JP2019057762A - 非可逆回路素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】 磁石の共振が中心電極に干渉することが抑制された非可逆回路素子を提供する。
【解決手段】 下ヨーク1と、下側主面と上側主面とを有するフェライト4と、複数のポート部6a〜6cを有する中心電極6と、複数の磁石と、板状金属9とを備え、下ヨーク1に、下ヨーク1と電気的に絶縁された、複数の入出力端子3a〜3cが形成され、複数の磁石は、少なくとも、第1磁石7と、第2磁石8とを含み、下ヨーク1と、フェライト4と、中心電極6と、第1磁石7と、板状金属9と、第2磁石8とが、この順番に下から上に垂直に配置されたものとする。
【選択図】 図2
【解決手段】 下ヨーク1と、下側主面と上側主面とを有するフェライト4と、複数のポート部6a〜6cを有する中心電極6と、複数の磁石と、板状金属9とを備え、下ヨーク1に、下ヨーク1と電気的に絶縁された、複数の入出力端子3a〜3cが形成され、複数の磁石は、少なくとも、第1磁石7と、第2磁石8とを含み、下ヨーク1と、フェライト4と、中心電極6と、第1磁石7と、板状金属9と、第2磁石8とが、この順番に下から上に垂直に配置されたものとする。
【選択図】 図2
Description
本発明は、アイソレータやサーキュレータなどの非可逆回路素子に関する。
携帯電話やスマートフォンなどの電子機器に、信号を伝送方向のみに通過させ、逆方向への伝送を阻止する、アイソレータやサーキュレータなどの非可逆回路素子が広く使用されている。
特許文献1(特開2016-163110号公報)に、そのような非可逆回路素子が開示されている。図12に、特許文献1に開示された非可逆回路素子1000を示す。
非可逆回路素子1000は、下ヨーク(ケース部)101と、フェライト(基板)102、103と、中心電極(中心導体)104と、2つの磁石(永久磁石)105、106と、上ヨーク(蓋部)107と、を備えている。非可逆回路素子1000は、さらに、板状金属(シールド板)108と、非磁性シート109、110と、終端抵抗111とを備えている。
中心電極104は、ポート部(主導体部の先端)104a、104b、104cを備えている。そして、ポート部104cが、終端抵抗111に接続されている。
非可逆回路素子1000は、上記の構成要素が、下から上に、下ヨーク101、磁石105、板状金属108、フェライト102、中心電極104、フェライト103、非磁性シート109、磁石106、非磁性シート110、上ヨーク107の順番に、垂直に配置されている。
非可逆回路素子1000は、下ヨーク101と上ヨーク107とで磁気回路が構成され、磁石105、106が発生させた直流磁界を磁気回路によってフェライト102、103に印加する。
非可逆回路素子1000においては、磁石を、磁石105と磁石106との2つに分割して構成している。非可逆回路素子1000が、磁石を、磁石105と磁石106との2つに分割して構成した理由は、次のとおりである。
非可逆回路素子においては、中心電極から放射される電磁界によって、磁石が共振する場合がある。この磁石の共振の共振周波数は、磁石の大きさに反比例し、磁石の大きさが小さいと共振周波数は高く、磁石の大きさが大きいと共振周波数は低くなる。
磁石の共振周波数が、非可逆回路素子の動作周波数帯に近い場合、磁石の共振が中心電極に干渉し、非可逆回路素子の電気的特性が劣化するという問題があった。
特に、非可逆回路素子を高周波帯で動作させようとした場合、磁石からフェライトに大きな直流磁界を印加する必要があり、磁石を大きくする必要があるが、磁石を大きくすることによって磁石の共振周波数が低周波側へシフトする。そして、一般的に、磁石の共振周波数は非可逆回路素子の動作周波数よりも高いため、磁石の共振周波数が低周波側へシフトすることにより、磁石の共振周波数が非可逆回路素子の動作周波数に近づき、非可逆回路素子の電気的特性が劣化するという問題があった。特に、近年、数十GHz以上のミリ波帯を利用した高周波の通信システムが構築されており、ミリ波帯の通信システムに対応する非可逆回路素子において、磁石をより大きくする必要がある。そのため、特に、ミリ波帯の通信システムに対応する非可逆回路素子において、磁石の共振周波数の低周波側へのシフト、および、磁石の共振周波数と非可逆回路素子の動作周波数とが近づくことによる電気的特性の劣化が大きな問題になっていた。
なお、磁石の大きさを必要以上に大きくし、磁石の共振周波数を、非可逆回路素子の動作周波数よりも、さらに低周波側へシフトさせて、磁石の共振が中心電極に干渉するのを抑制し、非可逆回路素子の電気的特性の劣化を抑制する方法も考えられる。しかしながら、この方法には、高次共振モードが発生して電気的特性が劣化する虞があるという問題や、非可逆回路素子が大型化するという問題があるため、実用的ではない。
そこで、非可逆回路素子1000は、磁石を、磁石105と磁石106との2つに分割し、それぞれの大きさを小さくすることによって、フェライト102、103に印加する必要な直流磁界の大きさを維持したまま、磁石105、106の共振周波数を、それぞれ、非可逆回路素子1000の動作周波数帯よりも高周波側の離れた周波数帯に位置させている。この結果、非可逆回路素子1000は、磁石105、106の共振が中心電極104に干渉することが抑制されており、電気的特性の劣化が抑制されている。
非可逆回路素子1000は、中心電極104と下ヨーク101との間に、2分割したうちの片方の磁石105が配置されているため、非可逆回路素子1000を電子機器の基板に実装した際に、中心電極104のポート部104a〜104cと基板の電極との間の距離が、磁石105の厚み分だけ長くなってしまうという問題があった。すなわち、非可逆回路素子1000を基板に実装した場合、ポート部104aはピン端子112を経由して、ポート部104bはピン端子113を経由して、ポート部104cは終端抵抗111を経由して、それぞれ基板の電極に電気的に接続されるが、いずれ経路においても、ポート部104a〜104cから、基板の電極までの距離が、磁石105の厚み分だけ長くなってしまうという問題があった。
そして、非可逆回路素子1000は、中心電極104のポート部104a〜104cから、基板の電極までの距離が、磁石105の厚み分だけ長くなってしまうことにより、伝送ロスが発生し、挿入損失が増大してしまうという問題があった。特に、非可逆回路素子1000の動作周波数帯が高周波帯である場合には、単位長さあたりの伝送ロスが大きいため、挿入損失が大幅に劣化してしまうという問題があった。
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものである。その手段として本発明の非可逆回路素子は、下ヨークと、下側主面と上側主面とを有するフェライトと、複数のポート部を有する中心電極と、複数の磁石と、板状金属とを備え、下ヨークに、下ヨークと電気的に絶縁された、複数の入出力端子が形成され、複数の磁石は、少なくとも、第1磁石と、第2磁石とを含み、下ヨークと、フェライトと、中心電極と、第1磁石と、板状金属と、第2磁石とが、この順番に下から上に垂直に配置されたものとする。
板状金属は、たとえば、鉄、ニッケルまたはコバルトを主成分とすることができる。
第1磁石の厚みが、第2磁石の厚みよりも小さいことが好ましい。この場合には、第1磁石と第2磁石とで必要な直流磁界を発生させながら、板状金属よりも中心導体側に配置された第1磁石の大きさ(厚み)を小さくすることができ、第1磁石の共振周波数を、非可逆回路素子の動作周波数帯よりも高周波側の離れた周波数帯に位置させることができる。なお、第2磁石は、中心導体との間に板状金属が配置され、中心導体からシールドされているため、共振の発生自体が抑制されている。
上ヨークをさらに備え、下ヨークと、フェライトと、中心電極と、第1磁石と、第2磁石と、上ヨークとが、この順番に下から上に垂直に配置されることも好ましい。この場合には、上ヨークと下ヨークとで磁気回路を構成し、第1磁石および第2磁石が発生させた直流磁界を、効率的にフェライトに印加させることができる。
上ヨークおよび下ヨークのいずれか一方が垂直部を有し、下ヨークと上ヨークの垂直部とが、または、下ヨークの垂直部と上ヨークとが、接合されることも好ましい。この場合には、第1磁石および第2磁石が発生させた磁束を、上ヨークと下ヨークに効率的に回流させることができる。
あるいは、上ヨークが垂直部を有し、下ヨークと、上ヨークの垂直部とが、間にフェライトを挟んで対向して配置されることも好ましい。フェライトの比透磁率が1以上あるために磁気抵抗が小さく、下ヨークと上ヨークの垂直部とをフェライトを間に挟んで対向して配置させれば、この場合にも、第1磁石および第2磁石が発生させた磁束を、上ヨークと下ヨークに効率的に回流させることができる。また、この場合には、フェライトの側面に上ヨークの垂直部を配置させる必要がないので、非可逆回路素子の平面方向の大きさを小さくすることができる。
フェライトの下側主面と上側主面との間を貫通してスルーホール導体が形成され、中心電極のポート部と、入出力端子とが、スルーホール導体を経由して電気的に接続されることも好ましい。この場合には、中心導体のポート部と入出力端子との間の距離を小さくすることができ、伝送ロスを抑制し、挿入損失の増大を抑制することができる。
中心電極は、フェライトの上側主面にフェライトと一体的に形成された膜状の電極とすることができる。あるいは、中心電極とフェライトとが別体であっても良い。
本発明の非可逆回路素子は、中心導体と、入出力端子が形成された下ヨークとの間に、第1磁石、第2磁石および板状金属のいずれもが配置されていないため、中心電極のポート部と入出力端子との間の距離を小さくすることができ、伝送ロスの発生を抑制し、挿入損失の増大を抑制することができる。
以下、図面とともに、本発明を実施するための形態について説明する。なお、実施形態は、本発明の実施の形態を例示的に示したものであり、本発明が実施形態の内容に限定されることはない。また、異なる実施形態に記載された内容を組合せて実施することも可能であり、その場合の実施内容も本発明に含まれる。また、図面は、明細書の理解を助けるためのものであって、模式的に描画されている場合があり、描画された構成要素または構成要素間の寸法の比率が、明細書に記載されたそれらの寸法の比率と一致していない場合がある。また、明細書に記載されている構成要素が、図面において省略されている場合や、個数を省略して描画されている場合などがある。
[第1実施形態]
図1、図2に、第1実施形態にかかる非可逆回路素子100を示す。ただし、図1は、非可逆回路素子100の斜視図である。図2は、非可逆回路素子100の分解斜視図である。
図1、図2に、第1実施形態にかかる非可逆回路素子100を示す。ただし、図1は、非可逆回路素子100の斜視図である。図2は、非可逆回路素子100の分解斜視図である。
本実施形態の非可逆回路素子100は、サーキュレータである。ただし、本発明の非可逆回路素子は、サーキュレータには限られず、アイソレータなどであっても良い。
非可逆回路素子100は、下ヨーク1を備えている。下ヨーク1の材質は任意であるが、後述する第1磁石7および第2磁石8が発生させる磁束を効率的に回流させるためには、Fe、Ni、Coなどの強磁性体であることが望ましい。
また、下ヨーク1の表面は、高周波電流が流れるため、挿入損失を低減させるために、Cu、Ag、Au、Ptなどの高導電率材料でメッキされていることが望ましい。
本実施形態においては、下ヨーク1の形状を、四角形の板状とした。ただし、下ヨーク1の形状は任意であり、四角形に代えて、円形、楕円形、四角形以外の多角形などであっても良い。また、単純な板状ではなく、垂直部などを備えていても良い。
下ヨーク1の4つの辺のうち、3つの辺に、それぞれ切欠きが設けられ、それらの切欠きに、それぞれ絶縁体2が埋め込まれている。絶縁体2の材質は任意であるが、たとえば、樹脂を使用することができる。
各絶縁体2に、それぞれ入出力端子3a、3b、3cが形成されている。本実施形態においては、入出力端子3a〜3cとして、絶縁体2に、CuやAgなどを主成分とする導電性樹脂を埋め込んだ。入出力端子3a〜3cは、絶縁体2を貫通して形成されており、絶縁体2の上面、側面、下面の3つの面において外部に露出している。なお、入出力端子3a〜3cの構造は任意であり、上記に代えて、たとえば、CuやAgなどの金属片を絶縁体2に埋め込んで、入出力端子としても良い。あるいは、絶縁体2の上面、側面、下面の3つの面にわたって、CuやAgなどの金属膜を形成して、入出力端子としても良い。
非可逆回路素子100は、フェライト4を備えている。フェライト4の組成は任意であるが、たとえば、NiZn系、MnZn系、YIG系、CVG系のフェライト等を使用することができる。
本実施形態においては、フェライト4の形状を、四角形の板状とした。フェライト4は、下側主面と上側主面と4つの側面とを備えている。ただし、フェライト4の形状は任意であり、四角形に代えて、円形、楕円形、四角形以外の多角形などであっても良い。
フェライト4の下側主面と上側主面とを貫通して、6つのスルーホール導体5a、5b、5c、5d、5e、5fが形成されている。スルーホール導体の材質は任意であるが、たとえば、CuやAgなどを使用することができる。
フェライト4の上側主面に、膜状の中心電極6が形成されている。中心電極6の形状は任意である。中心電極6の材質も任意であるが、たとえば、CuやAgなどを使用することができる。中心電極6は、3つのポート部6a、6b、6cを備えている。そして、ポート部6aがスルーホール導体5aに電気的に接続され、ポート部6bがスルーホール導体5cに電気的に接続され、ポート部6cがスルーホール導体5eに電気的に接続されている。
なお、中心電極6は、フェライト4の上側主面に膜状に形成されたものではなく、金属板を加工して作製した、フェライト4とは別体の中心電極であっても良い。
下ヨーク1の上側主面に、フェライト4が接合されている。また、入出力端子3aとスルーホール導体5a、入出力端子3bとスルーホール導体5c、入出力端子3cとスルーホール導体5eが、それぞれ電気的に接続されている。また、下ヨーク1とスルーホール導体5b、5d、5fが、それぞれ電気的に接続されている。
この結果、中心電極6のポート部6aが、スルーホール導体5aを経由して、入出力端子3aと電気的に接続されている。同様に、中心電極6のポート部6bが、スルーホール導体5cを経由して、入出力端子3bと電気的に接続されている。中心電極6のポート部6cが、スルーホール導体5eを経由して、入出力端子3cと電気的に接続されている。なお、本実施形態においては、スルーホール導体5b、5d、5fは、電気的な接続には使用されていない。
非可逆回路素子100は、第1磁石7および第2磁石8を備えている。第1磁石7および第2磁石の材質は任意であるが、たとえば、ストロンチウム系、バリウム系、ランタン系のフェライト磁石、サマリウムコバルト系、ネオジム系の希土類磁石などを使用することができる。
本実施形態においては、第1磁石7および第2磁石8を、それぞれ、四角柱とした。ただし、第1磁石7および第2磁石8の形状は任意であり、四角柱に代えて、円柱、楕円柱、四角柱以外の多角柱などの形状であっても良い。
本実施形態においては、第1磁石7の厚みと、第2磁石8の厚みとを等しくした。具体的には、第1磁石7および第2磁石の厚みを、それぞれ、1mmとした。
非可逆回路素子100は、第1磁石7と第2磁石8との間に、板状金属9が配置されている。本実施形態においては、板状金属9に、鉄を使用した。ただし、板状金属9の材質は任意であり、鉄に代えて、ニッケル、コバルトなどであっても良い。なお、鉄、ニッケル、コバルトは、他の金属との合金であっても良く、不純物を含んでいても良い。すなわち、鉄、ニッケル、コバルトは、それぞれ、鉄、ニッケル、コバルトを主成分としていれば良い。
本実施形態においては、板状金属9の厚みを0.1mmとした。ただし、板状金属9の厚みは任意であり、増減することができる。
以上の構造からなる非可逆回路素子100は、磁石を第1磁石7と第2磁石8との2つに分割して構成しているため、第1磁石7と第2磁石8とで必要な直流磁界を発生させながら、第1磁石7の大きさを小さくすることが可能になっている。この結果、非可逆回路素子100は、第1磁石7の共振周波数が、非可逆回路素子100の動作周波数帯よりも高周波側の離れた周波数帯にあり、第1磁石7の共振による中心電極への干渉が抑制されており、電気的特性の劣化が抑制されている。
また、非可逆回路素子100は、第2磁石8と中心電極6との間に板状金属9が配置され、第2磁石8が中心電極6からシールドされているため、中心電極6から放射される電磁界による第2磁石8の共振の発生自体が抑制されている。この結果、本発明の非可逆回路素子は、第2磁石8の共振が中心電極6に干渉することが抑制されており、電気的特性の劣化が抑制されている。
また、本発明の非可逆回路素子100は、中心電極6と下ヨーク1との間に、第1磁石7、第2磁石8が配置されていないため、中心電極6のポート部6a〜6cと、入出力端子3a〜3cとの間の距離が、磁石の厚みによって大きくなってしまうことがなく、伝送ロスが抑制され、挿入損失の増大が抑制されている。
また、非可逆回路素子100は、ポート部6aと入出力端子3a、ポート部6bと入出力端子3b、ポート部6cと入出力端子3cとの電気的接続を、それぞれ、フェライト4の下側主面と上側主面とを貫通して形成されたスルーホール導体5a、5c、5eを経由しておこなっているため、ポート部6a、6b、6cと、入出力端子3a、3b、3cとの間の距離がそれぞれ小さく、伝送ロスが抑制され、挿入損失の増大が抑制されている。
本発明の有効性を確認するために、次の実験をおこなった。
実施例として、第1実施形態にかかる非可逆回路素子100を用意した。また、比較例として、図3に示す非可逆回路素子1100を用意した。比較例の非可逆回路素子1100は、非可逆回路素子100の構成の一部を変更したものである。具体的には、非可逆回路素子1100は、非可逆回路素子100の第1磁石7、板状金属9、第2磁石8を取り除き、代わりに、厚みの大きな1つの磁石57を設けたものである。磁石57の厚みは、2mmとした。
図4に、実施例の非可逆回路素子100の特性(挿入損失)と、比較例の非可逆回路素子1100の特性(挿入損失)とを、それぞれ示す。図4から分かるように、非可逆回路素子1100は、非可逆回路素子の動作周波数帯において、磁石57の共振により大きな挿入損失が発生している。これに対し、非可逆回路素子100は、中心電極6が、第1磁石7、第2磁石8の共振による影響をほとんど受けていないと考えられ、優れた特性を示している。以上により、本発明の有効性が確認できた。
非可逆回路素子100は、たとえば、次の方法で製造することができる。
まず、図5に示す、複数の下ヨーク1をマトリックス状に含んだ下ヨーク用のマザー金属板11を作製する。マザー金属板11は、下ヨーク1の材質によって作製する。必要があれば、マザー金属板11の表面に、予め高導電率材料をメッキしておく。
まず、マザー金属板11の隣接する下ヨーク1と下ヨーク1との境界線上に、たとえばエッチングなどの方法により、絶縁体2を作製するための貫通孔を形成する。続いて、形成した各貫通孔に、未硬化の樹脂を充填し、続いて加熱して樹脂を硬化させて絶縁体2を形成する。
次に、各絶縁体2に、たとえばレーザ光を照射するなどの方法によって、入出力端子3a、3b、3cを形成するための貫通孔を形成する。続いて、各貫通孔に、未硬化の導電性樹脂を充填し、加熱して導電性樹脂を硬化させて入出力端子3a、3b、3cを形成する。マザー金属板11を後の工程において個々の下ヨーク1に分割することにより、各下ヨーク1の3つの辺に、絶縁体2で絶縁された入出力端子3a、3b、3cが得られる。
以上の工程と並行して、図6に示す、複数のフェライト4をマトリックス状に含んだマザーフェライト板14を作製する。
具体的には、まず、所定の組成からなるフェライト粉末を、バインダー、溶剤とともに混練し、混練物を得る。続いて、混練物を、たとえばドクターブレード法などの方法によって膜状に加工し、フェライトのマザーグリーンシートを作製する。
次に、マザーグリーンシートに、レーザ光を照射するなどの方法によって、各フェライト4にスルーホール導体5a、5b、5c、5d、5e、5fを形成するための貫通孔を形成する。続いて、形成した各貫通孔に、導電性ペーストを充填する。
次に、マザーグリーンシートを所定のプロファイルで焼成して、マザーフェライト板14を得る。マザーフェライト板14に作製された個々のフェライト4には、スルーホール導体5a、5b、5c、5d、5e、5fが形成されている。
次に、マザーフェライト板14に作製された個々のフェライト4の上側主面に、中心電極6を形成する。具体的には、各フェライト4の上側主面に、導電性ペーストを所望の形状にスクリーン印刷したうえで、加熱して焼付け、中心電極6を形成する。なお、スクリーン印刷に代えて、フォトリソグラフィー技術によって、各フェライト4の上側主面に導電性ペーストを所望の形状に塗布しても良い。
次に、下ヨーク用のマザー金属板11と、マザーフェライト板14とを、接着剤によって接合する。ただし、電気的な接続が必要になる、入出力端子3aとスルーホール導体5a、入出力端子3bとスルーホール導体5c、入出力端子3cとスルーホール導体5e、下ヨーク1とスルーホール導体5b、下ヨーク1とスルーホール導体5d、下ヨーク1とスルーホール導体5fの間は、それぞれ、たとえば、導電性接着剤によって接合(接続)する。ただし、導電性接着剤に代えて、これらの部分にクリームはんだを塗布しておき、後から加熱して、これらの部分の電気的な接続をはかっても良い。
次に、相互に接合されたマザー金属板11およびマザーフェライト板14を、相互に接合された個々の下ヨーク1およびフェライト4に分割する。
次に、中心電極6が形成されたフェライト4の上側主面に、接着剤によって、第1磁石7を接合する。
次に、第1磁石7の上側主面に、接着剤によって、板状金属9を接合する。
次に、板状金属9の上側主面に、接着剤によって、第2磁石8を接合する。なお、第1磁石7と板状金属9と第2磁石8とを、予め接着剤によって一体化させておき、一体化された第1磁石7、板状金属9、第2磁石8を、接着剤によって、フェライト4の上側主面に接合するようにしても良い。
以上により、第1実施形態の非可逆回路素子100が完成する。なお、ここに記載した非可逆回路素子100の製造方法は一例であり、他の方法によって非可逆回路素子100を製造しても良い。
[第2実施形態]
図7に、第2実施形態にかかる非可逆回路素子200を示す。ただし、図7は、非可逆回路素子200の斜視図である。
図7に、第2実施形態にかかる非可逆回路素子200を示す。ただし、図7は、非可逆回路素子200の斜視図である。
非可逆回路素子200は、第1実施形態にかかる非可逆回路素子100の構成の一部に変更を加えた。具体的には、非可逆回路素子100では、第1磁石7の厚みと第2磁石8の厚みとが等しく、それぞれ、1mmであった。これに対し、非可逆回路素子200は、第1磁石27の厚みを第2磁石28の厚みよりも小さくし、第1磁石27の厚みを0.5mmとし、第2磁石28の厚みを 1.5mmとした。なお、非可逆回路素子100の第1磁石7と第2磁石8の合計の大きさと、非可逆回路素子200の第1磁石27と第2磁石28との合計の大きさが等しいため、非可逆回路素子100の第1磁石7と第2磁石8が発生させる直流磁界の大きさと、非可逆回路素子200の第1磁石27と第2磁石28が発生させる直流磁界の大きさとは、ほぼ等しい。
非可逆回路素子200は、第1磁石27の大きさが、非可逆回路素子100の第1磁石7の大きさよりも小さいため、第1磁石27の共振周波数が、第1磁石7の共振周波数よりも高くなっている。したがって、非可逆回路素子200は、第1磁石27の共振周波数が、非可逆回路素子200の動作周波数帯から、より高周波側に離れている。そのため、非可逆回路素子200は、第1磁石27の共振の中心電極6への干渉が確実に抑制されており、電気的特性の劣化が確実に抑制されている。なお、第2磁石28は、中心電極6との間に板状金属9が配置され、中心電極6からシールドされているため、中心電極6から放射される電磁界による共振の発生自体が抑制されている。
[第3実施形態]
図8(A)、(B)、図9に、第3実施形態にかかる非可逆回路素子300を示す。ただし、図8(A)は、非可逆回路素子300の斜視図である。図8(B)は、非可逆回路素子300の断面図であり、図8(A)の一点鎖線X−X部分を示している。図9は、非可逆回路素子300の分解斜視図である。
図8(A)、(B)、図9に、第3実施形態にかかる非可逆回路素子300を示す。ただし、図8(A)は、非可逆回路素子300の斜視図である。図8(B)は、非可逆回路素子300の断面図であり、図8(A)の一点鎖線X−X部分を示している。図9は、非可逆回路素子300の分解斜視図である。
非可逆回路素子300は、第1実施形態にかかる非可逆回路素子100に、さらに構成を追加した。具体的には、非可逆回路素子300は、非可逆回路素子100には無かった、上ヨーク10を備えている。
上ヨーク10の材質は任意であるが、第1磁石7および第2磁石8が発生させる磁束を効率的に回流させるためには、Fe、Ni、Coなどの強磁性体であることが望ましい。
また、上ヨーク10の表面は、高周波電流が流れるため、挿入損失を低減させるために、Cu、Ag、Au、Ptなどの高導電率材料でメッキされていることが望ましい。
本実施形態においては、上ヨーク10は、四角形で板状の天面部10aと、天面部10aに対して垂直な板状の2つの垂直部10b、10cを備えている。ただし、上ヨーク10の形状は任意であり、種々の変更を加えることができる。なお、垂直部10bには、ポート部6bとの接触を避けるために切欠き10bxが形成され、垂直部10cには、ポート部6cとの接触を避けるために切欠き10cxが形成されている。
第1磁石7、板状金属9、第2磁石8を覆うように、フェライト4の上側主面に、上ヨーク10が接合されている。より具体的には、上ヨーク10の垂直部10b、10cの底面が、フェライト4の上側主面に接合されている。また、上ヨーク10の垂直部10bの底面とスルーホール導体5b、上ヨーク10の垂直部10cの底面とスルーホール導体5fが、それぞれ電気的に接続されている。
非可逆回路素子300は、上ヨーク10の垂直部10b、10cと下ヨーク1とが、フェライト4を間に挟んで対向して配置されている。そして、フェライト4の側面が、上ヨーク10および下ヨーク1のいずれによっても覆われていない。非可逆回路素子300は、上ヨーク10と下ヨーク1とが直接には接合されていないが、フェライト4の比透磁率が1以上あるために磁気抵抗が小さく、図8(B)に一点鎖線の矢印で示すように、第1磁石7および第2磁石8から発生する磁束を上ヨーク10と下ヨーク1との間で十分回流させることができるような磁気回路が構成される。したがって、非可逆回路素子300は、第1磁石7および第2磁石8が発生させた磁束を、上ヨーク10および下ヨーク1に効率的に回流させることができ、フェライト4に対して十分に直流磁界を印加することができる。
また、非可逆回路素子300は、フェライト4の側面が、上ヨーク10および下ヨーク1のいずれによっても覆われていないため、平面方向の大きさが小さくなっている。
また、非可逆回路素子300は、上ヨーク10が、スルーホール導体5b、5fを経由して、下ヨーク1と電気的に接続されている。非可逆回路素子300は、下ヨーク1をグランドと電気的に接続することによって、上ヨーク10もグランドと電気的に接続されることになり、上ヨーク10に非可逆回路素子300の電気シールドとしての機能を持たせることができる。
[第4実施形態]
図10、図11に、第4実施形態にかかる非可逆回路素子400を示す。ただし、図10は、非可逆回路素子400の斜視図である。図11は、非可逆回路素子400の分解斜視図である。
図10、図11に、第4実施形態にかかる非可逆回路素子400を示す。ただし、図10は、非可逆回路素子400の斜視図である。図11は、非可逆回路素子400の分解斜視図である。
非可逆回路素子400は、第3実施形態にかかる非可逆回路素子300に、さらに変更を加えた。具体的には、非可逆回路素子300では、上ヨーク10の垂直部10b、10cと下ヨーク1とが、フェライト4を間に挟んで対向して配置されていた。非可逆回路素子400は、上ヨーク40の垂直部40b、40cと、下ヨーク1とを、直接に接合した。以下、簡潔に説明する。
非可逆回路素子400は、平面視が長方形の下ヨーク41を備えている。下ヨーク41の4つの辺のうち、1つの長辺と、2つの短辺に、それぞれ切欠きが設けられ、それらの切欠きに、それぞれ絶縁体42が埋め込まれている。そして、長辺に形成された絶縁体42に入出力端子43aが形成され、一方の短辺に形成された絶縁体42に入出力端子43bが形成され、他方の短辺に形成された絶縁体42に入出力端子43cが形成されている。
下ヨーク41の上側主面に、フェライト4が接合されている。また、入出力端子43aとスルーホール導体5a、入出力端子43bとスルーホール導体5c、入出力端子43cとスルーホール導体5eが、それぞれ電気的に接続されている。また、下ヨーク41とスルーホール導体5b、5d、5fが、それぞれ電気的に接続されている。
非可逆回路素子400は、上ヨーク40を備えている。上ヨーク10は、平面視が長方形の天面部40aを備えている。天面部40aの一方の短辺に垂直部40bが形成され、他方の短辺に垂直部40cが形成されている。垂直部40b、40cは、天面部40aに対して垂直に形成されている。垂直部40bに、入出力端子43bとの接触を避けるために切欠き40bxが形成され、垂直部40cに、入出力端子43cとの接触を避けるために切欠き40cxが形成されている。
フェライト4、第1磁石7、板状金属9、第2磁石8を覆うように、下ヨーク41に、上ヨーク40が接合されている。より具体的には、上ヨーク40の垂直部40b、40cの底面が、下ヨーク41の上側主面に接合されている。上ヨーク40の垂直部40b、40cの底面は、下ヨーク41と、電気的にも接続されている。
非可逆回路素子400は、下ヨーク41と上ヨーク40とが接合されているため、第1磁石7および第2磁石8が発生させた磁束を、上ヨーク40と下ヨーク41に、より効率的に回流させることができるため、直流磁界をフェライト4に、より効率的に印加することができる。
以上、第1実施形態〜第4実施形態にかかる非可逆回路素子100、200、300、400について説明した。しかしながら、本発明が上述した内容に限定されることはなく、発明の趣旨に沿って、種々の変更をなすことができる。
たとえば、非可逆回路素子100、200、300、400は、いずれもサーキュレータであったが、これに代えて、アイソレータであっても良い。なお、アイソレータを構成するためには、中心電極6の3つのポート部6a、6b、6cのうちの1つを、抵抗を挿入したうえでグランドに接続し、終端させれば良い。
また、非可逆回路素子100、200、300、400では、磁石を、第1磁石7、27と第2磁石8、28との2つに分割していたが、磁石の個数は2つには限られず、3つ以上であっても良い。
また、非可逆回路素子100、200、300、400では、中心電極6がフェライト4の上側主面に膜状に形成されたものであったが、これに代えて、フェライト4とは別体の、金属板を加工して作製した中心電極を使用しても良い。
1、41・・・下ヨーク
2、42・・・絶縁体
3a、3b、3c、43a、43b、43c・・・入出力端子
4・・・フェライト
5a、5b、5c、5d、5e、5f・・・スルーホール導体
6・・・中心電極
6a、6b、6c・・・ポート部
7、27・・・第1磁石
8、28・・・第2磁石
9・・・板状金属
10、40・・・上ヨーク
10a、40a・・・天面部
10b、10c、40b、40c・・・垂直部
10bx、10cx、40bx、40cx・・・切欠き
2、42・・・絶縁体
3a、3b、3c、43a、43b、43c・・・入出力端子
4・・・フェライト
5a、5b、5c、5d、5e、5f・・・スルーホール導体
6・・・中心電極
6a、6b、6c・・・ポート部
7、27・・・第1磁石
8、28・・・第2磁石
9・・・板状金属
10、40・・・上ヨーク
10a、40a・・・天面部
10b、10c、40b、40c・・・垂直部
10bx、10cx、40bx、40cx・・・切欠き
Claims (9)
- 下ヨークと、下側主面と上側主面とを有するフェライトと、複数のポート部を有する中心電極と、複数の磁石と、板状金属とを備え、
前記下ヨークに、前記下ヨークと電気的に絶縁された、複数の入出力端子が形成され、
複数の前記磁石は、少なくとも、第1磁石と、第2磁石とを含み、
前記下ヨークと、前記フェライトと、前記中心電極と、前記第1磁石と、前記板状金属と、前記第2磁石とが、この順番に下から上に垂直に配置された、非可逆回路素子。 - 前記板状金属が、鉄、ニッケルまたはコバルトを主成分とする、請求項1に記載された非可逆回路素子。
- 前記第1磁石の厚みが、前記第2磁石の厚みよりも小さい、請求項1または2に記載された非可逆回路素子。
- 上ヨークをさらに備え、
前記下ヨークと、前記フェライトと、前記中心電極と、前記第1磁石と、前記第2磁石と、前記上ヨークとが、この順番に下から上に垂直に配置された、請求項1ないし3のいずれか1項に記載された非可逆回路素子。 - 前記上ヨークおよび前記下ヨークのいずれか一方が垂直部を有し、
前記下ヨークと前記上ヨークの前記垂直部とが、または、前記下ヨークの前記垂直部と前記上ヨークとが、接合された、請求項4に記載された非可逆回路素子。 - 前記上ヨークが垂直部を有し、
前記下ヨークと、前記上ヨークの前記垂直部とが、間に前記フェライトを挟んで対向して配置された、請求項4に記載された非可逆回路素子。 - 前記フェライトの前記下側主面と前記上側主面との間を貫通してスルーホール導体が形成され、
前記中心電極の前記ポート部と、前記入出力端子とが、前記スルーホール導体を経由して電気的に接続された、請求項1ないし6のいずれか1項に記載された非可逆回路素子。 - 前記中心電極が、前記フェライトの前記上側主面に前記フェライトと一体的に形成された膜状の電極である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載された非可逆回路素子。
- 前記中心電極と前記フェライトとが別体である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載された非可逆回路素子。
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- 2017-09-19 JP JP2017179534A patent/JP2019057762A/ja active Pending
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