JP2018127746A - 弾性繊維の製造方法、弾性繊維製品の製造方法、弾性繊維及び弾性繊維製品 - Google Patents

弾性繊維の製造方法、弾性繊維製品の製造方法、弾性繊維及び弾性繊維製品 Download PDF

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晃 野村
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Yolanda Chang
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雄士 鞠谷
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Wataru Takarada
亘 宝田
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洋介 太田
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Abstract

【課題】機械的特性が向上した弾性繊維を製造する。
【解決手段】本発明の製造方法は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)を含む原料組成物を溶融紡糸する際に、紡糸速度を2000m/分〜10000m/分の範囲に設定する。このような高速の紡糸速度でTPUの原料組成物を紡糸すると、引張強さ、引張弾性率等の機械的特性が改善されたTPU弾性繊維が得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、特に、熱可塑性ポリウレタンを用いた弾性繊維の製造方法、この弾性繊維を用いた弾性繊維製品の製造方法、並びに弾性繊維及び弾性繊維製品に関する。
従来より、ゴム状弾性を持つ繊維、即ち弾性繊維(JIS L0204-3)は、衣料のみならず産業資材など多様な分野で広く用いられており、このような弾性繊維の原料としては、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性ポリエーテルエステルアミド(TPA)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)等が広く知られている。
これらの中でも、特にTPUを用いた繊維は、耐薬品性、耐摩耗性、製品の軽量化、他の材料との接着性等の点では優れているものの、引張強さや引張弾性率などの機械的特性が、ナイロン系(PA66等)、ポリエステル系(PET等)の繊維と比較して十分ではなかった。
特開2005−281901号公報 特開2013−241701号公報
従って、本発明は、機械的特性が向上したTPUを製造可能な方法を提供することを目的とする。
特許文献1に開示されているように、TPU繊維の紡糸速度は、一般に450m/分〜1000m/分程度が強度向上などの点で好適とされている(特許文献1の段落0055)。特許文献2には、高速紡糸可能な弾性繊維の一例として、ポリウレタン樹脂を開示しているが、これはポリエーテルエステル樹脂等の複数の樹脂ともに使用可能性を示唆されたにすぎず、ポリウレタン樹脂の高速紡糸については未だ検討されていない。
本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、紡糸速度を2000m/分以上に高めることで、TPU繊維の機械的特性が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、弾性繊維を製造する方法に関するものであって、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、すなわち、ソフトセグメントとハードセグメントとを含むTPUを原料として使用し、このTPUを含む原料組成物を、2000m/分〜10000m/分の紡糸速度で溶融紡糸し、弾性繊維を製造する方法である。
本発明の好ましい態様は以下の通りである。
TPUのソフトセグメントは一般に長鎖ポリオールとイソシアネートとの反応により生成されるが、原料となる長鎖ポリオールには、数平均分子量3000未満のポリオールを50質量%以上含有させることが好ましい。
TPUの硬度は特に限定されないが、ショア硬度を74D以下とすることが好ましい。更に、TPUのショア硬度を70D以下とすれば弾性回復率やエネルギー損失がより改善される。
TPUのハードセグメント含有率は特に限定されないが、一例を挙げると10質量%〜90質量%である。
本発明は、上記方法により得られた弾性繊維、この弾性繊維を用いて弾性繊維製品を製造する方法、更に、この製造方法に得られた弾性繊維製品も包含する。
本発明によれば、薬品耐性等のTPU繊維の特性を維持したまま、機械的特性が改善されたTPU弾性繊維を得ることができる。
図1は繊維製造装置の一例を示す側面図である。 図2は実験装置を示す部分断面図である。 図3(a)〜(d)は繊維の外径変化を示すグラフである。 図4は弾性収縮率の測定結果を示すグラフである。 図5(a)は引張弾性率(initial young module)のグラフであり、図5(b)は靱性(toughness)のグラフであり、図5(c)は破断伸度(elongation at break)のグラフであり、図5(d)は強度(tenacity)を示すグラフである。 図6(a)〜(d)は応力―ひずみ曲線を示すグラフである。 図7(a)〜(c)は応力―ひずみ曲線の立ち上がり部分を示すグラフである。 図8(a)〜(d)は広角X線回折(WAXD)の回折像を示す。 図9(a)〜(d)は小角X線散乱像(SAXS)を示す。 図10(a)は弾性回復率を説明するためのグラフであり、図10(b)はエネルギー損失率を説明するためのグラフである。 図11(a)は弾性回復率を示すグラフであり、図11(b)はエネルギー損失率を示すグラフである。 図12(a)〜(d)は繊維の外径変化を示すグラフである。 図13は弾性収縮率の測定結果を示すグラフである。 図14(a)〜(d)は応力―ひずみ曲線を示すグラフである。 図15(a)は引張弾性率のグラフであり、図15(b)は靱性のグラフであり、図15(c)は破断伸度のグラフであり、図15(d)は強度を示すグラフである。 図16(a)〜(d)は広角X線回折(WAXD)の回折像を示す。 図17(a)〜(d)は小角X線散乱像(SAXS)を示す。 図18(a)は弾性回復率を示し、図18(b)はエネルギー損失率を示す。
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は特定の具体例に限定されるものではない。
本発明の弾性繊維の製造方法は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)を含む原料組成物を溶融紡糸する工程を含む。以下により詳細に説明する。
[溶融紡糸]
溶融紡糸は通常、押出機などを用いて融点以上に加熱して得た溶融状態の原料組成物を、紡糸口より気相(例えば空気中もしくは必要に応じて冷却された空気中)に吐出し、吐出された溶融糸条を細化させながら気相で冷却固化し、その後一定の速度で巻き取るという手法である。
本発明に用いる装置は特に限定されないが、その一例を図1に示す。繊維製造装置1は、押出機2と、紡糸ヘッド3と、巻取機7とを有しており、例えば、ペレット状の原料組成物が供給口9から押出機2に供給され、押出機2で溶融された後に紡糸ヘッド3のノズル(紡糸口)か気相中に溶融糸条となって吐出される。
この気相は特に限定されず、不活性ガス雰囲気、大気雰囲気など多様な気相とすることができるが、コスト面では大気雰囲気(空気)である。気相の温度は、原料組成物の融点未満であれば特に限定されないが、コスト面を考慮すると−10℃〜50℃、より好ましくは10℃〜40℃である。
吐出された溶融糸条は、気相中を走行する際に冷却されながら細化され、弾性繊維となって巻取機7で巻き取られる。巻取機7は特に限定されないが、通常、1以上のゴデットローラ4、5を有しており、このゴデットローラ4、5の回転により、溶融糸条(冷却中又は冷却後の弾性繊維をも含む)は2000m/分以上の紡糸速度で走行した後に巻取ロール6(ボビン)の周囲に巻き取られる。
なお、巻取機7の構成は上記に限定されない。本発明は、紡糸速度の制御により繊維特性を改良するため、少なくとも1つのゴデットローラ4をネルソンローラとし、ローラと糸との間のすべりに起因する紡糸速度の変動を抑制することもできる。
従来、TPUの弾性繊維は数100m/分から1000m/分未満の速度で紡糸することが一般的であった。本発明では、この紡糸速度を2000m/分以上、より好ましくは3000m/分以上とすることで、TPU弾性繊維の機械的特性を向上することができる。
紡糸速度の上限は特に限定されず、後述するように原料組成物に用いるTPUにより適宜変更できるが、安定した装置制御のためには10000m/分以下、好ましくは9000m/分以下とする。
なお、本発明で紡糸速度とは、例えば、紡糸ヘッド3のノズルから巻取機7の最初のローラ(ゴデットローラ、ネルソンローラ又は巻取ロール)との間の引取速度、即ち、紡糸ヘッド3のノズルから巻取機7迄の間の引取速度のことであり、この引取速度を2000m/分以上の高速に設定する。
なお、紡糸速度以外の紡糸条件は特に限定されないが、以下のように設定することが好ましい。
−紡糸道長
図1の符号Lは、紡糸ヘッド3のノズルから巻取機7迄の距離である紡糸道長を示しており、溶融樹脂の冷却の観点から、この紡糸道長Lは通常50cm以上、より好ましくは100cm以上とする。紡糸道長Lを長くすると空気抵抗応力も増加するので、通常800cm以下、好ましくは500cm以下、より好ましくは300cm以下とする。
-紡糸温度
紡糸温度は、例えば、押出機2での加熱温度として定義される。この紡糸温度は特に限定されず、原料組成物の融点により適宜変更可能であるが、紡糸性の観点からは通常180℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上、特に好ましくは235℃以上であり、原料組成物の熱分解抑制の観点からは通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。
紡糸温度を高くすると、結晶化速度が抑制され、その影響で紡糸線上の直径は太くなる傾向がある。紡糸温度を高くすると破断伸度が減少し、弾性収縮率Cが小さくなる傾向がある。また、TPUの特性(ショア硬度、ハードセグメント含有率、(b)長鎖ポリオール分子量等)の違いにより、紡糸温度の影響による可紡性の変化が異なるので、TPUの特性に合わせ、紡糸温度は、好ましくは上記好適範囲内で適宜変更可能である。
−ノズル径
紡糸ヘッド3のノズル径(直径)は、吐出圧力の観点から0.2mm以上、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上であり、特に好ましくは0.8mm以上であり、吐出安定性の観点からは通常3.0mm以下、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下、特に好ましくは1.2mm以下である。
−吐出量
1つのノズル孔(単孔)当たりの吐出量は、紡糸安定性の観点から通常0.2g/分以上、好ましくは0.4g/分以上とし、繊度制御の観点から通常7.0g/分以下、好ましくは5.0g/分以下、より好ましくは3.0g/分以下とする。
上記のような紡糸条件は、条件相互間の関係や、原料組成物に用いるTPU及び添加剤の種類、紡糸装置1全体の設計、製品繊維の特性(繊維径、フィラメント数等)に応じて任意に選択することができる。次に、本発明に用いる原料組成物について説明する。
[原料組成物]
紡糸の原料組成物はTPUを必須として含むものであれば特に限定されないが、必須成分としてのTPUを主成分(原料組成物全体の50質量%以上)とし、好ましくはTPUを60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上、例えば90質量%以上含有するものであり、実質的にTPUからなる原料組成物(TPU含量が約100質量%)を用いることもできる。
[TPU(熱可塑性ポリウレタンエラストマー)]
TPUは特に限定されないが、一般に、(a)イソシアネート(通常、有機ジイソシアネート)と、(b)長鎖ポリオール(通常、ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオール)、(c)鎖延長剤(長鎖ポリオールよりも短鎖のポリオール、通常短鎖ジオール)とを必須とし、必要であれば、(d)触媒及び/又は(e)補助剤の存在下で反応させることで得られる。この反応は全必須成分(a)〜(c)及び任意成分(d)、(e)を一段で反応させる一段式であってもよいし、二以上の成分(a)〜(e)でプレポリマーを形成してから、そのプレポリマーを残部成分と反応させる複数段式でもよい。
TPUの硬度は、(c)鎖延長剤と(a)イソシアネートとの反応により形成されるハードセグメントと、(b)長鎖ポリオールと(a)イソシアネートとの反応により形成されるソフトセグメントの比(質量比)や、ハードセグメントの構造(例:イソシアネート分率)などに影響を受ける。下記式(1)にハードセグメントの一例を示す。
Figure 2018127746
式(1)上段は(a)イソシアネートと(c)鎖延長剤を示しており、これらが反応して式(1)下段のハードセグメント構造が得られる。ハード/ソフトセグメント比は、例えば、上記ハードセグメント構造の総質量がTPU全体の質量に占める割合(ハードセグメント含有率、質量%)で定義することができる。より具体的には、(c)鎖延長剤の質量と、それと反応する(通常(c)と同モル数の)(a)イソシアネートとの合計質量が、TPU全体の質量に占める割合としてハードセグメント含有率を定義できる。本発明に用いるTPUは、ハードセグメント含有率が例えば10質量%〜90質量%であり、好ましくは25質量%〜75質量%、より好ましくは30質量%〜60質量%である。
TPUの硬度は特に限定されないが、一般的にはショア70A〜ショア80Dであり、好ましくはショア75A〜ショア74Dである。しかしながら、硬度が高すぎると紡糸速度の高速化が困難であり、また、弾性回復率やエネルギー損失率が悪化する傾向があるので、これらの特性が必要な場合はTPUのショア硬度を74D以下とし、より好ましくは70D以下とする。
(a)イソシアネートは一般的に知られている芳香族、脂肪族、脂環式及び/又は芳香脂肪族のイソシアネートを用いることが可能であり、好ましくはジイソシアネートが用いられる。具体的には、2,2´−、2,4´及び/又は4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3´−ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2−ジフェニルエタンジイソシアネート及び/又はフェニレンジイソシアネート、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、2−エチルブチレン−1,4−ジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1−ジイソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4−及び/又は1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−メチル−2,4−及び/又は−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート及び/又は4,4´−、2,4´−及び2,2´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどから1種以上を選択して用いることができる。より好ましいイソシアネートは、2,2´−、2,4´−及び/又は4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はIPDI、特に4,4´−MDI及び/又はヘキサメチレンジイソシアネートであり、最も好ましくはMDIである。
(b)長鎖ポリオールは、一般にイソシアネート反応性化合物として知られるものを用いることができる。例えば、ポリエステルオール、ポリエーテルオール及び/又はポリカーボネートジオールであり、これらは慣習的に「ポリオール」という用語に含まれ、このポリオールは、分子量が例えば500〜8000、好ましくは600〜6000のものが一般的に用いられる。しかしながら、後述するように、紡糸速度を高めるためには、(b)長鎖ポリオールの分子量は3000未満が好ましく、より好ましい分子量は2000未満である。この分子量の好ましい下限は500、より好ましくは600、特に好ましくは700である。
TPUの原料として2種以上の(b)長鎖ポリオールを用いる場合、上記のような好適分子量(例:3000未満)のポリオールは(b)長鎖ポリオールの合計100質量部中50質量部以上用いることが好ましく、より好ましくは70質量部以上、特に好ましくは90質量部以上、実質的に好適分子量ポリオールからなる(b)長鎖ポリオールを用いることが最も好ましい。
(b)長鎖ポリオールのその他特性は特に限定されないが、例えば、イソシアネートに対する平均官能価は1.8〜2.3が好ましく、より好ましくは1.9〜2.2、特に2(ジイソシアネート)である。なお、特に注釈が無い限り、分子量とは数平均分子量Mn(g/mol)を意味する。
分子量以外の化学構造に着目すると、(b)長鎖ポリオールは1種又は2種以上を用いることができる。本発明の製造方法には、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系のいずれの(b)長鎖ポリオールを用いても理論上高い効果が得られると推測されるが、少なくともポリエーテル系、すなわちポリエーテルオールを含む長鎖ジオールをTPU原料として用いた場合の効果は十分に実証されている。ポリエーテル系の(b)長鎖ポリオールを用いる場合、ポリエーテルオールと共にポリエステルオールと、ポリカーボネートジオールの少なくとも一方を用いることもできるが、実質的にポリエーテルオールからなる長鎖ポリオールを用いることもできる。有用なポリエーテルオールとしてさらに、いわゆる低不飽和ポリエーテルオールが挙げられる。
本発明において低不飽和ポリオールは、特に、不飽和化合物を0.02meg/g未満、好ましくは0.01meg/g未満で含むポリエーテルアルコールである。このようなポリエーテルアルコールは、テトラヒドロフランの開環重合物(ポリテトラメチレングリコール、PTMEG)、アルキレンオキシド(特に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びこれらの混合物)とアルコールの付加物等がある。長鎖ポリオール(b)としては、TPUとしたときの柔軟性、引張強さ、耐久性等の観点からはPTMEGが最も好ましい。ただし、耐熱性等が求められる場合は、好適なポリオールはPTMEGのみには限定されない。
(c)鎖延長剤は長鎖ポリオール(b)よりも分子量が小さい短鎖ポリオールであって、具体的には分子量が50〜499の2官能性化合物(ジオール)である。(c)鎖延長剤として使用される短鎖ポリオールは、一般的に知られている脂肪族、芳香脂肪族、芳香族及び/又は脂環式化合物が挙げられる。例えば、ジアミン及び/又はアルカンジオール(アルキレン基に2〜10の炭素原子を有する)、特に1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及び/又はジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ、ノナ及び/又はデカアルキレングリコール(3〜8個の炭素源子を有する)、対応するオリゴ及び/又はポリプロピレングリコールである。(c)鎖延長剤は1種を単独で用いることも、2種以上を併用することも可能である。特に好ましい(c)鎖延長剤は1,4−ブタンジオールである。
TPUの硬度を調整するため、構成単位成分(b)及び(c)は、比較的広いモル比において変更することができる。成分(b)の鎖延長剤(c)の全量に対するモル比は、10:1〜1:10、特に1:1〜1:4の範囲が有用であり、(c)の含有量が増加するとTPUの硬度が増加する。
任意成分である(d)触媒は特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N,N´−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ−(2,2,2)−オクタン及びその類似物、さらに特に、チタンエステル等の有機金属化合物、例えば鉄(III)アセチルアセトネート等の鉄化合物、例えば錫ジアセテート、錫ジオクトエート、錫ジラウレート等の錫化合物、又はジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート等の脂肪族カルボン酸の錫ジアルキル塩、又はその同等物である。この触媒は通常、(b)長鎖ポリオール100質量部に対して0.0001〜0.1質量部の量が使用される。
他の任意成分である補助剤(e)としては、界面活性剤、核剤、滑り及び脱型補助剤(gliding and demolding aids)、染料、及び顔料、抗酸化剤(例えば、加水分解、光、熱又は変色に対して)、難燃剤、強化剤及び可塑剤、金属不活性剤、架橋剤であり、これら1種以上を選択して用いることができる。
上記成分(a)〜(c)、任意に(d)、(e)から製造されるTPUとしては、市販品を用いることも可能である。市販品としては、例えば、ディーアイシーバイエルポリマー社製のパンデックスT−1185N、T−1190N、日本ミラクトラン社製のミラクトラン、大日本インキ化学工業社製のパンデックス、ダウケミカルジャパン社製のペレセン、BASFジャパン社製のエラストラン、協和発酵工業社製のエステン、大日精化工業社製のレザミンP、三井化学ポリウレタン社製のハイプレン、日清紡績社製のモビロン、クラレ社製のクラミロンU、旭硝子社製のユーファイン、アプコ社製のスミフレックス、東洋紡績社製の東洋紡ウレタン等のような市販の熱可塑性ポリウレタン系エラストマー樹脂を用いてもよい。
紡糸用の原料組成物としては、上記TPUに加え、更なる添加剤を用いることもできる。この添加剤は特に限定されないが、例えば、難燃剤、フィラー、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤など繊維分野で使用される添加剤を1種以上添加して用いることができる。必要に応じて、上記好適TPUとは異なるTPU及び/又はTPU以外の樹脂を原料組成物に添加することもできるし、有機溶媒等の希釈剤を添加することもできる。
本発明により製造された弾性繊維は、衣料用繊維、工業用繊維、フィルター等の繊維製品として使用することができる。また、本発明により製造した弾性繊維は、自動車などの内装用に使用される繊維製品としても適している。
以下、TPUを用いた紡糸方法について実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
A)ハードセグメント含有率の検討
(a)イソシアネートであるMDI、(b)長鎖ポリオールであるポリテトラメチレングリコール、(c)鎖延長剤である1,4‐ブタンジオールを原料とするTPUを複数種類用意した。各TPUのショア硬度及びHS(ハードセグメント)含有量、並びに(b)長鎖ポリオール分子量を下記表1に記載する。
[高速紡糸弾性繊維の製造]
図2は、実施例で使用した溶融紡糸・計測装置の構成を模式的に示す図であり、図1の装置と同じ部材には同じ符号を付して説明を省略する。図2に示す溶融紡糸・計測装置を用いて、各TPUを原料組成物として用い、下記表1の紡糸温度及び吐出圧で、ノズル(1ホール)から溶融紡糸して繊維を作成した。
ここでは、繊維構造形成に関る紡糸速度は、ノズル孔から巻取機7(巻取ロール)迄の間の速度、すなわち、巻取ロールの巻取速度である。また、図2に示す紡糸口から巻取ロールまでの距離が、図1における紡糸道長Lに対応する。この巻取速度を、当初は0.27km/分として、次いで、0.5km/分、1km/分とし速度を増加させ、以降は1km/分刻みで最高速度まで巻き取り、最大巻取速度を可紡性として評価した。
Figure 2018127746
上記表1から明らかなように、TPUのハードセグメント含有率が高く、硬度が高い程、最大巻取速度が低くなる傾向があることがわかった。なお、サンプルNo.IIはサンプルNo.Iよりも最大巻取速度が低くなってはいるが、他のサンプルは紡糸性を確保できるまで紡糸温度を高くしたのに対し、サンプルNo.IIは紡糸温度が十分ではなく、紡糸温度をより高温(例えば235℃以上)にすれば、サンプルNo.IIについても最大巻取速度が更に向上すると推測される。
次に、高速紡糸が弾性繊維に与える影響について調べた。
[高速溶融紡糸時の速度変化プロフィールの検討]
紡糸線上の速度変化プロフィールを調べる為に、弾性樹脂の溶融紡糸時に、オンラインでの外径・速度計測を行った。繊維の外径は外径測定器(Zimmere OHG、Model 460/A10)を用いて、紡糸ヘッド(ノズル)の吐出口(紡糸口)下10cmの位置から10cm刻みで260cmまで計測した。サンプリング周波数は1kHzとし、測定時間は6秒間とした。繊維の速度は、レーザードップラー速度計(TSI、Ls520)を用いて、ノズルの吐出口下20cmの位置から10cm刻みで280cmまで、更に285cm、289cmの位置で行った。サンプリング周波数は1kHzとし、各位置につき2000点のサンプリングが出来るまで測定した。なお、紡糸温度は上記表1の通りである。
図3(a)〜(d)はTPU試料I〜IVについての紡糸結果を示す。低硬度のTPU(No.IV)よりも、高硬度のTPU(No.I〜III)はより上流側で繊維直径(外径)が細くなり、切り出した後の外径も細いままであった。
図4は巻取ロール(ボビン)から繊維を切り離したときの弾性収縮率Cを示しており、弾性収縮率Cは、ボビンから切り出す前の繊維長(ボビンの周長72.25cm)をl、ボビンから切り出した後の繊維長をl’としたときに、(l−l’)/lにより算出される。例えば、TPU No.II、III、IVを同じ巻取速度の条件で比較すると、ショア硬度が高いIIは、ショア硬度の低いIII、IVよりも弾性収縮率が低かった。これらの中でも最もショア硬度の高いIは特に弾性収縮率が小さく、最大でも3%程度であった。従って、TPUのショア硬度が高い程、弾性収縮率が小さくなることが確認できた。
次に、SHIMADU製測定装置「AUTOGRAPH AG−1」を用い、引張弾性率、破断靱性、破断伸度、破断強度を求めた。サンプルとしては長さ20mmの各TPU弾性繊維を用いた。断面積は事前に3点測定し、平均値から真円断面を仮定し、サンプル別に計算したものを使用した。試験速度は100%/分(すなわち20mm/分)とした。引張弾性率は、応力立ち上がり時の応力‐歪み曲線の傾きを読み取った。破断靱性は応力‐歪み曲線の積分値とした。これらの試験は各サンプルについて5回ずつ行い、平均値を使用した。
図5(a)は引張弾性率(initial young module)の測定結果を、図5(b)には破断靱性(toughness、tenacity*elongation)の測定結果を、図5(c)には破断伸度(elongation at break)の測定結果を、図5(d)には破断強度(tenacity)の結果をそれぞれ示し、各図グラフの横軸は巻取速度(紡糸速度)を示す。
引張弾性率は紡糸速度を高くしても上昇率は低く、TPU No.IIIのように巻取速度が2km/分以上の領域では引張弾性率が減少するものもあった(図5(a))。破断靱性はTPU No.IIについては巻取速度を早くしても破断靱性の減少は少なく、他のTPU試料については巻取速度が2km/分以上の領域では靱性の減少率が低下した(図5(b))。また、従来のTPU繊維(紡糸速度1000m/分未満)では破断伸度が500〜1000%、強度が50〜100MPaであるのに対し、紡糸速度を紡糸速度2km/分以上の領域では破断伸度が特に小さくなり、強度が特に高くなることが確認できた(図5(c)、(d))。
図6(a)〜(d)は応力-歪曲線(stress-strain curve、S-Sカーブ)を示しており、横軸が公称ひずみ(nominal strain)、縦軸が公称応力(nominal stress)をそれぞれ示し、各図中の数字0.5、1、…5、6はそれぞれ巻取速度(km/分)を示している。なお公称ひずみは長さの変化分(Δl)を元の長さLで除した値である。図6(a)〜(d)から明らかなように、巻取速度(紡糸速度)が2km/分以上になると公称ひずみが小さくなる傾向が顕著に強まることが確認された。
図7(a)〜(c)は応力-歪曲線の立ち上がり部分を示すグラフであり、図6(a)〜(d)と同様、グラフ中の数字0.5、1、…5、6、7はそれぞれ巻取速度(km/分)を示している。ハードセグメント含有率が低く、硬度が低いTPU No.Vでは巻取速度に関らず公称歪40%程度迄略等しい曲線を辿ったが、ハードセグメント含有率と硬度が高いTPU No.IIIでは曲線形状が乱れ始め、ハードセグメント含有率と硬度がより高いTPU No.Iでは降伏点が見られた。
[弾性繊維の広角X線回折(WAXD)及び小角X線散乱(SAXS)の検討]
高速紡糸弾性繊維の広角X線回折(WAXD)及び小角X線散乱(SAXS)を調べるために、X線発生装置(Rigaku、RMT-18HFVE)を用いて、電圧45kV、電流60mAで出力し、CCDカメラ(Rigaku、CCD MERCURY)を用いて回折像を得た。広角X線回折(WAXD)については、照射時間10秒で5回積算することにより回折像を得た。小角X線散乱(SAXS)については、照射時間5分で6回積算することにより回折像を得た。
TPU No.I〜IVを用いて製造した弾性繊維の広角X線回折を図8(a)〜(d)に、小角X線散乱像を図9(a)〜(d)にそれぞれ示す。なお、図8、9中、「km/min」は各弾性繊維の紡糸速度を示している。図8(a)〜(d)から明らかなように、広角X線回折では、ハードセグメント含有率を増加させても結晶を示す明確なピークが見られなかった。また、図9(a)〜(d)から明らかなように、小角X線散乱像では、像が方位角で赤道方向に***する傾向は小さかった。
[弾性回復率(ヒステリシス)の検討]
初期張力(プリテンション)なし、負荷歪みを100%とした以外はASTM−D2731に従い、2倍伸長後(100%伸長後)の弾性回復率(ヒステリシス)を、以下の手順により、1回目の伸長及び5回目の伸長についてそれぞれ調べ、エネルギー損失率(1回目の伸長)と弾性回復率(5回目の伸長)を求めた。
1.歪速度100%/分で繊維に1.0の歪(初期長さの100%ひずみ)を与え、同じ速度で初期長さまで戻す。
2.上記1の工程を4回繰返し(計5回)、5回目はひずみを与えた後30秒間止める。
3.初期長さまで戻し、最後に破断するまで引っ張る(6回目)。
上記6回目の工程で破断するまで引っ張る際に、応力が立ち上がり始める歪み量Eを求め(図10(a))、この歪み量E(%)と負荷歪みE(%)とから、下記式により弾性回復率を求めた。
弾性回復率[%]=(E−E)/E×100
エネルギー損失率は、1回目の歪みサイクルにおいて、歪みを付加している過程における応力の積分値から、除荷している過程における応力の積分値を引いた値をエネルギー損失WL(すなわち、図10(b)の0abcd0で囲まれた面積)とし、下記式により求めた。
エネルギー損失率[%]=WL/(WL+W)×100
なお、Wは図10(b)のdcbedで囲まれた面積である。
図11(a)、(b)のI〜Vはそれぞれ表1のTPUのサンプル番号に対応する。図11(a)、(b)から明らかなように、ハードセグメント含有率が低く、硬度が低い程、弾性回復率(5回目)が高く、エネルギー損失も低いことが確認された。ショア硬度が最も高いTPU No.Iは他と比べて弾性回復率が著しく低かったものの、巻取速度が上昇する程弾性回復率が高くなり、また、エネルギー損失も低下することが確認された。
[ハードセグメント含有率に関する小括]
ハードセグメント含有率を増加させたTPUを高速溶融紡糸した場合には、紡糸速度が高くても弾性収縮が少ないTPU弾性繊維を得ることができた。ハードセグメント含有率が大きいTPUの繊維は、弾性率が高い反面、回復特性は悪化した。また、応力―ひずみ曲線の立ち上がり形状にも差異が見られた。ハードセグメント含有率が高いTPUの繊維は、他のTPU繊維と同様にWAXD像では明瞭なスポットを示さなかったが、示差走査熱量測定(DSC)を行ったところハードセグメントの融解由来とみられるピークが観測された(200℃付近に吸熱ピーク)。
B)ポリオール分子量の検討
次に、下記表2に示す通り、ソフトセグメントの(b)ポリオール分子量が異なるTPUサンプルを用い、「A)ハードセグメント含有率の検討」と同じ条件で弾性繊維の特性試験を行った。
Figure 2018127746
図12(a)〜図12(d)はオンライン直径の測定結果を示しており、各図中の括弧内のMnはポリオールの分子量を示している。これら図12(a)〜図12(d)の対比から、ソフトセグメントを構成するポリオールの分子量が大きくなると固化点がよりノズル孔(口金)に近づき、直径の変化がない領域が大きくなった。
また、ショア硬度が85Aと低いにも関わらず、(b)長鎖ポリオールの分子量が3000以上になると、紡糸温度を調整しても2km/分を超える高速巻取が困難となった。TPU2−IVは、他のTPU2−I〜2−IIIとポリマー全体の分子量に大差が無いにも関わらず、溶融粘度が非常に高くなり、高速巻取性が劣る。従って、より高速な紡糸速度により繊維特性の改善が必要な場合は、(b)長鎖ポリオールの分子量は3000未満が好ましいことが確認された。
図13に繊維をボビンから切り離した時の弾性収縮率Cの測定結果を示す。同図の縦軸が弾性収縮率Cを示し、横軸は巻取速度を示し、図中の2−I〜2−IVはそれぞれTPUのサンプル番号を示す。弾性収縮率の測定結果から、ソフトセグメントの長鎖ポリオール分子量が小さい程弾性収縮率Cが上昇することが確認された。
図14(a)〜(d)には応力―ひずみ曲線の測定結果を示す。同図の横軸は公称ひずみを、縦軸は公称応力を示し、同図中の数値0.5、1、…5、6はそれぞれ巻取速度を示している。図14(a)〜(d)から明らかなように、ソフトセグメントの長鎖ポリオール分子量が大きくなると繊維の強度が小さくなる傾向が見られた。
図15(a)は引張弾性率(initial young module)の測定結果を、図15(b)には靱性(toughness)の測定結果を、図15(c)には破断伸度(elongation at break)の測定結果を、図15(d)には強度(tenacity)の結果をそれぞれ示し、各図グラフの横軸は巻取速度(紡糸速度)を示し、各図の横軸は巻取速度を示し、各図中の2−I〜2−IVはそれぞれTPUのサンプル番号を示している。
長鎖ポリオールの分子量が3000のTPUサンプル2−IVは巻取速度に対する弾性率の増加量が顕著に大きかった(図15(a))。他方、長鎖ポリオール分子量が3000未満のTPUサンプル2−I〜2−IIIは巻取速度の増加により強度が顕著に上昇し(図15(d))、巻取速度が2km/分以上の領域で破断伸度の低下率も少なく(図15(c))、強度が減少するものはあっても、その減少率も小さかった(図15(b))。
[弾性繊維の広角X線回折(WAXD)及び小角X線散乱(SAXS)の検討]
表2のTPUを用いて製造した繊維について、上記「A)ハードセグメント含有率の検討」と同じ条件で広角X線回折像(図と小角X線散乱像を得た。その結果を図16(a)〜(d)、図17(a)〜(d)に示す。
図16(a)〜(d)から明らかなように、広角X線回折では、(b)ポリオール分子量を大きくしても明瞭なスポットは観察されなかった。また、図17(a)〜(d)の小角X線散乱像では、図9(a)〜(d)と同様、巻取速度の上昇につれ2点像が4点像に近づく傾向の他、(b)長鎖ポリオールの分子量が大きくなる程赤道方向に強い散乱像が確認できた。
[弾性回復率(ヒステリシス)の検討]
上記「A)ハードセグメント含有率の検討」と同じ条件で、弾性回復率とエネルギー損失率を測定した。その結果を図18(a)、(b)にそれぞれ示す。図18(a)から明らかなように(b)長鎖ポリオールの分子量が大きくなるほど回復特性が悪化した。また、図18(b)から明らかなように、(b)長鎖ポリオールの分子量が大きいほどエネルギー損失率が高いことが確認できた。
[長鎖ポリオール分子量に関する小括]
(b)長鎖ポリオールの分子量が高いTPU繊維は、よりノズル孔近くで固化し、ソフトセグメントの結晶速度が速いことが推測できるが、WAXDでは明瞭なスポットが現れない反面、SAXSでは赤道方向に強い散乱が観察された。TPU繊維の機械的特性としては、(b)長鎖ポリオールの分子量が高いTPU繊維は引張弾性率が高く、巻取速度の依存性も高かったが、一方で強度は小さかった。なお、DSC測定を行ったところ、TPUサンプルNo.2−IVに(b)長鎖ポリオールの結晶の融解と見られるピークが観察された(10℃近辺に吸熱ピーク)。
1…繊維製造装置
2…押出機
3…紡糸ヘッド
7…巻取機
4、5…ローラ(ゴデットローラ)
6…巻取ロール(ボビン)

Claims (7)

  1. 弾性繊維を製造する方法であって、
    熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含む原料組成物を、2000m/分〜10000m/分の紡糸速度で溶融紡糸する工程を有する弾性繊維の製造方法。
  2. 前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーのソフトセグメントは、長鎖ポリオールとイソシアネートとの反応により生成され、
    長鎖ポリオールの少なくとも50質量%は、数平均分子量3000未満のポリオールからなる請求項1に記載の弾性繊維の製造方法。
  3. 前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ショア硬度が74D以下である請求項1又は2に記載の弾性繊維の製造方法。
  4. 前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ハードセグメントの含有率が10質量%〜90質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性繊維の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法で製造された弾性繊維を用いて弾性繊維製品を製造する製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法で製造された弾性繊維。
  7. 請求項6に記載の弾性繊維を用いた弾性繊維製品。
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