JP2018119248A - 不織布ワイパーおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
このようなワイパーは、布の様な風合があり、吸液性や拭取り性(掻取り性と称される場合もある)なども備えており、さらに大量生産が可能で安価であることが望ましい。そのため、従来から不織布によるワイパーが広く利用されている。
ここで不織布を構成する素材としては、合成繊維やパルプ等の天然繊維を採用したものが知られているが、吸液性を考慮するような場合にはパルプ繊維層を含むものが好ましいことが知られている。
また、例えば特許文献1で開示されるように複数の畝状の山部と谷部(凹凸部)を設けたワイパーの構造も知られている。このようにワイパーに凹凸部を設ける処理は、不織布のエンボス処理として知られているものである。
また、特許文献1の不織布ワイパーによる凹凸部は、畝状とした凸部と溝状となる凹部とが交互に筋状に存在する構造である。よって、ユーザがこの不織布ワイパーを使用して拭取りを行う際に、その筋に沿って不織布ワイパーを移動させた場合と、その筋に直角な方向に不織布ワイパーを移動させた場合とでは、拭取り能力に差が出てしまう。すなわち、特許文献1による不織布ワイパーは、拭取り操作の方向によって拭取能力に相違(以下「拭取り能力の異方性」と称する)が生じてしまう。
全面にわたり複数の凹凸部が形成してあり、
前記パルプ繊維層側から見て、前記凹凸部の内の凸部が切頭錐体形状であって頂部の平坦部と該平坦部の周囲から延在し裾野状に広がった傾斜部とを有し、
前記平坦部が四角形状である、ことを特徴とする不織布ワイパーにより達成できる。
また、前記凹凸部における凸部から凹部までの深さ寸法が、前記パルプ繊維層と合成繊維層とを積層して一体化された積層体の厚さ寸法に対して、2から4倍であるのが好ましい。
水流交絡工程後に、脱水、乾燥の処理を施して一体化された積層体に、エンボス処理を施すエンボス工程を少なくとも含み、
前記エンボス工程では、それぞれの周表面に凹凸部を有し、前記凹凸部が交互に噛合うようにして配置してある対の金属ロールを用い、前記金属ロール間に前記積層体を通過させて、前記パルプ繊維層に切頭錐体形状の凸部を賦形する、ことを特徴とする不織布ワイパーの製造方法によっても達成される。
また、前記金属ロールは少なくとも一方の内部に、加熱手段を備えていることがより好ましい。
また、本発明によるワイパーは、凸部を同じ太さの単なる柱形状とした場合と比較し、使用感が柔らかで、繰り返し使用しても凸部が潰れ難く、耐久性に富む不織布ワイパーとして提供できる。よって、工業用のワイパーとして好適である。
更に、本発明の製造方法によると、上記不織布ワイパーを簡易、確実に製造することができる。
図1は本発明の不織布ワイパーの特徴的な構成を確認し易いように、その一部を拡大して示した模式図であり、図1(a)は拭取り面となるパルプ繊維層側から見た斜視図、図1(b)は図1(a)におけるA−A矢視断面図である。
図1で、ワイパーを構成する不織布CWebは、拭取り面となるパルプ繊維FPによるパルプ繊維層(以下、パルプ繊維層FPと記載する場合もある)の背面側に合成繊維ウエブSWによる合成繊維層(以下、合成繊維層SWと記載する場合もある)を一体に積層した構造である。合成繊維層SWはパルプ繊維層FPを補強してワイパーとしての外形を保持する裏打ち面となっている。
本発明に係る不織布ワイパーは、合成繊維層SWと上記パルプ繊維層FPとが一体的に積層された複合型の不織布CWebに、全面にわたり複数の凹凸部を設けた形態である。図1(b)は、不織布ワイパーの横断面の様子を示している。
なお、図1から理解できるように、所定のパターン(図では不織布製造時の搬送方向MDとこれに直角な方向CDに沿って、間隔をもって凸部PRが繰り返されるパターン)によるので、凸部PRと凸部PRとの間の部分は相対的に低くなった凹部DEが形成される。
本発明の不織布ワイパーは、後述の説明から明らかとなるが、拭取り面となるパルプ繊維層FPにおける凸部PRが上記のように切頭四角錐体の形状に形成されていることが重要である。凸部の周囲に相対的に現れる凹部DEについては特段の制限はなく、凸部PRと凹部DEとが同一形状で対称的であってもよいし、凹部DEの形状が凸部と異なってもよい。
図1の不織布ワイパーは、拭取り能力の異方性がないので、ユーザは不織布ワイパーの向きを気にすること無く拭取り動作を行って、グリース等の粘性の高い油状物質を確実に拭取ることができる。
この上記不織布ワイパーの製造方法については、後述の説明で明らかとする。
なお、不織布ワイパーの吸液性能および拭取り性能を十分に確保するという観点から、平坦部PPの面積は、例えば4から25mm2とするのが望ましい。ここで、面積が4mm2よりも小さいと、拭取り操作時、平坦部PPへ均一に荷重を掛ける事が難しくなり、凸部の効果が発揮されにくい。また25mm2よりも大きいと、平坦部PP内で荷重により歪みが生じて、拭き取り性が悪化してしまう可能性がある、よって、平坦部PPの面積は上記範囲とするのが好ましい。
図2に示す不織布の製造装置1は、上流側にパルプエアレイド部としてのエアレイド装置2、合成繊維層供給部としての合成繊維ウエブ供給装置3、そして積層形成部としてのサクション装置4が配設されている。サクション装置4はエアレイド装置2の下側に対向するように配置されている。
搬送方向MDで、これらの装置2、3、4より下流には、上流側から順に、水流交絡部としての水流噴射(ウオータジェット)装置5、脱水・乾燥部として乾燥装置6が配置されている。上記乾燥装置6の下流には連続して製造される複合型の不織布CWebを巻き取るための巻取装置7が更に設けてある。
上記積層位置24の下側にはサクション装置4が対向配備してある。より詳細には、サクション装置4は装置本体41の上面にサクション部42を有しており、サクション部42が上記パルプ繊維FPに吸引力(負圧)を作用させるべく積層位置24に対して設定してある。
搬送ワイヤ43はサクション部42の吸引力が、反対側(上側)に及ぶような目開き形態(メッシュ)で形成されている。
さらに、原料パルプRPは、例示のようにロールパルプの形態で供給される場合が多いので、上記解繊装置21としてハンマーミルやディスクミル型等を採用するのが好ましい。ここでの解繊処理は、必要に応じて一段或いは複数段としてもよい。
また、上記原料パルプRPと共に、コットン等の天然繊維や、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成繊維を追加配合するようにしてもよい。このような配合を採用する際には、別途エアレイドヘッドを追加してウエブ層を重ねるか、開繊したパルプを風送するダクトに別の繊維を混合する風送ラインを追加すればよい。
上記合成繊維ウエブSWとしては、スパンボンド法により形成された連続フィラメントのウエブを用いるのが好ましい。そして、ここでの合成繊維としては、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等から選択するのが好ましい。
その際に、積層位置24ではサクション装置4のサクション部42による吸引力が搬送ワイヤ43を通過し、その上の合成繊維ウエブSWおよびパルプ繊維FPに作用する。よって、上記積層位置24を経て下流側に移動した積層状態のウエブは下側の合成繊維層(合成繊維ウエブSW)と、その上に載置されたパルプ繊維層(パルプウエブ)とが積層された状態の予備的積層体PWebとなる。
そこで、本製造装置1では、予備的積層体PWebを上下から挟んで合成繊維ウエブSW上でのパルプ繊維FPの載置状態を安定化させる為の挟持ローラ28、そして水流噴射装置5の上流側にパルプ繊維FPに飛散防止用に水分を付与するプレウエット装置30が配備してある。プレウエット装置30は、好適には、予備的積層体PWebの上方からウオータミストを吹き付ける噴霧ノズル31と予備的積層体PWebの下側(すなわち、合成繊維ウエブSWの下面)から吸引力を印加するサクション装置32とを含んで構成されている。
図2で例示的に示している水流噴射装置5は、搬送方向MDに沿って多段(図2では例示しているのは4段)に水流噴射ノズル51が配置されている。第1段目の水流噴射ノズルを低圧で吹き付ける事により、上述したプレウエット装置30の代用としてもよい。
図2では、搬送方向MDに対して直角な方向(装置1の幅方向)におけるノズルの様子は図示していないが、幅方向においても複数の水流噴射ノズルが配置してある。
よって、搬送ワイヤ55上を搬送される予備的積層体PWebは、搬送方向MDで下流に向かう程に、より多くの水流交絡処理を受けることになり、水流噴射装置5を出るときには上側のパルプ繊維層と下側の合成繊維ウエブとの十分な交絡処理が実現される。
水流噴射装置5を出た直後にあっては、ウエブはウエット状態であり、乾燥前にあってはパルプ繊維同士の結合は十分に確立されてはいない。
凹凸部を有するワイパーを得るために、平坦な不織布CWebにエンボス処理が施される。エンボス処理を実施するためのエンボス装置は、図2に示した製造装置に付加してもよいし、別途に設けてもよい。図2に付加する場合は、図示したように、乾燥装置6と巻取装置7との間に、エンボス装置8を付加すればよい。
パルプ繊維層FP側の表面に、異なる形状の凸部を設けて、拭取り性能の違いを確認した。本発明に従う実施例1、2と、比較例1−3を準備して、拭取り試験を行った。
拭取り試験は、アルミプレート上に拭取り対象物となるグリース7mgを垂らし、試験用の治具に試験片としてワイパーを固定し、前後方向に20回滑らせて往復動させる拭取り操作を行った。その後、試験片の表面を画像解析して、変色している領域の面積を、グリースを拭取った面積(拭取り面積)であるとして、初期面積(2500mm2)に対する拭取り面積の割合を面積率として算出した。なお、上記治具に5g/cm2の荷重を設定して、試験片(ワイパー)をアルミプレートに当てた。この当接圧は、ユーザがワイパーに軽く手を載せてワイパーを拭取り操作するときを想定した圧力である。
下記の表1は実施例1、2、及び比較例1〜3のワイパーそれぞれに関する情報を纏めたものであり、図4はこれらワイパーの拭取り試験の結果を示した図である。
具体的に説明すると、実施例1ではCD方向の拭取り面積が233mm2であり、MD方向の拭取り面積が200mm2であるので、(233/200)−1=0.165で、異方性は約0.17とした。
同様に実施例2、比較例1、比較例2及び比較例3について求めた異方性は、それぞれ0.41、−0.57、−0.52、そして0.22であった。
表1の異方性の評価は絶対値を用いて、0.0〜0.4を○、0.4〜0.5を△、そして0.5以上を×とした。実施例2のワイパーは僅かな差ではあるが異方性△となった。
更に、拭取り性能(拭取り面積の大きさ)を確認した。初期面積(2500mm2)に対して、いずれかの方向で拭取り面積率が7.5%以下であるワイパーは、拭取り性能が劣ると判定した。
上記に対して、比較例1は、畝状に長く形成される凸部とその間で溝部となる凹部を形成した従来技術による不織布である。そして、凸部を四角錐(点)としたのが比較例2、そして、凸部を球状(点)とした比較例3である。
なお、上記実施例1、2および比較例1−3について、用いた不織布はNBKPによるパルプ繊維層と、ポリプロピレンによる合成繊維層とによる複合型不織布であり、パルプ繊維層に設ける凸部の形状を変更した、各ワイパーは他の条件が一致するように作製した。
一方、畝状に長く形成された凸部を有する比較例1は異方性が大きいことが示されている。また、比較例2の凸部が四角錐体形状の場合は拭取り性能が大きく劣ること、比較例3の凸部が球体形状の場合は異方性に問題は無いが、比較例2の場合と同様に拭取り性能が極めて低いことが、確認された。
なお、表1の拭取り易さは、モニター7名により、アルミ板上のグリース拭取りの評価である。拭取りした際の拭取り作業性(滑り感)や感触(柔らかさや)などの官能評価をしたものであり、良好○、普通△、悪い×で示している。
以上から、各ワイパーの総合評価は、表1に示した結果となった。
また、本発明の不織布ワイパー製造法によれば、上記不織布ワイパーを簡易、確実に製造できる。
2 エアレイド装置
3 合成繊維ウエブ供給装置
4 サクション装置
5 水流噴射装置
6 乾燥装置
7 巻取装置
8 エンボス装置
21 解繊機
22 ダクト
23 エアレイドホッパ
24 積層位置
28 挟持ローラ
30 プレウエット装置
31 噴霧ノズル
32 サクション装置
41 サクション装置本体
42 サクション部
43 搬送ワイヤ
51 水流噴射ノズル
52 サクション装置
55 搬送ワイヤ
81 金属ロール
82 ヒータ
85 金属ロール
86 ヒータ
FP パルプ繊維(パルプ繊維層)
PWeb 予備的積層体
CWeb 積層体(複合型不織布)
SW 合成繊維ウエブ(合成繊維層)
PR 凸部
DE 凹部
EG エッジ部
SL 傾斜部
Claims (7)
- 拭取り面となるパルプ繊維層と、前記拭取り面の裏打ち面となる合成繊維層とを積層して一体化してある不織布よりなるワイパーであって、
全面にわたり複数の凹凸部が形成してあり、
前記パルプ繊維層側から見て、前記凹凸部の内の凸部が切頭錐体形状であって頂部の平坦部と該平坦部の周囲から延在し裾野状に広がった傾斜部とを有し、
前記平坦部が四角形状である、ことを特徴とする不織布ワイパー。 - 当該不織布ワイパーは外形が四角形状であり、前記平坦部の各辺と前記不織布ワイパーの外形各辺とが互いに平行となるように、前記平坦部が設定してある、ことを特徴とする請求項1に記載の不織布ワイパー。
- 前記平坦部の面積は、4から25mm2である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の不織布ワイパー。
- 前記凹凸部における凸部から凹部までの深さ寸法が、前記パルプ繊維層と合成繊維層とを積層して一体化された積層体の厚さ寸法に対して、2から4倍である、ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の不織布ワイパー。
- 拭取り面となるパルプ繊維層の上に裏打ち面となる合成繊維層を積層して一体化してある不織布よりなるワイパーを製造する方法であって、
水流交絡工程後に、脱水、乾燥の処理を施して一体化された積層体に、エンボス処理を施すエンボス工程を少なくとも含み、
前記エンボス工程では、それぞれの周表面に凹凸部を有し、前記凹凸部が交互に噛合うようにして配置してある対の金属ロールを用い、前記金属ロール間に前記積層体を通過させて、前記パルプ繊維層に切頭錐体形状の凸部を賦形する、ことを特徴とする不織布ワイパーの製造方法。 - 前記切頭錐体形状は切頭四角錐体形状であり、頂部の四角形状の一辺が前記積層体の搬送方向と平行である、ことを特徴とする請求項5に記載の不織布ワイパーの製造方法。
- 前記金属ロールは少なくとも一方の内部に、加熱手段を備えていることを特徴とする請求項5又は6に記載の不織布ワイパーの製造方法。
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