JP2018146112A - 過給機用焼結軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温時の強度、耐摩耗性、耐焼き付き性、および耐腐食性に優れ、かつ低コスト化を達成できる過給機用焼結軸受を提供する。【解決手段】この焼結軸受5は、8〜12質量%のアルミニウム、0.1〜0.8質量%の燐、およびフッ化カルシウムを含有し、残部が銅および不可避的不純物からなる。焼結体の表面は、フッ化カルシウム粒子と、アルミニウムを含有した銅合金組織とで形成されている。【選択図】図2

Description

本発明は、過給機用焼結軸受に関する。
自動車エンジン等で使用される過給機、例えばターボチャージャは、軸の両端にタービンインペラとコンプレッサインペラとを取り付けた構造を有する。エンジンの駆動中は、シリンダからの排気ガスによってタービンインペラが回転駆動され、このトルクでコンプレッサインペラが回転して空気を圧縮する。過給機は、このようにして圧縮した空気をシリンダの吸気側に送り込むことで、エンジンの吸気効率を高める機能を有する。
過給機の軸を支持する軸受は、タービンインペラとコンプレッサインペラとの間でハウジング内に配置される。この軸受としては、軸受とハウジング、および軸受と軸の双方の間に油膜を形成するフローティング軸受を使用するのが通例である。このフローティング軸受としては、軸受を潤滑油(エンジンオイル)中に浮かせて軸受が軸に対して連れ回るようにしたフルフローティング構造と、軸受の回転を拘束したセミフローティング構造とが知られている。
過給機の軸は10万rpmを超える高速で回転する。また、排熱等の影響により軸受周辺は数百度程度の高温となる。従って、過給機用の軸受では、高温下で高い耐摩耗性や耐焼き付き性が必要とされる。また、排気ガスやエンジンオイルに対する耐腐食性も必要とされる。このような過酷な環境下で使用される過給機用軸受の一例として、特許文献1には、黄銅系生地にMn−Si系化合物を析出させた黄銅系合金(黄銅系メタル)からなるすべり軸受が開示されている。
特許第3718147号公報
特許文献1の黄銅系メタル軸受は溶製材で形成されている。溶製材からなるすべり軸受は、その製作過程で切削加工等を必要とするため、高コスト化する問題がある。この問題を解決する手法として、ニアネットシェイプで成形可能となる焼結軸受を使用することが考えられる。
その一方で、過給機用軸受の焼結軸受への置き換えには多くの障害がある。例えば焼結軸受としては鉄系や青銅系が一般的であるが、鉄系焼結軸受では耐焼き付き性を満足することができず、青銅系焼結軸受では、低融点(ほぼ232℃)のSnを含むため、過給機として使用した際に軸受強度が著しく低下する問題がある。また、摺動性の観点から、軸受面には固体潤滑剤組織を形成することが望まれるが、固体潤滑剤として一般的な黒鉛は、325℃以上で炭酸ガス化して消失するため、過給機用焼結軸受としての使用には適さない。二硫化モリブデンも同様に高温で消失するため、過給機用焼結軸受の固体潤滑剤としての使用には適さない。さらに、過給機用軸受では、軸受が高速回転する軸と瞬間的に接触する(フルフローティングタイプでは、さらに軸受とハウジングも瞬間的に接触する)ため、その衝突時の軸受の変形や摩耗を抑制できるよう高い強度や耐摩耗性が必要とされる。
近年では、過給機のさらなるパワーアップが要請され、この要請に応えるべく、軸の回転速度や軸受温度がさらに高まる傾向にある(軸の回転速度は30万rpm程度、軸受温度は400℃程度に達する可能性がある)。このような要求特性の更なる過酷化に対し、既存の黄銅系メタル等からなる過給機用軸受では対応に限界がある。例えば黄銅系メタルは400℃程度での軟化が著しいため、高温下での強度、硬さ、耐摩耗性に不安が残る。
以上の問題に鑑み、本発明は、高温時の強度、耐摩耗性、耐焼き付き性、および耐腐食性に優れ、かつ低コスト化を達成できる過給機用焼結軸受を提供することを目的とする。
過給機用焼結軸受として重要視される耐焼き付き性を満足するためには、銅合金組織を主体とする焼結体を用いるのが好ましい。本発明者らは、この銅系焼結体の採用を前提として、過給機用焼結軸受に適合する固体潤滑剤組織を種々検討した結果、固体潤滑剤としてフッ化カルシウム(CaF)を使用する、との着想に至った。フッ化カルシウム粒子は高温(900℃程度)でも安定しており、固体潤滑剤としての機能を失わない。従って、400℃程度の高温下でも軸あるいはハウジングに対する接触面の摺動性(低摩擦性、耐焼き付き性)を確保することができる。また、フッ化カルシウム粒子は黄銅系メタルよりも硬質となるため、耐摩耗性の面でも有利となる。
原料粉末にフッ化カルシウム粉末を添加した場合、その一部は焼結中に蒸発、揮散するが、銅系焼結体の焼結温度は鉄系焼結体よりも低温(銅の融点1083℃よりも低温で焼結される)であるため、焼結中のフッ化カルシウムの消失量は少ない。この時、焼結中に見込まれるフッ化カルシウムの消失量よりも多いフッ化カルシウム粉末を原料粉末に配合しておけば、焼結後の焼結組織に必要量のフッ化カルシウム粒子を形成することが可能となる。
以上の検証結果に基づき、本発明にかかる、過給機の軸を支持する過給機用焼結軸受は、銅合金組織を主体とする焼結体からなり、焼結体がフッ化カルシウム粒子を含有することを特徴とする。
また、過給機用焼結軸受の製造に際しては、フッ化カルシウム粉末を含む原料粉末を成形および焼結して前記焼結体を形成し、前記原料粉末におけるフッ化カルシウム粉末の配合量を、焼結中におけるフッ化カルシウムの消失量よりも多くして、前記焼結体にフッ化カルシウム粒子を形成するのが好ましい。
本発明者らは、さらに検証を進め、上記の課題を解決するため、過給機用の焼結軸受として、アルミニウム青銅系(Cu−Al系)を使用するという新たな着想に至った。具体的に説明すると、本発明は、過給機の軸を支持する過給機用焼結軸受であって、8〜12質量%のアルミニウム、0.1〜0.8質量%の燐、およびフッ化カルシウムを含有し、残部が銅および不可避的不純物からなる焼結体で形成され、焼結体の表面が、主にフッ化カルシウム粒子と、アルミニウムを含有した銅合金組織とで形成されていることを特徴とするものである。
この過給機用焼結軸受は、アルミニウムを含む銅合金組織とフッ化カルシウム粒子とで形成され、純銅組織を含まない。すなわち、アルミニウム源および銅源となる原料粉末として、アルミニウム−銅合金粉末を用い、銅単体の粉末は使用していない。また、燐は、焼結時に周辺の銅組織と共に溶融して液相となり、さらに液相となった銅合金は周辺のアルミニウム−銅合金組織に拡散する。そのため、焼結体には燐−銅合金組織は形成されない。従って、この焼結軸受は、フッ化カルシウム粒子の存在領域を除き、全てアルミニウムが分散した銅合金組織で形成される。
焼結体の表面の銅合金組織は、空気中の酸素と反応してその全体が酸化アルミニウム被膜で被覆される。酸化アルミニウム被膜は高温下でも化学的に安定しており、かつ本発明では、焼結体の表面の殆どの領域(フッ化カルシウム粒子が現れた領域を除いた全ての領域)がアルミニウムを含む銅合金組織で形成されているため、表面の殆どの領域が酸化アルミニウム被膜で覆われる。従って、焼結体の高温時の耐腐食性を向上させることができる。また、焼結体の内周面や外周面(軸やハウジングに対する接触面)の全周にわたり、ほぼ均一厚さの酸化アルミニウム被膜が形成されることになるため、軸受隙間が均一となって軸受性能が安定化する。
さらに焼結体の表面に現れたフッ化カルシウム粒子は高温(900℃程度)でも安定しており、固体潤滑剤としての機能を失わないため、400℃程度の高温下でも軸あるいはハウジングに対する接触面の摺動性(低摩擦性、耐焼き付き性)を確保することができる。加えて、酸化アルミニウム被膜自身が硬質であること、さらにフッ化カルシウム粒子も黒鉛等の他の固体潤滑剤と同じく潤滑性または摺動性があることから、先の焼結体の表面全体の硬質化と共に、耐摩耗性のさらなる向上が達成される。
以上に述べた理由から、今後、過給機用軸受に対する要求性能(軸の回転速度や軸受使用温度)がさらに過酷化し、例えば30万rpmの回転速度や400℃程度の軸受使用温度が求められるようになっても、強度、耐摩耗性、耐焼付き性、耐腐食性といった要求特性を満足することが可能となる。
耐腐食性の面からは、アルミニウムを含有する銅合金組織をα相で形成するのが望ましい。その一方で、銅合金組織のγ相は、α相に比べて硬質であるため、ある程度の量のγ相を焼結体の表面に分布させることで、軸受の耐摩耗性を向上させることが可能となる。以上の新たな知見から、銅合金組織におけるα相とγ相は、面積比で、0.10<γ相/α相<0.35(好ましくは0.15<γ相/α相<0.30)にするのが好ましい。
焼結体の表面に、フッ化カルシウム粒子を面積比で3%以上15%以下の割合で分散させるのが好ましい。3%を下回ると摺動性の改善効果が得られず、15%を上回ると、フッ化カルシウムが多すぎるために焼結が過剰に進んで焼結体が大きく収縮し、焼結体の寸法精度を確保することが困難となるためである。
フッ化カルシウム粒子の平均粒径は10μm以上、30μm以下が好ましい。また、焼結体の表面には、フッ化カルシウム粒子を除いて酸化アルミニウム被膜を形成するのが好ましい。
本発明による過給機用焼結軸受は、高温下における強度、耐摩耗性、耐焼き付き性、耐腐食性といった要求性能を、余裕をもってクリアすることができる。従って、過給機用焼結軸受としての使用に適合する。しかも過給機用軸受として従来から用いられる黄銅系メタルからなる軸受よりも低コスト化を図ることができる。
ターボチャージャの概略構成を示す縦断面図である。 焼結軸受の縦断面図である。 焼結体の焼結組織の顕微鏡写真を示す図である。 エッチング後の焼結組織の顕微鏡写真を示す図である。 フッ化カルシウムの配合量を変えて焼結体の各種値を測定した結果を示す表である。 銅合金組織の組織割合および硬さの測定結果を示す表である。 ALBC3材の温度と機械的性質との関係を示すグラフである。 焼結軸受の縦断面図である。
以下、本発明の過給機用焼結軸受の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
本発明に係る焼結軸受は、自動車エンジン等に装備される過給機に使用される。図1は、この種の過給機の一例として、フルフローティング軸受を用いたターボチャージャの概要を示す縦断面図である。
ターボチャージャ1は、軸2と、軸2の一端に設けられたタービンインペラ3と、軸2の他端に設けられたコンプレッサインペラ4と、軸2をラジアル方向で支持するラジアル軸受5と、軸2をスラスト方向で支持するスラスト軸受6と、ラジアル軸受5およびスラスト軸受6を支持するハウジング7とを有する。エンジンの駆動中は、シリンダからの排気ガスによってタービンインペラ3が回転駆動され、このトルクで軸2、さらにコンプレッサインペラ4が回転する。コンプレッサインペラ4の回転により、空気が圧縮される。この圧縮空気をシリンダの吸気側に送り込むことで、エンジンの吸気効率が高められる。
軸2は、ラジアル軸受5およびスラスト軸受6で回転自在に支持される。フルフローティング構造のターボチャージャ1では、図1に示すように、軸方向に離間した二カ所にラジアル軸受5を配置し、対をなすラジアル軸受5の軸方向一方側にスラスト軸受6を配置する場合が多い。しかしながら、各軸受5,6の配置位置や数は任意であり、図示した構造に限定されるものではない。
ラジアル軸受5およびスラスト軸受6は、タービンインペラ3とコンプレッサインペラ4の間に配置された中空状のハウジング7内に収容される。ハウジング7には、潤滑油としてのエンジンオイルを循環させるためのオイル経路8が形成されており、その下流端は、ラジアル軸受5の外周面と対向するハウジング7の内周面に開口している。オイル経路8から流出したエンジンオイルは、ラジアル軸受5の外周面5b(図2参照)とハウジング7の内周面の間の隙間、さらにラジアル軸受5の内周面5a(軸受面)と軸2の外周面との間の隙間を満たし、各隙間(軸受隙間)に油膜が形成される。これにより、ラジアル軸受5はエンジンオイル中に浮いたフローティング状態となり、軸2の回転中にはラジアル軸受5も軸2に連れ回る形で軸2よりも低速で回転する。スラスト軸受6も同様の構成を有する。
図2に、以上に述べたターボチャージャ1に使用されるラジアル軸受5の縦断面図を示す。このラジアル軸受5は、焼結金属からなり、内周面に軸受面5aを有する円筒状に形成される(以下では、ラジアル軸受5を単に「焼結軸受」と呼ぶ)。焼結軸受5の内周に軸2が挿入され、軸2が焼結軸受5によって回転自在に支持される。
この焼結軸受5は、各種粉末を混合した原料粉末を金型に充填し、これを圧縮して圧粉体を成形した後、圧粉体を焼結することで形成される。
原料粉末は、アルミニウム−銅合金粉末、燐−銅合金粉末、固体潤滑剤としてのフッ化カルシウム、および焼結助剤としてのフッ化アルミニウムを混合した混合粉末である。各粉末の詳細を以下に述べる。
[アルミニウム−銅合金粉末]
アルミニウム−銅合金粉末としては、銅とアルミニウムの完全合金粉末を粉砕した後、粒度調整したものが使用される。8〜12質量%アルミニウム−銅合金粉末(好ましくは9〜11質量%アルミニウム−銅合金粉末)を使用するのが好ましい。また、アルミニウム−銅合金粉末の粒径は100μm以下で、平均粒径は例えば35μm程度とする。なお、本明細書において、平均粒径とは、レーザ回析により測定した粒径の平均値を意味する。具体的には、株式会社島津製作所製SALD−3100により、5000粉末をレーザ回析で測定したときの粒径の平均値である。
アルミニウム−銅合金粉末におけるアルミニウムの量が多くなるほどβ相の割合が多くなる。β相は565℃で共析変態してα相とγ相になるため、アルミニウム量が多くなるほど焼結体に生じるγ相が多くなる。γ相はエンジンオイルに含まれる有機酸や排気ガス中のアンモニアに対する耐腐食性を低下させるため、アルミニウム量を過剰に増やすことは好ましくない。一方、アルミニウムの含有量が少なすぎると、アルミニウム青銅焼結軸受としてのメリット(特に耐摩耗性)が得られない。以上の理由から、上記のとおり、アルミニウム−銅合金粉末におけるアルミニウム含有量は8〜12質量%(好ましくは9〜11質量%)とする。
[燐−銅合金粉末]
燐−銅合金粉末としては、7〜10質量%燐−銅合金粉末が用いられる。燐は、固相−液相間の濡れ性を高めると共に、焼結過程でのアルミニウムの拡散を促進させることで、配合すべきアルミニウム量を減らす効果を有する。原料粉末における燐の配合量は、0.1〜0.8質量%、好ましくは0.1〜0.4質量%とする。0.1質量%未満の配合量では固液相間の焼結促進効果が乏しくなり、0.8重量%(好ましくは0.4質量%)を超える配合量では、焼結が進み過ぎてアルミニウムが偏析し、γ相の析出が増えて耐腐食性が低下すると共に、焼結体が脆くなる。
[フッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウム]
アルミニウム−銅合金粉末の焼結時には、その表面に生成する酸化アルミニウムの被膜が焼結を著しく阻害する。フッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムは、アルミニウム−銅合金粉末の焼結温度である850〜950℃で溶融しながら徐々に蒸発し、アルミニウム−銅合金粉末の表面を保護して酸化アルミニウムの生成を抑制することにより、焼結を促進しアルミニウムの拡散を増進させる。フッ化アルミニウムは、焼結時に蒸発、揮散するため焼結体には殆ど残らない。その一方で、フッ化カルシウムは、固体潤滑剤として焼結体に残す。そのため、フッ化カルシウムの配合量は、フッ化アルミニウムよりも多くするのが好ましい。
具体的には、原料粉末におけるフッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムの配合割合は、前者については0.05質量%〜0.2質量%程度、後者については0.3質量%〜6質量%程度とする。フッ化アルミニウムの配合量が下限値を下回ると焼結助剤としての効果が不十分となり、緻密で必要な強度を有する焼結体が得られない。フッ化アルミニウムの配合量が上限値を上回ると、焼結時の収縮が大きくなり、焼結体の寸法精度が悪化する。また、フッ化カルシウムの配合量が下限値を下回ると、焼結体に残るフッ化カルシウムの量が不足し、固体潤滑剤としての効果が得られずに摺動性に悪影響を与える。フッ化カルシウムの配合量が上限値を超えると、焼結の促進効果が過剰となって焼結体が過度に収縮するため、必要な寸法精度を確保することができない。なお、フッ化カルシウム粉末としては、平均粒径が10μm〜30μm程度のものを使用するのが好ましい。
原料粉末には、アルミニウム−銅合金粉末、燐−銅合金粉末、フッ化カルシウム粉末、およびフッ化アルミニウム粉末の合計を100重量%として、成形を容易にするための成形助剤としてステアリン酸亜鉛、あるいはステアリン酸カルシウム等の潤滑剤を0.1〜1重量%添加するのが好ましい。なお、これらの成形助剤は、焼結に伴って蒸発、揮散するため、焼結後の焼結体には残らない。
以上に述べた原料粉末を混合した後、原料粉末を圧縮成形することで圧粉体が製作される。次いで、圧粉体は焼結工程に移送され、炉内で加熱することで焼結される。焼結温度は900〜950℃が好ましい。また、炉内の雰囲気ガスは、水素ガス、窒素ガスあるいはこれらの混合ガスとし、焼結時間は20〜60分程度とする。
焼結に伴い、燐−銅合金粉末が溶融して液相となり、さらに液相となった燐−銅合金は周辺のアルミニウム−銅合金粉末に拡散する。そのため、アルミニウム−銅合金粉末間のネック強度が高くなり、焼結体の強度が高まる。焼結後は、銅系組織の多くがアルミニウム−銅合金組織となり、一部が燐−アルミニウム−銅合金組織となる。燐−銅合金組織は残らない。従って、焼結後の焼結体は、フッ化カルシウム粒子の存在領域を除く全領域が、アルミニウムを含む銅合金組織で形成される。
なお、焼結温度は、原料粉末に含まれるフッ化カルシウムの配合量に応じて変更することができる。例えばフッ化カルシウムの配合量が少ない場合(例えば配合量が0.3質量%以上で3.0質量%未満の場合)は、フッ化カルシウムによる焼結の促進効果が小さくなるため、焼結温度を950℃程度まで上げて焼結体の強度を高めるのが好ましい。一方、フッ化カルシウムの配合割合が多い場合(例えば配合量が3.0質量%以上で6.0質量%以下の場合)は、焼結の進み過ぎによる焼結体の過剰収縮を防止するため、焼結温度を920℃〜930℃まで下げるのが好ましい。
このようにして得た焼結体に対してサイジングを行うことで、焼結体が整形される。サイジングは、コア、ダイス、および上下のパンチで画成された円筒状のキャビティに焼結体を収容した後、上下のパンチで焼結体を圧縮して焼結体の内周面をコアに、外周面をダイスにそれぞれ押し付けることで行われる。サイジングを行うことで、図2に示す焼結軸受5が完成する。焼結体への潤滑油等の含浸は行われない。
以上の手順で製作された焼結軸受5(焼結体)は、8〜12質量%のアルミニウム、0.1〜0.8質量%の燐、およびフッ化カルシウムを含有し、残部が銅および不可避的不純物で構成されたものとなる。黒鉛、錫、亜鉛、マンガン、ケイ素、鉄等は不可避的不純物となるものを除き含有されない。また、図3に示すように、焼結体の表面には、フッ化カルシウム粒子が均一に分散し、その表面(気孔も含む)におけるフッ化カルシウム粒子の割合は、面積比で3%以上15%以下となる。フッ化カルシウム粒子の平均粒径は、10μm〜30μmとなっている。また、図4に示すように、焼結体の銅合金組織には、α相(マトリックス相)を主体としつつ一部にγ相(化合物相)が形成される。なお、図4は、図3に示す焼結体に、重クロム酸等によるエッチング処理を行ってから撮影したものである。
図5は、原料粉末におけるフッ化カルシウム(CaF)の配合割合を5質量%、3質量%、1質量%、0.5質量%と変えた時の各焼結体の密度(g/cm)、硬さ(HRF)、圧環強さ(MPa)、フッ化カルシウム粒子の析出量(面積比)、およびフッ化カルシウム粒子の平均粒径(μm)の各測定結果を示す。各焼結体の原料粉末は、8質量%燐−銅合金粉末を3質量%、フッ化アルミニウム粉末を0.1質量%、フッ化カルシウム粉末を上記各割合で含み、残りを9〜11質量%アルミニウム−銅合金粉末としたものである。また、焼結温度は何れも950℃としている。
図6は、銅合金組織におけるα相とγ相の組織割合を面積比で表すと共に、α相、γ相、およびフッ化カルシウム粒子のビッカース硬さ(荷重50g)を測定した結果を示す。フッ化カルシウム粒子の析出量や平均粒径、α相とγ相の組織割合は、上記エッチング処理後に顕微鏡により撮影した画像データを二値化処理することで算出している。
図5より本発明によれば、高強度(圧環強さ700MPa〜950MPa程度)で高い表面硬さ(HRF95〜105程度)を有する焼結体が得られることが理解できる。また、図6に示す結果から、焼結組織中のフッ化カルシウム粒子を含む全ての相が黄銅系メタル(ビッカース硬さ70〜80程度)よりも硬質となっていることが理解できる。
また、上記各焼結体について耐アンモニア試験、エンジンオイル浸漬試験も行ったところ、何れも良好な結果が得られた。
図7は、JIS H5120に規定されたアルミニウム青銅鋳物3種(以下、ALBC3と呼ぶ)での温度と機械的性質(引張り強さおよびビッカース硬さ)との関係を示す。このようにALBC3は、400℃でも十分な引張り強さ(50kgf/mm)と十分な硬さ(Hv120前後)を有する。従って、ALBC3材に近似した組成を有する本発明の焼結軸受が、400℃に達する高温下でも強度および耐摩耗性を維持できることが理解できる。図1に示すターボチャージャ用の焼結軸受では、瞬間的には焼結軸受5の内周面5aが軸2の外周面と接触し、焼結軸受5の外周面5bがハウジング7の内周面と接触する場合があるが、本発明の焼結軸受5は高温下でも高強度で高い耐摩耗性を有するため、上記の接触による焼結軸受5の変形や摩耗を長期にわたり安定して防止することができる。
焼結軸受5の表面の銅合金組織は、空気中の酸素と反応してその全体が酸化アルミニウム被膜で被覆される。酸化アルミニウム被膜は高温下でも化学的に安定しており、かつ本発明では、焼結体の表面の殆どの領域(フッ化カルシウム粒子が現れた領域を除いた全ての領域)がアルミニウムを含む銅合金組織で形成されている関係上、当該領域の全てが酸化アルミニウム被膜で覆われる。従って、焼結体の高温時の耐腐食性をさらに向上させることができる。また、焼結体の内周面や外周面の全周にわたり、ほぼ均一厚さの酸化アルミニウム被膜が形成されるため、軸受隙間が均一となって軸受性能が安定化する。
また、焼結体の表面に現れたフッ化カルシウム粒子は900℃程度まで安定しており、固体潤滑剤としての機能を失わないため、400℃程度の高温下でも軸2あるいはハウジング7に対する接触面の摺動性(低摩擦性、耐焼き付き性)を確保することができる。加えて、酸化アルミニウム被膜自身が硬質であること、さらにフッ化カルシウム粒子も黄銅系メタルに比べれば硬質であることから、焼結体の表面全体が硬質となり、耐摩耗性のさらなる向上が達成される。
また、銅合金組織は、耐腐食性に優れるα相がその多くを占める一方で、その一部に硬質のγ相を有するため、焼結体の耐摩耗性を向上させることができる。このように耐腐食性と耐摩耗性を両立する観点から、銅合金組織におけるα相とγ相は、面積比で、0.10<γ相/α相<0.35(好ましくは0.15≦γ相/α相≦0.30)となるように形成するのが好ましい。
以上に述べた理由から、今後、過給機用軸受に対する要求性能(軸の回転速度や軸受使用温度)がさらに過酷化し、例えば30万rpmの回転速度や400℃程度の軸受使用温度が求められるようになっても、本発明により、強度、耐摩耗性、耐焼付き性、耐腐食性といった過給機用軸受に対する要求特性を満足することが可能となる。加えてニアネットシェイプ成形が可能な焼結軸受であるので、既存の黄銅系メタルからなる過給機用軸受よりも低コスト化を達成することができる。
以上に述べた実施形態では、銅合金組織として、アルミニウム−銅合金組織(一部は燐−アルミニウム−銅合金組織)を形成する場合を例示したが、銅合金組織はこの例示には限定されず、アルミニウムと他の元素を含む銅合金組織、あるいはアルミニウムを含まず他の元素を含む銅合金組織であってもよい。このような銅合金組織でも過給機用焼結軸受として使用できる可能性がある。焼結温度は、主体となる銅合金組織の種類によって適宜選択することができ、850℃〜950℃の範囲で適宜選択される。何れにせよ固体潤滑剤組織としてはフッ化カルシウムが使用される。焼結体の表面には、フッ化カルシウム粒子が均一に分散しており、その表面(気孔も含む)におけるフッ化カルシウム粒子の割合は、面積比で3%以上15%以下とする。
図8は、フルフローティング過給機に使用される焼結軸受5の他例で、焼結軸受5を挟んだ両側に形成される油膜間で潤滑油を循環させる油循環孔11を設けたものである。図示例の油循環孔11は、焼結体の内周面と外周面を貫通する径方向の孔である。油循環孔11は、円周方向の一個所に設ける他、円周方向の複数箇所に設けることもできる。
以上の説明では、本発明の焼結軸受5をフルフローティング構造のターボチャージャに適用した実施形態を例に挙げたが、本発明の焼結軸受5の適用対象は、フルフローティング構造に限定されず、焼結軸受5をフローティングさせつつ、ハウジング7に対する軸受の回転を拘束したセミフローティング構造のターボチャージャにも同様に適用することができる。
また、以上の説明では、図1に示すラジアル軸受に本発明を適用した場合を説明したが、本発明は、図1に示すスラスト軸受6にも同様に適用することができる。
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々の形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
1 ターボチャージャ(過給機)
2 軸
3 ターボインペラ
4 コンプレッサインペラ
5 ラジアル軸受(焼結軸受)
6 スラスト軸受(焼結軸受)
7 ハウジング
8 オイル供給路

Claims (7)

  1. 過給機の軸を支持する過給機用焼結軸受であって、
    銅合金組織を主体とする焼結体からなり、前記焼結体がフッ化カルシウム粒子を含有することを特徴とする過給機用焼結軸受。
  2. 過給機の軸を支持する過給機用焼結軸受であって、
    8〜12質量%のアルミニウム、0.1〜0.8質量%の燐、およびフッ化カルシウムを含有し、残部が銅および不可避的不純物からなる焼結体で形成され、
    焼結体の表面が、主にフッ化カルシウム粒子と、アルミニウムを含有した銅合金組織とで形成されていることを特徴とする過給機用焼結軸受。
  3. 前記銅合金組織におけるα相とγ相を、面積比で、0.10<γ相/α相<0.35にした請求項2に記載の過給機用焼結軸受。
  4. 焼結体の表面に、フッ化カルシウム粒子を面積比で3%以上15%以下の割合で分散させた請求項1〜3何れか1項に記載の過給機用焼結軸受。
  5. フッ化カルシウム粒子の平均粒径を10μm以上、30μm以下にした請求項1〜4の何れか1項に記載の過給機用焼結軸受。
  6. 前記焼結体の表面に、フッ化カルシウム粒子を除いて酸化アルミニウム被膜が形成されている請求項2または3に記載の過給機用焼結軸受。
  7. 銅合金組織を主体とする焼結体で形成され、過給機の軸を支持する過給機用焼結軸受の製造方法であって、
    フッ化カルシウム粉末を含む原料粉末を成形および焼結して前記焼結体を形成し、
    前記原料粉末におけるフッ化カルシウム粉末の配合量を、焼結中におけるフッ化カルシウムの消失量よりも多くして、前記焼結体にフッ化カルシウム粒子を形成することを特徴とする過給機用焼結軸受の製造方法。
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