JP2018197371A - 軸受用鋼及び軸受部品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明による軸受用鋼は、質量%で、C:0.40〜1.00%、Si:0.75〜3.00%、Mn:0.30〜2.00%、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Cr:0.10〜1.60%、V:0.10%超〜1.00%、Al:0.010〜0.500%、及びN:0.015%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなり、式(1)で定義されるMsが100〜220であり、式(2)で定義されるNfが0.5以下である化学組成を有する。
Ms=539−423C−30Mn−11Si−12Cr−7Mo−18Ni−18Cu (1)
Nf=(N/14)/(Al/27+Ti/46+Nb/93) (2)
ここで、式(1)及び式(2)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
【選択図】なし
Description
Ms=539−423C−30Mn−11Si−12Cr−7Mo−18Ni−18Cu (1)
Nf=(N/14)/(Al/27+Ti/46+Nb/93) (2)
ここで、式(1)及び式(2)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
上述のとおり、軸受部品の転動疲労寿命を高めるには、軸受部品の残留オーステナイト量を高めることが有効である。しかしながら、残留オーステナイト量が高すぎれば、鋼の強度が低下する。残留オーステナイト量が高すぎればさらに、残留オーステナイト粒が粗大になる。軸受として使用する環境下において、粗大な残留オーステナイトは応力によりマルテンサイトに変態しやすい。この場合、軸受部品の転動疲労寿命が低下する。
Ms=539−423C−30Mn−11Si−12Cr−7Mo−18Ni−18Cu (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。また、対応する元素が含有されていない場合、その元素記号には「0」が代入される。
上述のとおり、Si含有量を高め、焼戻しを250〜400℃の高温で実施することにより、残留オーステナイトが鋼中に微細に分散する。しかしながら、残留オーステナイトは、焼戻しマルテンサイトと比較して強度が低い。そのため、軸受部品の強度が低下し、軸受部品の転動疲労強度が低下する。
ここで、式(2)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。また、対応する元素が含有されていない場合、その元素記号には「0」が代入される。
Ms=539−423C−30Mn−11Si−12Cr−7Mo−18Ni−18Cu (1)
Nf=(N/14)/(Al/27+Ti/46+Nb/93) (2)
ここで、式(1)及び式(2)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
[化学組成]
本発明による軸受用鋼の化学組成は、次の元素を含有する。
炭素(C)は、鋼の強度を高める。Cはさらに、焼入れ後の残留オーステナイト量を高める。その結果、軸受部品の転動疲労寿命が高まる。C含有量が低すぎれば、これらの効果は得られない。一方、C含有量が高すぎれば、残留オーステナイト量が高くなりすぎ、鋼の強度が低下する。その結果、軸受部品の転動疲労寿命が低下する。したがって、C含有量は0.40〜1.00%である。C含有量の好ましい下限は0.50%であり、より好ましくは0.60%である。C含有量の好ましい上限は0.95%であり、より好ましくは0.90%である。
シリコン(Si)は、鋼の強度を高める。Siはさらに、高温焼戻し時の残留オーステナイト量の減少を抑制し、残留オーステナイト粒を微細化する。その結果、軸受部品の転動疲労寿命が高まる。Siはさらに、鋼のセメンタイトの生成量を抑制し、複合炭化物の生成量を高める。その結果、鋼の強度が高まる。Si含有量が低すぎれば、これらの効果は得られない。一方、Si含有量が高すぎれば、鋼が脆化する。したがって、Si含有量は0.75〜3.00%である。Si含有量の好ましい下限は1.00%であり、より好ましくは1.20%である。Si含有量の好ましい上限は2.50%であり、より好ましくは2.30%である。
マンガン(Mn)は、鋼の焼入れ性を高める。Mnはさらに、焼入れ後の残留オーステナイト量を高める。その結果、軸受部品の転動疲労寿命が高まる。Mn含有量が低すぎれば、これらの効果は得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、焼入れ後の残留オーステナイト量が高くなりすぎ、鋼の強度が低下する。その結果、軸受部品の転動疲労寿命が低下する。したがって、Mn含有量は0.30〜2.00%である。Mn含有量の好ましい下限は0.45%であり、より好ましくは0.65%である。Mn含有量の好ましい上限は1.50%であり、より好ましくは1.20%である。
燐(P)は不純物である。Pは鋼を脆化する。したがって、P含有量は0.015%以下である。P含有量の好ましい上限は0.012%であり、より好ましくは0.008%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。
硫黄(S)は不純物である。Sは鋼を脆化する。したがって、S含有量は0.015%以下である。S含有量の好ましい上限は0.012%であり、より好ましくは0.008%である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。
クロム(Cr)は、鋼の焼入れ性を高める。Crはさらに、焼入れ後の残留オーステナイト量を高める。その結果、軸受部品の転動疲労寿命が高まる。Crはさらに、Vと複合炭化物を形成し、鋼の強度を高める。Cr含有量が低すぎれば、これらの効果は得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば、焼入れ時に固溶しない粗大な析出物が生成する。そのため、軸受部品の転動疲労寿命が低下する。したがって、Cr含有量は0.10〜1.60%である。Cr含有量の好ましい下限は0.40%であり、より好ましくは0.60%である。Cr含有量の好ましい上限は1.40%であり、より好ましくは1.20%である。
バナジウム(V)は鋼の焼入れ性を高める。Vはさらに、焼入れ後の残留オーステナイト量を高める。その結果、軸受部品の転動疲労寿命が高まる。Vはさらに、Crと複合炭化物を形成し、鋼の強度を高める。V含有量が低すぎれば、これらの効果は得られない。一方、V含有量が高すぎれば、焼入れ時に固溶しない粗大な析出物が生成する。そのため、軸受部品の転動疲労寿命が低下する。したがって、V含有量は0.10%超〜1.00%である。V含有量の好ましい下限は0.14%であり、より好ましくは0.20%である。V含有量の好ましい上限は0.60%であり、より好ましくは0.40%である。
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。Alはさらに、鋼中の窒素(N)と結合してAlNを形成する。そのため、鋼中の固溶N量が低下し、複合炭化物が形成されやすくなる。その結果、鋼の強度が高まり、軸受部品の転動疲労強度が高まる。Al含有量が低すぎれば、これらの効果は得られない。一方、Al含有量が高すぎれば、粗大な酸化物系介在物が形成され、鋼が脆化する。したがって、Al含有量は0.010〜0.500%である。Al含有量の好ましい下限は0.015%であり、より好ましくは0.018%である。Al含有量の好ましい上限は0.10%であり、より好ましくは0.05%である。本明細書にいう「Al」含有量は「酸可溶Al」、つまり、「sol.Al」の含有量を意味する。
窒素(N)は不可避に含有される。NはAlやVと結合して鋼中で窒化物や炭窒化物を形成する。V窒化物及びV炭窒化物は熱的に安定であり、焼入れ時にオーステナイト中に固溶しにくい。そのため、V窒化物及びV炭窒化物は複合炭化物の形成を阻害する。その結果、鋼の強度が低下し、軸受部品の転動疲労寿命が低下する。したがって、N含有量は、0.015%以下である。N含有量の好ましい上限は0.0080%であり、より好ましくは0.0060%である。N含有量はなるべく低いほうが好ましい。
上述の軸受用鋼の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Mo、Cu、及び、Niからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも任意元素である。これらの元素はいずれも、鋼の焼入れ性を高め、焼入れ後の残留オーステナイト量を高める。
モリブデン(Mo)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Moは鋼の焼入れ性を高める。Moはさらに、焼入れ後の残留オーステナイト量を高める。その結果、軸受部品の転動疲労寿命が高まる。Moが少しでも含有されれば、これらの効果はある程度得られる。一方、Mo含有量が高すぎれば、焼入れ後の残留オーステナイト量が高くなりすぎ、鋼の強度が低下する。その結果、軸受部品の転動疲労強度が低下する。したがって、Mo含有量は0〜1.00%である。Mo含有量の好ましい下限は0.10%であり、より好ましくは0.20%である。Mo含有量の好ましい上限は0.80%であり、より好ましくは0.60%である。
銅(Cu)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Cuは鋼の焼入れ性を高める。Cuはさらに、焼入れ後の残留オーステナイト量を高める。その結果、軸受部品の転動疲労寿命が高まる。Cuが少しでも含有されれば、これらの効果はある程度得られる。しかしながら、Cu含有量が高すぎれば、焼入れ後の残留オーステナイト量が高くなりすぎ、鋼の強度が低下する。その結果、軸受部品の転動疲労強度が低下する。したがって、Cu含有量は0〜1.00%である。Cu含有量の好ましい下限は0.10%であり、より好ましくは0.20%である。Cu含有量の好ましい上限は0.80%であり、より好ましくは0.60%である。
ニッケル(Ni)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Niは鋼の焼入れ性を高める。Niはさらに、焼入れ後の残留オーステナイト量を高める。その結果、軸受部品の転動疲労寿命が高まる。Niが少しでも含有されれば、これらの効果はある程度得られる。しかしながら、Ni含有量が高すぎれば、焼入れ後の残留オーステナイト量が高くなりすぎ、鋼の強度が低下する。その結果、軸受部品の転動疲労強度が低下する。したがって、Ni含有量は0〜3.00%である。Ni含有量の好ましい下限は0.10%であり、より好ましくは0.20%であり、さらに好ましくは0.40%である。Ni含有量の好ましい上限は2.40%であり、より好ましくは1.60%である。
チタン(Ti)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Tiはピンニング効果によってオーステナイト結晶粒を微細化し、鋼の強度を高める。その結果、軸受部品の転動疲労寿命を高める。Tiはさらに、鋼中のNと結合し、TiNを形成する。そのため、複合炭化物の生成量が高まる。その結果、鋼の強度が高まり、軸受部品の転動疲労寿命が高まる。Tiが少しでも含有されれば、これらの効果はある程度得られる。しかしながら、Ti含有量が高すぎれば、鋼が脆化する。したがって、Ti含有量は0〜0.100%である。Ti含有量の好ましい下限は0.010%であり、より好ましくは0.030%である。Ti含有量の好ましい上限は0.070%であり、より好ましくは0.050%である。
ニオブ(Nb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Nbはピンニング効果によってオーステナイト結晶粒を微細化し、鋼の強度を高める。その結果、軸受部品の転動疲労寿命が高まる。Nbはさらに、鋼中のNと結合し、NbNを形成する。そのため、複合炭化物の生成量が高まる。その結果、鋼の強度が高まり、軸受部品の転動疲労寿命が高まる。Nbが少しでも含有されれば、これらの効果はある程度得られる。しかしながら、Nb含有量が高すぎれば、鋼が脆化する。したがって、Nb含有量は0〜0.100%である。Nb含有量の好ましい下限は0.010%であり、より好ましくは0.030%である。Nb含有量の好ましい上限は0.070%であり、より好ましくは0.050%である。
本発明の軸受用鋼の化学組成はさらに、式(1)で定義されるMsが100〜220である。
Ms=539−423C−30Mn−11Si−12Cr−7Mo−18Ni−18Cu (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。また、対応する元素が含有されていない場合、その元素記号には「0」が代入される。
本発明の軸受用鋼の化学組成はさらに、式(2)で定義されるNfが0.5以下である。
Nf=(N/14)/(Al/27+Ti/46+Nb/93) (2)
ここで、式(2)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。また、対応する元素が含有されていない場合、その元素記号には「0」が代入される。
上述の軸受用鋼、及び、軸受部品の製造方法の一例を説明する。
本発明による軸受用鋼の製造方法は、鋳造工程と、熱間加工工程とを備える。
鋳造工程では、上述の化学組成を有し、かつ、Msが100〜220、及びNfが0.5以下となる溶鋼を周知の方法で製造する。製造された溶鋼を用いて、連続鋳造法により鋳片(スラブ又はブルーム)にする。製造された溶鋼を用いて、造塊法により鋼塊(インゴット)にしてもよい。
熱間加工工程では、上記鋳造工程で製造された鋳片又は鋼塊に対して、1又は複数回の熱間加工を実施して棒鋼、線材、又は所望の形状の軸受用鋼材を製造する。熱間加工はたとえば熱間圧延である。複数回の熱間加工を実施する場合、たとえば、粗圧延と仕上げ圧延とを実施する。粗圧延ではたとえば、分塊圧延により鋳片又は鋼塊を鋼片(ビレット)にする。仕上げ圧延ではたとえば、複数の圧延スタンドが一列に並んだ連続圧延機を用いる。各圧延スタンドには、複数の圧延ロールが配置される。各圧延ロールには孔型が形成されている。連続圧延機を用いてビレットを熱間圧延し、棒鋼又は線材等の軸受用鋼材に製造する。上述の説明では熱間加工の一例として熱間圧延を説明した。しかしながら、熱間加工として、熱間鍛伸により棒鋼又は線材の軸受用鋼材を製造してもよい。
本発明による軸受部品は、上記の軸受用鋼を用いて製造される。以下、本発明の軸受部品について説明する。
本発明の軸受部品の製造方法は、中間品成形工程と、焼入れ工程と、焼戻し工程とを備える。
初めに、軸受用鋼材を用いて中間品を成形する。たとえば、軸受用鋼材に対して熱間鍛造を実施して、粗形状の中間品を製造する。さらに、中間品に対して機械加工を実施して、中間品を所定の形状にする。機械加工はたとえば、切削や穿孔である。
成形された中間品に対し、焼入れ処理を実施する。焼入れ処理の加熱温度は、900℃以上である。焼入れ処理の加熱温度が900℃以上であれば、V及びCrの固溶量が高まる。その結果、複合炭化物の析出量が高まり、鋼の強度が高まる。好ましい焼入れ処理の加熱温度は930℃以上である。続いて急冷し、焼入れ処理を実施する。焼入れ処理は、たとえば油冷である。焼入れ処理は、水冷であってもよい。
焼入れ後の中間品に対し、焼戻し処理を行う。焼戻し処理の加熱温度は、250〜400℃である。通常よりも高い温度で焼戻すことにより、複合炭化物の析出量が高まり、軸受部品の強度が高まる。高温で焼戻すことによりさらに、残留オーステナイト粒を微細化することができる。焼戻し処理の加熱温度が250℃未満であれば、これらの効果は得られない。一方、焼戻し処理の加熱温度が400℃を超えれば、残留オーステナイトが焼戻しマルテンサイトへと変態する。この場合、軸受部品の転動疲労強度が低下する。したがって、焼戻し処理の加熱温度は250〜400℃である。好ましい焼戻し処理の加熱温度の下限は280℃である。好ましい焼戻し処理の加熱温度の上限は360℃である。
本発明の軸受部品の表面のビッカース硬さは、670Hv以上である。軸受部品には高い荷重が負荷される。そのため、軸受部品には高い強度が要求される。したがって、本発明の軸受部品のビッカース硬さは、670Hv以上である。軸受部品のビッカース硬さは、焼戻し温度によって調整できる。好ましいビッカース硬さの下限は700Hvである。好ましいビッカース硬さの上限は800Hvであり、より好ましくは750Hvである。
本発明の軸受部品のミクロ組織は、体積分率で5.0〜40%の残留オーステナイトを含む。残部の相のうち最も体積分率の多い相は焼戻しマルテンサイトである。さらに、ミクロ組織において、0.2〜2.0μmの円相当径を有する残留オーステナイト粒の数密度は10個/100μm2以上である。円相当径とは、各残留オーステナイト粒の面積を、同じ面積を有する円に換算した場合の円の直径を意味する。
上述のとおり、残留オーステナイトは、軸受の転動疲労寿命を高める。残留オーステナイトは、焼入れ直後の鋼に最も多く含まれる。焼入れ直後の残留オーステナイト量はMsによって決定される。その後、焼戻しによって一部が焼戻しマルテンサイトへと変態する。
上述のとおり、微細に分散した残留オーステナイト粒は、応力によってマルテンサイトに変態しにくい。しかしながら、円相当径が2.0μmを超える残留オーステナイト粒は、応力誘起変態により容易にマルテンサイトに変態する。そのため、軸受部品として使用中、徐々に残留オーステナイトが減少し、転動疲労寿命が低下する。したがって、円相当径2.0μm以下の残留オーステナイトであれば、軸受部品の転動疲労寿命を高めることができる。なお、円相当径2.0μm以下の残留オーステナイト粒は、円相当径0.2μm以上であれば、客観的に計数できる。そこで、円相当径0.2〜2.0μmの残留オーステナイトを、本願発明の対象とする。
本発明の軸受部品は、鋼中において、150〜300nmの長径を有する炭化物の数密度が50個/100μm2以上である。本発明の軸受部品の鋼中には、炭化物として、V及びCrの複合炭化物と、セメンタイトと、その他炭化物とが含まれる。複合炭化物の長径は300nm以下である。一方、セメンタイトの長径は300nmを超える。さらに、その他炭化物の長径は150nm未満である。ところで、後述のSEM観察では、長径が150nm以上の炭化物を確実に確認できる。したがって、SEM観察で確認可能な150〜300nmの長径を有する炭化物は、複合炭化物を意味する。そこで、本発明では、150〜300nmの長径を有する炭化物の数密度を鋼の強度の指標とする。具体的には、鋼中に長径150〜300nmの炭化物の数密度が50個/100μm2以上であれば、鋼中に複合炭化物が十分に析出しているため、鋼の強度を高めることができる。
ノルマ処理後の丸棒を機械加工して、直径58mmのリング状の森式スラスト転動疲労試験片の粗形状の中間品を作製した。
森式スラスト転動疲労試験片に対して、次のミクロ組織観察、及び転動疲労試験を実施した。
ミクロ組織観察は、次の方法で実施した。各試験番号の転動疲労試験片に対し、上述のXRD2ピーク法を用いて残留オーステナイトの体積分率(%)を測定した。続いて上述の方法で、SEM観察を用いて各残留オーステナイト粒の円相当径(μm)を測定した。さらに、円相当径0.2〜2.0μmの残留オーステナイト粒を特定し、数密度(個/100μm2)を測定した。これらの結果を表2に示す。
上述の方法で、SEM観察を用いて炭化物の長径(nm)を測定した。さらに、長径150〜300nmの炭化物を特定し、数密度(個/100μm2)を測定した。この結果を表2に示す。
転動疲労試験は、次の方法で実施した。各試験番号の転動疲労試験片と、上レースとしての呼び番号#51305のスラスト軸受レースと、鋼球3球とを組み合わせて、転動疲労試験を実施した。具体的には、試験荷重を400kgf、最大面圧を5.23GPa、回転数を1200rpm、潤滑油をクリセフH8に浸漬した状態で、耐久回数を200×106とした試験を10回繰返した。ワイブルプロットから転動疲労寿命L10(×106cycles)を求めた。この結果を表2に示す。
表1、2を参照して、試験番号1〜18の化学組成は適切であり、Msは100〜220を満たし、Nfは0.50以下を満たした。そのため、残留オーステナイトの体積分率(%)、残留オーステナイトの数密度(個/100μm2)、及び、炭化物の数密度(個/100μm2)は本願発明の範囲内であった。その結果、転動疲労寿命L10(×106cycles)は50以上となり、優れた転動疲労寿命を示した。
Claims (4)
- 質量%で、
C:0.40〜1.00%、
Si:0.75〜3.00%、
Mn:0.30〜2.00%、
P:0.015%以下、
S:0.015%以下、
Cr:0.10〜1.60%、
V:0.10%超〜1.00%、
Al:0.010〜0.500%、
N:0.015%以下、
Mo:0〜1.00%、
Cu:0〜1.00%、
Ni:0〜3.00%、
Ti:0〜0.100%、及び、
Nb:0〜0.100%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
式(1)で定義されるMsが100〜220であり、
式(2)で定義されるNfが0.5以下である化学組成を有する、軸受用鋼。
Ms=539−423C−30Mn−11Si−12Cr−7Mo−18Ni−18Cu (1)
Nf=(N/14)/(Al/27+Ti/46+Nb/93) (2)
ここで、式(1)及び式(2)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。 - 請求項1に記載の軸受用鋼であって、
前記化学組成は、
Mo:0.10〜1.00%、
Cu:0.10〜1.00%、及び、
Ni:0.10〜3.00%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、軸受用鋼。 - 請求項1又は請求項2に記載の軸受用鋼であって、
前記化学組成は、
Ti:0.010〜0.100%、及び、
Nb:0.010〜0.100%からなる群から選択される1種以上を含有する、軸受用鋼。 - 軸受部品であって、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の化学組成を有し、
前記軸受部品の表面のビッカース硬さが670Hv以上であり、
前記軸受部品の組織は、体積分率で5〜40%の残留オーステナイトを含有し、残部の相のうち最大の体積分率を有する相は焼戻しマルテンサイトであり、
0.2〜2.0μmの円相当径を有する前記残留オーステナイト粒の数密度が10個/100μm2以上であり、
150〜300nmの長径を有する炭化物の数密度が50個/100μm2以上である、軸受部品。
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