JP2019037151A - 細胞集合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、容易に回収可能な細胞集合体を形成することができる細胞集合体の製造方法を提供することである。【解決手段】本発明は、細胞を細胞培養容器に播種して細胞集合体を製造する方法であって、細胞培養容器11は、多数の突起12から構成される微細な突起群が設けられた培養面を有し、細胞充填率が100%以上となるように細胞Cを前記培養面上に播種する工程、及び播種した細胞Cを培養して細胞集合体Sを形成する工程を含むことを特徴とする。【選択図】図5
Description
本開示の実施形態は、細胞集合体の製造方法に関する。
再生医療技術の一つとして、細胞を移植する手法がある。移植のための細胞の形態としては、細胞をシート状に培養して得られる細胞シートが挙げられる。細胞シートは、細胞間結合で細胞同士が連結されたシート状の細胞集合体である。また、細胞シートはシャーレ等の支持体上で細胞培養を行うことにより形成することができる。
例えば、特許文献1では、温度応答性ポリマーによって表面が修飾された培養基材上で細胞を培養し、形成された細胞シートを低温処理によって剥離する細胞シートの製造方法が開示されている。一般的に、基材上で形成された細胞シートは接着分子等を介して基材表面と強固に結合しているため、細胞間の結合を壊さずに基材から細胞シートを剥離することは容易ではない。しかし、特許文献1に記載の方法によると、基材上に形成された細胞シートに対して酵素処理を行わずに、温度の調節によって細胞シートを回収し得るとされている。
また一方で、特許文献2には、血清要求性の細胞種を用いてシート状の細胞培養物を得る方法が開示されている。特許文献2に記載の方法は、血清で被覆された培養基材上に細胞を播種する工程、及び細胞を培養してシート状の細胞培養物を形成する工程を含む。特許文献2の方法によると、臨床への適用に障害となり得る製造工程由来の不純物成分を含まない良質な細胞培養物を回収し得るとされている。
一般的に、細胞シート等の細胞集合体の製造に用いられる培養容器における培養面は、細胞が接着して伸展し易い基材が用いられるため、基材上で形成された細胞集合体は接着分子等を介して基材表面と強固に結合している。そこで、上述のように、特許文献1では、温度応答性ポリマーを用いて培養基材の培養面を修飾し、温度の調節によって細胞シートを回収している。しかし、特許文献1に記載の方法では、温度応答性ポリマーを基材表面に被覆する工程が必要となるため、製造コストが高くなる。また、当該方法は低温処理工程を必要とするため、工程が煩雑である。さらに、温度応答性ポリマーとして用いられるポリN−イソプロピルアクリルアミドのモノマーには神経毒性があり、基材上にモノマーが残存する可能性や、温度応答性ポリマーの一部が細胞シート中へ取り込まれる可能性がある。
また、特許文献2では、細胞シートと基材表面との接着については特に考慮されておらず、特許文献2に記載の方法は、シート状細胞培養物を回収するために、温度や光等の刺激応答性材料で表面が処理された基材を利用すること及び/又は酵素処理を用いることが前提とされている。そのため、特許文献2に記載の方法では、細胞シートの製造工程が煩雑となる。
そこで、本開示の実施形態は、容易に回収可能な細胞集合体を形成することができる細胞集合体の製造方法を提供することを目的とする。すなわち、本開示の実施形態は、温度処理や酵素処理等の特段の処理を施さなくとも容易に回収可能な細胞集合体を形成することができる細胞集合体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、微細な突起群が設けられた培養面を有する細胞培養容器を用い、かつ細胞充填率が100%以上となるように細胞を培養面上に播種することにより、容易に回収可能な細胞集合体を形成できることを見出し、本発明を完成した。
本発明の態様は、以下の通りに記載することができる。
(1)細胞を細胞培養容器に播種して細胞集合体を製造する方法であって、
前記細胞培養容器は、微細な突起群が設けられた培養面を有し、
細胞充填率が100%以上となるように前記細胞を前記培養面上に播種する工程、及び播種した前記細胞を培養して前記細胞集合体を形成する工程を含む、細胞集合体の製造方法。
(2)前記突起群が、規則的に配列した突起からなる、上記(1)に記載の細胞集合体の製造方法。
(3)前記突起群を構成する突起が、先鋭形状の端部を有する突起である、上記(1)又は(2)に記載の細胞集合体の製造方法。
(4)前記先鋭形状の端部を有する突起が、少なくとも端部が錐形状の突起である、上記(3)に記載の細胞集合体の製造方法。
(5)前記突起群を構成する突起の直径が500nm以上5μm以下であり、高さが300nm以上5μm以下であり、前記突起間のピッチが500nm以上10μm以下である、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の細胞集合体の製造方法。
(6)前記培養面を構成する基材が、ポリジメチルシロキサンである、上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の細胞集合体の製造方法。
(7)形成された前記細胞集合体が、前記培養面から自然に剥離している、上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の細胞集合体の製造方法。
(1)細胞を細胞培養容器に播種して細胞集合体を製造する方法であって、
前記細胞培養容器は、微細な突起群が設けられた培養面を有し、
細胞充填率が100%以上となるように前記細胞を前記培養面上に播種する工程、及び播種した前記細胞を培養して前記細胞集合体を形成する工程を含む、細胞集合体の製造方法。
(2)前記突起群が、規則的に配列した突起からなる、上記(1)に記載の細胞集合体の製造方法。
(3)前記突起群を構成する突起が、先鋭形状の端部を有する突起である、上記(1)又は(2)に記載の細胞集合体の製造方法。
(4)前記先鋭形状の端部を有する突起が、少なくとも端部が錐形状の突起である、上記(3)に記載の細胞集合体の製造方法。
(5)前記突起群を構成する突起の直径が500nm以上5μm以下であり、高さが300nm以上5μm以下であり、前記突起間のピッチが500nm以上10μm以下である、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の細胞集合体の製造方法。
(6)前記培養面を構成する基材が、ポリジメチルシロキサンである、上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の細胞集合体の製造方法。
(7)形成された前記細胞集合体が、前記培養面から自然に剥離している、上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の細胞集合体の製造方法。
本開示によれば、温度処理や酵素処理等の特段の処理を施さなくとも容易に細胞集合体を形成し回収することができる細胞集合体の製造方法が提供される。
本開示の実施形態は、細胞を細胞培養容器に播種して細胞集合体を製造する方法である。また、本開示の実施形態において、前記細胞培養容器が、微細な突起群が設けられた培養面を有する。さらに、本開示の実施形態は、所定の細胞充填率が100%以上となるように前記細胞を前記培養面上に播種する工程、及び播種した前記細胞を培養して前記細胞集合体を形成する工程を含む。本開示の実施形態の製造方法により、容易に回収可能な細胞集合体を形成することができる。
本発明の一実施形態は、細胞を細胞培養容器に播種して細胞集合体を製造する方法であって、前記細胞培養容器が、微細な突起群が設けられた培養面を有し、細胞充填率が100%以上となるように前記細胞を前記培養面上に播種する工程、及び播種した前記細胞を培養して前記細胞集合体を形成する工程を含む、細胞集合体の製造方法である。
本実施形態において、微細な突起群が設けられた培養面を備える細胞培養容器を用いる。本明細書では、細胞培養容器の内部において、細胞が播種されて細胞集合体が形成される面を「培養面」と称す。ここで「突起群」とは、多数の突起が培養面の面上方へ向かって密集して形成されている状態をいう。また、「微細」とは、培養面に播種される細胞が突起に接触した場合に、個々の細胞にとって突起構造であることが認識されるような突起の直径、高さ、及び突起間の距離(ピッチ)を有していることを意味し、例えば、一つの突起の上面の直径が、細胞の直径よりも広い場合や、突起間の間隙に細胞全体が落ち込み、細胞と突起の上面とが接触しない場合を除く趣旨である。
本実施形態において、細胞充填率が100%以上となるように細胞を培養面上に播種する。細胞充填率(%)は、式:[(細胞断面積×播種細胞数/培養面面積)×100]で表される。細胞断面積とは、液中に存在する接着していない細胞(浮遊している細胞)における最大断面積(細胞の断面のうち面積が最大となる断面の断面積)である。通常、細胞は液中で球状であるため、細胞断面積は、一般的に、細胞の中心を通る断面の面積である。細胞充填率の測定において使用する液は、好ましくは細胞集合体の製造(培養工程)に用いる培養液である。細胞の直径は、液中の細胞を顕微鏡で観察することにより測定することができる。同一種類の各細胞は、液中においてほぼ同じ径を有するため、複数の細胞の径を測定する必要はないが、好ましくは10〜100個の細胞の平均径を用いて細胞断面積を算出する。また、培養面面積は、突起の周面を含む培養面の全表面積ではなく、培養面全体を上から見たときの平面視面積をいう。以下の表に、例として、細胞の直径と細胞充填率が100%となる細胞播種密度との関係を示す。
本実施形態における細胞の播種密度は、従来の一般的な細胞集合体の形成方法における播種密度よりも大きい。従来の一般的な方法では、細胞を培養面に播種して細胞を培養面に接着させた後、培養により細胞を増殖させ、コンフルエントに到達させる(なお、本明細書において、「コンフルエント」とは、細胞が培養面を覆った状態をいう)。しかし、この方法では、培養面と細胞シートとの接着が強いため、細胞シートの剥離には酵素処理や温度処理等が必要となる。一方、本実施形態では、細胞充填率が100%以上となるように細胞を微細な突起群が設けられた培養面上に播種する。この細胞充填率は、播種した際に、すでにコンフルエントに到達する播種密度である。本実施形態では、このような高い播種密度で微細な突起群が設けられた培養面上に細胞を播種することにより、細胞同士の接着が進んで細胞集合体を形成できることを見出した。このような条件で細胞を培養した場合、細胞と培養面との接着よりも細胞同士の接着が進むため、細胞集合体と培養面との間の接着力が弱くなる。したがって、得られる細胞集合体は、温度処理や酵素処理等の特段の処理を施さなくとも容易に回収することができる。細胞と培養面との接着よりも細胞同士の接着が進む理由は、以下のように推測される。まず、微細な突起群が設けられた培養面上では細胞に対して個々の突起の一部(例えば、上面のみ)が接触し、細胞と培養面との接触面積が小さくなるため細胞の培養面への接着性が低くなり、細胞の伸展及び増殖が抑制される傾向がある。そして、高い播種密度で細胞を培養面上に播種しているため、細胞間組織の形成を促進することができる。その結果、細胞と培養面との接着よりも細胞同士の接着が進んで細胞集合体が形成されるものと推測される。なお、このような推測は、本発明を限定するものではない。
細胞充填率は、好ましくは、130%以上であり、より好ましくは150%以上であり、さらに好ましくは200%以上である。細胞充填率を大きくすれば、厚みの増加した及び/又は大きいサイズの細胞集合体又は強度に優れた細胞集合体が得られ易くなる。また、細胞充填率の上限は、特に制限されるものではないが、細胞充填率を大きくし過ぎると、細胞集合体の内側に存在する細胞に酸素もしくは栄養等を供給し難くなる場合がある。このような観点から、細胞充填率は、好ましくは1000%以下であり、より好ましくは800%以下であり、さらに好ましくは600%以下である。
得られる細胞集合体は、培養面に接着していても、接着していなくても良い。細胞集合体が培養面に接着していても、その培養面への接着力は弱いため、例えば、細胞集合体に意図的な揺動やピペッティングによって水流を与えることにより、細胞集合体を培養面から容易に剥離することができる。また、ピンセット等の器具を用いて細胞集合体の端部を摘まんで容易に剥離することもできる。ピペッティング操作により溶液とともに吸いこむことも可能である。回収に用いる器具や機材は、細胞集合体の形状や用途に合わせて適宜選択することができる。また、本実施形態において、一つの培養面上に一つの細胞集合体が得られることが好ましい。また、得られる細胞集合体は、隙間なく細胞同士が接着及び/又は凝集化した構造を有することが好ましい。また、本実施形態においては、形成された細胞集合体が自然に培養面から剥離する。「自然に培養面から剥離する」とは、形成された細胞集合体が、静置状態で何の操作もせずあるいは培養時の容器の振とうにより生じる水流によって細胞集合体が培養面から剥がれることをいう。これは、細胞の培養により細胞間組織の形成が進むに従って、細胞間に働く収縮力が細胞集合体と培養面との間の接着力よりも強くなり、細胞集合体が培養面から自然に剥離するためと考えられる。そのため、本発明の好ましい実施形態によれば、損傷が極めて少ない細胞集合体を得ることができる。
また、本実施形態に係る細胞集合体の製造方法は、得られる細胞集合体を容易に回収することができる利点以外にも、細胞の細胞充填率を増やすことで、厚みの増した及び/又は大きいサイズの細胞集合体及び/又は強度に優れた細胞集合体を容易に作製することができる利点を有する。そのため、従来のように、使用前に複数の細胞シートを重ね合わせて積層体を作製する作業も不要となる。
細胞集合体は、細胞間を接着する細胞外マトリクスを細胞が形成することによって形成される。細胞集合体の形状は、特に制限されるものではなく、例えば、シート状、ファイバー状、リング状等が挙げられる。例えば、ファイバー状の細胞集合体を、所定の径を有する棒の外周面に巻くことにより、チューブ状の細胞集合体を形成することができる。また、リング状の細胞集合体を重ねることによってもチューブ状の細胞集合体を形成することもできる。チューブ状の細胞集合体は、移植用血管組織に使用することも考え得る。
細胞培養容器の形状は、特に制限されるものではない。細胞培養容器の形状は、ディッシュ型、プレート型又はフラスコ型等の当該技術分野で通常使用される形状であり得る。突起群は、培養面となる細胞培養容器の底部表面の全体に設けられていても良いし、底部表面の一部に設けられていても良いが、底部表面の全体に設けられることが好ましい。なお、容器の形状及び培養面の形状は、所望の細胞集合体の形状を考慮して適宜選択することができる。
培養面を構成する基材(培養面構成基材とも称す)の材料は、特に制限されるものではなく、例えば、ガラス又はプラスチックを用いることができる。プラスチックとしては、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、環状ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、シリコン樹脂、又はアクリル樹脂が挙げられる。これらのうち、汎用性の観点から、ガラス又はポリスチレンが好ましい。特に、ポリジメチルシロキサン(PDMS)は、材料自体が低細胞接着性を有する傾向があり、突起群と相まって細胞と培養面との接着性を低減することができ、また、酸素透過性及び細胞毒性の点で優れているため、好ましい。アクリル樹脂としては、汎用性の観点から、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が好ましい。ポリメチルメタクリレートは、PEG、PAA、MPCポリマー、pHEMA(ポリヒドロキシエチルメタクリレート)による表面修飾により、表面を低細胞接着性とすることができる。また、培養面構成基材の材料は、細胞の種類を考慮して、適宜選択することができる。
本実施形態で用いられる細胞培養容器の構成について、図1を参照して説明する。図1は、ディッシュ型の形態を有する本実施形態における細胞培養容器の構成例を示す断面図である。図1(A)に示される細胞培養容器は、プラスチック等の基材から構成されるディッシュ型の容器1を有し、該容器1の底面(培養面)2には、多数の突起10から構成される突起群が設けられている。図1(B)に示される細胞培養容器は、プラスチック等の基材から構成されるディッシュ型の容器1の底面上に、培養面2を構成する培養面構成基材3が配置されており、培養面2に、多数の突起10から構成される突起群が設けられている。図1(C)に示される細胞培養容器は、プラスチック等の基材から構成される側壁(円筒状部材)4に、培養面2を構成する培養面構成基材3が配置され、培養面2には多数の突起10から構成される突起群が設けられている。容器の形状は、特に制限されるものではないが、例えば、シャーレ、フラスコ、ビーカー、ウェルプレート等の形状であり得る。細胞培養容器の内部空間(培養部)には培養液が配置される。また、図1には図示していないが、細胞培養容器は、適切な大きさの蓋を有することができる。細胞培養容器は、該蓋で閉じられた際に、液密になることが好ましい。
図2に示される細胞培養容器は、図1(B)に示す細胞培養容器において、培養面構成基材3の表面のうち培養面2と反対側の面に通じる開口5が容器1に形成されているものに相当する。このような細胞培養容器を用いることにより、培養面構成基材3における培養面2と反対側の表面から酸素を供給しながら細胞を培養することができる。そのため、細胞を効率良く培養することができ、細胞の生存率を向上することができる。図2に示される形態において、培養面構成基材3はPDMSであることが好ましい。
個々の突起10の形状は、特に限定されるものではなく、突起の上面のみ、あるいは突起の上面とその近傍が細胞に接触するような形状であれば適用可能である。例えば、三角錐、四角錘等の多角錘、円錐等の錘形状、多角柱、円柱等の柱形状、錘台形状、針状、棒状、半球状、紡錘形状、不定形状等が挙げられる。あるいは、培養面上に、多数の畝状の突起を配列させることで突起群を構成しても良い。その中でも、先鋭形状の端部を有する突起であることが好ましい。ここで「先鋭形状の端部を有する」とは、培養面と平行な面に沿って切断した突起の断面積が、突起の上端に向かうにつれて小さくなり、突起の上端部において断面積が理論的に0(実際には微小な面積を有する場合も含む)となる状態をいい、具体的には、少なくとも端部が錐形状の突起、針状の突起、長手方向に垂直な断面の形状が三角形である畝状の突起等が該当する。先鋭形状の端部を有することにより、突起と細胞との間が点接触あるいは線接触となり接触面積が最小になって培養面と細胞との接着性が低くなるため好ましい。
図3は、突起群を構成する突起10の一実施形態を示す拡大断面図である。図3の突起10は錘形状であり、この場合、突起10の頂点のみ(あるいは頂点とその近傍)が細胞と接触し、接触面積は非常に小さくなる。個々の突起10の直径d、高さh、及び突起間のピッチPの値は特に限定されるものではなく、培養する細胞の種類等に応じて適宜設定することができる。しかし、直径dが大き過ぎると細胞に対して突起として接触せず、細胞と突起の接触面積が大きくなって所期の効果が得られない虞がある。また、高さhが小さ過ぎると細胞が突起の上面のみならず突起間の平面部分にも接触する可能性があるため好ましくない。さらに、ピッチPは、大き過ぎると細胞が突起間に入り込み、突起間の面に対して細胞が接着するため不適であり、逆に小さ過ぎる場合は細胞にとって実質的に平面として認識され、接着性の低減という所期の効果が得られないため、これらのバランスを考慮して適宜設定することができる。具体的には、細胞一個の直径が数μm以上30μm以下、好ましくは数μm以上20μm以下、より好ましくは数μm以上10μm以下程度であることを考慮すると、突起群を構成する突起の直径dは500nm以上5μm以下の範囲であり、高さhは300nm以上5μm以下の範囲であり、突起間のピッチPは500nm以上10μm以下の範囲であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。なお、上記の好ましい範囲は、錘形状のみならず、錘台形状や針状等のその他の形状を有する突起においても同様である。ここで直径dとは、突起の底面に外接する正方形の一辺の長さをいい、ピッチPは、平面視において隣接する突起の中心間の距離をいう。畝状の突起の場合は、直径dとは畝の長手方向ではなく幅方向に沿った長さをいい、ピッチPは隣接する畝同士の中心線間の距離をいう。
図4は、突起群を構成する突起10の別の実施形態を示す拡大断面図である。突起の頂点のみ(あるいは頂点とその近傍)を細胞と接触させ、細胞との接触面積を最小にするためには、少なくとも端部が錐形状の突起であれば良く、図3に示すような突起10の全体が錐形状である場合や、図4に示すような、突起10の端部10aのみが錐形状であり、それ以外の基部10bは別の形状である場合も適用可能である。すなわち、図4の突起10は、基部10bが棒状(柱状)であり、基部10bの上方に位置する端部10aが錐形状に構成されている。図4に示す突起10は、端部が錐形状であるため、図3に示す実施形態と同様に、細胞との接触面積を最小限にすることができる。また、図3に示す錐形状の突起10では、対象細胞の種類に応じて突起間のピッチPをより狭くしようとした場合、錐形状の頂角にもよるが、突起10の高さhも同時に低くせざるを得ず、培養面が平面(フラットな面)に近くなってしまう虞がある。一方、図4に示すような、端部10aのみが錐形状であり基部10bが棒状である突起10の場合、突起10の高さhを所定の高さに維持しながら、突起間のピッチPを極限まで狭くすることができ、突起の設計の自由度が向上し、より広範囲の細胞種の培養に対して適用可能となる。
突起群は、規則的に配列した突起から構成しても良いし、培養面上に変則的あるいはランダムに配置された突起から構成しても良い。ここで「規則的」とは、培養面上に、実質的に同一形状の突起を、実質的に同一の直径、高さ及びピッチで配列させることをいう。突起を規則的に配列させる方が、培養面と細胞との接着力が均一となり、結果として均質な細胞シートが回収され易いため好ましい。また「変則的」とは、培養面上の位置によって、上記の突起形状、突起の直径、高さ、及び突起間のピッチの一以上が変化する状態をいう。例えば、上述のように突起の直径d、高さh、突起間のピッチPには好ましい範囲が存在するが、これに限定されることなく、培養面上の一部において上記範囲外となる直径d、高さhあるいはピッチPを有していても良い。このような場合であっても、細胞の培養により細胞間組織の形成が進むに従って、細胞間に働く力が支配的となるため、培養面と細胞との接着力に若干の不均一さを生じたとしてもそれに影響されずに細胞シートを回収することができる。
培養面上の微細な突起群は、当業者に従来知られた各種手法を適宜採用して形成することができる。具体例として、3次元プリンタにより造形する方法、電子線描画法やフォトリソグラフィ法を用いてレジストパターンを形成し、エッチング加工を施して得られた突起群構造体をそのまま培養面構成基材として利用する方法、上記の突起群構造体を鋳型として樹脂を成形し突起群が設けられた樹脂製の培養面構成基材を作製する方法、機械切削による方法、めっき(陽極酸化により作製した凹凸パターンに金属めっきを行う電鋳等)による方法、サンドブラスト等のブラストによる方法、リソグラフィー技術を用いた造形方法、光造形の方法、スクリーン印刷による方法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
なお、図3及び図4に示すような突起10の直径dは、電子顕微鏡、光学顕微鏡、光干渉計、レーザー顕微鏡、又は段差計を用いて測定することができる。具体的には、各種の顕微鏡もしくは光干渉計を用いて培養面の複数領域(好ましくは3箇所以上の領域)を観察し、あるいは段差計で複数箇所(好ましくは3箇所以上)を測定し、その際に一つの領域もしくは測定箇所に少なくとも3個の突起が含まれるように設定する。少なくとも3個の突起を含むようにすることが難しい場合は、観察する領域数又は測定する箇所を増やして対応する(例えば10箇所)。観察したそれぞれの領域又は測定箇所において、突起の直径を複数点(好ましくは3点以上)測定し、全測定値から算出される平均値をもって直径dとすることができる。
また、突起10の高さhは、電子顕微鏡、光干渉計、レーザー顕微鏡、又は段差計を用いて測定することができる。具体的には、ミクロトーム等の切片作製装置を用いて培養面の断面を切り出し、得られた断面における複数領域(好ましくは3箇所以上の領域)を電子顕微鏡によって観察する。そして、観察したそれぞれの領域において、突起の高さを複数点(好ましくは3点以上)測定し、全測定値から算出される平均値をもって高さhを求めることができる。あるいは、培養面の複数領域(好ましくは3箇所以上の領域)を光干渉計もしくはレーザー顕微鏡によって観察し、観察したそれぞれの領域において、突起の高さを複数点(好ましくは3点以上)測定し、全測定値から算出される平均値をもって高さhとすることができる。別法として、まず、段差計を用いて培養面の複数箇所(好ましくは3箇所以上)を測定する。その際、一箇所の測定において、少なくとも3個の突起の凹凸が含まれるように設定する。少なくとも3個を含ませることが難しい場合は、測定する箇所を増やして対応する(例えば10箇所)。測定したそれぞれの箇所において、突起の高さを複数点(好ましくは3点以上)測定し、全測定値から算出される平均値をもって高さhとすることができる。
さらに、突起10間のピッチPは、電子顕微鏡、光学顕微鏡、光干渉計、レーザー顕微鏡、又は段差計を用いて測定することができる。具体的には、各種の顕微鏡もしくは光干渉計を用いて培養面の複数領域(好ましくは3箇所以上の領域)を観察し、あるいは段差計で複数箇所(好ましくは3箇所以上)を測定し、その際に一つの領域もしくは測定箇所に少なくとも3個の突起が含まれるように設定する。少なくとも3個の突起を含むようにすることが難しい場合は、観察する領域数又は測定する箇所を増やして対応する(例えば10箇所)。観察したそれぞれの領域又は測定箇所において、突起の中心間の距離を複数点(好ましくは3点以上)測定し、全測定値から算出される平均値をもってピッチPとすることができる。突起の中心間の距離は、一つの突起に対して、最近接の突起との間の中心間距離を採用するものとする。
図5は、本実施形態の細胞集合体の製造工程を説明するための概念図である。図5に示すように、細胞培養容器11は、多数の突起12から構成される突起群が設けられた培養面を有している。まず、図5(A)に示すように、細胞培養容器11中に対象細胞Cを培養液Bとともに所定の細胞充填率(100%以上)となるように播種する。播種された細胞Cは培養面に沈降する(図5(B))。その後、細胞を培養することにより、細胞集合体Sを形成させる(図5(C))。本実施形態で得られる細胞集合体Sは、突起12の影響により培養面に対する接着力が弱く、容易に回収することができる。また、好ましい実施形態においては、図5(C)に示すように、形成された細胞集合体Sの少なくとも一部(好ましくは細胞集合体全体)が培養面から自然に剥離する。
微細な突起群が設けられた培養面は、反射光が突起群によって干渉され、干渉縞を生ずる。干渉縞の色や縞間隔は、突起の直径、高さ及び突起間のピッチを反映しており、干渉縞を目視で観察することによって突起群の状態を確認することができる。例えば、干渉縞の色や縞間隔の乱れから、突起群における欠陥の有無の判別、あるいは欠陥部位の特定を行うことができる。また、干渉縞の色や縞間隔の違いによって、どの対象細胞種を培養するための培養面であるかを特定し易くなる。さらに、例えば、図1(C)に示すように、培養面構成用基材3を作製し、別途用意した円筒状部材4と組み合わせて細胞培養基材を構成する場合、干渉縞によって突起群が設けられた側が容易に視認できるので、円筒状部材4に対して組み合わせる培養面構成用基材3の表裏を間違えることがない。
細胞の培養時間は、特に制限されるものではなく、細胞集合体が形成されるまで培養することができる。細胞集合体を形成するためには、播種された細胞が隣接する細胞間に細胞間同士の結合を形成することが必要となる。細胞間同士の結合とは、カドヘリン等による膜タンパク質同士の相互作用による特異的認識と接着、タイトジャンクションによる細胞同士の接着のことである。なお、培養が進むにつれ、細胞間同士の接着力強くなり、細胞集合体が収縮する傾向がある。例えば、細胞集合体がシート状である場合、培養時間の経過につれて細胞シートの面積が小さくなる傾向がある。
対象細胞は、接着性細胞である。接着性細胞としては、例えば、肝臓の実質細胞である肝細胞、クッパー細胞、血管内皮細胞や角膜内皮細胞等の内皮細胞、線維芽細胞、骨芽細胞、砕骨細胞、歯根膜由来細胞、表皮角化細胞等の表皮細胞、気管上皮細胞、消化管上皮細胞、子宮頸部上皮細胞、角膜上皮細胞等の上皮細胞、乳腺細胞、ペリサイト、平滑筋細胞や心筋細胞等の筋細胞、腎細胞、膵ランゲルハンス島細胞、末梢神経細胞や視神経細胞等の神経細胞、軟骨細胞、又は骨細胞等が挙げられる。これらの細胞は、組織や器官から直接採取した初代細胞でも良く、あるいは、それらを何代か継代させたものでも良い。さらにこれらの細胞は、未分化細胞である胚性幹細胞、多分化能を有する間葉系幹細胞等の多能性幹細胞、単分化能を有する血管内皮前駆細胞等の単能性幹細胞、分化が終了した細胞のいずれであっても良い。また、細胞は単一種を培養しても良いし、二種以上の細胞を共培養しても良い。
培養液は、特に制限されるものではなく、例えば、当該技術分野で一般的に用いられる細胞培養用培地を用いることができる。培地としては、例えば、用いる細胞の種類に応じて、MEM培地、BME培地、DME培地、αMEM培地、IMDM培地、ES培地、DM−160培地、Fisher培地、F12培地、WE培地及びRPMI1640培地等の基礎培地を用いることができる。基礎培地は、例えば、朝倉書店発行「日本組織培養学会編 組織培養の技術第三版」581頁に記載されている。さらに、基礎培地に血清(ウシ胎児血清等)、各種増殖因子、抗生物質、アミノ酸等を加えても良い。また、Gibco無血清培地(インビトロジェン社)等の市販の無血清培地も用いることができる。最終的に得られる細胞集合体の臨床応用を考えると、動物由来成分を含まない培地を使用することが好ましい。
培養して得られた細胞集合体は容易に剥離することができるため、ダメージがなく、もしくはダメージがほんどない細胞集合体を得ることができる。得られる細胞集合体は、再生医療への利用に適したものである。また、細胞集合体を利用することでバイオセンサー等の検出デバイスにも応用できる。
次に、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
1.細胞培養基材の作製
表面が(100)面からなる単結晶シリコン基板を準備し、異方性ウェットエッチング法によってシリコン基板上に逆四角錐アレイを形成した。以下に、逆四角錐アレイの形成方法について詳細に述べる。
まず、熱酸化法によって、シリコン基板の表面に、結晶異方性ウェットエッチング加工においてエッチングマスクとして用いる厚さ400nmのシリコン酸化膜層を形成した。続いて、前記シリコン酸化膜をパターニングするために、フォトリソグラフィ法によって、前記シリコン酸化膜上に一辺が500nmの正方形レジストパターンをピッチ600nmの正方アレイ状に形成した。
その後、前記レジストをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを主体とした混合ガスによるRIE法によって、前記シリコン酸化膜マスクをシリコン基板に到達するまでエッチングした。そして、酸素プラズマによるレジストの除去を実施し、一辺が500nmの正方形がアレイ状に配置された開口を有するシリコン酸化膜マスクを得た。
続いて、シリコン酸化膜マスクをエッチングマスクとして、90℃に加熱した25重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液による結晶異方性エッチングを実施し、シリコン基板上にアレイ状に配置された逆四角錐を形成した。
次に、エッチングマスクとして用いたシリコン酸化膜マスクを、25℃に温度制御された10重量%のバッファードフッ酸水溶液によるウェットエッチングで除去した。
本実施例で形成した逆四角錐状の斜面を形成する結晶面は(111)面となり、深さは約0.35μmとなった。形成したシリコン基板上の逆四角錘アレイの走査型電子顕微鏡写真を図6に示す。
1.細胞培養基材の作製
表面が(100)面からなる単結晶シリコン基板を準備し、異方性ウェットエッチング法によってシリコン基板上に逆四角錐アレイを形成した。以下に、逆四角錐アレイの形成方法について詳細に述べる。
まず、熱酸化法によって、シリコン基板の表面に、結晶異方性ウェットエッチング加工においてエッチングマスクとして用いる厚さ400nmのシリコン酸化膜層を形成した。続いて、前記シリコン酸化膜をパターニングするために、フォトリソグラフィ法によって、前記シリコン酸化膜上に一辺が500nmの正方形レジストパターンをピッチ600nmの正方アレイ状に形成した。
その後、前記レジストをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを主体とした混合ガスによるRIE法によって、前記シリコン酸化膜マスクをシリコン基板に到達するまでエッチングした。そして、酸素プラズマによるレジストの除去を実施し、一辺が500nmの正方形がアレイ状に配置された開口を有するシリコン酸化膜マスクを得た。
続いて、シリコン酸化膜マスクをエッチングマスクとして、90℃に加熱した25重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液による結晶異方性エッチングを実施し、シリコン基板上にアレイ状に配置された逆四角錐を形成した。
次に、エッチングマスクとして用いたシリコン酸化膜マスクを、25℃に温度制御された10重量%のバッファードフッ酸水溶液によるウェットエッチングで除去した。
本実施例で形成した逆四角錐状の斜面を形成する結晶面は(111)面となり、深さは約0.35μmとなった。形成したシリコン基板上の逆四角錘アレイの走査型電子顕微鏡写真を図6に示す。
信越化学工業(株)製RTVシリコーンゴムの主剤KE−106と副剤CAT−RGを重量比10:1で混ぜ合わせて真空脱泡した後、前述の逆四角錐アレイが形成されたシリコン基板上に流し、150℃で30分硬化させてシリコーンゴムシートを作製した。得られたシリコーンゴムシートを直径6mmにポンチで打ち抜き、O2プラズマ処理によって表面を改質した後、細胞培養用ウェルプレート(商品名:平底ボトム96ウェルクリアポリスチレンプレート、Nunc社製)の底部に設置した。培養面構成基材であるシリコーンゴムシート上に設けられている突起群は、直径500nm、高さ0.35μmの四角錘状の突起が、600nmのピッチで配列している。
2.細胞集合体の作製
細胞培養基材に対し、1.0×106cells/cm2(細胞充填率240%)になるようにヒト由来間葉系幹細胞(UE7T−13)(JCRBから入手)を播種した。使用培地は、間葉系幹細胞増殖培地(Lonza社製)を採用した。培養は、CO2インキュベーターで37℃、5%CO2の条件にて行い、培養22時間経過後に目視で観察したところ、基材表面から自律的に剥離した状態で細胞集合体(細胞シート)が形成されている様子が確認された。
細胞培養基材に対し、1.0×106cells/cm2(細胞充填率240%)になるようにヒト由来間葉系幹細胞(UE7T−13)(JCRBから入手)を播種した。使用培地は、間葉系幹細胞増殖培地(Lonza社製)を採用した。培養は、CO2インキュベーターで37℃、5%CO2の条件にて行い、培養22時間経過後に目視で観察したところ、基材表面から自律的に剥離した状態で細胞集合体(細胞シート)が形成されている様子が確認された。
(実施例2)
1.細胞培養基材の作製
表面が(100)面からなる単結晶シリコン基板を準備し、異方性ウェットエッチング法によってシリコン基板上に逆四角錐アレイを形成した。以下に、逆四角錐アレイの形成方法について詳細に説明する。
まず、熱酸化法によって、シリコン基板の表面に、結晶異方性ウェットエッチング加工においてエッチングマスクとして用いる厚さ400nmのシリコン酸化膜層を形成した。続いて、前記シリコン酸化膜層をパターニングするために、フォトリソグラフィ法によって、前記シリコン酸化膜上に一辺が5μmの正方形レジストパターンをピッチ7.5μmの正方アレイ状に形成した。
その後、前記レジストをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを主体とした混合ガスによるRIE法によって、前記シリコン酸化膜マスクをシリコン基板に到達するまでエッチングした。そして、酸素プラズマによるレジストの除去を実施し、一辺が5μmの正方形がアレイ状に配置された開口を有するシリコン酸化膜マスクを得た。
続いて、シリコン酸化膜マスクをエッチングマスクとして、90℃に加熱した25重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液による結晶異方性エッチングを実施し、シリコン基板上にアレイ状に配置された逆四角錐を形成した。
次に、エッチングマスクとして用いたシリコン酸化膜マスクを、25℃に温度制御された10重量%のバッファードフッ酸水溶液によるウェットエッチングで除去した。
本実施例で形成した逆四角錐状の斜面を形成する結晶面は(111)面となり、深さは約3.5μmとなった。形成したシリコン基板上の逆四角錘アレイの走査型電子顕微鏡写真を図7に示す。
1.細胞培養基材の作製
表面が(100)面からなる単結晶シリコン基板を準備し、異方性ウェットエッチング法によってシリコン基板上に逆四角錐アレイを形成した。以下に、逆四角錐アレイの形成方法について詳細に説明する。
まず、熱酸化法によって、シリコン基板の表面に、結晶異方性ウェットエッチング加工においてエッチングマスクとして用いる厚さ400nmのシリコン酸化膜層を形成した。続いて、前記シリコン酸化膜層をパターニングするために、フォトリソグラフィ法によって、前記シリコン酸化膜上に一辺が5μmの正方形レジストパターンをピッチ7.5μmの正方アレイ状に形成した。
その後、前記レジストをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを主体とした混合ガスによるRIE法によって、前記シリコン酸化膜マスクをシリコン基板に到達するまでエッチングした。そして、酸素プラズマによるレジストの除去を実施し、一辺が5μmの正方形がアレイ状に配置された開口を有するシリコン酸化膜マスクを得た。
続いて、シリコン酸化膜マスクをエッチングマスクとして、90℃に加熱した25重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液による結晶異方性エッチングを実施し、シリコン基板上にアレイ状に配置された逆四角錐を形成した。
次に、エッチングマスクとして用いたシリコン酸化膜マスクを、25℃に温度制御された10重量%のバッファードフッ酸水溶液によるウェットエッチングで除去した。
本実施例で形成した逆四角錐状の斜面を形成する結晶面は(111)面となり、深さは約3.5μmとなった。形成したシリコン基板上の逆四角錘アレイの走査型電子顕微鏡写真を図7に示す。
信越化学工業(株)製RTVシリコーンゴムの主剤KE−106と副剤CAT−RGを重量比10:1で混ぜ合わせて真空脱泡した後、前述の逆四角錐アレイが形成されたシリコン基板上に流し、150℃で30分硬化させてシリコーンゴムシートを作製した。得られたシリコーンゴムシートを直径6mmにポンチで打ち抜き、O2プラズマ処理によって表面を改質した後、細胞培養用ウェルプレート(商品名:平底ボトム96ウェルクリアポリスチレンプレート、Nunc社製)の底部に設置した。培養面構成基材であるシリコーンゴムシート上に設けられている突起群は、直径5μm、高さ3.5μmの四角錘状の突起が、7.5μmのピッチで配列している。
2.細胞集合体の作製
細胞培養基材に対し、1.0×106cells/cm2(細胞充填率240%)になるようにヒト由来間葉系幹細胞(UE7T−13)(JCRBから入手)を播種した。使用培地は、間葉系幹細胞増殖培地(Lonza社製)を採用した。培養は、CO2インキュベーターで37℃、5%CO2の条件にて行い、培養22時間経過後に目視で観察したところ、基材表面から自律的に剥離した状態で細胞集合体(細胞シート)が形成されている様子が確認された。
細胞培養基材に対し、1.0×106cells/cm2(細胞充填率240%)になるようにヒト由来間葉系幹細胞(UE7T−13)(JCRBから入手)を播種した。使用培地は、間葉系幹細胞増殖培地(Lonza社製)を採用した。培養は、CO2インキュベーターで37℃、5%CO2の条件にて行い、培養22時間経過後に目視で観察したところ、基材表面から自律的に剥離した状態で細胞集合体(細胞シート)が形成されている様子が確認された。
(比較例)
1.細胞培養基材の作製
信越化学工業(株)製RTVシリコーンゴムの主剤KE−106と副剤CAT−RGを重量比10:1で混ぜ合わせて真空脱泡した後、フラットなシリコンウェハ上に流し、150℃で30分硬化させてシリコーンゴムシートを作製した。得られたシリコーンゴムシートを直径6mmにポンチで打ち抜き、O2プラズマ処理によって表面を改質した後、細胞培養用ウェルプレート(商品名:平底ボトム96ウェルクリアポリスチレンプレート、Nunc社製)の底部に設置した。
1.細胞培養基材の作製
信越化学工業(株)製RTVシリコーンゴムの主剤KE−106と副剤CAT−RGを重量比10:1で混ぜ合わせて真空脱泡した後、フラットなシリコンウェハ上に流し、150℃で30分硬化させてシリコーンゴムシートを作製した。得られたシリコーンゴムシートを直径6mmにポンチで打ち抜き、O2プラズマ処理によって表面を改質した後、細胞培養用ウェルプレート(商品名:平底ボトム96ウェルクリアポリスチレンプレート、Nunc社製)の底部に設置した。
2.細胞シートの作製
細胞培養基材に対し、1.0×106cells/cm2(細胞充填率240%)になるようにヒト由来間葉系幹細胞(UE7T−13)(JCRBから入手)を播種した。使用培地は、間葉系幹細胞増殖培地(Lonza社製)を採用した。培養は、CO2インキュベーターで37℃、5%CO2の条件にて行い、培養22時間経過後に目視で観察したところ、基材表面に細胞が接着した状態で存在している様子が観察された。
細胞培養基材に対し、1.0×106cells/cm2(細胞充填率240%)になるようにヒト由来間葉系幹細胞(UE7T−13)(JCRBから入手)を播種した。使用培地は、間葉系幹細胞増殖培地(Lonza社製)を採用した。培養は、CO2インキュベーターで37℃、5%CO2の条件にて行い、培養22時間経過後に目視で観察したところ、基材表面に細胞が接着した状態で存在している様子が観察された。
1 容器
2 培養面
3 培養面構成用基材
4 円筒状部材
5 開口
10 突起
10a 端部
10b 基部
11 細胞培養容器
12 突起
B 培養液
C 細胞
d 直径
h 高さ
P ピッチ
S 細胞集合体
2 培養面
3 培養面構成用基材
4 円筒状部材
5 開口
10 突起
10a 端部
10b 基部
11 細胞培養容器
12 突起
B 培養液
C 細胞
d 直径
h 高さ
P ピッチ
S 細胞集合体
Claims (7)
- 細胞を細胞培養容器に播種して細胞集合体を製造する方法であって、
前記細胞培養容器は、微細な突起群が設けられた培養面を有し、
細胞充填率が100%以上となるように前記細胞を前記培養面上に播種する工程、及び播種した前記細胞を培養して前記細胞集合体を形成する工程を含む、細胞集合体の製造方法。 - 前記突起群が、規則的に配列した突起からなる、請求項1に記載の細胞集合体の製造方法。
- 前記突起群を構成する突起が、先鋭形状の端部を有する突起である、請求項1又は2に記載の細胞集合体の製造方法。
- 前記先鋭形状の端部を有する突起が、少なくとも端部が錐形状の突起である、請求項3に記載の細胞集合体の製造方法。
- 前記突起群を構成する突起の直径が500nm以上5μm以下であり、高さが300nm以上5μm以下であり、前記突起間のピッチが500nm以上10μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞集合体の製造方法。
- 前記培養面を構成する基材が、ポリジメチルシロキサンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の細胞集合体の製造方法。
- 形成された前記細胞集合体が、前記培養面から自然に剥離している、請求項1〜6のいずれか1項に記載の細胞集合体の製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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Citations (3)
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JP2011004612A (ja) * | 2009-06-23 | 2011-01-13 | Hitachi Ltd | 培養基材、培養シート、及び細胞培養方法 |
WO2011142364A1 (ja) * | 2010-05-10 | 2011-11-17 | 独立行政法人理化学研究所 | 細胞シート作製方法 |
JP2015128432A (ja) * | 2015-02-19 | 2015-07-16 | テルモ株式会社 | 単離されたシート状細胞培養物の製造方法 |
-
2017
- 2017-08-22 JP JP2017159788A patent/JP2019037151A/ja active Pending
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