受信した電波信号140に含まれる情報を取得する。そして、検知警報エリア決定部61において、油圧ショベル1の周辺におけるRFIDタグ40の存在位置の検知対象とする検知対象エリアとその検知対象エリアのうちRFIDタグの接近通知の対象とする接近通知対象エリアとを決定し、作業員位置判定部62において、磁界発生装置21A〜21Dの油圧ショベル1における設置位置に関する情報とタグ検知装置制御部23で取得した電波信号140に含まれる情報とを用いて、検知警報エリア決定部61で決定した検知対象エリアのうちRFIDタグ40が存在する位置を判定し、通知指令生成部63において、作業員位置判定部62の判定結果に基づいて、接近通知対象エリアでRFIDタグ40を検知したことを油圧ショベル1のオペレータに通知するための通知指令を生成して通知装置に出力するように構成した。したがって、過度な警報を防止することができる。
すなわち、本実施の形態においては、作業員の存在エリアを特定するとともに、作業状態検出装置70からの入力情報に基づいて作業機械の作業状態を判定し、その作業状態に応じて検知対象エリアおよび接近通知対象エリアを設定し、各エリアでの作業員の検知状況に応じて通知および接近通知を行う。油圧ショベル1が稼働する現場には複数の作業員が存在することが想定される。本実施の形態では、タグ検知装置20で検知された作業員がどのような作業員かを認識し、作業員ごとに接近通知の方法を変更することができるので、過度な接近通知を防止することができ、オペレータに適切なタイミングで作業員の存在を通知することができ、わずらわしさや作業効率の低下を抑制することができる。
また、本実施の形態においては、油圧ショベル1に搭載するタグ検知装置20で磁界強度を周期的に変更することによって作業員の検知を行う原理を用いているため、タグ検知装置20は油圧ショベル1にのみ搭載すればよく、本実施の形態に係る作業員接近通知システム10を油圧ショベル1に新たに付加することによるコストへの影響を小さく抑えることができる。
また、本実施の形態においては、一般的な誘導磁界方式のセミアクティブと同様の構成を用いることが可能なRFIDタグ40を用いているので、検知対象となる作業員の人数分のRFIDタグ40を用意したとしても、コストへの影響を小さく抑えることができる。
また、本実施の形態においては、作業員接近通知システム10の要部となるタグ検知装置20及び制御装置60のいずれも油圧ショベル1上に搭載することができ、タグ検知装置20においては制御装置60からの指令によって細かな変更を行いやすい。
なお、本実施の形態においては、油圧ショベル1に対して複数(4台)の磁界発生装置21A〜21Dを搭載する場合を例示して説明したが、例えば、図18に変形例として示すように、油圧ショベル1に対して1台の磁界発生装置21を搭載して作業員の検知を行うこともできる。例えば、図19に示すように1台の磁界発生装置21を油圧ショベル1の旋回中心の上部等に設置して磁界検知可能エリア221が油圧ショベル1全体を含む範囲となるようにし、油圧ショベル1の全周囲の作業員を検知するような構成が考えられる。この構成の場合には、作業員が油圧ショベル1に対してどの距離の範囲に存在するかを検知することができる。ただし、作業員が油圧ショベル1に対していずれの方向に存在するかの情報は得られないため、油圧ショベル1と作業員との距離に関する情報が重要な場合にこの構成は有効である。
また、例えば、図20に示すように1台の磁界発生装置21を油圧ショベル1の右側後方等に設置して磁界検知可能エリア221が油圧ショベル1の右側後方の範囲を含むようにし、運転室4から死角となりやすい油圧ショベル1の右側後方の作業員を検知するような構成が考えられる。この構成の場合には、作業員が油圧ショベル1の右側後方の部位からどの距離の範囲に存在するかを検知することができる。ただし、作業員が油圧ショベル1の特定の部位に対していずれの方向に存在するかの正確な情報は得られないため、油圧ショベル1の特定の部位の周辺(この場合は運転室4から死角となりやすい右側後方)の作業員の存在を検知することが重要な場合に有効である。
また、油圧ショベル1に対して2台の磁界発生装置21A,21Bを搭載して作業員の検知を行うこともできる。例えば、図21に示すように磁界発生装置21A,21Bを油圧ショベル1の右側と後方とにそれぞれ1台ずつ配置して磁界検知可能エリア221A,221Bが油圧ショベル1の右側及び後方の範囲を含むようにし、運転室4から死角となりやすい油圧ショベル1の右側及び後方の作業員を検知するような構成が考えられる。この構成の場合には、作業員が油圧ショベル1の特定の部位(この場合は油圧ショベル1の右側及び後方)に対してどの距離の範囲に存在するかを検知することができるとともに、磁界検知可能エリア221A,221Bとそれらが重複するエリアとを区別して検知対象エリアに設定することができるので、作業員の位置をより精度良く検知することができる。
なお、本実施の形態においては作業機械の一例として油圧ショベル1を挙げて説明したが、本発明は、油圧ショベル1におけるフロント作業機6のような作業腕を有する作業機械であれば適用可能である。作業腕を有する作業機械としては、例えば、車体の前方に多関節型の油圧作業装置を備えたホイールローダがある。
図22は、本発明が適用される作業機械の一例として示すホイールローダの側面図である。図22において、ホイールローダ430は、車体本体431と、この車体本体431の前方に取り付けた多関節型の油圧作業装置450とを備えている。車体本体431は、アーティキュレート操舵式(車体屈折式)を採用しており、それぞれ左右に車輪410(前輪410a、後輪410b)を装着した前部車体(フロントフレーム)431aと後部車体(リアフレーム)431bを、センタージョイント464で連結している。なお、図22には示されていないが、センタージョイント464の左右両側には前部車体431aと後部車体431bを連結するようにステアリングシリンダ(油圧アクチュエータ)が配置されている。
油圧作業装置450は、回動可能に連結された複数のフロント部材(リフトアーム441、バケット442)と、リフトアーム441及びバケット442を駆動するために伸縮駆動されるリフトシリンダ452(油圧アクチュエータ)及びバケットシリンダ451(油圧アクチュエータ)を備えている。なお、リフトアーム441とリフトシリンダ452は前部車体431aの左右に1つずつ装備されているが、図22では車体左側のリフトアーム441とリフトシリンダ452のみを図示し、隠れている車体右側の構成については図示を省略して説明する。
リフトアーム441は、リフトシリンダ452の伸縮駆動に伴って上下方向に回動(俯仰動)する。バケット442は、バケットシリンダ451の伸縮駆動に伴って上下方向に回動(ダンプ動作又はクラウド動作)する。なお、図22に示したホイールローダ430は、バケット442を作動させるためのリンク機構として、Zリンク式(ベルクランク式)のものを採用している。当該リンク機構にはバケットシリンダ451が含まれている。
運転室436内には、油圧作業装置450を操作するための操作レバー(図示せず)、車体本体431の進行方向に関して前進(F)/後進(R)を切り替える装置(前後進切替え装置)である前後進スイッチ(図示せず)、車体本体431に加速を指示するためのアクセルペダル(図示せず)、車体本体431に減速を指示するためのブレーキペダル(図示せず)、車体本体431の左右の進行方向を操るためのステアリングホイール(図示せず)、などが設置されている。運転室(キャブ)436内に設置されたステアリングホイール(図示せず)を操作すると、ステアリングシリンダの伸縮駆動に伴って後部車体431bと前部車体431aはセンタージョイント464を中心にして屈折(旋回)する。
後部車体431b上の前方には運転室436、後方にはエンジン室437が搭載されている。なお、図示しないが、エンジン室437には、原動機であるディーゼルエンジンや、ディーゼルエンジンにより駆動される油圧ポンプ、油圧ポンプから各油圧アクチュエータに供給される圧油の流量および方向を制御するコントロールバルブ、減速機などを介して車輪410と接続された走行油圧モータ(車輪410などを含めた走行装置と言える)などが収納されている。
以上のように構成したホイールローダ430についても、油圧ショベル1と同様に本願発明を適用することができる。作業機械である油圧ショベル1のフロント作業機6、車体本体(上部旋回体3及び下部走行体2)、運転室等は、同じく作業機械であるホイールローダ430の油圧作業装置450、車体本体431及び車輪410、運転室436等にそれぞれ対応している。
そして、このように構成したホイールローダ430に、本願発明の作業員接近通知ステムを適用する。すなわち、油圧作業装置450のフロント部材(リフトアーム441、バケット442)には、それぞれの姿勢情報を取得するための姿勢センサ475A,475Bを配置する。姿勢センサ75A,475Bは、例えば、設置されたフロント部材の角速度及び加速度を計測する慣性計測装置(IMU: Inertial Measurement Unit)である。また、車体本体431上部の前後左右には、4台の磁界発生装置421B,421D(図22においては2台のみ図示する)をそれぞれ1つずつ配置する。
さらに、油圧ショベル1に適用したタグ検知装置20(ホイールローダ430においては磁界発生装置421A〜421Dを含む)、作業状態検出装置70、通知装置80、及び制御装置60に相等する構成を備えることにより、本願発明を適用したホイールローダ430においても、本願発明を適用した油圧ショベル1と同様の効果を得ることができる。
以上のように構成した本実施の形態の特徴を説明する。
(1)上記の実施の形態では、走行装置が設けられた車体本体と、前記車体本体に取り付けられ、回動可能に連結された複数のフロント部材(例えば、ブーム6A、アーム6B、バケット6C)からなる多関節型の作業機(例えば、フロント作業機6)と、前記作業機を操作するための操作信号を出力する操作装置(例えば、操作レバー装置5)とを備えた作業機械(例えば、油圧ショベル1)に搭載される作業員接近通知システム10において、発生する磁界信号の磁界強度を調整可能な磁界発生装置であって、前記磁界信号の磁界強度に関する情報である磁界強度設定情報と前記磁界信号の発生元を識別するための磁界IDとを含む磁界信号120A〜120Dを発生させる、前記車体本体の予め定めた位置に固定された少なくとも1つの磁界発生装置21A〜21Dと、前記作業機械のオペレータ及び前記作業機械の外部で作業を行う作業員に携帯されるRFIDタグ40であって、前記磁界発生装置が発生する前記磁界信号を受信した場合に、受信した前記磁界信号に含まれる前記磁界ID及び前記磁界強度設定情報と、前記磁界信号を受信した前記RFIDタグ自身を識別するタグIDと、を含む電波信号140を送信する少なくとも1つのRFIDタグと、前記RFIDタグから発信する電波信号を受信するタグ情報受信装置22と、前記磁界発生装置で発生する磁界信号の磁界強度を周期的に変更させるとともに、前記タグ情報受信装置で受信した電波信号に含まれる情報を取得するタグ検知装置制御部23と、前記作業機械の周辺における前記RFIDタグの存在位置の検知対象とする検知対象エリアと前記検知対象エリアのうち前記RFIDタグの接近通知の対象とする接近通知対象エリアとを決定する検知警報エリア決定部61と、前記磁界発生装置の前記作業機械における設置位置に関する情報と前記タグ検知装置制御部で取得した前記電波信号に含まれる情報とを用いて、前記検知警報エリア決定部で決定した前記検知対象エリアのうち前記RFIDタグが存在する位置を判定する作業員位置判定部62と、前記作業員位置判定部の判定結果に基づいて、前記接近通知対象エリアで前記RFIDタグを検知した場合に、前記RFIDタグを検知したことを前記作業機械のオペレータに通知するための通知指令を生成し、通知装置に出力する通知指令生成部63とを備えたものとする。
(2)また、上記の実施の形態では、上記(1)の作業員接近通知システムにおいて、前記作業機械の作業状態を検出する作業状態検出装置70を備え、前記検知警報エリア決定部は、前記作業状態検出装置の検出結果に基づいて前記検知対象エリア及び前記接近通知対象エリアを決定し、前記タグ検知装置制御部は、前記磁界発生装置が発生する磁界信号の磁界強度が最大値となったときに前記RFIDタグが前記磁界信号を受信可能な範囲が前記検知警報エリア決定部で決定された前記検知対象エリアと同じ範囲となるように、前記磁界発生装置で発生する磁界信号の磁界強度を周期的に変更させるものとする。
(3)また、上記の実施の形態では、上記(2)の作業員接近通知システムにおいて、複数の前記磁界発生装置を備え、前記タグ検知装置制御部は、前記複数の磁界発生装置が発生する磁界信号の磁界強度がそれぞれ最大値となったときに前記RFIDタグが前記磁界信号を受信可能な範囲の集合が前記検知警報エリア決定部で決定された前記検知対象エリアと同じ範囲となるように、前記複数の磁界発生装置で発生する磁界信号の磁界強度をそれぞれ周期的に変更させ、前記作業員位置判定部は、前記複数の磁界発生装置の前記作業機械におけるそれぞれの設置位置に関する情報と、前記タグ検知装置制御部で取得した、前記複数の磁界発生装置からそれぞれ発生される磁界信号に応じて前記RFIDタグからそれぞれ送信される電波信号の情報とを用いて、前記検知警報エリア決定部で決定した前記検知対象エリアのうち前記RFIDタグが存在する位置を判定するものとする。
(4)また、上記の実施の形態では、上記(3)の作業員接近通知システムにおいて、前記車体本体は、下部走行体2と、前記下部走行体に対して旋回可能に設けられ、前記多関節型の作業機が取り付けられた上部旋回体3とを有し、前記作業状態検出装置は、前記作業機を構成する前記複数のフロント部材の姿勢に関する姿勢情報をそれぞれ検出する姿勢検出装置71と、前記操作装置の操作状態を作業機械の動作状態として検出する機械作動状態検出装置72とを備え、前記検知警報エリア決定部は、前記姿勢検出装置の検出結果に基づいて、前記下部走行体に対する前記上部旋回体の旋回中心から前記作業機の最も遠い端部までの距離である旋回半径を演算する旋回半径演算部66と、前記機械作動状態検出装置からの検出結果に基づいて、前記作業機械の作業状態を判別する作業状態判別部67と、前記旋回半径演算部の演算結果と前記作業状態判別部の判別結果とに基づいて前記検知対象エリアおよび前記接近通知対象エリアを演算する検知警報エリア演算部68とを有するものとする。
(5)また、上記の実施の形態では、上記(3)の作業員接近通知システムにおいて、前記通知装置は、前記通知指令生成部からの通知指令に基づいて、前記作業員位置判定部の判定結果を視覚情報によってオペレータに報知する表示装置81と、前記通知指令生成部からの通知指令に基づいて、前記作業員位置判定部の判定結果を聴覚情報によってオペレータに報知する警報装置82とを備え、前記通知指令生成部は、前記作業員位置判定部によって前記RFIDタグが前記検知対象エリアに存在すると判定された場合には、前記検知警報エリア決定部で決定された前記検知対象エリアと、前記RFIDタグが存在すると判定されたエリアとを異なる表示で表示させる通知指令を生成して前記表示装置に送信し、前記RFIDタグが前記接近通知対象エリアに存在すると判定された場合には、前記RFIDタグが接近通知対象エリアに存在することを示す警告表示を表示させる通知指令を生成して前記表示装置に送信するとともに、警報を発報させる通知指令を生成して前記警報装置に送信するものとする。
<付記>
なお、上記の実施の形態においては、作業腕を有する作業機械として油圧ショベルやホイールローダを例示して説明したが、作業腕を有する作業機械であれば他の作業機械であっても本願発明を適用可能である。また、蒸気の実施の形態においては、エンジン等の原動機で油圧ポンプを駆動する一般的な油圧ショベルやホイールローダを例に挙げて説明したが、油圧ポンプをエンジン及びモータで駆動するハイブリッド式の油圧ショベルや、油圧ポンプをモータのみで駆動する電動式の油圧ショベルやホイールローダ等にも本発明が適用可能であることは言うまでもない。
また、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。