JP2018145397A - ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】薄肉成形体とした場合にも極めて高い難燃性を有し、さらには剛性、曲げ強度、衝撃強度、ウエルド強度に優れ、軽量化されたポリカーボネート樹脂組成物を提供する。【解決手段】ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、炭素繊維(B)5〜120質量部、鱗片状無機鉱物フィラー(C)1〜15質量部及びリン系難燃剤(D)15〜50質量部を含有し、炭素繊維(B)に対する鱗片状無機鉱物フィラー(C)の割合が3〜30質量%であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品に関し、詳しくは、薄肉成形体とした場合にも極めて高い難燃性を有し、さらには剛性、曲げ強度、衝撃強度、ウエルド強度に優れ、軽量化されたポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、機械的物性、電気的特性に優れた樹脂であり、例えば自動車材料、電気電子機器材料、住宅材料、その他の工業分野における部品製造用材料等に幅広く利用されている。
中でも難燃化されたポリカーボネート樹脂組成物は、コンピューター、ノートブック型パソコン、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話等の情報・モバイル機器やプリンター、複写機等のOA機器等の部材として好適に使用されている。
近年、上述のような情報・モバイル機器をはじめとする電気電子機器は、小型化・薄肉化が進んでいるため、使用する材料には薄肉とした場合も高い難燃性を有し、さらに剛性にも優れる材料が求められている。
ポリカーボネート樹脂の剛性を高める手法はいくつか検討されているが、上述のような薄肉高剛性の要求に対しては、ガラス繊維のような繊維状の強化材を配合する手法が最も効果的である。このようなガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂に難燃性を付与する手段としては、従来、ハロゲン系難燃剤をポリカーボネート樹脂に配合することがなされてきた。しかしながら、塩素や臭素を含有するハロゲン系難燃剤を配合したポリカーボネート樹脂組成物は、熱安定性の低下を招いたり、成形加工時における成形機のスクリューや成形金型の腐食を招いたりすることがあった。
これに代わる手法として有機リン酸エステルを配合したガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物が、数多く提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
しかしながら、ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂では、比重が重いために近年要求されるような軽薄短小で高強度の成形品を得ることはできなかった。
これに対し、例えば、特許文献4〜6等では、炭素繊維と有機リン酸エステルを配合した、炭素繊維強化ポリカーボネート樹脂が提案されている。
しかしながら上述のような炭素繊維強化ポリカーボネート樹脂は、難燃性や耐衝撃性の低下が課題であった。
特開平10−46017号公報 特開平10−30056号公報 特開2014−156588号公報 特開平9−48912号公報 特開2000−226508号公報 特開2002−265767号公報
本発明は、上記の課題に鑑みて創案されたもので、薄肉成形体とした場合にも極めて高い難燃性を有し、さらには剛性、曲げ強度、衝撃強度、ウエルド強度に優れ、かつ軽量化が可能な材料を提供することを目的(課題)とする。
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂に、炭素繊維、鱗片状無機鉱物フィラー及びリン系難燃剤を含有し、炭素繊維に対する鱗片状無機鉱物フィラーの割合を特定の量で組み合わせることにより、軽量で且つ衝撃強度及びウエルド強度に優れ、剛性、曲げ強度及び難燃性に優れるポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下のポリカーボネート樹脂組成物及び成形品を提供する。
[1]ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、炭素繊維(B)5〜120質量部、鱗片状無機鉱物フィラー(C)1〜15質量部及びリン系難燃剤(D)15〜50質量部を含有し、炭素繊維(B)に対する鱗片状無機鉱物フィラー(C)の割合が3〜30質量%であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
[2]さらに、フルオロポリマー(E)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.05〜2質量部含有する上記[1]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[3]鱗片状無機鉱物フィラー(C)がタルク及び/又はマイカである上記[1]又は[2]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[4]リン系難燃剤(D)が、縮合リン酸エステル化合物である上記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[5]さらに、コア/シェル型グラフト共重合体(F)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、3〜10質量部含有する上記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[6]コア/シェル型グラフト共重合体(F)が、シリコーン−アクリレート複合ゴムをコアとするグラフト共重合体である上記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[7]鱗片状無機鉱物フィラー(C)とコア/シェル型グラフト共重合体(F)の含有量の質量比(C)/(F)が0.1〜2である上記[1]〜[6]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[8]UL94試験に基づく燃焼性が、0.8mm厚みでV−0である上記[1]〜[7]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[9]上記[1]〜[8]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品。
[10]電気電子機器の筐体である上記[9]に記載の成形品。
[11]前記電気電子機器が、ノートパソコン、タブレット端末、スマートフォン又は携帯電話である上記[10]に記載の成形品。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物によれば、薄肉成形体とした場合にも極めて高い難燃性を有し、さらには剛性、曲げ強度、衝撃強度、ウエルド強度に優れ、軽量化されたポリカーボネート樹脂組成物が可能となる。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定して解釈されるものではない。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、炭素繊維(B)5〜120質量部、鱗片状無機鉱物フィラー(C)1〜15質量部及びリン系難燃剤(D)15〜50質量部を含有し、炭素繊維(B)に対する鱗片状無機鉱物フィラー(C)の割合が3〜30質量%であることを特徴とする。
[ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に用いるポリカーボネート樹脂の種類に制限は無い。また、ポリカーボネート樹脂は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂は、一般式:−[−O−X−O−C(=O)−]−で表される、炭酸結合を有する基本構造の重合体である。なお、式中、Xは、一般には炭化水素基であるが、種々の特性付与のためヘテロ原子、ヘテロ結合の導入されたXを用いてもよい。
また、ポリカーボネート樹脂は、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素である芳香族ポリカーボネート樹脂、及び脂肪族炭素である脂肪族ポリカーボネート樹脂に分類できるが、いずれを用いることもできる。なかでも、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
ポリカーボネート樹脂の具体的な種類に制限はないが、例えば、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させてなるポリカーボネート重合体が挙げられる。この際、ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体に加えて、ポリヒドロキシ化合物等を反応させるようにしてもよい。また、二酸化炭素をカーボネート前駆体として、環状エーテルと反応させる方法も用いてもよい。またポリカーボネート重合体は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。さらに、ポリカーボネート重合体は1種の繰り返し単位からなる単重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。なお、通常、このようなポリカーボネート重合体は、熱可塑性の樹脂となる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例としては、
1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、
1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)(4−プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−プロピル−5−メチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、
9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
これらの中でもビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、中でもビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性の点から2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)が好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、脂肪族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーの例を挙げると、
エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、デカン−1,10−ジオール等のアルカンジオール類;
シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサノール、2,2,4,4−テトラメチル−シクロブタン−1,3−ジオール等のシクロアルカンジオール類;
エチレングリコール、2,2’−オキシジエタノール(即ち、ジエチレングリコール)、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、スピログリコール等のグリコール類;
1,2−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジエタノール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン、1,6−ビス(ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、4,4’−ビフェニルジメタノール、4,4’−ビフェニルジエタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビスフェノールAビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、ビスフェノールSビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル等のアラルキルジオール類;
1,2−エポキシエタン(即ち、エチレンオキシド)、1,2−エポキシプロパン(即ち、プロピレンオキシド)、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,4−エポキシシクロヘキサン、1−メチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、2,3−エポキシノルボルナン、1,3−エポキシプロパン等の環状エーテル類;等が挙げられる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
ポリカーボネート樹脂の分子量は、適宜選択して決定すればよいが、溶液粘度から換算した粘度平均分子量[Mv]は、17000〜24000であることが好ましい。粘度平均分子量をこのような範囲とすることにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができ、粘度平均分子量を上記範囲の上限値以下とすることにより本発明のポリカーボネート樹脂組成物の流動性低下を抑制して改善でき、成形加工性を高めて薄肉成形加工を容易に行うこともできる。
なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよく、この場合はポリカーボネート樹脂混合物の粘度平均分子量を上記の範囲とすることが好ましい。
なお、粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10−4Mv0.83 から算出される値を意味する。また極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、通常1,000ppm以下、好ましくは800ppm以下、より好ましくは600ppm以下である。これにより本発明のポリカーボネート樹脂組成物の滞留熱安定性及び色調をより向上させることができる。また、その下限は、特に溶融エステル交換法で製造されたポリカーボネート樹脂では、通常10ppm以上、好ましくは30ppm以上、より好ましくは40ppm以上である。これにより、分子量の低下を抑制し、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の機械的特性をより向上させることができる。
なお、末端水酸基濃度の単位は、ポリカーボネート樹脂の質量に対する、末端水酸基の質量をppmで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)である。
ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂単独(ポリカーボネート樹脂単独とは、ポリカーボネート樹脂の1種のみを含む態様に限定されず、例えば、モノマー組成や分子量が互いに異なる複数種のポリカーボネート樹脂を含む態様を含む意味で用いる。)で用いてもよく、ポリカーボネート樹脂と他の熱可塑性樹脂とのアロイ(混合物)とを組み合わせて用いてもよい。さらに、例えば、難燃性や耐衝撃性をさらに高める目的で、ポリカーボネート樹脂を、シロキサン構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性や難燃性をさらに向上させる目的でリン原子を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性を向上させる目的で、ジヒドロキシアントラキノン構造を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;光学的性質を改良するためにポリスチレン等のオレフィン系構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;耐薬品性を向上させる目的でポリエステル樹脂オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体として構成してもよい。
さらにポリカーボネート樹脂は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよい。前記の使用済みの製品としては、例えば、光学ディスク等の光記録媒体;導光板;自動車窓ガラス、自動車ヘッドランプレンズ、風防等の車両透明部材;水ボトル等の容器;メガネレンズ;防音壁、ガラス窓、波板等の建築部材などが挙げられる。また、製品の不適合品、スプルー、ランナー等から得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。
ただし、再生されたポリカーボネート樹脂は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に含まれるポリカーボネート樹脂のうち、80質量%以下であることが好ましく、中でも50質量%以下であることがより好ましい。再生されたポリカーボネート樹脂は、熱劣化や経年劣化等の劣化を受けている可能性が高いため、このようなポリカーボネート樹脂を前記の範囲よりも多く用いた場合、色相や機械的物性を低下させる可能性があるためである。
[炭素繊維(B)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、炭素繊維(B)を含有する。炭素繊維(B)としては、PAN系(ポリアクリロニトリル系)、ピッチ系、レーヨン系等のいずれをも使用できる。
炭素繊維(B)の平均繊維径は20μm以下が好ましく、流動性、耐衝撃性、寸法安定性、外観のバランスから、5〜8μmの範囲が最も好ましい。平均繊維径が20μmを超えると寸法安定性、耐衝撃性のバランスが低下するため、好ましくない。
また、樹脂組成物中での炭素繊維(B)の平均繊維長は、0.1〜2mmの範囲にあることが耐衝撃性、寸法安定性、外観のバランスの点から好ましい。
炭素繊維(B)は、表面処理が施されたものが好ましく、樹脂組成物としての引張り強度、曲げ強度が向上する。表面処理剤は通常用いられる任意のものが使用でき、例えばエポキシ系サイジング剤、ウレタン系サイジング剤、エポキシ−ウレンタン系サイジング剤、ポリアミド系サイジング剤、オレフィン系サイジング剤などが挙げられる。これらの中では、エポキシ系、ポリアミド系、ウレタン系のものが、ポリカーボネート樹脂に対しての分散性が良好であるため、好ましい。
表面処理剤の量は、炭素繊維(B)100質量部に対して、0.5〜15質量部の範囲であることが好ましく、1〜10質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物における炭素繊維(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、5〜120質量部である。炭素繊維(B)の含有量が5質量部未満では剛性が不十分であり、逆に120質量部を超えると耐衝撃性や流動性が不十分となり、また生産が困難となる。炭素繊維(B)の含有量は、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下である。
[鱗片状無機鉱物フィラー(C)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、鱗片状無機鉱物フィラー(C)を含有する。本発明において、無機鉱物フィラーとは樹脂成分に含有させて強度及び剛性を向上させる無機鉱物質のものをいい、鱗片状とは平板状、湾曲板状等のように、所定の角度から観察した際(平面視した際)の面積が、当該観察方向と直交する角度から観察した際の面積よりも大きい形状のことをいう。
鱗片状無機鉱物フィラー(C)としては、例えば、タルク、マイカ、カオリン等が挙げられ、中でもタルク及び/又はマイカが好ましく、特に好ましいのはタルクである。鱗片状無機鉱物フィラー(C)は1種でも2種類の混合物であってもよい。
タルクは、ポリカーボネート樹脂との接着性を高めるため、シラン処理剤等の各種表面処理剤で表面処理がなされたものであってもよい。表面処理剤としては特に限定されず、従来公知のものを使用することができるが、メチル水素シロキサン等のハイドロジェンシロキサン化合物やエポキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、及び、アミノシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤が、ポリカーボネート樹脂の物性を低下させることが少ないため好ましい。その他にもポリオキシエチレンシラン等を用いることができる。
タルクを表面処理剤で処理する方法には特に限定はなく、通常の方法で実施しうる。たとえば、タルクに表面処理剤を添加し、溶液中であるいは加熱しながら撹拌あるいは混合することで行なうことができる。
鱗片状無機鉱物フィラー(C)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、1〜15質量部である。含有量が1質量部を下回ると強度や難燃性の向上効果が不十分となり、15質量部を超えるとウエルド強度の低下に繋がるため相応しくない。鱗片状無機鉱物フィラー(C)の含有量は1.5質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、10質量部以下が好ましく、7質量部以下がより好ましい。
そして、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、炭素繊維(B)の含有量に対する鱗片状無機鉱物フィラー(C)の割合が3〜30質量%であることを特徴とする。3〜30質量%とすることで、効果的に強度と難燃性を向上した高剛性かつ低比重で軽量化が可能な材料を提供することができる。鱗片状無機鉱物フィラー(C)の割合は好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは12質量%以上、特に好ましくは13質量%以上であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、特に好ましくは17質量%以下である。
ここで鱗片状無機鉱物フィラー(C)の割合は、炭素繊維(B)の含有量100質量%に対する値(%)である。
[リン系難燃剤(D)]
本発明の超臨界発泡成形用熱可塑性樹脂組成物は、リン系難燃剤(D)を含有する。
リン系難燃剤(D)としては、分子中にリンを含む化合物であり、低分子であっても、オリゴマーであっても、ポリマーであってもよいが、熱安定性の面から、下記一般式(1)で表される縮合リン酸エステル化合物や一般式(2)および(3)で表されるホスファゼン化合物が特に好ましい。
<縮合リン酸エステル化合物>
上記一般式(1)で表される縮合リン酸エステル化合物は、kが異なる数を有する化合物の混合物であってもよく、かかるkが異なる縮合リン酸エステルの混合物の場合は、kはそれらの混合物の平均値となる。kは、通常0〜5の整数であり、異なるk数を有する化合物の混合物の場合は、平均のk数は好ましくは0.5〜2、より好ましくは0.6〜1.5、さらに好ましくは0.8〜1.2、特に好ましくは0.95〜1.15の範囲である。
また、Xは、二価のアリーレン基を示し、例えばレゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、2,3’−ジヒドロキシビフェニル、2,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシ化合物から誘導される二価の基である。これらのうち、特に、レゾルシノール、ビスフェノールA、3,3’−ジヒドロキシビフェニルから誘導される二価の基が好ましい。
また、一般式(1)におけるp、q、rおよびsは、それぞれ0または1を表し、なかでも1であることが好ましい。
また、R、R、RおよびRは、それぞれ、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示す。このようなアリール基としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、ジ−tert−ブチルフェニル基、p−クミルフェニル基等が挙げられるが、フェニル基、クレジル基、キシリル基がより好ましい。
一般式(1)で表される縮合リン酸エステル化合物の具体例としては、
トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート(EHDP)、tert−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス−(tert−ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス−(tert−ブチルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス−(イソプロピルフェニル)ジフェニルホスフェート、トリス−(イソプロピルフェニル)ホスフェート等の芳香族リン酸エステル類;
レゾルシノールビス−ジフェニルホスフェート(RDP)、レゾルシノールビス−ジキシレニルホスフェート(RDX)、ビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェート(BDP)、ビフェニルビス−ジフェニルホスフェート等の縮合リン酸エステル類;
等が挙げられる。
一般式(1)で表される縮合リン酸エステル化合物の酸価は、0.2mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは0.15mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは0.1mgKOH以下であり、特に好ましくは0.05mgKOH/g以下である。かかる酸価の下限は実質的に0とすることも可能である。一方、ハーフエステルの含有量は1.1質量部以下がより好ましく、0.9質量部以下がさらに好ましい。酸価が0.2mgKOH/gを超える場合やハーフエステル含有量が1.5mgを超える場合は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性や耐加水分解性の低下を招く。
リン酸エステル化合物としては、上述のものの他に、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,3−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、リン酸エステル部位を含有するポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂またはエポキシ樹脂も当然含まれる。
<ホスファゼン化合物>
上記一般式(2)及び(3)で表されるホスファゼン化合物としては、例えば、フェノキシホスファゼン、(ポリ)トリルオキシホスファゼン(例えば、o−トリルオキシホスファゼン、m−トリルオキシホスファゼン、p−トリルオキシホスファゼン、o,m−トリルオキシホスファゼン、o,p−トリルオキシホスファゼン、m,p−トリルオキシホスファゼン、o,m,p−トリルオキシホスファゼン等)、(ポリ)キシリルオキシホスファゼン等の環状及び/又は鎖状C1−6アルキルC6−20アリールオキシホスファゼンや、(ポリ)フェノキシトリルオキシホスファゼン(例えば、フェノキシo−トリルオキシホスファゼン、フェノキシm−トリルオキシホスファゼン、フェノキシp−トリルオキシホスファゼン、フェノキシo,m−トリルオキシホスファゼン、フェノキシo,p−トリルオキシホスファゼン、フェノキシm,p−トリルオキシホスファゼン、フェノキシo,m,p−トリルオキシホスファゼン等)、(ポリ)フェノキシキシリルオキシホスファゼン、(ポリ)フェノキシトリルオキシキシリルオキシホスファゼン等の環状及び/又は鎖状C6−20アリールC1−10アルキルC6−20アリールオキシホスファゼン等が例示できる。
これらのうち、好ましくは、環状及び/又は鎖状フェノキシホスファゼン、環状及び/又は鎖状C1−3アルキルC6−20アリールオキシホスファゼン、C6−20アリールオキシC1−3アルキルC6−20アリールオキシホスファゼン(例えば、環状及び/又は鎖状トリルオキシホスファゼン、環状及び/又は鎖状フェノキシトリルフェノキシホスファゼン等)である。
一般式(2)で表される環状ホスファゼン化合物としては、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す。このようなアリール基又はアルキルアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、ベンジル基等が挙げられるが、なかでもR及びRがフェニル基である環状フェノキシホスファゼンが特に好ましい。
このような環状フェノキシホスファゼン化合物としては、例えば、塩化アンモニウムと五塩化リンとを120〜130℃の温度で反応させて得られる環状及び直鎖状のクロロホスファゼン混合物から、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン、オクタクロロシクロテトラホスファゼン、デカクロロシクロペンタホスファゼン等の環状のクロルホスファゼンを取り出した後にフェノキシ基で置換して得られる、フェノキシシクロトリホスファゼン、オクタフェノキシシクロテトラホスファゼン、デカフェノキシシクロペンタホスファゼン等の化合物が挙げられる。
また、式(2)中、tは3〜25の整数を表すが、なかでもtが3〜8の整数である化合物が好ましく、tの異なる化合物の混合物であってもよい。なかでも、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10〜40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である化合物の混合物が好ましい。
式(3)中、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す。このようなアリール基又はアルキルアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、ベンジル基等が挙げられるが、R及びRがフェニル基である鎖状フェノキシホスファゼンが特に好ましい。
このような鎖状フェノキシホスファゼン化合物は、例えば、上記の方法で得られるヘキサクロロシクロトリホスファゼンを220〜250℃の温度で開還重合し、得られた重合度3〜10,000の直鎖状ジクロロホスファゼンをフェノキシ基で置換することにより得られる化合物が挙げられる。
また、Rは、−N=P(OR基、−N=P(OR基、−N=P(O)OR基、−N=P(O)OR基から選ばれる少なくとも1種を示し、R10は、−P(OR基、−P(OR基、−P(O)(OR基、−P(O)(OR基から選ばれる少なくとも1種を示す。
また、式(3)中、uは3〜10,000の整数を示し、好ましくは3〜1,000、より好ましくは3〜100、さらに好ましくは3〜25である。
また、ホスファゼン化合物は、その一部が架橋された架橋ホスファゼン化合物であってもよい。このような架橋構造を有することで耐熱性が向上する傾向にある。
このような架橋ホスファゼン化合物としては、下記一般式(4)で表わされる架橋基、例えば、4,4’−スルホニルジフェニレン(ビスフェノールS残基)の架橋構造を有する化合物、2,2−(4,4’−ジフェニレン)イソプロピリデン基の架橋構造を有する化合物、4,4’−オキシジフェニレン基の架橋構造を有する化合物、4,4’−チオジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等の、4,4’−ジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等が挙げられる。
[式(4)中、Xは−C(CH−、−SO−、−S−、又は−O−であり、vは0又は1である。]
また、架橋ホスファゼン化合物としては、一般式(2)においてR及びRがフェニル基である環状フェノキシホスファゼン化合物が前記一般式(4)で表される架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物又は、前記一般式(3)においてR及びRがフェニル基である鎖状フェノキシホスファゼン化合物が上記一般式(4)で表される架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物が難燃性の点から好ましく、環状フェノキシホスファゼン化合物が上記一般式(4)で表される架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物がより好ましい。
また、架橋フェノキシホスファゼン化合物中のフェニレン基の含有量は、一般式(2)で表される環状ホスファゼン化合物及び/又は一般式(3)で表される鎖る状フェノキシホスファゼン化合物中の全フェニル基及びフェニレン基数を基準として、通常50〜99.9%、好ましくは70〜90%である。また、該架橋フェノキシホスファゼン化合物は、その分子内にフリーの水酸基を有しない化合物であることが特に好ましい。
本発明においては、ホスファゼン化合物は、前記一般式(2)で表される環状フェノキシホスファゼン化合物、及び、上記一般式(3)で表される環状フェノキシホスファゼン化合物が架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物よる成る群から選択される少なくとも1種であることが、難燃性及び機械的特性の点から好ましい。
リン系難燃剤(D)としては、特には前記した縮合リン酸エステル化合物が好ましい。
リン系難燃剤(D)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、15〜50質量部であり、好ましくは20質量部以上であり、好ましくは40質量部以下、である。リン系難燃剤(D)の配合量が15質量部を下回る場合は、難燃性が不十分となり、50質量部を超えると著しい耐熱性の低下や機械物性の低下を引き起こす。
[フルオロポリマー(E)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、さらにフルオロポリマー(E)を含有することが好ましい。これによりポリカーボネート樹脂組成物の溶融特性を改良することができ、燃焼時の滴下防止性を向上させることができる。
フルオロポリマー(E)は、その見掛け密度が0.4g/ml以上であることが好ましい。フルオロポリマー(E)の見掛け密度が0.4g/ml以上とすることで燃焼時の滴下防止性がより向上する。フルオロポリマーの見掛け密度は、より好ましくは0.45g/ml以上であり、また、ハンドリング性の観点から、好ましくは2.0g/ml以下であり、より好ましくは1.5g/ml以下であり、更に好ましくは1.0g/ml以下である。
なお、フルオロポリマーの見掛け密度は、JIS K6820に基づく、見掛け密度測定装置を用いて行う。
フルオロポリマー(E)の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.05〜2質量部である。0.05質量部より少ないと難燃性向上効果が不十分になりやすく、2質量部を超えると樹脂組成物を成形した成形品の外観不良や機械的強度の低下が生じやすい。フルオロポリマー(E)の含有量は、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.2質量部以上であり、また1.5質量部以下がより好ましく、特に1.2質量部以下であることが好ましい。
フルオロポリマーは、通常ポリフルオロエチレン構造を含む重合体あるいは共重合体であり、具体例としては、ジフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等が挙げられるが、中でもテトラフルオロエチレン重合体が好ましい。
また、このフルオロポリマーとしては、フィブリル形成能を有するものが好ましく、具体的には、フィブリル形成能を有するフルオロポリマー樹脂が挙げられる。このように、フィブリル形成能を有することで、燃焼時の滴下防止性が著しく向上する傾向にある。
また、フルオロポリマーとして、有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂も好適に使用することができる。有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂を用いることで、分散性が向上し、成形品の表面外観が向上し、表面異物を抑制できる。有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂は、公知の種々の方法により製造でき、例えば(1)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合して、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、(2)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液存在下で、有機系重合体を構成する単量体を重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、(3)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合した分散液中で、エチレン性不飽和結合を有する単量体を乳化重合した後、凝固又はスプレードライにより粉体化して製造する方法、等が挙げられる。
フルオロポリマーを被覆する有機系重合体を生成するための単量体としては、ポリカーボネート樹脂に配合する際の分散性の観点から、ポリカーボネート樹脂との親和性が高いものが好ましく、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、シアン化ビニル系単量体がより好ましい。
[コア/シェル型グラフト共重合体(F)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、コア/シェル型グラフト共重合体(F)を含有することが好ましい。コア/シェル型グラフト共重合体(F)としては、ゴム成分をコア層とし、その周囲に、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物、芳香族ビニル化合物、及び不飽和ニトリル化合物等から選ばれる少なくとも1種の単量体成分を共重合して形成されたシェル層からなるコア/シェル型グラフト共重合体が好ましい。
ゴム成分の具体例としては、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブチルアクリレートやポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート−2−エチルヘキシルアクリレート共重合体などのポリアルキルアクリレートゴム、ポリオルガノシロキサンゴムなどのシリコーン系ゴム、ブタジエン−アクリル複合ゴム、シリコーン−アクリレート複合ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴムやエチレン−ブテンゴム、エチレン−オクテンゴムなどのエチレン−α−オレフィン系ゴム、エチレン−アクリルゴム、フッ素ゴムなど挙げることができる。これらは、単独でも2種以上を混合して使用してもよい。
本発明において、コア/シェル型グラフト共重合体(F)として好ましいのは、シリコーン−アクリレート複合ゴムをコアとするグラフト共重合体であり、特にシリコーン−アクリレート複合ゴムのコアの周囲に、アクリル系重合体または共重合体成分をシェル層とするコア/シェル型グラフト共重合体である。
コア層を構成するシリコーン−アクリレート複合ゴムとしては、ポリオルガノシロキサン、例えば、ジメチルシロキサン単位を構成単位として含有する重合体と、(メタ)アクリル酸エステル化合物あるいはアクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物等のアクリル系成分から構成されるものが好ましい。
アクリル系成分のシェルとしては、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物などを重合することにより得られる。
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;フェニルメタクリレート、ナフチルメタクリレート等のアリール(メタ)アクリレート;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有(メタ)アクリレート;等が挙げられるが、なかでもメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メチルメタクリレートがより好ましい。
なお、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物は1種または2種以上を使用することができる。
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物の他に、その他のビニル系単量体を含有してよい。その他のビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等);等が挙げられる。
さらに、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の芳香族多官能ビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等の多価アルコールの不飽和カルボン酸エステル類;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル等の不飽和カルボン酸アリルエステル;ジアリルフタレート、ジアリルセバケート、トリアリルトリアジン等のジ及びトリアリル化合物等の架橋性単量体を併用することもできる。
コア/シェル型グラフト共重合体(F)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは3〜10質量部であり、より好ましくは4質量部以上であり、より好ましくは8質量部以下である。コア/シェル型グラフト共重合体(D)の含有量が3質量部を下回ると、耐衝撃性の改良効果を十分に得ることができず、10質量部を上回ると、耐熱性が低下し難燃性が悪化しやすい。
鱗片状無機鉱物フィラー(C)とコア/シェル型グラフト共重合体(F)の含有量の質量比(C)/(F)は、0.1〜2の範囲にあることが好ましい。質量比が2を超えるとウエルド曲げ強度が低下しやすく、0.1未満では燃焼性が不十分となりやすい。質量比(C)/(F)の範囲の好ましい下限値は0.2、0.3、0.45、0.6、0.8、0.9であり、質量比(C)/(F)の範囲の好ましい上限値は1.8、1.6、1.4、1.2、1.1である。
[リン系安定剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、リン系安定剤を含有することが好ましい。リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
なお、リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
リン系安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.7質量以下、より好ましくは0.5質量部以下である。リン系安定剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、熱安定効果が不十分となる可能性があり、リン系安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
[フェノール系安定剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、フェノール系安定剤を含有することも好ましい。フェノール系安定剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
なお、フェノール系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
フェノール系安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。フェノール系安定剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、フェノール系安定剤としての効果が不十分となる可能性があり、フェノール系安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
[離型剤]
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、離型剤を含有することも好ましい。離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も包含する用語として使用される。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
なお、脂肪族炭化水素は、単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
ポリシロキサン系シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等が挙げられる。
なお、上述した離型剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
[その他の成分]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上述したもの以外にその他の成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂、上記した以外の他の樹脂添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
その他の樹脂
その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリメタクリレート樹脂等が挙げられる。
なお、その他の樹脂は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
ただし、その他の樹脂を含有する場合の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下がより好ましく、さらには5質量部以下、特には3質量部以下とすることが好ましい。
樹脂添加剤
上記した以外の他の樹脂添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、染顔料(カーボンブラックを含む)、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、流動性改質剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。
具体例を挙げると、ポリカーボネート樹脂(A)、鱗片状無機鉱物フィラー(C)及びリン系難燃剤(D)、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。炭素繊維(B)はサイドフィードすることが好ましい。
また、例えば、各成分を予め混合せずに、又は、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、分散し難い成分を混合する際には、その分散し難い成分を予め水や有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させ、その溶液又は分散液と混練するようにすることで、分散性を高めることもできる。
得られた本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、難燃性に優れ、UL94試験に基づく燃焼性が、0.8mm厚みでV−0である高度の難燃性を示す。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物から成形品を製造するには、ポリカーボネート樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法などが挙げられ、また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることも出来る。なかでも、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法などの射出成形法が好ましい。
[成形品]
成形品の例を挙げると、電気・電子機器、OA機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、車輌部品、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器等の部品が挙げられる。これらの中でも、電気電子機器、OA機器、情報端末機器等の部品に用いて好適である。中でも電気電子機器の筐体に好適であり、ノートパソコン、タブレット端末、スマートフォン又は携帯電話の筺体に特に好適である。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
なお、以下の説明において[部]とは、特に断らない限り質量基準に基づく「質量部」を表す。
実施例及び比較例に使用した各成分は以下の表1のとおりである。
(実施例1〜20、比較例1〜14)
[樹脂ペレット製造]
表1に記載した各成分の中、炭素繊維(B)とリン系難燃剤(D)以外を表3〜5に記載の量(質量部)で配合し、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製押出機「TEX30α」に上流のフィーダーより供給し、リン系難燃剤(D)を液注ポンプによりバレルの途中より表3〜5に記載の量(質量部)で供給し、更に炭素繊維(B)を、表3〜5に記載の量(質量部)でサイドフィーダーによりバレルの途中より供給しながら、回転数200rpm、吐出量30kg/h、バレル温度260℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂を水槽にて冷却し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
[試験片の作製]
上述の方法で得られたペレットを、80℃で5時間乾燥させた後、東洋機械金属社製射出成形機「Si−80−6」(型締力80トン)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度60℃の条件で射出成形し、ISO多目的試験片(4mm厚)を成形した。
また、上述の方法で得られたペレットを、80℃で5時間乾燥させた後、住友重機械工業社製射出成形機「SE100D」(型締力100トン)に、試験片の両端にゲートを設けた金型を用い、シリンダー温度300℃、金型温度60℃の条件で射出成形し、長さ125mm、幅13mm、厚み1.6mmで試験片中心にウエルドのあるウエルド試験片を成形した。
さらに、上述の方法で得られたペレットを、80℃で5時間乾燥させた後、住友重機械工業社製射出成形機「SE100D」(型締力100トン)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度60℃の条件で射出成形し、長さ125mm、幅13mm、厚み0.8mmのUL試験用試験片を成形した。
[比重]
上記の方法で得られたISO多目的試験片(4mm厚)を用い、ISO1883に準拠し、比重を測定した。
[流動性評価]
上述の方法で得られたペレットを、80℃で5時間乾燥させた後、日精樹脂工業社製「NEX80III」(型締力80トン)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度60℃、射出圧力150MPaの条件で、幅20mm、厚さ1mmのバーフロー成形品を射出成形し、その流動長(単位:mm)を評価した。
[曲げ特性]
上述の方法で得られたISO多目的試験片を用い、ISO178に準拠して曲げ弾性率(単位:GPa)、曲げ強度(単位:MPa)を測定し評価した。
[耐衝撃性]
上述の方法で得られたISO多目的試験片を用い、ISO179に準拠してノッチ付およびノッチ無しシャルピー衝撃強度(単位:kJ/m)を測定し評価した。
[ウエルド強度]
上述の方法で得られたウエルド試験片を、インストロン万能試験機を用いて、支点間距離26mm、圧子の半径R5mm、圧子降下速度1mm/minの条件で、圧子にウエルド部が接触するように試験片を設置して曲げ試験を行い、その強度(単位:MPa)を評価した。
この方法で測定したウエルド曲げ強度は、80MPa以上であることが好ましい。
[耐熱性]
上述の方法で得られたISO多目的試験片を用い、ISO75に準拠して1.8MPaの荷重たわみ温度を測定し評価した。
[難燃性評価 UL94試験]
上述の方法で得られたペレットUL試験用試験片を温度23℃、湿度59%の恒温室で48時間調湿し、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)が定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料燃焼試験)に準拠して行った。
UL94Vとは、鉛直に保持した所定の大きさの試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から難燃性を評価する方法であり、V−0、V−1及びV−2の難燃性を有するためには以下の表に示す基準を満たすことが必要となる。
ここで残炎時間とは、着火源を遠ざけた後の、試験片の有炎燃焼を続ける時間の長さである。また、ドリップによる綿着火とは、試験片の下端から約300mm下にある標識用の面が、試験片からの滴下(ドリップ)物によって着火されるかどうかによって決定される。
さらに全5本中の総燃焼時間(単位:秒)をカウントし、評価した。この総燃焼時間は小さい方が、良好な難燃性を有していることを意味し、好ましい。
以上の評価結果を、以下の表3〜表5に示す。
(比較例15〜19)
[樹脂ペレット製造]
表1に記載した各成分の中、ガラス繊維CX1及びCX2と難燃剤(D)以外を表6に記載の量(質量部)で配合し、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製押出機「TEX30α」に上流のフィーダーより供給し、リン系難燃剤(D)を液注ポンプによりバレルの途中より表6に記載の量(質量部)で供給し、更にガラス繊維CX1及びCX2を、表6に記載の量(質量部)でサイドフィーダーによりバレルの途中より供給しながら、回転数200rpm、吐出量30kg/h、バレル温度260℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂を水槽にて冷却し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットを用い、前記と同様にして各種の評価を行った。
評価結果を、以下の表6に示す。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、薄肉成形体とした場合にも極めて高い難燃性を有し、さらには流動性、衝撃強度、ウエルド強度、耐熱性にも優れる高剛性材料であるので、電気電子機器、OA機器、情報端末機器、家電製品等の部品に広く好適に利用でき、産業上の利用性は非常に高い。

Claims (11)

  1. ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、炭素繊維(B)5〜120質量部、鱗片状無機鉱物フィラー(C)1〜15質量部及びリン系難燃剤(D)15〜50質量部を含有し、炭素繊維(B)に対する鱗片状無機鉱物フィラー(C)の割合が3〜30質量%であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
  2. さらに、フルオロポリマー(E)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.05〜2質量部含有する請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 鱗片状無機鉱物フィラー(C)がタルク及び/又はマイカである請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  4. リン系難燃剤(D)が、縮合リン酸エステル化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  5. さらに、コア/シェル型グラフト共重合体(F)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、3〜10質量部含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  6. コア/シェル型グラフト共重合体(F)が、シリコーン−アクリレート複合ゴムをコアとするグラフト共重合体である請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  7. 鱗片状無機鉱物フィラー(C)とコア/シェル型グラフト共重合体(F)の含有量の質量比(C)/(F)が0.1〜2である請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  8. UL94試験に基づく燃焼性が、0.8mm厚みでV−0である請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品。
  10. 電気電子機器の筐体である請求項9に記載の成形品。
  11. 前記電気電子機器が、ノートパソコン、タブレット端末、スマートフォン又は携帯電話である請求項10に記載の成形品。
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