JP2019002030A - オーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法、ならびに排気部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、自動車排気部品の中でターボチャージャーの部品用として適合する特性を有し、さらに耐酸化性を有する排気部品用オーステナイト系ステンレス鋼板、および排気部品を提供する。【解決手段】化学組成が、質量%で、C:0.01〜0.2%、Si:0.50〜5.0%、Mn:0.5〜10.0%、P:0.01〜0.05%、S:0.0001〜0.010%、Ni:5.0〜15.0%、Cr:15.0〜26.0%、Al:0.05〜0.3%、B:0.0003〜0.01%、N:0.01〜0.4%、Mo:0.05〜2.0%、Cu:0.05〜3.0%、V:0.01〜1.0%、Ti:0〜0.3%、Nb:0〜0.3%、Ca:0〜0.01%、W:0〜3.0%、Zr:0〜0.3%、Sn:0〜0.5%、Co:0〜0.3%、Mg:0〜0.01%、Sb:0〜0.5%、REM:0〜0.2%、Ga:0〜0.3%、Ta:0〜1.0%、残部:Feおよび不可避的不純物であり、鋼板表面から1.0μm深さ位置までの領域における、Alの最大濃度が、質量%で、2.0%以上であるオーステナイト系ステンレス鋼板。【選択図】なし

Description

本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法、ならびに排気部品に関するものである。
自動車の排気部品として、排気マニホールド、フロントパイプ、センターパイプ、マフラー、および排気ガス浄化装置等、様々な部品が用いられている。加えて、近年では、ダウンサイジング等の要求から、ターボチャージャーの様な過給機を自動車に搭載するケースも多くなっている。
上述の排気部品は、その部品ごとに様々な形状を有しており、比較的、加工のしやすい形状のものは板金加工等の加工で、複雑な構造を有している部品は、鋳型で成形する鋳造により製造されてきた。例えば、鋳造で製造される部品の一例としては、ターボチャージャーが例示され、特許文献1では、高Ni高C鋳鉄を用いて、製造されたターボチャージャーが開示されている。
しかしながら、近年では、コスト等の観点から、上述のターボチャージャーのような部品においても、板金加工で製造される場合がある。具体的には、特許文献2において鋼板に板金加工を施して、製造された板金製のターボチャージャーハウジングが提案されている。
ところで、上述の排気部品は、高温の排気ガスを安定的に通気させるための流路となる部品である。このため、上述の排気部品には、高温強度、耐酸化性、熱疲労特性等に例示される耐熱性に優れた材料が使用される。加えて、これら排気部品は、凝縮水腐食環境で使用されることから、耐食性についても要求される。
一般的に、排気部品の材料には、Ni基合金の他、鋼板等が使用されている。そして、排気部品に、鋼板を使用する場合、上述の材料特性が要求されるため、ステンレス鋼が使用されつつある。加えて、特許文献2に開示された発明のように、従来、鋳物で製造されていた部品も、板金加工により製造されていることから、今後、排気部品においては、ステンレス鋼の広範な利用が推し進められると考えられる。
例えば、ターボチャージャーの内部部品として、代表的なステンレス鋼は、耐熱オーステナイト系ステンレス鋼が挙げられ、その具体例として、SUS310S(25%Cr−20%Ni)が例示される。そのほかにも、特許文献3、4には、1100℃における耐力に優れるオーステナイト系ステンレス鋼として、Si含有の高Cr−高Ni−Mo鋼が開示されている。
国際公開第2009/028736号 特開2016−31027号公報 国際公開第2014/157655号 特開2016−89200号公報
また、近年では、自動車においては、排気ガス規制の強化、燃費性向上、エンジン性能の向上、車体軽量化(ダウンサイジング)等、様々な性能が要求されている。特に、燃費性の向上、ダウンサイジングの要求などから、エンジン直下のエキゾーストマニホールドを通気する排気ガス温度は上昇傾向にある。
このため、排気部品に使用されるステンレス鋼板には、更なる高い水準での耐熱性が求められる。具体的には、従来、900℃程度であった排気ガス温度が、今後、1000℃程度まで上昇することも見込まれていることから、上記温度域においても適合し得るステンレス鋼板が求められている。
排気ガス温度が、1000℃程度となるエキゾーストマニホールドでは、上述したように、高温強度、熱疲労特性といった耐熱性が要求される。加えて、上述の部品に使用される耐熱オーステナイト系ステンレス鋼では、後続する部品である触媒の損傷を防止するために、耐酸化性、その中でも特に、耐スケール剥離性が要求される。
また、ターボチャージャーの外側の部品である、ターボハウジングは、排気ガスの流路を兼ねたケースであり、精密加工された内部部品を包含している。このため、内部部品の損傷、および後続する触媒の損傷を防止するために、上述の部品と同様、高温強度、熱疲労特性に加えて、耐酸化性、その中でも特に、耐スケール剥離性が求められる。
ところで、耐スケール剥離性とは、上記部品等の表面に形成した酸化スケールの剥離しやすさの度合いを示すものである。耐スケール剥離性が不良であると、高温である使用環境下で形成するスケールが剥離しやすく、その結果、耐酸化性が低下する。
特許文献2では、開示されている板金製のターボチャージャーハウジングについて、使用に適した板金鋼板、およびその鋼板の耐用温度に関する言及は無く、耐スケール剥離性について検討されていない。
特許文献3では、高温強度、加工性、そして耐スケール剥離性を含めた耐酸化性について検討されている。しかしながら、耐スケール剥離性向上のためにSi、Moの添加を必須としており、製造コストが増加する。
特許文献4では、高温強度、加工性、そして耐スケール剥離性を含めた耐酸化性について、検討されている。しかしながら、耐スケール剥離性向上のために希土類元素(REM)を必須元素としているため、製造コストが増加する。
本発明は、上記の問題点を解決し、自動車排気部品の中で、ターボチャージャーの部品用として適合する特性を有し、耐酸化性、そのなかでも特に耐スケール剥離性を有するオーステナイト系ステンレス鋼板、および排気部品を提供することを目的とする。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その要旨は、下記に示すオーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法、ならびに排気部品にある。
(1)化学組成が、質量%で、
C:0.01〜0.2%、
Si:0.50〜5.0%、
Mn:0.5〜10.0%、
P:0.01〜0.05%、
S:0.0001〜0.010%、
Ni:5.0〜15.0%、
Cr:15.0〜26.0%、
Al:0.05〜0.3%、
B:0.0003〜0.01%、
N:0.01〜0.4%、
Mo:0.05〜2.0%、
Cu:0.05〜3.0%、
V:0.01〜1.0%、
Ti:0〜0.3%、
Nb:0〜0.3%、
Ca:0〜0.01%、
W:0〜3.0%、
Zr:0〜0.3%、
Sn:0〜0.5%、
Co:0〜0.3%、
Mg:0〜0.01%、
Sb:0〜0.5%、
REM:0〜0.2%、
Ga:0〜0.3%、
Ta:0〜1.0%、
残部:Feおよび不可避的不純物であり、
鋼板表面から1.0μm深さ位置までの領域における、Alの最大濃度が、質量%で、2.0%以上である、オーステナイト系ステンレス鋼板。
(2)前記化学組成が、質量%で、
Ti:0.001〜0.3%、
Nb:0.001〜0.3%、
Ca:0.0005〜0.01%、
から選択される1種以上を含有する、(1)に記載のオーステナイト系ステンレス鋼板。
(3)前記化学組成が、質量%で、
W:0.005〜3.0%、
Zr:0.0005〜0.3%、
Sn:0.001〜0.5%、
Co:0.01〜0.3%、
Mg:0.0001〜0.01%、
Sb:0.0005〜0.5%、
REM:0.001〜0.2%、
Ga:0.0002〜0.3%、
Ta:0.001〜1.0%、
から選択される1種以上を含有する、(1)または(2)に記載のオーステナイト系ステンレス鋼板。
(4)大気中で、1000℃×25分加熱―5分空冷を1サイクルとし、400サイクル繰り返した断続酸化試験において、
試験後に形成している酸化スケール中での、表面から深さ方向に30μmの位置までの領域におけるCrの最大濃度が、26.0%以上、または、
表面から深さ方向に30μmの位置から100μmの位置までの領域におけるAlの最大濃度が、1.0%以上、
の少なくともいずれかを満足する、(1)〜(3)のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼板。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の化学組成を有する鋼板を製造する方法であって、
(a)(1)〜(3)のいずれかに記載の化学組成を有する鋼を冷延焼鈍鋼板とする工程と、
(b)前記冷延焼鈍鋼板を、溶融アルカリ塩に、450℃超で60秒以下浸漬し、その後、酸洗処理する工程と、
を備えるオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
(6)排気部品用である、(1)〜(4)のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼板。
(7)(1)〜(4)のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼板を用いた排気部品。
(8)(1)〜(4)のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼板を用いたターボチャージャー部品。
(9)(1)〜(4)のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼板を用いたターボハウジング部品。
本発明によれば、ターボチャージャーの部品用として適合する特性を有し、耐酸化性、そのなかでも、特に耐スケール剥離性を有するオーステナイト系ステンレス鋼板、および排気部品を提供することができる。
図1は、表面の元素濃化と断続酸化試験後の重量変化を示す図である。(a)は発明鋼、(b)は比較鋼を示す。
上記課題を解決するために、本発明者らは、排気部品用オーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法に関して、鋼成分、高温特性、耐酸化性、表面性状の見地から詳細な研究を行った。その結果、以下の知見を得た。
ターボチャージャー用部品に使用される鋼には、良好な表面性状が要求される。表面性状が悪いと、鋼板表面に形成するスケールが剥離しやすく、その結果、耐スケール剥離性が低下する。
そして、優れた鋼板の表面状態は、適切な表面処理によって確保できる。具体的には、仕上焼鈍条件、および仕上焼鈍後の酸洗等の表面処理条件を適切に制御することで、耐スケール剥離性に優れた表面状態を得ることが可能となる。
これは、上記の製造工程において、表層にAl濃化層が形成するためであると考えられる。ここで、Al濃化層と、耐酸化性との関係について、図1を用いて詳しく説明する。図1は、本発明で規定する組成および製造条件を満足する鋼(19%Cr−13Ni−3.5Si−0.15Al鋼)と、本発明で規定する組成および製造条件から外れる鋼(19%Cr−13Ni−3.5Si−0.006Al鋼)との表面皮膜プロファイルを比較したものである。
ここで、表面皮膜プロファイルは、オージェ電子分光装置を用いて、仕上焼鈍後、酸洗した表面からの各元素濃度を測定し、カチオン分率で示したものである。また、耐酸化性を評価する試験として、断続酸化試験後の重量変化を測定した。具体的には、30mm×15mm×4.3mm厚さのサンプルを、大気中で1000℃×25分加熱―5分空冷を1サイクルとして、400サイクル後の重量変化を測定した。つまり、断続酸化試験後の重量変化が負で大きいほど、スケール剥離を生じており、耐スケール剥離性が劣ることを示している。
図1(a)は、本発明で規定する組成および製造条件を満足するため、表層のAlの最大濃度が質量%で2.17%と高く、断続酸化試験後の重量変化量も少ない。このことから、耐スケール剥離性を優れており、したがって、耐酸化性に優れていると言える。
一方、(b)は、本発明で規定する組成および製造条件から外れる鋼(19%Cr−13Ni−3.5Si−0.02Al鋼)の表面皮膜プロファイルおよび断続酸化試験結果である。(b)においては、表層のAlの最大濃度が質量%で1.27%と低く、断続酸化試験後の重量変化量が大きい。このことから、耐スケール剥離性も不良であり、耐酸化性に劣っている。なお、(a)は、後述する実施例の鋼No.A1であり、(b)はNo.B1である。
Alは、本発明で想定される焼鈍工程において形成される酸化スケール中で濃化し、スケール剥離を抑制する。このため、Alが表層で濃化しない場合、耐スケール剥離性を得ることができない。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
1.化学組成
各元素の限定理由は下記の通りである。なお、以下の説明において各元素の含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.01〜0.2%
Cは、オーステナイト組織の形成、および高温強度の確保のために必要な元素である。このため、C含有量は、0.01%以上とする。一方、過度に含有させると、加工硬化が過度に大きくなる。さらに、Cr炭化物形成により、耐食性、特に溶接部の粒界腐食性の劣化、炭化物に起因した高温クリープ特性の劣化、冷延焼鈍板の酸洗時において、粒界浸食溝形成により表面粗さが粗くなる。このため、C含有量は、0.2%以下とし、0.1%以下であるのが好ましい。
Si:0.50〜5.0%
Siは、脱酸元素として含有される場合がある。また、Siの内部酸化により耐スケール剥離性および高温強度が向上する。このため、Si含有量は、0.50%以上とする。一方で、Siの5.0%超の含有により硬質化する。加えて、粗大なSi系酸化物が生成し、部品の加工精度が、著しく低下する。このため、Si含有量は、5.0%以下とする。なお、耐スケール剥離性を十分確保するために、Si含有量は2.1%以上であるのが好ましく、3.0%以上であるのがより好ましい。また、製造コスト、鋼板製造時の酸洗性、溶接時の凝固割れ性を考慮すると、Si含有量は、4.0%以下であるのが好ましく、3.5%以下であるのがより好ましい。
Mn:0.5〜10.0%
Mnは、脱酸元素として利用する他、オーステナイト組織形成、およびスケール密着性を確保するために含有させる必要がある。特に、母相に固溶するN量を増加させるためには、Mn含有量を増加させることが有効である。このため、Mn含有量は、0.5%以上とする。一方で、Mn含有量が過剰であると、加工硬化の変化が大きくなるとともに、介在物清浄度が著しく劣化する。加えて、酸洗性が著しく劣化し、製品表面が粗くなる。このため、Mn含有量は、10.0%以下とする。なお、製造コスト、鋼板製造時の酸洗性を考慮すると、Mn含有量は、0.6%以上であるのが好ましい。
P:0.01〜0.05%
Pは、製造時の熱間加工性、および凝固割れを助長する元素である他、鋼板を硬質化させる元素である。このため、P含有量は、0.05%以下とする。Pは、その含有量が少ないほど良いが、一方で、精錬コストを考慮して、P含有量は、0.01%以上とする。P含有量は、0.02%以上であるのが好ましく、0.03%以下であるのが好ましい。
S:0.0001〜0.010%
Sは、製造時の熱間加工性を低下させる他、耐食性を劣化させる元素である。また、粗大な硫化物(MnS)が形成されると、清浄度が著しく悪くなる。このため、S含有量は、0.010%以下とする。一方、過度な低減は、精錬コストの増加に繋がることから、S含有量は、0.0001%以上とする。さらに、製造コスト、および耐酸化性を考慮すると、S含有量は、0.0005%以上であるのが好ましく、0.0050%以下であるのが好ましい。
Ni:5.0〜15.0%
Niは、オーステナイト組織の形成元素であるとともに、耐食性、および耐酸化性を確保する元素である。また、Ni含有量が、5.0%未満では結晶粒の粗大化が顕著に生じてしまう。このため、Ni含有量は、5.0%以上とする。一方、過度な含有は、コストの上昇と硬質化を招く。このため、Ni含有量は、15.0%以下とする。また、製造性、高温強度、および耐食性を考慮すると、Ni含有量は、11.0%以上であるのが好ましい。
Cr:15.0〜26.0%
Crは、耐食性および耐酸化性を向上させる元素である。さらに排気部品環境における異常酸化を抑制する。このため、Cr含有量は、15.0%以上とする。一方、Crを過度に含有させると、組織が硬質となり、成形性を劣化させる他、コストアップに繋がる。このため、Cr含有量は26.0%以下とする。製造コスト、鋼板製造性、または加工性を考慮すると、Cr含有量は17.0%以上であるのが好ましい。また、Cr含有量は、24.5%以下であるのが好ましく、20.0%以下であるのがより好ましい。
Al:0.05〜0.3%
Alは、脱酸元素として使用される他、内部酸化により耐スケール剥離性の向上に寄与する効果があり、その作用は0.05%以上から発現する。このため、Al含有量は、0.05%以上とする。一方、Alは、フェライト生成元素であるため、過度に含有させると、オーステナイト組織の安定性、および酸洗性を低下させ、さらには表面粗さの増加を招く。このため、Al含有量は、0.3%以下とする。精錬コスト、および表面疵を考慮すると、Al含有量は0.06%以上であるのが好ましく、0.25%以下であるのが好ましい。また、耐スケール剥離性を十分確保するためには、Al含有量は、0.15%以上であるのが好ましい。
B:0.0003〜0.01%
Bは、鋼板製造段階での熱間加工性を向上させる元素であるとともに、粒界への偏析により高温酸化抑制効果がある。このため、B含有量は、0.0003%以上とする。しかしながら、過度な含有は、ホウ炭窒化物の形成により、清浄度の低下、および粒界腐食性の劣化をもたらす。このため、B含有量は、0.01%以下とする。精錬コスト、および延性低下を考慮すると、B含有量は、0.0005%以上であるのがより好ましく、0.005%以下であるのが好ましい。
N:0.01〜0.4%
Nは、Cと同様に、オーステナイト組織形成と高温強度の確保に有効な元素である。このため、N含有量は、0.01%以上とする。一方、過度に含有させると、常温材質が著しく硬質化し、鋼板製造段階の冷間加工性を劣化させる。その結果、部品加工時の成形性、および部品精度が悪くなる。このため、N含有量は、0.4%以下とする。高温強度の観点から、N含有量は、0.04%以上であるのが好ましい。また、軟質化、溶接時のピンホール抑制、溶接部の粒界腐食抑制の観点から、N含有量は、0.25%以下であるのが好ましい。
Mo:0.05〜2.0%
Moは、耐食性を向上させる元素であるとともに、高温強度の向上に寄与する。このため、Mo含有量は、0.05%以上とする。一方、過度な含有は、合金コストの増加を招く。このため、Mo含有量は、2.0%以下とする。さらに、析出物による強化安定性および介在物清浄度を考慮すると、Mo含有量は、0.2%以上であるのが好ましく、1.7%以下であるのが好ましい。
Cu:0.05〜3.0%
Cuは、オーステナイト相の安定化、および軟質化のために有効な元素である。このため、Cu含有量は0.05%以上とする。一方、過度な含有は、耐酸化性の劣化、および製造性の劣化に繋がる。このため、Cu含有量は、3.0%以下とする。さらに、耐食性、および製造性を考慮すると、Cu含有量は、0.1%以上であるのが好ましく、1.0%以下であるのが好ましい。
V:0.01〜1.0%
Vは、耐食性を向上させる元素であるとともに、V炭化物を形成し、高温強度、および高温での耐摩耗性を向上させる。このため、V含有量は、0.01%以上とする。一方、過度な含有は、合金コストの増加、または異常酸化限界温度の低下を招く。このため、V含有量は、1.0%以下とする。さらに、製造性、および介在物清浄度を考慮すると、V含有量は0.1%以上であるのが好ましく、0.5%以下であるのが好ましい。
以上が、必須元素であるが、その他Feの一部の代替として、以下の元素の1種以上を含有させてもよい。
Ti:0〜0.3%
Tiは、C、Nと結合して耐食性、耐粒界腐食性を向上させるため、必要に応じて含有させる。しかしながら、Tiを過度に含有させると、鋳造段階でのノズル詰まりが生じ易くなり、製造性を著しく劣化させる。このため、Ti含有量は、0.3%以下とする。さらに、高温強度、溶接部の粒界腐食性、および合金コストを考慮すると、Ti含有量は0.05%以下にすることが好ましい。なお、上記効果を得るためには、Ti含有量は0.001%以上であるのが好ましく、0.01%以上であるのがより好ましい。
Nb:0〜0.3%
Nbは、Tiと同様にC、Nと結合して耐食性、耐粒界腐食性を向上させる。加えて、高温強度を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させる。しかしながら、過度な含有は、鋼板製造段階での熱間加工性を著しく劣化させる。このため、Nb含有量は、0.3%以下とする。一方で、C、Nと結合する固定作用は、Nbの0.001%以上の含有から発現する。このため、Nb含有量は、0.001%以上であるのが好ましい。さらに、高温強度、溶接部の粒界腐食性、および合金コストを考慮すると、Nb含有量は0.005%以上であるのが好ましく、0.008%未満であるのが好ましい。
Ca:0〜0.01%
Caは、脱硫のために必要に応じて含有させる。しかしながら、Caを過度に含有させると、水溶性の介在物CaSが生成する。その結果、清浄度の低下および耐食性の著しい低下を招く。このため、Ca含有量は、0.01%以下とする。一方で、上記効果を得るためには、Ca含有量は、0.0005%以上であるのが好ましい。さらに、製造性の観点から、Ca含有量は0.0010%以上であるのが好ましく、0.0030%以下であるのが好ましい。
W:0〜3.0%
Wは、耐食性と高温強度の向上に寄与するため、必要に応じて含有させる。しかしながら、Wを過度に含有させると、硬質化、鋼板製造時の靭性劣化、およびコスト増加につながる。このため、W含有量は、3.0%以下とする。一方で、上記効果を得るためには、W含有量は0.005%以上であるのが好ましい。さらに、精錬コスト、および製造性を考慮すると、W含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.025%以下であるのが好ましい。
Zr:0〜0.3%
Zrは、CおよびNと結合して、溶接部の粒界腐食性および耐酸化性を向上させるため、必要に応じて含有させる。しかしながら、Zrを過度に含有させると、コストが増加する他、製造性を著しく劣化させる。このため、Zr含有量は0.3%以下とする。さらに、精錬コスト、および製造性を考慮すると、Zr含有量は0.03%以下にするのが好ましい。一方、上記効果を得るためには、Zr含有量は0.0005%以上であるのが好ましい。
Sn:0〜0.5%
Snは、耐食性と高温強度の向上に寄与するため、必要に応じて含有させる。しかしながら、Snを過度に含有させると、鋼板製造時のスラブ割れが生じる場合があるため、Sn含有量は0.5%以下とする。さらに、精錬コスト、および製造性を考慮すると、0.3%以下であるのが好ましい。一方で、上記効果を得るためには、Sn含有量は、0.001%以上であるのが好ましく、0.003%以上であるのがより好ましく、0.005%以上であるのがさらに好ましい。
Co:0〜0.3%
Coは、高温強度の向上に寄与するため、必要に応じて含有させる。しかしながら、Coを過度に含有させると、硬質化、鋼板製造時の靭性劣化、およびコストの増加につながる。このため、Co含有量は、0.3%以下とする。さらに、精錬コストおよび製造性を考慮すると、Co含有量は、0.1%以下であるのが好ましい。一方で、上記効果を得るためには、Co含有量は、0.01%以上であるのが好ましい。
Mg:0〜0.01%
Mgは、脱酸元素として使用する場合がある他、スラブ組織の酸化物を微細分散化させ、介在物清浄度の向上、および組織の微細化に寄与する元素である。このため、必要に応じて含有させる。しかしながら、過度な含有は、溶接性および耐食性の劣化を招く。このため、Mg含有量は、0.01%以下とする。一方で、上記効果を得るためには、Mg含有量は、0.0001%以上であるのが好ましい。また、精錬コストを考慮すると、Mg含有量は、0.0003%以上であるのが好ましく、0.005%以下であるのが好ましい。
Sb:0〜0.5%
Sbは、粒界に偏析して高温強度を上げる元素であるため、必要に応じて含有させる。しかしながら、その含有量が0.5%を超えると、Sbの偏析が生じて、溶接時に割れが生じる。このため、Sb含有量は、0.5%以下とする。一方で、上記効果を得るためには、Sb含有量は、0.0005%以上であるのが好ましい。高温特性と製造コスト、および靭性を考慮すると、Sb含有量は、0.003%以上であるのが好ましく、0.03%以下であるのが好ましい。さらに、Sb含有量は、0.004%以上であるのがより好ましく、0.02%以下であるのがより好ましい。
REM:0〜0.2%
REM(希土類元素)は、耐酸化性の向上に有効であり、必要に応じて含有させる。しかしながら、0.2%を超えて含有させてもその効果は飽和し、REM硫化物による耐食性低下を生じる。このため、REM含有量は、0.2%以下とする。一方で、上記効果を得るためには、REM含有量は、0.001%以上であるのが好ましい。また製品の加工性、および製造コストを考慮すると、REM含有量は、0.002%以上であるのが好ましく、0.10%以下であるのが好ましい。
REM(希土類元素)は、一般的な定義に従う。スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)の2元素と、ランタン(La)からルテチウム(Lu)までの15元素(ランタノイド)の総称を指す。単独で含有させても良いし、混合物であっても良い。
Ga:0〜0.3%
Gaは、耐食性向上、または水素脆化抑制のため、必要に応じて含有させる。しかしながら、Gaを過度に含有させると粗大硫化物が生成し、r値が劣化する。このため、Ga含有量は、0.3%以下とする。一方、硫化物、または水素化物形成の観点から、Ga含有量は、0.0002%以上であるのが好ましい。さらに、製造性、および製造コストの観点から、Ga含有量は、0.002%以上であるのがより好ましい。
Ta:0〜1.0%
Taは、高温強度向上のため、必要に応じて含有させる。Ta含有量は、1.0%以下とする。一方で、上記効果を得るためには、Ta含有量は、0.001%以上であるのが好ましい。さらに、高強度を得るためには、Ta含有量は、0.01%以上であるのが、より好ましい。
また、Hfは、Taと同様の理由で必要に応じて、0.001〜1.0%含有させる。Biも必要に応じて0.001〜0.02%含有させる。なお、As、Pb等の一般的な有害な元素および不純物元素はできるだけ低減することが好ましい。
本発明において不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入されるものであって、本発明の鋼材に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
2.表層Al濃度
本発明では、Alは、冷間圧延後の焼鈍時に、後述する内部酸化物を形成し、製造工程において形成される表面近傍の母材中で濃化する。そして、前述のAlの濃化により、高温使用時(本発明においては大気中断続酸化試験)でのスケール剥離を抑制する。このため、Alが表層で濃化しない場合、耐スケール剥離性を得ることができない。したがって、高温での耐スケール剥離性を確保するために、鋼板の表層のAl最大濃度を規定する。本発明では、耐酸化性を満足するために、冷間圧延鋼板を焼鈍し、酸洗した後の表層のAl最大濃度を2.0%以上と規定する。表層のAl最大濃度は、3.0%以上であるのが好ましい。なお、ここで示す表層とは、ステンレス鋼板表面から深さ1.0μmまでを指す。
なお、本発明においては、表層のAlの最大濃度は、オージェ電子分光装置を用いて表面から、母材に到達するのに十分な深さである、約8μm深さまで元素濃度を測定した。深さ分析条件は、スパッタ速度:100Å/分、積算回数:10回とした。
3.製造方法
次に製造方法について説明する。本発明の鋼板の製造方法は、下記に後述する工程以外に、特段制約はないが、例えば、製鋼−熱間圧延−焼鈍・酸洗(溶融アルカリ塩処理を含む。)、あるいは製鋼−熱間圧延−焼鈍・酸洗−冷間圧延−焼鈍・酸洗(溶融アルカリ塩処理を含む。)からなることが好ましい。
製鋼においては、前記必須元素および、または必要に応じて、含有される任意元素を含有する鋼を、電気炉溶製あるいは転炉溶製し、続いて2次精錬を行う方法が好適である。溶製した溶鋼は、公知の鋳造方法(連続鋳造など)に従ってスラブとする。
スラブは、所定の温度に加熱され、所定の板厚に連続圧延で熱間圧延される。上記の様に、本発明が対象となる部品には、熱間圧延以降の工程において、所定の結晶粒度、断面硬度、表面粗さを確保した製造条件が設定される。熱間圧延後の鋼板は、一般的には熱延板焼鈍および酸洗処理が施されるが、熱延板焼鈍を省略してもよい。熱間圧延後の鋼板の焼鈍、および酸洗処理については、その条件は特に制約は無く、一般的な条件で構わない。その後、所定の板厚に冷間圧延し、下記記載の冷延板焼鈍と、酸洗処理(溶融アルカリ塩処理を含む。)が施される。
3−1.冷間圧延後の焼鈍条件
通常、焼鈍は、1000〜1100℃未満の温度に保持することにより、再結晶組織を得るものであるが、本発明では、焼鈍温度を1100℃以上とするのが好ましい。これは、耐スケール剥離性を確保するために、含有したAlを鋼板表面の内側に濃化させるためである。過度な焼鈍は結晶粒径の粗大化を引き起こし、高温強度低下につながるため、焼鈍温度は、1250℃以下とするのが好ましい。加えて、焼鈍時間は、3秒以上であるのが好ましい。
3−2.冷延鋼板の溶融アルカリ塩処理および酸洗処理
本発明では、排気部品の耐酸化性を確保するために、冷延焼鈍板の酸洗処理の前処理として溶融アルカリ塩に浸漬させる。本発明では、冷間圧延後、焼鈍時に、FeおよびCrが主体の酸化スケールが生成する。溶融アルカリ塩処理では、前述の焼鈍で生成した酸化スケールにおけるCrを改質して、溶融アルカリ塩中に溶かし出し、Fe主体のスケールとする。なお、溶融アルカリ塩の組成は、NaNO(10〜30%)+NaOH溶液とする。その後、酸洗処理として、硝弗酸洗あるいは硝酸電解等の化学的なデスケール処理を行なう。
ところで、Alが0.05%以上のオーステナイト系ステンレス鋼板の場合、前述の焼鈍後に生成するFeおよびCr主体のスケール近傍の母材中に、Alの内部酸化物が針状に生成する。この内部酸化物は、酸洗処理時に溶解しがたいものの、前処理の溶融アルカリ塩処理において、溶融アルカリ塩反応が進行すると溶解してしまう。ここで、Alの内部酸化物は、断続酸化試験後のスケール剥離を抑制させることを本発明では知見することに成功した。また、溶融アルカリ塩処理条件を最適化することで、酸洗後の表層のAl濃度が、2.0%以上にすることが可能となることを明らかにした。
溶融アルカリ塩処理の塩浴温度が450℃以下の場合、スケール改質が不十分で、酸洗処理後にスケール残りが生じ、製品鋼板の表層にAlが濃化しない。このため、溶融アルカリ塩処理時に、十分スケール改質する温度として、アルカリ塩の塩浴温度を450℃超とする。また、アルカリ塩の塩浴温度は、455℃以上であるのが好ましく、470℃以下であるのが好ましい。
また、溶融アルカリ塩処理の浸漬時間が60秒超では、過度の改質が進行してAlの内部酸化物が溶解し、製品鋼板の表層にAlが濃化しない。このため、溶融アルカリ塩処理の浸漬時間は、60秒以下とする。しかしながら、浸漬時間が、30秒以下の場合はスケール改質が不十分となるため、30秒超であるのが好ましい。また、浸漬時間は40秒以上であるのが好ましく、50秒以下であるのが好ましい。加えて、冷却速度は10℃/秒以上が好ましい。
3−3.他の条件について
なお、製造工程における他の条件は、適宜選択すれば良い。例えば、スラブ厚さ、熱間圧延板厚などは、適宜設計すれば良い。冷間圧延においては、ロール粗度、ロール径、圧延油、圧延パス回数、圧延速度、圧延温度などは適宜選択すれば良い。冷間圧延の途中に中間焼鈍を入れても構わず、バッチ式焼鈍でも連続式焼鈍でも良い。
また、酸洗工程は、硝酸、硝酸電解酸洗の他、硫酸、または塩酸を用いた処理を行っても良い。冷延板の焼鈍・酸洗後に、調質圧延またはテンションレベラー等により、形状および材質調整を行っても良い。さらに、プレス成形を向上させる目的で、潤滑皮膜を製品板に付与することも可能である。
4.耐スケール剥離性
4−1.大気中断続酸化試験後におけるスケール中のCr濃化、およびAl濃化
本発明では、高温使用時での耐酸化性を調べるため、大気中断続酸化試験を実施した。本発明で実施した大気中断続酸化試験は、30mm×20mm×4.5mm厚の試験片の表裏面および端面を600番で研磨仕上し、大気中、1000℃×25分加熱―5分空冷を1サイクルとして、400サイクル酸化試験をした後の質量変化を調べるものである。
そして、試験後のスケール剥離性と表面スケール状態について、Al含有オーステナイト系ステンレス鋼板のAl含有量と、断面スケール組成を精緻に調査した。その結果、断面スケールは、Crが濃化した外層と、Alが濃化した内層に分かれており、質量%で、最大濃度で、外層にCr:26.0%以上、および/または内層にAl:1.0%以上濃化している場合に、耐スケール剥離性が著しく向上する。
ここで、本発明においては、外層とは、酸化試験後の表面と、当該表面から30μm深さ位置との間の領域を意味し、内層とは、酸化試験後の表面から30μm深さ位置と、表面から100μm深さ位置との間の領域を意味する。したがって、質量%で外層にCr:26.0%以上および/または内層にAl:1.0%以上濃化を満たしていることが好ましい。
なお、本発明において、大気中断続酸化試験後のCrおよびAl濃度は、SEMに付属するEDSで測定を実施している。
4−2.大気中断続酸化試験後における重量変化
また、大気中断続酸化試験における重量変化の絶対値が小さいほど、耐スケール剥離性に優れており、本発明では、大気中断続酸化試験における重量変化の絶対値が1.0mg/cm以下であるのが好ましい。
ここで、具体的な事例として、表1にAl含有オーステナイト系ステンレス鋼の大気中断続酸化試験結果を示す。表1においては、大気中断続酸化試験の重量変化の絶対値と外層におけるCr濃度、および内層におけるAl濃度を示す。
本発明鋼No.A1は、重量変化の絶対値が1.0mg/cm以下であり、耐スケール剥離性に優れている。加えて、本発明鋼No.A2は、重量変化の絶対値が6mg/cm以下と、比較的小さく、耐スケール剥離性に優れている。また、両者は、質量%で、外層にCr:26.0%以上、内層にAl:1.0%以上濃化している。これに対して、比較鋼No.B1は、重量変化の絶対値が6mg/cm以上であり、耐スケール性に劣り、外層のCr濃度は26.0%未満であり、また、内層のAl濃度は1.0%未満である。
Figure 2019002030
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表2および表3に示す成分組成の鋼を溶製した。
Figure 2019002030
Figure 2019002030
その後、溶製した鋼を1250℃で、6.5mm厚まで熱延し、1150℃で熱延板焼鈍、酸洗、冷延、1150℃で仕上焼鈍し、表4および表5に示す条件で溶融アルカリ塩処理、酸洗を施して、4.3mm厚の鋼板を得た。そして、仕上げ焼鈍し、酸洗後の鋼板表面のAlの濃度測定、大気中断続酸化試験を実施した。
仕上げ焼鈍酸洗後の鋼板表面のAl濃度測定は、オージェ電子分光装置を用いて表面から約8μm深さまで元素濃度を測定した。オージェ電子分光装置は、ULVAC−PHI社製の装置を使用した。深さ分析条件は、スパッタ速度:100Å/分、積算回数:10回とした。
大気中断続酸化試験では、30mm×20mm×4.5mm厚の試験片を表裏面および端面を600番研磨仕上げに調整し、大気中、1000℃×25分加熱―5分空冷を1サイクルとして、400サイクル酸化試験をした後の質量変化を評価した。質量変化の絶対値が1.0mg/cm未満であればスケール剥離が著しく少ないと言え、排気部品性能に支障をきたさないため合格(◎)とした。質量変化の絶対値が、1.0mg/cm以上6.0mg/cm未満の場合は、おおむね合格(○)とし、6.0mg/cm以上の場合を不合格(×)とした。
大気中断続酸化試験後の試験片は、断面をSEM/EDSで観察し、スケール組成を調査した。SEM/EDSは、日本電子株式会社製の装置を使用した。大気中断続酸化試験後の試験片において、質量%で外層にCr:26.0%以上、または内層にAl:1.0%以上濃化している場合に、耐スケール剥離性が優れる。
ここで、外層とは、酸化試験後の表面と、当該表面から30μm深さ位置との間の領域を意味し、内層とは、酸化試験後の表面から30μm深さ位置と、表面から100μm深さ位置との間の領域を意味する。そのため、外層のCr濃化が、26.0%以上の場合は合格(○)、26.0%未満の場合は不合格(×)、内層のAl濃化が1.0%以上の場合は合格(○)、1.0%未満の場合は不合格(×)とした。
また、仕上げ焼鈍酸洗後の鋼板表層のAl濃度、大気中断続酸化試験後の質量変化の内1つ以上が本発明の規定範囲外では、耐酸化性について排気部品性能が不良となり、不具合が生じる。よって、これらの特性を満たさないものは、排気部品性能についての項目で、不合格(×)、1つ以上満たすものはおおむね合格(○)、全て満たすものは合格(◎)と記載した。
以下、結果をまとめて表4および5に示す。
Figure 2019002030
Figure 2019002030
本発明によれば、耐熱性、特に耐酸化性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板を提供することができる。本発明の鋼板を、自動車のターボチャージャー、およびエキゾーストマニホールド等の排気部品として使用することで、排気ガス規制等に伴う、排気ガスの高温化、自動車の軽量化、燃費性向上(熱効率)といった要求に適合する製品を製造することができる。さらに、自動車、二輪の排気部品に限らず、各種ボイラー、燃料電池システム等の高温環境に使用される部品に適用することも可能である。

Claims (9)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C:0.01〜0.2%、
    Si:0.50〜5.0%、
    Mn:0.5〜10.0%、
    P:0.01〜0.05%、
    S:0.0001〜0.010%、
    Ni:5.0〜15.0%、
    Cr:15.0〜26.0%、
    Al:0.05〜0.3%、
    B:0.0003〜0.01%、
    N:0.01〜0.4%、
    Mo:0.05〜2.0%、
    Cu:0.05〜3.0%、
    V:0.01〜1.0%、
    Ti:0〜0.3%、
    Nb:0〜0.3%、
    Ca:0〜0.01%、
    W:0〜3.0%、
    Zr:0〜0.3%、
    Sn:0〜0.5%、
    Co:0〜0.3%、
    Mg:0〜0.01%、
    Sb:0〜0.5%、
    REM:0〜0.2%、
    Ga:0〜0.3%、
    Ta:0〜1.0%、
    残部:Feおよび不可避的不純物であり、
    鋼板表面から1.0μm深さ位置までの領域における、Alの最大濃度が、質量%で、2.0%以上である、オーステナイト系ステンレス鋼板。
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    Ti:0.001〜0.3%、
    Nb:0.001〜0.3%、
    Ca:0.0005〜0.01%、
    から選択される1種以上を含有する、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼板。
  3. 前記化学組成が、質量%で、
    W:0.005〜3.0%、
    Zr:0.0005〜0.3%、
    Sn:0.001〜0.5%、
    Co:0.01〜0.3%、
    Mg:0.0001〜0.01%、
    Sb:0.0005〜0.5%、
    REM:0.001〜0.2%、
    Ga:0.0002〜0.3%、
    Ta:0.001〜1.0%、
    から選択される1種以上を含有する、請求項1または2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼板。
  4. 大気中で、1000℃×25分加熱―5分空冷を1サイクルとし、400サイクル繰り返した断続酸化試験において、
    試験後に形成している酸化スケール中での、表面から深さ方向に30μmの位置までの領域におけるCrの最大濃度が、26.0%以上、または、
    表面から深さ方向に30μmの位置から100μmの位置までの領域におけるAlの最大濃度が、1.0%以上、
    の少なくともいずれかを満足する、請求項1〜3のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼板。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の化学組成を有する鋼板を製造する方法であって、
    (a)請求項1〜3のいずれかに記載の化学組成を有する鋼を冷延焼鈍鋼板とする工程と、
    (b)前記冷延焼鈍鋼板を、溶融アルカリ塩に、450℃超で60秒以下浸漬し、その後、酸洗処理する工程と、
    を備えるオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
  6. 排気部品用である、請求項1〜4のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼板。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼板を用いた排気部品。
  8. 請求項1〜4のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼板を用いたターボチャージャー部品。
  9. 請求項1〜4のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼板を用いたターボハウジング部品。

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