JP2018121394A - 回転機制御装置及び回転機制御方法 - Google Patents

回転機制御装置及び回転機制御方法 Download PDF

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Tetsuya Matsuyama
哲也 松山
淳貴 吉本
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淳貴 吉本
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Abstract

【課題】3相回転機の回転速度が低い場合において制御性能の低下を抑制可能な制御モードと、回転速度が高い場合においてトルクに対する高い応答性を確保可能な制御モードとを切換可能な制御装置であって、制御モード切換時のトルク変動を抑制するのに適した制御装置を提供する。
【解決手段】移動量特定部111は、3相回転機102の指令速度と制御サイクルの周期の積を計算し、第1制御モードにおいては推定トルクの振動成分をゼロに近づけるものであり第2制御モードにおいては指令トルクと推定トルクとの差分をゼロに近づけるものである第1移動量を特定し、積と第1移動量とを合計することによって1制御サイクルで一次磁束ベクトルの位相が移動するべき第2移動量を特定する。
【選択図】図4

Description

本開示は、回転機制御装置及び回転機制御方法に関するものである。
従来から、直接トルク制御(DTC:Direct Torque Control)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献2では、3相回転機の回転速度が低い場合に顕在化する制御性能の低下を抑制する技術が提案されている。
特許第3485844号明細書 特開2016−100994号公報
3相回転機の回転速度が低い場合において制御性能の低下を抑制可能な制御モードと、回転速度が高い場合においてトルクに対する高い応答性を確保可能な制御モードとを切換可能な制御装置であって、制御モード切換時のトルク変動を抑制するのに適した制御装置は、従来提案されていない。そこで、本発明者らは、そのような制御装置の作製を目指した。
すなわち、本開示は、
3相回転機の一次磁束ベクトルが指令磁束ベクトルに追従するように、インバータを用いて前記3相回転機に電圧ベクトルを印加する回転機制御装置であって、
前記回転機制御装置は、前記3相回転機のトルクを指令トルクに追従させる第2制御モードと、前記第2制御モードとは異なる第1制御モードと、を切り換え可能であり、
前記回転機制御装置は、
前記一次磁束ベクトルと、前記3相回転機の電流ベクトルと、を用いて、前記3相回転機のトルクを推定するトルク推定部と、
前記一次磁束ベクトルの位相を推定する位相推定部と、
前記3相回転機の指令速度と制御サイクルの周期の積を計算し、前記第1制御モードにおいては推定される前記トルクの振動成分をゼロに近づけるものであり前記第2制御モードにおいては前記指令トルクと推定される前記トルクとの差分をゼロに近づけるものである第1移動量を特定し、前記積と前記第1移動量とを合計することによって1制御サイクルで前記一次磁束ベクトルの位相が移動するべき第2移動量を特定する移動量特定部と、
推定された前記位相と、前記第2移動量と、を用いて、前記指令磁束ベクトルの位相である指令位相を特定する指令位相特定部と、
前記指令位相を用いて前記指令磁束ベクトルを特定する指令磁束特定部と、を備えた、回転機制御装置を提供する。
本開示に係る回転機制御装置は、3相回転機の回転速度が低い場合において制御性能の低下を抑制可能な制御モードと、回転速度が高い場合においてトルクに対する高い応答性を確保可能な制御モードとを切換可能である。しかも、この回転機制御装置は、制御モード切換時のトルク変動を抑制可能である。
3相回転機、インバータ及び回転機制御装置のブロック図 dq座標系を説明するための図 αβ座標系を説明するための図 実施形態1に係る回転機制御部のブロック図 実施形態1に係る移動量特定部のブロック図 実施形態1における制御モードの切換方法を説明するための図 PWMインバータの構成図 実施形態2に係る回転機制御部のブロック図 実施形態2に係る移動量特定部のブロック図 実施形態3に係る回転機制御部のブロック図 実施形態3に係る移動量特定部のブロック図 磁束ベクトル及び電流ベクトルを説明するための図 指令振幅を得るための計算式の例を説明するための図 振幅修正量生成部のブロック図
(本発明者らによる知見)
直接トルク制御の一例では、3相回転機の電圧ベクトルに基づいて3相回転機の回転速度を推定する。速度制御部において、回転速度に基づいて3相回転機の参照トルクを生成する。そして、参照トルクを指令トルクとして用い、3相回転機のトルクが指令トルクに追従するように、3相回転機が制御される。本発明者らの検討によれば、このようにすれば、回転速度が高い場合には、トルクに対する高い応答性を確保することができる。しかし、回転速度が低い場合には、制御が不安定になり易い。なぜなら、この場合には、制御で情報として用いられる電圧ベクトルと実際に3相回転機に印加されている電圧ベクトルとの間の誤差(電圧誤差)が大きくなり易く、回転速度の推定精度を確保し難く、参照トルクが脈動し易いためである。
特許文献2では、3相回転機の回転速度が低い場合における制御性能の低下を抑制する技術が提案されている。しかし、本発明者らの検討によれば、この技術は、3相回転機の回転速度が高い場合にトルクに対する高い応答性を確保することには必ずしも適していない。
回転速度が低い場合と高い場合とで別の制御モードを用いる場合、制御モードの切換時に3相回転機の電圧が急激に変動し、トルクが大きく変動するおそれがある。本発明者らの知る限り、この変動の抑制に適した技術は提案されていない。
そこで、本発明者らは、3相回転機の回転速度が低い場合において制御性能の低下を抑制可能な制御モードと、回転速度が高い場合においてトルクに対する高い応答性を確保可能な制御モードとを切換可能な制御装置であって、制御モード切換時のトルク変動を抑制可能な制御装置の作製を目指した。
本開示の第1態様は、
3相回転機の一次磁束ベクトルが指令磁束ベクトルに追従するように、インバータを用いて前記3相回転機に電圧ベクトルを印加する回転機制御装置であって、
前記回転機制御装置は、前記3相回転機のトルクを指令トルクに追従させる第2制御モードと、前記第2制御モードとは異なる第1制御モードと、を切り換え可能であり、
前記回転機制御装置は、
前記一次磁束ベクトルと、前記3相回転機の電流ベクトルと、を用いて、前記3相回転機のトルクを推定するトルク推定部と、
前記一次磁束ベクトルの位相を推定する位相推定部と、
前記3相回転機の指令速度と制御サイクルの周期の積を計算し、前記第1制御モードにおいては推定される前記トルクの振動成分をゼロに近づけるものであり前記第2制御モードにおいては前記指令トルクと推定される前記トルクとの差分をゼロに近づけるものである第1移動量を特定し、前記積と前記第1移動量とを合計することによって1制御サイクルで前記一次磁束ベクトルの位相が移動するべき第2移動量を特定する移動量特定部と、
推定された前記位相と、前記第2移動量と、を用いて、前記指令磁束ベクトルの位相である指令位相を特定する指令位相特定部と、
前記指令位相を用いて前記指令磁束ベクトルを特定する指令磁束特定部と、を備えた、回転機制御装置を提供する。
第1態様に係る回転機制御装置は、3相回転機の回転速度が低い場合において制御性能の低下を抑制可能な制御モード(第1制御モード)と、回転速度が高い場合においてトルクに対する高い応答性を確保可能な制御モード(第2制御モード)とを切換可能である。しかも、この回転機制御装置は、制御モード切換時のトルク変動を抑制可能である。
本開示の第2態様は、第1態様に加え、
前記第1制御モードにおいて、前記移動量特定部は、推定された前記トルクにおける遮断角周波数よりも高い周波数成分である高周波成分をゼロに近づける前記第1移動量を特定する回転機制御装置を提供する。
第2態様では、第1制御モードにおいて、推定された前記トルクにおける遮断角周波数よりも高い周波数成分である高周波成分をゼロに近づける制御が行われる。このようにすれば、推定されるトルクの振動成分を容易にゼロに近づけることができる。
本開示の第3態様は、第2態様に加え、
前記第1制御モードにおいて、前記高周波成分をゼロに近づけるフィードバック制御によって前記第1移動量が特定され、
前記第2制御モードにおいて、前記指令トルクと推定された前記トルクとの差分をゼロに近づけるフィードバック制御によって前記第1移動量が特定される回転機制御装置を提供する。
第3態様では、第1制御モードにおいて、高周波成分をゼロに近づけるフィードバック制御が行われる。このようにすれば、推定されるトルクの振動成分を容易にゼロに近づけることができる。また、第3態様では、第2制御モードにおいて、前記指令トルクと推定された前記トルクとの差分をゼロに近づけるフィードバック制御が行われる。このようにすれば、指令トルクと推定されるトルクとの差分を容易にゼロに近づけることができる。
本開示の第4態様は、第2態様又は第3態様に加え、
前記回転機制御装置は、指令振幅特定部を備え、
前記第1制御モード及び前記第2制御モードの両方において、(i)同じ固定値が前記指令磁束ベクトルの振幅である指令振幅として用いられ、又は(ii)同じ計算式を用いて得た値が前記指令磁束ベクトルの振幅である指令振幅として用いられ、
前記第1制御モード及び前記第2制御モードの両方において、前記指令磁束特定部は前記指令振幅を用いて前記指令磁束ベクトルを特定する回転機制御装置を提供する。
第1態様から理解されるように、第1制御モードと第2制御モードとでは、指令磁束ベクトルの位相(指令位相)の特定方法が異なる。回転機制御装置における他の制御及び3相回転機の使用条件にもよるが、両制御モードで指令磁束ベクトルの振幅(指令振幅)の特定方法が大きく異なる場合、指令位相の特定方法の相違と指令振幅の特定方法の相違の両方の影響で、制御モード切換時に大きなトルク変動が生じるおそれがある。この点、第4態様では、第1制御モード及び第2制御モードおける指令振幅の特定方法の共通性が高い。このため、第4態様は、制御モード切換時のトルク変動抑制の観点から有利である。
本開示の第5態様は、第1態様に加え、
前記第1制御モードにおいて、前記移動量特定部は、推定された前記トルクにおける遮断角周波数よりも低い周波数成分である低周波成分と、前記低周波成分と推定された前記トルクとの差分である第1差分をゼロに近づける前記第1移動量と、を特定する回転機制御装置を提供する。
第5態様では、第1制御モードにおいて、推定された前記トルクにおける遮断角周波数よりも低い周波数成分である低周波成分と推定されたトルクとの差分である第1差分をゼロに近づけるように制御が行われる。このようにすれば、推定されるトルクの振動成分を容易にゼロに近づけることができる。
本開示の第6態様は、第5態様に加え、
前記回転機制御装置は、参照トルク特定部と、指令振幅特定部と、を備え、
前記参照トルク特定部は、前記3相回転機の回転子速度を前記指令速度に追従させる場合に前記3相回転機のトルクが追従するべき参照トルクを特定し、
前記第1制御モードにおいて、前記低周波成分が前記指令トルクとして用いられ、
前記第2制御モードにおいて、前記参照トルクが前記指令トルクとして用いられ、
前記第1制御モード及び前記第2制御モードの両方において、前記指令トルクと推定された前記トルクとの差分をゼロに近づけるフィードバック制御によって前記第1移動量が特定され、
前記第1制御モード及び前記第2制御モードの両方において、前記指令振幅特定部は前記指令トルクを用いて前記指令磁束ベクトルの振幅である指令振幅を特定し、前記指令磁束特定部は前記指令振幅を用いて前記指令磁束ベクトルを特定する回転機制御装置を提供する。
第6態様では、第1制御モードにおいて、第5態様の第1差分と同じ値をゼロに近づけるフィードバック制御が行われる。従って、第1制御モードにおいて、第1差分を容易にゼロに近づけることができ、推定されるトルクの振動成分を容易にゼロに近づけることができる。また、第6態様では、第2制御モードにおいて、指令トルクと推定されたトルクとの差分をゼロに近づけるフィードバック制御が行われる。このようにすれば、指令トルクと推定されるトルクとの差分を容易にゼロに近づけることができる。
第6態様の第1制御モードにおいて指令振幅の特定に用いられる指令トルクは、トルクの低周波成分に対応する。このため、3相回転機の回転速度が低いときに第1制御モードが用いられるようにすれば、回転速度の低さに起因する脈動が指令振幅に反映され難くなる。このため、特定される指令振幅の脈動が抑制され、安定した指令磁束ベクトルが生成され、その安定した指令磁束ベクトルに一次磁束ベクトルが追従する。このため、第6態様の第1制御モードは、回転速度が低いときに安定した制御を行う観点から有利である。また、第1制御モードにより得られる安定性により、第1制御モードと第2制御モードとの切換時におけるトルク変動も緩和される。また、第6態様の第2制御モードにおいて指令振幅の特定に用いられる指令トルクは、参照トルクに対応する。参照トルクは、トルクの低周波成分と同様、トルクに関連するものである。つまり、第6態様では、第1制御モード及び第2制御モードおける指令振幅の特定方法の共通性が高い。この高い共通性も、制御モード切換時のトルク変動緩和に有利である。
また、指令トルクとして用いられるトルクの低周波成分も参照トルクも、指令振幅を特定するのに役立つ情報である。このため、第6態様では、第1制御モード及び第2制御モードの両方において(回転速度が低い場合と高い場合の両方において)、制御目的に即した指令振幅を特定し易い。例えば、両制御モードにおいて最大トルク/電流(MTPA: Maximum Torque Per Ampere)制御を行うことができる。このようにすれば、回転速度が低い場合と高い場合の両方において、3相回転機を高効率に制御することが可能となる。
本開示の第7態様は、第1態様に加え、
前記移動量特定部は、リミッタを有し、
前記リミッタは、前記リミッタへの入力が上限値以上である場合は前記上限値を出力し、前記リミッタへの入力が下限値以下である場合は前記下限値を出力し、前記リミッタへの入力が前記下限値よりも大きく前記上限値よりも小さい場合は前記リミッタへの入力を出力するものであり、
前記第1制御モードにおいて、前記移動量特定部は、推定された前記トルクにおける遮断角周波数よりも低い周波数成分である低周波成分を前記リミッタに入力させ、前記リミッタの出力と推定された前記トルクとの差分である第2差分をゼロに近づける前記第1移動量を特定する回転機制御装置を提供する。
第7態様では、第1制御モードにおいて、推定されたトルクの低周波成分をリミッタに入力させ、リミッタの出力と推定されるトルクの差分(第2差分)をゼロに近づけるように制御が行われる。このようにすれば、結果として、推定されるトルクの振動成分をゼロに近づけることができる。
リミッタの出力は、極端に小さい値になったり極端に大きい値になったりすることがない。このため、リミッタによれば、3相回転機に流れる電流が過大となる事態を回避できる。つまり、3相回転機、インバータ等における異常な発熱を回避できる。この点で、リミッタは、信頼性の高い回転機制御装置の実現に寄与するといえる。
本開示の第8態様は、第7態様に加え、
前記回転機制御装置は、参照トルク特定部と、指令振幅特定部と、を備え、
前記参照トルク特定部は、前記3相回転機の回転子速度を前記指令速度に追従させる場合に前記3相回転機のトルクが追従するべき参照トルクを特定し、
前記第2制御モードにおいて、前記参照トルクが前記リミッタに入力され、
前記第1制御モード及び前記第2制御モードの両方において、前記リミッタの出力が前記指令トルクとして用いられ、前記指令トルクと推定された前記トルクとの差分をゼロに近づけるフィードバック制御によって前記第1移動量が特定され、
前記第1制御モード及び前記第2制御モードの両方において、前記指令振幅特定部は前記指令トルクを用いて前記指令磁束ベクトルの振幅である指令振幅を特定し、前記指令磁束特定部は前記指令振幅を用いて前記指令磁束ベクトルを特定する回転機制御装置を提供する。
第8態様では、第1制御モードにおいて、第7態様の第2差分と同じ値をゼロに近づけるフィードバック制御が行われる。従って、第1制御モードにおいて、第2差分を容易にゼロに近づけることができ、推定されるトルクの振動成分を容易にゼロに近づけることができる。また、第8態様では、第2制御モードにおいて、指令トルクと推定されたトルクとの差分をゼロに近づけるフィードバック制御が行われる。このようにすれば、指令トルクと推定されるトルクとの差分を容易にゼロに近づけることができる。
第8態様では、第1制御モード及び第2制御モードの両方において、リミッタの出力を用いた制御が行われる。上述のように、リミッタの出力は、極端に小さい値になったり極端に大きい値になったりすることがない。第8態様では、第1制御モード及び第2制御モードの両方において、そのようなリミッタの出力を用いて指令磁束ベクトルの振幅(指令振幅)を特定する。このようにすれば、指令振幅が極端に小さくなったり大きくなったりすることが防止される。つまり、安定した指令磁束ベクトルが生成され、その安定した指令磁束ベクトルに一次磁束ベクトルが追従する。このため、トルク等、3相回転機の種々の物理量が全体的に安定する。このような安定性により、第1制御モードと第2制御モードの切換時におけるトルク変動も緩和される。また、トルクの低周波成分も参照トルクもトルクに関連するものであり、両制御モードにおいて、そのトルク関連情報がリミッタに入力され、リミッタの出力が指令トルクとして用いられ、指令トルクから指令振幅が特定される。つまり、第8態様では、両制御モードおける指令振幅の特定方法の共通性が高い。この高い共通性も、制御モード切換時のトルク変動緩和に有利である。
なお、第7及び第8態様の第1制御モード及び第2制御モードにおいてリミッタへの入力が下限値よりも大きく上限値よりも小さい場合には、第7及び第8態様により、第5及び第6態様と同様の効果を得ることができる。
本開示の第9態様は、
3相回転機の一次磁束ベクトルが指令磁束ベクトルに追従するように、インバータを用いて前記3相回転機に電圧ベクトルを印加する回転機制御方法であって、
前記回転機制御方法は、前記3相回転機のトルクを指令トルクに追従させる第2制御モードと、前記第2制御モードとは異なる第1制御モードと、を切り換え可能であり、
前記回転機制御方法は、
前記一次磁束ベクトルと、前記3相回転機の電流ベクトルと、を用いて、前記3相回転機のトルクを推定するトルク推定ステップと、
前記一次磁束ベクトルの位相を推定する位相推定ステップと、
前記3相回転機の指令速度と制御サイクルの周期の積を計算し、前記第1制御モードにおいては推定される前記トルクの振動成分をゼロに近づけるものであり前記第2制御モードにおいては前記指令トルクと推定される前記トルクとの差分をゼロに近づけるものである第1移動量を特定し、前記積と前記第1移動量とを合計することによって1制御サイクルで前記一次磁束ベクトルの位相が移動するべき第2移動量を特定する移動量特定ステップと、
推定された前記位相と、前記第2移動量と、を用いて、前記指令磁束ベクトルの位相である指令位相を特定する指令位相特定ステップと、
前記指令位相を用いて前記指令磁束ベクトルを特定する指令磁束特定ステップと、を備えた、回転機制御方法を提供する。
第9態様によれば、第1態様の効果と同じ効果を得ることができる。
回転機制御装置の技術は、回転機制御方法に適用できる。回転機制御方法の技術は、回転機制御装置に適用できる。
本開示の第10態様は、第9態様の回転機制御方法を実行するための命令を含む、コンピュータプログラムを提供する。
本開示の第11態様は、第10態様のコンピュータプログラムが格納された、コンピュータによる読み取りが可能なメモリを提供する。
本開示の第12態様は、第10態様のコンピュータプログラムを実行するプロセッサを提供する。
本開示の第13態様は、
第10態様のコンピュータプログラムが格納された、コンピュータによる読み取りが可能なメモリと、
前記コンピュータプログラムを実行するプロセッサと、を備えた制御システムを提供する。
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、本開示の回転機制御装置100(,200a,200b)は、第1電流センサ105a、第2電流センサ105b、回転機制御部101(,201a,201b)及びデューティ生成部103を含んでいる。回転機制御装置100は、PWMインバータ(PWM方式で電力変換を行う電力変換回路)104及び3相回転機102に接続され得る。
回転機制御部101は、3相回転機102を所望の指令速度で駆動させるための構成を有している。また、回転機制御部101は、3相回転機102の速度・位置センサレス運転を実行するように構成されている。速度・位置センサレス運転は、エンコーダ、レゾルバ等の位置センサを用いない運転である。本実施形態のセンサレス運転では、3相回転機102の磁束ベクトルを推定する。そして、推定された磁束ベクトルの位相を用いて磁束ベクトルを制御する。磁束ベクトルは、3相回転機102に印加されている3相交流座標上の電機子鎖交磁束と、この電機子鎖交磁束を座標変換することにより得た磁束の両方を含む概念である。同様に、電流ベクトルは、3相回転機102を流れている3相交流座標上の電流ベクトルと、この電流ベクトルを座標変換することにより得た電流ベクトルの両方を含む概念である。同様に、電圧ベクトルは、3相回転機102に印加されている3相交流座標上の電圧ベクトルと、この電圧ベクトルを座標変換することにより得た電圧ベクトルの両方を含む概念である。本明細書では、「振幅」は、単に大きさ(絶対値)を指す場合がある。
回転機制御装置100の一部又は全部の要素は、DSP(Digital Signal Processor)又はマイクロコンピュータにおいて実行される制御アプリケーションによって提供され得る。DSP又はマイクロコンピュータは、コア、メモリ、A/D変換回路及び通信ポート等の周辺装置を含んでいてもよい。また、回転機制御装置100の一部又は全部の要素は、論理回路によって構成されていてもよい。
(回転機制御装置100を用いた制御の概要)
図1を参照しながら、回転機制御装置100を用いた制御の概要を説明する。電流センサ105a,105bによって、相電流iu,iwが検出される。相電流iu,iwは、U相電流iu及びW相電流iwをまとめて記載したものである。U相電流iu及びW相電流iwは、それぞれ検出された電流ベクトルiaのU相成分及びW相成分である。回転機制御部101によって、指令速度ωref *及び相電流iu,iwから、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *が特定される。指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *の各成分は、それぞれ3相交流座標上のU相電圧、V相電圧及びW相電圧に対応する。デューティ生成部103によって、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *から、デューティDu,Dv,Dwが生成される。PWMインバータ104によって、デューティDu,Dv,Dwから、3相回転機102に印加するべき電圧ベクトルvu,vv,vwが生成される。指令速度ωref *は、上位制御装置から回転機制御装置100に与えられる。指令速度ωref *は、3相回転機102の回転速度が追従するべき回転速度(単位:rad/秒)を表す。このような制御により、3相回転機102は、回転速度が指令速度ωref *に追従するように制御される。
指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *は、逐次更新される。本明細書では、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *が更新されてから次に更新されるまでのサイクルを「制御サイクル」と称する。本実施形態では、制御サイクル毎に、指令トルク及び指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *が特定される。特定された指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *は、次の制御サイクルにおいて3相回転機102に印加される電圧ベクトルvu,vv,vwを規定する。本実施形態の各制御サイクルは、周期Tsを有する。
図2Aに示すdq座標系は、回転座標系である。d軸及びq軸は、回転子磁束ベクトル(二次磁束ベクトル)の回転速度(角速度)と同じ速度で回転する。反時計回り方向が、位相の進み方向である。d軸は、回転子磁束ベクトルの方向に延びる軸として設定されている。q軸は、d軸を進み方向に90度回転させた軸として設定されている。U軸は、U相巻線に対応する。V軸は、V相巻線に対応する。W軸は、W相巻線に対応する。U軸、V軸及びW軸は、回転子が回転しても、回転しない。つまり、U軸、V軸及びW軸は、固定軸である。
回転子速度ω2nは、回転子の速度を表す(図示していない)。二次磁束回転速度ω2fは、二次磁束ベクトルの回転速度を表す。誘導機のような非同期機の場合は回転子速度(回転子の速度)ω2nと二次磁束の回転速度ω2fの間には差があり、この差はすべり角速度ωsと呼ばれる。本明細書では、特に断りが無い限り、角度は電気角を意味する。d軸とq軸との間の角度、角度θ、回転子角速度ω2n及び二次磁束回転速度ω2fは、電気角に基づいた値である。回転子速度ω2n及び二次磁束回転速度ω2fの単位はrad/秒である。
図2Bに示すαβ座標系は、固定座標系である。α軸及びβ軸は、固定軸である。反時計回り方向が、位相の進み方向である。α軸は、U軸と同一方向に延びる軸として設定されている。β軸は、α軸を進み方向に90度回転させた軸として設定されている。
(実施形態1)
(回転機制御部101について)
図3に示すように、回転機制御部101は、u,w/α,β変換部(3相2相座標変換部)106、指令電圧特定部107、磁束推定部108、トルク推定部109、速度・位相推定部110、参照トルク特定部121、指令振幅特定部122、移動量特定部111、指令位相特定部127、指令磁束特定部112、α軸磁束偏差特定部113a、β軸磁束偏差特定部113b及びα,β/u,v,w変換部(2相3相座標変換部)114を含んでいる。
回転機制御部101では、u,w/α,β変換部106によって、相電流iu,iwが、軸電流iα,iβに変換される。軸電流iα,iβは、3相回転機102のα−β座標上におけるα軸電流iα及びβ軸電流iβをまとめて記載したものである。相電流iu,iw及び軸電流iα,iβは電流ベクトルであるので、相電流iu,iw及び軸電流iα,iβをそれぞれ電流ベクトルiu,iw及び電流ベクトルiα,iβと称することができる。磁束推定部108によって、指令軸電圧vα *,vβ *及び軸電流iα,iβから、3相回転機102の一次磁束ベクトルが推定される(推定一次磁束ψsが特定される)。推定一次磁束ψsのα軸成分及びβ軸成分をそれぞれ推定一次磁束ψα及び推定一次磁束ψβと記載する。推定一次磁束ψsの振幅を|ψs|と記載する。軸指令電圧vα *,vβ *は、次の制御サイクルにおいて回転機に印加される電圧ベクトルを規定するものである。速度・位相推定部110によって、推定一次磁束ψα,ψβから、3相回転機102の一次磁束ベクトルの位相と、一次磁束の回転速度が推定される(推定位相θsと推定一次磁束速度ω1fが特定される)。図3の例では、一次磁束の回転速度と回転子の回転速度は同じである。つまり、速度・位相推定部110によって、推定回転子速度ω2nが特定される。トルク推定部109によって、推定一次磁束ψα,ψβ及び軸電流iα,iβから、3相回転機102のトルクが推定される(推定トルクTeが特定される)。参照トルク特定部121によって、推定回転子速度ω2nが指令速度ωref *に一致するように、参照トルクTrefが特定される。移動量特定部111によって、参照トルクTref、指令速度ωref *及び推定トルクTeから、第2移動量Δθsが特定される。指令振幅特定部122によって、参照トルクTrefから指令振幅|ψs *|が特定される。指令位相特定部127によって、第2移動量Δθs及び推定位相θsから、指令位相θs *が特定される。指令磁束特定部112によって、指令位相θs *及び指令振幅|ψs *|から、指令磁束ベクトルψs *が特定される。指令磁束ベクトルψs *のα軸成分及びβ軸成分を、それぞれα軸指令磁束ψα *及びβ軸指令磁束ψβ *と記載する。α軸磁束偏差特定部113aによって、α軸指令磁束ψα *と推定一次磁束ψαとの偏差(磁束偏差Δψα=ψα *−ψα)が求められる。β軸磁束偏差特定部113bによって、β軸指令磁束ψβ *と推定一次磁束ψβとの偏差(磁束偏差Δψβ=ψβ *−ψβ)が求められる。指令電圧特定部107によって、磁束偏差Δψα,Δψβ及び軸電流iα,iβから、指令軸電圧vα *,vβ *が特定される。指令軸電圧vα *,vβ *は、3相回転機102のα−β座標上におけるα軸指令電圧vα *及びβ軸指令電圧vβ *をまとめて記載したものである。指令軸電圧vα *,vβ *は電圧ベクトルであるので、指令軸電圧vα *,vβ *を指令電圧ベクトルvα *,vβ *と称することができる。α,β/u,v,w変換部114によって、指令軸電圧vα *,vβ *が、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *に変換される。なお、本実施形態では、後述の第1制御モードにおいては、参照トルク特定部121および指令振幅特定部122では機能せず、移動量特定部111において参照トルクTrefは用いられない。
このような制御(フィードバック制御)により、3相回転機102の一次磁束ベクトルが指令磁束ベクトルψs *に追従する(3相回転機102の一次磁束ベクトルの振幅が指令振幅|ψs *|に追従する)ように、PWMインバータ104を介して3相回転機102に電圧ベクトルが印加される。
本明細書では、軸電流iα,iβは、実際に3相回転機102を流れる電流ではなく、情報として伝達される電流値を意味する。指令軸電圧vα *,vβ *、推定一次磁束ψs(磁束ψα,ψβ)、推定位相θs、推定トルクTe、参照トルクTref、指令トルクTe *、指令速度ωref *、指令位相θs *、指令振幅|ψs *|、指令磁束ベクトルψs *、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *等も同様である。
本実施形態の制御に関する各構成要素について、以下で説明する。
(第1電流センサ105a、第2電流センサ105b)
第1電流センサ105a及び第2電流センサ105bは、3相回転機102の相電流(電流ベクトル)iu,iwを検出する。図1に示す第1電流センサ105a及び第2電流センサ105bとして、公知の電流センサを用いることができる。本実施形態では、第1電流センサ105aは、u相を流れる相電流iuを測定するように設けられている。第2電流センサ105bは、w相を流れる相電流iwを測定するように設けられている。ただし、第1電流センサ105a及び第2電流センサ105bは、u相及びw相の2相以外の組み合わせの2相の電流を測定するように設けられていてもよい。以下では、第1電流センサ105a及び第2電流センサ105bの組み合わせを電流検出部と称することがある。電流検出部は、電流ベクトルiaを検出する。
(u,w/α,β変換部106)
図3に示すu,w/α,β変換部106は、相電流iu,iwを軸電流iα,iβに変換する。具体的に、u,w/α,β変換部106は、式(1−1)及び(1−2)により、相電流iu,iwを軸電流iα,iβに変換して、軸電流iα,iβを出力する。
Figure 2018121394
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(磁束推定部108)
磁束推定部108は、前の制御サイクルにおいて特定された指令軸電圧(指令電圧ベクトル)vα *,vβ *を用いて、現在の制御サイクルにおける3相回転機102の一次磁束ベクトルを推定する(推定一次磁束ψsを特定する)。具体的には、磁束推定部108は、軸電流iα,iβ及び指令軸電圧vα *,vβ *から、推定一次磁束ψs(推定一次磁束ψα,ψβ)を求める。より具体的には、磁束推定部108は、式(1−3)、(1−4)及び(1−5)を用いて、推定一次磁束ψα,ψβ、及び推定一次磁束ψsの振幅|ψs|を求める。式(1−3)及び(1−4)におけるψα|t=0、ψβ|t=0は、それぞれ推定一次磁束ψα,ψβの初期値である。式(1−3)及び(1−4)におけるRaは、3相回転機102の固定子抵抗である。本実施形態では、式(1−3)及び(1−4)における演算のために必要となる積分器は離散系で構成されている。
Figure 2018121394
Figure 2018121394
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推定一次磁束ψsの特定の際に、指令電圧ベクトル(指令軸電圧vαβ *)に代えて、検出された3相回転機102の電圧ベクトル(2相電圧vαβ)を用いることもできる。すなわち、式(1−3)の「vα *」を「vα」に置き換え、式(1−4)の「vβ *」を「vβ」に置き換えることができる。具体的には、磁束推定部108は、3相回転機102に印加されている電圧ベクトルの検出値を3相2相変換させて得た2相電圧(2相電圧vαβ)を用いて推定一次磁束ψsを特定するものであってもよい。
(トルク推定部109)
トルク推定部109は、検出された電流ベクトルia(軸電流iα,iβ)と、現在の制御サイクルにおいて推定された一次磁束ベクトルである推定一次磁束ψα,ψβとから、現在の制御サイクルにおけるトルクを推定する(推定トルクTeを特定する)。具体的には、トルク推定部109は、式(1−6)を用いて、推定トルクTeを求める。式(1−6)におけるNpは、3相回転機102の極対数である。
Figure 2018121394
(速度・位相推定部110)
速度・位相推定部110は、推定一次磁束ψs(推定一次磁束ψα,ψβ)から一次磁束ベクトルの位相を推定する(推定位相θsを特定する)。具体的に、速度・位相推定部110は、式(1−7)により、推定位相θsを求める。また、速度・位相推定部110は、現在の制御サイクルにおいて求めた推定位相θs(n)と、前回の制御サイクルにおいて求めた推定位相θs(n−1)とを用いて、式(1−8)により、3相回転機102の一次磁束の角速度ω1fすなわち回転子の角速度(回転子速度)ω2nを推定する。本実施形態の3相回転機102は、後述のように同期回転機であるため、一次磁束の角速度ω1fと回転子の角速度ω2nは一致する。速度・位相推定部110は、公知の速度・位相推定器である。ここで、Tsは各制御サイクルの周期(制御周期)を意味する。nは、n番目の制御サイクルであることを示す。nは整数である。
Figure 2018121394
Figure 2018121394
3相回転機102が誘導機の場合、回転子の角速度ω2nは一次磁束の回転速度ω1fに対してすべり角速度ωs分ずれた角速度となる。このため、式(1−8)により回転子速度ω2nを求めることはできない。3相回転機102が誘導機である変形例では、式(1−8)の左辺と中辺の間の関係式を用いて求めた3相回転機102の一次磁束の回転速度ω1fと、正規化二次磁束ψ2nと、推定トルクTeとから、回転子の速度を推定する(回転子速度ω2nを特定する)。具体的には、式(1−9A)を用いて、すべり角速度ωsを求める。さらに、算出したすべり角速度ωsと一次磁束の回転速度ω1fから回転子速度ω2nを式(1−10)により求める。式(1−9A)におけるR2nは、3相誘導機102の正規化回転子抵抗である。Mは、相互インダクタンスである。R2は、回転子抵抗である。L2は、回転子インダクタンスである。なお、正規化二次磁束ψ2nは回転子磁束(二次磁束)ψ2のM/L2倍の値であり、正規化二次磁束ψ2nの回転速度は二次磁束ψ2の回転速度と同じである。式(1−9A)の導出方法は、例えば公知の文献(新中新二:「瞬時速度推定同伴の最小次元D因子磁束状態オブザーバを用いた誘導モータのセンサレスベクトル制御」、電気学会論文誌D、Vol.135、No.3、pp.299−307、(2015))に記載されている。正規化二次磁束ψ2nのノルムが一定の条件においては二次磁束(正規化二次磁束)の回転速度ω2fではなく一次磁束の回転速度ω1fを利用できることも上記公知の文献に記載のとおりである。正規化二次磁束ψ2nは、例えば、式(1−9B)を用いて求めることができる。式(1−9B)におけるl1taは、3相誘導機102の仮想電機子反作用磁束である。l1tは、固定子総合漏れインダクタンスである。仮想電機子反作用磁束l1ta及び固定子総合漏れインダクタンスの詳細については後述する。
Figure 2018121394
Figure 2018121394
本実施形態では、速度・位相推定部110は、速度推定部(速度特定部)と位相推定部(位相特定部)とを含んでいる。これらは、組み合わされて単一の推定部を構成していてもよく別個独立に設けられていてもよい。
(参照トルク特定部121)
参照トルク特定部121は、指令速度ωref *及び推定回転子速度ω2nから、参照トルクTrefを特定する。具体的に、参照トルク特定部121は、式(1−11)により、参照トルクTrefを求める。式(1−11)におけるKspは比例ゲインである。KsIは積分ゲインである。参照トルク特定部121は、公知のPI補償器である。本実施形態では、参照トルク特定部121は、後述の第2制御モードで動作し、第1制御モードでは動作しない。この点は、実施形態2及び3でも同様である。ただし、必要であれば、第1制御モードにおいて参照トルク特定部121を動作させてもよい。
Figure 2018121394
(移動量特定部111)
移動量特定部111は、参照トルクTref、推定トルクTe及び指令速度ωref *から第2移動量Δθsを求める。第2移動量Δθsは、1制御サイクルで一次磁束ベクトルの位相が移動するべき移動量である。図4に示すように、移動量特定部111は、トルク減算部141と、ハイパスフィルタ(HPF)142と、乗算部143と、切り換えスイッチ144と、PI補償器145と、乗算部146と、加算部147と、を有している。
移動量特定部111では、切り換えスイッチ144を切り換えることにより、第1制御モードと第2制御モードとを切り換えることができる。第1制御モードは、3相回転機102の回転速度が低い場合において制御性能の低下を抑制可能な制御モードである。第2制御モードは、回転速度が高い場合においてトルクに対する高い応答性を確保可能な制御モードである。第2制御モードにおいて、回転機制御装置102は、3相回転機102のトルクを指令トルクTe *(本実施形態では参照トルクTrefと同じである)に追従させる。
第1制御モードでは、HPF142が、推定トルクTeの高周波成分を抽出(特定)する。次に、乗算部143が、高周波成分の符合を反転させる。これにより、推定トルクTeの振動成分(トルクの変動分)ΔT1が得られる。HPF142及び乗算部143の動作は、式(1−12)によって表現される。式(1−12)におけるωcは遮断角周波数である。
Figure 2018121394
第1制御モードでは、次に、切り換えスイッチ144が、振動成分ΔT1を選択する。次に、PI補償器145が、式(1−13A)に基づいて、第1移動量Δθを特定する。式(1−13A)におけるKθPは比例ゲインである。KθIは積分ゲインである。本実施形態では、式(1−13A)における演算のために必要となる積分器は、離散系で構成されている。式(1−13A)から理解されるように、PI補償器145は、自身への入力をゼロに近づける(具体的には収束させる)フィードバック制御を行うことによって第1移動量Δθを特定するフィードバック補償部として機能する(この点は、実施形態1の第2制御モード並びに実施形態2及び3の第1及び第2制御モードでも同様である)。第1制御モードでは、PI補償器145が行うフィードバック制御により、振動成分ΔT1がゼロに近づく。結果として、HPF142の出力もゼロに近づく。なお、実施形態2及び3においても、実施形態1同様、第1制御モードにおける第1移動量Δθは、推定トルクTeの振動成分をゼロに近づけるように生成される。
Figure 2018121394
第1制御モードでは、乗算部146が、指令速度ωref *に制御周期Tsを乗算することによって、積ωref *sを特定する。加算部147は、第1移動量Δθと積ωref *sとを足し合わせる。これにより、第2移動量(一次磁束ベクトルの移動量)Δθsが特定される。乗算部146及び加算部147の動作は、式(1−14)によって表現される。
Figure 2018121394
このように、第1制御モードにおいて、移動量特定部111は、推定トルクTeにおける遮断角周波数ωcよりも高い周波数成分である高周波成分をゼロに近づける第1移動量Δθを特定する。そして、第1移動量Δθと積ωref *sとを合計することにより、第2移動量Δθsを特定する。
第2制御モードでは、トルク減算部141が、参照トルクTrefを指令トルクTe *として用い、指令トルクTe *から推定トルクTeを差し引くことによって、トルク偏差ΔT2(=Te *−Te)を特定する。次に、切り換えスイッチ144が、トルク偏差ΔT2を選択する。次に、PI補償器145が、式(1−13B)に基づいて、第1移動量Δθを特定する。式(1−13B)から理解されるように、第2制御モードにおける第1移動量Δθは、指令トルクTe *(本実施形態では参照トルクTrefと同じである)と推定トルクTeとの差分をゼロに近づけるものである。
Figure 2018121394
その後、第2制御モードでは、乗算部146が、指令速度ωref *に制御周期Tsを乗算することによって、積ωref *sを特定する。加算部147は、第1移動量Δθと積ωref *sとを足し合わせることにより、第2移動量Δθsを得る。第2制御モードにおける乗算部146及び加算部147の動作も、上記の式(1−14)によって表現される。
本実施形態における制御モードの切換方法について、図5を用いて説明する。図5における左右に延びる2つの半直線のうち、下側の半直線が第1制御モードに対応し、上側の半直線が第2制御モードに対応する。図5に示すように、第1制御モードが選択された状態において、3相回転機102が加速して回転子速度ω2nがωth2以上になると、制御モードは第2制御モードに切り換わる。第2制御モードが選択された状態において、3相回転機102が減速して回転子速度ω2nがωth1以下になると、制御モードは第1制御モードに切り換わる。これらの切り換えは、切り換えスイッチ144が担う。
3相回転機102の回転速度が低い領域では、回転子速度の推定精度を確保するのが難しい。参照トルクTrefは推定回転子速度ω2nに基づいて生成されるため、参照トルクTrefの精度を確保するのも難しい。この点、本実施形態では、回転速度が低いときに、第1制御モードを選択し、参照トルクTrefを用いずに第2移動量Δθsを特定する。これにより、3相回転機102の低速駆動時における安定性が確保される。一方、回転速度が高いときには、第2制御モードを選択し、参照トルクTrefを用いて第2移動量Δθsを特定する。これにより、トルクに対する高い応答性が確保される。
また、図5を用いた説明から理解されるように、3相回転機102の回転速度と制御モード切り換えのタイミングとの関係は、ヒステリシスループを構成する。このようなヒステリシスループによれば、制御モード切換時のチャタリングを防止することができる。
なお、乗算部143による高周波成分の符合の反転は必須ではない。つまり、乗算部143を省略することもできる。この高周波成分自体が振動成分であると考えることもできる。この省略を行った場合であっても、適切な第2移動量Δθsが得られるように移動量特定部111を構成することは可能である。
(指令位相特定部127)
指令位相特定部127は、第2移動量(一次磁束ベクトルの移動量)Δθs及び推定位相θsから、指令位相θs *を特定する。指令位相θs *は、指令磁束ベクトルψs *の位相である。具体的には、指令位相特定部127は、式(1−15)により指令位相θs *を求める。
Figure 2018121394
(指令振幅特定部122)
振幅指令生成部122は、参照トルクTrefを指令トルクTe *として用い、指令トルクTe *から指令振幅|ψs *|を特定することができるように構成されている。指令振幅|ψs *|は、指令磁束ベクトルψs *の振幅である。指令振幅特定部122は、ルックアップテーブル、計算式(近似式)が格納された演算子等を用いて構成できる。ルックアップテーブルを用いる場合、指令トルクTe *と指令振幅|ψs *|との対応関係を表すルックアップテーブルを事前に準備することができる。演算子における計算式も、事前に準備できる。このようなルックアップテーブル及び計算式は、予め行った測定データ又は理論に基づいて設定できる。指令振幅|ψs *|の具体的な特定方法は、公知の文献(武田洋次、森本茂雄、松井信行、本田幸夫、「埋込磁石同期モータの設計と制御」、株式会社オーム社、2001年10月25日発行、等)を参照することにより理解され得る。本実施形態では、最小の電流で最大のトルクを発生できる最大トルク/電流制御(MTPA)を満たすトルクと磁束との関係を利用する。本実施形態における指令振幅特定部122は、磁束パラメータ|ψa|を用いて指令振幅|ψs *|を求める。磁束パラメータ|ψa|は、3相回転機(本実施形態では同期回転機)102における永久磁石が作る磁石磁束の振幅として与えられた定数である。
実施形態1では、第2制御モードにおいて、指令振幅特定部122により指令振幅|ψs *|を特定する。第1制御モードにおいては、指令振幅特定部122を用いず指令振幅|ψs *|を得る。具体的に、第1制御モードにおいては、指令振幅|ψs *|として、固定値、又は、計算式を用いて得た値を用いる。ただし、必要であれば、実施形態1の第1制御モードにおいても、指令振幅特定部122により指令振幅|ψs *|を特定してもよい。
実施形態1の変形例では、第1制御モード及び第2制御モードの両方において、(i)同じ固定値が指令振幅|ψs *|として用いられる、又は(ii)同じ計算式を用いて得た値が指令振幅|ψs *|として用いられる。この変形例では、第1制御モード及び第2制御モードおける指令振幅の特定方法の共通性が高い。このため、この変形例は、制御モード切換時のトルク変動抑制の観点から有利である。(ii)の計算式の例については、後述の「指令振幅|ψs *|を得るための計算式の例」の項目で説明する。この計算式は、第2制御モードにおいて指令振幅特定部122を用いる場合にも、第1制御モードの指令振幅|ψs *|の特定に使用可能である。
なお、後述の第2実施形態及び第3実施形態においては、第1制御モード及び第2制御モードの両方において、指令振幅特定部122により指令振幅|ψs *|を特定する。ただし、第2実施形態及び第3実施形態においても、第1制御モード及び/又は第2制御モードにおいて上述の固定値を用いたり計算式を用いてもよい。
(指令磁束特定部112)
指令磁束特定部112は、制御サイクル毎に、指令位相θs *及び指令振幅|ψs *|を用いて、指令磁束ベクトルψs *を特定する。特定された指令磁束ベクトルψs *は、次の制御サイクルにおいて3相回転機102に印加される一次磁束ベクトルを規定する。具体的に、式(1−16)及び(1−17)を用いて、指令磁束ベクトルψα *,ψβ *を求める。指令磁束ψα *は、指令磁束ベクトルψα *,ψβ *のα軸成分である。指令磁束ψβ *は、指令磁束ベクトルψα *,ψβ *のβ軸成分である。
Figure 2018121394
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なお、指令振幅特定部122、指令位相特定部127及び指令磁束特定部112は、1つのまとまった演算部を構成していてもよい。
(α軸磁束偏差特定部113a、β軸磁束偏差特定部113b)
α軸磁束偏差特定部113aは、指令磁束ψα *と推定一次磁束ψαを取得し、これらの偏差(磁束偏差Δψα:ψα *−ψα)を求める。β軸磁束偏差特定部113bは、指令磁束ψβ *と推定一次磁束ψβを取得し、これらの偏差(磁束偏差Δψβ:ψβ *−ψβ)を求める。磁束偏差特定部113a,113bとしては、公知の演算子を用いることができる。
(指令電圧特定部107)
指令電圧特定部107は、制御サイクル毎に、指令軸電圧(指令電圧ベクトル)vα *,vβ *を特定する。特定された指令軸電圧vα *,vβ *は、次の制御サイクルにおいて3相回転機102に印加される電圧ベクトルを規定する。具体的には、指令電圧特定部107は、磁束偏差Δψα,Δψβ及び軸電流iα,iβから、指令軸電圧vα *,vβ *を求める。より具体的には、指令電圧特定部107は、式(1−18)を用いてα軸指令電圧vα *を求め、式(1−19)を用いてβ軸指令電圧vβ *を求める。
Figure 2018121394
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(α,β/u,v,w変換部114)
α,β/u,v,w変換部114は、指令軸電圧vα *,vβ *を、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *に変換する。具体的に、α,β/u,v,w変換部114は、式(1−20)により、指令軸電圧vα *,vβ *を指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *に変換して、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *を出力する。
Figure 2018121394
(デューティ生成部103)
図1に示すデューティ生成部103は、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *から、デューティDu,Dv,Dwを生成する。本実施形態では、デューティ生成部103は、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *の各成分を、各相のデューティDu,Dv,Dwに変換する。デューティDu,Dv,Dwの生成方法としては、一般的な電圧形PWMインバータに用いられる方法を用いることができる。例えば、デューティDu,Dv,Dwは、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *を、直流電源118(図6)の電圧値Vdcの半分の値で除すことにより求めてもよい。この場合、デューティDuは、2×vu */Vdcである。デューティDvは、2×vv */Vdcである。デューティDwは、2×vw */Vdcである。デューティ生成部103は、デューティDu,Dv,Dwを出力する。
(PWMインバータ104)
図1及び図6に示すように、PWMインバータ104は、スイッチング素子119a,119b,119c,119d,119e,119f及び還流ダイオード120a,120b,120c,120d,120e,120fが対になった変換回路、ベースドライバ116、平滑コンデンサ117及び直流電源118を含む。直流電源118は、ダイオードブリッジ等によって整流された出力を表す。
PWMインバータ104は、PWM制御によって3相回転機102に電圧ベクトルを印加する。具体的には、3相回転機102への給電は、スイッチング素子119a〜119fを介して、直流電源118から行われる。より具体的には、まず、デューティDu,Dv,Dwがベースドライバ116に入力される。次に、デューティDu,Dv,Dwがスイッチング素子119a〜119fを電気的に駆動するためのドライブ信号に変換される。次に、ドライブ信号に従って各スイッチング素子119a〜119fが動作する。
本実施形態では、PWMインバータ104は、スイッチング素子119a〜119fを用いた3相スイッチング回路である。スイッチング素子119a〜119fとしては、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)及びIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が挙げられる。
本実施形態の回転機制御装置100は、PMWインバータ104を用いて、電圧ベクトルを3相回転機102に印加する。具体的には、回転機制御装置100は、PMWインバータ104を用いて、前の制御サイクルにおいて特定された現在の制御サイクル用の指令電圧ベクトルを平均値とする電圧ベクトルを3相回転機102に印加する。
(3相回転機102)
図1に示す3相回転機102は、回転機制御装置100の制御対象である。3相回転機102は、電動機であってもよく発電機であってもよい。3相回転機102には、PWMインバータ104によって、電圧ベクトルが印加される。「3相回転機102に電圧ベクトルが印加される」とは、3相回転機102における3相交流座標上の3相(U相、V相、W相)の各々に電圧が印加されることを指す。本実施形態では、3相(U相、V相、W相)の各々が、相対的に高電圧を有する高電圧相と、相対的に低電圧を有する低電圧相との2種類から選択されるいずれかとなるように、3相回転機102が制御される。
本実施形態における3相回転機102は、例えば、永久磁石同期回転機である。永久磁石同期回転機としては、IPMSM(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)及びSPMSM(Surface Permanent Magnet Synchronous Motor)が挙げられる。IPMSMは、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとが相違する突極性(一般には、Lq>Ldの逆突極性)を有し、マグネットトルクに加えてリラクタンストルクも利用できる。このため、IPMSMの駆動効率は極めて高い。3相回転機102としては、誘導機、シンクロリラクタンスモータを用いることもできる。
(本実施形態の効果)
3相回転機102の回転速度が低いときは、回転子速度の推定精度を確保するのが難しく、従って参照トルクTrefの精度を確保するのが難しい。この点、本実施形態の第1制御モードでは、参照トルクTrefを用いずに第2移動量Δθsを特定する。このため、第1制御モードは、3相回転機102の回転速度が低いときに3相回転機102の駆動を安定させる(ロバスト性を確保する)のに適している。また、本実施形態の第1制御モードでは、推定トルクTeの振動成分ΔT1をゼロに近づける(具体的にはゼロに収束させる)第1移動量Δθが特定される。その第1移動量Δθが指令磁束ベクトルψs *の位相(指令位相)θs *に反映され、その指令磁束ベクトルψs *に一次磁束ベクトルが追従する。推定トルクTeの振動成分ΔT1の情報が指令位相θs *に反映されることは、3相回転機102の駆動を安定させることに役立つ。このため、第1制御モードによれば、3相回転機102の回転速度が低い場合においても、制御性能が低下し難い。
本実施形態の第2制御モードでは、参照トルクTrefを指令トルクTe *として用い、指令トルクTe *と推定トルクとの差分をゼロに近づける(具体的にはゼロに収束させる)第1移動量Δθが特定される。その第1移動量Δθが第2移動量Δθsに反映され、その第2移動量Δθsが指令磁束ベクトルψs *の位相(指令位相)θs *に反映され、その指令磁束ベクトルψs *に一次磁束ベクトルが追従する。このような第2制御モードは、トルクに対する高い応答性を確保するのに適している。
また、本実施形態には、第1制御モード及び第2制御モードの両方を、速度センサ及び位置センサを用いずに実現できるというメリットもある。
(実施形態2)
以下、実施形態2の回転機制御装置200aについて説明する。なお、実施形態2では、実施形態1と同様の部分については同一符号を付し、説明を省略することがある。
図7に示すように、実施形態2の回転機制御部201aは、移動量特定部211aを有している。
(移動量特定部211a)
移動量特定部211aは、参照トルクTref、推定トルクTe及び指令速度ωref *から第2移動量(一次磁束ベクトルの移動量)Δθsを求める。図8に示すように、移動量特定部211aは、ローパスフィルタ(LPF)252と、切り換えスイッチ251と、トルク減算部250と、PI補償器145と、乗算部146と、加算部147と、を有している。
移動量特定部211aでは、切り換えスイッチ251を切り換えることにより、第1制御モードと第2制御モードとを切り換えることができる。具体的に、移動量特定部211aは、移動量特定部111と同様、図5に従って制御モードを切り換えることができる。第2制御モードにおいて、回転機制御装置102は、3相回転機102のトルクを指令トルクTe *に追従させる。
第1制御モードでは、LPF252が、推定トルクTeの低周波成分T1を抽出(特定)する。具体的には、LPF252は、式(1−21)に従って低周波成分T1を求める。式(1−21)におけるωcは遮断角周波数である。
Figure 2018121394
第1制御モードでは、次に、切り換えスイッチ251が、低周波成分T1を、指令トルクTe *として選択する。次に、トルク減算部250が、指令トルクTe *(低周波成分T1)から推定トルクTeを差し引くことによって、トルク偏差ΔT(=Te *−Te)を特定する。このトルク偏差ΔTは、実施形態1の振動成分ΔT1と同じ意味合いを有する。従って、このトルク偏差ΔTを、振動成分と称することができる。
第1制御モードでは、その後、PI補償器145は、式(1−13C)に基づいて、第1移動量Δθを特定する。乗算部146が、指令速度ωref *に制御周期Tsを乗算することによって、積ωref *sを特定する。加算部147は、第1移動量Δθと積ωref *sとを足し合わせる。これにより、第2移動量(一次磁束ベクトルの移動量)Δθsが得られる。
Figure 2018121394
このように、第1制御モードにおいて、移動量特定部211aは、推定トルクTeにおける遮断角周波数ωcよりも低い周波数成分である低周波成分T1と、低周波成分T1と推定トルクTeとの差分である第1差分をゼロに近づける第1移動量Δθと、を特定する。そして、第1移動量Δθと積ωref *sとを合計することにより、第2移動量Δθsを特定する。
第2制御モードでは、切り換えスイッチ251が、参照トルクTrefを、指令トルクTe *として選択する。トルク減算部250が、指令トルクTe *(参照トルクTref)から推定トルクTeを差し引くことによって、トルク偏差ΔT(=Te *−Te)を特定する。PI補償器145は、式(1−13C)に基づいて、第1移動量Δθを特定する。乗算部146が、指令速度ωref *に制御周期Tsを乗算することによって、積ωref *sを特定する。加算部147は、第1移動量Δθと積ωref *sとを足し合わせる。これにより、第2移動量(一次磁束ベクトルの移動量)Δθsが得られる。
第1制御モード及び第2制御モードの両方において、指令トルクTe *が指令振幅特定部122に与えられる。指令振幅特定部122では、指令トルクTe *から指令振幅|ψs *|が特定される。
(本実施形態の効果)
実施形態2の第1制御モードでは、実施形態1の第1制御モードと同様、第2移動量Δθsを特定するのに参照トルクTrefを用いない。従って、実施形態2の第1制御モードも、3相回転機102の低速駆動時における安定性確保に有利である。さらに、実施形態2の第1制御モードでは、ローパスフィルタ(LPF)252の出力が指令トルクTe *として用いられ、その指令トルクTe *が指令位相θs *及び指令振幅|ψs *|に反映される。これにより、安定した指令磁束ベクトルψs *が生成され、その安定した指令磁束ベクトルψs *に一次磁束ベクトルが追従する。このような第1制御モードにより得られる安定性により、第1制御モードと第2制御モードとの間の切換時におけるトルク変動が緩和される。また、実施形態2の第2制御モードは、実施形態1の第2制御モードと同様、トルクに対する高い応答性を確保するのに有利である。
本実施形態によれば、第1制御モードと第2制御モードとを移動量特定部211aの動作を変更することのみによって切り換えることができる。実際に、本実施形態では、第1制御モード及び第2制御モードにおいて、回転機制御装置100のうち移動量特定部211a以外の要素は同様に動作する(この点は、実施形態3においても同様である)。つまり、両制御モードの制御態様の共通性を高くすることができる。すなわち、本実施形態によれば、制御モード切換時に制御が不安定になったり3相回転機102の物理量が大きく振動したりすることを回避し易い。制御モード切換時のトルク変動も抑制され易い。
また、上述のように両制御モードの切り換えを移動量特定部211aの動作変更のみで行えること、すなわち両制御モードで多くの演算が共通することは、制御システムのシンプル化及び省メモリ化等の観点から有利である。
(実施形態3)
以下、実施形態3の回転機制御装置200bについて説明する。なお、実施形態3では、実施形態2と同様の部分については同一符号を付し、説明を省略することがある。
図9に示すように、実施形態3の回転機制御部201bは、移動量特定部211bを有している。
(移動量特定部211b)
移動量特定部211bは、参照トルクTref、推定トルクTe及び指令速度ωref *から第2移動量(一次磁束ベクトルの移動量)Δθsを求める。図10に示すように、移動量特定部211bは、ローパスフィルタ(LPF)252と、切り換えスイッチ251と、リミッタ(トルク制限部)253と、トルク減算部250と、PI補償器145と、乗算部146と、加算部147と、を有している。
移動量特定部211bでは、切り換えスイッチ251を切り換えることにより、第1制御モードと第2制御モードとを切り換えることができる。具体的に、移動量特定部211bは、移動量特定部111と同様、図5に従って制御モードを切り換えることができる。第2制御モードにおいて、回転機制御装置102は、3相回転機102のトルクを指令トルクTe *に追従させる。
第1制御モードでは、LPF252が、推定トルクTeの低周波成分T1を抽出(特定)する。具体的には、LPF252は、式(1−21)に従って低周波成分T1を求める。切り換えスイッチ251が、低周波成分T1を選択する。
第1制御モードでは、リミッタ253が、低周波成分T1から指令トルクTe *を特定する。具体的に、リミッタ253は、式(1−22A)に従って、指令トルクTe *を求める。なお、式(1−22A)の例では、上限値Tlimの絶対値と下限値−Tlimの絶対値は同じであるが、これらは同じでなくてもよい。この点は、式(1−22B)についても同様である。
Figure 2018121394
第1制御モードでは、その後、トルク減算部250が、リミッタ253の出力から推定トルクTeを差し引くことによって、トルク偏差ΔTを特定する。PI補償器145は、式(1−13C)に基づいて、第1移動量Δθを特定する。乗算部146が、指令速度ωref *に制御周期Tsを乗算することによって、積ωref *sを特定する。加算部147は、第1移動量Δθと積ωref *sとを足し合わせる。これにより、第2移動量(一次磁束ベクトルの移動量)Δθsが得られる。
第1制御モードにおいてPI補償器145が行う制御により、リミッタ253の出力と推定トルクTeの差分がゼロに近づく(具体的にはゼロに収束する)。このようにすれば、結果として、推定トルクTeの振動成分もゼロに近づく(具体的にはゼロに収束する)。
第2制御モードでは、切り換えスイッチ251が、参照トルクTrefを選択する。
第2制御モードでは、リミッタ253が、参照トルクTrefから指令トルクTe *を特定する。具体的に、リミッタ253は、式(1−22B)に従って、指令トルクTe *を求める。
Figure 2018121394
第2制御モードでは、その後、トルク減算部250が、リミッタ253の出力から推定トルクTeを差し引くことによって、トルク偏差ΔTを特定する。PI補償器145は、式(1−13C)に基づいて、第1移動量Δθを特定する。乗算部146が、指令速度ωref *に制御周期Tsを乗算することによって、積ωref *sを特定する。加算部147は、第1移動量Δθと積ωref *sとを足し合わせる。これにより、第2移動量(一次磁束ベクトルの移動量)Δθsが得られる。
第1制御モード及び第2制御モードの両方において、指令トルクTe *が指令振幅特定部122に与えられる。指令振幅特定部122では、指令トルクTe *から指令振幅|ψs *|が特定される。
(本実施形態の効果)
実施形態3の第1制御モードでは、低周波成分T1が上限値Tlim以上であったり下限値−Tlim以下であったりする場合に、上限値Tlim又は下限値−Tlimを指令トルクTe *として用いる。実施形態3の第2制御モードでは、参照トルクTrefが上限値Tlim以上であったり下限値−Tlim以下であったりする場合に、上限値Tlim又は下限値−Tlimを指令トルクTe *として用いる。つまり、両制御モードにおいて、指令トルクTe *が極端に小さい値になったり極端に大きい値になったりすることがない。その指令トルクTe *が指令位相θs *及び指令振幅|ψs *|に反映される。これにより、安定した指令磁束ベクトルψs *が生成され、その安定した指令磁束ベクトルψs *に一次磁束ベクトルが追従する。従って、リミッタ253によれば、制御モードの切換時の過渡時においても、トルク変動が抑制される。
また、リミッタ253によれば、3相回転機102に流れる電流が過大となる事態を回避できる。つまり、3相回転機102、インバータ104等における異常な発熱を回避できる。この点で、リミッタ253は、信頼性の高い回転機制御装置の実現に寄与するといえる。
[式(1−9B)の導出]
以下、式(1−9B)の導出について説明する。誘導機の一般座標系(より具体的には、任意の速度ωrで回転するγδ一般座標系)での数学モデルは公知の文献(新中新二:「瞬時速度推定同伴の最小次元D因子磁束状態オブザーバを用いた誘導モータのセンサレスベクトル制御」、電気学会論文誌D、Vol.135、No.3、pp.299−307、(2015))より式(2−1)、(2−2)、(2−3)で表され、ψ2nd=Mnid、ψ2nq=0を考慮すると、dq座標系では式(2−5)、(2−6)、(2−7)のように表せる。また、式(2−4A)及び式(2−4B)の関係が成り立つ。Mは相互インダクタンス、L1は固定子インダクタンス、L2は回転子インダクタンス、Raは固定子抵抗、R2は回転子抵抗、Mnは正規化相互インダクタンス、R2nは正規化回転子抵抗、l1tは固定子総合漏れインダクタンス、W2は回転子逆時定数(回転子時定数の逆数)、ψ2は回転子磁束(二次磁束)、ψ2nは正規化回転子磁束(正規化二次磁束)、vは固定子電圧、iは固定子電流、ω1は固定子磁束回転速度、ω2nは回転子速度、Npは極対数、Tはトルク、Iは2×2単位行列、Jは2×2交代行列であり、D(s,ωr)はD因子であり、sは微分演算子d/dtである。
Figure 2018121394
(一次磁束と正規化二次磁束の関係)
定常状態においては、式(2−5)に基づいて、一次磁束に関する式(2−9)と、正規化二次磁束に関する式(2−10)とが導かれる。一次磁束と正規化二次磁束との間では式(2−11)の関係が成立する。図11のベクトル図に、この関係を示す。ψsは固定子磁束(一次磁束)である。
Figure 2018121394
式(2−11)及び図11から、一次磁束ψsは正規化二次磁束ψ2nと仮想電機子反作用磁束l1taからなることが分かる。式(2−11)を変形することにより、式(1−9B)が導かれる。
[指令振幅|ψs *|を得るための計算式の例]
以下、指令振幅特定部122を用いずに指令振幅|ψs *|を得るための計算式の例について、図12及び図13を参照しながら説明する。
この例では、指令振幅|ψs *|は、仮設定部330と、振幅修正量生成部317と、加算部331と、によって計算される(図12参照)。この計算では、軸電流iα,iβと推定磁束ψs(推定磁束ψα,ψβ)とから、指令振幅|ψs *|が計算される。
(仮設定部330)
仮設定部330では、指令磁束ベクトルψs *の仮振幅|ψref|が設定(特定)される。この例では、仮設定部330に、予め仮振幅|ψref|が格納されている。仮振幅|ψref|を定数である。例えば、仮振幅|ψref|を、磁束パラメータψaとすることができる。
(振幅修正量生成部317)
振幅修正量生成部317は、軸電流iα,iβと推定磁束ψs(推定磁束ψα,ψβ)とから、振幅修正量Δψを特定する。図13に示すように、振幅修正量生成部317は、誤差パラメータ演算部321と、誤差パラメータ偏差演算部322と、PI補償部323とを有している。
振幅修正量生成部317は、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとが相違する場合でも、一致する場合においても、同じ動作を実施する。具体的には、インダクタンス差がある場合において、インダクタンスLとして、d軸インダクタンスとq軸インダクタンスとの間の値を用いることができる。また、磁気的突極性が大きくない場合は、L=Ldと取り扱っても差し支えがない。つまり、インダクタンスの値として、d軸インダクタンスの値、d軸インダクタンスよりも大きくq軸インダクタンスよりも小さい値、又はd軸インダクタンスよりも小さくq軸インダクタンスよりも大きい値を用いることができる。
特許第4972135号明細書は、上記のようにインダクタンスLを設定する上で参考になる。特許第4972135号明細書には、dm−qm座標系に関する技術が記載されている。dm−qm座標系は、埋込磁石構造の永久磁石同期モータ等の磁気的突極性を有するモータを、磁気的突極性を有していない永久磁石同期モータと同様に扱うことを可能とする。dm−qm座標系を用い、dm軸電流(制御座標系ではγ軸電流)をゼロにすることによって、最大トルク制御(最大トルク/電流制御)を行うことができる。3相回転機102が磁気的突極性を有する場合、d軸電流をdm軸電流に、磁石磁束ψaを拡張鎖交磁束ベクトルΦexmに、インダクタンスLを仮想インダクタンスLmに、それぞれ置き換えることができる。dm軸電流、拡張鎖交磁束ベクトルΦexm及び仮想インダクタンスLmの詳細については、特許第4972135号明細書(数式36及び段落0182〜0183等)を参照されたい。なお、Lmは、Ld≦Lm<Lqを満たす。また、インダクタンス差がない場合においては、dm−qm座標系と、一般的なd−q座標系とは一致し、Lm=Ld=Lqとすればよい。すなわち、インダクタンス差がある場合についての考え方は、インダクタンス差がない場合の考え方を包含することになる。
(誤差パラメータ演算部321)
誤差パラメータ演算部321は、仮想インダクタンス(3相回転機102のインダクタンス)Lmと軸電流iα,iβと推定磁束ψs(推定磁束ψα,ψβ)とから、誤差パラメータεを演算する。具体的には、まず、電機子反作用磁束を推定する(推定電機子反作用磁束Lmaを求める)。推定電機子反作用磁束Lmaのα軸成分及びβ軸成分を、それぞれ推定電機子反作用磁束Lmα、推定電機子反作用磁束Lmβと記載する。推定電機子反作用磁束Lmα、推定電機子反作用磁束Lmβは、仮想インダクタンスLmと、軸電流iα,iβとの積である。次に、推定磁束ψs(推定磁束ψα,ψβ)及び推定電機子反作用磁束Lma(推定電機子反作用磁束Lmα,Lmβ)から、磁石磁束を推定する(推定磁石磁束ψ’aeを求める)。推定磁石磁束ψ’aeのα軸成分及びβ軸成分を、それぞれ推定磁石磁束ψ’aeα,ψ’aeβと記載する。具体的には、式(3−1)及び(3−2)に示すように、推定磁束ψα,ψβから推定電機子反作用磁束Lmα,Lmβを減じることにより推定磁石磁束ψ’aeα,ψ’aeβを求める。次に、推定磁石磁束ψ’aeα,ψ’aeβと軸電流iα,iβとから誤差パラメータεを式(3−3)のように計算する。
Figure 2018121394
(誤差パラメータ偏差演算部322)
誤差パラメータ偏差演算部322は、指令誤差パラメータε*と誤差パラメータεを取得し、これらの偏差(誤差パラメータ偏差Δε:ε*−ε)を求める。誤差パラメータ偏差演算部322としては、公知の演算子を用いることができる。指令誤差パラメータε*は、任意の値とすることができる。この例では、振幅修正量生成部317は、MTPA用に構成されている。MTPAが成立するには、推定磁石磁束ψ’aeと軸電流iα,iβとを直交させる必要がある。そこで、この例では、推定磁石磁束ψ’aeと軸電流iα,iβとの内積をゼロにするために、指令誤差パラメータε*をゼロに設定している。
(PI補償部323)
PI補償部323は、誤差パラメータ偏差Δεを取得し、これがゼロとなるように振幅修正量Δψを特定する。具体的には、式(3−4)に示すように、誤差パラメータ偏差Δεを入力とする比例・積分演算を実施することにより振幅修正量Δψを求める。上述のように、この例では、誤差パラメータ偏差演算部322において、MTPA用の誤差パラメータ偏差Δεが生成される。従って、PI補償部323において、MTPAに適合した振幅修正量Δψが生成される。
Figure 2018121394
(加算部331)
加算部331は、仮振幅|ψref|と振幅修正量Δψとから、指令振幅|ψs *|を特定する。指令振幅|ψs *|は、仮振幅|ψref|と振幅修正量Δψとの合計である。このようにすれば、MTPAを行うことが可能となる。
以上のように、実施形態1〜3に係る回転機制御装置(100,200a,200b)は、3相回転機(102)の一次磁束ベクトルが指令磁束ベクトルψs *に追従するように、インバータ(104)を用いて3相回転機に電圧ベクトルを印加する。回転機制御装置は、3相回転機のトルクを指令トルクTe *に追従させる第2制御モードと、第2制御モードとは異なる第1制御モードと、を切り換え可能である。回転機制御装置は、トルク推定部(109)と、位相推定部(速度・位相推定部110に含まれている)と、移動量特定部(111,211a,211b)と、指令位相特定部(127)と、指令磁束特定部(112)と、を備えている。トルク推定部は、一次磁束ベクトルと、3相回転機の電流ベクトルと、を用いて、3相回転機のトルクを推定する(推定トルクTeを特定する)。位相推定部は、一次磁束ベクトルの位相を推定する(推定位相θsを特定する)。移動量特定部は、3相回転機の指令速度ωref *と制御サイクルの周期Tsの積ωref *sを計算し、第1制御モードにおいては推定トルクTeの振動成分をゼロに近づけるものであり第2制御モードにおいては指令トルクTe *と推定されるトルクとの差分をゼロに近づけるものである第1移動量Δθを特定し、積ωref *sと第1移動量Δθとを合計することによって1制御サイクルで一次磁束ベクトルの位相が移動するべき第2移動量Δθsを特定する。指令位相特定部は、推定位相θsと、第2移動量Δθsと、を用いて、指令磁束ベクトルψs *の位相である指令位相θs *を特定する。指令磁束特定部は、指令位相θs *を用いて指令磁束ベクトルψs *を特定する。この回転機制御装置は、3相回転機の回転速度が低い場合において制御性能の低下を抑制可能な制御モード(第1制御モード)と、回転速度が高い場合においてトルクに対する高い応答性を確保可能な制御モード(第2制御モード)とを切換可能である。しかも、この回転機制御装置は、制御モード切換時のトルク変動を抑制可能である。
実施形態1では、第1制御モードにおいて、移動量特定部は、推定トルクTeにおける遮断角周波数ωcよりも高い周波数成分である高周波成分をゼロに近づける第1移動量Δθを特定する。このようにすれば、推定トルクTeの振動成分を容易にゼロに近づけることができる。
実施形態1では、第1制御モードにおいて、高周波成分をゼロに近づけるフィードバック制御によって第1移動量Δθが特定される。第2制御モードにおいて、指令トルクTe *と推定トルクTeとの差分をゼロに近づけるフィードバック制御によって第1移動量Δθが特定される。このようにすれば、第1制御モードにおいて、推定トルクTeの振動成分を容易にゼロに近づけることができる。また、第2制御モードにおいて、指令トルクTe *と推定トルクTeとの差分を容易にゼロに近づけることができる。
実施形態1の変形例に係る回転機制御装置(100)は、指令振幅特定部(122)を備えている。第1制御モード及び第2制御モードの両方において、(i)同じ固定値が指令磁束ベクトルψs *の振幅である指令振幅|ψs *|として用いられ、又は(ii)同じ計算式を用いて得た値が指令磁束ベクトルψs *の振幅である指令振幅|ψs *|として用いられる。第1制御モード及び第2制御モードの両方において、指令磁束特定部は指令振幅|ψs *|を用いて指令磁束ベクトルψs *を特定する。このようにすることは、制御モード切換時のトルク変動抑制の観点から有利である。
実施形態2では、第1制御モードにおいて、移動量特定部は、推定トルクTeにおける遮断角周波数ωcよりも低い周波数成分である低周波成分と、低周波成分と推定トルクTeとの差分である第1差分(トルク偏差ΔT)をゼロに近づける第1移動量Δθと、を特定する。このようにすれば、推定トルクTeの振動成分を容易にゼロに近づけることができる。
実施形態2に係る回転機制御装置(201a)は、参照トルク特定部(121)と、指令振幅特定部(122)と、を備えている。参照トルク特定部は、3相回転機(102)の回転子速度を指令速度ωref *に追従させる場合に3相回転機のトルクが追従するべき参照トルクTrefを特定する。第1制御モードにおいて、低周波成分が指令トルクTe *として用いられる。第2制御モードにおいて、参照トルクTrefが指令トルクTe *として用いられる。第1制御モード及び第2制御モードの両方において、指令トルクTe *と推定トルクTeとの差分をゼロに近づけるフィードバック制御によって第1移動量Δθが特定される。第1制御モード及び第2制御モードの両方において、指令振幅特定部は指令トルクTe *を用いて指令磁束ベクトルψs *の振幅である指令振幅|ψs *|を特定し、指令磁束特定部は指令振幅|ψs *|を用いて指令磁束ベクトルψs *を特定する。このようにすれば、第1制御モードにおいて、推定トルクTeの振動成分を容易にゼロに近づけることができる。また、第2制御モードにおいて、指令トルクTe *と推定トルクTeとの差分を容易にゼロに近づけることができる。また、このようにすることは、制御モード切換時のトルク変動抑制の観点から有利である。また、このようにすれば、第1制御モード及び第2制御モードの両方において、制御目的(最大トルク/電流等)に即した指令振幅を特定し易い。
実施形態3に係る移動量特定部(211b)は、リミッタ(253)を有している。リミッタは、リミッタへの入力が上限値以上である場合は上限値を出力し、リミッタへの入力が下限値以下である場合は下限値を出力し、リミッタへの入力が下限値よりも大きく上限値よりも小さい場合はリミッタへの入力を出力するものである。第1制御モードにおいて、移動量特定部は、推定トルクTeにおける遮断角周波数ωcよりも低い周波数成分である低周波成分をリミッタに入力させ、リミッタの出力と推定トルクTeとの差分である第2差分(トルク偏差ΔT)をゼロに近づける第1移動量Δθを特定する。このようにすれば、推定されるトルクの振動成分をゼロに近づけることができる。また、3相回転機に流れる電流が過大となる事態を回避でき、信頼性の高い回転機制御装置の実現が可能となる。
実施形態3に係る回転機制御装置(201b)は、参照トルク特定部(121)と、指令振幅特定部(122)と、を備えている。参照トルク特定部は、3相回転機(102)の回転子速度を指令速度ωref *に追従させる場合に3相回転機のトルクが追従するべき参照トルクTrefを特定する。第2制御モードにおいて、参照トルクTrefがリミッタ(253)に入力される。第1制御モード及び第2制御モードの両方において、リミッタの出力が指令トルクTe *として用いられ、指令トルクTe *と推定トルクTeとの差分をゼロに近づけるフィードバック制御によって第1移動量Δθが特定される。第1制御モード及び第2制御モードの両方において、指令振幅特定部は指令トルクTe *を用いて指令磁束ベクトルψs *の振幅である指令振幅|ψs *|を特定し、指令磁束特定部は指令振幅|ψs *|を用いて指令磁束ベクトルψs *を特定する。このようにすれば、第1制御モードにおいて、推定トルクTeの振動成分を容易にゼロに近づけることができる。また、第2制御モードにおいて指令トルクTe *と推定トルクTeとの差分をゼロに近づけることができる。また、このようにすることは、制御モード切換時のトルク変動抑制の観点から有利である。
本開示に係る技術は、かご型誘導機や同期機のような3相回転機に適用できる。本開示に係る技術が適用された3相回転機は、冷暖房装置又は給湯機に使用されたヒートポンプ式冷凍装置に適している。また、本開示に係る技術は、ファン、ブロアの制御装置に適している。
100,200a,200b 回転機制御装置
101,201a,201b 回転機制御部
102 3相回転機
103 デューティ生成部
104 PWMインバータ
105a 第1電流センサ
105b 第2電流センサ
106 u,w/α,β変換部
107 指令電圧特定部
108 磁束推定部
109 トルク推定部
110 速度・位相推定部
111,211a,211b 移動量特定部
112 指令磁束特定部
113a α軸磁束偏差特定部
113b β軸磁束偏差特定部
114 α,β/u,v,w変換部
116 ベースドライバ
117 平滑コンデンサ
118 直流電源
119a〜119f スイッチング素子
120a〜120f 還流ダイオード
121 参照トルク特定部
122 指令振幅特定部
127 指令位相特定部
141,250 トルク減算部
142 ハイパスフィルタ(HPF)
143,146 乗算部
144,251 切り換えスイッチ
145 PI補償器
147 加算部
252 ローパスフィルタ(LPF)
253 リミッタ
317 振幅修正量生成部
321 誤差パラメータ演算部
322 誤差パラメータ偏差演算部
323 PI補償部
330 仮設定部
331 加算部

Claims (9)

  1. 3相回転機の一次磁束ベクトルが指令磁束ベクトルに追従するように、インバータを用いて前記3相回転機に電圧ベクトルを印加する回転機制御装置であって、
    前記回転機制御装置は、前記3相回転機のトルクを指令トルクに追従させる第2制御モードと、前記第2制御モードとは異なる第1制御モードと、を切り換え可能であり、
    前記回転機制御装置は、
    前記一次磁束ベクトルと、前記3相回転機の電流ベクトルと、を用いて、前記3相回転機のトルクを推定するトルク推定部と、
    前記一次磁束ベクトルの位相を推定する位相推定部と、
    前記3相回転機の指令速度と制御サイクルの周期の積を計算し、前記第1制御モードにおいては推定される前記トルクの振動成分をゼロに近づけるものであり前記第2制御モードにおいては前記指令トルクと推定される前記トルクとの差分をゼロに近づけるものである第1移動量を特定し、前記積と前記第1移動量とを合計することによって1制御サイクルで前記一次磁束ベクトルの位相が移動するべき第2移動量を特定する移動量特定部と、
    推定された前記位相と、前記第2移動量と、を用いて、前記指令磁束ベクトルの位相である指令位相を特定する指令位相特定部と、
    前記指令位相を用いて前記指令磁束ベクトルを特定する指令磁束特定部と、を備えた、回転機制御装置。
  2. 前記第1制御モードにおいて、前記移動量特定部は、推定された前記トルクにおける遮断角周波数よりも高い周波数成分である高周波成分をゼロに近づける前記第1移動量を特定する、請求項1に記載の回転機制御装置。
  3. 前記第1制御モードにおいて、前記高周波成分をゼロに近づけるフィードバック制御によって前記第1移動量が特定され、
    前記第2制御モードにおいて、前記指令トルクと推定された前記トルクとの差分をゼロに近づけるフィードバック制御によって前記第1移動量が特定される、請求項2に記載の回転機制御装置。
  4. 前記回転機制御装置は、指令振幅特定部を備え、
    前記第1制御モード及び前記第2制御モードの両方において、(i)同じ固定値が前記指令磁束ベクトルの振幅である指令振幅として用いられ、又は(ii)同じ計算式を用いて得た値が前記指令磁束ベクトルの振幅である指令振幅として用いられ、
    前記第1制御モード及び前記第2制御モードの両方において、前記指令磁束特定部は前記指令振幅を用いて前記指令磁束ベクトルを特定する、請求項2又は3に記載の回転機制御装置。
  5. 前記第1制御モードにおいて、前記移動量特定部は、推定された前記トルクにおける遮断角周波数よりも低い周波数成分である低周波成分と、前記低周波成分と推定された前記トルクとの差分である第1差分をゼロに近づける前記第1移動量と、を特定する、請求項1に記載の回転機制御装置。
  6. 前記回転機制御装置は、参照トルク特定部と、指令振幅特定部と、を備え、
    前記参照トルク特定部は、前記3相回転機の回転子速度を前記指令速度に追従させる場合に前記3相回転機のトルクが追従するべき参照トルクを特定し、
    前記第1制御モードにおいて、前記低周波成分が前記指令トルクとして用いられ、
    前記第2制御モードにおいて、前記参照トルクが前記指令トルクとして用いられ、
    前記第1制御モード及び前記第2制御モードの両方において、前記指令トルクと推定された前記トルクとの差分をゼロに近づけるフィードバック制御によって前記第1移動量が特定され、
    前記第1制御モード及び前記第2制御モードの両方において、前記指令振幅特定部は前記指令トルクを用いて前記指令磁束ベクトルの振幅である指令振幅を特定し、前記指令磁束特定部は前記指令振幅を用いて前記指令磁束ベクトルを特定する、請求項5に記載の回転機制御装置。
  7. 前記移動量特定部は、リミッタを有し、
    前記リミッタは、前記リミッタへの入力が上限値以上である場合は前記上限値を出力し、前記リミッタへの入力が下限値以下である場合は前記下限値を出力し、前記リミッタへの入力が前記下限値よりも大きく前記上限値よりも小さい場合は前記リミッタへの入力を出力するものであり、
    前記第1制御モードにおいて、前記移動量特定部は、推定された前記トルクにおける遮断角周波数よりも低い周波数成分である低周波成分を前記リミッタに入力させ、前記リミッタの出力と推定された前記トルクとの差分である第2差分をゼロに近づける前記第1移動量を特定する、請求項1に記載の回転機制御装置。
  8. 前記回転機制御装置は、参照トルク特定部と、指令振幅特定部と、を備え、
    前記参照トルク特定部は、前記3相回転機の回転子速度を前記指令速度に追従させる場合に前記3相回転機のトルクが追従するべき参照トルクを特定し、
    前記第2制御モードにおいて、前記参照トルクが前記リミッタに入力され、
    前記第1制御モード及び前記第2制御モードの両方において、前記リミッタの出力が前記指令トルクとして用いられ、前記指令トルクと推定された前記トルクとの差分をゼロに近づけるフィードバック制御によって前記第1移動量が特定され、
    前記第1制御モード及び前記第2制御モードの両方において、前記指令振幅特定部は前記指令トルクを用いて前記指令磁束ベクトルの振幅である指令振幅を特定し、前記指令磁束特定部は前記指令振幅を用いて前記指令磁束ベクトルを特定する、請求項7に記載の回転機制御装置。
  9. 3相回転機の一次磁束ベクトルが指令磁束ベクトルに追従するように、インバータを用いて前記3相回転機に電圧ベクトルを印加する回転機制御方法であって、
    前記回転機制御方法は、前記3相回転機のトルクを指令トルクに追従させる第2制御モードと、前記第2制御モードとは異なる第1制御モードと、を切り換え可能であり、
    前記回転機制御方法は、
    前記一次磁束ベクトルと、前記3相回転機の電流ベクトルと、を用いて、前記3相回転機のトルクを推定するトルク推定ステップと、
    前記一次磁束ベクトルの位相を推定する位相推定ステップと、
    前記3相回転機の指令速度と制御サイクルの周期の積を計算し、前記第1制御モードにおいては推定される前記トルクの振動成分をゼロに近づけるものであり前記第2制御モードにおいては前記指令トルクと推定される前記トルクとの差分をゼロに近づけるものである第1移動量を特定し、前記積と前記第1移動量とを合計することによって1制御サイクルで前記一次磁束ベクトルの位相が移動するべき第2移動量を特定する移動量特定ステップと、
    推定された前記位相と、前記第2移動量と、を用いて、前記指令磁束ベクトルの位相である指令位相を特定する指令位相特定ステップと、
    前記指令位相を用いて前記指令磁束ベクトルを特定する指令磁束特定ステップと、を備えた、回転機制御方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP4350973A1 (en) * 2022-10-05 2024-04-10 Abb Schweiz Ag Stable and passive observer-based v/hz control for synchronous motors

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