JP2019038918A - ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】成形性、流動性に優れ、低反り性、ウェルド強度、ウェルド部の耐ヒートサイクル性に優れた成形品を得ることのできるPBT樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)全ジカルボン酸成分中のイソフタル酸成分含有率が2.5〜5mol%である、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)共重合体を含むポリブチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対し、(B)ゴム成分が10〜30重量%のスチレン系共重合体18〜28重量部、(C)変性エラストマを含むエラストマ5〜14重量部、(D)強化繊維30〜90重量部を配合してなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、およびそれを成形してなる成形品に関するものである。
ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと略記することがある。)樹脂は、電気特性、耐薬品性、耐熱性、寸法安定性などに優れているため、各種の電気・電子機器部品、自動車、列車、電車などの車両用内外装部品、その他の一般工業製品製造用材料として、広く使用されている。
PBT樹脂は、上記特性に優れることからセンサーカバー、ECUケース、ドアロックハウジング、パワーウィンドウモーターハウジングといった車載用電装部品などの箱形状部品に多く使用される。これら電装部品の多くは、樹脂製ケース内部に電子部品やギアなどを取り付けた後、樹脂製カバーで覆うためケースとカバーの嵌合性が重要であり、使用される樹脂には、低反り性が要求される。PBT樹脂の反りを改良する手段としては、非晶性樹脂やガラス繊維、フィラー等を配合することが一般的である。しかし、一般的な低反り化の手法では、樹脂の剛性を高め、かつ樹脂の結晶化を早める効果があることから、靭性低下およびウェルド強度低下の背反があり、特に耐ヒートサイクル性が求められる製品には不向きである。また、上記のような車載用電装部品は、その機能を発現させるため、複雑形状(ウェルド部が生じやすい形状)である成形品や、金属部品がインサートされた成形品が多い。
このような背景から、上記の車載用電装部品には、低反り性を有するだけでなく、高いウェルド強度、特にウェルド部分の耐ヒートサイクル性を有する材料が求められている。
ウェルド強度、ウェルド部分の耐ヒートサイクル性に優れる樹脂組成物として、熱可塑性樹脂、無機フィラー、脂肪酸金属塩、オレフィン系樹脂を配合してなる樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。また、熱可塑性ポリエステル、芳香族ビニル系樹脂、アミド化合物、多価アルコール、エポキシ化合物、繊維状充填材を配合してなる樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2)。
低反り性に優れる樹脂組成物としては、芳香族ビニル系樹脂、結晶性樹脂、繊維状充填材を配合してなる樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献3)。また、ポリブチレンテレフタレート、スチレン系樹脂、ポリオレフィン共重合体、繊維状無機充填剤、板状無機物を配合してなる樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献4)。
低反り性、ウェルド強度に優れる樹脂組成物として、ポリブチレンテレフタレート、リン酸エステル系化合物、ガラス繊維、トリアジン系化合物、ポリカーボネートを配合してなる樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献5)。
流動性、耐熱性に優れる樹脂組成物として、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ビニル系樹脂、燐酸エステル、トリアジン系化合物、アルカリ土類金属化合物、ガラス繊維を配合してなる樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献6)。また、熱可塑性樹脂、熱伝導性フィラー、難燃剤を配合してなる樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献7)。
特開2008−163324号公報 特開2011−52172号公報 特開2017−82047号公報 特開平10−60240号公報 特開2009−96969号公報 特開2009−227750号公報 特開2009−270709号公報
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂組成物からなる成形品は、無機フィラーを多く含み、成形性、流動性が不十分であった。また、特許文献2に記載の樹脂組成物からなる成形品は、芳香族ビニル系樹脂の配合量が少なく、低反り性が不十分であった。
特許文献3および4に記載の樹脂組成物からなる成形品は、芳香族ビニル系樹脂、スチレン系樹脂の配合量が多く、ウェルド強度、ウェルド部の耐ヒートサイクル性が不十分であった。さらに特許文献5〜7に記載の樹脂組成物からなる成形品は、難燃剤を含み、依然としてウェルド強度、ウェルド部の耐ヒートサイクル性が不十分であった。
成形品の中でも、樹脂製カバーやケースをネジ止めによって嵌合させる車載用部品の場合、金属カラーをインサート成形することでネジ止め用の穴を設けている成形品が多く、金属カラー部に接する形でウェルドが生じる。このような成形品をヒートサイクル処理すると、金属と樹脂の線膨張差により、カラー部に接しているウェルド部(最も弱い部分)でクラックが生じ、気密性低下、製品強度低下等の問題が生じる場合がある。特に薄肉の成形品では、結晶化速度の早いPBT樹脂では、ウェルド部の密着性が低く、ウェルド強度の低下、ヒートサイクル処理によるウェルド部の割れが発生しやすくなる問題点がある。一方で、ウェルド強度、ウェルド部の耐ヒートサイクル性に特化した材料は、結晶化速度の低下、靭性の向上により、成形性、流動性、成形品の低反り性が低下する問題があった。
本発明は、上記の課題に鑑み、成形性、流動性に優れ、低反り性、ウェルド強度、ウェルド部の耐ヒートサイクル性に優れた成形品を得ることのできるPBT樹脂組成物を提供することを課題とするものである。
上記課題を解決するため、本発明は次の構成を有する。
(1)(A)全ジカルボン酸成分中のイソフタル酸成分含有率が2.5〜5mol%である、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)共重合体を含むポリブチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対し、(B)ゴム成分が10〜30重量%のスチレン系共重合体18〜28重量部、(C)変性エラストマを含むエラストマ5〜14重量部、および(D)強化繊維30〜90重量部を配合してなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(2)前記(B)ゴム成分が10〜30重量%のスチレン系共重合体が(B−1)アクリロニトリル、スチレンおよびグリシジルメタクリレートを共重合してなる共重合体と、(B−2)ゴム成分を含むスチレン系樹脂を含む(1)記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(3)前記(C)エラストマが(C−1)αオレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを共重合成分とするグリシジル基含有共重合体、(C−2)エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンを共重合成分とする密度が870kg/m以下である未変性エチレン・αオレフィン系共重合体を含み、前記(C−1)αオレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを共重合成分とするグリシジル基含有共重合体および前記(C−2)エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンを共重合成分とする密度が870kg/m以下である未変性エチレン・αオレフィン系共重合体の配合比((C−1)/(C−2))が、重量比で25/75以上75/25以下である(1)または(2)に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(4)さらに前記(A)ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)共重合体100重量部に対し、(E)エチレンビスステアリルアミド0.7〜1.5重量部配合してなる(1)から(3)のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品。
(5)(1)から(4)のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品。
(6)厚み3mm以下のウェルド部を有する(5)に記載の成形品。
本発明のPBT樹脂組成物は成形性、流動性に優れ、本発明の樹脂組成物を成形して得られる成形品は低反り性、ウェルド強度とウェルド部の耐ヒートサイクル性に優れるため、薄肉のウェルド部を有する金属インサート成形品であって、耐ヒートサイクル性が要求される部品に有用である。
実施例および比較例における反り量測定用箱型成形品の外観 図1の概略側面図(1)、概略平面図(2) 実施例および比較例におけるウェルド部の耐ヒートサイクル性評価用成形品の外観 図2の概略側面図(1)、概略平面図(2)
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、結晶化特性、耐熱性、成形性、耐薬品性および電気絶縁性に優れている。本発明に用いられるポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)共重合体とは、テレフタル酸およびイソフタル酸と1,4−ブタンジオールとの共重合体であって、テレフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体、およびイソフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体と、ブタンジオールあるいはそのエステル形成性誘導体とを通常公知の方法で重縮合して得られるものである。さらに他の成分を共重合してもよい。他の共重合成分としては、テレフタル酸およびイソフタル酸以外のジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、ブタンジオール以外のジオールなどが挙げられる。ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、例えば、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸やこれらのアルキルエステル等が挙げられる。ジオールとしては、例えば、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
本発明の(A)(ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)共重合体を含むポリブチレンテレフタレート系樹脂の全ジカルボン酸成分中のイソフタル酸成分含有率(以下、イソフタル酸含有率とする)は、2.5〜5mol%以下である。ここで、全ジカルボン酸成分とは、ポリブチレンテレフタレート系樹脂を構成するジカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体の残基を意味する。イソフタル酸成分とは、ポリブチレンテレフタレート系樹脂を構成するイソフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体の残基を意味する。ジカルボン酸成分として、イソフタル酸成分を少量配合することにより、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)共重合体の固化を遅らせ、射出成形時にウェルド部での密着性が改良されることで、ウェルド強度を向上させることが可能である。イソフタル酸含有率が2.5mol%未満であると、成形品のウェルド強度、ウェルド部の耐ヒートサイクル性が低下し、5mol%を超えると、成形性が低下する。3〜4mol%がより好ましい。
本発明における(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂は、前述のポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)共重合体を2種以上含んでもよく、ポリブチレンテレフタレートおよび他の共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂を含んでもよい。ポリブチレンテレフタレート系樹脂を2種以上配合する場合、ポリブチレンテレフタレート系樹脂全体のイソフタル酸含有率が上記範囲にあればよい。
本発明に用いられる(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂は、o−クロロフェノール溶液を25℃で測定したときの固有粘度が0.60〜1.60の範囲にあることが好ましい。固有粘度が0.60以上であれば、機械特性に優れる成形品を得ることができる。0.70以上がより好ましい。一方、固有粘度が1.60以下であれば、流動性をより向上させることができる。
本発明に用いられる(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の重縮合法や開環重合法などを挙げることができる。バッチ重合法および連続重合法のいずれでもよく、また、エステル交換反応および直接重合による重縮合反応のいずれも適用することができるが、カルボキシル末端基量を少なくすることができ、かつ、流動性向上効果が大きくなるという点で、連続重合法が好ましく、コストの点で、直接重合法が好ましい。
なお、エステル化反応またはエステル交換反応および重縮合反応を効果的に進めるために、これらの反応時に触媒を添加することが好ましい。触媒の具体例としては、有機チタン化合物、スズ化合物、ジルコニア化合物、アンチモン化合物などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも有機チタン化合物およびスズ化合物が好ましく、有機チタン化合物の中でも、チタン酸のテトラ−n−プロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステルおよびテトライソプロピルエステルがより好ましく、チタン酸のテトラ−n−ブチルエステルが特に好ましい。スズ化合物の中では、ジブチルスズオキシド、メチルフェニルスズオキシド、テトラエチルスズが好ましい。触媒の添加量は、機械特性、成形性および色調の点で、ポリブチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対して、0.005〜0.5重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.2重量部の範囲がより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、(B)ゴム成分が10〜30重量%のスチレン系共重合体を配合してなる。(B)ゴム成分が10〜30重量%のスチレン系共重合体は、非晶性樹脂とゴム成分を含むため、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂に配合することで、低反り性、耐ヒートサイクル性の両方を向上させる効果がある。(B)ゴム成分が10〜30重量%のスチレン系共重合体とは、(B−1)アクリロニトリル、スチレンおよびグリシジルメタクリレートを共重合してなる共重合体と、(B−2)ゴム成分を含むスチレン系樹脂を含むことが好ましい。このように、(B)成分が複数の成分を含む場合、例えば前述の(B−1)成分および(B−2)成分を含む場合は、(B−1)成分および(B−2)成分の合計重量に対してのゴム成分の割合が10〜30重量%である。
(B−1)アクリロニトリル、スチレンおよびグリシジルメタクリレートを共重合してなる共重合体におけるグリシジルメタクリレートの好ましい共重合量は、(A)成分との相溶性を向上させるのに有効な量が好ましく、アクリロニトリル、スチレンおよびグリシジルメタクリレートを共重合してなる共重合体に対して0.1重量%以上であることが好ましい。多量に共重合すると流動性低下やゲル化の問題があるので、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。また、スチレンおよびアクリロニトリルの共重合量は特に制限はないが、スチレンおよびアクリロニトリルの合計に対してスチレン50〜99重量%、アクリロニトリル50〜1重量%であることが好ましい。
(B−2)ゴム成分を含むスチレン系樹脂とは、スチレン系化合物を、またはスチレン系化合物とスチレン系化合物と共重合可能な他の化合物とを、ゴム成分存在下に重合して得られる(共)重合体である。スチレン系化合物の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ブチルスチレン等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。スチレン系化合物と共重合可能な他の化合物の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル類、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートおよびブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物類等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
ゴム成分としては、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン系ゴム等が使用できる。具体例として、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン/スチレン)、ポリ(ブタジエン/アクリロニトリル)、ポリイソプレン、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸オクチル、ポリ(ブタジエン/アクリル酸ブチル)、ポリ(ブタジエン/メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸ブチル/メタクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン/アクリル酸エチル)、エチレン/プロピレンラバー、エチレン/プロピレン/ジエンラバー、ポリ(エチレン/イソプレン)、ポリ(エチレン/アクリル酸メチル)等が挙げられる。これらのゴム成分は、1種または2種以上の混合物で使用される。これらのゴム成分のうち、ポリブタジエン、ポリアクリル酸ブチルが好ましく用いられる。
(B−2)ゴム成分を含むスチレン系樹脂の具体例としては、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル/スチレン/アクリレート共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル/エチレンゴム/スチレン共重合体(AES樹脂)などがあり、これらの中でも、成形品の低反り性、ウェルド部の耐ヒートサイクル性の観点からABS樹脂、ASA樹脂が好ましく用いられる。
(B)スチレン系共重合体におけるゴム成分の含有量は、(B−1)成分および(B−2)成分を含む(B)スチレン系共重合体の赤外分光スペクトルを測定し、ゴム成分由来のピークから求めることができる。(B)スチレン系共重合体におけるゴム成分の含有量は、10〜30重量%である。ゴム成分が10重量%未満であると、成形品のウェルド部の耐ヒートサイクル性が低下し、30重量%を超えると、成形品の低反り性、ウェルド強度が低下する。
本発明に用いられる変性エラストマとは、エポキシ基、酸無水物基、およびそれらの誘導体である官能基から選択される少なくとも1種の官能基を有するエラストマである。(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂との相溶性の観点から、エポキシ基を有することが好ましい。(C)変性エラストマを含むエラストマを配合することで、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂の耐ヒートサイクル性が向上する。(C)変性エラストマを含むエラストマは、(C−1)αオレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを共重合成分とするグリシジル基含有共重合体、および(C−2)エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンを共重合成分とする密度が870kg/m以下である未変性エチレン・αオレフィン系共重合体を含むことが好ましい。
(C−1)α−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを共重合成分とするグリシジル基含有共重合体は、α−オレフィン、α,β−不飽和酸のグリシジルエステル共重合体、および必要に応じてこれらと共重合可能な不飽和モノマーを共重合することにより得られる共重合体である。全共重合成分中、α−オレフィン、α,β−不飽和酸のグリシジルエステルを60重量%以上用いることが好ましい。
α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−オクテン等を挙げることができる。これらを二種以上用いてもよい。
α,β−不飽和酸のグリシジルエステルとしては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジルなどを挙げることができる。これらを二種以上用いてもよい。メタクリル酸グリシジルが好ましく使用される。
(C−1)グリシジル基含有共重合体は、ISO1133:1997に従った190℃、2160g荷重で測定したメルトフローレート(以下MFRと略す)が1g/10分〜15g/10分であることが好ましい。MFRを1g/10分以上とすることで、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の流動性がより向上し、15g/10分以下とすることで、インサート成形品とした際の耐冷熱衝撃性がより向上する。
また、上記成分と共重合可能な不飽和モノマーとしては、例えば、ビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアクリル酸およびメタクリル酸エステル類、アクリロニトリル、スチレンなどを挙げることができる。これらを二種以上用いてもよい。
本発明に用いられる(C−1)α−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを共重合成分とするグリシジル基含有共重合体の好ましい例としては、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/アクリル酸グリシジル/酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。これらを二種以上用いてもよい。樹脂組成物から得られるインサート成形品の耐冷熱衝撃性がより向上する点から、上記グリシジル基含有共重合体はα−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを共重合成分とするグリシジル基含有二元共重合体であることが好ましく、具体的には、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体がより好ましい。
特に好ましいエチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体は、例えば、ARKEMAからロタダー(登録商標)AX8840という商品名で入手できる。
(C−2)エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンを共重合成分とする密度が870kg/m以下である未変性エチレン・αオレフィン系共重合体は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを共重合してなるものである。
(C−2)エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンを共重合成分とする密度が870kg/m以下である未変性エチレン・α−オレフィン共重合体の炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどが挙げられ、1−ブテンおよび1−オクテンが特に好ましい。
特に好ましい、エチレン/1−ブテン共重合体は、例えば、三井化学株式会社からタフマー(登録商標)A0550Sという商品名で入手できる。
また、(C−2)エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンを共重合成分とする密度が870kg/m以下である未変性エチレン・α−オレフィン共重合体は、ISO1133:1997に従った190℃、2160g荷重で測定したメルトフローレート(以下MFRと略す)が0.05g/10分以上1.0g/10分以下であることが好ましい。MFRを0.05g/10分以上とすることで、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の流動性がより向上し、1.0g/10分以下とすることで、インサート成形品とした際の耐冷熱衝撃性がより向上する。
前記(C−1)α−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを共重合成分とするグリシジル基含有共重合体および(C−2)エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンを共重合成分とする密度が870kg/m以下である未変性エチレン・αオレフィン系共重合体を配合する際の重量比(以下、(C−1)/(C−2)と略記することがある。)は、25/75以上75/25以下である。25/75以上の場合、成形品のウェルド強度、ウェルド部の耐ヒートサイクル性が向上し、75/25以下の場合、成形性、流動性の低下を抑制することができる。40/60以上がより好ましい。(C−1)α−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを共重合成分とするグリシジル基含有共重合体と(C−2)未変性エチレン・α−オレフィン共重合体を上記割合で配合することで、(C−2)成分を樹脂中へ微分散することが可能となり、得られる成形品の耐冷熱衝撃性が向上する。
本発明に用いられる(D)強化繊維としては、熱可塑性樹脂の強化に一般的に用いられる繊維状の材料をいずれも用いることができる。(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂に配合することで、成形品としたときの収縮を抑制し、低反り性を向上させることができる。
(D)強化繊維の具体例としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラストナイト、セピオライト、アスベスト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化硅素繊維およびホウ素繊維がなど挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。これらの中では、補強強化のより高いガラス繊維が好ましい。PBT樹脂組成物中における(D)強化繊維のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は5以上であることが好ましく、10以上であることがさらに好ましく、20以上であることがさらに好ましい。なお、樹脂組成物中における(D)強化繊維の平均繊維長は、以下の方法により測定することができる。PBT樹脂組成物からなるペレット10gを空気中において550℃で8時間加熱して樹脂成分を除去する。残存したガラス繊維を、光学式顕微鏡を用いて倍率120倍にて観察し、無作為に選択した1000個以上のガラス繊維の繊維長を測定する。平均繊維長は、ΣL/nで示される。ここで、Lとはガラス繊維1本の繊維長であり、nとは測定したガラス繊維の全本数である。測定したn本の繊維長の和を測定した本数nで除した値である。
また、(D)強化繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆または集束処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシランなどのカップリング剤などで処理されていてもよい。かかる予備処理が施されたガラス繊維としては、具体的には、アミノシラン(カップリング剤)/エポキシシラン(集束剤)で表面処理されているガラス繊維としては、例えば、日東紡社製CSF3PE941H、日本電気硝子社製ECS03T187などが市販されている。
本発明のPBT樹脂組成物は、(E)エチレンビスステアリルアミドを配合してなることが好ましい。(E)エチレンビスステアリルアミドは、通常は離型剤として用いるのが一般的であるが、(B)スチレン系共重合体に対して流動性改良効果を有することから、成形品のウェルド部における密着性を改良し、ウェルド強度を向上させることを可能とする。本発明において好ましい(E)エチレンビスステアリルアミドとしては、例えば、Palmamide社製PALMOWAX EBS−SFなどが市販されている。
本発明のPBT樹脂組成物における(B)ゴム成分が10〜30重量%のスチレン系共重合体の配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対して、18〜28重量部の範囲である。(B)ゴム成分が10〜30重量%のスチレン系共重合体の配合量が、18重量部未満であると、成形品の低反り性が低下する。一方、(B)ゴム成分が10〜30重量%のスチレン系共重合体の配合量が、28重量部を超えると、成形性、成形品のウェルド強度が悪化する。20〜26重量部がより好ましい。
本発明のPBT樹脂組成物における(C)変性エラストマを含むエラストマの配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対して、5〜14重量部の範囲である。(C)変性エラストマを含むエラストマの配合量が、5重量部未満であると、成形品のウェルド部の耐ヒートサイクル性が低下する。一方、(C)変性エラストマを含むエラストマの配合量が、14重量部を超えると、成形品のウェルド強度が低下する。7〜12重量部がより好ましい。
本発明のPBT樹脂組成物における(D)強化繊維の配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対して、30〜90重量部の範囲である。(D)強化繊維の配合量が、30重量部未満であると、成形品の低反り性が低下する。一方、(D)強化繊維の配合量が、90重量部を超えると、流動性、成形品ウェルド部の耐ヒートサイクル性が低下する。50〜60重量部がより好ましい。
本発明のPBT樹脂組成物における(E)エチレンビスステアリルアミドの配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対して、0.7〜1重量部の範囲である。(E)エチレンビスステアリルアミドの配合量を、0.7重量部以上とすることで、ウェルド密着性が向上し、成形品のウェルド強度が向上する。一方、(E)エチレンビスステアリルアミドの配合量が、1.5重量部以下とすることで、成形品表面へのブリードアウトおよび加熱時の発生ガス量を抑制することができるので、射出成形時に発生したガスがウェルド部に巻き込まれることで、成形品のウェルド強度が低下するようなことが起こらない。
なお、本発明のPBT樹脂組成物は、それを構成する各成分同士が反応した反応物を含むが、当該反応物はその構造を特定することが実際的でない事情が存在する。そのため、本発明は、各成分の配合量で発明を特定するものである。
本発明のPBT樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、安定剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤、良流動化剤などの各種添加剤を配合することができる。
本発明のPBT樹脂組成物は、前記(A)〜(D)成分および必要によりその他成分が均一に分散されていることが好ましい。本発明のPBT樹脂組成物の製造方法としては、例えば、単軸あるいは二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーあるいはミキシングロールなどの公知の溶融混練機を用いて、各成分を溶融混練する方法を挙げることができる。各成分は、予め一括して混合しておき、それから溶融混練してもよい。なお、各成分に含まれる水分は少ない方がよく、必要により予め乾燥しておくことが望ましい。
また、溶融混練機に各成分を投入する方法としては、例えば、単軸あるいは二軸の押出機を用い、スクリュー根元側に設置した主投入口から(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂、(B)スチレン系共重合体、(C)変性エラストマを含むエラストマおよび必要に応じてその他成分を供給し、スクリュー吐出口手前側に設置した副投入口から(D)強化繊維を供給し溶融混練する方法が挙げられる。
溶融混練温度は、流動性および機械特性により優れるという点で、200℃以上が好ましく、240℃以上がより好ましい。また、320℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましく、280℃以下がさらに好ましい。ここで溶融混練温度とは、溶融混練機の設定温度を指し、例えば二軸押出機の場合、シリンダ温度を指す。
本発明のPBT樹脂組成物は、公知の射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、紡糸などの任意の方法で成形することにより、各種成形部品に加工し利用することができる。射出成形時の温度は、流動性をより向上させる観点から230℃以上が好ましい。成形部品としては例えば、射出成形部品、押出成形部品、ブロー成形部品、フィルム、シート、繊維などが挙げられる。
本発明において、上記各種成形品は、自動車部材、電気・電子部材、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。特に、本発明のPBT樹脂組成物は、成形性、流動性に優れ、低反り性、ウェルド強度、ウェルド部の耐ヒートサイクル性に優れた成形品を得ることができるため、薄肉のウェルド部を有する成形品で、さらに耐ヒートサイクル性が要求される部品に好適に用いられる。
ここで言う「薄肉のウェルド部を有する成形品」とは、成形品の一部に厚み3mm以下のウェルド部を有するものであり、さらに金属部品がそのウェルド部に接するようにインサート成形されたものであっても良い。
本発明のPBT樹脂組成物を使用することで、低反り性、ウェルド強度、ウェルド部の耐ヒートサイクル性に優れる成形品を得ることができる。
薄肉のウェルド部を有する成形品としては、センサーカバー等の自動車部品、電気電子部品等が挙げられ、より具体的には、電子スロットルセンサ、ECUケース、吸気圧センサ、回転センサ等が挙げられる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。実施例、比較例で使用する原料の略号および内容を以下に示す。
(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂
(A−1)ポリブチレンテレフタレート樹脂:東レ(株)製“トレコン”(登録商標)1050M(商品名):イソフタル酸成分含有量 0mol%
(A−2)ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)共重合体:
テレフタル酸65.6重量部、イソフタル酸7.3重量部、1,4−ブタンジオール61.4重量部および触媒としてテトラブチルチタネート0.05重量部、モノブチルスズオキシド0.04重量部とを精留塔および撹拌機のついた反応缶に仕込み、常圧下にて150から235℃まで4時間かけて昇温し、エステル化反応をさせた。生成した水とテトラヒドロフランとを精留塔を通して留去してテトラヒドロフラン含有物を得た。次に得られたエステル化反応生成物に着色防止剤のリン酸0.02重量部と重縮合触媒のテトラブチルチタネート0.05重量部を加えた後、重縮合反応缶に移し、常圧から67Paまで50分かけて徐々に減圧し、同時に245℃まで昇温して、2時間50分重縮合反応を行い、イソフタル酸含有量が10mol%である共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂を得た。得られた共重合体の相対粘度は26dl/gであった。
(B)ゴム成分が10〜30重量%のスチレン系共重合体
(B−1)アクリロニトリル、スチレンおよびグリシジルメタクリレートを共重合してなる共重合体:アクリロニトリル、スチレンおよびグリシジルメタクリレートを懸濁重合しビーズ状のビニル系共重合体を調製した。アクリロニトリル/スチレン/グリシジルメタクリレートの各成分の重量比は25.5/74/0.5(重量%)である。
(B−2)アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体:ポリブタジエンラテックス(ゴム粒子径0.25μ、ゲル含率80%)60重量部(固定分換算)の存在下でスチレン70重量%、アクリロニトリル30重量%からなる単量体混合物40重量部を乳化重合した。得られたグラフト共重合体は硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和、洗浄、ろ過、乾燥してパウダー状のグラフト共重合体を調製した。共重合体中におけるブタジエン量は60重量%である。
(C)変性エラストマを含むエラストマ
(C−1−1)α−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを共重合成分とするグリシジル基含有共重合体:エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体(ARKEMA製“ロタダー”(登録商標)AX8840(商品名)、MFR:5g/10分(190℃、2.16kgf))
(C−1−2)エチレン/メチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体(ARKEMA製“ロタダー”(登録商標)AX8900(商品名)、MFR:6g/10分(190℃、2.16kgf))
(C−2−1)エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとからなる密度が870kg/m以下である未変性エチレン・α−オレフィン共重合体:エチレン/1−ブテン共重合体(三井化学株式会社製“タフマー”(登録商標)A0550S(商品名)、MFR:0.5g/10分(190℃、2.16kgf))、密度:861kg/m
(C−2−2)エチレンとアクリルとからなる密度が930kg/mである未変性エチレン・アクリル系共重合体:エチレン/ブチルアクリレート共重合体(ARKEMA製“ロトリル”(登録商標)35BA40(商品名)、MFR:40g/10分(190℃、2.16kgf))、密度:930kg/m
(D)強化繊維:日本電気硝子製、ガラス繊維 ECS03T187(商品名)
(E)エチレンビスステアリルアミド:Palmamide製“PALMOWAX”(登録商標)EBS−SF(商品名)
実施例および比較例における評価方法を以下にまとめて示す。
(1)成形性
日精樹脂工業射出成形機“PS40”を用い、シリンダ温度260℃、金型温度80℃、冷却時間10秒の成形条件で、図1および2に記載の開口部を有する小箱成形品(幅30mm×奥行き30mm×高さ30mm、厚み1.5mm)を側面のピンゲートから成形した。成形時において、流動性が悪く充填不可能なものや、あるいは充填した後の成形品突き出し時に試験片が変形したり、突き出し箇所が大きく挫屈するようなものを成形性不良として表中「×」で示した。充填後、成形品突出し時に変形が起こらないものは「○」で示した。
(2)流動性
日精樹脂工業射出成形機“PS40”を用い、各実施例および比較例で得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を、厚み1mm、幅10mmの短冊型に8秒間射出し、得られた短冊型成形品の長さ(バーフロー流動長)を測定した。射出条件は、シリンダ温度260℃、金型温度80℃、射出圧力63MPaで実施した。流動長が100mm以上であれば、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の流動性は良好と判断した。
(3)低反り性
日精樹脂工業射出成形機“PS40”を用い、シリンダ温度260℃、金型温度80℃、冷却時間10秒の成形条件で、図1および2に記載の開口部を有する小箱成形品(幅30mm×奥行き30mm×高さ30mm、厚み1.5mm)を側面のピンゲートから成形した。23%×50%RH雰囲気下で24時間放置した後、ミツトヨ製3次元寸法測定機(CRYSTA−Apex S776)を使用しその側面の反ゲート側の内側への面の倒れ量を測定し、成形品各10個の平均値を反り量とした。反り量の値が小さいほど低反り性に優れ、成形品の反り量が0.45mm以下であれば、低反り性は良好と判断した。
(4)ウェルド強度
日精樹脂工業射出成形機“PS40”を用いて、2点サイドゲートにて、ASTM1号ウェルドダンベルを5本作製した。射出条件は、シリンダ温度260℃、金型温度80℃、射出時間10秒、冷却時間10秒、射出圧力は各樹脂組成物の充填下限圧力+10MPaで実施した。得られた試験片の引張強度をASTM−D−638に準拠して測定した。試験片の引張強度が40MPa以上であれば、ウェルド強度は良好と判断した。
(5)ウェルド部の耐ヒートサイクル性
日精樹脂工業射出成形機“PS40”を用い、シリンダ温度260℃、金型温度80℃、射出時間10秒、冷却時間10秒、射出圧力は各樹脂組成物の充填下限圧力+10MPaの成形条件で、図3および4に記載のウェルド部を有する金属インサート成形品(縦53mm×横38mm×高さ8mm、モールド厚み1.5mm)を側面のピンゲートから成形した。得られた成形品を23%×50%RH雰囲気下で24時間放置した後、タバイエスペック製冷熱衝撃試験機(TSV−40st)内に入れ、−40℃×1時間保持(降温時間含む)⇔130℃×1時間保持(昇温時間含む)の条件を1サイクルとして稼動させ、目視確認にて成形品のウェルド部にてクラックが発生するまでのサイクル数を評価した。クラックが発生するまでのサイクル数が10サイクル以上であれば、成形品ウェルド部の耐ヒートサイクル性は良好と判断した。
[実施例1〜28]
表1および2に示す配合組成に従い、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(E)成分をシリンダ温度250℃に設定したスクリュー径37mmφの二軸押出機(東芝機械製TEM37)の元込め部から、(D)成分についてはサイドから供給し、溶融混練を行った。ダイスから吐出されたストランドを冷却バス内で冷却した後、ストランドカッターにてペレット化し、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を得た。得られたPBT樹脂組成物について、上記方法で評価した結果を表1および2に記した。
得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、いずれも成形性、流動性に優れ、低反り性、ウェルド強度、ウェルド部の耐ヒートサイクル性に優れた成形品を得ることができた。実施例1〜4に示すように、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂を構成する全ジカルボン酸成分中のイソフタル酸成分含有率が多いほど、成形品のウェルド強度、ウェルド部の耐ヒートサイクル性が向上した。
実施例5〜8に示すように、(B)ゴム成分が10〜30重量%のスチレン系共重合体の配合量が多いほど、成形品の低反り性が向上した。実施例9〜14に示すように、(B)スチレン系共重合体のゴム成分量が多いほど、(C)変性エラストマを含むエラストマの配合量が多いほど、成形品ウェルド部の耐ヒートサイクル性が向上した。実施例15に示すように、(C)変性エラストマを含むエラストマに、(C−1−2)エチレン/メチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体と(C−2−2)エチレンとアクリルとからなる密度が930kg/mである未変性エチレン・アクリル系共重合体を用いた場合は、(C−1)α−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを共重合成分とするグリシジル基含有共重合体と(C−2−1)エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとからなる密度が870kg/m以下である未変性エチレン・αオレフィン系共重合体を用いた場合には劣るものの成形品ウェルド部の耐ヒートサイクル性は良好であった。
実施例16〜19に示すように、(C−1)α−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを共重合成分とするグリシジル基含有共重合体と(C−2−1)エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとからなる密度が870kg/m以下である未変性エチレン・αオレフィン系共重合体の配合の重量比(C−1)/(C−2)において、(C−1)の割合が高くなるほど、成形品のウェルド強度、ウェルド部の耐ヒートサイクル性が向上した。さらに実施例17、18に示すように、(C−1)α−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを共重合成分とするグリシジル基含有共重合体と(C−2−1)エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとからなる密度が870kg/m以下である未変性エチレン・αオレフィン系共重合体の配合の重量比(C−1)/(C−2)が25/75以上、75/25以下である場合には、流動性と成形品の低反り性、ウェルド強度、ウェルド部の耐ヒートサイクル性のバランスが良好であった。
実施例20〜23に示すように、(D)強化繊維の配合量が多いほど、成形品のそり量が小さくなり低反り性が向上した。実施例24〜27に示すように、(E)エチレンビスステアリルアミドの配合量が多いほど、流動性が向上した。さらに実施例25、26に示すように、(E)エチレンビスステアリルアミドの配合量が0.7〜1.5重量部の範囲である場合には、その配合量が多いほど、成形品のウェルド強度、ウェルド部の耐ヒートサイクル性が向上した。実施例28の組成となるように配合した場合は、成形性、流動性、成形品の低反り性、ウェルド強度、ウェルド部の耐ヒートサイクル性のバランスが最も優れたものであった。
[比較例1〜10]
表3に示す配合組成に変更した以外は実施例1〜28と同様にして、PBT樹脂組成物のペレットを得た。
比較例1、2に示すように、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂を構成する全ジカルボン酸成分中のイソフタル酸成分含有率が5mol%を超えると、成形性が低下した。一方、イソフタル酸成分含有率が2.5mol%未満であると、成形品のウェルド強度、ウェルド部の耐ヒートサイクル性が低下した。比較例3、4に示すように、(B)ゴム成分が10〜30重量%のスチレン系共重合体の配合量が28重量部を超えると、成形性、成形品のウェルド強度が低下した。一方、(B)スチレン系共重合体の配合量が18重量部未満であると、成形品の低反り性が低下した。比較例5、6に示すように、(B)スチレン系共重合体のゴム成分量が30重量%を超えると、成形品の低反り性、ウェルド強度が低下した。一方、(B)スチレン系共重合体のゴム成分量が10重量%未満であると、成形品ウェルド部の耐ヒートサイクル性が低下した。比較例7、8に示すように、(C)変性エラストマを含むエラストマの配合量が14重量部を超えると、成形品のウェルド強度が低下した。一方、(C)変性エラストマを含むエラストマの配合量が5重量部未満であると、成形品ウェルド部の耐ヒートサイクル性が低下した。比較例9、10に示すように(D)強化繊維の配合量が90重量部を超えると、流動性、成形品ウェルド部の耐ヒートサイクル性が低下した。一方、(D)強化繊維の配合量が30重量部未満であると、成形品の低反り性が低下した。
a.スプルー/ランナー
b.反り量評価用小箱
c.ゲート
d.反り量
e.スプルー/ランナー
f.ウェルド部の耐ヒートサイクル性評価用成形品(表面)
g.ウェルド部の耐ヒートサイクル性評価用成形品(裏面)
h.インサート金属部品
i.ウェルド(破線)
j.ゲート

Claims (6)

  1. (A)全ジカルボン酸成分中のイソフタル酸成分含有率が2.5〜5mol%である、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)共重合体を含むポリブチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対し、(B)ゴム成分が10〜30重量%のスチレン系共重合体18〜28重量部、(C)変性エラストマを含むエラストマ5〜14重量部、および(D)強化繊維30〜90重量部を配合してなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  2. 前記(B)ゴム成分が10〜30重量%のスチレン系共重合体が(B−1)アクリロニトリル、スチレンおよびグリシジルメタクリレートを共重合してなる共重合体、および(B−2)ゴム成分を含むスチレン系樹脂を含む請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  3. 前記(C)エラストマが(C−1)αオレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを共重合成分とするグリシジル基含有共重合体、および(C−2)エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンを共重合成分とする密度が870kg/m以下である未変性エチレン・αオレフィン系共重合体を含み、前記(C−1)αオレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを共重合成分とするグリシジル基含有共重合体および前記(C−2)エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンを共重合成分とする密度が870kg/m以下である未変性エチレン・αオレフィン系共重合体の配合比((C−1)/(C−2))が、重量比で25/75以上75/25以下である請求項1または2に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  4. さらに前記(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対し、(E)エチレンビスステアリルアミドを0.7〜1.5重量部配合してなる請求項1から3のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品。
  6. 厚み3mm以下のウェルド部を有する請求項5に記載の成形品。
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