以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態を図1〜図20を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態に係る原稿給送装置Aの概略図である。
<装置の構成>
原稿給送装置Aは、原稿の画像を読み取る画像読取装置(スキャナ等)や、原稿に対して印刷を行う印刷装置(プリンター等)、あるいはこれらを組み合わせた複合機などの原稿給送(媒体供給)系を持つ装置に適用可能であり、本実施形態では、画像読取装置へ適用した例として説明する。
本実施形態の原稿給送装置Aは、装置本体A1の背面側上端部に設けられた載置台1(積載部)に積載された一つ又は複数の原稿Sを1つずつ装置内に対し、水平面(装置本体A1の設置面)に対して傾斜した経路RTにて搬送してその画像を読み取り、装置本体Aの前面側下端部に設けられた排出トレイ2に排出する装置である。読み取る原稿Sは、例えば、OA紙、チェック、小切手、名刺、カード類等のシートであり、厚手のシートであっても、薄手のシートであってもよい。カード類は、例えば、保険証、免許証、クレジットカード等を挙げることができる。
<給送部>
図1に示すように、装置本体A1の経路RTに沿って原稿Sを給送する給送機構としての第1搬送部10が設けられている。第1搬送部10は本実施形態の場合、給送ローラ110と、給送ローラ110に対向配置される分離ローラ12と、を備え、載置台1上の積載面側に配置された原稿Sを給送方向D1に一つずつ順次搬送する。
なお、図1では搬送状態に対し、図2では待機状態を示している。図3では装置全体の駆動伝達構造を示し、図4では給送部の要部拡大図を示し、図5では給搬送部の要部拡大断面図を示している。本実施形態においては、給送方向D1は、原稿給送装置Aの載置面に対して所定の角度で傾斜して設けられており、載置台1に載置された原稿Sの自重によって給送機構に対して原稿Sが供給される。
装置本体A1の上端部側には、載置台1の載置面側にある原稿Sに当接するように給送ローラ110を装着するための凹形状部であるローラ装着部a1が設けられている。なお、本実施形態では、このローラ装着部a1内に装着された給送ローラ110の周囲を覆うカバー部材a3が、ローラ装着部a1の端部に開閉自在に設けられる。そして、このカバー部材a3を開状態とした状態では、給送ローラ110はローラ装着部a1に対して着脱自在となる。
また、給送ローラ110は、図4に示すように、例えば、ゴム材料等で形成された2つの給送ローラ部(第1ローラ部及び第2ローラ部)11がホイール部111にそれぞれ個別に装着され、給送ローラ軸(回転軸)11bに回転可能に支持されている。つまり、本実施形態の給送ローラ110は、2つの給送ローラ部11が給送ローラ軸11bに対して左右に別々に回転可能に設けられる。
さらに、給送ローラ110が有する給送ローラ軸11bは、図4及び図5に示すように、ローラ装着部a1内に設けられた軸受部a2に両側の軸端部が保持され、更にその上からカバー部材a3を閉じることで、カバー部材a3とローラ装着部a1の軸受部a2との間で給送ローラ軸11bの軸受構造が形成され、ローラ装着部a1内の軸受部a2とカバー部材a3との間で給送ローラ軸11bが固定され、この給送ローラ軸11bの軸回りに各給送ローラ部11が回転可能に保持される。このように、本実施形態では、カバー部材a3の開閉によって、給送ローラ110の着脱が容易に行えるようになっている。
また、給送ローラ110が有する各給送ローラ部11には、各給送ローラ部軸11bに対して給送ローラ部11と共に回転可能となる第1及び第2給送ギア部(第1及び第2給送回転部)112a、112bが設けられている。この第1及び第2給送ギア部112a、112bに対しては、装置本体A1内に設置されたモータ3(駆動モータ)の駆動力を伝達する第1及び第2駆動ギア部(第1及び第2駆動回転部)101a、101bが、給送ローラ110を駆動する駆動手段の一部としてギア接続される。
なお、これら第1及び第2給送ギア部112a、112bは、上記カバー部材a3を閉じたときにカバー部材a3によって分離ローラ12側の上部が覆われる構造となる。これにより、第1及び第2給送ギア部112に対して紙粉が付着することをカバー部材a3によって保護することができる。
また、給送ローラ110を駆動するための駆動手段とは、例えば、上述したモータ3に加え、当該モータ3と給送ローラ110との間の駆動伝達機構を含めた構成を意味し、本実施形態ではギア接続やプーリー等でのベルト連結を用いた駆動伝達系を例示して説明しているが、例えば、全てをギア接続としてもよいし、全ての構成を、プーリー等を用いたベルト接続としてもよい。
このようにカバー部材a3によって保護された第1及び第2給送ギア部112a、112bは、各給送ローラ部11の直径よりも小さいギア径で設けられている。このため、第1及び第2給送ギア部112a、112bに接続される第1及び第2駆動ギア部101a、101bは、各給送ローラ軸11bの軸方向視において各給送ローラ部11と部分的に重なり、給送ギア部112とのギア接続部が軸方向視において各給送ローラ部11と重なるように設けられている。これにより、第1及び第2給送ギア部112a、112bの外径を小さく設定し、給送ローラ110の収容性を高め、カバー部材a3との物理的な干渉についても未然に防ぐことができる。
また、このような第1及び第2駆動ギア部101a、101bは、駆動ギア軸102に対してその軸方向に間隔をあけて設けられている。そして、本実施形態では、第1駆動ギア部101aと駆動ギア軸102との間にワンウェイクラッチ部(第1ワンウェイクラッチ部)101cが設けられ、さらに第2駆動ギア部101bと駆動ギア軸102との間にも、同様のワンウェイクラッチ部(第2ワンウェイクラッチ部)101cが設けられている。したがって、第1及び第2駆動ギア部101a、101bは、基本的に、個々独立した回転動作が可能となる。
すなわち、ワンウェイクラッチ部101cは、それぞれ第1及び第2駆動ギア部101a、102bに対して個別に設けられているため、第1駆動ギア部101aと第2駆動ギア部101bとはそれぞれ給送方向へ独立した回転駆動が可能となる。そのため、給送ローラ110の各給送ギア部112a、112bに対して接続された状態では、各給送ローラ部11が給送方向に独立して給送可能となる。このように、本実施形態では、各給送ローラ部11が、第1及び第2駆動ギア部101a、101bの動作に連動することになる。また、各給送ローラ部11は、分離ローラ12が接圧された状態では停止し、分離ローラ12との間に原稿が進入した場合には給送方向への回転駆動が可能となる。
そのため、詳細は後述するが、搬送ローラ21に達した搬送原稿Sが斜行した状態で給送ローラ110及び分離ローラ12の間から引き抜かれたとしても、個々独立したワンウェイクラッチ101cの動作によって、後続原稿Sの斜行の連鎖が抑えられる。例えば、一方の給送ローラ部11と分離ローラ12との間に斜行した搬送原稿Sの一部が残っている間は一方の給送ローラ部11は給送方向へ回転を継続し、他方の給送ローラ部11と分離ローラ12とが接圧されると分離ローラ12に対して当該他方の給送ローラ部11の回転は停止することになるため、このような給送ローラ部11の左右の個別動作によって後続原稿Sの斜行連鎖が防止される。
また、本実施形態では、給送ローラ110が着脱される装置本体A1側の駆動系において、各給送ローラ部11の独立動作を可能とするための組み込み構造、すなわち、給送ローラ110が有する各給送ローラ部11に対して駆動伝達を行う第1及び第2駆動ギア部101a、101bにそれぞれワンウェイクラッチ部101cを設けた構造としたことで、例えば、交換部品となる給送ローラ110に対してワンウェイクラッチ部を内蔵する場合と比べて、給送ローラ110の構成を簡素化できるため、低コストで給送ローラ110を製作することができる。
さらに、本実施形態では、給送ローラ部11と分離ローラ12とのニップ部から各ワンウェイクラッチ部101cを遠ざけた構成を採用、すなわち、給送ローラ110をカバー部材a3で覆い、更に給送ローラ110が装着されるローラ装着部a1の底面部で紙粉を遮断できる構成となっているため、ワンウェイクラッチ部101cへの紙粉の付着を有効に防ぐことができる。
なお、このような給送ローラ110への駆動伝達を行う第1及び第2駆動ギア部101a、101bが設けられた駆動ギア軸102の一端部には、電磁クラッチ等から構成されるクラッチ部103が設けられている。また、このクラッチ部103は、モータ3からプーリーQで駆動力が伝達される駆動伝達機構(ギア列)Xと駆動ギア軸102との間で接続されている。
つまり、駆動ギア軸102と駆動伝達機構Xとは、駆動ギア軸102が有するクラッチ部103によって駆動連結される。さらに、この給送ローラ110への駆動伝達機構Xは、分離ローラ12の駆動伝達機構が接続される。すなわち、モータ3は、分離ローラ12及び給送ローラ110の駆動源となる。
ここで、駆動ギア軸102に設けたクラッチ部103がOFFのときは、モータ3の駆動を駆動ギア軸102に伝達せず、クラッチ部103がONのときはモータ3の駆動を駆動ギア軸102に伝達するための切替手段である。
クラッチ部103をOFFすると、分離ローラ12だけに駆動伝達が行われ、このとき給送ローラ110は分離ローラ12に従動回転する。これにより、原稿が重送したことを後述する重送検出センサ40で検知した場合、給送動作を一時停止し、モータ3を駆動することで、重送した原稿を載置台1側に戻す動作を適切に行うことができる。なお、このような重送リトライ機能を搭載しない場合は、クラッチ部103を設けなくてもよい。
このように、本実施形態では、モータ3を駆動して駆動ギア部101から第1及び第2給送ギア部112a、112bにその駆動力が伝達されると、第1及び第2給送ギア部112a、112bと共に各給送ローラ部11が給送方向(図1の実線矢印D2方向)に回転する。
ここで、給送ローラ110の搬送速度は、後述の搬送ローラ21の搬送速度より遅い速度に設定されている。このため、給送された原稿Sが搬送ローラ21に到達し原稿Sの搬送速度が上がる時、各ワンウェイクラッチ部101cと駆動ギア軸102との噛み合いが外れ、給送ローラ110は搬送原稿Sに連れ回り、モータ3からの駆動伝達で回転するスピードよりも速く回転する。
すなわち、搬送ローラ21に達した搬送原稿Sは、給送ローラ110との速度差が大きく設定された搬送ローラ21から搬送力を受けるため、給送ローラ110とこの給送ローラ110に接圧された分離ローラ12との間から引き抜かれることになる。
このとき、本実施形態では、上述したように、ワンウェイクラッチ部101cが、左右の給送ローラ部11への駆動伝達を行うための第1及び第2駆動ギア部101に対して個別に設けられているため、搬送ローラ21に達した搬送原稿Sが斜行した状態で給送ローラ110及び分離ローラ12の間から引き抜かれたとしても、個々独立したワンウェイクラッチ部101cの動作によって、後続原稿Sの斜行の連鎖が抑えられる(以下、「斜行連鎖の抑制効果」)。
また、本実施形態の給送ローラ110は、上述したように、給送ローラ軸11bの軸方向における各給送ローラ部11の両側で駆動伝達が行われるため、給送ローラ110に対して左右均等な駆動伝達によってモータ3の駆動力が安定的に伝達される。
すなわち、給送ローラ110は、分離ローラ12からの付勢力を受けており、この付勢力に対し、各給送ローラ部11への駆動伝達は左右でバランス良く行われることになる。そのため、給送ローラ部11の軸方向の姿勢が安定化し、その結果、シートに対する給送力が左右でバランス良く伝達されることになり、給送性能の向上を図ることができる。
また、分離ローラ12は、給送ローラ110の各給送ローラ部11に対してバネ等で付勢されることから、本実施形態のように各給送ローラ部11の隙間側の各ローラ端部に圧接するような構成としつつ、各給送ローラ部11の隙間側とは反対側の両側で第1及び第2給送ギア部112a、112bがそれぞれ設けることで、第1及び第2給送ギア部112a、112bと第1及び第2駆動ギア部101a、101bとのギア接続が更に安定化する。これにより、給送ローラ110に対する動力伝達がより安定的に行え、分離ローラ12との接圧状態も左右で良好なバランスを維持できる。
なお、本実施形態では、上述したように、各給送ローラ部11のうち軸方向に対向する側(互いに向かい合う側)の各ローラ端部で分離ローラ12がそれぞれ接圧される構成としたが、給送ギア部112側のローラ端部でそれぞれ分離ローラ12と接圧されていてもよいし、軸方向における各給送ローラ部11の中央部で分離ローラ12と接圧されてもよい。いずれにしても、各給送ローラ部11に対して分離ローラ12を左右均等に接圧するようにするのが好ましい。
このように、本実施形態の給送ローラ部11は、分離ローラ12の付勢力を受け、左右でバランス良く分離ローラ12に接圧されることになる。つまり、分離ローラ12に対する給送ローラ110の姿勢が安定する。これは給送ローラ110に対して左右の給送ギア部112a、112bを設け、それぞれで駆動ギア部101a、101bを接続したことで、分離ローラ12に接圧された各給送ローラ部11の荷重バランスが左右で安定化する。
したがって、給送ローラ110と分離ローラ12との間で形成されたニップ部に対して原稿Sが進入したときには、原稿Sに対して左右のニップ力が均等にかかることになるため、原稿Sの斜行を未然に防止し、様々な種類の原稿に対して、安定した給送動作を行うことができ、給送性能の向上を図ることができる。
また、本実施形態では、上述した通り、各給送ローラ部11に対応する第1駆動ギア部101a、101bに対して個別にワンウェイクラッチ部101cを設けているので、仮に、先行する原稿Sが斜行したとしても、後続の原稿Sに対して上述のワンウェイクラッチ部101cの個別動作が作用し、後続の原稿Sの斜行連鎖を有効に抑制することができる。
なお、給送ローラ110と後述の分離ローラ12はそれぞれ1つのユニットであり、装置から付け外し可能なユニットとなっている。このため、メンテナンスが容易であり、また、ローラ表面が摩耗してきた場合等において、給送ローラ110のユニット交換が可能である。
<分離部>
上述した給送ローラ110に対向配置される分離ローラ12は、原稿Sを1枚ずつ分離するためのローラであり、給送ローラ110に対して一定圧で圧接している。この圧接状態を確保するため、図1に示すように分離ローラ12を分離揺動部材121によって支持している。分離揺動部材121は、軸部121aを中心に回転可能に支持されており、また、分離ローラ12が給送ローラ110に圧接するように圧縮バネ122により付勢力が与えられている。
図1に示すように、分離ローラ12はトルクリミッタ12aを介してモータ3から駆動力が伝達され、実線矢印D3方向に回転駆動される。分離ローラ12はトルクリミッタ12aにより駆動力の伝達が規制されるため、給送ローラ110と当接している際は給送ローラ110に連れ回りする方向(破線矢印D4方向)に回転する。
また、左右2つのローラ(第3及び第4ローラ部)を有する分離ローラ12に対してトルクリミッタやディファレンシャルギア等のトルク調整機構を個別に内蔵させることで、原稿Sの斜行に応じて、左右のトルクの調整が可能となり、原稿Sの斜行を低減するような構成としてもよい。
なお、本実施形態においては分離ローラ12を用いた構造にて説明したが、必ずしもローラの形態に限らず、原稿Sに対して給送方向とは逆方向に負荷を掛けるもの、例えば分離パッドなどを用いた場合でも同様であり、分離部材としてはいかなる形態でも構わない。
<給送部の原稿検知構造>
載置台1上の原稿Sの有無を検知するため、図1に示すように給送ローラ110の上流部には原稿検知センサ90が設けられている。原稿検知センサ90は、自重で鉛直方向上方から下方側に垂れ下るように設けられたレバー式のセンサである。他の例として後述の媒体検出センサ50、60のような光学式のセンサであっても構わない。
ここで、本実施形態では、原稿検知センサ90は、分離ローラ12と給送ローラ部11とで形成されるニップ部よりも給送方向における直前で原稿の有無を検知するセンサである。そのため、原稿検知センサ90は、ニップ部に近い場所となる左右の給送ローラ部11の間に配置するのが好ましい。
なお、本実施形態のようなレバー式の原稿検知センサ90を採用することで、給送ローラ110において給送ギア部112を設けるスペースが確保され、高精度な原稿検知に加え、左右均等な接圧状態で良好な分離給送を行うことができる。
<ピックアーム・原稿ストッパー>
原稿給送装置Aは図1のように、給送ローラ110と分離ローラ12とが接するニップ部(圧接部)の上流側で給送ローラ110に原稿Sを圧接するピックローラ131と、ピックローラ131を軸支するピックアーム13を備える。ピックローラ131は原稿Sを給送ローラ110に押し付けることで原稿Sの搬送力をアップさせて原稿Sの給送を補助する。
ピックアーム13は、ピックアーム13の軸部13aが装置Aに回転可能に支持され、ピックローラ131を給送ローラ110に押し付ける方向に不図示のバネにより付勢されている。ピックアーム13は、図1で示されるピックローラ131が給送ローラ110に原稿Sを圧接する圧接位置と、図2で示されるピックローラ131を給送ローラ110から退避する退避位置と、に後述のモータ4の駆動力によって移動可能である。
給送ローラ110の給送を補助する別の構成として、給送ローラ110の上流にもう1つの給送ローラを設ける構成もあるが、上記図1の構成であれば装置の小型化や装置のコストダウンを実現できる。
原稿給送装置Aは図1のように原稿ストッパー14を備える。原稿ストッパー14は図2の状態においてその先端を搬送路側に突出させることで、積載された原稿束をせき止める役割を有する。
原稿ストッパー14は、原稿ストッパー14の軸部14aが装置Aに回転可能に支持され、図1で示される原稿Sを給送できるように搬送路を開く開口位置と、図2で示される給送ニップに原稿束が入らないように搬送路を閉じる閉口位置と、に移動可能である。図2が原稿給送装置Aの待機状態であり、この状態で原稿束の先端を原稿ストッパー14に突き当てて載置台1に原稿束をセットできる。
モータ4は、搬送ローラ21を保持する搬送ローラ軸21a、及び搬送ローラ31を保持する搬送ローラ軸31aの一端側においてプーリーP及びベルト4aを介して接続される。
すなわち、モータ4は、搬送ローラ21、31を駆動する駆動源であり、上述した給送ローラを駆動するモータ3とは別のモータとして設けられている。これにより、モータ3、4を個別制御すれば、給送駆動と搬送駆動とを別々の制御を行うことで、高精度な給搬送制御を実現できる。
ピックアーム13と原稿ストッパー14は駆動伝達機構Y(図3参照)を介して、上述した搬送ローラ21、31を駆動するモータ4によって駆動される。モータ4が所定パルス数を正方向に駆動することで、ピックアーム13が圧接位置、原稿ストッパー14が開口位置に移動し、モータ4が所定パルス数を逆方向に駆動することで、ピックアーム13が退避位置、原稿ストッパー14が閉口位置に移動する。ここで正方向とは、図1において原稿Sを給送方向D1に搬送するように後述の搬送ローラ21、31を回転させる方向である。
<搬送構造>
図1に示すように、第1搬送部10の給送方向下流側にある搬送機構としての第2搬送部20は、搬送ローラ21と、搬送ローラ21に従動する従動ローラ22とを備え、第1搬送部10から搬送されてきた原稿Sをその下流側へ搬送する。搬送ローラ21はモータ4から駆動力が伝達され、図中実線矢印方向に回転駆動される。従動ローラ22は搬送ローラ21に対して一定圧で圧接し、搬送ローラ21に連れ回る。
このような第2搬送部20よりも給送方向下流側にある第3搬送部30は、搬送ローラ31と、搬送ローラ31に従動する従動ローラ32とを備え、第2搬送部20から搬送されてきた原稿Sを排出トレイ2へ搬送する。つまり、この第3搬送部30は排出機構として機能する。搬送ローラ31はモータ4から駆動力が伝達され、図中実線矢印方向に回転駆動される。従動ローラ32は搬送ローラ31に対して一定圧で圧接し、搬送ローラ31に連れまわる。
<重送検出>
図1及び図2に示すように、第1搬送部10と第2搬送部20との間に配置される重送検出センサ40は、静電気等により紙などの原稿S同士が密着し、第1搬送部10を通過してきた場合(つまり重なって搬送される重送状態の場合)に、これを検出するための検出センサ(原稿Sの挙動や状態を検出するセンサ)の一例である。
重送検出センサ40としては、種々のものが利用可能であるが本実施形態の場合には超音波センサであり、超音波の発信部41とその受信部42とを備え、紙等の原稿Sが重送されている場合と1つずつ搬送されている場合とで、原稿Sを通過する超音波の減衰量が異なることを原理として重送を検出する。
<レジストセンサ>
上述した重送検出センサ40よりも給送方向下流側に配置される媒体検出センサ50は第2搬送部20よりも上流側で、第1搬送部10よりも下流側に配置された上流側の検出センサ(原稿Sの挙動や状態を検出するセンサ)としての一例であり、第1搬送部10により搬送される原稿Sの位置、詳細には、媒体検出センサ50の検出位置に原稿Sの端部が到達又は通過したか否かを検出する。
媒体検出センサ50としては、種々のものが利用可能であるが、本実施形態の場合には光学センサであり、発光部51とその受光部52とを備え、原稿Sの到達又は通過により受光強度(受光量)が変化することを原理として原稿Sを検出する。
本実施形態の場合、原稿Sの先端が媒体検出センサ50で検出された時点で、原稿Sが重送検出センサ40により重送を検出可能な位置に到達しているように、上記の媒体検出センサ50は重送検出センサ40の近傍においてその下流側に設けられている。なお、この媒体検出センサ50は、上記の光学センサに限定されず、例えば、原稿Sの端部が検知できるセンサ(イメージセンサ等)を用いてもよいし、経路RTに突出したレバー型のセンサでもよい。
媒体検出センサ50とは別の媒体検出センサ60が画像読取ユニット70よりも上流側に配置されている。第2搬送部20よりも下流側に配置された下流側の検出センサとしての一例であり、第2搬送部20により搬送される原稿Sの位置を検出する。
媒体検出センサ60としては、種々のものが利用可能であるが、本実施形態の場合、媒体検出センサ50と同様に光センサであり、発光部61と受光部62とを備え、原稿Sの到達又は通過により受光強度(受光量)が変化することを原理として原稿Sを検出する。
<CISの配置>
媒体検出センサ60よりも下流側にある画像読取ユニット70は、例えば、光学的に走査し、電気信号に変換して画像データとして読み取るものであり、内部にLED等の光源、イメージセンサ、レンズアレー等を備えている。本実施形態の場合、画像読取ユニット70は経路RTの両側に一つずつ配置されており、原稿Sの表裏面を読み取るコンタクトイメージセンサ(CIS)によって構成されている。
<ブロック図の説明>
図6を参照して制御部80について説明する。図6は原稿給送装置Aの制御部80のブロック図である。
制御部80はCPU81、記憶部82、操作部83、通信部84及びインターフェース部85を備える。CPU81は記憶部82に記憶されたプログラムを実行することにより、原稿給送装置A全体の制御を行う。記憶部82は例えばRAM、ROM等から構成される。操作部83は、例えば、スイッチやタッチパネル等で構成され、操作者からの操作を受け付ける。
通信部84は、外部装置との情報通信を行うインターフェースである。外部装置としてPC(パソコン)を想定した場合、通信部84としては、例えば、USBインターフェースやSCSIインターフェースを挙げることができる。また、このような有線通信のインターフェースの他、通信部84は無線通信のインターフェースとしてもよく、有線通信、無線通信の双方のインターフェースを備えていてもよい。
インターフェース部85はアクチュエータ86やセンサ87とのデータの入出力を行うI/Oインターフェースである。アクチュエータ86には、モータ3、モータ4等が含まれる。センサ87には、重送検出センサ40、媒体検出センサ50及び60、画像読取ユニット70、原稿検知センサ90等が含まれる。
<PCからの開始指示受信による駆動>
原稿給送装置Aの基本的な動作について説明する。制御部80は、例えば原稿給送装置Aが接続された外部パソコンから画像読み取りの開始指示を受信すると、第1乃至第3搬送部10乃至30の駆動を開始する。載置台1に積載された原稿Sはその最も下に位置する原稿Sから1つずつ搬送される。画像読み取りの開始指示は、原稿給送装置Aに設けられたスタートボタンの押下によって実行されても良い。
<レジストセンサの出力に応じた読取開始>
制御部80は、媒体検出センサ60の検出結果に基づくタイミングで、第2搬送部20により搬送されてきた原稿Sの、画像読取ユニット70、70による画像の読み取りを開始し、読み取った画像を一次記憶して順次外部パソコンへ送信する。画像が読み取られた原稿Sは第3搬送部30により排出トレイ2に排出されてその原稿Sの画像読取処理が終了する。
<給送・搬送の動作フロー>
次に、図7を参照して給送・搬送の動作フローについて説明する。
ステップS1では、制御部80が、例えば原稿給送装置Aが接続された外部パソコンから画像読み取りの開始指示を受信する。
ステップS2では、制御部80が、原稿検知センサ90により載置台1上の原稿Sの有無を判定する。
ステップS3では、制御部80が、原稿検知センサ90により原稿Sが無いと判定した場合、原稿Sが無い旨の注意書きを外部パソコン等に表示し、給送・搬送が行われず終了となる。
ステップS4では、制御部80が、原稿検知センサ90により載置台1上に原稿Sが有ると判定した場合、モータ4を正方向に駆動する。この時ピックアーム13が圧接位置に、原稿ストッパー14が開口位置に移動される。
ステップS5では、制御部80が、モータ3を駆動し、給送ローラ110を原稿Sを給送する方向(正方向)に回転させ、原稿Sを給送する。
ステップS6では、搬送原稿Sの先端が媒体検出センサ50を通過したことを検出し、次いで、ステップS7で、搬送原稿Sの先端が媒体検出センサ60を通過したことを検出する。
このとき、搬送原稿Sの先端が媒体検出センサ60を通過したことで、搬送原稿Sが第2搬送部20に到達していることから、第1搬送部10を停止しても搬送原稿Sが第2搬送部20によって搬送されるため、ステップS8で、制御部80がモータ3を停止する。
一方、媒体検出センサ60に原稿Sの先端が到達した時刻から、画像読取ユニット70に到達する所定時間の経過後に原稿Sの画像読み取りを開始する。
ステップS9では、搬送原稿Sの後端が媒体検出センサ60を通過したことを検出する。この時刻から所定時間の経過後に原稿Sの画像読み取りを終了する。これによって1枚の原稿Sに対する一連の読み取り動作が完了する。
ステップS10では、制御部80が、原稿検知センサ90により載置台1上の原稿Sの有無を判定する。原稿Sが有ると判定した場合はステップS5に移り、原稿Sの搬送と画像読み取りを行う。
ステップS10で、原稿検知センサ90により載置台1上に原稿Sが無いと判定した場合、ステップS11で、制御部80がモータ4を停止する。このとき、媒体検出センサ60を通過した原稿が第3搬送部30によって排紙されるべく、所定時間経過後にモータ4を停止する。第3搬送部の駆動をモータ4が行わない場合には、直ちにモータ4を停止して良い。
その後、ステップS12で、制御部80が、モータ4を逆方向に所定パルス数だけ駆動してから停止する。この時、ピックアーム13が退避位置に、原稿ストッパー14が閉口位置に移動されて停止する。これで給送・搬送の動作が終了となる。
以上の動作フローにより、媒体検出センサ60をトリガーとして次の原稿Sの給送をする搬送制御を行う。これにより、画像読取ユニット70の読取位置で所定の紙間を設けられるので、安定的に原稿Sを連続して搬送することができる。
<分離揺動部材>
分離揺動部材121は図8及び図9に示すように、分離ローラ12の側部に設けられており、原稿Sに当接する面を設けたリブ部121bと、リブ部121bに揺動可能に支持された制限部材1211と、制限部材1211を付勢するバネ1212とを有する。制限部材1211は可動部材の一例であり、後述するように分離ローラ12と原稿の先端側との間の空間に進入する。
リブ部121bは、分離揺動部材121の側面図である図8及び図9に示すように、分離ローラ12の回転中心に対して給送方向上流側の外形面と略同一面である面121cを有する。積載枚数が多い原稿束等の重い原稿束を給送するときに、原稿束の先端が面121cに突き当たることで、積載された原稿束における上側の原稿Sが分離ローラ12に押圧され、分離ローラ12の上流側の面が潰れるのを防止し、また、給送ニップへ入り込む原稿束の枚数を制限し、給送不良を低減する。
制限部材1211は、リブ部121bの搬送路側への突出先端である突出部121dより搬送路に向けて突出すると共に、リブ部121bから給送方向上流側にも突出するように設けている。制限部材1211は、軸部1211aを中心に回転可能で、バネ1212により搬送路に突出する方向(図中矢印D5方向)に付勢され、回転止め部1211bがリブ部121bに突き当たっている。
制限部材1211は、重い原稿束をセットした時に退避(矢印D5とは逆方向に回動)するように、また、軽い原稿束をセットした時に退避しないように、バネ1212により付勢されている。軽い原稿束とは、伝票の束のような特に紙厚の薄いかつ原稿サイズが小さい原稿である。
例えば、本実施形態においては、最大積載枚数が60枚である原稿給送装置Aにおいて、搬送路は原稿給送装置Aの設置面に対して40度となっており、この場合、坪量80g/m2でA4サイズのOA紙60枚をセットした場合に制限部材1211が原稿束に押されて退避し、坪量40g/m2でA6サイズの伝票60枚をセットした場合に制限部材1211が原稿束に押されても退避せずにいるよう、バネ1212の荷重が設定されている。
このように、制限部材1211を付勢するバネ1212の付勢力は、原稿給送装置Aの仕様やどの程度の原稿束に対してのみ退避するようにするかを設定することができ、必ずしも一意に決まるものではない。
このような制限部材1211を設けることによって、特に薄紙の給送ジャム(紙詰まり)を防止することができる。制限部材1211が無い場合は、図10のように、伝票等の紙厚の薄い原稿束を給送する時、原稿束の一部が給送ニップに入り込み、給送ニップと原稿束先端の間に空間Kができることがある。
このとき原稿S1を給送中にその空間Kの中で次に給送される原稿S2がつられて給送方向(正方向)に力を受け、分離ローラ12からも負方向の力を受けることで原稿S2先端がたわみ、原稿S2先端のめくれやジャムが発生することがある。
それに対し本実施形態においては、上記の制限部材1211を設けることで、図11のように、伝票等の紙厚の薄い原稿束に対しては給送ニップに入り込む原稿束の量を制限し、給送ニップと原稿束先端の間の空間Kを小さくしてその空間Kでの原稿S2のたわみを抑制し原稿S2先端のめくれやジャムの発生を抑えることができる。
重い原稿束に対しては、制限部材1211が退避するので、原稿Sと給送ローラ110の接触する面積が変わらず搬送力が低下しないので原稿Sの不送りが発生しない。またクレジットカード等の厚い原稿Sも給送ローラ110の搬送力を受けて原稿Sが制限部材1211を押して退避させるので、原稿Sの不送りは発生しない。
また、図8に示すように、複数の給送ローラ110の間の位置に、原稿Sの到達を検知するための原稿検知センサ90を設けている。原稿検知センサ90は、検知センサ軸90aで軸支されており、自重でぶら下がっている。到達する原稿Sの種類に依らずに検知センサ軸90aを中心に退避可能にするために、できるだけ軽く、回動動作に対する摩擦などによる抵抗がほとんどなくなるように構成されている。
原稿検知センサ90の上流側には、給送ローラガイド17が設けられている。給送ローラガイド17は、給送ローラ110の上流側に設けられたガイド軸17aによって軸支され、給送方向下流側に向けて延在している。
給送ローラガイド17は、図13に示すガイド付勢手段17bによって、先端が給送ローラ110側から分離ローラ12側に移動するように給送方向と直交する方向(搬送原稿の厚み方向)に付勢されており、載置台1上に原稿Sが存在しない場合には、給送ローラ110の軸方向(図13に示す方向)から見た際に、先端が給送ローラ110の外周から飛び出す位置まで付勢された状態で、不図示の突き当て部によって位置決めされている。
この給送ローラガイド17によって、複数の原稿Sが載置台1に載置される場合には、図11に示すように付勢手段に抗して給送ローラガイド17が給送ローラ110側に付勢される。また、原稿Sが少ない場合、特に、薄紙の原稿Sが1枚だけ載置台1に載置される場合など、載置する原稿Sが少ない場合などには、図12に示すように、給送ローラガイド17によって原稿を分離ローラ12側に付勢される。
そして、原稿Sの先端が給送ローラガイド17に摺接している間は、原稿Sが給送ローラ110に当接しないようにしている。この構成によって、原稿Sを載置台1にセットするとき、原稿Sが少ない場合などに、原稿Sが給送ローラ110に引っ掛かってしまい所定のセット位置にセットできないということを防ぐことができる。
なお、本実施形態においては、図8に示すように、給送ローラ110の両脇および給送ローラ110の間に給送ローラガイド17における分離ローラ12側(給送方向下流側)の先端が配置されるように、給送ローラガイド17を設けているため、載置台1上の原稿束が少なくなってきたときなどに、原稿Sの先端が給送ローラ110に当接してしまうことをより確実に防ぐことができる。
また、給送ローラガイド17によって、局所的に原稿Sを持ち上げて、原稿Sに対するコシ付けを行うことができる。本実施形態における給送ローラガイド17によれば、複数の給送ローラガイド17が、給送ローラ110の上流側において原稿Sを持ち上げる方向に付勢し、コシ付けを行った状態で、給送ローラ110と分離ローラ12との間のニップに原稿Sを突入させることができる。
加えて、それでもコシの弱い原稿Sに対しては上述したような制限部材1211が当接してニップに突入する原稿Sの量を制限できるため、原稿S先端のめくれや紙詰まりの発生を効果的に抑制することができる。ここで、本実施形態において原稿先端のめくれとは、めくれた結果、原稿に皺が寄ったまま給送される状態も含む。
なお、本実施形態においては、給送ローラ110および給送ローラガイド17を覆うように、図8に示すカバー部材a3が設けられている。給送ローラ110のカバー部材a3における原稿が摺接する面とは反対側(図8における下方側)に図12に示す給送ローラガイド17のガイド軸17aおよびガイド付勢手段17bが取り付けられており、カバー部材a3と給送ローラガイド17とで一体のユニットを構成している。
給送ローラ110のカバー部材a3を取り外すことによって、給送ローラ110の軸や軸受が露出し、給送ローラ110を原稿給送装置Aから着脱することが可能となる。なお、給送ローラ110のカバー部材a3には、原稿ストッパー14の先端が収納される位置に凹形状の収納部を設けている。
本実施形態においては、制限部材1211が分離揺動部材121に支持されることにより、給送ローラ110や分離ローラ12が摩耗した場合でも給送性能の悪化を抑制できる。
図14(a)のように分離揺動部材121ではなく揺動しない固定部品15に制限部材1211を支持した構成では、給送ローラ110や分離ローラ12が摩耗したときに、分離ローラ12が給送ローラ110側に圧接されるため、図14(b)のように給送ローラ110や分離ローラ12の軸間ピッチmが短くなり、制限部材1211と給送ローラ110の隙間n’が隙間nよりもが大きくなり、給送時に図11における空間Kが大きくなるため原稿先端のめくれや紙詰まりの低減作用は小さくなる。
しかし、図15(a)のように、揺動する分離揺動部材121に制限部材1211を支持した構成にすれば、給送ローラ110や分離ローラ12が摩耗したときに、図15(b)のように給送ローラ110や分離ローラ12の軸間ピッチmが短くなっても、制限部材1211と給送ローラ110の隙間n’’が分離ローラ12の摩耗分だけ隙間nよりも小さくなる。
そのため、給送時に図11における空間Kが図14(b)のように大きくならないので、ジャム等の給送の問題を抑えることができる。実際には、分離ローラ12の摩耗量は、給送ローラ110の摩耗量に比べて小さく、隙間n’’が狭くなり過ぎて給送できなくなるということはない。
図16に示すように、本実施形態におけるリブ部121b及び制限部材1211は、給送ローラ110の摩擦部材11cの対向側に配置される。摩擦部材11cはゴム等の材料で原稿Sをグリップし易いよう給送ローラ110のローラ外周に形成されたものである。
給送ローラ110が2つの摩擦部材11cを有し、2つの分離ローラ12の両脇にリブ部121b及び制限部材1211が配置される。リブ部121b及び制限部材1211を摩擦部材11cに対向させることで、リブ部121b及び制限部材1211と摩擦部材11cの間に原稿Sが挟まれて摩擦部材11cの摩擦力が上がるため、原稿Sの搬送力がアップし原稿Sの不送りが防止される。
換言すると、給送ローラ110に対し、幅の狭い分離ローラ12を設け、給送ローラ110に対しては、分離ローラ12が配置されていない部分のスペースを用いて制限部材1211を設けている。こうすることによって給送ローラ110の幅に対して必要な分離ローラ12の幅を確保しながら、制限部材1211を配置することができ、特に、本実施形態のように、搬送路が鉛直方向に立っている比較的小型の原稿給送装置における小型化に有効である。
リブ部121b及び制限部材1211の配置はこれに限るものではない。図17のように、リブ部121b及び制限部材1211を2つの分離ローラ12の間に配置してもよい。
このように配置しても、図16の態様と同様に、リブ部121b及び制限部材1211と摩擦部材11cの間に原稿Sが挟まれて摩擦部材11cの摩擦力が上がるため、原稿Sの搬送力がアップし原稿Sの不送りを好適に防止することができる。
また、図18、図19のように、リブ部121b及び制限部材1211を摩擦部材11cと対向しない位置、つまり給送ローラ110のスラスト方向にずらした位置に配置してもよい。
リブ部121b及び制限部材1211は、図18では2つの摩擦部材11cの間に配置され、図19では2つの摩擦部材11cの両脇に配置される。このように配置した場合、給送ローラ110と対向しないため、制限部材1211と摩擦部材11cとの間に原稿Sを挟む作用は低減するが、実質的に挟んでおり摩擦力は向上でき、制限部材1211による軽い原稿束に対して退避せずに押圧する作用は発揮することができ、給送性能を向上することができる。
図20は、リブ部121bと制限部材1211の配置を説明するための断面図である。図20(b)のようにリブ部121b及び制限部材1211は摩擦部材11cの対向側で給送ニップに近い場所に配置される。
これにより給送ローラ110外径の搬送路に露出する距離(ローラ外径の上流の点aから突出部121dの対向の点bまで)が長くなり、原稿束が接触する給送ローラ110の面積が大きくなって搬送力をアップできる。
具体的には、図16のようにリブ部121b及び制限部材1211を分離ローラの両脇に配置することで、摩擦部材11cの対向側かつ給送ニップに近い場所に配置でき、搬送力を強くすることができる。
より詳述すると、図20(b)に示すように、制限部材1211における給送ローラ110側に形成された面1211eが、分離ローラ12の外周面とそのスラスト方向(給送方向と直交する方向)で重なり、同一な外形面を形成するように配置している。こうすることで、給送される原稿Sに対して制限部材1211によって浮き等を抑えることができ、搬送性能を向上できる。
但し、制限部材1211の配置は上記の構成に限るものでは無く、重い原稿束を搬送することがなく給送の搬送力が小さくてかまわない装置等では、図20(a)のように、摩擦部材11c外径における搬送路に露出する距離(ローラ外径の上流の点aから突出部121dの対向の点bまで)を短くしてもかまわない。
制限部材1211は図9に示すように、原稿束の突き当たる突き当て面1211cと傾斜面1211dを有する。突き当て面1211cは給送方向に対して略垂直であり、傾斜面1211dが突き当て面1211cの給送ローラ110側で給送方向に傾斜した面である。
そして、突き当て面1211cを給送方向に対して略垂直にすることにより、原稿束の上層部が給送ニップに入ることを抑止し、傾斜面1211dを突き当て面1211cの給送ローラ110側で給送方向に傾斜した面にすることにより、原稿束の下層部が給送ニップに入り易くすることができる。
図8の構成において、原稿Sが給送ローラ110から抜けると、給送ローラ110に圧接する分離ローラ12により上流側へ給送ローラ110を押し戻そうとしてしまうことがある。このとき、各給送ギア部112a、112bと各駆動ギア部101a、101bとの間に存在するバックラッシ分だけ、給送ローラ110が負方向に回転してしまい、そうすると載置台1に載置された原稿Sの先端が戻される可能性がある。
原稿Sの先端が負方向に戻されてしまった場合には、給送性能の低下につながるが、これを防止するために、例えば、各給送ギア部112a、112bと各駆動ギア部101a、101bとの間のバックラッシを小さくする手段(例えばギアの歯厚を大きくする等)を設けることが好ましい。
この構成により、原稿Sが負方向に戻されることを防止できると共に、各給送ギア部112a、112bと各駆動ギア部101a、101bとの間のバックラッシ分だけ給送ローラ110が戻されることによってギア同士が衝突することによる打音の発生を防ぐことができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態の装置構成は、第1の実施形態の装置構成と略同じであり、異なる点は、制限部材1211と給送ローラ110が圧接することである。
図21のように制限部材1211は給送ローラ110の外径に圧接する。制限部材1211は、軸部1211aを中心に回転可能で、図22に示すバネ1212により搬送路に突出する方向(図中矢印D5方向)に付勢され、回転止め部1211bがリブ部121bに突き当る手前で、給送ローラ110に突き当たる。
制限部材1211と給送ローラ110の接触点は給送ニップの上流である。制限部材1211により給送ニップに入り込む原稿束の量を制限し、給送ニップと原稿束先端の間の空間を小さくしてその空間での原稿Sのたわみを抑制し原稿S先端のめくれやジャムを防止することができる。
第1の実施形態に比べ第2の実施形態は制限部材1211と給送ローラ110の間の隙間が無い分、給送ニップに入り込む紙束をさらに減らすことができ、原稿Sの先端めくれやジャムを防止できる。
図22に給送ローラ110の構成を示す。給送ローラ110は、摩擦部材11cの外径と略同径の円筒部11dを有する。円筒部11dはゴムに比べ摩擦係数が低い樹脂等の低摩擦材料でも良く、摩擦部材11cと一体となって回転する。
制限部材1211は、円筒部11dに突き当たっており、給送ローラ110が回転すると円筒部11dの外径を滑る。制限部材1211の先端を摩擦部材11cに接触させた構成であると、給送ローラ110が回転することで摩擦部材11cの摩擦により、制限部材1211を動かしてしまい、給送性能を安定させることができず、また異音も発生しやすくなる。
このため、例えば制限部材1211における摩擦部材11cとの当接位置に摩擦が低減する構造などを設ける必要がある。本実施形態においては、より好適に制限部材1211を原稿Sに作用させるために、制限部材1211が摩擦部材11cではなく低摩擦材料の円筒部11dに接触するように構成している。
こうすることによって、制限部材1211の構造としては、上記各実施形態で説明したような、原稿束や原稿Sに対して好適な作用を及ぼす構造にしつつ、給送手段の一部である円筒部11dに対して突き当たって圧接させることで、原稿Sの先端めくれやジャムの発生の低減作用を向上することができる。
上記第1、2の実施形態の装置では、可動部材の一例としての制限部材1211が分離揺動部材121に回転可能に支持された構成であるが、これに限るものではない。可動部材を分離揺動部材121に対しスライドあるいは揺動可能に支持して、制限部材1211を原稿束の厚み方向に変位可能にした構成であってもよい。
(第3の実施形態)
上記第1、2の実施形態の装置では分離揺動部材121に制限部材1211を設ける構成であるが、図23、図24に示すような、制限部材1211の替わりに弾性部材1213を設ける構成であっても同様の効果を有する。
図23、図24において、弾性部材1213は、薄板やゴム等の弾性変形可能な材料であり、分離揺動部材121に固定され、弾性部材1213の一端が、制限部材1211と同様に給送ローラ110側に突出する。
この構成によれば、上記第1、第2の実施形態で説明した制限部材1211と同様に、特定の原稿束に対して給送ニップに入り込む原稿束の量を制限し、給送ニップと原稿束先端の間の空間Kを小さくしてその空間Kでの原稿S2のたわみを抑制し原稿S2先端のめくれやジャムの発生を抑えることができる。
本発明においては、給送ローラ110が設けられる幅内(給送方向と直交する方向における幅)において、分離ローラ12と可動部材の両方が対向するように配置することによって、給送ローラ110と可動部材との間で原稿を挟む作用は向上することができると同時に、小型化を図ることができる。
分離ローラ12は給送ローラ110に比べて幅方向を小さく構成することができ、給送ローラ110が設けられる幅内において分離ローラ12が設けられていない部分を利用して可動部材および分離揺動部材121を配置することができる。
ここで、給送ローラ110が設けられる幅内とは、給送ローラ110が複数設けられる場合には、その最も外側に配置されるローラの外側の端部同士に挟まれた領域のことである。その領域に対向するスペースに分離ローラ12と可動部材(および分離揺動部材121)との両方を配置することによって、給送ローラ110が設けられる幅の外側の領域およびそれと対向するスペースについては、他の構造物を配置するスペースとして利用できる。
本発明は、上記実施形態で説明したように、原稿給送装置Aの載置面に対して所定の角度で搬送路(給送方向D1)が設けられた装置に対して好適に利用できる。原稿給送装置Aの一例としてデスクサイドで用いられるスキャナなどにおいては、小型化が求められるが、一方で、給送速度の向上のニーズがある。それに対して、本発明を用いることによって、原稿に対するダメージを低減して給送することができる。
なお、上記各実施形態は、載置面に対して所定の角度で傾斜させた搬送路を用いることによって、載置台1に積載された原稿の自重によって給送機構へ原稿を供給するものであり、給送ローラ110が搬送路の下側に配置され、載置台1に積載された原稿束の一番下(最下位)の原稿から順次給送されるようになっている。
すなわち、原稿を給送するためのピックローラなどを設けることなく原稿を給送することが可能であり、本発明は、その場合に発生する分離給送機構への2枚目以降の原稿の連れ入りによって生じる原稿先端のジャム(紙詰まり)に対して好適に作用させることができる。
本発明は、以上説明した実施形態に限らず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることが可能である。
(他の実施形態)
以上、本発明を各実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述した各実施形態では、2つのモータ3、4を使った原稿搬送装置を例示したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、図25に示すように、1つのモータによって原稿搬送装置の駆動系を制御するようにしてもよい。
図25に示すような原稿搬送装置とした場合には、原稿の搬送方向に直交する装置の幅方向一方側にある単一のモータMの駆動力を、搬送路を跨ぐように配置された搬送ローラ21の搬送ローラ軸21aを使って装置の幅方向他方側にある駆動伝達機構Xに対して搬送路を跨いで伝達する。
これにより、単一のモータMの駆動力を給送ローラ110や分離ローラ12に対して伝達することが可能となり、複数のモータを使う構成と比べて、部品点数を減らすことで、小型化又は低コスト化や軽量化に適した原稿搬送装置を実現できる。
また、上述した各実施形態では、各給送ローラ部11が分離ローラ12に対して軸方向の幅寸法を大きくし、給送ローラ部の一部に分離ローラが接圧される構成として説明したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、給送部における回転軸方向において各給送ローラ部の全幅に対して分離ローラが接圧されるようにした分離給送部としてもよい。
なお、分離ローラの構成としてその軸方向左右にローラを二分割した構成を適用する場合、それら各ローラ間の軸部に対して駆動伝達用のギア部を設けて、給送ローラに対して各ローラ間で左右のバランス差のない駆動伝達構造を適用した改良型の分離ローラとしてもよい。
このような分離ローラのギア部に対しては、その駆動伝達機構に対して一端が接続された回転軸の他端側に動力伝達用のギア部を通じて、モータの駆動力が伝達される。そして、分離ローラの軸部の両端部は、それぞれ図示しない軸受に回転可能に保持される。
このような改良型の分離ローラとすれば、給送ローラ及び分離ローラのそれぞれにおいて左右のガタ付き等を低減できるため、分離給送性能が更に向上するだけでなく、給送ローラに対する駆動伝達側のギアに対して個別のワンウェイクラッチ部を設ければ、斜行連鎖の抑制効果を更に高めることもできる。
また、上述した実施形態では、分離ローラ12に対してトルクリミッタ12aを設けた場合について説明したが、例えば、図26に示すように、第3及び第4ローラ部1201を分離回転軸に対して間隔をあけて設けた分離ローラ12内にトルクリミッタを内蔵せず、第3及び第4ローラ部1201のそれぞれにギア部(第3及び第4ギア部)1202を設け、これら各ギア部1202に駆動伝達するようにする。この分離駆動伝達機構は、分離駆動ギア軸1301と、この分離駆動ギア軸1301の第1及び第2ギア部1302と、図示しないがトルクリミッタを内蔵した2つの第3及び第4駆動ギア部1303とで構成される。この第3及び第4駆動ギア部1303は、図示しないが分離ローラ12を保持する揺動機構に回転可能に設けられる。
この場合には、これらトルクリミッタは、分離ローラ12の各ローラ1201が給送ローラ110との間で原稿に作用させる給送負荷が均一になるように内蔵される。これにより、分離ローラ12の各ローラ1201は、個々が受けるトルクが均等であれば回転差は生じず、個々が受けるトルクに差異があればその程度に応じて回転差が生じる。
つまり、分離ローラ12の各ローラ1201が受ける負荷に応じて、給送方向と逆方向への分離ローラ12の各ローラ1201の回転量は異なる。このため、給送ローラ110と分離ローラ12との間にニップ部に傾いて進入してきた原稿は、分離ローラ12の左右で各ローラ1201の回転差の作用を受け、各ローラ1201が受ける給送負荷の差異が小さくなるように、傾きが小さくなる方向に回転する。したがって、原稿の斜行状態を補正することができる。
なお、このような図26の構造の場合、給送ローラ110と分離ローラ12とは、互いに駆動伝達のバランスが左右均等であるため、左右のニップ圧も安定的である。このため、このようなニップ部に対して原稿のセット方向が傾いたとしても、上述したトルクリミッタの作用によって斜行状態が低減され、仮に斜行状態が残ったとしても、後続の原稿の斜行連鎖を有効に防止することができる。
また、上述した実施形態において説明したように、分離ローラ12は、分離揺動部材121に対して揺動可能に取り付けられている。この分離ローラ12への駆動伝達用のギア部が分離ローラ12の軸方向における一方端側にある場合、ギア部が設けられた側はギア部が負荷となるため揺動動作を行いづらくなり、他方端側が揺動し易くなる。
これによって、左右の揺動動作に差異が生じ、分離ローラ12の回転軸などにアンバランスな負荷が生じてしまう。これに対し、ギア部を各ローラ間に設けることによって左右の揺動動作の差異を低減することで、給送ローラへの押し付け力が均等になることで、給送時の原稿の斜行を抑えることができる。
また、上述した実施形態では、給送ローラ110のうち各給送ローラ部11の隙間側とは反対の両側に給送ギア部112a、112bをそれぞれ設けた構造について説明したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、図27に示すように、各給送ローラ部11の片側に設けた給送ギア部112a、112bを、給送ローラ110の給送ローラ軸11bの一端部に同一方向に向けて配置した構造としてもよい。そして、各給送ギア部112a、112bに対して、ワンウェイクラッチ部101cが内蔵された駆動ギア部101a、101bをそれぞれギア接続されることで、上述した実施形態と同様の斜行連鎖の抑制効果を得ることができる。
また、上述した実施形態では、給送部として分離ローラ12に接圧される給送ローラ110のみで給送する構成について説明したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、給送ローラよりも上流側にピックローラを配置してもよい。この場合には、ピックローラによって載置台側の最下位の原稿を給送ローラ110と分離ローラ12とのニップ部に送ることができ、不送り等を防止することができる。
さらに、このように給送ローラ110に対してピックローラを組み合わせた給送部の構成を採用し、軸方向に間隔をあけて設けられた第3ローラ部及び第4ローラ部によってピックローラを構成する場合には、各第3ローラ部及び第4ローラ部内にそれぞれ個別にワンウェイクラッチ部を設けてもよい。
あるいは、給送ローラ110への駆動伝達と同じ方式で、第3ローラ部に対して第3ギア部、第4ローラ部に対して第4ギア部をそれぞれ設け、各第3ギア部及び第4ギア部のそれぞれに駆動伝達する駆動伝達ギア部をギア接続する構成としてもよい。その場合、給送ローラ110への駆動伝達と同様に、各駆動伝達ギア部内にそれぞれ個別にワンウェイクラッチ部を設けてもよい。
いずれにしても、上述したように、ピックローラに対してもワンウェイクラッチを個別に作用させる構成とすれば、ピックローラ上で原稿が積載されているときに、最下位の原稿が斜行して搬送系からの引き抜きを受けても、ピックローラの第3ローラ部及び第4ローラ部がワンウェイクラッチの個別作用によって最下位の上にある原稿に対する送り動作が調整され、斜行連鎖を有効に防ぐことができる。
なお、本発明は、上述した実施形態において例示したシート給送装置(シート搬送装置)を備えた画像読取装置だけでなく、プリンタ等の画像形成装置や複写機などにも適用可能である他、これら各種装置に対して着脱される給送ローラについても広く対象とする。