JP2018202356A - 固体酸フィルター - Google Patents

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Ryuji Kawakami
竜司 川上
正芳 石井
Masayoshi Ishii
正芳 石井
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Abstract

【課題】スルホン酸基による強力な反応活性を備えた固体酸をフィルターに組み込むことによって、耐久性に優れ安定的に殺菌作用を発揮するとともに、当該フィルター単独で作用する固体酸フィルターを提供する。【解決手段】ウレタンフォームからなり多孔質部11を有する基材部10と、無定形炭素にスルホン酸基を導入した粉末状のスルホン酸基含有固体酸21とバインダ26を含有した固体酸添着部25を固体酸反応部20として備え、基材部10の多孔質部11に固体酸反応部20を配し反応フィルター部15を形成する。【選択図】図1

Description

本発明は、固体酸フィルターに関し、特に殺菌を目的とするフィルターに関する。
車両、船舶、航空機等では限られた空間に多くの人間が存在する。このため、一部の感染者からの空気感染の危険性が高まる。また、病院内においても一部の感染患者から他の入院患者または病院労働者への院内感染の危険性と隣り合わせである。一般に空気感染の場合、感染経路の特定や防疫対策が困難であり、特に高齢者や乳幼児の感染被害が大きくなりやすい。
この状況から、閉鎖空間内の感染抑制のため、空気清浄装置、空調機器用のフィルター等が提案されている。例えば、光触媒フィルター部と、酵素フィルター部と、光源からなる空気清装置が提案されている(特許文献1参照)。また、鉄、アルミニウム、チタン及びカリウムを含む金属組成物からなる抗菌剤を繊維性ろ材に添着した抗菌フィルター用ろ材が提案されている(特許文献2参照)。さらに、撥水処理を施していないガラス繊維の濾紙状担体に溶菌酵素を化学的に固定化した空気浄化フィルターが提案されている(特許文献3参照)。
従前提案における酸化チタン等の抗菌材料は、殺菌や静菌に一定の効果を発揮する。しかしながら、酸化チタンは光触媒であり、紫外線等の所定波長の光線が必要である。そうすると、複数のフィルターを組み合わせて集合ユニットを構成することは可能であっても、その内部の個々のフィルターに対して均等に光線を照射することは容易ではない。効率的な反応のために光源が必要であり、別途の電源設備等も必要である。酵素を使用するフィルターの場合、失活温度を超える熱に曝露されると酵素のタンパク質が分解して反応効率が低下する。それゆえ、酵素使用のフィルター自体の耐久性、熱安定性は十分とは言えず、フィルター使用時の温度、条件に注意が必要である。
このような経緯とは別に、固体酸を活用した殺菌方法も検討されてきた(特許文献4参照)。固体酸とは、炭素骨格にスルホン酸基(SO3H)が導入された化合物等の総称である。固体酸はスルホン酸基の性質上、硫酸に近似した反応活性を発現する。そこで、スルホン酸基が微生物の細胞膜等に作用すると考えられる。しかしながら、前掲の特許文献4にあっては、固体酸における殺菌性能を開示しているに留まる。それゆえ、空気殺菌に関する具体的な部材の開発に至っていなかった。
そこで、フィルターとして機能する部材の特性を生かしながら、ここに当該部材への固体酸を導入することが可能となれば、より強力な殺菌機能を持つフィルターを得ることができる。そこで、固体酸とフィルターとの組み合わせが検討されてきた。
特開2003−106583号公報 特許第4722350号公報 特許第3963954号公報 特許第4925379号公報
このような経緯を踏まえ、発明者は、多孔質材料の個々の空隙内に安定的に固体酸を付着する手法について鋭意改良を重ねた。そして、固体酸を備えることにより殺菌性能を有するフィルターを開発するに至った。
本発明は、上記状況に鑑み提案されたものであり、強力な反応活性を備えた固体酸をフィルターに組み込むことによって、耐久性に優れ安定的に殺菌作用を発揮するとともに、当該フィルター単独で作用する固体酸フィルターを提供する。
すなわち、第1の発明は、ウレタンフォームからなり多孔質部を有する基材部と、固体酸を含有する固体酸反応部を備え、前記基材部の前記多孔質部に前記固体酸反応部を配し反応フィルター部を形成したことを特徴とする固体酸フィルターに係る。
第2の発明は、前記固体酸反応部が、固体酸とバインダを含有した固体酸添着部である第1の発明に記載の固体酸フィルターに係る。
第3の発明は、前記固体酸がスルホン酸基含有固体酸である第1または2の発明に記載の固体酸フィルターに係る。
第4の発明は、前記固体酸が、無定形炭素にスルホン酸基を導入したスルホン酸基含有固体酸である第1または2の発明に記載の固体酸フィルターに係る。
第5の発明は、前記固体酸が粉末状物である第1ないし4のいずれかの発明に記載の固体酸フィルターに係る。
第6の発明は、前記基材部の前記ウレタンフォームがポリエーテル系ウレタンフォームである第1ないし5のいずれかの発明に記載の固体酸フィルターに係る。
第7の発明は、前記基材部の厚さが1〜80mmである第1ないし6のいずれかの発明に記載の固体酸フィルターに係る。
第8の発明は、前記基材部のセル数が5〜60個/25mmである第1ないし7のいずれかの発明に記載の固体酸フィルターに係る。
第9の発明は、前記基材部に対し風速1m/secの風量を当てて通気した際の圧力損失が、100Pa以下である第7または8の発明に記載の固体酸フィルターに係る。
第10の発明は、前記反応フィルター部において、前記基材部100重量部に対し前記固体酸が500重量部以下の割合で含有されている第1ないし9のいずれかの発明に記載の固体酸フィルターに係る。
第11の発明は、前記反応フィルター部の使用が殺菌目的である第1ないし10のいずれかの発明に記載の固体酸フィルターに係る。
第1の発明に係る固体酸フィルターによると、ウレタンフォームからなり多孔質部を有する基材部と、固体酸を含有する固体酸反応部を備え、前記基材部の前記多孔質部に前記固体酸反応部を配し反応フィルター部を形成したため、耐久性に優れ安定的に殺菌作用を発揮するとともに、当該フィルター単独での作用が可能である。
第2の発明に係る固体酸フィルターによると、第1の発明において、前記固体酸反応部が、固体酸とバインダを含有した固体酸添着部であるため、固体酸の多孔質部からの欠落が抑制される。
第3の発明に係る固体酸フィルターによると、第1または2の発明において、前記固体酸がスルホン酸基含有固体酸であるため、硫酸に近似した反応活性を備え、かつ、固体としての取扱うことができる。
第4の発明に係る固体酸フィルターによると、第1または2の発明において、前記固体酸が、無定形炭素にスルホン酸基を導入したスルホン酸基含有固体酸であるため、無定形炭素の構造に起因して、固体酸の耐久性、耐薬品性、熱安定性が優れ、高温下等の過酷な条件での使用可能なフィルターとなる。
第5の発明に係る固体酸フィルターによると、第1ないし4のいずれかの発明において、前記固体酸が粉末状物であるため、基材部の多孔質部の内部まで浸入しやすく、かつ、バインダへの分散性が向上し、基材部に添着した後の脱落が生じにくい。
第6の発明に係る固体酸フィルターによると、第1ないし5のいずれかの発明において、前記基材部の前記ウレタンフォームがポリエーテル系ウレタンフォームであるため、基材部の安定性に優れる。
第7の発明に係る固体酸フィルターによると、第1ないし6のいずれかの発明において、前記基材部の厚さが1〜80mmであるため、良好な通気性が確保される。
第8の発明に係る固体酸フィルターによると、第1ないし7のいずれかの発明において、前記基材部のセル数が5〜60個/25mmであるため、通気性の確保と構造維持が可能となる。
第9の発明に係る固体酸フィルターによると、第7または8の発明において、前記基材部に対し風速1m/secの風量を当てて通気した際の圧力損失が、100Pa以下であるため、良好な通気性が確保される。
第10の発明に係る固体酸フィルターによると、第1ないし9のいずれかの発明において、前記反応フィルター部において、前記基材部100重量部に対し前記固体酸が500重量部以下の割合で含有されているため、固体酸量の増加と通気性確保の均衡が図られる。
第11の発明に係る固体酸フィルターによると、第1ないし10のいずれかの発明において、前記反応フィルター部の使用が殺菌目的であるため、閉鎖環境、施設等の空気汚染対策、安全、衛生管理に利用できる。
本発明の固体酸フィルターを含むフィルター構造体の全体斜視図である。 図1の固体酸フィルターの部分拡大断面模式図である。 本発明の固体酸フィルターの製造方法例の概略工程図である。
図1は本発明の固体酸フィルター1を使用したフィルター構造体5の全体斜視図である。フィルター構造体5では、固体酸フィルター1の周囲は金属等の枠部2により取り囲んで補強されてユニット構造体に仕上げられる。フィルター構造体5は適宜のダクト(図示せず)等の空気の流通する配管内に設置される。そこで、図中の矢印inから固体酸フィルター1内に進入した空気は固体酸フィルター1の内部を通過し、矢印outのとおり外部に進む。図示は固体酸フィルターのひとつの使用形態の開示であり、他の構造とすることも当然に可能である。むろん、固体酸フィルター1のみによる使用も可能である。
本発明の固体酸フィルターは専ら空気を浄化するための殺菌目的のフィルターである。特に、フィルター内部に保持された固体酸の強力な反応活性が利用される。例えば、酸化作用、触媒作用等である。空気中に浮遊する微生物、細菌、ウイルス等は固体酸フィルターと接触することにより、固体酸の効果によって細菌等の細胞膜、ウイルスのカプシド、エンベロープ等が破壊されて死滅する作用と考えられる。この結果、空気中の殺菌ないし除菌ができる。従って、固体酸フィルターは、車内、機内、船内等の閉鎖環境、病院内、生物実験施設等の空気汚染対策、安全、衛生管理に利用される。
固体酸フィルター1について、さらに図2の部分拡大断面模式図を用い構造から説明する。固体酸フィルター1はウレタンフォームの基材部10を主要部材とする発泡ポリウレタンである。基材部10には多孔質部11が存在し、多孔質部11は複数の空隙部12により構成される。従って、固体酸フィルター1に流入する空気は個々の空隙部12に衝突しながら多孔質部11内を進む。つまり、基材部10自体がフィルターの機能を有する。
多孔質部11を構成する個々の空隙部12の内表面13に固体酸反応部20が配される。反応フィルター部15は多孔質部11と固体酸反応部20の組み合わせにより形成される。従って、固体酸フィルター1は反応フィルター部15のみから形成(実質同一)である場合と、反応フィルター部15と多孔質部11の組成物の場合のいずれかとなり得る。後者の場合、固体酸反応部20の存在しない部位が存在する。空気が反応フィルター部15を通過する際、空気は空隙部12の内面の固体酸反応部20に接触する。そこで、反応は同部位で進む。
固体酸フィルター1の基材部として用いる部材は各種合成樹脂フォームが考えられる。合成樹脂フォームには、(ポリ)ウレタンフォーム、(ポリ)スチレンフォーム、(ポリ)エチレンフォーム、(ポリ)プロピレンフォーム、EVA架橋発泡体、PET樹脂発泡体、フェノールフォーム、シリコーンフォーム、(ポリ)塩化ビニルフォーム、ユリアフォーム、アクリルフォーム、(ポリ)イミドフォーム、EPDMフォームなどが挙げられるが、その中でもウレタンフォームを用いるのが好ましい。
前述で列挙された合成樹脂フォームが持つ気泡の形状として、連続気泡型と独立気泡型が存在するが、連続気泡型のみ空気や水を通すことが可能である。また、より柔らかい性質を持つ。特に連続気泡型のウレタンフォームは、非常に高い柔軟性と、気泡の制御が容易で高い通気性を併せ持つという特徴のため、本固体酸フィルターのように空気や水等の流体用のフィルターに用いる目的で基材部の部材を選定する場合に好ましく、一般的であることはよく知られている。
ウレタンフォームの材質として、主にポリエステル系ウレタンフォーム、ポリエーテル系ウレタンフォーム等が知られている。固体酸フィルターの場合、その内部に固体酸21が備えられる。この固体酸は強力な酸化作用等を有することから、基材部10自体の耐薬品性が求められる。そこで、後記の実施例からも明らかであるように、基材部10のウレタンフォームの材質は、安定性の点からポリエーテル系ウレタンフォームが好ましく用いられる。
基材部10自体が固体酸フィルター1の本体となるため、フィルターとしての通気性能を確保する点から基材部10の厚さは重要である。具体的に、基材部10は1ないし80mmの厚さである。基材部10の厚さはウレタンフォームの成形、切り出し等により調節できる。ただし、1mmを下回る厚さでは、空気の通気時に多孔質部11内の固体酸反応部20と接触する時間が短くなる。そのため、固体酸に接触する時間が少なくなりすぎて固体酸の作用が少なくなり、十分な反応を得ることができない。逆に、基材部10の厚さが80mmを超過する場合、通気時の抵抗が大きく、過大な圧力損失を引き起こしフィルターに求められる通気性が確保されにくくなる。そこで、基材部10は1ないし80mmの範囲の厚さに規定される。
前述のとおり、基材部10は多孔質部11を備えるスポンジ状(多孔質状)である。そこで、空隙部12の存在量は、単位長さ当たりのセル数量として把握可能である。セル数を比較することにより、多孔質部11における個々の空隙部12の大きさ、通気性能の多少を比較することができる。具体的に、基材部10のセル数は、5ないし50個/25mmである。セル数が5個/25mmを下回る場合、基材部において空隙部が極端に多くなり、基材部自体の構造強度が不足する。また、50個/25mmを上回る場合、個々の空隙部自体が細かくなりすぎて通気性が悪化する。そこで、通気性の確保と構造維持を考慮して前述のセル数の範囲となる。
さらに、基材部10の厚さとセル数の多少の評価に加え、実際の基材部10自体の圧力損失も評価も組み合わせられる。圧力損失の評価に際し、ウレタンフォームの基材部10は固定枠に面状に設置される。さらに風の漏れがなくなるように周囲が覆われる。そして、送風機等により風速1m/secの風量の風が基材部10の表面に対し当てられる。このとき、基材部10の表裏において圧力が測定される。結果、両者間の圧力差が100Pa以下に収まっていれば、圧力損失は少なくフィルターとしての通気性能は確保できる。逆に、圧力損失が100Paを越える場合、フィルターとして使用は可能である。ただし、高い通気性能が要求される場所への設置には不向きとなり得る。そこで、基材部の圧力損失の好ましい上限として100Paが規定される。
基材部10の多孔質部11に配される固体酸反応部20は、固体酸21とバインダ26より構成される。固体酸21とバインダ26が多孔質部11の個々の空隙部12の内表面13に固着して、当該内表面13に固体酸添着部25が形成される。
使用する固体酸21はスルホン酸基含有固体酸であり、分子中にスルホン酸基(SO3H)を有し硫酸に近似した反応活性を示す。従って、硫酸に近似した触媒活性及び酸化作用を備え、かつ、固体としての取扱いが可能な材料である。さらに詳しくは、固体酸21は無定形炭素にスルホン酸基を導入したスルホン酸基含有固体酸である。炭素を主体に構成されているため、軽量かつ耐久性、耐薬品性、熱安定性に優れており、経時劣化は少なく、高温下等の過酷な条件においても使用可能となる。しかも、原料価格も抑制される。また、無定形炭素の構造によると、スルホン酸基が結合するために表面残基も多く残存する。従って、単位重量当たりのスルホン酸基量の増加に寄与し、触媒、殺菌作用の向上に役立つ。
固体酸(スルホン酸基含有固体酸)の出発物質は、背景技術にて言及の特許第4925379号公報等に開示のコロネン、ナフタレン等の芳香族炭化水素、さらには、石油ピッチ、タール等、廃棄樹脂製品、廃棄タイヤである。加えて、天然物の木質系原料も使用できる。木質系原料は、例えば、木材の製材や加工時に生じるオガコやカンナ屑、廃材や間伐材、廃竹や伐採竹、ヤシ殻、パームヤシの搾りかす、コーヒーの抽出時に生じるコーヒー豆の等のセルロース分に富む原料である。加えて、木材から抽出されるセルロース分も出発原料に含められる。木質系原料は一般に燃料として用いられる他、焼却処理されていた廃棄物であり、これまで特段有効活用されてこなかった。そこで、木質系原料に由来する材料が固体酸の基材に加工されることによって、原価は抑えられ資源の有効活用が可能となる。
芳香族炭化水素、石油ピッチ、タール等が固体酸(スルホン酸基含有固体酸)の出発物質である場合、これらは濃硫酸または発煙硫酸中で加熱され、炭化の進行とともにスルホン酸基が炭素骨格に導入される(スルホン化)。そして、適宜の洗浄を経て固体酸は出来上がる。この固体酸(スルホン酸基含有固体酸)は、黒色の粉末状物である。
木質系原料は炭化に先立ち、あるいは、炭化後に必要に応じて予め適度な大きさに粉砕(破砕)される。さらには、粉砕は炭化の前後両方としても良い。併せて、石や金属片等の異物が混入していないことも事前に検査され、それらは除去される。木質系原料は焼失しない程度の温度条件下にて炭化されて炭化物となる。「炭化」は窒素ガス等の不活性ガスを充満した雰囲気下、200ないし400℃の加熱処理条件において加熱される。木質系原料の焼成は、窒素、炭酸ガス、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下にて行われる。
当該温度域は木質系原料の炭化促進に十分であり、かつ木質系原料の過剰な熱分解を回避可能な温度である。400℃を越える温度で焼成して炭化が進むと、グラフェンシート様の構造が多くなる。その結果、後出のスルホン酸基の炭素骨格への導入効率が低下するためである。焼成温度が200℃を下回ると、焼成が低温過ぎるため木質の炭化自体が進行しない。200℃以下で焼成を行い得た焼成物は、事後に行う薬品の作用を制御できず、分解、炭化が進みすぎてしまい、スルホン酸基の導入に好ましい炭素骨格が得られない。従って、適切な焼成の温度は前述の範囲となる。
炭化の後、所定の粒径に粉砕してもよい。炭化物の粉砕には、公知のミル、グラインダー等が適宜使用される。粉砕及び篩別に際し、炭化物は必要に応じて1mm以下、好ましくは0.5mm以下、さらには0.1mm以下の適宜の粒径とされる。これは最終的に粉末状物の固体酸を得るためである。粉砕の目的とは、最終的に出来上がる固体酸が基材部(多孔質部)からの脱落を防止するためである。それゆえ、目的に適合する限り粉砕粒径は限定されない。
炭化物を作製するに際し、予め木質系原料に対して、または炭化物とした後に、賦活処理を加えることもできる。賦活処理が加わることにより細孔が発達しやすくなる。このため、表面積が大きくなって接触効率の高い炭化物を得ることができる。賦活処理の方法は適宜であり、水蒸気賦活、塩化亜鉛賦活、リン酸賦活、硫酸賦活、空気賦活、炭酸ガス賦活等が例示される。
出来上がった炭化物に対し、スルホン酸基が導入される(スルホン化)。スルホン化は室温ないし200℃、好ましくは70ないし100℃の温度条件下で行われる。スルホン化を経て、炭化物は固体酸(スルホン酸基含有固体酸)になる。スルホン基の導入は、濃硫酸、発煙硫酸、またはクロロスルホン酸等のスルホン化剤と炭化物との反応により行われる。当該スルホン化工程に用いるスルホン化剤の種類は通常のスルホ化反応に使用できる薬品の中から選択される。
固体酸は熱水等による洗浄を経ることによって、余分なスルホン化剤は洗い流される。ここで、篩別により所定の大きさに揃えられた製品とすることができる。また、製造途中に砕けて生じた粉状物も取り除かれる。当該作製に基づく固体酸としては、例えば、特許第5528036号等に開示の固体酸が示される。このようにして、粉末状物の固体酸(スルホン酸基含有固体酸)が得られる。
固体酸(スルホン酸基含有固体酸)自体は粉末状物であるため、基材部10の多孔質部11の個々の空隙部12内まで浸入しやすい。ただし、固体酸21と空隙部12の内表面13の付着は十分ではないため安易に空隙部12から固体酸21はこぼれ落ちてしまう。そこで、図2のとおり、基材部10の多孔質部11に配される固体酸反応部20において、固体酸(スルホン酸基含有固体酸)21はバインダ26の介在により保持され、多孔質部11の個々の空隙部12の内表面13に固着される。結果、内表面13に固体酸添着部25が形成され、反応フィルター部15が出来上がる。固体酸添着部の形態としているため、固体酸の多孔質部(空隙部)からの欠落が抑制される。
バインダ自体は流動可能な公知の樹脂種から選択される。例えば、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂である。さらには、流動性と硬化等から各種の接着剤からも選択される。例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の接着剤が挙げられる。例示以外の接着剤も使用し得る。ただし、固体酸がバインダにより被覆たりバインダ中に埋没してしまうと、固体酸フィルター1(反応フィルター部15)の内部を通気する空気の固体酸との接触は阻害される。それゆえ、反応性の低下を引き起こし好ましくない。そこで、バインダの使用量は過剰とならないように調整される。
多孔質部11と固体酸反応部20の組み合わせにより形成される反応フィルター部15において、基材部100重量部に対して固体酸(スルホン酸基含有固体酸)21は500重量部以下の割合で含有される。固体酸の量は多いほど好ましい。ただし、固体酸量の増加に伴い、多孔質部11の個々の空隙部12の内部は固体酸21そのものにより塞がれてしまう。そのため、基材部10に備わっていた通気性の良さは喪失し、固体酸フィルターとしては不適合となる。このことから、固体酸量の増加と通気性確保の双方の均衡から前記の500重量部以下の割合が導き出される。固体酸量の下限についての制約は無い。強い反応性が求められない用途または高い通気性確保が優先される用途では、固体酸量は少なく含有される。後記の実施例を勘案すると、固体酸量の下限は概ね2ないし3重量部と想定される。
基材部10に添着する固体酸21の量は、例えば次述のバインダの消費量から間接的に求められる。後記の実施例においては、バインダの消費量から間接的に求めた。あるいは、計算上から推定も可能である。なお、固体酸の分散性向上、バインダの性状改善のため、必要に応じて分散剤や増粘剤等が添加される。
図3の概略工程図を用い、本発明の固体酸フィルター1の製造方法について、ひとつの実施形態を説明する。はじめに、固体酸(スルホン酸基含有固体酸)21とバインダ26が用意される。固体酸及びバインダは前述のとおりである。所定量ずつ計量された固体酸とバインダは均質に混合されて混合液30が調製される。図示では混合液30はトレー31内に溜められている。固体酸フィルターの本体となるウレタンフォームの基材部10も用意される。基材部のセル数、大きさ、通気性等の物性は前述の規定を満たす限り任意である。
基材部10は、トレー31に満たされた混合液30内に浸漬される。この例では、混合液の基材部の多孔質部内への均質な含浸のため、トレー31はチャンバ35内に搬入され、真空ポンプ等により減圧吸引(抜気)される。こうして、基材部10内に混合液30は浸透する。図2のとおり、多孔質部11の個々の空隙部12の内部にバインダ26とともに固体酸21が付着する。
その後、基材部10はトレー31から取り出され乾燥される。乾燥を経て基材部10の多孔質部11の個々の空隙部12の内部に固体酸反応部20が形成される。一連の工程を経て固体酸フィルター1はできあがる。固体酸フィルターは使用場所に応じて所望の大きさに裁断される。そして、固体酸フィルターは設置場所に取り付けられる。または、図1に示すような枠部2が取り付けられてフィルター構造体5に加工され、設置場所に取り付けられる。
[スルホン酸基含有固体酸の作製]
木質原料としてベイマツ(米松)のオガコ(大鋸粉)を使用した。オガコを105±5℃に保った乾燥機内で8時間乾燥後、4.7mesh(粒径およそ4000μm)以上の木片を除去し、ここから木粉を分取した。1Nの塩酸に塩化亜鉛を溶解し濃度65%(w/w)の塩化亜鉛溶液を調製し、同塩化亜鉛溶液中に木粉を浸漬した。浸漬後、木粉を坩堝に入れて電気炉内に置いた。室温から350℃まで1時間かけて昇温し、350℃を60分間維持し焼成するとともに賦活も行い木質炭化物を得た。焼成に際し、窒素ガスを供給して不活性ガス雰囲気下とした。
木質炭化物を20%に希釈した塩酸を添加して1時間煮沸しながら洗浄した。水分を切り、さらに木質炭化物を100℃の蒸留水で洗浄した。洗浄後の木質炭化物を105±5℃に保った乾燥機内で8時間乾燥して回収した。
木質炭化物10重量部に対し、11.3%発煙硫酸188重量部を加えて同一容器内にて混合し、80℃で10時間加熱しスルホン酸基を導入してスルホン酸基含有固体酸を得た。その後、100℃の蒸留水により繰り返し洗浄し、蒸留水中の硫酸イオンが元素分析の検出限界以下になるまで洗浄を繰り返してスルホン酸基含有固体酸を得た。洗浄後の固体酸を105±5℃に保った乾燥機内で8時間乾燥して回収した。スルホン酸基含有固体酸の性状、形態は黒色の粉末状であり、比重は0.42g/cm3であった。一連の処理により、無定形炭素にスルホン酸基を導入したスルホン酸基含有固体酸を調製し、以降の実施例及び比較例の固体酸フィルターの作製に供した。
[原材料]
〈ウレタンフォーム〉
実施例及び比較例の固体酸フィルターの作製に際し、以下のウレタンフォーム(PF1ないしPF6)を基材部として使用した。以降の表中にてPF1等として表記する。
PF1:株式会社イノアックコーポレーション製,ポリエーテル系ウレタンフォーム,品番「モルトフィルター,CFH−13」
PF2:株式会社イノアックコーポレーション製,ポリエーテル系ウレタンフォーム,品番「モルトフィルター,CFH−20」
PF3:株式会社イノアックコーポレーション製,ポリエーテル系ウレタンフォーム,品番「モルトフィルター,CFH−30」
PF4:株式会社イノアックコーポレーション製,ポリエーテル系ウレタンフォーム,品番「モルトフィルター,CFH−50」
PF5:株式会社イノアックコーポレーション製,ポリエステル系ウレタンフォーム,品番「モルトフィルター,MF−20」
PF6:株式会社イノアックコーポレーション製,ポリエーテル系ウレタンフォーム,品番「モルトフィルター,CFS」
前記のPF1ないしPF6の実施例及び比較例にて使用したウレタンフォームに関し、圧力損失(Pa)(測定法は後記する。)、厚さ(mm)、セル数(個/25mm)、及び比重(g/cm3)の物性は表1ないし表4に開示する。
〈バインダ〉
実施例及び比較例の固体酸フィルターの作製に際し、以下のバインダ(B1ないしB3)を使用した。以降の表中にてB1等として表記する。
B1:中部サイデン株式会社製,エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂,品名「マルカボンド EZ190」
B2:昭和電工株式会社製,アクリル樹脂,品名「ポリゾール(登録商標)F−417」
B3:互応化学工業株式会社製,ポリエステル樹脂,品名「プラスコート Z−3310」
[固体酸フィルターの作製]
実施例及び比較例の固体酸フィルターの作製は、前掲の図3にて説明の方法に従った。各例に対応するバインダ(B1ないしB3いずれか)とスルホン酸基含有固体酸をそれぞれ計量し、均一に攪拌、混合して混合液を調製した。この混合液(バインダ及び固体酸)をトレーに流し込み、ここに各例に対応するウレタンフォーム(PF1ないしPF6のいずれか)をトレー内の混合液内に浸漬した。さらに、トレーごと密封チャンバ内に搬入して密封チャンバ内の空気を真空ポンプにより適度に吸引して混合液のウレタンフォームの基材部の多孔質部内への浸透を高めた。
ウレタンフォームの基材部内への混合液の含浸を終えた後、密封チャンバからトレーを取り出してウレタンフォームを取り出した。その後、温風を吹きつけながら乾燥して、ウレタンフォームの多孔質部に固体酸反応部を配した固体酸フィルターを作製した。実施例及び比較例の固体酸フィルターの作製方法は共通である。作製に際し、ウレタンフォームとバインダの種類の変更、バインダに添加する固体酸量の変更を通じて各実施例及び比較例の固体酸フィルターを作製した。
[添着量の算出]
実施例及び比較例の固体酸フィルターにおいて、固体酸添着部中に占める固体酸(スルホン酸基含有固体酸)の相対割合(%)は、「(固体酸重量)÷{(固体酸重量)+(バインダ重量)}×100」として算出した。{(固体酸重量)+(バインダ重量)}は固体酸添着部重量に相当する。相対割合(%)は重量部と同義である。
さらに、ウレタンフォーム基材部100重量部に対する固体酸添着部の相対割合(%)は、「{(固体酸添着部重量)÷(ウレタンフォーム基材部重量)}×100」として算出した。相対割合(%)は重量部と同義である。
固体酸フィルターにおいて、「ウレタンフォーム基材部100重量部に添着した固体酸重量の相対割合」は、上記の固体酸添着部中に占める固体酸の相対割合、ウレタンフォーム基材部100重量部に対する固体酸添着部の相対割合、及び浸漬時の混合液の含浸量(消費量)から計算した。
[ウレタンフォーム基材部の通気性]
実施例及び比較例のウレタンフォーム(PF1ないしPF6)を各例に応じた厚さ(表参照)としつつ、一辺70cmの正方形状のウレタンフォーム試験板に切り出した。ダクト開口面寸法70mmの正方形状の通風ダクト内にウレタンフォーム試験板を隙間無く固定し、上流側から送風機を用いて風速1m/secの風量の風をウレタンフォーム試験板に当てた。このとき、ウレタンフォーム試験板の表裏両側(上流と下流)において圧力(風圧)を圧力計により測定した。ウレタンフォーム試験板の上流側と下流側の両者間の圧力差が100Pa以下であれば、圧力損失が軽微な良品として「A」の評価とした。これに対し、上流側と下流側の両者間の圧力差が100Paを越える例については好ましくないとして「F」の評価とした。
[固体酸フィルターの通気性]
内直径16mmの円筒のシリンジ内に、実施例及び比較例の固体酸フィルターをシリンジの内直径と同径に切り出して挿入し、当該シリンジ内を固体酸フィルターにより隙間なく充填した。このシリンジの上流側に圧送ポンプを接続し、さらに同圧送ポンプの上流側に水を満たしたタンクを接続した。シリンジと圧送ポンプの間の配管に圧力計を接続し圧力測定を可能に設定した。空気よりも密度の高い水を使用することにより、通気性の良否を鋭敏に検知できる。
圧送ポンプを100mL/minの流速に設定し、水をシリンジ内に供給した。この際、固体酸フィルターの通気性が十分であれば圧力計の表示はほぼ変動しない。そこで、表示変動の無い例については良品として「A」の評価とした。これに対し、圧力計の表示が0.01MPaを上回った例については、通気性は低いとして不良品の「F」の評価とした。
[成形性]
前述の固体酸フィルターの作製において、当初のウレタンフォームの基材部の形状を維持した例については成形性ありの良品として「A」の評価とした。これに対し、固体酸の影響等によるウレタンフォーム基材の形状の崩れ、または成形不可能、もしくは通気性の評価に際しての形状の崩れが著しく測定不能の例については不良として「F」の評価とした。
各実施例及び比較例のとおり作製した固体酸フィルターの結果は表1ないし表4である。表の上から順に、「ウレタンフォーム基材部の種類、系統(材質)、圧力損失(Pa)、厚さ(mm)、セル数(個/25mm)及び比重(g/cm3)」、「バインダの種類、系統及び比重(g/cm3)」、「基材部に対するスルホン酸基含有固体酸の添加量(重量部)」、「固体酸添着部中の固体酸の相対割合(重量部)」、「基材部に対する固体酸の相対割合(重量部)」、「基材部の通気性の良否(2段階評価)」、「固体酸フィルターの通気性の良否(2段階評価)」、「成形性の良否(2段階評価)」である。
Figure 2018202356
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[固体酸フィルターの作製の結果と考察]
〈ウレタンフォームの材質〉
ウレタンフォーム基材部の系統(材質)がポリエステル系である比較例1,2は、成形不良となった。これに対し、ポリエーテル系の全実施例はいずれも良好に成形できた。これにより、固体酸フィルターに用いるウレタンフォームの系統(材質)はポリエーテル系が好ましいことを見出した。ポリエステル系ウレタンフォームは分子内に「−COO−」結合を有しているため酸により加水分解されやすい。これに対し、ポリエーテル系ウレタンフォームは分子内に「−O−」を有する。しかし、これは水に影響されないことから、加水分解されない。従って、ポリエーテル系ウレタンフォームの耐薬品性、耐食性がより高く、固体酸の影響を受け難いためと考える。
〈バインダの系統〉
実施例のとおり、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル樹脂、及びポリエステル樹脂のバインダの系統はいずれも使用可能であった。従って、市場入手容易なバインダを用いて固体酸フィルターの作製が実現できることを確認した。
〈基材部の厚さ〉
比較例3の基材部の厚さは80mmであった。比較例3はその厚さゆえに基材部の通気性は低下し、また固体酸添着部の形成もできなかった。現状の方法を勘案すると80mmは上限となる。基材部の厚さは固体酸フィルターの設置場所や流通する流体流量等を勘案して規定する。この点と比較例の結果を踏まえると、固体酸フィルターの基材部の好ましい厚さは、1ないし80mm、より好ましくは1ないし70mmである。
〈基材部のセル数〉
比較例4の基材部のセル数は68個/25mmであった。比較例4は見かけのセル数は多いものの、他の基材部のウレタンフォームと比べて細かな多孔質部の集合である。比重からも明らかであるように、ウレタンフォームは全体に緻密化して通気度は低下した。そこで、比較例4と実施例4との比較を考慮して、基材部の好ましいセル数は5ないし60個/25mm、より好ましくは5ないし50個/25mmである。
〈基材部の圧力損失〉
ウレタンフォーム基材部の通気性評価は圧力損失の高低と置き換えることができる。比較例3,4のとおり100Paを超過した例では通気性悪化が著しく不適であった。そこで、ウレタンフォーム基材部の圧力損失の上限を100Paとした。
〈固体酸の含有量〉
固体酸フィルターとしては、固体酸量が多いほど高い殺菌等の反応性は高まる。しかしながら、多くの固体酸をウレタンフォームの基材部に添着すると、基材部の多孔質部内の空隙部が固体酸により閉塞される。それゆえ、良好な通気性確保は難しくなり、フィルター性能は低下する。実施例14と比較例5の比較から、基材部に対するスルホン酸基含有固体酸の添加量が500重量部を上回る比較例の通気性悪化が顕著となった。そこで、基材部に対する固体酸の添加量を500重量部以下と規定した。
[固体酸フィルターの抗菌性能試験]
前述のとおり作製した実施例の固体酸フィルターについて、実際に殺菌性能を備えていることを検証するべく、抗菌性能試験に供した。抗菌性能試験は、抗菌製品技術協議会(抗技協)試験法II(2012年度版,2016年度版)「シェーク法」に準じた。試験菌株は「黄色ブドウ球菌:Staphylococcus aureus NBRC 12732(ATCC6538P)」と「大腸菌:Escherichia coli NBRC 3972(ATCC8739)」の2種類とし、予め菌数を一定とする試験用の微生物菌液を調製した。そして、実施例の固体酸フィルター及び次述の比較例を一辺40mmの正方形状に裁断して試験片とし、微生物菌液中に浸漬して24時間培養を続けた。その後、両菌株について24時間培養後の微生物菌液中の菌数を測定した。なお、同試験法と対応する方法としてJIS Z 2801が存在する。
実施例の固体酸フィルターとの対比群として、対照例と比較例6ないし9を用意した。対照例(ブランク)は試験用の微生物菌液に何も添加せず、微生物菌液の状態のまま放置し、24時間経過した時点の菌数を測定した。
比較例6はウレタンフォーム(PF3)の基材部のみの例である。このウレタンフォームの基材部のみを微生物菌液中に浸漬し24時間経過した。
比較例7,8,9は、実施例における固体酸フィルターの作製においてスルホン酸基含有固体酸のバインダへの配合のみを省略し、その他の工程を共通にして作製した。すなわち、ウレタンフォームの基材部とバインダのみの形成である。比較例7,8,9についても、同様に微生物菌液中に浸漬し24時間経過した。
比較例7は、ウレタンフォーム(PF3:ポリエーテル系)にバインダ(B1:エチレン−酢酸ビニル樹脂)を含浸した。
比較例8は、ウレタンフォーム(PF3:ポリエーテル系)にバインダ(B2:アクリル樹脂)を含浸した。
比較例9は、ウレタンフォーム(PF3:ポリエーテル系)にバインダ(B3:ポリエステル樹脂)を含浸した。
表5は黄色ブドウ球菌の培養結果である。縦に実施例1,2,3,7,10,12と、比較例6,7,8,9と、対照例である。表6は大腸菌の培養結果である。縦に実施例1,2,3,7,10,12と、比較例6,7,8,9と、対照例である。
Figure 2018202356
Figure 2018202356
[抗菌性能試験の結果と考察]
対照例の菌数変化は自然増である。固体酸を含有しない比較例については、全体的に菌数の増加が顕著であった。なお、比較例8はアクリル樹脂系バインダの使用である。そこで、バインダ自体が菌数に影響したと推定される。実施例の菌数変化によると、いずれも限界以下に減少しほぼ無菌化した。実施例の固体酸フィルターの菌数の減少は際立って優れており、固体酸含有の顕著な効果である。
ここで実施した抗菌性能試験は専ら菌液中の菌数変化の評価結果であるものの、いずれの実施例の固体酸フィルターは十分な抗菌、殺菌性能を発揮した。当該試験結果を踏まえると、固体酸フィルターを空気の殺菌の用途に応用しても、非常に効率よく空気中の殺菌に効果を発揮すると考える。特に、実施例の固体酸フィルターは良好な通気度も確保しているため、空気の流通抵抗(圧力損失)は少なく、フィルターとしての性能も十分である。加えて、固体酸をフィルターに組み込まれた固体酸自体が強力な反応活性、殺菌作用を備えているため、光線等を必要とせず、耐久性に優れ安定的に殺菌効果を期待できる。しかも、ウレタンフォームの基材部、バインダ、固体酸はいずれも安価であり調達容易である。ゆえに、固体酸フィルターの活用の幅は広い。
本発明の固体酸フィルターはウレタンフォームに固体酸を組み合わせた構造であるため安価に作製でき、しかも、通気性も良好であり、空気を固体酸フィルターに流通しながらの空気殺菌用途に好適である。そこで、既存の殺菌フィルターの代替として、車内、機内、船内等の閉鎖環境、病院内、生物実験施設等の空気汚染対策、安全、衛生管理に非常に有望である。さらに、菌を捕集しなくても、フィルターと菌との接触のみで殺菌効果が発現するため、より通気性の求められる分野への参入への期待が高まる。
1 固体酸フィルター
2 枠部
5 フィルター構造体
10 基材部
11 多孔質部
12 空隙部
13 内表面
15 反応フィルター部
20 固体酸反応部
21 固体酸(スルホン酸基含有固体酸)
25 固体酸添着部
26 バインダ
30 混合液
31 トレー
35 チャンバ

Claims (11)

  1. ウレタンフォームからなり多孔質部を有する基材部と、固体酸を含有する固体酸反応部を備え、
    前記基材部の前記多孔質部に前記固体酸反応部を配し反応フィルター部を形成した
    ことを特徴とする固体酸フィルター。
  2. 前記固体酸反応部が、固体酸とバインダを含有した固体酸添着部である請求項1に記載の固体酸フィルター。
  3. 前記固体酸がスルホン酸基含有固体酸である請求項1または2に記載の固体酸フィルター。
  4. 前記固体酸が、無定形炭素にスルホン酸基を導入したスルホン酸基含有固体酸である請求項1または2に記載の固体酸フィルター。
  5. 前記固体酸が粉末状物である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の固体酸フィルター。
  6. 前記基材部の前記ウレタンフォームがポリエーテル系ウレタンフォームである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の固体酸フィルター。
  7. 前記基材部の厚さが1〜80mmである請求項1ないし6のいずれか1項に記載の固体酸フィルター。
  8. 前記基材部のセル数が5〜60個/25mmである請求項1ないし7のいずれか1項に記載の固体酸フィルター。
  9. 前記基材部に対し風速1m/secの風量を当てて通気した際の圧力損失が、100Pa以下である請求項7または8に記載の固体酸フィルター。
  10. 前記反応フィルター部において、前記基材部100重量部に対し前記固体酸が500重量部以下の割合で含有されている請求項1ないし9のいずれか1項に記載の固体酸フィルター。
  11. 前記反応フィルター部の使用が殺菌目的である請求項1ないし10のいずれか1項に記載の固体酸フィルター。
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