JP2018160560A - 熱電変換モジュールおよびその製造方法 - Google Patents

熱電変換モジュールおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】応力緩和性と耐熱性に加えて、熱電素子と電極間の接合界面安定性に優れる熱電変換モジュールを提供する。【解決手段】熱電変換モジュール1はN型熱電素子11とP型熱電素子12が接合層31を介して電極21に接合されている。接合層31は、熱電素子側に形成される第一層311と電極側に形成される第二層312を有する。第一層311は、実質的にAlとNiからなるとともに、AlとNiからなる化合物相もしくは合金相を含む。第二層312は、実質的にNiからなり、電極21の少なくとも接合側表層がCu、Ni、Ti、Mo、Au、Ag、Fe、Pd、Crおよびこれらを含む合金で形成される。第二層312のNiと電極21の表層が金属的に接合されている。【選択図】図1

Description

本発明は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電変換モジュールおよびその製造方法に関する。
熱電変換は熱エネルギーと電気エネルギーの相互作用を利用したエネルギー変換技術の一つである。熱電素子に温度差を与えると、ゼーベック効果によって起電力が生じる。一方で熱電素子に電流を流すとペルチェ効果によって、熱電素子の表裏に温度差が生じる。このようなゼーベック効果またはペルチェ効果を産業に活用するため、複数の熱電素子を電極で直列に接続した熱電変換モジュールが用いられる。ゼーベック効果の利用は、例えば工業炉の高温配管部や自動車の排気管に熱電変換モジュールを取り付け、廃熱回収および発電用途として期待されている。ペルチェ効果の利用は、熱電変換モジュールに電流を流すことにより加熱あるいは冷却する温調システム等での適用実績がある。特にゼーベック効果を利用した発電用途の場合は熱電変換モジュールの温度差が大きいほど得られる発電電力量が大きくなる。したがって、より多くの発電電力量を得るためには高温域で変換効率が高い熱電素子の適用と合わせて高温動作時の信頼性が高い熱電変換モジュールの構造が必要となる。
熱電変換モジュールの一例を図10に示す。熱電変換モジュール1はN型熱電素子11とP型熱電素子12が電極21に接合され、N型熱電素子11とP型熱電素子12が電極を介して直列に配列された構造となっており、熱電変換モジュール1の一方の面と他方の面に温度差を与えることでゼーベック効果による発電、電極21に電流を流すことで熱電変換モジュール1の一方の面と他方の面に温度差を形成して加熱あるいは冷却を行うことができるように構成されている。
高温域で発電性能が高い熱電素子は多く存在しているが、いずれも300〜600℃程度の温度域において特に性能が優れている。しかしながら、高温向け熱電素子を電極に接合した熱電変換モジュールを高温環境下で使用する場合、熱応力の影響が大きくなることで、接合部や熱電素子自体の割れが生じやすくなる。電子部品の接合に使用されるはんだは柔らかい錫(Sn)や鉛(Pb)を主体とした合金であり、接合部自体が変形することで被接合材に負荷される熱応力を緩和することができる。しかしながら、一般的なはんだ材の融点はほとんどが300℃以下であるため、300℃以上の温度環境では使用することができない。はんだ材よりも融点が高いろう材を使用する場合は、高温環境下で接合部が溶けない反面、接合時は融点以上まで温度をあげる必要があるので、接合後に熱電素子や接合部が破壊する懸念がある。一般的なろう材として普及している銀(Ag)−銅(Cu)共晶ろうは融点が780℃のため、接合時は800℃以上まで加熱する必要がある。さらに高温域で熱電変換モジュールを使用する場合は、熱にともなう部材間の原子拡散によって接合部にボイドが生じ、接合信頼性が低下しやすい。
これらのことから、高温向け熱電素子の性能を最大限に発揮するためには、(1)熱応力緩和性、(2)高耐熱性、(3)接合界面安定性に優れるモジュール構造、接合構造が必須となる。
高温対応接合技術の背景技術として、特許文献1がある。この公報には「はんだ付け母材の間に配置されたはんだとを、所定の圧力で互いに加圧しあい該はんだを溶融させ、所定の時間が終了した後、この液状のはんだから拡散された銅および錫が、金属間化合物銅錫相を含む接続層を形成する。」とあり、「応力緩和層として半導体基板表面に200〜700nm厚の柔らかいアルミニウム(Al)層を形成する」と記載されている(要約参照)。
特開2008−235898号公報
特許文献1では接合後に融点676℃を有するCu3Sn化合物層が接合部に形成されるため、(2)高耐熱性に関しては可能である。しかしながら(1)熱応力緩和性に関しては応力緩和層とするAl層の厚みが200〜700nm厚と非常に薄いため、応力緩和性に欠ける。また(3)接合界面安定性に関しては、はんだ材を挟持する被接合材が同部材の場合、被接合材の両方の界面から金属間化合物層が成長するため、はんだ材から金属間化合物銅錫層へ変化する際の体積収縮にともなうボイドが接合層中央部に形成されやすくなり、安定性に欠けるものである。これらのことから、本発明は応力緩和性と耐熱性に加えて、熱電素子と電極間の接合界面安定性に優れる熱電変換モジュールを提供することを目的とする。
上記目的を達成する、本発明の第1の熱電変換モジュールは、複数のP型の熱電素子と、複数のN型の熱電素子と、複数の電極を有し、前記複数のP型の熱電素子および前記複数のN型の熱電素子と前記複数の電極とが互いに電気的に直列に接続されるとともに、少なくとも高温側に配置される電極と、前記複数のP型の熱電素子および前記複数のN型の熱電素子とが接合層を介して接合されている熱電変換モジュールにおいて、前記接合層は前記熱電素子側に形成される第一層と前記電極側に形成される第二層を有し、前記第一層は実質的にAlとNiからなるとともに、AlとNiからなる化合物相もしくは合金相を含み、前記第二層は実質的にNiからなり、前記電極の少なくとも接合側表層がCu、Ni、Ti、Mo、Au、Ag、Fe、Pd、Crおよびこれらを含む合金で形成され、前記第二層のNiと前記電極の表層が金属的に接合されているものとする。
また、本発明の第2の熱電変換モジュールは、複数のP型の熱電素子と、複数のN型の熱電素子と、複数の電極を有し、前記複数のP型の熱電素子および前記複数のN型の熱電素子と前記複数の電極とが互いに電気的に直列に接続されるとともに、少なくとも高温側に配置される電極と、前記複数のP型の熱電素子および前記複数のN型の熱電素子とが接合層を介して接合されている熱電変換モジュールにおいて、少なくとも前記P型の熱電素子およびN型の熱電素子いずれか一方の前記接合層は三層で形成され、前記三層は熱電素子側から電極側へ順に第一層、第二層、第三層を有し、前記第一層は実質的にAlとNiとからなるとともに、AlとNiからなる化合物相もしくは合金相を含み、前記第二層は実質的にNiからなり、前記第三層は実施的にTiからなり、前記電極の少なくとも接合側表層がCu、Ni、Ti、Mo、Au、Ag、Fe、Pd、Crおよびこれらを含む合金で形成され、前記第三層のTiと前記電極の表層が金属的に接合されているものとする。
上記の第1および第2の熱電変換モジュールは、前記第一層がAlとNiからなる化合物相または合金相と、Al相からなるものとすることが好ましく、前記第一層がAl3Ni、Al3Ni2、AlNi、Al2Ni3、AlNi3のうちの1種または2種以上で形成されたものとすることが好ましい。また、前記化合物相または合金相に前記熱電素子の成分が含まれていてもよく、第1の熱電変換モジュールにおいて、前記第二層のNiと前記電極の表層が互いの成分を含む層を介して接合されていてもよく、第2の熱電変換モジュールにおいて、前記第三層のTiと前記電極の表層が互いの成分を含む層を介して接合されていてもよい。さらに、第1および第2の熱電変換モジュールにおいて、前記第一層の厚さが1〜100μmであることが好ましく、第1の熱電変換モジュールにおいて、前記第二層の厚さが25〜500μmであることが好ましく、第2の熱電変換モジュールにおいて、前記第二層と前記第三層の合計の厚さが25〜500μmであり、前記第二層の厚さが5〜500μmであることが好ましい。
本発明の熱電変換モジュールの製造方法は、上記の第1および第2の熱電変換モジュールの好適な製造方法であり、本発明の熱電変換モジュールの製造方法は、高温側および低温側に配置される電極とP型熱電素子およびN型熱電素子が接合層を介して機械的および電気的に接続される熱電変換モジュールの製造方法において、電極、接合層形成部材、P型熱電素子およびN型熱電素子の順に位置を合わせて設置する設置工程と、前記P型熱電素子および前記N型熱電素子をそれぞれ前記電極に加圧しながら加熱して、前記P型熱電素子と前記電極との間および前記N型熱電素子と前記電極との間を接合する加圧加熱工程とを備え、前記接合層形成部材は、実質的にAlからなる層および実質的にNiからなる層の二層からなる接合層形成部材、または実質的にAlからなる層、実質的にNiからなる層および実質的にTiからなる層の三層からなる接合層形成部材であり、前記実質的にAlからなる層を前記P型熱電素子またはN型熱電素子の側に配置するものである。
本発明の熱電変換モジュールの製造方法において、前記接合層形成部材の一部または全部の層を電極またはP型熱電素子およびN型熱電素子に予め設けておいてもよい。また、前記加熱加圧工程における加熱温度が500〜700℃であり、加圧力が5〜50MPaであることが好ましい。
本発明によれば、熱電変換素子と電極間の接合部に生じる応力を十分に緩和することができるとともに、耐熱性と接合部界面安定性に優れる熱電変換モジュールを提供することができる。すなわち、熱電変換モジュールの信頼性を向上することができる。
本発明の第1の熱電変換モジュールの一部を抜粋した断面図である。 本発明の第1の熱電変換モジュールにおける接合後のN型素子側接合部断面像と元素マッピング分析結果を示す図である。 本発明の第1の熱電変換モジュールにおける500℃熱処理後のN型素子側接合部断面像と元素マッピング分析結果を示す図である。 本発明の第1の熱電変換モジュールにおける接合後のP型素子側接合部断面像と元素マッピング分析結果を示す図である。 本発明の第1の熱電変換モジュールにおける500℃熱処理後のP型素子側接合部断面像と元素マッピング分析結果を示す図である。 本発明の第1の熱電変換モジュールに絶縁層付き電極を使用する場合の熱電変換モジュールの一部を抜粋した断面図である。 本発明の第1の熱電変換モジュールの製造工程の一例を示す図である。 本発明の第1の熱電変換モジュールの別の製造工程を示す図である。 本発明の第2の熱電変換モジュールの一部を抜粋した断面図である。 熱電変換モジュールの一例を示す斜視図である。
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。なお、実施の形態を説明するための各図において、同一の機能を有する要素には同一の名称、符号を付して、その繰り返しの説明を省略する。
[第1の熱電変換モジュール]
図1に、本発明の第1の熱電変換モジュールの一例を示す。熱電変換モジュール1はN型熱電素子11とP型熱電素子12は接合層31を介して電極21に接合されている。発電性能が優れる熱電素子は数種類存在しており、マグネシウム(Mg)−シリコン(Si)系、マンガン(Mn)−Si系、スクッテルダイト系、ホイスラー合金系、ハーフホイスラー合金系、シリコン(Si)−ゲルマニウム(Ge)系、酸化物系、Sn−セレン(Se)系のいずれかの組み合わせからなる熱電変換素子の組み合わせが望ましい。特に、Mg−Si系とMn−Si系は原材料が豊富で安価な特徴も有している。しかしながら、発電性能が優れるMg−Si系はN型のみとなる。一方で発電性能が優れるMn−Si系はP型のみとなる。そのため本発明の第1の熱電変換モジュールではN型熱電変換素子11をMg−Si系素子、P型熱電変換素子12をMn−Si系素子として説明する。
電極21はCu、Ni、Ti、Mo、Au、Ag、Fe、Pd、Crおよびこれらを含む合金であることが好ましく、N型熱電素子11とP型熱電素子12およびとの熱膨張率差や後述する接合層31との界面安定性を考慮して選択すればよい。本発明の熱電変換モジュールでは電極21をCuとして説明する。
接合層31内の構成は実質的にAlとNiからなる第一層311、実質的にNiからなる第二層312で構成する。ここで「実質的に」とは成分の80原子%以上を占めるものを云う。第一層においてAlとNiは化合物(Al3Ni、Al3Ni2、AlNi、Al2Ni3、AlNi3のうちの少なくとも1種)または合金の形態で存在し、化合物相または合金相を形成する。第一層においては残余としてAlを含みAl相が分散してもよく、熱電変換素子の成分の一部を含み熱電変換素子の成分とAlまたはNiの化合物相あるいは合金相を含んでいてもよい。
接合層31における第一層311は、熱電素子(N型熱電素子11,P型熱電素子12)を接合するための層であるとともに、熱電素子や電極間の拡散にともなうボイドの生成を防止する拡散防止バリア層としての機能を有する層である。しかしながら、第一層311はAlとNiは化合物を含む硬い層となるため、本発明の熱電変換モジュールにおいては軟質な第二層312を設けることで応力緩和を果たし、接合層31の界面安定性を担保したものである。
図1において第一層311は単層として表記しているが成分比の異なる相を複数層形成していてもよく、例えば、第一層311の中にAl3Ni、Al3Ni2、AlNiの合計三層の複合層が形成されていてもよい。本発明の第1の熱電変換モジュールでは、第一層311をAlとNiと熱電素子の成分からなる層、第二層312をNiとして説明する。
図1に示すようにN型熱電変換素子11とP型熱電変換素子12およびと電極21は接合層31を介して上端と下端で接合されている。熱電変換モジュール1は、熱電変換素子の両端に温度差を与えることにより、温度差に応じた起電力が発生するモジュールである。図1の上面を低温に、下面を高温にした場合について以下に示す。上下面に与えた温度差により、熱電変換モジュール1には電流が発生する。電流はN型熱電変換素子11では低温側から高温側(図1中、上から下)に、P型熱電変換素子12では高温側から低温側(図1中、下から上)に流れるので、これらを直列に接合することで電気的な回路を形成する。このように直列に接続した熱電変換素子を、例えば図10のように、平面状、ライン上などに複数接合することで熱電変換モジュール1を構成する。
ここで、N型熱電変換素子11であるMg−Si系素子とP型熱電変換素子12であるMn−Si系素子は300〜500℃の温度域で最も効率的な発電を行うことができる熱電素子である。すなわち、Mg−Si系素子とMn−Si系素子を使用する場合、熱電変換モジュールの稼動温度は300〜500℃となり、熱電変換素子と電極間の接合部は300〜500℃の温度に耐える必要がある。図2はN型熱電変換素子11と電極21を接合層31を介して接合した場合の接合部断面像と元素マッピング分析結果を示す図である。図2(a)に示すように実質的にAlとNiからなる第一層311内には二つの層が形成されており、実質的にAlとNiからなる第一層を介してMg−Si系素子と実質的にNiからなる第二層312が接合されており、さらに実質的にNiからなる第二層312と電極21が接合されている。したがって、Mg−Si系素子と電極21は接合層31を介して接合されている。図2(a)のPoint1の定量分析結果は、0.3原子%Mg−0.5原子%Si−74.9原子%Al−24.3原子%Niであり、Point2の定量分析結果は、0.6原子%Mg−5.1原子%Si−56.2原子%Al−38.4原子%Niである。すなわち実質的にAlとNiからなる第一層311内には組成比の異なる二層が存在しており、それぞれの組成比から、第一層311内の素子側から順に素子成分である微量のMgとSiが置換する形でAl3Ni、Al3Ni2が形成されている。図2(b)は図2(a)内の点線で囲まれた部分(第一層311)の元素マッピング分析結果を示す図である。第一層311はAlとNiで構成されており、微量のSi、Mgが第一層311内に存在している。加えて、AlとNiは一部Mg−Si系素子内の接合界面近傍に点在するものの、第一層311内に留まる形で接合界面を形成している。第一層311に形成されるAlとNiの化合物の融点はそれぞれAl3Ni:854℃、Al3Ni2:1133℃であり、耐熱性を有するため、高温環境下でも接合を維持することが可能である。仮に、500℃を超える温度域まで熱電変換モジュールの温度が上昇した場合も、少なくとも854℃未満の温度であれば第一層311は溶融しないため、熱電変換モジュールを使用することが可能である。また、本発明の第1の熱電変換モジュールにおいては接合層内にAlとNiの化合物相を形成しているが、一部にAlとNiの化合物相よりも融点の低いAlからなる相が残存していても本発明の第1の熱電変換モジュールと同様の効果を発揮することができる。熱電素子と、AlとNiの化合物が層状に形成されない場合でも耐熱性に優れるAlとNiの化合物相が一部または複数箇所で連結することで、Mg−Si系素子と接合することが可能である。すなわち、AlとNiの化合物相とAlとNiの化合物相と異なるAlからなる相が混在するような第一層311の場合でも接合を維持することが可能である。
図3は500℃、100時間熱処理後のN型素子接合部断面像と元素マッピング分析結果を示す図である。図3(a)に示すように実質的にAlとNiからなる第一層311内には二つの層が形成されており、実質的にAlとNiからなる第一層311を介してMg−Si系素子と実質的にNiからなる第二層312が接合されており、さらに第二層312と電極21が接合されている。したがって、Mg−Si系素子と電極21は接合層31を介して接合されている。図3(a)のPoint1の定量分析結果は、0.6原子%Mg−0.8原子%Si−74.2原子%Al−24.4原子%Niであり、Point2の定量分析結果は、0.7原子%Mg−5.3原子%Si−54.4原子%Al−39.6原子%Niである。すなわち第一層311内には組成比の異なる二層が存在しており、それぞれの成分比から、第一層311内の素子側から順に素子成分である微量のMgとSiが置換する形でAl3Ni、Al3Ni2が形成されている。図3(b)は図3(a)内の点線で囲まれた部分(第一層312)の元素マッピング分析結果を示す図である。第一層311はAlとNiの化合物相で構成されており、微量のSi、Mgが第一層311内に存在している。加えて、AlとNiは一部Mg−Si系素子内の接合界面近傍に点在するものの、第一層311内に留まる形で接合界面を形成している。すなわち、第一層311は500℃、100時間熱処理後も接合前と同様の接合界面を維持しており、高温での接合界面安定性に優れる。上記では第一層311をAl3Ni、Al3Ni2の二相を耐熱性と接合界面安定性に優れると記載したが、AlNi、Al3Ni2、AlNi3の相が形成されている場合も同様の効果を発揮することが可能である。例えば、接合温度(製造方法にて後述)や熱処理温度が500℃を超える(熱電変換モジュールの使用温度が長期的に500℃を超える)場合であっても例えば、より融点の高いAlNi相が第一層311内に形成され、Al3Ni、Al3Ni2と同等以上の耐熱性、接合界面安定性を得ることができる。本発明の第1の熱電変換モジュールでは第一層311は平均で20μmの厚さで形成することで、Mg−Si系素子や第一層311内にクラックが生じない接合を達成する。一般的に化合物相は耐熱性が高い反面、硬く、脆い性質を有している。化合物相からなる第一層311が厚すぎるとMg−Si系素子と電極21であるCuとの熱膨張差によって熱応力が負荷した際に熱電素子11内や第一層311内にクラックが生じる恐れがある。逆に薄すぎる場合でも、第一層311に負荷される熱応力が増加するため、第一層311内にクラックが生じる恐れがある。第一層311は後述する第二層312より薄く形成されていればよく、1〜100μmの厚さであればよい。
図2(a)、図3(a)では第二層312であるNiと電極21であるCuの接合状態についても明示している。第二層312と電極21の接合界面は500℃100時間熱処理後も明確なボイドが生じておらず、接合界面安定性に優れる。CuとNiは全率固溶のため、CuとNiの固溶相(図示せず)を介した接合界面を形成するが、500℃の温度域では部材拡散にともなうボイドは生じ難く、接合信頼性に優れる接合部を得ることが可能である。仮に500℃を超えるような環境で熱電変換モジュールを使用する場合は電極21をNiとして第二層312であるNiと同部材同士による接合構造とすることも可能である。また、電極21をNiとせずとも、Ti、Mo、Au、Ag、Fe、Pd、Cr等からなる高融点金属とすることも可能である。電極21をTi、Mo、Au、Ag、Fe、Pd、Crとした場合、第二層312であるNiとの接合界面には第二層312であるNiからなる成分と電極21の互いの成分を含む反応層が形成されるが、いずれの場合もAlとNiの化合物相よりも融点の高い化合物相もしくは合金相が形成されるため、耐熱性と接合界面安定性に優れる接合を形成することができる。電極21自体を上記の高融点金属とせずとも、例えば、少なくとも電極21の最表面にTi、Mo、Au、Ag、Fe、Pd、Cr等の高融点金属が形成されている場合でも同様の効果を発揮することが可能である。
本発明の第1の熱電変換モジュールでは第二層312は平均で100μmの厚さで形成することで、Mg−Si系素子や第一層311内にクラックが生じていない接合を達成する。電極21のCuの線膨張係数は17×10-6/Kであり、Mg−Si系素子の線膨張係数(14.5×10-6/K)と比較して大きい。そのため、第一層312のNi(13.4×10-6/K)が接合層31に含まれることで、N型熱電素子11と電極21の線膨張係数差により生じる熱応力を緩和することが可能である。第一層312のNiの厚さが薄いと応力緩和効果を得がたく、Mg−Si系素子内のクラックに合わせて第一接合層311内にもクラックが生じる可能性がある。逆に第二層312が厚すぎると電極21とMg−Si系素子との距離が長くなることで、熱的および電気的損失が生じ、発電性能が低下する恐れがある。少なくとも第二層312は前述した第一層311よりも厚く形成されていればよく、25〜500μmの厚さの範囲であればよい。
図4はP型熱電変換素子12であるMn−Si系素子と電極21を接合層31を介して接合した場合の接合部断面像と元素マッピング分析結果を示す図である。図4(a)に示すように第一層313を介してMn−Si系素子と第二層312が接合されており、さらに第二層312と電極21が接合されている。したがって、Mn−Si系素子と電極21は接合層31を介して接合されている。図4(a)のPoint1の定量分析結果は、0.7原子%Mn−4.7原子%Si−55.7原子%Al−38.9原子%Niであり、Mg−Si系素子を接合した場合と類似する形で第一層313内に微量のMnとSiが置換したAl3Ni2が形成されている。図4(b)は図4(a)内の点線で囲まれた部分(第一層313)の元素マッピング分析結果を示す図であり、第一層313はAl、Ni、Si、Mnが第一層313内に存在しており、AlとNiは第一層313内に留まる形で接合界面を形成している。
図5は500℃、100時間熱処理後のP型素子接合部断面像と元素マッピング分析結果を示す図である。図5(a)に示すように第一層313を介してMn−Si系素子と第二層312が接合されており、さらに第二層312と電極21が接合されている。したがって、Mn−Si系素子と電極21は接合層31を介して接合されている。図5(a)のPoint1の定量分析結果は、0.7原子%Mn−3.0原子%Si−55.6原子%Al−40.7原子%Niであり、熱処理前と同様に微量のMnとSiが置換する形でAl3Ni2が形成されている。図5(b)は図5(a)内の点線で囲まれた部分(第一層313)の元素マッピング分析結果を示す図である。Al、Ni、Si、Mnが第一層313内に存在しており、AlとNiは第一層313内に留まる形で接合界面を形成している。すなわち、第一層313は500℃、100時間熱処理後も接合前と同様の接合界面を維持しており、高温での接合界面安定性に優れる。また、第二層312であるNiと電極21であるCuの接合界面についても500℃、100時間熱処理後はボイドのない安定した接合界面を維持することが可能である。また、第一層313と第二層312の厚さを前述したMg−Si系素子を接合した場合と同様にすることでMn−Si系素子内や第一層313に負荷される熱応力を低減することが可能であり、クラックを防止することができる。
本発明の第1の熱電変換モジュールではN型熱電素子11であるMg−Si系素子を電極21に接合した場合、実質的にAlとNiからなる第一層311内にはAlとNiの化合物の成分比が異なる二層が形成される。一方でP型熱電素子12であるMn−Si系素子を電極21に接合した場合は、実質的にNiからなる第二層312との接合界面にAlとNiの化合物相(第一層311内で第二層312側に形成されたAl3Ni2)が一層となっている。したがって、AlとNiの化合物相が一層のみの場合でも接合信頼性に優れる熱電変換モジュールを提供することができる。すなわち、第一層313内にAlとNiの化合物相と異なる組成の相が存在する場合でも、第一層313内に少なくとも一層以上のAlとNiの化合物相を形成することで、熱電素子や電極間の拡散にともなうボイドの生成を防止することが可能であり、拡散防止バリア層としての機能を発揮することができる。
加えて、本発明の第1の熱電変換モジュールでは第一層311内および第一層313内に形成されるAlとNiの化合物相に熱電素子の成分であるSi、Mg、Mnが含まれる形で形成される。素子成分であるSi、Mg、MnがAlとNiの化合物相に含まれる工程は後述する接合時となる。素子成分であるSi、Mg、MnはAlとNiの化合物相の生成を急速に進行させる作用があり、AlとNiの化合物相を容易に層状に形成することができるため、熱電素子の成分を含まないAlとNiの化合物相よりも緻密で接合性に優れる接合界面を実現できる。例えばAlとNiの化合物相でAlNiがあるが、状態図からAlNiは固溶幅が広く化学量論組成から最大で20原子%のずれが存在することがわかる。すなわち、固溶元素を得やすいため、熱電素子の成分を容易に取り込みやすい。そのため、AlとNiの化合物相内に熱電素子の成分の合計が1〜20原子%含まれることで、上記効果を十分に発揮することができる。AlとNiの化合物相に熱電素子の成分が含まれない場合でも接合性は高いが、熱電素子の成分が含まれた方がより信頼性の高い接合を実現することができる。
また、本発明の第1の熱電変換モジュールではN型熱電素子11にMg−Si系素子、P型熱電素子12にMn−Si系素子を使用したが、他の熱電素子を使用した場合でも第一層311内または第一層313内に形成するAlとNiの化合物相内に熱電素子の成分を取り込むことにより、緻密で接合性に優れた接合界面を形成することが可能である。Si−Ge系素子の場合はMg−Si系素子、Mn−Si系素子と同様にSiを含んでいるため、AlとNiの化合物相にSiを取り込むことが可能である。他にAlとNiの化合物相内に取り組むことができる元素はCo、Cr、Sn、Sb、Ti、V、Zn等がある。状態図より、Cr、V、ZnはNi中への固溶量が10原子%以上であり、Co、Sn、Sb、TiについてもNi中への固溶量が最大で10原子%程度あるため、Ni中に固溶しやすい。すなわち、AlとNiの化合物相内に上記元素を取り込むことが可能である。また、Al中に固溶する元素についてもAlとNiの化合物相内に取り込むことが可能である。Al中へ少なくとも1〜10原子%固溶できる元素であればよい。上記の元素はホイスラー合金系素子、ハーフホイスラー合金系素子、スクッテルダイト系素子、酸化物系素子、Sn−Se系素子に含まれる。例えば、ホイスラー合金ではFe2VAl素子、スクッテルダイト系ではCo−Sb素子等の公知となっている。したがって、N型熱電素子11およびP型熱電素子12を上記の熱電素子とした場合でも信頼性の高い接合を実現することが可能である。なお、上記の熱電変換素子のうち、Mg−Si系素子の線膨張率はNiとほぼ同等であるため、Mg−Si系素子と電極の接合に特に好適である。
以上より、接合層31を本発明の第1の熱電変換モジュールで示した構成とすることで、応力緩和性と耐熱性に加えて、熱電素子と電極間の接合界面安定性に優れる熱電変換モジュールを実現することができる。
なお、上記の例では電極21としてCu電極を用いたが、Cu電極の一方の面に絶縁層を形成した絶縁電極、または絶縁層の両面にCu層を形成した三層電極を用いてもよい。図6は熱電変換モジュール1に絶縁層付き電極を使用した場合の例であり、絶縁層付電極23で第一層231は銅通させるための金属層、第二層232もしくは第三層233が絶縁層となる。絶縁付電極を使用することでモジュール設置時の自由度が向上する。
[第1の熱電変換モジュールの製造方法]
図7は本発明の第1の熱電変換モジュールの製造工程を示す図である。11はN型熱電変換素子、12はP型熱電変換素子、21は電極(Cu電極)、41は接合層形成部材、51は支持治具、52は加圧治具である。以下、図7(c)の熱電変換モジュール1を製造する工程を、図7(a)〜(c)を参照しながら説明する。なお、図7(a)は電極、接合層形成部材、P型熱電素子およびN型熱電素子の順に位置を合わせて設置する設置工程の模式図であり、図7(b)はP型熱電素子およびN型熱電素子をそれぞれ電極に加圧しながら加熱して、前記P型熱電素子と前記電極との間および前記N型熱電素子と前記電極との間を接合する加熱加圧工程の模式図であり、図7(c)は加熱加圧工程後に得られる熱電変換モジュールの模式図である。
まず、図7(a)に示すように、支持治具51上に電極21を設置する。その後、電極21上に接合層形成部材41、N型熱電変換素子11およびP型熱電変換素子12の順に位置合せおよび設置を行う。N型熱電変換素子11およびP型熱電変換素子12の上に再度接合層形成部材41を設置し、最後に電極21を配置する。これらの設置には、治具(図示せず)を用いて一括で設置しても良いし、個別に設置してもよく、方法は特に問わない。本発明の第1の熱電変換モジュールの製造方法では接合層31を形成するために、接合層形成部材41としてAl層411とNi層412からなる金属箔が積層された複合金属箔を用いた例である。複合金属箔の作製方法はクラッド法等の一般的に公知な方法でよい。すなわち、Al箔とNi箔をクラッド法等により複合した複合金属箔を用いることができる。本発明の第1の熱電変換モジュールの製造方法ではAl層411とNi層412の二層が形成されたクラッド材として説明する。
ある。
次に、図7(b)に示すように、上方から加圧治具52により加圧を行うとともに加熱を行い、電極21とN型熱電変換素子11およびP型熱電変換素子12を、接合層形成部材41を介して接合する。接合完了後、図7(c)に示すように、加圧治具52と支持治具51を取り外すことにより、熱電変換モジュール1が形成できる。図7(b)の過程で接合層形成部材41はN型熱電変換素子11、P型熱電変換素子12および電極21と拡散反応が生じることで、接合層31となる。具体的にはAl層411がNi層412と反応することでAlとNiの化合物相からなる第一層311または第一層313を形成することが可能である。AlとNiの化合物相の詳細については前述した通りである。Ni層412と電極21についても前述した通り、電極のCuと固相拡散の形で接合することが可能である。接合後にNi層412は第二層312となるが、Ni層412はAl層411を実質的にAlとNiからなる第一層311とするためのNi供給層および電極21のCuと固相接合するための層であり、組成はNi層412と第二層312は同じである。
本発明の第1の熱電変換モジュールの製造方法ではAl層411の厚みは1〜100μm、Ni層412の厚みは25〜500μmの厚さの範囲であれば前述の第1の熱電変換モジュールで記載した効果を発揮することができる。接合層31の厚みの範囲については前述のとおりであり、接合後に形成される接合層31の厚みを考慮して接合層形成部材41の厚さを適宜選定すればよい。
また、加熱加圧工程の加熱温度は500〜700℃であればよい。Al層411の融点は660℃であるが、660℃まで温度を上げずとも、Al層411を溶融させることが可能である。加圧によりAl層411はN型熱電素子11およびP型熱電素子12と接触しているため、熱電素子の成分とAl層411が拡散によって660℃以下でも共晶溶融を生じる。共晶溶融によりAlとNiの拡散が更に進行することでAlとNiからなる化合物相を形成しやすくなる。また、共晶溶融が生じない場合も、固相拡散によって接合することが可能である。接合時間を長くする、もしくは加圧力を上げることでより低温での接合が可能となるが、後述する加圧力の範囲も踏まえると接合温度は500℃以上が望ましい。逆に接合温度が高すぎると接合後の熱応力の影響が大きくなり、N型熱電素子11およびP型熱電素子12や接合層31にクラックが生じる恐れがあるため、700℃以下が望ましい。
加熱加圧工程の加圧力は5〜50MPaの範囲が望ましい。加圧力を5MPa以上としたのは熱電素子の新生面と接合層形成部材52の表面に形成されているAlの新生面を接合中に密に接触させるためである。加圧力が低いと酸化膜の影響で、新生面同士が密に接触せず、酸化膜の影響によって、接合性が悪化する。加えて、前述したように加圧は拡散を促進させる効果があるため、加圧力が低すぎると接合層31を形成する過程で拡散が不十分となり、接合界面安定性に優れる接合層31を形成することが困難である。加圧の上限はN型熱電素子11およびP型熱電素子12が破壊しない程度とする必要があるため、素子の圧壊未満であればよい。具体的には50MPa以下であれば十分に効果を発揮することができる。接合雰囲気については非酸化性雰囲気であればよく、窒素でなくとも真空、水素、窒素水素混合、アルゴン雰囲気においても同様の効果を得ることができる。
加えて、図7を用いた説明では、上下面の接合層形成部材51を一括して接合するプロセスを示したが、いずれか一方を予め接合したのち、他方を接合してもよい。たとえば、図7(a)の設置工程において、支持治具51側の接合層形成部材41とN型熱電変換素子11およびP型熱電変換素子12を設置し、支持治具51を加熱し接合層形成部材41を介してN型熱電変換素子11およびP型熱電変換素子12と支持治具51側の電極21とを接合させ、その後N型熱電変換素子11およびP型熱電変換素子12の上面と電極21を接合層形成部材41を介して熱電変換モジュール1を形成してもよい。
図7は接合層形成部材41をAl層411とNi層412からなる金属箔が積層された複合金属箔として用い、N型熱電変換素子11およびP型熱電変換素子12と電極21の間に接合層形成部材41を挟持する形態であるが、接合層形成部材41を複合金属箔として用い、N型熱電変換素子11およびP型熱電変換素子12と電極21の間に挟持する構造でなくとも製造することが可能である。例えば、接合層形成部材41を形成するAl層411とNi層412のうち、Al層411をN型熱電変換素子11およびP型熱電変換素子12の接合側端面に予め蒸着等により形成してもよく、さらにN型熱電変換素子11およびP型熱電変換素子12の接合側端面に形成したAl層に重ねてNi層を蒸着等により形成してもよい。また、接合層形成部材41を形成するAl層411とNi層412のうち、Ni層412を電極21表面に蒸着、鍍金等により形成してもよく、さらに電極21表面に形成したNi層412上にAl層411を蒸着等により形成してもよい。
図8は、本発明の熱電変換モジュールの他の製造工程の一例であり、電極21と接合層形成部材41に替えて複合電極22を使用する部分が図8と異なっている。複合電極22はAl層221、Ni層222、Cu層223からなる三層構造となる。複合電極22は電極と接合層形成部材41を兼ねる構造であり、複合電極22とN型熱電素子11およびP型熱電素子12を支持治具51上に配置後、加圧治具52を介して加圧および加熱することで熱電変換モジュール1を作製することが可能である。すなわち、接合層形成部材41の設置工程を省略が可能である。また、電極21および複合電極22は全て金属部材からなる構造であるが、セラミックスのような絶縁層が形成された電極を使用することも可能である。
[第2の熱電変換モジュール]
本発明の第2の熱電変換モジュールの構造を図9を用いて説明する。図9は本発明の第2の熱電変換モジュールの一部を抜粋した断面図である。図9に示す構造では第1の熱電変換モジュールと同様に、熱電変換モジュール1はN型熱電素子11としてMg−Si系素子、P型熱電素子12としてMn−Si系素子を使用している。接合層32中の第一層321および第二層323については第1の熱電変換モジュールと同様の組成、すなわち、第一層は実質的にAlとNiとからなるとともに、AlとNiからなる化合物相もしくは合金相を含むものとし、第二層は実質的にNiからなるものとする。本発明の第2の熱電変換モジュールはこのような第1の熱電変換モジュールに対し、第三層323を追加したことが第1の熱電変換モジュールと異なる。第三層323は実施的にTiからなる層で構成される。Tiの線膨張率はMn−Si系素子と同等のため、Mn−Si系素子に対しては応力緩和効果が増大する。すなわち、N型熱電素子11のMg−Si素子に対しては第1の熱電変換モジュールと同様で、P型熱電素子12のMn−Si素子に対しては上記のTi層からなる第三層323を形成することでモジュール全体の信頼性が極めて高くなる。
ここではN型熱電素子11およびP型熱電素子12で接合層31および接合層32を形成することを説明をしたが、素子の組み合わせによってはN型P型によらず全て接合層32で形成することも可能である。実質的にTiからなる第三層323の厚さに関しては25μm以上とすることが望ましい。厚さの範囲の理由については第1の熱電変換モジュールの第二層312と同様である。第一層321に関しては第1の熱電変換モジュールと同様1〜100μmが望ましい。第二層322に関してはTi層からなる第三層323で応力緩和効果を得ることが可能なため、第1の熱電変換モジュールよりも薄く形成してもよい。ただし、第二層322の厚さが5μmよりも薄くなると第一層321を形成するAlとの拡散反応過程で第二層322のNiが全て消失してしまい、接合界面安定性が低下する。したがって、第二層322は5μm以上とすることが望ましい。ただし、第二層および第三層の厚さが過大となると、第三層または第二層の線膨張により素子の割れが生じやすくなるため、第二層と第三層の合計の厚さを500μmとすることが望ましい。
第2の熱電変換モジュールではP型素子をMn−Si系素子、N型素子をMg−Si系素子としたが、他の熱電素子を使用した場合でも同様の効果が得ることができる。例えばスクッテルダイト系であるCo−Sb系の素子の線膨張係数はMn−Si系素子と同等であるため、Co−Sb系の素子を使用した場合でも第1の熱電変換モジュールと同様の信頼性に優れる熱電変換モジュールを提供することが可能である。また電極21は第1の熱電変換モジュールと同様にCuでもよいが、Niとした場合でもNi−Ti間で化合物相を介して強固に固相接合することもできる。
なお、最も好ましい熱電変換モジュールの形態としては、N型熱電変換素子11としてMg−Si系素子を用い、Mg−Si系素子が実質的にAlとNiからなる第一層と実質的にNiからなる第二層の二層により電極に接合され、P型熱電変換素子12としてMn−Si系素子またはCo−Sb系の素子を用い、Mn−Si系素子またはCo−Sb系の素子が実質的にAlとNiからなる第一層、実質的にNiからなる第二層および実質的にTiからなる第三層の三層により電極に接合された形態である。この形態においては、接合層の応力緩和効果を有する層の線膨張率がN型熱電変換素子11およびP型熱電変換素子12の線膨張係数とほぼ同等となるため、応力緩和効果が最も高く、接合界面安定性が最も高くなる。
[第2の熱電変換モジュールの製造方法]
製造方法についても第1の熱電変換モジュールの製造方法と同様の方法で信頼性に優れる熱電変換モジュールを提供することができる。すなわち、第1の熱電変換モジュールの製造方法において用いた、実質的にAlからなる層および実質的にNiからなる層の二層からなる接合層形成部材に替えて、実質的にAlからなる層、実質的にNiからなる層および実質的にTiからなる層の三層からなる接合層形成部材を用いることで第1の熱電変換モジュールの製造方法と同様にして製造することができる。この場合においても、接合層形成部材をAl箔、Ni箔およびTi箔の金属箔が積層された複合金属箔を用いてもよく、接合層形成部材の一部または全部を予め熱電変換素子または電極に形成しておいてもよい。
接合条件についても、第1の熱電変換モジュールの製造方法と同様であり、加熱加圧工程の加熱温度は500〜700℃であればよく、加熱加圧工程の加圧力は5〜50MPaの範囲とすることが好ましい。また、接合雰囲気については非酸化性雰囲気であればよく、窒素でなくとも真空、水素、窒素水素混合、アルゴン雰囲気においても同様の効果を得ることができる。
[第1実施例]
N型熱電変換素子としてMg−Si系素子、P型熱電変換素子としてMn−Si系素子、電極としてCu製の電極を用意し、Al層(厚み:12μm)とNi層(厚み:100μm)からなる複合金属箔を用い、表1に示す雰囲気、加熱温度および加圧圧力を変えて接合を行い、試料番号01〜28の熱電変換モジュール試料を作製した。作製した熱電変換モジュール試料について、接合後の界面を観察して接合状態の評価を行い、評価結果を併せて表1に記載した。なお、接合状態の良好なものについて「○」、接合不良のものについて「×」と評価して記載するとともに、接合不良のものについて備考欄に観察した状態を記載した。
また、接合状態の良好な試料について、500℃、1時間の熱処理を行い、接合した評価試料の熱電変換素子側面側から50μm/Sの速度で専用の治具を押し当てて、熱電変換素子と電極の接合部にせん断荷重を与える強度試験を行った。このとき、熱電変換素子で破断したものは接合状態が問題ないものとして「○」、熱電変換素子と電極の接合界面で破断したものは接合状態が悪いものであるため「×」として評価し、この評価結果につき表1に併せて記載した。
Figure 2018160560
表1より、加圧圧力が50MPaを超える試料番号05の試料では接合時に熱電変換素子の割れが生じている。一方、加圧圧力が50MPa以下の試料については熱電変換素子の割れが生じていない。しかしながら、加圧圧力が5MPaに満たない試料は接合後の状態は良好であるものの、熱処理後の破断試験で熱電変換素子と電極の接合界面で容易に界面剥離することがわかった。また、接合時の加熱温度が500℃に満たない場合、接合後の状態が良好であっても、熱処理後の破断試験で熱電変換素子と電極の接合界面で容易に界面剥離することがわかった。一方、接合時の加熱温度が700℃を超える場合、接合時に熱電変換素子の割れが生じやすいことがわかった。これに対し接合温度が500〜700℃であり、加圧圧力が5〜50MPaの試料は良好な接合状態が得られることが確認された。また、接合において非酸化雰囲気であれば問題なく接合することが可能であることが確認された。
[第2実施例]
N型熱電変換素子としてMg−Si系素子、P型熱電変換素子としてMn−Si系素子、電極としてCu製の電極を用意し、Al層(厚み:12μm)、Ni層(厚み:100μm)、Ti層(厚み:100μm)からなる複合金属箔を用い、表2に示す雰囲気、加熱温度および加圧圧力を変えて接合を行い、試料番号29〜52の熱電変換モジュール試料を作製した。作製した熱電変換モジュール試料について、第1実施例と同様に、接合後の界面を観察して接合状態の評価を行い、評価結果を併せて表2に記載した。なお、接合状態の良好なものについて「○」、接合不良のものについて「×」と評価して記載するとともに、接合不良のものについて備考欄に観察した状態を記載した。また、接合状態の良好な試料について、第1実施例と同様に、500℃、1時間の熱処理を行い、熱処理後の試料について同様に強度試験を行い、評価結果につき表2に併せて記載した。
Figure 2018160560
表2より、Al層、Ni層およびTi層の3層からなる複合金属箔を用いて接合を行った場合、第1実施例と同じく接合温度が500〜700℃であり、加圧圧力が5〜50MPaの試料は良好な接合状態が得られることが確認された。
本発明によれば、熱電変換モジュールにおいて、熱電変換素子と電極間の接合部の耐熱性を確保するとともに、熱電変換モジュール稼動時に生じる熱応力を十分に緩和することができる。そのため、本発明の熱電変換モジュールは、高温の環境下において、例えば、溶鉱炉、焼却炉等の工業炉の配管や自動車の排気管などに取り付けて発電に用いることができる。
1 熱電変換モジュール
11 N型熱電変換素子
12 P型熱電変換素子
21 電極
22 多層電極
221 第一層
222 第二層
223 電極
23 絶縁層付電極
231 第一層
232 第二層
233 第三層
31 接合層
311 第一層
312 第二層
32 接合層
321 第一層
322 第二層
323 第三層
41 接合層形成部材
411 第一層
412 第二層
51 支持治具
52 加圧治具

Claims (13)

  1. 複数のP型の熱電素子と、
    複数のN型の熱電素子と、
    複数の電極を有し、
    前記複数のP型の熱電素子および前記複数のN型の熱電素子と前記複数の電極とが互いに電気的に直列に接続されるとともに、
    少なくとも高温側に配置される電極と、前記複数のP型の熱電素子および前記複数のN型の熱電素子とが接合層を介して接合されている熱電変換モジュールにおいて、
    前記接合層は前記熱電素子側に形成される第一層と前記電極側に形成される第二層を有し、
    前記第一層は実質的にAlとNiからなるとともに、AlとNiからなる化合物相もしくは合金相を含み、
    前記第二層は実質的にNiからなり、
    前記電極の少なくとも接合側表層がCu、Ni、Ti、Mo、Au、Ag、Fe、Pd、Crおよびこれらを含む合金で形成され、
    前記第二層のNiと前記電極の表層が金属的に接合されている熱電変換モジュール。
  2. 複数のP型の熱電素子と、
    複数のN型の熱電素子と、
    複数の電極を有し、
    前記複数のP型の熱電素子および前記複数のN型の熱電素子と前記複数の電極とが互いに電気的に直列に接続されるとともに、
    少なくとも高温側に配置される電極と、前記複数のP型の熱電素子および前記複数のN型の熱電素子とが接合層を介して接合されている熱電変換モジュールにおいて、
    少なくとも前記P型の熱電素子およびN型の熱電素子いずれか一方の前記接合層は三層で形成され、
    前記三層は熱電素子側から電極側へ順に第一層、第二層、第三層を有し、
    前記第一層は実質的にAlとNiとからなるとともに、AlとNiからなる化合物相もしくは合金相を含み、
    前記第二層は実質的にNiからなり、
    前記第三層は実質的にTiからなり、
    前記電極の少なくとも接合側表層がCu、Ni、Ti、Mo、Au、Ag、Fe、Pd、Crおよびこれらを含む合金で形成され、
    前記第三層のTiと前記電極の表層が金属的に接合されていることを特徴とする熱電変換モジュール。
  3. 前記第一層がAlとNiからなる化合物相または合金相と、Al相からなる請求項1または2に記載の熱電変換モジュール。
  4. 前記第一層がAl3Ni、Al3Ni2、AlNi、Al2Ni3、AlNi3のうちの1種または2種以上で形成されている請求項3に記載の熱電変換モジュール。
  5. 前記化合物相または合金相に前記熱電素子の成分が含まれる請求項1〜4のいずれかに記載の熱電変換モジュール。
  6. 前記第二層のNiと前記電極の表層が互いの成分を含む層を介して接合されている請求項1に記載の熱電変換モジュール。
  7. 前記第三層のTiと前記電極の表層が互いの成分を含む層を介して接合されている請求項2に記載の熱電変換モジュール。
  8. 前記第一層の厚さが1〜100μmである請求項1に記載の熱電変換モジュール。
  9. 前記第二層の厚さが25〜500μmである請求項1に記載の熱電変換モジュール。
  10. 前記第二層と前記第三層の合計の厚さが25〜500μmであり、前記第二層の厚さが5〜500μmである請求項2に記載の熱電変換モジュール。
  11. 高温側および低温側に配置される電極とP型熱電素子およびN型熱電素子が接合層を介して機械的および電気的に接続される熱電変換モジュールの製造方法において、
    電極、接合層形成部材、P型熱電素子およびN型熱電素子の順に位置を合わせて設置する設置工程と、
    前記P型熱電素子および前記N型熱電素子をそれぞれ前記電極に加圧しながら加熱して、前記P型熱電素子と前記電極との間および前記N型熱電素子と前記電極との間を接合する加熱加圧工程とを備え、
    前記接合層形成部材は、実質的にAlからなる層および実質的にNiからなる層の二層からなる接合層形成部材、または実質的にAlからなる層、実質的にNiからなる層および実質的にTiからなる層の三層からなる接合層形成部材であり、前記実質的にAlからなる層を前記P型熱電素子またはN型熱電素子の側に配置する熱電変換モジュールの製造方法。
  12. 前記接合層形成部材の一部または全部の層を電極またはP型熱電素子およびN型熱電素子に予め設ける請求項11に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
  13. 前記加熱加圧工程における加熱温度が500〜700℃であり、加圧力が5〜50MPaである請求項11または12に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
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