JP2018160602A - 放熱シート - Google Patents
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Abstract
Description
従来、電子部品と放熱部材は、熱伝導性に優れた放熱シートを介在させて積層され、ネジ止め等によって積層方向に圧力を付与した状態で固定されている。放熱シートとしては、三次元網目構造の金属骨格およびこの金属骨格の間に形成された気孔を有する多孔質金属シートと、多孔質金属シートの気孔に充填されている弾性体とを含む放熱シートが使用されている。
しかしながら、これまで放熱シートの密着性を高くするために、多孔質金属シートの骨格内部に孔(骨格孔)を導入することは検討がなされていなかった。特許文献1、3には、多孔質金属シートの骨格内部に孔を導入することに関する記載はない。そのため密着性と熱伝導度を両立できていない場合があった。また、特許文献2に開示されている多孔質焼結体を用いた放熱シートは、気孔率が40〜60%の範囲と低く、金属の含有量が相対的に多いため、硬度が高く、変形しにくい。このため、発熱体や放熱部材に対する密着性が十分ではない場合があった。
この場合、シリコーンゴム、シリコーンゲル、フッ素ゴムおよびそれらの混合物は耐熱性が高いので、放熱シートの高い密着性と優れた放熱特性とをさらに長期間にわたって維持することができる。
放熱シート10の厚みが薄くなりすぎると、弾性体15の変形が可能な範囲が少なくなり、密着性が低下し、界面抵抗が高くなる。また、放熱シート10が脆くなり、回路基板と放熱材との間に配置する際のハンドリングが難しくなるおそれがある。一方、多孔質金属シート14の厚みが厚くなりすぎると、バルク熱抵抗が高くなり、放熱シート10内の熱抵抗が高くなるおそれがある。
多孔質金属シート14の気孔率が低くなりすぎる(即ち、金属骨格11の含有量が多くなりすぎる)と、多孔質金属シート14が硬くなって、放熱シート10の密着性が低下するおそれがある。一方、多孔質金属シート14の気孔率が高くなりすぎる(即ち、金属骨格11の含有量が少なくなりすぎる)と、多孔質金属シート14の熱伝導度が低下して、放熱シート10内の熱抵抗が高くなるおそれがある。
気孔13の平均孔径が小さくなりすぎると、熱伝導度は高くなるが、シート硬さも大きくなるため、界面熱抵抗が大きくなり、結果として熱抵抗が大きくなるおそれがある。一方、気孔13の平均孔径が大きくなりすぎると、放熱シート10の表面粗さRaが大きくなって密着性が低下したり、放熱シート10内の熱抵抗などの特性のばらつきが大きくなるおそれがある。
乾燥後の気泡含有粘性組成物の塗布膜を、ポリエチレンシートから剥がし、所望の形状に切り出し、焼結前成形体が得られる。
従って、本実施形態に係る放熱シート10は、密着性が高く、熱伝導性が高いので、優れた放熱特性を発揮する。
先ず、平均粒子径4μmのアルミニウム粉末(不純物として、Fe:0.15質量%、Si:0.05質量%およびNi:0.01質量%を含む)と、平均粒子径9.1μmの水素化チタン粉末を用意した。このアルミニウム粉末と水素化チタン粉末を質量比で99:1となる割合で、合計で500gとなるように混合してアルミニウム混合原料粉末を調製した。
また、メチルセルロースを0.1質量部、エチルセルロースを2.9質量部、グリセリンを3質量部、ポリエチレングリコールを3質量部、そして水を91質量部の割合で、合計500gとなるように混合してバインダー溶液を調製した。
得られた多孔質アルミニウムシートの平均孔径、気孔率、金属骨格長さ100μm当たりの骨格孔の数を下記の方法により測定した。この結果を表1に示す。
多孔質アルミニウムシートを走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、気孔の長径を孔径として1試料につき50か所測定した。なお、40μm以上の長径を持つ気孔のみを測定対象とした。測定した孔径の算術平均値を算出し、これを平均孔径とした。
多孔質アルニウムシートを5cm角のサイズで切り出し、切り出した多孔質アルミニウムシートの質量M(g)と、体積V(cm3)、真密度D(g/cm3)を測定した。気孔率は、下記の計算式にて算出した。真密度は気相置換法(マイクロメトリクス社製 アキュピックII 1340)により測定した。
気孔率(%)=[1−{M÷(V×D)}]×100
樹脂埋めした多孔質アルニウムシートを準備し、シートの面方向に平行な断面を出した。その後、多孔質アルニウムシートの断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、写真中央に金属骨格が写るようにそれぞれ別視野で撮影したSEM写真を10枚用意した。SEM写真の倍率は1000倍とした。図2に、No.1の多孔質アルニウムシートの断面のSEM写真を、図3に図2中の破線で囲まれた部分の拡大写真を示す。図3に示すように、SEM写真の対角線の交点から対角線上の各隅に向かって50μmずつ、全長100μmの直線を2本描いた。そして、その2本の長さ100μmの直線にそれぞれ接する骨格孔(長径が5μm以上40μm以下の範囲にあるもの)の個数を計数した。用意した10枚の各SEM写真で計数された骨格孔の個数の算術平均値を算出し、これを断面観察によって測定される長さ100μmあたりの骨格孔の平均個数とした。
[本発明例1]
上記方法で作製した多孔質アルニウムシートNo.1に、液状シリコーンゴム(信越化学工業株式会社製:KE−1830)を塗布し、次いで、真空脱泡に1時間かけて、多孔質アルニウムシートの気孔に液状シリコーンゴムを充填した。液状シリコーンゴムを充填した多孔質アルニウムシートを、二枚の離形フィルム(ダイセルバリューコーティング株式会社:T1432)の間に、多孔質アルミニウムシートと同じ厚さのスペーサーと共に挟み、2MPaの力でプレスしながら120度で1時間加熱して、液状シリコーンゴムを硬化させて、多孔質アルニウムシートNo.1にシリコーンゴムを充填した放熱シートを作成した。
液状シリコーンゴムの代わりに、二液型シリコーンゲル(信越化学工業株式会社製:KE−1013)を用いたこと、および真空脱泡にかける時間を0.1時間としたこと以外は、本発明例1と同様にして、多孔質アルニウムシートNo.1にシリコーンゲルを充填した放熱シートを作製した。
液状シリコーンゴムの代わりに、液状シリコーンゴム(信越化学工業株式会社製:KE−1830)と二液型シリコーンゲル(信越化学工業株式会社製:KE−1013)とを質量比で1:1の割合で混合した混合物を用いたこと以外は、本発明例1と同様にして、多孔質アルニウムシートNo.1にシリコーンゴムとシリコーンゲルの混合物を充填した放熱シートを作製した。
本発明例1で用いた液状シリコーンゴムの代わりに、液状フッ素ゴム(ダイキン工業株式会社製:DPA−382)を用いた。上記方法で作製した多孔質アルニウムシートNo.1に、液状フッ素ゴムを塗布し、次いで、真空脱泡に1時間かけて、多孔質アルニウムシートの気孔に液状フッ素ゴムを充填した。次に、80℃で30分乾燥を行った。続いて液状フッ素ゴムを充填した多孔質アルニウムシートを、二枚の離形フィルムの間に、多孔質アルミニウムシートと同じ厚さのスペーサーと共に挟み、0.5MPaの力でプレスした。その後、マッフル炉にて120℃で1時間加熱して、液状フッ素ゴムを硬化させて、多孔質アルニウムシートNo.1にフッ素ゴムを充填した放熱シートを作製した。
多孔質アルニウムシートNo.1の代わりに、表1に示すように多孔質アルニウムシートNo.2〜19を用いたこと以外は、本発明例1と同様にして、放熱シートを作製した。
本発明例1〜15および比較例1〜7で作製した放熱シートの表面粗さRa、シート硬さ、熱伝導度、熱抵抗を、下記の方法により測定した。その結果を表2に示す。
表面粗さRaは、Bruker Nano社製Dektak150を用いて測定した。測定は1mmスキャンによって行い、荷重は5.00mg、スキャンスピードは1mm/30sとした。
放熱シートを重ねて、5mm厚の試料を作製した。作製した5mm厚の試料に対して、JIS−K−6253に準じて、タイプAのデュロメーター(テフロック、GS−719N)を用いて硬さを5点測定した。測定した硬さの算術平均値を算出し、これをシート硬さとした。
熱伝導度は、放熱シートの垂直方向の熱拡散率から算出した。放熱シートの垂直(厚み)方向の熱拡散率は、NETZSCH−GeratebauGmbH製のLFA477 Nanoflash を用いたレーザーフラッシュ法で測定した。放熱シートの熱伝導度の計算には、多孔質アルニウムシートの密度と比熱、および弾性体の密度と比熱から体積分率に基づいて計算した値を用いた。
放熱シートを銅板(50mm×60mm、厚さ3mm)の上に貼り付けた。この放熱シートを貼り付けた銅板の放熱シートと発熱体パッケージとをトルク40Ncmの力でねじ留めした上で、T3Star装置を用いて、放熱シートの熱抵抗を測定した。発熱体パッケージはTO−3Pを用いた。発熱:1A、30sec(素子温度:ΔT=2.6℃)、測定:0.01A、測定時間:45secの条件で測定を行った。
比較例2の放熱シートは厚さが厚くなりすぎて、バルク熱抵抗が大きくなりすぎたためであると推察される。
比較例4の放熱シートは、平均孔径が大きく、表面粗さRaが大きくなりすぎたため、密着性が低下したためであると推察される。これは本発明例1の熱伝導度、厚みとの関係からより明確に支持される。つまり比較例4の熱伝導度は本発明例1と同程度であり、厚みは同じである。従ってバルク熱抵抗はほぼ変わらない。しかしながら熱抵抗としては比較例4のほうが高くなっている。これは、界面熱抵抗が高いことを示しており、密着性が低下していることを示している。
比較例5の放熱シートは、気孔率が低くなりすぎて、密着性が低下したためであると推察される。これは本発明例1の熱伝導度、厚みとの関係からより明確に支持される。つまり比較例5の熱伝導度は本発明例1よりも高く、厚みは同じである。従ってバルク熱抵抗はほぼ変わらない。しかしながら熱抵抗としては比較例5のほうが高くなっている。これは、界面熱抵抗が高いことを示しており、密着性が低下していることを示している。
比較例7の放熱シートは、骨格孔の数が多くなりすぎて、多孔質アルミニウムシートの熱伝導度が低下したためであると推察される。これは熱伝導度測定値から明確に支持される。
11 金属骨格
12 骨格孔
13 気孔
14 多孔質金属シート
15 弾性体
Claims (2)
- 三次元網目構造の金属骨格およびこの金属骨格の間に形成された気孔を有する多孔質金属シートと、前記気孔に充填されている弾性体とを含む放熱シートであって、
厚みが150μm以上350μm以下の範囲にあり、前記多孔質金属シートは、気孔率が70%以上99%以下の範囲とされ、前記気孔は、平均孔径が50μm以上100μm以下の範囲にあり、さらに前記金属骨格は、長径が5μm以上40μm以下の範囲にある骨格孔を有し、前記金属骨格の断面観察によって測定される長さ100μmあたりの前記骨格孔の平均個数が1個以上5個以下の範囲にあることを特徴とする放熱シート。 - 前記弾性体が、シリコーンゴム、シリコーンゲル、フッ素ゴムもしくはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の放熱シート。
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