JP2018153855A - ウェブ拘束ローラ付き胴幅可変水平ロールを備えたｈ形鋼用仕上ユニバーサル圧延機および仕上ユニバーサル圧延方法 - Google Patents

Abstract

【課題】胴幅可変水平ロールの中心軸より上流で前記被圧延材の姿勢が崩れるのを回避し、かつフランジ幅の異なるＨ形鋼のサイズ間で共用でき、フランジ幅変動やフランジ幅差の影響を受けない、また、表面疵やガイド詰まりのような通材不良を起こす恐れのない、特にウェブ中心位置精度の高いＨ形鋼製品を安定的に製造する。
【解決手段】中間圧延によって圧延造形されたＨ形中間材を被圧延材とし、当該Ｈ形中間材の外側に傾斜したフランジを矯正してＨ形鋼製品を圧延造形する胴幅可変水平ロールの上下対を備えた仕上ユニバーサル圧延機であって、胴幅可変水平ロールは左右の分割ロールから構成され、当該左右の分割ロール間に形成される空間内に、Ｈ形中間材又はＨ形鋼製品のウェブを拘束するウェブ拘束ローラの上下対と、当該ウェブ拘束ローラの内部に胴幅可変水平ロールの上下対の主軸の外周上に回動自在に設けられる偏心スリーブの上下対と、を備える。
【選択図】図１

Description

本発明は、Ｈ形鋼用の仕上ユニバーサル圧延機及び該仕上ユニバーサル圧延機を用いたＨ形鋼の仕上ユニバーサル圧延方法に関し、詳しくは、中間ユニバーサル−エッジャー圧延で仕上がったＨ形中間材のフランジの傾斜を矯正しＨ形鋼製品を形成するための、その胴部が左右に分割された胴幅可変水平ロールを備えた仕上ユニバーサル圧延機、及び該仕上ユニバーサル圧延機を用いたＨ形鋼の仕上ユニバーサル圧延法に関する。

現在、圧延にて製造されているＨ形鋼は、需要家ニーズの多様化に伴い、サイズの数が非常に多いのが特徴である。図８に示すようにＨ形鋼製品８０の断面はウェブ８１とその両側のフランジ８２、８３から構成され、ウェブ８１およびフランジ８２、８３の板厚寸法ｈ_ｗおよびｈ_ｆのみならず、ウェブ内法Ｈ（（ウェブ高さＡ−２×フランジ厚ｈ_ｆ）で示されるウェブ幅寸法）、フランジ片幅Ｆ（（フランジ幅Ｂ−ウェブ厚ｈ_ｗ）／２で示されるフランジ片側分の幅長さ）が異なる様々な製品が製造される。このうちウェブ内法Ｈが異なる様々なＨ形鋼を、圧延ロールを組み替えることなく高い能率で製造するために、胴部が左右に分割された胴幅可変水平ロールを備えたユニバーサル方式の仕上圧延機（以下、単に仕上ユニバーサル圧延機と呼称する）が用いられる。

Ｈ形鋼の製造には、図９のような製造設備が用いられる。加熱炉１から抽出されたスラブ等の素材１０を粗圧延機２によってドッグボーン形状のＨ形粗形材１１に造形し、第一中間ユニバーサル圧延機３によって前記Ｈ形粗形材１１のウェブやフランジの板厚を圧下し、併せて前記第一中間ユニバーサル圧延機３に近接した第一エッジャー圧延機４によって前記Ｈ形粗形材１１のフランジに対し幅圧下や端面の鍛錬と整形が施され、Ｈ形中間材１２が造形される。該Ｈ形中間材１２は、第二中間ユニバーサル圧延機５および該第二中間ユニバーサル圧延機５に近接した第二エッジャー圧延機６によって板厚とフランジ幅が圧下され、Ｈ形中間材１３が造形される。次に、該Ｈ形中間材１３は斜行ロール圧延機（スキューロール圧延機）７により、そのウェブ内法を製品に対応した様々な所定寸法に拡幅されＨ形中間材１４となる。最後に、該Ｈ形中間材１４のウェブ内法寸法に適合した胴幅寸法に設定された仕上ユニバーサル圧延機８によって仕上ユニバーサル圧延が行われ、Ｈ形鋼製品８０が造形される。なお，Ｈ形鋼の製造においては、前記斜行ロール圧延機（スキューロール圧延機）７を用いない場合もあり、この場合には、仕上ユニバーサル圧延機８の胴幅寸法を前記Ｈ形中間材１３のウェブ内法寸法に適合させて仕上ユニバーサル圧延を行う。

また、仕上ユニバーサル圧延機８を用いてウェブ高さを縮小、または拡大する圧延も行われ、この場合には胴幅可変水平ロールの胴幅寸法を前記Ｈ形中間材１３または１４のウェブ内法寸法よりも小さく、または大きく設定して仕上ユニバーサル圧延を施すことになる。

ところで前記仕上ユニバーサル圧延において、仕上ユニバーサル圧延機８に組み込まれた上下一対の胴幅可変水平ロールと左右一対の竪ロールで形成されたロール間隙を前記Ｈ形中間材１３または１４が通過する間に、該Ｈ形中間材１３または１４の外側へ傾斜したフランジは傾斜角０に矯正されてＨ形鋼製品８０が造形される。このとき、前記Ｈ形中間材１３または１４のウェブに対する板厚圧下量はほとんど０かごくわずかであり、そのため、仕上ユニバーサル圧延機８を用いたＨ形鋼の仕上ユニバーサル圧延は非常に不安定である。この理由を以下に詳しく説明する。以下において、説明の便宜上、仕上ユニバーサル圧延において、仕上ユニバーサル圧延機８の入側にあるＨ形中間材１３または１４、前記仕上ユニバーサル圧延機８のロールバイト内にある材料、および出側にあるＨ形鋼製品８０、を「被圧延材」と総称する。

図１０に仕上ユニバーサル圧延機８による仕上ユニバーサル圧延の様子を示し、その側面図を（ｂ）に示し、該側面図における断面Ｅ−Ｅを（ａ）に示す。被圧延材７０は胴幅可変水平ロール５０、５１と竪ロール３０、３１で形成される間隙を左から右に進み、これを抜ける間にＨ形中間材１３または１４の断面からＨ形鋼製品８０の断面に加工される。すなわち該被圧延材７０のフランジ７２、７３は外側へ傾斜している形状から矯正されて傾斜のない形状になる。より具体的に言えば、図１０において上流の断面Ａ−Ａでは被圧延材７０の断面はＨ形中間材１３または１４の断面であるが、断面Ｂ−Ｂでフランジ７２、７３の形状の矯正が始まり、胴幅可変水平ロール５０、５１および竪ロール３０、３１の中心軸を通る平面である断面Ｃ−Ｃで矯正が終了する。そして、断面Ｃ−Ｃより下流域では胴幅可変水平ロール５０、５１と竪ロール３０、３１は被圧延材７０から離れ、前記下流域の任意の断面、例えば断面Ｄ−Ｄでは被圧延材７０の断面はＨ形鋼製品８０の断面になっている。

上記断面Ａ−Ａ、断面Ｂ−Ｂ、断面Ｃ−Ｃおよび断面Ｄ−Ｄにおける被圧延材７０とロール（すなわち、胴幅可変水平ロール５０、５１および竪ロール３０、３１）の幾何学的位置関係を図１１に示す。図１１（ａ）は断面Ａ−Ａ、（ｂ）は断面Ｂ−Ｂ、（ｃ）は断面Ｃ−Ｃ、（ｄ）は断面Ｄ−Ｄにおける被圧延材とロールの断面形状である。

まず、胴幅可変水平ロール５０、５１については、上流の断面Ａ−Ａから断面Ｂ−Ｂを経由してロール軸直下の断面Ｃ−Ｃまで、上水平ロール５０と下水平ロール５１の周面間の隙、所謂上下水平ロール隙はｇ_ｈ１→ｇ_ｈ２→ｇ_ｈと減少していき、断面Ｃ−Ｃで最小値ｇ_ｈになった後、増加に転じ断面Ｄ−Ｄではｇ_ｈ３になる。ここで、胴幅可変水平ロール５０、５１は胴幅可変機能を持たせるため胴部が左右に分割され、すなわち上ロール５０は左ロール５０−１と右ロール５０−２に、また下ロール５１は左ロール５１−１と右ロール５１−２に分割され、左右ロール間は空隙である。そのため、この空隙に対峙する被圧延材７０のウェブ７１の幅中央部には板厚圧下を加えることはできない。仮に板厚圧下を加えると前記ウェブ７１の幅中央部とそれ以外の部分との間に段付きが生じ不良品となる。したがって、胴幅可変水平ロール５０、５１の位置は、断面Ｃ−Ｃにおける上下水平ロール隙ｇ_ｈが被圧延材７０のウェブ厚ｈ_ｗに等しくなるように設定される。上下水平ロール隙は断面Ｃ−Ｃで最小値ｇ_ｈをとることから、胴幅可変水平ロール５０、５１がウェブ７１に当接するのは断面Ｃ−Ｃの一箇所のみであることが分かる。

次に、竪ロール３０、３１については、上流の断面Ａ−Ａから断面Ｂ−Ｂを経由して断面Ｃ−Ｃまで、胴幅可変水平ロール５０、５１の側面と竪ロール３０、３１の周面の間の隙、所謂竪ロール隙はｇ_ｖ１→ｇ_ｖ２→ｇ_ｖと減少していき、断面Ｃ−Ｃで最小値ｇ_ｖになった後、増加に転じ断面Ｄ−Ｄではｇ_ｖ３になる。竪ロール３０、３１の位置は、断面Ｃ−Ｃにおける竪ロール隙ｇ_ｖが被圧延材７０のフランジ厚ｈ_ｆに等しくなるように、あるいはｈ_ｆ値よりごくわずか小さい値になるように設定される。そして、竪ロール３０、３１は、断面Ｂ−Ｂで被圧延材７０のフランジ７２、７３の外側面の両端に接触したあと断面Ｃ−Ｃまでの間で、竪ロール隙を縮小しながらフランジ７２、７３の外側面を押圧し、胴幅可変水平ロール５０、５１の側面との間でフランジ７２、７３の板厚を挟み圧力を加えて前記フランジの傾斜を取り除く。

竪ロール３０、３１による被圧延材７０のフランジ７２、７３の外側面の押圧は断面Ｂ−Ｂから断面Ｃ−Ｃまで連続的に継続するのに対し、上下ロール５０、５１による被圧延材７０のウェブ７１に対する押圧または拘束は断面Ｃ−Ｃ一箇所のみであることから、仕上ユニバーサル圧延においては被圧延材７０の姿勢が不安定になり、特に後述のウェブ中心偏り不良、反りやねじれの問題を生じやすい。このことを図１２で説明する。図１２では、図１１に対応させて、（ａ）、（ｂ）、（ｃ）、（ｄ）はそれぞれ図１０の断面Ａ−Ａ、断面Ｂ−Ｂ、断面Ｃ−Ｃ、断面Ｄ−Ｄにおける被圧延材７０とロールの断面形状を示す。

仕上ユニバーサル圧延においては、ロール軸直下の断面Ｃ−Ｃ以外の断面ではウェブ７１が非拘束状態であるため、図１２（ａ）、（ｂ）に示すように該ウェブ７１がねじれる等、被圧延材７０の姿勢が崩れやすく、崩れた姿勢のまま仕上ユニバーサル圧延が進行する恐れがある。最初に、竪ロール３０、３１とフランジ７２、７３とが当接し始める図１２（ｂ）の断面Ｂ−Ｂで被圧延材７０の姿勢が不安定になりやすい。これは、ウェブ７１の上下面が胴幅可変水平ロール５０、５１から挟持されない状態で左右から竪ロール３０、３１で圧縮されることに起因する。これに伴い、断面Ｂ−Ｂで被圧延材７０の長さ方向部位の前後に位置する部位、例えば上流の図１２（ａ）の断面Ａ−Ａの被圧延材７０にも影響が及んで姿勢が崩れ、それが下流に移動すると断面Ｂ−Ｂで竪ロール３０、３１の圧縮によってさらに姿勢が大きく崩れる。断面Ｂ−Ｂの被圧延材７０の姿勢が崩れたまま圧延が進むと、図１２（ｃ）、（ｄ）に示すように、ウェブ７１の中心偏りｓ１、ｓ２（ウェブ７１の板厚中心線に対するフランジ７２または７３の板幅中心線のずれ量）が生じ、フランジ７２、７３が非対称形状に造形される。また、出側では図１２（ｄ）に示すように、反りＣが生じやすい。また、反りＣの値が左右で異なるねじれも生じる。

上記のような問題に対し、以下に示す特許文献１〜３のような様々な技術が開示されている。

例えば、上記特許文献１には、図１２（ａ）、（ｂ）のようにＨ形中間材１３または１４の「フランジの幅方向の中央位置が水平ロールのロールすき間の中心（パスライン）からはずれた状態で圧延」されないように、「粗形鋼片（前記Ｈ形中間材１３または１４に相当）の各フランジの幅端部の少なくとも一方を拘束しつつ」仕上ユニバーサル圧延を行う方法が公開されている。その上で、フランジの幅端部の拘束要領として、例えば図１３（ａ）のような「溝付の垂直ロール（竪ロール）」３０、３１、図１３（ｂ）のような「溝付の水平ロール」５０、５１、あるいは図１３（ｃ）のような「貫通ガイド」６４などが考えられるとし、「数種類のＨ形鋼の圧延に際して兼用し設備コストの上昇を抑制できるという点では貫通ガイドがとくに有利である」としている。

また、特許文献２には、ウェブガイドを着脱することなく、ロール交換やウェブガイドの幅変更を行うことが可能な技術が開示されている。図１４に示すようなウェブガイド６５によれば、被圧延材のウェブの位置が定まるため、ウェブ中心偏り不良等が抑制される。

また、特許文献３には、図１５に示すような仕上ユニバーサル圧延機の出側至近に設置される被圧延材７０の先後端部の上下出曲がり（反り、ねじれ）の軽減に効果のある出曲がり矯正装置６６が開示されている。当該出曲がり矯正装置６６には、被圧延材７０のウェブ７１の両側の各々を独立して上下から拘束する複数の圧延材巻き付き防止ガイド６７が上下および左右に移動可能に支持され、さらに被圧延材７０のフランジ７２、７３の端面を押圧する回動自在な端面ローラ６８が前記圧延材巻き付き防止ガイド６７の各々に上下動可能に設けられている。圧延材巻き付き防止ガイド６７は、被圧延材７０のウェブ７１の厚さおよび幅に応じた所定の位置で、前記ウェブ７１の両側を上下から拘束する。また、端面ローラ６８は、被圧延材７０のフランジ７２、７３の幅に等しい間隔に設定され、当該端面ローラ６８の上下方向の位置調整により、反りやねじれが矯正される。

特開平３−２７８０１号公報 特許第３３６２８３２号 特許第３４２４１４８号

しかしながら、上記特許文献１に記載されているように、図１３（ａ）の「溝付の竪ロール」３０、３１や図１３（ｂ）の「溝付の水平ロール」５０、５１をフランジ７２、７３の幅端部を拘束する手段として用いる場合には、該溝付の竪ロール３０、３１や胴幅可変水平ロール５０、５１をフランジ幅の異なるＨ形鋼のサイズ間で共用することはできない。また、Ｈ形鋼製品８０のフランジ幅が同じでも、実操業においては、被圧延材７０（Ｈ形中間材１３または１４）には長さ方向に多少のフランジ幅変動が存在したり、例えば鋼種の違いや圧延温度の変動等によって異なる被圧延材の間でフランジ幅差が生じるのが普通である。そのため、フランジ幅の小さい断面に対してフランジの幅端部の拘束が不十分になってウェブ中心偏り不良の発生を抑制できず、逆にフランジ幅の大きい断面に対しては余剰となったメタルが溝からはみ出たり、表面疵を生じたりする危険が伴う。

貫通ガイド６４は、図１０の断面Ａ−Ａ、Ｂ−Ｂ、Ｃ−Ｃ、Ｄ−Ｄの圧延方向の長い距離にわたり、図１３（ｃ）のように被圧延材７０のフランジ７２、７３の幅端部を拘束し、フランジ７２、７３の幅中心を胴幅可変水平ロール５０、５１の間隙中心から外さないようにすることができる。しかし、貫通ガイド６４をフランジ７２、７３の幅端部の拘束手段に用いる場合、前記貫通ガイド６４は常に静止しており、そのため被圧延材７０のフランジ７２または７３の先端部と貫通ガイド６４の間のすべり摩擦は過酷であり、フランジ７２、７３の先端部は貫通ガイド６４から大きな摩擦力を受ける。その結果、被圧延材７０のフランジ７２、７３の先端部には貫通ガイドとの摩擦でスリ疵が発生したり、上下のガイド間の空間内で被圧延材７０が動けなくなり（ガイド詰まり）、被圧延材７０が仕上ユニバーサル圧延機８に噛み込まないといった問題がしばしば発生する。また、被圧延材７０の長さ方向のフランジ幅変動や異なる被圧延材間のフランジ幅差への対応は難しく、フランジ幅の小さい断面に対してフランジの幅端部の拘束が不十分になってウェブ中心偏り不良の発生を抑制できず、逆にフランジ幅の大きい断面に対してはガイド詰まりを起こしやすい。

また、上記特許文献２に記載の技術では、図１４のようなウェブガイド６５が被圧延材７０のウェブ７１を上下から挟持して被圧延材７０の位置を定められるのでウェブ中心偏り不良が発生しにくくなる。しかし、ウェブガイド６５は常に静止しており、被圧延材７０のウェブ７１とウェブガイド６５の間のすべり摩擦は過酷であり、ウェブ７１はウェブガイド６５から大きな摩擦力を受ける。その結果、被圧延材のウェブ７１の表面にはウェブガイド６５との摩擦でスリ疵が発生したり、上下ウェブガイドの間の狭い空間内でガイド詰まりを起こし、被圧延材７０が仕上ユニバーサル圧延機８に噛み込まないといった問題がしばしば発生する。この問題を解決するためには、やむを得ず上下ウェブガイド間隙ｇ_ｓを拡大するしかなく、そのためにウェブガイド６５による被圧延材７０のウェブ７１に対する拘束が緩くなり、ウェブ中心偏り不良が生じることになる。

さらに、上記特許文献３に記載の技術により、被圧延材７０の先後端部の曲がりやねじれの軽減は可能である。この場合、端面ローラ６８は、被圧延材７０のフランジ７２、７３の幅に等しい間隔に設定されるが、被圧延材７０の先後端部は圧延の非定常域にあたるのでフランジ７２、７３の幅は変動しやすく、端面ローラ６８による被圧延材７０の各フランジ端面の押圧状態が変動する可能性があり、フランジ７２、７３の先端部が潰れたり、反りやねじれの矯正が不完全になりやすい。また、端面ローラ６８は仕上ユニバーサル圧延機の出側至近に設置されるとはいえ、当該端面ローラ６８と水平ロール５０、５１のロール軸Ｏの間の距離Ｓは、当該水平ロール５０、５１の直径にもよるが千ミリメートル前後のかなり大きな値になる。先後端部の短い範囲に生じる反りやねじれの矯正にはＳ値が小さいことが必要であり、被圧延材７０の長さ方向の短い範囲の反りやねじれの矯正に対処できない場合がある。また、被圧延材７０の先端部Ｔが圧延材巻き付き防止ガイド６７の隙間に進入する際に、水平ロール５０、５１との隙間Ｐに入り込みガイド詰まりを起こす危険があり、出曲がり矯正装置６６は通材性に問題がある。

上記事情に鑑み、本発明の目的は、Ｈ形鋼の仕上ユニバーサル圧延において、Ｈ形中間材を被圧延材として該被圧延材の外側へ傾斜したフランジを矯正してＨ形鋼製品を造形するに際して、胴幅可変水平ロールの中心軸より上流で前記被圧延材の姿勢が崩れるのを回避し、かつフランジ幅の異なるＨ形鋼のサイズ間で共用でき、フランジ幅変動やフランジ幅差の影響を受けない、また、表面疵やガイド詰まりのような通材不良を起こす恐れのない、特にウェブ中心位置精度の高いＨ形鋼製品を安定的に製造することが可能な、胴幅可変水平ロールを備えたＨ形鋼用仕上ユニバーサル圧延機および仕上ユニバーサル圧延方法を提供することにある。

併せて、胴幅可変水平ロールの中心軸にごく近い下流で前記被圧延材の反りやねじれを効果的に矯正し、かつフランジ幅の異なるＨ形鋼のサイズ間で共用でき、フランジ幅変動の影響を受けない、また表面疵やガイド詰まりのような通材不良を起こす恐れのない、胴幅可変水平ロールを備えたＨ形鋼用仕上ユニバーサル圧延機および仕上ユニバーサル圧延方法を提供することにある。

前記の目的を達成するため、本発明によれば、中間圧延によって圧延造形されたＨ形中間材を被圧延材とし、当該Ｈ形中間材の外側に傾斜したフランジを矯正してＨ形鋼製品を圧延造形する胴幅可変水平ロールの上下対を備えた仕上ユニバーサル圧延機であって、前記胴幅可変水平ロールは左右の分割ロールから構成され、当該左右の分割ロール間に形成される空間内に、前記Ｈ形中間材又は前記Ｈ形鋼製品のウェブを拘束するウェブ拘束ローラの上下対と、当該ウェブ拘束ローラの内部に前記胴幅可変水平ロールの上下対の主軸の外周上に回動自在に設けられる偏心スリーブの上下対と、を備えることを特徴とする、仕上ユニバーサル圧延機が提供される。

前記左右の分割ロール間に形成される空間内において、前記胴幅可変水平ロールの主軸の外周と、前記偏心スリーブの内周との間には、前記胴幅可変水平ロールの主軸の外周上で軸方向に摺動自在であり、且つ、当該主軸と回動を共にするベーススリーブの上下対が設けられても良い。

前記ウェブ拘束ローラの上下対は、前記左右の分割ロール間に形成される空間内において、当該左右の分割ロールそれぞれに隣接する左右ウェブ拘束ローラ部分に分かれて構成されても良い。

また、本発明によれば、上記記載の仕上ユニバーサル圧延機を用いた仕上ユニバーサル圧延方法であって、前記偏心スリーブの位相角の調整に基づき、前記ウェブ拘束ローラを所定の位置に配置し、前記Ｈ形中間材からＨ形鋼製品を圧延造形することを特徴とする、仕上ユニバーサル圧延方法が提供される。

前記ウェブ拘束ローラの中心軸を、前記胴幅可変水平ロールの中心軸より上流に位置させ、当該ウェブ拘束ローラの上下対の間隙中心を前記胴幅可変水平ロールの上下対の間隙中心と上下方向に一致させて設定しても良い。

前記ウェブ拘束ローラの中心軸を、前記胴幅可変水平ロールの中心軸より上流に位置させ、当該ウェブ拘束ローラの上下対の間隙中心を前記胴幅可変水平ロールの上下対の間隙中心に対して上下方向にずらして設定しても良い。

前記ウェブ拘束ローラの中心軸を、前記胴幅可変水平ロールの中心軸より下流に位置させ、当該ウェブ拘束ローラの上下対の間隙中心を前記胴幅可変水平ロールの上下対の間隙中心と上下方向に一致させて設定しても良い。

前記ウェブ拘束ローラの中心軸を、前記胴幅可変水平ロールの中心軸より下流に位置させ、当該ウェブ拘束ローラの上下対の間隙中心を前記胴幅可変水平ロールの上下対の間隙中心に対して上下方向にずらして設定しても良い。

前記ウェブ拘束ローラの上下対の間隙値を前記Ｈ形中間材または前記Ｈ形鋼製品のウェブ厚値と等しくなるように設定しても良い。

前記Ｈ形中間材の前記仕上ユニバーサル圧延機への噛み込みから蹴出しまでの間において、前記偏心スリーブの位相角を一定として前記ウェブ拘束ローラの位置を固定した状態で圧延造形を行っても良い。

前記Ｈ形中間材の前記仕上ユニバーサル圧延機への噛み込みから蹴出しまでの間において、前記偏心スリーブの位相角を調整して前記ウェブ拘束ローラの位置を変化させて圧延造形を行っても良い。

前記ウェブ拘束ローラの中心軸を、前記胴幅可変水平ロールの中心軸より下流に位置させた状態で前記Ｈ形中間材の先端部を前記仕上ユニバーサル圧延機に噛み込ませて圧延造形を行った後、前記ウェブ拘束ローラの中心軸を、前記胴幅可変水平ロールの中心軸より上流に位置させたるように移動させ、前記Ｈ形中間材の後端部を前記仕上ユニバーサル圧延機から蹴出しても良い。

本発明によれば、Ｈ形鋼の仕上ユニバーサル圧延において、Ｈ形中間材を被圧延材として該被圧延材の外側へ傾斜したフランジを矯正してＨ形鋼製品を造形するに際して、胴幅可変水平ロールの中心軸より上流で前記被圧延材の姿勢が崩れるのを回避し、かつフランジ幅の異なるＨ形鋼のサイズ間で共用でき、フランジ幅変動やフランジ幅差の影響を受けない、また、表面疵やガイド詰まりのような通材不良を起こす恐れのない、特にウェブ中心位置精度の高いＨ形鋼製品を安定的に製造することが可能となる。

併せて、胴幅可変水平ロールの中心軸にごく近い下流で前記被圧延材の反りやねじれを効果的に矯正し、かつフランジ幅の異なるＨ形鋼のサイズ間で共用でき、フランジ幅変動の影響を受けない、また表面疵やガイド詰まりのような通材不良を起こす恐れのない、仕上ユニバーサル圧延を行うことが可能となる。

本発明の第１の実施の形態に係る仕上ユニバーサル圧延機を示す概略説明図であり、（ａ）は胴幅可変水平ロールに先んじてウェブ拘束ローラが被圧延材のウェブを拘束した状態を示す正面図、（ｂ）は胴幅可変水平ロールが被圧延材のウェブを拘束した状態を示す正面図、（ｃ）は側面図である。 本発明の第２の実施の形態に係る仕上ユニバーサル圧延機についての概略説明図である。 本発明の第３の実施の形態に係る仕上ユニバーサル圧延機についての概略説明図である。 本発明の第１の実施の形態に係る仕上ユニバーサル圧延機を示す概略説明図であり、（ａ）は胴幅可変水平ロールが被圧延材のウェブを拘束した状態を示す正面図、（ｂ）はウェブ拘束ローラが被圧延材のウェブを拘束した状態を示す正面図、（ｃ）は側面図である。 Ｈ形鋼製品のウェブ中心偏りを小さくし、ウェブ中心位置精度を高めるためのウェブ拘束ローラの適用法に関する説明図である。 Ｈ形鋼製品の先後端部の反りやねじれを抑制するためのウェブ拘束ローラの適用法に関する説明図である。 本発明技術にかかる仕上ユニバーサル圧延機について、改削等により水平ロール径が減少した場合、水平ロール径の減少量だけウェブ拘束ローラ径を減少させることにより、ウェブ拘束ローラのウェブ拘束位置Ｌを一定値に保つことができることを示す説明図である。 Ｈ形鋼製品の断面を示す説明図である。 素材からＨ形鋼を製造するための工程を示す説明図である。 Ｈ形鋼の仕上ユニバーサル圧延の状況を示す概略説明図であり、（ａ）は概略平面図、（ｂ）は概略側面図である。 従来の仕上ユニバーサル圧延機において圧延される被圧延材の様子を正面から見た概略断面図であり、（ａ）が圧延開始前、（ｂ）は圧延開始時、（ｃ）は圧延終了時、（ｄ）は仕上ユニバーサル圧延機を抜けた後を示している。 従来の仕上ユニバーサル圧延機においてウェブ部が非拘束であることに起因して生じる問題点の概略説明図であり、（ａ）が圧延開始前、（ｂ）は圧延開始時、（ｃ）は圧延終了時、（ｄ）は仕上ユニバーサル圧延機を抜けた後を示している。 仕上ユニバーサル圧延機における被圧延材の形状不良を防ぐための従来技術であり、（ａ）は溝付の垂直ロール（竪ロール）、（ｂ）は溝付の水平ロール、（ｃ）は貫通ガイド、を示す説明図である。 仕上ユニバーサル圧延機における被圧延材の形状不良を防ぐための従来技術であり、ウェブガイドを示す概略側面図である。 仕上ユニバーサル圧延機出側における被圧延材の反り、ねじれを軽減するための従来技術である出曲がり矯正装置を示す概略図であり、（ａ）は側面図、（ｂ）は正面図である。

以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。

（本発明の第１の実施の形態）
図１及び図４は、本発明の第１の実施形態にかかるウェブ拘束ローラ付き胴幅可変水平ロールを備えたＨ形鋼用の仕上ユニバーサル圧延機の概略説明図である。胴幅可変水平ロールを備えた仕上ユニバーサル圧延機については、前記特許文献１をはじめ多くの文献で公知になっており、胴幅可変水平ロール５０、５１、竪ロール３０、３１で構成される。前記胴幅可変水平ロール５０、５１の上ロール５０は厚みａの左右の分割ロール５０−１、５０−２から、また下ロール５１は厚みａの左右の分割ロール５１−１、５１−２から構成され、各々の分割ロールを水平ロール軸Ｏに沿って移動することにより、その胴幅ＷをＨ形鋼製品８０のウェブ内法Ｈに対応してインラインで自在に設定することが可能である。

本発明技術の核心は、前記胴幅可変水平ロール５０、５１を備えた仕上ユニバーサル圧延機に対し、図１（ｃ）、又は図４（ｃ）のように断面Ｙ−Ｙ上の水平ロール軸Ｏよりも圧延の上流方向、又は下流方向にＬだけ離れた位置にある断面Ｘ−Ｘ上の軸Ｐをその中心とするウェブ拘束ローラ６０、６１を設けたところにある。そして、該ウェブ拘束ローラ６０、６１の間隙ｇ_Ｒの値は通常被圧延材７０のウェブ７１の板厚ｈ_ｗと等しい値か、又は板厚ｈ_ｗより大きい値に設定される。これにより、前記ウェブ拘束ローラ６０、６１は、断面Ｘ−Ｘ上で前記被圧延材７０のウェブ７１をその上下面から拘束し、図１２のように被圧延材７０の姿勢が崩れるのを防止する。すなわち、被圧延材７０のウェブ７１は、断面Ｘ−Ｘおよび断面Ｙ−Ｙの２断面において、ウェブ拘束ローラ６０、６１および胴幅可変水平ロール５０、５１によって上下方向の動きを拘束されることにより、被圧延材７０の姿勢が安定し、ウェブ中心偏り、又は反りやねじれを抑制することができる。

ここで、図１を用いて、ウェブ拘束ローラ６０、６１の位置設定について、その装置構成と方法について以下に詳しく説明する。胴幅可変水平ロール５０、５１の各々に対し左右の分割ロール５０−１、５０−２の間の空間内、および左右の分割ロール５１−１、５１−２の間の空間内において、前記胴幅可変水平ロール５０、５１の各々の主軸５２、５３の外側に、偏心スリーブ５６、５７を該主軸５２、５３の外周上を回動させて設定可能に設けてある。回動をスムーズに行うため、前記主軸５２、５３と前記偏心スリーブ５６、５７の間には、円周方向に例えばベアリング６３が配置されている。前記偏心スリーブ５６、５７の内円の中心はＯ、外円の中心はＰであり両者の間にはεの距離があり、線分Ｏ−Ｐは鉛直方向に対してθの角度をなす。以下、線分Ｏ−Ｐの長さεおよび鉛直方向とのなす角度θを、それぞれ偏心スリーブ５６、５７の偏心量および位相角と呼ぶ。

さらに、前記偏心スリーブ５６、５７の外側にはウェブ拘束ローラ６０、６１を前記偏心スリーブ５６、５７の外周上を回動自在に設けてあり、回動をスムーズに行うため、前記偏心スリーブ５６、５７とウェブ拘束ローラ６０、６１の間に円周方向にベアリング６３が配置されている。前記ウェブ拘束ローラ６０、６１には偏心はなく（内円と外円の中心が同じ）、その中心は偏心スリーブ５６、５７の外円の中心Ｐにある。

ウェブ拘束ローラ６０、６１の位置設定は、主軸５２、５３の上下方向位置および位相角θの調整によって行われ、上ウェブ拘束ローラ６０と下ウェブ拘束ローラ６１は、被圧延材７０をはさんで互いに鏡面対称、または非対称に調節される。図１および図４は鏡面対称に調整した状態を示している。図１のように、胴幅可変水平ロール５０、５１の直径をＤ_ｈ、上下水平ロール隙をｇ_ｈ、ウェブ拘束ローラ６０、６１の直径をＤ_Ｒ、ウェブ拘束ローラ６０、６１の中心Ｐの前記胴幅可変水平ロール５０、５１の中心Ｏとの水平距離をＬ、上下ウェブ拘束ローラ隙をｇ_Ｒ、偏心スリーブ５６、５７の偏心量をε、位相角をθ、とおくと、幾何学的な関係から式（１）と式（２）が成り立つ。

式（１）を変形すると以下の式（３）が得られる。

式（２）と式（３）からθを消去すると、以下の式（４）の関係式が得られる。

式（４）の両辺に現れる操業諸元は式（４）の関係式を満たす必要があり、もしこれを満足することができない場合には、例えば水平ロールとウェブ拘束ローラの径差Ｄ_ｈ−Ｄ_Ｒを調整するなどして式（４）を満足するようにできる。

なお、Ｌ値の適正値、すなわち図１の断面Ｘ−Ｘの適正位置については、被圧延材７０の断面寸法や材質、竪ロール３０、３１の径によって異なるが、被圧延材７０のフランジ７２、７３の外側面の両端に前記竪ロール３０、３１が最初に接触する図１０における断面Ｂ−Ｂ付近に前記ウェブ拘束ローラ６０、６１を位置させるのが適切である。また、図４の断面Ｘ−Ｘの適正位置については、被圧延材７０の反りやねじれの態様によって変わる。

図１（ａ）から分かるように、断面Ｘ−Ｘでは被圧延材７０のフランジ７２、７３が竪ロール３０、３１によって押圧され、ウェブ７１は水平方向に幅圧下されるが、ウェブ拘束ローラ６０、６１がウェブ７１をその上下面から拘束し、ウェブ７１がねじれるのを妨げている。もしウェブ拘束ローラ６０、６１がなければ、該断面Ｘ−Ｘでは胴幅可変水平ロール５０、５１の隙ｇ_ｈ’は断面Ｙ−Ｙにおける隙ｇ_ｈよりも大きく、ウェブ７１は分割ロール５０−１、５１−１、５０−２、５１−２で拘束されておらずウェブ７１がねじれる恐れがある。

また、図１（ｂ）から分かるように、断面Ｙ−Ｙにおけるウェブ拘束ローラ６０、６１の上下隙ｇ_Ｒ’は断面Ｘ−Ｘにおける隙ｇ_Ｒよりも大きく、該断面Ｙ−Ｙではウェブ拘束ローラ６０、６１はウェブ７１を拘束できない。代わりに胴幅可変水平ロール５０、５１がウェブ７１を拘束しているのである。

一方、図４の場合には、図４（ａ）のように断面Ｙ−Ｙで被圧延材７０の仕上ユニバーサル圧延を終了しフランジ７２、７３の傾斜を矯正し終わった後で、図４（ｂ）のように断面Ｘ−Ｘでウェブ拘束ローラ６０、６１がウェブ７１をその上下面から拘束し、ウェブ７１がねじれるのを妨げ、反りやねじれを抑制する。

ところで、胴幅可変水平ロール５０、５１は被圧延材７０の圧延により摩耗し、ロールチャンス毎に改削により次第に直径Ｄ_ｈが減少していく。また、ウェブ拘束ローラ６０、６１についても前記胴幅可変水平ロール５０、５１ほどではないが、摩耗面を研磨するため次第に直径Ｄ_Ｒが減少していく。しかしながら、ロールチャンス毎に直径Ｄ_ｈ、Ｄ_Ｒが変化しても、胴幅可変水平ロールとウェブ拘束ローラの径差Ｄ_ｈ−Ｄ_Ｒと隙差ｇ_ｈ−ｇ_Ｒの和を変えなければ、Ｌ値を一定値に維持することが可能である。図７（ａ）は水平ロール５０、５１の直径Ｄ_ｈが最大の場合の側面図を、図７（ｂ）、（ｃ）には直径Ｄ_ｈが最小の場合の側面図を示している。図７の（ａ）と（ｂ）はＤ_ｈ値が異なるが、両者間でＬ、ｇ_Ｒ、ｇ_ｈの各値は等しい。これは、水平ロール径がＤ_ｈｍａｘからＤ_ｈｍｉｎに減少しても、ウェブ拘束ローラ径をＤ_ＲからＤ_Ｒ’＝Ｄ_Ｒ−(Ｄ_ｈｍａｘ−Ｄ_ｈｍｉｎ)に減少させて、径差Ｄ_ｈ−Ｄ_Ｒを一定に保つことにより、同一サイズの被圧延材７０のウェブ７１を常に適正な位置Ｌでウェブ拘束ローラ６０、６１によって拘束することができることを示している。このことは、式（４）からも明らかである。図７は、ウェブ拘束ローラ６０、６１が断面Ｙ−Ｙ上の水平ロール軸Ｏよりも圧延の上流方向に位置する状態を示しているが、下流方向に位置する場合でもまったく同じである。

図７（ｃ）のように、ウェブ拘束ローラ径を減少させずに、例えばウェブ拘束ローラ径が図７（ａ）と同じＤ_Ｒのままであれば、図７（ａ）と（ｃ）の間でｇ_Ｒ、ｇ_ｈの各値は等しいが、ウェブ７１をウェブ拘束ローラ６０、６１で上下面から拘束する位置は異なる。すなわち、この位置は図７（ａ）では断面Ｙ−Ｙから上流にＬだけ離れた断面Ｘ−Ｘにあったが、図７（ｃ）ではＬ’(＝Ｌ＋ΔＬ>Ｌ)だけ離れたＸ’―Ｘ’に移動する。このことは式（４）からも明らかである。また、偏心スリーブ５６、５７の位相角は、図７（ａ）では位相角θであったが、図７（ｃ）ではそれより大きいθ’である。このことは、式（２）からも明らかである。ただし、ΔＬ値は仕上ユニバーサル圧延機の大きさによるが、最大で２０〜３０ｍｍであり、被圧延材の断面寸法によってはこの程度のＬ値の変動は許容できる。

（本発明の第２の実施の形態）
図２は本発明の第２の実施の形態に係る仕上ユニバーサル圧延機についての概略説明図である。なお、図２に関し、上記第１の実施の形態と実質的に同じ機能構成を有する構成要素については同一の符号を付し、その説明は省略する場合がある。
図２に示す第２の実施の形態に係る構成は、図１の仕上ユニバーサル圧延機の主軸５２、５３と偏心スリーブ５６、５７の間に、キー６２を介して該主軸５２、５３と回動を共にするベーススリーブ５４、５５を設けたものである。そして、該ベーススリーブ５４、５５の外側に偏心スリーブ５６、５７を該ベーススリーブ５４、５５の外周上を回動させて設定可能に設けたところが図１の仕上ユニバーサル圧延機と異なる。なお、図１に示した上記第１の実施の形態において、図４に示すようなウェブ拘束ローラ６０、６１が断面Ｙ−Ｙ上の水平ロール軸Ｏよりも圧延の下流方向に位置する状態があるが、図２に示す第２の実施形態についても同様の状態があり、この状態については図示を省略する。

図２に示す第２の実施の形態に係る仕上ユニバーサル圧延機によれば、ベーススリーブ５４、５５を設けたことにより、該ベーススリーブ５４、５５は前記主軸５２、５３上を軸方向に摺動させることができることから、これにより左右の分割ロール５０−１、５０−２の間の空間内、および左右の分割ロール５１−１、５１−２の間の空間内において、前記ウェブ拘束ローラ６０、６１の左右方向の位置を任意に設定することができる。その結果、例えば前記ウェブ拘束ローラ６０、６１を前記胴幅可変水平ロール５０、５１の胴幅Ｗの中心に位置させ、左右の対称性を保つことができ、被圧延材７０の姿勢の崩れを最も効果的に防止できる。

（本発明の第３の実施の形態）
図３は本発明の第３の実施の形態に係る仕上ユニバーサル圧延機についての概略説明図である。なお、図３に関し、上記第１、２の実施の形態と実質的に同じ機能構成を有する構成要素については同一の符号を付し、その説明は省略する場合がある。

図３に示す第３の実施の形態に係る構成は、図２に示した構成の仕上ユニバーサル圧延機に対して、該左右の分割ロール５０−１、５０−２、および５１−１、５１−２に隣接する各二箇所ずつに主軸５２、５３と回動を共にするように設けたベーススリーブ５４、５５を、該主軸５２、５３上を軸方向に摺動させて設定可能に設け、前記ベーススリーブ５４、５５の外側に偏心スリーブ５６、５７を該ベーススリーブ５４、５５の外周上を回動させて設定可能に設け、前記偏心スリーブ５６、５７の外側にウェブ拘束ローラ６０、６１を前記偏心スリーブ５６、５７の外周上を回動自在に設けたものである。
即ち、ベーススリーブ５４、５５、偏心スリーブ５６、５７、ウェブ拘束ローラ６０、６１のそれぞれを、左右ベーススリーブ部分、左右偏心スリーブ部分、左右ウェブ拘束ローラ部分、から構成されるものとし、各部分を左右の分割ロール５０−１、５０−２、および５１−１、５１−２に隣接させて設ける構成である。

図３に示す第３の実施の形態に係る仕上ユニバーサル圧延機によれば、ウェブ拘束ローラ６０、６１による被圧延材７０のウェブ７１に対する拘束が図１や図２のユニバーサル圧延機より強くなる。すなわち、ウェブ７１のフランジ７２、７３との付け根に近い位置を拘束できるので、ウェブ７１のねじれが起こりにくい。各分割ロール５０−１、５０−２、５１−１、５１−２の厚みａをできる限り小さく設計することにより、ウェブ拘束ローラ６０、６１を前記付け根に近い位置に配置することができ、効果的に被圧延材７０のウェブ７１を拘束できる。

なお、図１に示した上記第１の実施の形態において、図４に示すようなウェブ拘束ローラ６０、６１が断面Ｙ−Ｙ上の水平ロール軸Ｏよりも圧延の下流方向に位置する状態があるが、図３に示す第３の実施形態についても同様の状態があり、この状態については図示を省略する。

以上、図１〜４を参照して説明した本発明に係る仕上ユニバーサル圧延機によれば、従前の構成と比較し、偏心スリーブ５６、５７によって位置設定を自在に構成されたウェブ拘束ローラ６０、６１を設けたことにより、断面Ｘ−Ｘおよび断面Ｙ−Ｙの２断面において、ウェブ拘束ローラ６０、６１および胴幅可変水平ロール５０、５１によってウェブの上下方向の動きが拘束され、被圧延材７０の姿勢が安定し、ウェブ中心偏り、または反りやねじれが防止される。
加えて、胴幅可変水平ロール５０、５１やウェブ拘束ローラ６０、６１のロール径が、ロール摩耗によって変化（減少）した場合であっても、径差Ｄ_ｈ−Ｄ_Ｒを一定に保つこと、および偏心スリーブによるウェブ拘束ローラ６０、６１の位置設定を好適に制御することにより、被圧延材７０のウェブ７１を適正な位置で拘束することができる。

また、特に本発明の第２および第３の実施の形態に係る仕上ユニバーサル圧延機によれば、ベーススリーブ５４、５５を設けた構成としたことにより、該ベーススリーブ５４、５５は前記主軸５２、５３上を軸方向に摺動させることができることから、ウェブ拘束ローラ６０、６１の左右方向の位置を任意に設定することが可能となる。そのため、例えばウェブ内法Ｈの異なるＨ形鋼製品８０の仕上ユニバーサル圧延を行うには胴幅可変水平ロール５０、５１の胴幅Ｗを変更する必要があるが、この場合に好都合である。すなわち、第２の実施形態においては前記胴幅Ｗが変化してもウェブ拘束ローラ６０、６１を胴幅Ｗの中心に位置させて左右の対称性を保つことができ、被圧延材７０の姿勢の崩れを最も効果的に防止できる。また、第３の実施形態においては、各分割ロール５０−１、５０−２、５１−１、５１−２にウェブ拘束ローラ６０、６１を常に近接させて位置させることができ、被圧延材７０のウェブ７１のフランジ７２、７３との付け根に近い位置を拘束できるので、被圧延材７０の姿勢の崩れを最も効果的に防止できる。

以下、図５と図６を用いてウェブ拘束ローラ６０、６１の仕上ユニバーサル圧延への適用法について説明する。ウェブ拘束ローラ６０、６１の適用法を説明するためには、胴幅可変水平ロール５０、５１、竪ロール３０、３１、ウェブ拘束ローラ６０、６１および被圧延材７０のみを図示すれば充分であるため、図５および図６ではこれらのみを図示して説明する。

図５はＨ形鋼製品８０のウェブ中心偏りを小さくし、ウェブ中心位置精度を高めるためのウェブ拘束ローラ６０、６１の適用法に関する説明図である。すなわち、ウェブ拘束ローラの中心軸を前記胴幅可変水平ロールの中心軸より上流に位置させて、（ａ）はウェブ拘束ローラの上下対の間隙中心を胴幅可変水平ロールの上下対の間隙中心と上下方向に一致させて設定し、ウェブ付け替えを抑制する方法、（ｂ）はウェブ拘束ローラの上下対の間隙中心を胴幅可変水平ロールの上下対の間隙中心に対して上下方向にずらして設定し、ウェブ板厚中心位置をフランジに対して強制的に付け替える方法、であり、（ｃ）は特にウェブ拘束ローラの上下対の間隙中心の胴幅可変水平ロールの上下対の間隙中心に対するずらし量を左右で異なる値にして、ウェブ板厚中心位置のフランジに対する強制付け替え量を左右で異なる値にする方法、である。

図５（ａ）は、上ウェブ拘束ローラ６０と下ウェブ拘束ローラ６１は、被圧延材７０をはさんで互いに鏡面対称の位置にあり、ウェブ拘束ローラ６０、６１の間隙ｇ_Ｒの中心ＰＬ_Ｒと上下水平ロール間隙ｇ_ｈの中心ＰＬ_ｈは、上下方向同じ位置にある。被圧延材７０のウェブ厚ｈ_ｗに対して、ｇ_Ｒ≧ｈ_ｗ，ｇ_ｈ≒ｈ_ｗの関係がある。この場合は、仕上ユニバーサル圧延入側で図１２のように被圧延材７０の姿勢が崩れるのを防止し、ウェブ付け替えを防止する。

図５（ｂ）はＰＬ_ＲをＰＬ_ｈと上下方向位置が異なるように設定して仕上ユニバーサル圧延を行う場合を示しており、図５（ｂ）はＰＬ_ＲをＰＬ_ｈより高い位置に設定する例を示している。これは、被圧延材７０にウェブ中心偏りがあり、フランジ７２、７３の幅中心位置よりもウェブ７１の板厚中心位置が上方に位置する場合に適用する方法であり、このようにするとウェブ７１が下方に付け替わり、仕上ユニバーサル圧延後のＨ形鋼製品８０のウェブ中心偏りが小さくなり、ウェブ中心位置精度が高まる。逆に、被圧延材７０のフランジ７２、７３の幅中心位置よりもウェブ７１の板厚中心位置が下方に位置する場合には、ＰＬ_ＲをＰＬ_ｈより低い位置に設定する。

図５（ｃ）は被圧延材７０の左フランジ７２と右フランジ７３のそれぞれについて、フランジ幅中心に対するウェブ板厚中心位置が異なる場合に、左ウェブ拘束ローラ６０−１、６１−１と右ウェブ拘束ローラ６０−２、６１−２のＰＬ_Ｒの上下方向位置を独立して設定し、仕上ユニバーサル圧延を行うものである。図５（ｃ）の例では、被圧延材７０の左フランジ７２についてはフランジ幅中心よりもウェブ板厚中心が上方にあり、右フランジ７３についてはフランジ幅中心よりもウェブ板厚中心が下方にある場合に、仕上ユニバーサル圧延後のＨ形鋼製品８０のウェブ中心偏りを小さくし、ウェブ中心位置精度を高めるためのものである。

図６はＨ形鋼製品８０の先後端部の反りやねじれを抑制するためのウェブ拘束ローラ６０、６１の適用法に関する説明図である。すなわち、ウェブ拘束ローラの中心軸を前記胴幅可変水平ロールの中心軸より下流に位置させて、（ａ）はウェブ拘束ローラの上下対の間隙中心を胴幅可変水平ロールの上下対の間隙中心と上下方向に一致させて設定し、反りまたはねじれを抑制する方法、（ｂ）はウェブ拘束ローラの上下対の間隙中心を胴幅可変水平ロールの上下対の間隙中心に対して上下方向にずらして設定し、反りまたはねじれを矯正する方法、であり、（ｃ）は特にウェブ拘束ローラの上下対の間隙中心の胴幅可変水平ロールの上下対の間隙中心に対するずらし量を左右で異なる値にして、大きな反りやねじれを矯正する方法、である。

図６（ａ）はＰＬ_ＲとＰＬ_ｈの上下方向位置を一致させて仕上ユニバーサル圧延を行うものであり、先後端部の反りやねじれが比較的軽微なときに適用する方法である。（ｂ）と（ｃ）はＰＬ_ＲとＰＬ_ｈの上下方向位置をずらして仕上ユニバーサル圧延を行うものである。Ｈ形鋼製品８０の反りやねじれが大きく、ＰＬ_ＲとＰＬ_ｈの上下方向位置を一致させるだけでは、これを矯正することが難しいときに適用する。

実際の操業においては、被圧延材７０のウェブ板厚中心のフランジ幅中心に対する上下方向位置は、該被圧延材７０の長さ方向一定ではない。また、反りやねじれについては、これらが生じやすいのはほとんどが該被圧延材７０の先端部であり、後端部にはほとんど発生しない。逆に、ウェブ付け替えが生じやすいのは後端部である。このことに注目して、被圧延材７０を仕上ユニバーサル圧延機が噛み込む際（噛み込み時）には図６のようにウェブ拘束ローラの中心軸を前記胴幅可変水平ロールの中心軸より下流に位置させ、蹴出す際（蹴出し時）には図５のようにウェブ拘束ローラの中心軸を前記胴幅可変水平ロールの中心軸より上流に位置させるような、被圧延材７０のバー内でのウェブ拘束ローラの位置調整が有効である。このようなウェブ拘束ローラの適用法も本発明技術の範疇である。

以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

例えば、本発明技術の関わるＨ形鋼の「仕上ユニバーサル圧延」には、先に説明したような仕上ユニバーサル圧延機で被圧延材のフランジの傾斜を矯正するとともに、該被圧延材のウェブ高さを縮小、または拡大するような仕上ユニバーサル圧延をも含み、当然本発明技術の範疇に属する。

本発明は、ウェブ拘束ローラ付き胴幅可変水平ロールを備えたＨ形鋼用仕上ユニバーサル圧延機および仕上ユニバーサル圧延方法に適用できる。

１…加熱炉
２…粗圧延機
３…第一中間ユニバーサル圧延機
４…第一エッジャー圧延機
５…第二中間ユニバーサル圧延機
６…第二エッジャー圧延機
７…斜行ロール圧延機（スキューロール圧延機）
８…仕上ユニバーサル圧延機
１０…素材
１１…Ｈ形粗形材
１２、１３、１４…Ｈ形中間材
３０、３１…仕上ユニバーサル圧延機の竪ロール
５０、５１…仕上ユニバーサル圧延機の胴幅可変水平ロール
５０−１、５０−２…仕上ユニバーサル圧延機の上水平ロールの左右分割ロール
５１−１、５１−２…仕上ユニバーサル圧延機の下水平ロールの左右分割ロール
５２、５３…仕上ユニバーサル圧延機の胴幅可変水平ロールの主軸
５４、５５…仕上ユニバーサル圧延機のウェブ拘束ローラのベーススリーブ
５６、５７…仕上ユニバーサル圧延機のウェブ拘束ローラの偏心スリーブ
６０、６１…仕上ユニバーサル圧延機のウェブ拘束ローラ
６２…キー
６３…ベアリング
６４…貫通ガイド
６５…ウェブガイド
６６…出曲がり矯正装置
６７…圧延材巻き付き防止ガイド
６８…端面ローラ
７０…被圧延材
７１…被圧延材のウェブ
７２、７３…被圧延材のフランジ
８０…Ｈ形鋼製品
８１…Ｈ形鋼のウェブ
８２、８３…Ｈ形鋼のフランジ

Claims (12)

1. 中間圧延によって圧延造形されたＨ形中間材を被圧延材とし、当該Ｈ形中間材の外側に傾斜したフランジを矯正してＨ形鋼製品を圧延造形する胴幅可変水平ロールの上下対を備えた仕上ユニバーサル圧延機であって、
   前記胴幅可変水平ロールは左右の分割ロールから構成され、
   当該左右の分割ロール間に形成される空間内に、前記Ｈ形中間材又は前記Ｈ形鋼製品のウェブを拘束するウェブ拘束ローラの上下対と、
   当該ウェブ拘束ローラの内部に前記胴幅可変水平ロールの上下対の主軸の外周上に回動自在に設けられる偏心スリーブの上下対と、を備えることを特徴とする、仕上ユニバーサル圧延機。
2. 前記左右の分割ロール間に形成される空間内において、
   前記胴幅可変水平ロールの主軸の外周と、前記偏心スリーブの内周との間には、前記胴幅可変水平ロールの主軸の外周上で軸方向に摺動自在であり、且つ、当該主軸と回動を共にするベーススリーブの上下対が設けられていることを特徴とする、請求項１に記載の仕上ユニバーサル圧延機。
3. 前記ウェブ拘束ローラの上下対は、前記左右の分割ロール間に形成される空間内において、当該左右の分割ロールそれぞれに隣接する左右ウェブ拘束ローラ部分に分かれて構成されることを特徴とする、請求項１又は２に記載の仕上ユニバーサル圧延機。
4. 請求項１〜３のいずれか一項に記載の仕上ユニバーサル圧延機を用いた仕上ユニバーサル圧延方法であって、
   前記偏心スリーブの位相角の調整に基づき、前記ウェブ拘束ローラを所定の位置に配置し、前記Ｈ形中間材からＨ形鋼製品を圧延造形することを特徴とする、仕上ユニバーサル圧延方法。
5. 前記ウェブ拘束ローラの中心軸を、前記胴幅可変水平ロールの中心軸より上流に位置させ、当該ウェブ拘束ローラの上下対の間隙中心を前記胴幅可変水平ロールの上下対の間隙中心と上下方向に一致させて設定することを特徴とする、請求項４に記載の仕上ユニバーサル圧延方法。
6. 前記ウェブ拘束ローラの中心軸を、前記胴幅可変水平ロールの中心軸より上流に位置させ、当該ウェブ拘束ローラの上下対の間隙中心を前記胴幅可変水平ロールの上下対の間隙中心に対して上下方向にずらして設定することを特徴とする、請求項４に記載の仕上ユニバーサル圧延方法。
7. 前記ウェブ拘束ローラの中心軸を、前記胴幅可変水平ロールの中心軸より下流に位置させ、当該ウェブ拘束ローラの上下対の間隙中心を前記胴幅可変水平ロールの上下対の間隙中心と上下方向に一致させて設定することを特徴とする、請求項４に記載の仕上ユニバーサル圧延方法。
8. 前記ウェブ拘束ローラの中心軸を、前記胴幅可変水平ロールの中心軸より下流に位置させ、当該ウェブ拘束ローラの上下対の間隙中心を前記胴幅可変水平ロールの上下対の間隙中心に対して上下方向にずらして設定することを特徴とする、請求項４に記載の仕上ユニバーサル圧延方法。
9. 前記ウェブ拘束ローラの上下対の間隙値を前記Ｈ形中間材または前記Ｈ形鋼製品のウェブ厚値と等しくなるように設定することを特徴とする、請求項４〜８のいずれか一項に記載の仕上ユニバーサル圧延方法。
10. 前記Ｈ形中間材の前記仕上ユニバーサル圧延機への噛み込みから蹴出しまでの間において、前記偏心スリーブの位相角を一定として前記ウェブ拘束ローラの位置を固定した状態で圧延造形を行うことを特徴とする、請求項４〜９のいずれか一項に記載の仕上ユニバーサル圧延方法。
11. 前記Ｈ形中間材の前記仕上ユニバーサル圧延機への噛み込みから蹴出しまでの間において、前記偏心スリーブの位相角を調整して前記ウェブ拘束ローラの位置を変化させて圧延造形を行うことを特徴とする、請求項４〜９のいずれか一項に記載の仕上ユニバーサル圧延方法。
12. 前記ウェブ拘束ローラの中心軸を、前記胴幅可変水平ロールの中心軸より下流に位置させた状態で前記Ｈ形中間材の先端部を前記仕上ユニバーサル圧延機に噛み込ませて圧延造形を行った後、
    前記ウェブ拘束ローラの中心軸を、前記胴幅可変水平ロールの中心軸より上流に位置させたるように移動させ、前記Ｈ形中間材の後端部を前記仕上ユニバーサル圧延機から蹴出すことを特徴とする、請求項４〜９、１１のいずれか一項に記載の仕上ユニバーサル圧延方法。

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