本開示は、EZH2ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と他の抗癌剤とを併用で使用して一定の腫瘍を処置すると、EZH2ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤および抗癌剤を単独で用いて腫瘍を処置することによって達成される結果より優れた結果を得ることができる、という発見に一部基づいている。したがって、本開示は、EZH2ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と1つまたは複数の他の治療剤とを含む組成物、およびヒストンまたは他のタンパク質のメチル化状態の調節によってその過程が影響を受け得る疾患、たとえば癌を処置するためのそれらの使用方法を提供する。ある実施形態では、本開示は、式(I)〜(VIa)の化合物とスニチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤とを含む組成物を特徴とする。ある実施形態では、本開示は、式(I)〜(VIa)の化合物とスニチニブなどの抗VEGF剤とを含む組成物を特徴とする。ある実施形態では、本開示は、式(I)〜(VIa)の化合物とプレドニゾンとを含む組成物を特徴とする。本開示はまた、癌、たとえば、腎細胞癌、濾胞性リンパ腫(FL)およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse cell large B−cell lymphoma)(DCLBL)を処置するための、EZH2ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤と1つまたは複数の治療剤、たとえば式(I)〜(VIa)の化合物およびスニチニブまたはプレドニゾンとを含む併用療法の方法も含む。特に、本開示の方法は、癌の処置もしくは予防または癌細胞増殖の阻害に有用である。
EZH2は、ヒストンH3のリシン27(H3−K27)のモノメチル化からトリメチル化を触媒するPRC2複合体の触媒サブユニットであるヒストンメチルトランスフェラーゼである。ヒストンH3−K27のトリメチル化は、ヒストン修飾部位の近位にある特定の遺伝子の転写を抑制するための機序である。このトリメチル化は、前立腺癌などの癌における発現変化の癌マーカーであることが知られている(たとえば、米国特許出願公開第2003/0175736号明細書を参照されたく、その内容全体を参照により本明細書に援用する)。他の研究が、調節異常を起こしたEZH2の発現と、転写抑制と、腫瘍性転化との間の機能連関の証拠を示した。Varambally et al.(2002)Nature 419(6907):624−9 Kleer et al.(2003)Proc Natl Acad Sci USA 100(20):11606−11。
抗VEGF療法への反応は、転移性腎細胞癌の患者では、初期には処置に反応しても、結局は耐性および腫瘍進行を生じる患者として、継続的な課題となっている。ヒストンメチルトランスフェラーゼであるzesteホモログのエンハンサー(EZH2)の過剰発現などのエピジェネティックな変化は、ヒト悪性腫瘍において頻繁に過剰発現し、複数の遺伝子のエピジェネティックなサイレンシングおよび腫瘍血管新生の制御に関与することが示されている。EZH2は薬物耐性に関与していることが最近になって報告された。たとえば、Herranz, Nicolas,et al.“Polycomb complex 2 is required for E−cadherin repression by the Snail1 transcription factor.”Molecular and cellular biology 28.15(2008):4772−4781;およびAdelaiye,Remi,et al.“Sunitinib dose−escalation overcomes transient resistance in clear cell renal cell carcinoma and is associated with epigenetic modifications.”Molecular cancer therapeutics(2014):molcanther−0208を参照されたい。したがって、EZH2を阻害すると、抗VEGF剤に対して腫瘍を再感作することができる。
本開示の一態様は、変異型EZH2を発現している被検体に、治療有効量のEZH2阻害剤と1つまたは複数の他の治療剤(チロシンキナーゼ阻害剤または抗VEGF剤など)とを投与することによって、被検体における癌の症状または前癌性状態を処置または緩和する方法に関する。本開示の変異型EZH2とは、変異型EZH2ポリペプチドまたは変異型EZH2ポリペプチドをコードする核酸配列をいう。ある種の実施形態では、変異型EZH2は、配列番号:6に定義されているその基質ポケットドメイン中に1つまたは複数の変異を含む。たとえば、変異は、置換、点変異、ナンセンス変異、ミスセンス変異、欠失、または挿入とすることができる。
ヒトEZH2核酸およびポリペプチドは、以前に記述されている。たとえば、Chen et al.(1996)Genomics 38:30−7[746アミノ酸];Swiss−Prot受託番号Q15910[746アミノ酸];GenBank受託番号NM_004456およびNP_004447(アイソフォームa[751アミノ酸]);ならびにGenBank受託番号NM_152998およびNP_694543(アイソフォームb[707アミノ酸])を参照されたく、これらの各々は、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
核内受容体結合SETドメインタンパク質1(NSD1)のA鎖に基づく部分的EZH2タンパク質の構造モデルを以下に示す。このモデルは、配列番号:1のEZH2配列の533〜732番目のアミノ酸残基に対応する。
この構造モデルに対応するアミノ酸配列を以下に示す。基質ポケットドメイン中の残基に下線を引いてある。SETドメイン中の残基はイタリック体で示している。
EZH2の触媒部位は、SETドメインとして知られるタンパク質の保存ドメインに属していると考えられる。EZH2のSETドメインのアミノ酸配列を、Swiss−Prot受託番号Q15910(配列番号:1)の613〜726番目のアミノ酸残基を範囲とする以下の部分配列によって示す。
配列番号:7において下線で示したチロシン(Y)残基はSwiss−Prot受託番号Q15910(配列番号:1)におけるTyr641(Y641)である。
GenBank受託番号NP_004447(配列番号:3)のSETドメインは、618〜731番目のアミノ酸残基を範囲としており、配列番号:6と同一である。配列番号:7において下線で示したSwiss−Prot受託番号Q15910におけるY641に対応するチロシン残基は、GenBank受託番号NP_004447(配列番号:3)におけるTyr646(Y646)である。
GenBank受託番号NP_694543(配列番号:5)のSETドメインは、574〜687番目のアミノ酸残基を範囲としており、配列番号:7と同一である。配列番号:7において下線で示したSwiss−Prot受託番号Q15910におけるY641に対応するチロシン残基は、GenBank受託番号NP_694543(配列番号:5)におけるTyr602(Y602)である。
GenBank受託番号NP_004447のSETドメインをコードするヌクレオチド配列は、
であり、Y641をコードするコドンを下線で示している。
本出願の目的上、ヒトEZH2のアミノ酸残基Y641とは、Swiss−Prot受託番号Q15910におけるY641であるか、またはそれに対応するチロシン残基をいうものと理解されたい。
やはり本出願の目的上、ヒトEZH2のY641変異型および同様の意味でEZH2のY641変異型は、野生型ヒトEZH2のY641に対応するアミノ酸残基がチロシン以外のアミノ酸残基で置換されているヒトEZH2をいうものと理解されたい。
一実施形態では、EZH2のY641変異型のアミノ酸配列が野生型ヒトEZH2のアミノ酸配列と異なるのは、野生型ヒトEZH2のY641に対応する単一アミノ酸残基がチロシン以外のアミノ酸残基によって置換されていることのみによるものである。
一実施形態では、EZH2のY641変異型のアミノ酸配列が野生型ヒトEZH2のアミノ酸配列と異なるのは、野生型ヒトEZH2のY641に対応する単一アミノ酸残基からフェニルアラニン(F)への置換のみによるものである。この実施形態によるEZH2のY641変異型を、本明細書ではY641F変異型または同様の意味でY641Fと呼ぶ。
一実施形態では、EZH2のY641変異型のアミノ酸配列が野生型ヒトEZH2のアミノ酸配列と異なるのは、野生型ヒトEZH2のY641に対応する単一アミノ酸残基からヒスチジン(H)への置換のみによるものである。この実施形態によるEZH2のY641変異型を、本明細書ではY641H変異型または同様の意味でY641Hと呼ぶ。
一実施形態では、EZH2のY641変異型のアミノ酸配列が野生型ヒトEZH2のアミノ酸配列と異なるのは、野生型ヒトEZH2のY641に対応する単一アミノ酸残基からアスパラギン(N)ヘの置換のみによるものである。この実施形態によるEZH2のY641変異型を、本明細書ではY641N変異型または同様の意味でY641Nと呼ぶ。
一実施形態では、EZH2のY641変異型のアミノ酸配列が野生型ヒトEZH2のアミノ酸配列と異なるのは、野生型ヒトEZH2のY641に対応する単一アミノ酸残基からセリン(S)への置換のみによるものである。この実施形態によるEZH2のY641変異型を本明細書ではY641S変異型または同様の意味でY641Sと呼ぶ。
一実施形態では、EZH2のY641変異型のアミノ酸配列が野生型ヒトEZH2のアミノ酸配列と異なるのは、野生型ヒトEZH2のY641に対応する単一アミノ酸残基からシステイン(C)への置換のみによるものである。この実施形態によるEZH2のY641変異型を、本明細書ではY641C変異型または同様の意味でY641Cと呼ぶ。
一実施形態では、EZH2のA677変異型のアミノ酸配列が野生型ヒトEZH2のアミノ酸配列と異なるのは、野生型ヒトEZH2のA677に対応する単一アミノ酸残基から非アラニンアミノ酸、好ましくはグリシン(G)への置換のみによるものである。この実施形態によるEZH2のA677変異型を、本明細書ではA677変異型、好ましくはA677G変異型または同様の意味でA677Gと呼ぶ。
一実施形態では、EZH2のA687変異型のアミノ酸配列が野生型ヒトEZH2のアミノ酸配列と異なるのは、野生型ヒトEZH2のA687に対応する単一アミノ酸残基から非アラニンアミノ酸、好ましくはバリン(V)への置換のみによるものである。この実施形態によるEZH2のA687変異型を、本明細書ではA687変異型、好ましくはA687V変異型または同様の意味でA687Vと呼ぶ。
一実施形態では、EZH2のR685変異型のアミノ酸配列が野生型ヒトEZH2のアミノ酸配列と異なるのは、野生型ヒトEZH2のR685に対応する単一アミノ酸残基から非アルギニンアミノ酸、好ましくはヒスチジン(H)またはシステイン(C)への置換のみによるものである。この実施形態によるEZH2のR685変異型を、本明細書ではR685変異型、好ましくはR685C変異型もしくはR685H変異型または同様の意味でR685HもしくはR685Cと呼ぶ。
一実施形態では、EZH2の変異型のアミノ酸配列は、配列番号:6に定義されているその基質ポケットドメイン中の1つまたは複数のアミノ酸残基において、野生型ヒトEZH2のアミノ酸配列と異なる。この実施形態によるEZH2の変異型を、本明細書ではEZH2変異型と呼ぶ。
他の例示的な置換アミノ酸変異として、配列番号:1のアミノ酸位置677、687、674、685または641での置換が挙げられ、たとえば、以下に限定されるものではないが、配列番号:1のアミノ酸位置677における野生型残基アラニン(A)からグリシン(G)への置換(A677G);配列番号:1のアミノ酸位置687における野生型残基アラニン(A)からバリン(V)への置換(A687V);配列番号:1のアミノ酸位置674における野生型残基バリン(V)からメチオニン(M)への置換(V674M);配列番号:1のアミノ酸位置685における野生型残基アルギニン(R)からヒスチジン(H)への置換(R685H);配列番号:1のアミノ酸位置685における野生型残基アルギニン(R)からシステイン(C)への置換(R685C);配列番号:1のアミノ酸位置641における野生型残基チロシン(Y)からフェニルアラニン(F)への置換(Y641F);配列番号:1のアミノ酸位置641における野生型残基チロシン(Y)からヒスチジン(H)への置換(Y641H);配列番号:1のアミノ酸位置641における野生型残基チロシン(Y)からアスパラギン(N)への置換(Y641N);配列番号:1のアミノ酸位置641における野生型残基チロシン(Y)からセリン(S)への置換(Y641S);または配列番号:1のアミノ酸位置641における野生型残基チロシン(Y)からシステイン(C)への置換(Y641C)がある。
本開示の変異として、配列番号:3のアミノ酸位置322における野生型残基アスパラギン(N)からセリン(S)への置換(N322S)、配列番号:3のアミノ酸位置288における野生型残基アルギニン(R)からグルタミン(Q)への置換(R288Q)、配列番号:3のアミノ酸位置573における野生型残基スレオニン(T)からイソロイシン(I)への置換(T573I)、配列番号:3のアミノ酸位置664における野生型残基アスパラギン酸(D)からグルタミン酸(E)への置換(D664E)、配列番号:5のアミノ酸位置458における野生型残基アルギニン(R)からグルタミン(Q)への置換(R458Q)、配列番号:3のアミノ酸位置249における野生型残基グルタミン酸(E)からリシン(K)への置換(E249K)、配列番号:3のアミノ酸位置684における野生型残基アルギニン(R)からシステイン(C)への置換(R684C)、配列番号:21のアミノ酸位置628における野生型残基アルギニン(R)からヒスチジン(H)への置換(R628H)、配列番号:5のアミノ酸位置501における野生型残基グルタミン(Q)からヒスチジン(H)への置換(Q501H)、配列番号:3のアミノ酸位置192における野生型残基アスパラギン酸(D)からアスパラギン(N)への置換(D192N)、配列番号:3のアミノ酸位置664における野生型残基アスパラギン酸(D)からバリン(V)への置換(D664V)、配列番号:3のアミノ酸位置704における野生型残基バリン(V)からロイシン(L)への置換(V704L)、配列番号:3のアミノ酸位置132における野生型残基プロリン(P)からセリン(S)への置換(P132S)、配列番号:21のアミノ酸位置669における野生型残基グルタミン酸(E)からリシン(K)への置換(E669K)、配列番号:3のアミノ酸位置255における野生型残基アラニン(A)からスレオニン(T)への置換(A255T)、配列番号:3のアミノ酸位置726における野生型残基グルタミン酸(E)からバリン(V)への置換(E726V)、配列番号:3のアミノ酸位置571における野生型残基システイン(C)からチロシン(Y)への置換(C571Y)、配列番号:3のアミノ酸位置145における野生型残基フェニルアラニン(F)からシステイン(C)への置換(F145C)、配列番号:3のアミノ酸位置693における野生型残基アスパラギン(N)からスレオニン(T)への置換(N693T)、配列番号:3のアミノ酸位置145における野生型残基フェニルアラニン(F)からセリン(S)への置換(F145S)、配列番号:21のアミノ酸位置109における野生型残基グルタミン(Q)からヒスチジン(H)への置換(Q109H)、配列番号:21のアミノ酸位置622における野生型残基フェニルアラニン(F)からシステイン(C)への置換(F622C)、配列番号:3のアミノ酸位置135における野生型残基グリシン(G)からアルギニン(R)への置換(G135R)、配列番号:5のアミノ酸位置168における野生型残基アルギニン(R)からグルタミン(Q)への置換(R168Q)、配列番号:3のアミノ酸位置159における野生型残基グリシン(G)からアルギニン(R)への置換(G159R)、配列番号:5のアミノ酸位置310における野生型残基アルギニン(R)からシステイン(C)への置換(R310C)、配列番号:3のアミノ酸位置561における野生型残基アルギニン(R)からヒスチジン(H)への置換(R561H)、配列番号:21のアミノ酸位置634における野生型残基アルギニン(R)からヒスチジン(H)への置換(R634H)、配列番号:3のアミノ酸位置660における野生型残基グリシン(G)からアルギニン(R)への置換(G660R)、配列番号:3のアミノ酸位置181における野生型残基チロシン(Y)からシステイン(C)への置換(Y181C)、配列番号:3のアミノ酸位置297における野生型残基ヒスチジン(H)からアルギニン(R)への置換(H297R)、配列番号:21のアミノ酸位置612における野生型残基システイン(C)からセリン(S)への置換(C612S)、配列番号:3のアミノ酸位置694における野生型残基ヒスチジン(H)からチロシン(Y)への置換(H694Y)、配列番号:3のアミノ酸位置664における野生型残基アスパラギン酸(D)からアラニン(A)への置換(D664A)、配列番号:3のアミノ酸位置150における野生型残基イソロイシン(I)からスレオニン(T)への置換(I150T)、配列番号:3のアミノ酸位置264における野生型残基イソロイシン(I)からアルギニン(R)への置換(I264R)、配列番号:3のアミノ酸位置636における野生型残基プロリン(P)からロイシン(L)への置換(P636L)、配列番号:3のアミノ酸位置713における野生型残基イソロイシン(I)からスレオニン(T)への置換(I713T)、配列番号:5のアミノ酸位置501における野生型残基グルタミン(Q)からプロリン(P)への置換(Q501P)、配列番号:3のアミノ酸位置243における野生型残基リシン(K)からグルタミン(Q)への置換(K243Q)、配列番号:5のアミノ酸位置130における野生型残基グルタミン酸(E)からアスパラギン酸(D)への置換(E130D)、配列番号:3のアミノ酸位置509における野生型残基アルギニン(R)からグリシン(G)への置換(R509G)、配列番号:3のアミノ酸位置566における野生型残基アルギニン(R)からヒスチジン(H)への置換(R566H)、配列番号:3のアミノ酸位置677における野生型残基アスパラギン酸(D)からヒスチジン(H)への置換(D677H)、配列番号:5のアミノ酸位置466における野生型残基リシン(K)からアスパラギン(N)への置換(K466N)、配列番号:3のアミノ酸位置78における野生型残基アルギニン(R)からヒスチジン(H)への置換(R78H)、配列番号:6のアミノ酸位置1における野生型残基リシン(K)からメチオニン(M)への置換(K6M)、配列番号:3のアミノ酸位置538における野生型残基セリン(S)からロイシン(L)への置換(S538L)、配列番号:3のアミノ酸位置149における野生型残基ロイシン(L)からグルタミン(Q)への置換(L149Q)、配列番号:3のアミノ酸位置252における野生型残基ロイシン(L)からバリン(V)への置換(L252V)、配列番号:3のアミノ酸位置674における野生型残基ロイシン(L)からバリン(V)への置換(L674V)、配列番号:3のアミノ酸位置656における野生型残基アラニン(A)からバリン(V)への置換(A656V)、配列番号:3のアミノ酸位置731における野生型残基アラニン(A)からアスパラギン酸(D)への置換(Y731D)、配列番号:3のアミノ酸位置345における野生型残基アラニン(A)からスレオニン(T)への置換(A345T)、配列番号:3のアミノ酸位置244における野生型残基アラニン(A)からアスパラギン酸(D)への置換(Y244D)、配列番号:3のアミノ酸位置576における野生型残基システイン(C)からトリプトファン(W)への置換(C576W)、配列番号:3のアミノ酸位置640における野生型残基アスパラギン(N)からリシン(K)への置換(N640K)、配列番号:3のアミノ酸位置675における野生型残基アスパラギン(N)からリシン(K)への置換(N675K)、配列番号:21のアミノ酸位置579における野生型残基アスパラギン酸(D)からチロシン(Y)への置換(D579Y)、配列番号:3のアミノ酸位置693における野生型残基アスパラギン(N)からイソロイシン(I)への置換(N693I)、および配列番号:3のアミノ酸位置693における野生型残基アスパラギン(N)からリシン(K)への置換(N693K)も挙げてもよい。
本開示の変異は、配列番号:3、5もしくは21のアミノ酸位置730、391、461、441、235、254、564、662、715、405、685、64、73、656、718、374、592、505、730もしくは363または配列番号:3、5もしくは21をコードする核酸配列の対応するヌクレオチド位置でのフレームシフトとすることができる。EZH2の変異はまた、配列番号:3、5または21のアミノ酸位置148と149の間へのグルタミン酸(E)の挿入とすることもできる。EZH2変異の別の例は、配列番号:3、5または21のアミノ酸位置148および149でのグルタミン酸(E)およびロイシン(L)の欠失である。変異型EZH2は、配列番号:3、5または21のアミノ酸位置733、25、317、62、553、328、58、207、123、63、137または60でのナンセンス変異をさらに含んでもよい。
EZH2に対してヘテロ接合性の細胞は、野生型酵素によるH3−K27me1の高効率形成、ならびに変異型酵素形態によるこの前駆細胞腫からH3−K27me2、および特にH3−K27me3への高効率な後続の移行によって、悪性形質を示すと予想され得る。
以前の結論によると、濾胞性リンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫における病理発生については、H3−K27のモノ−メチル化を行う酵素間の酵素カップリングおよびEZH2の一定の変異型に依存することが指摘されている。たとえば、Y641変異型EZH2を発現している細胞は、野生型EZH2を発現している細胞より、低分子EZH2阻害剤に対して感受性が高い場合がある。具体的には、Y641変異型EZH2を発現している細胞は、EZH2阻害剤の処置後に、成長、***または増殖が低減し、またはアポトーシスもしくはネクローシスを起こすことさえある。これとは逆に、野生型EZH2を発現している細胞はEZH2阻害剤の増殖抑制効果に対して反応性がない(米国特許出願第13/230,703号明細書(現在は米国特許第8,895,245号明細書);その内容全体を参照により本明細書に援用する。)
本開示の一態様は、配列番号:6に定義されている基質ポケットドメイン中に変異を含む変異型EZH2を発現している被検体に、本明細書に記載のEZH2阻害剤、たとえば、式(I)〜(VIa)の化合物の治療有効量を、一緒に投与するのに好適な別の薬剤と併用して、同時に、逐次的に、または交互に投与することによる、被検体における癌の症状または前癌性状態を処置または緩和する方法である。
本開示の別の態様は、被検体においてH3−K27からトリメチル化H3−K27への変換を阻害する方法である。この阻害は、被検体において、非メチル化H3−K27からモノメチル化H3−K27への変換、モノメチル化H3−K27からジメチル化H3−K27への変換、ジメチル化H3−K27からトリメチル化H3−K27ヘの変換、または、たとえば、モノメチル化H3−K27からジメチル化H3−K27への変換とジメチル化H3−K27からトリメチル化H3−K27ヘの変換とを含む、これらの任意の組合せを阻害するというものであり得る。本明細書で使用する場合、非メチル化H3−K27とは、リシン27のアミノ基に共有結合しているメチル基がないヒストンH3をいう。本明細書で使用する場合、モノメチル化H3−K27とは、リシン27のアミノ基に1つのメチル基が共有結合しているヒストンH3をいう。モノメチル化H3−K27はまた、本明細書でH3−K27me1とも呼ばれる。本明細書で使用する場合、ジメチル化H3−K27とは、リシン27のアミノ基に2つのメチル基が共有結合しているヒストンH3をいう。ジメチル化H3−K27はまた、本明細書でH3−K27me2とも呼ばれる。本明細書で使用する場合、トリメチル化H3−K27とは、リシン27のアミノ基に3つのメチル基が共有結合しているヒストンH3をいう。トリメチル化H3−K27はまた、本明細書でH3−K27me3とも呼ばれる。
ヒストンH3は136アミノ酸長のタンパク質であり、その配列は既知である。たとえば、GenBank受託番号CAB02546を参照されたく、その内容を参照により本明細書に援用する。本明細書にさらに開示しているように、完全長ヒストンH3に加えて、完全長ヒストンH3のK27に対応するリシン残基を含むヒストンH3のペプチド断片を、EZH2に対する(および同様にEZH2の変異型に対する)基質として使用して、H3−K27m1からH3−K27m2への変換およびH3−K27m2からH3−K27m3への変換を評価することができる。一実施形態では、こうしたペプチド断片は、ヒストンH3の21〜44番目のアミノ酸残基に対応する。こうしたペプチド断片は、アミノ酸配列LATKAARKSAPATGGVKKPHRYRP(配列番号:19)を有する。
本開示の組成物は、式(I)〜(VIa)の化合物および1つまたは複数の他の治療剤、またはそれらの薬学的に許容される塩を含む。式(I)〜(VIa)の化合物は、1つまたは複数の他の治療剤との併用療法、または一緒に、逐次的にもしくは交互に投与するのに好適な処置法の一部としての投与に好適である。本開示の方法に好適な式(I)〜(VIa)の他の化合物は米国特許出願公開第20120264734号明細書に記載されており、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
本明細書に記載の任意の方法に使用することができる化合物(すなわち、EZH2阻害剤)は次式I:
またはその薬学的に許容される塩を有することができ、式中、
R701はH、F、OR707、NHR707、−(C≡C)−(CH2)n7−R708、フェニル、5員または6員ヘテロアリール、C3〜8シクロアルキルまたは1〜3個のヘテロ原子を含む4〜7員ヘテロシクロアルキルであり、ここで、フェニル、5員または6員ヘテロアリール、C3〜8シクロアルキルまたは4〜7員ヘテロシクロアルキルは各々独立にハロ、C1〜3アルキル、OH、O−C1〜6アルキル、NH−C1〜6アルキル、およびC3〜8シクロアルキルまたは1〜3個のヘテロ原子を含む4〜7員ヘテロシクロアルキルで置換されたC1〜3アルキルから選択される1つまたは複数の基で任意選択的に置換されており、ここで、O−C1〜6アルキルおよびNH−C1〜6アルキルの各々はヒドロキシル、O−C1〜3アルキルまたはNH−C1〜3アルキルで任意選択的に置換されており、O−C1〜3アルキルおよびNH−C1〜3アルキルの各々はO−C1〜3アルキルまたはNH−C1〜3アルキルでさらに任意選択的に置換されており;
R702およびR703は各々独立にH、ハロ、C1〜4アルキル、C1〜6アルコキシルまたはC6〜C10アリールオキシであり、各々が1つまたは複数のハロで任意選択的に置換されており;
R704およびR705は各々独立にC1〜4アルキルであり;
R706はN(C1〜4アルキル)2で置換されたシクロヘキシルであり、ここで、C1〜4アルキルのうち一方または両方がC1〜6アルコキシで置換されており;またはR706はテトラヒドロピラニルであり;
R707はヒドロキシル、C1〜4アルコキシ、アミノ、モノ−またはジ−C1〜4アルキルアミノ、C3〜8シクロアルキル、および1〜3個のヘテロ原子を含む4〜7員ヘテロシクロアルキルから選択される1つまたは複数の基で任意選択的に置換されたC1〜4アルキルであり、ここで、C3〜8シクロアルキルまたは4〜7員ヘテロシクロアルキルは各々独立にC1〜3アルキルでさらに任意選択的に置換されており;
R708はOH、ハロ、およびC1〜4アルコキシ、1〜3個のヘテロ原子を含む4〜7員ヘテロシクロアルキル、またはO−C1〜6アルキルから選択される1つまたは複数の基で任意選択的に置換されたC1〜4アルキルであり、ここで、4〜7員ヘテロシクロアルキルはOHまたはC1〜6アルキルで任意選択的にさらに置換されていることが可能であり;および
n7は0、1または2である。
たとえば、R706はN(C1〜4アルキル)2で置換されたシクロヘキシルであり、ここで、C1〜4アルキルのうち一方が非置換であり、他方がメトキシで置換されている。
たとえば、R706は
である。
たとえば、化合物は式II:
の化合物である。
たとえば、R702はメチルまたはイソプロピルであり、R703はメチルまたはメトキシルである。
たとえば、R704はメチルである。
たとえば、R701はOR707であり、R707はOCH3またはモルホリンで任意選択的に置換されたC1〜3アルキルである。
たとえば、R701はHまたはFである。
たとえば、R701はテトラヒドロピラニル、フェニル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾリルまたはピラゾリルであり、その各々がメチル、メトキシ、モルホリンで置換されたエチルまたは−OCH2CH2OCH3で任意選択的に置換されている。
たとえば、R708はモルホリン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ジアゼパンまたはアゼチジンであり、その各々がOHまたはC1〜6アルキルで任意選択的に置換されている。
たとえば、R708はモルホリンである。
たとえば、R708はC1〜6アルキルで置換されたピペラジンである。
たとえば、R708はメチル、t−ブチルまたはC(CH3)2OHである。
本明細書に記載の任意の方法に使用することができる化合物(すなわち、EZH2阻害剤)は、次式III:
またはその薬学的に許容される塩を有することができる。
この式において:
R801はC1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C3〜8シクロアルキル、1〜3個のヘテロ原子を含む4〜7員ヘテロシクロアルキル、フェニルまたは5員または6員ヘテロアリールであり、その各々がO−C1〜6アルキル−RxまたはNH−C1〜6アルキル−Rxで置換されており、ここで、Rxはヒドロキシル、O−C1〜3アルキルまたはNH−C1〜3アルキルであり、Rxは、これがヒドロキシルである場合を除いて、O−C1〜3アルキルまたはNH−C1〜3アルキルで任意選択的にさらに置換されており;あるいはR801は−Q2−T2で置換されたフェニルであり、ここで、Q2は結合またはハロ、シアノ、ヒドロキシルもしくはC1〜C6アルコキシで任意選択的に置換されたC1〜C3アルキルリンカーであり、T2は4員〜12員ヘテロシクロアルキルで任意選択的に置換されており;およびR801は任意選択的にさらに置換されており;
R802およびR803は各々独立にH、ハロ、C1〜4アルキル、C1〜6アルコキシルまたはC6〜C10アリールオキシであり、各々が1つまたは複数のハロで任意選択的に置換されており;
R804およびR805は各々独立にC1〜4アルキルであり;ならびに
R806は−Qx−Txであり、ここで、Qxは結合またはC1〜4アルキルリンカーであり、TxはH、任意選択的に置換されたC1〜4アルキル、任意選択的に置換されたC3〜C8シクロアルキルまたは任意選択的に置換された4員〜14員ヘテロシクロアルキルである。
たとえば、QxおよびQ2は各々独立に結合またはメチルリンカーであり、TxおよびT2は各々独立にテトラヒドロピラニル、1つ、2つまたは3つのC1〜4アルキル基で置換されたピペリジニル、またはN(C1〜4アルキル)2で置換されたシクロヘキシルであり、ここで、C1〜4アルキルのうち一方または両方がC1〜6アルコキシで任意選択的に置換されている。
たとえば、R806はN(C1〜4アルキル)2で置換されたシクロヘキシルであり、またはR806はテトラヒドロピラニルである。
たとえば、R806は
である。
たとえば、R801はフェニルまたはO−C1〜6アルキル−Rxで置換された5員もしくは6員ヘテロアリールであり、またはR801はCH2−テトラヒドロピラニルで置換されたフェニルである。
たとえば、本開示の化合物は式IVaまたはIVb:
の化合物であり、式中、Z’はCHまたはNであり、R807はC2〜3アルキル−Rxである。
たとえば、R807は−CH2CH2OH、−CH2CH2OCH3または−CH2CH2OCH2CH2OCH3である。
たとえば、R802はメチルまたはイソプロピルであり、R803はメチルまたはメトキシルである。
たとえば、R804はメチルである。
本開示の化合物は、次式(V):
、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルを有することができる。
この式において:
R2、R4およびR12は各々独立にC1〜6アルキルであり;
R6はC6〜C10アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリールであり、その各々が1つまたは複数の−Q2−T2で任意選択的に置換されており、ここで、Q2は結合、またはハロ、シアノ、ヒドロキシルもしくはC1〜C6アルコキシで任意選択的に置換されたC1〜C3アルキルリンカーであり、T2はH、ハロ、シアノ、−ORa、−NRaRb、−(NRaRbRc)+A−、−C(O)Ra、−C(O)ORa、−C(O)NRaRb、−NRbC(O)Ra、−NRbC(O)ORa、−S(O)2Ra、−S(O)2NRaRbまたはRS2であり、ここで、Ra、RbおよびRcは各々独立にHまたはRS3であり、A−は薬学的に許容されるアニオンであり、RS2およびRS3は各々独立にC1〜C6アルキル、C3〜C8シクロアルキル、C6〜C10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキルまたは5員もしくは6員ヘテロアリールであり、あるいはRaおよびRbは、それらが結合しているN原子と一緒に0または1個の追加のヘテロ原子を有する4〜12員ヘテロシクロアルキル環を形成し、RS2と、RS3と、RaおよびRbで形成される4〜12員ヘテロシクロアルキル環との各々は、1つまたは複数の−Q3−T3で任意選択的に置換されており、ここで、Q3は結合、またはハロ、シアノ、ヒドロキシルまたはC1〜C6アルコキシで各々任意選択的に置換されたC1〜C3アルキルリンカーであり、T3はハロ、シアノ、C1〜C6アルキル、C3〜C8シクロアルキル、C6〜C10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル、5員または6員ヘテロアリール、ORd、COORd、−S(O)2Rd、−NRdReおよび−C(O)NRdReからなる群から選択され、RdおよびReは各々独立にHまたはC1〜C6アルキルであるか、または−Q3−T3はオキソであり;あるいは任意の2つの隣接する−Q2−T2は、それらが結合している原子と一緒に5員または6員環を形成し、当該5員または6員環は、N、OおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を任意選択的に含み、ハロ、ヒドロキシル、COOH、C(O)O−C1〜C6アルキル、シアノ、C1〜C6アルコキシル、アミノ、モノ−C1〜C6アルキルアミノ、ジ−C1〜C6アルキルアミノ、C3〜C8シクロアルキル、C6〜C10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキルおよび5員または6員ヘテロアリールからなる群から選択される1つまたは複数の置換基で任意選択的に置換されており;
R7は−Q4−T4であり、ここで、Q4は結合、C1〜C4アルキルリンカーまたはC2〜C4アルケニルリンカーであり、各リンカーはハロ、シアノ、ヒドロキシルまたはC1〜C6アルコキシで任意選択的に置換されており、T4はH、ハロ、シアノ、NRfRg、−ORf、−C(O)Rf、−C(O)ORf、−C(O)NRfRg、−C(O)NRfORg、−NRfC(O)Rg、−S(O)2RfまたはRS4であり、ここで、RfおよびRgは各々独立にHまたはRS5であり、RS4およびRS5は各々独立にC1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、C6〜C10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキルまたは5員もしくは6員ヘテロアリールであり、RS4およびRS5は各々1つまたは複数の−Q5−T5で任意選択的に置換されており、ここで、Q5は結合、C(O)、C(O)NRk、NRkC(O)、S(O)2またはC1〜C3アルキルリンカーであり、RkはHまたはC1〜C6アルキルであり、T5はH、ハロ、C1〜C6アルキル、ヒドロキシル、シアノ、C1〜C6アルコキシル、アミノ、モノ−C1〜C6アルキルアミノ、ジ−C1〜C6アルキルアミノ、C3〜C8シクロアルキル、C6〜C10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル、5員もしくは6員ヘテロアリールまたはS(O)qRqであり、ここで、qは0、1または2であり、RqはC1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、C6〜C10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキルまたは5員もしくは6員ヘテロアリールであり、T5は、これがH、ハロ、ヒドロキシルまたはシアノである場合を除いて、ハロ、C1〜C6アルキル、ヒドロキシル、シアノ、C1〜C6アルコキシル、アミノ、モノ−C1〜C6アルキルアミノ、ジ−C1〜C6アルキルアミノ、C3〜C8シクロアルキル、C6〜C10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキルおよび5員または6員ヘテロアリールからなる群から選択される1つまたは複数の置換基で任意選択的に置換されており;あるいは−Q5−T5はオキソであり;ならびに
R8はH、ハロ、ヒドロキシル、COOH、シアノ、RS6、ORS6またはCOORS6であり、ここで、RS6はC1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、4〜12員ヘテロシクロアルキル、アミノ、モノ−C1〜C6アルキルアミノまたはジ−C1〜C6アルキルアミノであり、RS6はハロ、ヒドロキシル、COOH、C(O)O−C1〜C6アルキル、シアノ、C1〜C6アルコキシル、アミノ、モノ−C1〜C6アルキルアミノおよびジ−C1〜C6アルキルアミノからなる群から選択される1つまたは複数の置換基で任意選択的に置換されており;あるいはR7およびR8は、それらが結合しているN原子と一緒に、0〜2個の追加のヘテロ原子を有する4〜11員ヘテロシクロアルキル環を形成し、R7およびR8で形成された4〜11員ヘテロシクロアルキル環は1つまたは複数の−Q6−T6で任意選択的に置換されており、ここで、Q6は結合、C(O)、C(O)NRm、NRmC(O)、S(O)2またはC1〜C3アルキルリンカーであり、RmはHまたはC1〜C6アルキルであり、T6はH、ハロ、C1〜C6アルキル、ヒドロキシル、シアノ、C1〜C6アルコキシル、アミノ、モノ−C1〜C6アルキルアミノ、ジ−C1〜C6アルキルアミノ、C3〜C8シクロアルキル、C6〜C10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル、5員もしくは6員ヘテロアリールまたはS(O)pRpであり、ここで、pは0、1または2であり、RpはC1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、C6〜C10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキルまたは5員もしくは6員ヘテロアリールであり、T6は、これがH、ハロ、ヒドロキシルまたはシアノである場合を除いて、ハロ、C1〜C6アルキル、ヒドロキシル、シアノ、C1〜C6アルコキシル、アミノ、モノ−C1〜C6アルキルアミノ、ジ−C1〜C6アルキルアミノ、C3〜C8シクロアルキル、C6〜C10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキルおよび5員または6員ヘテロアリールからなる群から選択される1つまたは複数の置換基で任意選択的に置換されており;あるいは−Q6−T6はオキソである。
たとえば、R6はC6〜C10アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリールであり、その各々が独立に、1つまたは複数の−Q2−T2で任意選択的に置換されており、ここで、Q2は結合またはC1〜C3アルキルリンカーであり、T2はH、ハロ、シアノ、−ORa、−NRaRb,−(NRaRbRc)+A−、−C(O)NRaRb、−NRbC(O)Ra、−S(O)2RaまたはRS2であり、ここで、RaおよびRbは各々独立にHまたはRS3であり、RS2およびRS3は各々独立にC1〜C6アルキルであり、あるいはRaおよびRbは、それらが結合しているN原子と一緒に0または1個の追加のヘテロ原子を有する4〜7員ヘテロシクロアルキル環を形成し、RS2と、RS3と、RaおよびRbで形成された4〜7員ヘテロシクロアルキル環との各々は独立に、1つまたは複数の−Q3−T3で任意選択的に置換されており、ここで、Q3は結合またはC1〜C3アルキルリンカーであり、T3はハロ、C1〜C6アルキル、4〜7員ヘテロシクロアルキル、ORd、−S(O)2Rdおよび−NRdReからなる群から選択され、RdおよびReは各々独立にHまたはC1〜C6アルキルであり、または−Q3−T3はオキソであり;あるいは任意の2つの隣接する−Q2−T2は、それらが結合している原子と一緒に、N、OおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を任意選択的に含む5員または6員環を形成する。
たとえば、本開示の化合物は式(VI):
の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、Q2は結合またはメチルリンカーであり、T2はH、ハロ、−ORa、−NRaRb、−(NRaRbRc)+A−または−S(O)2NRaRbであり、R7はピペリジニル、テトラヒドロピラン、シクロペンチルまたはシクロヘキシルであり、各々が1つの−Q5−T5で任意選択的に置換されており、R8はエチルである。
本開示は式(VIa):
の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルを提供し、式中、R7、R8、RaおよびRbは本明細書に定義されている。
式(VIa)の化合物には、以下の特徴のうち1つまたは複数を含めることができる。
たとえば、RaおよびRbは各々独立にH、または1つもしくは複数の−Q3−T3で任意選択的に置換されたC1〜C6アルキルである。
たとえば、RaおよびRbのうち一方はHである。
たとえば、RaおよびRbは、それらが結合しているN原子と一緒に、N原子に加えて0または1個のヘテロ原子を有する4〜7員ヘテロシクロアルキル環(たとえば、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、トリアゾリジニル、ピペリジニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、1,4−ジアゼパニル、1,4−オキサゼパニル、2−オキサ−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、および同種のもの)を形成し、その環は1つまたは複数の−Q3−T3で任意選択的に置換されている。
たとえば、RaおよびRbは、それらが結合しているN原子と一緒に、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、トリアゾリジニル、テトラヒロフラニル(tetrahyrofuranyl)、ピペリジニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、ピペラジニルまたはモルホリニルを形成し、これらの環は1つまたは複数の−Q3−T3で任意選択的に置換されている。
たとえば、1つまたは複数の−Q3−T3はオキソである。
たとえば、Q3は結合または非置換もしくは置換のC1〜C3アルキルリンカーである。
たとえば、T3はH、ハロ、4〜7員ヘテロシクロアルキル、C1〜C3アルキル、ORd、COORd,−S(O)2Rdまたは−NRdReである。
たとえば、各々独立にHまたはC1〜C6アルキルであるRdおよびRe。
たとえば、R7はC3〜C8シクロアルキルまたは4〜7員ヘテロシクロアルキルであり、各々が1つまたは複数の−Q5−T5で任意選択的に置換されている。
たとえば、R7はピペリジニル、テトラヒドロピラン、テトラヒドロ−2H−チオピラニル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ピロリジニルまたはシクロヘプチルであり、各々が1つまたは複数の−Q5−T5で任意選択的に置換されている。
たとえば、R7はシクロペンチル、シクロヘキシルまたはテトラヒドロ−2H−チオピラニルであり、その各々が1つまたは複数の−Q5−T5で任意選択的に置換されている。
たとえば、Q5はNHC(O)であり、T5はC1〜C6アルキルまたはC1〜C6アルコキシ、各々である。
たとえば、1つまたは複数の−Q5−T5はオキソである。
たとえば、R7は1−オキシド−テトラヒドロ−2H−チオピラニルまたは1,1−ジオキシド−テトラヒドロ−2H−チオピラニルである。
たとえば、Q5は結合であり、T5はアミノ、モノ−C1〜C6アルキルアミノ、ジ−C1〜C6アルキルアミノである。
たとえば、Q5はCO、S(O)2またはNHC(O)であり、T5はC1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシル、C3〜C8シクロアルキルまたは4〜7員ヘテロシクロアルキルである。
たとえば、R8はH、またはハロ、ヒドロキシル、COOH、C(O)O−C1〜C6アルキル、シアノ、C1〜C6アルコキシル、アミノ、モノ−C1〜C6アルキルアミノおよびジ−C1〜C6アルキルアミノからなる群から選択される1つまたは複数の置換基で任意選択的に置換されているC1〜C6アルキルである。
たとえば、R8はH、メチルまたはエチルである。
一実施形態では、本開示の化合物は化合物44
またはその薬学的に許容される塩である。
いくつかの実施形態では、本明細書に提示する任意の方法に使用することができる化合物は、
、それらの立体異性体またはそれらの薬学的に許容される塩および溶媒和物である。
いくつかの実施形態では、本明細書に提示する任意の方法に使用することができる化合物は、GSK−126、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩および溶媒和物である。
一実施形態では、本開示の化合物は、化合物それ自体、すなわち、遊離塩基または「裸」分子である。別の実施形態では、化合物はその塩、たとえば、裸分子のモノ−HCl塩またはトリ−HCl塩、モノ−HBr塩またはトリ−HBr塩である。
本開示の代表的な化合物として、表1に列挙した化合物が挙げられる。
以下の表中、
で表されている各々は
と解釈されるべきである。
本明細書で使用する場合、「アルキル」、「C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキル」または「C1〜C6アルキル」は、C1、C2、C3、C4、C5またはC6直鎖(線状)飽和脂肪族炭化水素基、およびC3、C4、C5またはC6分岐飽和脂肪族炭化水素基を含むことを意図している。たとえば、C1〜C6アルキルは、C1アルキル基、C2アルキル基、C3アルキル基、C4アルキル基、C5アルキル基およびC6アルキル基を含むことを意図している。アルキルの例として、以下に限定されるものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、s−ペンチルまたはn−ヘキシルなど1〜6個の炭素原子を有する部分が挙げられる。
ある種の実施形態では、直鎖または分岐アルキルは6個以下の炭素原子(たとえば、直鎖のC1〜C6、分岐鎖のC3〜C6)を有し、別の実施形態では、直鎖または分岐アルキルは4個以下の炭素原子を有する。
本明細書で使用する場合、「シクロアルキル」という用語は、3〜30個の炭素原子(たとえば、C3〜C10)を有する飽和または不飽和の、非芳香族炭化水素単環または多環(たとえば、縮合環、架橋環またはスピロ環)系をいう。シクロアルキルの例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロへプテニルおよびアダマンチルが挙げられるが、これに限定されるものではない。「ヘテロシクロアルキル」という用語は、別段の指定のない限り、1つまたは複数のヘテロ原子(O、N、SまたはSeなど)を有する、飽和または不飽和の非芳香族の、3〜8員単環系、7〜12員二環系(縮合環、架橋環またはスピロ環)または11〜14員三環系(縮合環、架橋環またはスピロ環)をいう。ヘテロシクロアルキル基の例として、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、ジオキサニル、テトラヒドロフラニル、イソインドリニル、インドリニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、トリアゾリジニル、テトラヒロフラニル(tetrahyrofuranyl)、オキシラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、ピラニル、モルホリニル、1,4−ジアゼパニル、1,4−オキサゼパニル、2−オキサ−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、2−オキサ−6−アザスピロ[3.3]ヘプタニル、2,6−ジアザスピロ[3.3]ヘプタニル、1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4.5]デカニルおよび同種のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
「任意選択的に置換されたアルキル」という用語は、非置換アルキル、または炭化水素骨格の1つまたは複数の炭素上の1つまたは複数の水素原子に置き換わる所定の置換基を有するアルキルをいう。こうした置換基として、たとえば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィナート、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくは芳香族複素環部分を挙げることができる。
「アリールアルキル」または「アラルキル」部分とは、アリールで置換されたアルキル(たとえば、フェニルメチル(ベンジル))である。「アルキルアリール」部分は、アルキルで置換されたアリール(たとえば、メチルフェニル)である。
本明細書で使用する場合、「アルキルリンカー」は、C1、C2、C3、C4、C5またはC6直鎖(線状)飽和二価脂肪族炭化水素基、およびC3、C4、C5またはC6分岐飽和脂肪族炭化水素基を含むことを意図している。たとえば、C1〜C6アルキルリンカーは、C1アルキルリンカー基、C2アルキルリンカー基、C3アルキルリンカー基、C4アルキルリンカー基、C5アルキルリンカー基およびC6アルキルリンカー基を含むことを意図している。アルキルリンカーの例として、以下に限定されるものではないが、メチル(−CH2−)、エチル(−CH2CH2−)、n−プロピル(−CH2CH2CH2−)、i−プロピル(−CHCH3CH2−)、n−ブチル(−CH2CH2CH2CH2−)、s−ブチル(−CHCH3CH2CH2−)、i−ブチル(−C(CH3)2CH2−)、n−ペンチル(−CH2CH2CH2CH2CH2−)、s−ペンチル(−CHCH3CH2CH2CH2−)またはn−ヘキシル(−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)など1〜6個の炭素原子を有する部分が挙げられる。
「アルケニル」は、上述のアルキルと長さが類似し、上述のアルキルへの置換が可能であるが、少なくとも1つの二重結合を含む不飽和脂肪族基を含む。たとえば、「アルケニル」という用語は、直鎖アルケニル基(たとえば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル)、および分岐アルケニル基を含む。ある種の実施形態では、直鎖または分岐アルケニル基はその骨格に6個以下の炭素原子(たとえば、直鎖に対してC2〜C6、分岐鎖に対してC3〜C6)を有する。「C2〜C6」という用語は、2〜6個の炭素原子を含むアルケニル基を含む。「C3〜C6」という用語は、3〜6個の炭素原子を含むアルケニル基を含む。
「任意選択的に置換されたアルケニル」という用語は、非置換アルケニル、または1つまたは複数の炭化水素骨格の炭素原子上の1つまたは複数の水素原子に置き換わる所定の置換基を有するアルケニルをいう。こうした置換基として、たとえば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィナート、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族部分もしくは芳香族複素環部分を挙げることができる。
「アルキニル」は、上述のアルキルと長さが類似し、上述のアルキルへの置換が可能であるが、少なくとも1つの三重結合を含む不飽和脂肪族基を含む。たとえば、「アルキニル」は、直鎖アルキニル基(たとえば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル)、および分岐アルキニル基を含む。ある種の実施形態では、直鎖または分岐アルキニル基はその骨格に6個以下の炭素原子(たとえば、直鎖に対してC2〜C6、分岐鎖に対してC3〜C6)を有する。「C2〜C6」という用語は、2〜6個の炭素原子を含むアルキニル基を含む。「C3〜C6」という用語は、3〜6個の炭素原子を含むアルキニル基を含む。
「任意選択的に置換されたアルキニル」という用語は、非置換アルキニル、または1つまたは複数の炭化水素骨格の炭素原子上の1つまたは複数の水素原子に置き換わる所定の置換基を有するアルキニルをいう。こうした置換基として、たとえば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィナート、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族部分もしくは芳香族複素環部分を挙げることができる。
他の任意選択的に置換された部分(たとえば任意選択的に置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール)は、非置換部分、および1つまたは複数の所定の置換基を有する部分の両方を含む。たとえば、置換されたヘテロシクロアルキルとして、1つまたは複数のアルキル基で置換されているもの、たとえば、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルおよび2,2,6,6−テトラメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジニルが挙げられる。
「アリール」は、少なくとも1つの芳香環を有するが、環構造に任意のヘテロ原子を有さない「結合された」環系、または多環系を含む、芳香族性を有する基を含む。例として、フェニル、ベンジル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレニルなどが挙げられる。
「ヘテロアリール」基は、環構造に1〜4個のヘテロ原子を有すること以外は上記で定義したようなアリール基であり、「複素環アリール」または「複素芳香族化合物」ということもある。本明細書で使用する場合、「ヘテロアリール」という用語は、炭素原子と、窒素、酸素および硫黄からなる群から独立に選択される1つまたは複数のヘテロ原子、たとえば1個もしくは1〜2個もしくは1〜3個もしくは1〜4個もしくは1〜5個もしくは1〜6個のヘテロ原子、または、たとえば1個、2個、3個、4個、5個もしくは6個のヘテロ原子とからなる安定な5員、6員もしくは7員単環式または7員、8員、9員、10員、11員もしくは12員二環式芳香族複素環式環を含むことを意図している。窒素原子は置換されていても、あるいは置換されていなくてもよい(すなわち、N、あるいは、RがHまたは定義された他の置換基であるNR)。窒素ヘテロ原子および硫黄ヘテロ原子は、任意選択的に酸化されていてもよい(すなわち、N→OおよびS(O)p、式中、p=1または2)。芳香族複素環のS原子およびO原子の総数は、1以下である点に留意されたい。
ヘテロアリール基の例として、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジンおよび同種のものが挙げられる。
さらに、「アリール」および「ヘテロアリール」という用語は、多環式、たとえば、三環式、二環式アリール基およびヘテロアリール基、たとえば、ナフタレン、ベンゾオキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、ナフトリジン、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、インドリジンを含む。
多環式芳香環の場合、すべての環が芳香族(たとえば、キノリン)であってもよいが、環の1つのみが芳香族(たとえば、2,3−ジヒドロインドール)であってもよい。また第2の環は縮合していても、あるいは架橋していてもよい。
シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール環は、1つまたは複数の環位置(例えば、環形成炭素またはNなどのヘテロ原子)において上記のような置換基、たとえば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィナート、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族部分もしくは芳香族複素環部分で置換されていてもよい。アリールおよびヘテロアリール基はさらに、多環式系(たとえば、テトラリン、メチレンジオキシフェニル)を形成するように、芳香族でない脂環式環または複素環式環と縮合していても、あるいは架橋していてもよい。
本明細書で使用する場合、「炭素環(carbocycle)」または「炭素環(carbocyclic ring)」は、そのいずれもが飽和でも、不飽和でも、あるいは芳香族でもよい、特定の数の炭素を有する任意の安定な単環式、二環式または三環式環を含むことを意図している。炭素環は、シクロアルキルおよびアリールを含む。たとえば、C3〜C14炭素環は、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個または14個の炭素原子を有する単環式、二環式または三環式環を含むことを意図している。炭素環の例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロブテニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘプテニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、アダマンチル、シクロオクチル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル、フルオレニル、フェニル、ナフチル、インダニル、アダマンチルおよびテトラヒドロナフチルがあるが、これに限定されるものではない。炭素環の定義には、架橋環も含まれ、たとえば、[3.3.0]ビシクロオクタン、[4.3.0]ビシクロノナン、[4.4.0]ビシクロデカンおよび[2.2.2]ビシクロオクタンがある。架橋環は、1個または複数個の炭素原子が2個の隣接しない炭素原子を連結すると生じる。一実施形態では、架橋環は、1個または2個の炭素原子である。架橋は常に単環式環を三環式環に変換する点に注意されたい。環が架橋されると、当該環について記載された置換基も架橋上に存在してもよい。さらに縮合環(たとえば、ナフチル、テトラヒドロナフチル)およびスピロ環も含まれる。
本明細書で使用する場合、「複素環」または「複素環基」には、少なくとも1つの環ヘテロ原子(たとえば、N、OまたはS)を含む任意の環状構造(飽和、不飽和または芳香族)が含まれる。複素環にはヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリールが含まれる。複素環の例として、モルホリン、ピロリジン、テトラヒドロチオフェン、ピペリジン、ピペラジン、オキセタン、ピラン、テトラヒドロピラン、アゼチジンおよびテトラヒドロフランが挙げられるが、これに限定されるものではない。
複素環式基の例として、アクリジニル、アゾシニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH−カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3−b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H−インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H−インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾール5(4H)−オン、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキシンドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4−ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H−ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H−1,2,5−チアジアジニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,5−トリアゾリル、1,3,4−トリアゾリルおよびキサンテニルがあるが、これに限定されるものではない。
「置換された」という用語は、本明細書で使用する場合、指定された原子上の任意の1つまたは複数の水素原子が、表記された基から選択された基で置き換えられていることを意味する。ただし、指定された原子の通常の原子価を超えず、かつ置換の結果、安定な化合物が得られるものとする。置換基がオキソまたはケト(すなわち、=O)である場合、原子上の2個の水素原子が置き換えられる。ケト置換基は芳香族部分には存在しない。環二重結合は、本明細書で使用する場合、隣接する2つの環原子間に形成される二重結合(たとえば、C=C、C=NまたはN=N)である。「安定な化合物」および「安定な構造」とは、ある化合物が、反応混合物から有用な程度の純度に単離されること、および有効な治療薬として製剤化することに耐えるのに十分に強いことを示すことを意図する。
置換基との結合が、環内の2つの原子を連結する結合を横切るように示される場合、そうした置換基は、環内のどの原子に結合してもよい。ある置換基について、そうした置換基が所定の式の化合物の残部に結合している原子を示さずに記載される場合、そうした置換基は当該式のどの原子を介して結合してもよい。置換基および/または可変基の組み合わせも許容されるが、そうした組み合わせの結果、安定な化合物が得られる場合に限られる。
任意の可変基(たとえば、R1)が、ある化合物の任意の構成要素または式に2回以上存在する場合、その各存在時の定義は、その他のすべての存在時の定義と無関係である。したがって、たとえば、ある基が0〜2のR1部分で置換されているように示される場合、その基は、最大2つのR1部分で任意選択的に置換されていてもよく、各存在時のR1は、R1の定義から独立に選択される。さらに、置換基および/または可変基の組み合わせも許容されるが、そうした組み合わせの結果、安定な化合物が得られる場合に限られる。
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」という用語は、−OHまたは−O−を有する基を含む。
本明細書で使用する場合、「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードをいう。「過ハロゲン化」という用語は一般に、ある部分においてすべての水素原子がハロゲン原子で置き換えられていることをいう。「ハロアルキル」または「ハロアルコキシル」という用語は、1つまたは複数のハロゲン原子で置換されたアルキルまたはアルコキシルをいう。
「カルボニル」という用語は、酸素原子に二重結合で連結された炭素を含む化合物および部分を含む。カルボニルを含む部分の例として、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミド、エステル、無水物などがあるが、これに限定されるものではない。
「カルボキシル」という用語は、−COOHまたはそのC1〜C6アルキルエステルをいう。
「アシル」は、アシルラジカル(R−C(O)−)またはカルボニル基を含む部分を含む。「置換アシル」は、1つまたは複数の水素原子が、たとえば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィナート、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族部分もしくは芳香族複素環部分で置き換えられているアシル基を含む。
「アロイル」は、カルボニル基に結合したアリールまたは芳香族複素環部分を有する部分を含む。アロイル基の例として、フェニルカルボキシ、ナフチルカルボキシなどが挙げられる。
「アルコキシアルキル」、「アルキルアミノアルキル」および「チオアルコキシアルキル」は、1つまたは複数の炭化水素骨格の炭素原子が酸素原子、窒素原子または硫黄原子で置き換えられている上記のようなアルキル基を含む。
「アルコキシ」または「アルコキシル」という用語は、酸素原子に共有結合した置換および非置換アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基を含む。アルコキシ基またはアルコキシルラジカルの例として、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基およびペントキシ基があるが、これに限定されるものではない。置換アルコキシ基の例として、ハロゲン化アルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基は、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィナート、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分または芳香族複素環部分などの基で置換されていてもよい。ハロゲン置換アルコキシ基の例として、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシおよびトリクロロメトキシがあるが、これに限定されるものではない。
「エーテル」または「アルコキシ」という用語は、2個の炭素原子またはヘテロ原子に結合した酸素を含む化合物または部分を含む。たとえば、この用語は、アルキル基に共有結合している酸素原子に共有結合したアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基をいう「アルコキシアルキル」を含む。
「エステル」という用語は、カルボニル基の炭素に結合している酸素原子に結合した炭素またはヘテロ原子を含む化合物または部分を含む。「エステル」という用語は、アルコキシカルボキシ基、たとえばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニルなどを含む。
「チオアルキル」という用語は、硫黄原子と連結したアルキル基を含む化合物または部分を含む。チオアルキル基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、カルボキシ酸、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくは芳香族複素環部分などの基で置換されていてもよい。
「チオカルボニル」または「チオカルボキシ」という用語は、硫黄原子に二重結合で連結された炭素を含む化合物および部分を含む。
「チオエーテル」という用語は、2個の炭素原子またはヘテロ原子に結合した硫黄原子を含む部分を含む。チオエーテルの例として、アルクチオアルキル、アルクチオアルケニルおよびアルクチオアルキニルがあるが、これに限定されるものではない。「アルクチオアルキル」という用語は、アルキル基に結合している硫黄原子に結合したアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を有する部分を含む。同様に、「アルクチオアルケニル」という用語は、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基が、アルケニル基に共有結合している硫黄原子に結合している部分をいう。アルクチオアルキニル」は、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基が、アルキニル基に共有結合している硫黄原子に結合している部分をいう。
本明細書で使用する場合、「アミン」または「アミノ」は、非置換または置換NH2をいう。「アルキルアミノ」は、−NH2の窒素が少なくとも1つのアルキル基に結合している化合物の基を含む。アルキルアミノ基の例として、ベンジルアミノ、メチルアミノ、エチルアミノ、フェネチルアミノなどが挙げられる。「ジアルキルアミノ」は、−NH2の窒素が少なくとも2つの別のアルキル基に結合している基を含む。ジアルキルアミノ基の例として、ジメチルアミノおよびジエチルアミノがあるが、これに限定されるものではない。「アリールアミノ」および「ジアリールアミノ」はそれぞれ、窒素が少なくとも1つまたは2つのアリール基に結合している基を含む。「アミノアリール」および「アミノアリールオキシ」は、アミノで置換されたアリールおよびアリールオキシをいう。「アルキルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」または「アリールアミノアルキル」は、少なくとも1つのアルキル基および少なくとも1つのアリール基に結合しているアミノ基をいう。「アルカミノアルキル」は、アルキル基にも結合している窒素原子に結合したアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基をいう。「アシルアミノ」は、窒素がアシル基に結合している基を含む。アシルアミノの例として、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基およびウレイド基があるが、これに限定されるものではない。
「アミド」または「アミノカルボキシ」という用語は、カルボニル基またはチオカルボニル基の炭素に結合している窒素原子を含む化合物または部分を含む。この用語は、カルボニル基またはチオカルボニル基の炭素に結合しているアミノ基に結合したアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を含む「アルカミノカルボキシ」基を含む。この用語はさらに、カルボニル基またはチオカルボニル基の炭素に結合しているアミノ基に結合したアリール部分またはヘテロアリール部分を含む「アリールアミノカルボキシ」基を含む。「アルキルアミノカルボキシ」、「アルケニルアミノカルボキシ」、「アルキニルアミノカルボキシ」および「アリールアミノカルボキシ」という用語はそれぞれ、アルキル部分、アルケニル部分、アルキニル部分およびアリール部分が窒素原子に結合し、その窒素原子がカルボニル基の炭素に結合している部分を含む。アミドは、直鎖アルキル、分岐アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたは複素環などの置換基で置換されていてもよい。アミド基上の置換基はさらに置換されていてもよい。
窒素を含む本開示の化合物は、他の本発明の化合物を得るため、酸化剤(たとえば、3−クロロペルオキシ安息香酸(mCPBA)および/または過酸化水素)を用いた処理によりN−オキシドに変換してもよい。したがって、図示し特許請求の範囲に記載されているすべての窒素含有化合物は、原子価および構造が許容される場合、図示した化合物およびそのN−オキシド誘導体(N→OまたはN+−O−と表記することがある)の両方を含むものと見なされる。さらに、他の例では、本開示の化合物中の窒素は、N−ヒドロキシ化合物またはN−アルコキシ化合物に変換してもよい。たとえば、N−ヒドロキシ化合物は、酸化剤、たとえばm−CPBAによる親アミンの酸化により調製することができる。図示し特許請求の範囲に記載されているすべての窒素含有化合物はさらに、原子価および構造が許容される場合、図示した化合物とそのN−ヒドロキシ(すなわち、N−OH)誘導体およびN−アルコキシ(すなわち、N−OR(式中、Rは置換もしくは非置換C1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アルキニル、3〜14員炭素環または3〜14員複素環である))誘導体との両方を包含する。
「異性」は、化合物が同一の分子式を有するものの、その原子の結合順序またはその原子の空間配置が異なることを意味する。原子の空間配置が異なる異性体は「立体異性体」と呼ばれる。互いに鏡像でない立体異性体は「ジアステレオ異性体」と呼ばれ、互いに重ね合わせることができない鏡像である立体異性体は「エナンチオマー」と呼ばれ、光学異性体と呼ばれることもある。逆のキラリティーの各エナンチオマー型を等量含む混合物は「ラセミ混合物」と呼ばれる。
同一でない4つの置換基に結合した炭素原子は「キラル中心」と呼ばれる。
「キラル異性体」は、少なくとも1つのキラル中心を有する化合物を意味する。2つ以上のキラル中心を有する化合物は、個々のジアステレオマーとして存在しても、あるいは「ジアステレオマー混合物」と呼ばれるジアステレオマーの混合物として存在してもよい。1つのキラル中心が存在する場合、立体異性体は、そのキラル中心の絶対配置(RまたはS)により特徴付けてもよい。絶対配置とは、キラル中心に結合した置換基の空間配置をいう。検討対象のキラル中心に結合した置換基は、Sequence Rule of Cahn,Ingold and Prelogに従いランク付けされる。(Cahn et al.,Angew.Chem.Inter.Edit.1966,5,385;errata 511;Cahn et al.,Angew.Chem.1966,78,413;Cahn and Ingold,J.Chem.Soc.1951(London),612;Cahn et al.,Experientia 1956,12,81;Cahn,J.Chem.Educ.1964,41,116)。
「幾何異性体」は、存在する原因が二重結合またはシクロアルキルリンカー(たとえば、1,3−シルコブチル)の周りの回転障壁であるジアステレオマーを意味する。これら配置は、接頭辞シスおよびトランス、またはカーン−インゴルド−プレローグ順位則に従い各基が分子の二重結合に関して同じ側または反対側にあることを示すZおよびEにより、その名称により区別される。
本開示の化合物は、異なるキラル異性体または幾何異性体として図示し得ることが理解されよう。さらに、化合物がキラル異性体型または幾何異性体型を有する場合、すべての異性体型が本開示の範囲に含まれることを意図しており、化合物の名称は任意の異性体型を除外するものではないことも理解されるべきである。
さらに、こうした構造および本開示で考察された他の化合物は、そのすべてのアトロピック(atropic)異性体を含む。「アトロピック(atropic)異性体」は、2つの異性体の原子が空間で異なって配置されている立体異性体の1種である。アトロピック(atropic)異性体が存在する原因は、中心結合の周りの大きな基の回転障壁により引き起こされる回転の束縛である。こうしたアトロピック(atropic)異性体は典型的には混合物として存在するが、クロマトグラフィー技術の最近の進歩の結果、特定の場合、2つのアトロピック(atropic)異性体の混合物を分離することが可能になっている。
「互変異性体」は、2つ以上の構造異性体が平衡状態で存在し、ある異性体型から別の異性体型に容易に変換される、それらの構造異性体の1つである。この変換の結果、水素原子が、隣接する共役二重結合の変化を伴って形式的に移動する。互変異性体は、溶液中で互変異性体のセットの混合物として存在する。互変異性が可能である溶液においては、互変異性体の化学平衡に達する。互変異性体の正確な比率は、温度、溶媒およびpHを含むいくつかの要因によって異なる。互変異性化により相互変換可能な互変異性体の概念は、互変異性と呼ばれる。
考えられる様々なタイプの互変異性のうち、2つが一般に観察される。ケト−エノール互変異性では、電子および水素原子の同時移動が起こる。環鎖互変異性は、糖鎖分子のアルデヒド基(−CHO)が同じ分子のヒドロキシ基(−OH)の1つと反応して、分子にグルコースに見られるような環式(環状)形態が生じた結果として起こる。
一般的な互変異性のペアとして、ケトン−エノール、アミド−ニトリル、ラクタム−ラクチム、複素環における(たとえば、グアニン、チミンおよびシトシンなどの核酸塩基における)アミド−イミド酸互変異性、イミン−エナミンおよびエナミン−エナミンがある。ケト−エノール平衡の例は、以下に示すように、ピリジン−2(1H)−オンと対応するピリジン−2−オールとの間の平衡である。
本開示の化合物は異なる互変異性体として図示され得ることが理解されよう。さらに、化合物が互変異性型を有する場合、すべての互変異性型が本開示の範囲に含まれることを意図しており、化合物の名称は任意の互変異性体型を除外するものではないことも理解されるべきである。
本明細書に開示している式(I)〜(VIa)の化合物には、化合物それ自体と、該当する場合、その塩およびその溶媒和物も含まれる。塩は、たとえば、アニオンと、アリール置換またはヘテロアリール置換されたベンゼン化合物上の正に荷電した基(たとえば、アミノ)との間で形成させることができる。好適なアニオンとして、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、重硫酸イオン、スルファミン酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、クエン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、グルタミン酸イオン、グルクロン酸イオン、グルタル酸イオン、リンゴ酸イオン、マレイン酸イオン、コハク酸イオン、フマル酸イオン、酒石酸イオン、トシル酸イオン、サリチル酸イオン、乳酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオンおよび酢酸イオン(たとえば、トリフルオロ酢酸イオン)が挙げられる。「薬学的に許容されるアニオン」という用語は、薬学的に許容される塩を形成するのに好適なアニオンをいう。同様に、塩はまた、カチオンと、アリール置換またはヘテロアリール置換されたベンゼン化合物上の負に荷電した基(たとえば、カルボン酸イオン)との間で形成させることもできる。好適なカチオンとして、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、およびテトラメチルアンモニウムイオンなどのアンモニウムカチオンが挙げられる。アリール置換またはヘテロアリール置換されたベンゼン化合物として、第四級窒素原子を含むその塩も含まれる。塩形態において、化合物対塩のカチオンまたはアニオンの比は、1:1でもよく、1:1以外の任意の割当量、たとえば、3:1、2:1、1:2または1:3でもよいことが理解されよう。
加えて、本開示の化合物、たとえば、化合物の塩は、水和もしくは非水和(無水)形態で存在しても、あるいは他の溶媒分子との溶媒和物として存在してもよい。水和物の非限定的な例として、一水和物、二水和物などが挙げられる。溶媒和物の非限定的な例として、エタノール溶媒和物、アセトン溶媒和物などが挙げられる。
「溶媒和物」は、化学量論量あるいは非化学量論量の溶媒を含む溶媒付加形態を意味する。一部の化合物は、結晶性固体状態で一定のモル比の溶媒分子を捕捉する傾向があり、したがって溶媒和物を形成する。溶媒が水の場合、形成される溶媒和物は水和物であり、溶媒がアルコールの場合、形成される溶媒和物はアルコラートである。水和物は1つの物質分子と1つまたは複数の水分子の組み合わせにより形成され、水はその分子状態をH2Oとして維持する。
本明細書で使用する場合、「アナログ」という用語は、別の化学化合物と構造的に類似しているが、組成がやや異なる(異なる元素の原子による1つの原子の置き換え、または特定の官能基の存在、または別の官能基による1つの官能基の置き換えのように)化学化合物をいう。したがって、アナログは、参照化合物と機能および外観が類似または同様であるが、構造または起源が類似または同様でない化合物である。
本明細書で定義した、「誘導体」という用語は、共通のコア構造を有するが、本明細書に記載するような様々な基で置換されている化合物をいう。たとえば、式(I)で表される化合物はすべて、アリールまたはヘテロアリール置換ベンゼン化合物であり、共通のコアとして式(I)を有する。
「生物学的等価体」という用語は、ある原子または原子団と、別の概ね類似した原子または原子団との交換により生じる化合物をいう。生物学的等価性置換の目的は、親化合物に類似した生物学的特性を有する新しい化合物を作ることにある。生物学的等価性置換は、物理化学をベースにしても、あるいは位相幾何学をベースにしてもよい。カルボン酸の生物学的等価体の例として、アシルスルホンイミド、テトラゾール、スルホネートおよびホスホネートがあるが、これに限定されるものではない。たとえば、Patani and LaVoie,Chem.Rev.96,3147−3176,1996を参照されたい。
本開示は、本化合物に生じる原子の同位体をすべて含むことを意図している。同位体は、同じ原子番号を有するが、異なる質量数を有する原子を含む。一般的な例として、限定するものではないが、水素の同位体としてトリチウムおよびジュウテリウムがあり、炭素の同位体としてC−13およびC−14がある。
本開示の式(I)〜(VIa)の任意の化合物は、本明細書に記載のとおり、EZH2阻害剤とすることができる。
本開示のある種の態様では、EZH2の阻害剤は、それが野生型EZH2のヒストンメチルトランスフェラーゼ活性を阻害するよりも有効に変異型EZH2のヒストンメチルトランスフェラーゼ活性を阻害するとき、変異型EZH2のヒストンメチルトランスフェラーゼ活性を「選択的に阻害する」。たとえば、一実施形態では、選択的阻害剤は、変異型EZH2に対するIC50が、野生型EZH2に対するIC50より少なくとも40パーセント低い。一実施形態では、選択的阻害剤は、変異型EZH2に対するIC50が野生型EZH2に対するIC50より少なくとも50パーセント低い。一実施形態では、選択的阻害剤は、変異型EZH2に対するIC50が野生型EZH2に対するIC50より少なくとも60パーセント低い。一実施形態では、選択的阻害剤は、変異型EZH2に対するIC50が野生型EZH2に対するIC50より少なくとも70パーセント低い。一実施形態では、選択的阻害剤は、変異型EZH2に対するIC50が野生型EZH2に対するIC50より少なくとも80パーセント低い。一実施形態では、選択的阻害剤は、変異型EZH2に対するIC50が野生型EZH2に対するIC50より少なくとも90パーセント低い。
一実施形態では、変異型EZH2の選択的阻害剤は、野生型EZH2に対して阻害効果を実質的に発揮しない。
本開示のある種の態様では、阻害剤は、H3−K27me2からH3−K27me3への変換を阻害する。一実施形態では、阻害剤はH3−K27のトリメチル化を阻害すると言われる。H3−K27me1からH3−K27me2への変換はH3−K27me2からH3−K27me3への変換に先行するため、H3−K27me1からH3−K27me2への変換の阻害剤は当然H3−K27me2からH3−K27me3への変換も阻害する。すなわちそれは、H3−K27のトリメチル化を阻害する。H3−K27me1からH3−K27me2への変換を阻害せずにH3−K27me2からH3−K27me3への変換を阻害することも可能である。このタイプの阻害もまた、H3−K27のジメチル化の阻害はしないにしても、H3−K27のトリメチル化を阻害することになる。
一実施形態では、阻害剤は、H3−K27me1からH3−K27me2への変換およびH3−K27me2からH3−K27me3ヘの変換を阻害する。こうした阻害剤は、H3−K27me1からH3−K27me2への変換のみを直接阻害するものであってもよい。あるいは、こうした阻害剤は、H3−K27me1からH3−K27me2への変換およびH3−K27me2からH3−K27me3ヘの変換の両方を直接阻害するものであってもよい。
本開示のある種の態様では、阻害剤化合物は、ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性を阻害する。ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性の阻害は、任意の好適な方法を用いて検出することができる。阻害は、たとえば、ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性の速度によって、またはヒストンメチルトランスフェラーゼ活性の産物として、測定することができる。
阻害は、好適な対照と比較して測定可能な阻害である。一実施形態では、阻害は好適な対照と比較して少なくとも10パーセントの阻害である。すなわち、阻害剤を用いた場合の酵素活性の速度または産物の量が、阻害剤を用いない場合に作られる、対応する速度または量の90パーセント以下である。種々の他の実施形態では、阻害は好適な対照と比較して少なくとも20、25、30、40、50、60、70、75、80、90または95パーセントの阻害である。一実施形態では、阻害は好適な対照と比較して少なくとも99パーセントの阻害である。すなわち、阻害剤を用いた場合の酵素活性の速度または産物の量が、阻害剤を用いない場合に作られる、対応する速度または量の1パーセント以下である。
本開示の組成物は、式(I)〜(VIa)の化合物またはその薬学的に許容される塩と、1つまたは複数の他の治療剤またはその薬学的に許容される塩とを含む。本開示は、式(I)〜(VIa)の化合物またはその薬学的に許容される塩と、1つまたは複数の治療剤またはその薬学的に許容される塩との、合剤または別個の製剤としての投与を提供し、製剤の投与は同時、逐次または交互である。ある種の実施形態では、他の治療剤は、本開示の組成物で処置される疾患または状態を処置するのに有用であると当技術分野において認識されている薬剤とすることができる。他の実施形態では、他の治療剤は、本開示の組成物で処置される疾患または状態を処置するのに有用であると当技術分野において認識されていない薬剤とすることができる。一態様では、他の治療剤は、本開示の組成物に有益な特性を付与する薬剤(たとえば、組成物の粘度に影響を及ぼす薬剤)とすることができる。本開示の組成物の有益な特性として、式(I)〜(VIa)の化合物と1つまたは複数の他の治療剤との併用から生じる薬物動態学的または薬力学的な協同作用が含まれるが、これに限定されるものではない。たとえば、1つまたは複数の他の治療剤は抗癌剤または化学療法剤とすることができる。たとえば、1つまたは複数の他の治療剤はグルココルチコイドとすることができる。たとえば、1つまたは複数の他の治療剤は、プレドニゾン、プレドニゾロン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、マホスファミド、シスプラチン、AraC、エベロリムス、デシタビン、デキサメタゾン、またはこれらの機能的なアナログ、誘導体、プロドラッグおよび代謝産物から選択することができる。別の態様では、他の治療剤はプレドニゾンまたはその活性代謝産物であるプレドニゾロンとすることができる。
以下に示す治療剤は、例示を目的とするものであり、限定を意図するものではない。本開示は、以下のリストから選択される少なくとも1つの他の治療剤を含む。本開示は、本開示の組成物がその目的とする機能を発揮することができるように、2つ以上の他の治療剤、たとえば、2つ、3つ、4つまたは5つの他の治療剤を含むことができる。
一実施形態では、他の治療剤は、抗癌剤である。一実施形態では、抗癌剤はHDAC阻害剤などヒストン修飾に影響を与える化合物である。ある種の実施形態では、抗癌剤は、化学療法剤(2CdA、5−FU、6−メルカプトプリン、6−TG、アブラキサン(商標)、アキュテイン(登録商標)、アクチノマイシンD、アドリアマイシン(登録商標)、アリムタ(登録商標)、全トランス型レチノイン酸、アメトプテリン、Ara−C、アザシタジン(Azacitadine)、BCNU、ブレノキサン(登録商標)、カンプトスター(Camptosar)(登録商標)、CeeNU(登録商標)、クロファラビン、クロラール(商標)、シトキサン(登録商標)、塩酸ダウノルビシン、ダウノキソーム(DaunoXome)(登録商標)、ダコゲン(Dacogen)(登録商標)、DIC、ドキシル(登録商標)、エレンス(Ellence)(登録商標)、エロキサチン(登録商標)、エムシト(Emcyt)(登録商標)、リン酸エトポシド、フルダラ(登録商標)、FUDR(登録商標)、ジェムザール(登録商標)、グリーベック(登録商標)、ヘキサメチルメラミン、ハイカムチン(登録商標)、ハイドレア(登録商標)、イダマイシン(登録商標)、アイフェックス(Ifex)(登録商標)、イキサベピロン、イグゼンプラ(登録商標)、L−アスパラギナーゼ、ロイケラン(登録商標)、リポソームAra−C、L−PAM、リソドレン(Lysodren)、マチュレーン(Matulane)(登録商標)、ミスラシン(mithracin)、マイトマイシンC、ミレラン(登録商標)、ナベルビン(登録商標)、ノイトレキシン(Neutrexin)(登録商標)、ニロチニブ、ニペント(Nipent)(登録商標)、ナイトロジェンマスタード、ノバントロン(登録商標)、オンカスパー(Oncaspar)(登録商標)、パンレチン(登録商標)、パラプラチン(登録商標)、プラチノール(登録商標)、カルムスチンインプラント含有プロリフェプロスパン(prolifeprospan)20、サンドスタチン(登録商標)、タルグレチン(Targretin)(登録商標)、タシグナ(登録商標)、タキソテール(登録商標)、テモダール(登録商標)、TESPA、トリセノックス(登録商標)、バルスター(Valstar)(登録商標)、ベルバン(Velban)(登録商標)、ビダーザ(商標)、硫酸ビンクリスチン、VM26、ゼローダ(登録商標)およびザノサー(登録商標)など);生物製剤(アルファインターフェロン、無菌化ウシ型結核菌、ベキサール(登録商標)、キャンパス(登録商標)、エルガミソール(Ergamisol)(登録商標)、エルロチニブ、ハーセプチン(登録商標)、インターロイキン2、イレッサ(登録商標)、レナリドミド、マイロターグ(登録商標)、オンタック(Ontak)(登録商標)、ペガシス(登録商標)、レブリミド(登録商標)、リツキサン(登録商標)、タルセバ(商標)、サロミド(登録商標)、タイケルブ(登録商標)ベルケイド(登録商標)およびゼバリン(商標)など);コルチコステロイド(リン酸デキサメタゾンナトリウム、デルタソン(DeltaSone)(登録商標)およびデルタコルテフ(Delta−Cortef)(登録商標)など);ホルモン療法(アリミデックス(登録商標)、アロマシン(登録商標)、カソデックス(登録商標)、シタドレン(登録商標)、エリガード(登録商標)、ユーレキシン(Eulexin)(登録商標)、エビスタ(登録商標)、フェソロデックス(登録商標)、フェマーラ(登録商標)、ハロテスチン(登録商標)、メガス(Megace)(登録商標)、ニランドロン(Nilandron)(登録商標)、ノルバデックス(登録商標)、プレナキシス(Plenaxis)(商標)およびゾラデックス(登録商標)など);ならびに放射性医薬品(ヨードトープ(Iodotope)(登録商標)、メタストロン(登録商標)、ホスホコル(Phosphocol)(登録商標)およびサマリウムSM−153など)からなる群から選択される。
別の実施形態では、他の治療剤は、アルキル化剤;抗生物質;代謝拮抗剤;解毒剤;インターフェロン;ポリクローナルまたはモノクローナル抗体;EGFR阻害剤;HER2阻害剤;ヒストンデアセチラーゼ阻害剤;ホルモン;有糸***阻害剤;MTOR阻害剤;多標的キナーゼ阻害剤;セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤;チロシンキナーゼ阻害剤;VEGF/VEGFR阻害剤;タキサンまたはタキサン誘導体、アロマターゼ阻害剤、アントラサイクリン、微小管標的薬、トポイソメラーゼ毒性薬、分子標的または酵素(たとえば、キナーゼまたはタンパク質メチルトランスフェラーゼ)の阻害剤、シチジンアナログ薬、あるいはwww.cancer.org/docroot/cdg/cdg_0.aspに収載されている任意の化学療法剤、抗新生物剤または抗増殖剤を含む群から選択される化学療法剤(抗新生物剤または抗増殖剤とも呼ばれる)である。
例示的なアルキル化剤としては、以下に限定されるものではないが、シクロホスファミド(シトキサン;ネオサー(Neosar));クロランブシル(ロイケラン);メルファラン(アルケラン);カルムスチン(BiCNU);ブスルファン(ブスルフェクス);ロムスチン(CeeNU);ダカルバジン(DTIC−Dome);オキサリプラチン(エロキサチン);カルムスチン(ギリアデル);イホスファミド(アイフェックス);メクロレタミン(ムスタルゲン);ブスルファン(ミレラン);カルボプラチン(パラプラチン);シスプラチン(CDDP;プラチノール);テモゾロミド(テモダール);チオテパ(チオプレックス(Thioplex));ベンダムスチン(トレアンダ);またはストレプトゾシン(ザノサー)が挙げられる。
例示的な抗生物質としては、以下に限定されるものではないが、ドキソルビシン(アドリアマイシン);ドキソルビシンリポソーム(ドキシル);ミトキサントロン(ノバントロン);ブレオマイシン(ブレノキサン);ダウノルビシン(セルビジン);ダウノルビシンリポソーム(ダウノキソーム);ダクチノマイシン(コスメゲン);エピルビシン(エレンス);イダルビシン(イダマイシン);プリカマイシン(ミスラシン(Mithracin));マイトマイシン(ムタミシン(Mutamycin));ペントスタチン(ニペント);またはバルルビシン(バルスター)が挙げられる。
例示的な代謝拮抗剤としては、以下に限定されるものではないが、フルオロウラシル(アドルシル);カペシタビン(ゼローダ);ヒドロキシ尿素(ハイドレア);メルカプトプリン(プリネトール);ペメトレキセド(アリムタ);フルダラビン(フルダラ);ネララビン(アラノン(Arranon));クラドリビン(クラドリビンノバプラス(Cladribine Novaplus));クロファラビン(クロラール);シタラビン(サイトサール−U);デシタビン(ダコゲン);シタラビンリポソーム(DepoCyt);ヒドロキシ尿素(ドロキシア(Droxia));プララトレキセート(フォロチン);フロクスウリジン(FUDR);ゲムシタビン(ジェムザール);クラドリビン(ロイスタチン);フルダラビン(オフォルタ(Oforta));メトトレキセート(MTX;リウマトレックス);メトトレキセート(トレキサール(Trexall));チオグアニン(タブロイド);TS−1またはシタラビン(タラビン(Tarabine)PFS)が挙げられる。
例示的な解毒剤としては、以下に限定されるものではないが、アミホスチン(エチオール(Ethyol))またはメスナ(メスネックス(Mesnex))が挙げられる。
例示的なインターフェロンとしては、以下に限定されるものではないが、インターフェロンアルファ−2b(イントロンA)またはインターフェロンアルファ−2a(ロフェロンA)が挙げられる。
例示的ポリクローナルまたはモノクローナル抗体としては、以下に限定されるものではないが、トラスツズマブ(ハーセプチン);オファツムマブ(アーゼラ);ベバシズマブ(アバスチン);リツキシマブ(リツキサン);セツキシマブ(アービタックス);パニツムマブ(ベクティビックス);トシツモマブ/ヨウ素131トシツモマブ(ベキサール);アレムツズマブ(キャンパス);イブリツモマブ(ゼバリン;In−111;Y−90ゼバリン);ゲムツズマブ(マイロターグ);エクリズマブ(ソリリス)またはデノスマブが挙げられる。
例示的なEGFR阻害剤としては、以下に限定されるものではないが、ゲフィチニブ(イレッサ);ラパチニブ(タイケルブ);セツキシマブ(アービタックス);エルロチニブ(タルセバ);パニツムマブ(ベクティビックス);PKI−166;カネルチニブ(CI−1033);マツズマブ(Emd7200)またはEKB−569が挙げられる。
例示的なHER2阻害剤としては、以下に限定されるものではないが、トラスツズマブ(ハーセプチン);ラパチニブ(タイケルブ)またはAC−480が挙げられる。
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤としては、以下に限定されるものではないが、ボリノスタット(ゾリンザ)が挙げられる。
例示的なホルモン剤としては、以下に限定されるものではないが、タモキシフェン(ソルタモックス(Soltamox);ノルバデックス);ラロキシフェン(エビスタ);メゲストロール(メガス);リュープロリド(リュープロン;リュープロンデポー剤;エリガード;ビアドュール(Viadur));フルベストラント(フェソロデックス);レトロゾール(フェマーラ);トリプトレリン(トレルスターLA;トレルスターデポー剤);エキセメスタン(アロマシン);ゴセレリン(ゾラデックス);ビカルタミド(カソデックス);アナストロゾール(アリミデックス);フルオキシメステロン(アンドロキシ(Androxy);ハロテスチン);メドロキシプロゲステロン(プロベラ;デポプロベラ);エストラムスチン(エムシト);フルタミド(ユーレキシン);トレミフェン(フェアストン);デガレリクス(ファーマゴン);ニルタミド(ニランドロン(Nilandron));アバレリックス(プレナキシス(Plenaxis));またはテストラクトン(テスラック)が挙げられる。
例示的な有糸***阻害剤としては、以下に限定されるものではないが、パクリタキセル(タキソール;オンキソール(Onxol);アブラキサン);ドセタキセル(タキソテール);ビンクリスチン(オンコビン;ビンカサールPFS);ビンブラスチン(ベルバン);エトポシド(トポサール(Toposar);エトポホス;ベペシド;テニポシド(ブモン(Vumon));イキサベピロン(イグゼンプラ);ノコダゾール;エポチロン;ビノレルビン(ナベルビン);カンプトテシン(CPT);イリノテカン(カンプトサール);トポテカン(ハイカムチン);アムサクリンまたはラメラリンD(LAM−D)が挙げられる。
例示的なMTOR阻害剤としては、以下に限定されるものではないが、エベロリムス(アフィニトール)またはテニシロリムス(トーリセル);ラパミューン、リダホロリムス;またはAP23573が挙げられる。
例示的なVEGF/VEGFR阻害剤としては、以下に限定されるものではないが、ベバシズマブ(アバスチン);ソラフェニブ(ネクサバール);スニチニブ(スーテント);ラニビズマブ;ペガプタニブ;またはバンデチニブ(vandetinib)が挙げられる。
例示的な微小管標的薬としては、以下に限定されるものではないが、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロンおよびナベルビンが挙げられる。
例示的なトポイソメラーゼ毒性薬としては、以下に限定されるものではないが、テニポシド、エトポシド、アドリアマイシン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ミトキサントロン、アムサクリン、エピルビシンおよびイダルビシンが挙げられる。
例示的なタキサンまたはタキサン誘導体としては、以下に限定されるものではないが、パクリタキセルおよびドセタキソールが挙げられる。
例示的な一般的化学療法剤、抗新生物剤、抗増殖剤としては、以下に限定されるものではないが、アルトレタミン(ヘキサレン);イソトレチノイン(アキュテイン;アムネスティーム;クララビス;ソトレット(Sotret));トレチノイン(ベサノイド);アザシチジン(ビダーザ);ボルテゾミブ(ベルケイド)アスパラギナーゼ(エルスパール(Elspar));レバミソール(エルガミソール(Ergamisol));ミトタン(リソドレン);プロカルバジン(マチュレーン);ペガスパルガーゼ(オンカスパー);デニロイキンディフチトクス(オンタック);ポルフィマー(フォトフリン);アルデスロイキン(プロロイキン);レナリドミド(レブリミド);ベキサロテン(タルグレチン);サリドマイド(サロミド);テニシロリムス(トーリセル);三酸化ヒ素(トリセノックス);ベルテポルフィン(ビスダイン);ミモシン(ロイセノール);(1M テガフール−0.4M 5−クロロ−2,4−ジヒドロキシピリミジン−1M カリウムオキソネート、またはロバスタチンが挙げられる。
別の態様では、他の治療剤は、化学療法剤またはG−CSF(顆粒球コロニー刺激因子)などのサイトカインである。
さらに別の態様では、他の治療剤は、以下に限定されるものではないが、CMF(シクロホスファミド、メトトレキセートおよび5−フルオロウラシル)、CAF(シクロホスファミド、アドリアマイシンおよび5−フルオロウラシル)、AC(アドリアマイシンおよびシクロホスファミド)、FEC(5−フルオロウラシル、エピルビシンおよびシクロホスファミド)、ACTまたはATC(アドリアマイシン、シクロホスファミドおよびパクリタキセル)、リツキシマブ、ゼローダ(カペシタビン)、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、TS−1(1:0.4:1のモル比のテガフール、ギメスタットおよびオタスタットカリウム)、カンプトテシン−11(CPT−11、イリノテカンまたはカンプトサール(商標))、CHOP(シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、オンコビン、およびプレドニゾンまたはプレドニゾロン)、R−CHOP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、オンコビン、プレドニゾンまたはプレドニゾロン)、あるいはCMFP(シクロホスファミド、メトトレキセート、5−フルオロウラシルおよびプレドニゾン)など標準的な化学併用療法であり得る。
別の態様では、他の治療剤は、受容体型または非受容体型キナーゼなどの酵素の阻害剤であり得る。受容体型および非受容体型キナーゼは、たとえばチロシンキナーゼまたはセリン/スレオニンキナーゼである。本明細書に記載のキナーゼ阻害剤は、小分子、ポリ核酸、ポリペプチドまたは抗体である。
例示的なキナーゼ阻害剤としては、以下に限定されるものではないが、ベバシズマブ(VEGFを標的にする)、BIBW2992(EGFRおよびErb2を標的にする)、セツキシマブ/アービタックス(Erb1を標的にする)、イマチニブ/グリービック(Gleevic)(Bcr−Ablを標的にする)、トラスツズマブ(Erb2を標的にする)、ゲフィチニブ/イレッサ(EGFRを標的にする)、ラニビズマブ(VEGFを標的にする)、ペガプタニブ(VEGFを標的にする)、エルロチニブ/タルセバ(Erb1を標的にする)、ニロチニブ(Bcr−Ablを標的にする)、ラパチニブ(Erb1およびErb2/Her2を標的にする)、GW−572016/ラパチニブジトシレート(HER2/Erb2を標的にする)、パニツムマブ/ベクティビックス(EGFRを標的にする)、バンデチニブ(Vandetinib)(RET/VEGFRを標的にする)、E7080(RETおよびVEGFRを含む複数を標的にする)、ハーセプチン(HER2/Erb2を標的にする)、PKI−166(EGFRを標的にする)、カネルチニブ/CI−1033(EGFRを標的にする)、スニチニブ/SU−11464/スーテント(EGFRおよびFLT3を標的にする)、マツズマブ/Emd7200(EGFRを標的にする)、EKB−569(EGFRを標的にする)、Zd6474(EGFRおよびVEGFRを標的にする)、PKC−412(VEGRおよびFLT3を標的にする)、バタラニブ/Ptk787/ZK222584(VEGRを標的にする)、CEP−701(FLT3を標的にする)、SU5614(FLT3を標的にする)、MLN518(FLT3を標的にする)、XL999(FLT3を標的にする)、VX−322(FLT3を標的にする)、Azd0530(SRCを標的にする)、BMS−354825(SRCを標的にする)、SKI−606(SRCを標的にする)、CP−690(JAKを標的にする)、AG−490(JAKを標的にする)、WHI−P154(JAKを標的にする)、WHI−P131(JAKを標的にする)、ソラフェニブ/ネクサバール(RAFキナーゼ、VEGFR−1、VEGFR−2、VEGFR−3、PDGFR−β、KIT、FLT−3およびRETを標的にする)、ダサチニブ/スプリセル(BCR/ABLおよびSrc)、AC−220(Flt3を標的にする)、AC−480(HERタンパク質をすべて標的にする、「panHER」)、モテサニブ二リン酸塩(VEGF1−3、PDGFRおよびc−kitを標的にする)、デノスマブ(RANKLを標的にし、SRCを阻害する)、AMG888(HER3を標的にする)、ならびにAP24534(Flt3を含む複数を標的にする)が挙げられる。
例示的なセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤としては、以下に限定されるものではないが、ラパミューン(mTOR/FRAP1を標的にする)、デフォロリムス(mTORを標的にする)、サーティカン/エベロリムス(mTOR/FRAP1を標的にする)、AP23573(mTOR/FRAP1を標的にする)、エリル/塩酸ファスジル(RHOを標的にする)、フラボピリドール(CDKを標的にする)、セリシクリブ(Seliciclib)/CYC202/ロスコビトリン(Roscovitrine)(CDKを標的にする)、SNS−032/BMS−387032(CDKを標的にする)、ルボキシスタウリン(PKCを標的にする)、Pkc412(PKCを標的にする)、ブリオスタチン(PKCを標的にする)、KAI−9803(PKCを標的にする)、SF1126(PI3Kを標的にする)、VX−680(オローラキナーゼを標的にする)、Azd1152(オローラキナーゼを標的にする)、Arry−142886/AZD−6244(MAP/MEKを標的にする)、SCIO−469(MAP/MEKを標的にする)、GW681323(MAP/MEKを標的にする)、CC−401(JNKを標的にする)、CEP−1347(JNKを標的にする)およびPD332991(CDKを標的にする)が挙げられる。
例示的なチロシンキナーゼ阻害剤として、エルロチニブ(タルセバ);ゲフィチニブ(イレッサ);イマチニブ(グリーベック);ソラフェニブ(ネクサバール);スニチニブ(スーテント);トラスツズマブ(ハーセプチン);ベバシズマブ(アバスチン);リツキシマブ(リツキサン);ラパチニブ(タイケルブ);セツキシマブ(アービタックス);パニツムマブ(ベクティビックス);エベロリムス(アフィニトール);アレムツズマブ(キャンパス);ゲムツズマブ(マイロターグ);テムシロリムス(トーリセル);パゾパニブ(ヴォトリエント);ダサチニブ(スプリセル);ニロチニブ(タシグナ);バタラニブ(Ptk787;ZK222584);CEP−701;SU5614;MLN518;XL999;VX−322;Azd0530;BMS−354825;SKI−606 CP−690;AG−490;WHI−P154;WHI−P131;AC−220;またはAMG888が挙げられるが、これに限定されるものではない。式(I)〜(VIa)の化合物またはその薬学的に許容される塩と併用するのに好適な他の治療剤のさらなる例は、2014年5月13日に出願された同時係属中の米国特許出願第61/992,881号明細書および2014年12月8日に出願された国際出願番号PCT/US2014/069167号明細書に開示されており、その各々の内容全体を参照により本明細書に援用する。
本開示は、式(I)〜(VIa)の化合物またはその薬学的に許容される塩と1つまたは複数の他の治療剤とを含む組成物が、疾患または癌の処置を必要とする被検体に投与される、併用療法の方法を提供する。併用療法はまた、癌細胞に適用されて、増殖の阻害または細胞死の誘導をすることもできる。一態様では、式(I)〜(VIa)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、式(I)〜(VIa)の化合物またはその薬学的に許容される塩と1つまたは複数の他の治療剤とを含む本開示の組成物の投与後に投与される。一態様では、式(I)〜(VIa)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、式(I)〜(VIa)の化合物またはその薬学的に許容される塩と1つまたは複数の他の治療剤とを含む本開示の組成物の投与前に投与される。一態様では、式(I)〜(VIa)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、1つまたは複数の治療剤の投与後に投与され、したがって、他の治療剤は単一の組成物でまたは2つ以上の組成物で投与され、たとえば、同時に、逐次的に、または交互に投与される。一態様では、式(I)〜(VIa)の化合物またはその薬学的に許容される塩は1つまたは複数の治療剤の投与前に投与され、したがって、他の治療剤は単一の組成物でまたは2つ以上の組成物で投与され、たとえば、同時に、逐次的にまたは交互に投与される。
一実施形態では、本開示の組成物は、式(I)〜(VIa)の化合物またはその薬学的に許容される塩と、1つまたは複数の抗癌剤、たとえば、CHOP(シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、オンコビン、およびプレドニゾンまたはプレドニゾロン)またはR−CHOP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、オンコビン、プレドニゾンまたはプレドニゾロン)とを含む。一実施形態では、本開示の組成物は、式(I)〜(VIa)の化合物またはその薬学的に許容される塩と、プレドニゾンまたはプレドニゾロンとを含む。本開示の方法は、式(I)〜(VIa)の化合物またはその薬学的に許容される塩と抗癌剤とを投与する併用療法を含み、抗癌剤はCHOP、R−CHOP、プレドニゾンまたはプレドニゾロンである。
ある種の実施形態では、「併用療法」は、各治療剤が異なる時点で投与される、これらの治療剤の逐次的な投与、ならびにこれらの治療剤またはこれらの治療剤の少なくとも2つの同時または実質的に同時の投与を包含することを意図する。同時投与は、たとえば、固定比率の各治療剤を含有する単一カプセル剤または治療剤の各々についての複数の単一カプセル剤を被検体に投与することによって達成することができる。各治療剤の逐次的または実質的に同時の投与は、以下に限定されるものではないが、経口経路、静注経路、筋肉内経路および粘膜組織による直接吸収を含む、任意の適切な経路により達成することができる。治療剤は、同じ経路によりまたは異なる経路により投与することができる。たとえば、選択された併用の最初の治療剤は静脈内注射により投与することができ、一方他の治療剤は経口投与することができる。あるいは、たとえば、治療剤をすべて経口投与することも、または静脈内注射により投与することもできる。治療剤はまた交互に投与してもよい。
本開示のある種の態様では、本開示で注目する併用療法は、疾患または癌の処置において相乗効果をもたらし得るものである。「相乗効果」は、治療剤の併用の効力が単独投与されたいずれの薬剤の効果の合計よりも大きい場合として定義される。相乗効果はまた、化合物または他の治療剤のいずれについても単剤として投与することによって達成することができない効果でもあり得る。相乗効果には、以下に限定されるものではないが、腫瘍サイズの縮小、腫瘍増殖の阻害または被検体の生存期間の延長による癌処置の効果が含まれる。相乗効果にはまた、癌細胞生存率の低下、癌細胞死の誘導および癌細胞増殖の阻害または遅延も含まれ得る。
ある種の態様では、「併用療法」はまた、他の生物学的に活性な成分および非薬物療法(たとえば、外科手術または放射線処置)とのさらなる併用における、上記の治療剤の投与も包含する。併用療法が非薬物処置をさらに含む場合、治療剤の併用と非薬物処置との共同作用からの有益な効果が達成される限り、非薬物処置は任意の好適な時期に行うことができる。たとえば、適合する症例では、非薬物処置が治療剤の投与のためにおそらく数日間または数週間も一時的に中断される場合でも依然として有益な効果が達成される。
別の態様では、本開示の組成物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、アナログもしくは誘導体は、放射線療法と併用して投与することができる。放射線療法はまた、多剤療法の一部として、本開示の組成物および本明細書に記載の別の化学療法剤と併用して適用することもできる。
併用療法は、たとえば、式(I)〜(VIa)の化合物と1つまたは複数の他の治療剤との各々が別個に製剤され、投与されるような2種以上の薬剤を投与することによって、または単一製剤にした2種以上の薬剤を投与することによって、達成され得る。他の併用もまた、併用療法に包含される。たとえば、2剤を一緒に製剤し、第3の薬剤を含む別個の製剤と併せて投与することができる。併用療法における2種以上の薬剤は同時に投与することができるが、そうである必要はない。たとえば、第1の薬剤(または薬剤の併用)の投与は、第2の薬剤(または薬剤の併用)の投与の数分前、数時間前、数日前または数週間前にすることができる。したがって、2種以上の薬剤は、互いに数分以内、もしくは互いに1、2、3、6、9、12、15、18もしくは24時間以内、もしくは互いに1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14日以内、または互いに2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10週間以内に投与することができる。場合によっては、間隔をさらに一層長くすることが可能である。多くの場合、併用療法に使用される2種以上の薬剤は患者の体内に同時に存在することが望ましいが、そうである必要はない。
本開示はまた、式(I)〜(VIa)の化合物またはその薬学的に許容される塩と、本明細書に開示している1つまたは複数の他の治療剤とを、薬学的に好適なキャリアまたは賦形剤と混合して、本明細書に記載の疾患または状態を処置または予防するための用量で含む医薬組成物も提供する。一態様では、本開示はまた、表Iの任意の化合物またはその薬学的に許容される塩と、1つまたは複数の治療剤とを、薬学的に好適なキャリアまたは賦形剤と混合して、本明細書に記載の疾患または状態を処置または予防するための用量で含む医薬組成物も提供する。別の態様では、本開示はまた、化合物44
またはその薬学的に許容される塩と、1つまたは複数の治療剤とを、薬学的に好適なキャリアまたは賦形剤と混合して、本明細書に記載の疾患または状態を処置または予防するための用量で含む医薬組成物も提供する。本開示の医薬組成物はまた、他の治療剤または治療法と併用して、同時に、逐次的にまたは交互に投与することもできる。
本開示の組成物の混合物はまた、患者に、単純な混合物として、または製剤化した好適な医薬組成物で投与することもできる。たとえば、本開示の一態様は、治療有効用量の式(I)〜(VIa)のEZH2阻害剤またはその薬学的に許容される塩、水和物、エナンチオマーもしくは立体異性体と、1つまたは複数の他の治療剤と、薬学的に許容される希釈剤またはキャリアとを含む医薬組成物に関する。
「医薬組成物」とは、本開示の化合物を、被検体への投与に好適な形態で含む製剤のことである。式(I)〜(VIa)の化合物および本明細書に記載の1つまたは複数の他の治療剤は各々、個々に製剤化することもでき、活性成分を任意に組み合わせて複数の医薬組成物に製剤化することもできる。したがって、各医薬組成物の剤形に基づいて1つまたは複数の投与経路が適切に選択され得る。あるいは、式(I)〜(VIa)の化合物と本明細書に記載の1つまたは複数の他の治療剤とを1つの医薬組成物に製剤化することができる。
一実施形態では、医薬組成物はバルクまたは単位剤形である。単位剤形は、たとえば、カプセル、IVバッグ、錠剤、エアロゾル吸入器の単一ポンプまたはバイアルなど種々の形態のいずれかである。単位用量の組成物における活性成分(たとえば、開示された化合物またはその塩、水和物、溶媒和物または異性体の製剤)の量は有効量であり、関連する個々の処置に応じて変化する。当業者であれば、患者の年齢および状態によって投薬量を日常的に変える必要があることもあることを理解するであろう。投薬量はまた投与経路によって異なる。経口、経肺、直腸、非経口、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、吸入、口腔内、舌下、胸膜内、髄腔内、鼻腔内および同種のものなど種々の経路を意図している。本開示の化合物の局所投与または経皮投与用の剤形として、散剤、スプレー剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、溶液剤、パッチ剤および吸入薬が挙げられる。一実施形態では、活性化合物は、滅菌条件下で薬学的に許容されるキャリアと、必要とされる任意の防腐剤、バッファーまたは噴霧剤と混合される。
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」という語句とは、化合物、アニオン、カチオン、材料、組成物、キャリアおよび/または剤形が、適切な医学的判断の範囲内において、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を回避しつつ、合理的なベネフィット/リスク比に見合ってヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに好適であることをいう。
「薬学的に許容される賦形剤」は、医薬組成物の調製に有用であり、かつ一般に安全で無毒性であり、生物学的にもあるいは他の点でも望ましい賦形剤を意味し、動物用途のほか、ヒトの医薬用途に許容可能な賦形剤を含む。本明細書および特許請求の範囲に使用される「薬学的に許容される賦形剤」は、そうした賦形剤の1種および2種以上の両方を含む。
本開示の医薬組成物は、その目的の投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例として、非経口投与、たとえば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、経口投与(たとえば、吸入)、経皮投与(局所)、および経粘膜投与が挙げられる。非経口用途、皮内用途または皮下用途に使用される溶液または懸濁液として、以下の成分:無菌希釈液、たとえば食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌薬、たとえばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;酸化防止剤、たとえばアスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート化剤、たとえばエチレンジアミン四酢酸;バッファー、たとえばアセテート、シトレートまたはホスフェート、および張度調整剤、たとえば塩化ナトリウムまたはブドウ糖を挙げることができる。pHは、酸または塩基、たとえば塩酸または水酸化ナトリウムで調整することができる。非経口調製物は、ガラスもしくはプラスチック製のアンプル、ディスポーザブルシリンジまたはマルチドーズバイアルに封入してもよい。
本発明の化合物または医薬組成物は、化学療法処置に現在使用されるよく知られた方法の多くで被検体に投与することができる。たとえば、癌の処置では、本発明の化合物を腫瘍に直接注射しても、血流中もしくは体腔に注射しても、あるいは経口投与しても、あるいはパッチを用いて経皮適用してもよい。選択される用量は効果的な処置となるのに十分であるが、許容できない副作用を引き起こすほど高くないようにすべきである。病状の状況(たとえば、癌、前癌および同種のもの)および患者の健康については好ましくは、処置中および処置後相当期間、詳細にモニターすべきである。
「治療有効量」という用語は、本明細書で使用する場合、特定された疾患または状態を処置、軽減または予防する、あるいは検出可能な治療効果または阻害効果を示す医薬剤の量をいう。効果は、当該技術分野において公知の任意のアッセイ方法により検出することができる。被検体の正確な有効量は、被検体の体重、大きさおよび健康;その状態の性質および程度;ならびに投与のために選択した治療法または併用療法によって異なる。ある状況に対する治療有効量は、臨床医の技能および判断の範囲内にある通常の実験により決定することができる。好ましい態様では、処置対象の疾患または状態は癌である。別の態様では、処置対象の疾患または状態は細胞増殖性障害である。
ある種の実施形態では、併用される各医薬剤の治療有効量は、各薬剤を単独で用いる単剤療法と比較して、併用した場合の方が少ない。このように治療有効量が少なければ、治療レジメンの毒性が低くなり得る。
いずれの化合物でも、治療有効量は、たとえば、腫瘍性細胞の細胞培養アッセイ、または動物モデル、通常ラット、マウス、ウサギ、イヌもしくはブタを用いて最初に推定することができる。動物モデルはさらに、適切な濃度範囲および投与経路を判定するのに使用してもよい。次いでこうした情報を使用して、ヒトの投与に有用な用量および経路を判定することができる。治療/予防有効性および毒性は、細胞培養または実験動物を対象とした標準的な薬学的手順、たとえば、ED50(集団の50%で治療効果のある用量)およびLD50(集団の50%致死用量)により判定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比は治療係数であり、LD50/ED50比で表すことができる。好ましいのは、大きな治療係数を示す医薬組成物である。投薬量は、利用する剤形、患者の感受性および投与経路によってこの範囲内で変わってもよい。
投薬量および投与は、十分なレベルの活性剤を与えるか、または所望の効果を維持するように調整される。考慮に入れてもよい因子として、病状の重症度、被検体の一般的な健康状態、被検体の年齢、体重および性別、食事、投与の時間および頻度、薬剤の組み合わせ、反応感受性、ならびに治療に対する忍容性/反応が挙げられる。長時間作用性医薬組成物は、特定の製剤の半減期およびクリアランス速度によって3〜4日毎、毎週あるいは2週に1回投与してもよい。
本発明の活性化合物を含む医薬組成物は、一般に知られた方法で、たとえば、従来の混合プロセス、溶解プロセス、造粒プロセス、糖衣錠製造プロセス、研和プロセス、乳化プロセス、カプセル化プロセス、封入プロセスまたは凍結乾燥プロセスによって製造することができる。医薬組成物は、活性化合物を薬学的に使用することができる調製物に加工しやすくする賦形剤および/または助剤を含む、1種もしくは複数種の薬学的に許容されるキャリアを用いて従来の方法で製剤化してもよい。言うまでもなく、適切な製剤は選択された投与経路によって異なる。
注射用途に好適な医薬組成物は、無菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および必要に応じて調製される無菌注射用溶液または分散液用の無菌粉末を含む。静脈内投与では、好適なキャリアとして、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)またはリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合において、組成物は無菌でなければならず、シリンジ操作が容易である程度の流動性があるべきである。組成物は、製造および保存条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの混入微生物の作用を防止しなければならない。キャリアは、たとえば、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールならびに同種のもの)およびこれらの好適な混合物を含む溶媒または分散媒であってもよい。適切な流動性は、たとえば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には、必要とされる粒度の維持により、および界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、たとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールおよび同種のものの使用により達成することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、たとえば、糖、多価アルコール、たとえばマニトールおよびソルビトール、ならびに塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の吸収の持続化は、組成物に吸収を遅らせる薬、たとえば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含ませることにより行うことができる。
無菌注射溶液は、必要量の活性化合物を、必要に応じて上記に列挙した1つの成分または成分の組み合わせと共に適切な溶媒に加え、続いて濾過滅菌を行うことにより調製することができる。一般に、分散液は、基本的な分散媒および上記に列挙したものから必要とされる他の成分を含む無菌ビヒクルに活性化合物を加えることにより調製される。無菌注射溶液の調製用の無菌粉末の場合、調製方法は真空乾燥およびフリーズドライであり、これにより活性成分と任意の所望の追加成分との、前もって滅菌濾過した溶液から、活性成分と任意の所望の追加成分との粉末が得られる。
経口組成物は一般に、不活性希釈剤または食用の薬学的に許容されるキャリアを含む。経口組成物はゼラチンカプセルに封入しても、あるいは錠剤に圧縮してもよい。経口治療投与の目的上、活性化合物を賦形剤と混合し、錠剤、トローチ剤またはカプセル剤の形態で使用してもよい。経口組成物はさらに、洗口剤として使用される液体キャリアを用いて調製してもよく、液体キャリア中の化合物は経口適用し、すすいで吐き出すかまたは飲み込む。薬学的に適合する結合剤および/または補助剤を組成物の一部として含めてもよい。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤および同種のものは、性質の類似した以下の成分または化合物:バインダー、たとえば微結晶性セルロース、トラガントゴムまたはゼラチン;賦形剤、たとえばデンプンまたはラクトース、崩壊剤、たとえばアルギン酸、Primogelまたはコーンスターチ;滑沢剤、たとえばステアリン酸マグネシウムまたはSterotes;流動促進剤、たとえばコロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、たとえばスクロースまたはサッカリン;または着香剤、たとえばペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香味料のいずれかを含んでもよい。
吸入による投与では、化合物は、好適な噴射剤、たとえば、二酸化炭素などのガスを含む加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で送達される。
全身投与はまた、経粘膜または経皮手段によるものでもよい。経粘膜または経皮投与では、透過対象のバリアに適した浸透剤を製剤に使用する。こうした浸透剤は一般に当該技術分野において公知であり、たとえば、経粘膜投与の場合、界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻スプレーまたは坐剤の使用により達成することができる。経皮投与では、活性化合物を一般に当該技術分野において公知の軟膏、膏薬、ゲルまたはクリームに製剤する。
活性化合物は、化合物の身体からの急速な排除を防ぐ薬学的に許容されるキャリア、たとえばインプラントおよびマイクロカプセル化送達系などの放出制御製剤と共に調製してもよい。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生分解性生体適合性ポリマーを使用してもよい。こうした製剤を調製するための方法は、当業者に明らかであろう。こうした材料はさらに、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から市販品として入手することができる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染細胞を標的としたリポソームを含む)も、薬学的に許容されるキャリアとして使用することができる。これらは、たとえば米国特許第4,522,811号明細書に記載されているような当業者に公知の方法に従い調製することができる。
投与のしやすさおよび投薬量の均一性のため、経口または非経口組成物を投薬単位剤形で製剤化すると特に有利である。投薬単位剤形とは、本明細書で使用する場合、単位投薬量として処置対象の被検体に適した物理的に分離した単位をいい、各単位は、必要とされる薬学的キャリアと共に、所望の治療効果を発揮するように計算された所定量の活性化合物を含む。本開示の投薬単位剤形の規格は、活性化合物の特有の特徴および達成されるべき個々の治療効果により決定され、それらに直接左右される。
治療用途では、本明細書に記載のEZH2阻害剤化合物、本明細書に記載の他の治療剤、式(I)〜(VIa)の化合物と1つまたは複数の他の治療剤とを含む組成物、または本開示に従い使用される医薬組成物の投薬量は、選択される投薬量に影響を与える数ある要因の中でも、薬剤、レシピエント患者の年齢、体重および臨床状態、ならびに療法を行う臨床医または開業医の経験および判断によって異なる。一般に、用量は、腫瘍の増殖を遅延させる、そして好ましくは退縮させる、さらに好ましくは癌を完全に退縮させるのに十分であるべきである。投薬量は、単回投与、分割投与または連続投与で約0.01mg/kg/日〜約5000mg/kg/日の範囲であってもよい。好ましい態様では、投薬量は約1mg/kg/日〜約1000mg/kg/日の範囲であってもよい。一態様では、用量は約0.1mg/日〜約50g/日;約0.1mg/日〜約25g/日;約0.1mg/日〜約10g/日;約0.1mg〜約3g/日;または約0.1mg〜約1g/日の範囲であってもよい(投与はkg単位の患者の体重、m2単位の体表面積および年齢に応じて調整してもよい)。医薬剤の有効量は、臨床医または他の適格な観察者により認められる改善が客観的に特定できる量である。たとえば、患者の腫瘍の退縮は、腫瘍の直径を基準に測定してもよい。腫瘍の直径の減少は退縮を示す。退縮はさらに、処置を中止した後に再発する腫瘍がないことによっても示される。本明細書で使用する場合、「投薬量効果的方法」という用語は、活性化合物の量が被検体または細胞で所望の生物学的作用を発揮することをいう。
医薬組成物は、投与説明書と共に容器、パックまたはディスペンサーに含めてもよい。
本開示の組成物はさらに塩を形成することができる。本開示の組成物は、たとえば、モノ−、ジ−、トリ−など、分子につき1つを超す塩を形成することができる。こうした形態もすべて、特許請求の範囲に記載されている発明の範囲内にあることを意図している。
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」は、親化合物がその酸性塩または塩基性塩を作ることにより修飾された本開示の化合物の誘導体をいう。薬学的に許容される塩の例として、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩、および同種のものがあるが、これに限定されるものではない。薬学的に許容される塩は、たとえば、無毒性無機酸または有機酸から形成された親化合物の従来の無毒性塩または第四級アンモニウム塩を含む。たとえば、そうした従来の無毒性塩として、2−アセトキシ安息香酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、炭酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、1,2−エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコリアルサニル酸、ヘキシルレゾルシン酸、ヒドラバム酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナプシル酸、硝酸、シュウ酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、サブ酢酸(subacetic)、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸および一般に存在するアミン酸、たとえば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニンなどから選択される無機酸および有機酸から得られるものがあるが、これに限定されるものではない。
薬学的に許容される塩の他の例として、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ピルビン酸、マロン酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ−[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ムコン酸および同種のものが挙げられる。本開示はさらに、親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン、たとえば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、またはアルミニウムイオンに置き換えられている場合、あるいは有機塩基、たとえばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミンおよび同種のものと配位している場合に形成される塩を包含する。
薬学的に許容される塩への言及にはすべて、同じ塩の溶媒付加体(溶媒和物)が含まれることを理解すべきである。
本開示の組成物はさらに、エステル、たとえば、薬学的に許容されるエステルとして調製してもよい。たとえば、化合物のカルボン酸官能基をその対応するエステル、たとえば、メチル、エチルまたは他のエステルに変換してもよい。さらに、化合物のアルコール基をその対応するエステル、たとえば、アセテート、プロピオネートまたは他のエステルに変換してもよい。
本組成物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、経口、経鼻、経皮、経肺、吸入、口腔内、舌下、腹腔内、皮下、筋肉内、静脈内、直腸内、胸膜内、髄腔内および非経口で投与される。一実施形態では、化合物は経口投与される。当業者であれば、特定の投与経路の利点を認識するであろう。
化合物を利用する投与レジメンは、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別および医学的状態;処置対象の状態の重症度;投与経路;患者の腎機能および肝機能;ならびに利用される個々の化合物またはその塩など種々の因子に従い選択される。通常の知識を有する医師または獣医師であれば、当該状態の進行を予防、防止または停止するのに必要な薬剤の有効量を容易に判定し、処方することができる。
開示した本開示の化合物の製剤および投与のための技術は、Remington:the Science and Practice of Pharmacy,19th edition,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1995)で確認することができる。一実施形態では、本明細書に記載の化合物およびその薬学的に許容される塩は、薬学的に許容されるキャリアまたは希釈薬と組み合わせて医薬調製物に使用される。好適な薬学的に許容されるキャリアとして、不活性な固体充填剤または希釈薬、および無菌水溶液または有機溶液が挙げられる。本化合物は、本明細書に記載の範囲の所望の投薬量を与えるのに十分な量でそうした医薬組成物中に存在する。
本明細書に使用されるパーセンテージおよび比率はすべて、他に記載がない限り、重量による。本発明の他の特徴と利点は様々な例から明らかである。提示した例は、本発明を実施する際に有用な様々な要素および方法を説明するものである。こうした例は、特許請求の範囲に記載されている発明を限定するものではない。本開示に基づき、当業者であれば、本発明を実施するのに有用な他の要素および方法を特定し、利用することができる。
本開示は、ヒストンまたは他のタンパク質のメチル化状態の調節によってその過程が影響を受け得る状態および疾患を処置するための、組成物および方法であって、前記メチル化状態が、EZH2の活性に少なくとも部分的に媒介される、組成物および方法を提供する。ヒストンのメチル化状態の調節の結果、メチル化により活性化される標的遺伝子および/またはメチル化により抑制される標的遺伝子の発現レベルが影響され得る。この方法は、そうした処置を必要とする被検体に、本開示の組成物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の治療有効量をそうした処置を必要とする被検体に投与することを含む。
ヒストンの異常なメチル化が一定の癌および前癌性状態と関連していることが発見されたという事実に少なくとも基づいて、被検体の変異型EZH2を伴う癌または前癌性状態を処置する方法は、それを必要とする被検体に、メチル化を阻害する化合物の治療有効量を投与することを含む。一実施形態では、被検体の癌または前癌性状態を処置する方法は、それを必要とする被検体に、非メチル化H3−K27からモノメチル化H3−K27(H3−K27me1)への変換を阻害する化合物の治療有効量を投与することを含む。一実施形態では、被検体の癌または前癌性状態を処置する方法は、それを必要とする被検体に、モノメチル化H3−K27(H3−K27me1)からジメチル化H3−K27(H3−K27me2)への変換を阻害する化合物の治療有効量を投与することを含む。一実施形態では、被検体の癌または前癌性状態を処置する方法は、それを必要とする被検体に、H3−K27me2からトリメチル化H3−K27(H3−K27me3)への変換を阻害する化合物の治療有効量を投与することを含む。一実施形態では、被検体の癌または前癌性状態を処置する方法は、それを必要とする被検体に、H3−K27me1からH3−K27me2への変換とH3−K27me2からH3−K27me3ヘの変換の両方を阻害する化合物の治療有効量を投与することを含む。メチル化の疾患特異的な増加は、ヒストンまたはタンパク質のメチル化の細胞レベルでの全体的な増加の非存在下で、重要なゲノム遺伝子座中のクロマチンで起こり得ることに留意することが重要である。たとえば、全体的なヒストンまたはタンパク質の低メチル化を背景として、重要な疾患関連遺伝子で異常な高メチル化が起こることがあり得る。
メチル化のモジュレーターは、一般に、細胞増殖の調節のために使用することができる。たとえば、場合によっては、過剰な増殖は、メチル化を低下させる薬剤で低減することができるのに対して、不十分な増殖は、メチル化を増加させる薬剤で刺激することができる。したがって、処置することができる疾患には、良性の細胞増殖および悪性の細胞増殖(癌)などの過剰増殖の疾患が含まれる。
EZH2に媒介されるタンパク質のメチル化が役割を担う障害として、癌、細胞増殖性障害または前癌性状態があり得る。本開示は、癌の処置に有用な医薬品の調製のための、そうした処置を必要とする被検体への、本開示の組成物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の使用をさらに提供する。処置することができる例示的な癌として、リンパ腫、たとえば、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫(FL)およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL);黒色腫;ならびに白血病、たとえば、CMLが挙げられる。例示的な前癌性状態として、骨髄異形成症候群(MDS;以前は前白血病として知られていた)が挙げられる。
一般に、メチル化モジュレーターである化合物は、細胞増殖の調節のために一般に使用することができる。たとえば、場合によっては、過剰な増殖は、メチル化を低下させる薬剤で低減することができるのに対して、不十分な増殖は、メチル化を増加させる薬剤で刺激することができる。したがって、本開示の化合物により処置することができる疾患には、良性の細胞増殖および悪性の細胞増殖などの過剰増殖の疾患が含まれる。
本明細書で使用する場合、「それを必要とする被検体」は、EZH2に媒介されるタンパク質のメチル化が役割を担う障害を有する被検体、または一般集団と比較してそうした障害を発症するリスクが高い被検体をいう。それを必要とする被検体は、前癌性状態を有していてもよい。好ましくは、それを必要とする被検体は癌を有する。「被検体」には哺乳動物が含まれる。哺乳動物は、たとえば、任意の哺乳動物、たとえば、ヒト、霊長類、トリ、マウス、ラット、家禽、イヌ、ネコ、雌ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジまたはブタであってもよい。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
本開示の被験体は、癌または前癌性状態と診断されている、それらの症状を有する、またはそれらを発症するリスクのある任意のヒト被験体を含む。本開示の被検体は、変異型EZH2を発現している任意のヒト被検体を含む。たとえば、変異型EZH2は1つまたは複数の変異を含み、その変異は置換、点変異、ナンセンス変異、ミスセンス変異、欠失もしくは挿入または本明細書に記載の他の任意のEZH2変異である。
それを必要とする被検体は、難治性癌または耐性癌を有していてもよい。「難治性癌または耐性癌」とは、処置に反応しない癌を意味する。癌は処置の初期に耐性である場合もあり、処置中に耐性になる場合もある。いくつかの実施形態では、それを必要とする被検体は、直近の療法による寛解後に癌が再発している。いくつかの実施形態では、それを必要とする被検体は、癌処置に有効な既知の療法をすべて受けて無効であった。いくつかの実施形態では、それを必要とする被検体は少なくとも1つの従来療法を受けた。ある種の実施形態では、従来療法は単剤療法である。ある種の実施形態では、従来療法は併用療法である。
いくつかの実施形態では、それを必要とする被検体は、以前の療法の結果として二次癌を有してもよい。「二次癌」は、以前の発癌性療法、たとえば化学療法によって、またはその結果として発生する癌を意味する。
被検体はまた、EZH2ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤または他の任意の治療剤に対して耐性を示すこともある。
本開示はまた、癌を有する被検体に対する併用療法を選択する方法を特徴とする。この方法は、被検体由来のサンプル中に本明細書に記載の1つまたは複数のEZH2変異を検出するステップ、および1つまたは複数のEZH2変異の存在に基づき、癌を処置するための併用療法を選択するステップを含む。一実施形態では、この療法は、被検体に本開示の組成物を投与することを含む。一実施形態では、この方法は、被検体に治療有効量の本開示の組成物を投与することをさらに含む。EZH2変異は、当技術分野において公知の好適な任意の方法を用いて検出することができる。さらなる方法は米国特許出願公開第20130040906号明細書に記載されており、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
本明細書に記載の方法および使用は、本開示の組成物(たとえば、式(I)〜(VIa)の化合物またはその薬学的に許容される塩と、1つまたは複数の治療剤とを含む組成物)を、それを必要とする被検体に投与する前および/または後に、その被検体由来のサンプル中に本明細書に記載の1つまたは複数のEZH2変異を検出するステップを含むことができる。試験したサンプル中の本明細書に記載の1つまたは複数のEZH2変異の存在から、被検体が本開示の併用療法に対して反応性であることが示される。
本開示は、被検体における本明細書に記載の1つまたは複数のEZH2変異の遺伝子スクリーニングにより、被検体に個別化した、医療、処置および/または癌の管理を提供する。たとえば、本開示は、併用療法に対する被検体の反応性を判定して、被検体が併用療法に反応性がある場合、被検体に本開示の組成物を投与することにより、それを必要とする被検体の癌の症状または前癌性状態を処置または緩和する方法を提供する。反応性は、被検体からサンプルを採取し、本明細書に記載の1つまたは複数のEZH2変異を検出することによって判定され、こうした本明細書に記載の1つまたは複数のEZH2変異の存在から、被検体が本開示の組成物に対して反応性であることが示される。被検体の反応性が判定されたならば、治療有効量の組成物、たとえば、式(VIa)の化合物またはその薬学的に許容される塩と1つまたは複数の治療剤とを含む組成物を投与することができる。組成物の治療有効量は、当業者が判定することができる。
本明細書で使用する場合、「反応性」という用語は、「反応性のある」、「感受性のある」および「感受性」と同義であり、本開示の組成物を投与されたときに被検体が治療反応を示す、たとえば、被検体の腫瘍細胞または腫瘍組織がアポトーシスおよび/もしくは壊死を起こし、かつ/または成長、***もしくは増殖の低下を示すことを意味する。この用語はまた、被検体が、本開示の組成物を投与されたときに一般集団と比較して、治療反応を示す、たとえば、被検体の腫瘍細胞または腫瘍組織がアポトーシスおよび/もしくは壊死を起こし、かつ/または成長、***もしくは増殖の低下を示す確率が高くなることまたは高いことを意味する。
「サンプル」は、被検体から得られた任意の生物学的サンプルを意味し、以下に限定されるものではないが、細胞、組織サンプル、体液(粘液、血液、血漿、血清、尿、唾液および***があるが、これに限定されるものではない)、腫瘍細胞および腫瘍組織がある。好ましくは、サンプルは、骨髄、末梢血細胞、血液、血漿および血清から選択される。サンプルは、処置または検査中の被検体から得てもよい。あるいはサンプルは、当該技術分野における通常の業務に従い医師が採取してもよい。
本明細書で使用する場合、「細胞増殖性障害」という用語は、細胞の制御不能な増殖もしくは異常な増殖、または制御不能かつ異常な増殖により、癌性であることもあればそうでない場合もある望ましくない状態または疾患が発症し得る状態をいう。本開示の例示的な細胞増殖性障害は、細胞***が無秩序である種々の状態を包含する。例示的な細胞増殖性障害として、新生物、良性腫瘍、悪性腫瘍、前癌性状態、in situ腫瘍、被包性腫瘍、転移性腫瘍、液性腫瘍、充実性腫瘍、免疫学的腫瘍、血液系腫瘍、癌、癌腫、白血病、リンパ腫、肉腫および急速に***する細胞があるが、これに限定されるものではない。「急速に***する細胞」という用語は、本明細書で使用する場合、同じ組織内の隣接するまたは並列する細胞において予想または観察される速度を上回るまたはそれより大きな速度で***する任意の細胞と定義される。細胞増殖性障害は前癌または前癌性状態を含む。細胞増殖性障害は癌を含む。好ましくは、本明細書に規定される方法は癌の症状を処置または緩和するために使用される。「癌」という用語は、充実性腫瘍のほか、血液腫瘍および/または悪性腫瘍を含む。「前癌細胞」または「前癌性細胞」は、前癌または前癌性状態である細胞増殖性障害を発現している細胞である。「癌細胞」または「癌性細胞」は、癌である細胞増殖性障害を発現している細胞である。任意の再現可能な測定手段を用いて、癌細胞または前癌性細胞を同定することができる。癌細胞または前癌性細胞は、組織サンプル(たとえば、生検標本)の組織学的分類またはグレード分類により同定してもよい。癌細胞または前癌性細胞は、適切な分子マーカーの使用により同定してもよい。
例示的な非癌性状態または障害として、関節リウマチ;炎症;自己免疫疾患;リンパ球増殖状態;先端巨大症;リウマチ性脊椎炎;変形性関節症;痛風、他の関節炎状態;敗血症;敗血症性ショック;内毒素性ショック;グラム陰性敗血症;毒素ショック症候群;喘息;成人呼吸窮迫症候群;慢性閉塞性肺疾患;慢性肺炎症;炎症性腸疾患;クローン病;乾癬;湿疹;潰瘍性大腸炎;膵線維症;肝線維症;急性および慢性腎疾患;過敏性腸症候群;発熱(pyresis);再狭窄症;脳マラリア;脳卒中および虚血傷害;神経外傷;アルツハイマー病;ハンチントン病;パーキンソン病;急性および慢性疼痛;アレルギー性鼻炎;アレルギー性結膜炎;慢性心不全;急性冠状動脈症候群;悪液質;マラリア;ハンセン病;リーシュマニア症;ライム病;ライター症候群;急性滑膜炎;筋変性、滑液包炎;腱炎;腱鞘炎;ヘルニア様、断裂性もしくは脱出性椎間板症候群;大理石骨病;血栓症;再狭窄症;珪肺症;肺肉腫;骨吸収疾患、たとえば骨粗鬆症;移植片対宿主反応;多発性硬化症;ループス;線維筋痛症;AIDSおよび他のウイルス性疾患、たとえば帯状疱疹、単純ヘルペスIもしくはII、インフルエンザウイルスおよびサイトメガロウイルス;ならびに糖尿病があるが、これに限定されるものではない。
例示的な癌として、副腎皮質癌、AIDS関連癌、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、肛門直腸癌、肛門管癌、虫垂癌、小児小脳星状細胞腫、小児大脳星状細胞腫、基底細胞癌、皮膚癌(非メラノーマ性)、胆道癌、肝外胆管癌、肝内胆管癌、膀胱癌(bladder cancer、urinary bladder cancer)、骨および関節癌、骨肉腫および悪性線維性組織球腫、脳癌、脳腫瘍、脳幹神経膠腫、小脳星状細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視覚路および視床下部神経膠腫、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、カルチノイド腫瘍、胃腸、神経系癌、神経系リンパ腫、中枢神経系癌、中枢神経系リンパ腫、子宮頸癌、小児癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、リンパ系腫瘍、菌状息肉腫、Seziary症候群、子宮内膜癌、食道癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢癌、胃癌(gastric cancer、stomach cancer)、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍神経膠腫、頭頸部癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼内黒色腫、眼癌、島細胞腫瘍(膵内分泌部)、カポジ肉腫、腎臓癌、腎癌、腎臓癌、喉頭癌、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、有毛細胞白血病、***および口腔癌、肝癌、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、Waldenstramマクログロブリン血症、髄芽腫、メラノーマ、眼内(眼)メラノーマ、メルケル細胞癌、悪性中皮腫、中皮腫、転移性頸部扁平上皮癌、口癌、舌癌、多発性内分泌腫瘍症候群、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、慢性骨髄増殖性障害、上咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔癌(oral cancer、oral cavity cancer)、中咽頭癌、卵巣癌、上皮性卵巣癌、卵巣低悪性度腫瘍、膵癌、島細胞 膵癌、副鼻腔および鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体芽腫およびテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、腎盂および尿管移行上皮癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、カポジ肉腫、軟部組織肉腫、子宮癌、子宮肉腫、皮膚癌(非メラノーマ性)、皮膚癌(メラノーマ)、メルケル皮膚癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫、胸腺腫および胸腺癌、甲状腺癌、腎盂および尿管ならびに他の泌尿器の移行上皮癌、妊娠性絨毛性腫瘍、尿道癌、子宮内膜子宮癌、子宮肉腫、子宮体部癌、腟癌、外陰癌、ならびにウィルムス腫瘍があるが、これに限定されるものではない。
「血液系の細胞増殖性障害」は、血液系の細胞に関係する細胞増殖性障害である。血液系の細胞増殖性障害として、リンパ腫、白血病、骨髄系新生物、マスト細胞新生物、骨髄形成異常、良性単クローン性免疫グロブリン血症、リンパ腫様肉芽腫症、リンパ腫様丘疹症、真性赤血球増加症、慢性骨髄球性白血病、原発性骨髄線維症および本態性血小板血症を挙げることができる。血液系の細胞増殖性障害として、血液系の細胞の過形成、異形成および化生を挙げることができる。好ましくは、本開示の組成物は、本開示の血液癌または本開示の血液細胞増殖性障害からなる群から選択される癌を処置するのに使用してもよい。本開示の血液癌として、多発性骨髄腫、リンパ腫(ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、小児期リンパ腫、ならびにリンパ球および皮膚由来のリンパ腫)、白血病(小児白血病、有毛細胞白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄球性白血病、慢性骨髄性白血病およびマスト細胞白血病を含む)、骨髄系新生物およびマスト細胞新生物を挙げることができる。
「肺の細胞増殖性障害」は、肺の細胞に関係する細胞増殖性障害である。肺の細胞増殖性障害として、肺細胞を侵す細胞増殖性障害のすべての型を挙げることができる。肺の細胞増殖性障害として、肺癌、肺の前癌または前癌性状態、肺の良性増殖または病変、および肺の悪性増殖または病変、および肺以外の体内の組織および臓器の転移病変を挙げることができる。好ましくは、本開示の組成物は、肺癌または肺の細胞増殖性障害を処置するのに使用してもよい。肺癌として、肺の癌のすべての型を挙げることができる。肺癌として、悪性肺新生物、上皮内癌、定型的カルチノイド腫瘍、および非定型的カルチノイド腫瘍を挙げることができる。肺癌として、小細胞肺癌(「SCLC」)、非小細胞肺癌(「NSCLC」)、扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌、大細胞癌、腺扁平上皮細胞癌および中皮腫を挙げることができる。肺癌として、「瘢痕癌」、気管支肺胞上皮癌、巨細胞癌、紡錘細胞癌および大細胞神経内分泌癌を挙げることができる。肺癌として、組織化学的および超徴形態学的多様性(たとえば、混合細胞型)を有する肺新生物を挙げることができる。
肺の細胞増殖性障害として、肺細胞を侵す細胞増殖性障害のすべての型を挙げることができる。肺の細胞増殖性障害として、肺癌、肺の前癌性状態を挙げることができる。肺の細胞増殖性障害として、肺の過形成、化生および異形成を挙げることができる。肺の細胞増殖性障害として、アスベストによる過形成、扁平上皮化生および良性反応性中皮化生を挙げることができる。肺の細胞増殖性障害として、円柱上皮が重層扁平上皮に置換された状態、および粘膜異形成を挙げることができる。有害な環境化学物質、たとえばタバコの煙およびアスベストを吸入した個体は、肺の細胞増殖性障害を発症するリスクが高い場合がある。個体に肺の細胞増殖性障害の発症を引き起こしやすい可能性がある既往の肺疾患として、慢性間質性肺疾患、壊死性肺疾患、強皮症、リウマチ様疾患、サルコイドーシス、間質性肺臓炎、結核、繰り返す肺炎、特発性肺線維症、肉芽腫、石綿肺、線維化肺胞炎およびホジキン病を挙げることができる。
「結腸の細胞増殖性障害」は、結腸の細胞に関係する細胞増殖性障害である。好ましくは、結腸の細胞増殖性障害は結腸癌である。好ましくは、本開示の組成物は、結腸癌または結腸の細胞増殖性障害を処置するのに使用してもよい。結腸癌として、結腸の癌のすべての型を挙げることができる。結腸癌として、散発性および遺伝性結腸癌を挙げることができる。結腸癌として、悪性結腸新生物、上皮内癌、定型的カルチノイド腫瘍、および非定型的カルチノイド腫瘍を挙げることができる。結腸癌として、腺癌、扁平上皮癌および腺扁平上皮細胞癌を挙げることができる。結腸癌は、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸癌、家族性大腸腺腫症、ガードナー症候群、ポイツ・ジェガース症候群、ターコット症候群および若年性ポリポーシスからなる群から選択される遺伝性症候群と関連していてもよい。結腸癌は、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸癌、家族性大腸腺腫症、ガードナー症候群、ポイツ・ジェガース症候群、ターコット症候群および若年性ポリポーシスからなる群から選択される遺伝性症候群により引き起こされることがある。
結腸の細胞増殖性障害として、結腸細胞を侵す細胞増殖性障害のすべての型を挙げることができる。結腸の細胞増殖性障害として、結腸癌、結腸の前癌性状態、結腸の腺腫性ポリープおよび結腸の異時性病変を挙げることができる。結腸の細胞増殖性障害として腺腫を挙げることができる。結腸の細胞増殖性障害は、結腸の過形成、化生および異形成を特徴としてもよい。個体に結腸の細胞増殖性障害の発症を引き起こしやすい可能性がある既往の結腸疾患として、既往の結腸癌を挙げることができる。個体に結腸の細胞増殖性障害の発症を引き起こしやすい可能性がある現在の疾患として、クローン病および潰瘍性大腸炎を挙げることができる。結腸の細胞増殖性障害は、p53、ras、FAPおよびDCCからなる群から選択される遺伝子の突然変異と関連していてもよい。個体は、p53、ras、FAPおよびDCCからなる群から選択される遺伝子の突然変異の存在のため、結腸の細胞増殖性障害を発症するリスクが高い可能性がある。
「膵臓の細胞増殖性障害」は、膵臓の細胞に関係する細胞増殖性障害である。膵臓の細胞増殖性障害として、膵臓細胞を侵す細胞増殖性障害のすべての型を挙げることができる。膵臓の細胞増殖性障害として、膵臓癌、膵臓の前癌または前癌性状態、膵臓の過形成、および膵臓の異形成、膵臓の良性増殖または病変、および膵臓の悪性増殖または病変、ならびに膵臓以外の体内の組織および臓器の転移病変を挙げることができる。膵癌は、膵臓の癌のすべての型を含む。膵癌として、導管腺癌、腺扁平上皮癌、多形巨細胞癌、粘液性腺癌、破骨細胞様巨細胞癌、粘液性嚢胞性癌、細葉細胞癌、分類不能大細胞癌、小細胞癌、膵芽腫、乳頭状新生物、粘液性嚢胞腺腫、乳頭状嚢胞性新生物、および漿液性嚢胞腺腫を挙げることができる。膵癌はまた、組織化学的および超徴形態学的多様性(たとえば、混合細胞型)を有する膵臓の新生物を含んでもよい。
「前立腺の細胞増殖性障害」は、前立腺細胞に関係する細胞増殖性障害である。前立腺の細胞増殖性障害として、前立腺細胞を侵す細胞増殖性障害のすべての型を挙げることができる。前立腺の細胞増殖性障害として、前立腺癌、前立腺の前癌または前癌性状態、前立腺の良性増殖または病変、および前立腺の悪性増殖または病変、ならびに前立腺以外の体内の組織および臓器の転移病変を挙げることができる。前立腺の細胞増殖性障害として、前立腺の過形成、化生および異形成を挙げることができる。
「皮膚の細胞増殖性障害」は、皮膚の細胞に関係する細胞増殖性障害である。皮膚の細胞増殖性障害として、皮膚細胞を侵す細胞増殖性障害のすべての型を挙げることができる。皮膚の細胞増殖性障害として、皮膚の前癌または前癌性状態、皮膚の良性増殖または病変、メラノーマ、悪性メラノーマおよび皮膚の他の悪性増殖または病変、ならびに皮膚以外の体内の組織および臓器の転移病変を挙げることができる。皮膚の細胞増殖性障害として、皮膚の過形成、化生および異形成を挙げることができる。
「卵巣の細胞増殖性障害」は、卵巣の細胞に関係する細胞増殖性障害である。卵巣の細胞増殖性障害として、卵巣の細胞を侵す細胞増殖性障害のすべての型を挙げることができる。卵巣の細胞増殖性障害として、卵巣の前癌または前癌性状態、卵巣の良性増殖または病変、卵巣癌、卵巣の悪性増殖または病変、および卵巣以外の体内の組織および臓器の転移病変を挙げることができる。皮膚の細胞増殖性障害として、卵巣の細胞の過形成、化生および異形成を挙げることができる。
「***の細胞増殖性障害」は、***の細胞に関係する細胞増殖性障害である。***の細胞増殖性障害として、***細胞を侵す細胞増殖性障害のすべての型を挙げることができる。***の細胞増殖性障害として、乳癌、***の前癌または前癌性状態、***の良性増殖または病変、および***の悪性増殖または病変、ならびに***以外の体内の組織および臓器の転移病変を挙げることができる。***の細胞増殖性障害として、***の過形成、化生および異形成を挙げることができる。
***の細胞増殖性障害は、***の前癌性状態であってもよい。本開示の組成物は、***の前癌性状態を処置するのに使用してもよい。***の前癌性状態として、***の非定型的過形成、非浸潤性乳管癌(DCIS)、乳管内癌、非浸潤性小葉癌(LCIS)、小葉性新生物、およびステージ0もしくはグレード0の***の増殖または病変(たとえば、ステージ0もしくはグレード0の乳癌または上皮内癌)を挙げることができる。***の前癌性状態は、American Joint Committee on Cancer(AJCC)により承認されたTNM分類スキームに従いステージ判定することができ、原発腫瘍(T)にはステージT0またはTisが割り当てられ;所属リンパ節(N)にはステージN0が割り当てられ;遠隔転移(M)にはステージM0が割り当てられている。
***の細胞増殖性障害は乳癌であってもよい。好ましくは、本開示の組成物は、乳癌を処置するのに使用してもよい。乳癌は、***の癌のすべての型を含む。乳癌として、原発性上皮乳癌を挙げることができる。乳癌として、***が他の腫瘍、たとえばリンパ腫、肉腫またはメラノーマに罹患している癌を挙げることができる。乳癌として、***の癌腫、***の腺管癌、***の小葉癌、***の未分化癌、***の葉状嚢肉腫、***の血管肉腫および***の原発性リンパ腫を挙げることができる。乳癌として、ステージI、II、IIIA、IIIB、IIICおよびIVの乳癌を挙げることができる。***の腺管癌として、浸潤癌、管内成分優位の浸潤性上皮内癌、炎症性乳癌、ならびに面皰型、粘液(膠様)型、髄様、リンパ球浸潤を伴う髄様型、乳頭型、硬性型および管状型からなる群から選択される組織学的型を有する***の腺管癌を挙げることができる。***の小葉癌として、in situ成分優位の浸潤性小葉癌、浸潤性(invasive)小葉癌、および浸潤性(infiltrating)小葉癌を挙げることができる。乳癌として、パジェット病、乳管内癌を伴うパジェット病、および浸潤性腺管癌を伴うパジェット病を挙げることができる。乳癌として、組織化学的および超徴形態学的多様性(たとえば、混合細胞型)を有する***新生物を挙げることができる。
好ましくは、本開示の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、乳癌を処置するのに使用してもよい。処置できる乳癌として、家族性乳癌を挙げることができる。処置できる乳癌として、散発性乳癌を挙げることができる。処置できる乳癌は、男性/雄被検体に発生してもよい。処置できる乳癌は、女性/雌被検体に発生してもよい。処置できる乳癌は、閉経前の女性/雌被検体に発生しても、あるいは閉経後の女性/雌被検体に発生してもよい。処置できる乳癌は、30歳以上の被検体に発生しても、あるいは30歳未満の被検体に発生してもよい。処置できる乳癌は、50歳以上の被検体または50歳未満の被検体に発生している。処置できる乳癌は、70歳以上の被検体に発生しても、あるいは70歳未満の被検体に発生してもよい。
処置できる乳癌は、BRCA1、BRCA2またはp53の家族性突然変異または自然突然変異を同定するため型別にしてもよい。処置できる乳癌は、HER2/neu遺伝子の増幅を有するもの、HER2/neuを過剰発現するもの、あるいは低レベル、中間レベルまたは高レベルのHER2/neu発現を有するものとして型別にしてもよい。処置できる乳癌は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、ヒト上皮増殖因子受容体−2、Ki−67、CA15−3、CA 27−29およびc−Metからなる群から選択されるマーカーについて型別にしてもよい。処置できる乳癌は、ER不明、高ERまたは低ERとして型別にしてもよい。処置できる乳癌は、ER陰性またはER陽性として型別にしてもよい。乳癌のER分類は、任意の再現可能な手段により行ってもよい。乳癌のER分類は、Onkologie 27:175−179(2004)に記載されているように行ってもよい。処置できる乳癌は、PR不明、高PRまたは低PRとして型別にしてもよい。処置できる乳癌は、PR陰性またはPR陽性として型別にしてもよい。処置できる乳癌は、受容体陽性または受容体陰性として型別にしてもよい。処置できる乳癌は、CA 15−3もしくはCA27−29またはその両方の血中レベルの上昇と関連するものとして型別にしてもよい。
処置できる乳癌として、***の局所腫瘍を挙げることができる。処置できる乳癌として、センチネルリンパ節(SLN)生検陰性と関連する***の腫瘍を挙げることができる。処置できる乳癌として、センチネルリンパ節(SLN)生検陽性と関連する***の腫瘍を挙げることができる。処置できる乳癌として、任意の適用可能な方法により腋窩リンパ節がステージ判定された、1つまたは複数の腋窩リンパ節陽性と関連する***の腫瘍を挙げることができる。処置できる乳癌として、リンパ節転移の陰性状態(たとえば、リンパ節転移陰性)またはリンパ節転移の陽性状態(たとえば、リンパ節転移陽性)を有するものとして型別にされた***の腫瘍を挙げることができる。処置できる乳癌として、体内の他の部位に転移した***の腫瘍を挙げることができる。処置できる乳癌は、骨、肺、肝臓または脳からなる群から選択される部位に転移したものとして分類してもよい。処置できる乳癌は、転移性、限局性、局部性、局所局部性、局所進行性、遠隔性、多中心性、両側性、同側性、対側性、新規診断性、再発性および手術不能性からなる群から選択される特徴に従い分類してもよい。
本開示の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、***の細胞増殖性障害を処置または予防するのに使用しても、あるいは一般集団と比較して乳癌を発症する高いリスクを有する被検体の乳癌を処置または予防するのに使用してもよい。一般集団と比較して乳癌を発症するリスクが高い被検体は、乳癌の家族歴または個人歴がある女性/雌被検体である。一般集団と比較して乳癌を発症するリスクが高い被検体は、BRCA1もしくはBRCA2またはその両方に生殖系列突然変異または自然突然変異を有する女性/雌被検体である。一般集団と比較して乳癌を発症するリスクが高い被検体は、乳癌の家族歴、およびBRCA1もしくはBRCA2またはその両方に生殖系列突然変異または自然突然変異がある女性/雌被検体である。一般集団と比較して乳癌を発症するリスクが高い被検体は、30歳より高齢、40歳より高齢、50歳より高齢、60歳より高齢、70歳より高齢、80歳より高齢、または90歳より高齢の女性/雌である。一般集団と比較して乳癌を発症するリスクが高い被検体は、***の非定型的過形成、非浸潤性乳管癌(DCIS)、乳管内癌、非浸潤性小葉癌(LCIS)、小葉性新生物、またはステージ0の***の増殖または病変(たとえば、ステージ0もしくはグレード0の乳癌または上皮内癌)を有する被検体である。
処置できる乳癌は、Scarff−Bloom−Richardson方式に従い組織学的にグレード分けしてもよく、この場合、乳腺腫瘍には1、2または3の有糸***数スコア;1、2または3の核異型度スコア;1、2または3の脈管形成スコア;および3〜9のScarff−Bloom−Richardson総スコアが割り当てられる。処置できる乳癌には、グレード1、グレード1〜2、グレード2、グレード2〜3またはグレード3からなる群から選択される、International Consensus Panel on the Treatment of Breast Cancerによる腫瘍グレードが割り当てられていてもよい。
処置できる癌は、American Joint Committee on Cancer(AJCC)のTNM分類方式に従いステージ判定することができ、この場合、腫瘍(T)にはTX、T1、T1mic、T1a、T1b、T1c、T2、T3、T4、T4a、T4b、T4cまたはT4dのステージが割り当てられており;所属リンパ節(N)にはNX、N0、N1、N2、N2a、N2b、N3、N3a、N3bまたはN3cのステージが割り当てられており;遠隔転移(M)にはMX、M0またはM1のステージが割り当てられ得る。処置できる癌は、American Joint Committee on Cancer(AJCC)分類に従い、ステージI、ステージIIA、ステージIIB、ステージIIIA、ステージIIIB、ステージIIICまたはステージIVとステージ判定することができる。処置できる癌は、AJCC分類に従い、グレードGX(たとえば、評価できないグレード)、グレード1、グレード2、グレード3またはグレード4のグレードを割り当ててもよい。処置できる癌は、AJCCの病理分類(pN)に従い、pNX、pN0、PN0(I−)、PN0(I+)、PN0(mol−)、PN0(mol+)、PN1、PN1(mi)、PN1a、PN1b、PN1c、pN2、pN2a、pN2b、pN3、pN3a、pN3bまたはpN3cのステージに判定することができる。
処置できる癌として、直径が約2センチメートル以下であると判定された腫瘍を挙げることができる。処置できる癌として、直径が約2〜約5センチメートルであると判定された腫瘍を挙げることができる。処置できる癌として、直径が約3センチメートル以上であると判定された腫瘍を挙げることができる。処置できる癌として、直径が5センチメートル超であると判定された腫瘍を挙げることができる。処置できる癌は、顕微鏡所見によって高分化、中分化、低分化または未分化として分類してもよい。処置できる癌は、顕微鏡所見により有糸***数(たとえば、細胞***の量)または核異型度(たとえば、細胞の変化)に関して分類してもよい。処置できる癌は、顕微鏡所見により壊死領域(たとえば、死につつあるまたは変性しつつある細胞領域)を伴うものとして分類してもよい。処置できる癌は、異常核型を有するもの、異常な数の染色体を有するもの、あるいは外見が異常な1つまたは複数の染色体を有するものと分類してもよい。処置できる癌は、異数体、三倍体、四倍体または倍数性が変化したものとして分類してもよい。処置できる癌は、染色体転座、または全染色体の欠失もしくは重複、または一部の染色体の欠失、重複もしくは増幅の領域を有するものとして分類してもよい。
処置できる癌は、DNAサイトメトリー、フローサイトメトリーまたはイメージサイトメトリーにより評価してもよい。処置できる癌は、細胞の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%が細胞***の合成期(たとえば、細胞***のS期)にあるものとして型別にしてもよい。処置できる癌は、S期割合が低いまたはS期割合が高いものとして型別にしてもよい。
本明細書で使用する場合、「正常な細胞」は、「細胞増殖性障害」の一部として分類できない細胞である。正常な細胞には、望ましくない状態または疾患の発症に至る可能性がある制御不能な増殖もしくは異常な増殖、または制御不能かつ異常な増殖が見られない。好ましくは、正常な細胞は、正常に機能する細胞周期チェックポイント制御機構を有する。
本明細書で使用する場合、「細胞を接触させること」とは、化合物または他の組成物が細胞と直接接触している、あるいは細胞に所望の生物学的作用を起こすのに十分に接近している状態をいう。
本明細書で使用する場合、「候補化合物」とは、その化合物が細胞、組織、系、動物またはヒトにおいて研究者または臨床医が求めている所望の生物学的または医学的反応を惹起する可能性が高いかどうかを判定するため、1つまたは複数のインビトロまたはインビボでの生物学的アッセイで試験したことがあるあるいは試験する予定の本開示の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物をいう。候補化合物は、本開示の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。生物学的または医学的反応は、癌の処置であってもよい。生物学的または医学的反応は、細胞増殖性障害の処置または予防であってもよい。インビトロまたはインビボでの生物学的アッセイとして、以下に限定されるものではないが、酵素活性アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ、レポーター遺伝子アッセイ、インビトロ細胞生存率アッセイおよび本明細書に記載のアッセイを挙げることができる。
本明細書で使用する場合、「処置すること」または「処置する」は、疾患、状態または障害の対処を目的とした患者の管理およびケアをいい、疾患、状態もしくは障害の症状または合併症を緩和するため、あるいは疾患、状態もしくは障害を除去するため本開示の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を投与することを含む。
本開示の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物はまた、疾患、状態または障害を予防するために使用してもよい。本明細書で使用する場合、「予防すること」または「予防する」は、疾患、状態もしくは障害の症状または合併症の発症を減少または除去することをいう。
本明細書で使用する場合、「緩和する」という用語は、障害の徴候または症状の重症度を低下させるプロセスを記載することを意図している。重要な点として、徴候または症状は、除去することなく緩和することができる。好ましい実施形態では、本開示の医薬組成物を投与すると徴候または症状が除去されるが、しかしながら、除去は必須ではない。効果的な投薬量は徴候または症状の重症度を低下させると予想される。たとえば、複数の部位で起こり得る癌などの障害の徴候または症状は、複数の部位の少なくとも1つで癌の重症度が低下すると緩和される。
本明細書で使用する場合、「重症度」という用語は、癌が前癌性または良性状態から悪性状態に変化する可能性を記載することを意図している。あるいは、またはさらに、重症度は、たとえば、TNM方式(International Union Against Cancer(UICC)およびAmerican Joint Committee on Cancer(AJCC)により認められた)により、あるいは他の当該技術分野において承認されている方法により癌の病期を記載することを意図している。癌の病期とは、原発腫瘍の位置、腫瘍の大きさ、腫瘍数およびリンパ節転移(癌のリンパ節への広がり)などの因子に基づく癌の程度または重症度をいう。あるいは、またはさらに、重症度は、当該技術分野において承認されている方法により腫瘍グレードを記載することを意図している(米国国立癌研究所(National Cancer Institute)、www.cancer.govを参照されたい)。腫瘍グレードは、癌細胞が顕微鏡下でどのように異常に見えるか、そして腫瘍がいかに急速に増殖し広がる傾向があるかという観点から癌細胞を分類するのに使用するシステムである。腫瘍グレードを判定する際は、細胞の構造および増殖パターンなど多くの因子が考慮される。腫瘍グレードの判定に使用される具体的な因子は、各癌型によって異なる。重症度はまた、腫瘍細胞が同じ組織型の正常な細胞にどの程度類似しているかを示す、分化とも呼ばれる組織学的グレードもいう(米国国立癌研究所(National Cancer Institute、www.cancer.govを参照されたい)。さらに、重症度は、腫瘍細胞の核の大きさおよび形状と、***している腫瘍細胞の割合とを示す核グレードについてもいう(米国国立癌研究所(National Cancer Institute、www.cancer.govを参照されたい)。
本開示の別の態様では、重症度は、腫瘍が増殖因子をどの程度分泌したか、細胞外マトリックスをどの程度分解したか、どの程度血管新生化したか、隣接した組織への接着をどの程度失ったか、あるいはどの程度転移したかをいう。さらに重症度は、原発腫瘍が転移した部位の数も示す。最後に、重症度は、様々な型および部位の腫瘍の処置のしにくさを含む。たとえば、手術不能な腫瘍、複数の器官に到達しやすい癌(血液系および免疫系の腫瘍)、および伝統的な処置に最も抵抗性があるものが、最も重度と見なされる。これらの状況において、被検体の平均余命の延長および/または疼痛の低下、癌性細胞の比率の低下または細胞が1つの系に限定されること、ならびに癌の病期/腫瘍グレード/組織学的グレード/核グレードの改善は、癌の徴候または症状の緩和と見なされる。
本明細書で使用する場合、「症状」という用語は、疾患、疾病、障害または体内に適切でないものがあることの兆しと定義される。症状は、症状を経験している個体が感じあるいは気付くものであるが、他人は容易に気付くことができない。他人は、非医療専門家と定義される。
本明細書で使用する場合、「徴候」という用語も、体内に適切でないものがあることの兆しと定義される。ただし、徴候は、医師、看護師または他の医療専門家により確認することができるものと定義される。
癌は、ほとんどすべての徴候または症状を引き起こし得る疾患群である。徴候および症状は、癌がどこにあるか、癌の大きさ、および癌が近くの器官または構造にどの程度影響を与えるかによって異なる。癌が広がる(転移する)場合、症状は体の様々な部分で現れることがある。
EZH2に媒介されるタンパク質のメチル化が役割を担う障害は神経系疾患であり得る。したがって、本開示の化合物はまた、神経疾患、たとえば、癲癇、統合失調症、双極性障害、または他の心理的障害および/もしくは精神障害、ニューロパチー、骨格筋萎縮、および神経変性疾患類、たとえば、神経変性疾患を処置するために使用することもできる。例示的な神経変性疾患類として、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびパーキンソン病が挙げられる。神経変性疾患類の別のクラスとして、少なくとも一部がポリ−グルタミンの凝集により引き起こされる疾患が挙げられる。このクラスの疾患として、ハンチントン病、球脊髄性筋萎縮症(SBMAまたはケネディ病)歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、脊髄小脳失調症1(SCA1)、脊髄小脳失調症2(SCA2)、マシャド・ジョセフ病(MJD;SCA3)、脊髄小脳失調症6(SCA6)、脊髄小脳失調症7(SCA7)および脊髄小脳失調症12(SCA12)が挙げられる。
EZH2に媒介されるエピジェネティックなメチル化が役割を担う他の任意の疾患も、本明細書に記載の組成物および方法を用いて処置可能または予防可能とすることができる。
癌を処置すると、腫瘍の大きさが小さくなることがある。腫瘍の大きさが小さくなることは、「腫瘍退縮」という場合もある。好ましくは、処置後、腫瘍の大きさは、処置前のその大きさと比較して5%以上縮小し;一層好ましくは、腫瘍の大きさは10%以上縮小し;一層好ましくは20%以上縮小し;一層好ましくは30%以上縮小し;一層好ましくは40%以上縮小し;なお一層好ましくは、50%以上縮小し;最も好ましくは、75%超縮小する。腫瘍の大きさは、任意の再現可能な測定手段により測定することができる。腫瘍の大きさは、腫瘍の直径として測定してもよい。
癌を処置すると、腫瘍容積が縮小することがある。好ましくは、処置後、腫瘍容積は、処置前のその大きさと比較して5%以上縮小し;一層好ましくは、腫瘍容積は10%以上縮小し;一層好ましくは20%以上縮小し;一層好ましくは30%以上縮小し;一層好ましくは40%以上縮小し;なお一層好ましくは50%以上縮小し;最も好ましくは75%超縮小する。腫瘍容積は、任意の再現可能な測定手段により測定することができる。
癌を処置すると、腫瘍の数が減少する。好ましくは、処置後、腫瘍数は、処置前の数と比較して5%以上減少し;一層好ましくは、腫瘍数は10%以上減少し;一層好ましくは20%以上減少し;一層好ましくは30%以上減少し;一層好ましくは40%以上減少し;なお一層好ましくは50%以上減少し;最も好ましくは75%超減少する。腫瘍の数は、任意の再現可能な測定手段により測定することができる。腫瘍の数は、肉眼または特定の倍率で観察できる腫瘍をカウントすることにより測定することができる。好ましくは、特定の倍率は2倍、3倍、4倍、5倍、10倍または50倍である。
癌を処置すると、原発腫瘍部位から離れた他の組織または器官における転移病変の数が減少することがある。好ましくは、処置後、転移病変の数は、処置前の数と比較して5%以上減少し;一層好ましくは、転移病変の数は10%以上減少し;一層好ましくは20%以上減少し;一層好ましくは30%以上減少し;一層好ましくは40%以上減少し;なお一層好ましくは50%以上減少し;最も好ましくは75%超減少する。転移病変の数は、任意の再現可能な測定手段により測定することができる。転移病変の数は、肉眼または特定の倍率で観察できる転移病変をカウントすることにより測定することができる。好ましくは、特定の倍率は2倍、3倍、4倍、5倍、10倍または50倍である。
癌を処置すると、処置した被検体の集団の平均生存期間が、キャリアを単独投与した集団と比較して延長されることがある。好ましくは、平均生存期間は30日を超えて;一層好ましくは60日を超えて;一層好ましくは90日を超えて;最も好ましくは120日を超えて延長される。集団の平均生存期間の延長は、任意の再現可能な手段により測定することができる。集団の平均生存期間の延長は、たとえば、集団について活性化合物による処置の開始後の平均生存期間を計算することにより測定してもよい。集団の平均生存期間の延長はまた、たとえば、集団について活性化合物による初回処置の終了後の平均生存期間を計算することにより測定してもよい。
癌を処置すると、処置した被検体の集団の平均生存期間が、未処置被検体の集団と比較して延長されることがある。好ましくは、平均生存期間は30日を超えて;一層好ましくは60日を超えて;一層好ましくは90日を超えて;最も好ましくは120日を超えて延長される。集団の平均生存期間の延長は、任意の再現可能な手段により測定することができる。集団の平均生存期間の延長は、たとえば、集団について活性化合物による処置の開始後の平均生存期間を計算することにより測定してもよい。集団の平均生存期間の延長はまた、たとえば、集団について活性化合物による初回処置の終了後の平均生存期間を計算することにより測定してもよい。
癌を処置すると、処置した被検体の集団の平均生存期間が、本開示の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、アナログもしくは誘導体ではない薬剤による単独療法を受けた集団と比較して延長されることがある。好ましくは、平均生存期間は30日を超えて;一層好ましくは60日を超えて;一層好ましくは90日を超えて;最も好ましくは120日を超えて延長される。集団の平均生存期間の延長は、任意の再現可能な手段により測定することができる。集団の平均生存期間の延長は、たとえば、集団について活性化合物による処置の開始後の平均生存期間を計算することにより測定してもよい。集団の平均生存期間の延長はまた、たとえば、集団について活性化合物による初回処置の終了後の平均生存期間を計算することにより測定してもよい。
癌を処置すると、処置した被検体の集団の死亡率がキャリアを単独投与した集団と比較して低下することがある。癌を処置すると、処置した被検体の集団の死亡率が未処置集団と比較して低下することがある。癌を処置すると、処置した被検体の集団の死亡率が、本開示の化合物、またはその薬学的に許容される塩溶媒和物、アナログもしくは誘導体ではない薬剤による単独療法を受けた集団と比較して低下することがある。好ましくは、死亡率は2%超;一層好ましくは5%超;一層好ましくは10%超;最も好ましくは25%超低下する。処置した被検体の集団の死亡率の低下は、任意の再現可能な手段により測定することができる。集団の死亡率の低下は、たとえば、集団について活性化合物による処置の開始後の単位時間当たりの疾患関連死亡の平均数を計算することにより測定してもよい。集団の死亡率の低下はまた、たとえば、集団について活性化合物による初回処置の終了後の単位時間当たりの疾患関連死亡の平均数を計算することにより測定してもよい。
癌を処置すると、腫瘍の増殖率が低下することがある。好ましくは、処置後、腫瘍の増殖率は処置前の数と比較して少なくとも5%低下し;一層好ましくは、腫瘍の増殖率は少なくとも10%低下し;一層好ましくは少なくとも20%低下し;一層好ましくは少なくとも30%低下し;一層好ましくは少なくとも40%低下し;一層好ましくは少なくとも50%低下し;なお一層好ましくは少なくとも50%低下し;最も好ましくは少なくとも75%低下する。腫瘍の増殖率は、任意の再現可能な測定手段により測定することができる。腫瘍の増殖率は、単位時間当たり腫瘍直径の変化により測定してもよい。
癌を処置すると、腫瘍の再増殖が抑制されることがある。好ましくは、処置後、腫瘍の再増殖は5%未満であり;一層好ましくは、腫瘍の再増殖は10%未満であり;一層好ましくは20%未満であり;一層好ましくは30%未満であり;一層好ましくは40%未満であり;一層好ましくは50%未満であり;なお一層好ましくは50%未満であり;最も好ましくは75%未満である。腫瘍の再増殖は、任意の再現可能な測定手段により測定することができる。腫瘍の再増殖は、たとえば、以前の腫瘍縮小後に、処置後生じた腫瘍の直径の増加を測定することにより測定してもよい。腫瘍の再増殖の抑制は、処置を中止した後に腫瘍が再発しないことにより示される。
細胞増殖性障害を処置または予防すると、細胞増殖率が低下することがある。好ましくは、処置後、細胞増殖率は少なくとも5%低下し;一層好ましくは少なくとも10%低下し;一層好ましくは少なくとも20%低下し;一層好ましくは少なくとも30%低下し;一層好ましくは少なくとも40%低下し;一層好ましくは少なくとも50%低下し;なお一層好ましくは少なくとも50%低下し;最も好ましくは少なくとも75%低下する。細胞増殖率は、任意の再現可能な測定手段により測定することができる。細胞増殖率は、たとえば、組織サンプルにおいて単位時間当たりに***している細胞数を測定することにより測定してもよい。
細胞増殖性障害を処置または予防すると、増殖している細胞の比率が低下することがある。好ましくは、処置後、増殖している細胞の比率は少なくとも5%;一層好ましくは少なくとも10%;一層好ましくは少なくとも20%;一層好ましくは少なくとも30%;一層好ましくは少なくとも40%;一層好ましくは少なくとも50%;なお一層好ましくは少なくとも50%;最も好ましくは少なくとも75%低下する。増殖している細胞の比率は、任意の再現可能な測定手段により測定することができる。好ましくは、増殖している細胞の比率は、たとえば組織サンプルにおいて***している細胞数を非***細胞の数と比較して定量することにより測定される。増殖している細胞の比率は、***指数と等価であり得る。
細胞増殖性障害を処置または予防すると、細胞の増殖部位または領域の大きさが小さくなることがある。好ましくは、処置後、細胞の増殖部位または領域の大きさは、処置前のその大きさと比較して少なくとも5%縮小し;一層好ましくは少なくとも10%縮小し;一層好ましくは少なくとも20%縮小し;一層好ましくは少なくとも30%縮小し;一層好ましくは少なくとも40%縮小し;一層好ましくは少なくとも50%縮小し;なお一層好ましくは少なくとも50%縮小し;最も好ましくは少なくとも75%縮小する。細胞の増殖部位または領域の大きさは、任意の再現可能な測定手段により測定することができる。細胞の増殖部位または領域の大きさは、細胞の増殖部位または領域の直径または幅として測定してもよい。
細胞増殖性障害を処置または予防すると、異常な外観もしくは形態を有する細胞の数または比率が低下することがある。好ましくは、処置後、異常な形態を有する細胞数は、処置前のその大きさと比較して少なくとも5%減少し;一層好ましくは少なくとも10%減少し;一層好ましくは少なくとも20%減少し;一層好ましくは少なくとも30%減少し;一層好ましくは少なくとも40%減少し;一層好ましくは少なくとも50%減少し;なお一層好ましくは少なくとも50%減少し;最も好ましくは少なくとも75%減少する。異常な細胞外観または形態は、任意の再現可能な測定手段により測定することができる。異常な細胞形態は、たとえば倒立型培養顕微鏡を用いて顕微鏡観察により測定してもよい。異常な細胞形態は、核異型の形をとることがある。
本明細書で使用する場合、「選択的に」という用語は、ある集団において別の集団より高頻度で起こる傾向があることを意味する。比較される集団は細胞集団であってもよい。好ましくは、本開示の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、癌または前癌性細胞に選択的に作用するが、正常な細胞には作用しない。好ましくは、本開示の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、ある分子標的(たとえば、標的タンパク質メチルトランスフェラーゼ)を調節するが、別の分子標的(たとえば、非標的タンパク質メチルトランスフェラーゼ)をあまり調節しないように選択的に作用する。本開示はまた、酵素、たとえばタンパク質メチルトランスフェラーゼの活性を選択的に阻害するための方法を提供する。好ましくは、あるイベントが集団Bと比較して集団Aで2倍を超える高い頻度で起こる場合、そのイベントは、集団Bに対して集団Aにおいて選択的に起こる。あるイベントが集団Aで5倍を超える高い頻度で起こる場合、そのイベントは選択的に起こる。あるイベントが集団Bと比較して集団Aで10倍を超える高い頻度で;一層好ましくは50倍を超える;なお一層好ましくは100倍を超える;最も好ましくは1000倍を超える高い頻度で、集団Aで起こる場合、そのイベントは選択的に起こる。たとえば、細胞死は、正常な細胞と比較して癌細胞で2倍を超える頻度で起こる場合、癌細胞で選択的に起こるといえると考えられる。
本開示の組成物、たとえば、式(I)〜(VIa)の任意の化合物またはその薬学的に許容される塩と、1つまたは複数の他の治療剤、たとえば、プレドニゾンとを含む組成物は、分子標的(たとえば、標的タンパク質メチルトランスフェラーゼ)の活性を調節することができる。調節とは、分子標的の活性を刺激または阻害することをいう。好ましくは、本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、前記化合物が存在しないこと以外は同じ条件下の分子標的の活性と比較して、分子標的の活性を少なくとも2倍刺激または阻害する場合、この組成物は分子標的の活性を調節する。一層好ましくは、本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、前記化合物が存在しないこと以外は同じ条件下の分子標的の活性と比較して、分子標的の活性を少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍刺激または阻害する場合、この組成物は分子標的の活性を調節する。分子標的の活性は、任意の再現可能な手段により測定することができる。分子標的の活性は、インビトロで測定してもインビボで測定してもよい。たとえば、分子標的の活性は、酵素活性アッセイまたはDNA結合アッセイによりインビトロで測定してもよいし、または分子標的の活性は、レポーター遺伝子の発現をアッセイすることによりインビボで測定してもよい。
本開示の組成物は、化合物を添加しても、前記化合物が存在しないこと以外は同じ条件下の分子標的の活性と比較して、分子標的の活性を10%より多く刺激または阻害しない場合、分子標的の活性をあまり調節しない。
本明細書で使用する場合、「アイソザイム選択的」という用語は、酵素の第2のアイソフォームと比較した際の酵素の第1のアイソフォームの優先的な阻害または刺激(たとえば、タンパク質メチルトランスフェラーゼアイソザイムβと比較した際のタンパク質メチルトランスフェラーゼアイソザイムαの優先的な阻害または刺激)を意味する。好ましくは、本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、生物学的作用を得るのに必要な投薬量で最低4倍の差、好ましくは10倍の差、一層好ましくは50倍の差を示す。好ましくは、本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、阻害の範囲全域にわたってこの差を示し、この差は、IC50、すなわち、目的の分子標的の50%阻害で例示される。
本開示の組成物を細胞またはそれを必要とする被検体に投与すると、目的のタンパク質メチルトランスフェラーゼの活性が調節(すなわち、刺激または阻害)され得る。
本開示の化合物、たとえば、式(I)〜(VIa)の任意の化合物またはその薬学的に許容される塩と、1つまたは複数の他の治療剤、たとえば、プレドニゾンとを含む組成物を、細胞またはそれを必要とする被検体に投与すると、細胞内の標的(たとえば、基質)の活性が調節(すなわち、刺激または阻害)される。本開示の化合物を用いて、以下に限定されるものではないが、タンパク質メチルトラスフェラーゼ(methyltrasferase)など、いくつかの細胞内標的を調節することができる。
活性化するとは、組成物(たとえば、タンパク質または核酸)を所望の生物学的機能を果たすのに好適な状態にすることをいう。活性化させることができる組成物はまた、不活性状態も有する。活性化している組成物は、阻害性もしくは刺激性の生物学的機能、またはその両方を有し得る。
上昇とは、組成物(たとえば、タンパク質または核酸)の所望の生物活性における増加をいう。上昇は組成物の濃度の増加によって起こり得る。
本明細書で使用する場合、「細胞周期チェックポイント経路」とは、細胞周期チェックポイントの調節に関わる生化学的経路をいう。細胞周期チェックポイント経路は、細胞周期チェックポイントを含む1つまたは複数の機能に対して刺激作用もしくは阻害作用を有しても、あるいはその両方を有してもよい。細胞周期チェックポイント経路は、少なくとも2つの組成物、好ましくはタンパク質からなり、そのどちらも細胞周期チェックポイントの調節に寄与する。細胞周期チェックポイント経路は、細胞周期チェックポイント経路の1つまたは複数のメンバーの活性化により活性化され得る。好ましくは、細胞周期チェックポイント経路は生化学的シグナル伝達経路である。
本明細書で使用する場合、「細胞周期チェックポイント制御因子」とは、細胞周期チェックポイントの調節において少なくともある程度機能し得る組成物をいう。細胞周期チェックポイント制御因子は、細胞周期チェックポイントを含む1つまたは複数の機能に対して刺激作用もしくは阻害作用を有しても、あるいはその両方を有してもよい。細胞周期チェックポイント制御因子はタンパク質でも、あるいはタンパク質でなくてもよい。
癌または細胞増殖性障害を処置すると、細胞死が起こることがあり、好ましくは細胞死により、ある集団で細胞の数が少なくとも10%減少する。一層好ましくは、細胞死は、少なくとも20%の減少;一層好ましくは少なくとも30%の減少;一層好ましくは少なくとも40%の減少;一層好ましくは少なくとも50%の減少;最も好ましくは少なくとも75%の減少を意味する。集団における細胞数は、任意の再現可能な手段により測定することができる。集団における細胞数は、蛍光活性化セルソーター(FACS)、免疫蛍光顕微鏡および光学顕微鏡により測定してもよい。細胞死を測定する方法は、Li et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.100(5):2674−8,2003に示される通りである。一態様では、細胞死はアポトーシスにより起こる。
好ましくは、有効量の本開示の組成物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、正常な細胞に対してあまり細胞毒性を示さない。治療有効量の化合物の投与により、正常な細胞に10%を超えて細胞死が誘導されない場合、治療有効量の化合物は正常な細胞に対してあまり細胞毒性を示さない。治療有効量の化合物の投与により、正常な細胞に10%を超えて細胞死が誘導されない場合、治療有効量の化合物は正常な細胞の生存率にあまり影響を与えない。一態様では、細胞死はアポトーシスにより起こる。
本開示の組成物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と細胞を接触させると、癌細胞に選択的に細胞死を誘導または活性化することができる。本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、それを必要とする被験体に投与すると、癌細胞に選択的に細胞死を誘導または活性化することができる。本開示の組成物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と細胞を接触させると、細胞増殖性障害に冒された1つまたは複数の細胞に選択的に細胞死を誘導することができる。好ましくは、本開示の組成物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、それを必要とする被験体に投与すると、細胞増殖性障害に冒された1つまたは複数の細胞に選択的に細胞死が誘導される。
本開示は、本開示の組成物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、それを必要とする被検体に投与することによって、癌を処置または予防する方法であって、本開示の組成物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を投与すると、細胞周期(たとえばG1、G1/S、G2/M)のうち1つまたは複数の期における細胞の蓄積による癌細胞増殖の予防、または細胞老化の誘導、もしくは腫瘍細胞分化の促進;正常な細胞において相当量の細胞死を起こすことのない、細胞毒性、壊死もしくはアポトーシスによる癌細胞の細胞死の促進、治療係数が少なくとも2の動物における抗腫瘍活性のうち1つまたは複数が起こる方法に関する。本明細書で使用する場合、「治療係数」とは最大耐量を有効用量で除した値である。
当業者は、本明細書で考察した公知の技術または等価な技術の詳細な説明に関する一般的な参考図書を参照してもよい。そうした図書として、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Inc.(2005);Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(3rd edition),Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,New York(2000);Coligan et al.,Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,N.Y.;Enna et al.,Current Protocols in Pharmacology,John Wiley & Sons,N.Y.;Fingl et al.,The Pharmacological Basis of Therapeutics(1975),Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA,18th edition(1990)が挙げられる。さらにこれらの図書は、本開示の態様の製造または使用の際に参照してもよいことは、言うまでもない。
実施例1
前臨床データによると、ヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2の低分子阻害剤は、EZH2の機能転換型変異を発現している非ホジキンリンパ腫(NHL)の有望で新規な処置法であることが示唆されている。インビトロおよびインビボでEZH2を選択的に阻害すると、非変異型リンパ腫細胞ヘの影響は最小限で、EZH2変異を担持するリンパ腫細胞に特異的な死滅をもたらすことが、以前に報告されている[Knutson et al.Nature Chemical Biology 20121;Keilhack et al.Blood(ASH Annual Meeting Abstracts)2012,120,Abstract 37122]。エピジェネティックな変化には、多くの抗癌剤に対する癌細胞の耐性が関与していることが示唆されているため、この徴候について調査中のNHLの標準治療薬、第二選択療法または標的療法と併用する、化合物44について調査した。2種の異なるEZH2変異型細胞株の細胞ベースのアッセイにより、化合物44に継続的に曝露すると、CHOP化学療法レジメンのすべての成分で、第二選択療法で、しかしいくつかの標的療法(たとえば他のエピジェネティックな薬物、PI3K経路または他の阻害剤)でも、併用有益性が示された。これらの効果は活性化B細胞型のEZH2野生型リンパ腫細胞株では観察されなかった。2種の異なるEZH2変異型異種移植片モデルでは、CHOPとの併用有益性が強力であることも観察された。たとえば、SUDHL6 Y646N異種移植片モデルにおいて、化合物44でもCHOP化学療法単独でも有意な抗腫瘍効果はなかったが、それらを併用すると、休薬後でさえ持続的な腫瘍後退があった。重要なことであるが、この効果は、別のEZH2変異型異種移植片モデルでの第3の試験において、CHOP化学療法レジメンからドキソルビシンを除外した場合に維持された。続いて、本明細書に提示するデータにより、いくつかのEZH2変異型リンパ腫細胞株(インビトロ)において、化合物44の増殖抑制効果はプレドニゾロン単独またはデキサメタゾン単独によって増強されたため、グルココルチコイド受容体アゴニズムが、CHOPで観察された併用有益性の重要な機序であり得ることが示された。まとめると、これらのデータから、EZH2変異型NHLにおける化合物44の単剤活性は、合理的な併用戦略によってさらに増強および拡大され得ることが示唆される。
本明細書に提示するデータにより、化合物44およびグルココルチコイド受容体アゴニストは、インビトロで、EZH2iに非感受性の変異型株を含むが、活性化B細胞型の株は含まないEZH2変異型および野生型のGCBリンパ腫株において、協同して増殖抑制作用を劇的に増強することが示される。
変異型EZH2 GCBリンパ腫細胞において、併用有益性は、CHOP化学療法レジメンの単一成分のすべて、第二選択療法および他の標的療法についても観察され、その併用有益性は、BCL2阻害剤、ナビトクラックスおよびmTOR阻害剤エベロリムスとの強力な相乗作用を含む。
CHOPとの強力な併用有益性は、2種の異なるEZH2変異型異種移植片モデルにおいて観察され、この効果は、化学療法レジメンからドキソルビシンを除外した第3のEZH2変異型異種移植片モデルでの試験において維持された。
まとめると、これらの結果から、EZH2変異型リンパ腫異種移植片において化合物44とCHOPとの併用で観察された抗腫瘍活性の増幅に、グルココルチコイド受容体アゴニストが重要な役割を担い得ること、およびNHLにおいて現在評価中のいくつかの新規な療法で強力なインビトロ相乗作用が観察され、合理的な併用手段をさらに調査するに値することが示唆される。
実施例2:胚中心非ホジキンリンパ腫におけるEZH2阻害剤とグルココルチコイド受容体アゴニストとの相乗的な抗腫瘍活性
結果
化合物44をCHOPのグルココルチコイド受容体アゴニスト(GRag)であるプレドニゾロンまたは他のGRag(たとえば、デキサメタゾン)のみと併用した場合に劇的な相乗作用が観察された。CHOPと併用した場合、化合物44の増殖抑制効果は大幅に増強され、この相乗作用の大部分がCHOPのGRag成分であるプレドニゾロン(プレドニゾンの活性代謝産物)によるものであり得る。注目すべきことに、化合物44とプレドニゾロンとを併用すると、EZH2阻害に感受性がある細胞の範囲が、変異型担持細胞のみからすべてのGCB NHL細胞にまで広がる。
2種のEZH2変異型細胞株、WSU−DLCL2およびSU−DHL10を、化合物44で4日間前処置し、次いで、化合物44プラス個々のCHOP成分の併用でさらに3日間併用処置した(4+3モデル)。変異型細胞株において、マホスファミド(シクロホスファミドのアナログ)、ドキソルビシンおよびビンクリスチンはすべて、これら単独で、濃度依存的な増殖阻害を示した。それ故、化合物44との併用では、これらの薬物について併用指数(CI、Calcusynソフトウェアを用いて計算)を得た。しかし、これらの細胞株はプレドニゾロン(プレドニゾンの活性代謝産物)単独には感受性を示さなかった。したがって、この場合CIを求めることができず、代替として、プレドニゾロンの濃度−反応曲線に見られる化合物44のIC50のシフトに基づいて効力の増強を計算した。
化合物44+マホスファミドの併用では、両方のEZH2変異型細胞株において全体的な相加的併用有益性が見られた(図3C、F)。4+3モデルにおいて、WSU−DLCL2細胞では化合物44+ドキソルビシンは相乗的に作用したが(図3A)、SU−DHL10細胞ではこの併用は相加的であった(図3D)。化合物44+ビンクリスチンの併用もまた、両方のEZH2変異型細胞株において相加作用を示した(図3B、E)。WSU−DLCL2細胞をプレドニゾロン+化合物44で処置すると、化合物44について効力増大方向への9倍シフトが観察された。別のGRagであるデキサメタゾンで処置すると、化合物44のIC50において、さらに大きい17倍シフトが得られた(図4A、B)。化合物44の効力シフトにおける同様の傾向がSU−DHL10細胞において観察された(図4C、D)。
次に、化合物44+CHOPの併用効果が、GCB亜型およびABC亜型の両方の野生型EZH2リンパ腫細胞株を、化合物44に対して感受性にし得るかどうかを調査した。化合物44の単独処置はEZH2野生型リンパ腫株において増殖を阻害しないため、効力のシフトを個々のCHOP成分の濃度−反応曲線を基に計算した。試験した4つのCHOP成分のうち、GRag+化合物44の併用のみが、野生型GCBリンパ腫細胞株において効力シフトを起こした(図5A、Bおよび表3)。これとは反対に、野生型ABCリンパ腫株において、4つのCHOP成分のいずれについても効力シフトは観察されなかった(図5C、Dおよび表3)これは、GRag+EZH2iの併用有益性がリンパ腫のGCB亜型の生物学的性質に特異的であることを示す。
EZH2野生型および変異型GCBリンパ腫細胞株において、どの単剤と比較しても、GRag+EZH2iの併用のみが増殖抑制効果を劇的に増強したことを考慮して、処置期間および/または化合物の添加の順序が感受性に影響を及ぼすかどうかを判定した。細胞株パネルもまた、2つのEZH2野生型細胞株、化合物44に感受性の2つのEZH2変異型細胞株、および化合物44に非感受性の2つのEZH2変異型細胞株を含むまでに拡大した(McCabe et alによる以前の報告、および非公開内部データ)。以前の4+3モデルでは、効力シフトは化合物44の曝露(感受性のEZH2 Y646細胞株において)またはプレドニゾロンの曝露(EZH2野生型細胞株において)を基にした。この一連の実験では、プレドニゾロンの濃度を固定した化合物44のIC50シフトを使用して、4+3モデル、4日もしくは7日の併用処置、または4日のプレドニゾロン前処置プラス3日の併用処置で処置した細胞株における併用有益性を求めた。化合物44に感受性のEZH2変異型細胞株を4日間併用処置した場合、化合物44のIC50が1/30〜1/60になることが観察され、4+3処置スケジュールのIC50と同様の傾向が示された(表2)。同様の結果が7日の併用処置および4+3モデル(表2)に観察された。EZH2野生型GCB細胞株において、4日後に化合物44の測定可能なIC50は得られなかったが、4日間のプレドニゾロンとの併用処置後には、両方の細胞株が、増殖の低減および化合物44の測定可能なIC50を示した(表2)。EZH2野生型GCB細胞はまた、4+3モデルおよび/または7日の併用処置スケジュールに対しても反応した(表2)。注目すべきことに、化合物44に非感受性のEZH2変異型細胞株もまた、4日の処置後に化合物44の測定可能なIC50は示さなかったが、4日の併用処置では増殖が低減し、4+3処置スケジュールでの併用および7日の併用処置に対してはさらに大きく反応した(表2)。細胞をプレドニゾロンで前処置し、その後、化合物44+プレドニゾロンで併用処置した場合に併用有益性を示したのは6細胞株のうち1株のみであった。このことは、相乗効果には薬物添加の順序が重要であることを示す(表2)。
これらの細胞株において化合物44+GRagのこの併用有益性が作用する作用機序を調査するために、ヒストンH3リシン27(H3K27)残基の全体的なメチル化およびアセチル化を解析した。WSU−DLCL2、OCI−LY19およびRLの各細胞を、化合物44、プレドニゾロン、またはその併用で4日間処置し、H3K27の修飾をELISAまたはウエスタンブロットで評価した。プレドニゾロン単独は、WSU−DCL2細胞でもRL細胞でもH3K27のトリメチル化(H3K27me3)に影響を及ぼさなかったが、OCI−LY19細胞では高めの用量でH3K27me3をわずかに増加させた。化合物44+プレドニゾロンの併用は、いずれの細胞株においても、H3K27me3阻害に対する化合物44のIC50をシフトさせなかった(図11A)。同様に、H3K27アセチル化レベルは、プレドニゾロン単独でも化合物44+プレドニゾロンの併用でも全体的に影響を受けることはなかった(図11B)。
H3K27アセチル化またはトリメチル化の全体的なレベルが影響を受けなかったことがわかったため、GRシグナル伝達経路の転写制御を調査した。WSU−DLCL2、SU−DHL10、RL、SU−DHL4、OCI−LY19およびDOHH2の各細胞を単一濃度の化合物44、プレドニゾロン、またはその併用で4日間処置し、グルココルチコイドシグナル伝達PCRアレイを用いて遺伝子発現を解析した(表4)。全般的に、すべての細胞株において、プレドニゾロンおよび併用処置の両方でより多数の遺伝子がダウンレギュレーションされ、遺伝子発現の活性化因子と抑制因子の両方としてのGRの役割が指摘された。ここで、GRの活性化機能に焦点を当てると、細胞株のパネル中、併用処置で相乗的なアップレギュレーションを有する3つの遺伝子が示された。セストリン、mTORシグナル伝達を阻害する推定腫瘍抑制因子(ref)を、4種のEZH2変異型細胞株においては共通に、併用処置で相乗的にアップレギュレーションされるが、EZH2野生型細胞株においてはそうではない遺伝子として特定した(図10A)。TNF発現は、化合物44に非感受性のEZH2変異型細胞株においてのみ、相乗的にアップレギュレーションされ(図10B)、TSC22D3/GILZは、すべての細胞株においてプレドニゾロンでアップレギュレーションされる一方、化合物44に感受性があるEZH2変異型細胞株においてのみ、併用処置により相乗的に増強される(図10C)。
最後に、3種の異なるEZH2変異型リンパ腫異種移植片モデルにおいて、腫瘍増殖阻害を評価した。皮下にリンパ腫異種移植片を担持するSCIDマウスまたはヌードマウスに、化合物44と、CHOPまたはCOP(ドキソルビシンを除外したCHOP)のいずれかの化学療法とを併用投与し、単剤処置と比較した。WSU−DLCL2異種移植片担持マウスでは、使用したすべての化合物44の用量およびスケジュールで、腫瘍増殖阻害を達成し、CHOP化学療法単独より良好であった(図9A)。さらに、化合物44とCHOPとの併用療法は、強い抗腫瘍反応、およびいずれの単剤単独(CHOPおよび化合物44についてそれぞれ45%および71%)よりも有意に(p<0.001)良好な腫瘍増殖阻害(93%)を誘導した。すべての単回処置に耐容性であった;化合物44/CHOP併用群において最初のサイクル後に軽微な体重減少(11.3%)があったが、その後、マウスは次のサイクルの処置前に回復した。
Beguelin et alが以前にEZH2阻害剤GSK503を用いて発表した結果とは逆に、SU−DHL6異種移植片モデルにおいて、CHOP単独でも、化合物44でも、有意な腫瘍増殖阻害は観察されなかった(図9B、上段のパネル)。注目すべきことに、化合物44/CHOPを併用すると腫瘍が後退した。投薬を28日目に中止し、マウスを腫瘍増殖遅延について60日目まで観察したところ、この併用で、マウスの58%が腫瘍のないまま生存した(図9B、下段のパネル)。
CHOPのドキソルビシン成分には、その心毒性のため、生涯累積性の投薬限度<550mg/m2がある。それ故、化合物44と、この成分を除外した化学療法レジメンとの併用有益性を調査した。第3の試験において、SU−DHL10異種移植片担持マウスを、漸増用量の化合物44(BID)、ドキソルビシンを除外した化学療法レジメン(COP)、またはCOPと化合物44との併用で28日間処置し、腫瘍増殖阻害を、化合物44のすべての用量およびCOPについて観察した(図9C、上段のパネル)。266mg/kg、532mg/kgおよびCOP/化合物44の併用処置により、反復測定ANOVAおよびダネット事後検定で評価した場合にビヒクルとは統計的に差がある(p>0.001)後退が生じ、化合物44/COP併用群は最良の奏効を示した。28日の投薬後、腫瘍量が最小のマウスの部分群(1群につき8匹のマウス)を、腫瘍増殖遅延エンドポイントのために、さらなる投薬をせずに生存を維持させた。化合物44で処置したマウスには明白な用量依存的腫瘍増殖遅延有益性があったが、COPで処置した腫瘍は化合物44で処置した腫瘍より進行が速かった(図9C、中央のパネル)。最大耐用量の化合物44または化合物44/COP併用で処置したマウスは60日目に100%生存率を示したが、併用群は、化合物44の最大耐用量を含む他のすべての処置群と統計的に差がある(p>0.05)最小の最終腫瘍重量を示した(図9C、下段のパネル)。
B細胞NHLの標準的な処置は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾロンから構成される併用化学療法レジメンである。完全奏効率40〜50%を達成することができるが、相当な割合の患者が再発し、3年全生存率は約30%にすぎない。再発したリンパ腫は広範囲の抗癌薬物に対して耐性を示すことがあり、このことは、臨床においてこれらの高悪性度の悪性腫瘍に対処するために厳しい課題となる。リンパ腫における薬物耐性の獲得は、一部には腫瘍細胞の遺伝的異質性および不安定性に促進される。したがって、化学療法耐性のNHLに奏効する処置は、B細胞NHLの様々な亜型に特異的な複数の経路を標的する薬物の合理的な併用を必要とすることになる。たとえば、活性化B細胞型のリンパ腫において、NFkB経路の恒常的活性化は療法に対する耐性に関与すると示唆されており、いくつかの新規な標的療法はこの亜型において有望である。
ポリコームなどのエピジェネティックなエフェクターもまた、癌細胞の化学療法耐性に関与すると示唆されている。EZH2はポリコーム抑制複合体2(PRC2)の触媒サブユニットであり、胚中心由来のB細胞リンパ腫における決定的な腫瘍形成駆動因子(oncogenic driver)である。これらのより原始的なB細胞悪性腫瘍、特に触媒活性が変化したEZH2変異型を発現している変異体は、増殖および生存のためにEZH2を必要とする。前臨床試験の結果から、そうした遺伝学的に定義された癌の処置には、EZH2の触媒の阻害剤が大いに有望であると予測されており、EZH2阻害剤はまた、化学療法耐性を軽減し得る。本明細書に提示するデータにより、臨床段階のEZH2阻害剤である化合物44が、CHOPの成分と一緒に、相加作用から相乗作用までの範囲の様々な程度の併用有益性を示すことがわかる。そうした併用効果は胚中心起源のリンパ腫において特に見られ、シクロホスファミド、ドキソルビシンおよびビンクリスチンの場合には、そうした併用効果がEZH2変異型担持細胞に限定された。リンパ腫細胞死における有意な相乗作用もまた、インビボで化合物44をCHOPと併用投与した場合に見られた。このことは、いずれの単剤も有意な抗腫瘍活性を何ら示さなかったが、併用すると、マウスの>50%に持続的な後退が誘導されたSU−DHL6異種移植片モデルにおいて、特に当てはまった。このことは、EZH2変異型リンパ腫の化学療法耐性における過剰活性なEZH2の潜在的重要性を再確認するものである。CHOP成分のうちのプレドニゾンと、化合物44とを併用すると、最強の増殖抑制作用が誘導され、この併用はまた、EZH2の変異状態にかかわらず、EZH2阻害に非感受性のGCBリンパ腫細胞株を感受性にする可能性がある。加えて、この併用有益性は、化合物44とプレドニゾロンとがどちらも一緒に、または特定の順序で投与される場合に、より明白となる。たとえば、細胞をEZH2阻害剤で刺激した後に、GRアゴニストで処置すると、特に有効であることが立証された。この驚くべき発見は、臨床におけるEZH2阻害剤の適用に、潜在的に重要な意味をもつ。第1に、広く使用されているGRagは、薬物誘導性アレルギー反応を予防するため、また、疼痛、悪心および嘔吐を軽減するために、抗癌薬物と併用投与されることが多く、造血器悪性腫瘍においてアポトーシスを誘導するその能力のため、こうした癌の処置に極めて重要である。他のCHOP成分と比較して、GRagが引き起こす有害作用は重症度が最も低い。さらに、SU−DHL10異種移植片モデルのデータによって示したように、化合物44との併用有益性を保ちながら、CHOPレジメンからドキソルビシンを除外する機会があると、患者はドキソルビシンの用量制限的な心毒性の副作用を免れる可能性がある。最後に、前臨床試験では、単剤のEZH2阻害剤は、EZH2変異型担持リンパ腫においてのみ、有意な細胞死を誘導することが示されているが、EZH2変異型担持リンパ腫は、臨床的ニーズの満たされない度合いが大きいGCBリンパ腫患者の一部(20%)に過ぎない。本明細書における結果は、GRag/EZH2阻害剤の併用により、すべての胚中心由来のB細胞リンパ腫において臨床的有用性があり得ることを示す。
グルココルチコイドが結合したGR分子は核へ移行し、細胞環境に応じて、転写活性化因子または転写抑制因子として作用し得る。GRは増殖性相互作用のためにヌクレオソームを常時サンプリングし、クロマチンを修飾する酵素の目的は、GR、その補因子および基本転写機構がDNAに到達するのを制御することであると示唆されている。他の試験では、GRは開いたクロマチンの既存の領域に結合することが多く、所与の細胞型のクロマチンの構造は、GRが組織特異的に作用し得るように構成されることが示されている。GR結合部位への到達可能性は、ATPに依存するクロマチンリモデリングによってさらに高まり、SWI/SNF複合体がこの活性に重要な役割を担う。特定の理論または特定の作用機序に縛られることを望むものではないが、EZH2媒介性のH3K27の高トリメチル化によって誘導される異常なクロマチン抑制により、これがなければ到達可能なGR結合部位の一部がブロックされ、正常なGR媒介性遺伝子誘導または抑制が妨害され得ると考えられる。実際、すべてのEZH2変異型リンパ腫細胞株がGRag処置に非感受性であるが、EZH2野生型細胞では濃度依存的細胞死が観察される。プレドニゾロンで前処置してから化合物44で処置すると、試験したほとんどすべての細胞株で相乗作用を誘導することができないという観察から、EZH2阻害剤が誘導するクロマチンリモデリングがGRの作用の増強の律速段階である可能性が指摘される。また、PRC2はSWI/SNF機能と拮抗することが知られており、SWI/SNF複合体のコアサブユニット−SMARCA4、ARID1AおよびINI1−のダウンレギュレーションは急性リンパ芽球T細胞白血病におけるプレドニゾロンに対する耐性に関連している。INI1の減少とEZH2の過剰活性化の関連性がラブドイド腫瘍において確立されているため、化合物44またはプレドニゾロンに曝露された種々のリンパ腫細胞において、全体的なINI1タンパク質レベルが増加するかどうか(それにより、SWI/SNF機能が亢進した後にGRのその結合部位への到達可能性を大きくする可能性がある)を調査した。
GR経路遺伝子発現アレイでは、数種類のGCBリンパ腫細胞(EZH2野生型および変異型の両方)を化合物44、プレドニゾロンまたはその併用で処置した後に、遺伝子発現の増加および減少の両方が現れ、GRの二重機能が確認された。すべてのEZH2変異型リンパ腫細胞の中で、併用によって相乗的にアップレギュレーションした唯一の遺伝子が、DNA損傷および酸化ストレスに対する細胞応答において機能を有するTP53腫瘍抑制因子であるSESN1であった。セストリンは、AMP活性化プロテインキナーゼを活性化し、その結果mTOR経路を阻害することによって細胞増殖を阻害する。したがって、SESN1に媒介されるmTOR経路の阻害は、化合物44での処置後にEZH2変異型リンパ腫細胞にGRag感受性を再導入する重要な機序であり得る。
反対に、GRag/化合物44の併用処置は、EZH2阻害剤処置に対して難治性であると報告されているEZH2変異型リンパ腫細胞株(RL、SU−DHL4)において細胞死を誘導することもできる可能性がある。SESN1はこれらの細胞株においても併用処置により誘導されたが、強力な炎症性サイトカインであるTNFのさらなる相乗的なアップレギュレーションが、RL細胞およびSU−DHL4細胞において特異的に観察された。TNFおよびグルココルチコイドは、通常は拮抗的に作用するため、この観察は驚くべきことに思われる。TNFは、その受容体TNFR−1を介してアポトーシスを誘導することができるが、主にNFkB経路を介して生存シグナルを伝達する能力も有する。したがって、化合物44/プレドニゾロンの併用によってTNF発現の増加が誘導されると、NFkBに媒介される転写のGRアゴニスト抑制の状況では、TNFの作用をアポトーシスへとシフトさせ得る可能性がある。しかし、この機序が化合物44に非感受性のEZH2変異型細胞に相乗的な細胞死をもたらす理由は不明である。GRag耐性におけるNFkB経路の負の制御因子の異常な抑制が重要である可能性、およびそれを媒介するEZH2の役割の可能性は、6細胞株中2細胞株において、併用によりGILZが相乗的にアップレギュレーションされるという観察によってさらに裏付けられる。
方法
ミディアムスループットアッセイ
リンパ腫細胞をフラスコ中に播種し(WSU−DLCL2およびDOHH2は50,000細胞/mL、SU−DHL10は10,000細胞/mL、およびToledoは100,000細胞/mL)、7用量の化合物44またはDMSOで4日間、またはToledoアッセイでは6日間前処置した。次いで、細胞を、WSU−DLCL2およびDOHH2は50,000細胞/mLに、またはSU−DHL−10は30,000細胞/mLに再分割し、HP D300デジタルディスペンサー(Tecan)を用いて化合物44と対象化合物とで併用処置した。両薬物を2倍段階希釈し、プレートを一定比で対角線に横切るマトリックスに組み合わせ、最終DMSO含量を0.11%(v/v)にした。3日間の併用処置後(Toledoアッセイでは5日間)、細胞生存率を、CellTiter−Glo(登録商標)(Promega)を用いてATP含量により測定し、SpectraMax M5マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を用いて発光を検出した。
相乗作用の定量化は、薬物併用に関するChou−Talalay法を用いて行われる(参考文献1)。併用指数(CI)式は、相加作用(CI=1)、相乗作用(CI<1)および拮抗作用(CI>1)に関して定量的定義を提供する。この式は、一定比の薬物併用からの分割効果(fractional effect:Fa)値を使用してCI値を決定した。得られたプロットの(Fa−CI)プロットは、95%信頼区間で囲まれた結果としてのCI値を示す。これらのFa−CIプロットはWindows(登録商標)用Calcusynソフトウェアを用いて作成される(参考文献2)。信頼区間線も1未満のCI値<1は、統計的に有意な相乗作用を示す。
一方の薬物のみが50%を超す阻害を示した薬物併用について、効力シフトを判定した。Graphpad Prismを用いて用量反応をプロットし、50%または60%の阻害濃度を用量反応曲線から内挿した。効力シフトは、用量反応の信頼区間が重なっていない場合に有意であると考えられた。
細胞株、化合物および処置の概要
WSU−DLCL2、SU−DHL10、RL、SU−DHL4、OCI−Ly19およびDOHH2は、以前に記述されている(NatChemBio 2012)。併用試験には、以前に記述されているように(Daigle et al)、浮遊細胞での増殖アッセイの変更版を使用した。手短に言えば、4日にわたる線形対数増殖期を確保する初期密度で、0日目に細胞を96ウェルプレートに3連でプレーティングした。細胞を、用量曲線の化合物44(最高用量1μMで開始)、薬物の4日IC50の1/10の濃度での単一用量のプレドニゾロン(カタログ番号および製造者)、または化合物44+プレドニゾロンの併用で処置した。4日目に、細胞をguava easyCyteフローサイトメーターに入れ、Viacount試薬を用いてカウントし、さらなる3日間用に、生存細胞数を使用して細胞を最初の密度で再プレーティングした。化合物44で前処置した細胞は、継続して化合物44単独か、または化合物44+プレドニゾロン(一定用量)で処置し、プレドニゾロンで前処置した細胞は、継続してプレドニゾロンか、またはプレドニゾロン+化合物44で処置し、4日間併用処置した細胞は、7日間を通して併用処置を継続した。
異種移植片試験
この試験の動物の取り扱い、管理および処置に関するすべての手順は、Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care(AAALAC)のガイドラインに沿ってCRL PiedmontおよびShanghai ChemPartnerのInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)によって認可されたガイドラインに従って行われた。WSU−DLCL2、SU−DHL6またはSU−DHL10の各細胞を、対数増殖期の中間で採取し、50% Matrigel(商標)(BD Biosciences)を含むPBS中に再浮遊させ、免疫不全のマウスに注射した。各マウスの右側腹部に1×107細胞(細胞浮遊液0.2mL)を皮下注射し、腫瘍が所定のサイズに達すると、マウスに様々な用量の化合物44を種々のスケジュールで28日目まで、および/またはCHOP/COPを以下のスケジュールで経口投与した:シクロホスファミドは腹腔内投与(i.p.)し、ドキソルビシンおよびビンクリスチンは、それぞれボーラス尾静脈注射(i.v.)で投与した;それぞれを、SU−DHL6試験では1日目および8日目に、WSU−DLCL2試験およびSU−DHL10試験では1日目および22日目に1日1回与えた。プレドニゾンは、1日量5日間を2サイクル経口投与した。SU−DHL6試験では1日目および8日目に開始し((1日1回×5日)×2、1日目、8日目)、WSU−DLCL2試験およびSU−DHL10試験では1日目および22日目に開始した((1日1回×5日)×2、1日目、22日目)。各用量を0.2mL/20gマウス(10mL/kg)の体積で送達し、各動物の最新記録体重で調節した。腫瘍測定値および体重を、すべての試験について週2回、28日間収集した。SU−DHL10試験およびSU−DHL6試験において腫瘍増殖遅延を判定するために、各試験動物を、その新生物がエンドポイント体積の2000mm3に到達したとき、または試験最終日(60日目)のいずれか早い方の日に安楽死させた。
定量的PCR
WSU−DLCL2、SU−DHL10、RL、SU−DHL4、OCI−LY19およびDOHH2の各細胞を、DMSO、1uMの化合物44(SU−DHL10は100nMの化合物44で処置)、4日IC50の1/10の濃度でのプレドニゾロン用量または薬物の併用で4日間並行して処置した。細胞を採取し、全mRNAを、RNeasy Plus Mini Kit(Qiagen;74134)を用いて細胞ペレットから抽出した。RT2グルココルチコイドシグナル伝達PCRアレイ(Qiagen;PAHS−154ZE−4)用に、RT2 First Strand Kit(Qiagen;330401)でcDNAを作製した。アレイRT−PCRは、ViiA 7 Real−Time PCR Systems[Applied Biosystems(AB)]をRT2 SYBR Green ROX qPCR Mastermix(Qiagen;330521)と共に用いて行った。遺伝子発現をアレイのB2Mに対して標準化し、DMSOと比較した倍率変化を、ΔΔCt法を用いて計算した。アレイのデータを検証するため、TaqManプローブベースのqPCRを、TaqMan Fast Advanced Master Mix(AB;4444964)を用いて、ならびにセストリン(AB;Hs00902787_m1)およびTNF(AB;Hs01113624_m1)についてはTaqManプライマー/プローブセットを用いて行った。倍率変化を、RPLPO(AB;4333761F)に対して標準化して上記のように計算した。
ELISA
上記のように、ヒストンを腫瘍サンプルから抽出した。ヒストンを当量濃度でコーティングバッファー(PBS+0.05%BSA)中に調製し、0.5ng/ulのサンプルを得、100ulのサンプルまたは標準物質を2つの96ウェルELISAプレート(Thermo Labsystems、Immulon 4HBX #3885)に2連で添加した。プレートを密封し、4℃で終夜インキュベートした。翌日、プレートを、Bio Tekプレート洗浄機で、300ul/ウェルのPBST(PBS+0.05% Tween 20;10X PBST、KPL #51−14−02)を用いて3回洗浄した。プレートを300ul/ウェルの希釈剤(PBS+2%BSA+0.05% Tween 20)でブロックし、室温で2時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄した。すべての抗体を希釈剤で希釈した。100ul/ウェルの抗H3K27me3(CST#9733、50%グリセロールストック1:1,000)または抗全H3(Abcam ab1791、50%グリセロール1:10,000)を各プレートに添加した。プレートを室温で90分間インキュベートし、PBSTで3回洗浄した。100ul/ウェルの抗Rb−IgG−HRP(Cell Signaling Technology、7074)をH3K27Me3プレートに1:2,000で、H3プレートに1:6,000で添加し、室温で90分間インキュベートした。プレートをPBSTで4回洗浄した。検出のために、100ul/ウェルのTMB基質(BioFx Laboratories、#TMBS)を添加し、プレートを室温で5分間、暗所でインキュベートした。反応を100ul/ウェルの1N H2SO4で停止した。450nmでの吸光度をSpectaMax M5マイクロプレートリーダーで読み取った。
実施例3:EZH2を阻害すると、腎明細胞癌モデルにおいてスニチニブに対する耐性が克服される
遺伝子プロモーター領域でのヒストン修飾および高メチル化を含むエピジェネティックな機序の変化は、癌における薬物耐性の機序として関与すると示唆されている。エピジェネティックな制御因子であるこうしたヒストンメチルトランスフェラーゼ、EZH2の変化は進行腎細胞癌(RCC)を含む多くの癌の種類において報告されている。以前の試験では、スニチニブは直接的な抗腫瘍効果を有し得ること、およびスニチニブに対する獲得耐性は、内皮細胞のみではなく、腫瘍細胞において誘導され得ることが示唆されている。本試験では、腎明細胞癌のスニチニブ耐性におけるEZH2の役割を調査した。
方法:ヒトRCC細胞株786−0を、漸増濃度のスニチニブで処置およびそれに曝露して、耐性細胞株786−0Rを開発した。親細胞株および耐性細胞株をスニチニブ、GSK126(EZH2阻害剤)または両方で処置した。並行して、786−0細胞においてEZH2をノックダウンし、漸増濃度のスニチニブに曝露した。細胞生存率を、分光計を570nmで用いて、クリスタルバイオレットで染色した細胞の吸光度によって定量化した。第2の実験一式では、対照細胞および処置細胞をウエスタン解析のために回収した。ヒトccRCC患者由来の異種移植片(PDXs)を担持するマウスは、RP−R−01、RP−R−02およびRP−R−02LM(RP−R−02から樹立した転移性ccRCCモデル)をSCIDマウスに移植したものである。腫瘍が50mm3の平均体積に到達したとき、マウスを無作為に2群にグループ化した;対照、スニチニブ処置(40mg/kg、5日/週)またはEZH2i EPZ011989(500mg/kg、2回/日、5日/週)。腫瘍体積および体重を週1回評価した。腫瘍組織および肺を免疫組織化学解析のために回収した。すべての評価および定量化は盲検的に行った。
結果:インビトロおよびインビボのデータから、スニチニブに対して耐性のあるEZH2の発現が増加したことがわかった。さらに、インビトロおよびインビボの試験におけるEZH2の阻害は、親細胞株および耐性細胞株の両方で、スニチニブの抗腫瘍効果の有意な増加と相関していた。
結論:総じて、本データはエピジェネティックな変化、特にEZH2の過剰発現の潜在的な役割およびそのスニチニブに対する耐性との関連を示唆するものである。
本明細書に引用する刊行物および特許文書はすべて、そうした刊行物または文書を本明細書に援用するために具体的に個々に示しているかのように本明細書に援用する。刊行物および特許文書の引用は、いずれかが適当な従来技術であること認めることを意図するものではなく、その内容または日付について何ら承認することにならない。これまで本発明を書面による記載により説明してきたが、当業者であれば、本発明を種々の実施形態で実施することができること、および前述の記載および下記の例は説明を目的としたものであり、以下の特許請求の範囲の限定を目的としたものでないことを認識するであろう。
本発明は、その精神または本質的な特徴を逸脱することなく他の特定の形態で実施することができる。したがって前述の実施形態は、あらゆる点で本明細書に記載の本発明に関する限定ではなく、例示と見なすべきである。このため本発明の範囲は、明細書本文ではなく添付の特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲の均等範囲に属するすべての変更をすべてその範囲内に包含することを意図している。