以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。また、本明細書において、原料が導入される方を上流側及び後方(図1〜図6において紙面左側)とし、原料が排出される方を下流側、押し出し方向、及び前方(図1〜図6において紙面右側)とする。また上下流方向を前後方向とする。また上下流方向を横断する幅方向を左右方向とする。また幅方向内側を内方とし、幅方向外側を外方とする。図1に示すように、本実施の形態の繊維強化樹脂成形体の製造装置1は、混練装置2と、裁断分離装置100と、搬送装置3と、成形装置4とを備えている。混練装置2は、樹脂と繊維との混練物を製造し、混練物を吐出する。裁断分離装置100は、吐出部から押し出された混練物を裁断して、裁断混練物を生成する。搬送装置3は、裁断混練物を成形装置4に搬送する。成形装置4は、裁断混練物を成形して、繊維強化樹脂成形体を製造する。
<混練装置>
混練装置2は、LFT−D法により、熱可塑性樹脂に繊維が混入されてなる成形体材料としての混練物を製造する装置である。つまり、熱可塑性樹脂と複数本の連続した繊維の束とを導入し、繊維を裁断しながら開繊させ、樹脂と繊維とを混練して混練物を生成する。熱可塑性樹脂及び繊維は特に限定されないが、熱可塑性樹脂はポリアミド樹脂であることが好ましく、繊維はガラス繊維、炭素繊維などであることが好ましい。炭素繊維を用いた場合には、製造装置1において熱可塑性CFRP(炭素繊維強化プラスチック:Carbon
Fiber Reinforced Plastics)成形体が製造される。
混練装置2は、第1混練機10と、第2混練機20と、繊維供給部30とを含んでいる。第1混練機10は、熱可塑性樹脂と繊維とを混練する。第2混練機20は、第1混練機10に導入される熱可塑性樹脂を、第1混練機10内での繊維との混練に先立って、混練・溶融する。繊維供給部30は、第1混練機10に繊維を供給する。
第1混練機10は、混練軸11と、シリンダー12と、駆動部13aと、減速機13bと、堰体14と、ダイ15とを含んでいる。
混練軸11は、スクリュー11aと、回転軸11bとを有している。第1混練機10は、1本の混練軸11を有する単軸混練機であってもよく、複数本の混練軸11を含む多軸混練機であってもよいが、本実施の形態では、互いに並列に配置された2本の混練軸11を含んだ2軸混練機としている。2本の回転軸11bの回転方向は同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。
この2本の混練軸11を内部に収容するようにシリンダー12が設けられている。シリンダー12と混練軸11との隙間は、熱可塑性樹脂及び/または繊維が通過する流路となる。シリンダー12は、第2混練機20から供給される熱可塑性樹脂を第1混練機10内に導入するための樹脂供給口12aと、繊維供給部30から供給される複数本の連続した繊維を第1混練機10内に導入するための繊維供給口12bとを有している。繊維供給口12bには、導入される連続した繊維を切断するための部材が設けられてもよいが、本実施の形態ではそのような部材は省略されており、繊維供給部30から導入される連続した繊維をそのまま第1混練機10内へ送る。
混練軸11の一方(上流側)の軸端には、混練軸11にトルクを分配する減速機13bを経由して駆動部13aが接続されている。減速機13bは、2本の混練軸11を所定の回転速度で同期させて回転させる。
混練軸11の他方(下流側)の軸端側には、堰体14が接続されている。堰体14は、ブレーカープレートと中間軸受とを兼用でき、流路と交差する方向に延びるように配置されているので、熱可塑性樹脂と繊維との混練物に背圧を与える。
堰体14は、混練物の流路となる開口部を有している。本実施の形態の堰体14は、2本の混練軸11のスクリュー11aのそれぞれの回転方向に沿う円弧状の開口部を複数有している。開口部は、混練軸11ごとに対応して設けられている。
この堰体14においてスクリュー11aと反対側には、ダイ15が設けられている。ダイ15は、混練物を排出する吐出部15aを有している。
第2混練機20は、上述した第1混練機10のシリンダー12の樹脂供給口12aに導入される熱可塑性樹脂を予め溶融するものであって、スクリュー21aおよび回転軸21bを有する混練軸21と、シリンダー22と、駆動部23aと、減速機23bと、ホッパー24とを含んでいる。第2混練機20は、1本の混練軸21を有する単軸混練機であってもよく、複数本の混練軸21を含む多軸混練機であってもよい。混練軸21は、スクリュー21aのみが回転軸21bに組み込まれていてもよく、回転軸21bの中間部にはスクリューに代えてパドルが組み込まれていてもよい。シリンダー22は、溶融された熱可塑性樹脂を第1混練機10に供給する吐出部22aを有している。駆動部23a及び減速機23bは、混練軸21を所定の回転速度で回転させる。ホッパー24は、混練軸21とシリンダー22との間で混練される熱可塑性樹脂の原料25を受ける。
繊維供給部30は、上述した第1混練機10のシリンダー12の繊維供給口12bに導入される繊維原料32を供給する。繊維供給部30は、複数本の連続する繊維の束が巻回された繊維原料32を載置する載置部31を含んでいる。載置部31は、繊維原料32から繊維の束の先端を取り出し、第1混練機10のシリンダー12の繊維供給口12bに導入するための第1及び第2案内部31a、31bを有している。
<裁断分離装置>
図1に示すように、裁断分離装置100は、混練物を前方に向けて押し出す混練装置2の吐出部15aと向き合うように配置されている。裁断分離装置100は、混練装置2の吐出部15aから押し出された連続する混練物K1を、成形装置4の成形型50に投入する非連続的な裁断混練物K2に変えるためのものである。主に図2〜図6を参照して、本実施の形態の裁断分離装置100について説明する。
裁断分離装置100は、裁断部110と、把持部120と、移送部130と、コンベア140と、戻し部150とを含んでいる。
裁断部110は、吐出部15aから押し出された混練物K1の前端領域を裁断して、裁断混練物K2を生成する。裁断混練物K2は、後述する成形装置4の成形型50に投入されるので、成形型50のキャビティに適するサイズ及び重量に切断されたものである。裁断部110は、混練物を裁断する裁断刃111と、この裁断刃111の裁断動作を駆動および制御する制御部112とを有している。
裁断刃111は、吐出部15aから押し出されて前方に移動する長尺の混練物K1を、裁断する。この裁断刃111は、吐出部15aから押し出される混練物K1の上方に配置され、混練物K1よりも上方の上方位置(図2)から混練物K1と同じ高さになる下方位置(図3)まで進動(下降)することにより、混練物K1を裁断する。また下方位置(図3)から上方位置(図2)まで退動(上昇)し、上方位置(図2)に復帰することにより、次の裁断を準備する。
裁断刃111は、包丁の如き板状であり、下流側の前面111fおよび上流側の後面111bまで厚み一定の刀身111cと、刀身111cから下向きに尖っている刃先部111dとを有する。前面111fおよび後面111bは裁断刃111の進退動方向と略平行な平坦面である。上下流方向と直交するように左右方向に延びる刃先部111dは、水平よりも、一方が高く他方が低くなるよう傾斜していることが好ましい。これにより刃先部111dは混練物K1に容易に貫入する。
刃先部111dは裁断刃111の下縁に設けられる片刃であって、刃先部111dの後面111bは、刀身111cおよび刃先部111dに共通する平坦面とされる。刃先部111dの刃面111gは、前方へ指向するとともに裁断刃111の進退動方向に対して傾斜している。図9は裁断刃111の刃先部111dを示す拡大図である。水平面に対する刃面111gの刃角θは、10°以上35°以下の範囲に含まれる所定値である。なお刃角θが10°未満の場合、混練物K1を切断し難くなってしまう。また刃角θが35°を超える場合、刃先部111dの耐久性が悪化する。裁断刃111の上流側の後面111bには、混練物K1の熱融着を防止するように表面処理されている。また下流側の前面111fおよび刃面111gにも表面処理されることが好ましい。この表面処理は例えばフッ素コーティングである。
図2に表される制御部112は、裁断刃111の進退動を制御する。制御部112は、前方に押し出される混練物K1に対して直交するように裁断刃111を移動させる。あるいは図示しない変形例として混練物K1の押し出し方向に対して傾斜するように裁断刃111を移動させてもよい。このような裁断刃111の進退動を補助するために、バネなどを利用してもよい。制御部112は、例えば、サーボモータ制御装置である。
また、裁断される混練物K1中の繊維長を混練装置2で短くした場合には、切断の確実性を高めるために、裁断前の混練物K1の同じ位置に、裁断刃111が複数回進退動されるように(複数度切りアクション)制御してもよい。このような混練物K1の同じ位置での複数回の裁断を実現するために、例えば、第1コンベア141を停止させる。このような複数度切りアクションは、効率の観点から2度切りアクションであることが好ましい。なお、裁断部110には、裁断刃111を保持する部材(図示せず)が設けられてもよい。また、裁断刃111を下方で支持するための受け板(図示せず)が設けられてもよい。
戻し部150は、裁断刃111の前方に隣り合って配置される。戻し部150と裁断刃111の間には隙間がある。また戻し部150は、裁断混練物K2(および混練物K1)よりも上方に配置され、通常は裁断混練物K2(および混練物K1)と接触しない。ただし混練物K1を裁断する際に裁断混練物K2が裁断刃111に付着して持ち上がると、戻し部150は裁断混練物K2に線接触し、裁断混練物K2を下方に落として元の位置に戻す。
戻し部150は、ローラ151、枢軸152、およびブラケット153を有する。ローラ151は、混練物K1の幅方向、つまり押し出し方向と交差する方向、に延びる円筒体である。枢軸152は、ローラ151の中心孔を貫通するシャフトである。ブラケット153は枢軸152の両端と連結して、ローラ151および枢軸152を支持する。またブラケット153は、ローラ151および枢軸152の上下方向位置を適宜調整可能である。これによりローラ151は、吐出部15aから押し出される混練物K1の上下方向寸法に対応する上下方向位置に調整されて保持される。ローラ151の外周面は表面処理されることが好ましい。この表面処理は例えばフッ素コーティングである。
なお図示しない変形例として、ローラ151を円柱体として、該円柱体の両端面をピボットで回転自在に支持してもよい。ローラ151は裁断混練物K2と線接触する間に上下方向に移動する必要がない。線接触による接触面積は小さく、裁断混練物K2の接着力が小さいためである。ローラ151は若干の回動を許容されることにより、裁断混練物K2はローラ151から容易に外れ、自重で落下する。また図示しない変形例としてローラ151は回動不能に支持されてもよい。
把持部120は、混練物K1が裁断部110で裁断されて裁断混練物K2が生成される位置で、当該裁断混練物K2を把持する。把持部120は、裁断混練物K2の両側方を把持する。換言すると、把持部120は、裁断混練物K2の移動方向と交差(本実施の形態では直交)する両側を挟むように把持する。さらに換言すると、把持部120は、裁断混練物K2において移送部130による把持部120の移動方向と交差する両側面に突き刺さる。
本実施の形態では、把持部120は、混練物K1から裁断された裁断混練物K2を両側から掴むように構成されている。具体的には、把持部120は、吐出部15aから吐出される混練物の両外側にそれぞれ配置されるとともに、内方に向けて突出する突起部121と突起部121を内方及び外方、すなわち左右(横)方向に移動させる往復手段122を含んでいる。
往復手段122は、突起部121に連結されている。往復手段122は、突起部121を裁断混練物に刺し込むために突起部121を内方に移動させるとともに、裁断混練物に刺し込まれた突起部121を外方に移動させて裁断混練物から外す。往復手段122は特に限定されず、その動力源は特に限定されないが、例えば、エアー、油圧、電気などである。
1対の突起部121は、互いに向き合うフォーク状あるいは剣山状の細く尖った針状突起を有し、往復手段122によって互いに近づいたり離れたりするよう同時に進退動する。1対の突起部121が内方(図7に示す矢印の方向)に移動されると、混練物に刺し込まれる。突起部121は、混練物K2の熱融着を防止するように表面処理されている。この表面処理は例えばフッ素コーティングである。
移送部(ガイド)130は、把持部120を前方に向けて移動させて、裁断後の混練物K2を裁断前の混練物K1と分離する。移送部130は、前後方向に把持部120を移動させる往復手段133を含んでいる。つまり、移送部130により、把持部120は前後方向の往復移動が可能に構成されている。図6では、移送部130は、第2コンベア142と第3コンベア143との間を把持部120が往復するように把持部120を移動させる。
具体的には、図7及び図8に示すように、把持部120の往復手段122上に、連結部材131が連結されている。この連結部材131上に、固定部材132が連結されている。この固定部材132の後方に、固定部材132を前後方向に移動させる往復手段133が取り付けられている。往復手段133は、突起部121及び往復手段122を有する把持部120と、連結部材131と、固定部材132とを含むユニットを、前後方向に往復移動させる。往復手段133は特に限定されず、その動力源は特に限定されないが、例えば、エアー、油圧、電気などである。
なお、把持部120の左右方向の移動及び移送部130の前後方向の移動は、リニアガイドなどを用いてもよい。
図2に示すように、コンベア140は、裁断前の混練物K1を下方から支持して前方に移動させる。コンベア140は、混練物を連続的に搬送する機械であり、本実施の形態では、輪状にしたベルトを台車の上で回転させ、その上に混練物を載置して移動させるベルトコンベアを用いている。
本実施の形態のコンベア140は、第1コンベア141と、第2コンベア142と、第3コンベア143とを含んでいる。上流側(後方)から下流側(前方)に向けて、第1コンベア141、第2コンベア142、及び第3コンベア143の順に配置されている。
第1コンベア141は、吐出部15aと裁断部110(裁断刃111)との間に配置され、吐出された混練物K1を下方から支持して、裁断部110に向けて前方に移動させる。第1コンベア141の載置面(上面)と、吐出された混練物K1の下面とは、同一平面上に位置している。つまり第1コンベア141の載置面は、混練物K1の下面に接触する。
第2コンベア142は、第1コンベア141の前方に配置され、把持部120に把持された裁断混練物を下方から支持して前方に移動させる。つまり、第2コンベア142は、裁断部110で裁断された位置の裁断混練物K2を、前方に移動させる。第2コンベア142の載置面は、第1コンベア141の載置面と同一平面上に位置している。つまり、混練装置2から押し出される混練物K1は、1平面上で裁断される。このため、混練装置2から押し出される混練物K1の伸縮を防止して、混練物K1を裁断できるので、裁断混練物K2の品質を高めることができる。
第3コンベア143は、第2コンベア142の前方に配置され、把持部120から離れた裁断混練物K2を下方から支持して前方に移動させる。第3コンベア143は、後述する搬送装置3に相当する。第3コンベア143の載置面は、第2コンベア142の載置面と同一平面上に位置している。つまり、裁断混練物K2は、押し出し方向において前方に直進するように搬送される。これにより、裁断混練物K2の伸縮を防止して、搬送されるので、裁断混練物K2の品質を高めることができる。
第1〜第3コンベア141〜143には、混練物が冷えて固まらないように混練物を加熱する加熱部(図示せず)が設けられている。加熱部は、例えば混練物に過熱蒸気を加えて保温する機能を有しており、例えばトンネル炉としてもよい。
なお、第2コンベア142と第3コンベア143とは分離されたものではなく、1つのコンベアであってもよい。また、各コンベアの代わりに、フリーローラや、すべり台のような傾斜面等を用いてもよい。
また、本実施の形態の裁断分離装置100において、吐出部15a前方に、吐出される混練物K1のバイパス経路(図示せず)を設けてもよい。バイパス経路は、例えば、吐出部15aと第1コンベア141との間に配置される。バイパス経路は、混練物K1が不良であると判断されたときに、その混練物K1の一次的な保管、または、その混練物K1を混練装置2に戻す経路として用いられる。
次に裁断分離装置100の作用を詳細に説明する。
図2に示すように、コンベア140で後方から前方へ長尺な混練物K1が搬送され、裁断部110よりも前方の前端領域が所定の長さに達すると、裁断刃111が図2に示す上方位置から図3に示す下方位置に進動し、第1コンベア141と第2コンベア142の間に入り込む。これにより刃先部111dが混練物K1の上面に当接して貫入し、混練物K1の前端領域を裁断する。裁断された前端領域は裁断混練物K2となる。なお裁断刃111の下降速度は、混練物K1の前進速度よりも極めて速い。したがって裁断刃111による裁断中に、混練物K1が裁断刃111の後面111bに押しつけられることはない。
次に図4に示すように裁断刃111が退動し、第1コンベア141と第2コンベア142の間から抜け出す。裁断刃111の上昇速度は、混練物K1の前進速度よりも極めて速いので、混練物K1は後面111bに付着しない。ただし裁断混練物K2が裁断刃111の前面111fに付着して、裁断刃111とともに上昇する場合がある。この理由として、裁断混練物K2の裁断直後の裁断面の粘着度が大きいため、下流側に指向する刃面111gが裁断混練物K2に押しつけられて刃面111gが裁断混練物K2に付着するため、裁断混練物K2に接触する刃面111gの接触面積が大きく裁断混練物K2が刃面111gに付着するため、また裁断刃111の刃面111gが裁断混練物K2に一瞬押しつけられることにより裁断混練物K2の一部が上方へ回り込み前面111fに付着するため、等が考えられる。
そうすると裁断混練物K2は次に戻し部150と当接し、上昇を規制される。一方で裁断刃111は上方位置(図2)に向けて上昇する。これにより裁断混練物K2は裁断刃111から引き剥がされる。
図4に示すように裁断混練物K2の上面が、戻し部150のうちローラ151の最下端と線接触する。このように裁断混練物K2と戻し部150の接触面積が小さいため、裁断混練物K2は自重によって戻し部150から離れて下方に落下し、図5に示すように第2コンベア142の載置面に復帰する。
<搬送装置>
図1に示すように、搬送装置3は、裁断分離装置100の裁断部110で所定の大きさに切断された混練物を成形装置4に移動する。本実施の形態では、搬送装置3は、裁断分離装置100の第3コンベア143と、第1載置部41と、第1把持部42と、スライド部43とを含んでいる。
第1載置部41は、第3コンベア143から搬送された裁断混練物K2を載置する台である。この第1載置部41に載置された裁断混練物を把持して成形型50に投入するために、第1把持部42が設けられている。第1把持部42は、例えばロボットアームである。
第1把持部42により、裁断混練物は、スライド部43上に載置された成形型50の下型52上に配置される。スライド部43は、水平方向に移動可能に構成されており、下型52をホルダ44上に移動させる。スライド部43は、例えばスライドテーブルである。
<成形装置>
成形装置4は、裁断混練物を加圧成形して、繊維強化樹脂成形体を製造する。成形装置4は、ホルダ44と、プレート45と、第2把持部46と、第2載置部47と、上型51と下型52とを有する成形型50とを含んでいる。
ホルダ44は、スライド部43により裁断混練物が配置された下型52を支持する。プレート45は、成形型50の上型51を支持する。
成形型50は、上型51と下型52とを含み、上型51と下型52との空洞部分であるキャビティに裁断混練物が配置され、上型51と下型52とが閉じられることにより、この裁断混練物を加圧成形する。
成形型50により製造された繊維強化樹脂成形体を把持するために、第2把持部46が設けられている。第2把持部46により把持された繊維強化樹脂成形体を、第2載置部47に載置する。第2載置部47は、完成品である繊維強化樹脂成形体を載置する台である。
続いて、本実施の形態の繊維強化樹脂成形体の製造方法について説明する。
まず、樹脂と繊維とを混練して、混練物を製造する。この工程では、図1に示す混練装置2により、以下のように、成形体材料としての混練物を生成する。
第2混練機20のホッパー24を経由して熱可塑性樹脂の原料25を供給する。駆動部23a及び減速機23bを用いて混練軸21を所定の回転速度で回転させ、混練軸21によりシリンダー22内の熱可塑性樹脂の原料25を溶融・混練する。
また、複数本の連続した繊維原料32を準備する。複数本とは、例えば1万2千本以上であり、2万4千本以上であってもよく、5万本以上であってもよい。本実施の形態では、繊維原料32として、1万2千本以上の繊維の束(ロービング)とし、この繊維の束を複数束準備する。複数本の連続した繊維が巻回された繊維原料32を繊維供給部30の載置部31に載置し、繊維原料32の先端部を第1案内部31aに通し、第2案内部31bに支持させる。
次に、第1混練機10に、第2混練機20で溶融した樹脂と、繊維供給部30で準備した複数本の連続した繊維とを導入する。この工程では、第2混練機20の吐出部22aから排出される溶融された樹脂を、第1混練機10の樹脂供給口12aに導入する。また、繊維供給部30の第1案内部31a及び第2案内部31bから導かれる複数本の繊維の先端部を、第1混練機10の繊維供給口12bに導入する。
次に、繊維を裁断しながら熱可塑性樹脂と繊維とを混練することで混練物を製造する。具体的には、駆動部13aを用いて回転軸11bを回転させることにより、混練軸11を所定の回転速度で回転させる。混練軸11のスクリュー11a(パドルを含む場合はスクリュー11a及びパドル)の回転によって、混練軸11とシリンダー12との間に形成される流路を移動する樹脂及び繊維に圧力が加えられるので、繊維を裁断しながら、樹脂と繊維とを混練する。
スクリュー11aの回転に伴って、混練軸11とシリンダー12との間の流路を移動した混合物は、最下流に位置するスクリュー11aと堰体14との間に充満され、スクリュー11aが回転しない領域で適度な背圧が加えられるので、ショートパスした未開繊の繊維をばらばらにできる。開繊された繊維には、樹脂が含浸される。この混練物K1は、堰体14の開口部を通過し、ダイ15の吐出部15aから排出される。
次に、裁断分離装置100で、混練装置2から吐出される混練物K1を裁断して裁断混練物K2を生成し、裁断前の混練物K1と分離する。具体的には、以下の工程を実施する。
図2〜図5に示すように、裁断部110により混練装置2から前方に吐出される混練物K1を裁断して、裁断混練物K2を生成する。この工程では、混練装置2の吐出部15aから押し出された混練物K1を第1コンベア141で下方から支持して前方に移動させつつ、裁断刃111を混練物K1上から下方に向けて進動させる。これにより、長尺の混練物K1を裁断して、適切なサイズ及び重量を有する裁断混練物K2を生成する。裁断混練物K2は、第2コンベア142で下方から支持される。
裁断混練物K2は、戻し部150によって第2コンベア142に戻された位置で、図6に示す把持部120により把持される。この工程は具体的には、図7に示す往復手段122により突起部121を矢で示す内方に移動させて、裁断混練物K2に突起部121を刺し込む。
その後、移送部130により、把持部120を前方に向けて移動させ、後方の混練物K1から分離する。この工程では、図6に仮想線で示すように、裁断混練物K2を把持部120に把持した状態で、移送部130の往復手段133により、把持部120を第3コンベア143まで前方に移動する。
次いで、把持部120の往復手段122により突起部121を外方に移動させて、裁断混練物K2から突起部121を外す。これにより、裁断混練物K2は、第3コンベア143に載置される。この状態で、移送部130の往復手段133により、把持部120を第2コンベア142まで後方に移動する。これにより、図6に実線で示すように把持部120を戻し位置に配置できる。
このように、往復手段122で把持部120の突起部121を左右方向に移動するとともに、往復手段133で把持部120を前後方向に移動することを繰り返す。このため、混練装置2から前方に吐出される混練物K1を裁断及び分離する工程を連続して実施できる。
次に、図1に示すように、搬送装置3を用いて、裁断混練物を成形装置4の成形型50のキャビティに配置する。具体的には、第3コンベア143で、裁断混練物が冷却されない状態を維持しながら、第1載置部41に搬送する。そして、第1載置部41上に載置された裁断混練物を第1把持部42が把持して、スライド部43上に配置された下型52に移動させる。スライド部43により、裁断混練物が配置された下型52をホルダ44上に位置させる。
次に、混練物を加圧成形する。具体的には、プレート45に取り付けられた上型51を下方に移動させて、上型51と下型52とを合わせて加圧成形する。この工程により、繊維強化樹脂成形体を製造できる。
製造した繊維強化樹脂成形体を、図1に示すように第2把持部46で把持し、第2載置部47上に載置する。
ところで本実施形態の裁断分離装置100は、繊維と樹脂との混練物K1を製造し、混練物K1を前方に向けて押し出す第1混練機10の吐出部15aに配置されるものであって、上下方向に進退動して下方位置(図3)で吐出部15aから押し出される混練物K1の前端領域を裁断して裁断混練物K2を生成し、上方位置(図2)で混練物K1から離れる裁断刃111と、裁断混練物K2よりも上方かつ裁断刃111よりも前方に配置されて、下方位置から上方位置へ復帰する裁断刃111に付着して上昇する裁断混練物K2に線接触し(図4)、該裁断混練物K2を復帰中の裁断刃111から剥がして落下させる(図5)戻し部150とを備える。これにより、裁断混練物K2を整然と前方へ搬送することができ、裁断混練物K2が裁断刃111に付着するという不都合を解決することができる。
また本実施形態の戻し部150は、裁断混練物K2の上面に当接するローラ151と、混練物K1の幅方向に延びてローラ151を枢支する枢軸152と、枢軸152を支持するブラケット153を含む。これによりローラ151は自由な回動を許容されて、裁断混練物K2は自重でローラ151から容易に外れることができる。
また本実施形態のブラケット153は枢軸152の上下方向位置を調整可能である。これにより吐出部15aから押し出される混練物K1の上下方向寸法に応じ、ローラ151は、吐出部15aから押し出される混練物K1の上面との間で上下方向隙間を確保するように保持される。
また本実施形態の裁断刃111は、裁断刃111の前面111f、後面111b、刃面111gを被覆するフッ素コーティングを有する。これにより混練物K1および裁断混練物K2が裁断刃111に付着し難くし、たとえ付着しても外れ易くされる。
また本実施形態の裁断分離装置100は、裁断刃111よりも後方に配置されて、混練物K1を下方から支持して前方に移動させる第1のコンベア141と、裁断刃111よりも前方に配置されて、裁断混練物K2を下方から支持して前方に移動させる第2のコンベア142をさらに備える。これにより、混練物K1および裁断混練物K2を変形させることなく速やかに前方へ搬送させることができる。
なお図示しない変形例として裁断分離装置100は、混練物K1よりも上方かつ裁断刃111よりも後方に配置されて、下方位置から上方位置へ復帰する裁断刃111に付着して上昇する混練物K1に線接触し、該混練物K1を復帰中の裁断刃111から剥がして落下させる第2の戻し部をさらに備えてもよい。これにより混練物K1を整然と前方へ搬送することができ、混練物K1が裁断刃111に付着するという不都合を解決することができる。
また本実施形態の裁断分離装置100及び繊維強化樹脂成形体の製造装置1によれば、裁断分離装置100の裁断部110で混練装置2から押し出された混練物K2を裁断できる。このため、成形装置4の成形型50で成形する形状に応じたサイズ及び重量の裁断混練物K2を生成できる。このように、成形型50に合わせて適切に混練物を裁断することができるので、利用可能な成形型50の制約を低減できる。
また、裁断分離装置100において混練物K1を連続して裁断すると、裁断混練物K2と、上流側の混練物K1とは、裁断面でわずかに接触しない程度の間隔に位置する。しかし、本実施の形態では、裁断混練物K2を把持部120で把持して、移送部130により把持部120を強制的に前方に移動して、裁断後の混練物K2を裁断前の混練物K1から引き離す。これにより、裁断混練物K2が混練装置2から押し出される裁断前の混練物K1と接触することを防止できるので、成形する形状に応じて適切に裁断された混練物K2の形状を維持できる。そして、搬送装置3によって、この裁断混練物K2は、成形型50に応じて適切に裁断された形状を維持して、成形装置4に搬送される。
したがって、本実施の形態の裁断分離装置100及び繊維強化樹脂成形体の製造装置1は、製造する繊維強化樹脂成形体の形状の制約を低減し、かつ効率よく繊維強化樹脂成形体を製造することができる。
また、本実施の形態の裁断分離装置100及び繊維強化樹脂成形体の製造装置1において、繊維と樹脂との混練物を製造し、この混練物K1を前方に向けて押し出す混練装置2の吐出部15aに配置され、吐出部15aから押し出された混練物K1を裁断して裁断混練物K2を生成する裁断部110と、裁断混練物K2を把持する把持部120と、この把持部120を移動させる移送部130とを備え、把持部120は、裁断混練物K2の両側方を把持する。
本実施の形態の混練装置2は、必要な物性に応じて混練物中の繊維長を調整することができる。このような混練装置2のダイ15の吐出部15aから吐出される混練物K1は、前方に直進して吐出されるとは限らず、搬送方向に対して左右のいずれか一方にずれて吐出されることがある。また、裁断部110での裁断において、裁断刃111が斜めに降りてくる際に引っ張られて、中心からずれてしまうことがある。これらの場合、成形装置4の成形型50に混練物を投入する位置がずれる可能性が生じる。しかし、本実施の形態では、混練物K1の混練装置2から出てきた際の曲り、裁断刃が斜めに降りてくる際に成形物が引っ張られることによる中心からずれなどが生じても、把持部120は裁断混練物K2をセンターに位置決めするために両側方から把持できる。つまり、把持部120は、裁断混練物K2のセンタリング機能を有しているので、把持した裁断混練物K2の移動において、位置精度を向上できる。これにより、裁断した混練物K2を成形装置4の成形型50内に適切に配置できる。成形型50内での混練物の流動挙動は、裁断混練物が投入される位置と密接な関係があるので、安定した品質の繊維強化樹脂成形体を製造することができる。
なお、本実施の形態の裁断分離装置100及び繊維強化樹脂成形体の製造装置1において、把持部120が裁断混練物K2の両側方を把持する場合には、把持部120は裁断部110で裁断された位置で裁断混練物K2を把持しなくてもよい。つまり、把持部120は、後工程の位置決め時までの差支えのない位置で裁断混練物K2を把持してもよい。
また、把持部120が裁断混練物K2の両側方を把持する場合には、移送部130は、把持部120を前方に移動させ裁断混練物K2を裁断前の混練物K1と分離しなくてもよい。
しかし、裁断分離装置及び繊維強化樹脂成形体の製造装置において、把持部120は裁断混練物K2の両側方を把持し、移送部130は把持部120を前方に移動させて裁断混練物K2を裁断前の混練物K1と分離することが好ましい。この場合、裁断混練物K2が中心から側方にずれるなど所定位置からずれても、把持部120は裁断混練物K2を容易に把持できるため、高い位置精度で、把持した裁断混練物K2を前方中心へ移動できる。それに加えて、把持部120は裁断部110で裁断された位置で裁断混練物K2を把持することがより好ましい。この場合、長尺の混練物K1を連続して裁断して、効率よく裁断混練物K2を製造できる。したがって、裁断した混練物K2を成形装置4の成形型50内により適切に、かつ効率よく配置できる。
本実施の形態の裁断分離装置100及び繊維強化樹脂成形体の製造装置1において好ましくは、裁断前の混練物K1を下方から支持して前方に移動させるコンベア140をさらに備えている。
本発明者は、混練装置2から所定の速度で混練物K1が押し出されるので、吐出直後に動力を有していないフリーローラを配置して混練物K1の押し出される力を利用することを考えた。しかし、鋭意検討の結果、フリーローラの代わりに、搬送能力の高いコンベア140が配置されている場合の方が、効率よく裁断混練物K2を生成できることを本発明者は見出した。すなわち、混練装置2から押し出される混練物K1をコンベア140で所定の速度で移動することにより、効率よく裁断できることがわかった。それに加えて、混練装置2から押し出される混練物K1の吐出速度と、第1コンベア141の搬送速度とを同期させる(同じ速度にする)ことにより、押し出される混練物K1の伸縮が防止されるので、製造する繊維強化樹脂成形体の品質を高めることができる。
本実施の形態の裁断分離装置100及び繊維強化樹脂成形体の製造装置1において好ましくは、コンベア140は、吐出部15aと裁断部110との間に配置されるとともに、吐出された混練物K1を下方から支持して前方に移動させる第1のコンベア(図2では第1コンベア141)と、この第1のコンベアの前方に配置されるとともに、把持部120に把持された裁断混練物K2を下方から支持して前方に移動させる第2のコンベア(図2では第2及び第3コンベア142、143)とを含んでいる。
第1のコンベア(第1コンベア141)により、混練装置2から押し出される混練物K1を所定の速度で移動できるとともに、第2のコンベア(第2及び第3コンベア142、143)により裁断混練物K2を所定の速度で移動できる。つまり、第1コンベア141、第2コンベア142及び第3コンベア143の速度を同一とすることも異なるようにすることも可能になる。このため、第1コンベア141を混練装置2の混練物K1の押出速度に応じた速度に設定し、第2コンベア142及び第3コンベア143を下流工程の動作ピッチに応じた速度に設定することもできる。したがって、裁断混練物K2の搬送ピッチを任意に設定できるので、成形する形状等に併せて適切な速度で移動できるため、より効率よく繊維強化樹脂成形体を製造できる。
本実施の形態の裁断分離装置100及び繊維強化樹脂成形体の製造装置1において好ましくは、移送部130は、前後方向に把持部120を移動させる往復手段133を含んでいる。
これにより、混練物が裁断された位置と、この裁断位置から前方に離れた位置とを把持部120が往復運動する。このため、裁断混練物K2が裁断前の混練物K1と接着することを防止しながら、混練装置2から押し出される混練物K1を連続して裁断できる。したがって、裁断混練物K2をより効率よく製造できるので、繊維強化樹脂成形体をより効率よく製造できる。
本実施の形態の繊維強化樹脂成形体の製造装置1において、裁断分離装置100は、搬送装置3(第3コンベア143)を含んでいる。
これにより、裁断分離装置100の裁断部110で裁断された混練物K2を把持部120で把持して、移送部130で第3コンベア143に移動させることができる。このため、より効率よく繊維強化樹脂成形体を製造することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。