JP2018137050A - 金属空気電池及び金属空気燃料電池 - Google Patents

金属空気電池及び金属空気燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 自己腐食や分極等の問題を解決し、エネルギー密度や電圧等の電池性能に優れ、寿命が長く、安全性の高い金属空気電池及び金属空気燃料電池を提供することを目的とする。【解決手段】 マグネシウム(Mg)、両性金属、及び、これらの合金を活物質とする負極と、酸素を活物質とする正極(空気極)と、中性水系電解質とからなる金属空気電池及び金属空気燃料電池において、電解質が中性水系電解質に高分子肪酸塩を溶解したものであることを特徴とする。【選択図】図2

Description

本発明は、定置用電源、非常用電源、電子機器、電気自動車等に必要な電気エネルギーを蓄積し供給する電源として使用することができ、メカニカルチャージで容量が回復できる、金属を活物質とする負極と、酸素を活物質とする正極(空気極)と、中性水系電解質とからなる金属空気電池及び金属空気燃料電池に関する。
18世紀半ばに始まった産業革命以来の技術進歩は、世界的な人口増加と相まって、電気や熱等の大量エネルギーなくしては成り立たない現代社会が作り上げられ、温室効果ガスの排出量も増加の一途を辿っている。このようなエネルギーの消費量と温室効果ガスの排出量の増加は、将来的にも抑制することは実質上困難である。従って、資源に限りある地球が持続可能な社会であるためには、人類が活用する電気や熱等の有効エネルギーに変換する際の有害物質排出量(二酸化炭素、窒素酸化物等)が少なく、太陽光・太陽熱、風力、水力、地熱、波力・潮力、及び、バイオマス等の永続的に利用可能な資源から製造されるエネルギーであって、石油、石炭、天然ガス等を用いた化石エネルギー及びウラン等を用いた原子力エネルギー等のような枯渇資源を用いないエネルギー、すなわち、再生可能エネルギーを創出し活用する必要がある。
特に、エネルギーの中でも、産業、交通・運輸、通信・サービス、家庭等、あらゆる部門において電気エネルギーの占める割合が増加している。そのため、太陽光発電、風力発電、地熱発電等の再生可能エネルギーの開発が重要であることは言うまでもないが、このようにして製造された電気を蓄積し、繰り返し利用可能で、有害物質を排出しない二次電池も不可欠な存在であり、性能の向上やコストダウンを目的とした開発が積極的に行われている。
この二次電池には、代表的なものとして、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等があるが、電圧、容量、エネルギー密度の観点から、現在では、リチウムイオン電池の用途が拡大しており、パソコンや携帯電話等のあらゆる携帯機器に採用されている。今後は、電気自動車の電源、震災等の緊急時のライフライン確保のための非常用電源、定置用電力貯蔵として、その役割が一層重要となってくるものと推測される。そのため、容量やエネルギー密度の更なる向上を目指した電極材料、電解質、セパレータ等の要素技術開発が継続されている(非特許文献2及び3)ものの、このようなリチウムイオン電池にも、解決することが困難な問題がある。第一に、エネルギー密度に限界があり、電気自動車等には不十分であるという性能の問題である。第二に、正極材料にリチウム(Li)やコバルト(Co)等のレアメタルを使用しなければならず、高価であるというコスト及び資源枯渇の問題がある。また、リチウム(Li)やコバルト(Co)は毒性があり、環境破壊の問題がある上、電解液として非水系の有機溶媒を使用しており、内部短絡で高温になると発火・爆発するという安全の問題がある。第三に、従来の二次電池では繰り返し使用するためには充電を必要とし、充放電を繰り返すことによる電池の劣化が著しく進行し、最終的には廃棄処分することになるというリサイクルの問題がある。
そこで、革新的二次電池として期待されているのが、金属空気電池及び金属空気燃料電池である。これは、次のような具体的な根拠に基づいている。
リチウムイオン電池の課題であるエネルギー密度についてみると、金属空気電池のエネルギー密度は、理論的にはリチウムイオン電池の数倍以上、例えば、リチウム空気電池で、11,400Wh/Kg、アルミニウム空気電池で、8,100Wh/Kgと計算されており、ガソリン車のエネルギー密度(12,722Wh/Kg)に肩を並べることができる(非特許文献4及び5)。
電極材料については、金属空気電池の正極の活物質は大気中に無尽蔵に存在する酸素(O)である。その上、これまでのところ、金属空気電池の負極の活物質がリチウム(Li)の場合に最も高いエネルギー密度が達成されてはいるが、上記アルミニウム空気電池に代表されるように、地球に広く分布している鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、及び、マグネシウム(Mg)等のように安価な金属を用いることができる可能性があり、資源の枯渇が心配され、高価なリチウム(Li)やコバルト(Co)を必ずしも必要としない(非特許文献6)。従って、リチウム(Li)やナトリウム(Na)等のような反応性が激しい金属を電極とする場合のように、非水系電解質を使用する必要がなく、水系電解質を用いることができるため、発火、発熱、爆発の心配がなく、安全性が高い。
また、金属空気電池は、リサイクル可能な燃料電池となりうる可能性がある。フランスのフェリーが1900年代初期に考案した金属空気電池を、ル・カーボン社が改良した亜鉛(Zn)空気電池は、一次電池として利用されていたが(非特許文献7)、1996年、米国のAbrahamにより、リチウム空気電池が蓄電池として機能することが報告された。その後、二次電池を目的とした金属空気電池の開発が活発化し、次世代の二次電池として期待されるようになった(非特許文献4及び8)。特に、金属空気電池に特徴的なことは、従来の充電方式だけでなく、再生可能な電解質及び金属電極を入れ替えるメカニカルチャージを採用することが可能で、一種の燃料電池ともなる(非特許文献9)。
更に、燃料となる金属を化学反応させない方式で保管することができ、これまでの二次電池の課題の一つである自己放電による容量の減少を解決することができる可能性がある。
このように、金属空気電池は、従来の二次電池の性能、コスト、資源、環境、及び、安全性の様々な問題を理論的には解決できる可能性がある。特に、アルミニウム空気電池は、リチウム空気電池に次いでエネルギー密度が高く、安価なアルミニウム(Al)又はアルミニウム(Al)合金を負極として用いるため、最も期待されている金属空気電池の一つである。
そのため、金属空気電池を構成する、負極材料の金属の種類、電解質の種類、及び、正極材料の種類等全体に亘って、それぞれ検討しなければならないが、アルミニウム空気電池の電極反応及びそれに付随する化学反応等に起因する課題を解決しようとする試みが数多く認められる。
従来のアルミニウム空気電池では、電解質として、水酸化ナトリウム(NaOH)のアルカリ性水溶液を用いる場合が多かった(例えば、非特許文献4)。これは、アルミニウム空気電池の放電における電極反応[化1]から分かるように、アルカリ性又は酸性が強い程電位差が大きくなるので、電解質溶液としては、水酸化ナトリウム(NaOH)や水酸化カリウム(KOH)等のアルカリ水溶液又は塩酸(HCl)等の酸性水溶液を採用することが望ましい。
Figure 2018137050
しかしながら、アルミニウム(Al)は両性金属であるため、[化2]に示したように、アルカリ性水溶液や酸性水溶液による自己放電が激しく、負極材料が無駄に消費されてしまうという問題がある。更に、塩酸(HCl)水溶液や水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液のような強酸性水溶液や強アルカリ性水溶液を用いると、液漏れ等における火傷や失明の事故に繋がる危険性があるという問題もある。
Figure 2018137050
この問題に対して、塩化ナトリウム(NaCl)や塩化カリウム(KCl)等の中性塩化物の水溶液を電解質として適用すれば、自己放電が大幅に減少するが、アルミニウム(Al)表面に酸化被膜(Al)が形成されてアルミニウム(Al)が溶解せず、発電能力が極めて低くなる(特許文献1)。そのため、アルカリ性電解質に、四級アンモニウム基を有する高分子電解質(特許文献1)やオキソ酸塩等を添加すること(特許文献2及び3)や、負極材料に適したアルミニウム(Al)合金を採用すること(特許文献4)で自己放電を抑制する方法が提案されている。一方、電解質をアルカリ性からアニオン交換樹脂を含む中性電解質とする改良(特許文献5)も開示されている。
更に、電極反応[化1]の放電生成物である水酸化アルミニウム(Al(OH))が、負極上に析出し、ゲル化して発電を阻害するだけでなく、[化3]に示す水酸化アルミニウム(Al(OH))と水との反応により、アルミン酸イオン([Al(OH))と共に水素イオン(H)を生成し、分極する。これは、アルミン酸イオン([Al(OH))が電位差を低下させ発電を阻害する一方、水素イオン(H)は負極から電子を奪って水素となるため、電子の逆流現象が生起すると共に、水素の気泡が負極を覆ってアルミニウム(Al)の酸化と、電解質への金属イオンの透過を阻害するためである。
Figure 2018137050
この問題に対して、例えば、電解質である塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を空気極とアルミニウムイオン(Al3+)伝導体を貼り合わせた負極とで挟むことによって解決手段が提案されている(特許文献6)。
以上、アルミニウム空気電池の改良が数多く提案されているが、未だ、エネルギー密度、電圧、寿命、及び、安全性等の性能を満足するアルミニウム空気電池は得られていない。また、上述したように、金属空気電池を改良するためには、金属空気電池を構成する、負極材料の金属の種類、電解質の種類、及び、正極材料の種類等全体に亘って、それぞれ検討しなければならない。
特開昭55−62661号公報 特開2012−15025号公報 特開2012−15026号公報 特開平6−179936号公報 特開2002−184472号公報 特開2006−147442号公報
独立行政法人・新エネルギー・産業技術総合開発機構編、「NEDO再生可能エネルギー技術白書第二版」、2014年2月、森北出版株式会社 暖水慶孝、「二次電池の進化と将来」、年報NTTファシリティーズ総研レポート、No.24、2013年6月、pp.67〜72 独立行政法人・新エネルギー・産業技術総合開発機構編、「NEDO二次電池技術開発ロードマップ2013」、2013年8月 富士色素株式会社ホームページ、http://www.fuji−pigment.co.jp/pres.pdf 環境庁ホームページ、https://www.env.go.jp/policy/tech/nano_tech/review/theme/03/05.html、石井正純、「環境ナノテクがエレクトリック・カーの未来の問題を開く〜自動車産業のシリコンバレー・モデル〜」 村上浩康、「リチウム資源」、地質ニュース670号、22−26頁、2010年6月 吉田和正、「一次電池技術発展の系統化調査」、独立行政法人国立科学博物館編、国立科学博物館 技術の系統化調査報告第9集、2007年3月30日、172−277頁 武田保雄他、「水溶液系リチウム/空気電池の現状と課題」、GS Yuasa Technical Report、2010年6月、第7巻、第1号、1−7頁 国立研究開発法人・産業技術総合研究所ホームページ、「新しい構造の高性能「リチウム−空気電池」を開発」、2009年2月24日掲載、http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2009/pr20090224/pr20090224.html
本発明は、上述した自己放電や分極等の問題を解決し、エネルギー密度や電圧等の電池性能に優れ、寿命が長く、安全性の高い金属空気電池及び金属空気燃料電池を提供することを目的とする。また、従来、金属空気電池を構成する負極活物質として検討されてきた亜鉛(Zn)、リチウム(Li)、及び、アルミニウム(Al)以外に、金属空気電池に適した活物質を見出し、負極、正極、及び、電解質の総合的な最適化を目的とする。
本発明者らは、アルミニウム(Al)又はアルミニウム(Al)合金を活物質とする負極と、酸素を活物質とする正極(空気極)と、中性水系電解質とからなるアルミニウム空気電池において、中性水系電解質を種々検討した結果、水又は中性塩化物を水に溶解した中性水系電解質に高分子脂肪酸塩を溶解することによって、上記課題を解決できることを見出した。更に、この高分子脂肪酸塩を溶解した中性水系電解質を、イオン化傾向の異なる、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、錫(Sn)、鉛(Pb)、及び、これらの少なくとも二種以上の金属からなる合金を活物質とする負極と、酸素を活物質とする正極(空気極)とから構成される金属空気電池に適用した場合にも、同様の効果が認められ、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、金属を活物質とする負極と、酸素を活物質とする正極(空気極)と、中性水系電解質とからなるアルミニウム空気電池において、中性水系電解質が、高分子脂肪酸塩を水に溶解した電解質もしくは中性塩化物と高分子脂肪酸塩とを水に溶解した電解質であって、負極の金属が、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、錫(Sn)、鉛(Pb)、及び、これらの少なくとも二種以上の金属からなる合金であることを特徴とする金属空気電池及び金属空気燃料電池である。
中性塩化物としては、特に限定されないが、塩化ナトリウム(NaCl)又は塩化カリウム(KCl)であることが好ましく、その水溶液を用いることができる。また、陽イオンとして、マグネシウムイオン(Mg2+)カルシウムイオン(Ca2+)等、陰イオンとして、硫酸イオン(SO 2−)、炭酸水素イオン(HCO )等を微量に含む海水を中性塩化物水溶液に置き換えて使用することもできる。
高分子肪酸塩としては、高分子脂肪酸ナトリウム又は高分子脂肪酸カリウムであることが好ましい。更に、高分子脂肪酸ナトリウム又は高分子脂肪酸カリウムは、アクリル酸ナトリウム又はアクリル酸カリウム、メタクリル酸ナトリウム又はメタクリル酸カリウム、及び、不飽和二重結合を有する単量体の中から選ばれる少なくとも1つ以上の単量体から合成される重合体であることがより更に好ましい。
負極活物質の金属は、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、錫(Sn)、鉛(Pb)、及び、これらの少なくとも二種以上の金属からなる合金が好ましく用いられるが、合金は、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、鉛(Pb)、クロム(Cr)、及び、銅(Cu)の少なくとも二種以上の金属からなる合金であってもよい。更に、このような合金には、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び、シリコン(Si)の少なくとも一種以上の金属が含まれていることがより更に好ましい。
本発明により、電解質は、水もしくは中性塩化物の水溶液に高分子脂肪酸塩を溶解した中性水系電解質であるため、酸性またはアルカリ性水溶液下で起きる自己放電の問題はない上、高分子脂肪酸塩が解離し、負極で生成する水素イオンと結合して高分子脂肪酸となることによって、負極金属の酸化剤としてこれらの金属の溶解を促進すると共に、水素イオンを吸着することで水素ガスの発生を防止する。その上、この高分子脂肪酸が負極で生成する金属の水酸化物、例えば、Al(OH)、Zn(OH)、Mg(OH)、Fe(OH)、Sn(OH)、及び、Pb(OH)等と混合して負極表面を被覆して酸化被膜が形成されることを防止すると共に、金属の水酸化物が正極に移行しないことで正極の被毒も防止するセパレータの役割を供する。更に、ゲル化した電解質が負極金属を被覆し、自己放電も防止される。従って、発電が阻害されることなく、長寿命の金属空気電池が得られる。
上述したような高分子脂肪酸の生成は、水素イオンを消費することで、電位差を低下させ発電を阻害する要因となる金属に水酸イオンが配位した金属錯イオン、例えば、[Al(OH)、[Zn(OH)2−、[Sn(OH)2−、及び、[Pb(OH)2−等が生成されても、電解質内では、その錯イオンは水酸化物に戻るという循環反応経路が形成される。従って、高分子脂肪酸の生成は、金属錯イオンの生成による電位差の低下及び金属の水酸化物による負極の劣化を防止する効果がある。
一方、高分子脂肪酸塩から解離したナトリウムイオン(Na)やカリウムイオン(K)等の金属イオンが、正極の電極反応で生成する水酸イオン(OH)と塩橋の役割を果たし、イオンの平衝を保つことで発電を促進する。また、高分子脂肪酸は、水との水素結合によって水を吸着し、正極で副次的に生じる水と電子との反応によって生成する水素の発生を妨げ、正極の電極反応を促進する効果もある。
そして、本発明により、非水系電解質の発火・爆発の問題、酸性又はアルカリ性電解質の火傷や失明の問題がない、安全性の高い金属空気電池を提供することができる。特に、高分子脂肪酸塩により、電解質が水との相互作用によりゲル状となるため、簡易な構造で、液漏れがなく、メカニカルチャージが容易な金属空気燃料電池を構成できる。
更に、本発明、特に、中性塩化物と高分子脂肪酸塩を水に溶解した電解質を採用することにより、金属空気電池及び金属空気燃料電池の負極活物質として、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、錫(Sn)、鉛(Pb)等の金属、及び、これらの合金まで適用できる可能性が見出されたので、それぞれの金属の特徴に応じた金属空気電池及び金属空気燃料電池が構成でき、用途に応じた金属空気電池及び金属空気燃料電池を提供できるようになる。しかも、地球に無尽蔵に存在する資源である海水や雨水等を利用した金属空気電池及び金属空気燃料電池だけでなく、災害時等には尿等も使用できる金属空気電池及び金属空気燃料電池も提供できる。
金属空気電池の基本構成と電極及び電解質における反応を示す模式図である。 電解質にポリアクリル酸ナトリウムを水に溶解した電解ゲルでの各成分の作用効果図である。 本発明の一実施形態であるアルミニウム空気電池Aの基本構成を示す模式図である。 本発明の一実施形態であるアルミニウム空気電池Bの基本構成を示す模式図である。 各種アルミニウム空気電池の放電特性評価の結果を示すグラフである。
以下、負極活物質がアルミニウム(Al)である場合を代表例として、図面を用い、本発明を詳細に説明するが、図面に描かれた一実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想によってのみ限定されるものである。
図1は、金属空気電池の基本構成と電極及び電解質における反応を示す模式図であり、図2は、本発明の電解質にポリアクリル酸ナトリウムを水に溶解した電解ゲルでの各成分の作用効果図である。いずれも、分かり易くするため、負極の代表例として、アルミニウム(Al)を用いているが、アルミニウム(Al)合金がより好ましく用いられる。アルミニウム(Al)だけでは、表面の酸化被膜による初期反応性が悪い上、長時間の使用に当たっても酸化被膜が新たに生成される。また、負極の自己腐食率を低減させ、負極表面の酸化に伴う分極を抑制するという観点からもアルミニウム(Al)合金の方が好ましい。アルミニウム(Al)合金としては、アルミニウム(Al)に、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、鉛(Pb)、クロム(Cr)、カルシウム(Ca)、及び、銅(Cu)から選ばれる少なくとも一種以上の金属を添加したものが好ましい。そして、このような合金に、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び、シリコン(Si)が少なくとも1種以上添加されていることがより更に好ましい。
負極活物質の金属は、アルミニウム(Al)だけでなく、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、鉄(Fe)、及び、鉛(Pb)を用いることができる。この場合も、アルミニウム(Al)同様、表面の酸化被膜、自己腐食率、分極という観点から、合金とすることによって制御することが好ましい。このような合金としては、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、鉄(Fe)、及び、鉛(Pb)の少なくとも二種以上の金属からなる合金であることがより好ましいが、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、カルシウム(Ca)、及び、銅(Cu)の少なくとも一種以上が含まれていても良い。そして、これらの合金には、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び、シリコン(Si)の少なくとも一種以上の金属が含まれていることがより更に好ましい。特に、負極表面の酸化を軽減するためには、各種合金であることが好ましく、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び、シリコン(Si)の金属が効果的である。
本発明における正極(空気極)は、従来のアルミニウム空気電池と同様に、酸素を活物質としており、水との濡れ性を有し、気体を透過し、電子を受け取って、気体と液体と固体で形成される三相界面で還元する導電性の固体物質であれば、特に限定されるものではない(図1)。白金担持カーボン、活性炭やカーボンブラック等の炭素材料、ランタンマンガナイト等のペロブスカイト型複合酸化物、マンガン低級酸化物、及び、これらの混合物等を用いることができる。特に、気体透過性があり、酸素還元能と導電性を有する活性炭やカーボンブラック等の炭素材料が好ましい。更に、電極の強度という観点から、気体透過性と導電性があり、このような炭素材料を支持することができる、例えば、ニッケル、ステンレス、チタン、クロム、鉄等の金属又はこれらの合金のメッシュ又は多孔質体のような集電材と貼り合わせた正極を用いる方がより好ましい(図2)。
本発明の電解質は、高分子脂肪酸塩を水に溶解した電解質、もしくは、中性塩化物と高分子脂肪酸塩とを水に溶解した電解質であることを特徴としている。特に、中性塩化物と高分子脂肪酸塩とを水に溶解した電解質を採用することによって、負極活物質として上述した各種金属及び合金を幅広く選択することが可能となった。
水は、イオン交換水、蒸留水等のイオンを含まない純水であることが望ましいが、水道水であっても問題はない。また、水の供給を満たせば良い為、雨水等を集水した水、海水、尿等も代用することができる。特に、尿は、微量ながらアンモニア(NH)を含み、後述する金属空気電池の全反応において、水酸化物の溶解に寄与し、中性水よりも好ましい点がある上、災害時等に利用することができるという特徴がある。
中性塩化物を溶解した電解質とする理由は、塩素イオン(Cl)が電解質の電気的抵抗を低減する作用と、負極金属の表面不動態被膜(酸化被膜)を破壊し易くする作用があるためである。塩素イオン(Cl)は必須ではないが、存在する方が、発電までの時間を短縮でき、初期発電量も大きくなるという効果がある。中性塩化物は、特に限定されるものではないが、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化アルミニウム(AlCl)、及び、塩化マンガン(MnCl)等の塩化物を用いることが好ましい。特に、高分子脂肪酸塩との組合せによる種々の効果を十分発現するためには、塩化ナトリウム(NaCl)又は塩化カリウム(KCl)であることがより好ましい。しかし、陽イオンとして、マグネシウムイオン(Mg2+)カルシウムイオン(Ca2+)等、陰イオンとして、硫酸イオン(SO 2−)、炭酸水素イオン(HCO )等を微量に含む海水を中性塩化物水溶液としてそのまま利用することもできる。高分子脂肪酸塩を用いることに起因していると考えられるが、予想以上に微量イオンの影響を受けないことを見出した。ただし、濃度を調整することが好ましいが、地球に無尽蔵に存在する資源を用いることができるという大きな特徴を有する。
高分子脂肪酸塩も、特に限定されるものではないが、水に対する溶解性と、上記中性塩化物である塩化ナトリウム(NaCl)又は塩化カリウム(KCl)を溶解した水溶液との組合せによる種々の効果を十分発現するためには、高分子脂肪酸ナトリウム又は高分子脂肪酸カリウムであることが好ましい。
更に、高分子脂肪酸塩は、その脂肪酸塩以外の骨格構造の炭素数が、脂肪酸塩一つ当たり1〜4個の炭素(C)を有する高分子脂肪酸塩であることが好ましい。これは、この炭素数が4以上になると水に対する溶解性が低下して使用できないためである。以下、このような有機脂肪酸塩をこの有機脂肪酸塩の骨格構造の炭素数別に例示する。炭素数が2の代表例としては、ポリアクリル酸ナトリウム(−(CHCHCOONa)−)又はポリアクリル酸カリウム(−(CHCHCOOK)−)等を挙げることができる。炭素数が3の代表例としては、ポリメタクリル酸ナトリウム(−(CH(CH)CHCOONa)−)又はポリメタクリル酸カリウム(−(CH(CH)CHCOOK)−)等を挙げることができる。高分子脂肪酸塩の炭素一つあたりの脂肪酸塩以外の骨格構造の炭素数は、整数値に限定されるものではないし、炭素数3以上及び炭素数2以下とすることもできる。この場合は、アクリル酸ナトリウム(又はカリウム)、メタクリル酸ナトリウム(又はカリウム)、及び、不飽和二重結合を有する単量体の中から選ばれる少なくとも一つ以上の単量体を合成して得られる重合体とすることによって、脂肪酸塩の炭素一つ当たりの脂肪酸塩以外の骨格構造の炭素数を自由に制御することができる。このような不飽和二重結合を有する単量体の例としては、例えば、マレイン酸塩、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステル、フマル酸塩、フマル酸、フマル酸エステル、イタコン酸塩、イタコン酸、イタコン酸エステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、及び、酢酸ビニル等を上げることができる。
一方、高分子脂肪酸塩は、電解質をゲル状にし、簡易な構造で、液漏れがなく、メカニカルチャージが容易なアルミニウム空気燃料電池を構成することができると共に、適正なゲル状電解質は、水との水素結合によって水を吸着し、正極でのガス拡散電極のFlooding(水没)で生じる水と電子との反応によって生成する水素の発生を妨げ、正極の電極反応を促進する効果もある。
このような観点から、高分子脂肪酸塩としては、ポリアクリル酸ナトリウム(又はカリウム)、ポリメタクリル酸ナトリウム(又はカリウム)、或いは、アクリル酸ナトリウム(又はカリウム)、メタクリル酸ナトリウム(又はカリウム)、及び、不飽和二重結合を有する単量体の中から選ばれる少なくとも一つ以上の単量体を合成して得られる重合体であって、その数平均分子量が、1,000〜700,000程度のものを用いることができる。しかし、液体を保持することが可能なゲル状とするためには、その数平均分子量が、10,000〜200,000であることが好ましく、20,000〜80,000であることがより更に好ましい。分子量に加え、メタクリル酸ナトリウム(又はカリウム)、及び、不飽和二重結合を有する単量体の中から選ばれる少なくとも一つ以上の単量体を合成して得られる重合体における、脂肪酸塩一つ当たりの脂肪酸塩以外の骨格構造の炭素数も重要で、2〜4に制御することが好ましい。2以下の場合は、電解質の粘度が低く、ゲル状となり難いため、簡易な構造で、液漏れがなく、メカニカルチャージが容易なアルミニウム空気燃料電池を構成することが困難になる。4以上の場合は、中性塩化物水溶液への高分子脂肪酸塩の溶解性が不足する。
以上、種々の負極、正極、電解質を用いることができるが、図3に、本発明の代表例として、アルミニウム空気電池及びアルミニウム空気燃料電池の模式図を示す。負極1はアルミニウム(Al)を、正極2は活性炭素2−1にチタン製エキスパンドメタルの集電材2−2を貼り合わせた電極を、電解質3は塩化ナトリウム(NaCl)水溶液にポリアクリル酸ナトリウムを溶解した電解ゲルを用いている。この場合の電解質の中で生じる全反応を[化4]に、各成分の作用効果を図2に示す。
Figure 2018137050
塩化ナトリウム(NaCl)水溶液にポリアクリル酸ナトリウムを溶解した中性水系であるため、自己腐食の問題はない。ポリアクリル酸ナトリウムが解離し([化4]反応式(11))、負極で生成する水素イオンと結合してポリアクリル酸となる([化4]反応式(12))。このポリアクリル酸が、アルミニウム(Al)の酸化剤としてアルミニウム(Al)の溶解を促進すると共に、水素の発生を防止する上、負極で生成する水酸化アルミニウム(Al(OH)、[化4]反応式(8、9))と混合してアルミニウム(Al)表面を被覆して酸化被膜(Al)が形成されることを防止するため、発電が阻害されることなく、長寿命のアルミニウム空気電池が得られる。
又、上述したように、ポリアクリル酸の生成によって水素イオンが消費され、電位差を低下させ発電を阻害する要因となるアルミン酸イオン([Al(OH))が生成されるが([化4]反応式(6))、負極上に生成する水に難溶な水酸化アルミニウムが(Al(OH)、[化4]反応式(8))、ゲル化して発電を阻害する要因を解消する。と同時に、増加したアルミン酸イオン([Al(OH))は再び水酸化アルミニウム(Al(OH))に戻る([化4]反応式(9))という循環反応経路が形成される。従って、全体的には、ポリアクリル酸が、アルミン酸イオン([Al(OH))による電位差の低下及び水酸化アルミニウム(Al(OH))による負極での発電阻害要因を防止する効果を奏する。
更に、ポリアクリル酸ナトリウムから解離したナトリウムイオン(Na)([化4]反応式(11))が、正極及び負極の電極反応で生成する水酸イオン(OH)([化4]反応式(2)及び(9))と塩橋の役割を果たし([化4]反応式(10))、イオンの平衝を保つことで発電を促進する。一方、ポリアクリル酸は、水との水素結合によって水を吸着し、正極でのガス拡散電極のFlooding(水没)で生じる水と電子との反応によって生成する水素の発生を妨げ、正極の電極反応を促進する効果もある([化4]及び図2には省略)。
中性水溶液に溶解したポリアクリル酸ナトリウムは、中性水溶液内のイオン濃度が高まると吸水力が低下して、正極では還元剤として、負極では酸化剤となる水を放出する。従って、電解ゲル内で多価金属イオンの濃度が高まることで水を供給出来る効果もある。
以上、アルミニウム(Al)を負極活物質とした場合の、高分子脂肪酸塩の効果を説明したが、このような効果をより高めるためには、負極活物質として、アルミニウム(Al)に、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、鉛(Pb)、クロム(Cr)、カルシウム(Ca)、及び、銅(Cu)から選ばれる少なくとも一種以上の金属を添加したアルミニウム(Al)合金を用いる方が、負極表面の酸化の防止という観点から好ましい。特に、このような合金に、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び、シリコン(Si)が少なくとも1種以上添加されていることが、同様の観点からより更に好ましい。しかし、基本的な化学反応は、[化4]に示した通りである。
更に、負極活物質の金属は、アルミニウム(Al)だけでなく、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、鉄(Fe)、及び、鉛(Pb)を用いることができる。この場合も、アルミニウム(Al)同様、表面の酸化被膜、自己腐食率、分極という観点から、合金とすることによって制御することが好ましい。このような合金としては、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、鉄(Fe)、及び、鉛(Pb)の少なくとも二種以上の金属からなる合金であることがより好ましいが、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、カルシウム(Ca)、及び、銅(Cu)の少なくとも一種以上が含まれていても良い。そして、これらの合金には、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び、シリコン(Si)の少なくとも一種以上の金属が含まれていることがより更に好ましい。このような金属を負極活物質として使用した場合、アルミニウム(Al)とイオン化傾向が異なるため、中性電解質に対する溶解性の問題が生じるものと予想されたが、高分子脂肪酸塩を導入することによって解決された。例えば、亜鉛(Zn)を負極に用いた場合、[化5]に示すように、電解質中でアルミニウム(Al)と同様の反応が生起したものと考えられる。
Figure 2018137050
そして、本発明により、非水系電解質の発火・爆発の問題、酸性又はアルカリ性電解質の火傷や失明の問題がない、安全性の高い金属空気電池及び金属空気燃料電池を提供することができる。特に、高分子であるポリアクリル酸塩を用いた場合は、電解質が水との相互作用によりゲル状となるため、簡易な構造で、液漏れがなく、メカニカルチャージが容易な金属空気燃料電池を構成できる。
以下、本発明の金属空気電池の実施例として、Alを負極として用いた場合について具体的に説明するが、上述したように、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で、負極、電解質等、種々変更して実施することが可能であり、実施例によって限定されるものではない。
評価用電解質は、以下の手順で製造した。
(電解質1)
電解質として、所定量のNaCl(和光純薬工業(株)製特級、純度99.5%)60.3gと純水939.7gとを混合し、6.0重量%NaCl水溶液である電解質1を製造した。
(電解質2)
電解質1とポリアクリル酸ナトリウム(三菱化学(株)製)とを、重量比70/5となるように混合して電解質2を製造した。
(電解質3)
純水とポリアクリル酸ナトリウム(三菱化学(株)製)とを、重量比70/5となるように混合して電解質3を製造した。
評価用アルミニウム空気電池は、以下のような手順で、図3と図4に示した形状となるように作製した。
(Al負極の作製)
(負極1−a)
厚さ1mmのAl合金板(A5052)を縦50mm×横30mmに切断し、ワニ口クリップコードをリード線5としてAl負極1−aを作製した。
(負極1−b)
厚さ1mmのMg、Zn、In系Al合金を縦50mm×横30mmに切断し、ワニ口クリップコードをリード線(図示していない)としてAl負極1−bを作製した。
(正極の作製)
正極2は、集電体2−2として厚さ0.1mmのチタン製エキスパンドメタル(日健ラス工業(株)製)を縦40mm×横30mmに切断し、カーボンクロス((株)FFC−R&D製)を両面テープで貼り付けた後、酸素還元能と導電性を有する粒状ヤシ殻活性炭素2−1(和光純薬工業(株)製)をカーボンクロス上に敷き詰めて、針葉樹パルプ100%のろ紙で蓋をし、ワニ口クリップコードをリード線5として正極2を得た。
(アルミニウム空気電池の組み立て)
(アルミニウム空気電池A)
図3に示したように、作製した正極2をポリエチレン容器6の端から10mmのところにエポキシ系接着剤で固定すると共に、電解液の漏れ防止のシールをした後、正極から30mm間隔を開けて負極1−aをマスキングテープで固定した後、電解液を注液してアルミニウム空気電池Aを作製した。
(アルミニウム空気電池B)
図4に示したように、長方形の箱の側面2面に空気が通過する穴と、電解質3を入れる蓋8を上面に設け、蓋8は負極1−bが差し込める溝が彫られている。このようなABS樹脂製容器7を筐体とし、この筺体の内面に作製した正極2を10mmの間隔を持って対峙させた後、電解質3を詰め込み、蓋8をした後に、蓋8の溝から負極1−bを差し込んだアルミニウム空気電池Bを作製した。
(放電特性の評価)
次のような比較例1及び2、並びに、実施例1乃至3の条件で作製されたアルミニウム空気電池は、電解質を注液した後、33Ωの抵抗を接続した後、3日間の連続放電の実験を行った。これらの放電特性の評価結果は、表1及び図5に示す。
(比較例1)
負極金属は上記Al負極1−aを、電解質は上記電解質1を、実験装置は上記のアルミニウム空気電池Aを用いた。
(比較例2)
負極金属は上記Al負極1−bを、電解質は上記電解質1を、実験装置は上記のアルミニウム空気電池Aを用いた。
(実施例1)
負極金属は上記Al負極1−aを、電解質は上記電解質2を、実験装置は上記アルミニウム空気電池Aを用いた。
(実施例2)
負極金属は上記Al負極1−bを、電解質は上記電解質2を、実験装置は上記アルミニウム空気電池Aを用いた。
(実施例3)
負極金属は上記Al負極1−bを、電解質は上記電解質3を、実験装置は上記アルミニウム空気電池Bを用いた。
Figure 2018137050
表1と図5とから明らかなように、比較例1と比較例2の6.0重量%NaCl水溶液の電解質1だけのアルミニウム空気電池では,ガス拡散電極のFloodingと、負極電極からの水素と、[Al(OH)が発生して、双方ともに低電圧で微弱電流しか取り出せず、電圧も継時的に降下した。これらに対して、実施例1、実施例2、及び、実施例3のポリアクリル酸ナトリウムを添加した電解質2又は3では、電圧は長時間に亘って安定し、放電容量も長時間に亘って維持され、いずれも電圧と放電容量の顕著な向上が認められた。特に、NaCl水溶液にポリアクリル酸ナトリウムを溶解した電解質2とA5052Al負極を用いたアルミニウム空気電池(実施例1)では、6.0重量%NaCl水溶液の電解質1のアルミニウム空気電池(比較例1及び比較例2)に対し、平均電圧及び平均電流共に4.7倍の向上、同じ電解質2とMg、Zn、In系Al合金負極(実施例2)では、6.0重量%NaCl水溶液の電解質1のアルミニウム空気電池(比較例1及び比較例2)に対し、平均電圧及び平均電流共に8.6倍以上の向上が確認された。そして、Mg、Zn、In系Al合金が、発電の向上に大きく寄与することも確認できた。
一方、純水にポリアクリル酸ナトリウムを溶解した電解質3とMg、Zn、In系Al合金負極を用いたアルミニウム空気電池(実施例3)でも、実施例1及び実施例2のNaCl水溶液とポリアクリル酸ナトリウムとからなる電解質2のアルミニウム空気電池と遜色が無い電圧と放電容量の向上が確認できた。これは、ポリアクリル酸ナトリウムは、純水なら自重の100〜1,000倍、生理食塩水なら20〜60倍を吸収して膨らみ、溶媒を保持する特徴を持っており、溶媒のイオン濃度が低いほど給水倍率が向上するためである。又、ポリアクリル酸ナトリウムを溶解した電解質は、電解質内で多価金属イオンが増えると吸水力が低下して、正極では酸化剤、負極では還元剤となる水を、正極と負極に供給することが出来る。従って、実施例3では電解質に圧力が掛かることで物理的に吸水力が低下し、正極と負極に水を供給させたこととなり、電圧と放電容量の向上が可能となったものと考えられる。このような結果は、上述したポリアクリル酸ナトリウムの添加効果が相乗的に発現していることを示している。
本発明によれば、自己放電や分極等の問題が解決され、エネルギー密度、電圧、寿命等の電池性能に優れており、メカニカルチャージに適している上、液漏れ、発火・爆発、火傷等の心配がない安全性の高い金属空気電池及び金属空気燃料電池が提供される。そのため、本発明の金属空気電池及び金属空気燃料電池は、一次電池だけでなく、リチウムイオン電池に代わる革新的二次電池として、パソコンや携帯電話等のあらゆる携帯機器等はいうまでもなく、電気自動車の電源、震災等の緊急時のライフライン確保のための非常用電源、定置用電力貯蔵等様々な用途に適用できる。これは、雨水等の集水された水、海水、尿等を利用できるためであり、特に、船舶や沿岸地域の電源として利用することが期待される。
1 負極(金属)
1−a A5052Al負極
1−b Mg、Zn、In系Al合金負極
2 正極(空気極)
2−1 活性炭素
2−2 集電体(チタン製エキスパンドメタル)
3 電解質
4 電球
5 リード線
6 ポリエチレン容器
7 ABS製容器
8 容器蓋
A、B アルミニウム空気電池

Claims (12)

  1. 金属を活物質とする負極と、酸素を活物質とする正極(空気極)と、中性水系電解質とからなる金属空気電池において、前記中性電解質が、高分子脂肪酸塩を水に溶解した電解質であって、前記負極の金属が、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、錫(Sn)、鉛(Pb)、これらの少なくとも二種以上の金属からなる合金、及び、前記合金にインジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び、シリコン(Si)の少なくとも一種以上の金属が含まれている合金であることを特徴とする金属空気電池。
  2. 前記高分子脂肪酸塩が、高分子脂肪酸ナトリウム又は高分子脂肪酸カリウムであることを特徴とする請求項1に記載の金属空気電池。
  3. 前記高分子脂肪酸ナトリウム又は高分子脂肪酸カリウムが、アクリル酸ナトリウム又はアクリル酸カリウム、メタクリル酸ナトリウム又はメタクリル酸カリウム、及び、不飽和二重結合を有する単量体の中から選ばれる少なくとも1つ以上の単量体から合成される重合体であることを特徴とする請求項2に記載の金属空気電池。
  4. 前記中性水系電解質が、中性塩化物と高分子脂肪酸塩とを水に溶解した電解質であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム空気電池。
  5. 前記高分子脂肪酸塩が、高分子脂肪酸ナトリウム又は高分子脂肪酸カリウムであることを特徴とする請求項4に記載のアルミニウム空気電池。
  6. 前記高分子脂肪酸ナトリウム又は高分子脂肪酸カリウムが、アクリル酸ナトリウム又はアクリル酸カリウム、メタクリル酸ナトリウム又はメタクリル酸カリウム、及び、不飽和二重結合を有する単量体の中から選ばれる少なくとも1つ以上の単量体から合成される重合体であることを特徴とする請求項5に記載のアルミニウム空気電池。
  7. 金属を活物質とする負極と、酸素を活物質とする正極(空気極)と、中性水系電解質とからなる金属空気燃料電池において、前記中性電解質が、高分子脂肪酸塩を水に溶解した電解質であって、前記負極の金属が、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、錫(Sn)、鉛(Pb)、これらの少なくとも二種以上の金属からなる合金、及び、前記合金に、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び、シリコン(Si)の少なくとも一種以上の金属が含まれている合金であることを特徴とする金属空気燃料電池。
  8. 前記高分子脂肪酸塩が、高分子脂肪酸ナトリウム又は高分子脂肪酸カリウムであることを特徴とする請求項7に記載の金属空気燃料電池。
  9. 前記高分子脂肪酸ナトリウム又は高分子脂肪酸カリウムが、アクリル酸ナトリウム又はアクリル酸カリウム、メタクリル酸ナトリウム又はメタクリル酸カリウム、及び、不飽和二重結合を有する単量体の中から選ばれる少なくとも1つ以上の単量体から合成される重合体であることを特徴とする請求項8に記載の金属空気燃料電池。
  10. 前記中性水系電解質が、中性塩化物と高分子脂肪酸塩とを水に溶解した電解質であることを特徴とする請求項7に記載の金属空気燃料電池。
  11. 前記高分子脂肪酸塩が、高分子脂肪酸ナトリウム又は高分子脂肪酸カリウムであることを特徴とする請求項10に記載の金属空気燃料電池。
  12. 前記高分子脂肪酸ナトリウム又は高分子脂肪酸カリウムが、アクリル酸ナトリウム又はアクリル酸カリウム、メタクリル酸ナトリウム又はメタクリル酸カリウム、及び、不飽和二重結合を有する単量体の中から選ばれる少なくとも1つ以上の単量体から合成される重合体であることを特徴とする請求項11に記載の金属空気燃料電池。
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