JP2018531024A6 - マーカーフリーゲノム改変のための方法および組成物 - Google Patents

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Abstract

選択マーカーを使用せずに植物細胞のゲノム中のヌクレオチド配列を改変するための組成物および方法を提供する。本方法および本組成物は、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼシステムを使用してヌクレオチド配列に位置する標的部位で二本鎖切断を行い、選択マーカーを使用せずに植物細胞を得、そして、植物体、植物細胞または種子のゲノム内の標的部位の改変に有効なシステムを提供する。また、選択マーカーを使用せずに、ゲノム中に改変されたヌクレオチド配列を有する植物細胞、カルス組織または植物体を作製するための組成物および方法を提供する。

Description

本願は、2015年10月20日に出願された米国仮特許出願第62/243719号、2016年3月16日に出願された米国仮特許出願第62/309033号、および2016年7月7日に出願された米国仮特許出願第62/359254号の利益を主張するものであり、その内容は全て参照により本明細書に組み込まれる。
本開示は分子生物学に関し、特に細胞のゲノムを変更する方法に関する。
電子的手段によって提出された配列表の参照
配列表の正式な写しは、2016年10月11日作成の20161011_7158PCT_SeqLs.txtのファイル名を備え、185キロバイトのサイズを有するASCIIフォーマットの配列表としてEFS−Webを介して電子的に提出され、本明細書と同時に提出されている。このASCIIフォーマットの文書内に含まれる配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
組み換えDNA技術により、標的のゲノム位置にDNA配列を挿入し、かつ/または特定の内因性染色体配列を改変(編集)することが可能になり、それにより、生命体の表現型を変えることが可能になった。部位特異的組み換えシステムを使用する部位特異的組み込み技術は、他の組み換え技術と同様、様々な生命体における目的遺伝子の標的挿入の生成に使用されてきた。デザイナージンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)またはホーミングメガヌクレアーゼなどのゲノム編集技術は、標的ゲノムパータベーションの生成に利用可能であるが、これらのシステムは、特異性が低く、各標的部位用に再設計することが必要であり、そのために作製に多額の費用と時間を要する設計ヌクレアーゼを使用する傾向がある。
生命体のゲノムの改変に特異的な部位を標的とするいくつかの方法が開発されてきているが、安価で、構築しやすく、拡張性があり、かつ、生命体のゲノム内の多くの位置をターゲティングするのに適した新しいゲノム工学技術が依然として求められている。
選択マーカーを使用せずに植物細胞のゲノム中のヌクレオチド配列を改変するための組成物および方法を提供する。本方法および本組成物は、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼシステムを使用してヌクレオチド配列に位置する標的部位で二本鎖切断を行い、選択マーカーを使用せずに植物細胞を得、そして、植物体、植物細胞または種子のゲノム内の標的部位の改変に有効なシステムを提供する。また、選択マーカーを使用せずに、ゲノム中に改変されたヌクレオチド配列を有する植物細胞、カルス組織または植物体を作製するための組成物および方法を提供する。
本開示の一実施形態においては、本方法は、選択マーカーを使用せずに植物細胞のゲノム中のヌクレオチド配列を改変する方法であって、少なくとも1つの植物細胞に、前記ヌクレオチド配列に位置する標的部位で二本鎖切断を行うことができるガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体を導入する工程と、前記ヌクレオチド配列に改変を有する植物細胞を選択する工程(ここで、その選択は選択マーカーの使用なしで生じる)とを含む方法を含む。
本開示の一実施形態においては、本方法は、選択マーカーを使用せずにゲノム中に改変されたヌクレオチド配列を有する植物体を作製する方法であって、少なくとも1つの植物細胞に、ヌクレオチド配列に位置する標的部位で二本鎖切断を行うことができるガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体を導入する工程と;前記植物細胞から植物体を得る工程と;前記ヌクレオチド配列に改変を有する植物体を選択する工程(ここで、その選択は選択マーカーの使用なしで生じる)とを含む方法を含む。
本開示の一実施形態においては、本方法は、選択マーカーを使用せずにゲノム中に改変されたヌクレオチド配列を有する植物体を作製する方法であって、少なくとも1つの植物細胞に、ヌクレオチド配列に位置する標的部位で二本鎖切断を行うことができるガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体を導入する工程と;前記植物細胞から植物体を得る工程と;前記ヌクレオチド配列に改変を有する植物体を選択する工程(ここで、その選択は選択マーカーの使用なしで生じる)とを含む方法を含む。ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体であり得る。
本開示の方法は、ポリヌクレオチド鋳型を導入する工程(ここで、前記ポリヌクレオチド改変鋳型は、前記細胞のゲノムに標的部位を含むヌクレオチド配列の少なくとも1つのヌクレオチド改変を含み、前記ポリヌクレオチド改変鋳型の前記少なくとも1つのヌクレオチド改変は、(i)少なくとも1つのヌクレオチドの置換、(ii)少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、(iii)少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、および(iv)(i)〜(iii)の任意の組み合わせからなる群から選択される)をさらに含むことができる。本方法はまた、ドナーDNAを導入する工程(ここで、前記ドナーDNAは少なくとも1つの目的ポリヌクレオチドを含む)をさらに含むことができる。ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体の細胞への導入は、限定はされないが、粒子媒介送達、ウィスカー媒介送達、膜透過性ペプチド媒介送達、エレクトロポレーション、PEP媒介トランスフェクションおよびナノ粒子媒介送達からなる群から選択される送達システムなどの当該技術分野で知られた方法により行うことができる。
本開示の方法は、表現型マーカーまたは選択マーカーを使用せず、かつ選択剤を適用せずに用いることができる。本方法は、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体を植物細胞へ、選択マーカーを前記植物細胞へ導入することなく、導入する工程、または、その場合に、前記ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体の導入が、破壊された選択マーカー遺伝子の、機能的選択マーカータンパク質をコードする非破壊選択マーカー遺伝子への修復を伴わない工程、もしくは前記ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体の導入が、前記細胞内に選択マーカーを生成しない工程を含む。本開示の方法は、さらに、そのゲノム中に改変ヌクレオチド配列を含む植物細胞、カルス組織または植物体を選択する工程(ここで、その選択は選択マーカーの使用なしで生じる)を含み得る。
本明細書に記載の方法によって作製された核酸コンストラクト、細胞、植物体、子孫植物体、微生物、外植体、種子および穀類もまた提供する。本開示の方法および組成物のさらなる実施形態を本明細書中に示す。
図面の簡単な説明および配列表
下記の詳細な説明、および本出願の一部を形成する添付図面および配列表から、本開示をより完全に理解することができる。配列の記載および本明細書に添付した配列表は、37C.F.R.§§1.821−1.825に規定されている特許出願におけるヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の開示に適用される規則に適合している。配列の記載は、37C.F.R.§§1.821−1.825(これは参照により本明細書に組み込まれる)で定義されるアミノ酸の3文字コードを含む。
図1は、本明細書に記載のトウモロコシ最適化ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼシステムにより導入された最も頻度の多いNHEJ変異の上位10の配列のアライメントとその数を示す。変異はディープシークエンシングによって同定した。参照配列(配列番号48)は、改変されていない遺伝子座を示し、各標的部位はボールド体で示してある。また、PAM配列(灰色)および切断予測部位(矢印)を示す。不完全なNHEJの結果として生じた欠失または挿入をそれぞれ、「−」または「斜字体表記で下線を付したヌクレオチドで示す。標的部位の参照および1〜10位の変異はそれぞれ、配列番号49〜58に対応する。トウモロコシでは、標的部位の大半で、Cas9−gRNAシステムで最も高頻度に生じる変異は、単一ヌクレオチド挿入(≧60%)(16,861として示された数)。 図2は、ALS2遺伝子の部分ヌクレオチド配列((配列番号59、61、63)および部分アミノ酸配列(配列番号60、62、64)、ならびに、2つの編集修復鋳型(Oligo1およびOligo2)を示す。改変ヌクレオチドには下線を引き、遺伝子編集(ProからSerへ)の標的のコドン配列は四角で囲んである。 図3は、クロルスルフロン耐性を付与するALS2アレルを有するトウモロコシ植物体(左)および野生型植物体(右)を示す。4週齢の植物体にクロルスルフロン(100mg/L)を噴霧した。処理3週後の植物体を示す。 図4A〜4Cは、改変およびALS2の選択マーカーとしての使用のために選択されたALS2遺伝子の断片(配列番号65、67、69)の概略図を示す。各ヌクレオチド配列の下にコードされるアミノ酸配列を示す。(配列番号66、68)。図4A:クロルスルフロン耐性のために編集されたALS2遺伝子の特定のノックアウト型を生成するために、165の位置の1つのヌクレオチド(G)(ボールド体で、かつ下線が付されている)を取り除くことができる。図4Bは、1つのヌクレオチドが欠失した(Gの削除)新しいヌクレオチド配列が、翻訳フレームシフトおよびALS2遺伝子ノックアウトをもたらすことを示している。図4C:ALS2遺伝子機能とクロルスルフロン耐性は、NHEJ経路によるDSB修復の過程で1つのヌクレオチド(N、ボールド体で、かつ下線が付されている)を挿入することによって回復する。 不活化ALS2P165Sの選択マーカーとしての再活性化。図5A(配列番号70)。PAMの5’側の3つのヌクレオチドのところに位置する上流アウトフレーム翻訳開始コドンを含むALS2P165Sの設計。最初のAUG(配列下の矢印で示す)における翻訳の開始は、ALS2の翻訳開始コドン(灰色文字)の開始を妨害する4アミノ酸からなるポリペプチドをコードする。図5B(配列番号71)。上流AUGの欠損をもたらす単一のヌクレオチドの挿入(C、AもしくはT)または欠失(あるいは、任意の組み合わせ)は、ALS2の開始コドンでの翻訳の開始を許容し、完全長のALS2P165S除草剤耐性遺伝子の翻訳を復元する。 図6A〜6Cは、改変のために選択された内因性標的部位を含む目的ポリヌクレオチド断片(配列番号72)の概略図を示す。各ヌクレオチド配列の下に、コードされるアミノ酸配列を示す。(配列番号73、75、77)。図6Aは、エンドヌクレアーゼ切断部位(矢印で示す)に隣接する単一ヌクレオチド(この例ではC、ボールド体および下線で示す)がNHEJによって除かれ得ることを示している。図6Bは、1つの塩基を欠失させた生成目的ポリヌクレオチド(配列番号74)では、新しい切断部位(矢印で示す)が作られ、翻訳フレームシフトが起きることを示している。図4C:エンドヌクレアーゼ切断部位に隣接する単一ヌクレオチド(この例ではT、ボールド体および下線で示す)を、ポリヌクレオチド改変(修復)鋳型を使用せずに、NHEJによって挿入することができ、目的ポリヌクレオチドの1つのヌクレオチドの編集を行うことできる(配列番号76)。PAM配列を灰色で強調表示する。 上:UBI:Cas9のトウモロコシゲノムへの安定した組み込みを行うためのアグロバクテリウム(Agrobacterium)ベクター。下:MDH:Cas9のトウモロコシゲノムへの安定した組み込みを行うためのアグロバクテリウム(Agrobacterium)ベクター。MDHは、Cas9の発現を調節する温度調節プロモーターである。これらのベクターはまた、視認マーカー遺伝子(END2:AmCYAN)を含み、それは、安定に形質転換されたカルスセクターを選択するために使用された。赤色蛍光タンパク質(DsRED)の配列は、343bpのスペーサーによって分離され、順方向に複製された369bpの断片を含み、それは、2つのgRNAとLIG3:4メガヌクレアーゼによる認識とターゲッティングの配列を含んだ。H2Bは、ヒストンH2B遺伝子プロモーターを指す。
選択マーカーを使用せずに植物細胞のゲノム中のヌクレオチド配列を改変するための組成物および方法を提供する。本方法および本組成物は、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼシステムを使用して、改変すべきヌクレオチド配列に位置する標的部位で二本鎖切断を行い、選択マーカーを使用せずに植物細胞を得る。また、ゲノム中に改変されたヌクレオチド配列を有する植物細胞、カルス組織または植物体を選択マーカーを使用せずに作製するための組成物および方法を提供する。
本明細書に記載の方法は、少なくとも1つの植物細胞に、前記ヌクレオチド配列に位置する標的部位で二本鎖切断を行うことができるガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体を導入する工程と、前記ヌクレオチド配列に改変を有する植物細胞を選択する工程(ここで、その選択は選択マーカーの使用なしで生じる)とをさらに含むことができる。本方法はさらに、その植物細胞からカルス組織または植物体を得る工程と、前記ヌクレオチド配列中に改変を有するカルス組織または植物体を選択する工程(ここで、その選択は選択マーカーの使用なしで生じる)とをさらに含むことができる。
当業者は、従来のゲノム改変方法および植物形質転換方法が主に、選択マーカー遺伝子を改変すべき細胞に導入することによって、例えば、抗生物質または除草剤(選択剤)を、選択マーカー遺伝子を含まない細胞または組織を阻害または死滅させるために使用し、選択マーカー遺伝子を含む細胞または組織を、選択マーカー(耐性)遺伝子を発現させることにより増殖させる選択スキームを可能にすることに依存したものであったことを理解することができる。対照的に、本開示の方法は、選択マーカーを使用せず、かつ選択剤を適用せずに用いることができる。
CRISPR遺伝子座(クラスター化等間隔短鎖回文リピート)(SPIDR―スペーサー散在型ダイレクトリピートとしても知られる)はDNA遺伝子座のファミリーを構成する。CRISPR遺伝子座は、短く、かつ高度に保存されたDNAリピート(通常24〜40bp、1〜140回の繰り返し―CRISPRリピートとも呼ばれる)から構成され、部分的に回文を形成している。反復配列(通常、種に固有である)間は一定の長さの可変配列(通常、CRISPR遺伝子座により20〜58bp)がスペーサーとして存在している(国際公開第2007/025097号パンフレット、2007年3月1日公開)。細菌および古細菌は、外来核酸の分解に短鎖RNAを使用する、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)/CRISPR−関連(Cas)システムと呼ばれる適応免疫防御を発展させた(国際公開第2007/025097号パンフレット、2007年3月1日公開)。マルチサブユニットエフェクター複合体を用いるクラス1システムと、単一タンパク質エフェクター(例えば、限定はされないが、Cas9、Cpf1、C2c1、C2c2、C2c3)を用いるクラス2システムを含む、多重CRISPR−Casシステムが報告されている。(Zetsche et al.,2015,Cell 163,1−13;Shmakov et al.、2015,Molecular_Cell 60、1−13;Makarova et al.2015,Nature Reviews Microbiology Vol.13:1−15、2013年11月23日に公開され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2013/176772A1号パンフレット)。
細菌由来のII型CRISPR/Casシステムは、CasエンドヌクレアーゼをDNA標的に誘導するために、crRNA(CRISPR RNA)およびtracrRNA(トランス活性化CRISPR RNA)を使用する。crRNAは、二本鎖DNA標的の1本鎖に相補的なスペーサー領域と、tracrRNA(トランス活性化CRISPR RNA)と塩基対合し、Casエンドヌクレアーゼを反復領域に導き、DNA配列を切断させるRNA二本鎖を形成する領域とを含む。スペーサーは、Cas1およびCas2タンパク質を伴う十分解明されていないプロセスによって得られる。全てのII型CRISPR−Cas遺伝子座は、cas9遺伝子に加えてcas1およびcas2遺伝子を有する(Makarova et al.2015,Nature Reviews Microbiology Vol.13:1−15)。Cas遺伝子は、一般に、フランキングCRISPR遺伝子座に結合するか、関連するか、近接するか、近くに存在する遺伝子を含む。
用語「Cas遺伝子」、「CRISPR関連(Cas)遺伝子」は、本明細書中で互換的に使用される。Casタンパク質ファミリーの包括的レビューは、Haft et al.(2005)Computational Biology、PLoS Comput Biol 1(6):e60.doi:10.1371/journal.pcbi.0010060に示されている。そこに記載されているように、以前から知られている4つの遺伝子ファミリーに加えて、41のCRISPR関連(Cas)遺伝子ファミリーが記載されている。これは、CRISPRシステムが、異なる繰り返しパターン、異なる遺伝子群および異なる種の範囲を持つ異なるクラスに属することを示している。所与のCRISPR遺伝子座におけるCas遺伝子の数は、種によって異なり得る(Haft et al.,2005,Computational Biology,PLoS Comput Biol 1(6):e60.doi:10.1371/journal.pcbi.0010060;Makarova et al.2015、Nature Reviews Microbiology Vol.13:1−15;2013年11月23日に公開され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2013/176772A1号パンフレット)。
本明細書中の用語「Casエンドヌクレアーゼ」は、Cas(CRISPR関連)遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。Casエンドヌクレアーゼは、適切なポリヌクレオチド構成要素と複合体を形成すると、特定のDNA標的配列の全てまたは一部を認識し、それに結合し、かつ場合によりニッキングまたは切断をすることができる。本明細書中に記載のCasエンドヌクレアーゼは、1つ以上のヌクレアーゼドメインを含む。本開示のCasエンドヌクレアーゼとしては、HNHもしくはHNH様ヌクレアーゼドメインおよび/またはRuvCもしくはRuvC様ヌクレアーゼドメインを有するものが挙げられる(Makarova et al.2015,Nature Reviews Microbiology Vol.13:1−15)。Casとしては、Cas9タンパク質、Cpf1タンパク質、C2c1タンパク質、C2c2タンパク質、C2c3タンパク質、Cas3、Cas3−HD、Cas5、Cas7、Cas8、Cas10、またはこれらの複合体が挙げられる。
本明細書で使用される場合、用語「ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体」、「ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼシステム」、「ガイドポリヌクレオチド/Cas複合体」、「ガイドポリヌクレオチド/Casシステム」、「誘導型Casシステム」、「PGEN」は、本明細書中で互換的に使用され、ポリヌクレオチド−タンパク質複合体を形成することができる、少なくとも1つのガイドポリヌクレオチド、および少なくとも1つのCasエンドヌクレアーゼタンパク質を指し、前記ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、CasエンドヌクレアーゼをDNA標的部位に誘導することができ、CasエンドヌクレアーゼがDNA標的部位を認識し、それに結合し、かつ任意選択によりそれをニッキングまたは切断(一本鎖または二本鎖切断の導入)するのを可能にする。本明細書におけるガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、4つの既知のCRISPRシステム(Horvath and Barrangou,Science 327:167−170)、例えば、I型、II型、またはIII型CRISPRシステムのいずれかのCasタンパク質および好適なポリヌクレオチド構成要素を含んでよい。Casエンドヌクレアーゼは、CASタンパク質と複合化したポリヌクレオチド(例えば、限定はされないが、crRNAまたはガイドRNA)により標的配列を認識して、標的配列でDNA二本鎖をほどき、場合により、少なくとも1本のDNA鎖を切断する。正確なプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)が、DNA標的配列の3’末端に位置するか、またはDNA標的配列の3’末端に隣接するなら、そのようなCasエンドヌクレアーゼによる標的配列の認識および切断は、通常、起こる。これ以外にも、Casタンパク質は、本明細書中で、適切なRNA構成要素と複合化する場合、DNA切断活性またはニッキング活性を欠くかもしれないが、DNA標的配列に依然として特異的に結合することができる。(2015年3月19日公開の米国特許出願公開第2015/0082478A1号明細書、および2015年2月26日公開の米国特許出願公開第2015/0059010A1号明細書(両文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)もまた参照されたい)。
ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、DNA標的配列の一方または双方の鎖を切断することができる。DNA標的配列の双方の鎖を切断することができるガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、通常、エンドヌクレアーゼドメインの全てを機能的な状態で有するCasタンパク質(例えば、各エンドヌクレアーゼドメインの一部または全ての活性を保持する野生型エンドヌクレアーゼドメインまたはその変異体)を含む。したがって、Casタンパク質の各エンドヌクレアーゼドメインの一部または全ての活性を保持する野生型Casタンパク質(例えば、本明細書中に開示されるCas9タンパク質)またはその変異体が、DNA標的配列の双方の鎖を切断することができるCasエンドヌクレアーゼの適切な例である。機能的なRuvCおよびHNHヌクレアーゼドメインを含むCas9タンパク質は、DNA標的配列の双方の鎖を切断することができるCasタンパク質の例である。DNA標的配列の一方の鎖を切断することができるガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、本明細書において、ニッカーゼ活性(例えば、部分的切断能力)を有すると特徴付けられ得る。Casニッカーゼは、通常、CasがDNA標的配列の一方の鎖のみを切断する(すなわち、ニックを入れる)ことを可能にする1つの機能的エンドヌクレアーゼドメインを含む。例えば、Cas9ニッカーゼは、(i)変異した、機能不全RuvCドメイン、および(ii)機能的HNHドメイン(例えば、野生型HNHドメイン)を含み得る。他の例として、Cas9ニッカーゼは、(i)機能的RuvCドメイン(例えば野生型RuvCドメイン)、および(ii)突然変異した、機能不全HNHドメインを含んでよい。本明細書での使用に好適なCas9ニッカーゼの非限定的例は、Gasiunas et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.109:E2579−E2586)、Jinek et al.(Science 337:816−821)、Sapranauskas et al.Nucleic Acids Res.39:9275−9282)、および米国特許出願公開第2014/0189896号明細書(これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
DNAターゲティングの特異性を高めるのに、一対のCas9ニッカーゼを用いることができる。一般に、これは、2つのCas9ニッカーゼを導入することによってなされ得、これらが、異なるガイド配列を有するRNA構成要素との関連により、所望のターゲティング領域における反対側の鎖の近接するDNA配列を標的とし、そこにニックを入れる。そのような各DNA鎖の近くの切断は、二本鎖切断(すなわち、単鎖オーバーハングを有するDSB)を引き起こし、これは、その後、非相同性末端結合NHEJ(変異につながる不完全な修復になりやすい)、または相同組み換えHRの基質として認識される。これらの実施形態における各ニックは、例えば、互いと少なくとも約5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、もしくは100(または5〜100の任意の整数)塩基、離れていてよい。本明細書においては、1つまたは2つのCas9ニッカーゼタンパク質が、Cas9ニッカーゼ対に用いられてよい。例えば、変異したRuvCドメインを有するが、機能するHNHドメインのないCas9ニッカーゼ(すなわち、Cas9 HNH+/RuvC−)が使用されるであろう(例えば、ストレプトコッカス・ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9 HNH+/RuvC−)。各Cas9ニッカーゼ(例えば、Cas9 HNH+/RuvC−)は、各ニッカーゼをそれぞれの特定のDNA部位に標的として向けるガイドRNA配列を有する本明細書中の適切なRNA構成要素を用いることによって、互いに近い(最大で100塩基対離れている)特定のDNA部位に導かれることになる。
Casタンパク質は、1つ以上の異種タンパク質ドメイン(例えば、Casタンパク質に加えて1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のドメイン)を含む融合タンパク質の一部であってよい。そのような融合タンパク質は、任意のさらなるタンパク質配列を、そして、任意選択により、任意の2つのドメイン間、例えばCasと第1の異種ドメインとの間にリンカー配列を含み得る。本明細書において、Casタンパク質に融合し得るタンパク質ドメインの例としては、限定されないが、エピトープタグ(例えば、ヒスチジン[His]、V5、FLAG、インフルエンザヘマグルチニン[HA]、myc、VSV−G、チオレドキシン[Trx])、リポータ(例えば、グルタチオン−5−トランスフェラーゼ[GST]、ホースラディッシュペルオキシダーゼ[HRP]、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ[CAT]、ベータ−ガラクトシダーゼ、ベータ−グルクロニダーゼ[GUS]、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質[GFP]、HcRed、DsRed、シアン色蛍光タンパク質[CFP]、黄色蛍光タンパク質[YFP]、青色蛍光タンパク質[BFP])、および以下の活性の1つ以上を有するドメインが挙げられる:メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性(例えば、VP16またはVP64)、転写抑制活性、転写終結因子活性、ヒストン修飾活性、RNA切断活性、および核酸結合活性。
Casタンパク質はまた、DNA分子または他の分子、例えばマルトース結合タンパク質(MBP)、S−タグ、Lex A DNA結合ドメイン(DBD)、GAL4A DNA結合ドメイン、および単純ヘルペスウィルス(HSV)VP16と結合するタンパク質と融合し得る。
本明細書中のCasタンパク質は以下の属のいずれか由来であり得る:アエロピルム(Aeropyrum)、ピロバクルム(Pyrobaculum)、スルホロブス(Sulfolobus)、アーキオグロブス(Archaeoglobus)、ハロアーキュラ(Haloarcula)、メタノバクテリウム(Methanobacteriumn)、メタノコッカス(Methanococcus)、メタノサルシナ(Methanosarcina)、メタノパイラス(Methanopyrus)、ピロコッカス(Pyrococcus)、ピクロフィラス(Picrophilus)、テルモプラズマ(Thernioplasnia)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、アクウィフェクス(Aquifrx)、ポルフィロモナス(Porphvromonas)、クロロビウム(Chlorobium)、サーマス(Thermus)、バチルス(Bacillus)、リステリア(Listeria)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、クロストリジウム(Clostridium)、サーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、フソバクテリウム(Fusobacterium)、アゾアルカス(Azarcus)、クロモバクテリウム(Chromobacterium)、ナイセリア(Neisseria)ニトロソモナス(Nitrosomonas)、デスルホビブリオ(Desulfovibrio)、ゲオバクター(Geobacter)ミロコッカス(Myrococcus)、キャンピロバクター(Campylobacter)、ウォリネラ(Wolinella)、アシネトバクター(Acinetobacter)、エルウィニア(Erwinia)、エシェリキア(Escherichia)、レジオネラ(Legionella)、メチロコッカス(Methylococcus)、パスツレラ(Pasteurella)、フォトバクテリウム(Photobacterium)、サルモネラ(Salmonella)、キサントモナス(Xanthomonas)、エルシニア(Yersinia)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、トレポネーマ(Treponema)、フランシセラ(Francisella)またはサーモトガ(Thermotoga)。あるいは、本明細書中のCasタンパク質は、例えば、米国特許出願公開第2010/0093617号明細書(この文献は参照により本明細書に組み込まれる)に開示される配列番号462〜465、467〜472、474〜477、479〜487、489〜492、494〜497、499〜503、505〜508、510〜516、または517〜521のいずれでコードされてもよい。
いくつかの実施形態では、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体はDNA標的部位配列に結合することができるが、標的部位配列ではいかなる鎖も切断しない。そのような複合体は、全ヌクレアーゼドメインが、変異した、機能不全のCasタンパク質を含んでよい。例えば、DNA標的部位配列に結合することができるが、標的部位配列でいかなる鎖も切断しない本明細書におけるCas9タンパク質は、変異した、機能不全RuvCドメイン、および変異した、機能不全HNHドメインの双方を含んでよい。標的DNA配列に結合するがこれを切断しない本明細書中のCasタンパク質は、遺伝子発現を調整するために用いることができ、例えば、その場合、Casタンパク質は、転写因子(または、その一部)(例えば、リプレッサーまたは活性化因子、例えば本明細書中に開示されるもののいずれか)と融合し得る。
Casエンドヌクレアーゼ遺伝子は、II型Cas9エンドヌクレアーゼ、例えば、限定はされないが、2007年3月1日に公開され、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2007/025097号パンフレットの配列番号462、474、489、494、499、505および518に記載のCas9遺伝子であり得る。他の実施形態では、Casエンドヌクレアーゼ遺伝子は、植物、トウモロコシまたはダイズ最適化Cas9エンドヌクレアーゼ遺伝子である。本明細書中のCasエンドヌクレアーゼ遺伝子は、植物体または微生物のコドン最適化Cas9エンドヌクレアーゼ遺伝子であり得る。Casエンドヌクレアーゼ遺伝子は、任意選択により、Casコドン領域のSV40核標的シグナル上流、およびCasコドン領域の二分VirD2核定位シグナル(Tinland et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7442−6)下流に作動可能に結合することができる。
「Cas9」(以前はCas5、Csn1、またはCsx12と呼ばれた)は、本明細書中で、crヌクレオチドおよびtracrヌクレオチドと、または単一のガイドポリヌクレオチドと複合体を形成して、DNA標的配列の全てまたは一部を特異的に認識して切断する、II型CRISPRシステムのCasエンドヌクレアーゼを指す。Cas9タンパク質は、RuvCヌクレアーゼドメイン、およびHNH(H−N−H)ヌクレアーゼドメインを含み、これらはそれぞれ、標的配列で一本鎖DNAを切断することができる(両ドメインが協調して作用すると、DNA二本鎖が切断されるが、一方のドメインの活性ではニックに至る)。一般に、RuvCドメインは、サブドメインI、II、およびIIIを含み、ドメインIは、Cas9のN末端近くに位置し、サブドメインIIおよびIIIは、タンパク質の中央に位置し、HNHドメインにフランキングしている(Hsu et al,Cell 157:1262−1278)。II型CRISPRシステムとしては、Cas9エンドヌクレアーゼを少なくとも1つのポリヌクレオチド構成要素と複合させて使用するDNA切断システムが挙げられる。例えば、Cas9は、CRISPR RNA(crRNA)およびトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)と複合させることができる。他の例では、Cas9は、単一ガイドRNAと複合させることができる。
本明細書中に記載のCas9タンパク質、および本明細書中の他のいくつかのCasタンパク質のアミノ酸配列は、例えば、ストレプトコッカス(Streptococcus)属種(例えば、ストレプトコッカス・ピオゲネス(S.pyogenes)、ストレプトコッカス・ニューモニアエ(S.pneumoniae)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(S.thermophilus)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(S.agalactiae)、ストレプトコッカス・パラサングイニス(S.parasanguinis)、ストレプトコッカス・オラリス(S.oralis)、ストレプトコッカス・サリバリウス(S.salivarius)、ストレプトコッカス・マカカエ(S.macacae)、ストレプトコッカス・ディスガラクティエ(S.dysgalactiae)、ストレプトコッカス・アンギノサス(S.anginosus)、ストレプトコッカス・コンステラトゥス(S.constellatus)、ストレプトコッカス・シュードポルシナス(S.pseudoporcinus)、ストレプトコッカス・ミュータンス(S.mutans))、リステリア(Listeria)属種(例えば、リステリア・イノキュア(L.innocua))、スピロプラズマ(Spiroplasma)属種(例えば、スピロプラズマ・アピス(S.apis)、スピロプラズマ・シルフィディコーラ(S.syrphidicola))、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcaceae)科種、アトポビウム(Atopobium)属種、ポルフィロモナス(Porphyromonas)属種(例えば、ポルフィロモナス・カトニアエ(P.catoniae))、プレボテラ(Prevotella)属種(例えば、プレボテラ・インテルメディア(P.intermedia)、ベイロネラ(Veillonella)属種、トレポネーマ(Treponema)属種(例えば、トレポネーマ・ソクランスキィ(T.socranskii)、トレポネーマ・デンティコラ(T.denticola))、カプノシトファガ(Capnocytophaga)属種、フィネゴルディア(Finegoldia)属種(例えば、フィネゴルディア・マグナ(F.magna))、コリオバクテリア(Coriobacteriaceae)科種(例えば、C.バクテリウム(C.bacterium))、オルセネラ(Olsenella)属種(例えば、オルセネラ・プロフューザ(O.profusa))、ヘモフィルス(Haemophilus)属種(例えば、ヘモフィルス・スプトルム(H.sputorum)、ヘモフィルス・ピットマニエ(H.pittmaniae))、パスツレラ(Pasteurella)属種(例えば、パスツレラ・ベッティアエ(P.bettyae))、オリビバクター(Olivibacter)属種(例えば、オリビバクター・シティエンシス(O.sitiensis))、エピリソニモナス(Epilithonimonas)属種(例えば、エピリソニモナス・テナックス(E.tenax))、メソニア(Mesonia)属種(例えば、メソニア・モビリス(M.mobilis))、ラクトバチルス(Lactobacillus)属種、バチルス(Bacillus)属種(例えば、バチルス・セレウス(B.cereus))、アクイマリーナ(Aquimarina)属種(例えば、アクイマリーナ・ムエレリ(A.muelleri))、クリセオバクテリウム(Chryseobacterium)属種(例えば、クリセオバクテリウム・パルストレ(C.palustre))、バクテロイデス(Bacteroides)属種(例えば、バクテロイデス・グラミニソルベンス(B.graminisolvens))、ナイセリア(Neisseria)属種(例えば、ナイセリア・メニンジティディス(N.meningitidis))、フランシセラ(Francisella)属種(例えば、フランシセラ・ノビシダ(F.novicida))、またはフラボバクテリウム(Flavobacterium)属種(例えば、フラボバクテリウム・フリギダリウム(F.frigidarium)、フラボバクテリウム・ソリ(F.soli))に由来のものであってよい。他の例として、Cas9タンパク質は、Chylinski et al.(RNA Biology 10:726−737および2015年5月15日出願の米国特許出願第62/162377号明細書(これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる))に開示されるCas9タンパク質のいずれかであり得る。
したがって、本明細書中のCas9タンパク質の配列は、例えば、GenBankアクセッション番号G3ECR1(ストレプトコッカス・サーモフィルス(S.thermophilus))、WP_026709422、WP_027202655、WP_027318179、WP_027347504、WP_027376815、WP_027414302、WP_027821588、WP_027886314、WP_027963583、WP_028123848、WP_028298935、Q03JI6(ストレプトコッカス・サーモフィルス(S.thermophilus))、EGP66723、EGS38969、EGV05092、EHI65578(ストレプトコッカス・シュードポルシナス(S.pseudoporcinus))、EIC75614(ストレプトコッカス・オラリス(S.oralis))、EID22027(ストレプトコッカス・コンステラトゥス(S.constellatus))、EIJ69711、EJP22331(ストレプトコッカス・オラリス(S.oralis))、EJP26004(ストレプトコッカス・アンギノサス(S.anginosus))、EJP30321、EPZ44001(ストレプトコッカス・ピオゲネス(S.pyogenes))、EPZ46028(ストレプトコッカス・ピオゲネス(S.pyogenes))、EQL78043(ストレプトコッカス・ピオゲネス(S.pyogenes))、EQL78548(ストレプトコッカス・ピオゲネス(S.pyogenes))、ERL10511、ERL12345、ERL19088(ストレプトコッカス・ピオゲネス(S.pyogenes))、ESA57807(ストレプトコッカス・ピオゲネス(S.pyogenes))、ESA59254(ストレプトコッカス・ピオゲネス(S.pyogenes))、ESU85303(ストレプトコッカス・ピオゲネス(S.pyogenes))、ETS96804、UC75522、EGR87316(ストレプトコッカス・ディスガラクティエ(S.dysgalactiae))、EGS33732、EGV01468(ストレプトコッカス・オラリス(S.oralis))、EHJ52063(ストレプトコッカス・マカカエ(S.macacae))、EID26207(ストレプトコッカス・オラリス(S.oralis))、EID33364、EIG27013(ストレプトコッカス・パラサングイニス(S.parasanguinis))、EJF37476、EJO19166(ストレプトコッカス(Streptococcus)属種BS35b)、EJU16049、EJU32481、YP_006298249、ERF61304、ERK04546、ETJ95568(ストレプトコッカス・アガラクティエ(S.agalactiae))、TS89875、ETS90967(ストレプトコッカス(Streptococcus)属種SR4)、ETS92439、EUB27844(ストレプトコッカス(Streptococcus)属種BS21)、AFJ08616、EUC82735(ストレプトコッカス(Streptococcus)属種CM6)、EWC92088、EWC94390、EJP25691、YP_008027038、YP_008868573、AGM26527、AHK22391、AHB36273、Q927P4、G3ECR1、またはQ99ZW2(ストレプトコッカス・ピオゲネス(S.pyogenes))(これらの文献は参照により組み込まれる)に開示されるCas9アミノ酸配列のいずれかを含み得る。これらのCas9タンパク質配列のいずれの変異体が用いられてもよいが、本明細書中のRNA構成要素と関連する場合に、DNAに向けた特異的な結合活性を、そして場合によってはエンドヌクレアーゼ活性を有さなければならない。そのような変異体は、基準Cas9のアミノ酸配列と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み得る。
あるいは、本明細書中のCas9タンパク質は、例えば、米国特許出願公開第2010/0093617号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている、配列番号462(ストレプトコッカス・サーモフィルス(S.thermophilus))、474(ストレプトコッカス・サーモフィルス(S.thermophilus))、489(ストレプトコッカス・アガラクティエ(S.agalactiae))、494(ストレプトコッカス・アガラクティエ(S.agalactiae))、499(ストレプトコッカス・ミュータンス(S.mutans))、505(ストレプトコッカス・ピオゲネス(S.pyogenes))、または518(ストレプトコッカス・ピオゲネス(S.pyogenes))のいずれによってコードされてもよい。0036あるいは、さらに、Cas9タンパク質は、例えば、前述のアミノ酸配列のいずれかと少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含んでよい。そのようなCas9タンパク質変異体は、本明細書中のRNA構成要素と関連する場合に、DNAに向けた特異的な結合活性を、そして場合によっては、切断またはニッキング活性を有さなければならない。
本明細書中のCasタンパク質、例えばCas9は、異種の核局在化配列(NLS)を含み得る。本明細書中の異種NLSアミノ酸配列は、例えば、本明細書中の酵母細胞の核内で検出可能な量のCasタンパク質の蓄積を駆動するのに十分な強度を有し得る。NLSは、塩基性の、正に帯電する残基(例えば、リシンおよび/またはアルギニン)の1つ(一分節)または複数(例えば、二分節)の短い配列(例えば、2〜20残基)を含んでよく、また、タンパク質表面に曝されるのであれば、Casアミノ酸配列のどこに位置してもよい。NLSは、例えば、本明細書中のCasタンパク質のN末端またはC末端に作動可能に結合してもよい。例えば、2つ以上のNLS配列が、Casタンパク質に、例えばCasタンパク質のN末端およびC末端の両方に結合してもよい。本明細書中の適切なNLS配列の非限定的な例としては、米国特許第6660830号明細書および同第7309576号明細書(例えば、その中の表1)に開示されるものが挙げられる(これらの文献はいずれも参照によって本明細書に組み込まれる)。
Casエンドヌクレアーゼは、Cas9ポリペプチドの改変された形態を含み得る。Cas9ポリペプチドの改変形態としては、Cas9タンパク質の自然発生のヌクレアーゼ活性を低下させるアミノ酸変化(例えば、欠失、挿入または置換)を挙げることができる。例えば、いくつかの例では、Cas9タンパク質の改変形態が有するヌクレアーゼ活性は、対応する野生型Cas9ポリペプチドの50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満または1%未満である(2014年3月6日公開の米国特許出願公開第2014/0068797A1号明細書)。いくつかの例では、Cas9ポリペプチドの改変形態はヌクレアーゼ活性を実質的に有さず、触媒的に「不活化されたCas9」または「失活したcas9(dCas9)」と呼ばれる。触媒的に不活化されたCas9変異体としては、HNHおよびRuvCヌクレアーゼドメインに変異を有するCas9変異体が挙げられる。これらの触媒的に不活化されたCas9変異体は、sgRNAと相互作用し、インビボで標的部位に結合することができるが、標的DNAの鎖はいずれも切断することができない。
触媒的に不活性なCas9は、異種配列に融合することができる(2014年3月6日公開の米国特許出願公開第2014/0068797A1号明細書)。好適な融合パートナーとしては、限定はされないが、標的DNA、または標的DNAに関連するポリペプチド(例えば、ヒストンまたは他のDNA結合性タンパク質)に直接作用することによって、転写を間接的に増加させる活性を示すポリペプチドが挙げられる。さらなる好適な融合パートナーとしては、限定はされないが、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、デアセチラーゼ活性、キナーゼ活性、ホフファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性または脱ミリストイル化活性を提供するポリペプチドが挙げられる。さらに他の好適な融合パートナーとしては、限定はされないが、標的核酸の転写増加を直接引き起こすポリペプチド(例えば、転写活性化因子またはその断片、転写活性化因子、小分子/薬剤反応性転写調節因子などを誘導するタンパク質またはその断片)が挙げられる。触媒的に不活性なCas9はまた、二本鎖切断を生成するFokIヌクレアーゼに融合することができる(Guilinger et al.Nature biotechnology、volume 32、number6、June 2014)。
Casエンドヌクレアーゼの「機能的断片」、「機能的に等価である断片」および「機能的に等価な断片」という用語は、本明細書中で互換的に使用され、標的部位を認識し、結合し、そして場合によりニッキングまたは切断を行う(一本鎖切断または二本鎖切断を入れる)能力が保持されているCasエンドヌクレアーゼ配列の一部分またはサブ配列を指す。
Casエンドヌクレアーゼの「機能的変異体」、「機能的に等価である変異体」および「機能的に等価な変異体」という用語は、本明細書中で互換的に使用され、標的部位を認識し、結合し、そして場合によりニッキングまたは切断を行う(一本鎖切断または二本鎖切断を入れる)能力が保持されているCasエンドヌクレアーゼの変異体を指す。断片および変異体は、部位特異的変異誘発法および合成構築法(synthetic construction)により得ることができる。
Casエンドヌクレアーゼ遺伝子としては、原則として標的とされ得るN(12−30)NGG形態のゲノム配列を認識することができる植物コドン最適化ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)Cas9遺伝子、またはブレビバチルス・ラテロスポラス(Brevibacillus laterosporus)、ラクトバチルス・ロイテリー(Lactobacillus reuteri)Mlc3、ラクトバチルス・ロシアエ(Lactobacillus rossiae)DSM15814、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)SL4、ラクトバチルス・ノデンシス(Lactobacillus nodensis)JCM14932、スルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属種SCADC、ビフィドバクテリウム・サーモフィルム(Bifidobacterium thermophilum)DSM20210、ロクタネラ・ベストフォルデンシス(Loktanella vestfoldensis)、スフィンゴモナス・サンキサニゲネンス(Sphingomonas sanxanigenens)NX02、エピリソニモナス・テナックス(Epilithonimonas tenax)DSM16811、スポロサイトファガ・ミクソコッコイデス(Sporocytophaga myxococcoides)およびサイクロフレクサス・トークイス(Psychroflexus torquis)ATCC700755からなる群から選択される生物に由来するCas9エンドヌクレアーゼが挙げられ、この場合、前記Cas9エンドヌクレアーゼは、DNA標的配列の全てまたは一部を認識し、それに結合し、かつ場合によりニッキングまたは切断をすることができる他のCasエンドヌクレアーゼシステムは、2015年5月15日出願の米国特許出願第62/162,377号明細書、および2015年5月15日出願の同第62/162,353号明細書(両文献は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
Cas9エンドヌクレアーゼは、標的ゲノム編集(単一および多重の二本鎖切断およびニックにより)、および標的ゲノム調節(Cas9またはsgRNAにエピジェネティックエフェクタードメインを結合することにより)に使用することができる。Cas9はまた、RNA誘導型リコンビナーゼとして機能するように設計することができ、また、RNA結合により、多タンパク質および核酸複合体のアセンブリ用足場として機能し得る(Mali et al.2013 Nature Methods Vol.10:957−963)。
本明細書で使用される用語「ガイドポリヌクレオチド」は、Casエンドヌクレアーゼと複合体を形成することができ、CasエンドヌクレアーゼがDNA標的部位を認識し、結合し、かつ場合により切断することを可能にするポリヌクレオチド配列に関連する。ガイドポリヌクレオチドは単分子または二重分子であり得る。ガイドポリヌクレオチド配列は、RNA配列(ガイドRNA、gRNAと呼ばれる)、DNA配列、またはこれらの組み合わせ(RNA−DNA組み合わせ配列)であり得る。任意選択により、ガイドポリヌクレオチドは、少なくとも1つのヌクレオチド、ホスホジエステル結合または連結修飾、例えば、限定はされないが、Locked Nucleic Acid(LNA)、5−メチルdC、2,6−ジアミノプリン、2’−フルオロA、2’−フルオロU、2’−O−メチルRNA、ホスホロチオエート結合、コレステロール分子への連結、ポリエチレングリコール分子への連結、スペーサー18(ヘキサエチレングリコール鎖)分子への連結、または環化をもたらす5’から3’への共有結合的連結を含み得る。リボ核酸のみを含むガイドポリヌクレオチドはまた、「ガイドRNA」または「gRNA」と呼ばれる(2015年3月19日公開の米国特許出願公開第2015/0082478A1号明細書、および2015年2月26日公開の米国特許出願公開第2015/0059010A1号明細書、(両文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)もまた参照されたい)。
ガイドポリヌクレオチドは、crヌクレオチド配列およびtracrヌクレオチド配列を含む二重分子(二本鎖ガイドポリヌクレオチドとも呼ばれる)であり得る。crヌクレオチドは、標的DNA中のヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができる第1のヌクレオチド配列ドメイン(可変標的ドメインまたはVTドメインと呼ばれる)、およびCasエンドヌクレアーゼ認識(CER)ドメインの一部である第2のヌクレオチド配列(tracrメイト配列とも呼ばれる)を含む。tracrメイト配列は、tracrヌクレオチドに相補性領域に沿ってハイブリダイズし、Casエンドヌクレアーゼ認識ドメイン、すなわちCERドメインを共に形成することができる。CERドメインは、Casエンドヌクレアーゼポリペプチドと相互作用することができる。二本鎖ガイドポリヌクレオチドのcrヌクレオチドおよびtracrヌクレオチドは、RNA、DNA、および/またはRNA−DNA組み合わせ配列であり得る。いくつかの実施形態では、二本鎖ガイドポリヌクレオチドのcrヌクレオチド分子は、(DNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成されている場合には)「crDNA」と称され、(RNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成されている場合には)「crRNA」と称され、(DNAヌクレオチドとRNAヌクレオチドとの組み合わせで構成されている場合には)「crDNA−RNA」と称される。crヌクレオチドは、細菌中および古細菌中に天然に存在するcrRNAの断片を含むことができる。本明細書で開示するcrヌクレオチド中に存在することができる、細菌中および古細菌中に天然に存在するcrRNAの断片のサイズは、限定はされないが、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれ以上のヌクレオチド長の範囲をとることができる。いくつかの実施形態では、tracrヌクレオチドは、(RNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成されている場合には)「tracrRNA」と称され、(DNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成されている場合には)「tracrDNA」と称され、(DNAヌクレオチドとRNAヌクレオチドとの組み合わせで構成されている場合には)「tracrDNA−RNA」と称される。一実施形態では、RNA/Cas9エンドヌクレアーゼ複合体を誘導するRNAは、二本鎖crRNA−tracrRNAを含む二本鎖RNAである。
tracrRNA(トランス活性化CRISPR RNA)は、5’から3’の方向に(i)CRISPRII型crRNAの反復領域とアニールする配列と、(ii)ステムループ含有部とを有する(Deltcheva et al.,Nature 471:602−607)。二本鎖ガイドポリヌクレオチドは、Casエンドヌクレアーゼと複合体を形成することができ、前記ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体(ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼシステムとも呼ばれる)は、Casエンドヌクレアーゼをゲノム標的部位に誘導することができ、Casエンドヌクレアーゼがその標的部位を認識し、それに結合し、かつ任意選択によりそれをニッキングまたは切断(一本鎖または二本鎖切断の導入)するのを可能にする。(2015年3月19日公開の米国特許出願公開第2015/0082478A1号明細書、および2015年2月26日公開の米国特許出願公開第2015/0059010A1号明細書(両文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)もまた参照されたい)。
ガイドポリヌクレオチドはまた、tracrヌクレオチド配列に結合したcrヌクレオチド配列を含む単一分子(単一ガイドポリヌクレオチドとも呼ばれる)であり得る。単一ガイドポリヌクレオチドは、標的DNA中のヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができる第1のヌクレオチド配列ドメイン(可変標的ドメインまたはVTドメインと呼ばれる)、およびCasエンドヌクレアーゼポリペプチドと相互作用するCasエンドヌクレアーゼ認識ドメイン(CERドメイン)を含む。「ドメイン」は、RNA、DNAおよび/またはRNA−DNA組み合わせ配列であり得るヌクレオチドの連続ストレッチを意味する。単一ガイドポリヌクレオチドのVTドメインおよび/またはCERドメインは、RNA配列、DNA配列またはRNA−DNA組み合わせ配列を含み得る。Crヌクレオチド由来の配列およびtracrヌクレオチド由来の配列で構成されている単一ガイドポリヌクレオチドを、(RNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成されている場合には)「単一ガイドRNA」と称することができ、(DNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成されている場合には)「単一ガイドDNA」と称することができ、(RNAヌクレオチドとDNAヌクレオチドとの組み合わせで構成されている場合には)「単一ガイドRNA−DNA」と称することができる。単一ガイドポリヌクレオチドは、Casエンドヌクレアーゼと複合体を形成することができ、前記ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体(ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼシステムとも呼ばれる)は、Casエンドヌクレアーゼをゲノム標的部位に誘導することができ、Casエンドヌクレアーゼがその標的部位を認識し、それに結合し、かつ任意選択によりそれをニッキングまたは切断(一本鎖または二本鎖切断の導入)するのを可能にする。(2015年3月19日公開の米国特許出願公開第2015/0082478A1号明細書、および2015年2月26日公開の米国特許出願公開第2015/0059010A1号明細書(両文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)もまた参照されたい)。
用語「可変標的ドメイン」または「VTドメイン」は本明細書中で互換的に使用され、二本鎖DNA標的部位の一方の鎖(ヌクレオチド配列)にハイブリダイズすることができる(相補的である)ヌクレオチド配列を含む。第1のヌクレオチド配列ドメイン(VTドメイン)と標的配列との間の相補性%は、少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、63%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%であり得る。可変標的ドメインの長さは、少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオチド長であり得る。いくつかの実施形態では、可変標的ドメインは12〜30ヌクレオチドの連続するストレッチを含む。可変標的ドメインは、DNA配列、RNA配列、改変DNA配列、改変RNA配列、またはこれらの任意の組み合わせで構成され得る。
(ガイドポリヌクレオチドの)「Casエンドヌクレアーゼ認識ドメイン」または「CERドメイン」という用語は、本明細書中で互換的に使用され、Casエンドヌクレアーゼポリペプチドと相互作用するヌクレオチド配列を含む。CERドメインは、tracrヌクレオチドメイト配列に続いてtracrヌクレオチド配列を含む。CERドメインは、DNA配列、RNA配列、改変DNA配列、改変RNA配列(例えば、2015年2月26日公開の米国特許出願公開第2015/0059010A1号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい)、またはこれらの任意の組み合わせで構成され得る。
単一ガイドポリヌクレオチドのcrヌクレオチドとtracrヌクレオチドとを連結するヌクレオチド配列は、RNA配列、DNA配列またはRNA−DNA組み合わせ配列を含み得る。一実施形態では、単一ガイドポリヌクレオチドのcrヌクレオチドとtracrヌクレオチドとを連結するヌクレオチド配列の長さは、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100ヌクレオチド長であり得る。他の実施形態では、単一ガイドポリヌクレオチドのcrヌクレオチドとtracrヌクレオチドとを連結するヌクレオチド配列は、限定はされないが、GAAAテトラループ配列などのテトラループ配列を含み得る。
ガイドポリヌクレオチド、VTドメインおよび/またはCERドメインのヌクレオチド配列改変は、限定はされないが、5’キャップ、3’ポリアデニル化テイル、リボスイッチ配列、安定性制御配列、dsRNA二本鎖を形成する配列、ガイドポリヌクレオチドの標的を細胞内部位に設定する改変または配列、トラッキングが生じる改変または配列、タンパク質用の結合部位が生じる改変または配列、Locked Nucleic Acid(LNA)、5−メチルdCヌクレオチド、2,6−ジアミノプリンヌクレオチド、2’−フルオロAヌクレオチド、2’−フルオロUヌクレオチド;2’−O−メチルRNAヌクレオチド、ホスホロチオエート結合、コレステロール分子への連結、ポリエチレングリコール分子への連結、スペーサー18分子への連結、5’から3’への共有結合的連結、またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択することができる。これらの改変により、少なくとも1種の追加の有利な特徴がもたらされ得、この追加の有利な特徴は、安定性の変更または調節、細胞内ターゲティング、トラッキング、蛍光標識、タンパク質用またはタンパク質複合体用の結合部位、相補的な標的配列に対する結合親和性の変更、細胞分解に対する耐性の変更、および細胞透過性の増加からなる群から選択される。
ガイドRNA、crRNAまたはtracrRNAの「機能的断片」、「機能的に等価である断片」および「機能的に等価な断片」という用語は、本明細書中で互換的に使用され、それぞれガイドRNA、crRNAまたはtracrRNAとして機能する能力が保持されているガイドRNA、crRNAまたはtracrRNAの一部分またはサブ配列を指す。
ガイドRNA、crRNAまたはtracrRNA(それぞれ)の「機能的変異体」、「機能的に等価である変異体」および「機能的に等価な変異体」という用語は、本明細書中で互換的に使用され、それぞれガイドRNA、crRNAまたはtracrRNAとして機能する能力が保持されているガイドRNA、crRNAまたはtracrRNAそれぞれの変異体を指す。
用語「単一ガイドRNA」、「gRNA」および「sgRNA」は、本明細書中で互換的に使用され、2つのRNA分子の合成融合体、tracrRNA(トランス活性化CRISPR RNA)に融合した、(tracrRNAにハイブリダイズするtracrメイト配列に連結した)可変標的ドメインを含むcrRNA(CRISPR RNA)を指す。単一ガイドRNAは、II型Casエンドヌクレアーゼと複合体を形成することができるII型CRISPR/CasシステムのcrRNAまたはcrRNA断片、およびtracrRNAまたはtracrRNA断片を含み得、前記ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、CasエンドヌクレアーゼをDNA標的部位に誘導することができ、CasエンドヌクレアーゼがそのDNA標的部位を認識し、それに結合し、かつ任意選択によりそれをニッキングまたは切断(一本鎖または二本鎖切断の導入)するのを可能にする。
用語「ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体」、「ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼシステム」、「ガイドRNA/Cas複合体」、「ガイドRNA/Casシステム」、「gRNA/Cas複合体」、「gRNA/Casシステム」、「RNA誘導型エンドヌクレアーゼ」、「RGEN」は、本明細書中で互換的に使用され、複合体を形成することができる、少なくとも1つのRNA構成要素、および少なくとも1つのCasエンドヌクレアーゼタンパク質を指し、前記ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、CasエンドヌクレアーゼをDNA標的部位に誘導することができ、CasエンドヌクレアーゼがそのDNA標的部位を認識し、それに結合し、かつ任意選択によりそれをニッキングまたは切断(一本鎖または二本鎖切断の導入)するのを可能にする。本明細書中のガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、I型、II型またはIII型CRISPRシステムなどの、既知のCRISPRシステム(Zetsche et al.,2015,Cell 163,1−13;Shmakov et al.,2015、Molecular_Cell60,1−13;Makarova et al.2015,Nature Reviews Microbiology Vol.13:1−15;Horvath and Barrangou、Science 327:167−170)のいずれかのCasタンパク質および適切なRNA構成要素を含み得る。ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、II型Cas9エンドヌクレアーゼと少なくとも1つのRNA構成要素(例えば、crRNAおよびtracrRNA、またはgRNA)を含み得る(2015年3月19日公開の米国特許出願公開第2015/0082478A1号明細書、および2015年2月26日公開の米国特許出願公開第2015/0059010A1号明細書(両文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)も参照されたい)。
Casエンドヌクレアーゼは、当該技術分野で知られた任意の方法、例えば、限定はされないが、一過性導入法、トランスフェクション、マイクロインジェクションおよび/もしくは局所アプリケーションにより、または組み換えコンストラクトにより間接的に細胞に導入(細胞に供給)することができる。植物細胞は、植物細胞へのCas9エンドヌクレアーゼの直接送達のバリアとして作用し得る植物細胞壁を有している点でヒトおよび動物の細胞と異なっている。Cas9エンドヌクレアーゼをコードする組み換えDNAコンストラクトの植物細胞への導入が成功し(Svitashev et al.,PlantPhysiology,2015、Vol.169、pp.931−945)標的部位におけるゲノムの編集が可能になった。植物細胞へ組み換えDNAコンストラクトを安定して導入することであり得る1つの欠点は、Cas9エンドヌクレアーゼが継続して存在することにより、オフターゲット効果が増大することである。
本明細書に記載するように、Casエンドヌクレアーゼの植物細胞への直接送達は、粒子媒介送達法によって行うことができる。本明細書に記載の実験に基づき、熟練した技術者は今や、他の直接送達法、例えば、限定はされないが、プロトプラストへのポリエチレングリコール(PEG)媒介トランスフェクション、ウィスカー媒介送達、エレクトロポレーション、粒子撃ち込み、細胞貫通ペプチドまたはメソ多孔性シリカナノ粒子(MSN)媒介直接タンパク質送達の使用によって、Casエンドヌクレアーゼ の植物細胞への直接送達を成功させることができると想定することができる。
Casエンドヌクレアーゼの直接送達(CasエンドヌクレアーゼのDNAフリー送達とも称する)は、当該技術分野で知られた任意の方法を用いて、Casタンパク質、CasエンドヌクレアーゼをコードするmRNA、および/またはRNA誘導型エンドヌクレアーゼリボヌクレオチド−タンパク質複合体(RGEN)自体(リボヌクレオチド−タンパク質複合体として)を細胞に導入することによって行うことができる。CasエンドヌクレアーゼをコードするmRNAによる、またはポリペプチド分子によるCasエンドヌクレアーゼの直接送達は、Casエンドヌクレアーゼタンパク質の産生にDNA分子が関与しないため、本明細書中では、CasエンドヌクレアーゼのDNAフリー送達とも称する。同様に、RNA分子としてのガイドRNAの直接送達は、本明細書中では、ガイドRNAのDNAフリー送達とも称する。同様に、リボヌクレオチド−タンパク質複合体としてのガイドRNA/エンドヌクレアーゼ複合体自体(RGEN)の直接送達は、本明細書中では、RGENのDNAフリー送達とも称する。
gRNAとともに、タンパク質として、もしくはmRNA分子として、またはRGENリボヌクレオチド−タンパク質自体としてのCasエンドヌクレアーゼの直接導入は、標的部位でのゲノム編集を可能にし、その後、RGEN複合体は急速に分解され、複合体は一時的に存在するだけである。このことにより、(実施例12に示すように)、オフターゲット効果が低減される。
これらの構成要素の直接送達は、RGEN構成要素を受け取る細胞の富化および/または可視化を促進する他のmRNAの直接送達を伴い得る(共送達)。例えば、蛍光タンパク質(例えば、限定はされないが、赤色、緑色、黄色、青色またはこれらの組み合わせ)などのスクリーニング可能な可視マーカーをコードするmRNAの送達もまた、修復された非機能破壊遺伝子産物に代えて、または併用して使用することができる。
本明細書には、破壊された遺伝子のヌクレオチド配列を、修復後のヌクレオチド配列が機能遺伝子産物をコードするように修復することによって、非機能遺伝子産物の機能を回復させる方法が記載される。
破壊された遺伝子とは、その遺伝子産物がその機能を喪失する(非機能遺伝子産物と称する)か、または、破壊されていない対応する遺伝子(非破壊遺伝子とも称する)の産物と比較して機能が低下するように改変(破壊)された遺伝子を指す。例えば、機能ポリペプチドまたは機能タンパク質をコードする遺伝子は、遺伝子の翻訳産物が、機能を失った、または機能が低下したポリペプチドを生成するように破壊(改変)され得る。
機能遺伝子産物としては、生物学的機能または非生物学的機能を有する機能タンパク質または機能ポリペプチドが挙げられる。
非機能遺伝子産物には、破壊された遺伝子の遺伝子産物が含まれる。非機能遺伝子産物には、その機能を失った(機能が存在しない)、または、対応する非破壊遺伝子の遺伝子産物と比較して機能が低下したポリペプチドが含まれる。
(例えば、RGEN構成要素またはRGEN複合体自体の細胞への送達による)NHEJによる遺伝子機能の修復と同期して、他のガイドポリヌクレオチドを同時に加えることにより、他の標的を改変することができる。そのような他の標的(NHEJにより遺伝子機能を回復するための標的と異なる標的)は、トランスジェニック遺伝子座などのゲノム中の任意の標的であり得る。1つのgRNAがNHEJにより選択マーカーを標的とし、かつ活性化し(例えば、限定はされないが、除草剤耐性を付与するため、他のgRNAが選択マーカー(または、他の破壊遺伝子設計)とは異なる標的部位でDSBを促進し、目標とした変異、欠失、遺伝子編集または部位特異的形質遺伝子挿入を促進することができる場合の2つ以上のgRNAを同時送達するアプローチは、他の必要な構成要素(Cas9、gRNA)は全てタンパク質および/またはインビトロ転写RNA分子の形態で送達され得るので、完全に一過性の標的ゲノムの改変を可能にする。
破壊遺伝子には、その遺伝子産物がその機能を失う(例えば、破壊された除草剤選択マーカー遺伝子の場合、破壊遺伝子はもはや除草剤耐性を付与しない)ように改変(破壊)されたマーカー遺伝子(限定はされないが、表現型マーカー遺伝子および選択マーカー遺伝子など)が含まれる。
選択マーカーおよびスクリーニングマーカーは、本明細書中で互換的に使用され、それには、多くの場合、特定の条件下で、それを含む分子もしくは細胞を求めるために、または排除するために、特定または選択することを可能にするDNAセグメント(選択マーカー遺伝子など)が含まれる。これらのマーカーは活性(限定はされないが、RNA、ペプチドもしくはタンパク質の産生など)をコードする、またはRNA、ペプチド、タンパク質、無機および有機の化合物もしくは組成物などの結合部位を提供することができる。選択マーカーとしては、さらに、改変またはノックアウトされると、その特性を含む細胞を求めるために(または、細胞を排除するために)特定または選択することを可能にする特性を細胞中に生成する遺伝子が挙げられる。
一態様では、選択マーカーは、例えば、選択剤(限定はされないが、抗生物質または除草剤など)を、選択マーカーを含まない細胞または組織を阻害または死滅させるために使用し、選択マーカーを含む細胞または組織を、選択マーカー遺伝子を発現させることにより継続して増殖させる選択スキームを適用することによって細胞の選択を可能にする。
一態様では、選択マーカーは、例えば、視認マーカー(蛍光分子など)を使用して、その視認マーカーを含む細胞を選択する選択スキームを適用することによって細胞の視覚選択を可能にする。
選択マーカー遺伝子としては、限定はされないが、クロロスルフロン耐性遺伝子、ホスホマンノースイソメラーゼ遺伝子(PMI)、ビアラホス耐性遺伝子(BAR)、ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(PAT)遺伝子、ヒグロマイシン耐性遺伝子(NPTII)、グリホサート耐性遺伝子、制限酵素部位を含むDNAセグメント;抗生物質などの本来毒性を有する化合物に対する耐性を提供する産物をコードするDNAセグメント、例えば、スペクチノマイシン、アンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、Basta、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NEO)およびヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HPT);本来はレシピエント細胞を欠く産物をコードするDNAセグメント(例えば、tRNA遺伝子、栄養要求性マーカー)など、容易に同定可能な産物をコードするDNAセグメント(視認マーカー遺伝子と称される)が挙げられる。視認マーカー遺伝子には、蛍光マーカー遺伝子(赤色蛍光マーカー遺伝子、青色蛍光マーカー遺伝子、緑色蛍光マーカー遺伝子、黄色蛍光マーカー遺伝子など)、DsRED、RFP、赤色蛍光タンパク質、CFP、GFP、緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子、ならびに、β−ガラクトシダーゼ、GUSなどの表現型マーカー;緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)などの蛍光タンパク質、および細胞表面タンパク質をコードする遺伝子が含まれる。選択マーカー遺伝子は、さらに、PCR用の新しいプライマー部位の生成(例えば、予め並べられていない2つのDNA配列の並列)、制限エンドヌクレアーゼまたは他のDNA改変酵素の作用、化学的作用などを受けていない、または受けたDNA配列の組み込み、および同定を可能とする特異的修飾(例えば、メチル化)に必要なDNA配列の組み込みを含む。
選択マーカーのさらなる例としては、グルホシネートアンモニウム、ブロモキシニル、イミダゾリノンおよび2,4−ジクロロフェノキシアセテート(2,4−D)などの除草化合物に対する耐性を付与する遺伝子が挙げられる。例えば、Yarranton,(1992)Curr Opin Biotech 3:506−11;Christopherson et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:6314−8;Yao et al.,(1992)Cell 71:63−72;Reznikoff,(1992)Mol Microbiol 6:2419−22;Hu et al.,(1987)Cell 48:555−66;Brown et al.、(1987)Cell 49:603−12;Figge et al.,(1988)Cell 52:713−22;Deuschle et al.,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5400−4;Fuerst et al.,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2549−53;Deuschle et al.,(1990)Science 248:480−3;Gossen,(1993)Ph.D.Thesis,University of Heidelberg;Reines et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:1917−21;Labow et al.,(1990)Mol Cell Biol 10:3343−56;Zambretti et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:3952−6;Baim et al.,(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:5072−6;Wyborski et al.,(1991)Nucleic Acids Res19:4647−53;Hillen and Wissman,(1989)Topics Mol Struc Biol 10:143−62;Degenkolb et al.,(1991)Antimicrob Agents Chemother 35:1591−5;Kleinschnidt et al.,(1988)Biochemistry 27:1094−104;Bonin,(1993)Ph.D.Thesis,University of Heidelberg;Gossen et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547−51;Oliva et al.,(1992)Antimicrob Agents Chemother 36:913−9;Hlavka et al.,(1985)Handbook of Experimental Pharmacology,Vol.78(Springer−Verlag,Berlin);Gill et al.,(1988)Nature 334:721−4.J.Bacteriol.170:5837−5847)を参照されたい。ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)の発現を促進する。
表現型マーカー遺伝子としては、ポジティブマーカーであるかネガティブマーカーであるかにかかわらず、可視マーカーを含むスクリーニングマーカーまたは選択マーカーを含む遺伝子が挙げられる。あらゆる表現型マーカーを使用することができる。
本明細書に記載のように、表現型および選択マーカー遺伝子は、非機能遺伝子産物をコードする破壊遺伝子として、植物細胞に導入され、ガイドRNA導入およびDNA修復により、機能遺伝子産物をコードする非破壊遺伝子に戻すため、二本鎖切断を誘導するエンドヌクレアーゼの標的として使用されるように改変することができる。
破壊される表現型マーカー遺伝子または選択マーカー遺伝子は、細胞に予め導入され、細胞のゲノムに安定に組み込まれているマーカー遺伝子であってよい。そのような予め組み込まれた選択マーカー遺伝子はまた、他の遺伝子、例えば、細胞の成長を増強する遺伝子(ZmODP2およびZmWUS、例えば、2016年8月26日出願のPCT/US16/49144号明細書および同2016年8月26日出願のPCT/US16/49128号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)であってよい。
当業者は、従来のゲノム改変方法が主に、選択マーカー遺伝子を改変すべき細胞に導入することによって、例えば、抗生物質または除草剤(選択剤)を、選択マーカー遺伝子を含まない細胞または組織を阻害または死滅させるために使用し、選択マーカー遺伝子を含む細胞または組織を、選択マーカー(耐性)遺伝子を発現させることにより増殖させる選択スキームを可能にすることに依存したものであったことを理解することができる。対照的に、本開示の方法は、選択マーカーを使用せず、かつ選択剤を適用せずに用いることができる。
本開示の一実施形態においては、本方法は、少なくとも1つの植物細胞に、ヌクレオチド配列に位置する標的部位で二本鎖切断を行うことができるガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体を導入し;前記ヌクレオチド配列に改変を有する植物細胞を選択する工程(ここで、その選択は選択マーカーの使用なしで生じる)方法を含む。ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体であり得る。
本開示の一実施形態においては、本方法は、選択マーカーを使用せずにゲノム中に改変されたヌクレオチド配列を有する植物体を作製する方法であって、少なくとも1つの植物細胞に、ヌクレオチド配列に位置する標的部位で二本鎖切断を行うことができるガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体を導入する工程と;前記植物細胞から植物体を得る工程と;前記ヌクレオチド配列に改変を有する植物体を選択する工程(その選択は選択マーカーの使用なしで生じる)とを含む方法を含む。ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体であり得る。
本開示の一実施形態においては、本方法は、選択マーカーを使用せずにゲノム中に改変されたヌクレオチド配列を有する植物カルス組織を作製する方法であって、少なくとも1つの植物細胞に、ヌクレオチド配列に位置する標的部位で二本鎖切断を行うことができるガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体を導入する工程と;前記植物細胞からカルス組織を得る工程と;前記ヌクレオチド配列に改変を有するカルス組織を選択する工程(ここで、その選択は選択マーカーの使用なしで生じる)とを含む方法を含む。ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体であり得る。
本明細書に記載の方法における選択工程は、当業者に知られた、選択マーカーに基づかない、任意の選択(識別、獲得)、例えば、ゲノム中に所望の改変を含む植物細胞、カルスまたは植物体を遺伝子型手段(限定はされないが、DNAシークエンシングなど)または表現型手段(植物体の形態学的特徴、もしくはゲノム中の所望の改変に関連する選択可能な表現型など)によって選択することを含むことができる。
一態様において、本方法は、選択マーカーを使用せずに植物細胞のゲノム中のヌクレオチド配列を改変する方法であって、少なくとも1つの植物細胞に、前記ヌクレオチド配列に位置する標的部位で二本鎖切断を行うことができるガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体を導入する工程(ここで、ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体は組み換えDNAコンストラクトの使用なしで細胞に導入される)と;(a)の植物細胞から植物体を得る工程と;前記ヌクレオチド配列に改変を有する植物体を選択する工程(ここで、その選択は前記植物体のDNAのシークエンシングによって生じる)とを含む方法を含む。
本明細書に記載の方法は、さらに、ポリヌクレオチド鋳型を導入する工程(ここで、前記ポリヌクレオチド改変鋳型は、前記細胞のゲノムにヌクレオチド配列の少なくとも1つのヌクレオチド改変を含み、前記ポリヌクレオチド改変鋳型の前記少なくとも1つのヌクレオチド改変は、(i)少なくとも1つのヌクレオチドの置換、(ii)少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、(iii)少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、および(iv)(i)〜(iii)の任意の組み合わせからなる群から選択される)を含むことができる。本方法はまた、ドナーDNAを導入する工程(ここで、前記ドナーDNAは少なくとも1つの目的ポリヌクレオチドを含む)をさらに含むことができる。ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体の細胞への導入は、粒子媒介送達、ウィスカー媒介送達、膜透過性ペプチド媒介送達、エレクトロポレーション、PEP媒介トランスフェクションおよびナノ粒子媒介送達からなる群から選択される送達システムにより行うことができる。
本開示の方法は、表現型マーカーまたは選択マーカーを使用せず、かつ選択剤を適用せずに用いることができる。本方法は、ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体を植物細胞へ、選択マーカーもまた前記植物細胞へ導入することなく、導入する工程、または、その場合に、前記ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体の導入が、破壊された選択マーカー遺伝子の、機能的選択マーカータンパク質をコードする非破壊選択マーカー遺伝子への修復を伴わない工程、もしくは前記ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体の導入が、前記細胞内に選択マーカーを生成しない工程を含む。本方法は、そのゲノム中に改変ヌクレオチド配列を含む植物細胞、カルス組織または植物体を選択する工程(ここで、その選択は選択マーカーの使用なしで生じる)を含む。
本明細書に開示の方法では、任意の誘導型エンドヌクレアーゼを使用することができる。そのようなエンドヌクレアーゼとしては、限定はされないが、CasエンドヌクレアーゼおよびCpf1エンドヌクレアーゼが挙げられる。これまでに、特定のPAM配列を認識し、特定の位置で標的DNAを切断することができる多くのエンドヌクレアーゼが報告されている(例えば、2015年5月15日出願の米国特許出願第62/162377号明細書および5月15日出願の同第62/162353号明細書、ならびにZetsche B et al.2015.Cell 163,1013を参照されたい)。当然のことながら、誘導型Casシステムを使用する本明細書に記載の方法および実施形態に基づき、任意の誘導型エンドヌクレアーゼシステムを使用することができるように、これらの方法を適合させることができる。例えば、本明細書に記載されている、選択マーカーを使用せずに植物細胞のゲノム中のヌクレオチド配列を改変する方法を、誘導型Casエンドヌクレアーゼ複合体に代えて、誘導型Cpf1エンドヌクレアーゼ複合体を導入することを含む方法に適合させることが想定される。本明細書に開示の方法で使用される、他の誘導型エンドヌクレアーゼおよびヌクレオチド−タンパク質複合体としては、国際公開第2013/088446号パンフレットに記載されるものが挙げられる。
エンドヌクレアーゼは、ポリヌクレオチド鎖内のリン酸ジエステル結合を切断する酵素であり、特定部位のDNAを、塩基を損傷せずに切断する制限エンドヌクレアーゼが挙げられる。制限エンドヌクレアーゼは、I型、II型、III型およびIV型エンドヌクレアーゼを含み、それらはさらにサブタイプを含む。I型システムおよびIII型システムでは、単一複合体にメチル化酵素活性と制限活性の両方が含まれる。エンドヌクレアーゼとしては、また、ホーミングエンドヌクレアーゼ(HEase)としても知られるメガヌクレアーゼが挙げられ、それは、制限エンドヌクレアーゼのように、特定の認識部位に結合し切断するが、メガヌクレアーゼの認識部位は、一般に長く、約18bp以上である(2012年3月22日出願の特許出願PCT/US12/30061号明細書).メガヌクレアーゼは、保存配列モチーフに基づき4つのファミリーに分類されており、それらのファミリーは、LAGLIDADGファミリー、GIY−YIGファミリー、H−N−HファミリーおよびHis−Cysボックスファミリーである。これらのモチーフは、金属イオンの配位およびリン酸ジエステル結合の加水分解に参加する。HEaseは、その認識部位の長さとDNA基質のいくつかの配列多型を許容することで知られている。メガヌクレアーゼの命名規則は、他の制限エンドヌクレアーゼの規則と類似している。メガヌクレアーゼはまた、フリースタンディングのORF、イントロンおよびインテインによってコードされる酵素に対し、それぞれ接頭語F−、I−またはPI−によって特徴付けられる。組み換えプロセスの一工程は、認識部位またはその近傍におけるポリヌクレオチド切断を含む。この切断活性は、二本鎖切断を行うために使用することができる。部位特異的リコンビナーゼおよびその認識部位については、Sauer(1994)Curr Op Biotechnol 5:521−7;およびSadowski(1993)FASEB 7:760−7のレビューを参照されたい。いくつかの例では、リコンビナーゼはインテグラーゼファミリーまたはリゾルバーゼファミリー由来である。
TALエフェクターヌクレアーゼは、植物体または他の生命体のゲノム中の特定の標的配列で二本鎖切断を行うために使用することができる部位特異的ヌクレアーゼの新しいクラスである。(Miller et al.(2011)Nature Biotechnology 29:143−148)。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、ジンクフィンガーDNA結合ドメインおよび二本鎖切断誘発剤ドメインで構成される人工的な二本鎖切断誘発剤である。認識部位特異性は、ジンクフィンガードメインによって与えられ、そのドメインは、例えば、C2H2構造を有する、通常、2,3または4個のジンクフィンガーを含むが、他のジンクフィンガー構造も知られており、人工的に作られている。ジンクフィンガードメインは、選択されたポリヌクレオチド認識配列に特異的に結合するポリペプチドの設計に適している。ZFNとしては、非特異的エンドヌクレアーゼドメインに連結した人工的なDNA結合ジンクフィンガードメイン、例えば、FokIなどのII型エンドヌクレアーゼのヌクレアーゼドメインが挙げられる。転写活性化因子ドメイン、転写リプレッサードメインおよびメチル化酵素などのさらなる機能性を、ジンクフィンガー結合ドメインに融合することができる。いくつかの例では、切断活性にヌクレアーゼドメインの二量化が要求される。各ジンクフィンガーは、標的DNA中の3つの連続する塩基対を認識する。例えば、3フィンガードメインは9個の連続するヌクレオチドからなる配列を認識し、ヌクレアーゼの二量化要求によって、2組の3ジンクフィンガーが18個のヌクレオチドからなる認識配列に結合するために使用される。
DNA二本鎖切断(DSB)技術(ZFN、TALENおよびCRISPR−Cas)は学術研究、遺伝子治療、ならびに動物および植物の育種計画に幅広く用いることができる。これらの技術は、多くの植物、例えばトウモロコシ、コムギ、ダイズおよびイネなどの主要作物におけるゲノムの改変に使用され成功を収めている。植物ゲノムの編集は、現在の形質転換方法および遺伝子改変方法、DNAの送達効率、ならびに植物体の再生頻度の低さに制限されている。ヒトおよび動物のシステムと対照的に、全ての植物細胞は周りに厚い壁があり、それが植物の形質転換および植物遺伝子改変のプロトコルに根本的な影響を及ぼしている。この細胞壁が、哺乳動物のゲノム編集実験において核酸および/またはタンパク質の送達に広く使用されているトランスフェクションおよびエレクトロポレーションの使用を不可能なものにしている。この理由のため、植物の形質転換および植物の遺伝子改変は、主に、DNAベクターへのガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ試薬のアグロバクテリウム(Agrobacterium)を媒介とした送達および微粒子銃送達(衝撃送達)により行っている。その結果、gRNAおよびCas9発現カセットは多くの場合ゲノムに組み込まれ、遺伝子破壊、植物モザイク現象および潜在的オフサイト切断に繋がる可能性がある。これらの望ましくない二次変化は、野生型親植物への戻し交配を数回行うことにより取り除くことができるが、このプロセスは、特に複雑な倍数体ゲノムを有し、かつ育種サイクルが長い作物、例えば、限定はされないが、ダイズおよびコムギなどでは、時間の浪費となり得る。本明細書に記載のように、CasエンドヌクレアーゼおよびgRNAをRGEN複合体の形態で植物細胞へ送達することにより、これらの副作用の多くを軽減することができる(実施例11〜12)。植物体へのRGEN複合体の送達により促進されるNHEJ媒介変異が予想を超えて多く発生することが、実施例10に記載されている。このRGEN複合体を用いた高頻度の変異発生を考慮すると、DNAフリーおよび選択マーカーフリーの遺伝子改変は、遺伝子ノックアウト生成に対する実用的な方法になり得る。植物の体細胞においてはHDR経路の頻度が低いため、このDNAフリーおよび選択マーカーフリーの方法は、遺伝子編集および遺伝子挿入用途に対しては(NHEJによる遺伝子変異と比較すると)実用性は低い。さらに、DNA分子は、標的DSB部位にしばしば組み込まれ、遺伝子編集効率、特に、遺伝子挿入効率を低下させる。植物細胞に送達された遺伝子(例えば、Cas9遺伝子、gRNA遺伝子、選択マーカー遺伝子および形質遺伝子)をコードするDNAベクターが、同じDSB部位に共組み込みされ、部位特異的形質遺伝子挿入を有する使用可能なイベントの頻度を劇的に減少させる傾向があることが示された。ドナーDNA(例えば、相同腕を有する形質遺伝子)へのDNA分子の送達を制限することにより、所望の遺伝子型を有するイベントの可能性を増大させることができる。したがって、本明細書に記載の、RGENが送達されると活性化され得る、破壊された(不活性な)内因性の、または予め組み込まれた選択マーカー遺伝子の概念により、遺伝子編集および遺伝子挿入のためのDNAフリーおよび選択マーカーフリーの方法は非常に実用的なものになり得る。
ガイドポリヌクレオチドは、当該技術分野で知られた任意の方法、例えば、限定はされないが、粒子撃ち込み法、ウィスカー媒介形質転換法、アグロバクテリウム(Agrobacterium)形質転換法または局所導入法を用いて、一本鎖ポリヌクレオチドまたは二本鎖ポリヌクレオチドとして直接細胞に導入することができる。ガイドRNAはまた、前記細胞中のガイドRNAを転写することができる特定のプロモーターに作動可能に連結している、ガイドRNAをコードする異種核酸断片を含む組み換えDNA分子を導入することにより(限定はされないが、粒子撃ち込み法、またはアグロバクテリウム(Agrobacterium)形質転換法により)細胞に間接的に導入することができる。特定のプロ―モーターは、限定はされないが、厳密に定義され、改変されていない5’末端および3’末端を有するRNAの転写を可能にする、RNAポリメラーゼIIIプロモーターであり得る(DiCarlo et al.,Nucleic Acids Res.41:4336−4343;Ma et al.,Mol.Ther.Nucleic Acids 3:e161)。本明細書に記載するように、sgRNA の植物細胞への直接送達は、粒子媒介送達法によって行うことができる。本明細書に記載の実験に基づき、熟練した技術者は、他の直接送達法、例えば、限定はされないが、プロトプラストへのポリエチレングリコール(PEG)媒介トランスフェクション法、ウィスカー媒介形質転換法、エレクトロポレーション、粒子撃ち込み法、細胞貫通ペプチドまたはメソ多孔性シリカナノ粒子(MSN)媒介直接タンパク質送達法などの使用によって、gRNAの植物細胞への送達を成功させることができると今や想定することができる。
化学的合成ガイドポリヌクレオチド(例えば、限定はされないが、Hendel et al.2015,Nature Biotechnology 33、985−989など)、インビトロ生成ガイドポリヌクレオチド、および/または自己スプライシングガイドRNA(例えば、限定はされないが、Xie et al.2015,PNAS 112:3570−3575など)など、ガイドポリヌクレオチドは、当該技術分などの野で知られた任意の方法で作製することができる。
用語「標的部位」、「標的配列」、「標的部位配列」、「標的DNA」、「標的遺伝子座」、「ゲノム標的部位」、「ゲノム標的配列」、「ゲノム標的遺伝子座」および「プロトスペーサー」は、本明細書中で互換的に使用され、限定はされないが、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体が認識し、結合し、かつ場合によりニッキングまたは切断をすることができる、細胞の、染色体、エピソーム、トランスジェニック遺伝子座、またはゲノム中のあらゆる他のDNA分子(例えば、染色体DNA、葉緑体DNA、ミトコンドリアDNA、プラスミドDNA)上のヌクレオチド配列などのポリヌクレオチド配列を指す。標的部位は細胞ゲノム中の内因性部位であり得、あるいは、標的部位は真菌細胞に対して異種であり、そのため細胞のゲノム中に天然には存在していないか、または天然で生じる場所と比較して異種のゲノム位置に見出すことができる。本明細書で使用される場合、用語「内因性標的配列」および「天然標的配列」は、本明細書中で互換的に使用され、細胞のゲノムに内在するか、または細胞のゲノムで生じ、細胞のゲノム中のその標的配列の内在位置または発生位置に存在する標的配列を指す。細胞としては、限定はされないが、ヒト、非ヒト、動物、細菌、真菌、昆虫、酵母、非従来型酵母および植物の細胞、ならびに本明細書に記載の方法によって作製された植物体および種子が挙げられる。「人工標的部位」または「人工標的配列」は、本明細書中で互換的に使用され、細胞のゲノムに導入された標的配列を指す。そのような人工標的配列は、細胞のゲノム中の内因性標的配列または天然標的配列と配列は同一であるが、細胞のゲノム中の異なる位置(すなわち、非内在位置または非発生位置)に位置し得る。
「変更標的部位」、「変更標的配列」、「改変標的部位」、「改変標的配列」は、本明細書中で互換的に使用され、非変更標的配列と比較して少なくとも1つの変更を含む、本明細書に開示の標的配列を指す。そのような「変更」としては、例えば、(i)少なくとも1つのヌクレオチドの置換、(ii)少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、(iii)少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、または(iv)(i)〜(iii)の任意の組み合わせが挙げられる。
標的DNA配列(標的部位)の長さは様々であってよく、例えば、少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、またはそれ以上のヌクレオチド長の標的部位が挙げられる。標的部位は回文構造であり得る、すなわち、一方の鎖上の配列が相補鎖上で反対方向に同じものを読み取ることがさらに可能である。ニッキング/切断部位は標的配列内に存在することができる、またはニッキング/切断部位は標的配列の外側に存在する可能性がある。別の変形では、切断は互いに直接向かい合ったヌクレオチド位置で起きて平滑末端切断が起きる可能性があり、その他の場合では、切り込みがジグザグ状となり、5’オーバーハングまたは3’オーバーハングであり得る一本鎖オーバーハング(「粘着末端」とも呼ばれる)を生じさせる可能性がある。ゲノム標的部位の活性変異体もまた使用することができる。そのような活性変異体は、所与の標的部位に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を含むことができ、活性変異体は生物学的活性を保持しており、したがってCasエンドヌクレアーゼにより認識され切断され得る。エンドヌクレアーゼによる標的部位の一本鎖または二本鎖切断を測定するためのアッセイは、当該技術分野で知られており、一般には、認識部位を含むDNA基質への薬剤の全体的な活性および特異性を測定する。
本明細書中の「プロトスペーサー隣接モチーフ」(PAM))は、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼシステムにより認識される(標的とされる)標的配列(プロトスペーサー)に隣接する短いヌクレオチド配列を指す。標的DNA配列の後にPAMがなければ、その標的DNA配列を正しく認識することはできない。本明細書におけるPAMの配列および長さは、用いるCasタンパク質、またはCasタンパク質複合体に応じて異なり得る。PAM配列は任意の長さであり得るが、一般には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20ヌクレオチド長である。
用語「ターゲティング」、「遺伝子ターゲティング」および「DNAターゲティング」は、本明細書中で互換的に使用される。本明細書中のDNAターゲティングは、例えば細胞の染色体またはプラスミド中の、特定のDNA配列でのノックアウト、編集、またはノックインの特異的な導入であってよい。本明細書においては、DNAターゲティングは、一般に、適切なポリヌクレオチド構成要素を伴ったCasタンパク質が、細胞中の特定のDNA配列にて一方の鎖または双方の鎖を切断することによって実行され得る。そのようなDNA切断は、二本鎖切断(DSB)の場合、標的部位での改変に繋がり得るNHEJまたはHDRプロセスを引き起こすことができる。
用語「ノックアウト」、「遺伝子ノックアウト」および「遺伝的ノックアウト」は、本明細書中で互換的に用いられる。ノックアウトは、Casタンパク質によるターゲティングによって部分的に、または完全に無効とされた、細胞のDNA配列を表す;ノックアウト前のそのようなDNA配列は、例えば、アミノ酸配列をコードすることができたか、または、調節機能(例えば、プロモーター)を有していたはずである。ノックアウトは、インデル(NHEJによる標的DNA配列中のヌクレオチド塩基の挿入または欠失)、または標的部位もしくはその近傍の配列の機能を低下もしくは喪失させる配列の特異的除去により産生し得る。
ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼシステムは、共送達されるポリヌクレオチド改変鋳型と組み合わせて使用することができ、目的のゲノムヌクレオチド配列の編集(改変)を可能にする。(2015年3月19日公開の米国特許出願公開第2015/0082478A1号明細書、および2015年2月26日公開の国際公開第2015/026886A1号パンフレット(両文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
「改変ヌクレオチド」または「編集ヌクレオチド」は、その非改変ヌクレオチド配列と比較して少なくとも1つの変更を含む目的のヌクレオチド配列を指す。そのような「変更」としては、例えば、(i)少なくとも1つのヌクレオチドの置換、(ii)少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、(iii)少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、または(iv)(i)〜(iii)の任意の組み合わせが挙げられる。
用語「ポリヌクレオチド改変鋳型」には、編集されるべきヌクレオチド配列と比較して、少なくとも1つのヌクレオチド改変を含むポリヌクレオチドが含まれる。ヌクレオチド改変は、少なくとも1つのヌクレオチドの置換、付加または欠失であり得る。場合により、ポリヌクレオチド改変鋳型は、さらに、少なくとも1つのヌクレオチド改変にフランキングする相同ヌクレオチド配列を含み得、そのフランキング相同ヌクレオチド配列は、編集されるべき所望のヌクレオチド配列に十分な相同性を提供する。
ポリヌクレオチド改変鋳型は、当該技術分野で知られた任意の方法、例えば、限定はされないが、一過性導入法(transient introduction method)、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、粒子媒介送達法、局所アプリケーション、ウィスカー媒介送達、細胞貫通ペプチドによる送達、またはメソ多孔性シリカナノ粒子(MSN)媒介直接送達によって細胞に導入することができる。
ポリヌクレオチド改変鋳型は、一本鎖ポリヌクレオチド分子、二本鎖ポリヌクレオチド分子、または環状DNA(ベクターDNA)の一部として細胞に導入することができる。ポリヌクレオチド改変鋳型はまた、ガイドRNAおよび/またはCasエンドヌクレアーゼに連結することができる。連結されたDNAは、ゲノムの編集および標的ゲノムの調節に有用な標的および鋳型の共局在化を可能にし得、また、内因性のHR機構の機能が大きく低下していると考えられる***終了細胞のターゲティングに有用であり得る(Mali et al.2013Nature Methods Vol.10:957−963)。ポリヌクレオチド改変鋳型は、細胞内に一時的に存在してもよく、あるいはウイルスレプリコンにより導入されてもよい。
編集されるべきヌクレオチドは、Casエンドヌクレアーゼによって認識され切断される標的部位の中に位置しても外に位置してもよい。一実施形態では、少なくとも1つのヌクレオチドの改変は、Casエンドヌクレアーゼにより認識され切断される標的部位での改編ではない。他の一実地形態では、編集されるべき少なくとも1つのヌクレオチドとゲノム標的部位間には、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、30個、40個、50個、100個、200個、300個、400個、500個、600個、700個、900個または1000個のヌクレオチドが存在する。
ゲノム編集は利用可能な任意の遺伝子編集方法によって行うことができる。例えば、遺伝子編集は、宿主細胞に、その宿主細胞のゲノム内の遺伝子に対する標的改変を含むポリヌクレオチド改変鋳型(遺伝子修復オリゴヌクレオチドと呼ばれることもある)を導入することによって行うことができる。そのような方法に使用するポリヌクレオチド改変鋳型は、一本鎖または二本鎖であり得る。そのような方法の例は、広く、例えば、米国特許出願公開第2013/0019349号明細書などに記載れている。
本明細書に記載の実験に基づき、熟練した技術者は、他の直接送達法、例えば、限定はされないが、プロトプラストへのポリエチレングリコール(PEG)媒介トランスフェクション、ウィスカー媒介形質転換法、エレクトロポレーション、粒子撃ち込み法、細胞貫通ペプチドまたはメソ多孔性シリカナノ粒子(MSN)媒介直接タンパク質送達法の使用によって、ポリヌクレオチド改変鋳型の植物細胞への送達を成功させることができると今や想定することができる。
いくつかの実施形態では、遺伝子編集は、所望の変更部近傍のゲノムの所定の位置に二本鎖切断(DSB)を導入することによって促進され得る。DSBは、利用可能な任意のDSB導入剤、例えば、限定はされないが、TALEN、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、核酸誘導型エンドヌクレアーゼシステム、例えば、(細菌性CRISPR−Casシステムの基づく)などを使用して導入することができる。いくつかの実施形態では、DSBの導入は、ポリヌクレオチド改変鋳型の導入と組み合わせることができる。
DSBと改変鋳型を組み合わせるゲノム配列の編集プロセスは、一般に、染色体配列中の標的配列を認識し、ゲノム配列にDSBを導入することができる、DSB誘発物質、またはDSB誘発物質をコードする核酸、および、編集されるべきヌクレオチド配列と比較して少なくとも1つのヌクレオチドの変更を含む少なくとも1つのポリヌクレオチド改変鋳型を、宿主細胞へ導入することを含む。ポリヌクレオチド改変鋳型は、さらに、少なくとも1つのヌクレオチド変更部にフランキングするヌクレオチド配列を含み得る。そのフランキング配列は、DSBにフランキングする染色体領域に実質的に相同である。Cas9−gRNA複合体などのDSB誘発物質を使用するゲノムの編集は、例えば、2015年3月19日公開の米国特許出願公開第2015−0082478A1号明細書、2015年2月26日公開の国際公開第2015/026886A1号パンフレット、2014年7月7日出願の米国特許出願第62/023246号明細書、および2014年8月13日出願の米国特許出願第62/036,652号明細書(これらは全て参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
用語「ノックイン」、「遺伝子ノックイン」、「遺伝子挿入」および「遺伝的ノックイン」は、本明細書中で互換的に用いられる。ノックインは、(適切なドナーDNAポリヌクレオチド配列もまた使用される場合、HRによる)Casタンパク質によるターゲティングによる、細胞中の特定のDNA配列でのDNA配列の置換または挿入を表す。ノックインの例としては、遺伝子のコード領域中の異種アミノ酸コード配列の特異的な挿入、または遺伝子座中への転写調節要素の特異的な挿入がある。
Casエンドヌクレアーゼの標的部位に挿入される目的ポリヌクレオチドを有する細胞または生命体を得るために、様々な方法および組成物を使用することができる。そのような方法は、標的部位に目的ポリヌクレオチドを組み込む相同組み換えを用いることができる。提示された1つの方法では、目的ポリヌクレオチドがドナーDNAコンストラクトとして生命体細胞に供給される。
本明細書で使用される場合、「ドナーDNA」には、Casエンドヌクレアーゼの標的部位に挿入される目的ポリヌクレオチドを含むDNAコンストラクトが含まれる。ドナーDNAコンストラクトは、さらに、目的ポリヌクレオチドにフランキングする第1および第2の領域を含むことができる。ドナーDNAの相同の第1および第2の領域はそれぞれ、細胞または生命体ゲノムの標的部位に存在するかまたはフランキングする第1および第2のゲノム領域に対する相同性を共有する。ドナーDNAは、ガイドポリヌクレオチドおよび/またはCasエンドヌクレアーゼに連結することができる。連結されたドナーDNAは、ゲノムの編集および標的ゲノムの調節に有用な標的およびドナーDNAの共局在化を可能にし得、また、内因性のHR機構の機能が大きく低下していると考えられる***終了細胞のターゲティングに有用であり得る(Mali et al.2013Nature Methods Vol.10:957−963)。
「相同性」は、類似するDNA配列を意味する。例えば、ドナーDNA上で見出される「ゲノム領域に対する相同領域」とは、細胞または生命体ゲノムの所与の「ゲノム領域」と類似する配列を有するDNA領域のことである。相同領域は、切断される標的部位での相同組み換えを促進するのに十分な任意の長さであり得る。例えば、相同領域は、この相同領域が、対応するゲノム領域との相同組み換えを受けるのに十分な相同性を有するように、少なくとも5〜10、5〜15、5〜20、5〜25、5〜30、5〜35、5〜40、5〜45、5〜50、5〜55、5〜60、5〜65、5〜70、5〜75、5〜80、5〜85、5〜90、5〜95、5〜100、5〜200、5〜300、5〜400、5〜500、5〜600、5〜700、5〜800、5〜900、5〜1000、5〜1100、5〜1200、5〜1300、5〜1400、5〜1500、5〜1600、5〜1700、5〜1800、5〜1900、5〜2000、5〜2100、5〜2200、5〜2300、5〜2400、5〜2500、5〜2600、5〜2700、5〜2800、5〜2900、5〜3000、5〜3100、またはそれ以上の塩基長を含むことができる。「十分な相同性」は、2つのポリヌクレオチド配列が相同組み換え反応用の基質として作用するのに十分な構造的類似性を有することを示す。この構造的類似性は、各ポリヌクレオチド断片の全長とポリヌクレオチドの配列類似性とを含む。配列類似性は、配列の全長にわたる配列同一性パーセント、ならびに/または100%配列同一性を有する連続ヌクレオチドなどの局在化した類似性を含む保存領域、および配列の長さの一部にわたる配列同一性パーセントで説明することができる。
標的およびドナーポリヌクレオチドにより共有される相同性または配列同一性の量は多様であり得、約1〜20bp、20〜50bp、50〜100bp、75〜150bp、100〜250bp、150〜300bp、200〜400bp、250〜500bp、300〜600bp、350〜750bp、400〜800bp、450〜900bp、500〜1000bp、600〜1250bp、700〜1500bp、800〜1750bp、900〜2000bp、1〜2.5kb、1.5〜3kb、2〜4kb、2.5〜5kb、3〜6kb、3.5〜7kb、4〜8kb、5〜10kbの範囲で単位整数値を有する全長および/もしくは全領域を含む、または最大で標的部位の全長を含む。これらの範囲には、この範囲内の全ての整数が含まれ、例えば1〜20bpの範囲には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20bpが含まれる。相同性の量はまた、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性パーセントを含む2つのポリヌクレオチドの完全にアラインされた長さ全体にわたる配列同一性パーセントで説明することもできる。十分な相同性は、ポリヌクレオチドの長さと、全体的な配列同一性パーセントと、任意選択で連続ヌクレオチドの保存領域または局所的な配列同一性パーセントとの任意の組み合わせを含み、例えば、十分な相同性を、標的遺伝子座の領域に対して少なくとも80%の配列同一性を有する75〜150bpの領域として説明することができる。十分な相同性はまた、高ストレンジェンシー条件下で特異的にハイブリダイズする2つのポリヌクレオチドの予測能力によって説明することができ、例えば、Sambrook et al.,(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、(Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY);Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,Eds(1994)Current Protocols、(Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley &Sons,Inc.);および、Tijssen(1993)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−−Hybridization with Nucleic Acid Probes,(Elsevier,New York)を参照されたい。
本明細書で使用される場合、「ゲノム領域」とは、標的部位のいずれかの側上に存在する、細胞のゲノム中の染色体のセグメントのことであるか、または標的部位の一部も含むセグメントのことである。このゲノム領域は、このゲノム領域は、対応する相同領域との相同組み換えを受けるのに十分な相同性を有するように、少なくとも5〜10、5〜15、5〜20、5〜25、5〜30、5〜35、5〜40、5〜45、5〜50、5〜55、5〜60、5〜65、5〜70、5〜75、5〜80、5〜85、5〜90、5〜95、5〜100、5〜200、5〜300、5〜400、5〜500、5〜600、5〜700、5〜800、5〜900、5〜1000、5〜1100、5〜1200、5〜1300、5〜1400、5〜1500、5〜1600、5〜1700、5〜1800、5〜1900、5〜2000、5〜2100、5〜2200、5〜2300、5〜2400、5〜2500、5〜2600、5〜2700、5〜2800、5〜2900、5〜3000、5〜3100個、またはそれ以上の塩基を含むことができる。
目的ポリヌクレオチドおよび/または形質は、2013年10月3日公開の米国特許出願公開第2013/0263324−A1号明細書および2013年10月3日公開のPCT/US13/22891号明細書(両出願は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、複合形質遺伝子座に共にスタッキングすることができる。本明細書に記載のガイドポリヌクレオチド/Cas9エンドヌクレアーゼシステムは、二重鎖切断を効率よく生成するシステムを提供し、複合形質遺伝子座における形質のスタッキングを可能にする。
(2015年3月19日公開の米国特許出願公開第2015−0082478−A1号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように)、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼシステムは、1つ以上のガイドポリヌクレオチドと、1つのCasエンドヌクレアーゼと、任意選択により1つ以上のドナーDNAとを植物細胞に導入することによって、目的ポリヌクレオチド、または1つ以上の目的形質を、1つ以上の標的部位に導入するために使用することができる。稔性植物は、前記1つ以上の標的部位に変更を含む植物細胞から作製することができ、その変更は、(i)少なくとも1つのヌクレオチドの置換、(ii)少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、(iii)少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、および(iv)(i)〜(iii)の任意の組み合わせからなる群から選択される。これらの変更標的部位を含む植物は、少なくとも1つの目的遺伝子または目的形質を同じ複合形質遺伝子座に含む植物と交配することができ、さらにそれによって前記複合形質遺伝子座に形質をスタッキングすることができる(2013年10月3日公開の米国特許出願公開第2013/0263324A1号明細書および2013年1月24日公開のPCT/US13/22891号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)もまた参照されたい)。
所与のゲノム領域とドナーDNA上に見出される対応する相同領域との間の構造類似性は、相同組み換えが起こることを可能にする任意の程度の配列同一性であることができる。例えば、ドナーDNAの「相同領域」および生命体ゲノムの「ゲノム領域」により共有される相同性または配列同一性の量は、配列が相同組み換えを受けるように、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性であることができる。
ドナーDNA上の相同領域は、標的部位にフランキングする任意の配列に対する相同性を有することができる。いくつかの実施形態では、相同領域は、標的部位に直接フランキングするゲノム配列に対して相当な配列相同性を共有するが、この相同領域を、標的部位に対してさらに5’または3’であり得る領域に対して十分な相同性を有するように設計することができることが認識される。さらに他の実施形態では、相同領域はまた、下流のゲノム領域に沿った標的部位の断片とも相同性を有し得る。一実施形態では、第1の相同領域は標的部位の第1の断片をさらに含み、第2の相同領域は標的部位の第2の断片を含み、これら第1の断片および第2の断片は異なる。
DNAで二本鎖切断が誘発されると直ちに、細胞のDNA修復機構が活性化されて切断を修復する。非相同性末端結合(NHEJ)経路は、切断された末端を接合する最も一般的な修復機構である(Bleuyard et al.,(2006)DNA Repair 5:1−12)。染色体の構造的完全性は、通常、修復によって保存されるが、欠失、挿入またはその他の再配置は起こり得る。1つの二本鎖切断の2末端は、NHEJの最も一般的な基質である(Kirik et al.,(2000)EMBO J 19:5562−6)が、2つの異なる二本鎖切断が起きる場合、異なる切断のフリー端でライゲーションが起こり、染色体の欠失(Siebert and Puchta、(2002)Plant Cell 14:1121−31)、または異なる染色体間の染色体転座転移(Pacher et al.,(2007)Genetics 175:21−9)が生じる。エラーが起きやすいDNA修復機構は、二本鎖切断部位で変異を起こし得る。非相同性末端結合(NHEJ)経路は、切断された末端を接合する最も一般的な修復機構である(Bleuyard et al.,(2006)DNA Repair 5:1−12)。
あるいは、二本鎖切断は、相同性DNA配列間の相同組み換え(HR)によって修復することができる。二本鎖切断部分近傍の配列が、例えば、二本鎖切断の成熟に関与するエクソヌクレアーゼ活性によって変わると、非***体細胞中の相同染色体、またはDNA複製後の姉妹染色分体などの相同配列が利用できるなら、遺伝子変換経路が、元の構造に修復することができる(Molinier et al.,(2004)Plant Cell 16:342−52)。異所性および/または後成的DNA配列もまた、相同組み換えのDNA修復鋳型として機能し得る(Puchta,(1999)Genetics 152:1173−81)。エピソームDNA分子もまた、二本鎖切断へのライゲート、例えば、染色体二本鎖切断へのT−DNAへの組み込みがされ得る(Chilton and Que,(2003)Plant Physiol 133:956−65;Salomon and Puchta,(1998)EMBO J 17:6086−95)。
本明細書で使用される場合、「相同組み換え(HR)」は、相同部位の2つのDNA分子間でのDNA断片の交換を含む。相同組み換えの頻度は、多くの因子に影響される。相同組み換え量、および相同組み換えと非相同組み換えとの相対的比率は、異なる生命体間で変わる。一般に、相同領域の長さは、相同組み換えイベントの頻度に影響し、相同領域が長いほど頻度は高くなる。相同組み換えの観察に必要な相同領域の長さはまた、種により変動する。多くの例で少なくとも5kbの相同が使用されるが、25−50bpの相同で相同組み換えが観察されている。例えば、Singer et al.,(1982)Cell31:25−33;Shen and Huang、(1986)Genetics 112:441−57;Watt et al.,(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:4768−72、Sugawara and Haber,(1992)Mol Cell Biol 12:563−75、Rubnitz and Subramani、(1984)Mol Cell Biol 4:2253−8;Ayares et al.,1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:5199−203;Liskay et al.,(1987)Genetics 115:161−7を参照されたい。
相同配向型修復(HDR)は、二本鎖および一本鎖DNA切断の細胞における修復機構である。相同配向型修復としては、相同組み換え(HR)および一本鎖アニーリング(SSA)(Lieber.2010 Annu.Rev.Biochem.79:181−211)が挙げられる。HDRの最も一般的な形態は、相同組み換え(HR)と呼ばれ、それは、ドナーDNAとアクセプターDNA間に最も長い配列相同性を要求する。HDRの他の形態として、一本鎖アニーリング(SSA)および切断誘導複製が挙げられ、これらはHRと比べて短い配列相同性を要求する。ニッキング(一本鎖切断)に対する相同配向型修復は、二本鎖切断に対するHDRと異なる機構で起こり得る(Davis and Maizels.PNAS(0027−8424),111(10),p.E924−E932).
例えば、相同性の相同配向型修復(HDR)による植物細胞のゲノムの変更は、遺伝子工学の強力なツールである。高等植物では相同組み換えの頻度が低いにもかかわらず、植物内因性遺伝子の相同組み換えが成功した例がある。植物における相同組み換えのパラメータは、主に、導入された切断選択マーカー遺伝子をレスキューすることによって調べられているこれらの実験では、相同DNA断片は通常0.3kb〜2kbであった。観察された相同組み換えの頻度は、10−4〜10−5のオーダーであった。例えば、Halfter et al.,(1992)Mol Gen Genet 231:186−93;Offringa et al.,(1990)EMBO J 9:3077−84;Offringa et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:7346−50;Paszkowski et al.,(1988)EMBO J 7:4021−6;Hourda and Paszkowski,(1994)Mol Gen Genet 243:106−11;およびRisseeuw et al.,(1995)Plant J 7:109−19を参照されたい。
DNA二本鎖切断は、相同組み換え経路を刺激する有効な因子のようである(Puchta et al.,(1995)Plant Mol Biol 28:281−92;Tzfira and White、(2005)Trends Biotechnol 23:567−9;Puchta、(2005)J Exp Bot 56:1−14)。DNA−切断物質の使用により、植物の人工的に構築された相同DNA反復配列間の相同組み換えの2〜9倍の増加が観察された(Puchta et al.,(1995)Plant Mol Biol 28:281−92)。トウモロコシのプロトプラストにおける線状DNA分子による実験で、プラスミド間の相同組み換えの増進が示された(Lyznik et al.,(1991)Mol Gen Genet 230:209−18)。
ドナーDNAは、当該技術分野で知られた任意の手段で導入することができる。例えば、標的部位を有する植物体が供給される。ドナーDNAは、当該技術分野で知られた任意の送達方法、例えば、アグロバクリウム(Agrobacterium)媒介形質転換法、ウィスカー媒介形質転換法、または遺伝子銃粒子撃ち込み法によって、供給し得る。ドナーDNAは、細胞内に一時的に存在してもよく、あるいはウイルスレプリコンにより導入されてもよい。Casエンドヌクレアーゼおよび標的部位の存在下に、ドナーDNAは植物ゲノムに挿入される。
本明細書に記載するように、ドナーDNAの植物細胞への直接送達は、粒子媒介送達法によって行うことができる。本明細書に記載の実験に基づき、熟練した技術者は、他の直接送達法、例えば、限定はされないが、プロトプラストへのポリエチレングリコール(PEG)媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、粒子撃ち込み法、ウィスカー媒介送達法、細胞貫通ペプチドまたはメソ多孔性シリカナノ粒子(MSN)媒介直接タンパク質送達法の使用によって、ドナーDNAの植物細胞への送達を成功させることができると今や想定することができる。
ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼシステムのさらなる使用が報告されており(2015年3月15日公開の米国特許出願公開第2015−0082478A1号明細書、2015年2月26日公開の国際公開第2015/026886A1号パンフレット、2015年2月26日公開の米国特許出願公開第2015−0059010A1、2014年7月7日出願の米国特許出願第62/023246号明細書、および2014年8月13日公開の米国特許出願第62/036,652号明細書(これらは全て参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)、限定はされないが、目的ヌクレオチド配列(調節要素など)の改変または置換、目的ポリヌクレオチドの挿入、遺伝子ノックアウト、遺伝子ノックイン、スプライシング部位の改変および/または代替スプライシング部位の導入、目的タンパク質をコードするヌクレオチド配列の改変、アミノ酸および/またはタンパク質の融合、ならびに目的遺伝子への逆方向反復配列の発現による遺伝子サイレンシングが挙げられる。
目的ポリヌクレオチドはさらに本明細書中に記載されており、商業市場、および作物の開発に関係するそれらの関心を反映したポリヌクレオチドが挙げられる。目的の作物および市場は変化し、開発途上国が世界市場を広げるにつれ、新しい作物や技術もまた出現してくるであろう。さらに、農業形質、ならびに収穫量およびヘテロシスなどの特性の理解が増すにつれ、それに応じて遺伝子操作のための遺伝子の選択も変わるであろう。
さらに、そのゲノム中の標的部位に組み込まれた目的ポリヌクレオチドを含む、少なくとも1種の植物細胞を同定する方法が提供される。スクリーニングマーカー表現型を使用せずにゲノムの標的部位またはその近傍への挿入がなされた植物細胞の同定に様々な方法を用いることができる。そのような方法は、標的配列の変化を検出する、標的配列の直接的解析と見なすことができ、限定はされないが、PCR法、シークエンス法、ヌクレアーゼ消化法、サザンブロット法およびこれらの組み合わせが挙げられる。例えば、米国特許出願第12/147,834号明細書されたい(この文献は本明細書に記載の方法に必要な範囲で本明細書に組み込まれる)。方法はまた、ゲノムに組み込まれた目的ポリヌクレオチドを含む植物細胞から植物体を回収することを含む。植物体は、不稔性であっても稔性であってもよい。任意の目的ポリヌクレオチドが提供され、植物体のゲノムの標的部位に組み込まれ、植物体で発現し得ることが確認された。
目的ポリヌクレオチド/目的ポリペプチドとしては、限定はされないが、除草剤耐性コード配列、殺虫物質コード配列、殺線虫物質コード配列、抗真菌性物質コード配列、抗ウイルス物質コード配列、ならびに非生物的ストレスおよび生物的ストレス耐性コード配列、あるいは収穫量、穀粒品質、栄養分、デンプンの品質もしくは量、窒素固定および/もしくは窒素利用、脂肪酸および油分、ならびに/または組成などの植物形質を改変する配列が挙げられる。より具体的な目的ポリヌクレオチドとしては、限定はされないが、作物収穫量を改善する遺伝子、作物の望ましさを向上させるポリペプチド、非生物的ストレス、例えば、乾燥、窒素、温度、塩分、有毒な金属もしくは微量元素に対する耐性を付与するタンパク質をコードする遺伝子、あるいは殺虫剤および除草剤などの毒性物質に耐性を付与する、または生物的ストレス、例えば、真菌、ウイルス、細菌、昆虫および線虫による攻撃、ならびに、これらの生命体と関連する病気の発生に対する耐性を付与するタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。目的遺伝子の一般的な分類としては、例えばジンクフィンガーなどの情報に関わる遺伝子類、例えばキナーゼなどの伝達に関わる遺伝子類、および熱ショックタンパク質などのハウスキーピングに関わる遺伝子類が挙げられる。トランス遺伝子のより具体的な分類としては、例えば、作物栽培学、昆虫耐性、病気耐性、除草剤耐性、稔性または不稔性、穀類特性および市販製品に重要な形質をコードする遺伝子が挙げられる。目的遺伝子としては、一般に、油、デンプン、炭水化物または栄養素の代謝に関与している遺伝子、ならびに、他の形質、例えば、限定はされないが、本明細書に記載の、除草剤耐性などと組み合わせてスタッキングまたは使用され得る穀粒の大きさ、スクロースローディングなどに影響する遺伝子が挙げられる。
油、デンプンおよびタンパク質量成などの作物栽培学的に重要な形質は、従来の育種方法の使用に加えて、遺伝子学的に変えることができる。改変としては、オレイン酸、飽和油および不飽和油量の増加、リシンおよび硫黄濃度の増加、必須アミノ酸の導入、およびまたデンプンの改質が挙げられる。ホリドチオニンタンパク質の改質が、米国特許第5,703,049号明細書、同5,885,801号明細書、同5,885,802号明細書、および同5,990,389明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
目的ポリヌクレオチド配列は、病気耐性または有害生物耐性の導入に関与するタンパク質をコードしてもよい。「病気耐性」または「有害生物耐性」は、植物と病原体との相互作用の結果である有害な症状を回避することを意味する。有害生物耐性遺伝子は、ネキリムシ、ヨトウムシ、ヨーロッパアワノメイガなどの、高収量を阻害する有害生物に対する耐性をコードし得る。抗菌性を保護するリゾチームもしくはセクロピンなどの病気耐性および昆虫耐性遺伝子、抗真菌性を保護するデフェンシン、グルカナーゼもしくはキチナーゼなどのタンパク質、または線虫もしくは昆虫を制御する、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)エンドトキシン、プロテアーゼ阻害剤、コラゲナーゼ、レクチンもしくはグルコシダーゼは、いずれも遺伝子産物の有用な例である。病気耐性形質をコードする遺伝子としては、フモニシンに対するなどの解毒遺伝子(米国特許第5,792,931号明細書)、非病原性(avr)遺伝子および病気耐性(R)遺伝子(Jones et al.(1994)Science 266:789;Martin et al.(1993)Science 262:1432;およびMindrinos et al.(1994)Cell 78:1089)などが挙げられる。昆虫耐性遺伝子は、ネキリムシ、ヨトウムシ、ヨーロッパアワノメイガなどの、高収量を阻害する有害生物に対する耐性をコードし得る。そのような遺伝子としては、例えば、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)毒性タンパク質遺伝子(米国特許第5,366,892号明細書;同第5,747,450号明細書;同第5,736,514号明細書;同第5,723,756号明細書;同第5,593,881号明細書;およびGeiser et al.(1986)Gene 48:109)などが挙げられる。
「除草剤耐性タンパク質」、または「除草剤耐性をコードする核酸分子」の発現により得られるタンパク質としては、そのタンパク質を発現しない細胞より、より高濃度の除草剤に耐える能力、またはそのタンパク質を発現しない細胞より、より長期間ある特定の濃度の除草剤に耐える能力を細胞に付与するタンパク質が挙げられる。除草剤耐性形質は、アセト乳酸合成酵素(ALS、AHASとも呼ばれる)の働きを阻害するように作用する除草剤、特に、スルホニル尿素(sulfonylurea)型−(UK:スルホニル尿素(sulphonylurea))除草剤に対する耐性をコードする遺伝子、グルタミン合成酵素の働きを阻害するように作用する除草剤、例えば、ホスフィノトリシンもしくはbastaに対する耐性をコードする遺伝子(例えば、bar遺伝子)、グリホサートに対する耐性をコードする遺伝子(例えば、EPSP合成酵素遺伝子およびGAT遺伝子)、HPPD阻害剤に対する耐性をコードする遺伝子(例えば、HPPD遺伝子)、または当該技術分野で知られている他のそのような遺伝子によって植物体に導入することができる。例えば、米国特許第7,626,077号明細書、同第5,310,667号明細書、同第5,866,775号明細書、同第6,225,114号明細書、同第第6,248,876号明細書、同第7,169,970号明細書、同第6,867,293号明細書、および米国仮特許出願61/401,456号明細書(これらの各文献は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。bar遺伝子は、除草剤bastaに対する耐性をコードし、nptII遺伝子は、抗生物質カナマイシンおよびgeneticinに対する耐性をコードし、ALS遺伝子変異体は、除草剤クロルスルフロンに対する耐性をコードする。
本明細書で使用される場合、「スルホニル尿素耐性ポリペプチド」は、植物体で発現すると、少なくとも1種のスルホニル尿素に対する耐性を付与する任意のポリペプチドを含む。スルホニル尿素除草剤は、アセトヒドロキシ酸合成酵素(AHAS)としても知られるアセト乳酸合成酵素(ALS)の働きを遮断することによって高等植物の成長を阻害する。ALSの特定の変異(例えば、S4および/またはHRA変異)を含む植物体は、スルホニル尿素除草剤に対する耐性を有する。スルホニル尿素耐性植物体の作製については、米国特許第5,605,011号明細書、同第5,013,659号明細書、同第5,141,870号明細書、同第5,767,361号明細書、同第5,731,180号明細書、同第5,304,732号明細書、同第4,761,373号明細書、同第5,331,107号明細書、同第5,928,937号明細書、同第5,378,824、および国際公開第96/33270号パンフレット(これらはあらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる)、ならびに、Tan et al.2005.Imidazolinone−tolerant crops:history、current status and future.Pest Manag Sci 61:246−257により詳しく記載されている。スルホニル尿素耐性ポリペプチドは、例えば、ALSのSuRAまたはSuRB遺伝子座によってコードされ得る。特定の実施形態では、ALS阻害剤耐性ポリペプチドは、C3 ALS変異、HRA ALS変異、S4変異もしくはS4/HRA変異、またはこれらの任意の組み合わせを含む。ALS中の異なる変異が、異なる除草剤、ならびに除草剤のグループ(および/またはサブグループ)に対する耐性を付与することが知られている。例えば、Tranel and Wright(2002)Weed Science 50:700−712を参照されたい。米国特許第5,605,011号明細書、同第5,378,824号明細書、同第5,141,870号明細書および同第5,013,659(これらの各文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)も参照されたい。一実施形態においては、ALS中のHRA変異が特に使用されている。この変異は、野生型タンパク質と比較して、少なくとも1種のスルホニル尿素化合物に対し耐性を有するアセト乳酸合成酵素ポリペプチドを生成する。
スルホニル尿素耐性ポリペプチドをコードする遺伝子は、スルホニル耐性(tolerant)遺伝子、またはスルホニル耐性(resistant)遺伝子と呼ばれる。スルホニル耐性(tolerant)遺伝子、またはスルホニル耐性(resistant)遺伝子という用語は、本明細書で互換的に使用される
破壊されたスルホニル尿素耐性(ALS)遺伝子とは、その遺伝子産物がもはや機能的スルホニル尿素耐性ポリペプチドをコードしないように改変されている破壊遺伝子(その対応する破壊されていない遺伝子はスルホニル尿素耐性ポリペプチドをコードする)を指す。
(2012年9月4日発行の米国特許第8,257,956号明細書に記載されているような)スルホニル尿素反応性リプレッサーシステムの構成要素をまた植物ゲノムに導入して、前記植物にリプレッサー/オペレーター/インデューサーシステムを生成することができ、そこでは、ポリペプチドがオペレーターに特異的に結合することができ、この特異的結合はスルホニル尿素化合物によって調節される。
不稔性遺伝子もまた発現カセットにおいてコードされ得、物理的雄穂除去の代替を提供する。そのような方法で使用される遺伝子の例としては、MS26(例えば、米国特許第7,098,388号明細書、同第7,517,975号明細書、同第7,612,251を参照されたい)、MS45(例えば、米国特許第5,478,369号明細書、同第6,265,640号明細書を参照されたい)、またはMSCA1(例えば、米国特許第7,919,676号明細書を参照されたい)などの雄性稔性遺伝子が挙げられる。トウモロコシ植物体(トウモロコシ(Zea mays L.))は自家受粉および異花受粉の両技術によって育種することができるトウモロコシは、同じ植物体の雄穂に位置する雄花と、雌穂に位置する雌花とを有する。それは、自家受粉(「自殖」)または異花受粉することができる。トウモロコシでは、風により花粉が雄穂から初期の雌穂の頂部から伸びた毛に飛ばされると、自然受粉が起こる。受粉は、当業者に知られた手法で容易に制御することができる。トウモロコシのハイブリッドの開発には、ホモ接合性の近交系、これらの系統の交雑、および交雑種の評価が必要である。系統育種および循環選抜は、集団からの近交系の開発に使用される育種法の2つである。育種プログラムは、2以上の近交系または種々の広範囲にわたるソースから、自殖および所望の表現型の選択によって新しい近交系を開発する育種プールへ、所望の形質を組み合わせる。トウモロコシの交雑品種は、それぞれが他方に欠けている1つ以上の所望の特性を有するか、または他方を補完し得る2種のそのような近交系の交雑種である。新しい近交系を他の近交系と交雑し、これらの交雑種のハイブリッドを評価して、どのハイブリッドが商業的可能性を有するかを決定する。第一世代のハイブリッド子孫をF1と称する。F1ハイブリッドはその近交系の親より丈夫である。このハイブリッド強勢またはヘテロシスは、多くの方法、例えば、栄養成長の増大および収量の増加などで示すことができる。
トウモロコシのハイブリッド種子は、手作業による雄穂除去を組み込んだ雄性不稔性システムにより作製することができる。ハイブリッド種子を作製するために、成長する雌性の近交系親から雄穂を除き、それを雄性の近交系親と共に種々の交互列パターンで植え付けることができる。その結果、外来のトウモロコシ花粉源から十分に分離され、雌性近交系の穂は雄性近交系の花粉のみを受粉するであろう。したがって、得られる種子はハイブリッド(F1)であり、ハイブリッド植物体を形成するであろう。
植物体の開発に影響する畑地の変化は、手による雌性親の手作業による雄穂除去が終わった後、植物体に雄穂を付けさせることがある。あるいは、雌性近交系植物の雄穂が、雄穂除去プロセスにより完全には除かれないことがある。いずれにしても、雌性植物から花粉が落ち、いくつかの雌性植物体が自家受粉することになろう。これにより、雌性近交系の種子が、正常に作製されたハイブリッド種子と共に収穫されるであろう。雌性近交系の種子は、ヘテロシスを示さず、したがって、F1種子ほど生産性は高くない。さらに、雌性近交系の種子の存在は、ハイブリッドを生産する会社に、生殖質のセキュリティリスクを示すことになり得る。
あるいは、雌性近交系は、機械によって機械的に雄穂除去することができる。機械による雄穂除去は、人の手による雄穂除去と信頼性はほぼ同じであるが、作業は速く費用も少なくて済む。しかしながら、雄穂除去機の殆どは、人の手による雄穂除去より植物体にダメージを与える。したがって、今のところ、完全に満足できる雄穂除去の形態はなく、ハイブリッド種子の作製において、生産コストをさらに抑える代替に対するニーズ、および雌性親の自家受粉をなくすニーズが依然存在している。
トウモロコシなどの作物では、植物体に雄性不稔性を引き起こす変異が、ハイブリッド種子の作製方法に有用である可能性があり、多くの人手を要する、ハイブリッド親として使用される母系親株から(雄穂除去としても知られる)雄花除去の必要性をなくすことによって、生産コストを低下させることができる。トウモロコシにおいて雄性不稔性を引き起こす変異は、X線もしくは紫外線照射、化学的処理、または転位因子挿入(ms23、ms25、ms26、ms32)などの種々の方法で作られている(Chaubal et al.(2000)Am J Bot 87:1193−1201)。稔性/不稔性「分子スイッチ」による稔性遺伝子の条件付き調節は、作物改良のための新しい雄性不稔性システムの設計に対する選択肢を増やすであろう(Unger et al.(2002)Transgenic Res 11:455−465)。
さらに、目的ポリヌクレオチドがまた、目的の標的遺伝子配列のメッセンジャーRNA(mRNA)の少なくとも一部に相補的なアンチセンス配列を含み得ることが確認されている。アンチセンスヌクレオチドは、対応するmRNAとハイブリダイズするように構成されている。アンチセンス配列は、対応するmRNAにハイブリダイズし、その発現を妨げるなら、改変されていてもよい。このように、対応するアンチセンス配列と70%、80%、または85%の配列同一性を有するアンチセンス構成が使用され得る。さらに、アンチセンスヌクレオチドの部分は、標的遺伝子の発現を妨げるために使用され得る。一般に、少なくとも50ヌクレオチド、100ヌクレオチド、200ヌクレオチドまたはそれ以上からなる配列が使用され得る。
さらに、目的ポリヌクレオチドはまた、植物体の内因性遺伝子の発現を抑制するセンス配向で使用され得る。センス配向のポリヌクレオチドによって植物体の遺伝子の発現を抑制する方法は、当該技術分野で知られている。この方法には、一般に、内因性の遺伝子の転写に対応するヌクレオチド配列の少なくとも一部に作動可能に結合した、植物体内での発現を駆動するプロモーターを含むDNAコンストラクトで植物体を形質転換することが含まれる。通常、そのようなヌクレオチド配列は、内因性遺伝子の転写配列に対し相当の配列同一性を、一般に、約65%を超える配列同一性を、約85%を超える配列同一性を、または約95%を超える配列同一性を有する。米国特許第5,283,184号明細書および同第5,034,323号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
目的ポリヌクレオチドはまた、表現型マーカーであり得る。
組み換えDNA分子、目的DNA配列および目的ポリヌクレオチドは、遺伝子サイレンシングのための1種以上のDNA配列を含みことができる。植物体中のDNA配列の発現に関与する遺伝子サイレンシングの方法は、当該技術分野で知られており、例えば、限定はされないが、コサプレッション、アンチセンス抑制、二本鎖RNA(dsRNA)干渉、ヘアピンRNA(hpRNA)干渉、イントロン含有RNA(ihpRNA)干渉、転写遺伝子サイレンシング、およびマイクロRNA(miRNA)干渉が挙げられる。
本明細書で使用する場合、「核酸」はポリヌクレオチドを意味しており、デオキシリボヌクレオチド塩基またはリボヌクレオチド塩基の一本鎖ポリマーまたは二本鎖ポリマーを含む。核酸はまた、断片および改変ヌクレオチドを含んでよい。したがって、用語「ポリヌクレオチド」、「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」および「核酸断片」は、互換的に使用され、一本鎖または二本鎖で、場合により合成ヌクレオチド塩基、非天然ヌクレオチド塩基または改変ヌクレオチド塩基を含むRNAおよび/またはDNAのポリマーを示す。ヌクレオチド(通常、5’−一リン酸塩形態で見出される)は、単一文字表示により、以下のように称される:アデノシンまたはデオキシアデノシンに対し(それぞれ、RNAまたはDNAに対し)「A」、シトシンまたはデオキシシトシンに対し「C」、グアノシンまたはデオキシグアノシンに対し「G」、ウリジンに対し「U」、デオキシチミジンに対し「T」、プリン(AまたはG)に対し「R」、ピリミジン(CまたはT)に対し「Y」、GまたはTに対し「K」、AまたはCまたはTに対し「H」、イノシンに対し「I」、および任意のヌクレオチドに対し「N」。
「オープンリーディングフレーム」は、ORFと略される。
用語「機能的に等価である小断片」および「機能的に等価な小断片」は、本明細書で互換的に使用される。これらの用語は、断片または小断片が活性酵素をコードしているか否かに関わらず、遺伝子発現を変更し得る能力、またはある特定の表現型を生成する能力が保持されている、単離核酸断片の一部またはサブ配列を指す。例えば、断片または小断片は、形質転換植物に所望の表現型を生じさせる遺伝子の設計に使用することができる。遺伝子は、その核酸断片または小断片を、それが活性酵素をコードするか否かに関わらず、植物プロモーター配列に対してセンスまたはアンチセンス配向で結合させることにより、抑制的に使用されるように設計することができる。
用語「保存ドメイン」または「モチーフ」は、進化的に関連したタンパク質のアラインされた配列に沿って特定の位置に保存される一連のアミノ酸を意味する。他の位置のアミノ酸が相同タンパク質間で変動し得るが、一方、特定の位置に高度に保存されるアミノ酸は、タンパク質の構造、安定性または活性に必須のアミノ酸を意味する。それらは、そのタンパク質相同体ファミリーのアラインされた配列の高い保存度によって同定されるため、新しく決定された配列を有するタンパク質が予め同定されたタンパク質ファミリーに属するか否かを決定する識別子または「シグネチャー」として使用することができる。
ポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列、その変異体、ならびにこれらの配列の構造的関係は、「相同」、「相同の」、「実質的に同一の」、「実質的に類似の」および「実質的に対応する」という用語によって記載され、これらの用語は本明細書で互換的に使用される。これらは、1つ以上のアミノ酸またはヌクレオチド塩基の変化が、分子の機能、例えば、遺伝子の発現を仲介し、ある特定の表現型を生じさせる能力に影響することのないポリペプチド断片または核酸断片を指す。これらの用語はまた、得られる核酸断片の機能特性が、所期の改変されていない断片と比較して実質的に変わらない核酸断片の改変を指す。これらの改変には、核酸断片中の1つ以上のヌクレオチドの欠失、置換および/または挿入が含まれる。
実質的に類似の核酸配列に包含されるものは、(中度のストリンジェンシー条件下、例えば、0.5×SSC、0.1%SDS、60℃で)本明細書に例示した配列と、または本明細書に開示したヌクレオチド配列の任意の部分にハイブリダイズする能力によって規定することができ、それらは本明細書に開示した核酸配列のいずれかと機能的に等価である。ストリンジェンシー条件を調節して、中度の類似性を有する断片、例えば遠縁の生命体由来の相同配列を、高い類似性を有する断片、例えば近縁の生命体由来の機能酵素を複製する遺伝子などに対しスクリーニングすることができる。ポストハイブリダイゼーション洗浄がストリンジェンシー条件を決定する。
用語「選択的にハイブリダイズする」には、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下での、核酸配列の特定の核酸標的配列への、非標的核酸配列へのハイブリダイゼーションより高い検出度(例えば、バックグラウンドの少なくとも2倍)のハイブリダイゼーション、および非標的核酸の実質的排除が含まれる。選択的にハイブリダイズする配列は、通常、互いに少なくとも80%または90%、最大で100%の(すなわち、完全相補の)の配列同一性を有する。
用語「ストリンジェントな条件」または「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」には、インビトロのハイブリダイゼーション分析において、プローブがその標的配列に選択的にハイブリダイズする条件が含まれる。ストリンジェントな条件は、配列に依存し、また、環境が変わると異なるであろう。ハイブリダイゼーション条件および/または洗浄条件のストリンジェンシーを制御することによって、プローブに対し100%相補的な標的配列を特定することができる(相同プロービング)。あるいは、配列の不一致を許容し、より低い類似性が検出されるように配列の不一致を認めるように、ストリンジェンシー条件を調節することができる(非相同プロービング)。一般に、プローブは長さが約1000ヌクレオチド未満であり、場合により500ヌクレオチド未満である。
通常、ストリンジェントな条件は、pH7.0〜8.3で、短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)の場合、少なくとも約30℃において、また、長いプローブ(例えば、50超のヌクレオチド)の場合、少なくとも約60℃の温度において、塩濃度が、約1.5M Naイオン濃度、典型的には約0.01〜1.0M Naイオン濃度であるものである。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドなどの不安定化物質の添加により形成することができる。低ストリンジェンシー条件の例としては、37℃の、30〜35%のホルムアミド、1M NaCl、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)からなる緩衝液によるハイブリダイゼーション、および50〜55℃での1〜2×SSC(20×SSC=3.0M NaCl/0.3M クエン酸酸ナトリウム)における洗浄が挙げられる。中度ストリンジェンシー条件の例としては、37℃の、40〜45%のホルムアミド、1M NaCl、1%SDSにおけるハイブリダイゼーション、および55〜60℃での0.5〜1×SSCにおける洗浄が挙げられる。高ストリンジェンシー条件の例としては、37℃の、50%のホルムアミド、1M NaCl、1%SDSにおけるハイブリダイゼーション、および60〜65℃での0.1×SSCにおける洗浄が挙げられる。
核酸配列またはポリペプチド配列と関連する「配列同一性」または「同一性」は、特定の比較窓全体にわたり最大の一致のためにアラインされた場合に同一である2種の配列における核酸塩基またはアミノ酸残基を指す。
用語「配列同一性パーセンテージ」は、比較窓全体にわたり2種の適切にアラインされた配列を比較することにより決定される値を指し、比較窓内のポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の部分は、これら2種の配列の最適なアラインメントのために、参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含む場合がある。このパーセンテージは、両方の配列内で同一の核酸塩基もしくはアミノ酸残基が発生する位置の数を決定してマッチ位置数を得、このマッチ位置数を比較窓内の位置の総数で除し、その結果に100を乗じて配列同一性パーセンテージを得ることによって算出される。配列同一性パーセントの有用な例としてが、限定はされないが、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%、または50%〜100%の任意の整数パーセンテージが挙げられる。これらの同一性は、本明細書に記載のプログラムのいずれかを使用して決定することができる。
配列アラインメント、および同一性または類似性パーセントの計算は、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイート(DNASTAR Inc.、Madison、WI)のMegAlign(商標)プログラム(これに限定されない)などの、相同配列を検出するために設計された様々な比較方法を使用して決定することができる。本願の文脈内では、配列分析ソフトウェアを分析に使用する場合、別途指定しない限り、分析結果は、言及したプログラムの「デフォルト値」をベースとすることは理解されるであろう。本明細書で使用する場合、「デフォルト値」は、最初に初期化したとき、ソフトウェアで最初にロードされる値またはパラメータの任意のセットを意味する。
「アラインメントのClustal V方法」は、Clustal V(Higgins and Sharp,(1989)CABIOS 5:151−153、Higgins et al.,(1992)Comput Appl Biosci 8:189−191に記載されている)とラベルされ、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイート(DNASTAR Inc.、Madison、WI)のMegAlign(商標)プログラム中にあるアラインメント方法に対応する。多重アラインメントの場合、デフォルト値は、GAP PENALTY=10およびGAP LENGTH PENALTY=10に対応する。Clustal方法を使用するタンパク質配列のペアワイズアラインメント用の、および同一性パーセント算出用のデフォルトパラメータは、KTUPLE=1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5およびDIAGONALS SAVED=5である。核酸の場合、これらのパラメータは、KTUPLE=2、GAP PENALTY=5、WINDOW=4およびDIAGONALS SAVED=4である。Clustal Vプログラムを使用した配列のアラインメントの後、同じプログラム中の「配列距離」表を調べることにより、「同一性パーセント」を得ることができる。
「アラインメントのClustal W方法」は、Clustal W(Higgins and Sharp,(1989)CABIOS 5:151−153、Higgins et al.,(1992)Comput Appl Biosci 8:189−191に記載されている)とラベルされ、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイート(DNASTAR Inc.、Madison、WI)のMegAlign(商標)v6.1プログラム中にあるアラインメント方法に対応する。多重アラインメント用のデフォルトパラメータ(GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=0.2、Delay Divergen Seqs(%)=30、DNA Transition Weight=0.5、Protein Weight Matrix=Gonnet Series、DNA Weight Matrix=IUB)。Clustal Wプログラムを使用した配列のアラインメントの後、同じプログラム中の「配列距離」表を調べることにより、「同一性パーセント」を得ることができる。
別途指定しない限り、本明細書に示される配列同一性/類似性値は、以下のパラメータを用いるGAPVersion10(GCG、Accelrys、San Diego、CA)を使用して得られた値を指す:ヌクレオチド配列の同一性%および類似性%は、ギャップ生成ペナルティウエイト50、ギャップ長伸長ペナルティウエイト3、およびnwsgapdna.cmpスコアリングマトリックスを使用;アミノ酸配列の同一性%および類似性%は、ギャップ生成ペナルティウエイト8、ギャップ長伸長ペナルティ2、およびBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用(Henikoff and Henikoff,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915)。GAPは、Needleman and Wunsch,(1970)J Mol Biol 48:443−53のアルゴリズムを使用して、一致した数を最大化し、ギャップ数を最小限に抑える2種の配列全体のアラインメントを見出す。GAPは、全ての可能なアラインメントおよびギャップ位置を考慮し、一致した塩基の単位でギャップ生成ペナルティおよびギャップ伸長ペナルティを使用して、一致した塩基の最大数および最小のギャップを有するアラインメントを作成する。
「BLAST」は、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NCBI)によって提供されている、生物学的配列の類似領域を見出すために使用される検索アルゴリズムである。このプログラムでは、ヌクレオチド配列またはタンパク質配列を配列データベースと比較し、一致の統計学的有意性を計算して、問い合わせ配列に十分類似した配列を、類似性がランダムに起こったと予想されないように特定する。BLASTは特定された配列およびそれらの問い合わせ配列に対するローカルアライメントを報告する。
多くのレベルの配列同一性が、その他の種からのまたは天然にもしくは合成により改変されているポリペプチド(そのようなポリペプチドは同一のまたは類似した機能または活性を有する)の特定に有用であることは当業者によく理解されるであろう。同一性パーセントの有用な例としては、限定はされないが、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%または50%〜100%の任意の整数パーセンテージが挙げられる。実際に、50%〜100%の任意の整数のアミノ酸同一性、例えば、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性は、本開示の説明に有用であり得る。
「遺伝子」は、機能分子、例えば、限定はされないが、コード配列の前(5’非コード配列)および後(3’非コード配列)の調節配列などの特定のタンパク質などを発現する核酸断片を含む。「天然遺伝子」は、それ自体の調節配列と共に天然に見出される遺伝子を指す。
「変異遺伝子」は、ヒトが介入して改変された遺伝子である。そのような「変異遺伝子」は、少なくとも1つのヌクレオチドの付加、欠失または置換によって、対応する非変異遺伝子と異なる配列を有する。本開示のある特定の実施形態では、変異遺伝子は、本明細書で開示するガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼシステムの結果として生じる変更を含む。変異植物体は、変異遺伝子を含む植物体である。
本明細書で使用する場合、「標的型変異」は、本明細書で開示する、または当該技術分野で知られる標的配列のDNAに二本鎖切断を導入することができる二本鎖切断誘導剤を含む方法を使用して、天然遺伝子内の標的とされる配列を変更することによりなされた天然遺伝子中の変異のことである。
ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ誘導標的型変異は、Casエンドヌクレアーゼによって認識され切断されるゲノム標的部位の中または外に位置するヌクレオチド配列で起こり得る。
用語「ゲノム」は、植物細胞に適用する場合、核内で見出される染色体DNAだけでなく、細胞の細胞内構成要素(例えば、ミトコンドリアまたはプラスチド)内で見出される細胞小器官DNAも包含する。
「コドン改変遺伝子」または「コドン優先遺伝子」または「コドン最適化遺伝子」とは、宿主細胞の好ましいコドン使用頻度を模倣するように設計されているコドン使用頻度を有する遺伝子のことである。
[アレル」は、染色体の所与の遺伝子座を占める遺伝子のいくつかの代替形態の1つである。染色体の所与の遺伝子座に存在する全てのアレルが同じである場合、その植物体はその遺伝子座でホモ接合性である。染色体の所与の遺伝子座に存在するアレルが異なっているなら、その植物体はその遺伝子座でヘテロ接合性である。
「コード配列」は、特定のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を指す。「調節配列」は、コード配列の上流(5’−非コード配列)、コード配列内、またはコード配列の下流(3’−非コード配列)に位置するヌクレオチド配列を指し、それは関連するコード配列の転写、RNAプロセシングもしくは安定性、または翻訳に影響を及ぼす。調節配列としては、限定はされないが、プロモーター、翻訳リーダー配列、5’非翻訳配列、3’非翻訳配列、イントロン、ポリアデニル化標的配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位およびステム−ループ構造を挙げることができる。
「植物最適化ヌクレオチド配列」とは、植物体における発現が増大するように最適化されているヌクレオチド配列のことである。例えば、植物最適化ヌクレオチド配列は、例えば、本明細書に開示する二本鎖切断誘導物質(例えば、エンドヌクレアーゼ)などのタンパク質をコードするヌクレオチド配列を、発現を改善するための1つ以上の植物優先コドンを用いて改変することにより、合成することができる。例えば、宿主優先コドンの利用についての考察には、Campbell and Gowri(1990)Plant Physiol.92:1−11を参照されたい。
植物優先遺伝子を合成する方法は、当該技術分野で利用可能である。例えば、米国特許第5,380,831号明細書および同第5,436,391号明細書、ならびにMurray et al.(1989)Nucleic Acids Res.17:477−498(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。植物宿主において遺伝子発現を高めるためのさらなる配列の改変は知られている。これらの改変としては、例えば、疑似のポリアデ二ル化シグナルをコードする1つ以上の配列の除去、1つ以上のエクソン−イントロンスプライス部位シグナル、1つ以上のトランスポゾン様反復、および遺伝子発現に有害なおそれのあるそうしたよく特徴付けられた他の配列が挙げられる。配列のGC含量は、所与の植物宿主の平均レベル(その宿主植物細胞で発現する既知の遺伝子を参照して計算される)に調整することができる。可能であれば、1つ以上のmRNAの予測されるヘアピン二次構造を避けるために配列を改変する。したがって、本開示の「植物最適化ヌクレオチド配列」は、そのような配列の改変を1つ以上含む。
プロモーターは、RNAポリメラーゼおよび他の転写開始タンパク質の認識および結合に関与するDNA領域である。プロモーター配列は近位およびより遠位の上流エレメントからなり、後者のエレメントはエンハンサーと称されることが多い。「エンハンサー」はプロモーター活性を刺激することができるDNA配列であり、プロモーター固有のエレメントであってもよいし、プロモーターのレベルまたは組織特異性を増強するために挿入された異種エレメントであってもよい。プロモーターは、その全体が天然遺伝子に由来していてもよいし、天然に見出される異なるプロモーターに由来する異なるエレメントで構成され、かつ/または合成DNAセグメントを含んでいてもよい。様々なプロモーターが、様々な組織型もしくは細胞型で、または様々な発達段階で、または様々な環境条件に応じて、遺伝子の発現を誘導し得ることは当業者に理解されている。さらに、殆どの場合に調節配列の正確な境界が完全には定義されていないことから、いくつかのバリエーションのDNA断片が同一のプロモーター活性を有する場合があることは認識されている。殆どの細胞型で最も多く遺伝子の発現を引き起こすプロモーターは、一般に、「構成型プロモーター」と呼ばれている。
ある特定のプロモーターが他のものよりより高率でRNAの合成を誘導することができることが示された。これらは「強力なプロモーター」と呼ばれている。ある特定の他のプロモーターが、特定の細胞型または組織型でのみ高いレベルでRNAの合成を誘導することが示され、プロモーターがある特定の組織で好適にRNA合成を誘導し、他の組織では低いレベルでRNA合成を誘導するなら、「組織特異性プロモーター」または「組織優勢プロモーター」としばしば呼ばれている。植物体に導入されたキメラ遺伝子(または、遺伝子群)の発現パターンはプロモーターによって制御され、特定の組織型または特定の植物成長段階においてある特定のレベルでキメラ遺伝子または(遺伝子群)の発現を制御することができる新規なプロモーターを単離することへの関心が依然存在している。
植物プロモーターとしては、植物細胞において転写を開始することができるプロモーターを挙げることができ、植物プロモーターについては、Potenza et al.,(2004)In Vitro Cell Dev Biol 40:1−22を参照されたい。構成型プロモーターとしては、例えば、国際公開第99/43838号パンフレットおよび米国特許第6,072,050号明細書に開示のRsyn7プロモーターおよび他の構成型プロモーターのコアプロモーター;コアCaMV 35Sプロモーター(Odell et al.,(1985)Nature 313:810−2);ライスアクチン(McElroy et al.,(1990)Plant Cell 2:163−71);ユビキチン(Christensen et al.,(1989)Plant Mol Biol 12:619−32;Christensen et al.,(1992)Plant Mol Biol 18:675−89);pEMU(Last et al.,(1991)Theor Appl Genet 81:581−8);MAS(Velten et al.,(1984)EMBO J 3:2723−30);ALSプロモーター(米国特許第5,659,026号明細書)などが挙げられる。他の構成型プロモーターは、例えば、米国特許第5,608,149号明細書、同第5,608,144号明細書、同第5,604,121号明細書、同第5,569,597号明細書、同第5,466,785号明細書、同第5,399,680号明細書、同第5,268,463号明細書、同第5,608,142号明細書および同第6,177,611号明細書に記載されている。いくつかの例では、誘導性プロモーターが使用され得る。病原体の感染後に誘導される病原体誘導性プロモーターとしては、限定はされないが、PRタンパク質、SAタンパク質、ベータ−1,3−グルカナーゼ、キチナーゼなどの発現を調節するものが挙げられる。
外因性の化学調節剤の適用によって植物体の遺伝子発現を調節するために、化学調節プロモーターを使用することができる。このプロモーターは、化学物質の適用が遺伝子発現を誘導する化学誘導性プロモーターであっても、化学物質の適用が遺伝子発現を抑制する化学抑制性プロモーターであってもよい。化学誘導性プロモーターとしては、限定はされないが、ベンゼンスルホンアミド除草剤毒性緩和剤によって活性化されるトウモロコシIn2−2プロモーター(De Veylder et al.,(1997)Plant Cell Physiol 38:568−77)、発芽前除草剤として使用されている疎水性親電性化合物によって活性化されるトウモロコシGSTプロモーター(GST−II−27、国際公開第93/01294号パンフレット)、およびサリチル酸によって活性化されるタバコPR−1aプロモーター(Ono et al.,(2004)Biosci Biotechnol Biochem 68:803−7)が挙げられる。他の化学調節プロモーターとして、ステロイド応答性プロモーター(例えば、グルココルチコイド誘導性プロモーター(Schena et al.,(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:10421−5;McNellis et al.,(1998)Plant J 14:247−257);テトラサイクリン誘導性およびテトラサイクリン抑制性プロモーター(Gatz et al.,(1991)Mol Gen Genet 227:229−37;米国特許第5,814,618号明細書および同第5,789,156号明細書)を参照されたい)が挙げられる。
特定の植物組織内での発現増強のため、組織優先プロモーターを使用することができる。組織優先プロモーターとしては、例えば、Kawamata et al.,(1997)Plant Cell Physiol 38:792−803;Hansen et al.,(1997)Mol Gen Genet 254:337−43;Russell et al.,(1997)Transgenic Res 6:157−68;Rinehart et al.,(1996)Plant Physiol 112:1331−41;Van Camp et al.,(1996)Plant Physiol 112:525−35;Canevascini et al.,(1996)Plant Physiol 112:513−524;Lam,(1994)Results Probl Cell Differ 20:181−96;およびGuevara−Garcia et al.,(1993)Plant J 4:495−505が挙げられる。葉優先プロモーターとしては、例えば、Yamamoto et al.,(1997)Plant J 12:255−65;Kwon et al.,(1994)Plant Physiol 105:357−67;Yamamoto et al.,(1994)Plant Cell Physiol 35:773−8;Gotor et al.,(1993)Plant J 3:509−18;Orozco et al.,(1993)Plant Mol Biol 23:1129−38;Matsuoka et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:9586−90;Simpson et al.,(1958)EMBO J 4:2723−9;Timko et al.,(1988)Nature 318:57−8が挙げられる。根優先プロモーターとしては、例えば、Hire et al.,(1992)Plant Mol Biol 20:207−18(ダイズ根特異的グルタミン合成酵素遺伝子);Miao et al.,(1991)Plant Cell 3:11−22(サイトゾルグルタミン合成酵素(GS));Keller and Baumgartner,(1991)Plant Cell 3:1051−61(サヤインゲンのGRP 1.8遺伝子における根特異的調節エレメント);Sanger et al.,(1990)Plant Mol Biol 14:433−43(アグロバクテリウム・ツメファシエンス(A.tumefaciens)マンノピン合成酵素(MAS)の根特異的プロモーター);Bogusz et al.,(1990)Plant Cell 2:633−41(パラスポニア・アンデルソニイ(Parasponia andersonii)およびトレマ・トメントサ(Trema tomentosa)から単離された根特異的プロモーター);Leach and Aoyagi,(1991)Plant Sci 79:69−76(アグロバクテリウム・リゾゲネス(A.rhizogenes)rolCおよびrolD根誘導遺伝子);Teeri et al.,(1989)EMBO J 8:343− 50(アグロバクテリウム(Agrobacterium)創傷誘導TR1’およびTR2’遺伝子);VfENOD−GRP3遺伝子プロモーター(Kuster et al.,(1995)Plant Mol Biol 29:759−72);およびrolBプロモーター(Capana et al.,(1994)Plant Mol Biol 25:681−91;ファゼオリン遺伝子(Murai et al.,(1983)Science 23:476−82;Sengopta−Gopalen et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA82:3320−4)が挙げられる。米国特許第5,837,876号明細書、同第5,750,386号明細書、同第5,633,363号明細書、同第5,459,252号明細書、同第5,401,836号明細書、同第5,110,732号明細書および同第5,023,179号明細書も参照されたい。
種子優先プロモーターとしては、種子発育中活性な種子特異的プロモーター、および種子発芽中活性な種子発芽プロモーターの両プロモーターが挙げられる。Thompson et al.,(1989)BioEssays 10:108を参照されたい。種子優先プロモーターとしては、限定はされないが、Cim1(サイトカイニン誘導メッセージ)、cZ19B1(トウモロコシ19kDaゼイン)およびmilps(ミオ−イノシトール−1−リン酸合成酵素)(国際公開第00/11177号パンフレットおよび米国特許第6,225,529号明細書)が挙げられる。双子葉植物の種子優先プロモーターとしては、限定はされないが、マメ−β−ファセオリン、ナピン(napin)、β−コングリシニン、ダイズレクチン、クルシフェリンなどが挙げられる。単子葉植物の種子優先プロモーターとしては、限定はされないが、トウモロコシ15kDaゼイン、22kDaゼイン、27kDaガンマゼイン、ワキシー(waxy)、シュランケン(shrunken)1、シュランケン(shrunken)2、グロブリン1、オレオシンおよびnuc1が挙げられる。国際公開第00/12733号パンフレットも参照されたい。この文献には、END1およびEND2遺伝子由来の種子優先プロモーターが開示されている。
用語「誘導性プロモーター」は、例えば化学物質(化学誘導剤)による内因性または外因性刺激に応じて、あるいは、環境シグナル、ホルモンシグナル、化学物質シグナルおよび/または発生シグナルに応じて、コード配列または機能性RNAを選択的に発現するプロモーターを指す。誘導性または調節プロモーターとしては、例えば、光、熱、ストレス、フラッディングもしくは乾燥、塩ストレス、浸透圧ストレス、植物ホルモン、創傷、またはエタノール、アブシジン酸(ABA)、ジャスモネート、サリチル酸もしくは毒性緩和剤などの化学物質によって誘導または調節されるプロモーターが挙げられる。
ストレス誘導性プロモーターの例は、RD29Aプロモーター(Kasuga et al.(1999)Nature Biotechnol.17:287−91)である。当業者は、乾燥条件をシミュレーションするためのプロトコル、および、シミュレーションした、または天然に発生した乾燥条件に置かれた植物体の乾燥耐性を評価するためのプロトコルに精通している。例えば、植物体に、ある期間にわたって、通常必要とする量より少ない量の水を与えるか、または水を全く与えないことによって、乾燥条件をシミュレートすることができ、また、生理学的および/または物理的条件、例えば、活力、成長、大きさもしくは根の長さ、または、特に、葉の色もしくは葉の面積(これらに限定されない)の相違を見出すことによって、乾燥耐性を評価することができる。乾燥耐性を評価する他の技術としては、クロロフィル蛍光、光合成速度およびガス交換速度の測定が挙げられる。また、当業者は、浸透圧ストレス、塩ストレスおよび温度ストレスなどのストレス条件をシミュレーションするためのプロトコル、および、シミュレーションした、または天然に発生したストレス条件に置かれた植物体の乾燥耐性を評価するためのプロトコルに精通している。
植物細胞に有用な誘導性プロモーターの他の例は、2013年11月21日公開の米国特許出願公開第2013/0312137A1号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。米国特許出願公開第2013−0312137A1号明細書には、トウモロコシおよびその機能的断片由来のマンニトール脱水素酵素をコードするCBSU−葯サブトラクションライブラリー(CAS1)遺伝子のZmCAS1プロモーターが記載されている。ZmCAS1プロモーター(「CAS1プロモーター」、「マンニトール脱水素酵素プロモーター」、「mdhプロモーター」とも呼ばれる)は、化学処理またはストレス処理によって誘導することができる。化学物質は、限定はされないが、N−(アミノカルボニル)−2−クロロベンゼンスルホンアミド(2−CBSU)などの毒性緩和剤であり得る。ストレス処理は、限定はされないが、熱ショック処理などの熱処理であり得る(2015年2月25日に出願され、参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第62/120421号明細書も参照されたい。
植物細胞に有用な様々な種類の新しいプロモーターが絶えず発見されており、多くの例が、OkamuroおよびGoldberg編集(1989)のThe Biochemistry of Plants、Vol.115、Stumpf and Conn、eds(New York、NY:Academic Press)、pp.1−82)中に見出すことができる。
「翻訳リーダー配列」は、遺伝子のプロモーター配列とコード配列間のポリヌクレオチド配列を指す。翻訳リーダー配列は、mRNAの翻訳開始配列の上流に存在する。翻訳リーダー配列は、mRNAへの一次転写物のプロセシング、mRNAの安定性または翻訳効率に影響し得る。翻訳リーダー配列の例は、報告されている(例えば、Turner and Foster、(1995)Mol Biotechnol 3:225−236)。
「3’非コード配列」、「転写ターミネーター」または「終止配列」は、コード配列の下流に位置するDNA配列を指し、ポリアデニル化認識配列、およびmRNAプロセシングまたは遺伝子の発現に影響を及ぼすことができる、調節シグナルをコードする他の配列を含む。ポリアデニル化シグナルは、通常、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸系の付加に影響することによって特徴付けられる。異なる3’非コード配列の使用は、Ingelbrecht et al.、(1989)Plant Cell 1:671−680に例示されている。
「RNA転写物」は、RNAポリメラーゼにより触媒されるDNA配列の転写によりえられる産物を指す。RNA転写物が、DNA配列の完全に相補的なコピーである場合、これは一次転写物またはプレmRAと呼ばれる。RNA転写物は、それが一次転写物プレRNAの転写後のプロセシングで得られたRNAである場合、成熟RNAまたはmRNAと呼ばれる。「メッセンジャーRNA」または「mRNA」は、イントロンを有しておらず、細胞によりタンパク質に翻訳され得るRNAを指す。「crDNA」は、mRNA鋳型に相補的であり、かつ逆転写酵素を使用してmRNA鋳型から合成されるDNAを指す。cDNAは単鎖であってよく、あるいはDNAポリメラーゼIのKlenow断片を使用して、二本鎖形態に変換することができる。「センス」RNAは、mRNAを含むRNA転写物を指し、細胞内またはインビトロでタンパク質に翻訳され得る。「アンチセンスRNA」は、標的一次転写物またはmRNAの全部または一部に対して相補的であり、かつ標的遺伝子の発現をブロックするRNA転写物を指す(例えば米国特許第5,107,065号明細書を参照)。アンチセンスRNAの相補性は、特定の遺伝子転写物の任意の部分、すなわち5’末端非コーディング配列、3’末端非コーディング配列、イントロンまたはコーディング配列との相補性であり得る。「機能的RNA」は、アンチセンスRNA、リボザイムRNAまたはポリペプチドに翻訳され得ないがそれにもかかわらず細胞内プロセスに影響を及ぼすその他のRNAを指す。用語「相補体」および「逆相補体」はmRNA転写物に関して本明細書において互換的に使用され、メッセージのアンチセンスRNAを定義することが意図されている。
本明細書で使用する場合、「作動可能に結合される」という用語は、一方の機能が他方により調節されるような、単一の核酸断片上の核酸配列の結合を指す。例えば、プロモーターは、コード配列の発現を調節することができる場合には、このコード配列に作動可能に連結されている(すなわち、このコード配列はプロモーターの転写制御下にある)。コード配列は、センスまたはアンチセンス方向に、作動可能に調節配列と結合することができる。別の例では、相補的RNA領域は、直接または間接的に、標的mRNAの5’末端、もしくは標的mRNAの3’末端と、または標的mRNA内で作動可能に結合することができるか、あるいは最初の相補的領域は5’末端であり、その相補体は標的mRNAの3’末端である。
本明細書で使用される、標準の遺伝子組み換えDNAおよび分子クローニング技術は、当該技術分野ではよく知られており、Sambrook et al.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor、NY(1989)に、より詳しく説明されている。形質転換法は当業者にはよく知られており、以下で説明する。
「PCR」または「ポリメラーゼ連鎖反応」は特定のDNAセグメントの合成技術であり、一連の反復的な変性サイクル、アニーリングサイクルおよび伸長サイクルからなる。通常、二本鎖DNAは熱変性を起こし、標的セグメントの3’末端バウンダリーに相補的な2つのプライマーが低い温度でDNAにアニーリングされ、その後、中間温度で伸長する。これら3つの連続した工程の1セットを「サイクル」と呼ぶ。
用語「組み換え」は、例えば化学合成による、または、遺伝子工学技術による核酸の単離セグメントの操作による、配列の2つの、通常であれば分離しているセグメントの人工的な結合を指す。
用語「プラスミド」、「ベクター」および「カセット」は、細胞の中央代謝の一部でない遺伝子をしばしば運ぶ、追加の染色体要素を指し、通常、二本鎖DNAの形態をとる。そのような要素は、多くのヌクレオチド配列が、目的のポリヌクレオチドを細胞に導入することができる固有の構築物に連結されている、または組み換えられている任意の起源に由来する、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAの、線状のまたは環状の、自律的に複製する配列、ゲノム組み込み配列、ファージまたはヌクレオチド配列であることができる。「形質転換カセット」は、遺伝子を含み、かつ、遺伝子に加えて、特定の宿主細胞の形質転換を促進する要素を有する特定のベクターを指す。「発現カセット」は、遺伝子を含み、かつ、遺伝子に加えて、宿主にその遺伝子を発現させることのできる要素を有する特定のベクターを指す。
用語「組み換えDNA分子」、「組み換えコンストラクト」、「発現コンストラクト」、「コンストラクト」、「コンストラクト」および「組み換えDNAコンストラクト」は、本明細書では互換的に使用される。組み換えコンストラクトは、自然界では一緒に見出されるとは限らない、核酸断片、例えば、調節配列およびコード配列の人工的な組み合わせを含む。例えば、コンストラクトは、異なる起源に由来する調節配列およびコード配列を含み得るか、または同一起源に由来するが、自然界に見出されるのとは異なる方法で配列された調節配列およびコーディング配列を含み得る。そのようなコンストラクトは、それだけで使用し得るか、またはベクターと共に使用し得る。ベクターが使用される場合、ベクターの選択は、当業者にはよく知られているように、宿主細胞を形質転換するために使用する方法に依存する。例えばプラスミドベクターを使用することができる。熟練した職人は、宿主細胞を成功裡に形質転換し、選択し、そして増殖させるために、ベクター上に存在しなければならない遺伝要素をよく知っている。熟練した職人は、また、異なる、独立した形質転換イベントは、異なる発現レベルとパターンをもたらすこと(Jones et al.,(1985)EMBO J 4:2411−2418;De Almeida et al.,(1989)Mol Gen Genetics 218:78−86)、したがって、所望の発現レベルとパターンを示す系統を得るためには、多重イベントは通常スクリーニングされることも認識するであろう。そのようなスクリーニングは、DNAのサザン分析、mRNA発現のノーザン分析、PCR、実時間定量PCR(qPCR)、逆転写PCR(RT−PCR)、タンパク質発現の免疫ブロッティング、酵素もしくは活性分析、および/または表現型分析を含む、標準の分子生物学的、生化学的および他の分析法により行い得る。
用語「発現」は、本明細書で使用する場合、前駆体または成熟型のいずれかの形態の機能的最終産物(例えばmRNA、ガイドRNAまたはタンパク質)の産生を指す。
用語「導入」は、化合物、例えば、限定はされないが、核酸(例えば発現コンストラクト)またはペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を細胞内へ導入、提供すること、それらを細胞と接触させることを含む。導入は、ポリヌクレオチドの直接送達(RNA、DNA、RNA−DNAハイブリッド、一本鎖もしくは二本鎖オリゴヌクレオチド、直鎖もしくは環状ポリヌクレオチドなどの)を含み、かつ/またはタンパク質(ポリペプチド)の直接送達を含む。導入は、核酸またはポリペプチドを真核または原核細胞(ここで核酸が細胞のゲノムに組み込まれ得る)へ組み込むことへの言及を含み、かつ、核酸またはタンパク質を細胞へ一過性に導入することを含む。導入は、安定なまたは一過性の形質転換法、軽質移入、形質導入法、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法、ウイルス法、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属媒介形質転換、弾道粒子加速法、ウィスカー媒介形質転換および有***雑を含む。このように、核酸断片(例えば、組み換えDNAコンストラクト/発現コンストラクト、ガイドRNA、ガイドDNA、鋳型DNA、ドナーDNA)を細胞に挿入するという文脈での「導入」は、「軽質移入」、「形質転換」または「形質導入」を含み、真核または原核細胞(ここで核酸断片は、細胞のゲノム(例えば、染色体、プラスミド、プラスチドまたはミトコンドリアDNA)に組み込まれるか、自律性レプリコンに変換されるか、または一過性に発現し得る(例えば、軽質移入mRNA))へ核酸を組み込むことを含む。
生命体への組成物の導入、接触および/または提供のために、安定形質転換法、一過性形質転換法、ウイルス法、有***雑および有性育種を含む、多様な方法が知られている。安定形質転換は、導入されたポリヌクレオチドは、生命体のゲノムに組み込まれ、その子孫によって継承され得ることを意味する。一過性形質転換は、導入された組成物は、生命体の中で一時的にのみ発現または存在することを意味する。
ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの細胞または生命体への接触、提供、導入のためのプロトコルは知られており、マイクロインジェクション法(Crossway et al.,(1986)Biotechniques 4:320−34および米国特許第6,300,543号明細書)、***組織形質転換法(米国特許第5,736,369号明細書)、エレクトロポレーション法(Riggs et al.,(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:5602−6、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属媒介形質転換法(米国特許第5,563,055号明細書および同第5,981,840号明細書)、ウィスカー媒介形質転換法(Ainley et al.2013、Plant Biotechnology Journal 11:1126−1134;Shaheen A.and M.Arshad 2011 Properties and Applications of Silicon Carbide(2011),345−358 Editor(s):Gerhardt,Rosario.Publisher:InTech、Rijeka、Croatia.CODEN:69PQBP;ISBN:978−953−307−201−2)遺伝子直接導入法(Paszkowski et al.,(1984)EMBOJ3:2717−22)および弾道粒子加速法(米国特許第4,945,050号明細書;同第5,879,918号明細書;同第5,886,244号明細書;同第5,932,782号明細書;Tomes et al.,(1995)”Direct DNA Transfer into Intact Plant Cells via Microprojectile Bombardment” in Plant Cell,Tissue,and Organ Culture:Fundamental Methods,ed.Gamborg & Phillips(Springer−Verlag,Berlin);McCabe et al.,(1988)Biotechnology 6:923−6;Weissinger et al.,(1988)Ann Rev Genet 22:421−77;Sanford et al.,(1987)Particulate Science and Technology 5:27−37(onion);Christou et al.,(1988)Plant Physiol 87:671−4(soybean);Finer and McMullen,(1991)In Vitro Cell Dev Biol 27P:175−82(soybean);Singh et al,(1998)Theor Appl Genet 96:319−24(soybean);Datta et al.,(1990)Biotechnology 8:736−40(rice);Klein et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:4305−9(トウモロコシ);Klein et al.,(1988)Biotechnology 6:559−63(トウモロコシ);米国特許第5,240,855号明細書;同第5,322,783号明細書および同第5,324,646号明細書;Klein et al.,(1988)Plant Physiol 91:440−4(トウモロコシ);Fromm et al.,(1990)Biotechnology 8:833−9(トウモロコシ);Hooykaas−Van Slogteren et al.,(1984)Nature 311:763−4;米国特許第5,736,369号明細書(穀草類);Bytebier et al.,(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:5345−9(ユリ科(Liliaceae));De Wet et al,(1985)in The Experimental Manipulation of Ovule Tissues,ed.Chapman et al.,(Longman、New York),pp.197−209(花粉);Kaeppler et al.,(1990)Plant Cell Rep 9:415−8)およびKaeppler et al.,(1992)Theor Appl Genet 84:560−6(ウィスカー媒介形質転換);D’Halluin et al.,(1992)Plant Cell4:1495−505(エレクトロポレーション);Li et al.,(1993)Plant Cell Rep 12:250−5;Christou and Ford(1995)Annals Botany 75:407−13(コメ)ならびにOsjoda et al.,(1996)Nat Biotechnol 14:745−50(アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)経由トウモロコシ)が含まれる。
あるいは、ポリヌクレオチドは、細胞または生命体とウイルスまたはウイルス性核酸とを接触させることにより、細胞または生命体に導入され得る。一般に、そうした方法は、ポリヌクレオチドをウイルス性DNAまたはRNA分子内に組み込むことを含む。いくつかの実施例では、目的のポリペプチドは、最初、ウイルス性ポリタンパク質の一部として合成され、これは、後でインビボまたはインビトロのタンパク質分解処理を受けて、所望の組み換えタンパク質を生成し得る。ウイルス性DNAまたはRNA分子を含む、ポリヌクレオチドを植物体に導入し、そこにコードされているタンパク質を発現させる方法は知られており、例えば、米国特許第5,889,191号明細書、同第5,889,190号明細書、同第5,866,785号明細書、同第5,589,367号明細書および同第5,316,931号明細書を参照されたい。一過性形質転換法は、限定はされないが、二本鎖切断誘発剤などのポリペプチドの生命体への直接導入、DNAおよび/またはRNAポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドの導入、および二本鎖切断誘発剤をコードするmRNAなどのRNA転写物の生命体への導入を含む。そのような方法は、例えば、マイクロインジェクション法または粒子撃ち込み法を含む。例えば、Crossway et al.,(1986)Mol Gen Genet 202:179−85;Nomura et al.,(1986)Plant Sci 44:53−8;Hepler et al.,(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:2176−80;およびHush et al.,(1994)J Cell Sci 107:775−84を参照されたい。
ガイドされたCasシステムの、いずれかのまたは全ての構成要素(タンパク質および/または核酸)の摂取を容易にする分子を使用する方法、例えば細胞貫通ペプチドおよびナノキャリアを含む任意の方法で、核酸およびタンパク質を、細胞に提供することができる。米国特許出願公開第2011/0035836号明細書 Nanocarier based plant transfection and transduction、および欧州特許出願公開第2821486A1号明細書Method of introducing nucleic acid into plant cells(参照により本明細書に組み込まれる)も参照されたい。
ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼを複合体の細胞への導入は、前記複合体の個々の構成要素を別々に、もしくは化学結合させて、または直接(ガイド用RNAおよびCasエンドヌクレアーゼ用タンパク質の直接送達)もしくは構成要素(ガイドRNA、Casエンドヌクレアーゼ)を発現する組み換えコンストラクト経由で、細胞へ導入することを含む。ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体の細胞への導入は、リボヌクレオチド−タンパク質としてガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体を細胞へ導入することを含む。リボヌクレオチド−タンパク質は、本明細書に記載のように、細胞に導入する前に組み立てることができる。
植物細胞はヒトおよび動物細胞とは、植物細胞が、RGENリボヌクレオタンパク質の直接送達および/またはRGEN構成要素の直接送達に障壁として作用する、植物細胞壁を有する点で異なる。
本明細書に記載のように、RGENリボヌクレオタンパク質の植物細胞への直接送達は、微粒子銃法(粒子撃ち込み法により達成することができる。本明細書に記載の実験に基づき、熟練職人は今では、RGENリボヌクレオタンパク質の植物細胞への送達に、他の如何なる直接送達法、例えば、限定はされないが、プロトプラストへのポリエチレングリコール(PEG)媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション法、細胞貫通ペプチド法またはメタ多孔性シリカナノ粒子(MSN)媒介タンパク質直接送達法などを成功裡に使用できると想像することができる。
本明細書に記載のように、RGENリボヌクレオタンパク質の直接送達は、その後、複合体が急速に分解し、細胞内での複合体の存在が一時的となるような形での、細胞ゲノムの標的部位におけるゲノム編集を可能にする。このRGEN複合体の一時的存在は、オフターゲットになる結果を減少させることに繋がり得る。対照的に、プラスミドDNA配列によるRGEN構成要素(ガイドRNA、Cas9エンドヌクレアーゼ)の送達は、これらのプラスミドからのRGENのコンスタントな発現をもたらし、これはオフターゲットになる結果を増強する(Cradick,T.J.et al(2013)Nucleic Acids Res 41:9584−9592;Fu,Y et al(2014)Nat.Biotechnol.31:822−826を参照されたい。
直接送達は、RNAにガイドされたエンドヌクレアーゼの任意の1構成要素(ガイドRNA、Casタンパク質、gRNAまたはCasエンドヌクレアーゼをコードするmRNA)またはRGEN複合体それ自身と、限定はされないが、金粒子、タングステン粒子および炭化ケイ素ウィスカー粒子などの微粒子を含む送達マトリックスとを化学結合させることにより達成することができる。微粒子をプラスミドDNAおよび目的DNAに化学結合させるために、本明細書で説明した結合法の例は、ガイドRNA分子、mRNA分子、Casタンパク質およびRGEN複合体の微粒子へのコーティングにも使用することができる。
これらのコーティングされた微粒子は、実施例8に記載の粒子撃ち込み法などの、当該技術分野で知られている任意の直説法により細胞に導入することができる。RGEN構成要素をマイクロ粒子にコーティングするために、微粒子とRGEN構成要素またはRGEN複合体とを任意の物質中で化学結合させる(混合する)ことができる。例えば、RGEN構成要素は、任意の適切なバッファー(例えば、比限定的に水溶性カチオン性脂質、例えば、限定はされないが、TransIT−2020トランスフェクション試薬など(カタログ番号MIR 5404、Mirus、USA))を使用して、直径が少なくとも0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm,0.5μm,0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μmまたは1.0μmの範囲の金ペレット上に沈殿させることができる。RGEN構成要素の溶液は、少なくとも、0.1μg、0.2μg、0.3μg、0.4μg、0.5μg、0.6μg、0.7μg、0.8μg、0.9μg、1.0μg、2.0μg、3.0μg、4.0μg、5.0μg、6.0μg、7.0μg、8.0μg、9.0μgまたは10μgのRNA(ガイドRNAまたはmRNA)またはCasエンドヌクレアーゼタンパク質を使用して、氷上で(または、微粒子への結合に適切な任意の温度で)調製することができる。予め混合したRGEN複合体のRGEN構成要素に、少なくとも1μl〜20μlの調製した微粒子を加え、注意深く混合することができる。
ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体を細胞に導入する方法は、少なくとも1種のガイドRNA分子と少なくとも1種のCasエンドヌクレアーゼタンパク質を化学結合させて、リボヌクレオチド−タンパク質を生成させ、前記リボヌクレオチド−タンパク質を粒子送達マトリックスと化学結合させて、前記リボヌクレオチド−タンパク質とマトリックスとを結合させ、リボヌクレオチド−タンパク質−マトリックス複合体を生成させ;前記リボヌクレオチド−タンパク質−マトリックス複合体を前記細胞に導入することを含む方法を含む。粒子送達マトリックスは、カチオン性脂質と化学結合した微粒子を含むことができる。
用語「カチオン性脂質」は、水溶性カチオン性脂質、例えば、限定はされないが、TransIT−2020など、またはカチオン性脂質溶液、例えば、限定はされないが、N、N、N’、N’−テトラメチル−N、N’−ビス(2−ヒドロキシルエチル)−2,3−ジ(オレオイルオキシ)−1、4−ブタンジアンモニウムヨウ素およびL−ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)(2007年8月2日に公開された米国特許出願公開第2007/0178593号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)も参照されたい)などを含むカチオン性脂質溶液を含む。
粒子送達マトリックスは、金粒子、タングステン粒子および炭化ケイ素ウィスカー粒子からなる群から選択された偽粒子を含むことができる。
粒子送達マトリックスは、Tfx−10(商標)、Tfx−20(商標)、Tfx−50(商標)、Lipofectin(商標)、Lipofectamine(商標)、Cellfectin(商標)、Effectene(商標)、Cytofectin GSV(商標)、Perfect Lipids(商標)、DOTAP(商標)、DMRIE−C(商標)、FuGENE−6(商標)、Superfect(商標)、Polyfeet(商標)、ポリエチレンイミン、キトサン、プロタミンCl、ヒストンH1、ヒストンCENH3、ポリ−LリシンおよびDMSA(2007年8月2日公開の米国特許出願公開第2007/0178593号明細書(参照により本明細書に組み込まれる))からなる群から選択された化合物をさらに含むことができる。
RGEN構成要素は、また、微粒子にコーティングされる前に、少なくとも0.1μg、0.2μg、0.3μg、0.4μg、0.5μg、0.6μg、0.7μg、0.8μg、0.9μg、1.0μg、2.0μg、3.0μg、4.0μg、5.0μg、6.0μg、7.0μg、8.0μg9.0μgまたは10μgのガイドRNAと少なくとも0.1μg、0.2μg、0.3μg、0.4μg,0.5μg,0.6μg,0.7μg,0.8μg,0.9μg、1.0μg、2.0μg、3.0μg、4.0μg、5.0μg、6.0μg、7.0μg、8.0μg、9.0μgまたは10μgのCasエンドヌクレアーゼを、複合体の生成に適した溶液(限定はされないが、Cas9バッファー(NEB)など)中、複合体の生成に適した任意の温度、例えば、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23.0℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33.0℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃および40℃の範囲の温度などで化学結合させることにより、化学結合させることができる。
ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体を細胞に導入する方法は、少なくとも1種のガイドRNA分子と、少なくとも1種のCasエンドヌクレアーゼタンパク質とを細胞に導入し、かつ適切な条件下で前記細胞を培養して、前記細胞内で、前記ガイドRNAと前記Casエンドヌクレアーゼタンパク質との複合体を形成させる方法を含む。
ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体を細胞に導入する方法は、少なくとも1種のガイドRNA分子と、Casエンドヌクレアーゼタンパク質をコードする少なくとも1種のmRNAとを細胞に導入し、かつ適切な条件下で前記細胞を培養し、前記mRNAに前記Casエンドヌクレアーゼタンパク質を翻訳させて前記ガイドRNAと複合体を形成させる方法を含む。
ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体を細胞に導入する方法は、少なくとも1種のガイドRNA分子と、少なくとも1種のCasエンドヌクレアーゼタンパク質とを化学結合させてリボヌクレオチド−タンパク質を生成させ、前記リボヌクレオチド−タンパク質と粒子送達マトリックスとを化学結合させて、前記リボヌクレオチド−タンパク質とマトリクスとを結合させてリボヌクレオチド−タンパク質−マトリックス複合体を形成させ;かつ前記リボヌクレオチド−タンパク質−マトリックス複合体を少なくとも1種のポリヌクレオチド鋳型と共に前記細胞に導入する(ここで、前記ポリヌクレオチド改変鋳型は、前記細胞のゲノム内ヌクレオチド配列に少なくとも1つのヌクレオチドの改変を含み、前記ポリヌクレオチド改変鋳型の前記少なくとも1つのヌクレオチド改変は、(i)少なくとも1つのヌクレオチドの置換、(ii)少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、(iii)少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、および(iv)(i)〜(iii)の任意の組み合わせからなる群から選択される)方法を含む。
ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体を細胞に導入する方法は、少なくとも1種のガイドRNA分子と、少なくとも1種のCasエンドヌクレアーゼタンパク質とを化学結合させて、リボヌクレオチド−タンパク質を生成させ、前記リボヌクレオチド−タンパク質を粒子送達マトリックスと化学結合させ、前記リボヌクレオチド−タンパク質とマトリックスとを結合させてリボヌクレオチド−タンパク質−マトリックス複合体を形成させ;かつ前記リボヌクレオチド−タンパク質−マトリックス複合体をドナーDNAと共に前記細胞に導入する(ここで、前記ドナーDNAは少なくとも1つの目的のポリヌクレオチドを含む)方法を含む。
細胞を培養する適切な条件は、当該技術分野でよく知られており、熟練職人は、細胞の種類に基づき任意の培養条件(植物細胞に適した条件など)を使用することができる。実施例8に記載のように、植物の胚または細胞は、当該技術分野で知られている任意の植物体メンテナンス培地(限定はされないが、560Pなど、実施例8)中、26℃〜37℃の温度範囲で、12〜48時間インキュベートすることができ、その後、26℃の場所に置くことができる。5〜7日後、胚/細胞を当該技術分野で知られている任意の選択培地(限定はされないが、560R、実施例8)に移し、その後継代培養する。
RGEN構成要素(ガイドRNA、Casエンドヌクレアーゼタンパク質を含む)は、微粒子にコーティングする(微粒子と化学結合させる)前に、少なくとも0.1μg、0.2μg、0.3μg、0.4μg、0.5μg、0.6μg、0.7μg、0.8μg、0.9μg、1.0μg、2.0μg、3.0μg、4.0μg、5.0μg、6.0μg、7.0μg、8.0μg、9.0μgまたは10μgのガイドRNAを、少なくとも0.1μg、0.2μg、0.3μg、0.4μg、0.5μg、0.6μg、0.7μg、0.8μg、0.9μg、1.0μg、2.0μg、3.0μg、4.0μg、5.0μg、6.0μg、7.0μg、8.0μg、9.0μgまたは10μgのCasエンドヌクレアーゼと、複合体を形成させるのに適した溶液(限定はされないが、Cas9バッファー(NEB)など)中で、複合体を形成させるのに適した温度、例えば1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃および40℃の範囲の温度などで化学結合させることにより、リボヌクレオチド−タンパク質複合体(RNP)を形成させるために化学結合させることができる。
「成熟」タンパク質は、翻訳後にプロセシングされたポリペプチド(すなわち、一次翻訳産物中に存在する任意のプレペプチドまたはプロペプチドが除去されているポリペプチド)を指す。「前駆体」タンパク質は、mRNAの翻訳の一次産物(すなわち、プレペプチドおよびプロペプチドが依然として存在している)を指す。プレペプチドおよびプロペプチドは細胞内局在化シグナルであり得るが、これに限定はされない。
「安定な形質転換」は、核酸断片が、核ゲノムおよび細胞小器官ゲノムの両者を含む、宿主生命体のゲノムへ移動し、遺伝子的に安定な継承をもたらすことを指す。対照的に「一過性形質転換」は、核酸断片が、宿主生命体の核または他のDNA含有細胞小器官へ移動し、組み込まれることなく、あるいは安定に継承されずに発現することを指す。形質転換された核酸断片を含む宿主生命体を「トランスジェニック」生命体と称する。
遺伝子的に改良された生殖質の商業的開発も、複数の形質を作物に導入する段階にまで進んできており、しばしばこれを遺伝子スタッキングアプローチという。このアプローチでは、目的の異なる特性を付与する、複数の遺伝子を植物体に導入することができる。遺伝子スタッキングは、限定はされないが、共形質転換、再形質転換および目的の異なる遺伝子を有する系統の交雑を含む、多くの手段で達成される。
細胞としては、限定はされないが、ヒト、非ヒト、動物、細菌、真菌、昆虫、酵母、および植物の細胞ならびに本明細書に記載の方法によって産出された植物および種子の細胞が挙げられる。植物細胞としては、トウモロコシ、コメ、ソルガム、ライムギ、オオムギ、コムギ、キビ、カラスムギ、サトウキビ、芝草またはスイッチグラス、ダイズ、キャノーラ、アルファルファ、ヒマワリ、ワタ、タバコ、ピーナッツ、ジャガイモ、トマト、タバコ、シロイロナズナ(Arabidopsis)およびベニバナの細胞からなる群から選択された細胞が挙げられる。
用語「植物体」は、植物体全体、植物器官、植物組織、種子、植物細胞およびその子孫を含む。植物細胞としては、限定はされないが、種子、懸濁培養物、胚、***組織領域、カルス組織、葉、根、シュート、配偶体、胞子体、花粉および小胞子の細胞が挙げられる。植物体の部分には、分化組織および未分化組織が含まれ、それらの組織としては、限定はされないが、根、茎、シュート、葉、花粉、種子、腫瘍組織、および様々な形態の細胞および培養物(例えば、単細胞、プロトプラスト、胚およびカルス組織)が挙げられる。植物組織は、植物体中に、または植物器官、組織、もしくは細胞培養物中に存在し得る。用語「植物器官」は、形態的にも機能的にも区別された植物体の部分を構成する、植物組織または組織群を指す。用語「ゲノム」は、生命体の各細胞、またはウイルスもしくは細胞小器官に存在する遺伝物質(遺伝子および非コード配列)の相補体の全体;ならびに/あるいは1つの親から1つの(ハプロイド)単位として受け継いだ一式の染色体を指す。「子孫」は、植物体のその後の世代を含む。
トランスジェニック植物体としては、例えば、形質転換工程によって導入された異種ポリヌクレオチドをゲノム内に含む植物体が挙げられる。異種ポリヌクレオチドは、そのポリヌクレオチドが後代に継承されるよう、ゲノムに安定に組み込むことができる。異種ポリヌクレオチドは、ゲノムに単独で、または組み換えDNAコンストラクトの一部として組み込んでもよい。トランスジェニック植物体はまた、ゲノム内に複数の異種ポリヌクレオチドを含むことができる。各異種ポリヌクレオチドは、トランスジェニック植物体に異なる形質を付与してもよい。異種ポリヌクレオチドとして、外来種を起源とする配列を挙げることができ、あるいは、同種からの配列であれば、その天然形態から大幅に改変することができる。トランスジェニック体としては、異種の核酸の存在によってその遺伝子型を変化させた、任意の細胞、細胞系統、カルス、組織、植物体の部分または植物体(初めからそのように変更されたトランスジェニック体、および初めのトランスジェニック体から有***雑または無性増殖によって作られたものを含む)を挙げることができる。従来の植物育種方法による、外来ポリヌクレオチドが挿入されない本明細書に記載のゲノム編集手順による、または自然に発生するイベント(ランダム交雑受精、非組み換えウイルス感染、非組み換え細菌形質転換、非組み換え転位もしくは自然変異など)による、ゲノム(染色体または染色体外の)の変化を、トランスジェニックと見なすことは意図されていない。
本開示のある特定の実施形態では、稔性植物は、生存可能な雄性および雌性配偶子を生み出す植物であり、自家稔性植物である。そのような自家稔性植物は、他の植物の配偶子や、それに含まれる遺伝物質の貢献によらずに子孫の植物体を作ることができる。本開示の他の実施形態は、植物が生存可能な、またはそうでなければ受精可能な雄性配偶子もしくは雌性配偶子または両者を作らないことから、自家稔性でない植物を使用することがある。本明細書で使用する場合、「雄性不稔植物」は生存可能な、またはそうでなければ受精可能な雄性配偶子を作らない植物である。本明細書で使用する場合、「雌性不稔植物」は生存可能な、またはそうでなければ受精可能な雌性配偶子を作らない植物である。雄性不稔植物および雌性不稔植物はそれぞれ、雌性稔性および雄性捻性であり得ることが認められている。さらに、雄性稔性(雌性捻性以外)植物は、雌性稔性植物と交雑されると、生存可能な子孫を産生することができ、また、雌性稔性(雄性捻性以外)植物は、雄性稔性植物と交配されると、生存可能な子孫を産生することができことが認められている。
本明細書では、非従来型酵母は、サッカロミケス(Saccharomyces)属(例えば、サッカロミケス・セレビシアエ(S.cerevisiae))またはシゾサッカロミケス(Schizosaccharomyces)属の酵母種でない任意の酵母を指す。非従来型酵母は、Non−Conventional Yeasts in Genetics,Biochemistry and Biotechnology:Practical Protocols(K.Wolf、K.D.Breunig,G.Barth,Eds.,Springer−Verlag,Berlin,Germany,2003)(これは参照により本明細書に組み込まれる)に記載がある。ある特定の実施形態では、非従来型酵母は、さらに(または代替的に)相同組み換え(HR)に媒介される修復プロセスよりも、非相同末端結合(NHEJ)DNA修復プロセスを好む酵母であり得る。この線―HRよりもNHEJを好む―に沿った非従来型酵母の定義は、さらにChen et al.(PLoS ONE8:e57952)により開示されている(これは参照により本明細書に組み込まれる)。本明細書中で好ましい非従来型酵母は、ヤロウイア(Yarrowia)属のもの(例えば、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))である。本明細書中の用語「酵母」は、主に単細胞の形態で存在する真菌種を指す。本明細書では、酵母は代替的に「酵母細胞」と呼ぶことがある(2014年8月13日に出願された米国特許出願第62/036,652号明細書(これは参照により本明細書に組み込まれる)も参照されたい)。
「センチモルガン」(cM)または「地図単位」は、2つの連結遺伝子、マーカー、標的部位、遺伝子座またはこれらの任意のペア間の距離であり、減数***の産物の1%が組み換え体である。したがって、センチモルガンは、二つの連結遺伝子、マーカー、標的部位、遺伝子座またはこれらの任意のペアの間の、1%の平均組み換え頻度に等しい距離と等価である。
本開示では、1種またはそれより多くの導入された形質を含む植物の育種で使用している。最も一般的には、トランスジェニック形質は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、微粒子銃または他の一般に使用される手順に基づく形質転換システムの結果、植物ゲノムの至る所でランダムに挿入される。つい最近、部位指定導入遺伝子の挿入を可能にする、遺伝子標的プロトコルが開発された。1つの重要な技術、部位特異的組み込み(SSI)は、導入遺伝子が、前に挿入された導入遺伝子と同じ染色***置を標的とすることを可能にする。カスタム設計のメガヌクレアーゼおよびカスタム設計の亜鉛フィンガーメガヌクレアーゼにより、研究者は特異的な染色体の位置を標的とするヌクレアーゼを設計することができ、これらの試薬により導入遺伝子は、これらの試薬により切断された染色体部位を標的とすることができる。
真核ゲノム、例えば植物ゲノムの精密遺伝子工学で現在使用しているシステムは、エンドヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、亜鉛フィンガーヌクレアーゼおよびエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)のような転写活性化因子を誘導することを頼りにしており、これはそれぞれの新しい標的遺伝子座に対するデノボタンパク質工学を必要とする。本明細書に記載の、高度に特異的な、RNA指定DNAヌクレアーゼであるガイドRNA/Cas9エンドヌクレアーゼシステムは、多くの異なる標的配列の改変を目的とするときには、より容易にカスタム化でき、したがって、より有用である。
ヌクレアーゼのオフターゲット切断が標的細胞に有毒となる場合、本明細書に記載のガイドRNA/Casシステムは、ゲノム工学、特に植物ゲノム工学にとって特に有用である。本明細書に記載のガイドRNA/Casシステムのある実施形態では、発現最適化Cas9遺伝子が、安定に標的ゲノム、例えば植物ゲノムに組み込まれる。Cas9遺伝子の発現は、プロモーター、例えば植物プロモーター(これは、構成的プロモーター、組織特異的プロモーターまたは誘導性プロモーター、例えば、温度誘導性、ストレス誘導性、発生段階誘導性または化学的誘導プロモーターであり得る)の制御下にある。ガイドRNAまたはcrRNAが存在しない場合、Cas9タンパク質はDNAを切断できず、したがって、植物細胞中のその存在は殆どまたは全く影響しないであろう。したがって、本明細書に記載のガイドRNA/Casシステムの重要な利点は、細胞の生存に殆どまたは全く影響せずに、Cas9タンパク質を効率的に発現することができる、細胞系統またはトランスジェニック生命体を生み出し、維持する能力にある。標的遺伝子の改変を行うために所望のゲノム部位で切断を誘発するには、安定に組み込まれ、発現したCas9遺伝子を含有する細胞に、様々な方法でガイドRNAまたはcrRNAを導入することができる。例えば、ガイドRNAまたはcrRNAは、化学合成または酵素合成することができ、粒子衝突法またはエレクトロポレーション法などの直接送達法によりCas9発現細胞に導入することができる。あるいは、標的細胞中でガイドRNAまたはcrRNAを効率的に発現できる遺伝子は、化学的に、酵素的にまたは生物学的システム中で合成でき、これらの遺伝子は粒子衝突法、エレクトロポレーション法または生物学的送達法、例えばアグロバクテリウム(Agrobacterium)属媒介DNA送達などの直接送達法により、Cas9発現細胞に導入することができる。
ガイドRNA/Casシステムによる遺伝子の標的化は、導入遺伝子の挿入を指示するための方法および/または複数の導入遺伝子を含む、複雑なトランスジェニック形質の遺伝子座を作り出す方法で、国際公開第2013/0198888号パンフレット(2013年8月1日公開)で開示されているのと類似の仕方、すなわち目的遺伝子の導入に二本鎖切断誘発剤を使用する代わりに、本明細書で開示のガイドRNA/Casシステムを用いる仕方で使用することができる。複雑な形質遺伝子座は、遺伝子的に互いに関連した複数の導入遺伝子を有するゲノムの遺伝子座を含む。独立した導入遺伝子を、互いに0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1.0、2、または5センチモルガン(cM)以内に挿入することにより、単一の遺伝子座として導入遺伝子を繁殖させることができる(例えば、米国特許出願第13/427,138号明細書、またはPCT出願PCT/US2012/030061号明細書を参照されたい)。1つの導入遺伝子を含む植物体を選択後、(少なくとも)1つの導入遺伝子を含有する植物体を交雑させ、両導入遺伝子を含有するF1を形成することができる。これらのF1(F2またはBC1)からの子孫のうち、1/500の子孫は、同一の染色体上に組み換えられた2つの異なる導入遺伝子を有するであろう。その後、複雑な遺伝子座は、単一遺伝子座として両導入形質とともに繁殖することができる。この過程は繰り返すことができ、所望する形質を幾らでも積み上げることができる。
目的の表現型または形質と関係する染色体間隔を同定することができる。染色体間隔を同定するには、当該技術分野でよく知られている様々な方法を利用できる。そのような染色体間隔の境界は、目的の形質を制御する遺伝子に関連するマーカーを包含するよう引かれる。言い換えれば、染色体間隔はその間隔(間隔の境界を定義するターミナルマーカーを含む)内に存在する任意のマーカーが、すす紋病耐性のマーカーとして使用できるように決められる。ある実施形態では、染色体間隔は、少なくとも1つのQTLを含み、さらには、実際1つより多くのQTLを含み得る。同じ間隔内に複数のQTLが非常に近接していると、1つのマーカーが1つより多くのQTLと連結するので、特定のマーカーの特定のQTLとの関連が不明確になる。逆に、例えば、非常に近接している2つのマーカーが目的の表現型形質と共分離しているならば、これらのマーカーのそれぞれが同じQTLを、または2つの異なるQTLを特定しているのかどうか、しばしば不明確になる。用語「量的形質遺伝子座」または「QTL]は、少なくとも1つの遺伝的背景、例えば、少なくとも1つの育種集団の中における、量的表現型形質の発現差異に関連するDNAの領域を指す。QTL領域は、問題の形質に影響する遺伝子を包含するか、またはそうした遺伝子と緊密に関連している。「QTLのアレル」は、ハプロタイプなどの、連続したゲノム領域内または連鎖群内に、複数の遺伝子または他の遺伝因子を含むことができるQTLのアレルは、特定のウィンドウ内のハプロタイプを意味することができ、前記ウィンドウは、1つまたはそれより多くの多型マーカーのセットで定義し、かつ追跡ができる連続したゲノム領域である。ハプロタイプは、特定のウィンドウ内の各マーカー位置で、アレルの固有の指紋によって定義することができる。
標的部位またはその近傍に変更されたゲノムを有する、それらの細胞を、スクリーンマーカー表現型を使用せずに同定するには、様々な方法が利用できる。そうした方法は、標的配列中の変化を検出するための、標的配列の直接分析と見なすことができ、限定はされないが、PCR法、配列決定法、ヌクレアーゼ消化法、サザンブロット法およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
タンパク質は各種の方法で変更でき、アミノ酸の置換、削除、トランケーションおよび挿入が挙げられる。そうした操作法は、一般に知られている。例えば、タンパク質のアミノ酸配列変異体をDNAの変異により作製することができる。変異誘発法およびヌクレオチド配列の変更法として、例えば、Kunkel,(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488−92;Kunkel et al.,(1987)Meth Enzymol 154:367−82;米国特許第4,873,192号明細書;Walker and Gaastra,eds.(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company、New York)およびそこで引用された文献が挙げられる。タンパク質の生物学的活性に影響を与えそうにないアミノ酸置換についてのガイダンスとして、例えば、Dayhoff et al.のモデル、(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl Biomed Res Found、Washington、D.C.)がある。1つのアミノ酸を類似の特性を有する別のアミノ酸と交換するなどの保存的置換が好ましいかもしれない。保存的な削除、挿入およびアミノ酸置換は、タンパク質の特性に過激な変化を引き起こさないことが期待され、置換、削除、挿入またはこれらの組み合わせの影響は、ルーチンのスクリーニング分析で評価することができる。二本鎖切断誘発活性の分析法は知られており、一般に、標的部位を含有するDNA基質上における、試薬の全体の活性と特異性を測定する。
用語「双子葉植物」は、「ジコチルドネアエ(dicotyledoneae)類」としても知られる、被子植物のサブクラスを指し、それには植物体の全体、植物器官(例えば、葉、茎、根など)、種子、植物細胞およびその子孫が含まれる。本明細書で使用するとき、植物細胞は、制限なしに、種子、懸濁培養物、胚、***組織部位、カルス組織、葉、根、シュート、配偶体、胞子体、花粉および小胞子を含む。
本開示において用語「交雑した」、「交雑する」または「交雑」は、子孫(すなわち、細胞、種子または植物体)を残すための、授粉による配偶子の融合を意味する。この用語は、有***雑(別の植物体による1つの植物体への授粉)および自殖(自家授粉、すなわち花粉および胚珠(小胞体および大胞子)が同じ植物のものか、または遺伝子的に同じ植物体のもの)の両者を包含する。
用語「遺伝子移入」は、1つの遺伝的背景から別のものへ、遺伝子座の所望のアレルの伝達を指す。例えば、所望のアレルの特定の座位への遺伝子移入は、2つの親植物体の間の有***雑により、少なくとも1つの子孫植物体へ伝達することができるが、その場合、少なくとも一方の親植物体は所望のアレルをそのゲノム中に有している。あるいは、例えばアレルの伝達は、例えば融合したプロトプラスト中の2つのドナーゲノムの間の組み換えにより、行うことができるが、その場合、少なくとも一方のドナープロトプラストは所望のアレルをそのゲノム中に有している。所望のアレルは、例えば導入遺伝子、改変した(変異した、または編集した)野生型のアレルまたはマーカーもしくはQTLの選択されたアレルであり得る。
標準のDNA分離、精製、分子クローニング、ベクターコンストラクションおよび検証/キャラクタリゼーションの方法は十分に確立されており、例えば、Sambrook et al.,(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press、NY)を参照されたい。ベクターおよびコンストラクトには、環状プラスミドおよび線形ポリヌクレオチドが含まれ、これらには目的のポリヌクレオチド、および場合によりリンカー、アダプター、調節要素または分析要素を含む、他の構成要素が含まれる。いくつかの実施例では、認識部位および/または標的部位は、イントロン、コード配列、5’末端UTR、3’末端UTRおよび/または調節領域内に含有させることができる。
本開示は、植物体、植物細胞または植物の一部分に、標的部位に結合でき、その部位を二本鎖切断することができるガイドRNA/Casシステムを発現させるためのコンストラクトをさらに提供する。ある実施形態では、本開示の発現コンストラクトは、Cas遺伝子をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結したプロモーターおよび本開示のガイドRNAに作動可能に連結したプロモーターを含む。プロモーターは、植物細胞で作動可能に連結したヌクレオチド配列の発現を駆動することができる。
単子葉植物および双子葉植物を含む、あらゆる植物を使用することができる。使用可能な単子葉植物の例としては、限定はされないがトウモロコシ(ゼアマイズ(Zea・mays))、コメ(オリザ・サティバ(Oryza sativa))、ライムギ(セカレ・セレアレ(Secale cereale))、ソルガム(ソルガム・ビカラー(Sorghum bicolor)、ソルガム・ブルガレ(Sorghum vulgare))、トウジンビエ(例えばトウジンビエ、ペニセツム・グラウクム(Pennisetum glaucum))、キビ(パニクム・ミリアセウム(Panicum miliaceum))、アワ(セタリア・イタリカ(Setaria italica))、シコクビエ(エレウシネ・コラカナ(Eleusine coracana))、コムギ(トリティクム・アエスティバム(Triticum aestivum))、サトウキビ(サッカルム属の種(Saccharum spp.))、カラスムギ(アヴィーナ属(Avena))、オオムギ(ホルデウム属(Hordeum))、スイッチグラス(パニクム・ヴィルガツム(Panicum virgatum))、パイナップル(アナナス・コモスス(Ananas comosus))、バナナ(ムサ属の種(Musa spp.))、ヤシ、観賞植物および芝草が挙げられる。使用可能な双子葉植物の例として、限定はされないが、ダイズ(グリシン・マックス(Glycine max))、キャノーラ(ブラシカ・ナプス(Brassica napusおよびブラシカ・カンペストリス(B.campestris))、アルファルファ(メディカゴ・サティバ(Medicago sativa))、タバコ(ニコチアナ・タバクム(Nicotiana tabacum))、アラビドプシス(アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana))、ヒマワリ(ヘリアントゥス・アヌウス(Helianthus annuus))、ワタ(ゴシピウム・アルボレウム(Gossypium arboreum))およびラッカセイ(アラキス・ヒポガエア(Arachis hypogaea))、トマト(ソラナム・リコペルシカム(Solanum lycopersicum))、ジャガイモ(ソラナム・ツベロスム(Solanum tuberosum))などが挙げられる。
略語の意味は以下の通りである:「sec」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」は時間を意味し、「d」は日を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「μM」マイクロモル濃度を意味し、「mM」ミリモル濃度を意味し、「M」はモル濃度を意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「μmole」はマイクロモルを意味し、「g」はグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「U」は単位を意味し、「bp」は塩基対を意味し、そして「kb」キロベースを意味する。
本明細書で開示する組成物および方法の非限定的な例は下記の通りである。
1.選択マーカーを使用せずに植物細胞のゲノム中のヌクレオチド配列を改変する方法であって、少なくとも1つの植物細胞に、ヌクレオチド配列に位置する標的部位で二本鎖切断を行うことができるガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体を導入する工程と;
前記ヌクレオチド配列に改変を有する植物細胞を選択する工程(ここで、前記選択は選択マーカーの使用なしで生じる)とを含む方法。
1b.選択マーカーを使用せずに植物細胞のゲノム中のヌクレオチド配列を改変する方法であって、少なくとも1つの植物細胞に、前記ヌクレオチド配列に位置する標的部位で二本鎖切断を行うことができるガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体を導入する工程と;前記ヌクレオチド配列に改変を有する植物細胞を選択する工程(ここで、その選択は選択マーカーの使用なしで生じる)とを含む方法。
2.選択マーカーを使用せずにゲノム中に改変されたヌクレオチド配列を有する植物体を作製する方法であって、少なくとも1つの植物細胞に、ヌクレオチド配列に位置する標的部位で二本鎖切断を行うことができるガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体を導入する工程と;前記植物細胞から植物体を得る工程と;前記ヌクレオチド配列に改変を有する植物体を選択する工程(ここで、その選択は選択マーカーの使用なしで生じる)とを含む方法。
2b.選択マーカーを使用せずにゲノム中に改変されたヌクレオチド配列を有する植物体を作製する方法であって、少なくとも1つの植物細胞に、ヌクレオチド配列に位置する標的部位で二本鎖切断を行うことができるガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体を導入する工程と;前記植物細胞から植物体を得る工程と;前記ヌクレオチド配列に改変を有する植物体を選択する工程(ここで、その選択は選択マーカーの使用なしで生じる)とを含む方法。
3.選択マーカーを使用せずにゲノム中に改変されたヌクレオチド配列を有する植物カルス組織を作製する方法であって、少なくとも1つの植物細胞に、ヌクレオチド配列に位置する標的部位で二本鎖切断を行うことができるガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体を導入する工程と;前記植物細胞からカルス組織を得る工程と;前記ヌクレオチド配列に改変を有するカルス組織を選択する工程(ここで、その選択は選択マーカーの使用なしで生じる)とを含む方法。
3b.選択マーカーを使用せずにゲノム中に改変されたヌクレオチド配列を有する植物カルス組織を作製する方法であって、少なくとも1つの植物細胞に、ヌクレオチド配列に位置する標的部位で二本鎖切断を行うことができるガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体を導入する工程と;前記植物細胞からカルス組織を得る工程と;前記ヌクレオチド配列に改変を有するカルス組織を選択する工程(ここで、前記選択は選択マーカーの使用なしで生じる)と
を含む方法。
4.改変は、前記標的部位での、少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、または少なくとも1つのヌクレオチドの置換からなる群から選択される実施形態1〜3bの方法。
5.ポリヌクレオチド改変鋳型を前記植物細胞へ導入する工程(ここで、前記ポリヌクレオチド改変鋳型は、前記ヌクレオチド配列の少なくとも1つのヌクレオチド改変を含む)をさらに含む実施形態1〜3bの方法。
6.前記ポリヌクレオチド改変鋳型の前記少なくとも1つのヌクレオチド改変は、(i)少なくとも1つのヌクレオチドの置換、(ii)少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、(iii)少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、および(iv)(i)〜(iii)の任意の組み合わせからなる群から選択される実施形態5の方法。
7.(a)の植物細胞にドナーDNAを導入する工程(ここで、前記ドナーDNAは、前記標的部位に挿入すべき少なくとも1つの目的ポリヌクレオチドを含む)をさらに含む実施形態1〜3bの方法。
8.導入は、前記細胞への選択マーカーの導入を含まない実施形態1〜3bの方法。
9.導入は、破壊された選択マーカー遺伝子の、機能的選択マーカータンパク質をコードする非破壊選択マーカー遺伝子への修復を含まない実施形態1〜3bの方法。
10.導入は、前記細胞内に選択マーカーを生成しない実施形態1〜3bの方法。
11.選択は、選択マーカーの同定または使用を含まない実施形態1〜3bの方法。
12.選択は、前記植物体の単離されたDNAのシークエンシングによって生じる実施形態1〜3bの方法。
13.ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、インビトロで構築され、リボヌクレオチド−タンパク質複合体として導入される実施形態1〜3bの方法。
13b.ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、インビトロで構築され、リボヌクレオチド−タンパク質複合体として導入される実施形態1〜3bの方法。
13c.ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、組み換えRNAコンストラクトを使用せずに細胞に導入される実施形態1〜3bの方法。
14.ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体の構成要素は、前記ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体を形成可能な、ガイドRNAおよびCasエンドヌクレアーゼタンパク質として導入される実施形態1〜3bの方法。
15.ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体の構成要素は、前記CasエンドヌクレアーゼをコードするmRNAとして、およびガイドRNAを含むRNAとして導入される実施形態1〜3bの方法。
16.
ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体の構成要素は、ガイドRNAおよびCasエンドヌクレアーゼタンパク質をコードする組み換えDNA分子として導入される実施形態1〜3bの方法。
17.ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、細胞の内部で構築される実施形態1〜3bの方法。
18.前記リボヌクレオチド−タンパク質複合体は、粒子送達マトリックスに被覆されるか、または粒子送達マトリックスと組み合わされて、リボヌクレオチド−タンパク質−マトリックス複合体を形成し、前記リボヌクレオチド−タンパク質−マトリックス複合体が前記細胞に導入される実施形態13の方法。
18b.前記粒子送達マトリックスは、少なくとも1種の微粒子を含む実施形態18の方法。
18c.粒子送達マトリックスは、陽イオン性脂質と組み合わされた少なくとも1種の微粒子を含む実施形態18の方法。
18d.前記微粒子は、金粒子、タングステン粒子および炭化ケイ素ウィスカー粒子からなる群から選択される実施形態18c〜18cの方法。
18e.植物細胞は、体細胞胚細胞である実施形態1〜3bの方法。
19.植物細胞は、プロトプラストではない実施形態1〜3bの方法。
20.植物細胞は、単子葉植物細胞および双子葉植物細胞からなる群から選択される実施形態1〜3bの方法。
21.植物細胞は、トウモロコシ、イネ、ソルガム、ライムギ、オオムギ、コムギ、キビ、カラスムギ、サトウキビ、芝草、またはスイッチグラス、ダイズ、キャノーラ、アルファルファ、ヒマワリ、ワタ、タバコ、ピーナッツ、ジャガイモ、トマト、タバコ、シロイヌナズナ(Arabidopsis)、およびベニバナ細胞からなる群から選択される実施形態21の方法。
22.植物細胞から植物体を再生することをさらに含む実施形態1〜3bの方法。
23.実施形態22の方法によって作製された植物体。
24.実施形態23の植物体の子孫植物であって、ガイドRNA、Casエンドヌクレアーゼ、ポリヌクレオチド改変鋳型およびドナーDNAからなる群から選択される構成要素のいくつかを持たない子孫植物。
下記の実施例では、別途明記しない限り、部および割合は重量によるものであり、度は摂氏である。これらの実施例は、本開示の実施形態を示すものであるが、例示のみを目的として提示されることを理解すべきである。上記の議論およびこれらの実施例から、当業者は本開示の様々な変更および改変を行って本開示を様々な用法および条件に適合させることができる。そのような改変も、添付した特許請求の範囲に含まれるものとする。
実施例1
Cas9エンドヌクレアーゼおよびガイドRNA発現カセットの送達による、植物細胞ゲノムの標的DNA配列の改変
ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)M1 GAS(SF370)株のCas9遺伝子(配列番号1)は、当該技術分野における標準の手法を用いて最適化されたトウモロコシのコドンであり、エシェリキア・コリ(E.coli)およびアグロバクテリウム(Agrobacterium)中でのその発現を抑えるために、ジャガイモのST−LS1イントロン(配列番号2)が導入された。トウモロコシ細胞中のCas9タンパク質の核局在化を容易にするために、シミアンウイルス40(SV40)単節型アミノ末端核局在化シグナル(MAPKKKRKV、配列番号3)およびアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の双節型VirD2 T−DNA端部エンドヌクレアーゼカルボキシル末端核局在化シグナル(KRPRDRHDGELGGRKRAR、配列番号4)を、それぞれCas9のオープンリーディングフレームのアミノおよびカルボキシル末端に組み込んだ。標準的な分子生物学的手法により、トウモロコシに最適化されたCas9遺伝子を、トウモロコシの構成的プロモーター(ユビキチン)に作動可能に連結した。ジャガイモのタンパク質分解酵素阻害II遺伝子(PinII)の3’末端配列を加えることで、転写を終了させ、UBI:Cas9:PinIIベクターを作製する。ユビキチン駆動トウモロコシ最適化Cas9発現カセットの配列を配列番号5に示す。
単一ガイドRNA(gRNA)は、Mali et al.、2013(Science 339:823−26)に記載の方法を用いて設計した。トウモロコシU6ポリメラーゼIIIプロモーターおよびターミナーターを単離し、それぞれgRNAの開始および終了を指示するために使用した。トウモロコシゲノムDNA標的配列のgRNA発現コンストラクトへの急速導入を容易にするために、Cong et al.、2013(Science 339:819−23)に記載のように、2つのBbsI制限エンドヌクレアーゼ部位を、切断部を外側に向けて逆方向に縦列で導入した。gRNAの好ましいポリメラーゼIII発現を促進するために、Gヌクレオチドで始まる標的配列のみを使用した。gRNA発現カセットをBluescript SKベクター(配列番号6)にサブクローン化した。
非相同末端結合(NHEJ)修復経路を介して、トウモロコシ最適化Cas9−gRNA複合体がトウモロコシ染色体DNAの標的変異を認識し、切断し、かつ促進するか否かを試験するために、5つのトウモロコシ遺伝子座(各遺伝子座に3つの異なるゲノム配列)を切断標的とし(表2)、アンプリコンディープシーケンシングにより変異の存在を調べた。
トウモロコシ最適化Cas9エンドヌクレアーゼおよび特定のトウモロコシ可変標的ドメインを含有するgRNA発現カセットを、選択および視認マーカー(UBI:MoPAT:DsRED融合体)ならびに発生遺伝子ZmODP−2(BBM)およびZmWUS2(WUS)(実施例9を参照)と共に粒子撃ち込み(実施例8を参照)を行うことよって、60−90Hi−II未成熟トウモロコシ胚へ共送達した。Cas9またはgRNA発現カセットのみで形質転換した、Hi−IIトウモロコシ胚を負の対照とした。7日後、20〜30個の最も均一に形質転換した、各処理からの胚を(DsRED蛍光タンパク質の一過性発現に基づき)プールし、ゲノムDNAの全体を抽出した。意図した標的部位を囲む領域を、2ラウンドのPCRを通して「テール配列を付加した」プライマーを用いる、アンプリコン特異的バーコードおよびIllumnia sequencingのために必要な配列を加える、Phusion(登録商標)High Fidelity PCR Master Mix(New England Biolabs、M0531L)とともにPCR増幅した。プライマリーPCR反応で使用したプライマーを表3に示す。
セカンダリーPCR反応で使用したプライマーは、AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACTCTTTCCCTACACG(順方向、配列番号37)およびCAAGCAGAAGACGGCATA(逆方向、配列番号38)であった。
得られたPCR増幅産物をQiagen製PCR精製スピンカラムで精製し、濃度は等モル比で混合したHoechst製染料ベースの蛍光分析により測定し、Illumina製MiSeq Personal Sequencerにより、PhiX control v3(Illumina、FC−110−3001)の30〜40%(体積/体積)のスパイク濃度からオフセット配列バイアスまでの濃度で、単一の読み取りが100ヌクレオチド長のディープシーケンシングを実施した。予期される切断部位を中央にした10ヌクレオチドのウィンドウ内で生じた、≧1ヌクレオチドのインデルが読み取られもので、かつ、負の対照には類似のレベルで見出されないもののみを変異に分類した。同一の変異が読み取られた変異体を数え、単一のグループに纏め、最も高頻度の変異トップ10は、予期された切断部位内で生じるものとして視覚的に確認された。続いて、変異の全数は、バーコードおよび順方向プライマーに対して完全一致を含む適当な長さの全読み取り数を基準として、変異体読み取りの百分率を計算するのに使用した。
15部位の全てを標的としたCas9−gRNAシステムに対する、アンプリコンのディープシーケンシングよって明らかにされた変異の頻度を表4に示す。
さらなる分析によって、Cas9−gRNAシステムによって促進された最も一般的なタイプの変異は、単一ヌクレオチド挿入(例えば、図1、配列番号49−58を参照)であることが示された。試験したgRNAの大半で、類似の結果が観察された(表5)。
この実施例は、RNA誘導型Cas9により二本鎖が切断され、高頻度の変異がもたらされることを示す。複数の標的部位における変異の分析により、各種の大きさの欠失および/または挿入が観察されたものの、トウモロコシで試験した大半の標的部位において、単一ヌクレオチド挿入および単一ヌクレオチド欠失が、Cas9−gRNA技術で引き起こされる最も高頻度タイプの変異であることが示された。
実施例2
編集したアセト乳酸シンターゼ遺伝子はクロルスルフロン耐性を付与する
この実施例では、野生トウモロコシのアセト乳酸シンターゼ(ALS)遺伝子の特定の変異が、スルホニル尿素クラスの除草剤、具体的にはクロルスルフロンに対する耐性をもたらすことを示す。
トウモロコシには、2つのALS遺伝子、ALS1(配列番号39)およびALS2(配列番号40)があり、それぞれ染色体4と5に位置しており、DNAレベルで94%の配列同一性を有している。
ALSタンパク質はN末端トランジットを含有しており、葉緑体へ移行し、その後トランジットペプチドが切断された後、成熟タンパク質が形成される。成熟タンパク質は、残基S41から始まり、推定分子量65kDaの598個のアミノ酸からなる成熟タンパク質を与える(配列番号41)。
内因性トウモロコシアセト乳酸シンターゼタンパク質と比べて、単一アミノ酸残基(P165AまたはP165S、灰色で囲まれている)の変異をもたらすような、ALS1またはALS2のいずれかのヌクレオチド配列の改変は、トウモロコシに除草剤耐性を与える。
アセト乳酸シンターゼは、植物の細胞機能にとって極めて重要な酵素であるから、ALS1およびALS2遺伝子の2アレルの同時ノックアウトは、生き残りを困難にするであろう。したがって、ALS1とALS2ヌクレオチド配列間の多型に基づき、ALS2−特異的ALSCas−4標的部位を同定し試験した。対照として、ALS1およびALS2の両遺伝を標的とする、ALSCas−1ガイドRNA発現コンストラクトを使用した。表6にALSCas−1およびALSCas−4標的部位に関する情報を示す。
実施例1に記載のようにして、アンプリコンのディープシーケンシングを行い、ALSCas−1およびALSCas−4における変異の頻度を決定し、表7に示した。
これらの結果は、ALSCas−4gRNA/Cas9システムはALS1遺伝子よりも約90倍高い効率でALS2遺伝子を変異させることを示している。したがって、ALS遺伝子編集実験には、ALSCas−4標的部位および対応するALS−CR4 gRNAを使用した。
ALS2編集アレルを作製するには、相同断片(配列番号43)を含む、794bpのポリヌクレオチド改変鋳型をプラスミドベクターにクローニングし、2つの127nt一本鎖ポリヌクレオチド改変鋳型(DNAオリゴとも呼ぶ、Oligo1、配列番号44、およびOligo2、配列番号45)をポリヌクレオチド改変鋳型として試験した(図2)。794bpの断片は、Oligo1と同一の配列の改変を有した。ポリヌクレオチド改変鋳型(修復鋳型)は、野生型配列と比べると数個のヌクレオチドに変異があった。一本鎖Oligo1および794bp修復鋳型には、アミノ酸位置165のプロリンに対応するDNA配列からセリン(P165S)への編集を指示する単一ヌクレオチド変異、ならびにALS−CR4標的部位およびPAM配列内に3つの追加の変異があった。修復鋳型内でのPAM配列の改変は、メチオニンコドン(AUG)をイソロイシン(AUU)に変えたが、これはALS1遺伝子では自然に起こることである。第2の127nt一本鎖オリゴ修復鋳型(Oligo2)は、157の位置にメチオニンを保持しているものの、配列中に、ALS−CR4 gRNAとの塩基ペアリングに影響を及ぼすであろう3つの追加の単一ヌクレオチド変異を含有するものであるが、これについても試験した(図2)。
1回の処理当たり約1,000個の未成熟の胚に2つのオリゴまたは単一プラスミド修復鋳型、Cas9、ALS−CR4 gRNAおよびMoPAT−DsREDを入れたDNA発現カセットを撃ち込み、PATにより付与されたビアラホス耐性物を選択するために培地上に置いた。形質転換から5週後、選択培地で生長している、200個(1回の処理当たり)のランダムに選択した、独立した若いカルスセクターを胚から分離し、新鮮なビアラホスプレートに移した。生長中のカルスイベントを有する残りの胚(1回の処理当たり>800)を、編集されたALS2遺伝子の直接選択用として、100ppmのクロロスルフロンを含有するプレートに移した。一ヶ月後、全部で384個のランダムに採取した、ビアラホス上で生長中のカルスセクター(各修復鋳型当たり約130イベント)、およびクロルスルフロンを含む培地上で生長を続ける7つのカルスセクターをPCR増幅および配列を決定することにより分析した。編集したALS2アレルは、9つのカルスセクターで検出された:2つは、ビアラホス上で生長中の、794bpの修復DNA鋳型を使用して生成させたカルスセクターから得られたものであり、残りの7つは127ntの一本鎖オリゴを使用して編集(3つはOligo1により、4つはOligo2により)された、クロロスルフロン耐性カルスセクターから得られたものである。これらのカルスセクターの第2のALS2アレルは、NHEJ修復の結果変異した。ALS1遺伝子の分析を行ったところ、野生型配列のみが示され、ALS−CR4 gRNAの高い特異性が確認された。
追加の分子分析および後代検定では、編集されたALS2アレルを含有する、9つのカルスセクターのうち7つで植物体が再生した。ALS2アレルのDNA配列分析により、P165Sの改変(ALS2−P165S)の存在、およびそれぞれの修復鋳型に関連する他のヌクレオチドの変異を確認した。異なるカルスイベント(794bp修復DNAおよびOligo2)から生じた、2つのT0植物体のT1およびT2子孫を分析し、編集されたALS2アレルの継承を評価した。野生型Hi−II植物体の花粉を使用した交雑から得られた子孫の植物体を、配列を決定することにより分析し、親植物体では期待値として1:1(それぞれ57:56および47:49)で観察される分離比が、編集したアレルの交雑継承で示された。編集したALS配列による除草剤耐性の付与を試験するために、編集したALS2アレルと野生型のALS2アレルを有する4週齢の分離T1植物体を選んで、4種の異なる濃度(50、100(1×)、200、および400mg/liter)のクロルスルフロンをスプレーした。処理してから3週後、編集したアレルを有する植物体は、通常の表現型を示した(図3−左)が、野生型アレルのみを有する植物体は老化の兆候を強く示した(図3−右)。
スルホニル尿素クラスの除草剤(具体的にはクロルスルフロン)に対する耐性に加えて、トリアゾロピリミジン、ピリミジニルチオベンゾエートおよびイミダゾリノン除草剤を含む、他のクラスのAHAS阻害剤耐性が付与されるようALS遺伝子を改変することができる(TanS,Evans RR,Dahmer ML,Singh BK,Shaner DL(2005)「Imidazolinone−tolerant crops:history,current status and future.Pest Management Science 61:246−257)。このように、ALS遺伝子の改変は、本明細書に記載の変異およびクロルスルフロン耐性の付与に限定されるべきでない。
これらの実験により、Cas9−gRNAは、トウモロコシ内でHDR依存標的配列の改変を刺激することができ、次世代に適切に継承される、編集された内因性遺伝子を有する植物体をもたらすことが示された。このデータはまた、編集した単一のALS2アレルは、内因性プロモーターの下で、トウモロコシに除草剤耐性を付与することを示すものである。
実施例3
内因性選択マーカー遺伝子としてのALS2
この実施例では、植物体の形質転換で現在使用されている外因性マーカー遺伝子の送達を置き換える、選択マーカーを細胞内に作製するために、特異的に編集したALS2遺伝子をどのように使用することができるかを示す。
植物体の比較的低い形質転換頻度(トランスジェニックイベントの回収)のために、各種除草剤耐性を付与する選択マーカー遺伝子は、通常、形質遺伝子と共に送達される。耐性を付与するために、これらの選択マーカー遺伝子は、植物体のゲノムに安定に組み込まれる必要があり、次の世代では切除または退化されなければならない。いくつかの自生植物体遺伝子を特異的に改変(編集)し、除草剤耐性を付与することができる。実施例2に記載のように、単一アミノ酸変異を有するALS2遺伝子は、クロルスルフロン耐性を付与する。したがって、外部から供給されるマーカー遺伝子が無くとも、遺伝子の変異誘発、遺伝子編集または形質遺伝子の共送達およびALS2遺伝子の同時編集を使用することができるものと推測し得る。Cas9−gRNAシステムによって作製された、DSBのNHEJ修復の結果、高頻度の変異が生じたのであるから(実施例1)、このアプローチは、遺伝子の変異誘発に有用であろう。この場合、変異イベントの頻度は、HDR媒介ALS遺伝子の編集に依存するものと予想されるであろう。遺伝子編集に関して、植物細胞における2つの低頻度HDR依存性ゲノム編集プロセスの組み合わせ(1つは選択のためのALS遺伝子修復用、他は内因性遺伝子編集または形質遺伝子の組み込み用)は、ALS2遺伝子の同時編集を使用するアプローチの実現を幾分困難にすることがあり得る。
以下の実施例では、この低効率(そして非実際性)を克服し、選択試薬に耐性を有する植物細胞を選択する可能性を改善する方法を説明する。この方法はHDR依存性遺伝子編集に頼らず、むしろNHEJのDNA修復を通した標的変異誘発による遺伝子機能の回復に頼る方法であって、これは植物の体細胞ではより一般的(HDRより)である。実施例2に記載したように、トウモロコシには、それぞれ染色体4および5の上に存在する、2種のALS遺伝子、ALS1とALS2がある。2つのALS遺伝子のいずれか一方への特異的編集により、除草剤耐性が付与されるであろう。これらの遺伝子は、植物代謝で基本的な役割を果たしており、したがって、同時に両者を標的とし変異を起こさせることことは細胞死に繋がる。したがって、この実施例では、ALS1遺伝子を標的としないで、したがってALS1は野生型のままとし、改変は、ALS2特異的gRNAを使用することにより、ALS2遺伝子のみとする。具体的には、ALS2遺伝子に2つの改変が導入される;第1は、特定のヌクレオチドの変異、例えば、クロルスルフロン耐性が付与されるよう、165のアミノ酸位置(ALS2−P165Sと命名)でプロリンからセリンへ変更するために、493のヌクレオチド位置でCからT(図2、oligo1)または493および495のヌクレオチド位置で、それぞれCからTおよびCからG(図2、oligo2)への変更(詳しくは実施例2を参照されたい)。第2は、単一ヌクレオチドの削除、例えば、翻訳フレームシフト(図4B)をもたらす165の位置のG(図4A〜4B)の削除、したがって、ALS2媒介クロルスルフロン耐性の喪失(ALS2−P165S−CCΔと命名)をもたらす。ALS2遺伝子修復の最高頻度を目指す多くの設計が予想されるが、単一ヌクレオチドの位置(図4A〜4Cに示す例)は好ましくは:i)gRNA/Casエンドヌクレアーゼ標的部位のPAM配列から上流(5’)側、4番目のヌクレオチド、およびii)コドン中の3番目のヌクレオチド(図4A)とすべきである。この3番目の位置は、殆どのアミノ酸に対して柔軟性があり、20種のアミノ酸のうち8種で、任意の4種のヌクレオチドが占めることができる(表8)。1番目または2番目の位置と比較すると、3番目の位置は、そのような柔軟性があるため、より高頻度の適切な修復が期待される。
上の基準を満たす4つの異なる標的部位および対応するgRNAsを選択した。上で述べた好ましい単一ヌクレオチドの位置に加えて、対応するgRNAも、切断部位での単一ヌクレオチド挿入を表す高割合の変異を伴う高頻度の変異を促進しているはずである。試験した4つの標的部位の中の1つのみが、説明した全ての好ましい点を満たし、したがってこの実験に適していることが判明した(ALSCas−7と呼ばれる;表9)。
その後、クロルスルフロン耐性を付与するALS2−P165S遺伝子をさらに改変した(遺伝子の破壊をもたらした):ALSCas−7標的部位のCCG(表9でアンダーライン部分)によってコードされるプロリンのコドンが、不安定位置(コドン中で3番目のヌクレオチド位置)でGヌクレオチドの削除によって変更され、これによって翻訳フレームシフトおよび遺伝子の破壊がもたらされた(ALS2−P165S−CCΔと呼ばれる;図4A〜4B)。実施例1で示したように、トウモロコシにおいてCas9−gRNAシステムにより作製され、NHEJを通して修復されたDSBの修復は、しばしば、切断部位に単一ヌクレオチド挿入をもたらす。したがって、ALS2−P165S−CCΔ遺伝子の機能は、そして連続していることだが、細胞のクロルスルフロン耐性は、ALSCas−7−1と呼ばれる、改変されたALSCas−7部位(GCTCCCCCGGCCACCCCCTC;配列番号80)で、二本鎖切断(DSB)およびNHEJを通した修復(図4B〜4Cを参照)を行うことによって修復することができる。
1つのgRNAが、NHEJを通して、破壊されたALS2−P165S−CCΔ遺伝子を標的とし、活性化させ(こうして除草剤耐性が付与される)、他のgRNAがALS2とは異なる部位でDSBを促進し、所望のゲノム改変、例えば、標的の変異誘発、削除、遺伝子編集または部位特異的形質遺伝子の挿入を容易にするとき、本開示に基づき、2つまたはそれより多くのgRNAの同時送達が考えられる。このアプローチは、他の必要な全ての構成要素(Cas9、gRNAs)をタンパク質の形態および/またはインビトロ転写RNA分子の形態で送達することができるから、完全に一時的な標的ゲノムの改変を可能にする。
このアプローチを試験するために、上記の特異的に改変したALS2遺伝子を有するトウモロコシ植物体(Hi−II遺伝子型)を作製した。最初に、実施例2に記載のように、クロルスルフロン耐性を付与するために、ALS2配列を165のアミノ酸位置で改変した。その後、編集に対して同型接合植物体の未成熟の胚に、ALSCas−7標的部位を標的とするCas9およびALS−CR7 gRNA、選択マーカー(UBI:MoPAT−DSRED融合体)ならびに細胞増殖促進遺伝子(詳しくは、実施例8および9を参照)を撃ち込んだ。ビアラホス耐性カルスセクターからの再生体を配列の決定により分析した。単一ヌクレオチド欠失(ヌクレオチド位置165のG)の数種のT0植物を同定した(図4A〜4B)。この欠失は翻訳フレームシフトをもたらし(図4B)、したがって、ALS2−P165S媒介クロルスルフロン耐性の喪失をもたらす。両編集(ALS2−P165S−CCΔ)に対して同型接合植物体を再生させ、配列決定により確認し、クロルスルフロンをスプレーして除草剤耐性の喪失を試験した。
コンセプト立証実験では、特異的に改変した内因性ALS2遺伝子(ALS2−P165S−CCΔ)を有する同型接合植物体からの胚を使用した。編集し、破壊したALS2−P165S−CCΔ遺伝子が上記のように修復でき(機能性タンパク質をコードできるよう)、かつ選択マーカーとして働けることを示すために、Cas9をコードするDNAベクター、ALSCas−7−1部位を標的とするgRNA(ALS−CR7−1と呼ぶ)、細胞増殖促進遺伝子(ZmODP2およびZmWUS)およびMS45−CR2 gRNAをトウモロコシ(Hi−II)の未成熟胚細胞に共送達した。撃ち込みの1週後、選択のために胚を100ppmクロルスルフロンを含む培地に移した。約30%の胚(290のうち84)が、除草剤耐性カルスイベントへと発育し、これを配列決定により分析した。イベントの大多数(79イベント)は、予想されたALSCas−7−1のDSB部位(図4C)に単一ヌクレオチド挿入があること、およびALS2−P165S遺伝子が完全に修復されていることを示した。4つのイベントには挿入がなく、遺伝子をフレーム内に戻す、2または5bpのいずれかの欠失があり、1つのイベントはエスケープしたと思われるものであった。83イベントのうち50(60%)もまたMS45Cas−2標的部位に変異を示した。
この実施例は、コンセプトを立証し、かつ、誘導型Casエンドヌクレアーゼシステムを使用することにより、特異的に改変した不活性ALS2が、内因性選択マーカー遺伝子として有用であることを示すものである。本明細書で説明した結果に基づき、当業者は説明されたアプローチを使用し、かつ任意の同様に改変された内因性遺伝子または予め組み込んだ外因性遺伝子へと拡張することができ、この拡張は、植物ゲノム編集実験で現在使用している選択マーカーの共送達を置き換えることになる。
実施例4
破壊された遺伝子によりコードされる、非機能性タンパク質の機能復元のための代替設計
先の実施例では、配列の変更は、コード領域またはALS2−P165S内で行われた。破壊遺伝子(これは機能性タンパク質をコードしない)を生み出す他の配列の変更もまた、再活性化配列として使用されるよう設計できるものと考えられる。この実施例では、コード配列内のコドンの復元に依存せず、むしろ最初のALS2−P165S翻訳開始コドンの上流でアウトフレームにある、開始コドンの削除による再活性化配列の作製を説明する。
真核生物の翻訳開始のスキャンモデルによれば、mRNAの5’末端キャップ構造から最初のAUGコドンが、タンパク質合成の開始に使用される(Kozak M.1989.The scanning model for translation:an update.The Journal of Cell Biology 108:229−241)。このように、15RNA転写産物の非コードリーダー内AUGコドンが、最初の開始コドンの上流でアウトフレームにあるならば、mRNAにコードされるポリペプチドのタンパク質合成は無効にされる。このルールを利用し、遺伝子の発現または機能の再活性化戦略に適用するために、上流のアウトフレームの翻訳開始コドンを含有する、内因性ALS2−P165Sアレルを作ることができる(図5A〜5B)。このアレルは、Cas9 PAM認識部位およびALS−CRX標的スペーサーを含有する。この実施例では、5’末端のPAM部位に位置する、ヌクレオチド3と4の間をCas9で切断することにより、ATGコドンの喪失をもたらすことができる、ヌクレオチドの削除または追加を促進することができる。NHEJの修復による削除と追加の任意の組み合わせによる、この上流のアウトフレームATGの喪失は、最初のALS2−P165S開始コドンの位置での翻訳の開始をもたらすことができ、除草剤耐性を付与する。
上流のアウトフレームATGを使用する再活性化戦略は、図5A〜5Bの設計に限定されるものではないと考えられる。Cas9による標的切断が、この上流の開始コドンの喪失をもたらす限り、PAMおよび標的スペーサーもまた、この上流のアウトフレームATGに対していろいろの場所に置くことができる。例えば、PAMは開始コドンの5’末端側のアンチセンス鎖上に存在することができる。他の設計も考えられる;アウトフレームのATG開始コドンはまた、5’末端リーダー配列内の異なる位置に置くことができる。PAM配列は、nGG PAMまたは非nGG PAM配列を認識する、例えば、ストレプトコッカス・テルモフィレス(Streptococcus thermophiles)CR1(PAM配列認識nnAGAAn)およびPAM配列を有する他のものを認識する、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)のような他のCas9タンパク質によって認識されることができる。他のCas9タンパク質の有用性は、この実施例および上述の実施例3の再活性化設計の要求を満たすことにあるであろう。
遺伝子活性化の他の設計も考えられる。先に言及したように、クロロスルフロン耐性に加え、他の除草剤への耐性を付与するALS遺伝子の改変を再活性化のために使用することができる。さらに、ホスホマンノースイソメラーゼ遺伝子(PMI)、ビアラホス耐性遺伝子(BAR)、ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(PAT)、ヒグロマイシン耐性遺伝子(NPTII)、選択マーカー遺伝子、蛍光マーカー遺伝子(RFP、赤色蛍光タンパク質、CFP、GFP、緑色蛍光タンパク質などであるが、これらに限定されない)およびグリホサート耐性遺伝子が、実施例3に記載のように、不活性形態の植物細胞へ導入されるように、かつ、ガイドRNAの導入およびNHEJの修復による再活性化のための標的として使用されるように改変することができる。複数の不活性遺伝子を有することが複数の標的として働くことも考えられる。例えば、ガイドRNAの多重化により、1回の実験で、同時に複数の遺伝子が改変されることが示され、したがって、このアプローチ用に、クロルスルフロンおよびビアラホス耐性の標的再活性化をさらに設計できるが、このことはこれらの遺伝子に限定されるものではない。上述のように、他のガイドポリヌクレオチドを加えることにより、NHEJによる遺伝子機能の復元と同期して、他の標的の改変が同時に達成されるであろう。
さらに、生来のまたは導入された遺伝子配列に対して類似のアプローチを適用でき、高効率の遺伝子スイッチ機構として使用できると考えられる。
実施例5
相同組み換え修復用ポリヌクレオチド改変鋳型を導入しない特異的遺伝子編集
実施例2では、特異的に設計したポリヌクレオチド改変鋳型(修復鋳型)を使用して、ALS2遺伝子(P165S)のコード領域内配列を変更することについて説明した。次の実施例では、HDR機構ではなく、NHEJに依存する、編集された目的遺伝子の作製に対する異なるアプローチを説明する。
実施例1に記載のように、Cas9ヌクレアーゼによって引き起こされたDSBのNHEJ修復によって促進された、2つの最も一般的なタイプの変異は、1bpの挿入と1bpの欠失(表4)である。本明細書に記載のこれらの観察に基づき、以下に説明するような、2つの連続した工程または単一工程で達成できる遺伝子編集方法が開発された。
第1の工程は、切断されたDNAのNHEJ修復により、特定のヌクレオチドが欠失した細胞または生命体の作成をもたらすような、本明細書で説明したRNA誘導型Casヌクレアーゼシステムを使用して、Casエンドヌクレアーゼにより認識される標的部位を含有する、目的の遺伝子またはポリヌクレオチドを標的化することである(図6Aに図解)。第2の工程は、変異した部位の再標的化および所望のヌクレオチドが挿入されたイベントの選択(ポリヌクレオチド改変鋳型(修復鋳型)を使用せずに、したがって対応するアミノ酸をおよび遺伝子機能を特異的に変更する)を必要とする。一般的には、このアイデアは図6A〜6Cに図解されている。この方法はまた、非コードDNA断片を編集するのに使用することができる。
あるいは、両工程は単一工程に統合することができる。2つの異なるgRNA、すなわち一方は元の標的部位を認識し、他方は同一部位ではあるが、1bpが欠失した部位を認識するものを使用することができる。この場合、連続切断および1bp欠失をもたらす内因性部位の修復、その後の、変更された部位の切断および1bpの挿入によるその修復が想定される。その後、所望のヌクレオチドが挿入されたイベントを選択することができる。コーディングDNA配列を編集する場合、このプロセスは2つの目標を達成する―翻訳読み取りフレームの復元と目的のアミノ酸の置換。この2工程または1工程システムで、異なるエンドヌクレアーゼの組み合わせを使用することが考えられよう。例えば、目的のポリヌクレオチドの単一塩基欠失に繋がる、第1の二本鎖切断の導入は、第1のエンドヌクレアーゼにより達成することができ、単一塩基挿入に繋がる、第2の二本鎖切断の導入(および目的のポリヌクレオチドの編集)は、第1のエンドヌクレアーゼとは異なる、第2のエンドヌクレアーゼにより達成することができる。これらのエンドヌクレアーゼの違いは、限定はされないが、PAM認識配列の違い、標的認識配列の違い、切断活性の違い(平滑末端、5’または3’末端オーバーハング、一本鎖、二本鎖)、異なる生命体に由来するDNAもしくはアミノ酸配列の違い、またはこれらの任意の1つの組み合わせを挙げ得る。
目的ゲノム中の特定のヌクレオチドを編集する能力は、エンドヌクレアーゼシステムの選択ならびにその特定の標的部位の認識能力および切断能力に依存し得る。新規の誘導型エンドヌクレアーゼの発見(例えば、2015年5月15日出願、米国仮特許出願第62/162377号明細書を参照)および/または各種PAM配列による誘導型エンドヌクレアーゼの改変は、これらのエンドヌクレアーゼにより認識されかつ/または切断される、標的部位の密度をさらに増加させ、本明細書で説明した方法を使用して、最終的にゲノム中の任意の所与のヌクレオチド位置を標的とする能力をもたらすであろう。
実施例6
Cas9エンドヌクレアーゼを安定に組み込んだトウモロコシの系統
この実施例では、Cas9発現カセットを安定に組み込んだトウモロコシの系統の作製と検証について説明する。
構成的(トウモロコシUBI、配列番号46)プロモーターまたは温度調節(トウモロコシMDH、配列番号47)プロモーターの転写制御下で、Cas9に最適化されたトウモロコシコドンを含有する、2種のアグロバクテリウム(Agrobacterium)ベクター(図7)をHi−II胚細胞へ導入し、Cas9エンドヌクレアーゼが予め組み込まれたゲノムのコピーを含有する系統を確立した。これらのベクターはまた、視認マーカーとして青色蛍光遺伝子(AmCYAN)の発現を調節する、胚選考END2プロモーターと、トウモロコシのヒストン2Bプロモーターにより転写的に調節されたDsRED遺伝子の中断コピーとを含有した。DsRED配列の一部を順方向に複製(369bp断片)したが、これはgRNAにより標的とされ得る347bpのスペーサーによって隔てられている、DsRED(RF−FP)遺伝子の2つの断片からなるものであった。スペーサー領域内のDSBは、破壊された、赤色蛍光細胞をもたらすDsRED遺伝子の機能を復元する、分子内組み換えを促進する未成熟の胚の供給源として、UBI:Cas9かまたはMDH:Cas9のいずれかを含有する、単一コピーのT−DNAが挿入されたトウモロコシ植物体を使用した。予め組み込んだCas9を含有する、青色蛍光胚を切除し、28℃(UBI:Cas9)または37℃(MDH:Cas9)で24時間インキュベートした。撃ち込み後、MDH:Cas9を有する胚は37℃で24時間インキュベートし、その後28℃とした。対照(gRNAなし)とは対照的に、347bpのスペーサー内配列を標的とする、2つのDNAが発現されたgRNAが撃ち込まれた、UBI:Cas9およびMDH:Cas9含有胚は、容易に赤色蛍光フォーカスを生成した。
これらの結果は、上述のトウモロコシ系統が、機能性Cas9エンドヌクレアーゼの単一コピーを与えることを示すものである。
実施例7
予めCas9を組み込んだ胚細胞への一過性のgRNA送達は、トウモロコシに変異を引き起こす
この実施例では、予めCAs9を組み込んだトウモロコシ未成熟胚細胞への、インビトロ転写RNA分子形態のgRNAの送達により、標的部位に変異が引き起こされることを示す。
インビトロ転写RNAとして、または対照用のDNA発現カセットとしてgRNAを送達するための未成熟胚の供給源として、UBI:Cas9かまたはMDH:Cas9のいずれかを含有する、実施例6に記載のトウモロコシ植物体を使用した。LIGおよびMS26内因性標的部位で変異の頻度を測定するために、RNA分子(100ng/ショット)として、またはDNAベクター(25ng/ショット)として、LIG−CR3およびMS26−CR2 gRNAをUBI:Cas9およびMDH:Cas9を含有する胚細胞へ送達し、実施例6に記載の熱処理を施した。これらの実施例では、撃ち込んでから2日後に胚を回収し、アンプリコンディープシーケンシングにより分析した。DNAベクターとして送達したgRNAと、RNA分子として送達したものとでは、特に、ユビキチンプロモーターによって調節されたCas9の場合に、類似の頻度が検出された(表10)。
以上から、植物細胞に変異を引き起こすために、予め組み込んだCas9を含有するトウモロコシ細胞へ、RNAの形態のgRNAを直接送達することは、DNA送達の実行可能な代替法であることをこれらのデータは示している。
実施例8
トウモロコシの未成熟胚の形質転換
形質転換は植物に有効であることが知られている、各種方法で実施でき、これには、粒子媒介送達法、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換法、PEG媒介送達法およびエレクトロポレーション法が含まれる。
a.粒子媒介送達法
粒子送達法を使用したトウモロコシ未成熟胚の形質転換は以下のように行う。培地のレシピは下記の通りである。
穂の殻を剥き、30%Clorox漂白剤プラス0.5%Micro洗剤中で20分間表面を殺菌し、滅菌水で2回濯ぐ。未成熟胚を分離し、プレート当たり25の胚を胚軸側を下にして(胚盤側を上にして)、560Y培地上に4時間置き、その後、撃ち込みの準備として2.5cmの標的ゾーンに整列させる。あるいは、分離した胚を560L(開始培地)上に置き、26℃〜37℃の範囲の温度で8〜24時間暗所に置き、その後、26℃で560Y上に4時間置き、次いで上述のように撃ち込みを行う。
標準の分子生物学的手法を用いて、二本鎖切断誘発剤および鋳型またはドナーDNAを含むプラスミドを構築し、発生遺伝子ODP2(AP2ドメイン転写因子ODP2(胚珠発達タンパク質2);米国特許出願公開第2009/0328252A1号明細書)およびWUSCHEL(米国特許出願公開第2011/0167516号明細書)を含有するプラスミドと共撃ち込みを行う。
目的のプラスミドおよびDNAは、以下のように、水溶性のカチオン性脂質TransIT−2020トランスフェクション試薬(カタログ番号MIR5404、Mirus、USA)を使用し、0.6μm(平均直径)の金ペレット上に沈殿させるトータルで1μgのDNAおよび/またはRNAコンストラクト(10ショット)を使用し、DNAまたはDNAおよびRNA溶液を氷上で調製する。予め混合したDNAに、20μlの調製した金粒子(15mg/ml)および1μlのTransIT−2020を加え、注意深く混合する。Microfugeにより10,000rpmで1分間処理して金粒子をペレットにし、上清を除去する。105μlの100%EtOHを加え、短時間の超音波処理により粒子を再懸濁させるその後、各マクロキャリアーの中心に10μlで染みを付け、撃ち込みの前に乾燥させる。Biorad Helium Gun(shelf#3)を425PSIで使用して、試料プレートに撃ち込む。
撃ち込み後、560P(メンテナンス培地)上、26℃〜37℃の温度範囲で12〜48時間、胚をインキュベートし、その後、26℃の場所に置く。5〜7日後、3mg/リットルのビアラホスを含有する560R選択培地へ胚を移し、26℃で2週間ごとに継代培養を行う。選択してから約10週後、選択剤耐性カルスクローンを288J培地へ移し、植物体の再生を開始する。体細胞胚の成熟(2〜4週)後、よく生長した体細胞胚を発芽用培地に移し、照明のある培養室へ移す。約7〜10日後、生長中の小植物を管に入れた272Vホルモン不含培地に移し、7〜10日間、小植物を十分に定着させる。その後、植物を鉢植え用土が入った木箱の挿入物(2.5”のポットと同等)中に移し、栽培室で1週間栽培し、引き続き温室でさらに1〜2週間栽培し、その後、Classic600ポット(1.6ガロン)に移し、成熟するまで栽培する。形質転換効率および/または再生能力の変化について植物を監視し採点する。
開始培地(560L)は4.0g/lのN6基礎塩(SIGMA C−1416)、1.0ml/lのEriksson’s Vitamin Mix(1000× SIGMA−1511)、0.5mg/lのチアミンHCl、20.0g/lのスクロース、1.0mg/lの2,4−D、2.88g/lのL−プロリン(KOHでpHを5.8に調節後、D−I H2Oで所定の体積まで増量);2.0g/lのGelrite(D−I H2Oで所定の体積まで増量後加える);および8.5mg/lの硝酸銀(培地を滅菌し、室温にまで冷却後加える)を含む。
メンテナンス培地(560P)は4.0g/lのN6基礎塩(SIGMA C−1416)、1.0ml/lのEriksson’s Vitamin Mix(1000×SIGMA−1511)、0.5mg/lのチアミンHCl、30.0g/lのスクロース、2.0mg/lの2,4−D、0.69g/lのL−プロリン(KOHでpHを5.8に調節後、D−I H2Oで所定の体積まで増量);3.0g/lのGelrite(D−I H2Oで所定の体積まで増量後加える);および0.85mg/lの硝酸銀(培地を滅菌し、室温にまで冷却後加える)を含む。
撃ち込み培地(560Y)は、4.0g/lのN6基礎塩(SIGMA C−1416)、1.0ml/lのEriksson’s Vitamin Mix(1000× SIGMA−1511)、0.5mg/lのチアミンHCl、120.0g/lのスクロース、1.0mg/lの2,4−D、2.88g/lのL−プロリン(KOHでpHを5.8に調節後、D−I H2Oで所定の体積まで増量);2.0g/lのGelrite(D−I H2Oで所定の体積まで増量後加える);および8.5mg/lの硝酸銀(培地を滅菌し、室温にまで冷却後加える)を含む。
選択培地(560R)は、4.0g/lのN6基礎塩(SIGMA C−1416)、1.0ml/lのEriksson’s Vitamin Mix(1000× SIGMA−1511)、0.5mg/lのチアミンHCl、30.0g/lのスクロース、2.0mg/lの2,4−D(KOHでpHを5.8に調節後、D−I H2Oで所定の体積まで増量);3.0g/lのGelrite(D−I H2Oで所定の体積まで増量後加える);0.85mg/lの硝酸銀および3.0mg/lのビアラホス(両者とも、培地を滅菌し、室温にまで冷却後加える)を含む。
植物体再生培地(288J)は4.3g/lのMS塩(GIBCO 11117−074)、5.0ml/lのMSビタミンストック溶液(0.100gのニコチン酸、0.02g/lのチアミンHCL、0.10g/lのピリドキシンHCL、および0.40g/lのグリシンを完全なD−I H2Oで所定の体積まで増量)(Murashige and Skoog(1962)PhysiolPlant.15:473)、100mg/lのミオイノシトール、0.5mg/lのゼアチン、60g/lのスクロース、1.0ml/lの0.1mMアブシジン酸(pHを5.6に調節後、完全なD−I H2Oで所定の体積まで増量);3.0g/lのGelrite(D−I H2Oで所定の体積まで増量後加える);1.0mg/lのインドール酢酸および3.0mg/lのビアラホス(培地を滅菌し、60℃にまで冷却後加える)を含む。
ホルモン不含培地(272V)は4.3g/lのMS塩(GIBCO11117−074)、5.0ml/lのMSビタミンストック溶液(0.100g/lのニコチン酸、0.02g/lのチアミンHCL、0.10g/lのピリドキシンHCL、0.40g/lのグリシンを完全なD−I H2Oで所定の体積まで増量)、0.1g/lのミオイノシトール、および40.0g/lのスクロース(pHを5.6に調節後、完全なD−I H2Oで所定の体積まで増量);および滅菌し、60℃に冷却した6g/lのBacto−Agar(完全なD−I H2Oで所定の体積まで増量後加える)を含む。
b.アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換
基本的には、Djukanovic et al.(2006)Plant Biotech J 4:345−57に記載のようにして、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換を行った。手短に言えば、10〜12日齢の未成熟胚(大きさ0.8〜2.5mm)を滅菌した穀粒から切り取り、液体培地(4.0g/LのN6基礎塩(Sigma C−1416)、1.0ml/LのEriksson’s Vitamin Mix(Sigma E−1511)、1.0mg/LのチアミンHCl、1.5mg/Lの2、4−D、0.690g/LのL−プロリン、68.5g/Lのスクロース、36.0g/Lのグルコース、pH5.2)上に置いた。胚の回収後、OD550が0.35〜0.45濃度の、1mlのアグロバクテリウム(Agrobacterium)で培地を置換した。トウモロコシの胚をアグロバクテリウム(Agrobacterium)と共に室温で5分間インキュベートし、その後、4.0g/LのN6基礎塩(Sigma C−1416)、1.0ml/LのEriksson’s Vitamin Mix(Sigma E−1511)、1.0mg/LのチアミンHCl、1.5mg/Lの2、4−D、0.690g/LのL−プロリン、30.0g/Lのスクロース、0.85mg/Lの硝酸銀、0.1nMのアセトシリンゴンおよび3.0g/LのGelriteを含有するpH5.8の培地プレートに混合物を注いだ。20℃の暗所で3日間、軸を下側にして胚をインキュベートし、その後、28℃の暗所で4日間インキュベートし、その後、4.0g/LのN6基礎塩(Sigma C−1416)、1.0ml/LのEriksson’s Vitamin Mix(Sigma E−1511)、1.0mg/LのチアミンHCl、1.5mg/Lの2、4−D、0.69g/LのL−プロリン、30.0g/Lのスクロース、0.5g/LのMESバッファー、0.85mg/Lの硝酸銀、3.0mg/Lのビアラホス、100mg/Lのカルベニシリンおよび6.0g/Lの寒天を含有する、pH5.8の新しい培地プレートに移した。トランスジェニックイベントが同定されるまで、3週間ごとに胚を継代培養した。少量の組織を再生培地(4.3g/LのMS塩(Gibco 11117)、5.0ml/LのMSビタミンストック溶液、100mg/Lのミオイノシトール、0.1μMのABA、1mg/LのIAA、0.5mg/Lのゼアチン、60.0g/Lのスクロース、1.5mg/Lのビアラホス、100mg/Lのカルベニシリン、3.0g/LのGelrite、pH5.6)に移し、28℃で2週間、暗所でインキュベーションすることにより、体細胞胚の発生を誘導した。目で見えるシュートおよび根を有する全てのものを4.3g/LのMS塩(Gibco 11117)、5.0ml/LのMSビタミンストック溶液、100mg/Lのミオイノシトール、40.0g/Lのスクロース、1.5g/LのGelriteを含有するpH5.6の培地に移し、人工光の下、28℃でインキュベートした。1週間後、小植物を同じ培地を含有するガラスチューブに移動させ、サンプルにするまで、かつ/または土壌に移植するまで栽培した。
実施例9
ZmODP−2およびZmWUSの一過性発現は形質転換を促進する
BBM活性が一過性であることを確かにするために、形質転換プロトコルのパラメータを修正することができる。そのような方法の一つに、転写および発現はさせるが、その後のDNAの放出を起こさせない方法、例えば化学的なPEIを使用する方法で行う、BBM含有プラスミドの沈殿が含まれる。
ある実施例では、PEIによりBBMプラスミドを金粒子上に沈殿させるが、組み込まれるべきトランスジェニック発現カセット、(UBI:MoPAT−GFPm:PinII;MoPATはトウモロコシに最適化したPAT遺伝子である)は標準の塩化カルシウム法を使用して金粒子上に沈殿させる。
手短に言えば、以下のようにして金粒子をPEIでコーティングした。最初、金粒子を洗浄した。平均直径1.0μmの35mgの金粒子(A.S.I.#162−0010)を秤量してマイクロ遠心管に入れ、1.2mlの純粋のEtOHを加え、1分間ボルテックスした。室温で15分間、管をインキュベートし、その後、Microfugeを使用し、4℃で15分間高速遠心分離を行った。上清を捨て、エタノール(EtOH)の新鮮な1.2mlのアリコートを加え、1分間ボルテックスし、1分間遠心分離し、上清を再度捨てた(これを2回繰り返した)。EtOHの新鮮な1.2mlのアリコートを加え、この懸濁液(EtOH中の金粒子)を−20℃で数週間保管した。ポリエチルイミン(PEI;Sigma #P3143)で粒子をコーティングするには、250μlの洗浄した金粒子/EtOH混合物を遠心分離し、EtOHを捨てた。100μlのddH2O中で粒子を1回洗浄して残留エタノールを除去し、250μlの0.25mM PEIを加えた後、パルス超音波洗浄を行って粒子を懸濁させ、その後、管をドライアイス/EtOH浴に浸漬して懸濁液を急速冷凍し、続いてこれを終夜凍結乾燥させた。この時点で、乾燥コーティング粒子を−80℃で少なくとも3週間は保管することができたであろう。使用前に、2.5mM HEPESバッファーの250μlアリコート、pH7.1で粒子を3回濯ぎ、1×パルス超音波洗浄、そして迅速なボルテックスを行った後、それぞれ遠心分離した。その後粒子を最終容積250μlのHEPESバッファーに懸濁させた。25μlの粒子のアリコートを新鮮な管に加え、その後DNAを付着させた。無コーティングDNAを付着させるには、粒子をパルス超音波洗浄し、その後、1μgのDNA(5μlの水中の)を加え、その後Pipettemanにより吸引と吐出を数回行って混合し、10分間インキュベートした。粒子を短時間回転(すなわち、10秒間)させ上清を除き、60μlのEtOHを加えた。PEI沈殿DNA−1を有する粒子を60μlのEtOH中で2回洗浄した。粒子を遠心分離し、上清を捨て、粒子を45μlの水に再懸濁させた。第2のDNA(DNA−2)を付着させるには、TransIT−2020を用いた沈殿を行った。45μlの粒子/DNA−1懸濁液を短時間超音波洗浄し、その後5μlの100ng/μl DNA−2および1μlのTransIT−2020を加えた。溶液をロータリー振盪機の上に10分間置き、10,000Gで1分間遠心分離した。上清を除き、粒子を60μlのEtOHに再懸濁させた。マクロキャリアーに溶液で染みを付け、PDS−1000の標準プロトコルを使用して、DNA−1およびDNA−2を逐次付着させた金粒子を10 DAP Hi−II未成熟胚の胚盤細胞に送達した。この実験では、DNA−1プラスミドはUBI:RFP:PinII発現カセットを含有し、DNA−2はUBI:CFP:PinII発現カセットを含有した。撃ち込みから2日後、CFPおよびRFPの両蛍光マーカーの一過性発現が、多数の赤色および青色細胞として未成熟胚の表面に観察された。その後、胚を非選択性培養培地に置き、3週間生長させ、その後、安定したコロニーについて採点した。この3週間の期間の後、僅かに1個の赤色コロニーと比較すると、多細胞の安定発現青色コロニーは10個観察された。これは、一過性発現のためにDNAを有効に導入するのに、PEI沈殿を使用し得るが、PEI導入DNAの組み込みが顕著に低下し、したがって、RFP発現トランスジェニックイベントの回収を減少させることを示すものであった。このようにして、PEI沈殿はBBMおよび/またはWUS2の一過性発現を送達するために使用することができる。
例えば、最初にPEIを使用してUBI:BBM:PinIIで粒子をコーティングし、その後、TransIT−2020を使用してUBI:MoPAT−YFPでコーティングし、その後、未成熟胚表面の胚盤細胞に撃ち込むPEI媒介沈殿は、未成熟胚表面に高頻度の一過性発現細胞を、安定な形質転換体の回収の極めて低い頻度(TransIT−2020法と比較して)をもたらした。したがって、PEI沈殿BBMカセットは一時的に発現し、撃ち込まれた組織表面(すなわち、胚盤表面)で爆発的な胚形成の進展を刺激するが、このプラスミドは組み込まれないと考えられる。Ca++/金粒子から放出されたMoPAT−GFPプラスミドは、組み込まれ、トランスジェニックイベントの回収に大幅な改善をもたらすような頻度で、選択マーカーを発現させることが期待される。対照の処理として、UBI:GUS:PinII(BBMの代わりに)を含有するPEI沈殿粒子をMoPAT−GFP/Ca++粒子と混合する。両処理した未成熟胚を、3mg/lのビアラホスを含有する培養培地に移動させる。6〜8週間後には、対照処理(PEI/GUS)と比べてPEI/BBM処理で、GFP陽性、ビアラホス耐性カルスがはるかに高頻度で観察されるであろうと期待される。
代替法として、BBMプラスミドをPEIとともに金粒子上に沈殿させ、その後、未成熟胚表面の胚盤細胞に導入し、続くBBM遺伝子の一過性発現により胚形成の急激な進展が誘発される。誘導生長のこの期間に、UBI:MoPAT−GFPm:PinIIなどのトランスジェニック発現カセットを導入する、細胞へのT−DNA送達とともに、トウモロコシに対する標準法(実施例1を参照)を使用し、アグロバクテリウム(Agrobacterium)により外植体を処理する。共培養後、外植体を通常の培養培地上で回収し、その後、3mg/lのビアラホスを含有する培養培地に移動させる。6〜8週間後には、対照処理(PEI/GUS)に比べて、PEI/BBM処理で、GFP陽性、ビアラホス耐性カルスがはるかに高頻度で観察されるであろうと期待される。
BBMおよび/またはWUS2ポリヌクレオチド産物を一過性に発現させることにより、カルスを「キック・スタート」で生長させることが望ましいのかもしれない。これは、BBMおよびWUS2DNAまたはBBMおよび/もしくはWUS2タンパク質を含む、BBMおよびWUS2の5’末端がキャップされたポリアデニル化RNA発現カセットを送達することにより行うことができる。これらの分子は全て微粒子銃を使用して送達することができる。例えば、5’がキャップされたポリアデニル化BBMおよび/またはWUS2 RNAは、AmbionのmMessage mMachineキットを使用して、インビトロで容易に作製することができる。RNAは、目的のポリヌクレオチドと、UBI:MoPAT−GFPm:PinIIなどの選択/スクリーニングに使用されるマーカーとを含有するDNAと共送達される。RNAを受け取った細胞は、直ちにより速く***を開始するであろうこと、また、これらの大部分は農学的遺伝子を組み込んでいるであろうことが予期される。これらのイベントは、またPAT〜GFP融合タンパク質を発現するであろうから(したがって適切な照明の下では緑色蛍光を発するであろうから)、トランスジェニッククローンコロニーとしてさらに確認することができる。その後、目的のポリヌクレオチドが存在するものについて、これらの胚から再生した植物をスクリーニングすることができる。
実施例10
ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼリボヌクレオチド−タンパク質複合体(RGEN)としてのgRNAおよびCas9を胚細胞へ直接送達することにより、トウモロコシに変異が引き起こされる
この実施例では、タンパク質形態のCas9と、インビトロ転写または化学合成RNA分子形態のgRNAとのトウモロコシ未成熟胚細胞への直接送達により、対応する標的部位に引き起こされることを示す。
RNA分子形態のgRNAを作製するために、これもまたT7ポリメラーゼプロモーター配列、および遺伝子に対して5’末端側のスペーサーの転写開始シグナルを含有する、5’末端オリゴヌクレオチドプライマーを使用して、トウモロコシ最適化U6ポリメラーゼIII gRNA発現カセットをPCRにより増幅させた。AmpliScribe T7−Flash Kit(Epicentre)により、製造者の推奨にしたがって、T7のインビトロ転写を行い、NucAway Spin Columns(Invitrogen;Life Technologies Inc)を使用して生成物を精製し、その後、エタノール沈殿を行った。
ガイドRNA/Cas9エンドヌクレアーゼタンパク質複合体(RGEN)(ガイドRNA/Cas9エンドヌクレアーゼリボヌクレオチド−タンパク質とも呼ばれる)を作製するために、7μgのCas9(ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)Cas9)タンパク質および3μgのgRNA分子(モル比1:2)を、全体積が20μlの1×Cas9バッファー(NEB)中で混合し、室温で15分間インキュベートした。RGENとともに、ユビキチンプロモーター調節選択および視認マーカー(MoPAT−DsRed融合体)、ユビキチンプロモーター調節トウモロコシ胚珠発達タンパク質2、ZmODP2(2009年12月31日公開の米国特許出願公開第2009/0328252号明細書を参照されたい)およびトウモロコシIN2プロモーター(Hershey et al.1991、Plant Mol.Biol 17:679〜690)調節WUSCHEL、ZmWUS(2011年7月7日公開の米国特許出願公開第2011/0167516号明細書を参照されたい)を含有するプラスミドを、市販の金粒子(0.6μm、Bio−Rad)および水溶性のカチオン性脂質TransIT−2020(Mirus、USA)を含有する、粒子送達マトリックスと混合した。いくらかの修正を加えた粒子媒介送達法(実施例8に記載の粒子媒介送達法を参照)を使用して、ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼリボヌクレオチド−タンパク質複合体を含む、粒子送達マトリックスをトウモロコシ胚細胞へ送達した。具体的には、金粒子を10,000rpmで1分間、Microfugeでペレット化し、上清を除去した後、100%エタノールの代わりに、105μlの滅菌水中で粒子を再懸濁させた。その後、各マイクロキャリアーの中心に10μlで染みを付け、乾燥させてから撃ち込んだ。
ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼリボヌクレオチド−タンパク質複合体(RGEN)形態のCas9およびgRNAを、選択および視認マーカー(UBI:MoPAT−DsRED)ならびに発生遺伝子(UBI:ZmODP2およびIN2:ZmWUS)と共に共送達するための、未成熟胚の供給源として、野生型トウモロコシ植物を使用した。LIGCas−3、MS26Cas−2、MS45Cas−2およびALSCas−4の内因性標的部位における変異の頻度を測定するために、撃ち込みの2日後に胚を収穫し、アンプリコンディープシーケンシングにより分析した。無処理の胚およびCas9タンパク質のみを撃ち込んだ胚は負の対照の役割を担い、Cas9およびgRNAを発現するDNAベクターを撃ち込んだ胚は正の対照として使用した。DNAベクターとして送達したCas9−gRNA構成要素と、ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼリボヌクレオチド−タンパク質複合体として送達したCas9−gRNA構成要素とで、類似の頻度が検出された(表11)。
植物体のレベルで変異の頻度を測定するために、Cas9−MS45−gRNA複合体、ZmODP2、ZmWUSおよびMOPAT−DSREDを共撃ち込みした60個の胚を、選択剤としてビアラホスを含有する培地に置いた。36の除草剤耐性カルスセクターのそれぞれから、複数の植物が再生され、変異体をスクリーニングした。36個のイベントのうち、17個(47%)は、変異アレル(10個は単一、7個は2アレル)を含んだが、19個(53%)は野生型MS45アレルのみを示した。変異した植物体の中で、各アレルについての読み取り配列の数は同程度であり、植物体はキメラでないことが示された。
RGENの直接送達もまた植物体の内因性遺伝子内で特定の編集を行うのに十分であることを示すために、実施例2に記載のように、トウモロコシALS2遺伝子を標的にした(ALS2特異的ALSCas−4標的部位)。修復鋳型としての127ntの一本鎖DNA Oligo2、(配列番号45)とCas9/ALS−CR4RGEN複合体とを、上記と同様の方法で共送達した。撃ち込みの2日後、胚を回収し、アンプリコンディープシーケンシングにより分析した(表12)。
さらに、2つの独立した実験で、40〜50個の撃ち込み済みの胚を、編集したALS2遺伝子の直接選択として、100ppmのクロルスルフロンを含有するプレートに移した。6週間後、クロルスルフロンを含む培地上で生長を続けている、2つのカルスセクター(各実験から1つ)を配列の決定により分析した。両イベントで、1つのALS2アレルは特異的に編集されていたが、第2のアレルは野生型のままであった。これらのカルスセクターから再生された植物体は、編集されたALS2アレルを含有し、除草剤を散布した時、クロルスルフロン耐性を示した。
これらのデータは、植物体の標的変異誘発および遺伝子編集のために、ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼリボヌクレオチド−タンパク質複合体(ポリヌクレオチド改変鋳型DNAを含むまたは不含)形態のCas9およびgRNAの、トウモロコシ未成熟胚細胞への直接送達は、DNA送達(組み換えDNA、プラスミドDNAなど)の代替として実行可能であることを示すものである。
実施例11
mRNAおよびgRNA形態Cas9の胚細胞への直接送達はトウモロコシに変異を引き起こす
この実施例では、mRNA分子の形態のCas9およびインビトロ転写または化学合成RNA分子形態のgRNAの、トウモロコシ未成熟胚細胞への直接送達により、対応する標的部位に変異が引き起こされることを示す。
我々の先の実験(Svitashev et al.、Plant Physiology、2015、Vol.169、pp.931−945)で、インビトロ合成RNA分子形態のgRNA分子とDNAベクターを発現するCas9との共送達によって、Cas9およびgRNAともにDNAベクターで送達した実験に比べて、変異は約100倍低い頻度であった。この違いについての可能な一つの説明は、gRNAがRNAとして送達され、Cas9がDNAベクターとして送達されるときには、Cas9およびgRNAで同時に起こる機能に対する要件が満たされないということかもしれない。この問題を解決するために、Cas9を、送達の瞬間から機能性Cas9タンパク質の発現までの時間を短縮するであろうmRNA分子として送達することがでる。この実験では、市販のCas9mRNA(TriLink Biotechnologies)を使用した。
この考えを試験するために、トウモロコシ胚細胞に、1ショット当たりCas9 mRNA(200ng)、インビトロ合成RNA分子形態のgRNA(100ng)、ユビキチン調節MoPAT−DsRED融合体(25ng)および発生遺伝子を含有するDNAベクター、ユビキチンプロモーター調節ODP2およびIN2プロモーター調節WUS(各12ng)の共撃ち込みを行った。この実験では、市販のCas9 mRNA(TriLink Biotechnologies)および上述のようにインビトロで合成したRNA分子を使用した。形質転換から2日後に回収した胚に対して、アンプリコンディープシーケンシングにより、変異の頻度分析を行った。(表13)。
これらのデータにより、Cas9およびgRNA両者のRNA分子形態での送達は、標的変異の頻度を向上させ、RGEN複合体としてのCas9−gRNAと共に行う送達は、植物体の標的変異誘発および遺伝子編集のためのDNA送達の代替として実行可能であることが示された。
実施例12
ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼリボヌクレオチド−タンパク質複合体(RGEN)としてのCas9およびgRNAの、選択マーカーを使用しない胚細胞への直接送達は、トウモロコシに変異を引き起こす
この実施例では、タンパク質形態のCas9およびインビトロ転写または化学合成RNA分子形態のgRNAの、トウモロコシ未成熟胚細胞への、選択マーカー遺伝子の共送達を行わない送達は、対応する標的部位で実際的な頻度の変異を有する植物体を再生させるのに十分であることを示す。
形質転換または改変細胞に、生長の優位性を与えるための選択マーカーの必要性は、植物体の形質転換およびゲノム改変プロトコルにおいて、長く続いてきたパラダイムである。したがって、全ての変異、遺伝子編集および遺伝子組み込み実験において、ゲノム編集イベントを選択するために選択マーカーが使用される。実施例10に記載の実験においてRGEN複合体の予期しない高活性(変異の頻度)を考慮して、選択マーカーを使用しない、完全にDNAフリー(ベクターフリー)のゲノム編集を試みた。トウモロコシの胚細胞に、3つの異なる遺伝子:liguleless1(LIG)、MS26およびMS45を標的とするガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼリボヌクレオチド−タンパク質(RGEN)複合体を撃ち込んだ。対照の役割を担う平行実験では、DNAベクター上のCas9エンドヌクレアーゼおよびMS45−gRNAを送達した。植物体を再生させ、標的変異の配列決定により分析した。全ての実験で、2.4〜9.7%の範囲の驚くべき高頻度で、変異植物体を回収した(表14)。
さらに、再生T0植物体を野生型Hi−II植物体と交雑し、分離比分析のために子孫の植物体を使用した。分析した全ての子孫植物体で、変異したMS45アレルの交雑伝達は、期待されたメンデルの分離比(1:1)であることが示された。
RGENの送達がトウモロコシのオフターゲット切断を減少させる可能性を評価するために、DNAベクターおよびRGEN送達を使用して、MS45オフサイトの変異の頻度を評価した。MS45Cas−2標的部位のプロトスペーサー領域(塩基がガイドRNAスペーサーと対をなす標的部位の領域)を、トウモロコシB73レファレンスゲノム(B73RefGen_v3、Maize Genetics and Genomics Database)と、オンターゲット配列に対して2つまでのミスマッチを認めるBowtie配列アライナー(Langmead、B.、Trapnell、C.、Pop、M.& Salzberg、S.L.Ultrafast and memory−efficient alignment of short DNA sequences to the human genome.Genome Biol.10:R25、2009)を使用してアライメントすることにより、オンターゲット部位と高い相同性を有する部位の探索を行った。その後、同定されたプロトスペーサーオフターゲットの3’側に隣接する、NGGプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列の存在に関し、可能性があるオフターゲット部位を調べた。これらの探索基準を使用して、単一のオフターゲット部位(5’−CGCCGAGGGCGACTACCGGC−3’、配列番号81)のみが同定された。それは、MS45プロトスペーサー標的およびAGG PAMとは2bpのミスマッチを含んだ(表15).この部位がインビボで切断されたことを確認するため、Cas9およびMS45−CR2 gRNA発現DNAベクターで形質転換した、トウモロコシ胚中の変異の存在に関するディープシーケンシングにより分析した。表15に示すように、オフターゲット部位の変異活性は、オンターゲット部位で観察された頻度4%と比べて頻度2%であった。表15に示すように、RGENオフターゲット活性は、DNAのベクターに乗せてCas9およびgRNAを送達する場合に比べて大幅に低下した(2%から0%)。
この実施例で、RNA誘導型エンドヌクレアーゼを使用した、標的変異を有する植物体の作製には、選択またはスクリーニングマーカーの共送達の必要がないこと、したがって、導入する改変の特異性および正確性が向上することが示された。再生植物体は、DNAベクターをランダムに組み込むことなく、標的変異または標的遺伝子編集(DNA配列を改変する修復鋳型が含まれるならば)のみを含有した。この送達方法は、限定されないが、トウモロコシ、ダイズ、コムギ、コメ、キビ、ソルガムおよびキャノーラなどの主要な作物種植物の体細胞における、遺伝子変異誘発に対して、完全にDNAフリーのアプローチを提供するものである。

Claims (25)

  1. 選択マーカーを使用せずに植物細胞のゲノム中のヌクレオチド配列を改変する方法であって、
    少なくとも1つの植物細胞に、前記ヌクレオチド配列に位置する標的部位で二本鎖切断を行うことができるガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体を導入する工程と;
    前記ヌクレオチド配列に改変を有する植物細胞を選択する工程であって、前記選択は選択マーカーの使用なしで生じる工程と
    を含む方法。
  2. 選択マーカーを使用せずにゲノム中に改変されたヌクレオチド配列を有する植物体を作製する方法であって、
    少なくとも1つの植物細胞に、ヌクレオチド配列に位置する標的部位で二本鎖切断を行うことができるガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体を導入する工程と;
    前記植物細胞から植物体を得る工程と;
    前記ヌクレオチド配列に改変を有する植物体を選択する工程であって、前記選択は選択マーカーの使用なしで生じる工程と
    を含む方法。
  3. 選択マーカーを使用せずにゲノム中に改変されたヌクレオチド配列を有する植物カルス組織を作製する方法であって、
    少なくとも1つの植物細胞に、ヌクレオチド配列に位置する標的部位で二本鎖切断を行うことができるガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体を導入する工程と;
    前記植物細胞からカルス組織を得る工程と;
    前記ヌクレオチド配列に改変を有するカルス組織を選択する工程であって、前記選択は選択マーカーの使用なしで生じる工程と
    を含む方法。
  4. 前記改変は、前記標的部位での、少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、または少なくとも1つのヌクレオチドの置換からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
  5. ポリヌクレオチド改変鋳型を前記植物細胞へ導入する工程であって、前記ポリヌクレオチド改変鋳型は、前記ヌクレオチド配列の少なくとも1つのヌクレオチド改変を含む工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
  6. 前記ポリヌクレオチド改変鋳型の前記少なくとも1つのヌクレオチド改変は、(i)少なくとも1つのヌクレオチドの置換、(ii)少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、(iii)少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、および(iv)(i)〜(iii)の任意の組み合わせからなる群から選択される請求項3に記載の方法。
  7. 前記植物細胞にドナーDNAを導入する工程であって、前記ドナーDNAは、前記標的部位に挿入すべき少なくとも1つの目的ポリヌクレオチドを含む工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
  8. 前記導入は、前記細胞への選択マーカーの導入を含まない請求項1に記載の方法。
  9. 前記導入は、破壊された選択マーカー遺伝子の、機能的選択マーカータンパク質をコードする非破壊選択マーカー遺伝子への修復を含まない請求項1に記載の方法。
  10. 前記導入は、前記細胞内に選択マーカーを生成しない請求項1に記載の方法。
  11. 前記選択は、選択マーカーの同定または使用を含まない請求項1に記載の方法。
  12. 前記選択は、前記植物体のDNAのシークエンシングによって生じる請求項1に記載の方法。
  13. 前記ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、リボヌクレオチド−タンパク質として導入される請求項1に記載の方法。
  14. 前記ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体の構成要素は、前記ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体を形成可能な、ガイドRNAおよびCasエンドヌクレアーゼタンパク質として導入される請求項1に記載の方法。
  15. 前記ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体の構成要素は、前記CasエンドヌクレアーゼをコードするmRNAとして、およびガイドRNAを含むRNAとして導入される請求項1に記載の方法。
  16. 前記ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体の構成要素は、ガイドRNAおよびCasエンドヌクレアーゼタンパク質をコードする組み換えDNA分子として導入される請求項1に記載の方法。
  17. 前記ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、細胞の内部で構築される請求項1に記載の方法。
  18. 前記リボヌクレオチド−タンパク質は、粒子送達マトリックスに被覆されるか、または粒子送達マトリックスと組み合わされて、リボヌクレオチド−タンパク質−マトリックス複合体を形成し、前記リボヌクレオチド−タンパク質−マトリックス複合体が前記細胞に導入される請求項13に記載の方法。
  19. 前記植物細胞は、体細胞胚細胞である請求項1に記載の方法。
  20. 前記植物細胞は、プロトプラストではない請求項1に記載の方法。
  21. 前記植物細胞は、単子葉植物細胞および双子葉植物細胞からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
  22. 前記植物細胞は、トウモロコシ、イネ、ソルガム、ライムギ、オオムギ、コムギ、キビ、カラスムギ、サトウキビ、芝草、スイッチグラス、ダイズ、キャノーラ、アルファルファ、ヒマワリ、ワタ、タバコ、ピーナッツ、ジャガイモ、トマト、タバコ、シロイヌナズナ(Arabidopsis)、およびベニバナ細胞からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
  23. 前記植物細胞から植物体を再生することをさらに含む請求項1に記載の方法。
  24. 請求項23に記載の方法によって作製された植物体。
  25. 請求項24に記載の植物体の子孫植物であって、ガイドRNA、Casエンドヌクレアーゼ、ポリヌクレオチド改変鋳型およびドナーDNAからなる群から選択される構成要素のいくつかを持たない子孫植物。
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