JP2019035807A - トナーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献2では、水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックス(W1)の存在下で、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との重縮合を行い、該炭化水素ワックス(W1)由来の構成成分及びポリエステル樹脂セグメントを有する非晶性樹脂(A)を得る工程(1)、得られた非晶性樹脂(A)を水性媒体中に分散させ、樹脂粒子(X)の水系分散体を得る工程(2)、得られた樹脂粒子(X)を、水性媒体中で結晶性ポリエステル(B)の存在下で凝集させて、凝集粒子を得る工程(3)、及び、得られた凝集粒子を融着させる工程(4)を含む、静電荷像現像用トナーの製造方法が記載されている。これにより得られるトナーが低温定着性及び帯電特性に優れ、印刷物の画像濃度にも優れると記載されている。
しかしながら、特許文献1や2の方法では、優れた印刷物の画像濃度と耐オフセット性という、相反する2つの特性を十分に両立したトナーが得られるとは言い難かった。
〔1〕工程1:水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックスW1由来の構成成分及びポリエステル樹脂セグメントを有する非晶性樹脂Aを含有する樹脂粒子Xを、水性媒体中で、ワックスD1、ワックスD2、及び着色剤の存在下で凝集させて、凝集粒子を得る工程と、
工程2:前記工程1で得られた凝集粒子を融着させる工程と、
を含む、トナーの製造方法であって、
前記ワックスD1の融点Tm1が前記ワックスD2の融点Tm2より低く、且つ、工程2において凝集粒子を融着させる温度Tは、前記ワックスD1の融点Tm1より10℃低い温度以上、前記ワックスD2の融点Tm2より10℃高い温度以下である、トナーの製造方法。
〔2〕水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックスW1由来の構成成分及びポリエステル樹脂セグメントを有する非晶性樹脂Aと、ワックスD1と、ワックスD2と、着色剤とを含み、前記ワックスD1の融点Tm1が前記ワックスD2の融点Tm2より低い、トナー。
本発明のトナーの製造方法は、
工程1:水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックスW1由来の構成成分及びポリエステル樹脂セグメントを有する非晶性樹脂Aを含有する樹脂粒子Xを、水性媒体中で、ワックスD1、ワックスD2、及び着色剤の存在下で凝集させて、凝集粒子を得る工程と、
工程2:前記工程1で得られた凝集粒子を融着させる工程と、
を含む。
そして、当該トナーの製造方法では、ワックスD1の融点Tm1は、ワックスD2の融点Tm2より低く、且つ、工程2において凝集粒子を融着させる温度Tは、前記ワックスD1の融点Tm1より10℃低い温度以上、前記ワックスD2の融点Tm2より10℃高い温度以下である。
当該製造方法により、優れた印刷物の画像濃度及び耐ホットオフセット性を示すトナーが得られる。その理由は定かではないが、次のように考えられる。
本発明の製造方法では、水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックスW1由来の構成成分及びポリエステル樹脂セグメントを有する非晶性樹脂Aを用いる。当該非晶性樹脂Aを含有する樹脂粒子Xは、水性媒体中では、炭化水素ワックスW1由来の構成成分が疎水基として内側に、より親水的なポリエステル樹脂セグメントが外側に存在するように形成される。
この樹脂粒子Xを少なくとも2種のワックスD1及びワックスD2、並びに着色剤の存在下で凝集させ、ワックスD1とワックスD2と着色剤とを凝集粒子に内包させる。そして、この凝集粒子をワックスD1の融点Tm1より10℃低い温度以上、ワックスD2の融点Tm2より10℃高い温度以下で加熱融着させることにより、融点が低く溶融しやすいワックスD1が着色剤と作用し、更に樹脂中の炭化水素ワックスW1由来の構成成分とも相互作用することで、融着粒子中に着色剤を微分散させる。一方、融点の高く溶融しにくいワックスD2は、融着粒子中で過度に微分散されることなく適度のサイズのドメインを形成する。このため、得られるトナーは印刷物の画像濃度が優れるだけでなく、現像時にワックスが有効に作用できるため耐ホットオフセット性にも優れるものと考えられる。
樹脂が結晶性であるか非晶性であるかについては、結晶性指数により判定される。結晶性指数は、後述する実施例に記載の測定方法における、樹脂の軟化点と吸熱の最大ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最大ピーク温度(℃))で定義される。結晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6以上1.4以下のものである。非晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6未満又は1.4超のものである。結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。
明細書中、ポリエステルのカルボン酸成分には、その化合物のみならず、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び各カルボン酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数1以上3以下)も含まれる。
明細書中、「結着樹脂」とは、非晶性樹脂A及び結晶性樹脂Bを含むトナー中に含まれる樹脂成分の総称である。
以下、本発明の製造方法の各工程等を説明する。
工程1は、水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックスW1(以下単に「炭化水素ワックスW1」ともいう)由来の構成成分及びポリエステル樹脂セグメントを有する非晶性樹脂Aを含有する樹脂粒子Xを、水性媒体中で、ワックスD1、ワックスD2、及び着色剤の存在下で凝集させて、凝集粒子を得る工程である。
凝集には、結晶性樹脂Bの存在下で行うことが好ましい。結晶性樹脂B、ワックスD1、ワックスD2、及び着色剤は、樹脂粒子Xに含有させてもよいし、これらの分散液を用いて、凝集させてもよい。
工程1−1:水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックスW1由来の構成成分及びポリエステル樹脂セグメントを有する非晶性樹脂Aを得る工程
工程1−2:工程1−1で得られた非晶性樹脂Aを含有する樹脂粒子Xの水系分散体を得る工程
工程1−3:工程1−2で得られた樹脂粒子Xを水性媒体中で、ワックスD1、ワックスD2、及び着色剤の存在下で凝集させて、凝集粒子を得る工程
工程1−1の詳細は、後述の非晶性樹脂Aの製造方法に示す方法による。
工程1−2の詳細は、後述の樹脂粒子Xの製造方法に示す方法による。
以下、工程1で用いられる各成分の説明をする。
非晶性樹脂Aは、印刷物の画像濃度及び耐ホットオフセット性を示すトナーを得る観点から、水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックスW1由来の構成成分及びポリエステル樹脂セグメントを有する。非晶性樹脂Aは、例えば、水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックスW1の存在下、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合することで得られる樹脂である。
非晶性樹脂Aは、トナーの印刷物の画像濃度及び耐ホットオフセット性をより向上させる観点から、水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックスW1由来の構成成分、ポリエステル樹脂セグメントを有し、好ましくは更に付加重合系樹脂セグメントを有する。
炭化水素ワックスW1由来の構成成分は、例えば、水酸基又はカルボキシ基が反応し、ポリエステル樹脂セグメントと共有結合した炭化水素ワックスW1である。
炭化水素ワックスW1は、水酸基又はカルボキシ基を有する。炭化水素ワックスW1は、水酸基、カルボキシ基のいずれか一方、又は両方を有していてもよいが、印刷物の画像濃度を向上させる観点、及び耐ホットオフセット性を向上させる観点から、好ましくは、水酸基及びカルボキシ基を有する。
炭化水素ワックスW1は、例えば、未変性の炭化水素ワックスを公知の方法で変性させて得られる。炭化水素ワックスW1の原料としては、例えば、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスが挙げられる。これらの中でも、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスが好ましい。
炭化水素ワックスW1の原料となるパラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの市販品としては、例えば、「HNP−11」、「HNP−9」、「HNP−10」、「FT−0070」、「HNP−51」、「FNP−0090」(以上、日本精蝋株式会社製)が挙げられる。
水酸基を有する炭化水素ワックスの市販品としては、例えば、「ユニリン700」、「ユニリン425」、「ユニリン550」(以上、ベーカー・ペトロライト社製)等が挙げられる。
酸変性炭化水素ワックスは、例えば、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素ワックスに、酸変性により、カルボキシ基を導入することで得られる。酸変性の方法としては、例えば、特開2006−328388号公報、特開2007−84787号公報に記載の方法が挙げられる。具体的には、原料の炭化水素ワックスの溶融物に、反応開始剤として、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物と、不飽和結合を有するカルボン酸化合物を添加して反応させることで、カルボキシ基を導入することができる。
カルボキシ基を有する炭化水素ワックスの市販品としては、例えば、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体「ハイワックス1105A」(三井化学株式会社製)が挙げられる。
水酸基及びカルボキシ基を有する炭化水素ワックスの市販品としては、例えば、「パラコール6420」、「パラコール6470」、「パラコール6490」(以上、日本精蝋株式会社製)が挙げられる。
炭化水素ワックスW1の水酸基価、酸価、数平均分子量の測定方法は、実施例に記載の方法による。
ポリエステル樹脂セグメントは、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物であるポリエステル樹脂からなるセグメントである。
アルコール成分としては、例えば、芳香族ジオール、直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。これらの中でも、芳香族ジオールが好ましい。
芳香族ジオールは、好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物であり、より好ましくは式(I):
(式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、Rはそれぞれ独立にエチレン基又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは4以下である)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物である。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、ビスフェノールA〔2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〕のポリオキシプロピレン付加物、ビスフェノールAのポリオキシエチレン付加物が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることが好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、より更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
脂環式ジオールとしては、例えば、水素添加ビスフェノールA〔2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン〕、水素添加ビスフェノールAの炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイド(平均付加モル数2以上12以下)付加物が挙げられる。
3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールが挙げられる。
これらのアルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ジカルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸が挙げられる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸、及び、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられる。これらの中でも、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは95モル%以下、より好ましくは90モル%以下、更に好ましくは80モル%以下である。
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アゼライン酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸が挙げられる。炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸としては、例えば、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸が挙げられる。これらの中でも、フマル酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸が好ましく、フマル酸がより好ましい。
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは1モル%以上、より好ましくは2モル%以上、更に好ましくは3モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。
3価以上の多価カルボン酸を含む場合、3価以上の多価カルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは20モル%以下である。
これらのカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
付加重合系樹脂セグメントは、印刷物の画像濃度を向上させる観点から、スチレン系化合物を含む原料モノマーの付加重合物であることが好ましい。
スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩が挙げられる。これらの中でもスチレンが好ましい。
付加重合系樹脂セグメントの原料ビニルモノマー中、スチレン系化合物の含有量は、印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは87質量%以下、より更に好ましくは85質量%以下である。
(メタ)アクリル酸アルキルにおけるアルキル基の炭素数は、印刷物の画像濃度をより向上させる観点、及び耐ホットオフセット性をより向上させる観点から、好ましくは1以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下である。
(メタ)アクリル酸アルキルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸(イソ)プロピル、(メタ)アクリル酸(イソ又はターシャリー)ブチル、(メタ)アクリル酸(イソ)アミル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)オクチル、(メタ)アクリル酸(イソ)デシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ドデシル、(メタ)アクリル酸(イソ)パルミチル、(メタ)アクリル酸(イソ)ステアリル、(メタ)アクリル酸(イソ)ベヘニルが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリルが好ましく、メタクリル酸ステアリルがより好ましい。
なお、「(イソ又はターシャリー)」とは、ノルマル、イソ又はターシャリー、「(イソ)」とは、ノルマル又はイソを意味する。
「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種を意味する。
付加重合系樹脂セグメントの原料モノマー中、スチレン系化合物及び(メタ)アクリル酸エステルの合計含有量は、印刷物の画像濃度をより向上させる観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、そして、より更に好ましくは100質量%である。
「両反応性モノマー由来の構造単位」とは、両反応性モノマーの官能基、不飽和結合部位が反応した単位を意味する。
両反応性モノマーとしては、例えば、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する付加重合性モノマーが挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、水酸基又はカルボキシ基を有する付加重合性モノマーが好ましく、カルボキシ基を有する付加重合性モノマーがより好ましい。
両反応性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。これらの中でも、重縮合反応と付加重合反応の双方の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
両反応性モノマー由来の構成単位の量は、非晶性樹脂Aのポリエステル樹脂セグメントのアルコール成分100モル部に対して、好ましくは1モル部以上、より好ましくは5モル部以上、更に好ましくは8モル部以上であり、そして、好ましくは30モル部以下、より好ましくは25モル部以下、更に好ましくは20モル部以下である。
非晶性樹脂Aは、例えば、水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックスW1の存在下、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合により得られる。
必要に応じて、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)、酸化ジブチル錫、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のエステル化触媒をアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対し0.01質量部以上5質量部以下、没食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸と同じ。)等のエステル化助触媒をアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対し0.001質量部以上0.5質量部以下用いて重縮合してもよい。
重縮合反応の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下である。なお、重縮合は、不活性ガス雰囲気中にて行ってもよい。
工程Aの後に工程Bを行ってもよいし、工程Bの後に工程Aを行ってもよく、工程Aと工程Bを同時に行ってもよい。
工程Aにおいて、カルボン酸成分の一部を重縮合反応に供し、次いで工程Bを実施した後に、再度反応温度を上昇させ、多価カルボン酸成分の残部を重合系に添加し、工程Aの重縮合反応及び必要に応じて両反応性モノマーとの反応をさらに進める方法がより好ましい。
付加重合反応のラジカル重合開始剤としては、例えば、ジブチルパーオキサイド等の過酸化物、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。
ラジカル重合開始剤の使用量は、原料モノマー100質量部に対して、好ましくは1質量部以上20質量部以下である。
付加重合反応の温度は、好ましくは110℃以上、より好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは220℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは180℃以下である。
付加重合反応には、必要に応じてアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上0.5質量部以下のラジカル重合禁止剤を用いてもよい。ラジカル重合禁止剤としては、4−tert−ブチルカテコール等が挙げられる。
非晶性樹脂Aの軟化点は、印刷物の画像濃度をより向上させる観点、及び耐ホットオフセット性をより向上させる観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上、より更に好ましくは110℃以上であり、そして、好ましくは140℃以下、より好ましくは135℃以下、更に好ましくは130℃以下である。
なお、非晶性樹脂Aを2種以上混合して使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、ガラス転移温度及び酸価の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
結晶性樹脂Bとしては、例えば、結晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。
結晶性ポリエステルは、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である。
α,ω−脂肪族ジオールの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
α,ω−脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオールが挙げられる。これらの中でも、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールが好ましく、1,10−デカンジオールがより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、好ましくは4以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸が挙げられる。これらの中でも、セバシン酸、ドデカン二酸が好ましく、セバシン酸がより好ましい。これらのカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
重縮合反応の条件は、前述の非晶性樹脂Aの製造方法で示したとおりである。
結晶性樹脂Bの軟化点は、印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、そして、印刷物の画像濃度及び耐ホットオフセット性を向上させる観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
なお、結晶性樹脂Bを2種以上混合して使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、融点、及び酸価の値がそれぞれ前記範囲内であることが好ましい。
工程1では、ワックスD1及びワックスD2の2種類のワックスを用いる。ワックスD1の融点Tm1は、ワックスD2の融点Tm2より低い。
ワックスD1及びワックスD2としては、例えば、炭化水素ワックス、エステルワックス、シリコーンワックス、脂肪酸アミドが挙げられる。
炭化水素ワックスとしては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックスが挙げられる。
エステルワックスとしては、例えば、カルナウバワックス、モンタンワックス又はそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックスが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
ワックスD1の融点Tm1は、印刷物の画像濃度をより向上させる観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
ワックスD2の融点Tm2は、耐ホットオフセット性をより向上させる観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上、より更に好ましくは85℃以上であり、そして、好ましくは110℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは95℃以下である。
ワックスD1の融点Tm1とワックスD2の融点Tm2の差|Tm1−Tm2|は、印刷物の画像濃度及び耐ホットオフセット性をより向上させる観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは8℃以上、更に好ましくは10℃以上、より更に好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは30℃以下、より好ましくは25℃以下、更に好ましくは20℃以下である。
着色剤としては、顔料及び染料が挙げられ、印刷物の画像濃度を向上させる観点から、顔料が好ましい。
顔料としては、シアン顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、黒色顔料が挙げられる。シアン顔料は、フタロシアニン顔料が好ましく、銅フタロシアニンがより好ましい。イエロー顔料は、モノアゾ顔料、イソインドリン顔料、ベンズイミダゾロン顔料が好ましい。マゼンタ顔料は、キナクリドン顔料、BONAレーキ顔料等の溶性アゾ顔料、ナフトールAS顔料等の不溶性アゾ顔料が好ましい。黒色顔料は、カーボンブラックが好ましい。
染料としては、アクリジン染料、アゾ染料、ベンゾキノン染料、アジン染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、フタロシアニン染料、アニリンブラック染料等が挙げられる。
着色剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
樹脂粒子Xは、少なくとも非晶性樹脂Aを含有する。
樹脂粒子Xは、結晶性樹脂B、着色剤、ワックスD1、ワックスD2を含有していてもよい。
樹脂粒子Xは、非晶性樹脂Aと、必要に応じて、結晶性樹脂B、着色剤等の任意成分とを水性媒体中に分散させ、樹脂粒子Xの水系分散液として得られる。
分散は、公知の方法を用いて行うことができるが、転相乳化法により分散することが好ましい。転相乳化法としては、例えば、樹脂の有機溶媒溶液又は溶融した樹脂に水性媒体を添加して転相乳化する方法が挙げられる。
有機溶媒溶液には、塩基性物質等の中和剤を添加することが好ましい。塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、トリメチルアミン、ジエタノールアミン等の含窒素塩基性物質が挙げられる。
樹脂の酸基に対する中和剤の使用当量(モル%)は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは30モル%以上であり、そして、好ましくは150モル%以下、より好ましくは120モル%以下、更に好ましくは100モル%以下である。
なお、中和剤の使用当量(モル%)は、下記式によって求めることができる。なお、中和剤の使用当量は、100モル%以下の場合、中和度と同義である。
中和剤の使用当量(モル%)=〔{中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量}/[{樹脂粒子Xを構成する樹脂の加重平均酸価(mgKOH/g)×樹脂粒子Xを構成する樹脂の質量(g)}/(56×1000)]〕×100
水性媒体を添加する際の有機溶媒溶液温度は、樹脂粒子Xの分散安定性を向上させる観点から、好ましくは樹脂粒子Xを構成する樹脂のガラス転移温度以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上、より更に好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは85℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは75℃以下である。
転相乳化の後に、必要に応じて、得られた分散液から蒸留等により有機溶媒を除去してもよい。
樹脂粒子Xの粒径分布の変動係数(以下、単に「CV値」ともいう)(%)は、樹脂粒子Xの分散液の生産性を向上させる観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上であり、そして、高画質の画像が得られるトナーを得る観点から、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは35%以下である。
体積中位粒径(D50)及びCV値は、後述の実施例に記載の方法で求められる。
結晶性樹脂Bは、樹脂粒子Xとは別の樹脂粒子Yに含有させてもよい。その場合、工程1では樹脂粒子Xと、樹脂粒子Yとを、水性溶媒中で、ワックスD1、ワックスD2、及び着色剤の存在下で凝集させて、凝集粒子を得る。
樹脂粒子Yは、例えば、前述の樹脂粒子Xと同様の方法により得られる。体積中位粒径(D50)及びCV値は、前述の例示と同様である。
ワックスD1は、ワックスD1粒子として添加することが好ましい。ワックスD2も同様に、ワックスD2粒子として添加することが好ましい。以下、ワックスD1と、ワックスD2の共通する説明については、単に「ワックス」として説明する。
ワックス粒子の製造方法は、例えば、ワックスと水性媒体とを、界面活性剤等の存在下、ワックスの融点以上の温度で、分散機を用いて分散する方法、ワックスと、樹脂粒子Zと、水性媒体とを、ワックスの融点以上の温度で、分散機を用いて分散する方法が挙げられる。これらの中でも後者の方法が好ましい。ワックスと樹脂粒子Zを用いてワックス粒子を調製することで、樹脂粒子Zによりワックス粒子が安定化され、界面活性剤を使用しなくてもワックスを水性媒体中に分散させることが可能となる。ワックス粒子の分散液中では、ワックス粒子の表面に樹脂粒子Zが多数付着した構造を有していると考えられる。
超音波分散機としては、例えば超音波ホモジナイザーが挙げられる。その市販品としては、例えば、「US−150T」、「US−300T」、「US−600T」(株式会社日本精機製作所製)、「SONIFIER(登録商標)4020−400」、「SONIFIER(登録商標)4020−800」(ブランソン社製)が挙げられる。
高圧分散機の市販品としては、例えば、高圧湿式微粒化装置「ナノマイザー(登録商標)NM2−L200−D08」(吉田機械興業株式会社製)が挙げられる。
複合樹脂のポリエステル樹脂セグメント、付加重合系樹脂セグメントとしては、前述の非晶性樹脂Aでの例示と同様である。
複合樹脂の軟化点は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上であり、そして、好ましくは140℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
複合樹脂のその他の樹脂特性の好適範囲、樹脂を構成する原料モノマーの好適例等は、非晶性樹脂Aで示した例と同様である。樹脂粒子Zの分散液は、例えば、前述の転相乳化法により得ることができる。
ワックス粒子の体積中位粒径(D50)及びCV値は、具体的には、実施例に記載の方法で求められる。
着色剤は、着色剤粒子として添加することが好ましい。
着色剤粒子の製造方法は、例えば、着色剤と水性媒体とを、界面活性剤等の存在下、分散機を用いて分散する方法が挙げられる。分散機としては、例えば、前述のホモジナイザー、超音波分散機が挙げられる。水性媒体の好ましい態様は、樹脂粒子Xの水系分散体に用いられる水性媒体と同様である。
界面活性剤が、下記式(1)で表される化合物(以下、単に「化合物1」ともいう)であることが好ましい。つまり、着色剤粒子は、着色剤と下記式(1)で表される化合物とを混合して得られるものであることが好ましい。
〔式中、R1は炭素数1以上12以下のアルカンジイル基であり、mは平均置換数を示し、mの値は1以上4以下であり、R2は水素原子又はメチル基であり、A1Oはオキシアルキレン基を示し、A1はエチレン基又はプロピレン基であり、nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であり、nの値は5以上100以下である。〕
R1としては、例えば、メタンジイル基(メチレン基ともいう)、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基(以上、包括的概念として、「エタンジイル基」又は「エチレン基」ともいう)、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,1−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ブタン−2,3−ジイル基が挙げられる。これらの中でも、メタンジイル基、エタンジイル基が好ましく、エタンジイル基がより好ましい。
mの値は、好ましくは2以上3以下である。
R2は、好ましくは水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基、より好ましくは水素原子又はメチル基、更に好ましくは水素原子である。
A1は、好ましくはエチレン基、又はエチレン基及びプロピレン基であり、より好ましくはエチレン基である。
nの値は、好ましくは6以上、より好ましくは9以上、更に好ましくは11以上、より更に好ましくは12以上であり、そして、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下である。
これらの中でも、印刷物の画像濃度を向上させる観点から、ポリオキシエチレン(ジスチレン化フェニル)エーテルが好ましい。このポリオキシエチレン基の平均付加モル数は、前述のnの範囲が好ましい。
分散機としては、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機が挙げられる。好適な分散機の市販品としては、例えば、ホモミキサー「T.K.AGI HOMOMIXER 2M−03」(特殊機化工業株式会社製)、高圧ホモジナイザー「Microfluidizer M−110EH」(Microfluidics社製)、超音波ホモジナイザー「US−600T」(株式会社日本精機製作所製)が挙げられる。
着色剤粒子の体積中位粒径(D50)及びCV値は、具体的には、実施例に記載の方法で求められる。
工程1は、樹脂粒子Xを、水性媒体中で、ワックスD1粒子、ワックスD2粒子、及び着色剤粒子と混合し、凝集させて、凝集粒子を得ることが好ましい。
樹脂粒子Xの水系分散液、ワックスD1粒子の分散液、ワックスD2粒子の分散液、及び着色剤粒子の分散液、その他必要に応じて、界面活性剤等の任意成分を水性媒体中で混合して、混合分散液を得ることが好ましい。そして、当該混合分散液中の粒子を凝集させて、凝集粒子を得る。
樹脂粒子Xの配合量は、印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、凝集を制御して所望の粒径の凝集粒子を得る観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
結晶性樹脂Bの配合量は、結着樹脂中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
非晶性樹脂A及び結晶性樹脂Bの合計配合量は、結着樹脂中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは98質量%以上であり、そして、100質量%以下である。
各粒子の凝集を効率的に行う観点から、凝集剤を添加することが好ましい。
凝集剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン等の有機系凝集剤;硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等の無機金属塩;硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩;2価以上の金属錯体等の無機系凝集剤が挙げられる。凝集性を向上させ均一な凝集粒子を得る観点から、1価以上5価以下の無機系凝集剤が好ましく、1価以上2価以下の無機金属塩、無機アンモニウム塩がより好ましく、無機アンモニウム塩が更に好ましく、硫酸アンモニウムがより更に好ましい。
凝集粒子の体積中位粒径(D50)は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。凝集粒子の体積中位粒径は、後述の実施例に記載の方法で求められる。
凝集を停止させる方法としては、分散液を冷却する方法、凝集停止剤を添加する方法、分散液を希釈する方法等が挙げられる。不必要な凝集を確実に防止する観点からは、凝集停止剤を添加して凝集を停止させる方法が好ましい。
凝集停止剤としては、例えば、界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤がより好ましい。アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩が挙げられる。凝集停止剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。凝集停止剤は、水溶液として添加してもよい。
凝集停止剤の添加量は、不必要な凝集を確実に防止する観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、そして、トナーへの残留を低減する観点から、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
工程2は、工程1で得られた凝集粒子を融着させる工程である。
凝集粒子中の、主として物理的にお互いに付着している状態であった各粒子が融着されて一体となり、トナー粒子が形成される。
温度Tは、凝集粒子の周囲の温度を意味し、例えば、融着を行う分散液に温度計を挿入し測定した温度を意味する。
工程2の融着により得られる分散液中のトナー粒子の円形度は、印刷物の画像濃度をより向上させる観点から、好ましくは0.955以上、より好ましくは0.960以上、更に好ましくは0.965以上であり、そして、好ましくは0.990以下、より好ましくは0.985以下、更に好ましくは0.980以下である。
工程2の後に後処理工程を行ってもよい。
後処理工程としては、例えば、工程2で得られる分散液中からトナー粒子を分離する工程が挙げられる。
トナー粒子の分離は、例えば、吸引濾過法等の固液分離により行われる。
トナー粒子は、固液分離後、更に洗浄されることが好ましい。トナー粒子は、添加した界面活性剤を除去する観点から、界面活性剤の曇点以下で水性媒体により洗浄することが好ましい。洗浄は複数回行うことが好ましい。
洗浄後、乾燥を行うことが好ましい。乾燥方法としては、例えば、真空低温乾燥法、振動型流動乾燥法、スプレードライ法、冷凍乾燥法、フラッシュジェット法が挙げられる。
以上の工程によりトナー粒子が得られる。
トナー粒子は、トナーとしてそのまま用いることもできるが、後述のように流動化剤等を外添剤としてトナー粒子表面に添加処理したトナー粒子をトナーとして用いることが好ましい。
トナーは、例えば、静電荷像現像用トナーである。静電荷像現像用トナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる。
トナー粒子のCV値は、トナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは12%以上、より好ましくは14%以上、更に好ましくは16%以上であり、そして、高画質の画像を得る観点から、好ましくは30%以下、より好ましくは26%以下である。
外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
〔樹脂、ワックスの酸価及び水酸基価〕
樹脂の酸価は、JIS K 0070:1992に記載の中和滴定法に従って測定した。ただし、測定溶媒をクロロホルムとした。
(1)軟化点
フローテスター「CFT−500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(2)結晶性指数
示差走査熱量計「Q100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、室温(20℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料をそのまま1分間静止させ、その後、昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(1)として、(軟化点(℃))/(吸熱の最大ピーク温度(1)(℃))により、結晶性指数を求めた。
(3)融点及びガラス転移温度
示差走査熱量計「Q100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(2)とした。結晶性樹脂の場合には、該ピーク温度を融点とした。
また、非晶性樹脂の場合に、ピークが観測される時はそのピークの温度を、ピークが観測されずに段差が観測される時は該段差部分の曲線の最大傾斜を示す接線と該段差の低温側のベースラインの延長線との交点の温度をガラス転移温度とした。
示差走査熱量計「Q100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温した後、200℃から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定し、吸熱の最大ピーク温度を融点とした。
以下に示すゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により数平均分子量(Mn)を測定した。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をクロロホルムに25℃で溶解させ、次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「DISMIC,25JP」(ADVANTEC社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(2)測定
以下の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてクロロホルムを、1mL/minの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させ、そこに前記試料溶液100μLを注入して分子量を測定した。試料の分子量(重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn)は、数種類の単分散ポリスチレン「TSKgel標準ポリスチレン」のタイプ名(Mw):「A−500(5.0×102)」、「A−1000(1.01×103)」、「A−2500(2.63×103)」、「A−5000(5.97×103)」、「F−1(1.02×104)」、「F−2(1.81×104)」、「F−4(3.97×104)」、「F−10(9.64×104)」、「F−20(1.90×105)」、「F−40(4.27×105)」、「F−80(7.06×105)」、「F−128(1.09×106)」(以上、東ソー株式会社製)を標準試料として、予め作成した検量線に基づき算出した。
・測定装置:「HLC−8220GPC」(東ソー株式会社製)
・分析カラム:「GMHXL」及び「G3000HXL」(以上東ソー株式会社製)
(1)測定装置:レーザー回折型粒径測定機「LA−920」(株式会社堀場製作所製)
(2)測定条件:測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で体積中位粒径(D50)及び体積平均粒径を測定した。また、CV値は次の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径)×100
赤外線水分計「FD−230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分、水分量の変動幅0.05%)にて、水分(質量%)を測定した。固形分濃度は次の式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100−水分(質量%)
(1)測定装置:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマンコールター株式会社製)
(2)解析ソフト:「マルチサイザー(登録商標)IIIバージョン3.51」(ベックマンコールター株式会社製)
(3)測定条件:
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマンコールター株式会社製)
・アパチャー径:50μm
試料分散液を上記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、改めて3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径(D50)を求めた。
測定装置、解析ソフト、アパチャー径、電解液は、凝集粒子の体積中位粒径(D50)と同様のものを用いた。
(1)試料分散液
ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン(登録商標)109P」(花王株式会社製、HLB(Hydrophile−Lipophile Balance)=13.6)を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
上記分散液5mLに乾燥後のトナー粒子の測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を作製した。
(2)測定条件:上記試料分散液を上記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径(D50)及び体積平均粒径を求めた。
また、CV値(%)は下記の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径)×100
〔トナーの高温定着性(耐ホットオフセット性)評価〕
上質紙「J紙A4サイズ」(富士ゼロックス株式会社製)に市販のプリンタ「Microline(登録商標)5400」(株式会社沖データ製)を用いて、トナーの紙上の付着量が0.30±0.01mg/cm2となるベタ画像をA4紙の上端から5mmの余白部分を残し、50mmの長さで定着させずに出力した。
次に、定着器を温度可変に改造した同プリンタを用意し、定着器の温度を130℃にし、A4縦方向に1枚あたり1.5秒の速度でトナーを定着させ、印刷物を得た。定着器の温度が130℃においては、コールドオフセット及びホットオフセットが発生していないことを目視で確認した。
同様の方法で定着器の温度を130℃から5℃ずつ上げて、トナーを定着させ印刷物を得、ホットオフセットの発生を目視で確認した。本試験をホットオフセットが発生する温度まで実施した。
なお、コールドオフセットとは定着温度が低い場合に、未定着画像上のトナーが充分に溶融しない、もしくは離型性が良好でないために、定着ローラーにトナーが付着する現象を指す。一方、ホットオフセットとは定着温度を高温にした場合に、未定着画像上のトナーの粘弾性が低下すること、又は高温下で離型性が良好でなくなるために、定着ローラーにトナーが付着する現象を指す。コールドオフセット又はホットオフセットの発生は定着ローラーが一周した際に、再度、紙上にトナーが付着するか否かで判断することができ、本試験ではベタ画像上端から87mmの部分にトナー付着があるか否かで判断した。
ホットオフセット発生温度とは、ホットオフセットが発生し始める温度を指す。ここでは、ホットオフセット発生温度より5℃低い温度が、ホットオフセットが発生しない最高温度をホットオフセット発生温度とした。
なお、ホットオフセット発生温度の評価において、評価温度5℃の差はトナーの定着性に明確に差が認められる。
上質紙「J紙A4サイズ」(富士ゼロックス株式会社製)に市販のプリンタ「Microline(登録商標)5400」(株式会社沖データ製)を用いて、トナーの紙上の付着量が0.30mg/cm2となるベタ画像を出力した。
次に、定着器の温度を130℃に設定し、A4縦方向に1枚あたり1.5秒の速度でトナーを定着させて、印刷物を得た。
印刷物の下に上質紙「エクセレントホワイト紙A4サイズ」(株式会社沖データ製)を30枚敷き、出力した印刷物のベタ画像部分の反射画像濃度を、測色計「SpectroEye」(GretagMacbeth社製、光射条件;標準光源D50、観察視野2°、濃度基準DINNB、絶対白基準)を用いて測定し、画像上の任意の10点を測定した値を平均して画像濃度とした。数値が大きいほど、画像濃度に優れる。
製造例A1(非晶性樹脂A−1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ビスフェノールAのポリオキシプロピレン(2.2)付加物3268g、テレフタル酸1085g、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)30g、及び3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸3g、及び炭化水素ワックスW1「パラコール6490」(日本精蝋株式会社製)394gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で8時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、155℃まで冷却し、155℃に保持した状態で、スチレン2138g、メタクリル酸ステアリル534g、アクリル酸108g、及びジブチルパーオキサイド321gの混合物を3時間かけて滴下した。その後、30分間155℃に保持した後、200℃まで昇温し、更にフラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、190℃まで冷却し、フマル酸70g、トリメリット酸無水物269g、及び4−tert−ブチルカテコール2.5gを加え、210℃まで10℃/hrで昇温し、その後、8kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、非晶性樹脂A−1を得た。物性を表1に示す。
原料組成を表1に示すように変更した以外は製造例A1と同様にして、非晶性樹脂A−2、A−4〜A−6を得た。物性を表1に示す。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ビスフェノールAのポリオキシプロピレン(2.2)付加物4771g、テレフタル酸1923g、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)30g、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸3g、及び炭化水素ワックスW1「パラコール6490」(日本精蝋株式会社製)349gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、230℃で8時間保持した後、180℃まで冷却し、ドデセニルコハク酸無水物73g及びトリメリット酸無水物314gを加え、220℃まで10℃/hrで昇温し、その後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、非晶性樹脂A−3を得た。物性を表1に示す。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ビスフェノールAのポリオキシプロピレン(2.2)付加物3290g、テレフタル酸1092g、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)30g、及び3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸3gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で8時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、155℃まで冷却し、155℃に保持した状態で、スチレン2152g、メタクリル酸ステアリル538g、アクリル酸108g、及びジブチルパーオキサイド323gの混合物を3時間かけて滴下した。その後、30分間155℃に保持した後、200℃まで昇温し、更にフラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、190℃まで冷却し、フマル酸71g、トリメリット酸無水物271g、及び4−tert−ブチルカテコール2.5gを加え、210℃まで10℃/hrで昇温し、その後、フラスコ内の圧力を下げ、4kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、非晶性樹脂A−7を得た。物性を表1に示す。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ビスフェノールAのポリオキシプロピレン(2.2)付加物4313g、テレフタル酸818g、コハク酸727g、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)30g、及び3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸3.0gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で5時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、160℃まで冷却し、160℃に保持した状態で、スチレン2756g、メタクリル酸ステアリル689g、アクリル酸142g、及びジブチルパーオキサイド413gの混合物を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持した後、200℃まで昇温し、更にフラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、非晶性樹脂A−8を得た。物性を表1に示す。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、1,10−デカンジオール3416g及びセバシン酸4084gを入れ、撹拌しながら、135℃に昇温し、135℃で3時間保持した後、135℃から200℃まで10時間かけて昇温した。その後、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)23gを加え、更に200℃にて1時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaの減圧下にて1時間保持し、結晶性樹脂B−1を得た。物性を表2に示す。
製造例X1(樹脂粒子分散液X−1の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた内容積3Lの容器に、非晶性樹脂A−1を210g、結晶性樹脂B−1を90g、及びメチルエチルケトン300gと脱イオン水49gを入れ、73℃にて2時間かけて樹脂を溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、樹脂の酸価に対して中和度50モル%になるように添加して、30分撹拌した。
次いで、73℃に保持したまま、200r/min(周速度63m/min)で撹拌しながら、脱イオン水600gを60分かけて添加し、転相乳化した。継続して73℃に保持したまま、メチルエチルケトンを減圧下で留去し水系分散体を得た。その後、280r/min(周速度88m/min)で撹拌を行いながら水系分散体を30℃に冷却した後、固形分濃度が20質量%になるように脱イオン水を加えることにより、樹脂粒子分散液X−1を得た。得られた樹脂粒子の体積中位粒径(D50)及びCV値を表3に示す。
使用する樹脂及び量比(樹脂の合計量は同様)を表3のように変更した以外は、製造例X1と同様にして、樹脂粒子分散液X−2〜X−8を得た。得られた樹脂粒子の体積中位粒径(D50)及びCV値を表3に示す。
結晶性樹脂を使用せず、非晶性樹脂A−1を300g、及びメチルエチルケトンを360gに変更した以外は、製造例X1と同様にして、樹脂粒子分散液X−9を得た。得られた樹脂粒子の体積中位粒径(D50)及びCV値を表3に示す。
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた内容積3Lの容器に、非晶性樹脂A−8を200g及びメチルエチルケトン200gを入れ、73℃にて2時間かけて樹脂を溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、非晶性樹脂A−8の酸価に対して中和度60モル%になるように添加して、30分撹拌した。
次いで、73℃に保持したまま、280r/min(周速度88m/min)で撹拌しながら、脱イオン水700gを50分かけて添加し、転相乳化した。継続して73℃に保持したまま、メチルエチルケトンを減圧下で留去し水系分散体を得た。その後、280r/min(周速度88m/min)で撹拌を行いながら水系分散体を30℃に冷却した後、固形分濃度が20質量%になるように脱イオン水を加えることにより、樹脂粒子分散液Z−1を得た。得られた樹脂粒子の体積中位粒径(D50)は0.09μm、CV値は23%であった。
製造例D11(ワックス粒子分散液D1−1の製造)
内容積1Lのビーカーに、脱イオン水120g、樹脂粒子分散液Z−1 86g、及びパラフィンワックス「HNP−9」(日本精鑞株式会社製、融点75℃)40gを添加し、90〜95℃に温度を保持して溶融させ、撹拌し、溶融混合物を得た。
得られた溶融混合物を更に90〜95℃に温度を保持しながら、超音波ホモジナイザー「US−600T」(株式会社日本精機製作所製)を用いて、40分間分散処理した後に室温(20℃)まで冷却した。脱イオン水を加え、固形分濃度を20質量%に調整し、ワックス粒子分散液D1−1を得た。分散液中のワックス粒子の体積中位粒径D50及びCV値を表4に示す。
使用するワックスの種類を表4のように変更した以外は、製造例D11と同様にしてワックス粒子分散液を得た。分散液中のワックス粒子の体積中位粒径(D50)及びCV値を表4に示す。
製造例C1(着色剤粒子分散液C−1の製造)
内容積1Lのビーカーに、シアン顔料「ECB−301」(大日精化工業株式会社製、銅フタロシアニン顔料)100g、ポリオキシエチレン(ジスチレン化フェニル)エーテル「エマルゲンA−60」(花王株式会社製、ノニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンの平均付加モル数は13)35g、及び脱イオン水300gを混合し、ホモミキサー「T.K.AGI HOMOMIXER 2M−03」(特殊機化工業株式会社製)を用いて室温下で撹拌翼の回転速度8000rpmで1時間分散させた後、「Microfluidizer M−110EH」(Microfluidics社製)を用いて150MPaの圧力で15PASS処理した後、200メッシュのフィルターを通し、固形分濃度が24質量%になるように脱イオン水を加えることにより着色剤粒子分散液C−1を得た。得られた着色剤粒子の体積中位粒径(D50)は0.18μm、CV値は25%であった。
実施例1(トナー1の作製)
脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した内容積2Lの4つ口フラスコに、樹脂粒子分散液X−1を500g、ワックス粒子分散液D1−1を49g、ワックス粒子分散液D2−1を49g、着色剤粒子分散液C−1を56g、及びポリオキシエチレン(50)ラウリルエーテル「エマルゲン150」(花王株式会社製、非イオン性界面活性剤)の10質量%水溶液10gを温度25℃で混合した。次に、当該混合物を撹拌しながら、硫酸アンモニウム35gを脱イオン水512gに溶解した水溶液に4.8質量%水酸化カリウム水溶液を添加してpH8.4に調整した溶液を、25℃で5分かけて滴下した後、60℃まで2時間かけて昇温し、凝集粒子の体積中位粒径(D50)が5.2μmになるまで、60℃で保持し、凝集粒子の分散液を得た。
得られた凝集粒子の分散液に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム「エマールE−27C」(花王株式会社製、アニオン性界面活性剤、有効濃度27質量%)53g、脱イオン水439g、及び0.1mol/Lの硫酸水溶液30gを混合した水溶液を添加した。その後、77℃まで1時間かけて昇温した後、円形度が0.965になるまで77℃で保持することにより、凝集粒子が融着した融着粒子の分散液を得た。
得られた融着粒子分散液を30℃に冷却し、分散液を吸引濾過して固形分を分離した後、25℃の脱イオン水で洗浄し、25℃で2時間吸引濾過した。その後、真空定温乾燥機「DRV622DA」(ADVANTEC社製)を用いて、33℃で24時間真空乾燥を行って、トナー粒子を得た。得られたトナー粒子の物性を表5に示す。
トナー粒子100質量部、疎水性シリカ「RY50」(日本アエロジル株式会社製、個数平均粒径;0.04μm)2.5質量部、及び疎水性シリカ「キャボシル(登録商標)TS720」(キャボットジャパン株式会社製、個数平均粒径;0.012μm)1.0質量部をヘンシェルミキサーに入れて撹拌し、150メッシュの篩を通過させてトナー1を得た。得られたトナー1の評価結果を表5に示す。
使用する樹脂粒子分散液の種類及び離型剤粒子分散液の種類を表5に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー2〜8、13、14、51を得た。得られたトナー粒子の物性及びトナーの評価結果を表5に示す。
実施例1において、ワックス粒子分散液D1−1の使用量を28gに変更した以外は実施例1と同様にしてトナー9を得た。得られたトナー粒子の物性及びトナーの評価結果を表5に示す。
実施例1において、ワックス粒子分散液D1−1の使用量を14gに変更した以外は実施例1と同様にしてトナー10を得た。得られたトナー粒子の物性及びトナーの評価結果を表5に示す。
実施例1において、ワックス粒子分散液D2−1の使用量を28gに変更した以外は実施例1と同様にしてトナー11を得た。得られたトナー粒子の物性及びトナーの評価結果を表5に示す。
実施例1において、ワックス粒子分散液D1−1の使用量を28g、ワックス粒子分散液D2−1の使用量を28gに、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にしてトナー12を得た。得られたトナー粒子の物性及びトナーの評価結果を表5に示す。
実施例1と同様にして、凝集粒子の分散液を得た。
得られた凝集粒子の分散液に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム「エマールE−27C」(花王株式会社製、アニオン性界面活性剤、有効濃度27質量%)53g、脱イオン水439g、及び0.1mol/Lの硫酸水溶液30gを混合した水溶液を添加した。その後、75℃まで1時間かけて昇温した後、円形度が0.965になるまで75℃で保持することにより、凝集粒子が融着した融着粒子の分散液を得た。
得られた融着粒子分散液を実施例1と同様に処理してトナー15を得た。得られたトナー粒子の物性及びトナーの評価結果を表5に示す。
実施例1と同様にして、凝集粒子の分散液を得た。
得られた凝集粒子の分散液に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム「エマールE−27C」(花王株式会社製、アニオン性界面活性剤、有効濃度27質量%)53g、脱イオン水439g、及び0.1mol/Lの硫酸水溶液30gを混合した水溶液を添加した。その後、73℃まで1時間かけて昇温した後、円形度が0.965になるまで73℃で保持することにより、凝集粒子が融着した融着粒子の分散液を得た。
得られた融着粒子分散液を実施例1と同様に処理してトナー16を得た。得られたトナー粒子の物性及びトナーの評価結果を表5に示す。
実施例1と同様にして、凝集粒子の分散液を得た。
得られた凝集粒子の分散液に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム「エマールE−27C」(花王株式会社製、アニオン性界面活性剤、有効濃度27質量%)53g、脱イオン水439g、及び0.1mol/Lの硫酸水溶液30gを混合した水溶液を添加した。その後、88℃まで1時間かけて昇温した後、円形度が0.965になるまで88℃で保持することにより、凝集粒子が融着した融着粒子の分散液を得た。
得られた融着粒子分散液を実施例1と同様に処理してトナー17を得た。得られたトナー粒子の物性及びトナーの評価結果を表5に示す。
実施例1と同様にして、凝集粒子の分散液を得た。
得られた凝集粒子の分散液に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム「エマールE−27C」(花王株式会社製、アニオン性界面活性剤、有効濃度27質量%)53g、脱イオン水439g、及び0.1mol/Lの硫酸水溶液30gを混合した水溶液を添加した。その後、90℃まで1時間かけて昇温した後、円形度が0.965になるまで90℃で保持することにより、凝集粒子が融着した融着粒子の分散液を得た。
得られた融着粒子分散液を実施例1と同様に処理してトナー18を得た。得られたトナー粒子の物性及びトナーの評価結果を表5に示す。
実施例1において、ワックス粒子分散液D1−1を使用しなかった以外は実施例1と同様にしてトナー52を得た。得られたトナー粒子の物性及びトナーの評価結果を表5に示す。
実施例1において、ワックス粒子分散液D2−1を使用しなかった以外は実施例1と同様にしてトナー53を得た。得られたトナー粒子の物性及びトナーの評価結果を表5に示す。
Claims (11)
- 工程1:水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックスW1由来の構成成分及びポリエステル樹脂セグメントを有する非晶性樹脂Aを含有する樹脂粒子Xを、水性媒体中で、ワックスD1、ワックスD2、及び着色剤の存在下で凝集させて、凝集粒子を得る工程と、
工程2:前記工程1で得られた凝集粒子を融着させる工程と、
を含む、トナーの製造方法であって、
前記ワックスD1の融点Tm1が前記ワックスD2の融点Tm2より低く、且つ、
工程2において凝集粒子を融着させる温度Tは、前記ワックスD1の融点Tm1より10℃低い温度以上、前記ワックスD2の融点Tm2より10℃高い温度以下である、トナーの製造方法。 - 前記工程2において凝集粒子を融着させる温度Tが、前記ワックスD1の融点Tm1より3℃低い温度以上、前記ワックスD2の融点Tm2より3℃高い温度以下である、請求項1に記載のトナーの製造方法。
- 前記工程1を結晶性樹脂Bの存在下で行う、請求項1又は2に記載のトナーの製造方法。
- 前記工程2において凝集粒子を融着させる温度Tが、前記ワックスD1の融点Tm1より1℃低い温度以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記工程2において凝集粒子を融着させる温度Tが、前記ワックスD2の融点Tm2より5℃低い温度以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記ワックスD1の融点Tm1と前記ワックスD2の融点Tm2の差が、10℃以上である、請求項1〜5のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記ワックスD1が、炭化水素ワックスである、請求項1〜6のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記ワックスD2が、炭化水素ワックスである、請求項1〜7のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記結晶性樹脂Bが、炭素数4以上16以下のα、ω−脂肪族ジオールを80モル%以上含む多価アルコール成分と、炭素数8以上16以下の脂肪族飽和ジカルボン酸を80モル%以上含む多価カルボン酸成分とを重縮合して得られる、請求項1〜8のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記着色剤が、着色剤と下記式(1)で表される化合物とを混合して得られる着色剤粒子である、請求項1〜9のいずれかに記載のトナーの製造方法。
〔式中、R1は炭素数1以上12以下のアルカンジイル基であり、mは平均置換数を示し、mの値は1以上4以下であり、R2は水素原子又はメチル基であり、A1Oはオキシアルキレン基を示し、A1はエチレン基又はプロピレン基であり、nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であり、nの値は5以上100以下である。〕 - 水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックスW1由来の構成成分及びポリエステル樹脂セグメントを有する非晶性樹脂Aと、ワックスD1と、ワックスD2と、着色剤とを含み、前記ワックスD1の融点Tm1が前記ワックスD2の融点Tm2より低い、トナー。
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