JP2018500934A - Cmp依存性シアリダーゼ活性 - Google Patents

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Abstract

本開示は、N末端トランケーション欠失または内部欠失を有する特定のグリコシルトランスフェラーゼバリアントの特性に関する。本明細書に開示する変異体はいずれも、補基質としてのCMP活性化されたシアル酸の存在下で、かつ適切なアクセプター部位の存在下で、α−2,6−シアリルトランスフェラーゼ酵素活性を示す。本開示中で述べる基本的知見は、そのような酵素がシアリジル部分の伝達を触媒できるだけでなく、それらがグリカンからの末端結合シアル酸の加水分解開裂をも触媒できるということである。特に、シチジン−5’−一リン酸(CMP)の存在下でグリコシルトランスフェラーゼ活性は阻害され、シアリダーゼ活性は刺激されることが見出された。シアリダーゼ活性は、基準(野生型)hST6Gal−Iポリペプチドのポリペプチド配列中の特定範囲のアミノ酸(位置90−108)の存在に依存することが見出された。N末端トランケーションバリアントにおけるこの配列部分の欠失は、CMPの存在下および非存在下で共に明らかにシアリダーゼ活性を無効にすることが見出された。よって、本明細書中で述べるCMP仲介フィードバック調節を用いる組成物、使用および方法を開示する。【選択図】図11

Description

本開示は、N末端トランケーション欠失または内部欠失を有する特定のグリコシルトランスフェラーゼバリアントの特性に関する。本明細書に開示する変異体はいずれも、補基質(補助基質)(co-substrate)としてのCMP活性化されたシアル酸の存在下で、かつ適切なアクセプター部位の存在下で、α−2,6−シアリルトランスフェラーゼ酵素活性を示す。本開示中で述べる基本的知見は、そのような酵素がシアリジル部分の伝達を触媒できるだけでなく、それらがグリカンからの末端結合シアル酸の加水分解開裂をも触媒できるということである。特に、シチジン−5’−一リン酸(CMP)の存在下でグリコシルトランスフェラーゼ活性は阻害され、シアリダーゼ活性は刺激されることが見出された。シアリダーゼ活性は、基準(野生型)hST6Gal−Iポリペプチドのポリペプチド配列中の特定範囲のアミノ酸(位置90−108)の存在に依存することが見出された。N末端トランケーションバリアントにおけるこの配列部分の欠失は、CMPの存在下および非存在下で共に明らかにシアリダーゼ活性を無効にすることが見出された。よって、本明細書中で述べるCMP仲介フィードバック調節を用いる組成物、使用および方法を開示する。
これまでの知見と異なり、α−2,6−シアリルトランスフェラーゼ変異体、特に(ただし、それらに限定されない)ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(hST6Gal−I;野生型アミノ酸配列;SEQ ID NO:1を参照)のバリアントであって、それぞれの野生型ポリペプチドの最初の89個のN末端アミノ酸を伴うトランケーション欠失をもつもの(すなわち、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列をもつ変異体)は、シアリダーゼ酵素活性を示すことが見出された。本開示中で述べる基本的知見は、この変異酵素はシアリジル部分の伝達を触媒できるだけではないということである;事実、このα−2,6−シアリルトランスフェラーゼ変異体はグリカンからの末端結合シアル酸の加水分解開裂をも触媒できる。本開示はさらに、予想外のフィードバック阻害の所見を報告する。特に、シチジン−5’−一リン酸(CMP)の存在下でグリコシルトランスフェラーゼ活性は阻害され、シアリダーゼ活性は刺激されることが見出された。よりいっそう意外なことに、最初の89個のN末端アミノ酸を伴う欠失変異体だけでなく、ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(hST6Gal−I)の他のN末端トランケーションバリアントもシアリダーゼ酵素活性を示すことが見出された。ただし、シアリダーゼ活性はSEQ ID NO:1による基準(野生型)hST6Gal−Iポリペプチドのポリペプチド配列中の特定範囲のアミノ酸(位置90−108,図1を参照)の存在に依存することが見出された。N末端トランケーションバリアントにおけるこの配列部分の欠失は、CMPの存在下および非存在下で共に明らかにシアリダーゼ活性を無効にすることが見出された。よって、本明細書中で述べるCMP仲介フィードバック調節を用いる組成物、使用および方法、特にN−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分のα2,6グリコシド結合の制御加水分解に関するものを開示する。さらに、CMP非感受性hST6Gal−Iを用いる組成物、使用および方法を開示する。
トランスフェラーゼ(EC 2)はある物質から他への官能基の伝達を触媒する。グリコシルトランスフェラーゼ(酵素スーパーファミリー)は、糖タンパク質、糖脂質およびグリコサミノグリカンの炭水化物部分の合成に関与する。特定のグリコシルトランスフェラーゼは、活性化された糖ドナーの単糖部分をアクセプター分子へ逐次伝達することによりオリゴ糖を合成する。したがって、“グリコシルトランスフェラーゼ”は、糖部分をそれのヌクレオチドドナーからポリペプチド、脂質、糖タンパク質または糖脂質のアクセプター部分へ伝達するのをを触媒する。このプロセスは“グリコシル化”としても知られる。たとえば糖タンパク質の構造部分である炭水化物部分は、“グリカン”とも呼ばれる。グリカンはすべての既知の翻訳後タンパク質修飾の最も多くを構成する。グリカンは、接着、免疫応答、神経細胞移動および軸索伸長にわたる広範な生物学的認識プロセスに関与する。グリカンは、糖タンパク質の構造部分として、タンパク質フォールディングならびにタンパク質の安定性および生物活性の支持においても役割をもつ。
グリコシルトランスフェラーゼ触媒作用において、単糖単位であるグルコース(Glc)、ガラクトース(Gal)、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)、グルクロン酸(GlcUA)、ガラクツロン酸(GalUA)およびキシロースは、ウリジン二リン酸(UDP)−α−D誘導体として活性化される;アラビノースはUDP−β−L誘導体として活性化される;マンノース(Man)およびフコースは、それぞれGDP−α−DおよびGDP−β−L誘導体として活性化される;シアル酸(=β−D−Neu5Ac;=Neu5Ac;=SA;=NANA)はシアル酸のCMP誘導体として活性化される。CMP活性化されたシアル酸(=CMP−β−D−Neu5Ac,後記を参照)は、ヌクレオチド一リン酸の形態の唯一の天然ヌクレオチド糖であると思われる。
多種多様なグリコシルトランスフェラーゼがグリカンの合成に関与している。糖タンパク質の炭水化物部分の構造多様性は特に大きく、複雑な生合成経路により決定される。真核細胞では、小胞体(endoplasmic reticulum)(“ER”)の内腔およびゴルジ体において糖タンパク質のグリカン部分の翻訳後生合成が起きる。糖タンパク質の単一(分枝または線状)炭水化物鎖は一般にN−またはO−結合型グリカンである。翻訳後プロセシングに際して、炭水化物は一般にアスパラギンを介して(“N−結合型グリコシル化”)、またはセリンもしくはトレオニンを介して(“O−結合型グリコシル化”)、ポリペプチドに結合する。グリカンの合成は、N−またはO−結合型(=“N−/O−結合型”)のいずれであっても、幾つかの異なる膜固定型グリコシルトランスフェラーゼの活性により作用を受ける。糖タンパク質は1以上のグリカン結合したアミノ酸(=“グリコシル化部位”)を含む場合がある。個々のグリカン構造は線状または分枝状の場合がある。分枝は炭水化物の顕著な特徴であり、それはDNA、RNAおよびポリペプチドに一般的な線状性と対照的である。グリカン構造体は、それらの基本構築ブロックである単糖の不均一性が大きいことと合わせて、高い多様性を示す。さらに、特定の糖タンパク質種のメンバーにおいては特定のグリコシル化部位に結合するグリカンの構造が変動する可能性があり、こうしてそれぞれの糖タンパク質種、すなわちポリペプチド部分の同一アミノ酸配列を共有する種における、ミクロ不均一性が生じる。
シアリルトランスフェラーゼ(=“ST”)は、ドナー化合物から(i)糖脂質もしくはガングリオシドの末端単糖アクセプター基への、または(ii)糖タンパク質のN−/O−結合型グリカンの末端単糖アクセプター基への、シアル酸残基の伝達を触媒するグリコシルトランスフェラーゼである。本開示の目的について、ドナー化合物は“補基質(co-substrate)”とも呼ばれる。ヒトST種を含めた哺乳動物シアリルトランスフェラーゼについては、共通のドナー化合物であるシチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミニン酸(=CMP−β−D−Neu5Ac;=CMP−Neu5Ac;=CMP−NANA;=CMP−シアル酸;=CMP−SA)がある。当業者に周知のとおり、CMP−シアル酸はシアリルトランスフェラーゼに特異的な態様のドナー化合物である;さらに、CMP−9−フルオレセイニル−シアル酸を含めた(それに限定されない)機能均等物がある。レセプター部位へのシアル酸残基(またはその機能均等物)の伝達および共有結合は、“シアリル化する(sialylating)”および“シアリル化(sialylation)”とも呼ばれる。
シアリル化された糖タンパク質のグリカン構造体において、(1以上の)シアリル部分は通常はオリゴ糖の末端位置にみられる。よって、シアリル化された部位の量に応じて、1以上のシアル酸残基はその糖タンパク質のグリカン部分の一部を形成する可能性がある。シアル酸は、末端、すなわち露出位置にあるため、多種多様な生物学的認識現象に関与し、種々の生物学的相互作用に役立つ可能性がある。糖タンパク質には1より多いシアリル化部位、すなわちシアリルトランスフェラーゼの基質として作用できる、シアル酸残基の伝達に適したアクセプター基である部位が存在する可能性がある。そのような1より多い部位は、原則として、糖タンパク質の異なるグリコシル化部位に結合した複数の線状グリカン部分の末端にある可能性がある。さらに、分枝グリカンはシアリル化が起きうる複数の部位をもつ場合がある。
現在の知識によれば、末端シアル酸残基は、(i)ガラクトシル−Rにα2→3(α2,3)結合、(ii)ガラクトシル−Rにα2→6(α2,6)結合、(iii)N−アセチルガラクトサミニジル−Rにα2→6(α2,6)結合、(iv)N−アセチルグルコサミニジル−Rにα2→6(α2,6)結合、および(v)シアリジル−Rにα2→8/9(α2,8/9)結合した状態でみられる可能性がある;これらにおいて、−Rはアクセプター基質部分の残部を意味する。したがって、シアリルコンジュゲートの生合成において作用するシアリルトランスフェラーゼは、一般にそれのそれぞれの単糖アクセプター基質に従って、かつそれが触媒するグリコシド結合の3、6または8/9位置に従って、命名および分類される。したがって、当技術分野で知られている文献、たとえばPatel RY, et al, Glycobiology 16 (2006) 108-116には、真核細胞シアリルトランスフェラーゼに、グリコシド結合の形成に際してNeu5Ac残基が伝達されるアクセプター糖残基のヒドロキシル位置に応じて、(i)ST3Gal、(ii)ST6Gal、(iii)ST6GalNAc、または(v)ST8Siaなどの表記がなされている。より総称的なシアリルトランスフェラーゼの表記、たとえばST3、ST6、ST8も行なうことができる;よって、“ST6”は詳細にはα2,6シアリル化を触媒するシアリルトランスフェラーゼを包含する。
二糖部分β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン(=Galβ1,4GlcNAc)は糖タンパク質のN−結合型グリカンのアンテナ(antenna)にしばしばみられる末端残基であるが、O−結合型グリカンおよび糖脂質にも存在する場合がある。さらに、末端Galβ1,4GlcNAc部分は、あるターゲット糖タンパク質においてガラクトシルトランスフェラーゼ酵素活性の結果として生成する可能性がある。酵素β−ガラクトシド−α2,6−シアリルトランスフェラーゼ(=“ST6Gal”)は、グリカンまたはグリカン分枝(当技術分野で“アンテナ”としても知られる)の末端Galβ1,4GlcNAcアクセプター部分のα2,6−シアリル化を触媒することができる。その一般的側面については、DallOlio F. Glycoconjugate Journal 17 (2000) 669-676の文献を参照する。ヒトおよび他の哺乳動物には、ST6Galの幾つかの種(アイソザイム)があると思われる。本開示は、特にヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(=hST6Gal−I;IUBMB酵素命名法によればEC 2.4.99.1)およびそのバリアントを開示するが、それらに限定されない。
ST6グループのシアリルトランスフェラーゼは、2つのサブグループST6GalおよびST6GalNAcを含む。ST6Gal酵素の活性は、Neu5Ac残基を、グリカンまたはグリカンのアンテナにおける末端Galβ1,4GlcNAcの一部である遊離ガラクトシル残基のC6 ヒドロキシル基へ伝達するのを触媒し、それによりグリカンに、Galβ1,4GlcNAc部分のガラクトシル残基に連結した末端シアル酸残基α2→6を形成する。得られた新たにグリカン中に形成された末端部分はNeu5Acα2,6Galβ1,4GlcNAcである。
ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(hST6Gal−I)の野生型ポリペプチドは、本明細書の提出時点で“UniProtKB/Swiss−Prot:P15907.1”として公にアクセスできるNCBIデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/115445)に開示されていた。さらに、コード配列を含む情報がデータベースエントリー“Gene ID:6480”(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/6480)内にコンパイルされたハイパーリンクとして提供されている。
哺乳動物シアリルトランスフェラーゼは、下記のものを備えたいわゆる“II型構造(type II architecture)”を、他の哺乳動物ゴルジ常在グリコシルトランスフェラーゼと共有している:(i)短い細胞質N末端テイル、(ii)膜貫通フラグメント、続いて(iii)可変長ステム領域、および(iv)ゴルジ体の内腔に面したC−末端触媒ドメイン(Donadio S. et al. in Biochimie 85 (2003) 311-321)。したがって、N末端トランケーション欠失を伴う“可溶性”シアリルトランスフェラーゼは、少なくともII型構造のエレメント(i)および(ii)を欠如する。哺乳動物シアリルトランスフェラーゼはそれらの触媒ドメインにおいて有意の配列相同性を示すと思われる。hST6Gal−Iの構造および機能に関する最近のデータは、Kuhn B. et al. (Biol. Crystallography D69 (2013) 1826-1838)に開示されている。
マウス、ラットおよびヒトを含めたある哺乳動物において、ST6Galは広範な組織分布をもつ。それは肝臓、すなわち血清糖タンパク質合成の主要部位に、特に多量に存在する(Weinstein J. et al. J. Biol. Chem 257 (1982) 13835-13844)。一方で、シアリルトランスフェラーゼは主に膜結合形態でゴルジおよびトランスゴルジネットワーク(trans-Golgi network)内に存在し、そこでそれは新たに合成された分泌型または細胞表面型の糖タンパク質の翻訳後修飾に関与する。他方で、可溶性形態のST6Gal−Iは血清中に存在し(Kim Y.S. et al Biochim. Biophys Acta 244 (1971) 505-512; Dalziel M. et al. Glycobiology 9 (1999) 1003-1008)、主に肝臓から(Kaplan, H.A.et al. J. Biol. Chern. 258 (1983) 11505-11509; van Dijk, W.et al. Biochem. Cell. Biol. 64 (1986) 79-84; Dalziel M. et al. (前掲))、触媒ドメインをそれの膜アンカーから遊離するタンパク質分解事象により誘導される(Kaplan et al., 前掲; Weinstein, J. et al. J. Biol. Chem. 262 (1987) 17735-17743)。よって、本来は膜固定型(membrane-anchored)であったグリコシルトランスフェラーゼの、膜アンカーを含むN末端トランケーションを伴うバリアントはいずれも、用語“可溶性バリアント”に含まれる。可溶性バリアントは、たとえばその部分を膜アンカーと共にタンパク質からタンパク質分解除去することにより、あるいは元のタンパク質のN末端トランケート形をコードするバリアント核酸配列を発現させることにより作製でき、その際、そのトランケーションは膜アンカー(膜貫通フラグメント,II型構造のエレメント(ii))を含む。
Donadio S. et al. (前掲)は、hST6Gal−Iの膜アンカーを含まない幾つかのN末端トランケート型バリアントをCHO細胞において組換え発現させた。その著者らは、最初の35、48、60および89アミノ酸の欠失を含むN末端欠失により、酵素活性をもち、シアル酸を外部アクセプターへ伝達できるhST6Gal−Iバリアントが得られることを見出した。
グリコシル化は、タンパク質のフォールディング、安定性、および生物活性調節に影響を及ぼす重要なタンパク質翻訳後修飾である。シアリル残基は通常はN−グリカンの末端位置に露出しており、したがって、生物学的認識およびリガンド機能に対する主要な関与因子である。重要な例として、末端シアル酸残基を特徴とするグリカンを含むIgGは、炎症反応軽減を誘導することが見出され、かつ血清半減期の延長を示した。したがって、グリコシルトランスフェラーゼを酵素による特定のグリカン構造体の合成に使用することは、療法用タンパク質、特に療法用モノクローナル抗体の、直接インビトロN−グリコシル化に対する工学的ツールとなりつつある。
原核細胞由来のグリコシルトランスフェラーゼは通常は複雑な糖タンパク質構造体には作用しないので、インビトロ糖工学操作の目的には哺乳動物由来のシアリルトランスフェラーゼが好ましい。たとえば、Barb et al. (2009)は、単離されたヒトST6Gal−Iを用いて免疫グロブリンGの高度にシアリル化された形態のFcフラグメントを製造した。しかし、種々の宿主(メトロトローフ(methylotrophic)酵母ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、培養ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)細胞、大腸菌(E. coli)−ベースの発現系)において組換え発現させたhST6Gal−Iの低い発現収率および/または活性の貧弱さのため、そのような適用のための組換えhST6Gal−Iの入手はなお限られている。
Kleineidam R.G. et al. Glycoconjugate Journal (1997) 14: 57-66は、ラット肝臓由来のα−2,6−シアリルトランスフェラーゼの多数の阻害物質を開示している。具体的には、それぞれシチジン、2’−CMP、3’−CMPおよび5’−CMPの存在下で70%、40%、39%および71%のα−2,6−シアリルトランスフェラーゼ阻害がみられ、その際、各阻害物質は0.25mMの濃度で試験された。
グリコシル化されたターゲット分子、たとえば糖タンパク質または糖脂質をインビトロシアリル化するための哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼの使用が当技術分野で知られているが、逆の反応(シアリダーゼ活性、すなわちグリカン部分からの末端シアリル残基の加水分解開裂)は一般にこれまでノイラミニダーゼにより提供されている。しかし、本発明者らによる独自の知見は、哺乳動物由来のシアリルトランスフェラーゼの可溶性バリアントがCMPの存在下でシアリダーゼ活性を示すというものである。事実、N末端トランケーションにより膜貫通ドメインを欠失したヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIの可溶性バリアントの特定の例は、(i)ターゲット糖タンパク質のシアリル化、および(ii)シアリル化されたターゲット糖タンパク質からのシアリル残基の加水分解開裂の両方に使用できる。CMPの存在およびCMPと可溶性バリアントの相互作用に応じて、シアリル化を定量的に制御できる。2以上のアンテナ形(antennal)グリカンアクセプター部位をもつターゲット分子を伴う特定の態様において、本開示は、幾つかのアクセプター部位のうち1つだけにおいてシアリル化を可能にする、またターゲット分子の2以上またはすべてのアクセプター部位ですらシアリル化する手段、方法および条件を提供する。
これは、特に免疫グロブリン、および他のグリコシル化されたターゲット分子のインビトロ糖工学操作の分野において、多種多様な方法への道を開く。
Patel RY, et al, Glycobiology 16 (2006) 108-116 DallOlio F. Glycoconjugate Journal 17 (2000) 669-676 Donadio S. et al. in Biochimie 85 (2003) 311-321 Kuhn B. et al. (Biol. Crystallography D69 (2013) 1826-1838) Weinstein J. et al. J. Biol. Chem 257 (1982) 13835-13844 Kim Y.S. et al Biochim. Biophys Acta 244 (1971) 505-512 Dalziel M. et al. Glycobiology 9 (1999) 1003-1008 Kaplan, H.A.et al. J. Biol. Chern. 258 (1983) 11505-11509 van Dijk, W.et al. Biochem. Cell. Biol. 64 (1986) 79-84 Weinstein, J. et al. J. Biol. Chem. 262 (1987) 17735-17743 Barb et al. (2009) Kleineidam R.G. et al. Glycoconjugate Journal (1997) 14: 57-66
本明細書に開示する他のすべての側面のうち第1側面および特定の態様には、
(a)SEQ ID NO:1の位置90から位置108までのアミノ酸モチーフを含む可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI;
(b)シチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミニン酸またはその機能均等物;
(c)糖タンパク質および糖脂質から選択されるグリコシル化されたターゲット分子;ターゲット分子は1以上のアンテナを含み、少なくとも1つのアンテナは末端構造としてガラクトシル残基のC6位にヒドロキシル基をもつβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を有する;
(d)グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする水溶液
を含む水性組成物であって、
さらに、グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする条件下で5’−シチジン−一リン酸中のホスホエステル結合を加水分解できる酵素を含む水性組成物を開示する。
本明細書に開示する他のすべての側面のうち第2側面および特定の態様には、第1側面に従った組成物におけるシアリルトランスフェラーゼ酵素活性を維持するための、および/またはシアリダーゼ酵素活性を阻害するための、5’−シチジン−一リン酸中のホスホエステル結合を加水分解できる酵素の使用を開示する。
本明細書に開示する他のすべての側面のうち第3側面および特定の態様には、シアリル化されたターゲット分子をインビトロで製造する方法であって、
(a)請求項1および2に従った水性組成物を用意する;
(b)工程(a)の水性組成物をインキュベートし、それによりシチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミニン酸またはその機能均等物を補基質として反応させることにより、1以上の末端アンテナ形N−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン残基を形成し、それにより5’−シチジン−一リン酸が形成される;
(c)工程(b)で形成された5’−シチジン−一リン酸のホスホエステル結合を加水分解し、それにより5’−シチジン−一リン酸仲介による阻害を低減し、それにより可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIの活性を維持する;
工程を含み、
それにより、シアリル化されたターゲット分子をインビトロで製造する方法を開示する。
本明細書に開示する他のすべての側面のうち第4側面および特定の態様には、シアリル化された免疫グロブリンの調製物を開示し、それぞれの免疫グロブリンはヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIに対する複数のアクセプター部位を有し、シアリル化された免疫グロブリンの調製物における約25%未満がシアリル化されておらず、約75%以上がシアリル化されており、その際、調製物は第3側面に従った方法により得られる。
本明細書に開示する他のすべての側面のうち第5側面および特定の態様には、5’−シチジン−一リン酸の存在下で、N−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分、すなわちシアリル化された糖タンパク質または糖脂質中のグリカンの末端構造である部分におけるα2,6グリコシド結合をインビトロ加水分解するための、SEQ ID NO:1の位置90から位置108までのアミノ酸モチーフを含む可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIの使用を開示する。
図1 野生型hST6Gal−Iポリペプチドのアミノ酸配列、および本明細書に開示する欠失バリアントにおいてトランケートされるそのN末端部分の表示。トランケーションにおける欠失部分を“X”により表わす。下線を施したのはCMP誘導によるシアリダーゼ活性に必須であることが見出された位置90−108のアミノ酸である。 図2 HEK細胞において一過性発現し、それから分泌された△89 hST6Gal−Iバリアントの電気泳動および染色後のSDS−PAGEゲル。列1はサイズ標準品を示し、標準品に従った分子量kDaを左に示す。列2:精製した△89 hST6Gal−Iトランケーションバリアント(5μgのタンパク質をゲルに装填した)。 図3 HEK細胞において一過性発現し、それから分泌された△108 hST6Gal−Iバリアントの電気泳動および染色後のSDSゲル。列1はサイズ標準品を示し、標準品に従った分子量kDaを左に示す。列2:△108 hST6Gal−Iトランケーションバリアント(5μgのタンパク質をゲルに装填した)。 図4 組換え体△89 hST6Gal−Iを用いたIgG4 MABのシアリル化のタイムコース。 図5 組換え体△89 hST6Gal−Iにより触媒されるG2+2SAおよびG2+1SAの形成の動態を、異なるシアリル化ターゲット分子種の相対含量を決定する基礎として取得した質量スペクトルにより示したもの。 図6 CTPによる、組換え体△89 hST6Gal−Iのシアリダーゼ活性の阻害。末端ガラクトース残基をもつグリカン(G2+0SA,“アシアロ(asialo)”)、モノシアリル化されたグリカン(G2+1SA)およびビ−シアリル化されたグリカン(G2+2SA)を含む抗体の相対含量を種々の時点について示す。 図7 △89 hST6Gal−IのCMP−依存性シアリダーゼ活性:精製したIgG1 MAB G2+2SAを△89 hST6Gal−Iと共にCMPの非存在下でインキュベーション。末端ガラクトース残基をもつグリカン(G2+0SA)、モノシアリル化されたグリカン(G2+1SA)およびジシアリル化されたグリカン(G2+2SA)を含む抗体の相対含量を種々の時点について示す。 図8 △89 hST6Gal−IのCMP−依存性シアリダーゼ活性:精製したIgG1 MAB G2+2SAを△89 hST6Gal−Iと共にCMPの存在下でインキュベーション。末端ガラクトース残基をもつグリカン(G2+0SA)、モノシアリル化されたグリカン(G2+1SA)およびジシアリル化されたグリカン(G2+2SA)を含む抗体の相対含量を種々の時点について示す。 図9 △89 hST6Gal−IのCMP−依存性シアリダーゼ活性:精製したIgG1 MAB G2+2SAを△108 hST6Gal−Iと共にCMPの存在下でインキュベーション。末端ガラクトース残基をもつグリカン(G2+0SA)、モノシアリル化されたグリカン(G2+1SA)およびジシアリル化されたグリカン(G2+2SA)を含む抗体の相対含量を種々の時点について示す。 図10 △89 hST6Gal−IのCMP−依存性シアリダーゼ活性:精製したIgG1 MAB G2+2SAをデルタ57ST3−Gal−Iと共にCMPの存在下でインキュベーション。末端ガラクトース残基をもつグリカン(G2+0SA)、モノシアリル化されたグリカン(G2+1SA)およびジシアリル化されたグリカン(G2+2SA)を含む抗体の相対含量を種々の時点について示す。 図11 シアリル化反応混合物中における5’−ヌクレオチダーゼCD73の非存在下または存在下における△89 hST6Gal−IによるIgG4 MABのシアリル化。末端ガラクトース残基のみをもつグリカン(G2+0SA)、モノシアリル化されたグリカン(G2+1SA)およびジシアリル化されたグリカン(G2+2SA)を含む抗体の相対含量を示す。用いた5’−ヌクレオチダーゼの量は0〜0.5μgであった。陰性対照:0μgの5’−ヌクレオチダーゼCD73. 図12 シアリル化反応混合物中における5’−ヌクレオチダーゼCD73の非存在下または存在下における△89 hST6Gal−IによるIgG4 MABのシアリル化。末端ガラクトース残基のみをもつグリカン(G2+0SA)、モノシアリル化されたグリカン(G2+1SA)およびジシアリル化されたグリカン(G2+2SA)を含む抗体の相対含量を示す。0.1μgの5’−ヌクレオチダーゼCD73を含むシアリル化反応混合物。 図13 シアリル化反応混合物中における5’−ヌクレオチダーゼCD73の非存在下または存在下における△89 hST6Gal−IによるIgG4 MABのシアリル化。末端ガラクトース残基のみをもつグリカン(G2+0SA)、モノシアリル化されたグリカン(G2+1SA)およびジシアリル化されたグリカン(G2+2SA)を含む抗体の相対含量を示す。0.25μgの5’−ヌクレオチダーゼCD73を含むシアリル化反応混合物。 図14 シアリル化反応混合物中における5’−ヌクレオチダーゼCD73の非存在下または存在下における△89 hST6Gal−IによるIgG4 MABのシアリル化。末端ガラクトース残基のみをもつグリカン(G2+0SA)、モノシアリル化されたグリカン(G2+1SA)およびジシアリル化されたグリカン(G2+2SA)を含む抗体の相対含量を示す。0.5μgの5’−ヌクレオチダーゼCD73を含むシアリル化反応混合物。 図15 シアリル化反応混合物中におけるアルカリホスファターゼの非存在下または存在下における△89 hST6Gal−IによるIgG4 MABのシアリル化。末端ガラクトース残基のみをもつグリカン(G2+0SA)、モノシアリル化されたグリカン(G2+1SA)およびジシアリル化されたグリカン(G2+2SA)を含む抗体の相対含量を示す。用いた5’−ヌクレオチダーゼの量は0〜100μgであった。陰性対照:0μgのアルカリホスファターゼ. 図16 シアリル化反応混合物中におけるアルカリホスファターゼの非存在下または存在下における△89 hST6Gal−IによるIgG4 MABのシアリル化。末端ガラクトース残基のみをもつグリカン(G2+0SA)、モノシアリル化されたグリカン(G2+1SA)およびジシアリル化されたグリカン(G2+2SA)を含む抗体の相対含量を示す。1μgのアルカリホスファターゼを含むシアリル化反応混合物。 図17 シアリル化反応混合物中におけるアルカリホスファターゼの非存在下または存在下における△89 hST6Gal−IによるIgG4 MABのシアリル化。末端ガラクトース残基のみをもつグリカン(G2+0SA)、モノシアリル化されたグリカン(G2+1SA)およびジシアリル化されたグリカン(G2+2SA)を含む抗体の相対含量を示す。5μgのアルカリホスファターゼを含むシアリル化反応混合物。 図18 シアリル化反応混合物中におけるアルカリホスファターゼの非存在下または存在下における△89 hST6Gal−IによるIgG4 MABのシアリル化。末端ガラクトース残基のみをもつグリカン(G2+0SA)、モノシアリル化されたグリカン(G2+1SA)およびジシアリル化されたグリカン(G2+2SA)を含む抗体の相対含量を示す。10μgのアルカリホスファターゼを含むシアリル化反応混合物。 図19 シアリル化反応混合物中におけるアルカリホスファターゼの非存在下または存在下における△89 hST6Gal−IによるIgG4 MABのシアリル化。末端ガラクトース残基のみをもつグリカン(G2+0SA)、モノシアリル化されたグリカン(G2+1SA)およびジシアリル化されたグリカン(G2+2SA)を含む抗体の相対含量を示す。100μgのアルカリホスファターゼを含むシアリル化反応混合物。
用語“a”、“an”および“the”は、状況からそうではないことが明らかに示されない限り、一般に複数表記、すなわち“1以上の(one or more)”を含む。本明細書中で用いる“複数(plurality)”は1より多いことを意味すると解釈される。たとえば、複数は少なくとも2、3、4、5またはより多いことを表わす。具体的に述べない限り、または状況から明らかでない限り、本明細書中で用いる用語“または(or)”は包括的であると解釈される。
具体的に述べない限り、または状況から明らかでない限り、本明細書中で用いる用語“約(about)”は当技術分野で普通の許容範囲内、たとえば平均の2標準偏差以内であると解釈される。約は、記載した数値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内であると解釈できる。状況からそうではないことが明らかでない限り、本明細書中に提示するすべての数値は用語“約”により修飾できる。
用語“アミノ酸”は、一般にペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に取り込むことができるいずれかのモノマー単位を表わす。本明細書中で用いる用語“アミノ酸”には下記の20の天然または遺伝子コードされるアルファ−アミノ酸が含まれる:アラニン(AlaまたはA)、アルギニン(ArgまたはR)、アスパラギン(AsnまたはN)、アスパラギン酸(AspまたはD)、システイン(CysまたはC)、グルタミン(GlnまたはQ)、グルタミン酸(GluまたはE)、グリシン(GlyまたはG)、ヒスチジン(HisまたはH)、イソロイシン(IleまたはI)、ロイシン(LeuまたはL)、リジン(LysまたはK)、メチオニン(MetまたはM)、フェラルアラニン(PheまたはF)、プロリン(ProまたはP)、セリン(SerまたはS)、トレオニン(ThrまたはT)、トリプトファン(TrpまたはW)、チロシン(TyrまたはY)、およびバリン(ValまたはV)。“X”残基が規定されていない場合、これらは“いずれかのアミノ酸”と規定すべきである。これら20種類の天然アミノ酸の構造は、たとえばStryer et al., Biochemistry, 5th ed., Freeman and Company (2002)に示されている。他のアミノ酸、たとえばセレノシステインおよびピロリジンも遺伝子コードすることができる(Stadtman (1996) “Selenocysteine,” Annu Rev Biochem. 65:83-100 and Ibba et al. (2002) “Genetic code: introducing pyrrolysine,” Curr Biol. 12(13):R464-R466)。用語“アミノ酸”には非天然アミノ酸、修飾アミノ酸(たとえば、修飾された側鎖および/または主鎖をもつもの)、およびアミノ酸アナログも含まれる。たとえば下記を参照:Zhang et al. (2004) “Selective incorporation of 5-hydroxytryptophan into proteins in mammalian cells,” Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101(24):8882-8887, Anderson et al. (2004) “An expanded genetic code with a functional quadruplet codon” Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101(20):7566-7571, Ikeda et al. (2003) “Synthesis of a novel histidine analogue and its efficient incorporation into a protein in vivo,” Protein Eng. Des. Sel. 16(9):699-706, Chin et al. (2003) “An Expanded Eukaryotic Genetic Code,” Science 301(5635):964-967, James et al. (2001) “Kinetic characterization of ribonuclease S mutants containing photoisomerizable phenylazophenylalanine residues,” Protein Eng. Des. Sel. 14(12):983-991, Kohrer et al. (2001) “Import of amber and ochre suppressor tRNAs into mammalian cells: A general approach to site-specific insertion of amino acid analogues into proteins,” Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 98(25):14310-14315, Bacher et al. (2001) “Selection and Characterization of Escherichia coli Variants Capable of Growth on an Otherwise Toxic Tryptophan Analogue,” J. Bacteriol. 183(18):5414-5425, Hamano-Takaku et al. (2000) “A Mutant Escherichia coli Tyrosyl-tRNA Synthetase Utilizes the Unnatural Amino Acid Azatyrosine More Efficiently than Tyrosine,” J. Biol. Chem. 275(51):40324-40328, およびBudisa et al. (2001) “Proteins with {beta}-(thienopyrrolyl)alanines as alternative chromophores and pharmaceutically active amino acid,” Protein Sci. 10(7):1281-1292。さらに説明するために、アミノ酸は一般に、置換もしくは非置換アミノ基、置換もしくは非置換カルボキシ基、および1以上の側鎖もしくは側基、またはこれらのいずれかの基のアナログを含む有機酸である。代表的な側鎖には、たとえば、チオール、セレノ、スルホニル、アルキル、アリール、アシル、ケト、アジド、ヒドロキシル、ヒドラジン、シアノ、ハロ、ヒドラジド、アルケニル、アルキニル、エーテル、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環式、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミン、またはこれらの基のいずれかの組合わせが含まれる。他の代表的なアミノ酸には下記のものが含まれるが、それらに限定されない:光活性化可能なクロスリンカーを含むアミノ酸、金属結合性アミノ酸、スピンラベルしたアミノ酸、蛍光アミノ酸、金属含有アミノ酸、新規官能基を含むアミノ酸、他の分子と共有結合または非共有結合により相互作用するアミノ酸、フォトケージド(photocaged)および/または光異性化可能なアミノ酸、放射性アミノ酸、ビオチンまたは非ビオチンアナログを含むアミノ酸、グリコシル化されたアミノ酸、他の炭水化物修飾されたアミノ酸、ポリエチレングリコールまたはポリエーテルを含むアミノ酸、重原子置換アミノ酸、化学開裂および/または光開裂可能なアミノ酸、炭素結合した糖を含むアミノ酸、レドックス活性アミノ酸、アミノチオ酸含有アミノ酸、ならびに1以上の有毒部分を含むアミノ酸。
用語“タンパク質”は、リボソーム翻訳プロセスの生成物としてのポリペプチド鎖(アミノ酸配列)を表わし、その際、ポリペプチド鎖は翻訳後フォールディングプロセスを受けて三次元タンパク質構造になっている。用語“タンパク質”には、1以上の翻訳後修飾、たとえば(ただし、それらに限定されない)グリコシル化、リン酸化、アセチル化およびユビキチン化を含むポリペプチドも含まれる。
本明細書に開示するいずれかのタンパク質、特に本明細書に開示する組換え製造されたタンパク質は、特定の態様において、組換えタンパク質に遺伝学的に架橋したペプチド配列である“タンパク質タグ”を含むことができる。タンパク質タグは、タンパク質分解によるタグの除去を容易にするための特異的プロテアーゼ開裂部位をもつリンカー配列を含むことができる。特定の態様として、“アフィニティータグ”は、アフィニティー法を用いてターゲットをそれの粗製の生物供給源から精製できるようにターゲットタンパク質に付加される。たとえば、供給源は、ターゲットタンパク質を発現する形質転換した宿主生物、または形質転換した宿主生物によりターゲットタンパク質がその中へ分泌された培養上清であってもよい。アフィニティータグの具体的態様には、キチン結合タンパク質(chitin binding protein)(CBP)、マルトース結合タンパク質(maltose binding protein)(MBP)、およびグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(glutathione-S-transferase)(GST)が含まれる。ボリ(His)タグは、特定の金属キレーティングマトリックスへの結合を容易にする広く用いられているタンパク質タグである。
用語“キメラタンパク質”、“融合タンパク質”または“融合ポリペプチド”はそれぞれ同様に、そのアミノ酸配列が少なくとも2つの別個のタンパク質に由来するアミノ酸配列のサブ配列の融合生成物であるタンパク質を表わす。融合タンパク質は一般にアミノ酸配列の直接操作により製造されるのではなく、むしろキメラアミノ酸配列をコードする“キメラ”遺伝子から発現される。
用語“組換え体”は、組換え法によって意図的に修飾されたアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を表わす。本明細書中で用語“組換え核酸”は、本来、インビトロで、一般にエンドヌクレアーゼによる核酸操作により形成された核酸であって、普通は自然界にみられない形態のものを意味する。よって、線状の単離された変異体DNAポリメラーゼ核酸、または普通は連結していないDNA分子をライゲートさせることによりインビトロで形成された発現ベクターは、両方とも本発明の目的に関して組換え体とみなされる。組換え核酸が作製されて宿主細胞に再導入されると、それは非組換え的に、すなわちインビトロ操作ではなくインビボ細胞機構を使って複製するであろうということは理解される;しかし、そのような核酸は、組換え作製されるとその後は非組換え的に複製するけれども、本発明の目的に関してなお組換え体とみなされる。“組換えタンパク質”または“組換え製造タンパク質”は、組換え法を用いて、すなわち前記の組換え核酸の発現により製造されたタンパク質である。
用語“宿主細胞”は、単細胞性の原核生物および真核生物(たとえば、哺乳動物細胞、昆虫細胞、細菌、酵母、および放線菌)と、細胞培養において増殖させたより高等な植物または動物に由来する単一細胞の両方を表わす。
用語“グリコシル化”は、グリコシル残基をアクセプター基に共有結合させる化学反応を意味する。具体的アクセプター基の一つは、ヒドロキシル基、たとえば他の糖のヒドロキシル基である。“シアリル化(sialylation)”は、アクセプター基がシアル酸(=N−アセチルノイラミニン酸)残基と反応する特定の形態のグリコシル化である。そのような反応は一般に、シアリルトランスフェラーゼ酵素により、シチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミニン酸をドナー化合物または補基質として用いて触媒される。
“シアリル化”は、それを可能にする条件下でのグリコシルトランスフェラーゼ酵素活性(特定の場合にはシアリルトランスフェラーゼ酵素活性)の結果の特定の態様である。
一般に、グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性が起きうる(=“グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする”条件下の)水性組成物は、具体的にはpH6〜pH8のpH範囲、より具体的にはpH6〜pH7の範囲に緩衝化できる、よりいっそう具体的には溶液を約pH6.5に緩衝化できる緩衝塩、たとえばトリス、MES、リン酸塩、酢酸塩、または他の緩衝塩により緩衝化される必要があることを当業者は認識している。緩衝液はさらに中性塩、たとえばNaClを含有することができるが、これに限定されない。さらに、特定の態様において、当業者は二価カチオン、たとえばMg2+またはMn2+を含む塩、たとえばMgClおよびMnCl(これらに限定されない)を水性緩衝液に添加することを考慮できる。さらに他の特定の態様において、グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする水性組成物は、抗酸化剤および/または界面活性剤を含むことができる。当技術分野で既知の、グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする条件には、周囲(室)温度、より一般的には0℃〜40℃、特に10℃〜30℃の範囲、特に約20℃の温度が含まれる。前記条件はそのような酵素活性を可能にする一般的条件を示すが、グリコシルトランスフェラーゼ活性はさらに、補基質として、活性化された糖ドナー(たとえば、具体的にはCMP−Neu5Ac)の存在をさらに必要とする。しかし、用語“グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする”は必ずしも補基質の存在を含まないと解釈される。よって、本明細書において用語“グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする”には、本開示の対象である哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼの加水分解(シアリダーゼ)活性、特に5’−シチジン−一リン酸(CMP)の存在下での加水分解活性を可能にする条件も含まれる。
用語“グリカン”は、多糖またはオリゴ糖、すなわち酸加水分解すると複数の単糖が得られるマルチマー化合物を表わす。糖タンパク質は1以上のグリカン部分を含み、それらはポリペプチド鎖の側基に一般にアスパラギンもしくはアルギニン(“N−結合型グリコシル化”)を介して、またはセリンもしくはトレオニンを介して(“O−結合型グリコシル化”)共有結合している。
複雑なグリカン構造体の酵素合成のためのグリコシルトランスフェラーゼの使用は、複雑な生物活性糖タンパク質を得るための魅力的な方法である。たとえば、Barb et al. Biochemistry 48 (2009) 9705-9707は、単離されたヒトST6Gal−Iを用いて、効力の高いシアリル化された形態の免疫グロブリンGのFcフラグメントを製造した。しかし、糖タンパク質の療法適用における関心の高まりは、シアリルトランスフェラーゼを含めたグリコシルトランスフェラーゼの需要の増大をもたらす。糖タンパク質のシアリル化を増大または改変するための種々の方策が、Bork K. et al. J. Pharm. Sci. 98 (2009) 3499-3508により記載された。魅力的な方策は、組換え製造されたタンパク質(たとえば、免疫グロブリンおよび成長因子であるが、これらに限定されない)、特に療法用タンパク質の、インビトロシアリル化である。この目的で、幾つかの研究者グループは、形質転換した生物におけるシアリルトランスフェラーゼの発現、および組換え製造されたシアリルトランスフェラーゼの精製を記載している。原核細胞由来のグリコシルトランスフェラーゼは通常は複雑な糖タンパク質(たとえば、抗体)に対しては作用しないので、哺乳動物由来のシアリルトランスフェラーゼが優先的に研究された。
本明細書の開示内容およびすべての側面ならびに本発明の側面および態様の対象となる具体的な糖タンパク質は、限定ではなく、細胞表面−糖タンパク質および可溶性形態で血清中に存在する糖タンパク質(“血清糖タンパク質”)、特に哺乳動物由来のものである糖タンパク質を含む。“細胞表面−糖タンパク質”は、その一部が膜の表面にあって表面−糖タンパク質のポリペプチド鎖の膜アンカー部分により膜に結合している糖タンパク質であると解釈され、その膜は生物細胞の一部である。細胞表面−糖タンパク質という用語には、単離された形態の細胞表面−糖タンパク質、およびその可溶性フラグメントであって、たとえばタンパク質分解開裂により、またはそのような可溶性フラグメントの組換え製造により、膜アンカー部分から分離されたものも含まれる。“血清糖タンパク質”は、血清中に存在する糖タンパク質、すなわち全血の非細胞部分中に、たとえば細胞性血液成分の沈降後の上清中に存在する血液タンパク質であると解釈される。限定ではなく、特に考慮される具体的な血清糖タンパク質は免疫グロブリンである。本明細書中で述べる特定の免疫グロブリンは、IgGグループ(ガンマ重鎖を特徴とする)、具体的には4つのIgGサブグループのいずれかに属する。本発明の開示内容、側面および態様について、用語“血清糖タンパク質”にはモノクローナル抗体も含まれる;モノクローナル抗体は当技術分野で技術的に周知であり、たとえばハイブリドーマ細胞により、または形質転換した宿主細胞を用いて組換えにより産生できる。さらなる血清特異的な糖タンパク質は、キャリヤータンパク質、たとえば血清アルブミン、フェツイン(fetuin)、またはフェツインがメンバーであるヒスチジンリッチ糖タンパク質のスーパーファミリーの他の糖タンパク質メンバーである。さらに、限定ではなく、本発明のすべての開示内容、側面および態様に関して特に考慮される具体的な血清糖タンパク質は、グリコシル化されたタンパク質シグナル伝達分子である。このグループの具体的な分子はエリスロポエチン(EPO)である。
糖タンパク質のインビトロ工学操作のために、グリコシルトランスフェラーゼを効果的なツールとして使用できる(Weijers 2008)。哺乳動物由来のグリコシルトランスフェラーゼは基質としての糖タンパク質と適合し、これに対し細菌性グリコシルトランスフェラーゼは通常はより簡単なオリゴ糖のような基質を修飾する。そのため、糖タンパク質のグリカン部分における合成による変更は、有利には哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼを好ましいツールとして用いて行なわれる。しかし、糖工学操作にグリコシルトランスフェラーゼを大規模適用するためには、適切な酵素を多量に(すなわち、工業的量で)入手できることが要求される。本発明の開示は、特に下記を備えたタンパク質を提供する:(i)hST6Gal−Iシアリルトランスフェラーゼ活性、および(ii)1以上のアクセス可能なガラクトシル基質部分をもつターゲット糖タンパク質の定量的に制御されたインビトロシアリル化に使用できるシアリダーゼ活性。
重要なことに、ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIにおいてSEQ ID NO:1中の位置90から位置108までのアミノ酸モチーフは、この酵素がシアリダーゼ活性を示すことができるために必要である。同時に、このアミノ酸モチーフは、この酵素が5’−CMPと相互作用するために必要である。きわめて顕著に、位置1から位置108までの連続N末端範囲のアミノ酸を欠如したトランケーション欠失変異体である可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIバリアントは、CMPの存在下ですらシアリダーゼ活性を示さない。よって、ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIにおいてSEQ ID NO:1中の位置90から位置108までのアミノ酸モチーフはこれらの特性が存在するために必須であると結論された。
シアリダーゼ活性で処理するのに適したターゲットには、一方ではアシアロ糖タンパク質、すなわちシアル酸残基がシアリダーゼの作用により除去されている糖タンパク質が含まれる。他方で、ビ−シアリル化された糖タンパク質をシアリダーゼ活性の基質として使用できる。きわめて有利には、アシアロ−、モノ−シアリル化、およびビ−シアリル化免疫グロブリン、特にIgGクラスの免疫グロブリンは、特異的基質である。
野生型hST6Gal−Iをメトロトローフ酵母ピキア・パストリスにおいて発現させ、発現したポリペプチドを宿主生物の分泌経路へターゲティングさせた際に、組換え産生されたhST6Gal−Iの種々のトランケート型バリアントがみられた。一般に、hST6Gal−I由来のタンパク質をクロマトグラフィー精製し、特に質量分析により、またN末端からアミノ酸配列を決定することにより(エドマン分解(Edman degradation))分析した。これらの手段により、hST6Gal−Iのトランケーション、特にN末端トランケーションが詳細に解明された。
幾つかの顕著なトランケーションバリアントが、形質転換したピキア・パストリスの上清中に同定された。これらのバリアントは、おそらく酵母細胞からの分泌に際して部位特異的タンパク質分解開裂から生じたか、あるいは培養したピキア属株の上清中に存在する1以上の細胞外プロテアーゼによるエンドプロテオリシス開裂(endoproteolytic cleavage)から生じた可能性がある。
同定した各トランケーションバリアントに、SEQ ID NO:1による野生型hST6Gal−IポリペプチドのN末端からカウントして各トランケーション欠失の最後のアミノ酸位置の番号を指示する“デルタ”(=“△”)表示を付与した。hST6Gal−Iの特定のN末端トランケーションバリアント△89および△108を組換え発現させ、より詳細に調べた。
原核細胞、たとえば大腸菌およびバチルス属種(Bacillus sp.)、酵母、たとえばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびピキア・パストリス、ならびに哺乳動物細胞、たとえばCHO細胞およびHEK細胞を含めた種々の宿主生物においてhST6Gal−I野生型タンパク質ならびに△89および△108トランケーションバリアントを発現させるための発現ベクターを構築した。hST6Gal−Iの△89および△108トランケーションバリアントのための発現構築体を含むベクターを分子的に組み立て、それによりヒトST6Gal−Iの△89バリアントを幾つかの形質転換した宿主生物において組換え製造する手段を得た。組換え発現した酵素の精製を容易にするために、これらの構築体がコードするコードされたトランケーションポリペプチドは、特定の態様において場合によりN末端His−タグを含んでいた。
本明細書に開示する他のすべての側面のうちある側面および特定の態様は、糖タンパク質中のグリカンのN−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分のα2,6グリコシド結合の加水分解を触媒することができるバリアント哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼである。特に、このバリアント哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼは、糖タンパク質グリカンのN−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分のα2,6グリコシド結合の形成を触媒し、それにより遊離N−アセチルノイラミニン酸を生成することができる。本明細書に開示するすべての側面のうち特定の態様において、このバリアント哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼは、ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIを開示するSEQ ID NO:1の位置90から位置108までのアミノ酸モチーフを含む可溶性酵素である。本明細書に開示する教示には、SEQ ID NO:1の位置90から位置108までのアミノ酸モチーフを含む相同シアリルトランスフェラーゼが含まれる。
本明細書に開示するすべての側面のうち特定の態様において、α2,6グリコシド結合の加水分解を触媒することができるバリアントである哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼは、SEQ ID NO:1によるヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIからアミノ酸欠失により誘導された哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼであり、その配列がN末端からの欠失によりトランケートされる。本明細書に開示するすべての側面のうちさらなる特定の態様において、N末端からのトランケーション欠失は、SEQ ID NO:1の位置1−位置89の連続配列である。
本明細書に開示する他のすべての側面のうちもうひとつの側面および特定の態様は、本明細書に開示するいずれかの態様によるバリアント哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼのポリペプチドを含む融合ポリペプチドである。融合タンパク質または融合ポリペプチドは、2以上のポリペプチドのアミノ酸配列を含むキメラポリペプチドである。それらの2以上のポリペプチドは相補的機能をもつことができ、それらのポリペプチドのうち1つは補足的機能特性を提供してもよく、あるいはそれらのポリペプチドのうち1つは融合ポリペプチド中の他のものと無関係な機能をもっていてもよい。オルガネラターゲティング配列または保持配列を含む1以上のポリペプチドを目的ポリペプチドと融合させて、その目的ポリペプチドを特定の細胞オルガネラにターゲティングさせ、あるいは目的ポリペプチドを細胞内に保持させることができる。融合ポリペプチドの発現、精製および/または検出を補助するキャリヤー配列を含む1以上のポリペプチドを目的ポリペプチドと融合させることができる(たとえば、FLAG、mycタグ、6×Hisタグ、GST融合体など)。特定の融合パートナーは、その融合ポリペプチドを発現させる宿主生物の分泌経路へその融合ポリペプチドのバリアント哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼ部分を指向させることができるN末端リーダーペプチドを含む。それにより、細胞外間隙および周囲培地への分泌が促進される。なお、本明細書に開示する他のすべての側面のうちもうひとつの側面および特定の態様は、本明細書に開示するいずれかの態様によるバリアント哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼをコードする、または本明細書に開示するいずれかの態様によるバリアント哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼを一部として含む融合ポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列である。重要なことに、ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:1の位置90から位置108までの配列、またはヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIに対して相同なシアリルトランスフェラーゼの場合にはその相同均等物を含む。
なお、本明細書に開示する他のすべての側面のうちもうひとつの側面および特定の態様は、発現ベクターであり、それはターゲット遺伝子、およびその発現ベクターで形質転換した宿主生物におけるターゲット遺伝子の発現を促進する配列を含み、その際、ターゲット遺伝子は本明細書に開示するヌクレオチド配列を含む。
なお、本明細書に開示する他のすべての側面のうちもうひとつの側面および特定の態様は、形質転換した宿主生物であり、その際、宿主生物は本明細書に開示する発現ベクターで形質転換されている。特に有利には、ヒト胎児腎293(Human Embryonic Kidney 293 (HEK))細胞を用いて本明細書に開示する方法を実施することができる。これらの細胞の格別な利点は、それらがトランスフェクション、それに続く培養およびターゲット遺伝子の一過性発現にきわめて好適なターゲットであるということである。よって、ターゲットタンパク質を組換え発現により産生させるためにHEK細胞を効果的に使用できる。著しく有利には、翻訳生成物を分泌経路へ指向させるように発現構築体を設計して、本明細書に開示するバリアント哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼまたは融合ポリペプチドを分泌させる。それでもなお、ジャーカット(Jurkat)、NIH3T3、HeLa、COSおよびチャイニーズハムスター卵巣(Chinese Hamster Ovary)(CHO)細胞は周知の代替細胞であり、形質転換および本明細書に開示するすべての側面の特定の態様のための代替宿主生物として含まれる。
なお、本明細書に開示する他のすべての側面のうちもうひとつの側面および特定の態様は、バリアント哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼを組換え製造するための方法であり、その方法は、発現ベクターで形質転換した宿主生物において本明細書に開示するバリアント哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を発現させる工程を含み、その際、ポリペプチドが形成され、それによりバリアント哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼが製造される。
従来の知識によれば、グリコシルトランスフェラーゼのN末端トランケート型バリアントは、それらが膜貫通ドメインを欠如するため、インビトロで有利に使用される。よって、そのようなバリアントは溶液中でグリコシルトランスフェラーゼ反応を触媒および実施するために有用である。意外にも特にN末端トランケート型バリアント△89 hST6Gal−Iがインビトロで、たとえばグリコシル化された抗体と共に5’−CMPの存在下でインキュベートした際に、種々の活性を示すことを見出して本明細書に開示する。よって、本開示の特定の態様ならびに本発明のすべての側面および態様は、ビ−シアリル化された糖タンパク質、すなわち2つの別個の末端N−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を糖タンパク質の1以上のグリカン部分に含む糖タンパク質の、N−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分のα2,6グリコシド結合の加水分解を触媒することができる、バリアント哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼである。特定の態様において、1つのα2,6グリコシド結合のみが加水分解される。さらなる特定の態様において、ビ−シアリル化された糖タンパク質はビ−シアリル化されたIgG免疫グロブリンである。
代表例として、IgG−FcグリカンG2はアンテナ付き(antennate)分枝の末端に2つのガラクトース部分をもち、それらをシアリル化することができる。適切な反応条件下で、N末端トランケート型バリアント△89 hST6Gal−Iは、免疫グロブリンFc部分にビ−シアリル化されたG2グリカン(G2+2SA)をもつIgGの合成を触媒する。しかし、5’−CMPが蓄積すると、この酵素バリアントは、ビ−シアリル化された(G2+2SA)抗体から加水分解によりシアル酸部分を除去するシアリダーゼとして作用し、モノ−シアリル化された(G2+1SA)抗体を生成する。この特性は予想外に見出され、固有のシアリダーゼ(ノイラミニダーゼ)活性であると思われる。
ヒトST6Gal−Iについての基礎的刊行物には、この酵素はいかなるシアリダーゼ活性も含まないと述べられている;参照:Sticher et al. Glycoconjugate Journal 8 (1991) 45-54。本発明の意外な知見からみて、同じ酵素を用い、シアリル化反応混合物中のCMPを制御することによりその酵素の反応速度を制御して、モノ−、ビ−またはより高度にシアリル化されたグリカンをもつ糖タンパク質を優先的に合成することが可能になる。さらなる利点は、両方の活性、すなわちシアリル化活性とシアリダーゼ活性が同じ酵素により同じ反応器において得られることである。
しかし、本開示に述べる全般的知見は、糖タンパク質中のグリカンのN−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分のα2,6グリコシド結合の加水分解を触媒することができるバリアント哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼ、具体的には本開示によるグリコシルトランスフェラーゼが存在するということである。既知のシアリルトランスフェラーゼ(シアリル化)活性に加えて、意外な知見は、少なくともSEQ ID NO:2のアミノ酸配列をもつN末端トランケート型ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIについて具体的に示すように、この酵素により触媒される一般的なシアリルトランスフェラーゼ活性だけでなくシアリダーゼの酵素活性があるということであった。興味深いことに、代表例においてこれら2つの活性は同時にはみられなかった;それによって予想外の知見を部分的に説明できる。よって、CMPの非存在下で初期にはシアリルトランスフェラーゼ活性が優性であり、シアリダーゼ活性はインキュベーション中の後期に、十分な量のCMPが蓄積した時点で初めて明らかになる。それでもなお、同じ酵素の2つの別個の活性を明らかに認識することによって、たとえばインキュベーション時間の変更によりターゲット分子のシアリル化度を制御することができる。
しかし、きわめて洗練された方法で、シアリルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする条件下で5’−シチジン−一リン酸中のホスホエステル結合を加水分解できる酵素をシアリル化反応混合物に添加することによりシアリル化を最大限にすることができる。こうして副産物CMPは除かれ、シアリルトランスフェラーゼによるシアリル化触媒作用が拮抗されることはない。
なお、本明細書に開示する他のすべての側面のうちもうひとつの側面および特定の態様は、本明細書に開示するバリアント哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼ、具体的にはSEQ ID NO:2のアミノ酸配列をもつN末端トランケート型ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIのグリコシルトランスフェラーゼ活性を維持するための、および/またはシアリダーゼ活性を阻害するための、シアリルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする条件下で5’−シチジン−一リン酸中のホスホエステル結合を加水分解することができる酵素の使用である。
そのような制御されたシアリル化は、目的とするシアリル化度をもつモノ−、ビ−、およびより高度にシアリル化された糖タンパク質をインビトロで合成するための新規手段として提供される。よって、IgG分子について目的とする技術的効果を示すことにより例示するが、本明細書の開示内容に従った使用により他の糖タンパク質を同様な方法で処理することもできる;ただし、グリコシルトランスフェラーゼ活性に関して、糖タンパク質は2以上の末端アンテナ付きβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を含む。同じ論法が糖脂質にも当てはまる。
具体例において、組換えヒト化IgG1およびIgG4モノクローナル抗体(mab)、すなわちG2+0SA(=2つのアクセプター部位が存在し、いずれのアクセプター部位においてもシアリル化されていない)を特徴とするもの、ならびにEPO(=エリスロポエチン)をシアリル化実験(30μgの酵素/300μgのターゲットタンパク質)におけるターゲットとして用いた。△89 hST6Gal−Iを標準的な反応条件下で用い、G2+0SA、G2+1SA(=モノ−シアリル化,2つのうち1つのアクセプター部位がシアリル化されたもの)およびG2+2SA(=ビ−シアリル化,両方のアクセプター部位がシアリル化されたもの)状態を質量分析により分析した。
高い発現速度および効率的な精製法であるため、代表的△89 hST6Gal−Iも機能均等な酵素も多量に高純度で入手できる。バリアント△89 hST6Gal−I酵素は高分子量基質について活性であり、モノクローナル抗体はそれらのうちの一例にすぎない。インキュベーション時間に応じて、△89 hST6Gal−IをCMP加水分解酵素と組み合わせたものは、2アンテナ型(bi-antennary)グリカンをもつモノクローナル抗体を基質として用いるシアリル化実験において良好な性能を示す。本開示の態様を用いて、比較的短いインキュベーション期間、たとえば8時間後に、好ましいビ−シアリル化されたグリカンが著しく有利に得られる。4アンテナ型(tetra-antennary)グリカンも基質として受け入れられる(データを示していない)。これらの結果は、療法用抗体のインビトロ糖工学操作のための技術的利点を立証する。
下記の項目は本明細書に提示する教示を実施するための本開示の特定の側面および特定の態様をさらに提示する。
1. 5’−シチジン−一リン酸の存在下で、N−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分、すなわちシアリル化された糖タンパク質または糖脂質中のグリカンの末端構造である部分におけるα2,6グリコシド結合をインビトロ加水分解するための、SEQ ID NO:1の位置90から位置108までのアミノ酸モチーフを含む可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIの使用。
2. 可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIがSEQ ID NO:1の位置90から位置406までのアミノ酸を含む、項目1に記載の使用。
3. 可溶性β−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIのアミノ酸配列がSEQ ID NO:2のアミノ酸配列である、項目1および2に記載の使用。
4. 糖タンパク質が、細胞表面−糖タンパク質および血清−糖タンパク質からなる群から選択される、項目1〜3のいずれか1項に記載の使用。
5. 血清−糖タンパク質が、グリコシル化されたタンパク質シグナル伝達分子、グリコシル化された免疫グロブリン、およびグリコシル化されたウイルス由来のタンパク質から選択される、項目4に記載の使用。
6. 糖タンパク質が組換え製造される、項目1〜5のいずれか1項に記載の使用。
7. 糖タンパク質が哺乳動物由来の形質転換された宿主細胞において組換え製造される、項目6に記載の使用。
8. 糖タンパク質がヒト由来の免疫グロブリンまたはヒト化免疫グロブリンであり、その免疫グロブリンがIgG1、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される、項目1〜7のいずれか1項に記載の使用。
9. 糖タンパク質が、EPOおよびアシアロフェツインから選択される、項目1〜7のいずれか1項に記載の使用。
10.
(a)SEQ ID NO:1の位置90から位置108までのアミノ酸モチーフを含む可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI;
(b)シチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミニン酸またはその機能均等物;
(c)糖タンパク質および糖脂質から選択されるグリコシル化されたターゲット分子;ターゲット分子は1以上のアンテナを含み、少なくとも1つのアンテナは末端構造としてガラクトシル残基のC6位にヒドロキシル基をもつβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を有する;
(d)グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする水溶液
を含む水性組成物であって、
さらに、グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする条件下で5’−シチジン−一リン酸中のホスホエステル結合を加水分解できる酵素を含む水性組成物。
11. 可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIがSEQ ID NO:1の位置90から位置406までのアミノ酸を含む、項目10に記載の水性組成物。
12. 可溶性β−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIのアミノ酸配列がSEQ ID NO:2のアミノ酸配列である、項目10および11に記載の水性組成物。
13. グリコシル化されたターゲット分子が、細胞表面−糖タンパク質および血清−糖タンパク質からなる群から選択される、項目10〜12のいずれか1項に記載の水性組成物。
14. 血清−糖タンパク質が、グリコシル化されたタンパク質シグナル伝達分子、グリコシル化された免疫グロブリン、およびグリコシル化されたウイルス由来のタンパク質から選択される、項目10〜13のいずれか1項に記載の水性組成物。
15. 糖タンパク質が組換え製造される、項目10〜14のいずれか1項に記載の水性組成物。
16. 糖タンパク質が哺乳動物由来の形質転換された宿主細胞において組換え製造される、項目15に記載の水性組成物。
17. 糖タンパク質がヒト由来の免疫グロブリンまたはヒト化免疫グロブリンであり、その免疫グロブリンがIgG1、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される、項目10〜16のいずれか1項に記載の水性組成物。
18. 糖タンパク質が、EPOおよびアシアロフェツインから選択される、項目10〜16のいずれか1項に記載の水性組成物。
19. 水溶液が、水、pH6〜pH8のpH範囲に緩衝化できる緩衝塩、ならびに場合により中性塩、二価カチオンを含む塩、抗酸化剤、界面活性剤、およびその混合物からなる群から選択される化合物を含む、項目10〜18のいずれか1項に記載の水性組成物。
20. 組成物が0〜40℃の温度を有する、項目10〜19のいずれか1項に記載の水性組成物。
21. 5’−シチジン−一リン酸中のホスホエステル結合を加水分解できる酵素が、アルカリホスファターゼ、酸性ホスファターゼ、および5’ヌクレオチダーゼからなる群から選択される、項目10〜20のいずれか1項に記載の水性組成物。
22. アルカリホスファターゼが、細菌由来のアルカリホスファターゼ、エビ−アルカリホスファターゼ、子ウシ腸アルカリホスファターゼ、ヒト胎盤アルカリホスファターゼ、およびその混合物からなる群から選択される、項目21に記載の水性組成物。
23. 水性組成物がさらにZn2+イオンを含む、項目22に記載の水性組成物。
24. 5’ヌクレオチダーゼが、哺乳動物由来の、特にヒト由来の5’ヌクレオチダーゼCD73である、項目21に記載の水性組成物。
25. 5’−シチジン-一リン酸仲介による阻害を低減し、それによりSEQ ID NO:1の位置90から位置108までのアミノ酸モチーフを含む可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIのシアリル化活性を維持するための、項目10〜24のいずれか1項に記載の水性組成物の使用。
26. シアリル化活性が、補基質からガラクトシル残基のC6位置にヒドロキシル基をもつβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分へのシアル酸残基またはその機能均等物の伝達および共有結合を触媒し、その部分は糖タンパク質および糖脂質から選択されるグリコシル化されたターゲット分子のグリカンの末端構造である、項目25に記載の使用。
27. シアリル化されたターゲット分子をインビトロで製造する方法であって、
(a)項目10〜24のいずれか1項に記載の水性組成物を用意する;
(b)工程(a)の水性組成物をインキュベートし、それによりシチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミニン酸またはその機能均等物を補基質として反応させることにより、1以上の末端アンテナ形N−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン残基を形成し、それにより5’−シチジン−一リン酸が形成される;
(c)工程(b)で形成された5’−シチジン−一リン酸のホスホエステル結合を加水分解し、それにより5’−シチジン−一リン酸仲介による阻害を低減し、それにより可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIの活性を維持する;
工程を含み、
それにより、シアリル化されたターゲット分子をインビトロで製造する方法。
28. その方法を0℃〜40℃の温度で実施する、項目27に記載の方法。
29. 工程(b)と(c)を同じ容器内で実施する、項目27および28に記載の方法。
30. 工程(b)および(c)を、2時間〜96時間、2時間〜23時間、2時間〜6時間、および約2時間からなる群から選択される期間実施する、項目27〜29のいずれか1項に記載の方法。
31. 工程(b)および(c)を、6時間〜96時間、6時間〜23時間、および約6時間からなる群から選択される期間実施する、項目27〜29のいずれか1項に記載の方法。
32. 工程(b)および(c)を、23時間〜96時間、および約23時間からなる群から選択される期間実施する、項目27〜29のいずれか1項に記載の方法。
33. 工程(b)および(c)を約96時間実施する、項目5〜7のいずれか1項に記載の方法。
34. インビトロで5’−シチジン−一リン酸の存在下に、ドナー化合物シチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミニン酸から、またはその機能均等物から、アクセプター、すなわち糖タンパク質または糖脂質のグリカン部分中の末端β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミンであるアクセプターへ、5−N−アセチルノイラミニン酸残基を伝達するための、SEQ ID NO:1の位置90から位置108までのアミノ酸モチーフを欠如する可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIの使用。
35. 可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIがSEQ ID NO:1の位置109から位置406までのアミノ酸を含む、項目34に記載の使用。
36. 可溶性β−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIのアミノ酸配列がSEQ ID NO:5のアミノ酸配列である、項目34および35に記載の使用。
37. 糖タンパク質が、細胞表面−糖タンパク質および血清−糖タンパク質からなる群から選択される、項目34〜36のいずれか1項に記載の使用。
38. 血清−糖タンパク質が、グリコシル化されたタンパク質シグナル伝達分子、グリコシル化された免疫グロブリン、およびグリコシル化されたウイルス由来のタンパク質から選択される、項目37に記載の使用。
39. 糖タンパク質が組換え製造される、項目34〜38のいずれか1項に記載の使用。
40. 糖タンパク質が哺乳動物由来の形質転換された宿主細胞において組換え製造される、項目39に記載の使用。
41. 糖タンパク質がヒト由来の免疫グロブリンまたはヒト化免疫グロブリンであり、その免疫グロブリンがIgG1、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される、項目34〜40のいずれか1項に記載の使用。
42. 糖タンパク質が、EPOおよびアシアロフェツインから選択される、項目34〜40のいずれか1項に記載の使用。
43.
(a)SEQ ID NO:1の位置90から位置108までのアミノ酸モチーフを含む可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI;
(b)シチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミニン酸またはその機能均等物;
(c)糖タンパク質および糖脂質から選択されるグリコシル化されたターゲット分子;ターゲット分子は1以上のアンテナを含み、少なくとも1つのアンテナは末端構造としてガラクトシル残基のC6位にヒドロキシル基をもつβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を有する;
(d)グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする水溶液
を含む水性組成物であって、
さらに、グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする条件下で5’−シチジン−一リン酸中のホスホエステル結合を加水分解できる酵素を含む水性組成物。
44. 可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIがSEQ ID NO:1の位置109から位置406までのアミノ酸を含む、項目43に記載の水性組成物。
45. 可溶性β−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIのアミノ酸配列がSEQ ID NO:5のアミノ酸配列である、項目43および44に記載の水性組成物。
46. グリコシル化されたターゲット分子が、細胞表面−糖タンパク質および血清−糖タンパク質からなる群から選択される、項目43〜45のいずれか1項に記載の水性組成物。
47. 血清−糖タンパク質が、グリコシル化されたタンパク質シグナル伝達分子、グリコシル化された免疫グロブリン、およびグリコシル化されたウイルス由来のタンパク質から選択される、項目43〜46のいずれか1項に記載の水性組成物。
48. 糖タンパク質が組換え製造される、項目43〜47のいずれか1項に記載の水性組成物。
49. 糖タンパク質が哺乳動物由来の形質転換された宿主細胞において組換え製造される、項目48に記載の水性組成物。
50. 糖タンパク質がヒト由来の免疫グロブリンまたはヒト化免疫グロブリンであり、その免疫グロブリンがIgG1、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される、項目43〜49のいずれか1項に記載の水性組成物。
51. 糖タンパク質が、EPOおよびアシアロフェツインから選択される、項目43〜49のいずれか1項に記載の水性組成物。
52. 水溶液が、水、pH6〜pH8のpH範囲に緩衝化できる緩衝塩、ならびに場合により中性塩、二価カチオンを含む塩、抗酸化剤、界面活性剤、およびその混合物からなる群から選択される化合物を含む、項目43〜51のいずれか1項に記載の水性組成物。
53. 組成物が0〜40℃の温度を有する、項目43〜52のいずれか1項に記載の水性組成物。
54. シアリル化されたターゲット分子をインビトロで製造する方法であって、
(a)項目43〜53のいずれか1項に記載の水性組成物を用意する;
(b)工程(a)の水性組成物をインキュベートし、それによりシチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミニン酸またはその機能均等物を補基質として反応させることにより、1以上の末端アンテナ形N−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン残基を形成し、それにより5’−シチジン−一リン酸が形成される;
(c)工程(b)で形成された5’−シチジン−一リン酸を蓄積させる;
工程を含み、
それにより、シアリル化されたターゲット分子をインビトロで製造する方法。
55. その方法を0℃〜40℃の温度で実施する、項目54に記載の方法。
56. 工程(b)と(c)を同じ容器内で実施する、項目54および55に記載の方法。
57. 工程(b)および(c)を、2時間〜72時間からなる群から選択される期間実施する、項目54〜56のいずれか1項に記載の方法。
58. 項目10〜24のいずれか1項に記載の組成物におけるシアリルトランスフェラーゼ酵素活性を維持するための、5’−シチジン−一リン酸中のホスホエステル結合を加水分解できる酵素の使用。
59. 項目10〜24のいずれか1項に記載の組成物におけるシアリダーゼ酵素活性を阻害するための、5’−シチジン−一リン酸中のホスホエステル結合を加水分解できる酵素の使用。
60. シアリル化された免疫グロブリンの調製物であって、それぞれの免疫グロブリンはヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIに対する複数のアクセプター部位を有し、その際、シアリル化された免疫グロブリンの調製物中のアクセプター部位の25%未満がシアリル化されておらず、75%以上がシアリル化されている、項目27〜33のいずれか1項に記載の方法に従って得られる調製物。
61. シアリル化された免疫グロブリンの調製物中のアクセプター部位の20%未満がシアリル化されておらず、80%以上がシアリル化されている、項目60に記載の調製物。
62. シアリル化された免疫グロブリンの調製物中のアクセプター部位の10%未満がシアリル化されておらず、90%以上がシアリル化されている、項目60に記載の調製物。
以下の実施例は本開示の特定の態様およびその使用の具体例である。それらを説明の目的で述べるにすぎず、本開示を限定するものと解釈すべきではない。
実施例1
シアリルトランスフェラーゼ酵素活性についての試験
アシアロフェツイン(脱シアリル化されたフェツイン,Roche Applied Science)をアクセプターとして用い、CMP−9−フルオロ−NANA(CMP−9−フルオレセイニル−NeuAc)をドナー基質として用いた(Brossmer, R. & Gross H. J. (1994) Meth. Enzymol. 247, 177-193)。ドナー化合物からアシアロフェツインへのシアル酸の伝達を測定することにより、シアリルトランスフェラーゼの酵素活性を決定した。反応ミックス(35mMのMES,pH6.0,0.035%のTriton X−100,0.07%のBSA)は、2.5μgの酵素試料、5μLのアシアロフェツイン(20mg/mL)および2μLのCMP−9−フルオロ−NANA(1.0mg/mL)を、51μLの総体積中に含有していた。反応ミックスを37℃で30分間、インキュベートした。10μLの阻害物質CTP(10mM)の添加により反応を停止した。反応ミックスを、0.1Mトリス/HCl,pH8.5で平衡化したPD10脱塩用カラムに装填した。平衡化用緩衝液を用いてフェツインをカラムから溶離した。画分サイズは1mLであった。形成されたフェツインの濃度を蛍光分光光度計により決定した。励起波長は490nmであり、発光を520nmで測定した。酵素活性をRFU(relative fluorescence unit(相対蛍光単位))として表示した。10,000RFU/μgは0.0839nmol/μg×分の比活性に等しい。
実施例2
SDSゲル電気泳動
NuPAGEゲル(4〜12%,Invitrogen)を用いて分析用SDSゲル電気泳動を実施した。試料(36μL)を12μLのNuPAGE LDS試料緩衝液(Invitrogen)で希釈し、85℃で2分間、インキュベートした。一般に5μgのタンパク質を含有するアリコートをゲルに装填した。SimplyBlue SafeStain(Invitrogen)を用いてゲルを染色した。
実施例3
エドマン分解によるN末端シーケンシング
発現したヒトST6Gal−IのバリアントのN末端配列を、Life Technologiesから入手した試薬およびデバイスを用いるエドマン分解により分析した。試料の調製を、Life Technologies ProSorb試料調製カートリッジ(カタログ番号401950)およびLife Technologies ProBlott Mini PK/10メンブレン(カタログ番号01194)の指示マニュアルの記載に従って行なった。シーケンシングのためにProcise Protein Sequencing Platformを用いた。
実施例4
グリコシル化されたヒトST6Gal−I酵素の質量分析
HEK細胞において発現したヒトST6Gal−Iのバリアントの分子質量を分析した。グリコシル化された形態のヒトST6Gal−Iが産生され、産生された物質をMicromass Q−Tof UltimaおよびSynapt G2 HDMSデバイス(Waters UK)ならびにMassLynx V 4.1ソフトウェアを用いて分析した。
質量分析測定のために、試料をエレクトロスプレー媒体(20%アセトニトリル+1%ギ酸)中で緩衝化した。illustra(商標) MicroSpin(商標) G−25カラム(GE−Healthcare)による緩衝液交換を行なった。濃度1mg/mLのシアリルトランスフェラーゼバリアント20μgを予備平衡化したカラムに適用し、遠心により溶離した。得られた溶出液をエレクトロスプレーイオン化質量分析により分析した。
実施例5
脱グリコシル化されたヒトST6Gal−I酵素の質量分析
HEK細胞において発現したヒトST6Gal−Iのバリアントの分子質量を分析した。脱グリコシル化された形態のヒトST6Gal−Iを、Micromass Q−Tof UltimaおよびSynapt G2 HDMSデバイス(Waters UK)ならびにMassLynx V 4.1ソフトウェアを用いて分析した。
脱グリコシル化のために、シアリルトランスフェラーゼの試料を変性および還元した。100μgのシアリルトランスフェラーゼに45μLの変性用緩衝液(6M塩酸グアニジニウム)および13μLのTCEP(=トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン;0.1mM,変性用緩衝液中に希釈)を添加した。さらに、塩酸グアニジニウムの全濃度が約4Mになるように、適宜な体積の超純水を添加した。試料を37℃で1時間インキュベートした後、超純水で予備平衡化したBio−SpinR 6トリスカラム(Bio Rad)を用いて緩衝液を交換した。全試料をカラムに適用し、遠心により溶離した。得られた溶出液に0.1U/μLのPNGase−F溶液5.5μLを添加し、37℃で一夜インキュベートした。その後、試料を30%のACN(=アセトニトリル)および1%のFA(=ホルムアミド)に調整し、エレクトロスプレーイオン化質量分析により分析した。
実施例6
哺乳動物宿主細胞におけるヒトST6Gal−Iのトランケート型バリアント△89の一過性発現のためのpM1MT発現構築体のクローニング
ヒトST6Gal−Iのトランケート型バリアント△89を、一過性発現のためにエリスロポエチンシグナルペプチド配列(Epo)および2アミノ酸(“AP”)のペプチドスペーサーを用いてクローニングした。Epo−AP−△89 hST6Gal−I構築体のためにコドン最適化cDNAを合成した;参照:SEQ ID NO:3。hST6Gal−Iコード領域には、天然リーダー配列およびN末端タンパク質配列の代わりに、宿主細胞系の分泌機構による発現ポリペプチドの適正プロセシングを確実にするためのエリスロポエチンシグナル配列プラスAPリンカー配列がある。さらに、発現カセットは、予備消化したpM1MTベクターフラグメント(Roche Applied Science)の多重クローニング部位へのクローニングのためのSalIおよびBamHI制限部位を備えている。したがって、ST6Gal−Iコード配列の発現は、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)極初期(immediate-early)エンハンサー/プロモーター領域、続いて調節発現のための“イントロンA”、およびBGHポリアデニル化シグナルの制御下にある。
HEK細胞におけるEpo−AP−△89 hST6Gal−I構築体の発現、および細胞上清中への△89 hST6Gal−Iタンパク質の分泌は、実施例8の記載に従って実施された。
実施例7
哺乳動物宿主細胞におけるヒトST6Gal−Iのトランケート型バリアント△108の一過性発現のためのpM1MT発現構築体のクローニング
ヒトST6Gal−Iのトランケート型バリアント△108を、一過性発現のためにエリスロポエチンシグナルペプチド配列(Epo)および4アミノ酸(“APPR”)のペプチドスペーサーを用いてクローニングした。Epo−APPR−△108 hST6Gal−I構築体のためにコドン最適化cDNAを合成した;参照:SEQ ID NO:6。天然hST6Gal−I由来のmRNAリーダーおよびN末端タンパク質配列を、HEK宿主細胞系の分泌機構によるポリペプチドの適正プロセシングを確実にするためにエリスロポエチンシグナル配列および“APPR”リンカー配列で交換した。さらに、発現カセットは、予備消化したpM1MTベクターフラグメント(Roche Applied Science)の多重クローニング部位へのクローニングのためのSalIおよびBamHI制限部位をもつ。それにより、hST6Gal−Iコード配列の発現は、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)極初期エンハンサー/プロモーター領域の制御下に置かれた;発現ベクターはさらに調節発現のための“イントロンA”、およびBGHポリアデニル化シグナルを備えている。
HEK細胞におけるEpo−APPR−△108 hST6Gal−I構築体(SEQ ID NO:6)の発現、および細胞上清中への△108 hST6Gal−Iタンパク質の分泌は、実施例8の記載に従って実施された。
実施例8
HEK細胞の形質転換ならびに一過性発現および分泌
プラスミドDNAのトランスフェクションによる一過性遺伝子発現(transient gene expression)(TGE)は、哺乳動物細胞培養においてタンパク質を製造するための迅速な方策である。組換え体ヒトタンパク質の高レベル発現のために、懸濁適応させたヒト胎児腎(HEK)293細胞系をベースとするTGEプラットホームを用いた。細胞をシェーカーフラスコ内において37℃で無血清培地条件下に培養した。約2×10vc/mLの細胞に、293−Free(商標) (Merck)トランスフェクション試薬により複合体形成したpM1MT発現プラスミド(0.5〜1mg/L 細胞培養物)を製造業者のガイドラインに従ってトランスフェクションした。トランスフェクションの3時間後、発現を増強するために、バルプロ酸(valproic acid)、すなわちHDAC阻害物質を添加した(最終濃度4mM)(Backliwal et al. (2008), Nucleic Acids Research 36, e96)。毎日、培養物に6%(v/v)のダイズペプトン水解物ベースの供給物を補足した。培養上清をトランスフェクション後7日目に遠心により採集した。
実施例9
形質転換したHEK細胞の上清からのヒトST6Gal−IのN末端トランケーションバリアントの精製
HEK細胞を実施例8の記載に従って形質転換した。発現構築体を実施例6および7に従って作製した。
簡略化した精製プロトコルを用いて、HEK細胞発酵の上清から2種類のバリアントEpo−AP−△89 hST6Gal−IおよびEpo−APPR−△108 hST6Gal−Iを精製した。第1工程で、体積0.1Lの培養上清を濾過し(0.2μm)、溶液を緩衝液A(20mMリン酸カリウム,pH6.5)に対して透析した。透析物を、緩衝液Aで平衡化したS−Sepharose(商標) ff(Fast Flow)カラム(1.6cm×2cm)に装填した。100mLの緩衝液Aで洗浄した後、10mLの緩衝液Aおよび200mMのNaClを含む10mLの緩衝液Aの直線勾配で酵素を溶離し、続いて200mMのNaClを含む48mLの緩衝液Aを用いる洗浄工程を行なった。画分(4mL)を分析用SDSゲル電気泳動により分析した。
△89 hST6Gal−I酵素を含有する画分をプールし、緩衝液B(50mM MES,pH6.0)に対して透析した。透析したプールを、緩衝液Bで平衡化したHeparin Sepharose ffカラム(0.5cm×5cm)に装填し、200mMのNaClを含む緩衝液Bを用いて溶離した。酵素を含有する画分(1mL)をプールし、緩衝液Bに対して透析した。タンパク質濃度を280nm(E280nm[1mg/mL]=1.931)で測定した。質量分析は、組換え発現したEpo−AP−△89 hST6Gal−I酵素がN末端アミノ酸APを含まずに分泌されたことを示した。この所見は予想外であり、発現したタンパク質のEpo部分が除去された状態の、シグナルペプチダーゼによる異例な開裂を指摘した。組換え体ヒト△89 hST6Gal−I酵素について、3.75nmol/μg×分の比活性が決定された。図2は、HEK細胞から精製した組換え体△89 hST6Gal−IバリアントのSDS−PAGEの結果を示す。
△108 hST6Gal−I酵素を含有する画分をプールし、貯蔵緩衝液(20mMのリン酸カリウム,100mMの塩化ナトリウム,pH6.5)に対して透析した。280nmの波長でモル吸光係数1.871を用いてタンパク質濃度を決定した。Epo−APPR−△108−hST6Gal−I発現構築体で形質転換したHEK細胞から分泌された組換えタンパク質の質量分析により、N末端配列“APPR”が確認され、こうしてシグナルペプチダーゼによる予想したEPOシグナル配列の開裂が示された。HEK細胞からの組換え体ヒト△108 hST6Gal−Iバリアントについて、>600RFU/μgの比活性が決定された。図3は、HEK細胞から精製した組換え体△108 hST6Gal−IバリアントのSDS−PAGEの結果を示す。
実施例10
△89 hST6Gal−Iを用いるヒト化モノクローナル抗体IgG4 MABのシアリル化
高度にガラクトシル化されたヒト化モノクローナル抗体IgG4 MABをシアリル化実験に用いた。反応混合物は、IgG4 MAB(300μg;55μLの35mM酢酸ナトリウム/トリス緩衝液,pH7.0中)、ドナー基質CMP−NANA(150μg;50μLの水中)およびシアリルトランスフェラーゼ(30μgの△89 hST6Gal−I;20mMのリン酸カリウム、0.1MのNaCl,pH6.5 中)を含有していた。試料を37℃で一定時間インキュベートした。反応を停止するために、試料を−20℃で凍結した。質量分析のために、100μLの変性用緩衝液(6M塩化グアニジニウム)および30μLのTCEP(=トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン;0.1mMの変性用緩衝液中に希釈)を試料に添加し、試料を37℃で1時間インキュベートした。予備平衡化したillustra(商標) Nap5−カラム(GE−Healthcare)を用いて、試料をエレクトロスプレー媒体[20%のACN(=アセトニトリル),1%のFA(=ホルムアミド)]中に緩衝化した。試料をエレクトロスプレーイオン化質量分析により分析し、G2+0SA、G2+1SAおよびG2+2SA N−グリカンの含量を決定した。Micromass Q−Tof UltimaおよびSynapt G2 HDMSデバイス(Waters UK)を用い、使用したソフトウェアはMassLynx V 4.1であった。シアリル化の反応速度を決定するために、反応物を最大72時間インキュベートした。図4は、インキュベーション期間の異なる時点で得られた異なる状態にシアリル化されたターゲットタンパク質の相対量を示す。
G2+0SA、G2+1SAおよびG2+2SAの含量を、質量分析により決定した。バリアント△89 hST6Gal−Iについては、2時間のインキュベーション後に既に高含量(88%)のビ−シアリル化された形態のG2+2SAが得られた。参照:図4。このデータは、△89 hST6Gal−Iの固有のCMP−依存性シアリダーゼ(ノイラミニダーゼ)活性のためG2+0SAおよびG2+1SAが経時的に再び増加したことをも示す。48時間のインキュベーション後、71%のG2+1SA含量が得られた。
図5は、異なるIgG4 MAB試料の質量分析により得られたスペクトルを示す。試料を時点t=0(下パネル)、時点t=8時間(中パネル)および時点t=48時間(上パネル)で採取した。G2+0SA、G2+1SAおよびG2+2SAグリカンを含むIgG分子の質量スペクトルにおける1電荷状態(one charge state)の質量電荷比(mass over charge)(m/z)信号を表示する。異なる状態にシアリル化された種の相対強度がこれらの信号から導かれる。図4に対応して、t=0時間ではG2+0SAが主グリカン種である。t=8時間では、G2+2SAに対する信号が優勢形態であり、これに対しt=48時間ではG2+1SAが最も多量に存在する種である。決定した数値については図4を参照されたい。
実施例11
CTPによる△89 hST6Gal−Iのシアリダーゼ活性の阻害
化合物シチジン−5’−三リン酸(CTP)は強力なシアリルトランスフェラーゼ阻害物質であることが知られている(Scudder PR & Chantler EN BBA 660 (1981) 136-141)。シアリダーゼ活性が△89 hST6Gal−Iに固有の活性であることを立証するために、阻害実験を実施した。第1相実験では、△89 hST6Gal−IによるIgG4 MABのシアリル化を実施して、高含量のG2+2SAを達成した(参照:実施例10)。7時間のインキュベーション後、G2+2SA含量は94%であった。その後、△89 hST6Gal−Iのシアリダーゼ活性を阻害するためにCTPを添加した(CTPの最終濃度:0.67mM)。種々の時点で試料を採取し、G2+0SA、G2+1SAおよびG2+2SAの含量を質量分析により決定した。結果を図6に示す。図4に示した阻害物質を含まない状態と比較して、シアリダーゼ活性により生じたG2+2SAの分解は有意に低減した。72時間のインキュベーション後、73%のG2+2SAがなお存在していた。既知のシアリルトランスフェラーゼ活性の阻害物質によるシアリダーゼ活性の阻害は、△89 hST6Gal−Iの同じ活性中心に両方の活性があることを強く指摘する。
実施例12
△89 hST6Gal−IによるIgG1 MABのシアリル化
15mgの量の高度にガラクトシル化されたヒト化モノクローナル抗体IgG1 MABをシアリル化処理に用いた。反応混合物は、規定量のIgG1 MAB(15mg;20mMの酢酸ナトリウム、50mMのトリス緩衝液,pH8.0を含有する1,854μLの水性緩衝液中)、ドナー基質CMP−NANA(7,500μg;2,500μLの水中)およびシアリルトランスフェラーゼ(1,500μg;組換え製造し、精製した△89 hST6Gal−I;202μLの20mMのリン酸カリウム、0.1MのNaCl,pH6.5 中)を含有していた。成分を混合し、得られた反応混合物を37℃で、2時間、4時間、8時間、24時間、および48時間を含む種々の時間、インキュベートした。シアリル化された抗体の精製を実施例13に従って実施した。
シアリル化度を分析するために、124μLの変性用緩衝液(6Mの塩化グアニジニウム;水中)および30μLのTCEP(=トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン;0.1mM,変性用緩衝液中に希釈)を76μL(250μgのIgG1 MABに相当する)に添加し、試料を37℃で1時間インキュベートした。その後、予備平衡化したillustra(商標) Nap5−カラム(GE−Healthcare)を用いて、試料をエレクトロスプレー媒体[20%のACN(=アセトニトリル),1%のFA(=ホルムアミド)]中に緩衝化した。その後、試料をエレクトロスプレーイオン化質量分析により分析し、G2+0SA、G2+1SAおよびG2+2SA N−グリカンの含量を決定した。Synapt G2 HDMSデバイス(Waters UK)を用い、使用したソフトウェアはMassLynx V 4.1であった。
実施例13
シアリル化されたIgG1 MABの精製
実施例12のインキュベートしたシアリル化反応混合物からシアリルトランスフェラーゼおよびCMP−NANAを分離するために、インキュベートしたIgG1 MABをプロテインAを用いて精製した。25mMのトリス、25mMのNaCl、5mMのEDTA(=エチレンジアミン四酢酸),pH7で平衡化したプロテインAカラムに反応混合物を適用した。カラムを25mMのトリス、25mMのNaCl、500mMのTMAC(=塩化テトラメチルアンモニウム)、5mMのEDTA,pH5.0で洗浄し、次いで25mMのトリス、25mMのNaCl、5mMのEDTA,pH7.1で洗浄した。IgG1 MABを25mMクエン酸Naで溶離した。低pHにおける自然脱シアリル化を避けるために、1Mトリス,pH9.0を用いてpHをpH7.0に調整した。この方法を用いて、純粋な形態のシアリル化されたIgG1 MABを一般的収量12mgで得た。
実施例14
CMPの存在下および非存在下でのIgG1 MABに対する△89 hST6Gal−Iのシアリダーゼ活性
シチジン一リン酸(5’−CMP,=CMP)はシアリルトランスフェラーゼ酵素により触媒される反応の生成物であり、グリコシルトランスフェラーゼ反応中に補基質CMP−NANAから生成する。シアリル化反応のインキュベーション時間に伴なって、CMPが反応混合物中に蓄積する。固有のシアリダーゼ活性がCMP依存性であることを立証するために、実施例12の記載に従ってCMP−NANAの存在下で△89 hST6Gal−Iと共にインキュベートすることにより、高度にシアリル化されたIgG1モノクローナル抗体IgG1 MAB G2+2SAを製造し、実施例13の記載に従って精製した。
実施例12に従ってシアリル化のためのインキュベーション期間8時間で高度にシアリル化された1,250μg(194μL中)の量のIgG1 MABに、125μgのシアリルトランスフェラーゼバリアント(30μg/300μg IgG1 MAB)を添加した。
種々のN末端トランケート型hST6Gal−I酵素バリアントをCMP−依存性シアリダーゼ活性について調べた:
・ △89 hST6Gal−I (実施例9)
・ △108 hST6Gal−I (実施例9)
・ △57 hST3Gal−I(R&D Systemsから入手)
△89 hST6Gal−I(16.8μL,125μgを含む)、△108 hST6Gal−I(17.3μL,125μgを含む)、△57 hST3Gal−I(20.1μL,125μgを含む)および陰性対照(酵素なし,20.1μLの超純水)を用いて、4つの異なる実験を行なった。これらの酵素をCMP(モル濃度で10倍過剰)の存在下および非存在下でシアリダーゼ活性について試験した。濃度は下記に示すとおりであった:
△89 hST6Gal−I(16.8μL,125μgを含む):11,8μgのCMP(c=0.5mg/mL,23,6μL)
△108 hST6Gal−I(17.3μL,125μgを含む):12,3μgのCMP(c=0.5mg/mL,24,5μL)
△57 hST3Gal−I(20.1μL,125μgを含む):12,3μgのCMP(c=0.5mg/mL,24,5μL)
陰性対照(酵素なし):12,3μgのCMP(c=0.5mg/mL,24,5μL)
試料を37℃で20mMのクエン酸ナトリウム、35mMのトリス,pH6.5 中においてインキュベートした。種々のインキュベーション時間後、アリコートを試料として採取し、分析した。
試料中のIgG1 MABのシアリル化度を分析するために、124μLの変性用緩衝液(6M塩化グアニジニウム,水中)および30μLのTCEP(=トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン;0.1mM,変性用緩衝液中に希釈)を76μL(250μgのIgG1 MABに相当する)に添加し、試料を37℃で1時間インキュベートした。その後、予備平衡化したillustraTM Nap5−カラム(GE−Healthcare)を用いて、試料をエレクトロスプレー媒体(20%のACN(=アセトニトリル),1%のFA(=ホルムアミド))中に緩衝化した。その後、試料をエレクトロスプレーイオン化質量分析により分析し、G2+0SA、G2+1SAおよびG2+2SA N−グリカンの含量を決定した。Synapt G2 HDMSデバイス(Waters UK)を用い、使用したソフトウェアはMassLynx V 4.1であった。
結果を図7〜10に示す。CMPを含まない反応混合物中においては、46時間のインキュベーション後ですらG2+2SAの分解がみられなかった(図7)。これに対し、CMPの存在下ではG2+1SA含量の増加を伴うG2+2SA分解が測定された(図8)。前記条件下で、△89 hST6Gal−IはCMP−依存性シアリダーゼ活性を示し、これに対し△108 hST6Gal−I(図9)および△57 ST3Gal−I(図10)はCMPの存在下でシアリダーゼ活性を示さなかった。後者の場合、この酵素は2−3グリコシド結合に特異的であることが認められている。
実施例15
ホスファターゼ酵素活性の存在下で△89 hST6Gal−Iを用いるIgG4 MABのシアリル化
反応中に形成されたCMPを連続的に除去することにより、△89 hST6Gal−IのCMP−依存性シアリダーゼ活性の抑制を調べた。
これらの実験には、酵素(i)5’−ヌクレオチドに対して幅広い特異性をもつ5’−ヌクレオチダーゼ(EC 3.1.3.5)、および(ii)アルカリホスファターゼ(EC 3.1.3.1)(両方とも業者により提供された)を用いた。ここで用いた特定の5’−ヌクレオチダーゼはecto−5’−ヌクレオチダーゼまたはCD73(Cluster of Differentiation 73(クラスター分類73))としても知られ、ヒトにおいてはNT5E遺伝子によりコードされる。両酵素ともCMPを脱リン酸化する;すなわち、CMP中のホスホエステル結合の加水分解を触媒する。この実施例の実験には、補基質CMP−NANAからシアリルトランスフェラーゼ反応により生成したCMPを分解するために、これらの酵素を用いた。CMPの非存在下では△89 hST6Gal−Iの固有のシアリダーゼ活性はみられなかった。
1,000μgのIgG4 MAB(182μL)に、500μgのCMP−NANA(3mg/mL,166.7μL)、100μgの△89 hST6Gal−I(13.4μL,30μg/300μg IgG4 MAB)および種々の量のヌクレオチダーゼ(Nu)およびアルカリホスファターゼ(AP)を添加した。APの活性にはZn2+イオンが必須であるので、これらを最終濃度0.1mMになるように添加した。用いた緩衝液は20mM酢酸ナトリウム/トリス,pH6.5であった。
種々の量の酵素を反応混合物に添加して、脱リン酸化酵素の作用を調べた:
1)5’−ヌクレオチダーゼCD73を0.1μg/μLの濃度で用いた。反応物に0.10μg、0.25μgおよび0.50μgを添加した。
2)アルカリホスファターゼ(AP)を1μg/μLおよび10μg/μLの濃度で用いた。反応物に1μg、5μg、10μgおよび100μgを添加した。
それぞれの量の酵素を添加した後、試料を37℃でインキュベートした。試料を幾つかの時点で採取して、シアリル化度を制御した。したがって、110μLの変性用緩衝液(6M塩化グアニジニウム)および30μLのTCEP(0.1mM,変性用緩衝液中に希釈)を90μLの試料(約250μgのIgG4 MAB)に添加し、試料を37℃で1時間インキュベートした。その後、予備平衡化したillustra(商標) Nap5−カラム(GE−Healthcare)を用いて、試料をエレクトロスプレー媒体[20%のACN(=アセトニトリル),1%のFA(=ホルムアミド)]中に緩衝化した。次いで、試料をエレクトロスプレーイオン化質量分析により分析し、G2+0SA、G2+1SAおよびG2+2SA N−グリカンの含量を決定した。Synapt G2 HDMSデバイス(Waters UK)を用い、使用したソフトウェアはMassLynx V 4.1であった。
5’−ヌクレオチダーゼCD73の存在下または非存在下での△89 hST6Gal−IによるIgG4 MABのシアリル化の結果を図11〜14に示す;アルカリホスファターゼの存在下または非存在下での△89 hST6Gal−IによるIgG4 MABのシアリル化の結果を図15〜19に示す。明らかになったように、5’−CMP中のホスホエステル結合を加水分解できるホスファターゼ活性を導入することにより、CMP仲介シアリダーゼ活性は効果的に低減し、シアリルトランスフェラーゼ活性は増強された。

Claims (15)

  1. (a)SEQ ID NO:1の位置90から位置108までのアミノ酸モチーフを含む可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI;
    (b)シチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミニン酸またはその機能均等物;
    (c)糖タンパク質および糖脂質から選択されるグリコシル化されたターゲット分子;ターゲット分子は1以上のアンテナを含み、少なくとも1つのアンテナは末端構造としてガラクトシル残基のC6位にヒドロキシル基をもつβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を有する;
    (d)グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする水溶液
    を含む水性組成物であって、
    さらに、グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする条件下で5’−シチジン−一リン酸中のホスホエステル結合を加水分解できる酵素を含む水性組成物。
  2. 5’−シチジン−一リン酸中のホスホエステル結合を加水分解できる酵素が、アルカリホスファターゼ、酸性ホスファターゼ、および5’ヌクレオチダーゼからなる群から選択される、請求項1に記載の水性組成物。
  3. 請求項1および2に記載の組成物におけるシアリルトランスフェラーゼ酵素活性を維持するための、5’−シチジン−一リン酸中のホスホエステル結合を加水分解できる酵素の使用。
  4. 請求項1および2に記載の組成物におけるシアリダーゼ酵素活性を阻害するための、5’−シチジン−一リン酸中のホスホエステル結合を加水分解できる酵素の使用。
  5. シアリル化されたターゲット分子をインビトロで製造する方法であって、
    (a)請求項1および2に記載の水性組成物を用意する;
    (b)工程(a)の水性組成物をインキュベートし、それによりシチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミニン酸またはその機能均等物を補基質として反応させることにより、1以上の末端アンテナ形N−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン残基を形成し、それにより5’−シチジン−一リン酸が形成される;
    (c)工程(b)で形成された5’−シチジン−一リン酸のホスホエステル結合を加水分解し、それにより5’−シチジン−一リン酸仲介による阻害を低減し、それにより可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIの活性を維持する;
    工程を含み、
    それにより、シアリル化されたターゲット分子をインビトロで製造する方法。
  6. その方法を0℃〜40℃の温度で実施する、請求項5に記載の方法。
  7. 工程(b)と(c)を同じ容器内で実施する、請求項5および6に記載の方法。
  8. 工程(b)および(c)を、2時間〜96時間、2時間〜23時間、2時間〜6時間、および約2時間からなる群から選択される期間実施する、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 工程(b)および(c)を、6時間〜96時間、6時間〜23時間、および約6時間からなる群から選択される期間実施する、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
  10. 工程(b)および(c)を、23時間〜96時間、および約23時間からなる群から選択される期間実施する、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
  11. 工程(b)および(c)を約96時間実施する、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
  12. シアリル化された免疫グロブリンの調製物であって、それぞれの免疫グロブリンはヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIに対する複数のアクセプター部位を有し、シアリル化された免疫グロブリンの調製物における約25%未満がシアリル化されておらず、約75%以上がシアリル化されている、請求項5〜11のいずれか1項に記載の方法により得られる調製物。
  13. 5’−シチジン−一リン酸の存在下で、N−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分、すなわちシアリル化された糖タンパク質または糖脂質中のグリカンの末端構造である部分におけるα2,6グリコシド結合をインビトロ加水分解するための、SEQ ID NO:1の位置90から位置108までのアミノ酸モチーフを含む可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIの使用。
  14. 可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIがSEQ ID NO:1の位置90から位置406までのアミノ酸を含む、請求項13に記載の使用。
  15. 可溶性β−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIのアミノ酸配列がSEQ ID NO:2のアミノ酸配列である、請求項13および14に記載の使用。
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