JP2018193010A - 車両 - Google Patents

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Keizo Araki
敬造 荒木
水野 晃
Akira Mizuno
晃 水野
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Abstract

【課題】車体の幅方向の振動が大きくなることを抑制する。
【解決手段】
車両は、車両の幅方向に互いに離れて配置された一対の車輪を含むN個(Nは3以上の整数)の車輪であって、1個以上の前輪と1個以上の後輪とを含む、N個の車輪と、N個の車輪に連結された幅方向にロール可能な車体と、操作することで旋回方向と旋回の程度とを表す操作量が入力される操作入力部と、操作入力部へ入力される操作量に応じて、車体を車両の幅方向に傾斜させる傾斜部と、1個以上の前輪を、操作入力部に入力される操作量に拘わらず車体の傾斜の変化に追随して車体に対して左右方向に回動可能に支持する前輪支持部と、を備える。傾斜部は、車体の幅方向のロール振動に対する1個以上の前輪の舵角の振動の位相の遅れが90度未満になるようにロール振動を抑制するロール抑制部を含む。
【選択図】 図12

Description

本明細書は、車体を傾斜させて旋回する車両に関する。
曲線走行の際に、車両のフレームを傾斜させる技術が提案されている。例えば、前輪を有する前方フレームに、後輪を有する後方フレームが連結され、後方フレームが前方フレームに対して傾斜可能である車両が、提案されている。
特表2003−533403号公報
ところで、車体を傾斜させて走行する場合に、車体の幅方向の振動が大きくなる場合があった。例えば、車輪の舵角の変化によって、車体の幅方向の振動が大きくなる場合があった。
本明細書は、車体の幅方向の振動が大きくなることを抑制できる技術を開示する。
本明細書は、例えば、以下の適用例を開示する。
[適用例1]
車両であって、
前記車両の幅方向に互いに離れて配置された一対の車輪を含むN個(Nは3以上の整数)の車輪であって、1個以上の前輪と1個以上の後輪とを含む、N個の車輪と、
前記N個の車輪に連結された前記幅方向にロール可能な車体と、
操作することで旋回方向と旋回の程度とを表す操作量が入力される操作入力部と、
前記操作入力部へ入力される前記操作量に応じて、前記車体を前記車両の幅方向に傾斜させる傾斜部と、
前記1個以上の前輪を、前記操作入力部に入力される前記操作量に拘わらず前記車体の傾斜の変化に追随して前記車体に対して左右方向に回動可能に支持する前輪支持部と、
を備え、
前記傾斜部は、前記車体の前記幅方向のロール振動に対する前記1個以上の前輪の舵角の振動の位相の遅れが90度未満になるように前記ロール振動を抑制するロール抑制部を含む、
車両。
この構成によれば、傾斜部のロール抑制部によって、ロール振動に対する舵角の振動の位相の遅れが90度未満になるようにロール振動が抑制されるので、車体の幅方向の振動が大きくなることを抑制できる。
[適用例2]
適用例1に記載の車両であって、
前記ロール抑制部は、前記傾斜部による前記車体の傾斜角が特定の範囲内にある場合に、前記位相の遅れが90度未満になるように前記ロール振動を抑制する、
車両。
この構成によれば、車体の傾斜角が特定の範囲内にある場合に、車体の幅方向の振動が大きくなることを抑制できる。
[適用例3]
適用例2に記載の車両であって、
前記傾斜部は、前記傾斜角を、予め決められた許容範囲内に制限し、
前記傾斜角の前記特定の範囲は、前記許容範囲のうちの最も大きい大きさの傾斜角を含む予め決められた一部の範囲を含む、
車両。
この構成によれば、傾斜角の大きさが大きい場合に、車体の幅方向の振動が大きくなることを抑制できる。
[適用例4]
適用例2または3に記載の車両であって、
前記傾斜部は、前記傾斜角が、前記操作入力部に入力される前記操作量を用いて特定される目標傾斜角に近づくように、前記車体を傾斜させ、
前記傾斜角の前記特定の範囲は、前記目標傾斜角の大きさよりも許容幅以上大きい範囲を含む、
車両。
この構成によれば、傾斜角の大きさが目標傾斜角の大きさよりも許容幅以上大きい場合に、車体の幅方向の振動が大きくなることを抑制できる。
[適用例5]
適用例2から4のいずれかに記載の車両であって、
前記傾斜部は、
前記車体を前記車両の幅方向に傾斜させる傾斜機構と、
前記操作入力部へ入力される前記操作量に応じて前記傾斜機構を制御する傾斜制御部と、
を含み、
前記ロール抑制部は、前記傾斜制御部を含み、
前記傾斜制御部は、前記傾斜角が前記特定の範囲内にある場合には、前記傾斜角が前記特定の範囲外にある場合と比べて、前記傾斜機構による前記車体を傾斜させるトルクの大きさを小さくする、
車両。
この構成によれば、車体の傾斜角が特定の範囲内にある場合に、傾斜角の変化速度の増大が抑制されるので、車体の幅方向の振動が大きくなることを適切に抑制できる。
[適用例6]
適用例1から5のいずれかに記載の車両であって、
前記ロール抑制部は、前記操作入力部に入力される前記操作量の低周波数成分を通過させるローパスフィルタを含み、
前記傾斜部は、前記操作量の前記低周波数成分を用いることによって、前記車体を傾斜させる、
車両。
この構成によれば、操作量の低周波数成分を用いて車体が傾斜されるので、操作量の高周波数成分に起因する90度以上の位相の遅れが抑制される。この結果、車体の幅方向の振動が大きくなることを抑制できる。
[適用例7]
適用例6に記載の車両であって、
前記傾斜部は、前記ローパスフィルタの通過帯域を、前記車両の車速が遅い場合には、前記車速が速い場合と比べて、低周波数側にシフトさせる、帯域変更部を含む、
車両。
車速が遅い場合には、車速が速い場合と比べて、舵角の振動の位相が遅れ易い。上記構成によれば、車速が遅い場合には、車速が速い場合と比べて、ローパスフィルタの通過帯域が低周波数側にシフトされるので、操作量の高周波数成分に起因する90度以上の位相の遅れが抑制される。この結果、車体の幅方向の振動が大きくなることを抑制できる。
[適用例8]
適用例1から7のいずれかに記載の車両であって、
前記ロール抑制部は、前記操作入力部に入力される前記操作量の高周波数成分が強い場合には、前記操作量の前記高周波数成分が弱い場合と比べて、同じ操作量に対応付けられる前記車体の傾斜角の大きさを、小さくする、
車両。
この構成によれば、操作量の高周波数成分が強い場合には、同じ操作量に対応付けられる車体の傾斜角が小さくなるので、車体の幅方向の振動が大きくなることを抑制できる。
[適用例9]
適用例1から8のいずれかに記載の車両であって、
前記ロール抑制部は、前記車体のロールに対する抵抗力を前記車体に付与するダンパを含む、
車両。
この構成によれば、ダンパによって車体の高い周波数でのロールが抑制されるので、位相の遅れが90度未満になるようにロール振動が抑制される。この結果、車体の幅方向の振動が大きくなることを抑制できる。
[適用例10]
適用例1から9のいずれかに記載の車両であって、
前記前輪支持部は、前記1以上の前輪を回転可能に支持する支持部材を含み、
前記車両は、前記操作入力部と前記支持部材とを直接的または間接的に連結するとともに、前記1個以上の前輪が、前記操作入力部に入力される前記操作量に拘わらず前記車体の傾斜の変化に追随して前記車体に対して左右方向に回動することを許容する、弾性体を備える、
車両。
この構成によれば、ユーザは、操作入力部を操作することによって、1個以上の前輪の向きを修正できるので、走行安定性を向上できる。
なお、本明細書に開示の技術は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、車両、車両の制御装置、車両の制御方法、等の態様で実現することができる。
車両10の右側面図である。 車両10の上面図である。 車両10の下面図である。 車両10の背面図である。 車両10の状態を示す概略図である。 旋回時の力のバランスの説明図である。 舵角AFと旋回半径Rとの簡略化された関係を示す説明図である。 回転する前輪12Fに作用する力の説明図である。 ロール角Trの振動と舵角AFの振動との例を示すグラフである。 車両10の制御に関する構成を示すブロック図である。 制御処理の例を示すフローチャートである。 傾斜制御のための機能を示すブロック図である。 車速Vとカットオフ周波数fclとの関係を示すグラフである。 第1目標傾斜角T1の大きさと高周波数強度Shとの関係の例を示すグラフである。 指令値Cvによって表されるリーンモータ25のトルクtqと傾斜角Tとの関係の例を示すグラフである。 鉛直下方向DDを向いて見た車輪12F、12L、12Rの位置を示す説明図である。 トルクtqと第1目標傾斜角T1と傾斜角Tとの関係の例を示すグラフである。 ハンドル角Amを振動させる場合の傾斜角Tの振動の例を示すグラフである。 傾斜機構の別の実施例の説明図である。
A.第1実施例:
A1.車両10の構成:
図1〜図4は、一実施例としての車両10を示す説明図である。図1は、車両10の右側面図を示し、図2は、車両10の上面図を示し、図3は、車両10の下面図を示し、図4は、車両10の背面図を示している。図2〜図4では、図1に示す車両10の構成のうち、説明に用いる部分が図示され、他の部分の図示が省略されている。図1〜図4には、6つの方向DF、DB、DU、DD、DR、DLが示されている。前方向DFは、車両10の前進方向であり、後方向DBは、前方向DFの反対方向である。上方向DUは、鉛直上方向であり、下方向DDは、上方向DUの反対方向である。右方向DRは、前方向DFに走行する車両10から見た右方向であり、左方向DLは、右方向DRの反対方向である。方向DF、DB、DR、DLは、いずれも、水平な方向である。右と左の方向DR、DLは、前方向DFに垂直である。
本実施例では、この車両10は、一人乗り用の小型車両である。車両10(図1、図2)は、車体90と、車体90に連結された1つの前輪12Fと、車体90に連結され車両10の幅方向(すなわち、右方向DRに平行な方向)に互いに離れて配置された2つの後輪12L、12Rと、を有する三輪車である。前輪12Fは、左右方向に回動可能であり、車両10の幅方向の中心に配置されている。後輪12L、12Rは、駆動輪であり、車両10の幅方向の中心に対して対称に配置されている。
車体90(図1)は、本体部20を有している。本体部20は、前部20aと、底部20bと、後部20cと、支持部20dと、を有している。底部20bは、水平な方向(すなわち、上方向DUに垂直な方向)に拡がる板状の部分である。前部20aは、底部20bの前方向DF側の端部から前方向DF側かつ上方向DU側に向けて斜めに延びる板状の部分である。後部20cは、底部20bの後方向DB側の端部から後方向DB側かつ上方向DU側に向けて斜めに延びる板状の部分である。支持部20dは、後部20cの上端から後方向DBに向かって延びる板状の部分である。本体部20は、例えば、金属製のフレームと、フレームに固定されたパネルと、を有している。
車体90(図1)は、さらに、底部20b上に固定された座席11と、底部20b上の座席11よりも前方向DF側に配置されたアクセルペダル45とブレーキペダル46と、座席11の座面の下に配置され底部20bに固定された制御装置110と、底部20bのうちの制御装置110よりも下の部分に固定されたバッテリ120と、前部20aの前方向DF側の端部に固定された前輪支持装置41と、前輪支持装置41に取り付けられたシフトスイッチ47と、を有している。なお、図示を省略するが、本体部20には、他の部材(例えば、屋根、前照灯など)が固定され得る。車体90は、本体部20に固定された部材を含んでいる。
アクセルペダル45は、車両10を加速するためのペダルである。アクセルペダル45の踏み込み量(「アクセル操作量」とも呼ぶ)は、ユーザの望む加速力を表している。ブレーキペダル46は、車両10を減速するためのペダルである。ブレーキペダル46の踏み込み量(「ブレーキ操作量」とも呼ぶ)は、ユーザの望む減速力を表している。シフトスイッチ47は、車両10の走行モードを選択するためのスイッチである。本実施例では、「ドライブ」と「ニュートラル」と「リバース」と「パーキング」との4つの走行モードから1つを選択可能である。「ドライブ」は、駆動輪12L、12Rの駆動によって前進するモードであり、「ニュートラル」は、駆動輪12L、12Rが回転自在であるモードであり、「リバース」は、駆動輪12L、12Rの駆動によって後退するモードであり、「パーキング」は、少なくとも1つの車輪(例えば、後輪12L、12R)が回転不能であるモードである。
前輪支持装置41(図1)は、回動軸Ax1を中心に車両10の旋回方向に向けて前輪12Fを回動可能に支持する装置である。前輪支持装置41は、前輪12Fを回転可能に支持する前フォーク17と、回動軸Ax1を中心に前フォーク17(すなわち、前輪12F)を回動させる操舵モータ65と、を有している。また、車両10には、ユーザによる操作によってユーザの望む旋回方向と旋回の程度とが入力される操作入力部としてのハンドル41aが、設けられている。ハンドル41aには、ハンドル41aの回転軸に沿って延びる支持棒41axが、固定されている。支持棒41axは、回転軸に沿って回転可能に、前輪支持装置41に接続されている。また、車両10には、支持棒41axと前フォーク17とを連結する弾性体50が、設けられている。
前フォーク17(図1)は、例えば、サスペンション(コイルスプリングとショックアブソーバ)を内蔵したテレスコピックタイプのフォークである。操舵モータ65は、例えば、ステータとロータとを有する電気モータである。ステータとロータとのうちの一方は、本体部20に固定され、他方は、前フォーク17に固定されている。
ハンドル41a(図1)は、ハンドル41aの回転軸に沿って延びる支持棒41axを中心に回動可能である。ハンドル41aの回動方向(右、または、左)は、ユーザの望む旋回方向を示している。直進を示す所定方向からのハンドル41aの回動の程度(ここでは、回動角度。以下「ハンドル角」とも呼ぶ)は、ユーザの望む旋回の程度を示している。本実施例では、「ハンドル角=ゼロ」は、直進を示し、「ハンドル角>ゼロ」は、右旋回を示し、「ハンドル角<ゼロ」は、左旋回を示している。このように、ハンドル角の正負の違いは、旋回方向を示している。また、ハンドル角の絶対値は、旋回の程度を示している。このようなハンドル角は、ハンドル41aに入力される旋回方向と旋回の程度とを表す操作量の例である。
前輪舵角AFは、下方向DDを向いて車両10を見る場合に、前方向DFを基準とする、回転する前輪12Fの進行方向D12の角度である(以下、前輪舵角AFを、単に、舵角AFとも呼ぶ)。この進行方向D12は、前輪12Fの回転軸に垂直な方向である。本実施例では、「AF=ゼロ」は、「方向D12=前方向DF」を示し、「AF>ゼロ」は、旋回方向が右方向DRであること(すなわち、方向D12が右方向DR側を向いている)を示し、「AF<ゼロ」は、旋回方向が左方向DLであること(すなわち、方向D12が左方向DL側を向いている)を示している。制御装置110(図1)は、ユーザによってハンドル41aの向きが変更された場合に、前フォーク17の向き(すなわち、前輪12Fの舵角AF(図2))をハンドル41aの向きに合わせて変更するように、操舵モータ65を制御可能である。
また、前輪支持装置41の動作モードは、ハンドル41aに入力されるハンドル角に拘わらず前輪12Fの舵角AFが左右方向に回動できる状態で前輪12Fを支持する第1モードと、操舵モータ65によって舵角AFが制御される第2モードと、を含んでいる。第1モードの詳細については、後述する。
図1に示すように、本実施例では、車両10が水平な地面GL上に配置されている場合、前輪支持装置41の回動軸Ax1は、地面GLに対して斜めに傾斜しており、具体的には、回動軸Ax1に平行に下方向DD側へ向かう方向は、斜め前方を向いている。そして、前輪支持装置41の回動軸Ax1と地面GLとの交点P2は、前輪12Fの地面GLとの接触中心P1よりも、前方向DF側に位置している。図1、図3に示すように、接触中心P1は、前輪12Fと地面GLとの接触領域Ca1の中心である。接触領域の中心は、接触領域の重心の位置を示している。領域の重心は、領域内に質量が均等に分布していると仮定する場合の重心の位置である。これらの点P1、P2の間の後方向DBの距離Ltは、トレールと呼ばれる。正のトレールLtは、接触中心P1が交点P2よりも後方向DB側に位置していることを示している。また、鉛直上方向DUと、回動軸Ax1に沿って鉛直上方向DU側へ向かう方向と、のなす角度CAは、キャスター角とも呼ばれる。キャスター角CAがゼロよりも大きいことは、回動軸Ax1に沿って鉛直上方向DU側へ向かう方向が、斜め後ろに傾斜していることを、示している。
2つの後輪12L、12R(図4)は、後輪支持部80に回転可能に支持されている。後輪支持部80は、リンク機構30と、リンク機構30の上部に固定されたリーンモータ25と、リンク機構30の上部に固定された第1支持部82と、リンク機構30の前部に固定された第2支持部83(図1)と、を有している。図1では、説明のために、リンク機構30と第1支持部82と第2支持部83のうちの右後輪12Rに隠れている部分も実線で示されている。図2では、説明のために、本体部20に隠れている後輪支持部80と後輪12L、12Rと連結部75とが、実線で示されている。図1〜図3では、リンク機構30が簡略化して示されている。
第1支持部82(図4)は、リンク機構30の上方向DU側に配置されている。第1支持部82は、左後輪12Lの上方向DU側から、右後輪12Rの上方向DU側まで、右方向DRに平行に延びる板状の部分を含んでいる。第2支持部83(図1、図2)は、リンク機構30の前方向DF側の、左後輪12Lと右後輪12Rとの間に配置されている。
右後輪12R(図1)は、リムを有するホイール12Raと、ホイール12Raのリムに装着されたタイヤ12Rbと、を有している。ホイール12Ra(図4)は、右電気モータ51Rに接続されている。右電気モータ51Rは、ステータとロータとを有している(図示省略)。ロータとステータとのうちの一方は、ホイール12Raに固定され、他方は、後輪支持部80に固定されている。右電気モータ51Rの回転軸は、ホイール12Raの回転軸と同じであり、右方向DRに平行である。左後輪12Lの構成は、右後輪12Rの構成と、同様である。具体的には、左後輪12Lは、ホイール12Laとタイヤ12Lbとを有している。ホイール12Laは、左電気モータ51Lに接続されている。左電気モータ51Lのロータとステータとのうちの一方は、ホイール12Laに固定され、他方は、後輪支持部80に固定されている。これらの電気モータ51L、51Rは、後輪12L、12Rを直接的に駆動するインホイールモータである。
図1、図4には、車体90が傾斜せずに直立している状態(後述する傾斜角Tがゼロである状態)が、示されている。この状態で、左後輪12Lの回転軸ArLと右後輪12Rの回転軸ArRとは、同じ直線上に位置している。また、図1、図3には、右後輪12Rの地面GLとの接触中心PbRと、左後輪12Lの地面GLとの接触中心PbLと、が示されている。図3に示すように、右の接触中心PbRは、右後輪12Rと地面GLとの接触領域CaRの中心である。左の接触中心PbLは、左後輪12Lと地面GLとの接触領域CaLの中心である。図1の状態では、これらの接触中心PbR、PbLの前方向DFの位置は、おおよそ同じである。
リンク機構30(図4)は、いわゆる、平行リンクである。リンク機構30は、右方向DRに向かって順番に並ぶ3つの縦リンク部材33L、21、33Rと、下方向DDに向かって順番に並ぶ2つの横リンク部材31U、31Dと、を有している。縦リンク部材33L、21、33Rは、車両10の停止時には鉛直方向に平行である。横リンク部材31U、31Dは、車両10の停止時には水平方向に平行である。2つの縦リンク部材33L、33Rと、2つの横リンク部材31U、31Dとは、平行四辺形リンク機構を形成している。上横リンク部材31Uは、縦リンク部材33L、33Rの上端を連結している。下横リンク部材31Dは、縦リンク部材33L、33Rの下端を連結している。中縦リンク部材21は、横リンク部材31U、31Dの中央部分を連結している。これらのリンク部材33L、33R、31U、31D、21は、互いに回動可能に連結されており、回動軸は、前方向DFに平行である。左縦リンク部材33Lには、左電気モータ51Lが固定されている。右縦リンク部材33Rには、右電気モータ51Rが固定されている。中縦リンク部材21の上部には、第1支持部82と第2支持部83(図1)とが、固定されている。リンク部材33L、21、33R、31U、31Dと、支持部82、83とは、例えば、金属で形成されている。
リーンモータ25は、例えば、ステータとロータとを有する電気モータである。リーンモータ25のステータとロータのうちの一方は、中縦リンク部材21に固定され、他方は、上横リンク部材31Uに固定されている。リーンモータ25の回動軸は、これらのリンク部材31U、21の連結部分の回動軸と同じであり、車両10の幅方向の中心に位置している。リーンモータ25のロータがステータに対して回動すると、上横リンク部材31Uが、中縦リンク部材21に対して、傾斜する。これにより、車両10が傾斜する。以下、リーンモータ25によって生成されるトルク(本実施例では、中縦リンク部材21に対して上横リンク部材31Uを傾斜させるトルク)を、傾斜トルクとも呼ぶ。傾斜トルクは、車体90を傾斜させるトルクである。
図5は、車両10の状態を示す概略図である。図中には、車両10の簡略化された背面図が示されている。図5(A)は、車両10が直立している状態を示し、図5(B)は、車両10が傾斜している状態を示している。図5(A)に示すように、上横リンク部材31Uが中縦リンク部材21に対して直交する場合、全ての車輪12F、12L、12Rが、平らな地面GLに対して直立する。そして、車体90を含む車両10の全体は、地面GLに対して、直立する。図中の車両上方向DVUは、車両10の上方向である。車両10が傾斜していない状態では、車両上方向DVUは、上方向DUと同じである。なお、後述するように、車体90は、後輪支持部80に対して回動可能である。そこで、本実施例では、後輪支持部80の向き(具体的には、リンク機構30の動きの基準である中縦リンク部材21の向き)を、車両上方向DVUとして採用する。
図5(B)に示すように、上横リンク部材31Uが中縦リンク部材21に対して傾斜する場合、右後輪12Rと左後輪12Lとの一方が、車両上方向DVU側に移動し、他方は、車両上方向DVUとは反対方向側に移動する。すなわち、リンク機構30とリーンモータ25とは、幅方向に互いに離れて配置された一対の車輪12L、12Rの間の回転軸に垂直な方向の相対位置を変化させる。この結果、全ての車輪12F、12L、12Rが地面GLに接触した状態で、これらの車輪12F、12L、12Rは、地面GLに対して傾斜する。そして、車体90を含む車両10の全体は、地面GLに対して、傾斜する。図5(B)の例では、右後輪12Rが車両上方向DVU側に移動し、左後輪12Lが反対側に移動している。この結果、車輪12F、12L、12R、ひいては、車体90を含む車両10の全体は、右方向DR側に、傾斜する。後述するように、車両10が右方向DR側に旋回する場合に、車両10は、右方向DR側に傾斜する。車両10が左方向DL側に旋回する場合に、車両10は、左方向DL側に傾斜する。
図5(B)では、車両上方向DVUは、上方向DUに対して、右方向DR側に傾斜している。以下、前方向DFを向いて車両10を見る場合の、上方向DUと車両上方向DVUとの間の角度を、傾斜角Tと呼ぶ。ここで、「T>ゼロ」は、右方向DR側への傾斜を示し、「T<ゼロ」は、左方向DL側への傾斜を示している。車両10が傾斜する場合、車体90も、おおよそ、同じ方向に傾斜する。車両10の傾斜角Tは、車体90の傾斜角Tということができる。
なお、リーンモータ25は、リーンモータ25を回動不能に固定する図示しないロック機構を有している。ロック機構を作動させることによって、上横リンク部材31Uは、中縦リンク部材21に対して回動不能に固定される。この結果、傾斜角Tが固定される。例えば、車両10の駐車時に、傾斜角Tはゼロに固定される。ロック機構としては、メカニカルな機構であって、リーンモータ25(ひいては、リンク機構30)を固定している最中に電力を消費しない機構が好ましい。
図5(A)、図5(B)には、傾斜軸AxLが示されている。傾斜軸AxLは、地面GL上に位置している。リンク機構30とリーンモータ25とは、車両10を、傾斜軸AxLを中心に、右と左とに傾斜させることができる。本実施例では、傾斜軸AxLは、地面GL上に位置しており、前輪12Fと地面GLとの接触中心P1を通り前方向DFに平行な直線である。後輪12L、12Rを回転可能に支持するリンク機構30と、リンク機構30を作動させるアクチュエータとしてのリーンモータ25とは、車体90を車両10の幅方向に傾斜させる傾斜機構89を構成する。傾斜角Tは、傾斜機構89による傾斜角である。
車体90(具体的には、本体部20)は、図1、図5(A)、図5(B)に示すように、後方向DB側から前方向DF側に向かって延びるロール軸AxRを中心に回動可能に、後輪支持部80に連結されている。図2、図4に示すように、本実施例では、本体部20は、サスペンションシステム70と連結部75とによって、後輪支持部80に連結されている。サスペンションシステム70は、左サスペンション70Lと、右サスペンション70Rと、を有している。本実施例では、各サスペンション70L、70Rは、コイルスプリングとショックアブソーバとを内蔵するテレスコピックタイプのサスペンションである。各サスペンション70L、70Rは、各サスペンション70L、70Rの中心軸70La、70Ra(図4)に沿って、伸縮可能である。図4に示すように車両10が直立している状態では、各サスペンション70L、70Rの中心軸は、鉛直方向におおよそ平行である。サスペンション70L、70Rの上端部は、第1軸方向(例えば、前方向DF)に平行な回動軸を中心に回動可能に本体部20の支持部20dに連結されている。サスペンション70L、70Rの下端部は、第2軸方向(例えば、右方向DR)に平行な回動軸を中心に回動可能に後輪支持部80の第1支持部82に連結されている。なお、サスペンション70L、70Rと他の部材との連結部分の構成は、他の種々の構成であってもよい(例えば、玉継ぎ手)。
連結部75は、図1、図2に示すように、前方向DFに延びる棒である。連結部75は、車両10の幅方向の中心に配置されている。連結部75の前方向DF側の端部は、本体部20の後部20cに連結されている。連結部分の構成は、例えば、玉継ぎ手である。連結部75は、後部20cに対して、予め決められた範囲内で、任意の方向に動くことができる。連結部75の後方向DB側の端部は、後輪支持部80の第2支持部83に連結されている。連結部分の構成は、例えば、玉継ぎ手である。連結部75は、第2支持部83に対して、予め決められた範囲内で、任意の方向に動くことができる。
このように、本体部20(ひいては、車体90)は、サスペンションシステム70と連結部75とを介して、後輪支持部80に連結されている。車体90は、後輪支持部80に対して、動くことが可能である。図1のロール軸AxRは、車体90が後輪支持部80に対して右方向DRまたは左方向DLに回動する場合の中心軸を示している。本実施例では、ロール軸AxRは、前輪12Fと地面GLとの接触中心P1と、連結部75の近傍と、を通る直線である。車体90は、サスペンション70L、70Rの伸縮によって、ロール軸AxRを中心に、幅方向に回動可能である。なお、本実施例では、傾斜機構89による傾斜の傾斜軸AxLは、ロール軸AxRと異なっている。
図5(A)、図5(B)には、ロール軸AxRを中心に回動する車体90が、点線で示されている。図中のロール軸AxRは、サスペンション70L、70Rを含み前方向DFに垂直な平面上のロール軸AxRの位置を示している。図5(B)に示すように、車両10が傾斜した状態においても、車体90は、さらに、ロール軸AxRを中心に、右方向DRと左方向DLとに回動可能である。
図中の車体上方向DBUは、車体90の上方向である。車体90が後輪支持部80に対して傾斜していない場合、車体上方向DBUは、車両上方向DVUと同じである。図5(A)に示すように、車両10が傾斜しておらず、かつ、車体90が後輪支持部80に対して傾斜していない場合、車体上方向DBUは、上方向DUと同じである。車体90は、ロール軸AxRを中心に、後輪支持部80に対して、右と左とに回動し得る。この場合、車体上方向DBUは、車両上方向DVUに対して右と左とに傾斜し得る。このような車体90の傾斜は、図5(A)のように車両10が傾斜していない場合と、図5(B)のように車両10が傾斜する場合と、のそれぞれにおいて、生じ得る。例えば、地面GL上を走行する車両10は、地面GLの凹凸に応じて、振動し得る。この振動に起因して、車体90は、後輪支持部80に対して、車両の幅方向に、回動(ひいては、振動)し得る。以下、前方向DFを向いて車両10を見る場合の、上方向DUと車体上方向DBUとの間の角度を、ロール角Trと呼ぶ。ここで、「Tr>ゼロ」は、右方向DR側への傾斜を示し、「Tr<ゼロ」は、左方向DL側への傾斜を示している。ロール角Trは、傾斜角Tとは異なる値であり得る。
車体90は、後輪支持部80による回動と、サスペンションシステム70と連結部75とによる回動と、によって、鉛直上方向DU(ひいては、地面GL)に対して、車両10の幅方向に回動し得る。このように、車両10の全体を総合して実現される車体90の幅方向の回動を、ロールとも呼ぶ。本実施例では、車体90のロールは、主に、後輪支持部80とサスペンションシステム70と連結部75との全体を通じて引き起こされる。また、車体90やタイヤ12Rb、12Lbなどの車両10の部材の変形によっても、ロールは生じる。
図1、図5(A)、図5(B)には、重心90cが示されている。この重心90cは、満載状態での車体90の重心である。満載状態は、車両10が、車両10の総重量が許容される車両総重量になるように、乗員(可能なら荷物も)を積んだ状態である。例えば、荷物の最大重量は規定されず、最大定員数が規定される場合がある。この場合、重心90cは、車両10に対応付けられた最大定員数の乗員が車両10に搭乗した状態の重心である。乗員の体重としては、最大定員数に予め対応付けられた基準体重(例えば、55kg)が採用される。また、最大定員数に加えて、荷物の最大重量が規定される場合がある。この場合、重心90cは、最大定員数の乗員と、最大重量の荷物と、を積んだ状態での、車体90の重心である。
図示するように、本実施例では、重心90cは、ロール軸AxRの下方向DD側に配置されている。従って、車体90がロール軸AxRを中心に振動する場合に、振動の振幅が過度に大きくなることを抑制できる。本実施例では、重心90cをロール軸AxRの下方向DD側に配置するために、車体90(図1)の要素のうち比較的重い要素であるバッテリ120が、低い位置に配置されている。具体的には、バッテリ120は、車体90の本体部20のうちの最も低い部分である底部20bに固定されている。従って、重心90cを、容易に、ロール軸AxRよりも低くできる。
図6は、旋回時の力のバランスの説明図である。図中には、旋回方向が右方向である場合の後輪12L、12Rの背面図が示されている。後述するように、旋回方向が右方向である場合、制御装置110(図1)は、後輪12L、12R(ひいては、車両10)が地面GLに対して右方向DRに傾斜するように、リーンモータ25を制御する場合がある。
図中の第1力F1は、車体90に作用する遠心力である。第2力F2は、車体90に作用する重力である。ここで、車体90の質量をm(kg)とし、重力加速度をg(おおよそ、9.8m/s)とし、鉛直方向に対する車両10の傾斜角をT(度)とし、旋回時の車両10の速度をV(m/s)とし、旋回半径をR(m)とする。第1力F1と第2力F2とは、以下の式1、式2で表される。
F1 = (m*V)/R (式1)
F2 = m*g (式2)
ここで、*は、乗算記号(以下、同じ)。
また、図中の力F1bは、第1力F1の、車両上方向DVUに垂直な方向の成分である。力F2bは、第2力F2の、車両上方向DVUに垂直な方向の成分である。力F1bと力F2bとは、以下の式3、式4で表される。
F1b = F1*cos(T) (式3)
F2b = F2*sin(T) (式4)
ここで、「cos()」は、余弦関数であり、「sin()」は、正弦関数である(以下、同じ)。
力F1bは、車両上方向DVUを左方向DL側に回動させる成分であり、力F2bは、車両上方向DVUを右方向DR側に回動させる成分である。車両10が傾斜角T(さらには、速度Vと旋回半径R)を保ちつつ安定して旋回を続ける場合には、F1bとF2bとの関係は、以下の式5で表される
F1b = F2b (式5)
式5に上記の式1〜式4を代入すると、旋回半径Rは、以下の式6で表される。
R = V/(g*tan(T)) (式6)
ここで、「tan()」は、正接関数である(以下、同じ)。
式6は、車体90の質量mに依存せずに、成立する。ここで、式6の「T」を、左方向と右方向とを区別せずに傾斜角の大きさを表すパラメータTa(ここでは、傾斜角Tの絶対値)に置換することによって得られる以下の式6aは、車体90の傾斜方向に拘わらずに、成立する。
R = V/(g*tan(Ta)) (式6a)
図7は、舵角AFと旋回半径Rとの簡略化された関係を示す説明図である。図中には、下方向DDを向いて見た車輪12F、12L、12Rが示されている。図中では、前輪12Fは、右方向DRに回動しており、車両10は、右方向DRに旋回する。図中の前中心Cfは、前輪12Fの中心である。前中心Cfは、前輪12Fの回転軸上に位置している。下方向DDを向いて車両10を見る場合、前中心Cfは、接触中心P1(図1)とおおよそ同じ位置に位置している。後中心Cbは、2つの後輪12L、12Rの中心である。車体90が傾斜していない場合、後中心Cbは、後輪12L、12Rの回転軸上の、後輪12L、12Rの間の中央に位置している。下方向DDを向いて車両10を見る場合、後中心Cbの位置は、2個の後輪12L、12Rの接触中心PbL、PbRの間の中央の位置と、同じである。中心Crは、旋回の中心である(旋回中心Crと呼ぶ)。ホイールベースLhは、前中心Cfと後中心Cbとの間の前方向DFの距離である。図1に示すように、ホイールベースLhは、前輪12Fの回転軸と、後輪12L、12Rの回転軸との間の前方向DFの距離である。
図7に示すように、前中心Cfと後中心Cbと旋回中心Crとは、直角三角形を形成する。点Cbの内角は、90度である。点Crの内角は、舵角AFと同じである。従って、舵角AFと旋回半径Rとの関係は、以下の式7で表される。
AF = arctan(Lh/R) (式7)
ここで「arctan()」は、正接関数の逆関数である(以下、同じ)。
なお、現実の車両10の挙動と、図7の簡略化された挙動と、の間には、種々の差異が存在する。例えば、現実の車輪12F、12L、12Rは、地面GLに対して滑り得る。また、現実の前輪12Fと後輪12L、12Rは、傾斜する。従って、現実の旋回半径は、式7の旋回半径Rと異なり得る。ただし、式7は、舵角AFと旋回半径Rとの関係を示す良い近似式として、利用可能である。
前進中に図5(B)のように車両10が右方向DR側へ傾斜した場合、車体90の重心90cが右方向DR側へ移動するので、車両10の進行方向は、右方向DR側へ変化する。これにより、前輪支持装置41(図1)(ひいては、回動軸Ax1(図5(B)))も、右方向DR側へ移動する。一方、前輪12Fと地面GLとの接触中心P1は、摩擦によって、直ぐに右方向DR側へ移動することはできない。そして、本実施例では、図1で説明したように、前輪12Fは、正のトレールLtを有する。すなわち、接触中心P1は、回動軸Ax1と地面GLとの交点P2よりも、後方向DB側に位置している。これらの結果、前進中に車両10が右方向DR側へ傾斜した場合、前輪12Fの向き(すなわち、進行方向D12(図2))は、自然に、車両10の新たな進行方向、すなわち、傾斜方向(図5(B)の例では、右方向DR)に、回動可能である。図5(B)中の回動方向RFは、車体90が右方向DR側へ傾斜する場合の、回動軸Ax1を中心とする前輪12Fの回動方向を示している。前輪支持装置41が第1モードで動作している場合には、前輪12Fの向きは、傾斜角Tの変更開始に続いて、自然に、傾斜方向に回動する。そして、車両10は、傾斜方向に向かって、旋回する。
また、旋回半径が上記の式6(ひいては、式6a)で表される旋回半径Rと同じである場合には、力F1b、F2b(図6、式5)が釣り合うので、車両10の挙動の安定性が向上する。傾斜角Tで旋回する車両10は、式6で表される旋回半径Rで旋回しようとする。また、車両10が正のトレールLtを有するので、前輪12Fの進行方向D12は、自然に、車両10の進行方向と同じになる。従って、車両10が傾斜角Tで旋回する場合、左右方向に回動できる前輪12Fの向き(すなわち、舵角AF)は、式6で表される旋回半径Rと、式7と、から特定される舵角AFの向きに、落ち着き得る。このように、舵角AFは、車体90の傾斜に追随して、変化する。
このように、第1モードで動作している前輪支持装置41は、ハンドル41aに入力される情報に拘わらず車体90の傾斜の変化に追随して車体90に対して左右方向に回動可能に前輪12Fを支持している。例えば、ハンドル41aが直進を示す所定方向を向いた状態に維持される場合であっても、車体90の傾斜角Tが右方向に変化する場合には、前輪12Fは、傾斜角Tの変化に追随して、右方向に回動し得る(すなわち、舵角AFは、右方向に変化し得る)。
なお、図1で説明したように、ハンドル41aに固定された支持棒41axと、前輪12Fを回転可能に支持する支持部材の例である前フォーク17とは、弾性体50で連結されている。すなわち、弾性体50は、ハンドル41aと前フォーク17とを、支持棒41axを介して間接的に、連結している。本実施例では、弾性体50は、コイルバネである。ユーザがハンドル41aを右または左に回動させる場合、ハンドル41aにユーザによって印加された右向きまたは左向きの力は、弾性体50を介して、前フォーク17へ伝達される。すなわち、ユーザは、ハンドル41aを操作することによって、前フォーク17、ひいては、前輪12Fに、右向きまたは左向きの力を、印加できる。これにより、ユーザは、前輪12Fが意図する方向を向かない場合(すなわち、舵角AFが意図する角度と異なる場合)、ハンドル41aを操作することによって、前輪12Fの向き(すなわち、舵角AF)を修正できる。これにより、走行安定性を向上できる。例えば、路面の凹凸や風などの外部の要因に応じて、舵角AFが変化する場合に、ユーザは、ハンドル41aを操作することによって、舵角AFを修正できる。
なお、弾性体50は、支持棒41axと前フォーク17とを緩く連結する。例えば、弾性体50のバネ定数は、十分に小さい値に設定されている。このような弾性体50は、前輪支持装置41が第1モードで動作している場合に、ハンドル41aに入力されるハンドル角に拘わらず前輪12Fが車体90の傾斜の変化に追随して車体90に対して左右方向に回動することを、許容する。従って、舵角AFは傾斜角Tに適した舵角に変化できるので、走行安定性が向上する。なお、弾性体50が、緩い連結を実現する場合、すなわち、前輪12Fの上記のような回動を許容する場合、車両10は、以下のように動作し得る。例えば、ハンドル41aが左方向に回動される場合であっても、車体90が右方向に傾斜する場合には、前輪12Fは、右方向に回動し得る。また、アスファルト舗装された平らで乾燥した道路上に車両10が停止している状態で、ハンドル41aを右と左とに回動させる場合に、ハンドル角と舵角AFとの一対一の関係は維持されない。ハンドル41aに印加される力は、弾性体50を介して、前フォーク17に伝達されるので、舵角AFは、ハンドル角の変化に応じて、変化し得る。ただし、ハンドル角が1つの特定の値になるようにハンドル41aの向きが調整された時の舵角AFは、1つの値に固定されず、変化し得る。例えば、ハンドル41aと前輪12Fとの両方が直進方向を向く状態で、ハンドル41aが右方向に回動される。これにより、前輪12Fは、右を向く。この後に、ハンドル41aが再び直進方向に戻される。ここで、前輪12Fは、直進方向を向かず、右を向いた状態に、維持され得る。また、ハンドル41aを右または左に回動させたとしても、車両10は、ハンドル41aの方向に旋回できない場合がある。また、車両10が停止している場合には、車両10が走行している場合と比べて、ハンドル角の変化量に対する舵角AFの変化量が小さい場合がある。
なお、弾性体50は、ハンドル41aに直接的に接続され、そして、ハンドル41aと前フォーク17とを直接的に連結してもよい。また、弾性体50は、弾性変形可能な他の種類の部材であってよい。弾性体50は、例えば、トーションバネ、ゴム等の種々の弾性体であってよい。また、弾性体50が省略されてもよい。
また、本実施例では、車体90が傾斜する場合に、前輪12Fには、トレールLtに依存せずに、舵角AFを傾斜方向に回動させる力が作用する。図8は、回転する前輪12Fに作用する力の説明図である。図中には、前輪12Fの斜視図が示されている。図8の例では、前輪12Fの方向D12は、前方向DFと同じである。回転軸Ax2は、前輪12Fの回転軸である。車両10が前進する場合、前輪12Fは、この回転軸Ax2を中心に、回転する。図中には、前輪支持装置41(図1)の回動軸Ax1と、前軸Ax3とが示されている。回動軸Ax1は、上方向DU側から下方向DD側に向かって延びている。前軸Ax3は、前輪12Fの重心12Fcを通り、前輪12Fの方向D12に平行な軸である。なお、前輪12Fの回転軸Ax2も、前輪12Fの重心12Fcを通っている。
図1等で説明したように、本実施例では、前輪12Fを支持する前輪支持装置41は、車体90に固定されている。従って、車体90が傾斜する場合には、前輪支持装置41が車体90とともに傾斜するので、前輪12Fの回転軸Ax2も、同様に、同じ方向へ傾斜しようとする。走行中の車両10の車体90が右方向DR側に傾斜する場合、回転軸Ax2を中心に回転する前輪12Fに、右方向DR側へ傾斜させるトルクTq1(図8)が作用する。このトルクTq1は、前軸Ax3を中心に前輪12Fを右方向DR側へ傾斜させようとする力の成分を含んでいる。このように、回転する物体に外部トルクが印加される場合の物体の運動は、歳差運動として知られている。例えば、回転する物体は、回転軸と外部トルクの軸とに垂直な軸を中心に、回動する。図8の例では、トルクTq1の印加によって、回転する前輪12Fは、前輪支持装置41の回動軸Ax1を中心に右方向DR側へ回動する。このように、回転する前輪12Fの角運動量に起因して、前輪12Fの方向(すなわち、舵角AF)は、車体90の傾斜に追随して変化する。
以上、車両10が右方向DR側に傾斜する場合について説明した。車両10が左方向DL側に傾斜する場合も、同様である。
車両10が、右旋回と左旋回とを繰り返す場合、傾斜角Tは、右と左との間で振動する。これにより、車体90の向きである車体上方向DBUも、右と左との間で振動する。舵角AFは、車体90の振動に追随して、振動し得る。具体的には、舵角AFは、車体90のロール角Tr(図5(A)、図5(B))の振動に追随して、振動し得る。
図9は、ロール角Trの振動と舵角AFの振動との例を示すグラフである。横軸は、時間TMを示し、縦軸は、ロール角Trと舵角AFを示している。グラフGTrは、ロール角Trの振動の例を示し、グラフGAF1、GAF2は、それぞれ、舵角AFの振動の例を示している。これらのグラフGAF1、GAF2によって示されるように、舵角AFは、ロール角Trの振動に追随して振動している。また、舵角AFの振動の位相は、ロール角Trの振動の位相から、遅れている。以下、ロール角Trの振動に対する舵角AFの振動の位相の遅れ量を、「舵角遅延位相差」、または、単に、「遅延位相差」とも呼ぶ。図中の遅延位相差Dpa1、Dpa2は、ロール角Trからの舵角AFの位相の遅れ量を示している。第1グラフGAF1の遅延位相差Dpa1は、第2グラフGAF2の遅延位相差Dpa2よりも、小さい。図中では、グラフを見やすくするために、舵角AFの振幅が、ロール角Trの振幅と同じ振幅で示されている。実際には、舵角AFの振幅は、ロール角Trの振幅と異なり得る。
舵角AFの変化の遅れは、種々の原因に起因して生じ得る。例えば、前輪12Fの向き(すなわち、舵角AF)の変化は、前輪支持装置41の回動軸Ax1を中心に前輪12Fとともに回動する部材(例えば、前フォーク17)の慣性モーメントによって、抑制される。また、回動軸Ax1を中心とする回動の抵抗(例えば、摩擦)によって、舵角AFの変化が抑制される。これらの結果、舵角AFの変化が、ロール角Trの変化に対して遅れ得る。また、車両10の進行方向の変化は、車両10の旋回に関する慣性モーメント(ヨーモーメントとも呼ばれる)によって抑制される。この結果、進行方向の変化が、ロール角Trの変化に対して遅れ得る。そして、進行方向の変化の遅れによって、舵角AFの変化が遅れ得る。また、ユーザが、ハンドル41aを左右方向に高い周波数で振動させる場合、傾斜角Tも、左右方向に高い周波数で振動し得る。このような場合に、舵角AFの変化の遅れが、大きくなり得る。
遅延位相差が90度である場合、右と左との間で回動する前輪12Fは、車体90の振動の振幅を増大させ得る。図9の第2グラフGAF2は、遅延位相差Dpa2が90度である場合を示している。図中には、2つの状態Sa、Sbが、示されている。第1状態Saは、車体90が、最大振幅(最大のロール角Tr)で右方向DRに傾斜した状態である。第2状態Sbは、車体90が、第1状態Saから、左方向DLに向かって回動し、ロール角Trがゼロ度になった状態である。この第2状態Sbで、車体90の振動の角速度は、最も速い。一方、舵角AFはロール角Trから90度遅れているので、この第2状態Sbで、舵角AF(第2グラフGAF2)は、最大振幅(最大の舵角AF)で右方向DRを向いている。このような舵角AFの前輪12Fは、車両10を右方向DRへ旋回させるので、車体90には、左方向DLを向いた遠心力が働く。このように左に向かって最大の角速度で回動する車体90に、さらに、左方向DLを向いた遠心力が働く。この結果、車体90の振動の振幅が増大し得る。車体90の振動の振幅の増大は、車両10の走行安定性を低下させる場合があった。例えば、走行中に、車体90が意図せず振動する場合があった。そこで、本実施例では、制御装置110(図1)は、車体90の振動が大きくなることを抑制するように、車両10を制御する。
A2.車両10の制御:
図10は、車両10の制御に関する構成を示すブロック図である。車両10は、制御に関する構成として、車速センサ122と、ハンドル角センサ123と、前輪舵角センサ124と、リーン角センサ125と、アクセルペダルセンサ145と、ブレーキペダルセンサ146と、シフトスイッチ47と、制御装置110と、右電気モータ51Rと、左電気モータ51Lと、リーンモータ25と、操舵モータ65と、を有している。
車速センサ122は、車両10の車速を検出するセンサである。本実施例では、車速センサ122は、前フォーク17(図1)の下端に取り付けられており、前輪12Fの回転速度、すなわち、車速を検出する。
ハンドル角センサ123は、ハンドル41aの向き(すなわち、ハンドル角)を検出するセンサである。本実施例では、ハンドル角センサ123は、ハンドル41a(図1)に固定された支持棒41axに取り付けられている。
前輪舵角センサ124は、前輪12Fの前輪舵角AFを検出するセンサである(以下、単に、舵角センサ124とも呼ぶ)。本実施例では、舵角センサ124は、操舵モータ65(図1)に取り付けられている。
リーン角センサ125は、傾斜角Tを検出するセンサである。リーン角センサ125は、リーンモータ25に取り付けられている(図4)。上述したように、中縦リンク部材21に対する上横リンク部材31Uの向きが、傾斜角Tに対応している。リーン角センサ125は、中縦リンク部材21に対する上横リンク部材31Uの向き、すなわち、傾斜角Tを検出する。
アクセルペダルセンサ145は、アクセル操作量を検出するセンサである。本実施例では、アクセルペダルセンサ145は、アクセルペダル45(図1)に取り付けられている。ブレーキペダルセンサ146は、ブレーキ操作量を検出するセンサである。本実施例では、ブレーキペダルセンサ146は、ブレーキペダル46(図1)に取り付けられている。
なお、各センサ122、123、124、125、145、146は、例えば、レゾルバ、または、エンコーダを用いて構成されている。
制御装置110は、主制御部100と、駆動装置制御部101と、リーンモータ制御部102と、操舵モータ制御部103と、を有している。制御装置110は、バッテリ120(図1)からの電力を用いて動作する。制御部100、101、102、103は、それぞれ、コンピュータを有している。各コンピュータは、プロセッサ(例えば、CPU)と、揮発性記憶装置(例えば、DRAM)と、不揮発性記憶装置(例えば、フラッシュメモリ)と、を有している。不揮発性記憶装置には、制御部の動作のためのプログラムが、予め格納されている(図示省略)。プロセッサは、プログラムを実行することによって、種々の処理を実行する。
主制御部100のプロセッサは、センサ122、123、124、125、145、146とシフトスイッチ47とからの信号を受信し、受信した信号に応じて車両10を制御する。具体的には、主制御部100のプロセッサは、駆動装置制御部101とリーンモータ制御部102と操舵モータ制御部103とに指示を出力することによって、車両10を制御する(詳細は後述)。
駆動装置制御部101のプロセッサは、主制御部100からの指示に従って、電気モータ51L、51Rを制御する。リーンモータ制御部102のプロセッサは、主制御部100からの指示に従って、リーンモータ25を制御する。操舵モータ制御部103のプロセッサは、主制御部100からの指示に従って、操舵モータ65を制御する。これらの制御部101、102、103は、それぞれ、制御対象のモータ51L、51R、25、65にバッテリ120からの電力を供給する電気回路(例えば、インバータ回路)を有している。
以下、制御部のプロセッサが処理を実行することを、単に、制御部が処理を実行する、とも表現する。
図11は、制御装置110(図10)によって実行される制御処理の例を示すフローチャートである。図11のフローチャートは、後輪支持部80と前輪支持装置41との制御の手順を示している。図10の実施例では、制御装置110は、車速Vが、予め決められた閾値Vth以上である場合には、前輪12Fが車体90の傾斜に追随して変化するように前輪12Fを支持する第1モードで前輪支持装置41を動作させる。車速Vが閾値Vth未満である場合、制御装置110は、前輪12Fの方向(すなわち、舵角AF)を能動的に制御する第2モードで前輪支持装置41を動作させる。また、制御装置110は、車速Vが閾値Vth以上である場合と閾値Vth未満である場合とのそれぞれにおいて、車両10を傾斜させるリーン制御を行う。図11では、各処理に、文字「S」と、文字「S」に続く数字と、を組み合わせた符号が、付されている。
S100では、主制御部100は、センサ122、123、124、125、145、146とシフトスイッチ47とからの信号を取得する。これにより、主制御部100は、速度Vとハンドル角と舵角AFと傾斜角Tとアクセル操作量とブレーキ操作量と走行モードとを、特定する。
S110では、主制御部100は、前輪支持装置41を第1モードで動作させるための条件が満たされるか否かを判断する(以下「解放条件」と呼ぶ)。本実施例では、解放条件は、「走行モードが「ドライブ」または「ニュートラル」であり、かつ、速度Vが閾値Vth以上である」である。閾値Vthは、ゼロよりも大きく、例えば、15km/hである。車両10の前進時に、車速Vが閾値Vth以上である場合に、解放条件は満たされる。
解放条件が満たされる場合(S110:Yes)、S120で、主制御部100は、前輪支持装置41を第1モードで動作させるための指示を、操舵モータ制御部103に供給する。操舵モータ制御部103は、指示に従って、操舵モータ65への、舵角AFを目標の舵角に維持するための電力供給を停止する。これにより、前輪支持装置41は、回動軸Ax1を中心に右方向DR側と左方向DL側とのいずれにも回動可能な状態で、前輪12Fを支持する。この結果、前輪12Fの舵角AFは、車体90の傾斜に追随して変化する。
S130では、主制御部100は、リーンモータ25を制御する傾斜制御を実行する。図12は、主制御部100によって実現される機能のうちの傾斜制御のための機能を示すブロック図である。主制御部100は、ローパスフィルタ処理部910と、帯域変更部915と、高周波強度特定部920と、目標傾斜角決定部930と、指令値決定部940と、として動作する。本実施例では、主制御部100のプロセッサが、プログラムを実行することによって、これらの処理部910、915、920、930、940の機能を実現する。
ローパスフィルタ処理部910は、S100(図11)で特定されたハンドル角Amの低周波数成分を通過させるローパスフィルタとしての処理を行う。ユーザがハンドル41aを操作する場合、ハンドル41aの操作は不規則に行われるので、ハンドル角Amは、不規則に変化し易い。従って、ハンドル角Amは、種々の周波数成分を、含み得る。本実施例では、ローパスフィルタ処理部910は、変動し得るハンドル角Amのうち、カットオフ周波数fcl以上の高周波数成分を減衰させ、カットオフ周波数fcl以下の低周波数成分を通過させる。これにより、ローパスフィルタ処理部910は、ハンドル角Amの低周波数成分Amlを、出力する。ユーザが、ハンドル41aをゆっくり操作する場合には、低周波数成分Amlによって表されるハンドル角は、元のハンドル角Amと、おおよそ同じである。ユーザが、ハンドル41aを高い周波数で振動させる場合、低周波数成分Amlによって表されるハンドル角は、元のハンドル角Amのようには振動せずに、元のハンドル角Amの平均的なハンドル角を、示す。
帯域変更部915は、車速Vを用いて、ローパスフィルタ処理部910の通過帯域を変更する。本実施例では、ローパスフィルタ処理部910のカットオフ周波数fclが、車速Vに応じて変更される。図13は、車速Vとカットオフ周波数fclとの関係を示すグラフである。横軸は、車速Vを示し、縦軸は、カットオフ周波数fclを示している。図示するように、車速Vが遅い場合には、車速Vが速い場合と比べて、カットオフ周波数fclが小さい(すなわち、通過帯域は、低周波数側にシフトされる)。この理由については、後述する。
高周波強度特定部920(図12)は、ハンドル角Amの高周波数成分を抽出し、高周波数成分の強度Shを特定する(高周波数強度Shとも呼ぶ)。本実施例では、高周波強度特定部920は、変動し得るハンドル角Amのうち、カットオフ周波数fch以上の高周波数成分を抽出し、抽出された高周波数成分の強度Shを算出する。カットオフ周波数fchは、ローパスフィルタ処理部910のカットオフ周波数fclと同じであってもよく、カットオフ周波数fclと異なっていてもよい。高周波数強度Shは、高周波数成分の振幅の大きさを表す種々の値であってよい。例えば、高周波数強度Shとしては、複数の周波数のそれぞれにおける振幅の平均値が、算出される。
目標傾斜角決定部930は、低周波数成分Amlと高周波数強度Shとを用いて、第1目標傾斜角T1を決定する。本実施例では、第1目標傾斜角T1は、以下のように決定される。目標傾斜角決定部930は、低周波数成分Amlによって表されるハンドル角(単位は、度)に所定の係数(例えば、30/60)を乗じることによって、基準目標傾斜角Tsを算出する。ハンドル角と基準目標傾斜角Tsとの対応関係としては、比例関係に代えて、ハンドル角の絶対値が大きいほど基準目標傾斜角Tsの絶対値が大きくなるような種々の関係を採用可能である。ハンドル角と基準目標傾斜角Tsとの対応関係を表す情報は、主制御部100の不揮発性記憶装置に予め格納されている。目標傾斜角決定部930は、この情報を参照し、参照した情報によって予め決められた対応関係に従って、ハンドル角に対応する基準目標傾斜角Tsを特定する。
目標傾斜角決定部930は、基準目標傾斜角Tsと高周波数強度Shとを用いて、第1目標傾斜角T1を決定する。図14は、第1目標傾斜角T1の大きさと高周波数強度Shとの関係の例を示すグラフである。横軸は、高周波数強度Shを示し、縦軸は、第1目標傾斜角T1の大きさ(ここでは、絶対値)を示している。このグラフは、基準目標傾斜角Tsが一定である場合の第1目標傾斜角T1を示している。このような第1目標傾斜角T1は、同じハンドル角Am(例えば、低周波数成分Amlによって表される同じハンドル角)に対応付けられる目標傾斜角であり得る。図示するように、強度Shが大きい場合には、強度Shが小さい場合と比べて、第1目標傾斜角T1の大きさは小さい。本実施例では、Sh=ゼロの場合に、第1目標傾斜角T1が基準目標傾斜角Tsと同じである。そして、強度Shの増大に応じて、第1目標傾斜角T1の大きさは、徐々に、小さくなる(例えば、図14のグラフの傾き(強度Shに変化に対する第1目標傾斜角T1の変化の割合)は、予め決められている)。図示を省略するが、強度Shが一定である場合、第1目標傾斜角T1の大きさは、基準目標傾斜角Tsの大きさ(ここでは、絶対値)が大きいほど、大きい。
指令値決定部940は、第1目標傾斜角T1と現行の傾斜角Tとを用いて、傾斜角Tが第1目標傾斜角T1になるようにリーンモータ25を制御するための指令値Cvを決定する。指令値Cvは、リーンモータ制御部102を制御するためのパラメータである。指令値Cvの形式は、任意の形式であってよい。指令値Cvは、例えば、リーンモータ25が出力すべきトルクの向きと大きさとを表す情報であってよい。
また、本実施例では、指令値決定部940は、傾斜角Tが特定の範囲内にある場合には、図9で説明した遅延位相差の増大を抑制するように、指令値Cvを決定する。図15は、指令値Cvによって表されるリーンモータ25のトルクtqと、傾斜角Tと、の関係の例を示すグラフである。横軸は、傾斜角Tを示し、縦軸は、トルクtqの大きさ(ここでは、絶対値)を示している。本実施例では、傾斜機構89(図4)は、左方向の最も大きな左最大傾斜角TLxから右方向の最も大きな右最大傾斜角TRxまでの予め決められた許容範囲RT内で、傾斜角Tが変化し得るように構成されている。具体的には、傾斜機構89の複数のリンク部材は、傾斜角Tが許容範囲RTの外に変化しようとする時に、互いに接触して、傾斜角Tを許容範囲RT内に制限する。例えば、上横リンク部材31U(図4)には、左ストッパ31Lと右ストッパ31Rとが、固定されている。傾斜角Tが許容範囲RT内にある場合、これらのストッパ31L、31Rは、中縦リンク部材21から離れている。図示を省略するが、傾斜角Tが左最大傾斜角TLxである場合、左ストッパ31Lが中縦リンク部材21に接触する。これにより、車体90は、左方向DLへさらに傾斜することができない。また、傾斜角Tが右最大傾斜角TRxである場合、右ストッパ31Rが中縦リンク部材21に接触する。これにより、車体90は、右方向DRへさらに傾斜することができない。このように、傾斜機構89は、機械的に、傾斜角Tを許容範囲RT内に制限している。なお、本実施例では、傾斜機構89の構成は、左右対称である。従って、左最大傾斜角TLxの大きさ(ここでは、絶対値)は、右最大傾斜角TRxの大きさ(ここでは、絶対値)と、同じである。
許容範囲RTは、例えば、以下のように決定される。図16は、鉛直下方向DDを向いて見た、車輪12F、12L、12Rの位置を、示している。ここでは、車両10は、水平で平らな地面上を、走行していることとする。ハッチングが付された領域ACは、3個の車輪12F、12L、12Rのそれぞれの地面との接触領域Ca1、CaR、CaLで構成される凸包によって表される領域である(凸包領域ACと呼ぶ)。
図中の投影位置90cpは、重心90cを地面上に投影する場合の地面上の投影位置である。投影位置90cpの投影方向は、重力F2(図6)と遠心力F1との合力の方向(すなわち、車両上方向DVUとは反対の方向)である。車両10の走行安定性を向上するためには、投影位置90cpが、凸包領域AC内に位置していることが好ましい。投影位置90cpが凸包領域ACの外に位置する場合、走行安定性が低下し得る。例えば、後輪12L、12Rのうちの一方が、地面から浮き上がり得る。
投影位置90cpは、車体90の傾斜角Tの変化などに応じて、移動する。本実施例では、傾斜角Tの許容範囲RT(図15)は、種々の走行状態において、投影位置90cpが凸包領域AC内に維持されるように、予め決められている。
図15には、第1範囲R1と第2範囲R2とが示されている。第1範囲R1は、予め決められた範囲であり、許容範囲RTのうちの最も大きい大きさの右最大傾斜角TRxを含む一部の範囲である。第2範囲R2は、予め決められた範囲であり、許容範囲RTのうちの最も大きい大きさの左最大傾斜角TLxを含む一部の範囲である。第2範囲R2の幅は、第1範囲R1の幅と、同じである。図示するように、これらの範囲R1、R2では、許容範囲RTの残りの範囲R3と比べて、トルクtqの大きさが小さい。すなわち、傾斜角Tの大きさが大きい場合には、傾斜角Tの大きさが小さい場合と比べて、トルクtqの大きさが小さい。従って、傾斜角Tが大きい場合には、リーンモータ25のトルクtqの大きさが小さいので、傾斜角Tの急な変化が抑制される。
図17は、トルクtqと第1目標傾斜角T1と傾斜角Tとの関係の例を示すグラフである。横軸は、第1目標傾斜角T1を示し、縦軸は、傾斜角Tを示している。線Leqは、T=T1を示している。右許容線LwRは、第1目標傾斜角T1が正値である場合に(すなわち、傾斜方向が右方向である場合に)、傾斜角Tの大きさが、第1目標傾斜角T1の大きさに許容幅wを加算したものと同じであることを示す線である。ハッチングで示された右超過領域RRは、傾斜角Tの大きさが右許容線LwRによって示される大きさよりも大きい領域である。左許容線LwLは、第1目標傾斜角T1が負値である場合に(すなわち、傾斜方向が左方向である場合に)、傾斜角Tの大きさが、第1目標傾斜角T1の大きさに許容幅wを加算したものと同じであることを示す線である。ハッチングで示された左超過領域RLは、傾斜角Tの大きさが左許容線LwLによって示される大きさよりも大きい領域である。このような超過領域RR、RLによって表される傾斜角Tの範囲は、傾斜角Tの大きさが、第1目標傾斜角T1の大きさよりも許容幅w以上大きい範囲である。
指令値決定部940(図12)は、第1目標傾斜角T1と傾斜角Tとの組み合わせが、超過領域RR、RL内に位置する場合には、超過領域RR、RL外に位置する場合と比べて、トルクtqの大きさを小さくする。例えば、超過領域RR、RLの外でのトルクtqの大きさは、図15の範囲R3でのトルクtqの大きさと、同じに設定される。そして、超過領域RR、RLの内では、図15の範囲R1、R2でのトルクtqと同様に、傾斜角Tの大きさが大きいほど、トルクtqの大きさが小さくなるように、トルクtqが調整される。このように、超過領域RR、RL内でのトルクtqの大きさが小さいので、傾斜角Tの大きさが第1目標傾斜角T1の大きさよりも許容幅w以上大きい場合に、傾斜角Tの急な変化が抑制される。なお、超過領域RR、RLと他の領域との境界では、目標傾斜角T1と傾斜角Tとの組み合わせの変化に応じて、トルクtqが滑らかに変化することが好ましい。
なお、図17の実施例では、許容幅wは、第1目標傾斜角T1によらずに一定値である。ただし、第1目標傾斜角T1に応じて許容幅wが変化してもよい。例えば、第1目標傾斜角T1の大きさが大きいほど、許容幅wが小さくてもよい。一般的には、許容幅wは、ゼロ以上の種々の値であってよい。
指令値決定部940(図12)は、傾斜角Tと第1目標傾斜角T1とを用いて、図15、図17で説明した特性を有するトルクtqを表すように、指令値Cvを決定する。傾斜角Tと第1目標傾斜角T1との組み合わせが図17の超過領域RR、RLの外であっても、傾斜角Tが、図15の範囲R1、R2内である場合には、トルクtqの大きさは、小さくなる。指令値Cvを決定する方法としては、種々の方法を採用してよい。指令値決定部940は、例えば、傾斜角Tと第1目標傾斜角T1と指令値Cvとの対応関係を表す予め決められた対応関係情報(例えば、マップデータ)を参照して、傾斜角Tと第1目標傾斜角T1とを用いて、指令値Cvを決定してよい。
指令値決定部940は、決定した指令値Cvを、リーンモータ制御部102に供給する。リーンモータ制御部102(図10)は、指令値Cvに従って、リーンモータ25を制御する。これにより、傾斜角Tは、第1目標傾斜角T1に近づく。そして、制御装置110は、図11のS130を終了する。
図11のS140では、上述したように、前輪12Fは、車体90の傾斜方向に、自然に回動する。具体的には、前輪12Fは、式6で表される旋回半径Rと、式7と、から特定される舵角AFの方向に、自然に、回動する。前輪12Fの回動は、傾斜角Tの変更に応じて、自然に始まる。すなわち、舵角AFは、車体90の傾斜に追随して変化する。そして、図11の処理が終了する。制御装置110は、図11の処理を繰り返し実行する。解放条件が満たされる場合、制御装置110は、前輪支持装置41の第1モードでの動作と、S130でのリーンモータ25の制御とを、継続して行う。この結果、車両10は、ハンドル角に適した進行方向に向かって、走行する。
解放条件が満たされない場合(S110:No)、主制御部100は、S160に移行する。なお、本実施例では、解放条件が満たされない場合は、以下のいずれかの場合である。
1)走行モードが「ドライブ」または「ニュートラル」であり、かつ、速度Vが閾値Vth未満である場合。
2)走行モードが「パーキング」である場合。
3)走行モードが「リバース」である場合。
S160では、主制御部100は、前輪支持装置41を第2モードで動作させるための指示を、操舵モータ制御部103に供給する。本実施例では、操舵モータ制御部103は、指示に従って、操舵モータ65へ電力を供給する。本実施例では、操舵モータ制御部103は、繰り返し実行されるS180(詳細は後述)で決定された目標の舵角に、舵角AFが維持されるように、操舵モータ65を制御する。前輪12F(舵角AF)の自由な回動は、操舵モータ65によって禁止される。
S170の処理は、S130の処理と、同じである。主制御部100は、第1目標傾斜角T1を特定する。そして、主制御部100は、傾斜角Tが第1目標傾斜角T1となるようにリーンモータ25を制御するための指令値Cvを、リーンモータ制御部102に供給する。
なお、S170では、傾斜角Tは、第1目標傾斜角T1の大きさよりも小さい大きさの低速目標傾斜角T2に近づくように制御されてもよい。低速目標傾斜角T2は、例えば、以下の式11で表されてよい。
T2 = (V/Vth)*T1 (式11)
式11で表される低速目標傾斜角T2は、ゼロから閾値Vthまで車速Vに比例して変化する。低速目標傾斜角T2の大きさは、目標傾斜角T1の大きさ以下である。この理由は、以下の通りである。低速時には、高速時と比べて、進行方向が頻繁に変更される。従って、低速時には、傾斜角Tの大きさを小さくすることによって、進行方向の頻繁な変更を伴う走行を、安定化できる。なお、低速目標傾斜角T2と車速Vとの関係は、車速Vが大きいほど低速目標傾斜角T2の大きさが大きくなるような、他の種々の関係であってよい。
リーンモータ25の制御(S170)を開始した後のS180では、主制御部100は、第1目標舵角AFt1を決定する。第1目標舵角AFt1は、ハンドル角と車速Vとに応じて決定される。本実施例では、S170で特定された目標傾斜角と、上記の式6、式7と、によって特定される舵角AFが、第1目標舵角AFt1として用いられる。そして、主制御部100は、舵角AFが第1目標舵角AFt1となるように操舵モータ65を制御するための指示を、操舵モータ制御部103に供給する。操舵モータ制御部103は、指示に従って、舵角AFが第1目標舵角AFt1になるように、操舵モータ65を駆動する。これにより、車両10の舵角AFが、第1目標舵角AFt1に変更される。
なお、S180では、舵角AFは、第1目標舵角AFt1の大きさよりも大きい大きさの第2目標舵角AFt2に制御されてもよい。例えば、第2目標舵角AFt2は、ハンドル角が同じ場合には、車速Vが小さいほど第2目標舵角AFt2の大きさが大きくなるように、決定されてよい。この構成によれば、速度Vが小さい場合の車両10の最小回転半径を小さくできる。いずれの場合も、第2目標舵角AFt2は、車速Vが同じ場合には、ハンドル角の大きさが大きいほど第2目標舵角AFt2の大きさが大きくなるように、決定されていることが好ましい。また、閾値Vth未満の車速Vと、閾値Vth以上の車速Vと、の間で車速Vが変化する場合に、舵角AFと傾斜角Tとが滑らかに変化するように、舵角AFと傾斜角Tとが制御されることが好ましい。
なお、主制御部100は、傾斜角Tの変更(S170)の開始後、傾斜角Tの変更(S170)が終了するよりも前に、前輪12Fの回動(S180)を開始する。これに代えて、主制御部100は、傾斜角Tの変更(S170)が終了した後に、前輪12Fの回動(S180)を開始してもよい。
S170、S180が終了したことに応じて、図11の処理が終了する。制御装置110は、図11の処理を繰り返し実行する。解放条件が満たされない場合、制御装置110は、前輪支持装置41の第2モードでの動作と、S170でのリーンモータ25の制御と、S180での舵角AFの制御とを、継続して行う。この結果、車両10は、ハンドル角に適した進行方向に向かって、走行する。
図示を省略するが、主制御部100(図10)と駆動装置制御部101とは、アクセル操作量とブレーキ操作量とに応じて電気モータ51L、51Rを制御する駆動制御部として機能する。本実施例では、具体的には、アクセル操作量が増大した場合には、主制御部100は、電気モータ51L、51Rの出力パワーを増大させるための指示を、駆動装置制御部101に供給する。駆動装置制御部101は、指示に従って、出力パワーが増大するように、電気モータ51L、51Rを制御する。アクセル操作量が減少した場合には、主制御部100は、電気モータ51L、51Rの出力パワーを減少させるための指示を、駆動装置制御部101に供給する。駆動装置制御部101は、指示に従って、出力パワーが減少するように、電気モータ51L、51Rを制御する。
ブレーキ操作量がゼロよりも大きくなった場合には、主制御部100は、電気モータ51L、51Rの出力パワーを減少させるための指示を、駆動装置制御部101に供給する。駆動装置制御部101は、指示に従って、出力パワーが減少するように、電気モータ51L、51Rを制御する。なお、車両10は、全ての車輪12F、12L、12Rのうちの少なくとも1つの車輪の回転速度を摩擦によって低減するブレーキ装置を有することが好ましい。そして、ユーザがブレーキペダル46を踏み込んだ場合に、ブレーキ装置が、少なくとも1つの車輪の回転速度を低減することが好ましい。
以上のように、本実施例では、車両10(図1〜図5)は、車両10の幅方向に互いに離れて配置された一対の後輪12L、12Rと、1個の前輪12Fと、それらの車輪12L、12R、12Fに連結された幅方向にロール可能な車体90と、操作することで旋回方向と旋回の程度とを表す操作量(ここでは、ハンドル角Am)が入力される操作入力部の例であるハンドル41aと、を備えている。また、車両10は、傾斜機構89(図4)と、制御装置110(図10)と、を備えている。制御装置110の主制御部100(図12)およびリーンモータ制御部102は、傾斜機構89を制御する傾斜制御部の例である(主制御部100とリーンモータ制御部102との全体を、傾斜制御部112とも呼ぶ)。傾斜機構89と傾斜制御部112とは、操作入力部へ入力される操作量に応じて車体90を車両10の幅方向に傾斜させる傾斜部の例である(傾斜機構89と傾斜制御部112との全体を、傾斜部88(図1)とも呼ぶ)。また、車両10は、前輪支持装置41を備えている。前輪支持装置41は、前輪12Fを、操作入力部に入力される操作量に拘わらず車体90の傾斜の変化に追随して車体90に対して左右方向に回動可能に支持する前輪支持部の例である。
そして、図15で説明したように、制御装置110(図12)の指令値決定部940は、車体90の傾斜角Tが特定の範囲R1、R2内にある場合に、傾斜角Tが特定の範囲R1、R2外にある場合と比べて、リーンモータ25のトルクtqの大きさを小さくする。これにより、傾斜角Tの変化速度(例えば、角速度)の増大が抑制される。この結果、舵角遅延位相差(図9)が90度未満に抑制され得るので、車体のロール振動が大きくなることが抑制される。また、この範囲R1、R2は、傾斜角Tの許容範囲RTのうちの最も大きい大きさの傾斜角TRx、TLxを含む予め決められた一部の範囲である。傾斜角Tのこのような範囲R1、R2において、傾斜角Tの変化速度の増大が抑制されるので、舵角遅延位相差が増大して90度に到達することが、適切に、抑制される。この結果、車体90の幅方向の振動が大きくなることが、適切に、抑制される。
また、図12で説明したように、指令値決定部940は、傾斜角Tが、操作入力部(ここでは、ハンドル41a)に入力される操作量を用いて特定される目標傾斜角T1に近づくように、リーンモータ25を制御するための指令値Cvを決定する。そして、図17で説明したように、指令値決定部940は、傾斜角Tが、特定の範囲RR、RL内にある場合に、傾斜角Tが、特定の範囲RR、RL外にある場合と比べて、リーンモータ25のトルクtqの大きさを小さくする。これにより、傾斜角Tの変化速度(例えば、角速度)の増大が抑制される。この結果、舵角遅延位相差(図9)が90度未満に抑制され得るので、車体のロール振動が大きくなることが抑制される。また、この範囲RR、RLは、目標傾斜角T1の大きさよりも許容幅w以上大きい範囲である。傾斜角Tのこのような範囲RR、RLにおいて、傾斜角Tの変化速度の増大が抑制されるので、舵角遅延位相差が増大して90度に到達することが、適切に、抑制される。この結果、車体90の幅方向の振動が大きくなることが、適切に、抑制される。
また、図12で説明したように、ローパスフィルタ処理部910は、操作入力部(ここでは、ハンドル41a)に入力される操作量(ここでは、ハンドル角Am)の低周波数成分を通過させる。そして、目標傾斜角決定部930は、ハンドル角Amの低周波数成分Amlを用いて、目標傾斜角T1を決定する。そして、主制御部100とリーンモータ制御部102とは、傾斜角Tが目標傾斜角T1になるように、傾斜機構89に車体90を傾斜させる。これにより、ハンドル角Amの高周波数成分に起因して、傾斜角Tが高い周波数で振動することが抑制される。この結果、舵角遅延位相差(図9)が90度未満に抑制され得るので、車体のロール振動が大きくなることが抑制される。
また、図13で説明したように、帯域変更部915(図12)は、ローパスフィルタ処理部910の通過帯域を、車速Vが遅い場合には、車速Vが速い場合と比べて、低周波数側にシフトさせる。この理由は、以下の通りである。図8で説明したように、車両10の前進時には、回転する前輪12Fは、車体90の傾斜に起因して、舵角AFが傾斜方向に回動するように、回動する。このように前輪12Fを回動させるトルクは、前輪12Fの回転速度が速いほど、すなわち、車速Vが速いほど、大きい。従って、車速Vが速い場合には、傾斜角Tの変化(ひいては、ロール角Trの変化)に対する舵角AFの変化の遅れが抑制される。すなわち、車速Vが遅い場合には、車速Vが速い場合と比べて、舵角遅延位相差が増大し易い。上記の通り、本実施例では、帯域変更部915は、ローパスフィルタ処理部910の通過帯域を、車速Vが遅い場合には、車速Vが速い場合と比べて、低周波数側にシフトさせる。従って、車速Vが遅い場合であっても、ハンドル角Amの高周波数成分に起因する舵角AFの位相の遅れは、適切に、抑制される。
図18は、ハンドル角Amを振動させる場合の傾斜角Tの振動の例を示すグラフである。横軸は、ハンドル角Amの振動の周波数fAm(ハンドル周波数fAmとも呼ぶ)を示し、縦軸は、傾斜角Tの振動の周波数fT(傾斜周波数fTとも呼ぶ)を示している。なお、ユーザがハンドル41aを操作する場合、ハンドル41aの振動は、不規則に行われ易い。従って、図18のグラフにおいて、ハンドル角Amの振動の周波数が周波数fAmである場合には、ハンドル角Amの振動は、ハンドル周波数fAm以下の種々の低周波数成分を、含むこととする。
グラフfV1、fV2、fV3は、それぞれ、車速V1、V2、V3での、ハンドル周波数fAmと傾斜周波数fTとの関係の例を示している(ここで、0<V1<V2<V3)。上記の通り、傾斜角Tは、ハンドル角Amに応じて変化するので、ハンドル周波数fAmの増大に応じて、傾斜周波数fTも増大する。また、図12で説明したように、目標傾斜角T1は、元のハンドル角Amではなく、低周波数成分Amlを用いて決定される。従って、カットオフ周波数fclよりも高い高周波数成分の、傾斜角Tの振動に対する影響は、小さい。図18中のカットオフ周波数fcl1、fcl2、fcl3は、それぞれ、車速V1、V2、V3での、カットオフ周波数fclである(fcl1<fcl2<fcl3)
3つのグラフfV1、fV2、fV3のいずれにおいても、ハンドル周波数fAmがゼロから増大する場合に、傾斜周波数fTはゼロから増大する。そして、ハンドル周波数fAmがカットオフ周波数fcl1、fcl2、fcl3を超えて増大する場合、傾斜周波数fTの増大が緩やかになる。そして、ハンドル周波数fAmが更に増大しても、傾斜周波数fTは、ほとんど増大しない。
図中の傾斜周波数fT1、fT2、fT3は、それぞれ、車速V1、V2、V3において、舵角遅延位相差が90度になる傾斜周波数fTを示している(90度周波数fT1、fT2、fT3とも呼ぶ)。図8で説明したように、車速Vが速いほど、舵角AFの振動の遅延は抑制される。従って、90度周波数fT1、fT2、fT3は、車速Vが速いほど、大きい。
図13に示すように、車速Vが遅い場合には、車速Vが速い場合と比べて、カットオフ周波数fclが小さい。従って、グラフfV1、fV2、fV3が示すように、車速Vが遅いほど、傾斜周波数fTは、小さな周波数に抑制される。本実施例では、車速Vに拘わらずに、傾斜周波数fTが、90度周波数未満になるように、図13に示す車速Vとカットオフ周波数fclとの関係が、予め決められている。図18のグラフでは、いずれの車速V1、V2、V3においても、傾斜周波数fTは、対応する車速Vの90度周波数fT1、fT2、fT3未満に、維持される。このように、車速Vに拘わらずに、舵角遅延位相差が90度未満に抑制され得るので、車体のロール振動が大きくなることが抑制される。また、車速Vが速い場合には、カットオフ周波数fclが大きいので、舵角遅延位相差を90度未満に維持しつつ、傾斜角Tの素早い変化を実現できる。
また、図14に示すように、目標傾斜角決定部930は、ハンドル角Amの高周波数強度Shが強い場合には、高周波数強度Shが弱い場合と比べて、同じハンドル角Am(例えば、低周波数成分Amlによって表される同じハンドル角)に対応付けられる目標傾斜角T1の大きさを、小さくする。従って、ハンドル角Amの高周波数強度Shが強い場合には、高周波数強度Shが弱い場合と比べて、同じハンドル角Amに対応付けられる傾斜角Tの大きさが、小さくなる。このように、高周波数強度Shが強い場合に、傾斜角Tの大きさの増大が抑制されるので、車体のロール振動が大きくなることが抑制される。
B.第2実施例:
図19は、傾斜機構の別の実施例の説明図である。図4の実施例との差異は、本実施例の傾斜機構89aのリンク機構30aに、ダンパ150が追加されている点だけである。傾斜機構89a(ひいては、後輪支持部80a、そして、後輪支持部80aを含む車両10a)の他の部分の構成は、図1〜図4の実施例の対応する部分の構成と、同じである(対応する要素と同じ要素には、同じ符号を付して、説明を省略する)。
本実施例では、ダンパ150は、上横リンク部材31Uと中縦リンク部材21とに連結されている。ダンパ150は、上横リンク部材31Uと中縦リンク部材21とに、中縦リンク部材21に対する上横リンク部材31Uの回動に対する抵抗力を、付与する。図5(B)で説明したように、中縦リンク部材21に対する上横リンク部材31Uの回動は、傾斜角Tを変化させる。従って、この抵抗力は、傾斜角Tの変化に対する抵抗力であり、ひいては、車体90のロールに対する抵抗力である。このように、ダンパ150は、車体90に、車体90のロールに対する抵抗力を、付与する。本実施例では、ダンパ150は、車体90のロールに対する抵抗力を、中縦リンク部材21と上横リンク部材31Uとを含む後輪支持部80を介して、後輪12R、12Lと車体90とに付与する。これにより、ダンパ150は、車体90の高い周波数でのロール振動を、抑制する。この結果、舵角遅延位相差が90度まで増大することが、抑制されるので、車体のロール振動が大きくなることが抑制される。
なお、ダンパ150の構成としては、運動エネルギーを減衰する任意の構成を採用してよい。例えば、液体の粘性抵抗を利用して減衰力を生成するダンパを採用してよく、また、複数の部材の摩擦を利用して減衰力を生成するダンパを採用してよい。また、ダンパ150の連結位置は、車体90にロールに対する抵抗力を付与可能な任意の位置であってよい。
C.変形例:
(1)車体90の傾斜を制御する処理は、上記各実施例の処理に代えて、他の種々の処理であってよい。例えば、図13のグラフにおいて、カットオフ周波数fclは、車速Vの変化に応じて、階段状に変化してもよく、曲線を描くように変化してもよい。いずれの場合も、車速Vが遅い場合に、車速Vが速い場合と比べて、カットオフ周波数fclが小さいことが好ましい。また、主制御部100(図12)から、帯域変更部915が省略されてもよい。この場合、カットオフ周波数fclは、車速Vに拘わらず、予め決められた周波数であってよい。また、主制御部100(図12)から、ローパスフィルタ処理部910が省略されてもよい。この場合、目標傾斜角決定部930は、ハンドル角Amをそのまま用いて目標傾斜角T1を決定してよい。
図14のグラフにおいて、目標傾斜角T1の大きさは、高周波数強度Shの変化に応じて、階段状に変化してもよく、曲線を描くように変化してもよい。いずれの場合も、目標傾斜角T1の大きさは、強度Shが大きい場合には、強度Shが小さい場合と比べて、小さいことが好ましい。また、目標傾斜角T1の大きさは、ハンドル角Amの大きさが大きいほど、大きいことが好ましい。また、目標傾斜角T1の大きさは、低周波数成分Amlによって表されるハンドル角の大きさが大きいほど、大きいことが好ましい。また、主制御部100(図12)から高周波強度特定部920が省略されてもよい。この場合、目標傾斜角決定部930は、ハンドル角Amと低周波数成分Amlとの少なくとも一方のみを用いて目標傾斜角T1を決定してよい。
図15のグラフにおいて、傾斜部88の駆動装置(ここでは、リーンモータ25)のトルクtqの大きさは、傾斜角Tの変化に応じて、階段状に変化してもよい。また、トルクtqの大きさは、範囲R3内で、傾斜角Tの変化に応じて変化してもよい。また、トルクtqの大きさは、範囲R1、R2内で、傾斜角Tの変化に対して直線的に変化してもよい。いずれの場合も、指令値決定部940は、範囲R1、R2内でのトルクtqの大きさを、範囲R1、R2外(すなわち、範囲R3内)でのトルクtqの大きさよりも、小さくすることが好ましい。ただし、範囲R1、R2内でのトルクtqの大きさが、範囲R3内でのトルクtqの大きさと同じであってもよい。
図17のグラフにおいて、許容幅wは、目標傾斜角T1の変化に応じて変化してもよい。例えば、目標傾斜角T1の大きさが小さいほど、許容幅wが大きくてもよい。ここで、許容幅wは、目標傾斜角T1の変化に対して、連続的に変化してもよく、階段状に変化してもよい。ただし、許容幅wを用いるトルクtqの調整が、省略されてもよい。
なお、傾斜機構89による車体90を傾斜させるトルク(すなわち、傾斜機構89の駆動装置のトルク)の大きさが小さくなる傾斜角Tの特定の範囲は、範囲R1、R2(図15)と範囲RR、RL(図17)とを含む範囲に代えて、他の種々の範囲であってよい。例えば、範囲R1、R2と、範囲RR、RLと、のいずれかが、特定の範囲から省略されてもよい。いずれの場合も、傾斜角Tの特定の範囲の少なくとも一部では、傾斜角Tの大きさは、ゼロよりも大きいことが好ましい。
(2)舵角遅延位相差が90度未満になるようにロール振動を抑制するロール抑制部は、図12の各処理部910、915、920、930、940と、図19のダンパ150とに代えて、他の種々の装置であってよい。例えば、ハンドル41aに連結されたロータリーダンパを採用してもよい。ロータリーダンパは、例えば、ハンドル41aと、車体90とを、直接的または他の部材を介して間接的に、連結する。このようなロータリーダンパは、車体に対するハンドル41aの高い周波数での振動を抑制し得る。従って、ハンドル41aに、高い周波数の振動が入力されることが抑制される。この結果、高い周波数のロール振動が抑制される。また、最大トルクの小さいリーンモータ25を、ロール抑制部として利用してもよい。一般的に、車体90を高い周波数で振動させるためには、リーンモータ25の大きなトルクが必要である。ここで、リーンモータ25の最大トルクが、車体90を高い周波数で振動させるために必要なトルクよりも小さい場合には、リーンモータ25は、車体90を、高い周波数で振動させることができない。この結果、車体90の高い周波数でのロール振動が、抑制される。
(3)前輪を、車体90の傾斜の変化に追随して車体90に対して左右方向に回動可能に支持する前輪支持部の構成としては、図1〜図3で説明した前輪支持装置41の構成に代えて、他の種々の構成を採用可能である。例えば、操舵モータ65が省略され、代わりに、ハンドル41aと前フォーク17とが、クラッチを介して接続されてもよい。クラッチが解放されている場合、前輪12Fの状態は、操作入力部に入力される操作量に拘わらず車体90の傾斜の変化に追随して左右方向に回動可能な第1状態である。クラッチが接続されている場合、前輪12Fの状態は、自由な回動が禁止された第2状態である。また、前輪を前後方向に回転可能に支持する支持部材は、前フォーク17に代えて、種々の部材であってよい。例えば、支持部材は、片持ちの部材であってもよい。
一般的には、前輪支持部は、操作入力部(例えば、ハンドル41a)に入力される操作量に拘わらず車体(例えば、車体90)の傾斜の変化に追随して車体に対して左右方向に回動可能に前輪を支持することが好ましい。ここで、前輪が左右方向に回動可能である場合、前輪は、左方向に回動可能であり、また、右方向に回動可能である。前輪支持部がこのように前輪を支持することは、以下のように言い換えられ得る。すなわち、前輪支持部は、操作入力部に入力される1つの操作量に対する前輪の舵角が1つの舵角に制限されないように、車体の傾斜の変化に追随して車体に対して左右方向に回動可能に前輪を支持する。例えば、ハンドル41aが直進を示す所定方向を向いた状態で車両10が直進する場合、ゼロのハンドル角に、ゼロの舵角AFが対応する。車両10が右方向に旋回している状態で、ハンドル41aが直進を示す所定方向に向けられた場合、傾斜角Tがゼロに変化する前の段階では、ゼロのハンドル角に、右旋回を示す舵角AFが対応する。
このような前輪支持部は、例えば、前輪を前後に回転可能に支持する支持部材(例えば、前フォーク17、片持ちの支持部材など)と、車体90に固定されるとともに回動軸(例えば、回動軸Ax1)を中心に支持部材を左右方向に回動可能に支持する回動支持部(例えば、操舵モータ65、軸受けなど)と、を含んでよい。そして、前輪と地面との接触領域の中心(例えば、点P1)は、回動支持部の回動軸と地面との交点(例えば、交点P2)よりも、後方向に位置してよい。このようにトレールLtが正である場合、前輪の舵角は、容易に、車体90の傾斜の変化に追随して変化する。そして、操作入力部と支持部材とが、機械的に連結されていない、または、弾性体によって緩く連結されていることが好ましい。この場合、前輪支持部に支持される前輪は、操作入力部に入力される操作量に拘わらず、車体の傾斜の変化に追随して車体に対して左右方向に容易に回動できる。なお、キャスター角CAは、ゼロであってもよく、ゼロとは異なっていてもよい(キャスター角CAがゼロ以上であることが好ましい)。
いずれの場合も、前輪支持部は、前輪を、操作入力部(例えば、ハンドル41a)に入力される操作量に拘わらず車体の傾斜の変化に追随して車体に対して左右方向に回動可能に支持する第1モードと、前輪の自由な回動が禁止された第2モードと、を含む複数の動作モードで動作できることが好ましい。そして、制御装置110は、予め決められた条件(例えば、図11のS110の解放条件)が満たされる場合に、前輪支持部を第1モードで動作させ、予め決められた条件が満たされない場合に、前輪支持部を第2モードで動作させてよい。
ここで、車体の傾斜に追随する前輪の回動を許容するための条件である解放条件は、図11で説明した解放条件に代えて、他の種々の条件であってよい。例えば、制御装置110は、ユーザの指示に応じて、前輪支持部の動作モードを切り替えてもよい。一般的には、車体の傾斜に追随する前輪の回動を許容するための条件は、速度が所定の閾値以上であることを含む条件であることが好ましい。ただし、前輪支持部は、第1モードの状態のみで前輪を支持するように構成されていてもよい。
(4)車体90を幅方向に傾斜させる傾斜機構の構成としては、リンク機構30(図4)を含む構成に代えて、他の種々の構成を採用可能である。例えば、傾斜機構としては、後輪12L、12Rを回転可能に支持する台と、車体90と、を幅方向に回動可能に接続するヒンジと、台に対する車体90の傾斜角度(すなわち、傾斜角T)を制御する電気モータと、を含む構成を採用してもよい。また、傾斜機構の駆動装置は、電気モータに代えて他の種類の駆動装置であってもよい。例えば、傾斜機構の駆動装置がポンプを含み、傾斜機構は、ポンプからの液圧(例えば、油圧)によって駆動されてもよい。また、傾斜機構は、操作入力部に機械的に連結されてもよい。そして、ユーザが操作入力部を操作する場合に、操作入力部に入力される力によって、傾斜機構が駆動されてもよい。一般的には、地面GLに対して車体90を傾斜させることが可能な種々の構成を採用可能である。ここで、単なるサスペンションとは異なり、車体90の傾斜角Tを、目標の傾斜角に維持することが可能な機構を採用することが好ましい。
また、傾斜機構から、傾斜角Tを機械的に許容範囲RT内に制限するための構成(例えば、ストッパ31L、31R(図4))が、省略されてもよい。この場合、制御装置110が、リーンモータ25を制御することによって、傾斜角Tを許容範囲RT内に制限してもよい。
(5)車両の制御方法としては、図11で説明した方法に代えて、他の種々の方法を採用可能である。例えば、車速Vに拘わらずに、前輪支持装置41は、第1モードで動作してよい。そして、第2モードが省略されてよい。例えば、図11のS110、S160、S170、S180が省略されてよい。そして、前輪支持部は、第1状態のみで前輪を支持するように構成されてよい。例えば、操舵モータ65が軸受けに置換されてもよい。
(6)操作することで旋回方向と旋回の程度とを表す操作量が入力される操作入力部は、図1等に示すハンドル41aに代えて、他の種々の装置であってよい。例えば、右方向DRと左方向DLとに傾斜可能なレバーを採用してよい。ここで、レバーの傾斜方向が、旋回方向を示してよい。また、レバーの傾斜角が、旋回の程度を示してよい。また、このように機械的な動き(例えば、回動や傾斜)によって操作量を受け付ける装置に代えて、電気的に操作量を受け付ける装置を採用してよい。例えば、タッチパネルに、操作量が、入力されてもよい。
(7)車両の構成としては、上述の構成に代えて、他の種々の構成を採用可能である。例えば、制御装置110の主制御部100の傾斜制御のための機能の一部が、リーンモータ制御部102によって実現されてもよい。制御装置110が、1つの制御部によって構成されてもよい。また、制御装置110(図8)のようなコンピュータが省略されてもよい。例えば、コンピュータを含まない電気回路が、センサ122、123、124、125、145、146とスイッチ47とからの信号に応じて、モータ51R、51L、25、65を制御してもよい。また、電気回路に代えて、油圧やモータの駆動力を利用して動作する機械が、モータ51R、51L、25、65を制御してもよい。また、複数の車輪の総数と配置としては、種々の構成を採用可能である。例えば、前輪の総数が2であり、後輪の総数が1であってもよい。また、前輪の総数が2であり、後輪の総数が2であってもよい。また、幅方向に互いに離れて配置された一対の車輪が、前輪であってもよく、また、舵角を変更可能な車輪であってもよい。いずれの場合も、車両は、車両の幅方向に互いに離れて配置された一対の車輪を含むN個(Nは3以上の整数)の車輪であって、1個以上の前輪と、前輪よりも後方向DB側に配置された1個以上の後輪とを含む、N個の車輪を備えることが好ましい。この構成によれば、車両の停止時に車両が自立できる。また、前輪は、正のトレール(図1)を有することが好ましい。これにより、前輪の舵角は、車体の傾斜に追随して、容易に変化できる。また、駆動輪を駆動する駆動装置は、電気モータに代えて、車輪を回転させる任意の装置であってよい(例えば、内燃機関)。また、駆動装置を省略してもよい。すなわち、車両は、人力の車両であってもよい。また、車両の最大定員数は、1人に代えて、2人以上であってもよい。
(8)上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、図10の車両10の制御装置110の機能を、専用のハードウェア回路によって実現してもよい。
また、本発明の機能の一部または全部がコンピュータプログラムで実現される場合には、そのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、一時的ではない記録媒体)に格納された形で提供することができる。プログラムは、提供時と同一または異なる記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に格納された状態で、使用され得る。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、メモリーカードやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種ROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスクドライブ等のコンピュータに接続されている外部記憶装置も含み得る。
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
10…車両、11…座席、12F…前輪、12L…左後輪、12R…右後輪、12Fc…重心、12La…ホイール、12Lb…タイヤ、12Ra…ホイール、12Rb…タイヤ、17…前フォーク、20…本体部、20a…前部、20b…底部、20c…後部、20d…支持部、21…中縦リンク部材、25…リーンモータ、30、30a…リンク機構、31D…下横リンク部材、31L…左ストッパ、31R…右ストッパ、31U…上横リンク部材、33L…左縦リンク部材、33R…右縦リンク部材、41…前輪支持装置、41a…ハンドル、41ax…支持棒、45…アクセルペダル、46…ブレーキペダル、47…シフトスイッチ、50…弾性体、51L…左電気モータ、51R…右電気モータ、65…操舵モータ、70…サスペンションシステム、70L…左サスペンション、70R…右サスペンション、70La…中心軸、75…連結部、80…後輪支持部、80a…後輪支持部、82…第1支持部、83…第2支持部、88…傾斜部、89、89a…傾斜機構、90…車体、90c…重心、90cp…投影位置、100…主制御部、101…駆動装置制御部、102…リーンモータ制御部、103…操舵モータ制御部、110…制御装置、112…傾斜制御部、120…バッテリ、122…車速センサ、123…ハンドル角センサ、124…前輪舵角センサ、125…リーン角センサ、145…アクセルペダルセンサ、146…ブレーキペダルセンサ、150…ダンパ、910…ローパスフィルタ処理部、915…帯域変更部、920…高周波強度特定部、930…目標傾斜角決定部、940…指令値決定部、T…傾斜角、V…速度、R…旋回半径、m…質量、V…車速、fcl…カットオフ周波数、fch…カットオフ周波数、w…許容幅、F1…第1力(遠心力)、F2…第2力(重力)、P1…接触中心、P2…交点、CA…キャスター角、DF…前方向、DB…後方向、DR…右方向、DL…左方向、DU…鉛直上方向、DD…鉛直下方向、DBU…車体上方向、DVU…車両上方向、D12…進行方向、AC…凸包領域、AF…前輪舵角、GL…地面、Lh…ホイールベース、Am…ハンドル角、Cr…旋回中心、Tr…ロール角、Lt…トレール、AxL…傾斜軸、AxR…ロール軸

Claims (10)

  1. 車両であって、
    前記車両の幅方向に互いに離れて配置された一対の車輪を含むN個(Nは3以上の整数)の車輪であって、1個以上の前輪と1個以上の後輪とを含む、N個の車輪と、
    前記N個の車輪に連結された前記幅方向にロール可能な車体と、
    操作することで旋回方向と旋回の程度とを表す操作量が入力される操作入力部と、
    前記操作入力部へ入力される前記操作量に応じて、前記車体を前記車両の幅方向に傾斜させる傾斜部と、
    前記1個以上の前輪を、前記操作入力部に入力される前記操作量に拘わらず前記車体の傾斜の変化に追随して前記車体に対して左右方向に回動可能に支持する前輪支持部と、
    を備え、
    前記傾斜部は、前記車体の前記幅方向のロール振動に対する前記1個以上の前輪の舵角の振動の位相の遅れが90度未満になるように前記ロール振動を抑制するロール抑制部を含む、
    車両。
  2. 請求項1に記載の車両であって、
    前記ロール抑制部は、前記傾斜部による前記車体の傾斜角が特定の範囲内にある場合に、前記位相の遅れが90度未満になるように前記ロール振動を抑制する、
    車両。
  3. 請求項2に記載の車両であって、
    前記傾斜部は、前記傾斜角を、予め決められた許容範囲内に制限し、
    前記傾斜角の前記特定の範囲は、前記許容範囲のうちの最も大きい大きさの傾斜角を含む予め決められた一部の範囲を含む、
    車両。
  4. 請求項2または3に記載の車両であって、
    前記傾斜部は、前記傾斜角が、前記操作入力部に入力される前記操作量を用いて特定される目標傾斜角に近づくように、前記車体を傾斜させ、
    前記傾斜角の前記特定の範囲は、前記目標傾斜角の大きさよりも許容幅以上大きい範囲を含む、
    車両。
  5. 請求項2から4のいずれかに記載の車両であって、
    前記傾斜部は、
    前記車体を前記車両の幅方向に傾斜させる傾斜機構と、
    前記操作入力部へ入力される前記操作量に応じて前記傾斜機構を制御する傾斜制御部と、
    を含み、
    前記ロール抑制部は、前記傾斜制御部を含み、
    前記傾斜制御部は、前記傾斜角が前記特定の範囲内にある場合には、前記傾斜角が前記特定の範囲外にある場合と比べて、前記傾斜機構による前記車体を傾斜させるトルクの大きさを小さくする、
    車両。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の車両であって、
    前記ロール抑制部は、前記操作入力部に入力される前記操作量の低周波数成分を通過させるローパスフィルタを含み、
    前記傾斜部は、前記操作量の前記低周波数成分を用いることによって、前記車体を傾斜させる、
    車両。
  7. 請求項6に記載の車両であって、
    前記傾斜部は、前記ローパスフィルタの通過帯域を、前記車両の車速が遅い場合には、前記車速が速い場合と比べて、低周波数側にシフトさせる、帯域変更部を含む、
    車両。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の車両であって、
    前記ロール抑制部は、前記操作入力部に入力される前記操作量の高周波数成分が強い場合には、前記操作量の前記高周波数成分が弱い場合と比べて、同じ操作量に対応付けられる前記車体の傾斜角の大きさを、小さくする、
    車両。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の車両であって、
    前記ロール抑制部は、前記車体のロールに対する抵抗力を前記車体に付与するダンパを含む、
    車両。
  10. 請求項1から9のいずれかに記載の車両であって、
    前記前輪支持部は、前記1以上の前輪を回転可能に支持する支持部材を含み、
    前記車両は、前記操作入力部と前記支持部材とを直接的または間接的に連結するとともに、前記1個以上の前輪が、前記操作入力部に入力される前記操作量に拘わらず前記車体の傾斜の変化に追随して前記車体に対して左右方向に回動することを許容する、弾性体を備える、
    車両。
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