本願発明は、木造軸組工法に用いる耐力面材と耐力面構造に関し、特に、構造用軸組材である木軸(柱又は間柱)と同様の木軸材を用いて形成した耐力面材と、これを用いた耐力面構造に関する。
木造軸組工法の耐力面の構築において、特に、耐力壁面の構築の場合、土台に所定間隔で柱を立設固定し、この柱間に筋交いを取り付けて壁の耐力を確保している。そして、この柱間に断熱材や防音材を充填させて後、合板やサイディングなどの面材を取り付ける工法を採っているのが一般的である。
近年、これに変わるものとして、柱間に構造用面材を取り付け、筋交いと断熱材充填を省略して工法の簡易化と工期の短縮化を図った種々構成のものが開示されている。
その一例となる特許文献1(発明の名称「木造建築」)には、柱材と同じ角寸法の角材の複数本を側面に形成した溝条と突条で嵌合させると共に、これらの角材を横方向に貫通させた金属線材(ボルト)を金属ナットで緊締してパネルを形成し、このパネルを構成する角材を立てた状態(垂直方向)にして柱間に取り付ける木造建築の耐力面構造が開示されていた。
その他、耐力面構造又は耐力壁として機能する耐力面材に関する従来技術としては、特許文献2(発明の名称「木造軸組工法における面材耐力壁パネル」)、及び特許文献3(発明の名称「建築用パネルとそれを使用した建築構造」)が開示されている。
特許文献2の開示発明は、含水率15%以下まで機械乾燥させた80mm以上200mm以下の小角材の木口を接着接合し、長さ1000mm以上1200mm以下の長尺角材を形成し、さらにこの長尺小角材の側面を相互に接着剤にて接着して、幅を900mm以上1200mm以下の面材耐力壁パネルとするものである。
また特許文献3の開示発明は、建築用パネルにおいて、2本並べた芯持ちの棒材の溝に変形防止材を跨がせて配置し、この配置の繰り返しにより数本の棒材を並べ、並べた棒材を棒材連結具で貫通してパネル状に連結して形成しているものである。2本の棒材の溝には隙間防止材をも跨がせて配置している。
特開2007−146388号公報
特開2003−306993号公報
特開2004−263398号公報
しかしながら、特許文献1で開示された発明のパネルは、耐力面材(又は耐力壁)としては建築基準にあった壁耐力を十分に満たすものではなかった。すなわち、ボルト通し孔方向(ボルト軸方向)に繰り返し力が加わった場合(例えば、耐力壁の評価試験のような上部横方向の力が加わる場合)、ボルトやナットは金属であるためにパネル側の木製角材とは強度差があるため、角材側の座面にへこみが生じることとなり、ボルトとナットの締結状態が緩むことがあったからである。この緩みは適宜に増し締めしなければ拡大することになり、ひいては耐力面材としての強さの維持が困難になっていた。加えて、ボルトとナットによる締結は、長期経年による応力緩和やクリープが発生して締結力の低下が問題となっていた。
また、引用文献2の面材耐力壁パネルは、複数種類の小角材を接着剤で所定長さに接合して長尺小角材を形成し、この長尺材の側面側どうしを複数接合して成るものである。このため、小角材から長尺小角材、長尺小角材から面材耐力壁パネルの形成時に大量の接着剤と接着工程が必要となり、量産効率が極めて悪いものであった。また、大量の接着材を使う環境は、環境保全の観点から高コストになるばかりでなく、ハウスシック症候群等の健康被害の発生が否定できないものであった。
引用文献3の建築用パネルにおいても、ボルトとナットの締結構造である点で引用文献1のパネルと変わりなく、木材側の座面にへこみが生じることにより、締結状態が緩むことが想定されるものであった。同様に、長期経年による締結力の低下も問題であった。
そこで、本願発明は、上記実情に鑑み発明されたものであり、簡易な構造でありながら強度が向上するだけでなく、長期経年による耐力低下を回避すると共に、複数の面材幅に迅速に対応できる耐力面材を提供するものである。さらに、これを用いて構築する木造軸組工法の耐力面構造を提供するものである。
本願発明にかかる木軸材構成の耐力面材(以下、「本面材」と称する。)は、以下の構成を特徴としている。
すなわち、角柱状の木軸材の複数本を側面当接させて面状に並設すると共に、隣接する木軸材どうしを直棒状の締結線材の複数箇所への貫入によって結着させたことを特徴としている。
ここで、各木軸材は同一断面形とすると共に、締結線材は長尺状の木材用ビス又は木材用雄ネジであることを特徴としている。また、締結線材の貫入は、隣接する2本又は3本の木軸材への貫入であり、貫入方向についても木軸材の長さ方向に対して直角方向及び斜め方向のいずれか一方、又はこれらの組合せを採用したことを特徴としている。
上記木軸材の側面当接においては、側面に形成した凹条又は凸条の適合によるものであることを特徴としている。凹条及び凸条は、側面の一部又は全面に渡って形成しても良い。
また、前記凹凸条の当接適合が、木軸材の面取り成形に適合する凹条成形によるものであること特徴としている。より具体的には、一方の木軸材を面取り成形して側面全体を凸条形とし、他方の適合側は上記面取り部に適合する凹条を側面全体に成形している。
次に、本面材を用いた木造軸組工法の耐力面構造(以下、「本構造」と称する。)は、上記構成の耐力面材を、木造軸組工法の軸組材の間に取り付けたことを特徴としている。ここで、木造軸組工法の軸組材としては、例えば、通し柱や間柱、土台、及び桁や胴差し等を示し、これらから成る軸組材に取り付ける場合、壁面を構成する耐力面構造となる。他にも、土台、大引きで成る軸組材に配置すれば床面を構成する耐力面構造となり、桁、梁で成る軸組材に配置すれば天井面を構成する耐力面構造となる。
また、本面材を構成する木軸材の断面形を、取付け対象である部位の軸組材の木軸と同一形としても良い。この場合、本面材と軸組材間には凹凸面が生じず、美観を確保できると共に余計な引っ掛かりもないため安全面も向上する。
本面材は上記構成を採用することにより、複数の木軸材間に跨るように貫入させた複数の締結線材によって木軸材の連結状態を高めることができる。本面材は、所定の外力が繰り返し作用しても複数箇所に配設した各締結線材が、隣接する木軸材どうしと個別的に結着しているため、面材の耐力低下を招くことはない。また、長期経年の作用によって生じる応力緩和やクリープは、各締結線材限りのものであって、かつその方向性が区々であるため、面材としての耐力を安定的に維持することができる。
また、締結線材の貫入方向を直角方向だけでなく斜め方向にして組み合わせた場合は、面材へ作用する外力を締結線材の貫入方向に適宜に分散することができるため、耐力面材をより強固に構築することかできる。
さらに、木軸材の側面当接を、凹条又は凸条の適合としているため、木軸材どうしの当接時や締結線材の貫入による位置ズレが抑制され、面材の面を一にした安定品質の耐力面材を形成することができる。
次に、本面材を用いた本構造は、木造軸組工法の軸組材を構成する木軸と同様の木軸材を用いて構成しているため、筋交いや断熱材や防音材や保温材等を省略することができ、充填作業等の別作業をすることなく大工作業のみで構築できるため、作業効率と工期の短縮を図ることできる。特に、内装施工に関しては、木材の肌が表面に表れるので、これをそのまま内装仕上げとすることができ、材料削減や工期短縮、引いてはコスト削減にも資する。
また、軸組材を構成する木軸と同一形(同一寸法角)の木軸材を用いて耐力面材を形成した場合は、壁面や床面や天井面の内装面の工事を省略することができる。これにより、当該工事費の削減が図れるだけでなく、内装及び外装の美観向上にも寄与する。
さらに、本願発明は、壁面構築においては本面材を構成する木軸材を縦方向にして立設させているため、地震による影響が大きい横揺れへの抵抗力をより高めることでき、木造軸組工法としては強度がより向上した耐力壁を構築することができる。この耐力壁の強度向上によって耐力壁数を減少できるために設計自由度が増すことになり、例えば、住宅に大きな開口部を設けることが可能となる。加えて、接着剤を使用しないため、ハウスシック症候群のおそれもなく、住環境にやさしいものである。
本実施例に係る本面材を用いた本構造の概要を示す一部切り欠き斜視図である。
本実施例に係る本面材を構成する木軸材を示す斜視図(A)、及び木軸材の側面当接状態を示す斜視図(B)である。
本実施例に係る本面材を構成時の締結線材の貫入状況を示す一部切り欠き斜視図である。
本実施例に係る本面材の形成方法を示す説明図である。
本実施例に係る本面材を耐力壁に用いると共に、その評価試験の構成例を示す正面図である。
本実施例に係る本面材を耐力壁に用いると共に、その評価試験の構成例を示す正面図である。
以下に、実施例に係る本面材、及びこれを用いた本構造の最良の実施例を図面に基づき詳細に説明する。
図1の図符号1は、本面材2を壁面として用いた本構造である。本構造1は、基礎91の上面に載置した土台92に所定の離隔距離で2本の柱93を立設し、柱間の上部には桁94を跨ぐように配設して木造軸組工法の軸組材9を成し、この軸組材内に本面材2を固定して構成している。
なお、本面材2は、実施例のように壁面に限定するものでなく、取り付ける木造軸組工法の軸組材9によっては、壁面の他、床面や天井面として構成するようにしても良い。
ここで、本面材2は、上述のように軸組材間に取り付けるものであり、土台92、桁94、柱93に複数の専用の2種類の固定ビス6a、6bを用いて固定している。柱用に長めの固定ビス6bを用い、これを水平横方向から柱93を突き通して本面材2の木場面に貫入させている。土台用には短めの固定ビス6aを用い、本面材2から斜めに突き通し先端の一部を土台92に貫入させている。桁用にも短めの固定ビス6aを用い、これを桁94から斜めに突き通し先端の一部を本面材2に貫入させるようにしている。なお、上記固定ビス6a、6bは、後述する締結線材5aと同じ長尺状の木材用ビス又は木材用雄ネジである。また、本面材2と土台92と接合部分は、ホゾとホゾ穴の係合としても良い(図示省略)。
次に、本面材2の詳細について説明する。本面材2は、同一断面及び同一長さの複数の角柱状の木軸材3、3、3、・・・から構成している。
この木軸材3は、対向側面の一方側の全長に渡って凸条31を形成すると共に、他方側の対向面側には凹条32を形成している。凸条31は、長手側の両方の稜線部を面取り成形して全体で凸条31を成し、凹条32はこの凸条31に適合するように稜線部の両端を残して全体を削った形状にしている。
本面材2は、上記構成の複数の木軸材3の側面を接合させ、面状を成すように並設して構成している。この側面当接時には、側面の形成した上記凹条32と凸条31とを適合させている。そして、この並設状態の木軸材3に対し、少なくとも2本の木軸材3に跨る長さの直棒状の締結線材5aを複数箇所へ貫入し、この締結線材5aと各木軸材3とを結着させて一体化している。
ここで、本実施例の締結線材5aは、長尺状の木材用ビス又は木材用雄ネジである。したがって、締結線材5aのネジ部51がその全長に渡って複数の木軸材3と深く結着していることとなる。
この締結線材5aを貫入する木軸材3の高さ位置は、その側面の高さ寸法のほぼ中央とする一方、貫入方向は木軸材3の長さ方向に対して直角方向と斜め方向を組み合わせている。また、締結線材5aの長さは、上述のように2本の木軸材3に跨る長さの他、3本の木軸材3に跨る合計2種類の寸法を設定している。ここで、2本の木軸材3に跨る長さの締結線材は短めの締結線材5aと、3本の木軸材3に跨る長さの締結線材は長めの締結線材5bと、称して用いる。
本面材2における複数の締結線材5a、5bの貫入態様は、中央に直角方向の貫入方向のグループ、その両側に中央に向かう斜め方向の貫入方向のグループ、その外側に直角方向の貫入方向のグループ、となるようにしている。
そして、上記構成の本面材2を、木軸材3が縦方向となるように土台92に立設させた状態で柱93の間に取付けて本構造1を構築している。この軸組材9への取付けにおいては、上述のように、横側は柱93の外側から本面材2に向かって直角方向に複数の固定ビス6bを貫入し、下側は本面材2から土台92に向かって斜め方向に複数の固定ビス6aを貫入し、上側は桁94から本面材2に向かって斜め方向に複数の固定ビス6aを貫入して行っている。
また、本面材2の左右に位置する柱93については、木軸材3と当接状態を強固にすると共に隙間を生じさせないために、長さ方向に隣接する木軸材3と適合する凹条又は凸条を片側の側面にのみ形成している。
上記構成の本面材2の形成は、以下のようにして行っている。
まず、2本の木軸材3を互いの凹条32と凸条31が適合するように並設して配置する。並設後には、木軸材3を固定して凸条側の側面から下穴4を長さ方向に対して直角方向に開孔する。下穴4の開孔位置は、木軸材3の側面の高さ寸法のほぼ中央であり、長さ方向に所定間隔を確保する。また、下穴4の開孔深さに関しては、少なくとも2本の木軸材3に跨る長さとする。この場合、2本の木軸材3を貫通しても良く、又は一部の下穴4については斜め方向に開孔しても良い(図示省略)。
下穴4の開孔後には、各下穴位置に下穴径よりも若干拡径した締結線材5aをそれぞれ貫入する。この締結線材5aは木材用ビス又は木材用雄ネジであるため、その貫入によってネジ部51が木軸材3と強固に結着する。締結線材5aの長さは下穴深さとほぼ同じとしている。
次に、一体化した2本の木軸材3、3の凸条側に新たな木軸材3を配置し、新たな木軸材3の凹条32を一体化した木軸材3の凸条31に適合させて側面どうしを当接させる。この状態で、締結線材5aが貫入した位置と異なる位置に複数の下穴4を開孔する。所定数の下穴4の開孔の終了後には、この下穴4に締結線材5aを貫入させていく。なお、一部の下穴深さについては、適宜に3本の木軸材3に跨るように設定しても良く、これに貫入する締結線材5bは当然に長く設定している。
必要な締結線材5a、5bの貫入後は、新たな木軸材3の追加、貫入後の締結線材5a、5bに干渉しない位置への下穴4の開孔、この下穴4に対して適宜の締結線材5a、5bの貫入を繰り返し、所定本数の木軸材3から成る本面材2の形成が完了する。
[耐力壁の評価試験について]
上記実施例の本面材2については、木軸材3を縦方向に立設させると共に、締結線材5a、5bの貫入態様を変えた耐力壁7、8を構築した。そして、耐力壁7、8において「耐力壁及びその倍率性能評価試験」を行ったところ良好な結果を得ている。
なお、「耐力壁及びその倍率性能評価試験」の詳細については、「木造耐力壁及びその倍率の試験・評価業務方法書/http://www.jtccm.or.jp/Portals/0/resources/library/jtccm/seino/siryo/houhousho/jikugumikabe.pdf、又は木造の耐力壁及びその倍率性能試験・評価業務方法書/http://www.cbl.or.jp/standard/kseino/11/file/01.pdf」等に準拠するものであるため、本明細書での詳細な説明は省略する。
まず、図5に示す耐力壁7については、1辺105mm、長さ2515mmの木軸材の8本から成り、これを所定の基礎91、土台92、柱93、桁94から成る軸組材9に2種類の長さの固定ビス6a、6bで取付けている。
本面材2に貫入する締結線材5a、5bの寸法としては、直径6.5mm、短めが全長200mm、長めが全長260mmとしている。貫入位置としては、木軸材間の一体化用として短めの締結線材5aが6本、長めの締結線材5bが29本であり、これを木軸材3の長さ方向に対して直角及び斜め方向の組み合わせとしている。そして、この耐力壁7の壁倍率としては、3.08の結果を得た。
なお、軸組材9への固定については、締結線材5aと直径が同じであるが、これよりも全長が短めの固定ビス6aと、長めの締結線材5bと直径も全長も同じ長めの固定ビス6bの2種類を用いている。土台92及び桁94への固定には短めの固定ビス6aの16本をもって行い、柱93への固定には長めの固定ビス6bの16本をもって行っている。なお、長めの固定ビス6bについては、一部を斜め方向への貫入としている。
次に、図6に示す耐力壁8については、上記同様の8本の木軸材3の構成である点と、取付け対象の軸組材9を同じとしている。一方で、木軸間3の一体化用としては、全てが短めの締結線材5aを直角方向への貫入のみ合計49本で行っている。また、柱93への取付けについては、長めの固定ビス6bを直角方向へ貫入した合計16本で行っている。この耐力壁8の壁倍率としては、2.18の結果を得た。
1 本構造
2 本面材
3 木軸材
31 凸条
32 凹条
4 下穴
5a 締結線材(短め)
5b 締結線材(長め)
51 ネジ部
6a 固定ビス(短め)
6b 固定ビス(長め)
7 耐力壁
8 耐力壁
9 軸組材
91 基礎
92 土台
93 柱
94 桁
本願発明は、木造軸組構法に用いる耐力面材と耐力面構造に関し、特に、構造用軸組材である木軸(柱又は間柱)と同様の木軸材を用いて形成した耐力面材と、これを用いた耐力面構造に関する。
木造軸組構法の耐力面の構築において、特に、耐力壁面の構築の場合、土台に所定間隔で柱を立設固定し、この柱間に筋交いを取り付けて壁の耐力を確保している。そして、この柱間に断熱材や防音材を充填させて後、合板やサイディングなどの面材を取り付ける工法を採っているのが一般的である。
そこで、本願発明は、上記実情に鑑み発明されたものであり、簡易な構造でありながら強度が向上するだけでなく、長期経年による耐力低下を回避すると共に、複数の面材幅に迅速に対応できる耐力面材を提供するものである。さらに、これを用いて構築する木造軸組構法の耐力面構造を提供するものである。
次に、本面材を用いた木造軸組構法の耐力面構造(以下、「本構造」と称する。)は、上記構成の耐力面材を、木造軸組構法の軸組材の間に取り付けたことを特徴としている。
ここで、木造軸組構法の軸組材としては、例えば、通し柱や間柱、土台、及び桁や胴差し等を示し、これらから成る軸組材に取り付ける場合、壁面を構成する耐力面構造となる。他にも、土台、大引きで成る軸組材に配置すれば床面を構成する耐力面構造となり、桁、梁で成る軸組材に配置すれば天井面を構成する耐力面構造となる。
次に、本面材を用いた本構造は、木造軸組構法の軸組材を構成する木軸と同様の木軸材を用いて構成しているため、筋交いや断熱材や防音材や保温材等を省略することができ、
充填作業等の別作業をすることなく大工作業のみで構築できるため、作業効率と工期の短縮を図ることできる。特に、内装施工に関しては、木材の肌が表面に表れるので、これをそのまま内装仕上げとすることができ、材料削減や工期短縮、引いてはコスト削減にも資する。
さらに、本願発明は、壁面構築においては本面材を構成する木軸材を縦方向にして立設させているため、地震による影響が大きい横揺れへの抵抗力をより高めることでき、木造軸組構法としては強度がより向上した耐力壁を構築することができる。この耐力壁の強度向上によって耐力壁数を減少できるために設計自由度が増すことになり、例えば、住宅に大きな開口部を設けることが可能となる。加えて、接着剤を使用しないため、ハウスシック症候群のおそれもなく、住環境にやさしいものである。
図1の図符号1は、本面材2を壁面として用いた本構造である。本構造1は、基礎91の上面に載置した土台92に所定の離隔距離で2本の柱93を立設し、柱間の上部には桁94を跨ぐように配設して木造軸組構法の軸組材9を成し、この軸組材内に本面材2を固定して構成している。
なお、本面材2は、実施例のように壁面に限定するものでなく、取り付ける木造軸組構法の軸組材9によっては、壁面の他、床面や天井面として構成するようにしても良い。
すなわち、同一横断面形の角柱木軸材の複数本を、それぞれ側面当接させて面一状に配置して固定一体化して成り、該固定一体化が、2本又は3本の前記木軸材間に跨る長さの木材用ビスをねじ込み締結すると共に、該ねじ込み締結箇所を、上記耐力面材の適宜の複数箇所に分散配置して行っていることを特徴としている。なお、上記木材用ビスは、木材用雄ネジに変更しても良い。
また、木材用ビスのねじ込み方向は、木軸材の長さ方向に対して直角方向、斜め方向、又はこれらの組合せを採用したことを特徴としている。
上記角柱木軸材の側面当接においては、側面に形成した凹条又は凸条の適合によるものであることを特徴としている。凹条及び凸条は、側面の一部又は全面に渡って形成しても良い。
また、前記凹凸条の当接適合が、角柱木軸材の面取り成形に適合する凹条成形によるものでも良い。具体的には、一方の角柱木軸材を面取り成形して側面全体を凸条形とし、他方の適合側は上記面取り部に適合する凹条を側面全体に成形するものである。
次に、本面材を用いた木造軸組構法の耐力面構造(以下、「本構造」と称する。)は、上記構成の耐力面材を、木造軸組構法の軸組材の間に取り付けて耐力壁面としたことを特徴としている。ここで、木造軸組構法の軸組材としては、例えば、通し柱や間柱、土台、及び桁や胴差し等を示し、これらから成る軸組材に取り付け固定する。その場合、木軸材を、縦方向にして土台に立設させて木造軸組の柱間又は間柱間に取付け固定すれば、耐力壁面を構成する耐力面構造となる。他にも、耐力面材を取り付ける部位が、土台、大引きであれば床面を構成する耐力面構造となり、桁、梁であれば天井面を構成する耐力面構造となる。
また、本面材を構成する角柱木軸材の断面形を、取付け固定する部位の軸組材の木軸と同一横断面形としても良い。この場合、本面材と軸組材間には凹凸面が生じず、美観を確保できると共に余計な引っ掛かりもないため安全面も向上する。
本面材は上記構成を採用することにより、複数の角柱木軸材間に跨るようにねじ込み締結させた複数の木材用ビスによって木軸材の連結状態を高めることができる。本面材は、所定の外力が繰り返し作用しても複数箇所に配設した各木材用ビスが、隣接する角柱木軸材どうしと個別的に結着しているため、面材の耐力低下を招くことはない。また、長期経年の作用によって生じる応力緩和やクリープは、各木材用ビス限りのものであって、かつその方向性が区々であるため、面材としての耐力を安定的に維持することができる。
また、木材用ビスのねじ込み方向を直角方向だけでなく斜め方向にして組み合わせた場合は、面材へ作用する外力を木材用ビスのねじ込み方向に適宜に分散することができるため、耐力面材をより強固に構築することかできる。
さらに、角柱木軸材の側面当接を、凹条又は凸条の適合としているため、木軸材どうしの当接時や木材用ビスのねじ込み締結による位置ズレが抑制され、面材の面を一にした安定品質の耐力面材を形成することができる。
また、軸組材を構成する木軸と同一横断面形(同一寸法角)の角柱木軸材を用いて耐力面材を形成した場合は、壁面や床面や天井面の内装面の工事を省略することができる。これにより、当該工事費の削減が図れるだけでなく、内装及び外装の美観向上にも寄与する。
本実施例に係る本面材を用いた本構造の概要を示す一部切り欠き斜視図である。
本実施例に係る本面材を構成する木軸材を示す斜視図(A)、及び木軸材の側面当接状態を示す斜視図(B)である。
本実施例に係る本面材を構成時の木材用ビスのねじ込み状況を示す一部切り欠き斜視図である。
本実施例に係る本面材の形成方法を示す説明図である。
本実施例に係る本面材を耐力壁に用いると共に、その評価試験の構成例を示す正面図である。
本実施例に係る本面材を耐力壁に用いると共に、その評価試験の構成例を示す正面図である。
図1の図符号1は、本面材2を耐力壁面(以下、「壁面」と略称する。)として用いた本構造である。本構造1は、基礎91の上面に載置した土台92に所定の離隔距離で2本の柱93を立設し、柱間の上部には桁94を跨ぐように配設して木造軸組構法の軸組材9を成し、この軸組材内に本面材2を固定して構成している。
ここで、本面材2は、上述のように軸組材間に取り付けるものであり、土台92、桁94、柱93に複数の専用の2種類の固定ビス6a、6bを用いて固定している。柱用に長めの固定ビス6bを用い、これを水平横方向から柱93を突き通して本面材2の木場面にねじ込み締結している。土台用には短めの固定ビス6aを用い、本面材2から斜めに突き通し先端の一部を土台92にねじ込み締結している。桁用にも短めの固定ビス6aを用い、これを桁94から斜めに突き通し先端の一部を本面材2にねじ込み締結している。なお、上記固定ビス6a、6bは、後述する木材用ビス5aと同じ長尺状の木材用ビスである。また、本面材2と土台92と接合部分は、ホゾとホゾ穴の係合としても良い(図示省略)。
次に、本面材2の詳細について説明する。本面材2は、同一横断面形及び同一長さの複数の角柱木軸材(以下、「木軸材」と略称する。)3、3、3、・・・から構成している。
本面材2は、上記構成の複数の木軸材3の側面を接合させ、面状を成すように並設して構成している。この側面当接時には、側面の形成した上記凹条32と凸条31とを適合させている。そして、この並設状態の木軸材3に対し、少なくとも2本の木軸材3に跨る長さの木材用ビス5aを複数箇所へねじ込み、この木材用ビス5aと各木軸材3とを結着させて一体化している。
ここで、本実施例の木材用ビス5aは、そのネジ部51がその全長に渡って複数の木軸材3と深く結着している。
この木材用ビス5aをねじ込む木軸材3の高さ位置は、その側面の高さ寸法のほぼ中央とする一方、ねじ込み方向は木軸材3の長さ方向に対して直角方向と斜め方向を組み合わせている。また、木材用ビス5aの長さは、上述のように2本の木軸材3に跨る長さの他、3本の木軸材3に跨る合計2種類の寸法を設定している。ここで、2本の木軸材3に跨る長さの木材用ビスは短めの木材用ビス5aと、3本の木軸材3に跨る長さの木材用ビスは長めの木材用ビス5bと、称して用いる。
本面材2における複数の木材用ビス5a、5bのねじ込み締結態様は、中央に直角方向のねじ込む方向のグループ、その両側に中央に向かう斜め方向のねじ込む方向のグループ、その外側に直角方向のねじ込む方向のグループ、となるようにしている。
そして、上記構成の本面材2を、木軸材3が縦方向となるように土台92に立設させた状態で柱93の間に取付けて本構造1を構築している。この軸組材9への取付けにおいては、上述のように、横側は柱93の外側から本面材2に向かって直角方向に複数の固定ビス6bをねじ込み締結し、下側は本面材2から土台92に向かって斜め方向に複数の固定ビス6aをねじ込み締結し、上側は桁94から本面材2に向かって斜め方向に複数の固定ビス6aをねじ込み締結している。
下穴4の開孔後には、各下穴位置に下穴径よりも若干拡径した木材用ビス5aをそれぞれねじ込む。この木材用ビス5aは、そのねじ込み締結によってネジ部51が木軸材3と強固に結着する。木材用ビス5aの長さは下穴深さとほぼ同じとしている。
次に、一体化した2本の木軸材3、3の凸条側に新たな木軸材3を配置し、新たな木軸材3の凹条32を一体化した木軸材3の凸条31に適合させて側面どうしを当接させる。この状態で、木材用ビス5aをねじ込みした位置と異なる位置に複数の下穴4を開孔する。所定数の下穴4の開孔の終了後には、この下穴4に木材用ビス5aをねじ込んでいく。なお、一部の下穴深さについては、適宜に3本の木軸材3に跨るように設定しても良く、これにねじ込む木材用ビス5bは当然に長く設定している。
必要な木材用ビス5a、5bのねじ込み後は、新たな木軸材3の追加、ねじ込み後の木材用ビス5a、5bに干渉しない位置への下穴4の開孔、この下穴4に対して適宜の木材用ビス5a、5bのねじ込みを繰り返し、所定本数の木軸材3から成る本面材2の形成が完了する。
上記実施例の本面材2については、木軸材3を縦方向に立設させると共に、木材用ビス5a、5bのねじ込み締結態様を変えた耐力壁7、8を構築した。そして、耐力壁7、8において「耐力壁及びその倍率性能評価試験」を行ったところ良好な結果を得ている。
本面材2にねじ込む木材用ビス5a、5bの寸法としては、直径6.5mm、短めが全長200mm、長めが全長260mmとしている。ねじ込む位置としては、木軸材間の一体化用として短めの木材用ビス5aが6本、長めの木材用ビス5bが29本であり、これを木軸材3の長さ方向に対して直角及び斜め方向の組み合わせとしている。そして、この耐力壁7の壁倍率としては、3.08の結果を得た。
なお、軸組材9への固定については、木材用ビス5aと直径が同じであるが、これよりも全長が短めの固定ビス6aと、長めの木材用ビス5bと直径も全長も同じ長めの固定ビス6bの2種類を用いている。土台92及び桁94への固定には短めの固定ビス6aの16本をもって行い、柱93への固定には長めの固定ビス6bの16本をもって行っている。なお、長めの固定ビス6bについては、一部を斜め方向へのねじ込み締結としている。
次に、図6に示す耐力壁8については、上記同様の8本の木軸材3の構成である点と、取付け対象の軸組材9を同じとしている。一方で、木軸間3の一体化用としては、全てが短めの木材用ビス5aを直角方向へねじ込み締結した合計49本で行っている。また、柱93への取付けについては、長めの固定ビス6bを直角方向へねじ込み締結した合計16本で行っている。この耐力壁8の壁倍率としては、2.18の結果を得た。
1 本構造
2 本面材
3 木軸材
31 凸条
32 凹条
4 下穴
5a 木材用ビス(短め)
5b 木材用ビス(長め)
51 ネジ部
6a 固定ビス(短め)
6b 固定ビス(長め)
7 耐力壁
8 耐力壁
9 軸組材
91 基礎
92 土台
93 柱
94 桁
すなわち、同一横断面形の角柱木軸材の3以上の複数本を、それぞれ側面当接させて面一状に配置して固定一体化して成り、該固定一体化が、前記木軸材ごとに、前記木軸材の1本又は2本を貫通し得る長さの複数本の木材用ビスを、同方向側に当接した1本又は2本の木軸材に向けて、かつ適宜の間隔をもってねじ込み締結して行っていることを特徴としている。なお、上記木材用ビスは、木材用雄ネジに変更しても良い。