JP2019031704A - 陽極酸化皮膜およびその製造方法 - Google Patents

陽極酸化皮膜およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 低温かつ短時間で封孔処理することができるとともに、脱色を抑制することができる、色鮮やかで環境にやさしい陽極酸化皮膜およびその製造方法を提供する。【解決手段】 本発明の陽極酸化皮膜の製造方法は、孔を有する陽極酸化皮膜を形成する陽極酸化処理工程と、陽極酸化皮膜の孔を着色する着色工程と、着色した陽極酸化皮膜の孔を、水中で解離したときに陰イオンとなる界面活性剤を含む水溶液に接触させる封孔前処理工程と、界面活性剤に接触させた陽極酸化皮膜の孔をアルカリ性水溶液で封孔する封孔処理工程とを含む。これにより得られる、着色された陽極酸化皮膜は、孔がLiH(AlO2)2・5H2Oおよび/またはAlO(OH)で封孔されており、SCI(SpecularComponentInclude)から算出された色差ΔEが8.9以下である。【選択図】 なし

Description

本発明は、陽極酸化皮膜およびその製造方法に関し、より詳しくは、アルミニウム又はアルミニウム合金部材の表面に施した着色された陽極酸化皮膜およびその製造方法に関する。
従来、アルミニウム又はアルミニウム合金部材の表面を陽極酸化処理することにより、多孔質皮膜である陽極酸化皮膜を形成した後、着色料を含む水溶液に浸漬させることで、陽極酸化皮膜の表面や孔内に着色料を付着させ、陽極酸化皮膜を着色することが行われている。
着色後は色抜け防止として、一般的にはpHが酸性領域の溶液により、孔を化合物で埋める封孔処理が行われる。一般的な封孔処理方法は、80〜100℃の酢酸ニッケル水溶液にアルミ部品を10min以上浸漬する方法であるが、高温かつ長時間の処理を必要とするために、消費エネルギーが大きくコスト削減の観点から問題があった。
それに対して近年、特許文献1に記載されているようなリチウムイオンを含むアルカリ性水溶液を用いることにより、低温かつ短時間で封孔処理を行うことができる技術が開発された。
また、特許文献2では、酢酸ニッケル水溶液を用いて、一般的な封孔処理の温度よりも少し低い温度で封孔処理を行う方法が見出された。この方法は、2価のマンガン塩と、スルホン酸塩型アニオン性界面活性剤及び硫酸エステル塩型アニオン性界面活性剤の中から少なくとも1種のアニオン性界面活性剤を含む水溶液を用いて封孔処理を行う方法である。
この他に、特許文献3として、ニッケル化合物などの有害な化合物を使用しない封孔処理の方法が知られている。この方法は、着色料にて着色した陽極酸化皮膜を水溶性カチオンポリマー水溶液に浸漬した後、マグネシウム塩あるいはカルシウム塩を含む封孔処理液にて封孔処理を行う方法である。この方法では、カチオンポリマーが着色料を皮膜中に固着させる効果をもつことにより、封孔による脱色を抑制することができる。
特開2010−77532号公報 特開2015−4083号公報 特開2010−248545号公報
本発明者らが研究を重ねたところ、特許文献1に記載されたアルカリ性水溶液を用いた封孔処理を、着色した陽極酸化皮膜に適用すると、封孔時に孔内から着色料が抜けて、脱色が起こるという問題があることがわかった。
また、特許文献2に記載された方法では、封孔液温度が65〜95℃であり、一般的な封孔処理の温度よりも若干低いだけであり、エネルギー消費はまだ大きく、また使用するマンガン化合物は有害であるため作業環境上、好ましくないという問題がある。
特許文献3に記載された方法では、ポリマーの水溶液は、重縮合によってポリマー分子量の変化が起こり、安定して生産を行う上で懸念が残る。また、この方法での封孔処理では、処理液を80℃以上に加熱する必要があるためエネルギー消費の観点で課題がある。
このように、陽極酸化皮膜の着色及び封孔処理を行う場合、低温かつ短時間で、脱色が起こらず、エネルギー消費を抑制しつつ、環境にも配慮し、安定して大量生産することができる陽極酸化皮膜の製造方法が求められている。
そこで、本発明は、低温かつ短時間で封孔処理することができるとともに、脱色を抑制することができる、色鮮やかで環境にやさしい陽極酸化皮膜およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、その一態様として、陽極酸化皮膜の製造方法であって、孔を有する陽極酸化皮膜を形成する陽極酸化処理工程と、前記陽極酸化皮膜の前記孔を着色する着色工程と、前記着色した陽極酸化皮膜の孔を、水中で解離したときに陰イオンとなる界面活性剤を含む水溶液に接触させる封孔前処理工程と、前記界面活性剤に接触させた陽極酸化皮膜の孔をアルカリ性水溶液で封孔する封孔処理工程とを含むものである。
前記界面活性剤はアニオン性界面活性剤が好ましい。更に、前記界面活性剤はカルボン酸塩型、スルホン酸塩型、硫酸エステル塩型のアニオン性界面活性剤のうち、いずれか一つ又はこれらの組み合わせがより好ましい。特に、前記界面活性剤はカルボン酸塩型がさらに好ましい。
前記アルカリ性水溶液はリチウムイオンを含んでいるものが好ましい。
前記界面活性剤を含む水溶液の濃度は1g/L以上であってもよい。
前記界面活性剤を含む水溶液の温度は10〜70℃であってもよい。
本発明は、別の態様として、着色された陽極酸化皮膜であって、前記陽極酸化皮膜の孔はLiH(AlO・5HOおよび/またはAlO(OH)で封孔されており、前記着色された陽極酸化皮膜のSCI(SpecularComponentInclude)から算出された色差ΔEは8.9以下である。
本発明によれば、孔を有する陽極酸化皮膜を着色した後、陽極酸化皮膜の孔を、水中で解離したときに陰イオンとなる界面活性剤を含む水溶液に接触させる封孔前処理をし、そして、この界面活性剤に接触させた陽極酸化皮膜の孔をアルカリ性水溶液で封孔する封孔処理を行うことによって、驚くべきことに、封孔処理を短時間、低温で行うことができるアルカリ性水溶液を封孔処理液として用いた場合であっても、封孔処理時において陽極酸化皮膜の孔からの着色料の脱色を抑制でき、良好な外観を得ることができる。
実施例において対照に用いた陽極酸化皮膜の表面を示すSEMの写真である。 実施例において対照に用いた陽極酸化皮膜の断面を示すSEMの写真である。 実施例1にて、封孔前処理液中の界面活性剤の濃度を変化させた場合の色差の変化を示すグラフである。 実施例1における、封孔処理前後の試験片の写真である。 実施例2にて、封孔前処理液への浸漬時間を変化させた場合の色差の変化を示すグラフである。 実施例2における、封孔処理前後の試験片の写真である。 実施例3にて、封孔前処理液の温度を変化させた場合の色差の変化を示すグラフである。
以下、本発明に係る陽極酸化皮膜およびその製造方法の一実施形態について説明する。本実施の形態の製造方法は、孔を有する陽極酸化皮膜を形成する陽極酸化処理工程と、陽極酸化皮膜の孔を着色する着色工程と、着色した陽極酸化皮膜の孔を、水中で解離したときに陰イオンとなる界面活性剤を含む水溶液に接触させる封孔前処理工程と、界面活性剤に接触させた陽極酸化皮膜の孔をアルカリ性水溶液で封孔処理する封孔処理工程とを含むものである。陽極酸化皮膜が形成される被処理物、および上記の各工程について詳細に説明する。
1.被処理物
本発明の陽極酸化皮膜が形成される被処理物は、主に、アルミニウム、またはアルミニウム合金部材であるが、その他の素材であっても同様の効果を期待できる。アルミニウム合金部材として、展伸材、鋳造材、ダイカスト材が挙げられるが特に限定されず、またシリコンや銅などの合金成分についても特に限定しない。また、例えば、シリコン成分比が高いADC12材等で陽極酸化処理した場合、黒っぽい色の皮膜ができるように、含まれる合金成分によっては、陽極酸化処理時に色がついた皮膜ができることから、最終的に作製したい色を考慮の上、材質を選定すればよい。
2.陽極酸化処理工程
次に、陽極酸化処理の条件について説明する。上記被処理物への陽極酸化処理については、陽極酸化処理液中で被処理物を陽極に、チタンやステンレス板などを陰極に配置し、電解処理を行う。これにより被処理物表面に酸化アルミを主成分とした陽極酸化皮膜が生成する。陽極酸化処理液としては、硫酸やシュウ酸、リン酸、クロム酸などの酸性水溶液、または水酸化ナトリウムやリン酸ナトリウム、フッ化ナトリウムなどのアルカリ性水溶液のいずれを用いてもよく、特に限定されない。
陽極酸化皮膜の膜厚については、通常3〜40μmが好ましい。より好ましくは5μm以上であり、20μm以下である。膜厚が3μm以上であることにより、着色料が付着するのに十分な多孔質の皮膜を形成することができ、また、付着する着色料の量を少なくして、薄い色合いとすることができる。逆に膜厚が40μm以下であることにより、皮膜孔内に着色料が多く付着するようにして、濃い色に着色するように調節することができ、このように所望の色合いを得るために適宜調製することができる。
電解処理は、直流電解や交流電解、交直重畳電解、Duty電解などが挙げられるが、特に限定されずいずれの電解方法を用いてもよい。また、陽極酸化処理後は水洗を最低1回行うことが好ましい。水洗を行うことでアルミニウム部品に付着している陽極酸化処理液が除去され、また、除去できなかった処理液が残存していた場合であっても、その濃度が薄くなることで、次工程への混入量を減らすことができる。水洗で用いる水はイオン交換水や純水など不純物が少ない水が好ましいが特に限定されない。
3.着色工程
陽極酸化皮膜の着色は、前記陽極酸化処理した皮膜を、着色料を含む水溶液に浸漬させることで行う。着色料としては陽極酸化皮膜用着色料など一般的に販売されている着色料を用いることができる。着色料と混合する水としては、不純物が少ない水が好ましいが、特に限定されない。着色液の濃度、温度、浸漬時間等の条件は、着色したい色合いによって異なるため、特に限定されない。一般的に、着色料を販売するメーカが色合い毎に好ましい条件を指定しているため、それに従って着色を行えばよい。
4.封孔前処理工程
封孔前処理工程は、前記着色した陽極酸化皮膜を、封孔処理の前処理として界面活性剤を含む水溶液に浸漬することで行う。界面活性剤としては、水中で解離したときに陰イオンとなる界面活性剤を用いる。本発明者らの知見によれば、このような陰イオンとなる界面活性剤によって、陽極酸化皮膜が正から負への荷電の変化を抑制することができると推測される。この界面活性剤としてアニオン性界面活性剤がより好ましい。例えば、カルボン酸塩型、スルホン酸塩型、硫酸エステル塩型などのアニオン性界面活性剤がさらに好ましく、これらを組み合わせてもよい。さらに、界面活性剤としては、松本油脂製薬(株)の商品名ラバノールCKとして市販されているカルボン酸塩型を用いることもできる。
界面活性剤の濃度は、1g/L以上が好ましく、7.5g/L以上がより好ましい。1g/L以上であることによって、皮膜に界面活性剤が付着しやすくなり、封孔時の脱色抑制効果が得られやすくなる。7.5g/L以上であることによって、さらに界面活性剤の孔内への取り込みが多くなり、取り込みができていない孔が実質的になくなることによって、十分に着色料の脱色を抑制できるようになる。また、界面活性剤の濃度は、100g/L以下が好ましい。100g/L以下であることによって、濃度が高くなっても水溶液の撹拌が容易にでき、さらに、持出しによる次工程への混入が少なくなる。
陽極酸化皮膜を封孔前処理液である界面活性剤を含む水溶液に浸漬する時間は特には限定しないが、生産性を考慮すると1〜20分が好ましい。皮膜を浸漬させた際、界面活性剤は素早く皮膜に吸着し、その後は界面活性剤の入れ替わりが起こるだけであり吸着している界面活性剤の量が変化するわけではないため、浸漬時間による影響は見られないからである。
封孔前処理液の温度は10〜70℃が好ましく、生産性や加熱によるエネルギー消費、液濃度の管理を考慮すると20〜50℃がより好ましい。液温が70℃以下であることにより、皮膜の水和反応が抑制されるため、水和反応時に皮膜が溶解する際に付着していた着色料が溶出して脱色することを防ぐことができる。また、水和反応が抑制されることでこの後に行う封孔処理反応を進めやすくすることができる。液温が10℃以上であることによって、封孔前処理が容易にでき、封孔前処理において陽極酸化皮膜の冷却にかかるエネルギー消費量を抑制し、さらには、界面活性剤の種類に関わらず、界面活性剤が凝固したり、析出したりすることを防ぐことができる。
5.封孔処理工程
封孔処理工程は、封孔処理液を陽極酸化皮膜に付着させることで行う。例えば、陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム又はアルミニウム合金部材を、アルカリ性の水溶液に浸漬することや、アルカリ性の水溶液を上記部材にスプレー又は塗布することなどにより封孔処理する。好ましくは、スプレーや塗布で封孔処理する場合であり、これにより部分的に封孔処理することができ、大型部品でも浸漬する必要がないため、大型の槽を必要としないという効果が期待できる。
アルカリ性の水溶液としては、リチウムイオンを含むアルカリ性の水溶液が好ましい。リチウムイオン源となる試薬としては、水酸化リチウムや炭酸リチウム、ケイ酸リチウム、硫酸リチウム、塩化リチウム、リン酸リチウム、およびそれらの水和物などを使用することができる。そのうち、水溶液がアルカリ性で毒性がない水酸化リチウムと炭酸リチウムが好ましい。
封孔処理液のリチウムイオン濃度は、0.02〜20g/Lにする必要があり、好ましくは0.08〜10g/Lである。0.02g/L以上であることによって、封孔反応が短時間で進行し、封孔を行うことができる。20g/L以下であることによって、皮膜の急速な溶解を防ぎ脱色を抑制することができる。
封孔処理液の温度は10〜65℃が好ましく、さらに好ましいのは25〜50℃である。10℃以上であることにより、封孔反応が短時間で進行し、封孔を行うことができる。65℃以下であることにより、過剰な封孔反応を抑制し、皮膜の急速な溶解を防ぐことで脱色を抑制することができる。
処理時間は0.5〜5分が好ましい。0.5分以上であることにより、確実に皮膜の孔を塞ぐことができ高い耐食性をもつ皮膜ができる。5分以下であることにより、皮膜の過剰な溶解を防ぎ脱色を抑制することができる。
封孔処理液のpHは10.5以上にすることが好ましく、より好ましくは11以上、さらに好ましくは12以上である。10.5以上であることにより、封孔反応が起こるようになるため、低温、短時間で封孔処理できる。リチウムイオン源によってpHが異なるため、硫酸やシュウ酸、クロム酸などの酸や、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム、フッ化ナトリウムなどの塩基を用いてpHを調整することができる。
封孔処理後は再び水洗や湯洗を行い、エアブローや乾燥機にて乾燥させることで、皮膜の色調が変化することなく耐食性の高いアルミニウム又はアルミニウム合金部材を作製することができる。
このように、孔を有する陽極酸化皮膜を形成する工程と、陽極酸化皮膜の孔を着色する工程と、着色した陽極酸化皮膜の孔を、水中で解離したときに陰イオンとなる界面活性剤を含む水溶液に接触させる前処理工程と、界面活性剤に接触させた陽極酸化皮膜の孔をアルカリ性水溶液で封孔する工程とを行うことによって、封孔処理を短時間、低温で行うことができるアルカリ性水溶液による封孔処理であっても、封孔処理時における陽極酸化皮膜の孔からの着色料の脱色を抑制でき、良好な外観を得ることができる。
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、実施例および比較例で作製した陽極酸化皮膜について、陽極酸化皮膜の脱色が抑制できたかどうかの判定は、以下の方法にて行った。
[評価方法]
封孔前処理の前と封孔処理の後の陽極酸化皮膜をコニカミノルタ(株)製の分光測色計CM−700dでSCI(正反射光を含む色の測定値)を測定し、封孔前処理の前のSCI値と封孔処理の後のSCI値から色差ΔEを算出した。このΔEの数値が小さいほど色の違いが無い、つまり脱色が起きていないことを示す。本発明において、陽極酸化皮膜の着色後に本発明の封孔前処理を行わずにリチウムイオンを含むアルカリ性水溶液にて封孔処理を行った試験片での値(ΔE=11.9)を基準とし、これと比較して25%以上小さくなっていれば(ΔE=8.9以下)脱色が抑制されていると判断し、50%以上小さくなっていれば(ΔE=6.0以下)より脱色抑制効果が高いと判断した。後述する試験例での評価結果において、ΔE=8.9以下の時は○、ΔE=6.0以下の時は◎、それ以外は効果が無いとして×と記載した。
また、陽極酸化皮膜が封孔されているか確認するため、封孔処理後の陽極酸化皮膜表面を電子顕微鏡にて観察を行った。通常、特許文献1に記載の封孔処理を行うと、陽極酸化皮膜孔内にはLiH(AlO・5HOを主としたリチウムとアルミニウムの化合物や酸化アルミニウムの水和物が生成し、孔内から溢れ出たそれら化合物は皮膜表層にて薄片状の物質を形成する(図1)。さらに陽極酸化皮膜表層付近は封孔反応が特に進行するため、陽極酸化皮膜内におけるセルと呼ばれる柱状の構造体は、陽極酸化皮膜表層付近では、上記化合物で形成された粒状の構造へと変化する(図2)。今回、陽極酸化皮膜表面にこの薄片状の物質が生成しているかどうかで封孔されているか判断を行った。
なお、試験例では色の変化を明確に測定するため、被処理物としてA1050材を用いた。この材質は合金成分をほとんど含んでいないため無色に近い皮膜が作製でき、着色した際の色の変化がわかりやすいため用いたが、他のアルミニウム及びアルミニウム合金材においても同様の結果が得られる。
実施例1:[封孔前処理液濃度の影響調査]
アルミニウム合金A1050材を試験片として用いた。200g/L硫酸浴に試験片を陽極として浸漬し、電流密度1.5A/dmで直流を10分間通電することにより、5μmの陽極酸化皮膜を作製した。その後、奥野製薬工業(株)製の着色料TACRED−SCH(レッド106)を溶解させた10g/Lの水溶液(55℃)を作製し、10分間試験片を浸漬させることで着色を行った。封孔前処理液に添加するアニオン性界面活性剤としては松本油脂製薬(株)のラバノールCKを使用し、濃度が0.1〜30g/Lになるように水溶液を作製した。この封孔前処理液の温度は25℃で固定し、この中に試験片を10分間浸漬した。その後、リチウムイオンを1.6g/L含むpH13、25℃の封孔処理液に試験片を1分浸漬し、封孔処理を行った。
封孔前処理の前の試験片と封孔処理の後の試験片を分光測色計にて測定し色差ΔEを算出した。結果を表1、図3に示す。界面活性剤の濃度が1g/L以上の時色差ΔEが25%以上小さくなり、7.5g/L以上の時50%以上小さい値となった。一方で、界面活性剤の濃度が1g/Lよりも小さい場合は皮膜中に界面活性剤成分を十分に付着させることができず、封孔時に脱色が大きくなった。また、いずれの濃度においても皮膜は封孔されていることを確認した。
また、本実施例において、界面活性剤の濃度を0.1g/Lとしたときの試験片の脱色判定を目視で行った。結果を図4に示す。封孔前処理の前と比べて、封孔処理の後では着色料が脱色していることが分かる。
実施例2:[封孔前処理液への浸漬時間の影響調査]
アルミニウム合金A1050材を試験片として用いた。200g/L硫酸浴に試験片を陽極として浸漬し、電流密度1.5A/dmで直流を10分間通電することにより、5μmの陽極酸化皮膜を作製した。その後、奥野製薬工業(株)製の着色料TACRED−SCH(レッド106)を溶解させた10g/Lの水溶液(55℃)を作製し、10分間試験片を浸漬させることで着色を行った。封孔前処理液に添加するアニオン性界面活性剤としては松本油脂製薬(株)のラバノールCKを使用し、濃度が10g/Lになるように水溶液を作製した。この前処理液の温度は25℃で固定し、この中に試験片を1〜20分間浸漬した。その後、リチウムイオンを1.6g/L含むpH13、25℃の封孔処理液に試験片を1分浸漬し、封孔処理を行った。
封孔前処理の前の試験片と封孔処理の後の試験片を分光測色計にて測定し色差ΔEを算出した。結果を表2、図5に示す。いずれの浸漬時間においても色差は50%以上小さくなり、封孔もされていることを確認できた。このことから、皮膜中に素早く界面活性剤が付着するため、前処理液への浸漬時間は本発明の効果に影響しないことがわかった。なお、工業的な生産の場合、部品を取付けた治具を機械にて搬送することが多いため素早い動きが難しく、最低でも1分浸漬を行うことが好ましい。
また、本実施例において、界面活性剤への浸漬時間を7分間としたときの試験片の脱色判定を目視で行った。結果を図6に示す。封孔前処理の前と比べて、封孔処理の後では着色料の脱色が抑制されていることが分かる。
実施例3:[封孔前処理液の温度の影響調査]
アルミニウム合金A1050材を試験片として用いた。200g/L硫酸浴に試験片を陽極として浸漬し、電流密度1.5A/dmで直流を10分間通電することにより、5μmの陽極酸化皮膜を作製した。その後、奥野製薬工業(株)製の着色料TACRED−SCH(レッド106)を溶解させた10g/Lの水溶液(55℃)を作製し、10分間試験片を浸漬させることで着色を行った。封孔前処理液に添加するアニオン性界面活性剤としては松本油脂製薬(株)のラバノールCKを使用し、濃度が10g/Lになるように水溶液を作製した。この前処理液の温度を10〜80℃で変化させ、その中に試験片を10分浸漬した。その後、リチウムイオンを1.6g/L含むpH13、25℃の封孔処理液に試験片を1分浸漬し、封孔処理を行った。
封孔前処理の前の試験片と封孔処理の後の試験片を分光測色計にて測定し色差ΔEを算出した。結果を表3、図7に示す。封孔前処理液の温度が10〜70℃のとき色差は25%以上小さくなり、また、10〜55℃のときは50%以上小さくなることがわかった。液温が70℃を超えると皮膜の水和反応(皮膜の溶解)が起こることで脱色やその後の封孔処理に悪い影響が生じた。前処理液の冷却には大きなエネルギーを消費し、また、界面活性剤の種類によっては凝固したり析出したりしやすくなるため10℃以上が好ましい。
実施例4:[界面活性剤の種類による影響]
アルミニウム合金A1050材を試験片として用いた。200g/L硫酸浴に試験片を陽極として浸漬し、電流密度1.5A/dmで直流を10分間通電することにより、5μmの陽極酸化皮膜を作製した。その後、奥野製薬工業(株)製の着色料TACRED−SCH(レッド106)を溶解させた10g/Lの水溶液(55℃)を作製し、10分間試験片を浸漬させることで着色を行った。封孔前処理液に添加する界面活性剤をアニオン性界面活性剤としては松本油脂製薬(株)のラバノールCK、ノニオン性界面活性剤としては松本油脂製薬(株)のマーポンDPE−0828、両性界面活性剤としては松本油脂製薬(株)のマーポビスターMLSの3種類を使用し、それぞれ濃度が10g/Lになるように水溶液を作製した。この前処理液の温度を25℃で固定し、その中に試験片を10分浸漬した。その後、リチウムイオンを1.6g/L含むpH13、25℃の封孔処理液に試験片を1分浸漬し、封孔処理を行った。
封孔前処理の前の試験片と封孔処理の後の試験片を分光測色計にて測定し色差ΔEを算出した。結果を表4に示す。アニオン性界面活性剤を使用した際にのみ色差は50%以上小さくなり、ノニオン性界面活性剤や両性界面活性剤では効果はないことがわかった。アニオン性界面活性剤は陽極酸化皮膜が正から負への荷電の変化を抑制することができ脱色を抑制できるが、ノニオン性界面活性剤や両性界面活性剤ではアルマイト皮膜に変化を与えず脱色抑制効果が得られない。

Claims (8)

  1. 孔を有する陽極酸化皮膜を形成する陽極酸化処理工程と、
    前記陽極酸化皮膜の前記孔を着色する着色工程と、
    前記着色した陽極酸化皮膜の孔を、水中で解離したときに陰イオンとなる界面活性剤を含む水溶液に接触させる封孔前処理工程と、
    前記界面活性剤に接触させた陽極酸化皮膜の孔をアルカリ性水溶液で封孔する封孔処理工程と
    を含む陽極酸化皮膜の製造方法。
  2. 前記界面活性剤がアニオン性界面活性剤である、請求項1に記載の陽極酸化皮膜の製造方法。
  3. 前記界面活性剤がカルボン酸塩型、スルホン酸塩型、硫酸エステル塩型のアニオン性界面活性剤のうち、いずれか一つ又はこれらの組み合わせからなる界面活性剤である、請求項1に記載の陽極酸化皮膜の製造方法。
  4. 前記界面活性剤がカルボン酸塩型である、請求項1に記載の陽極酸化皮膜の着色及び封孔処理方法。
  5. 前記アルカリ性水溶液がリチウムイオンを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の陽極酸化皮膜の製造方法。
  6. 前記界面活性剤を含む水溶液の濃度が1g/L以上である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の陽極酸化皮膜の製造方法。
  7. 前記界面活性剤を含む水溶液の温度が10〜70℃である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の陽極酸化皮膜の製造方法。
  8. 着色された陽極酸化皮膜であって、前記陽極酸化皮膜の孔がLiH(AlO・5HOおよび/またはAlO(OH)で封孔されており、前記着色された陽極酸化皮膜のSCI(SpecularComponentInclude)から算出された色差ΔEが8.9以下である、陽極酸化皮膜。

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