JP2018140542A - 缶詰用缶蓋 - Google Patents

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伸基 目高
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美津徳 今泉
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Abstract

【課題】缶蓋を高速で巻締めや成形を行った際に樹脂層の損傷が発生せず、レトルト殺菌処理後の外観の意匠性及び耐内容物性に優れ、樹脂層の密着性を保持可能な樹脂被覆金属板を用いた缶詰用缶蓋を提供すること。【解決手段】本発明に係る缶詰用缶蓋に用いられる樹脂被覆金属板の熱可塑性樹脂層Aは、2層以上で構成され、金属板に接している層であるA1層のPBT/PETの重量比が(40/60)〜(80/20)の範囲内にあり、最表層であるA2層におけるPET重量比率がA2層におけるPBT重量比率より大きく、A2層の厚みd(μm)が所定の数式を満足し、熱可塑性樹脂層Bにおける熱可塑性樹脂の95mol%以上がポリエチレンテレフタレートである。【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂被覆金属板を用いた缶詰用缶蓋に関する。
従来、金属製の飲料缶及び食品用缶詰容器の内面及び外面には、熱硬化性樹脂を主成分とする溶剤型塗料が塗布されていた。これは、内容物の風味を保つこと、飲料缶及び食品用缶詰容器の母材である金属の腐食を防止すること、又は、飲料缶及び食品用缶詰容器の外面の意匠性の向上や印刷面の保護等の目的のためである。しかしながら、溶剤型塗料の塗膜を形成するためには高温での加熱処理が必要であり、また加熱処理時に多量の溶剤が発生するため、作業の安全性及び環境への影響の面で問題があった。このため、最近では、溶剤を用いない腐食防止法として、熱可塑性樹脂による金属の被覆が提案されている。特に、熱可塑性樹脂の中でもポリエステル樹脂は加工性や耐熱性等に優れていることから、ポリエステル樹脂をベースとした金属ラミネート用フィルムの開発が進められている。
ポリエステル樹脂フィルム等の樹脂フィルムを被覆した樹脂被覆金属板を飲料缶用や食品用缶詰容器用に適用した場合、生産性を上げるために高速で蓋材の巻締めを行うと、外面側の樹脂フィルムに割れや削れが発生することがある。また、レトルト殺菌処理等の高温殺菌処理の際に樹脂フィルム中の環状三量体が樹脂フィルム表面に析出することによって意匠性が損なわれたり、レトルト殺菌処理中に樹脂フィルムそのものが白く濁ったように変色する現象(白化現象)が発生したりすることがある。一方で、内面側に用いられる樹脂フィルムには内容物に対する耐食性(耐内容物性)や内容物と長期接触した際の密着性が要求される。
このような問題を改善する方法として、特許文献1には、金属板の両面に熱可塑性樹脂フィルム層を被覆し、缶蓋外面側の熱可塑性樹脂フィルム層の非晶質化率を60%以上とし、缶蓋内面側の熱可塑性樹脂フィルム層の一部に配向結晶層を残した両面フィルムラミネート缶蓋が記載されている。また、特許文献2には、エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルを30〜50質量%、ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルを50〜70質量%の比率で配合したポリエステルであるフィルムを容器外面側に被覆した金属板が記載されている。
さらに、特許文献2には、金属板の容器内面側に二層構造のポリエステル樹脂層が被覆され、上層のポリエステル樹脂層がポリエチレンテレフタレート又は酸成分としてイソフタル酸を6mol%以下の比率で共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートであることも記載されている。また、特許文献2には、上層のポリエステル樹脂層が、オレフィン系ワックスを0.1〜5質量%含有し、下層のポリエステル樹脂層が、酸成分としてイソフタル酸を10〜22mol%以下の比率で共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートであることも記載されている。同様に、特許文献3〜6には、外面側の樹脂フィルムの耐白化性を向上させる技術が記載されている。
また、特許文献7には、エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル30〜50質量%と、ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル50〜70質量%とを含有するポリエステル組成物が記載されている。また、特許文献7には、樹脂の融点を規定して熱融着させる際に界面を溶融させる技術も記載されている。また、特許文献8,9にもレトルト殺菌処理時の変色を抑制する技術が記載されている。また、特許文献10には、缶内面には接触角が70〜120°の範囲内にあるポリエステルフィルムを用い、缶外面には結晶化温度120℃以下であるPET−PBTを貼り合わせて耐白化性を向上させる技術が記載されている。
特開2002−193256号公報 特開2005−342911号公報 特開平5−331302号公報 特開2001−335682号公報 特開2002−88233号公報 特開2003−238780号公報 特開平10−110046号公報 特開平09−012743号公報 特開平07−145252号公報 特開2004−168365号公報
しかしながら、特許文献1に記載の両面フィルムラミネート缶蓋では、外面側の熱可塑性樹脂フィルム層は良好な耐巻締め性を有するものの、エチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体を使用しており、結晶化速度が不十分なため、レトルト殺菌処理時の耐白化性が不十分である。また、特許文献2〜6に記載の技術では、外面側の樹脂フィルムの耐白化性を向上させる効果は見られるものの、結晶化状態が考慮されていないため、高速で巻締めや成形を行った際の樹脂フィルムの損傷に対する改善には至っていない。また、内面側の樹脂フィルムには共重合成分が存在しているために、共重合成分が溶出して耐内容物性に劣る懸念がある。
また、特許文献7〜9に記載の技術では、容器に用いる金属板に対しては両面同時に樹脂フィルムを熱融着させる必要があるところ、片側の面の樹脂フィルムに関する記載しかなく、反対側の面の樹脂フィルムに関する記載はない。前述したように、缶用金属板では、缶の内外面に要求される性能が異なるため、異なる種類の樹脂フィルムを組み合わせる必要が生じる。異なる種類の樹脂フィルムを用いるものの生産性を考慮すると、両面同時に樹脂フィルムを熱融着することが好ましく、共重合化することで融点をほぼ同等にした樹脂フィルムが組み合わされてきた。しかしながら、この場合、共重合化成分を添加する必要があり、コストアップに繋がる。また、樹脂フィルムの融点が大きく異なる場合、高融点側の樹脂フィルムを熱融着させるために高融点まで加熱する必要があるが、低融点側の樹脂フィルムが融点を超えロール等に付着して生産性を阻害する懸念がある。上記技術では、これらの観点について考慮されていないため、樹脂フィルムの密着性に劣り、製品としての競争力に欠けるか、生産性に劣るか、いずれかの懸念がある。
また、特許文献10に記載の技術では、耐白化性に優れるものの、結晶化状態が考慮されていないため高速で巻締めや成形を行った際の樹脂フィルムの損傷に対する改善には至っていない。また、内面側の樹脂フィルムがイソフタル酸系共重合ポリエチレンテレフタレートであるため、共重合成分が溶出して耐内容物性に劣る懸念がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、高速で巻締めや成形を行った際に樹脂層の損傷が発生せず、レトルト殺菌処理後の外観の意匠性及び耐内容物性に優れ、樹脂層の密着性を保持可能な樹脂被覆金属板を用いた缶詰用缶蓋を提供することにある。
本発明に係る缶詰用缶蓋は、金属板と、前記金属板の缶蓋の外面側となる面に設けられた、ポリブチレンテレフタレート(PBT)とポリエチレンテレフタレート(PET)とを主体とした熱可塑性樹脂層Aと、前記金属板の缶蓋の内面側となる面に設けられた、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主体とした熱可塑性樹脂層Bと、を備え、前記熱可塑性樹脂層Aは、2層以上で構成され、前記金属板に接している層であるA1層のPBT/PETの重量比が(40/60)〜(80/20)の範囲内にあり、最表層であるA2層におけるPET重量比率がA2層におけるPBT重量比率より大きく、該A2層の厚みd(μm)が以下に示す数式(1)を満足し、前記熱可塑性樹脂層Bにおける熱可塑性樹脂の95mol%以上がポリエチレンテレフタレートであり、前記熱可塑性樹脂層Aでは、レーザーラマン分光法を用いて樹脂層表面に対して水平な偏光面で測定した1615±10cm−1のラマンバンド強度(I)と樹脂層表面に対して垂直な偏光面で測定した1615±10cm−1のラマンバンド強度(I90)との比(I90/I)が0.60以上であり、前記熱可塑性樹脂層Bでは、レーザーラマン分光法を用いて樹脂層表面に対して水平な偏光面で測定した1730±10cm−1のラマンバンドの半値幅が22cm−1以上であることを特徴とする。
Figure 2018140542
前記熱可塑性樹脂層Aの熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート又は共重合成分が10mol%以下の共重合ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレート又は共重合成分が10mol%以下の共重合ポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂層Aにおいて、A1層のポリエチレンテレフタレートの共重合成分が、イソフタル酸であることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂層Aにおいて、熱可塑性樹脂層Aの融点が235〜245℃の範囲内にあることが好ましい。
本発明に係る缶詰用缶蓋によれば、缶蓋を高速で巻締めや成形を行った際に樹脂層の損傷が発生せず、レトルト殺菌処理後の外観の意匠性に優れ、樹脂層の密着性を保持可能な樹脂被覆金属板を用いた缶詰用缶蓋を提供することができる。
図1は、レーザーラマン分光法の測定原理を説明するための模式図である。 図2は、樹脂層の熱融着方法を説明するための模式図である。 図3は、缶蓋の構成を示す平面図である。 図4は、缶蓋の構成を示す断面図である。 図5は、缶体の構成を示す図である。 図6は、A2層のPBT/(PET/PBT)と厚みdとの関係を示すグラフである。
以下、図面を参照して、本発明に係る缶詰用缶蓋について詳細に説明する。
〔レーザーラマン分光法〕
まず、図1を参照して、本発明に適用されるレーザーラマン分光法の測定原理について説明する。図1は、レーザーラマン分光法の測定原理を説明するための模式図である。図1に示すように、レーザーラマン分光法では、金属板1の両面に樹脂層2が被覆された本発明に係る缶蓋用樹脂被覆金属板10の一方の面側の樹脂層2に対して、レーザー発振器3から発振されたレーザー光4を入射し、散乱したラマン散乱光5を分光器6で分光する。レーザー光4のビーム径はレンズ7により可変となっており、レーザー光4のビーム径を絞ることによって樹脂層2の微小領域における結晶化度の評価を行うことができる。本発明では、図1に示すレーザーラマン分光法の測定原理により、樹脂層2の厚さ方向断面の任意の位置における結晶化度を評価する。
ここで、レーザーラマン分光法から求められる1730cm−1近傍のラマンバンド(C=O伸縮振動由来)の半値幅は、樹脂層2の密度と反比例の関係にあることが知られている。一方、樹脂層2の密度と体積分率結晶化度(以後、結晶化度と略記)との間には、以下の数式(2)に示す関係があることが知られている。これらのことより、ラマンバンドの半値幅から結晶化の状態を把握することができる。
Figure 2018140542
さらに、レーザーラマン分光法で1615cm−1近傍に見られるラマンバンドはベンゼン環C=C伸縮振動由来である。ベンゼン環C=C伸縮振動については、照射するレーザー光4を偏光させて、樹脂層2表面に対して水平な偏光面で測定したラマンバンド強度と樹脂層2表面に対して垂直な偏光面で測定したラマンバンド強度との比からも結晶化の状態を把握することができる。
〔金属板〕
本発明に係る缶蓋用樹脂被覆金属板10の下地となる金属板1には、缶詰容器用材料として広く使用されている鋼板やアルミニウム板を用いることができる。金属板1には、各種の表面処理が施されていてもよく、特に下層が金属クロム、上層がクロム水酸化物からなる2層皮膜の表面処理鋼板であるティンフリースチール(以下、TFSと表記)等が好適である。TFSにおける金属クロム及びクロム水酸化物層の付着量は特に限定されないが、加工性や耐食性の観点から、金属クロム層の付着量は70〜200mg/mの範囲内、クロム水酸化物層の付着量は10〜30mg/mの範囲内とすることが望ましい。
〔缶蓋用金属板に被覆される樹脂層〕
本発明に係る缶蓋用樹脂被覆金属板10において、金属板1の2つの面のうち、缶蓋に成形される際に缶蓋の外面側となる面に熱融着される樹脂層2は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)とポリエチレンテレフタレート(PET)とを主体とした熱可塑性樹脂層Aで構成される。また、缶蓋の内面側となる蓋面に熱融着される樹脂層2は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主体とした熱可塑性樹脂層Bで構成される。
熱可塑性樹脂層Aは2層以上で構成され、金属板1に接している層をA1層、最表層をA2層とすると、A1層におけるPBT/PETの組成比(wt%)は(40/60)〜(80/20)の範囲内にある。A1層におけるPBT比率がこの範囲より少ない場合、レトルト殺菌処理時に白化してしまい好ましくない。レトルト殺菌処理時の白化については後述する。一方、A1層におけるPBT比率がこの範囲より多くなると、水蒸気雰囲気下での加熱によって密着性等が悪化して好ましくない。
なお、熱可塑性樹脂層Aの熱可塑性樹脂は、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートを主体とし、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートを一定の関係にすることが必要であるが、性能を損なわない範囲でこれら以外の熱可塑性樹脂を含んでもよい。例えば、共重合成分が10mol%以下の共重合ポリエチレンテレフタレート、共重合成分が10mol%以下の共重合ポリブチレンテレフタレートとしてもよい。特に、ポリエチレンテレフタレートの共重合成分として、イソフタル酸を10mol%以下共重合化するとなおよい。イソフタル酸の共重合化でA1層の融点が低下することにより、樹脂層表面に対して垂直な偏光面で測定された1615±10cm−1のラマンバンド強度(I90)が高くなり、結果的に、レーザーラマン分光法による強度比(I90/I)が高くなるためである。レーザーラマン分光法についての詳細は後述する。イソフタル酸の共重合比率が10mol%より大きい場合、融点が低下し、ロールとは直接接触しないにも関わらず、溶着が懸念されるため好ましくない。イソフタル酸の共重合比率が2mol%未満の場合、ラマンバンド強度(I90)増加の効果が小さいため、添加効果を得るためには2mol%以上とすることが好ましい。また、熱可塑性樹脂層Aにおいて、熱可塑性樹脂層Aの融点が235〜245℃の範囲内にあることが好ましい。
A2層におけるPET比率はA2層におけるPBT比率より大きくする。これは、両面の樹脂層2を同時に熱融着する場合、PET比率の高い缶内面側となる熱可塑性樹脂層Bの融点が高いため、熱可塑性樹脂層Aがロールに溶着する懸念があるためである。ロールと直接接触するA2層において融点が高いPETの比率がPBTの比率より大きければ、下層であるA1層、又は、A1層とA2層の間に中間層があった場合の樹脂成分に関わらず溶着による操業性劣化を抑制することができる。なお、中間層の成分は特に限定するものではないが、製造上の観点から、融点が近いことが好ましく、上下層との融点の差異が10℃以内とすることが好ましい。
A2層の厚みd(μm)は以下に示す数式(1)を満足する。本発明の発明者らは、A1層の組成が良好な範囲内においてレトルト殺菌処理時の白化を抑制できるA2層の組成を種々検討し、図6の結果を得た。当該結果より表層のPBT比率と厚みdとの間に相関があることが確認された。白化する最小表層厚みとPBT/(PBT+PET)との関係をプロットして回帰計算することにより数式(1)の関係を得た。レトルト殺菌処理時の気泡は金属板1と接している界面付近で形成されやすいが、最表層でも形成され、白化の原因となりうる。但し、最表層厚みと結晶化速度の速いPBT比率の関係で数式(1)に示す範囲内とすれば、気泡は形成されないことを見出した。これは、最表層での気泡の形成は、最表層が蒸気と接しており、内容物側に近い鋼板との界面と比較してレトルト殺菌処理時の温度差が小さくマイルドであるため、最表層厚みとPBT比率を数式(1)に示す範囲にすれば良好になったと考えられる。
Figure 2018140542
熱可塑性樹脂層Bにおける熱可塑性樹脂中のPETの含有量は95mol%以上とする。PETの含有量が95mol%未満である場合、共重合成分を含めたその他成分が混入し、内容物へ溶出して耐内容物性が劣化してしまう。また、その他成分の添加によって融点が低下してしまい、金属板1との熱融着性(密着性)が劣化する。
熱可塑性樹脂層Aでは、レーザーラマン分光法を用いて樹脂層表面に対し水平な偏光面で測定した1615±10cm−1のラマンバンド強度(I)と樹脂層表面に対して垂直な偏光面で測定した1615±10cm−1のラマンバンド強度(I90)との強度比(I90/I)が0.60以上、好ましくは0.70以上である。ここで、樹脂層表面に対し水平な偏光面で測定された1615±10cm−1のラマンバンド強度(I)は、樹脂層表面の面内方向の結晶成分が多いほど大きな値となる。一方、樹脂層表面に対して垂直な偏光面で測定された1615±10cm−1のラマンバンド強度(I90)は、樹脂層の厚み方向の結晶成分が多いほど大きな値になる。よって、強度比(I90/I)が大きな値になれば、樹脂層の面内方向の結晶成分が減少し、樹脂層の厚み方向の結晶成分が増加することを意味する。
製造時に延伸された熱可塑性樹脂層A用のフィルムは、延伸過程で樹脂フィルムの面内方向の結晶成分が大きくなっている。その状態で巻締めが行われると、弱い分子間で結合が切れやすく、熱可塑性樹脂層Aが損傷する。そこで、熱可塑性樹脂層Aの厚み方向の結晶成分が必要となってくる。その割合は、強度比(I90/I)が0.60以上であればよい。さらに、強度比(I90/I)が0.70以上であることが好ましい。強度比(I90/I)が0.60未満である場合には、樹脂フィルムの面内方向の結晶成分が多いため、高速で巻締めを行った際や高速で成形した際に熱可塑性樹脂層Aが削れてしまう。
一方、熱可塑性樹脂層Bでは、レーザーラマン分光法を用いて樹脂層表面に対して水平な偏光面で測定した1730±10cm−1のラマンバンドの半値幅が22cm−1以上、好ましくは24cm−1以上である。ラマンバンドの半値幅が22cm−1より小さい場合、加工度の高い成形をした際、熱可塑性樹脂層Bが成形に追随せずに割れてしまう。ラマンバンドの半値幅の上限値は特にないが、製造上、熱可塑性樹脂層Aがロールに溶着しない限り問題ない。
缶蓋用樹脂被覆金属板10の製造時、熱可塑性樹脂層A及び熱可塑性樹脂層Bの熱融着は、同時、又は、ほぼ同時に行われる。この場合、熱可塑性樹脂層Aを上記のような結晶状態にするためには熱可塑性樹脂層Bを適正に選択する必要がある。ここで、図2を参照して、樹脂層2を熱融着する方法について説明する。
図2は、樹脂層2の形成方法の一例として、樹脂フィルムを熱融着する方法を説明するための模式図である。図2に示すように、樹脂層2を形成するために、樹脂フィルムを熱融着する際には、金属帯加熱装置11により金属板1を一定温度以上に昇温させた後、圧着ロール(以後、ラミロールと称す)12を用いて金属板1の両面に樹脂層2を圧接させる。これにより、金属板1の両面に樹脂層2を熱融着させて、本発明に係る缶蓋用樹脂被覆金属板10を製造することができる。この場合、樹脂層2を介した状態でラミロール12を金属板1に圧接させることにより、樹脂層2の金属板1への熱融着を均一な状態とすることができる。
以下、熱融着の条件の詳細について説明する。熱融着開始時の金属板1の温度は、樹脂層2の融点を基準として、+5℃〜+40℃の範囲内とすることが望ましい。熱融着法によって金属板1と樹脂層2との間の密着性を確保するためには、界面におけるポリエステル樹脂の熱流動が必要である。樹脂層2の融点を基準として金属板1の温度を+5℃以上の温度範囲とすることにより、界面において樹脂が熱流動し、界面における濡れ性が相互に良好となって、優れた密着性が得られる。金属板1の温度を+40℃超としても更なる密着性の改善効果が期待できないこと、樹脂層2の溶融が過度となり、ラミロール12表面の型押しによる表面荒れ、ラミロール12への溶融物の転写等の問題が生じる懸念があることから、熱融着開始時の金属板1の温度は、樹脂層2の融点を基準として+40℃以下とすることが好ましい。
熱融着時は、金属板1の温度が樹脂層2の融点以上である状態で、ラミロール12により5msec以上の時間、圧接することが望ましい。これは、界面における濡れ性が良好となるためである。相互に接している時に樹脂層2は熱により金属板1との界面近傍から溶融する。樹脂層2の熱伝導度は極めて小さいため、5〜40msecの時間で樹脂層2の表層は融点に達することはないものの、この時間が長くなると融点に近い温度まで上昇し、ラミロール12に溶着する懸念がある。この観点からも圧接時間は40msec以下とすることが望ましい。さらに、圧接時間が10〜25msecの範囲内であればより好ましい。
このような熱融着条件を達成するためには、150mpm以上の高速操業に加え、熱融着中の温度制御も必要であり、ラミロール12を温度制御可能とすればよい。例えば、図2中のラミロール12を内部水冷式とし、冷却水を通過させることで、樹脂層2が過度に加熱されることを抑制できる。さらに、冷却水の温度を缶蓋にしたときの内面側及び外面側の樹脂層2をそれぞれで独立に変化させることで、内面側及び外面側それぞれの樹脂層2の熱履歴をコントロールできるため好適である。内面側の樹脂層2の方が高融点なので、ラミロール12の温度も高めに設定し、外面側のラミロール12の温度は低めに設定することが好ましい。例えば内面側のラミロール12の温度を120℃にして、外面側のラミロール12の温度を80℃にするといったように温度差を設けることが好ましい。ラミロール12の温度は50℃〜130℃の範囲内で適宜調整すると良い。
ラミロール12による加圧は、面圧として9.8〜294N/cm(1〜30kgf/cm)とすることが望ましい。ラミロール12による加圧が9.8N/cm未満である場合、たとえ熱融着開始時の温度が樹脂層2の融点に対して+5℃以上で十分な流動性が確保できたとしても、金属板1表面に樹脂層2を押し広げる力が弱いため十分な被覆性が得られない。その結果、密着性や耐食性(耐内容物性)等の性能に影響を及ぼす可能性がある。また、ラミロール12による加圧が294N/cm超となると、缶蓋用樹脂被覆金属板10の性能に不都合は生じないものの、ラミロール12にかかる力が大きく設備に強度が必要となることから、装置の大型化を招き不経済である。よって、ラミロール12による加圧は、好適には9.8〜294N/cmの範囲内である。
加工性、耐熱性、及び耐食性を損なわない範囲で内外面側の樹脂層2の材料に他のジカルボン酸成分、グリコール成分、その他の樹脂成分を共重合させてもよい(但し、内面側の樹脂層2における含有量は5mol%未満とする)。ジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族カルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を例示できる。
グリコール成分としては、エチレングリコール又はブタンジオール、プロパンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ジエチレングリコール等を例示できる。ジカルボン酸成分及びグリコール成分は2種以上を併用してもよい。
必要に応じて、低分子量ポリマー、蛍光増白剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料、帯電防止剤、結晶核剤等を配合できる。低分子量ポリマーは、例えば数平均分子量が1000〜10000程度であり、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアミド等があげられる。これらの低分子量ポリマーは、フィルムを構成するポリエステルとは非相溶であるため、表層に存在すると適度な凹凸を形成することで潤滑性を付与する効果が期待できる。また、顔料の添加により、意匠性を持たせることができるが、例えば、熱可塑性樹脂層Aにジスアゾ系顔料を使用すれば、透明性に優れながら着色力が強く、展延性に富むため、製蓋後も光輝色のある外観が得られる。樹脂以外の添加成分は、適宜被膜全体量に対しての重量比率で必要量を計算して添加すればよいが、顔料を添加する場合は、添加量は30PHR以下とすることが好ましい。ここで、顔料の添加量とは、顔料を添加した樹脂層中の樹脂量に対する(下層の樹脂層に添加した場合は、下層の樹脂層中の樹脂量に対する)割合(樹脂量に対する外割)を意味する。ジスアゾ系顔料としては、カラーインデックス(C.I.登録の名称)が、ピグメントイエロー12、13、14、16、17、55、81、83、180、181等が例示される。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。特に色調(光輝色)の鮮映性、レトルト殺菌処理環境での耐ブリーディング性(顔料がフィルム表面に析出する現象に対する抑制能)等の観点から、分子量が大きくPET樹脂への溶解性が乏しい顔料が望ましく、分子量が700以上の、ベンズイミダゾロン構造を有するC.I.ピグメントイエロー180がより好ましく用いられる。
熱可塑性樹脂層A、熱可塑性樹脂層Bである樹脂層2を形成する樹脂材料は、その製法によって限定されることはない。例えば、以下の方法(1),(2)等を利用して樹脂材料を形成することができる。
(1)テレフタル酸、エチレングリコール、及び共重合成分をエステル化反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合させて熱可塑性樹脂とする方法。
(2)ジメチルテレフタレート、エチレングリコール、及び共重合成分をエステル交換反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させて熱可塑性樹脂とする方法。
熱可塑性樹脂の製造においては、必要に応じて、蛍光増白剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等の添加物を添加してもよい。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂層A及び熱可塑性樹脂層Bは、ポリエステル樹脂については、機械的特性、ラミネート性、味特性を向上させる点から、ポリエステルの重量平均分子量が、5000〜100000の範囲内であるものが好ましく、10000〜80000の範囲内であるものがさらに好ましい。また、本発明の熱可塑性樹脂層A及び熱可塑性樹脂層Bの厚みは、5μm以上、50μm以下の範囲内にあることが好ましく、更に8μm以上30μm以下の範囲内、特に10μm以上25μm以下の範囲内であることが好ましい。また、フィルムにより複数の樹脂層を形成する場合は、膜厚均一性の観点から、各層は0.3μm以上とすることが好ましい。
〔レトルト殺菌処理時の白化について〕
樹脂層2を被覆させた缶蓋用樹脂被覆金属板10を用いて製造された缶蓋を巻締めた缶体についてレトルト殺菌処理を行なうと、熱可塑性樹脂層Aが白化する現象が見られる場合がある。これは熱可塑性樹脂層A内に微細な気泡が形成され、これらの気泡によって光が散乱した結果、白く濁った外観を呈するものである。加えて、熱可塑性樹脂層Aに形成される気泡は以下のような特徴を有する。まず、これらの気泡は、缶体を乾熱環境下で加熱しても形成されない。また、缶体に内容物を充填せずに空き缶のままレトルト殺菌処理を行っても気泡は形成されない。以上の特徴から、レトルト殺菌処理に伴う熱可塑性樹脂層Aでの気泡の形成は、以下のメカニズムによって起こると考えられる。
レトルト殺菌処理開始当初から缶体は高温水蒸気にさらされ、水蒸気の一部は熱可塑性樹脂層Aの内部へと浸入し、金属板1との界面近傍まで到達する。レトルト殺菌処理開始当初、熱可塑性樹脂層Aと金属板1との界面近傍は内容物によって缶蓋内面から冷却されているので、界面に侵入した水蒸気は凝縮水となる。次いで、レトルト殺菌処理の時間経過と共に内容物の温度も上昇し、金属板1との界面の凝縮水は再気化を起こす。気化した水蒸気は再び熱可塑性樹脂層Aを通って外へ脱出するが、このときの凝縮水の跡が気泡となると推定される。加えて、熱せられた金属板1との接触により溶けた界面近傍の樹脂が、冷却、固化した後も機械的に軟らかく変形性に富む非晶性樹脂であり、変形しやすく、気泡を形成しやすいためと考えられる。従って、レトルト殺菌処理時に熱可塑性樹脂層Aに気泡が形成されず白化が抑制されるためには、熱可塑性樹脂層Aに関して、レトルト殺菌処理の熱で速やかに非晶性ポリエステル層を結晶化させ、非晶層の強度をアップさせることが有効である。
以上、説明したように、本発明に係る缶蓋用樹脂被覆金属板10によれば、樹脂層2を熱融着することにより製造する際、外面側の熱可塑性樹脂層Aがラミロールに溶着することなく安定的に製造でき、本金属板で製蓋された缶蓋の熱可塑性樹脂層Aでは、高速で巻締めや成形を行った際に損傷が発生せず、さらにレトルト殺菌処理後の外観の意匠性に優れ、熱可塑性樹脂層Bは、耐内容物性に優れ、内容物に接触した状態でレトルト殺菌処理を施しても密着性を保持することができる。
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例では、冷間圧延、焼鈍、調質圧延を施した厚さ0.18mm、幅977mmの鋼板を脱脂、酸洗後、クロムめっきを行い、金属板1としてクロムめっき鋼板(TFS)を製造した。クロムめっきは、CrO、F、SO 2−を含むクロムめっき浴でクロムめっき、中間リンス後、CrO、Fを含む化成処理液で電解した。その際、電解条件(電流密度・電気量等)を調整して金属クロム付着量とクロム水酸化物付着量とをCr換算でそれぞれ120mg/m、15mg/mにした。
次に、金属帯のラミネート装置を用い、前記で得たクロムめっき鋼板を金属帯加熱装置で加熱し、ラミロールでクロムめっき鋼板の両面に樹脂フィルムとして二軸延伸ポリエステルフィルムを熱融着し、缶蓋用樹脂被覆金属板10を製造した。ラミロールは内部水冷式とし、熱融着中に冷却水を強制循環することにより、熱融着中の缶蓋用樹脂被覆金属板10の冷却を行った。レーザーラマン分光法によるラマンバンド強度比は、金属帯へのラミネート条件の変更により調整した。
樹脂層2の特性を下記(1)の方法により測定し評価した。また、以上の方法で製造された缶蓋用樹脂被覆金属板10の特性を下記(2)〜(6)の方法により測定し評価した。表1〜表4は、ラミネートされた樹脂層2の特性及び熱融着条件と各缶蓋用樹脂被覆金属板10の評価結果を示す。
(1)レーザーラマン分光法による測定
(1−1)熱可塑性樹脂層Aのラマンバンド強度比(I90/I
缶蓋用樹脂被覆金属板10の断面研磨サンプルを作製し、下記測定条件にて熱可塑性樹脂層Aの断面方向に対して水平なレーザー偏光面で1μm毎に1615±10cm−1のラマンバンド強度を測定し、表層側から5μmの測定値の平均値をラマンバンド強度(I)とした。また、熱可塑性樹脂層Aの断面方向に垂直なレーザー偏向面で表層側から1μm毎に1615±10cm−1のラマンバンド強度を測定し、表層側から5μmの測定値の平均値をラマンバンド強度(I90)とし、ラマンバンド強度比(I=I90/I)を求めた。
(1−2)熱可塑性樹脂層Bのラマンバンド半値幅
缶蓋用樹脂被覆金属板10の断面研磨サンプルを作製し、下記測定条件にて、熱可塑性樹脂層Bの断面方向に水平なレーザー偏向面で1μm毎に1730±10cm−1のラマンバンドの半値幅を測定し、表層側から5μmの測定値の平均値を求めた。
(測定条件)
励起光源:半導体レーザー(λ=532nm)
顕微倍率:×100
アパーチャ:25μmφ
(2)融点の測定
Perkin Elemer製DSC8500を使用して20℃/分の昇温条件にて融点を測定した。測定には、樹脂層を溶融後、液体窒素中で急冷したものを測定用サンプルとして用いた。
(3)耐巻締め性
プレス装置を用いて缶蓋用樹脂被覆金属板10を缶蓋形状に打ち抜き、周知の工程で加工して、図3及び図4に示す通称200径の缶蓋(底蓋)21を形成した。具体的には、平板状パネル部22の外周部にチャックウオール23が形成され、その外方に湾曲したシーミングパネル24が形成された缶蓋形状とし、シーミングパネル24の内側に周知のシール材25を塗布乾燥した。次いで、1分間に800缶の速度で、溶接缶胴27(図5参照)の端縁フランジ部に缶蓋21を巻締めた。缶蓋21の巻締め部28の熱可塑性樹脂層Aの状態を観察し、以下の評点に従って耐巻締め性を評価した。
(評点)
◎:蓋材50枚のうち、樹脂層削れの発生無し。
○:蓋材50枚のうち、1〜5枚で樹脂層削れが発生。
△:蓋材50枚のうち、6〜10枚で樹脂層削れが発生。
×:蓋材50枚のうち、11枚以上で樹脂層削れが発生。
(4)耐レトルト白化性
缶蓋21の熱可塑性樹脂層Aの耐レトルト白化性を評価した。具体的には、缶蓋21を溶接缶胴27の底蓋として巻締めた缶体26内に常温の水道水を満たした後、上蓋29を巻き締めて密閉し、図5に示す缶体26を形成した。その後、缶体26の底部を下向きにして、蒸気式レトルト殺菌炉の中に配置し、125℃、30分間、レトルト殺菌処理を行った。レトルト殺菌処理後、缶蓋21の熱可塑性樹脂層Aの外観変化を目視で観察し、以下の評点に従って耐レトルト白化性を評価した。
(評点)
○:外観変化なし。
×:外観が白濁。
(5)密着性(湿潤密着性)
缶蓋用樹脂被覆金属板10の製蓋前の平板サンプル(幅15mm、長さ120mm)を切り出した。切り出されたサンプルの長辺側端部から樹脂層2の一部を剥離した。剥離された樹脂層(フィルム)2を、剥離された方向とは逆方向(角度:180°)に開き、50gの重りを固定して、レトルト殺菌処理(125℃、30分)を行った。レトルト殺菌処理後の樹脂層2の剥離長さを測定し、密着性として、成形前フィルム湿潤密着性(2次密着性)を以下の評点に従って評価した。なお、本試験方法は、レトルト殺菌処理後の密着性を模擬した試験であるが、缶蓋内面側の耐内容物性も主として密着性劣化による要因が大きいため、缶蓋の内外面とも同一条件により試験した。
(評点)
◎:10mm未満。
○:10mm以上、20mm未満。
×:20mm以上。
(6)製造性
上述の通りに缶蓋用樹脂被覆金属板10を製造し、ラミロール12等への樹脂層2の溶着有無を観察し、以下の評点に従って製造性を評価した。
(評点)
○:フィルム溶着無し。
×:フィルム溶着有り。
Figure 2018140542
Figure 2018140542
Figure 2018140542
Figure 2018140542
表3,4から、本発明に係る缶蓋用樹脂被覆金属板は、耐巻締め性、耐レトルト白化性、密着性、耐内容物性、及び製造性に優れることが確認された。これに対して、比較例1,2では、熱可塑性樹脂層Aにおいて、PBT比率が低い場合には耐白化性に劣り、PBT比率が高い場合には密着性に劣ることが確認された。また、比較例3では、A2層のPBT比率が高い場合、溶着が起こり製造性が劣化することが確認された。また、比較例4では、A2層におけるPBT比率と厚みとが数式(1)に示す範囲外である場合、耐白化性に劣ることが確認された。比較例5では、熱可塑性樹脂層Aのラマンバンド強度比が0.60未満である場合には、結晶構造が不適切なため、耐巻締め性に劣ることが確認された。比較例6では、熱可塑性樹脂層BにおけるPET比率が低い場合、密着性に劣ることが確認された。比較例7では、熱可塑性樹脂層Bのラマンバンドの半値幅が22cm−1より小さい場合、熱可塑性樹脂層Bの密着性が劣ることが確認された。
1 金属板
2 樹脂層(フィルム)
3 レーザー発振器
4 レーザー光
5 ラマン散乱光
6 分光器
7 レンズ
10 缶蓋用樹脂被覆金属板
11 金属帯加熱装置
21 缶蓋
22 平板状パネル部
23 チャックウオール
24 シーミングパネル
25 シール材
26 缶体
27 溶接缶胴
28 巻締め部
29 上蓋

Claims (4)

  1. 金属板と、
    前記金属板の缶蓋の外面側となる面に設けられた、ポリブチレンテレフタレート(PBT)とポリエチレンテレフタレート(PET)とを主体とした熱可塑性樹脂層Aと、
    前記金属板の缶蓋の内面側となる面に設けられた、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主体とした熱可塑性樹脂層Bと、
    を備え、
    前記熱可塑性樹脂層Aは、2層以上で構成され、前記金属板に接している層であるA1層のPBT/PETの重量比が(40/60)〜(80/20)の範囲内にあり、最表層であるA2層におけるPET重量比率がA2層におけるPBT重量比率より大きく、該A2層の厚みd(μm)が以下に示す数式(1)を満足し、
    前記熱可塑性樹脂層Bにおける熱可塑性樹脂の95mol%以上がポリエチレンテレフタレートであり、前記熱可塑性樹脂層Aでは、レーザーラマン分光法を用いて樹脂層表面に対して水平な偏光面で測定した1615±10cm−1のラマンバンド強度(I)と樹脂層表面に対して垂直な偏光面で測定した1615±10cm−1のラマンバンド強度(I90)との比(I90/I)が0.60以上であり、
    前記熱可塑性樹脂層Bでは、レーザーラマン分光法を用いて樹脂層表面に対して水平な偏光面で測定した1730±10cm−1のラマンバンドの半値幅が22cm−1以上であることを特徴とする缶詰用缶蓋。
    Figure 2018140542
  2. 前記熱可塑性樹脂層Aの熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、又は、共重合成分が10mol%以下の共重合ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレート、又は、共重合成分が10mol%以下の共重合ポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1に記載の缶詰用缶蓋。
  3. 前記熱可塑性樹脂層Aにおいて、A1層のポリエチレンテレフタレートの共重合成分が、イソフタル酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の缶詰用缶蓋。
  4. 前記熱可塑性樹脂層Aにおいて、熱可塑性樹脂層Aの融点が235〜245℃の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜3のうち、いずれか1項に記載の缶詰用缶蓋。
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