JP2019026826A - 樹脂組成物及び成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】加硫速度に優れ、柔軟性、引裂強度、引張特性、ドライグリップ性能及びウェットグリップ性能のバランスに優れた樹脂組成物及び当該樹脂組成物の成形体を提供する。【解決手段】特定の水添ブロック共重合体(I)及び架橋剤(II)を含有し、ポリオレフィン系樹脂を含有しないか又は前記水添ブロック共重合体(I)100質量部に対するポリオレフィン系樹脂の含有量が10質量部未満である、樹脂組成物及び当該樹脂組成物の成形体である。【選択図】なし

Description

本発明は、ファルネセン由来の構造単位を有するブロック共重合体の水添ブロック共重合体及び架橋剤を少なくとも含有する樹脂組成物、並びに当該樹脂組成物の成形体に関する。
スチレン系エラストマーやオレフィン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーを各種ゴムと混合したゴム組成物は、優れた機械的特性及び柔軟性等から、履物用靴底、各種タイヤ、パッキン等の建材、機械部品等の幅広い分野で使用されている。しかし、熱可塑性エラストマーを含むゴム組成物は、水分が付着することにより滑りやすくなり、特に履物用靴底や各種タイヤ等の用途では高い危険性を伴うため問題となる。
そこで、熱可塑性エラストマー及びゴム成分を含むゴム組成物のウェットグリップ性能を向上させるために検討が行われている。
例えば、熱可塑性エラストマーの数平均分子量やゴム成分のガラス転移温度を特定し、あるいは粘着付与樹脂や水添ブロック共重合体を含有させた樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1〜8)。
米国特許出願公開第2013/0086822号明細書 国際公開第2006/121069号 特開2017−39819号公報 特開2016−210937号公報 特開2014−189697号公報 特開2014−520017号公報 特開2004−75882号公報 特開2003−292672号公報
しかしながら、特許文献1〜8に開示された技術では柔軟性、引裂強度、引張特性、ドライグリップ性能及びウェットグリップ性能のバランスに優れた樹脂組成物とすることができず、また加硫速度についても十分なものではないことから、これらについて更なる改善が求められている。更に、特許文献1〜8には、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含む重合体ブロックと、ファルネセン由来の構造単位を含有する重合体ブロックとを含むブロック共重合体及びその水素添加物について記載はない。
そこで本発明は、加硫速度(Tc90)に優れ、柔軟性、引裂強度、引張特性、ドライグリップ性能及びウェットグリップ性能のバランスに優れた樹脂組成物及び当該樹脂組成物の成形体を提供することを課題とする。
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは特定の水添ブロック共重合体及び架橋剤を含有する樹脂組成物が、当該課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]水添ブロック共重合体(I)及び架橋剤(II)を含有し、
ポリオレフィン系樹脂を含有しないか又は前記水添ブロック共重合体(I)100質量部に対するポリオレフィン系樹脂の含有量が10質量部未満である、樹脂組成物であって、
前記水添ブロック共重合体(I)が、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(A)と、ファルネセン由来の構造単位(b1)を含有する重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体(P)について、前記ブロック共重合体(P)中の共役ジエン由来の構造単位における炭素−炭素二重結合を50モル%以上水素添加した水素添加物である、樹脂組成物。
[2]上記[1]に記載の樹脂組成物の成形体。
[3]上記[1]に記載の樹脂組成物を少なくとも一部に用いた、靴底。
本発明によれば、加硫速度(Tc90)に優れ、柔軟性、引裂強度、引張特性、ドライグリップ性能及びウェットグリップ性能のバランスに優れた樹脂組成物及び当該樹脂組成物の成形体を提供することができる。
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、
水添ブロック共重合体(I)及び架橋剤(II)を含有し、
ポリオレフィン系樹脂を含有しないか又は前記水添ブロック共重合体(I)100質量部に対するポリオレフィン系樹脂の含有量が10質量部未満である樹脂組成物であって、
前記水添ブロック共重合体(I)が、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(A)と、ファルネセン由来の構造単位(b1)を含有する重合体ブロック(B)と含むブロック共重合体(P)について、前記ブロック共重合体(P)中の共役ジエン由来の構造単位における炭素−炭素二重結合を50モル%以上水素添加した水素添加物である。
[水添ブロック共重合体(I)]
本発明の樹脂組成物は、水素添加ブロック共重合体(I)を含有することにより、柔軟性が良好となり、優れた引張特性、ドライグリップ性能及びウェットグリップ性能(以下、単に「グリップ性能」と略記することがある。)を発現することができる。
(重合体ブロック(A))
重合体ブロック(A)は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含有する。かかる芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N−ジエチル−4−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、4−メトキシスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン及びジビニルベンゼン等が挙げられる。これらの芳香族ビニル化合物は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。これらの中でも、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。
重合体ブロック(A)は、芳香族ビニル化合物以外の単量体、例えば、後述する重合体ブロック(B)を構成する単量体等のその他の単量体に由来する構造単位を含有してもよい。ただし、重合体ブロック(A)中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上がより更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
また、水添ブロック共重合体(I)中の重合体ブロック(A)の含有量は、好ましくは10〜45質量%であり、より好ましくは10〜40質量%であり、更に好ましくは10〜30質量%であり、より更に好ましくは15〜25質量%である。上記含有量が10質量%以上であれば樹脂組成物の成形加工性が良好となり、引裂強度、引張特性、及びグリップ性能も好適なものとすることができる。また、上記含有量が45質量%以下であれば十分な柔軟性を得ることができ、良好な成形加工性、引張特性、及びグリップ性能を発現することができる。
(重合体ブロック(B))
重合体ブロック(B)は、ファルネセン由来の構造単位(b1)(以下、単に「構造単位(b1)」ともいう)を含有する。
上記ファルネセンとしては、α−ファルネセン、又は下記式(1)で表されるβ−ファルネセンのいずれでもよいが、ブロック共重合体(P)の製造容易性の観点から、β−ファルネセンが好ましい。なお、α−ファルネセンとβ−ファルネセンとは組み合わせて用いてもよい。

重合体ブロック(B)中のファルネセン由来の構造単位(b1)の含有量は、好ましくは1〜100質量%である。重合体ブロック(B)がファルネセンに由来する構造単位(b1)を含有することにより、柔軟性が良好となり、グリップ性能に優れる。当該観点から、重合体ブロック(B)中のファルネセン由来の構造単位(b1)の含有量は、当該観点から、重合体ブロック(B)中のファルネセン由来の構造単位(b1)の含有量は、10〜100質量%がより好ましく、20〜100質量%が更に好ましく、30〜100質量%がより更に好ましく、50〜100質量%が特に好ましく、100質量%であること、すなわち重合体ブロック(B)は構造単位(b1)からなることが最も好ましい。
また、ファルネセンがバイオ由来である場合には、石油由来のブタジエン、イソプレンといったファルネセン以外の共役ジエンの使用量を抑制し、石油依存度を低減することができる。当該観点からは、重合体ブロック(B)中のファルネセン由来の構造単位(b1)の含有量は、50〜100質量%が好ましく、60〜100質量%がより好ましく、70〜100質量%が更に好ましく、80〜100質量%がより更に好ましい。
また、重合体ブロック(B)中に後述する構造単位(b2)を含有する場合、重合体ブロック(B)中のファルネセン由来の構造単位(b1)の含有量は1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、30質量%以上がより更に好ましく、50質量%以上が特に好ましい。
重合体ブロック(B)は、ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)(以下、単に「構造単位(b2)」ともいう)を含有してもよく、重合体ブロック(B)中の構造単位(b2)の含有量は、0〜99質量%であることが好ましい。
かかる共役ジエンとしては、例えばイソプレン、ブタジエン、2,3−ジメチル−ブタジエン、2−フェニル−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3,7−オクタトリエン、ミルセン及びクロロプレン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。これらの中でも、イソプレン、ブタジエン及びミルセンが好ましく、イソプレン、ブタジエンがより好ましい。
重合体ブロック(B)中に構造単位(b2)を含有する場合、構造単位(b2)の含有量は、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましく、70質量%以下がより更に好ましく、50質量%以下が特に好ましい。
重合体ブロック(B)は、構造単位(b1)及び構造単位(b2)以外のその他の構造単位を含有してもよい。重合体ブロック(B)中の構造単位(b1)及び構造単位(b2)の合計含有量は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%が更に好ましい。
(重合体ブロック(C))
ブロック共重合体(P)は、前述の重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)に加えて、更にファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(c2)を含有する重合体ブロック(C)を含むことが好ましい。
重合体ブロック(C)は、ファルネセン由来の構造単位(c1)の含有量が0質量%以上かつ1質量%未満であり、ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(c2)の含有量が1〜100質量%である重合体ブロックであることがより好ましい。
ファルネセン由来の構造単位(c1)(以下、単に「構造単位(c1)」ともいう)を構成するファルネセン、及びファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(c2)(以下、単に「構造単位(c2)」ともいう)を構成する共役ジエンは、前述のファルネセン由来の構造単位(b1)を構成するファルネセン及びファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)を構成する共役ジエンと同様のものが挙げられる。
ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(c2)を構成する共役ジエンとしては、それらの中でも、イソプレン、ブタジエン及びミルセンが好ましく、イソプレン及びブタジエンがより好ましい。
重合体ブロック(C)中におけるファルネセン由来の構造単位(c1)の含有量は、0質量%であることが好ましい。
重合体ブロック(C)中におけるファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(c2)の含有量は、60〜100質量%がより好ましく、80〜100質量%が更に好ましく、90〜100質量%がより更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。構造単位(c2)を含む重合体ブロック(C)を用いることにより、ブロック共重合体(P)は前述の構造単位(b1)及び構造単位(c2)の異なる共役ジエンを有することになり、当該ブロック共重合体の水添ブロック共重合体を後述する架橋剤(II)により架橋しても、優れた引張特性を維持しつつ引裂強度を発現することができ、引張特性と引裂強度の両立を図ることができる。
また、重合体ブロック(C)は、ファルネセン由来の構造単位(c1)及びファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(c2)以外の他の構造単位を含んでいてもよい。
重合体ブロック(C)中における構造単位(c1)及び構造単位(c2)の合計含有量は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%が更に好ましい。
(結合形態)
水添ブロック共重合体(I)は、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)をそれぞれ少なくとも1個含むブロック共重合体(P)の水素添加物である。
重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)の結合形態は特に制限されず、直線状、分岐状、放射状又はそれらの2つ以上の組み合わせであってもよい。これらの中でも、各ブロックが直線状に結合した形態が好ましい。
直線状の結合形態としては、重合体ブロック(A)をA、重合体ブロック(B)をBで表したときに、(A−B)l、A−(B−A)m、又はB−(A−B)nで表される結合形態等を例示することができる。なお、前記l、m及びnはそれぞれ独立して1以上の整数を表す。
ブロック共重合体(P)が、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)をそれぞれ少なくとも1個含む場合、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)、重合体ブロック(A)の順にブロックを有する結合形態であって、A−B−Aで表されるトリブロック共重合体であることが好ましい。
すなわち、水添ブロック共重合体(I)は、A−B−Aで表されるトリブロック共重合体の水素添加物であることが好ましい。
ブロック共重合体(P)が、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)を含む場合、水添ブロック共重合体(I)は、少なくとも1個の重合体ブロック(B)を末端に有するブロック共重合体(P)の水素添加物であることが好ましい。少なくとも1個の重合体ブロック(B)がポリマー鎖の末端にあることにより成形加工性が向上する。当該観点から、水添ブロック共重合体(I)が直線状である場合は、その両末端に重合体ブロック(B)を有することがより好ましい。また、水添ブロック共重合体(I)が分岐状、又は放射状である場合、末端に存在する重合体ブロック(B)の数は、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましい。
また、ブロック共重合体(P)は、少なくとも2個の重合体ブロック(A)、少なくとも1個の重合体ブロック(B)、及び少なくとも1個の重合体ブロック(C)を含むブロック共重合体であることが好ましく、少なくとも2個の重合体ブロック(A)、少なくとも1個の重合体ブロック(B)、及び少なくとも1個の重合体ブロック(C)を含有し、かつ少なくとも1個の重合体ブロック(B)を末端に有することがより好ましい。
ブロック共重合体(P)が、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)を含む場合、複数の重合体ブロックの結合形態は特に制限されず、直線状、分岐状、放射状又はそれらの2つ以上の組み合わせであってもよい。これらの中でも、各ブロックが直線状に結合した形態が好ましい。
ブロック共重合体(P)は、重合体ブロック(B)、重合体ブロック(A)、及び重合体ブロック(C)の順にブロックを有する構造(すなわち、B−A−Cの構造)であることが好ましい。
具体的には、ブロック共重合体(P)は、B−A−C−Aで表されるテトラブロック共重合体、B−A−C−A−Bで表されるペンタブロック共重合体、B−A−(C−A)p−B、B−A−(C−A−B)q、B−(A−C−A−B)r(p、q、rはそれぞれ独立して2以上の整数を表す)で表される共重合体であることが好ましく、中でもB−A−C−A−Bで表されるペンタブロック共重合体であることがより好ましい。
すなわち、水添ブロック共重合体(I)は、B−A−C−A−Bで表されるペンタブロック共重合体の水素添加物であることが好ましい。
ここで、本明細書においては、同種の重合体ブロックが2価のカップリング剤等を介して直線状に結合している場合、結合している重合体ブロック全体は一つの重合体ブロックとして取り扱われる。これに従い、本来厳密にはA−X−A(Xはカップリング剤残基を表す)と表記されるべき重合体ブロックは、全体としてAと表示される。本明細書においては、カップリング剤残基を含むこの種の重合体ブロックを上記のように取り扱うので、例えば、カップリング剤残基を含み、厳密にはB−A−C−X−C−A−Bと表記されるべきブロック共重合体は、B−A−C−A−Bと表記され、ペンタブロック共重合体の一例として取り扱われる。
また、上述のブロック共重合体(P)における2個以上の重合体ブロック(A)は、それぞれ同じ構造単位からなる重合体ブロックであっても、異なる構造単位からなる重合体ブロックであってもよい。同様に、ブロック共重合体(P)が、重合体ブロック(B)を2個以上又は重合体ブロック(C)を2個以上有する場合には、それぞれの重合体ブロックは、同じ構造単位からなる重合体ブロックであっても、異なる構造単位からなる重合体ブロックであってもよい。例えば、A−B−Aで表されるトリブロック共重合体における2個の重合体ブロック(A)において、それぞれの芳香族ビニル化合物は、その種類が同じであっても異なっていてもよい。
ブロック共重合体(P)が、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)を含み、重合体ブロック(C)を含まない場合、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との質量比[(A)/(B)]は、1/99〜70/30であり、5/95〜60/40が好ましく、10/90〜50/50がより好ましく、15/85〜40/60が更に好ましく、15/85〜35/65がより更に好ましい。当該範囲内であると、柔軟性に優れ、優れたグリップ性能を有する樹脂組成物を得ることができる。
ブロック共重合体(P)が、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)を含む場合、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との質量比[(A)/(B)]は、1/99〜70/30であり、5/95〜60/40が好ましく、10/90〜50/50がより好ましく、20/80〜40/60が更に好ましく、25/75〜35/65がより更に好ましい。当該範囲内であると、柔軟性に優れ、優れたグリップ性能を有する樹脂組成物を得ることができる。
ブロック共重合体(P)において、重合体ブロック(A)と、重合体ブロック(B)と重合体ブロック(C)との合計量との質量比[(A)/((B)+(C))]は、1/99〜70/30が好ましい。当該範囲内であると、優れた引張特性、成形加工性及びグリップ性能を有する樹脂組成物を得ることができる。当該観点から、当該質量比[(A)/((B)+(C))]は、1/99〜60/40がより好ましく、10/90〜40/60が更に好ましく、10/90〜30/70がより更に好ましく、15/85〜25/75がより更に好ましい。
ブロック共重合体(P)が、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)を含む場合、ブロック共重合体(P)中の重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)の合計量に対する構造単位(b1)及び構造単位(c1)の合計含有量[((b1)+(c1))/((B)+(C))]は、柔軟性、引張特性及びグリップ性能に優れる観点から、40〜90質量%が好ましく、50〜80質量%がより好ましく、60〜70質量%が更に好ましい。
ブロック共重合体(P)が、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)を含み、重合体ブロック(C)を含まない場合、ブロック共重合体(P)中における、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)の合計含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、100質量%がより更に好ましい。
また、ブロック共重合体(P)が、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)を含む場合、ブロック共重合体(P)中における、これら重合体ブロック(A)〜(C)の合計含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、100質量%がより更に好ましい。
水添ブロック共重合体(I)のより好ましい態様の一例としては、柔軟性、引裂強度、引張特性及びグリップ性能の観点から、
・重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)を含むブロック共重合体(P)の水素添加物であり、
・重合体ブロック(C)が、ファルネセン由来の構造単位(c1)の含有量が0質量%以上かつ1質量%未満であり、ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(c2)の含有量が1〜100質量%である重合体ブロックであり、
・重合体ブロック(A)と、重合体ブロック(B)と重合体ブロック(C)の合計量との質量比[(A)/((B)+(C))]が10/90〜30/70であり、
・ブロック共重合体(P)が、少なくとも2個の前記重合体ブロック(A)、少なくとも1個の前記重合体ブロック(B)、及び少なくとも1個の重合体ブロック(C)を含み、かつ少なくとも1個の重合体ブロック(B)を末端に有し、
・ブロック共重合体(P)中の共役ジエン由来の構成単位における炭素−炭素二重結合の水素添加率が50モル%以上である。
(他の単量体で構成される重合体ブロック)
水添ブロック共重合体(I)は、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)のほか、本発明の効果を阻害しない限り、他の単量体で構成される重合体ブロックを含有していてもよい。
かかる他の単量体としては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン等の不飽和炭化水素化合物;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2−アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタクリロイルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、酢酸ビニル、メチルビニルエーテル等の官能基含有不飽和化合物;等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
水添ブロック共重合体(I)が他の重合体ブロックを有する場合、その含有量は10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
(水添ブロック共重合体(I)の製造方法)
水添ブロック共重合体(I)は、例えば重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)を含有するブロック共重合体(P)、あるいは重合体ブロック(C)を含む場合には重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)を含有するブロック共重合体(P)を、アニオン重合により得る重合工程、並びに当該ブロック共重合体(P)中の共役ジエン由来の構造単位における炭素−炭素二重結合を水素添加する工程により好適に製造できる。
〈重合工程〉
ブロック共重合体(P)は、溶液重合法又は特表2012−502135号公報、特表2012−502136号公報に記載の方法等により製造することができる。これらの中でも溶液重合法が好ましく、例えば、アニオン重合やカチオン重合等のイオン重合法、ラジカル重合法等の公知の方法を適用できる。これらの中でもアニオン重合法が好ましい。アニオン重合法としては、溶媒、アニオン重合開始剤、及び必要に応じてルイス塩基の存在下、芳香族ビニル化合物、ファルネセン及び/又はファルネセン以外の共役ジエンを逐次添加して、ブロック共重合体(P)を得る。
アニオン重合開始剤としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;ランタン、ネオジム等のランタノイド系希土類金属;前記アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド系希土類金属を含有する化合物等が挙げられる。中でもアルカリ金属及びアルカリ土類金属を含有する化合物が好ましく、有機アルカリ金属化合物がより好ましい。
前記有機アルカリ金属化合物としては、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム、ジリチオメタン、ジリチオナフタレン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン等の有機リチウム化合物;ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン等が挙げられる。中でも有機リチウム化合物が好ましく、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムがより好ましく、sec−ブチルリチウムが更に好ましい。なお、有機アルカリ金属化合物は、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン等の第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミドとして用いてもよい。
重合に用いる有機アルカリ金属化合物の使用量は、ブロック共重合体(P)の分子量によっても異なるが、通常、芳香族ビニル化合物、ファルネセン及びファルネセン以外の共役ジエンの総量に対して0.01〜3質量%の範囲である。
溶媒としてはアニオン重合反応に悪影響を及ぼさなければ特に制限はなく、例えば、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の飽和脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量には特に制限はない。
ルイス塩基はファルネセン由来の構造単位及びファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位におけるミクロ構造を制御する役割がある。かかるルイス塩基としては、例えばジブチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;ピリジン;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン等の3級アミン;カリウムt−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物等が挙げられる。ルイス塩基を使用する場合、その量は、通常、アニオン重合開始剤1モルに対して0.01〜1000モル当量の範囲であることが好ましい。
重合反応の温度は、通常、−80〜150℃程度、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃の範囲である。重合反応の形式は回分式でも連続式でもよい。重合反応系中の芳香族ビニル化合物、ファルネセン及び/又はファルネセン以外の共役ジエンの存在量が特定範囲になるように、重合反応液中に各単量体を連続的あるいは断続的に供給するか、又は重合反応液中で各単量体が特定比となるように順次重合することで、ブロック共重合体(P)を製造できる。
重合反応は、メタノール、イソプロパノール等のアルコールを重合停止剤として添加して停止できる。得られた重合反応液をメタノール等の貧溶媒に注いでブロック共重合体(P)を析出させるか、重合反応液を水で洗浄し、分離後、乾燥することによりブロック共重合体(P)を単離できる。
水添ブロック共重合体(I)は、前述のとおり、重合体ブロック(B)、重合体ブロック(A)、及び重合体ブロック(C)をこの順に有する構造を含むことが好ましい。したがって、重合体ブロック(B)、重合体ブロック(A)、及び重合体ブロック(C)をこの順に製造することによりブロック共重合体(P)を得る工程、及び得られたブロック共重合体(P)を水素添加する工程を含む方法により製造することがより好ましい。
なお、前記水添ブロック共重合体(I)が、ポリマー鎖の片末端にのみ重合体ブロック(B)を有する場合には、直線状に結合するように他の各重合体ブロックを重合させた後で、最後に重合体ブロック(B)を製造する方法により得てもよい。
水添ブロック共重合体(I)は、少なくとも2個の重合体ブロック(A)、少なくとも1個の重合体ブロック(B)、及び少なくとも1個の重合体ブロック(C)を含み、かつ少なくとも1個の重合体ブロック(B)を末端に有するブロック共重合体(P)の水素添加物である場合、ブロック共重合体(P)を製造する方法としては、
〔i〕重合体ブロック(B)、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(C)、及び重合体ブロック(A)をこの順に重合する方法、及び
〔ii〕重合体ブロック(B)、重合体ブロック(A)、及び重合体ブロック(C)をこの順に重合し、重合体ブロック(C)の末端同士を、カップリング剤を用いてカップリングすることにより製造する方法、等が挙げられる。
本発明においては、効率的に製造する観点から、カップリング剤を用いる後者の方法〔ii〕が好ましい。
前記カップリング剤としては、例えば、ジビニルベンゼン;エポキシ化1,2−ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の多価エポキシ化合物;四塩化錫、テトラクロロシラン、トリクロロシラン、トリクロロメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、ジブロモジメチルシラン等のハロゲン化物;安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル等のエステル化合物;炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル等の炭酸エステル化合物;ジエトキシジメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)シラン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物;2,4−トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
本重合工程では、前記のように未変性のブロック共重合体を得てもよいが、以下のように変性したブロック共重合体を得てもよい。
変性したブロック共重合体の場合、後述の水素添加工程の前に、前記ブロック共重合体を変性してもよい。導入可能な官能基としては、例えばアミノ基、アルコキシシリル基、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、メルカプト基、イソシアネート基、酸無水物基等が挙げられる。
ブロック共重合体の変性方法としては、例えば、重合停止剤を添加する前に、重合活性末端と反応し得る四塩化錫、テトラクロロシラン、ジクロロジメチルシラン、ジメチルジエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、2,4−トリレンジイソシアネート等のカップリング剤や、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N−ビニルピロリドン等の重合末端変性剤、又は特開2011−132298号公報に記載のその他の変性剤を添加する方法が挙げられる。また、単離後の共重合体に無水マレイン酸等をグラフト化して用いることもできる。
官能基が導入される位置はブロック共重合体の重合末端でも、側鎖でもよい。また上記官能基は1種又は2種以上を組み合わせてもよい。上記変性剤は、アニオン重合開始剤1モルに対して、0.01〜10モル当量の範囲であることが好ましい。
〈水素添加工程〉
前記方法により得られたブロック共重合体(P)又は変性されたブロック共重合体を水素添加する工程に付すことにより、水添ブロック共重合体(I)を得ることができる。
水素添加する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、水素添加反応に影響を及ぼさない溶媒にブロック共重合体(P)を溶解させた溶液に、チーグラー系触媒;カーボン、シリカ、けいそう土等に担持されたニッケル、白金、パラジウム、ルテニウム又はロジウム金属触媒;コバルト、ニッケル、パラジウム、ロジウム又はルテニウム金属を有する有機金属錯体等を、水素添加触媒として存在させて水素化反応を行う。
水素添加工程においては、前記したブロック共重合体(P)の製造方法によって得られたブロック共重合体(P)を含む重合反応液に水素添加触媒を添加して水素添加反応を行ってもよい。本発明において水素添加触媒は、パラジウムをカーボンに担持させたパラジウムカーボンが好ましい。
水素添加反応において、水素圧力は0.1〜20MPaが好ましく、反応温度は100〜200℃が好ましく、反応時間は1〜20時間が好ましい。
水添ブロック共重合体(I)は、ブロック共重合体(P)中の共役ジエン由来の構造単位における炭素−炭素二重結合を50モル%以上水素添加した水素添加物である。水素添加率は、耐熱性、耐候性、及び架橋をして優れた引裂強度を発現させる観点から、50〜98モル%が好ましく、70〜97モル%がより好ましく、80〜96モル%が更に好ましく、85〜96モル%がより更に好ましく、90〜96モル%が特に好ましい。
なお、上記水素添加率はブロック共重合体(P)中に存在する全ての共役ジエン由来の構造単位における炭素−炭素二重結合の水素添加率である。
ブロック共重合体(P)中に存在する共役ジエン由来の構造単位における炭素−炭素二重結合としては、例えば、重合体ブロック(B)中の共役ジエン由来の構造単位における炭素−炭素二重結合が挙げられ、またブロック共重合体(P)が更に重合体ブロック(C)を含有する場合は、重合体ブロック(B)中及び重合体ブロック(C)中の共役ジエン由来の構造単位における炭素−炭素二重結合が挙げられる。
ブロック共重合体(P)が重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)を含有する場合、重合体ブロック(B)と重合体ブロック(C)との共役ジエン由来の構造単位における炭素−炭素二重結合の水素添加率は異なることが好ましい。上記水素添加率が異なることによって、後述する架橋剤(II)による架橋度合いが重合ブロック(B)及び(C)ごとに異なるものとなり、これによって水添ブロック共重合体(I)中に硬柔の異なる部分を存在させ、引裂強度や引張特性等の優れた効果を発現させることができると考えられる。また、顕著に優れた引張特性を発現させる観点から、重合体ブロック(B)よりも重合体ブロック(C)の上記水素添加率が高い方がより好ましい。
水添ブロック共重合体(I)中の重合体ブロック(B)の共役ジエン由来の構造単位における炭素−炭素二重結合の水素添加率は、好ましくは50〜98モル%であり、より好ましくは50〜95モル%であり、更に好ましくは60〜95モル%であり、より更に好ましくは70〜95モル%であり、特に好ましくは80〜95モル%である。
ブロック共重合体(P)が重合体ブロック(C)を含有する場合、水添ブロック共重合体(I)中の重合体ブロック(C)の共役ジエン由来の構造単位における炭素−炭素二重結合の水素添加率は、好ましくは95〜99.9モル%であり、より好ましくは96〜99.5モル%であり、更に好ましくは97〜99.5モル%である。
なお、水素添加率は、ブロック共重合体(P)及び水素添加後の水添ブロック共重合体(I)のH−NMRを測定することにより算出できる。
水添ブロック共重合体(I)のピークトップ分子量(Mp)は、成形加工性の観点から4,000〜1,500,000が好ましく、9,000〜1,000,000がより好ましく、30,000〜800,000が更に好ましく、50,000〜500,000がより更に好ましい。
水添ブロック共重合体(I)の分子量分布(Mw/Mn)は1〜6が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜3が更に好ましく、1〜2がより更に好ましい。分子量分布が前記範囲内であると、水添ブロック共重合体(I)の粘度のばらつきが小さく、取り扱いが容易である。
なお、本明細書におけるピークトップ分子量(Mp)及び分子量分布(Mw/Mn)は後述する実施例に記載した方法で測定した値を意味する。
重合体ブロック(A)のピークトップ分子量は、成形加工性の観点から、2,000〜100,000が好ましく、4,000〜80,000がより好ましく、5,000〜50,000が更に好ましく、6,000〜30,000がより更に好ましい。
重合体ブロック(B)のピークトップ分子量は、成形加工性の観点から、2,000〜200,000が好ましく、3,000〜150,000がより好ましく、4,000〜100,000が更に好ましい。
更に、重合体ブロック(C)のピークトップ分子量は、成形加工性の観点から、4,000〜200,000が好ましく、4,500〜150,000がより好ましく、5,000〜100,000が更に好ましい。
[架橋剤(II)]
本発明の樹脂組成物は、架橋剤(II)を含有する。架橋剤(II)としては共役ジエン由来の構造単位における炭素−炭素二重結合若しくはそのα−メチレンのみで架橋反応するものであることが好ましい。ここで、α−メチレンは炭素−炭素二重結合に隣接するメチレンを示す。この様な架橋剤(II)を含有することで、水添ブロック共重合体(I)中に残存する上記炭素−炭素二重結合若しくは上記炭素−炭素二重結合のα−メチレンのみが架橋され、優れた柔軟性、引張特性及びグリップ特性を維持しつつ、引裂強度に優れるものとすることができる。
架橋剤(II)としては、例えば、ラジカル発生剤、硫黄及び硫黄含有化合物等が挙げられ、引裂強度及び引張特性等の観点から、より好ましくは硫黄又は硫黄含有化合物であり、更に好ましくは硫黄である。
ラジカル発生剤としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ジt−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド等の有機過酸化物が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
硫黄としては特に制限無く用いることができ、例えば、微粉硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄等のいずれであってもよい。
硫黄含有化合物としては、例えば、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、トリアジンチオール類等が挙げられる。
架橋剤(II)としては、その他にアルキルフェノール樹脂、臭素化アルキルフェノール樹脂等のフェノール系樹脂;p−キノンジオキシムと二酸化鉛、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシムと四酸化三鉛の組み合わせ等も使用することができる。
[ゴム(III)]
本発明の樹脂組成物は、更にゴム(III)を含有してもよい。
ゴム(III)としては従来から靴底等のゴム底のゴム原料として用いられている天然ゴム(NR)や各種合成ゴム等が特に限定なく用いられる。
なお、ゴム(III)には、上述の水添ブロック共重合体(I)は含まれない。
合成ゴムの具体例としては、例えば、スチレンブタジエン共重合ゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、アクリルニトリルブタジエン共重合ゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(イソブチレン−イソプレンゴム(IIR))及びこれを変性したハロゲン化ブチルゴム(例えば、Br−IIR及びCl−IIR)等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。これらの中でもスチレンブタジエン共重合ゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)及びこれを変性したハロゲン化ブチルゴムが好ましい。
スチレンブタジエン共重合ゴムとしては、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)、変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR)等のいずれも用いることができるが、好ましくはE−SBRである。
また、市販のスチレンブタジエン共重合ゴムを用いることができ、スチレン含量が0.1〜70質量%のものが好ましく、5〜50質量%のものがより好ましく、15〜35質量%のものが更に好ましく、15〜25質量%のものがより更に好ましい。
スチレンブタジエン共重合ゴムは、弾性や強度等の物性バランスがよく、混練りや成型加工等にも良好で、入手容易の観点からも好適である。
ポリイソプレンゴムとしては、市販のポリイソプレンゴムを用いることができるが、シス体の含有量が高いチーグラー系触媒により重合されたポリイソプレンゴムやランタノイド系希土類金属触媒を用いて得られる超高シス体含量のポリイソプレンゴムであることが好ましい。
ポリイソプレンゴムの重量平均分子量(Mw)は、9万〜200万であることが好ましく、15万〜150万であることがより好ましい。Mwが上記範囲にある場合、成形加工性、引裂強度、及び引張特性が良好となる。ポリイソプレンゴムのビニル含量は好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
ポリイソプレンゴムは、機械的強度等の物性バランスにも良好で、入手容易の観点からも好適である。
ポリブタジエンゴムとしては、市販のポリブタジエンゴムを用いることができるが、シス体の含有量が高いチーグラー系触媒により重合されたポリブタジエンゴムやランタノイド系希土類金属触媒を用いて得られる超高シス体含量のポリブタジエンゴムであることが好ましい。
ポリブタジエンゴムの重量平均分子量(Mw)は、9万〜200万であることが好ましく、15万〜150万であることがより好ましく、25万〜100万であることが更に好ましく、35万〜70万であることがより更に好ましい。Mwが上記範囲にある場合、成形加工性、引裂強度、及び引張特性が良好となる。ポリブタジエンゴムのビニル含量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
ポリブタジエンゴムは、特に、優れた耐摩耗性を樹脂組成物の成形体に付与することが期待できる観点からも好適である。
[含有量]
上述の水添ブロック共重合体(I)、架橋剤(II)及びゴム(III)の含有量は、次の要件を満たすことが好ましい。
水素添加ブロック共重合体(I)とゴム(III)との含有割合[(I)/(III)]の質量比は、柔軟性、引裂強度、引張特性、ドライグリップ性能及びウェットグリップ性能のバランスを発現する観点から、好ましくは1/99〜100/0であり、より好ましくは10/90〜100/0であり、更に好ましくは15/85〜100/0であり、より更に好ましくは20/80〜100/0である。
一方、ウェットグリップ性能及び引張特性の観点ではゴム(III)に対する水素添加ブロック共重合体(I)の含有割合が高いほど物性がより向上する傾向があり、上記観点からは[(I)/(III)]の質量比は、好ましくは40/60〜100/0であり、より好ましくは55/45〜100/0であり、更に好ましくは70/30〜100/0であり、より更に好ましくは90/10〜100/0である。
また、原料コストの観点では水素添加ブロック共重合体(I)に対するゴム(III)の含有割合を高くした方が有利な場合もあり、上記観点から本発明の効果を損なわない範囲で水素添加ブロック共重合体(I)とゴム(III)の含有割合を自由に設定してもよい。このように本発明の樹脂組成物において、水素添加ブロック共重合体(I)とゴム(III)を併用する場合、両者の含有割合を事由に設定すればよいが、本発明の効果を良好に発揮しやすい観点から、[(I)/(III)]の質量比は、好ましくは20/80〜80/20であり、より好ましくは30/70〜70/30であり、更に好ましくは40/60〜60/40である。
本発明の樹脂組成物がゴム(III)を含有しない場合、架橋剤(II)の含有量は、水添ブロック共重合体(I)の含有量100質量部に対し、柔軟性、引裂強度、引張特性、ドライグリップ性能及びウェットグリップ性能のバランスを発現する観点から、好ましくは0.1〜10質量部であり、より好ましくは0.5〜6.0質量部、更に好ましくは1.0〜4.0質量部、より更に好ましくは1.5〜2.5質量部である。
本発明の樹脂組成物がゴム(III)を含有する場合、架橋剤(II)の含有量は、水添ブロック共重合体(I)及びゴム(III)の合計含有量100質量部に対し、柔軟性、引裂強度、引張特性、ドライグリップ性能及びウェットグリップ性能のバランスを発現する観点から、好ましくは0.1〜10質量部であり、より好ましくは0.5〜6.0質量部、更に好ましくは1.0〜4.0質量部、より更に好ましくは1.5〜2.5質量部である。
[その他の任意成分]
(ポリオレフィン系樹脂)
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂を含有しないか又は水添ブロック共重合体(I)100質量部に対するポリオレフィン系樹脂の含有量が10質量部未満である。当該含有量が10質量部を超えると溶融混練することができずに本発明の樹脂組成物の効果が損なわれるおそれがあるため、好ましくはポリオレフィン系樹脂を含有しないことである。
含有させることができるポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリヘキセン−1、ポリ−3−メチル−ブテン−1、ポリ−4−メチル−ペンテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等が挙げられる。
(架橋促進剤)
本発明の樹脂組成物は架橋促進剤を含有していてもよい。架橋促進剤としては、例えば、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾール−スルフェンアミド、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、2−(4−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等のチアゾール類;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン等のグアニジン類;ブチルアルデヒド−アニリン反応物、ヘキサメチレンテトラミン−アセトアルデヒド反応物等のアルデヒド−アミン系反応物ないしはアルデヒド−アンモニア系反応物;2−メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン類;チオカルバニリド、ジエチルウレア、ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア、ジオルソトリルチオウレア等のチオウレア類;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラムモノないしポリスルフィド類;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等のチオカルバミン酸塩類;ジブチルキサントゲン酸亜鉛等のキサントゲン酸塩類等が挙げられる。これらの架橋促進剤は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
架橋促進剤の含有量は、本発明の樹脂組成物がゴム(III)を含有しない場合は水添ブロック共重合体(I)の含有量100質量部に対して、またゴム(III)を含有する場合は水添ブロック共重合体(I)及びゴム(III)の合計100質量部に対して、好ましくは0.05〜15質量部、より好ましくは0.1〜5質量部、特に好ましくは1.0〜4.0質量部である。
(無機充填剤)
本発明の樹脂組成物は、無機充填剤を含有してもよい。
無機充填剤としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、ガラス繊維、カーボン繊維、カーボンブラック、マイカ、カオリン、酸化チタン等が挙げられ、これらの中でもタルク、炭酸カルシウム、シリカが好ましく、引裂強度、特にウェット状態での静摩擦性向上の観点から、シリカがより好ましい。
無機充填剤の含有量は、本発明の樹脂組成物がゴム(III)を含有しない場合は水添ブロック共重合体(I)の含有量100質量部に対して、またゴム(III)を含有する場合は水添ブロック共重合体(I)及びゴム(III)の合計含有量100質量部に対して、好ましくは0〜120質量部である。
優れた引裂強度を付与しつつ硬度及び比重が高くなり過ぎずに、樹脂組成物の成形体が、例えば履物用靴底であれば当該履物の軽量化を実現することができ、かつ良好な柔軟性、引張特性及びグリップ性を保つことができる観点から、無機充填剤の含有量の上限は、より好ましくは100質量部以下であり、更に好ましくは80質量部以下であり、より更に好ましくは60質量部以下である。
また、含有量の下限としては0、すなわち無機充填剤を含有していなくてもよい。無機充填剤を含有しなくても、柔軟性、引裂強度、引張特性及びグリップ性能のバランスが良好な樹脂組成物とすることができる。したがって、無機充填剤は上記含有量の範囲において、樹脂組成物の用途に求められる性能に応じて適宜決定すればよい。
(軟化剤)
本発明の樹脂組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、軟化剤を含有してもよい。しかし、本発明の樹脂組成物は、前述の構成によって成形加工に十分な流動性を有していることから軟化剤を含有しなくともよい。特に、軟化剤の中でもパラフィン系、ナフテン系及び芳香族系等のプロセスオイル、ミネラルオイル、ホワイトオイル等のオイル系軟化剤は、成形体とした際に経時的にオイルが染み出てくるおそれがあるため樹脂組成物に含有させないことが好ましい。
含有させることができる軟化剤としては、例えばジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸誘導体;エチレンとα−オレフィンとの液状コオリゴマー;流動パラフィン;ポリブテン;低分子量ポリイソブチレン;液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状ポリイソプレン/ブタジエン共重合体、液状スチレン/ブタジエン共重合体、液状スチレン/イソプレン共重合体等の液状ポリジエン及びその水添物等が挙げられる。
軟化剤を含有する場合の含有量は、本発明の樹脂組成物中、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、更に好ましくは0質量%、すなわち含有させないことである。
(その他の添加剤)
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲において、その他の添加剤、例えば、架橋助剤、シランカップリング剤、熱老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤、発泡剤、顔料、染料、増白剤等を添加することができる。これらの添加剤は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物の製造方法は、例えば、前記架橋剤(II)及び必要に応じて添加される架橋促進剤を除く各成分を溶融混練した後、後述の架橋方法で架橋することにより製造することができる。
架橋剤(II)及び必要に応じて添加される架橋促進剤を除く各成分を溶融混練する方法に特に制限はなく、水添ブロック共重合体(I)とゴム(III)及びその他の任意成分を、同時に混練装置、例えば一軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー、加熱ロール、各種ニーダー等に供給して溶融混練する方法が挙げられる。また、水添ブロック共重合体(I)、ゴム(III)及びその他の任意成分を別々の仕込み口から供給して溶融混練する方法、あるいは水添ブロック共重合体(I)と無機充填剤(例えば、シリカ)等の一部の任意成分を予め溶融混練し、当該溶融混練物とその他の任意成分と溶融混練する方法等であってもよい。
溶融混練時の温度は、通常45℃〜270℃の範囲で任意に選択することができる。
架橋方法としては、加硫金型を用いて加硫温度が通常120〜200℃程度、好ましくは140〜200℃、加硫圧力が通常0.5〜10MPa程度で、通常1分〜2時間程度維持することにより、架橋する方法等が挙げられる。
[物性]
(加硫速度)
本発明の樹脂組成物は、後述する実施例における条件で架橋剤(II)を用いて架橋されたものである。中でも架橋剤として硫黄又は硫黄含有化合物を用いた場合、本発明の樹脂組成物は加硫速度に優れるもの、すなわち、加硫に要する時間(90%加硫時間)が短いものである。
本発明の樹脂組成物の加硫速度が速いと、加硫する時の樹脂組成物の粘度上昇が速く、樹脂組成物中の硫黄又は硫黄含有化合物である加硫剤や、架橋促進剤、架橋助剤、酸化防止剤、老化防止剤、軟化剤等の可塑剤等が水添ブロック共重合体(I)やゴム(III)の表面へブリードしにくくなるため、加工用の金型の汚染を抑制することができる。
本明細書において樹脂組成物の加硫速度は、JIS K 6300−2:2001にしたがって、振動式加硫試験機(キュラストメーター)を用いてゴム組成物の160℃におけるトルクを測定し、90%加硫量に至るまでに要した時間(90%加硫時間)とする。樹脂組成物の加硫速度Tc(90)としては、13分以下が好ましく、11分以下がより好ましく、10分以下が更に好ましい。下限は特に限定されないが、通常1分以上である。
(比重)
本発明の樹脂組成物は、ISO 1183:1987に準じて測定された比重が、好ましくは0.88〜1.30、より好ましくは0.90〜1.20である。上記範囲であれば樹脂組成物からなる成形体は実用性に欠けることはない。
(硬度)
本発明の樹脂組成物は、JIS K 6253−2:2012のタイプAデュロメータ法による硬度(以下、「A硬度」ともいう)が、好ましくは90以下、より好ましくは85以下である。また、A硬度は、好ましくは25以上であり、より好ましくは30以上であり、更に好ましくは35以上である。A硬度が上記範囲であれば成形加工性が良好となり、また良好な柔軟性から摩擦力が高くなりグリップ性能にも優れたものとなる。
(引裂強度)
本発明の樹脂組成物は、JIS K 6252−1:2015に準じて測定された引裂き強さ(引裂強度)が、好ましくは2.0kN/m以上、より好ましくは2.5kN/m以上、更に好ましくは3.0kN/m以上、より更に好ましくは3.5kN/m以上である。
(静摩擦係数)
本発明の樹脂組成物は、ASTM D−1894に準じて測定された静摩擦係数が、ドライ条件で、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.8以上である。また、ウェットの件で、好ましくは0.8以上、より好ましくは1.0以上、更に好ましくは1.2以上、より更に好ましくは1.3以上である。
ドライ条件及びウェット条件については、後述する実施例に記載した測定条件を意味する。
(引張破断強度)
本発明の樹脂組成物は、JIS K 6251:2010に準じて測定された切断時引張強さ(引張破断強度)が、好ましくは2.0MPa以上であり、より好ましくは3.0MPa以上、更に好ましくは4.0MPa以上、特に好ましくは6.5MPa以上である。引張破断強度が2.0MPa以上であれば、引張特性が良好なものとなる。
(引張破断伸び)
本発明の樹脂組成物は、JIS K 6251:2010に準じて測定された切断時伸び(引張破断伸び)が、好ましくは100%以上であり、より好ましくは110%以上であり、更に好ましくは120%以上であり、より更に好ましくは130%以上である。引張破断伸びが100%以上であれば、引張特性が良好なものとなる。
<成形体>
本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物からなるものである。
成形体の形状は、本発明の樹脂組成物を用いて製造できる成形体であればいずれでもよく、例えばペレット、フィルム、シート、プレート、パイプ、チューブ、棒状体、粒状体等種々の形状に成形することができる。この成形体の製造方法は特に制限はなく、従来からの各種成形法、例えば、射出成形、ブロー成形、プレス成形、押出成形、カレンダー成形等により成形することができる。本発明の樹脂組成物は、特にプレス成形体を好適に得ることができる。
本発明の樹脂組成物を成形して得られる成形体は、引裂強度、引張特性、ドライグリップ性能及びウェットグリップ性能のバランスに優れるため、これら特性が要求される成形品に用いることができる。特に、本発明の樹脂組成物を少なくとも一部に用いた靴底等の成形品として好適に用いることができる。
具体的には、ハイキングブーツ、サンダル、安全靴、登山靴、マラソンシューズ、地下足袋及び長靴等の履物用靴底;水中眼鏡、シュノーケル、スキーブーツ及びスキー・スノーボード等のスポーツ用品;ペン及びはさみ等の筆記用具、ドライバー、ペンチ及びレンチ等の工具及び電気工具、歯ブラシ及びキッチン用品(包丁及びヘラ等)等の水周り用品、ゴルフクラブ、スキーのストック、自転車、バイク等のスポーツ及びフィットネス等に用いられる器具、並びにナイフ等の各種グリップ;冷蔵庫、掃除機及び防水ボディー(携帯電話等)等の家電の部品;サイドモール、ラック・オピニオンブーツ、サスペンションブーツ、等速ジョイントブーツ、ウェザーストリップ、マットガード、フロアーマット、アームレスト、ベルトラインモール、フラッシュマウント及び自動車内外装(ギア及びノブ等)の自動車用品;コピー機送りローラー及び巻き取りローラー等の事務機器;ソファー及びチェアーシート等の家具に用いられる部品;スイッチカバー、ストッパー、キャスター及び足ゴム等のゴム部品;被覆合板及び被覆鋼板等の建材等に好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、β−ファルネセン(純度97.6質量%、アミリス,インコーポレイティド社製)は、3Åのモレキュラーシーブにより精製し、窒素雰囲気下で蒸留することで、ジンギベレン、ビサボレン、ファルネセンエポキシド、ファルネソール異性体、E,E−ファルネソール、スクアレン、エルゴステロール及びファルネセンの数種の二量体等の炭化水素系不純物を除き、以下の重合に用いた。
<水添ブロック共重合体(I)>
後述の製造例1、2の水添ブロック共重合体(I−1)、(I−2)
<水添ブロック共重合体(I’)>
後述の製造例3の水添ブロック共重合体(I’−1)
<1,4−ポリファルネセン>
後述の製造例4、5の1,4−ポリファルネセン(1)、(2)
<ポリスチレン−3,4−ポリファルネセン−ポリスチレン>
後述の製造例6のポリスチレン−3,4−ポリファルネセン−ポリスチレン
<架橋剤(II)>
・硫黄(II):微粉硫黄200メッシュ、鶴見化学工業株式会社製
<ゴム(III)>
・ゴム(III−1):製品名JSR 1502、JSR株式会社製、スチレン・ブタジエンゴム(E−SBR)、乳化重合法で製造、スチレン含有量=23.5質量%
・ゴム(III−2):製品名JSR BR01、JSR株式会社製、ポリブタジエンゴム(BR)、シス体含量=95質量%、ビニル含量=2.5質量%、重量平均分子量(Mw)=55万
<架橋促進剤>
・架橋促進剤(1):製品名ノクセラーDM、大内新興化学工業株式会社製、(ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド)
・架橋促進剤(2):製品名ノクセラーTT、大内新興化学工業株式会社製、テトラメチルチウラムジスルフィド)
<無機充填剤>
・シリカ:製品名ULTRASIL7000GR、エボニック デグサ ジャパン製
<その他の添加剤>
・ステアリン酸:製品名ルナックS−20、花王株式会社製
・酸化亜鉛:酸化亜鉛1種、堺化学工業株式会社製
・シランカップリング剤:製品名Si69、エボニック デグサ ジャパン製
・ポリエチレングリコール:製品名PEG4000、東邦化学工業株式会社製
また、製造例で得られた重合体についての各測定方法の詳細は次のとおりである。
(1)ピークトップ分子量及び分子量分布の測定
重合体(水添ブロック共重合体(I)又は(I’)、1,4ポリファルネセン(1)又は(2)、ポリスチレン−3,4−ポリファルネセン−ポリスチレン)及びスチレンブロックのピークトップ分子量(Mp)、及び分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算分子量で求め、分子量分布のピークの頂点の位置からピークトップ分子量(Mp)を求めた。測定装置及び条件は、以下のとおりである。
・装置 :東ソー株式会社製 GPC装置「HLC−8320GPC」
・分離カラム :東ソー株式会社製 カラム「TSKgelSuperHZ4000」
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :0.7mL/min
・サンプル濃度:5mg/10mL
・カラム温度 :40℃
(2)水素添加率の測定方法
(2−1) ブロック共重合体(P)又は(P’)及び水素添加後の水添ブロック共重合体(I)又は(I’)をそれぞれ重クロロホルム溶媒に溶解し、日本電子株式会社製「Lambda−500」を用いて50℃でH−NMRを測定した。
水添ブロック共重合体(I)又は(I’)のブロック共重合体(P)又は(P’)中の共役ジエン由来の構造単位における炭素−炭素二重結合の水素添加率は、得られたスペクトルの4.5〜6.0ppmに現れる炭素−炭素二重結合が有するプロトンのピークから、下記式により算出した。
水素添加率(モル%)={1−(水添ブロック共重合体(I)又は(I’)1モルあたりに含まれる炭素−炭素二重結合のモル数)/(ブロック共重合体(P)又は(P’)1モルあたりに含まれる炭素−炭素二重結合のモル数)}×100
(2−2) また、重合体ブロック(B)中の共役ジエン由来の構造単位における炭素−炭素二重結合の水素添加率、及び重合体ブロック(C)中の共役ジエン由来の構造単位における炭素−炭素二重結合の水素添加率について、上記で得られたそれぞれのスペクトルに現れるプロトンピークから、上記と同様に算出した。
[製造例1]
水添ブロック共重合体(I−1):
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)0.1905kg、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン0.40kgを仕込み、50℃に昇温した後、β−ファルネセン6.34kgを加えて2時間重合を行い、引き続いてスチレン(1)2.50kgを加えて1時間重合させ、更にブタジエン3.66kgを加えて1時間重合を行った。続いてこの重合反応液にカップリング剤としてジクロロジメチルシラン0.02kgを加え1時間反応させることで、ポリ(β−ファルネセン)−ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン−ポリ(β−ファルネセン)ペンタブロック共重合体(P1)を含む反応液を得た。
この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体(P1)に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより、ポリ(β−ファルネセン)−ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン−ポリ(β−ファルネセン)ペンタブロック共重合体の水素添加物(I−1)(以下、「水添ブロック共重合体(I−1)」という。)を得た。
得られた水添ブロック共重合体(I−1)について、上記の物性を測定した。結果を表1に示す。
[製造例2]
水添ブロック共重合体(I−2):
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)0.0413kgを仕込み、50℃に昇温した後、スチレン(1)1.12kgを加えて1時間重合を行い、続いてβ−ファルネセン10.25kgを加えて2時間重合を行い、更にスチレン(2)1.12kgを加えて1時間重合を行い、ポリスチレン−ポリ(β−ファルネセン)−ポリスチレントリブロック共重合体(P2)を含む反応液を得た。
この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体(P2)に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより、ポリスチレン−ポリ(β−ファルネセン)−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(以下、「水添ブロック共重合体(I−2)」ともいう)を得た。
水添ブロック共重合体(I−2)について、上記の物性を測定した。結果を表1に示す。
[製造例3]
水添ブロック共重合体(I’−1):
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン62.4kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)0.206kgを仕込み、60℃に昇温した後、スチレン(1)1.65kgを加えて1時間重合を行い、続いてイソプレン7.71kgを加えて2時間重合を行い、更にスチレン(2)1.65kgを加えて1時間重合を行い、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(P’1)を含む反応液を得た。
この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体(P’1)に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。
放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(以下、「水添ブロック共重合体(I’−1)」ともいう)を得た。
水添ブロック共重合体(I’−1)について、上記の物性を測定した。結果を表1に示す。
[製造例4]
1,4−ポリファルネセン(1):
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン36.76kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)0.198kgを仕込み、50℃に昇温した後、β−ファルネセン36.56kgを加えて2時間重合を行い、1,4−ポリファルネセン(1)を含む反応液を得た。
この反応液に、エタノール及びt−ブチルカテコールの1質量%溶液を加え1,4−ポリファルネセン(1)を沈殿させ、濾過した後、真空乾燥することにより1,4−ポリファルネセン(1)を得た。
1,4−ポリファルネセン(1)について、上記の物性を測定した。結果を表1に示す。
[製造例5]
1,4−ポリファルネセン(2):
表1に示した配合量とした以外は製造例4と同様にして1,4−ポリファルネセン(2)を得た。
1,4−ポリファルネセン(2)について、上記の物性を測定した。結果を表1に示す。
[製造例6]
ポリスチレン−3,4−ポリファルネセン−ポリスチレン:
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン62.4kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)0.105kgを仕込み、50℃に昇温した後、スチレン(1)5.34kgを加えて1時間重合を行い、続いてβ−ファルネセン5.67kgを加えて2時間重合を行った。続いてこの重合反応液にカップリング剤としてジクロロシラン0.00018kgを加え1時間反応させることで、ポリスチレン−3,4−ポリファルネセン−ポリスチレンを含む反応液を得た。
この反応液に、エタノール及びt−ブチルカテコールの1質量%溶液を加えポリスチレン−3,4−ポリファルネセン−ポリスチレンを沈殿させ、濾過した後、真空乾燥することによりポリスチレン−3,4−ポリファルネセン−ポリスチレンを得た。
ポリスチレン−3,4−ポリファルネセン−ポリスチレンについて、上記の物性を測定した。結果を表1に示す。

なお、表1中の各表記は下記のとおりである。
*1:(A)/(B)は、重合体ブロック(A)の含有量と重合体ブロック(B)の含有量との質量比を示す。
*2:(A)/((B)+(C))は、重合体ブロック(A)の含有量と、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)それぞれの含有量の合計との質量比を示す。
*3:(b1)/(B)は、重合体ブロック(B)中のファルネセン由来の構造単位(b1)の含有量(質量%)を示す。
*4:((b1)+(c1))/((B)+(C))は、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)の合計量に対する構造単位(b1)及び構造単位(c1)の合計含有量(質量%)を示す。
*5: F−St−Bd−St−Fは、ポリ(β−ファルネセン)−ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン−ポリ(β−ファルネセン)ペンタブロック共重合体を示す。
St−F−Stは、ポリスチレン−ポリ(β−ファルネセン)−ポリスチレントリブロック共重合体を示す。
St−Ip−Stは、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体を示す。
Fは、ポリ(β−ファルネセン)単独重合体を示す。
St−F−Stは、ポリスチレン−3,4−ポリファルネセン−ポリスチレン共重合体を示す。
*6:(I)又は(I’)の水素添加率は、ブロック共重合体(P)又は(P’)中の共役ジエン由来の構造単位における炭素−炭素二重結合の水素添加率を示す。
*7:重合体ブロック(B)の水素添加率は、重合体ブロック(B)中の共役ジエン由来の構造単位における炭素−炭素二重結合の水素添加率を示す。ただし、重合体ブロック(B)を有する場合のみ示す。
*8:重合体ブロック(C)の水素添加率は、重合体ブロック(C)中の共役ジエン由来の構造単位における炭素−炭素二重結合の水素添加率を示す。ただし、重合体ブロック(C)を有する場合のみ示す。
[実施例1〜8][比較例1〜18]
(1)溶融混練(樹脂組成物の製造)
表3〜6に記載した配合割合(質量部)に従って、架橋剤(II)及び架橋促進剤を除く各成分を、表2に示す条件にてブラベンダーミキサー(製品名プラストグラフEC50ccミキサー、ブラベンダー社製)に投入して溶融混練した(工程1及び2)。その後、溶融混練物をブラベンダーミキサー外に取り出して室温まで冷却した(工程3)。
次いで、この溶融混練物をミキシングロール(関西ロール株式会社製)に入れ(工程4)、架橋剤(II)及び架橋促進剤を投入し(工程5)、再混練する(工程6)ことで樹脂組成物を得た。
(2)成形(成形体の製造)
また、上記で得られた樹脂組成物をプレス成形(160℃、7〜40分)して架橋させつつゴムシート(厚み0.5mm)を得た。
得られた樹脂組成物又はゴムシートを用い、下記の測定方法に基づき物性を評価した。結果を表3〜6に示す。
なお、比較例1、6及び11では、水添ブロック共重合体(I’−1)の分散性が悪く溶融混練することができなかったため、樹脂組成物及びゴムシートを得ることができなかった。
なお、表2中のエラストマーは、水添ブロック共重合体(I)、水添ブロック共重合体(I’)、1,4−ポリファルネセン、又はポリスチレン−3,4−ポリファルネセン−ポリスチレン、及び配合した場合はゴム(III)を示す。
(加硫速度)
加硫速度(t90)の測定は、JIS K 6300−2に準じ、振動式加硫試験機(キュラストメーター)を使用して、実施例及び比較例において得られた上記樹脂組成物の160℃におけるトルクを測定し、90%加硫量にいたる加硫時間を加硫速度(t90)とした。数値が小さいほど加硫速度に優れる。
(比重)
ISO 1183:1987に準じて測定した。
(硬度)
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のゴムシートからJIS K 6251:2010に準拠した打ち抜き刃を用い、ダンベル3号形試験片(厚さ0.5mm)を得た。
得られた試験片を12枚重ねて厚み6mmとし、硬度をタイプAデュロメータの圧子を用い、JIS K 6253−3:2012に準拠して測定した。なお、硬度の数値が低いほど柔軟性に優れ、80以下であれば柔軟性は良好である。
(引裂強度)
JIS K6252−1:2015に準じて、実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のゴムシートから、打ち抜き刃を用い切り込みなしアングル形試験片(厚さ0.5mm)を得た。得られた試験片を用い、引張速度500mm/min、温度23℃で引裂強さを測定した。数値が高いほど引裂強度に優れる。
(静摩擦係数)
(1)ドライ
ASTM D-1894に準じて、実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のゴムシートの表面の静摩擦係数を測定した。
上記ゴムシートから縦110mm、横63.5mm、厚さ0.5mmの試験片を切り出してセル(重さ200g、63.5mm×63.5mm)に巻き付け、摩擦係数測定装置の試験片台が水平になるようにオートグラフヘッドに固定した。摩擦台の材質をアルミとし、引張速度150mm/分で静摩擦係数を測定した。静摩擦係数の数値が高いほど摩擦力が大きく滑りにくく、ドライグリップ性能に優れる。
(2)ウェット
摩擦台に蒸留水を1cc垂らした以外は、上記(1)ドライと同様の方法で静摩擦係数を測定した。静摩擦係数の数値が高いほど摩擦力が大きく滑りにくく、ウェットグリップ性能に優れる。
(引張破断強度及び引張破断伸び)
上記(硬度)測定と同様の方法で作製したダンベル3号形試験片(0.5mm)を用い、JIS K 6251:2010に準じて、引張破断強度及び引張破断伸びを測定した。引張破断強度及び引張破断伸びの数値が高いほど引張特性に優れる。

表3〜6の結果から、本発明の樹脂組成物である実施例1,2は、ゴム(III−2)を用いた比較例5に比べ、引裂強度、ドライグリップ性能、ウェットグリップ性能、引張破断強度及び引張破断伸びがいずれも向上することがわかる。
また、比較例2〜4についても比較例5よりドライグリップ性能、ウェットグリップ性能が向上する傾向があるが、実施例1,2においては優れたドライグリップ性能及びウェットグリップ性能を維持しながら、さらに比較例2〜4よりも引裂強度、引張破断強度、引張破断伸び及び加硫速度に優れることがわかる。特に実施例1では、引張破断強度と引張破断伸びが顕著に向上していながら、他の物性バランスにも優れることがわかる。
また、シリカを50質量部含む構成の表4及びシリカを含有しない構成の表5においても、本発明の樹脂組成物であれば、ゴム(III−2)を用いた比較例10及び15よりも、各物性がバランスよく向上されることがわかる。
また、水添ブロック共重合体(I−1)とゴム(III−1)を用いた実施例7は、比較例16,17と比べ特に加硫速度、ドライグリップ性能及びウェットグリップ性能に優れており、かつ他の物性も良好で、各物性のバランスに優れていた。
また、実施例8と比較例5を比較すると、ゴム(III−2)のみを用いた比較例5に対し、実施例8では引張強度、ドライグリップ性能、ウェットグリップ性能、引張破断強度及び引張破断伸びが大きく向上していることがわかる。
なお、水添ブロック共重合体(I’−1)を配合した比較例1,6及び11では溶融混練することができなかったのに対し、比較例16において水添ブロック共重合体(I’−1)とゴム(III−1)とを併用した場合は溶融混練が可能であったが、比較例16で得られた樹脂組成物の架橋状態を確認したところ水添ブロック共重合体(I’−1)の水素添加率が高いためか架橋が生じていなかった。そのため、比較例16の樹脂組成物は耐摩耗性に劣るものであった。
本発明の樹脂組成物は、引裂強度、引張特性、ドライグリップ性能及びウェットグリップ性能のバランスに優れることから、履物用靴底;スポーツ用品;筆記用具、工具及び電気工具等の各種グリップ;巻き取りローラー等の事務機器;足ゴム等のゴム部品;被覆合板及び被覆鋼板等の建材等に好適に用いることができる。

Claims (17)

  1. 水添ブロック共重合体(I)及び架橋剤(II)を含有し、
    ポリオレフィン系樹脂を含有しないか又は前記水添ブロック共重合体(I)100質量部に対するポリオレフィン系樹脂の含有量が10質量部未満である、樹脂組成物であって、
    前記水添ブロック共重合体(I)が、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(A)と、ファルネセン由来の構造単位(b1)を含有する重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体(P)について、前記ブロック共重合体(P)中の共役ジエン由来の構造単位における炭素−炭素二重結合を50モル%以上水素添加した水素添加物である、樹脂組成物。
  2. 前記水添ブロック共重合体(I)中の前記重合体ブロック(B)の共役ジエン由来の構造単位における炭素−炭素二重結合の水素添加率が50〜98モル%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記ブロック共重合体(P)が、更にファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(c2)を含有する重合体ブロック(C)を含み、
    前記水添ブロック共重合体(I)において、前記重合体ブロック(B)と前記重合体ブロック(C)との共役ジエン由来の構造単位における炭素−炭素二重結合の水素添加率が異なる、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記重合体ブロック(B)中における前記水素添加率が50〜95モル%であり、前記重合体ブロック(C)中における前記水素添加率が95〜99.9モル%である、請求項3に記載の樹脂組成物。
  5. 前記ブロック共重合体(P)が、少なくとも2個の前記重合体ブロック(A)、少なくとも1個の前記重合体ブロック(B)、及び少なくとも1個の前記重合体ブロック(C)を含有し、かつ少なくとも1個の前記重合体ブロック(B)を末端に有する、請求項3又は4に記載の樹脂組成物。
  6. 架橋剤(II)が、前記共役ジエン由来の構造単位における炭素−炭素二重結合若しくはそのα−メチレンのみで架橋反応する架橋剤である、請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
  7. 前記架橋剤(II)が、硫黄又は硫黄含有化合物である、請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
  8. 前記架橋剤(II)の含有量が、前記水添ブロック共重合体(I)の含有量100質量部に対し、0.1〜10質量部である、請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
  9. 前記水添ブロック共重合体(I)の含有量100質量部に対し、更に無機充填剤を0〜120質量部含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
  10. 更にゴム(III)を含有する、請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物。
  11. 前記重合体ブロック(B)が、前記ファルネセン由来の構造単位(b1)を1〜100質量%及びファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)を99〜0質量%含む、請求項1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物。
  12. 前記水添ブロック共重合体(I)中の前記重合体ブロック(A)の含有量が10〜45質量%である、請求項1〜11のいずれかに記載の樹脂組成物。
  13. JIS K 6251:2010に準じて測定した引張破断伸びが、100%以上である、請求項1〜12のいずれかに記載の樹脂組成物。
  14. JIS K 6252−1:2015に準じて測定した引裂強度が、2.0kN/m以上である、請求項1〜13のいずれかに記載の樹脂組成物。
  15. 軟化剤を含有しない、請求項1〜14のいずれかに記載の樹脂組成物。
  16. 請求項1〜15のいずれかに記載の樹脂組成物の成形体。
  17. 請求項1〜15のいずれかに記載の樹脂組成物を少なくとも一部に用いた、靴底。
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