JP2019042935A - 積層体の製造方法 - Google Patents

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大道 千葉
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Abstract

【課題】スペーサーや補強板を用いることなく、端部の変形が抑制された積層体を作製することができる積層体の製造方法を提供する。【解決手段】基材と、該基材上に形成された少なくとも1層の樹脂層とを備え、該樹脂層が熱可塑性樹脂を含む積層体を製造する積層体の製造方法であって、積層物を包装袋に封入した包装体を真空脱気する工程と、前記真空脱気した包装体を加熱および加圧して積層体を作製する工程とを含み、前記加熱の温度をT1、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度もしくは融点をT2、前記包装袋のビカット軟化温度をT3、前記包装袋の溶融温度をT4とした場合、T1〜T4のそれぞれの温度が、T4>T1≧T2≧T3の関係を満たす、積層体の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、積層体の製造方法に関するものである。
積層体としての合わせガラスは、通常、ガラス板と樹脂層とが積層された積層物を耐熱バッグ等の包装袋に入れた包装体をオートクレーブで真空排気(減圧)しながら加熱および加圧して溶融圧着することにより、貼り合わせを行う(例えば、特許文献1参照)。
特開2016−36998号公報
しかしながら、真空排気(減圧)された包装袋より、合わせガラスの端部が中央よりも強く押圧されて変形し、合わせガラスの端部から樹脂がはみ出したりするという問題があった。
斯かる問題を解決するため、(i)包装体内に枠状スペーサーを設置して、合わせガラスの端部の変形を防止したり、(ii)包装体内の上下に補強板を設けて、合わせガラスの端部に応力が集中しないようにする、等の種々の工夫が行われている。しかしながら、(i)包装体内に枠状スペーサーを設置した場合、枠状スペーサーの高さ分だけ全体の押し圧も弱くなり、貼り合わせ不良が発生するという問題があった。また、(ii)包装体内の上下に補強板を設置した場合、剛直な鉄板が必要だったり、補強板と変形したガラス板とが接触して、ガラス板が割れるといった問題があった。
そこで、本発明は、スペーサーや補強板を用いることなく、端部の変形が抑制された積層体を作製することができる積層体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、合わせガラスの貼り合わせ時の加熱温度で軟化する包装袋に積層物を封入した包装体を真空脱気し、真空脱気した包装体を加熱および加圧すると、スペーサーや補強板を用いることなく、端部の変形が抑制された積層体を作製することができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の積層体の製造方法は、基材と、該基材上に形成された少なくとも1層の樹脂層とを備え、該樹脂層が熱可塑性樹脂を含む積層体を製造する積層体の製造方法であって、積層物を包装袋に封入した包装体を真空脱気する工程と、前記真空脱気した包装体を加熱および加圧して積層体を作製する工程とを含み、前記加熱の温度をT1、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度もしくは融点をT2、前記包装袋のビカット軟化温度をT3、前記包装袋の溶融温度をT4とした場合、T1〜T4のそれぞれの温度が、T4>T1≧T2≧T3の関係を満たす、ことを特徴とする。このように、T1〜T4のそれぞれの温度が、T4>T1≧T2≧T3の関係を満たせば、スペーサーや補強板を用いることなく、端部の変形が抑制された積層体を作製することができる。
なお、本発明において、「積層物」は、「基材と樹脂層とを備えた積層物であって、加熱および加圧を行う前(例えば、オートクレーブを行う前)のもの」を意味し、「包装袋」は、「積層物を封入するための袋」を意味し、「包装体」は、「積層物を包装袋に入れたもの」を意味し、積層体は、「加熱および加圧した包装体における包装袋から取り出したもの」を意味する。
なお、本発明において、「加熱の温度T1」は、貼り合わせが開始してから終了するまでの最高温度を意味し、「熱可塑性樹脂のガラス転移温度もしくは融点T2」は、樹脂層が複数種の熱可塑性樹脂を含む場合には、ガラス転移温度もしくは融点が最も高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度もしくは融点を意味し、また、熱可塑性樹脂が複数のガラス転移温度もしくは融点を有する場合には、最も高いガラス転移温度もしくは融点を意味し、「包装袋のビカット軟化温度T3」は、包装袋が複数層からなる場合、包装袋の最内層の材質のビカット軟化温度を意味し、「包装袋の溶融温度T4」は、包装袋が複数層からなる場合、包装袋の最内層の材質の溶融温度を意味する。
ここで、本発明の積層体の製造方法は、T1〜T4のそれぞれの温度が、90℃≦T1<140℃、90℃≦T2<125℃、90℃≦T3<120℃、および90<T4≦140℃を満たすことが好ましい。T1〜T4のそれぞれの温度が、90℃≦T1<140℃、90℃≦T2<125℃、90℃≦T3<120℃、および90<T4≦140℃を満たせば、端部の変形をさらに良好に抑制することができる。
ここで、本発明の積層体の製造方法は、前記基材が電子デバイスを含むことが好ましい。前記基材が電子デバイスを含めば、端部たわみが少ない積層体が得られ、包埋される電子デバイスの劣化および破損を防止することができる。
ここで、本発明の積層体の製造方法は、前記包装袋がポリエチレン系樹脂からなる層を1層以上含むことが好ましい。前記包装袋がポリエチレン系樹脂からなる層を1層以上含めば、スペーサーや補強板を用いることなく、端部の変形が抑制された積層体を確実に作製することができる。
ここで、本発明の積層体の製造方法は、前記熱可塑性樹脂を限定するものではないが、耐光性、柔軟性の観点から、水素添加ブロック共重合体であることが好ましい。前記熱可塑性樹脂が水素添加ブロック共重合体であれば、得られる積層体の可撓性を向上させることができる。
本発明の積層体の製造方法によれば、スペーサーや補強板を用いることなく、端部の変形が抑制された積層体を作製することができる。
実施例1の積層体の製造方法を説明するための図である。 実施例2の積層体の製造方法を説明するための図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(積層体の製造方法)
本発明の積層体の製造方法は、基材と、該基材上に形成された少なくとも1層の樹脂層とを備え、前記樹脂層が熱可塑性樹脂を含む積層体を製造する積層体の製造方法であって、積層物を包装袋に封入した包装体を真空脱気する工程と、前記真空脱気した包装体を加熱および加圧して積層体を作製する工程と、を含む。
<積層体>
積層体の構成は、基材と、基材上に形成された少なくとも1層の樹脂層とを備えていればよく、例えば、(i)基材と樹脂層との2層構造でもよいし、(ii)基材間に、少なくとも1層の樹脂層を有し、任意に追加の基材を有する構造でもよく、(iii)樹脂層間に、基材を有する構造でもよい。
また、積層体は、一般的に、樹脂層を構成する樹脂シートと、基材とを貼り合わせること等によって製造される。
<基材>
本発明の積層体に用いられる基材としては、加熱温度に対し、溶融、変形、破損、分解など機能上の不具合が発生しない物であれば、特に制限はなく、例えば、電子デバイス、ガラス板、金属板、耐熱性の樹脂板、耐熱性の樹脂フィルムなどが挙げられる。なお、耐熱性の樹脂板および耐熱性の樹脂フィルムは、いずれも熱可塑性樹脂を含まない。
ここで、電子デバイスの劣化および破損を防止しつつ、端部たわみの少ない、電子デバイスを樹脂層で包埋した積層体を得ることができるという観点から、基材が電子デバイスを含むことが好ましく、ガラス板間に樹脂層と電子デバイスとを備えることがより好ましい。
本発明の積層体に用いられる基材の厚さとしては、特に限定されないが、積層体の強度と電子デバイスの包埋性の観点から、0.05mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることがより好ましく、0.3mm以上であることが特に好ましい。
また、本発明の積層体に用いられる基材が2枚以上の場合、各基材の厚さは、同じであってもよく、異なっていてもよい(例えば、一方の基材の厚さが10mmであり、他方の基材の厚さが1mmであってもよい)。
<<電子デバイス>>
電子デバイスの具体例としては、LED搭載テープ、有機EL素子、液晶素子、電子ペーパー、フィルムスピーカー、光学センサー等のセンサー、などが挙げられる。電子デバイスは、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、脂環式オレフィンポリマー等のフレキシブル基板や石英ガラス、ソーダライムガラス(ソーダガラス)、無機アルカリガラス等のガラス基板などの基板を有していてもよいし、有していなくてもよい。即ち、基板に、LED搭載テープ、有機EL素子等の素子を配置したものであってもよく、LED搭載テープ、有機EL素子等の素子のみからなっていてもよい。
電子デバイスとして、LED搭載テープを用いることにより、防水性フレキシブル光源を作製することができる。
また、電子デバイスとして、有機EL素子を用いることにより、防水、防汚ディスプレイを作製することができる。
さらに、電子デバイスとして、光学センサーを用いることにより、防水型センサーを作製することができる。
<<ガラス板>>
ガラス板としては、特に制限はなく、例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、熱線吸収板ガラス等の公知の無機ガラス板、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのガラス板は、透明性を有し、無色および有色のいずれであってもよい。
ガラス板の形状としては、特に制限がなく、平板状であってもよく、曲面形状であって
もよい。
また、ガラス板に用いられるガラスの材質としては、特に制限はなく、例えば、アルミノシリケート酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、ウランガラス、カリガラス、ケイ酸ガラス、結晶化ガラス、ゲルマニウムガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス(ソーダガラス)、鉛ガラス、バリウム瑚珪酸ガラス、瑚珪酸ガラス、などが挙げられる。
<樹脂層>
樹脂層の層数としては、1層以上である限り、特に制限はないが、電子デバイスの包埋性の観点から、2層以上であることが好ましい。
即ち、樹脂層は、1層の樹脂シート、または、複数層の樹脂シートを重ね合わせた重ね合わせ体である。
樹脂層の厚さは、特に制限はなく、0.05mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることがより好ましく、0.3mm以上であることが特に好ましい。樹脂層の厚さを、上記好ましい範囲内とすることにより、ハンドリング性に優れ、容易に厚みを調整することができる。
また、積層体が電子デバイスを有する場合、樹脂層の厚さを、電子デバイス保護の観点から、電子デバイスの厚さの1.0倍以上とすることが好ましい。
樹脂層は、樹脂シート表面に凹凸パターン、エンボス形状、段差、溝形状、等を備えて微小範囲で不均一な厚さ構造を有してもよい。
樹脂層を作製する方法としては、特に制限はなく、例えば、溶融押出し成形法、インフレーション成形法、カレンダー成形法、などが挙げられる。これらの中でも、樹脂層の表面へのエンボス形状の付形し易さの観点から、溶融押出し成形法が好ましい。
樹脂層の表面は、平面状やエンボス加工を施した形状等とすることができる。また、樹脂層同士のブロッキングを防止するために、樹脂層の片面に、離型フィルムを重ねて保管することもできる。
樹脂層は、少なくとも、熱可塑性樹脂を含み、任意に添加剤を含む。樹脂層が熱可塑性樹脂を含むことにより、積層体の可撓性を向上させることができる。さらに、樹脂層が熱可塑性樹脂を含むことにより、加熱により、樹脂層から基材を取り出して、基材のリサイクルを容易に行うことができる。
<<熱可塑性樹脂>>
熱可塑性樹脂としては、芳香族ビニル化合物および共役ジエン化合物から製造されるブロック共重合体およびその水素化物;芳香族ビニル化合物およびイソブテンもしくはイソブテン誘導体から製造されるブロック共重合体およびその水素化物;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチルペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・4−メチルペンテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・1−ブテン・1−オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・1−ブテン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・1−ブテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・1−ブテン・ビニルノルボルネン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;エチレン・ノルボルネン共重合体、エチレン・テトラシクロドデセン共重合体、ノルボルネン誘導体の開環メタセシス重合体水素化物、シクロヘキサジエン重合体等のシクロオレフィンポリマー;エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体等のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のオレフィン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体;エチレン・不飽和カルボン酸ランダム共重合体を金属化合物と反応させて得られたアイオノマー樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルオキシド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のビスフェノール類と塩化カルボニル等のカルボニル化合物の反応で得られるポリカーボネート樹脂;ポリスチレン、スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、スチレン・アクリロニトリル共重合体等のスチレン系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル・メタクリル酸グリシジル共重合体、メタクリル酸メチル・メタクリル酸トリシクロデシル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体等;エチレン・酢酸ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体等の含ハロゲン系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド等の芳香族系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6T等のポリアミド系樹脂;これらの熱可塑性樹脂にアルコキシシリル基や酸無水物基が導入されてなる変性熱可塑性樹脂;などが挙げられる。
これらの中でも、(i)芳香族ビニル化合物および共役ジエン化合物から製造されるブロック共重合体およびその水素化物が好ましく、(ii)芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体[C]を水素化してなるブロック共重合体水素化物[D]であることがより好ましく、(iii)芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体[C]の主鎖および側鎖における炭素−炭素不飽和結合の90%以上、および、芳香環における炭素−炭素不飽和結合の90%以上を水素化してなるブロック共重合体水素化物[D]がさらに好ましく、(iv)芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体[C]を水素化してなるブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基が導入されてなる変性ブロック共重合体水素化物[E]を主成分とすることが特に好ましく、(v)芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体[C]の主鎖および側鎖における炭素−炭素不飽和結合の90%以上、および、芳香環における炭素−炭素不飽和結合の90%以上を水素化してなるブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基が導入されてなる変性ブロック共重合体水素化物[E]を主成分とすることが最も好ましい。
また、熱可塑性樹脂は、溶媒に溶解することが好ましい。樹脂層における熱可塑性樹脂を溶媒に溶解させれば、樹脂層から電子デバイス等の基材を取り出して、電子デバイスのリサイクルを容易に行うことができる。
なお、本発明において、「芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[A]」は、「芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を50質量%超含有する重合体ブロック[A]」を意味し、「鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[B]」は、「鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位を50質量%超含有する重合体ブロック[B]」を意味する。
−変性ブロック共重合体水素化物[E]−
変性ブロック共重合体水素化物[E]は、前駆体であるブロック共重合体水素化物[D]に、アルコキシシリル基が導入された高分子である。
−−ブロック共重合体水素化物[D]−−
本発明に用いる特定のブロック共重合体水素化物[D]は、前駆体であるブロック共重合体[C]を水素化してなる高分子であり、より詳しくは、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[A]と鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[B]とを有する高分子であるブロック共重合体[C]を水素化してなる高分子である。
前記ブロック共重合体水素化物[D]は、主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合の好ましくは90%以上、より好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上が水素化され、芳香環の炭素−炭素不飽和結合の好ましくは90%以上、より好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上が水素化されている。なおここで、「主鎖および側鎖における炭素−炭素不飽和結合の水素化」は、「ブロック共重合体〔C〕における鎖状共役ジエン化合物に由来の二重結合の水素化」を意味し、「芳香環における炭素−炭素不飽和結合の水素化」は、「ブロック共重合体〔C〕における芳香環に由来の二重結合の水素化」を意味する。
水素化の程度を示す水素化率が高いほど、樹脂層の耐光性、耐熱性および透明性が良好である。
ブロック共重合体水素化物[D]の水素化率は、ブロック共重合体〔C〕およびブロック共重合体水素化物[D]のH−NMRを測定する方法等により求めることができる。
炭素−炭素不飽和結合の水素化方法や反応形態等は、特に制限はなく、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を向上させることができる点で、重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましい。重合体鎖切断反応の少ない水素化方法としては、例えば、国際公開第2011/096389号、国際公開第2012/043708号等に記載された方法を挙げることができる。
水素化反応終了後においては、水素化触媒および/または重合触媒を反応溶液から除去した後、得られた溶液からブロック共重合体水素化物[D]を回収することができる。回収されたブロック共重合体水素化物[D]の形態としては、特に制限はないが、ペレット形状にして、その後のアルコキシシリル基の導入反応に供することが好ましい。
ブロック共重合体水素化物[D]の分子量としては、特に制限はないが、樹脂層の耐熱性や機械的強度の観点から、THFを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、35,000以上であることが好ましく、38,000以上であることがより好ましく、40,000以上であることが特に好ましく、200,000以下であることが好ましく、150,000以下であることがより好ましく、100,000以下であることが特に好ましい。
また、ブロック共重合体水素化物[D]の分子量分布(Mw/Mn)は、特に制限はないが、樹脂層の耐熱性や機械的強度の観点から、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることが特に好ましい。
−−−ブロック共重合体[C]−−−
ブロック共重合体[C]は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[A]を1個以上と、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[B]を1個以上有する高分子であるが、重合体ブロック[A]2個以上と、重合体ブロック[B]1個以上とからなる高分子であることが好ましい。
ブロック共重合体[C]中における重合体ブロック[A]の数は、3個以下であることが好ましく、2個であることがより好ましい。
ブロック共重合体[C]中における重合体ブロック[B]の数は、2個以下であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
ブロック共重合体[C]中における重合体ブロック[A]および重合体ブロック[B]の数をそれぞれ上記範囲内にすることにより、ブロック共重合体[C]を水素化して得られるブロック共重合体水素化物[D]において、重合体ブロック[A]由来の水素化重合体ブロック(以下、「水素化重合体ブロック[A]」ということがある。)と重合体ブロック[B]由来の水素化重合体ブロックとの相分離が不明瞭となるのを防止して、水素化重合体ブロック[A]に基づく高温側のガラス転位温度(以下、「Tg」ということがある。)が低下するのを防止し、ひいては、得られる樹脂層の耐熱性が低下するのを防止することができる。
なお、ブロック共重合体水素化物〔D〕の高温側のガラス転移温度Tgとしては、特に制限はなく、90℃〜125℃が好ましい。
ブロック共重合体[C]のブロックの形態は、特に制限はなく、鎖状型ブロックであっても、ラジアル型ブロックであってもよいが、機械的強度の観点から、鎖状型ブロックであることが好ましい。ここで、ブロック共重合体[C]の特に好ましい形態は、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体([A]−[B]−[A])、である。
重合体ブロック[A]の全量がブロック共重合体[C]に占める重量分率をwAとし、重合体ブロック[B]の全量がブロック共重合体[C]に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比wA:wBは30:70〜60:40であることが好ましく、35:65〜55:45であることがより好ましく、40:60〜50:50であることが特に好ましい。
wAの質量分率を60%以下にすることにより、得られる樹脂層の柔軟性(可撓性)が低下するのを防止することができる。一方、wAの質量分率を30%以上にすることにより、樹脂層の耐熱性が低下するのを防止することができる。
ブロック共重合体[C]の分子量は、特に制限はないが、樹脂層の耐熱性や機械的強度の観点から、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、35,000以上であることが好ましく、38,000以上であることがより好ましく、40,000以上であることが特に好ましく、200,000以下であることが好ましく、150,000以下であることがより好ましく、100,000以下であることが特に好ましい。
また、ブロック共重合体[C]の分子量分布(Mw/Mn)は、特に制限はないが、樹脂層の耐熱性や機械的強度の観点から、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることが特に好ましい。
ブロック共重合体[C]の製造方法は特に限定されず、例えば、国際公開第2003/018656号、国際公開第2011/096389号、等に記載の方法を採用することができる。
〔重合体ブロック[A]〕
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位〔a〕を主成分とする重合体ブロックである。重合体ブロック[A]中における構造単位〔a〕の含有量は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
重合体ブロック[A]中における構造単位(a)の含有量が90質量%以上であると、得られる樹脂層の耐熱性が低下するのを防止することができる。
重合体ブロック[A]は、構造単位〔a〕以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、後述する鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位〔b〕および/またはその他のビニル化合物に由来する構造単位〔j〕が挙げられる。重合体ブロック[A]中における鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位〔b〕およびその他のビニル化合物に由来する構造単位〔j〕の合計含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
重合体ブロック[A]が構造単位〔a〕以外の構造単位〔b〕および/または構造単位〔j〕を含む場合は、重合体ブロック[A]は、通常、構造単位〔a〕、〔b〕、〔j〕を不規則的に繰り返してなる部分を有することが好ましい。
重合体ブロック[A]中における構造単位〔b〕および構造単位〔j〕の合計含有量が10質量%以下であると、得られる樹脂層の耐熱性が低下するのを防止することができる。
ブロック共重合体[C]が複数の重合体ブロック[A]を有する場合、重合体ブロック[A]同士は、互いに同一であってもよく、相異していてもよい。
〔〔芳香族ビニル化合物〕〕
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン;α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン等の「置換基として炭素数1〜6のアルキル基を有するスチレン類」;4−メトキシスチレン等の「置換基として炭素数1〜6のアルコキシ基を有するスチレン類」;4−フェニルスチレン等の「置換基としてアリール基を有するスチレン類」;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン等のビニルナフタレン類;などが挙げられる。これらは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、低吸湿性の観点から、スチレン、「置換基として炭素数1〜6のアルキル基を有するスチレン類」等の「極性基を含有しない芳香族ビニル化合物」が好ましく、さらに、工業的な入手の容易さから、スチレンがより好ましい。
〔〔その他のビニル化合物〕〕
その他のビニル化合物としては、芳香族ビニル化合物および鎖状共役ジエン化合物以外のビニル化合物、例えば、鎖状ビニル化合物、環状ビニル化合物、不飽和の環状酸無水物、不飽和イミド化合物、などが挙げられる。これらの化合物は、ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。また、これらは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、低吸湿性の観点から、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン等の炭素数2〜20の鎖状ビニル化合物(鎖状オレフィン);ビニルシクロヘキサン、ノルボルネン等の炭素数5〜20の環状ビニル化合物(環状オレフィン);1,3−シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン化合物;などであって、極性基を含有しないものが好ましい。
〔重合体ブロック[B]〕
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位[b]を主成分とする重合体ブロックである。重合体ブロック[B]中における構造単位[b]の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
重合体ブロック[B]中における構造単位[b]の含有量が70質量%以上であると、得られる樹脂層は柔軟性(可撓性)を有するため好ましい。
重合体ブロック[B]は、構造単位[b]以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、上述した芳香族ビニル化合物に由来する構造単位[a]および/または上述したその他のビニル化合物に由来する構造単位[j]が挙げられる。重合体ブロック[B]中における芳香族ビニル化合物に由来する構造単位[a]およびその他のビニル化合物に由来する構造単位[j]の合計含有量は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
重合体ブロック[B]が構造単位[b]以外の構造単位[a]および/または構造単位[j]を含む場合は、重合体ブロック[B]は、通常、構造単位[a]、[b]、[j]を不規則的に繰り返してなる部分を有することが好ましい。
重合体ブロック[B]中における構造単位[a]および構造単位[j]の合計含有量が30質量%以下であると、得られる樹脂層の柔軟性(可撓性)が損なわれるのを防止することができる。
ブロック共重合体[C]が重合体ブロック[B]を複数有する場合、重合体ブロック[B]同士は、互いに同一であってもよく、相異なっていてもよい。
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位[b]の一部が、1,2−結合および/または3,4−結合で重合した構造単位(1,2−および/または3,4−付加重合由来の構造単位)を有し、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位[b]の残部が、1,4−結合(1,4−付加重合由来の構造単位)で重合した構造単位を有していてもよい。
1,2−結合および/または3,4−結合で重合した鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物、必要に応じて、芳香族ビニル化合物、その他のビニル化合物を、ランダム化剤として電子供与原子を有する特定の化合物の存在下で重合させることにより得ることができる。1,2−結合および/または3,4−結合で重合した鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位の含有量は、ランダム化剤の添加量により制御することができる。
電子供与原子(例えば、酸素(O)、窒素(N))を有する化合物としては、エーテル化合物、第3級アミン化合物、ホスフィン化合物、などが挙げられる。これらの中でも、ランダム共重合体ブロックの分子量分布を小さくすることができ、その水素添加反応を阻害し難いという観点から、エーテル化合物が好ましい。
電子供与原子を有する化合物の具体例としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールメチルフェニルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジ(2−テトラヒドロフリル)メタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、テトラメチルエチレンジアミン、などが挙げられる。これらの電子供与原子を有する化合物の含有量は、鎖状共役ジエン化合物100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.01質量部以上であることがより好ましく、10質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましい。
鎖状共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレン、などが挙げられる。これらは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、低吸湿性の観点から、極性基を含有しない鎖状共役ジエン化合物が好ましく、さらに、工業的な入手の容易さから、1,3−ブタジエン、イソプレンがより好ましい。
−変性ブロック共重合体水素化物[E]−
変性ブロック共重合体水素化物[E]は、上記ブロック共重合体水素化物[D]に、アルコキシシリル基が導入された高分子である。
ブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基を導入することにより、変性ブロック共重合体水素化物[E]に電子デバイス等の基材に対する充分な接着性が付与される。
−−アルコキシシリル基−−
導入するアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等の、トリ(炭素数1〜6アルコキシ)シリル基;メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基、プロピルジメトキシシリル基、プロピルジエトキシシリル基等の、(炭素数1〜20アルキル)ジ(炭素数1〜6アルコキシ)シリル基;フェニルジメトキシシリル基、フェニルジエトキシシリル基等の、(アリール)ジ(炭素数1〜6アルコキシ)シリル基;などが挙げられる。
また、アルコキシシリル基は、ブロック共重合体水素化物[D]に、炭素数1〜20のアルキレン基や、炭素数2〜20のアルキレンオキシカルボニルアルキレン基等の2価の有機基を介して結合していてもよい。
〔アルコキシシリル基の導入量〕
ブロック共重合体水素化物[D]100質量部に対するアルコキシシリル基の導入量としては、特に制限はなく、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることが特に好ましく、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることが特に好ましい。
アルコキシシリル基の導入量が10質量部以下であると、得られる変性ブロック共重合体水素化物[E]をシート状に溶融成形する前に微量の水分等で分解されたアルコキシシリル基同士の架橋が進み、ゲル化したり、溶融時の流動性が低下して成形性が低下したりするのを防止することができ、また、アルコキシシリル基の導入量が0.1質量部以上であると、シートを基材と接着するのに十分な接着力が得られないという不具合が生じるのを防止することができる。
アルコキシシリル基が導入されたことは、アルコキシシリル基が導入された変性ブロック共重合体水素化物[E]のIRスペクトルで確認することができる。また、その導入量は、アルコキシシリル基が導入された変性ブロック共重合体水素化物[E]のH−NMRスペクトルにて算出することができる。
〔アルコキシシリル基の導入方法〕
ブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基を導入する方法としては、特に制限はなく、例えば、ブロック共重合体水素化物[D]に、有機過酸化物の存在下で、エチレン性不飽和シラン化合物を反応(グラフト化反応)させることにより、アルコキシシリル基を導入する方法、より詳細には、ブロック共重合体水素化物[D]、エチレン性不飽和シラン化合物および有機過酸化物からなる混合物を、二軸混練機にて溶融状態で所望の時間混練する方法、などが挙げられる。
前述した導入方法で用いるエチレン性不飽和シラン化合物としては、ブロック共重合体水素化物[D]とグラフト化反応し、ブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基を導入可能なものであれば、特に制限はなく、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
グラフト化反応に使用する有機過酸化物としては、特に制限はないが、1分間半減期温度が170℃以上190℃以下のものが好ましく、例えば、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシド、1,4−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
二軸混練機による混練温度としては、特に制限はないが、180℃以上であることが好ましく、185℃以上であることがより好ましく、190℃以上であることが特に好ましく、220℃以下であることが好ましく、210℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることが特に好ましい。
また、加熱混練時間としては、特に制限はないが、0.1分間以上であることが好ましく、0.2分間以上であることがより好ましく、0.3分間以上であることが特に好ましく、10分間以下であることが好ましく、5分間以下であることがより好ましく、2分間以下であることが特に好ましい。
加熱混練温度および加熱混練時間(滞留時間)を上記好ましい範囲内にすることにより、連続的な混練および押出しを効率的に行うことができる。
得られた変性ブロック共重合体水素化物(E)の形態としては、特に制限はないが、通常は、ペレット形状にして、その後の成形加工や添加剤の配合に供することが好ましい。
変性ブロック共重合体水素化物[E]の分子量としては、導入されるアルコキシシリル基の分子量が、通常、小さいため、原料として用いたブロック共重合体水素化物[D]の分子量と実質的には変わらない。ただし、ブロック共重合体水素化物[D]に、有機過酸化物の存在下で、エチレン性不飽和シラン化合物を反応(グラフト化反応)させるため、重合体の架橋反応および切断反応が併発し、変性ブロック共重合体水素化物[E]の分子量分布の値は大きくなる。
変性ブロック共重合体水素化物[E]の分子量としては、特に制限はないが、樹脂層の耐熱性や機械的強度の観点から、THFを溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、35,000以上が好ましく、38,000以上がより好ましく、40,000以上が特に好ましく、200,000以下が好ましく、150,000以下がより好ましく、100,000以下が特に好ましい。
また、変性ブロック共重合体水素化物[E]の分子量分布(Mw/Mn)としては、特に制限はないが、樹脂層の耐熱性や機械的強度の観点から、3.5以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることが特に好ましい。
−ガラス転移温度Tg、融点−
熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgもしくは融点、即ちT2は、基材が電子デバイスである場合の電子デバイスの発熱に対する耐熱性の観点から、90℃以上であることが好ましく、95℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることが特に好ましく、基材の回収しやすさの観点から、125℃未満であることが好ましく、115℃以下であることがより好ましく、110℃以下であることが特に好ましい。
なお、「ガラス転移温度Tg」は、例えばJIS−K7244−2法に基づき粘弾性測定装置(製品名「ARES」、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を使用して、周波数1Hz、−100℃から+150℃の範囲で、昇温速度5℃/分で動的粘弾性特性を測定し、損失正接tanδのピークトップ温度より、算出することができる。
また、「融点」は、例えば、JIS K7121に基づき、示差走査熱量測定DSCにより測定する。
<<添加剤>>
樹脂層に添加される添加剤としては、粘着付与剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、光安定剤、などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
熱可塑性樹脂に添加剤を配合する方法としては、一般に用いられる公知の方法が適用でき、例えば、(i)熱可塑性樹脂のペレットおよび添加剤を、タンブラー、リボンブレンダー、ヘンシェルタイプミキサー等の混合機を使用して均等に混合した後、二軸押出機等の連続式溶融混練機により溶融混合し、押出すことで、ペレット状にする方法や、(ii)熱可塑性樹脂を、サイドフィーダーを備えた二軸押出機により、サイドフィーダーから各種添加剤を連続的に添加しながら、溶融混練し、押出すことで、ペレット状にする方法、が挙げられる。これらの方法によって、添加剤を熱可塑性樹脂に均一に分散させたものを製造することができる。
<<<粘着付与剤>>>
粘着付与剤を配合することにより、粘着性や接着性を付与することができる。
粘着付与剤の具体例としては、例えば、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリ−1−オクテン、エチレン−α−オレフィン共重合体等の低分子量体およびその水素化物;ポリイソプレン、ポリイソプレン−ブタジエン共重合体等の低分子量体およびその水素化物;などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、透明性および耐光性を維持し、充填性の効果に優れている点で、低分子量のポリイソブチレン水素化物、低分子量のポリイソプレン水素化物、が好ましい。
粘着付与剤の添加量としては、要求される粘着性に応じて適宜選定できるが、樹脂層の取り扱いの容易性の観点から、熱可塑性樹脂100質量部に対して、30質量部以下とすることが好ましく、20重量部以下とすることがより好ましい。
<<<紫外線吸収剤>>>
樹脂層に紫外線吸収剤を配合することにより、より紫外線を遮蔽することができる。
紫外線吸収剤の具体例としては、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、などが挙げられる。
<<<赤外線吸収剤>>>
赤外線吸収剤を配合することにより、赤外線を遮蔽することができる。
赤外線吸収剤の具体例としては、酸化錫、アルミニウムドープ酸化錫、インジウムドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、錫ドープ酸化亜鉛、珪素ドープ酸化亜鉛、酸化チタン、ニオブドープ酸化チタン、酸化タングステン、ナトリウムドープ酸化タングステン、セシウムドープ酸化タングステン、タリウムドープ酸化タングステン、ルビジウムドープ酸化タングステン、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム等の金属酸化物微粒子;フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、イモニウム化合物、ジイモニウム化合物、ポリメチン化合物、ジフェニルメタン化合物、アントラキノン化合物、ペンタジエン化合物、アゾメチン化合物、6ホウ化ランタン等の近赤外線吸収色素;などが挙げられる。
<<<酸化防止剤>>>
酸化防止剤を配合することにより、加工性等を高めることができる。
酸化防止剤の具体例としては、リン系酸化防止剤、フェノ−ル系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、などが挙げられる。
<<<ブロッキング防止剤>>>
ブロッキング防止剤を配合することにより、熱可塑性樹脂を主成分とするペレットのブロッキングを防止することができる。
ブロッキング防止剤の具体例としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸バリウム、ミリスチン酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、リシノール酸亜鉛、リシノール酸バリウム、ベヘン酸亜鉛、モンタン酸ナトリウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、などが挙げられる。
<<<光安定剤>>>
光安定剤を配合することにより、耐久性を高めることができる。
光安定剤の具体例としては、ヒンダードアミン系光安定剤、などが挙げられる。
紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、光安定剤等の添加量としては、これらの添加剤の合計添加量が、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.01質量部以上であることがより好ましく、0.05質量部以上であることが特に好ましく、5質量部以下であることが好ましく、4質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることが特に好ましい。
<真空脱気工程>
真空脱気工程は、積層物を包装袋に封入した包装体を真空脱気する工程である。
<<包装袋>>
包装袋は、ビカット軟化温度および溶融温度が後述する所定の関係を満たす限り、特に制限はないが、ポリエチレン系樹脂からなる層を1層以上含むことが好ましく、ポリエチレン系樹脂からなる層を最内層にすることがより好ましい。
<<<ビカット軟化温度>>>
ビカット軟化温度T3としては、特に制限はないが、熱可塑性樹脂を加熱し溶融させる際に、包装袋の熱収縮を抑制する観点から、90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることが特に好ましく、加熱温度を過度に高くしないようにする観点から、120℃未満であることが好ましく、118℃以下であることがより好ましく、115℃以下であることが特に好ましい。
「ビカット軟化温度」は、JIS K7206A法に基づいて、東洋精機製HDT(ヒートディストーションテスター)装置を用いて測定することができる。この測定方法は,プラスチック試験片に10Nの試験荷重をかけて、昇温速度50℃/時間で伝熱媒体を昇温させ、針状圧子が試験片の表面から1mm侵入したときの伝熱媒体の温度を測定するものである。ここで、「ビカット軟化温度」に達した樹脂は、容易に変形を生じる。つまり、包装袋がビカット軟化温度に達した場合、包装袋の熱収縮や伸びなど変形にともなう応力は極めて小さくなる。
なおここで、包装袋のビカット軟化温度は、包装袋が複数の層からなる場合、包装袋の最内層の材料のビカット軟化温度を意味する。
<<<溶融温度>>>
溶融温度T4としては、特に制限はないが、加熱加工時の電子デバイス等の基材への熱ダメージを低減させる観点から、140℃以下であることが好ましく、135℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることが特に好ましく、包装袋の真空脱気状態を維持する観点から、90℃超であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、125℃以上であることが特に好ましい。
「溶融温度」は、示差走査熱量計(DSC)(日立ハイテクサイエンス株式会社製、DSC6200)を用いて融点ピークを溶融温度として測定することができる。溶融温度に達した樹脂は液状になり、包装袋の形状を保持できない。よって、溶融温度に達した包装袋の状態は、ビカット軟化温度に達した包装袋が形状を保持している状態とは明確に異なる。
なおここで、包装袋の溶融温度は、包装袋が複数の層からなる場合、包装袋の最内層の材料の溶融温度を意味する。
<<<ポリエチレン系樹脂>>>
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン系樹脂、中密度ポリエチレン系樹脂、低密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂、長鎖分岐を有する直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂、および、それらの混合物、などが挙げられる。
<加熱加圧工程>
加熱加圧工程は、真空脱気した包装体を加熱および加圧して積層体を作製する工程である。ここで、加熱および加圧は、オートクレーブ装置で行うオートクレーブ処理であることが好ましい。
加熱の温度をT1、熱可塑性樹脂のガラス転移温度もしくは融点をT2、包装袋のビカット軟化温度をT3、包装袋の溶融温度をT4とした場合、T1〜T4のそれぞれの温度が、T4>T1≧T2≧T3の関係を満たす。
つまり、例えば、ビカット軟化温度(T3)95℃、溶融温度(T4)130℃のポリエチレンフィルムで耐熱バッグ(包装袋)を作製し、ガラス転移温度Tgもしくは融点(T2)105℃の樹脂層を用いて、オートクレーブで加熱温度(T1)110℃で張り合わせを行うことにより、昇温中は耐熱バッグ(包装袋)のビカット軟化温度(T3)95℃以下であるため、真空を保つ。貼り合せ温度(加熱温度(T1)110℃)に到達すると、包装袋のビカット軟化温度(T3)95℃を超えており、端部に応力が強くかかることはない。また、貼り合せ温度(加熱温度(T1)110℃)は、耐熱バッグ(包装袋)の溶融温度(T4)130℃以下であり、樹脂層のガラス転移温度Tgもしくは融点(T2)105℃よりも高いため、耐熱バッグ(包装袋)溶け落ちることもなく、良好に貼り合わせが終了する。
加熱の温度T1としては、特に制限はないが、貼り付けの観点から、90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることが特に好ましく、熱劣化防止や袋溶解防止の観点から、140℃未満であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましく、125℃以下であることが特に好ましい。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。本実施例における測定乃至評価は、以下の方法によって行った。
(1)重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)
ブロック共重合体[C]、ブロック共重合体水素化物[D]の分子量を、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として40℃において測定し、標準ポリスチレン換算値を算出した。なお、測定装置としては、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)装置(HLC8320GPC、東ソー社製)を用いた。
(2)水素化率
ブロック共重合体水素化物[D]の主鎖、側鎖および芳香環の水素化率は、ブロック共重合体[C]およびブロック共重合体水素化物[D]のH−NMRを測定して算出した。
(3)wAとwBとの比(wA:wB)
重合体ブロック[A]の全量がブロック共重合体[C]全体に占める質量分率をwAとし、重合体ブロック[B]の全量がブロック共重合体[C]全体に占める質量分率をwBとしたときの、「wAとwBとの比(wA:wB)」については、ブロック共重合体[C]を製造する過程において、各重合体ブロックの重合に用いた芳香族ビニル化合物、鎖状共役ジエン化合物およびその他のビニル化合物の部数と、ガスクロマトグラフィー(GC)を使用して測定された各重合体ブロック重合終了段階での用いたモノマーの重合体への重合転化率により、各重合体ブロックの質量分率を算出した。
[製造例1]
<Si−HSISシートの製造>
攪拌装置を備え、内部が十分に窒素置換された反応器に、脱水シクロヘキサン400部、脱水スチレン10部、およびジブチルエーテル0.475部を投入した。全容を60℃で攪拌しながら、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.91部を加えて重合を開始させた。引続き、全容を60℃で攪拌しながら、脱水スチレン15部を40分間に亘って連続的に反応器内に添加して重合反応を進め、添加終了後、そのまま、さらに、60℃で20分間全容を攪拌した。反応液をガスクロマトグラフィー(GC)により測定したところ、この時点での重合転化率は99.5%であった。
次に、反応液に、脱水イソプレン50部を130分間に亘って連続的に添加し、添加終了後そのまま30分間攪拌を続けた。この時点で、反応液をGCにより分析した結果、重合転化率は99.5%であった。
その後、更に、反応液に脱水スチレン25部を70分間に亘って連続的に添加し、添加終了後そのまま60分攪拌した。この時点で、反応液をGCにより分析した結果、重合転化率はほぼ100%であった。
ここで、反応液に、イソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止させ、重合体溶液を得た。重合体溶液に含まれるブロック共重合体[C1]は、[A]−[B]−[A]型のトリブロック共重合体であり、重量平均分子量(Mw)は45,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.03、wA:wB=50:50であった。
次に、上記の重合体溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として、珪藻土担持型ニッケル触媒(製品名「E22U」、ニッケル担持量60%、日揮触媒化成社製)4.0部、および脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度190℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。
水素化反応により得られた反応溶液に含まれるブロック共重合体水素化物[D1]の重量平均分子量(Mw)は47,800、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
水素化反応終了後、反応溶液を濾過して水素化触媒を除去した後、得られた溶液に、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリトリトール・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名「AO60」、ADEKA社製)0.1部を溶解したキシレン溶液2.0部を添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶液からシクロヘキサン、キシレンおよびその他の揮発成分を除去した。溶融ポリマーをダイからストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーによりカッティングしてブロック共重合体水素化物[D1]からなるペレット94部を得た。
得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[D1]の重量平均分子量(Mw)は47,600、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、水素化率は、「主鎖および側鎖」並びに「芳香族」のいずれもほぼ100%であった。
得られたブロック共重合体水素化物[D1]のペレット100部に対して、ビニルトリメトキシシラン2.0部、および、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(製品名「パーヘキサ(登録商標)25B」、日油社製)0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出機(製品名「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度200℃、滞留時間60〜70秒で混練した。得られた混練物を、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、アルコキシシリル基を有する変性ブロック共重合体水素化物[E1]のペレット97部を得た。
変性ブロック共重合体水素化物[E1]のペレット10部をシクロヘキサン100部に溶解させた後、得られた溶液を脱水メタノール400部中に注いで、変性ブロック共重合体水素化物[E1]を凝固させた。凝固物を25℃で真空乾燥して、精製した変性ブロック共重合体水素化物[E1]9.0部を得た。
変性ブロック共重合体水素化物[E1]のFT−IRスペクトルには、1090cm−1にSi−OCH基、825cm−1と739cm−1にSi−CH基に由来する新たな吸収帯が、ビニルトリメトキシシランのSi−OCH基、Si−CH基に由来する吸収帯(1075cm−1、808cm−1、および766cm−1)と異なる位置に観察された。
また、変性ブロック共重合体水素化物[E1]のH−NMRスペクトル(重クロロホルム中)を測定したところ、3.6ppmにメトキシ基のプロトンに基づくピークが観察された。ピーク面積比からブロック共重合体水素化物[D1]100部に対してビニルトリメトキシシラン1.9部が結合したことが確認された。変性ブロック共重合体水素化物[E1]のガラス転移温度もしくは融点T2は121℃であった。
上記で得た変性ブロック共重合体水素化物[E1]のペレット100部に、紫外線吸収剤である(2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−tert−ブチル−p−クレゾール(住友化学社製、製品名「SUMISORB(登録商標)300」)0.2部と、粘着付与材であるポリイソブテン重合体水素化物(日油社製、製品名「ポリブテン10SH」)10.0部を添加して、均一に混合した。この混合物を直径37mmのスクリューを備えた二軸混練機(東芝機械社製、TEM37B)を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機(Tダイ幅400mm)、キャストロール(エンボスパターン付き)、およびシート引き取り装置を備えた押出しシート成形機を使用して、溶融樹脂温度200℃、Tダイ温度180℃、キャストロール温度40℃の条件にて押出し成形し、変性ブロック共重合体水素化物[E1]を主成分とするSi−HSISシート(厚さ760μm)を得た。
Si−HSISシートは、押出しシートの片面をニップロールでエンボスロールに押し当てることにより、エンボスパターンを転写した。得られたSi−HSISシートはロールに巻き取り回収した。
変性ブロック共重合体水素化物[E1]を主成分とするSi−HSISシートのガラス転移温度もしくは融点T2は105℃であった。
(実施例1)
縦22cm×横16cm、厚さ2.1mmのソーダライムガラスを2枚用意し、縦22cm×横16cm、厚さ760μmのSi−HSISシート(Si−HSISシートにおける熱可塑性樹脂(変性ブロック共重合体水素化物[E1]とポリイソブテン重合体水素化物との混合樹脂)のガラス転移温度Tg:105℃)を6枚用意した。次に、Si−HSISシート4枚を端部をそろえて重ね、液晶パネル(LG製、LP097QX1 9.7’’2048×1536)と同サイズをくり抜き、枠型シートを作製した。次に、図1に示すように、ソーダライムガラス10の上に、厚さ760μmのSi−HSISシート20を1枚載置し、次に、Si−HSISシート20上に枠型シート30を重ね、枠型シート30における枠型30a内に液晶パネル40を設置した。さらに、厚さ760μmのSi−HSISシート50を1枚重ね、最後に、ソーダライムガラス60を重ね、ずれが生じないように耐熱粘着テープで仮止めを行い、積層物としての仮止め積層体1を作製した。なお、液晶パネル40を電源およびコントローラーに接合するフラットケーブル70は枠型シート30の間から取り出した。
次に、リニアローデンシティポリエチレンフィルム(「LL−XHT」、二村化学(株)製、ビカット軟化温度T3:95℃、溶融温度T4:130℃)60μm厚を300mm×300mmのサイズに裁断し、インパルスシーラーを用いて、シール幅10mmにて3方をシールして包装袋Xを作製した。この包装袋Xに仮止め積層体1(積層物)を入れて、包装袋Xの中央部に設置した。
その後、小型真空包装器(日本包装機械(株)製、「T−100」)を用いて、シール時間4秒間、脱気時間30秒間にて真空包装を行った。そして、真空包装した包装袋Xを取り出し、小型オートクレーブ(羽生田鉄工所(株)製、「タンデライオン」)を用いて、槽内温度を室温から加熱温度T1:110℃に昇温している間は保持圧力を0.1MPaとし、槽内温度が加熱温度T1:110℃に到達した後は、保持圧力を0.3MPaとし、保持時間を20分間として加熱加圧溶着を行い、積層体1−1を作製した。保持時間が経過した後、圧力を0.3MPaに保持したまま、槽内温度を60℃まで冷却し、冷却後に減圧し、積層体1−1を取り出した。取り出した積層体1−1のフラットケーブル70に液晶コントローラーを取り付け、パソコンのHDMI(登録商標)端子に接合し、表示画像状態を観察した。また、積層体1−1の中央と長辺端部で厚さを測定し、その差をたわみ量として算出した。結果を表1に示す。
(実施例2)
縦22cm×横5cm、厚さ2.1mmのソーダライムガラスを2枚用意し、縦22cm×横5cm、厚さ760μmのSi−HSISシート(Si−HSISシートにおける熱可塑性樹脂(変性ブロック共重合体水素化物[E1]とポリイソブテン重合体水素化物との混合樹脂)のガラス転移温度Tg:105℃)を6枚用意した。次に、Si−HSISシート4枚の端部をそろえて重ね、LEDチップ搭載テープ(厚さ3mm、幅8mm、高輝度SMD3528型、以下、「LEDテープ」という)と同サイズをくり抜き、枠型シートを作製した。次に、図2に示すように、ソーダライムガラス10の上に、厚さ760μmのSi−HSISシート20を1枚載置し、次に、Si−HSISシート20上に枠型シート30を重ね、枠型シート30における枠型30a内にLEDテープ80を設置した。さらに、厚さ760μmのSi−HSISシート50を1枚重ね、最後に、ソーダライムガラス60を重ね、ずれが生じないように耐熱粘着テープで仮止めを行い、積層物としての仮止め積層体2を作製した。なお、LEDテープ80を電源およびコントローラーに接合するケーブル90は枠型シート30の間から取り出した。
次に、リニアローデンシティポリエチレンフィルム(「LL−XHT」、二村化学(株)製、ビカット軟化温度T3:95℃、溶融温度T4:130℃)60μm厚を300mm×300mmのサイズに裁断し、インパルスシーラーを用いて、シール幅10mmにて3方をシールして包装袋Xを作製した。この包装体Xに仮止め積層体2(積層物)を入れて、包装袋Xの中央部に設置した。
その後、仮止め積層体2を用いたこと以外は、実施例1と同様に、真空包装、加熱加圧溶着を行い、積層体2−1を作製し、取り出した。取り出した積層体2−1のケーブル90にコントローラーを取り付け、LEDの発光状態を観察した。また、積層体2−1の中央と長辺端部で厚さを測定し、その差をたわみ量として算出した。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1において、ソーダライムガラスの厚さを0.7mmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、仮止め積層体1および積層体3−1を作製し、積層体3−1を取り出した。取り出した積層体3−1のフラットケーブルに液晶コントローラーを取り付け、パソコンのHDMI端子に接合し、表示画像状態を観察した。また、積層体3−1の中央と長辺端部で厚さを測定し、その差をたわみ量として算出した。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1と同様に、仮止め積層体1を作製した。
次に、キャストポリプロピレンフィルム(トレファン「ZK100」、東レフィルム加工株式会社製、ビカット軟化温度T3:150℃、溶融温度T4:165℃)60μm厚を300mm×300mmのサイズに裁断し、インパルスシーラーを用いて、シール幅10mmにて3方をシールして包装袋Zを作製した。
その後、実施例1と同様に、積層体1−3を作製し、取り出した。取り出した積層体1−3のフラットケーブル70に液晶コントローラーを取り付け、パソコンのHDMI端子に接合し、表示画像状態を観察した。また、積層体1−3の中央と長辺端部で厚さを測定し、その差をたわみ量として算出した。結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例2と同様に、仮止め積層体2を作製した。
次に、比較例1と同様に、包装袋Zを作製した。
その後、仮止め積層体2を用いたこと以外は、比較例1と同様に、積層体2−3を作製し、取り出した。取り出した積層体2−3のケーブル90にコントローラーを取り付け、LEDの発光状態を観察した。また、積層体2−3の中央と長辺端部で厚さを測定し、その差をたわみ量として算出した。結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例3と同様に、仮止め積層体1を作製した。
次に、比較例1と同様に、包装袋Zを作製した。
その後、実施例3と同様に作製した仮止め積層体1を用いたこと以外は、比較例1と同様に、積層体3−3を作製し、取り出した。取り出した積層体3−3のフラットケーブル70に液晶コントローラーを取り付け、パソコンのHDMI端子に接合し、表示画像状態を観察した。また、積層体3−3の中央と長辺端部で厚さを測定し、その差をたわみ量として算出した。結果を表1に示す。
(比較例4)
実施例1と同様に、仮止め積層体1を作製した。
次に、ローデンシティポリエチレンフィルム(「Z323」グレード、宇部丸善ポリエチレン株式会社製、ビカット軟化温度T3:112℃、溶融温度T4:135℃)60μm厚を300mm×300mmのサイズに裁断し、インパルスシーラーを用いて、シール幅10mmにて3方をシールして包装袋Yを作製した。
その後、仮止め積層体1を包装袋Yに入れたこと以外は、比較例1と同様に、積層体1−2を作製し、取り出した。取り出した積層体1−2のフラットケーブル70に液晶コントローラーを取り付け、パソコンのHDMI端子に接合し、表示画像状態を観察した。また、積層体1−2の中央と長辺端部で厚さを測定し、その差をたわみ量として算出した。結果を表1に示す。
Figure 2019042935
表1より、T1〜T4のそれぞれの温度が、T4>T1≧T2≧T3の関係の関係を満たす実施例1〜3の積層体の製造方法は、T1〜T4のそれぞれの温度が、T4>T1≧T2≧T3の関係を満たさない比較例1〜4の積層体の製造方法と比較して、スペーサーや補強板を用いることなく、端部の変形を抑えて、電子デバイスにダメージを付与せずに、ソーダライムガラスが割れることなく、積層体の張り合わせを行うことができることが分かる。
本発明の積層体の製造方法によれば、スペーサーや補強板を用いることなく、端部の変形が抑制された積層体を作製することができる。
1 仮止め積層体(積層体)
2 仮止め積層体(積層体)
10 ソーダライムガラス
20 Si−HSISシート
30 枠型シート
30a 枠型
40 液晶パネル
50 Si−HSISシート
60 ソーダライムガラス
70 フラットケーブル
80 LEDテープ
90 ケーブル

Claims (5)

  1. 基材と、該基材上に形成された少なくとも1層の樹脂層とを備え、該樹脂層が熱可塑性樹脂を含む積層体を製造する積層体の製造方法であって、
    積層物を包装袋に封入した包装体を真空脱気する工程と、
    前記真空脱気した包装体を加熱および加圧して積層体を作製する工程とを含み、
    前記加熱の温度をT1、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度もしくは融点をT2、前記包装袋のビカット軟化温度をT3、前記包装袋の溶融温度をT4とした場合、T1〜T4のそれぞれの温度が、T4>T1≧T2≧T3の関係を満たす、積層体の製造方法。
  2. T1〜T4のそれぞれの温度が、90℃≦T1<140℃、90℃≦T2<125℃、90℃≦T3<120℃、および90<T4≦140℃を満たす、請求項1に記載の積層体の製造方法。
  3. 前記基材が電子デバイスを含む、請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
  4. 前記包装袋がポリエチレン系樹脂からなる層を1層以上含む、請求項1〜3のいずれかに記載の積層体の製造方法。
  5. 前記熱可塑性樹脂が水素添加ブロック共重合体である、請求項1〜4のいずれかに積層体の製造方法。
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